(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(54)【発明の名称】新規病理学マーカ及びその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220531BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20220531BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220531BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G01N33/53 D
C12Q1/04
C12Q1/686 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560611
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(85)【翻訳文提出日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 IB2020053360
(87)【国際公開番号】W WO2020208549
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019000005700
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521444619
【氏名又は名称】メタデク リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カスタニェート ジセー、リディア
(72)【発明者】
【氏名】ミンニョーネ、ゲルトルード
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029FA02
4B029FA05
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR36
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS25
(57)【要約】
本発明は新規病理学マーカの同定、当該マーカの検出及び定量化による、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の診断用、又はその進行のモニタリング用の新規方法、並びに当該方法の実行を可能とするデバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び/又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を診断するための方法であって、
a.個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.a時点で得られる値と、健常な個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値とを比較する工程、
c.aで測定される値がbで測定される値より大きいときに、NAFLD及び/又はNASHを診断する工程を含む、方法。
【請求項2】
NAFLD又はNASHを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NAFLDに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定し、NAFLDに罹患している患者と健常な患者間の前記濃度のカットオフ値C0を同定する工程、並びにNASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプルの集団におけるPlin2タンパク質の濃度値を測定し、NASHに罹患している患者と健常な患者間の前記濃度のカットオフ値C1を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が、前記値C0以上であり、かつ前記値C1より小さいときにNAFLDを診断し、又はaで得られる値が前記値C1以上であるときにNASHを診断する工程を含む、方法。
【請求項3】
NAFLD又はNASHに罹患している患者のNASスコアを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NAFLD又はNASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定し、ここで、NAFLDに罹患している患者に由来するサンプルを含む前記集団において、NASスコア値が、肝臓細胞における脂肪症の割合、膨化肝細胞の発生、小葉炎症の存在、及び門脈炎症の存在に基づき、NAS1、NAS2、及びNAS3として前記患者において組織学的に定義され、
健常な患者とNASスコア1を有する、NAFLDに罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C2、
NASスコア1を有する、NAFLDに罹患している患者とNASスコア2を有する、NAFLDに罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C3、及び
NASスコア2を有する、NAFLDに罹患している患者とNASスコア3を有する、NASHに罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C4、を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.前記NASスコアを、
aで得られる値が前記カットオフ値C2以上であり、かつ前記カットオフ値C3以下であるときにはNASスコア1、
aで得られる値が前記値C2より大きく、かつ前記カットオフ値C4以下であるときにはNASスコア2、
aで得られる値が前記値C4より大きいときにはNASスコア3と診断する工程を含む、方法。
【請求項4】
NASHの重症度を診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定し、ここで、NASHに罹患している患者に由来するサンプルを含む前記集団において、病態の重症度が、肝臓細胞における脂肪症の割合、膨化肝細胞の発生、小葉炎症の存在、及び門脈炎症の存在に基づき、軽度、中等症、又は重症として前記患者において組織学的に定義され、
健常な患者と軽度NASHに罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C5、
軽度NASHに罹患している患者と中等症NASHに罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C6、及び
中等症NASHに罹患している患者と重症NASHに罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C7、を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.NASHの重症度を、
aにて得られる値が前記値C5より大きく、かつ前記値C6より小さいときには軽度、
aにて得られる値が前記値C6より大きく、かつ前記値C7より小さいときには中等症、
aにて得られる値が前記値C7より大きいときには重症、と診断する工程を含む、方法。
【請求項5】
Plin2タンパク質の前記濃度値が、ウェスタンブロット、又は細胞蛍光分析、又はELISA、又は定量PCRにより測定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Plin2タンパク質の前記濃度値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用する細胞蛍光分析により測定され、前記カットオフが、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
NAFLD又はNASHを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、前記値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
b.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、2.7MFIに等しい前記濃度のカットオフ値及び1.0MFIに等しい前記濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が1.0MFI以上であり、かつ2.7MFI以下であるときにNAFLDを診断し、又はaで得られる値が2.7MFIより大きいときにNASHを診断する工程を含む、方法。
【請求項8】
NAFLD又はNASHに罹患している患者のNASスコアを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、前記値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
c.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、1.0MFI、1.4MFI及び2.7MFIに等しい前記濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が1.0MFIのカットオフ値以上であり、かつ1.4MFIのカットオフ値以下であるときに、NASスコア1を診断する工程、aで得られる値が1.4MFIのカットオフ値より大きいときに、NASスコア2を診断する工程、又はaで得られる値が2.7MFIのカットオフ値より大きいときに、NASスコア3を診断する工程を含む、方法。
【請求項9】
NASHの重症度を診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、前記値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
c.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、2.7MFI、4MFI及び6.3MFIに等しい前記濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が、2.7MFIの前記カットオフ値より大きく、かつ4MFIの前記カットオフ値以下であるときには軽度状態のNASH、aで得られる値が、4MFIの前記カットオフ値より大きく、かつ6.3MFIの前記値以下であるときには中等症状態のNASH、及びaで得られる値が、6.3MFIより大きいときには重症状態のNASHと診断する工程を含む、方法。
【請求項10】
前記蛍光色素が、以下の特徴を有する蛍光色素である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【表1】
【請求項11】
e.NASHを診断するためのa時点での血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定する工程、
f.肝線維症に罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定し、肝線維症に罹患している患者と健常な患者間の前記濃度値のカットオフ値C8を同定する工程、
g.e時点で得られる値と、f時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
h.e時点で得られる値が、前記値C8より大きいときに肝線維症を診断する工程をさらに含む、
請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
e.NASHを診断するためのa時点での血液サンプル中、又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質のタンパク質濃度値を測定する工程、
f.健常な患者に由来する血液サンプル集団、及び肝線維症に罹患している患者に由来する血液サンプル集団中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の前記濃度値を測定し、ここで、前記病態の重症度が、肝線維症の位置及び拡大に基づき、ステージ1、ステージ2、又はステージ3として組織学的に定義され、
健常な患者とステージ1の肝線維症に罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C9、
ステージ1の肝線維症に罹患している患者とステージ2の肝線維症に罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C10、及び
ステージ2の肝線維症に罹患している患者とステージ3の肝線維症に罹患している患者間の前記濃度のカットオフ値C11、を同定する工程、
g.e時点で得られる値とf時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
h.e時点で得られる値が前記値C9以上であり、かつ前記値C10より小さいときにステージ1、
e時点で得られる値が前記値C10以上であり、かつ前記値C11以下のときにステージ2、
e時点で得られる値が前記値C11より大きいときにステージ3、
として肝線維症のステージを診断する工程をさらに含む、
請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Pnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の前記濃度値が、ウェスタンブロット、又は細胞蛍光分析、又はELISA、又は定量PCRにより測定される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
Pnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の前記濃度値が、好適な蛍光色素で標識された、特異的にPnpla3に結合して他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体、及び特異的にRab14に結合して他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用する細胞蛍光分析により測定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
e.NASHを診断するためのa時点での血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定する工程であって、前記値が、好適な蛍光色素で標識された、Pnpla3に特異的に結合し他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体、及びRab14に特異的に結合し他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
g.e時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、1.24MFI以上のカットオフ値とを比較する工程、
h.e時点で得られる値が1.24MFI以上であるときに肝線維症を診断する工程をさらに含む、
請求項2~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
e.NASHを診断するためのa時点での血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定する工程であって、前記値が、好適な蛍光色素で標識された、Pnpla3に特異的に結合し他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体、及びRab14に特異的に結合し他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定され、前記カットオフが平均蛍光強度(MFI)に関して表される工程、
g.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、1.24MFI、2.3MFI、及び3.10MFIに等しい前記濃度のカットオフ値とを比較する工程、
h.e時点で得られる値が1.24MFI以上であり、かつ2.4MFIより小さいときには軽度のステージ1の肝線維症、e時点で得られる値が2.4MFI以上であり、かつ3.10MFIより小さいときにはステージ2の肝線維症、e時点で得られる値が3.10MFI以上であるときにはステージ3の肝線維症を診断する工程、
をさらに含む、請求項2~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記蛍光色素が、以下の特徴を有する蛍光色素である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【表2】
【請求項18】
患者におけるNAFLD又はNASHの治療的処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a.前記モニタリングが実施される瞬間t0において、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.1つ以上の瞬間tnにおいて、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、nは0より大きい整数であり、各tnはt0後の瞬間に対応しており、
1つ以上の前記瞬間tnにおけるPlin2タンパク質の濃度における低下が、前記治療的処置の有効性を表す、工程を含む、方法。
【請求項19】
患者におけるNAFLD又はNASHの進行をモニタリングするための方法であって、
a.前記モニタリングが実施される瞬間t0において、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.1つ以上の瞬間tnにてNAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、nは0より大きい整数であり、各tnはt0後の瞬間に対応しており、1つ以上の前記瞬間tnにおけるPlin2タンパク質の濃度における低下が、NAFLD又はNASHの改善を表し、一方で1つ以上の瞬間tnにおけるPlin2タンパク質の濃度の上昇が、NAFLD又はNASHの悪化を表す、工程を含む、方法。
【請求項20】
Plin2タンパク質の前記濃度値が、ウェスタンブロット、又は細胞蛍光分析、又はELISA、又は定量PCRにより測定される、請求項18又は19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
Plin2タンパク質の前記濃度値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用する細胞蛍光分析により測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記蛍光色素が、以下の特徴を有する蛍光色素である、請求項21に記載の方法。
