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特表2022-528040非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物及びその用途
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  • 特表-非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20220601BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220601BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20220601BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220601BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20220601BHJP
   A23K 10/12 20160101ALI20220601BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20220601BHJP
【FI】
A61K35/744
A23L33/135
A61P3/10
A61K35/745
A61K35/747
A61P1/14
A23K10/12
C12N1/20 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556835
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 KR2019008836
(87)【国際公開番号】W WO2020196992
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0033130
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519359723
【氏名又は名称】コリア フード リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】パク ホ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン スク
(72)【発明者】
【氏名】オウ ミ ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー サン フン
(72)【発明者】
【氏名】ハ サン クン
(72)【発明者】
【氏名】チェ サン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨン コン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB10
2B150AC02
2B150AC06
2B150AC08
2B150AC25
2B150AD04
2B150AE05
2B150BB01
2B150DD13
2B150DD26
4B018LB08
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4C087BC64
4C087BC65
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4C087MA13
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA23
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4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA57
4C087MA59
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA73
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物及びその用途に関する。さらに詳しくは、本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株を含む、非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物、並びにその組成物を含む非蛍光終末糖化産物の低減活性を有する食品組成物、薬学的組成物、整腸用組成物、プロバイオティクス組成物、飼料用組成物及び発酵製品に関する。さらに、本発明は、非蛍光終末糖化産物の抑制剤を製造する方法、及び非蛍光終末糖化産物を抑制する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株を含む、非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項2】
前記ラクトバチルス属菌株が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus cassei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracassei)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・パラカセイ亜種トレランス(Lactobacillus paracasei subsp.tolerans)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・プランタルム亜種プランタルム(Lactobacillus plantarum subsp.plantarum)、ラクトバチルス・パラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・パラカセイKF00816(受託番号KCCM11998P)、及びラクトバチルス・ペントーサスKF8(受託番号KCCM11997P)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項3】
前記ラクトコッカス属菌株が、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・チュンガンゲンシス(Lactococcus chungangensis)、ラクトコッカス・フジエンシス(Lactococcus fujiensis)、ラクトコッカス・ラクチス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス亜種ラクチス(Lactococcus lactis subsp.lactis)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)、及びラクトコッカス・ラクチスKF140(受託番号KCCM11673P)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項4】
