(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】平らな標示表示面を有するシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20220601BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
A61M5/32 510H
A61M5/31 520
A61M5/32 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558610
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 US2019052943
(87)【国際公開番号】W WO2020204992
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513066638
【氏名又は名称】リトラクタブル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Retractable Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】511 Lobo Lane Little Elm, TX 75068, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】508328486
【氏名又は名称】ショー,トーマス ジェイ.
【氏名又は名称原語表記】SHAW,Thomas J.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショー,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スモール,マーク
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
4C066GG16
4C066GG17
4C066HH12
4C066JJ08
4C066LL26
4C066LL28
4C066NN06
4C066NN07
(57)【要約】
【解決手段】医療用シリンジは、長手方向に延びる管状の流体チャンバと、流体チャンバに近接して配置された少なくとも1つの長手方向に延びる外向きの略平らな標示表示面とを有するバレルと、流体チャンバにスライド可能に挿入されたプランジャーと、バレルから前方に突出して流体チャンバと流体連通する針と、一定長さの針安全装置とを備えており、針安全装置は、バレルにスライド可能に係合する作動ハンドルと、シリンジの使用後に作動ハンドルが前方に移動すると前方に移動して針の先端を覆う、針を囲んでおり前方に突出した針先シールドとを有する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる管状の流体チャンバと、前記流体チャンバの前方に配置されたノーズと、後方に向いた開口と、前記流体チャンバに近接して配置された少なくとも1つの長手方向に延びる外向きの略平らな標示表示面とを備えているバレルと、
前記後方に向いた開口を介して前記管状の流体チャンバにスライド可能に挿入されるプランジャーと、
前記ノーズから前方に突出しており、前記流体チャンバと流体連通する針と、
前記バレルとスライド可能に係合する針安全装置と、
を備える医療用シリンジ。
【請求項2】
前記バレルは、背向する略平らな2つの標示表示面を備えている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記標示表示面に体積目盛が付されている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項4】
各標示表示面に体積目盛が付されている、請求項2に記載のシリンジ。
【請求項5】
前記体積目盛が、モールド成形、スタンピング、エンボス加工、及び印刷からなる一群の付加方法のうちの少なくとも1つの方法で、前記標示表示面に付されている、請求項3に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記体積目盛が、モールド成形、スタンピング、エンボス加工、及び印刷からなる一群の付加方法のうちの少なくとも1つの方法で、前記標示表示面に付されている、請求項4に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記体積目盛がパッド印刷によって前記標示表示面に付されている、請求項5に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記体積目盛がパッド印刷によって前記標示表示面に付されている、請求項6に記載のシリンジ。
【請求項9】
前記針安全装置は一定の全長を維持しており、そして、前記針の周囲を取り囲む前方を向いた針先シールドと、前記針先シールドの後方に配置された作動ハンドルとを備えている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項10】
前記作動ハンドルは前記バレルとスライド可能に係合している、請求項9に記載のシリンジ。
【請求項11】
前記作動ハンドルはタッチ面を備えている、請求項10に記載のシリンジ。
【請求項12】
前記バレル及び前記作動ハンドルは、協働的に係合可能な要素を含んでおり、前記協働的に係合可能な要素は、前記バレルに対して、所定の2つの停止位置の間で手動で長手方向にスライドする制御可能な前記作動ハンドルの動きを可能にしている、請求項10に記載のシリンジ。
【請求項13】
前記所定の2つの停止位置のうちの第1の位置は、前記針先シールドが前記ノーズをほぼ取り囲んでいる完全に引き込まれた使用位置である、請求項12に記載のシリンジ。
【請求項14】
前記所定の2つの停止位置のうちの第2の位置は、前記針先シールドが前記前方に突出している針の先端の周囲を取り囲んでいる完全に伸びた使用後の位置である、請求項12に記載のシリンジ。
