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特表2022-527794マイクロニードルアレイ分析物選択センサを組み込むためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】マイクロニードルアレイ分析物選択センサを組み込むためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20220530BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A61M5/142 522
A61M37/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558506
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2020023771
(87)【国際公開番号】W WO2020197968
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】16/824,700
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/823,628
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521146056
【氏名又は名称】バイオリンク インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biolinq Incorporated
【住所又は居所原語表記】4535 Towne Centre Court, Suite 200,San Diego,California 92121 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィンドミラー, ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】タングニー, ジャレッド
(72)【発明者】
【氏名】ペイサー, トーマス アーノルド
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066DD11
4C066EE11
4C066FF04
4C066QQ82
4C267AA71
4C267BB24
4C267BB62
4C267CC05
4C267HH22
(57)【要約】
ユーザの生理的状態に応じて治療介入を手動で送達するためのデバイス(1300)および方法(700)が、本明細書に開示されている。デバイス(1300)は、センサ(20)と、注入システムと、単一の身体装着型構成要素(1305)とを備える。センサ(20)は、角質層を貫通して、生存表皮または生存真皮にアクセスし、分析物の存在を測定するように構成されている。注入システムは、ユーザの行動または制御アルゴリズムに基づいて液相治療薬を送達するように構成されている。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生理的状態に応じて治療介入を手動で送達するためのデバイスであって、前記デバイスが、角質層を貫通して生存表皮または生存真皮にアクセスし、選択的な様式で1つ以上の分析物の存在を測定するように構成されたセンサと、所定の量の液相治療薬または複数の治療薬を、前記生存表皮および生存真皮とは別個の分離した生理的コンパートメントに送達するように構成された注入構成要素と、前記センサと前記注入構成要素とを統合するための単一の身体装着型構成要素と、を備え、前記センサからの測定値によって知らされたユーザの行動に基づいて、前記単一の身体装着型構成要素が、前記注入構成要素を介して指定された投薬量の前記治療薬を送達するように構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記治療介入が、液相薬物、薬理学的なもの、生物学的なもの、または薬剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記生理的状態が、急性代謝条件、慢性代謝条件、疾患、傷害、病気、障害、または感染症のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記センサが、電気化学センサ、化学センサ、電気センサ、電位差測定センサ、電流測定センサ、電圧測定センサ、ガルバノメトリックセンサ、インピーダンス測定センサ、導電率測定センサ、またはバイオセンサである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記1つ以上の分析物が、グルコース、乳酸、ケトン体、尿酸、アスコルビン酸、アルコール、グルタチオン、過酸化水素、代謝物、電解質、イオン、薬物、薬理学的なもの、生物学的なもの、または薬剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記注入構成要素が、マクロニードル、皮下注射針、カニューレ、カテーテル、または経口送達経路を介した注入を提供するように構成されている流体送達装置を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記単一の身体装着型構成要素が、皮膚パッチ、真皮パッチ、接着パッチ、注入セット、パッチポンプ、または自動治療送達システムを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記指定された投薬量が、治療薬の量、治療薬の濃度、治療薬の体積、治療薬の送達の持続時間、または治療薬の送達の頻度を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
ユーザの生理的状態に応じて治療介入を自動送達するためのデバイスであって、前記デバイスが、角質層を貫通して生存表皮または生存真皮にアクセスし、選択的な様式で1つ以上の分析物の存在を測定するように構成されたセンサと、所定の量の液相治療薬または複数の治療薬を、前記生存表皮および生存真皮とは別個の分離した生理的コンパートメントに送達するように構成された注入構成要素と、前記センサと前記注入構成要素とを統合するための単一の身体装着型構成要素と、制御アルゴリズムと、を備え、前記制御アルゴリズムの出力に基づいて、前記単一の身体装着型構成要素が、注入システムを介して指定された投薬量の前記治療薬を送達するように構成されている、デバイス。
