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特表2022-527975反射防止ユニットを備える自動車用LiDARアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(54)【発明の名称】反射防止ユニットを備える自動車用LiDARアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20220531BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20220531BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20220531BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220531BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20220531BHJP
【FI】
G01S7/481 A
C03C27/12 Z
C03C27/12 D
B60J1/02 Z
B60J1/00 G
G01S17/931
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558936
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020059515
(87)【国際公開番号】W WO2020201489
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】19167511.5
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】リ, メイジエ
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】デシャン, ファビアン
【テーマコード(参考)】
4G061
5J084
【Fターム(参考)】
4G061AA02
4G061AA20
4G061AA23
4G061BA02
4G061CB03
4G061CD03
4G061CD18
5J084AA05
5J084AC02
5J084AC04
5J084AC06
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA20
5J084BA48
5J084BB40
5J084CA03
5J084CA10
5J084EA07
5J084EA22
5J084EA34
(57)【要約】
本発明は、a)屈折率n1を有する透明ペイン(1)と、b)内部環境に配置され、透明ペイン(1)の内部面(1i)に面した光検知及び測距(LiDAR)装置(2)と、c)屈折率n3の材料から作られ、LiDAR装置を透明ペイン(1)の内部面(1i)に結合し、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い平均吸収係数(k)(即ち、k≦5m-1)を有し、透明ペイン(1)の内部面(1i)に密着して結合された境界面(31)を備え、LiDAR装置(2)と結合され、境界面(31)との間で角度θを形成し、その法線が入射軸(i0)と-30°~+30°の角度φを形成する面(32)を備える反射防止ユニット(3)とを備える自動車車両に関する。
【選択図】図4(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)屈折率n1を有するペイン(1)であって、
内部環境に面した内部面(1i)と、外部環境に面した外部面(1o)とを備え、
750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い平均吸収係数(k)(即ち、k≦5m-1)を有する少なくとも1つの部分を有し、
透明ペイン(1)の内部面(1i)が、垂直方向との間で10°より大きい傾斜角α1(α1>10°)を形成する
ペイン(1)と、
(b)内部環境に配置され、内部面(1i)に面する光検知及び測距(LiDAR)装置(2)であって、内部面(1i)に対する法線との間で角度(φ+θ)を形成する入射軸(i0)を中心にして放射され、透明ペイン(1)を通り抜け、外部面(1o)に対する法線との間で角度αを形成する屈折軸(ir)を中心とする軌道に沿って外部環境中を伝搬する赤外線ビームを放射するように構成される光検知及び測距(LiDAR)装置(2)と、
を備える自動車車両において、
屈折率n3の材料から作られ、LiDAR装置を透明ペイン(1)の内部面(1i)に結合し、
750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い平均吸収係数(k)(即ち、k≦5m-1)を有し、
透明ペイン(1)の内部面(1i)に密着して結合された境界面(31)を備え、
LiDAR装置(2)と結合され、境界面(31)との間で角度θを形成する面(32)であって、その法線が入射軸(i0)との間で-30°~+30°の角度φを形成する面(32)を備える、
反射防止ユニット(3)
をさらに備えることを特徴とする自動車車両。
【請求項2】
面(32)に対する法線と入射軸(i0)との間の角度φがゼロであり(φ=0)、
入射軸(i0)が、境界面(31)に対する法線との間で、角度θと等しい角度τを形成し(τ=θ)、
sinθ=(1/n3)sinαである、
請求項1に記載の自動車車両。
【請求項3】
n3は、n1の±5%以内であり(即ち、n3=n1(1±5%))、好ましくはn3=n1であって、n1及びn3は、いずれも、好ましくは1.3~1.7、好ましくは1.4~1.6、より好ましくは1.45~1.55である、請求項1又は2に記載の自動車車両。
【請求項4】
屈折軸(ir)は実質的に水平であり、αはα1の±5%であり(即ち、α=α1(1±5%))、好ましくはα=α1であり、α1は好ましくは50°~70°である、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車車両。
【請求項5】
境界面(31)と面(32)との間の楔角θは、10°~50°、好ましくは30°~40°、より好ましくは33°~37°である、請求項4に記載の自動車車両。
【請求項6】
LiDARにより放射された赤外線ビームの6%以下が、面(32)によって、および境界面(31)と内部面(1i)の接触面によって反射される、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動車車両。
【請求項7】
反射防止ユニット(3)が、ガラス、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、光学グレードのシリコーン、又は、前記材料の2つ以上の組合せから作られている、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車車両。
【請求項8】
反射防止ユニット(3)が、特に750~1650nmの領域において高い近赤外線透過性を有するとともに、可視光透過性が非常に低い又はゼロであるケイ酸塩タイプのガラスシートから作られている、請求項1~7のいずれか一項に記載の自動車車両。
【請求項9】
ペイン(1)は、ガラス、好ましくは合わせガラス又は強化ガラスから作られ、透明ペイン(1)は、自動車車両のウインドシールド、バックライト、フロントライト、又はサイドライトのいずれか1つを形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の自動車車両。
【請求項10】
ペイン(1)は、板ガラス、又は、一つ又は二つの曲面を有するガラスのいずれかであり、
一つ又は二つの曲面を有するガラスの場合、軸(ir、i0)と、透明ペインの内部面(1i)と外部面(1o)のうちの選ばれた面との間の角度は、軸と選ばれた面との交点において、選ばれた面の接平面に対して測定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の自動車車両。
