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特表2022-528054ロスバスタチンカルシウム塩の製造方法
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  • 特表-ロスバスタチンカルシウム塩の製造方法 図1
  • 特表-ロスバスタチンカルシウム塩の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ロスバスタチンカルシウム塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/42 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
C07D239/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557054
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 KR2019017082
(87)【国際公開番号】W WO2020197042
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0034149
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515311291
【氏名又は名称】ヘキサファーマテック カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】#301,315,Banwol Hitech Village,278 Sandan-ro,Danwon-gu,Ansan-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ギョンラク
(57)【要約】
本発明は、ロスバスタチンカルシウム塩の製造に有用な新規の中間体、すなわち結晶形の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸(ロスバスタチン)ジイソブチルアミン塩を提供する。また、本発明は、前記の新規の中間体を使用して、ロスバスタチンカルシウム塩を高い化学的純度および光学純度で製造する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含むロスバスタチンカルシウム塩の製造方法:
(a)(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸をジイソブチルアミンと反応させる工程;
(b)工程(a)の反応混合物を室温で撹拌した後、生成した沈殿物をろ過、選択的に洗浄、および乾燥して、結晶形の下記化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩を得る工程;
【化1】
(c)工程(b)で得られた前記結晶形の化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩を水酸化ナトリウムと、水性溶媒中で、反応させる工程;
(d)工程(c)で得られた反応混合物を有機溶媒で洗浄する工程;および
(e)工程(d)の反応混合物にカルシウム源を添加して、ロスバスタチンカルシウム塩を形成する工程。
【請求項2】
前記(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸t-ブチルエステルを加水分解して得られることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(a)の反応が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、アセトン、またはこれらの混合溶媒中で行われることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(a)の反応が、アセトニトリルとジクロロメタンの混合溶媒中で行われることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(a)の反応が、45~50℃で行われることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記結晶形の化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩が、7.10、9.68、11.60、14.62、16.02、16.66、20.14、22.00、22.52、25.66、27.04、および29.56°2θ±0.2°2θでピークを示すXRPDスペクトルを有することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記結晶形の化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩が、約146.9℃で溶融吸熱ピークを示す示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを有することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(d)で使用される有機溶媒が、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチルまたはトルエンであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
下記化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩。
【化2】
【請求項10】
結晶形である、請求項9に記載の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩。
【請求項11】
7.10、9.68、11.60、14.62、16.02、16.66、20.14、22.00、22.52、25.66、27.04、および29.56°2θ±0.2°2θでピークを示すXRPDスペクトルを有することを特徴とする、請求項9に記載の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩。
【請求項12】
