(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵システムのための自動化されたエネルギー取引システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20220531BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559489
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 NO2020050082
(87)【国際公開番号】W WO2020197407
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438098
【氏名又は名称】ハガル・テクノロジー・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】HAGAL TECHNOLOGY AS
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】テーレセン,ケント
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
エネルギーを連続して自動的に取引するエネルギー貯蔵システムが開示される。システムは、電力バンク及び電力関係者を含む。電力バンクは、電力を購入及び販売する最適価格を計算し、これをブロードキャストする。電力関係者が、電力の購入又は販売を望むことを通信するとき、電力が転送される。システムにおける電力バンクの位置及び役割に関して、複数のシステム構成が提示される。エネルギー貯蔵システムとの自動化されたエネルギー取引の方法についても開示される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵システムであって、該エネルギー貯蔵システムは、
電力バンク(10)であって、
既知の要因、予測要因、高速応答要因、及び該電力バンク(10)の動作条件に基づいて、受容可能な最小販売価格及び受容可能な最大購入価格を計算する、価格計算装置(15)と、
購入及び販売された電力を貯蔵及び送信するバッテリバンク(17)と、
該電力バンク(10)の現在のエネルギー及び電力状態を測定及び/又は計算する、充電状態計算装置(11)と、
該電力バンク(10)に、及び該電力バンク(10)から電力を転送する電力転送装置(12)と、
該電力バンク(10)に、及び該電力バンク(10)から情報を通信するブロードキャスト装置(13)と、
少なくとも、前記充電状態計算装置(11)及び前記価格計算装置(15)からの情報に基づいて、前記電力転送装置(12)を通じて電力を転送するか又は受信するかの判定を行う判定装置(16)と、
を備える電力バンクと、
電力関係者(45)と、
を含み、
前記電力バンク(10)は、前記価格計算装置(15)によって決定された価格において自律的に、前記電力関係者(45)に対し電力を購入及び/又は販売することを特徴とする、エネルギー貯蔵システム。
【請求項2】
前記電力関係者(45)は、少なくとも1つの顧客(40)に電力を販売する電力供給者(30)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電力関係者(45)は、顧客(40)に電力を販売しないエンドユーザ(20)である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電力バンク(10)は、顧客(40)に電力を販売する、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記電力バンク(10)は、電力を販売しない、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電力バンク(10)はモバイルである、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記価格計算は、連続した方式で行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
エネルギー貯蔵システムとの自動化されたエネルギー取引の方法であって、該方法は、
A.電力バンク(10)を取得するステップであって、該電力バンクは、
該電力バンク(10)の現在のエネルギー及び電力状態を測定及び/又は計算する、充電状態計算装置(11)と、
該電力バンク(10)に、及び該電力バンク(10)から電力を転送する電力転送装置(12)と、
該電力バンク(10)に、及び該電力バンク(10)から情報を通信するブロードキャスト装置(13)と、
既知の要因、予測要因、高速応答要因、及び該電力バンク(10)の動作条件に基づいて、受容可能な最小販売価格及び受容可能な最大購入価格を計算する、価格計算装置(15)と、
購入及び販売された電力を貯蔵及び送信するバッテリバンク(17)と、
少なくとも、前記充電状態計算装置(11)及び前記価格計算装置(15)からの情報に基づいて、前記電力転送装置(12)を通じて電力を転送するか又は受信するかの判定を行う判定装置(16)と、
を備える、ステップと、
B.前記電力バンク(10)の貯蔵容量を計算するステップと、
C.前記電力バンク(10)が関与する、電力の購入及び販売の価格を計算するステップと、
D.前記電力バンク(10)から購入するのに利用可能な電力量及び前記販売価格をブロードキャストするステップと、
E.前記電力バンク(10)が購入することができる電力量及び前記購入価格をブロードキャストするステップと、
F.電力関係者(45)からオファーを受信するステップであって、オファーは、前記電力バンク(10)からの所与の価格において電力を購入又は販売するオファーである、ステップと、