【請求項11】
ペイン(1)は、反射防止ユニット(3)の境界面(31)と接触する領域を除いて、赤外線フィルターを与えられている、請求項1~10のいずれか一項に記載の自動車車両。
【請求項12】
境界面(31)及び/又は面(32)は、霜よけ処理、反射防止コーティング、疎水性コーティング、及び/又は、可視光の波長の一部又は全てを吸収する黒色着色コーティングにより被覆されることができる、請求項1~11のいずれか一項に記載の自動車車両。
【請求項13】
入射軸(i0)を中心としてLiDARにより放射され、垂直方向との間で10°より大きい角度α1を形成する自動車車両のペイン(1)を通る赤外線ビームの反射量を低減するための反射防止ユニット(3)の使用であって、前記反射防止ユニット(3)が、
屈折率n3の材料から作られ、前記LiDAR装置を透明ペイン(1)の内部面(1i)に結合し、
750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い平均吸収係数(k)(即ち、k≦5m-1)を有し、
透明ペイン(1)の内部面(1i)に密着して結合された境界面(31)を備え、
LiDAR装置(2)に面した面(32)であって、入射軸(i0)に対して垂直であり、境界面(31)との間で角度θを形成する、LiDAR装置(2)に面した面(32)を備える、
反射防止ユニット(3)の使用。
【請求項14】
LiDAR装置(2)をペイン(1)に結合する方法であって、前記方法が、
(a)屈折率n1を有し、内部面(1i)と、一定の厚みにより前記内部面から分離される外部面(1o)とを備え、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い平均吸収係数(k)(即ち、k≦5m-1)を有するペイン(1)を与えること、
(b)入射軸(i0)を中心に赤外線ビームを放射するように構成されたLiDAR装置(2)を与えること、
(c)屈折率n3の材料から作られ、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い平均吸収係数(k)(即ち、k≦5m-1)を有する反射防止ユニット(3)であって、境界面(31)と、この境界面(31)との間で角度θを形成する面(32)とを備える反射防止ユニット(3)を与えること、
(d)反射防止ユニット(3)の境界面(31)を、ペイン(1)の内部面(1i)に密着して結合させること、
(e)入射軸(i0)が面(32)に対する法線との間で-30°~+30°の角度φを形成するように、LiDARを反射防止ユニット(3)の面(32)に結合させること、
を含み、
入射軸(i0)を中心にしてLiDAR、より好ましくは固体状態LiDARによって放射される赤外線放射が、入射角φで面(32)を通って反射防止ユニット(3)を貫通し、外部面(1o)に対する法線との間で角度αを形成する屈折軸(ir)を中心とする軌道に沿って外部面(1o)を通って赤外線透過のペイン(1)から出射し、α>φである、方法。
【請求項15】
反射防止ユニット(3)が、特に750~1650nmの領域において高い近赤外線透過性を有するとともに、可視光透過性が非常に低い又はゼロであるケイ酸塩タイプのガラスシートから作られる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転車又はセルフドライビング車を含む、運転者を支援する自動車車両(ADAS、先進運転支援システム)における使用に適した検知装置の分野に関する。特に、本発明は、フロントガラス又はサイドライト、バックライトのような透明な、或いは、車のピラーに用いられるような不透明なペインであることができるペインの内部面に面するLiDAR装置に関する。LiDARは、垂直方向との間で角度α1を形成する。本発明は、LiDAR装置、特に固体状態LiDAR装置のような新世代LiDARから放射され、(透明又は不透明な)ペインの内部面と交差する際に反射される赤外線放射の割合を低減する。
【背景技術】
【0002】
自動車車両には、車両の運転者を支援するために、ますます多くのシステムが装備されている。これらは集合的に、ADAS(先進運転支援システム)と呼ばれる。ADASは、車両のごく周辺において障害物を検知し、場合によっては特定することができる検知システムを含む。検知システムは、例えば、光学又は赤外線カメラ、レーダー、及びLiDAR(光検知及び測距)を含む。
【0003】
一般的に、LiDAR装置は、いくつかの主要部品で構成される光電子システムである。即ち、(1)少なくとも1つのレーザー送信機(即ち、光源)であって、本発明に係るLiDAR感知装置のレーザー送信機は、主に700nm~1mmの赤外波長、好ましくは780nm~3μmの近赤外波長、より好ましくは750~1650nmの波長域で送信することが望ましい、(2)光を受信し電気的信号に変換する少なくとも1つの受信機(即ち、光検知素子)、及び所望の情報を抽出する電気的処理信号チェーンで構成される。
【0004】
飛行機又は衛星のような移動プラットフォームに取り付けられるLiDAR感知装置は、その絶対位置及び方向を決定するための器具を更に必要とするかもしれず、したがって、測位及び/又はナビゲーションシステムを含むかもしれない。
【0005】
本発明で使用されるLiDAR装置は、フラッシュLiDARとして固体状態LiDAR型の新世代LiDAR装置であることが好ましい。走査又は回転LiDARは移動式レーザービームを使用するのに対し、フラッシュ及び固体状態LiDARは、物体に反射するパルス光を放射する。
【0006】
LiDARが自動車車両に組み込まれることがますます多くなってきている。それらは、雨、雹、大幅な温度変化、及び砂利を含む様々な物体との衝突にさらされる非常に過酷な環境である自動車車両の外側に取り付けられることがある。そのような環境からLiDARを守るために、例えばフロントガラス、バックライト、サイドライト又はピラーといった車両の既存の透明又は不透明なペインの後ろにLiDAR装置を統合するための研究がなされている。
【0007】
LiDARは、紫外光、可視光、又は赤外光を用いることができる。しかしながら、自動車業界で用いられるLiDARは、一般的に、750~1650nmに含まれる近赤外スペクトルの光を放射する。そのため、LiDAR装置に面するペインの部分は、LiDAR装置によって放射される近赤外光に対して高い透過率を保持していなければならない。
【0008】
図6に示されるように、空気力学的な考慮から、今日の自動車車両の多くにおいて、少なくともフロントガラス及びフロントライトカバーは、強く傾斜させられており、垂直方向との間で少なくとも10°の、しばしば少なくとも50°又はそれより大きい傾斜角α1を形成する。LiDAR装置が放射する近赤外線ビームが、透明ペインの外部面に対する法線との間で角度αを形成する屈折軸(ir)を中心にして伝搬する場合、LiDAR装置により放射された近赤外線ビームは、同じ角度αで透明ペインの内部面と交差する入射軸(i0)を中心にして伝搬する。図2に示されるように、屈折軸(ir)が水平である場合、角度αはα1と等しくなり、車両のデザインによっては、60~70°のオーダーの値に達することがある。
【0009】
図1(a)に示されるように、入射軸(i0)に沿って伝搬する入射光は、透明壁部(1)を横断する前に、反射光(irf)、吸収光(ia)、散乱光(is)及び屈折光(if)のうちの1つ以上に分かれることができる。反射光(irf)及び吸収光(ia)は、透明壁部を横断しない。図1(e)に示されるように、フレネルの法則によれば、透明壁部(1)の表面と交差する際に反射される放射線の割合(irf)は、入射軸(i0)が当該表面との間で形成する入射角φに伴って増加する。図1(e)はフレネルの法則を描画的に示したものであり、入射角φの係数としての反射率が連続的に増加し、50°より大きい入射角に対して非常に急激に増加することを示している。シュリック(Schlick)は、反射率R(φ)が(1-cosφ)の5乗で増加するという、フレネルの法則の近似を提案した。
【0010】