【表3】
【請求項23】
前記血液サンプルが、末梢血サンプルである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記白血球細胞が、多形核細胞及び/又は単球細胞である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
分析される個体におけるNAFLD及び/又はNASHを診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される前記個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、及び健常な個体の血液サンプル中又は前記サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第2濃度値が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
前記第1値と前記第2値とを比較する工程、並びに
前記第1値が前記第2値より大きいときに、NAFLD及び/又はNASHを診断する工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【請求項26】
分析される個体におけるNAFLD及び/又はNASHを診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される前記個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、並びにタンパク質濃度のうち請求項2に定義されるC0の第2値及びC1の第3値が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
前記第1値と前記第2値及び第3値とを比較する工程、並びに
前記第1値が前記値C0以上であり、かつ前記値C1より小さいときにNAFLDを診断する工程、又は前記血液サンプル中の前記第1値が前記値C1以上であるときにNASHを診断する工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【請求項27】
分析される個体におけるNASスコアを診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される前記個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、請求項3に定義されるPlin2タンパク質の濃度の第2値C3、第3値C4、及び第4値C5が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
前記第1値と、前記第2値、第3値、第4値とを比較する工程、並びに
前記第1値が前記カットオフ値C2以上であり、かつ前記カットオフ値C3以下であるときにNASスコア1、
前記第1値が前記値C2より大きく、かつ前記カットオフ値C4以下であるときにNASスコア2、
前記第1値が前記値C4よりも大きいときにNASスコア3、として前記NASスコアを診断する工程、を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【請求項28】
分析される個体におけるNASH重症度を診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される前記個体の血液サンプル中又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、請求項4に定義されるPlin2タンパク質の濃度の第2値C5、第3値C6、第4値C7が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
前記第1値と、前記第2値、前記第3値、前記第4値とを比較する工程、並びに
前記第1値が前記値C5より大きく、かつ前記値C6より小さいときに軽度、
前記第1値が前記値C6より大きく、かつ前記値C7より小さいときに中等症、
前記第1値が前記値C7よりも大きいときに重症、としてNASHの重症度を診断する工程、を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【請求項29】
分析される個体における肝線維症を診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される前記個体の血液サンプル中、又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の第1濃度値、並びに請求項11に定義されるPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の第2濃度値C8が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
前記第1値と前記第2値とを比較する工程、及び
前記第1値がC8より大きいときに肝線維症を診断する工程、を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【請求項30】
分析される個体における肝線維症のステージを診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される前記個体の血液サンプル中、又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の第1濃度値、請求項12に定義されるPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度の第2値C9、第3値C10、及び第4値C11が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
前記第1値と前記第2値、前記第3値、前記第4値とを比較する工程、及び
前記第1値が、前記値C9以上であり、かつ前記値C10より小さいときにステージ1、
前記第1値が、前記値C10以上であり、かつ前記C11以下であるときにステージ2、
前記第1値が前記値C11よりも大きいときにステージ3、として線維化スコアのステージを診断する工程、を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【請求項31】
患者におけるNAFLD又はNASHの治療的処置の有効性をモニタリングするためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、瞬間t0において前記患者の血液サンプル中、又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、及びt0に続く瞬間での前記患者の血液サンプル中、又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第2濃度値が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
前記第1値と前記第2値とを比較する工程、及び
前記第2値が前記第1値より小さい場合には、前記治療的処置の有効性を検出する工程、を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【請求項32】
患者におけるNAFLD又はNASHの進行をモニタリングするためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、瞬間t0において前記患者の血液サンプル中、又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、及びt0の次の瞬間での前記患者の血液サンプル中、又は前記血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第2濃度値が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
前記第1値と前記第2値とを比較する工程、及び
前記第2値が前記第1値より小さい場合には、NAFLD又はNASHの改善を検出する工程、
前記第2値が前記第1値より大きい場合には、NAFLD又はNASHの悪化を検出する工程、
前記第2値が前記第1値とほぼ等しい場合には、NAFLD又はNASHの停滞を検出する工程、を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【請求項33】
患者の血液サンプル中のPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度の自動測定のためのデバイス(10)であって、
-前記血液サンプルが採取されることになる個体の皮膚に穴を開けやすい穿刺手段(2)と、
-血液サンプル中の多形核球(PBMC)の単離手段(14、5、6、19)であって、結合されている構成成分からの前記多形核球(PBMC)の少なくとも分離手段(19)を含み、前記多形核球(PBMC)と前記構成成分間の分離に有利であるように構成され、前記分離手段(19)がろ過膜型又は緩衝液型である、単離手段(14、5、6、19)と、
-1つの分光器(12、13)の、少なくとも1つの分析チャンバ(11)、及び前記多形核球(PBMC)の細胞質中のPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質の濃度の測定手段(16、12、13)を含む、少なくとも1つの分光器であって、前記測定手段(16、12、13)が、
-前記単離手段(14、5、6、19)により単離される多形核球(PBMC)の処理手段(16)であって、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質が存在するときには、前記タンパク質のための特定の試薬とPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質の結合を可能とするように構成され、前記試薬が蛍光色素である、又は1つ以上の所定の波長にて特定の発色を有する、処理手段(16)、および
-少なくとも1つの分光器(12、13)であって、
1つの放射線源(12)であって、前記試薬が蛍光色素を放出する、又は前記特定の発色を呈するように、前記単離及び処理された多形核球(PBMC)にて、所定の波長で放射線を放出するように構成される、放射線源(12)と、
放射線源(12)により照射されるサンプルの画像を取得するための手段(13)と、
を備える少なくとも1つの分光器(12、13)
を含む、少なくとも1つの分光器と、
-前記単離手段(14、5、6、19)及び前記測定手段(16、12、13)に接続されたコントロールユニット(7)であって、
所定の動作パラメータに従い、自動モードにより前記単離手段(14、5、6、19)及び前記測定手段(16、12、13)の発動を制御及び同期するようにプログラムされ、
前記多形核球(PBMC)の前記細胞質中で測定されるPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質の濃度データと、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度の少なくとも1つの参照データとを、自動的に比較する、コントロールユニット(7)とを含む、デバイス。
【請求項34】
Plin2タンパク質濃度の前記参照データが同じ患者に関連し、前記血液サンプルが検出された瞬間(tn)より前の瞬間(t0)において検出されるデータであり、前記コントロールユニット(7)が、
-サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが、Plin2タンパク質濃度の参照データより小さい場合には、NAFLD又はNASHの改善、
-サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが、Plin2タンパク質濃度の参照データより大きい場合には、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又はNASHの悪化、
-サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが、Plin2タンパク質濃度の参照データと等しい場合には、NAFLD又はNASHの停滞、を検出するようにさらにプログラムされている、請求項1~33のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項35】
Plin2タンパク質濃度の前記参照データが健常な対象に関連するデータであり、前記コントロールユニット(7)が、サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが、Plin2タンパク質濃度の前記参照データより大きい場合には、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又はNASH状態を検出するようにさらにプログラムされている、請求項33又は34に記載のデバイス(10)。
【請求項36】
前記コントロールユニット(7)が全ての前記手段及び前記放射線源(12)に接続され、所定の動作パラメータに従い、自動モードによりそれらの発動を制御及び同期するようにプログラムされており、
前記血液サンプル中に存在するPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質の濃度データを決定するように、画像を得るための前記手段(13)によって取得される画像を処理し、
前記Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度データと、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質の前記参照データとを自動的に比較するようにさらに構成されている、請求項33~35のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項37】
血液サンプルからの多形核球(PBMC)の前記単離手段(14、5、6、19)が、
-前記血液サンプルと、前記サンプル中に存在する多形核球(PBMC)に結合しやすい構成成分と、必要な場合には抗凝固物質と混合するように構成される、混合手段(14)と、
-機械的振動及び/又は回転応力を、前記混合手段(14)により得られた前記混合物に加え、前記混合物をろ過手段(6)へと運搬するように構成される、移動手段(5)と、
-前記ろ過手段(6)であって、前記多形核球(PBMC)に結合される前記構成成分を保持し、前記混合物の残りを溶出させることができるように構成される、前記ろ過手段(6)とを含む、請求項33~36のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項38】
前記移動手段(5)及び前記ろ過手段(6)が統合され、ろ過コンベヤベルトとして実装される、請求項37に記載のデバイス(10)。
【請求項39】
前記放射線源(12)が、340nm~780nmの波長にて放射線を放出することができる、請求項33~38のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項40】
前記血液サンプルを、前記穿刺手段(2)に流体的に接続された回収チャンバ(3)及び前記回収チャンバ(3)に運搬するための手段(4)をさらに含み、運搬するための前記手段(4)がダイヤフラムポンプ型である、請求項33~39のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項41】
前記ダイヤフラムポンプが以下の寸法、すなわち、
-0.6mmに等しい高さ、
-5mmに等しい幅、
-5mmに等しい長さ、を有する、請求項40に記載のデバイス(10)。
【請求項42】
前記分光器が以下の寸法、すなわち、
-15mm~25mm、好ましくは20.1mmに等しい高さ、
-7mm~18mm、好ましくは12.5mmに等しい幅、
-5mm~15mm、好ましくは10.1mmに等しい深さ、を有する、請求項33~41のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項43】
請求項25~33のうち1つ以上に記載のコンピュータプログラムを実行するように構成された少なくとも1つの処理ユニットをさらに含む、請求項33~42のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項44】
前記処理ユニットが、前記コントロールユニット(7)に動作可能に接続されている、請求項43に記載のデバイス(10)。
【請求項45】
請求項1~24のいずれか一項に記載の方法を実行するための、請求項32~44のいずれか一項に記載のデバイス(10)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規病理学マーカの同定、当該マーカの検出及び定量化(定性化)による、非アルコール性脂肪性肝疾患であるNAFLD及び/又はNASHの診断用、又はその進行のモニタリング用の新規方法、並びに当該方法の実行を可能とするデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
NAFLD(Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)の頭字語によっても表示される非アルコール性脂肪性肝疾患は、大量のアルコール消費がなく、肝障害の二次原因が存在しない場合、肝細胞内部の脂肪の過剰蓄積(脂肪症、5%超の細胞トリグリセリドの蓄積からなる)により特徴付けられる肝臓組織の変性といったスペクトルによって表される。
【0003】
NAFLDは現在、西洋において、成人、並びに驚くことには小児及び十代の若者でも同様に、肝細胞溶解性肝炎インデックスを変性させる主要原因を構成している。
【0004】
Bugianesi及びMarietti(Recenti Prog Med 2016;107:360-368)により2016年に報告されたアップデートされたデータは、成人集団中、NAFLDの世界的有病率が25%である点及びNAFLDの個体中、肝生検により診断されるNASH(非アルコール性脂肪性肝疾患)の世界的な有病率が20~50%である点を示している。本明細書にて報告される割合は、例えば、肥満及び/又は2型糖尿病に罹患している患者においてなど、危険性のある患者にて劇的に上昇している。
【0005】
最も印象的な疫学的データは小児集団に関係するものであり、小児では、肥満及びメタボリックシンドロームは世界規模で漸進的に増加しており、現在までのところ欧州でもこれは顕著であり、米国で記録されたデータと類似の推定を有している。2007年~2010年に記録されたデータより、NAFLDの有病率は約7%に等しく、これはその20年弱前に記録されたデータよりも3倍高い値であることがここから明らかである。
【0006】
単純性脂肪肝が肝硬変への進行に関して無視できるリスクを有する一方、有意な割合(10~15%)のNAFLDを抱える対象は、肝疾患、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といった最も重症である形態を特徴付ける壊死性炎症及び膨化変性の組織学的態様を呈する。これらは線維化、肝硬変、及び肝細胞癌(HCC)を含む関連する合併症へと発展する可能性がある。