前記エンテロコッカス属菌株が、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)またはエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)であることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項5】
前記ビフィドバクテリウム属菌株が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・アニマリス属ラクチス(Bifidobacterium animalis sub.Lactis)またはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)であることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項6】
前記バチルス属菌株が、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・モジャベンシス(Bacillus mojavensis)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・ポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus)またはバチルス・サブチリスKF11(受託番号KCCM11981P)であることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項7】
前記サッカロミセス属菌株が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・エリプソイデウス(Saccharomyces ellipsoideus)、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces Pastorianus)またはサッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces Bayanus)であることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項8】
前記ペディオコッカス属菌株が、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)またはペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項9】
前記ロイコノストック属菌株が、ロイコノストック・シトレウム(Leuconostoc citreum)であることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項10】
前記非蛍光終末糖化産物が、N-カルボキシメチルリジン(N-carboxymethyl lysine;CML)またはN-カルボキシエチルリジン(N-carboxyethyl lysine;CEL)であることを特徴とする、請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む、食品組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む、非蛍光終末糖化産物に関連する疾患を予防または治療するための薬学的組成物。
【請求項13】
前記疾患が、糖尿病、糖尿病性合併症、慢性腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患、及び老化からなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の非蛍光終末糖化産物に関連する疾患を予防または治療するための薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む、飼料用組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む、整腸用組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む、プロバイオティクス組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む、発酵製品。
【請求項18】
ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される単一の菌株または2種以上の混合菌株、その破砕物またはその培養物を粉末化するステップを含む、非蛍光終末糖化産物の抑制剤を製造する方法。
【請求項19】
ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される単一の菌株または2種以上の混合菌株を用いた、非蛍光終末糖化産物を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物、その用途及びそれを用いた非蛍光終末糖化産物を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の非酵素的糖化反応(Nonenzymatic glycation reaction)とは、タンパク質のリジン残基などのアミノ酸基と還元糖において酵素の作用なしに起こるメイラード反応(Maillard reaction)であり、その反応の結果として終末糖化産物(Advanced glycation end products;AGEs)が形成される。タンパク質の非酵素的糖化反応は、タンパク質の遊離アミノ基であるリジン(lysine)や、アルギニン(arginine)と還元糖のカルボニル基(carbonyl group)が反応して初期糖化反応生成物であるシッフ塩基(Schiff base)を形成し、その際に形成された化合物が立て続けに縮合、再電位、酸化、分裂、環化などの一連の複雑な反応を経て褐色の物質(melanoidine)が生成され、総体的な概念の不可逆的な終末糖化産物を形成する反応である。
【0003】
終末糖化産物は、不可逆的な反応産物であるため、一度生成されると、血糖値が正常値に回復した後でも分解されず、タンパク質の生存期間にかけて組織に蓄積され、組織の構造と機能を異常に変化させる。比較的半減期の長いコラーゲン(collagen)は、簡単に糖化反応が起こり、すでに形成された終末糖化産物とコラーゲンの交差結合(cross-linking)を形成するので、体内の構造及びその他のタンパク質の結合組織などにおいて異常な物理化学的変化をもたらす。また、様々な細胞タイプに対する特異的受容体によって認識されることで、糖尿病性網膜症(retinopathy)、糖尿病性神経症(diabetic neuropathy)糖尿病性白内障(cataract)、糖尿病性腎症(nephropathy)などの糖尿病性合併症と糖尿病、慢性腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患及び老化による病気を引き起こす原因となる。