【請求項15】
前記前方に突出している針は、前記バレルの前記ノーズに固定して配置されている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項16】
ニードルキャップを更に備えている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項17】
プランジャーキャップを更に備えている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項18】
前記プランジャーは、プランジャーシールとサムキャップとを更に備えている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項19】
前記バレルは、前記プランジャーキャップと係合して支持するようなサイズ及び構成にされた後向きのカラーを更に備えている、請求項17に記載のシリンジ。
【請求項20】
前記後向きのカラーの前方に配置された横方向に突出するフィンガーフランジを更に備えている、請求項19に記載のシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を吸引又は注入する際に用いる医療用に構成されたシリンジに関する。シリンジは、好ましくは、バレルと、バレルの一部とスライド可能に係合するプランジャーと、前方に突出した針とを含む。バレルは、好ましくは、流体チャンバの側壁として機能する実質的に管状の内面と、バレルの少なくとも片側に配置されており、長手方向に延びる実質的に平らな標示表示面とを有している。好ましくは、主題となるシリンジは、両側にある2つの標示表示面であって、外側に向いており、長手方向に延びており、実質的に平らであり、シリンジに投与量目盛を印刷するのに適した標示表示面を含んでいる。
【0002】
本発明の一実施形態はまた、針引込み機構と、横方向にオフセットされた針引込みキャビティとを含んでおり、当該針引込みキャビティは、バレルの流体チャンバの長さと略同一の広がりを有する。バレルと針引込みキャビティとを針に対して横方向にスライドさせて、針引込みキャビティを針と同軸状に揃えるように横方向に移動させることで、注射後に針を選択的に引き込むことができる。十分な長さを有する針引込みキャビティが横方向にオフセットされていることにより、引込み可能な針を有する従来の安全シリンジに使用される長尺の引込み可能な針の選択的な使用が可能になり、シリンジの長さ全体を増大させることなく、デバイスの使用及び処置の実施可能な範囲を拡大することができる。デバイスのこの使用及び処置には、針の長さに応じて、例えば、脊髄穿刺を行うこと、硬膜外麻酔を投与すること、嚢胞を吸引することなどがあり、その他にも、皮内、皮下又は筋肉へ注射することを含む。
【0003】
本発明の別の態様は、バレルを有するシリンジに関するもので、そのバレルは、略円筒状の流体チャンバと、該流体チャンバに平行かつ横方向に間隔を存して配置された針引込みキャビティと、略平らで外向きの少なくとも1つの表示面と、を備えており、その表示面には、投与量目盛等の標示(indicia)を、従来のパッド印刷プロセスを用いて貼り付けることができる。本発明の更に別の態様は、背向する2つの略平らな表面を有するバレルを備えるシリンジに関するもので、その表面には、同じ標示又は異なる標示が、1mL、0.5mL又はそれより小さいシリンジに印刷する場合でも、バレルを回転させることなく、パッド印刷できる。略平らな表示面は、エンボス加工、射出成形などの他のプロセスによっても、シリンジに標示を付すことを容易にする。
【0004】
本発明の別の態様は、前述したバレル及びプランジャーを備える医療用シリンジと、前方に突出し、後方に付勢された針を有する前頭アタッチメントとの組合せに関する。前頭アタッチメントとバレルは、前頭アタッチメントが、針を通る長手方向軸線に対して横方向の軸線に沿ってバレルの前部とスライド可能に係合するように、協働作用するよう構成されることが好ましい。
【0005】
上記段落[0001]に関連して記載した本発明の別の実施形態では、針の周りに周方向に延びており、望ましくは針と同軸状に揃えられる針先シールドを有する針安全装置を具現化している。針先シールドは、細長い作動ハンドルに接続されているか、一体的に成形されており、作動ハンドルはまた、針安全装置の一部であってバレルにスライド可能に係合することが望ましい。本発明のこの実施形態の針安全装置は、誤った針刺しから使用者を保護するために針引込み機構及び針引込みキャビティを持つ必要がなく、針に対するバレルの横方向のスライド移動も必要としない。この実施形態の注射器の使用後、針及び針先シールドの後方に位置する作動ハンドルの接触面に手動で圧力を加えることで、針先シールドが選択的に前進して、前方に突き出た針先から使用者を保護する。作動ハンドルは,シリンジのバレルとスライド可能に係合しており、針先が覆われていない第1の位置から、針先が針先シールドによって囲まれており、不用意な針刺しから保護される第2の位置まで、バレルに対して前方にスライド可能である。この実施形態の前方にスライド可能な針安全装置は、注射器のバレルに対する装置のその後の後方移動を防止する停止面を組み入れていることから、使用者は、その後の針先の偶発的な露出とそれに関連した針刺し損傷とから保護される。本発明のこの実施形態は、より読みやすい容量標示を有する平らで印刷可能な表面の利点と、より単純であるが依然として効果的で使いやすい針安全装置の費用上の利点とを組み合わせて、特に、様々な慢性的な健康状態を治療するために頻繁な注射を必要としている人々に安全でより手頃な解決策を提供する。更に、使用者が投与量を示すマークや標示をより容易に読み取れることから、誤った量の薬液を患者に投与するリスクが減り、それによって他の意図しない結果を引き起こすリスクも減少する。
【背景技術】
【0006】
