(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(54)【発明の名称】混合糖組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20220531BHJP
C07H 3/02 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A23L27/00 E
C07H3/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557271
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 KR2020004101
(87)【国際公開番号】W WO2020204459
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0037322
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508074963
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン フェ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン ミ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ラン ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】シン、スン ミ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウル-ス
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソンギュン
(72)【発明者】
【氏名】バク、ユン-ギョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ボ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウン ジョン
【テーマコード(参考)】
4B047
4C057
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG22
4B047LP11
4B047LP12
4C057BB02
(57)【要約】
本出願は、タガトースとソルボースを含む混合糖組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルボースとタガトースの総重量100重量部に対して0重量部超、5重量部以下のソルボースを含む混合糖組成物。
【請求項2】
前記組成物は、24時間経過後の結晶化率が40%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の保管温度は0~90℃である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、0時間の組成物の色価を100%とした場合、24時間経過後の混合糖組成物の色価が90%以上維持される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の保管温度は0~90℃である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を結晶化母液とする混合糖。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を含む食品用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、品質が改善されたタガトース混合糖組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タガトースは体内吸収過程でほとんど代謝されない非カロリー(non-caloric)甘味料であり、摂取した量の15~20%が体内に吸収されるが、これはヒトの有する自己消化能力ではなく、大腸内の微生物の分解による吸収であるので、血糖数値に影響を及ぼさない。よって、砂糖をタガトースで代替することにより、糖尿病患者における血糖調節効果が期待され、腸内微生物に炭素源を提供し、腸内微生物の繁殖を助けることにより、微生物による排便活動を助けることが知られている。それだけでなく、虫歯を誘発しないという機能的特性を有するので、子供の好むチョコレート、ガム、パン、キャンディーなどに砂糖の代わりに入れ、子供が安心して摂取できるようにする健康甘味料であると共に、砂糖過剰による疾病の予防にも寄与する物質として多くの関心を集めている。
【0003】
一方、ソルボースもヘキソースであり、甘味度は砂糖の70%程度であることが知られており、様々な生理活性の改善に用いられるので、これを含む糖組成物は開示されているが(特許文献1など)、混合糖組成物を構成する糖成分間の相互作用及びそれによる効果や糖組成物の物性についての研究は全く行われていない現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、色価及び純度が高く、かつ結晶化に要する時間が短縮されたタガトース混合糖組成物を開発し、本出願を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、ソルボースとタガトースの総重量100重量部に対して0重量部超、5重量部以下のソルボースを含む混合糖組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本出願は、前記組成物を結晶化母液とする混合糖を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本出願は、前記混合糖を含む食品用組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0009】
