(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】植物外稙片の形質転換
(51)【国際特許分類】
C12N 15/29 20060101AFI20220530BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20220530BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20220530BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220530BHJP
C12N 15/82 20060101ALI20220530BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220530BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220530BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20220530BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20220530BHJP
A01H 6/20 20180101ALI20220530BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220530BHJP
A01H 6/14 20180101ALI20220530BHJP
A01H 6/54 20180101ALI20220530BHJP
A01H 6/88 20180101ALI20220530BHJP
A01H 6/78 20180101ALI20220530BHJP
A01H 6/82 20180101ALI20220530BHJP
A01H 6/74 20180101ALI20220530BHJP
【FI】
C12N15/29
A01H1/00 A ZNA
C12N15/90 100Z
C12N15/55
C12N15/82 120Z
C12N15/82 122Z
C12N15/82 110Z
C12N15/63 100Z
C12N15/09 110
C12N15/09 100
A01H5/00 A
A01H5/10
C12N15/82 Z
A01H6/20
C12N15/11 Z
A01H6/14
A01H6/54
A01H6/88
A01H6/78
A01H6/82
A01H6/74
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557358
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2020024814
(87)【国際公開番号】W WO2020198408
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500207899
【氏名又は名称】パイオニア ハイ-ブレッド インターナショナル, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】コルテバ アグリサイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】アーリング,マレン エル
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シュジュン
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン-カム,ウィリアム ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】サンヨア-ドイエル,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】サルデサイ,ナゲシュ
【テーマコード(参考)】
2B030
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AB04
2B030AD04
2B030AD06
2B030AD07
2B030AD08
2B030AD20
2B030CA15
2B030CA17
2B030CA19
2B030CB02
(57)【要約】
成長植物器官及びそれらの複合組織の形質転換方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ポリヌクレオチドを含有するトランスジェニック双子葉植物を作製する方法であって、
双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織を、前記異種ポリヌクレオチド及び形態形成遺伝子発現カセットを含有するT-DNAと接触させること;
前記異種ポリヌクレオチドを含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない植物細胞を選択することであって、ここで、前記植物細胞は前記異種ポリヌクレオチドを含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない再生可能な植物構造体を形成する、選択すること;並びに
前記異種ポリヌクレオチドを含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない前記再生可能な植物構造体からトランスジェニック植物を再生すること
を含む方法。
【請求項2】
前記形態形成遺伝子発現カセットは、
(i)機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;又は
(ii)Babyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;又は
(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヌクレオチド配列は、前記機能性WUS/WOXポリペプチドをコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記機能性WUS/WOXポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、WUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5及びWOX9から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヌクレオチド配列は、前記Babyboom(BBM)ポリペプチド又は前記胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記Babyboom(BBM)ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、BBM2、BMN2及びBMN3から選択される、又は前記胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列はODP2である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヌクレオチド配列は、前記機能性WUS/WOXポリペプチド、及び前記Babyboom(BBM)ポリペプチド又は前記胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記機能性WUS/WOXポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列はWUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5及びWOX9から選択され、前記Babyboom(BBM)ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列はBBM2、BMN2及びBMN3から選択される、又は前記胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列はODP2である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記異種ポリヌクレオチドは、
栄養強化を付与する異種ポリヌクレオチド、油分含量の改変を付与する異種ポリヌクレオチド、タンパク質含量の改変を付与する異種ポリヌクレオチド、代謝産物含量の改変を付与する異種ポリヌクレオチド、収量増加を付与する異種ポリヌクレオチド、非生物的ストレス耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、乾燥耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、耐寒性を付与する異種ポリヌクレオチド、除草剤耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、病虫害耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、病原体耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、昆虫耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、窒素利用効率(NUE)を付与する異種ポリヌクレオチド、耐病性を付与する異種ポリヌクレオチド、バイオマス増加を付与する異種ポリヌクレオチド、代謝経路を変更する能力を付与する異種ポリヌクレオチド、及びこれらの組み合わせ
からなる群から選択される。請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織は、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記葉外植片は、葉、根出葉、茎生葉、散生葉及び対生葉、十字対生葉、対生重ね葉(opposite superposed leaf)、輪生葉、有柄葉、無柄葉、準無柄葉(subsessile leaf)、托葉を有する葉、無托葉の葉、単葉、複葉、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記茎外植片は、茎節領域、茎節間領域、葉柄、胚軸、上胚軸、ストロン、リゾーム、塊茎、球茎、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記双子葉植物は、ダイズ、ワタ、ヒマワリ、キャッサバ、インゲンマメ、ササゲ、トマト、ジャガイモ、ビート、ブドウ、ユーカリ属(Eucalyptus)、カンキツ類、パパイヤ、カカオ、キュウリ、リンゴ、トウガラシ属(Capsicum)、メロン、又はアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項14】
前記形態形成遺伝子発現カセットは、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、
前記機能性WUS/WOXポリペプチドは、配列番号61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、若しくは148のいずれかのアミノ酸配列を含む;又は前記機能性WUS/WOXポリペプチドは、配列番号60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、若しくは147のいずれかのヌクレオチド配列によってコードされる、
請求項1~4、7及び8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記形態形成遺伝子発現カセットは、FLP、FLPe、KD、Cre、SSV1、ラムダInt、ファイC31 Int、HK022、R、B2、B3、Gin、Tn1721、CinH、ParA、Tn5053、Bxb1、TP907-1、又はU153からなる群から選択される部位特異的リコンビナーゼをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、前記部位特異的リコンビナーゼは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、又は発生調節プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
前記形態形成遺伝子発現カセットを切除することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1又は16に記載の方法により作製されるトランスジェニック植物。
【請求項18】
請求項1又は17に記載のトランスジェニック植物の種子であって、前記異種ポリヌクレオチドを含む種子。
【請求項19】
前記再生可能植物構造体は、前記双子葉植物器官又はその複合組織を前記形態形成遺伝子発現カセットと接触させない場合の再生可能植物構造体の形成頻度と比較して、約0.1%~約1.0%、約1.1%~約10%、約10.1%~約20%、約20.1%~約30%、約30.1%~約40%、約40.1%~約50%、約50.1%~約60%、約60.1%~約70%、約70.1%~約80%、約80.1%~約90%、及び約90.1%~約100%増加した頻度で形成される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項20】
ゲノム編集双子葉植物を作製する方法であって、
双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織を、形態形成遺伝子発現カセットを含有するT-DNAと接触させ、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は部位特異的ポリペプチドを提供すること;
ゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない植物細胞を選択することであって、ここで、前記植物細胞は前記ゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない再生可能な植物構造体を形成する、選択すること;並びに
前記ゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない前記再生可能な植物構造体からゲノム編集植物を再生すること
を含む方法。
【請求項21】
前記形態形成遺伝子発現カセットは、
(i)機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;又は
(ii)Babyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;又は
(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヌクレオチド配列は、前記機能性WUS/WOXポリペプチドをコードする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記機能性WUS/WOXポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、WUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5及びWOX9から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヌクレオチド配列は、前記Babyboom(BBM)ポリペプチド又は前記胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記Babyboom(BBM)ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、BBM2、BMN2及びBMN3から選択される、又は前記胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列はODP2である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヌクレオチド配列は、前記機能性WUS/WOXポリペプチド、及びBabyboom(BBM)ポリペプチド又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記機能性WUS/WOXポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列はWUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5及びWOX9から選択され、前記Babyboom(BBM)ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列はBBM2、BMN2及びBMN3から選択される、又は前記胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列はODP2である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記部位特異的ポリペプチドは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEN、及びCRISPR-Casヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記CRISPR-Casヌクレアーゼは、Cas9又はCpflヌクレアーゼであり、ガイドRNAを提供することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記部位特異的ヌクレアーゼは、挿入、欠失、又は置換変異をもたらす、請求項20、28及び29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ガイドRNA及びCRISPR-Casヌクレアーゼは、リボ核タンパク質複合体である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織は、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記葉外植片は、葉、根出葉、茎生葉、散生葉及び対生葉、十字対生葉、対生重ね葉(opposite superposed leaf)、輪生葉、有柄葉、無柄葉、準無柄葉(subsessile leaf)、托葉を有する葉、無托葉の葉、単葉、複葉、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記茎外植片は、茎節領域、茎節間領域、葉柄、胚軸、上胚軸、ストロン、リゾーム、塊茎、球茎、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記双子葉植物は、ダイズ、ワタ、ヒマワリ、キャッサバ、インゲンマメ、ササゲ、トマト、ジャガイモ、ビート、ブドウ、ユーカリ属(Eucalyptus)、カンキツ類、パパイヤ、カカオ、キュウリ、リンゴ、トウガラシ属(Capsicum)、メロン、又はアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される、請求項20又は32に記載の方法。
【請求項36】
前記形態形成遺伝子発現カセットは、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、
前記機能性WUS/WOXポリペプチドは、配列番号61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、若しくは148のいずれかのアミノ酸配列を含む;又は前記機能性WUS/WOXポリペプチドは、配列番号60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、若しくは147のいずれかのヌクレオチド配列によってコードされる、
請求項20~23、26及び27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記形態形成遺伝子発現カセットは、FLP、FLPe、KD、Cre、SSV1、ラムダInt、ファイC31 Int、HK022、R、B2、B3、Gin、Tn1721、CinH、ParA、Tn5053、Bxb1、TP907-1、又はU153からなる群から選択される部位特異的リコンビナーゼをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、前記部位特異的リコンビナーゼは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、又は発生調節プロモーターに作動可能に連結されている、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項38】
前記形態形成遺伝子発現カセットを切除することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項20又は38に記載の方法によって作製されるゲノム編集植物。
【請求項40】
請求項20又は39に記載のゲノム編集植物の種子であって、前記ゲノム編集物を含む種子。
【請求項41】
前記再生可能植物構造体は、前記双子葉植物器官又はその複合組織を前記形態形成遺伝子発現カセットと接触させない場合のゲノム編集再生可能植物構造体の形成頻度と比較して、約0.1%~約1.0%、約1.1%~約10%、約10.1%~約20%、約20.1%~約30%、約30.1%~約40%、約40.1%~約50%、約50.1%~約60%、約60.1%~約70%、約70.1%~約80%、約80.1%~約90%、及び約90.1%~約100%増加した頻度で形成される、請求項35又は36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は植物分子生物学の分野に関し、より詳しくは、双子葉植物における成長植物器官及びそれらの複合組織の形質転換に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月27日に出願された米国仮特許出願第62/824,746号明細書に基づく優先権を主張するものであり、その内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
電子的に提出された配列表の参照
配列表の正式な写しは、2020年3月23日作成の8045-WO-PCT_ST25.txtのファイル名の、1,151,646バイトのサイズを有するASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出され、本明細書と同時に提出される。このASCIIフォーマットの文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
近年、植物の遺伝子工学の能力が著しく拡大している。現在の形質転換技術は商業的に有望なトランスジェニック植物を生産する機会を提供し、望ましい形質を含む新しい植物種の創出を可能にする。植物の遺伝子工学の1つの制約は、多くの植物組織外植片が形質転換及び再生が難しいため、形質転換に適した植物組織外植片の入手可能性である。したがって、より広範囲の形質転換及び再生が可能な植物外植片組織を可能にする植物形質転換方法が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、異種ポリヌクレオチドを含有するトランスジェニック植物を作製するための方法及び組成物、並びに遺伝子編集植物を作製するための方法及び組成物を含む。さらなる態様では、本開示は、本明細書に開示する方法によって作製される植物の種子を提供する。
【0006】
本開示は、双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織を、異種ポリヌクレオチド及び形態形成遺伝子発現カセットを含有するT-DNAと接触させること;異種ポリヌクレオチドを含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない植物細胞を選択すること(ここで、植物細胞は異種ポリヌクレオチドを含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない再生可能な植物構造体を形成する);並びに異種ポリヌクレオチドを含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない再生可能な植物構造体からトランスジェニック植物を再生することを含む、異種ポリヌクレオチドを含有するトランスジェニック双子葉植物を作製する方法を提供する。さらなる態様では、形態形成遺伝子発現カセットは、(i)機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;又は(ii)Babyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせを含む。さらなる態様では、ヌクレオチド配列は、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードする。さらなる態様では、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、WUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5及びWOX9から選択される。さらなる態様では、ヌクレオチド配列は、Babyboom(BBM)ポリペプチド又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする。さらなる態様では、Babyboom(BBM)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はBBM2、BMN2及びBMN3から選択される、又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はODP2である。さらなる態様では、ヌクレオチド配列は、機能性WUS/WOXポリペプチド、及びBabyboom(BBM)ポリペプチド又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする。さらなる態様では、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はWUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5及びWOX9から選択され、Babyboom(BBM)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はBBM2、BMN2及びBMN3から選択される、又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はODP2である。さらなる態様では、異種ポリヌクレオチドは、栄養強化を付与する異種ポリヌクレオチド、油分含量の改変を付与する異種ポリヌクレオチド、タンパク質含量の改変を付与する異種ポリヌクレオチド、代謝産物含量の改変を付与する異種ポリヌクレオチド、収量増加を付与する異種ポリヌクレオチド、非生物的ストレス耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、乾燥耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、耐寒性を付与する異種ポリヌクレオチド、除草剤耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、病虫害耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、病原体耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、昆虫耐性を付与する異種ポリヌクレオチド、窒素利用効率(NUE)を付与する異種ポリヌクレオチド、耐病性を付与する異種ポリヌクレオチド、バイオマス増加を付与する異種ポリヌクレオチド、代謝経路を変更する能力を付与する異種ポリヌクレオチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる態様では、双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織は、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる態様では、葉外植片は、葉、根出葉、茎生葉、散生葉及び対生葉、十字対生葉、対生重ね葉(opposite superposed leaf)、輪生葉、有柄葉、無柄葉、準無柄葉(subsessile leaf)、托葉を有する葉、無托葉の葉、単葉、複葉、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる態様では、茎外植片は、茎節領域、茎節間領域、葉柄、胚軸、上胚軸、ストロン、リゾーム、塊茎、球茎、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる態様では、双子葉植物は、ダイズ、ワタ、ヒマワリ、キャッサバ、インゲンマメ、ササゲ、トマト、ジャガイモ、ビート、ブドウ、ユーカリ属(Eucalyptus)、カンキツ類、パパイヤ、カカオ、キュウリ、リンゴ、トウガラシ属(Capsicum)、メロン、及びアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される。さらなる態様では、形態形成遺伝子発現カセットは、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、機能性WUS/WOXポリペプチドは、配列番号61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、若しくは148のいずれかのアミノ酸配列を含むか、又は配列番号60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、若しくは147のいずれかのヌクレオチド配列によってコードされる。さらなる態様では、形態形成遺伝子発現カセットは、FLP、FLPe、KD、Cre、SSV1、ラムダInt、ファイC31 Int、HK022、R、B2、B3、Gin、Tn1721、CinH、ParA、Tn5053、Bxb1、TP907-1、又はU153からなる群から選択される部位特異的リコンビナーゼをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、その部位特異的リコンビナーゼは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、又は発生調節プロモーターに作動可能に連結されている。さらなる態様では、形態形成遺伝子発現カセットを切除することをさらに含む方法。さらなる態様では、本方法により作製されるトランスジェニック植物が提供される。さらなる態様では、本方法により作製されるトランスジェニック植物の種子が提供され、その種子は異種ポリヌクレオチドを含む。さらなる態様では、再生可能な植物構造体は、双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織を形態形成遺伝子発現カセットと接触させない場合に形成される再生可能植物構造体の形成頻度と比較して、約0.1%~約1.0%、約1.1%~約10%、約10.1%~約20%、約20.1%~約30%、約30.1%~約40%、約40.1%~約50%、約50.1%~約60%、約60.1%~約70%、約70.1%~約80%、約80.1%~約90%、及び約90.1%~約100%増加した頻度で形成される。
