IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロ モーション インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】間隙を有する振動式メータ
(51)【国際特許分類】
   G01N 9/00 20060101AFI20220601BHJP
   G01N 11/16 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G01N9/00 C
G01N9/00 B
G01N11/16 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557280
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 US2019023851
(87)【国際公開番号】W WO2020197543
(87)【国際公開日】2020-10-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド, ジョージ アレクサンダー
(57)【要約】
振動式メータは、長手方向と、長手方向に垂直な平面における断面領域とを含む振動素子を備える。振動素子は、振動素子の長手方向に垂直な平面内で第1の位置と第2の位置との間を動く。電子機器は、第1の位置と第2の位置との間で振動素子を駆動するように動作可能である。境界要素および振動素子は、境界要素と振動素子との間の平均間隙距離を有する流体増速間隙を画定する。振動素子は、間隙周縁長を有する流体増速間隙に面する間隙対向周縁区画を含む。実施形態では、間隙周縁長と平均間隙距離との比は、少なくとも160である。さらなる実施形態では、平均間隙距離は0.25 mm以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(228)、および、前記長手方向(228)に垂直な平面(231)内の断面領域(230)を含む振動素子(202,402,502,702,1002)であって、前記長手方向(228)に垂直な前記平面(231)内の第1の位置(302)と第2の位置(304)との間で動く、振動素子(202,402,502,702,1002)と、
前記振動素子(202,402,502,702,1002)に隣接する境界要素(232,432,532,732,1032)と、
前記第1の位置(302)と前記第2の位置(304)との間で前記振動素子(202,402,502,702,1002)を駆動するように動作可能な電子機器(118)とを備え、
前記境界要素(232,432,532,732,1032)および前記振動素子(202,402,502,702,1002)は、前記長手方向(228)に垂直な前記平面(231)内に流体増速間隙(308,408,508,754,1008)を規定し、前記流体増速間隙(308,408,508,754,1008)は、前記振動素子(202,402,502,702,1002)が中立位置にあるときの前記境界要素(232,432,532,732,1032)と前記振動素子(202,402,502,702,1002)との間の平均間隙距離(309,409,509)を有し、前記振動素子(202,402,502,702,1002)は、間隙周縁長を有する、前記流体増速間隙(308,408,508,754,1008)に面する前記平面(231)の前記断面領域(230)の周りの間隙対向周縁区画(211)を有し、前記間隙周縁長と前記平均間隙距離(309,409,509)との比は少なくとも160である、振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項2】
長手方向(228)、および、前記長手方向(228)に垂直な平面(231)内の断面領域(230)を含む振動素子(202,402,502,702,1002)であって、前記長手方向(228)に垂直な前記平面(231)内の第1の位置(302)と第2の位置(304)との間で動く、振動素子(202,402,502,702,1002)と、
前記振動素子(202,402,502,702,1002)に隣接する境界要素(232,432,532,732,1032)と、
前記第1の位置(302)と前記第2の位置(304)との間で前記振動素子(202,402,502,702,1002)を駆動するように動作可能な電子機器(118)とを備え、
前記境界要素(232,432,532,732,1032)および前記振動素子(202,402,502,702,1002)は、前記長手方向(228)に垂直な前記平面(231)内に流体増速間隙(308,408,508,754,1008)を規定し、前記流体増速間隙(308,408,508,754,1008)は、前記振動素子(202,402,502,702,1002)が中立位置にあるときの前記境界要素(232,432,532,732,1032)と前記振動素子(202,402,502,702,1002)との間の平均間隙距離(309,409,509)を有し、前記平均間隙距離(309,409,509)は0.25 m以下である、振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項3】
前記平均間隙距離(309,409,509)は、0.2 mm以下である、請求項1または2に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項4】
前記振動素子(202)は第1の歯部(234a)であり、前記境界要素(232)はハウジング(204)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の振動式メータ(200)。
【請求項5】
前記振動素子(1002)は第1の歯部(1034a)であり、前記境界要素(1032)は第2の歯部(1034b)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の振動式メータ(1000)。
【請求項6】
前記振動素子(402)は、シリンダ(116)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の振動式メータ(400)。
【請求項7】
前記振動素子(502,702)は、平面共振器(550)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の振動式メータ(500,700)。
【請求項8】
前記振動式メータ(200,400,500,700,1000)の密度感度は、前記流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項9】
前記流体が気体である場合、粘度感度が1.949×10-7μPa.sより大きい、請求項1~8のいずれか一項に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項10】
請求項1または2のいずれか一項に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)を使用して流体の粘度または密度を決定する方法であって、
ドライバ(112)および電子機器(118)を使用して前記振動素子(202,402,502,702,1002)を第1の位置(302)と第2の位置(304)との間で駆動することと、
センサおよび前記電子機器(118)を使用して前記振動素子(202,402,502,702,1002)の固有振動数を決定することと
を含む、方法。
【請求項11】
平均間隙距離(309,409,509)が0.2 mm以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記振動素子(202)は第1の歯部(234a)であり、前記境界要素(232)はハウジングである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記振動素子(1002)は第1の歯部(1034a)であり、前記境界要素(1032)は第2の歯部(1034b)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記振動素子(202,402,502,702,1002)がシリンダ(116)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項15】
