(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】免疫疾患又は炎症を治療するためのニタゾキサニド及びエラフィブラノールの組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/426 20060101AFI20220530BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220530BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220530BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220530BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220530BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A61K31/426
A61P37/02
A61P29/00
A61P43/00 121
A61P1/16
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559864
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2020059941
(87)【国際公開番号】W WO2020208044
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペギー・パロシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ヴァルチャク
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC82
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA05
4C086ZA75
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZC75
4C206AA01
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4C206DA30
4C206KA01
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4C206ZB11
4C206ZB21
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、免疫疾患又は炎症の治療に使用するための、(i)ニタゾキサニド(NTZ)又はその類似体、及び(ii)PPARアゴニストを含む組合せ製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む組合せ製品であって:
(i)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化1】
式中:
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C1~C6)アルキル基、スルホニル基、スルホキシド基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルオキシ、カルボン酸基、カルボキシレート基、ニトロ基(NO
2)、アミノ基(NH
2)、(C1~C6)アルキルアミノ基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基又は(C1~C6)ジアルキルアミド基を示し;
R2は、水素原子、重水素原子、NO
2基、(C6~C14)アリール基、複素環基、ハロゲン原子、(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C2~C6)アルキニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、(C6~C14)アリールカルボニルアミノ基、カルボン酸基又はカルボキシレート基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、(C1~C6)ジアルキルアミド基、NH
2基又は(C1~C6)アルキルアミノ基を示し;
又は、R1及びR2は、それらが結合している炭素原子とともに、置換又は非置換の5~8員のシクロアルキル基、複素環基又はアリール基を形成し;
R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なり、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、水酸基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO
2基、スルホニルアミノアルキル基、NH
2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボン酸基、カルボキシレート基、又はR9基を示し;
R9は、O-R8基、又はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群より選択されたアミノ酸、又は式(A)の一部を示し:
【化2】
式中、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基又は(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を示し; R''及びR'''は、独立して、水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を示し;及び
R8は、水素原子、重水素原子、グルクロニジル基、又は
【化3】
基を示し、式中、R8a、R8b及びR8cは、同一又は異なり、水素原子又は重水素原子を示し;及び
(ii)式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化4】
式中:
Y1は、ハロゲン、Ra、又はGa-Ra基を示し;
Aは、CH=CH基又はCH
2-CH
2基を示し;
Y2は、Gb-Rb基を示し;
Ga及びGbは、同一又は異なり、酸素又は硫黄の原子を示し;
Raは、水素原子、非置換(C1~C6)アルキル基、(C6~C14)アリール基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換された(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルコキシ、又は(C1~C6)アルキルチオ基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルチオ基又は複素環基を示し;
