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特表2022-528066気相堆積装置のための流体処理構造体及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】気相堆積装置のための流体処理構造体及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20220601BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20220601BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20220601BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20220601BHJP
   B05B 1/26 20060101ALI20220601BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220601BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C23C16/455
B05C5/00 101
B05C11/10
B05B1/14 Z
B05B1/26 A
H01L21/205
H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557276
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 NL2020050196
(87)【国際公開番号】W WO2020197387
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】19165207.2
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595115802
【氏名又は名称】ネーデルランセ オルハニサチエ フォール トゥーヘパスト-ナツールウェーテンシャッペルック オンデルズク テーエヌオー
【氏名又は名称原語表記】Nederlandse Organisatie voor toegepast-natuurwetenschappelijk onderzoek TNO
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】オリースラヘルス、ルート
(72)【発明者】
【氏名】スメルティンク、イェルン アントーニウス
【テーマコード(参考)】
4F033
4F041
4F042
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4F033AA14
4F033BA01
4F033DA05
4F033EA01
4F033EA02
4F033EA05
4F033JA04
4F033NA01
4F041AA02
4F041AB08
4F041BA05
4F041BA13
4F041BA34
4F041CA03
4F041CA16
4F042AA02
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA12
4F042BA27
4F042CB03
4F042CB10
4K030EA05
4K030EA06
4K030JA03
5F045AA03
5F045AA15
5F045AC15
5F045AE29
5F045BB01
5F045BB08
5F045EF01
5F045EF05
(57)【要約】
気相堆積装置用の流体処理構造体であって、該構造体は、加圧された流体を入口から出口に伝達するための入口と出口を備える流路を規定し、該構造体は、細長いスリットと、一連のノズルとを含み、加圧された流体が一連のノズルを通って細長いスリットに入ることができ、入口は一連のノズルの上流にあり、出口は細長いスリットのギャップ開口部の下流に形成され、加圧された流体が細長いスリットから基板に向かって吐出されることができ、一連のノズルは、細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成されており、一連のノズルは、加圧された流体が流路を通過する際に、構造体の1つ以上の衝突面に向けられた一連の噴流を形成するように適合されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相堆積装置のための流体処理構造体であって、該構造体は、加圧された流体を入口から出口に送るための前記入口と前記出口を備えた流路を規定し、前記構造体は、細長いスリットと、一連のノズルとを含み、加圧された流体は前記一連のノズルを通って前記細長いスリットに入ることができ、前記入口は前記一連のノズルの上流にあり、前記出口は前記細長いスリットのギャップ開口部の下流に形成されることで、加圧された流体が前記細長いスリットから基板に向かって吐出されることができ、前記一連のノズルは、前記細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成されており、前記一連のノズルは、加圧された流体が前記流路を通って送られる際に、前記構造体の1つ以上の衝突面に向けられた一連の噴流を形成するように適合されており、前記ノズルは、400マイクロメートルよりも小さい直径を有する、ことを特徴とする流体処理構造体。
【請求項2】
前記ノズルは、前記細長いスリットと前記基板との間の流動抵抗以上の流動抵抗を提供するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の流体処理構造体。
【請求項3】
前記一連のノズルは、前記細長いスリットの第1の壁に配置されており、前記衝突面は前記細長いスリットの第2の壁に配置されており、前記第2の壁は前記第1の壁に対向する、ことを特徴とする請求項1に記載の流体処理構造体。
【請求項4】
前記一連のノズルは、アレイ内で互いに対して空間的にオフセットされており、前記アレイは前記細長いスリットの長さ方向に実質的に延びる、ことを特徴とする請求項1に記載の流体処理構造体。
【請求項5】
前記一連のノズルは、200~700マイクロメートルの範囲の直径を有する、ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の流体処理構造体。
【請求項6】
前記一連のノズルと前記ギャップ開口部との間の距離は、2.5~25ミリメートルの範囲であり、好ましくは5~10ミリメートルの範囲である、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流体処理構造体。
【請求項7】
前記一連のノズルと前記ギャップ開口部とは、0.1~10ミリメートルの範囲で、より好ましくは2.5~5ミリメートルの範囲で間隔を空けられている、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流体処理構造体。
【請求項8】
前記第2の壁は、加圧された流体が前記流路を送られる際に形成された前記噴流を受けるために配置された一連のキャビティを含み、前記一連のキャビティによって前記衝突面が形成される、ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の流体処理構造体。
【請求項9】
前記第2の壁の上の前記一連のキャビティは、前記第1の壁上の前記一連のノズルと対向して配置される、ことを特徴とする請求項7に記載の流体処理構造体。
【請求項10】
前記キャビティは、0.5~2ミリメートルの範囲の直径を有し、0.5~5ミリメートルの範囲の長さを有する、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の流体処理構造体。
【請求項11】
前記細長いスリットは、大きな渦をより小さい渦へと分解するための手段を含む、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の流体処理構造体。
【請求項12】
基板上への気相堆積のための流体の流れの均一性を改善するための方法であって、加圧された流体を入口から出口まで基板上に送るための、前記入口と前記出口とを備える流路を規定する流体処理構造体を使用して流体が導入され、前記構造体には、細長いスリットと一連のノズルとが設けられ、加圧された流体が前記一連のノズルを通って前記細長いスリットに入ることができ、前記入口は前記一連のノズルの上流に設けられ、前記出口は、前記細長いスリットのギャップ開口部の下流に形成されることで、加圧された流体が前記細長いスリットから吐出されることができ、前記一連のノズルは、前記細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成されており、前記一連のノズルは、加圧された流体が前記流路を通って送られる際に前記構造体の1つ以上の衝突面に向けられた一連の噴流を形成するように適合されており、前記ノズルは400マイクロメートルよりも小さい直径を有している、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
流体処理構造体を製造するための方法であって、該方法は、
a.第1の壁の一連のノズルを設けるステップ、
b.第2の壁との間に空間を備えて、前記第2の壁と隣接する前記第1の壁を配置することでスリットを形成するステップであって、形成された前記スリットはギャップ開口部を規定し、前記ギャップ開口部を通って加圧された流体が吐出される、ステップ、及び、
c.前記一連のノズルの上流に入口チャンバを配置するステップ、
を有する、方法。
【請求項14】
一連のキャビティが前記第2の壁に配置され、前記一連のキャビティは、前記一連のノズルと対向するように位置する、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の流体処理構造体を含む、
気相堆積システムにおいて使用される流体送出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相堆積装置のための流体処理に関する。また、本発明は、気相堆積システムにおいて使用するための流体送出ヘッドと、流体処理構造体を有する流体送出ヘッドを含む気相堆積装置と、に関する。本発明は、基板上において、気相堆積装置のために生成される流体の流れの均一性を改善するための方法に更に関連する。更に、本発明は、気相堆積装置のための流体処理構造体の製造方法に関連する。更に、本発明は、気相堆積装置のための流体処理構造体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気相堆積技術は、基板上に又は予め堆積された層上に材料の薄膜を設けるために用いられる薄膜堆積である。大半の気相堆積技術において、層厚は、数十ナノメートル~数マイクロメートルの範囲内で制御することができる。
【0003】