LiDAR装置をペイン、特に可視光透過ペインの後ろに置いて、50°より大きな入射角φ(=α)で透明ペインと交差するよう赤外線を放射すると(図2参照)、ペインの内部面で反射される放射線の割合は非常に大きくなる(図1(e)参照)。
【0011】
ペインの内部面で反射される光の量を低減するために、現状では、反射防止コーティングが内部面に適用されることができる。しかしながら、この解決策には多くの問題がある。標準的な反射防止コーティングは、通常、垂直入射(即ち、入射角φ=0)のために最適化される。そのような反射防止コーティングの性能は、入射角φが大きくなると低下する。特別に設計された反射防止コーティングであれば、より大きな値の入射角φに対して最適化されることができるが、設計がより複雑で難しくなる場合がある。特に、LiDAR装置、より具体的には固体状態LiDAR装置は、入射軸(i0)を中心とし、入射角φn~φmの範囲に広がる円錐として図4に示された広い視野(FOV)をカバーする。LiDAR装置の視野を考慮すると、そのような特別な反射防止コーティングの設計は、はるかにより難しく、非効率的になる。更に、反射防止コーティングの適用は、追加の生産コストを生じさせ、透明ペインの機械抵抗、化学抵抗又は温度抵抗に影響する場合がある。
【0012】
ADASと、多数の検知システムを必要とする自動走行車両との進化に伴い、透明ペインの内部面での反射に起因する赤外線放射の強度損失を克服するために、自動車車両の内部に取り付けられるLiDAR装置の電力を増強しなければならない。しかし、このことは、生産コスト及び車両のエネルギー消費を受け入れがたいレベルまで増加させるため、受け入れられない。本発明は、所定の傾きを有する透明ペインの内部面で反射される、LiDARにより放射された放射線の割合を低減する解決策を提案する。この利点及びその他の利点が、以下の部分において、より詳細に説明される。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、添付の独立請求項によって規定される。好ましい実施形態は、従属請求項により規定される。本発明は、特に、
(a)屈折率n1を有するペインであって、
内部環境に面した内部面と、外部環境に面した外部面とを備え、
750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い平均吸収係数(k)(即ち、k≦5m-1)を有する少なくとも一つの部分を有し、
透明ペイン(1)の内部面(1i)が垂直方向との間で10°より大きい傾斜角α1を形成する(α1>10°)、
ペインと、
(b)内部環境に配置され、内部面に面する光検知及び測距(LiDAR)装置であって、内部面(1i)に対する法線との間で角度(φ+θ)を形成する入射軸(i0)を中心にして放射される赤外線ビームであって、透明ペイン(1)を通り抜け、外部面(1o)に対する法線との間で角度αを形成する屈折軸(ir)を中心とする軌道に沿って外部環境中を伝搬する赤外線ビームを放射するように構成される光検知及び測距(LiDAR)装置と、
を備える自動車車両に関する。
【0014】
本発明によれば、自動車車両は、
・屈折率n3の材料から作られ、LiDAR装置を透明ペインの内部面に結合し、
・750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い平均吸収係数(k)(即ち、k≦5m-1)を有し、
・透明ペインの内部面に密着して結合された境界面を備え、
・LiDAR装置と結合され、境界面(31)との間で角度θを形成する面であって、その法線が入射軸(i0)と-30°~+30°の角度φを形成する面を備える、
反射防止ユニット(3)を更に備える。
【0015】
本発明によれば、「750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い(即ち、k<5m-1)、好ましくは3m-1より低い(即ち、k<3m-1)、より好ましくは1m-1より低い(即ち、k<1m-1)平均吸収係数(k)を有する少なくとも一つの部分」は、「赤外線透過部」とも呼ばれ、或いは、ペインの全ての面がこの特性を有する場合には、赤外線透過ペインと呼ばれる。
【0016】
本発明によれば、LiDAR装置は、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い(即ち、k<5m-1)、好ましくは3m-1より低い(即ち、k<3m-1)、より好ましくは1m-1より低い(即ち、k<1m-1)平均吸収係数(k)を有する少なくとも一つの部分の後ろに配置される。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、ペイン(pane)はガラスペインである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の性質のより完全な理解のために、添付の図面と結び付けて、以下の詳細な説明が参照される。
図1図1(a)は、一定の厚みを有する透明壁部を横断する入射線(i0)の動作を示す。図1(b)は、平行な面を有する2つの透明壁部を横断する入射線(i0)の動作を示す。図1(c)は、非平行な面を有する第1の透明壁部、及び平行な面を有する第2の透明壁部を横断する入射線(i0)の動作を示す。図1(d)は、入射角φの関数として、反射された入射線の割合を示す。図1(e)は、入射角φの関数としてフレネルの屈折率を示す。
図2図2は、従来技術に係るLiDAR装置アセンブリが設けられた自動車車両の内部を示す。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るLiDAR装置アセンブリが設けられた自動車車両の内部の様々な実施形態を示す。
図4図4(a)は、本発明の一実施形態に係るLiDAR装置アセンブリが設けられた自動車車両の内部の、視野(FOV)を示す斜視図である。図4(b)は、本発明の一実施形態に係るLiDAR装置アセンブリが設けられた自動車車両の内部の、視野(FOV)を示す断面図である。
図5図5は、放射軸と二重湾曲面の法線との間の角度の測定方法を示す。
図6図6は、本発明の1つの実施形態に係る、垂直方向との間で角度α1を形成するペインに面したいくつかの固体状態LiDAR装置を備える自動車車両を示す。
図7図7は、平坦ではない面(32)を備える反射防止ユニットとペインとのアセンブリの一実施形態を示す。
図8図8(a)は、可視光に対して限定された又は低い透過率を有する材料で全体が作られた反射防止ユニットと、ペインとのアセンブリの一実施形態を示す。図8(b)は、可視光に対して限定された又は低い透過率を有する材料で一部が作られた反射防止ユニットと、ペインとのアセンブリの一実施形態を示す。図8(c)は、可視光に対して限定された又は低い透過率を有する材料で一部が作られた反射防止ユニットとペインとのアセンブリの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3、4及び6に示されるように、本発明は、入射軸(i0)を中心にして赤外線ビームを放射するように設計されたLiDAR、特に固体状態光検知及び測距(LiDAR)装置(2)を備える自動車車両に関する。自動車車両には、乗用車、バン、貨物自動車、バイク、バス、トラム、電車、飛行機、ヘリコプターなどが含まれる。LiDAR装置は、透明ペイン(1)の内部面(1i)に面して車両の内部環境に配置され、この透明ペイン(1)は、本発明によれば屈折率がn1であり、外部環境に面しており透明ペイン(1)の厚みの分だけ内部面(1i)から分離される外部面(1o)を備える。本発明によれば、ペインは、ペインの必要性(窓又はピラー)に応じて、光の透過に対して透明でも半透明でもよいが、LiDAR装置の設置場所のための赤外線透過部を有する。LiDAR装置、特に固体状態LiDAR装置(2)から放射された放射線と交差する、透明ペイン(1)、この特定の場合には光透過ペイン(1)の少なくとも一部は、少なくとも赤外(IR)線放射に対して、特に近赤外(NIR)線放射に対して透明であるべきであり、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い(即ち、k≦5m-1)、好ましくは3m-1より低い(即ち、k≦3m-1)、より好ましくは1m-1より低い(即ち、k≦1m-1)平均吸収係数(k)を有する。透明ペイン(1)の内部面(1i)は、垂直方向との間で10°より大きい(α1>10°)、好ましくは50°より大きい、より好ましくは60°又は70°より大きい傾斜角α1を形成する。