Rbは、少なくとも1つの-COORc基で置換された(C1~C6)アルキル基を示し、式中、Rcは水素原子、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換された、若しくは置換されていない(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、又は複素環基を示し;及び
Y4及びY5は、同一又は異なり、1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換された、若しくは置換されていない(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基又は複素環基を示す;
免疫疾患又は炎症を治療する方法で使用するための組合せ製品。
【請求項2】
免疫疾患又は炎症は、肝臓の免疫疾患又は炎症である、請求項1に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項3】
肝臓疾患に関連する炎症の治療における、請求項1又は2に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項4】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)関連炎症、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)関連炎症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)関連炎症又は原発性硬化性胆管炎(PSC)関連炎症の治療における、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項5】
NASH関連炎症の治療における、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項6】
以下を含む組合せ製品であって、
(i)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩;及び
(ii)式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩;
目的の組織又は臓器への免疫細胞の浸潤を低減又は停止する方法で使用するための組合せ製品。
【請求項7】
目的の組織又は臓器が肝臓である、請求項6に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項8】
肝臓へのNASH関連免疫細胞の浸潤、肝臓へのNAFLD関連免疫細胞の浸潤、肝臓へのASH関連免疫細胞の浸潤、肝臓へのPBC関連免疫細胞の浸潤、又は肝臓へのPSC関連免疫細胞の浸潤を低減又は停止するための、請求項6又は7に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項9】
T細胞の浸潤を低減又は停止するための、請求項6から8のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項10】
肝臓へのT細胞の浸潤を低減又は停止するための、請求項6から9のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項11】
肝臓へのNASH関連T細胞の浸潤を低減又は停止するための、請求項6から9のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項12】
式(I)の化合物は、ニタゾキサニド又はその薬学的に許容される塩である、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項13】
式(II)の化合物は、エラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩である、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項14】
前記組合せ製品が、薬学的に許容される担体の中に、式(I)の化合物及び式(II)の化合物を含む医薬組成物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【請求項15】
前記組合せ製品が、連続して、別々に、又は同時に使用するための、式(I)の化合物及び式(II)の化合物を含む部品のキットである、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用するための組合せ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫疾患又は炎症の治療に使用するための、(i)ニタゾキサニド(NTZ)又はその類似体、及び(ii)PPARアゴニストを含む組合せ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答の活性化は、多数の疾患の引き金となる出来事になる可能性がある。例えば、臓器へのリンパ球の浸潤は、病態生理学的事象の活性化をもたらす可能性がある。肝臓では、浸潤と免疫応答の活性化は、線維症の誘発のための引き金となる出来事になる可能性がある。線維症は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)等の多くの肝疾患で観察される現象である。
【0003】
したがって、リンパ球浸潤を停止又は低減させるため、又は目的の細胞、組織又は臓器におけるリンパ球活性化を停止又は低減させるため、新しい治療戦略を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Greene's Protective Groups in Organic Synthesis"(Wut及びGreene (2007)、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、John Wiley & Sons)
【非特許文献2】Rossignolら、(1975)、2-Benzamido-5-nitrothiazoles、S.P.R.L. Phavic、Belg. 11頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(i)NTZ又はその類似体と(ii)PPARアゴニストとの組合せが、肝臓へのT細胞の浸潤を防止するという驚くべき観察に由来する。
【0006】
したがって、本発明は、以下を含む組合せ製品であって:
