(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】圧縮機電動機冷却システムを備えた暖房、換気、空調及び/又は冷凍システム
(51)【国際特許分類】
H02K 9/08 20060101AFI20220530BHJP
H02P 29/62 20160101ALI20220530BHJP
H02K 9/00 20060101ALI20220530BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20220530BHJP
F25B 1/053 20060101ALI20220530BHJP
F25B 1/047 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
H02K9/08 A
H02P29/62
H02K9/00 A
H02K7/14 B
F25B1/053 D
F25B1/047 V
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557930
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020025240
(87)【国際公開番号】W WO2020198597
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521301840
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・タイコ・アイピー・ホールディングス・エルエルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】ジャドリック,アイバン
(72)【発明者】
【氏名】ケーン,アジット・ワサント
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー,ジェブ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ハイジー,マシュー・リー
(72)【発明者】
【氏名】コーラー,ジェイ・アルバート
【テーマコード(参考)】
5H501
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
5H501AA09
5H501BB02
5H501CC01
5H501CC06
5H501DD04
5H501DD09
5H501JJ03
5H501JJ16
5H501KK05
5H501LL39
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607FF07
5H609BB03
5H609BB14
5H609BB19
5H609PP02
5H609QQ03
5H609QQ11
5H609SS21
5H609SS23
(57)【要約】
暖房、換気、空調及び/又は冷凍(HVAC&R)システムは、冷媒ループであって、それを通して冷媒を循環させるように構成された圧縮機を有する冷媒ループと、圧縮機の回転を駆動するように構成された電動機であって、永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機である電動機と、冷媒の一部をPMASR電動機の構成要素と熱的連通させるために、冷媒ループから且つPMASR電動機のハウジングを通して冷媒の一部を導くように構成された電動機冷却システムとを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ループであって、それを通して冷媒を循環させるように構成された圧縮機を有する冷媒ループと、
前記圧縮機の回転を駆動するように構成された電動機であって、永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機である電動機と、
前記冷媒の一部を前記PMASR電動機の構成要素と熱的連通させるために、前記冷媒ループから且つ前記PMASR電動機のハウジングを通して前記冷媒の前記一部を導くように構成された電動機冷却システムと
を含む暖房、換気、空調及び/又は冷凍(HVAC&R)システム。
【請求項2】
前記PMASR電動機は、回転子であって、前記回転子の本体内に埋め込まれた磁石を有する回転子を含む、請求項1に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項3】
前記磁石は、フェライト磁石である、請求項2に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項4】
前記磁石は、希土類磁石である、請求項2に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項5】