【請求項10】
前記制御アルゴリズムが、少なくとも1つの数学的変換を採用しているソフトウェアまたはファームウェアルーチンを含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記数学的変換の入力が、前記1つ以上の分析物の測定値である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記制御アルゴリズムの前記出力が、前記治療薬の前記指定された投薬量である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
単一の身体装着型構成要素を使用して、ユーザの生理的状態に応じて治療介入を手動で送達するための方法であって、前記方法が、センサによって、生存表皮または生存真皮における選択的な様式で1つ以上の分析物の存在を測定することと、1つ以上の分析物の測定値をユーザに提示することと、前記ユーザの行動に基づいて、または前記制御アルゴリズムの出力に基づいて、真皮の下の生理的コンパートメントへ、指定された投薬量の液相の治療薬または治療薬の集合体を、注入構成要素に送達させることと、を含む、方法。
【請求項14】
前記生理的状態が、急性代謝条件、慢性代謝条件、疾患、傷害、病気、障害、および感染症のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の分析物が、グルコース、乳酸、ケトン体、尿酸、アスコルビン酸、アルコール、グルタチオン、過酸化水素、代謝物、電解質、イオン、薬物、薬理学的なもの、生物学的なもの、または薬剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記センサが、電気化学センサ、化学センサ、電気センサ、電位差測定センサ、電流測定センサ、電圧測定センサ、ガルバノメトリックセンサ、インピーダンス測定センサ、導電率測定センサ、またはバイオセンサである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記制御アルゴリズムが、少なくとも1つの数学的変換を採用しているソフトウェアまたはファームウェアルーチンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記真皮の下の前記生理的コンパートメントが、皮下脂肪組織(真皮下組織、皮下組織(subcutis)、皮下組織(hypodermis))、または筋肉組織を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記指定された投薬量が、治療薬の量、治療薬の濃度、治療薬の体積、治療薬の送達の持続時間、または治療薬の送達の頻度を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記制御アルゴリズムの前記出力が、前記治療薬を投薬することを示す信号、刺激、または作動である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の技術は、治療送達メカニズム、分析物選択センサ、およびそれらを構成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬の持続的送達は、現代の医療デバイスにおいて依然として重要な技術である。このような医療デバイスの最も重要な例が、インスリンポンプで、持続皮下インスリン注入(CSII)システムとも呼ばれる。インスリンポンプは1980年代に開発され、1990年代に商品化され、注射器で頻繁にインスリンを注入する方法よりも、より生理的なインスリン送達方法を提供するために開発された。1992年の糖尿病管理および合併症調査(DCTT)の影響で、集中的なインスリン療法が糖尿病の長期合併症の発生率と重症度を劇的に減少させることが示され、インスリン送達方法の改善の重要性がさらに認識された。より最近では、インスリンポンプは、低血糖の発生、低血糖の重症化、低血糖の持続時間を最小限に抑えるために持続グルコースモニタリングシステムからの入力を使用してアルゴリズムを決定し、実際の低血糖または差し迫った低血糖の場合には、インスリン注入を自動的に停止するように構成されている。インスリンポンプはまた、インスリン送達を持続的に調節して、グルコースレベルを正常血糖設定値または正常血糖ウィンドウ(またはゾーン)内に維持するように構成されており、持続グルコースモニタリングシステムからの入力値を使用して血糖制御を改善するように設計されたアルゴリズムによって決定される。このようなシステムは、人工膵臓デバイス、自動インスリン送達システム、自動グルコース制御システム、クローズドループシステムなどで、様々な記載がなされており、そのような記載の中で、これらのシナリオでは、分析物のセンシングと治療送達モダリティの両方が、身体に装着される2つの別個の分離可能なデバイスで構成される。しかしながら、多くの患者にとって、これらの技術を使用する際の主な障害は、図2に示すように、ユーザ215上に配置された2つのデバイス205および210のように、2つの分離したオンボディデバイスを使用することである。センシング処置システムの統合を目指し、身体装着型デバイスを小型化したいという要望に沿って、分析物のセンシングと治療送達因子の両方を単一の装着型デバイス内に併置することは、開発分野として活発になっている。上記のように、センシング部と送達部との併置は、分析物センシングモダリティのすぐ近くに治療薬を送達することになり、クロストーク、干渉、汚染検出中の分析物の局所希釈、などの重要な技術的課題がしばしば生じるといった独自の課題を提示する。このような理由から、センシング構成要素と送達構成要素とは身体上の物理的に離れた場所にしばしば配置されるのであった。
【0003】