(i)以下に定義される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩;及び
(ii)以下に定義される式(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩;
免疫疾患又は炎症を治療する方法で使用するための組合せ製品に関する。
【0007】
本発明は更に、以下を含む組合せ製品であって:
(i)以下に定義される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩;及び
(ii)以下に定義される式(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩;
目的の組織又は臓器への免疫細胞の浸潤を低減又は停止する方法で使用するための組合せ製品に関する。
【0008】
NTZ及びその類似体を含む式(I)の化合物は、以下のように定義される:
【0009】
【0010】
式中:
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C1~C6)アルキル基、スルホニル基、スルホキシド基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルオキシ、カルボン酸基、カルボキシレート基、ニトロ基(NO2)、アミノ基(NH2)、(C1~C6)アルキルアミノ基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基又は(C1~C6)ジアルキルアミド基を示し;
R2は、水素原子、重水素原子、NO2基、(C6~C14)アリール基、複素環基、ハロゲン原子、(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C2~C6)アルキニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、(C6~C14)アリールカルボニルアミノ基、カルボン酸基又はカルボキシレート基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、(C1~C6)ジアルキルアミド基、NH2基又は(C1~C6)アルキルアミノ基を示し;
又は、R1及びR2は、それらが結合している炭素原子とともに、置換又は非置換の5~8員のシクロアルキル基、複素環基又はアリール基を形成し;
R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なり、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、水酸基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO2基、スルホニルアミノアルキル基、NH2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボン酸基、カルボキシレート基、又はR9基を示し;
R9は、O-R8基、又はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群より選択されたアミノ酸、又は式(A)の一部を示し:
【0011】
【0012】
式中、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基又は(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を示し; R''及びR'''は、独立して、水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を示し;及び
R8は、水素原子、重水素原子、グルクロニジル基、又は
【0013】
【0014】
基を示し、式中、R8a、R8b及びR8cは、同一又は異なり、水素原子又は重水素原子を示す。
【0015】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は以下の通りである:
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C1~C6)アルキル基、スルホニル基、スルホキシド基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルオキシ、カルボン酸基、カルボキシレート基、NO2基、NH2基、(C1~C6)アルキルアミノ基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基又は(C1~C6)ジアルキルアミド基を示し;
R2は、水素原子、重水素原子、NO2基、(C6~C14)アリール基、複素環基、ハロゲン原子、(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C2~C6)アルキニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、(C6~C14)アリールカルボニルアミノ基、カルボン酸基又はカルボキシレート基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、(C1~C6)ジアルキルアミド基、NH2基、(C1~C6)アルキルアミノ基を示し;
又は、R1及びR2は、それらが結合している炭素原子とともに、置換又は非置換の5~8員のシクロアルキル基、複素環基又はアリール基を形成し;
R3は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、O-R8基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO2、スルホニルアミノアルキル基、NH2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボン酸基、カルボキシレート基、又はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群より選択されたアミノ酸、又は式(A)の一部を示し:
【0016】
【0017】
式中、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基又は(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を示し; R''及びR'''は、独立して、水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を示し;
R8は、水素原子、重水素原子、又は
【0018】
【0019】
基を示し、式中、R8a、R8b及びR8cは、同一又は異なり、水素原子又は重水素原子を示し;及び
