(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】工学的に操作されたIgA抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220601BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220601BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220601BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220601BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220601BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220601BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220601BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220601BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220601BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220601BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220601BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K16/28
C07K16/18
A61K39/395 V
A61K45/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557277
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 NL2020050217
(87)【国際公開番号】W WO2020197400
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506362417
【氏名又は名称】ユーエムシー ユトレヒト ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レーセン, イェアネッテ ヘンリカ ウィルヘルミナ
(72)【発明者】
【氏名】エフェアス, ヨハネス ヘーラルトゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン テーテリング, ヘールト ヤン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
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4C085BB11
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4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
改変されたIgA重鎖定常領域を含む工学的に操作された抗体、医薬組成物、および使用方法が本明細書で提供される。本明細書に記載の工学的に操作された抗体は、IgAドメインの定常領域に1つまたは複数のアミノ酸置換または欠失を含む。がんを含めた障害を本明細書に記載の工学的に操作されたIgA抗体を投与することによって処置する方法も本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸残基:N45.2、N114、N135、およびN15.2に非保存的アミノ酸置換を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.抗原結合性ドメインと;
b.免疫グロブリンA(IgA)重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA重鎖定常領域が、IgA CH2領域およびIgA CH3領域を含み、
前記IgA重鎖定常領域が、対応するWT IgA重鎖定常領域と比較して、少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含み、
前記少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位のそれぞれが、前記IgA CH2領域内または前記IgA CH3領域内に存在する、抗体またはその機能性断片。
【請求項2】
前記少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位が、2つの天然に存在するN結合グリコシル化部位である、請求項1に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項3】
前記少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位が、対応する野生型IgAと比較して、天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項4】
前記改変が、前記少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位のうちの一方または両方のアミノ酸置換、またはアミノ酸欠失を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項5】
前記アミノ酸置換が、非保存的アミノ酸置換である、請求項4に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項6】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.N114およびN135、
ii.N114およびN15.2、または
iii.N135およびN15.2
にアミノ酸置換を含む、
請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項7】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.N114Tアミノ酸置換およびN135Qアミノ酸置換、
ii.N114Tアミノ酸置換ならびにN15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換、または
iii.N135Qアミノ酸置換およびN15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群からのアミノ酸置換
を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項8】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して少なくとも3つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項9】
前記少なくとも3つの天然に存在するグリコシル化部位が、3つの天然に存在するN結合グリコシル化部位である、請求項8に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項10】
前記少なくとも3つの天然に存在するグリコシル化部位が、対応する野生型IgAと比較して、天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を含む、請求項8または9に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項11】
前記改変が、アミノ酸置換またはアミノ酸欠失である、請求項8から10までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項12】
前記アミノ酸置換が、非保存的置換である、請求項11に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項13】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、N114、N135、およびN15.2にアミノ酸置換を含む、請求項8から12までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項14】
前記IgA重鎖定常領域が、前記IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.N114Tアミノ酸置換、
ii.N135Qアミノ酸置換、および
iii.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換
を含む、請求項8から13までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項15】
前記IgA重鎖定常領域が、IgA CH1領域をさらに含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項16】
前記重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して、前記IgA CH2領域内の少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位、前記IgA CH3領域内の少なくとも1つの天然に存在するグリコシル化部位、および前記IgA CH1領域内の少なくとも1つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含む、請求項15に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項17】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2、N114、およびN135、または
ii.N45.2、N15.2、およびN135、
にアミノ酸置換を含む、請求項15または16に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項18】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、およびN135Qアミノ酸置換;または
ii.N45.2Gアミノ酸置換、N135Qアミノ酸置換、ならびにN15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換
を含む、請求項17に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項19】
前記重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して、前記IgA CH2領域内の少なくとも2つの天然に存在するN結合グリコシル化部位、および前記IgA CH1領域内の少なくとも1つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含む、請求項17に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項20】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、
i.N45.2、N114、およびN15.2G
にアミノ酸置換を含む、請求項19に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項21】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.N114Tアミノ酸置換、および
iii.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換
を含む、請求項20に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項22】
対応するWT IgA抗体と比較して長い循環半減期を示す、請求項1から21までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項23】
対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す、請求項1から22までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項24】
対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す、請求項1から23までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項25】
IgG重鎖定常領域を含む対応する抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害を誘導する、請求項1から24までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項26】
対応するWT IgA抗体と比較して増大した熱安定性を示す、請求項1から25までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項27】
対応するWT IgA抗体と比較して減少したグリコシル化を示す、請求項1から26までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項28】
前記IgA重鎖定常領域が、免疫エフェクター細胞上に発現されたFcαRに対して、対応するWT IgA抗体と比較して増大した親和性での結合を示す、請求項1から27までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項29】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも4つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含む、請求項1から28までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項30】
前記少なくとも4つの天然に存在するグリコシル化部位が、4つの天然に存在するN結合グリコシル化部位である、請求項29に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項31】
前記少なくとも4つの天然に存在するグリコシル化部位が、天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を含む、請求項29または30に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項32】
前記重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して、前記IgA CH2領域内の少なくとも2つの天然に存在するN結合グリコシル化部位、前記IgA CH3領域内の少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位、および前記IgA CH1領域内の少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位の改変を含む、請求項29から31までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項33】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、アミノ酸残基:N45.2、N114、N135、およびN15.2にアミノ酸置換を含む、請求項29から32までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項34】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸残基:N45.2、N114、N135、およびN15.2に非保存的アミノ酸置換を含む請求項29から33までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項35】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.N114Tアミノ酸置換、
iii.N135Qアミノ酸置換、および
iv.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換
を含む、請求項29から34までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項36】
少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位を含む対応するIgA抗体と比較して長い循環半減期を示す、請求項29から35までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項37】
IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む対応する抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する、請求項29から36までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項38】
少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位を含む対応するIgA抗体と比較して増大した熱安定性を示す、請求項29から37までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項39】
少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位を含む対応するIgA抗体と比較して減少したグリコシル化を示す、請求項29から38までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項40】
前記IgA重鎖定常領域が、免疫エフェクター細胞上に発現されたFcαRに対して、少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位を含む対応するIgA抗体と比較して増大した親和性での結合を示す、請求項29から39までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項41】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の改変を含む、請求項1から40までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項42】
前記改変が、前記少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸置換またはアミノ酸欠失である、請求項41に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項43】
前記アミノ酸置換が、前記少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換である、請求項42に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項44】
前記少なくとも1つの天然に存在するシステインアミノ酸残基が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C147またはC86である、請求項41から43までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項45】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C86Sアミノ酸置換を含む、請求項44に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項46】
前記IgA重鎖定常領域が、前記IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C147の欠失を含む、請求項44から45までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項47】
対応するWT IgA抗体またはその機能性断片と比較して減少した凝集を示す、請求項44から46までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項48】
対応するWT IgA構築物と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す、請求項44から47までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項49】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の改変を含む、請求項44から48までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項50】
前記改変が、前記少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の一方または両方のアミノ酸置換を含む、請求項49に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項51】
前記改変が、前記少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の一方または両方の欠失を含む、請求項49に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項52】
前記IgA重鎖定常領域が、前記少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のうちの1つのアミノ酸置換、および前記少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のうちの1つの欠失を含む、請求項49に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項53】
前記少なくとも2つの天然に存在するシステインアミノ酸残基が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C147およびC86である、請求項49から52までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項54】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C147の欠失を含む、請求項53に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項55】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C86のアミノ酸置換を含む、請求項53に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項56】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、天然に存在するC86アミノ酸残基のアミノ酸置換、および天然に存在するC147アミノ酸残基の欠失を含む、請求項53に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項57】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C86Sアミノ酸置換を含む、請求項56に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項58】
対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す、請求項49から57までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項59】
対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す、請求項49から58までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項60】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基の改変を含む、請求項1から59までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項61】
前記改変が、前記少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失である、請求項60に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項62】
前記アミノ酸置換が、WT IgA抗体と比較した、前記少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸突然変異である、請求項60に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項63】
前記少なくとも1つのチロシン残基が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、Y148である、請求項60から62までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項64】
IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、アミノ酸Y148が欠失している、請求項63に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項65】
対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す、請求項60から64までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項66】
対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す、請求項60から65までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項67】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgA抗体と比較して少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の改変を含む、請求項1から66までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項68】
前記改変が、対応する野生型IgA抗体と比較して前記少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む、請求項67に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項69】
前記アミノ酸置換が、前記少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換である、請求項68に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項70】
前記少なくとも1つの天然に存在するトレオニンアミノ酸残基が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、T116またはT16である、請求項67から69までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項71】
対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す、請求項67から70までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項72】
対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す、請求項67から71までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項73】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも2つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の改変を含む、請求項1から72までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項74】
前記改変が、前記少なくとも2つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の一方または両方のアミノ酸置換または欠失を含む、請求項73に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項75】
前記アミノ酸置換が、前記少なくとも2つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の一方または両方の非保存的アミノ酸置換である、請求項74に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項76】
前記少なくとも2つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、T116またはT16である、請求項73から75までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項77】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、T116Sアミノ酸置換を含む、請求項76に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項78】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、T16Sアミノ酸置換を含む、請求項76に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項79】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の改変を含む、請求項1から78までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項80】
前記改変が、前記少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む、請求項79に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項81】
前記アミノ酸置換が、前記少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換を含む、請求項80に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項82】
前記少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)残基が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、I115である、請求項79から81までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項83】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、I115Lアミノ酸置換を含む、請求項82に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項84】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するロイシン(L)アミノ酸残基の改変を含む、請求項1から83までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項85】
前記改変が、前記少なくとも1つの天然に存在するロイシン(L)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む、請求項84に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項86】
前記アミノ酸置換が、前記少なくとも1つの天然に存在するロイシン(L)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換である、請求項85に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項87】
前記少なくとも1つの天然に存在するロイシン(L)残基が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、L15.3である、請求項84から86までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項88】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1~3のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、L15.3Iアミノ酸置換を含む、請求項87に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項89】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の改変を含む、請求項1から88までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項90】
前記IgA重鎖定常領域が、前記少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む、請求項89に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項91】
前記アミノ酸置換が、前記少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換である、請求項89に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項92】
前記少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)残基が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、P124である、請求項89から91までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項93】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、P124Rアミノ酸置換を含む、請求項92に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項94】
対応するWT IgA抗体と比較して高い安定性を示す、請求項89から93までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項95】
対応するWT IgA抗体と比較して高い重鎖と軽鎖の間の安定性を示す、請求項89から94までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項96】
前記重鎖と前記軽鎖の間に共有結合性の連結を有する、請求項89から95までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項97】
前記重鎖のシステイン(C)アミノ酸残基と前記軽鎖のシステイン(C)アミノ酸残基の間にジスルフィド結合を含む、請求項89から96までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項98】
前記IgA重鎖定常領域が、配列番号16~21のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1から97までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項99】
前記抗体が、アロタイプIgA2m(1)抗体またはIgA2m(2)である、請求項1から98までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項100】
前記抗体が、アロタイプコーカサスIgA2m(1)抗体である、請求項1から99までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項101】
前記IgA重鎖定常領域が、対応する野生型IgAと比較してC末端IgA尾部片の改変を含む、請求項1から100までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項102】
前記改変が、前記C末端の25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、12、10、8、6、4、または2アミノ酸の欠失を含む、請求項1から101までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項103】
前記改変が、前記C末端の18アミノ酸の欠失を含む、請求項1から102までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項104】
前記改変が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C末端アミノ酸残基131~148の欠失を含む、請求項1から103までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項105】
前記IgA重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C末端アミノ酸残基P131~Y148の欠失を含む、請求項1から104までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項106】
前記IgA重鎖定常領域が、IgA1 CH2領域およびIgA1 CH3領域を含むIgA1定常領域を含む、請求項1から105までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項107】
前記IgA1定常領域が、IgA1 CH1領域をさらに含む、請求項106に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項108】
前記IgA重鎖定常領域が、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域を含むIgA2定常領域を含む、請求項1から106までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項109】
前記IgA2定常領域が、IgA2 CH1領域をさらに含む、請求項108に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項110】
前記抗原結合性ドメインならびにIgG CH2領域およびIgG CH3領域を含むIgA重鎖定常領域を含む対応する抗体の循環半減期の1%以内、5%以内、10%以内、20%以内、または30%以内の循環半減期を示す、請求項1から109までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項111】
a.抗原結合性ドメインと;
b.IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む、抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含む対応するWT IgA重鎖定常領域と比較して、N135Qアミノ酸置換を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項112】
前記重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.N114Tアミノ酸置換、
iii.I115Lアミノ酸置換、
iv.T116Sアミノ酸置換、および
v.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換
をさらに含む、請求項111に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項113】
前記重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.C86Sアミノ酸置換、
ii.P124Rアミノ酸置換、
iii.C147の欠失、
iv.Y148の欠失、
v.L15.3Iアミノ酸置換、
vi.T16Sアミノ酸置換または
vii.これらの組合せ
をさらに含む、請求項111または112に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項114】
a.抗原結合性ドメインと;
b.IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む、抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.C86Sアミノ酸置換、
ii.N114Tアミノ酸置換、
iii.I115Lアミノ酸置換、
iv.T116Sアミノ酸置換、および
v.N135Qアミノ酸置換
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項115】
a.抗原結合性ドメインと;
b.IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.C86Sアミノ酸置換、
iii.N114Tアミノ酸置換、
iv.I115Lアミノ酸置換、
v.T116Sアミノ酸置換、
vi.N135Qアミノ酸置換、
vii.C147の欠失、および
viii.Y148の欠失
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項116】
前記IgA2重鎖定常領域が、配列番号16と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項115に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項117】
a.抗原結合性ドメインと;
b.IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.C86Sアミノ酸置換、
iii.N114Tアミノ酸置換、
iv.I115Lアミノ酸置換、
v.T116Sアミノ酸置換、および
vi.C末端尾部片の欠失
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項118】
前記C末端尾部片の欠失が、前記IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C末端アミノ酸残基P131~Y148の欠失を含む、請求項117に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項119】
前記IgA2重鎖定常領域が、配列番号17と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項117または118に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項120】
a.抗原結合性ドメインと;
b.IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.N114Tアミノ酸置換、
iii.I115Lアミノ酸置換、
iv.T116Sアミノ酸置換、
v.N135Qアミノ酸置換、
vi.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換、
vii.L15.3Iアミノ酸置換、および
viii.T16Sアミノ酸置換
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項121】
a.抗原結合性ドメインと;
b.IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.N114Tアミノ酸置換、
iii.I115Lアミノ酸置換、
iv.T116Sアミノ酸置換、
v.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換、
vi.L15.3Iアミノ酸置換、
vii.T16Sアミノ酸置換、および
viii.C末端アミノ酸P131~Y148の欠失
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項122】
IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.C86Sアミノ酸置換、
ii.P124Rアミノ酸置換、
iii.C147の欠失、
iv.Y148の欠失、または
v.これらの組合せ
をさらに含む、請求項121に記載の構造を有する抗体。
【請求項123】
前記IgA2重鎖定常領域が、配列番号18~21のいずれか1つから選択される配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項121または122に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項124】
グリコシル化されていない、請求項121から123までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項125】
前記IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2、L15.3、T16のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAよりも延長した循環半減期を有する、請求項121から124までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項126】
IgG重鎖定常ドメインを含む対応する抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する、請求項121から125までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項127】
前記IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2、L15.3、T16のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して増大した熱安定性を示す、請求項121から126までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項128】
前記IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2、L15.3、T16のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して減少したグリコシル化を示す、請求項121から127までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項129】
前記IgA重鎖定常領域が、免疫エフェクター細胞上に発現されたFcαRに対して、前記IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2、L15.3、T16のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して増大した親和性での結合を示す、請求項121から128までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項130】
前記IgA重鎖定常領域が、ヒンジ領域をさらに含む、請求項1から129までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項131】
前記ヒンジ領域が、IgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項130に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項132】
前記ヒンジ領域が、ヒトIgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項131に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項133】
前記ヒンジが、IgA1ヒンジまたはIgA2ヒンジ、またはそのバリアントもしくは断片である、請求項130または131に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項134】
前記定常ドメインが、軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1から133までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項135】
前記軽鎖定常領域が、カッパ軽鎖定常領域であり、前記カッパ軽鎖定常領域が、配列番号31の配列を含む、請求項134に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項136】
前記IgA重鎖定常領域が、1つまたは複数のアルブミン結合性領域をさらに含む、請求項1から135までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項137】
1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインが、前記CH3領域のC末端と融合している、請求項136に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項138】
前記定常領域が、前記軽鎖定常領域を含み、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインが、前記軽鎖定常領域と融合している、請求項136に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項139】
前記1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインを含まない対応するIgA抗体と比較して長い循環半減期を有する、請求項136から138までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項140】
適切なin vitro CDCアッセイで測定した場合に、IgG重鎖定常ドメインを含む対応する抗体と比較して低減した補体依存性細胞傷害(CDC)を示す、請求項1から139までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項141】
適切なin vitro ADCCアッセイで測定した場合に、対応するWT IgA抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を示す、請求項1から140までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項142】
前記抗原結合性ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、請求項1から141までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項143】
前記重鎖可変領域が、相補性決定領域(CDR):
配列番号33~40のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むHC-CDR1、
配列番号41~48のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および
配列番号49~56のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むHC-CDR3
のうちの少なくとも1つを含む、請求項142に記載の抗体またはその機能性断片
【請求項144】
前記軽鎖可変領域が、相補性決定領域(CDR):
配列番号57~64のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むLC-CDR1;
配列番号65~72のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および
配列番号73~80のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むLC-CDR3
のうちの少なくとも1つを含む、請求項142または143に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項145】
前記重鎖可変領域が、配列番号4、7、81~86のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、請求項142から144までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項146】
前記軽鎖可変領域が、配列番号5、8、95~100のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、請求項142から145までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項147】
前記重鎖CDRおよび軽鎖CDRのそれぞれがIgG抗体に由来するものである、請求項143から146までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項148】
前記重鎖可変領域が、4つのフレームワーク領域(FW):HC-FW1、HC-FW2、HC-FW3、およびHC-FW4をさらに含む、請求項142から147までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項149】
前記軽鎖可変領域が、4つのフレームワーク領域(FW):LC-FW1、LC-FW2、LC-FW3、およびLC-FW4をさらに含む、請求項142から148までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項150】
前記重鎖FW領域および軽鎖FW領域のそれぞれがIgG抗体に由来するものである、請求項148から149までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項151】
前記重鎖FW領域および軽鎖FW領域のそれぞれがIgA抗体に由来するものである、請求項148から149までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項152】
請求項1から150までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項153】
前記抗体が、キメラ抗体、重鎖抗体、単鎖抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、モノクローナル抗体、脱免疫抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、多価抗体またはこれらの組合せである。
【請求項154】
前記抗原結合性断片が、抗体断片から形成されるFab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFV、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖状抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、ラクダ科動物VHHドメイン、または多重特異性抗体を含む、請求項1から152までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項155】
前記可変ドメインが、GD2、CD20、CD47、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、またはCD25に特異的に結合する、請求項1から153までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項156】
酵素、基質、補助因子、蛍光マーカー、化学発光マーカー、ペプチドタグ、磁気粒子、薬物、毒素、放射性核種、二次抗体の結合性部位、金属結合性ドメイン、またはこれらの組合せをさらに含む、請求項1から154までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項157】
請求項1から155までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項158】
それを必要とする対象を処置する方法であって、前記対象に、請求項1から155までのいずれか一項に記載の抗体もしくはその機能性断片または請求項156に記載の医薬組成物を治療用量で投与することを含む方法。
【請求項159】
前記抗体もしくはその機能性断片または前記医薬組成物が、標的細胞に対する細胞溶解性を持つものである、請求項156または157に記載の方法。
【請求項160】
標的細胞が、がん細胞である、請求項158に記載の方法。
【請求項161】
前記抗体もしくはその機能性断片または前記医薬組成物が、腫瘍成長を阻害するものである、請求項157から159までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項162】
前記抗体もしくはその機能性断片または前記医薬組成物が、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口的、筋肉内または頭蓋内に投与される、請求項157から160までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記抗体もしくはその機能性断片または前記医薬組成物が、前記対象に第2の治療剤と組み合わせて投与される、請求項157から161までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記第2の治療剤が、抗がん剤、化学療法剤、放射線療法、細胞傷害性薬剤、NSAID、コルチコステロイド、抗酸化剤などの栄養補助剤、またはこれらの組合せを含む、請求項162に記載の方法。
【請求項165】
前記第2の治療剤が、前記抗体もしくはその機能性断片または前記医薬組成物の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与される、請求項162から163までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項166】
請求項1から155までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片をコードする単離された核酸。
【請求項167】
重鎖ポリペプチドをコードする単離された核酸分子であって、IgA重鎖定常領域をコードする第1の核酸配列を含み、前記第1の核酸配列が、配列番号25~32のうちのいずれか1つから選択される、単離された核酸分子。
【請求項168】
可変重鎖領域をコードする第2の核酸配列をさらに含み、前記第2の核酸配列が、配列番号87~84のうちのいずれか1つから選択される、請求項166に記載の単離された核酸分子。
【請求項169】
請求項165から167までのいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項170】
請求項165から167までのいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項171】
軽鎖ポリペプチドをコードする単離された核酸分子をさらに含み、前記軽鎖ポリペプチドをコードする単離された核酸分子が可変軽鎖領域をコードする核酸配列を含み、前記核酸配列が配列番号101~108のうちのいずれか1つから選択される、請求項169に記載の宿主細胞。
【請求項172】
前記軽鎖ポリペプチドをコードする単離された核酸分子が、カッパ軽鎖定常領域をコードする核酸配列をさらに含み、前記核酸配列が配列番号32の配列を含む、請求項170に記載の宿主細胞。
【請求項173】
請求項1から155までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片を発現する宿主細胞。
【請求項174】
細菌細胞または哺乳動物細胞である、請求項169から172までのいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項175】
CHO細胞、またはHEK293細胞である、請求項173に記載の宿主細胞。
【請求項176】
抗体またはその機能性断片を産生する方法であって、
(a)請求項169から174までのいずれか一項に記載の宿主細胞を、培地中、前記単離された核酸分子によってコードされるポリペプチドの発現および前記抗体またはその機能性断片のアセンブルを可能にする条件下で培養するステップと、
(b)前記培養された宿主細胞または前記宿主細胞の前記培地から前記抗体またはその機能性断片を精製するステップと
を含む方法。
【請求項177】
前記精製するステップが、分子ふるいクロマトグラフィーによるものである、請求項175に記載の方法。
【請求項178】
CD20ポリペプチドまたはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、
(a)配列番号16~21のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに
(b)配列番号33の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号41のHC-CDR2、および配列番号49のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;
(c)配列番号57の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号65のLC-CDR2、および配列番号73のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または
(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖
を含む抗体またはその機能性断片。
【請求項179】
前記可変重鎖が、配列番号81のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、前記可変軽鎖が、配列番号95のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項177に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項180】
GD2タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、
(a)配列番号16~21のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに
(b)配列番号34の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号42のHC-CDR2、および配列番号50のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;
(c)配列番号58の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号66のLC-CDR2、および配列番号74のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または
(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項181】
前記可変重鎖が、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、前記可変軽鎖が、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項180に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項182】
Her2タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、
(a)配列番号16~21から選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに
(b)配列番号35の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号43のHC-CDR2、および配列番号51のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;
(c)配列番号59の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号67のLC-CDR2、および配列番号75のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または
(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項183】
前記可変重鎖が、配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、前記可変軽鎖が、配列番号96のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項182に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項184】
gp75タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、
(a)配列番号16~21から選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに
(b)配列番号36の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号44のHC-CDR2、および配列番号52のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;
(c)配列番号60の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号68のLC-CDR2、および配列番号76のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または
(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項185】
前記可変重鎖が、配列番号83のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、前記可変軽鎖が、配列番号97のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項184に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項186】
CTLA4タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、
(a)配列番号16~21から選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに
(b)配列番号37の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号45のHC-CDR2、および配列番号53のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;
(c)配列番号61の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号69のLC-CDR2、および配列番号77のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または
(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項187】
前記可変重鎖が、配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、前記可変軽鎖が、配列番号98のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項186に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項188】
CD47タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、
(a)配列番号16~21から選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに
(b)配列番号38の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号46のHC-CDR2、および配列番号54のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;
(c)配列番号62の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号70のLC-CDR2、および配列番号78のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または
(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項189】
前記可変重鎖が、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、前記可変軽鎖が、配列番号99のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項188に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項190】
a.抗原結合性ドメインと;
b.IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.N135Qアミノ酸置換、
iii.C147の欠失、および
iv.Y148の欠失
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項191】
a.抗原結合性ドメインと;
b.IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインと
を含む抗体またはその機能性断片であって、
前記IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.N45.2Gアミノ酸置換、
ii.N114Tアミノ酸置換、
iii.I115Lアミノ酸置換、
iv.T116Sアミノ酸置換、
v.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換、および
vi.C末端アミノ酸P131~Y148の欠失
を含む、抗体またはその機能性断片。
【請求項192】
IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、
i.C86Sアミノ酸置換、
ii.P124Rアミノ酸置換、
iii.C147の欠失、
iv.Y148の欠失、
v.L15.3Iアミノ酸置換、
vi.T16Sアミノ酸置換または
vii.これらの組合せ
をさらに含む、請求項191に記載の構造を有する抗体。
【請求項193】
前記IgA2重鎖定常領域が、配列番号18~21のいずれか1つから選択される配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項191または192に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項194】
グリコシル化されていない、請求項191から194までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項195】
前記IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAよりも延長した循環半減期を有する、請求項191から194までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項196】
IgG重鎖定常ドメインを含む対応する抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する、請求項121から125までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項197】
前記IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して増大した熱安定性を示す、請求項121から126までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【請求項198】
前記IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して減少したグリコシル化を示す、請求項121から127までのいずれか一項に記載の抗体またはその機能性断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2019年3月27日出願の米国仮出願第62/824,864号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍抗原を標的とするIgGアイソタイプのモノクローナル抗体は、種々のがんに対する有効な処置であることが証明されている。長年にわたり、異なる腫瘍抗原を標的とするますます多くのモノクローナル抗体ががん治療への使用に関して認可されてきた。しかし、特に単剤療法としてのそれらの臨床的な有効性および副作用に関しては未だ不十分である。したがって、臨床的な有効性の増大、新規の標的化モダリティもしくは作用様式ならびに/または副作用の数および重症度の低減を有する新しい抗体治療を開発することが目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
抗原結合性ドメインと;免疫グロブリンA(IgA)重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA重鎖定常領域が、IgA CH2領域およびIgA CH3領域を含み、IgA重鎖定常領域が、対応する野生型(WT)IgA重鎖定常領域と比較して少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含み、少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位のそれぞれが、IgA CH2領域内またはIgA CH3領域内に存在する、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。
【0004】
一部の実施形態では、少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位は、2つの天然に存在するN結合グリコシル化部位である。一部の実施形態では、少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位のうちの1つまたは複数は、本明細書に開示される工学的に操作された抗体では対応する野生型IgAと比較して改変されている天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を含む。一部の実施形態では、改変は、少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位のうちの一方または両方のアミノ酸置換、またはアミノ酸欠失を含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、非保存的アミノ酸置換である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含む対応するWT IgA重鎖定常領域と比べて、i.N114およびN135、ii.N114およびN15.2、またはiii.N135およびN15.2にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含む対応するWT IgA重鎖定常領域と比べて、i.N114Tアミノ酸置換およびN135Qアミノ酸置換、ii.N114Tアミノ酸置換ならびにN15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換、またはiii.N135Qアミノ酸置換およびN15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群からのアミノ酸置換を含む。
【0005】
一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して少なくとも3つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含む。一部の実施形態では、少なくとも3つの天然に存在するグリコシル化部位は、3つのN結合グリコシル化部位である。一部の実施形態では、3つの天然に存在するグリコシル化部位は、それぞれが、本明細書に記載の抗体では改変されているアスパラギン(N)アミノ酸残基を含む。
【0006】
一部の実施形態では、改変は、アミノ酸置換またはアミノ酸欠失である。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、非保存的置換である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、N114、N135、およびN15.2にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、i.N114Tアミノ酸置換、ii.N135Qアミノ酸置換、およびiii.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0007】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、IgA CH1領域をさらに含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して、IgA CH2領域内の少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位、IgA CH3領域内の少なくとも1つの天然に存在するグリコシル化部位、およびIgA CH1領域内の少なくとも1つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、i.N45.2、N114、およびN135、またはii.N45.2、N15.2、およびN135にアミノ酸置換を含む。
【0008】