【0007】
これは複合的で多因子の病態であり、非アルコール性脂肪性肝疾患の重症度及び発症は、遺伝的要因と環境的要因の両方によって調整される。これは、メタボリックシンドローム及び2型糖尿病といった病態に関連して頻繁に現れるが、これはまた症候群の発症、関連する発生及び合併症において役割を有している。NAFLD有病率の増加が食事及び先進国の社会的変化と関連すると仮定すると、この病態は潜在的に有意な臨床的関連を伴うことから、例えば無視できない数の場合においては、この病態は肝硬変及びHCCの原因でもある非アルコール性脂肪性肝疾患へと発展することもあり得るため、肝臓値及び肝臓外(心血管)値において予後に影響する可能性がある合併症の発症を調査し、かつ予測することを可能とする目的で、ハイリスクな対象を早期に及び正確に同定することが可能であることは明らかに重要である。
【0008】
肝臓損傷のほかにも、実際のところ、NAFLDに罹患している個体における罹患率及び死亡率の主要原因は、2型糖尿病及び他のリスク因子の存在に関わらず、一般的集団よりもこうした個体においてより出現する心血管合併症により表される。
【0009】
Bugianesi及びMariettiが2016年にさらに報告したように、NASH診断は現在、肝生検の実施が条件となっていることから、近年、科学者集団の試みは、スクリーニングプログラム、フォローアップ及び治療の試みに正確に取り組む目的で、大規模で適用可能であり関連する遺伝子多型の肝臓損傷の非侵襲的マーカを検索することに関する。
【0010】
この器官での生検は、深刻な症候群が存在する場合のみに実施され、それが標準的となっていることから、非侵襲診断の方法を同定することにより、通常では肝生検に供されない対象においても、適時診断が可能となる。さらに、非侵襲診断はまた、患者に実施される治療的処置の有効性を経時的にモニタリングすることができる。実際、超音波誘導下での肝生検は病院で実施されなければならない高額試験であり、この費用は2000米ドル~7000米ドル以上の範囲であることも考慮されなくてはならない。肝生検後の致命的な漏出性出血による死亡率は、未だに0.13%~0.33%の範囲であり、凝血時の変性を有する対象ではさらに高い可能性がある。
【0011】
したがって、肝臓に生検介入する必要なく、正確かつ迅速な診断を可能とし、これにより診断方法が非侵襲性であることから集団における疾患の診断を拡大可能とするNAFLD診断マーカを選抜する必要が、現在大いに感じられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の著者らは、Plin2タンパク質が、循環細胞にて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の効果的なマーカであることを発見し、驚くべきことに、肝細胞にて測定される当該マーカの発現度は、同じ個体の白血球細胞、特に末梢血の多形核白血球細胞及び単球にて測定される当該マーカの発現度と強固かつ正に相関することを見いだした。さらに、本発明の著者らはまた、血液細胞中及び肝細胞中のPlin2タンパク質の発現度が、NAFLDのNASスコア及びNASH重症度とも比例し、このため、NAFLDに罹患している患者中のPlin2濃度が高くなるにつれて、NASスコアが高くなり、NASHに罹患している患者中のPlin2濃度が高くなるにつれて、疾患の重症度は大きくなる(NASスコア及びNASH重症度は、文献に従い、及び本発明の説明中で定義される)ことを発見した。
【0013】
本発明の著者はしたがって、個体の血液サンプル又は当該サンプルから抽出した白血球細胞で実施されるNAFLD及び/又はNASHを診断するための方法を考案した。ここでは当該サンプル中のPlin2濃度が、健常な個体から採取された1つ以上の対照サンプルで測定されるものより大きい場合には、NAFLD及び/又はNASHの診断は確認されると見なされなければならない。
【0014】
Plin2発現度の測定は、該疾患の当該発現と重症度とが相関するという理由で、治療の有効性をモニタリングするためにさらに有利に使用され得る。それによって、当該測定で得られる値と、瞬間tnに実施される1つ以上の続く測定にて得られる値とを比較することで、治療有効性のモニタリング開始時である瞬間t0において実施される個体のPlin2血液濃度の測定間を比較することで、当該治療有効性を評価することが可能となる。経時的なPlin2濃度の低下は治療有効性を表すが、この場合、nは0より大きい整数であり、当該瞬間は、互いに漸進的に続き(続く又は次)、かつ全てt0に続く。経時的な一定の値は疾患の封じ込めを意味し、一方で当該値が経時的に上昇することは、治療無効性を意味する。
【0015】
さらに、上に説明されるようにその後の測定により、例えば、患者の食事及び生活習慣の変化、薬物又は減量手術の変化後といった薬理学的治療がない状態でも、疾患の経過をモニタリングすることが可能となる。
【0016】
したがって、本発明により有利には、肝生検の必要なく、明白かつ明らかな医療上及び経済学的利点を有しながら、NAFLD又はNASHの診断及び/又はモニタリングを実施することが可能となる。さらに、本発明による診断及び/又はモニタリングの簡潔さにより、分析を行うことが可能である個体数を大幅に広げることが可能となり、小児への試験もまた容易に実施することが可能となり、さらには通常肝生検に供されることのない患者の全体集団においても、NAFLD又はNASHに関する健康状態を確認することが可能となる。さらに、本発明による分析により、集団へのスクリーニングを実施することもまた可能となる。
【0017】
さらに、NAFLD及びNASHに罹患している患者において、心血管損傷の発生頻度が高いことが、他のリスク因子の有無に影響しないと判明していることを考えると、この疾患の早期診断により、当該患者における心血管に関する予防モニタリングが可能となる。
【0018】
本発明の著者らは、上に言及されるように、Plin2タンパク質濃度値は、NASスコアと相関し、本文献では、生検サンプルにて観察される組織学的パラメータに基づき、軽度、中等症、及び重症と定義されるNASHの重症度とも相関することも発見した。したがって、本発明はまた、本発明に定義されるように患者の生物学的サンプル中のPlin2タンパク質濃度値に基づき、当該病態に罹患している当該患者におけるNASHの重症度を定義する方法、コンピュータプログラム及びデバイスに関する。
【0019】
本発明の著者らは、驚くべきことに、同様の生物学的サンプルにおいて、Pnpla3及びRab14タンパク質発現値により肝線維症の存在及びそれらの重症度の診断が可能となることもまた発見した。
【0020】
本発明の方法は、上述の測定すること(測定)及び任意で得られたデータの処理を可能とする簡易なデバイスを用いて実施することもまた可能である。
【0021】
したがって、本発明の目的は、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び/又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を診断するための方法であって、
a.個体の血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.a時点で得られる値と、健常な個体の血液サンプル及び当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値とを比較する工程、
c.aで測定される値がbで測定される値より大きいときに、NAFLD及び/又はNASHを診断する工程を含む、方法、
NAFLD又はNASHを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NAFLDに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定し、NAFLDに罹患している患者と健常な患者間の当該濃度のカットオフ値C0を同定する工程及びNASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプルの集団におけるPlin2タンパク質の濃度値を測定し、NASHに罹患している患者と健常な患者間の当該濃度のカットオフ値C1を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が、当該値C0以上であり、かつ当該値C1より小さいときにNAFLDを診断し、又はaにて得られた値が当該値C1以上であるときにNASHを診断する工程を含む、方法、
NAFLD又はNASHに罹患している患者のNASを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NAFLD又はNASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、NAFLDに罹患している患者に由来するサンプルを含む当該集団において、NAS値は、肝臓細胞における脂肪症の割合(パーセント)、膨化肝細胞の発生、小葉炎症の存在、及び門脈炎症の存在に基づきNAS1、NAS2、NAS3として当該患者において組織学的に定義され、
健常な患者とNAS1を有するNAFLDに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C2、
NAS1を有するNAFLDに罹患している患者とNAS2を有するNAFLDに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C3、NAS2を有するNAFLDに罹患している患者と、NAS3を有するNASHに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C4を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.NAS度を、
aで得られる値が当該カットオフ値C2以上であり、かつ当該カットオフ値C3以下であるときにNAS1として、
aで得られる値が当該カットオフ値C2より大きく、かつ当該カットオフ値C4以下であるときにNAS2として、
aで得られる値が当該カットオフ値C4より大きいときにNAS3として診断する工程を含む、方法、
NASHの重症度を診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定し、この場合、NASHに罹患している患者に由来するサンプルを含む当該集団において、病態の重症度が、肝臓細胞における脂肪症の割合、膨化肝細胞の発生、小葉炎症の存在、及び門脈炎症の存在に基づき、軽度、中等症、又は重症として当該患者において組織学的に定義され、
健常な患者と軽度NASHに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C5、
軽度NASHに罹患している患者と中等症NASHに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C6、
中等症NASHに罹患している患者と重症NASHに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C7を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.NASHの重症度を、
aにて得られる値が当該値C5より大きく、かつ当該値C6より小さいときには軽度、
aにて得られる値が当該値C6より大きく、かつ当該値C7より小さいときには中等症、
aにて得られる値が当該値C7より大きいときには重症と診断する工程を含む、方法、
NAFLD又はNASHを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、当該値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
b.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、2.7MFIに等しい当該濃度のカットオフ値及び1.0MFIに等しい当該濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が1.0MFI以上であり、かつ2.7MFI以下であるときにNAFLDを診断する工程、又はaで得られる値が2.7MFIより大きいときにNASHを診断する工程を含む、方法、
NAFLD又はNASHに罹患している患者のNASを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、当該値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
c.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、1.0MFI、1.4MFI及び2.7MFIに等しい当該濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が1.0MFIのカットオフ値以上であり、かつ1.4MFIのカットオフ値以下であるときに、1に等しいNASを診断する工程、aで得られる値が1.4MFIのカットオフ値より大きいときに、2に等しいNASを診断する工程、又はaで得られる値が2.7MFIのカットオフ値より大きいときに、3に等しいNASを診断する工程を含む、方法、
NASHの重症度を診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、当該値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
c.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、2.7MFI、4MFI及び6.3MFIに等しい当該濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が2.7MFIのカットオフ値より大きく、かつ4MFIのカットオフ値以下であるときに軽度状態のNASH、aで得られる値が4MFIのカットオフ値より大きく、かつ6.3MFIの値以下であるときに中等症状態のNASH、又はaで得られる値が6.3MFIのカットオフ値より大きいときに、重症状態のNASHであると診断する工程を含み、
当該方法は、NASHを診断するためのa時点での血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中の、Pnpla3タンパク質及びRab14タンパク質のタンパク質濃度値を測定する工程、健常な患者及び任意では、肝線維症の診断のため、肝線維症のグレードが組織学的に定義されている患者に由来する血液サンプル中のその濃度値に対する比較の工程をさらに含む、方法、
患者におけるNAFLD又はNASHの治療的処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a.当該モニタリングが実施される瞬間t0において、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.1つ以上の瞬間tnにおいて、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル又は当該血液サンプルから抽出された白血球細胞のサンプルにおけるPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、nは0より大きい整数であり、各tnはt0後の瞬間に対応しており、
1つ以上の当該瞬間におけるPlin2タンパク質の濃度における低下が、当該治療的処置の有効性を表す、工程を含む、方法、
患者におけるNAFLD又はNASHの進行をモニタリングするための方法であって、
a.当該モニタリングが実施される瞬間t0において、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.1つ以上の瞬間tnにてNAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプルにおけるPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、この場合、nは0より大きい整数であり、各tnはt0後の瞬間に対応している、工程を含み、
1つ以上の当該瞬間におけるPlin2タンパク質の濃度における低下が、NAFLD又はNASHの改善を表し、一方で1つ以上の瞬間tnにおけるPlin2タンパク質の濃度の上昇が、NAFLD又はNASHの悪化を表しており、
当該方法を実行しやすいコンピュータプログラム、
及び血液サンプル中のPlin2タンパク質濃度値の自動測定用のデバイスであって、一般には、
-血液サンプルからのPBMCの単離手段、
-当該PBMCの細胞質中のPlin2タンパク質の濃度値の測定手段、
-当該単離手段及び当該測定手段に接続されるコントロールユニットであって、
所定の動作パラメータに従い、自動モードによりそれらの発動を制御及び同期し、
当該PBMCの細胞質中のPlin2タンパク質濃度のデータと、Plin2タンパク質濃度の参照データとを自動的に比較するようにプログラムされている、コントロールユニットを含む、デバイスを含む、方法である。
【0022】
用語
本発明の目的のための用語白血球細胞は、文献にて一般に公知である意味を有し、好中球、好酸球(eosinophils)又は好酸球(acidophils)、好塩基球、リンパ球、単球へと細分される顆粒球(又は多形核球)といった、異なる細胞種を含む。
本発明の目的のために、用語Plin2は、ヒトタンパク質であるアディポース分化関連タンパク質を表し、ADFP、ADRP又は9p22.1に位置づけられるヒト遺伝子ADFPによりコードされるペリリピン2としても公知である。
NAFLD 非アルコール性脂肪性肝疾患
NASH 非アルコール性脂肪肝炎
Pnpla3は、ヒトPnpla3タンパク質を指し、これはアジポヌトリン、ADPN、アシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ、C22orf20、IPLA2エプシロン、DJ796I17.1、IPLA(2)エプシロン、IPLA2-エプシロンとしても公知である。
Rab14は、ヒトRab14タンパク質を指し、Ras関連タンパク質であるRab-14としても公知である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】パネルA:単球及び肝細胞中の脂肪滴(薄灰色の点):大きく、若干強く染色された細胞核が可視化される。パネルBは、単球及び肝臓中のPlin2のウェスタンブロットを示す。 βアクチンは、単球中で検出されるタンパク質量のうち、どのくらいの量が肝細胞中に検出されるタンパク質量に類似しているかを示す。
【
図2】同様の対象の肝臓部分及び単球におけるORO染色を報告する。
【