【0007】
本開示は、双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織を、形態形成遺伝子発現カセットを含有するT-DNAと接触させ、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は部位特異的ポリペプチドを提供すること;ゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない植物細胞を選択すること(ここで、植物細胞はゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない再生可能な植物構造体を形成する);並びにゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含有しない再生可能な植物構造体からゲノム編集植物を再生することを含む、ゲノム編集双子葉植物を作製する方法を提供する。さらなる態様では、形態形成遺伝子発現カセットは、(i)機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;又は(ii)Babyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせを含む。さらなる態様では、ヌクレオチド配列は、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードする。さらなる態様では、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、WUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5及びWOX9から選択される。さらなる態様では、ヌクレオチド配列は、Babyboom(BBM)ポリペプチド又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする。さらなる態様では、Babyboom(BBM)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はBBM2、BMN2及びBMN3から選択される、又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はODP2である。さらなる態様では、ヌクレオチド配列は、機能性WUS/WOXポリペプチド、及びBabyboom(BBM)ポリペプチド又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードする。さらなる態様では、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はWUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5及びWOX9から選択され、Babyboom(BBM)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はBBM2、BMN2及びBMN3から選択される、又は胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はODP2である。さらなる態様では、部位特異的ポリペプチドは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEN、及びCRISPR-Casヌクレアーゼからなる群から選択される。さらなる態様では、CRISPR-Casヌクレアーゼは、Cas9又はCpflヌクレアーゼであり、ガイドRNAを提供することをさらに含む。さらなる態様では、部位特異的ヌクレアーゼは、挿入、欠失、又は置換変異をもたらす。さらなる態様では、ガイドRNA及びCRISPR-Casヌクレアーゼは、リボ核タンパク質複合体である。さらなる態様では、双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織は、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる態様では、葉外植片は、葉、根出葉、茎生葉、散生葉及び対生葉、十字対生葉、対生重ね葉(opposite superposed leaf)、輪生葉、有柄葉、無柄葉、準無柄葉(subsessile leaf)、托葉を有する葉、無托葉の葉、単葉、複葉、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる態様では、茎外植片は、茎節領域、茎節間領域、葉柄、胚軸、上胚軸、ストロン、リゾーム、塊茎、球茎、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。さらなる態様では、双子葉植物は、ダイズ、ワタ、ヒマワリ、キャッサバ、インゲンマメ、ササゲ、トマト、ジャガイモ、ビート、ブドウ、ユーカリ属(Eucalyptus)、カンキツ類、パパイヤ、カカオ、キュウリ、リンゴ、トウガラシ属(Capsicum)、メロン、及びアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される。さらなる態様では、形態形成遺伝子発現カセットは、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、機能性WUS/WOXポリペプチドは、配列番号61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、若しくは148のいずれかのアミノ酸配列を含むか、又は配列番号60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、若しくは147のいずれかのヌクレオチド配列によってコードされる。さらなる態様では、形態形成遺伝子発現カセットは、FLP、FLPe、KD、Cre、SSV1、ラムダInt、ファイC31 Int、HK022、R、B2、B3、Gin、Tn1721、CinH、ParA、Tn5053、Bxb1、TP907-1、又はU153からなる群から選択される部位特異的リコンビナーゼをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、その部位特異的リコンビナーゼは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、又は発生調節プロモーターに作動可能に連結されている。さらなる態様では、形態形成遺伝子発現カセットを切除することをさらに含む。さらなる態様では、本方法により作製されるゲノム編集植物が提供される。さらなる態様では、本方法により作製されるゲノム編集植物の種子が提供され、その種子はゲノム編集物を含む。さらなる態様では、再生可能な植物構造体は、双子葉植物の成長植物器官又はその複合組織を形態形成遺伝子発現カセットと接触させない場合のゲノム編集再生可能植物構造体の形成頻度と比較して、約0.1%~約1.0%、約1.1%~約10%、約10.1%~約20%、約20.1%~約30%、約30.1%~約40%、約40.1%~約50%、約50.1%~約60%、約60.1%~約70%、約70.1%~約80%、約80.1%~約90%、及び約90.1%~約100%増加した頻度で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例14に記載されるように、異なるWUS遺伝子を有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)感染後のデノボシュートを有するタバコ葉切片のパーセント(%)のグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記で、添付の図面を参照しながら本明細書中の開示をより詳しく説明するが、図面は可能な態様のいくつかを示すものであって全部ではない。実際、開示は、多くの異なる形態で具体化可能であり、本明細書中に記載した態様に限られると解釈すべきではなく、むしろ、これらの態様は、本開示が適用法的要件を満たすために提供される。
【0010】
本明細書で開示されている多くの変更及び他の態様は、本開示の方法が関連する技術分野の当業者であって、以下の説明及び添付の図面に提示された教示を利用できる者であれば、思い付くであろう。したがって、開示は本明細書に開示した特定の態様に限定されるべきではなく、また、変更やその他の態様が添付の請求項の範囲に含まれることを意図していることは理解されるべきである。本明細書中には特定の用語が使用されるが、それらは、単に一般的且つ記述的意味で使用されるものであって、限定を目的として使用されるものではない。
【0011】
また、本明細書に使用される専門用語は、単に特定の態様を説明するためのものであって、限定を目的とするものではないことも理解されるべきである。本明細書及び特許請求の範囲で使用する用語「~を含む(comprising)」には、「~からなる(consisting of)」態様が含まれ得る。他に定義されていない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示の組成物及び方法が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同一の意味を有する。この後に続く本明細書及び特許請求の範囲においては、本明細書で定義する多くの用語について言及するであろう。
【0012】
本明細書で使用される場合、「再生可能な植物構造体」は、完全に機能的な稔性植物を形成し得る多細胞構造体である。完全に機能的な稔性植物を形成し得る再生可能な植物構造体としては、シュート分裂組織、シュート、体細胞胚、胚発生カルス、体細胞分裂組織、及び/又は器官形成カルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「体細胞胚」は、球形の移行期にある胚の形成、胚軸及び胚盤の形成、並びに脂質及びデンプンの蓄積を含む、接合胚の発達に類似した発達段階を経て成長する多細胞構造体である。接合胚から生じる単一の体細胞胚は発芽して、本来単細胞から生じ得る非キメラ植物体を作製する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「胚発生カルス」は、成熟稔性植物に再生することができる増殖性の一次及び二次体細胞胚を包んでいる未分化の、又は部分的に未分化の細胞の脆い、又は脆くない混合物である。
【0015】
本明細書で使用される場合、「体細胞分裂組織」は、葉原基が隣接し、維管束始原細胞によって包まれた、地上成長植物体を生じさせる未分化の頂端ドームを有するとされる、種子由来の胚の一部である頂端分裂組織に類似した多細胞構造体である。そのような体細胞分裂組織は、単一の分裂組織、又は融合した分裂組織の集まりを形成することができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「器官形成カルス」は、以下に限定はされないが、頂端分裂組織、根分裂組織、葉及び根を含む、分化した成長する植物構造体のコンパクトな混合物である。
【0017】
本明細書で使用される場合、「発芽」は、成長を続けて植物を作る小植物体を形成する再生可能な構造体の成長である。
【0018】
本明細書で使用される場合、「トランスジェニック植物」は、導入遺伝子を含む成熟した稔性植物である。
【0019】
本開示の方法は、成長植物器官及びそれらの複合組織を形質転換するために使用することができる。本明細書で使用される場合、「成長植物器官及びその複合組織」は、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「茎外植片」には、茎の節及び節間領域、葉柄、胚軸、上胚軸、ストロン、リゾーム、塊茎、及び球茎が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「葉外植片」には、根出葉、茎生葉、散生葉、対生葉、十字対生葉、対生重ね葉(opposite superposed leaf)、輪生葉、有柄葉、無柄葉、準無柄葉(subsessile leaf)、托葉を有する葉、無托葉の葉、単葉、又は複葉が含まれるが、これらに限定されない。葉の外植片には、葉の基部、又は葉柄若しくは茎への付着点のすぐ近位にある葉の部分が含まれる。このような成長器官及びそれらの複合組織は、農学的に重要な形質をコードするヌクレオチド配列による形質転換に使用することができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「葉」は、植物の茎から突出する平坦な側方構造体であり、扁平な葉と植物茎との間の支持茎を含むが、葉柄と茎との接合部に位置する腋芽分裂組織は含まず、以下に限定はされないが、根出葉、茎生葉、散生葉及び対生葉、十字対生葉、対生重ね葉(opposite superposed leaf)、輪生葉、有柄葉、無柄葉、準無柄葉(subsessile leaf)、托葉を有する葉、無托葉の葉、単葉、又は複葉を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、「茎節間」は、植物の茎節間の間に位置する組織であり、「茎節」は、枝、葉柄、葉、又は気根が茎から成長する茎の領域である。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「形態形成遺伝子」は、異所的に発現した場合に、植物を作製することができる体細胞から発生した構造体の形成を刺激する遺伝子を意味する。より正確には、形態形成遺伝子の異所的発現が、植物を作製することができる体細胞胚又はシュート分裂組織などの器官形成構造体のデノボ形成を刺激する。この刺激によるデノボ形成は、形態形成遺伝子が発現した細胞、又は隣接細胞で起こる。形態形成遺伝子は、他の遺伝子の発現を調節する転写因子、又は植物組織中のホルモン濃度に影響する遺伝子であり得、これらはいずれも形態形成変化を促進することができる。形態形成遺伝子は、植物のゲノムに安定的に組み込まれることもあれば、又は一時的に発現されることもある。一態様では、形態形成遺伝子の発現が制御される。発現の制御は、特定の期間の形態形成遺伝子の間欠的な発現であり得る。或いは、形態形成遺伝子が一部の形質転換細胞においてのみ発現され、他の細胞においては発現されないことがあり得る。形態形成遺伝子の発現の制御は、以下の本明細書中に開示する様々な方法によって行うことができる。本開示の方法において有用な形態形成遺伝子は、本明細書に記載される任意の植物種から得られ得るか、又はそれに由来し得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「形態形成因子」は、形態形成遺伝子及び/又は形態形成遺伝子によって発現するタンパク質を意味する。
【0024】
WUS/WOX遺伝子(WUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5、又はWOX9)などの形態形成遺伝子は、植物代謝、器官発生、幹細胞発生、細胞増殖刺激、器官形成、再生、体細胞胚形成開始、体細胞胚成熟の促進、頂端分裂組織の発生及び/若しくは発達、シュート分裂組織の発生及び/若しくは発達、シュートの発生及び/若しくは発達、又はこれらの組み合わせに関与している。米国特許第7,348,468号明細書及び同第7,256,322号明細書、米国特許出願公開第2017/0121722号明細書及び同第2007/0271628号明細書;Laux et al.(1996)Development 122:87-96;及びMayer et al.(1998)Cell 95:805-815;van der Graaff et al.,2009,Genome Biology 10:248;Dolzblasz et al.,2016,Mol.Plant 19:1028-39を参照されたい。それらは本開示の方法に有用である。WUS/WOXの調節は、植物代謝、器官発生、幹細胞発生、細胞増殖刺激、器官形成、再生、体細胞胚形成開始、体細胞胚成熟の促進、頂端分裂組織の発生及び/若しくは発達、シュート分裂組織の発生及び/若しくは発達、シュートの発生及び/若しくは発達、又はそれらの組み合わせを含む植物及び/又は植物組織表現型を調節すると考えられる。アラビドプシス(Arabidopsis)WUSの発現は成長組織に幹細胞を誘導することができ、これは体細胞胚に分化することができる(Zuo,et al.(2002)Plant J 30:349-359)。この点に関して、MYB118遺伝子(米国特許第7,148,402号明細書を参照)、MYB115遺伝子(Wang et al.(2008)Cell Research 224-235を参照)、BABYBOOM遺伝子(BBM;Boutilier et al.(2002)Plant Cell 14:1737-1749を参照)、又はCLAVATA遺伝子(例えば、米国特許第7,179,963号明細書を参照)もまた興味深い。
【0025】
機能性WUS/WOXポリペプチドの形態形成ポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、本開示の方法において有用である。本明細書中で定義するように、「機能性WUS/WOXヌクレオチド」は、ホメオボックスDNA結合ドメイン、WUSボックス、及びEARリプレッサードメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドである(Ikeda et al.,2009 Plant Cell 21:3493-3505)。Rodriguez et al.,2016 PNAS www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1607673113によって実証されているように、ホメオボックスDNA結合ドメイン、WUSボックス、及びEARリプレッサードメインを残す二量化配列の除去は、機能性WUS/WOXポリペプチドを生じる。Wuschelタンパク質(以下、WUSという)は、多能性幹細胞プールを含む頂端分裂組織の発生及び維持に重要な役割を果たす(Endrizzi,et al.,(1996)Plant Journal 10:967-979;Laux,et al.,(1996)Development 122:87-96;及びMayer,et al.,(1998)Cell 95:805-815)。WUS遺伝子用のアラビドプシス(Arabidopsis)植物変異体は、特定されておらず、分化するように見える幹細胞を含む。WUSは、転写調節因子として機能すると推定される新規のホメオドメインタンパク質をコードする(Mayer,et al.,(1998)Cell 95:805-815)。アラビドプシス(Arabidopsis)シュート分裂組織の幹細胞集団は、器官発生を促進するCLAVATA(CLV)遺伝子と幹細胞同一性に必要なWUS遺伝子との間の調節ループによって維持される(CLV遺伝子が転写レベルでWUSを抑制し、WUSが分裂組織細胞同一性と幹細胞マーカーCLV3の発現を十分に誘導し得るだけ発現する)と考えられている(Brand,et al.,(2000)Science 289:617-619;Schoof,et al.,(2000)Cell 100:635-644)。アラビドプシス(Arabidopsis)におけるWUSの構成的発現が葉からの不定のシュート増殖(植物内で)に導くことが示された(Laux,T.,第XVI回国際植物科学会議(the XVI International Botanical Congress Meeting),Aug.1-7,1999,St.Louis,Mo.での発表)。
【0026】
一態様では、本開示の方法において有用な機能性WUS/WOXポリペプチドは、WUS、WUS1、WUS2、WUS3、WOX2A、WOX4、WOX5、WOX5A、又はWOX9ポリペプチドである(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,348,468号明細書及び同第7,256,322号明細書、並びに米国特許出願公開第2017/0121722号明細書及び同第2007/0271628号明細書、並びにvan der Graaff et al.,2009,Genome Biology 10:248を参照)。本開示の方法において有用な機能性WUS/WOXポリペプチドは、以下に限定されないが、単子葉植物、双子葉植物、被子植物、及び裸子植物を含む植物のいずれかから得られ得るか、又はそれに由来し得る。本開示の方法において有用なさらなるWUS/WOX遺伝子を、表3に列挙する。
【0027】
本開示に有用な他の形態形成遺伝子としては、LEC1(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,825,397号明細書、Lotan et al.,1998,Cell 93:1195-1205)、LEC2(Stone et al.,2008,PNAS 105:3151-3156;Belide et al.,2013,Plant Cell Tiss.Organ Cult 113:543-553)、KN1/STM(Sinha et al.,1993.Genes Dev 7:787-795)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)由来のIPT遺伝子(Ebinuma and Komamine,2001,In vitro Cell.Dev Biol-Plant 37:103-113)、MONOPTEROS-DELTA(Ckurshumova et al.,2014,New Phytol.204:556-566)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)AV-6b遺伝子(Wabiko and Minemura 1996,Plant Physiol.112:939-951)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)IAA-h及びIAA-m遺伝子の組み合わせ(Endo et al.,2002,Plant Cell Rep.,20:923-928)、アラビドプシス(Arabidopsis)SERK遺伝子(Hecht et al.,2001,Plant Physiol.127:803-816)、アラビドプシス(Arabidopsis)AGL15遺伝子(Harding et al.,2003,Plant Physiol.133:653-663)、FUSCA遺伝子(Castle and Meinke,Plant Cell 6:25-41)、並びにPICKLE遺伝子(Ogas et al.,1999,PNAS 96:13839-13844)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「転写因子」は、プロモーターのDNA配列に結合し、発現を上方制御又は下方制御することによって、特異的遺伝子の転写速度を制御するタンパク質を意味する。形態形成遺伝子でもある転写因子の例としては、AP2/EREBPファミリー(例えば、BBM(ODP2))のメンバー、plethora及びアインテグメンタサブファミリー、LEC1及びHAP3などのCAATボックス結合タンパク質、並びにMYB、bHLH、NAC、MADS、bZIP及びWRKYファミリーのメンバーが挙げられる。
【0029】
胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチド、及び関連ポリペプチド、例えばBabyboom(BBM)タンパク質ファミリータンパク質の形態形成ポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、本開示の方法において有用である。一態様では、2つのAP2-DNA結合ドメインを含むポリペプチドは、ODP2、BBM2、BMN2、又はBMN3ポリペプチドであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0121722号明細書を参照されたい。本開示の方法において有用なODP2ポリペプチドは、2つの予想されるAPETALA2(AP2)ドメインを含み、AP2タンパク質ファミリーのメンバーである(PFAMアクセッションPF00847)。推定転写因子のAP2ファミリーは、広範な発達プロセスを調節することがわかっており、ファミリーのメンバーは、AP2 DNA結合ドメインを有することを特徴としている。この保存コアはDNAに結合する両親媒性のアルファヘリックスを形成すると予想される。AP2ドメインは最初にAPETALA2、すなわち、分裂組織の決定、花器の特定、種皮の発達、及び花芽のホメオティック遺伝子の発現を調節するアラビドプシス(Arabidopsis)のタンパク質で確認された。今では、AP2ドメインは様々なタンパク質で見出されている。
【0030】
本開示の方法に有用なODP2ポリペプチドは、AP2ファミリーのいくつかのポリペプチドと相同性を共有する(例えば、米国特許第8420893号明細書の
図1を参照されたい(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、そこには2つのAP2ドメインを有する8種の他のタンパク質と共に、トウモロコシ及びイネのODP2ポリペプチドのアライメントが示されている))。米国特許第8420893号明細書のアライメントに示されている全タンパク質のコンセンサス配列もまた、その
図1に示されている。本開示の方法において有用な2つのAP2-DNA結合ドメインを含むポリペプチドは、本明細書中に記載される植物のいずれかから得られ得るか、又はそれに由来し得る。一態様では、本開示の方法において有用な2つのAP2-DNA結合ドメインを含むポリペプチドは、ODP2ポリペプチドである。一態様では、本開示の方法において有用な2つのAP2-DNA結合ドメインを含むポリペプチドは、BBM2ポリペプチドである。本開示の方法において有用なODP2ポリペプチド及びBBM2ポリペプチドは、以下に限定されないが、単子葉植物、双子葉植物、被子植物、及び裸子植物を含む植物のいずれかから得られ得るか、又はそれに由来し得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「発現カセット」は、形質転換/トランスフェクトされた細胞における発現を制御する5’及び3’調節配列を含む、コード配列及び非コード配列からなるベクターDNAの個別の成分を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「コード配列」は、タンパク質のアミノ酸をコードする開始コドン及び終止コドンを境界とするDNA配列の部分を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「非コード配列」は、メッセンジャーRNAを生成するために転写されるが、5’非翻訳領域、イントロン及び3’非翻訳領域などの、タンパク質のアミノ酸をコードしないDNA配列の部分を意味する。非コード配列はまた、発現した場合に、内因性遺伝子又は別の導入遺伝子の発現を下方制御することができる、マイクロRNA、干渉RNA又はRNAヘアピンなどのRNA分子を指し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「調節配列」は、遺伝子の発現を増加又は減少させることができる核酸分子の断片を意味する。調節配列としては、プロモーター、ターミネーター、エンハンサーエレメント、サイレンシングエレメント、5’UTR及び3’UTR(非翻訳領域)が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「トランスファーカセット」は、右境界配列及び左境界配列が隣接する1つ又は複数の発現カセットを含むT-DNAを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、T-DNAは、宿主植物細胞のゲノムに挿入されるTiプラスミドの一部を意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「選択マーカー」は、形質転換/トランスフェクトされた細胞において発現した場合に、形質転換/トランスフェクトされていない細胞に対して毒性を示す抗生物質、除草剤及び他の化合物などの選択剤に対する耐性を付与する導入遺伝子を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「EAR」は、転写因子内の転写抑制シグナルとして作用する一般的なコンセンサス配列を有するエチレン応答エレメント結合因子関連両親媒性抑制モチーフ」を意味する。転写因子、dCAS9、又はLEXA(例として)などのDNA結合タンパク質にEAR型リプレッサーエレメントを加えると、融合タンパク質に転写抑制機能が付与される(Kagale,S.,and Rozwadowski,K.2010. Plant Signaling and Behavior 5:691-694)。
【0039】
一態様では、本開示の形質転換方法は、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列との組み合わせを含む組み換え発現カセット又はコンストラクトを使用する。
【0040】
一態様では、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列との組み合わせは、部位特異的リコンビナーゼによる切除の標的とされ得る。したがって、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列との組み合わせの発現は、形質転換後の所望の時間に切除することによって制御することができる。機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列との組み合わせの発現を制御するために、部位特異的リコンビナーゼが使用される場合、発現コンストラクトは、切除するポリヌクレオチド配列に隣接して、適切な部位特異的切除部位を、例えば、Creリコンビナーゼが使用されるなら、Cre lox部位を含むことは理解されている。部位特異的リコンビナーゼは、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列との組み合わせを含む発現コンストラクトに位置している必要はない。しかし、一態様では、形態形成遺伝子発現カセットは、部位特異的リコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0041】