G.前記オファーが前記電力バンク(10)に受容可能であるか否かを判定し、受容可能である場合、前記電力関係者(45)と前記電力バンク(10)との間で必要に応じて電力を転送するステップと、
H.ステップB~Gを自律的方式で繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記電力バンク(10)は、動作中に、該電力バンク(10)における消耗条件を計算するバッテリ消耗計算装置(14)を更に備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップFは、
F1.前記電力関係者(45)における電力需要を測定するステップと、
F2.前記電力関係者(45)によって貯蔵された現在の電力と、前記電力関係者(45)における電力需要との間の余剰を計算するステップと、
F3.前記電力関係者(45)における未来の電力需要を予測するステップと、
F4.前記余剰が、前記予測される未来の電力需要を満たすのに十分高いか否かを判断するステップと、
F4A.十分な余剰がない場合、前記電力バンク(10)からいくらかの電力を購入することをオファーするステップと、
を更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
ステップF4は、F4B.十分な余剰がある場合、前記余剰電力のうちのいくらかを前記電力バンク(10)に販売することをオファーするステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電力バンク(10)は送電網に接続される、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電力バンク(10)は、複数の顧客(40)に販売している、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記価格の計算は継続的に行われる、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記電力バンク(10)は、前記電力関係者(45)からのみ電力を購入する、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ステップGは、G1:前記電力関係者(45)と前記電力バンク(10)との間で電力が転送されている間、受容可能な料金である場合、電力の購入を継続するステップを更に含む、請求項8~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップFとステップGとの間にステップF’を更に含み、該ステップF’において、前記電力バンク(10)は、他の電力関係者(45)との電力の購入及び販売のオファーのブロードキャストを継続する、請求項8~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、エネルギー取引システムに関し、より詳細には、エネルギー貯蔵システム、及びエネルギー貯蔵システムを用いた自動化されたエネルギー取引の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気では、通例、生成と消費との間に厳密なバランスが存在する。なぜなら、電気は容易に貯蔵されないためである。電気市場における慣例は、前の24時間の期間のビッド、オファー、及び送電網(grid)容量に基づいて価格が1時間ごとに決定されるというものである。これは多くの場合、「1日前市場」と呼ばれる。多くの場所(例えば、EU)において、市場参加者は、次の24時間について1時間ごとにビッド及びオファーを行うことができ、予め送電網容量を予約する必要がない。
【0003】
1日前市場に加えて、当日市場も存在する。これらの市場では、ビッド及びオファーは、次の1時間の電力について行われる。条件及び予測電力消費が、24時間前に予測されたものに対し変化している場合、これが必要である。特定の時間内に発生するイベントに起因した生成及び消費のバランスを取るために、バランシング市場が用いられる。価格は多くの場合、手動で又は低速で計算される。これは、会社にとっては、潜在的な利益の損失につながり、顧客にとっては、より高い価格につながる。
【0004】
送電網(power grid)は、場所によっては、非常に限られているか、又は完全に存在しない可能性がある。これらのエリアに電力を供給することは、時間及び金銭の多大な投資となる可能性がある。したがって、居住者が少なく、需要が限られたエリア、到達困難なエリア、及び/又は一時的な需要しかない多くのエリアは、しばしば無視される。また、大きな初期費用を伴うことなく電力市場に参入することは非常に困難である。
【0005】
現代の電力市場において、再生可能エネルギーは、環境及び顧客の双方にとって非常に重要である。いくつかの国及び領域は、グリーンエネルギーに税控除を与えている。しかしながら、電気の価格は、時間ごとに大幅に変動する。この変動は、需要に基づいて部分的に予測可能であり、天候に基づいて部分的に予測不可能である。
【0006】
グリーンエネルギーは、どこにおいても送電網に達していない。これには多くの要因がある。それらのうちのいくつかは、インフラ要件、電力会社が販売されているエネルギーのタイプに対し専売権を有すること、電力会社が他の供給者から信頼性のある方式でグリーンエネルギーを得ることが困難であること、及び電力供給者からの非効率な価格設定戦略である。
【0007】
例えば、水力発電所では、価格が有益であるとみなされるときに、需要に応じて電力が生成されることが一般的である。従来、これは手動のプロセスであり、長期契約に基づく。これは、グリーンエネルギーの取引を非効率なプロセスにする可能性がある。
【0008】
電気料金管理システムが特許文献1から既知である。これは、バッテリが再生可能エネルギー発電施設において提供される、4つの別個の当事者を含むシステムを開示している。バッテリは、再生可能エネルギーから生成された余剰電気を貯蔵するために用いられ、ここで、貯蔵エネルギーは、再生可能エネルギーから生じたものとみなすことができる。