約146.9℃で溶融吸熱ピークを示す示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを有することを特徴とする、請求項9に記載の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の中間体、すなわち結晶形の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸(以下、ロスバスタチン)ジイソブチルアミン塩に関する。また、本発明は、前記の新規の中間体を使用して、ロスバスタチンカルシウム塩を高い化学的純度および光学純度で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロスバスタチンカルシウム塩(rosuvastatin calcium salt)は、下記化学式1の構造を有するHMG-CoA還元酵素阻害剤であり、高脂血症治療のために使用される。
【化1】
【0003】
ロスバスタチンカルシウム塩は、二つのキラル中心を有する光学的に純粋な化合物である。ロスバスタチンカルシウム塩の異性体不純物は(3R、5R)と(3S、5S)形態のジアステレオマーおよび(3S、5R)の形態のエナンチオマーである。これらの異性体不純物が含まれている場合には、薬理効果および安定性の低下が発生することになるので、製造過程で異性体不純物を除去し、高純度のロスバスタチンカルシウム塩を得ることが非常に重要である。
【0004】
欧州特許第521,471号は、アモルファス形態のロスバスタチンカルシウム塩の製造方法を開示しているが、異性体不純物を除去する精製方法については開示していない。
【0005】
欧州特許第2,298,745号は、ロスバスタチンジオールメチルエステルのジアステレオマー純度を増加させる方法を開示している。しかし、結晶化のために、揮発性と爆発性の強いエチルエーテルを使用する欠点がある。エチルエーテルは、産業的に危険性が高くて、大量生産に適していない溶媒として知られている。
【0006】
国際特許公開第WO01/60804号は、ロスバスタチンのアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、4-メトキシベンジルアンモニウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、およびこれらの製造方法を開示しており、また、ロスバスタチンの無定形カルシウム塩の製造のためのそれらの用途を開示している。しかし、前記した塩の製造に伴う、化学的純度および光学純度の改善をするかどうかについては、開示していない。
【0007】
一方、ICHガイドラインなどの国際基準によると、個々の不純物(individual impurity)の含有量が0.1%以下になるようお勧めしている。したがって、異性体不純物および他の不純物の含有量が0.1%以下、つまり、99.9%以上の化学的純度および光学純度を有するロスバスタチンカルシウム塩の製造方法を開発することが当業界で求められている。
【0008】
国際特許公開第WO2010/035284号は、(S)-2-アミノ-3、3-ジメチルブタンと(S)-(-)-α-メチルベンジルアミンを用いて、光学純度が向上されたロスバスタチンアミン塩を製造し、この塩からロスバスタチンカルシウム塩を製造する方法を開示している。しかし、上記の製造方法は、異性体不純物を0.15%以下に除去することができるので、まだ不十分である。
【0009】
韓国特許公開第10-2012-0022421号は、中間体として、アリールアミンの一種である、N-メチルベンジルアミンを使用して、ロスバスタチンN-メチルベンジルアミン塩を製造し、この塩からロスバスタチンカルシウム塩を製造する方法を開示している。しかし、ロスバスタチンからロスバスタチンN-メチルベンジルアミン塩を得る工程の収率が低いのみならず、得られるロスバスタチンカルシウム塩の化学的および光学純度が99.8%で、まだ不十分である。
【0010】
韓国特許公開第10-2016-0008026号は、中間体として、アルキルアミンの一種である、t-ブチルアミンを使用して、ロスバスタチンt-ブチルアミン塩を製造し、この塩からロスバスタチンカルシウム塩を製造する方法を開示している。しかし、ロスバスタチンt-ブチルアミン塩を大量に製造したとき、ロスバスタチンt-ブチルアミン塩の化学的純度は99.6%~99.7%に過ぎず(つまり、不純物が0.3%~0.4%)、また、ジアステレオマー不純物の含有量が0.14%~0.15%で、非常に高く、光学純度が低い。これらの低い化学的および光学純度を高めるために、韓国特許公開第10-2016-0008026号は、生成されたロスバスタチンt-ブチルアミン塩を有機溶媒中で室温で静置したり、あるいは静置後に生成された結晶をスラリー化することを含む、結晶化工程を追加で行うことを開示している。しかし、前記の製造方法は、結晶化工程を追加で行わなければならない欠点があり、結晶化工程の実行により、ロスバスタチンt-ブチルアミン塩の製造収率が例えば約85%に減少するだけでなく、化学的純度が99.87%で、まだ不十分である。また、ロスバスタチンt-ブチルアミン塩からロスバスタチンカルシウム塩を製造する工程の収率が80%~94%であり、非常に大きな収率偏差を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、ICHガイドラインなどの国際基準に適合した純度(個々の不純物の含有量が0.1%以下)よりも高い化学的純度および光学純度、例えば、99.95%以上の化学的純度および光学純度を有する純粋なロスバスタチンカルシウム塩を製造することができる方法を開発するために、様々な研究を行った。その結果、価格が安い、特定のアルキルアミン、すなわちジイソブチルアミンを使用して、新規の中間体であるロスバスタチンジイソブチルアミン塩を製造する場合、別の結晶化工程の実行なしで、結晶形態、すなわち結晶形のロスバスタチンジイソブチルアミン塩を高収率で得ることができ、また、得られるロスバスタチンジイソブチルアミン塩が99.95%以上の高い化学的純度および光学純度を持っていることを見出した。前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、吸湿性が低く、安定性に優れて保管が容易なので、生産現場で容易に使用することができるということが明らかになった。また、ロスバスタチンジイソブチルアミン塩からロスバスタチンカルシウム塩を製造する場合、90%以上の高い収率および99.95%以上の高い化学的純度および光学純度でロスバスタチンカルシウム塩を製造することができるということが明らかになった。