前記PMASR電動機に供給される電気エネルギーの量を変化させるように構成された可変速駆動装置を含む、請求項1に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項6】
前記電動機冷却システムのバルブに通信可能に結合されたコントローラと、前記PMASR電動機の前記ハウジング内の温度を示すフィードバックを提供するように構成されたセンサとを含み、前記コントローラは、前記冷媒ループからの且つ前記PMASR電動機の前記ハウジングを通した前記冷媒の前記一部の流れを制御するために、前記バルブの位置を調整するように構成される、請求項1に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項7】
前記冷媒ループは、前記冷媒を冷却流体と熱的連通させるように構成された凝縮器と、前記冷媒を作動流体と熱的連通させるように構成された蒸発器とを含む、請求項1に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項8】
前記電動機冷却システムは、前記凝縮器の下流の前記冷媒ループに沿った位置から前記冷媒の前記一部を導くように構成される、請求項7に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項9】
前記PMASR電動機は、保持スリーブを有さない、請求項1に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項10】
冷媒ループに沿って配置された圧縮機の回転を駆動するように構成された電動機であって、永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機であり、且つハウジングと、前記ハウジング内に配置された回転子と、前記回転子の本体内に埋め込まれた磁石とを含む電動機と、
冷媒の一部を前記PMASR電動機の構成要素と熱的連通させるために、前記冷媒ループから且つ前記PMASR電動機の前記ハウジングを通して前記冷媒の前記一部を導くように構成された電動機冷却システムと
を含む暖房、換気、空調及び/又は冷凍(HVAC&R)システム。
【請求項11】
前記電動機冷却システムは、前記冷媒の前記一部を前記回転子、前記PMASR電動機の固定子、前記PMASR電動機の軸受又はそれらの任意の組み合わせと熱的連通させるように構成される、請求項10に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項12】
前記冷媒ループを含み、前記冷媒ループは、前記冷媒を加圧するように構成された前記圧縮機と、前記冷媒を冷却流体と熱的連通させるように構成された凝縮器と、前記冷媒を作動流体と熱的連通させるように構成された蒸発器とを含む、請求項10に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項13】
前記電動機冷却システムは、前記凝縮器の下流の前記冷媒ループに沿った第1の位置から前記ハウジングまで、且つ前記ハウジングから、前記蒸発器の上流の前記冷媒ループに沿った第2の位置まで前記冷媒の前記一部を導くように構成される、請求項12に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項14】
前記磁石は、フェライト磁石を含む、請求項10に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項15】
前記PMASR電動機は、前記回転子の周りに配置された保持スリーブを有さない、請求項10に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項16】
前記電動機冷却システムは、
前記冷媒ループから前記ハウジングに導かれる前記冷媒の前記一部の流れを調節するように構成されたバルブと、
前記バルブに通信可能に結合されたコントローラであって、前記PMASR電動機の温度を示すフィードバックに基づいて前記冷媒の前記一部の前記流れを調整するために、前記バルブの位置を調整するように構成されるコントローラと
を含む、請求項10に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項17】
前記電動機冷却システムは、前記コントローラに通信可能に結合されたセンサを含み、前記センサは、前記PMASR電動機の前記ハウジング内の温度を検出し、且つ前記フィードバックを前記コントローラに通信するように構成される、請求項16に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項18】
冷媒ループであって、それを通して冷媒を循環させるように構成された圧縮機を含む冷媒ループと、