機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列との組み合わせの発現を制御するために使用される部位特異的リコンビナーゼは、種々の好適な部位特異的リコンビナーゼから選択することができる。例えば、種々の態様では、部位特異的リコンビナーゼは、FLP、FLPe、KD、Cre、SSV1、ラムダInt、ファイC31 Int、HK022、R、B2(Nern et al.,(2011)PNAS Vol.108,No.34 pp14198-14203)、B3(Nern et al.,(2011)PNAS Vol.108,No.34 pp14198-14203)、Gin、Tn1721、CinH、ParA、Tn5053、Bxb1、TP907-1、又はU153である。部位特異的リコンビナーゼは、不安定化融合ポリペプチドであり得る。不安定化融合ポリペプチドは、TETR(G17A)~CRE又はESR(G17A)~CREであり得る。
【0042】
一態様では、部位特異的リコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、又は発生調節プロモーターに作動可能に連結している。好適な構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、及び発生調節プロモーターとしては、UBI、LLDAV、EVCV、DMMV、BSV(AY)PRO、CYMV PRO FL、UBIZM PRO、SI-UB3 PRO、SB-UBI PRO(ALT1)、USB1ZM PRO、ZM-GOS2 PRO、ZM-H1B PRO(1.2KB)、IN2-2、NOS、35Sの-135バージョン、ZM-ADF PRO(ALT2)、AXIG1、DR5、XVE、GLB1、OLE、LTP2(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるKalla et al.,1994.Plant J.6:849-860及び米国特許第5525716号明細書)、HSP17.7、HSP26、HSP18A、AT-HSP811、AT-HSP811L、GM-HSP173B、テトラサイクリン、エタメツルフロン若しくはクロルスルフロンによって活性化されるプロモーター、PLTP、PLTP1、PLTP2、PLTP3、SDR、LGL、LEA-14A、又はLEA-D34(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0121722号明細書及び同第2018/0371480号明細書)が挙げられる。
【0043】
一態様では、部位特異的リコンビナーゼに作動可能に連結している化学誘導性プロモーターは、XVEである。化学誘導性プロモーターは、テトラサイクリンリプレッサー(TETR)、エタメツルフロンリプレッサー(ESR)、又はクロルスルフロンリプレッサー(CR)により抑制することができ、脱抑制は、テトラサイクリン関連リガンド又はスルホニル尿素リガンドの付加により起こる。リプレッサーはTETRであり得、テトラサイクリン関連リガンドは、ドキシサイクリン又はアンヒドロテトラサイクリンである。(Gatz,C.,Frohberg,C.and Wendenburg,R.(1992)Stringent repression and homogeneous de-repression by tetracycline of a modified CaMV 35S promoter in intact transgenic tobacco plants,Plant J.2,397-404)。或いは、リプレッサーはESRであり得、スルホニル尿素リガンドは、エタメツルフロン、クロルスルフロン、メツスルフロンメチル、スルホメツロンメチル、クロリムロンエチル、ニコスルフロン、プリミスルフロン、トリベヌロン、スルホスルフロン、トリフロキシスルフロン、ホラムスルフロン、ヨードスルフロン、プロスルフロン、チフェンスルフロン、リムスルフロン、メソスルフロン、又はハロスルフロンである(その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0287936号明細書)。
【0044】
一態様では、形態形成遺伝子発現カセット又はコンストラクトが部位特異的リコンビナーゼ切除部位を含む場合、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列との組み合わせは、オーキシン誘導性プロモーター、発生調節プロモーター、組織特異的プロモーター、又は構成的プロモーターに作動可能に連結することができる。これに関連して有用な、例示的なオーキシン誘導性プロモーター、発生調節プロモーター、組織特異的プロモーター、及び構成的プロモーターとしては、UBI、LLDAV、EVCV、DMMV、BSV(AY)PRO、CYMV PRO FL、UBIZM PRO、SI-UB3 PRO、SB-UBI PRO(ALT1)、USB1ZM PRO、ZM-GOS2 PRO、ZM-H1B PRO(1.2KB)、IN2-2、NOS、35Sの-135バージョン、ZM-ADF PRO(ALT2)、AXIG1(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,838,593号明細書)、DR5、XVE、GLB1、OLE、LTP2、HSP17.7、HSP26、HSP18A、AT-HSP811(Takahashi,T,et al.,(1992)Plant Physiol.99(2):383-390)、AT-HSP811L(Takahashi,T,et al.,(1992)Plant Physiol.99(2):383-390)、GM-HSP173B(Schoeffl,F.,et al.(1984)EMBO J.3(11):2491-2497)、テトラサイクリン、エタメツルフロン(ethamethsulfuron)若しくはクロルスルフロンによって活性化されるプロモーター、PLTP、PLTP1、PLTP2、PLTP3、SDR、LGL、LEA-14A、LEA-D34(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0121722号明細書及び同第2018/0371480号明細書)、及び本明細書中に開示されるプロモーターのいずれかが挙げられる。
【0045】
形態形成遺伝子カセット及び形質遺伝子カセット(異種ポリヌクレオチド)を用いてトランスジェニック植物を作製する場合、形質遺伝子(異種ポリヌクレオチド)のみを含むトランスジェニック植物を提供するために、同時形質転換植物において形質遺伝子(異種ポリヌクレオチド)座から形態形成遺伝子座を分離する能力を有することが望ましい。これは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の2つのT-DNAを有するバイナリーシステムを用いて達成することができ、この一般的なテーマには2つのバリエーションがある(Miller et al.,2002を参照)。例えば、第1の2つのT-DNAを有するベクターでは、形態形成遺伝子及び除草剤選択(すなわち、HRA)のための発現カセットが第1のT-DNA内に含まれ、形質遺伝子カセット(異種ポリヌクレオチド)が第2のT-DNA内に含まれる。ここで、両T-DNAは単一のバイナリーベクター上に存在する。2つのT-DNAを有するプラスミドを含むアグロバクテリウム(Agrobacterium)によって植物細胞が形質転換されると、形質転換細胞は高い割合で、異なるゲノム上の位置(たとえば、異なる染色体上)に組み込まれた両T-DNAを含む。第2の方法では、例えば、それぞれ2つのT-DNAのうちの1つ(形態形成遺伝子T-DNA又は形質遺伝子(異種ポリヌクレオチド)T-DNA)を含む2つのアグロバクテリウム(Agrobacterium)株をある比率で混合し、その混合物を形質転換に用いる。この混合アグロバクテリウム(Agrobacterium)法による形質転換の後では、回収されたトランスジェニックイベントは両方のT-DNAを(多くの場合、別々のゲノム位置に)含むことが高い頻度で観察されている。作製されたトランスジェニックイベントの大半で、2つのT-DNA遺伝子座が独立に分離し、T-DNA遺伝子座が互いに分離した子孫T1植物を容易に特定でき、形質遺伝子(異種ポリヌクレオチド)を含み、形態形成遺伝子/除草剤遺伝子を持たない子孫種子が回収されることが、両方の同時形質転換法で観察されている。Miller et al.Transgenic Res 11(4):381-96を参照されたい。
【0046】
本明細書で提供される方法では、目的のヌクレオチド配列が組み込まれた再生可能な植物細胞を作製するために、細菌媒介及び/又は微粒子銃媒介遺伝子導入を使用することに依存している。本開示の方法に有用な菌株としては、非武装化アグロバクテリウム(Agrobacteria)、オクロバクテリウム属(Ochrobactrum)菌、又はリゾビウム科(Rhizobiaceae)菌が挙げられるが、これらに限定されない。本方法において有用な非武装化アグロバクテリウム(Agrobacteria)としては、AGL-1、EHA105、GV3101、LBA4404、及びLBA4404 THY-が挙げられるが、これらに限定されない。本方法において有用なオクロバクテリウム属(Ochrobactrum)の菌株としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0216123号明細書に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。本方法において有用なリゾビウム科(Rhizobiaceae)の菌株としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,365,859号明細書に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
また、植物のゲノムに安定に組み込まれた本明細書に記載の発現カセットを有する植物、この植物の種子であって、そのような発現カセットを含む種子も具体化されている。さらに、異種ポリヌクレオチド又は目的ポリヌクレオチドの遺伝子又は遺伝子産物が、栄養強化、収量増加、非生物的ストレス耐性、乾燥耐性、耐寒性、除草剤耐性、病虫害耐性、病原体耐性、昆虫耐性、窒素利用効率(NUE)、耐病性、又は代謝経路を変更する能力を付与する植物も具体化されている。異種ポリヌクレオチド又は目的ポリヌクレオチドの発現が植物の表現型を変化させる植物もまた具体化されている。
【0048】
本開示は、単離されたか又は実質的に精製された核酸組成物を包含する。「単離された」又は「精製された」核酸分子、或いはその生物活性部分は、組み換え技術によって生成されたときには、他の細胞物質も培養培地も実質的に含んでおらず、又は、化学的に合成された場合には、化学的前駆体も他の化学物質も実質的に含んでいない。「単離された」核酸は、この核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて天然ではこの核酸に隣接している配列(例えば、タンパク質コード配列)(すなわち、この核酸の5’末端及び3’末端に位置する配列)を実質的に含まない。例えば、各種態様においては、単離された核酸分子が含有する、その核酸が由来する細胞のゲノムDNAにおいて、天然では核酸分子に隣接しているヌクレオチド配列は、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb又は0.1kb未満であり得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、核酸配列の一部を指す。本開示の方法に有用な配列の断片は、核酸配列の生物学的活性を保持している。或いは、ハイブリダイゼーションプローブとして有用なヌクレオチド配列の断片は、必ずしも生物学的活性を保持していない可能性がある。本明細書に開示されているヌクレオチド配列の断片は、少なくとも約20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1500、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800、1825、1850、1875又は1900個のヌクレオチドから、最大で対象配列の全長までの範囲であり得る。ヌクレオチド配列の生物学的に活性な部分は、この配列の一部を単離し、その部分の活性を評価することにより調製することができる。
【0050】
本開示の方法に有用なヌクレオチド配列の断片及び改変体、並びにそれらによりコードされるタンパク質もまた、包含される。本明細書で使用される場合、用語「断片」は、ヌクレオチド配列の一部、したがってそれによってコードされるタンパク質、又はアミノ酸配列の一部を指す。ヌクレオチド配列の断片は、天然タンパク質の生物学的活性を保持しているタンパク質断片をコードし得る。或いは、ハイブリダイゼーションプローブとして有用なヌクレオチド配列の断片は、生物学的活性を保持している断片タンパク質を一般にコードしない。したがって、ヌクレオチド配列の断片は、少なくとも約20個のヌクレオチド、少なくとも約50個のヌクレオチド、少なくとも約100個のヌクレオチドから、本開示の方法で有用なタンパク質をコードする完全長のヌクレオチド配列までの範囲であり得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「改変体」は、本明細書に開示のプロモーター配列と実質的類似性を有する配列を意味する。改変体は、天然のポリヌクレオチドの1つ以上の内部部位における1つ以上のヌクレオチドの欠失及び/若しくは付加、並びに/又は天然のポリヌクレオチドの1つ以上の部位における1つ以上のヌクレオチドの置換を含む。本明細書で使用される場合、「天然の」ヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列では、天然に存在する改変体を、よく知られた分子生物学的手法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及び本明細書で概説されているようなハイブリダイゼーション手法などを使用して同定することができる。
【0052】
改変体ヌクレオチド配列にはまた、合成的に誘導されたヌクレオチド配列、例えば、部位特異的変異誘発を使用して生成されたものなども含まれる。一般に、本明細書で開示されているヌクレオチド配列の改変体は、本明細書の他の箇所で説明されている配列アライメントプログラム(デフォルトパラメーターを使用)で測定した場合に、そのヌクレオチド配列に対して少なくとも40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%~95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を有するであろう。本明細書で開示されているヌクレオチド配列の生物学的に活性な改変体も包含される。生物学的活性は、ノーザンブロット解析、転写融合体で行うレポーター活性測定などの手法を使用して測定し得る。例えば、Sambrook,et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)(以下、「Sambrook」)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。或いは、ヌクレオチド断片又は改変体に作動可能に連結されたプロモーターの制御下で生成される緑色蛍光タンパク質(GFP)又は黄色蛍光タンパク質(YFP)などのレポーター遺伝子のレベルを測定することができる。例えば、Matz et al.(1999)Nature Biotechnology 17:969-973;米国特許第6,072,050号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる);Nagai,et al.,(2002)Nature Biotechnology 20(1):87-90を参照されたい。改変体ヌクレオチド配列にはまた、DNAシャフリングなどの変異組み換え手順により生成される配列も包含される。そのような手順により、1つ又は複数の異なるヌクレオチド配列を操作して、新たなヌクレオチド配列を作製することができる。このようにして、実質的な配列同一性を有し且つインビトロ又はインビボで相同的に組み換えられ得る配列領域を含む関連配列のポリヌクレオチドの集団から、組み換えポリヌクレオチドのライブラリーが作られる。そのようなDNAシャフリングのための戦略は、当該技術分野で知られている。例えば、Stemmer,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747-10751;Stemmer,(1994)Nature 370:389 391;Crameri,et al.,(1997)Nature Biotech.15:436-438;Moore,et al.,(1997)J.Mol.Biol.272:336-347;Zhang,et al.,(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4504-4509;Crameri,et al.,(1998)Nature 391:288-291、並びに米国特許第5,605,793号明細書及び同第5,837,458号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0053】
変異誘発及びヌクレオチド配列改変の方法は当該技術分野でよく知られている。例えば、Kunkel,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488-492;Kunkel,et al.,(1987)Methods in Enzymol.154:367-382;米国特許第4,873,192号明細書;Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)、及びこれらに引用されている参考文献(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)(参照により本明細書に組み込まれる)のモデルにおいて見出され得る。1つのアミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸と交換するなどの保存的置換が最適であり得る。
【0054】
本開示のヌクレオチド配列を使用して、他の生物、具体的には他の植物、より具体的には他の単子葉植物又は双子葉植物から対応する配列を単離することができる。このようにして、PCR、ハイブリダイゼーションなどの方法を使用して、本明細書に記載されている配列に対する配列相同性に基づいて、そのような配列を同定することができる。本明細書に記載されている全配列又はその断片に対する配列同一性に基づいて単離された配列は、本開示に包含される。
【0055】
PCR法では、任意の目的植物から抽出されたcDNA又はゲノムDNAからの対応するDNA配列を増幅するPCR反応に使用するためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計し得る。PCRプライマーを設計する方法及びPCRクローニングの方法は当該技術分野で一般に知られており、Sambrook(前出)で開示されている。また、Innis,et al.,eds.(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,New York);Innis and Gelfand,eds.(1995)PCR Strategies(Academic Press,New York);及びInnis and Gelfand,eds.(1999)PCR Methods Manual(Academic Press,New York)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。既知のPCR方法としては、対合プライマー、ネステッドプライマー、単一特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的にミスマッチのプライマーなどを使用する方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
ハイブリダイゼーション手法では、既知のヌクレオチド配列の全て又は一部を、選択された生物からのクローン化ゲノムDNA断片又はcDNA断片の集団(すなわち、ゲノムライブラリー又はcDNAライブラリー)に存在する他の対応するヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするプローブとして使用する。ハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNA断片、cDNA断片、RNA断片、又は他のオリゴヌクレオチドであり得、且つ32P又は任意の他の検出マーカーなどの検出可能な基で標識され得る。そのため、例えば、ハイブリダイゼーション用のプローブは、本開示の配列をベースとする合成オリゴヌクレオチドを標識することにより作製することができる。ハイブリダイゼーション用プローブの調製方法、及びゲノムライブラリーの構築方法は、当該技術分野で一般に知られており、Sambrook(前出)に開示されている。
【0057】
一般に、活性を有し、本明細書中に開示されている配列にハイブリダイズする配列は、この開示されている配列と、少なくとも40%~50%相同であり、約60%、70%、80%、85%、90%、95%~98%以上相同である。換言すると、配列の配列類似性は、少なくとも約40%~50%、約60%~70%、及び約80%、85%、90%、95%~98%の配列類似性を共有する範囲であり得る。
【0058】
比較のための配列のアライメント方法は、当該技術分野においてよく知られている。したがって、任意の2つの配列間の配列同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成し得る。このような数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Myers and Miller,(1988)CABIOS4:11-17のアルゴリズム、Smith、et al.,(1981)Adv.Appl.Math.2:482のアルゴリズム、Needleman and Wunsch,(1970)J.Mol.Biol.48:443-453のアルゴリズム、Pearson and Lipman,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444-2448のアルゴリズム、Karlin and Altschul,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872:264(Karlin and Altschul,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877におけるように改変)のアルゴリズムであり、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの数学的アルゴリズムのコンピューター化インプリメンテーションは、当該技術分野でよく知られており、配列同一性を決定するための配列の比較に利用することができる。
【0059】
2つの核酸配列又はポリペプチド配列と関連する「配列同一性」又は「同一性」は、本明細書で使用される場合、ある特定の比較ウィンドウに最大の対応でアラインしたときに同じである2つの配列の残基を指す。配列同一性のパーセンテージをタンパク質に関して使用する場合、同一でない残基位置がしばしば保存的アミノ酸置換により異なることが認識される。ここで、アミノ酸残基は、類似の化学特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換され、それゆえ、分子の機能特性は変化しない。保存的置換で配列が異なる場合、置換の保存的性質を補正するために、配列同一性パーセントを高める方向に調節してもよい。そのような保存的置換によって相異する配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有すると言われる。このような調節を行う方法は、当業者にはよく知られている。通常、これには、保存的置換を、完全ミスマッチとしてではなく部分的ミスマッチとして採点し、それにより、配列同一性パーセンテージを高める方法が含まれる。したがって、例えば、同一のアミノ酸に1のスコアを与え、非保存的置換に0のスコアを与える場合、保存的置換には0と1との間のスコアを与える。保存的置換のスコア付けは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics、Mountain View、Calif.)において実行されるように算出される。
【0060】
本明細書で使用される場合、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウに最適にアラインされた2つの配列を比較することにより決定される値を意味し、ここで、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントについて、参照配列(これは、付加も欠失も含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両方の配列内で同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が発生する位置の数を決定してマッチ位置数を得、そのマッチ位置数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。
【0061】
ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、標準的なパラメータを使用するアライメントプログラムを使用して参照配列と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当業者であれば、これらの値が、コドンの縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレームの位置決めなどを考慮することにより、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために適切に調整され得ることは認識していよう。これらの目的のためのアミノ酸配列の実質的同一性は、通常、少なくとも60%、70%、80%、90%、及び少なくとも95%の配列同一性を意味する。
【0062】
ヌクレオチド配列が実質的に同一であるという別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするか否かである。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHで特定の配列のTmと比べて約5℃低く選択される。しかしながら、ストリンジェントな条件は、Tmと比べて約1℃~約20℃低い範囲の温度を含み、別途本明細書中で限定されるように、所望するストリンジェンシーの程度により変わる。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であるならば、なお実質的に同一である。このことは、例えば、核酸のコピーが、遺伝コードにより許容される最大のコドン縮重を使用して作製される場合に起こり得る。2つの核酸配列が実質的に同一であるという1つの指標は、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性である場合である。
【0063】
本明細書に開示される方法、配列、及び遺伝子は、植物の遺伝子操作、例えば、形質転換植物又はトランスジェニック植物の作製において、目的の表現型を発現させるのに有用である。本明細書で使用される場合、「形質転換植物」及び「トランスジェニック植物」という用語は、ゲノム内に異種ポリヌクレオチドを含む植物を指す。一般に、異種ポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドが何世代にもわたって伝えられるように、トランスジェニック植物又は形質転換植物のゲノムに安定して組み込まれる。異種ポリヌクレオチドは、ゲノムに単独で組み込まれてもよいし、又は組み換えDNAコンストラクトの一部として組み込まれてもよい。本明細書で使用される場合、「トランスジェニック」という用語には、異種核酸の存在によって遺伝子型が改変されているあらゆる細胞、細胞系、カルス、組織、植物部又は、植物体(例えば、これらの最初にそのように改変されたトランスジェニック体、及びこの最初のトランスジェニック体から有性交配又は無性繁殖により作られたもの)が含まれることを理解しなければならない。
【0064】
トランスジェニック「イベント」は、目的の遺伝子を含む核酸発現カセットなどの異種DNAコンストラクトで植物細胞を形質転換し、植物体のゲノムへ導入遺伝子を挿入することにより植物体の集団を再生し、特定のゲノム位置への挿入により特徴付けられた植物体を選択することによって作製される。イベントは、挿入遺伝子の発現により、表現型で特徴付けられる。遺伝子レベルでは、イベントは、植物体の遺伝子構造の一部である。「イベント」という用語はまた、形質転換体と別の植物体との間の有性交配により作製された子孫を指し、この子孫は、異種DNAを含む。
【0065】
「植物」という用語は、全植物、植物器官(例えば、葉、茎、根など)、植物組織、植物細胞、植物部分、種子、栄養繁殖体、胚、及びこれらの子孫を指す。植物細胞は、分化又は未分化であり得る(例えば、カルス、未分化カルス、未熟胚及び成熟胚、未熟接合胚、未熟子葉、胚軸、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉、葉細胞、根細胞、師管細胞、及び花粉)。植物細胞としては、限定はされないが、種子、懸濁培養物、外植片、未熟胚、胚、接合胚、体細胞胚、胚発生カルス、分裂組織、体細胞分裂組織、分裂組織部位、器官形成カルス、カルス組織、プロトプラスト、成熟穂生成種子由来胚、葉、葉基、成熟植物由来葉、葉頂、未熟花序、房、未熟穂、シルク、子葉、未熟子葉、胚軸、葉由来細胞、茎由来細胞、根由来細胞、シュート由来細胞、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉、小胞子、多細胞構造体(MCS)、再生可能な植物構造体(RPS)、及び胚様構造体からの細胞が挙げられる。
【0066】
植物部には、分化組織及び未分化組織が含まれ、それらの組織としては、以下に限定はされないが、根、茎、シュート、葉、花粉、種子、腫瘍組織、及び様々な形態の細胞及び培養物(例えば、単細胞、プロトプラスト、胚及びカルス組織)が挙げられる。植物組織は、植物体であっても、植物の器官、組織、又は細胞培養物であってもよい。
【0067】
穀粒は、種の栽培又は繁殖以外の目的で栽培業者が作製する成熟種子を意味することが意図されている。再生植物の子孫、改変体、及び変異体もまた、これらの子孫、改変体、及び変異体が導入ポリヌクレオチドを含むならば、本開示の範囲に含まれる。
【0068】
本開示はまた、本明細書に開示した方法のいずれかにより得られる植物を含む。本開示はまた、本明細書に開示した方法のいずれかにより得られる植物由来の種子を含む。
【0069】