持続皮下インスリン注入(CSII)システムは、1型糖尿病の患者に広く使用されている。2型糖尿病の患者であってもCSIIシステムを使用する人が増えている。CSIIデバイスには2つの一般的なクラスがあり、インスリンを送達するためのチューブが付いているものと、デバイスから小さなカニューレが突出していて組織に直接挿入されるチューブのない(またはチューブレスの)ものとがある。チューブ付きデバイスは、LEDディスプレイとコマンド入力用のタッチパッドを備えたプログラム可能な電気機械式ポンプデバイスで構成されている。チューブ式ポンプは、通常、長さ6~8cm、幅4~6cm、厚さ2~4cmであり、インスリンが入ったリザーバが組み込まれており、皮下脂肪組織に挿入されるカニューレまたは針を備えた注入セットで終端する24~48インチのプラスチックチューブを介して体内に送達される。チューブレスデバイス(パッチポンプと呼ばれることもある)は、電気機械式のポンプデバイスで構成されており、LEDディスプレイやコマンド用のタッチパッドはなく、専用の医療機器や規定のモバイルメディカルアプリケーションを実行しているスマートフォンなどで構成される分離コントローラとの無線機能を備えている。パッチポンプは、通常、長さ3~5cm、幅2~4cm、厚さ2~3cmであり、インスリンが入ったリザーバが組み込まれており、パッチポンプの底部から突出した2~3cmの短いカニューレをまた皮下脂肪組織に挿入して体内に送達する。液相治療薬(すなわちインスリン)の送達用に構成された現在の注入システムは、分析物(すなわちグルコース)の持続定量化用に構成された針およびカニューレベースのセンサシステムと組み合わせて使用されることが多い。このようなシステムは一斉に動作し、組織の皮下脂肪層などの類似した生理的コンパートメント内において動作するように構成されているが、両方のシステムを、単一の身体装着型デバイス内で併置するには適していない。これは、単一の統合デバイスに物理的に取り付けられた2つのカニューレの挿入に関連する課題に一部起因する。ただし、最大の課題は、両方のシステムを近接して動作させる際に、隔離されないことに起因する。すなわち、併置された所与の生理的コンパートメント内で分析物センサデバイスと治療送達デバイスを同時に動作させるシナリオにおいて、望ましくない化学的な相互作用が発生する可能性があり、これらの望ましくない影響の中には、クロストーク、干渉、汚染、局所希釈などがあり、これらは、指定された選択性、感度、安定性、および応答時間で目的の分析物を定量化するセンサの能力に直接影響を与える。
【0004】
グルコースセンシングおよびインスリン注入の併置を成功させる上での主な障害は、現在のインスリン製剤に含まれる防腐剤が、市販の標準的なグルコースセンサの酵素特性に悪影響を及ぼすことである。インスリンは、皮下脂肪組織層で抵抗の少ない経路をたどる垂直方向よりも、水平方向の方がはるかに容易に消炎する。これらの最近の発見は、真皮(皮膚の表面から1mm未満)でのグルコース測定、および皮下脂肪組織(皮膚の表面から約10~40mm未満)へのインスリン注入を同時に行うことができる単一のオンボディデバイスを得るための本願発明を裏付けるものである。図11は、表皮41、真皮42および皮下組織43を含む患者の皮膚40の図(縮尺なし)であり、皮下組織45内で動作するように構成された注入システム45を備えている。Jockelらの以下の図12A図12Dのグラフ1200、1210、1220および1230は、組織に注入された異なる体積のインスリンに対する非対称水平拡散の優先パターンを示している。Jockelらは、この水平方向へのインスリンの優先的な拡散により、大量のインスリンの場合でも、インスリンデポーに対しての垂直方向の範囲が約4mmに制限されることを示している。したがって、グルコースを測定する真皮内のマイクロニードルアレイと、脂肪組織にインスリンを注入するカニューレの遠位端との間に10mm以上の物理的な分離を確保することは、グルコースセンサの汚染を防ぎ、持続グルコースモニタをインスリン送達システムに物理的に統合するのに十分である。
【0005】
人工膵臓デバイスのアルゴリズムは、制御理論および化学工学の原理に大きく依拠しており、いくつかのカテゴリに分類できる。第1のカテゴリでは、人工膵臓デバイスのアルゴリズムはユニホルモナルまたはバイホルモナルである。ユニホルモナルシステムは、高血糖を回避し、正常血糖の時間を最大化するために、インスリン注入のみを使用する。ユニホルモナルシステムでは、持続グルコースモニタリングシステムの実際の測定値または持続グルコースモニタリングデータから得られた予測グルコース値に基づいてインスリンを一時停止することにより、低血糖を予防または治療することができる。バイオホルモナルシステムでは、高血糖はユニホルモナルシステムと同様にインスリンの注入によって回避または治療されるが、低血糖は肝臓での内因性グルコースの産生を促進するグルカゴンの注入によって回避または治療される。第2のカテゴリでは、インスリン送達と血糖制御の最適化は、モデル予測制御(MPC)、比例積分微分(PID)、またはファジー論理(FL)などの様々なアルゴリズムアプローチによって実現され得る。最後に、人工膵臓は自動化の度合いによっても分類される。ハイブリッド型のクローズドループシステムでは、食事の量を定量的または定性的に推定して、ユーザが食事のボーラスを開始する必要がある。対照的に、完全なクローズドループシステムは、食事時のインスリン送達を自動化し、食事のボーラスのためのユーザ介入を必要としない。
【0006】
先行技術の解決策は、センシングシステムと送達システムの両方を、2つのシステム間の相互作用を避けるために空間的に十分に分離させているにもかかわらず、同じ生理的コンパートメント内で動作する分離可能な身体装着型デバイスとして動作させることを主に懸念してきた。相互作用は、クロストーク、干渉、汚染、希釈など、複数の形態をとり得る。分析物センシングモダリティの先行技術の実施形態は、電気化学的変換技術を使用して分析物を定量化するように構成されたカニューレ支援型の皮下埋め込み型ワイヤベースセンサを含む。治療薬送達モダリティの先行技術の実施形態は、皮下脂肪組織に療法を送達するように構成されたカニューレベースのパッチポンプおよび注入セットを含む。図1Aは、皮下脂肪組織中のグルコースの定量化のために構成されたユーザインターフェースデバイス115および携帯電話105を備えた先行技術の針/カニューレベースの分析物選択センサ110である。図1Bは、皮下脂肪組織中のグルコースの定量化のために構成されたユーザインターフェースデバイス125を備えた先行技術の針/カニューレベースの分析物選択センサ130である。図1Cは、皮下脂肪組織中のグルコースの定量化のために構成されたユーザインターフェースデバイス145を備えた先行技術の針/カニューレベースの分析物選択センサ150である。より最近の先行技術では、同じ生理的コンパートメント内で動作している場合であっても、センシング部と送達部との間の相互作用を最小限にするためにその2つの間に十分な横方向または空間的な隔離を備えているのにもかかわらず、単一の身体装着型デバイス内にセンシングモダリティと送達モダリティの両方を併置することが示されている。
