(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】疎水性高温光学アクリルコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20220530BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220530BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C08F220/18
G02B5/30
G02B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560389
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020026377
(87)【国際公開番号】W WO2020206113
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】521441087
【氏名又は名称】ジ, ジャシン ジェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジ, ジャシン ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】セシャドリ, スリ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ホール, ゲイリー エー.
【テーマコード(参考)】
2H149
4J100
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB04
2H149AB12
2H149AB13
2H149BA02
2H149CA02
2H149CB02
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2H149DB24
2H149EA02
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2H149FA08X
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2H149FD03
2H149FD09
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2H149FD22
2H149FD25
2H149FD30
4J100AJ02R
4J100AL03P
4J100AL08Q
4J100BC04Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA25
4J100DA62
4J100DA63
4J100JA33
4J100JA43
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、高い熱安定性と優れた光学特性とを有する、高Tgの疎水性(メタ)アクリレートが組み込まれたアクリル系のコポリマー及びターポリマーに関する。これらのコポリマーは光学的に透明であり、十分に大きい分子量と共に115~140℃のTgを有するコポリマーを提供する。コポリマーは、優れた耐UV性と共に、高い耐熱性、高い光透過性、低いヘイズ、低い吸湿性、優れた環境安定性、優れた高温熱安定性、及び優れた機械的特性を示すことが見出されている。コポリマー、またはターポリマーは、照明管、薄肉部品、光学レンズ、押出フィルム、(共)押出シート/形材、熱成形可能なシート、キャストシート、複合材料などを形成するために使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物から選択される0.1~20重量パーセントのモノマー単位と;
b)50~80重量パーセントのメチルメタクリレートモノマー単位と;
c)メチルメタクリレートと共重合可能な0~49.9重量パーセントの任意選択的な他のモノマー単位と;
を含む高Tgコポリマーを含む、高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物であって、前記コポリマーが、115℃~150℃、好ましくは116℃~140℃、より好ましくは120℃~130℃のTgを有する、前記組成物。
【請求項2】
前記tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートモノマー単位及び/または前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートモノマー単位が、30/70~85/15、より好ましくは40/60~80/20、最も好ましくは50/50~75/25のトランス/シス比を有する、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物。
【請求項3】
前記任意選択的な他のモノマーが、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、アルファメチルスチレン、無水マレイン酸、マレイミド、イソボミルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択される0.01~25重量パーセントの高Tgコモノマーを含む、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー。
【請求項4】
前記任意選択的な他のモノマーが、0.01~10重量パーセントのメタクリル酸、好ましくは0.1%~5%のメタクリル酸を含む、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー。
【請求項5】
前記コポリマーの固形分の重量を基準として50~3500ppmの酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物。
【請求項6】
前記コポリマーが、55,000g/モル~250,000g/モル、好ましくは75,000g/モル~200,000g/モル、より好ましくは90,000g/モル超200,000g/モルまでの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物。
【請求項7】
少なくとも89%、好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%のTWLTと;ASTM法D1003を使用して厚さ3.2mmの板状試験片上で測定される5%未満、好ましくは3%未満、最も好ましくは2%未満の光学的ヘイズとを有する、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物。
【請求項8】
前記コポリマーが589nmの波長で1.47~1.50の屈折率を有する、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物。
【請求項9】