【0009】
再充電可能リチウムイオンバッテリの劣化を判断するシステム及び方法が特許文献2から既知である。これは、正極の容量比、負極の容量比、及びバッテリの逸脱した容量を取得するために、バッテリの容量が変動する際に、バッテリの開回路電圧がどのように変動するかを示す再充電可能リチウムイオンバッテリの開回路電圧特性に基づいた劣化診断について開示している。
【0010】
したがって、上述した問題を克服する方法及びシステムが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第2806393号
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0076363号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、エネルギー貯蔵システムのエネルギーを自動的に取引する方法を提供することである。本発明の目的は、モバイル電力バンクを用いてエネルギーを自動的に取引することである。本発明の別の目的は、顧客及び卸売電力供給者の双方へのグリーンエネルギーの導入を容易にすることである。
【0013】
本発明が解決する他の問題は、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、エネルギー貯蔵システムであって、該エネルギー貯蔵システムは、
電力バンクであって、
既知の要因、予測要因、高速応答要因、及び該電力バンクの動作条件に基づいて、受容可能な最小販売価格及び受容可能な最大購入価格を計算する、価格計算装置と、
購入及び販売された電力を貯蔵及び送信するバッテリバンクと、
該電力バンクの現在のエネルギー及び電力状態を測定及び/又は計算する、充電状態計算装置と、
該電力バンクに、及び該電力バンクから電力を転送する電力転送装置と、
該電力バンクに、及び該電力バンクから情報を通信するブロードキャスト装置と、
少なくとも、前記充電状態計算装置及び前記価格計算装置からの情報に基づいて、前記電力転送装置を通じて電力を転送するか又は受信するかの判定を行う判定装置と、
を備える、電力バンクと、
電力関係者と、
を含み、
前記電力バンクは、前記価格計算装置によって決定された価格において自律的に、前記電力関係者に対し電力を購入及び/又は販売する、エネルギー貯蔵システムに関する。
【0015】
第1の態様の実施の形態において、前記電力関係者は、少なくとも1つの顧客に電力を販売する電力供給者である。
【0016】
第1の態様の実施の形態において、前記電力関係者は、顧客に電力を販売しないエンドユーザである。
【0017】
第1の態様の実施の形態において、前記電力バンクは、顧客に電力を販売する。
【0018】
第1の態様の実施の形態において、前記電力バンクは、電力を販売しない。
【0019】
第1の態様の実施の形態において、前記電力バンクはモバイルである。
【0020】
第1の態様の実施の形態において、前記価格の計算は、継続的に行われる。
【0021】
第2の態様において、本発明は、エネルギー貯蔵システムとの自動化されたエネルギー取引の方法であって、該方法は、
A.電力バンクを取得するステップであって、該電力バンクは、
該電力バンクの現在のエネルギー及び電力状態を測定及び/又は計算する、充電状態計算装置と、
該電力バンクに、及び該電力バンクから電力を転送する電力転送装置と、
該電力バンクに、及び該電力バンクから情報を通信するブロードキャスト装置と、
既知の要因、予測要因、高速応答要因、及び該電力バンクの動作条件に基づいて、受容可能な最小販売価格及び受容可能な最大購入価格を計算する、価格計算装置と、
購入及び販売された電力を貯蔵及び送信するバッテリバンクと、
少なくとも、前記充電状態計算装置及び前記価格計算装置からの情報に基づいて、前記電力転送装置を通じて電力を転送するか又は受信するかの判定を行う判定装置と、
を備える、ステップと、
B.前記電力バンクの貯蔵容量を計算するステップと、
C.前記電力バンクが関与する、電力の購入及び販売の価格を計算するステップと、
D.前記電力バンクから購入するのに利用可能な電力量及び前記販売価格をブロードキャストするステップと、
E.前記電力バンクが購入することができる電力量及び前記購入価格をブロードキャストするステップと、
F.電力関係者からオファーを受信するステップであって、一オファーは、前記電力バンクからの所与の価格において電力を購入又は販売するオファーである、ステップと、
G.前記オファーが前記電力バンクに受容可能であるか否かを判定し、受容可能である場合、前記電力関係者と前記電力バンクとの間で必要に応じて電力を転送するステップと、
H.ステップB~Gを自律的方式で繰り返すステップと、
を含む、方法に関する。
【0022】
第2の態様の実施の形態において、前記電力バンクは、動作中に、該電力バンクにおける消耗条件を計算するバッテリ消耗計算装置を更に備える。
【0023】
第2の態様の実施の形態において、ステップFは、
F1.前記電力関係者における電力需要を測定するステップと、
F2.前記電力関係者によって貯蔵された現在の電力と、前記電力関係者における電力需要との間の余剰を計算するステップと、
F3.前記電力関係者における未来の電力需要を予測するステップと、
F4.前記余剰が、前記予測される未来の電力需要を満たすのに十分高いか否かを判断するステップと、
F4A.十分な余剰がない場合、前記電力バンクからいくらかの電力を購入することをオファーするステップと、
を更に含む。
【0024】
第2の態様の実施の形態において、ステップF4は、F4B.十分な余剰がある場合、前記余剰電力のうちのいくらかを前記電力バンクに販売することをオファーするステップを更に含む。