【0004】
よって、これらの終末糖化産物の生成を抑制するための研究が進められており、代表的な合成医薬品としてアミノグアニジンが挙げられるが、これは、求核性ヒドラジン(hydrazine)であって、縮合反応の産物と結合して終末糖化産物の生成を抑制することで、合併症になることを防ぐものである。また、アミノグアニジンは、糖尿病性合併症の予防及び治療において最も期待される医薬品として第3相臨床試験まで行われたが、長期間投与すると毒性が誘発される問題点が発見されたため、より安全な薬剤の開発が求められている。
【0005】
そこで、人体への副作用がなく、安全性を保ちながら、終末糖化産物の抑制及び低減が可能である新しい素材の開発が切望されている。
【0006】
それらを踏まえて、本願発明は、乳酸菌を用いた終末糖化産物の効果的な低減方法を開発することにより、本発明を完成させるに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株を含む、非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、前記本発明の乳酸菌を用いた非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む保健機能食品を提供することを他の目的とする。
【0009】
本発明は、前記本発明の乳酸菌を用いた非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む非蛍光終末糖化産物に関連する疾患を予防または治療するための薬学的組成物を提供することを他の目的とする。
【0010】
本発明は、前記本発明の乳酸菌を用いた非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む飼料用組成物を提供することを他の目的とする。
【0011】
本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株、その破砕物またはその培養物を粉末化するステップを含む、非蛍光終末糖化産物の抑制剤を製造する方法を提供することを他の目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株を用いた非蛍光終末糖化産物を抑制する方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を達成するために、本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株を含む、非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を提供する。
【0014】
本発明の一実施例において、前記ラクトバチルス属菌株が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus cassei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracassei)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・パラカセイ亜種トレランス(Lactobacillus paracasei subsp.tolerans)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・プランタルム亜種プランタルム(Lactobacillus plantarum subsp.plantarum)、ラクトバチルス・パラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・パラカセイKF00816(受託番号KCCM11998P)またはラクトバチルス・ペントーサスKF8(受託番号KCCM11997P)であってもよい。
【0015】
本発明の一実施例において、前記ラクトコッカス属菌株が、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・チュンガンゲンシス(Lactococcus chungangensis)、ラクトコッカス・フジエンシス(Lactococcus fujiensis)、ラクトコッカス・ラクチス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス亜種ラクチス(Lactococcus lactis subsp.lactis)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)またはラクトコッカス・ラクチスKF140(受託番号KCCM11673P)であってもよい。
【0016】
本発明の一実施例において、前記エンテロコッカス属菌株が、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)またはエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)であってもよい。
【0017】
本発明の一実施例において、前記ビフィドバクテリウム属菌株が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・アニマリス属ラクチス(Bifidobacterium animalis sub.Lactis)またはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)であってもよい。
【0018】
本発明の一実施例において、前記バチルス属菌株が、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・モジャベンシス(Bacillus mojavensis)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・ポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus)またはバチルス・サブチリスKF11(受託番号KCCM11981P)であってもよい。
【0019】
本発明の一実施例において、前記サッカロミセス属菌株が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・エリプソイデウス(Saccharomyces ellipsoideus)、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces Pastorianus)またはサッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces Bayanus)であってもよい。