【0012】
したがって、本発明は、前記の新規の中間体、すなわちロスバスタチンジイソブチルアミン塩を使用してロスバスタチンカルシウム塩を製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、前記の新規の中間体、すなわちロスバスタチンジイソブチルアミン塩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によって、下記の工程を含むロスバスタチンカルシウム塩の製造方法が提供される:
(a)(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸をジイソブチルアミンと反応させる工程;
(b)工程(a)の反応混合物を室温で撹拌した後、生成した沈殿物をろ過、選択的に洗浄、および乾燥して、結晶形の下記化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩を得る工程;
【化2】
(c)工程(b)で得られた前記結晶形の化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩を水酸化ナトリウムと、水性溶媒中で、反応させる工程;
(d)工程(c)で得られた反応混合物を有機溶媒で洗浄する工程;および
(e)工程(d)の反応混合物にカルシウム源を添加して、ロスバスタチンカルシウム塩を形成する工程。
【0015】
本発明の製造方法において、前記(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸(ロスバスタチン)は、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸t-ブチルエステルを加水分解して得られてもよい。
【0016】
本発明の製造方法において、工程(a)の反応は、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、アセトン、またはこれらの混合溶媒中で、好ましくは、アセトニトリルとジクロロメタンの混合溶媒中で行われてもよい。また、工程(a)の反応は、45~50℃で行われてもよい。
【0017】
本発明の製造方法の一実施形態で、前記結晶形の化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩は、7.10、9.68、11.60、14.62、16.02、16.66、20.14、22.00、22.52、25.66、27.04、および29.56°2θ±0.2°2θでピークを示すXRPDスペクトルを有する。本発明の製造方法の別の実施形態で、前記結晶形の化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩は、約146.9℃で溶融吸熱ピークを示す示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを有する。
【0018】
本発明の製造方法において、工程(d)で使用される有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチルまたはトルエンであってもよい。
【0019】
本発明の別の態様に応じて、下記化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩が提供される:
【化3】
【0020】
前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、好ましくは、結晶形である。一実施形態で、前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、7.10、9.68、11.60、14.62、16.02、16.66、20.14、22.00、22.52、25.66、27.04、および29.56°2θ±0.2°2θでピークを示すXRPDスペクトルを有する。別の実施形態で、前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、約146.9℃で溶融吸熱ピークを示す示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明にに従って、価格が安い、特定のアルキルアミン、すなわちジイソブチルアミンを使用して、ロスバスタチンジイソブチルアミン塩を製造する場合、別の結晶化工程の実行なしで、結晶形のロスバスタチンジイソブチルアミン塩を高収率および99.95%以上の高い化学的および光学純度で製造することができる。また、前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩からロスバスタチンカルシウム塩を製造する場合、高収率および99.95%以上の高い化学的および光学純度でロスバスタチンカルシウム塩を製造することができる。したがって、新規の中間体である、前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩を経由して、ロスバスタチンカルシウム塩を製造する場合、優れた精製機能を実現することができて、異性体不純物を含む化学的不純物を効果的に除去することができ、また、別の結晶化工程の実行なしに経済的にロスバスタチンカルシウム塩を製造することができるので、産業的大量生産に効果的に適用することができる。また、前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、吸湿性が低く、安定性に優れて保管が容易なので、生産現場で容易に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明により得られたロスバスタチンジイソブチルアミン塩のX-線粉末回折(XRPD)スペクトルを示す。