一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、i.N45.2Gアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、およびN135Qアミノ酸置換;またはii.N45.2Gアミノ酸置換、N135Qアミノ酸置換、ならびにN15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0009】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体の重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して、IgA CH2領域内の少なくとも2つの天然に存在するN結合グリコシル化部位、およびIgA CH1領域内の少なくとも1つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、i.N45.2、N114、およびN15.2Gにアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のIgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、i.N45.2Gアミノ酸置換、ii.N114Tアミノ酸置換、およびiii.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して長い循環半減期を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IgG重鎖定常領域を含む同等の抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)(ADCC)を誘導する。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して増大した熱安定性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少したグリコシル化を示す。
【0011】
一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、免疫エフェクター細胞上に発現されたFcαRに対して、対応するWT IgA抗体と比較して増大した親和性での結合を示す。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも4つの天然に存在するグリコシル化部位の改変を含む。一部の実施形態では、少なくとも4つの天然に存在するグリコシル化部位は、4つの天然に存在するN結合グリコシル化部位である。一部の実施形態では、少なくとも4つの天然に存在するグリコシル化部位は、それぞれが、天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して、IgA CH2領域内の少なくとも2つの天然に存在するN結合グリコシル化部位、IgA CH3領域内の少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位、およびIgA CH1領域内の少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位の改変を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、アミノ酸残基:N45.2、N114、N135、およびN15.2にアミノ酸置換を含む。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸残基:N45.2、N114、N135、およびN15.2に非保存的アミノ酸置換を含む。
【0013】
一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、i.N45.2Gアミノ酸置換、ii.N114Tアミノ酸置換、iii.N135Qアミノ酸置換、ならびにiv.N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位を含む対応するIgA抗体と比較して長い循環半減期を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む対応する同等の抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位を含む対応するIgA抗体と比較して増大した熱安定性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位を含む対応するIgA抗体と比較して減少したグリコシル化を示す。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、免疫エフェクター細胞上に発現されたFcαRに対して、少なくとも1つの天然に存在するN結合グリコシル化部位を含む対応するIgA抗体と比較して増大した親和性での結合を示す。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸置換またはアミノ酸欠失である。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換である。一部の実施形態では、少なくとも1つの天然に存在するシステインアミノ酸残基は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C147またはC86である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C86Sアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C147の欠失を含む。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体またはその機能性断片と比較して減少した凝集を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA構築物と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の一方または両方のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、改変は、少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の一方または両方の欠失を含む。
【0016】
一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のうちの1つのアミノ酸置換、および少なくとも2つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のうちの1つの欠失を含む。一部の実施形態では、少なくとも2つの天然に存在するシステインアミノ酸残基は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C147およびC86である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C147の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C86のアミノ酸置換を含む。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、天然に存在するC86アミノ酸残基のアミノ酸置換、および天然に存在するC147アミノ酸残基の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C86Sアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す。
【0018】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失である。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、WT IgA抗体と比較した、少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸突然変異である。一部の実施形態では、少なくとも1つのチロシン残基は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、Y148である。一部の実施形態では、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、アミノ酸Y148が欠失している。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す。
【0019】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgA抗体と比較して少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、対応する野生型IgA抗体と比較して少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換である。一部の実施形態では、少なくとも1つの天然に存在するトレオニンアミノ酸残基は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、T116またはT16である。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも2つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、少なくとも2つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の一方または両方のアミノ酸置換または欠失を含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、少なくとも2つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の一方または両方の非保存的アミノ酸置換である。一部の実施形態では、少なくとも2つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、T116またはT16である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、T116Sアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、T16Sアミノ酸置換を含む。
【0020】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)残基は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、I115である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、I115Lアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するロイシン(L)アミノ酸残基の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、少なくとも1つの天然に存在するロイシン(L)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、少なくとも1つの天然に存在するロイシン(L)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換である。一部の実施形態では、少なくとも1つの天然に存在するロイシン(L)残基は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、L15.3である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、L15.3Iアミノ酸置換を含む。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の改変を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換である。一部の実施形態では、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)残基は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、P124である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、P124Rアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して高い安定性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して高い重鎖と軽鎖の間の安定性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、重鎖と軽鎖の間に共有結合性の連結を有する。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、重鎖のシステイン(C)アミノ酸残基と軽鎖のシステイン(C)アミノ酸残基の間にジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、配列番号16~21のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、アロタイプIgA2m(1)抗体またはIgA2m(2)の改変されたIgAの重鎖領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、アロタイプコーカサスIgA2m(1)抗体である。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、対応する野生型IgAと比較してC末端IgA尾部片の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、C末端の25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、12、10、8、6、4、または2アミノ酸の欠失を含む。一部の実施形態では、改変は、C末端の18アミノ酸の欠失を含む。一部の実施形態では、改変は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C末端アミノ酸残基131~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C末端アミノ酸残基P131~Y148の欠失を含む。
【0023】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA重鎖定常領域は、IgA1 CH2領域およびIgA1 CH3領域を含むIgA1定常領域を含む。一部の実施形態では、IgA1定常領域は、IgA1 CH1領域をさらに含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域を含むIgA2定常領域を含む。一部の実施形態では、IgA2定常領域は、IgA2 CH1領域をさらに含む。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、抗原結合性ドメインならびにIgG CH2領域およびIgG CH3領域を含むIgA重鎖定常領域を含む対応する抗体の循環半減期の1%以内、5%以内、10%以内、20%以内、または30%以内の循環半減期を示す。
【0024】
抗原結合性ドメインと;IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含む対応するWT IgA重鎖定常領域と比較して、N135Qアミノ酸置換を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。
【0025】
一部の実施形態では、重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、N45.2Gアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、I115Lアミノ酸置換、T116Sアミノ酸置換、ならびにN15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、C86Sアミノ酸置換、P124Rアミノ酸置換、C147の欠失、Y148の欠失、L15.3Iアミノ酸置換、T16Sアミノ酸置換、またはこれらの組合せをさらに含む。
【0026】
抗原結合性ドメインと;IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、C86Sアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、I115Lアミノ酸置換、T116Sアミノ酸置換、およびN135Qアミノ酸置換を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。
【0027】
抗原結合性ドメインと;IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、N45.2Gアミノ酸置換、C86Sアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、I115Lアミノ酸置換、T116Sアミノ酸置換、N135Qアミノ酸置換、C147の欠失、およびY148の欠失を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、IgA2重鎖定常領域は、配列番号16と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0028】
抗原結合性ドメインと;IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、N45.2Gアミノ酸置換、C86Sアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、I115Lアミノ酸置換、T116Sアミノ酸置換、およびC末端尾部片の欠失を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。
【0029】
一部の実施形態では、C末端尾部片の欠失は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C末端アミノ酸残基P131~Y148の欠失を含む。
【0030】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のIgA2重鎖定常領域は、配列番号17に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6、99.7%、99.8%、99.9%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0031】
抗原結合性ドメインと;IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、N45.2Gアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、I115Lアミノ酸置換、T116Sアミノ酸置換、N135Qアミノ酸置換、N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換、L15.3Iアミノ酸置換、ならびにT16Sアミノ酸置換を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。
【0032】
抗原結合性ドメインと;IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、N45.2Gアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、I115Lアミノ酸置換、T116Sアミノ酸置換、N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換、L15.3Iアミノ酸置換、T16Sアミノ酸置換、ならびにC末端アミノ酸P131~Y148の欠失を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。
【0033】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、C86Sアミノ酸置換、P124Rアミノ酸置換、C147の欠失、Y148の欠失、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、IgA2重鎖定常領域は、配列番号18~21のいずれか1つから選択される配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、グリコシル化されていない。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2、L15.3、T16のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAよりも延長した循環半減期を有する。
【0034】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその機能性断片は、IgG重鎖定常ドメインを含む対応する抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2、L15.3、T16のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して増大した熱安定性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2、L15.3、T16のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して減少したグリコシル化を示す。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、免疫エフェクター細胞上に発現されたFcαRに対して、IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2、L15.3、T16のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して増大した親和性での結合を示す。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、ヒンジ領域をさらに含む。一部の実施形態では、ヒンジ領域は、IgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む。一部の実施形態では、ヒンジ領域は、ヒトIgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む。一部の実施形態では、ヒンジは、IgA1ヒンジまたはIgA2ヒンジ、またはそのバリアントもしくは断片である。一部の実施形態では、定常ドメインは、軽鎖定常領域をさらに含む。一部の実施形態では、軽鎖定常領域はカッパ軽鎖定常領域であり、カッパ軽鎖定常領域は、配列番号31の配列を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、1つまたは複数のアルブミン結合性領域をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインは、CH3領域のC末端と融合している。一部の実施形態では、定常領域は、軽鎖定常領域を含み、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインは、軽鎖定常領域と融合している。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインを含まない対応するIgA抗体と比較して長い循環半減期を有する。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、適切なin vitro CDCアッセイで測定した場合に、IgG重鎖定常ドメインを含む対応する抗体と比較して低減した補体依存性細胞傷害(CDC)を示す。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその機能性断片は、適切なin vitro ADCCアッセイで測定した場合に、対応するWT IgA抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)(ADCC)を示す。一部の実施形態では、抗原結合性ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体の重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR):配列番号33~40のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号41~48のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および配列番号49~56のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体の軽鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR):配列番号57~64のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むLC-CDR1;配列番号65~72のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および配列番号73~80のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
一部の実施形態では、記載の抗体の重鎖可変領域は、配列番号4、7、81~86のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号5、8、95~100のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、重鎖CDRおよび軽鎖CDRはそれぞれIgG抗体に由来するものである。一部の実施形態では、重鎖可変領域は、4つのフレームワーク領域(FW):HC-FW1、HC-FW2、HC-FW3、およびHC-FW4をさらに含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、4つのフレームワーク領域(FW):LC-FW1、LC-FW2、LC-FW3、およびLC-FW4をさらに含む。
【0038】
一部の実施形態では、重鎖FW領域および軽鎖FW領域はそれぞれIgG抗体に由来するものである。一部の実施形態では、重鎖FW領域および軽鎖FW領域はそれぞれIgA抗体に由来するものである。
【0039】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその機能性断片は、キメラ抗体、重鎖抗体、単鎖抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、モノクローナル抗体、脱免疫(deimmunized)抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、多価抗体またはこれらの組合せである。
【0040】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体の抗原結合性断片は、抗体断片から形成されるFab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ(diabody)、直鎖状抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、VHHドメイン、または多重特異性抗体を含む。一部の実施形態では、可変ドメインは、GD2、CD20、CD47、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、またはCD25に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、酵素、基質、補助因子、蛍光マーカー、化学発光マーカー、ペプチドタグ、磁気粒子、薬物、毒素、放射性核種、二次抗体の結合性部位、金属結合性ドメイン、またはこれらの組合せをさらに含む。
【0041】
上の態様のいずれか1つの抗体またはその機能性断片および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0042】
それを必要とする対象を処置する方法またはそれを必要とする対象の処置に使用するための組成物であって、対象に上の態様のいずれか1つの抗体もしくはその機能性断片または上に開示されている医薬組成物を治療用量で投与することを含む、方法または組成物が本明細書で提供される。
【0043】
一部の実施形態では、抗体もしくはその機能性断片または医薬組成物は、標的細胞に対する細胞溶解性を持つ。一部の実施形態では、標的細胞は、がん細胞である。一部の実施形態では、抗体もしくはその機能性断片または医薬組成物は、腫瘍成長を阻害する。一部の実施形態では、抗体もしくはその機能性断片または医薬組成物は、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口的、筋肉内または頭蓋内に投与される。一部の実施形態では、抗体もしくはその機能性断片または医薬組成物は、対象に第2の治療剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗がん剤、化学療法剤、放射線療法、細胞傷害性薬剤、NSAID、コルチコステロイド、抗酸化剤などの栄養補助剤、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗体もしくはその機能性断片または医薬組成物の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与される。
【0044】
上の態様のいずれか1つの抗体またはその機能性断片をコードする単離された核酸が本明細書で提供される。
【0045】
重鎖ポリペプチドをコードする単離された核酸分子であって、IgA重鎖定常領域をコードする第1の核酸配列を含み、第1の核酸配列が、配列番号25~32のうちのいずれか1つから選択される、単離された核酸分子が本明細書で提供される。一部の実施形態では、上の態様の単離された核酸分子は、可変重鎖領域をコードする第2の核酸配列をさらに含み、第2の核酸配列は、配列番号87~84のうちのいずれか1つから選択される。
【0046】
上の態様のいずれか1つの単離された核酸分子を含むベクターが本明細書で提供される。
【0047】
上の態様のいずれか1つの単離された核酸分子を含む宿主細胞が本明細書で提供される。一部の実施形態では、上の態様のいずれか1つの宿主細胞は、軽鎖ポリペプチドをコードする単離された核酸分子をさらに含み、軽鎖ポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、可変軽鎖領域をコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号101~108のうちのいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、軽鎖ポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、カッパ軽鎖定常領域をコードする核酸配列をさらに含み、核酸配列は、配列番号32の配列を含む。
【0048】
上の態様のいずれか1つの抗体またはその機能性断片を発現する宿主細胞が本明細書で提供される。一部の実施形態では、宿主細胞は、細菌細胞または哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、またはHEK293細胞である。
【0049】
抗体またはその機能性断片を産生させる方法であって、(a)上の態様のいずれか1つの宿主細胞を、培地中、単離された核酸分子によってコードされるポリペプチドの発現および抗体またはその機能性断片のアセンブルを可能にする条件下で培養するステップと、(b)培養された宿主細胞または宿主細胞の培地から抗体またはその機能性断片を精製するステップとを含む方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、精製するステップは、分子ふるいクロマトグラフィーによるものである。
【0050】
CD20ポリペプチドまたはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、(a)配列番号16~21のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに(b)配列番号33の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号41のHC-CDR2、および配列番号49のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;(c)配列番号57の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号65のLC-CDR2、および配列番号73のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域;または(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖を含む抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、可変重鎖は配列番号81のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、可変軽鎖は配列番号95のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
【0051】
GD2タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、(a)配列番号16~21のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに(b)配列番号34の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号42のHC-CDR2、および配列番号50のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;(c)配列番号58の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号66のLC-CDR2、および配列番号74のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、可変重鎖は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、可変軽鎖は配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
【0052】
Her2タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、(a)配列番号16~21から選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに(b)配列番号35の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号43のHC-CDR2、および配列番号51のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;(c)配列番号59の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号67のLC-CDR2、および配列番号75のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、可変重鎖は配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、可変軽鎖は配列番号96のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
【0053】
gp75タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、(a)配列番号16~21から選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに(b)配列番号36の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号44のHC-CDR2、および配列番号52のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;(c)配列番号60の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号68のLC-CDR2、および配列番号76のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、可変重鎖は配列番号83のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、可変軽鎖は配列番号97のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
【0054】
CTLA4タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、(a)配列番号16~21から選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに(b)配列番号37の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号45のHC-CDR2、および配列番号53のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;(c)配列番号61の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号69のLC-CDR2、および配列番号77のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、可変重鎖は配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、可変軽鎖は配列番号98のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
【0055】
CD47タンパク質またはそのバリアントに選択的に結合する抗体またはその機能性断片であって、(a)配列番号16~21から選択されるアミノ酸配列を含むIgA重鎖定常領域;ならびに(b)配列番号38の相補性決定領域重鎖1(HC-CDR1)、配列番号46のHC-CDR2、および配列番号54のHC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変重鎖領域;(c)配列番号62の相補性決定領域軽鎖1(LC-CDR1)、配列番号70のLC-CDR2、および配列番号78のLC-CDR3のうちの少なくとも1つを含む可変軽鎖領域、または(d)(b)の可変重鎖および(c)の可変軽鎖を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、可変重鎖は配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、可変軽鎖は配列番号99のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
【0056】
抗原結合性ドメインと;IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA2重鎖定常領域と比べて、N45.2Gアミノ酸置換、N135Qアミノ酸置換、C147の欠失、およびY148の欠失を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。
【0057】
抗原結合性ドメインと;IgA2 CH1領域、IgA2 CH2領域、およびIgA2 CH3領域を含むIgA2重鎖定常領域を含む定常ドメインとを含む抗体またはその機能性断片であって、IgA2重鎖定常領域が、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、N45.2Gアミノ酸置換、N114Tアミノ酸置換、I115Lアミノ酸置換、T116Sアミノ酸置換、N15.2G、N15.2Q、およびN15.2Tからなる群から選択されるアミノ酸置換、およびC末端アミノ酸P131~Y148の欠失を含む、抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。
【0058】
一部の実施形態では、上の態様の抗体またはその機能性断片は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1のアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域と比べて、C86Sアミノ酸置換、P124Rアミノ酸置換、C147の欠失、Y148の欠失、L15.3Iアミノ酸置換、T16Sアミノ酸置換またはこれらの組合せをさらに含む。
【0059】
一部の実施形態では、IgA2重鎖定常領域は、配列番号18~21のいずれか1つから選択される配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、グリコシル化されていない。
【0060】
一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAよりも延長した循環半減期を有する。
【0061】
一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IgG重鎖定常ドメインを含む対応する抗体と比較して増大した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して、増大した熱安定性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IMGTスキームに従って番号付けして野生型アミノ酸残基N45.2、N114、I115、T116、N15.2のうちの1つもしくは複数、またはC末端アミノ酸残基P131~Y148を含む対応するIgAと比較して減少したグリコシル化を示す。
参照による組込み
【0062】
本明細書において言及されている刊行物、特許および特許出願は全て、個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的にかつ個別に参照により組み込まれることが示されたものと同じく参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
本開示の特色は、添付の特許請求の範囲において詳細に記載されている。本開示の原理が利用される例示的な実施形態が記載されている以下の詳細な説明および付属図を参照することにより本開示の特色および利点のより良い理解が得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、IgA2重鎖(UniProt参照番号A0A0G2JMB2)のアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。強調表示されているアミノ酸は、本明細書に記載の一部の実施形態において置換に供されるアミノ酸を示す。下線が引かれた配列は、その全部または一部が本明細書に記載の一部の実施形態において欠失され得る尾部片を示す。
【0065】
【
図2】
図2は、IgA2重鎖(UniProt参照番号P01877)のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。強調表示されているアミノ酸は、本明細書に記載の一部の実施形態において置換に供されるアミノ酸を示す。下線が引かれた配列は、その全部または一部が本明細書に記載の一部の実施形態において欠失され得る尾部片を示す。
【0066】
【
図3】
図3は、代表的なIgA2重鎖(UniProt参照番号A0A286YEY5)のアミノ酸配列(配列番号3)を示す図である。強調表示されているアミノ酸は、本明細書に記載の一部の実施形態において置換または欠失に供されるアミノ酸を示す。一部のさらなる実施形態では、対応するアミノ酸が同等のIgA抗体またはIgA2定常領域を有する同等のキメラ抗体では欠失し得る。
【0067】
【
図4】
図4A-4Dは、野生型IgA(IgA2(m1))と比べた工学的に操作されたIgAバリアントの略図である。
図4Aは、野生型(WT)IgA;IgA2m1抗体の描写を示す。野生型(WT)IgA;IgA2m1は、CHドメインにN-グリコシル化部位を3つ含有し、尾部片にグリコシル化部位を1つ含有する。
【0068】
図4Bは、工学的に操作されたIgA3.0+(プラス)バリアントの描写を示す。工学的に操作されたIgA3.0+バリアントは、IgA2m1抗体を、CH1-P124R突然変異による安定化された重鎖と軽鎖の連結、2つの遊離のシステインの除去であって、1つがセリンへの突然変異(CH2-C86S)であり、第2のシステインが尾部片の最後の2アミノ酸の欠失によって除去されたものである(CH3-CHS-C147del)、2つの遊離のシステインの除去を含有するように工学的に操作することによって生成される。さらに、3つのN-グリコシル化モチーフ内の極めて重要なアミノ酸の置換によって3つのN結合グリコシル化部位が除去されている。3つのN-グリコシル化モチーフの突然変異は、CH1-N45.2G;CH2-N114T-I115L-T116S;CH3-CHS-N135Qを含む。
【0069】
図4Cは、尾部片全体の欠失(CH3-CHS-P131-Y148del)を含有する工学的に操作されたIgA3.0-またはIgA3.0minバリアントの描写を示す。IgA3.0minバリアントは、安定化された重鎖と軽鎖の連結(CH1-P124R突然変異)、尾部片全体の欠失(CH3-CHS-P131-Y148del)、2つの遊離のシステインの欠如であって、1つがセリンへの突然変異(CH2-C86S)であり、第2のシステインが尾部片の欠失(CH3-CHS-C147del)である、2つの遊離のシステインの欠如を含有する。さらに、2つのN-グリコシル化モチーフ内の極めて重要なアミノ酸の置換、すなわち、CH1-N45.2GおよびCH2-N114T-I115L-T116S、ならびに尾部片の欠失によるCH3-CHS-N135Qdelの欠失によって3つのN結合グリコシル化部位が除去されている。
【0070】
図4Dは、IgA3.0minの特色の全てを含有し、最後のN結合グリコシル化モチーフCH2-N15.2の突然変異をさらに含有する工学的に操作されたIgA4.0バリアントの描写を示す。したがって、IgA4.0バリアントは、安定化された重鎖と軽鎖の連結(CH1-P124R突然変異)、尾部片全体の欠失(CH3-CHS-P131-Y148del)、2つの遊離のシステインの欠如であって、1つがセリンへの突然変異(CH2-C86S)であり、第2のシステインが尾部片の欠失(CH3-CHS-C147del)である、2つの遊離のシステインの欠如を含有する。さらに、4つのN-グリコシル化モチーフ内の極めて重要なアミノ酸(CH1-N45.2G;CH2-N114T-I115L-T116S;CH3-CHS-N135Q;およびCH2-N15.2G;CH2-N15.2Q;;CH2-N15.2T;またはCH2-N15.2T-L15.3I-T16Sのうちの1つ)の置換によって4つのN結合グリコシル化部位が除去されている。IgA4.0バリアントは、グリコシル化されていないIgAである。
【0071】
【
図5】
図5Aおよび5Bは、IgA3.0min抗体バリアントの収量を実証するグラフである。
【0072】
図5Aは、種々の重鎖(HC):軽鎖(LC):pAdvantage比でトランスフェクトしたHEK293F細胞の上清に対するELISAによって決定される抗Her2 IgA抗体、すなわちIgA2-Her2の濃度を示すグラフである。
【0073】
図5Bは、種々の重鎖(HC):軽鎖(LC):pAdvantage比でトランスフェクトしたHEK293F細胞の上清に対するELISAによって決定される、抗CD47 IgA3.0min抗体、すなわち抗CD47可変ドメインを含有するIgA3.0min抗体(IgA3.0min-C47A8-CQ)の濃度を示すグラフである。可変ドメインはC47A8-CQ抗体から得たものである。
【0074】
【
図6】
図6A~6Cは、ELISAで決定された、HEK293F細胞における抗体IgA3.0min抗体バリアントの収量とExpiCHO-S細胞における抗体IgA3.0min抗体バリアントの収量の比較を示すグラフである。
【0075】
図6Aは、HEK293F細胞における抗CD20 IgA3.0min-Obi抗体の産生率とExpiCHO細胞における抗CD20 IgA3.0min-Obi抗体の産生率の比較を示すグラフである。IgA3.0min-Obi抗体は、オビヌツズマブ(Obi)可変ドメインを有するIgA3.0minを含有する。
【0076】
図6Bは、HEK293F細胞における抗Her2 IgA3.0min-Her2抗体の産生率とExpiCHO細胞における抗Her2 IgA3.0min-Her2抗体の産生率の比較を示すグラフである。IgA3.0min-Her2抗体は、抗Her2可変ドメインを有するIgA3.0minを含有する。
【0077】
図6Cは、HEK293F細胞における抗mCTLA4 IgA3.0min-mCTLA4抗体の産生率とExpiCHO細胞における抗mCTLA4 IgA3.0min-mCTLA4抗体の産生率の比較を示すグラフである。IgA3.0min-mCTLA4は、抗mCTLA4可変ドメインを有するIgA3.0minを含有する。
【0078】
【
図7】
図7A~7Dは、種々の重鎖(HC):軽鎖(LC):pAdvantage比でトランスフェクトしたExpiCHO-S細胞におけるIgA3.0min抗体バリアントの濃度を実証するグラフである。
【0079】
図7Aは、抗GD2 IgA3.0min-ch14.18抗体の濃度を示すグラフである。IgA3.0min-ch14.18抗体は、ch14.18可変ドメインを有するIgA3.0minを含有する。
【0080】
図7Bは、抗gp75 IgA3.0min-TA99抗体の濃度を示すグラフである。IgA3.0min-TA99抗体は、TA99可変ドメインを有するIgA3.0minを含有する。
【0081】
図7Cは、抗Her2 IgA3.0min-Her2抗体の濃度を示すグラフである。IgA3.0min-Her2抗体は、抗Her2可変ドメインを有するIgA3.0minを含有する(抗Her2可変ドメインは抗Her2抗体トラスツズマブに由来するものであった)。
【0082】
図7Dは、抗CD20 IgA3.0min-Obi抗体の濃度を示すグラフである。IgA3.0min-Obi抗体は、オビヌツズマブ(Obi)可変ドメインを有するIgA3.0minを含有する。
【0083】
図8A~8Dは、種々の重鎖(HC):軽鎖(LC):pAdvantage比でトランスフェクトしたExpiCHO-S細胞におけるIgA4.0抗体バリアントの産生率を示すグラフである。
【0084】
【
図8-1】
図8Aは、抗CD20 IgA4.0_NG-Obiバリアントの産生を示すグラフである。IgA4.0_NG-Obiバリアントは、グリコシル化部位にCH2-N15.2G突然変異を有するIgA4.0およびObi由来の可変ドメインを含有する。
【0085】
【
図8-2】
図8Bは、抗CD20 IgA4.0_NT-Obiバリアントの産生を示すグラフである。IgA4.0_NT-Obiバリアントは、グリコシル化部位にCH2-N15.2T突然変異を有するIgA4.0およびObi由来の可変ドメインを含有する。
【0086】
【
図8-3】
図8Cは、抗CD20 IgA4.0_NQ-Obiバリアントの産生を示すグラフである。IgA4.0_NQ-Obiバリアントは、グリコシル化部位にCH2-N15.2Q突然変異を有するIgA4.0およびObi由来の可変ドメインを含有する。
【0087】
【
図8-4】
図8Dは、抗CD20 IgA4.0_NLT-TIS-Obiバリアントの産生を示すグラフである。IgA4.0_NLT-TIS-Obiバリアントは、グリコシル化部位にN15.2T-L15.3I-T16S突然変異を有するIgA4.0およびObi由来の可変ドメインを含有する。
【0088】
【
図9-1】
図9A~9Bは、産生細胞株ExpiCHO-S(
図9A)およびHEK293F(
図9B)由来の上清からのKappaSelectカラム(GE Healthcare)を使用したIgA3.0min-Obiの溶出プロファイルを示すグラフである。
【0089】
【
図9-2】
図9C~9Dは、産生細胞株ExpiCHO-S(
図9C)およびHEK293F(
図9D)からのIgA3.0min-ObiのSEC分離プロファイルを示すグラフである。SEC分離では凝集体は観察されない。
【0090】
【
図10-1】
図10A~10Bは、産生細胞株ExpiCHO-S(
図10A)およびHEK293F(
図10B)由来の上清からのKappaSelectカラム(GE Healthcare)を使用したIgA3.0min-Her2の溶出プロファイルを示すグラフである。
【0091】
【
図10-2】
図10C~10Dは、産生細胞株ExpiCHO-S(
図10C)およびHEK293F(
図10D)からのIgA3.0min-Her2のSEC溶出プロファイルを示すグラフである。SECでは凝集体は観察されない。
【0092】
【
図11-1】
図11Aは、産生細胞株ExpiCHO-S由来の上清からのKappaSelectカラム(GE Healthcare)を使用したIgA4.0-Obiの典型的な溶出プロファイルを示すグラフである。
【0093】
【
図11-2】
図11Bは、産生細胞株ExpiCHO-SからのIgA4.0-ObiのSEC溶出プロファイルを示すグラフである。SECでは凝集体は観察されない。
【0094】
図12A~12Eは、フローサイトメトリーによる、IgA3.0+-ObiおよびIgA3.0min-ObiのCD20陽性Daudi細胞への結合を示すグラフである。
【0095】
【
図12-1】
図12Aは、染色しなかったCD20+Daudi細胞対照を示すグラフである。
【0096】
【
図12-2】
図12Bは、二次抗体のみの陰性対照を用いて染色したDaudi細胞を示すグラフである。
【0097】
【
図12-3】
図12Cは、抗CD20 IgA Obi(5μg/mL)陽性対照を用いて染色した_を示すグラフである。
【0098】
【
図12-4】
図12Dは、IgA3.0+-Obi(上清)を用いて染色したDaudi細胞を示すグラフである。
図12Eは、IgA3.0min-Obi(上清)を用いて染色したDaudi細胞を示すグラフである。
図12D~12Eは、IgA3.0min-ObiまたはIgA3.0+-ObiをトランスフェクトしたHEK293F細胞由来の上清を用いて染色したDaudi細胞を示すグラフである。バリアント、IgA3.0+-Obi(
図12D)およびIgA3.0min-Obi(
図12E)のどちらもCD20陽性DaudiにIgA Obi(
図12C)と同じ程度に結合する。
【0099】
【
図13】
図13は、PMN結合アッセイによって評価した、IgA3.0min-ObiによるFc部分のPMNへの結合を示すグラフである。種々の濃度の抗体をコーティングしたELISAプレートウェルにPMNを添加した。一連の洗浄により、IgA3.0min-ObiおよびIgA2の、Fc部分のPMNへの結合強度を決定する。6回目の洗浄後に結合をプロットする。IgA3.0min-Obiは野生型IgA2と比較して等しい~より良好なPMNへの結合を示す。
【0100】
【
図14】
図14は、IgA3.0minの野生型IgA2と比較して等しいコーティング濃度を示す。
【0101】
【
図15】
図15は、IgA4.0バリアントの結合解析を示す。IgA4.0バリアント;IgA4.0_NT-Obi、IgA4.0_NQ-Obi、IgA4.0_NG-Obi、およびIgA4.0_NLT-TIS-ObiをトランスフェクトしたExpiCHO-S細胞由来の上清を、CD20を発現するSKBR3細胞に対する結合について評価した。IgA4.0-Obiのバリアント全てがSKBR3-CD20に、IgA3.0min-Obiまたは精製IgA3.0min-ObiをトランスフェクトしたExpiCHO-S細胞由来の上清と同じ程度に結合する。
【0102】
図16A~16Dは、IgAバリアントにより標的細胞に対するPMN媒介性ADCCが誘導されることを示すグラフである。
【0103】
【
図16-1】
図16Aは、クロム放出アッセイによって決定して、IgA3.0min-Her2抗体により、ADCCがSKBR3細胞のIgA2-Her2と同様のまたはより良好な程度で誘導されることを示すグラフである。
【0104】
【
図16-2】
図16B~16Cは、クロム放出アッセイによって評価して、HEK293F細胞またはExpiCHO-S細胞によって産生されたIgA3.0min-Obi抗体により、Ramos細胞(
図16B)およびDaudi細胞(
図16C)に対するADCCが同様のレベルで誘導されることを示すグラフである。
【0105】
【
図16-3】
図16Dは、IgAバリアントによるDaudi細胞に対するADCCの誘導を示すグラフである。精製IgA3.0min-Obi、IgA3.0min-Obiをトランスフェクトした細胞由来の上清、IgA4.0_NG-Obiをトランスフェクトした細胞由来の上清、IgA4.0_NQ-Obiをトランスフェクトした細胞由来の上清、IgA4.0_NT-Obiをトランスフェクトした細胞由来の上清、およびIgA4.0_NLT-TIS-Obiをトランスフェクトした細胞由来の上清では、精製IgG1-Obiと比較してADCCの増大が示される。IgA4.0-obiバリアント;IgA4.0_NG-Obi、IgA4.0_NQ-Obi、IgA4.0_NT-Obi、およびIgA4.0_NLT-TIS-Obiでは、精製IgA3.0min-Obi、IgA-3.0min-Obiをトランスフェクトした細胞由来の上清と比較して同様のレベルのADCC誘導が示される。
【0106】
図17A~17Cは、IgAバリアントの熱安定性を示すグラフである。SYPRO Orange熱シフトアッセイを使用し、IgA3.0minおよびIgA4.0の熱安定性を決定した。
図17Aは、工学的に操作されたIgA3.0minバリアント;Obi可変ドメインを有するIgA3.0minおよび2.3D11可変ドメインを有するIgA3.0minでは、野生型IgA2(m1)、すなわち、ch14.18可変ドメインを有するIgA2およびHer2可変ドメインを有するIgA2と比較して増大した熱安定性が示されることを実証するグラフである。
【0107】
【
図17-1】
図17Aはまた、全てObi可変ドメインを有する、工学的に操作されたIgA4.0minバリアント;IgA4.0 NQ、IgA4.0 NT、IgA4.0 NLT-TIS、およびIgA4.0 NGにより、野生型IgA2(m1)、すなわち、ch14.18可変ドメインを有するIgA2およびHer2可変ドメインを有するIgA2と比較して増大した熱安定性が示されることも実証する。工学的に操作されたIgA3.0minバリアントおよび工学的に操作されたIgA4.0バリアントの野生型IgA2(m1)と比べた増大した熱安定性は、より高い温度へのシフトによって示される。
【0108】
【
図17-2】
図17Bは、分析された工学的に操作されたIgA3.0minバリアントおよび工学的に操作されたIgA4.0バリアントの野生型IgA2(m1)と比べた平均Tm値のプロットを示すグラフである。プロットは、工学的に操作されたIgA3.0minバリアントおよび工学的に操作されたIgA4.0バリアントが野生型IgA2と比較して、より熱安定性であることを示す。
【0109】
【
図17-3】
図17Cは、CD20を発現するRaji細胞に対するPMN-ADCCにおける機能性について試験した、漸増温度に曝露した抗体を示すグラフである。野生型IgA2(m1)では47℃から有効性の漸減が示されるが、一方、IgA3.0min-ObiおよびIgA4.0_NT-Obiはどちらもなお有効なままである。71℃で、IgA3.0min-ObiならびにIgA4.0_NT-Obiはどちらも50%を超える死滅有効性を示すが、一方、IgA2(m1)はこの温度では機能しない。
【0110】
【
図18】
図18は、PNGase F処理による、工学的に操作されたIgA3.0minバリアントおよび工学的に操作されたIgA4.0バリアントの野生型IgA2と比較した脱グリコシル化の影響を示す図である。野生型IgA2;IgA2(m1)-UMAB10では最大シフトが示されるが、一方、工学的に操作されたIgA3.0minバリアント;IgA3.0min-Obiでは軽微なシフトが示され、これにより、野生型IgA2と比較して減少したグリコシル化が示される。工学的に操作されたIgA4.0バリアント;IgA4.0_NG-Obiではシフトが示されず、これにより、工学的に操作されたIgA3.0minバリアントおよび野生型IgA2と比較して減少したグリコシル化が示される。
【0111】
図19A~19Gは、MALDI-TOF-MSを用いて決定された、野生型IgA2および工学的に操作されたIgAバリアントの総グリコシル化プロファイルを示す図である。
【0112】
【
図19-1】
図19Aは、HEK293細胞により産生された野生型IgA2;IgA2-Her2の総グリコシル化プロファイルを示すグラフである。
【0113】
【
図19-2】
図19Bは、HEK293細胞により産生された工学的に操作されたIgA3.0minバリアント;IgA3.0min-Her2の総グリコシル化プロファイルを示すグラフである。このプロファイルにより、工学的に操作されたIgA3.0minバリアントに存在する単一のグリコシル化部位からの全てのシグナルが示される。
【0114】
【
図19-3】
図19Cは、HEK293FおよびExpiCHO-Sにおいて産生された工学的に操作されたIgA3.0minバリアント;IgA3.0min-Obiのグリコシル化部位特異的解析を示すグラフである。ExpiCHO-Sにおいて産生されたIgA3.0min-Obiではより少ない遊離のガラクトースが示され、これは、肝臓におけるASGPR依存性クリアランスを受けにくいことを意味する。
【0115】
【
図19-4】
図19D~19Gは、4種のIgA4.0バリアント;IgA4.0_NG-Obi(
図19D)、IgA4.0_NQ-Obi(
図19E)、IgA4.0_NT-Obi(
図19F)、およびIgA4.0_NLT-TIS-Obi(
図19G)のネイティブMS分析を示すグラフである。大きなプロットは、抗体の広範な質量範囲を示し、挿入図は、最高ピークのズームインである。観察された質量は、かさのあるN-グリカンの存在を除外した理論的質量と事実上等しく、これにより、IgA4.0バリアントにはグリコシル化が存在しないことが示される。
【0116】
図20A~20Bは、工学的に操作されたIgAバリアントの薬物動態および薬物分布分析を示すグラフである。100μgの量の野生型-IgG1-ジヌツキシマブ、野生型-IgA2-ジヌツキシマブおよびIgA3.0min-ジヌツキシマブ、IgA3.0min-オビヌツズマブ、IgA4.0-オビヌツズマブをBALB/cマウスに注射し、血液を示されている時点でELISAによって分析した。
【0117】
【
図20-1】
図20Aは、IgA3.0minバリアント;IgA3.0min-ジヌツキシマブではその野生型IgA2対応物と比較して延長した半減期が示されたことを示すグラフである。
【0118】
【
図20-2】
図20Bは、オビヌツズマブ(Obinituzumab)フォーマットのIgA3.0minとIgA4.0の比較を示すグラフである。工学的に操作されたIgA4.0バリアント;IgA4.0-オビヌツズマブでは、工学的に操作されたIgA3.0minバリアント;IgA3.0min-オビヌツズマブよりも良好な半減期プロファイルが示された。オビヌツズマブIgA4.0は120時間後にもまだ検出することができる。
【0119】
【
図21】
図21A~21Bは、IgG1ジヌツキシマブおよびジヌツキシマブ由来の可変ドメインを含有する工学的に操作されたIgA3.0minバリアント、IgA3.0minジヌツキシマブの体内分布を示す写真である。インジウム111で放射標識したIgG1ジヌツキシマブおよび工学的に操作されたIgA3.0minバリアント、IgA3.0minジヌツキシマブを体内分布分析のためにマウスにi.v.注射した。マウスをモニタリングして24時間後(
図21A)および48時間後(
図21B)の抗体分布を追跡した。IgG1および工学的に操作されたIgA3.0minバリアントの両方の腫瘍への明らかな浸潤が観察される。
【0120】
【
図22】
図22は、
図21A~21Bからのマウスにおける放射標識したIgG1ジヌツキシマブおよび工学的に操作されたIgA3.0minバリアント、IgA3.0minジヌツキシマブの分布の数量化を示すグラフである。腫瘍シグナルと肝臓シグナルの比を決定して、バックグラウンドシグナルに対して調整した。プロットから、工学的に操作されたIgA3.0minバリアント、IgA3.0minジヌツキシマブでは、IgG1ジヌツキシマブと比較して増大した腫瘍/肝臓比が示されたことが示される。
【0121】
【
図23】
図23は、確立された腫瘍モデルにおける、工学的に操作されたIgA3.0minバリアント;IgA3.0min-Her2を投与した際の腫瘍成長の阻害を示すグラフである。0日目にA431-Luc2-Her2細胞をhCD89トランスジェニックまたは非トランスジェニックSCIDマウスに腹腔内注射し、その後、6日目にpegG-CSFを皮下注射した。生物発光シグナルを6日目以降測定し、その日にマウスを異なる処置群にランダムに入れ、重要なシグナルを測定した。7日目に処置を開始し、IgA3.0min-Her2、10ugを毎日、10日間にわたって腹腔内注射した。生物発光シグナルを示されている時点で測定した。
【発明を実施するための形態】
【0122】
以下の説明および実施例は、本開示の実施形態を詳細に例示するものである。本開示は本明細書に記載の特定の実施形態に限定されず、したがって、変動し得ることが理解されるべきである。本開示の多数の変形形態および改変形態が存在し、それらが本開示の範囲内に包含されることが当業者には理解されよう。
【0123】
用語は全て当業者に理解される通り理解されることが意図されている。別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本開示が関係する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0124】
本明細書で使用される節の見出しは、単に構成目的のものであり、記載の主題を限定するものとは解釈されない。
【0125】
本開示の種々の特色が単一の実施形態に関して記載されている場合があるが、特色はまた、別々にまたは任意の適切な組合せでも提供され得る。逆に、本開示は明確にするために別々の実施形態に関して本明細書に記載されている場合があるが、本開示を単一の実施形態で実施することもできる。
定義
【0126】
以下の定義は当業者を補うものであり、本出願を対象とし、いかなる関連するまたは関連しない場合、例えば、いかなる共同所有の特許または出願にも帰するものではない。本明細書に記載の方法および材料と類似した、またはそれと等しい任意の方法および材料を本開示の試験のための実施に使用することができるが、本明細書には、好ましい材料および方法が記載されている。したがって、本明細書において使用される用語法は、単に特定の実施形態を説明することを目的とし、限定的なものではない。
【0127】
本出願では、他に特に指定がなければ、単数形の使用は複数形を含む。本明細書において使用される通り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈により明確に別段の規定がなされない限り、複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。本出願では、別段の指定のない限り、「または(or)」の使用は、「および/または(and/or)」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定されるものではない。
【0128】
本明細書における「一部の実施形態」、「ある実施形態」、「一実施形態」または「他の実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載されている特定の特色、構造、または特徴が少なくとも一部の実施形態に含まれるが、必ずしも本開示の全ての実施形態に含まれるのではないことを意味する。
【0129】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」という単語(および含む(comprising)の任意の形態、例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」など)、「有する(having)」という単語(および有する(having)の任意の形態、例えば、「有する(have)」および「有する(has)」)など、「含む(including)」という単語(および含む(including)の任意の形態、例えば、「含む(includes)」および「含む(include)」など)または「含有する(containing)」という単語(および含有する(containing)の任意の形態、例えば、「含有する(contains)」および「含有する(contain)」など)は、包括的またはオープンエンドであり、追加的な、記載されていない要素または方法のステップを排除するものではない。本明細書において考察されている任意の実施形態を本開示の任意の方法または組成物に関して実施でき、逆もまた同じであることが意図されている。さらに、本開示の方法を実現するために本開示の組成物を使用することができる。
【0130】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値について許容される誤差範囲内に入ることを意味し、許容される誤差範囲は、その値の測定または決定の仕方、すなわち、測定系の限界に一部依存する。例えば、「約」は、当技術分野における実施につき、1または1よりも大きな標準偏差内に入ることを意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、10%まで、5%まで、または1%までの範囲を意味し得る。別の例では、「約10」量は、10および9から11までの任意の量を含む。
【0131】
さらに別の例では、「約」という用語は、参照数値との関連では、その値からプラスマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の値の範囲も含み得る。あるいは、特に生物系またはプロセスに関しては、「約」という用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。本出願および特許請求の範囲において特定の値が記載されている場合、別段の指定のない限り、特定の値についての許容される誤差範囲内に入ることを意味する「約」という用語が仮定される。
【0132】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、天然のものであるかまたは部分的にもしくは完全に合成により作製されたものであるかに関わらず、免疫グロブリン(Ig)を指す。この用語はまた、抗原結合性ドメインであるまたはそれと相同である結合性ドメインを有する任意のポリペプチドまたはタンパク質も包含する。この用語は、「抗原結合性断片」もしくは「その機能性断片」、または「抗体の断片」、「抗体断片」、「抗体の機能性断片」および下記のものなどの同様の結合性断片に対する他の交換可能な用語をさらに含む。
【0133】
抗体は、例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、組換え抗体、化学的に操作された抗体、脱免疫抗体、親和性成熟抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体および多重反応性抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体、抗体断片、およびこれらの組合せ(例えば、脱免疫もされているモノクローナル抗体、脱免疫もされているヒト化抗体など)を含む。
【0134】
抗体は、例えば、マウス、キメラ、ヒト化、ヘテロコンジュゲート、二重特異性、ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、またはテトラボディ(tetrabody)であり得る。抗原結合性断片は、例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、FV、rlgG、scFV、hcAb(重鎖抗体)、単一ドメイン抗体、VHH、VNAR、sdAb、またはナノボディを含み得る。
【0135】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、B細胞の単一のクローンによって産生され、同じエピトープに結合する抗体を指す。対照的に、「ポリクローナル抗体」は、異なるB細胞によって産生され、同じ抗原の異なるエピトープに結合する抗体の集団を指す。全抗体は、一般には、4つのポリペプチド:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一のコピーおよび軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一のコピーからなる。重鎖はそれぞれが1つのN末端可変(VH)領域と3つのC末端定常(CH1、CH2およびCH3)領域を含有し、軽鎖はそれぞれが1つのN末端可変(VL)領域と1つのC末端定常(CL)領域を含有する。軽鎖と重鎖の各対の可変領域は抗体の抗原結合性部位を形成する。VHおよびVL領域は同様の一般構造を有し、各領域が4つのフレームワーク領域を含み、それらの配列は比較的保存されたものである。フレームワーク領域は3つの相補性決定領域(CDR)によって接続されている。3つのCDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3として公知であり、抗原結合に関与する抗体の「超可変領域」を形成する。
【0136】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」は、2つの異なる種または2つの異なる供給源に由来するアミノ酸配列を含む抗体であり、合成分子を含む。非限定的な例として、非ヒトCDRおよびヒト可変領域フレームワークまたは定常もしくはFc領域を含む抗体、2つの異なるモノクローナル抗体由来の結合性ドメインを有する抗体、または抗体の一部の生物活性もしくは結合を増大もしくは低減するための1つもしくは複数のアミノ酸残基の突然変異を含む抗体が挙げられる。ある特定の実施形態では、組換え抗体を組換えDNA分子から作製するまたは合成する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は1つまたは複数のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドである。
【0137】
本明細書で使用される場合、「認識する」とは、抗原結合性ドメインと抗原の関連または結合を指す。本明細書で使用される場合、「抗原」とは、宿主における免疫応答を誘発し得る抗原性物質を指す。抗原性物質は、宿主における免疫応答を誘発し得る共刺激分子などの分子であり得る。
【0138】
本明細書で使用される場合、「抗体構築物」は、抗原結合性ドメインおよびFcドメインを含有する構築物を指す。
【0139】
本明細書で使用される場合、「結合性ドメイン」は、抗体または非抗体ドメインを指す。
【0140】
本明細書で使用される場合、「抗原結合性ドメイン」は、抗原に結合することができる、抗体由来または非抗体由来の結合性ドメインを指す。抗原結合性ドメインは、腫瘍抗原結合性ドメインまたは抗原提示細胞上の抗原(例えば、分子など)に結合することができる結合性ドメインであり得る。所与のコンジュゲートまたは抗体構築物内に1つよりも多くの抗原結合性ドメインが存在する場合、抗原結合性ドメインに番号付けすることができる(例えば、第1の抗原結合性ドメイン、第2の抗原結合性ドメイン、第3の抗原結合性ドメインなど)。同じコンジュゲートまたは構築物内の異なる抗原結合性ドメインは、同じ抗原または異なる抗原を標的とし得る(例えば、腫瘍抗原に結合し得る第1の抗原結合性ドメイン、抗原提示細胞上の分子(APC抗原)に結合し得る第2の抗原結合性ドメイン、およびAPC抗原に結合し得る第3の抗原結合性ドメイン)。「抗原結合性ドメイン」という用語は、エピトープに特異的に結合し、抗原の一部または全部に相補的である領域を含む抗体の断片を指す。抗原結合性ドメインは、例えば、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも称される)によってもたらされ得る。特に、抗原結合性ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0141】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、抗体上の認識部位と反応することができる分子または分子の一部を意味する。「抗原」という用語はまた、それ自体でまたはアジュバントもしくは担体と併せてのいずれかで、免疫応答を引き出すことができる分子または分子の一部(「免疫原」とも称される)も含む。「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体の産生を引き出すことができるまたは抗体に結合することができる分子または分子の一部(エピトープ)を含む。この用語は、抗体と強力に反応し、抗体に対して高い特異性を有する材料を包含し、また、抗体と弱く反応し、かつ/または抗体に対して低親和性を有する材料も包含する。
【0142】
「エピトープ」という用語は、本明細書で使用される場合、パラトープとして公知の、抗体分子の可変領域内の特異的な抗原結合性部位と相互作用する抗原性決定因子を指す。単一の抗原が1つよりも多くのエピトープを有し得る。したがって、異なる抗体が抗原上の異なる領域に結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、コンフォメーショナルまたは直鎖状のいずれかであり得る。コンフォメーショナルエピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからのアミノ酸が空間的に並置されることによって生じる。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基によって生じるエピトープである。ある特定の状況では、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基部分を含み得る。当業者に公知の種々の技法を使用して、抗体の抗原結合性ドメインがポリペプチドまたはタンパク質内の「1つまたは複数のアミノ酸と相互作用する」かどうかを決定することができる。例示的な技法としては、例えば、Antibodies. Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY)に記載されているものなどの常套的な交差遮断アッセイ、アラニンスキャニング変異性分析、ペプチドブロット分析(Reineke, 2004, Methods Mol Biol 248: 443-463)、およびペプチド切断分析が挙げられる。さらに、エピトープ切り出し、エピトープ抽出および抗原の化学修飾などの方法を使用することができる(Tomer, 2000, Protein Science 9: 487-496)。抗体の抗原結合性ドメインが相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般に述べると、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素標識し、その後、重水素標識されたタンパク質に抗体を結合させることを伴う。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護されている残基(重水素標識されたままになる)以外の全ての残基における水素重水素交換が起こるようにする。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析に供し、それにより、抗体と相互作用する特異的なアミノ酸に対応する重水素標識された残基を明らかにする。例えば、Ehring (1999) Analytical Biochemistry 267 (2): 252-259;Engen and Smith (2001) Anal. Chem. 73: 256A-265Aを参照されたい。抗原/抗体複合体のX線結晶構造解析もエピトープマッピングのために使用することができる。
【0143】
本明細書で使用される場合、「抗体抗原結合性ドメイン」は、抗原に結合することができる、抗体由来の結合性ドメインを指す。
【0144】
本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」は、Fc受容体に結合することができる、抗体由来または非抗体由来のFcドメインを指す。本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」および「Fcを含むドメイン」は互換的に使用され得る。