【0020】
簡潔にするために、ペイン(1)は、実質的に一定の厚み(d1)を持つため(即ち、内部面と外部面とが互いに平行である)、傾斜角α1が外部面(1o)でも測定することができるものとして以下に説明され、図面に示される。これは、自動車車両で用いられるたいていの透明ペインを表わしているが、そうではない例もあることができることは明らかである。変化する厚みを有する透明ペインについても、議論は有効であるが、傾斜角α1は、必ず入射軸(i0)と内部面(1i)との交点で測定される。図5に示されるように、軸と曲面とによって形成されるいかなる角度も、軸と曲面との交点において、軸と当該交点における曲面に対する接平面との間で測定されることができる。
【0021】
LiDAR装置は、入射軸(i0)を中心にして放射される赤外線ビームであって、内部面(1i)に対する法線との間で形成される入射角(φ+θ)で透明ペイン(1)の内部面(1i)と交差し、透明ペイン(1)を通り抜け、外部面(1o)に対する法線との間で角度αを形成する屈折軸(ir)を中心とする軌道に沿って外部環境中を伝搬する赤外線ビームを放射するように構成され、車両内に取り付けられる。
【0022】
図2は、従来技術に係る車両の透明ペイン(1)(即ち、フロントガラス)の後ろに取り付けられ、水平な(即ち、水平方向を指す)屈折軸(ir)を中心とする軌道に沿って外部環境に赤外線ビームを伝搬するように構成されるLiDAR装置の例を示す。ウインドシールドに加熱コーティングが設けられる場合、LiDARが配置される部分には前記コーティングは設けられないことが理解される。透明ペイン(1)は垂直方向との間で傾斜角α1を形成し、屈折軸(ir)は水平であるため、後者は透明ペインの外部面との間で角度α=α1で形成される。透明ペインの屈折率(n1)を考慮すると、外部面との間で角度α=α1を形成する屈折軸(ir)を得るために、入射軸(i0)は入射角(φ+θ)=α=α1を形成しなければならない。
【0023】
図1(e)は、フレネルの法則に従い、入射光と表面との間で形成される入射角φの係数として、屈折率n3>1)の透明ペインの表面で反射される入射光の割合(即ち、反射率)をプロットしている。入射角が50°のオーダー又はそれより大きいときに反射率が急に増加していることが見て取れる。車両の設計に応じてフロントガラスが60~70°のオーダーの傾斜角α1を形成することがあることを考慮すれば、反射率の問題は重大になることがある。高いレベルの反射率は、固体状態LiDARに対して特に重大であり、低エネルギーの多数のビームをもたらす。
【0024】
LiDAR装置(2)により放射される赤外線放射の反射率を低減するため、本発明は、LiDAR装置(2)を、例えば可視光透明ペインであるペイン(1)の内部面(1i)に、反射防止ユニット(3)によって結合することを提案する。反射防止ユニット(3)は、屈折率n3を有する材料であって、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い(即ち、k≦5m-1)、好ましくは3m-1より低い(即ち、k≦3m-1)、より好ましくは1m-1より低い(即ち、k≦1m-1)平均吸収係数(k)を有する材料から作られる。
【0025】
反射防止ユニット(3)は、赤外線透過ペイン(1)の内部面(1i)に密着して結合された境界面(31)と、LiDAR装置(2)に結合された面(32)とを備える。面(32)は、境界面(31)との間で楔角θを形成する。面(32)に対する法線は、入射軸(i0)との間で角度φを形成し、φは、-30°~+30°、好ましくは-10°~+10°、より好ましくは5°~+5°であり、角度φは最も好ましくは0°であって、即ち、入射軸(i0)は最も好ましくは面(32)に対する法線である。入射軸(i0)は、透明ペインの内部面(1i)との間で角度(φ+θ)を形成する。従来技術を示す図2に関連して上記に論じられたように、屈折軸(ir)が水平の場合、入射軸(i0)と内部面(1i)との間の入射角φは、透明ペイン(1)の傾斜角α1と等しく、これは、フロントガラスにとっては典型的に50~70°のオーダーである。LiDAR装置(2)と赤外線透過ペイン(1)との間に反射防止ユニット(3)を置くことにより、入射角は単純に、(φ+θ)-θ=φ<(φ+θ)となり、これは、反射防止ユニット(3)が無い場合の入射角(φ+θ)(屈折軸(ir)が水平であれば=α1)(図2参照)より小さい。図3(c)から図3(e)に示される好ましい実施形態において、入射軸(i0)の面(32)との間の入射角φは0である。図1(e)の反射率曲線を導入して、従来技術を表す入射角(φ+θ)=α1≒60~70°と、本発明を表す入射角φ<(φ+θ)、好ましくはφ=0とを比較すると、面(32)で反射される放射線の割合をどれほど低減することができ、それにより、一層大きな割合の赤外線エネルギーが赤外線透過ペイン(1)を通って伝送可能となるかが示される。これにより、LiDAR装置の視野(FOV)内で検知される障害物の配置及び位置の解像度及び精度をより高くしながら、LiDAR装置により提供されるデータの効率性が向上する。
【0026】
ペイン(1)及び内部環境
車両の内部環境とは、ペイン(1)により外部環境から隔てられた任意の空間である。例えば、内部環境は、車両の内部車室でもよく、透明ペイン(1)、又はより好ましくは光透過ペインは、フロントガラス、リアウインドウ、又は1つ以上のサイドウインドウであってよい。内部環境は、また、フロント又はリアのライトユニットの内部であってよく、赤外線透過パネル(1)は、ライトユニットのカバーであることができる。
【0027】
ペイン(1)は屈折率n1を有し、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い(即ち、k≦5m-1)、好ましくは3m-1より低い(即ち、k≦3m-1)、より好ましくは1m-1より低い(即ち、k≦1m-1)平均吸収係数(k)を有する。透明ペインの屈折率n1は、好ましくは、1.3~1.7、より好ましくは1.4~1.6、最も好ましくは1.45~1.55である。
【0028】
吸収係数(k)は、以下のように定義される。透明ペインを通って伝送される放射エネルギー量Iは、透明ペインの厚みにより、等比級数的に減少する。(I/I0)=-kdにおいて、I0は入射光エネルギーであり、Iは伝送される放射エネルギーである。dは放射線が横断する透明ペインの厚みであり、kは吸収係数として定義される。吸収係数(k)の平均値は、750~1650nmの波長域全体で測定される吸収係数(k)の平均値として定義される。LiDARが狭い波長域で放射する場合、平均吸収係数(k)はこの狭い波長域のみで測定されることができることが明らかである。
【0029】
透明ペイン(1)全体が、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い(即ち、k≦5m-1)平均吸収係数(k)を有する必要はない。LiDARにより放射される赤外線放射線と交差する透明ペイン(1)の部分が低い吸収係数(k)を有していれば充分である。これは、透明ペインがフロントガラスである場合に重要である。フロントガラスを通して射し込む太陽による車両の内部車室の加熱を低減するために、フロントガラスは、しばしば、赤外線フィルター層で処理されることができる。そのような赤外線フィルター層は、LiDAR装置の赤外線ビームがフロントガラスを横切る領域には望ましくない。LiDARにより放射された赤外線放射のフロントガラスの透過率を高めるために、当該領域に赤外線フィルター層を設けず、フロントガラスの残りの領域に赤外線フィルター層を適用して、フロントガラスを透過する太陽光線の熱を吸収すれば充分である。
【0030】