本出願の組成物は、タガトースの純度が高く、かつ結晶化に要する時間が短く、色価安定性が維持されるタガトース結晶を提供することができるので、消費者の審美的満足感が満たされ、タガトースの結晶化に有用であり、タガトースの分離精製工程に有用であり、タガトース粉末の保存、輸送コストの低減及び粉末の流動特性向上による操業環境改善に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0011】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本出願の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本出願に含まれることが意図されている。
【0012】
本出願の一態様は、ソルボースとタガトースの総重量100重量部に対して0重量部超、5重量部以下のソルボースを含む混合糖組成物を提供する。
【0013】
本出願の組成物において、ソルボースとタガトースの総重量100重量部に対するソルボース含有量は、0重量部超、かつ20重量部未満であり、具体的には、0重量部超、かつ15重量部以下、10重量部以下、10重量部未満、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2.3重量部以下、2.2重量部以下、2.1重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、0.9重量部以下、0.8重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下、0.005重量部以下、0.003重量部以下、0.001重量部以下又は0.0005重量部以下であってもよいが、これらに限定されるものではない。また、本出願の組成物において、ソルボースとタガトースの総重量100重量部に対するソルボース含有量は、0.00005重量部超、かつ20重量部未満であり、具体的には、0.00005重量部超、かつ15重量部以下、10重量部以下、10重量部未満、7重量部以下、5重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2.3重量部以下、2.2重量部以下、2.1重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、0.9重量部以下、0.8重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下、0.005重量部以下、0.003重量部以下、0.001重量部以下又は0.0005重量部以下であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0014】
なお、本出願において、特定組成物全体100重量部に対する0.0001重量部は、含有量「1ppm」と表される。すなわち、全体100重量部に対する0.5ppmは0.00005重量部、5ppmは0.0005重量部に相当する。
【0015】
本出願の組成物は、時間経過による色価の変化量が大きくなく、色価安定性が向上したものであってもよい。
【0016】
本出願における「色価」とは、可視光領域における極大吸収波長(λmax)の吸光度(A: Absorbance)に基づいて算出される値である。
【0017】
光が試料を通過すると、試料により光が吸収されるので、光の強度は弱くなる。試料溶液を通過した光の量(transmittance, T)は、吸光物質が存在しないときの光の強度I0に対する、吸光物質が存在するときの光の強度I、すなわちT=I/I0で表されるので、光の通過率は常に1より小さく、次のように%で表される。
【0018】
次のように、吸光度(A: Absorbance)と通過率(%Transmittance)には一定の相関関係がある。
【0019】
[数1]
A = Absorbance of the solution
%T = %Transmittance
A = 2.00-log %T
【0020】
通常流通している液状糖の色価を測定するために、波長420nmで通過率(%Transmittance)を測定し、メーカーや加工業者において基準としている(韓国食品開発研究院,1991.1)。
【0021】
本出願の組成物は、従来のタガトースを含む組成物に比べて、色価の変化量が多くないため、色素又はその安定性を維持する添加物の使用を低減することができるので、タガトースを含有する食品、薬品及び様々な分野において有用である。
【0022】
前記組成物は、0時間の組成物の色価を100%とした場合、24時間経過後の混合糖組成物の色価が90%以上維持されるものであってもよい。
【0023】
本出願における「0時間の組成物」とは、組成物を特定の環境で所定時間保管、静置又は反応させる前の組成物を意味する。
【0024】
本出願において、特定組成物を保管、静置又は反応させる時間を特に「0時間超」と記載していなくても、当該技術分野の常識に照らして、特定組成物を保管、静置又は反応させる時間が0時間超であることは明らかであるので、「0時間の組成物」とは、保管、静置又は反応させる前の組成物を意味する。
【0025】
よって、本出願における前記「0時間の組成物」は、「0時間目の組成物」、「反応前の組成物」、「最初の組成物」、「初期の組成物」などの用語と相互交換的に用いられる。
【0026】
本出願における「n時間経過後の組成物(n>0である任意の数)」とは、組成物を特定の環境でn時間静置するか、保管するか、又は反応させた組成物を意味する。前記特定の環境は、組成物を保管、静置又は反応させる環境における温度、pH、湿度値などの条件で規定されるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
具体的には、前記組成物を静置する温度は、0℃~100℃、5℃~95℃、10℃~90℃、15℃~85℃、20℃~80℃、20℃~75℃、20℃~70℃、25℃~75℃又は25℃~75℃であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、前記組成物は、最初の組成物の色価値を100%とした場合、120時間、108時間、96時間、84時間、72時間、60時間、48時間、36時間、24時間、12時間又は6時間以下の時間保管、静置又は反応させると、混合糖組成物の色価が99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%又は65%以上維持されるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0029】