図3】単球及び肝臓におけるウェスタンブロットにより、Plin2測定の差異(Y軸)及び平均(X軸)のブランド-アルトマングラフを報告する。2つの点線は、一致限界を示す。 2つの測定で得られた値間の差異はY軸上にて報告されるが、一方で平均はY軸上に存在する。点線は、2つの測定間の95%の一致境界線(限界)を報告する。グラフは、全ての点が一致限界の内側に存在し、肝臓内及び末梢血細胞内のPlin2発現間の直接相関を実証する。
【
図4】本発明による、デバイスの好ましい実施形態の例示的なブロック図である。
【
図5】本発明による、デバイスのさらに好ましい実施形態の使用の例示的な図である。
【
図6】本発明による、デバイスのさらに好ましい実施形態の使用の例示的な図である。
【
図7】平均Plin2(MFI)レベルとNASステージとの相関であり、X軸上の独立変数はPlin2の中間値であるが、一方で従属変数はNASステージである。
【
図9】Pnpla3及びRab14の線維化正規化重要度である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の著者らは、驚くべきことにPlin2タンパク質はNAFLD及びNASHマーカであり、血液細胞(白血球細胞)中のタンパク質濃度は、肝臓細胞中の当該タンパク質の発現と相関し、その濃度はNASスコア及びNASH疾患の重症度とも比例することを発見した。本発明の著者は、したがって、肝生検に頼る必要なく血液サンプルを分析することにより、NAFLD若しくはNASHの診断を実施するため、本文献中に定義されるようにNAFLD若しくはNASHの重症度を軽度、中等症、若しくは重症といったように診断するため、又はNAFLD若しくはNASHの治療的処置の有効性をモニタリングするため、又はNAFLD若しくはNASHの経時的な経過をもモニタリングするため、Plin2タンパク質の濃度の測定を使用することが可能であると発見した。
【0025】
したがって、本発明は、
a.個体の血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.a時点で得られる値と、健常な個体の血液サンプル及び当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値とを比較する工程、
c.aで測定される値がbで測定される値より大きいときに、NAFLD及び/又はNASHを診断する工程を含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び/又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を診断するための方法を提供する。
【0026】
一実施形態において、工程aにて当業者には公知である技術により血液サンプルから白血球細胞を単離する目的で処理され得る、血液サンプルが使用される。
【0027】
したがって、この方法はサンプル中のPlin2タンパク質の濃度の測定に先行する工程を含み、この血液サンプルは中に含有される白血球細胞を単離するために処置に供される。一実施形態において、この方法は、分析される血液サンプル又はそこから単離される白血球細胞から、多形核細胞(多形核球)及び/又は単球を単離する工程を含み得る。
【0028】
血液サンプルから白血球細胞を単離するための現在の使用に関する文献にて公知である任意のプロトコルが使用され得る。
【0029】
単に例として、多形核細胞は以下のように血液サンプルから単離され得る。すなわち、血液の凝固を防ぐため、EDTA(最終濃度が4mM)を含有している試験管へと血液を採取する。次いで、1つ以上の非連続的なパーコール成分(ポリビニルピロリドン(PVP)でコーティングされた、15~30nmの径を有するコロイド性シリカ粒子(水中23%w/w)からなる)を配置し、試験管中に15mlの62%パーコールを入れ、2種類の懸濁液の混合を避けつつ、細いカテーテルを有するシリンジを活用して、その下に15mlの75%パーコールを静かに重層化させた。
【0030】
次いで、8~10mLの血液を上に説明される成分上に重層化させ、試験管を20℃で全体では25分間、そのうち200rpmで10分間、次に400rpmで15分間遠心分離にかけた。したがって、密度及び大きさに基づく血液の図形的要素の分離、すなわち、赤血球及び大半の好酸球は試験管の底部に定着し、多形核球は2種類のパーコール懸濁液間の界面にて定着し、リンパ単球は62%のパーコールと血漿の間に局在化させる。
【0031】
血漿及びリンパ単球を廃棄した後、多形核球含有バンドを、ガラス製パスツールピペットを用いて採取し、これを試験管に集め、250rpmにて、7分間20℃で遠心分離することによりHEPES/BSAで洗浄に供した。存在する可能性がある赤血球を廃棄するため、これにより得られた底部層を迅速な溶解処理に供し、これを3部の低張性溶液へと再懸濁させる。約15秒撹拌させた後、7部の等張溶液を加えることで培地の等張性を回復させた。
【0032】
250rpmで7分、20℃でさらに洗浄した後、使用するまで、細胞ペレットを再懸濁させ、公知の量のHEPES/BSAへと維持させた。好中球濃度を、電動パーティクルカウンタを用いて又は血球計数器を使用して光学顕微鏡下にて測定した。
【0033】
単に例として、様々な種類の単球は、表面細胞マーカに対し、微生物学的に発現されるモノクローナル抗体のCD-特異的組換えFab断片の使用といった技術により、血液サンプルから単離され得る。また、市販のキットはこの目的のために利用可能であり、例えばFABian(商標)向けのIBA GmbH(商標)CD14単離キットなどである。
【0034】
Plin2タンパク質濃度の測定は、当業者にとって利用可能な任意の方法に従って行われ得る。単に例として、本明細書に説明される方法において、測定はウェスタンブロット、又は細胞蛍光分析、又はELISA、又は免疫蛍光法、又は定量PCR、酵素免疫スポットアッセイ、若しくは局在表面プラズモン共鳴繊維チッププローブシステムにより、又は以下に説明される当該測定のために調製されるデバイスを使用することにより実施され得る。上に示される方法の全ては、どのサンプルで実施されるべきか、及びどのタンパク質を定量しなければならないかを知っており、最も適切であると考えるプロトコルを選択し、市場において最も好適な試薬を使用することができるような当業者に公知である。本明細書に従い、サンプル内のPlin2の検出及び定量化を実施するのに必要とされる全ての試薬は公知であり、市場にて入手可能である。したがって、本発明の方法が公知となった場合、当業者による特定の工夫を必要とすることがない。
【0035】
例として、上に列挙される技術を要約し、それぞれの工程に関して当業者により通常使用される工程が示される。
【0036】
ウェスタンブロッティングにより、細胞中のタンパク質発現をモニタリングすることが可能となり、これにより、特定の抗原の存在、その量及びその分子量は3つの手法により決定することができる。すなわち、
1)タンパク質の抽出及び投与量、
2)ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)によるタンパク質の分離、
3)ウェスタンブロッティング:ゲルから分離されたタンパク質をニトロセルロース分析(ブロット)上へと移動させ、関心対象のタンパク質(一次抗体)に対して向けられる抗体へと膜を曝露させ、種が一次抗体として使用する抗体に対して向けられる抗体(二次抗体)へと膜を曝露させ、ケミルミネセンス法(ECL)と共に膜を発達させる、
4)画像濃度測定分析、である。
【0037】
細胞蛍光分析は、中に含有される特定の細胞又はタンパク質を検出し、同定し、数えることができる実験技術である。
【0038】
細胞蛍光分析技術は、様々な段階を予想している。
【0039】
流体中の細胞サンプルの懸濁
検査前に、分析される細胞に基づき、サンプルを細胞のサブタイプを識別可能である特定の色素で処理する。この色素、蛍光色素は、特定の細胞領域又はマーカ抗原に向けられるモノクローナル抗体に結合する。
【0040】
標識される細胞を含有するサンプルは、細胞蛍光計と呼ばれる機器へと導入される。
【0041】
この機器では、内部に次から次へと一列で細胞が組織化される流れを生成するため、細胞含有流体はフローチャンバへと注ぎ込まれ、次いで非常に狭い穴を通る。この細胞の流れを検出計の前に配置し、そうすることで非常に高い速さで流れ中に存在する各細胞を分析する(1秒あたり数百個~数千個の細胞)。
【0042】
細胞蛍光計は、1つ以上のレーザ、及び各細胞にとって特有のいくつかの特徴を同定可能な複数の検出器を含有する。各レーザは、流れ中に存在する細胞に影響し、その特徴に応じて、細胞のそれぞれに特徴的な散乱を発生させる。この特徴は、物理的(細胞サイズ及び複雑性)であり得、又はレーザインターセプト色素(蛍光色素)により発生した信号によって変化することがあり得る。この情報の組合せにより、サンプル中に存在する各細胞の特性プロファイルが作成される。
【0043】
1つ以上の検出器(又は単独の検出器)により検出される信号は、(光電子増倍管により)増幅され、コンピュータに送信される。ここでは、この信号はデジタル形式に変換され、コンピュータ上に表示、又は印刷される。
【0044】
データはグラフ形式で提供される。
【0045】
ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)は非常に高頻度で使用される技術であり、酵素と抗体又は抗原との化学結合に基づくものである。これらの酵素の活性は容易にモニタリング可能であり、この活性によりコンジュゲート複合体濃度を正確に定量することが可能となる。使用される特定の方法によっては、ELISAは抗原又は抗体を投与するために使用され得る。
【0046】
特定の抗体により認識される抗原(免疫)
システム(吸着剤)表面に吸着される分析物(抗原又は抗体)
(第2の)酵素結合抗体により認識される抗原/抗体、その生成物が染色される反応を起こすことが可能。
【0047】
定量PCR又はリアルタイムPCRは、フルオロフォアにより放出される蛍光を測定することで核酸(この場合には、mRNAをコードするPlin2タンパク質)を定量するために使用される技術である。この技術は、単一の反応内部で増幅と定量化を関連付ける。リアルタイムPCR反応において、蛍光はPCR生成物の蓄積に比例して増加する。当業者は、RT-PCRを実行するのに好適なプローブを設計するにあたり、何ら問題ないことが予想される。これは、Plin2タンパク質の遺伝子及びDNAコード化が文献にて公知であることが理由である。PBMCサンプルでの酵素免疫スポットアッセイ(ELISPOT)分析は、インキュベーション中に生成される調査対象のサイトカインに対し、高親和性を有するモノクローナル抗体を吸着させることにより事前に機能化(コーティング)された96ウェルプレートにおいて、限定的な期間での細胞インキュベーションに基づく。抗基準タンパク質ビオチン化抗体と、抗ビオチン酵素結合二次抗体の組合せにより、スポットの形成により反応生成物が沈殿(色素蓄積)することから、酵素にとって発色性物質の存在下での定義領域内におけるタンパク質産生の検出が可能となる。当該技術は、細胞溶解後にPBMC内容物へと加えることができる。
【0048】
蛍光、ラマン散乱、及び二次高調波発生を含む様々な分光測定の表面感度を向上させるために、表面プラズモンを使用した。ただし、それらの最も単純な形式においては、タンパク質などにおける分子吸収を検出するためにSPRの反射率を使用することができる。技術的には、最小反射角(最大吸収)を測定する。
【0049】
上で定義されるような血液サンプル又は細胞サンプル内のPlin2濃度を定量するのに好適である、文献中で公知である任意の分析技術は、本発明の任意の方法にて使用され得る。
【0050】
さらに、本発明によるデバイスは、上に説明される検出技術のうち1つ以上により、関心対象のサンプルにおけるPlin2タンパク質の定量化を実施するように設計され得る。
【0051】
特定の実施形態において、測定は、好適な蛍光色素で標識され、Plin2タンパク質に特異的な抗体(又は上に定義されるその誘導体若しくはその断片)、すなわちPlin2タンパク質にのみ結合する抗体をタンパク質マーカとして使用する、細胞蛍光分析により実施されることができる。
【0052】
一実施形態において、蛍光色素は、例えば、以下の特徴を有する蛍光色素のような、市販の細胞蛍光分析装置により検出可能である、任意の1つの蛍光色素であってもよい。
【表1】
【0053】
一実施形態において、Alexa Fluor 488蛍光色素(Invitrogen)を使用することができる。これは、以下の技術的特徴を有し、FITC又はCy2の代替物として一般的に使用されることができる。
【0054】
蛍光強度及び平均蛍光強度(MFI)値の分析は、一般に入手可能である好適なソフトウェアにより計算されることができ、市場で入手可能な細胞蛍光計の使用により評価され得る。
【0055】
したがって、一実施形態に従い、使用される蛍光色素は、上に定義される技術的特徴を有するAlexa Fluor 488蛍光色素であり得、FC 500 cytofluorimeter(Beckman Coulter,Brea,CA)及びそのデータは、本出願の提出時に当該製品の技術特徴を有する、Kaluza software(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用して分析され得る。
【0056】
当業者は、比較アッセイに関しては、他の蛍光色素及び他のデバイス及びソフトウェアを使用して算出されるMFIに関して表されるカットオフにて、Alexa Fluor 488蛍光色素又は上の表に報告される特徴を有する蛍光色素を使用することで算出し、FC 500 cytofluorimeter(Beckman Coulter,Brea,CA)又は類似の技術的特徴を有する細胞蛍光計、及びKaluza software(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用し、本明細書にて提供されるMFIに関して表されるカットオフをどのように適合させるかを、どのような方法であっても理解している。
【0057】
MFIは、単純な算術平均といった意味である。
【0058】
本発明に従い、細胞蛍光計は好ましくは、上で示される細胞蛍光計の技術的特徴を有し、本出願の出願時に一般に入手可能なものである。
【0059】
上に説明される工程に関する全ての実施形態は、本明細書に提供される方法のいずれかに適用可能である。
【0060】
一実施形態において、本発明は、
NAFLD又はNASHを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NAFLDに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定し、NAFLDに罹患している患者と健常な患者間の当該濃度のカットオフ値C0を同定する工程及びNASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプルの集団におけるPlin2タンパク質の濃度値を測定し、NASHに罹患している患者と健常な患者間の当該濃度のカットオフ値C1を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が、当該値C0以上であり、かつ当該値C1より小さいときにNAFLDを診断し、又はaにて得られた値が当該値C1以上であるときにNASHを診断する工程を含む、方法に関する。
【0061】
本発明はまた、NAFLD又はNASHに罹患している患者のNASスコアを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NAFLD又はNASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、NAFLDに罹患している患者に由来するサンプルを含む当該集団において、NASスコア値は、肝臓細胞における脂肪症の割合、膨化肝細胞の発生、小葉炎症の存在、及び門脈炎症の存在に基づきNAS1、NAS2、NAS3として当該患者において組織学的に定義され、
健常な患者とNASスコア1を有するNAFLDに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C2、
NAS1を有するNAFLDに罹患している患者とNASスコア2を有するNAFLDに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C3、NAS2を有するNAFLDに罹患している患者と、NASスコア3を有するNASHに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C4を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.NASスコアを、
aで得られた値が当該カットオフ値C2以上であり、かつ当該カットオフ値C3以下であるときにNASスコア1として、
aで得られた値が当該カットオフ値C2より大きく、かつ当該カットオフ値C4以下であるときにNASスコア2として、
aで得られた値が当該カットオフ値C4より大きいときにNASスコア3として診断する工程を含む、方法に関する。
【0062】
本発明によるNASスコアは本文献に定義される通りであり、以下のパラメータに従って通常は割り当てられる。
【表2】
【0063】
本発明はまた、NASHの重症度を診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.NASHに罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、NASHに罹患している患者に由来するサンプルを含む当該集団において、病態の重症度は、肝臓細胞における脂肪症の割合、膨化肝細胞の発生、小葉炎症の存在、及び門脈炎症の存在に基づき軽度、中等症、又は重症として当該患者において組織学的に定義され、
健常な患者と軽度のNASHに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C5、
軽度NASHに罹患している患者と中等症NASHに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C6、
中等症NASHに罹患している患者と、重症NASHに罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C7を同定する工程、
c.a時点で得られる値と、b時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
d.NASHの重症度を、
aで得られる値が当該値C5より大きく、かつ当該値C6より小さいときに軽度、
aで得られる値が当該値C6より大きく、かつ当該値C7より小さいときに中等症、
aで得られる値が当該値C7より大きいときに重症診断する工程を含む、方法に関する。
【0064】
したがって、本明細書に従い、Plin2濃度のカットオフ値は、
NAFLDに罹患している患者と健常な患者の間のカットオフC0、
NASHに罹患している患者と健常な患者の間のカットオフC1、
健常な患者と、NAS1を有する、NAFLDに罹患している患者の間のカットオフC2、