【0007】
両デバイスの統合は当然のことのように思えるかもしれないが生理的、技術的に多くの課題があり、この問題をうまく解決することを妨げてきた。インスリン注入とグルコースセンシングの併置を阻む最大の障害は、インスリン製剤の安定化のために採用される防腐剤が、一般的なグルコースセンサで使用される酵素を損傷することであると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載の本発明は、これらの構成要素を別個の生理的コンパートメント内に配置すると同時に、それらを単一のオンボディデバイスに統合することを可能にするという目的を達成する。
【0009】
本発明の一態様は、ユーザの生理的状態に応じて治療介入を手動で行うためのデバイスである。このデバイスは、センサ、注入システム、単一の身体装着型構成要素、および制御アルゴリズムを備える。センサは、角質層を貫通して生存表皮または生存真皮にアクセスし、選択的な様式で1つ以上の分析物の存在を測定するように構成される。注入システムは、制御された様式で、液相の治療薬または治療薬の集合体を、生存表皮および生存真皮とは別個の分離した生理的コンパートメントに送達するように構成される。単一の身体装着型構成要素は、センサと注入システムとを統合する。デバイスは、当該制御アルゴリズムの出力に基づいて、注入システムを介して当該治療薬の指定された投薬量を送達するように構成される。
【0010】
本発明の別の態様は、ユーザの生理的状態に応じて治療介入を手動で行うためのデバイスである。このデバイスは、センサと、注入システムと、単一の身体装着型構成要素とを備える。センサは、角質層を貫通して生存表皮または生存真皮にアクセスし、選択的な様式で1つ以上の分析物の存在を測定するように構成される。注入システムは、制御された方法で、液相の治療薬または治療薬の集合体を、生存表皮および生存真皮とは別個の分離した生理的コンパートメントに送達するように構成される。単一の身体装着型構成要素は、センサと注入システムとを統合する。デバイスは、ユーザの行動に基づいて、注入システムを介して当該治療薬の指定された投薬量を送達するように構成される。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、単一の身体装着型構成要素を使用して、ユーザの生理的状態に応じて治療介入を手動で送達するための方法である。この方法は、センサによって、生存表皮または生存真皮における選択的な様式で1つ以上の分析物の存在を測定することを含む。この方法はまた、1つ以上の分析物の測定値を制御アルゴリズムに入力することを含む。この方法はまた、当該制御アルゴリズムの出力に基づいて、注入システムに、指定された投薬量の液相の治療薬または治療薬の集合体を真皮の下の生理的コンパートメントに送達させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】皮下脂肪組織中のグルコースの定量化のために構成された先行技術の針/カニューレベースの分析物選択センサである。
図1B】皮下脂肪組織中のグルコースの定量化のために構成された先行技術の針/カニューレベースの分析物選択センサである。
図1C】皮下脂肪組織中のグルコースの定量化のために構成された先行技術の針/カニューレベースの分析物選択センサである。
図2】分析物選択センサデバイス(左)および注入システム(右)の先行技術の実施形態あり、両デバイスは、望ましくない相互作用を回避する広範な空間的分離を特徴とする。
図3】皮下脂肪組織中のグルコースの定量化のために構成された先行技術の針/カニューレベースの分析物選択センサ(左)およびの真皮中のグルコースの定量化のために構成されたマイクロニードルアレイベースの分析物選択センサ(右)である。
図4】皮下組織内で動作するように構成された注入システム(左)および真皮内で動作するように構成された分析物選択センサ(右)の絵図(縮尺なし)であり、両方は、空間的に近接して配置されている。
図5A】マイクロニードルアレイベースの分析物選択センサの注入セットへの統合の図である。
図5B】マイクロニードルアレイベースの分析物選択センサのパッチポンプへの提案された統合である。
図6A】マイクロニードルアレイベースの分析物選択センサのパッチポンプへの提案された統合である。
図6B】マイクロニードルアレイベースの分析物選択センサのパッチポンプへの提案された統合である。
図6C図6Bの円6Cの分離図である。
図7】本発明のオープンループ実施形態の主要な方法ステップを示すブロック/プロセスフロー図である。
図8】本発明のクローズドループ実施形態の主要な方法ステップを示すブロック/プロセスフロー図である。
図9】オープンループ実施形態における本発明の入力、出力、および主要な構成因子を示すブロック/プロセスフロー図である。
図10】クローズドループ実施形態における本発明の入力、出力、および主要な構成因子を示すブロック/プロセスフロー図である。
図11】皮下組織内で動作するように構成された注入システムの図(縮尺なし)である。
図12A】皮下脂肪組織におけるインスリンデポー形成に関連するグラフの図である。
図12B】皮下脂肪組織におけるインスリンデポー形成に関連するグラフの図である。
図12C】皮下脂肪組織におけるインスリンデポー形成に関連するグラフの図である。
図12D】皮下脂肪組織におけるインスリンデポー形成に関連するグラフの図である。
図13】完全に統合されたマイクロアレイセンサを備えたインスリンパッチポンプの上面斜視図である。
図14】完全に統合されたマイクロアレイセンサを備えたインスリンパッチポンプの底面斜視図である。
図15】完全に統合されたマイクロアレイセンサを備えたインスリンパッチポンプの側面図である。
図16】コネクタを介して接続されたマイクロアレイセンサを備えたインスリンパッチポンプの底面斜視図である。