透明ペインの内部面(1i)は、垂直方向との間で、10°より大きい(α1>10°)、一般的に50°又は60°より大きい、更には70°より大きい傾斜角α1を形成する。好ましい実施形態において、透明ペイン(1)は実質的に一定の厚み(d1)を有するため、内部面(1i)は外部面(1o)と平行である。自動車車両の大多数のケースにおいて、この状況が見られ、図面に示される状況である。
【0031】
ペイン(1)は平面ガラス、或いは、一つ又は二つの曲面を有するガラスであることができる。図5に示されるように、軸(ir、i0)と、一つ又は二つの曲面を有する透明ペインの内部面(1i)及び外部面(1o)から選ばれた面との間の角度は、軸と面との交点において、当該面の接平面に対して測定される。
【0032】
図6に示されるように、ペイン(1)は、フロントガラス、リアウインドウ、又はサイドウインドウであってよく、これらは全て外部環境を車両の内部車室から分離する。ペインは、また、外部環境をライトユニットの内部から分離するフロント又はリアのライトユニット、或いはサイドライトユニットのカバーであってもよい。
【0033】
本発明の1つの実施形態によれば、ペインは積層されたペインである。安全のために、例えばウインドシールドには、積層されたペインが求められる。しかしながら、積層されたペインはリアウインドウ及びサイドウインドウにも用いられることができる。合わせガラスは、衝撃による粉砕に対して、より大きな耐久性を有する。図7(a)及び図7(b)に概略的に示されるように、合わせガラスは、少なくとも1つの熱可塑性中間接着層(1p)により分離される少なくとも第1及び第2のガラスペイン(11、12)を積層することにより得られる。中間接着層(1p)は、望ましくない波長をフィルターし、断熱や着色を向上させるために、赤外線吸収又は反射剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤等のうちの1つ以上を含むことにより、接着以外の機能も提供することができる。
【0034】
第1及び第2のガラスペイン(11、12)は、自動車業界で用いられる任意のガラスペインであってよい。
【0035】
好ましくは、本発明のベースガラス組成物は、ガラスの重量パーセントで表わされる以下の全含有量:
SiO 55~85%
Al 0~30%
0~20%
NaO 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
O 0~20%
BaO 0~20%
を含む。
【0036】
より好ましくは、本発明のベースガラス組成物は、ガラスの全重量パーセントとして表わされる含有量において:
SiO 55~78%
Al 0~18%
0~18%
NaO 0~20%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0037】
より好ましくは、生産コストを低減するために、本発明の少なくとも1つのガラスシートは、ソーダライムガラスから作られる。有利なことに、本実施形態によれば、ベースガラス組成物は、ガラスの全重量パーセントとして表わされる以下の含有量:
SiO 60~75%
Al 0~6%
0~4%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
NaO 5~20%
O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0038】
そのベース組成物に加えて、ガラスは、望ましい効果の性質及び量によって適合される他の組成物を含んでもよい。
【0039】
その美しさ及び色に対する影響を弱め又は無くしながら、高い赤外線(IR)に対して非常に透明なガラスを得るために本発明が提案する解決策は、ガラス組成物において、低い鉄量と特定の含有量範囲のクロムとを組み合わせることである。
【0040】
したがって、第1の実施形態によれば、ガラスシートは、好ましくは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全Fe(Feとして表される) 0.002~0.06%
Cr 0.0001~0.06%
を含む組成を有する。
【0041】
そのような低濃度の鉄及びクロムを組み合わせたガラス組成物は、赤外線反射に関して特に良好な性能を示し、且つ可視において高い透過率を示し、また顕著な色を示さず、「エクストラクリア」と呼ばれるガラスに近い。これらの組成物は、国際出願の国際公開第2014128016A1号パンフレット、国際公開第2014180679A1号パンフレット、国際公開第2015011040A1号パンフレット、国際公開第2015011041A1号パンフレット、国際公開第2015011042A1号パンフレット、国際公開第2015011043A1号パンフレット及び国際公開第2015011044A1号パンフレットに記載されており、これらは、参照により本出願に組み込まれる。この第1の特定の実施形態によれば、組成物は、好ましくは、ガラスの全重量に対して0.002重量%~0.06重量%の(Crとして表される)クロム含有量を含む。そのようなクロムの含有量により、赤外線反射を更に改善することが可能となる。
【0042】
第2の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全Fe(Feとして表される) 0.002~0.06%
Cr 0.0015~1%
Co 0.0001~1%
を含む組成を有する。
【0043】
そのようなクロム及びコバルトベースのガラス組成物は、美しさ/色(青みがかった中性から強度の着色、更に不透明まで)に関して興味深い可能性を提供しながら、赤外線反射に関して特に良好な性能を示した。そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願第13198454.4号明細書に記載されている。
【0044】
第3の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.02~1%
Cr 0.002~0.5%
Co 0.0001~0.5%
を含む組成を有する。好ましくは、本実施形態によれば、該組成物は、0.06%<全鉄≦1%を含む。
【0045】
クロム及びコバルトをベースとするそのような組成物は、色及び光透過率に関して、市場に出ているブルー及びグリーンガラスに匹敵するが、赤外線反射に関して特に良好な性能を有するブルー-グリーン範囲の着色ガラスシートを得るために使用される。そのような組成物は、欧州特許出願第15172780.7号明細書に記載されており、これは、参照により本出願に組み込まれる。
【0046】
第4の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~1%
Cr 0.001~0.5%
Co 0.0001~0.5%
Se 0.0003~0.5%
を含む組成を有する。
【0047】
そのようなクロム、コバルト及びセレンをベースとするガラス組成物は、美しさ/色(グレー中性からグレー-ブロンズ範囲のわずかな着色強度まで)に関して興味深い可能性を提供しながら、赤外線反射に関して特に良好な性能を示した。そのような組成物は、欧州特許出願第15172779.9号明細書に記載されており、これは、参照により本出願に組み込まれる。
【0048】
第1の代替実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%
CeO 0.001~1%
を含む組成を有する。
【0049】
そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願第13193345.9号明細書に記載されている。
【0050】
別の代替実施形態によれば、ガラスは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%、及び
以下の成分の1種:
- 0.01~1重量%の範囲の量のマンガン(MnOとして算出される);
- 0.01~1重量%の範囲の量のアンチモン(Sbとして表される);
- 0.01~1重量%の範囲の量のヒ素(Asとして表される)、又は
- 0.0002~0.1重量%の範囲の量の銅(CuOとして表される)
