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特表2022-527977血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(54)【発明の名称】血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/02 20060101AFI20220531BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20220531BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C12N5/02
C12N5/07
C07K17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559012
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 KR2020002919
(87)【国際公開番号】W WO2020222414
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0050051
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520457236
【氏名又は名称】ダナグリーン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DANAGREEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Rm.201, 116-1, Dogu-ro, Seocho-gu, Seoul 06570 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジュ スンヨン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BC42
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045EA20
4H045FA52
(57)【要約】
血清由来誘導蛋白質を含む多孔性細胞支持体及びその製造方法に関するもので、一具体例による多孔性細胞支持体によれば、細胞を安定的に及び継続的に培養できるだけでなく、細胞ごとに細胞の特性に合った培養パターンを示し、実際の組織を模写することができ、安定的培養及び高い生体内生着率を持ち、オルガノイドを利用した薬物活性及び毒性評価、細胞治療剤、又は目的蛋白質の生産に有効に使用できる効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離された血清又は血漿蛋白質水溶液を架橋剤で処理して血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を架橋結合した後、還元剤で還元し、収得した血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体。
【請求項2】
記血清由来蛋白質は、還元剤で還元した後、反応物を均質化して収得されたものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項3】
前記架橋剤は、デキストラン-ジアルデヒド(dextran dialdehyde)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1-ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimide hydrochloride)、ビニルアミン(vinylamine)、メタクリル酸2-アミノエチル(2-aminoethyl methacrylate)、3-アミノプロピルメタクリルアミド(3-aminopropyl methacrylamide)エチレンジアミン(ethylene diamine)、ジメタクリル酸エチレングリコール(ethylene glycol dimethacrylate)、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate)、N、N'-メチレンビスアクリルアミド(N,N′-methylene-bisacrylamide)、N,N'-メチレンビスメタクリルアミド(N,N′-methylenebis-methacrylamide)、ジアリルタルタルジアミド(diallyltartardiamide)、アリル(メタ)アクリレート(allyl(meth)acrylate)、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(lower alkylene glycol di(meth)acrylate)、低級ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(poly lower alkylene glycol di(meth)acrylate)、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート(lower alkylene di(meth)acrylate)、ジビニルエーテル(divinyl ether)、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリビニルベンゼン(trivinylbenzene)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(trimethylolpropane tri(meth)acrylate)、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート(pentaerythritol tetra(meth)acrylate)、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(bisphenol A di(meth)acrylate)、メチレンビス(メタ)アクリルアミド(methylenebis(meth)acrylamide)、トリアリルフタレート(triallyl phthalate)、ジアリルフタレート(diallyl phthalate)、アリルグリシジルエーテル(allyl glycidyl ether)、塩化アルキル(alkyl choloride)、トランスグルタミナーゼ(transglutaminase)、リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase)、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(protein disulfide-isomerase)、プロテインジスルフィドレダクターゼ(protein-disulfide reductase)、スルフヒドリルオキシダーゼ(sulfhydryl oxidase)、リポキシゲナーゼ(lipoxygenase)、ポリフェノールオキシダーゼ(polyphenol oxidase)、チロシナーゼ(tyrosinase)、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、ラッカーゼ(laccase)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項4】
前記還元剤は、前記血清内蛋白質のジスルフィド結合を還元させるものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項5】
前記還元剤は、ベータ-メルカプトエタノール(b-mercaptoethanol)、ジチオトレイトール(dithiothreitol:DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine: TCEP))、システイン(cysteine)、グルタチオン(glutathione)、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン(Tris(3-hydroxypropyl)phosphine :THPP))、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される一つである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項6】
前記多孔性細胞支持体の気孔のサイズは50~600μmである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項7】
前記多孔性細胞支持体は、1~10kPaの弾性率を持つものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項8】
前記多孔性細胞支持体は、ポロシティが10~80%であるものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項9】
前記固体、又は半固体状態で可逆的な相転移が起き、不溶性であるものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項10】
前記血清又は血漿蛋白質は、ウシ胎児血清又は仔ウシ血清に由来するものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項11】
細胞が前記多孔性細胞支持体内に播種されたものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項12】