【0020】
本発明の一実施例において、前記ペディオコッカス属菌株が、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)またはペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であってもよい。
【0021】
本発明の一実施例において、前記ロイコノストック属菌株が、ロイコノストック・シトレウム(Leuconostoc citreum)であってもよい。
【0022】
本発明の一実施例において、前記非蛍光終末糖化産物が、N-カルボキシメチルリジン(N-carboxymethyl lysine;CML)またはN-カルボキシエチルリジン(N-carboxyethyl lysine;CEL)であってもよい。
【0023】
また、本発明は、本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む食品組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む、非蛍光終末糖化産物に関連する疾患を予防または治療するための薬学的組成物を提供する。
【0025】
本発明の一実施例において、前記疾患が、糖尿病、糖尿病性合併症、慢性腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患、及び老化からなる群から選択されてもよい。
【0026】
また、本発明は、本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む飼料用組成物を提供する。
【0027】
また、本発明は、本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む整腸用組成物を提供する。
【0028】
また、本発明は、本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含むプロバイオティクス組成物を提供する。
【0029】
また、本発明は、本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む発酵製品を提供する。
【0030】
また、本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される単一の菌株または2種以上の混合菌株、その破砕物またはその培養物を粉末化するステップを含む非蛍光終末糖化産物の抑制剤を製造する方法を提供する。
【0031】
さらに、本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される単一の菌株または2種以上の混合菌株を用いた非蛍光終末糖化産物を抑制する方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、乳酸菌を用いた非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物及びその用途に関し、本発明に係る乳酸菌を用いた非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物は、終末糖化産物を効果的に低減させることのできる活性を有し、終末糖化産物で誘発される疾患を予防、改善または治療することのできる機能食品及び医薬品の製造に使用することができるといった効果があり、さらに整腸用、プロバイオティクス、飼料及び発酵製品の製造にも使用することができるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施例において、終末糖化産物(CML)を含有した食品を微生物で処理した際に、終末糖化産物の抑制程度を分析した結果を示す図である。
図2】本発明の一実施例において、終末糖化産物(CML)を含有した食品を微生物で処理した際に、終末糖化産物を抑制する活性がない微生物の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物及びその用途を提供し、具体的に、本発明は、乳酸菌を用いた非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物及び非蛍光終末糖化産物を低減する方法を提供する。
【0035】
前述の従来技術で述べたように、終末糖化産物(Advanced glycation end products;AGEs)は、不可逆的な反応産物であり、一度生成されると、血糖値が正常値に回復しても分解されず、タンパク質の生存期間中に組織に蓄積され、組織の構造と機能を異常に変化させることで、糖尿病、糖尿病性合併症、慢性腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患または老化のような疾患を招く原因となる。
【0036】
終末糖化産物の種類としては、ペントシジン(pentosidine)やアルグピリミジン(argpyrimidine)のような蛍光物質と、N-カルボキシメチルリジン(N-carboxymethyl lysine;CML)、N-カルボキシエチルリジン(N-carboxyethyl lysine;CEL)などのような非蛍光物質があるが、本発明で抑制しようとする終末糖化産物は、非蛍光終末糖化産物である。
【0037】
非蛍光終末糖化産物の中からCMLの危険性に関して、糖尿病性網膜症患者と健常者の間のCMLのレベルを比較したところ、糖尿病性網膜症の場合、CMLの発現レベルが通常に比べて増加していることが知られており、CMLを抑制することで糖尿病性網膜症を治療することができると報告されている。
【0038】
また、糖尿病性白内障患者の場合、非糖尿病性白内障患者よりもCMLのレベルが増加していることが知られており、CMLが糖尿病性白内障の主な原因であることが明らかになった。また、糖尿病性腎症疾患が誘発されたときも、CMLのレベルが増加しており、CMLが糖尿病性腎症の疾患誘発要因であることが知られている。
【0039】
さらに、慢性腎臓疾患が誘発されると、通常に比べてCMLのレベルが増加することが明らかになっており、増加されたCMLのレベルは、慢性腎臓疾患の発症有無を判別することのできる因子として活用することができ、その抑制子は、慢性腎臓疾患の治療薬になれることが知られている。
【0040】
それのみならず、CMLは糖尿病性神経症の危険因子であることが知られており、糖尿病性神経症患者の場合、通常の患者に比べてCMLのレベルが格段に増加しているという研究結果が報告されている。
【0041】