【0025】
第2の態様の実施の形態において、前記電力バンクは送電網に接続される。
【0026】
第2の態様の実施の形態において、前記電力バンクは、複数の顧客に販売している。
【0027】
第2の態様の実施の形態において、前記価格計算は継続的に行われる。
【0028】
第2の態様の実施の形態において、前記電力バンクは、前記電力関係者からのみ電力を購入する。
【0029】
第2の態様の実施の形態において、ステップGは、G1:前記電力関係者と前記電力バンクとの間で電力が転送されている間、受容可能な料金である場合、電力の購入を継続するステップを更に含む。
【0030】
第2の態様の実施の形態において、本発明は、ステップFとステップGとの間にステップF’を更に含み、該ステップF’において、前記電力バンクは、他の電力関係者との電力の購入及び販売のオファーのブロードキャストを継続する。
【0031】
本発明の上記の特徴及び更なる特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に示される。添付の図面を参照して与えられる本発明の例示的な実施形態の以下の説明の検討から、その利点と共により明らかとなる。
【0032】
本発明は、参照符号と共に、例示的な実施形態に関連して以下で更に説明され、これらの実施形態は図面において概略的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の複数の実施形態を開示する図である。
【
図2】電力バンクの構成要素の概略図を開示する図である。
【
図3A】構成Aにおける本発明の実施形態のプロセス図を開示する図である。
【
図3B】構成Aにおける本発明の代替的な実施形態のプロセス図を開示する図である。
【
図3C】電力販売のオファーをしている間に電力を購入するためのプロセス図を開示する図である。
【
図3D】電力の送達中に電力を購入するためのプロセス図を開示する図である。
【
図4】構成Bにおける本発明の実施形態のプロセス図を開示する図である。
【
図5】構成Cにおける本発明の実施形態のプロセス図を開示する図である。
【
図6】構成Dにおける本発明の実施形態のプロセス図を開示する図である。
【
図7】構成Eにおける本発明の実施形態のプロセス図を開示する図である。
【
図8】構成Fにおける本発明の実施形態のプロセス図を開示する図である。
【
図9】電力バンクが電力を購入及び販売する方式のプロセス図を開示する図である。
【
図10】システムの方法の一般的な概観を示すプロセス図を開示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の様々な態様が、添付の図面を参照して以下でより詳しく説明される。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態において具現化することができ、本開示全体を通じて提示されるいかなる特定の構造又は機能にも限定されるものと解釈されるべきでない。むしろ、これらの態様は、本開示が綿密かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。本明細書における教示に基づいて、当業者は、本開示の範囲が、本明細書に開示された開示の任意の態様を、これが本開示の任意の他の態様と独立して実施されようと、組み合わせて実施されようと、包含することが意図されることを認識すべきである。例えば、本明細書に示す任意の数の態様を用いて装置を実施することができるか又は方法を実行することができる。加えて、本開示の範囲は、本明細書に示す開示の様々な態様に加えて、又はそれ以外の、他の構造、機能又は構造及び機能を用いて実施される装置又は方法を包含することが意図される。本明細書に開示される本開示の任意の態様は、特許請求項の1つ以上の要素によって具現化され得ることが理解されるべきである。
【0035】
本発明は、モバイル電力バンクを介したエネルギー取引を、自動的で有益なものにする。送電網における市場運営者は、この能力を利用して、ピーク需要中の送電網のバランスを取るか、又は異なる時間に電力を購入及び販売することができる。システムは、送電網に対し有する接続について短絡電流を自動的に計算し、送電網に対するバッテリの放電率を制限している場合、これを考慮するようにエネルギーフローを制限する。
【0036】
図1を参照する。
図1は、本発明の電力バンク10をどのように用いることができるかの複数のシステム構成を開示する。電力バンク10は、
図2に示す(後に説明する)複数の要素を含む装置である。構成Aは、電力バンク10がエンドユーザ20に電力を供給しているときのものである。構成Bにおいて、電力バンク10は、エンドユーザ20に対する電力の購入及び販売の双方を行っている。構成Bがエンドユーザ20からの購入に用いられ、そのエンドユーザ20への販売に用いられないことが可能であることに留意されたい。構成Cにおいて、電力バンク10は、電力供給者30に対し電力を購入及び販売しており、次に電力供給者30が顧客40に電力を販売している。構成Dにおいて、電力バンク10は、電力供給者30から購入し、自身の貯蔵された電力を消費している。構成Eは、電力バンク10が顧客40に直接販売する場合を示す。構成Fは、電力バンク10が電力供給者30に販売し、次に電力供給者30が更に顧客40に販売する場合を示す。
【0037】
電力バンク10がモバイルであることが好ましい。送電網は、場所によっては、非常に限られているか、又は全く存在しない可能性があり、電力バンク10の移動性は、そのようなハードルを突破してエネルギーの容易な輸送を可能にする。モバイルとは、電力バンク10が可搬であることを意味する。これらの電力バンク10は、動作時に必要とされる電力需要に供給するために大きくなり得るが、依然として、単体として可搬であるか、又はいくつかの構成要素に分割することができる。これは、電力の生成及び転送に関連付けられた大量のインフラを有する発電所等の電力供給者30と異なる。