R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なり、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、水酸基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO2、スルホニルアミノ(C1~C6)アルキル基、NH2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボン酸基、カルボキシレート基、又はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群より選択されたアミノ酸、又は式(A)の一部を示し:
【0020】
【0021】
式中、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C1~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を示し;R''及びR'''は、独立して、水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を示す。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の式(I)の化合物において:
アルキル基は、置換又は非置換(C1~C6)アルキル基、特に置換又は非置換(C1~C4)アルキル基であってよく;
アルキニル基は、置換又は非置換(C2~C6)アルキニル基であってよく;
シクロアルキル基は、置換又は非置換(C3~C14)シクロアルキル基であってよく;
アルキルオキシ基は、置換又は非置換(C1~C4)アルキルオキシ基等の置換又は非置換(C1~C6)アルキルオキシ基であってよく;
アルキルチオ基は、置換又は非置換(C1~C4)アルキルチオ基等の置換又は非置換(C1~C6)アルキルチオ基であってよく;
アルキルアミノ基は、(C1~C4)アルキルアミノ基等の(C1~C6)アルキルアミノ基であってよく;
ジアルキルアミノ基は、(C1~C4)ジアルキルアミノ基等の(C1~C6)ジアルキルアミノ基であってよく;
アリール基は、置換又は非置換(C6~C14)アリール基等の置換又は非置換(C6~C14)アリール基であってよく;
複素環基は、置換又は非置換のヘテロシクロアルキル基又はヘテロアリール基でもよい。
【0023】
窒素保護基は、例えば、書籍である"Greene's Protective Groups in Organic Synthesis"(Wut及びGreene (2007)、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、John Wiley & Sons)等の文献に記載されており、当業者に周知である。
【0024】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、式(I')の化合物である:
【0025】
【0026】
式中、R9は、水素原子、重水素原子、O-R8基(R8は上記で定義されている)、又はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群より選択されたアミノ酸、又は式(A)の一部を示し:
【0027】
【0028】
式中、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C1~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を示し;R''及びR'''は、独立して、水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基又はそれらの薬学的に許容される塩を示す。
【0029】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、以下から選択される:
- ニタゾキサニド:
【0030】
【0031】
- チゾキサニド(TZ):
【0032】
【0033】
及び
- チゾキサニドグルクロニド(TZG):
【0034】
【0035】
別の実施形態では、式(I')の化合物は、
R8a、R8b及びR8cは、同一又は異なり、水素原子又は重水素原子を示し、及び/又は
R1、R2、R8a、R8b、R8c、R3、R4、R5、及びR6が同時に水素原子ではないという条件で、R1、R3、R4、R5、及びR6は、同一又は異なり、水素原子又は重水素原子を示す。
【0036】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d3)エタノエート、2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d2)エタノエート;又は2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d1)エタノエートである。
【0037】
別の特定の実施形態では、式(I)の化合物は、2-(5-ニトロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3,3-ジメチルブタノエート、特に下式の(S)-2-(5-ニトロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3,3-ジメチルブタノエート、又はその薬学的に許容される塩、例えば下式の塩酸塩(RM5061)であり:
【0038】
【0039】
別の特定の実施形態では、式(I)の化合物は、2-(5-ニトロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3-メチルペンタノエート、特に下式の(2S、3S)-2-(5-ニトロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3-メチルペンタノエート、又はその薬学的に許容される塩、例えば下式の塩酸塩(RM5066)であり:
【0040】
【0041】
別の特定の実施形態では、式(I)の化合物は、2-(5-クロロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3,3-ジメチルブタノエート、特に下式の(S)-2-(5-クロロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3,3-ジメチルブタノエート、又はその薬学的に許容される塩、例えば下式の塩酸塩(RM5064)であり:
【0042】
【0043】