血管疾患の場合も、血管疾患が生じた場合、CMLのレベルが増加するので血管疾患の危険因子として知られており、CMLの抑制は、血管疾患を予防または治療できることが知られており、CMLが心臓疾患や糖尿病の主な病因として作用し、これらの疾患が誘発された場合、CMLのレベルが増加することも知られている。
【0042】
よって、このような非蛍光終末糖化産物の生成を抑制または減少させると、終末糖化産物に由来する各種疾患を予防したり、改善し、あるいは治療することができる。
【0043】
そこで、本発明者らは、非蛍光終末糖化産物の効果的な低減方法を研究していたところ、微生物を利用すると、非蛍光終末糖化産物が効果的に抑制されることを確認した。
【0044】
従って、本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株を含む、非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を提供する。
【0045】
ここで、前記ラクトバチルス属菌株は、これらに限定されるものではないが、ラクトバチルス属菌株が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus cassei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracassei)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・パラカセイ亜種トレランス(Lactobacillus paracasei subsp.tolerans)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・プランタルム亜種プランタルム(Lactobacillus plantarum subsp.plantarum)、ラクトバチルス・パラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・パラカセイKF00816(受託番号KCCM11998P)またはラクトバチルス・ペントーサスKF8(受託番号KCCM11997P)であってもよい。
【0046】
前記ラクトコッカス属菌株は、これらに限定されるものではないが、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・チュンガンゲンシス(Lactococcus chungangensis)、ラクトコッカス・フジエンシス(Lactococcus fujiensis)、ラクトコッカス・ラクチス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス亜種ラクチス(Lactococcus lactis subsp.lactis)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)またはラクトコッカス・ラクチスKF140(受託番号KCCM11673P)であってもよい。
【0047】
前記エンテロコッカス属菌株は、これらに限定されるものではないが、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)またはエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)であってもよい。
【0048】
前記ビフィドバクテリウム属菌株は、これらに限定されるものではないが、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・アニマリス属ラクチス(Bifidobacterium animalis sub.Lactis)またはビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)であってもよい。
【0049】
前記バチルス属菌株は、これらに限定されるものではないが、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・モジャベンシス(Bacillus mojavensis)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・ポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus)またはバチルス・サブチリスKF11(受託番号KCCM11981P)であってもよい。
【0050】
前記サッカロミセス属菌株は、これらに限定されるものではないが、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・エリプソイデウス(Saccharomyces ellipsoideus)、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces Pastorianus)またはサッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces Bayanus)であってもよい。
【0051】
前記ペディオコッカス属菌株は、これらに限定されるものではないが、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)またはペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であってもよい。
【0052】
前記ロイコノストック属菌株は、ロイコノストック・シトレウム(Leuconostoc citreum)であってもよい。
【0053】
本発明者らは、前述の各微生物の単独及び前記微生物の混合菌株に対して、非蛍光終末糖化産物の低減活性を分析するために、各菌株をそれぞれ終末糖化産物を含有した試料で処理した後、培養液中の終末糖化産物の含有量を測定したところ、優れた終末糖化産物の低減効果を示すことが確認された。
【0054】
従って、本発明者らは、前記微生物、具体的には、各微生物の単独または2種以上の混合菌株を、非蛍光終末糖化産物を低減するための機能性製品の製造で有用に用いられることが分かった。
【0055】
本発明の一実施例では、40個の種類の各微生物に対する終末糖化産物であるCML低減活性を分析したところ、CMLを含有した食品において、36個の微生物はCMLを低減する活性があることが確認されたが、それに対して、4種の微生物はCMLを低減する活性がなく、むしろCMLが増加するといった結果を確認した。
【0056】
よって、本発明は、好ましくは、下記実施例の表1に記載の36個の微生物群から選択される少なくとも1つの菌株を含む非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を提供する。
【0057】