NAS1を有する、NAFLDに罹患している患者と、NAS2を有する、NAFLDに罹患している患者の間のカットオフC3、
NAS2を有する、NAFLDに罹患している患者と、NAS3を有する、NASHに罹患している患者の間のカットオフC4、
健常な患者と、軽度NASHに罹患している患者の間のカットオフC5、
軽度NASHに罹患している患者と、中等症NASHに罹患している患者の間のカットオフC6、
中等症NASHに罹患している患者と、重症NASHに罹患している患者の間のカットオフC7である。
【0065】
本発明による疾患の重症度の形態の定義は、NAFLD活動スコア(NAS)に従う組織分析に基づき、文献にて一般に使用されるものである(Kleiner DE,Brunt EM,Van Natta M,Behling C,Contos MJ,Cummings OW,et al.Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease.HEPATOLOGY 2005;41:1313-1321)。これは組織的スコアであり、脂肪症、小葉炎症及び門脈炎症、並びに膨化肝細胞変性(「膨化」)の、肝生検の存在に基づき、世界的な肝臓学会により広範に使用及び確認されている。各構成要素は、グレード1(軽度)、グレード2(中等症)、及びグレード3(重症)であり得る。
【0066】
【0067】
事実、本発明の著者らは驚くべきことに、NASH重症度が知られている患者からの分析される血液サンプルPlin2タンパク質の濃度値が、当該グレードと相関しており、Plin2タンパク質濃度の上昇は、病態の重症度に直接的に比例することを発見した。
【0068】
好ましい実施形態においては、上に説明される方法は、Plin2タンパク質の発現を評価する細胞蛍光分析技術を使用し、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用することにより実行され、当該カットオフは、平均蛍光強度(MFI)に関して表される。
【0069】
より好ましい実施形態においては、これは、上に説明される蛍光色素、ソフトウェア及びデバイス、又は上に説明される蛍光色素に加え、以下及び特許請求の範囲に定義されるような本発明の主題であるソフトウェア及びデバイスを使用することによる。文献及び本発明による、NASH壊死性炎症性グレードは、肝細胞脂肪症、膨化及び障害、並びに(小葉内及び門脈)炎症のグレードに基づき、グレード1(軽度)、グレード2(中等症)、及びグレード3(重症)と分類される(上記表)。
【0070】
本発明の著者らは、上に説明される方法に適用可能である特定のカットオフ(以下に定義される蛍光色素、ソフトウェア及びデバイスを有するMFIに関して本明細書では表される)が、コンピュータ処理され得ることを実証した(例部分を参照されたい)。
【0071】
したがって、本発明の目的はまた、
NAFLD又はNASHを診断するための方法であって、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、好適な蛍光色素で標識され、当該値が特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
b.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、2.7MFIに等しい当該濃度のカットオフ値及び1.0MFIに等しい当該濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が1.0MFI以上であり、かつ2.7MFI以下であるときにNAFLDを診断する工程、又はaで得られる値が2.7MFIより大きいときにNASHを診断する工程を含む、方法である。
【0072】
NAFLD又はNASHに罹患している患者のNASスコアを診断するための方法は、
a.血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、当該値が、好適な蛍光色素で標識され、特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
c.a時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、1.0MFI、1.4MFI及び2.7MFIに等しい当該濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が1.0MFIのカットオフ値以上であり、かつ1.4MFIのカットオフ値以下であるときにNASスコア1、aで得られる値が1.4MFIのカットオフ値より大きいときにNASスコア2、又はaで得られる値が2.7MFIのカットオフ値より大きいときに、NASスコア3であると診断する工程を含み、
NASHの重症度のための方法は、
a.血液サンプル又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプルにおけるPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、好適な蛍光色素で標識され、当該値が特異的にPlin2に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定される工程、
c.a時点で得られる値と、2.7MFI、4MFI及び6.3MFIに等しい平均蛍光強度(MFI)の点で発現する当該濃度のカットオフ値とを比較する工程、
d.aで得られる値が2.7MFIのカットオフ値より大きく、かつ4MFIのカットオフ値以下であるときに軽度状態のNASH、aで得られる値が4MFIのカットオフ値より大きく、かつ6.3MFIの値以下であるときに中等症状態のNASH、又はaで得られる値が6.3MFIのカットオフ値より大きいときに、重症状態のNASHであると診断する工程を含む。
【0073】
このような方法は、
Alexa Fluor 488蛍光色素、又は上記表にて報告される特徴を有する蛍光色素を使用し、FC 500 cytofluorimeter(Beckman Coulter,Brea,CA)及びKaluza software(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用する一実施形態である。同様に、異なるカットオフであるC0~C7は、Plin2タンパク質の検出システム及び定量化システムを使用することにより定義され得る。
【0074】
上で表されるように、著者らはまた、驚くべきことに、NASHを診断するためのa時点における血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度の評価により、肝線維症が存在するかしないかを、及びその重症度を定義することができることを発見した。
【0075】
本発明において、肝線維症を定義する目的で、繊維化の位置及び拡大に基づき、ステージ1、ゾーン3の類洞周囲線維化;ステージ2、上で言及したステージ1を伴う門脈線維化;ステージ3、ステージ2に加えて架橋線維化;及びステージ4、肝硬変といったステージ決めを行うスコアシステムに基づき、文献(Kleiner DE,Brunt EM,Van Natta M,Behling C,Contos MJ,Cummings OW,et al.Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease.HEPATOLOGY 2005;41:1313-1321)にて使用されるのと同様の定義を使用する。NASH Clinical Research Network(NASH CRN)は、ステージ1を続いて3カテゴリに細分している。すなわち、ステージ1A、ゾーン3における軽度の類洞周囲線維化;ステージ1B、ゾーン3における中等症の門脈周囲線維化;及びステージ1C、門脈/門脈周囲線維化のみである。ステージ1Cの線維化は、小児又は重症肥満患者に時折観察される。
【0076】
【0077】
したがって、本発明はまた、上で報告される方法に適用されるさらなる工程を提供する。患者の血液サンプルからNASHが診断されると、同じサンプルから、又は当該患者のさらなる血液サンプルから、線維化の有無及びその病理学的ステージを診断することもまた可能である。
【0078】
線維化ステージ診断の工程はまた、本明細書及び特許請求の範囲に定義されるようにNASHに罹患している患者の血液サンプル上でも行われることができ、NASHの診断は、本発明において説明され、請求されるものとは異なる方法で実施される。
【0079】
したがって、工程eは、本明細書にて説明される実施形態のいずれかにおいて、NASHを有すると診断される患者の血液サンプル中、又はその血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定する工程e’により置き換えられることができ、工程gはしたがって、e’時点で得られる値と、f時点で得られるカットオフ値とを比較する、工程g’により置き換えられることができる。
【0080】
したがって、本発明の目的は、NASHのみを診断及び/又はその重症度を診断するための方法のいずれか1つであり、
e.NASHを診断するためのa時点における血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定する工程、
f.肝線維症に罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプル集団中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定し、肝線維症に罹患している患者と健常な患者の間の当該濃度のカットオフ値C8を同定する工程、
g.e時点で得られる値とf時点で得られるカットオフ値とを比較する工程、
h.e時点で得られる値が当該値C8より大きいときに、肝線維症を診断する工程、をさらに含み、又は工程e’、工程f、工程g’及び工程hを含む、肝線維症を診断する方法である。本発明の目的はまた、NASHのみを診断及び/又はその重症度を診断する方法のいずれか1つであり、
e.NASHを診断するためのa時点での血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定する工程、
f.肝線維症に罹患している患者及び健常な患者に由来する血液サンプルの集団中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定し、当該病態の重症度は、肝線維症の位置及び拡大に基づき、ステージ1、ステージ2、又はステージ3と組織的に定義され、
健常な患者とステージ1の肝線維症に罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C9、
ステージ1の肝線維症に罹患している患者とステージ2の肝線維症に罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C10、
ステージ2の肝線維症に罹患している患者とステージ3の肝線維症に罹患している患者間の当該濃度のカットオフ値C11、を同定する工程、
g.e時点で得られた値とf時点で得られたカットオフ値とを比較する工程、
h.肝線維症のステージを、
e時点で得られる値が当該値C9以上であり、かつ当該値C10より小さいときにはステージ1、
e時点で得られる値が当該値C10以上であり、かつ当該値C11以下であるときにはステージ2、
e時点で得られる値が当該値C11より大きいときにはステージ3と診断する工程、をさらに含み、又は工程e’、工程f、工程g’及び工程h’を含む肝線維症のステージを診断する方法であり、上記工程hのe時点に対する全ての参照は、必要な変更と共に、e’時点に対する参照へと変更される。
【0081】
本発明の目的はまた、肝線維症を診断するための方法、及びNASHを有すると診断される患者からの血液サンプル又は白血球細胞における、肝線維症のステージを診断するための方法は、上に説明される工程を含み、工程e及び工程gは、工程e’及び工程g’により置き換えられる。
【0082】
要約すると、本明細書にて定義されるPnpla3及びRab14濃度のカットオフ値は、
肝線維症に罹患している患者と健常な患者間のカットオフC8、
健常な患者とステージ1の肝線維症に罹患している患者間のカットオフC9、
ステージ1の肝線維症に罹患している患者と、ステージ2の肝線維症に罹患している患者間のカットオフC10、
ステージ1の肝線維症に罹患している患者と、ステージ3の肝線維症に罹患している患者間のカットオフC11である。
【0083】
上で言及したタンパク質の濃度値は、ウェスタンブロット、又は細胞蛍光分析、又はELISA、又は定量PCRにより測定され得る。
【0084】
特定の実施形態において、この濃度値は、好適な蛍光色素で標識され、Pnpla3に特異的に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体、及びRab14に特異的に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用して細胞蛍光分析により測定され、当該カットオフは平均蛍光強度(MFI)に関して表される。
【0085】
上に言及されるように、Pnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値は、例えば、以下の特徴を有する蛍光色素などのPlin2濃度の値を計算する、説明される全ての実施形態及びデバイスを使用することにより計算され得る。
【表5】
【0086】
したがって、一実施形態に従い、使用される蛍光色素は、上に定義される技術特徴を有するAlexa Fluor 488蛍光色素であり得、FC 500 cytofluorimeter(Beckman Coulter,Brea,CA)及びそのデータは、本出願の提出時に一般に入手可能である当該製品の技術的特徴を有する、Kaluza software(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用して分析され得る。
【0087】
本発明の著者らは、上に説明される方法に適用可能である特定のカットオフ(以下に定義される蛍光色素、ソフトウェア及びデバイスを有するMFIに関して本明細書では表される)が、コンピュータ処理され得ることを実証した(例部分を参照されたい)。
【0088】
したがって本発明の目的はまた、NASHのみを診断及び/又はその重症度を診断するための方法のうちいずれか1つであり、
e.a時点又はNASHを診断する時点での血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定する工程であって、当該値が、好適な蛍光色素で標識され、PNPLAに特異的に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体、及びRab14に特異的に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用する細胞蛍光分析により測定される、工程、
g.e時点で得られる値と、平均蛍光強度(MFI)に関して表される、1.24MFI以上のカットオフ値を比較する工程、
h.e時点で得られる値が1.24MFI以上であるときに、肝線維症を診断する工程、をさらに含み、
並びにNASHのみを診断及び/又はその重症度を診断するための方法のうちいずれか1つであり、
e.a時点又はNASHを診断する時点での血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度値を測定する工程であって、当該値が、好適な蛍光色素で標識され、PNPLAに特異的に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体、及びRab14に特異的に結合し、他のタンパク質には結合しないモノクローナル抗体を使用する細胞蛍光分析により測定され、当該カットオフが平均蛍光強度(MFI)の点で表される、工程、
g.a時点で得られる値と、1.24MFI、2.3MFI及び3.10MFIに等しい平均蛍光強度(MFI)の点で発現される当該濃度のカットオフ値を比較する工程、
h.e時点で得られる値が1.24MFI以上であり、かつ2.4MFIより小さいときに、軽度であるステージ1の肝線維症、e時点で得られる値が2.4MFI以上であり、かつ3.10MFIより小さいときに、ステージ2の肝線維症、及びe時点で得られた値が3.10MFI以上であるときに、ステージ3の肝線維症を診断する工程をさらに含む。
【0089】
この場合も同様に、本発明の目的はまた、肝線維症を診断するための方法、及びNASHを有すると診断される患者からの血液サンプル又は白血球細胞における、肝線維症のステージを診断するための方法は、上に説明される工程を含み、工程e及び工程gは、工程e’及び工程g’及び工程h’により置き換えられ、この場合、必要な変更と共に、上の工程hのe時点に対する参照の全ては、e’時点に対する参照へと変更される。
【0090】
上に報告される値は、Alexa Fluor 488蛍光色素、又は上記表にて報告される特徴を有する蛍光色素を使用し、Cytofluometer FC 500(Beckman Coulter,Brea,CA)及びKaluza software(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用することにより定義される。明らかに、異なる検出システムを使用することにより、他のカットオフ値は割り当てられ得る。
【0091】
当業者は、比較アッセイに関しては、他のデバイス及びソフトウェアを使用して計算されるカットオフにて、FC 500 Cytofluometer(Beckman Coulter,Brea,CA)、及びKaluza software(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用し、Alexa Fluor 488蛍光色素又は上記表にて報告される特徴を有する蛍光色素を使用することにより計算される、本明細書にて提供されるMFIの点で表されるカットオフにどのようにして適合するかをどのような方法であっても理解している。
【0092】
さらには、本発明は、患者におけるNAFLD又はNASHの治療的処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a.当該モニタリングが実施される瞬間t0において、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.1つ以上の瞬間tnにおいて、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプルにおけるPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、nは0より大きい整数であり、各tnはt0後の瞬間に対応しており、
1つ以上の当該瞬間におけるPlin2タンパク質の濃度における低下が、当該治療的処置の有効性を表す、工程を含む、方法を提供する。
【0093】