本開示の方法は、以下に限定されないが、アルファルファ、ダイズ、ワタ、ヒマワリ、キャッサバ、インゲンマメ、ササゲ、トマト、ジャガイモ、ビート、ブドウ、ユーカリ属(Eucalyptus)、ポプラ、マツ、ダグラスファー、カンキツ類、パパイヤ、カカオ、キュウリ、リンゴ、トウガラシ属(Capsicum)、メロン、及びアブラナ属(Brassica)を含む植物種の形質転換に使用され得る。一態様では、本開示の方法で使用される双子葉植物として、ケール、カリフラワー、ブロッコリー、カラシナ、キャベツ、エンドウ、クローバー、アルファルファ、ソラマメ、トマト、ラッカセイ、キャッサバ、ダイズ、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、タバコ、アラビドプシス属(Arabidopsis)、又はワタが挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
高等植物、例えば、被子植物類(Angiospermae)及び裸子植物類(Gymnospermae)を本開示に使用し得る。本開示の方法に有用な好適な植物種は、キツネノマゴ科(Acanthaceae)、ネギ科(Alliaceae)、ユリズイセン科(Alstroemeriaceae)、ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)、キョウチクトウ科(Apocynaceae)、ヤシ科(Arecaceae)、キク科(Asteraceae)、メギ科(Berberidaceae)、ベニノキ科(Bixaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、アサ科(Cannabaceae)、ナデシコ科(Caryophyllaceae)、イヌガヤ科(Cephalotaxaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、イヌサフラン科(Colchicaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、ヤマノイモ科(Dioscoreaceae)、マオウ科(Ephedraceae)、ユカノキ科(Erythroxylaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、マメ科(Fabaceae)、シソ科(Lamiaceae)、アマ科(Linaceae)、ヒカゲノカズラ科(Lycopodiaceae)、アオイ科(Malvaceae)、メランチウム科(Melanthiaceae)、バショウ科(Musaceae)、フトモモ科(Myrtaceae)、ヌマミズキ科(Nyssaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、マツ科(Pinaceae)、オオバコ科(Plantaginaceae)、バラ科(Rosaceae)、アカネ科(Rubiaceae)、ヤナギ科(Salicaceae)、ムクロジ科(Sapindaceae)、ナス科(Solanaceae)、イチイ科(Taxaceae)、ツバキ科(Theaceae)、及びブドウ科(Vitaceae)由来であり得る。トロロアオイ属(Abelmoschus)、モミ属(Abies)、カエデ属(Acer)、ネギ属(Allium)、ユリズイセン属(Alstroemeria)、パイナップル属(Ananas)、アンドログラフィス属(Andrographis)、ウシクサ属(Andropogon)、ヨモギ属(Artemisia)、アトローパ属(Atropa)、メギ属(Berberis)、フダンソウ属(Beta)、ベニノキ属(Bixa)、アブラナ属(Brassica)、キンセンカ属(Calendula)、ツバキ属(Camellia)、カンレンボク属(Camptotheca)、アサ属(Cannabis)、トウガラシ属(Capsicum)、ベニバナ属(Carthamus)、ニチニチソウ属(Catharanthus)、イヌガヤ属(Cephalotaxus)、キク属(Chrysanthemum)、キナ属(Cinchona)、スイカ属(Citrullus)、コヒア属(Coffea)、イヌサフラン属(Colchicum)、コリウス属(Coleus)、キュウリ属(Cucumis)、カボチャ属(Cucurbita)、ギョウギシバ属(Cynodon)、チョウセンアサガオ属(Datura)、ナデシコ属(Dianthus)、ジギタリス属(Digitalis)、ヤマノイモ属(Dioscorea)、アブラヤシ属(Elaeis)、マオウ属(Ephedra)、エリアンサス属(Erianthus)、エリスロキシルム属(Erythroxylum)、ユーカリ属(Eucalyptus)、ウシノケグサ属(Festuca)、オランダイチゴ属(Fragaria)、ガランサス属(Galanthus)、ダイズ属(Glycine)、ワタ属(Gossypium)、ヒマワリ属(Helianthus)、パラゴムノキ属(Hevea)、ヒヨス属(Hyoscyamus)、ナンヨウアブラギリ属(Jatropha)、アキノノゲシ属(Lactuca)、ヤマ属(Linum)、ルピナス属(Lupinus)、トマト属(Lycopersicon)、ヒカゲノカズラ属(Lycopodium)、イモノキ属(Manihot)、ウマゴヤシ属(Medicago)、メンタ属(Mentha)、バショウ属(Musa)、タバコ属(Nicotiana)、ケシ属(Papaver)、ヨモギキク属(Parthenium)、チカラシバ属(Pennisetum)、ペチュニア属(Petunia)、クサヨシ属(Phalaris)、アワガエリ属(Phleum)、マツ属(Pinus)、ポア属(Poa)、ポインセチア属(Poinsettia)、ポプラ属(Populus)、ラウオルフィア属(Rauwolfia)、トウゴマ属(Ricinus)、バラ属(Rosa)、サトウキビ属(Saccharum)、ヤナギ属(Salix)、サングイナリア属(Sanguinaria)、ハシリドコロ属(Scopolia)、ナス属(Solanum)、ホウレンソウ属(Spinacea)、ヨモギキク属(Tanacetum)、イチイ属(Taxus)、カカオ属(Theobroma)、ウニオラ属(Uniola)、シュロソウ属(Veratrum)、ビンカ属(Vinca)、及びブドウ属(Vitis)のメンバーからの植物。
【0071】
農業、園芸、(液体燃料分子及び他の化学物質の作製のための)バイオマス作製、並びに/又は林業にとって重要な又は興味深い植物は、本開示の方法で使用され得る。非限定的な例として、例えば、ポプルス・バルサミフェラ(Populus balsamifera)(ポプラ)、ワタ(ゴシピウム・バルバデンセ(Gossypium barbadense)、ゴシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum))、ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annuus)(ヒマワリ)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)(アルファルファ)、ベタ・ブルガリス(Beta vulgaris)(テンサイ)、エリアンサス属(Erianthus)種、ヤナギ属(Salix)種(ヤナギ)、ユーカリ属(Eucalyptus)種(ユーカリ、例えば、E.グランディス(E.grandis)(及び、「ウログランディス」として知られるそのハイブリッド)、E.グロブルス(E.globulus)、E.カマルドレンシス(E.camaldulensis)、E.テレティコルニス(E.tereticornis)、E.ビミナリス(E.viminalis)、E.ニテンス(E.nitens)、E.サリグナ(E.saligna)、及びE.ウロフィラ(E.urophylla))、カルタムス・ティンクトリウス(Carthamus tinctorius)(ベニバナ)、ヤトロファ・クルカス(Jatropha curcas)(ヤトロファ)、リシヌス・コムニス(Ricinus communis)(トウゴマ)、マニホト・エスクレンタ(Manihot esculenta)(キャッサバ)、ソラヌム・リコペルシクム(Solanum lycopersicum)(トマト)、ラクチュカ・サティバ(Lactuca sativa)(レタス)、ファセオルス・ウルガリス(Phaseolus vulgaris)(サヤインゲン)、ファセオルス・リメンシス(Phaseolus limensis)(ライマメ)、レンリソウ属(Lathyrus)種(エンドウマメ)、ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum)(ジャガイモ)、アブラナ属(Brassica)種(B.ナプス(B.napus)(キャノーラ)、B.ラパ(B.rapa)、B.ジュンセア(B.juncea))、ブラシカ・オレラケア(Brassica oleracea)(ブロッコリー、カリフラワー、メキャベツ)、カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)(チャノキ)、フラガリア・アナナッサ(Fragaria ananassa)(イチゴ)、テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)(ココア)、コフェア・アラビカ(Coffea arabica)(コーヒーノキ)、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)(ブドウ)、アナナス・コモスス(Ananas comosus)(パイナップル)、カプシカム・アンヌム(Capsicum annum)(トウガラシ及びピーマン)、アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea)(ラッカセイ)、イポモエア・バタツス(Ipomoea batatus)(サツマイモ)、ココス・ヌシフェラ(Cocos nucifera)(ココナツ)、ミカン属(Citrus)種(カンキツ類の木)、ペルセア・アメリカーナ(Persea americana)(アボカド)、イチジク(フィクス・カシカ(Ficus casica))、グアバ(シジウム・グアジャバ(Psidium guajava))、マンゴー(マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica))、オリーブ(オレア・エウロパエ(Olea europaea))、カリカ・パパヤ(Carica papaya)(パパイヤ)、アナカルジウム・オクシデンタレ(Anacardium occidentale)(カシュー)、マカダミア・インテグリフォリア(Macadamia integrifolia)(マカダミアの木)、プルヌス・アミグダルス(Prunus amygdalus)(アーモンド)、アリウム・セパ(Allium cepa)(タマネギ)、ククミス・メロ(Cucumis melo)(マスクメロン)、ククミス・サチブス(Cucumis sativus)(キュウリ)、ククミス・カンタルペンシス(Cucumis cantalupensis)(カンタロープ)、ククルビタ・マクシマ(Cucurbita maxima)(スクワシュ)、ククルビタ・モスカータ(Cucurbita moschata)(スクワシュ)、スピナケア・オレラケア(Spinacea oleracea)(ホウレンソウ)、キトルッルス・ラナトゥス(Citrullus lanatus)(スイカ)、アベルモスクス・エスクレンツス(Abelmoschus esculentus)(オクラ)、ソラヌム・メロンゲナ(Solanum melongena)(ナス)、シアムプシス・テトラゴノロバ(Cyamopsis tetragonoloba)(グアーマメ)、ケラトニア・シリクア(Ceratonia siliqua)(イナゴマメ)、トリゴネラ・フォエヌム-グラエクム(Trigonella foenum-graecum)(フェヌグリーク)、ビグナ・ラディアタ(Vigna radiata)(リョクトウ)、ビグナ・ウンギィクラタ(Vigna unguiculata)(ササゲ)、ビシア・ファバ(Vicia faba)(ソラマメ)、キセル・アリエチヌム(Cicer arietinum)(ヒヨコマメ)、レンズ・クリナリス(Lens culinaris)(レンズマメ)、パパフェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)(ケシ)、パパフェル・オリエンターレ(Papaver orientale)、タクスス・バッカータ(Taxus baccata)、タクスス・ブレウィフォリア(Taxus brevifolia)、アルテミシア・アヌア(Artemisia annua)、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)、カムプトテカ・アクミナーテ(Camptotheca acuminate)、カタランツス・ロセウス(Catharanthus roseus)、ビンカ・ロセア(Vinca rosea)、キンコナ・オッフィキナリス(Cinchona officinalis)、コルキクム・アウツムナレ(Colchicum autumnale)、ベラトルム・カルフォルニカ(Veratrum californica)、ジギタリス・ラナタ(Digitalis lanata)、ジギタリス・プルプレア(Digitalis purpurea)、ヤマノイモ属(Dioscorea)種、アンドログラフィス・パニクラータ(Andrographis paniculata)、アトロパ・ベラドンナ(Atropa belladonna)、ダチュラ・ストラモニウム(Datura stomonium)、メギ属(Berberis)種、イヌガヤ属(Cephalotaxus)種、エフェドラ・シニカ(Ephedrasinica)種、マオウ属(Ephedra)種、エリスロキシルム・コカ(Erythroxylum coca)、ガランツス・ウォルノリイ(Galanthus wornorii)、ハシリドコロ属(Scopolia)種、リポコジウム・セラツム(Lycopodium serratum)(フペルジア・セラタ(Huperzia serrata))、ヒカゲノカズラ属(Lycopodium)種、ラウオルフィア・セルペンチナ(Rauwolfia serpentina)、ラウオルフィア属(Rauwolfia)種、サンギナリア・カナデンシス(Sanguinaria canadensis)、ヒヨス属(Hyoscyamus)種、カレンデュラ・オフィシナリス(Calendula officinalis)、クリサンテマム・パーセニューム(Chrysanthemum parthenium)、コレウス・フォルスコリイ(Coleus forskohlii)、タナセツム・パルテニウム(Tanacetum parthenium)、パルセニウム・アルゲンタツム(Parthenium argentatum)(グアユール)、パラゴムノキ属(Hevea)種(ゴムノキ)、メンタ・スピカータ(Mentha spicata)(ミント)、メンタ・ピペリータ(Mentha piperita)(ミント)、ビクサ・オレラナ(Bixa orellana)(ベニノキ)、ユリズイセン属(Alstroemeria)種、バラ属(Rosa)種(バラ)、ツツジ属(Rhododendron)種(アザレア)、マクロフィラ・ヒドランゲア(Macrophylla hydrangea)(アザレア)、ヒビスクス・ロササネンシス(Hibiscus rosasanensis)(ハイビスカス)、チューリップ属(Tulipa)種(チューリップ)、スイセン属(Narcissus)種(ラッパズイセン)、ペチュニア・ハイブリッド(Petunia hybrida)(ペチュニア)、ジアンツス・カリオフィルス(Dianthus caryophyllus)(カーネーション)、ユーフォルビア・プルケリマ(Euphorbia pulcherrima)(ポインセチア)、キク、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)(タバコ)、ルピナス・アルブス(Lupinus albus)(ルピナス)、ポプルス・トレムロイデス(Populus tremuloides)(ヤマナラシ)、マツ属(Pinus)種(マツ)、モミ属(Abies)種(モミ)、カエデ属(Acer)種(メープル)、及び球果植物が挙げられる。
【0072】
本開示の方法では球果植物を使用し得、球果植物としては、例えば、テーダマツ(ピヌス・タエダ(Pinus taeda))、スラッシュパイン(ピヌス・エリオッティ(Pinus elliotii))、ポンデローサマツ(ピヌス・ポンデローサ(Pinus ponderosa))、ロッジポールパイン(ピヌス・コントルタ(Pinus contorta))、及びモントレーパイン(ピヌス・ラジアータ(Pinus radiata))などのマツ;ダグラスファー(シュードツガ・メンジエシイ(Pseudotsuga menziesii));カナダツガ(ツガ・カナデンシス(Tsuga canadensis));アメリカツガ(ツガ・ヘテロフィラ(Tsuga heterophylla));マウンテンヘムロック(ツガ・メルテンシアナ(Tsuga mertensiana));アメリカカラマツ又はカラマツ(ラリックス・オキシデンタリス(Larix occidentalis));ベイトウヒ(ピセア・グラウカ(Picea glauca));セコイア(セコイア・センペルビレンス(Sequoia sempervirens));ヨーロッパモミ(アビエス・アマビリス(Abies amabilis))、及びバルサムモミ(アビエス・バルサメア(Abies balsamea))などのトゥルーモミ;並びにベイスギ(ツヤ・プリカータ(Thuja plicata))、及びアラスカイエローシーダー(カマエシパリス・ヌートカテンシス(Chamaecyparis nootkatensis))などのシーダーが挙げられる。
【0073】
特定の態様では、本開示の方法に有用な植物は、作物(例えば、アルファルファ、ヒマワリ、アブラナ属(Brassica)、ダイズ、ワタ、ベニバナ、ラッカセイ、タバコなど)である。本開示の方法において有用な他の植物としては、キャッサバ、インゲンマメ、ササゲ、トマト、ジャガイモ、ビート、ブドウ、ユーカリ属(Eucalyptus)、ポプラ、マツ、ダグラスファー、カンキツ類、パパイヤ、カカオ、キュウリ、リンゴ、トウガラシ属(Capsicum)、及びメロンが挙げられる。
【0074】
さらなる異種コード配列、異種ポリヌクレオチド、及び目的のポリヌクレオチドは、本開示の方法において、植物の表現型を変化させるために使用され得る。目的の表現型の様々な変化としては、植物における遺伝子発現の改変、植物の病原体又は昆虫に対する防御機構の改変、植物の除草剤に対する耐性の増大、環境ストレスに応答する植物の発達の改変、塩、温度(高温及び低温)、乾燥などに対する植物の応答の調節などが挙げられる。これらの結果は、適切な遺伝子産物を含む目的の異種ヌクレオチド配列の発現により達成され得る。特定の態様では、目的の異種ヌクレオチド配列は、その発現レベルが植物体又は植物部で上昇する内因性の植物配列である。結果は、1種若しくは複数種の内因性遺伝子産物(特に、ホルモン、レセプター、シグナル伝達分子、酵素、トランスポーター、若しくは補因子)の発現を改変することにより得ることができるか、又は植物の栄養摂取に影響を及ぼすことにより得ることができる。これらの変化は、形質転換植物の表現型の変化をもたらす。
【0075】
本開示の方法で使用する目的の異種ポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列の一般的な種類としては、例えば、ジンクフィンガーなどの情報に関与する遺伝子、キナーゼなどの伝達に関与する遺伝子、及び熱ショックタンパク質などのハウスキーピングに関与する遺伝子が挙げられる。導入遺伝子(目的の異種ポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列)のより具体的な種類としては、例えば、農学上の重要な形質、昆虫耐性、耐病性、除草剤耐性、環境ストレス耐性(寒冷、塩、乾燥などに対する耐性の変化)及び穀粒特性をコードする遺伝子が挙げられる。導入遺伝子のさらに他の種類としては、植物及び他の真核生物、並びに原核生物からの酵素、補因子及びホルモンなどの外因性産物の発現を誘発する遺伝子が挙げられる。目的のいかなる遺伝子又はポリヌクレオチドも、本明細書に開示の方法によりプロモーターに作動可能に連結され、植物で発現し得ることは認識されている。
【0076】
多くの農業形質、例えば、以下に限定はされないが、植物体の高さ、莢の数、植物体における莢の位置、節間部の数、莢の破損の発生率、穀粒サイズ、根粒形成効率及び窒素固定効率、栄養の消化効率、生物的ストレス及び非生物的ストレスに対する耐性、炭素同化、植物構造、耐倒伏性、種子の発芽率、苗の成長力、並びに幼植物の形質が、「収穫量」に影響を及ぼし得る。収穫量に影響を及ぼし得る他の形質として、発芽効率(例えば、ストレス条件下での発芽効率)、成長速度(例えば、ストレス条件下での成長速度)、穂の数、1本の穂当たりの種子数、種子の大きさ、種子の組成(デンプン、油、タンパク質)、並びに登熟特性が挙げられる。植物の全収穫量を増大させるか否かはわからないが、所望の表現型特性を示すトランスジェニック植物の発生もまた目的とされる。そのような特性としては、植物形態学的増強、植物生理学的増強、又はトランスジェニック植物から得られる成熟種子の成分の改善が挙げられる。
【0077】
本開示のトランスジェニック植物の「収穫量の増大」を、多くの方法(例えば、試験重量、1つの植物体当たりの種子数、種子重量、単位面積当たりの種子数(すなわち、1エーカー当たりの種子、若しくは種子重量)、1エーカー当たりのブッシェル数、1エーカー当たりのトン数、及び1へクタール当たりのキロ数)で評価して測定し得る。例えば、トウモロコシの収穫量を、例えば、1エーカー当たりのブッシェル数又は1へクタール当たりのメートルトン数を単位とした、生産面積1単位当たりの、皮を剥いたトウモロコシ粒の産生量として測定し得、多くの場合に、水分調節ベース(例えば水分15.5%)で報告される。収穫量の増大は、キーとなる生化学化合物、例えば、窒素、リン及び炭水化物などの利用の改善、又は、環境ストレス、例えば、寒さ、熱、乾燥、塩分、及び害虫若しくは病原体による攻撃などに対する耐性の向上によりもたらされ得る。形質強化組み換えDNAはまた、植物成長調節物質の発現の改変、又は細胞周期若しくは光合成経路の変更の結果として、成長及び発達が改善され、ひいては収穫量が増大するトランスジェニック植物を提供するために使用され得る。
【0078】
「形質の強化」は、本明細書の本開示の態様の説明する中で使用される場合、水使用効率若しくは乾燥耐性の改善若しくは強化、浸透圧ストレス耐性、高塩分ストレス耐性、熱ストレス耐性、低温発芽耐性などの耐寒性の強化、収穫量の増大、種子品質の改善、窒素利用効率の強化、植物の早い成長及び発達、植物の遅い成長及び発達、種子タンパク質の強化、並びに種子油の生産性の強化を含む。
【0079】
目的の多くの遺伝子(目的の異種ポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列)、例えば、昆虫耐性形質除草剤耐性、真菌耐性、ウイルス耐性、ストレス耐性、耐病性、雄性不稔性、茎強度など)又はアウトプット形質(例えば、収穫量の増大、デンプンの改変、油プロファイルの改善、バランスのとれたアミノ酸、高リシン若しくは高メチオニン、消化性の増大、繊維品質の改善、乾燥耐性、栄養強化など)が、本開示の方法で使用され、植物で発現され得る。
【0080】
一態様では、本開示の方法は、成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)を、ネキリムシ、ヨトウムシ、ヨーロッパアワノメイガなどの収量を大きく低下させる害虫に対する耐性をコードする昆虫耐性遺伝子(目的の異種ポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列)で形質転換するために使用することができる。このような遺伝子(目的の異種遺伝子又はヌクレオチド配列)としては、例えば、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)毒性タンパク質遺伝子(米国特許第5,366,892号明細書、同第5,747,450号明細書、同第5,736,514号明細書、同第5,723,756号明細書、同第5,593,881号明細書、及びGeiser,et al.,(1986)Gene 48:109(これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))などが挙げられる。耐病性形質をコードする遺伝子(目的の異種ポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列)、例えば、フモニシンを解毒する遺伝子などの解毒遺伝子(米国特許第5,792,931号明細書);非病原性(avr)及び耐病性(R)遺伝子(Jones,et al.,(1994)Science 266:789、Martin,et al.,(1993)Science 262:1432、及びMindrinos,et al.,(1994)Cell 78:1089)もまた本開示の方法に使用することができる(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0081】
除草剤耐性形質、例えば、アセト乳酸合成酵素(ALS)の働きを阻害するように作用する除草剤、特に、スルホニル尿素系除草剤に対する耐性をコードする遺伝子(例えば、そのような耐性に導く変異、特にS4及び/又はHra変異を含むアセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子)、グルタミン合成酵素の働きを阻害するように作用する除草剤、例えば、ホスフィノトリシン又はバスタに対する耐性をコードする遺伝子(例えば、bar遺伝子)、グリホサートに対する耐性をコードする遺伝子(例えば、EPSPS遺伝子及びGAT遺伝子;例えば、米国特許出願公開第2004/0082770号明細書及び国際公開第03/092360号パンフレット(参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照)、或いは当該技術分野で知られる他のそのような遺伝子を本開示の方法に使用することができる。bar遺伝子は除草剤のバスタに対する耐性をコードし、nptII遺伝子は抗生物質のカナマイシン及びジェネティシンに対する耐性をコードし、ALS-遺伝子変異体は除草剤のクロルスルフロンに対する耐性をコードしており、そのいずれもが本開示のプロモーターに作動可能に連結され、本開示の方法に使用することができる。
【0082】
グリホサート耐性は、変異5-エノールピルビル-3-ホスホシキメート合成酵素(EPSPS)及び本開示のプロモーターに作動可能に連結され、本開示の方法に使用することができるaroA遺伝子によって付与される。例えば、Shah,et al.の米国特許第4,940,835号明細書を参照されたい。この文献はグリホサート耐性を付与し得るEPSPSの形態のヌクレオチド配列を開示している。Barry,et al.,の米国特許第5,627,061号明細書にもまた、本開示のプロモーターに作動可能に連結され、本開示の方法に使用することができるEPSPS酵素をコードする遺伝子が記載されている。米国特許第6,248,876B1号明細書;同第6,040,497号明細書;同第5,804,425号明細書;同第5,633,435号明細書;同第5,145,783号明細書;同第4,971,908号明細書;同第5,312,910号明細書;同第5,188,642号明細書;同第4,940,835号明細書;同第5,866,775号明細書;同第6,225,114B1号明細書;同第6,130,366号明細書;同第5,310,667号明細書;同第4,535,060号明細書;同第4,769,061号明細書;同第5,633,448号明細書;同第5,510,471号明細書;米国再発行特許第36,449号明細書、同第37,287E号明細書、及び米国特許第5,491,288号明細書、並びに国際公開第97/04103号パンフレット;同第97/04114号パンフレット;同第00/66746号パンフレット;同第01/66704号パンフレット;同第00/66747号パンフレット、及び同第00/66748号パンフレット(これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)もまた参照されたい。グリホサート耐性はまた、米国特許第5,776,760号明細書及び同第5,463,175号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)でより詳しく説明されているグリホサート酸化還元酵素をコードする遺伝子を発現する植物にも付与される。グリホサート耐性はまた、グリホサートNアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の過剰発現により植物に付与され得る。例えば、米国特許出願第11/405,845号明細書及び同第10/427,692号明細書(参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0083】
本開示の方法では、物理的雄穂除去の代替を提供するために、不稔性遺伝子(目的の異種ポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列)を使用することができる。そのような方法に使用される遺伝子の例としては、雄性組織優先的遺伝子、及び米国特許第5,583,210号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているQMなどの雄性不稔性表現型を有する遺伝子が挙げられる。本開示のプロモーターに作動可能に連結され、本開示の方法に使用され得るその他の遺伝子としては、キナーゼ、及び雄性又は雌性の配偶体形成に毒性のある化合物をコードするものが挙げられる。
【0084】
例えばエタノール産生のためにデンプンを増加させられる、又はタンパク質の発現を提供できる商業的形質もまた、本発明の方法を用いて生成することができる。形質転換植物の別の重要な商業利用は、米国特許第5,602,321号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなポリマー及びバイオプラスチックの生成である。本開示のプロモーターに作動可能に連結され、本開示の方法に使用され得る、β-ケトチオラーゼ、PHBアーゼ(ポリヒドロキシブチレート合成酵素)、及びアセトアセチル-CoA還元酵素(Schubert,et al.,(1988)J.Bacteriol.170:5837-5847(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照)などの遺伝子は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の発現を促進する。
【0085】