医療用シリンジは通常、略円筒形の内壁と外壁を備えるバレルを有するが、これは、体積投与量標示や他のマーキングが、製造中に円弧状の外面に施されることを意味する。これは困難な作業であり、バレルの直径や外壁の曲率半径が小さくて(例えば、1mL、0.5mL及びそれより小さい容量のシリンジ)利用可能な外面領域が非常に限られている場合、又はバレルの両面に異なる投与量目盛又は他の標示が施されるシリンジの場合には、特に困難である。このような場合、投与量の目盛線や関連する数値又は他のマーキングなどの標示の読み取りが困難であることも多い。その理由は、これら標示がバレルの外周をぐるりと巻いているためであり、また、一方の面に付された標示又はマーキングがシリンジを通して見えて、使用者を混乱させることがあるからであり、時には医療過誤行為に至ることがある。少なくともこれらの理由から、投与量やその他の標示を施すのに使用するための略平らな表面を有するシリンジが必要とされている。
【0007】
後方に付勢された針が、プランジャー内部にて同軸状に揃えられた引込みキャビティの中に引き込む医療用シリンジは知られており、これまでに、例えば、米国特許第5,049,133号、第5,053,010号、第5,084,018号及び第6,090,077号に開示されている。更に最近では、後方に付勢された針が入れられた前頭アタッチメントを有する医療用シリンジであって、針が、前頭アタッチメントの一部である針引込みキャビティの中に引き込む医療用シリンジが、例えば、米国特許第9,381,309号に開示されている。
【0008】
更に最近では、前頭アタッチメントを有する医療用シリンジについて、前頭アタッチメントが針引込みキャビティを有するバレルとスライド可能に係合し、針引込みキャビティが、バレルと一体的にモールド成形され、流体チャンバと平行に配置されたものが開示されている。例えば、米国特許第9,814,841号(
図37-
図42)では、針引込みキャビティは、その長さがバレル内の流体チャンバの長さよりもかなり短いため、バレルの外壁と協働作用して、流体チャンバに隣接し、かつ流体チャンバと略同じ広がりを有する略平らな外面を形成することができない。
【0009】
本発明の様々な態様又は実施形態とある程度類似していると思われる装置を開示する他の文献には、以下が含まれる:米国特許第4,573,976号、米国特許第4,702,738号、米国特許第4,790,828号、米国特許第4,915,696号、米国特許第5,037,402号、米国特許第5,092,461号、米国特許第5,215,534号、米国特許第5,312,372号、米国特許第9,623,192号、米国特許出願公開第2002/0065488A1、米国特許出願公開第2003/0038171A1、及び米国特許出願公開第2005/0159706A1。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、開示される医療用シリンジは、流体チャンバと横方向にオフセットされた針引込みキャビティとを有する一体型のバレルを備え、流体チャンバと針引込みキャビティとは、略平行であって共通の壁によって分離されている。針引込みキャビティは、非円形の断面を有し、好ましくは流体チャンバと略同じ長さである。これによって、バレルの全長を増大させることなく、より長尺の針の引込みに対応することができ、使用後に針がバレル内に引き込む安全シリンジのように、より長尺の針を使用することができる。バレルは、少なくとも1つの略平らな外向きの表示面を有する外壁を更に備えており、その表示面に、例えば体積投与量目盛等の標示を、従来のパッド印刷技術又は同様の効果を有する別の代替手段を用いて付すことができる。少なくとも1つの略平らな表示面は、好ましくは流体チャンバに近接して配置され、好ましくは計量目盛を含む。計量目盛は、流体を注入又は吸引するのに有用な流体チャンバの少なくとも注入又は吸引する部分と長手方向に同一直線上に揃えて設けられる。本発明の好ましい一実施形態では、長手方向に同一の広がりを持つ2つの略平らな表面が背向して配置され、各表面は、流体チャンバの外壁の少なくとも一部と、針引込みキャビティの外壁の少なくとも一部とにまたがっている。
【0011】
本発明は、使用可能な容積が、1mL又はそれより小さいシリンジに特に有用である。これらのシリンジは一般的にバレル直径が小さいため、外面に施される体積投与量標示は、バレル外周部の大部分に巻き付けられる。本発明の別の好ましい実施形態では、体積投与量標示又は他のマーキングをシリンジの略平らな表示面に施すためにパッド印刷技術(「タンポグラフィ(tampography)」と称されることもある)が用いられる。針引き込みキャビティは、非円形の断面を有するように作ることができ(好ましくは適切なポリマー材料から成形される)、製造中に、より広く、外向きの、実質的に平らな表示面の形成を容易にするためにバレルから横方向にオフセットされる。略平らな表示面は、好ましくは、バレルの流体チャンバに近接する少なくとも1つの面を含む。この面により、必要であれば、体積投与量のマーキング又は他の標示を、他の平らな表示面にモールド成形するか、又は、表示面上若しくは表示面に標示をエンボス加工することが可能になる。
【0012】
本発明のシリンジの別の実施形態は、前述したバレル及びプランジャーと、前方に突出しており、後方に付勢される針を有する前頭アタッチメントとの組合せを含む。前頭アタッチメントとバレルは、前頭アタッチメントが、針を通る長手方向軸線に対して横方向の軸線に沿ってバレルの前部とスライド可能に係合するように、協働作用するよう構成されることが好ましい。シリンジが使用位置に配置されると、針は、バレルの前部の第1の開口と同一直線上に位置し、この開口により、バレル内の略円筒形の流体チャンバに連通して、流体チャンバと針との間で同軸状に揃えられた流体流路が確立される。前頭アタッチメントとバレルとの間で流体が漏れ難くするために、流体シールが第1の開口の周囲に据え付けられているのが好ましい。針引込みキャビティは、バレルの前部にある第2の開口から、バレルの流体チャンバと平行かつ流体チャンバから離間して後方に延びており、好ましくは、流体チャンバの少なくとも一部と共通の壁を共有する。シリンジの使用後、バレルと前頭アタッチメントとの間で相対的な横方向の動きにより、後方に付勢された針は、針引込みキャビティと同軸状に揃うように再配置される。これによって、典型的には圧縮ばねなどの付勢手段によって引込み位置へ押し込まれるので、針はシリンジから前方に突出することはない。
