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特表2022-527966癌転移をブロックまたはDNA損傷化学療法によって誘導される細胞死を増強する抗CCR5薬剤および処置の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(54)【発明の名称】癌転移をブロックまたはDNA損傷化学療法によって誘導される細胞死を増強する抗CCR5薬剤および処置の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20220531BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/704
A61K31/282
A61K31/136
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558834
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020026253
(87)【国際公開番号】W WO2020206026
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/827,729
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】517057384
【氏名又は名称】サイトダイン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CYTODYN INC.
【住所又は居所原語表記】1111 Main Street, Suite 660, Vancouver, Washington 98660 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ペステル,リチャード,ジー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206JB16
4C206KA05
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
(57)【要約】
本開示は、選択的にCCR5受容体を標的化することによって癌転移を処置または防止およびDNA損傷薬剤の殺細胞能力を増強するための、DNA損傷薬剤およびレロンリマブ(PRO140)または他の抗CCR5薬剤の使用に関する。本開示は、癌転移を処置または防止する、および処置後の末梢血中の循環腫瘍細胞(CTC)または推定上の転移性腫瘍細胞を縮減する、処置後の癌関連細胞上のCCR5発現を縮減する、処置後の腫瘍サイズの体積を減少させるための、DNA損傷薬剤およびレロンリマブ(PRO140)または他の抗CCR5薬剤の使用に関する。本開示は、癌を有する対象、特に転移性CCR5+癌を有する対象を処置または防止するために用いられ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CCR5薬剤をDNA損傷薬剤との組み合わせで投与することを含む、CCR5+癌を有する対象の癌転移を処置または防止する方法。
【請求項2】
癌が、次の少なくとも1つから選択されるCCR5+癌である、請求項1に記載の方法:白血病癌、リンパ腫癌、骨および結合組織の肉腫、脳腫瘍癌、乳癌、副腎癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、前立腺癌、直腸癌、胆嚢癌、肺癌、口腔癌、皮膚癌、腎臓癌、および骨原性肉腫癌。
【請求項3】
癌が、乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
癌が、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抗CCR5薬剤が抗体またはそれらの断片、非抗体蛋白質またはそれらの断片、および低分子薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抗CCR5薬剤が抗体またはその断片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抗CCR5薬剤が、レロンリマブまたはその断片である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
DNA損傷薬剤が含み、DNA損傷化学療法がドキソルビシン、カルボプラチン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、およびアメタントロン、ならびにそれらのいずれかの誘導体の1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
DNA損傷薬剤が、ドキソルビシンまたはカルボプラチンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
DNA損傷薬剤が、ドキソルビシンからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
DNA損傷薬剤が、カルボプラチンからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
対象が、処置後の末梢血中の循環腫瘍細胞(CTC)または推定上の転移性腫瘍細胞の縮減を見せる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
対象が、処置後の癌関連細胞上の縮減されたCCR5発現を見せる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
対象が、処置後の腫瘍サイズの減少した体積を見せる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
対象が、DNA損傷薬剤による癌細胞の増強された殺細胞を見せる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
抗CCR5薬剤を投与することを含む、CCR5+癌の処置または防止のためのDNA損傷化学療法の有効性を遷延させる方法。
【請求項17】
癌が、次の少なくとも1つから選択されるCCR5+癌である、請求項16に記載の方法:白血病癌、リンパ腫癌、骨および結合組織の肉腫、脳腫瘍癌、乳癌、副腎癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、前立腺癌、直腸癌、胆嚢癌、肺癌、口腔癌、皮膚癌、腎臓癌、および骨原性肉腫癌。
【請求項18】
癌が、乳癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
癌が、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
抗CCR5薬剤が抗体またはそれらの断片、非抗体蛋白質またはそれらの断片、および低分子薬剤を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
抗CCR5薬剤が抗体またはその断片を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
抗CCR5薬剤がレロンリマブまたはその断片である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
DNA損傷薬剤が含み、DNA損傷化学療法がドキソルビシン、カルボプラチン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、およびアメタントロン、ならびにそれらのいずれかの誘導体の1つから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
DNA損傷薬剤が、ドキソルビシンまたはカルボプラチンを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
DNA損傷薬剤が、ドキソルビシンからなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
DNA損傷薬剤が、カルボプラチンからなる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
対象が、処置後の末梢血中の循環腫瘍細胞(CTC)または推定上の転移性腫瘍細胞の縮減を見せる、請求項16~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
対象が、処置後の癌関連細胞上の縮減されたCCR5発現を見せる、請求項16~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
対象が、処置後の腫瘍サイズの減少した体積を見せる、請求項16~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
対象が、DNA損傷薬剤による癌細胞の増強された殺細胞を見せる、請求項16~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
抗CCR5薬剤およびDNA損傷化学療法を投与することを含む、癌を有する対象のCCR5+癌転移の処置または防止のための組み合わせ治療。
【請求項32】
癌が、次の少なくとも1つから選択されるCCR5+癌である、請求項31に記載の組み合わせ治療:白血病癌、リンパ腫癌、骨および結合組織の肉腫、脳腫瘍癌、乳癌、副腎癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、前立腺癌、直腸癌、胆嚢癌、肺癌、口腔癌、皮膚癌、腎臓癌、および骨原性肉腫癌。
【請求項33】
癌が、乳癌である、請求項32に記載の組み合わせ治療。
【請求項34】
癌が、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)である、請求項33に記載の組み合わせ治療。
【請求項35】
抗CCR5薬剤が、抗体またはそれらの断片、非抗体蛋白質またはそれらの断片、および低分子薬剤を含む、請求項31に記載の組み合わせ治療。
【請求項36】
抗CCR5薬剤が、抗体またはその断片を含む、請求項35に記載の組み合わせ治療。
【請求項37】
抗CCR5薬剤が、レロンリマブまたはその断片である、請求項36に記載の組み合わせ治療。
【請求項38】
DNA損傷薬剤が含み、DNA損傷化学療法がドキソルビシン、カルボプラチン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、およびアメタントロン、ならびにそれらのいずれかの誘導体の1つから選択される、請求項31に記載の組み合わせ治療。
【請求項39】
DNA損傷薬剤が、ドキソルビシンまたはカルボプラチンを含む、請求項38に記載の組み合わせ治療。
【請求項40】
DNA損傷薬剤が、ドキソルビシンからなる、請求項39に記載の組み合わせ治療。
【請求項41】
DNA損傷薬剤が、カルボプラチンからなる、請求項39に記載の組み合わせ治療。
【請求項42】
対象が、処置後の末梢血中の循環腫瘍細胞(CTC)または推定上の転移性(metastatic or)細胞の縮減を見せる、請求項31~41のいずれか1項に記載の組み合わせ治療。
【請求項43】
対象が、処置後の癌関連細胞上の縮減されたCCR5発現を見せる、請求項31~41のいずれか1項に記載の組み合わせ治療。
【請求項44】
対象が、処置後の腫瘍サイズの減少した体積を見せる、請求項31~41のいずれか1項に記載の組み合わせ治療。
【請求項45】
対象が、DNA損傷薬剤による癌細胞の増強された殺細胞を見せる、請求項31~41のいずれか1項に記載の組み合わせ治療。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
癌について、研究は、CCR5が腫瘍浸潤および転移に重要な役割を演ずるということを示している。増大したCCR5発現はいくつかの癌における疾患状態の指標である。そして、公開された研究は、CCR5をブロックすることが侵攻的な乳および前立腺癌の実験室および動物モデルにおいて腫瘍転移を縮減し得るということを示している。
【0002】
いくつかの研究は、CCR5シグナル伝達が抗腫瘍効果を有し、T細胞性化の共刺激分子として作用し、腫瘍微小環境へのT細胞走化性を増大させるということを指示している。Gao et al., CCL5 activation of CCR5 regulates cell metabolism to enhance proliferation of breast cancer cells , OPEN BIOL., 6: 160122 (2016);Gonzalez-Martin et al., CCR5 in cancer immunotherapy: More than an“attractive” receptor for T cells , ONCOlMMUNOLOGY, 1: 106-108 (2012)を見よ。しかしながら、証拠は、また、CCL5/CCR5軸シグナル伝達がある種の型の癌、例えば乳および前立腺癌において選好的に活性化され得るということと、かかるシグナル伝達が疾患進行を容易化するということとを示唆している。例えば、いくつかの研究は、癌細胞がCCL5、CCR5、または両方を過剰発現し得、蓋然的には、ラパマイシンの機械的標的(mTOR)に対するCCR5シグナル伝達の効果を介してそれらの成長および増殖に寄与するということを指示している。Gao et al., CCL5 activation of CCR5 regulates cell metabolism to enhance proliferation of breast cancer cells , OPEN BIOL., 6: 160122 (2016)を見よ;Chow and Luster, Chemokines in Cancer , CANCER IMMUNOL. RES., 2(12): 1125-1131 (2014);Singh et al., Expression of CCR5 and its ligand CCL5 in pancreatic cancer (Abstract), J IMMUNOL, 196(1 Supplement): 51.3 (2016)をもまた見よ。加えて、制御性T細胞(Treg)および骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)を包含するいくつかの免疫抑制免疫細胞はCCR5を発現し、CCR5シグナル伝達が腫瘍成長に寄与し得る別の経路を示唆している。Mukaida, CCR5 antagonist, an ally to fight against metastatic colorectal cancer, TRANSLATIONAL CANCER RESEARCH, 5(Supp. 2): S309-S312 (2016)。さらにその上、腫瘍微小環境の癌細胞は、CD4+およびCD8+T細胞によるCCL5産生を利用して、増大した腫瘍成長および腫瘍細胞進展に至り得るということが報告されている。Halama et al., Tumoral Immune Cell Exploitation in Colorectal Cancer Metastases Can Be Targeted Effectively by Anti-CCR5 Therapy in Cancer Patients, CANCER CELL, 29: 587-601 (2016)。
【0003】