図17】コネクタに接続されたマイクロアレイセンサの分離図である。
図18】患者の皮膚に貼付されているマイクロアレイセンサ用のくぼみを備えたインスリンパッチポンプの底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
マイクロニードルを用いた分析物選択センサは、近年、開発が活発化しており、間質液、真皮間質液血液、血清、および血漿などの生理的流体中の多くの関連分析物の低侵襲定量化に向けた有望な機能を備えている。これらのデバイスは、基板上の少なくとも2つの突起のアレイから構成され、各突起は、近位端で当該基板に取り付けられ、遠位端まで200~2000マイクロメートルの間で延在する。少なくとも1つの当該突起は、金属、半導体、またはポリマー材料を含む少なくとも1つの電極を特徴とするように構成され、これらは、1つ以上のポリマー膜でさらにコーティングされ得る。特定の実施形態では、当該電極上または当該膜内に認識素子が配置され、当該生理的流体を占める内因性または外因性の化学種に対する選択的なセンシング能力を付与する。当該化学種は、バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル、薬物、治療薬、毒素、酵素、タンパク質、核酸、DNA、およびRNAのうちの少なくとも1つを含み得る。センシングモードは、電気的、化学的、電気化学的(電圧測定、電流測定、電位差測定)、光学的、蛍光測定、比色分析、吸光度、発光、コンダクタンス、インピーダンス、抵抗、静電容量を含み得る。典型的な貼付モードには、ユーザが供給した力による手段、ユーザが作動させたときに蓄積された位置エネルギーが運動エネルギーに変換されるパッケージングによる手段、および当該マイクロニードルベースの分析物選択センサを促進することができるアプリケータによる手段が含まれ、アレイのマイクロニードル構成因子を角質層に浸透させ生存表皮または生存真皮内でのセンシングを実現し、生存表皮または生存真皮の層を占める生理的媒体(間質液、血液)からの関連分析物の皮内分析を容易にすることができる。センシングは、持続的、準持続的、周期的、または単発の様式で実現される。センサデバイスは、いくつかの実施形態では、データ、測定値、または読み取り値を、スマートフォン、スマートウォッチ、および治療送達システムなどの接続された無線対応デバイスに中継するように構成された無線ラジオを含む。他の実施形態では、当該デバイスは、データ、測定値、または読み取り値を機械的に結合された治療送達システムに中継するように構成された少なくとも1つの電気接点を含む。
【0014】
治療送達システムは、療法、薬物、薬品、医薬品、または有効成分をユーザの生理的コンパートメントに注入するように構成される。これらのデバイスは、最も一般的には、当該療法のためのリザーバ、当該療法の量または投薬量を制御するための分配メカニズムまたはアクチュエータ、電源(すなわち、バッテリ)、およびファームウェアにプログラムされた組み込み制御アルゴリズムを含む電気コントローラを含む。いくつかの好ましい実施形態では、これらのシステムは、データ、測定値、または読み取り値を、スマートフォン、スマートウォッチ、および持続分析物モニタなどの接続された無線対応デバイスに中継するように構成された無線ラジオを特徴とする。治療送達システムの実施形態は、療法の皮下送達のためにポンプとカニューレの両方を統合する皮膚装着型の統合パッチポンプを含む。他の実施形態では、当該治療送達システムは、非皮膚装着型ポンプと皮膚装飾型注入セットを含む。持続皮下インスリン注入(CSII)および自動インスリン送達(AID)システムは、インスリンポンプ、制御アルゴリズム、および持続グルコースモニタとのデータインターフェース方法を備えており、血糖の乱高下を打開するためにインスリンの送達を自動化し、ユーザが正常血糖状態にある時間を最大化すること(別称、time-in-range)を目的としたクローズドループ動作の潜在性ゆえに、この領域における開発活動の最前線にいる。
【0015】
制御アルゴリズムは、持続分析物センサによって提供されるデータ入力に基づき、治療送達システムを介して治療の送達を調節するように設計され、病態生理的状態を打開するように投薬量が制御される治療介入の自動送達を可能にする。基礎的な速度送達は、治療送達の固定された時間速度を必要とするが、少なくとも1つの分析物を測定することができれば、効果的なフィードバックの方法を提供するので、ひいては、完全に自律的なクローズドループ療法に役立つ。具体的には、分析物センサは、持続グルコースモニタを含み得、治療送達システムは、持続皮下インスリン注入(CSII)システムを構成し得る。持続グルコースモニタは、皮膚の下のグルコースを測定するように構成され、CSIIシステムは、注入セットと対になるポンプや、または別の手段として皮膚付着パッチ(チューブレスポンプとしても知られる)に統合され、処方された用量のインスリンを送達するように構成されている。CSII、持続グルコースモニタ、または無線接続デバイス内に搭載された制御アルゴリズムは、当該持続グルコースモニタからの読み取り値に基づいて病態生理的状態を打開し、厳しい血糖コントロール、好ましくは正常血糖範囲内(70~180mg/dL)に収めるために必要な投薬量を計算する。当該制御アルゴリズムは、制御されたプロセス変数(すなわち、持続グルコースモニタによるグルコースレベル)を監視し、それを基準または設定点(すなわち、正常血糖範囲内のグルコースレベル)と比較するように設計されている。プロセス変数の実際の値と所望の値との差は、エラー信号、またはSP-PVエラーと呼ばれ、制御されたプロセス変数を設定点と同じ値にするための制御行動を生成するためのフィードバックとして適用される。換言すれば、制御アルゴリズムの主な目的は、エラー信号の最小化である。システムは、クローズドループ制御(すなわち、コントローラからの制御行動は、プロセス変数の値の形でプロセスからのフィードバックに依拠する)またはオープンループ制御(すなわち、コントローラからの制御行動は、プロセス出力に依拠しない)の下で動作することができる。様々な実施形態では、ノーフィードバックまたは負のフィードバックが採用され得る。負のフィードバックには、不安定なプロセスを安定させ、パラメータの変動に対する感度を低下させ、設定点のパフォーマンスを向上させることができるという利点がある。好ましい実施形態では、CSIIシステム内に埋め込まれたメモリまたはプロセッサが制御アルゴリズムを搭載する。通常、制御アルゴリズム(プロセッサまたはメモリに搭載)は、入力値として、ユーザが手動で入力したグルコースデータ(例えば、指先の血液サンプルなど)、または持続グルコースモニタ(通常は無線であるが、プロセッサは、単一のデバイス内に併置された直接の電気接続を有することができる)からストリーミングされたグルコースデータを受け取る。