前記振動素子(502)は平面共振器(550)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項16】
前記振動式メータ(200,400,500,700,1000)の密度感度は、前記流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きい、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記流体が気体である場合、粘度感度が1.949×10-7μPa.sより大きい、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記振動素子(202,402,502,702,1002)が前記第1の位置(302)と前記第2の位置(304)との間で駆動される駆動周波数は600 Hz未満である、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1または2に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)を組み立てるための方法であって、
振動素子(202,402,502,702,1002)を提供することと、
境界要素(232,432,532,732,1032)を提供することと、
前記振動素子(202,402,502,702,1002)に隣接する前記境界要素(232,432,532,732,1032)を結合して流体増速間隙(308,408,508,754,1008)を画定することと、
電子機器(118)を前記振動式メータ(200,400,500,700,1000)に結合することと
を含む、方法。
【請求項20】
平均間隙距離(309,409,509)が0.2 mm以下である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記振動素子(202)は第1の歯部であり、前記境界要素(232)はハウジングである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記振動素子(1002)は第1の歯部(1034a)であり、前記境界要素(1032)は第2の歯部(1034b)である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
前記振動素子(202,402,502,702,1002)がシリンダ(116)である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項24】
前記振動素子(502)は平面共振器(550)である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項25】
前記振動式メータ(200,400,500,700,1000)の密度感度は、前記流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きい、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記流体が気体である場合、粘度感度が1.949×10-7μPa.sより大きい、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記に説明する実施形態は、振動型メータに関し、より詳細には、密度計および粘度計に関する。
【背景技術】
【0002】
密度計および粘度計を含む振動式メータは、流体の密度または粘度を測定するために使用される重要な器具である。振動式メータは、被試験流体に曝されるフォーク、シリンダ、または平面共振器などの振動素子を備えることができる。振動式メータの一例は、入口端部が既存のパイプラインまたは他の構造に結合され、出口端部が自由に振動するように実装されたシリンダカンチレバーを含む。シリンダを共振において振動させることができ、共振応答周波数を測定することができる。被試験流体の密度は、振動素子の低減された応答周波数を測定することによって決定することができる。周知の原理によれば、振動素子の共振周波数は、導管に接触する流体の密度と逆に変化する。
【0003】
図1は、従来技術の振動式メータ100を示している。振動式メータ100は、例えば液体または気体などの流体の密度を測定するように構成することができる。振動式メータ100は、少なくとも部分的にハウジング102内に配置された振動素子104を有するハウジング102を含む。ハウジング102は、振動素子104が振動するときに流体圧力を保持するのに役立つ。ハウジング102の一部は、振動素子104を示すように切り取られている。例では、振動式メータ100は、既存のパイプライン内に一列に配置され得る。しかしながら、さらなる例では、ハウジング102は、流体サンプルを受け入れるための開口を有する閉鎖端部を備えてもよい。したがって、フランジは図示されていないが、多くの場合、ハウジング102または振動素子104は、振動式メータ100をパイプラインまたは同様の流体送達装置に流体密に、動作可能に結合するためのフランジまたは他の部材を含むことができる。振動式メータ100の例では、振動素子104は、第1の端部106においてハウジング102に片持ち梁式に実装されている。振動素子104は、第2の端部108において自由に振動する。
【0004】
例示的な振動式メータ100は浸漬可能であり、これは、測定対象の流体が振動素子104の周囲全体に見られることを意味する。図示の例によれば、振動素子104は、第1の端部106の近くに複数の流体開口110を含むことができる。流体開口110は、振動式メータ100に入る流体の一部がハウジング102と振動素子104との間を流れることを可能にするように設けることができる。他の例では、被試験流体を振動素子104の外面に露出させるために、ハウジング102内に開口を設けることができる。しかしながら、さらなる例では、流体は、第1の端部106付近の金属加工品のチャネルを通って振動式メータに入ることができる。流体は、ハウジング102と振動素子104との間の長手方向長さに沿って第2の端部108まで流れることができ、次いで振動素子104の内部を介して第1の端部106に向かって逆流することができる。このようにして、流体は、振動素子104の内面および外面に接触することができる。これは、より大きい表面積が気体に曝されるため、被試験流体が気体を含む場合に有用である。
【0005】
図1には、シリンダ116内に位置付けられたドライバ112および振動センサ114がさらに示されている。ドライバ112および振動センサ114は、コイルを備えるものとして示されているが、他の実施態様も可能である。コイルに電流が与えられると、振動素子104内に磁場が誘起され、振動素子104が振動する。逆に、振動素子104の振動は、振動センサ114内の電圧を誘起する。ドライバ112は、例えば単純な曲げ、ねじり、半径方向、または結合型を含む複数の振動モードのうちの1つにおけるその共振周波数のうちの1つにおいて振動素子104を振動させるために、メータ電子機器118から駆動信号を受信する。振動センサ114は、振動素子104が振動している周波数を含む、振動素子104の振動を検出し、処理のために振動情報をメータ電子機器118に送信する。振動素子104が振動すると、振動素子の壁に接触する流体、およびシリンダから短い距離をおいた流体が、振動素子104と共に振動する。振動素子104に接触する流体の付加質量は、共振周波数を低下させる。振動素子104の新しい、より低い共振周波数は、流体の密度を決定するために使用される。共振応答または品質係数を使用して、流体の粘度を決定することもできる。
【0006】