空間原子層堆積法(ALD)又は大気圧化学気相堆積法(CVD)のような大気圧大面積気相堆積装置では、前駆体の流れの局所的な変動による厚みの不均一性を避けるために、基板の幅方向に均一なガスの流れが求められる。また、ALDシステムでは、前駆体ガスの分離を改善することも重要である。この前駆体分離機能には、前駆体ガスの抵抗(基板の動きによって生じる)を打ち消し、分離を改善するN2ガスの制御された流れが必要である。これを実現するための一般的な方法は、高い流量制限を備える狭いスリットを配置することである。しかしながら、スリットの幅が大きい場合、製造公差によるスリット幅のばらつきが発生し、均一な流量分布が得られず、拡張性が損なわれるということがあった。例えば、100マイクロメートルのクリアランス(つまり、出口のギャップ開口部)を備えるスリットは、10マイクロメートル前後と相対的に大きいクリアランスの公差であり、最大で30%の著しく不均一な流量分布となる。高スループットのALDシステムでは、複数のALDスロットペアを使用することで、必要なスループットを確保することができる。複数のALDスロットへのガス供給の均一性を高めるためには、そのようなスリットの寸法を公差の観点から正確に決める必要がある。
【0004】
流体を均一に供給でき、例えば、容易に製造することができる気相堆積のための流体処理装置を提供することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、少なくとも1つの上述した欠点を解消する流体処理構造体及び流体処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
付加的に又は代替的に、本発明の目的は、気相堆積中の流れの均一性の改善を達成することにある。
【0007】
付加的に又は代替的に、本発明の目的は、気相堆積中に表面上に流体ガスをより均等に分布させることによって、気相堆積において均一な層を堆積することである。
【0008】
付加的に又は代替的に、本発明の目的は、気相堆積サイクルの間中流体のより均一な流れを促進することができる流体処理構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
更に、本発明は、気相堆積装置のための流体処理構想を提供するものであり、該構造体は、加圧された流体を入口から出口へと送るための入口と出口とを備える流路を規定し、該構造体は、細長いスリットと、加圧された流体がそこを通って細長いスリットに入ることができる一連のノズルとを含み、入口は一連のノズルの上流にあることを特徴とし、出口は、細長いスリットのギャップ開口部の下流側に形成されており、加圧された流体が細長いスリットから吐出されることができ、一連のノズルは、細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成されており、一連のノズルは、加圧された流体が流路を送られる際に、該構造体の1つ以上の衝突面に向かう一連の噴流を形成するように適合されている、ことを特徴とする。
【0010】
ノズルは、細長いスリットに流れ込む流体の主な/一次制限として使用される。
スリットのギャップ開口部から吐出されるより均一な流れを得ることができ、それにより、気相堆積プロセス中のより均一な層を堆積させることができる。スリットと比較してノズルは製造公差が小さいため、流体処理構造体は製造公差の影響を受けにくい。ノズルは正確な方法で製造することができる。更に、ノズルは主な制限を形成するため、細長いスリットのギャップ開口部のサイズをより大きく選択することができ、スリットの製造公差の影響が小さい吐出流を形成することができる。
【0011】
好ましくは、ノズルは、細長いスリットと基板との間のギャップ距離(IHGap)から生ずる流動抵抗よりも大きい又は等しい流動抵抗を提供するように構成されている。従って、使用時に、ノズルはインジェクタヘッドと基板との間の制御された距離の範囲内で流量分布を制御するように構成されている。そして、細長いスリットの開口部は、スリットの入口における一般的な製造公差10μmの影響を受けないように、十分に大きく(例えば、500μm~±10μm)選択することができる。
【0012】
流量分布を制御するノズルは、これらの細長いスリットの出口の上流に配置されており、(1)ノズルの制限が流路全体に渡って支配的である場合:これにより、スリットと基板の間の距離(IHgap)及び上流の供給制限の状況的な非対称性に全く依存しない、実質的に均一な流れが得られる、又は(2)ノズルの制限が、スリット出口と基板との間の距離により生ずる制限と実質的に等しい(例えば、0.5~1.5のオーダー)場合:この場合は、流れは直線的にこの距離に依存する可能性がある。これは、移動する基板によるガスの遅れを打ち消すために有益であり得るが、流れの制限(例えば、屈曲、不均等な供給長さ)における(上流の)非対称性に敏感である可能性もある。
【0013】
従って、ノズルは細長いスリットよりも著しく高い制限を提供する、つまり、ノズルを通過する流体の流れは、細長いスリットを通過する流体の流れよりも大きく制限される。主流路の制限を通過する流体は、一連の噴流を形成し、これらの噴流は、衝突面に衝突するように向けられる。細長いスリットを通過する流体は、細長いスリットのギャップ開口部からのより均一な排出を可能にする。
【0014】
ノズルは、使用時に、加圧された流体が流体処理構造体によって規定された流路を通って導かれる際に、ジェットの形成を可能にするように構成されてもよい。一連のノズルは、流体処理構造体の流体入口部分に配置された一次流路制限を形成してもよい。細長いスリットは、後続の二次流路制限を形成してもよい。ギャップ開口部は、流体処理構造体の流体出口部分を形成してもよく、そこから実質的に均一な流体の流れを吐出することができる。
【0015】
一連のノズル(一次流路の制限を参照)は、そこを横切る第1の圧力損失を提供することができる。これにより、均一性を促進する流体処理構造体における支配的な圧力損失が保証される。細長いスリット(二次流路制限を参照)は、一連のノズルによって達成される支配的な圧力損失よりも著しく小さいそこを横切る第2の圧力損失を提供することができる。これにより、流路を通って送られた加圧された流体が流体処理構造体から吐出される際に、更なる均一性を促進する流体処理構造体内の更なる圧力損失が保証される。任意に、ノズルによって得られたジェットは、細長いスリットに沿った方向及びギャップ開口部に向かう方向に対して実質的に非平行である。
【0016】
一連のノズルは、細長いスリットに流体を取り込むために配置することができる。一連のノズルを通って導かれた加圧された流体は、1つ以上の衝突面に衝突した後、細長いスリットの開口部のギャップへ導かれる。流路内の支配的な障害は、一連のノズルによって提供される。細長いスリットは、一連のノズルの障害に対して、実質的に低い障害を有していてもよい。更に、細長いスリットは、細長いスリットのギャップ開口部において、より均一な出力流を得るために有益な容量効果を提供することができる。
【0017】
任意に、一連のノズルは細長いスリットの第1の壁に配置され、衝突面は細長いスリットの第2の壁に配置され、第2の壁は第1の壁の反対側にある。
【0018】
第1の壁と第2の壁は、流体をそこを通して流すことができる細長いスリットを規定する横方向の壁であってもよい。細長いスリットは、流体処理構造体によって形成される流路の一部を形成してもよい。壁は、互いに間隔を置いて配置されており、それらの間にギャップを備える。ギャップは、流体が細長いスリットの外側部分にあるギャップ開口部に向かって流れることができるように十分に大きい。第1の壁と第2の壁は、細長いスリットを形成するように寸法決めされており、それによって細長いギャップ開口部が形成される。ギャップ開口部は、流路の上流側に配置された複数のノズルよりも制限が小さくなるために十分な大きさである。
【0019】
一連のノズルは、オリフィス、開口、又は貫通孔によって形成されてもよい。ノズル孔は、小さな公差で製造することができる。例えば、一連のオリフィスは、固体の壁に孔を正確に加工することによって得ることができる。ノズルは、流れに依存した抵抗を提供することができる。
【0020】
一連のノズルは、下流の噴流を形成するように構成されている。流体(ガス)を直接基板に向けて流すと、一連のオリフィスから出てくるガスの速度が速いことで、流速の不均一性が生じる可能性がある。代わりに、ジェットは1つ以上の衝突面に導かれ、更に細長いスリットに沿ってギャップ開口部に向かって導かれるため、流体処理構造体のギャップ開口部から吐出されるガス流の均一性を向上させる。
【0021】
一例では、第1の壁と第2の壁とは、互いに対して実質的に平行である。このようにして、第1の壁と第2の壁との間の隙間を、細長いスリットに沿って下流方向に実質的に一定に保つことができる。
【0022】
また、第1の壁と第2の壁とが互いに対して非平行であることも想定される。例えば、第1の壁と第2の壁との間の隙間が、ギャップ開口部(テーパー状を参照)に向かって小さくなるように、第1の壁と第2の壁とが配置されていてもよい。第1の壁と第2の壁とは、細長いスリット及び/又はギャップ開口部によって提供される制限性が、一連のノズルによって提供される制限性よりも小さく維持されるように配置される。従って、ノズルによる制限は、流体処理構造体によって規定された流路において支配的な制限を形成する。
【0023】
細長いスリットは、一連のノズルとギャップ開口部との間に延びる中間部分を含む。この中間部分は、ギャップ開口部に近づくにつれて流体の流れがより均一になるような容量効果を持つことができる。任意に、細長いスリットは、ギャップ開口部に向かう方向に対して反対方向に延びる自由部分も含む。この自由部分は、追加の容量効果を提供し、ギャップ開口部でより均一な流れを達成することができる。
【0024】
任意に、一連のノズルは、配列内で互いに対して空間的にオフセットされており、配列は細長いスリットの長さ方向に実質的に延びる。
【0025】
一連のノズルは、細長いスリットのギャップ開口部の全長を実質的に覆うように配置されていてもよい。これにより、ギャップ開口部の長さにわたって流れをより均等に分配することができる。
【0026】
細長いスリットの開口部の隙間から吐出される流体の流れの均一性は、細長いスリットの拡張された領域に渡ってより均一な背圧を与えることによって、高めることができる。更に、一連のノズルとギャップ開口部との間の距離は、ガスの流れを十分に拡散させることができるように選択することができる。付加的に又は代替的に、より良い拡散を得るために、リムウォールなどの付加的な手段を細長いスリットに設けることもできる。
【0027】
ノズルと細長いスリットとは、所定のサイズを有していてもよい。流体処理構造体は、ノズルが細長いスリットよりも非常に高い制限を提供するように寸法を決めることができる。従って、ノズルは、流体処理構造体によって規定される流路の主な制限を形成することができる。各ノズルからは、比較的高い速度の噴流が得られる。この速度は、噴流が衝突面、例えば細長いスリットの壁に衝突すると、より均一になることができる。
【0028】
孔の形状を有するノズルは、スリットよりも正確に製造できることが理解されるだろう。しかし、流体処理構造体の出口にはスリットがあることが好ましい。従って、孔形状のオリフィスは、所望の背圧を正確に提供することができる。
【0029】
一次流路制限と二次流路制限とは、一連のノズルとギャップ開口部を備える細長いスリットとによって、それぞれ形成され、異なる開口部を有する。
