(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】フラッシュバット溶接を使用したAL-SIコーティングプレス硬化鋼の接合
(51)【国際特許分類】
B23K 11/04 20060101AFI20220530BHJP
B23K 11/16 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B23K11/04 102
B23K11/16 311
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559243
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 US2020026493
(87)【国際公開番号】W WO2020206193
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503404132
【氏名又は名称】クリーブランド-クリフス スティール プロパティーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ダフィー、マシュー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ストレイビック、スティーブン ダブリュー.
(57)【要約】
【要約】
鋼板を接合するための方法は、鋼板を提供すること、および前記鋼板を別の材料に接合することを含む。前記鋼板は、Al-Siコーティングを有する少なくとも1つの表面を含む。前記鋼板を別の材料に接合する工程は、前記鋼板がコーティングされたままの状態で実行される。接合は、鍛造処理を使用して実行される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を接合するための方法であって、
Al-Siコーティングを有する少なくとも1つの表面を備える鋼板を提供する工程と、
前記鋼板が鍛造処理を使用してコーティングされたままの状態にある間に、前記鋼板を別の材料に接合する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記鋼板を接合する前記工程の前記鍛造処理は、フラッシュバット溶接処理を含む、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記フラッシュバット溶接処理は、前記鋼板を加熱し、前記鋼板を他の材料に押し込んで、前記鋼板を前記他の材料に溶着させることを含む、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記鋼板を接合する前記工程は、前記鋼板の前記少なくとも1つの表面から離れて前記Al-Siコーティングからアルミニウムを溶接フラッシュに移動させることを含む、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、さらに、
前記鋼板を前記他の材料に接合する前記工程の後、前記鋼板からフラッシュを除去するために前記鋼板をスカーフィングすることを有するものである、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記鋼板は、第1の鋼板を含み、前記他の材料は第2の鋼板を含み、前記第2の鋼板は、Al-Siコーティングを備える少なくとも1つの表面を有し、前記鋼板を接合する前記工程は、前記鍛造処理を使用して前記第1の鋼板を前記第2の鋼板に接合することを含む、方法。
【請求項7】
鋼板であって、
第1の板材および第2の板材を有し、前記第1の板材および前記第2の板材はそれぞれ、Al-Siコーティングを有する少なくとも1つの表面を含み、
前記第1の板材を前記第2の板材に接合する溶接を有し、前記溶接は、溶融帯およびフラッシュを規定し、前記溶融帯は、前記Al-Siコーティングからのアルミニウムを実質的に含まず、フラッシュは、前記Al-Siコーティングからの少なくともある程度のアルミニウムを含むものである
鋼板。
【請求項8】
請求項7記載の鋼板において、前記フラッシュは、スカーフィングによって前記溶融帯から除去するように構成されている、鋼板。
【請求項9】
請求項7記載の鋼板において、前記フラッシュは、前記Al-Siコーティングからのすべてのアルミニウムを含み、それによってアルミニウムが前記溶融帯から分離される、鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年4月5日に出願された米国仮出願番号62/829、891「フラッシュバット溶接を使用したAL-SIコーティングプレス硬化鋼の接合」に優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