前記圧縮機の回転を駆動するように構成された電動機であって、回転子と、前記回転子の本体内に埋め込まれたフェライト磁石とを含む永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機である電動機と、
前記冷媒の一部を前記PMASR電動機の構成要素と熱的連通させるために、前記冷媒ループから前記PMASR電動機のハウジングを通して、且つ前記ハウジングから再び前記冷媒ループに前記冷媒の前記一部を導くように構成された電動機冷却システムと
を含むチラーシステム。
【請求項19】
前記PMASR電動機は、前記回転子の周りに配置された保持スリーブを有さない、請求項18に記載のHVAC&Rシステム。
【請求項20】
前記冷媒ループは、前記冷媒を冷却流体と熱的連通させるように構成された凝縮器と、前記冷媒を作動流体と熱的連通させるように構成された蒸発器とを含み、
前記電動機冷却システムは、前記凝縮器の下流の前記冷媒ループに沿った第1の位置から前記ハウジングまで、且つ前記ハウジングから、前記蒸発器の上流の前記冷媒ループに沿った第2の位置まで前記冷媒の前記一部を導くように構成され、
前記電動機冷却システムは、
前記冷媒ループから前記ハウジングに導かれる前記冷媒の前記一部の流れを調節するように構成されたバルブと、
前記PMASR電動機の前記ハウジング内の温度を検出するように構成されたセンサと、
前記バルブ及び前記センサに通信可能に結合されたコントローラであって、前記センサを介して受信される、前記PMASR電動機の前記ハウジング内の前記温度を示すフィードバックに基づいて前記冷媒の前記一部の前記流れを調整するために、前記バルブの位置を調整するように構成されるコントローラと
を含む、請求項19に記載のHVAC&Rシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本項は、後述する本開示の様々な態様に関係し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを意図している。この議論は、本開示の様々な態様をよりよく理解しやすくするための背景情報を読者に提供することに役立つと考えられる。したがって、これらの記述は、この観点から解釈すべきであり、先行技術としての容認として解釈すべきではないことを理解されたい。
【0002】
暖房、換気、空調及び/又は冷凍システム(HVAC&R)システムは、様々な設定において且つ多くの目的で使用されている。例えば、HVAC&Rシステムは、環境を調節するように構成された蒸気圧縮冷凍サイクル(例えば、凝縮器、蒸発器、圧縮機及び/又は膨張装置を有する冷媒回路)を含み得る。蒸気圧縮冷凍サイクルは、蒸気圧縮冷凍サイクルの構成要素を通して冷媒を循環させるように構成された圧縮機を含み得る。圧縮機は、電動機によって駆動され、電動機のサイズは、一般に、HVAC&Rシステムの能力に基づいて定められる。残念ながら、既存のHVAC&Rシステムの電動機は、HVAC&Rシステムが低能力条件で稼働している場合、相対的に低い効率のみを実現することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一実施形態では、暖房、換気、空調及び/又は冷凍(HVAC&R)システムは、冷媒ループであって、それを通して冷媒を循環させるように構成された圧縮機を有する冷媒ループと、圧縮機の回転を駆動するように構成された電動機であって、永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機である電動機と、冷媒の一部をPMASR電動機の構成要素と熱的連通させるために、冷媒ループから且つPMASR電動機のハウジングを通して冷媒の一部を導くように構成された電動機冷却システムとを含む。
【0004】
別の実施形態では、暖房、換気、空調及び/又は冷凍(HVAC&R)システムは、冷媒ループに沿って配置された圧縮機の回転を駆動するように構成された電動機であって、永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機であり、且つハウジングと、ハウジング内に配置された回転子と、回転子の本体内に埋め込まれた磁石とを含む電動機を含む。HVAC&Rシステムは、冷媒の一部をPMASR電動機の構成要素と熱的連通させるために、冷媒ループから且つPMASR電動機のハウジングを通して冷媒の一部を導くように構成された電動機冷却システムを更に含む。
【0005】
本開示の更なる実施形態では、チラーシステムは、冷媒ループであって、それを通して冷媒を循環させるように構成された圧縮機を有する冷媒ループと、圧縮機の回転を駆動するように構成された電動機であって、回転子と、回転子の本体内に埋め込まれたフェライト磁石とを有する永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機である電動機とを含む。チラーシステムは、冷媒の一部をPMASR電動機の構成要素と熱的連通させるために、冷媒ループからPMASR電動機のハウジングを通して、且つ再び冷媒ループに冷媒の一部を導くように構成された電動機冷却システムを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一態様による、商業的環境における暖房、換気、空調及び/又は冷凍(HVAC&R)システムの一実施形態を利用し得る建物の斜視図である。