例示的な振動式メータ100では、例えば、流体が気体である場合など、測定対象の流体が低密度または低粘度を有する場合、密度感度および粘度感度は不適切であり得る。この問題に対する従来の解決策の1つは、振動素子104の壁厚を薄くし、したがってより軽くすることである。しかしながら、これは、振動素子104を製造することをより困難にし、より容易に損傷する可能性があるため、堅牢性を低下させる。
【0007】
低密度流体を測定するときにより高い密度感度および/またはより低い粘度感度を有する振動式メータが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第1の実施形態では、振動式メータが提供される。振動式メータは、ある長手方向、および、当該長手方向に垂直な平面内の断面領域を含む振動素子であって、長手方向に垂直な平面内の第1の位置と第2の位置との間で動く振動素子と、振動素子に隣接する境界要素と、第1の位置と第2の位置との間で振動素子を駆動するように動作可能な電子機器とを備え、境界要素および振動素子は、長手方向に垂直な平面内に流体増速間隙を規定し、流体増速間隙は、振動素子が中立位置にあるときの境界要素と振動素子との間の平均間隙距離を有し、振動素子は、間隙周縁長を有する、流体増速間隙に面する平面の断面領域の周りの間隙対向周縁区画を有し、間隙周縁長と平均間隙距離との比は少なくとも160である。
【0009】
第2の実施形態では、振動式メータが提供される。振動式メータは、ある長手方向、および、当該長手方向に垂直な平面内の断面領域を含む振動素子であって、長手方向に垂直な平面内の第1の位置と第2の位置との間で動く振動素子と、振動素子に隣接する境界要素と、第1の位置と第2の位置との間で振動素子を駆動するように動作可能な電子機器とを備え、境界要素および振動素子は、長手方向に垂直な平面内に流体増速間隙を規定し、流体増速間隙は、振動素子が中立位置にあるときの境界要素と振動素子との間の平均間隙距離を有し、平均間隙距離は0.25 mm以下である。
【0010】
第3の実施形態では、第1の実施形態または第2の実施形態によって定義される振動式メータを使用して流体の粘度または密度を決定する方法が提供される。本方法は、ドライバおよび電子機器を使用して振動素子を第1の位置と第2の位置との間で駆動することと、センサおよび電子機器を使用して振動素子の固有振動数を決定することとを含む。
【0011】
第4の実施形態では、第1の実施形態または第2の実施形態による振動式メータを組み立てるための方法を提供する。方法は、振動素子を提供することと、境界要素を提供することと、振動素子に隣接する境界要素を結合して流体増速間隙を画定することと、電子機器を振動式メータに結合するステップとを含む。
【0012】
態様
一態様において、平均間隙距離は、0.2 mm以下であってもよい。
【0013】
一態様によれば、振動素子は第1の歯部であってもよく、境界要素はハウジングであってもよい。
【0014】
一態様によれば、振動素子は第1の歯部であってもよく、境界要素は第2の歯部であってもよい。
【0015】
一態様によれば、振動素子は、シリンダであってもよい。
【0016】
一態様によれば、振動素子は平面共振器であってもよい。
【0017】
一態様によれば、振動式メータの密度感度は、流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きくてもよい。
【0018】
一態様によれば、流体が気体である場合、粘度感度は1.949×10-7μPa.sより大きくてもよい。
【0019】
一態様において、平均間隙距離は、0.2 mm以下であってもよい。
【0020】
一態様によれば、振動素子は第1の歯部であってもよく、境界要素はハウジングであってもよい。
【0021】
一態様によれば、振動素子は第1の歯部であってもよく、境界要素は第2の歯部であってもよい。
【0022】
一態様によれば、振動素子は、シリンダであってもよい。
【0023】
一態様によれば、振動素子は平面共振器であってもよい。
【0024】
一態様によれば、振動式メータの密度感度は、流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きくてもよい。
【0025】
一態様によれば、流体が気体である場合、粘度感度は1.949×10-7μPa.sより大きくてもよい。
【0026】
一態様によれば、振動素子が第1の位置と第2の位置との間で駆動され得る駆動周波数は、600 Hz未満である。
【0027】
一態様において、平均間隙距離は、0.2 mm以下であってもよい。
【0028】
一態様によれば、振動素子は第1の歯部であってもよく、境界要素はハウジングであってもよい。
【0029】
一態様によれば、振動素子は第1の歯部であってもよく、境界要素は第2の歯部であってもよい。
【0030】
一態様によれば、振動素子は、シリンダであってもよい。
【0031】
一態様によれば、振動素子は平面共振器であってもよい。
【0032】
一態様によれば、振動式メータの密度感度は、流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きくてもよい。
【0033】
一態様によれば、流体が気体である場合、粘度感度は1.949×10-7μPa.sより大きくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
同じ参照番号は、すべての図面上で同じ要素を表す。図面は必ずしも原寸に比例しないことを理解されたい。
図1】従来技術の振動式メータ100を示す図である。
図2】一実施形態による振動式メータ200を示す図である。
図3A】一実施形態による振動式メータ200を示す図である。
図3B】一実施形態による振動式メータ200を示す図である。
図3C】一実施形態による振動式メータ200を示す図である。
図4A】一実施形態による振動式メータ400を示す図である。
図4B】一実施形態による振動式メータ400を示す図である。
図5A】一実施形態による振動部材502を示す図である。
図5B】一実施形態による平面共振器550を示す図である。
図6】一実施形態による、無摩擦ばね・質量トロリーシステム600を示す図である。
図7A】一実施形態による振動式メータ700を示す図である。
図7B】一実施形態による振動式メータ700を示す図である。
図7C】一実施形態による振動式メータ700を示す図である。
図8A】一実施形態によるグラフ800を示す図である。
図8B】一実施形態によるグラフ850を示す図である。
図9A】一実施形態によるグラフ900を示す図である。
図9B】一実施形態によるグラフ950を示す図である。
図10】一実施形態による振動式メータ1000を示す図である。
図11】一実施形態による方法1100を示す図である。
図12】一実施形態による方法1200を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図2図12および以下の説明は、当業者に振動式メータの実施形態の最良の形態を作成および使用する方法を教示するための特定の例を示している。本発明の原理を教示するために、いくつかの従来の態様は簡略化または省略されている。当業者であれば、本明細書の範囲内に入るこれらの例からの変形形態を理解するであろう。当業者であれば、下記に説明する特徴を様々な方法で組み合わせて振動式メータの複数の変形を形成することができることを理解するであろう。その結果、下記に説明する実施形態は、下記に説明する具体例に限定されるものではなく、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるものである。
【0036】
図2は、一実施形態による振動式メータ200の切り取り斜視図を示す。図3A図3B、および図3Cは、図2の231と記された線における振動式メータ200の断面図を示す。振動式メータ200は、振動素子202と、ハウジング204と、境界要素232と、メータ電子機器(図示せず)とを含む。振動式メータ200は、ドライバ、センサ、1つまたは複数の開口、および他の特徴部をさらに備えてもよいが、これらの特徴部は、図面を単純化するために図示されていない。
【0037】