前記細胞は、細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞及び植物細胞からなる群から選択されるものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項13】
組織工学、3D細胞培養又は治療上使用のための細胞輸送であるものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項14】
請求項1の多孔性細胞支持体;及び前記多孔性細胞支持体内に播種された細胞を含む組織修復又は再生用組成物。
【請求項15】
前記細胞は、軟骨細胞;繊維軟骨細胞;骨細胞;骨芽細胞;破骨細胞;滑膜細胞;骨髄細胞;神経細胞;脂肪細胞;間葉細胞;上皮細胞、肝細胞、筋肉細胞;間質細胞;血管細胞;幹細胞;胚性幹細胞;間葉系幹細胞;脂肪組織由来の前駆細胞;末梢血液前駆細胞;成体組織から単離された幹細胞;人工多能性幹細胞(iPS細胞);これらの細胞に由来する癌細胞;及びこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであるものである請求項11に記載の組織修復又は再生用組成物。
【請求項16】
請求項1の多孔性細胞支持体に細胞を播種して3次元培養し、3次元細胞集合体を形成するステップ;及び
前記3次元細胞集合体に候補物質を処理するステップを含む、候補物質の薬理学的活性又は毒性を評価する方法。
【請求項17】
請求項1の多孔性細胞支持体に細胞を播種し、3次元培養し、3次元細胞集合体を形成するステップ;及び
前記3次元細胞集合体の培養物又は培養液から目的物質を分離するステップを含む目的物質を生産する方法。
【請求項18】
分離された血清又は血漿蛋白質水溶液を架橋剤で処理して血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を架橋結合するステップ;
架橋結合された血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を還元剤と反応させて、反応物を収得するステップ;及び
前記反応物を均質化し、血清由来蛋白質を収得するステップを含む血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項19】
前記血清由来蛋白質を熟成するステップを含むものである請求項18に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項20】
前記熟成された血清由来蛋白質を成形し、凍結乾燥するステップを含むものである請求項19に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項21】
前記架橋剤は、デキストラン-ジアルデヒド(dextran dialdehyde)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1-ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimide hydrochloride)、ビニルアミン(vinylamine)、メタクリル酸2-アミノエチル(2-aminoethyl methacrylate)、3-アミノプロピルメタクリルアミド(3-aminopropyl methacrylamide)エチレンジアミン(ethylene diamine)、ジメタクリル酸エチレングリコール(ethylene glycol dimethacrylate)、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate)、N、N'-メチレンビスアクリルアミド(N,N′-methylene-bisacrylamide)、N.N'-メチレンビスメタクリルアミド(N,N′-methylene-bis-methacrylamide)、ジアリルタルタルジアミド(diallyltartardiamide)、アリル(メタ)アクリレート(allyl(meth)acrylate)、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(lower alkylene glycol di(meth)acrylate)、低級ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(poly lower alkylene glycol di(meth)acrylate)、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート(lower alkylene di(meth)acrylate)、ジビニルエーテル(divinyl ether)、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリビニルベンゼン(trivinylbenzene)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(trimethylolpropane tri(meth)acrylate)、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート(pentaerythritol tetra(meth)acrylate)、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(bisphenol A di(meth)acrylate)、メチレンビス(メタ)アクリルアミド(methylenebis(meth)acrylamide)、トリアリルフタレート(triallyl phthalate)、ジアリルフタレート(diallyl phthalate)、アリルグリシジルエーテル(allyl glycidyl ether)、塩化アルキル(alkyl choloride)、トランスグルタミナーゼ(transglutaminase)、リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase)、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(protein disulfide-isomerase)、プロテインジスルフィドレダクターゼ(protein-disulfide reductase)、スルフヒドリルオキシダーゼ(sulfhydryl oxidase)、リポキシゲナーゼ(lipoxygenase)、ポリフェノールオキシダーゼ(polyphenol oxidase)、チロシナーゼ(tyrosinase)、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、ラッカーゼ(laccase)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれが一つである請求項18に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項22】
前記架橋剤は、2unit/mg~100unit/mgの比活性で処理されるものである請求項18に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項23】
前記還元剤は、ベータ-メルカプトエタノール(b-mercaptoethanol)、ジチオトレイトール(dithiothreitol:DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine: TCEP))、システイン(cysteine)、グルタチオン(glutathione)、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン(Tris(3-hydroxypropyl)phosphine: THPP))及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれた一つであるものである請求項18に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項24】
前記還元剤は、5mM~50mMの濃度で処理されるものである請求項18に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項25】
前記反応物を均質化して血清由来蛋白質を収得するステップは、反応物を組織粉砕機で均質化した後、遠心分離して血清由来蛋白質の懸濁液を回収するステップを含むものである請求項18に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項26】
前記血清由来蛋白質を熟成するステップは、血清由来蛋白質を洗浄するステップ;及び前記洗浄された血清由来蛋白質を1~15℃で熟成するステップを含むものである請求項19に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔性支持体は傷の治療、熱傷の治療、薬物の伝達及び損傷組織の再生のための支持体として広く応用されている。特に、損傷した組織の再生のための支持体には、少量の組織片から抽出し、分離した細胞を十分な量に培養するために適合した構造と安定性を持つこと、体内移植後に副作用が生じない生体適合性と生分解性を持つことが求められる。そのため、細胞の再生と成長を効果的に実現するための生分解性支持体は、組織細胞が支持体の表面に粘着して3次元構造の組織を形成することができる多孔性構造を持つこと、水分と細胞成長因子などの移動が容易であること、細胞の付着と成長に適合することが求められる。また、多孔性支持体は、体内に移植された後、周囲の組織と融和すること、炎症反応などの副作用を引き起こさないこと、組織が再生された後には自ら生分解し、異物として残留しない高い生体適合性を持つことが求められる。そのため、生体適合性、生分解性、そして機械的物性に優れた多孔性支持体は、組織の再生と復元に必須である。