【0013】
本発明のシリンジの別の実施形態は、幅広で略平らな表示面を医療用シリンジに設けるものであり、当該医療用シリンジでは、一体のバレルと針引込みキャビティが、周囲フランジの略平らな縁部と協働作用することにより、シリンジがトレイ又は他の平らな面から転落するのを防止する。また、略平らな表面は、管状のバレルを有する従来のシリンジのフランジと比べて、バレルの周囲のフランジを比例的に狭くすることができるので、提供される表面領域が大きくなり、使用者による表示面の理解が容易になる。背向する略平らな表面は、安定性を向上させるので、使用者が注射又は他の処理中にシリンジに対して行う操作の制御の度合いが向上する。本発明のシリンジは、横方向にオフセットされた針引込みキャビティを有するバレルが、流体チャンバと一体的にモールド成形できるので、少なくとも1つ、好ましくは2つの(背向する)略平坦で外向きの表面領域が提供される。この表面領域は、体積目盛やその他の標示の配置に有用であり、使用者による読取りが容易となり、吸引又は注射の際に投与過誤の起こる可能性が低減される。
【0014】
本発明の別の実施形態は、本発明のシリンジを選択的に取外し可能な針カバーと組み合わせるもので、当該針カバーはロック部材を含み、そのロック部材は、バレルの一部と係合して、前頭アタッチメントに対するバレルの横方向へのスライド移動を阻止し、シリンジ使用前に、針の偶発的な引込みが防止されるよう構成される。シリンジの使用後に針が引き込むことにより、注射器の再使用可能性、偶発的に針が刺さる可能性、及び血液媒介病原体による偶発的感染の可能性が低下する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、本発明のシリンジをプランジャーキャップと組み合わせるもので、当該プランジャーキャップは、シリンジの後部、典型的には、フィンガーフランジの背後に着脱可能に取り付けられ、流体を吸引する又は使用する前に選択的に取り外し可能である。針カバーとプランジャーキャップの両方が所定位置にあるとき、シリンジが別のパッケージ内に封入されているか否かに拘わらず、針とシリンジ内部の流体接触部は取り囲まれて、汚染から保護される。このため、シリンジを、パッケージング及び殺菌を行う前に組み立ててまとめて出荷することができる。
【0016】
本発明のシリンジは、比較的少量のインスリン又はワクチン等の薬液を注射又は輸液によって使用者に投与するのに特に有用であるが、装置の構造及び操作は、特定のサイズ、投与量又は工程に限定されない。例えば、本明細書に開示されるシリンジは、膝又は脊髄穿刺等の臨床処置において患者から流体サンプルを吸引するのに使用するように構成されてよい。前頭アタッチメントを本発明の新規なバレルと組み合わせて使用することにより、シリンジ全体の長さが減少するので、長尺の針を使用することができ、使用後もシリンジ内に引き込むことができる。この開示で使用される「引き込まれる(retracted)」又は「引込み(retraction)」の用語は、針に作用する力が、針先を、前方に突出した位置から後方に向けて押すこと又は引くことにより、針先が、前方に突出した使用位置から、前頭アタッチメントから前方に突出しない使用後の位置に移動するプロセスのことを言う。
【0017】
医療用シリンジの別の実施形態として、長手方向に延びる管状の流体チャンバと、流体チャンバに近接して配置された少なくとも1つの長手方向に延びる外向きの略平らな標示表示面を有するバレルと、流体チャンバにスライド可能に挿入されたプランジャーと、バレルから前方に突出しており流体チャンバと流体連通する針と、所定の一定長さの針安全装置とを有するシリンジが開示される。針安全装置は、バレルにスライド可能に係合する作動ハンドルと、針を囲んでおり前方に突出した針先シールドとを含むことが望ましい。第1の停止位置では、針先シールドはバレルのノーズ部周りに配置されている。第2の停止位置では、シリンジの使用後に手動で圧力をかけて作動ハンドルを前方に移動させると、針先シールドが前方に移動して針の先端の周囲を囲んで覆う。
【0018】
本発明の別の実施形態は、1つの、好ましくは背向する2つの略平らな標示表示面を望ましくは具現化しており、また、針の周囲に周方向に延びて、望ましくは針と同軸状に揃えられる針先シールドを有する針安全装置を具現化することが開示される。針先シールドは、バレルとスライド可能に係合する作動ハンドルに取り付けられる、接続される、又は一体成形される。適切なレール、ランプ部、停止肩部、戻り止め部、又は他の同様の効果的な手段が、針安全装置とバレルの一部として望ましくは提供されているので、作動ハンドルは所望の時にほとんど干渉なしにスムーズに進み、また、後に誤って後退して針先を露出させることはない。本発明のこの実施形態の針安全装置は、誤った針刺しから使用者を保護するために針引込み機構、針引込みキャビティ、針に対するバレルの横方向のスライド移動を有する必要がない。注射器の使用後、針及び針先シールドの後方に位置する作動ハンドルの接触面に手動で圧力を加えることで、針先シールドが選択的に前進して、前方に突き出た針先から使用者を保護する。作動ハンドルは、シリンジのバレルとスライド可能に係合しており、針先が覆われていない第1の位置から、針先が針先シールドによって囲まれており、不用意な針刺しから保護される第2の位置まで、バレルに対して前方にスライド可能である。針安全装置がバレルに対して完全に伸びると、針先は、針先シールドの内側に完全に配置されていることが望ましく、使用済みの注射器を扱う人が、単に注射器の先端に指先を当てるだけで不用意に針刺し事故に遭うことはない。