また、本発明の他の一実施例では、混合菌株を使用すると、単独使用に比べてCML低減活性がより優れているか否かを分析した結果、単独処理群に比べて、異なる微生物の2種以上の混合菌株を使用すると、CML低減活性が高まることを確認することができ、ラクトバチルス・パラカセイKF00816(受託番号KCCM11998P)、ラクトバチルス・ペントーサスKF8(受託番号KCCM11997P)、ラクトコッカス・ラクチスKF140(受託番号KCCM11673P)、及びバチルス・サブチリスKF11(受託番号KCCM11981P)を1:1:1:1の混合比(微生物細胞数)で処理した群もまたCML低減活性に優れていることが分かり、本発明で確認した合計36個の菌株をすべて混合した群では、CMLがほとんど存在しない程度に低減することが分かった。
【0058】
よって、本発明は、前記微生物、その破砕物またはその培養物を有効成分として含む終末糖化産物抑制用組成物を提供する。
【0059】
また、本発明は、前記本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む保健機能食品組成物を提供する。
【0060】
本発明の食品組成物は、機能食品(functional food)、栄養補助食品(nutritional supplement)、健康食品(health food)、及び食品添加物(food additives)などのあらゆる形態を含む。前記タイプの食品組成物は、当業界において公知となった通常の方法によって様々な形態で製造されてもよい。例えば、健康食品としては、本発明の前記菌株そのもの、その破砕物及び前記菌株の培養物群のうち少なくとも1つをお茶、ジュース及びドリンクの形態で製造して飲用するようにしたり、顆粒化、カプセル化、及び粉末化して摂取してもよい。また、本発明の菌株、その破砕物及び培養物群の少なくとも1つを終末糖化産物の低減効果があると知られている公知の物質または活性成分と一緒に混合して組成物の形態で製造してもよい。また、機能食品としては、飲料(アルコール飲料を含む)、果実及びその加工食品(例えば、果物缶詰、瓶詰、ジャム、マーマレードなど)、魚類、肉類及びその加工食品(例えば、ハム、ソーセージコンビーフなど)、パン類及び麺類(例えば、うどん、そば、ラーメン、スパゲッティ、マカロニなど)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例えば、バター、チーズなど)、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例えば、味噌、醤油、ソースなど)などに本発明の菌株、その破砕物及び培養物群の少なくとも1つを添加して製造してもよい。
【0061】
本発明の食品組成物のうち、前記本発明の菌株、その破砕物及び培養物などの好適な含有量としては、これに限定されるものではないが、好ましくは、最終的に製造された食品に対して0.01~50重量%である。また、本発明の菌株、その破砕物及び培養物からなる群から選択された少なくとも1つを有効成分として食品添加物の形態で使用するためには、粉末または濃縮液の形態で製造して使用してもよい。
【0062】
さらに、本発明は、前記本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む、非蛍光終末糖化産物に関連する疾患を予防または治療するための薬学的組成物を提供し、前記疾患としては、これらに限定されるものではないが、糖尿病、糖尿病性合併症、慢性腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患または老化であってもよい。
【0063】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容される塩を単独で含有してもよく、あるいは少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤をさらに含有してもよい。薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用の担体または非経口投与用の担体をさらに含んでもよい。経口投与用の担体は、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含んでもよい。また、非経口投与用の担体は、水、適切な油、食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含んでもよく、安定化剤及び保存剤をさらに含んでもよい。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤が挙げられる。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル-またはプロピル-パラベン及びクロロブタノールが挙げられる。その他の薬学的に許容される担体としては、次の文献に記載されているものを参考にしてもよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA、1995)。
【0064】
本発明の薬学的組成物は、人間をはじめとする哺乳動物に如何なる方法をもって投与してもよい。例えば、経口または非経口的に投与してもよい。非経口的な投与方法としては、これらに限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸内投与であってもよい。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、経口または経皮投与してもよい。
【0065】
本発明の薬学的組成物は、前述のような投与経路に応じて、経口投与用または非経口投与用の製剤として製剤化されてもよい。
【0066】
経口投与用製剤の場合に、本発明の組成物は、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液などであって、当業界で公知となった方法を用いて剤形化されてもよい。例えば、経口用製剤は、活性成分を固体賦形剤と配合してからこれを粉砕し、適切な補助剤を添加した後、顆粒混合物として加工することにより、錠剤または糖衣錠剤を得てもよい。適切な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、及びマルチトールなどを含む糖類と、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、及びジャガイモデンプンなどを含むデンプン類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチル-セルロースなどを含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなどの充填剤を含んでもよい。また、場合によっては、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはナトリウムアルギネートなどを崩壊剤として添加してもよい。さらに、本発明の薬学的組成物は、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、及び防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0067】