【0003】
細胞培養関連の生物医薬品産業市場は、2011年以降、毎年2桁成長が続いている。特に、2014年には1200億ドルを超える市場が形成されたが、韓国国内には3次元細胞培養関連の専門人材が不足し、海外の機関に依存しているのが現状である。3次元細胞培養技術は、薬物の効能と毒性の検索だけでなく、人工臓器の開発などにも活用される、見通しの明るい先端技術であり、BCCリサーチ社によると、市場の規模は、2016年にはおよそ60億ドルと推定されている。毎年10%以上成長し、2019年には80億ドル規模にまで成長すると見込まれている。また、世界的に組織工学及び再生関連市場(細胞基盤の人工臓器を含む)の規模は、2016年の136億ドルから2021年には608億ドルに上ると見込まれており、年平均34.9%の高成長が期待される有望な分野である。
【0004】
そのため、高い生着率と保管性を有し、実際のヒトの組織と類似した形で具現される細胞集合体を生産するための多孔性細胞支持体に関する研究が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様は、分離された血清又は血漿蛋白質水溶液を架橋剤で処理し、血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を架橋結合した後、還元剤で還元して得られた血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体を提供することである。
【0006】
他の態様は、多孔性細胞支持体;及び前記多孔性細胞支持体内に播種された細胞を含む組織修復又は再生用組成物を提供することである。
【0007】
他の態様は、多孔性細胞支持体に細胞を播種し、3次元培養し、3次元細胞集合体を形成するステップ;及び前記3次元細胞集合体に候補物質を処理するステップを含む候補物質の薬理学的活性又は毒性を評価する方法を提供することである。
【0008】
他の態様は、多孔性細胞支持体に細胞を播種し、3次元培養し、3次元細胞集合体を形成するステップ;及び前記3次元細胞集合体の培養物又は培養液から目的物質を分離するステップを含む目的物質を生産する方法を提供することである。
【0009】
他の態様は、分離された血清又は血漿蛋白質水溶液に架橋剤を処理し、血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を架橋結合するステップ;架橋結合した血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を還元剤と反応させて、反応物を収得するステップ;及び前記反応物を均質化し、血清由来蛋白質を収得するステップを含む、血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、一態様は、分離された血清又は血漿蛋白質水溶液を架橋剤で処理し、血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を架橋結合した後、還元剤で還元し、収得した血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体を提供する。
【0011】
本明細書において、用語「血清由来蛋白質」は、通常、組織培養に使用されるウシ胎児血清(fetal bovine serum: FBS)、仔ウシ血清(bovine calf serum: BCS)又は他の動物(例えば、哺乳類又はヒト)に由来する血清に架橋剤を処理し、血清内蛋白質を架橋結合して収得した蛋白質を意味してもよい。また、血清内蛋白質である血清アルブミン、リポ蛋白質、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、免疫グロブリン、各種の補体、フィブリノーゲン、プロトロンビン、プラスミノーゲン、キニノーゲン、プレカリクレイン、フィブロネクチン、α2-HS-グリコプロテイン、アンジオテンシノーゲン、ホルモンなどで血液中に一時的に存在する蛋白質の水溶液内蛋白質を架橋結合して収得した蛋白質を意味してもよい。
【0012】
本明細書で使用される架橋剤は、デキストラン-ジアルデヒド(dextran dialdehyde)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1-ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carboimide hydrochloride)、ビニルアミン(vinylamine)、メタクリル酸2-アミノエチル(2-aminoethyl methacrylate)、3-アミノプロピルメタクリルアミド(3-aminopropyl methacrylamide)エチレンジアミン(ethylene diamine)、ジメタクリル酸エチレングリコール(ethylene glycol dimethacrylate)、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate)、N、N'-メチレンビスアクリルアミド(N,N′-methylene-bisacrylamide)、N,N'-メチレンビスメタクリルアミド(N,N′-methylenebis-methacrylamide)、ジアリルタルタルジアミド(diallyltartardiamide)、アリル(メタ)アクリレート(allyl(meth)acrylate)、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(lower alkylene glycol di(meth)acrylate)、低級ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(poly lower alkylene glycol di(meth)acrylate)、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート(lower alkylene di(meth)acrylate)、ジビニルエーテル(divinyl ether)、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリビニルベンゼン(trivinylbenzene)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(trimethylolpropane tri(meth)acrylate)、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート(pentaerythritol tetra(meth)acrylate)、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(bisphenol A di(meth)acrylate)、メチレンビス(メタ)アクリルアミド(methylenebis(meth)acrylamide)、トリアリルフタレート(triallyl phthalate)、ジアリルフタレート(diallyl phthalate)、アリルグリシジルエーテル(allyl glycidyl ether)、塩化アルキル(alkyl choloride)、トランスグルタミナーゼ(transglutaminase)、リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase)、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(protein disulfide-isomerase)、プロテインジスルフィドレダクターゼ(protein-disulfide reductase)、スルフヒドリルオキシダーゼ(sulfhydryl oxidase)、リポキシゲナーゼ(lipoxygenase)、ポリフェノールオキシダーゼ(polyphenol oxidase)、チロシナーゼ(tyrosinase)、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、ラッカーゼ(laccase)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase)及びこれらの組み合わせを含み、他にも蛋白質を結合させる物質であればいずれも適用可能である。
前記架橋剤のうち、酵素架橋剤は、任意の微生物(例えば、Streptoverticillium mobaraense)由来の酵素であってもよい。
【0013】
本明細書において、用語「還元剤」は、血清内の蛋白質のジスルフィド結合を還元させる物質を意味する。本明細書で使用される還元剤は、ベータ-メルカプトエタノール(b-mercaptoethanol)、ジチオトレイトール(dithiothreitol:DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine: TCEP))、システイン(cysteine)、グルタチオン(glutathione)及びトリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン(Tris(3-hydroxypropyl)phosphine: THPP))を含み、他にも蛋白質のジスルフィド結合を還元させる物質であればいずれも適用可能である。
【0014】
一具体例による多孔性細胞支持体の気孔のサイズは、50~600μm、100~550μm、150~500μm、200~450μm、250~400μm、300~350μm、50~300μm、100~250μm、150~200μm、300~600μm、350~550μm、400~500μmであってもよい。