上に説明されるモニタリング方法の実行において、時間t0はモニタリングが開始する時間であり、これは治療の最初より前の瞬間に対応し得、又はそこからモニタリングが開始する瞬間であり、治療が開始されたときでもあり得る。
【0094】
瞬間tnは、値nが増加しながら互いに続く(互いの次の)瞬間であり、瞬間t0に続く瞬間である。
【0095】
したがって、瞬間t0はモニタリングが開始する瞬間であり、血液サンプル中のPlin2の濃度値は、治療有効性の評価が開始する値と見なされる。次いで、濃度の測定は、t0に続き1以後から進行して互いに続く(互いの次)時間で繰り返され、当該時間tnは、nが0より大きい整数であり、それによって瞬間t1は瞬間t3に先行する瞬間t2に先行し、これが継続する。
【0096】
t0時点で測定される値に対して、t0に続く時間で分析される患者の血液サンプル中のPlin2濃度の検出可能で有意な低下は、NAFLD又はNASHの改善において、治療的処置の有効性を表している。経時的な一定の値の維持は、NAFLD又はNASHを含有する治療的処置の有効性を表し、t0時点で測定される値に対する経時的な値の上昇は、治療的処置の無効を表している。
【0097】
場合によっては、薬理学的治療の実施前に、食事習慣およびライフスタイルの変更が患者に提案される。こうした場合、疾患の進行を経時的にモニタリングし、例えば食事習慣及びライフスタイルの変更が疾患にポジティブに影響しているかどうかを確認することが有用である。
【0098】
考えられる治療有効性の評価の有無に関わらず、どのような方法であっても疾患の経過をモニタリングすることは、治療を行う医師にとって関心対象となり得る。したがって、本発明の目的はまた、患者におけるNAFLD又はNASHの経時的な進行をモニタリングするための方法であって、
a.当該モニタリングが実施される瞬間t0において、NAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程、
b.1つ以上の瞬間tnにてNAFLD又はNASHに罹患している個体の血液サンプル又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプルにおけるPlin2タンパク質の濃度値を測定する工程であって、この場合、nは0より大きい整数であり、各tnはt0後の瞬間に対応している、工程を含み、
1つ以上の当該瞬間におけるPlin2タンパク質の濃度における低下が、NAFLD又はNASHの改善を表し、一方で1つ以上の瞬間tnにおけるPlin2タンパク質の濃度の上昇が、NAFLD又はNASHの悪化を表し、一方で経時的に一定の維持状態にある値が、疾患が停滞している状況を表す、方法である。
【0099】
治療的処置のモニタリングのために本方法の説明時に瞬間t0とtnについて説明される事項は、一般にはモニタリングのための方法に適用される。
【0100】
以下に説明される診断方法について全ての実施形態はまた、以下に説明されるモニタリング方法にも適用される。
【0101】
一般には、本明細書に説明される方法の実行時に、血液サンプルを器官などからも採取してもよいが、末梢血の使用が好ましい。
【0102】
特に、本明細書に説明される方法の実行においては、当該末梢血から単離される白血球細胞、さらに詳細には多形核細胞(多形核球)及び/又は単球におけるPlin2、Pnpla3、Rab14濃度の測定を実施することが好ましい。
【0103】
NAFLD又はNASHに関して上で示される有効性及び疾患の進行をモニタリングするための同様の方法は、必要な変更と共に、脂肪肝に罹患している患者の血液サンプル中のマーカPnpla3及びRab14濃度値として使用される、治療有効性及び脂肪肝の進行のモニタリング時に実施され得る。
【0104】
本発明はさらに、個体から採取した血液サンプル中のPlin2タンパク質濃度値及び/又はPnpla3タンパク質濃度値及び/又はRab14タンパク質濃度値の自動測定用デバイスを提供し、一般には、
血液サンプルからのPBMCの単離手段、
当該PBMCの細胞質中のPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質の濃度の測定手段、
得られた測定と、健常な個体から得られた値であり得る比較値、又は事前に得られる、同じ個体の血液サンプルからのPBMCの細胞質中のPlin2タンパク質及び/若しくはPnpla3タンパク質及び/若しくはRab14タンパク質の濃度の1つ以上の値を相関させる手段、を含む。
【0105】
上に言及されるように、本発明によるデバイスは、上に説明される検出技術のうち1つ以上により、個体から採取される血液サンプル中のPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質の測定を実施するために実行され得る。
【0106】
PBMCの単離及び溶解のために選択される技術によっては、上で言及した手段は、様々な変形例に従い実行され、そのうちのいくつかは以下に説明されるであろう。例えば、PBMC又は単球と選択的に結合する構成成分による分離形式の場合には、このデバイスは、
-血液サンプルを受容しやすい回収チャンバ;
-当該回収チャンバ内に含まれる混合手段であって、当該血液サンプルと、当該サンプル中に存在する多形核球(PBMC)に結合しやすい構成成分と、必要な場合には抗凝固物質とを混合させるように構成された、混合手段;
-当該混合手段により得られた混合物に、機械的振動及び回転応力を加え、当該混合物をろ過手段へと運搬するように構成された、移動手段;
-当該ろ過手段であって、当該多形核球(PBMC)に結合され、当該混合物の残りを溶出させることができる当該構成成分を保持するように構成された、ろ過手段、
-結合されている構成成分からの当該多形核球(PBMC)の単離手段であって、当該多形核球(PBMC)と当該構成成分との間の分離に有利であるように構成された、単離手段;
-当該単離手段により単離される多形核球(PBMC)の処理手段であって、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質が存在するときには、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質と、当該タンパク質に特異的な試薬とを結合可能とするように構成され、当該試薬が1つ以上の所定の波長で蛍光性を有する、処理手段;
-少なくとも1つの放射線源であって、例えば光波の形態で、当該試薬が蛍光を放出するように所定の波長にて放射線を放出するように構成された、放射線源;
-照射されたサンプルの画像を取得するための手段;
-コントロールユニット(7)であって、当該全ての手段及び当該放射線源(12)に接続され、所定の動作パラメータに従い、自動モードによりそれらの発動を制御及び同期するようにプログラムされ、当該コントロールユニットが、当該サンプル中に存在するPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度を定量するために当該画像を処理するようにさらに構成されている、コントロールユニット(7);を含み得る。
【0107】
当該コントロールユニットは、当該測定される濃度と、健常な対象の血液サンプル上で、及び/又は異なる瞬間に採取された同じ個体の血液サンプル上で実施される測定から得られた、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度の1つ以上の参照データとを比較するようにさらに構成される。
【0108】
一実施形態において、例えばPlin2タンパク質を参照すると、Plin2タンパク質濃度の当該参照データは健常な対象に関連するデータであり、当該コントロールユニット7は、サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータがPlin2タンパク質濃度の当該参照データより大きい場合には、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)状態を検出するようにさらにプログラムされている。
【0109】
上に説明されたものと類似する、Pnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度の程度は、肝線維症状態を検出し、任意でそれらの重症度を評価するために使用され得る。さらなる実施形態に従い、Plin2タンパク質濃度の当該参照データは、同じ患者に関連し、当該血液サンプルが検出される瞬間(tn)の前の瞬間(t0)にて検出されたデータであり、当該コントロールユニット7は、経時的に疾患の経過を検出するようにさらにプログラムされる。
【0110】
例えば、サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが参照データより大きい場合には、NAFLDの改善が検出され、
サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが参照データより小さい場合には、NAFLDの悪化が検出され、一方でサンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが参照データに等しい場合には、疾患の停滞が検出される。
【0111】
好ましくは、サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータは、2つのデータ間の差異が約0%~約5%であるときには、参照データと等しいと考えられる。
【0112】
デバイスの第1の好ましい実施形態及び第2の好ましい実施形態は、
図4及び
図5に例として例示される。
【0113】
一実施形態に従い、好ましくは抗凝血薬と既に混合される血液サンプルは、デバイス内の回収チャンバ3へと導入される。好ましくは、デバイス1は、当該血液サンプルが採取されることになる個体の皮膚に穴を開けやすい穿刺手段2を含むことができる。例えば、穿刺手段2は、指先で患者の皮膚に穴を開けるのに好適であり得る。当該穿刺手段は、特に、例えば針といった尖った端部を有する、少なくとも突出した終端要素を含む。穿刺手段2は、デバイス1の外部表面に支持され、使用しない状態では最小限の負担にしかならない構成をとることができるように、構成かつ関節運動することができる。この中で、尖った要素はデバイス1の外部表面に面し、使用構成では、尖った要素はデバイス1の外部表面に対向する方向に面する。好ましい一実施形態において、穿刺手段2は、マイクロメートルといったサイズを有する複数の針を含み、それ以外の場合には「マイクロニードル」と呼ばれる。有用には、マイクロニードルは、患者から血液サンプルを採取するのに好適な尖った要素の母型を形成するように、互いに対して配置され得る。そのように配置されたマイクロメートルサイズにより、血液サンプルの抽出を促進させるように、複数の皮膚の穿刺を実施することが可能となる。
【0114】
本明細書に従うデバイスが、血液サンプルを得るための穿刺手段2を直接含むときには、血液サンプルが得られると、これは上で言及した手段2にて集められ、次いで好適な流体接続手段又は運搬するための手段4によりデバイス1内の回収チャンバ3へと運搬される。このような運搬は、血液サンプルの吸引により生じ得る。特に、吸引は、穿刺手段2にそれぞれの吸引口を有する、運搬するための手段4により実施される。特に、運搬するための手段4は、シリコーン製ダイヤフラムポンプ型、又は真空マイクロポンプ型であってもよい。好ましくは、ダイヤフラムポンプが以下の寸法、すなわち、
-0.6mmに等しい高さ、
-5mmに等しい幅、
-5mmに等しい長さ、を有し得る。
【0115】
したがって、ダイヤフラムポンプは、容易に移動させるには十分小型であり、デバイスはほぼかさばることなく、軽量かつ運びやすい。
【0116】
運搬するための手段4はさらに、回収ダクト又はカニューレ、サンプルを抗凝血薬と接触させることができる、例えばゴム製カテーテルをさらに含むことができる。
【0117】
代替的には、本明細書にて説明されるデバイスにより独立して抽出されるサンプルは、好ましくは抗凝血薬を用いて処理した後に、回収チャンバへと直接注入され得る。
【0118】
代替的な一実施形態において、サンプルは、抗凝血薬と接触させる前に回収チャンバ3へと導入又は運搬される。
【0119】
好ましくは、デバイス1は、血液サンプルから多形核球(PBMC)を単離する手段14、5、6、19を含む。
【0120】
本発明による、単離手段14、5、6、19は、好ましくは回収チャンバ3へと挿入され、当該血液サンプルと、PBMCを単離しやすい構成成分又は構成成分の群とを混合するように構成される混合手段14を含み得る(「PBMCの単離手段」としても本明細書にて定義される)。例えば、当該構成成分の群は、当該サンプル中に存在する、多形核球(PBMC)に結合しやすい構成成分を含むことができ、必要な場合には(すなわち、当該血液サンプルが、抗凝血薬で未だ処理されていないときには)、抗凝固物質を伴うことができる。
【0121】
本明細書に説明されるデバイスの実行においては、当該構成成分は例えば、CD3+T、したがってPBMCに結合するPBMC-特異抗原に対する抗体に上で結合されている好適なマイクロビーズ(例えば、PluriBead(登録商標)又はDynabeads(登録商標)タイプの技術)により表されてもよい。
【0122】
デバイス1は、それぞれ抗凝血薬、及び多形核細胞(多形核球)に結合することができる構成成分を保持している第1容器s1、及び/又は第2容器s2をさらに含み得る。各容器s1、s2は、それぞれの送達手段15を好ましくは含む。
【0123】
さらに、単離手段14、5、6、19は、以下に説明される移動手段5、及びろ過手段6を含み得る。
【0124】
混合することにより、PBMCは上で言及した構成成分に結合する。得られる混合物は、好ましくは回収チャンバ3内部に含まれる専用の移動手段5の作用により生じる、機械的振動及び/又は回転応力に供される。特に、移動手段5は、そのようにして得られる混合物を上に運搬する、少なくとも1つの回転コンベヤベルト及び/又は振動コンベヤベルトにより実装され得る。
【0125】
手段5による混合物の応力、又は混合物の撹拌は、所定の持続時間にわたり操作される。これは、5~20分間、5~15分間、例えば約10分間に相当する時間であり得る。持続時間は、例えば好ましくは同じ移動手段5に接続されるタイマーTによって測定され得る。続いて混合物は、好ましくは同じ移動手段5によってろ過手段6へと運搬され、さらにより好ましくは、この運搬はコンベヤベルトにより実行される。
【0126】
好ましい変形実施形態に従い、ろ過手段6は、例えばろ過コンベヤベルトの形態にて移動手段5に統合され得る。換言すれば、運搬される混合物が上に配置されるコンベヤベルトの作動面は、ろ過用材料から作製され得る。ろ過手段6は、PBMC結合構成成分を保持し、混合物の残りを溶出させるように構成され、これは事実、上で言及した構成成分に結合されるPBMCの単離を促す。この目的のために、ろ過手段6(PBMCを単離しやすい構成成分の群に属する)は、例えばPBMC結合構成成分の通過を防ぎ、代わりに混合物の残りを通過させるための所定の部分の通過口を有する。
【0127】
ろ過手段のカットオフという選択は、PBMC結合構成成分のサイズに応じて、当業者により容易に実行され得る。加えて、ろ過のカットオフは、様々な血液サンプル細胞及び上で言及した構成成分に結合しない構成成分を溶出させ、構成成分-PBMC複合体を保持するように選択されるべきである。一実施形態において、PBMC特異的抗抗原抗体と結合したマイクロビーズを使用するときには、ろ過手段はビーズ径に基づき選択されるカットオフを有するであろう。例えば、約30μmの径を有するビーズにとって、ろ過手段は、細胞結合ビーズを保持させ、より小さな径を有するもの全てを溶出させるようなカットオフを有するであろう。市場で既に入手可能である試薬を使用したい場合には、ろ過手段6は、市場で現在入手可能である、pluriStrainer(登録商標)型の技術により実行され得る。
【0128】
有用には、単離手段14、5、6、19は、当該多形核球(PBMC)と当該構成成分との間の分離に有利であるように構成されている、結合されている構成成分からの当該多形核球(PBMC)の分離手段19を含み得る。
【0129】
有利には、分離手段19は、ろ過膜型又は緩衝液型であり得る。
【0130】
ろ過手段6上に保持される構成成分-PBMC化合物は、PBMCのみを単離する手段、又は分離手段19で処理される。それらの結合する構成成分からのPBMCの単離又は分離は、例えば、PBMCとそれらが結合されている構成成分間の結合を破断に有利となりやすい特定の緩衝液(脱離緩衝液)を使用して実施され得る。したがって、デバイスはそれらが結合されている構成成分からPBMCを脱離するのに好適な溶液である送達手段を含むことができる。
【0131】
そのように単離されたPBMCは、例えば、管又はカテーテルを含む回収手段9により分析チャンバ11へと運搬される。当該分析チャンバ11は、例えば細胞膜用の溶解緩衝液など、PBMC細胞質を曝露させるための手段を好ましくは含む。変形実施形態に従い、細胞質の曝露は、回収チャンバ3へと直接実施される。
【0132】
代替的には、本明細書にて説明されるものに対し、血液サンプル中のPBMC分離を得る目的で、PBMCを単離しやすい構成成分の群は、PBMCにおいて忌避作用を有し、それによりそれら(Avivabio(登録商標))を単離可能である微小電気機械システム、又は精密濾過パリレン膜を含み得る。当該膜は、最大36mm2のろ過表面、及びわずかなマイクロメートルにまで減少された限界寸法を有する、異なる幾何学形状の孔(例えば、円形、楕円又は矩形)を有する約7%~15%の多孔度を有することができる。加えて、PBMCは、電解ニッケルめっき技術又は紙製若しくはプラスチック材料製シートを介したろ過により、血液サンプル中で分離され得る。
【0133】
PBMCを単離した後、これらは、例えば、色素結合検出システム、特に蛍光色素結合検出システムといった、1つ以上の所定の波長にてタンパク質の存在を可視化し、定量化することができる手段により、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度を測定するように処理される。これは、好ましくは分析チャンバ11へと含まれ、当該特性を呈している又はシグナル伝達している構成成分に、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質への結合を行うように構成される処理手段16により、得られ得る。一実施形態において、PBMCサンプルは、細胞質Plin2溶解用の緩衝液で処理され、好ましくは、例えばAlexa Fluor(登録商標)488などの例えば蛍光二次抗体といった所定の波長で蛍光する試薬に結合される抗Plin2モノクローナル抗体と反応する。こうして、蛍光二次抗体はPlin2に関連付けられる。デバイス1は、抗体を保持する第3容器s3をさらに含み、これは当該抗体のそれぞれの送達手段15を含む。さらには、デバイス1は、分析チャンバ11内部に収容される分光器を含む。好ましくは、分光器は1つの放射線源12、及び画像を取得するための手段13を備え、この両方は、例えば分析チャンバ11(又は回収チャンバ3)内部に収容され、単離され処理されるPBMCの沈着面に面している。供給源12は、当該沈着面に放射線を放出し、当該放射線は、蛍光色素結合抗体が可視化(又は特定の着色をされると想定)されるように、したがって、目視での検査によりPlin2を選抜することが可能となるように、所定の波長を有する。一実施形態において、放射線源12は、340nm~780nmの波長にて放射線を放出するように構成されている。好ましくは、放射線源は、488nmの波長で放射線を放出することができる。供給源12は、レーザ精密蛍光計又は市場で入手可能な他の類似のデバイスを含み得る。