別の特定の実施形態では、式(I)の化合物は、2-(5-クロロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3-メチルペンタノエート、特に下式の(2S、3S)-2-(5-クロロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3-メチルペンタノエート、又は薬学的に許容される塩、例えば下式の塩酸塩(RM5065)であり:
【0044】
【0045】
特定の実施形態では、成分(i)は、NTZ、TZ、TZG又はそれらの薬学的に許容される塩である。別の特定の実施形態では、成分(i)は、NTZ、TZ又はそれらの薬学的に許容される塩である。更に別の実施形態では、成分(i)は、NTZ又はその薬学的に許容される塩である。
【0046】
NTZ又は類似体の合成は、例えば、Rossignolら、(1975)、2-Benzamido-5-nitrothiazoles、S.P.R.L. Phavic、Belg. 11頁に記載されているように、又は当業者によって既知の他の合成方法により実施できる。
【0047】
式(II)の化合物は、PPARアゴニストであり、以下のように定義される:
【0048】
【0049】
式中:
Y1は、ハロゲン、Ra、又はGa-Ra基を示し;
Aは、CH=CH基又はCH2-CH2基を示し;
Y2は、Gb-Rb基を示し;
Ga及びGbは、同一又は異なり、酸素又は硫黄の原子を示し;
Raは、水素原子、非置換(C1~C6)アルキル基、(C6~C14)アリール基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換された(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルコキシ基、又は(C1~C6)アルキルチオ基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルチオ基又は複素環基を示し;
Rbは、少なくとも1つの-COORc基で置換された(C1~C6)アルキル基を示し、式中、Rcは水素原子、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換された、若しくは置換されていない(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、又は複素環基を示し;及び
Y4及びY5は、同一又は異なり、1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換された、若しくは置換されていない(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基又は複素環基を示す。
【0050】
式(II)の化合物の特定の実施形態では:
Y1は、ハロゲン、Ra、又はGa-Ra基を示し;
Aは、CH=CH基を示し;
Y2は、Gb-Rb基を示し;
Ga及びGbは、同一又は異なり、酸素又は硫黄の原子を示し;
Raは、(C1~C6)アルキル又は(C3~C14)シクロアルキル基、特に1つ又は複数のハロゲン原子によって置換された、又は置換されていない(C1~C6)アルキル基又は(C3~C14)シクロアルキル基を示す;
Rbは、1つの-COOR3基で置換された(C1~C6)アルキル基を示し、式中、Rcは、水素原子又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基を示し;及び
Y4及びY5は、独立して、(C1~C4)アルキル基を示す。
【0051】
式(II)の化合物の特定の実施形態では:
Y1は、Ra又はGa-Ra基を示し;
Aは、CH2-CH2基を示し;
Y2は、Gb-Rb基を示し;
Gaは、酸素又は硫黄の原子を示し、Gbは酸素原子を示し;
Raは、(C1~C6)アルキル又は(C3~C14)シクロアルキル基を示し;
Rbは、少なくとも1つの-COORc基で置換された(C1~C6)アルキル基を示し、Rcは、水素原子又は(C1~C4)アルキル基を示し;及び
Y4及びY5は、独立して、(C1~C4)アルキル基を示す。
【0052】
式(II)の化合物の特定の実施形態では:
Y1は、ハロゲン原子又はRa又はGa-Ra基を示し;
Aは、CH2-CH2基を示し;
Y2は、Gb-Rb基を示し;
Gaは、酸素又は硫黄の原子を示し、Gbは酸素の原子を示し;
Raは、1つ又は複数のハロゲン原子で置換された(C1~C6)アルキル又は(C3~C14)シクロアルキル基を示し;
Rbは、1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換された、若しくは置換されていない、又は少なくとも-COORc基で置換された(C1~C6)アルキル基を示し、式中、Rcは水素原子又は(C1~C4)アルキル基を示し;及び
Y4及びY5は、(C1~C4)アルキル基を示す。
【0053】
式(II)の化合物の特定の実施形態では、Gbは、酸素原子であり、Rbは、1つの-COORc基で置換された(C1~C6)アルキル基であり、式中、Rcは、水素原子又は非置換の直鎖状又は分岐状の(C1~C4)アルキル基を示す。
【0054】
式(II)の化合物の特定の実施形態では、Y1は、1つ又は複数のハロゲン原子によって置換された、又は置換されていない直鎖状又は分岐状の(C1~C6)アルキル基を含む(C1~C6)アルキルチオ基である。
【0055】
特定の実施形態では、式(II)の化合物は、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロプ-2-エン-1-オン(Elafibranor、ELA又はGFT505)、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-イソプロピルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロプ-2-エン-1-オン、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロプ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロプ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロプ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルオキシフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロプ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルオキシフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロプ-2-エン-1-オン、2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチルプロパン酸、2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチル-プロパン酸イソプロピルエステル、及びこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、式(II)の化合物は、ELA又はその薬学的に許容される塩である。