いくつかの癌の型について、CCL5/CCR5シグナル伝達を変更する抗CCR5結合薬剤を用いる予備的な仕事がなされた。Sicoli et al., CCR5 Receptor Antagonists Block Metastasis to Bone of v-Src Oncogene-Transformed Metastatic Prostate Cancer Cell Lines, CANCER RES., 74(23): 7103-7114 (2014);Velasco-Velazquez et al., The CCL5/CCR5 Axis Promotes Metastasis In Basal Breast Cancer, ONCOIMMUNOLOGY, 2(4): e23660 (2013);Velasco-Velazquez et al., CCR5 Antagonist Blocks Metastasis of Basal Breast Cancer Cells, CANCER RES., 72(15): 3839-3850 (2012)。CCR5/CCL5受容体/リガンド軸(すなわち、CCR5受容体/CCL5リガンド軸)を阻害、遮断、ブロック、変更、または改変する種々の化合物が存在する。これらの化合物の多くは、HIV-1の処置のために開発された。これもまたCCR5受容体に結合し、いくつかの結合の共通性をCCL5と共有することが公知である。かかる化合物は、細胞外または細胞膜貫通CCR5結合薬剤、例えば、例えばPRO140(細胞外)およびマラビロク(膜貫通)、ならびに他の化合物、例えばビクリビロク、アプラビロック、SCH-C、およびTAK-779、ならびに抗体、例えばPA14、2D7、RoAb13、RoAb14、45523などを包含する。例えばPRO140を包含する最も強力に抗ウイルス性の抗CCR5モノクローナル抗体は、単独のまたはNt残基との組み合わせのEL2上のCCR5受容体アミノ酸残基に結合するということが見出されている。抗CCR5モノクローナル抗体のCCR5受容体結合部位は、低分子CCR5アンタゴニストのものとは別物であるということもまた決定されている。つまり、マラビロクなどの利用可能な低分子CCR5アンタゴニストは、すなわち細胞外Ntまたはループ領域ではなく膜貫通ヘリックスによって形成される疎水性の空洞に結合する。第7の膜貫通領域上のアミノ酸残基E283は低分子にとっての相互作用の(or)主たる(principle)部位として特異的に同定されており、マラビロクおよびビクリビロクはCCR5受容体アミノ酸の同一のセットに結合することが見出されている。Olson et al., CCR5 Monoclonal Antibodies for HIV-1 Therapy, CURR. OPIN. HIV AIDS, March, 4(2): 104-111 (2009)。しかしながら、CCL5リガンドおよびマラビロクは2つの受容体部位:NtおよびECL2を共有することによってCCR5受容体上にドッキングするということと、合成CCL5由来ペプチドもまたCCR5受容体をブロックするために用いられ得るということともまた報告されている。Secchi et al., Combination of the CCL5-Derived Peptide R4.0 with Different HIV-1 Blockers Reveals Wide Target Compatibility and Synergic Cobinding to CCR5, ANTIMICROB AGENTS CHEMOTHER., 58(10): 6215-6223 (2014)。
【0004】
いくつかの場合には、免疫細胞活性化に関連するCCL5発現が腫瘍微小環境の癌細胞によって利用され得、マラビロクなどの阻害剤を用いてCCR5シグナル伝達をブロックすることは抗腫瘍効果を有し得る。ヒト大腸癌肝臓転移の研究では、浸潤マージンのCD4+およびCD8+T細胞はCCL5を発現し、これは、T細胞疲弊、腫瘍増殖、浸潤性の腫瘍細胞挙動、および腫瘍関連マクロファージによるマトリックスメタロプロテイナーゼの増大した産生に関連した。Halama et al., Tumoral Immune Cell Exploitation in Colorectal Cancer Metastases Can Be Targeted Effectively by Anti-CCR5 Therapy in Cancer Patients, CANCER CELL, 29: 587-601 (2016)。マラビロクによってCCL5を阻害することは、腫瘍関連マクロファージの再極性化および腫瘍細胞死に至った。Halama et al. (2016)。
【0005】
しかしながら、CCR5シグナル伝達の阻害は、免疫抑制効果をもまた有し得る。可能な免疫学的メカニズムに対する活性化ヒトT細胞上のマラビロクによるCCR5受容体ブロックの効果を検討するためのインビトロ研究が実施されている。マラビロクによってCCR5をブロックすることはCCL5およびCCL2によって誘導されるCCR5およびCCR2内在化プロセスをブロックし得るのみならず、それぞれそれらの対応するリガンドへのT細胞走化性活性をもまた阻害し得るということが見出された。さらに、高いドーズのマラビロクによってCCR5をブロックすることは、TNF-αおよびIFN-γの産生を減少させる傾向がある。CCR5に対するマラビロクの効果は一時的かつ可逆的であるということもまた注意された。Yuan et al., In Vitro Immunological Effects of Blocking CCR5 on T Cells, INFLAMMATION, 38(2): 902-910 (2015);Arberas et al., In vitro effects of the CCR5 inhibitor maraviroc on human T cell function, J. ANTIMICROB. CHEMOTHER., 68(3): 577-586 (2013)を見よ。
【0006】
腫瘍発生に寄与することにおけるCCR5シグナル伝達の数多のかつ場合によっては矛盾する役割から判断して、意図されない副作用を誘発することなしに治療目的でCCR5/CCL5受容体/リガンド軸を阻害、減弱、遮断、ブロック、変更、もしくは改変するために用いられ得るか、または意図されない副作用のインパクトを縮減する、CCR5受容体に対する競合阻害剤および使用の方法の必要が存在する。さらに、より少数のかつより重篤でない副作用を引き起こし、より持続的であり、かつ競合阻害剤それ自体によって引き起こされる副作用を包含する減少した投薬要求および改善された患者体験(より少数の望ましくない副作用を原因とする)を原因とする改善された患者コンプライアンスを容易化する、CCR5受容体に対するかかる競合阻害剤および使用の方法の必要がある。CCL5/CCR5軸を治療標的として用いる最適な治療モダリティーは、2つの相反する要求を調整することを必要とするであろう:特定の悪性疾患におけるCCL5およびCCR5の有害な関わりを阻害しながら、免疫におけるそれらの可能性として有益な活性は守る必要である。
【0007】
乳癌は女性を冒す最も普通の固形腫瘍であり続けており、それは女性の癌に関係した死亡の第2の主だった原因である。転移は乳癌を有する患者の死亡の一次的原因である。現行では、特異的に転移プロセスに向けられた承認された処置は存在しない。
【0008】
また、乳癌患者の10から15パーセントはトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を有する。これはエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、およびヒト上皮成長因子受容体-2(HER-2)発現の欠如によって定義され、これらはそれぞれ内分泌療法および抗HER2薬剤の公知の標的である。TNBCのおよそ70~84%は基底様である;逆に、基底様腫瘍の約70%はTNBCである(Nielson 2004, Prat 2011, Prat 2013)。
【0009】
化学療法はなおTNBC患者の主な処置オプションであり、標準的な処置は、アジュバント化学療法および放射線治療を有する手術である。TNBCは乳癌の他の亜型よりも良好にタキサンおよびアントラサイクリンなどの化学療法薬剤に応答するが、予後はなお不良なままに留まる。変形として、ネオアジュバント化学療法がトリプルネガティブ乳癌について頻繁に用いられる[Hudis 2011]。これはより高い率の乳房温存手術を許し、化学療法に対する応答を評価することからは、化学療法に対する特定の癌の個々の応答性についての重要な手掛かりを与える。
【0010】
ER、PGR、およびHER-2などの標的受容体の喪失を原因として、TNBCを有する患者は、ホルモン療法またはトラスツズマブに基づく治療からのベネフィットがない。ゆえに、手術および化学療法は、個々にまたは組み合わせで、唯一の利用可能なモダリティーであるように見える。今日まで、白金、標的化EGFRおよびVEGF阻害剤、ならびにPARP阻害剤のようなDNA損傷薬剤を包含するトリプルネガティブ乳癌患者のケアを改善することを試みる複数のアプローチがある;しかしながら、いずれも期待されたほど臨床的に首尾良くはなく、より多くの標的化治療が開発および探求されることを必要とする[Aysola 2013]。それゆえに、転移性TNBCは複雑な疾患であり、臨床現場におけるアンメットニーズおよび未確立の処置レジメンを有する。
【0011】
特異的に転移プロセスに向けられた改善された癌処置、例えば、例えばDNA損傷薬剤などの現行で利用可能な治療と一緒になったCCR5結合薬剤の投与が、患者処置オプションの意味がある改善を提供するために必要とされる。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、選択的にCCR5受容体を標的化することによって癌転移を処置または防止およびDNA損傷薬剤の殺細胞能力を増強するための、DNA損傷薬剤およびレロンリマブ(PRO140)または他の抗CCR5薬剤の使用に関する。本開示は、癌転移を処置または防止、および処置後の末梢血中の循環腫瘍細胞(CTC)または推定上の転移性腫瘍細胞を縮減、処置後の(after following)癌関連細胞上のCCR5発現を縮減、処置後の腫瘍サイズの体積を減少させるための、DNA損傷薬剤およびレロンリマブ(PRO140)または他の抗CCR5薬剤の使用に関する。本開示は、癌を有する患者、特に転移性CCR5+癌を有する患者を処置または防止するために用いられ得る。
【0013】
本明細書に記載されるゼノグラフトモデルで示される通り、レロンリマブは、CCR5陽性の乳癌転移を有効にブロックし得る。ネズミゼノグラフトモデルもまた提供され、これらは、乳癌細胞が転移する能力を縮減することによって、腫瘍がより封じ込められるということを示す。加えて、レロンリマブは、可能性として、標準的なDNA損傷化学療法に働くためのより多くの時間を提供し、可能性として、存在する癌治療の有意に改善された効力をより少数の副作用によって提供し得るということが示される。つまり、レロンリマブはDNA損傷薬剤が癌細胞を殺す効果を増強する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本特許または出願ファイルはカラーで制作された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面(単数または複数)を有する本特許または特許出願公開のコピーは、請求および必要な料金の支払いによって当局によって提供される。
図1A】レロンリマブはヒト乳癌細胞のCCR5に結合する。
図1B】レロンリマブはヒト乳癌細胞のCCR5に結合する。
図2A】PRO140はヒト乳癌細胞におけるヒトCCR5によって媒介されるシグナル伝達をブロックする。
図2B】PRO140はヒト乳癌細胞におけるヒトCCR5によって媒介されるシグナル伝達をブロックする。
図2C】PRO140はヒト乳癌細胞におけるヒトCCR5によって媒介されるシグナル伝達をブロックする。
図2D】PRO140はヒト乳癌細胞におけるヒトCCR5によって媒介されるシグナル伝達をブロックする。
図3A】レロンリマブは細胞外マトリックス中へのヒト乳癌細胞のCCR5によって媒介される浸潤をブロックする。
図3B】レロンリマブは細胞外マトリックス中へのヒト乳癌細胞のCCR5によって媒介される浸潤をブロックする。
図3C】レロンリマブは細胞外マトリックス中へのヒト乳癌細胞のCCR5によって媒介される浸潤をブロックする。
図3D】レロンリマブは細胞外マトリックス中へのヒト乳癌細胞のCCR5によって媒介される浸潤をブロックする。
図4A】レロンリマブはマウスの乳癌転移をブロックする。
図4B】レロンリマブはマウスの乳癌転移をブロックする。
図5】レロンリマブはDNA損傷を誘導する化学療法薬剤のドキソルビシンによって誘導される細胞死を増強する。
図6図6A~6Cは、トリプルネガティブ乳癌を有する対象からの組織サンプルのCCR5についての免疫組織化学染色を示す。図6AはCCR5についてのIHCの代表的な画像を示す。アーカイバル組織による免疫組織化学分析はCCR5+腫瘍浸潤白血球の高い優勢を示した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
増大したCCR5発現は、乳癌を包含するがこれに限定されないいくつかの癌における疾患状態の指標である。
【0016】
転移は乳癌を有する患者の死亡の主だった原因であるが、現行では、転移プロセスに向けられた利用可能な処置はない。それゆえに、転移性乳癌を包含する転移性癌のためのより良好な処置が必要とされる。有効量のCCR5結合薬剤、例えばレロンリマブを対象に投与することによって、転移性乳癌について対象を処置するための方法が本明細書において提示される。特に、本開示は、癌を有する対象のCCR5受容体を選択的に標的化することによって癌転移を処置、縮減、防止、もしくはブロックおよび/またはDNA損傷化学療法の殺細胞能力を増強するための、レロンリマブ(PRO140)または他の抗CCR5薬剤の使用に関する。
【0017】
前臨床および臨床データは、ケモカイン受容体および化学誘引物質または走化性サイトカインともまた言われるそのリガンドが、特定の器官による癌細胞トロピズムのプロセスに関わるということを示唆している[Moser, 2001][Neagu, 2015][Velasco-Velazquez, 2012]。C-Cケモカイン受容体5型(CCR5)は脱分化および形質転換プロセスの間に腫瘍細胞の表面上に選択的に再発現される(velasco-velazquez-2012)。Velasco-Velazquez et al.は2,254の乳癌サンプルを含む組み合わせマイクロアレイデータベースの分析を評価し、CCL5/CCR5の発現が内腔亜型と比較して乳癌の基底亜型(サンプルの58%超)において高いということを示した[Velasco-Velazquez, 2012]。CCR5は乳癌細胞のインビトロの浸潤性および転移を誘導するために十分であることが示されており、これはCCR5阻害剤によってブロックされる[Velasco-Velazquez, 2012]。マラビロクなどのCCR5阻害剤は乳癌腫瘍モデルにおける肺転移を有効にブロックした。
【0018】
レロンリマブ(PRO140)を包含するCCR5結合薬剤は乳癌腫瘍モデルにおいて腫瘍体積の有意な縮減を示す。CCR5が可能な役割を提示する別の癌の特質はDNA修復経路である。この癌特徴はアポトーシスを減弱させ、化学療法抵抗性および腫瘍細胞不死性に寄与する。研究は、C-Cケモカインリガンド5型(CCL5)の変更された発現を乳癌を有する患者の疾患進行と相関させている[Luboshits, 1999][Niwa, 2001][Zhang, 2009]。
【0019】
CCR5結合薬剤、例えばアンタゴニストのマラビロクおよびビクリビロクは、DNA損傷化学療法薬剤によって媒介される殺細胞を劇的に増強した。1細胞分析は、CCR5がPI3K/Akt、リボソーム新生、および細胞生残シグナル伝達を支配するということを明らかにした[Jiao-2018]。
【0020】
腫瘍の免疫コントロールにおけるCCL5-CCR5経路のCCR5ブロックの役割が最近示され、この致命的疾患を標的化するための新たな地平を提供している[de Oliveira, 2017、Del Prete, 2017、Lanitis, 2017]。生検のCCR5免疫組織化学は、腫瘍上のみならず腫瘍微小環境の腫瘍内免疫細胞上にCCR5発現を有する患者を選択的に選ぶことを許す。
【0021】
1つ以上のCCR5結合薬剤、例えばレロンリマブ(PRO140)による標的化治療は、カルボプラチンなどの化学療法薬剤のDNA架橋鎖切断における相乗性を原因として全奏功率を増大させ、レロンリマブ(PRO140)によるCCR5結合から副次的にDNA修復を縮減する可能性を有し得る。
【0022】
用語集
本開示をより詳細に説明することに先立って、本明細書において用いられるべきある種の用語の定義を提供することがその理解にとって助けになり得る。別様に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の業者によって普通に理解される同じ意味を有する。追加の定義は本開示の各所で説明される。
【0023】
別様に指示されない限り、本明細書では、いずれかの濃度範囲、パーセンテージ範囲、比の範囲、または整数範囲は、記載されている範囲内のいずれかの整数の値、および適当なときにはそれらの分数(例えば、整数の10分の1および100分の1)を包含すると理解されるべきである。また、別様に指示されない限り、ドーズなどのいずれかの物理的特徴に関する本明細書に記載されるいずれかの数の範囲は、記載されている範囲内のいずれかの整数を包含すると理解されるべきである。別様に指示されない限り、本明細書において用いられる用語「約」は、指示されている範囲、値、または構造の±20%を意味する。
【0024】
本明細書において用いられる用語「a」および「an」は、計数される構成要素の「1つ以上」を言うということが理解されるべきである。選択肢(例えば「または」)の使用は、選択肢の1つ、両方、またはそれらのいずれかの組み合わせどちらかを意味すると理解されるべきである。