【0038】
エンドユーザ20は、電力バンク10が関与する電力の購入及び販売に直接関与する電力消費者である。エンドユーザ20は、別のエンドユーザ20に更に電力を販売することはせず、通常、電力の少なくとも一部分を自身で消費する。電力供給者30は、電力を顧客40に更に販売する。エンドユーザ20、電力供給者30、及び顧客40の定義は、システムにおける電力バンクの位置からのものである。「電力関係者(power participant)」45という用語は、エンドユーザ20と電力供給者30との間に区別がなされない場合に用いられる。一般的な事例において、ユーザ20及び電力供給者30の双方が、電力バンク10との間で電力の受信及び/又は転送の双方を行う。
【0039】
図1は、電力バンク10からの1つの分離度しか存在しない構成のみをカバーしていることに留意されたい。様々な分離度が検討されるとき、多くの他の可能性が存在する。例えば、構成Aにおいて、エンドユーザ20は、電力バンク10に供給するために別の電力供給者30から(後に又は同時に)更なる電力を購入することもできる。別の例では、このとき、構成Bのエンドユーザ20が、顧客グループのための電力バンク10を有する電力供給者30になり得るというものである。このとき、新たな電力バンク10は、システム構成Eにある。
【0040】
これらは、システムの電力バンク10からの第2の分離度を有する電力バンク10を用いる構成の例示的な実施例である。当業者であれば、これらの構成をいくつかの相互に関連する構成に容易に拡張することができるであろう。当業者によって導出又は拡張することができる電力バンク10の実施形態も存在する。
【0041】
システム全体が単一の構成で構成されている必要がないことが重要である。システムは、同じ電力バンク10において、同時に異なる複数の構成を含むことができる。例えば電力バンク10は、構成Aにおけるようにエンドユーザ20に電力を販売しながら、構成Fにおけるように、電力供給者30に電力を販売し、これを電力供給者30が顧客40に販売し、構成Cにおけるように、電力供給者30が関与する電力の購入及び販売を行う。
【0042】
システムは、自律モードにおいて、全ての変数、市場データ予測、及び天候予報の現在の診断に基づいて、取引及び購入を行うことができる。顧客は、電力供給の発注をすることができ、システムは取引変数を自動的に更新する。
【0043】
図2を参照する。
図2は、電力バンク10の構成要素の概略図を開示する。好ましい実施形態において、当該装置は、充電状態計算装置11、電力転送装置12、ブロードキャスト装置13、バッテリ消耗計算装置14、価格計算装置15、判定装置16及びバッテリバンク17の構成要素を備える。好ましくは、電力バンク10は、自律的かつ継続的に用いられる。これにより、利益が最大限になること、及び電力市場の急速な変化に対する応答が可能になる。
【0044】
充電状態計算装置11は、電力バンク10の現在のエネルギー及び電力状態を測定及び/又は計算するためのものである。これは通常、バッテリバンク17を測定することによって行われる。当該装置は、周囲温度、セル温度、サイクル充電又は放電深度、放電速度、セルの使用履歴及び各個々のセルの健全性も測定する。当該装置は、送電網を測定し、送電網における局所的エリアにおける短絡電流を推定することもできる。
【0045】
電力転送装置12は、電力バンク10に、及び電力バンク10から電力を転送するためのものである。電力転送装置12は、電力の受信及び複数の場所への送信を同時に行うことができるように構成される。電力転送装置12は、送電網に接続することもできるし、接続しないこともできるし、何らかの形で双方とすることもできる。当業者であれば、必要に応じて、動作上の需要に必要な調節及び寸法設定を行うことができる。
【0046】
ブロードキャスト装置13は、システムの他の部分との間で情報を送受信するためのものである。例えば、バッテリバンク17は、ブロードキャスト装置13を用いて、システムの別の部分に対し、電力の購入を望むこと、及びどのような価格で望むかを通信することができる。これは、複数の方法を通じて行うことができる。
【0047】
バッテリ消耗計算装置14は、バッテリが充電を保持する能力に影響を及ぼす条件を考慮に入れることになる。1つの要因は、充電/放電サイクルがバッテリを或る程度劣化させることである。バッテリ消耗計算装置14は、温度、天候、システム負荷スパイク、及び他の既知の要因等の動作条件がバッテリの性能を変化させることも考慮に入れる。これは、試験充電を使用した直接測定、又は同じ量の充電がシステム若しくは電力バンク10においてどれだけ長く持つかを測定することによって行うことができる。加えて、動作負荷、ユーザ20及び電力供給者30の数、天候、事故、並びにバッテリ性能に影響を与える可能性がある他の要因等の特徴を考慮に入れるモデルを用いることができる。モデル及び測定の組み合わせを用いることも可能である。
【0048】
価格計算装置15は、電力を購入及び販売する最適価格を計算するためのものである。これは、利益を最大にするために重要である。価格計算装置15は、電力バンク10が電力を購入すべき最大価格、及び電力を販売すべき最小価格を計算する。換言すれば、価格計算装置15は、電力を購入及び販売するためにどの価格が受容可能であるかを決定する。
【0049】
複数の要因を考慮に入れることができる。例えば、価格は、既知の要因、予測要因、及び高速応答要因と共に変動する。既知の要因は、電力を送達し、電力を受信するための固定契約を含む可能性がある。
【0050】