振動素子202は、長手方向228と、長手方向228に垂直な平面231における断面領域230とを含む。振動式メータ200の例では、振動素子202は、部分円形断面領域230を有する2つのフォーク歯部のうちの少なくとも一方を含む。例では、断面領域230は半円形であってもよい。しかしながら、さらなる例では、断面領域230は、円の小区画を含む周縁を含んでもよい。
【0038】
しかしながら、さらなる実施形態では、振動素子202は、異なる形状のフォーク歯部を含んでもよい。例えば、振動素子202は、実質的に平坦な形状を含む1つまたは複数の歯部を含んでもよい。いくつかの例では、実質的に平坦な形状は、円の2つの平行なコードの間に形成された断面を含むことができる。
【0039】
さらなる実施形態では、振動素子は、1つまたは複数のフォーク歯部を含まなくてもよい。例えば、図4Aは、一実施形態による振動式メータ400の断面図を示している。振動式メータ400は、振動部材402と、ハウジング404とを備える。振動部材402およびハウジング404は各々、振動式メータ100と同様に円筒形状を有する。
【0040】
さらなる実施形態では、振動素子は、代わりに平面共振器を備えてもよい。例えば、図59Aは、振動素子502を備える平面共振器550の上面図を示し、図5Bは、図5Aの双頭矢印を有する線でマークされた、長手方向228に垂直な平面531における振動式メータ500の断面図を示す。
【0041】
振動式メータ500は、平面共振器550の振動素子502と、ハウジング504とを備える。振動素子502は、実質的に平坦であり、結合端部503a(結合は図示せず)において振動式メータ500に結合することができ、駆動されると振動端部503bにおいて自由に振動することができる。例では、振動端部503bは、当業者には理解されるように、共に振動するか、または互いに反対に動く1つまたは複数のパドル部をさらに含むことができる。
【0042】
当業者には理解されるように、振動素子202の他の実施形態も可能である。
【0043】
図3A図3Cに戻ると、振動素子202が、長手方向228に垂直な平面231内の第1の位置302と第2の位置304との間で振動することが分かる。図3A図3B、および図3Cは、異なる位置にある振動素子202を有する振動式メータ200を示す。図3Bは、フォーク歯部間の最大分離位置である第2の位置304にある振動素子202を示し、図3Cは、フォーク歯部間の最小分離位置である第1の位置302にある振動素子202を示す。図3Aは、中立位置または静止位置306、すなわち、振動素子202が振動するように駆動されていないときに振動素子202がある位置にある振動素子を示す。
【0044】
振動式メータ200は、振動素子に隣接する境界要素232を含む。境界要素232は、振動素子202の長手方向228に垂直な平面231の断面領域における、境界要素232と振動素子202との間の流体の境界を提供する。振動素子202は、振動素子202と境界要素232との間の距離が振動素子の振動に伴って変化するように、境界要素232に向かって振動し、境界要素から外方に向かって振動する。
【0045】
振動式メータ200のこの実施形態において、境界要素232は、振動素子202の外側半円形輪郭を囲む円筒形ハウジング部材204である。しかしながら、さらなる実施形態では、境界要素は異なる形状を含んでもよい。例えば、振動式メータ500は、矩形ハウジング部材504である境界要素532を含む。さらなる例では、境界要素は、下記にさらに説明するように、振動素子202の第2の歯部を含むことができる。
【0046】
振動素子202が振動すると、流体は振動素子202と境界要素232との間の領域を出入りして動く。従来の振動式メータでは、振動素子と任意の境界要素との間の距離は非常に大きく、結果、振動に応答して振動素子の周りを動く流体の平均速度は低かった。対照的に、境界要素232および振動素子202は、長手方向228に垂直な平面231内に流体増速間隙308を画定する。流体増速間隙308は、下記にさらに説明するように、振動素子が振動しているときに流体の平均速度を実質的に増加させるのに十分に狭くなるように構成される。例えば、図3Aに見られるように、流体増速間隙308は、振動素子202の弧とハウジング204の弧との間のC字形の断面領域を含む。
【0047】
しかしながら、別様に構成された振動素子およびハウジングを含むさらなる例では、流体増速間隙308は他の形状を含んでもよい。例えば、振動式メータ400は、円筒形振動素子402の周囲全体に環状形状を形成する流体増速間隙408を含む。反対に、振動式メータ500は、振動部材502の上下の長方形を含む流体増速間隙508を含む。
【0048】
流体増速間隙308,408,508は、振動素子202,402,502が中立位置にあるときに境界要素232,432,532と振動素子202,402,502との間の平均間隙距離309,409,509を有する。例えば、振動式メータ200が中立位置にある図3Aから分かるように、平均間隙距離309は、振動素子202およびハウジング204の隣接する円弧の最も近い点の間の距離を平均することによって決定することができる。例では、流体増速間隙308,408,508に沿った平均間隙距離309は、低い標準偏差を有することができる。言い換えれば、振動素子202,402,502と境界要素232,432,532との間の距離は、実質的に同じであってもよい。
【0049】
例では、流体増速間隙308,408,508は、振動素子202,402,502の周縁の一部または全体を囲むことができる。
【0050】
振動素子202が2つの歯部を含む例では、流体増速間隙308は、図3Aにおいて310とマークされた、第2の歯部の周りの第2の領域をさらに含むことができる。
【0051】
振動素子202,402,502は、間隙周縁長を有する、流体増速間隙308,408,508に面する平面231の断面領域230の周りの間隙対向周縁区画を含む。
【0052】
例えば、図3Aの実施形態では、流体増速間隙308に面する振動素子202の部分的に円形の外側は、間隙対向周縁区画211を含む。間隙周縁長は、間隙対向周縁区画の長さである。図3Aの例では、間隙周縁長は、間隙対向周縁区画211を含む劣弧の長さに等しい。
【0053】
しかしながら、さらなる例では、間隙対向周縁区画は、異なる形状をとってもよい。例えば、振動式メータ400の実施形態において、間隙対向周縁区画411は、円筒形振動部材402の全周を含むことができる。また、振動式メータ500の実施形態において、間隙対向周縁は、ハウジング要素504に面する両方の長辺に沿って、振動素子502の幅Wに沿った周縁を含んでもよい。
【0054】
従来の実施形態では、振動素子と境界要素との間の間隙のサイズは0.5 mm以上であった。フォークを含む振動素子202を有する例示的な実施形態では、典型的な歯部直径は25.4 mmであり、約40 mmの間隙周縁長に対応する。したがって、従来のフォーク振動式メータが含む、間隙周縁長と平均間隙距離との比は80であった。しかしながら、振動素子402が円筒を含む例示的な実施形態では、典型的な円筒直径は20 mmであり、約63 mmの間隙周縁長に対応する。したがって、従来の円筒振動式メータが含む、間隙周縁長と平均間隙距離との比は125であった。
【0055】
本出願の実施形態では、間隙周縁長と平均間隙距離との比は、少なくとも160である。例えば、直径25.4 mm、間隙サイズ0.25 mmの歯部型振動素子202の場合、間隙周縁長と平均間隙距離との比は約160である。直径20 mm、間隙サイズ0.25 mmの円筒型振動素子402の場合、間隙周縁長と平均間隙距離との比は約251である。
【0056】
振動式メータ200は、第1の位置302と第2の位置304との間で振動素子を駆動するように動作可能な電子機器をさらに備え、振動素子は、第1の位置よりも第2の位置において境界要素232に近い。振動素子が円筒または平面共振器である場合、電子機器118は振動素子を前後に駆動することができる。ただし、振動素子202がフォークである場合、2つの歯部があり得る(図2図3A図3B、および図3Cに示すように)。したがって、電子機器118は、ドライバと共に、図3A図3B、および図3Cに示すように、歯部を互いに対向して移動させることができる。