【0025】
本明細書において用いられる用語「包含する」、「有する」、および「含む」は同義的に用いられ、これらの用語およびそれらの変形は非限定的として解釈されることを意図される。
【0026】
用語「から本質的になる」は、請求項の範囲を、記されている材料もしくはステップにまたは請求される発明の基本的特徴に実質的に影響しないものに限定する。例えば、ドメイン、領域、もしくはモジュール、または蛋白質のアミノ酸配列が、延長、欠失、変異、またはそれらのいずれかの組み合わせ(例えば、アミノもしくはカルボキシ末端のまたはドメイン間のアミノ酸)を包含し、これらが組み合わせでドメイン、領域、もしくはモジュール、または蛋白質の長さのせいぜい20%(例えば、せいぜい15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%)に寄与し、かつドメイン(単数または複数)、領域(単数または複数)、モジュール(単数または複数)、または蛋白質の活性(例えば、結合蛋白質の標的結合親和性)に実質的に影響しない(すなわち、活性を50%よりも多く、例えば40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%よりも多く縮減しない)するときには、蛋白質ドメイン、領域、もしくはモジュール(例えば結合ドメイン、ヒンジ領域、リンカーモジュール)または蛋白質(これは1つ以上のドメイン、領域、またはモジュールを有し得る)は、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0027】
本明細書において用いられる「ケモカイン」は、白血球の動きを刺激し得るサイトカインを意味する。2つのアミノ末端システイン残基が直ちに隣接するかまたは1アミノ酸によって分離されるかどうかに依存して、ケモカインはcys-cysまたはcys-X-cysどちらかとしてキャラクタリゼーションされ得る。それは、CCL5(RANTESとしてもまた公知)、MIP-1α、MIP-1β、もしくはSDF-1、または類似の活性を有する別のケモカインを包含するが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書において用いられる「ケモカイン受容体」は、ケモカインに結合する7回膜を貫く細胞表面蛋白質の相同的なファミリーのメンバーを意味する。
【0029】
本明細書において用いられる「CCR5」はケモカイン受容体であり、これはケモカインのC-C群のメンバーに結合し、そのアミノ酸配列はGenbankアクセッション番号1705896で提供されるものおよび関係する多型バリアントを含む。
【0030】
本明細書において用いられる「抗体」は、抗原を認識する2つの重鎖および2つの軽鎖を含む免疫グロブリン分子を意味する。免疫グロブリン分子は、普通に公知のクラスまたはアイソタイプのいずれかに由来し得る。IgA、分泌型IgA、IgG、およびIgMを包含するが、これらに限定されない。IgGサブクラスもまた当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を包含するが、これらに限定されない。それは例として天然に存在するおよび天然に存在しない抗体両方を包含する。具体的には、「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体ならびにそれらの一価および二価断片を包含する。さらにその上、「抗体」はキメラ抗体、全合成抗体、一本鎖抗体、およびそれらの断片を包含する。任意に、抗体は検出可能なマーカーによって標識され得る。検出可能なマーカーは例えば放射性または蛍光マーカーを包含する。抗体はヒトまたは非ヒト抗体であり得る。非ヒト抗体は、ヒトにおけるその免疫原性を縮減するために組み換え法によってヒト化され得る。抗体をヒト化するための方法は当業者に公知である。
【0031】
「mAb」ともまた呼称される本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」は、それらの一次配列が本質的に同一であり、かつ同じ抗原特異性を見せる抗体分子を言い表すために用いられる。モノクローナル抗体は当業者に公知のハイブリドーマ、組み換え、トランスジェニック、または他の技術によって産生され得る。
【0032】
本明細書において用いられる「重鎖」は、1つの可変ドメイン(VH)および3つもしくは4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)またはそれらの断片からなる抗体分子の大きい方のポリペプチドを意味する。
【0033】
本明細書において用いられる「軽鎖」は、1つの可変ドメイン(VL)および1つの定常ドメイン(CL)またはそれらの断片からなる抗体分子の小さい方のポリペプチドを意味する。
【0034】
抗体の本明細書において用いられる「結合断片」または「抗原結合断片もしくは部分」は、インタクトな抗体によって認識される抗原標的分子に結合する能力を有するかまたは保持するインタクトな抗体の断片または部分を言う。断片抗原結合(Fab)断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fv断片、組み換えIgG(rIgG)断片、一本鎖可変断片(scFv)および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を包含する一本鎖抗体断片を包含する。用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作または別様に改変された形態、例えばイントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、タンデムジscFv、およびタンデムトリscFvを包み込む。
【0035】
本明細書において用いられる「Fab」は、1つの軽鎖と重鎖の一部とからなる免疫グロブリンの一価の抗原結合断片を意味する。それは手短なパパイン消化によってまたは組み換え法によって得られ得る。
【0036】
本明細書において用いられる「F(ab')2断片」は、両方の軽鎖と両方の重鎖の一部とからなる免疫グロブリンの二価の抗原結合断片を意味する。それは手短なペプシン消化によってまたは組み換え法によって得られ得る。
【0037】
本明細書において用いられる「CDR」または「相補性決定領域」は、抗体の可変ドメイン上のアミノ酸の高度に可変な配列を意味する。
【0038】
本明細書において用いられる「ヒト化」は、CDR領域外のアミノ酸のいくつか、ほとんど、または全てがヒト免疫グロブリン分子に由来する対応するアミノ酸によって置き換えられている抗体を言い表す。抗体のヒト化形態の1つの態様では、CDR領域外のアミノ酸のいくつか、ほとんど、または全てはヒト免疫グロブリン分子からのアミノ酸によって置き換えられているが、そこで、1つ以上のCDR領域内のいくつか、ほとんど、または全てのアミノ酸は未変化である。それらが、抗体が所与の抗原に結合する能力を廃止しないであろう限りは、アミノ酸の小さい追加、欠失、挿入、置換、または修飾は許容可能である。好適なヒト免疫グロブリン分子はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgM分子を包含するであろう。「ヒト化」抗体は、元々の抗体と類似の抗原特異性、例えば本開示ではCCR5に結合する能力を保持するであろう。
【0039】
当業者は、本開示のヒト化抗体をどのように作るのかを知るであろう。それらのいくつかがここに参照によって本願に組み込まれる種々の公開もまた、どのようにヒト化抗体を作るのかを記載している。例えば、U.S.Pat.No.4,816,567に記載されている方法は、1つの抗体の可変領域と別の抗体の定常領域とを有するキメラ抗体の産生を含む。U.S.Pat.No.5,225,539はヒト化抗体の産生のための別のアプローチを記載している。この特許はヒト化抗体を産生するための組み換えDNAテクノロジーの使用を記載している。ヒト化抗体は所望の標的を認識するが、ヒト対象の免疫系によって有意なやり方では認識されないようにして、1つの免疫グロブリンの可変領域のCDRが異なる特異性を有する免疫グロブリンからのCDRによって置き換えられている。具体的には、CDRをフレームワーク上にグラフトするために、部位特異的変異導入が用いられる。
【0040】
抗体をヒト化するための他のアプローチがU.S.Pat.No.5,585,089および5,693,761ならびにWO90/07861に記載されている。これらはヒト化免疫グロブリンを産生するための方法を記載している。これらはドナー免疫グロブリンからの1つ以上のCDRおよびあり得る追加のアミノ酸とアクセプターヒト免疫グロブリンからのフレームワーク領域とを有する。これらの特許は所望の抗原に対する抗体の親和性を増大させるための方法を記載している。フレームワーク上のいくつかのアミノ酸は、アクセプターよりもむしろドナー上のそれらの位置のアミノ酸と同じであるように選ばれる。具体的には、これらの特許は、マウスモノクローナル抗体のCDRをヒト免疫グロブリンフレームワークおよび定常領域と組み合わせることによる受容体に結合するヒト化抗体の調製を記載している。ヒトフレームワーク領域はマウス配列との相同性を最大化するように選ばれ得る。CDRまたは特定の抗原と相互作用することが蓋然的であるフレームワーク領域上のアミノ酸を同定するために、コンピュータモデルが用いられ得、それから、ヒト化抗体を作り出すために、マウスアミノ酸がこれらの位置に用いられ得る。
【0041】
上のU.S.Pat.No.5,585,089および5,693,761ならびにWO90/07861は、ヒト化抗体を設計することに用いられ得る4つのあり得る基準をもまた提案している。第1の提案は、アクセプターについて、ヒト化されるべきドナー免疫グロブリンと非通常的に相同である特定のヒト免疫グロブリンからのフレームワークを用いること、または多くのヒト抗体からのコンセンサスフレームワークを用いることであった。第2の提案は、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク上のアミノ酸が非通常的であり、その位置のドナーアミノ酸がヒト配列に典型的である場合には、アクセプターよりもむしろドナーアミノ酸が選択され得るということであった。第3の提案は、ヒト化免疫グロブリン鎖上の3つのCDRに直ちに隣接する位置においては、アクセプターアミノ酸よりもむしろドナーアミノ酸が選択され得るということであった。第4の提案は、アミノ酸が抗体の3次元モデルにおいてCDRの3A以内に側鎖原子を有すると予測され、かつCDRと相互作用することができると予測されるフレームワーク位置に、ドナーアミノ酸残基を用いることであった。上の方法は、当業者がヒト化抗体を作るために採用し得る方法のいくつかを単に例解している。ヒト化抗体の結合の親和性および/または特異性は、Wu et al., J. MOL. BIOL., 284: 151 (1999)ならびにU.S.Pat.No.6,165,793;6,365,408;および6,413,774に記載されている通り指向性進化の方法を用いて増大させられ得る。
【0042】
ヒト化抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくともある部分に連結され得る。1つの態様では、ヒト化抗体は、軽鎖および重鎖定常領域両方を含有する。重鎖定常領域は、通常は CH1、ヒンジ、CH2、CH3、および場合によっては、CH4領域を包含する。1つの態様では、ヒト化抗体の定常領域は、ヒトIgG4アイソタイプである。
【0043】
本明細書において開示される抗体または結合断片は、標識または未標識どちらかであり得る。未標識の抗体は、ヒト化抗体と反応性である他の標識された抗体(二次(second)抗体)、例えばヒト免疫グロブリン定常領域に特異的な抗体との組み合わせで用いられ得る。代替的には、抗体は、直接的に標識され得る。広い種々の標識、例えば放射性核種、蛍光色素、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、リガンド(特にハプテン)などが採用され得る。CCR5発現細胞の検出またはCCR5を発現することができる細胞上のCCR5変調の検出のための数多の型のイムノアッセイが利用可能であり、当業者に周知である。
【0044】
本開示は、有効なサイズもしくは、分子量を有する抗体もしくは抗体断片-ポリマーコンジュゲートをもまた提供するか、または他の半減期延長テクノロジーを組み込み、これらが、未誘導体化の抗体断片と比べて血清中半減期の増大、循環中の平均滞留時間(MRT)の増大、および/または血清中クリアランス速度の減少を授ける。抗体断片-ポリマーコンジュゲートは、不活性ポリマーによって所望の抗体断片を誘導体化することによって作られ得る。コンジュゲートに所望の見かけ上のサイズを提供するかまたは選択された実際の分子量を有するいずれかの不活性ポリマーが、本開示の抗体断片-ポリマーコンジュゲートを構築することへの使用にとって好適であるということは、了解されるであろう。
【0045】
多くの不活性ポリマーが医薬への使用にとって好適である。例えばDavis et al., Biomedical Polymers: Polymeric Materials and Pharmaceuticals for Biomedical Use, pp. 441-451 (1980)を見よ。本明細書において開示される抗体または抗体断片-ポリマーコンジュゲートには、非蛋白質性ポリマーが用いられる。非蛋白質性ポリマーは、通例は、親水性の合成ポリマー、すなわちさもなければ天然には見出されないポリマーである。しかしながら、天然に存在し、かつ組み換えまたはインビトロ法によって産生されるポリマーもまた有用であり、ネイティブなソースから単離されるポリマーもそうである。親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンは、本開示の範囲に収まる。ポリアルキレンエーテル、例えばポリエチレングリコール(PEG);ポリオキシアルキレン(alklyene)、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ならびにポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(プルロニック);ポリメタクリレート;カルボマー;糖モノマーのD-マンノース、DおよびL-ガラクトース、フコース、フルクトース、D-キシロース、L-アラビノース、D-グルクロン酸、シアル酸、D-ガラクツロン酸、D-マンヌロン酸(例えばポリマンヌロン酸またはアルギン酸)、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、D-グルコース、およびノイラミン酸を含む分枝または非分枝多糖、例えばホモ多糖およびヘテロ多糖、例えばラクトース、アミロペクチン、澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸ムコ多糖の多糖サブユニット、例えばヒアルロン酸、糖アルコールのポリマー、例えばポリソルビトールおよびポリマンニトール、ヘパリン、またはヘパロンが特に有用である。架橋に先立って、ポリマーは、好ましくは水溶性であるがそうであることを必要としないが、最終的なコンジュゲートは、水溶性でなければならない。好ましくは、コンジュゲートは、少なくとも約0.01mg/ml、より好ましくは少なくとも約0.1mg/ml、なおより好ましくは少なくとも約1mg/mlの水溶性を見せる。1つの態様では、ポリマーは、コンジュゲート形態において高度に免疫原性であるべきではなく、それは、コンジュゲートがかかる経路によって投与されることを意図される場合には、静脈点滴または注射と非適合性である粘度を所有するべきでもない。
【0046】
1つの態様では、ポリマーは、反応性である単一の基のみを含有する。これは、蛋白質分子の架橋を回避することを助ける。しかしながら、架橋を縮減するように反応条件を最大化すること、または実質的に均質な誘導体を回収するためにゲル濾過もしくはイオン交換クロマトグラフィーによって反応産物を精製することは、本開示の範囲内である。他の態様では、複数の抗体断片をポリマーバックボーンに連結する目的で、ポリマーは、2つ以上の反応性の基を含有する。
【0047】
ゲル濾過またはイオン交換クロマトグラフィーは、所望の誘導体を実質的に均質な形態で回収するために用いられ得る。
【0048】
ポリマーの分子量は、最高で約500,000Dの範囲であり得、好ましくは少なくとも約20,000D、または少なくとも約30,000D、または少なくとも約40,000Dである。選ばれる分子量は、達成されるべきコンジュゲートの有効サイズ、ポリマーの性質(例えば、直鎖または分枝などの構造)、および誘導体化(derivitization)度、すなわち抗体断片当たりのポリマー分子数、ならびに抗体断片上のポリマー取り付け部位(単数または複数)に依存し得る。