【0016】
例示的なクローズドループコントローラアーキテクチャは、比例-積分-微分(PID)コントローラである。他の例示的なシステムと同様に、PIDコントローラは、システムの入力と出力との間の関係の数学的モデル(すなわち、時間またはプロセスに依拠する方程式のセット)で構成される、システム関数またはネットワーク関数とも呼ばれる伝達関数を広範囲に使用する。制御アルゴリズムの別の実施形態は、比例積分微分、モデル予測制御、ファジー論理、および安全監視設計のうちの少なくとも1つを備えることが可能である(Ann.NY Acad.Sci.2014 Apr:1311:102-23)。
【0017】
本発明は、1つ以上の分析物をセンシングし、かつ、付随する1つ以上の治療介入を、別個の生理的コンパートメントに送達するデバイスおよび方法を教示し、単一の身体装着型デバイスを使用して、空間的近傍で両方の行動を実施する際に生じるクロストーク、干渉、汚染、および/または希釈に関連付けられる問題を回避する。単一の身体装着型デバイスは、装着者の皮膚に容易に貼付されるように構成され、当該装着者の生存表皮または生存真皮においてセンシングルーチンに従事する。治療介入の送達または注入は、より深い、解剖学的に分離された別個の皮下脂肪組織層に向けられている。実施形態は、装着者が当該1つ以上の分析物のレベルに基づいて当該治療介入の投薬することを調整するオープンループシステムと、制御アルゴリズムが1つ以上の治療介入の投薬することを自律的に調整するクローズループシステムのいずれかを含むことができる。
【0018】
液相治療薬(すなわちインスリン)の送達用に構成された現在の針およびカニューレベースの注入システムは、分析物(すなわちグルコース)の持続定量化用に構成された針およびカニューレベースのセンサシステムと組み合わせて使用されることが多い。このようなシステムは一斉に動作し、組織の皮下脂肪層などの同様の生理的コンパートメント内において動作するように構成されているが、両方のシステムを、単一の身体装着型デバイス内で併置するには適していない。これは、単一の統合デバイスに物理的に取り付けられた2つのカニューレの挿入に関連する課題に一部起因するが、最大の課題は、両方のシステムを近接して動作させる際に、隔離されないことに起因する。すなわち、ともに付けられた所与の生理的コンパートメント内で分析物センサデバイスと治療送達デバイスを同時に動作させるシナリオにおいて、望ましくない化学的な相互作用が発生する可能性があり、これらの望ましくない影響の中には、クロストーク、干渉、汚染、局所希釈などがあり、これらは、指定された選択性、感度、安定性、および応答時間で目的の分析物を定量化するセンサの能力に直接影響を与える。一例として、インスリンポンプでしばしば採用されるインスリン液体製剤には、防腐剤としてm-クレゾールおよびp-ヒドロキシ安息香酸メチルが含まれる。どちらの化合物も、長期間の保存や大幅な温度変動に対してインスリンの活性を維持するのに効果的であるが、これらの物質には電気活性があり、同時に行われるグルコースの電気化学的検出を妨害する。したがって、グルコースを正確に測定するには、インスリンの送達をセンサから空間的に隔離する必要があり、この空間的隔離により、センシングと治療用の両方のモダリティを単一の身体装着型デバイスに統合することが非現実的となる。さらに、単一の身体装着型デバイスへの分析物センシング部および治療送達部の両方を併置するには、2つのカニューレを同時に、または段階的に移植することの難しさに関連して、応用面についても注目に値する課題を提示している。総括すると、装着者の利便性と簡便性のため、分析物センサモダリティと治療送達モダリティの両方を単一の身体装着型デバイスに統合することが強く求められている。これは特に、インスリン依存性糖尿病をより効果的に管理するために期待されている、インスリンの自動送達という課題に関連している。今日、現在の設計の実施により、分析物センシングモダリティおよび治療送達モダリティは両方とも、皮下、真皮下、または皮下組織としても知られている皮下脂肪組織で動作するように構成されている。両方のシステムを単一の身体装着型デバイスに併置することが望まれる場合、分析物センシングモダリティと治療送達モダリティとを十分に空間的に分離して、両方が隔離した仕方で動作できることが重要な課題となる(すなわち、どちらかのシステムも、他部で実行されるルーチンの影響を受けないようにする)。さらに、程度は低いものの、分析物センシングシステムと治療送達システムの両方の併置を、魅力的な形状を備えた単一の身体装着型デバイスに併置することは、特に両システムのマクロスケールの機能と、パッケージング、制御電子機器、およびハードウェアに対する独自の要件のために、一定の統合課題に直面する。
【0019】
身体装着型分析物センサ(持続グルコースモニタなど)は、1つ以上の分析物を高精度で選択的な様式でセンシングするように構成された高感度の電気化学システムである。多くの場合、センサは、他の内因性分析物が検出プロセスに干渉しないように構成できるが、当該センサの近傍における平衡状態(注入から生じるものなど)の乱れは、多数の外因性治療薬が当該分析物の定量化に直接干渉することは言うまでもなく、本来の場所での分析物のレベルを反映しない誤った測定値を誘発する可能性がある。本発明は、分析物センシングモダリティと治療送達モダリティの両方を、同じ生理的コンパートメントの同じオンボディデバイスに併置するという課題に対処するために、分析物センシングルーチンと治療送達ルーチンを、横方向ではなく横切って分離した別個の生理的コンパートメント(皮膚の層)において分離することを容易にするものである。