【0057】
本発明によれば、式(I)の化合物及び式(II)の化合物は、前記化合物の組合せが免疫細胞の浸潤に対して相乗作用を示すように選択できる。そのような相乗効果は、Bliss超過(EOB、又は、最高の単剤に対する超過)法を使用する等、当技術分野で周知の方法に従って決定可能である。この方法は、FDAが合剤製品の承認のために採用しており、期待される組合せ効果が、合剤製品の最良の成分を個別に服用した場合に得られる効果よりも優れていることを前提としている。実施例に示されているように、NTZとELAとの組合せは、免疫浸潤に対して相乗作用をもたらす。
【0058】
したがって、特定の実施形態では、式(I)の化合物は、NTZ、TZ又はそれらの薬学的に許容される塩であり、式(II)の化合物は、ELA又はその薬学的に許容される塩である。
【0059】
より好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、NTZ又はその薬学的に許容される塩であり、式(II)の化合物は、ELA又はその薬学的に許容される塩である。
【0060】
別の実施形態では、式(I)の化合物はNTZであり、式(II)の化合物はELAである。
【0061】
特定の実施形態では、本発明の組合せ製品は、薬学的に許容される担体中に、式(I)の化合物及び式(II)の化合物の両方を含む医薬組成物である。
【0062】
別の実施形態では、本発明の組合せ製品は、連続して、別々に、又は同時に使用するための、式(I)の化合物及び式(II)の化合物を含む部品のキットである。この実施形態では、各化合物は、異なる医薬組成物中に製剤化できる。
【0063】
本発明で使用される医薬組成物は、薬学の文脈内で許容可能な、1種又は複数の添加剤又は媒体(薬学的使用法に適合し、当業者が周知の例えば、生理食塩水、生理溶液、等張液等)を含むことができる。これらの組成物はまた、分散剤、可溶化剤、安定剤、防腐剤等の中から選択される1種又は複数の薬剤又は媒体を含むことができる。これらの製剤(液体及び/又は注射剤及び/又は固体)に有用な薬剤又は媒体は、特にメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物油、アカシアゴム、リポソーム等である。式(I)及び(II)の化合物は、経腸又は非経口投与用に製剤化できる。例えば、化合物は、経口、血管内(例えば、静脈内又は動脈内)、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮又は経鼻投与用に製剤化できる。製剤は、固体又は液体の剤形でもよい。例示的な製剤としては、これらに限定しないが、注射可能な懸濁液、又は経口摂取用の懸濁液、ゲル、オイル、丸薬、錠剤、坐剤、粉薬、カプセル、エアロゾル、軟膏、クリーム、パッチ、又は長期及び/又は徐放のための生薬形態の手段が挙げられる。この種の製剤には、セルロース、炭酸塩又はデンプン等の薬剤を有利に使用できる。
【0064】
式(I)及び(II)の化合物は、薬学的に許容される塩、特に医薬使用に適合する酸性又は塩基性の塩として製剤化できる。式(I)及び(II)の化合物の塩としては、薬学的に許容される酸付加塩、薬学的に許容される塩基付加塩、薬学的に許容される金属塩、アンモニウム塩及びアルキル化アンモニウム塩が挙げられる。これらの塩は、化合物の最終精製工程中に、又は以前に精製された化合物に塩を包含させることによって得ることができる。
【0065】
本発明の組合せ製品は、免疫細胞による組織又は臓器の浸潤を伴うか、又はそれによって特徴づけられる疾患を治療する方法で使用するためのものである。そのような疾患には、例えば、免疫疾患及び炎症が挙げられる。
【0066】
「治療」又は「治療する」という用語は、それを必要とする対象における疾患の治癒的又は予防的治療を指す。治療は、疾患の進行を予防し、治癒し、遅延させ、逆転させ、又は減速させ、それによって対象の状態を改善するために、明言された疾患を有する対象への本発明の組合せの投与を含む。組合せ製品はまた、健康であるか、又は疾患を発症するリスクがある対象に投与できる。治療される対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。本発明に従って治療される対象は、治療が求められる特定の疾患に関連するいくつかの基準、例えば、以前の薬物治療、関連する病状、遺伝子型、危険因子への曝露、ウイルス感染、並びに疾患に関連するバイオマーカーの検出に基づいて選択できる。
【0067】
対象となる実例となる組織又は臓器としては、これらに限定しないが、肝臓、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、陰茎、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば、小腸)、胆道、軟部組織(例えば、縦隔又は後腹膜)、骨髄、関節(例えば、膝、肩又は他の関節)及び胃が挙げられる。好ましい実施形態では、目的の組織又は臓器は肝臓である。
【0068】
したがって、本発明は、これらに限定しないが、肝臓、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、陰茎、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば小腸)、胆道、軟部組織(例えば縦隔又は後腹膜)、骨髄、関節(例えば膝、肩又は他の関節)又は胃における、免疫疾患又は炎症を治療する方法で使用するための本発明の組合せ製品に関する。好ましい実施形態では、本発明の組合せ製品は、肝臓の免疫疾患又は炎症、特に肝臓の炎症を治療する方法で使用するためのものである。更なる特定の実施形態では、本発明の組合せ製品は、NASH、NAFLD、ASH、PBC又はPSCに関連する肝臓の炎症を治療する方法で使用するためのものである。更に別の実施形態では、組合せ製品は、NASHに関連する炎症を治療する方法で使用するためのものである。
【0069】
浸潤を低減又は停止させることができる例示的な免疫細胞としては、顆粒球又は無顆粒白血球が挙げられる。免疫細胞としては、骨髄性細胞又はリンパ球様細胞も挙げられる。更なる例示的な免疫細胞型として、これらに限定しないが、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球及び単球が挙げられる。リンパ球の中で、T細胞、B細胞及びNK細胞の浸潤、特にT細胞の浸潤を低減又は停止させることができる。