前記組成物が、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物と、1種以上の相溶性ポリマーとのブレンドを含み、前記高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物のブレンドを含む前記高Tgのポリマー組成物が、前記ポリマー固形分全体の5~95重量パーセント、好ましくは5~75重量パーセント、より好ましくは10~60重量パーセントで前記ブレンド中に存在する、請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物を含む物品であって、照明管、薄肉部品、光学レンズ、押出フィルム、(共)押出シートまたは形材、熱成形可能シート、キャストシート、複合材料、LED/OLED光学部品、建築及び建設で使用される共押出形材、または反射標識である、前記物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱安定性と優れた光学特性とを有する、高Tgの疎水性(メタ)アクリレート及び誘導体が組み込まれたアクリル系のコポリマー及びターポリマーに関する。これらのコポリマーは光学的に透明であり、十分に大きい分子量と共に115~150℃のTgを有するコポリマーを提供する。このコポリマーは、優れた耐UV性と共に、高い耐熱性、高い光透過性、低いヘイズ、低い吸湿性、優れた環境安定性、優れた高温熱安定性、及び優れた機械的特性を示すことが見出されている。このコポリマーまたはターポリマーは、照明管、薄肉部品、光学レンズ、押出フィルム、(共)押出シート/形材、熱成形可能なシート、キャストシート、複合材料などを形成するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマー及びコポリマー、特に(メタ)アクリルポリマーは、透明性、機械的特性、及び加工性などの優れた特徴を有しており、自動車部品、電気部品、工業部品、光学材料、家庭用電化製品の様々な部品、意匠部品、雑貨などの様々な分野で広く使用されている。
【0003】
高Tgのアクリルポリマーは、自動車のフロントインナーレンズ、薄肉部品、照明管、電子機器の光学保護/位相差フィルム、ソーラーパネル/フィルム、家電製品、複合材料などの、高い光学的透明性と高い耐熱性とが求められる用途で有用である。自動車のLEDフロントインナーレンズや薄肉部品における高温アクリルコポリマーの市場は急激に増加すると見込まれる。加えて、高温アクリルフィルムはLED/OLEDディスプレイにも使用されている。
【0004】
メチルメタクリレート/メタクリル酸コポリマーなどの高Tgアクリルコポリマーは、US2018-0362688に記載されている。
【0005】
US10,043,930には、太陽電池のフロントシートで使用するための、様々な高Tgコモノマーを使用する高Tgアクリルコポリマーが記載されている。
【0006】
標準的なアクリルコポリマー及び製品の主な問題は、自動車のフロントインナーレンズ、ソーラーパネル、及び電子機器の新しい光学フィルムに求められる85℃/85%RH試験などの長期環境安定性試験に合格できないことである。メタクリル酸などのほとんどの高Tgモノマーは親水性であり、そのコポリマーは耐湿性を有さない。
【0007】
本発明者らは、今回驚くべきことにこの問題を解決し、高いTg及び高い光学的透明性を維持しながらも環境安定性試験に合格できる材料を製造した。新規なコポリマーは、高Tg及び高分子量を維持しながらコポリマーの疎水性を高めるために、高Tgの疎水性モノマーを含む。得られる高分子量、高Tg、かつ高い光学特性のコポリマーは、高温及び/または高湿環境を必要とする様々な多くの用途で有用である。
【0008】
具体的には、特定のシス/トランス比の範囲を有する疎水性コモノマーであるtert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び3,3,5,トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが、pMMAと共重合されることで吸水性を低下させ、疎水性を高めることが見出された。加えて、高いTg及び/またはビカット温度、高分子量が得られた。この疎水性コポリマーを用いて製造されたフィルム、シート、及び物品は、91%を超える光透過率及び2.5%未満のヘイズを示した。このコポリマーは、これをターポリマーやテトラポリマーなどにする追加のモノマー単位を含み得る。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、第1の態様において、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物から選択される0.1~20重量パーセントのモノマー単位と;50~80重量パーセントのメチルメタクリレートモノマー単位と;メチルメタクリレートと共重合可能な0~49.9重量パーセントの任意選択的な他のモノマー単位と;から重合された高Tgコポリマーを含む、高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物に関する。形成されたコポリマーは、115℃~150℃、好ましくは116℃~140℃、より好ましくは120℃~130℃のTgを有する。
【0010】
本発明の第2の態様では、高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物は、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートモノマー単位及び/または3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートモノマー単位において、30/70~85/15、より好ましくは40/60~80/20、最も好ましくは50/50~75/25のトランス/シス比を有する。
【0011】
本発明の第3の態様では、上述した態様のいずれかの高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマーは、高Tgコモノマーの0.01~25重量パーセントの、他の任意選択的なモノマーを含む。これらの任意選択的なモノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、アルファメチルスチレン、無水マレイン酸、マレイミド、イソボミルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド、またはこれらの混合物から選択され、特には0.1~5重量パーセントのメタクリル酸である。
【0012】
本発明の第4の態様では、前述した態様のいずれかの高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物は、コポリマー固形分の重量を基準として50~3500ppmの酸化防止剤をさらに含み得る。
【0013】
本発明の第5の態様では、前述した態様のいずれかの高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物は、55,000g/モル~250,000g/モル、好ましくは75,000g/モル~200,000g/モル、より好ましくは90,000g/モル超200,000g/モルまでの重量平均分子量を有する。