非経口投与用製剤の場合には、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤、ゲル剤、エアロゾル、及び鼻腔吸入剤の形態で、当業界で公知となった方法で製剤化されてもよい。これらの剤形は、すべての製薬化学で一般的に公知された処方書である文献(Remington’s Pharmaceutical Science,15th Edition,1975.Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0068】
本発明の菌株そのもの、その破砕物及び前記菌株培養物などの総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与されてもよく、複数回投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与してもよい。本発明の薬学的組成物は、疾患の軽重に応じて、有効成分の含有量を異ならせてもよい。好ましくは、本発明の菌株、その破砕物及び培養物の好ましい総容量は、1日当たり、患者の体重1kgにつき約0.01ug~1,000mg、最も好ましくは0.1ug~100mgであってもよい。しかしながら、前記本発明の菌株そのもの、その破砕物及び前記菌株培養物などの容量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数のみならず、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の軽重、食餌、及び排泄率など、様々な要因を考慮して患者の有効投与量が決まるので、これらの点を考慮すると、当分野の通常の知識を有する者であれば、前記本発明の菌株、その破砕物及び培養物を、免疫機能増進剤としての特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができる。本発明に係る薬学的組成物は、本発明の効果を奏する限り、その剤形、投与経路及び投与方法がに特に制限されることはない。
【0069】
また、本発明は、前記本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を含む整腸用、プロバイオティクス、飼料用組成物を提供する。本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物は、ヒト及び動物の健康増進のための用途、つまり、整腸用、プロバイオティクスまたは飼料用組成物として用いられてもよく、前記組成物は、前記菌株そのもの、その破砕物及び前記菌株培養物などを有効成分として含んでもよく、賦形剤または担体をさらに含んでもよい。前記組成物は、液体培地で培養した培養液そのもの、前記培養液をろ過または遠心分離して菌株を除去したろ液(遠心分離した上澄み液)などを含む。組成物中の前記本発明の菌株の含有量は、組成物の用途及び剤形に応じて異ならせてもよい。
【0070】
本発明に係る整腸用またはプロバイオティクス組成物は、様々な剤形と方法で製造し、投与してもよい。例えば、前記本発明で使用した菌株、その破砕物及びその培養物を薬剤学的分野で通常使用される担体及び香料と混合して錠剤(tablet)、トローチ(troche)、カプセル(capsule)、エリキシル(elixir)、シロップ(syrup)、散剤(powder)、懸濁剤(suspension)、または顆粒剤(granule)などの形態で製造及び投与してもよい。
【0071】
担体としては、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤などを使用してもよい。投与方式は、経口、非経口または塗布法を用いてもよいが、経口投与することが好ましい。また、投与量は、体内における活性成分の吸収度、不活性率及び排泄速度、被投与者の年齢、性別、状態などに応じて適宜選択してもよい。また、本発明に係る飼料用組成物は、発酵飼料、配合飼料、ペレット形態及びサイレージ(silage)などの形態で製造してもよい。
【0072】
前記発酵飼料は、本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物と、いくつかの微生物菌または酵素を添加することにより、有機物を発酵させて製造してもよく、前記配合飼料は、様々な種類の一般飼料と本発明の菌株を混合して製造してもよい。ペレット形態の飼料は、前記発酵飼料または配合飼料をペレット機で製剤化して製造してもよく、サイレージは、本発明に係る菌株により青刈飼料を発酵させることで製造してもよい。
【0073】
さらに、本発明の非蛍光終末糖化産物を抑制するための組成物を有効成分として含む発酵製品を提供する。発酵製品の製造方法は、通常的に、原料の準備、乳酸菌の添加、発酵、完成された製品の回収などの過程で構成される。原料の準備ステップは、発酵対象となる材料を準備し、発酵が順調に行われるように発酵条件を準備するステップである。乳酸菌の添加は、発酵対象の量に応じて適量の菌を添加するものであり、本発明では、本発明の菌株を使用することを特徴とする。発酵は、通常の発酵菌の発酵条件下で行われるものであり、好ましくは37~43℃で4~168時間にかけて行われる。完成された製品の回収には、発酵物から不要な副産物や未発酵の材料を除去することから保存、運搬を容易にするためのあらゆる後処理過程及び包装などが含まれる。前記方法によって製造する発酵製品は、好ましくは飲料であってもよく、この飲料は、例えば、本発明の菌株を培養して乳酸発酵させたものに滅菌水を加えて希釈し、糖分、香料などを加えてから、容器に充填した製品を示す。この飲料には、一般的に生きたままの乳酸菌が含有されているので、飲用後に腸内での整腸作用を期待できる。
【0074】
さらに、本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される単独の菌株または2種以上の混合菌株、その破砕物またはその培養物を粉末化するステップを含む非蛍光終末糖化産物の抑制剤を製造する方法を提供する。
【0075】
加えて、本発明は、ラクトバチルス属菌株、ラクトコッカス属菌株、エンテロコッカス属菌株、ビフィドバクテリウム属菌株、バチルス属菌株、サッカロミセス属菌株、ペディオコッカス属菌株、及びロイコノストック属菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株を用いた、非蛍光終末糖化産物を抑制する方法を提供する。
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
<実施例1>
非蛍光終末糖化産物の低減活性を有する微生物のスクリーニング