【0019】
本発明の別の実施形態では、作動ハンドルは、手が係合可能なタッチ面を更に備える。
【0020】
本発明の別の実施形態では、バレル及び作動ハンドルは、協働的に係合可能な要素を含んでおり、当該協働的に係合可能な要素は、バレルに対して、所定の2つの停止位置の間で手動で長手方向にスライドする制御可能な作動ハンドルの動きを可能にしている。第1の停止位置は、針先シールドがノーズをほぼ取り囲むような完全に引き込まれた使用位置である。第2の停止位置は、針先シールドが前方に突出した針の先端の周囲を取り囲む、使用後に完全に伸びた位置である。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、前方に突出した針がバレルのノーズに固定して配置されているが、本開示を読むと、同様に構成されたシリンジを、バレルに選択的に取り付けられるように構成された針を用いて作ることができることは理解されるであろう。
【0022】
本発明のこれら及び他の特徴は、様々な実施形態における以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面と共に検討することにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明のシリンジを、以下の図面に関連して更に説明する。図面は必ずしも縮尺通りではないことに留意のこと。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態を上から見た正面斜視図であり、本発明のシリンジがパッケージング、出荷及び保管される位置に、針カバー(ロック部材を含む)及びプランジャー端部キャップが配備され、針カバーのロック部材が、使用前に、前頭アタッチメントに対するバレルの横方向のスライド移動を制限している。
【
図2】
図2は、
図1の実施形態を上から見た正面斜視図であり、針カバーが外されている。
【
図3】
図3は、
図1の実施形態を上から見た正面斜視図の分解図である。
【
図6】
図6は、
図3の実施形態のバレルの前部に並置して示された前頭アタッチメントを、一部破断して示す詳細な分解斜視図である。
【
図7】
図7は、
図3の前頭アタッチメントを上から見た後方斜視図である。
【
図8】
図8は、
図4の実施形態の右側面図であって、プランジャーキャップが取り外され、プランジャーが吸引位置に引き込まれた図である。
【
図10】
図10は、
図8の実施形態の右側面図であって、針が引き込まれ、プランジャーがバレル内で完全に前進した図である。
【
図13】
図13は、
図12の実施形態の正面図であって、前頭アタッチメントがバレルに対して再配置され、針が
図10及び
図11に示す位置に引き込まれた図である。
【
図14】
図14は、本発明のシリンジの別の実施形態の上から見た正面斜視図であり、ニードルキャップとプランジャーキャップの両方が、シリンジをその包装から最初に取り出したときのように所定の位置に示されている。
【
図15】
図15は、
図14に示すシリンジの実施形態であって、ニードルキャップとプランジャーキャップは外されている。
【
図16】
図16は、
図15に示すシリンジの実施形態であって、針安全装置がバレル及び針に対して前方に移動し、針先シールドが針先を取り囲んで覆っている。
【
図21】
図21は、
図15のシリンジの実施形態の反対側の側面図であって、長手方向軸を中心に180度回転されている。
【
図23】
図23は、
図22の実施形態のシリンジの針の長手方向軸に沿って破断した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照すると、シリンジ20はバレル22を備え、該バレルは、略平らな表示面23、前頭アタッチメント24、流体チャンバ75の外壁25(
図9に見える)、選択的に取外し可能な針カバー26、体積計測標示(volumetric measuring indicia)27、フィンガーフランジ28、取外し可能なプランジャーキャップ30、及びロック部材40を更に備える。
図1に示されるように、主たる体積計測標示27が表示面23に施される。体積計測標示は、例えば流体単位を示すアラビア数字及びそれに関連する主たる計量標示を少なくとも含む。なお、図面に付された数字は例示のためのものであって、正確な縮尺で描かれておらず、副次的な単位であるマーク27のような幾つかの特徴について、略平らな表示面23に関する配置は、図示の位置から変えることができる。副次的な(個々の)単位標示又はマークの各々の少なくとも一部は、表示面23又は表示面23の縁部の近接位置で開始することが好ましく、任意選択的に、流体チャンバの湾曲した外壁25に少しだけ延在する。このような配置は、公知のパッド印刷技術の運用能力の範囲内であると認識され、現在では、当業者にとって容易に利用可能である。
【0025】
図1では、シリンジ20の前頭アタッチメント24は、「使用前」の配置で示されている。圧力がテクスチャ状タッチパッド46又はバレル22の反対側の面に不注意で作用することがあるため、使用前は、前頭アタッチメント24がバレル22に対して横方向に移動しないように針カバー26とロック部材40が配置される。プランジャー(図示されていない)がバレル22から誤って引き抜かれないようにし、また、バレル22の後部開口内部又はプランジャーの後方に延びるハンドル部分(
図9参照)の周囲が不注意で汚染されないようにするために、取外し可能なプランジャーキャップ30がフィンガーフランジ28の後方に配備されており、これについては後で説明する。
【0026】
図2、
図4-
図5及び
図12を参照すると、シリンジ20のバレル22と前頭アタッチメント24は、
図1と同じ位置に示されており、針カバー26(ロック部材40を有する)が取り外されていることが