【0145】
本明細書で使用される場合、「標的結合性ドメイン」は、抗原に結合することができる、抗体由来または非抗体由来の抗原結合性ドメインを含有する構築物を指す。
【0146】
本明細書で使用される場合、天然のl-鏡像異性アミノ酸に対する略語は従来のものであり、以下の通りであり得る:アラニン(A、Ala);アルギニン(R、Arg);アスパラギン(N、Asn);アスパラギン酸(D、Asp);システイン(C、Cys);グルタミン酸(E、Glu);グルタミン(Q、Gin);グリシン(G、Gly);ヒスチジン(H、His);イソロイシン(I、He);ロイシン(L、Leu);リシン(K、Lys);メチオニン(M、Met);フェニルアラニン(F、Phe);プロリン(P、Pro);セリン(S、Ser);トレオニン(T、Thr);トリプトファン(W、Trp);チロシン(Y、Tyr);バリン(V、Val)。別段の指定がない限り、Xは任意のアミノ酸を示し得る。一部の態様では、Xは、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、ヒスチジン(H)、リシン(K)、またはアルギニン(R)であり得る。
【0147】
「薬学的に許容される」という句は、本明細書では、良好な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わない、妥当なベネフィット/リスク比に見合う、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために使用される。
【0148】
「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」という句は、本明細書で使用される場合、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、かつ、患者に対して有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体としての機能を果し得る材料のいくつかの例としては、(1)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロースなど;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなど;(3)セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど;(4)粉末化トラガント;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばカカオバターおよび坐薬ワックスなど;(9)油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油など;(10)グリコール、例えばプロピレングリコールなど;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど;(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)医薬製剤に使用される他の無毒性の適合する物質が挙げられる。
【0149】
「がん」、「腫瘍」、「増殖性疾患」、「悪性腫瘍」または「悪性疾患」という用語は、調節解除された細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理的状態に関する。がんは、細胞の群が制御されない成長または望ましくない成長を示す疾患のクラスである。がん細胞は他の場所に拡散し得、それにより転移の形成が導かれ得る。体内のがん細胞の拡散は、例えば、リンパ液または血液を介して起こり得る。制御されない成長、侵入および転移形成は、がんの悪性特性とも称される。これらの悪性特性により、がんと、一般には浸潤も転移もしない良性腫瘍が区別される。
【0150】
「抗原認識部分」または「抗体認識ドメイン」は、抗原に特異的に結合する分子または分子の一部を指す。一実施形態では、抗原認識部分は、抗体、抗体様分子またはその断片であり、抗原は、腫瘍抗原または感染性疾患抗原である。
【0151】
「抗体の断片」、「抗体断片」、「抗体の機能性断片」、「抗原結合性部分」という用語またはそれらの文法上の等価物は、本明細書では互換的に使用され、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたは複数の断片または一部を意味する(一般に、Holliger et al., Nat. Biotech. ,23 (9): 1126-1129 (2005)を参照されたい)。抗体断片は、例えば、1つまたは複数のCDR、可変領域(もしくはその一部)、定常領域(もしくはその一部)、またはこれらの組合せを含むことが望ましい。抗体断片の例としては、これだけに限定されないが、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)柄領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)2つのドメインを単一のポリペプチド鎖として合成することを可能にする合成リンカーによって接合したFv断片の2つのドメイン(すなわち、VLおよびVH)からなる一価の分子である単鎖Fv(scFv)(例えば、Bird et al., Science、242: 423-426 (1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85: 5879-5883 (1988);およびOsbourn et al., Nat. Biotechnol., 16: 778 (1998)を参照されたい)ならびに(v)ポリペプチド鎖の二量体であるダイアボディであって、各ポリペプチド鎖が、同じポリペプチド鎖上のVHとVLの対形成が可能になるには短すぎ、それにより、異なるVH-VLポリペプチド鎖上の相補的なドメイン間の対形成を駆動して、二官能性抗原結合性部位を有する二量体分子を生成するペプチドリンカーによってVHとVLが接続した、ダイアボディが挙げられる。抗体断片は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第8,603,950号により詳細に記載されている。他の抗体断片は、重鎖抗体の可変性断片(VHH)を含み得る。
【0152】
「保存的アミノ酸置換」または「保存的突然変異」という用語は、1つのアミノ酸を、共通の特性を有する別のアミノ酸によって置き換えることを指す。個々のアミノ酸間の共通の特性を定義するための機能的なやり方は、相同な生物体の対応するタンパク質間でのアミノ酸の変化の正規化された頻度を分析することである(Schulz, G. E. and Schirmer, R.. H., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, New York (1979))。そのような分析に従って、群内のアミノ酸が優先的に互いに交換され、したがって、互いにそれらの全体的なタンパク質構造に対する影響がほぼ同様であるアミノ酸の群を定義することができる(Schulz, G. E. and Schirmer, R.. H. , supra)。保存的突然変異の例としては、上記の亜群内のアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、正電荷を維持することができる、リシンによるアルギニンの置換か、または逆に、アルギニンによるリシンの置換;負電荷を維持することができる、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換か、または逆にアスパラギン酸によるグルタミン酸の置換;遊離の-OHを維持することができる、セリンによるトレオニンの置換;および遊離の-NH2を維持することができる、グルタミンによるアスパラギンの置換が挙げられる。その代わりにまたはそれに加えて、治療用IgA抗体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を伴う参照タンパク質のアミノ酸配列を含み得る。
【0153】
「非保存的突然変異」または「非保存的アミノ酸置換」という用語は、異なる群間のアミノ酸置換、例えば、リシンによるトリプトファンの置換、またはフェニルアラニンによるセリンの置換などに関与し、この場合、非保存的アミノ酸置換は、治療用IgA抗体の生物活性に干渉しないまたはそれを阻害しないものであることが好ましい。非保存的アミノ酸置換により治療用IgA抗体の生物活性を増強することができ、したがって、治療用IgA抗体の生物活性が野生型治療用IgA抗体と比較して増大する。
【0154】
本明細書で使用される場合、「ヒト化」抗体とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最低限含有する特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、抗体のFV、Fab、Fab’、F(ab’)2または他の抗原結合性部分配列など)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性、および能力を有する、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)の相補性決定領域(CDR)由来の残基がマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられたものである。一部の場合では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見いだされないが、抗体の性能をさらに精密にし、最適化するために含められる残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの全てまたは実質的に全てに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の全てまたは実質的に全てである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の、一般にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分も含むことが最適である。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体由来の1つまたは複数のCDRに「由来する」1つまたは複数のCDRとも称される、元の抗体に対して変更される1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を有する。
【0155】
本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、その天然の環境の構成成分から分離および/または回収された抗体である。その天然の環境の夾雑構成成分は、抗体の診断的または治療的使用に干渉すると思われる材料であり、それらとして、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性構成成分を挙げることができる。好ましい実施形態では、抗体を、(1)ローリー法によって決定して、抗体が95重量%よりも多く、最も好ましくは99重量%よりも多くなるまで;(2)スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで;または(3)還元条件下または非還元条件下でのSDS-PAGEによって、クーマシーブルー、または、好ましくは、銀染色を使用して均一性が示されるまで精製する。単離された抗体は、組換え細胞内のin situの抗体を含み、これは、抗体の天然の環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないからである。しかし、普通は、単離された抗体は少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0156】
「実質的に精製された」とは、抗体またはその機能性断片が、それが由来する細胞または組織供給源に由来する細胞性材料もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含まないこと、または、化学的に合成されたものである場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないことを意味する。この言葉は、抗体が単離されたまたは組換えによって産生された細胞の細胞構成成分から分離された抗体の調製物を含む。したがって、細胞性材料を実質的に含まない抗体は、夾雑タンパク質および培養培地が約30%未満、約20%未満、約10%未満または約5%未満(乾燥重量で)である調製物を含む。一部の実施形態では、抗体は、クロマトグラフィー、例えば、分子ふるいクロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーによって精製することができる。
【0157】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」(CDR、すなわち、CDR1、CDR2、およびCDR3)という用語は、抗原結合のためにその存在が必要である、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。一般には、各可変ドメインがCDR1、CDR2およびCDR3と識別される3つのCDR領域を有する。可変重鎖のCDRは、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3であり得る。可変軽鎖のCDRは、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3であり得る。例示的な超可変ループはアミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)に存在する(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987))。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)は、L1はアミノ酸残基24~34、L2はアミノ酸残基50~56、L3はアミノ酸残基89~97、H1はアミノ酸残基31~35B、H2はアミノ酸残基50~65、およびH3はアミノ酸残基95~102に存在する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. (1991))。したがって、別段の指定のない限り、HVは対応するCDR内に含まれ得、本明細書ではVHの「超可変ループ」と称され、VLドメインは対応するCDRも包含するものと解釈されるべきであり、逆もまた同じである。可変ドメインのより高度に保存された領域は、下で定義される通り、フレームワーク領域(FR)と称される。ネイティブな重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれが4つのFR(それぞれFR1、FR2、FR3およびFR4)を含み、これらは、大部分が[ベータ]-シート立体配置をとり、3つの超可変ループによって接続されている。各鎖内の超可変ループはFRによって極めて近傍にまとめて保持され、他の鎖由来の超可変ループと共に抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する。抗体の構造解析により、配列間の関係および相補性決定領域によって形成される結合性部位の形状が明らかになった(Chothia et al., J. Mol. Biol. 227: 799-817 (1992));Tramontano et al., J. Mol. Biol、215: 175-182 (1990))。配列変動性が大きいにもかかわらず、6つのループのうちの5つが取る主鎖コンフォメーションのレパートリーはほんの小さなものであり、「標準構造」と称される。これらのコンフォメーションは、まず第1にループの長さによって決定され、第2に、ループ内およびフレームワーク領域内のある特定の位置における、パッキング、水素結合または普通でない主鎖コンフォメーションをとる能力を通じてコンフォメーションを決定する重要な残基の存在によって決定される。
【0158】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を単独で、または組み合わせて指す。重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれが、超可変領域としても公知の3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖内のCDRはFRによって極めて近傍にまとめて保持され、他の鎖由来のCDRと共に抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する。CDRを決定するための技法が少なくとも2つ存在する:(1)異種間での配列変動性に基づく手法(すなわち、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda Md.));および(2)抗原抗体複合体の結晶学的試験に基づく手法(Allazikani et al (1997) J. Molec. Biol. 273: 927-948))。CDRは、いずれかの手法によってまたは両方の手法の組合せによって定義されるCDRを指し得る。
【0159】
抗体の「定常領域」は、抗体軽鎖の定常領域、すなわち軽鎖定常領域、または抗体重鎖の定常領域、すなわち重鎖定常領域を単独で、または組み合わせて指す。定常領域は抗原特異性に対して変動しない。
【0160】
本明細書で使用される場合、「重鎖領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖の定常ドメインに由来するアミノ酸配列を含む。重鎖領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中部、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそのバリアントもしくは断片のうちの少なくとも1つを含む。ある実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、免疫グロブリン重鎖のFc領域(例えば、ヒンジ部分、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)を含み得る。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも定常ドメインのある領域(例えば、CH2ドメインの全部または一部)を欠く。ある特定の実施形態では、定常ドメインの少なくとも1つ、好ましくは全てがヒト免疫グロブリン重鎖に由来するものである。例えば、好ましい一実施形態では、重鎖領域は完全ヒトヒンジドメインを含む。他の好ましい実施形態では、重鎖領域は完全ヒトFc領域(例えば、ヒト免疫グロブリン由来のヒンジ、CH2およびCH3ドメイン配列)を含む。ある特定の実施形態では、重鎖領域の構成物である定常ドメインは異なる免疫グロブリン分子に由来するものである。例えば、ポリペプチドの重鎖領域は、IgA分子に由来するドメインおよびIgA1またはIgA2分子に由来するヒンジ領域を含み得る。他の実施形態では、定常ドメインは、異なる免疫グロブリン分子の領域を含むキメラドメインである。例えば、ヒンジは、IgA1分子由来の第1の領域およびIgA2分子由来の第2の領域を含み得る。上記の通り、重鎖領域の定常ドメインを改変することができ、したがって、重鎖領域の定常ドメインのアミノ酸配列が天然に存在する(野生型)免疫グロブリン分子から変動することが当業者には理解されよう。すなわち、本明細書に開示される本発明のポリペプチドは、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2もしくはCH3)および/または軽鎖定常ドメイン(CL)の1つまたは複数の変更または改変を含み得る。例示的な改変としては、1つまたは複数のドメイン内の1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失または置換が挙げられる。一部の実施形態では、改変は、表2の改変から選択される。
【0161】
本開示の抗体またはその抗原結合性断片は、長さが少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長であるCDR3領域を含み得る。本開示の抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも約18アミノ酸長であるCDR3領域を含み得る。
【0162】
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインとCH2ドメインを接合する重鎖分子の領域を含む。ヒンジ領域は、およそ25残基を含み得、また、柔軟であり、したがって、2つのN末端抗原結合性領域が独立に移動することが可能である。ヒンジ領域は3つの別個のドメイン:上部、中部、および下部ヒンジドメインに細分することができる(Roux et al. J. Immunol. 1998 161: 4083)。
【0163】
本明細書で使用される場合、「Fv」という用語は、完全な抗原認識および結合性部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが密接に非共有結合により会合した二量体からなる。
【0164】
これらの2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖からそれぞれ3つのループ)が発する。しかし、単一可変ドメイン(または抗原に特異的なCDRを3つしか含まない、Fvの半分)であっても、親和性は結合性部位全体よりも低いが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0165】
「重鎖可変領域」または「VH」は、抗体に関しては、3つのCDRを含有し、フレームワーク領域として公知のCDRを挟むひと続きが介在する重鎖の断片を指し、これらのフレームワーク領域は、一般に、CDRよりも高度に保存されたものであり、CDRを支持するための足場を形成する。
【0166】
「軽鎖可変領域」または「VL」は、抗体に関しては、3つのCDRを含有し、フレームワーク領域として公知のCDRを挟むひと続きが介在する軽鎖の断片を指し、これらのフレームワーク領域は、一般に、CDRよりも高度に保存されたものであり、CDRを支持するための足場を形成する。
【0167】
6つの超可変ループ(重鎖および軽鎖からそれぞれ3つのループ)は、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一可変ドメイン(または抗原に特異的なCDRを3つしか含まない、Fvの半分)であっても、親和性は結合性部位全体よりも低いが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0168】
「フレームワーク」またはFR残基は、超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0169】
抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を有する糖タンパク質またはその抗原結合性部分であることが当技術分野において理解される。重鎖は重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)で構成される。軽鎖は軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)で構成される。重鎖および軽鎖のどちらの可変領域も、フレームワーク領域(FRまたはFWR)および超可変領域(HVR)を含む。HVRは抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基である。超可変領域は、一般には、相補性決定領域(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、最も高い配列変動性を有し、かつ/または抗原認識に関与する。VHのCDR1を例外として、CDRは、一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原と接触する残基である「特異性決定残基」または「SDR」も含む。SDRは、省略-CDR、またはa-CDRと称されるCDRの領域内に含有される。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、およびa-CDR-H3)は、L1はアミノ酸残基31~34、L2はアミノ酸残基50~55、L3はアミノ酸残基89~96、H1はアミノ酸残基31~35B、H2はアミノ酸残基50~58、およびH3はアミノ酸残基95~102に存在する(例えば、Fransson、Front. Biosci. 13: 1619-1633 (2008)を参照されたい)
【0170】
別段の指定のない限り、HVR残基および可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書ではKabat et al., supraに従って番号付けされている。可変領域は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインである(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., p.91 (2007)を参照されたい)。抗原結合特異性を付与するためには単一のVHまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、抗原に結合する抗体由来のVHまたはVLドメインを使用して、それぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる(例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150: 880-887 (1993);Clarkson et al., Nature 352: 624-628 (1991)を参照されたい)。4つのFWR領域は、一般にはより保存されたものであり、一方、CDR領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は超可変領域を表し、NH2末端からCOOH末端まで以下の通り配置される:FWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、およびFWR4。重鎖および軽鎖の可変領域が抗原と相互作用する結合性ドメインを含有するが、アイソタイプに応じて、定常領域が免疫グロブリンの宿主組織または因子への結合を媒介し得る。抗体はまた、キメラ抗体、ヒト化抗体、および組換え抗体、トランスジェニック非ヒト動物から生成されるヒト抗体、ならびに当業者が利用可能な富化技術を使用してライブラリーから選択される抗体を含む。
【0171】
「抗体重鎖」という用語は、抗体分子の天然に存在するコンフォメーションで抗体分子内に存在する2つの型のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指し、通常、それにより、抗体が属するクラスが決定される。
【0172】
「抗体軽鎖」という用語は、抗体分子の天然に存在するコンフォメーションで抗体分子内に存在する2つの型のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。カッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)軽鎖は2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0173】
抗体またはその抗原結合性断片は、標的に、無関係のポリペプチド上のエピトープに結合するよりも大きな親和性および/または結合活性で結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。抗体または抗原結合性断片またはその一部の特異性は、親和性および/または結合活性に基づいて決定することができる。そのような特異的な結合を決定するための方法は当技術分野でも周知である。本開示のある特定の実施形態によると、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトがん抗原に結合し得るが、他の種由来のがん抗原には結合しない。あるいは、抗体またはその抗原結合性断片は、ある特定の実施形態では、ヒトがん抗原に結合し、1つまたは複数の非ヒト種由来のがん抗原にも結合する。例えば、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトがん抗原に結合し得、場合によって、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザルまたはチンパンジーがん抗原のうちの1つまたは複数にも結合し得る、またはそれには結合しない。
【0174】
抗原と抗原結合性タンパク質の解離(KD)についての平衡定数によって表される親和性は、抗原性決定因子と抗原結合性タンパク質上の抗原結合性部位の結合強度の評価基準である:KDの値が小さいほど抗原性決定因子と抗原結合性分子の結合強度が強力である。あるいは、親和性は、1/KDである親和定数(KA)として表すこともできる。当業者には明らかになる通り、親和性は、特定の目的の抗原に応じて、それ自体が公知の様式で決定することができる。したがって、本明細書で定義される抗体またはその抗原結合性断片は、第1の抗原に、前記アミノ酸配列またはポリペプチドが別の標的またはポリペプチドに結合する親和性の少なくとも50倍、例えば、少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、最大10,000倍またはそれよりも大きな親和性(上記の通りであり、例えばKD値として適切に表される)で結合する場合、第2の標的または抗原と比較して第1の標的または抗原に対して「特異的」であると言える。抗体またはその抗原結合性断片が標的または抗原に対して別の標的または抗原と比較して「特異的」である場合、抗体またはその抗原結合性断片は、標的または抗原に結合し得るが、他の標的または抗原には結合しないことが好ましい。しかし、当業者には理解される通り、一部の実施形態では、標的上の結合性部位が多数の異なるリガンドに共有されるまたは部分的に共有される場合、抗体またはその抗原結合性断片は、がん関連抗原などの標的に特異的に結合し得、例えば腫瘍増悪の阻害/防止という機能的効果を有する。
【0175】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体の解離定数(KD)は、約1μM、100nM、10nM、5nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、0.05nM、0.01nM、または0.001nMまたはそれ未満(例えば、10-8Mまたはそれ未満、例えば10-8Mから10-13Mまで、例えば10-9Mから10-13Mまで)である。本発明の別の態様では、その標的に対する親和性が増大した抗体またはその抗原結合性断片、例えば、親和性成熟した抗体が提供される。親和性成熟した抗体は、そのような変更を有さない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域(HVR)に1つまたは複数の変更を伴う抗体であり、そのような変更の結果、抗体の抗原に対する親和性が改善される。これらの抗体は、抗原に約5×10-9M、2×10-9M、1×10-9M、5×10-10M、2×10-10M、1×10-10M、5×10-11M、1×10-11M、5×10-12M、1×10-12M、またはそれ未満のKDで結合することができる。一部の実施形態では、本開示は、重鎖配列および軽鎖配列を含有するWT IgA抗体またはWT IgG抗体または両方と比較して親和性が少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍またはそれよりも大きく増大した抗体またはその抗原結合性断片を提供する。他の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその機能性断片は、可変ドメインが由来する対応する抗体と同じエピトープへの結合について競合する。一部の実施形態では、ある抗体と同じエピトープに結合し、かつ/または同じエピトープへの結合について競合する抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、ADCC活性を含めたFc媒介性細胞性細胞傷害性などのエフェクター機能活性を示す。
【0176】
KDは、任意の適切なアッセイによって測定することができる。例えば、KDは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定することができる(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293: 865-881 (1999);Presta et al., Cancer Res. 57: 4593-4599 (1997)を参照されたい)。例えば、KDは、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して(例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000を使用して)測定することができる。例えば、KDは、競合ELISAを使用して測定することができる。
【0177】
結合活性は、抗原結合性分子と関係する抗原の結合の強度の評価基準である。結合活性は、抗原性決定因子と抗原結合性分子上のその抗原結合性部位の親和性、および抗原結合性分子上に存在する関係する結合性部位の数の両方に関連する。一般には、抗原結合性タンパク質は、それらの同類のまたは特異的な抗原に10-5~10-12モル/リットルまたはそれ未満、好ましくは10-7~10-12モル/リットルまたはそれ未満、より好ましくは10-8~10-12モル/リットルの解離定数(KD)(すなわち、105~1012リットル/モルまたはそれよりも大きい、好ましくは107~1012リットル/モルまたはそれよりも大きい、またはさらに好ましくは108~1012リットル/モルの会合定数(KA))で結合する。10-4モル/リットルよりも大きなKD値はいずれも(または104M-1未満のKA値はいずれも)、一般に、非特異的な結合を示すものとみなされる。意味のある(例えば、特異的である)とみなされる生物学的相互作用についてのKDは、一般には、10-10M(0.1nM)~10-5M(10000nM)の範囲内に入る。相互作用が強力であるほどそのKDが小さくなる。本明細書に記載の抗LAP抗体またはその抗原結合性断片上の結合性部位は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば、500pM未満の親和性で結合することが好ましい。抗原結合性タンパク質の抗原または抗原性決定因子への特異的結合は、例えば、スキャッチャード解析および/またはラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)およびサンドイッチ競合アッセイなどの競合結合アッセイ、および当技術分野においてそれ自体が公知の種々のその変形;ならびに本明細書で言及されている他の技法を含めた、それ自体が公知の任意の適切な様式で決定することができる。
【0178】
「kon」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体またはその抗原結合性断片と抗原の会合についての速度定数を指すものとする。
【0179】
「Koff」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体またはその抗原結合性断片の抗体/抗原複合体からの解離についての速度定数を指すものとする。
【0180】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックまたはトランス染色体動物(例えば、マウス)またはそれから調製されたハイブリドーマ(下にさらに記載されている)から単離された抗体、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、創出または単離された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、創出または単離される全てのヒト抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域が本明細書に開示される免疫グロブリン配列に由来するものである可変領域を有する。しかし、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体をin vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列のトランスジェニック動物を使用する場合にはin vivo体細胞突然変異誘発)に供することができ、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト免疫グロブリンVHおよびVL配列に由来し、それに関連するものであるが、in vivoにおけるヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然には存在しない配列である。
【0181】
抗体またはその抗原結合性断片に関しては、「特異性」または「特異的」という用語は、特定の抗体またはその抗原結合性断片が結合することができる異なる型の抗原または抗原性決定因子の数を指す。抗体または抗原結合性断片またはその一部の特異性は、親和性および/または結合活性に基づいて決定することができる。親和性は、抗原と抗原結合性タンパク質の解離の平衡定数(KD)によって表され、抗原性決定因子と抗原結合性タンパク質上の抗原結合性部位の結合強度の評価基準である:KDの値が小さいほど抗原性決定因子と抗原結合性分子の結合強度が強力である。あるいは、親和性は、1/KDである親和定数(KA)として表すこともできる。当業者には明らかになる通り、親和性は、特定の目的の抗原に応じて、それ自体が公知の様式で決定することができる。したがって、本明細書で定義される抗体またはその抗原結合性断片は、第1の抗原に、前記アミノ酸配列またはポリペプチドが別の標的またはポリペプチドに結合する親和性よりも少なくとも50倍、例えば、少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、最大10,000倍またはそれよりも大きな親和性(上記の通りであり、例えばKD値として適切に表される)で結合する場合、第2の標的または抗原と比較して第1の標的または抗原に対して「特異的」であると言える。抗体またはその抗原結合性断片が標的または抗原に対して別の標的または抗原と比較して「特異的」である場合、抗体またはその抗原結合性断片は、標的または抗原に結合し得るが、他の標的または抗原には結合しないことが好ましい。
【0182】
しかし、当業者には理解される通り、一部の実施形態では、標的上の結合性部位が多数の異なるリガンドに共有されるまたは部分的に共有される場合、抗体またはその抗原結合性断片は、標的抗原に特異的に結合し、例えば腫瘍増悪の阻害/防止という機能的効果を有する。
【0183】
結合活性は、抗原結合性分子と関係する抗原の結合の強度の評価基準である。結合活性は、抗原性決定因子と抗原結合性分子上のその抗原結合性部位の親和性、および抗原結合性分子上に存在する関係する結合性部位の数の両方に関連する。一般には、抗原結合性タンパク質は、それらの同類のまたは特異的な抗原に、10-5~10-12モル/リットルまたはそれ未満、好ましくは10-7~10-12モル/リットルまたはそれ未満、より好ましくは10-8~10-12モル/リットルの解離定数(KD)(すなわち、105~1012リットル/モルまたはそれよりも大きい、好ましくは107~1012リットル/モルまたはそれよりも大きい、またはさらに好ましくは108~1012リットル/モルの会合定数(KA))で結合する。10-4モル/リットルよりも大きなKD値はいずれも(または104M-1未満のKA値はいずれも)、一般に、非特異的な結合を示すものとみなされる。意味のある(例えば、特異的である)とみなされる生物学的相互作用についてのKDは、一般には、10-10M(0.1nM)~10-5M(10000nM)の範囲内に入る。相互作用が強力であるほどそのKDが小さくなる。本明細書に記載の抗LAP抗体またはその抗原結合性断片上の結合性部位は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば、500pM未満の親和性で結合することが好ましい。抗原結合性タンパク質の抗原または抗原性決定因子への特異的結合は、例えば、スキャッチャード解析および/またはラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)およびサンドイッチ競合アッセイなどの競合結合アッセイ、および当技術分野においてそれ自体が公知の種々のその変形;ならびに本明細書で言及されている他の技法を含めた、それ自体が公知の任意の適切な様式で決定することができる。
【0184】
「融合タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体またはその断片のアミノ酸配列と異種ポリペプチド(すなわち、無関係のポリペプチド)のアミノ酸配列とを含むポリペプチドを指す。
【0185】
一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性断片は、単一ドメイン抗体である。「単一ドメイン抗体」(sdAb)または「単一可変ドメイン(SVD)抗体」とは、一般に、抗体-抗原結合を付与することができる単一の可変領域(VHまたは’)を指す。言い換えれば、単一可変ドメインは、別の可変領域と相互作用することにより標的抗原を認識する必要がない。単一ドメイン抗体単量体単一アーム各抗体可変領域による抗原結合(VH*VJ組成)。単一ドメイン抗体の例としては、ラクダ科の動物(ラクダおよびラマ)および軟骨魚類(例えば、テンジクザメ)抗体に由来する抗体およびそれらの抗体(Ward et al from human and mouse antibodies by recombinant methods, Nature (1989) 341: 544-546; Dooley and Flajnik, Dev Comp Immunol (2006) 30: 43-56;Muyldermans et, TrendBiochem Sci (2001) 26: 230-235;Holt et, Trends Biotechnol (2003):21: 484-490;W02005/035572;TO03/035694;Davies and Riechmann, Febs Lett (1994) 339: 285-290;W000/29 004;W002/051870)が挙げられ、単一ドメイン抗体可変領域または可変ドメイン以外の抗体の単一可変領域は、抗原結合性アームに存在する(例えば、ホモ多量体またはヘテロ多量体)。
【0186】
本明細書で使用される場合、「改変」という用語は、WT抗体のWT重鎖定常領域と比較した、抗体の重鎖定常領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基のアミノ酸置換またはアミノ酸欠失を指す。一部の実施形態では、改変は、重鎖定常領域のIgA CH1領域内のアミノ酸残基におけるものである。一部の実施形態では、改変は、重鎖定常領域のIgA CH2領域内のアミノ酸残基におけるものである。一部の実施形態では、改変は、重鎖定常領域のIgA CH3領域内のアミノ酸残基におけるものである。一部の実施形態では、改変は、表2から選択される。一部の実施形態では、本明細書に開示される1つまたは複数の改変の結果、1つまたは複数の改変を含む抗体に対応するWT抗体と比較して改善された特性がもたらされる。
【0187】
「改善された特性」という用語は、1つまたは複数の改変を含まない親WT抗体と比較して改善された、本明細書に開示される1つまたは複数の改変を含む抗体に関連する特徴を意味する。そのような改善された特性としては、これだけに限定されないが、増大した熱安定性、延長した循環半減期、ADCCの増大、減少した凝集、減少した血清タンパク質との凝集、増大した腫瘍標的化、増大した安定性、減少したグリコシル化、免疫細胞上に発現されるFcαRとの増大した結合が挙げられる。一部の実施形態では、改善された特性は、対応するWT IgAと比較した、抗体またはその機能性断片の1つまたは複数のエフェクター機能の増大である。エフェクター機能は、抗体のアイソタイプによって変動する抗体のFc領域に起因する生物活性である。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシスが挙げられる。
【0188】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片(例えば、IgA重鎖定常領域内に本明細書に開示される1つまたは複数の改変を含む)は、対応するWT IgA抗体または対応するWT IgG抗体と比較して、少なくとも2%、3%、4%、5%、7%、8%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または少なくとも100%の1つまたは複数の改善された特性を有する。
【0189】
本明細書で使用される場合、「対応する」改変されていない抗体という用語は、特に重鎖定常領域に本明細書に開示される1つまたは複数の選択された改変を含む抗体と配列が同じであるが、本明細書に記載の1つまたは複数の選択された改変を伴わない野生型抗体を意味する。一部の実施形態では、対応する抗体は、WT IgA重鎖定常領域を含むWT IgA抗体であり得る。一部の実施形態では、対応する抗体は、WT IgG重鎖定常領域を含むWT IgG抗体であり得る。一部の実施形態では、対応するWT IgA抗体は、WT IgA1抗体である。一部の実施形態では、対応するWT IgA抗体は、WT IgA2抗体である。一部の実施形態では、対応するWT IgA抗体は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含む野生型IgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、対応するWT IgA2抗体は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含む野生型IgA2重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、対応するWT IgA抗体は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む野生型IgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、対応するWT IgA抗体は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む野生型IgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、WT IgA重鎖定常領域は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、WT IgA2重鎖定常領域は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるアミノ酸改変は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域(例えば、WT IgA2重鎖定常領域)内の選択された位置のアミノ酸残基と比べたものである。
【0190】
一部の実施形態では、WT IgA重鎖定常領域は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、WT IgA2重鎖定常領域は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるアミノ酸改変は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域(例えば、WT IgA2重鎖定常領域)内の選択された位置のアミノ酸残基と比べたものである。
【0191】
一部の実施形態では、WT IgA重鎖定常領域は、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、WT IgA2重鎖定常領域は、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるアミノ酸改変は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域(例えば、WT IgA2重鎖定常領域)内の選択された位置のアミノ酸残基と比べたものである。
【0192】
「Fab」という用語は、本明細書で使用される場合、重鎖および軽鎖のそれぞれの1つの定常ドメインと1つの可変ドメインで構成される(一価抗原結合性断片)が、重鎖がCH2ドメインおよびCH3ドメインを欠くように短縮されており(すなわち、VH、CH1、VL、およびCL)、ヒンジ領域の一部または全部も欠く場合がある、抗体の領域を指すものとする。Fabは、全抗体を酵素パパインで消化することによって作製することができる。Fabは、単離されたこの領域、または全長抗体、免疫グロブリン構築物もしくはFab融合タンパク質の状況でのこの領域を指し得る。
【0193】
Fab’という用語は、本明細書で使用される場合、全抗体をペプシンで処理し、その後、還元して、インタクトな軽鎖とVHおよび単一の定常ドメインを含む重鎖の一部とからなる分子を得ることによって得ることができる。このように処理された抗体から2つのFab’断片が得られる。
【0194】
「scFv」は、抗体のVFIドメインおよびVLドメインを含む抗体断片を意味し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖内に存在する。例えば、米国特許第4,946,778号、5,260,203号、5,455,030号、および5,856,456号を参照されたい。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間に、scFvが抗原結合性のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、Pluckthun (1994) The Pharmacology of Monoclonal Antibodies vol 113 ed. Rosenburg and Moore (Springer-Verlag, New York) pp 269-315を参照されたい。Fv断片のVFIドメインとVLドメインの複合体は、ジスルフィド結合によって安定化することもできる(米国特許第5,747,654号)。
【0195】
「in vivo半減期」または「循環半減期」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体またはその機能性断片の所与の動物における循環を指し、動物に投与された数量の半分が循環から取り除かれるのに要する時間によって表される。
【0196】
「延長した循環半減期」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明に従って提供されるWT IgA抗体と比べて1つまたは複数の改変を含む抗体は、同じ改変を含有しない同じ抗体、すなわち、WT抗体、例えばWT IgA抗体と比べて、血清または血漿中での持続性がより大きく、かつ/または測定される血清または血漿中最大濃度が半減するまでの期間がより長い。
【0197】
「増大した熱安定性」という用語は、ある温度でのインキュベーション期間後に、対応するWT IgA抗体と比べて、本明細書に開示される抗体または機能性断片の生物活性、例えば、ADCC、抗原への結合、FcαRへの結合がより大きく保持されることを意味する。増大した熱安定性は、例えば、1つまたは複数の(例えば、いくつかの)温度の条件下で評価することができる。例えば、1つまたは複数の(例えば、いくつかの)温度は、バリアントが残留する活性を保持するような、3~9の範囲内、例えば、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、または9.0(または中間)の1つまたは複数の(例えば、いくつかの)pHで、適切なインキュベーション期間(時間)、例えば、1分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、または60分(または中間、例えば、23分、37分など)にわたる、45℃~95℃の範囲内、例えば、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または95℃(または中間、例えば、62℃、68℃、72℃など)の任意の温度であり得る。しかし、より長いインキュベーション期間を使用することもできる。「増大した熱安定性」という用語は、「改善された熱安定性」と互換的に使用され得る。
【0198】
本明細書で使用される場合、「天然に存在する」という用語は、IgA重鎖定常領域内のグリコシル化部位またはアミノ酸残基に関する場合、グリコシル化部位またはアミノ酸残基を天然にIgA重鎖定常領域内に見いだすことができる、例えば、天然の供給源から単離することができ、実験室においてヒトによって(ウイルスを含む)意図的に改変されていないという事実を指す。生物体内に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する配列である。
【0199】
「疾患」、「障害」、または「状態」という用語は、本明細書では互換的に使用され、体もしくは器官のいくつかの状態のあらゆる変更、機能の遂行の妨害もしくは撹乱および/または患っている人または人と接触している人に不快感、機能障害、窮迫、もしくはさらには死亡などの症状が引き起こされることを指す。疾患または障害は、不調、慢性的に病的な状態にあること、慢性的な軽症の病気、慢性病、障害、病的状態、疾病、愁訴、または見せかけにも関連し得る。
【0200】
「それを必要とする」という用語は、治療的または予防的処置に関しては、疾患を有する、疾患を有すると診断されている、または、例えば疾患が発生するリスクがある者について疾患を防止する必要があることを意味する。したがって、それを必要とする対象は、疾患を処置または防止することを必要とする対象であり得る。
【0201】
本明細書で使用される場合、「投与すること」という用語は、化合物(例えば、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片)を対象内に所望の部位への薬剤の少なくとも部分的な送達をもたらす方法または経路によって入れることを指す。本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物は、これだけに限定されないが、静脈内、動脈内、組織実質への直接の注射または注入などを含めた、対象における有効な処置をもたらす任意の妥当な経路によって投与することができる。必要または所望であれば、投与は、例えば、脳室内(「icv」)投与、鼻腔内投与、頭蓋内投与、腔内投与、小脳内投与、またはくも膜下腔内投与を含み得る。
【0202】
「がん」という用語は、異所性細胞の急速かつ制御されない成長を特徴とする疾患を指す。がん細胞は、局所的にまたは血流およびリンパ系を通じて体の他の部分に拡散し得る。
【0203】
「抗腫瘍効果」という用語は、これだけに限定されないが、例えば、腫瘍体積の縮小、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の延長、腫瘍細胞の増殖の低減、腫瘍細胞生存の低減、またはがん性の状態に付随する種々の生理的症状の好転を含めた、種々の手段によって証明することができる生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」は、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体の第1の場所における腫瘍の発生を防止する能力によって証明することもできる。
【0204】
本明細書で使用される場合、「対象」、「患者」、「個体」および同様の用語は互換的に使用され、脊椎動物、哺乳動物、霊長類、またはヒトを指す。哺乳動物としては、限定することなく、ヒト、霊長類、齧歯類、野生化動物、農場動物、競技動物、および愛玩動物を含めた野生動物または飼育動物が挙げられる。霊長類としては、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。齧歯類としては、例えば、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが挙げられる。飼育動物および狩猟動物としては、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、スイギュウ、ネコ科の動物種、例えば、飼育ネコ、およびイヌ科の動物種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、トリ種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚、例えば、マス、ナマズおよびサケが挙げられる。「個体」、「患者」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。対象は雄であっても雌であってもよい。
【0205】
一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物を、制御されない細胞成長(例えばがん)の状態または障害の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。非限定的な例として、マウス腫瘍モデルが挙げられる。さらに、本明細書に記載の組成物および方法を、飼育動物および/または愛玩動物を処置するために使用することができる。対象は、がんに罹患していることが以前に診断または同定された対象であり得る。対象は、診断され、現在処置を受けている、または処置、モニタリング、既存の治療的処置の調整もしくは改変を求めている、または所与の障害(例えばがん)が発生するリスクがある対象であり得る。
【0206】
「細胞傷害性薬剤」は、細胞に対する細胞傷害効果および/または細胞増殖抑制効果を有する薬剤を指す。「細胞傷害効果」は、標的細胞の枯渇、消失および/または死滅を指す。「細胞増殖抑制効果」は、細胞増殖の阻害を指す。
【0207】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、互換的に使用され、隣接する残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基の間のペプチド結合によって互いに接続した一連のアミノ酸残基を示す。「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、そのサイズまたは機能にかかわらず、修飾されたアミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)およびアミノ酸類似体を含めたアミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」は、多くの場合、比較的大きなポリペプチドに関して使用され、一方、「ペプチド」という用語は、多くの場合、小さなポリペプチドに関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は重複している。「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、遺伝子産物およびその断片について言及する場合、互換的に使用される。これらの用語は、例えば、ネイティブなタンパク質および人工タンパク質、タンパク質配列のタンパク質断片およびポリペプチド類似体(例えば、突然変異タンパク質、バリアント、および融合タンパク質など)、ならびに翻訳後に、または他の点では共有結合により、または非共有結合により修飾されたタンパク質を包含する。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、単量体またはポリマーであり得る。ポリペプチドは、任意の哺乳動物に由来する天然に存在するポリペプチドのアミノ酸配列を有し得る。そのようなネイティブな配列のポリペプチドは、天然から単離することもでき、組換えまたは合成手段によって作製することもできる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、「バリアント」である。「バリアント」は、ネイティブな配列のポリペプチドに対して、配列をアラインメントし、必要であれば最大のパーセント配列同一性を実現するためにギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさずに、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物活性のあるポリペプチドを意味する。そのようなバリアントとしては、例えば、ポリペプチドのN末端またはC末端において1つまたは複数のアミノ酸残基が付加された、または欠失したポリペプチドが挙げられる。一部の実施形態では、バリアントは、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する。一部の実施形態では、バリアントは、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有する。一部の実施形態では、バリアントは、ネイティブな配列のポリペプチドに対して少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、別の化学的部分(例えば、ポリエチレングリコールまたはアルブミン、例えば、ヒト血清アルブミンなど)のコンジュゲーション、リン酸化、およびグリコシル化によって化学修飾されたポリペプチド(例えば、抗体)である。
【0208】
「増大した/延長した/上昇した(increased)」、「増大させる/延長させる/上昇させる(increase)」、または「増強する(enhance)」という用語は全て本明細書では、一般に、統計学的に有意な量の増大を意味するように使用される。誤解を避けるために、「増大した/延長した/上昇した(increased)」、「増大させる/延長させる/上昇させる(increase)」、または「増強する(enhance)」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の上昇、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%もしくは最大100%および100%を含めた上昇、または参照レベルと比較して10~100%の任意の上昇、または、少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍もしくは少なくとも約10倍の上昇、または参照レベルと比較して2倍から10倍またはそれよりも大きい倍数の間の任意の上昇を意味する。
【0209】
「融合タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体またはその断片のアミノ酸配列と異種ポリペプチド(すなわち、無関係のポリペプチド)のアミノ酸配列とを含むポリペプチドを指す。
【0210】
「減少させる/低減する/低下させる/縮小する(decrease)」、「減少させる/低減する/低下させる/縮小する(reduce)」、「減少/低減/低下/縮小(reduction)」、「減少させる/低減する/低下させる/縮小する(lower)」または「減少/低減/低下/縮小(lowering)」または「阻害する(inhibit)」という用語は全て、本明細書では、一般に、統計的に有意な量の減少/低減/低下/縮小を意味するように使用される。例えば、「減少させる/低減する/低下させる/縮小する(decrease)」、「減少させる/低減する/低下させる/縮小する(reduce)」、「減少/低減/低下/縮小(reduction)」、または「阻害する(inhibit)」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の低下、例えば、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%もしくは最大100%の低下および100%を含めた低下(例えば、処置前の参照レベルと比較した処置後の腫瘍サイズ)、または参照レベルと比較して10~100%の任意の低下を意味する。マーカーまたは症状に関しては、これらの用語は、そのようなレベルの統計的に有意な低下を意味する。低下は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%またはそれよりも大きい低下であり得、所与の疾患を有さない個体に関して正常な範囲内に入る許容されるレベルまで下がることが好ましい。低減/低下/縮小するまたは阻害するとは、例えば、処置される障害の症状、転移または微小転移の存在またはサイズ、原発腫瘍のサイズ、休止状態の腫瘍の存在またはサイズを指し得る。
【0211】
「合成ポリヌクレオチド」、「合成遺伝子」または「合成ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、対応するポリヌクレオチド配列もしくはその一部、またはアミノ酸配列もしくはその一部が、等価の天然に存在する配列と比較して新規のまたは改変された、設計されたまたは合成された配列に由来することを意味する。合成ポリヌクレオチド(抗体または抗原結合性断片)または合成遺伝子は、これだけに限定されないが、核酸またはアミノ酸配列の化学合成を含めた当技術分野で公知の方法によって調製することができる。合成遺伝子は、一般には、天然に存在する遺伝子とアミノ酸レベルまたはポリヌクレオチドレベル(または両方)で異なり、一般には、合成発現制御配列との関連で位置する。合成遺伝子ポリヌクレオチド配列は、必ずしも天然の遺伝子と比較してアミノ酸が異なるタンパク質をコードしない場合があり、例えば、異なるコドンが組み入れられているが同じアミノ酸をコードする合成ポリヌクレオチド配列も包含し得る(すなわち、ヌクレオチドの変化がアミノ酸レベルではサイレント突然変異である)。
IgA抗体
【0212】
IgAは、2つのサブクラス(IgA1およびIgA2)を有し、単量体形態ならびに二量体形態かつ分泌型として産生され得る。一部の実施形態では、IgA抗体は単量体であり得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、1つまたは複数のIgA1アミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、1つまたは複数のIgA2アミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、1つまたは複数のIgA1アミノ酸配列および1つまたは複数のIgA2アミノ酸配列を含み得る。
【0213】
一部の実施形態では、IgA抗体は、アロタイプ:IgA2m(1)、IgA2(m)2、またはIgA2nのIgA2抗体である。一部の実施形態では、IgA2m(1)抗体は、コーカサスIgA2m(1)抗体である。一部の実施形態では、IgA2m(2)抗体は、アフリカIgA2m(2)抗体またはアジアIgA2m(2)抗体である。
【0214】
一部の実施形態では、IgA抗体は、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のIgAアミノ酸を含む重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、少なくとも50、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のIgAアミノ酸を含む軽鎖定常領域を含む。
【0215】
一部の実施形態では、IgA抗体は、IgA CH3領域、IgA CH2、またはIgA CH1領域のうちの1つもしくは複数、またはこれらの任意の組合せを含む重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、IgA CH1領域を含む軽鎖領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含む軽鎖領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、IgG CH3領域、IgG CH2、またはIgG CH1領域またはその任意の組合せの1つまたは複数のアミノ酸を含む重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、IgA CH3領域、IgA CH2、およびIgA CH1領域、またはこれらの任意の組合せを含む重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、IgA CH3領域、IgA CH2、およびIgG CH1領域、またはこれらの任意の組合せを含む重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IgA2 CH3領域、IgA2 CH2、またはIgA2 CH1領域のうちの1つもしくは複数、またはこれらの任意の組合せを含む重鎖定常領域を含む。
【0216】
一部の実施形態では、IgA抗体は、IgG軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、IgG重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、IgG軽鎖可変領域およびIgG重鎖可変領域を含む。
【0217】
一部の実施形態では、IgA抗体は、ヒト化抗体であり得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、キメラ抗体であり得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、ヒト抗体であり得る。
【0218】
一部の実施形態では、IgA抗体は、単一特異性抗体であり得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、二重特異性抗体であり得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、三重特異性抗体であり得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、多重特異性抗体であり得る。
【0219】
一部の実施形態では、IgA抗体は、二重特異性抗体であり得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、細胞表面で2つの抗原と同時会合する。一部の実施例では、IgA抗体の2つの異なる抗原との結合は逐次的である。例えば、IgA抗体の第1の抗原との結合が最初に生じ、それにより、第2の抗体アームによって探索される空間が制限される。結果として、第2の抗原の局所的な濃度が有意に上昇し、それにより、第2の抗体アームの結合が容易になり得る。
【0220】
一部の実施形態では、IgA抗体は、Fcドメインの少なくとも一部分を含み得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、CH3ドメイン、CH2ドメイン、およびCH1ドメインを含む重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、CH1を含む軽鎖定常領域を含む。
【0221】
一部の実施形態では、IgA抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導する。一部の実施形態では、IgA抗体は、多形核好中球(PMN)媒介性腫瘍細胞溶解を誘導する。一部の実施形態では、IgA抗体は、カスパーゼ非依存性経路を介したプログラム細胞死(PCD)を誘導する。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する。一部の実施形態では、IgA抗体は、好中球によって媒介される抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する。
【0222】
一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)のために好中球を動員する能力が対応するIgG抗体と比較して優れている。一部の実施形態では、IgA抗体は、より低いエフェクター:標的(E:T)比を必要とし得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、他の型の抗体(例えば、IgG)と比較して低い腫瘍オプソニン化抗体濃度を必要とし得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、IgA抗体-好中球会合後に腫瘍細胞の好中球媒介性ファゴサイトーシスまたはトロゴサイトーシスを誘発し得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、IgA抗体-好中球会合後に腫瘍細胞のトロゴプトーシスを誘発し得る。この腫瘍細胞を死滅させる機構は、主に、IgAに関しては最もよく特徴付けられているIgA受容体であるFc受容体(FcαRI;CD89)と相互作用することによって媒介される。FcαRIは、単球、マクロファージ、顆粒球、樹状細胞のサブセット、およびクッパー細胞上に発現され、単量体IgAアイソフォームおよび二量体IgAアイソフォームの両方に中間の親和性で結合する。IgAがFcαRIと結合することにより、ファゴサイトーシス、酸化バースト、サイトカイン放出、抗原提示、およびADCCなどのエフェクター機能が媒介される。ヒトでは、2つのIgAアイソタイプ、IgA1およびIgA2、ならびに3つのアロタイプ、IgA2m(1)、IgA2m(2)およびIgA2nが識別されている。一部の実施形態では、IgA抗体は、多形核細胞(PMN)媒介性ADCCをIgG抗体よりも効率的に誘発する。
【0223】
一部の実施形態では、IgAは、B細胞、T細胞、血小板、および/または赤血球には結合しない。例えば、一部の実施形態では、IgA抗体は低免疫原性を有し得る。
【0224】
一部の実施形態では、IgA抗体は、治療用抗体である。一部の実施形態では、IgA抗体は、組換え抗体であり得る。一部の実施形態では、IgA抗体は、細胞株で作られる。一部の実施形態では、細胞株はCHOである。一部の実施形態では、細胞株はSP20である。一部の実施形態では、細胞株はHEK239細胞株である。一部の実施形態では、HEK293細胞株はHEK293Fである。
【0225】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその機能性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその機能性断片は、IgG抗体由来の可変重鎖ドメインを含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその機能性断片は、IgG抗体由来の可変軽鎖ドメインを含む。可変ドメインは、例えば、ジヌツキシマブ、オビヌツズマブ、Unituxin、TA99、2.3D11、C47A8-CQ、UMAB10、およびトラスツズマブおよびリツキサン(リツキシマブ)に由来するものであり得、本発明の範囲に包含される治療活性を有する他の抗体としては、これだけに限定されないが、アバスチン、ハーセプチン、3F8、8H9、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴール、ALD518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブペンテテート、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトックス、アニフロルマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アチヌマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、cBR96-ドキソルビシン免疫コンジュゲート、CC49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、Ch.14.18、シタツズマブボガトクス、シクツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、コンシズマブ、CR6261、クレネズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デムシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュピルマブ、デュシギツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エファングマブ、エルデルマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴル、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファーレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、IMAB362、イミシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ランブロリズマブ、ラムパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リジェリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マルジェツキシマブ、マスリモマブ、マツズマブ、マブリリムマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスードトクス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オヅリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オトレルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ピジリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレヅマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セヴィルマブ、SGN-CD19A、SGN-CD33A、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、TGN1412、チシリムマブ、ティガツズマブ、チルドラキズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トシツモマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バンチクツマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビシリズマブ、ヴォロシキシマブ、ボルセツズマブマホドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、hu14.18K322A、ゾリモマブアリトクス、リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、CD20)、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標)、CD52)、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標)、CD20)トシツモマブ-I-131(Bexxar(登録商標):CD20)、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、ベバシズマブ(VEGF)、パニツムマブ(Vectibix(登録商標)、EGFR)、オファツムマブ(Arzerra(登録商標)、CD20)、イピリムマブ(Ypervoy(登録商標)、CTLA-4)、ブレンツキシマブ(brentiuximab)ベドチン(Adectris(登録商標)、CD30)、ペルツズマブ(Perjecta(登録商標)、HER2)、アドトラスツズマブ、エムタンシン(Kadcyla(登録商標)、HER2)、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標)、CD20)、ニボルマブおよびペムブロリズマブ(抗PD-1s)が挙げられる。