【
図2】本開示の一態様による蒸気圧縮システムの一実施形態の斜視図である。
【
図3】本開示の一態様による蒸気圧縮システムの一実施形態の概略図である。
【
図4】本開示の一態様による蒸気圧縮システムの別の実施形態の概略図である。
【
図5】本開示の一態様による、圧縮機の動作を駆動するための電動機と、電動機冷却システムとを有する蒸気圧縮システムの一実施形態の概略図である。
【
図6】本開示の一態様による、回転子と、回転子に結合された磁石とを有する蒸気圧縮システムの電動機の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の1つ又は複数の特定の実施形態を以下に説明する。これらの説明される実施形態は、本開示の技法の単なる例にすぎない。加えて、これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、本明細書では、実際の実装形態のすべての特徴を説明しない場合がある。あらゆるそのような実際の実装形態の開発では、あらゆる工学又は設計プロジェクトと同様に、実装形態ごとに異なり得るシステム関連及び事業関連の制約の順守など、開発者の具体的な目標を達成するために多くの実装形態固有の決定がなされなければならないことを理解されたい。更に、このような開発努力は、複雑であり且つ時間がかかるものであり得るが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって設計、組み立て及び製造の通常の作業であろうことを理解されたい。
【0008】
上述のように、暖房、換気、空調及び/又は冷凍(HVAC&R)システムは、様々な構成要素(例えば、凝縮器、蒸発器、膨張装置など)を有する冷媒ループを通して冷媒を循環させるように構成された圧縮機を含み得る。圧縮機は、HVAC&Rシステムの目標運転能力に基づいて一般に選択される電動機によって駆動される(例えば、総冷却能力)。具体的には、電動機のサイズは、HVAC&Rシステムの目標運転能力を達成するように構成される、ある動作範囲の速度値及びトルク値を含むように定められる。場合により、HVAC&Rシステムの負荷条件が比較的低い場合(例えば、HVAC&Rシステムの負荷需要がHVAC&Rシステムの目標運転能力の50パーセント未満の場合)では、電動機は、低い効率で動作することがある。そのため、比較的低い負荷条件では、HVAC&Rシステムの効率が全体的に低下することがある。
【0009】
本開示の実施形態は、HVAC&Rシステムの運転能力の範囲(例えば、HVAC&Rシステムの目標運転能力の25%~100%)にわたって高い効率で動作するように構成された電動機を含む、改良されたHVAC&Rシステム(例えば、チラーシステム)を対象とする。例えば、HVAC&Rシステムの圧縮機は、永久磁石電動機、より具体的には永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機によって駆動され得る。PMASR電動機は、PMASR電動機が追加的なトルクを発生できるようにする回転子上に配置されるか又はそれに埋め込まれた磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、PMASR電動機は、PMASR電動機の回転子に埋め込まれたフェライト磁石を含む。フェライト磁石は、一般に、いくつかのPMASR電動機において使用され得る希土類磁石よりも安価である。そのため、フェライト磁石をPMASR電動機に含めることにより、HVAC&Rシステムのコストを下げることができる。加えて、フェライト磁石を回転子に埋め込むことにより、回転子の外面に結合された磁石を有する電動機に一般に含まれ、且つ比較的高速の回転子回転速度において磁石を回転子の外面に対して保持するように構成された保持スリーブを排除することができる。
【0010】