【0030】
加圧された流体は、入口の高圧側から出口の低圧側へと流れることができる。一次流路制限(一連のノズル)と二次流路制限(細長いスリット)では、圧力損失が発生し、その結果、吐出量(流量)が少なくなることがある。背圧の大部分は、細長いスリットによって提供される制限性よりも高い制限性を有する支配的な制限を形成する一連のノズルによって生成される。細長いスリットを介さずに試料又は基板に流体を導く場合、ノズルから吐出された流体の速度が速いことで、排出される流体の速度プロファイルに不均一性が生じる可能性がある。一連のノズルと細長いスリットとを備える流体処理構造体は、細長いスリットの開口部の隙間で吐出される流体の流れの均一性を向上させることに役立つ。
【0031】
細長いスリットを形成する壁の少なくとも1つには、一連のノズルが設けられていてもよく、それらを通って細長いスリット内に流体が吐出される。また、両方の壁に一連のノズルが設けられていることも想定される。一連のノズルは、ボーリング、パーフォレーション等で形成されたオリフィスによって形成されていてもよい。
【0032】
任意に、第1の一連のノズルが細長いスリットの第1の横方向の壁に配置され、第2の一連のノズルが細長いスリットの第2の横方向の壁に配置され、細長いスリットの第2の横方向の壁は第1の横方向の壁の反対側にある。第1の一連のノズルと第2の一連のノズルは、対向するジェットの間の接触が実質的に防止されるように配置されてもよい。このため、第1及び第2の一連のノズルは、互いに対して千鳥状に配列されていてもよい。形成されたジェットは、対向する壁の衝突面に衝突することができる。従って、第1及び第2の一連のノズルからのジェットは、反対方向に流れることができる。
【0033】
一連のノズルは、互いに対して空間的にオフセットすることができる。例えば、一連のノズルは、1つのライン又は複数のラインに沿って互いに隣り合うように配置(例えば平行配置)することができる。更に、一連のノズルは、異なる方法で互いに相対的に距離を置くことができる。ノズルをアレイ状に配置することも可能である。更には、一連のノズルをマトリクス状に配列することも可能である。多くの種類のノズル配列が可能である。
【0034】
任意に、一連のノズルは、200~300マイクロメートルの範囲の直径を有し、細長い出口スリットのギャップ開口部は、その抵抗が流路に実質的に寄与しないように、実質的により大きなサイズを有する。
【0035】
任意に、各ノズルは、0.03~0.07平方ミリメートルの範囲の幾何学的流路面積を有する。一連のノズルの幾何学的流路面積は、細長いスリットのギャップ開口部によって形成される幾何学的流路面積よりも小さい。
【0036】
流体処理構造体は、細長いスリットのギャップ開口部から吐出される流体をより均一にし、それにより気相堆積プロセスにおいて、より均質な層を形成することができる。従って、基板の表面上に吐出される流体ガスの所望の均一性を維持しながら、細長いスリットのギャップ開口部の長さを増加させることができる。任意に、細長いスリットは、長手方向の長さが10~200ミリメートルの範囲内にある。
【0037】
ギャップ開口部が広すぎる場合、サンプル/基板とギャップ開口部との間の距離の変化に敏感になりすぎる可能性がある。このような距離の変化は、サンプル表面に対する流体処理装置の相対的な動きから生じる可能性がある。
【0038】
隙間を狭くすることで、均一性を高めることができる。しかしながら、細長いスリットによって提供される制限性は、一連のノズルによって提供される制限性よりも小さくするべきである。
【0039】
例えば、直径300マイクロメートルを有するノズルを1.25mmのピッチで配置した場合、細長いスリットのギャップ開口部の幅にわたって吐出される流量が大きく変動することがある(例えば、20%の流量変動)。ノズル間のピッチ距離を長くすることによって配置するノズルの数を減らす場合、1つのノズルあたりの流量を増やすことができる。その結果、流動抵抗が大きくなることがある。ノズルの直径がより小さい(例えば200マイクロメートル)場合、孔の上での流量変化を減らすことができる。従って、ノズルの直径をより小さくすることで、結果として得られる吐出される流体の速度プロファイルは、ギャップ開口部と基板/サンプルとの間の距離(ウェッジ距離)により依存しなくなる可能性がある。多くの場合、このウェッジ距離は、基板が傾く又は歪む(例えば、製造公差又は熱変形等の結果として)ことで変化する。
【0040】
任意に、一連のノズルとギャップ開口部との間の距離は、1~50ミリメートルの範囲であり、より好ましくは2.5~25ミリメートルの範囲にあり、更に好ましくは5~10ミリメートルの範囲にある。このようにして、細長いスリットの吐出ギャップ開口部における均一な流れの形成を向上させることができる。
【0041】
任意に、一連のノズルとギャップ開口部とは、0.1~10ミリメートルの範囲で、より好ましくは2.5~5ミリメートルの範囲で間隔が空けられている。
【0042】
十分に均一な流れが得られるまで、一定の距離が必要になる可能性がある。一連のノズルは、ギャップ開口部から出る流体の十分に均一な流れを得るために、細長いスリットのギャップ開口部から十分に距離を置いている。細長いスリットは、静電容量部材として機能してもよい。流れの分布は、ギャップ開口部に近づくにつれて、スリット内でより均一になることができる。流体の速度差を、「減衰」又は「均衡」させることができる。
【0043】
更に、衝突面に衝突する形成された噴流から生じる流体の振動を低減することができる。細長いスリットに沿ってギャップ開口部に向かう流体の流れは、より均一な流線型になり、ジェットによる乱流はギャップ開口部の上流で分解されることができる。
【0044】
細長いスリットは、速度差を十分に減衰させるために十分な高さを有していてもよく、それによって細長いスリットのギャップ開口部から吐出される流れの速度プロファイルがより均一になる。
【0045】
任意に、第2の壁は、加圧された流体が流路を送られるときに形成されたジェットを受けるために配置された一連のキャビティ(例えば、ポットホール)を含み、衝突面は一連の孔により形成される。
【0046】
一連のノズルによって提供される支配的な制限の結果として形成されたジェットが、細長いスリットのギャップ開口部を介して吐出される流体の速度プロファイルにおいて検出可能であることは望ましくない。噴流は、質量流量が大きいほど、速度プロファイルでより見えやすくなる。この有害な効果は、任意の形状(円形、正方形など)を有し、好ましくは重なり合わない一連のキャビティによって、例えばポットホールによって、効果的に低減することができる。噴流は、ギャップ開口部での流れの均一性に対する有害な影響を緩和するために、ポットホールのキャビティに誘導することができる。ポットホールは、ジェットの反対方向への連続的な逆流を得ることができるように、ノズルの直径よりも大きな直径を有することができる。流体はより低速でポットホールを出ることができるため、ギャップ開口部から吐出される流体の速度プロファイルにおいてジェットが見えにくくなる。
【0047】
任意に、第2の壁の一連のキャビティは、第1の壁の一連のノズルの反対側に配置される。
【0048】
ノズルから出る流体の流出を、衝突面に向かって押し出すことができる。衝突面への噴流の衝突により、噴流を分解することができ、ギャップ開口部を通って吐出される流体の速度プロファイルへの影響を低減することができる。
【0049】
任意に、キャビティは、ノズルの直径と同じオーダーの直径を有し、例えば、一般にノズルの直径の2~10倍である。一般的な寸法は、0.5~2ミリメートルの範囲内であり、長さは0.5~15ミリメートルの範囲内である。細長いスリットのギャップ開口部から吐出される流体のより均一な分布を得ることができる。
【0050】
任意に、キャビティは、少なくとも1ミリメートル、好ましくは少なくとも2ミリメートルの深さを有する。
【0051】
1つ以上のキャビティ(例えば、離散的なオリフィス、1つ以上の細長い溝、ポットホール等)を配置することで、細長いスリットのギャップ開口部から吐出される流れをより均一にすることができる。キャビティは、例えば、ミリング処理によって製造することができる。
【0052】
主な制限は、細長いスリットではなく、一連のノズルによって提供される。このようにして、150マイクロメートル未満のギャップ開口部を備える細長いスリットを提供する必要をもはやなくすことができる。例えば、100マイクロメートルの細長いスリットは、製造公差の影響を受けることがある。本発明によれば、一連のノズルは、流路の細長いスリットの前(上流を参照)に配置される。細長いスリット内で、一連のノズルを介して導かれた流体の流れを、ギャップ開口部でジェットから均一な流れに変換することができる。流体処理装置の流路では、一連のノズルが支配的な制限を提供するため、スリットをより広くすることができ、例えば、200ミクロンより大きく、より好ましくは350ミクロンより大きく、更に好ましくは400ミクロンより大きくすることができる。例えば、500ミクロンの細長いスリットでは、10ミクロンのばらつき(公差による)による流れへの影響は限定的である。
【0053】
任意に、流体処理構造体は、第1の細長いスリットに隣接して配置された少なくとも1つの更なる第2の細長いスリットを含む。
【0054】
任意に、細長いスリットは、大きな渦を小さな渦に分解する手段を含む。これにより、小さな渦は、細長いスリットのギャップ開口部に向かって下流側により速く散逸することができる。
【0055】
大きな渦を小さな渦に分解する手段は、ハニカム構造、網、メッシュスクリーン、又は細長い沈降領域のうち少なくとも1つを含むことができる。例えば、一連のノズル(一次流路制限を参照)と細長いスリット(二次流路制限を参照)との間の流路に、メッシュスクリーンを設けることができる。付加的に又は代替的に、複数の細孔を含む多孔質材料を設けることができる。非常に小さい孔を有する多孔質材料を、所望の背圧を生成するために使用することができる。多孔質材料は、鋼鉄等の難しい加工を回避する比較的単純なユニットを提供するために有利である。
【0056】
任意に、ノズルは、形成されたジェットを第2の壁に向け、それにより、第2の壁上の衝突面に実質的に横方向に衝突するように構成されている。
【0057】
任意に、ノズルは調整可能な直径を有する。一次流路制限及び/又は二次流路制限は、流れの抵抗又は制限性を変更するための手段を更に含んでもよいことが理解されるであろう。例えば、手段は、オリフィス内に配置され、オリフィスを横断するワイヤを含んでもよい。制限(例えば孔)の有効な制限性を、制限の直径よりも小さい直径を有するワイヤ又は他の物の挿入によって増加することができる。付加的に又は代替的に、一次流路制限及び/又は二次流路制限の幾何学的流路面積を変更するために、直径調整手段を使用することもできる。
【0058】
一連のノズルと細長いスリットとは、互いに距離を置くことができる。従って、主な/第一の流路制限は、流体処理構造体によって規定される流路における第二流路制限から距離を置くことができる。
【0059】