【0226】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4、7、81~86のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体は、WT抗体と同じ抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号4、7、81~86のいずれか1つのアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体は、配列番号4、7、81~86のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の1つまたは複数の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号33~40のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号41~48のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号49~56のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0227】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5、8、95~100のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、WT抗体と同じ抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号5、8、95~100のいずれか1つのアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5、8、95~100のいずれか1つのVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号57~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号65~72のいずれか1つのアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号73~80のいずれか1つのアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0228】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、VHおよびVLを含み、VHは配列番号4、7、81~86のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、VLは配列番号5、8、95~100のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、必要に応じてこれらの配列の翻訳後修飾が含まれる。
【0229】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、表9中の任意のVHから選択されるVHを含む。一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、表9中の任意のVLから選択されるVLを含む。一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、表9中の任意のVHから選択されるVHおよび表9中の任意のVLから選択されるVLを含む。一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、表9中の任意のVHから選択されるVHおよび表9中の任意のVLから選択されるVLを含み、選択されるVHとVLは、表9に従って対になる。一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、表5中の任意のHC-CDR3から選択されるHC-CDR3および表6中の任意のLC-CDR3から選択されるLC-CDR3を含み、選択されるHC-CDR3とLC-CDR3は、表9に従って対になる。一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、表5中の任意のCDR-H2から選択されるHC-CDR2および表6中の任意のCDR-L2から選択されるLC-CDR2を含み、選択されるHC-CDR2とLC-CDR2は、表9に従って対になる。一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、表5中の任意のHC-CDR1から選択されるHC-CDR1および表6中の任意のLC-CDR1から選択されるLC-CDR1を含み、選択されるHC-CDR1とLC-CDR1は、表9に従って対になる。一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、表5中の任意のHC-CDR1、HC-CDR2、およびHC-CDR3から選択されるHC-CDR1、HC-CDR2、およびHC-CDR3ならびに表6中の任意のLC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3から選択されるLC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3を含み、選択されるHC-CDR1、HC-CDR2、HC-CDR3、LC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3は、表9に従って対になる。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、表5中の任意のHC-CDR1、HC-CDR2、およびHC-CDR3から選択されるHC-CDR1、HC-CDR2、およびHC-CDR3のいずれか1つ、ならびに配列番号16~21から選択される任意のIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、表6中の任意のLC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3から選択されるLC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3のいずれか1つ、ならびに配列番号16~21から選択される任意のIgA重鎖定常領域を含む。
【0230】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、表5中の任意のHC-CDR1、HC-CDR2、およびHC-CDR3から選択されるHC-CDR1、HC-CDR2、およびHC-CDR3のいずれか1つ、ならびに表6中の任意のLC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3から選択されるLC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3のいずれか1つ、ならびに配列番号16~21から選択される任意のIgA重鎖定常領域を含み、選択されるHC-CDR1、HC-CDR2、HC-CDR3、選択されるLC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3および選択されるIgA重鎖定常領域は、表9に従って対になる。
IgA抗体の改変
【0231】
1つまたは複数のアミノ酸置換および/または1つまたは複数のアミノ酸欠失を含むIgA抗体が本明細書に記載されている。
【0232】
一部の実施形態では、本明細書に記載のIgA抗体のアミノ酸の番号付けは、CドメインおよびC様ドメインについてのIMGT独自の番号付けに従って示されている(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる”IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor constant domains and Ig superfamily C-like domains.” Dev Comp Immunol. 2005; 29 (3): 185-203に開示されている通り)。一部の実施形態では、本明細書に開示されるアミノ酸改変は、IMGTスキームに従って番号付けして、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含むWT IgA重鎖定常領域(例えば、WT IgA2重鎖定常領域)内の選択された位置のアミノ酸残基と比べたものである。その全体が本明細書に組み込まれるUS62/824,864にも、IMGT番号付けスキームに従って番号を付された、改変されたIgA重鎖定常領域を含む抗体および抗体構築物が含まれることに留意する。その中でいくつかのアミノ酸は不注意で違う表示がなされており、US62/824,864に記載されている特定のアミノ酸位は、以下の本明細書に提示される特定のアミノ酸位に対応する。US62/824,864において言及されているC92位、N120位、I121位、およびT122位は、IMGT番号付けスキーム(位置の番号付けのみの参照に関しては表11に示されているIMGT番号付け)の通り正確に表示されている本明細書に記載の抗体のアミノ酸残基C86、N114、I115、およびT116に対応する。US62/824,864に開示されているこれらの抗体の参照野生型重鎖定常領域配列と本出願の参照野生型重鎖定常領域配列は同じである、すなわち、
図1に示されている配列番号1である。そのように、US62/824,864における、残基C86、N114、I115、およびT116のIMGT命名スキームでのC92、N120、I121、およびT122という不注意の違う表示は当業者には明らかであろう。
【0233】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体は、定常領域内の少なくとも4つのグリコシル化部位の欠失を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体は、抗体の定常領域内の少なくとも3つのN結合グリコシル化部位の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体の定常領域内の少なくとも3つのN結合グリコシル化部位および抗体の定常領域内の少なくとも1つのO結合グリコシル化部位の欠失を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体または機能性断片は、IgA重鎖定常領域内に本明細書(例えば、表2)に開示される1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体または機能性断片は、本明細書(例えば、表2)に開示される1つまたは複数の改変をIgA1重鎖定常領域内に含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体または本明細書に開示される機能性断片は、本明細書(例えば、表2)に開示される1つまたは複数の改変をIgA2重鎖定常領域内に含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の改変は、IgA1重鎖定常領域のCH1領域、CH2領域および/またはCH3領域内のアミノ酸残基におけるものである。一部の実施形態では、
【0234】
一部の実施形態では、IgA抗体は、欠失した尾部片を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の改変は、IgA2重鎖定常領域のCH1領域、CH2領域および/またはCH3領域内のアミノ酸残基におけるものである。一部の実施形態では、IgA CH1領域は、配列番号109に記載されているアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IgA CH2領域は、配列番号110に記載されているアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IgA CH2領域は、配列番号111に記載されているアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片は、3~20個、3~19個、3~18個、3~17個、3~16個、3~15個、3~14個、3~13個、3~12個、3~11個、3~10個、3~9個、3~8個、3~7個、3~6個、3~5個、3~4個のC末端アミノ酸の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、3~20個、3~19個、3~18個、3~17個、3~16個、3~15個、3~14個、3~13個、3~12個、3~11個、3~10個、3~9個、3~8個、3~7個、3~6個、3~5個、3~4個のC末端アミノ酸の欠失を含む。一部の実施形態では、C末端アミノ酸は、IMGTスキームに従って番号付けして、IgA2抗体のアミノ酸131~148からのものである。
【0235】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸131~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸147~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸146~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸145~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸144~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸143~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸142~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸141~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸140~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸139~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸138~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸137~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸136~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸135~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸134~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸133~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸132~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸131~148の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸P131~Y148の欠失を含む。
【0236】
一部の実施形態では、IgA抗体は、C末端アスパラギン(N)アミノ酸の突然変異を含む。一部の実施形態では、突然変異は、非保存的アミノ酸置換である。一部の実施形態では、突然変異により、IgAのC末端アスパラギン(N)アミノ酸のグリコシル化部位が欠失する。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N135の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N135の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N135Q突然変異を含む。
【0237】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片は、IgA重鎖定常領域内の少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位における改変を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片は、IgA重鎖定常領域内の少なくとも3つの天然に存在するグリコシル化部位における改変を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片は、少なくとも4つの天然に存在するグリコシル化部位における改変を含む。一部の実施形態では、グリコシル化部位は、N結合グリコシル化部位を含む。一部の実施形態では、グリコシル化部位は、天然に存在するアスパラギン残基を含む。一部の実施形態では、グリコシル化部位は、CH2領域内、CH3領域内、および/またはCH1領域内にある。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2G、N15.2、L15.3、T16、N114、I115、T116、N135、またはこれらの組合せにおける改変を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2G、N45.2A、N15.2G、N15.2Q、N15.2T、L15.3I、T16S、N114T、I115L、T116S、N135Q、またはこれらの組合せであるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、IgA2重鎖定常領域内の4つ全ての天然に存在するグリコシル化部位における改変を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供されるグリコシル化されていない抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、残基;N45.2、N15.2、L15.3、T16、N114、I115、T116、およびN135における改変を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供されるグリコシル化されていない抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、残基;N45.2、N15.2、N114、I115、T116、およびN135における改変を含む。
【0238】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるグリコシル化されていない抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、残基;N45.2、N15.2、L15.3、T16、N114、I115、T116における改変、およびC末端尾部片残基P131~Y148の欠失を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供されるグリコシル化されていない抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、残基;N45.2、N15.2、N114、I115、T116、およびP131~Y148における改変を含む。
【0239】
一部の実施形態では、IMGTスキームに従って番号付けして、残基N45.2、N15.2、L15.3、T16、N114、I115、T116、およびN135における改変を含む抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、IMGTスキームに従って番号付けして、残基N45.2、N15.2、N114、I115、T116、およびN135における改変を含む抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2G、N45.2A、N15.2G、N114T、I115L、T116S、およびN135Qであるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、N45.2G、N45.2A、N15.2Q、L15.3I、T16S、N114T、I115L、T116S、およびN135Qであるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgA重鎖定常領域は、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2G、N45.2A、N15.2G、N15.2T、N114T、I115L、T116S、およびN135Qであるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IMGTスキームに従って番号付けして、IgA重鎖定常領域内にN45.2G、N45.2A、N15.2G、N114T、I115L、T116S、およびN135Qであるアミノ酸置換の組合せを含む抗体は、グリコシル化されていない抗体である。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、N45.2G、N45.2A、N15.2G、T16S、N114T、I115L、T116Sであるアミノ酸置換の組合せ、およびC末端尾部片の欠失を含む。
【0240】
一部の実施形態では、IMGTスキームに従って番号付けして、IgA重鎖定常領域にN45.2G、N45.2A、N15.2Q、N114T、I115L、T116S、およびN135Qであるアミノ酸置換の組合せを含む抗体は、グリコシル化されていない抗体である。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、N45.2G、N45.2A、N15.2Q、T16S、N114T、I115L、T116Sであるアミノ酸置換の組合せ、およびC末端尾部片の欠失を含む。一部の実施形態では、IMGTスキームに従って番号付けして、IgA重鎖定常領域内にN45.2G、N45.2A、N15.2T、N114T、I115L、T116S、およびN135Qであるアミノ酸置換の組合せを含む抗体は、グリコシル化されていない抗体である。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、N45.2G、N45.2A、N15.2T、T16S、N114T、I115L、T116Sであるアミノ酸置換の組合せ、およびC末端尾部片の欠失を含む。一部の実施形態では、IMGTスキームに従って番号付けして、IgA重鎖定常領域内にN45.2G、N45.2A、N15.2T、L15.3I、T16S、N114T、I115L、T116S、およびN135Qであるアミノ酸置換の組合せを含む抗体は、グリコシル化されていない抗体である。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、N45.2G、N45.2A、N15.2T、L15.3I、T16S、T16S、N114T、I115L、T116Sであるアミノ酸置換の組合せ、およびC末端尾部片の欠失を含む。
【0241】
一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、少なくとも1つのグリコシル化部位(例えば、IMGTスキームに従って番号付けして、WT残基N45.2、N114、N15.2.およびN135)を含む対応する抗体または対応するWT IgA抗体と比べて延長した循環半減期を示す。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、少なくとも1つのグリコシル化部位(例えば、IMGTスキームに従って番号付けして、WT残基N45.2、N114、N15.2.およびN135)を含む対応する抗体またはWT IgA抗体と比べて減少した凝集を示す。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、少なくとも1つのグリコシル化部位(例えば、IMGTスキームに従って番号付けして、WT残基N45.2、N114、N15.2.およびN135)を含む対応する抗体または対応するWT IgA抗体と比べて減少した血清タンパク質との凝集を示す。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、少なくとも1つのグリコシル化部位(例えば、IMGTスキームに従って番号付けして、WT残基N45.2、N114、N15.2.およびN135)を含む対応する抗体または対応するWT IgA抗体と比べて減少した凝集を示す。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、少なくとも1つのグリコシル化部位(例えば、IMGTスキームに従って番号付けして、WT残基N45.2、N114、N15.2.およびN135)を含む対応する抗体または対応するWT IgA抗体と比べて増大した熱安定性を示す。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、Fc受容体に対して、対応するWT IgAと比べて増大した結合親和性での結合を示す。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、標的細胞のADCCを誘導する。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は標的抗原に特異的に結合する。一部の実施形態では、グリコシル化されていない抗体は、標的細胞に特異的に結合する。
【0242】
一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2Gを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、N45.2アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0243】
一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、P124の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、P124の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、P124Rを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、P124アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。一部の実施形態では、IgA2抗体は、P124アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して増大した安定性を有する。
【0244】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、C86(上記の通り、その全体が本明細書に組み込まれるUS62/824,864では不注意でC92と称されている)の突然変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、C86の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、C86Sを含む。一部の実施形態では、抗体は、C86アミノ酸に突然変異を有さない抗体と比較して減少した凝集を有する。一部の実施形態では、抗体は、C86アミノ酸に突然変異を有さない抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を有する。一部の実施形態では、抗体は、C86アミノ酸に突然変異を有さない抗体と比較して減少したin vitroまたはin vivoにおける凝集を有する。
【0245】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って、C86の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、C86の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、C86Sを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、C86アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して減少した凝集を有する。一部の実施形態では、IgA2抗体は、C86アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を有する。一部の実施形態では、IgA2抗体は、C86アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して減少したin vitroまたはin vivoにおける凝集を有する。
【0246】
一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N114(上記の通り、その全体が本明細書に組み込まれるUS62/824,864では不注意でN120と称されている)の突然変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N114の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N114Tを含む。一部の実施形態では、抗体は、N114アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0247】
一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、I115(上記の通り、その全体が本明細書に組み込まれるUS62/824,864では不注意でI121と称されている)の突然変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、I115の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、I115Lを含む。一部の実施形態では、抗体は、I115アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0248】
一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、T116(上記の通り、その全体が本明細書に組み込まれるUS62/824,864では不注意でT122と称されている)の突然変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、T116の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、T116Sを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、T116アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0249】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N114の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N114の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N14Tを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、N114アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0250】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って、I115の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、I115の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、I115Lを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、I115アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0251】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、T116の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、T116の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、T116Sを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、T116アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0252】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って、N15.2の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N15.2の非保存的突然変異を含む 。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、N15.2G、N15.2Q、またはN15.2Tを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、N15.2アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0253】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って、L15.3の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、L15.3の非保存的突然変異を含む 。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、L15.3Iを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、L15.3アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0254】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って、T16の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、T16の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、T16Sを含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、T16Sアミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。
【0255】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、C147の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、C147の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸C147の欠失を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、C147アミノ酸に突然変異を有さないIgA2抗体と比較して減少した凝集を有する。
【0256】
一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、Y148の突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、Y148の非保存的突然変異を含む。一部の実施形態では、IgA2抗体は、IMGTスキームに従って番号付けして、アミノ酸Y148の欠失を含む。
【0257】
一部の実施形態では、IgA抗体は、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインはIgA定常領域の軽鎖または重鎖と融合している。一部の実施形態では、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインは、IgA定常領域の重鎖と融合している。一部の実施形態では、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインは、IgA定常領域の重鎖のCH3領域のC末端領域と融合している。一部の実施形態では、IgA2抗体は、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインを含まないIgA2抗体と比較して延長した循環半減期を有する。一部の実施形態では、IgA2抗体は、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインを含み、対応するIgG抗体の循環半減期の1%以内、5%以内、または10%以内の循環半減期を有する。一部の実施形態では、IgA2抗体は、1つまたは複数のアルブミン結合性ドメインを含み、対応するIgG抗体の循環半減期よりも長い循環半減期を有する。
【0258】
一部の実施形態では、IgA抗体は、Lohse S. et al. Cancer Res. 2015; 76 (2): 403-17; Meyer S. et al. mAbs. 2016; 8 (1): 87-98;またはLeusen J. et al. Molecular Immunology. 2015; 68: 35-39に記載されている1つまたは複数の突然変異を含む。
【0259】
一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異または欠失の結果、IgA抗体の循環半減期の延長または短縮がもたらされる。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異または欠失の結果、IgA抗体の循環半減期の延長がもたらされる。例えば、1つまたは複数の突然変異により、ヒトにおけるIgA抗体の血清中半減期が21日またはそれよりも長くまで延長し得る。さらに、1つまたは複数の突然変異により、マウスにおけるIgA抗体の血清中半減期が9日またはそれよりも長くまで延長し得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異により、IgA抗体の血清中半減期が免疫グロブリンG(IgG)分子の血清中半減期と同等のレベルまで延長し得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異または欠失の結果、IgA抗体の循環半減期の短縮がもたらされる。
【0260】
一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異により、IgA抗体の血清中半減期が少なくとも約7日~約30日またはそれよりも長く延長し得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異により、IgA抗体の血清中半減期が少なくとも約7日延長し得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異により、IgA抗体の血清中半減期が最大で約30日延長し得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異により、IgA抗体の血清中半減期が約7日~約8日、約7日~約9日、約7日~約10日、約7日~約15日、約7日~約20日、約7日~約25日、約7日~約30日、約8日~約9日、約8日~約10日、約8日~約15日、約8日~約20日、約8日~約25日、約8日~約30日、約9日~約10日、約9日~約15日、約9日~約20日、約9日~約25日、約9日~約30日、約10日~約15日、約10日~約20日、約10日~約25日、約10日~約30日、約15日~約20日、約15日~約25日、約15日~約30日、約20日~約25日、約20日~約30日、または約25日~約30日延長し得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異により、IgA抗体の血清中半減期が約7日、約8日、約9日、約10日、約15日、約20日、約25日、または約30日延長し得る。したがって、一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して長い循環半減期を示す。一部の実施形態では、抗体は、対応するWT IgA抗体と比べて少なくとも約2%、5%、10%、12%、15%、20%、25%、50%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、99%、100%、150%、および200%長い循環半減期を示す。
【0261】
一部の実施形態では、IgA抗体は、増大した安定性を示す。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異および/または1つまたは複数の欠失の結果、1つまたは複数の突然変異および/または1つまたは複数の欠失を含まない対応するIgA抗体と比較して、IgA抗体の安定性の増大がもたらされる。
【0262】
一部の実施形態では、IgA抗体は、減少した凝集を示す。抗体の凝集は、物理的不安定性のより一般的な顕在化である。タンパク質凝集体は、エピトープの多重度および/またはコンフォメーションの変化が原因で一般に低下した活性を有し、より重要なことに、より大きな免疫原性の潜在性を有する。免疫グロブリン凝集体は、重篤な腎不全ならびに頭痛、発熱、および悪寒などのアナフィラキシー様反応を引き起こすことが公知である。したがって、抗体治療薬における凝集を減少させることが有利である。さらに、市販の静脈注射用免疫グロブリン製品における凝集体レベルはWorld Health Organization(WHO)規格に基づいて5%未満に制限されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異の結果、凝集の減少がもたらされる。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異および/または1つまたは複数の欠失の結果、1つまたは複数の突然変異および/または1つまたは複数の欠失を含まない対応するIgA抗体と比較してIgA抗体の凝集の減少がもたらされる。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した凝集を示す。一部の実施形態では、抗体は、対応するWT IgA抗体と比べて少なくとも約2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも150%、および少なくとも200%減少した凝集を示す。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比較して減少した血清タンパク質との凝集を示す。一部の実施形態では、抗体は、対応するWT IgA抗体と比べて少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも150%、および少なくとも200%減少した凝集を示す。
【0263】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるIgA抗体は、少なくとも約0.1%から最大で約5%までにわたる凝集体レベルを有する。一部の実施形態では、本明細書で提供されるIgA抗体は、少なくとも約0.1%からにわたる凝集体レベルを有する。一部の実施形態では、本明細書で提供されるIgA抗体は、最大で約5%からにわたる凝集体レベルを有する。一部の実施形態では、本明細書で提供されるIgA抗体は、約0.1%~約0.5%、約0.1%~約1%、約0.1%~約2%、約0.1%~約3%、約0.1%~約4%、約0.1%~約5%、約0.5%~約1%、約0.5%~約2%、約0.5%~約3%、約0.5%~約4%、約0.5%~約5%、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2%~約3%、約2%~約4%、約2%~約5%、約3%~約4%、約3%~約5%、または約4%~約5%にわたる凝集体レベルを有する。一部の実施形態では、本明細書で提供されるIgA抗体は、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%からにわたる凝集体レベルを有する。
【0264】
本明細書に開示される治療用抗体は、1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸は当技術分野で公知であり、それらとして、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-およびトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リシン、N’,N’-ジベンジル-リシン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0265】
アミノ酸を置換するまたは欠失させる方法は当技術分野で公知である。例えば、アミノ酸の置換または欠失は、部位特異的突然変異誘発によって行うことができる(例えば、Zoller and Smith Nucl. Acids Res. 10: 6487 (1982))。突然変異誘発は、改変される抗体の定常ドメインの配列内に1つまたは複数の改変を有するオリゴヌクレオチドを合成することによって実施することができる。本開示の抗体(例えば、IgA重鎖定常領域内に1つまたは複数の改変を含む)は、例えば、部位特異的突然変異誘発、合成遺伝子構築、半合成遺伝子構築、ランダム突然変異誘発、シャッフリングなどの、当技術分野で公知の任意の突然変異誘発手順を使用して調製することができる。部位特異的突然変異誘発により、所望の突然変異のDNA配列をコードする特異的なオリゴヌクレオチド配列、ならびに横断される欠失接合部の両側に安定な2重鎖が形成されるのに十分なサイズおよび配列の複雑さのプライマー配列をもたらすための十分な数の隣接オリゴヌクレオチドを使用することによって突然変異体を生じさせることが可能になる。一般には、変更される配列の接合部の両側に約10~約25個またはそれよりも多くの残基を有する約17~約75ヌクレオチドの長さまたはそれよりも長いプライマーが好ましい。1つまたは複数の位置に種々の異なる突然変異を導入するいくつかのそのようなプライマーを使用して、突然変異体のライブラリーを生成することができる。
【0266】
部位特異的突然変異誘発の技法は当技術分野において周知である(例えば、Kunkel et al., Methods Enzymol,, 154: 367-82, 1987を参照されたい)。一般に、部位特異的突然変異誘発は、まず所望のペプチドをコードするDNA配列を配列内に含む一本鎖ベクターを得ることまたは二本鎖ベクターの2本の鎖を融解させて離すことによって実施される。所望の突然変異した配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーは、一般に合成によって調製される。次いで、このプライマーを一本鎖ベクターとアニーリングし、突然変異を有する鎖を完全に合成するために、T7 DNAポリメラーゼなどのDNA重合酵素に供する。したがって、一方の鎖が元の突然変異していない配列をコードし、第2の鎖が所望の突然変異を有するヘテロ二本鎖が形成される。次いで、このヘテロ二本鎖ベクターを使用してE.coli細胞などの妥当な細胞を形質転換またはトランスフェクトし、突然変異した配列配置を有する組換えベクターを含むクローンを選択する。理解される通り、当該技法では、一般には、一本鎖形態および二本鎖形態の両方で存在するファージベクターを使用する。部位特異的突然変異誘発に有用な典型的なベクターとしては、M13ファージなどのベクターが挙げられる。これらのファージは容易に商業的に入手可能であり、それらの使用は当業者には一般的に周知である。二本鎖プラスミドも部位特異的突然変異誘発において常套的に使用され、それにより、目的の遺伝子をプラスミドからファージに移行するステップが排除される。部位特異的突然変異誘発はまた、Kim Jin-Kyoo et al., (1994) Eur. J. Immunol. 24: 542-548)に記載されている通り、マウスlgG1ヒンジ-Fc断片の血漿クリアランスに影響を及ぼすアミノ酸残基を同定するためにも使用されている。
【0267】
あるいは、Taq DNAポリメラーゼなどの市販の熱安定性酵素を用いたPCRの使用を使用して、変異原性オリゴヌクレオチドプライマーを増幅したDNA断片に組み入れることができ、次いでそれを妥当なクローニングまたは発現ベクターにクローニングすることができる。PCR媒介性突然変異誘発の手順に関しては、例えば、Tomic et al., Nucleic Acids Res., 18(6): 1656, 1987、およびUpender et al., Biotechniques, 18 (1): 29-30, 32, 1995を参照されたい。熱安定性ポリメラーゼに加えて熱安定性リガーゼを使用するPCRを使用して、リン酸化された変異原性オリゴヌクレオチドを増幅したDNA断片に組み入れることもでき、次いでそれを妥当なクローニングまたは発現ベクターにクローニングすることができる(例えば、Michael, Biotechniques,16 (3): 410-2, 1994を参照されたい)。
【0268】
抗体のFc領域またはそのFcR結合性ドメインの配列バリアントを作製する、当業者に公知の他の方法を使用することができる。例えば、抗体の定常ドメインまたはその断片のアミノ酸配列をコードする組換えベクターをヒドロキシルアミンなどの突然変異誘発物質で処理して、配列バリアントを得ることができる。望ましい特性、例えばADCCの増大、凝集の減少、FcRに対する親和性の増大および/またはin vivo半減期の延長をもたらす突然変異体を、後に記載されているものなどの常套的なアッセイを使用してスクリーニングすることができる。
【0269】
合成遺伝子構築には、目的のポリペプチドをコードするように設計されたポリヌクレオチド分子のin vitroにおける合成が必要である。遺伝子合成は、Tian et al.(2004, Nature 432: 1050-1054)によって記載されているマルチプレックスのマイクロチップに基づく技術、およびオリゴヌクレオチドを合成し、光プログラム可能なマイクロ流体チップ上にアセンブルする同様の技術などのいくつかの技法を利用して実施することができる。単一のまたは多数のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を、突然変異誘発、組換え、および/またはシャッフリングの公知の方法を使用して行い、その後、Reidhaar-Olson and Sauer, 1988, Science 241: 53-57;Bowie and Sauer,1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 2152-2156;WO95/17413;またはWO95/22625に開示されているものなどの関連するスクリーニング手順を使用して試験することができる。使用することができる他の方法としては、エラープローンPCR、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., 1991, Biochemistry 30: 10832-10837;米国特許第5,223,409号;WO92/06204)および領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al., 1986, Gene 46: 145; Ner et al., 1988, DNA 7: 127)が挙げられる。
【0270】
突然変異誘発/シャッフリング法をハイスループットの自動化されたスクリーニング方法と組み合わせて、宿主細胞によって発現されるクローニングされた突然変異誘発されたポリペプチドの活性を検出することができる(Ness et al., 1999, Nature Biotechnology 17: 893-896)。活性なポリペプチドをコードする突然変異誘発されたDNA分子を宿主細胞から回収し、当技術分野における標準の方法を使用して迅速に配列決定することができる。これらの方法により、ポリペプチド内の個々のアミノ酸残基の重要性を迅速に決定することが可能になる。
【0271】
半合成遺伝子構築は、合成遺伝子構築、および/または部位特異的突然変異誘発、および/またはランダム突然変異誘発、および/またはシャッフリングの態様を組み合わせることによって実現される。半合成構築は、合成されるポリヌクレオチド断片をPCR技法と組み合わせて利用するプロセスによって典型的に表される。したがって、遺伝子の規定された領域を新規に合成することができ、一方、他の領域を部位特異的変異原性プライマーを使用して増幅することができ、一方、さらに他の領域をエラープローンPCRまたは非エラープローンPCR増幅に供することができる。次いで、ポリヌクレオチド部分配列をシャッフルすることができる。
他の共有結合性の改変
【0272】
抗体の共有結合性の改変も本発明の範囲内に包含される。抗体の共有結合性の改変は、該当する場合、抗体の化学合成によって、または酵素的もしくは化学的切断によって行うことができる。抗体の共有結合性の改変の他の型は、抗体の標的化アミノ酸残基を選択された側鎖またはN末端残基またはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって分子に導入される。
【0273】
最も一般的に、システイニル残基をクロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのハロ酢酸(および対応するアミン)と反応させて、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を生じさせる。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、アルファ-ブロモ-(5イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルリン酸、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリベンゾエート、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によっても誘導体化される。
【0274】
ヒスチジル残基は、pH5.5~7.0のジエチルピロカルボネートとの反応によって誘導体化され、これは、この薬剤がヒスチジル側鎖に比較的特異的であるからである。パラ-ブロモフェナシルブロミドも有用である;反応を0.1Mのカコジル酸ナトリウム下、pH6.0で実施することが好ましい。リジニルおよびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸の酸無水物と反応する。これらの薬剤を用いた誘導体化には、リジニル残基の電荷を逆転させる効果がある。アルファアミノ含有残基を誘導体化するための他の適切な試薬としては、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル、ピリドキサールリン酸、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、メチルイソ尿素、2,4-ペンタンジオン、およびグリオキシル酸とのトランスアミナーゼにより触媒される反応が挙げられる。
【0275】
アルギニル残基は、1つまたはいくつかの従来の試薬、とりわけ、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応によって改変される。アルギニン残基の誘導体化には、反応をアルカリ性条件下で実施する必要があり、これは、グアニジン官能基のpKaが高いからである。さらに、これらの試薬は、リシンの基ならびにアルギニンイプシロンアミノ基と反応し得る。
【0276】
チロシル残基の特定の改変は、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によって分光標識をチロシル残基に導入することへの特定の関心を持って行うことができる。最も一般的に、0-アセチルチロシル種および3-ニトロ誘導体を形成するために、それぞれN-アセチルイミジゾールおよびテトラニトロメタンが使用される。チロシル残基は、ラジオイムノアッセイに使用するための標識タンパク質を調製するために、125Iまたは131Iを使用してヨウ素化される。カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)はカルボジイミド(R-N.dbd.C.dbd.N-R’)との反応によって選択的に改変され、ここで、RおよびR’は、異なるアルキル基、例えば、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどである。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基はアンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換される。
【0277】
グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、頻繁に脱アミドされて、それぞれ対応するグルタミルおよびアスパルチル残基になる。これらの残基は、中性または塩基性条件下で脱アミドされる。これらの残基の脱アミドされた形態は本発明の範囲内に入る。他の改変としては、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルのヒドロキシル基、またはトレオニル残基のリン酸化、リシン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のアルファアミノ基のメチル化(T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0278】
別の型の共有結合性の改変には、配糖体を抗体と化学的または酵素的にカップリングすることが伴う。これらの手順は、N結合またはO結合グリコシル化のためのグリコシル化能を有する宿主細胞における抗体の産生を必要としないので、有利である。使用されるカップリング方式に応じて、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離のカルボキシル基、(c)システインのものなどの遊離のスルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのものなどの遊離のヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンのものなどの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に糖を付着させることができる。これらの方法は、1987年9月11日公開のW087105330、およびAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
【0279】
抗体に存在する任意の炭水化物部分の除去を化学的にまたは酵素的に実現することができる。化学的な脱グリコシルには、抗体を化合物トリフルオロメタンスルホン酸、または相当する化合物に曝露させることが必要である。この処理の結果、連結している糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)以外の大多数または全ての糖の切断がもたらされる一方で、抗体はインタクトなまま残る。化学的な脱グリコシルは、Hakimuddin, et al. Arch. Biochem. Biophys. 259: 52 (1987)およびEdge et al. Anal. Biochem., 118: 131 (1981)により記載されている。抗体の炭水化物部分の酵素による切断は、Thotakura et al. Meth. Enzymol. 138: 350 (1987)に記載されている通り、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを使用することによって実現することができる。
【0280】
抗体の共有結合性の改変の別の型は、抗体を種々の非タンパク質ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシアルキレン、またはデキストランなどの多糖ポリマーの1つと連結することを含む。そのような方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号、同第4,179,337号、同第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号、同第4,609,546号またはEP 315 456を参照されたい。
【0281】
IgA抗体の標的
【0282】
本明細書に記載のIgA抗体を使用して、細胞の表面上に発現される抗原を標的化することができる。一部の実施形態では、IgA抗体は、標的細胞(例えば、がん細胞)の表面上に発現される抗原に特異的に結合する抗原結合性領域を含む。一部の実施形態では、抗原は、ヒト抗原である。一部の実施形態では、標的細胞は、ヒト細胞である。一部の実施形態では、IgA抗体は、以下のタンパク質のうちの1つである抗原に特異的に結合する抗原結合性ドメインを含む:CD20、GD2、CD47、CD38、EGFR、HER2、PD-L1、CD25、CD33、BCMA、CD44、CD21、CD64、α-葉酸受容体、CAIX、CD30、ROR1、CEA、EGP-2、EGP-40、HER3、葉酸結合性タンパク質、GD3、IL-13R-a2、KDR、EDB-F、メソテリン、EGFR、MUC-1、MAGE-A1、MUC16、h5T4、PSMA、TAG-72、EGFRvIII、CD123、VEGF-R2、BCMA、CD19、CD22、CD30、CD33、CD123、CD38、CD44、CD70、CD274、CD45、CD123、CD138、CD171、ROR1、EGFR、EphA2、FBP、FAP、CEA、EGP2、EGP40、TAG72、PSMA、PSA、PAP、hsp70-2、M-CSF、LAGE-la、p53、NKG2Dリガンド、B7-H6、IL-13 R α 2、IL-11 R α、MUC1、MUC16、CA9、GD3、HMW-MAA、CD171、Lewis Y、G250/CAIX、HLA-AI MAGE A1、HLA-A2 NY-ESO-1、PSC1、PCTA-1、MAGE、ELF2M、IGF-I、IGF-II、IGF-I受容体、hTERT、WT1、MUC1、LMP2、HPV16、HPV18、RGL4、MelanA、MART、ML-IAP、AFP、BCR、ABL、CYP1B1、PLAC1、BORIS、NY-BR-1、RGS5、SART3、EphA2、グリピカン-3、5T4、8H9、ανβ6 インテグリン、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CSPG4、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、FAP、FAR、FBP、KDR、MCSP、Mucl、Mucl6、NCAM、PRAME、ROR1、CD44v7/8、8H9、NCAM、VEGF-R、TAG72、RAGE-1、MN-CA IX、RU1、RU2(AS)、胎児AchR、TEM1、TEM8、PAX5、OY-TES1、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE 1、tie 2、PDGFR-β、カリクレイン4、PBF、PRAME、HSDL1、CA125、TADG-12、MUC16、マンナン-MIC-1、HERV-K-MEL、KK-LC-1、KM-HN-1、LAGE-1、MAGE-A4、SP17、SSX4、TAG1、TAG2、ENAH、マンマグロビン-A、NY-BR-1、BAGE-1、HERV-K-MEL、KK-LC-1、KM-KN-1、LAGE1、MAGE1A、MAGEA2、ムチンk、TRAG3、c-myc、サイクリン B1、p62、DKK1、RU2AS、k-ras、ME1、NFYC、STEAP1、FGF5、RU2AS、hsp70-2、ARTC1、B-RAF、ベータカテニン、CDC27、CDK4、CDK12、CDKN2A、CLPP、CSNK1A1、FN1、GAS7、GPNMB、HAUS3、LDLR-フコシルトランスフェラーゼ、MART2、MATN、MUM1、MUM2、MUM3、ネオPAP、ミオシン、PPP1R3B、PRDX5、PTPRK、RBAF600、SIRT2、SNRPD1、トリオースリン酸イソメラーゼ、OA1、RAB38、TRP1、TRP2、メランA、BAGE1、GAGE1、GAGE2、GAGE8、GAGE3、GAGE4、GAGE5、GAGE6、GAGE7、GNTVF、LY6K、TRAG3、CASP8、SAGE、DEK-CAN、EFTUD2、FLT3-ITD、サイクリンA1、FNDC3B、MAGEAG、G250、ヘプシン、腸カルボキシルエステラーゼ、PBF、CASP5、COA1、OGT、OS9、CALCA、MDM2、アルファアクチニン4、延長因子2、fos関連抗原1、レグマイン、精子タンパク質17、炭酸脱水素酵素IX、葉酸受容体-α、好中球エラスターゼ、エフリンB2、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛膜ゴナドトロピン、アルファフェトプロテインサイログロブリン、テロメラーゼ逆転写酵素、腸カルボキシエステラーゼ、プロステイン、またはサバイビン。
ガングリオシドG2
【0283】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片(すなわち、IgA重鎖定常領域内に本明細書に開示される1つまたは複数の改変を含む抗体)は、GD2に特異的に結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、O-アセチル化GD2に結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、GD2に結合し、O-アセチル化GD2には結合しない。一部の実施形態では、IgA抗体は、O-アセチル化GD2に結合し、GD2には結合しない。一部の実施形態では、抗体は、GD2に結合し、かつO-アセチル化GD2に結合する。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体または機能性断片は、ヒトGD2ポリペプチドに特異的に結合する。ヒト起源のおよびいくつかの動物のGD2のポリペプチドおよびコードする核酸配列は、例えばNCBIウェブサイトから公的に入手可能である。
【0284】
一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の重鎖の少なくともCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ、および抗体ch14.18の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3、および抗体ch14.18の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の重鎖の少なくともCDR3およびIgAヒンジを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、およびCH2 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体ch14.18の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、CH2 IgA領域、およびCH3 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、アミノ酸配列:EVQLLQSGPELEKPGASVMISCKASGSSFTGYNMNWVRQNIGKSLEWIGAIDPYYGGTSYNQKFKGRATLTVDKSSSTAYMHLKSLTSEDSAVYYCVSGMEYWGQGTSVTVSS[配列番号4]を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、アミノ酸配列:EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRSSQSLVHRNGNTYLHWYLQKPGQSPK LLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPLTFGAGTKLELK[配列番号5]を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、アミノ酸配列:EVQLLQSGPELEKPGASVMISCKASGSSFTGYNMNWVRQNIGKSLEWIGAIDPYYGGTSYNQKFKGRATLTVDKSSSTAYMHLKSLTSEDSAVYYCVSGMEYWGQGTSVTVSS[配列番号4]を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列:EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRSSQSLVHRNGNTYLHWYLQKPGQSPKLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPLTFGAGTKLELK[配列番号5]を含む軽鎖可変領域を含む。
【0285】
一部の実施形態では、IgA抗体は、アミノ酸配列:EFTFTDYY[配列番号10]を含むCDR1;アミノ酸配列:IRNRANGYTT[配列番号11]を含むCDR2;アミノ酸配列:ARVSNWAFDY[配列番号12]を含むCDR3のうちの1つまたは複数を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、アミノ酸配列:QSLLKNNGNTFL[配列番号13]を含むCDR1;アミノ酸配列:KVS[配列番号14]を含むCDR2;アミノ酸配列:SQSTHIPYT[配列番号15]を含むCDR3のうちの1つまたは複数を含む可変軽鎖を含む。
【0286】
一部の実施形態では、IgA抗体は、アミノ酸配列:EFTFTDYY[配列番号10]を含むCDR1;アミノ酸配列:IRNRANGYTT[配列番号11]を含むCDR2;アミノ酸配列:ARVSNWAFDY[配列番号12]を含むCDR3のうちの1つまたは複数を含む可変重鎖;およびアミノ酸配列:QSLLKNNGNTFL[配列番号13]を含むCDR1;アミノ酸配列:KVS[配列番号14]を含むCDR2;アミノ酸配列:SQSTHIPYT[配列番号15]を含むCDR3のうちの1つまたは複数を含む可変軽鎖を含む。
【0287】
一部の実施形態では、抗GD2 IgA抗体は、3F8抗体のHC-CDR1、HC-CDR2、HC-CDR3、LC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3のうちの1つまたは複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)を含む。一部の実施形態では、抗GD2抗体は、3F8抗体の可変重鎖および/または可変軽鎖を含む。
【0288】
一態様では、本開示は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0289】
一態様では、本開示は、(a)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号42のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号50のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号66のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号74のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0290】
一態様では、本開示は、(a)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号42のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および(c)配列番号50のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに(d)配列番号5のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0291】
一態様では、本開示は、(a)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号66のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号74のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに配列番号4のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0292】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号50のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;および配列番号74のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0293】
一態様では、本明細書の開示は、(a)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号66のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および(c)配列番号74のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号42のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および(c)配列番号50のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0294】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号42のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号50のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号66のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号74のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0295】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号4のアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号42のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号50のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0296】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号5のアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号5のVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号66のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号74のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0297】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号5のVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含めて含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のカッパ軽鎖定常領域を含む。
CD20
【0298】
一部の実施形態では、IgA抗体は、CD20に特異的に結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、II型またはI/II型CD20結合性領域を含む抗原結合性ドメインを含む。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体または機能性断片は、ヒトCD20ポリペプチドに特異的に結合する。ヒト起源のおよびいくつかの動物のCD20のポリペプチドおよびコードする核酸配列は、例えばNCBIウェブサイトから公的に入手可能である。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD20エピトープに特異的に結合する抗原結合性ドメインを含み、前記CD20エピトープは、以下のアミノ酸配列:YNCEPANPSEKNSPSTQYCYS[配列番号6]内に存在する。
【0299】
一部の実施形態では、CD20抗体の可変領域は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCTNL2017050581に記載されている。一部の実施形態では、重鎖可変領域は、以下のアミノ酸配列:QAYLQQSGAELVRPGASVKMSCKASGYTFT SYNLHWVKQTPRQGLEWIGAIYPGNGDTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMQLSRLTSED SAVYFCARSNSYGSTYWYFDVWGTGTTVTVSS[配列番号7]内のCDR1、CDR2、またはCDR3の1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、以下のアミノ酸配列:QIVLSQSPAVLFASPGEKVTMTCRARSSVSYMDWYQQKPRSSPKPWIYATSNLASGVPARFSGSG SGTSYSLTISRVEAEDAATYYCQQWTSNPPTFGSGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSS[配列番号8]内のCDR1、CDR2、またはCDR3の1つ、2つ、または3つを含む。
【0300】
一部の実施形態では、重鎖可変領域は、以下のアミノ酸配列:QAYLQQSGAELVRPGASVKMSCKASGYTFTSYNLHWVKQTPRQGLEWIGAIYPGNGDTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMQLSRLTSED SAVYFCARSNSYGSTYWYFDVWGTGTTVTVSS[配列番号7]を含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、以下のアミノ酸配列:QIVLSQSPAVLFASPGEKVTMTCRARSSVSYMDWYQQKPRSSPKPWIYATSNLASGVPARFSGSG SGTSYSLTISRVEAEDAATYYCQQWTSNPPTFGSGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSS[配列番号8]を含む。
【0301】
一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの重鎖の少なくともCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ、および抗体オビヌツズマブの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3、および抗体オビヌツズマブの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの重鎖の少なくともCDR3およびIgAヒンジを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、およびCH2 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体オビヌツズマブの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、CH2 IgA領域、およびCH3 IgA領域を含む。
【0302】
一部の実施形態では、IgA抗体は、CD20エピトープEPANPSEKに特異的に結合する。
【0303】