【0014】
本発明の第6の態様では、前述した態様のいずれかの高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物は、少なくとも89%、好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%のTWLTと;ASTM法D1003を使用して厚さ3.2mmの板状試験片上で測定される5%未満、好ましくは3%未満、最も好ましくは2%未満の光学的ヘイズとを有する。
【0015】
本発明の第7の態様では、他の態様のいずれかの高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物は、589nmの波長で1.47~1.50の屈折率を有する。
【0016】
本発明の第8の態様では、上述した態様のいずれかの高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物は、前記高Tgの透明な疎水性アクリルコポリマー組成物と1種以上の相溶性ポリマーとのブレンドであり、高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物は、ポリマー固形分全体の5~95重量パーセント、好ましくは5~75重量パーセント、より好ましくは10~60重量パーセントでブレンド中に存在する。
【0017】
本発明の第9の態様では、物品は、他の態様のいずれかの高Tgの光学的に透明な疎水性アクリルコポリマー組成物を含む。物品は、照明管、薄肉部品、光学レンズ、押出フィルム、(共)押出シートまたは形材、熱成形可能シート、キャストシート、複合材料、LED/OLED光学部品、建築及び建設で使用される共押出形材、または反射標識である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「コポリマー」は、コポリマーを含む2種以上の異なるモノマー単位を有するポリマー、及びターポリマーやテトラポリマーなどの3種以上の異なるモノマーを有するポリマーを意味するために使用される。「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーの両方を意味するために使用される。ポリマーは、直鎖、分岐、星形、櫛形、ブロック、または任意の他の構造であってよい。ポリマーは、均一であっても不均一であってもよく、またコモノマー単位の勾配分布を有していてもよい。引用される全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、別段の記載がない限りパーセントは重量パーセントを意味するものとする。分子量は、GPCにより測定される重量平均分子量である。ポリマーにいくらかの架橋が含まれている場合には、及び不溶性のポリマーフラクションのためGPCを適用できない場合には、可溶性フラクション/ゲルフラクション、またはゲルから抽出後の可溶性フラクションの分子量が使用される。
【0019】
本明細書で使用される「疎水性」とは、トルエンに溶解させたコポリマーの25重量パーセント溶液を、撹拌しながら65℃まで加熱して不透明で粘ちょうなゲルを形成し、その後室温(23℃)まで冷却したときに、この溶液がある程度の柔らかいゲルを伴い光学的に透明であることを意味する。65℃に加熱すると、粘ちょうな「溶液」が不透明になると同時に「溶液」全体で物理的なゲル化が起こり、高温(65℃)の疎水性溶媒(トルエンなど)中で親水性コポリマーが二相に分離することに起因して、粘ちょうなゼリー状の材料になる。加えて、これは物理的に可逆的なプロセスである。
【0020】
本明細書で使用される「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を意味する。
【0021】
一実施形態では、本発明の疎水性コポリマーは、85℃/85%RH試験に合格する。
【0022】
本発明は、メチルメタクリレートと特定の疎水性の高Tgコモノマーとのコポリマーに関し、「高Tgモノマー」は、重合されたときに116℃超、好ましくは120℃超、より好ましくは130℃超のTgを有するポリマーを生成するモノマーを指す。有用な疎水性の高Tgモノマーの例としては、限定するものではないが、トランス/シス異性体の特定のブレンド範囲としてのtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、並びにこれらの異性体のブレンドが挙げられる。
【0023】
Tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート
Tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの構造式は次の通りである:
Tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート Tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート
【0024】
モノマーは、トランス/シス比が30/70~85/15、好ましくは40/60~80/20、より好ましくは50/50~75/25であるシス型とトランス型との混合物である。
【0025】
最終的なコポリマー中のtert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの量は、通常0.2~20重量パーセントの範囲であり、より好ましくは、0.5~10重量パーセントのtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートがコポリマー中で使用される。わずか1重量パーセント、さらには0.5重量パーセントのtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートが、疎水性を有するコポリマーをもたらすことが見出された。本発明のコポリマーのTgは116℃~140℃である。
【0026】
3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート
3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの構造式は次のとおりである:
【0027】
モノマーは、シス型とトランス型との混合物である。
【0028】
最終的なコポリマー中の3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの量は、通常0.2~20重量パーセントの範囲であり、より好ましくは、0.5~10重量パーセントのtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートがコポリマー中で使用される。わずか1重量パーセント、さらには0.5重量パーセントのtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートが、疎水性を有するコポリマーをもたらすことが見出された。本発明のコポリマーのTgは116℃~135℃である。