スリットのギャップ開口部を通して、気相堆積プロセスで流体処理される基板に向けて流体を吐出させることができる。この流体処理構造体は、他の試料の処理にも使用できることが理解されるだろう。
【0060】
任意に、流体処理構造体は、化学気相成長ヘッド又は原子層堆積ヘッドのような気相堆積ヘッドの少なくとも一部を形成する。
【0061】
任意に、ノズルは、1°~30°、より好ましくは2°~15°の範囲の開口角を備えるジェットを提供するように配置されている。いくつかの場合では、ジェットの直径及びノズルの数を増やすことで、速度変動を減らすことができる。
【0062】
任意に、流体処理構造体は、互いに近接して配置された複数の細長いスリットを含む。複数の細長いスリットは、連続して及び/又は互いに隣り合って配置されてもよい。一態様によると、本発明は、互いに隣接して配置された複数の流体処理構造体を含むシステムを提供する。
【0063】
一態様によると、本発明は、本発明に係る複数の流体処理構造体を含む流体処理アセンブリを提供する。流体処理アセンブリの複数の流体処理構造体は、互いの後に連続して配置されてもよい。複数の流体処理構造体は、それぞれ気相堆積のための均一な流れの分布を提供する気相堆積スロットとみなすことができる。アセンブリの複数のスロットは、ヘッドに収容されても、又はフレームによって保持されてもよい。複数のスロットは、気相堆積のために表面上を連続的に通過することができる。このようにして、気相堆積のための表面上の流体処理アセンブリの1回のストローク中に、複数の層を堆積させることができる。
【0064】
複数のスロットは、連続してある順序で配置することができる。スロットの連続は、スロットの細長いスリットの長さ方向Aに対して横向きに配置されてもよい(流体処理アセンブリの相対的な移動方向Sにおいて互いに隣り合うことを参照)。移動方向Sは、気相堆積が行われる表面に対して流体処理構造体が相対的に移動可能な方向と見なすことができる。アセンブリのスロットは、互いに隣接して配置されていてもよく、互いに間隔を空けて配置されていてもよい。
【0065】
入口は、加圧された流体をスロットに提供する。加圧された流体は、スロットの細長いスリットに向かってノズルを通って流れるように、スロットの一連のノズルに提供される。スロットの流路の出口は、細長いスリットのギャップ開口部によって形成される。
【0066】
任意に、複数のスロットの第1の群は、共通の第1の入口と流体連通していてもよく、複数のスロットの第2の群は、共通の第2の入口と流体連通していてもよい。第1及び第2のスロット群、及び/又は第1及び第2の入口は、異なっていてもよい。任意に、複数のスロットの更なる(例えば、第3、第4、第5等の)群は、共通の更なる(例えば、第3、第4、第5等の)入口と流体連通している。スロットの各群は、異なるガスを堆積させるために使用されてもよい。
【0067】
連続したスロットの異なる配置が可能であることが理解されるだろう。また、異なる数のスロットを、互いに後に連続して、又は隣合って連続して配置することができる。例えば、アセンブリは、より少ない数又はより多い数の個々のスロットを含むことができる。付加的に又は代替的に、アセンブリは、個々のスロットの異なる順序又は配列を有してもよい。付加的に又は代替的に、アセンブリは、より少ない数又はより多い数のスロットの群を含んでもよい。
【0068】
一連のノズルは、流体処理構造体によって形成される流路において支配的な制限を形成することができる。有利には、本発明に係る流体処理構造体を用いて、ガスを複数のスロット上に均一に分布させることができる。
【0069】
一態様によると、本発明は、基板上の気相堆積のための流体の流れの均質性を改善する方法であって、加圧された流体を入口から出口に送るための入口と出口を備える流路を規定する流体処理構造体を用いて流体が導入され、該構造体は、細長いスリットと一連のノズルとが設けられ、加圧された流体が一連のノズルを通って細長いスリットに入り、入口は一連のノズルの上流に設けられ、出口は、細長いスリットから加圧された流体が吐出されるように、細長いスリットのギャップ開口部の下流に形成されており、一連のノズルは、細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成され、一連のノズルは、加圧された流体が流路を通って送られる際に、構造体の1つ以上の衝突面に向けられた一連の噴流を形成するように適合されていることを特徴とする方法を提供する。
【0070】
一例として、流体の流れは、気相の反応物によって、又は反応物のガスを分離する不活性パージガスによって形成されてもよい。
【0071】
流体処理構造体は製造公差の影響を受けにくいため、より均一な空間的流量分布を得ることができる。その結果、気相堆積に使用される流体処理構造体は、衝突するジェットによる不均一なフローゾーンの影響を受けにくくなる可能性がある。支配的なノズルの制限を正確に行うことができるので、インジェクタ上のガスの改善された分布を得ることができる。更に、入口のスリット部分内での均一な流出状態が得られるため、パージスロットの長さをより短くする必要がある場合がある。
【0072】
流体処理構造体の入口は、1つ以上の入口チャンバと流体連通することができる。一連のノズルは、入口チャンバと細長いスリットとの間に配置することができる。流体処理構造体は、流体の流れを調節できる流路を提供するように構成することができ、ノズル又はスリットにより流体が基板上に直接吹き付けられることが防止される。代わりに、流路の主な制限は、一連のノズルの上流に配置される。
【0073】
一態様によると、本発明は、気相堆積装置で流体を処理する方法であって、該方法は、以下のステップ、加圧された流体が流れることができる流路を規定するステップであって、流路は、入口、一連のノズル、細長いスリット、及び出口を有し、入口は一連のノズルに対して上流にあり、出口は細長いスリットのギャップ開口部の下流に形成されるステップと、流路の入口に加圧された流体を供給するステップであって、一連のノズルは一連の噴流を形成するように構成されるステップと、一連の噴流を細長いスリットに向けるステップと、細長いスリット内で、形成された一連の噴流を衝突面に衝突させるステップと、を有し、一連のノズルが細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成され、一連のノズルが流路内の支配的な制限を形成することを特徴とする方法を提供する。
【0074】
気相堆積装置で流体を処理する上記の方法は、より均一な流れの吐出を得るための方法を提供する。使用時おいて、加圧された流体が入口に提供され、流体の流れが生成される。流体処理構造体の流路は、所望の流れ特性を提供するように配置される、及び寸法が決められる。
【0075】
任意に、流体処理装置は、ガス/空気ベアリング機能を提供するためにも使用される。このようにして、2つの機能が1つの装置に統合されているため、気相堆積システムの設計を簡略化することができる。
【0076】
一態様によると、本発明は、本発明に係る流体処理構造体を製造する方法を提供し、該方法は、第1の壁に一連のノズルを設けるステップと、第1の壁をその間に間隔を置いて第2の壁に隣接して配置することによってスリットを形成するステップであって、形成されたスリットが加圧された流体が吐出されるギャップ開口部を規定するステップと、一連のノズルの上流に入口チャンバを配置するステップと、を含む。
【0077】
流体処理構造体は、加圧された流体が流体処理構造体を通過する際に、流体処理構造体から吐出されるガスの流れの均一性を向上させることができる。
【0078】
ノズルは、細長いスリットの長手方向に間隔を空けて配置されたオリフィスによって形成することができる。ノズルは、細長いスリットの全長にわたって分散していてもよい。
【0079】
一連のノズルは、第1の壁に孔又はオリフィスをボーリングすることによって配置されてもよい。
【0080】
有利な例では、1つ以上のキャビティが第2の壁に配置されており、ジェットがそのような1つ以上のキャビティに向けられるように、複数のノズルと整列している。任意に、各ノズルはそれぞれのキャビティを有する。付加的に又は代替的に、2つ以上のノズルから来る2つ以上のジェットを受けるために、1つ以上の細長いスリットを使用してもよい。様々な配置が可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0081】
任意に、一連のキャビティが第2の壁に配置されており、一連のキャビティは一連のノズルの反対側に配置されている。
【0082】
任意に、流体処理構造体は、第1の壁を含む第1のユニットと、第2の壁を含む第2のユニットと、の2つのユニットで構成され、第1のユニットは、細長いスリットを形成するために第2のユニットに取り付けられる。一連のノズルを第1の壁に配置することができる。任意に、第1のユニットが第2のユニットに取り付けられたときに一連のキャビティが一連のノズルと対向するように、一連のキャビティが第2の壁に配置される。また、一連の離散的なキャビティの代わりに、1つ以上の細長い溝を採用することも想定される。このようにして、製造工程を大幅に簡略化することができる。更に、このようにして、1つ以上のキャビティを備えるノズルから来る流体ジェットとの位置合わせを容易にすることができる。
【0083】
一態様によると、本発明は、気相堆積システムで使用するための流体送出ヘッドを提供し、流体送出ヘッドは、本発明に係る流体処理構造体を含む。
【0084】
流体処理装置は、例えば、堆積ガス又は分離ガスのうち少なくとも1つを提供することを含む気相堆積プロセスで使用することができる。
【0085】
一態様によると、本発明は、本発明に係る流体処理構造体を備える流体送出ヘッドを含む気相堆積システムを提供する。
【0086】
流体処理構造体は、細長いスリットのギャップ開口部の製造公差(例えば10マイクロメートルの範囲)の影響を受けにくい一方で、均一な流体フロー出力を提供する。
【0087】
複数の細長いスリットを配置することで、高スループットの気相堆積システムを得ることができる。このようにして、気相堆積に必要とされるスループットを確保することができる。
【0088】
一連のノズルは、流路に一次流路制限を提供することができる。そこを横切る圧力損失は、均一性を促進する流体処理構造体における支配的な圧力損失をもたらすことができる。細長いスリットは、二次流路制限を提供することができる。そこを横切る圧力損失は、一連のノズルによって達成される支配的な圧力損失よりも著しく小さい。細長いスリットによって、流路を通って送られた加圧された流体が流体処理構造体から排出されるときに、流れの更なる均一性を達成することができる。
【0089】
一態様によると、本発明は、気相堆積装置のための流体処理構造体を提供し、該構造体は、加圧された流体を入口から出口に送るための入口と出口とを有する流路を規定し、構造体が、第1の細長いスリットと、加圧された流体が第1の細長いスリットに入ることができる第1の一連のノズルと、第2の細長いスリットと、加圧された流体が第2の細長いスリットに入ることができる第2の一連のノズルとを含み、入口が第1の一連のノズル及び第2の一連のノズルの上流にあり、出口は、第1及び第2の細長いスリットのそれぞれの第1及び第2のギャップ開口部の下流側に形成され、加圧された流体が第1及び第2の細長いスリットから基板に向かって吐出されるようになっており、第1及び第2の一連のノズルは、それぞれ第1及び第2の細長いスリットより大きい流動抵抗を提供するように構成されており、第1及び第2の一連のノズルは、加圧された流体が流体処理構造体の流路を送された場合に、構造体の1つ以上の第1及び第2の衝突面に向けられたそれぞれ第1及び第2の一連の噴流を形成するように適合されており、流路の出口は、第1及び第2の細長いスリットによって形成されてもよい。入口からの流れは、第1及び第2の細長いスリットの中に分岐させることができる。