を含む組成を有する。
【0051】
そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願第14167942.3号明細書に記載されている。
【0052】
本発明によれば、自動車グレイジングは、平面シートの形態であることができる。グレイジングは、湾曲していてもよい。これは、通常、リアウインドウ、サイドウインドウ若しくはルーフ、又は特にウインドシールドなどについての自動車グレイジングに当てはまる。
【0053】
そのようなガラスシートは、自動車車両のLiDAR検知装置に用いられる赤外線放射に対して非常に高い透過率を有する。ウインドシールドの場合、ウインドシールドには、LiDARが配置される領域を除いて、少なくとも1つの赤外線吸収又は反射層が設けられることができる。
【0054】
フロント又はリアライトユニットのカバーのために、ペイン(1)は、例えばフロントガラスに関して上に挙げられた組成を有する透明ポリマー又はガラスから作られることができる。
【0055】
LiDAR装置(2)
本発明は、750~1650nmの波長域で放射する限りにおいて、いかなる特定のLiDAR装置種別にも限定されない。本発明によれば、固体状態LiDARが望ましい。固体状態LiDARは、電子チップにマウントされ、小さな寸法を有する。一実施形態において、LiDAR装置は、接着剤(例えば、樹脂又は両面接着テープ)、或いは、例えばチップを場所に固定するカバーなどの機械的手段により反射防止ユニットの面(32)に結合されることができる。
【0056】
屈折軸(ir)の方向は、具体的な応用による。しかしながら、多くの応用において、屈折軸(ir)は実質的に水平になり、水平を指すことができる。屈折軸(ir)は、透明ペインの外部面(1o)に対する法線との間で角度αを形成するが、角度αは、透明ペインの傾斜角α1の±5%以内に含まれることができ(即ち、α=α1(1±5%))、好ましくはα=α1である。この場合、屈折軸(ir)は水平である。上記に論じられた通り、透明ペインの傾斜角α1は、好ましくは50°~70°に含まれる。
【0057】
反射防止ユニット(3)
反射防止ユニット(3)は、屈折率n3の赤外線透過材料から作られる。ペイン(1)にとって、「赤外線透過材料」は、750~1650nmの波長域において5m-1より低い(即ち、k<5m-1)、好ましくは3m-1より低い(即ち、k<3m-1)、より好ましくは1m-1より低い(即ち、k<1m-1)平均吸収係数(k)を有する材料を意味する。吸収係数の値が低いほど、高い割合の入射エネルギーI0が反射防止ユニット(3)を通って伝送される。
【0058】
反射防止ユニット(3)の境界面(31)は、赤外線透過ペイン(1)の内部面(1i)に密着して結合され、面(32)は、LiDAR装置(2)に面する。本発明の要点は、面(32)が境界面(31)との間で楔角θ>0を形成することである。入射軸(i0)との交点における面(32)に対する法線は、入射軸(i0)との間で角度φ<α1を形成し、φは-30°~+30°であり、好ましくは0である。図3(c)に示されるように、入射角φはφ=0であり、即ち、入射軸(i0)は面(32))に対する法線であり、反射防止ユニットを通して伝送される放射線は、境界面(31)と面(32)との間に形成される楔角と同じ角度θで、赤外線透過ペインの内部面に到達する。
【0059】
図1(a)を参照して、(屈折率n0=1の)空気中を伝搬し、屈折率n1>n0の赤外線透過ペインの内部面(1i)に対して入射角αで交差する入射ビーム(i0)は、内部面及び透過面を通過する際に偏向して、n0 sinα=n1 sinβであるスネルの法則で特徴付けられる角度βを形成する。赤外線透過ペイン(1)の外部面(1o)に到達すると、ビームは空気中を通過する際に再び偏向する。ここでもスネルの法則が当てはまり、ビームは赤外線透過ペインから入射角αと同じ角度αで出射する。この状況は、傾斜角α1で傾けられた赤外線透過ペインの前方に単に水平に固定された従来技術のLiDARアセンブリに対応する。
【0060】
図1(b)を参照して、一定の厚み(d3)と屈折率n3>1を有する中間ペイン(3)が、一定の厚み(d1)の赤外線透過ペイン(1)に密着して結合される場合、入射ビームは、まず、入射角φで中間透明ペインの表面と交差し、入射角Φで中間透明ペインを横断する際に偏向して、透明ペインの内部面(1i)との接触面を形成する境界面に到達する。この地点において、ビームは、角度βで偏向して、外部面(1o)に達し、空気中を伝搬する際に角度αで偏向する。スネルの法則を適用すると、入射φ=α(n0 sinφ=n3 sinΦ=n1 sinβ=n0 sinα⇔φ=α)となる。
【0061】
図1(c)を参照して、中間透過ペインが、面(32)との間で楔角θを形成する境界面(31)を備える反射防止ユニット(3)である場合、やはりスネルの法則が適用されるが、この場合は、φ<αである。この状況は、図3(a)及び3(b)に示された構成に対応する。
【0062】
図1(d)を参照して、φ=0である場合、入射軸(i0)は反射防止ユニット(3)の面(32)に対する法線であり、入射ビームは面(32)と交差する際に偏向せずに、境界面(31)と面(32)との間に形成される楔角と同じ角度θで、境界面(31)と透明ペインの内部面(1i)との接触面に到達する。φ=0のとき、入射軸(i0)は、境界面(31)に対する法線と、角度θと等しい角度τを形成する(τ=θ)。楔角θは、屈折軸(ir)の所望の方向の係数として、sinθ=(n0/n3)sinαにより容易に算定され、空気についてn0=1のとき、sinθ=(1/n3)sinαである。
【0063】
境界面(31)と面(32)との間の楔角θは、10°~50°、好ましくは30°~40°、より好ましくは33°~37°であることができる。
【0064】
楔角θを形成する境界面(31)と面(32)とを備える反射防止ユニットにより、入射角φは、図2に示される従来技術の車両における角度αと比べて実質的に低減され(φ<α)、容易にφ=0に設定することができ、図1(e)のグラフに示される最も低い反射率をもたらすことが明らかに理解できる。境界面(31)は、必ずしも平面でなくてもよい。境界面(31)は、それと接触面を構成する内部面(1i)の部分の幾何学的形状とできるだけ近く一致するべきである。曲面状のウインドシールドに関する図3(b)及び図5に示されるように、内部面(1i)が曲面状である場合、境界面は、ともに密接な接触面を形成するように、曲面状でなければならない。密接な接触面は、LiDAR装置(2)から放射される赤外線の透過率を向上させるために有利である。
【0065】
また、面(32)も、平面でなくてもよい。その形状は、それぞれのライトビームの垂直入射を保証するよう設計されることができる。図7に一例が示される。検出器からのライトビームは、全て一点から来る。面(32)の形状は、凹円の中心に点光源を有する凹面を有してもよい。外側へのライトビームのための複数の光源がある場合、又は、戻ってくるライトビームを集めるセンサー点がある場合、面(32)は、必要に応じて、1つの部材として接続される又は別個の部品となる、複数の凹状及び/又は凸状の輪郭を有してもよい。更に、面(32)は、各点における表面の傾きがライトビームの垂直入射のために最適化されるように、自由な形状を有するように設計されてもよい。
【0066】
レーザー入射ビームi0と面(32)に対する法線との間の角度φがα1より小さく、好ましくは-30度~30度であり、より好ましくは0であるように、境界面(31)と面(32)とが角度θを形成する限りにおいて、反射防止ユニット(3)の形状は、例えば三角形、台形などフレキシブルであってよく、その上部及び下部の境界端面も、例えば平面状、曲面状などフレキシブルであってよい。
【0067】
反射防止ユニット(3)は、屈折率n3を有する。好ましくは、反射防止ユニットの屈折率n3は、ペイン(1)の屈折率n1と近く、好ましくは等しい。具体的に、n3はn1の±10%であり(即ち、n3=n1(1±5%))、好ましくはn3=n1である。屈折率n1及びn3は、いずれも、1.3~1.7、好ましくは1.4~1.6、より好ましくは1.45~1.55であることができる。本実施形態は、反射防止ユニット(3)とペイン(1)との接触面でビームが偏向しないという利点を有する。入射角φ=0の実施形態において、ビームはLiDAR装置、特に固体状態LiDARから放射されてから、透明ペイン(1)の外部面(1o)を通る間ずっと、入射軸(i0)に沿って伝搬する。