【0015】
一具体例による多孔性細胞支持体の弾性率は、1~10kPa、2~8kPa、3~8kPa、1~5kPa、4~10kPa、6~10kPa、1~3kPa、又は4~6kPaであってもよい。
【0016】
一具体例による多孔性細胞支持体のポロシティは10~80%、20~80%、30~70%、40~60%、10~40%、10~30%、50~80%、又は60~80%であってもよい。
【0017】
他の具体例において、前記多孔性細胞支持体は、固体、又は半固体で、可逆的な相転移が発生する可能性がある。また、前記多孔性細胞支持体は、不溶性であってもよい。
【0018】
一具体例による多孔性細胞支持体は、組織工学、修復又は再生に特に適合している。ポロシティの違いは、多孔性細胞支持体の適切な部位に異なる細胞タイプの移動を可能にすることができる。他の具現例で、ポロシティの違いは、発達/修復/再生組織の適切な構造化に要求される、多孔性細胞支持体を含む細胞タイプの中で適切な細胞と細胞の連結の発達を可能にすることができる。例えば、細胞処理の拡張は、多孔性細胞支持体性物質の多様なポロシティを通じて、より適切に調節されることができる。そのため、多孔性細胞支持体は、任意の組織細胞を含む可能性がある。
一具体例による多孔性細胞支持体の用途は、組織工学、3D細胞培養又は治療上使用のための細胞輸送を含んでもよい。
【0019】
一具体例において、前記多孔性細胞支持体は、細胞が播種されたものであってもよい。一具体例による多孔性細胞支持体内に播種された細胞は、細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞及び植物細胞からなる群を含んでもよい。
【0020】
前記細胞、例えば、真核細胞は、酵母、カビ、原生動物(protozoa)、植物、高等植物及び昆虫、又は両生類の細胞、又はCHO、HeLa、HEK293、及びCOS-1のような哺乳動物の細胞であってもよく、例えば、当業界で一般的に使用される、培養された細胞(invitro)、移植された細胞(graft cell)及び一次細胞培養(インビトロ及びエクスビボ(ex vivo))及びインビボ(in vivo)細胞、及びまたヒトを含む哺乳動物の細胞(mammalian cell)であってもよい。また、前記有機体は、酵母、カビ、原生動物、植物、高等植物及び昆虫、両生類、又は哺乳動物であってもよい。
【0021】
一具体例による多孔性細胞支持体内に播種された細胞は、軟骨細胞;繊維軟骨細胞;骨細胞;骨芽細胞;破骨細胞;滑膜細胞;骨髄細胞;神経細胞;脂肪細胞;間葉細胞;上皮細胞、肝細胞、筋肉細胞;間質細胞;血管細胞;幹細胞;胚性幹細胞;間葉系幹細胞;脂肪組織由来の前駆細胞;末梢血液前駆細胞;成体組織から単離された幹細胞;人工多能性幹細胞(iPS細胞)、これらに由来する腫瘍細胞及びこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つを含んでもよい。
【0022】
前記多孔性細胞支持体は、播種された細胞の分化又は増殖を誘導するための成長因子、成長刺激剤、生理活性物質、又は細胞結合媒介物質であるペプチドや多糖類などをさらに含んでもよい。
【0023】
一具現例において、前記成長因子又は成長刺激剤は、細胞付着媒介体;生物学的活性リガンド;インテグリン結合シークエンス;リガンド;多様な成長及び/又は分化製剤(例えば、上皮細胞成長因子、IGF-I、IGF-II、TGF-[ベータ]、成長及び分化因子、間質細胞由来因子SDF-1;血管内皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子及びトランスフォーミング増殖因子、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、bFGF;神経成長因子(NGF)又は筋肉形成因子(MMF);ヘパリン結合性増殖因子(HBGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ又はベータ、アルファ線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞成長因子(TGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、SDF-1;TGF[ベータ]スーパーファミリー因子;BMP-2;BMP-4;BMP-6;BMP-12;ソニックヘッジホッグ;GDF5;GDF6;GDF8;PDGF);特定の成長因子のアップレギュレーションに影響を与える低分子;テネイシン-C;ヒアルロン酸;コンドロイチン硫酸;フィブロネクチン;デコリン;トロンボプラスチン;トロンビン由来ペプチド;TNFアルファ/ベータ;マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP);ヘパリン-結合ドメイン;ヘパリン;ヘパラン硫酸;DNA切片、DNAプラスミド、短鎖干渉RNA(short interfering RNA, siRNA)、形質感染体又はその任意の混合物が含まれてもよい。
【0024】
他の態様は、分離された血清又は血漿蛋白質水溶液を架橋剤で処理し、血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を架橋結合するステップ;架橋結合した血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を還元剤と反応させて、反応物を収得するステップ;及び前記反応物を均質化し、血清由来蛋白質を収得するステップを含む、血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体を製造する方法を提供する。
【0025】
前記分離された血清又は血漿蛋白質水溶液を架橋剤で処理するステップにおいて、架橋剤の比活性は約2~100unit/mg、7~95unit/mg、12~90unit/mg、17~85unit/mg、22~80unit/mg、27~75unit/mg、32~70unit/mg、37~65unit/mg、42~60unit/mg、47~55unit/mg、2~50unit/mg、7~45unit/mg、12~40unit/mg、17~35unit/mg、22~30unit/mg、50~100unit/mg、55~95unit/mg、60~90unit/mg、65~85unit/mg、70~80unit/mg、2~30unit/mg、7~25unit/mg、12~20unit/mg、30~60unit/mg、35~55unit/mg、40~50unit/mg、60~100unit/mg、65~95unit/mg、70~90unit/mg、75~85unit/mgであってもよい。
本明細書において、比活性は、基質蛋白質(本明細書で血清又は血清内蛋白質)当たりの単位ユニットを意味してもよい。
【0026】
前記血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を還元剤と反応させるステップにおいて、還元剤の濃度は、約5~50mM、10~45mM、15~40mM、20~35mM、25~30mM、5~25mM、10~20mM、25~50mM、30~45mM、35~40mMであってもよい。前記還元剤との反応は、20℃~40℃で行われてもよい。
【0027】
前記反応物を均質化し、血清由来蛋白質を収得するステップにおいて、前記均質化は組織粉砕機(homogenizer)で行われてもよい。前記ステップはまた、均質化した後、遠心分離して血清由来蛋白質の懸濁液を回収するステップを含んでもよい。
【0028】
他の具体例において、前記血清由来蛋白質を熟成するステップをさらに含んでもよい。前記熟成させるステップには、血清由来蛋白質を洗浄するステップ;及び前記洗浄された血清由来蛋白質を1~15℃で熟成させるステップを含んでもよい。
【0029】
他の具体例において、前記方法は、前記熟成された血清由来蛋白質を成形、凍結乾燥するステップをさらに含んでもよい。前記成形は、目的とする形及び大きさのキャスティングモールドで行ってもよい。前記凍結乾燥は、-40℃~-240℃で1分~3時間凍結させた後、乾燥させるステップを含んでもよい。
【0030】
また、前記方法は、乾燥された血清由来蛋白質を水溶液又は有機溶媒で洗浄し、蛋白質以外の不純物を洗浄するステップ;又は前記洗浄された血清由来蛋白質を保存液に浸漬するステップを含んでもよい。
【0031】
一具体例による多孔性細胞支持体は、細胞を安定的に及び継続的に培養できるだけでなく、細胞ごとに細胞の特性に合った培養パターンを示すことができる効果がある。また、一具体例による多孔性細胞支持体は、細胞培養ディッシュ及びプレートで培養する従来の2D培養方法でも長期間培養が可能な効果がある。
一態様は、多孔性細胞支持体;及び前記多孔性細胞支持体内に播種された細胞を含む組織修復又は再生用組成物に関するものである。
前記多孔性細胞支持体内に播種された細胞は、3次元培養された3次元細胞集合体であってもよい。
【0032】
本明細書において、用語「細胞治療剤(cellular therapeutic agent)」とは、ヒトから分離、培養及び特殊な操作を通じて製造された細胞及び組織で、治療、診断及び予防の目的で使用される医薬品(米FTA規定)であり、細胞又は組織の機能を復元させるために生きている自家、同種、又は異種細胞を体外で増殖選別するか、他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を通じて、こうした細胞が疾病の治療、診断及び予防の目的で使用される医薬品を意味する。
【0033】
用語「治療」は、疾患、障害又は病態、又はその一つ以上の症状の軽減、進行抑制又は予防を指すか、それを含み、「薬剤学的有効量」は、疾患、障害又は病態、又はその一つ以上の症状の軽減、進行抑制又は予防に十分な、本明細書で提供される発明を実施する過程で利用される組成物の任意の量を意味してもよい。