一部の実施形態では、IgA抗体は、CD20に特異的に結合するものであり、同じアイソタイプの定常領域を有するリツキシマブと比較して増大したプログラム細胞死(PCD)機能を有する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD20に特異的に結合するものであり、同じアイソタイプの定常領域を有するリツキシマブと比較して増大した抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能性を有する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD20に特異的に結合するものであり、同じアイソタイプの定常領域を有するリツキシマブと比較して増大した補体依存性細胞傷害(CDC)機能性を有する。
【0304】
一部の実施形態では、IgA抗体は、対応するIgG抗体と比較して短い循環半減期を有する。一部の実施形態では、抗CD20 IgA抗体の投与に付随する、B細胞枯渇による副作用は、対応するIgG抗体と比較して少ない。一部の実施形態では、抗CD20抗体の投与に付随するB細胞補給は対応するIgG抗体と比較して速い。
【0305】
一態様では、本開示は、(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号95のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0306】
一態様では、本開示は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号41のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号57のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号65のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号73のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0307】
一態様では、本開示は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号41のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに(d)配列番号95のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0308】
一態様では、本開示は、(a)配列番号57のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号65のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号73のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに配列番号81のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0309】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号49のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;および配列番号73のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0310】
一態様では、本明細書の開示は、(a)配列番号57のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号65のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および(c)配列番号73のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号41のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0311】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号41のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号57のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号65のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号73のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0312】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号81のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号81のアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号81のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号41のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0313】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号95のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号95のアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号95のVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号57のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号73のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0314】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号81のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号95のVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含めて含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のカッパ軽鎖定常領域を含む。
【0315】
一部の実施形態では、CD47に特異的に結合する抗体またはその機能性断片が本発明で提供される。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の重鎖の少なくともCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ、および抗体UMAB10の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3、および抗体UMAB10の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の重鎖の少なくともCDR3およびIgAヒンジを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、およびCH2 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体UMAB10の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、CH2 IgA領域、およびCH3 IgA領域を含む。
【0316】
一態様では、本開示は、(a)配列番号86のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号100のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0317】
一態様では、本開示は、(a)配列番号40のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号56のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号64のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号72のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号80のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0318】
一態様では、本開示は、(a)配列番号40のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および(c)配列番号56のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに(d)配列番号8のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0319】
一態様では、本開示は、(a)配列番号64のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号72のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号80のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに配列番号7のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0320】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号56のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;および配列番号80のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0321】
一態様では、本明細書の開示は、(a)配列番号64のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号72のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および(c)配列番号80のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号40のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および(c)配列番号56のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0322】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号40のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号56のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号64のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号72のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号80のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0323】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号7のアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号40のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号56のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0324】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号8のアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8のVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号64のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号72のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号80のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0325】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号8のVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含めて含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のカッパ軽鎖定常領域を含む。
Her2
【0326】
一部の実施形態では、Her2に特異的に結合する抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの重鎖の少なくともCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ、および抗体トラスツズマブの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3、および抗体トラスツズマブの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの重鎖の少なくともCDR3およびIgAヒンジを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、およびCH2 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体トラスツズマブの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、CH2 IgA領域、およびCH3 IgA領域を含む。
【0327】
一態様では、本開示は、(a)配列番号82のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0328】
一態様では、本開示は、(a)配列番号35のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号43のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号51のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号59のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号67のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号75のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0329】
一態様では、本開示は、(a)配列番号35のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号43のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および(c)配列番号51のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに(d)配列番号96のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0330】
一態様では、本開示は、(a)配列番号59のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号75のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに配列番号82のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0331】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号51のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;および配列番号75のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0332】
一態様では、本明細書の開示は、(a)配列番号59のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および(c)配列番号75のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号35のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号43のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および(c)配列番号51のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0333】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号35のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号43のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号51のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号59のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号67のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号75のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0334】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号82のアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号82のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号35のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号43のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号51のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0335】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号96のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号96のアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号96のVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号59のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号75のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0336】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号82のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号96のVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含めて含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のカッパ軽鎖定常領域を含む。
gp75
【0337】
一部の実施形態では、gp75またはチロシン関連タンパク質1に特異的に結合する抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体または機能性断片は、ヒトgp75ポリペプチドに特異的に結合する。ヒト起源のおよびいくつかの動物のgp75のポリペプチドおよびコードする核酸配列は、例えばNCBIウェブサイトから公的に入手可能である。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の重鎖の少なくともCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ、および抗体TA99の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3、および抗体TA99の軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の重鎖の少なくともCDR3およびIgAヒンジを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、およびCH2 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体TA99の重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、CH2 IgA領域、およびCH3 IgA領域を含む。
【0338】
一態様では、本開示は、(a)配列番号83のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号97のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0339】
一態様では、本開示は、(a)配列番号36のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号44のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号52のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号68のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号76のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0340】
一態様では、本開示は、(a)配列番号36のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号44のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および(c)配列番号52のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに(d)配列番号97のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0341】
一態様では、本開示は、(a)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号68のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号76のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに配列番号83のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0342】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号52のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;および配列番号76のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0343】
一態様では、本明細書の開示は、(a)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号68のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および(c)配列番号76のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号36のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号44のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および(c)配列番号52のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0344】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号36のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号44のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号52のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号68のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号76のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0345】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号83のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号83のアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号83のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号36のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号44のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号52のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0346】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号97のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号97のアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号97のVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号68のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号76のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0347】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号83のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号97のVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含めて含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のカッパ軽鎖定常領域を含む。
CTLA4
【0348】
一部の実施形態では、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)に特異的に結合する抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体または機能性断片は、ヒトCTLA4ポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体または機能性断片は、マウスCTLA4ポリペプチドに特異的に結合する。ヒト起源のおよびいくつかの動物のCTLA4のポリペプチドおよびコードする核酸配列は、例えばNCBIウェブサイトから公的に入手可能である。
【0349】
一態様では、本開示は、(a)配列番号84のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号98のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0350】
一態様では、本開示は、(a)配列番号37のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号53のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号61のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号69のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号77のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0351】
一態様では、本開示は、(a)配列番号37のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および(c)配列番号53のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに(d)配列番号98のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0352】
一態様では、本開示は、(a)配列番号61のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号69のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号77のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに配列番号84のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0353】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号53のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;および配列番号77のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0354】
一態様では、本明細書の開示は、(a)配列番号61のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号69のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および(c)配列番号77のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号37のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および(c)配列番号53のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0355】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号37のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号53のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号61のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号69のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号77のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0356】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号84のアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号84のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号37のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号53のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0357】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号98のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号98のアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号98のVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号61のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号69のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号77のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0358】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号98のVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含めて含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のカッパ軽鎖定常領域を含む。
CD47
【0359】
一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体または機能性断片は、ヒトCD47ポリペプチドに特異的に結合する。ヒト起源のおよびいくつかの動物のポリペプチドおよびコードする核酸配列CD47は、例えばNCBIウェブサイトから公的に入手可能である。一部の実施形態では、IgA抗体により、がん細胞の表面上に発現されるCD47へのSIRPαの結合が減少する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に、対応する野生型抗体と比較して、約0.5μM~約999μMにわたる結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に、対応する野生型抗体と比較して、約1mM~約1000mMにわたる結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、ヒトCD47とシグナル調節タンパク質α(SIRPα)の相互作用を阻害する。一部の実施形態では、前記ヒトCD47と前記SIRPαの相互作用の阻害により、前記IgA抗体の潜在性が増大する。一部の実施形態では、前記ヒトCD47と前記SIRPαの相互作用の阻害により、腫瘍部位におけるがん細胞のファゴサイトーシスおよびクリアランスが増加する。一部の実施形態では、がん細胞は、IgAオプソニン化がん細胞である。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に結合する抗原結合性ドメインおよび腫瘍関連抗原(例えば、本明細書に記載のもの)に特異的に結合する抗原結合性ドメインを含む。
【0360】
一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に結合する。一部の実施形態では、IgA抗体により、がん細胞へのCD47の結合が減少する。例えば、IgA抗体は、ヒトCD47とシグナル調節タンパク質α(SIRPα)の相互作用を阻害し得る。さらに、ヒトCD47とSIRPαの相互作用の阻害により、IgA抗体の潜在性が増大し得る。ヒトCD47とSIRPαの相互作用の阻害により、腫瘍部位におけるがん細胞のファゴサイトーシスおよびクリアランスが増加し得る。例えば、がん細胞は、IgAオプソニン化がん細胞であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載のIgA抗体は、CD47に対して低親和性の結合性を有し、それにより、IgA抗体のがん細胞以外の細胞上のCD47への結合が防止される。一部の実施形態では、本明細書に記載のIgA抗体の低親和性CD47アームは、CD47を発現する腫瘍細胞に結合する。一部の実施例では、本明細書に記載のIgA抗体の低親和性CD47アームは、腫瘍細胞ではない、CD47を発現する細胞には結合しない。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に少なくとも約0.01マイクロモル(μM)~約999μMまたはそれよりも高い結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に少なくとも約0.01μMの結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に最大で約999μMの結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に約0.01μM~約0.1μM、約0.01μM~約0.5μM、約0.01μM~約1μM、約0.01μM~約5μM、約0.01μM~約10μM、約0.01μM~約50μM、約0.01μM~約100μM、約0.01μM~約200μM、約0.01μM~約300μM、約0.01μM~約500μM、約0.01μM~約999μM、約0.1μM~約0.5μM、約0.1μM~約1μM、約0.1μM~約5μM、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約50μM、約0.1μM~約100μM、約0.1μM~約200μM、約0.1μM~約300μM、約0.1μM~約500μM、約0.1μM~約999μM、約0.5μM~約1μM、約0.5μM~約5μM、約0.5μM~約10μM、約0.5μM~約50μM、約0.5μM~約100μM、約0.5μM~約200μM、約0.5μM~約300μM、約0.5μM~約500μM、約0.5μM~約999μM、約1μM~約5μM、約1μM~約10μM、約1μM~約50μM、約1μM~約100μM、約1μM~約200μM、約1μM~約300μM、約1μM~約500μM、約1μM~約999μM、約5μM~約10μM、約5μM~約50μM、約5μM~約100μM、約5μM~約200μM、約5μM~約300μM、約5μM~約500μM、約5μM~約999μM、約10μM~約50μM、約10μM~約100μM、約10μM~約200μM、約10μM~約300μM、約10μM~約500μM、約10μM~約999μM、約50μM~約100μM、約50μM~約200μM、約50μM~約300μM、約50μM~約500μM、約50μM~約999μM、約100μM~約200μM、約100μM~約300μM、約100μM~約500μM、約100μM~約999μM、約200μM~約300μM、約200μM~約500μM、約200μM~約999μM、約300μM~約500μM、約300μM~約999μM、または約500μM~約999μMの結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に約0.01μM、約0.1μM、約0.5μM、約1μM、約5μM、約10μM、約50μM、約100μM、約200μM、約300μM、約500μM、または約999μMの結合親和性(Kd)で結合する。
【0361】
一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に約1mM~約1,000ミリモル(mM)の結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に少なくとも約1mMの結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に最大で約1,000mMの結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に約1mM~約5mM、約1mM~約10mM、約1mM~約50mM、約1mM~約100mM、約1mM~約200mM、約1mM~約300mM、約1mM~約400mM、約1mM~約500mM、約1mM~約600mM、約1mM~約800mM、約1mM~約1,000mM、約5mM~約10mM、約5mM~約50mM、約5mM~約100mM、約5mM~約200mM、約5mM~約300mM、約5mM~約400mM、約5mM~約500mM、約5mM~約600mM、約5mM~約800mM、約5mM~約1,000mM、約10mM~約50mM、約10mM~約100mM、約10mM~約200mM、約10mM~約300mM、約10mM~約400mM、約10mM~約500mM、約10mM~約600mM、約10mM~約800mM、約10mM~約1,000mM、約50mM~約100mM、約50mM~約200mM、約50mM~約300mM、約50mM~約400mM、約50mM~約500mM、約50mM~約600mM、約50mM~約800mM、約50mM~約1,000mM、約100mM~約200mM、約100mM~約300mM、約100mM~約400mM、約100mM~約500mM、約100mM~約600mM、約100mM~約800mM、約100mM~約1,000mM、約200mM~約300mM、約200mM~約400mM、約200mM~約500mM、約200mM~約600mM、約200mM~約800mM、約200mM~約1,000mM、約300mM~約400mM、約300mM~約500mM、約300mM~約600mM、約300mM~約800mM、約300mM~約1,000mM、約400mM~約500mM、約400mM~約600mM、約400mM~約800mM、約400mM~約1,000mM、約500mM~約600mM、約500mM~約800mM、約500mM~約1,000mM、約600mM~約800mM、約600mM~約1,000mM、または約800mM~約1,000mMの結合親和性(Kd)で結合する。一部の実施形態では、IgA抗体は、CD47に約1mM、約5mM、約10mM、約50mM、約100mM、約200mM、約300mM、約400mM、約500mM、約600mM、約800mM、または約1,000mMの結合親和性(Kd)で結合する。
【0362】
一部の実施形態では、CD47に特異的に結合する抗体またはその機能性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの重鎖の少なくともCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ、および抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3のうちの1つ、2つ、または3つを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3、および抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの軽鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの重鎖の少なくともCDR3およびIgAヒンジを含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、およびCH2 IgA領域を含む。一部の実施形態では、IgA抗体は、抗体2.3D11または抗体C47A8-CQの重鎖の少なくともCDR3、IgAヒンジ、CH1 IgA領域、CH2 IgA領域、およびCH3 IgA領域を含む。
【0363】
一態様では、本開示は、(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号99のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0364】
一態様では、本開示は、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号46のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号54のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号62のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号78のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0365】
一態様では、本開示は、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号46のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および(c)配列番号54のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに(d)配列番号99のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0366】
一態様では、本開示は、(a)配列番号62のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号70のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号78のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに配列番号85のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0367】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号54のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;および配列番号78のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0368】
一態様では、本明細書の開示は、(a)配列番号62のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号70のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および(c)配列番号78のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号46のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および(c)配列番号54のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0369】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号46のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号54のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号62のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号78のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0370】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号85のアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号85のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号46のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号54のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0371】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号99のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号99のアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号99のVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号62のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号70のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号78のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0372】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号85のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号99のVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含めて含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のカッパ軽鎖定常領域を含む。
【0373】
一態様では、本開示は、(a)配列番号86のアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号100のアミノ酸配列を含むVL、および(c)これらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0374】
一態様では、本開示は、(a)配列番号39のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号47のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号54のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号63のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号71のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号79のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0375】
一態様では、本開示は、(a)配列番号39のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号47のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;および(c)配列番号55のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに(d)配列番号100のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0376】
一態様では、本開示は、(a)配列番号63のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号71のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号79のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全て;ならびに配列番号86のアミノ酸配列を含むVHを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0377】
一態様では、本開示は、CDR:配列番号55のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;および配列番号79のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0378】
一態様では、本明細書の開示は、(a)配列番号63のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号71のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および(c)配列番号79のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択されるVL CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一態様では、本開示は、(a)配列番号39のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号47のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および(c)配列番号55のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択されるVH CDR配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0379】
一態様では、本開示は、CDR:(a)配列番号39のアミノ酸配列を含むHC-CDR1;(b)配列番号47のアミノ酸配列を含むHC-CDR2;(c)配列番号55のアミノ酸配列を含むHC-CDR3;(d)配列番号63のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(e)配列番号71のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(f)配列番号79のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0380】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号86のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号86のアミノ酸配列内の合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号86のアミノ酸配列のVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号39のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、(b)配列番号47のアミノ酸配列を含むHC-CDR2、および(c)配列番号55のアミノ酸配列を含むHC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0381】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号100のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号100のアミノ酸配列のいずれか1つの合計1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)に存在する。必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号100のVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号63のアミノ酸配列を含むLC-CDR1;(b)配列番号71のアミノ酸配列を含むLC-CDR2;および(c)配列番号79のアミノ酸配列を含むLC-CDR3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【0382】
一態様では、抗体またはその抗原結合性断片が提供され、ここで、抗体またはその抗原結合性断片は、上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVHおよび上に提示されている実施形態のいずれかと同様のVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号86のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号100のVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含めて含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するIgA重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のカッパ軽鎖定常領域を含む。
IgA抗体の特性および機能の改善
【0383】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、対応する野生型IgA抗体と比べて改善された安定性を示す。「増大した安定性」という用語は、本明細書で使用される場合、増大した熱安定性および/または減少した凝集を含む。増強または改善された安定性は、例えば、加速安定性試験によって決定することができる。例示的な加速安定性試験としては、これだけに限定されないが、保管温度の上昇を特徴とする試験が挙げられる。抗体に関して観察される凝集体の形成が対応するWT IgA抗体と比較して減少することにより、増大した安定性が示される。本開示の抗体およびその機能性断片の安定性は、抗体の融解温度遷移の対応する野生型IgA抗体と比較した変化を測定することによって試験することができる。そのような実施形態では、増大した安定性または増大した熱安定性は、抗体またはその機能性断片の融解温度遷移が対応するWT IgAまたはその機能性断片と比べて増大することによって明らかになる。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体よりも融解温度が高い。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその機能性断片の融解温度は、対応するWT IgA抗体よりも少なくとも約0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、0.6倍、0.8倍、1.0倍高いまたはそれよりも高い。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその機能性断片の融解温度は、対応するWT IgA抗体よりも少なくとも約1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、12℃、15℃高いまたはそれよりも高い。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその機能性断片の融解温度は、少なくとも約60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃であるまたはそれよりも高い。一部の実施形態では、この増大した安定性は、追加的なジスルフィド結合の非存在下におけるものである。具体的には、増大した安定性は、IgA重鎖定常領域内の追加的なジスルフィド結合の非存在下におけるものである。一実施形態では、本明細書に開示される抗体のCH3ドメインは、野生型CH3ドメインと比較して追加的なジスルフィド結合を含有しない。代替の実施形態では、本明細書に開示される抗体のCH3ドメインは、野生型CH3ドメインと比較して少なくとも1つのジスルフィド結合を含有する。
【0384】
タンパク質凝集を測定するための追加的な方法は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第10/176,809号、およびUS20030022243A1に記載されている。タンパク質安定性を測定するための種々の分析技法は、下で概説されているものなど、当技術分野において利用可能である:Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed. ,Marcel Dekker, Inc., New York, New York, Pubs., 1991;およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90, 1993。安定性は、選択された温度で選択された時間にわたって測定することができる。安定性は、凝集体の形成の決定(例えば、分子ふるいクロマトグラフィーを使用した、または濁度および/もしくは目視検査を測定することによる)を含めた様々な異なるやり方で定性的にかつ/または定量的に決定される。方法は以下の通りである:陽イオン交換クロマトグラフィーまたはキャピラリーゾーン電気泳動を使用した電荷の不均一性の評価;アミノ末端またはカルボキシ末端配列の分析;質量分析;還元または完全抗体SDS-PAGE分析の比較;ペプチドマッピング(例えば、トリプシンまたはLYS-C)分析;抗体の生物活性または抗原結合機能の決定。不安定性は、以下のいずれかの1つまたは複数を含む:凝集、酸化(例えばMet酸化)、異性化(例えばAsp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域の断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N末端伸長、C末端プロセシングなど。「減少した凝集」という用語は、本開示の抗体またはその機能性断片の他の抗体分子および/またはアルブミンなどの血清タンパク質を含めた他の巨大分子との凝集の、対応するWT IgA抗体によって示される凝集と比較した減少を指す。
【0385】
抗体の、対応するWT IgA抗体またはそのバリアントと比べて増大した熱安定性は、当技術分野における標準の方法を使用した示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる(例えば、Sturtevant, 1987,Annual Review of Physical Chemistry 38: 463-488を参照されたい)。抗体の、対応するWT IgA抗体またはそのバリアントと比べて増大した熱安定性はまた、タンパク質の熱によるアンフォールディングの分析を使用して決定することもできる。あるいは、抗体の、対応するWT IgA抗体またはそのバリアントと比べて増大した熱安定性は、抗体の性能をWTと比較する、抗体に対する任意の適用アッセイを使用して決定することができる。例えば、標的細胞のADCC、抗原への結合、または免疫細胞上のFcαRへの結合。
IgA抗体の免疫エフェクター機能
【0386】
WT重鎖定常領域を含む対応するWT IgA抗体と比べて重鎖定常領域内に1つまたは複数の改変を含む、工学的に操作されたIgAバリアントまたは抗体が本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片(例えば、本明細書に開示される1つまたは複数の改変を含む抗体)は、改善された特性を示す。
【0387】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体またはその機能性断片と比較して少なくとも1つのエフェクター機能の増大を示す。エフェクター機能は、抗体のアイソタイプによって変動する抗体のFc領域に起因する生物活性である。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシスが挙げられる。例えば、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体もしくはその機能性断片または対応するWT IgG抗体と比較して少なくとも1つのエフェクター機能の増大を示す。抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity)(ADCC)は、抗体のIgA Fab部分と細胞表面上の抗原の間の複合体の形成およびFc部分と免疫エフェクター細胞上のFc受容体(FcαR)の結合の結果である。例えば、エフェクター機能の増大は、Fc受容体(例えば、FcαR)に対する結合親和性の増大、ADCCの増大;細胞性免疫の増大;細胞傷害性CD8T細胞との結合の増大;NK細胞との結合の増大;マクロファージとの結合の増大;多形核細胞との結合の増大;単球との結合の増大;マクロファージとの結合の増大;大型顆粒リンパ球との結合の増大;顆粒球との結合の増大;アポトーシスを誘導する直接シグナル伝達;樹状細胞成熟化の増大;またはT細胞予備刺激の増大、オプソニン化の増大、もしくはオプソニン化ファゴサイトーシスの増大であり得る。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、がん細胞の溶解を誘導する。溶解は、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス、または細胞アポトーシスの直接誘導などのエフェクター機能を媒介することによるものなどの任意の機構によって誘導され得る。
ADCC
【0388】
「ADCC活性」は、ADCC反応を引き出す抗体の能力を指す。ADCCは、FcRを発現する抗原非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞の表面に結合した抗体を認識し、その後、その標的細胞(例えばがん細胞)の溶解を引き起こす(すなわち、「死滅させる」)、細胞媒介性反応である。主要なメディエーター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球であり得る。ADCC活性は、in vitroアッセイ、例えば、実施例およびShields et al. (2001) J. Biol. Chem., 276: 6591-6604に記載されている末梢血単核細胞(PBMC)および/もしくはNKエフェクター細胞を使用した51Cr放出アッセイ、または当技術分野で公知の別の適切な方法を使用して直接評価することができる。ADCC活性は、標的細胞の溶解が最大半量になる抗体の濃度として表すことができる。したがって、一部の実施形態では、溶解レベルが野生型対照による最大半量溶解レベルと同じになる本開示の抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、野生型対照自体の濃度の少なくとも2分の1、3分の1、5分の1、10分の1、20分の1、50分の1、100分の1である。
【0389】
さらに、一部の実施形態では、本開示の抗体またはその機能性断片は、対応する野生型IgAと比較して高い最大標的細胞溶解を示し得る。例えば、本開示の抗体またはその機能性断片の最大標的細胞溶解は、対応するWT IgA抗体または対応するWT IgG抗体の最大標的細胞溶解よりも2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%またはそれよりも高くなり得る。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、IgG重鎖定常ドメインを含む対応するWT IgG抗体と比較して増大したADCCを誘導する。一部の実施形態では、ADCCは、対応するWT IgG抗体と比べて少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも150%、および少なくとも200%増大する。
CDC
【0390】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、分子の、補体の存在下で標的(例えばがん細胞)を溶解させる能力を指す。補体活性化経路は、補体系の第1の構成成分(C1q)が、同族抗原と複合体を形成した分子(例えば抗体)に結合することによって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されているCDCアッセイを実施することができる。
Fc受容体結合
【0391】
一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、Fc受容体に結合する。一部の実施形態では、Fc受容体は、免疫エフェクター細胞上に発現される。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその機能性断片は、免疫エフェクター細胞上のFc受容体に結合し、ADCC、CDC、および/または標的細胞(例えばがん細胞)の細胞溶解などのエフェクター機能を誘導する。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、IgA受容体に結合する。一実施形態では、IgA受容体は、ヒトIgAに対するFcαRなどのFc-アルファ受容体(FcαR)である。一部の実施形態では、FcαRは免疫エフェクター細胞上に発現される。FcαRは、免疫エフェクター細胞、例えば、単球、マクロファージ、好中球、および他の骨髄細胞上に存在する。FcαRはまた、後骨髄球、骨髄球、前骨髄球およびいくつかの骨髄芽球、例えば、骨髄由来の骨髄芽球にも見いだされる。そのような受容体はまた、骨髄細胞株、例えば、U937細胞、PLB985細胞、およびHL60細胞にも見いだされる。FcαRがリンパ球に存在することも示唆されている。FcαRの発現は、骨髄細胞の活性化によって増大し得る。例えば、U937細胞およびPLB985細胞をホルボールミリスチンアセテート(PMA)で刺激することにより、FcαRの細胞表面レベルが数倍に上昇する(Maliszewski, et al. (1990) J Exp. Med. 172: 1665)。FcαRの表面レベルを上昇させることができる他の薬剤としては、カルシトリオール、1-25ジヒドロキシビタミンD3、およびインターフェロン-γ(IFN-γ)が挙げられる。
【0392】
FcαRは、IgA1およびIgA2と、単量体、二量体、およびポリマーの形態で相互作用することができる。本開示の抗体またはその機能性断片がこれらの受容体を有する免疫エフェクター細胞(例えば、好中球)に結合することにより、ファゴサイトーシス、抗体依存性細胞傷害(antibody dependent cellular cytotoxicity)(ADCC)、炎症性メディエーター放出、リゾチーム産生、および超酸化物アニオン産生などの種々のエフェクター機能が誘導される(Maliszewski, et al. (1990) J Exp. Med. 172: 1665)。
【0393】
したがって、本開示の抗体またはその機能性断片(例えば、本明細書に開示される1つまたは複数の改変を含む抗体)は、少なくとも1つのFc-受容体媒介性エフェクター細胞機能を誘発することができる。「Fc-受容体媒介性エフェクター細胞機能」という用語は、免疫グロブリン、例えばIgAがエフェクター免疫細胞上のFc受容体に結合することによって誘発される、上記のものなどのエフェクター機能を含むものとする。エフェクター免疫細胞は、免疫応答の認知相および活性化相とは対照的に免疫応答のエフェクター相に関与する細胞である。エフェクター免疫細胞は、リンパ球(例えば、細胞溶解性T細胞(CTL)を含めたB細胞およびT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、肥満細胞、ならびに好塩基球を含む。エフェクター免疫細胞は、標的抗原、標的細胞、または微生物(microorganism)を貪食し得る。エフェクター免疫細胞はまた、標的細胞または微生物を溶解させ得る。
【0394】
一部の実施形態では、エフェクター免疫細胞は、ADCC依存性細胞を誘導することができるものである(例えば、好中球はADCCを誘導することができる)。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞を特異的に死滅させるものであり、免疫系の他の構成成分への抗原の提示、または抗原提示細胞との結合に関与する。別の実施形態では、エフェクター免疫細胞は、標的抗原、標的細胞、または微生物に対するファゴサイトーシスを誘導するものであり得る。エフェクター免疫細胞は、標的抗原もしくは標的細胞に対するマクロファージ活性または可溶性を誘導するマクロファージであり得る。
【0395】
「標的細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、本開示の抗体またはその機能性断片の標的とすることができる細胞を指す。一部の実施形態では、標的細胞は、本開示の抗体またはその機能性断片によって特異的に認識される抗原を発現または過剰発現する細胞である。標的細胞は、任意の細胞を指す。他の実施形態では、標的細胞は、腫瘍細胞を含む。腫瘍細胞は、例えば、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、膵がん、肝がん、CNSがん、腎がん、頭部がん、頸部がん、血液がんおよびリンパのがんを含めたがんにおける腫瘍細胞のあらゆる型のものであり得る。腫瘍細胞に加えて、標的細胞は、例えば、リンパ球またはアレルギーを標的とするもしくはそれらの産生のための自己抗体の処置に関して、または自己免疫疾患の処置に関しては、IgEを産生するリンパ球であり得る。さらに、標的は、微生物(細菌もしくはウイルス)または可溶性抗原(例えば、同様のリウマチ因子、または異なる自己抗体および毒素など)であり得る。微生物は、病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌、原生動物)を含む。一部の実施形態では、標的細胞は、リンパ球、例えば、CD20を発現するB細胞であり得る。
【0396】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体は、対応するWT IgAと比べて、エフェクター免疫細胞上のFc受容体に対して少なくとも約2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれよりも大きく増大した結合親和性を示す。
標的抗原との結合
【0397】
一部の実施形態では、本開示の抗体およびその機能性断片は、特異的な標的抗原に結合する。「抗原」という用語は、任意の天然または合成の免疫原性物質、免疫原性物質、免疫原性物質の断片もしくは一部、ペプチドエピトープまたはハプテン(ハプテン)を指す。「抗原」という用語はまた、非免疫原性の形態の、複合型免疫原性と比較した場合の非複合材料にも含まれる。「非複合型」という用語は本発明の分子複合体を形成するために接続され、材料の移行を含む。「複合」に接続される用語は、本発明の分子複合体を形成する物質を含む。一部の実施形態では、標的抗原は、標的細胞上に発現または過剰発現される。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片が標的抗原に結合することにより、標的抗原を発現する標的細胞のFc媒介性細胞溶解が誘導される(例えばADCCによって)。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその機能性断片が標的抗原に結合することにより、標的抗原の「中和活性」が誘導される。「中和活性」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体またはその機能性断片の、同類のリガンドが標的抗原に結合することを遮断する能力を指す。
グリコシル化の減少
【0398】
一部の実施形態では、本開示の抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgAと比較して減少したグリコシル化を示す。抗体は、完全にグリコシル化されていないものまたは部分的にグリコシル化されていないものであり得る。「グリコシル化」という用語は、1つまたは複数の炭水化物のポリペプチドへの共有結合性の連結を指す。一般には、グリコシル化は、細胞の細胞内環境または細胞由来の抽出物において起こり得る翻訳後事象である。グリコシル化という用語は、例えば、N結合グリコシル化(1つもしくは複数の糖がアスパラギン残基に連結している)および/またはO結合グリコシル化(1つもしくは複数の糖がヒドロキシル基を有するアミノ酸残基(例えばセリンもしくはトレオニンに連結している)を含む。好ましい実施形態では、グリコシル化は、N結合グリコシル化を指す。一部の実施形態では、天然に存在するグリコシル化部位内のアスパラギン残基を改変することにより、グリコシル化の減少を実現することができる。一部の実施形態では、天然に存在するグリコシル化モチーフまたは天然に存在するグリコシル化部位、例えば、アミノ酸配列NXTまたはNXSを含有するN結合グリコシル化部位の付近またはその中のアミノ酸残基を改変することにより、グリコシル化の減少を実現する。一部の実施形態では、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれよりも多くの天然に存在するグリコシル化部位を改変することにより、グリコシル化の減少を実現する。一部の実施形態では、天然に存在するグリコシル化部位は、CH2領域内にある。一部の実施形態では、天然に存在するグリコシル化部位は、CH3領域内にある。一部の実施形態では、天然に存在するグリコシル化部位は、CH1領域内にある。コンセンサスモチーフ、すなわち、種々のグリコシルトランスフェラーゼによって認識されるアミノ酸配列が記載されている。例えば、N結合グリコシル化モチーフのコンセンサスモチーフは、NXTまたはNXSである頻度が高く、ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸であり得る。したがって、抗体またはFc含有断片内の潜在的なグリコシル化部位を同定するために、抗体の配列を、例えば、Center for Biological Sequence Analysisによって提供されるウェブサイトなどの公的に入手可能なデータベースを使用することによって調査する(N結合グリコシル化部位の予測に関してはwww.cbs.dtu.dk/services/NetNGlyc/およびO結合グリコシル化部位の予測に関してはwww.cbs.dtu.dk/services/NetOGlyc/を参照されたい)。グリコシル化を測定するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRoth et al, International Journal of Carbohydrate Chemistry, Volume 2012, Article ID 640923、およびWO2003102018A2を参照されたい。
【0399】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体は、対応するWT IgAと比べて少なくとも約2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれよりも大きく減少したグリコシル化を示す。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体または機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比べて、例えば、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%未満またはそれより少なく、部分的にグリコシル化されている。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比べて完全にグリコシル化されている。
体内分布