鋼板は、さまざまな溶接処理を使用して、さまざまな状況で接合できる。いくつかの状況では、そのような鋼板は、溶接の前に溶融めっきされて、前記鋼板の1つまたは複数の表面に様々な金属コーティングを付着することができる。異なるコーティング特性を有する鋼板が接合される状況では、溶接前の溶融めっきが望ましい場合がある。例えば、テイラー・ウェルデッド・ブランク(tailor welded blanks)は、異なる厚さ、コーティング特性、および/または材料特性を有する異なる合金の複数のシートを接合することによって作製することができる。すべての前記シートが結合されると、ブランクが形成され、その後、所定の形状に打ち抜くまたは描画することができる。この方法には多くの利点があるが、前記コーティングされたままの状態で材料を接合すると、前記材料を接合する場所で適切な成形性、延性、および強度を維持するという課題が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Al-Si(アルミシリコン合金)コーティングされたプレス硬化鋼板またはシートは、レーザー溶接または他の適切な溶接処理を使用して接合できる。ただし、前記プレス硬化鋼の前記コーティングに含まれるアルミニウムに関しては、課題が生じる可能性がある。特に、前記溶接処理中に、アルミニウムは溶接溶融帯で前記プレス硬化鋼基板と偶発的に混合する。アルミニウムはフェライトを安定化させる傾向があるため、前記溶接溶融帯でアルミニウムを混合すると、前記溶接溶融帯でフェライトが形成される可能性がある。前記フェライトの存在は完全に望ましくないわけではないが、過度の濃度では、前記フェライトの存在は、最終的なホストプレス部品の溶接溶融帯の延性と強度を低下させる可能性がある。
【0004】
状況によっては、前記溶接溶融帯のアルミニウム濃度は、適切な接合準備によって減らすことができる。例えば、レーザー切断を使用して前記Al-Siコーティングを除去することができる。あるいは、前記溶接溶融帯内のアルミニウム濃度は、溶接中に溶加材を使用するなどのアルミニウム希釈の方法によって減らすことができる。ただし、状況によっては、どちらかの方法の不正確さ、生産時間の増加、および/または生産コストの増加のために、両方のアプローチが望ましくない場合がある。したがって、Al-Siコーティングプレス硬化鋼の溶接中にアルミニウムが前記溶接溶融帯に入る傾向を低減するための装置と方法を開発する必要がある。鉄鋼製造の文脈でいくつかの装置および方法が作られおよび使用されてきたが、本発明者の以前には誰も、添付の特許請求の範囲に記載の発明を作成または使用はしていないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、例示的な溶接システムの斜視図を示す。
【
図2】
図2は、フラッシュバット溶接を実行するために配向された一対の鋼板と共に
図1の前記溶接システムの上面図を示している。
【
図3】
図3は、接合された
図2の前記一対の鋼板を用いて、
図1の前記溶接システムの別の上面平面図を示している。
【
図4】
図4は、フラッシュバット溶接を使用して形成された溶接の画像を示している。
【
図5】
図5は、フラッシュバット溶接を使用して形成された溶接の別の画像を示している。
【
図6】
図6は、溶接断面の顕微鏡写真を示しており、前記溶接はフラッシュバット溶接を使用して形成されている。
【
図7】
図7は、溶接断面の別の顕微鏡写真を示しており、前記溶接はフラッシュバット溶接を使用して形成され、前記フラッシュは除去されている。
【
図8】
図8は、溶接断面のさらに別の顕微鏡写真を示しており、前記溶接は、レーザー溶接を使用して形成されている。
【
図9】
図9は、溶接断面のさらに別の顕微鏡写真を示しており、前記溶接はレーザー溶接を使用して形成されている。
【
図10】
図10は、溶接断面のさらに別の顕微鏡写真を示しており、前記溶接はフラッシュバット溶接を使用して形成され、前記フラッシュは除去されている。
【
図11】
図11は、溶接断面のさらに別の顕微鏡写真を示しており、前記溶接はフラッシュバット溶接を使用して形成され、および前記フラッシュが除去されている。
【
図12】
図12は、溶接断面のさらに別の顕微鏡写真を示しており、前記溶接はフラッシュバット溶接を使用して形成され、前記フラッシュが除去されている。
【
図13】
図13は、フラッシュバット溶接を使用して形成された溶接のさらに別の画像を示しており、前記溶接は熱間鍛造されている。
【
図14】
図14は、フラッシュバット溶接を使用して形成された溶接のさらに別の画像を示しており、前記溶接は熱間鍛造されている。
【発明を実施するための形態】
【0006】