【0049】
ポリマーおよび連結されるべき抗体断片の1つ以上のアミノ酸残基と反応する多官能性架橋剤を介して、ポリマーは、共有結合的に抗体断片に連結され得る。しかしながら、誘導体化されたポリマーを抗体断片と反応させることまたは逆によって、直接的にポリマーを架橋することもまた本開示の範囲内である。
【0050】
抗体断片上の共有結合的な架橋部位は、N末端アミノ基、およびリジン残基上に見出されるイプシロンアミノ基、ならびに他のアミノ、イミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、ヒドロキシル、または他の親水性基を包含する。ポリマーは、U.S.Pat.No.6,458,355に記載されている通り多官能性(通例では二官能性)架橋剤の使用なしに直接的に抗体断片に共有結合され得る。
【0051】
かかるポリマーの置換度は、抗体断片上の反応性部位の数、ポリマーの分子量、親水性、および他の特徴、ならびに選ばれる特定の抗体断片誘導体化(derivitization)部位に依存して変わるであろう。一般的に、コンジュゲートは、1から約10ポリマー分子を含有するが、本開示の抗体断片に取り付けられたより多大なポリマー分子数もまた企図される。所望の量の誘導体化(derivitization)は、時間、温度、および他の反応条件が置換度を変化させるように変えられる実験マトリックスを用いることによって、容易に達成される。これの後に、コンジュゲートのポリマー置換のレベルが、当分野において公知のサイズ排除クロマトグラフィーまたは他の手段によって決定される。
【0052】
本開示の抗体断片を修飾するための官能化されたPEGポリマーは、Shearwater Polymers, Inc.(ハンツビル、Ala)から利用可能である。かかる商業的に利用可能なPEG誘導体は、アミノ-PEG、PEGアミノ酸エステル、PEG-ヒドラジド、PEG-チオール、PEG-スクシナート、カルボキシメチル化PEG、PEG-プロピオン酸、PEGアミノ酸、PEG スクシンイミジルスクシナート、PEGスクシンイミジルプロピオナート、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステル、PEGのスクシンイミジルカーボネート、アミノ酸PEGのスクシンイミジルエステル、PEG-オキシカルボニルイミダゾール、PEG-ニトロフェニルカーボネート、PEGトレシラート、PEG-グリシジルエーテル、PEG-アルデヒド、PEG-ビニルスルホン、PEG-マレイミド、PEG-オルトピリジル-ジスルフィド、ヘテロ官能性PEG、PEGビニル誘導体、PEGシラン、およびPEGホスホリドを包含するが、これらに限定されない。これらのPEG誘導体をカップリングするための反応条件は、蛋白質、所望のPEG化度、および利用されるPEG誘導体に依存して変わるであろう。PEG誘導体の選び方に関わるいくつかの因子は:誘導体の所望の取り付け点(例えばリジンまたはシステインR基)、加水分解安定性、および反応性、連結部の安定性、毒性、および抗原性、分析にとっての好適性などを包含する。いずれかの特定の誘導体の具体的な使用説明書は、製造者から利用可能である。これらのコンジュゲートはゲル濾過またはイオン交換HPLCによって未反応の出発材料から分離され得る。
【0053】
本明細書において用いられる「抗ケモカイン受容体抗体」は、ケモカイン受容体上のエピトープを認識および結合する抗体を意味する。本明細書において用いられる「抗CCR5抗体」は、CCR5ケモカイン受容体上のエピトープを認識および結合するモノクローナル抗体を意味する。
【0054】
本明細書において用いられる「エピトープ」は、抗体または他の化合物を結合するための表面を形成する分子(単数または複数)の部分を意味する。エピトープは、一続きのまたは一続きではないアミノ酸、炭水化物、もしくは他の非ペプチジル部分、またはオリゴマーの特異的な表面を含み得る。
【0055】
本明細書において用いられる「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸を意味する。
【0056】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNAの形態であり得、これは、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを包含する。核酸分子は二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖である場合には、コードストランドまたは非コード(アンチセンスストランド)であり得る。コード分子は、当分野において公知のコード配列と同一のコード配列を有し得るか、または遺伝暗号の冗長性もしくは縮重の結果としてまたはスプライシングによって同じポリペプチドをコードし得る異なるコード配列を有し得る。
【0057】
抗体または結合断片の「アナログ」は、保存的アミノ酸置換によって抗体または結合断片とは異なる分子を包含する。アミノ酸置換を保存的または非保存的として分類する目的のためには、アミノ酸は次の通り群分けされ得る:群I(疎水性側鎖):met、ala、val、leu、ile;群II(中性の親水性側鎖):cys、ser、thr;群III(酸性側鎖):asp、glu;群IV(塩基性側鎖):asn、gin、his、lys、arg;群V(鎖の向きに影響を及ぼす残基):gly、pro;および群VI(芳香属側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換には、同じクラスのアミノ酸間の置換が関わる。非保存的置換はこれらのクラスの1つのメンバーを別のもののメンバーに交換することを構成する。
【0058】
遺伝暗号の縮重を原因として、種々の核酸配列が、本明細書において開示される蛋白質またはポリペプチドをコードする。例えば、相同な核酸分子は、参照ヌクレオチド配列と少なくとも約90%同一であるヌクレオチド配列を含み得る。より好ましくは、ヌクレオチド配列は、参照ヌクレオチド配列と少なくとも約95%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一である。相同性は、当業者に周知の種々の公に利用可能なソフトウェアツールを用いて計算され得る。例示的なツールは、国立衛生研究所の国立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイトから利用可能なBLASTシステムを包含する。
【0059】
高度に相同なヌクレオチド配列を同定する1つの方法は、核酸ハイブリダイゼーションによってである。それゆえに、相同な核酸分子は、高ストリンジェンシー条件下においてハイブリダイゼーションする。関係する配列の同定は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および関係する核酸配列をクローニングすることにとって好適な他の増幅技術を用いてもまた達成され得る。好ましくは、目当ての核酸配列の部分、例えばCDRを増幅するためのPCRプライマーが選択される。
【0060】
本明細書において用いられる用語「高ストリンジェンシー条件」は、当分野に熟知されているパラメータを言う。核酸ハイブリダイゼーションパラメータは、かかる方法をまとめている参照、例えばMOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989)またはCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, F. M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに見出され得る。高ストリンジェンシー条件の1つの例は、65百分度でのハイブリダイゼーション緩衝液(3.5×SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaH2PO4 (pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中におけるハイブリダイゼーションである。SSCは0.15M塩化ナトリウム/0.015Mクエン酸ナトリウムpH7であり;SDSは、ドデシル硫酸ナトリウムであり;EDTAは、エチレンジアミン四酢酸である。ハイブリダイゼーション後に、核酸がトランスファーされている膜は、例えば2×SSCによって室温で、それから0.1~0.5×SSC/0.1×SDSで最高で68百分度の温度において洗浄される。
【0061】
本明細書において用いられる用語「ベクター」は、別の核酸を輸送することができる核酸分子を言う。ベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、またはファージであり得る。「発現ベクター」は、それが適当な環境に存在するときに、ベクターによって運ばれる1つ以上の遺伝子によってコードされる蛋白質の発現を導くことができるベクターである。
【0062】
核酸配列は、配列が発現コントロール配列に作動可能に連結された(すなわち、その機能を保証するように位置した)後にホストによって発現され得る。これらの発現ベクターは、典型的には、エピソームとしてまたはホスト染色体DNAの一体となった一部としてどちらかでホスト生物によって複製可能である。所望のDNA配列によって形質転換された細胞の検出を可能にするために、普通には、発現ベクターは、選択マーカー、例えばテトラサイクリンまたはネオマイシンを含有するであろう。例えばU.S.Pat.No.4,704,362を見よ。これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0063】
ひとたび発現されると、本開示の抗体丸ごと、それらの二量体、個々の軽および重鎖、または他の免疫グロブリン形態もしくは結合断片は、硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、および同類を包含する当分野の標準的手続きに従って精製され得る。一般的にはR. Scopes, PROTEIN PURIFICATION, Springer-Verlag, New York (1982)を見よ。医薬使用には、少なくとも約90から95%均質の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98から99%以上の均質が最も好ましい。ひとたび所望の通り部分的にまたは均質まで精製されると、それから、ポリペプチドは、治療学的に(体外的にを包含する)またはアッセイ手続き、免疫蛍光染色、および同類を開発することおよび行うことに用いられ得る。一般的には、IMMUNOLOGICAL METHODS, Vols. I and II, Lefkovits and Pernis, eds., Academic Press, New York, N.Y. (1979 and 1981)を見よ。
【0064】
本明細書において用いられる「阻害する」は、組成物なしで起こるであろう量と比較して、量が組成物の存在下において縮減されるということを意味する。
【0065】
本明細書において用いられる用語「競合阻害剤」は、標的に対する結合について参照分子と競合し、それによって標的に対する参照分子の効果を鈍化、阻害、減退、縮減、またはブロックする分子を言う。例えば、PRO140は、CCR5受容体に対するCCL5結合の競合阻害剤である。
【0066】
本開示において用いられる「アゴニスト活性」は、結合が応答を生ずるための標的を活性化する、ある標的に対するある分子による結合を言う。
【0067】
本明細書において用いられる「CCL5アゴニスト活性」は、CCL5による活性化と整合する活性を言う。
【0068】
本開示において用いられる「アンタゴニスト活性」は、結合が応答を生ずるための標的を活性化せず、かつ結合が1つ以上のアゴニスト分子の作用をブロックする、ある標的に対するある分子による結合を言う。
【0069】
本明細書において用いられる「対象」は、癌を有することができるいずれかの動物または人工的に改変された動物を意味する。人工的に改変された動物は、ヒト免疫系を有するSCIDマウスを包含するが、これらに限定されない。動物は、マウス、ラット、犬、モルモット、フェレット、ウサギ、および霊長類を包含するが、これらに限定されない。好ましい態様では、対象は、ヒトである。
【0070】
本明細書において用いられる「処置する」は、所与の疾患または障害の進行を低速化、停止、または逆転させることを意味する。好ましい態様では、「処置する」は、疾患または障害の進行を逆転させることを意味する。いくつかの態様では、処置することは、疾患または障害を抹消する点まで疾患または障害の進行を逆転させることを包含する。
【0071】
本明細書において用いられる「防止する」は、疾患もしくは障害が起こることを防止すること;疾患もしくは障害の進行を遅延させること;または疾患もしくは障害の病理学もしくは症候学を縮減することを言う。例えば、癌を防止することは、腫瘍の発生を防止すること、腫瘍の成長を低速化すること、および腫瘍の発生を遅延させることを包含する。
【0072】
本明細書において用いられる「投与する」は、当業者に公知の方法のいずれかを用いて成就され得るかまたは行なわれ得る。方法は、経口的、静脈内的、筋肉内的、または皮下的手段を含み得る。
【0073】
本明細書において用いられる「有効ドーズ」は、対象を処置するかまたは対象が癌を発生することを防止するかどちらかのための十分な数量での量を意味する。当業者は、どのような量が対象を処置するために要求されるのかを決定するための単純なタイトレーション実験を行ない得る。
【0074】
CCR5結合薬剤
1つの側面では、本開示は、DNA損傷薬剤に加えて、CCR5受容体を標的化し、かつCCL5アゴニスト活性を提供することなしにCCR5細胞受容体に対する競合阻害剤として作用するCCR5結合薬剤の使用に関する。
【0075】
1つの態様では、本開示は、癌を処置または防止することへのPRO140抗体またはその結合断片の使用を提供する。PRO140はUS.Pat.No.7,122,185および8,821,877に記載されているヒト化モノクローナル抗体であり、これらは、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。PRO140は、CD4+CCR5+細胞に対して作出されたネズミmAhのPA14のヒト化バージョンである。Olson et al., Differential Inhibition of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Fusion, gp 120 Binding and CC-Chemokine Activity of Monoclonal Antibodies to CCR5, J. VIROL., 73: 4145-4155. (1999)。インビトロにおいておよびHIV-1感染のhu-PBL-SCIDマウスモデルにおいて、PRO140は、細胞の表面上に発現されたCCR5に結合し、CCR5ケモカイン受容体活性に影響しない濃度でHIV-1侵入および複製を強力に阻害する。Olson et al., Differential Inhibition of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Fusion, gp 120 Binding and CC-Chemokine Activity of Monoclonal Antibodies to CCR5, J. VIROL., 73: 4145-4155. (1999);Trkola et al., Potent, Broad-Spectrum Inhibition of Human Immunodeficiency Virus Type 1 by the CCR5 Monoclonal Antibody PRO 140, J. VIROL., 75: 579-588 (2001)。
【0076】
ヒト化PRO140抗体の重および軽鎖をコードする核酸はATCCに寄託されている。具体的には、それぞれpVKHuPRO140、pVg4-HuPRO140(mut B+D+I)、およびpVg4-HuPRO140 HG2と呼称されるプラスミドが、ブダペスト条約の要件に従ってかつそれを満たして、ATCC、マナサス、Va.、U.S.A. 20108に、2002年2月22日に、それぞれATCCアクセッションNo.PTA4097、PTA4099、およびPTA4098で寄託された。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)は、今は10801ユニバーシティブールバード、マナサス、Va. 20110-2209に所在する。
【0077】