多くの形質遺伝子(目的の異種ポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列)が当該技術分野で知られており、本明細書に開示の方法で使用することができる。例示として、以下に限定されないが、昆虫又は病気に対する耐性を付与する形質遺伝子(異種ポリヌクレオチド)、除草剤に対する耐性を付与する形質遺伝子(異種ポリヌクレオチド)、改変された脂肪酸、改変されたリン含有量、改変された炭水化物若しくは炭水化物組成、改変された抗酸化物質含有量若しくは組成、又は改変された必須種子アミノ酸含有量若しくは組成などの改変された穀粒特性を付与若しくは寄与する形質遺伝子(異種ポリヌクレオチド)は、形質遺伝子(異種ポリヌクレオチド)の種類の例であり、これらは本明細書に開示される方法によって形質転換された植物において発現させるためのプロモーターに作動可能に連結され得る。当該技術分野で知られるさらなる遺伝子が本明細書に開示される方法に有用な発現カセットに含まれ得る。非限定的な例として、部位特異的DNAを組み込むための部位を作る遺伝子、非生物的ストレス耐性(例えば、以下に限定はされないが、開花、穂及び種子の発生、窒素利用効率の強化、窒素反応性の改変、乾燥に対する耐性又は抵抗性、寒さに対する耐性又は抵抗性、及び塩分に対する耐性又は抵抗性)、及びストレス下での収穫量の増大に作用する遺伝子、又は植物の成長及び農業形質(例えば、収穫量、開花、植物の成長及び/又は植物構造)に影響する他の遺伝子及び転写因子が挙げられる。
【0086】
本開示の方法は、標的遺伝子のアンチセンス配列である異種ヌクレオチド配列で植物を形質転換するために使用することができる。本明細書で使用される場合、「アンチセンス配向」には、アンチセンス鎖が転写される方向で、プロモーターに作動可能に連結しているポリヌクレオチド配列への言及が含まれる。アンチセンス鎖は、内因性転写産物に十分に相補的であり、そのため内因性転写産物の翻訳は多くの場合抑制される。「作動可能に連結している」とは、単一の核酸断片上の2つ以上の核酸断片が、1つの断片の機能が他の断片に影響されるような関係にあることを指す。例えば、プロモーターがコード配列の発現に影響を及ぼすことができる(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)とき、そのプロモーターはコード配列に作動可能に連結している。コード配列は、センス又はアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結することができる。
【0087】
「アンチセンスDNAヌクレオチド配列」という専門用語は、このヌクレオチド配列の5’から3’という通常の方向に対して逆方向である配列を意味することが意図されている。植物細胞に送達されると、アンチセンスDNA配列の発現は、標的遺伝子のDNAヌクレオチド配列の正常な発現を妨げる。アンチセンスヌクレオチド配列は、標的遺伝子のDNAヌクレオチド配列の転写により生じた内因性メッセンジャーRNA(mRNA)に相補的であり且つハイブリダイズし得るRNA転写産物をコードする。この場合には、標的遺伝子によりコードされる天然タンパク質の産生が阻害されて、所望の表現型応答が得られる。アンチセンス配列は、対応するmRNAにハイブリダイズしてその発現を妨げる限りにおいて改変され得る。このように、対応するアンチセンス配列に対して70%、80%、85%の配列同一性を有するアンチセンス構築物を使用し得る。さらに、アンチセンスヌクレオチドの部分は、標的遺伝子の発現を妨げるために使用され得る。一般に、少なくとも、50個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、又はそれ以上の配列を使用し得る。したがって、本明細書に開示のプロモーター配列は、アンチセンスDNA配列に作動可能に連結して、植物中の天然タンパク質の発現を抑制又は阻害することができる。
【0088】
「RNAi」は、遺伝子発現を減少させる一連の関連手法を指す(例えば、米国特許第6,506,559号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照)。他の名称で呼ばれる旧手法は、今日、同じメカニズムに依っていると考えられるが、文献では異なる名称が付されている。このような手法としては、「アンチセンス阻害」、すなわち、標的タンパク質の発現を抑制し得るアンチセンスRNA転写産物の産生、及び、同一の又は実質的に類似の外来性又は内因性の遺伝子の発現を抑制し得るセンスRNA転写産物の産生を指す「コサプレッション」又は「センスサプレッション」が挙げられる(全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,231,020号明細書)。このような手法は、サイレンシングする標的遺伝子に1本の鎖が相補的な二本鎖RNAの蓄積を生じるコンストラクトの使用に依存している。本開示の方法を使用して、マイクロRNA及びsiRNAを含むRNA干渉を起こすコンストラクトを発現させることができる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」又は「転写開始領域」という用語は、TATAボックス、又はRNAポリメラーゼIIを誘導して特定のコード配列に適切な転写開始部位でRNA合成を開始させ得るDNA配列を通常は含むDNAの調節領域を意味する。プロモーターは、TATAボックス、又はRNAポリメラーゼIIを誘導してRNA合成を開始させ得るDNA配列の上流若しくは5’側に一般に位置する他の認識配列(上流プロモーターエレメントと呼ばれ、転写開始速度に影響を及ぼす)をさらに含み得る。本明細書に開示のプロモーター領域のヌクレオチド配列が特定されたことが認められており、本明細書で特定された特定のプロモーター領域の上流の5’側の非翻訳領域におけるさらなるプロモーターを単離し特定するのはこの分野における最新技術である。さらに、キメラプロモーターが提供され得る。このようなキメラは、異種の転写調節領域の断片及び/又は改変体に融合したプロモーター配列の部分を含む。したがって、本明細書に開示のプロモーター領域は、コード配列の組織及び一時的な発現に関与しているもの、エンハンサーなどの上流プロモーターを含み得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、「調節エレメント」という用語はまた、通常(常にではない)、RNAポリメラーゼ及び/又は特定の部位で転写を開始するのに必要な他の因子を認識することにより、コード領域の発現を制御する配列を含む、構造遺伝子のコード配列の上流(5’)側のDNA配列を指す。RNAポリメラーゼ又は特定の部位で確実に開始させる他の転写因子を認識する調節エレメントの一例は、プロモーターエレメントである。プロモーターエレメントは、転写の開始に関与しているコアプロモーターエレメント、及び遺伝子発現を変化させる他の調節エレメントを含む。イントロン内に又はコード領域配列の3’側に位置しているヌクレオチド配列も目的のコード領域の発現の調節に寄与し得ることは理解しなければならない。好適なイントロンの例としては、トウモロコシIVS6イントロン、又はトウモロコシアクチンイントロンが挙げられるが、これらに限定されない。調節エレメントはまた、転写開始部位の下流(3’)側に、又は転写領域内に、又はそれらの両方に位置するエレメントを含み得る。本開示との関連では、転写後の調節エレメントとして、転写開始の後に活性なエレメント、例えば、翻訳エンハンサー及び転写エンハンサー、翻訳リプレッサー及び転写リプレッサー、並びにmRNA安定性決定因子が挙げられる。
【0091】
「異種ヌクレオチド配列」、「目的の異種ポリヌクレオチド」、又は「異種ポリヌクレオチド」は、本開示全体を通して使用される場合、天然にはプロモーター配列と共に存在していないか又はプロモーター配列に作動可能に連結されていない配列である。このヌクレオチド配列は、プロモーター配列に対し異種であるが、宿主植物に対しては、同種の、又は天然の、又は異種の、又は外来のものであり得る。同様に、プロモーター配列は、宿主植物及び/又は目的のポリヌクレオチドに対して、同種の、又は天然の、又は異種の、又は外来のものであり得る。
【0092】
転写レベルを高めるために、エンハンサーが存在し得ることは認識されている。エンハンサーは、プロモーター領域の発現を増加させるように作用するヌクレオチド配列である。エンハンサーは当該技術分野で知られており、SV40エンハンサー領域、35Sエンハンサーエレメントなどが挙げられる。いくつかのエンハンサーはまた、通常のプロモーター発現パターンを、例えば、プロモーターを構成的に発現させることにより、変更させることが知られている(エンハンサーがない場合には、同一のプロモーターは1つ又は少数の特定の組織でのみ発現する)。
【0093】
プロモーター配列の改変は、異種ヌクレオチド配列の一定の範囲の発現を提供し得る。したがって、それらは弱プロモーター又は強プロモーターに改変され得る。一般に、「弱プロモーター」は、コード配列の発現を低レベルで駆動するプロモーターを意味する。「低レベル」の発現とは、約1/10,000転写産物~約1/100,000転写産物~約1/500,000転写産物のレベルでの発現を意味することが意図されている。逆に、強プロモーターは、高レベルで、すなわち約1/10転写産物~約1/100転写産物~約1/1,000転写産物でコード配列の発現を駆動する。
【0094】
本明細書に開示されている形質転換方法は、任意の植物の遺伝子操作に有用であり、それによって形質転換植物の表現型の変化を生じる。
【0095】
「作動可能に連結されている」という用語は、異種ヌクレオチド配列の転写又は翻訳が、プロモーター配列の影響下にあることを意味する。このように、プロモーターのヌクレオチド配列は、目的の植物における発現のために、より特には植物の生殖組織における発現のために、目的の異種ヌクレオチド配列と共に発現カセットに提供され得る。
【0096】
本開示の一態様では、発現カセットは、形態形成遺伝子及び/又は異種ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターヌクレオチド配列又はその改変体若しくは断片を含む転写開始領域を含む。そのような発現カセットは、調節領域の転写調節下にヌクレオチド配列を挿入するための複数の制限部位を有し得る。発現カセットはさらに、選択マーカー遺伝子及び3’終端領域を含み得る。
【0097】
発現カセットは、転写の5’-3’方向に、宿主生物において機能する、転写開始領域(すなわち、プロモーター又はその改変体若しくは断片)、翻訳開始領域、目的の異種ヌクレオチド配列、翻訳終止領域、及び任意選択的な転写終止領域を含み得る。調節領域(すなわち、プロモーター、転写調節領域及び翻訳終止領域)、及び/又は本態様のポリヌクレオチドは、宿主細胞に対し、又は相互に、天然/類似であり得る。或いは、調節領域及び/又は本態様のポリヌクレオチドは、宿主細胞に対し、又は相互に、異種であり得る。本明細書で使用される場合、配列に関連した「異種」は、外来種を起源とする配列であるか、又は同種からのものであれば、組成及び/又はゲノム遺伝子座が意図的な人的介入により天然の形態から実質的に改変されている配列である。例えば、異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターは、このポリヌクレオチドが由来した種と異なる種からのものであるか、又は同一/類似種からのものであれば、一方若しくは両方が元の形態及び/若しくはゲノム遺伝子座から実質的に改変されているか、又はこのプロモーターが、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの天然プロモーターではない。
【0098】
終止領域は転写開始領域と同じ由来であっても、作動可能に連結した目的のDNA配列と同じ由来であっても、宿主植物と同じ由来であっても、他のソース由来(すなわち、プロモーター、発現するDNA配列、宿主植物、又はこれらの任意の組み合わせに対し外来又は異種)であってもよい。適切な終止領域は、オクトピン合成酵素終止領域及びノパリン合成酵素終止領域などのA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)のTiプラスミドから入手可能である。また、Guerineau,et al.,(1991)Mol.Gen.Genet.262:141-144;Proudfoot,(1991)Cell 64:671-674;Sanfacon,et al.,(1991)Genes Dev.5:141-149;Mogen,et al.,(1990)Plant Cell 2:1261-1272;Munroe,et al.,(1990)Gene 91:151-158;Ballas,et al.,(1989)Nucleic Acids Res.17:7891-7903;及びJoshi,et al.,(1987)Nucleic Acid Res.15:9627-9639(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0099】
本開示の方法に有用な発現カセットはまた、生物に同時形質転換される遺伝子、異種ヌクレオチド配列、目的の異種ポリヌクレオチド、又は異種ポリヌクレオチドのための少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列を含み得る。或いは、この追加のヌクレオチド配列は、別の発現カセットで供してもよい。
【0100】
適切な場合には、ヌクレオチド配列は、形質転換植物における発現を増加させるために最適化することができる。すなわち、発現を改善するために、これらのヌクレオチド配列を、植物に好適なコドンを使用して合成することができる。例えば、宿主に好適なコドンの利用についての考察には、Campbell and Gowri(1990)Plant Physiol.92:1-11(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。植物に好ましい遺伝子を合成するために、当該技術分野における各種方法が利用可能である。例えば、米国特許第5,380,831号明細書、同第5,436,391号明細書、及びMurray,et al.,(1989)Nucleic Acids Res.17:477-498(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0101】
細胞宿主中での遺伝子発現を増強するために、追加的に配列を改変することが知られている。このような改変には、遺伝子発現に有害であり得る、疑似ポリアデニル化シグナルをコードする配列、エクソン-イントロンスプライス部位シグナルをコードする配列、トランスポゾン様リピートをコードする配列、及び他のそのようなよく特徴付けられた配列の除去が含まれる。宿主細胞において発現した既知の遺伝子を参考にして算出される、異種ヌクレオチド配列のG-C含量を、所与の細胞宿主の平均レベルに調節することができる。可能であれば、予想されるヘアピン二次mRNA構造を避けるように配列を改変する。
【0102】
発現カセットはさらに、5’リーダー配列を含むことができる。そのようなリーダー配列は翻訳を促進するよう作用し得る。翻訳リーダーは、当該技術分野で知られており、下記が挙げられるが、これらに限定されない:ピコルナウイルスリーダー、例えばEMCVリーダー(脳心筋炎5’非コード領域)(Elroy-Stein,et al.,(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:6126-6130);ポティウイルス(potyvirus)リーダー、例えばTEVリーダー(タバコ・エッチ・ウイルス(Tobacco Etch Virus))(Allison,et al.,(1986)Virology 154:9-20);MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス(Maize Dwarf Mosaic Virus));ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)(Macejak,et al.,(1991)Nature 353:90-94);アルファルファモザイクウイルス(alfalfa mosaic virus)の外皮タンパク質mRNA(AMV RNA 4)由来の非翻訳リーダー(Jobling,et al.,(1987)Nature 325:622-625);タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)リーダー(TMV)(Gallie,et al.,(1989)Molecular Biology of RNA, pages 237-256);及びトウモロコシクロロティックモトルウイルス(maize chlorotic mottle virus)リーダー(MCMV)(Lommel,et al.,(1991)Virology 81:382-385)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。Della-Cioppa,et al.,(1987)Plant Physiology 84:965-968(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。mRNAの安定性を高めることが知られている方法では、例えば、イントロン(例えば、トウモロコシユビキチンイントロン(Christensen and Quail,(1996)Transgenic Res.5:213-218;Christensen,et al.,(1992)Plant Molecular Biology 18:675-689)又はトウモロコシAdhIイントロン(Kyozuka,et al.,(1991)Mol.Gen.Genet.228:40-48;Kyozuka,et al.,(1990)Maydica 35:353-357)など(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる))も使用され得る。
【0103】
本開示の方法において有用なDN発現カセット又はコンストラクトはまた、必要に応じて、エンハンサー(翻訳エンハンサー又は転写エンハンサー)をさらに含み得る。このエンハンサー領域は当業者によく知られており、ATG開始コドン及び隣接配列を含み得る。開始コドンは、全配列の翻訳を確かにするため、コード配列のリーディングフレームと同調していなければならない。翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成の両方の様々な起源に由来し得る。翻訳開始領域は、転写開始領域の供給源から、又は構造遺伝子から提供され得る。この配列はまた、遺伝子発現のために選択された調節エレメントに由来し得、特に、mRNAの翻訳を増大させるように改変され得る。転写レベルを高めるために、エンハンサーを本態様のプロモーター領域と組み合わせて利用し得ることがわかった。エンハンサーは当該技術分野で知られており、SV40エンハンサー領域、35Sエンハンサーエレメントなどが挙げられる。
【0104】
発現カセットの調製には、各種DNA断片が、適当な配向で、必要ならば、適当なリーディングフレームにおけるDNA配列を提供するように操作され得る。この目標に向かって、アダプター又はリンカーがDNA断片の結合に使用され得るか、又は適当な制限酵素認識部位、不要なDNAの除去、制限酵素認識部位の除去などを提供するための他の操作が行われ得る。この目的のために、インビトロでの変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えばトランジション及びトランスバージョンが行われ得る。
【0105】
レポーター遺伝子又は選択マーカー遺伝子もまた、本開示の方法で有用な発現カセットに含まれ得る。当該技術分野で知られる好適なレポーター遺伝子の例は、例えば、Jefferson,et al.,(1991)in Plant Molecular Biology Manual,ed.Gelvin,et al.,(Kluwer Academic Publishers),pp.1-33;DeWet,et al.,(1987)Mol.Cell.Biol.7:725-737;Goff,et al.,(1990)EMBO J.9:2517-2522;Kain,et al.,(1995)Bio Techniques 19:650-655;及びChiu,et al.,(1996)Current Biology 6:325-330(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0106】
形質転換された細胞又は組織を選択するための選択マーカー遺伝子として、抗生物質耐性又は除草剤耐性を付与する遺伝子が挙げられ得る。好適な選択マーカー遺伝子の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:クロラムフェニコール耐性をコードする遺伝子(Herrera Estrella,et al.,(1983)EMBO J.2:987-992);メトトレキサート耐性をコードする遺伝子(Herrera Estrella,et al.,(1983)Nature 303:209-213;Meijer,et al.,(1991)Plant Mol.Biol.16:807-820);ハイグロマイシン耐性をコードする遺伝子(Waldron,et al.,(1985)Plant Mol.Biol.5:103-108;及びZhijian,et al.,(1995)Plant Science108:219-227);ストレプトマイシン耐性をコードする遺伝子(Jones,et al.,(1987)Mol.Gen.Genet.210:86-91);スペクチノマイシン耐性をコードする遺伝子(Bretagne-Sagnard,et al.,(1996)Transgenic Res.5:131-137);ブレオマイシン耐性をコードする遺伝子(Hille,et al.,(1990)Plant Mol.Biol.7:171-176);スルホンアミド耐性をコードする遺伝子(Guerineau,et al.,(1990)Plant Mol.Biol.15:127-36);ブロモキシニル耐性をコードする遺伝子(Stalker,et al.,(1988)Science 242:419-423);グリホサートに耐性をコードする遺伝子(Shaw,et al.,(1986)Science 233:478-481;並びに米国特許出願第10/004,357号明細書及び同第10/427,692号明細書);ホスフィノトリシン耐性をコードする遺伝子(DeBlock,et al.,(1987)EMBO J.6:2513-2518)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0107】
トランスジェニックイベントの回収において有用性を提供し得る他の遺伝子としては、以下に限定はされないが、GUS(ベータ-グルクロニダーゼ;Jefferson,(1987)Plant Mol.Biol.Rep.5:387)、GFP(緑色蛍光タンパク質;Chalfie,et al.,(1994)Science 263:802)、ルシフェラーゼ(Riggs,et al.,(1987)Nucleic Acids Res.15(19):8115;及びLuehrsen,et al.,(1992)Methods Enzymol.216:397-414)、及びアントシアニン産生をコードするトウモロコシ遺伝子(Ludwig,et al.,(1990)Science 247:449)などの例が挙げられる。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、ヌクレオチドコンストラクト、例えば、発現カセット又はコンストラクトを宿主細胞に導入するためのプラスミド、コスミド又はバクテリオファージなどのDNA分子を指す。クローニングベクターは、一般的には、外来DNA配列を特定可能な方法で、ベクターの必須の生物学的機能を失わずに挿入し得る1つ又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位と、クローニングベクターで形質転換された細胞の識別及び選択に使用するのに好適なマーカー遺伝子とを含む。マーカー遺伝子としては
、一般的には、テトラサイクリン耐性、ハイグロマイシン耐性、又はアンピシリン耐性を与える遺伝子が挙げられる。
【0109】
本開示の方法は、植物にポリペプチド又はポリヌクレオチドを導入することを含む。本明細書で使用される場合、「導入する」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドを、植物に、その配列がこの植物の細胞内部に侵入する方法で提示することを意味する。本開示の方法は、植物に配列を導入する特定の方法に依存することはなく、この植物の少なくとも1つの細胞の内部にポリヌクレオチド又はポリペプチドを単に侵入させるだけである。ポリヌクレオチド又はポリペプチドを植物に導入する方法は、当該技術分野で知られており、安定した形質転換方法、一過性の形質転換方法、及びウイルス媒介方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
「安定した形質転換」とは、植物に導入されたヌクレオチドコンストラクトがこの植物のゲノムに組み込まれ、その子孫により受け継がれ得る形質転換のことである。「一過性の形質転換」は、ポリヌクレオチドが植物に導入されるがこの植物のゲノムに組み込まれないか又はポリペプチドが植物に導入されることを意味する。
【0111】
形質転換プロトコル、及びヌクレオチド配列を植物に導入するためのプロトコルは、形質転換の標的の植物又は植物細胞の種類により、すなわち、単子葉植物であるか又は双子葉植物であるかにより変わり得る。ヌクレオチド配列を植物細胞に導入し、続いて植物ゲノムに挿入する好適な方法としては、マイクロインジェクション(Crossway,et al.,(1986)Biotechniques 4:320-334)、エレクトロポレーション(Riggs,et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5602-5606)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換(Townsend,et al.,米国特許第5,563,055号明細書、及びZhao,et al.,米国特許第5,981,840号明細書)、遺伝子直接導入(Paszkowski,et al.,(1984)EMBO J.3:2717-2722)、弾道粒子加速(例えば、米国特許第4,945,050号明細書、同第5,879,918号明細書、同第5,886,244号明細書、同第5,932,782号明細書、Tomes,et al.、(1995)in Plant Cell,Tissue,and Organ Culture:Fundamental Methods,ed.Gamborg and Phillips(Springer-Verlag,Berlin)、McCabe,et al.,(1988)Biotechnology 6:923-926を参照)、及びLec1形質転換(国際公開第00/28058号パンフレット)が挙げられる。また、Weissinger,et al.,(1988)Ann.Rev.Genet.22:421-477、Sanford,et al.,(1987)Particulate Science and Technology 5:27-37(タマネギ)、Christou,et al.,(1988)Plant Physiol.87:671-674(ダイズ)、McCabe,et al.,(1988)Bio/Technology 6:923-926(ダイズ)、Finer and McMullen,(1991)In Vitro Cell Dev.Biol.27P:175-182(ダイズ)、Singh,et al.,(1998)Theor.Appl.Genet.96:319-324(ダイズ)、Datta,et al.,(1990)Biotechnology 8:736-740(イネ)、Klein,et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4305-4309(トウモロコシ)、Klein,et al.,(1988)Biotechnology 6:559-563(トウモロコシ)、米国特許第5,240,855号明細書、同第5,322,783号明細書、及び同第5,324,646号明細書、Klein,et al.,(1988)Plant Physiol.91:440-444(トウモロコシ)、Fromm,et al.,(1990)Biotechnology 8:833-839(トウモロコシ)、Hooykaas-Van Slogteren,et al.,(1984)Nature(London)311:763-764、米国特許第5,736,369号明細書(穀草類)、Bytebier,et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5345-5349(ユリ科(Liliaceae))、De Wet,et al.,(1985)in The Experimental Manipulation of Ovule Tissues,ed.Chapman,et al.,(Longman,New York),pp.197-209(花粉)、Kaeppler,et al.,(1990)Plant Cell Reports 9:415-418、及びKaeppler,et al.,(1992)Theor.Appl.Genet.84:560-566(ウィスカー媒介形質転換)、D’Halluin,et al.,(1992)Plant Cell 4:1495-1505(エレクトロポレーション)、Li,et al.,(1993)Plant Cell Reports 12:250-255、及びChristou and Ford,(1995)Annals of Botany 75:407-413(イネ)、Osjoda,et al.,(1996)Nature Biotechnology14:745-750(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によるトウモロコシ)も参照されたい。これらの文献は全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。迅速な植物形質転換のための方法及び組成物はまた、米国特許出願公開第2017/0121722号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見出される。植物形質転換に有用なベクターは、米国特許出願第15/765,521号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0112】
特定の態様では、DNA発現カセット又はコンストラクトは、様々な一過性形質転換法を用いて植物に供することができる。このような一過性形質転換法としては、以下に限定はされないが、ウイルスベクター系、及びDNAのその後の脱離が起こらないような方法でのポリヌクレオチドの沈澱が挙げられる。したがって、粒子結合DNAからの転写は起こり得るが、脱離してゲノムに組み込まれる頻度は非常に小さい。このような方法としては、ポリエチレンイミン(PEI;Sigma#P3143)でコーティングした粒子の使用が挙げられる。