3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート 3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート
【0029】
最終的なコポリマー中のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートまたは3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレートの量は、通常、コポリマー中のモノマー単位の合計を基準として0.2~20重量パーセント、より好ましくは、0.5~10重量パーセント範囲である。わずか1重量パーセント、さらには0.5重量パーセントのtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートが、疎水性を有するコポリマーをもたらすことが見出された。本発明のコポリマーのTgは116℃~140℃である。
【0030】
アクリルモノマー、MMA
1種以上の疎水性の高Tgモノマーは、1種以上の他のモノマーと共重合される。本発明の好ましい実施形態では、コポリマーは、コポリマーを構成する少なくとも50重量パーセントのメチルメタクリレートモノマー単位、好ましくは少なくとも70重量パーセント、より好ましくは少なくとも80重量パーセントのメチルメタクリレートモノマー単位を含む。
【0031】
本発明のコポリマーは、疎水性の高Tgモノマーとメチルメタクリレートとに加えて、0~49.5重量パーセントの他のアクリレート及びメタクリレートモノマーまたは他のエチレン性不飽和モノマー(限定するものではないが、スチレン、アルファメチルスチレン、アクリロニトリルが挙げられる)を含んでいてもよく、また少量の架橋剤もモノマー混合物中に存在していてもよい。適切なアクリレートコモノマー及びメタクリレートコモノマーとしては、限定するものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート及びイソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート及びラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート及びステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート及びメトキシメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート及び2-エトキシエチルメタクリレート、並びにジメチルアミノエチルアクリレート及びジメチルアミノエチルメタクリレートモノマーが挙げられる。メタクリル酸やアクリル酸などの(メタ)アクリル酸は、モノマー混合物に有用な場合がある。カルボキシル官能基に加えて、エポキシ(グリシジルメタクリレートなど)、ヒドロキシル、及び無水物官能基などの他の官能基を、官能性コモノマーを介して高分子量アクリル系加工助剤に加えることができる。官能性モノマー単位(官能基を有するモノマー単位)は、アクリルポリマーの最大70重量パーセント、好ましくは最大50重量パーセントで存在することができる。
【0032】
好ましい実施形態では、アクリルコポリマーは、115℃を超える、より好ましくは120℃を超える、125℃を超える、130℃を超える、135℃を超える、さらには140℃を超える高いTgを有する。tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートに加えて、任意選択的に他の高Tgモノマーが0~25重量パーセント、より好ましくは0~10重量パーセントの量で存在していてもよい。他の高Tgモノマーは、親水性、疎水性、または中性の特性を有していてもよく、これらとしては、限定するものではないが、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、アルファメチルスチレン、無水マレイン酸、マレイミド、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドが挙げられる。
【0033】
一実施形態では、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート及び/または3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの疎水性効果は、低レベルで使用される親水性コモノマーの親水性効果に打ち勝つほどに十分強く、全体として疎水性のコポリマーを生成することが見出された。
【0034】
合成プロセス
本発明のコポリマーは、限定するものではないが、溶液重合、乳化重合、及び懸濁重合などの溶融重合によって得られる。
【0035】
処理条件がコポリマーのTgに大きな影響を及ぼし得ることが見出された。通常、コポリマーの溶液重合は、溶融プロセスで生成されるコポリマーよりも高いレベルのシンジオタクティシティー(約60%)及び高いTg(約50%)を生じることが見出された。約65~75℃で実行される実験室における溶液プロセスでは、コポリマーのTgは約124℃であることが判明した。約160℃で実行されるパイロットプラントにおける溶融ポリマープロセスでは、Tgは約120℃であることが判明した。特定の理論に拘束されるものではないが、コポリマーTgの相違は、低い処理温度ほど高くなるシンジオタクティシティーのパーセント割合に関連していると考えられる。さらに、溶液重合で使用されるトルエンは、異なる化学的環境を有し得る。
【0036】
添加剤
本発明のコポリマーは、熱可塑性プラスチックにおいて使用される典型的な添加剤とブレンドすることができる。これらとしては、限定するものではないが、フィラー、表面改質剤、酸化防止剤、UVスクリーン、加工助剤、繊維、潤滑剤、熱安定剤、難燃剤、相乗剤、顔料、及びその他の着色剤が挙げられる。
【0037】
耐衝撃性改良剤を組成物に添加することができるが、それらは光学的透明性に悪影響を及ぼすことになるであろう。使用される場合、それらはマトリックスと一致する屈折率である必要があり、これはマトリックスとの屈折率差が0.02未満、好ましくは0.01未満であることを意味する。好ましくは、組成物は耐衝撃性改良剤を含まない。
【0038】
他のポリマー添加剤としては、直鎖、分岐、ブロック、及びグラフトポリマー構造を含む、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリオレフィン、これらのポリマーに基づくコポリマー及びターポリマーを挙げることができる。艶消し剤の例としては、限定するものではないが、様々な形状の架橋ポリマー粒子が挙げられる。各層のポリマー組成物中に含まれるフィラー及び添加剤の量は、ポリマーと添加剤とフィラーとの合計重量の約0.01%から約70%まで変動し得る。通常、約5%~約45%、約10%~約40%の量が含まれる。
【0039】
酸化防止剤