【0057】
自然な、または強制されていない共振器の場合、挙動は下記の式1によって説明することができる。
【0058】
【数1】
【0059】
式中、ωは共振周波数、Kは有効剛性、Mは有効質量である。幾何学的形状に応じて、600 Hz以下、または500 Hz以下などの比較的低い周波数で動作する場合、振動素子の周りの流体は共振器の剛性に寄与しない可能性がある。しかしながら、流体の変位はある程度の質量に寄与する可能性があり、したがって、共振周波数ωは、流体の密度が増加するにつれて減少する。
【0060】
式1は、図6に示す無摩擦ばね・質量トロリーシステム600の力を考慮することによって導出可能である。例えば、外力からの干渉なしにトロリーの無摩擦振動が開始されているためにシステム600が駆動されない場合、ばねの圧縮は、質量の加速をもたらす駆動力を提供することができる。したがって、システム600の運動は、式2によって表すことができる。
【0061】
【数2】
【0062】
式中、xはトロリーの変位であり、x”はトロリーの加速度、kはばねの剛性であり、mはトロリーの質量である。式2の解がx=Asin(ωt)である場合、式2は式1に変換される。
【0063】
式1はまた、無摩擦ばね・質量トロリーシステム600の振動ばね質量構成における総エネルギーが時間とともに一定のままであると仮定することによって導出可能であり、これは構成が無摩擦の場合である。そのような場合、無摩擦ばね・質量トロリーシステム600は、ばね内の歪みが最大であり、質量の速度がゼロであるときの100%の位置エネルギーから、速度が最大であり、ばね内の歪みがゼロである場合の100%の運動エネルギーへの周期的な伝達を提供する。
【0064】
例えば、位相ωt=0とする、エネルギーが100%運動エネルギーであるトロリー振動の終点位相と、例えば、位相ωt=90とする、エネルギーが100%位置エネルギーである終点位相との間には、運動エネルギーが位置エネルギーに等しくなる位相ωt=45がある。式3は、運動エネルギーと位置エネルギーとが等しいトロリー変位の位相ωt=45を表す。
【0065】
【数3】
【0066】
式中、kはばね定数であり、xは距離であり、mは質量であり、vは速度である。x=Asin(ωt)かつv=Aωcos(ωt)、Aは振動質量の最大変位、ωは共振周波数、である場合、式3は式1に変換される。
【0067】
しかしながら、振動式メータでは、振動素子に加えて、流体の運動のエネルギーを考慮しなければならない。気体の場合のように、流体が剛性を有しない場合、それは位置エネルギーに何ら寄与しない。振動式メータの用途では、式3は以下のように適用される。
【0068】
【数4】
【0069】
式中、mは振動素子の質量であり、vは振動素子の速度であり、mfluidは流体の質量であり、vfluidは流体の速度、kは振動素子のばね定数であり、xは振動素子の変位である。x=Asin(ωt)かつv=Aωcos(ωt)、 Aは振動素子202の最大変位、である場合、振動式メータ200は、以下によって記述することができる。
【0070】
【数5】
【0071】
式中、δは、流体の質量mfluidと振動素子の質量mとの比である。当業者には容易に理解されるように、比δは、流体の密度、振動素子の密度、および両方の幾何学的形状にも依存する。同様に、γは、流体の速度vfluidと振動素子の速度vとの比である。式5は、以下のようにさらに再構成することができる。
【0072】
【数6】
【0073】
x=Asin(ωt)、v=Aωcos(ωt)かつZ=(1+δ)(1+γ)の場合、以下のようになる。
【0074】
【数7】
【0075】
ωtが45度に等しい(運動エネルギーが位置エネルギーに等しい)場合、以下の周波数関係が適用される。
【0076】
【数8】
【0077】
式中、Zmは振動素子202および流体の有効質量である。有効質量Zmは間隙サイズに依存する。
【0078】
式8を介して理解され得るように、システムの有効質量Zmを増加させることによって、振動式メータの共振周波数を減少させることが可能であり得る。
【0079】
粘度感度は、振動式メータにどれだけの減衰があるかの尺度である。減衰の量は、流体の変位速度に依存し得る。流体の平均変位速度は、下記にさらに説明するように、流体増速間隙308のサイズを縮小することによって増加させることができる。
【0080】
流体の圧縮がないと仮定すると、これは振動の周波数ωが非常に低い場合に真であるが、変位される流体の質量mfluidは、境界要素232が振動素子202の近くに配置されてそれらの間により狭い間隙を形成しても、または境界要素232が振動素子202から遠く離れ、より広い間隙を形成しても、同じである。しかしながら、変位される流体の質量は両方の場合で同じであるが、境界要素232が振動素子202により近いとき、流体の平均変位速度はより高く、したがって、比γもまた、下記の図7A図7Cに関連して説明される理由により、より高い。
【0081】
図7Aは、振動素子702および境界要素732を有する振動式メータ700の単純化された断面領域を表し、断面領域は、振動式メータ700の長手方向に垂直である。断面図に見られるように、振動素子702および境界要素732は、実質的に平坦であるように示されており、振動素子702は、振動式メータ500について説明したのと同様に、境界要素732に対して上下に振動する。流体増速間隙754が、境界要素732と振動素子702との間に画定される。
【0082】
振動素子702が微小量であっても任意の距離だけ上下に動く場合、領域A内のある体積のガスは、図7Aの矢印によって示すように、振動素子702の周縁の1つの長さに沿って、振動素子702の両端の周りを、および振動素子702の周縁の第2の長さに沿って流れることによって、領域Bに変位する。当業者には理解されるように、領域A内の流体の約半分は左に移動し、半分は右に移動する。流体が気体である場合、分子は高い運動エネルギーを有し、気体の変位は、振動式メータ700内のすべての気体分子の間に分布し得る。
【0083】
境界要素732に対する振動素子702の動きは、図7A図7Cでは誇張されている。当業者には容易に理解されるように、振動素子702の動きは、振動素子702と境界要素732との間の流体増速間隙内の距離に対して非常に小さいものであり得る。例えば、振動素子702は肉眼では見えず、その変位は1ミクロン以下程度であり得る。
【0084】
図7A図7Cの振動素子702および境界要素732は、明示の目的のために簡略化されているが、当業者には、記載された概念が、異なる形状の振動素子(例えば、円筒形、平面、または任意の形状のフォーク歯部)および異なる形状の境界要素732(例えば、円筒形もしくは楕円形のハウジング、または平坦な歯部)を有する振動式メータに適用され得ることが容易に理解されよう。
【0085】
単純化のために、図7Bおよび図7Cは、振動部材702の半分のみを示している。図7Bは、振動素子702が第2の位置304に向かって動いているときの境界要素732からの最小距離を示し、図7Cは、振動素子702が第1の位置302に向かって移動しているときの境界要素732からの最大距離を示す。
【0086】
境界要素732と振動素子702との間の距離は、流体増速間隙754を画定し、その長さは、振動素子702が静止しているときに説明される。例示的な流体増速間隙754は、3.5単位の厚さおよび54単位の幅を有する。振動素子702が振動することにより、この例では、1単位×54単位の寸法を有する、流体増速間隙断面領域の大きさの変化に等しい流体の流体増速間隙754内の領域が、振動素子702によって変位される。これは、矢印によって示されるように、流体が列741から列740に、次いで振動素子702の周りに押される図7Bに見ることができる。運動理論の下では、変位した流体は、再び実質的に均一な密度になるように再分配される。図7Bの列741の流体は、振動部材702の端部の周りを、振動部材702の下側に沿って流れる。図7Cでは、振動部材702は第1の位置302に向かって動き、流体を列742から列743に押し出し、そこで領域Bから領域Aに再分配することができる。