図1とは異なる。針引込みキャビティ92の前側開口が示されており、針34は、前頭アタッチメント24の針支持部材32から前方に突出している。周方向に離間しており、軸方向にテーパ状にされた複数のリブ33が、針支持部材32の周りに配備されて、取り外される前の針カバー26の内面と摩擦係合するための面を提供する。
図2において、針34は、好ましくは、流体チャンバ75(
図9)を通る長手方向軸線と同軸状に揃えられる。
【0027】
図3を参照すると、シリンジ20の針キャップ26は、前向きでかつ内向きテーパ状の略円筒形の側壁を更に含み、この側壁は、前端部36と、後向きの環状カラー38と、環状カラー38から後方に突出するロック部材40とを有する。前頭アタッチメント24は、前側開口42を有し前方に突出する略管状の針支持部材32と、上側ガイド部材44と、下側ガイド部材45(
図7を参照)と、横方向に突出するテクスチャ状タッチパッド46と、を更に含む。
【0028】
シリンジ20は、好ましくは、前向きの斜め針先48を有する針34と、圧縮コイルばね50及び針ホルダー52を有する針引込み機構と、含む。針ホルダー52は、ばね50の後部に挿入可能な管状のボア58を有する細長いシャフト54を含む。針ホルダー52のヘッド56の直径は、ばね50の内径よりも十分に大きく、前頭アタッチメント24がバレル22の前部64とスライド可能に係合すると、ばね50はヘッド56によって圧縮状態に保持される。これについては、
図6及び
図7に関連して以下で説明する。針34の後端部は、針ホルダー52の管状ボア58内に挿入可能であり、接着剤等の市販されている適当な手段により、細長いシャフト54の内部に固定されて取り付けられる。本明細書に開示される針引込み機構は、シリンジ20内での使用に十分なものであるが、同様の効果をもたらし、シリンジ20の内部で針34を後方に付勢するために有用であれば、他の同様な要素及び機構も、本発明の実施に使用できることは理解されるであろう。
【0029】
図3を更に参照すると、管状ボア62を有する環状ポリマー流体シール60は、好ましくは、バレル22の前部64の凹部66に挿入可能である。針引込み機構が前頭アタッチメント24内に配備されて、前頭アタッチメント24がバレル22の前部64とスライド可能に係合している場合、シール60の前向きの端部が針ホルダー52の後向きヘッド56と接した状態にある。製造に際して、シリンジ20の前頭アタッチメント24がバレル22の前部64に組み付けられると、連続的で略直線状の流体流路が、針34、針ホルダー52、及び環状流体シール60を通って、管状で長手方向に延びる流体チャンバ75の中へと形成される(
図9参照)。
【0030】
バレル22は、前部64の他に、略平らな表示面23、湾曲した外側壁面25、フィンガーフランジ28、及び後方に突出する環状カラー70を更に含む。シリンジ20の組立てに際しては、後向きのプランジャー親指パッド78の反対側にあって、プランジャーハンドル72の前端部で前方に突出するボス74に、エラストマー製プランジャーシール76を配備することが好ましく、次いで、プランジャーハンドル72が、環状カラー70によって画定された後向きの開口に挿入される。シリンジ20の組立ては、略円筒形のプランジャーキャップ30をバレル22の後向きの端部に取り付けることによって完了する。プランジャーキャップ30は、開放した前端部80、円筒状のボア82、及び閉じた後端部84を更に含む。プランジャーキャップ30は、プランジャー親指パッド78の周囲に取り付けられ、環状カラー70の外壁と摩擦係合している。
図1に関連して説明した体積計測標示27はまた、略平らな表示面23及び湾曲した外側壁面25の外向きの部分に見られる。
【0031】
図3、
図6及び
図11は、バレル22の前部64に関して、針引込みキャビティ92内の前向き開口を更に示している。針引込みキャビティ92は、フィンガーフランジ28に隣接する閉じた後端部を有し、側壁90、側壁95、底壁94、及び上壁によって仕切られており、また、上壁は、バレル22の上向きの略平らな表示面23を含む。
【0032】
前頭アタッチメント24のシリンジ20のバレル22の前部64への組み付けを、
図6及び
図7を参照して更に説明する。
図6を参照すると、まず最初に、環状流体シール60(
図3を参照)が、バレル22の前部64の凹部66に挿入される。前部64は、横向きに延びる上側レール68及び下側レール69を更に含み、これらのレールは、バレル22の流体チャンバ75(
図9)を通る長手方向軸に対して横向きに配置される。丸みのある取付けガイド96、98が、それぞれ、上側レール68及び下側レール69の前方に配置されており、前頭アタッチメント24は、テクスチャ状タッチパッド46に繋がるアームの上下を前頭アタッチメント24の背面まで通過させることにより、バレル22の前部64への組付けが行われるよう構成されている。
【0033】
図7を参照すると、環状の開口112が前頭アタッチメント24の背面に開設されている。開口112により、
図3に関して記載したばね50及び針ホルダー52の挿入が可能となる。ばね50は、前側開口42内の環状肩部(
図11を参照)の間で圧縮されるのが好ましく、前頭アタッチメント24がバレル22の前部64をスライドさせる間、針ホルダー52のヘッド56の背後で圧縮状態が保持される。前頭アタッチメント24は、下向きで横方向に延びる凹部100を有する上側ガイド44と、上向きで横方向に延びる凹部102を有する下側ガイド45とを更に含む。前頭アタッチメント24の上側ランプ部(upper ramp)104及び下側ランプ部(lower ramp)106は、それぞれ、ブロッキングショルダー(blocking shoulder)77、79を有しており、横方向に離間して対向するランプ部の2つの組(
図6では、下側の組は見えない)を超えてスライドするように構成されている。前頭アタッチメント24及び前部64が