予測要因は、変化する条件を予測することに関連付けられた要因である。これは、電力を顧客40に供給するために電力供給者30がどれだけの容量を必要とするかに関する履歴データを調べることを含むことができる。加えて、天候等の要因が重要である。例えば、寒いとき、価格計算装置15は電力需要の増大を予測する。晴れた暖かい日には、太陽光発電所がより多くの電力を生成し、風の強い日には、風力発電所がより多くの電力を生成する。風の速度を予測することによって、強風時に風力発電所が閉鎖する必要があるか否かを予測することが可能である。データ、例えば天候は、電力バンク10自体で予測することができるか、又はローカルで若しくは現場外から通信することができる。
【0051】
また、価格計算装置15は、接続されている送電網の容量、並びにその時点における価格及び送電網負荷等の全ての市場変数を評価し、任意の時点又は時間の長さにおいて、容量を予約又は使用するためのコストを指定する、自動容量オファーを作成する。
【0052】
高速応答要因は、市場における短期の又は突然の変化に関連する要因である。例えば、送電網に対する或る電力供給者30の接続が突然中断された場合、同じ会社の全ての電力供給者30が負荷のバランスアップを試みるため、これらの電力供給者にこの中断が広まる可能性がある。その場合、価格計算装置は、需要の増大を考慮するように価格を調整する。
【0053】
価格計算装置は、充電状態計算装置11及び/又はバッテリ消耗計算装置14からの、バッテリの状態に関する情報も含むことができる。
【0054】
計算された価格は、電力関係者45ごとに同じである必要がない。この価格は、契約、電力関係者45のロケーション、電力バンク10と電力関係者45との間の条件及び市場力の変動に基づく要因、送電網の使用料金、及び他のコストによって変更することができる。
【0055】
判定装置16は、システムからの(多くの場合、ブロードキャスト装置13からの)情報を処理し、電力バンク10の要素内から、充電状態計算装置11、バッテリ消耗計算装置14、及び/又は価格計算装置15からの情報を評価することになる。次に、判定装置は、電力転送装置12を通じて電力を転送するか又は受信するかの判定を行う。判定装置16は、中でも、販売するのに十分な電力が存在するか否か、電力バンク10が電力コミットメントを満たすのに十分な電力を有するか否か、電力関係者45から購入した方が良いか又は電力関係者45に販売した方が良いかの判定、及び電力バンク10が行わなくてはならない他の判定を行うことができる。
【0056】
判定装置16が、2つ以上のステップにおいて必要とされる判定を行うことが可能である。判定装置が、電力を購入するか又は販売するかをまず判定し、次に、そのための最良の価格を設定することも可能である。この判定装置16は、ユーザが指定した動作を有するソフトウェア又はハードウェアとすることができる。判定装置16は、AI、機械学習、適応AI、又はシステムが過去の性能及び/又は予測される未来の性能に基づいて学習及び適応を継続する他の方法も用いることができる。
【0057】
バッテリバンク17は、購入及び販売された電力を貯蔵及び送信することになる。バッテリバンク17は、大きいサイズ又は小さいサイズのバッテリの大きな集合体又は小さな集合体を指すことができる。バッテリバンク17は、異なる種類の化学的性質とすることができる。加えて、スーパーキャパシタ又は他の電力貯蔵方法も用いられ得る。電力バンク10は、2つ以上のタイプのバッテリを含むことができる。船舶及び電気自動車用のバッテリ等の中古バッテリ(second hand battery)もバッテリバンク17の一部として用いることができる。
【0058】
実施形態は、互いに独立して各構成要素のうちの1つ以上から構成することができる。例えば、2つ以上のバッテリバンク17を用いる実施形態を有することが可能である。各バッテリ上に個々の充電状態計算装置11及び/又はバッテリ消耗計算装置が存在する実施形態が可能である。当業者であれば、構成要素のうちの少なくともいくつかを含む本発明の変形例を構築することが可能である。
【0059】
上述した要素のうちのいくつかを組み合わせて単一の構成要素にすることが可能である。例えば、バッテリ消耗計算装置14、充電状態計算装置11、価格計算装置15及び判定装置16を組み合わせて単一の装置にすることができる。
【0060】
電力バンク10は、その時点における変数に基づいて、頻繁な計算を用いて自律的に機能することが意図されることに留意されたい。これは好ましくは、1秒未満、最も好ましくは0.02秒未満で行われる。しかしながら、電力バンク10の構成要素を動作させるコストに応じて、更新の間でより長い休止を用いてこれらの構成要素を動作させることがより有益である場合がある。
【0061】
好ましい実施形態において、電力バンク10は、充電状態計算装置11、電力転送装置12、ブロードキャスト装置13、バッテリ消耗計算装置14、価格計算装置15、判定装置16及びバッテリバンク17を備える。しかしながら、これらの要素のうちのいくつかは必要でない場合がある。例えば、バッテリ消耗計算装置14を省くことができる。
【0062】
これらの構成要素のそれぞれは、ソフトウェア、ハードウェア、又は2つの組合せとすることができる。これらの要素は、電力バンク10の分離された部分、又は一体型構成要素とすることができる。
【0063】
図3A~
図9は、A~Fのシステム構成に関連付けられたプロセスを開示する。上記の
図2の説明において、電力バンク10の各要素の機能が論じられた。
【0064】
バッテリのバッテリ状態は、
図3A~
図9に開示されるプロセスのほとんどに関与する。このプロセスは、電力バンク10の状態に関係するステータス及びパラメータを得る。例えば、充電状態は、充電状態計算装置11によって計算することができ、及び/又はバッテリ消耗計算装置14は、バッテリ消耗に関連付けられたパラメータを計算することができる。
【0065】
例えば、