一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片は、対応するWT IgA抗体と比べて増大した体内分布を示す。本明細書で使用される場合、「体内分布」という用語は、対象に投与または送達される本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片の細胞内分布および/または組織内分布および/または器官内分布を指す。本明細書で使用される場合、「増大した体内分布」という用語は、一般に、標的部位への増大した分布を有する本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片の、例えば、ビヒクルまたは対応するWT IgA抗体のいずれかによって引き起こされる応答と比較した、腫瘍または腫瘍細胞を標的とする能力を指す。これだけに限定されないが、核医学、全身オートラジオグラフィー、マイクロオートラジオグラフィー;リン光体イメージング、クリオイメージング、ナノ二次イオン質量分析(ナノSIMS)、マトリックス支援レーザー脱離イメージング(MALDI-MS)、X線撮影法(X線)、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、マイクロ超音波単一光子放射CT(SPECT)、陽電子放出断層撮影法(PET)などを含めた、当業者に公知の様々な方法を使用して細胞または組織の増大した体内分布を評価することができる。抗体の標的部位への増大した体内分布は、ビヒクルまたはWT IgA抗体と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、またはそれよりも大きな増大を含む。「増大した」または「増強した」組織分布または体内分布は、一般には、「統計的に有意な」増大であり、ビヒクルまたは対照組成物の分布の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍またはそれよりも大きな(例えば、500倍、1000倍)(間に入る1を超える全ての整数および少数、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)増大を含み得る。
抗体の作出方法:
【0400】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を宿主細胞において調製する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を宿主細胞から単離する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を無細胞系で調製する。本開示の抗体、一部またはポリペプチドをコードする単離された核酸分子を、ベクターDNA(例えば、発現ベクター)を用い、ライゲーション用の平滑末端または付着末端、妥当な末端をもたらすための制限酵素消化、必要に応じて、付着末端の充填、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および妥当なリガーゼを用いたライゲーションを含む従来の技法に従って組み換えることができる。そのような操作のための技法は、例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning, Lab. Manual (Cold Spring Harbor Lab. Press, NY, 1982 and 1989)、およびAusubel, 1987, 1993によって開示されており、抗体分子またはその抗原結合性領域をコードする核酸配列を構築するために使用することができる。したがって、本開示は、本明細書に記載の単離された核酸を含むベクターまたは発現ベクターを提供する。一実施形態では、軽鎖をコードする核酸および重鎖をコードする核酸を上で概説した手順によって別々に単離する。一実施形態では、軽鎖をコードする単離された核酸および重鎖をコードする単離された核酸を別々の発現プラスミドに挿入することもでき、それぞれが適切なプロモーター下および翻訳制御下にある限りは、同じプラスミドに一緒に挿入することもできる。
【0401】
単離された核酸分子を発現ベクターに入れたら、次いでその発現ベクターを、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないE.coli細胞、サルCOS細胞、ヒト胎児由来腎臓293細胞(例えば、293E細胞)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞における抗体またはその抗原結合性断片の合成を得る。抗体の組換え産生は当技術分野において周知である。多くのベクターが利用可能である。ベクター構成成分は、一般に、これだけに限定されないが、以下のうちの1つまたは複数を含む:シグナル配列、複製開始点、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。
【0402】
単離された核酸分子を、ベクターDNA内の発現制御配列に作動可能に(operably)連結する。発現制御配列は、特定の宿主生物体内のコード配列に作動可能に連結した、発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に適した制御配列としては、例えば、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列、およびリボソーム結合性部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが公知である。「作動可能に連結」または「転写制御」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす、調節配列と異種核酸配列の間の機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列との機能的な関係に置かれている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターはコード配列に作動可能に連結している。作動可能に連結したDNA配列は、例えば、必要であれば2つのタンパク質コード領域を同じ読み枠内で接合するために、互いに連続させることができる。
【0403】
核酸が別の核酸配列との機能的関係に置かれている場合、その核酸は作動可能に連結している。例えば、プロモーターもしくはエンハンサーが配列の転写に影響を及ぼす場合、そのプロモーターもしくはエンハンサーはコード配列に作動可能に連結している;またはリボソーム結合性部位が、翻訳が促進されるように位置付けられている場合、リボソーム結合性部位はコード配列に作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結とは、連結しているDNA配列が連続している、および/または連続しておりかつ読み取り相内にあり得ることを意味する。しかし、エンハンサーは連続している必要はない。連結は、都合のよい制限部位におけるライゲーションによって実現される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを従来の実施に従って使用する。
【0404】
細胞、細胞株、および細胞培養物は、多くの場合互換的に使用され、本明細書におけるそのような名称は全て、後代を含む。形質転換体および形質転換された細胞は、対象の初代細胞およびそれに由来する培養物を、移行の数に関係なく含む。意図的なまたは不注意の突然変異に起因して、全ての後代のDNA含有量が正確に同一ではない可能性があることも理解される。最初の形質転換された細胞についてスクリーニングして同じ機能または生物活性を有する突然変異体の後代も含まれる。別個の名称が意図されている場合には、文脈から明らかになろう。代替の実施形態では、適切なコード核酸配列を、普遍的なコドン表に従い、目的の免疫グロブリンの公知のアミノ酸配列に基づいて設計することができる。
【0405】
所望の抗体のアミノ酸配列バリアントを、妥当なヌクレオチドの変化をコードするDNAに導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。そのようなバリアントとしては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。最終的な構築物が所望の特徴を有するのであれば、欠失、挿入、および置換の任意の組合せを行って最終的な構築物に到達することができる。アミノ酸の変化により、例えば、グリコシル化部位の数または位置の変化など、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはバリアント抗体の翻訳後プロセスを変更することもできる。
【0406】
抗体のアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、様々な方法によって調製される。これらの方法としては、これだけに限定されないが、天然の供給源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列バリアントの場合)、または、オリゴヌクレオチド媒介性(もしくは部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、およびによる抗体の以前の調製されたバリアントまたは非バリアントバージョンのカセット変異導入が挙げられる。
【0407】
本開示は、必要に応じて宿主細胞によって認識される調節制御配列に作動可能に連結した、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする単離された核酸分子、核酸を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに抗体を産生するための組換え技法であって、核酸が発現されるように宿主細胞を培養し、必要に応じて、抗体を宿主細胞培養物または培養培地から回収することを含み得る技法も提供する。
【0408】
抗体またはその抗原結合性断片の組換え産生のために、抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸分子を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、複製可能なベクターに挿入することができる。したがって、単離された抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性断片は組換え抗体であり得る。「組換え抗体」という用語は、抗体のコード配列を含む発現ベクター(または場合によって1つよりも多くの発現ベクター、一般には2つの発現ベクター)であって、前記コード配列が細胞に天然には付随しないものである、発現ベクターをトランスフェクトした細胞または細胞株から発現された抗体を指す。一実施形態では、組換え抗体は、天然に存在している場合の同じ配列を有する抗体のグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する。一実施形態では、組換え抗体をヒト宿主細胞ではない哺乳動物宿主細胞において発現させる。特に、個々の哺乳動物宿主細胞が独特のグリコシル化パターンを有する。
【0409】
一部の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性断片は合成されたものである。本開示のポリペプチドは、タンパク質化学の分野で一般に公知のタンパク質の単離/精製方法によって精製することができる。
【0410】
一態様では、本明細書に記載の単離された核酸分子または本明細書に記載の前記単離された核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞が本明細書で提供される。ベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る。本発明明細書のベクター内のDNAをクローニングするまたは発現させるために適した宿主細胞は、上記の原核生物、酵母、または高等真核生物細胞である。この目的のために適した原核生物としては、真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物体、例えば、Enterobacteriaceae、例えば、Escherichia、例えばE.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えばSalmonella typhimurium、Serratia、例えばSerratia marcescans、およびShigella、ならびにBacilli、例えば、B.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日に公開されたDD 266,710に開示されているB.licheniformis 41 P)、Pseudomonas、例えばP.aeruginosa、ならびにStreptomycesが挙げられる。1つの好ましいE.coliクローニング宿主はE.coli 294(ATCC31,446)であるが、E.coli B、E.coli Xl 776(ATCC31,537)、およびE.coli W3110(ATCC27,325)などの他の株も適する。これらの実施例は限定ではなく、例示的なものである。
【0411】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物(microbe)が抗体をコードするベクターの適切なクローニングまたは発現宿主である。Saccharomyces cerevisiae、または一般的なパン酵母が下等真核宿主微生物の中で最も一般的に使用されている。しかし、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K.wickeramii(ATCC24,178)、K. waltii(ATCC56,500)、K.drosophilarum(ATCC36,906)、K.thermotolerans、およびK.marxianus;yarrowia(EP402,226)など;Pichia pastors(EP183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalisなど;ならびに糸状菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、およびAspergillus宿主、例えば、A.nidulansおよびA.nigerなどのいくつかの他の属、種、および株が本明細書で一般に利用可能であり、有用である。
【0412】
無脊椎動物細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株およびバリアントならびにSpodoptera frugiperda(イモムシ)、Aedes aegypti(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)、およびBombyx moriなどの宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクション用の種々のウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1バリアントおよびBombyx mori NP\7のBm-5株が公的に入手可能であり、そのようなウイルスを本明細書においてウイルスとして本発明に従って、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用することができる。
【0413】
綿、トウモロコシ(com)、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、タバコ、アオウキクサ、および他の植物細胞の植物細胞培養物も宿主として利用することができる。しかし、脊椎動物細胞に対する関心が最大であり、培養(組織培養)下での脊椎動物細胞の繁殖が常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44、およびチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4216 (1980))を含めたチャイニーズハムスター卵巣細胞;SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児由来腎臓株(懸濁培養下での成長のためにサブクローニングされた293または293細胞、[Graham et al., J. Gen Viral. 36: 59 (1977)];ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23: 243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VER0-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y Acad. Sci. 383: 44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーマ株(Hep G2)である。
【0414】
宿主細胞に対して抗体産生のために上記の発現またはクローニングベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトを行い、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために、必要に応じて改変した従来の栄養培地で培養する。さらに、新規のベクター、および選択マーカーによって分離された転写ユニットの多数のコピーを有するトランスフェクトされた細胞株が本明細書に記載の抗体の発現のために特に有用であり、好ましい。
【0415】
発現ベクターのトランスフェクションおよび本明細書に記載のキメラ抗体、ヒト化抗体、または複合ヒト抗体の産生に関して、レシピエント細胞株は、骨髄腫細胞であり得る。骨髄腫細胞は、トランスフェクトされた免疫グロブリン核酸配列によってコードされる免疫グロブリンを合成し、アセンブルし、分泌することができ、また、免疫グロブリンをグリコシル化するための機構を有する。例えば、一部の実施形態では、レシピエント細胞は、組換えIg産生骨髄腫細胞SP2/0(ATCC#CRL 8287)である。SP2/0細胞は、トランスフェクトされた遺伝子によってコードされる免疫グロブリンのみを産生する。骨髄腫細胞は、培養物中またはマウスの腹膜腔内で成長させることができ、マウスの腹膜腔内で成長させる場合には、分泌された免疫グロブリンを腹水から得ることができる。他の適切なレシピエント細胞としては、ヒト起源もしくは非ヒト起源のBリンパ球などのリンパ系細胞、ヒト起源もしくは非ヒト起源のハイブリドーマ細胞、または種間ヘテロハイブリドーマ細胞が挙げられる。本明細書に記載のキメラ、ヒト化、または複合ヒト抗体構築物または抗体ポリペプチドを保有する発現ベクターを妥当な宿主細胞に形質転換、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、およびジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランなどのポリカチオンの適用などの生化学的手段、ならびに電気穿孔、直接マイクロインジェクション、および微粒子銃などの機械的な手段を含めた種々の適切な手段のいずれかによって導入することができる。当業者に公知のJohnston et al., 240 Science 1538 (1988)。
【0416】
酵母により、免疫グロブリンH鎖およびL鎖の産生に関して細菌と比べてある特定の利点がもたらされる。酵母では、グリコシル化を含めた翻訳後ペプチド修飾が行われる。酵母における所望のタンパク質の産生のために使用することができる強力なプロモーター配列および高コピー数プラスミドを利用するいくつかの組換えDNA戦略が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子産物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌する。Hitzman et al., 11th Intl. Conf. Yeast, Genetics & Molec. Biol. (Montpelier, France, 1982)。酵母遺伝子発現系を、抗体ポリペプチドまたはその抗原結合性断片ペプチドならびにアセンブルされたキメラ、ヒト化、または複合ヒト抗体、その断片および領域の産生、分泌および安定性のレベルについて常套的に評価することができる。酵母をグルコースに富む培地で成長させた場合に多量に産生される解糖酵素をコードする活発に発現される遺伝子由来のプロモーターおよび終結エレメントが組み入れられた一連の酵母遺伝子発現系のいずれかを利用することができる。公知の解糖遺伝子によっても非常に効率的な転写制御シグナルがもたらされ得る。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーターシグナルを利用することができる。酵母においてクローニングされた免疫グロブリンcDNAを発現させるために最適な発現プラスミドを評価するためにいくつかの手法を取ることができる。
【0417】
細菌株も本明細書に記載の抗体分子またはその断片の産生のための宿主として利用することができ、E.coli W3110(ATCC27325)などのE.coli K12株、Bacillus種、Salmonella typhimuriumまたはSerratia marcescensなどの腸内細菌、および種々のPseudomonas種を使用することができる。宿主細胞と適合する種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターをこれらの細菌宿主と併せて使用する。ベクターは、複製部位、ならびに形質転換された細胞の表現型の選択をもたらすことができる特定の遺伝子を保有する。発現プラスミドを、細菌におけるクローニングされた免疫グロブリンcDNAまたはCDRにコードされるキメラ、ヒト化、または複合ヒト化抗体およびその断片の産生について評価するために、いくつかの手法を取ることができる(Glover, 1985; Ausubel, 1987, 1993;Sambrook, 1989;Colligan, 1992-1996を参照されたい)。
【0418】
宿主哺乳動物細胞をin vitroまたはin vivoで成長させることができる。哺乳動物細胞により、リーダーペプチド除去、フォールディングおよびH鎖とL鎖のアセンブリ、抗体分子のグリコシル化、および機能的な抗体タンパク質の分泌を含めた免疫グロブリンタンパク質分子に対する翻訳後修飾がもたらされる。上記のリンパ系起源の細胞に加えて、抗体タンパク質の産生のための宿主として有用であり得る哺乳動物細胞として、Vero(ATCC CRL 81)またはCHO-K1(ATCC CRL 61)細胞などの、線維芽細胞起源の細胞が挙げられる。ポリペプチドを発現させるために使用することができる例示的な真核細胞としては、これだけに限定されないが、COS 7細胞を含めたCOS細胞;293-6E細胞を含めた293細胞;CHO-S細胞およびDG44細胞を含めたCHO細胞;PER.C6.(登録商標)細胞(Crucell);およびNSO細胞が挙げられる。一部の実施形態では、特定の真核生物宿主細胞を、可変重鎖および/または可変軽鎖に対して所望の翻訳後修飾を行う能力に基づいて選択する。例えば、一部の実施形態では、CHO細胞により、293細胞において産生される同じポリペプチドよりも高レベルのシアリル化を有するポリペプチドが産生される。
【0419】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片のポリペプチドは、当該ポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸分子を用いて工学的に操作されたまたはトランスフェクトされた動物においてin vivoで、任意の適切な方法に従って産生させることができる。
【0420】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を無細胞系で産生させる。非限定的な例示的な無細胞系は、例えば、Sitaraman et al., Methods Mol. Biol. 498: 229-44 (2009);Spirin、Trends Biotechnol. 22: 538-45 (2004);Endo et al., Biotechnol. Adv. 21: 695-713 (2003)に記載されている。
【0421】
哺乳動物細胞におけるH鎖およびL鎖核酸配列の発現のために多くのベクター系が利用可能である(Glover, 1985を参照されたい)。完全なH2L2抗体を得るために種々の手法に従うことができる。上記の通り、H鎖およびL鎖を同じ細胞において同時発現させて、H鎖とL鎖の完全な四量体H2L2抗体および/または抗原結合性断片ペプチドへの細胞内での会合および連結を実現することが可能である。同時発現は、同じプラスミドまたは異なるプラスミドのいずれかを同じ宿主において使用することによって行うことができる。H鎖およびL鎖の両方ならびに/またはCDR3領域ペプチドの遺伝子を同じプラスミド内に入れ、次いでそれを細胞にトランスフェクトし、それにより、両方の鎖を発現する細胞を直接選択することができる。あるいは、細胞にまず一方の鎖、例えばL鎖をコードするプラスミドをトランスフェクトし、その後、得られた細胞株に第2の選択可能なマーカーを含有するH鎖プラスミドをトランスフェクトする。抗原結合性ペプチド断片および/またはH2L2分子をいずれかの経路を介して産生する細胞株に、ペプチド、H鎖、L鎖、またはH鎖プラスL鎖の追加的なコピーをコードするプラスミドを追加的な選択可能なマーカーと併せてトランスフェクトして、アセンブルされたH2L2抗体分子のより多くの産生またはトランスフェクトされた細胞株の増強された安定性などの増強された特性を有する細胞株を生成することができる。
【0422】
さらに、微生物(microbe)または動物細胞の大規模培養に基づく組換え抗体産生のための主流の発現系に対する、都合がよく、安全であり、かつ経済的な代替として植物が出現している。抗体を植物細胞培養物において、または慣習的に成長させた植物において発現させることができる。植物における発現は、植物体全体にわたり得る、細胞内色素体に限定され得る、または種子(内胚乳)に限定され得る。いくつかの植物由来の抗体は開発が進んだ段階まで達している(例えば、Biolex, NCを参照されたい)。
【0423】
一部の態様では、ヒト化抗体の軽鎖をコードする第1の発現ベクターおよびヒト化抗体の重鎖をコードする第2の発現ベクターを用いて形質転換した宿主を各鎖が発現される様な条件下で維持するステップと、そのように発現された鎖のアセンブリによって形成されたヒト化抗体を単離するステップとを含むプロセスによって調製されるヒト化抗体を産生するための方法およびシステムが本明細書で提供される。第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターは同じベクターであり得る。ヒト化抗体の軽鎖または重鎖をコードするDNA配列;前記DNA配列が組み入れられた発現ベクター;および前記発現ベクターで形質転換された宿主も本明細書に提示される。本明細書に提示される配列および情報からのヒト化抗体の生成は、当業者が過度な実験を伴わずに実施することができる。1つの手法では、4つの一般的なステップを使用して、モノクローナル抗体をヒト化する。これらは、(1)出発抗体軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予測されるアミノ酸配列を決定するステップ;(2)ヒト化抗体を設計する、すなわち、ヒト化プロセスの間にいずれの抗体フレームワーク領域を使用するかを決定するステップ;(3)実際のヒト化方法体系/技法のステップ;および(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現ステップである。
精製
【0424】
「単離された」という用語は、天然の状態から変更されたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはポリペプチド(例えば、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片)は「単離されていない」が、その天然の状態で共存する材料から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはポリペプチドは、「単離された」ものである。単離された核酸分子またはポリペプチドは、実質的に精製された形態で存在し得る、または、例えば宿主細胞などのネイティブではない環境に存在し得る。単離されたポリペプチドは、その天然の環境の構成成分から分離および/または回収されたものである。その天然の環境の夾雑構成成分は、ポリペプチドの診断的または治療的使用に干渉すると思われる材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性のまたは非タンパク質性構成成分が含まれ得る。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性断片は、適切な方法によって精製することができる。好ましい実施形態では、ポリペプチドを、(1)ローリー法によって決定して、95重量%を超える、最も好ましくは99重量%を超えるポリペプチドまで;(2)スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで;または(3)還元条件下または非還元条件下でのSDS-PAGEによって、クーマシーブルー、または、好ましくは、銀染色を使用して均一性が示されるまで、精製する。単離された抗体は、ポリペプチドの天然の環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないので、組換え細胞内でポリペプチドをin situで含む。しかし、普通は、単離されたポリペプチドを少なくとも1回の精製ステップによって調製する。一態様では、本明細書で提供される精製された抗体または抗原結合性断片が本明細書に開示される。
【0425】
発現されたら、本発明の全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態を公知の技法、例えば、免疫吸着またはイムノアフィニティークロマトグラフィー、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などのクロマトグラフィー法、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、またはこれらの任意の組合せによって回収し、精製することができる。一般に、Scopes, PROTEIN PURIF. (Springer-Verlag, NY, 1982)を参照されたい。特に医薬用途に関しては、98%~99%またはそれよりも大きな均一性を有するものなど、均一性が少なくとも約90%~95%である実質的に純粋な免疫グロブリンが有利である。組換え技法を使用する場合、抗体は、細胞内に産生され得る、ペリプラズム空間内に産生され得る、または、微生物培養物からを含め、培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内に産生される場合、第1のステップとして、粒子デブリ、宿主細胞または溶解断片のいずれかを、例えば遠心分離または限外濾過によって除去する。Better et al. Science 240: 1041-1043 (1988);ICSU Short Reports 10: 105 (1990);およびProc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 457-461 (1993)には、E.coliのペリプラズム空間内に分泌された抗体を単離する手順が記載されている([Carter et al., Bio/Technology 10: 163-167 (1992)も参照されたい]。
【0426】
微生物細胞または哺乳動物細胞から単離された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーカチオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー(avian exchange chromatography)、およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技法である。プロテインAの親和性リガンドとしての適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFeドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトyl、y2、またはy4重鎖に基づく抗体を精製するために使用することができる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。全てのマウスアイソタイプおよびヒトy3に対してはプロテインGが推奨される(Guss et al., EMBO J. 5: 15671575 (1986))。親和性リガンドを付着させるマトリックスはアガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。制御されたポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスにより、アガロースを用いて実現することができるものよりも速い流速および短いプロセス時間が可能になる。抗体がCH3ドメインを含む場合、精製にはBakerbond ABX(商標)樹脂(J. T. Baker, Phillipsburg, N.J.)が有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製の他の技法も、回収される抗体に応じて利用可能である。部分的にまたは所望の均一性まで精製されたら、次いで、ヒト化または複合ヒト抗体を、治療的にまたはアッセイ手順の開発および実施、免疫蛍光染色などに使用することができる。一般に、Vols. I & II Immunol. Meth. (Lefkovits & Pernis, eds., Acad. Press、NY, 1979 and 1981)を参照されたい。
【0427】
本明細書に開示される抗体または抗原結合性断片の機能活性。そのような機能活性としては、生物活性およびがん細胞抗原に結合する能力が挙げられる。さらに、機能活性を有するポリペプチドとは、例えば、生物検定などの特定のアッセイで測定して、用量依存性を伴ってまたは伴わずに、成熟形態を含めた本明細書に記載の抗体の活性と同様であるが必ずしも同一ではない活性を示すポリペプチドを意味する。用量依存性が存在する場合では、本開示の抗体の用量依存性と同一であることが必要なのではなく、所与の活性の用量依存性が本明細書に記載の抗体と比較して実質的に同様である(すなわち、候補ポリペプチドは、本明細書に記載の抗体と比べてより大きな活性を示す、または約25分の1以下、約10分の1以下、または約3分の1以下の活性を示す)。
抗体をコードする核酸分子
【0428】
当業者は、本明細書に提示される情報、例えば、抗体の核酸およびアミノ酸配列を使用して、抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸分子を容易に得ることができる。そのような核酸分子は、例えば、当技術分野に開示されている従来の方法を使用して得ることができる。本開示の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNAもしくは任意の他の形態などのRNAの形態であり得る、または、これだけに限定されないが、クローニングによって得られたもしくは合成により作製されたcDNAおよびゲノムDNA、もしくはこれらの任意の組合せを含めたDNAの形態であり得る。DNAは、三重鎖、二重鎖または一本鎖、またはこれらの任意の組合せであり得る。DNAまたはRNAの少なくとも1つの鎖の任意の部分はセンス鎖としても公知のコード鎖であり得る、またはアンチセンス鎖としても公知のアンチセンス鎖であり得る。
【0429】
本明細書では互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/もしくはそれらの類似体、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み入れることができる任意の基質であり得る。核酸分子は、メチル化されたヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリの前、またはその後に付与することができる。ヌクレオチドの配列に非ヌクレオチド構成成分が割り込み得る。ポリヌクレオチドを重合後に、標識構成成分とのコンジュゲーションによってなど、さらに修飾することができる。他の型の修飾としては、例えば、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドの1つまたは複数の類似体での置換、例えば、非荷電連結を有するもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)および荷電連結を有するもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリLリシンなど)などのペンダント部分を含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾連結(例えば、アルファアノマー核酸など)を有するもの、ならびに修飾されていない形態のポリヌクレオチドが挙げられる。さらに、糖内に普通に存在するヒドロキシル基のいずれかを、例えば、標準の保護基によって保護されたホスホネート基、リン酸基によって置き換える、または活性化して、追加的なヌクレオチドとの追加的な連結を調製することができる、または、固体支持体とコンジュゲートすることができる。5’末端および3’末端OHをリン酸化すること、または1~20炭素原子のアミンまたは有機キャップ形成基部分で置換することができる。他のヒドロキシルも標準の保護基に誘導体化することができる。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体およびメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体を含めた、当技術分野で一般に公知の類似の形態のリボースまたはデオキシリボース糖も含み得る。1つまたは複数のリン酸ジエステル連結を代替連結基によって置き換えることができる。これらの代替連結基としては、これだけに限定されないが、リン酸がP(O)Sで置き換えられた実施形態(「チオエート」)、P(S)Sで置き換えられた実施形態(「ジチオエート」)、「(O)NR2で置き換えられた実施形態(「アミデート」)、P(O)Rで置き換えられた実施形態、P(O)OR’で置き換えられた実施形態、COで置き換えられた実施形態またはCH2で置き換えられた実施形態(「ホルムアセタール」)が挙げられ、ここで、各RまたはR’は、独立に、H、またはエーテル(-O-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジルを必要に応じて含有する置換もしくは非置換アルキル(1~20C)である。ポリヌクレオチド内の連結の全てが同一である必要はない。単離された核酸、RNAおよびDNAを含めた本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに前述の説明が当てはまる。
【0430】
本発明に関しては、一般に存在する核酸塩基に対する以下の略語を使用する。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。一部の実施形態では、核酸分子は単離された核酸を含む。
【0431】
核酸は、全細胞内に、細胞溶解物中に、または部分的に精製されたもしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸分子は、他の細胞構成成分または他の夾雑物、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質から、これだけに限定されないが、アルカリ/SDS処理、CsClバンド、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当技術分野で周知のその他を含めた標準の技法によって精製されている場合、「単離された」または「実質的に純粋になった」ものである。F. Ausubel, et al., ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照されたい。少なくとも本開示の一部の実施形態による核酸は、例えば、DNAであってもRNAであってもよく、イントロン配列を含有してもよく含有しなくてもよい。好ましい実施形態では、核酸はcDNA分子である。
【0432】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の抗体ポリペプチドもしくはその機能性断片またはその抗原結合性断片をコードする核酸配列を含む核酸分子に関する。一部の実施形態では、単離された核酸分子は、改変されたIgA重鎖定常領域をコードする核酸配列を含む。一部の実施形態では、改変されたIgA重鎖定常領域をコードする核酸配列は、配列番号25~32のいずれか1つから選択される配列を含む。一部の実施形態では、可変重鎖ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号87~84から選択される。一部の実施形態では、単離された核酸分子は、抗体の軽鎖可変領域ポリペプチドをコードする核酸配列を含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号101~108から選択される。
【0433】
VHセグメントおよびVLセグメントをコードするDNA断片が得られたら、これらのDNA断片を、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するために、標準の組換えDNA技法によってさらに操作することができる。これらの操作では、VLをコードするDNA断片またはVHをコードするDNA断片を抗体定常領域または柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片に作動可能に連結する。「作動可能に連結」という用語は、これに関連して使用される場合、2つのDNA断片が、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままになるように接合していることを意味するものとする。VH領域をコードする単離されたDNAを、VHをコードするDNAと重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子を作動可能に連結することによって全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片を標準のPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgA1またはIgA2定常領域であり得る。Fab断片重鎖遺伝子に関しては、VHをコードするDNAを重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結することができる。
【0434】
VL領域をコードする単離されたDNAを、VLをコードするDNAと軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子と作動可能に連結することによって全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片を標準のPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ定常領域であってもラムダ定常領域であってもよいが、カッパ定常領域であることが最も好ましい。
【0435】
scFv遺伝子を創出するために、VHをコードするDNA断片およびVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly-4-Ser)3をコードする別の断片と作動可能に連結し、その結果、VH配列とVL配列を、VL領域とVH領域が柔軟なリンカーによって接合した連続した単鎖タンパク質として発現させることができ(例えば、Bird et al. (1988) Science 242: 423-426; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature 348: 552-554を参照されたい)。
【0436】
本開示の単離された核酸分子は、オープンリーディングフレーム(ORF)を含み、必要に応じて1つまたは複数のイントロン、例えば、これだけに限定されないが、少なくとも1つの軽鎖の少なくともCDRの、CDR1、CDR2および/またはCDR3のうちの少なくとも1つの指定の部分を伴う核酸分子;本明細書に開示されるがん関連抗体または可変領域、例えば軽鎖の可変領域のコード配列を含む核酸分子;ならびに上記のものとは実質的に異なるが、遺伝暗号の縮退に起因して、それでもなお本明細書に記載のおよび/または当技術分野で公知の少なくとも抗体またはその抗原結合性断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み得る。当然、遺伝暗号は当技術分野において周知である。したがって、本開示の特定の抗体をコードするそのような縮退核酸バリアントの生成は当業者には常套的であろう。例えば、Ausubel et al.,上記を参照されたい。また、そのような核酸バリアントは本発明に含まれる。
【0437】
抗体の1つまたは複数の鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子が本明細書で提供される。一部の実施形態では、核酸分子は、抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、抗体の重鎖をコードする核酸配列および軽鎖をコードする核酸配列の両方を含む。一部の実施形態では、第1の核酸分子は重鎖をコードする第1の核酸配列を含み、第2の核酸分子は軽鎖をコードする第2の核酸配列を含む。
【0438】
一部の実施形態では、重鎖および軽鎖を、1つの核酸分子から、または2つの別々の核酸分子から2つの別々のポリペプチドとして発現させる。抗体がscFVである場合などの一部の実施形態では、単一の核酸配列は、連結した重鎖と軽鎖の両方を含む単一のポリペプチドをコードする。
【0439】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸配列は、本明細書で提供されるCDRのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸配列は、本明細書で提供されるCDRのうちの少なくとも3つをコードする配列を含む。一部の実施形態では、抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸配列は、本明細書で提供されるCDRのうちの少なくとも6つをコードする配列を含む。一部の実施形態では、抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸配列は、翻訳された際に重鎖または軽鎖のN末端に位置するリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む。リーダー配列は、ネイティブな重鎖もしくは軽鎖リーダー配列であり得る、または別の異種リーダー配列であり得る。「リーダー配列」という用語は、哺乳動物細胞からのポリペプチドの分泌を容易にする、ポリペプチドのN末端に位置するアミノ酸残基の配列を指す。リーダー配列を哺乳動物細胞からのポリペプチドの移出の際に切断し、それにより、成熟タンパク質を形成することができる。リーダー配列は天然であっても合成であってもよく、また、それらを付着させるタンパク質に対して異種であっても相同であってもよい。
【0440】
一部の実施形態では、核酸分子は、本明細書の表7~8の可変軽鎖および可変重鎖のアミノ酸配列のいずれかをコードするものである。一部の実施形態では、核酸配列は、本明細書の表7~8の可変軽鎖および可変重鎖のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸と少なくとも80%同一、例えば、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のものである。一部の実施形態では、核酸は、本明細書に提示される核酸配列のいずれか1つまたは複数とハイブリダイズするものである。実施形態の一部では、ハイブリダイゼーションは、中等度の条件下におけるものである。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーションは、65℃で少なくとも約6×SSCおよび1%SDS、約42℃で0.1×SSC中約20%(v/v)ホルムアミドを用いた10分間の第1の洗浄、および65℃で0.2×SSCおよび0.1%SDSを用いたその後の洗浄などの高度にストリンジェントな条件下におけるものである。
【0441】
核酸分子は、従来の当技術分野における組換えDNA技法を使用して構築することができる。一部の実施形態では、核酸分子を、選択された宿主細胞における発現に適した発現ベクター内に入れる。
【0442】
本明細書の抗体または抗原結合性断片をコードする核酸分子を含むベクターが提供される。重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子を含むベクターも提供される。そのようなベクターとしては、これだけに限定されないが、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられる。一実施形態では、軽鎖をコードする核酸および重鎖をコードする核酸を、上で概説した手順によって別々に単離する。一実施形態では、軽鎖をコードする単離された核酸および重鎖をコードする単離された核酸を別々の発現プラスミドに挿入することもでき、それぞれが適切なプロモーターおよび翻訳制御下にある限りは同じプラスミドに一緒に挿入することもできる。一部の実施形態では、例えば、抗体がscFvである場合には、重鎖および軽鎖を単一のポリペプチドの一部として発現させる。
【0443】
一部の実施形態では、第1のベクターは重鎖をコードする核酸分子を含み、第2のベクターは軽鎖をコードする核酸分子を含む。一部の実施形態では、第1のベクターおよび第2のベクターを宿主細胞に同様の量(例えば、同様のモル量または同様の質量など)でトランスフェクトする。一部の実施形態では、第1のベクターと第2のベクターを5:1から1:5の間のモル比または質量比で宿主細胞にトランスフェクトする。一部の実施形態では、重鎖をコードするベクターと軽鎖をコードするベクターを1:1から1:5の間の質量比で使用する。一部の実施形態では、重鎖をコードするベクターと軽鎖をコードするベクターを1:2の質量比で使用する。一部の実施形態では、CHO細胞もしくはCHO由来の細胞、またはNSO細胞におけるポリペプチドの発現のために最適化されたベクターを選択する。例示的なそのようなベクターは、例えば、Running Deer et al., Biotechnol. Prog.20: 880-889 (2004)に記載されている。
【0444】
一態様では、本開示は、がんを処置または防止するための方法であって、遺伝子治療として核酸分子を投与するステップを含み、核酸分子が、VH、VL、VHのCDR3領域またはVLのCDR3領域またはその抗原結合性断片をコードし、核酸分子が、本明細書に開示される(例えば表3または表4)配列を含む、方法を提供する。遺伝子治療は、発現されたまたは発現可能な核酸を対象に投与することによって実施される治療を指す。本発明のこの実施形態では、核酸により、予防効果または治療効果を媒介する、それらにコードされるタンパク質が産生される。当技術分野において利用可能な遺伝子治療のための方法のいずれかを本明細書の実施形態に従って使用することができる。
【0445】
遺伝子治療の方法の一般的な概説に関しては、Goldspiel et al., 1993, Clinical Pharmacy 12: 488-505; Wu and Wu, 1991, Biotherapy 3: 87-95; Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32: 573-596; Mulligan, 1993, Science 260: 926-932;およびMorgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62: 191-217; May, 1993, TIBTECH 11 (5): 155-215を参照されたい。使用することができる、組換えDNA技術の分野で一般的に公知の方法は、Ausubel et al. (eds.), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons、NY;およびKriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NYに記載されている。妥当な細胞への治療用抗体の送達は、物理的なDNA移入法(例えば、リポソームもしくは化学的処理)の使用によるもの、またはウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、もしくはレトロウイルス)の使用によるものを含めた、当技術分野で公知の任意の適切な手法を使用することにより、ex vivo、in situ、またはin vivoにおける遺伝子治療によって行うことができる。例えば、in vivo治療に関しては、所望の抗体をコードする核酸を、単独で、またはベクター、リポソーム、もしくは沈殿物と併せて対象に直接注射することができ、一部の実施形態では、抗体化合物の発現が望まれる部位に注射することができる。ex vivo処置に関しては、対象の細胞を取り出し、これらの細胞に核酸を導入し、改変された細胞を対象に直接、または、例えば多孔質膜に封入し、それを患者に埋め込んで戻す。例えば、米国特許第4,892,538号および同第5,283,187号を参照されたい。核酸を生存細胞に導入するために利用可能な様々な技法が存在する。技法は、核酸を培養細胞にin vitroで移入するか、または意図された宿主の細胞においてin vivoで移入するかに応じて変動する。核酸を哺乳動物細胞にin vitroで移入するための適切な技法としては、リポソームの使用、電気穿孔、微量注射、細胞融合、DEAE-デキストラン、およびリン酸カルシウム沈殿が挙げられる。核酸のex vivo送達に一般に使用されるベクターはレトロウイルスである。
【0446】
「宿主細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸分子がトランスフェクトされた特定の対象の細胞およびそのような細胞の後代または潜在的な後代を指す。そのような細胞の後代は、次の世代で生じ得る突然変異もしくは環境の影響または核酸分子が宿主細胞のゲノム内に組み入れることに起因して、核酸分子がトランスフェクトされた親細胞と同一ではない可能性がある。
【0447】
他のin vivo核酸移入技法としては、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、またはアデノ随伴ウイルスなど)を用いたトランスフェクションおよび脂質に基づく系が挙げられる。核酸およびトランスフェクション薬剤には必要に応じて微小粒子が付随する。例示的なトランスフェクション薬剤としては、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈澱、DEAEデキストラン媒介性トランスフェクション、第四級アンモニウム両親媒性物質DOTMA((ジオレオイルオキシプロピル)トリメチルアンモニウムブロミド、GIBCO-BRLによりLipofectinとして商品化されている))(Felgner et al, (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 7413-7417;Malone et al. (1989) Proc. Natl Acad. Sci. USA 86 6077-6081);ペンダントトリメチルアンモニウム頭部を有する親油性グルタミン酸ジエステル(Ito et al. (1990) Biochem. Biophys. Acta 1023, 124-132);カチオン性脂質ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS、Transfectam、Promega)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)などの代謝可能な親脂質(J. P. Behr (1986) Tetrahedron Lett. 27, 5861-5864; J. P. Behr et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 6982-6986);代謝可能な四級アンモニウム塩(DOTB、N-(1-[2,3-ジオレオイルオキシ]プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチル硫酸(DOTAP)(Boehringer Mannheim)、ポリエチレンイミン(PEI)、ジオレオイルエステル、ChoTB、ChoSC、DOSC)(Leventis et al. (1990) Biochim. Inter. 22, 235-241);3ベータ[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)/3ベータ[N-(N’,N’ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロールDC-Chol、1対1混合物(Gao ct al., (1991) Biochim. Biophys. Acta 1065, 8-14)、スペルミン、スペルミジン、リポポリアミン(Behr et al., Bioconjugate Chem, 1994, 5: 382-389)、親油性ポリリシン(LPLL)(Zhou et al., (1991) Biochim. Biophys. Acta 939, 8-18)、過剰のホスファチジルコリン/コレステロールを伴う[[(1,1,3,3テトラメチルブチル)クレソキシ]エトキシ]エチル]ジメチルベンジル(dimethlbnzyl)アンモニウム水酸化物(DEBDA水酸化物)(Ballas et al., (1988) Biochim. Biophys. Acta 939, 8-18)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)/DOPE混合物(Pinnaduwage et al, (1989) Biochim. Biophys. Acta 985, 33-37)、ホスファチジルエタノールアミンとの混和物中にDOPE、CTAB、DEBDA、ジドデシルアンモニウム臭化物(DDAB)、およびステアリルアミンを伴うグルタミン酸の親油性ジエステル(TMAG)(Rose et al., (1991) Biotechnique 10, 520-525)、DDAB/DOPE(TransfectACE、GIBCO BRL)、ならびにオリゴガラクトースを有する脂質が挙げられる。移入の効率を上昇させる例示的なトランスフェクション増強剤としては、例えば、DEAE-デキストラン、ポリブレン、リソソーム分裂ペプチド(Ohmori N I et al, Biochem Biophys Res Commun Jun. 27, 1997; 235 (3): 726-9)、コンドロイチン(chondroitan)に基づくプロテオグリカン、硫酸化プロテオグリカン、ポリエチレンイミン、ポリリシン(Pollard H et al. J Biol Chem, 1998 273 (13): 7507-11)、インテグリン結合性ペプチドCYGGRGDTP、直鎖状デキストランノナサッカライド、グリセロール、オリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオシド間連結に係留されたコレステリル基(Letsinger, R. L. 1989 Proc Natl Acad Sci USA 86: (17): 6553-6)、リゾホスファチド、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、および1-オレオイルリゾホスファチジルコリンが挙げられる。
【0448】
一部の状況では、核酸を含有するベクターを標的細胞に方向付ける薬剤を用いて核酸を送達することが望ましい場合がある。そのような「ターゲティング」分子としては、標的細胞上の細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体、または標的細胞上の受容体のリガンドが挙げられる。リポソームを使用する場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質をターゲティングのためにおよび/または取り込みを容易にするために使用することができる。そのようなタンパク質の例としては、特定の細胞型に対する向性をもつカプシドタンパク質およびその断片、循環中に内部移行するタンパク質に対する抗体、および細胞内局在化を標的とし、細胞内半減期を増強するタンパク質が挙げられる。他の実施形態では、受容体媒介性エンドサイトーシスを使用することができる。そのような方法は、例えば、Wu et al., 1987またはWagner et al., 1990に記載されている。現在公知の遺伝子マーキングおよび遺伝子治療プロトコールの概説に関しては、Anderson 1992を参照されたい。WO93/25673およびそこで引用されている参考文献も参照されたい。
キメラ抗原受容体
【0449】
一態様では、本明細書の開示は、本明細書に開示される抗原結合性断片、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体を提供する。「キメラ抗原受容体」(CAR)、「人工T細胞受容体」、「キメラT細胞受容体」、または「キメラ免疫受容体」という用語は、本明細書で使用される場合、任意の特異性を免疫エフェクター細胞に移植する工学的に操作された受容体を指す。CARは、一般には、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメインを含む細胞外ドメイン(外部ドメイン)、および細胞内(エンドドメイン)ドメインを含む。「シグナル伝達ドメイン」という用語は、細胞内に情報を伝達して、規定されたシグナル伝達経路を介して二次メッセンジャーを生成することによって細胞の活性を調節することによって、またはそのようなメッセンジャーに応答することによりエフェクターとして機能することによって作用するタンパク質の機能的部分を指す。
【0450】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、この用語が本明細書で使用される場合、分子の細胞内部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、CAR含有細胞、例えばCART細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。例えばCART細胞における免疫エフェクター機能の例としては、細胞溶解活性およびサイトカインの分泌を含めたヘルパー活性が挙げられる。
【0451】
ある実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。例示的な一次細胞内シグナル伝達ドメインとしては、一次刺激、または抗原依存性シミュレーションに関与する分子に由来するものが挙げられる。ある実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激細胞内ドメインを含み得る。例示的な共刺激細胞内シグナル伝達ドメインとしては、共刺激シグナル、または抗原非依存性刺激に関与する分子に由来するものが挙げられる。例えば、CARTの場合では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体の細胞質配列を含み得、共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、補助受容体または共刺激分子由来の細胞質配列を含み得る。
【0452】
一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。ITAMを含有する一次細胞質内シグナル伝達配列の例としては、これだけに限定されないが、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d DAP10およびDAP12に由来するものが挙げられる。
【0453】
「ゼータ」あるいは「ゼータ鎖」、「CD3-ゼータ」または「TCR-ゼータ」という用語は、GenBan Acc.No.BAG36664.1として提供されるタンパク質、または非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿など由来の等価の残基と定義され、「ゼータ刺激ドメイン」あるいは「CD3-ゼータ刺激ドメイン」または「TCR-ゼータ刺激ドメイン」は、T細胞活性化のために必要な最初のシグナルを機能的に伝達するために十分であるゼータ鎖の細胞質ドメイン由来のアミノ酸残基と定義される。一態様では、ゼータの細胞質ドメインは、GenBank Acc.No.BAG36664.1の残基52から164までまたはその機能的なオルソログである非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿など由来の等価の残基を含む。
【0454】
「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドに特異的に結合し、それにより、これだけに限定されないが、増殖などの、T細胞による共刺激応答を媒介するT細胞上の同類の結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫応答に必要な抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子としては、これだけに限定されないが、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体、ならびにOX40、CD2、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)および4-1BB(CD137)が挙げられる。
【0455】
共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分に由来するものであり得る。共刺激分子は、以下のタンパク質ファミリーで表される:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球性活性化分子(SLAMタンパク質)、および活性化NK細胞受容体。そのような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。
【0456】
細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子の、細胞内部分全体、またはネイティブな細胞内シグナル伝達ドメイン全体、またはその機能性断片を含み得る。
【0457】
別の態様では、抗原結合性断片は、ヒト化抗体または抗体断片を含む。一実施形態では、抗原結合性断片は、本明細書に記載の抗体の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC-CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC-CDR3)のうちの1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、または3つ全て)、ならびに本明細書に記載の抗体の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC-CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC-CDR3)のうちの1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、または3つ全て)を含む。
膜貫通ドメイン
【0458】
膜貫通ドメインに関しては、種々の実施形態では、CARを、CARの細胞外ドメインに付着した膜貫通ドメインを含むように設計することができる。膜貫通ドメインは、膜貫通領域に隣接する1つまたは複数の追加的なアミノ酸、例えば、膜貫通が由来するタンパク質の細胞外領域に付随する1つもしくは複数のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、最大15アミノ酸)および/または膜貫通タンパク質が由来するタンパク質の細胞内領域に付随する1つもしくは複数の追加的なアミノ酸(例えば、細胞内領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、最大15アミノ酸)を含み得る。一態様では、膜貫通ドメインは、使用されるCARの他のドメインのうちの1つに付随するものである。一部の場合では、例えば、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするために、そのようなドメインの同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合が回避されるように膜貫通ドメインを選択することまたはアミノ酸置換によって改変することができる。一態様では、膜貫通ドメインは、CAR T細胞表面上の別のCARとホモ二量体を形成することができる。異なる態様では、同じCAR T細胞に存在するネイティブな結合パートナーの結合性ドメインとの相互作用を最小限にするために、膜貫通ドメインのアミノ酸配列を改変または置換することができる。
【0459】
膜貫通ドメインは、天然の供給源または組換え供給源のいずれかに由来するものであり得る。供給源が天然である場合、膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来するものであり得る。一態様では、膜貫通ドメインは、CARが標的に結合したときに細胞内ドメインへのシグナル伝達を行うことができるものである。膜貫通ドメインは、例えば、例えば、T細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖の少なくとも膜貫通領域を含み得る。
【0460】
一部の場合では、膜貫通ドメインを、CARの細胞外領域、例えばCARの抗原結合性ドメインに、ヒンジ、例えばヒトタンパク質由来のヒンジを介して付着させることができる。例えば、一実施形態では、ヒンジは、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジ、例えば、IgG4ヒンジ、またはCD8aヒンジであり得る。一態様では、ヒンジまたはスペーサーは、IgG4ヒンジを含む。
細胞質ドメイン
【0461】
CARの細胞質ドメインまたは領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。細胞内シグナル伝達ドメインは、一般に、CARが導入された免疫細胞の通常のエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化に関与する。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊化された機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含めた細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを変換し、細胞を特殊化された機能を実施するように方向付けるタンパク質の部分を指す。通常は細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮された部分が使用される範囲では、そのような短縮された部分によりエフェクター機能シグナルが変換される限りは、そのような短縮された部分をインタクトな鎖の代わりに使用することができる。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを変換するために十分なあらゆる細胞内シグナル伝達ドメインの短縮された部分を含むものとする。
【0462】
本発明のCARに使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体会合後に協力して作用してシグナルトランスダクションを開始させるT細胞受容体(TCR)と補助受容体の細胞質配列、ならびに同じ機能的能力を有するこれらの配列の任意の誘導体またはバリアントおよび任意の組換え配列が挙げられる。
【0463】
TCR単独で生成されるシグナルはT細胞の完全な活性化のためには不十分であること、ならびに二次および/または共刺激シグナルも必要であることが公知である。したがって、T細胞活性化は、2つの別個のクラスの細胞質内シグナル伝達配列:TCRを通じて抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)および抗原非依存的に作用して二次または共刺激シグナルをもたらすもの(二次的な細胞質内シグナル伝達ドメイン、例えば、共刺激ドメイン)によって媒介されると言うことができる。
【0464】
一次シグナル伝達ドメインは、TCR複合体の一次活性化を刺激性に、または阻害性に調製する。刺激性に作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含有し得る。
【0465】
本発明において特に有用なITAMを含有する一次細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dのものが挙げられる。一実施形態では、本発明のCAR、例えば、CARは、CD3-ゼータの細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、一次シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、ネイティブなITAMドメインと比較して変更された(例えば、増大したまたは低下した)活性を有する改変されたITAMドメイン、例えば、突然変異したITAMドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAMを含有する一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化されたおよび/または短縮されたITAMを含有する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれよりも多くのITAMモチーフを含む。
【0466】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータシグナル伝達ドメインをそれ自体で含み得る、または、CD3-ゼータシグナル伝達ドメインを本発明のCARに関して有用な任意の他の所望の細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせることができる。例えば、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部を指す。共刺激分子は、抗原受容体以外の細胞表面分子またはリンパ球の、抗原に対する効率的な応答に必要なリガンドである。そのような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。例えば、CD27共刺激は、in vitroにおけるヒトCART細胞の増大、エフェクター機能、および生存を増強し、in vivoにおけるヒトT細胞の持続性および抗腫瘍活性を強化することが実証されている(Song et al. Blood. 2012; 119 (3): 696-706)。
【0467】
本発明のCARの細胞質部分内の細胞内シグナル伝達配列を互いにランダムなまたは指定の順序で連結することができる。必要に応じて、例えば、2アミノ酸から10アミノ酸の間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸)の長さの短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーにより、細胞内シグナル伝達配列間に連結を形成することができる。一実施形態では、グリシン-セリンダブレットを適切なリンカーとして使用することができる。一実施形態では、単一のアミノ酸、例えば、アラニン、グリシンを適切なリンカーとして使用することができる。
【0468】
一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインを、2つまたはそれよりも多く、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多くの共刺激シグナル伝達ドメインを含むように設計する。ある実施形態では、2つまたはそれよりも多く、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多くの共刺激シグナル伝達ドメインをリンカー分子、例えば本明細書に記載のリンカー分子によって分離する。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、リンカー分子はグリシン残基である。一部の実施形態では、リンカーはアラニン残基である。
【0469】
一部の実施形態では、CARは、実際には抗原全体を認識するのではない;その代わりに、抗原の表面の一部、抗原性決定因子またはエピトープと称される領域にのみ結合する。
【0470】
一部の実施形態では、本明細書に記載のCARは、グリコシル化された、アミド化された、カルボキシル化された、リン酸化された、エステル化された、N-アシル化された、例えばジスルフィド架橋によって環化された、もしくは酸付加塩に変換された、および/または必要に応じて二量体を形成したもしくは重合した、もしくはコンジュゲートしたものを含む(その機能的部分および機能的バリアントを含めて)。
免疫コンジュゲート
【0471】
本開示の一態様では、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片は、腫瘍に対する強力な免疫応答を開始し得る、かつ/または細胞傷害性を方向付けることができる。この点について、本明細書の抗体またはその抗原結合性断片は、どちらも免疫グロブリン分子のインタクトなFe部分がエフェクター細胞Fe受容体部位または補体タンパク質と相互作用するために必要である補体媒介性細胞傷害機構または抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cell cytotoxicity)(ADCC)機構のいずれかによって腫瘍細胞溶解を引き出し得る。さらに、腫瘍成長に対する直接的な生物学的効果を発揮する抗体が本開示の実施に有用である。そのような直接的に細胞傷害性の抗体が作用し得る潜在的な機構としては、細胞成長の阻害、細胞分化のモジュレーション、腫瘍血管新生因子プロファイルのモジュレーション、およびアポトーシスの誘導が挙げられる。本明細書に開示される特定の抗体またはその抗原結合性断片が抗腫瘍効果を発揮する機構は、当技術分野で一般に公知の通り、ADCC、ADMMC、補体媒介性細胞溶解などを決定するために設計された任意の数のin vitroアッセイを使用して評価することができる。
【0472】
本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片は、それらの「ネイキッド」またはコンジュゲートしていない形態で投与することもでき、治療剤をコンジュゲートすることもできる。一実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を放射線増感剤として使用する。そのような実施形態では、抗体または抗原結合性断片を、放射線増感物質とコンジュゲートする。「放射線増感剤」という用語は、本明細書で使用される場合、動物に、細胞の電磁放射線に対する放射線増感の感受性を増大させるため、および/または電磁放射線を用いて処置可能な疾患の処置を促進するために治療有効量で投与される分子、好ましくは低分子量分子と定義される。電磁放射線を用いて処置可能な疾患としては、新生物疾患、良性および悪性腫瘍、ならびにがん性細胞が挙げられる。
【0473】
「電磁放射線」および「放射線」という用語は、本明細書で使用される場合、これだけに限定されないが、10-20~100メートルの波長を有する放射線を含む。本開示の好ましい実施形態では、例えば、電磁放射線:ガンマ線c10-20~10-13m)、X線照射(10-12~10-9m)、紫外線(10nm~400nm)、可視光線(400nm~700nm)、赤外線(700nm~1.0mm)、およびマイクロ波照射(1mm~30cm)を使用することができる。
【0474】
放射線増感剤は、電磁放射線の毒作用に対するがん性細胞の感受性を増大させることが公知である。多くのがん処置プロトコールでは、現在、X線の電磁放射線によって活性化された放射線増感剤が使用されている。X線により活性化された放射線増感剤の例としては、これだけに限定されないが、以下が挙げられる:メトロニダゾール、ミソニダゾール、脱メチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU 1069、SR 4233、E09、RB 6145、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5-ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FUdR)、ヒドロキシウレア、シスプラチン、ならびにその治療的に有効な類似体および誘導体。