【0034】
用語「投与する」、「塗布する」、「導入する」及び「移植する」は、相互交換的に使用され、一具体例によるパッチ又は組成物の希望する部位への、少なくとも部分的局所化をもたらす方法又は経路による個体内への一具体例によるパッチ又は組成物の配置を意味してもよい。
【0035】
本明細書の用語「細胞集合体」又は「3次元細胞集合体」は、2以上の細胞が密集した状態を意味し、組織状態であってもよく、多細胞状態であってもよい。各細胞集合体は、組織自体又は一部、又は多細胞の集合体で存在してもよく、間質細胞から分化された細胞類似-組織体を含んでもよい。
【0036】
本明細書の用語「3次元(three-dimensional)」は、2次元ではない、幾何学的な3つのパラメーター(例えば、深さ、広さ、高さ又はX、Y、Z軸)モデルを持つ立体を意味してもよい。3次元細胞集合体は、一般的な細胞集合体のように細胞の単一層で形成された細胞集合体ではなく、細胞の多層又は球形などで形成された細胞集合体を意味してもよい。
【0037】
前記組織は、心臓、関節、骨、血管、胃、肝臓、皮膚、腎臓、軟骨、腸、神経、又は膵臓であってもよい。通常の技術者は、目的とする組織再建のために、それにあった体細胞又は幹細胞を前記多孔性細胞支持体に播種することができる。又は当該組織に由来する腫瘍細胞の研究のために同じ方法を適用することができる。
【0038】
一具体例による多孔性細胞支持体は、生体内移植時、高い生着率を持って3次元細胞集合体を形成するか、組織に分化されることができ、組織修復又は再生に有効に使用できる効果がある。また、一具体例による多孔性細胞支持体は、凍結と融解にも安定的な細胞培養能を有するため、細胞治療剤の製品化に有効に使用できる効果がある。
【0039】
前記3次元細胞集合体は、肉眼で識別可能な大きさの球形又はシートであってもよく、例えば、直径約300~2000μmである球形の3次元細胞集合体であってもよく、一具体例において、300~1000μmであってもよい。前記球形の3次元細胞集合体の直径は、一具体例による培養方法により通常の当業者が肉眼で識別可能な大きさに調節することができる。また、一具体例による球形の3次元細胞集合体は、直径400μm内に約3.0Х105~1.0Х106個の細胞を含んでもよい。また、一具体例において、前記3次元細胞集合体は、多様な蛋白質及び機能性物質を分泌することができる。
【0040】
したがって、一具体例による3次元細胞集合体は、細胞治療剤又は生理活性物質の供給時に細胞源(source)として有効に使用することができる。前記3次元細胞集合体の用途は以下の通りである。
【0041】
前記したように、3次元細胞集合体は、上皮細胞成長因子、多様な蛋白質及び機能性物質を分泌することができるため、これを必要とする個体に移植され、細胞供給源としての役割を遂行することで皮膚再生、又は血管新生を促進することができる。さらに、組織再生又は組織新生を促進することで、心臓、胃腸、肝臓、皮膚、腎臓、軟骨、腸、神経、又は膵臓関連疾患の予防及び治療用薬学的組成物にも有効に使用することができる。
【0042】
前記心臓関連疾患は、例えば、狭心症、心筋梗塞、心筋症、弁膜疾患、大動脈疾患及び不整脈を含んでもよい。前記胃腸関連疾患は、胃炎、胃潰瘍、胃癌、胃ポリープ、ヘリコバクター・ピロリ感染及び胃MALTリンパ腫を含んでもよい。前記肝臓関連疾患は、肝炎、サルコイドーシス、脂肪肝、アルコール性肝疾患、肝癌、肝硬変、妊娠中毒症、非ホジキンリンパ腫、ウィルソン病、ライ症候群、他にも新生児黄疸、肝吸虫症、肝膿瘍及び肝血管腫を含んでもよい。前記皮膚関連疾患は、湿疹性皮膚疾患、紅斑、蕁麻疹、薬疹、丘疹鱗屑疾患、昆虫及び寄生虫媒介疾患、表在性皮膚真菌症、細菌感染疾患、ウイルス性疾患、性感染症、自己免疫性水疱症、結合組織疾患、色素異常症、ニキビ、酒さ及び皮膚腫瘍を含んでもよい。前記腎臓関連疾患は、急性腎障害(急性腎不全)、慢性腎臓病(慢性腎不全)、末期慢性腎不全、慢性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、急性腎炎、急性間質性腎炎、慢性間質性腎炎、血尿、蛋白尿、無症候性尿異常、ネフローゼ症候群、急性腎盂腎炎、尿細管欠損、遺伝性腎疾患、腎臓結石、水腎症、腎性尿崩症、腎細胞癌、移行上皮細胞癌、血管筋脂肪腫、常染色体優性多発性嚢胞腎、単純性嚢胞及び腎結核を含んでもよい。前記軟骨関連疾患は、変形性関節症、外傷性関節症、離断性骨軟骨炎及び骨軟化症を含んでもよい。前記腸関連疾患は、潰瘍、腸炎、出血、腫瘍、腸管癒着、腸閉塞、腸麻痺、大腸癌、大腸ポリープ、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎及びクローン病、腸結核、感染性下痢症及び大腸炎、血管性腸疾患及び大腸憩室症を含んでもよい。前記神経関連疾患は、先天奇形、癌、感染症、外傷、出血及び自己免疫疾患を含んでもよい。前記膵臓関連疾患は、糖尿病、急性膵炎、慢性膵炎及び膵臓癌を含んでもよい。
【0043】
一具体例による細胞治療剤又は薬学的組成物の投与量は、有効成分を構成する3次元細胞集合体を基準に約1.0Х105~1.0Х108細胞/kg(体重)、又は1.0Х107~1.0Х108細胞/kg(体重)でもよい。ただし、投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様に処方することができ、当業者であれば、こうした要因を考慮し、投与量を適切に調節することができる。投与回数は、1回又は臨床的に容認可能な副作用の範囲内で2回以上が可能で、投与部位に対しても1ヶ所又は2ヶ所以上に投与することができる。ヒト以外の動物に対しても、kg当たりヒトと同じ投与量にするか、又は例えば目的の動物とヒトとの機関(心臓など)の容積比(例えば、平均値)などで前記投与量を換算した量を投与することができる。一具体例による治療の対象動物としては、ヒト及びその他の目的とする哺乳動物が挙げられ、具体的には、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、羊、牛、犬、馬、豚及びその他のペットなどが含まれる。
【0044】
一具体例による細胞治療剤又は薬学的組成物は、有効成分として細胞集合体や薬学的に許容可能な担体及び/又は添加物を含んでもよい。例えば、滅菌水、生理食塩水、慣用の緩衝剤(リン酸、クエン酸、その他の有機酸など)、安定剤、塩、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、界面活性剤、懸濁剤、等張化剤、又は保存剤などを含んでもよい。局所投与のために、生体高分子(biopolymer)などの有機物、ハイドロキシアパタイトなどの無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸重合体又は共重合体、ポリエチレングリコール重合体又は共重合体及びその化学的誘導体などと組み合わせるのも望ましい。一具体例による細胞治療剤又は薬学的組成物が注射に適した剤形に調剤される場合には、細胞集合体が薬学的に許容可能な担体中に溶解されているか又は溶解されている溶液状態で凍結されたものであってもよい。
【0045】
一具体例による組織再建又は修復用組成物、細胞治療剤又は薬学的組成物は、その投与方法や剤形によって、必要な場合、懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、還元剤、酸化防止剤などを適切に含んでもよい。前記例示したものを含め、本発明に適合した薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington's Pharmaceutical Sciences,19thed.,1995]に詳しく記載されている。
【0046】
一具体例による組織再建又は修復用組成物、細胞治療剤又は薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できる方法に合わせ、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を利用して製剤化することで、単位容量形態に製造されるか又は多容量容器内に入れて製造されてもよい。この時、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又はエマルション形態であるか、粉末、顆粒、錠剤又はカプセル形態であってもよい。
他の態様は、一具体例による3次元細胞集合体を含む薬物スクリーニング用3次元培養システムを提供する。
【0047】
他の態様は、多孔性細胞支持体に細胞を播種し、3次元培養し、3次元細胞集合体を形成するステップ;及び前記3次元細胞集合体に候補物質を処理するステップを含む、候補物質の薬理学的活性又は毒性を評価する方法を提供する。
【0048】
前記候補物質、例えば、被検化合物又は被検組成物は、低分子化合物(small molecule compound)、抗体(Antibody)、アンチセンスヌクレオチド(Antisense nucleotide)、短鎖干渉RNA(short interfering RNA, siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(short hairpin RNA、shRNA)、核酸(Nucleic acid)、蛋白質(Protein)、ペプチド(Peptide)、その他の抽出物(Extract)又は天然物(Nature product)を含んでもよい。
【0049】
前記3次元細胞集合体は、生体内環境を模倣した人為的な細胞形態を持つもので、実際の細胞形態及び機能研究、又は治療剤(例えば、前記皮膚疾患又は血管疾患)などに有効に使用することができる。そのため、前記3次元細胞集合体を含む薬物スクリーニング用3次元培養システムは、医薬品又は化粧品などの疾病治療剤効能テスト、又は炎症及びアレルギーテストなどのための実験において、動物実験を代替することができる。