【0090】
任意で、第1及び第2の細長いスリットは、第1及び第2の細長いスリットの長さ方向に対して横方向に、例えば流体処理構造体の移動方向に、互いに隣り合って配置される。移動方向は、気相堆積処理のために流体処理構造体を移動可能な方向である。複数の細長いスリットを互いに隣り合うように配置することで、各細長いスリットによって均一な流れの分布を得ながら、スループットを大幅に向上させることができる。任意に、第1及び第2の細長いスリットの長さ方向に対して横方向に、3つ以上の細長いスリットを互いに隣り合うように配置する。
【0091】
任意に、第1及び第2の細長いスリットは、第1及び第2の細長いスリットの長さ方向に、例えば流体処理構造体の移動方向に対して横方向に、互いに隣り合って配置される。このようにして、流体処理構造体が移動方向に移動するときに、より大きな領域をカバーすることができる。第1及び第2の細長いスリットは、互いに隣接して配置することができる。任意に、ノズルは、細長いスリットの側壁の近くに互いに近接して配置される。例えば、第1の細長いスリットの側壁は、第2の細長いスリットの側壁の隣に配置することができる。ノズルを共に近接して配置することで、これらの側部での流量の減少を補うことができる。また、第1及び第2の細長いスリットの間に1つの側壁が採用されることも想定される。第1及び第2の細長いスリットは、流体処理構造体の移動方向に対して横方向に互いに隣り合って配置された場合、側壁を共有することができる。移動方向は、第1及び第2の細長いスリットの長さ方向に対して横方向であってもよい。任意に、3つ以上の細長いスリットが、流体処理構造体の移動方向に対して横方向に、又は第1及び第2の細長いスリットの長さ方向に隣り合って配置される。
【0092】
一態様によると、本発明は、気相堆積(例えば、ALD、CVD等)装置の流体処理構造体を提供し、該構造体は、加圧された流体を入口から出口に送るための入口及び出口を有する流路を規定し、該構造体は、細長いスリットと、加圧された流体が細長いスリットに入ることができる一連のオリフィスとを含み、入口は一連のオリフィスの上流にあり、出口は、加圧された流体が細長いスリットから吐出されることを可能にする細長いスリットのギャップ開口部に形成されており、一連のオリフィスは、細長いスリットよりも大きな流れ抵抗(制限性)を提供するように構成されており、一連のオリフィスは、加圧された流体が流路を通って送られる際に、構造体の1つ以上の衝突面に向けられた一連の噴流を形成するように適合されている。
【0093】
更なる流路制限は一次流路制限よりも小さい抵抗又は制限性を有するが、細長いスリット内に配置されてもよいことが理解されるであろう。例えば、更なる流路制限は、細長いスリットのギャップ開口部(流体処理構造体の流体出口)に又はその近傍に配置されてもよい。
【0094】
一態様によると、本発明は、選択された反応ゾーン内の基板上に気相堆積によって製造された膜の均質性を向上させる方法であって、選択された反応ゾーンに基板を配置するステップと、基板のそれぞれに膜の化学的気相成長を誘導するために、少なくとも1つのガス状の膜形成反応物質を反応ゾーンに導入するステップと、キャリアガスのジェットストリームによって生じる吸引力によって、反応ゾーンから過剰なガス状の膜形成反応物質を除去するステップと、過剰なガス状の膜形成反応物質の少なくとも一部をキャリアガスとともに反応ゾーンにリサイクルするステップと、を含み、少なくとも1つの膜形成反応物質は、本発明に係る流体処理構造体を使用して導入されることを特徴とする方法を提供する。本方法は、基板上に気相堆積法(例えば、ALD及び/又はCVD)によって製造された膜の均質性を大幅に改善することができる。
【0095】
ALD及びCVDの次に、本発明に係る流体処理構造体は、当技術分野で知られている他の又は同様の気相堆積技術に使用できることが理解されるであろう。化学気相成長法の場合、流体はガス又は蒸気の少なくとも一方であることが理解されるであろう。
【0096】
一態様によると、本発明は、第1の流体処理構造体と第2の流体処理構造体とを含むアセンブリを提供し、第1及び第2の流体処理構造体は、互いに隣接して配置される。有利には、気相堆積のための流体処理アセンブリのスループットを向上させることができる。
【0097】
任意に、アセンブリの第1及び第2の流体処理構造体は、第1の流体処理構造体の第1の細長いスリットと及び第2の流体処理構造体の第2の細長いスリットが、細長いスリットの長さ方向に対して横方向に、連続して配置されるように配置される。長さ方向は、(気相堆積のために)処理されるべき表面に対するアセンブリの相対的な移動方向に直交することができる。このようにして、例えばスロット上において、流体処理構造体によって得られる均一な流量分布を維持しながら、気相堆積を改善することができる。
【0098】
また、アセンブリの流体処理構造体は、細長いスリットの長さ方向に互いに隣接して配置されていることが想定されている。このようにして、更に大きな面積をアセンブリでカバーすることができる。
【0099】
流体処理構造体の観点から説明した態様、特徴、及びオプションのいずれも、方法及び説明した流体送出ヘッド、アセンブリ、及び気相堆積システムに等しく適用されることが理解されるであろう。また、上記の態様、特徴、及びオプションのうち、任意の1つ以上を組み合わせることができることも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
更に、本発明は、図面で表される例示的な実施形態に基づいて解明される。例示的な実施形態は、非限定的な例示によって与えられる。図は、非限定的な例示によって与えられる本発明の実施形態の模式的な表現に過ぎないことに留意されたい。
【0101】
図1図1は、流体処理構造体の実施形態の概要の断面図である。
図2図2は、流体処理構造体の実施形態の概要の透視図である。
図3図3は、流体処理構造体の実施形態の概要の透視図である。
図4A図4Aは、流体処理構造体の実施形態の概要の断面図である。
図4B図4Bは、流体処理構造体の実施形態の概要の断面図である。
図4C図4Cは、流体処理構造体の実施形態の概要の断面図である。
図4D図4Dは、流体処理構造体の実施形態の概要の断面図である。
図5A図5Aは、流体処理構造体の実施形態の概要の透視図である。
図5B図5Bは、流体処理構造体の実施形態の概要の透視図である。
図6図6は、流体処理アセンブリの実施形態の模式図である。
図7A図7Aは、流体処理アセンブリの実施形態の模式図である。
図7B図7Bは、流体処理アセンブリの実施形態の模式図である。
図7C図7Cは、流体処理アセンブリの実施形態の模式図である。
図8A図8Aは、流体処理構造体の実施形態の概要の透視図である。
図8B図8Bは、流体処理構造体の実施形態の概要の透視図である。
図9図9は、流体処理構造体の実施形態の概要の透視図である。
図10図10は、流体処理構造体から排出される流体の速度プロファイルを示す図である。
図11図11は、流体処理構造体から吐出される流体の速度プロファイルを示す図である。
図12図12(A~E)は、流体処理構造体によって得られる流れの均一性を示す図である。
図13A図13Aは、流体処理構造体の断面を流れる流体の速度プロファイルを示す。
図13B図13Bは、流体処理構造体の断面を流れる流体の速度プロファイルを示す。
図14A図14Aは、流体処理構造体から吐出される流体の速度プロファイルを示す。
図14B図14Bは、流体処理構造体から吐出される流体の速度プロファイルを示す。
図15図15は、流体処理構造体の実施形態の模式図である。
図16図16は、方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
図1は、気相堆積装置用の流体処理構造体1の一実施形態の概略を示す断面図である。構造体1は、加圧された流体を入口3から出口5に送るための、入口3と出口5とを有する流路を規定する。構造体1は、細長いスリット7と、加圧された流体がそこを通って細長いスリット7に入ることができる一連のノズル9(この断面図では1つだけが見える)とを含む。流体処理構造体1の入口3は、流体処理構造体1によって規定される流路において、一連のノズル9の上流側に配置される。出口5は、流路の下流側、細長いスリット7のギャップ開口部11に形成されており、このギャップ開口部を介して、加圧された流体が細長いスリット7から吐出されることができる。一連のノズル9は、細長いスリット7よりも大きな流動抵抗を提供するように構成されている。一連のノズル9は、加圧された流体が流路を送られた場合に、構造体1の1つ以上の衝突面15に向けられた一連の噴流13を形成するように適合されている。
【0103】
ガス処理構造体によって得られる結果としてのガスの均一な分布は、堆積成長の改善された均一性を可能にするだけでなく、すなわち、より良い層の堆積、よりよい均一性も可能とする。流体処理構造体1は、基板レベルでの衝突ゾーンを排除しつつ、良好な製造性を有するノズル9の利点を利用している。加えて、流体処理構造体1の設計におけるスリットの公差への依存性も低減される。
【0104】
この例では、一連のノズル9は、細長いスリット7の第1の壁17に配置される。衝突面15は、細長いスリット7の第2の壁19に配置される。第2の壁19は、第1の壁17に対向して配置される。
【0105】
図示の例では、細長いスリットは、一連のノズル9とギャップ開口部11との間に延びる中間部分10aを含む。この中間部分10aは、ギャップ開口部に近づくにつれて流体の流れがより均一になるような容量的効果を有することができる。更に、細長いスリット7は、ギャップ開口部11に向かう方向に対して反対方向に延びる任意の自由部分10bも含む。この自由部分10bは、追加の容量効果をもたらし、その結果、ギャップ開口部で達成されるより均一な流れをもたらすことができる。
【0106】
図面において、必ずしも縮尺通りに描かれてはいないが、同様の数字は同様の構成要素を表す。これらの要素についての詳細な説明を省略することができる。
【0107】
図2は、流体処理構造体1の一実施形態を斜視図で示す模式図である。流体処理構造体1は、均一な流量分布を出力するように構成されている。構造体1は、細長いスリット7によって形成された吐出チャンバを含むことができる。吐出チャンバは入口と出口とを有し、入口は、第1の壁17に配置された一連のノズル9(例えば、開口部又はオリフィス)によって形成され、出口は、一連のノズル9から距離を置いた細長いスリット7のギャップ開口部11によって形成される。一連のノズル9は、使用時にジェットを形成できるような寸法とされており、吐出チャンバは、一連のノズルによって形成されたジェット13が、第1の壁17に対向する第2の壁19の表面に衝突するように配置されている。