【0134】
有利には、分光器11は以下の寸法、すなわち、
-15mm~25mm、好ましくは20.1mmに等しい高さ、
-7mm~18mm、好ましくは12.5mmに等しい幅、
-5mm~15mm、好ましくは10.1mmに等しい深さ、を有し得る。
【0135】
したがって、分光器11の負担は妥当なものであり、デバイス1は持ち運びが容易となるであろう。
【0136】
当業者は、文献における簡単な情報に基づき、関心対象の蛍光色素を検出するのに必要とされる波長を知るであろう。加えて、デバイスは様々な波長を放出することができるように製造され、したがって当該デバイスを特定かつ特異的な蛍光色素に結合させることがなく、これにより様々な色素の検出が可能となる。
【0137】
放射線源12を起動させると、画像を取得するための手段13は照射されたサンプルの画像を取得するように操作される。ここではPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質が検出可能であり、とりわけ定量化(定性化)することができる。
【0138】
デバイス1は、上に説明される手段及び構成要素の全てに接続され、所定の動作パラメータに従い、自動モードによりそれらの発動を制御及び同期させるようにプログラムされたコントロールユニット7を好ましくは含む。当該動作パラメータは、上に説明される手段/構成要素のそれぞれの起動の持続時間、並びに血液サンプルの圧力及び/又は吸引速度、それらの運搬する(運搬)速度、それぞれの容器s1、s2、s3から送達される、抗凝血薬の量/PBMCの単離構成成分の量/蛍光試薬の量/抗Plin2抗体の量、及び/又は放射線源の波長を含み得る。加えて、コントロールユニット7は、ユーザがデバイス1の起動を制御し、及び/又は上で言及した動作パラメータを変更/選択することができるように構成される、インタフェース手段8を包含し、又はこれに接続され得る。当該インタフェース手段8は、少なくとも1つのデバイス1の電源ボタンを含み得る。
【0139】
さらに、コントロールユニット7は、Plin2及び/又はPnpla3及び/又はRab14の存在を同定し、手段13により取得される画像中のタンパク質を定量化するようにプログラムされた画像処理マイクロプロセッサを含み得る。加えて、マイクロプロセッサは、取得される画像及び当該データの出力中に検出されるPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度を定量化するようにプログラムされ得る。出力データは、例えば、デバイス1自体に包含される有線接続手段又は無線接続手段により、外部の電子デバイス、又は例えばディスプレイを含む上で言及したインタフェース手段8に統合され得るディスプレイ手段へと伝送され得る。
【0140】
本発明のデバイス1であり、特にコントロールユニット7のマイクロプロセッサは、手段13により取得される画像の分析により得られるPlin2タンパク質濃度の参照データと、健常な対象に関連するPlin2及び/又はPnpla3及び/又はRab14であり得るPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度の参照データ(簡略化のため、ここでは参照データとする)とを、自動的に比較するように、さらに好ましくはプログラムされることができる。この場合、デバイスは専用の診断機能を有する。
【0141】
上で言及した参照データはまた、メモリモジュールに保存されることができる。例えば、このメモリモジュールは中央ユニット7中に包含され、マイクロプロセッサに接続されている。この中で、疾患の進行を追跡し続ける、又は治療的処置の有効性を評価する目的で、分析が実施されている同じ患者におけるPlin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度のデータは保存され、デバイス自体により予め検出される。
【0142】
特に、インタフェース手段は、その中でPlin2及び/又はPnpla3及び/又はRab14濃度の値のパターンが示され、時間の関数として検出されるグラフを表示するように構成され得る。
【0143】
さらに、インタフェース手段8は、分析により得られたPlin2タンパク質及び/又はPnpla3及び/又はRab14濃度のデータと、参照データとを比較した結果に従い、所定のカラーコードに従い、視覚信号を自動的に表示するように、及び/又は音響信号を再生するように構成され得る。
【0144】
例えば、Plin2タンパク質を参照して、疾患の進行のモニタリングを実施するときに、サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが参照データより小さい場合には、NAFLDの改善を検出する。これは緑色の光の点灯に対応し得る。代わりに、サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが参照データより大きい場合には、NAFLDの悪化を検出する。これは赤色の光の点灯及び/又は音響アラームの再生に対応し得る。加えて、サンプル分析から得られたPlin2タンパク質濃度のデータが参照データに等しい場合には、疾患の停滞を検出する。これは黄色の光の点灯に対応し得る。
【0145】
診断使用の場合、類似のシステムを使用することが可能である。
【0146】
さらに、同じインタフェース手段8により、異なる参照データを変更及び/又は選択すること、及び/又は光の設定/音響信号の表示設定/自動再生設定を変更することが可能である。
【0147】
好ましくは、デバイス1は、病院又は医療センターに対して割り振られる場所においてもまた、Plin2タンパク質及び/又はPnpla3タンパク質及び/又はRab14タンパク質濃度の測定を可能とする目的で、運搬されるように実装される。特に、デバイス1は、例えば、充電式電池及び/又は光起電若しくは風力充電デバイスなど、デバイス自体を独立型デバイスとすることを可能とする、それ自体の電力供給手段を含むことができる。
【0148】
考案されたデバイスは、特に穿刺手段2、分光器及びポンプ4のサイズなど、様々な構成要素のサイズに関連する多数の利点を伴う。このようにサイズ決めされた当該構成要素の組合せにより、運搬用デバイス1が軽量であり負担を低減されていることから、容易に持ち運ばれて使用されることが可能となる。
【0149】
説明される事柄に従い、どのような理由で運搬用デバイスが、Plin2タンパク質濃度に加え、好適な適用及び当業者の到達できる範囲内である必要な変更を伴いつつ、血清/血漿又はPBMC中の他の種類のタンパク質濃度の測定をも可能とするのに適切であると理解され得るかが理解されるであろう。
【0150】
この点については、デバイス1は、他のバイオマーカにこのデバイスを適合させるように構成された、好ましくは「プラグイン」ユニットといった接続ユニットを含み得る。
【0151】
代替的な実施形態によれば、デバイスはそれらの間で離間された複数の分析チャンバ11を含み得る。各チャンバは、Plin2、Pnpla3及びRab14の中から選択される異なるタンパク質の血液サンプル中の濃度を測定するように構成されている。
【0152】
したがってこのデバイスは、異なるタンパク質の濃度を決定することが可能であり、これにより、上にて説明されるように、異なる病態の発生及びそのグレードを決定することが可能であることから様々な目的で使用される。
【0153】
好ましくは、デバイスはコントロールユニット7に動作可能に接続され、血液サンプルを、決定されたタンパク質濃度に基づき選択される正確な分析チャンバ11へと送るように構成される、選択手段を含み得る。選択手段は、コントロールユニット7により制御されることが可能であり、このコントロールユニット7は、決定されるタンパク質濃度に関する情報を含有する入力データを送信するように構成されている。上で言及した入力データに基づき、選択手段は、血液サンプルをある特定の分析チャンバ11へと向きを変更して導入する。
【0154】
有利には、このデバイスは、以下に報告される1つ以上の例に従い、コンピュータプログラムを実行するように構成されている少なくとも1つの処理ユニットを含み得る。
【0155】
有用には、処理ユニットはコントロールユニット7に動作可能に接続され得る。このようにして、このデバイスは分析チャンバ11内で検出されるデータを使用し、以下に説明される1つ以上のコンピュータプログラムを実行することができる。
【0156】
本発明のデバイスは、例えば、意図される使用、及び本明細書にて説明及び請求されるようなものの中で実行したいと希望する方法に従い、以下にて説明されるように、好適なコンピュータプログラムを実装することができる。
【0157】
したがって、本発明の目的は以下に列挙されるコンピュータプログラムである。
【0158】
分析される個体におけるNAFLD及び/又はNASHを診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される当該個体の血液サンプル又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、並びにタンパク質濃度のうち本明細書に定義されるような第2値C0及び第3値C1が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
当該第1値と当該第2値及び第3値を比較する工程、並びに
当該第1値が当該値C0以上であり、かつ当該値C1より小さいときにNAFLDを診断する工程、又は当該血液サンプル中の当該第1値が当該値C1以上であるときにNASHを診断する工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【0159】
分析される個体におけるNASスコアを診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される当該個体の血液サンプル又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、並びに本明細書に定義されるようなPlin2タンパク質の濃度の第2値C3、第3値C4及び第4値C5が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
当該第1値と、当該第2値、当該第3値、当該第4値とを比較する工程、並びに
当該第1値が当該カットオフ値C2以上であり、かつ当該カットオフ値C3以下であるときにNASスコア1、
当該第1値が当該値C2より大きく、かつ当該カットオフ値C4以下であるときにNASスコア2、
当該第1値が当該値C4よりも大きいときにNASスコア3といったようにNASスコアを診断する工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【0160】
分析される個体におけるNASH重症度を診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される当該個体の血液サンプル中又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、並びに本明細書に定義されるような当該Plin2タンパク質の濃度の第2値C5、第3値C6、第4値C7が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
当該第1値と、当該第2値、第3値、第4値とを比較する工程、並びに
当該第1値が当該値C5より大きく、かつ当該値C6より小さいときに軽度、
当該第1値が当該値C6より大きく、かつ当該値C7より小さいときに中等症、
当該第1値が当該値C7よりも大きいときに重症といったようにNASH重症度を診断する工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【0161】
分析される個体における肝線維症を診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される当該個体の血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の第1濃度値、並びに請求項11に定義されるように、Pnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の第2濃度値C8が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
当該第1値と当該第2値とを比較する工程、及び
当該第1値がC8より大きいときに肝線維症を診断する工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【0162】
分析される個体における肝線維症のステージを診断するための診断するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、分析される当該個体の血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の第1濃度値、並びに本明細書に定義されるように、Pnpla3タンパク質及びRab14タンパク質の濃度の第2値C9、第3値C10、及び第4値C11が提供されたときに、以下の工程、すなわち、
第1値と当該第2値、当該第3値、当該第4値とを比較する工程、及び
当該第1値が、当該値C9以上であり、かつ当該値C10より小さいときにステージ1、
当該第1値が、当該値C10以上であり、かつ当該C11以下であるときにステージ2、及び
当該第1値が当該値C11よりも大きいときにステージ3といったように当該線維症スコアのステージを診断する工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム。
【0163】
代替的には、NAFLD、NASスコア、NASH、NASHの重症度を診断するための、上に説明されるコンピュータプログラムは、肝線維症及び/又は肝線維症ステージを診断するための、2つの上に説明される指示一覧のうち、1つを含み得る。
【0164】
本発明の目的はまた、患者におけるNAFLD又はNASHの治療的処置の有効性をモニタリングするためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、瞬間t0における当該患者の血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、及びt0の次の瞬間における、当該患者の血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第2濃度値を提供するときに、以下の工程、すなわち、
当該第1値と当該第2値を比較する工程、及び
当該第2値が当該第1値より小さい場合には、当該治療的処置の有効性を検出する工程、を含む工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラム、
並びに患者におけるNAFLD又はNASHの進行をモニタリングするためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上にて実施され、瞬間t0において当該患者の血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第1濃度値、及びt0の次の瞬間における、当該患者の血液サンプル中、又は当該血液サンプルから抽出した白血球細胞のサンプル中のPlin2タンパク質の第2濃度値を提供するときに、以下の工程、すなわち、
当該第1値と当該第2値を比較する工程、及び
当該第2値が当該第1値より小さい場合には、NAFLD又はNASHの改善を検出する工程、
当該第2値が当該第1値より大きい場合には、NAFLD又はNASHの悪化を検出する工程、
当該第2値が当該第1値とほぼ等しい場合には、NAFLD又はNASHの停滞を検出する工程、を含む工程を実行する指示の一覧を含む、コンピュータプログラムである。
【0165】
本発明の目的は、上に説明及び請求されるいずれかの実施形態中のデバイスであり、これはまた、上に説明される例のうち1つ以上に従い、コンピュータプログラムを実行するように構成されている少なくとも1つの処理ユニットをも含む。
【0166】
有用には、処理ユニットはコントロールユニット7に動作可能に接続され得る。このようにして、このデバイスは分析チャンバ11内で検出されるデータを使用し、上に説明される1つ以上のコンピュータプログラムを実行することができる。
【0167】
本発明の目的はまた、本発明の目的である方法を実行するために、上に説明される実施形態のうちいずれか1つにおいてデバイスを使用することである。
【0168】
最後に、本発明の目的は、本明細書に説明されるモニタリングが実施される、NAFLDに罹患している患者の処置のための治療方法である。
【0169】
例
方法
NAFLDに罹患している男女19人の肥満対象(10人の女性及び9人の男性、その平均年齢は38.5±1.9歳、及びBMIは36.79±4.43kg/m2)を登録し、減量手術を施した。登録時に12時間夜間絶食した後、EDTAを添加した末梢静脈血の採取を実施した。患者は、研究及び外科的介入に対するインフォームドコンセントに署名した。
【0170】
全ての対象に対し、既往歴を集めた。身長測定、体重測定、及び人体測定を含む客観的試験も実施した。体重(kg)を身長(m2)で割り、ボディマス指数(BMI)を計算した。使用される薬物の詳細な一覧を集めた。
【0171】
除外一覧は、(1)定期的及び/又は過剰なアルコール摂取(女性の場合、1日あたり20g超のアルコール、男性の場合、1日あたり30g超のアルコール)、(2)医原性胃腸管疾患又は免疫不全疾患(HIV感染症)に続発するNAFLDの臨床的エビデンス、(3)B型肝炎若しくはC型肝炎を含む非NAFLD肝疾患、又はヘモクロマトーシス、(4)ウィルソン病、(5)糖原病、(6)α-1アンチトリプシン欠乏、(7)自己免疫性肝炎、(8)胆汁うっ滞製肝疾患、(9)関連する心血管、胃腸管若しくは呼吸器疾患、又は任意のホルモン障害、(10)非代償性肝疾患の臨床的エビデンス(7点超のチャイルド・ピュー分類)、(11)麻薬乱用状態にある、(12)関連する全身性疾患、(13)妊娠、である。
【0172】
外科手術中に肝生検を得た。
【0173】
全ての対象は、血中インスリン及び糖値(血糖)を測定するため、0分時点、30分時点、60分時点、90分時点、120分時点、150分時点、及び180分時点で回収される、経口糖負荷試験を受けた。OGTTからインスリン感受性を計算することが可能な方法であるOGIS(経口グルコースインスリン感受性の頭字語)として、インスリン感受性を測定した。OGISは、クランプ法により得られるインスリン感受性指数と類似する指数を得た(Mari A,Pacini G,Brazzale AR,Ahren R.Comparative evaluation of simple insulin sensitivity methods based on the oral glucose tolerance test.Diabetologia 2005;48:748-751)。