【0068】
反射防止ユニット(3)は、ガラス又はポリマーから作られることができる。ガラスは、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、又は石英ガラスであることができる。ポリマーは、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、光学グレードシリコンの1つ以上、或いは、それらの混合物又は共重合体、或いは、上記材料の2つ又はそれ以上の組合せから選択されることができる。反射防止ユニット(3)はモノリシック、即ち均質であって、上記の通り、単一材料又は材料の混合物から作られることができる。代替として、反射防止ユニット(3)は、同一の又は異質の材料の様々な部品(3i)のアセンブリとして作られてもよい。本発明の好ましい実施形態において、反射防止ユニット(3)は、可視光に対し不透明である。不透明という用語は、光透過率が10%より低いことを意味する。図8は、本発明の実施形態に従う3つの構成を示す。図8(a)において、反射防止ユニット(3)は、全体が、近赤外(NIR)線透過性であるが可視光不透過性の材料から作られる。AR(反射防止)ユニット(3)は、例えば欧州特許出願第18194808.4号明細書に記載された黒色赤外線透過ガラスのような、黒色材料で作られてもよい。図8(b)及び8(c)において、ARユニット(3)は、部分的に、近赤外線透過性であるが可視光不透過性の材料で作られる。したがって、ARユニット(3)を形成するために様々な種類の材料が用いられることができる。これらの材料のうちの1つは、近赤外線透過性且つ可視光透過性の材料(ここで、近赤外線透過性材料と呼ぶ)であり、750nm~1650nmの波長域における吸収係数が5m-1より低いものとして定義される。近赤外線透過性且つ可視光不透過性の材料は、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い吸収係数を有し、且つ、400nm~750nmの波長域において10%より低い、好ましくは5%より低い、より好ましくは1%より低い透過率を有するものと定義される。
【0069】
反射防止ユニット(3)が積層構造であるか、モノリシック構造であるかに関わらず、境界面(31)及び/又は面(32)には、コーティング、又は、機能性材料をペイン基板とARユニットとの間に追加することにより、追加の機能が設けられることができる。
【0070】
コーティングは、反射防止(AR)コーティング、着色コーティング、疎水性コーティング、曇り止めコーティング、霜よけコーティング、及び/又は加熱コーティングの中から選択されることが好ましい。
【0071】
ARコーティングは、好ましくは、ARユニットの面(32)上に設けられる。ARコーティングは、関心のある波長における透過率を更に向上させる。ARコーティングは、例えば、低い屈折率を有する多孔質シリカをベースとする1つの層であってよく、又は、いくつかの層(スタック)、特に、低屈折率を有する層と高屈折率を有する層とを交互に積層し、低屈折率を有する層を末端とする、誘電体材料層のスタックで構成されてもよい。ARコーティングは、例えば、イオン注入法などにより堆積された、屈折率勾配層をベースとする1つの層であってよい。肌理を整えた表面が用いられてもよい。反射を避けるために、エッチング又はコーティング技法も用いられることができる。好ましくは、処理済の表面の反射率は、関心のある波長域において、少なくとも1%減少する。
【0072】
着色コーティングは、良好なレベルの動作性能を保証しながら、外部からセンサーの美しくない部品を隠すための、少なくとも1つの赤外線透過吸収(着色)及び/又は反射コーティングを意味する。このコーティングは、例えば、可視光領域において透過率を有さない(又は極めて低い透過率を有する)が、本応用が関心のある赤外領域では高い透過率を有する、少なくとも1つのブラックフィルム層又はブラック塗装層から構成されることができる。好ましくは、そのようなコーティングは、可視光領域において最大15%の透過率を示し、750~1650nmの波長域において少なくとも85%の透過率の値を示す。そのような塗料は、400~750nmにおいて10%より低い透過率を達成する有機化合物から製造されることができる。着色コーティングは、高い赤外線透過率を維持しつつ可視領域を選択的に反射するよう最適化された多層コーティングであってもよい。そのため、Kromatix(登録商標)製品で観察されるようないくつかの特性が求められる。これらの特性は、そのような層が適正なガラス組成物に堆積された際に、システム全体としての低い赤外線吸収率を保証する。
【0073】
疎水性コーティングは、例えば、他の性能に加えて、表面エネルギーを低減し、自浄能力及び汚れ防止特性を提供し、防湿性を向上させるフッ素ポリマーの薄い分子層によって構成されることができる。
【0074】
加熱コーティングは、好ましくは0.1μm~15μm、特に好ましくは1μm~10μmの層厚みを有する。
【0075】
ペイン基板とARユニットとの間の機能性材料は、黒色PVB及び/又は加熱システムを含むことができる。
【0076】
ペイン基板とARユニットとの間の中間層として黒色PVBが用いられることができる。黒色PVBは、関心のある赤外線波長域では透明であるが、可視領域では低い透過率、より具体的には400~750nmで5%より低い透過率を有する。
【0077】
加熱システムは、外部の動作条件が好ましくないときに、アセンブリが素早く霜取り又は曇り止めすることを可能とする。そのような加熱システムは、十分な電力供給が適用できる場合に、ガラス表面に直接適用される導電線材又は導電性パッチのネットワークにより構成されることができる。任意選択により、システムは、必要な場合に加熱機能を動的に始動させる温度センサーを備えてもよい。
【0078】
背景技術の部分に記載した通り、標準的な反射防止コーティングは、通常、垂直入射(即ち、入射角φ=0)のために最適化されるが、これは、自動車のフロントガラス又はリアウインドウのための、通常10°より大きく一般的には50~70°の(又はそれより大きい)オーダーである傾斜角α1を有するペインにおける使用に適しない。入射軸(i0)と面(32)との間の好ましい入射角φ=0°の場合に、標準的な反射防止コーティングは、反射防止ユニット(3)の面(32)に効果的に適用されることができる。例えば、反射防止層は、低屈折率の多孔質シリカの一層、又は、低屈折率を有する層と高屈折率を有する層とを交互に積層し、低屈折率を有する層を末端とする、いくつかの誘電体層の積層、或いはそれらの混合物のうちの1つを含むことができる。
【0079】
反射防止ユニット(3)と透明ペイン(1)との結合
反射防止ユニット(3)は、境界面(31)と内部面(1i)との間に接触面を形成することにより、透明ペイン(1)に結合される。接触面は、反射防止ユニットと透明ペインとの間の放射の軌道をできる限り中断しないものでなければならない。反射防止ユニットは、機械的固定手段、接着手段又はオートクレーブ、或いは任意の適切な方法により、透明ペインに結合されることができる。
【0080】
機械的固定手段は、LiDAR装置の視野外の、境界面(31)の周辺領域に置かれた固定部品を含むことができる。固定部品は、例えば接着剤により透明ペインの内部面(1i)に付着された第1の部品と、反射防止ユニットの一部であるか又は反射防止ユニットに固定された補助部品とを含むことができる。第1の部品及び補助部品は、好ましくは、リバーシブルに結合され、スナップ式アセンブリ、バヨネット又はネジ式アセンブリなどを含んでもよい。リバーシブルな固定手段の利点は、反射防止ユニット(3)が、損傷を受けた場合に取り外し、交換又は修理できることである。
【0081】