【0070】
特定の実施形態では、本発明の組合せ製品は、目的の組織又は臓器へのT細胞の浸潤を伴うか、又はそれを特徴とする疾患を治療する方法で使用するためものである。より具体的には、組合せ製品は、肝臓へのT細胞の浸潤を伴うか、又はそれを特徴とする疾患を治療する方法で使用するためのものである。
【0071】
別の態様では、組合せ製品は、疾患に関連する免疫細胞の浸潤を低減又は停止する方法で使用するためのものである。特定の実施形態では、組合せ製品は、肝臓で発生する免疫細胞の浸潤を低減又は停止する方法で使用するためのものである。実例となる使用としては、これらに限定しないが、NASH、ASH、NAFLD、PBC、又はPSCに関連する肝臓への免疫細胞浸潤の低減又は停止が挙げられる。特定の実施形態では、免疫細胞はT細胞である。更に特定の実施形態では、組合せ製品は、NASHに関連する、肝臓へのT細胞の浸潤を低減又は停止する方法で使用するためのものである。
【0072】
投与に関連する頻度及び/又は用量は、治療される対象、治療される疾患、疾患の段階、投与の形態等に応じて、当業者によって適合させることができる。通常は、式(I)の化合物、特にNTZ又はその薬学的に許容される塩は、0.01mg/dayから4000mg/dayの間、例えば、50mg/dayから2000mg/day、具体的に100mg/dayから1000mg/day、より具体的には500mg/dayから1000mg/dayを含む用量で投与できる。式(II)の化合物、特にELA又はその薬学的に許容される塩は、0.01mg/dayから4000mg/dayの間、例えば1mg/dayから2000mg/day、具体的には25から1000mg/day、より具体的には50から200mg/day、更により具体的には80mg/dayから120mg/dayを含む用量で投与できる。特定の実施形態では、式(I)の化合物及び式(II)の化合物は、これらの用量で、例えば、丸薬又は錠剤の形態で経口投与される。更なる特定の実施形態では、式(I)の化合物及び式(II)の化合物は、経口組成物(例えば、丸薬又は錠剤)等の同じ組成物であり、これらの用量で投与される。別の実施形態では、式(I)の化合物及び式(II)の化合物は、経口組成物(例えば、丸薬又は錠剤)等の異なる組成物であり、これらの用量で投与される。別の実施形態では、式(I)及び(II)の化合物は異なる組成物であり、式(I)の化合物は経口摂取用の液体懸濁液の形態であり、式(II)の化合物は錠剤の形態である。
【0073】
投与は、毎日、又は必要に応じて1日に数回実施できる。治療期間は、治療する特定の疾患によって異なるであろう。例えば、投与は、1日又は数日の間に、例えば、少なくとも1日の間に、少なくとも2日の間に、少なくとも3日の間に、少なくとも4日の間に、少なくとも5日の間に、少なくとも6日の間に、又は少なくとも7日の間に実施できる。或いは、投与は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも4週間実施できる。慢性疾患の場合、投与は、4週間以上、例えば、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、又は6か月超、例えば少なくとも1年、又は数年と考えることができる。場合によっては、本発明の組合せ製品は、対象の生涯に渡って投与できる。
【0074】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】ELAとNTZとを併用する長期経口投与は、T細胞の浸潤と活性化に関連するいくつかのマーカー(A:CD3g、B:Clec4e、C:IL12b)の肝臓での発現をmRNAレベルで有意に低下させる。 対照(CSAA)食餌、CDAA+1%CHOL(CDAA/c)食餌、又はNTZ 100mg/kg/dayのみを添加したCDAA/c食餌、ELA 1mg/kg/dayのみを添加したCDAA/c食餌、NTZ 100mg/kg/day及びELA 1mg/kg/dayを併用して添加したCDAA/c食餌を、6週齢のC57BL/6マウスに12週間与えた。犠牲にした後、肝臓サンプルに対してRNA配列分析を実施した。
【
図2】ELAとNTZの長期経口投与により、肝臓へのT細胞の浸潤が大幅に低減する。 対照(CSAA)食餌、CDAA+1%CHOL(CDAA/c)食餌、又はNTZ 100mg/kg/dayのみを添加したCDAA/c食餌、ELA 1mg/kg/dayのみを添加したCDAA/c食餌、NTZ 100mg/kg/day及びELA 1mg/kg/dayを併用して添加したCDAA/c食餌を、6週齢のC57BL/6マウスに12週間与えた。CD3+細胞の数は、免疫組織化学によって決定し、定量化した(
図A)。各群のCD3+染色の代表的な画像を
図B(倍率×400)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
材料と方法
統計分析
実験結果は平均±標準誤差として表し、棒グラフとしてプロットした。統計分析は、Prismバージョン7を使用して、以下のように実行した。
CSAA群とCDAA+1%chol群とは、マンホイットニー検定で比較した($:p<0.05;$$:p<0.01;$$$:p<0.001)。
一元配置分散分析及び未修正のフィッシャーのLSD事後分析により、治療群をCDAA+1%chol食餌又は他の治療群と比較した(*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001)。
【0077】
線維化NASHの長期CDAA+1%コレステロールモデルにおけるエラフィブラノール、ニタゾキサニド及びエラフィブラノール+ニタゾキサニドの組合せの評価(12週間)
実験計画
コリン欠乏及びL-アミノ酸制限(CDAA)食餌は、肝臓β酸化及び超低密度リポタンパク質の産生に不可欠なコリンを欠いており、肝細胞の脂肪症を誘発すると考えられている。続いて、脂質過酸化反応と酸化ストレスが小葉の炎症を引き起こし、包括的に線維症を引き起こす。
【0078】
本研究では、NTZ 100mg/kg/day、ELA 1mg/kg/day、及び両方の組合せの予防効果をマウスモデルで評価した。対照(CSAA)食餌(n=8)、CDAA+1%コレステロール食餌(n=12)、又は、NTZ 100mg/kg/dayを添加したCDAA+1%コレステロール食餌(n=8)、ELA 1mg/kg/dayを添加したCDAA+1%コレステロール食餌(n=8)、又は合剤(NTZ 100mg/kg/dayとELA 1mg/kg/dayとの共投与)を添加したCDAA+1%コレステロール食餌(n=8)を、6週齢の雄C57Bl/6Jマウスに12週間与えた。食物は、Ssniff(登録商標)社(ゾースト、ドイツ)から購入した。ニタゾキサニド(Interchim社、#RQ550を参照)、エラフィブラノール(Genfit社)又は両方の化合物を、Ssniff(登録商標)に混ぜ込み、必要な用量の粉末形態のCDAA+1%chol食餌を得た。