1つの態様では、本明細書において開示される方法は、PRO140と呼称されるヒト化抗体またはCCR5受容体に対する結合についてPRO140と競合する抗体を投与することを含み、PRO140は、(i)各軽鎖がpVK:HuPRO140-VKと呼称されるプラスミド(ATCC寄託呼称PTA-4097)の発現産物を含む2つの軽鎖と、(ii)各重鎖がpVg4:HuPRO140 HG2-VHと呼称されるプラスミド(ATCC寄託呼称PTA-4098)またはpVg4:HuPRO140(mut B+D+I)-VHと呼称されるプラスミド(ATCC寄託呼称PTA-4099)どちらかの発現産物を含む2つの重鎖とを含む。さらなる態様では、PRO140は、抗体PRO140が結合するものと同じエピトープに結合するヒト化またはヒト抗体である。別の態様では、モノクローナル抗体はPRO140と呼称されるヒト化抗体である。
【0078】
さらなる態様では、本開示は、CCR5mAb004と呼称されるヒト抗体またはその結合断片の使用に関する。CCR5mAb004はAbgenixゼノマウス(登録商標)テクノロジーを用いて作出された完全ヒトmAhであり、これはCCR5を特異的に認識および結合する。Roschke et al., Characterization of a Panel of Novel Human Monoclonal Antibodies That Specifically Antagonize CCR5 and Block HIV Entry, 44th Annual Interscience CONFERENCE ON ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY, Washington, D C., Oct. 30-Nov. 2, 2004 (2004);HGS Press Release, Human Genome Sciences Characterizes Panel of Novel Human Monoclonal Antibodies That Specifically Antagonize the CCR5 Receptor and Block HIV-1 Entry, Nov. 2, 2004 (2004);HGS Press Release, Human Genome Sciences Begins Dosing of Patients in a Phase 1 Clinical Trial of CCR5 mAh in Patients Infected With HIV-1, Mar. 30, 2005 (2005)を見よ。
【0079】
1つの態様では、本開示は、癌を処置または防止することへの、PA14と呼称されるハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッションNo.HB-12610)によって産生されたモノクローナル抗体PA14、その結合断片、またはCCR5受容体に結合することにおいてモノクローナル抗体PA14と競合する抗体の使用に関する。
【0080】
1つの態様では、CCR5結合薬剤は、例えばビクリビロク、UK-427,857、マラビロク、GW873140、TAK-652、Takeda AMD070、または同類などの低分子を含み得る。
【0081】
本明細書に記載される方法の1つの態様では、抗体またはその結合断片は、抗体の軽鎖を含む。別の態様では、抗体またはその結合断片は抗体の重鎖を含む。さらなる態様では、抗体またはその結合断片は、抗体のFab部分を含む。なおさらなる態様では、抗体またはその結合断片は、抗体のF(ab')2部分を含む。追加の態様では、抗体またはその結合断片は抗体のFd部分を含む。別の態様では、抗体またはその結合断片は、抗体のFv部分を含む。さらなる態様では、抗体またはその結合断片は、抗体の可変ドメインを含む。なそさらなる態様では、抗体またはその結合断片は、抗体の1つ以上のCDRドメインを含む。さらに別の態様では、抗体またはその結合断片は、抗体の6つのCDRドメインを含む。
【0082】
CC-ケモカイン受容体CCR5は、マクロファージ指向性(R5)株の最大の共受容体であり、HIV-1の性的伝播に重大な役割を演ずる。CCR5のアミノ末端ドメイン(Nt)上のチロシンおよび負荷電残基は共受容体に対するgp120結合ならびにHIV-1融合および侵入にとって必須であるということが実証されている。CCR5の細胞外ループ(ECL)1~3上の残基は、共受容体機能にとって不可欠ではなかったが、CCR5ドメイン間立体配置は、最適なウイルス融合および侵入のために維持されなければならなかった(24)。これは、gp120がECL上の拡散した表面との相互作用を形成するか、またはNtがECL上の残基との結合によって機能的な立体配座に維持されるかどちらかという結論に至った。キメラ共受容体および抗CCR5モノクローナル抗体による研究もまたウイルス侵入にとっての細胞外ループの重要性を示した。
【0083】
G蛋白質共役受容体CCR5は、正常ではT細胞のサブセット上に発現され、HIV感染の共受容体としての用をなす。CCR5は、HIV-1初代分離株の必要条件の融合共受容体である。PRO140は、抗CCR5モノクローナル抗体であり、これは、インビトロにおいてCCR5のケモカイン受容体活性に影響しない濃度でHIV-1侵入および複製を強力に阻害する。悪性形質転換の間に、CCR5発現は、いくつもの癌(乳癌(BCa)、前立腺癌、結腸癌、メラノーマ)において増大することが公知である。低分子阻害剤を用いるCCR5を標的化した癌治験が2018年後半にアクルーアルを始めた。CCR5は、ヒトBCaの>50%において、主としてトリプルネガティブBCaにおいて発現されている。ヒトBCaにおけるその発現は、不良なアウトカムと相関し、マウスでは、CCR5+BCa上皮細胞は、癌幹細胞の特徴を有し、腫瘍様塊を形成し、>60倍多大な効率で腫瘍を開始する。CCR5陰性BCa細胞へのCCR5発現の再導入は、腫瘍転移を促進し、DNA修復遺伝子発現および活性を誘導する。CCR5阻害剤レロンリマブは、HIVを有する>660の患者の処置に用いられており、有意な有害事象が報告されることなしに第III相研究のその一次エンドポイントを満足することを包含した。
【0084】
ここでは、レロンリマブがヒト乳癌細胞株に発現されたCCR5に98%効率で結合したということが報告される。レロンリマブは、CCL5によって誘導されるCa+2フラックスを廃止し、MDA-MB-231細胞の3Dマトリゲル浸潤をブロックした。活性化による制御・正常T細胞による発現および分泌(RANTES)としてもまた公知の炎症性ケモカインのCCL5(C-Cケモカインリガンド5)は、これらの免疫学的メカニズムに重要な役割を演ずる。CCL5は、炎症部位へのT細胞遊走の鍵の制御因子として作用し、損傷または感染部位へのT細胞の遊走を導く。CCL5は、T細胞分化をもまた制御する。ケモカインの多くの生物学的効果は、細胞表面上のケモカイン受容体とのそれらの相互作用によって媒介される。本開示では、CCL5の最も関連性がある公知の受容体は、CCR5受容体である;しかしながら、CCR1およびCCR3もまた公知のCCL5受容体であり、CCR4およびCD44は、補助受容体である。
【0085】
CCR5受容体は、C-CケモカインG共役蛋白質受容体であり、リンパ球(例えばNK細胞、B細胞)、単球、マクロファージ、樹状細胞、T細胞のサブセットなどの上に発現される。CCR5受容体は、蛇行した様式で細胞の形質膜を7回貫く。細胞外部分は、CCR5を標的化する抗体の可能な標的を代表し、アミノ末端ドメイン(Nt)および3つの細胞外ループ(ECL1、ECL2、およびECL3)を含む。CCR5の細胞外部分は、4つのドメイン上に分布したちょうど90アミノ酸を含む。これらのドメインの最も大きいものは、それぞれがおよそ30アミノ酸でNtおよびECL2にある。
【0086】
CCL5リガンドおよびCCR5受容体の複合体の形成は、受容体の立体配座変化を引き起こし、これは、G蛋白質のサブユニットを活性化し、シグナル伝達を誘導し、サイクリックAMP(cAMP)、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、およびチロシンキナーゼ活性化の変化したレベルに至る。これらのシグナル伝達イベントは、細胞極性化および転写因子NF-kBの移行を引き起こし、これは、貪食能力、細胞生残、および炎症促進性遺伝子の転写の増大をもたらす。ひとたびG蛋白質依存的なシグナル伝達が起こると、CCL5/CCR5受容体複合体は、エンドサイトーシスによって内在化される。
【0087】
CCR5との複合体のCCL5の完全な複合体構造がコンピュータによって導出されている。CCL5の1~15残基部分は、CCR5結合ポケットに挿入され;CCL5の1~6N末端ドメインは、CCR5の膜貫通領域に埋まり;CCL5の7~15残基部分は、優勢には、CCR5のN末端ドメインおよび細胞外ループによって包み込まれるということが報告されている。CCL5残基Ala16およびArg17と24~50残基部分の追加の残基とは、CCR5のN末端ドメイン上部および細胞外ループインターフェースと相互作用する。さらに、CCL5のアミノ末端のインテグリティが受容体結合および細胞活性化にとって重大であるということが報告されている。さらに、CCL5およびHIV-1は、主としてほとんど同じCCR5残基と相互作用し、同じケモカイン受容体結合ポケットを共有するということが報告されている。
【0088】
CCR5シグナル伝達は抗腫瘍効果を有し、T細胞活性化の共刺激分子として作用し、腫瘍微小環境へのT細胞走化性を増大させる。CCL5/CCR5軸シグナル伝達はある種の型の癌、例えば乳および前立腺癌において選好的に活性化され得、かかるシグナル伝達は疾患進行を容易化する。癌細胞は、CCL5、CCR5、または両方を過剰発現し得、蓋然的には、ラパマイシンの機械的標的(mTOR)に対するCCR5シグナル伝達の効果を介してそれらの成長および増殖に寄与する。加えて、制御性T細胞(Treg)および骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)を包含するいくつかの免疫抑制免疫細胞は、CCR5を発現し、CCR5シグナル伝達が腫瘍成長に寄与し得る別の経路を示唆している。腫瘍微小環境の癌細胞は、CD4+およびCD8+T細胞によるCCL5産生を利用して、増大した腫瘍成長および腫瘍細胞進展に至り得る。
【0089】
PRO140(レロンリマブ)は、CCR5受容体に結合し、いくつかの結合の共通性をCCL5と共有することが公知である。レロンリマブは、単独のまたはNt残基との組み合わせでのEL2上のCCR5受容体アミノ酸残基に結合する。抗CCR5モノクローナル抗体のCCR5受容体結合部位に対するこの結合は、低分子CCR5結合薬剤のものとは別物である。
【0090】
モノクローナル抗体PRO140は、CD4+T細胞に単独で追加されたときにはcAMPレベルに影響しないが、CCL5と共に投与されたときにはcAMPレベルに対するCCL5の効果を逓減させるということが先に示されている。類似に、PRO140単独は、CHO-K1細胞の走化性に影響しないが、PRO140は、CCL5と共に投与されるときに、CCL5によって誘導される走化性を縮減する。PRO140は、CCR5についてはアゴニスト活性を有さないが、CCR5に対する結合についてはCCL5との競合阻害剤として作用する。
【0091】
レロンリマブは、マウスにおいてヒト乳癌ゼノグラフト転移をブロックする。レロンリマブは、ドキソルビシンを包含するDNA損傷を誘導する薬剤による殺細胞をもまた強めた。
【0092】
レロンリマブは、BCa細胞のCCR5に結合し、乳癌細胞浸潤および腫瘍転移をブロックし、DNA損傷を誘導する化学療法による殺細胞を強めるということが見出された。CCR5は、DNA修復を強め、正常ではなく癌性の乳上皮細胞上に選択的に発現されるので、レロンリマブは、DNA損傷応答(DDR)に基づく処置の腫瘍特異的活性を増強し、化学療法および放射線のドーズの縮減を許し得る。
【0093】
本明細書に記載される研究は、ヒト乳癌細胞株とのCCR5に対するヒト化モノクローナル抗体(レロンリマブ)の結合および機能的相互作用を評価する。
【0094】
使用の方法
1つの側面では、本開示は、癌を処置または防止する方法を提供し、その必要がある対象にCCR5細胞受容体に対する競合阻害剤を投与することを含む。特定の態様では、癌を防止するための方法が提供される。
【0095】
1つの態様では、本開示は、癌を防止する方法を提供し、それ自体では、CCL5アゴニスト活性を有さないCCR5細胞受容体に対する競合阻害剤をその必要がある対象に投与することを含み、競合阻害剤は、CCR5細胞受容体のECL2ループに結合する。さらなる態様では、競合阻害剤は、CCR5細胞受容体に対する結合についてCCL5と競合する。さらなる態様では、競合阻害剤は、モノクローナル抗体PRO140またはその結合断片を含む。さらなる態様では、競合阻害剤は、モノクローナル抗体PRO140またはその結合断片との結合について競合する。
【0096】
1つの態様では、本開示は、癌を防止する方法を提供し、その必要がある対象に:(a)PRO140抗体またはその結合断片;(b)PRO140抗体またはその結合断片をコードする核酸;(c)PRO140抗体またはその結合断片をコードする核酸を含むベクター;あるいは(d)(i)PRO140抗体もしくはその結合断片、(ii)PRO140抗体もしくはその結合断片をコードする核酸、または(iii)PRO140抗体もしくはその結合断片をコードする核酸を含むベクターを含むホスト細胞を投与することを含む。前述の態様では、PRO140抗体またはその結合断片は、例えばPRO140モノクローナル抗体またはscFvを含み得る。
【0097】
1つの態様では、本開示は、癌を防止する方法を提供し、その必要がある対象にPRO140抗体またはその結合断片を投与することを含む。
【0098】
1つの態様では、PRO140などのCCR5細胞受容体に対する競合阻害剤は、薬学的に許容される担体と共に投与される。薬学的に許容される担体は、当業者には周知である。かかる薬学的に許容される担体は、水系または非水系溶液、懸濁液、およびエマルションを包含し得るが、これらに限定されない。非水系溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水系担体は、水、アルコール系/水系溶液、エマルション、または懸濁液、食塩水、および緩衝媒体を包含する。非経口基剤は、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、加乳酸リンゲル液、または不揮発性油を包含する。静注基剤は、体液・栄養補充液、電解質補充液、例えばデキストロースリンゲル液に基づくもの、および同類を包含する。例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス、および同類などの保存料および他の添加剤もまた存在し得る。
【0099】
本発明の組成物のドーズは、対象におよび用いられる特定の投与経路に依存して変わるであろう。用量は、0.1から100,000μg/kgの範囲であり得る。組成物に基づいて、ドーズは、連続的に、例えば連続ポンプによって、または定期的な間隔で、例えば1つ以上の別個の時に送達され得る。特定の組成物の複数ドーズの所望の時間間隔は、当業者によって過度の実験作業なしに決定され得る。
【0100】
本方法の1つの態様では、抗体またはその結合断片は、対象に複数回投与され、各投与は、kg体重当たり0.01mgからkg体重当たり50mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり0.05mgからkg体重当たり25mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。さらなる態様では、各投与は、kg体重当たり0.1mgからkg体重当たり10mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。なおさらなる態様では、各投与は、kg体重当たり0.5mgからkg体重当たり5mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり1mgからkg体重当たり3mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり約2mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。
【0101】