一実施形態では、255~275℃などの高温での樹脂の熱安定性を改善し、高温での黄変を低減するために、選択された酸化防止剤を使用することができる。最終的な樹脂配合物中への酸化防止剤の配合量は、組成物の総重量を基準として約50ppm~3500ppm、好ましくは約100ppm~約2500ppmの量である。有用な酸化防止剤の非限定的な例としては、立体障害を有するフェノール、有機亜リン酸エステル、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノン、及びシアノアクリレートが挙げられる。
【0040】
特性
本発明の新規な疎水性高温アクリル系材料は、可視波長領域での高い光透過、非常に低いヘイズ、高い耐熱性、少ない水/湿気吸収、優れた環境安定性、及び優れた機械的特性の要件を、任意選択的には優れた耐UV性の要件と共に満たすように設計されていることから、特定の高温かつ高い光学的透明度の用途で特に有用である。
【0041】
コポリマーのTgは、通常115℃~150℃、好ましくは116℃~140℃、より好ましくは120℃~130℃の範囲である。
【0042】
アクリルコポリマーの重量平均分子量は、55,000g/モル超、好ましくは75,000g/モル超、より好ましくは90,000g/モル超、さらに好ましくは100,000g/モル超である。最大分子量は約250,000g/モル、より好ましくは約200,000g/モルである。
【0043】
本発明のコポリマー、ターポリマー、及びテトラポリマーを含む本発明の疎水性高Tgコポリマーは、589nmの波長で1.47~1.50の屈折率を有する。
【0044】
コポリマーは、低い水分吸着及び強化された疎水性を提供する。
【0045】
本発明のコポリマーは、少なくとも89%、好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%のTWLTと、5%未満、好ましくは3%未満、最も好ましくは2%未満の光学的ヘイズとを有する優れた光学特性を有する。
【0046】
上述した特性に加えて、本発明のコポリマーは、優れた耐UV性と共に、優れた環境安定性及び優れた機械的特性を有する。
【0047】
本発明の高Tgコポリマーと他のポリマー、特にはアクリルポリマーとのブレンドが本発明で想定される。本発明の高Tgコポリマーまたはターポリマー(屈折率1.47~1.50)は、溶融加工/溶液ブレンドによるそれらの混合物及び/または組み合わせにおいて、多くの典型的な光学アクリルコポリマー(屈折率約1.49)と光学的及び物理的に適合性を有している。本発明のコポリマーは、典型的には、ポリマー固形分全体の5~95重量パーセント、好ましくは5~75重量パーセント、より好ましくは10~60重量パーセントの他のアクリル樹脂とブレンドされる。
【0048】
他の相溶性ポリマーとのあらゆる比率でのブレンドも、本発明で想定される。ブレンドに特に有用な相溶性ポリマーとしては、限定するものではないが、pMMA-EAやPMMA-MAなどの他のポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリ(スチレン-アクリロニトリル、SAN)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、及びポリ乳酸が挙げられる。
【0049】
使用
本発明のコポリマーは熱可塑性であり、シート、フィルム、照明管、及びレンズへと容易に成形することができる。
【0050】
優れた熱安定性、高い分子量、耐湿性、及び優れた光学特性のため、本発明のコポリマーは、照明管、薄肉部品、光学レンズ、押出フィルム、(共)押出シート/形材、熱成形シート、キャストシート、複合材料などに特に有用である。
【0051】
本発明の高温アクリルフィルムは、LED/OLEDディスプレイにおいて使用することができる。LED/LCD技術を置き換えるためにコスト効率の高いOLED技術が広く使用される場合には、OLED用の偏光子の数を減らすことができる。
【0052】
本明細書内では、実施形態は、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする形式で説明してきたが、実施形態は、本発明から逸脱することなしに様々に組み合わされ得るまたは分離され得ることが意図されており、またそのことが理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されている全ての好ましい特徴は、本明細書に記載されている本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【実施例】
【0053】
試験方法:
A.メルトフローレート(MFR)の測定:ポリマーのメルトフローレートの測定には、Instron CeastMF30装置を使用した。ロードセルの重量を3.8kgにする一方で、ダイの温度を230℃に制御した。Tgより約20℃下で8時間かけて乾燥したペレットを使用した。
【0054】
B.ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):Waters Alliance2695及びWaters Differential Refractometer2410を使用してポリマーの分子量を測定した。カラムは、2本のPL Gel mixed Cカラムとガードカラム(内径7.8mm×30cm、5μm)に基づいた。溶媒としてTHF(HPLCグレード)を選択した。温度は35℃に制御した。キャリブレーションには、550~1,677,000g/モルのMp(ピーク分子量)の範囲の10個のポリ(メチルメタクリレート)標準を使用した。
【0055】
C.示差走査熱量測定(DSC):アクリルポリマーのガラス転移温度は、2回目の加熱中に、TA装置Q2000 DSCを使用して、N2中で10℃/分の加熱速度で測定した。最初の加熱を使用してサンプルを10℃/分の加熱速度で170℃まで加熱し、その後サンプルを10℃/分の冷却速度で0℃まで冷却した。サンプル重量は5~10mgに制御した。
【0056】
D.熱重量分析(TGA):アクリルポリマーの熱分解温度は、TA装置Q5000 TGAを使用して、N2中で10℃/分の加熱速度で測定した。サンプル重量は5~10mgに制御した。サンプルは100℃の真空オーブン中で一晩予備乾燥した。
【0057】
E.全光線透過率:全光線透過率は、150mmの積分球を備えたPerkin Elmer Lambda 950を使用して、透過モードでフィルム及び/または板状試験片サンプルから測定した。選択したUV/Vis波長範囲は、UV/Vis領域で200nm~800nmであった。
【0058】
F.ヘイズ:透明なフィルム及び/または板状試験片サンプルの光学的ヘイズは、ASTM法D1003に基づいてBYK HazeGard Plusを使用して測定した。
【0059】
G.引張強さ及び伸び:引張棒の引張強さ、弾性率、及び伸びは、23℃/48時間で予め条件調整をした後、ASTM D638法を使用して5mm/分のクロスヘッド速度でInstron Model 4202を使用して評価した。引張は長さ6インチ幅0.50インチであった。サンプルの厚さは0.125インチであった。