図2図2は、本発明により得られたロスバスタチンジイソブチルアミン塩の示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、新規の中間体、すなわちロスバスタチンジイソブチルアミン塩を使用して、高純度、つまり、99.95%以上、好ましくは約99.98%の化学的純度および99.95%以上、好ましくは約99.99%の光学純度を有するロスバスタチンカルシウム塩を高収率で製造する方法を提供する。
【0024】
すなわち、本発明は、下記の工程を含むロスバスタチンカルシウム塩の製造方法を提供する:
(a)(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸をジイソブチルアミンと反応させる工程;
(b)工程(a)の反応混合物を室温で撹拌した後、生成した沈殿物をろ過、選択的に洗浄、および乾燥して、結晶形の下記化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩を得る工程;
【化4】
(c)工程(b)で得られた前記結晶形の化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸ジイソブチルアミン塩を水酸化ナトリウムと、水性溶媒中で、反応させる工程;
(d)工程(c)で得られた反応混合物を有機溶媒で洗浄する工程;および
(e)工程(d)の反応混合物にカルシウム源を添加して、ロスバスタチンカルシウム塩を形成する工程。
【0025】
本発明の製造方法において、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸(ロスバスタチン)は、公知の方法により得ることができる。一実施形態で、前記ロスバスタチンは、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸(ロスバスタチン)t-ブチルエステルを加水分解して得られることができる。前記ロスバスタチンt-ブチルエステルは、例えば、韓国特許公開第10-2016-0008026号に開示されている方法によって得ることができる。前記ロスバスタチンt-ブチルエステルの加水分解は、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中で、例えば水酸化ナトリウム水溶液を使用して、約5~10℃の温度で、約3~5時間反応させることによって行うことができる。前記加水分解工程の実行後に生成されたロスバスタチンは、別の単離なしに、続く反応、すなわちロスバスタチンジイソブチルアミン塩の製造のための反応に提供されることができる。すなわち、加水分解工程を実行して得られた反応混合物を濃縮して加水分解で使用された有機溶媒を除去し、ロスバスタチンジイソブチルアミン塩の製造のための反応溶媒を加えた後、ジイソブチルアミンとの反応工程を実行することができる。したがって、ロスバスタチンt-ブチルエステルの加水分解工程とロスバスタチンジイソブチルアミン塩の製造工程は、単一の反応容器の反応(one-pot reaction)で実行してもよい。
【0026】
工程(a)の反応において、ジイソブチルアミンは、ロスバスタチン1当量に対して、1当量以上、例えば1.0~1.2当量の割合で使用してもよい。工程(a)の反応は、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、アセトン、またはこれらの混合溶媒中で、好ましくは、アセトニトリルとジクロロメタンの混合溶媒中で行われてもよい。また、工程(a)の反応は、45~50℃で行われてもよい。
【0027】
工程(b)は、結晶形のロスバスタチンジイソブチルアミン塩の単離工程であり、通常のワークアップ(work-up)工程を介して行うことができる。すなわち、工程(b)は、工程(a)の反応混合物を室温で撹拌した後、生成した沈殿物をろ過、選択的に洗浄、および乾燥することにより、行うことができる。前記攪拌は、室温で2~5時間、好ましくは約3時間行われてもよい。前記ろ過は、減圧ろ過などの通常のろ過により行われてもよい。前記洗浄は、工程(a)で使用した溶媒または混合溶媒を使用したり、あるいはテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、またはアセトンを使用して行われてもよい。前記乾燥は、例えば、約40℃で10~15時間、真空乾燥することにより、行われてもよい。
【0028】
一実施形態で、前記結晶形のロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、7.10、9.68、11.60、14.62、16.02、16.66、20.14、22.00、22.52、25.66、27.04、および29.56°2θ±0.2°2θでピークを示すXRPDスペクトルを有する。別の実施形態で、前記結晶形のロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、約146.9℃で溶融吸熱ピークを示す示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを有する。
【0029】
工程(c)、すなわち前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩と水酸化ナトリウムとの反応は、水性溶媒(例えば、精製水など)の中で、約5~10℃の温度で約30分~5時間攪拌することにより、行われてもよい。
【0030】
工程(d)は、工程(c)で得られた反応混合物を有機溶媒で洗浄することによって行われる。前記洗浄工程により、遊離するジイソブチルアミンが除去されるようになる。前記洗浄工程に使用される有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチルまたはトルエン、好ましくは酢酸エチルであってもよい。
【0031】
工程(e)は、ロスバスタチンカルシウム塩の形成工程であり、工程(d)の反応混合物にカルシウム源を添加して反応させることによって行うことができる。前記カルシウム源は、塩化カルシウム、酢酸カルシウムなどのカルシウム塩を水性溶媒(例えば、精製水)に溶解した水溶液の形で添加してもよい。前記カルシウム源との反応は、室温で約30分~5時間攪拌することにより、行われてもよい。形成されたロスバスタチンカルシウム塩は、室温で約30分~3時間攪拌、ろ過、水性溶媒(例えば、精製水)を使用する洗浄、および乾燥を介して単離してもよい。
【0032】