接着手段は、750nm~1650nmの波長域において5m-1より低い(即ち、k≦5m-1)平均吸収係数(k)を有する、赤外放射に透明な両面接着テープ又は樹脂層の形態の接着層の適用を含むことができる。両面接着テープとして入手可能な場合に本発明に適切であることができる商業的なPSAテープの例には、3M社のScotchgard(商標)(即ち、SGH6)、及びVentureShield(商標)(即ち、VS7510E)、並びに、Haverkamp社のProfilon(商標)を含む。反射防止ユニット(3)を透明ペイン(1)に付着させるために用いられる樹脂の例には、AGC社により商品化されたinfoverre(商標)を含む。樹脂は、温度又はUVライトなどの放射に暴露されることで、反応及び硬化されることができる。
【0082】
反射防止ユニット(3)をペインに結合するために、任意の適切な既知のオートクレーブ処理が、使用されてもよい。
【0083】
したがって、LiDAR装置(2)は、放射された赤外線ビームの反射を低減するよう、以下の工程を適用することにより、自動車車両の透明ペイン(1)に結合されることができる。即ち、
(a)上記のようなペイン(1)を与える工程、
(b)入射軸(i0)を中心に赤外線ビームを放射するように構成された、上記のような光検知及び測距(LiDAR)装置(2)を与える工程、
(c)上記のような反射防止ユニット(3)を与える工程、
(d)反射防止ユニット(3)の境界面(31)を透明ペイン(1)の内部面(1i)に密着して結合させる工程、
(e)入射軸(i0)が面(32)に対する法線との間で-30°~+30°の角度φを形成するように、LiDARを反射防止ユニット(3)の面(32)に結合させる工程。
【0084】
結合作業は、LiDARにより入射角(i0)を中心として放射される赤外線放射が、入射角φで面(32)を通って反射防止ユニット(3)を通過し、外部面(1o)に対する法線との間でα>φである角度αを形成する屈折軸(ir)を中心とする軌道に沿って外部面(1o)を通って透明ペイン(1)から出射するようになされなければならない。
【0085】
反射防止ユニット(3)の境界面(31)は、好ましくは、上記のように、機械的固定部品、接着又はオートクレーブにより透明ペイン(1)の内部面(1i)に結合される。
【0086】
反射防止ユニット(3)の光学特性
反射防止ユニット(3)は、垂直方向との間で少なくとも10°、好ましくは少なくとも50°、より好ましくは少なくとも60°又は70°の傾斜角を形成するペイン(1)に結合された際に、優れた光学特性を有することが好ましい。例えば、LiDARから放射される赤外線ビームの6%以下が、面(32)によって、および、境界面(31)と内部面(1i)との間の接触面によって反射されることができる。入射角φ<αを低減することによって得られる反射率の低下が、境界面(31)と内部面(1i)との間の接触面のレベルで生成される反射により上回られることはもちろん、補償されることは、当然望ましくない。これは、上記の通り、反射防止ユニット(3)のための適切な材料、及び適切な結合方法を選択することにより達成されることができる。
【0087】
境界面(31)と内部面(1i)とにより形成されたアセンブリは、750~1650nmの波長域の赤外線放射に対して、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%、更には少なくとも95%の平均透過率を有する。
【0088】
反射防止ユニット(3)は、可視光に対して高い透過性を有することを必要としない。反射防止ユニット(3)は、シートの耐久性を低下させないままに、可視光透過性が非常に低い又はゼロであり、特に750~1650nmの波長域において高い近赤外線透過性を有するケイ酸塩タイプのガラスシートであってよい。
【0089】
特に、反射防止ユニット(3)は、その内在的な特性によって、追加の黒色/不透明の層/フィルムを必要とせずに、可視光透過性が非常に低い又はゼロであり、特に750~1650nmの波長域において高い近赤外線透過性を有するケイ酸塩タイプのガラスシートである。
【0090】
反射防止ユニット(3)は、
(i)ガラスの全重量パーセントで表わされる含有量において:
-全鉄(Feとして表される) 0.002~1.1%
-マンガン(MnOとして表される) ≧0.005%、
及び、オプションとして、
-クロム(Crとして表される) 0~1.3%
を含み、且つ、
(ii)
重量パーセントで表される全鉄、マンガン及びクロムの含有量の合計(Fe+MnO+Cr) ≧1%
Fe /(49+0.43(Cr -MnO))で定義される割合R1 <1
Fe /(34+0.3(Cr -MnO))で定義される割合R2 <1
(ただし、式中のFe 、MnO及びCr は、合計(Fe+MnO+Cr)に対する相対的パーセントである)
を有する、
組成を有するケイ酸塩タイプのガラスシートであることができる。
【0091】
結合又は境界面、又は反射防止ユニットの大部分のうちの1つは、着色層を適用し、又は解放可能な保護層の大部分を染めることにより、着色されるよう処理されることができる。例えば、解放可能な保護層は、黒色であっても、又は、適用される車両本体の色と一致する色を有してもよい。
【0092】
材料のたいていの光学特性は、供給者の技術情報シートにより提供される。
【0093】
反射防止ユニット(3)の使用
本発明は、また、入射軸(i0)を中心としてLiDAR装置、特に固体状態LiDAR装置により放射され、垂直方向との間でα1>10°、好ましくはα1>40°、より好ましくはα1>50°又は60°の角度を形成する自動車車両の透明ペイン(1)を通る赤外線ビームの反射量を低減するための、上記のような反射防止ユニット(3)の使用に関する。
【0094】
導光体(即ち、「Lichtleitkoerper」)によって車両のウインドシールドに結合されたカメラのアセンブリが、国際公開第2018087223号パンフレットに記載される。導光体は、傾斜フロントガラスに面するカメラの視野と交差する、傾斜フロントガラス上の領域(即ち、「Sensorbereich」又は「Snsorfenster」)を減少させるために使用される楔形の形状をとる。国際公開第2018087223号パンフレットの教示は、以下の理由により、LiDAR、特に固体状態LiDARにより傾斜透明ペインを通って放射される赤外線ビームの反射を低減するための本発明に適用することができない。即ち、カメラは何の放射も発しないが、外部環境から来る可視光線を捕獲する。その結果、外部環境に置かれた物体から発される可視光は、フロントガラスの外部面(1o)により反射されることができる。本発明に係る反射防止ユニット(3)の使用は、LiDARにより発される、フロントガラスの内部面による反射を低減するのに有用であり、外部環境から発される可視光の外部面(1o)での反射の問題は解決しない。次に、カメラは、相当量の反射にも関わらず、外部からの画像を捕獲するのに充分な感度を有する。
【符号の説明】
【0095】
1 ペイン
1i ペインの内部面
1o ペインの外部面
1p 中間接着層
2 LiDAR装置
3 反射防止ユニット
3i 反射防止ユニット形成部品
11 第1の積層ガラス
12 第2の積層ガラス
31 反射防止ユニットの境界面
32 反射防止ユニットの面
32c レンズ
41 境界面接着層
α 屈折軸(ir)とペインの外部面に対する法線との間の角度
α1 ペインの垂直方向に対する角度
β ペインを通る伝搬とペインに対する法線との間の角度
φ 入射軸(i0)と面(32)との間の角度
Φ 反射防止ユニットを通る伝搬の角度
θ 境界面(31)と面(32)との間の角度
τ 入射軸(i0)とペインの内部面に対する法線との間の角度
ζ =1/2π-τ
d 放射が横断するペインの厚み
I 伝送される放射エネルギー
i0 入射軸
I0 入射光エネルギー
ir 屈折軸
ia 吸収光
irf 反射光
is 散乱光
k 吸収係数
n0 外部環境の屈折率(大気については、n0=1)
n1 透明ペインの屈折率
n3 反射防止ユニットの屈折率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】