【0087】
図7A図7Cに関して説明した、単純化された振動式メータ700は、間隙長が減少するときに密度および粘度感度が増加する理由の定性的な説明を提供することを意図している。単純な高調波運動では、流体の変位は周期的かつ連続的であり、したがって当業者には、速度勾配が存在し得ることが理解されよう。例えば、振動素子702に近い平均流体速度が最も高くなり得、平均流体速度は、境界要素からの距離が増加するにつれて減少し得る。
【0088】
流体は、比較的短い流体増速間隙754に対して振動素子702の周縁を長い距離にわたって移動しなければならないため、流体は、より長い間隙距離を有する振動式メータにわたってより大きい平均変位を有する。同様に、振動式メータ700内の流体の平均変位速度もまた、流体増速間隙754の長さが振動素子702の周縁の周りの距離よりも実質的に小さい場合に大きくなる。流体の平均変位速度が増加すると、運動エネルギーは速度の二乗に比例するため、流体の平均運動エネルギーも増加する。モデル化および実験室実験は、間隙が狭くなるにつれて、間隙754が半分になり、領域Aと領域Bとの間の流体の平均変位速度が約2倍になることを決定しており、これは運動エネルギーの4倍の増加に対応する。
【0089】
当業者にはまた、振動素子702の断面領域の周縁の周りの比較的長い距離を動く流体に関して上述した原理が、より小さい流体増速間隙754と比較して振動素子702の長手方向寸法にも適用されることが理解されよう。したがって、例では、振動素子202,402,502,702の長手方向の長さと流体増速間隙308,408,508,754との比がまた、160より大きくてもよい。
【0090】
当業者には、図7A図7Cに関して説明した物理的性質が、異なる流体の流れを提供することができる振動式メータアセンブリの他の実施形態にも適用されることがさらに理解される。
【0091】
例えば、図4Bは、円筒振動素子402の振動を示す。図4Bでは、円筒振動部材402が、振動部材402を中心とする点線によって表されるように、アノードにおいて半径方向に変位する。振動部材402の振動中の流体の流れは、図4Bにおいて矢印によって表されている。0.25 mm以下の平均間隙距離を提供すること、または、160以上である間隙周縁長と平均間隙距離との比を提供することにより、振動素子402の周囲の流速を高めることができる。
【0092】
振動素子702と境界要素732との間の流体増速間隙754を間隙サイズ0.5 mmから間隙サイズ0.25 mmに狭めると、気体の平均変位速度が少なくとも倍になることが分かった。しかしながら、当業者には容易に理解されるように、これは、振動式メータの幾何学的形状および試験対象の流体に基づいて変化し得る。
【0093】
密度感度は、共振周波数対流体密度の変化であり、しばしばHz毎kg/m3またはμs毎kg/m3単位で測定される。振動式メータ700の狭い間隙によってもたらされる流体の速度の平均増加は、振動式メータ700にわたる流体の有効質量の増加をもたらし、したがって、上記の式5~式8によって提供されるように、振動式メータおよび流体を組み合わせた共振周波数の増加をもたらす。
【0094】
図8Aは、密度感度対間隙サイズのグラフ800を示す。グラフ800のy軸は、正規化密度感度単位であり、x軸は、ミリメートル単位の間隙サイズである。正規化密度感度単位は、境界部材を有しないか、または、増速効果がないほど広い間隙を形成する境界部材を有する、振動部材を有する振動式メータに対して正規化される。
【0095】
グラフ800は、例えば、浸漬密度計または粘度計がハウジングを有しない場合、または振動素子の断面幅と比較して非常に大きいハウジングを有する場合のように、境界要素がない場合の密度感度を示す線802を含む。線804は、異なる間隙サイズに対する密度感度の実験結果に従う。図8Aから分かるように、0.25 mmの間隙サイズを有する振動式メータが、境界要素を有せず、したがって間隙を有しない振動式メータよりも10倍大きい密度感度の増加をもたらすことができる。境界要素のない従来の振動式メータは、約140 ns/kg/m3の密度感度を有すると決定されている。したがって、10個の正規化密度感度単位は、1400 ns/kg/m3に相当する。同様に、間隙サイズが0.15 mmの振動式メータは、境界要素のない振動式メータよりも20倍大きい密度感度を提供することができる。
【0096】
粘度感度は、減衰対粘度の変化として定義することができる。減衰を決定する1つの方法は、振動式メータの共振ピークの広がりを測定することである。従来、これはQ=共振周波数/帯域幅である品質係数Qによって定義される。
【0097】
液体を測定する振動式メータの場合、粘度はほぼ1/Q2に比例する。粘度ηを決定するために使用される式は、以下のとおりである。
【0098】
【数9】
【0099】
式中、V0およびV1は較正係数であり、粘度感度はV1である。2つの流体が測定される場合、各流体
【数10】
および
【数11】
から測定された粘度およびQ係数を使用して粘度感度V1を決定することが可能である。粘度感度V1についてこの連立方程式を解くことにより、式10に到達する。
【0100】
【数12】
【0101】
下記の式11は、流体の粘度ηと品質係数Q、密度ρ、および振動素子の共振周波数ω0との関係を広く捉えている。
【0102】
【数13】
【0103】
流体が液体である場合、密度ρおよび共振周波数ω0を含む最終項は無視してもよい。したがって、式11によって表される液体の粘度は、式9で表される液体の粘度とほぼ同じ形態になることが分かる。したがって、式10はまた、流体の粘度感度の良好な近似であり得る。
【0104】
図8Bは、粘度感度対間隙サイズを示すグラフ850を示す。グラフ850のy軸は、正規化粘度感度単位であり、x軸は、ミリメートル単位の間隙サイズである。正規化粘度感度単位は、境界部材を有しないか、または、増速効果がないほど広い間隙を形成する境界部材を有する、振動部材を有する振動式メータに対して正規化される。
【0105】
グラフ850は、境界要素がない場合の粘度感度を示す線852を含む。図8Bは、異なる間隙サイズに対する粘度感度の実験結果に従う線854をさらに示す。図8Bから分かるように、0.25 mmの間隙サイズを有する振動式メータが、境界要素を有せず、したがって間隙を有しない振動式メータよりも1000倍を超えて大きい粘度感度の増加をもたらすことができる。境界要素のない従来の振動式メータは、約1.949×10-10μPa.sの粘度感度を有すると決定されているため、0.25 mmの間隙の粘度感度は1.949×10-7μPa.sである。同様に、間隙サイズが0.15 mmの振動式メータは、境界要素のない振動式メータよりも16000倍を超えて大きい粘度感度を提供することができる。
【0106】
図9Aおよび図9Bは、本出願の実施形態の有効性をさらに実証する実験データグラフ900および950を示す。グラフ900は、測定対象の気体が周囲空気と窒素N2との間で切り替わるときに、振動式メータを使用して測定される時間期間の変化(周波数ωの逆数)を示す。周波数ωと同様に、測定される時間期間は、被試験流体の密度に比例する。従来の振動式メータは、周囲空気とN2との密度の差を解決することができなかったが、本出願の実施形態によって提供される改善は、密度感度を増加させ、その結果、差をここで検出することができる。
【0107】
グラフ950は、測定対象の気体が周囲空気と窒素N2との間で切り替わるときに測定される品質係数Qの変化を示す。従来の振動式メータは、周囲空気と窒素N2との間の品質係数Qまたは粘度の差を解決することができなかった。しかしながら、本出願に記載された改善は、ここで品質係数Qまたは粘度の差が検出可能になるように粘度感度を増加させることができる。
【0108】