この技術革新は、治療溶液のすぐ近くで動作する分析物選択センサでその後の望ましくない反応を引き起こすことなく、治療処置の送達を容易にする代替アプローチを示すものであり、これは、単一の身体装着型デバイス内など、両方のモダリティが同じ横方向の空間的近傍に配置されているシナリオであっても、センシング部と送達部の両方を異なる生理的コンパートメントに配置することによって実現される。本発明の分析物センサの例示的な実施形態は、皮膚の生存表皮層または生存真皮層で少なくとも1つの分析物をセンシングするように構成されたマイクロニードルまたはマイクロニードルアレイと、液相薬物、薬理学的なもの、生物学的なもの、または薬剤などの治療介入の少なくとも1つを皮下脂肪組織層に送達するように構成されたカニューレベースの注入セットまたはパッチポンプとで構成される。様々な実施形態における2つの部(パッチポンプまたはカニューレベースの注入セットに統合された分析物センサ)間を横断する分離は、2mm~50mmの範囲、最も好ましくは5mm~25mmの範囲であり得る。両生理的コンパートメントは、クロストーク、干渉、汚染、および検出中の分析物の局所的希釈の発生の可能性を軽減するために、十分に隔離されていることが期待される。
【0020】
図5Aは、マイクロニードルアレイベースの分析物選択センサ20を注入セット500に統合した図である。
【0021】
図5B図6Aおよび図6Bは、マイクロニードルアレイベースの分析物選択センサ20をパッチポンプ525に統合した図を示す。図6Cは、マイクロニードルアレイベースの分析物選択センサ20およびマイクロニードル25を示す。
【0022】
本明細書に開示される技術は、分析物センサシステムと治療送達システムとを並置して、異なる生理的コンパートメントで動作させながら、2つの間の空間的分離を最小限に維持するものである。これは、分析物センサを装着者の生存表皮または生存真皮に分配することによって達成され、それによって、システムは、そこに存在する1つ以上の分析物を定量化するように構成される。逆に、治療送達システムは皮下領域に分配される。センシングと送達の両方のモダリティを横断して分離し、センシングルーチンを生存表皮または生存真皮に限定し、送達ルーチンを皮下脂肪組織に限定することで、両方のルーチンの隔離を可能にし、ひいては、クロストーク、干渉、汚染、および検出中の分析物の局所希釈の発生を軽減するので、両方とも所与の生理的コンパートメントに併置されるべきである。本発明の優先的な実施形態では、システムは、オープンループのパラダイムで機能することが可能となり、それにより、療法は、ユーザによって引き起こされ当該センサからの測定によって導かれる。代替的に、システムは、センサの1つ以上の読み取り値に応じて、治療介入を自律的に送達するための制御アルゴリズムを備えることができる。このパラダイムは、糖尿病管理、特に集中的なインスリン療法を受けている人々に大きな影響を与えることが期待されている。
【0023】
本発明のオープンループの実施形態は、センサと注入サブシステムを統合したシステムであり、治療介入の送達を開始するためにユーザの行動を必要とする。このシステムは、センサと注入サブシステムの両方を内蔵し、分析物が検出される領域から物理的に別個のコンパートメントに治療薬を送達することができる身体装着型デバイスであることが好ましい。センサは、好ましくは、200~2000μmの間の垂直方向の広がりを有する複数のマイクロニードルであり、生存表皮または生存真皮内に位置する少なくとも1つの分析物のレベルを選択的に定量化するように構成される。図3は、ダイム301および針305に関連するマイクロニードルアレイセンサ325を示す。センサは、皮膚の1つの別個の層、例えば、生存表皮または生存真皮の分析物を測定するように設計されている。注入サブシステムは、例えば皮下脂肪組織など、皮膚の異なる物理的に別個の層に治療薬を送達するように設計されている。注入サブシステムは、好ましくは、静脈ライン、皮下注射針、注入カニューレ、または経口送達経路を介した、液相治療薬の皮下脂肪層、循環系(静脈、動脈、または毛細血管)、または筋肉組織への注入を提供するように構成された流体送達装置である。治療薬は、好ましくは、液相薬物、薬理学的なもの、生物学的なもの、または薬剤である。センサは、医療用接着剤で皮膚に接着され、中空のプラスチックチューブによってインスリンポンプに取り付けられたインスリン注入カニューレセットの底部に組み込まれ得る。代替的に、センサは、医療用接着剤で皮膚に接着されたインスリンパッチポンプの底部に組み込まれ得る。
【0024】
本発明のクローズドループの実施形態は、センサと注入サブシステムとを統合したシステムであり、治療介入の送達を開始するために制御アルゴリズムを採用する。このシステムは、センサと注入サブシステムの両方を内蔵し、分析物が検出される領域から物理的に別個のコンパートメントに治療薬を送達することができる制御アルゴリズムを備えた身体装着型デバイスであることが好ましい。センサは、好ましくは、200~2000μmの間の垂直方向の広がりを有する複数のマイクロニードルであり、生存表皮または生存真皮内に位置する少なくとも1つの分析物のレベルを選択的に定量化するように構成される。センサは、皮膚の1つの別個の層、例えば、生存表皮または生存真皮の分析物を測定するように設計されている。注入サブシステムは、例えば皮下脂肪組織など、皮膚の異なる物理的に別個の層に治療薬を送達するように設計されている。注入サブシステムは、好ましくは、静脈ライン、皮下注射針、注入カニューレ、または経口送達経路を介した、液相治療薬を皮下脂肪層、循環系(静脈、動脈、または毛細血管)、または筋肉組織への注入を提供するように構成された流体送達装置である。治療薬は、好ましくは、液相薬物、薬理学的なもの、生物学的なもの、または薬剤である。センサは、医療用接着剤で皮膚に接着され、中空のプラスチックチューブによってインスリンポンプに取り付けられたインスリン注入カニューレセットの底部に組み込まれ得る。代替的に、センサは、医療用接着剤で皮膚に接着されたインスリンパッチポンプの底部に組み込まれ得る。療法は、分析物の測定に応じた治療薬の投薬プロファイルとして定義され、アルゴリズムによって制御され得る。制御アルゴリズムは、好ましくは、ユーザからの入力またはマイクロニードルアレイ分析物選択センサによって記録された測定値に基づいて、送達される量、送達の期間、および/または送達の頻度を制御することによって、治療薬の投薬することを制御するために1つ以上の数学的変換を採用するソフトウェアまたはファームウェアルーチンである。数学的変換では、ユーザが提供するか、または他の場所から自律的に統合されるいずれかの追加の入力を採用できる。