図6に示される位置にあるとき、前頭アタッチメント24をバレル22の前部64上にスライドさせることにより、バレル22の前部64の横方向に延びる上側レール68及び下側レール69は、それぞれ、上側凹部100及び下側凹部102と協働的に係合することが好ましい。テクスチャ状タッチ面46に圧力が加えられると、前頭アタッチメント24はレール68、69に沿って移動し、上側ガイド44の上側及び下側ブロッキングショルダー108は、上側及び下側ブロッキングショルダー77を通過して、その後、上側及び下側ブロッキングショルダー77と向き合う。この時、針支持部材32と針ホルダー52(
図6及び
図7には示されていない)は、流体チャンバ75の長手方向軸線(
図9参照)と同軸状に揃えられることが好ましい。前部64の上側及び下側ブロッキングショルダー77と、前頭アタッチメント24の上側ブロッキングショルダー108及び下側ブロッキングショルダー110とが向き合って接触しているから、前頭アタッチメント24を、分離した位置(
図6)に戻そうとしても、戻らない。
【0034】
図4及び
図5は、
図2のシリンジ20について、針カバーが取り外され、プランジャーキャップ30が所定の位置に維持され、テクスチャ状タッチ面46がバレル22に対して上述した初期位置にあるときの図である。針34は、前頭アタッチメント24の針支持部材32内に据え付けられる針ホルダー52の内側ボア58に配備され、ばね50は針ホルダー52のヘッド56(
図3)間で圧縮された状態にある。針ホルダー52と針34は、ばね50によって後方に付勢されており、ばね50で押されて、針34は、環状流体シール60の前面と対向して当接する。これによって、針34、針ホルダー52及び流体シール60を通り、略円筒形のバレル22の流体チャンバ75(
図9参照)に至る同軸状に揃えられた流体通路が確立される。
図4及び
図5に示されるように、プランジャーシール76は、バレル22の略円筒形の流体チャンバ75の中に前方に完全に押し込まれる。
【0035】
図8-
図9を参照すると、シリンジ20は流体が吸引されるように構成されており、テクスチャ状タッチパッド46は前述の初期位置にある。プランジャーキャップ30(
図2、
図4-
図5を参照)は取り外されており、プランジャーハンドル72は、流体チャンバ75に流体を吸引するときのように後退している。
図9では、針引込みキャビティ92は流体チャンバ75と略同じ長さである。これによって、体積計測標示27を略平らな表面23(
図3参照)に配置することができるので、流体チャンバ75の容積を十分に活用することができ、また、針34(
図11の針引込みキャビティ92内で見られる)よりかなり長い生検針などの針の引込みも可能になる。流体が流体チャンバ75内に吸引されると、プランジャー親指パッド78を前方に押してフランジ28の前向きの面に対して指で圧力を加えることにより、流体を患者に注入するか、又は流体チャンバ75から流体を注出できる。
【0036】
図10-
図11及び
図13を参照すると、流体チャンバ75を空にするために、プランジャーハンドル72とプランジャーシール76は前方に押されている。針の引込みを開始するために、テクスチャ状タッチパッド46に圧力が加えられ、これによって、前頭アタッチメントが移動して、針支持部材32が針引込みキャビティ92と揃えられる。針引込みキャビティ92の前側開口は、再配置された針ホルダー52のヘッド56よりも大きいので、針ホルダー52は圧縮バネ52の付勢力によって後方に押され、針ホルダー52と針34は、針引込みキャビティ92の遠位側端部へと移動する。
【0037】
図6及び
図7を再び参照すると、
図10-
図11に関して説明したバレル22に対して、前頭アタッチメント24のテクスチャ状タッチ面46へ更に力を加えると、前頭アタッチメント24とバレル22の前部64は相対的にスライド移動する。この移動によって、上側傾斜面104と下側傾斜面106が、対向するランプ部及びブロッキングショルダー79の第2の組を超えてスライドするので、上側ブロッキングショルダー108及び下側ブロッキングショルダー110が、上側及び下側ブロッキングショルダー79と対向して当接する。これによって、前頭アタッチメント24がバレル22に対して使用位置に戻ることはない。
【0038】
図14-
図24を全般的に、特に
図14-
図17を参照すると、本発明の別の実施形態が開示されており、バレル210、針安全装置212、針キャップ214、及びプランジャーキャップ216を備えるシリンジ200を備えている。バレル210は、読みやすい体積目盛が付いており、長手方向に延びる略平らな標示表示面220を少なくとも1つ備えていることが望ましい。本発明の好ましい一実施形態では、バレル210は、背向する略平らな2つの標示表示面220、236(
図16)を備えている。針キャップ214とプランジャーキャップ216(
図14)を装置から取り外すと、前方に突出した針225と後方に突出したプランジャー224(
図15)とが見えるようになる。針225は、プランジャー224と同軸状に揃えられており、そして、バレル210の前端にてノーズ234(
図16、
図17、
図20)の内側の狭いボア250に固定されて保持される。(或いは、針225及びノーズ234は協働的に構成されてよく、必要に応じて針225がノーズ234に着脱可能に取り付けられることで、様々なサイズの針をバレル234と共に使用することを可能にしてよいことは理解されるであろう。)
【0039】
ボア250は、流体リザーバと流体連通するように針225を配置し、当該流体リザーバは、ノーズ234とプランジャーハンドル240の前端のプランジャーシール260との間で管状バレル258内に配置されている。プランジャーハンドル240が、注入前(
図20)又は注入後(
図23)において完全に前方に押し出されてバレル210のノーズ234の後端に当たっていると、流体チャンバは見えない。後述するように、シリンジ200が注射のために準備されると、流体リザーバは、管状部258の内部の空間(これらの図では見えない)であって、当該空間は、流体がシリンジ200に引き込まれるとノーズ234の後部とプランジャーシール260の前部との間にある。