1つの態様では、抗体またはその結合断片は、複数回投与され、最初の投与は、爾後の投与から1週未満の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から少なくとも1週の間隔だけ離間される。さらなる態様では、最初の投与は、爾後の投与から1週の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から2から4週の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から2週の間隔だけ離間される。さらなる態様では、最初の投与は、爾後の投与から4週の間隔だけ離間される。さらに別の態様では、抗体またはその結合断片は、複数回投与され、最初の投与は、爾後の投与から少なくとも1ヶ月の間隔だけ離間される。
【0102】
さらなる態様では、抗体またはその結合断片は、対象に静脈点滴によって投与される。別の態様では、抗体またはその結合断片は、対象に皮下注射によって投与される。別の態様では、抗体またはその結合断片は、対象に筋肉内注射によって投与される。
【0103】
いくつかの態様では、PRO140は、350mgから1400mg、または約525mgまたは約700mgまたは約1050mgの週1回のドーズで投与される。いくつかの態様では、PRO140は、350mgから1400mg、または約525mgまたは約700mgまたは約1050mgの週2回のドーズで投与される。
【0104】
いくつかの態様では、PRO140は、約100mg/mLよりも多大なかつ約200mg/mL未満の量の濃縮されたPRO140と;緩衝液が約10mMから約25mMの量で存在し、約110mMから約120mMの合計量で存在するヒスチジンおよびグリシン緩衝液ならびにナトリウム塩から本質的になる等張化剤(tonicifier)と;界面活性剤とを含む製剤として投与され、製剤は、低張性であり、100mM未満のトータルの塩濃度を有する。
【0105】
いくつかの態様では、PRO140は、約100mg/mLよりも多大なかつ約200mg/mL未満の量の濃縮されたPRO140と;約90mMよりも多大なかつ100mM未満の量のナトリウム塩と;約5mMよりも多大なかつ約25mM未満の量のヒスチジンおよびグリシン緩衝液と;約0.001%w/vよりも多大なかつ約0.2%w/v未満の量の界面活性剤と;任意に、約0.05%w/vから約1.8%w/vの量の安定化剤または非塩等張化剤(tonicifier)とを含む製剤として投与され、製剤は、約250から約280mOsmのオスモル濃度を有し、100mM未満のトータルの塩濃度を有する。
【0106】
いくつかの態様では、PRO140は、(a)約100mg/mLよりも多大なかつ約200mg/mL未満の量の濃縮されたPRO140と;(b)約90mMまたは約95mMから選択される量のナトリウム塩と;(c)約20mMの量のヒスチジンおよびグリシン緩衝液と;(d)0.005%から0.2%w/vの量の界面活性剤と;任意に(e)約260~280mOs/kgの製剤のオスモル濃度を提供するために十分な量の安定化剤または非塩等張化剤(tonicifier)とを含む低粘度の低張性の製剤として投与され、製剤は、100mM未満のトータルの塩濃度を有する。
【0107】
いくつかの態様では、PRO140は、(a)約100mg/mLよりも多大なかつ約200mg/mL未満の量の濃縮されたPRO140と;(b)塩が塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、または乳酸ナトリウムから選択される約90mMまたは約95mMから選択される量の塩と;(c)約20mMの量のヒスチジンおよびグリシン緩衝液と;(d)界面活性剤がポリソルベート、ポロキサマー、またはプルロニックである約0.005%から約0.2%w/vの量の界面活性剤と;(e)約230mOs/kgから約280mOs/kgの製剤のオスモル濃度を提供するために十分な量で存在する安定化剤または非塩等張化剤(tonicifier)とを含む低粘度の低張性の製剤として投与され、安定化剤または非塩等張化剤(tonicifier)は糖アルコール、単糖、二糖、またはそれらの組み合わせから選択され;製剤は、100mM未満のトータルの塩濃度を有する。
【0108】
いくつかの態様では、PRO140は、約100mg/mLよりも多大なかつ約200mg/mL未満の量のPRO140と、約90mMよりも多大な濃度で存在するナトリウム塩ならびに110mMから120mMの合計量で存在するヒスチジンおよびグリシン緩衝液を含む等張化剤(tonicifier)と、約0.001%から約0.2%w/vの量で存在する界面活性剤とを含む組成物として投与され、組成物は、約230から約290mOs/kgのオスモル濃度および100mM未満のトータルの塩濃度を有する。
【0109】
いくつかの態様では、PRO140は、100mg/mLよりも多大なかつ200mg/mL未満の濃度のPRO140と、約90mMよりも多大な濃度で存在するナトリウム塩ならびに約110mMから約120mMの合計量で存在するヒスチジンおよびグリシン緩衝液の等張化剤(tonicifier)と、約0.005%から約0.2%の量の界面活性剤と、使用説明書とを含む容器ならびに製剤を含む製品として提供され、製剤は、100mM未満のトータルの塩濃度を有する。
【0110】
いくつかの態様では、PRO140は、レロンリマブ(PRO140)の700mgのドーズ(175mg/mL)で投与され、それぞれ2mLの2つの注射として送達され、腹部の両側に皮下投与されるであろう。レロンリマブ(PRO140)産物の各バイアルは、175mg/mLの濃度の~1.4mL抗体を含有し得る。
【0111】
本明細書に記載される態様では、CCR5結合薬剤ではない治療薬剤が従来のドーズで従来の方法を用いて投与され得る。
【0112】
別の態様では、CCR5結合薬剤ではない治療薬剤が、CCR5結合薬剤の投与によって達成される相乗的効果を原因とするより低いドーズで投与され得る。
【0113】
レロンリマブなどのCCR5結合薬剤は、同時にまたは逐次的な順序で非CCR5結合薬剤と一緒に投与され得る。治療上有効な薬剤の特定の投薬レジメンまたは導入の順序にかかわらず、対象がCCR5結合薬剤および非CCR5結合薬剤のそれぞれについて治療効果を経験する一緒の投与が有効に達成され得る。
【0114】
前述の態様のいずれかにおいて、癌は、例えば乳癌、前立腺癌、結腸癌、メラノーマ、胃癌、卵巣癌、肺(非小細胞)癌、膵臓癌、肉腫、または血液細胞癌であり得る。特定の態様では、癌は、乳癌である。特定の態様では、癌は、転移性乳癌である。
【0115】
転移性乳癌を処置する方法
1つの側面では、本開示は、転移性乳癌を処置または防止する方法を提供し、その必要がある対象にCCR5結合薬剤を別の治療薬剤との組み合わせで投与することを含む。
【0116】
特定の態様では、本明細書において開示される方法は、レロンリマブを例えばドキソルビシンまたはカルボプラチンなどのDNA損傷薬剤との組み合わせで投与することを含む。
【0117】
1つの態様では、CCR5細胞受容体に対する競合阻害剤、例えばPRO140は、1つ以上のDNA損傷薬剤、例えば化学療法との組み合わせで投与され、これらは:アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide);スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メトウレドパ、およびウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレン(trietylene)ホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)、およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を包含するエチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、およびウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosurea)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアミシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、およびトリメトレキサート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、および5-FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、およびトリロスタン;葉酸補充液、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;エリプチニウム酢酸塩;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKTM;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル(タキソール(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、プリストン、N.J.)およびドセタキセル(Taxotere(商標)、Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;およびカペシタビン;ならびに上のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または、誘導体を包含し得るが、これらに限定されない。
【0118】
特定の態様では、転移性乳癌は、転移性トリプルネガティブ乳癌を含み、方法は、レロンリマブをドキソルビシンとの組み合わせでまたはレロンリマブをカルボプラチンとの組み合わせで投与することを含む。
【0119】
1つの態様では、本開示は、CCR5陽性転移性乳癌を処置または防止する方法を提供し、その必要がある対象に有効量のCCR5結合薬剤を投与することを含む。
【0120】
さらなる態様では、CCR5結合薬剤は、CCR5細胞受容体に対する結合についてCCL5と競合する。さらなる態様では、CCR5結合薬剤は、モノクローナル抗体 PA14、レロンリマブ、もしくはCCR5mAb004、またはその結合断片を含む。さらなる態様では、競合阻害剤は、モノクローナル抗体PA14、レロンリマブ、もしくはCCR5mAb004、またはその結合断片との結合について競合する。
【0121】
1つの態様では、本開示は、レロンリマブまたはその結合断片をその必要がある対象に投与することを含む、CCR5陽性転移性乳癌を処置または防止する方法を提供する。
【0122】
前述の態様のいずれかにおいて、転移性乳癌を防止することは、癌転移もしくは原発腫瘍の成長もしくは進展を低速化すること、転移性腫瘍の形成を防止すること、または転移性腫瘍もしくは原発腫瘍の成長もしくはサイズを限定もしくは縮減することを含み得る。
【0123】
1つの態様では、レロンリマブなどのCCR5結合薬剤が、薬学的に許容される担体と共に投与される。薬学的に許容される担体は、当業者に周知である。かかる薬学的に許容される担体は、水系または非水系溶液、懸濁液、およびエマルションを包含し得るが、これらに限定されない。非水系溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水系担体は、水、アルコール系/水系溶液、エマルション、または懸濁液、食塩水、および緩衝媒体を包含する。非経口基剤は、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、加乳酸リンゲル液、または不揮発性油を包含する。静注基剤は、体液・栄養補充液、電解質補充液、例えばデキストロースリンゲル液に基づくもの、および同類を包含する。例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス、および同類などの保存料および他の添加剤もまた存在し得る。1つの態様では、CCR5結合薬剤は、U.S.特許No.9,956,165に開示されている製剤として提供される。これの内容は、この参照によってここで組み込まれる。
【0124】
本開示の組成物のドーズは、対象におよび用いられる特定の投与経路に依存して変わるであろう。用量は、0.1から100,000μg/kgの範囲であり得る。組成物に基づいて、ドーズは、連続的に、例えば連続ポンプによって、または定期的な間隔で、例えば1つ以上の別個の時に送達され得る。特定の組成物の複数ドーズの所望の時間間隔は、当業者によって過度の実験作業なしに決定され得る。
【0125】
本方法の1つの態様では、抗体またはその結合断片は、対象に複数回投与され、各投与は、kg体重当たり0.01mgからkg体重当たり50mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり0.05mgからkg体重当たり25mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。さらなる態様では、各投与は、kg体重当たり0.1mgからkg体重当たり10mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。なおさらなる態様では、各投与は、kg体重当たり0.5mgからkg体重当たり5mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり1mgからkg体重当たり3mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり約2mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。態様は、約175mgから約1,400mgの範囲である量の用量を包含し、ある種の量のCCR5結合薬剤、例えば175mg、350mg、525mg、700mg、875mg、1050mg、1,225mg、および1,400mgを送達する剤形を包含する。
【0126】
1つの態様では、抗体またはその結合断片は、複数回投与され、最初の投与は、爾後の投与から1週未満の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から少なくとも1週の間隔だけ離間される。さらなる態様では、最初の投与は、爾後の投与から1週の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から2から4週の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から2週の間隔だけ離間される。さらなる態様では、最初の投与は、爾後の投与から4週の間隔だけ離間される。さらに別の態様では、抗体またはその結合断片は、複数回投与され、最初の投与は、爾後の投与から少なくとも1ヶ月の間隔だけ離間される。
【0127】
さらなる態様では、抗体またはその結合断片は、対象に静脈点滴によって投与される。別の態様では、抗体またはその結合断片は、対象に皮下注射によって投与される。別の態様では、抗体またはその結合断片は、対象に筋肉内注射によって投与される。
【0128】
1つの態様では、前述の方法は、さらに、対象に細胞治療、例えば自家もしくは同種免疫療法;低分子;化学療法薬剤;またはCCR5/CCL5シグナル伝達の阻害剤を投与することを含み得る。1つの態様では、CCR5/CCL5シグナル伝達の阻害剤が投与され、マラビロク、ビクリビロク、アプラビロック、SCH-C、TAK-779、PA14抗体、2D7抗体、RoAb13抗体、RoAb14抗体、または45523抗体を含む。
【0129】
1つの態様では、PRO140などのCCR5細胞受容体に対する競合阻害剤は、1つ以上の他の治療分子または処置、例えば(such a)細胞治療、例えば自家もしくは同種免疫療法;低分子;化学療法;またはCCR5/CCL5シグナル伝達の阻害剤、例えばマラビロク、ビクリビロク、アプラビロック、SCH-C、TAK-779、PA14抗体、2D7抗体、RoAb13抗体、RoAb14抗体、もしくは45523抗体との組み合わせで投与される。1つの態様では、本明細書において開示される方法は、PRO140をマラビロク、ビクリビロク、アプラビロック、SCH-C、TAK-779、PA14抗体、2D7抗体、RoAb13抗体、RoAb14抗体、または45523抗体との組み合わせで投与することを含む。
【0130】