【0060】
H.屈折率:ポリマーフィルムの屈折率は、Metricon Incの光学プリズムカプラーMetricon2010を使用して402nm、518nm、636.5nmの3つの異なる波長で測定し、屈折率は589nmの選択した波長で計算した。
【0061】
I.NMR:サンプルは、13CNMR用の別個の10mmのNMR管内の約4mlのCDCl3に、約200mgのペレットを溶解することによって調製した。1Hスペクトルは、MAAの誘導体化の前後に25℃で5mmの1H/19F/13C TXOプローブを用いてBruker AV III HD 500(11.07T)分光計で取得した。13Cスペクトルは、50℃で10mmのBBOプローブを使用してBruker AV 400(9.4T)で取得した。
【0062】
J.ビカット軟化温度:サンプルは、ASTM法D1525を使用して、10N及び50Nの外力の下でInstron HV6Mで試験した。サンプルの加熱速度は50℃/時の速度で制御した。射出成形されたサンプルを、Tg値よりも約20℃下で16時間アニールし、試験前にデシケーターオーブン中で保管した。
【0063】
K.吸水率:射出成形したサンプルを、ASTM法D570を使用して脱イオン水浴(23℃)に浸漬した。板状試験片サンプルのサイズは、45mm(幅)×67mm(長さ)×3.2mm(厚さ)で成形した。吸水率の値は、サンプル表面を乾燥ティッシュできれいにしたときの重量増加に基づいて測定した。
【0064】
L.85℃/85%RH試験:加湿器に脱イオン水を用いたThermotron SE-1000-6-6環境オーブンを使用して、射出成形したサンプルを85℃/85%RHで保持した。引張棒のサイズは、12.5mm(幅)×165mm(長さ)×3.2mm(厚さ)で成形した。ひび割れや亀裂線などの欠陥は、85℃/85%RH試験中に目視で検査した。
【0065】
pMMA-co-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート
実施例1:(3.7%のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを含むpMMAコポリマー)。
この実施例は、メチルメタクリレートと、51%のトランス/49%のシス異性体比を有するtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートとの高分子量コポリマーの調製を示している。96.30部のメチルメタクリレート及び3.70部のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを、380rpmの機械撹拌速度で、約23℃のトルエン300部が入っている反応容器の中に入れた。開始剤として、AIBN(Aldrichより)を0.337部の量で使用した。重合反応は68~70℃で7時間行った。転化率が>60%に達したときに、残留モノマーをメタノール中で析出させることにより(MeOH、×20回)除去した。次いで、固体ポリマー粉末を25重量%の固形分でアセトンに溶解し、ポリマー溶液を再び十分なMeOH中で析出させた。再沈した白色粉末サンプルを、真空オーブン内で180℃及び210℃でそれぞれ8時間乾燥させた。ポリマーのメルトフローレートは、230℃、3.8kgで4.1g/10分と測定された。得られたポリマーの屈折率は、589nmで1.491と測定された。
【0066】
1H NMRを使用して、得られたポリマーがpMMA/tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(96.5/3.5w/w)の組成を有することが確認された。コポリマーのシンジオタクティシティーは、13C NMRを使用して44.5ppmの化学シフトから60%と決定され、イソタクティシティー及びアタクティシティーは、45.5ppm及び45.0ppmから4%及び36%と測定された。樹脂のガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度のDSCを使用してN2中で125℃であると測定された。樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを使用して88,000g/モルであると測定され、Mw/Mn(多分散度)値は1.9であった。120umのキャストフィルムからの光透過率は、150mmの積分球を備えたLambda950を使用して560nmで92.2%と測定され、ヘイズはヘイズメーター(BYKのHaze Gard Plus)を使用して0.5%と測定された。
【0067】
実施例2(5.1%のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを含むpMMAコポリマー、Tg=約128℃)。この実施例は、メチルメタクリレートと、51%のトランス/49%のシス異性体比を有するtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートとの高分子量コポリマーの調製を示している。94.9部のメチルメタクリレート及び5.10部のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを、360rpmの機械撹拌速度で、約23℃のトルエン300部が入っている反応容器の中に入れた。開始剤として、AIBN(Aldrichより)及びLuperox(登録商標)26(Arkemaより)を、それぞれ0.337部及び0.0部の量で使用した。重合反応は65~67℃で7時間行った。転化率が>60%に達したときに、残留モノマーをMeOH中で析出させることにより(×20回)除去した。次いで、固体ポリマー粉末を25重量%の固形分でアセトンに溶解し、ポリマー溶液を再び十分なMeOH中で析出させた。再沈した白色粉末サンプルを、真空オーブン内で180℃及び210℃でそれぞれ8時間乾燥させた。ポリマーのメルトフローレートは、230℃、3.8kgで2.7g/10分と測定された。得られたポリマーの屈折率は、589nmで1.490と測定された。
【0068】
1H NMRを使用して、得られたポリマーがpMMA/tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(95.7/4.3w/w)の組成を有することが確認された。コポリマーのシンジオタクティシティーは、13C NMRを使用して44.5ppmの化学シフトから60%と決定され、イソタクティシティー及びアタクティシティーは、45.5ppm及び45.0ppmから4%及び36%と測定された。樹脂のガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度のDSCを使用してN2中で128℃であると測定された。樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを使用して100,000g/モルであると測定され、Mw/Mn(多分散度)値は2.1であった。100umのキャストフィルムからの光透過率は、150mmの積分球を備えたLambda950を使用して560nmで92.3%と測定され、ヘイズはヘイズメーター(BYKのHaze Gard Plus)を使用して0.5%と測定された。