【0113】
他の態様では、ポリヌクレオチドは、植物をウイルス又はウイルス性核酸と接触させることにより、植物に導入することができる。一般に、そうした方法は、ヌクレオチドコンストラクトをウイルス性DNA又はRNA分子内に組み込むことを含む。ウイルス性DNA又はRNA分子を含むポリヌクレオチドを植物に導入し、それによりコードされるタンパク質を発現させる方法は、当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第5,889,191号明細書、同第5,889,190号明細書、同第5,866,785号明細書、同第5,589,367号明細書、同第5,316,931号明細書、及びPorta,et al.,(1996)Molecular Biotechnology 5:209-221を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0114】
形質転換された細胞は、従来の方法で植物体に成長させることができる。例えば、McCormick,et al.,(1986)Plant Cell Reports 5:81-84(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。その後、これらの植物体を成長させ、同じ形質転換株又は異なる株と授粉させ、それにより得られた、所望の表現型の特性を発現した子孫が確認され得る。所望の表現型特性の発現が安定して維持されて受け継がれるのを確実にするため、2世代以上生育させ、その後、所望の表現型特質の発現が達成されていることを確実にするため、種子を収穫し得る。このように、本開示は、ゲノムに安定に組み込まれたヌクレオチドコンストラクト、例えば発現カセットを有する形質転換種子(「トランスジェニック種子」ともいう)を提供する。
【0115】
植物組織から植物を再生する様々な方法がある。再生の特定の方法は、出発植物組織と再生する特定の植物種に依存するだろう。単一植物プロトプラスト形質転換体又は種々の形質転換された外植片からの植物の再生、発達及び培養は、当該技術分野でよく知られている(Weissbach and Weissbach、(1988)In:Methods for Plant Molecular Biology,(Eds.),Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。この再生及び育成プロセスには、通常、形質転換細胞を選択し、それらの個別の細胞を、胚の通常発生段階から小植物を根付かせる段階まで育成することを含む。トランスジェニック胚及び種子も同様に再生される。得られる根付いたトランスジェニックシュートをその後、土壌などの適切な植物育成培地に植え付ける。好ましくは、再生植物を自家授粉させて同型のトランスジェニック植物を提供する。さもなければ、再生植物から得た花粉を、農学的に重要な系の種子から育った植物と交雑させる。逆に、これらの重要な系の植物の花粉を、再生植物への授粉に使用する。所望のポリヌクレオチドを含む本態様のトランスジェニック植物は、当業者によく知られた方法で栽培される。
【0116】
植物ゲノムの特定の位置でポリヌクレオチドをターゲティングにより挿入する方法は、当該技術分野で知られている。ゲノムの所望の位置でのポリヌクレオチドの挿入は、部位特異的組み換えシステムを使用して行われる。例えば、米国特許第9,222,098B2号明細書、同第7,223,601B2号明細書、同第7,179,599B2号明細書、及び同第6,911,575B1号明細書を参照されたい。これらの文献は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。簡単に述べると、2つの非同一組み換え部位が隣接する目的のポリヌクレオチドが、T-DNAトランスファーカセットに含まれ得る。T-DNAトランスファーカセットは、トランスファーカセットの部位に対応する2つの非同一組み換え部位が隣接している標的部位がそのゲノムに安定に組み込まれた植物に導入される。適切なリコンビナーゼが提供され、トランスファーカセットが標的部位に組み込まれる。それにより、目的のポリヌクレオチドが、植物ゲノムの特定の染色体上の位置に組み込まれる。
【0117】
一態様では、本開示の方法を使用して、成長植物器官及びそれらの複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)に、植物のゲノムにおける改変のための特定部位を標的とするのに有用なポリヌクレオチドを効率よく且つ迅速に導入することができる。本開示の方法により導入され得る部位特異的改変として、部位特異的改変を導入する任意の方法によるものが挙げられ、例えば、以下に限定されないが、遺伝子修復オリゴヌクレオチドの使用(例えば、米国特許出願公開第2013/0019349号明細書)、又は二本鎖切断技術(TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR-Casなど)の使用によるものが挙げられる。例えば、植物体又は植物細胞のゲノム中の標的配列のゲノム改変のために、植物体を選択するために、塩基又は配列を欠失させるために、遺伝子編集のために、そして目的ポリヌクレオチドを植物体又は植物細胞のゲノムに挿入するために、本開示の方法を使用して、CRISPR-Casシステムを植物細胞又は植物体に導入し得る。そのため、本開示の方法を、CRISPR-Casシステムと共に使用して、植物体、植物細胞、又は種子のゲノム中の標的部位及び目的ヌクレオチドを変更するか又は改変するのに有効なシステムを提供し得る。Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、植物最適化Cas9エンドヌクレアーゼであり、この植物最適化Cas9エンドヌクレアーゼは植物ゲノムに結合し、ゲノム標的配列に二本鎖切断を引き起こすことができる。
【0118】
Casエンドヌクレアーゼは、ガイドヌクレオチドによりガイドされて、細胞のゲノムの特定の標的部位を認識し、場合により二本鎖切断を導入する。CRISPR-Casシステムは、植物体、植物細胞、又は種子のゲノム中の標的部位の改変に有効なシステムを提供する。さらに、細胞のゲノム中の標的部位の改変、及び細胞のゲノム中のヌクレオチドの編集に有効なシステムを提供するために、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを用いる方法及び組成物を提供する。ゲノム標的部位が特定されたなら、様々な方法を用いて、様々な目的ポリヌクレオチドを含むように標的部位をさらに改変することができる。本開示の組成物及び方法を使用して、細胞のゲノム中のヌクレオチド配列の編集を行うCRISPR-Casシステムを導入することができる。編集されるべきヌクレオチド配列(目的ヌクレオチド配列)は、Casエンドヌクレアーゼによって認識される標的部位中にあっても標的部位外にあってもよい。
【0119】
CRISPR遺伝子座(クラスター化等間隔短鎖回文リピート)(SPIDR-スペーサー散在型ダイレクトリピートとしても知られる)は、最近記載されたDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPR遺伝子座は、短く、且つ高度に保存されたDNAリピート(通常24~40bp、1~140回の繰り返し-CRISPRリピートとも呼ばれる)から構成され、部分的に回文を形成している。反復配列(通常、種に固有である)は、一定の長さの可変配列(通常、CRISPR遺伝子座に依存して20~58by)がスペーサーとして存在している(2007年3月1日公開の国際公開第2007/025097号パンフレット)。
【0120】
Cas遺伝子としては、一般にフランキングするCRISPR遺伝子座に結合して、関連して、又は近接して若しくは近傍に存在する遺伝子が挙げられる。用語「Cas遺伝子」及び「CRISPR関連(Cas)遺伝子」は、本明細書では互換的に使用される。
【0121】
別の態様では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、Casコドン領域上流のSV40核標的シグナル、及びCasコドン領域下流の二分VirD2核定位シグナル(Tinland et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7442-6)に作動可能に連結されている。
【0122】
Casエンドヌクレアーゼに関連して、用語「機能的断片」、「機能的に等価である断片」及び「機能的に等価な断片」は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、二本鎖切断を起こす能力が保持されている、Casエンドヌクレアーゼ配列の一部又は部分配列を指す。
【0123】
Casエンドヌクレアーゼに関連して、用語「機能的改変体」、「機能的に等価である改変体」及び「機能的に等価な改変体」は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、二本鎖切断を起こす能力が保持されている、Casエンドヌクレアーゼの改変体を指す。断片及び改変体は、部位特異的変異誘発法及び合成構築法などにより得ることができる。
【0124】
一態様では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、原則として標的とされ得るN(12-30)NGG型の任意のゲノム配列を認識し得る植物コドン最適化ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9遺伝子である。
【0125】
エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖のリン酸ジエステル結合を切断する酵素であり、塩基を損傷することなく特定の部位でDNAを切断する制限エンドヌクレアーゼを含む。制限エンドヌクレアーゼには、I型、II型、III型及びIV型エンドヌクレアーゼが含まれ、これらにはさらに亜型が含まれる。I型系及びIII型系においては、メチラーゼ活性及び制限活性の両活性が単一複合体内に含まれる。エンドヌクレアーゼにはまた、ホーミングヌクレアーゼ(HEアーゼ)としても知られるメガヌクレアーゼが含まれ、この酵素は、制限エンドヌクレアーゼのように、特定の認識部位に結合し切断するが、メガヌクレアーゼの認識部位は通常長く、約18bp以上である(2012年3月22日出願の特許出願第PCT/US12/30061号明細書)。メガヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づいて、4つのファミリーに分類されている。これらのモチーフは、金属イオンの配位及びリン酸ジエステル結合の加水分解に関与する。メガヌクレアーゼは、その長い認識部位と、そのDNA基質の配列多型性を許容していることで知られている。メガヌクレアーゼの命名規則は、他の制限エンドヌクレアーゼの規則と類似している。メガヌクレアーゼはまた、それぞれ独立ORF、イントロン及びインテインによってコードされる酵素に対して付される接頭辞のF-、I-又はPI-で特徴付けられる。遺伝子組み換えプロセスの1つの工程は、認識部位又はその近傍でのポリヌクレオチドの切断を含む。この切断活性は、二本鎖の切断に使用され得る。部位特異的リコンビナーゼ及びその認識部位のレビューには、Sauer(1994)Curr Op Biotechnol 5:521-7、及びSadowski(1993)FASEB 7:760-7を参照されたい。いくつかの例では、リコンビナーゼは、インテグラーゼファミリー又はリゾルバーゼファミリーからのものである。TALエフェクターヌクレアーゼは、植物又は他の生物のゲノム中の特定の標的配列での二本鎖切断に使用することができる配列特異的ヌクレアーゼの新しい分類である。(Miller,et al.(2011)Nature Biotechnology 29:143-148)。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン及び二本鎖切断誘発物質ドメインからなる人工の二本鎖切断誘発物質である。認識部位特異性は、通常、例えばC2H2構造を有する2つ、3つ又は4つのジンクフィンガーを含むジンクフィンガードメインによって与えられるが、他のジンクフィンガー構造は知られており、工学的に作り出されている。ジンクフィンガードメインは、選択されたポリヌクレオチド認識配列に特異的に結合するポリペプチドを設計するために適用できる。ZFNとしては、非特異的エンドヌクレアーゼドメインに結合した人工DNA結合ジンクフィンガードメイン、例えば、FoklなどのMs型エンドヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインが挙げられる。さらなる機能性は、ジンクフィンガー結合ドメイン、例えば、転写アクチベータードメイン、転写リプレッサードメイン及びメチラーゼに融合することができる。いくつかの例では、切断活性にヌクレアーゼドメインの二量体化が要求される。各ジンクフィンガーは、標的DNAの3つの連続する塩基対を認識する。例えば、3フィンガードメインは9個の連続するヌクレオチドからなる配列を認識し、ヌクレアーゼの二量化要求によって、2組の3ジンクフィンガーが18個のヌクレオチドからなる認識配列に結合するために使用される。
【0126】
本明細書で使用される場合、「デッドCAS9」(dCAS9)は、転写リプレッサードメインを供給するために使用される。dCAS9は、もはやDNAを切断できないように変異されている。dCAS0は、gRNAにより配列にガイドされると、なお結合し得、また、リプレッサーエレメントに融合され得る。リプレッサーエレメントに融合したdCAS9は、本明細書で説明されているように、dCAS9~REPと略され、ここで、リプレッサーエレメント(REP)は、植物において特徴付けられている既知のリプレッサーモチーフのいずれかであり得る。発現ガイドRNA(gRNA)は、dCAS9~REPタンパク質に結合し、dCAS9-REP融合タンパク質のプロモーター(T-DNA内のプロモーター)内の特定の所定のヌクレオチド配列への結合を標的とする。例えば、これがZM-UBI PRO::dCAS9~REP::PINII TERMカセットをU6-POL PRO::gRNA::U6 TERMカセットと共に使用して、境界を越えて発現し、gRNAがdCAS9-REPタンパク質をガイドして、T-DNA内の発現カセットSB-UBI PRO::moPAT::PINII TERMのSB-UBIに結合するように設計されているなら、境界配列を越えて配列を組み込んだイベントはビアラホス感受性となる。T-DNAのみを組み込んだトランスジェニックイベントは、moPATを発現し、ビアラホス耐性となるであろう。(TETR又はESRとは対照的に)リプレッサーに融合したdCAS9タンパク質を用いる利点は、T-DNA内の任意のプロモーターに対しこれらのリプレッサーを標的とする能力である。TETR及びESRは、同種のオペレーター結合配列に限定される。或いは、リプレッサードメインに融合した合成ジンクフィンガーヌクレアーゼを、上記のように、gRNA及びdCAS9~REPに代えて使用し得る(Urritia et al.,2003,Genome Biol.4:231)。
【0127】
細菌由来のII型CRISPR/Casシステムは、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的へガイドするのにcrRNA及びtracrRNAを使用する。crRNA(CRISPR RNA)は、二本鎖DNAの一方の鎖に相補的な領域と、CasエンドヌクレアーゼにDNA標的を切断させるRNA二本鎖を形成するtracrRNA(trans活性化CRISPR RNA)を有する塩基対とを含む。本明細書で使用される場合、用語「ガイドヌクレオチド」は、2つのRNA分子、可変ターゲティングドメインを含むcrRNA(CRISPR RNA)及びtracrRNAの合成的融合に関連している。一態様において、ガイドヌクレオチドは、12~30ヌクレオチド配列からなる可変ターゲティングドメインと、Casエンドヌクレアーゼと相互作用し得るRNA断片とを含む。
【0128】
本明細書で使用される場合、用語「ガイドポリヌクレオチド」は、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができ、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識し、場合により切断することを可能にするポリヌクレオチド配列に関連している。このガイドポリヌクレオチドは一本鎖分子であっても二本鎖分子であってもよい。ガイドポリヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列、又はこれらの組み合わせ(RNA-DNA組み合わせ配列)であってよい。任意選択で、ガイドポリヌクレオチドは、少なくとも1個のヌクレオチド、ホスホジエステル結合又は連結修飾を含むことができ、この連結修飾として、ロックド核酸(LNA)、5-メチルdC、2,6-ジアミノプリン、2’-フルオロA、2’-フルオロU、2’-O-メチルRNA、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18(ヘキサエチレングリコール鎖)分子への連結、又は環化をもたらす5’から3’への共有結合的連結が挙げられるがこれらに限定されない。リボ核酸のみを含むガイドポリヌクレオチドもまた、「ガイドヌクレオチド」と称される。
【0129】
ガイドポリヌクレオチド、VTドメイン、及び/又はCERドメインのヌクレオチド配列改変は、5’キャップ、3’ポリアデニル化テイル、リボスイッチ配列、安定性制御配列、dsRNA二本鎖を形成する配列、ガイドポリヌクレオチドの標的を細胞内位置に設定する改変若しくは配列、トラッキングが生じる改変若しくは配列、タンパク質用の結合部位が生じる改変若しくは配列、ロックド核酸(LNA)、5-メチルdCヌクレオチド、2,6-ジアミノプリンヌクレオチド、2’-フルオロAヌクレオチド、2’-フルオロUヌクレオチド、2’-O-メチルRNAヌクレオチド、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18分子への連結、5’から3’への共有結合的連結、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得るが、これらに限定されない。これらの改変は、少なくとも1つの追加の有利な特徴をもたらし得、この追加の有利な特徴は、安定性の変更又は調節、細胞内ターゲッティング、トラッキング、蛍光標識、タンパク質用又はタンパク質複合体用の結合部位、相補的な標的配列に対する結合親和性の変更、細胞分解に対する耐性の変更、及び細胞透過性の増大の群から選択される。
【0130】
一態様では、ガイドヌクレオチドとCasエンドヌクレアーゼとは、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位で二本鎖切断を導入するのを可能にする複合体を形成し得る。
【0131】
本開示の方法の一態様では、可変標的ドメインは、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のヌクレオチドの長さである。
【0132】
本開示の方法の一態様では、ガイドヌクレオチドは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成し得るII型CRISPR/CasシステムのcRNA(又はcRNA断片)及びtracrRNA(又はtracrRNA断片)を含み、このガイドヌクレオチドCasエンドヌクレアーゼ複合体は、Casエンドヌクレアーゼを植物ゲノム標的部位へと誘導し得、Casエンドヌクレアーゼがこのゲノム標的部位に二本鎖切断を導入することを可能にする。ガイドヌクレオチドを、当該技術分野で既知の任意の方法(例えば、限定されないが、粒子衝撃法又は局所的適用法)により、植物体又は植物細胞に直接導入し得る。
【0133】
一態様では、ガイドヌクレオチドを、植物細胞中でガイドヌクレオチドを転写し得る植物特異的プロモーターに作動可能に連結された、対応するガイドDNA配列を含む組み換えDNA分子を導入することにより、間接的に導入し得る。用語「対応するガイドDNA」には、RNA分子の各「U」が「T」に置き替えられている以外はRNA分子と同じDNA分子が含まれる。
【0134】
一態様では、ガイドヌクレオチドは、粒子衝撃法により、又は、植物U6ポリメラーゼIIIプロモーターに作動可能に連結した、対応するガイドDNAを含む組み換えDNAコンストラクトをアグロバクテリウム(Agrobacterium)により形質転換するための本開示の方法及び組成物によって導入される。
【0135】
一態様では、RNA Cas9エンドヌクレアーゼ複合体をガイドするRNAは、二本鎖crRNA-tracrRNAを含む二本鎖RNAである。二本鎖crRNA-tracrRNAに対してガイドヌクレオチドを使用する利点の1つは、融合ガイドヌクレオチドを発現させるために作製する必要がある発現カセットが1種のみであるということである。
【0136】
用語「標的部位」、「標的配列」、「標的DNA」、「標的遺伝子座」、「ゲノム標的部位」、「ゲノム標的配列」及び「ゲノム標的遺伝子座」は、本明細書では互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼによって植物細胞ゲノムで二本鎖切断が誘発される、植物細胞ゲノム中のポリヌクレオチド配列(葉緑体DNA及びミトコンドリアDNAを含む)を指す。標的部位は植物ゲノム中の内因性部位であり得、或いは、標的部位は植物体に対して異種であり得、そのためゲノム中に天然には存在していない、或いは標的部位は天然で生じる場所と比較して異種のゲノム位置で見出すことができる。
【0137】
本明細書で使用される場合、用語「内因性標的配列」及び「天然標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、植物ゲノムに対して内因性又は天然性であり、且つ植物ゲノム中の標的配列の内因性又は天然の位置に存在する標的配列を指す。一態様において、標的部位は、DNA認識部位、又は特異的に認識され、且つ/若しくは、LIG3-4エンドヌクレアーゼ(2009年5月21日公開の米国特許出願公開第2009/0133152A1号明細書)、若しくはMS26++メガヌクレアーゼ(2012年6月19日出願の米国特許出願第13/526912号明細書)などの二本鎖切断誘発物質によって結合する標的部位に類似する部位であり得る。
【0138】
「人工標的部位」又は「人工標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、植物のゲノム中に導入された標的配列を指す。そのような人工標的配列は、植物ゲノム中の内因性標的配列又は天然標的配列と配列が同じであり得、しかし、植物ゲノム中の異なる位置(すなわち、非内因性又は非天然の位置)に存在し得る。
【0139】
「改変標的部位」、「改変標的配列」、「変更標的部位」及び「変更標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、非改変標的配列と比較した場合に、少なくとも1つの改変を含む本明細書に開示の標的配列を指す。そのような「改変」としては、例えば、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせが挙げられる。
【0140】
一態様では、本開示の方法を使用して、植物における標的遺伝子の遺伝子抑制に有用なポリヌクレオチドを植物に導入し得る。植物における遺伝子操作のいくつかの態様では、特定の遺伝子の活性低下(遺伝子サイレンシング又は遺伝子抑制としても知られる)が望まれる。多くの遺伝子サイレンシング技術、例えば、限定されないが、アンチセンス技術、が当業者によく知られている。
【0141】
一態様では、本開示の方法を使用して、植物へのヌクレオチド配列の標的組み込みに有用なポリヌクレオチドを植物に導入し得る。例えば、本開示の方法を使用して、標的部位を含む植物体を形質転換するために使用される、非同一組み換え部位が隣接する目的ヌクレオチド配列を含むT-DNA発現カセットを導入することができる。一態様では、標的部位は、T-DNA発現カセット上のそれに対応する、非同一組み換え部位を少なくとも1セット含む。組み換え部位が隣接するヌクレオチド配列の置換は、リコンビナーゼの影響を受ける。このように、本開示の方法は、ヌクレオチド配列の標的組み込みのためのT-DNA発現カセットの導入に使用することができ、非同一組み換え部位が隣接するT-DNA発現カセットは、非同一組み換え部位を認識し、非同一組み換え部位で組み換えを行うリコンビナーゼにより認識される。したがって、本開示の方法及び組成物を使用して、非同一組み換え部位を含む植物の成長の効率及び速度を改善し得る。
【0142】
そのため、本開示の方法は、外因性ヌクレオチドの形質転換植物への、方向性を有する標的組み込みを行うための方法をさらに含み得る。一態様では、本開示の方法は、所望の遺伝子及びヌクレオチド配列の、既に標的植物ゲノムに導入された対応する組み換え部位への方向性を有するターゲティングを促進する遺伝子ターゲティングシステムにおいて、新規の組み換え部位を使用する。
【0143】
一態様では、2つの非同一組み換え部位が隣接するヌクレオチド配列が、目的ヌクレオチド配列の挿入のために標的部位が設けられた、標的生物のゲノム由来の外植片の1つ以上の細胞に導入される。安定した植物体又は培養組織が確立されると、標的部位に隣接している組み換え部位に対応する部位が隣接した第2のコンストラクト(すなわち、目的のヌクレオチド配列)が、リコンビナーゼタンパク質の存在下で、安定して形質転換された植物体又は組織に導入される。このプロセスで、標的部位の非同一組み換え部位とT-DNA発現カセットの間でヌクレオチド配列の置換が起こる。
【0144】
この方法で調製された形質転換植物体は複数の標的部位(すなわち、非同一組み換え部位のセット)を含み得ることが認識されている。この方法では、形質転換植物体の標的部位に対して複数の操作を行い得る。形質転換植物体の標的部位とは、形質転換植物体のゲノムに挿入された、非同一組み換え部位を含むDNA配列を意味する。
【0145】
本開示の方法で使用する組み換え部位の例は知られている。大部分の天然に存在するサッカロミケス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)株で見出される2ミクロンのプラスミドは、2つの反転リピート間のDNAの反転を促進する部位特異的リコンビナーゼをコードする。この反転はプラスミドのコピー数増幅に中心的な役割を果たす。
【0146】
タンパク質、指定されたFLPタンパク質は、部位特異的組み換えイベントを触媒する。最小の組み換え部位(FRT)が定義されており、非対称8bpスペーサーを挟んだ、2つの反転13塩基対(bp)リピートを含有する。FLPタンパク質は、リピートとスペーサーとの接合部で部位を切断し、3’末端リン酸エステルにより共有結合でDNAに結合する。FLPのような部位特異的リコンビナーゼは、特定の標的配列でDNAを切断し、再ライゲーションして、2つの同一部位間で正確に定義された組み換えをもたらす。機能させるには、システムは組み換え部位とリコンビナーゼを必要とする。補助的因子は必要でない。このようにして、システム全体を植物細胞に挿入し、機能させることができる。酵母のFLP¥FRT部位特異的組み換えシステムが植物で機能することが示されている。今日では、このシステムは不要なDNAの切除に利用されている。Lyznik et at.(1993)Nucleic Acid Res.21:969-975を参照されたい。対照的に、本開示は、植物ゲノムにおけるヌクレオチド配列の置換、ターゲティング、配置、挿入、及び発現の制御に、非同一FRTを使用する。
【0147】
一態様では、ゲノムに組み込まれる標的部位を含む目的の形質転換生物(例えば、植物体からの外植片)が必要とされる。標的部位は、非同一組み換え部位が隣接するという特徴を有する。形質転換生物の標的部位に含まれる部位に対応する非同一組み換え部位が隣接するヌクレオチド配列を含むターゲティングカセットがさらに要求される。非同一組み換え部位を認識し、部位特異的組み換えを触媒するリコンビナーゼが要求される。
【0148】
リコンビナーゼは当該技術分野で知られている任意の手段で提供できると認められる。すなわち、それは、生物中でリコンビナーゼを発現することができる発現カセットで生物を形質転換することにより、一過性発現により、又はリコンビナーゼ若しくはリコンビナーゼタンパク質のメッセンジャーRNA(mRNA)を提供することにより、生物又は植物の細胞中に提供され得る。
【0149】
「非同一組み換え部位」とは、隣接する組み換え部位の配列が同一でなく、組み換えが生じないか、又は部位間の組み換えが最少になるであろうことを意味する。すなわち、1つの隣接する組み換え部位がFRT部位で、第2の組み換え部位が変異したFRT部位であり得る。本開示の方法で使用される非同一組み換え部位は、2つの隣接する組み換え部位間の組み換え、及びそこに含まれるヌクレオチド配列の切除を妨げるか、又は大きく抑制する。したがって、本開示においては、FRT及び変異FRT部位、FRT及びlox部位、lox及び変異lox部位、並びに当該技術分野で知られている他の組み換え部位を含む、任意の好適な非同一組み換え部位を使用し得ると認められる。
【0150】
好適な非同一組み換え部位とは、活性なリコンビナーゼの存在下に、2つの非同一組み換え部位間の配列の削除がなされるとしても、植物ゲノムへのヌクレオチド配列の組み換えによる標的配置の置換よりもかなり低い効率で生じることを意味する。このように、本開示で使用される好適な非同一部位には、部位間の組み換え効率が低い部位、例えば、効率が約30~約50%未満、好ましくは約10~約30%未満、より好ましくは約5~約10%未満の部位が含まれる。
【0151】
上述のように、ターゲティングカセットの組み換え部位は、形質転換した植物体の標的部位のそれに対応する。すなわち、形質転換植物体の標的部位が、FRT及び変異FRTという隣接する非同一組み換え部位を含有するならば、ターゲティングカセットは同じFRT及び変異FRTの非同一組み換え部位を含有するであろう。
【0152】
さらに、本開示の方法で使用するリコンビナーゼは、形質転換植物体及びターゲティングカセットの標的部位の組み換え部位により変わってくると認められる。すなわち、FRT部位が使用されるのであれば、FLPリコンビナーゼが必要になるであろう。同様に、lox部位が使用されるのであれば、Creリコンビナーゼが必要になる。非同一組み換え部位がFRT及びlox部位の両者を含むのであれば、植物細胞中にFLP及びCreの両リコンビナーゼが必要となろう。
【0153】