更に、保持スリーブを排除することにより、冷媒ループからの冷媒の一部を電動機のケーシング又はハウジングに通して経路を定めることにより実行され得る電動機の冷却が促進され得る。後述のように、電動機の回転子が回転して、圧縮機を最終的に駆動して冷媒を圧縮する際に生じた熱又は熱エネルギーを除去するために、PMASR電動機を冷却するための電動機冷却システムが使用され得る。例えば、電動機冷却システムは、冷媒ループの凝縮器から冷媒の少なくとも一部を引き出し、冷媒の一部がPMASR内の構成要素(例えば、巻線の固定子、回転子及び/又は他の適切な構成要素)から熱エネルギーを吸収するように、PMASRを通して冷媒の一部を導き得る。したがって、HVAC&Rシステムの効率は、電動機の性能に本来影響を与え得る電動機内で生じた熱エネルギーを除去して、電動機をより低い温度で動作させることにより、更に向上させることができる。PMASR電動機の使用は、そのような電動機のコストが比較的高いため、既存のHVAC&Rシステムでは一般に回避されてきた。本開示の実施形態は、PMASR電動機の追加コストは、HVAC&Rシステムの比較的低い運転能力(例えば、全運転能力の50パーセント未満)において達成される効率の向上によって相殺され得ることを認識している。更に、電動機冷却システムの実施により、PMASR電動機の効率が更に向上し、これによりHVAC&Rシステムの運転コストが削減され得る。
【0011】
ここで、図面を参照すると、
図1は、典型的な商業的環境における建物12内の暖房、換気、空調及び/又は冷凍(HVAC&R)システム10のための環境の一実施形態の斜視図である。HVAC&Rシステム10は、建物12を冷却するために使用され得る、冷却された液体を供給する蒸気圧縮システム14を含み得る。HVAC&Rシステム10はまた、建物12を加熱するために温かい液体を供給するためのボイラ16と、建物12を通して空気を循環させる空気分配システムとを含み得る。空気分配システムは、還気ダクト18、給気ダクト20及び/又は空気調和機22も含み得る。いくつかの実施形態では、空気調和機22は、導管24によってボイラ16及び蒸気圧縮システム14に接続された熱交換器を含み得る。空気調和機22内の熱交換器は、HVAC&Rシステム10の動作モードに応じて、ボイラ16からの加熱された液体又は蒸気圧縮システム14からの冷却された液体のいずれかを受け取ることができる。HVAC&Rシステム10は、別個の空気調和機が建物12の各フロアにある状態で示されているが、他の実施形態では、HVAC&Rシステム10は、フロア間で共有され得る空気調和機22及び/又は他の構成要素を含み得る。
【0012】
図2及び
図3は、HVAC&Rシステム10で使用され得る蒸気圧縮システム14の実施形態を示す。蒸気圧縮システム14は、圧縮機32から始まる回路を通して冷媒を循環させ得る。回路はまた、凝縮器34と、膨張バルブ又は膨張装置36と、液体チラー又は蒸発器38とを含み得る。蒸気圧縮システム14は、アナログデジタル(A/D)変換器42、マイクロプロセッサ44、不揮発性メモリ46及び/又はインターフェースボード48を有する制御盤40(例えば、コントローラ)を更に含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、蒸気圧縮システム14は、可変速駆動装置(VSD)52、電動機50、圧縮機32、凝縮器34、膨張バルブ若しくは膨張装置36及び/又は蒸発器38の1つ又は複数を使用し得る。電動機50は、圧縮機32を駆動することができ、可変速駆動装置(VSD)52によって電力を供給され得る。VSD52は、AC電源から、特定の固定ライン電圧及び固定ライン周波数を有する交流(AC)電力を受け、可変電圧及び周波数を有する電力を電動機50に供給する。他の実施形態では、電動機50は、AC又は直流(DC)電源から直接電力を供給され得る。電動機50は、スイッチドリラクタンス電動機、誘導電動機、電子整流永久磁石電動機又は別の好適な電動機など、VSDによって電力を供給され得るか、又はAC若しくはDC電源から直接電力を供給され得る任意のタイプの電動機を含み得る。
【0014】
圧縮機32は、冷媒蒸気を圧縮するとともに、蒸気を、排出路を通して凝縮器34に送達する。いくつかの実施形態では、圧縮機32は、遠心圧縮機であり得る。圧縮機32は、圧縮機の構成要素を潤滑する流体(例えば、オイル)を含む。他の実施形態では、圧縮機32は、オイルを含まず、磁気軸受を使用し得る。圧縮機32によって凝縮器34に送達される冷媒蒸気は、凝縮器34内の冷却流体(例えば、水又は空気)に熱を伝達し得る。冷媒蒸気は、冷却流体との熱伝達の結果、凝縮器34内で冷媒液に凝縮し得る。凝縮器34からの冷媒液は、膨張装置36を通して蒸発器38に流れ得る。
図3に示す実施形態では、凝縮器34は、水冷され、冷却塔56に接続されたチューブ束54を含み、冷却塔56は、冷却流体を凝縮器に供給する。
【0015】
蒸発器38に送達された冷媒液は、別の冷却流体からの熱を吸収することができ、この冷却流体は、凝縮器34で使用される冷却流体と同じであっても又は同じでなくてもよい。蒸発器38内の冷媒液は、冷媒液から冷媒蒸気への相変化を経る場合がある。