【0475】
がんの光線力学的療法(PDT)では、増感物質の放射線活性化因子として可視光線を使用する。光線力学的放射線増感剤の例としては、以下が挙げられるが、これだけに限定されない:ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン(登録商標)、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、スズエチオポルフィリン(SnET2)、フェオボルビド-a、バクテリオクロロフィル-a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、ならびにその治療的に有効な類似体および誘導体。
【0476】
別の実施形態では、抗体を、腫瘍予備標的化に利用するために受容体(ストレプトアビジンなど)とコンジュゲートすることができ、その場合、抗体-受容体コンジュゲートを患者に投与し、その後、結合しなかったコンジュゲートを除去剤を使用して循環から除去し、次いで、細胞傷害性薬剤(例えば、放射性核種)とコンジュゲートしたリガンド(例えば、アビジン)を投与する。
【0477】
本開示は、さらに、検出可能に標識された形態の上記の抗体または抗原結合性断片を提供する。放射性同位元素、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジンなど)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)蛍光または発光または生物発光標識(例えば、FITCまたはローダミンなど)、常磁性原子などを使用することにより、抗体を検出可能に標識することができる。そのような標識を実現するための手順は当技術分野で周知である;例えば、(Sternberger, L. A. et al., J. Histochem. Cytochem. 18: 315 (1970); Bayer, E. A. et al., Meth. Enzym. 62: 308 (1979); Engval, E. et al., Immunol. 109: 129 (1972); Goding, J.W. J. Immunol. Meth. 13: 215 (1976))を参照されたい。
【0478】
「標識」は、抗体に直接または間接的にコンジュゲートした検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能なものであってよい(例えば、放射性同位元素標識もしくは蛍光標識)、または、酵素標識の場合では、基質である化合物または組成物の検出可能な化学的変質を触媒し得る。あるいは、標識は、それ自体が検出可能なものでなくてよいが、検出可能な別の薬剤が結合するエレメントであり得る(例えば、エピトープタグ、または例えばビオチン-アビジンなどの結合パートナー対の一方)。したがって、抗体は、その単離を容易にする標識またはタグを含んでよく、抗体を同定するための本発明の方法は、抗原/抗体を標識またはタグとの相互作用によって単離するステップを含む。
【0479】
例示的な治療用免疫コンジュゲートは、化学療法剤、毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源または動物起源の酵素的に活性な毒素、もしくはその断片)、または放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート)などの細胞傷害性薬剤とコンジュゲートした本明細書に記載の抗体を含む。融合タンパク質を以下にさらに詳細に記載する。
【0480】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体およびその抗原結合性断片を、化学療法用細胞毒、例えば、細胞増殖抑制剤もしくは細胞破壊薬剤(例えば、パクリタキソール、サイトカラシンBまたはジフテリア毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンおよびその類似体もしくはホモログ)、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC)、ならびに抗有糸分裂薬、血栓性もしくは抗血管新生剤または放射性標識などの治療剤とコンジュゲートすることができる。免疫コンジュゲートを形成するための適切な細胞傷害性薬剤および化学療法剤の例は、当技術分野で公知であり、例えば、WO05/103081を参照されたい)。別の実施形態では、本明細書に開示される抗体およびその抗原結合性断片を、例えば、酵素、蛍光マーカー、化学発光マーカー、生物発光材料、または放射性材料などの、検出可能な基質とコンジュゲートする。本明細書に記載の態様の一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体およびその抗体断片を、毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、もしくはその断片)、小分子、siRNA、ナノ粒子、標的薬剤(例えば、微小気泡)、または放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート)とコンジュゲートする。そのようなコンジュゲートを本明細書では「免疫コンジュゲート」と称する。そのような免疫コンジュゲートは、例えば、診断方法、セラノスティクス方法、または標的化方法に使用することができる。
【0481】
使用することができる酵素的に活性な毒素およびその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテシンが挙げられる。種々の放射性同位元素が放射性コンジュゲート抗体の作製のために利用可能である。例としては、これだけに限定されないが、212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reが挙げられる。
【0482】
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片と細胞傷害性薬剤のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジサクシンイミジルなど)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアン酸(例えば、トリエン2,6-ジイソシアン酸など)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの、種々の二官能性タンパク質カップリング剤のいずれかを使用して作出することができる。例えば、リシン免疫毒素をVitetta et al., 238 Science 1098 (1987)に記載されている通り調製することができる。炭素14で標識された1-イソチオシアネートベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は放射性ヌクレオチドと抗体のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。
【0483】
他の実施形態では、抗体またはその一部を、腫瘍予備標的化に利用するために、「受容体」(例えば、ストレプトアビジン)とコンジュゲートすることができ、その場合、抗体-受容体コンジュゲートを対象に投与し、その後、結合しなかったコンジュゲートを除去剤を使用して循環から除去し、次いで、細胞傷害性薬剤(例えば、放射性ヌクレオチド)とコンジュゲートした「リガンド」(例えば、アビジン)を投与する。一部の実施形態では、抗体またはその抗体断片をビオチンとコンジュゲートすることができ、ビオチンとコンジュゲートした抗体またはその抗体断片を、ストレプトアビジンを結合させたまたはコーティングした薬剤と、例えば、例えば血管新生の分子イメージングに使用するために、ストレプトアビジンをコーティングした微小気泡などと、さらにコンジュゲートまたは連結することができる。
【0484】
そのような治療用部分を抗体とコンジュゲートするための技法は周知であり、例えば、Amon et al., ”Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom et al., ”Antibodies For Drug Delivery”、in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.) ,Robinson et al. (eds.) ,pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, ”Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.) ,pp. 475-506 (1985);”Analysis、Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.) ,pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpe et al., ”The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev. , 62: 119-58 (1982)を参照されたい。
【0485】
免疫コンジュゲートの作製は、米国特許第6,306,393号に記載されている。免疫コンジュゲートは、治療剤と抗体構成成分を間接的にコンジュゲートすることによって調製することができる。一般的な技法は、Shih et al., Int. J. Cancer 41 :832-839 (1988);Shih et al., Int.J. Cancer 46: 1101-1106 (1990);およびShih et al.,米国特許第5,057,313号に記載されている。一般的な方法は、酸化した炭水化物部分を有する抗体構成成分を、少なくとも1つの遊離のアミン官能基を有し、複数の薬物、毒素、キレーター、ホウ素アデンド(boron addend)、または他の治療剤が負荷されている担体ポリマーと反応させることを伴う。この反応の結果、最初のシッフ塩基(イミン)連結がもたらされ、これを二級アミンに還元して最終的なコンジュゲートを形成することによって安定化することができる。
【0486】
担体ポリマーは、アミノデキストランまたは少なくとも50アミノ酸残基のポリペプチドであることが好ましいが、他の実質的に等価のポリマー担体も使用することができる。最終的な免疫コンジュゲートは、治療における使用のための投与のしやすさおよび有効なターゲティングのために、哺乳動物の血清などの水溶液に可溶性であることが好ましい。したがって、担体ポリマーに対する可溶化機能により、最終的な免疫コンジュゲートの血清溶解性が増強される。特に、アミノデキストランが好ましい。
【0487】
アミノデキストラン担体との免疫コンジュゲートを調製するためのプロセスは、一般には、デキストランポリマー、有利に、平均分子量が約10,000~100,000であるデキストランを用いて開始される。デキストランの炭水化物環の一部の制御された酸化に影響を及ぼしてアルデヒド基を生成するために、デキストランを酸化剤と反応させる。NaI04などの解糖化学的試薬を用い、従来の手順に従って都合よく酸化に影響を及ぼす。
【0488】
次いで、酸化されたデキストランをポリアミン、好ましくはジアミン、より好ましくはモノヒドロキシジアミンまたはポリヒドロキシジアミンと反応させる。適切なアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、または他の同様のポリメチレンジアミン、ジエチレントリアミンまたは同様のポリアミン、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン、または他の同様のヒドロキシル化されたジアミンまたはポリアミンなどが挙げられる。アルデヒド官能基のシッフ塩基基への実質的に完全な変換を確実にするために、デキストランのアルデヒド基に対して過剰のアミンを使用する。
【0489】
NaBH4、NaBH3CNなどの還元剤を使用して、得られたシッフ塩基中間体の還元的安定化を行う。得られた付加生成物を、従来のサイズ選別カラムを通過させて、架橋結合したデキストランを除去することによって精製することができる。アミン官能基を導入するために、デキストランを誘導体化する他の従来の方法、例えば、臭化シアンとの反応後のジアミンとの反応も使用することができる。次いで、アミノデキストランを、負荷される特定の薬物、毒素、キレーター、免疫モジュレーター、ホウ素アデンド、または他の治療剤の、従来の手段によって、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはその水溶性バリアントを使用して調製された活性化形態、好ましくはカルボキシル活性化誘導体と反応させて、中間付加生成物を形成する。
【0490】
あるいは、例えばヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質またはリシンA鎖などのポリペプチド毒素をアミノデキストランとグルタルアルデヒド縮合によって、またはタンパク質の活性化されたカルボキシル基とアミノデキストランのアミンの反応によってカップリングすることができる。放射性金属に対するキレーターまたは磁気共鳴増強剤は当技術分野で周知である。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体が典型的なものである。これらのキレーターは、一般には、キレーターを担体に付着させることができる基を側鎖上に有する。そのような基としては、例えば、DTPAまたはEDTAを担体のアミン基にカップリングすることができるベンジルイソチオシアネートが挙げられる。あるいは、キレーター上のカルボキシル基またはアミン基を担体に活性化または事前誘導体化によってカップリングし、次いで、全て周知の手段によってカップリングすることができる。
【0491】
カルボランなどのホウ素アデンドは、従来の方法によって抗体構成成分に付着させることができる。例えば、カルボランは、当技術分野で周知の通りペンダント側鎖上のカルボキシル官能基を用いて調製することができる。そのようなカルボランの担体、例えばアミノデキストランへの付着は、カルボランのカルボキシル基の活性化、および担体上のアミンと縮合して中間コンジュゲートを作製することによって実現することができる。次いで、下記の通り、そのような中間コンジュゲートを抗体構成成分に付着させて治療的に有用な免疫コンジュゲートを作製する。
【0492】
ポリペプチド担体をアミノデキストランの代わりに使用することができるが、ポリペプチド担体は鎖内に少なくとも50アミノ酸残基、好ましくは100~5000アミノ酸残基を有するべきである。アミノ酸の少なくとも一部はリシン残基またはグルタミン酸もしくはアスパラギン酸残基であるべきである。リシン残基のペンダントアミンならびにグルタミンおよびアスパラギン酸のペンダントカルボン酸は、薬物、毒素、免疫モジュレーター、キレーター、ホウ素アデンドまたは他の治療剤を付着させるために都合がよい。得られる負荷された担体および免疫コンジュゲートに望ましい溶解特性を付与するために、適切なポリペプチド担体の例としては、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、それらの共重合体、およびこれらのアミノ酸とその他、例えばセリンの混合ポリマーが挙げられる。
【0493】
中間コンジュゲートと抗体構成成分のコンジュゲーションを、抗体構成成分の炭水化物部分を酸化させ、得られたアルデヒド(およびケトン)カルボニルを、薬物、毒素、キレーター、免疫モジュレーター、ホウ素アデンド、または他の治療剤の負荷後に担体上の残りのアミン基と反応させることによって行う。あるいは、中間コンジュゲートを、酸化させた抗体構成成分に、治療剤の負荷後に中間コンジュゲートに導入されたアミン基を介して付着させることができる。酸化は、化学的に、例えば、NaI04もしくは他の解糖試薬を用いて、または酵素的に、例えばノイラミニダーゼおよびガラクトースオキシダーゼを用いてのいずれかで都合よく行うことができる。アミノデキストラン担体の場合では、一般には、アミノデキストランのアミンの全てが治療剤の負荷に使用されるとは限らない。アミノデキストランの残りのアミンを酸化させた抗体構成成分と縮合させてシッフ塩基付加生成物を形成し、次いで、これを、通常はホウ化水素還元剤を用いて還元的に安定化させる。
【0494】
類似の手順を使用して本発明による他の免疫コンジュゲートを作製することができる。負荷されたポリペプチド担体は、酸化した抗体構成成分の炭水化物部分との縮合のために残っている遊離のリシン残基を有することが好ましい。ポリペプチド担体上のカルボキシルを、必要であれば、例えば、DCCを用いた活性化および過剰のジアミンとの反応によってアミンに変換することができる。
【0495】
最終的な免疫コンジュゲートを、Sephacryl S-300でのサイズ選別クロマトグラフィーまたは1つもしくは複数のCD84Hyエピトープを使用したアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の技法を使用して精製する。あるいは、免疫コンジュゲートを、抗体構成成分と治療剤を直接コンジュゲートすることによって調製することができる。一般的な手順は、治療剤を酸化させた抗体構成成分に直接付着させる以外は間接的なコンジュゲーション方法と同様である。他の治療剤で本明細書に記載のキレーターを置換することができることが理解されよう。当業者は過度な実験を伴わずにコンジュゲーションスキームを考案することができよう。
【0496】
さらなる例示として、治療剤を還元した抗体構成成分のヒンジ領域にジスルフィド結合の形成によって付着させることができる。例えば、ペプチドの抗体構成成分への付着に使用される単一のシステイン残基を有する破傷風トキソイドペプチドを構築することができる。代替として、そのようなペプチドを抗体構成成分にN-サクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)などのヘテロ二官能性架橋剤を使用して付着させることができる。Yu et al., Int. J. Cancer56: 244 (1994)。そのようなコンジュゲーションのための一般的な技法は当技術分野で周知である。例えば、Wong, Chemistry Of Protein Conjugation and Cross-Linking (CRC Press 1991);Upeslacis et al., ”Modification of Antibodies by Chemical Methods,” in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birch et al. (eds.) , pages 187-230 (Wiley-Liss, Inc. 1995);Price, ”Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies,” in Monoclonal Antibodies: Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al. (eds.) , pages 60-84 (Cambridge University Press 1995)を参照されたい。
【0497】
抗体と細胞傷害性薬剤のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジサクシンイミジルなど)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド(glutareldehyde)など)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアン酸(例えば、トリエン2,6-ジイソシアン酸など)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの種々の二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作出する。例えば、リシン免疫毒素をVitetta et al., Science 238: 1098 (1987)に記載されている通り調製することができる。炭素14で標識された1-イソチオシアネートベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は放射性核種と抗体のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である(例えば、W094/11026を参照されたい)。
【0498】
上記の通り、抗体のFc領域内の炭水化物部分を治療剤とのコンジュゲーションに使用することができる。しかし、抗体断片を免疫コンジュゲートの抗体構成成分として使用する場合にはFc領域が存在しない可能性がある。それにもかかわらず、炭水化物部分を抗体または抗体断片の軽鎖可変領域に導入することが可能である。例えば、Leung et al., J. Immunol. 154: 5919 (1995); Hansen et al.,米国特許第5,443,953号を参照されたい。それでは、工学的に操作された炭水化物部分を治療剤への付着に使用する。[0404]さらに、コンジュゲーション方法の多数の可能性のある変形形態が当業者には理解されよう。例えば、インタクトな抗体またはその抗原結合性断片の血液、リンパ液、または他の細胞外液中での半減期を延長するために、炭水化物部分を使用してポリエチレングリコールを付着させることができる。さらに、治療剤を炭水化物部分および遊離のスルフヒドリル基に付着させることにより、「二価免疫コンジュゲート」を構築することが可能である。そのような遊離のスルフヒドリル基は、抗体構成成分のヒンジ領域内に位置し得る。
【0499】
一部の実施形態では、標的抗原に関連する状態を診断または処置するための方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、抗原に関連する状態は、抗原の発現または生物活性の増大に起因した結果である。一部の実施形態では、抗原に関連する状態は、抗原の発現または生物活性の低下に起因した結果である。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片は、抗原に結合し、それにより、抗原の発現および/または少なくとも1つの生物活性を部分的にまたは実質的に阻害する。本明細書に開示される抗原の発現および/または少なくとも1つの生物活性を部分的にまたは好ましくは実質的に阻害する抗体または指定の部分またはそのバリアントは、タンパク質抗原またはその断片に結合し、それにより、抗原、例えば特定の抗原と結合することが当技術分野で公知の1つまたは複数の受容体またはリガンドとの抗原の結合を通じて媒介される活性を阻害し得る。一部の実施形態では、抗体は、抗原活性を、約20~120%、好ましくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%またはそれよりも大きく阻害し得る。本明細書に開示される抗原の発現および/または少なくとも1つの生物活性を部分的にまたは好ましくは実質的に増大させる抗体または指定の部分またはそのバリアントは、タンパク質抗原またはその断片に結合し、それにより、抗原を通じて媒介される活性を増大させ得る。一部の実施形態では、抗体は、抗原活性を約20~120%、好ましくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%またはそれよりも大きく増大させ得る。
【0500】
抗原依存性活性を増大させる抗体の能力を、本明細書に記載されており、かつ/または当技術分野で公知の少なくとも1つの適切なアッセイによって評価することが好ましい。一部の実施形態では、抗原に関係する状態は、免疫に関係する疾患、心血管疾患、感染性疾患、悪性疾患または神経疾患であり得る。
処置方法
【0501】
一部の実施形態では、それを必要とする対象を処置する方法であって、対象に本明細書に記載の治療用IgA抗体または本明細書に記載の前記治療用IgA抗体を含む医薬組成物を治療用量で投与することを含む方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、対象は、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患を有する。
【0502】
一部の実施形態では、対象は、がんを有する。一部の実施形態では、対象は、炎症性障害を有する。一部の実施形態では、がんは、本明細書に記載の腫瘍関連抗原の発現に関連するものである。一部の実施形態では、がんは、CD47、CD20、GD2、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、CD25、CD33、BCMA、CD44、α-葉酸受容体、CAIX、CD30、ROR1、CEA、EGP-2、EGP-40、HER3、葉酸結合性タンパク質、GD3、IL-13R-a2、KDR、EDB-F、メソテリン、CD22、EGFR、MUC-1、MAGE-A1、MUC16、h5T4、PSMA、TAG-72、EGFRvIII、CD123またはVEGF-R2の発現に関連するものである。
【0503】
一部の実施形態では、本明細書に記載の治療用IgA抗体または医薬組成物を、CD20の過剰発現に関連するがんを有する対象に投与する方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、本明細書に記載の治療用IgA抗体または医薬組成物を、GD2の過剰発現に関連するがんを有する対象に投与する方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、本明細書に記載の治療用IgA抗体または医薬組成物を、メソテリンの過剰発現に関連するがんを有する対象に投与する方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、改変されたエフェクター細胞を、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、CD25、CD33、BCMA、CD44、α-葉酸受容体、CAIX、CD30、ROR1、CEA、EGP-2、EGP-40、HER3、葉酸結合性タンパク質、GD2、GD3、IL-13R-a2、KDR、EDB-F、メソテリン、CD22、EGFR、MUC-1、MAGE-A1、MUC16、h5T4、PSMA、TAG-72、EGFRvIII、CD123またはVEGF-R2の過剰発現に関連するがんを有する対象に投与する方法が本明細書に開示される。
【0504】
一部の実施形態では、がんは、転移性がんである。他の実施形態では、がんは、再燃したまたは難治性がんである。一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍または血液の悪性腫瘍である。一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。他の実施形態では、がんは、血液の悪性腫瘍である。一部の実施形態では、がんは、転移性がんである。一部の実施形態では、がんは、再燃したまたは難治性がんである。
【0505】
一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。例示的な固形腫瘍としては、これだけに限定されないが、肛門がん;虫垂癌;胆管がん(すなわち、胆管細胞癌);膀胱がん;脳腫瘍;乳がん;子宮頸がん;結腸がん;原発不明がん(CUP);食道がん;眼がん;卵管がん;消化器がん;腎がん;肝がん;肺がん;髄芽腫;黒色腫;口腔がん;卵巣がん;膵がん;副甲状腺疾患;陰茎がん;下垂体腫瘍;前立腺がん;直腸のがん;皮膚がん;胃がん;精巣がん;咽頭がん;甲状腺がん;子宮がん;膣がん;外陰がん;または神経膠芽腫が挙げられる。
【0506】
一部の実施形態では、がんは、血液の悪性腫瘍である。一部の実施形態では、血液の悪性腫瘍は、リンパ腫、白血病、骨髄腫、またはB細胞悪性腫瘍を含む。一部の実施形態では、血液の悪性腫瘍は、リンパ腫、白血病または骨髄腫を含む。一部の実施形態では、例示的な血液悪性腫瘍として、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、高リスクCLL、非CLL/SLLリンパ腫、前リンパ性白血病(PLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外周辺帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット高悪性度B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、B細胞性前リンパ性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、またはリンパ腫様肉芽腫症が挙げられる。一部の実施形態では、血液の悪性腫瘍は、骨髄性白血病を含む。一部の実施形態では、血液の悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)を含む。
【0507】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、GD2、ALK、hNET、GD3、およびCD20のうちの1つまたは複数に結合する。一部の実施形態では、GD2陽性腫瘍は、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、黒色腫、小細胞肺がん、神経膠芽腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、およびこれらの任意の組合せである。ある態様では、抗体またはその断片は、神経芽細胞腫細胞に結合する。一部の実施形態では、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)陽性腫瘍は、未分化大細胞リンパ腫、肺腺癌、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎細胞癌、食道の扁平上皮癌、乳がん、結腸腺癌、多形神経膠芽腫または甲状腺未分化がんである。一部の実施形態では、hNET(ヒトノルエピネフリン輸送体)陽性腫瘍は、膀胱腫瘍、乳腺腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣腫瘍、膵腫瘍または網膜芽細胞腫である。一部の場合では、GD3陽性腫瘍は、中枢神経系の神経外胚葉性腫瘍、神経膠腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、上衣腫、肉腫、黒色腫、乳がん、卵巣がん、神経膠芽腫、ユーイング肉腫、または小細胞肺癌である。一部の実施形態では、CD20陽性腫瘍は、白血病、リンパ腫または神経芽細胞腫である。
【0508】
他の実施形態では、感染性疾患に起因する感染症を有する対象に投与する方法が本明細書に開示される。感染性疾患は、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染に起因する疾患であり得る。他の実施形態では、例示的なウイルス病原体として、Adenoviridae、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、JCウイルス、BKウイルス、HSV、HHV科のウイルス、Picornaviridae、Herpesviridae、Hepadnaviridae、Flaviviridae、Retroviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Papovaviridae、ポリオーマウイルス、Rhabdoviridae、およびTogaviridaeの科のウイルス病原体が挙げられる。例示的な病原性ウイルスは、天然痘、インフルエンザ、流行性耳下腺炎、麻疹、水痘、エボラ、および風疹を引き起こすものである。例示的な病原性真菌としては、Candida、Aspergillus、Cryptococcus、Histoplasma、Pneumocystis、およびStachybotrysが挙げられる。例示的な病原性細菌としては、Streptococcus、Pseudomonas、Shigella、Campylobacter、Staphylococcus、Helicobacter、E.coli、Rickettsia、Bacillus、Bordetella、Chlamydia、Spirochetes、およびSalmonellaが挙げられる。
【0509】
一部の実施形態では、IgA抗体を1つまたは複数の追加的な治療剤と一緒に投与する。一部の実施形態では、IgA抗体と1つまたは複数の追加的な治療剤を同時投与する。一部の実施形態では、IgA抗体と1つまたは複数の追加的な治療剤を逐次的に投与する。
【0510】
一部の実施形態では、併用療法は、本開示の1つまたは複数の抗体と、それと共に製剤化され、かつ/または同時投与される、1つまたは複数の追加的な治療剤、例えば、化学療法薬または抗悪性腫瘍剤、例えば、サイトカインおよび増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、および/または細胞傷害性薬剤もしくは細胞増殖抑制剤などを含み得る。「併用」という用語は、この文脈では、薬剤が、同時かまたは逐次的に、実質的に同時期にもたらされることを意味する。例示的な化学療法剤としては、これだけに限定されないが、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、デュオカルマイシン、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンアルファ、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミソール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(Taxol(商標))、ピロカルピン、プロクロルペラジン、サプロイン、タモキシフェン、タキソール、トポテカン塩酸塩、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよび酒石酸ビノレルビンが挙げられる。
【0511】
一部の実施形態では、本明細書に記載のIgA抗体を、有効用量の、これだけに限定することなく、以下のFDAに認可されたモノクローナル抗体を含めた、がんの処置に使用されている他の抗体と組み合わせることができる:リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、CD20:キメラIgG1)、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、HER2:キメラIgG1)、アレムツズマブ(Campath(登録商標)、CD52:ヒト化IgG1)、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標)、CD20:マウス、IgG1、放射標識されたもの(イットリウム90)、トシツモマブ-I-131(Bexxar(登録商標):CD20、マウス、IgG2a、放射標識されたもの(ヨウ素131))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標)、EGFR:キメラ(cjimeric)、IgG1)、ベバシズマブ(VEGF:ヒト化、IgG4)、パニツムマブ(Vectibix(登録商標)、EGFR:ヒトIgG2)、オファツムマブ(Arzerra(登録商標)、CD20:ヒトIgG1)、イピリムマブ(Ypervoy(登録商標)、CTLA-4:ヒトIgG1)、ブレンツキシマブベドチン(Adectris(登録商標)、CD30:キメラ、IgG1、薬物-コンジュゲート)、ペルツズマブ(Perjecta(登録商標)、HER2:ヒト化IgG1、薬物コンジュゲート)、アドトラスツズマブエムタンシン(Kadcyla(登録商標)、HER2:ヒト化、IgG1、薬物-コンジュゲート)、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標)、CD20:ヒト化およびグリコールで工学的に操作されたもの)、ニボルマブおよびペムブロリズマブ(抗PD-1s)など。トラスツズマブはHER-2抗原を標的とする。
【0512】
一部の実施形態では、抗CD47 IgA抗体をHER2阻害剤、抗HER2抗体、EGFR阻害剤、抗EGFR抗体と組み合わせて投与する。一部の実施形態では、抗CD47 IgA抗体をトラスツズマブと組み合わせて投与する。一部の実施形態では、抗CD47 IgA抗体をc-kit阻害剤と組み合わせて投与する。
投薬量
【0513】
疾患(例えばがん)を処置(防止を含む)するための、IgA抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物が本明細書で提供される。一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。組成物を、がんの処置(予防を含む)のために有効な量で投与する。一部の実施形態では、組成物(例えば、抗体もしくはその抗原結合性断片または前記抗体もしくはその抗原結合性断片をコードする核酸分子)を、対象における免疫応答の増強および/またはT細胞活性化の増大のために有効な量で投与する。組成物は、非経口投与などの任意の利用可能な手段による対象へのin vivo投与に使用するためのものである。対象への投与に関しては、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物または医薬は無菌であり得、これは、滅菌濾過膜を通した濾過、または当業者に公知の他の方法によって容易に実現することができる。一実施形態では、組成物または医薬は、発熱物質または内毒素を含まないように処理されたものである。医薬組成物または医薬を発熱物質または内毒素について試験すること、および発熱物質もしくは内毒素を含まない医薬組成物もしくは医薬を調製すること、または内毒素を臨床的に許容されるレベルで含む医薬組成物もしくは医薬を調製することは、当業者には十分に理解される。医薬組成物または医薬を発熱物質または内毒素について試験するために市販のキットが利用可能である。
【0514】
本明細書に記載の方法において非経口投与などのin vivo投与に使用するための組成物は滅菌されたものであり得、これは、滅菌濾過膜を通した濾過、または当業者に公知の他の方法によって容易に実現される。
【0515】
本明細書に記載のIgA抗体またはその抗原結合性断片は、高い水準の医療(good medical practice)に合致する様式で製剤化、用量設定、および投与される。これに関連して考慮される因子としては、処置される特定の障害、処置を受ける特定の対象、個々の対象の臨床的状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療実践者に公知の他の因子が挙げられる。物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの「治療有効量」は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの個体における所望の応答を引き出す能力などの因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストのあらゆる毒性の影響または有害な影響よりも治療的に有益な影響が上回る量でもある。治療有効量は、1回または複数回の投与で送達することができる。治療有効量は、所望の治療結果および/または予防結果を実現するために必要な投薬量でそれに必要な期間にわたって有効な量を指す。投与される「治療有効量」は、そのような考慮事項によって支配され、がんを好転させる、処置する、もしくは安定化するため;増悪までの時間(無増悪生存期間の持続時間)を延長するため、または腫瘍、休止状態の腫瘍、もしくは微小転移の出現もしくは再発を処置もしくは防止するために必要な最小量を指す。本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片は、必要に応じて、がんまたがんが発生するリスクを防止または処置するために現在使用されている1つまたは複数の追加的な治療剤と共に製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体またはその抗原結合性断片の量、障害または処置の型、および上記の他の因子に依存する。これらは、一般に、同じ投薬量で本明細書において前に使用されている投与経路を用いて、または今までに使用された投薬量のおよそ1%から99%までで使用される。
【0516】
抗体の用量は、投与を受ける対象の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変動し得る。好ましい用量は、一般には、体重または体表面積に従って算出される。本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片を成体患者における状態または疾患を処置するために使用する場合、本発明の抗体を通常は体重1kg当たり約0.01~約20mg、より好ましくは体重1kg当たり約0.02~約7mg、体重1kg当たり約0.03~約5mg、または体重1kg当たり約0.05~約3mg、体重1kg当たり約5mg、体重1kg当たり約7.5mg、体重1kg当たり約10mg、または体重1kg当たり約15mgの単一用量で静脈内投与することが有利であり得る。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続時間を調整することができる。投与のための有効な投薬量およびスケジュールは経験的に決定することができる;例えば、患者の進行を定期的な評価によってモニタリングし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、当技術分野において周知の方法を使用して投薬量の種間スケーリングを実施することができる(例えば、Mordenti et al., 1991, Pharmaceut. Res. 8: 1351)。
【0517】
一部の実施形態では、本明細書の組成物は、例えば、がんのリスクがあるまたは疾患のより早い段階にある対象に投与する場合、予防有効量を含み得る。「予防有効量」は、所望の予防結果を実現するために必要な投薬量でそれに必要な期間にわたって有効な量を指す。一般には、予防用量は対象に疾患の前または疾患のより早い段階で使用されるので、予防用量は治療用量よりも少ない。
【0518】
有利に、上記の経口使用または非経口使用のための医薬組成物を、活性成分の用量に適合させるのに適した単位用量の剤形に調製する。そのような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、ピル、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0519】
投与は、例えば、1つまたは複数の別々の投与によるもの、または連続した注入によるものであり得る。数日間またはそれよりも長くにわたる反復投与に関しては、状態に応じて、例えば、当技術分野で公知の方法によって測定して、がんが処置されるまで処置を持続する。しかし、他の投薬量レジメンも有用であり得る。1つの非限定的な例では、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片を週に1回、2週間に1回、または3週間に1回、これだけに限定されないが、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgまたは15mg/kgを含めた、約5mg/kgから約15mg/kgまでの用量範囲で投与する。本明細書に記載の方法の使用の進行を従来の技法およびアッセイによって容易にモニタリングすることができる。本明細書に記載の方法を使用した治療の持続時間は、医学的に必要が示される限り、または所望の治療効果(例えば、本明細書に記載のもの)が実現されるまで継続する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の1つもしくは複数の抗体もしくはその抗原結合性断片、または組成物の投与を1カ月、2カ月、4カ月、6カ月、8カ月、10カ月、1年、2年、3年、4年、5年、10年、20年、または対象の寿命に至るまで何年にもわたって継続する。
処置の有効性
【0520】
例えばがんに対する、本開示のIgA抗体もしくはその抗原結合性断片、または医薬組成物を投与することを含む処置方法の有効性は、これだけに限定されないが、腫瘍の退縮、腫瘍の重量またはサイズの縮小、増悪までの時間、生存の持続時間、無増悪生存期間、全奏効率、応答の持続時間、および生活の質を含めた、がん処置の評価に一般に使用される種々のエンドポイントによって測定することができる。本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片には、独特の評価基準および薬物に対する臨床応答の定義が必要であり得る。がんの場合では、治療有効量の本明細書に開示される抗体、その抗原結合性断片、またはそれを含む組成物により、がん細胞の数を減少させること;腫瘍サイズを縮小すること;がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害する(すなわち、いくらかの程度まで遅らせる、好ましくは停止させる)こと;腫瘍転移を阻害する(すなわち、いくらかの程度まで遅らせる、好ましくは停止させる)こと;腫瘍成長をいくらかの程度まで阻害すること;および/または障害に付随する症状の1つもしくは複数をいくらかの程度まで軽減することができる。本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片が既存のがん細胞の成長を防止し、かつ/または死滅させるように作用する範囲では、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。がん治療に関しては、in vivoにおける有効性を、例えば、生存の持続時間、無増悪生存期間の持続時間(PFS)、奏効率(RR)、応答の持続時間、および/または生活の質を評価することによって測定することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片により、処置を受けていない対象と比べて腫瘍成長が少なくとも約2%、3%、5%、6%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれよりも大きく阻害される。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片により、腫瘍生着が、処置を受けていない対象と比べて少なくとも約2%、3%、5%、6%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれよりも大きく阻害される。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片により、腫瘍細胞の細胞溶解が誘導される。一部の実施形態では、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片により、対応するWT IgAと比べて腫瘍細胞の細胞溶解の少なくとも約2%、3%、5%、6%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれよりも大きな増大が誘導される。
【0521】
他の実施形態では、がん、例えば皮膚黒色腫などの皮膚がんにかかりやすいまたはその診断を受けたヒト対象の無増悪生存期間を延長するための方法が本明細書に記載されている。疾患増悪までの時間は、薬物の投与から疾患増悪または死亡までの時間と定義される。好ましい実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片と1つまたは複数の化学療法剤を使用する本発明の併用処置により、化学療法単独での処置と比較して、無増悪生存期間が少なくとも約1カ月、1.2カ月、2カ月、2.4カ月、2.9カ月、3.5カ月、例えば、約1カ月~約5カ月など、有意に延長される。別の実施形態では、本明細書に記載の方法により、種々の治療薬を用いた処置を受けているがんにかかりやすいまたはその診断を受けたヒト対象の群における奏効率が有意に上昇し得る。奏効率は、処置に応答した、処置を受けた対象のパーセンテージと定義される。一実施形態では、組換え抗体またはその抗原結合性断片などの本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片と1つまたは複数の化学療法剤を使用する本明細書に記載の併用処置により、処置を受けた対象群では、化学療法を単独で用いた処置を受けた群と比較して奏効率が有意に上昇する。
【0522】
本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」、または「好転(amelioration)」という用語は、治療的処置を指し、目的は、疾患または障害に関連する状態の増悪または重症度を逆転させる、緩和する、好転させる、阻害する、遅らせるまたは停止させることである。「処置すること(treating)」という用語は、これだけに限定されないが、慢性感染症またはがんなどの慢性免疫状態に関連する状態、疾患または障害の少なくとも1つの有害作用または症状を低減または緩和することを含む。処置は、一般に、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減すれば「有効」である。あるいは、処置は、疾患の増悪が低減するか止まれば「有効」である。すなわち、「処置(treatment)」は、単に症状またはマーカーの改善だけでなく、処置を行わない場合に予測される症状の進行または悪化を少なくとも遅らせる休止も含む。有益なまたは所望の臨床結果としては、これだけに限定されないが、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患増悪の遅延または減速、病態の好転または一時的緩和、および寛解(部分寛解であるか完全寛解であるかにかかわらず)が挙げられる。疾患の「処置(treatment)」という用語はまた、疾患の症状または副作用の軽減(緩和処置を含む)も含む。
【0523】
例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、疾患、例えばがんの症状を緩和するために、対象に本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を有効量で投与することを含む。本明細書で使用される場合、「がんの症状を緩和すること」とは、疾患に付随する任意の状態または症状を好転させるまたは低減することである。等価の無処置対照と比較して、そのような低減、または防止の程度は、任意の標準の技法によって測定して、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、または100%である。理想的には、がんは、当技術分野で公知の任意の標準方法によって検出して、完全に取り除かれ、その場合、がんが処置されたとみなされる。がんに対する処置を受けている患者は、そのような状態を有するという診断を医療実践者から受けた患者である。診断は、任意の適切な手段によるものであってよい。診断およびモニタリングには、例えば、生体試料中のがん細胞のレベルを検出すること(例えば、組織またはリンパ節生検、血液検査、または尿検査)、生体試料中のがんの代理マーカーのレベルを検出すること、特定のがんに付随する症状を検出すること、またはそのようながんに典型的な免疫応答に関与する免疫細胞を検出することを伴い得る。
【0524】
「有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患または障害の少なくとも1つまたは複数の症状を緩和するために必要な抗体またはその抗原結合性断片またはそれを含む組成物の量を指し、所望の効果をもたらすために十分な量の薬理学的組成物に関する。したがって、「治療有効量」という用語は、典型的な対象に投与された場合に特定の効果をもたらすために十分である、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片の量を指す。有効量は、本明細書で使用される場合、疾患の症状の発生を遅らせる、疾患の症状の過程を変更する(例えば、これだけに限定されないが、疾患の症状の増悪を遅らせる)、または疾患の症状を逆転させるために十分な量も含む。したがって、正確な「有効量」を指定することは不可能である。しかし、いかなる所与の場合に関しても、妥当な「有効量」は、当業者が常套的な実験のみを使用して決定することができる。
【0525】
有効量、毒性、および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順によって決定することができる。投薬量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて変動し得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる-大きな治療指数を示す組成物および方法が好ましい。治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。また、用量は、動物モデルにおいて、細胞培養物において、または妥当な動物モデルにおいて決定して症状の最大半量阻害を実現するIC50(すなわち、抗体またはその抗原結合性断片の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲が実現されるように策定することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニタリングすることができる。投薬量は医師が決定することができ、必要に応じて、観察される処置効果に合うように調整することができる。
【0526】
がんの処置および/または防止としては、これだけに限定されないが、がんに付随する症状の緩和、がんの増悪の阻害、がんの退縮の促進、免疫応答の促進、腫瘍成長の阻害、腫瘍サイズの阻害、転移の阻害、がん細胞成長の阻害、がん細胞増殖の阻害、またはがん細胞死を引き起こすことが挙げられる。
投与形式
【0527】
本明細書に記載のIgA抗体またはその抗原結合性断片は、それを必要とする対象に、対象における有効な処置をもたらす任意の妥当な経路によって投与することができる。本明細書で使用される場合、「投与すること(administering)」および「導入すること(introducing)」という用語は、互換的に使用され、抗体またはその抗体部分を対象にそのような薬剤の炎症部位またはがんなどの所望の部位への少なくとも部分的な局在をもたらす方法または経路によって置き、その結果、所望の効果を生じさせることを指す。
【0528】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれを含む組成物を、阻害すべきがんを有する対象に、薬剤を全身的にまたは所望の表面または標的に送達する任意の投与形式によって投与し、投与形式は、これだけに限定されないが、注射、注入、滴下注入、および吸入投与を含み得る。経口投与形態も本明細書において意図されている。「注射」は、これだけに限定することなく、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、莢膜下、くも膜下、頭蓋内、脊髄内、脳脊髄内、および胸骨内注射および注入を含む。
【0529】
「非経口投与」および「非経口的に投与」という句は、本明細書で使用される場合、経腸および局部投与以外の投与形式、通常は注射によるものを指す。「全身投与」、「全身的に投与」、「末梢投与」および「末梢性に投与」という句は、本明細書で使用される場合、二重特異性または多重特異性ポリペプチド薬剤の、腫瘍部位などの標的部位、組織、または器官への直接投与以外の投与を指し、したがって、当該薬剤は対象の循環系に入り、したがって、代謝および他の同様のプロセスに供される。
【0530】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれを含む組成物は、静脈内投与によってボーラスとして、またはある期間にわたって連続した注入により、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、関節内経路、滑液包内経路、くも膜下腔内経路、経口経路、局部経路、または吸入経路によって投与することができる。本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれを含む組成物の使用に広範囲にわたる副作用または毒性が付随する場合には、例えば血管新生が生じている腫瘍またはがん部位への局所投与が特に望ましい。一部の実施形態ではex vivo戦略を治療への適用に使用することもできる。ex vivo戦略には、対象から得た細胞に本明細書に開示される核酸配列をトランスフェクトまたは形質導入することが伴う。次いで、トランスフェクトされたまたは形質導入された細胞を対象に戻す。細胞は、これだけに限定することなく、造血細胞(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞、またはB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、または筋肉細胞を含めた広範囲の型のいずれかであり得る。
【0531】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれを含む組成物を、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、肺内投与、および鼻腔内投与、ならびに局所的な免疫抑制処置のために所望であれば病巣内投与を含めた任意の適切な手段によって投与する。
【0532】
非経口注入としては、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が挙げられる。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性断片または組成物をパルス注入により、特に抗体の用量を漸減しながら適切に投与する。投薬は注射によって行うことが好ましく、投与が短期的なものであるか長期的なものであるかに一部依存して、静脈内または皮下注射が最も好ましい。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性断片または組成物を、障害または腫瘍の場所により許容される場合には、局所的に、例えば直接注射によって投与し、注射を定期的に繰り返すことができる。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性断片または組成物を、例えば休止状態の腫瘍または微小転移の局所的な再発または転移を低減または防止するために、対象に全身的に、または腫瘍細胞に、例えば腫瘍にもしくは腫瘍の外科的切除後の腫瘍床に直接送達することもできる。
【0533】
本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片を含む治療用組成物の有効性および効力を増強するために、本明細書に記載の腫瘍を阻害するための方法の一部の実施形態において抗体ターゲティングソノポレーション法を使用することが意図されている。本明細書で使用される場合、「ソノポレーション」は、細胞原形質膜の透過性を一時的に改変し、したがって、治療剤などの大きな分子の取り込みを可能にするための、好ましくは超音波振動数での音、または超音波と造影剤(例えば、安定化された微小気泡)の相互作用の使用を指す。ソノポレーションによって引き起こされる膜透過性は一過性であり、超音波曝露後に薬剤は細胞の内側にトラップされたまま残る。ソノポレーションでは、微小気泡の音響キャビテーションを使用して大きな分子の送達を増強する。
【0534】
したがって、本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、微小気泡などの超音波造影剤と混合した抗体またはその抗原結合性断片を、がんに対する処置を必要とする対象に局所的にまたは全身的に注射することができ、超音波をカップリングし、さらには、規定された領域、例えば腫瘍部位に集束させて、ターゲティング送達を実現することができる。一部の実施形態では、方法では、集束超音波法を使用してターゲティング送達を実現する。本明細書で使用される場合、HIFUまたは「高強度集束超音波」は、上にあるまたは周囲の健康組織に対する損傷を引き起こすことなく悪性または病原性組織を熱し、破壊するために高強度超音波を使用する非侵襲的治療方法を指す。Khaibullina et al., 49 J. Nucl. Med. 295 (2008)およびWO2010127369に記載されている通り、HIFUを抗体またはその抗体断片などの治療剤を送達する手段として使用することもできる。
【0535】
造影超音波(CEUS)を使用する方法も本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片との使用が意図されている。造影超音波(CEUS)は、超音波造影媒体および超音波造影剤を従来の医学的超音波検査に適用することを指す。超音波造影剤とは、物質間の接触面からの音波の反射を種々のやり方に依拠する薬剤を指す。本明細書に記載の組成物および方法と使用するための種々の微小気泡造影剤が入手可能である。微小気泡は、それらの殻の構成、ガスコアの構成、およびターゲティングされるか否かが異なる。血管新生障害に特徴的な受容体に結合するターゲティングリガンドを微小気泡とコンジュゲートし、それにより、微小気泡複合体が、疾患にかかっているまたは異常な組織などの目的の領域内に選択的に蓄積することを可能にすることができる。この形態の分子イメージングはターゲティング造影超音波として公知であり、ターゲティング微小気泡が目的の領域内に結合した場合にのみ強力な超音波シグナルを生成する。ターゲティング造影超音波には、医学的診断および医学的治療のどちらにも多くの適用がある。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を、がんまたは腫瘍に対する処置を必要とする対象に、標的化超音波送達を使用して投与する。
医薬組成物および剤形
【0536】
ある特定の実施形態では、対象への投与のための、本明細書に開示されるIgA抗体またはその機能性断片を含む医薬組成物が本明細書に開示される。
【0537】
一部の実施形態では、本明細書に記載のIgA抗体を含む医薬組成物を、活性化合物を処理して薬学的に使用することができる調製物にすることを容易にする賦形剤および助剤を含む1つまたは複数の生理的に許容される担体を使用して従来の様式で製剤化する。適当な製剤は、選択される投与経路に依存する。本明細書に記載の医薬組成物の要約は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E. , Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. , Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L. , Eds. , Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見いだされる。
【0538】
医薬組成物は、必要に応じて、従来の様式で、例えば、単に例として、従来の混合、溶解、造粒、糖剤形成、研和、乳化、カプセル封入、封入または圧縮プロセスによって製造される。
【0539】
ある特定の実施形態では、組成物は、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸および塩酸などの酸;水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリス-ヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基;ならびにクエン酸/ブドウ糖、炭酸水素ナトリウムおよび塩化アンモニウムなどの緩衝剤を含めた1つまたは複数のpH調整剤または緩衝剤も含み得る。そのような酸、塩基および緩衝剤は、組成物のpHを許容される範囲内に維持するために必要な量で含められる。
【0540】
他の実施形態では、組成物は、組成物の重量オスモル濃度を許容される範囲内にするために必要な量の1つまたは複数の塩も含み得る。そのような塩としては、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム陽イオンおよび塩化物、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、炭酸水素、硫酸、チオ硫酸またはバイサルファイト陰イオンを有するものが挙げられる;適切な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムおよび硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0541】
本明細書に記載の医薬組成物は、これだけに限定されないが、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、脳内、脳室内、関節内、腹腔内、または頭蓋内)、鼻腔内、頬側、舌下、または直腸内投与経路を含めた任意適切な投与経路によって投与される。一部の実施形態では、医薬組成物を非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、脳内、脳室内、関節内、腹腔内、または頭蓋内)投与用に製剤化する。
【0542】
本明細書に記載の医薬組成物は、これだけに限定されないが、処置を受ける個体が経口摂取するための水性経口分散、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤、懸濁剤など、固形経口剤形、エアロゾル、制御放出製剤、高速融解製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、散剤、ピル、糖剤、カプセル剤、遅延放出製剤、延長放出製剤、パルス放出製剤、多微粒子製剤、および即時放出と制御放出の混合製剤を含めた任意の適切な剤形に製剤化される。
【0543】
一部の実施形態では、医薬組成物をカプセル剤に製剤化する。一部の実施形態では、医薬組成物を溶液に製剤化する(例えば、IV投与用)。一部の実施形態では、医薬組成物を注入剤として製剤化する。一部の実施形態では、医薬組成物を注射剤として製剤化する。
【0544】
本明細書に記載の医薬固体剤形は、必要に応じて、本明細書に記載の化合物、および適合性担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香味剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性物質、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑剤、安定剤、透過増強剤、湿潤剤、消泡剤、抗酸化剤、保存剤、またはこれらの1つまたは複数の組合せなどの1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む。
【0545】
さらに他の態様では、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000)に記載されているものなどの標準のコーティング手順を使用して、組成物の周囲にフィルムコーティングを提供する。一部の実施形態では、組成物を粒子に製剤化し(例えば、カプセル剤による投与用)、粒子の一部または全部をコーティングする。一部の実施形態では、組成物を粒子に製剤化し(例えば、カプセル剤による投与用)、粒子の一部または全部をマイクロカプセルに封入する。一部の実施形態では、組成物を粒子に製剤化し(例えば、カプセル剤による投与用)、粒子の一部または全部をマイクロカプセルに封入せず、コーティングもしない。
【0546】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、微生物の活性を阻害するために、1つまたは複数の保存剤も含み得る。適切な保存剤としては、メルフェンおよびチオメルサールなどの水銀含有物質;安定化された二酸化塩素;ならびに塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化セチルピリジニウムなどの四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0547】
「増殖性疾患」は、本明細書で言及される場合、細胞の過剰な増殖および細胞マトリックスのターンオーバーが、がんを含めたいくつかの疾患の病理発生に有意に寄与するという統一概念が提示されることを意味する。
【0548】
「患者」または「対象」は、本明細書で使用される場合、生理的状態、例えば、がんまたは自己免疫性状態または感染と診断されたまたはそれを有するもしくはそれが発生する疑いがある哺乳動物対象を指す。一部の実施形態では、「患者」という用語は、がんが発生する可能性が平均より高い哺乳動物対象を指す。例示的な患者は、本明細書に開示される治療が有益であり得るヒト、類人猿、イヌ、ブタ、ウシ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、齧歯類および他の哺乳動物であり得る。例示的なヒト患者は、男性および/または女性であり得る。「それを必要とする患者」または「それを必要とする対象」は、本明細書では、疾患または障害、例えば、これだけに制限されないが、がんなどの増殖性障害と診断されたまたはそれを有する疑いがある患者と称される。一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍または血液の悪性腫瘍である。一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。他の実施形態では、がんは、血液の悪性腫瘍である。一部の実施形態では、がんは、転移性がんである。一部の実施形態では、がんは、再燃したまたは難治性がんである。一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。例示的な固形腫瘍としては、これだけに限定されないが、肛門がん;虫垂がん;胆管がん(すなわち、胆管細胞癌);膀胱がん;脳腫瘍;乳がん;子宮頸がん;結腸がん;原発不明がん(CUP);食道がん;眼がん;卵管がん;消化器がん;腎がん;肝がん;肺がん;髄芽腫;黒色腫;口腔がん;卵巣がん;膵がん;副甲状腺疾患;陰茎がん;下垂体腫瘍;前立腺がん;直腸がん;皮膚がん;胃がん;精巣がん;咽頭がん;甲状腺がん;子宮がん;膣がん;外陰がん;または神経膠芽腫が挙げられる。一部の実施形態では、白血病は、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)および慢性骨髄性白血病(CML)であり得る。
【0549】
「投与すること(administering)」は、本明細書では、本開示の組成物を患者に提供することと称される。例として、限定するものではなく、組成物の投与、例えば注射は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、または筋肉内(i.m.)注射によって実施することができる。1つまたは複数のそのような経路を使用することができる。非経口投与は、例えば、ボーラス注射によるもの、または経時的な段階的灌流によるものであり得る。あるいは、または同時に、投与は、経口経路によるものであり得る。さらに、投与はまた、細胞のボーラスもしくはペレットの外科的沈着、または医療機器の設置によるものであり得る。ある実施形態では、本開示の組成物は、本明細書に記載の核酸配列を発現する工学的に操作された細胞もしくは宿主細胞、または本明細書に記載の核酸配列を少なくとも1つ含むベクターを、増殖性障害を処置または防止するために有効な量で含み得る。医薬組成物は、本明細書に記載の標的細胞集団を、1つまたは複数の薬学的にまたは生理的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含み得る。そのような組成物は、例えば中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;グリシンなどのポリペプチドまたはアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含み得る。
【0550】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」という用語およびその文法上の等価物は、所望の薬理的効果および/または生理的効果を得ることを指す。複数の実施形態では、効果は、治療的なものである、すなわち、効果により、疾患および/または疾患に起因する有害な症状が部分的にまたは完全に治る。この目的のために、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の核酸配列を発現する宿主細胞、または本明細書に記載の核酸配列を含むベクターを含む組成物を「治療有効量」で投与することを含む。
【0551】
「治療有効量」、「治療量」、「免疫学的に有効な量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」という用語またはそれらの文法上の等価物は、所望の結果を実現するために必要な投薬量でそれに必要な期間にわたって有効な量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに本明細書に記載の組成物の個体における所望の応答を引き出す能力などの因子に応じて変動し得る。投与される本開示の組成物の厳密な量は、医師が患者(対象)の年齢、重量、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および状態の個体差を考慮して決定することができる。
【0552】
あるいは、本明細書に記載の1つまたは複数の組成物を患者または対象に投与することの薬理的効果および/または生理的効果は、「予防的」なものであり得る、すなわち、効果により疾患またはその症状が完全にまたは部分的に防止される。
【0553】
「予防有効量」は、所望の予防結果(例えば、疾患の発症の防止)を実現するために必要な投薬量でそれに必要な期間にわたって有効な量を指す。
【0554】
「消泡薬剤」は、水性分散の凝固、完成したフィルム内の気泡をもたらす、または処理を一般に損なう処理中の泡立ちを減少させるものである。例示的な消泡剤としては、ケイ素エマルションまたはセスキオレイン酸ソルビタンが挙げられる。
【0555】
抗酸化剤としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびトコフェロールが挙げられる。ある特定の実施形態では、必要な場合、抗酸化剤により化学的安定性を増強する。
【0556】
本明細書に記載の製剤には、抗酸化剤、金属キレート剤、チオール含有化合物および他の一般的な安定化剤が有益であり得る。そのような安定化剤の例としては、これだけに限定されないが、:(a)約0.5%~約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、(e)約0.01%~約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%~約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)デキストラン硫酸、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの二価陽イオン;または(n)これらの組合せが挙げられる。
【0557】
「結合剤」は、粘着質を与えるものであり、結合剤としては、例えば、アルギン酸およびその塩;セルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース(例えば、Methocel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))、エチルセルロース(例えば、Ethocel(登録商標))、および微結晶セルロース(例えば、Avicel(登録商標))など;微結晶性ブドウ糖;アミロース;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;多糖酸;ベントナイト;ゼラチン;ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体;クロスポビドン;ポビドン;デンプン;アルファ化デンプン;トラガント、デキストリン、糖、例えば、スクロース(例えば、Dipac(登録商標))、グルコース、ブドウ糖、糖蜜、マンニトール、ソルビトール、キシリトール(例えば、Xylitab(登録商標))、およびラクトースなど;天然または合成ゴム、例えば、アラビアゴム、トラガント、ガティガム、イサポールハスクの粘液、ポリビニルピロリドン(例えば、Polyvidone(登録商標)CL、Kollidon(登録商標)CL、Polyplasdone(登録商標)XL-10)、カラマツアラボガラクタン、Veegum(登録商標)、ポリエチレングリコール、ワックス、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0558】
「担体」または「担体材料」は、製薬に一般に使用される任意の賦形剤を含み、イブルチニブおよび抗がん剤の化合物などの本明細書に開示される化合物との適合性、および所望の剤形の放出プロファイル特性に基づいて選択されるべきである。例示的な担体材料としては、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性物質、可溶化剤、安定剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などが挙げられる。「薬学的に適合性の担体材料」としては、これだけに限定されないが、アラビアゴム、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン酸ナトリウム、ダイズレシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン(phosphotidylcholine)、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、二カリウムリン酸、セルロースおよびセルロースコンジュゲート、糖ナトリウムステアロイルラクチレート、カラギーナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化デンプンなどを挙げることができる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L. , Eds. , Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins1999)を参照されたい。
【0559】
「分散剤」および/または「粘度調整剤」は、液体媒体または顆粒化法もしくは混和法によって薬物の拡散および均一性を制御する材料を含む。一部の実施形態では、これらの薬剤はまた、コーティングまたは浸食マトリックスの効果を助長する。例示的な拡散促進剤/分散剤としては、例えば、親水性ポリマー、電解質、Tween(登録商標)60または80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;商業的にはPlasdone(登録商標)として公知)、ならびに炭水化物に基づく分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC-SL、およびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、HPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、およびHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸ステアリン酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(S630)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドを伴う4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポールとしても公知)、ポロキサマー(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック共重合体であるPluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、およびF108(登録商標));およびポロキサミン(例えば、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの逐次的な付加に由来する四官能性ブロック共重合体であるTetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)としても公知(BASF Corporation、Parsippany、N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(S-630)、ポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールの分子量は約300~約6000、または約3350~約4000、または約7000~約5400であり得る、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば、トラガントゴムおよびアラビアゴム、グアーガム、キサンタンガムを含めたキサンタンなど、糖、セルロース系誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸、キトサンおよびこれらの組合せが挙げられる。セルロースまたはトリエチルセルロースなどの可塑剤も分散剤として使用することができる。リポソーム分散および自己乳化型分散に特に有用な分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然のホスファチジルコリン、卵由来の天然のホスファチジルグリセロール、コレステロールおよびミリスチン酸イソプロピルである。