したがって、分かるように、振動素子と境界要素との間の流体増速間隙308,408,508,754をより狭くすることによって、流体の平均変位速度を増加させることができ、振動式メータの密度感度および粘度感度も増加させることができる。しかし、間隙が狭くなりすぎる場合、振動式メータの性能に限界がある。1つの理由は、振動素子および境界要素の機械加工公差を管理することが非常に困難であり得ることである。さらに、間隙が狭すぎる場合、振動式メータにおいて望ましくない圧力降下を引き起こす可能性がある。最後に、間隙が狭すぎる場合、その中に微粒子が蓄積し、流体の閉塞を引き起こす可能性がある。しかし、間隙サイズが0.1 mmを超える場合、これらの問題は通常発生しないことが実験室で観察されている。
【0109】
一実施形態では、間隙は、幅0.25 mm以下であってもよい。さらなる実施形態では、間隙は、0.2 mmまたは0.15 mm以下であってもよい。さらなる実施形態では、間隙は0.2~0.1 mmであってもよい。実施形態では、振動式メータは、第1の位置302と第2の位置304との間で0.1 mm動くことができる。しかしながら、さらなる実施形態では、振動式メータは、第1の位置302と第2の位置304との間で1マイクロメートル以下動くことができる。
【0110】
実施形態では、振動素子202は第1の歯部234aを備えてもよく、境界要素232はハウジング204を備えてもよい。例えば、図3A図3Cは、第1の歯部234aおよび第2の歯部234bを含むフォークを有する振動式メータ200を示す。間隙308が、第1の歯部234 aとハウジング204との間に画定される。例では、間隙308は、第2の歯部234bとハウジングとの間にさらに画定されてもよい。
【0111】
さらなる実施形態では、振動素子は第1の歯部を備えてもよく、境界要素は第2の歯部を備えてもよい。例えば、図10は、振動式メータ1000を示している。振動式メータ1000は、これが取り囲む振動素子1002の周縁よりも比例的にはるかに大きいハウジング1004を含むことを除いて、振動式メータ200と同様である。このため、ハウジング1004と振動素子1002との間の流体の平均変位速度は、ハウジング1004と振動素子1002との間の流体の動きの影響をあまり受けない。
【0112】
振動式メータ1000は、代わりに、振動素子1002として作用する第1の歯部1034aと、境界要素1032として作用する第2の歯部1034bとを含み、これらは、流体の平均変位速度を増加させることができる間隙1008を画定する。したがって、振動式メータ1000は、上記の振動式メータ200および700に関して説明したのと同様の理由で、密度および粘度感度を増加させることができる。
【0113】
実施形態では、振動素子はシリンダを含んでもよい。例えば、振動素子は、図4Aに示すようなシリンダ共振器を含んでもよい。さらなる実施形態では、振動素子は、平面共振器を備えてもよい。例えば、図5Aおよび図5Bは、例示的な平面共振器550を示す。
【0114】
実施形態において、振動式メータの密度感度は、測定されている流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きくてもよい。
【0115】
実施形態において、上述したように、流体が気体である場合、粘度感度は1.949×10-7μPa.sより大きくてもよい。
【0116】
図11は、一実施形態による方法1100を示す。方法1100はステップ1102によって開始する。ステップ1102において、振動素子は、ドライバおよび電子機器を使用して第1の位置と第2の位置との間で駆動される。例えば、振動素子202は、振動式メータ200に関して上述したように、ドライバおよび電子機器を使用して第1の位置302と第2の位置304との間で駆動される。
【0117】
方法1100はステップ1104によって継続する。ステップ1104において、振動素子の固有振動数ωが、センサおよび電子機器を使用して決定される。例えば、振動素子202の固有振動数ωは、振動式メータ200に関して上述したように、センサおよび電子機器を使用して決定することができる。
【0118】
図12は、一実施形態による方法1200を示す。方法1200はステップ1202によって開始する。ステップ1202において、振動素子が提供される。例えば、上述したように、振動素子202,402,502,702、1002が提供されてもよい。
【0119】
方法1200はステップ1204によって継続する。ステップ1204において、境界要素が提供される。例えば、上述したように、境界要素232,432,532,732、1032が提供されてもよい。
【0120】
方法1200はステップ1206によって継続する。ステップ1206において、境界要素は、間隙を画定するために振動素子に隣接して結合される。例えば、境界要素232,432,532,732、1032は、上述したように、流体増速間隙308,408,508,754、1008を画定するために振動素子202,402,502,702、1002に結合されてもよい。
【0121】
方法1200はステップ1208によって継続する。ステップ1208において、電子機器が振動式メータに結合される。例えば、電子機器118は、上述したように、振動式メータ200,400,500,700、1000に結合されてもよい。
【0122】
上記の実施形態の詳細な説明は、本開示の範囲内であると本発明者らが考えているすべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際、当業者であれば、上述の実施形態の特定の要素は、さらなる実施形態を作成するために様々に組み合わせまたは削除されてもよく、このようなさらなる実施形態は、本開示の範囲および教示内に入ることを認識するであろう。また、当業者には、本開示の範囲および教示内で追加の実施形態を作成するために、上述の実施形態を全体的または部分的に組み合わせてもよいことは明らかであろう。
【0123】
したがって、特定の実施形態は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者には理解されるように、本明細書の範囲内で様々な均等な変更が可能である。本明細書で提供される教示は、上で説明され、添付の図に示される実施形態だけでなく、他の振動式メータに適用されてもよい。したがって、上述の実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲から決定されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2021-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(228)、および、前記長手方向(228)に垂直な平面(231)内の断面領域(230)を含む振動素子(202,402,502,702,1002)であって、前記長手方向(228)に垂直な前記平面(231)内の第1の位置(302)と第2の位置(304)との間で動く、振動素子(202,402,502,702,1002)と、
前記振動素子(202,402,502,702,1002)に隣接する境界要素(232,432,532,732,1032)と、
前記第1の位置(302)と前記第2の位置(304)との間で前記振動素子(202,402,502,702,1002)を駆動するように動作可能な電子機器(118)とを備え、
前記境界要素(232,432,532,732,1032)および前記振動素子(202,402,502,702,1002)は、前記長手方向(228)に垂直な前記平面(231)内に流体増速間隙(308,408,508,754,1008)を規定し、前記流体増速間隙(308,408,508,754,1008)は、前記振動素子(202,402,502,702,1002)が中立位置にあるときの前記境界要素(232,432,532,732,1032)と前記振動素子(202,402,502,702,1002)との間の平均間隙距離(309,409,509)を有し、前記振動素子(202,402,502,702,1002)は、間隙周縁長を有する、前記流体増速間隙(308,408,508,754,1008)に面する前記平面(231)の前記断面領域(230)の周りの間隙対向周縁区画(211)を有し、前記間隙周縁長と前記平均間隙距離(309,409,509)との比は少なくとも160であり、前記平均間隙距離(309,409,509)は少なくとも0.1 mmである、振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項2】