図3に示す実施形態に示すように、蒸発器38は、冷却負荷62に接続された供給ライン60Sと戻りライン60Rとを有するチューブ束58を含み得る。蒸発器38の冷却流体(例えば、水、エチレングリコール、塩化カルシウムブライン、塩化ナトリウムブライン又は任意の他の好適な流体)は、戻りライン60Rを介して蒸発器38に入り、供給ライン60Sを介して蒸発器38を出る。蒸発器38は、チューブ束58における冷却流体の温度を、冷媒との熱伝熱を介して低下させ得る。蒸発器38におけるチューブ束58は、複数のチューブ及び/又は複数のチューブ束を含み得る。いずれの場合にも、冷媒蒸気は、蒸発器38を出て、吸引ラインにより圧縮機32に戻り、サイクルを完了する。
【0016】
図4は、中間回路64が凝縮器34と膨張装置36との間に組み込まれた蒸気圧縮システム14の概略図である。中間回路64は、凝縮器34に流体的に直接接続された入口ライン68を有し得る。他の実施形態では、入口ライン68は、凝縮器34に間接的に流体接続され得る。
図4に示す実施形態に示すように、入口ライン68は、中間容器70の上流に位置付けられた第1の膨張装置66を含む。いくつかの実施形態では、中間容器70は、フラッシュタンク(例えば、フラッシュ中間冷却器)であり得る。他の実施形態では、中間容器70は、熱交換器又は「サーフェスエコノマイザ」として構成され得る。
図4に示す実施形態では、中間容器70は、フラッシュタンクとして使用され、第1の膨張装置66は、凝縮器34から受け取った冷媒液の圧力を下げる(例えば、膨張させる)ように構成される。膨張プロセス中、液体の一部が蒸発する場合があり、したがって中間容器70を使用して、第1の膨張装置66から受け取った液体から蒸気を分離できる。追加的に、中間容器70は、中間容器70に入るときに冷媒液体が圧力低下を経るため、(例えば、中間容器70に入るときに体積が急速に増大することに起因して)冷媒液体を更に膨張させ得る。中間容器70内の蒸気は、圧縮機32により、圧縮機32の吸引ライン74を通して引き込まれ得る。他の実施形態では、中間容器内の蒸気は、圧縮機32の中間ステージ(例えば、吸引ステージではなく)に引き込まれ得る。中間容器70内に集まる液体は、膨張装置66及び/又は中間容器70における膨張のため、凝縮器34を出る冷媒液よりもエンタルピーが低い場合がある。中間容器70からの液体は、次いで、ライン72内を流れ、第2の膨張装置36を通して蒸発器38に流れ得る。
【0017】
上述のように、本開示の実施形態は、永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機を含む蒸気圧縮システム14を有するHVAC&Rシステム10などのHVAC&Rシステムを対象とする。PMASR電動機は、HVAC&Rシステムの圧縮機32などの圧縮機に印加するトルク(例えば、PMASR電動機が消費する電力量あたりのトルク)をより大きく発生させることにより、HVAC&Rシステム10の効率を高めることができる。より具体的には、PMASR電動機は、HVAC&Rシステムのフル運転能力条件及び比較的低い運転条件の両方において、生じる損失(例えば、磁石の損失、回転子の損失、固定子の損失、巻線の損失又は他の損失)をより少なく発生し得、それにより、幅広い運転能力範囲にわたってHVAC&Rシステムの効率が向上する。上記のように、PMASR電動機は、PMASR電動機の回転子に埋め込まれるか又は成形された磁石(例えば、フェライト磁石)を含み得る。磁石は、PMASR電動機の運転中に追加的なトルクを発生させることができ、これにより、PMASR電動機がHVAC&Rシステムの幅広い運転能力にわたって圧縮機に十分な量の電力を供給できるようにし得る。更に、HVAC&Rシステムは、動作中にPMASR電動機のハウジング内で発生した熱エネルギーを除去する電動機冷却システムを含み得る。回転子の外面上に磁石が配置される場合に(例えば、比較的高速の回転子回転速度において回転子に対して磁石を保持するために)一般に含まれる保持スリーブが排除された結果、PMASR電動機から追加的な熱エネルギーが除去され得る。
【0018】
図5は、HVAC&Rシステム100の圧縮機32などの圧縮機106を駆動するPMASR電動機104から熱エネルギーを除去するように構成された電動機冷却システム102を有するチラーシステムなどのHVAC&Rシステム100の概略図である。PMASR電動機104は、PMASR電動機104の回転力を圧縮機106内の構成要素(例えば、インペラ)に伝達するシャフトを介して圧縮機106に結合され得る。これにより、圧縮機106は、HVAC&Rシステム100の冷媒ループ108内の冷媒(例えば、R-134a、R-513A、R-123、R-1233zd及び/又はR-514A)を加圧して、冷媒ループ108に沿って配置された凝縮器110(例えば、凝縮器34)、蒸発器112(例えば、蒸発器38)及び/又は膨張装置114(例えば、膨張装置36)を通して冷媒を循環させるように構成される。したがって、冷媒は、凝縮器110を流れる冷却流体及び/又は蒸発器112を流れる作動流体との熱エネルギー伝達により、相変化を経ることができる。
【0019】