前記「最初の組成物の色価値を100%とした場合の混合糖組成物の色価」は、{(特定時間での混合糖組成物の色価)/(最初の組成物の色価)}×100(%)で算出される。
【0030】
本出願の組成物は、結晶化速度が向上したものであってもよい。
【0031】
本出願における「結晶化(crystallization)」とは、液体又は非結晶状態の固体が結晶を形成する現象を意味する。前記結晶化は、蒸発濃縮、冷却法、断熱蒸発法、化合物添加などの当該技術分野で公知の結晶化方式で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本出願における「結晶化速度が向上した」又は「結晶化速度が速い」ものとは、他の組成比を有する混合糖組成物に比べて、又は1種の成分のみ含む糖組成物に比べて、結晶化速度が速いものを意味する。
【0033】
具体的には、結晶化速度が向上したものとは、ソルボースとタガトースの総重量100重量部に対するソルボース含有量が10重量部以上である組成物の結晶化速度に比べて、結晶化速度が速いものを意味し、より具体的には、ソルボースとタガトースの総重量100重量部に対するソルボース含有量が10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20重量部以上である混合糖組成物に比べて、結晶化速度が速いものを意味するが、これらに限定されるものではない。あるいは、ソルボースとタガトースの総重量100重量部に対するソルボース含有量が0超、0.00005重量部、0.00004重量部、0.00003重量部、0.00002重量部以下である混合糖組成物に比べて、結晶化速度が速いものであるか、又はソルボースとタガトースの総重量100重量部に対するソルボース含有量が9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下もしくは6重量部以下、かつ5重量部超である組成物に比べて、結晶化速度が速いものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本出願の結晶化速度は、結晶化率を測定することにより評価することができる。具体的には、結晶化率(%)は、(初期の結晶母液の各成分濃度の合計-各時点での結晶母液の各成分濃度の合計)/(初期の結晶母液の各成分濃度の合計-濃度変化がない時点(結晶化完了)での結晶母液の各成分濃度の合計)×100(%)で算出される。前記計算式において、濃度変化がない時点は、結晶平衡状態であって、時間が経過しても結晶化の程度に差がない時点であり、例えば、本出願の保管温度では72時間以上であってもよい。前記「初期の結晶母液」における「初期」とは、「反応0時間」と同じ意味に解釈されてもよい。しかし、前記式の%値は必ずしも重量%に限定されるものではなく、重量部を意味するものと解釈してもよい。また、前記式は結晶化率を表す一例にすぎず、結晶化率は、全組成物100重量部に対する値を前記式に代入して表すか、前記式でなくとも、全組成物に対する結晶化した部分を表すために当該技術分野の常識で理解できる方法で適宜表すことができる。
【0035】
本出願の組成物は、結晶化速度を向上させるので、タガトースの分離、精製に有用である。
【0036】
本出願の組成物は、24時間経過後の結晶化率が40%以上のものであってもよい。
【0037】
具体的には、前記組成物は、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、60時間~72時間以内に全組成物の結晶化が完了するものであってもよいが、これらに限定されるものではない。一実施例として、前記組成物は、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、60時間又は72時間以内の時間範囲で結晶化率を測定した場合に、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、98%もしくは99%以上であるか、又は結晶化率100%で全体が結晶化したものであるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記組成物を結晶化させる環境の温度は、0℃~90℃、0℃~80℃、0℃~70℃、0℃~65℃、0℃~60℃、0℃~40℃、5℃~35℃、5℃~30℃、5℃~25℃、5℃~20℃、10℃~30℃、10℃~25℃、15℃~25℃、20℃~30℃、5℃~95℃、10℃~90℃、15℃~85℃、20℃~80℃、20℃~75℃、20℃~70℃、25℃~75℃又は25℃~65℃であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記「0時間の組成物」については前述した通りである。
【0039】
本出願の他の態様は、本出願の混合糖組成物を母液とする混合糖を提供する。
【0040】
本出願のさらに他の態様は、本出願のタガトースとソルボースを含む結晶組成物を提供する。
【0041】
前記結晶組成物内のソルボース含有量とタガトース含有量の比率は、0.00005:99.99995~9.5:90.5であってもよく、具体的には、結晶内のソルボース含有量は、結晶100重量部に対して10重量部、9.5重量部、9重量部、8.5重量部、8重量部、7.5重量部、7重量部、6重量部、5重量部、4重量部、3重量部、2.5重量部、2重量部、1.5重量部又は1重量部以下、かつ0重量部超、0.00005重量部、0.0001重量部、0.0002重量部、0.0003重量部、0.001重量部、0.003重量部又は0.01重量部以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本出願の組成物を母液とする混合糖は、結晶化速度が速く、色価安定性が向上したタガトース結晶を提供するので、タガトース粉末の保存、輸送コストの低減及び粉末の流動特性向上による操業環境改善に寄与することができ、産業的に有用である。
【0043】
本出願のさらに他の態様は、本出願の混合糖を含む食品用組成物を提供する。
【0044】