【0108】
一連のノズル9は、アレイ21の中で互いに空間的にオフセットされている。アレイ21は、細長いスリット7の長さ方向Aに実質的に延びている。この例では、形成されたジェット13は、構造体1の第2の壁19に設けられた衝突面15に衝突する。細長いスリット7のギャップ開口部11は、第1の壁17と第2の壁19との間の距離に実質的に等しいサイズを有する。
【0109】
一連のノズルは、ノズルの下流側に流体の高速流を形成してもよい(噴流13を参照)。細長いスリット7を、一連のノズル9の位置の下流側の流路に配置することができる。このような噴流の効果は、細長いスリット7のギャップ開口部11を介して吐出される流体の速度プロファイルにおいて特徴付けられないことが望ましい。細長いスリット7によって提供される二次流路制限は、一連のノズル9によって提供される制限と比較して、著しく低い圧力損失を提供してもよい。
【0110】
一連のノズル9は、流体処理構造体1によって規定される流路において、主な又は支配的な流路制限と見なすことができる一次流路制限を提供する。細長いスリット7は、一連のノズル9によって提供される一次流路制限よりも著しく低い制限性を有する二次流路制限を提供してもよい。二次流路制限は、主流路制限の位置の下流側に配置される。
【0111】
流体処理構造体1の流体入口は、より高い圧力の流体を一連のノズル9に供給してもよい。その後、流体を、細長いスリット7によって形成される二次流路制限に沿って導くことができる。一次流路制限は、最大の圧力降下をもたらし、流体を出口に向かって、試料又は基板(図示せず)の表面の低圧領域に導く。
【0112】
ノズルの孔は、背圧を発生させるためのギャップ開口部のサイズに対して十分に小さい。好ましくは400マイクロメートル未満、より好ましくは300マイクロメートル未満である。孔を十分に小さくすることで、ギャップ開口部の幅に依存しない均一な流れを得ることができる。ノズルとキャビティ(例えば、ポットホール)は、孔を開けることによって製造することができる。また、他の製造方法を用いてもよい。また、複数のキャビティの代わりに、細長い溝を採用することも想定される。
【0113】
図3は、流体処理構造体1の一実施形態の概略を示す透視図である。第2の壁19は、加圧された流体が流路を通って送られる際に形成されたジェット13を受けるために配置された一連のポットホール23(キャビティ)を含む。衝突面15は、それぞれの一連のポットホール23によって形成される。第2の壁19に設けられた一連のポットホール23は、第1の壁17に設けられた一連のノズル9に対向して配置されている。
【0114】
この例では、ポットホール23は、ノズル9が配置されている第1の壁とは反対側の第2の壁19に設けられた円形のボーリングによって形成されている。ポットホール23は、加圧された流体が流体処理装置1を介して導かれる際に、使用時に複数のノズルによって形成されるジェットを受ける形状及び寸法であってもよい。
【0115】
ポットホール23は、異なる形態及び形状を有していてもよい。また、異なる数のポットホールが配置されていてもよい。例えば、1つのポットホールを、ノズル9から来る複数の形成されたジェット13を受けるために使用することができる。また、円形のポットホールの代わりに、1つ以上のポットホールのスリット又は溝を形成することも可能である。1つ以上のポットホールのスリット又は溝は、アレイ21に対向して配置され、アレイの長さに沿って延びていてもよい。任意に、ポットホールは、少なくとも0.5ミリメートル、好ましくは少なくとも1ミリメートルの最大リード直径を有する。
【0116】
円形のボーリングを有するポットホールを備える壁を製造することは比較的容易である。また、ボーリングを正確に(公差を参照)製造することも可能である。従って、流体処理構造体の製造コストを低減することができる。
【0117】
一連のノズル9によって形成される一次流路制限は、最大の大きさの流れ制限を提供し、支配的な制限と解釈することができる。一次流路制限は、入口チャンバ内のより高い圧力の第1の領域と、細長いスリット7によって囲まれたより低い圧力の領域と、の間に設けられてもよい。細長いスリット7によって形成された二次制限は、より小さい大きさの流れの制限を提供し、構造体1における非支配的な制限と解釈することができる。二次流路制限は、一次流路の制限とは異なる。
【0118】
図4A~4Dは、流体処理構造体1の実施形態を模式的に示す断面図である。流体処理構造体1は、流路内の複数のノズル9と流体連通する供給チャンバを含むことができる。供給チャンバと細長いスリット7との間の流体連通を提供するために、ノズル9の様々な寸法、形状及び配置を採用することができる。ノズルの直径は、流体処理構造体1によって規定される流路において、この制限が他の全ての制限に対して支配的であるように選択することができる。任意に、ノズル9は、400マイクロメートルよりも小さい直径、より好ましくは300マイクロメートルよりも小さい直径を有する。ガスの均一な分布を実現することができる。更に、ノズル9は、スリットよりも正確に製造することができる。ギャップ開口部の幅(スリットのクリアランス)を十分に大きくすることで、製造公差の影響を受けにくくすることができる。ノズル部分を通過した流体は、1つ以上の衝突面15に衝突することができる。1つ以上の衝突面15は、対向する入口壁側に配置することができ、最終的にパージ/プリカーサギャップに向かって均一な流出状態を実現することができる。
【0119】
図4A~4Dの各実施形態では、ポットホール23の種類が異なる。図4Aでは、ポットホールは、凹状の衝突面15を形成する。図4Bでは、ポットホールは、直線的な孔/ボーリングによって形成されている。図4Cでは、ポットホールは、テーパ状の孔によって形成されている。図4Dでは、孔が傾斜している。ポットホール23は、細長いスリット7のギャップ開口部11から吐出される流体の速度プロファイルへの、ジェット13の影響を効果的に改善して低減することができる。
【0120】
図5A及び5Bは、流体処理構造体1の一実施形態の概略を示す断面図である。この例では、ポットホール23が傾斜している。図5A及び5Bでは、ポットホール23は、それぞれ上向き及び下向きに傾斜している。更に、ノズル9は、ポットホール23の傾斜に実質的に対応する傾斜角度の下で噴流を形成するように構成されている。このようにして、角度のついた噴流は、ポットホール23に向かってよりよく誘導することができる。また、図5A及び5Bの実施形態は、例えば、一連のノズル9のノズルについて、上向き及び下向きに傾斜したポットホール23を交互に使用する等、組み合わせることもできる。ポットホール23は、細長いスリット7のギャップ開口部11における速度プロファイルをより均一にすることができる。
【0121】
図6は、本発明に係る複数の流体処理構造体を含む流体処理アセンブリの一実施形態の模式図である。気相堆積(例えば、ALD)で得られるスループットを著しく増加させることができる。各流体処理構造体は、気相堆積スロットと理解することができる。このアセンブリは、互いに連続して配置された複数のスロットを含む。スロットは、気相堆積のための表面上を連続的に通過することができる。このようにして、気相堆積のための表面上の流体処理アセンブリの単一のストロークの間に、複数の層を堆積させることができる。
【0122】
有利には、流体処理アセンブリの各スロットを通して均一な流量分布を得ることができる。一連のノズルは、ガスがスロット上に均一に分配されることを保証するために配置することができる。例えば、10個のスロットに100slmの比例供給が提供される。各スロットは10slmを受けることができる。その他の配置も可能である。一連のノズルは、流体処理構造体によって形成される流路において、(流体処理構造体の細長いスリットによって提供される制限と比較して)支配的な制限を形成することができる。有利には、本発明に係る流体処理構造体を用いて、複数のスロット上にガスを均一に分配することができる。
【0123】
一連のノズルは、細長いスリット内に加圧された流体を取り込むために配置することができる。一連のノズルを介して導かれた加圧された流体は、1つ以上の衝突面に衝突した後、細長いスリットの開口ギャップに導かれる。流路において、支配的な障害は、一連のノズルによって提供される。細長いスリットは、一連のノズルの障害に対して、実質的に低い障害を有していてもよい。更に、細長いスリットは、細長いスリットのギャップ開口部において、より均一な流量出力を得るために有益な容量効果を提供することができる。
【0124】
複数のスロットは、スロットの細長いスリットの長さ方向Aに対して横方向に(流体処理アセンブリの相対的な移動方向Sにおいて互いに隣り合うことを参照)順番に配置することができる。移動方向Sは、流体処理構造体が、気相堆積が行われる表面に対して相対的に移動可能な方向である。
【0125】
複数のスロットの第1の群は、共通の第1の入口と流体連通していてもよく、複数のスロットの第2の群は、共通の第2の入口と流体連通していてもよい。また、複数のスロットの更なる(例えば、第3、第4等の)スロット群が、共通の更なる入口と流体連通していることも可能である。入口は、加圧された流体をスロットに提供する。加圧された流体は、スロットの細長いスリットに向かってその中を流れることができるように、スロットの一連のノズルに提供される。スロットの流路の出口は、細長いスリットのギャップ開口部によって形成される。
【0126】
連続したスロットの異なる配置が可能である。また、異なる数のスロットを互いに後に連続して、又は隣に連続して配置することもできる。
【0127】
図6に示された実施形態では、スロットX1の第1の群は、第1のガス(例えば、Nを含む)を堆積させるために配置され、スロットX2の第2の群は、第2のガス(例えば、酸化物を含む)を堆積させるために配置され、スロットX3の第3の群は、第3のガス(例えば、金属を含む)を堆積させるために配置される。スロットの第1の群は、共通の第1の入口3-1を有し、スロットの第2の群は、共通の第2の入口3-2を有し、スロットの第3の群は、第3の共通の入口3-3を有する。入口は線で描かれているが、これは流体ライン、チャンバ、チャネル等であってもよい。図示された例では、流体処理アセンブリのスロット又は流体処理構造体は、任意のキャビティ(例えば、ポットホール)を含む。この例では、アセンブリは、以下の連続したスロット、X1-X2-X1-X3-X1-X2-X1-X3-X1-X2-X1-X3-X1を含む。しかしながら、他の多くの構成が可能である。例えば、アセンブリは、より少ない数又はより多い数の個々のスロットを含んでもよい。付加的に又は代替的に、アセンブリは、個々のスロットの異なる順序又は配列を有してもよい。付加的に又は代替的に、アセンブリは、より少ない数又はより多い数のスロットの群を含んでもよい。
【0128】
図7A及び7Bは、本発明に係る複数の流体処理構造体(スロットを参照)を含む流体処理アセンブリの一実施形態の模式図を示す。
【0129】
図7Aにおいて、アセンブリは、図6の例と比較して、より少ない数の個々のスロットを含む。アセンブリは、以下の連続したスロット、X1-X2-X1-X3-X1-X2-X1-X3-X1を含む。他の構成も可能であることが理解されるであろう。