微生物を利用した非蛍光終末糖化産物の抑制剤を開発するために、まず非蛍光終末糖化産物であるCML(Nε-(Carboxymethyl)-L-lysine)に対する低減活性を有する微生物をスクリーニングした。そのため、CMLを含有した食品を製造し、前記食品にそれぞれの微生物を添加した後、CMLの含有量の変化を測定した。
【0078】
<1-1>CML含量食品の製造
まず、CML含有食品を製造した。すなわち、牛乳の熱処理工程中に生成されるCMLを低減するために乳タンパク質のカゼインと乳糖のラクトースを用いたが、カゼインナトリウム(sodium caseinate)とD-ラクトース(D-lactose)は、(株)ES食品原料とSigma-Aldrichからそれぞれ購入して使用した。牛乳中のカゼインとラクトースの割合を考慮し、乳タンパク質(カゼイン)と乳糖(ラクトース)を1:7の割合で混ぜ、140℃の温度下で80分間反応して、これを本発明の微生物に対するCML低減効能の評価に用いた。そのとき、カゼインとラクトースのメイラード反応によるCML含有量は、5.90ug/mLであることが分かった。
【0079】
<1-2>CML含有量の分析
前記<1-1>で製造されたCML含有食品(溶液)に様々な種類の微生物を加え、24時間本培養した後、CML(Nε-(carboxymethyl)lysine)の変化量をCML ELISA kit(CircuLex,Ina,Nagano,Japan)を用いて測定した。CML-BSAで事前コーティングされた96ウェルプレートに上澄み液または標準試料と抗CML付加体モノクロ-ナル抗体(anti-CML-monoclonal antibody)を添加して、室温下で1時間反応させた。洗浄バッファーで4回洗浄した後、HRP conjugated detection antibody100μLを添加して1時間反応させた。次いで、洗浄バッファーで4回洗浄し、基質含有溶液100μLを添加して、光を遮断した条件下で20分間反応させた。それから、停止液100μLを添加し、マイクロプレートリーダーを用いて450nmで吸光度を測定し、その結果を下記の表に示した。そのとき、陰性対照群(CON;control)は、微生物を全く添加していない、前記<1-1>のメイラード反応で測定されたCMLが5.90ug/mLの含有量で含まれている群を使用したものであり、陰性対照群をCML含有量100%の基準で分析し、分析した微生物の中、CML抑制活性を有する微生物は、下記の表1に示しており、CML抑制活性のない微生物は、下記の表2に示した。また、下記表1において、33、34、及び35番の微生物は、本発明者らが先行研究を行って新たに発掘し、同定して寄託した菌株であって、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)KF140は、国際微生物寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託して寄託番号KCCM11673Pが付与された菌株であり、バチルス・サブチリスKF11は、国際微生物寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に2017年2月24日付けで寄託して寄託番号KCCM11981Pが付与された菌株であり、ラクトバチルス・ペントーサスKF8菌株は、国際微生物寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に2017年3月24日付けで寄託して寄託番号KCCM11997Pが付与された菌株であり、ラクトバチルス・パラカセイKF00816は、国際微生物寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に2017年03月24日付けで寄託して寄託番号KCCM11998Pが付与された菌株である。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】
【0082】
分析したところ、前記表1及び表2に示すように、すべての微生物、特にすべての乳酸菌が非蛍光終末糖化産物を抑制することができる活性を有するのではないことが分かり、本発明者らは、前記表1に記載された36個の微生物が、CMLを低減することができる活性を有することが分かった。
【0083】
これらの結果を踏まえて、本発明者らは、本発明で確認した前記表1の微生物を利用すると、CMLのような非蛍光終末糖化産物を効果的に阻害できることを知り、特に終末糖化産物を含有した食品において処理すると、食品中の非蛍光終末糖化産物を効果的に阻害できることが分かった。
【0084】
ここまでは本発明について、その好ましい実施例を挙げて説明した。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明が、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形で実装され得ることを理解できるであろう。よって、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述した説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にあるすべての相違点は、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
【0085】
本特許は、国家研究課題事業の一環として行われた結果物であり、(1)課題固有番号E0164400-04、部処名:韓国科学技術情報通信部、研究管理専門機関:韓国食品研究院、主管機関:韓国食品研究院、研究事業名:機関固有任務型事業、研究課題名:糖尿病性合併症の危険因子低減化及び改善食医薬素材の開発、研究期間:2019年1月1日~2019年12月31日に該当する課題と、(2)課題固有番号E0164400-03、部処名:韓国科学技術情報通信部、研究管理専門機関:韓国食品研究院、主管機関:韓国食品研究院、研究事業名:機関固有任務型事業、研究課題名:糖尿病性合併症の主な発病因子の分析及び低減化技術の開発、研究期間:2018年1月1日~2018年12月31日に該当する課題です。
【0086】
[受託番号]
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM11997P
受託日:20170324
【0087】
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM11998P
受託日:20170324
【0088】
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM11673P
受託日:20150306
【0089】
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM11981P
受託日:20170224




図1
図2
【国際調査報告】