【0079】
体重と摂餌量は週に2回測定した。治療の最終日は、6時間の絶食期間後にマウスを犠牲にした。トランスクリプトミクス及び組織学的研究のため、肝臓を迅速に摘出した。
【0080】
すべての動物的処置は、標準的なプロトコルに従って、及び実験動物の適切な世話と使用に関する標準的な推奨事項に従って実施された。
【0081】
トランスクリプトミクス研究
RNA抽出
肝臓の全RNAは、Nucleospin(登録商標)96キット(Macherey Nagel社)を使用して、製造元の指示に従って分離した。RTバッファー1x(Invitrogen社 cat#P/NY02321)、1mM DTT(Invitrogen社 cat#P/NY00147)、0.5mM dNTPs(Promega社)、200ng pdN6(Roche社 cat#11034731001)及び40Uのリボヌクレアーゼ阻害剤(Promega社 cat#N2515)の存在下で、M-MLV-RT(モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素)(Invitrogen社 cat#28025)を使用して、150ngの全RNAをcDNAに逆転写した。
【0082】
RNA配列解析
ナノドロップによるRNAサンプル濃度の測定時に、バイオアナライザーを使用して品質を評価した。Illumina社のTruSeq stranded mRNA LTキットを使用してライブラリーを調製し、高出力フローセルを備えたNextSeq 500デバイス(ペアエンドシーケンス、2x75 bp)を使用して、mRNAの配列解析を行った。
【0083】
RNA配列データ分析
Trimmomatic v.0.36を使用して、次のパラメータにより読み取りデータをクリーンアップした:SLIDINGWINDOW:5:20 LEADING:30 TRAILING:30 MINLEN:60。次に、アライナとしてhisat2 v.2.1.0をデフォルトのパラメータメータで使用して、rnacocktailを使用して、読み取りデータをゲノムリファレンス(ムス・ムスクルス(Mus musculus) GRCm38.90)にアラインメントした。
【0084】
カウントテーブルは、featureCounts v1.5.3をデフォルトのパラメータで使用して作成した。
【0085】
発現差のある遺伝子(DE遺伝子)を特定するために、R(バージョン3.4.3)とDESEq2ライブラリー(v.1.18.1)を使用した。遺伝子アノテーションは、AnnotationDbiライブラリー(v.1.40.0)を使用して取得した。簡単に説明すると、FeatureCountsによって生成されたカウントマトリックスを、DESeqDataSetFromMatrix()関数と、それに続くDESeq2ライブラリーのDEseq()関数によって分析した。各条件(すなわち、NTZ+CDAA/cとCDAA/cの比較)について、DESeq2のresults()関数を使用して倍率変化とp値とを取得した。Ensemble IDをキーとして使用して、異なるテーブルを結合した。
【0086】
組織学
犠牲にしたときに、肝臓サンプルを組織学的分析のために処理し、以下のように調べた。
【0087】
組織の埋め込みと切片化
肝臓薄片を最初にホルマリン4%溶液で40時間固定し、続いてエタノールで数回脱水した(70、80、95、100%エタノールでの連続浴)。続いて、肝臓片を3つのキシレン浴でインキュベートし、それに続いて2つの流動パラフィン(58℃)浴でインキュベートした。次に、Histowax(登録商標)を穏やかに満たした小さなラックに肝臓片を入れ、組織を完全に覆った。次に、組織サンプルを3μmの厚さの切片にした。免疫組織化学(IHC)のために切片を調製した。
【0088】
免疫組織化学アッセイ:CD3+
免疫組織化学アッセイは、免疫ペルオキシダーゼプロトコルを使用して実施した。切片を58℃及びキシレン浴(2×3分)で脱ロウした。標本は、エタノール(100%、100%、95%、70%の連続浴)(各3分)中で水和して、1xPBS(2×5分)に沈めた。続いて、内因性ペルオキシダーゼをH2O2溶液(蒸留水中0.3%H2O2)で30分間阻害し、続いて1xPBSで5分間ずつ3回洗浄した。更に、熱を介した抗原回復を、95℃で40分間、pH6.0のクエン酸バッファーを使用して実施した。非特異的結合を阻害するため、3%の正常ヤギ血清と0.1%のTritonを含む1xPBS溶液を60分間添加した。続いて、組織を一次CD3抗体と伴に4℃で一晩インキュベートして、1xPBSですすいだ(3×5分)。組織をHRP二次抗体(Novus Biological社)と室温で1時間インキュベートした後、1xPBSですすいだ(3×5分)。次に、ペルオキシダーゼ基質である3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)によってスライドを20分間顕色させ、水道水ですすいだ。最後に、マイヤーヘマトキシリンで染料を3分間対比染色して、水道水ですすぎ(2分間)、組織をエタノールとキシレンで脱水した。
【0089】
CD3+IHC分析
組織学的検査及び採点は盲目的に実施した。Pannoramic 250 Flash IIデジタルスライドスキャナー(3DHistech社)を使用して画像を取得した。採点:各切片から無作為に選択された10個の領域を、QuPathソフトウェアで調査及び分析した。茶色に染色された陽性細胞を、陽性細胞/選択された領域の平均によって提示した。
【0090】
結果
ニタゾキサニド、エラフィブラノール、又は両方の薬物の組合せは、線維化NASHモデルで評価した。肝臓サンプルのトランスクリプトミクス分析により、T細胞の浸潤と活性化に関連するいくつかのマーカーが、CSAA対照条件と比較して、CDAA/c治療計画によって有意に誘導されたことが明らかになった(CD3g、Clelc4e、IL12b)。予期せぬことに、ELA/NTZの組合せはこれらのマーカーのmRNAレベルを大幅に低下させる。
【0091】
それらのデータを確認するために、免疫組織化学分析を実施した。その結果、CDAA/c群とCSAAを比較すると、T細胞数を反映したCD3染色の有意な増加が観察される。トランスクリプトミクス分析に関しては、ELA/NTZの組合せのみがCD3+細胞の量を大幅に低減する。
【0092】
要するに、これらのデータは、肝臓へのT細胞の浸潤を防ぐためのELA/NTZの組合せの予想外の効力を示している。
【国際調査報告】