【0130】
図7Bにおいて、アセンブリは、図6及び7Aの例と比較して、より多くの個々のスロットを含む。アセンブリは、以下の連続したスロット、X1-X2-X1-X3-X1-X2-X1-X3-X1-X2-X1-X3-X1-X2-X1-X3-X1を含む。その他の構成のアセンブリも可能である。有利には、気相堆積プロセスを大幅に加速することができる。複数の気相堆積層を、表面に対するアセンブリの1回のストロークによって、表面に提供することができる。
【0131】
図7Cにおいて、アセンブリは、図6、7A及び7Bの例と比較して、より少ない数の個々のスロットを含む。アセンブリは、以下の連続したスロット、X1-X2-X1を含む。アセンブリの他の構成も想定される。例えば、X1-X2、X1-X2-X3、X1-X3-X1-X1-X3、X1-X2-X3-X1-X2-X3等である。
【0132】
アセンブリのスロットは、互いに隣接して配置されていてもよく、又は互いに間隔を空けて配置されていてもよい。アセンブリは、複数のスロットを含むヘッドを形成してもよい。ヘッドは、表面に対して移動可能であってもよい。付加的に又は代替的に、表面は、ヘッドに対して移動可能であってもよい(運動学的反転)。ヘッドは、1回の移動ストロークで複数の層を成膜することができる。気相堆積について達成可能なスループットを大幅に向上させることができる。
【0133】
図8A及び8Bは、流体処理構造体1”の一実施形態の概略図の斜視図を示す。である。他の図の任意の1つに示されたシステムと同じ機能及び構造体を有する要素は、同一又は類似の数字が付与されており、これらの要素に関する詳細な説明を省略する。
【0134】
この図8A及び8Bの例に示すように、第1及び第2の細長いスリットは、第1及び第2の細長いスリットの長さ方向に、つまり、気相堆積のための被処理面90に対する流体処理構造体の相対的な移動方向Sに対して横方向に、互いに隣り合って配置されている。このようにして、流体処理構造体が移動方向Sに移動した場合、より大きな領域をカバーすることができる。第1及び第2の細長いスリット7a、7bは、図8A及び8Bに示すように、互いに隣接して配置することができる。しかしながら、流体処理構造体1”の第1及び第2の細長いスリット7a、7bの間に小さなギャップ距離を設けることも可能である。
【0135】
図8Bに示す実施形態において、ノズル9iは、流体処理構造体1”の細長いスリット7a、7bの側壁25a、25bの近くに接近して配置されている。ノズル9i間のより小さなピッチ距離を、それぞれの側壁25a、25bによる流動抵抗の増加の結果として、細長いスリットの出口11における減少した流れを補償するために採用する。第1の細長いスリットの側壁25aは、第2の細長いスリットの側壁25bの隣に配置されている。しかしながら、第1及び第2の細長いスリット7a、7bの間に1つの側壁が採用されていること、つまり、2つの細長いスリット7a、7bが側壁(図示せず)を共有することも想定される。
【0136】
連続するノズル9iの間の距離を短くすることによって、細長いスリットの側面における流量の減少を効果的に補償することができる。しかしながら、付加的に又は代替的に、ノズルのサイズを選択して、端部付近の出口における不均一な流れを補償することもできる。例えば、側壁25a、25bに近いノズルは、他のノズル(図8には示されていない)よりも大きな直径を有していてもよい。
【0137】
また、第1及び第2の細長いスリットの長さ方向(被処理面90に対する流体処理構造体の相対的な移動方向に直交する方向を参照)に、3つ以上の細長いスリットを互いに隣り合って配置することも可能である。
【0138】
図9は、流体処理構造体1の一実施形態の模式図を示す透視図である。この例において、細長いスリット7を形成する両壁に、つまり第1の壁17及び第2の壁19に一連のノズル9a、9bが設けられている。第1の一連のノズル9aは、細長いスリット7の第1の側壁17に配置され、第2の一連のノズル9bは、細長いスリット7の第2の側壁19に配置され、細長いスリットの第2の側壁19は、第1の側壁17に対向している。第1の一連のノズル9a及び第2の一連のノズル9bは、対向する方向に流れる噴流を生じさせ、一方で対向する噴流間の接触を防止するように構成されている。このために、第1及び第2の一連のノズル9a、9bは、互いに千鳥状に配置されていてもよい。このようにして、第1及び第2の一連のノズル9a、9bからの噴流13は、それによってもたらされる、細長いスリット7のギャップ開口部11を通って吐出される流体の流速の均一性に大きな流れの不安定性を発生させることなく、反対方向に流れることができる。形成されたジェット13は、対向する壁の衝突面15に衝突することができる。この例において、衝突面は、ポットホール23内に配置されている。有利には、細長いスリットの全長にわたって、改善された均一な流れを得ることができる。
【0139】
流体構造体1の入口3は、第1の壁17及び第2の壁19にそれぞれ配置された第1及び第2の一連のノズル9a、9bに加圧された流体を供給するように構成することができる。更に、流体処理構造体1によって形成される流体経路の出口は、細長いスリット7のギャップ開口部11によって提供されてもよい。
【0140】
図10は、ポットホール23を有しない流体処理構造体1から吐出される流体の速度プロファイルを示す。CFD計算と実験とにより、製造公差のある従来のスリット設計と比較して、ノズルとスリットを組み合わせた構成の方が、より均一なガスの供給が可能であることが示されている。この例では、ノズルは、流体処理構造体1によって形成される流路の一次/主な制限を形成する0.2ミリメートルの直径を有する。ノズルは、2.5mmのピッチ間隔で直線状に配列されている。ノズルの配列9と細長いスリット7のギャップ開口部11との間の距離は5ミリメートルである。ギャップ開口部11は、試料面(例えば、基板)に近接して配置される。
【0141】
基板と流体処理構造体1は、気相堆積プロセス中に互いに対して移動することができる。クエット流とは、一方が他方に対して接線方向に移動している2つの面の間の空間における粘性流体の流れである。この流れは、移動に伴う推進流よりも大きいことが望ましい。従って、この例では,流量Qは10*Qクエットとして選択される。
【0142】
ギャップ開口部A0の中心を基準とする位置で試料表面を横切る速度コンター(contour)プロットA1~A8がプロットされており、流れの均一性を示している。ジェットは、質量流量を増加させると、局所的な速度変動を引き起こす可能性がある。この速度コンタープロットは、数値流体力学を用いて得られる。
【0143】
図11は、ポットホール23を有しない流体処理構造体1から吐出される流体の速度プロファイルを示す。ノズルは、流体処理構造体1によって形成される流路における一次/主な制限を形成する0.3ミリメートルの直径を有する。ノズルは、1.25ミリメートルのピッチ間隔で直線状に配列される。ノズルの配列9と細長いスリット7のギャップ開口部11との間の距離は5ミリメートルである。この例では、流量Q=10*Qクエットである。ギャップ開口部11は、試料表面(例えば、基板)に近接して配置される。ギャップ開口部の中心からの異なる距離における速度コンタープロットがプロットされており、流れの均一性を示す。
【0144】
図10に示す状況と比較して、細長いスリットのギャップ開口部から試料表面に向かって、流体がより均一に分散されていることが確認できる。噴流の直径及びノズルの数を増やすことで、速度変動を少なくすることができる。
【0145】
図12A~12Dは、流れの均一性を示すグラフである。図12Eにおいて、流体処理構造体の概要が示される。ネットワークモデルを使用して、ギャップ距離IHGapが約200±40マイクロメートルであり、幅が約225mmであるモデル(図12Eを参照)について、異なるノズル寸法について、ギャップ高さが流れの均一性へ与える影響を計算する。細長いスリット7のギャップ開口部11と表面との間の距離は、不正確性、アライメントの問題等の結果として変化してもよい。このようにして、細長いスリット7のギャップ開口部11から吐出される流れに影響を与えるウェッジを形成することができる。図12Aにおいて、ノズルの直径が200マイクロメートルであり、ギャップは実質的に等しい。異なる状況では、ウェッジを増やしても、例えば、0.025~0.225mmの範囲では、流量は実質的に変化しないと計算され、その結果、流量の変化は約6%である。直径がわずかに大きくなると、ウェッジを同じ順番で増やしていくと、流量は8%まで増加し、流量はIHgapにほぼ依存しなくなる。更に直径がより大きくなると、流量は10%(図12C)、20%(図12D)まで増加し、流量の応答はウェッジの増加に伴って実質的に直線的になる。
【0146】
図13A及び13Bは、流体処理構造体1の断面を流れる流体の速度プロファイルを示す。入口3(例えば、入口チャンバ)からの流体の流れは、一連のノズル9を介して細長いスリット7に向けられてもよい。一連のノズル9によって、より高度な制限が提供される。細長いスリット7内の流体の流れは、ギャップの開口部に近づいた際に、より均一になることができる。図13Aでは、流体処理構造体は、ポットホール23を含まない。図13Bでは、ノズル9の反対側にポットホールが配置されている。一連のノズル9と細長いスリットのギャップ開口部11との間の距離(つまり、ノズルの高さ)は5ミリメートルであり、スリットの幅、つまり第1の壁17と第2の壁19との間の距離は0.5ミリメートルであり、ポットホールの直径は1ミリメートルであり、ノズルの直径は0.2ミリメートルであり、ポットホールの長さは2ミリメートルであり、質量流量はQクエットの10倍である。また、ノズルの面積は3.1415e-8、環状の面積は7.539e-7である。他の寸法も採用可能であることが理解されるだろう。
【0147】
ノズルの反対側に配置されたポットホールに流体を注入することで、出口速度が低下することが理解できる(図13Bを参照)。流出速度は、ポットホールを備えない流体処理構造体と比較して96%低減する(図13Aを参照)。
【0148】
図14A及び14Bは、図10及び11に示す例と同様の位置の断面平面における、流体処理構造体1から吐出される流体の速度プロファイルを示す。図14Aは、ポットホールを備える実施形態の結果としての速度プロファイルを示す。図14Bは、ノズルから形成された噴流が第2の壁17に衝突する、ポットホールを備えない実施形態の結果としての速度プロファイルを示す。この例において、ノズルの直径は0.2ミリメートル、スリットの高さ(ギャップ開口部11までのノズルの距離)は5ミリメートル、ポットホールの直径は1ミリメートル(図14Aの例のみ)、流量はQ=10Qクエットである。ノズルの噴流をそれぞれのポットホールに導くことで、速度変動が大幅に減少していることが理解できる。また,スリットに近い部分の速度プロファイルは,より均一である(例えば、スリットの中心線から長手方向に+0.05ミリメートル及び-0.05ミリメートルの位置)。
【0149】