FLPリコンビナーゼは、DNA複製時に、S.セレビシアエ(S.cerevisiae)の2ミクロンプラスミドのコピー数の増幅に関与する、部位特異的反応を触媒するタンパク質である。FLPタンパク質はクローン化され、発現されてきた。例えば、Cox(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:4223-4227を参照されたい。本開示で使用されるFLPリコンビナーゼは、サッカロミケス属(Saccharomyces)由来のものであり得る。目的植物体での最適な発現のために、植物体に望ましいコドンを使用してリコンビナーゼを合成することが好ましいであろう。例えば、1997年11月18日出願の、発明の名称が「Novel Nucleic Acid Sequence Encoding FLP Recombinase」である米国特許出願第08/972,258号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0154】
バクテリオファージリコンビナーゼCreは、2つのlox部位間の部位特異的組み換えを触媒する。Creリコンビナーゼは当該技術分野で知られている。例えば、Guo et al.(1997)Nature 389:40-46;Abremski et al.(1984)J.Biol.Chem.259:1509-1514;Chen et al.(1996)Somat.Cell Mol.Genet.22:477-488、及びShaikh et al.(1977)J.Biol.Chem.272:5695-5702を参照されたい。これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。そのようなCre配列はまた、植物体に望ましいコドンを使用して合成され得る。
【0155】
適切な場合には、植物ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列は、形質転換植物における発現を増加させるために最適化され得る。本開示において哺乳動物、酵母又は細菌の遺伝子が使用される場合、発現改善のために、植物体に望ましいコドンを使用してそれらを合成することができる。単子葉植物における発現では、単子葉植物に望ましいコドンを使用して双子葉植物の遺伝子も合成できると認められる。植物に好ましい遺伝子を合成するために、当該技術分野における各種方法が利用可能である。例えば、米国特許第5,380,831号明細書、同第5,436,391号明細書、及びMurray et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:477-498(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。植物に好ましいコドンは、目的の植物で発現されるタンパク質において、より頻繁に使用されるコドンから決定され得る。単子葉植物又は双子葉植物に好ましい配列は、特定の植物種にとってその植物に望ましい配列と同様に構築できると認められる。例えば、欧州特許出願公開第A-0359472号明細書、同第A-0385962号明細書、国際公開第91/16432号パンフレット、Perlak et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:3324-3328、及びMurray et al.(1989)Nucleic Acids Research,17:477-498.米国特許第5,380,831号明細書;同第5,436,391号明細書など(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。さらに、遺伝子配列の全て又は任意の部分が最適化されてもよく、また合成されてもよいと認められる。すなわち、完全に最適化された、又は部分的に最適化された配列もまた使用することができる。
【0156】
配列のさらなる改変が、細胞宿主中の遺伝子発現を増強することが知られており、本開示で使用することができる。このような改変には、遺伝子発現に有害であり得る、疑似ポリアデニル化シグナルをコードする配列、エクソン-イントロンスプライス部位シグナルをコードする配列、トランスポゾン様リピートをコードする配列、及び他のそのようなよく特徴付けられた配列の除去が含まれる。宿主細胞において発現した既知の遺伝子を参照することによって算出される、配列のG-C含量を、所与の細胞宿主の平均レベルに調節することができる。可能であれば、配列を、予想されるヘアピン二次RNA構造を避けるように改変する。
【0157】
本開示はまた、新規なFLP組み換え標的部位(FRT)を包含する。FRTは、8塩基スペーサーで分けられた2つの13塩基対リピートを含む最小配列として特定されている。2つの13塩基リピートが8個のヌクレオチドで分離されている限り、スペーサー領域のヌクレオチドを、ヌクレオチドの組み合わせで置換し得る。スペーサーの実際のヌクレオチド配列は重要ではないが、しかしながら、本開示の実施のためには、スペース領域のヌクレオチドのいくつかの置換は、他の置換より良く機能し得る。8塩基対のスペーサーは、鎖置換時のDNA-DNAの対合に関与する。この領域の非対称性は、組み換えイベントの部位アライメントの方向を決定し、これは、その後、逆方向になるか又は切除されるかに繋がる。上述のように、スペーサーの大部分は、機能を失うことなく変異され得る。例えば、Schlake and Bode(1994)Biochemistry 33:12746-12751(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0158】
新規なFRT変異部位が、本開示の方法の実施で使用され得る。そのような変異部位はPCRをベースとした変異誘発により構築することができる。変異FRT部位は知られている(国際公開第1999/025821号パンフレットの配列番号2、3、4、及び5を参照)が、本開示の実施に他の変異FRT部位を使用し得ることは認められている。本開示は、特定のFRT又は組み換え部位の使用に限定されず、むしろ、非同一組み換え部位又はFRT部位が、植物ゲノム中のヌクレオチド配列のターゲティング挿入及び発現に使用され得る。そのため、本開示に基づいて、他の変異FRT部位が構築され、使用され得る。
【0159】
上で論じたように、リコンビナーゼの存在下に、非同一組み換え部位を有する標的部位を含むゲノムDNAを、対応する非同一組み換え部位を有するT-DNA発現カセットを含むベクターと一緒にすると、組み換えが起こる。隣接する組み換え部位の間に位置するT-DNA発現カセットのヌクレオチド配列は、隣接する組み換え部位の間に位置する標的部位のヌクレオチド配列と置換される。このようにして、目的ヌクレオチド配列を、宿主のゲノムに正確に組み込むことができる。
【0160】
本開示の多くの変形を実施することができると認められる。例えば、複数の非同一組み換え部位を有する標的部位を構築することができる。このように、複数の遺伝子又はヌクレオチド配列を、植物ゲノムの正確な位置に積み重ねるか、又は整列させることができる。同様に、ゲノム内に標的部位が確立されたならば、T-DNA発現カセットのヌクレオチド配列内に追加の組み換え部位を組み込み、その部位を標的配列に移入することにより、追加の組み換え部位を導入することができる。このように、標的部位が確立されたならば、その後、組み換えにより部位を追加したり、部位を変更したりすることが可能である。
【0161】
別の変形として、生物の標的部位に作動可能に連結したプロモーター又は転写開始領域を提供することが挙げられる。プロモーターは最初の組み換え部位の5’側にあることが好ましい。コード領域を含むT-DNA発現カセットで生物を形質転換することにより、コード領域の発現は、T-DNA発現カセットが標的部位に組み込まれたときに起こるであろう。この態様は、コード配列として選択マーカー配列を提供することにより、形質転換された細胞、特に植物細胞を選択する方法を提供する。
【0162】
本システムの他の利点として、上で論じたT-DNA発現カセットを使用することによる、導入遺伝子又は導入DNAを生物に組み込むことの複雑さを軽減する能力、及び単純な組み込みパターンによる生物の選択が挙げられる。同様に、数種の形質転換イベントを比較することにより、ゲノム内の好ましい部位を特定することができる。ゲノム内の好ましい部位としては、必須配列の発現を妨害せず、且つ導入遺伝子配列を十分に発現させる部位が挙げられる。
【0163】
本開示の方法はまた、ゲノム内の1ヵ所に複数の発現カセットを結合させる手段を提供する。ゲノム内の標的部位で、組み換え部位を追加又は切除することができる。
【0164】
本開示においては、本システムの3つの成分を一緒にする、当該技術分野で知られた手段を使用することができる。例えば、植物を安定に形質転換し、そのゲノム内に標的部位を宿させることができる。リコンビナーゼを一時的に発現させるか、又は提供することができる。或いは、リコンビナーゼを発現することができるヌクレオチド配列を植物ゲノムに安定的に組み込むことができる。対応する非同一組み換え部位が隣接するT-DNA発現カセットは、対応する標的部位とリコンビナーゼの存在下に、形質転換植物のゲノムに挿入される。
【0165】
或いは、形質転換植物を有性交雑させることにより、本システムの成分を一緒にすることができる。この態様では、ゲノムに組み込まれた標的部位を含有する形質転換植物、すなわち第1の親は、第2の植物、すなわち第1の植物に対応する隣接する非同一組み換え部位を含有するT-DNA発現カセットで遺伝的に形質転換されている第2の親と有性交雑することができる。第1の植物又は第2の植物は、そのゲノム内にリコンビナーゼを発現するヌクレオチド配列を含有する。リコンビナーゼを構成的又は誘導性プロモーターの制御下に置くことができる。このようにして、リコンビナーゼの発現及びその後の組み換え部位での活性を制御し得る。
【0166】
本開示の方法は、導入されるヌクレオチド配列を特定の染色体部位へ組み込むターゲティングに有用である。このヌクレオチド配列は、任意の目的ヌクレオチド配列をコードし得る。目的とする特定の遺伝子としては、宿主細胞及び/又は生物に容易に分析可能な機能的特徴を提供するもの、例えばマーカー遺伝子や、受容細胞の表現型を変える他の遺伝子などが挙げられる。このように、本開示では、植物の生長、高さ、病気に対する感受性、昆虫、栄養価などに影響する遺伝子を使用することができる。ヌクレオチド配列はまた、遺伝子の発現を停止又は改変させる「アンチセンス」配列をコードすることができる。
【0167】
ヌクレオチド配列は、機能性発現ユニット又はT-DNA発現カセットで使用できると認められる。機能性発現ユニット又はT-DNA発現カセットとは、機能性プロモーター及び殆どの場合に終止領域を有する目的ヌクレオチド配列を意味する。本開示の実施の中で機能性発現ユニットを実現させるには各種の方法がある。本開示の一態様では、目的核酸は機能性発現ユニットとしてゲノムに導入又は挿入される。
【0168】
或いは、ヌクレオチド配列はゲノム内のプロモーター領域の3’側の部位へ挿入することができる。この後者の場合、プロモーター領域の3’側へのコード配列の挿入が、組み込み時に機能性発現ユニットを実現させるものである。T-DNA発現カセットは、目的ペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された転写開始領域、又はプロモーターを含むであろう。そのような発現カセットは、調節領域の転写調節下とする、目的遺伝子又は目的遺伝子群を挿入するための複数の制限部位を備えている。
【0169】
本開示の方法に有用な配列番号1~198の概要を表3に示す。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
以下の実施例は、例証として提供するものであって、限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0187】
本開示の態様を以下の実施例においてさらに明確にするが、実施例中、特に明記しない限り、部及びパーセンテージは重量基準であり、度はセ氏である。これらの実施例は本開示の態様を示すが、単に例証として示すものである。上記の説明及びこれらの実施例から、当業者であれば、本開示の態様の必須の特徴を確認することができ、その精神と範囲から逸脱することなく、それらに様々な変更及び修正を加えて、様々な用途及び条件に適合させることができる。したがって、本明細書に示され記載されているものに加えて、様々な変更は、当業者には、前述の記載から明らかであろう。そのような変更も、添付した特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0188】
実施例1:植物材料及び培地組成
現在の方法では、広範囲の種類の組織又は外植片を用いることができ、これには、成長植物器官及びそれらの複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)が含まれる。ダイズの形質転換、組織培養、及び再生に使用される種々の培地組成を表4に概説する。この表において、培地M1は、これが形質転換のための出発材料である場合、懸濁培養の開始のために使用される。培地M2及びM3は、上に列挙した外植片の全範囲のアグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換に有用な代表的な共培養培地を示す。培地M4は選択に有用であり(適切な選択剤と共に)、M5は体細胞胚成熟に使用され、培地M6は発芽に使用されてT0小植物体を作出する。
【0189】
【0190】
【0191】
共培養の1~5日後、組織を、選択なしでM3培地で1週間培養し(回復期間)、次いで、選択に移行する。選択では、安定な形質転換体の選択のために抗生物質又は除草剤をM3培地に添加する。アグロバクテリウム(Agrobacterium)に対するカウンターセレクションを開始するために、300mg/lのTimentin(登録商標)(クラブラン酸カリウムと混合した無菌チカルシリン二ナトリウム、PlantMedia、Dublin、OH、USA)も添加し、選択剤及びTimentin(登録商標)の両方を、選択期間を通して培地中に維持する(合計8週間まで)。選択培地は毎週交換する。選択培地で6~8週間後、形質転換された組織は、漂白された(又は壊死した)、不健康な組織のバックグラウンドに対して緑色組織として見えるようになる。これらの組織片をさらに4~8週間培養する。
【0192】
次いで、緑色の健康な体細胞胚を、100mg/LのTimentin(登録商標)を含むM5培地に移す。M5培地で合計4週間、成熟させた後、成熟体細胞胚を、滅菌した空のペトリ皿に入れ、Micropore(商標)テープ(3M Health Care、St.Paul、MN、USA)で密封するか、又はプラスチックボックス(ファイバーテープなし)に入れ、室温で4~7日間置く。
【0193】
乾燥した胚をM6培地に植え、26℃、18時間の光周期、60~100μE/m2/sの照度で発芽させる。発芽培地で4~6週間後、小植物体を湿らせたJiffy-7ピートペレット(Jiffy Products Ltd、Shippagan、Canada)に移し、以下の条件下、すなわち、60~100μE/m2/s、26℃/24℃の昼/夜の温度で16時間の光周期で、Percivalインキュベーター中で順応するまで、透明なプラスチックトレーボックス中に封入したままにする。最後に、硬化した小植物体を、湿らせたSunGro 702を含有する2ガロンのポットに植え、温室内で成熟して種子を持つまで成長させる。
【0194】
実施例2:ダイズの形質転換
ダイズでは、粒子衝撃法の標準プロトコル(Finer and McMullen,1991,In Vitro Cell Dev.Biol.-Plant 27:175-182)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換(Jia et al.,2015,Int J.Mol.Sci.16:18552-18543、米国特許出願公開第2017/0121722号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))、オクロバクテリウム(Ochrobactrum)媒介形質転換(米国特許出願公開第2018/0216123号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))、又はリゾビアセエ(Rhizobiaceae)媒介形質転換(米国特許第9,365,859号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))が本開示の方法と共に使用することができる。。
【0195】
ダイズ形質転換に有用な培地を表5に列挙する。
【0196】
【0197】
実施例3:形態形成遺伝子の発現を制御するGM-HBSTART3又はGM-LTP3プロモーターは形質転換を改善する
蛍光マーカーを含む発現カセットにおけるアラビドプシス(Arabidopsis)LEC1、LEC2、KN1、STM、又はLEC1様(Kwong et al.,(2003)The Plant Cell,Vol.15,5-18)遺伝子の発現を駆動するGM-HBSTART3プロモーター(配列番号1)、GM-LTP3プロモーター(配列番号124)、又は本明細書に開示の他のプロモーターの使用により、体細胞胚形成の頻度及びトランスジェニックT0植物体の回収が増加することが見出される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404が、Pioneerダイズ品種PHY21の様々な成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)を形質転換するために使用される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染開始から4日後、組織を滅菌培養培地で洗浄し、過剰の細菌を除く。約9日後、組織は体細胞胚成熟培地に移され、約22日後にトランスジェニック体細胞胚はドライダウンの準備が整うと予想される。この時点で、十分に形成された成熟体細胞胚は、適切なフィルターセットを備えた落射蛍光実体顕微鏡下で蛍光を発する。成長した体細胞胚は、機能的であり発芽して温室で健康な植物体に育つ。この急速な、体細胞胚を生成し、発芽させて植物体を形成する方法により、アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染からトランスジェニックT0植物体を温室に移すまでの通常の時間枠が、4ヵ月(従来のダイズの形質転換)から約2~3ヵ月に短縮されると予想される。
【0198】
実施例4:アグロバクテリウム(AGROBACTERIUM)IPT遺伝子の発現を制御するGM-HBSTART3又はGM-LTP3プロモーターの使用は直接的シュート形成を促進し、形質転換を改善する
蛍光マーカーを含む発現カセットにおけるアグロバクテリウム(Agrobacterium)IPT遺伝子の発現を駆動するGM-HBSTART3プロモーター(配列番号1)、GM-LTP3プロモーター(配列番号124)、又は本明細書に開示の他のプロモーターのいずれかの使用により、多数のシュートを形成する頻度及びトランスジェニックT0植物体の回収が増加することが見出される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404が、Pioneerダイズ品種PHY21の様々な成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)を形質転換するために使用される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染開始から4日後、組織を滅菌培養培地で洗浄して過剰の細菌を除去し、多数のシュート増殖を促進する培地に移す。9日後、組織はシュートの発達に有利な培地に移され、22日後にトランスジェニックシュートが、発根を促進する培地に移されると予想される。この時点で、初期小植物体は、適切なフィルターセットを備えた落射蛍光立体顕微鏡下で蛍光を発する。機能性小植物体は急速に発達し、温室内で成長し続け、健康な植物体を作出する。この急速な、トランスジェニック植物体を直接形成する方法により、アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染からトランスジェニックT0植物体を温室に移すまでの通常の時間枠が、4ヵ月(従来のダイズの形質転換)から約2~3ヵ月に短縮されると予想される。
【0199】
実施例5:アラビドプシス(ARABIDOPSIS)モノプテロス-デルタ遺伝子の発現を制御するGM-HBSTART3又はGM-LTP3プロモーターは直接的シュート形成を促進し、形質転換を改善する
蛍光マーカーを含む発現カセットにおけるアラビドプシス(Arabidopsis)モノプテロス-デルタ遺伝子の発現を駆動するGM-HBSTART3プロモーター(配列番号1)、GM-LTP3プロモーター(配列番号124)、又は本明細書に開示の他のプロモーターのいずれかの使用により、多数のシュートを形成する頻度及びトランスジェニックT0植物体の回収が増加することが見出される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404が、Pioneerダイズ品種PHY21の様々な成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)を形質転換するために使用される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染開始から4日後、組織を滅菌培養培地で洗浄して過剰の細菌を除去し、多数のシュート増殖を促進する培地に移す。9日後、組織はシュートの発達に有利な培地に移され、22日後にトランスジェニックシュートが、発根を促進する培地に移されると予想される。この時点で、初期小植物体は、適切なフィルターセットを備えた落射蛍光立体顕微鏡下で蛍光を発する。機能性小植物体は急速に発達し、温室内で成長し続け、健康な植物体を作出する。この急速な、トランスジェニック植物体を直接形成する方法により、アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染からトランスジェニックT0植物体を温室に移すまでの通常の時間枠が、4ヵ月(従来のダイズの形質転換)から約2~3ヵ月に短縮されると予想される。
【0200】
実施例6:成長促進遺伝子の発現を制御するGM-HBSTART3又はGM-LTP3プロモーターは形質転換を改善する
蛍光マーカーを含む発現カセットにおけるアグロバクテリウム(Agrobacterium)AV-6B遺伝子、アグロバクテリウム(Agrobacterium)IAA-h遺伝子、アグロバクテリウム(Agrobacterium)IAA-m遺伝子、アラビドプシス(Arabidopsis)SERK又はアラビドプシス(Arabidopsis)AGL15遺伝子の発現を駆動するGM-HBSTART3プロモーター(配列番号1)、GM-LTP3プロモーター(配列番号124)、又は本明細書に開示の他のプロモーターのいずれかの使用により、体細胞胚形成の頻度及びトランスジェニックT0植物体の回収が増加することが見出される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404が、Pioneerダイズ品種PHY21の様々な成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)を形質転換するために使用される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染開始から4日後、組織を滅菌培養培地で洗浄し、過剰の細菌を除く。9日後、組織は体細胞胚成熟培地に移され、22日後にトランスジェニック体細胞胚はドライダウンの準備が整うと予想される。この時点で、十分に形成された成熟体細胞胚は、適切なフィルターセットを備えた落射蛍光実体顕微鏡下で蛍光を発する。成長した体細胞胚は、機能的であり発芽して温室で健康な植物体に育つ。この急速な、体細胞胚を生成し、発芽させて植物体を形成する方法により、アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染からトランスジェニックT0植物体を温室に移すまでの通常の時間枠が、4ヵ月(従来のダイズの形質転換)から約2~3ヵ月に短縮されると予想される。
【0201】
実施例7:ウイルスエンハンサーエレメントの、WUSの発現を駆動するGM-HBSTART3プロモーターとの併用は、ダイズの形質転換をさらに改善する
蛍光マーカーを含む発現カセットにおけるWUS発現を駆動するGM-HBSTART3プロモーター(配列番号1)、GM-LTP3プロモーター(配列番号124)、又は本明細書に開示の他のプロモーターのいずれかに隣接した35Sエンハンサーなどのウイルスエンハンサーエレメントの使用は、GM-HBSTART3プロモーター(配列番号1)、GM-LTP3プロモーター(配列番号124)、又は本明細書に開示の他のプロモーターのいずれかの単独使用に比べて、体細胞胚形成の頻度及び体細胞胚成熟の頻度のさらなる増加をもたらし、トランスジェニックT0植物の回収の全体的な増加をもたらす。アグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404が、Pioneerダイズ品種PHY21の様々な成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)を形質転換するために使用される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染開始から4日後、組織を滅菌培養培地で洗浄し、過剰の細菌を除く。9日後、組織を体細胞胚成熟培地に移し、22日後にトランスジェニック体細胞胚はドライダウンの準備が整う。この時点で、十分に形成された成熟体細胞胚は、適切なフィルターセットを備えた落射蛍光実体顕微鏡下で蛍光を発する。成長した体細胞胚は、機能的であり発芽して温室で健康な植物体に育つ。この急速な、体細胞胚を生成し、発芽させて植物体を形成する方法により、アグロバクテリウム(Agrobacterium)の感染からトランスジェニックT0植物体を温室に移すまでの通常の時間枠が、4ヵ月(従来のダイズの形質転換)から約2~3ヵ月に短縮される。
【0202】
他のエンハンサーエレメントが同様の方法で試験され、それらもまた、GM-HBSTART3プロモーター(配列番号1)、GM-LTP3プロモーター(配列番号124)、又は本明細書に開示の他のプロモーターのいずれかの単独使用と比較して、形質転換の増加が生ずることが示される。このようなエンハンサーとしては、カリフラワーモザイクウイルス(Cauliflower Mosaic Virus)35S及びミラビリスモザイクウイルス(Mirabilis Mosaic Virus)2xMMVなどのウイルスエンハンサー、並びに内因性植物エンハンサーエレメントが挙げられる。
【0203】
実施例8:アラビドプシス(ARABIDOPSIS)WUS遺伝子のオルソログはアブラナ属(BRASSICA)において体細胞胚の形成を促進する働きをする
以下のパーティクルガン法による形質転換処理を比較する。パーティクルガン法による形質転換処理の全てが、GM-EF1A PRO::GM-EF1A INTRON1::ZS-YELLOW::NOS TERM+GM-SAMS PRO::GM-SAMS INTRON1::GM-ALS::GM-ALS TERMを有するプラスミドQC318(配列番号117)を含有する。処理には、1)対照(付加遺伝子なし)、2)アラビドプシス(Arabidopsis)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するpVER9662(配列番号118)、3)グリシン・マックス(Glycine max)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBIGMWUS(配列番号119)、4)メディカゴ・トランカツラ(Medicago truncatula)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBIMTWUS(配列番号120)、5)ロツス・ヤポニカ(Lotus japonica)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBILJWUS(配列番号121)、6)ファセオルス・ウルガリス(Phaseolus vulgaris)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBIPVWUS(配列番号122)、及び7)ペチュニア(petunia)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBIPHWUS(配列番号123)が含まれる。
【0204】
アブラナ属(Brassica)の様々な成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)が、パーティクルガン法による形質転換のために単離される。2つのプラスミドの混合物を共導入し、第1のものは、WUSオルソログの各々のcDNA配列の発現を駆動するAT-UBI PROからなる発現カセット(pVER9662(配列番号118)、UBIGMWUS(配列番号119)、UBIMTWUS(配列番号120)、UBILJWUS(配列番号121)、UBIPVWUS(配列番号122)、及びUBIPHWUS(配列番号123)と、ZS-YELLOWの発現カセット(QC318(配列番号117))を含有する。外植片を2週間培養する。2週間後に、蛍光を発する球状体細胞胚の数を計数し、各処理について表にする。
【0205】
パーティクルガン法による形質転換の2週間後、アブラナ属(Brassica)の衝撃された対照成長植物器官及びその複合組織、例えば未熟子葉、分割種子、単離された胚軸(embryonic axes)、成熟子葉節、胚軸(hypocotyl)、上胚軸、又は葉の組織では、蛍光を発する球状体細胞胚はほとんど観察されないが、他の全ての処理(AT-UBIプロモーターによって駆動される異なる双子葉植物種由来のWUS遺伝子を含有)では、アブラナ属(Brassica)の衝撃された成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)では、多数の蛍光を発する体細胞胚が観察される。
【0206】
実施例9:アラビドプシス(ARABIDOPSIS)WUS遺伝子のオルソログはヒマワリにおいて体細胞胚の形成を促進する働きをする
以下のパーティクルガン法による形質転換処理を比較する。パーティクルガン法による形質転換処理では、全てがGM-EF1A PRO::GM-EF1A INTRON1::ZS-YELLOW::NOS TERM+GM-SAMS PRO::GM-SAMS INTRON1::GM-ALS::GM-ALS TERMを有するプラスミドQC318(配列番号117)を含有する。処理には、1)対照(付加遺伝子なし)、2)アラビドプシス(Arabidopsis)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するpVER9662(配列番号118)、3)グリシン・マックス(Glycine max)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBIGMWUS(配列番号119)、4)メディカゴ・トランカツラ(Medicago truncatula)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBIMTWUS(配列番号120)、5)ロツス・ヤポニカ(Lotus japonica)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBILJWUS(配列番号121)、6)ファセオルス・ウルガリス(Phaseolus vulgaris)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBIPVWUS(配列番号122)、及び7)ペチュニア(petunia)WUS遺伝子の発現を駆動するAT-UBI PROを有するUBIPHWUS(配列番号123)が含まれる。