【0050】
他の態様は、多孔性細胞支持体に細胞を播種し、3次元培養し、3次元細胞集合体を形成するステップ;及び前記3次元細胞集合体の培養物又は培養液から目的物質を分離するステップを含む目的物質を生産する方法を提供する。
前記目的物質は、目的蛋白質であってもよい。
前記培養は、炭素源を含有する培地で培養されるものであってもよい。
【0051】
本明細書で使用される用語「炭素源」は、宿主生物又は生産細胞株によって代謝できるものなどの微生物のエネルギー源として望ましい発酵可能な炭素基質、一般的に供給源炭水化物、複合栄養物質などのように、特に精製された形態又は原料物質として提供される、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、グリセロールを含むアルコール類からなるグループから選択される供給源を意味する。炭素源は、単一炭素源として又は相異なる炭素源の混合物として本発明に基づいて使用することができる。
【0052】
本明細書で使用される用語「目的蛋白質(Product of interest、POI)」は、宿主細胞で組換え技術により生産されるポリペプチド又は蛋白質を指す。より具体的には、蛋白質は宿主細胞で自然に発生しないポリペプチド(すなわち、異種蛋白質)であってもよく、宿主細胞に対して天然であってもよいが(すなわち、宿主細胞に対して相同性蛋白質)、例えば、POIをエンコーディングする核酸配列を含有する自己複製ベクターを使用した形質転換により、又は宿主細胞のゲノム内にPOIをエンコーディングする核酸配列の一つ以上のコピーの組換え技術による統合で、又は、例えば、プロモーター配列のPOIをエンコーディングする遺伝子の発現を調節する一つ以上の調節配列の組換え変形によって生産される。複数の場合、本明細書で使用される用語「POI」は、組換えにより発現された蛋白質によって媒介されたような宿主細胞による任意の代謝生成物を指す。具体的には、POIは真核細胞蛋白質、望ましくは哺乳動物蛋白質である。POIは真核細胞、望ましくは酵母細胞から分泌された蛋白質として生産される異種組み換えポリペプチド又は蛋白質である。蛋白質の例は、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、アプロチニン、組織因子経路インヒビター又は他のプロテアーゼ阻害剤、及びインスリン又はインスリン前駆体、インスリンアナログ、成長ホルモン、インターロイキン、組織プラスミノーゲン活性化剤、トランスフォーミング増殖因子a又はb、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、GRPP、因子VII、因子VIII、因子XIII、血小板由来成長因子1、血清アルブミン、酵素、例えば、リパーゼ又はプロテアーゼ、又は天然蛋白質と類似した機能を持つ機能的類似体、機能的等価変異体、誘導体及び生物学的活性断片である。POIは、天然蛋白質と構造的に類似していてもよく、C-及びN-末端のいずれか一つ又は両方に又は天然蛋白質の側鎖に一つ以上のアミノ酸の付加、天然アミノ酸配列のうち一つ又は複数の相異なる部位で一つ以上のアミノ酸の置換、天然蛋白質の一つ又は二つの末端で又はアミノ酸配列のうち一つ又は複数の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失、又は天然アミノ酸配列のうち一つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の挿入により天然蛋白質に由来してもよい。このような変形は、前記の複数の蛋白質に対して公知されている。
【0053】
本発明に基づいて生産されるPOIは、多量体蛋白質、望ましくは二量体又は四量体でもよい。POIは、抗体又はその断片を含む治療学的蛋白質、酵素及びペプチド、蛋白質抗生物質、毒素融合蛋白質、炭水化物‐蛋白質接合体、構造的蛋白質、調節蛋白質、ワクチン及びワクチン類似蛋白質又は粒子、工程酵素、成長因子、ホルモン及びサイトカイン又はPOIの代謝物質から選択される組換え又は異種蛋白質である。特定のPOIは、抗体などの抗原結合分子又はその断片である。特定のPOIの中には、モノクローナル抗体(mAb)、免疫グロブリン(Ig)又は免疫グロブリンG(IgG)、重鎖抗体(HcAb')又はこれらの断片、例えば、断片-抗原結合(Fab)、Fd、一本鎖可変領域断片(scFv)、又はその操作された変異体、例えば、Fv二量体(diabody)、Fv三量体(triabody)、Fv四量体又はminibody及びVH又はVHH又はV-NARなどの単一-ドメイン抗体のような抗体がある。
【0054】
POIは、このように得られた形質転換体を、適切な培地で培養し、発現された生成物又は代謝物質を培養物から単離し、これを適切な方法で任意に精製することで、組換え宿主細胞株を使用して生産することができる。
【0055】
本発明による形質転換体は、こうしたベクターDNA、例えば、プラスミドDNAを宿主内に導入し、POI又は宿主細胞代謝物質を高収率で発現させる形質転換体を選択することで収得できる。宿主細胞は、電気パルス方法、原形質体方法、酢酸リチウム方法、塩化カルシウム方法及びそれらの変形方法などのように、真核細胞の形質転換に通常使用される方法で外来DNAを導入できるように処理される。
【0056】
本発明による望ましい宿主細胞株は、本発明により使用される遺伝的特性を維持し、生産レベルは高く、例えば、約20継代培養、少なくとも30継代培養、少なくとも50継代培養後にも、少なくともμg レベルに維持される。
【0057】
本明細書に開示された方法は、分泌された形で又は細胞内生成物としてPOIの発現を可能にする条件下で、前記組換え宿主細胞を培養することをさらに含んでもよい。続いて、組換えによって生産されるPOI又は宿主細胞代謝物質は、細胞培養培地から単離でき、当業者に公知である技術によってさらに精製できる。
【0058】
本発明に基づいて生産されるPOIは、通常、当該技術分野の技術状態を使用して単離され、精製することができ、これは目的とするPOI濃度の増加及び/又は少なくとも一つの不純物濃度の減少を含む。
【0059】
POIが細胞から分泌される場合、これは当該技術分野の技術状態を使用して細胞培地から単離及び精製できる。宿主細胞から組換え発現生成物の分泌は、酵母細胞が破砕され細胞内蛋白質を放出する場合に発生する蛋白質の複雑な混合物ではなく、培養上清液から回収されるため、精製工程の促進を含む理由から一般的に有利である。
【0060】
また、培養された形質転換体細胞は超音波又は機械的、酵素的又は化学的に破砕され、POIが分離及び精製され、目的とするPOIを含有する細胞抽出物を収得することができる。
【0061】
組換えポリペプチド又は蛋白質生成物を収得する分離及び精製方法としては、溶解度の違いを利用する方法(例えば、塩析(salting out)及び溶媒沈殿)、分子量の違いを利用する方法(例えば、超音波及びゲル電気泳動)、電荷の違いを利用する方法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)、特異的親和性を利用する方法(例えば、アフィニティークロマトグラフィー)、疎水性の違いを利用する方法(例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー)及び等電点の違いを利用する方法(例えば、等電点電気泳動)などの方法を使用することができる。
【0062】
高度に精製された生成物は、汚染蛋白質を本質的に含有せず、望ましくは少なくとも90%、より望ましくは少なくとも95%又は少なくとも98%、100%以下の純度を持つ。精製された生成物は、細胞破片から細胞培養上清液などの精製によって収得することができる。
【0063】
単離及び精製方法としては下記の標準方法が望ましい:細胞破壊(POIが細胞内で収得される場合)、細胞(破片)分離及び精密ろ過又はタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)による洗浄又は遠心分離、沈殿又は熱処理によるPOI精製、酵素的消化によるPOI活性化、クロマトグラフィー、例えば、イオン交換(IEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除(SEC)又はHPLCクロマトグラフィーによるPOI精製、濃縮のPOI沈殿及び限外ろ過ステップによる洗浄。
分離及び精製されたPOIは、通常の方法、例えば、ウェスタンブロッティング、HPLC、活性分析又はELISAにより同定できる。
【0064】
一般的に、組換え生成物を発現する宿主細胞は、POIの組換え発現に適合した任意の真核細胞であってもよい。哺乳動物細胞の例は、BHK、CHO(CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHO-K1、CHOK1SV、CHO-S)、HeLa、HEK293、MDCK、NIH3T3、NS0、PER。C6、SP2/0及びVERO細胞である。宿主細胞として使用される酵母の例は、これらに限定されないが、サッカロマイセス属(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ)、ピキア属(例えば、P.パストリス又はP.メタノリカ)、コマガタエラ属(K.パストリス、K.シュードパストリス又はK.ファフィ)、ハンセヌラ・ポリモルファ又はクルイベロマイセス・ラクティスを含む。
【発明の効果】
【0065】