レーザー溶接処理は、Al-Siコーティングされたプレス硬化鋼(PHS)を接合することに使用できるが、そのようなプレス硬化鋼はコーティングされたままの状態である。レーザー溶接処理は、高い生産性、低い入熱、低い歪みなどの多くの理由で望ましい場合があるが、Al-Siコーティングされたプレス硬化鋼を接合する場合のレーザー溶接処理の欠点は、比較的低強度の溶接が発生する可能性があることである。このような低強度の溶接は、前記溶接溶融帯へのアルミニウムの混合によるものと考えられている。例えば、アルミニウムは一般的にフェライト安定化素子と見なされている。前記一部のフェライトの存在は許容できるが、過剰な濃度では、前記フェライトは基材と比較して低い溶接強度につながる可能性がある。したがって、前記溶接部にアルミニウムが存在すると、前記溶接溶融帯に低強度領域が生じる。この低強度は、成形性の悪さや強度の低下という形で現れる可能性がある。したがって、いくつかの実施例では、前記溶接溶融帯にアルミニウムが存在することが望ましくない場合があることを理解されたい。
【0007】
この実施例では、フラッシュバット溶接処理は、Al-Siコーティングされた鋼板を接合するときに前記溶接溶融帯内のアルミニウムの存在を一般的に低減するために使用される。本明細書の説明は鋼板に言及しているが、「板」という用語は、ほんの一例として、鋼板を含む様々な形態の鋼を包含することを意図していることを理解されたい。
図1は、例示的なフラッシュバット溶接システム(10)を図式的に示す。この実施例では、前記フラッシュバット溶接システム(10)は、反対方向のクランプ板(20)を含む。各クランプ板(20)は、水平軸に沿って対応する鋼板(40)を固定するように構成される。前記対向するクランプ板(20)の一方または両方は、前記水平軸に沿って前記鋼板を互いに向かって移動させるように構成することができる。本実施例のクランプ板(20)は、実質的に同じであるとして本明細書に示され、説明されるが、他の実施例では、各クランプ板(20)の特定の構成は、様々な考慮事項に従って変えることができることを理解されたい。さらに、各クランプ板(20)の特定の構成要素は、特定の形状または幾何学的構成を有するものとして示されているが、他の実施例では、各クランプ板(20)の個々の構成要素の前記特定の形状または幾何学的構成は変えることができることを理解されたい。
【0008】
図に示すように、各クランプ(20)は、上部クランプアーム(22)、下部クランプアーム(24)、上部電極(26)、および下部電極(28)を含む。クランプアーム(22、24)は、一般的に、互いに向かって移動して個々の鋼板(40)をそれらの間に固定するように協調して動作するように構成される。次に、一方または両方のクランプアーム(22、24)が互いに向かって移動して、前記鋼板(20)を接触させることができる。図示されていないが、溶接システム(10)は、油圧作動ピストン、リニアアクチュエータ、モーター、送りねじなどの様々なアクチュエータを含み、一方は静止したままで、各クランプアーム(22、24)、または一方のクランプアーム(22、24)を動作するように構成させることができる。
【0009】
各クランプアーム(22、24)の内部部分は、それぞれ、上部電極(26)および下部電極(28)を含む。したがって、各電極(26、28)は、クランプアーム(22、24)と鋼板(40)との間に配置され、その結果、各電極(26、28)は、一般的に、鋼板(40)に直接係合するように構成される。以下でより詳細に説明するように、各電極(26、28)は、一般的に、溶接のために鋼板(40)内に抵抗熱を誘導するために鋼板(40)に電流を供給するように構成される。本実施例の各アーム(22、24)は、対応する電極(26、28)を含むが、他の実施例では、単一のアーム(22、24)のみが電極を備えることができることを理解されたい。あるいは、他の実施例では、電極(26、28)の代わりに、抵抗加熱ではなく誘導加熱を提供するためにワイヤーコイルが使用される。
【0010】
図2および3は、溶接システム(10)の例示的な使用法を示している。
図2に示されるように、前記溶接処理は、鋼板(40)が分離されているが、鋼板(40)間に突合せ溶接を形成するために並んだ構成で配向されている状態で始まる。この構成では、溶接される各鋼板(40)の特定の表面は、他の鋼板(40)に面している。この段階では、鋼板(40)は、1つまたは複数の鋼板(40)の少なくとも1つの表面がAl-Siコーティングを含むように、コーティングされたままの状態にあることを理解されたい。以下でより詳細に説明するように、前記溶接処理により、アルミニウム、酸化物、汚染物質、不純物、およびその他の望ましくない表面成分が前記溶接溶融帯からフラッシュに押し出されるため、接合部の準備は一般的に必要ない。
【0011】
溶接を開始するには、一方または両方のクランプ(20)をもう一方のクランプ(20)に向かって動かして、各鋼板(40)をもう一方の鋼板(40)に接触させる。
図3に見られるように、この移動の間、前記2つの鋼板(40)が接触する前に、電源(50)が通電される。触れると、電流は電源(50)から、電極(26、28)を介して鋼板(40)を通って流れる。本実施例の前記電源(50)は直流電源として示されているが、他の実施例では、交流、パルス電流、多相交流または直流を含む様々な他の電源を使用できることを理解されたい。