長手方向(228)、および、前記長手方向(228)に垂直な平面(231)内の断面領域(230)を含む振動素子(202,402,502,702,1002)であって、前記長手方向(228)に垂直な前記平面(231)内の第1の位置(302)と第2の位置(304)との間で動く、振動素子(202,402,502,702,1002)と、
前記振動素子(202,402,502,702,1002)に隣接する境界要素(232,432,532,732,1032)と、
前記第1の位置(302)と前記第2の位置(304)との間で前記振動素子(202,402,502,702,1002)を駆動するように動作可能な電子機器(118)とを備え、
前記境界要素(232,432,532,732,1032)および前記振動素子(202,402,502,702,1002)は、前記長手方向(228)に垂直な前記平面(231)内に流体増速間隙(308,408,508,754,1008)を規定し、前記流体増速間隙(308,408,508,754,1008)は、前記振動素子(202,402,502,702,1002)が中立位置にあるときの前記境界要素(232,432,532,732,1032)と前記振動素子(202,402,502,702,1002)との間の平均間隙距離(309,409,509)を有し、前記平均間隙距離(309,409,509)は0.25 mm以下で0.1 mm以上である、振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項3】
前記平均間隙距離(309,409,509)は、0.2 mm以下である、請求項1または2に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項4】
前記振動素子(202)は第1の歯部(234a)であり、前記境界要素(232)はハウジング(204)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の振動式メータ(200)。
【請求項5】
前記振動素子(1002)は第1の歯部(1034a)であり、前記境界要素(1032)は第2の歯部(1034b)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の振動式メータ(1000)。
【請求項6】
前記振動素子(402)は、シリンダ(116)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の振動式メータ(400)。
【請求項7】
前記振動素子(502,702)は、平面共振器(550)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の振動式メータ(500,700)。
【請求項8】
前記振動式メータ(200,400,500,700,1000)の密度感度は、前記流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項9】
前記流体が気体である場合、粘度感度が1.949×10-7μPa.sより大きい、請求項1~8のいずれか一項に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)。
【請求項10】
請求項1または2のいずれか一項に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)を使用して流体の粘度または密度を決定する方法であって、
ドライバ(112)および電子機器(118)を使用して前記振動素子(202,402,502,702,1002)を第1の位置(302)と第2の位置(304)との間で駆動することと、
センサおよび前記電子機器(118)を使用して前記振動素子(202,402,502,702,1002)の固有振動数を決定することと
を含む、方法。
【請求項11】
平均間隙距離(309,409,509)が0.2 mm以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記振動素子(202)は第1の歯部(234a)であり、前記境界要素(232)はハウジングである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記振動素子(1002)は第1の歯部(1034a)であり、前記境界要素(1032)は第2の歯部(1034b)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記振動素子(202,402,502,702,1002)がシリンダ(116)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項15】
前記振動素子(502)は平面共振器(550)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項16】
前記振動式メータ(200,400,500,700,1000)の密度感度は、前記流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きい、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記流体が気体である場合、粘度感度が1.949×10-7μPa.sより大きい、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記振動素子(202,402,502,702,1002)が前記第1の位置(302)と前記第2の位置(304)との間で駆動される駆動周波数は600 Hz未満である、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1または2に記載の振動式メータ(200,400,500,700,1000)を組み立てるための方法であって、
振動素子(202,402,502,702,1002)を提供することと、
境界要素(232,432,532,732,1032)を提供することと、
前記振動素子(202,402,502,702,1002)に隣接する前記境界要素(232,432,532,732,1032)を結合して流体増速間隙(308,408,508,754,1008)を画定することと、
電子機器(118)を前記振動式メータ(200,400,500,700,1000)に結合することと
を含む、方法。
【請求項20】
平均間隙距離(309,409,509)が0.2 mm以下である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記振動素子(202)は第1の歯部であり、前記境界要素(232)はハウジングである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記振動素子(1002)は第1の歯部(1034a)であり、前記境界要素(1032)は第2の歯部(1034b)である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
前記振動素子(202,402,502,702,1002)がシリンダ(116)である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項24】
前記振動素子(502)は平面共振器(550)である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項25】
前記振動式メータ(200,400,500,700,1000)の密度感度は、前記流体が気体である場合、1400 ns/kg/m3より大きい、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記流体が気体である場合、粘度感度が1.949×10-7μPa.sより大きい、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】