一具体例による多孔性細胞支持体は、細胞を安定的に及び持続的に培養できるだけでなく、細胞ごとに細胞の特性に合った培養パターンを示し、実際の組織を模写することができ、安定的培養及び高い生体内生着率を持ち、オルガノイドを利用した薬物活性及び毒性評価、細胞治療剤、又は目的蛋白質の生産に有効に使用できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は、一具体例による多孔性細胞支持体を利用し、SNU017胃癌細胞株を9日間培養した結果である。
図2図2は、一具体例による多孔性細胞支持体を利用し、SiHA子宮頸癌細胞株を14日間培養した結果である。
図3図3は、一具体例による多孔性細胞支持体を利用し、hACs(軟骨細胞)を7日間培養した結果である。
図4図4は、一具体例による多孔性細胞支持体を利用し、腸管内分泌細胞を13日間培養した結果である。
図5図5は、一具体例による多孔性細胞支持体を利用した腸管内分泌細胞(Enteroendocrine Cell:EEC)の3次元細胞集合体をマウスの腎臓膜に注入した後、一週間経過したものである。
図6図6は、一具体例による多孔性細胞支持体を利用し、肝癌細胞を12日間培養した後、凍結融解試験を実施した結果である。
図7図7は、一具体例による多孔性細胞支持体を利用して培養された肝癌細胞と、陽性対照群で培養された肝癌細胞のアルブミンに対し、ELISA方法を使用して発現量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するためにのみ提供されるものであり、下記の実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
【0068】
実施例1 多孔性細胞支持体の製造
血清由来蛋白質を利用した多孔性細胞支持体は、以下のように製造する。
まず、架橋剤で血清蛋白質を架橋結合及び還元剤で還元した。具体的には、Class100以下のクリーンブースで、同量のウシ胎児血清や仔ウシ血清を1mg/ml微生物トランスグルタミナーゼ(比活性単位20U/mg、Sigma Aldrich)で処理した。その後、最終濃度15mMで還元剤のジチオトレイトール(Dithiothreitol:DTT、Sigma Aldrich)を添加し、37℃で12時間反応させ、反応物を製造した。その後、前記反応物に洗浄バッファー(6M urea and 0.1M酢酸ナトリウム、pH5.0)を添加し、電動式組織粉砕機(Homogenizer D1000、Benchmark Scientific)で均質化させた後、遠心分離して血清由来蛋白質の懸濁液を回収した。前記懸濁液を乳酸で洗浄した後、高速撹拌機(MaXtir◎500S、DAIHAN-brand)を使用して10,000rpmで20分間撹拌し、4℃で8時間熟成した。前記熟成した血清由来蛋白質を希望する形に成形するためにキャスティングモールドに移し、-80℃で1時間凍結させた後、24時間凍結乾燥させた。その後、乾燥された血清由来蛋白質を常温で100%エタノールと滅菌された3次蒸留水でそれぞれ5回水洗し、血清由来蛋白質以外の不純物を洗浄し、血清由来蛋白質の多孔性細胞支持体を製造した。その後の実験では、前記血清由来蛋白質の多孔性細胞支持体を保存液(1XPBS、cell culture media、DW等)に浸漬して使用した。
前記製造した細胞支持体の特性は以下の表1の通りである。
実験例1 多孔性細胞支持体を利用した癌細胞の3次元培養
前記実施例1で製造した多孔性細胞支持体を利用して癌細胞を培養し、培養安定性及び持続性を確認した。
【0069】
具体的には、前記実施例1で製造された多孔性細胞支持体から保存液を最大限除去するため、多孔性細胞支持体が十分浸るよう1xPBSを入れて静かに振って洗い、1xPBSを除去した。それをもう一回繰り返して保存液を除去した。その後、多孔性細胞支持体に胃癌細胞株であるSNU017(KCLB)及び子宮頸癌細胞株であるSiHA(KCLB)を5x105cellsの数で播種した。その後、前記細胞が播種された多孔性細胞支持体を細胞培養液(RPMI、Gibco)で37℃、CO25%の条件でインキュベーターで培養した。
培養9日目及び培養14日目にパラフィンブロックを形成し、スライドに製作し、H&E染色を行い、組織検査を行い、その結果を図1及び図2に示した。
【0070】
図1に示したように、前記多孔性細胞支持体を利用してSNU017細胞株を9日間培養した結果、実際の身体内の組織にいるときと類似した球体の癌組織構造が形成され、培養されたことを確認した。
【0071】
また、図2に示したように、前記多孔性細胞支持体を利用してSiHA細胞株を14日間培養した結果、実際の身体内の組織にいるときと類似した柵状組織形態の癌組織構造が形成され、培養されたことを確認した。
【0072】
実験例2 多孔性細胞支持体を利用した軟骨細胞の3次元培養
軟骨細胞は、一般的に体外培養が難しいことが知られている細胞である。本実施例では、前記実施例1で製造した多孔性細胞支持体を利用して軟骨細胞を培養し、培養安定性及び持続性を確認した。
【0073】
具体的には、実際の患者から採取した軟骨細胞(hACs)を5x105cellsの数で播種したことを除いては、前記実験例1と同じ方法で、軟骨細胞を3次元培養した。
【0074】
その後、培養7日目に、3次元培養された軟骨細胞に対してLive and Dead Cell stainingを行った。その後、染色された細胞を共焦点レーザー顕微鏡(LSM880 with Airyscan、Zeiss)で確認し、その結果を図3に示した。図3で緑色は生きている細胞を意味し、赤色は死んだ細胞を示す。
図3のZ1~Z9は縦軸で高さ10μmごとの断面を蛍光撮影したものである。
【0075】
図3に示したように、一週間、赤色で表示される死んだ細胞が観察されず、安定的に培養されたことを観察することができる。一具体例による多孔性細胞支持体で培養された患者由来の軟骨細胞は、高い生存率を見せた。
【0076】
実験例3 多孔性細胞支持体を利用した腸管内分泌細胞の3次元培養
前記実施例1で製造した多孔性細胞支持体を利用して腸管内分泌細胞を培養し、培養安定性及び持続性を確認した。
【0077】
具体的には、マウスから採取した腸管内分泌細胞(Enteroendocrine Cell)を5x105cellsの数で播種したことを除いては、前記実験例1と同じ方法で腸管内分泌細胞を3次元培養した。
【0078】
その後、培養11日目及び13日目に、3次元培養された腸管内分泌細胞に対してDAPIとHematoxylin & Eosin(H&E)染色を行った。染色された細胞を蛍光顕微鏡(Axiovert 200、Zeiss)で確認し、その結果を図4に示した。
【0079】
図4に示したように、通常、腸管内分泌細胞は、一週間以上培養することは難しいが、一具体例による多孔性細胞支持体で培養された腸管内分泌細胞の3次元細胞集合体は、2週間以上細胞状態の低下なく安定的に培養されたことが分かった。
【0080】
以上の結果により、一具体例による多孔性細胞支持体は、細胞を安定的に及び継続的に培養できるだけでなく、細胞ごとに細胞の特性に合った培養パターンが観察されることが分かった。また、細胞培養ディッシュ及びプレートで培養する従来の2D培養方法でも長期間培養が可能な効果があることが分かった。
【0081】
実験例4 多孔性細胞支持体を利用した3次元細胞集合体の生着率
本実施例では、前記実施例1で製造した多孔性細胞支持体を組織再生治療に適用するため、腸管内分泌細胞の3次元細胞集合体の腎臓膜への生着率を測定した。
【0082】
具体的には、前記実施例3と同じ細胞を同じ方法で培養した後、ハミルトンシリンジでマウスの腎臓膜に移植した。移植一週間後、マウスを安楽死させた後、腎臓を分離、解剖し、残りの量を直接観察した。その後、移植された部分のみを切り離してその重量(wet weight)を測定し、生着された細胞数で生着率を確認、パラフィンブロックを形成し、スライドに製作し、H&E染色を行い、組織検査を行った。その結果を図5に示した。
【0083】
図5に示したように、2週間、FBSfreeで腸管内分泌細胞を一具体例による多孔性細胞支持体で培養し、得られた細胞体をマウスの腎臓膜に移植し、1週間培養した結果、約80%を超える生存率を確認した。
【0084】
通常、幹細胞を注入したときの生体内生着率が5%未満であることを考慮すると、一具体例による多孔性細胞支持体は、組織再生のための細胞治療に有効に使用できるということが分かる。
【0085】
実験例5 多孔性細胞支持体を利用した3次元細胞集合体の凍結融解試験
本実施例では、前記実施例1で製造した多孔性細胞支持体が組織再生治療の実用化に実際に使用されるため、製品化及び運搬が容易であるかを確認するために凍結融解実験を行った。
【0086】
具体的には、一具体例による多孔性細胞支持体に肺癌細胞株であるNCI-H28とNCI-H2170(KCLB)を5x105cellsの数で播種した後、28日間培養した。凍結保管はDeepfreezer-80℃で30日間freezing solution(Media:FBS:DMSO、5:4:1)で保管した後、融解して12日間培養した。その後、前記支持体で培養された細胞にH&E染色を行い、その結果を図6に示した。
図6に示したように、一具体例による多孔性細胞支持体は、凍結又は解凍されても細胞の再培養が可能であることを確認することができた。
こうした結果は、一具体例による多孔性細胞支持体が細胞治療剤としての製品化及び運搬に有利な効果を有することを意味する。
【0087】
実験例6 多孔性細胞支持体を利用した蛋白質の生産
前記実施例1で製造した多孔性細胞支持体を利用して有用物質(目的蛋白質)を生産できるかを分析するため、肝癌細胞の3次元細胞集合体に対する蛋白質生産能力を測定した。
【0088】