【0207】
ヒマワリの様々な成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)が、パーティクルガン法による形質転換のために単離される。2つのプラスミドの混合物を共導入し、第1のものは、WUSオルソログの各々のcDNA配列の発現を駆動するAT-UBI PROからなる発現カセット(pVER9662(配列番号118)、UBIGMWUS(配列番号119)、UBIMTWUS(配列番号120)、UBILJWUS(配列番号121)、UBIPVWUS(配列番号122)、及びUBIPHWUS(配列番号123)と、ZS-YELLOWの発現カセット(QC318(配列番号117))を含有する。外植片を2週間培養する。2週間後に、蛍光を発する球状体細胞胚の数を計数し、各処理について表にする。
【0208】
パーティクルガン法による形質転換の2週間後、ヒマワリの衝撃された対照成長植物器官及びその複合組織では、蛍光を発する球状体細胞胚はほとんど観察されないが、他の全ての処理(AT-UBIプロモーターによって駆動される異なる双子葉植物種由来のWUS遺伝子を含有)では、ヒマワリの衝撃された成長植物器官及びその複合組織、例えば、以下に限定されないが、葉外植片、葉原基、托葉、子葉、子葉節、中胚軸、茎外植片、一次根、二次側根、根の切片、芽、及び分裂組織(頂端分裂組織、根分裂組織、二次分裂組織、腋芽分裂組織、及び花芽分裂組織を含むがこれらに限定されない)では、多数の蛍光を発する体細胞胚が観察される。
【0209】
実施例10:4つの異なる種からのWUSオルソログの、ダイズの葉の切片のアグロバクテリウム(AGROBACTERIUM)媒介形質転換後の直接的シュート形成を促進するための使用
ポプラWUS(RV026520(配列番号164)(POPTR-WUS))、アマランサス属(Amaranthus)WUS(RV026533(配列番号165)(AMAHY-WUS))、リンゴからのWUS遺伝子(RV026531(配列番号157)(MALDO-WUS))、又はグネツム属(Gnetum)からの遺伝子(RV026522(配列番号154)(GNEGN-WUS))を含有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404 THY-を使用して、インビトロで成長させたPioneerダイズ品種PHY21の無菌の未熟葉から切断した組織の切片を形質転換した。上記及び表3に列挙した遺伝子用ベクターを含むアグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404THY-を感染に用い、すべての細菌培養液を感染のためにOD0.5に調整した。全てのベクターが、選択マーカー遺伝子SPCN(スペクチノマイシン)を含有した。葉外植片を30分間感染させ、暗所にて21℃で3日間共培養培地上に置いた。共培養後、外植片をシュート再生培地に3~4週間移した。細長いシュートを発根培地に移した。SPCN及びZS-YELLOW1 N1発現カセットを含有する対照処理(RV022814(配列番号168)(NO WUS)で形質転換)では、葉切片からの直接的シュート形成は観察されなかった。しかし、3種の発現カセット(WUS、SPC及びZS-YELLOW1 N1)を含有するT-DNAを導入する形質転換を行った場合、緑色の健康なシュートが、ポプラWUS(RV026520(配列番号164)(POPTR-WUS))、アマランサス属(Amaranthus)WUS(RV026533(配列番号165)(AMAHY-WUS))、グネツム属(Gnetum)WUS(RV026522(配列番号154)(GNEGN-WUS))、及びリンゴWUS(RV026531(配列番号157)(MALDO-WUS))から(それぞれ23.6、38.4%、52%及び52.5%の頻度で)作製された。
【0210】
実施例11:発生遺伝子及び選択マーカー遺伝子SPCNを含有するベクターに感染させたダイズの葉及び茎の外植片からの再生
本方法では、エリート系統などのダイズ系統を使用することができる。93Y21の葉及び茎の外植片を採取した。葉を、約30~60ミリメートルの均一なサイズの切片に切断した。茎節間を、約0.3~0.8cmの長さの切片に切断した。表6に列挙したベクターを含むアグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404THY-を感染に用い、全ての細菌培養液をOD0.5に調整して感染させた。全てのベクターが、選択マーカー遺伝子SPCN(スペクチノマイシン)を含有した。葉及び茎節間外植片を30分間感染させ、暗所にて21℃で3日間共培養培地上に置いた。共培養後、外植片をシュート再生培地に移した。感染頻度は、形質転換後5日目及び20日目に選択マーカー遺伝子の一過性発現をスクリーニングすることにより評価した。シュート再生は、感染の約30日後に観察した(表6)。トランスジェニックシュートはSPCNマーカー遺伝子の存在について評価した。表6に示すように、系統的に異なる双子葉植物種又は裸子植物種由来のWUS遺伝子の発現は、ダイズの葉又は茎の外植片からの直接的なシュート形成を促進した。アマランサス属(Amaranthus)WUS(RV026533(配列番号165)(AMAHY-WUS))、ポプラWUS(RV026520(配列番号164)(POPTR-WUS))、リンゴWUS(RV026531(配列番号157)(MALDO-WUS))、及びグネツム属(Gnetum)WUS(RV026522(配列番号154)(GNEGN-WUS))を含有するT-DNAで形質転換した場合、ダイズの葉又は茎の外植片から(それぞれ20%、15%、5%及び5.5%の頻度で)緑色の健康なシュートが作製された。
【0211】
表6に示すように、シュート誘導199A培地を使用した場合、シュート誘導は観察されなかった。これらの結果は、シュート誘導培地処方の改善により、緑色の健康なシュートの回収がさらに改善され得ることを示唆している。
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
実施例12:アラビドプシス(ARABIDOPSIS)WUS遺伝子のオルソログはアブラナ属(BRASSICA)の葉の形態形成成長を促進する
12の異なる双子葉植物種、2つの裸子植物種、及び1つの単子葉植物種由来のWUS遺伝子について、スペクチノマイシン含有培地による選択下での、アブラナ属(Brassica)におけるトランスジェニック緑色シュート応答の成長を促進する能力を評価することにより、有効性を試験した。WUS発現カセットを含む全ての処理で、コンストラクトに用いられたWUS遺伝子を除いてT-DNAの構成は同一であった。T-DNAの構成は、RB+CAMV35S PRO::WUS::OS-T28 TERM+GM-UBQ PRO::GM-UBQ5UTR::GM-UBQ INTRON1::ZS-YELLOW1 N1::NOS TERM+AT-UBIQ10 PRO::AT-UBIQ10 5UTR::AT-UBIQ10 INTRON1::CTP::SPCN::UBQ14 TERM+GM-EF1A2 PRO::GM-EF1A2 5’UTR::GM-EF1A2 INTRON1::DS-RED2::UBQ TERM+LBであった(可変WUS遺伝子は太字及びイタリック体で示す)。
【0216】
ブラシカ・ナプス(Brassica napus)の種子の表面を50%Clorox溶液で滅菌し、MS基礎塩及びビタミンを含有する固体培地で発芽させた。実生を、光中にて28℃で成長させ、葉を集めた。葉を、200mMのアセトシリンゴンを含む10mlの20A培地(表7)を含む100×25mmペトリ皿に移し、次いで、長さ3~5mmの切片にスライスした。スライス後、上記の発現カセットを含む40μlのアグロバクテリウム(Agrobacterium)溶液(アグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404 THY-、OD550 0.50)を皿に加え、葉/アグロバクテリウム(Agrobacterium)混合物を含むペトリ皿を真空浸潤処理又は付傷処理した。真空に置いた葉を1分間、15PSIに暴露した。付傷処理させた葉の切片にそれぞれ針で10回穿孔した。付傷及び真空浸潤処理した皿を薄暗い光の中に移し、3日間、21℃で共培養した。
【0217】
共培養後、葉切片をアグロバクテリウム(Agrobacterium)溶液から取り出し、滅菌濾紙上で軽くふき取った後、70D培地(表7)に置き、明るい室内(60~100μE/m2/sで16時間の光周期)に移動させた。葉切片を70D培地上に1週間そのまま置き、その後、スペクチノマイシンを含まない70A培地に移した。発生したシュートを70Cシュート伸長培地(表7)に移し、明るい室内(60~100μE/m2/sで16時間の光周期)に戻して1ヶ月間培養した。最初の形質転換の7週間後、シュートを計数した。
【0218】
【0219】
表8及び表9に示すように、系統的に異なる双子葉植物、裸子植物、又は単子葉植物種からのWUS遺伝子の発現は、キャノーラ葉切片における直接的シュート形成を促進した。このシュート発達の促進とスペクチノマイシン耐性シュートの回復能力は、WUS遺伝子の供給源に応じて変化した。マツ(RV026525(配列番号167)(PINTA-WUS))、キュウリ(RV026521(配列番号166)(CUCSA-WUS))、アムボレラ属(Amborella)(RV026529(配列番号162)(AMBTR-WUS))、ポプラ(RV026520(配列番号164)(POPTR-WUS))、及びトマト(RV026592(配列番号196)(SL-WUS))では、このトランスジェニックシュートの促進は、陰性対照処理において見られたものと同じであった。下記の表8及び表9に示すように、他の種からのWUS遺伝子では、キャッサバ(デノボシュートRV026524(配列番号158)(MANES-WUS))で29%、リンゴ(RV026531(配列番号157)(MALDO-WUS))及びオダマキ(RV026528(配列番号163)(AQUCO-WUS))の両方で25%、ブドウ(RV026526(配列番号155)(VITVI-WUS))及びグネツム・グネモン(Gnetum gnemon)(裸子植物)(RV026522(配列番号154)(GNEGN-WUS))の両方で21%、ペチュニア(RV026534(配列番号156)(PETHY-WUS))で17%、アマモ(単子葉植物)(RV026527(配列番号161)(ZOSMA-WUS))で8%、並びにカランコエ属(RV026523(配列番号159)(KALFE-WUS))で4%に及んだ。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
実施例13:アラビドプシス(ARABIDOPSIS)WUS遺伝子のオルソログはカウピーの葉における形態形成成長を促進する
12の異なる双子葉植物種、2つの裸子植物種、及び1つの単子葉植物種からのWUS遺伝子の有効性を、カウピーの葉におけるトランスジェニック緑色シュート応答の成長を促進する能力を評価することにより試験した。WUS発現カセットを含む全ての処理で、コンストラクトに用いられたWUS遺伝子を除いてT-DNAの構成は同一であった。T-DNAの構成は、RB+CAMV35S PRO::WUS::OS-T28 TERM+GM-UBQ PRO::GM-UBQ 5UTR::GM-UBQ INTRON1::ZS-YELLOW1 N1::NOS TERM+AT-UBIQ10 PRO::AT-UBIQ10 5UTR::AT-UBIQ10 INTRON1::CTP::SPCN::UBQ14 TERM+GM-EF1A2 PRO::GM-EF1A2 5’UTR::GM-EF1A2 INTRON1::DS-RED2::UBQ TERM+LBであった(可変WUS遺伝子は太字及びイタリック体で示す)。
【0225】
ビグナ・ウンギィクラタ(Vigna unguiculata)IT86D-1010の種子を塩素ガスで滅菌し、MS基礎塩及びビタミンを含有する固体培地で発芽させた。実生を、光中にて28℃で成長させ、葉を集めた。葉組織を、200mMのアセトシリンゴンを含む10mlの20A培地(表10)を含む100×25mmペトリ皿に移し、長さ3~5mmの切片にスライスした。スライス後、20A溶液を各ペトリプレートから除去し、上記の異なるWUS遺伝子を含む発現カセットを含有する5mlの異なるアグロバクテリウム(Agrobacterium)溶液(アグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404 THY-、550nMでのOD 0.50)で置き換えた。皿を室温で30分間撹拌した。その後、処理した葉組織を562V固形培地(表10)に移し、暗所にて21℃で共培養した。共培養後、葉切片をアグロバクテリウム(Agrobacterium)溶液から取り出し、滅菌濾紙上で軽くふき取った後、70D培地(表10)に置き、明るい室内(26℃及び明るい光)に移動させた。3日後、組織を13113F休止培地(表10)上に置いた。8日後、休止培地上の組織を撮像した。トランスジェニック再生可能植物構造体(RPS)を、各感染葉外植片について表にした(下記の表11を参照)。
【0226】
【0227】
表11に示すように、系統的に異なる双子葉植物、裸子植物、又は単子葉植物種からのWUS遺伝子の発現は、カウピー葉切片におけるトランスジェニック再生可能植物構造体(RPS)の成長応答を促進した。WUS遺伝子の外植片当たりの平均応答は0.5~5.0再生可能植物構造体(RPS)であったが、「NO WUS」及び「No Agro」の陰性対照は、トランスジェニック再生可能植物構造体(RPS)を示さなかった。
【0228】
【0229】
実施例14:WUSは形質転換したタバコの葉切片からの緑色シュートのより急速な形成を促進する
タバコ(ニコチアナ・ベンタミアナ(Nicotiana benthamiana))実生を発芽させ、90A培地(表7)上で滅菌光条件下で成長させた。葉を切除し、20A液体培地(表7)に浸漬しながら2cm×0.5cmの細片に切断した。各葉から約7つの葉切片を得た。1回のアグロバクテリウム(Agrobacterium)感染につき、4枚の葉からの切片を用いた。アグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404 THY-は、PHP71539(米国特許出願公開第2019/0078106号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された病原性遺伝子を含有するプラスミド)、及びT-DNAを保有するバイナリーベクターを含んだ。1つの処理では、T-DNAはWUSを含まない(NO WUS)発現カセットを含んだ。WUS発現カセットを含む全ての処理で、コンストラクトに用いられたWUS遺伝子を除いてT-DNAの構成は同一であった。T-DNAの構成は、RB+CAMV35S PRO::WUS::OS-T28 TERM+GM-UBQ PRO::GM-UBQ5UTR::GM-UBQ INTRON1::ZS-YELLOW1 N1::NOS TERM+AT-UBIQ10 PRO::AT-UBIQ10 5UTR::AT-UBIQ10 INTRON1::CTP::SPCN::UBQ14 TERM+GM-EF1A2 PRO::GM-EF1A2 5’UTR::GM-EF1A2 INTRON1::DS-RED2::UBQ TERM+LBであった(可変WUS遺伝子は太字及びイタリック体で示す)。15mlのFalconチューブで、20A液体培地中、OD550が0.5に達するアグロバクテリウム(Agrobacterium)懸濁液を調製した。20μlのアグロバクテリウム(Agrobacterium)懸濁液を、切断した葉組織を含有する、1ウェル(マルチウェルプレート中)当たり10mlの20A培地に希釈した。プレートを10分間ゆっくり振盪し、次いで、20A培地中のアグロバクテリウム(Agrobacterium)との3日間の共培養のために薄暗い光(約25~30μEm-2s-1)下に置いた。
【0230】
3日間の共培養後、葉片を70D培地(表7を参照)に移し、暗所にて27℃で培養した。形質転換の10日後、組織を新しい70D培地上で継代培養した。形質転換の11日後、明確なシュートがまだ出現していないか、又は出現し始めたばかりであったので、初期シュート(緑色の再生可能な植物構造体)を全ての組織について計数した。表12、13及び14に、アグロバクテリウム(Agrobacterium)感染から11日後のタバコ葉1切片当たりの初期シュートの数を示す。表12、13及び14に示すように、最初に感染した葉1切片当たり観察された初期シュートの平均数は、試験した全てのWUS遺伝子で(2.2初期シュート/切片のNO WUS対照値と比較して)増加し、マニホット・エスキュレンタ(Manihot esculenta)(RV026524(配列番号158)(MANES-WUS))の4.2初期シュート/切片から、カランコエ・フェドシェンコイ(Kalanchoe fedtschenkoi)(RV026523(配列番号159)(KALFE-WUS))及びペチュニア・ヒブリド(Petunia hybrid)(RV026534(配列番号156)(PETHY-WUS))の16.5初期シュート/切片にまで及んだ。
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)感染の17日後、緑色シュートを形成した葉切片の数を計数し、表15、16、及び177に示すように表にした。表15、16、及び17に示すように、アグロバクテリウム(Agrobacterium)に感染した葉切片上にデノボ緑色シュート形成が観察された頻度をパーセンテージとして算出したところ、「NO WUS」処理葉切片で約11%がシュートを形成した。表15、16、及び17に示すように、WUS発現カセットが存在する全ての処置(試験した全てのWUSオルソログ)で、対照処置(11%)を超えるシュート形成頻度がもたらされ、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitus vinifera)(ブドウ)WUS(RV026526(配列番号155)(VITVI-WUS))の25%からポプルス・トリコカルパ(Populus trichocarpa)(ポプラ)WUS(RV026520(配列番号164)(POPTR-WUS))の100%にまで及んだ。
図1は、デノボ緑色シュートを形成した、処理した葉切片のパーセント(%)のグラフ表示である。
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
実施例15-キャノーラ茎の形質転換
長さ0.3~0.8cmの範囲の茎外植片を切片化し、コンストラクトRV029481((配列番号191)(GG-WUS+HSP:CRE+IPT))を含有するLBA4404THY-アグロバクテリウム(Agrobacterium)と共培養した。共培養の2日後、外植片を70A培地に移し、26℃、及び明るい光(60~100μE/m2/sで16時間の光周期)の下でインキュベートした。インキュベーションの7日又は14日後、外植片を含む皿を、45℃及び70%相対湿度に移して2時間の熱ショックを与え、その後、皿を26℃下に戻した。緑色体分裂組織を形成した外植片の数を、共培養の18日後に計数した(表18)。外植片は、GG-WUS及びIPT遺伝子の切除後も体細胞分裂組織を形成し続けた。
【0239】
【0240】
実施例16:4つの異なる種からのWUSオルソログの、ダイズの葉の切片のアグロバクテリウム(AGROBACTERIUM)媒介形質転換後の直接的シュート形成を促進するための使用
WUS発現カセット、熱誘導性CREカセット、並びにSPCN発現カセット及びDS-RED2発現カセットを有するT-DNAを保有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404 THY-を使用する。アグロバクテリウム(Agrobacterium)株は、ポプラWUS遺伝子(RV029630(配列番号193)(PT-WUS+HSP:CRE)、核局在化配列に融合したポプラWUS遺伝子(RV029480)(配列番号194)(ALA-NLS-PT-WUS+HSP:CRE)、又はポプラWUS遺伝子及びIPT遺伝子(RV029479)(配列番号195)(PT-WUS+HSP:CRE+IPT)を含む。アグロバクテリウム(Agrobacterium)株の別のセットはそれぞれ、グネツム属(Gnetum)WUS遺伝子(RV029631(配列番号192)(GG-WUS+HSP:CRE))、核局在化配列に融合したグネツム属(Gnetum)WUS遺伝子(RV029482(配列番号190)(ALA-NLS-GG-WUS+HSP:CRE))、又はグネツム属(Gnetum)WUS遺伝子及びIPT遺伝子(RV029481(配列番号191)(GG-WUS+HSP:CRE+IPT))を含む。WUS、IPT及びCRE遺伝子はLOXP部位にフランキングされている。6つのアグロバクテリウム(Agrobacterium)株を用いて、インビトロで成長させた無菌の未熟葉から切断した組織の切片を形質転換する。アグロバクテリウム(Agrobacterium)法、形質転換、及び共培養及びシュート伸長を通じた一連の培地は、先に記載した通りである。
【0241】
エリート系などのダイズ系、例えば93Y21(これに限定されない)を、このプロセスに使用することができる。葉及び茎の外植片を採取し、葉を3~8mmの切片に切断し、節間(茎外植片)を約0.5cmの長さの切片に切断する。上記のベクターを含むアグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404を感染のために使用し、且つ全ての細菌培養物を、感染用にOD550を0.5に調整する。全てのベクターが、選択マーカー遺伝子SPCN(スペクチノマイシン)を含有する。葉及び節間外植片を30分間感染させ、暗所にて21℃で3日間共培養培地上に置く。共培養後、外植片をシュート再生培地に移す。感染頻度は、形質転換後5日目及び20日目に選択マーカー遺伝子の一過性発現をスクリーニングすることにより評価する。CRE遺伝子の熱ショック駆動による発現は、ゲノムに安定に組み込まれたWUS、CRE、又はIPT遺伝子の切除を誘導する。シュート及び根の形態は、IPT及びWUS遺伝子の切除によって改善される。感染後約20日で、シュートの再生が観察される。さらに、トランスジェニックシュートは、マーカー遺伝子の存在を評価される。
【0242】
SPCN及びZS-YELLOW1 N1発現カセット(RV022814(配列番号168)(NO WUS))を含有する対照処理(T-DNA中のNO WUS又はIPTで形質転換)では、葉セグメントからの直接的シュート形成は観察されないと予想される。しかし、グネツム属(Gnetum)WUS遺伝子及びポプラWUS遺伝子を含むT-DNAを導入する形質転換が行われる場合、緑色の健康なシュートが形成されると予想される。6つのWUSコンストラクト全てによる葉又は茎組織のアグロバクテリウム(Agrobacterium)感染は、WUS、IPT及びCRE遺伝子が切除された健康な稔性植物を作出すると予想される。
【0243】
実施例17-双子葉植物の茎の形質転換
長さ0.1~1.0cmの範囲の双子葉植物の茎外植片を切片化し、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)をコードするヌクレオチド配列の組み合わせ、並びにIPT遺伝子及びHSP:CREを含むコンストラクトを含有するLBA4404THY-アグロバクテリウム(Agrobacterium)と共培養する。共培養の2日後、外植片を70A培地に移し、26℃、及び明るい光(60~100μE/m2/sで16時間の光周期)の下でインキュベートする。インキュベーションの7日又は14日後、外植片を含む皿を、45℃及び70%相対湿度に移して2時間の熱ショックを与え、その後、皿を26℃下に戻す。共培養後10日から21日で体細胞分裂組織及び/又は体細胞胚が形成されると予想される。WUS、BBM/ODP2及びIPT遺伝子の切除後も、外植片は体細胞分裂組織及び/又は体細胞胚を形成し続けると予想される。
【0244】
実施例18-双子葉植物の葉の形質転換
双子葉植物の葉外植片を均一な大きさ、約10~80ミリメートルの切片に切断し、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)をコードするヌクレオチド配列の組み合わせ、並びにIPT遺伝子及びHSP:CREを含むコンストラクトを含有するLBA4404 THY-アグロバクテリウム(Agrobacterium)と共培養する。共培養の2日後、外植片を70A培地に移し、26℃、及び明るい光(60~100μE/m2/sで16時間の光周期)の下でインキュベートする。インキュベーションの7日又は14日後、外植片を含む皿を、45℃及び70%相対湿度に移して2時間の熱ショックを与え、その後、皿を26℃下に戻す。共培養後10日から21日で体細胞分裂組織及び/又は体細胞胚が形成されると予想される。WUS、BBM/ODP2及びIPT遺伝子の切除後も、外植片は体細胞分裂組織及び/又は体細胞胚を形成し続けると予想される。
【0245】
実施例19:双子葉植物の葉のヌクレアーゼ媒介ゲノム修飾
CRISPR-Casヌクレアーゼ媒介ゲノム修飾を行う方法は、米国特許第9,637,739号明細書、米国特許出願公開第2014/0068797号明細書、米国特許出願公開第2019/0040405号明細書、及び米国特許第10,510,457に記載されており、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0246】
双子葉植物の葉外植片を均一な大きさ、約10~80ミリメートルの切片に切断し、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)をコードするヌクレオチド配列の組み合わせを含むコンストラクトを含有し、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は部位特異的ポリペプチドを提供するLBA4404 THY-アグロバクテリウム(Agrobacterium)と共培養する。共培養後、葉外植片を新鮮な培地に移し、26℃、及び明るい光(60~100μE/m2/sで16時間の光周期)の下でインキュベートする。共培養の10日~21日後に、ゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含まないゲノム編集された再生可能植物構造体が形成されると予想される。ゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットゲノムを含まないゲノム編集再生可能植物構造体は、双子葉植物器官又はその複合組織を形態形成遺伝子発現カセットと接触させない場合のゲノム編集再生可能植物構造体の形成頻度と比較して、約0.1%~約1.0%、約1.1%~約10%、約10.1%~約20%、約20.1%~約30%、約30.1%~約40%、約40.1%~約50%、約50.1%~約60%、約60.1%~約70%、約70.1%~約80%、約80.1%~約90%、及び約90.1%~約100%増加した頻度で形成される。
【0247】
実施例20:双子葉植物の茎のヌクレアーゼ媒介ゲノム修飾
CRISPR-Casヌクレアーゼ媒介ゲノム修飾を行う方法は、米国特許第9,637,739号明細書、米国特許出願公開第2014/0068797号明細書、米国特許出願公開第2019/0040405号明細書、及び米国特許第10,510,457に記載されており、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0248】
長さ0.1~1.0cmの範囲の双子葉植物の茎外植片を切片化し、機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は機能性WUS/WOXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とBabyboom(BBM)ポリペプチド若しくは胚珠発育タンパク質2(ODP2)をコードするヌクレオチド配列の組み合わせを含むコンストラクトを含有し、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は部位特異的ポリペプチドを提供するLBA4404 THY-アグロバクテリウム(Agrobacterium)と共培養する。共培養後、茎外植片を新鮮な培地に移し、26℃、及び明るい光(60~100μE/m2/sで16時間の光周期)の下でインキュベートする。共培養の10日~21日後に、ゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットを含まないゲノム編集された再生可能植物構造体が形成されると予想される。ゲノム編集物を含有し、形態形成遺伝子発現カセットゲノムを含まないゲノム編集再生可能植物構造体は、双子葉植物器官又はその複合組織を形態形成遺伝子発現カセットと接触させない場合のゲノム編集再生可能植物構造体の形成頻度と比較して、約0.1%~約1.0%、約1.1%~約10%、約10.1%~約20%、約20.1%~約30%、約30.1%~約40%、約40.1%~約50%、約50.1%~約60%、約60.1%~約70%、約70.1%~約80%、約80.1%~約90%、及び約90.1%~約100%増加した頻度で形成される。
【0249】
本明細書使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈により別途明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、そのような細胞を複数種含み、「タンパク質」への言及は、1つ以上のタンパク質及び当業者に知られたその均等物を含む。別途明確な指示がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同一の意味を有する。
【0250】
本明細書で言及した全ての特許、刊行物及び特許出願は、本開示が属する技術分野の当業者の水準を示すものである。全ての特許、刊行物及び特許出願は、あたかも個々の特許、刊行物又は特許出願が、明確に且つ個々に参照によりその全体が組み込まれるよう指示されているのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0251】
以上の開示は、理解を明確にする目的で、図面及び実施例を使ってある程度詳しく説明してきたが、添付の請求項の範囲内で一定の変更及び修正を行うことができる。
【配列表】
【国際調査報告】