図3Aにおいて、バッテリのバッテリ状態が計算される。判定装置16は、販売するのに十分な電力があるか否かを判定する。次に、価格計算装置15は、最良の販売価格を計算し、ブロードキャスト装置13を用いて、これを購入希望者にブロードキャストする。購入者が見つかると、電力転送装置12は、合意された価格で電力を転送し、次に、バッテリ状態の計算についてプロセスが再び開始する。判定装置16が、販売するのに十分な電力がないと判定した場合、ブロードキャスト装置を用いて、電力の購入を望むことをブロードキャストすることができる。次に、電力転送装置12を用いて電力が電力バンク10に転送される。
【0066】
図3Aを参照する。
図3Aは、構成Aのように、電力バンク10が電力関係者45(この例ではエンドユーザ20)に電力を供給しているときのプロセス図を開示する。ここでのエンドユーザ20は、電力バンク10に電力を戻して販売することがない。エンドユーザ20が電力バンク10に電力を戻して販売することができるのは構成Bである。
【0067】
電力バンク10は、充電状態、及び任意選択でバッテリ消耗量を用いて、バッテリ状態を計算する。電力バンク10が販売するのに十分な電力を有する場合、可能な限り最も良好な電力販売価格を計算し、ブロードキャストする。電力が電力関係者45(構成Aにおけるエンドユーザ20)によって購入されると、システムは、バッテリ状態の計算に戻り、プロセスが再び開始する。
【0068】
図3Bを参照する。
図3Bは、電力バンク10がエンドユーザ20に電力を供給しているとき(構成A)の代替的な実施形態のプロセス図を開示する。
図3Aでは、バッテリ10は、システムが販売するのに十分な電力を有していない状態になるまで、電力を購入しなかった。
図3Bは、電力バンク10の電力が購入されるときを変更することによって、より有益な動作をもたらす(50)。このプロセスはまた、電力の送達が終了するまで待ってから更なる電力を購入するのではなく、電力が送達されている間に所望の価格での購入電力を探し続ける(51)ため、より有益である。
図3Bに示した、電力の転送中に電力を購入するプロセス51は、プロセスが、電力転送が始動されるときにのみ開始することが示される実施形態であることに留意されたい。
【0069】
図3Cを参照する。
図3Cは、電力販売のオファーをしながら電力を購入する(50)ためのプロセス図を開示する。販売するのに十分な電力があると判断された後、電力の購入及び販売の最適な価格が決定される。電力の購入価格が十分低い場合、システムは電力を購入するとともに、電力販売のオファーを継続する。
【0070】
販売するのに十分な電力を有するときであっても低価格での購入電力を探す(50)このプロセスは、
図1において説明した全ての構成の動作に含めることができる。当業者であれば、必要に応じてこれらを調整することができる。
【0071】
図3Dを参照する。
図3Dは、電力の送達中に電力を購入する(51)ためのプロセス図を開示する。電力の転送は、転送速度、及び転送されている電力量等の動作条件に依拠して時間がかかる可能性がある。
図3Bに示すものと異なり、電力を転送するときに電力を購入するプロセス51は、電力転送全体の間に継続して生じることが示される。これは、転送が開始するときに限定されない。これは、電力転送が行われているときの全てのシステムの好ましい実施形態である。
【0072】
図3Dに示すプロセス51は、電力転送が完了する前に電力を販売する可能性を広げる。例えば、2つの異なる電力関係者45A及び45Bが存在し、第1の電力関係者45Aが、転送に時間を要する電力を購入する場合、電力バンク10は、購入量全体を貯蔵バンク17に貯蔵しておく必要がない。電力バンク10は、電力バンク10に貯蔵されている総電力が、第1の電力関係者45Aが購入した電力量未満である場合であっても、電力バンク10が電力転送中に更なる電力を購入する(51)ことができる限り、いくらかの電力を第2の電力関係者45Bに販売することができる。
【0073】
図4を参照する。
図4は、電力バンク10が電力関係者45(例えば、エンドユーザ20)に対する電力の購入及び販売の双方を行っているシステム構成Bのプロセス図を開示する。電力バンク10がエンドユーザ20から電力を購入するが、エンドユーザ20に販売しないことが可能であることに留意されたい。
【0074】
このプロセスにおいて、電力バンク10は、バッテリ状態、及び電力を購入又は販売する最適価格を計算する。次に、これはエンドユーザ20にブロードキャストされる。これらの状態が適合し得る(例えば、エンドユーザ20が、電力バンク10が販売したい価格で電力を購入したい)と判定される場合、電力が販売者から購入者に転送される。
【0075】
図5を参照する。
図5は、電力バンク10が電力関係者45に対する電力の購入及び販売を行っている場合(構成C)のプロセス図を開示する。この例において、電力関係者45は電力供給者30であるが、エンドユーザ20が代わりに機能してもよい。電力供給者30は、電力を顧客40に販売している。
【0076】
このプロセスの例において、電力供給者30は、どれだけの余剰電力を有しているかを知るために、現在の電力出力を測定し、未来の電力出力を予測する。電力供給者30は顧客の需要を満たすのに十分な余剰電力を有する場合、これを所望に応じて(電力バンク10が価格に満足していると仮定して)電力バンク10に販売することができる。電力供給者30は、需要を満たすのに十分な電力を有していない場合、電力バンク10から電力を購入することができる。これにより、電力バンク10が電力供給者30の負荷のバランスを取ることが可能になる。
【0077】
図5は、電力供給者30が、顧客40に供給する十分な電力を有してプロセスを開始することを示すことに留意されたい。これに当てはまらない場合、電力供給者30は、(
図5の下部に示す最後のプロセスのように)電力バンク10から電力を購入することができる。
【0078】
図6を参照する。