【0012】
使用される前記特定の電源(50)に関係なく、電源(50)は、一般的に、各鋼板(40)の合わせ面で熱を発生する大電流を提供するように構成されることを理解されたい。この電流は、各鋼板(40)の前記合わせ面とその近くの領域をプラスチックの特性にするために適用される。可塑性が発現すると、一方または両方のクランプ(20)が互いに向かって移動し、鋼板(40)間の前記接合部に圧力がかかる。この圧力により、前記鋼板(40)間で鍛造が行われる。本明細書で使用される鍛造という用語は、一般的に、圧力および塑性変形を使用して拡散メカニズムを介して溶接表面を接合する固体形態の溶接を指している。鍛造中に、すべての表面酸化物と不純物が前記溶接部から押し出されてフラッシュになることを理解されたい。この圧搾作用には、前記Al-Siコーティングの要素も含まれる。前記Al-Siコーティングの要素が前記溶接部から鍛造されているため、前記溶接溶融帯でアルミニウムが混合することはほとんどない。
【0013】
溶接が完了した後、前記接合された鋼板(40)はクランプ(20)から解放され、冷却されることができる。オプションで、溶接中に発生した前記フラッシュは、スカーフィングを使用して除去できる。この実施例でのスカーフィングは、一般的に、前記フラッシュの物理的な除去を指す。このような物理的除去は、前記フラッシュの前記特定の物理的特性に応じて、さまざまな方法によって実行できる。例えば、いくつかの実施例では、ハードカーバイドスカーフィングツールを使用して、前記溶接部から前記フラッシュを手動でこすり落とすことができる。より堅牢なフラッシュには、空気圧チッパーやグラインダーなどの他のツールを使用できる。さらに他の実施例では、手動または半自動の酸素アセチレンタッチまたはプラズマカッターを使用して、前記溶接部から前記フラッシュを除去することができる。
【実施例1】
【0014】
溶接は、最初の概念実証として、上記の溶接システム(10)を使用して準備された。特に、3回の溶接が行われ、各溶接は0.047インチの厚さのプレス硬化鋼試験片を0.059インチの厚さのプレス硬化鋼試験片に接合した。各試験片は幅4インチX長さ6インチで、各溶接部は幅4インチX長さ12インチの最終試験片を形成した。
【0015】
図4は、結果として得られる3つの溶接を示している。図に示すように、前記材料は前記フラッシュバット溶接処理を使用して正常に接合された。ただし、いくつかの材料の重複が観察された。この材料の重なりは、過度の材料の突き出し(前記クランプと前記溶接の間の距離など)が原因であると考えられた。
【実施例2】
【0016】
上記の溶接システム(10)を使用して、追加の溶接を準備した。特に、2枚のAl-Siコーティングされたプレス硬化鋼板は、フラッシュバット溶接を使用して接合された。試験片の寸法は、一般的に例1の寸法と同じであった。特に、0.047インチの厚さの溶接試験片が0.059インチの厚さの試験片と結合された。実施例1で行われた観察により、材料の突き出しが減少した。溶接中に、前記材料の突き出しが減少すると、前記クランプからの支持が増加し、それによって材料の溶接部の重なりが減少することが観察された。溶接後、前記溶接部はスカーフィングの前と後の両方で切断された(例えば、フラッシュの除去の前後)。
図5は、完成した溶接部の画像を示している。
【0017】
顕微鏡写真は、フラッシュバット溶接後に作成された前記切断面を使用して作成された。特に、
図6は、スカーフィングによってフラッシュを除去する前に、フラッシュバット溶接によって接合された2枚のAl-Siコーティング鋼板の顕微鏡写真を示している。
図6では、前記溶接部のアルミニウムが豊富な領域は明るい(または「白い」)領域として表示されるが、前記溶接部のアルミニウムが含まれていない領域は特性が暗くなる。図に示すように、アルミニウムが豊富な領域は、一般的に、溶接部の端に向かって、または前記フラッシュに押し込まれるか、そうでなければ移動した。
【0018】
図7は、スカーフィングによってフラッシュを除去した後、フラッシュバット溶接によって接合された2枚のAl-Siコーティング鋼板の顕微鏡写真を示している。上記で説明した
図6と同様に、前記溶接部のアルミニウムに富む領域は明るい領域として表示されるが、前記溶接部のアルミニウムを含まない領域は特性が暗くなる。図に示すように、アルミニウムが豊富な領域は、一般的にスカーフィングによって除去されている。残りのアルミニウムが豊富な領域は、前記溶接部の先端に向けられる。
図7に示される全ての残りのアルミニウムに富む領域は、まだ前記溶接部の前記フラッシュの一部であると見なされると理解されたい。
【実施例3】
【0019】