PMASR電動機104は、PMASR電動機104の回転子200の形状(例えば、優先磁気軸として機能し、固定子の巻線206によって生じる磁界と相互作用してリラクタンストルクを発生させる回転子200上の突起物)の結果として、また回転子200に組み込まれるか又はそれに他の方法で結合された磁石202(例えば、磁石202は、固定子の巻線206によって生じる磁界との相互作用を介して追加的なトルクを発生させる)からトルクを発生させ得る。例えば、
図6は、磁石202を有する回転子200と、回転子200の周りに配置された固定子の巻線206とを示す、PMASR電動機104の概略図である。理解されるように、PMASR電動機104の回転子200の回転は、PMASR電動機104の固定子巻線206に電気エネルギーが供給されると発生する磁界の結果として駆動される。磁界は、最終的に回転子200の回転を駆動する機械的エネルギー(例えば、回転エネルギー)に電気エネルギーを変換し得る。いくつかの実施形態では、PMASR電動機104の回転子200は、4極構成、すなわち4つの磁極が回転子200上に配置されるか又はそれに結合された構成を含み得る。他の実施形態では、PMASR電動機104は、2極構成及び/又はHVAC&Rシステム100の目標運転能力を達成するのに適した力を発生させるための別の適切な構成を含み得る。
【0020】
更に、PMASR電動機104の回転子200は、追加的なトルクを発生させるために、回転子200の本体208内に埋め込まれ得るか又は成形され得る磁石202を含む。例えば、磁石202は、PMASR電動機104のケーシング内に配置されたフラックスバリアと相互作用して、回転子200の回転を駆動するための磁気トルクを更に発生させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、磁石202は、回転子200の本体208内に埋め込まれたフェライト磁石を含む。他の実施形態では、磁石202は、ネオジム磁石、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石又は他の適切な磁石などの希土類磁石を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、PMASR電動機104の回転子200は、100ミリメートル(mm)~200mm、150~175mm又は160mm~170mmである長さを有する。例えば、PMASR電動機104の回転子200は、約170mmの長さを有し得る。他の実施形態では、PMASR電動機104の回転子200は、HVAC&Rシステム100の目標運転能力に基づいて任意の適切な長さを有し得る。
【0022】
上述のように、可変速駆動装置(VSD)116は、PMASR電動機104に電気エネルギーを供給して、PMASR電動機104の速度(例えば、回転速度)を変化させ、したがって圧縮機106の速度を変化させるように構成され得る。例えば、VSD116は、AC電源から特定の固定ライン電圧及び固定ライン周波数を有する交流(AC)電力を受け、可変電圧及び周波数を有する電力をPMASR電動機104に供給する。例えば、いくつかの実施形態では、VSD116は、0.9~1.2のスイッチング周波数を含み得る。より具体的には、VSD116は、約5000ヘルツ(HZ)又は約5500Hzのスイッチング周波数を含み得る。
【0023】
いずれの場合でも、PMASR電動機104は、特にHVAC&Rシステム100の比較的低い運転能力(例えば、HVAC&Rシステム100の総運転能力の50パーセント未満)において、HVAC&Rシステム100の効率を高め得る。例えば、PMASR電動機104は、HVAC&Rシステムに使用される従来の電動機と比較して、損失を少なくしながら、最終的に圧縮機106に供給するトルク量を増やすことができる。更に、電動機104内における熱エネルギーの発生によって生じる巻線の損失は、冷媒ループ108からの冷媒を用いてPMASR電動機104のハウジング204内から熱エネルギーを除去する電動機冷却システム102を介して低減され得る。
【0024】
図5に示す実施形態に示すように、凝縮器110を出る冷媒の一部は、T継手120(例えば、第1のT継手及び/又は第1の三方弁)を介して電動機冷却ループ118に進路変更され得る。バルブ122(例えば、ボール弁、蝶形弁、ゲート弁、グローブ弁、ダイヤフラム弁及び/又は別の好適な弁)は、電動機冷却ループ118に沿って、電動機冷却ループ118を通る冷媒の流れに対してT継手120の下流に配置され得る。バルブ122は、冷媒ループ108から電動機冷却ループ118に進路変更される冷媒の量(例えば、流れ又は流量)を調整するように構成され得る。いくつかの実施形態では、バルブ122は、コントローラ124に結合され、コントローラ124は、例えば、センサ126(例えば、温度センサ)によって監視されるPMASR電動機104の温度に基づいてバルブ122の位置を調整して、電動機冷却ループ118を通る冷媒の流れ又は流量を制御し得る。電動機冷却ループ118を通して流れる冷媒は、PMASR電動機104のハウジング204内に導かれて、冷媒をPMASR電動機104の構成要素(例えば、固定子、回転子200及び/又は軸受)と熱交換関係にさせる。それに応じて、冷媒は、PMASR電動機104からの熱エネルギー(例えば、熱)を吸収して、PMASR電動機104の温度を低下させる。次いで、冷媒は、PMASR電動機104から冷媒ループ108に向かって戻るように導かれ、そこで、冷媒は、蒸発器112に流入し得る。