【0560】
1つまたは複数の浸食促進剤と1つまたは複数の拡散促進剤の組合せを本組成物に使用することもできる。
【0561】
「希釈剤」という用語は、目的の化合物を送達前に希釈するために使用される化学化合物を指す。化合物を安定化するためにも希釈剤を使用することができ、これは、希釈剤により、より安定な環境をもたらすことができるからである。当技術分野では、これだけに限定されないが、リン酸緩衝食塩水溶液を含めた、緩衝液中に溶解させた塩(pHの制御または維持ももたらすことができる)が希釈剤として利用される。ある特定の実施形態では、希釈剤により、組成物の容積を増大させて、圧縮を容易にするまたは均一の混和物に対してカプセル充填のために十分な容積を創出する。そのような化合物としては、例えば、ラクトース、デンプン、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖、Avicel(登録商標)などの微結晶セルロース;第二リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物;リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム;無水ラクトース、噴霧乾燥させたラクトース;アルファ化デンプン、Di-Pac(登録商標)(Amstar)などの圧縮糖;マンニトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸ステアリン酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロースに基づく希釈剤、粉砂糖;一塩基硫酸カルシウム一水和物、硫酸カルシウム二水和物;乳酸カルシウム三水和物、デキストレート;穀類加水分解固形物、アミロース;粉末セルロース、炭酸カルシウム;グリシン、カオリン;マンニトール、塩化ナトリウム;イノシトール、ベントナイトなどが挙げられる。
【0562】
「充填剤」としては、例えば、ラクトース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、セルロース粉末、ブドウ糖、デキストレート、デキストラン、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコールなどの化合物が挙げられる。
【0563】
「滑沢剤」および「滑剤」は、材料の接着または摩擦を防止、低減または阻害する化合物である。例示的な滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、水酸化カルシウム、タルク、ステアリルフマル酸ナトリウム、炭化水素、例えば鉱油または水素化ダイズ油(Sterotex(登録商標))などの硬化植物油、高級脂肪酸およびそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、例えばアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール、タルク、ワックス、Stearowet(登録商標)、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000)またはCarbowax(商標)などのメトキシポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、マグネシウムまたはラウリル硫酸ナトリウム、Syloid(商標)などのコロイドシリカ、Cab-O-Sil(登録商標)、トウモロコシデンプンなどのデンプン、シリコーン油、界面活性物質などが挙げられる。
【0564】
「可塑剤」は、マイクロカプセル封入材料またはフィルムコーティングを軟化して脆さを低減するために使用される化合物である。適切な可塑剤としては、例えば、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1450、PEG3350、およびPEG800などのポリエチレングリコール、ステアリン酸、プロピレングリコール、オレイン酸、トリエチルセルロースおよびトリアセチンが挙げられる。一部の実施形態では、可塑剤は、分散剤または湿潤剤としても機能する。
【0565】
「可溶化剤」としては、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁酸塩、ポリエチレングリコール200-600、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビドなどの化合物が挙げられる。
【0566】
「安定剤」としては、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、酸、保存剤などの化合物が挙げられる。
【0567】
「懸濁化剤」としては、例えば、ポリビニルピロリドン、例えば、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(S630)、ポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールの分子量は約300~約6000、または約3350~約4000、または約7000~約5400であり得る、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸ステアリン酸ヒドロキシメチルセルロース、ポリソルベート-80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば、トラガントゴムおよびアラビアゴム、グアーガム、キサンタンガムを含めたキサンタンなど、糖、セルロース系誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポビドンなどの化合物が挙げられる。
【0568】
「界面活性物質」としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム、Tween(登録商標)60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリソルベート、ポロキサマー(polaxomer)、胆汁酸塩、モノステアリン酸グリセリン、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、例えば、Pluronic(登録商標)(BASF)などの化合物が挙げられる。いくつかの他の界面活性物質として、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油;ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。一部の実施形態では、物理的安定性を増強するためまたは他の目的で界面活性物質を含めることができる。
【0569】
「粘度増強剤」としては、例えば、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸ステアリン酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸、アラビアゴム、キトサンおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0570】
「湿潤剤」としては、例えば、オレイン酸、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ドキュセートナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクセートナトリウム、トリアセチン、Tween(登録商標) 80、ビタミンE TPGS、アンモニウム塩などの化合物が挙げられる。
【0571】
必要に応じて、本明細書に記載の組成物を含む製剤は、薬学的に許容される塩、一般には、例えば塩化ナトリウムを、好ましくはほぼ生理的濃度で含有する。必要に応じて、本発明の製剤は、薬学的に許容される保存剤を含有し得る。一部の実施形態では、保存剤の濃度は、一般にはv/vで0.1%から2.0%までにわたる。適切な保存剤としては、製薬技術分野で公知の保存剤が挙げられる。ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベン、およびプロピルパラベンが保存剤の例である。必要に応じて、本発明の製剤は、薬学的に許容される界面活性物質を0.005~0.02%の濃度で含み得る。
【0572】
本明細書に記載の組成物を、抗体またはその抗原結合性断片を対象に以下のために適合させたものを含めた固体、液体またはゲルの形態で投与するために特別に製剤化することができる:(1)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射により、例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液、または持続放出製剤として;(2)局部適用、例えば、皮膚に適用するクリーム剤、軟膏剤、または制御放出パッチもしくは噴霧剤として;(3)膣内または直腸内、例えば、膣坐薬、クリーム剤またはフォーム剤として;(4)眼;(5)経皮;(6)経粘膜;または(7)経鼻。さらに、本開示の抗体もしくはその抗原結合性断片または組成物を患者に埋め込むこと、または薬物送達システムを使用して注射することができる。例えば、Urquhart et al., 24 Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 199 (1984);Controlled Release of Pesticides & Pharmaceuticals (Lewis, ed., Plenum Press, New York, 1981);米国特許第3,773,919号、同第3,270,960号を参照されたい。
【0573】
本明細書に記載の抗体または抗原結合性断片を含む、本明細書に開示される組成物は、必要に応じて、処置される特定の適応症に対する1つよりも多くの活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさずに相補的な活性を有するものも含有し得る。例えば、組成物は、細胞傷害性薬剤、サイトカイン、成長阻害剤および/またはVEGFRアンタゴニストなどの血管新生阻害剤をさらに含み得る。そのような分子は、組み合わせて意図された目的のために有効な量で適切に存在する。本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物の活性成分を、例えばコアセルベーション技法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれコロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、微小粒子、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルションにおけるヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに封入することもできる。そのような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (16th ed., Osol、ed., 1980)に開示されている。医薬組成物を小胞、特にリポソームとして送達することもできる(Langer 1990 Science 249: 1527-1533; Treat et al. (1989) in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365;Lopez-Berestein, ibid. , pp. 317-327を参照されたい;一般に、同書を参照されたい)。リポソームとしては、エマルション、泡、ミセル、不溶性単層、リン脂質分散、ラメラ層などが挙げられ、これらは、M-CSF抗体を特定の組織にターゲティングするため、ならびに組成物の半減期を延長するためのビヒクルとしての機能を果し得る。例えば、当該特許が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,837,028号および同第5,019,369号に記載されている通り、リポソームの調製のために種々の方法が利用可能である。
【0574】
抗体を含有するリポソームは、Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 3688 (1985);Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 77: 4030 (1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されているものなどの当技術分野で公知の方法によって調製される。循環時間が増強されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームを、規定された孔径のフィルターを通して押出し成形して、所望の直径を有するリポソームを得る。本発明の抗体のFab’断片をリポソームとMartin et al., J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されている通り、ジスルフィド交換反応によってコンジュゲートすることができる。化学療法剤(例えば、ドキソルビシンなど)をリポソームに必要に応じて含有させる[例えば、Gabizon et al., J. National Cancer Inst. 81 (19): 1484 (1989)を参照されたい]。
【0575】
一部の実施形態では、持続放出調製物を使用することができる。持続放出調製物の適切な例としては、本開示の抗体または抗原結合性断片を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、マトリックスは、成形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリル酸)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とyエチル-L-グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸共重合体および酢酸リュープロリドで構成される注射可能なマイクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸共重合体、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日間を超えて放出することができるが、ある特定のハイドロゲルはタンパク質をより短い期間にわたって放出する。カプセル封入された抗体が体内に長時間留まる場合、37℃で水分に曝露した結果として変性または凝集し得、その結果、生物活性の消失、および免疫原性の可能性のある変化が生じる。関与する機構に応じて、安定化するための合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオジスルフィド交換を通じた分子間S-S結合形成であることが分かった場合、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥させること、妥当な添加剤を使用して含水量を制御すること、および特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより、安定化を実現することができる。ある特定の状況では、医薬組成物を制御放出系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer, supra;Sefton 1987 CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的の近傍に置くことができ、したがって、全身用量のほんの一部だけが必要になる(例えば、Goodson, 1984, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2、pp. 115-138を参照されたい)。
【0576】
本開示の医薬組成物は、例えば、標準の針およびシリンジを用いて皮下にまたは静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスが本発明の医薬組成物の送達に容易に適用される。そのようなペン型送達デバイスは再利用可能または使い捨てのものであり得る。再利用可能なペン型送達デバイスには、一般に、医薬組成物を含有する取り替え可能なカートリッジが利用される。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄し、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。それから、ペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスには取り替え可能なカートリッジがない。その代わりに、使い捨てペン型送達デバイスには、デバイス内のレザバー中に保持された医薬組成物が充填済みになっている。レザバーの医薬組成物が空になったら、デバイス全体を廃棄する。多数の再利用可能なペン型および自動注入装置送達デバイスが本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される。例としては、これらの確実に限定されるものではないが、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)pen(Disetronic Medical Systems、Burghdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)pen、HUMALOG(商標)pen、HUMALIN70130(商標)pen(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、Ind.)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)pen(Becton Dickinson、Franklin Lakes、N.J.)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられる。医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てペン型送達デバイスの例としては、これだけに確実に限定されるものではないが、SOLOSTAR(商標)pen(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)が挙げられる。
【0577】
注射可能な調製物は、静脈内注射、皮下注射、皮内注射および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含み得る。これらの注射可能な調製物は、公知の方法によって調製することができる。例えば、注射可能な調製物を、例えば、上記の抗体またはその塩を、注射に慣習的に使用される滅菌水性媒体または油性媒体に溶解させる、懸濁させるまたは乳化させることによって調製することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、グルコースおよび他の補助薬剤などを含有する等張性溶液である生理的食塩水があり、これは、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性物質[例えば、ポリソルベート80、硬化ヒマシ油のHCO-50(ポリオキシエチレン(50mol)付加生成物)]などの妥当な可溶化剤と組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、これは、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用することができる。そのように調製された注射剤を妥当なアンプルに充填することが好ましい。
【0578】
本開示の組成物は、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、エマルション、エリキシル剤、懸濁剤または溶液の形態であり得る。含有される前述の抗体の量は、単位用量の剤形当たり約5~約500mgであり得る;特に、注射の形態では、前述の抗体が約5~約100mg含有されることが好ましく、他の剤形については約10~約250mg含有されることが好ましい。
【0579】
経口、頬側、および舌下投与に関しては、固体剤形として散剤、懸濁剤、顆粒剤、錠剤、ピル、カプセル剤、ジェルキャップ、およびカプレットが許容される。これらは、例えば、本発明の1つまたは複数の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは互変異性体をデンプンまたは他の添加剤などの少なくとも1つの添加剤と混合することによって調製することができる。適切な添加剤は、スクロース、ラクトース、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギン酸、キチン、キトサン、ペクチン、トラガントゴム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成または半合成ポリマーまたはグリセリドである。必要に応じて、経口剤形は、不活性希釈剤、またはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、またはパラベンもしくはソルビン酸などの保存剤、またはアスコルビン酸、トコフェロールもしくはシステインなどの抗酸化剤、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味料、香味剤または香料などの、投与に役立つ他の成分を含有し得る。錠剤およびピルを当技術分野で公知の適切なコーティング材料でさらに処理することができる。
【0580】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容されるエマルション、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、および溶液の形態であり得、水などの不活性希釈剤を含有し得る。一部の実施形態では、医薬製剤および医薬を、例えば、これだけに限定されないが、油、水、アルコール、およびこれらの組合せなどの滅菌された液体を使用して液体懸濁液または水溶液として調製することができる。一部の実施形態では、医薬組成物を凍結乾燥形態で調製することができる。凍結乾燥調製物は、当技術分野で公知の凍結保護物質を含み得る。「凍結保護物質」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、タンパク質に凍結誘導性ストレスからの安定性をもたらす薬剤を含む。凍結保護物質の例としては、例えばマンニトールなどのポリオールが挙げられ、また、例えば、スクロースなどの糖類が挙げられ、例えば、ポリソルベート、ポロキサマーまたはポリエチレングリコールなどの界面活性物質も挙げられる。凍結保護物質はまた、製剤の張度にも寄与する。経口投与または非経口投与のために薬学的に適切な界面活性物質、懸濁化剤、乳化剤を添加することができる。
【0581】
上記の通り、懸濁液は、油を含み得る。そのような油としては、これだけに限定されないが、ピーナッツ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油およびオリーブ油が挙げられる。懸濁調製物は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリドおよびアセチル化脂肪酸グリセリドなどの脂肪酸のエステルも含み得る。懸濁製剤は、これだけに限定されないが、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロールおよびプロピレングリコールなどのアルコールを含み得る。これだけに限定されないが、ポリ(エチレングリコール)などのエーテル、鉱油およびワセリンなどの石油炭化水素;および水も懸濁製剤に使用することができる。
【0582】
経鼻投与に関しては、医薬製剤および医薬は、妥当な溶媒、および必要に応じて、これだけに限定されないが、安定剤、抗菌剤、抗酸化剤、pH改変剤、界面活性物質、生物学的利用能改変剤およびこれらの組合せなどの他の化合物を含有する噴霧剤またはエアロゾルであり得る。エアロゾル製剤用の噴射剤は、圧縮空気、窒素、二酸化炭素、または炭化水素に基づく低沸点溶媒を含み得る。
【0583】
注射可能な剤形は、一般に、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して調製することができる水性懸濁液または油性懸濁液を含む。注射可能な形態は、溶媒または希釈剤を用いて調製される液相または懸濁剤の形態であり得る。許容される溶媒またはビヒクルとしては、滅菌水、リンゲル液、または等張性水性生理食塩水溶液が挙げられる。あるいは、滅菌油を溶媒または懸濁化剤として使用することができる。油または脂肪酸は、天然または合成油、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドを含めた非揮発性のものであることが好ましい。
【0584】
注射に関しては、医薬製剤および/または医薬は、上記の妥当な溶液を用いた再構成に適した粉末であり得る。それらの例としては、これだけに限定されないが、フリーズドライされた、回転式乾燥されたまたは噴霧乾燥された粉末、非結晶粉末、顆粒、沈殿物、または粒子が挙げられる。注射に関しては、製剤は、必要に応じて、安定剤、pH改変剤、界面活性物質、生物学的利用能改変剤およびこれらの組合せを含有し得る。
【0585】
直腸内投与に関しては、医薬製剤および医薬は、化合物を腸、S字湾曲部および/または直腸内に放出するための坐薬、軟膏剤、浣腸剤、錠剤またはクリーム剤の形態であり得る。肛門坐薬は、本発明の1つまたは複数の化合物または化合物の薬学的に許容される塩もしくは互変異性体を、通常の保管温度では固相に存在し、直腸内などの体の内部への薬物の放出に適した温度では液相に存在する許容されるビヒクル、例えば、カカオバターまたはポリエチレングリコールと混合することによって調製される。軟ゼラチン型および坐剤の製剤の調製には油も使用することができる。ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどの懸濁化剤、ならびに緩衝剤および保存剤も含有し得る懸濁製剤の調製には、水、生理食塩水、水性ブドウ糖および関連する糖溶液、ならびにグリセロールを使用することができる。
【0586】
これらの組成物中の抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、広範に、すなわち、約10重量%未満から、通常少なくとも約25重量%、75重量%または90重量%の程度まで変動させることができ、これは、選択される特定の投与形式に従って、主に流体体積、粘度などによって選択される。経口投与可能な組成物、局部投与可能な組成物および非経口投与可能な組成物の実際の調製方法は当業者には公知であるまたは明らかになり、また、例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Science, 19th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1995)に詳しく記載されている。
【0587】
本発明の別の実施形態では、がんの処置を含めた、上記の疾患、障害または状態の処置に有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器およびラベルを含む。適切な容器としては、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成されたものであり得る。容器は、状態の処置に有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は静脈内溶液バッグまたは皮下注射針で穴をあけることができる止め栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の活性薬剤は、本発明の抗体である。容器上のまたは容器に付随する標識には、組成物が選択された状態の処置に使用されるものであることが示されている。製造品は、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液およびブドウ糖溶液などの薬学的に許容される緩衝剤を含む第2の容器をさらに含み得る。製造品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用説明を伴う添付文書を含めた商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。本明細書に記載の医薬組成物および医薬は、がん性疾患の処置に有用である。
診断への使用および他の使用
【0588】
抗原の発現(正常な試料と比べた発現の増大もしくは低減のいずれか、ならびに/または通常はエピトープが発現されない組織および/もしくは細胞における発現の存在などの不適切な発現)に関連する疾患、障害または状態の検出、診断およびモニタリングのために抗体を使用する方法が本明細書で提供される。患者が抗体療法に応答するかどうかを決定する方法が本明細書で提供される。
【0589】
一部の実施形態では、方法は、患者が標的抗原を発現する細胞を有するかどうかを本明細書に開示される抗体を使用して検出することを含む。一部の実施形態では、検出方法は、試料を本開示の抗体またはその抗原結合性断片と接触させ、結合のレベルが参照または比較試料(例えば、対照など)の結合のレベルと異なるかどうかを決定することを含む。一部の実施形態では、方法は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドが対象に対して妥当な処置であるかどうかを決定するために有用であり得る。
【0590】
一部の実施形態では、細胞または細胞/組織溶解物を抗体と接触させ、抗体と細胞の結合を決定する。試験細胞が同じ組織型の参照細胞と比較して結合活性を示す場合、その対象に抗体を用いた処置が有益であることが示され得る。一部の実施形態では、試験細胞はヒト組織に由来するものである。一部の実施形態では、試験細胞はヒト血液に由来するものである。
【0591】
特定の抗体-抗原結合を検出するための当技術分野で公知の様々な方法を使用することができる。行うことができる例示的なイムノアッセイとしては、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、比濁分析阻害イムノアッセイ(NIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、およびラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。指示部分、または標識群を対象抗体に付着させることができ、これは、多くの場合アッセイ設備および適合するイムノアッセイ手順の利用可能性によって要求される方法の種々の使用の必要性に見合うように選択される。
【0592】
妥当な標識としては、限定することなく、放射性核種(例えば、125I、131I、35S、3H、もしくは32P)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、もしくはβ-ガラクトシダーゼ)、蛍光部分もしくはタンパク質(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、GFP、もしくはBFP)、または発光部分(例えば、Quantum Dot Corporation、Palo Alto、Calif.によって供給されるQdot(商標)ナノ粒子)が挙げられる。上記の種々のイムノアッセイの実施に使用される一般的な技法は当業者に公知である。
【0593】
診断目的に関しては、抗体またはその抗原結合性断片を、これだけに限定されないが、放射性同位元素、蛍光標識、および当技術分野で公知の種々の酵素-基質標識を含めた検出可能部分で標識することができる。標識を抗体とコンジュゲートする方法は当技術分野で公知である。
【0594】
一部の実施形態では、抗体を標識する必要はなく、抗体の存在は、第1の抗体に結合する第2の標識された抗体を使用して検出することができる。本発明の抗体またはその抗原結合性断片を、がん関連抗原に対するアフィニティー精製剤として、またはがん関連抗原タンパク質に関する診断アッセイ、例えば、特定の細胞、組織、または血清におけるがん関連抗原タンパク質の発現の検出に使用することができる。本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片は、in vivo診断アッセイにも使用することができる。一般に、これらの目的に関しては、抗体を放射性核種(例えば、111In、99Tc、14C、131I、12sI、3H、32pまたは35Sなど)で標識し、したがって、免疫シンチグラフィーを使用して腫瘍の場所を突き止めることができる。
【0595】
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、直接的および間接的サンドイッチアッセイ、例えばELISAなどの、および免疫沈降アッセイなどの任意の公知のアッセイ方法に使用することができる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp. 147-158 (CRC Press, Inc. 1987)。抗体を、免疫組織化学的検査において、当技術分野で公知の方法を使用して腫瘍試料を標識するために使用することもできる。利便上、本発明の抗体をキット、すなわち、診断アッセイを実施するための説明書を伴う、所定量の試薬のパッケージングされた組合せとして提供することができる。抗体を酵素で標識する場合、キットは、酵素が必要とする基質および補助因子(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアをもたらす基質前駆体)を含む。さらに、例えば、安定剤、緩衝剤(例えば、遮断緩衝剤または溶解緩衝剤)などの他の添加剤を含めることができる。アッセイの感度を実質的に最適化する溶液中の試薬の濃度をもたらすために、種々の試薬の相対量を広範に変動させることができる。特に、試薬は、溶解すると妥当な濃度を有する試薬溶液をもたらす賦形剤を含む、通常は凍結乾燥した乾燥散剤として提供することができる。
キット
【0596】
本明細書に記載の方法のいずれかに使用するためのキット、薬、組成物、および単位剤形も本明細書で提供される。本明細書に開示されるIgA抗体またはその抗原結合性断片の少なくとも1つを治療有効量で含むキットが本明細書で提供される。一部の実施形態では、キットは、第2の治療剤(例えば、化学療法剤)をさらに含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、水性形態または凍結乾燥形態である。キットは、希釈剤または再構成用溶液をさらに含む。
【0597】
キットは、抗体(または単位剤形および/もしくは製造品)を含む1つまたは複数の容器を含み得る。一部の実施形態では、単位投薬量が提供され、単位投薬量は、抗体(例えば、治療有効量)を含む組成物を所定量で含有し、1つまたは複数の追加的な薬剤を伴うまたは伴わない。一部の実施形態では、そのような単位投薬量は注射用の使い捨ての充填済みシリンジとして供給される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物は、生理食塩水、スクロースなど;リン酸などの緩衝剤を含み得る;および/または安定かつ有効なpH範囲内で製剤化される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を、妥当な液体、例えば滅菌水を添加すると再構成することができる凍結乾燥粉末として提供することができる。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、これだけに限定されないが、スクロースおよびアルギニンを含めた、タンパク質凝集を阻害する1つまたは複数の物質をさらに含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヘパリンおよび/またはプロテオグリカンをさらに含む。
【0598】
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従ったがんの処置に関する使用説明書をさらに含む。キットは、適切な個体または処置の選択の説明をさらに含み得る。キット内に供給される説明書は、一般には、ラベルまたは添付文書上に書かれた説明書(例えば、キットに含まれる紙シート)であるが、機械可読の説明書(例えば、磁気または光学保存ディスク上に保持された説明書)も許容される。一部の実施形態では、キットは、別の治療剤(例えば、抗がん抗体または化学療法剤)をさらに含む。
【0599】
キットは、適切なパッケージング中に入れられている。適切なパッケージングとしては、これだけに限定されないが、バイアル、ビン、ジャー、軟質パッケージング(例えば、密閉Mylarバッグまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。キットにより、必要に応じて、緩衝剤および説明情報などの追加的な構成成分も提供される。したがって、本出願は、バイアル(例えば、密閉バイアルなど)、ビン、ジャー、軟質パッケージングなどを含む製造品も提供する。
【実施例】
【0600】
(実施例1)
工学的に操作された治療用IgA抗体
第1の野生型IgA2抗体を工学的に操作して以下のアミノ酸置換および欠失を組み入れた:IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2G、P124R、C86S、N114T、I115L、T116S、C147の欠失、およびY148の欠失。
【0601】
第2の野生型IgA2抗体を工学的に操作して135位のアスパラギンをグルタミンに突然変異させた。N135Q突然変異は、IgA2抗体のN-グリコシル化部位を欠失させるものである。N135Q突然変異を、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2G、P124R、C86S、N114T、I115L、T116S、C147の欠失、およびY148の欠失という追加的な突然変異と組み合わせることができる。
【0602】
第3の野生型IgA2抗体を工学的に操作してアミノ酸131~148(PTHINVSVVMAEADGTCY)(配列番号9)の尾部片全体を欠失させた。N135はIgA2抗体のN-グリコシル化部位である。尾部片の欠失を、IMGTスキームに従って番号付けして、N45.2G、P124R、C86S、N114T、I115L、およびT116Sという追加的な突然変異と組み合わせることができる。
【0603】
表1に、野生型IgA2(IgA2_Valerius_hgnc_id=HGNC:5479);以下のアミノ酸置換および欠失を含む工学的に操作されたIgA2抗体:N45.2G、P124R、C86S、N114T、I115L、T116S、C147の欠失、およびY148の欠失(IgA2-2.0)(IMGTスキームに従って番号付けして);N135Q突然変異を含む本明細書に記載の工学的に操作されたIgA2抗体(IgA3.0グリコシル化突然変異hgnc id=HGNC:5470);尾部片アミノ酸131~148の欠失を含む本明細書に記載の工学的に操作されたIgA2抗体(IgA2-3.0_尾部片_del_);IgA2(tr| A0A0G2JMB2 |A0A0G2JMB2 HUMAN);IgA2(sp|P01877|IGHA2_HUMAN);およびIgA2(tr |A0A286YEY5 |A0A286YEY5 HUMAN)のパーセント同一性、パーセント陽性、ギャップ、および全長の比較を詳述する。
【0604】
表1. 工学的に操作された抗体のアミノ酸配列の比較
【表1】
(実施例2)
工学的に操作されたIgAバリアント
【0605】
タンパク質グリコシル化は、抗体の機能および循環中の血清中半減期において主要な役割を果たす。IgAの不完全なグリコシル化により、専用受容体によるクリアランスが導かれる。不完全にグリコシル化されたタンパク質の内部移行の主要な受容体は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGRP1)である。この受容体は、N-グリコシル化タンパク質の末端ガラクトースを認識し、血清からのIgAクリアランスの重要なメディエーターである。IgA2(m1)抗体は、合計4つのN結合グリコシル化部位(CH1-N45.2、CH2-N15.2、CH2-N114、CH3_CHS-N135)によって形成される複雑なN結合グリコシル化パターンを有する。IgA2(m1)の半減期を増強するために、極めて重要なN-グリコシル化モチーフを、単一のN-グリコシル化モチーフのみを含有するかまたはN-グリコシル化モチーフを全く含有しないように工学的に操作した。単一のN結合グリコシル化部位により、半減期が延長され、その後、抗体クリアランスが低減するより徹底したグリコシル化プロファイルがもたらされた。さらに、完全にグリコシル化されていないIgAはグリコシル化依存性クリアランスを全く受けず、それにより、半減期が大幅に強化される。さらに、このグリコシル化されていないバリアントは、下等生物体における産生が可能であり、収率が有意に上昇し、製造費用が低減する。したがって、単一グリコシル化抗体またはグリコシル化されていない抗体は、生物学的製剤の製造を単純化をするものであり、治療目的での理想的な候補である。
工学的に操作されたIgAバリアントの設計
【0606】
IgA2(m1)重鎖の遺伝子配列がIgAの工学的操作の骨格であり、N結合グリコシル化モチーフをサイレンシングし、安定化突然変異を導入した(表2;
図4A~4D)。これにより、一連の分子:IgA3.0-(min)、IgA3.0+(plus)およびIgA4.0がもたらされた。
IgA3.0+バリアント
【0607】
IgA3.0+分子をCH1-P124R突然変異によって重鎖と軽鎖の間の共有結合が可能になるように改変した。血清タンパク質とのシステイン架橋の形成を防止し、それにより、二量体凝集体および/または複合体の形成を防止するために、2つのシステイン残基を改変または除去した(CH2-C86S;CH3_CHS-C147del_Y148del)。さらに、これらのモチーフ内の極めて重要なアミノ酸を置換することによって3つのN結合グリコシル化モチーフをサイレンシングした(CH1-N45.2G;CH2-N114T;CH3_CHS-N135Q)。
IgA3.0-またはIgA3.0minバリアント
【0608】
IgA3.0min分子は、IgA3.0+におけるCH1およびCH2と同じ突然変異を含有するが、IgA3.0+とは対照的に、IgA3.0minでは、尾部片のほぼ全体が欠失している(CH3_CHS-P131-Y148del)。
IgA4.0バリアントまたはグリコシル化されていないバリアント
【0609】
IgA4.0分子を、4つの別々のアミノ酸置換によって残りのN結合グリコシル化モチーフ(CH2-N15.2)のみをサイレンシングし、それにより、4つの完全にグリコシル化されていないIgA2分子を創出することによって創出した。
表2に、工学的に操作されたIgAバリアント;IgA3.0+、IgA3.0min、およびIgA4.0を野生型(WT)IgA2(m1)と比較して突然変異を列挙する。
【表2-1】
【表2-2】
(実施例3)
方法
IgA3.0/IgA4.0のクローニング
【0610】
IgA3.0+およびIgA3.0min分子をクローニングするために、IgA3.0の定常領域全体(CH1-CH2-CH3-CHS)を包含する合成DNAを注文し(Baseclear、Leiden NL)、pEE14.4ベクターにクローニングし、IgA2(m1)配列と置き換えた。IgA3.0min分子の一部の場合では、IgA3.0minの可変領域と定常領域の両方(VH-CH1-CH2-CH3-CHS)を包含するgBlocks(IDT)をpcDNA3.4ベクターにクローニングした。IgA3.0minベクターに基づいて、pcDNA3.4ベクター内のIgA3.0minのCH1-CH2-CH3-CHS領域をIgA4.0に対する適当な突然変異を含有するgBlocks(IDT)で置き換えることにより、IgA4.0分子をクローニングした。
産生
【0611】
IgA3.0+およびIgA3.0minの産生のためにHEK293F細胞(Thermo Fisher)を製造者の指示に従って使用した。DNA複合体形成のために、IgA3.0+重鎖(HC)またはIgA3.0min重鎖(HC)のための別々のベクターを、カッパ軽鎖(LC)のためのベクターおよびpAdvantage(pAdv;Promega)と最適なHC:LC:pAdv比で混合し、293fectinを用いて複合体形成した後、トランスフェクションを行った。
【0612】
IgA3.0minおよびIgA4.0の産生のためにExpiCHO-S細胞(Thermo Fisher)を製造者の指示に従って使用した。DNA複合体形成のために、IgA3.0+重鎖またはIgA3.0min重鎖またはIgA4.0重鎖のための別々のベクターを、カッパ軽鎖のためのベクターおよびpAdvantage(Promega)と最適なHC:LC:pAdv比で混合し、Expifectamineを用いて複合体形成した後、トランスフェクションを行った。
精製
【0613】
IgAを精製するための手順は全てのIgAバリアントについて同一であり、カッパ軽鎖を、清澄化し濾過した細胞培養上清からHiTrap KappaSelectカラム(GE Healthcare)を用いたFPCLを使用して捕捉し、その後、HiPrep 26/60 Sephacryl S-300 HRカラムを使用して分子ふるいクロマトグラフィー手順によって分離することによって実施する。
結合アッセイ
【0614】
工学的に操作された抗体の結合を決定するために、可変部分およびFc部分の両方の結合を評価した。
【0615】
HEK293F産生物由来のIgA3.0min-オビヌツズマブ(IgA3.0min-Obi)またはIgA3.0+-オビヌツズマブ(IgA3.0+-Obi)の清澄化した上清をFACS結合実験においてCD20を発現するDaudi細胞に対して試験した。ExpiCHO-S産生物由来のオビヌツズマブ-IgA4.0の清澄化した上清を希釈せずにFACS結合実験に使用した。
【0616】
手短に述べると、上清を、Daudi細胞と一緒に氷上で1時間インキュベートした。洗浄後、細胞を、PE標識した抗IgA抗体(Southern Biotech)と一緒に45分間インキュベートした。洗浄後、細胞をPFAで固定し、Canto II(BD)で測定した。CD20を認識する対照抗体を5~10ug/mLの濃度で添加した。
【0617】
抗体Fc領域がFcαRに結合することができるかどうかを決定するために、IgA2(m1)およびIgA3.0min-Obi(25μg/mL)を炭酸緩衝剤pH9.0中、ELISAプレートに終夜コーティングした。プレートを1%BSAでブロッキングし、その後、CD89を発現するカルセイン標識した健康なドナー多形核好中球(PMN)を37℃で45分にわたってプレートに結合させた。その後、2回の洗浄ステップ毎に、残りのシグナルとインプットシグナル(洗浄なし)を比較することによって結合を決定した。コーティング濃度が等しいかどうかを決定するための追加的な制御を、ELISAプレートを段階的に希釈したIgA2(m1)およびIgA3.0min抗体で終夜染色することによって実施し、その後、それらの存在を抗hIgA-HRP(Southern Biotech)を用いて検出した。
ADCC
【0618】
標的細胞に51Cr(Perkin-Elmer)を負荷し、2回洗浄し、段階的に希釈したIgA抗体および健康なドナーPMNと一緒に4時間インキュベートした。上清中のクロム放出を測定し、次式:((実験cpm-基底のcpm)/(最大cpm-基底cpm))×100を使用して特異的溶解を算出し、ここで、最大溶解は標識した細胞を1.25%トリトンと一緒にインキュベートすることによって決定され、最小溶解は抗体およびエフェクター細胞の非存在下で決定される。IgA4.0の場合では、ExpiCHO-S産物の希釈していない上清を評価した。
熱安定性
【0619】
熱安定性を、Sypro Orange(Life Technologies)を使用して熱シフトアッセイで分析した。25μLのPBSおよび3×SYPRO Orange(最終濃度)中に希釈した合計12,5μgの抗体を白色96ウェルの薄壁PCRプレート(Roche)に移し、Optical-Quality Sealing Tape(Roche)で密閉した。プレートをViiA7(Roche)で37℃から99℃まで毎秒1.6℃の加熱速度で、各温度において1分間インキュベートしながら加熱した。励起および放出波長としてそれぞれ490nmおよび575nmを使用して蛍光を同時に記録した。
【0620】
不安定化したIgA分子機能性を評価するために、PBS中の抗体をサーマルサイクラーにおいて異なる温度(4℃、12℃ずつ徐々に上昇させて23℃~95℃)で5分間インキュベートした。インキュベーション後、完全培地を添加し、抗体を最終濃度10μg/mLでADCCに直接使用した。
グリコシル化分析
【0621】
PNGase F処理を製造者の指示に従って実施した(NEB)。手短に述べると、抗体をまず100℃で10分にわたって変性させ、その後、NP-40、GlycobufferおよびPNGase F酵素を添加し、37℃で1時間インキュベートした。試料を、20mMのDTTを伴うLaemmli緩衝剤中に取り、10%Mini Protean TGX SDS-PAGE(Bio-Rad)に流した。ゲルをInstantBlue(Expedeon)で10分にわたって染色し、水ですすいだ。
【0622】
グリカンの同定および数量化を質量分析によって決定した。Her2-IgA2(m1)に関しては、連結特異的シアル酸誘導体化後のIgA2抗体の放出されたN-グリコシル化についてのリフレクトロン陽性モードMALDI-TOF-MS分析を以前に記載されている通り実施した(Meyer, Nederend et al. 2015)。IgA3.0min-Her2、IgA3.0min-Obi、およびIgA4.0-Obiバリアントに関しては、LC/MS2手法を取った。
【0623】
抗体を、GluC(Roche(Indianapolis、IN))およびトリプシン(Sigma-Aldrich(Steinheim、Germany))を用いて変性させ、還元し、アルキル化し、タンパク質分解により消化した。このために、抗体10μgを100mMのTris-HCl(pH 8.5)、5mMのTris(2-カルボキシエチル)-ホスフィン(TCEP、Sigma-Aldrich(Steinheim、Germany))、30mMのクロロアセトアミド(CAA、Sigma-Aldrich(Steinheim、Germany))および1%デオキシコール酸(deoxychelate)ナトリウム(SDC、Sigma-Aldrich(Steinheim、Germany))、水(MQ)(Q-PODまたはQ-Gard 1 system(Millipore)を≧18.2MΩで動作させて生成したもの)に入れた。この混合物をGluCと酵素:タンパク質比1:75w/wで、37℃で4時間インキュベートし、その後、トリプシンと一緒に(1:100w/w)37℃で終夜インキュベートした。その後、試料を0.5%トリフルオロ酢酸(trifluoric acid)(TFA、Sigma-Aldrich(Steinheim、Germany))に入れ、最大スピードで10分間遠心分離することによってSDCを沈殿させた。上清を固相抽出(SPE)のために収集した。
【0624】
SPEのために、真空マニホールド上に位置付けたOasis μElution HLB 96ウェルプレート(Waters、Wexford、Ireland)を使用した。プレートを、0.5%のTFAを用いて平衡化したアセトニトリル(ACN、BioSolve Valkenswaard、The Netherlands)で条件付けし、上清を負荷し、0.5%のTFAで洗浄し、50%ACN 0.5%のTFAを用いてペプチドを最終的に溶出させた。回収した溶出液を回転蒸発によって乾燥し、その後のLC-MS2分析のために2%ギ酸中に再構成した。
【0625】
消化および脱塩した試料のそれぞれについて、100ngを、Orbitrap Fusion Tribrid mass spectrometer(Thermo Fisher Scientific、Bremen、Germany)とハイフネートした、ナノフローを実現するためのフロースプリッターを備えたAgilent 1290 Infinity HPLC system(Agilent Technologies、Waldbronn、Germany)を使用することによって分析した。試料を、50cmの分析カラム(内径50μm、2.7μmのPoroshell 120 EC-C18を充填したもの;Agilent Technologies、Amstelveen、The Netherlands)とカップリングした2cmのトラップカラム(内径100μm、3μmのReproSil-Pur C18-AQを充填したもの;Dr.Maisch GmbH、Ammerbuch-Entringen、German)で分離した。緩衝剤Aは0.1%ギ酸からなり、緩衝剤Bは80%ACN中0.1%ギ酸からなった。LC勾配は以下の通りであった:0~5分間:100%A(残りはBである)、5~53分間:87%A~60%A、53~58分間:0%A、58~65分間:100%A。
【0626】
質量分析を、陽イオンモードで、コーティングされた融合シリカエミッターからスプレー電圧2kVでエレクトロスプレーイオン化することで実施した。各試料を、同じMS1撮像法であるが異なるMS2法を使用して3連で測定した。MS1スキャンに関しては、質量範囲を350m/zから2000m/zまで、分解能60,000、AGC標的400,000、最大注入時間50msに設定した。3種のMS2法のそれぞれでは、HCDフラグメンテーション(30%正規化衝突エネルギー;NCE)を、最高の電荷状態、最低m/zシグナルで3秒間のサイクル時間内に開始し、30秒間の排除時間を使用した。HCDによるMS2を、分解能30,000で120m/zから4000m/zまで、AGC標的50,000および最大注入時間50msで記録した。MS2法1に関しては、HCDフラグメンテーションのみを実施した。MS2法2に関しては、HCDスペクトル内での少なくとも3つのオキソニウムイオン(Hex:127.0390、145.0495、163.0601;HexNAc:138.0550、168.0655、186.0761、204.0867;PhosphoHex:243.0264;NeuAc:274.0921、292.1027;複合体:366.1395、405.0793、407.1660、512.1974、657.2349)の検出により、同じ前駆シグナルに対するステッピング-HCDを誘発し、HCD断片を10%、25%および40%のNCEと組み合わせた。ステッピング-HCDを分解能30,000で120m/zから4000m/zまで、AGC標的200,000および最大注入時間250msで記録した。MS2法3に関しては、オキソニウムイオンの検出によりEThcD(30%補足活性化)を誘発し、これを分解能30,000で120m/zから4000m/zまで、AGC標的200,000および最大注入時間250msで記録した。
【0627】
ボトムアップデータをByonic v3.3.11(Protein Metrics Inc.)を用いて解釈した。生データをArgおよびLys(トリプシン)、およびGluおよびAsp(GluC)におけるC末端切断部位で検索した。前駆質量許容差10ppmおよび断片質量許容差20ppmを使用し、誤った切断を3つ許容した。Cysカルバミドメチル化を固定された修飾として含め、Met酸化を可変修飾として含めた。N-グリコシル化のために、N-グリカン生合成の経路に従って279種の組成物を含めた。
【0628】
Skyline(v3.7.0.11317)を使用して相対的な数量化を実施した。このために、Byonicによりグリコシル化された状態で見いだされたペプチドのそれぞれを統合した。これには、主要な誤切断および酸化バリアントの全てが含まれた。これらのそれぞれについて、LC-MS2の各実行で上述の279種のグリカン組成物を統合した。その後、そのように得られた統合を以下の基準が順守されるようにキュレートした:1)理論的質量に対するエラーが≦5ppmであること、2)理論的な同位体パターンでidotpが≧0.85であること、3)そのペプチドについての平均保持時間±2分以内で溶出されること、4)明らかに重複する同位体パターンがないこと。得られたグリコペプチドの一覧はByonicによるアノテーションと一致し、これを相対的な数量化のためにさらに使用した。キュレートされたペプチドグリコフォームのそれぞれについて、MS1領域を統合し、同じN-グリコシル化部位に通知されるペプチドを組み合わせた。数量化の代替的なやり方として、所与のグリコシル化部位に通知されるグリコペプチドの組合せそれぞれについてペプチドスペクトルマッチ(PSM)の数を計数した。
【0629】
グリカン種の可視化に関しては、Consortium for Functional Glycomicsに従うことが推奨される。GlycoWorkbench(v2.1 build 146)を使用してグリカンカートゥーンを構築した。ネイティブMS分析のために、抗体の緩衝剤を、Vivaspin 500 30 kDa molecular weight cut-off filter(Sartorius Stedim Biotech、Germany)を使用し、15.000×gで10×15分間遠心分離することによって150mMの酢酸アンモニウムpH7.5と交換した。緩衝剤の交換後、150mMの酢酸アンモニウム、pH7.5を用いて抗体のおおよその濃度が3μMになるように調整した。
【0630】
ネイティブMSを、広範な質量範囲(EMR)を有するExactive Plus Orbitrap機器(Thermo Fisher Scientific、Bremen)で実施し、25mg/mLのCsI溶液を使用して較正した。トランスポート多重極およびイオンレンズの電圧設定を、必要とされるm/z範囲で良好な伝達がもたらされるように手動で最適化した。エレクトロスプレーイオン化を、金でコーティングされたガラスキャピラリーから、キャピラリー電圧1.2kVを使用して実現し、一方、MSを、200m/zで、ソースフラグメンテーション80V、ソース温度250℃、衝突エネルギー80V、および分解能35000で作動させた。HCD細胞に窒素を気体の圧力がおよそ3.7×10~10バールに達するまで添加することにより、分子の脱溶媒和をさらに実現した。質量を、電荷を質量の最低標準偏差に当てはめることによって電荷状態分布から算出した(一般には1Da未満の質量エラーが生じる)。
薬物動態/薬力学的試験
【0631】
IgAの薬物動態学/薬力学的性質に関して、BALB/cByJマウス(Jackson Laboratory)に抗体100μg(1mg/mL)をi.v.注射した。示されている時点で血液を収集し、遠心分離して血清を分離し、収集した。希釈した血清に対してELISAを実施した。
体内分布
【0632】
抗体をキレーターとコンジュゲートした後に放射性標識した。抗体を30kDaの遠心フィルターを通して12,000gで8分間、高速回転させた。その後、0.1Mの炭酸水素ナトリウム(pH8.2)500μLを遠心フィルターに添加し、12,000gで8分間、再度高速回転させた。遠心フィルターを新しい管の中にひっくり返し、1,000gで2分間遠心分離し、それにより、約40μLを得、それに炭酸水素ナトリウム緩衝剤60uLを添加し、その結果、100μLを得た。20倍モル過剰のp-SCN-Bn-DTPA(乾燥DMSO中2mg/mL(500ul中1mgを使用する))を添加し、30秒間ボルテックスし、37℃で1時間インキュベートした。次に、BnDTPA-IgG1-ジヌツキシマブまたはBnDTPA-IgA3.0min-ジヌツキシマブコンジュゲートをG50カラムに流し、0.5MのMES緩衝剤(pH5.4)を用いて、100μLの画分として12画分に溶出させた。5つの最も濃縮された画分をプールし、30kDaの遠心フィルターを通して12,000gで8分間、高速回転させた。0.5MのMES緩衝剤(pH5.4)を500μLの体積で遠心フィルターに添加し、12,300gでさらに8分間遠心分離した。遠心フィルターを新しい微量遠心管の中にひっくり返し、1,000gで2分間遠心分離した。タンパク質濃度をNanodropによって測定した。
【0633】
抗体を放射標識するために、インジウム溶液(55.5MBq)150uLを微量遠心管中のMES緩衝剤中抗体150ugに添加し、室温で45分間インキュベートした。反応混合物をG50カラムに流し、PBS(pH7.4)を用いて溶出させた。試料を微量遠心管中、100μLの画分(3滴)として16画分に収集し、活性を確認し、最高の画分を組み合わせた。
【0634】
放射標識した抗体の純度をiTLCストリップによって確認するために、合計2μLの反応混合物をiTLCにピペットで移し、2分間乾燥させた。体積0.1Mのクエン酸緩衝剤を、底部を覆う測定シリンダーに添加した。iTLCストリップを測定シリンダーに入れ、クエン酸緩衝剤を上部から約1cmのところまで添加した。ストリップをとり出し、ラジオTLCを使用してスキャンした。
in vivo i.pモデル
【0635】
マウスをUniversity of Utrechtの動物施設において維持した。CB17/lcr-Prkdcscid/lcrlcocrl(Charles river)バックグラウンドに対して戻し交配した雌hCD89 TgまたはhCD89 NTgマウスを使用して実験を行った。マウスを5つの群に入れ、12:12明暗サイクル下、食物および水を自由に入手可能にして飼育した。実験は全て国際的なガイドラインに従って実施し、また、国のCentral Authority for Scientific Procedures on Animals(CCD)および地域の実験動物福祉団体によって承認されたものであった。
【0636】
0日目に1×105個の量のA431-Luc2-Her2細胞をi.p.注入し、その後、6日目にpegG-CSF(Amgen)20ugをs.c.注射した。PBS中ルシフェリン(Promega)2.5mgをi.p.注射した10分後に生物発光(BLI)シグナルをU-OI system(MiLabs)で測定した。6日目に、マウスを異なる処置群にランダムに入れた。7日目に処置を開始し、IgA3.0min-Her2、10μgを10日間にわたって毎日i.p.注射した。示されている時点でBLIシグナルを測定した。
(実施例4)
結果
【0637】
種々の標的に対するIgA2分子、IgA3.0min分子、IgA3.0+分子、およびIgA4.0分子をコードするプラスミドをHEK293F細胞および/またはExpiCHO-S細胞にトランスフェクトした。
図5A~5Bに示されている通り、HEK293F細胞において異なるHC:LC:pAdv比を試験した場合、IgA3.0min-C47A8-CQ抗体は野生型IgA2(m1)-Her2と同様またはそれよりも良好なレベルで発現された。これはIgA3.0+にも当てはまる。
【0638】
産生細胞株間の比較として、IgA3.0-分子(例えば、それぞれ3つの異なる抗原、CD20、Her2、およびmCTLA4を標的とするIgA3.0min-Obi、IgA3.0min-Her2、IgA3.0min-mCTLA4)はHEK293F細胞およびExpiCHO-S細胞のどちらにおいても産生された。
図6A~6C。IgA3.0min分子の発現レベルはExpiCHO-S細胞においてより高く、上清に対するサンドイッチELISAによって決定して、ほぼ1g/Lに達した。さらに、異なるIgA3.0min分子(それぞれ種々の抗原、GD2、gp75、Her2、CD20を標的とするIgA3.0min-ch14.18、IgA3.0min-TA99、IgA3.0min-Her2、IgA3.0min-ObiはExpiCHO-S細胞において首尾よく産生された(
図7A~7D)。これらのデータから、工学的に操作されたIgA3.0minおよびIgA3.0+バリアントが産生系の選択に関係なく適当に発現されたことが示される。
【0639】
また、ExpiCHO-S細胞において発現された4種のグリコシル化されていないIgA4.0バリアントの全てについて、IgA3.0min抗体と同様の発現レベルが示された(
図8A~8D)。これにより、導入された突然変異のいずれによっても工学的に操作されたIgA4.0バリアントの発現が妨げられなかったこと、および完全にグリコシル化されていないIgA抗体が適当に発現されたことが示される。
【0640】
その後のIgA3.0minバリアント;IgA3.0min-Obi、(
図9A~9B))およびIgA3.0min-Her2(
図10A~10B)のカッパ軽鎖に依存的な精製、その後のそれらのそれぞれのSEC分離(IgA3.0min-Obiについての
図9C~9D、およびIgA3.0min-Her2を実証する
図10C~10D)により、野生型IgA2(m1)で尾部片のシステインに起因して通常見られる凝集体が存在しないことが明らかになった。このシステインの除去(IgA3.0+)または尾部片全体の除去(IgA3.0min)により、凝集が起こらなかった。同様に、IgA3.0minバリアントと同様に尾部片を欠くIgA4.0バリアント;IgA4.0-ObiのSEC分離では凝集体の形成は観察されなかった(
図11A~11B)。
【0641】
次に、IgA3.0+-Obi分子およびIgA3.0min-Obi分子の結合能をDaudi細胞に対するフローサイトメトリーによって決定した。予測通り、IgA3.0+-Obi抗体ならびにIgA3.0min-Obi抗体のどちらもDaudi細胞上のCD20に結合することができ、これにより、それらのFab断片が適当にフォールディングされていることが示された(
図12A~12E)。次に、完全にグリコシル化されていないIgA4.0バリアントがそれでも標的抗原に結合することができるかどうかを評価するために、CD20が補われたSKBR3細胞を使用してフローサイトメトリーアッセイを実施した(
図15)。これらのFACS結合データから、工学的に操作されたIgA4.0バリアント(IgA4.0_NT-Obi、IgA4.0_NQ-Obi、IgA4.0_NG-Obi、IgA4.0_NG-Obi、およびIgA4.0_NLT-TIS-Obi)がCD20ならびに工学的に操作されたIgA3.0min分子に結合したことが示され、これにより、Fab領域のフォールディングが工学的操作の影響を受けないことが確認される。
【0642】
Fc部分がなおFcαRに結合する能力を保持するかどうかを評価するために、IgA-FcαR結合アッセイを実施し、IgAをコーティングしたプレートに好中球を結合させ、その後、一連の洗浄を行った。多数回の洗浄後に、好中球はなおIgA分子に結合することができ、IgA3.0min-ObiについてはIgA2(m1)と同様またはそれよりも良好な結合プロファイルが示された(
図13)。好中球に提示されるIgA分子の量が等価であることを確実にするために、IgA検出ステップを実行し、それによりIgA2(m1)およびIgA3.0minの抗体の濃度が等しいことが示された(
図14)。
【0643】
工学的に操作されたIgA分子が機能的なものであり、PMN媒介性ADCCを誘導することができることを実証するために、クロム放出アッセイを実施した。SKBR3-CD20細胞に対して、IgA3.0min-Her2抗体によりADCCをIgA2(m1)-Her2と同じくらい良好にまたはそれよりも良好に誘導することができた(
図16A)。さらに、ExpiCHO-S細胞において産生されたIgA3.0min-Obi抗体により、Daudi細胞およびRamos細胞のどちらにおいてもHEK293Fにより産生された抗体と同じくらい効率的にADCCが誘導された(
図16B~16C)。さらに、完全にグリコシル化されていないIgA4.0バリアントでは、ADCCがIgA3.0min-Obiと同様のレベルまで誘導され(
図16D)、これにより、死滅に関して完全な機能性が示される。これは、機能性が重度に損なわれるまたは除去されるグリコシル化されていないIgG1(Jefferis 2009)とは全く対照的である。これらのデータから、IgAバリアントを工学的に操作するために導入された改変にもかかわらず、IgA3.0minならびにIgA4.0のどちらも、なおADCCの誘導に関する機能を保持することが示される。
【0644】
工学的に操作されたIgA3.0minバリアントおよびIgA4.0バリアントの熱安定性がより高いかどうかを調べるために、SYPRO熱シフトを実行した。抗体を、サーマルサイクラー中、SYPRO Orangeの存在下でその温度をゆっくりと上昇させながらインキュベートした。タンパク質がアンフォールディングされると、SYPRO Orangeが疎水性ポケットに結合することができ、蛍光シグナルを検出することができる。
図17Aは、2種の野生型IgA2(m1)抗体と、それに対して2種の工学的に操作されたIgA3.0min分子および4種の工学的に操作されたIgA4.0抗体の熱安定性プロファイルを示す。曲線のシフトから、IgA3.0minバリアントおよびIgA4.0バリアントが野生型IgA2(m1)よりも高温でより安定であることが示される。非線形回帰分析によって算出されたTm値を、評価を行った異なるIgA分子について平均した(
図17B)。どちらの型の工学的に操作されたIgAバリアント(IgA3.0minおよびIgA4.0)でも、野生型IgA2(m1)と比較して高温での安定性の改善が示された。
【0645】
観察された安定性を機能性に変換するために、抗CD20 IgA抗体;野生型IgA2およびIgA3.0min-Obiをある特定の温度まで加熱し、Raji細胞を使用してクロム放出ADCCにおいて試験した(
図17C)。シグナルを4℃でインキュベートした抗体である対照に対して正規化した。熱に曝露させた抗体の死滅効率は、野生型IgA2(m1)と工学的に操作されたIgA3.0min/IgA4.0分子の間で異なった。野生型IgA2(m1)では47℃またはそれよりも高い温度への曝露で漸減プロファイルが示され、一方、IgA3.0min/IgA4.0分子では、71℃への曝露後になお50%を超える活性が示された。試験した3種の抗体の全ての活性が83℃よりも高い温度で失われた。これにより、機能性に関して抗体の安定性が重要であること、および野生型と比べた工学的に操作されたIgAバリアントの熱安定性の改善が有利であることが示される。
【0646】
工学的に操作されたIgA3.0min分子およびIgA4.0分子は野生型IgA2(m1)と比較してN結合グリコシル化の部位が少ないまたはそれを有さないので、PNGase Fアッセイを実施して残りのN-グリコシル化を可視化した(
図18)。このために、IgA分子を、最内側のGlcNacとアスパラギンの間を切断することによって全てのN結合グリコシル化を除去するPNGase Fを用いて処理した。その後、試料を還元性SDS-PAGEゲルに流した。予測通り、野生型IgA2(m1)(HEK293Fにより産生されたもの)では4つのN結合グリカンが存在することに起因して分子量の主要なシフトが示され、一方、IgA3.0min-Obi(HEK293Fにより産生されたもの)のシフトは単一のグリコシル化事象のみであることに起因して軽微なものである。さらに、グリコシル化されていないIgA4.0バリアント(ExpiCHO-Sにより産生されたもの)ではシフトは全く示されず、これにより、この抗体がグリコシル化されていないことが示される。
【0647】
グリコシル化プロファイルをより詳細に評価するために、抗体を質量分析によって分析した。野生型IgA2(m1)-Her2およびIgA3.0min-Her2のグリコシル化プロファイル(
図19A~19B)を分析した。MALDI-TOF-MS分析により、IgA2(m1)-Her2ではいくつかのN-グリカン種が検出され、これは、4つのN結合グリコシル化モチーフの全体的なグリコシル化を反映する。さらに、LC/MS2分析から得られたIgA3.0min-Her2プロファイルのピークは残った単一のN結合グリコシル化モチーフのみに由来し、したがって、他の部位は改変されていないので、同様に全体的なグリコシル化プロファイルを反映する。LC/MS2により、HEK293FおよびExpiCHO-S抗体産生系に由来する抗体と比較した場合、グリコシル化プロファイルの実質的な差異が観察された(
図19C)。ExpiCHO-Sでは、グリコシル化された抗体の大多数(>50%)が二分岐GlcNacで終結し、一方、HEK293Fでは、ハイブリッドまたは複合型のグリコシル化種のより多様なアレイが示された。好ましくない遊離のガラクトースはHEK293Fにより産生された抗体においてExpiCHO-Sにより産生された抗体よりも著しく多く存在した。これらの結果から、ExpiCHO-Sにより産生された抗体はより少ない異種遺伝子型グリコシル化を示し、ASGPRにより誘導されるクリアランスに関して、より良好な半減期特徴を有することが示された。グリコシル化事象がIgA4.0分子に存在するかどうかを決定するために、ネイティブMS手法をとり、完全な、消化されていない抗体を分析した。4種全てのIgA4.0バリアントで理論的なペプチド骨格に極めて近い質量が示された(
図19D~19G)。4種全てのバリアントの間で36Daの一貫した減少が存在し、一般にはグリカン当たり1500~2500Daであるので、これをN-グリカン種に起因するものとすることはできない。観察された質量の差異は、36Daを構成する2つのピログルタミン酸の形成である可能性が高い。したがって、この分析により、IgA4.0抗体バリアントがそれらの骨格にN-グリカンを欠くことが示され、これにより、in vitroアッセイにおいて、グリコシル化されていないIgA抗体が完全に機能的であることが実証される。
【0648】
工学的に操作されたIgA3.0バリアントおよびIgA4.0バリアントにグリコシル化部位が存在しないことにより血清中半減期が長くなるかどうかを決定するために、薬物動態試験をセットアップした。BALB/cマウスに抗体100μgをi.v.注射し、血清試料を示されている時点でELISAによって分析した。フォーマットが異なる2種の抗体、ジヌツキシマブおよびオビヌツズマブを評価した。検出された血清中の野生型IgG1-ジヌツキシマブのレベルは、急速に取り除かれた野生型IgA2-ジヌツキシマブのレベルよりも高かった(
図20A)。24時間時点でのIgA2とIgA3.0minの血清中レベルの差異は、注射後最初の1時間以内のASGPRによるクリアランスに起因し得る。これにより、IgA3.0minでは、ASGPRによるN-グリコシル化依存性クリアランスが少ないことに起因して、分布相が明白でないことが実証された。データから、IgA3.0min-ジヌツキシマブ抗体では野生型IgA2-ジヌツキシマブと比較して延長した血清中半減期が観察されたことが示される。Ig4.0-オビヌツズマブの血清中半減期を評価すると、そのIgA3.0min対応物であるIgA3.0min-オビヌツズマブと比較して血清中半減期の明らかな延長が観察される(
図20B)。これにより、工学的に操作されたIgAバリアントがそれらの野生型対応物IgAと比べて延長した血清中半減期を有し、したがって、より少ない抗体を使用して腫瘍に対する同様の効果を与えることができることが実証される。
【0649】
IgA3.0min抗体が腫瘍に分布するかどうかを定義するために、抗体を111インジウムで放射標識してそれらをin vivoでモニタリングする体内分布実験を実施した。このために、GD2を発現するIMR-32神経芽細胞腫細胞をNSGマウスに皮下注射した。42日間成長させた後、マウスに放射標識した野生型IgG1-ジヌツキシマブおよびIgA3.0min-ジヌツキシマブを静脈内注射した。マウスを注射の24時間後および48時間後にスクリーニングした(
図21A~21B)。肝臓および腫瘍のどちらにおいても放射性シグナルが観察され、これにより、抗体が腫瘍に浸潤することが示される。肝臓シグナルは、異化される血流からの蓄積した抗体を表す。腫瘍/肝臓比を決定することにより、腫瘍特異的シグナルがバックグラウンドに対して補正される。最初、24時間後に観察されたシグナルは同様であるが、48時間の時点ではIgA3.0min-ジヌツキシマブシグナルがそのIgG1対応物よりも腫瘍特異的である(
図22)。
【0650】
次に、IgA3.0minのin vivoでの有効性を決定した。このために、hCD89トランスジェニックおよび非トランスジェニックSCIDも用いて確立された腫瘍モデルを使用した(Brandsma, Ten Broeke et al. 2015)。マウスにA431-luc2-Her2細胞をi.p.注射した。腫瘍が確立されたら、マウスを、PBSまたはIgA3.0min-Her2のいずれかをi.v.投与することによって処置した(
図23)。示されている時点で腫瘍成長をBLIによってモニタリングした。腫瘍はPBS群では指数関数的な成長を示した。しかし、IgA3.0min-Her2で処置したマウスでは腫瘍の成長は示されず、58日後にがんが制御され、これにより、工学的に操作されたIgAバリアントの有効性が実証される。
【0651】
結果から、野生型IgA2(m1)と比較して、全ての工学的に操作されたIgAバリアント;IgA3.0+、IgA3.0min、およびIgA4.0で改善された生物薬剤学的特性が示される一方でそれらの機能性がなお保持されることが実証された。工学的に操作されたIgAバリアントは高レベルで発現され、凝集を伴わずに精製することができ、その結果、in vitroならびにin vivoのどちらにおいても標的抗原に対する頑強な結合および標的細胞の効率的な死滅をなお示す純粋かつより安定なIgA抗体がもたらされる。
表3に、工学的に操作されたIgAバリアントの重鎖定常領域の例示的なアミノ酸配列および核酸配列を列挙する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【0652】
表4に工学的に操作されたIgAバリアントのカッパ軽鎖定常ドメインの例示的なアミノ酸配列および核酸配列を列挙する。
【表4】
表5に、工学的に操作されたIgAバリアントの可変重鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列の例示的な一覧を列挙する。
【表5-1】
【表5-2】
表6に、工学的に操作されたIgAバリアントの可変軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列の例示的な一覧を列挙する。
【表6】
表7に、工学的に操作されたIgAバリアントの可変重鎖の例示的なアミノ酸配列および核酸配列を列挙する。CDR領域が太字で示されている。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
表8に、工学的に操作されたIgAバリアントの可変軽鎖の例示的なアミノ酸配列および核酸配列を列挙する。CDR領域が太字で示されている。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
表9に、異なる抗原に結合することができる例示的なIgAバリアント抗体を列挙する。この表には、IgAバリアント抗体の可変軽鎖、可変重鎖、IgA重鎖定常領域およびカッパ軽鎖定常領域の配列の例示的な対形成が示されている。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
表10に、WT IgA重鎖定常領域のCH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインの例示的な配列を列挙する。
【表10】
表11
【表11-1】
【表11-2】
【0653】
本開示の好ましい実施形態が本明細書において示され、記載されているが、そのような実施形態が単に例として提供されていることは当業者には明白であろう。当業者は、本開示から逸脱することなく、多数の変形、変化および置換をすぐに思いつくであろう。本明細書に記載の実施形態の種々の代替、またはそこに記載のこれらの実施形態もしくは態様の1つまたは複数の組合せを本開示の実施に使用することができることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲により本開示の範囲が定義され、それにより、これらの特許請求の範囲内に入る方法および構造ならびにそれらの等価物が包含されるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】