【0174】
肝臓組織学
ホルマリン下に置かれた肝生検を60%イソプロパノールで完全に洗浄し、次いでこれを気化させた。オイルレッドO(ORO)溶液を10分間加え、次いでこれを除去し、サンプルを水で4回洗浄した。オイルレッドOの除去時に、この断片を100%イソプロパノール中でインキュベートした。単球もまた同じORO染色に供した。
【0175】
次いで適切なフィルタを装着したLSM510共焦点顕微鏡の下でサンプルを観察した。
【0176】
さらに、脂肪症の割合を評価する目的で、10%ホルマリンで固定し、パラフィンブロックに含まれ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された断片から調製した外科手術中に得られた生検部分を保管用スライドガラス上へと取り付けた。スライドガラスの読取りを、盲目条件下にて、肝臓における解剖病理学者が実施した。
【0177】
Brunt分類(Brunt EM,Janney CG,Di Bisceglie AM,et al.Nonalcoholic steatohepatitis:a proposal for grading and staging the histological lesions.Am J Gastroenterol.1999;94:2467-2474)を使用し、組織学的スコアリング及びNAFLD/NASH(非アルコール性脂肪肝炎)ステージを評価した。特に、脂肪症を以下のスコア:0、存在せず(1%未満);1、1~25%;2、26~50%;3、51%~75%;及び4、75%超の小葉中の脂肪で定義した。炎症は以下のスコア:1、軽度(リンパ球が単離(散乱)又は門脈管内部及び小葉における小さな形成へと凝集);2、中等症(グレード1と同様、大きな門脈及び小葉浸潤は未だなし);3、重症(グレード2と同様、著しい炎症は未だ見られず)を得た。線維化を、存在しないときには0、小葉中心の細胞周囲に見られるときには1、門脈周囲及び細胞周囲に見られるときには2、架橋線維化では3、及び肝硬変では4としてステージ分類した。
【0178】
単球の単離
Ficoll-Hypaque(GE Healthcare Bio-Sciences,Piscataway,NJ)における標準的な勾配遠心分離により、全血からPBMCを得た。次いでPBMCを洗浄し、Pan Monocyte Isolation Kitにより単球を単離した。
【0179】
肝細胞の単離
肝生検断片を細かく刻み、HBSS中で洗浄して血液の痕跡を除去した。次いで、EGTA緩衝液(HBSS、0.5mM EGTA、0.5%BSA)を含有する50mLの試験管へと移し、37℃に維持して水浴させながら10分間100rpmで撹拌した。次いでこの組織を消化緩衝液(HBSS、0.05%コラゲナーゼIV、脂肪酸を含まない0.5%のBSA、10mMのCaCl2)へと入れ、37℃に維持して水浴させながら10分間100rpmで撹拌した。上清を回収し、100μmの細孔フィルタに通してろ過し、細胞懸濁液を4℃にて5分間80rpmで遠心分離にかけ、この上清を廃棄した。
【0180】
脂肪滴の染色
単離した単球及び肝細胞を、4%ホルマリンと共に20分間インキュベートし、ナイルレッド(100ng/mL)で染色した。核をDAPIで染色した。
【0181】
Crest X-Light Confocal Imager(Germany)といったスピニングディスク共焦点顕微鏡で写真を撮影し、MetaMorph Microscopy Automation&Image Analysis Software(Molecular Devices)で画像を分析した。
【0182】
Plin2測定
単球及び肝生検を、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するRIPA緩衝液でホモジナイズした。ホモジナートを4℃で30分間13,000rpmで遠心分離にかけた。タンパク質含有量を、ブラッドフォードタンパク質アッセイ(Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA)で測定した。タンパク質溶解物(30μg)を10%SDS-PAGEで分離させ、PVDF膜に移した。膜を抗Plin2抗体(LS-BIO,Seattle,WA)及び抗-βアクチンで一晩インキュベートした。Chemidoc XRS Imageシステム及びImage Lab 5.0ソフトウェア(Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA)を用いて、定性-定量分析を実施した。全てのデータを、βアクチンレベル(8H10D10)について正規化した。
【0183】
統計
特段指定しない限り、データを平均±SDとして表す。スピアマンの相関を使用し、2変数の相関度を測定した。ブランド-アルトマンプロットにより、2つの方法間の一致を測定した。ブランドーアルトマンの結果は、2つの方法(単球中及び肝臓中のPlin2レベル)で得られる差異及び平均値を示す。2つの方法間の差異の標準偏差(SD)は、SDバイアスである。許容範囲は平均バイアス、すなわち2測定方法間の差異の平均は、SDバイアスの±1.96として測定された。
【0184】
方法の感度及び特異性を、ニューラルネットワーク分析により研究した。ニューラルネットワーク分析のパラメータを以下に報告する:2つの入力層が使用される、すなわち、単球中のPlin2及び対照の年齢である。6ユニット及び双曲線(正接)活性化関数を含有する1つの隠れ層のみ。出力層は従属変数、すなわちNASレベルである。活性化関数:Softmax、誤差関数:交差エントロピー。
【0185】
ニューラルネットワーク分析は、ROC(受信者操作特性)曲線の曲線下面積(AUC)を提供する。ROC曲線は、X軸上に感度を有し、Y軸上には誤検出数(1-特異度)を有する。1に最も近いAUCは、この試験の最高の予測値である。統計分析を、SPSSバージョン13により実行した。
【0186】
結果
脂肪肝のグレードを、肝生検により、かつ上に定義されるNAFLD活動スコア(NAS)、NAFLDのグレードを定義する組織学的方法で評価し、試験される全ての患者の脂肪症グレード平均は、2.42±1.17であり、対象は1~4の脂肪症グレードを呈した。
【0187】
単球中でも異所的な脂肪蓄積が生じることを実証する目的で、ナイルレッドを使用して肝生検及び単球を染色した(
図1、パネルA)。単球においては、脂質はより大きな滴へと凝集する。
【0188】
単球中のPlin2発現は、肝臓中のPlin2発現と強く正に相関する(R=0.84、P<0.0001)。ウェスタンブロットによるPlin2タンパク質発現の一例を、
図1のパネルBに報告する。
【0189】
図2は、同じ対象の肝臓部分及び単球中のORO染色を代わりに報告する。
【0190】
肝臓中のPlin2レベルは、脂肪肝のグレードと良好に相関し(R=0.91、P<0.001)、単球中のPlin2レベルは、脂肪肝のグレードと良好に相関する(R=0.89、P<0.001)。
【0191】
図3は、2つの投与方法、すなわち単球中及び肝臓中のPlin2レベルを比較するブランドーアルトマングラフを報告する。2つの測定で得られた値間の差異はY軸上にて報告されるが、一方で平均はY軸上に存在する。点線は、2つの測定間の95%の一致境界線を報告する。グラフは、全ての点が一致境界線内部に存在することを実証するが、これは本発明の方法が有効であることを意味している。
【0192】
または、平均蛍光強度(MFI、
図4)として表される細胞蛍光分析により単球中で測定されるPlin2レベル、及びウェスタンブロットにより測定されるPlin2レベル間には良好な相関が存在することも見いだされた(R=0.92、P<0.0001)。
【0193】
48.88±5.80(SEM)であるPBMC中のPlin2レベル(MFI)は、42.90±5.77(SEM)である単球中のレベルと優れた相関(R=0.98、P=0.0004)を実証する。
【0194】
非アルコール性脂肪性肝疾患の重症度とPlin2レベルとの相関の証拠として、肝臓中及び単球中の両方のPlin2レベルは、OGISとして表されるインスリン感受性と非常に良好に逆相関することが見いだされており、単球についての回帰式は、
OGIS=44.59*Plin2+411.3であり、
0.91のR2およびP<0.0001を伴う。
【0195】
OGISは経口グルコースインスリン感受性指数の頭字語であり、測定単位としてmL×分-1×m-2を有する。Plin2を、β-アクチン基準タンパク質に関連する単位で、ウェスタンブロットにより測定する。
【0196】
患者の分析
NASHが疑われる91人の対象が肝生検を受けたが、一方で標準的なボディマス指数を有する21人の対象は待機的胆嚢摘出術を受け、手術中に肝超音波陰性試験(対照)は、肝臓のコア生検を受けた。年齢範囲は18~67歳であり、55%が女性で45%が男性であった。
【0197】
組織学的試験は、NAFLD活動スコア(NAS)の様々なステージにハイライトした。
【0198】
細胞蛍光分析により分析される循環単球中のPlin2レベルを使用し、NASを予測した。
【0199】
対照のうち、一方はNAS=0であり、もう他方はNAS=1であった。
【0200】
細胞蛍光分析
Plin2に対するモノクローナル抗体を、LS-BIO(Seattle,WA)から得て、フルオロフォア結合された二次モノクローナル抗体であるAlexa Fluor 488をLife Technology(Carlsbad,CA)から、抗CD14-ECD抗体をBeckman Coulter(Brea CA)から得た。
【0201】
単球を、抗CD14-ECD抗体を使用することで同定し、全ての多形核球中の単球集団を同定するのに使用した。以下に報告されるように、標準的な技術により単球を固定及び透過処理した。
【0202】
1部の固体/透過濃縮物を、3部の固定/透過希釈剤と混合させた。細胞ペレット(2×106細胞)を、300μLの1倍透過処理緩衝液に再懸濁させ、45分間4℃加温してインキュベートした。これを1倍のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して遠心分離にかけ、細胞を100μLの1倍のPBSに再懸濁させた。懸濁液中の細胞を、2つの試験管(それぞれ50μL)へと細分した。
・試験管1:懸濁液中の細胞をIgG抗体Alexa Fluor 488(1:2000)で、20分間室温にて暗所で染色した。この試験管は陰性対照である。
・試験管2:懸濁液中の細胞を、抗Plin2(50μl中1μl)で染色し、次いでIgG抗体Alexa Fluor 488及び抗CD14-ECD抗体(50μl中4μl)で、20分間室温にて暗所で染色した。
【0203】
これを洗浄して遠心分離にかけ、500μLの1倍PBSに再懸濁させた。次いで細胞蛍光分析に進む。
【0204】
したがって、単球を、Plin2に対するモノクローナル抗体及び抗Plin2抗体に結合しているフルオロフォア結合二次抗体(Alexa Fluor 488)を使用して、Plin2に染色した。
【0205】
細胞蛍光分析に使用する装置はFC 500(Beckman Coulter,Brea,CA)であり、Kaluza software(Beckman Coulter,Brea,CA)でデータを分析した。
【0206】
Plin2検出を、細胞蛍光計の光ダイオードにより獲得され、平均蛍光強度(MFI)に関して変換される信号を生成する蛍光トレーサにより得る。
【0207】
MFIは、タンパク質の定量化を可能とする細胞抗原(この場合はPlin2)を認識し、これに結合する抗体の数に比例している(Mizrahi O.,Shalom E.I.,Baniyash M.,Klieger Y.Quantitative flow cytometry:concerns and recommendations in clinic and research.Cytometry B Clin Cytom.2017)。
【0208】
組織学的には、脂肪症が5%超の肝細胞に影響するときにはNAFLDが定義され、代わりにNASHは、脂肪症に加えて数には関係なくいずれかのグレードの肝細胞の膨化変性、及び小葉炎症性浸潤の存在に対して定義される。NAFLD活動スコア(NAS)は、脂肪症、肝細胞膨化変性、及び肝組織の小葉炎症性浸潤の組合せから生じる。以下の表から、個々の成分の合計が、最大スコア8を得ることが確認されるであろう。
【0209】
【表6】
(Kleiner D.E.,Brunt E.M.,Van Natta M.,Behlinh C.,Contos M.J.,Cummings O.W.,Ferrell L.D.,Liu Y.-C.,Torbenson M.S.,Unalp-Arida A.,Yeh M.,McCullough A.J.,Sanyal A.J.for the Nonalcoholic Steatohepatitis Clinical Research Network.Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease.Hepatology 41:1313-1321,2005.)
【0210】
様々なNASステージにおけるPlin2(平均蛍光強度[MFI])レベルを以下の表にて報告する:
【表7】
【0211】
以下に報告されるように、平均Plin2レベル(MFI)とNASステージとの間の相関は優れている。
【0212】
X軸上の独立変数はPlin2の平均値であり、一方で従属変数はNASステージである(
図7)。
【0213】
【0214】
R2は、P<0.0001の有意性を伴い非常に高く(0.985)、NASH組織ステージ、すなわちNASを予測するためのモデルが優れていることを示している。
【0215】
【0216】
様々なNASステージを予測するPlin2の能力は、ニューラルネットワーク分析により研究された。
【0217】
ニューラルネットワーク分析パラメータを以下に報告する。2つの入力層である、単球中のPlin2及び対象年齢を使用した。6ユニット及び双曲線(正接)活性化関数を含有する1つの隠れ層のみ。出力層は従属変数、すなわちNASレベルである。活性化関数:Softmax、誤差関数:交差エントロピー。
【0218】
【0219】
この設計は、以下に報告されるように、その訓練中の場合の6.3%のみ、0.05秒試験中の場合には11.35%が不正確なNAS値を予測した。
【0220】
【0221】
このデータは、受信者操作特性曲線(ROC)の曲線下面積(AUC)が非常に高く、最小0.974~最大1までの範囲であることを実証する。全てのステージは、優れた感度と特異性の点で予測可能である。
【0222】
【0223】
モデルにおけるPlin2変数の重要度は以下に報告され、これは68.3%であるが、正規化するとこれは100%に達する。一方でモデルにて使用される第2の変数の重要度、すなわち年齢は、31.7%であり、正規化するとこれは46.3%である。
【0224】
【0225】
繰り返しの推測、すなわち多重比較用に調整される多重比較分析は、様々なNASステージにおける高い有意性の差異を実証する。以下の表を参照されたい。
【0226】
【0227】
【0228】
まとめると、単球中のPlin2は、NASH重症度ステージ(すなわち、NASスコア)を高度に予測し、これにより生検などの侵襲的試験を末梢血における試験に置き換えることが可能となる。
【0229】
線維化
パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質3(Pnpla3)(Sigma Aldrich SAB1401851)及びRas関連タンパク質Rab-14(Sigma Aldrich R0656)を、常に単球中にて細胞蛍光分析により、肝臓及び単球単離の組織学的試験により合計132人の対象に投与した。
【0230】
以下、SAF線維症の各ステージに関する平均値(MFI)は、F0~F4の範囲である(Bedossa P,Poitou C,Veyrie N,Bouillot JL,Basdevant A,Paradis V,et al.Histopathological algorithm and scoring system for evaluation of liver lesions in morbidly obese patients.Hepatology 2012;56:1751-1759)。
【0231】
【0232】
【0233】
次いで、独立変数としてPnpla3単球及びRab14単球を使用し、従属変数としてNASを使用し、共変量(2値変数、はい=1、いいえ=0)として糖尿病の有無を使用して、ROC曲線のAUCを計算するためにニューラルネットワーク分析を実施した。これらの変数を、ニューラルネットワークの入力層にて使用した。8単位を有する隠れ層は1つのみであり、活性化関数は誇張であった。モデルの出力により線維化グレード(SAF F)が生じ、活性化関数はソフトマックスであり、誤差関数は交差エントロピーであった。
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
モデルの訓練中の誤差割合は14.3%であり、検査中の誤差割合は0%であり、使用される時間は0.05分であった。
【0238】
ROC分析の曲線下面積(AUC)は、以下の表にて報告される:
【表21】
【0239】
したがって、ステージ0、すなわち線維化が存在しない状態は100%で、ステージ1は95%で、ステージ2は100%で、ステージ3は95.5%で予測される。
【0240】
モデルにおける独立変数の重要度(Pnpla3単球及びRab14単球)は62%であるが、正規化されると100%であり、Pnpla3単球の重要度は29.7%であるが、正規化されるとRab14単球に関しては47.9%に到達し、糖尿病の有無の重要度は0.84%であり、正規化されると13.5%である。
【0241】
【0242】
したがって、Pnpla3及びRab14の使用により、線維化に関して非常に正確な情報を得ることが可能となる。
【0243】
ただし、Plin2単独の場合もまた、線維化を良好に示す。
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
訓練中の不正確な予測のパーセント:14.3%、試験中:20%。
【0248】
線維化の定義において、Plin2について以下に報告されるROCのAUCは、ステージ0については98.9%、ステージ1については94%、ステージ2については97%、ステージ3については98.8%、及びステージ4については100%である。
【0249】
【0250】
表及び
図10にて報告されるように、線維化診断時の単球中のPlin2の重要度は49.2%であり、正規化されると96.8%である。糖尿病の有無の重要度は50.8%であり、正規化されると100%である。
【0251】
【0252】
【0253】
【国際調査報告】