1つの態様では、PRO140などのCCR5結合薬剤は、1つ以上の化学療法、例えば、例えば:アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide);スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メトウレドパ、およびウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレン(trietylene)ホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)、およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を包含するエチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、およびウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosurea)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアミシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、およびトリメトレキサート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、および5-FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、およびトリロスタン;葉酸補充液、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;エリプチニウム酢酸塩;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKTM;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル(タキソール(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、プリンストン、N.J.)およびドセタキセル(Taxotere(商標)、Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;およびカペシタビン;ならびに上のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体と併せて投与される。
【0131】
本明細書において用いられる「低分子」CCR5受容体アンタゴニストは、例えば、CCR5受容体に結合および受容体の活性を阻害する有機低分子を包含する。1つの態様では、低分子は、1,500ダルトン未満の分子量を有する。別の態様では、低分子は、600ダルトン未満の分子量を有する。
【0132】
1つの態様では、PRO140などのCCR5結合薬剤は、1つ以上の低分子、例えばSCH-C(Strizki et al., PNAS, 98: 12718-12723 (2001));SCH-D(SCH417670;ビクリビロク);UK-427,857 (マラビロク;1-[(4,6-ジメチル-5-ピリミジニル)カルボニル]-4-[4-[2-メトキシ-1(R)-4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル-3(S)-メチル-1-ピペラジニリ-4-メチルピペリジン);GW873140;TAK-652;TAK-779;AMD070;AD101;1,3,4-三置換ピロリジン(Kim et al.,Bioorg. Med. Chem. Lett., 15: 2129-2134 (2005));修飾4-ピペリジニル-2-フェニル-1-(フェニルスルホニルアミノ)-ブタン(Shah et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 15: 977-982 (2005));アニバミンTFA、オフィオボリンC、または19,20-エポキシサイトカラシンQ(Jayasuriya et al., J. Nat. Prod., 67: 1036-1038 (2004));5-(ピペリジン-1-イル)-3-フェニル-ペンチルスルホン(Shankaran et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14: 3589-3593 (2004));4-(ヘテロアリールピペルジン-1-イル-メチル)-ピロリジン-1-イル-酢酸アンタゴニスト(Shankaran et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14: 3419-3424 (2004));4-(ピラゾリル)ピペリジン側鎖を含有する薬剤(Shu et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14: 947-52 (2004);Shen et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14: 935-939 (2004);Shen et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14: 941-945 (2004));3-(ピロリジン-1-イル)プロピオン酸アナログ(Lynch et al., Org. Lett., 5: 2473-2475 (2003));[2-(R)-[N-メチル-N-(1-(R)-3-(S)-((4-(3-ベンジル-1-エチル-(1H)-ピラゾール-5-イル)ピペリジン-1-イル)メチル)-4-(S)-(3-フルオロフェニル)シクロペンタ-1-イル)アミノ]-3-メチルブタン酸(MRK-1)](Kumar et al., J. Pharmacol. Exp. Then, 304: 1161-1171 (2003));4-アミノ複素環置換ピペリジン側鎖を持つ1,3,4三置換ピロリジン(Willoughby et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13: 427-431 (2003);Lynch et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 12: 3001-3004 (2003);Lynch et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13: 119-123 (2003);Hale et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 12: 2997-3000 (2002));二環式イソオキサゾリジン(Lynch et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 12: 677-679 (2002));CCR5アンタゴニストのコンビナトリアル合成(Willoughby et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 11: 3137-41 (2001));複素環含有化合物(Kim et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 11: 3103-3106 (2001));ヒダントインを含有するアンタゴニスト(Kim et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 11: 3099-3102 (2001));1,3,4三置換ピロリジン(Hale et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 11 : 2741-2745 (2001));1-[N-(メチル)-N-(フェニルスルホニル)アミノ]-2-(フェニル)-4-(4-(N-(アルキル)-N-(ベンジルオキシカルボニル)アミノ)ピペリジン-1-イル)ブタン(Finke et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 11: 2475-2479 (2001));植物リッピア・アルバからの化合物(Hedge et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 12: 5339-5342 (2004));ピペラジンに基づくCCR5アンタゴニスト(Tagat et al., J. Med. Chem., 47: 2405-2408 (2004));オキシイミノ-ピペリジノ-ピペリジンに基づくCCR5アンタゴニスト(Palani et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13: 709-712 (2003));SCH 351125の回転異性体(Palani et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13: 705-708 (2003));ピペラジンに基づく対称ヘテロアリールカルボキサミド(McCombie et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13 : 567-571 (2003));オキシイミノ-ピペリジノ-ピペリジンアミド(Palani et al., J. Med. Chem., 45: 3143-3160 (2002));Sch-351125およびSch-350634(Este, Curr. Opin. Investig. Drugs., 3: 379-383 (2002));1-[(2,4-ジメチル-3-ピリジニル)カルボニル]-4-メチル-4-[3(S)-メチル-4-[l(S)-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-1-ピペラジニル]-ピペリジンN1-オキシド(Sch-350634)(Tagat et al., J. Med. Chem., 44: 3343-3346 (2001));4-[(Z)-(4-ブロモフェニル)-(エトキシイミノ)メチル]-1'-[(2,4-ジメチル-3-ピリジニル)カルボニル]-4'-メチル-1,4'-ビピペリジンN-オキシド(SCH351125)(Palani et al., J. Med. Chem., 44: 3339-3342 (2001));2(S)-メチルピペラジン(Tagat et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 11: 2143-2146 (2001));ピペリジン-4-カルボキサミド誘導体(Imamura et al., Bioorg. Med. Chem., 13: 397-416, 2005);スルホキシド部分を含有する1-ベンザゼピン誘導体(Seto et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13: 363-386 (2005));ピリジンN-オキシド部分を含有するアニリド誘導体(Seto et al., Chem. Pharm. Bull. (Tokyo), 52: 818-829 (2004));第三級アミン部分を含有する1-ベンゾチエピン1,1-ジオキシドおよび1-ベンザゼピン誘導体(Seto et al., Chem. Pharm. Bull. (Tokyo), 52: 577-590 (2004));N-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピル]-N,N'-ジフェニル尿素(Imamura et al., Bioorg. Med. Chem., 12: 2295-2306 (2004));5-オキソピロリジン-3-カルボキサミド誘導体(Imamura et al., Chem. Pharm. Bull. (Tokyo), 52: 63-73 (2004);第四級アンモニウム部分を有するアニリド誘導体(Shiraishi et al., J. Med. Chem., 43 : 2049-2063 (2000));AK602/ONO4128/GW873140(Nakata et al., J. Virol., 79: 2087-2096 (2005));スピロジケトピペラジン誘導体(Maeda et al., J. Biol. Chem., 276: 35194-35200 (2001);Maeda et al., J. Virol., 78: 8654-8662 (2004));および選択的CCR5アンタゴニスト(Thoma et al., J. Med. Chem., 47: 1939-1955 (2004))との組み合わせで投与される。
【0133】
1つの態様では、PRO140などのCCR5結合薬剤は、SCH-C、SCH-D(SCH417670またはビクリビロク)、UK-427, 857(マラビロク)、GW873140、TAK-652、TAK-779、AMD070、またはAD101の1つ以上との組み合わせで投与される。U.S.Pat.No.8,821,877を見よ。
【0134】
1つの態様では、PRO140などのCCR5細胞受容体に対する競合的な結合薬剤は、DNA損傷薬剤との組み合わせで投与されるときに相乗的効果を見せる。さらなる態様では、PRO140などのCCR5細胞受容体に対する競合的な結合薬剤は、DNA損傷薬剤との組み合わせで、かつ1つ以上の他の治療分子または処置、例えば細胞治療、低分子、化学療法、またはCCR5/CCL5シグナル伝達の阻害剤と併せて投与されるときに相乗的効果を見せる。
【0135】
2つ以上の薬剤間の「相乗性」は、それらの相加的効果よりも多大である薬剤の組み合わせ効果を言う。薬剤間の相乗的、相加的、またはアンタゴニスト的効果は、組み合わせ係数(CI)法を用いる用量反応曲線の分析によって定量され得る。1よりも多大なCI値は、アンタゴニスト性を指示し;1に等しいCI値は、相加的効果を指示し;1未満のCI値は、相乗的効果を指示する。1つの態様では、相乗的相互作用のCI値は、0.9未満である。別の態様では、CI値は、0.8未満である。別の態様では、CI値は、0.7未満である。
【0136】
前述の態様のいずれかでは、癌を防止することは、癌の成長を低速化すること、腫瘍の形成を防止すること、または腫瘍の成長もしくはサイズを限定もしくは縮減することを含み得る。
【0137】
1つの態様では、PRO140などのCCR5細胞受容体に対する競合阻害剤は、薬学的に許容される担体と共に投与される。薬学的に許容される担体は、当業者に周知である。かかる薬学的に許容される担体は、水系または非水系溶液、懸濁液、およびエマルションを包含し得るが、これらに限定されない。非水系溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水系担体は、水、アルコール系/水系溶液、エマルション、または懸濁液、食塩水、および緩衝媒体を包含する。非経口基剤は、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、加乳酸リンゲル液、または不揮発性油を包含する。静注基剤は、体液・栄養補充液、電解質補充液、例えばデキストロースリンゲル液に基づくもの、および同類を包含する。例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス、および同類などの保存料および他の添加剤もまた存在し得る。
【0138】
本開示の組成物のドーズは、対象におよび用いられる特定の投与経路に依存して変わるであろう。用量は、0.1から100,000μg/kgの範囲であり得る。組成物に基づいて、ドーズは、連続的に、例えば連続ポンプによって、または定期的な間隔で、例えば1つ以上の別個の時に送達され得る。特定の組成物の複数ドーズの所望の時間間隔は、当業者によって過度の実験作業なしに決定され得る。
【0139】
本方法の1つの態様では、抗体またはその結合断片は、対象に複数回投与され、各投与は、kg体重当たり0.01mgからkg体重当たり50mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり0.05mgからkg体重当たり25mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。さらなる態様では、各投与は、kg体重当たり0.1mgからkg体重当たり10mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。なおさらなる態様では、各投与は、kg体重当たり0.5mgからkg体重当たり5mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり1mgからkg体重当たり3mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。別の態様では、各投与は、kg体重当たり約2mgの抗体またはその結合断片を対象に送達する。
【0140】
1つの態様では、抗体またはその結合断片は、複数回投与され、最初の投与は、爾後の投与から1週未満の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から少なくとも1週の間隔だけ離間される。さらなる態様では、最初の投与は、爾後の投与から1週の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から2から4週の間隔だけ離間される。別の態様では、最初の投与は、爾後の投与から2週の間隔だけ離間される。さらなる態様では、最初の投与は、爾後の投与から4週の間隔だけ離間される。さらに別の態様では、抗体またはその結合断片は、複数回投与され、最初の投与は、爾後の投与から少なくとも1ヶ月の間隔だけ離間される。