追加の溶接が実施例2で準備された前記溶接と比較する目的で準備された。特に、2つのAl-Siコーティングされた鋼板が、レーザー溶接処理を使用して接合された。前記レーザー溶接は、溶加材なしで実行された。言い換えれば、前記溶接は真っ直ぐなレーザー溶接で行われた。溶接後、前記溶接部を切断した。上記の実施例2で説明した溶接とは異なり、ここで実行する前記溶接では、レーザー溶接では一般的にフラッシュが発生しないため、スカーフィングは不要だった。
【0020】
顕微鏡写真は、レーザー溶接後に準備された前記切断面を使用して作成された。特に、
図8と
図9は、レーザー溶接によって接合された2枚のAl-Siコーティング鋼板の顕微鏡写真を示している。上記と同様に、前記溶接部のアルミニウムに富む領域は明るい(または「白い」)領域として表示されるが、前記溶接部のアルミニウムを含まない領域は特性が暗くなる。図に示すように、アルミニウムに富む領域は一般的に前記溶接溶融帯全体に分散している。上記した前記溶接部とは異なり、ここでの前記溶接部では、前記溶接部の先端に向かってアルミニウムが豊富な領域の分離が制限されている。したがって、本実施例で実施される前記溶接は、一般的に、前記溶接溶融帯にアルミニウムに富む領域が存在するため、実施例2で実施される溶接に比べて強度が低く、延性がない。
【実施例4】
【0021】
実稼働環境での性能をテストするために、製造用のフラッシュバット溶接設備で追加の溶接が準備された。溶接は、幅56インチ、厚さ0.080インチのアルミニウムコーティングされたプレス硬化鋼材料を使用して実行された。溶接品質は許容範囲内であった。
【実施例5】
【0022】
追加の溶接は、実施例4で準備された溶接と同様に、製造用フラッシュバット溶接設備で準備された。異なる材料の組み合わせを使用して、3つの溶接が準備されました。すべての溶接で、前記材料は同じであった、アルミニウムコーティングされたプレス硬化鋼、が、前記材料の寸法は異なった。特に、最初の溶接は、幅56インチX厚さ0.080インチの材料を幅56インチX厚さ0.080インチの材料に接合するために実行された。2番目の溶接は、幅50インチX厚さ0.060インチの材料を幅50インチX厚さ0.060インチの材料に接合するために実行された。3番目の溶接は、幅56インチX厚さ0.080インチの材料を幅50インチX厚さ0.060インチの材料に接合するために実行された。前記より軽い測定尺度の材料をせん断および溶接するために、通常のせん断ナイフのクリアランスが調整された。溶接後、接合された材料は切断された。
【0023】
顕微鏡写真は、フラッシュバット溶接後に準備された前記切断面を使用して作成された。特に、
図10は、0.080インチの厚さの材料が0.080インチの厚さの材料と接合された最初の溶接の顕微鏡写真を示している。同様に、
図11は、0.060インチの厚さの材料が0.060インチの厚さの材料と接合された2番目の溶接の顕微鏡写真を示している。最後に、
図12は、0.060インチの厚さの材料が0.080インチの厚さの材料と接合された3番目の溶接の顕微鏡写真を示している。
図10から12はすべて、スカーフィングによって前記フラッシュを除去した後の前記溶接部を示している。図に示すように、アルミニウムは一般的に前記溶接溶融帯に存在しなかった。
【実施例6】
【0024】
実施例5で行ったラッシュ溶接から10.5インチX10.5インチの溶接試験片を切り取った。次に、前記完成した試験片を、自動車のBピラーの下部を小規模にシミュレーションする熱間鍛造試験にかけた。
【0025】
図13と14は、熱間鍛造の結果を示している。図に示すように、目視検査を使用した熱間鍛造後の溶接性能は許容範囲内だった。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
鋼板は、さまざまな溶接処理を使用して、さまざまな状況で接合できる。いくつかの状況では、そのような鋼板は、溶接の前に溶融めっきされて、前記鋼板の1つまたは複数の表面に様々な金属コーティングを付着することができる。異なるコーティング特性を有する鋼板が接合される状況では、溶接前の溶融めっきが望ましい場合がある。例えば、テイラー・ウェルデッド・ブランク(tailor welded blanks)は、異なる厚さ、コーティング特性、および/または材料特性を有する異なる合金の複数のシートを接合することによって作製することができる。すべての前記シートが結合されると、ブランクが形成され、その後、所定の形状に打ち抜くまたは描画することができる。この方法には多くの利点があるが、前記コーティングされたままの状態で材料を接合すると、前記材料を接合する場所で適切な成形性、延性、および強度を維持するという課題が生じる可能性がある。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 特公昭61-99585号公報
(特許文献2) 特公昭59-118282号公報
(特許文献3) 欧州特許出願公開第2942143号明細書
(特許文献4) 独国実用新案第202007018832号明細書
(特許文献5) 米国特許第5,828,032号明細書
【国際調査報告】