【0025】
上述のように、PMASR電動機104は、保持スリーブがPMASR電動機104から排除され得るように、回転子200内(例えば、回転子200の本体208内)に埋め込まれた磁石202を含む(例えば、保持スリーブは、一般に、磁石が回転子の外面上に配置され、回転子内に組み込まれていない場合に含まれる)。保持スリーブは、PMASR電動機104の構成要素と、電動機冷却ループ118を通して循環する冷媒との間の熱エネルギー伝達量を減少させ得ることがここで分かる。そのため、PMASR電動機104の回転子200の本体208内に磁石202を埋め込むことにより、PMASR電動機104と、電動機冷却ループ118を通して循環する冷媒との間及びPMASR電動機104のハウジング204内の熱エネルギーの伝達量を増加させることができ、これによりPMASR電動機104の効率が更に向上し得る。更に、保持スリーブを排除することにより、保持スリーブを有する電動機と比較した場合、PMASR電動機104の性能に実質的な影響を与えることなく、PMASR電動機104をより高温で動作させ得る。このように、電動機冷却システム102は、PMASR電動機104を利用することに加えて(例えば、回転子200に磁石202を組み込んだ状態で)、HVAC&Rシステム100の運転能力の広い範囲にわたってHVAC&Rシステム100の効率を上げることができる。
【0026】
本開示の実施形態は、HVAC&Rシステムの効率を上げるのに有益な1つ又は複数の技術的効果を提供し得る。例えば、本開示の実施形態は、永久磁石補助付き同期リラクタンス(PMASR)電動機と電動機冷却システムとを含むHVAC&Rシステムを対象とする。PMASR電動機を利用することにより、運転能力条件が比較的低い状態でもHVAC&Rシステムの効率が上げることができる。更に、PMASRの回転子は、回転子の本体に組み込まれた磁石を含むことができ、これによりPMASR電動機から圧縮機へのトルクの伝達量を増やすことができる。加えて、回転子の本体内に磁石を埋め込むことにより、回転子内に埋め込まれるのではなく、回転子の外面の上に磁石を配置した場合に一般に含まれる保持スリーブの使用を排除できる。保持スリーブを排除することにより、電動機冷却システムからの冷媒とPMASR電動機の構成要素(例えば、回転子、固定子)との間の熱エネルギーの伝達量を増加させることができ、これによりHVAC&Rシステムの効率を更に向上させることができる。本明細書における技術的効果及び技術的課題は、例であり、限定ではない。本明細書に記載された実施形態は、他の技術的効果も有し得、他の技術的課題も解決できることに留意されたい。
【0027】
本開示の特定の特徴及び実施形態のみを図示及び説明してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された主題の新規な教示及び利点から著しく逸脱することなく、多くの修正形態及び変更形態(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び比率、パラメータの値(例えば、温度、圧力など)、取り付け構成、材料の使用、色、向きなどにおける変形形態)を想到し得る。任意のプロセス又は方法ステップの順序又は順番は、代替的な実施形態に応じて変更するか又は並べ替えることができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨の範囲内にあるものとして、そのようなすべての修正形態及び変更形態を包含することが意図されていることを理解されたい。更に、例示的な実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実現形態のすべての特徴が説明されているわけではない場合がある(すなわち、ここで企図される本技法の最良の実施形態に関係しないもの又は特許請求の範囲に記載の実施形態を可能にするのに関係しないものは、説明されていない場合がある)。あらゆるそのような実際の実装形態の開発では、あらゆる工学又は設計プロジェクトと同様に、多くの実装形態固有の決定がなされ得ることを理解されたい。そのような開発努力は、複雑であり且つ時間がかかるものであり得るが、それにもかかわらず、過度の実験をすることのない、本開示の利益を有する当業者の設計、製作及び製造の通常の作業である。
【国際調査報告】