【0069】
実施例3(6.1%のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートと4.6%のMAAとを含むpMMAターポリマー)。
この実施例は、メチルメタクリレートと、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(51%のトランス/49%のシス異性体比)との高分子量コポリマーの調製を示している。89.3部のメチルメタクリレートと、4.6部のメタクリル酸と、6.1部のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを、360rpmの機械撹拌速度で、約23℃のトルエン300部が入っている反応容器の中に入れた。さらに、開始剤として、AIBN(Aldrich)及びLuperox(登録商標)26(Arkemaより)を、それぞれ0.350部及び0部の量で使用した。重合反応は65~68℃で7時間行った。転化率が>60%に達したときに、残留モノマーをMeOH中で析出させることにより(×20回)除去した。次いで、固体ポリマー粉末を25重量%の固形分でアセトンに溶解し、ポリマー溶液を再び十分なMeOH中で析出させた。再沈した白色粉末サンプルを、真空オーブン内で180℃及び210℃でそれぞれ8時間乾燥させた。ポリマーのメルトフローレートは、230℃、3.8kgで1.6g/10分と測定された。得られたポリマーの屈折率は、589nmで1.491と測定された。
【0070】
1H NMRを使用して、得られたポリマーがpMMA/tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸(91.3/4.9/3.8w/w/w)の組成を有することが確認された。コポリマーのシンジオタクティシティーは、13C NMRを使用して44.5ppmの化学シフトから60%と決定され、イソタクティシティー及びアタクティシティーは、45.5ppm及び45.0ppmから4%及び36%と測定された。樹脂のガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度のDSCを使用してN2中で135℃であると測定された。樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを使用して110,000g/モルであると測定され、Mw/Mn(多分散度)値は2.0であった。125umのキャストフィルムからの光透過率は、150mmの積分球を備えたLambda950を使用して560nmで92.2%と測定され、ヘイズはヘイズメーター(BYKのHaze Gard Plus)を使用して0.5%と測定された。
【0071】
実施例4(1.0%のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを含むpMMAコポリマー、Tg=約120℃)。この実施例は、メチルメタクリレートと、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(73%のトランス/27%のシス異性体比)との高分子量コポリマーの調製を示している。9866部のメチルメタクリレート及び100部のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを、100rpmの機械撹拌速度で、N2下で約0℃の反応容器の中に入れた。さらに、開始剤としてLuperox(登録商標)531(Arkemaより)を1.6部の量で使用し、連鎖移動剤として32部のn-ドデシルメルカプタン(n-DDM、Aldrichより)を1.0部のジ-tert-ドデシルジスルフィド(DtDDS、Arkemaより)と共に使用した。重合反応は160℃で7時間行った。転化率が約50%に達したときに、残留モノマーをベントシステムから除去した。得られたポリマーを、バレル温度が230~250℃にある間に240℃のダイ温度で単軸押出機を通した。溶融流は、ペレット化の前に水浴を通した。その後、ポリマーをペレット化して長さ3~4mmの樹脂ペレットにし、デシケーターオーブン中で100℃で8時間乾燥させた。ポリマーのメルトフローレートは、230℃、3.8kgで2.1g/10分と測定された。得られたポリマーの屈折率は、589nmで1.491と測定された。
【0072】
1H NMRを使用して、得られたポリマーがpMMA/tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(99.1/0.9w/w)の組成を有することが確認された。コポリマーのシンジオタクティシティーは、13C NMRを使用して44.5ppmの化学シフトから50%と決定され、イソタクティシティー及びアタクティシティーは、45.5ppm及び45.0ppmから8%及び42%と測定された。樹脂のガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度のDSCを使用してN2中で120℃であると測定され、ビカット温度は10Nで120℃と検出された。樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを使用して105,000g/モルであると測定され、Mw/Mn(多分散度)値は2.0であった。3.2mmの板状試験片からの光透過率は、150mmの積分球を備えたLambda950を使用して560nmで92.1%と測定され、ヘイズはヘイズメーター(BYKのHaze Gard Plus)を使用して1.0%と測定された。試験サンプルの引張弾性率は3.2GPaであり、引張強さは78MPaであり、引張伸びは9.5%であった。
【0073】
実施例5(3.0%のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを含むpMMAコポリマー、Tg=約119℃)。この実施例は、メチルメタクリレートと、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(73%のトランス/27%のシス異性体比)との高分子量コポリマーの調製を示している。9566部のメチルメタクリレート及び300部のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを、100rpmの機械撹拌速度で、N2下で約0℃の反応容器の中に入れた。さらに、開始剤としてLuperox(登録商標)531(Arkemaより)を1.6部の量で使用し、連鎖移動剤として32部のn-ドデシルメルカプタン(n-DDM、Aldrichより)を1.0部のジ-tert-ドデシルジスルフィド(DtDDS、Arkemaより)と共に使用した。重合反応は160℃で7時間行った。転化率が約50%に達したときに、残留モノマーをベントシステムから除去した。得られたポリマーを、バレル温度が230~250℃にある間に245℃のダイ温度で単軸押出機を通した。溶融流は、ペレット化の前に水浴を通した。その後、ポリマーをペレット化して長さ3~4mmの樹脂ペレットにし、デシケーターオーブン中で100℃で8時間乾燥させた。ポリマーのメルトフローレートは、230℃、3.8kgで2.7g/10分と測定された。得られたポリマーの屈折率は、589nmで1.491と測定された。