本発明の製造方法において、中間体であるロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、高収率で製造することができるのみならず、異性体不純物および化学的不純物も簡単に除去することができて、高純度で製造することができる。本発明に係る製造方法において、中間体であるロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、高純度、すなわち、99.95%以上、好ましくは約99.98%の化学的純度および99.95%以上、好ましくは約99.99%の光学純度で製造することができる。
【0033】
したがって、本発明は、また、高い化学的および光学純度(つまり、99.95%以上、好ましくは約99.98%の化学的純度および99.95%以上、好ましくは約99.99%の光学純度)を有するロスバスタチンカルシウム塩の製造に有用な新規の中間体を提供する。すなわち、本発明は、下記化学式2の(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R、5S)-3、5-ジヒドロキシヘプタ-6-エン酸(ロスバスタチン)ジイソブチルアミン塩を提供する。
【化5】
【0034】
本発明に係るロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、好ましくは、結晶形である。一実施形態で、前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、7.10、9.68、11.60、14.62、16.02、16.66、20.14、22.00、22.52、25.66、27.04、および29.56°2θ±0.2°2θでピークを示すXRPDスペクトル、例えば、図1のXRPDスペクトルを有する。別の実施形態で、前記ロスバスタチンジイソブチルアミン塩は、約146.9℃で溶融吸熱ピークを示す示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを有する。
【0035】
本発明に係る製造方法を全体的反応式で表すと、次の反応式1の通りである。
【化6】
【0036】
以下、実施例を参照することによって本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を一例として説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0037】
X-線粉末回折(XRPD)スペクトルは、測定装置Rigaku D/MAX-2500/PC Xray Diffractometer(XRPD)を用いて得た。放射線として、CuKα(40kv、100mA)を使用した。常温(25℃)で、2θを3.0~40.0°、ステップのサイズを0.02°、ステップごとの計数時間を0.3秒として、データを収集した。サンプルは、ガラス標本容器上で溶媒がない粉末材料の薄層で製造された。
【0038】
示差走査熱量計(DSC)サーモグラムは、TA Instrument社のモデルDSC25を用いて測定した。昇温速度は、10℃/分で、200℃まで昇温した。
【0039】
核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析は、Bruker400MHz分光計で実行し、化学移動(chemical shift)は、ppmで分析した。
液体クロマトグラフィー(HPLC)は、以下の条件(European Pharmacopoeia)下で測定した。
-機器名:Agilent1260Infinity
-検出器の波長:242nm
-カラム:
Develosil ODS-UG、l=15cm、Φ=3.0mm、3μm(化学および部分立体純度)
Chiralcel OJ-RH、l=15cm、Φ=4.6mm、5μm(光学純度)
【0040】
実施例1:ロスバスタチンジイソブチルアミン塩の製造
ロスバスタチンt-ブチルエステル137.3gをテトラヒドロフラン549mLに溶解した後、5~10℃に冷却し、水酸化ナトリウム11.2gを精製水137.3mLに溶解した溶液を徐々に添加した。添加完了後、反応混合物を約5時間攪拌した後、5~10℃で減圧濃縮してテトラヒドロフランを除去した。濃縮物にジクロロメタン549mLを添加し、温度を5~10℃に維持しながら、クエン酸26.8gを精製水824mLに溶解した溶液を徐々に添加した。添加完了後、反応混合物を室温で30分間攪拌した後、有機層を分離した。水層にジクロロメタン549mLを添加し、30分間攪拌した後、有機層を分離した後、前記の有機層に加えた。得られた有機層にアセトニトリル1098mLを添加した後、ジイソブチルアミン44.3mLを加え、45~50℃で30分間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、3時間攪拌した。生成された結晶を濾過し、アセトニトリル275mLで洗浄した後、40℃で12時間真空乾燥して、表題化合物140.3gを得た。(収率:90.0%)
HPLC化学的純度:99.98%
HPLC光学純度:99.99%
H-NMR(400MHz、CDOD)δ1.05(12H、d)、1.30(6H、5)、1.54(1H、m)、1.70(1H、m)、2.04(2H、m)、2.33(2H、m)、2.83(4H、d)、3.37(1H、s)、3.54(3H、s)、3.56(3H、s)、3.98(1H、m)、4.37(1H、m)、5.57(1H、dd)、6.62(1H、d)、7.20(2H、m)、7.74(2H、m)
【0041】
実施例2:ロスバスタチンカルシウム塩の製造
実施例1で製造したロスバスタチンジイソブチルアミン塩140.3gを精製水982mLに加えた後、温度を5~10℃に維持しながら、水酸化ナトリウム9.46gを精製水280.6mLに溶解した溶液を徐々に添加した。添加完了後、反応混合物を室温で1時間攪拌した後、酢酸エチル561.2mLで2回洗浄した。水層を45℃で561.2mLまで減圧濃縮した後、塩化カルシウム14.02gを精製水280mLに溶解した溶液を徐々に添加した。添加完了後、反応混合物を室温で2時間攪拌した。生成された結晶を濾過し、精製水420mLで洗浄した後、35℃で12時間減圧乾燥して、表題化合物109.5gを得た。(収率:95.2%)
HPLC化学的純度:99.98%
HPLC光学純度:99.99%
図1
図2
【国際調査報告】