図15は、流体処理構造体1の一実施形態の模式図の断面を示している。構造体1は、加圧された流体を入口3から出口5に送るための、入口3と出口5とを有する流路を規定する。構造体1は、細長いスリット7と、一連のノズル9とを含み、一連のノズル9を通って加圧された流体が細長いスリット7に入ることができる。流体処理構造体1の入口3は、当該流体処理構造体1によって規定される流路において、一連のノズル9の上流側に配置されている。出口5は、流路の下流側、細長いスリット7のギャップ開口部11に形成されており、このギャップ開口部を通って、加圧された流体が細長いスリット7から吐出できる。一連のノズル9は、細長いスリット7よりも大きな流動抵抗が得られるように構成されている。一連のノズル9は、加圧された流体が流路を通って送られたときに、構造体1の1つ以上の衝突面15に向けられた一連の噴流13を形成するように適合されている。この例では、衝突面は、スリット7内に形成されている。更に、細長いスリット7のギャップ開口部11は、追加のスリットリム30によって狭められている。
【0150】
入口チャンバは、一連のノズル9によって形成された一次流路制限を介して、細長いスリットに流体的に結合することができる。一次流路制限にわたって、主な圧力降下が達成されてもよい。流体入口は、流体処理構造体1の入口チャンバに加圧された流体を供給するように構成された流体供給システムに流体的に結合されてもよい。
【0151】
従来のスリットベースのガス処理構造体とは対照的に、支配的な制限が一連のノズル9によって提供される。スリットは、一連のノズル9よりも低い制限性を有する。このようにして、スリットの幅(面外)の製造公差が大きな流れの変動につながることを防止することができる。支配的な制限は、小さな孔ベースのノズルによって正確に達成することができる。孔はスリットに比べて製造公差がはるかに緩い。従って、流体処理構造体のスリットは、設計上広くすることができる。
【0152】
図16は、気相堆積装置において流体を処理するための方法100の概略図である。第1のステップ101では、加圧された流体がそこを通って流れることができる流路が規定され、流路は、入口、一連のノズル、細長いスリット、及び出口を有し、入口は一連のノズルに対して上流にあり、出口は細長いスリットのギャップ開口部で下流に形成されている。第2のステップ102では、流路の入口に加圧された流体が供給され、一連のノズルは一連の噴流を形成するように構成されている。第3のステップ103では、一連の噴流が細長いスリットに向けられる。第4のステップ104では、細長いスリット内に形成された一連のジェットが、衝突面に衝突させられる。一連のノズルは、細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成されている。一連のノズルは、流路内の支配的な制限を形成する。
【0153】
ノズル9は、オリフィス又は貫通孔によって形成されてもよい。オリフィスは、数マイクロメートルまでは非常に正確に作ることができる。しかし、細長いスリットについて、そのような精度を得ることは非常に困難である。スリットは、公差のある製造誤差の影響をかなり受けやすい。
【0154】
操作(又はステップ)の順序は、特に他が示されない限り、図及び/又は請求項に示された順序に限定されないことが理解されるであろう。
【0155】
キャビティは、様々な形状や形態を有してもよいことが理解されるであろう。キャビティは、例えば、開口部、刻み目、孔、へこみ、又はポットホールの少なくとも1つを形成することができる。様々な開口部の形状、例えば、丸形、楕円形、円形、長方形、正方形等が可能である。他の形状、例えば、スリット又は溝の形状も可能である。円形のポットホールを容易且つ正確に製造することができることは当業者には明らかであろう。このようにして、製造に含まれるコストを削減することができる。
【0156】
「任意の」又は「任意に」は、続いて説明される事象又は状況が発生しても、しなくてもよく、説明は当該事象又は状況が発生する例と発生しない例とが含まれることを意味する。
【0157】
本発明は、比較的容易に製造することができ、本発明の実施に関連するコストでさえもそれほど高くないということに注目すべきである。上述した本発明は、本発明の概念の範囲から逸脱することなく、いくつかの方法で修正及び適応することができる。
【0158】
本明細書において、本発明は、本発明の実施形態の特定の実施例を参照して説明されている。しかしながら、本発明の本質から逸脱することなく、その中で様々な修正、変形、代替及び変更を行うことができることは明らかだろう。本明細書では、明確且つ簡潔に説明するために、特徴を同一又は別個の実施形態の一部として記載しているが、これらの別個の実施形態に記載された特徴の全て又は一部の組み合わせを有する代替的な実施形態も想定されており、請求項によって概説された本発明の枠組み内に入ると理解される。従って、本明細書、図面及び実施例は、制限的な意味ではなく、例示的な意味であると見なされるべきである。本発明は、添付の請求項の範囲の精神と範囲内に入る全ての代替、修正、及び変形を包含することを意図する。更に、説明されている要素の多くは、離散的又は分散的な部品として、又は他の部品と組み合わせて、任意の適切な組み合わせと場所で実装することができる機能物である。
【0159】
請求項において、括弧の間に置かれた参照符号は、請求項を限定するものと解釈してはならない。また、「を備える」という言葉は、請求項で挙げられているもの以外の特徴又はステップの存在を排除するものではない。更に、「a」及び「an」という言葉は、「1つだけ」に限定して解釈されるものではなく、「少なくとも1つ」を意味するために使用され、複数を排除するものではない。ある手段が相互に異なる請求項に記載されているという事実だけで、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0160】
[付記]
[付記1]
気相堆積装置のための流体処理構造体であって、該構造体は、加圧された流体を入口から出口に送るための前記入口と前記出口を備えた流路を規定し、前記構造体は、細長いスリットと、一連のノズルとを含み、加圧された流体は前記一連のノズルを通って前記細長いスリットに入ることができ、前記入口は前記一連のノズルの上流にあり、前記出口は前記細長いスリットのギャップ開口部の下流に形成されることで、加圧された流体が前記細長いスリットから基板に向かって吐出されることができ、前記一連のノズルは、前記細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成されており、前記一連のノズルは、加圧された流体が前記流路を通って送られる際に、前記構造体の1つ以上の衝突面に向けられた一連の噴流を形成するように適合されており、前記ノズルは、400マイクロメートルよりも小さい直径を有する、ことを特徴とする流体処理構造体。
【0161】
[付記2]
前記ノズルは、前記細長いスリットと前記基板との間の流動抵抗以上の流動抵抗を提供するように構成されている、ことを特徴とする付記1に記載の流体処理構造体。
【0162】
[付記3]
前記一連のノズルは、前記細長いスリットの第1の壁に配置されており、前記衝突面は前記細長いスリットの第2の壁に配置されており、前記第2の壁は前記第1の壁に対向する、ことを特徴とする付記1に記載の流体処理構造体。
【0163】
[付記4]
前記一連のノズルは、アレイ内で互いに対して空間的にオフセットされており、前記アレイは前記細長いスリットの長さ方向に実質的に延びる、ことを特徴とする付記1に記載の流体処理構造体。
【0164】
[付記5]
前記一連のノズルは、200~700マイクロメートルの範囲の直径を有する、ことを特徴とする付記1、2又は3に記載の流体処理構造体。
【0165】
[付記6]
前記一連のノズルと前記ギャップ開口部との間の距離は、2.5~25ミリメートルの範囲であり、好ましくは5~10ミリメートルの範囲である、ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1つに記載の流体処理構造体。
【0166】
[付記7]
前記一連のノズルと前記ギャップ開口部とは、0.1~10ミリメートルの範囲で、より好ましくは2.5~5ミリメートルの範囲で間隔を空けられている、ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載の流体処理構造体。
【0167】
[付記8]
前記第2の壁は、加圧された流体が前記流路を送られる際に形成された前記噴流を受けるために配置された一連のキャビティを含み、前記一連のキャビティによって前記衝突面が形成される、ことを特徴とする付記2乃至6のいずれか1つに記載の流体処理構造体。
【0168】
[付記9]
前記第2の壁の上の前記一連のキャビティは、前記第1の壁上の前記一連のノズルと対向して配置される、ことを特徴とする付記7に記載の流体処理構造体。
【0169】
[付記10]
前記キャビティは、0.5~2ミリメートルの範囲の直径を有し、0.5~5ミリメートルの範囲の長さを有する、ことを特徴とする付記7又は8に記載の流体処理構造体。
【0170】
[付記11]
前記細長いスリットは、大きな渦をより小さい渦へと分解するための手段を含む、ことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1つに記載の流体処理構造体。
【0171】
[付記12]
基板上への気相堆積のための流体の流れの均一性を改善するための方法であって、加圧された流体を入口から出口まで基板上に送るための、前記入口と前記出口とを備える流路を規定する流体処理構造体を使用して流体が導入され、前記構造体には、細長いスリットと一連のノズルとが設けられ、加圧された流体が前記一連のノズルを通って前記細長いスリットに入ることができ、前記入口は前記一連のノズルの上流に設けられ、前記出口は、前記細長いスリットのギャップ開口部の下流に形成されることで、加圧された流体が前記細長いスリットから吐出されることができ、前記一連のノズルは、前記細長いスリットよりも大きな流動抵抗を提供するように構成されており、前記一連のノズルは、加圧された流体が前記流路を通って送られる際に前記構造体の1つ以上の衝突面に向けられた一連の噴流を形成するように適合されており、前記ノズルは400マイクロメートルよりも小さい直径を有している、ことを特徴とする方法。
【0172】
[付記13]
流体処理構造体を製造するための方法であって、該方法は、
a.第1の壁の一連のノズルを設けるステップ、
b.第2の壁との間に空間を備えて、前記第2の壁と隣接する前記第1の壁を配置することでスリットを形成するステップであって、形成された前記スリットはギャップ開口部を規定し、前記ギャップ開口部を通って加圧された流体が吐出される、ステップ、及び、
c.前記一連のノズルの上流に入口チャンバを配置するステップ、
を有する、方法。
【0173】
[付記14]
一連のキャビティが前記第2の壁に配置され、前記一連のキャビティは、前記一連のノズルと対向するように位置する、
ことを特徴とする付記13に記載の方法。
【0174】
[付記15]
付記1乃至11のいずれか1つに記載の流体処理構造体を含む、
気相堆積システムにおいて使用される流体送出ヘッド。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
【国際調査報告】