【0074】
1H NMRを使用して、得られたポリマーがpMMA/tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(97.2/2.8w/w)の組成を有することが確認された。コポリマーのシンジオタクティシティーは、13C NMRを使用して44.5ppmの化学シフトから50%と決定され、イソタクティシティー及びアタクティシティーは、45.5ppm及び45.0ppmから8%及び42%と測定された。樹脂のガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度のDSCを使用してN2中で119℃であると測定され、ビカット温度は10Nで119℃と検出された。樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを使用して105,000g/モルであると測定され、Mw/Mn(多分散度)値は2.0であった。3.2mmの板状試験片からの光透過率は、150mmの積分球を備えたLambda950を使用して560nmで92.0%と測定され、ヘイズはヘイズメーター(BYKのHaze Gard Plus)を使用して1.0%と測定された。試験サンプルの引張弾性率は3.1GPaであり、引張強さは70MPaであり、引張伸びは9.2%であった。
【0075】
実施例6(1.5%のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートと4%のMAAとを含むpMMAコポリマー、Tg=約123℃)。この実施例は、メチルメタクリレートと、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(73%のトランス/27%のシス異性体比)との高分子量コポリマーの調製を示している。9416部のメチルメタクリレートと、400部のアクリル酸と、150部のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを、100rpmの機械撹拌速度で、N2下で約0℃の反応容器の中に入れた。さらに、開始剤としてLuperox(登録商標)531(Arkemaより)を1.6部の量で使用し、連鎖移動剤として32部のn-ドデシルメルカプタン(n-DDM、Aldrichより)を1.0部のジ-tert-ドデシルジスルフィド(DtDDS、Arkemaより)と共に使用した。重合反応は160℃で7時間行った。転化率が約50%に達したときに、残留モノマーをベントシステムから除去した。得られたポリマーを、バレル温度が230~250℃にある間に240℃のダイ温度で単軸押出機を通した。溶融流は、ペレット化の前に水浴を通した。その後、ポリマーをペレット化して長さ3~4mmの樹脂ペレットにし、デシケーターオーブン中で100℃で8時間乾燥させた。ポリマーのメルトフローレートは、230℃、3.8kgで1.4g/10分と測定された。得られたポリマーの屈折率は、589nmで1.492と測定された。
【0076】
1H NMRを使用して、得られたポリマーがpMMA/tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸(95.8/1.2/3.0w/w)の組成を有することが確認された。コポリマーのシンジオタクティシティーは、13C NMRを使用して44.5ppmの化学シフトから50%と決定され、イソタクティシティー及びアタクティシティーは、45.5ppm及び45.0ppmから8%及び42%と測定された。樹脂のガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度のDSCを使用してN2中で123℃であると測定され、ビカット温度は10Nで123℃と検出された。樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを使用して105,000g/モルであると測定され、Mw/Mn(多分散度)値は2.0であった。3.2mmの板状試験片からの光透過率は、150mmの積分球を備えたLambda950を使用して560nmで91.9%と測定され、ヘイズはヘイズメーター(BYKのHaze Gard Plus)を使用して1.0%と測定された。試験サンプルの引張弾性率は3.3GPaであり、引張強さは75MPaであり、引張伸びは9.6%であった。
【0077】
比較例1(4.8%のMAAを含むpMMAコポリマー、Tg=約124℃)。この実施例は、4.8%のメタクリル酸を含む高分子量コポリマーの調製を示している。9480部のメチルメタクリレートと、480部のtert-ブチルシクロヘキシルメタクリレートを、100rpmの機械撹拌速度で、N2下で約0℃の反応容器の中に入れた。さらに、開始剤としてLuperox(登録商標)531(Arkemaより)を1.6部の量で使用し、連鎖移動剤として38部のn-ドデシルメルカプタン(n-DDM、Aldrichより)を1.0部のジ-tert-ドデシルジスルフィド(DtDDS、Arkemaより)と共に使用した。重合反応は160℃で7時間行った。転化率が約50%に達したときに、残留モノマーをベントシステムから除去した。得られたポリマーを、バレル温度が230~250℃にある間に240℃のダイ温度で単軸押出機を通した。溶融流は、ペレット化の前に水浴を通した。その後、ポリマーをペレット化して長さ3~4mmの樹脂ペレットにし、デシケーターオーブン中で100℃で8時間乾燥させた。ポリマーのメルトフローレートは、230℃、3.8kgで2.2g/10分と測定された。得られたポリマーの屈折率は、589nmで1.494と測定された。
【0078】
1H NMRを使用して、得られたポリマーがpMMA/メタクリル酸(96.3/3.7w/w)の組成を有することが確認された。コポリマーのシンジオタクティシティーは、
13C NMRを使用して44.5ppmの化学シフトから50%と決定され、イソタクティシティー及びアタクティシティーは、45.5ppm及び45.0ppmから8%及び42%と測定された。樹脂のガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度のDSCを使用してN
2中で124℃であると測定され、ビカット温度は10Nで121℃と検出された。樹脂の重量平均分子量Mwは、GPCを使用して82,000g/モルであると測定され、Mw/Mn(多分散度)値は2.0であった。3.2mmの板状試験片からの光透過率は、150mmの積分球を備えたLambda950を使用して560nmで92.0%と測定され、ヘイズはヘイズメーター(BYKのHaze Gard Plus)を使用して1.0%と測定された。試験サンプルの引張弾性率は3.5GPaであり、引張強さは73MPaであり、引張伸びは9.6%であった。
【国際調査報告】