図6は、電力バンク10が電力供給者30から購入し、自身の貯蔵された電力を消費している(構成D)プロセス図を開示する。電力の転送は、電力関係者45から電力バンク10への転送のみである。この利点は、電力バンク10が最も良好な電力価格を可能にすることである。電力バンク10は、電力の市場価格が受容可能であるときに電力供給者30(又はエンドユーザ20)から電力を購入することができる。
【0079】
このプロセスにおいて、電力バンク10は、バッテリ状態、及び受容可能な電力購入価格を決定する。電力バンク10は、需要を満たすのに十分な電力を有していない場合、電力供給者30又はエンドユーザ20から電力を購入することになる。電力バンク10は、十分な電力を有している場合も依然として、電力購入価格が受容可能であるか否かをチェックする。受容可能である場合、電力バンク10は電力を購入することを決める。
【0080】
図7を参照する。
図7は、電力バンク10が顧客40に直接販売する場合(構成E)のプロセス図を開示する。
【0081】
このシステム構成において、電力バンク10は、バッテリ状態を計算し、顧客40の電力需要を満たすことができるか否かを判定する。満たすことができる場合、電力は顧客40に転送される。満たすことができない場合、電力バンク10は、電力関係者45(電力供給者30及び/又はエンドユーザ20)から購入する必要がある。
【0082】
図7は、電力バンク10が電力を顧客40に供給することができないときにのみ新たな電力が購入されることを示しているが、電力の価格が常に監視され、電力バンクの受容可能な電力価格と比較される(50)場合、より有益である。この一例が
図3Bにおいて説明された。
【0083】
図8を参照する。
図8は、電力バンク10が電力供給者30に販売し、次に電力供給者30が更に顧客40に販売する場合(構成F)のプロセス図を開示する。これは、電力バンク10が電力供給者30から電力を購入していない点を除いて、システム構成Cにおけるものと同じである(
図5及び付随する説明を参照)。
【0084】
このプロセスの例において、電力供給者30は、どれだけの余剰電力を有しているかを知るために、現在の電力出力を測定し、未来の電力出力を予測する。電力供給者30が顧客の需要を満たすのに十分な余剰電力を有する場合、電力供給者30は、電力バンク10とインタラクトする必要がない。しかしながら、電力供給者30が十分な電力を有しない場合、電力バンク10は電力を電力供給者に販売する。
【0085】
図9を参照する。
図9は、電力バンク10が電力を購入及び販売する非限定的な例のプロセス図を開示する。電力バンク10のバッテリ状態がまず判断される。次に、電力を購入及び販売する最適価格を決定することができる。電力バンク10は、電力を購入及び販売することを望む価格をブロードキャストする。受容可能な購入又は販売価格をオファーする電力関係者45が見つかった場合、システムは判定を行い、電力を転送する。
【0086】
図10を参照する。
図10は、システムの方法の一般的な概観を示すプロセス図を開示する。バッテリ状態は、(販売に利用可能であるか、又は購入し貯蔵することができる)電力量、並びに電力の購入及び販売の価格と同様に計算される。電力関係者45は、いずれの種類の電力転送に関心があるか(購入又は販売)、及び関連付けられた価格をブロードキャストする。電力バンクがこれを受容可能とした場合、取引が生じる。受容可能でない場合、価格が再計算及び再ブロードキャストされる。構成A~Fは、この具体的な実施形態である。
【0087】
プロセス図は例示の目的のものであることに留意されたい。いくつかの例において、システムの需要及び動作条件に依拠して、プロセスの順序は変更することができるか、又は新たなプロセスを追加することができる。この1つの例は、
図3Bに示すルーチン50である。別の例は、構成Cのプロセス図(
図5)において、電力供給者が、販売するのに十分な電力があるか否かを判定した後、電力バンクが、価格が受容可能であるか否かをチェックすることができるというものである。受容可能でない場合、電力バンクは単に販売を拒否する。別の例は、構成Eのプロセス図(
図7)において、顧客の需要を満たすのに十分な電力が存在する場合、電力の価格が、需要を満たすのに十分な電力が存在するにもかかわらず更なる電力を購入することを有益にするのに十分低いか否かをチェックすることが可能であるというものである。
【0088】
可能な場合、電力バンク10は、価格が最適価格以下であるときにのみ電力を購入する。これに対応して、電力バンク10は、価格が最適価格以上であるときにのみ電力を販売する。これは必ずしも常に可能でない場合がある。例えば、電力バンク10の義務を果たすために、電力が購入される必要があるときである。別の事例は、更なる電力を購入するために資金が必要とされる場合である。加えて、電力バンク10が、電力価格における大幅な下落があることを予測し、可能な限り安価な電力で「充填する」ために大量の電力を販売することを望む場合である。
【0089】
「~のステップ」は、「~のためのステップ」として解釈されないことに留意されたい。「から構成される」、「含む」、「備える」等の用語は、開いた集合を指し、「からなる」という用語は閉じた集合を指している。
【符号の説明】
【0090】
10 電力バンク
11 充電状態計算装置
12 電力転送装置
13 ブロードキャスト装置
14 バッテリ消耗計算装置
15 価格計算装置
16 判定装置
17 バッテリバンク
20 エンドユーザ
30 電力供給者
40 顧客
45 電力関係者
50 電力を販売しながら電力を購入するためのプロセス
51 電力の送達中に電力を購入するためのプロセス
A 電力バンクがエンドユーザに販売するシステム
B 電力バンクがエンドユーザに対して購入及び販売するシステム
C 電力バンクが電力供給者に対して購入及び販売するシステム
D 電力バンクが自身の電力のみを使用するシステム
E 電力バンクが顧客に直接販売するシステム
F 電力バンクが電力供給者に販売するシステム
【国際調査報告】