具体的には、24ウェルプレートでHepG2細胞を5x105cellsの数で播種した後、7日、14日及び21日間、MEM(10%FBS添加)培地培養した。その後、細胞培養液からアルブミンの濃度をHuman ALB solid-phase sandwich ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)の方法で測定した。対照群には、通常の2次元細胞培養方法を行った。2次元細胞培養は6 well plateで行った。また、陽性対照群は、Matrigel(Corning、356231)及びAlvetex(登録商標)(ReproCell社、Glasgow、UK)を使用した。具体的には、前記商業的に入手可能な3次元細胞培養支持体を使用したことを除いては、前記と同じ方法で細胞を培養した。前記対照群らの細胞培養液からアルブミンの濃度を測定し、その結果を図7に示した。
【0089】
図7に示したように、一具体例による多孔性細胞支持体の場合、陽性対照群であるMatrigel及びAlvetex(登録商標)を使用した場合より、肝癌細胞の活性化程度を示すアルブミンの発現量が高くなっていた。以上の結果は、一具体例による多孔性細胞支持体が目的物質(蛋白質)の生産に有効に使用できるということを意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-10-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離された血清又は血漿蛋白質水溶液を架橋剤で処理して血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を架橋結合した後、還元剤で還元し、収得した血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体。
【請求項2】
記血清由来蛋白質は、還元剤で還元した後、反応物を均質化して収得されたものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項3】
前記架橋剤は、デキストラン-ジアルデヒド(dextran dialdehyde)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1-ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimide hydrochloride)、ビニルアミン(vinylamine)、メタクリル酸2-アミノエチル(2-aminoethyl methacrylate)、3-アミノプロピルメタクリルアミド(3-aminopropyl methacrylamide)エチレンジアミン(ethylene diamine)、ジメタクリル酸エチレングリコール(ethylene glycol dimethacrylate)、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate)、N、N'-メチレンビスアクリルアミド(N,N′-methylene-bisacrylamide)、N,N'-メチレンビスメタクリルアミド(N,N′-methylenebis-methacrylamide)、ジアリルタルタルジアミド(diallyltartardiamide)、アリル(メタ)アクリレート(allyl(meth)acrylate)、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(lower alkylene glycol di(meth)acrylate)、低級ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(poly lower alkylene glycol di(meth)acrylate)、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート(lower alkylene di(meth)acrylate)、ジビニルエーテル(divinyl ether)、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリビニルベンゼン(trivinylbenzene)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(trimethylolpropane tri(meth)acrylate)、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート(pentaerythritol tetra(meth)acrylate)、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(bisphenol A di(meth)acrylate)、メチレンビス(メタ)アクリルアミド(methylenebis(meth)acrylamide)、トリアリルフタレート(triallyl phthalate)、ジアリルフタレート(diallyl phthalate)、アリルグリシジルエーテル(allyl glycidyl ether)、塩化アルキル(alkyl choloride)、トランスグルタミナーゼ(transglutaminase)、リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase)、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(protein disulfide-isomerase)、プロテインジスルフィドレダクターゼ(protein-disulfide reductase)、スルフヒドリルオキシダーゼ(sulfhydryl oxidase)、リポキシゲナーゼ(lipoxygenase)、ポリフェノールオキシダーゼ(polyphenol oxidase)、チロシナーゼ(tyrosinase)、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、ラッカーゼ(laccase)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項4】
前記還元剤は、ベータ-メルカプトエタノール(b-mercaptoethanol)、ジチオトレイトール(dithiothreitol:DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine: TCEP))、システイン(cysteine)、グルタチオン(glutathione)、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン(Tris(3-hydroxypropyl)phosphine :THPP))、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される一つである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項5】
前記多孔性細胞支持体の気孔のサイズは50~600μmである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項6】
前記多孔性細胞支持体は、1~10kPaの弾性率を持つものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項7】
前記多孔性細胞支持体は、ポロシティが10~80%であるものである請求項1に記載の多孔性細胞支持体。
【請求項8】
請求項1の多孔性細胞支持体;及び前記多孔性細胞支持体内に播種された細胞を含む組織修復又は再生用組成物。
【請求項9】
前記細胞は、軟骨細胞;繊維軟骨細胞;骨細胞;骨芽細胞;破骨細胞;滑膜細胞;骨髄細胞;神経細胞;脂肪細胞;間葉細胞;上皮細胞、肝細胞、筋肉細胞;間質細胞;血管細胞;幹細胞;胚性幹細胞;間葉系幹細胞;脂肪組織由来の前駆細胞;末梢血液前駆細胞;成体組織から単離された幹細胞;人工多能性幹細胞(iPS細胞);これらの細胞に由来する癌細胞;及びこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであるものである請求項に記載の組織修復又は再生用組成物。
【請求項10】
分離された血清又は血漿蛋白質水溶液を架橋剤で処理して血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を架橋結合するステップ;
架橋結合された血清又は血漿蛋白質水溶液内蛋白質を還元剤と反応させて、反応物を収得するステップ;及び
前記反応物を均質化し、血清由来蛋白質を収得するステップを含む血清由来蛋白質を含む多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項11】
前記血清由来蛋白質を熟成するステップを含むものである請求項10に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項12】
前記架橋剤は、2unit/mg~100unit/mgの比活性で処理されるものである請求項10に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項13】
前記還元剤は、5mM~50mMの濃度で処理されるものである請求項10に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項14】
前記反応物を均質化して血清由来蛋白質を収得するステップは、反応物を組織粉砕機で均質化した後、遠心分離して血清由来蛋白質の懸濁液を回収するステップを含むものである請求項10に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【請求項15】
前記血清由来蛋白質を熟成するステップは、血清由来蛋白質を洗浄するステップ;及び前記洗浄された血清由来蛋白質を1~15℃で熟成するステップを含むものである請求項11に記載の多孔性細胞支持体を製造する方法。
【国際調査報告】