本出願の食品組成物には、一般食品組成物、健康食品組成物及び医療用(又は患者用)食品組成物が含まれるが、これらに限定されるものではない。具体的には、本出願の食品組成物は、飲料(例えば、食物繊維飲料、炭酸飲料、ミスッカル、茶など)、アルコール飲料、パン、ソース(例えば、ケチャップ、トンカツソースなど)、乳加工品(例えば、発酵乳など)、肉加工品(例えば、ハム、ソーセージなど)、チョコレート加工品、ガム、キャンディー、ゼリー、アイスクリーム、シロップ、ドレッシング、スナック(例えば、クッキー、クラッカーなど)、果菜漬け(例えば、砂糖漬け、フルーツ漬け、紅参エキス、紅参切片など)、食事代替食品(例えば、冷凍食品、HMRなど)又は加工食品であってもよい。より具体的には、前記食品組成物は、炭酸飲料組成物であるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本出願の混合糖組成物を食品組成物に用いる場合、本出願の甘味料をそのまま添加してもよく、他の食品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。本出願の食品組成物は、様々な香味剤や天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前述した天然炭水化物は、グルコース、フルクトースなどの単糖類、マルトース、スクロースなどの二糖類、デキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを用いることができる。
【0046】
前記以外に、本出願の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。その他に、本出願の食品組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は、独立して又は組み合わせて用いることができる。また、食品組成物に通常含まれる物質を当業者が適宜選択して添加することができ、これらの添加剤の比率は、本出願の食品組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲で選択されてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び実験例を挙げて本出願をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び実験例は本出願を例示するものにすぎず、本出願がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
色価安定性の確認
還元糖は加熱及び酸化により茶色物質を形成しやすいなど、食品の褐変の原因となるが、これを含む食品の品質において消費者の審美的満足感に大きな影響を及ぼすので、保管中の色の変化が少ない糖源の使用が求められている。よって、タガトース結晶の色価安定性を向上させるために、他の糖類を少量含む混合糖組成物を製造し、経時的な色価の変化を測定した。
【0049】
全組成物に対して0.00005%(0.5ppm)~20%(w/w)の異なる含有量でソルボースを含有する試料1~9の混合糖を製造した。具体的な試料の組成比を表1に示す。
【0050】
【0051】
試料1~9の混合糖を60%(w/w)の濃度に希釈し、その後70℃で静置して初期の色価に比べた値を確認した。実験を計3回繰り返した。
【0052】
具体的には、色価は、分光光度計(420nm)を用いて、波長420nmでの吸光度及び通過率を測定して計算し、結果を0時間での色価に対する各時間帯での色価の割合で表した。その平均値を表2に示す。
【0053】
すなわち、表2の各セルに記載した値は(特定時間帯での色価/0時間での色価)×100であるので、表2に示す値が高いほど色価安定性が高いことを示す。上付き文字のアルファベットは、同じ行において同じアルファベットであれば統計的有意差がないこと、異なるアルファベットであれば統計的有意差があることを示す。
【0054】
【0055】
表2の結果から、ソルボースを含む組成物は、時間が経過してもタガトースの色価が安定して維持されることが分かる。よって、タガトース結晶の色価安定性において、ソルボースの濃度が高いほど時間経過による色価維持に影響を及ぼすことが確認された。特に、1ppm以上において優れた色価安定性が確認された。
【実施例2】
【0056】
結晶化速度の確認
実施例1で製造した試料1~9の混合糖の濃度を75%w/wに調整し、製造した混合糖を25℃で静置して経時的な結晶化率(%)の変化を3回測定した。その平均を表3に示す。結晶化率(%)とは、結晶化の進行による結晶母液(mother liquor)の濃度を分析し、それ以上の濃度の変化がない、すなわち結晶化が進まなくなった時点を100%として換算した値である。すなわち、結晶化率とは、各時点での(初期の結晶母液の各成分濃度の合計-各時点での結晶母液の各成分濃度の合計)/(初期の結晶母液の各成分濃度の合計-濃度変化がない時点(結晶化完了)での結晶母液の各成分濃度の合計)×100(%)を意味する。実験は計3回繰り返した。
【0057】
3回測定した結果の平均値で結晶化速度を比較した。それを表3に示す。上付き文字のアルファベットは、同じ行において同じアルファベットであれば統計的有意差がないこと、異なるアルファベットであれば統計的有意差があることを示す。
【0058】
【0059】
実験の結果、ソルボース含有量が5%(50,000ppm)以下のものにおいて優れた結晶化進行率が確認された。特に、ソルボース含有量が10%以上のものにおいて結晶化速度が大幅に減少し、ソルボース含有量が0.0001%以上、5%以下のものにおいて、混合糖組成物は他の混合比の組成物に比べて結晶化速度が速いことが確認された。
【0060】
よって、ソルボース含有量が0.0001%以上、5%以下である本出願の混合糖組成物を結晶化母液とする混合糖は、タガトース色価安定性が高く、かつ結晶化速度が速いので、タガトースの品質向上に有用であることが分かる。
【0061】
なお、前記試料により結晶化した結晶化組成物の純度を表4に示す。
【0062】
【0063】
ソルボース含有量が5%(50,000ppm)以下である組成物において結晶のタガトース純度が高いことが分かる。よって、混合糖のソルボース含有量が0.0001%以上、5%以下の組成物を用いると、色価安定性の高い混合糖、及び結晶化速度の速い結晶が得られることが分かる。
【0064】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【国際調査報告】