【0025】
図7は、本発明のオープンループ実施形態の主要な方法ステップを示すブロック/プロセスフロー図である。オープンループの実施形態を実施するための方法700は、ブロック701で、マイクロニードルアレイ分析物選択センサが、生存表皮または生存真皮における1つ以上の分析物の測定値を記録することから始まる。生存表皮または生存真皮内の分析物の循環レベルは、センサによって定量化される。次に、ブロック702で、マイクロニードルアレイ分析物選択センサからの1つ以上の測定値がユーザに表示される。ユーザは、ディスプレイまたはインターフェース上で1つ以上の分析物の循環レベルの読み取り値を受け取る。代替的に、ユーザは、1つ以上の分析物の循環レベルが、事前定義された基準または値の範囲を超えているという通知を受け取る。次に、ブロック703で、ユーザは、必要に応じて、1つ以上の治療薬を投薬することを調整する。ユーザは、センサから提供された1つ以上の分析物の測定値に基づいて、療法の注入の量、期間、または頻度を操作する。次に、ブロック704において、1つ以上の治療薬が、治療送達メカニズムによって、皮下脂肪層、循環系(静脈、動脈、または毛細血管)、筋肉組織または経口送達経路に投与される。療法は、注入サブシステムを介してユーザに送達され、かつセンサから与えられた1つ以上の測定値に基づいてユーザが決定した投薬量に基づく。
【0026】
図8は、本発明のクローズドループ実施形態の主要な方法ステップを示すブロック/プロセスフロー図である。クローズドループの実施形態を実施するための方法800は、ブロック801で、マイクロニードルアレイ分析物選択センサが、生存表皮または生存真皮における1つ以上の分析物の測定値を記録することから始まる。生存表皮または生存真皮内の分析物の循環レベルは、センサによって定量化される。次に、ブロック802で、マイクロニードルアレイ分析物選択センサからの1つ以上の測定値が制御アルゴリズムに入力され、任意選択で、1つ以上の測定値がユーザに表示される。アルゴリズムへの入力として、現在の測定値、および任意で過去の保存された測定値が採用される。代替的に、ユーザはまた、ディスプレイまたはインターフェース上で1つ以上の分析物の循環レベルの読み取り値を受け取る。代替的に、ユーザは、1つ以上の分析物の循環レベルが、事前定義された基準または値の範囲を超えているという通知を受け取る。次に、ブロック803において、制御アルゴリズムは、必要に応じて、プログラムされた数学的変換に基づいて、1つ以上の治療薬を投薬することを調整する。アルゴリズムは、センサによって提供された1つ以上の分析物の測定に基づいて、治療の注入の量、期間、または頻度を自律的に操作する。次に、ブロック804において、1つ以上の治療薬が、治療送達メカニズムによって、皮下脂肪層、循環系(静脈、動脈、または毛細血管)、筋肉組織または経口送達経路に投与される。療法は、注入サブシステムを介してユーザに送達され、かつアルゴリズムの出力で与えられた投薬量の決定に基づく。
【0027】
生存表皮または生存真皮内の1つ以上の分析物の循環レベルの入力は、特定の生理的または代謝状態を示す、生存表皮または生存真皮における内因性または外因性の生化学的薬剤、代謝物、薬物、薬理学的なもの、生物学的なもの、または薬剤である。
【0028】
出力は、循環系(静脈、動脈、または毛細血管)、筋肉組織または経口送達経路への1つ以上の治療薬の投与である。センサによって提供された測定値は、注入サブシステムによる治療薬の放出を促すために採用される。オープンループの実施形態では、療法の送達は、ユーザによって制御される。クローズドループの実施形態では、アルゴリズムは、療法の用量、期間、および頻度を制御するために採用される。
【0029】
図9は、オープンループ実施形態における本発明の入力、出力、および主要な構成因子を示すブロック/プロセスフロー図900である。ブロック901では、分析物または分析物の循環レベルが真皮内にある。ブロック902では、センサが分析物を測定する。ブロック903では、ユーザは、必要に応じて、1つ以上の治療薬を投薬することを調整する。ユーザ903は、センサから提供された1つ以上の分析物の測定値に基づいて、療法904の注入の量、期間、または頻度を操作する。次に、ブロック905において、1つ以上の治療薬は、治療的送達メカニズムによって、皮下脂肪層、循環系(静脈、動脈、または毛細血管)筋肉組織または経口送達経路に投与される。療法は、注入サブシステムを介してユーザに送達され、かつセンサから与えられた1つ以上の測定値に基づいてユーザが決定した投薬量に基づく。
【0030】
図10は、クローズドループ実施形態における本発明の入力、出力、および主要な構成因子を示すブロック/プロセスフロー図1000である。ブロック1001では、分析物または分析物の循環レベルが真皮内にある。ブロック1002では、センサが分析物を測定する。制御アルゴリズム1003は、必要に応じて、プログラムされた数学的変換に基づいて、1つ以上の治療薬を投薬することを調整する。アルゴリズムは、センサによって提供された1つ以上の分析物の測定に基づいて、治療1004の注入の量、期間、または頻度を自律的に操作する。次に、ブロック1005において、1つ以上の治療薬が、治療送達メカニズムによって、皮下脂肪層、循環系(静脈、動脈、または毛細血管)、筋肉組織または経口送達経路に投与される。療法は、注入サブシステムを介してユーザに送達され、かつアルゴリズムの出力で与えられた投薬量の決定に基づく
【0031】
図13図15は、底面1310に完全に統合されたマイクロアレイセンサ20を備える本体1305を有するインスリンパッチポンプ1300を示す。
【0032】
図16図17は、パッチポンプ1300の底面1310上のコネクタ1350を介して接続されたマイクロアレイセンサ20を備えたインスリンパッチポンプ1300を用いた代替実施形態を示す。
【0033】
図18は、すでに患者の皮膚に貼付されているマイクロアレイセンサ(図示せず)上に位置決めするために、パッチポンプ1300の底面1310に凹部1335を有するインスリンパッチポンプ1300を示す。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】