【0141】
さらなる態様では、抗体またはその結合断片は、対象に静脈点滴によって投与される。別の態様では、抗体またはその結合断片は、対象に皮下注射によって投与される。別の態様では、抗体またはその結合断片は、対象に筋肉内注射によって投与される。
【0142】
1つの態様では、前述の方法は、さらに、対象に細胞治療、例えば自家もしくは同種免疫療法;低分子;化学療法薬剤;またはCCR5/CCL5シグナル伝達の阻害剤を投与することを含み得る。1つの態様では、CCR5/CCL5シグナル伝達の阻害剤が投与され、マラビロク、ビクリビロク、アプラビロック、SCH-C、TAK-779、PA14抗体、2D7抗体、RoAb13抗体、RoAb14抗体、または45523抗体を含む。
【0143】
1つの態様では、PRO140などのCCR5細胞受容体に対する競合阻害剤が、1つ以上の他の治療分子または処置、例えば(such a)細胞治療、例えば自家もしくは同種免疫療法;低分子;化学療法;またはCCR5/CCL5シグナル伝達の阻害剤、例えばマラビロク、ビクリビロク、アプラビロック、SCH-C、TAK-779、PA14抗体、2D7抗体、RoAb13抗体、RoAb14抗体、もしくは45523抗体との組み合わせで投与される。1つの態様では、本明細書において開示される方法は、PRO140をマラビロク、ビクリビロク、アプラビロック、SCH-C、TAK-779、PA14抗体、2D7抗体、RoAb13抗体、RoAb14抗体、または45523抗体との組み合わせで投与することを含む。
【0144】
本明細書に記載される研究は、乳癌細胞株の研究に関するが、転移をブロックおよび/またはDNA損傷化学療法によって誘導される細胞死を増強するためのレロンリマブまたは他の抗CCR5薬剤の使用については、CCR5を発現する他の癌もまたベネフィットがあり得るということが企図される。かかる他の癌は、白血病癌、リンパ腫癌、骨および結合組織の肉腫、脳腫瘍癌、乳癌、副腎癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、前立腺癌、直腸癌、胆嚢癌、肺癌、口腔癌、皮膚癌、腎臓癌、および骨原性肉腫癌、ならびに他の1つを包含し得るが、これらに限定されない。
【0145】
抗CCR5薬剤は、抗体、他の蛋白質、ならびに例えばマラビロクおよびビクリビロクなどの低分子薬剤を包含し得るが、これらに限定されない。
【0146】
DNA損傷化学療法薬剤は、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、およびアメタントロン、ならびにそれらのいずれかの誘導体を包含し得るが、これらに限定されない。例えばカルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドセタキセル、エルロチニブ、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メシル酸イマチニブ、イリノテカン、メトトレキサート、パクリタキセル、ソラフィニブ、スニチニブ、トポテカン、ビンクリスチン、またはビンブラスチン、および他などの他の化学療法薬剤が本開示に用いられ得、本開示からのベネフィットがあり得る。癌または癌転移を処置することへの使用のためのいずれかの従来の治療薬剤は、本開示と一緒に用いられ得、本開示からのベネフィットがあり得るということが企図される。
【0147】
DNA損傷薬剤
理論によって拘束されることなしに、ある種のDNA損傷薬剤に対する癌細胞の暴露は、DNA損傷応答を誘発するための十分なDNA損傷と、DNA修復を許すための一時的なS期停止とをもたらすということが信じられている。DNA損傷応答は2つの相同な蛋白質キナーゼの毛細血管拡張性運動失調症(ATM)および毛細血管拡張性運動失調症Rad3関連(ATR)によって制御されると信じられている。ATRは、チェックポイントキナーゼ1(Chk1)を包含する何百という基質のリン酸化によって、DNA複製、細胞周期遷移、およびDNA修復を制御するためにシグナル伝達する。DNA損傷薬剤は、癌化学療法への使用の長い歴史を有する。DNA損傷は、細胞のアポトーシスを誘導し、DNA損傷抗癌薬物の最大の抗増殖メカニズムであると広く信じられている。
【実施例
【0148】
例1.乳癌細胞によって発現されたCCR5とのレロンリマブの結合
図1Aおよび1B.レロンリマブは、ヒト乳癌細胞のCCR5に結合する。
【0149】
図1Aに示されている通り、乳癌細胞におけるヒトCCR5に対するレロンリマブの結合を決定するために、モデル系として、MDA-MB-231ヒト乳癌細胞株をヒトCCR5発現ベクターによってトランスフェクションした。R&Dからの先に試験された商業的なAPCコンジュゲート化マウス抗ヒト/マウス/ラットCCR5抗体(FAB1802A)(APC-αCCR5)を正の対照として用いて、CCR5陽性細胞を評価した。MDA-MB-231-CCR5細胞をAPC-αCCR5およびレロンリマブ両方によって1~140μg/mlの濃度を用いて染色した。Alexa Fluor 488コンジュゲート化マウス抗ヒトIgGを二次抗体として用いて、レロンリマブ結合細胞を測定した。FACSによるCCR5とのレロンリマブ結合の分析が図1Aに示されている。ヒトCCR5とのレロンリマブの結合を検証した。
【0150】
図1Bに示されている通り、CCR5陽性細胞に対するPR140結合の効率は、最高で98%であった。
【0151】
例2.MDA-MB-231-CCR5細胞におけるCCL5によって誘導されるCa 2+ 応答に対するPR140の効果
図2A図2B図2C、および図2D.PR140(レロンリマブ)は、ヒト乳癌細胞においてヒトCCR5によって媒介されるシグナル伝達をブロックする。CCR5活性化は、カルシウムフラックスを誘導する(Mueller et al., 2002;Petkovic et al., 2004)。CCR5機能に対するレロンリマブの効果を評価するために、我々は、MDA-MB-231-CCR5細胞におけるCCL5によって誘導されるカルシウム応答を、レロンリマブありまたはなしで、生細胞画像によって測定した(図2A図2B、および図2C)。Fluo-4をカルシウム濃度指標として用いた。CCR5アンタゴニストのビクリビロクを正の対照として用いた(図2Aおよび2D)。結果は、レロンリマブがCCL5によって誘導されるカルシウム応答をMDA-MB-231-CCR5細胞においてブロックし得るということを示した(対照細胞では1.23±0.10、N=10、PR140処置細胞では0.54±0.13、N=12。CCL5によって誘導される(induce)カルシウムピークにおいてP<0.001)。
【0152】
例3.レロンリマブは、乳癌細胞3Dマトリゲル浸潤をブロックする
図3A図3B図3C、および図3D.レロンリマブは、細胞外マトリックス中へのヒト乳癌細胞のCCR5によって媒介される浸潤をブロックする。乳癌細胞が細胞外マトリックスに浸潤する能力は、腫瘍転移から区別され得るが、その重要なステップである(Zetter, 1990)。PRO140が3Dマトリゲル浸潤アッセイをブロックする能力を試験するために、MDA-MB-231細胞を用いた。CCL5を浸潤を誘導するための化学誘引物質として用いた。CCR5の低分子阻害剤ビクリビロクを正の対照のある形態として用いた。レロンリマブは、CCL5によって誘導されるMDA-MB-231乳癌細胞浸潤をビクリビロクと類似の効力によって縮減した(図3A図3B)(対照の855±9、N=8対レロンリマブの855±9、N=9。P<0.001)。我々は、乳癌細胞浸潤に対する異なるドーズのレロンリマブの効果をもまた試験し、結果は、175および350μg/mlのレロンリマブ両方が有効にMDA-MB-231細胞浸潤をブロックし得るということを示した(図3C図3D)。
【0153】
例4.レロンリマブは、マウス肺転移モデルにおける乳癌細胞転移をブロックする
図4Aおよび図4B.レロンリマブはマウスの乳癌転移をブロックする。マウスを4つの群(対照、レロンリマブ、マラビロク、およびビクリビロク)にランダムに分けた。Luc2-GFPによってトランスフェクションされた安定なMDA-MB-231細胞を尾静脈からマウスに注射した。各群のマウスは、注射の1日前に処置された。肺に形成された転移腫瘍をバイオルミネセンスイメージングによって決定した。対照、レロンリマブ、およびマラビロク群からの代表的なマウスのバイオルミネセンス画像を(図4A)に示した。各群の腫瘍サイズの定量分析を(図4B)に示した。腫瘍のサイズは、フォトンフラックス(×108p/sec/cm2/sr)によって定義される。データは、平均±SEとして示した。レロンリマブは、肺への乳癌腫瘍転移を劇的に減少させた。
【0154】
例5.レロンリマブは、ドキソルビシンによって誘導される細胞死を増強する
図5Aおよび図5B.レロンリマブは、DNA損傷を誘導する化学療法薬剤のドキソルビシンによって誘導される細胞死を増強する。MDA-MB-231細胞を、異なるドーズのドキソルビシンを組み合わせた10mg/mlのレロンリマブによって3日に渡って処置した。MTTアッセイを用いて相対細胞数を決定した(図5A)。異なるドーズのドキソルビシンを組み合わせたマラビロク(100mM)によって処置された細胞を正の対照として用いた(図5B)。データは、N=8の平均±SEMとして示されている。
【0155】
例6.CCR5+転移性TNBCのレロンリマブおよびカルボプラチン処置
ここでは、CCR5+転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)を有する患者におけるカルボプラチンと組み合わせられたレロンリマブ(PRO140)の第Ib/II相研究からの暫定的結果を記載する。第1b相の一次的な目標は、カルボプラチンと組み合わせられたときのTNBCを有する患者におけるPRO140の安全性、忍容性、および最大耐用量(MTD)を決定して、組み合わせの推奨される第II相ドーズを定義することである。第2b相の一次的な目標は、ネオアジュバントおよびアジュバント設定において、アントラサイクリンおよびタキサンによって先に処置されたCCR5+TNBCを有する患者において、無増悪生存期間(PFS)に対する組み合わせのPRO140およびカルボプラチンのインパクトを評価することである。
【0156】
研究に登録された第1の対象の対象706-001は、ステージIV転移性トリプルネガティブ乳癌を有する42歳の女性である。対象は、左乳癌の既往を有し、右肺転移を有する。
【0157】
対象はステージIIAグレード3浸潤性腺管癌(ER neg/PR neg/HER-2-NEU neg)と診断され、ドーズデンスアドリアマイシン(ドキソルビシン)・シクロホスファミド[ddAC]およびパクリタキセルを先に受けた。対象は診断の3週後に乳部の左乳腺腫瘤摘出およびセンチネルリンパ節生検を経過した。
【0158】
対象は診断の10週後にプロトコールCD07_TNBCのプレスクリーニングのインフォームドコンセントに署名した。アーカイバル組織による免疫組織化学分析はCCR5+腫瘍浸潤白血球の高い優勢を示した(図6A~6C)。
【0159】
ベースラインの標的病変は25mmのサイズで右肺上部に同定された。病変は右肺門部の胸膜に基づく大葉間裂軟部組織濃度結節として記載された。
【0160】
ベースラインの病変の同定および測定のおよそ6週後に、対象は350mgレロンリマブ(PRO140)の最初の処置を受けた(1)。各処置サイクルは21日からなった。レロンリマブ(PRO140)を、毎週、第1、8、および15日に、各サイクルの第1日の(21日毎の)カルボプラチンAUC5との組み合わせで皮下投与した。別様に指示されない限り、この処置レジメンはmTNBC研究に登録された全ての対象に用いた。
【0161】
【表1】
【0162】
循環腫瘍細胞(CTC)および癌関連マクロファージ様細胞(CAML)評価のための血液サンプルをベースラインにおいておよび爾後に各処置サイクルの第1日において収集して、処置後のCTCおよびCAMLの変化を評価し、CCR5発現およびPD-L1発現の間の相関分析を行なった。
【0163】
Creatv Microtechはサイズに基づくテクノロジーおよび検出方法論(LifeTracアッセイ)を開発している。これは血液中の全ての癌関連細胞、すなわちCTC、上皮間葉転換細胞(EMT)、およびCAMLの収集およびキャラクタリゼーションを可能化する[Adams Cytometry 2015、Adams RSC 2014]。CAMLおよびCTCを捕捉するためには、CellSieve(商標)濾過プラットフォームが用いられる。
【0164】
CCR5発現およびPD-L1発現の結果の概要は、次の通りである:
【0165】
【表2】
【0166】
トータルのCTC、EMT、およびCAMLの結果の概要は、次の通りである:
【0167】
【表3】
【0168】
スキャンを2サイクル毎の終わりに(6週毎に)取った。対象は、6週後にスキャン1を、12週後にスキャン2を、18週後にスキャン3を有した(表4)。スキャン3では、新たな肺結節は、見出されなかった。肺結節の右上葉に見出された標的病変は、2.1×1.6cmと測定され、これは、先には2.4×1.9であり、サイズの20%減少を有した。
【0169】
【表4】
【0170】
右肺転移は、6.8という最大標準取り込み値(SUV)を実証する(先には15.3)。先に同定された右肺門部リンパ節は、消散した。診断CTの胸部、腹部、および骨盤において、新たなリンパ節腫大または転移性の疾患は、報告されなかった。
【0171】
対象がサイクル6の第1日の受診を完了した時には、対象は、レロンリマブ(PRO140)の毎週の注射と3週毎のカルボプラチン点滴とをプロトコールに従って受けていた。サイクル6の第1日の受診の時には、深刻な有害事象は、報告されていなかった。
【0172】
16週のレロンリマブ処置後に、mTNBC研究に登録された第1の対象は、検出可能な循環腫瘍細胞(CTC)または推定上の転移性腫瘍細胞を末梢血中に示さなかった。さらにその上、患者は、レロンリマブによるおよそ11週の処置後に癌関連細胞上のCCR5発現の大きい縮減を有した。加えて、肺結節の右上葉に見出された標的病変は、サイズの20%よりも多大な減少を示す(腫瘍体積によって測定される)。この結果は、疾患アウトカムの顕著な改善であり、レロンリマブが転移性トリプルネガティブ乳癌の処置のための有望なアジュバント療法であるということを実証している。
【0173】
mTNBCの第2の対象が、mTNBC研究に登録された。社のmTNBC第1b/2相トライアルに登録された第2の患者から収集されたデータは、カルボプラチンとの組み合わせでのレロンリマブの先に記載された処置レジメンによる2週の処置後に、検出可能なレベルのCTCを示さなかった。この患者は、たった2週の処置後にEMT細胞の70%縮減をもまた示した。mTNBCトライアルの第2の患者からの初期データは、レロンリマブによる2週の処置後にCTCがゼロまで落ちたということを指示した。加えて、第2の患者は、45という初期CAMLカウントを有し、少なくとも2週の処置後に、CAMLカウントは、30まで減少した。
【0174】
第3の対象が、mTNBC研究に登録された。先に記載された処置レジメンによる処置の開始におよび処置の開始の2週後に、CTC+EMTカウントを測定した。結果は、第3の患者のトータルのCTC+EMTカウントが最初の2週の処置の間に75%減少したということを指示した。
【0175】
上に記載されている種々の態様は、さらなる態様を提供するために組み合わせられ得る。本明細書において参照および/または2019年4月1日出願のU.S.仮特許出願No.62/827,729を包含する出願データシートに列記されている U.S.特許、U.S.特許出願公開、U.S.特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許公開の全ては、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。必要な場合には、種々の特許、出願、および公開の概念を採用してなおさらなる態様を提供するように、態様の側面は、改変され得る。
【0176】
これらのおよび他の変化が、上の詳細な記載に照らして態様になされ得る。一般的に、次の請求項において用いられる用語は、本明細書および請求項において開示される具体的な態様に請求項を限定すると解釈されるべきではなく、かかる請求項が権利を有する同等物の完全な範囲と併せて全てのあり得る態様を包含すると解釈されるべきである。従って、請求項は、本開示によって限定されない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】