【0040】
図17を参照すると、針安全装置212はまた、作動ハンドル228及び針先シールド232を備えている。作動ハンドル228は、後端268と、タッチパッド226と、作動ハンドル228の両側に配置されており、長手方向に延びる一対のチャネル227とを更に備える。チャネル227の機能については、バレル210との摺動係合と関連して後述する。針先シールド232は内側ボア248を更に備えており、当該内側ボアは、針225と、そしてバレル210のノーズ234と同軸状に揃えられる。針先シールド232は、望ましくは、
図15及び
図21に示す位置にある場合に、同軸状に揃えられたノーズ234を針先シールド232がスライドして囲むことができるような内径を有しており、また、針先シールド232は、
図16、
図22-
図23のように前方に移動すると、針225の先端部を安全に覆うことができる十分な長さを有する。針先シールド232の内壁とノーズ234との間にわずかな摩擦係合をもたらすことで、シリンジ200の使用中に針安全装置212をバレル210に対して軸方向に安定した位置に保持してよい。針安全装置212は、望ましくは、ポリマー材料から一体成形され、シリンジ200での使用を意図した針の長さの範囲を考慮して、バレル210とスライド可能に係合するように協働的なサイズで構成される。
【0041】
再び
図17を参照すると、バレル210は、同軸状に揃えられており、内部ボア250を有するノーズ234と、ノーズ234から指先用フランジ218まで後方に延びる管状部258とを更に備える。管状部258の後端は開放しており、円筒状で後方に延びるカラー230の内部と連通している。カラー230には、プランジャーキャップ216が着脱自在に取り付けられる。両側にある標示表示面220、236(
図16)は、望ましくは、平行で長手方向に延びており略平らで印刷可能な面であり、各々が管状部258に隣接して配置された適切な標示を含む背向した体積目盛を有しており、使用者は、管状部258内の液体レベルを容易に読み取ることができる。内側に突出した保持端部254を有する長手方向に延びるレール256が、外向きの標示表示面220、236の各々の内向きの壁に設けられているのが望ましい。長手方向に延びるレール256は、針安全装置212の揃えられたチャネル227の各々に沿って、滑らかでスライド可能なインターフェースを提供するように、協働的なサイズで構成される。バレル210は、医療グレードのポリマー材料から成形されることが望ましく、シリンジ200の管状部258に引き込まれた液体レベルを使用者が分かりやすく見ることができるような十分な透明性を有する。更に、
図17を参照すると、プランジャー224は更に、サムキャップ(thumb cap)238、プランジャーハンドル240、プランジャーシールリテーナ本体266、及び環状凹部264を更に備えている。
【0042】
シリンジ200のバレル210に対する針安全装置212の協働的に構成された構造要素及び動作は、
図15-
図17、
図20、
図22-
図23に関連して更に説明及び解説される。シリンジ200の組立て中、針安全装置212の作動ハンドル228は、バレル210の管状部258と揃えられて、その上に挿入され、レール256がチャネル227に係合する。針安全装置212がバレル210に対して後方に移動すると、針先シールド232がバレル210のノーズ234を取り囲み、針安全装置212の後端268は、対向して配置された後側停止部246と摩擦係合する。スライド停止部242はランプ部244及び停止肩部252を有しており、レール256の後方と、後側停止部246の前方とに設けられる。対向して配置されたランプ部244は、作動ハンドル228をバレル210に対して前方にスライドさせて、シリンジ210の使用後に針先シールド232が針225の先端を覆って保護する位置まで移動させることを可能にする。針225の先端が覆われた後、対向して向き合う停止肩部252は、作動ハンドル228がバレル210に対して後方に移動して針先を再び露出させることを防止する。
【0043】
針安全装置212及び針先シールド232がバレル210及び針225に対して
図15、
図20-
図21に示す位置(「第1の停止位置」と称する)に配置されている場合、針先シールド232は、バレルのノーズ234と針225の一部とを取り囲んでいる。シリンジ200の針安全装置212が第1の停止位置にある場合、針225の先端を薬瓶(例えば、インスリンボトル)の栓を通って挿入し、管状部258の内壁にスライド可能に係合するプランジャー224を後方に引っ張ることにより、バレル210の管状部258(
図17、
図20)内に配置された流体リザーバに薬を吸い込むことができる。
【0044】
注射又はシリンジ200の他の使用に続いて、
図16、
図22-
図23に示す位置(「第2の停止位置」)まで針安全装置212を選択的に前方に移動させることによって、針先が覆われており、医療従事者又は患者との不注意な接触から保護された「安全」な配置にシリンジ200を再構成することができる。針安全装置212が第2の停止位置にあるようにシリンジ200が構成されていると、針225の先端は針先シールド232によって周囲を囲まれており、(
図16、
図23に示すように)針先シールド232の前端は針225の先端よりも十分に前方に延びているので、シリンジ200の前端が皮膚に押し付けられても、人が意図しない針刺しを被ることはない。
【0045】
添付の図面に関連して本明細書を読むことで、当業者には、本明細書に開示された実施形態に対して他の様々な修正及び変更を行うことができることは明らかになり、本発明の範囲は、発明者が法的に権利を与えられている添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ制限される。
【国際調査報告】