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  • 特表-金属ナノ構造体の精製 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】金属ナノ構造体の精製
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20220601BHJP
   B22F 1/0545 20220101ALI20220601BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220601BHJP
   B22F 1/062 20220101ALI20220601BHJP
   B22F 1/06 20220101ALI20220601BHJP
   B22F 1/07 20220101ALI20220601BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220601BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/0545
B22F1/00 K
B22F1/062
B22F1/06
B22F1/07
B82Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558821
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020026057
(87)【国際公開番号】W WO2020205898
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/828,613
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317001367
【氏名又は名称】カンブリオス フィルム ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ムーディー イアン ストームズ
(72)【発明者】
【氏名】チュー リーズ
(72)【発明者】
【氏名】ロビロス サミュエル ルマハン
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017AA08
4K017BA02
4K017BA03
4K017BA05
4K017CA02
4K017CA03
4K017CA07
4K017CA08
4K017DA07
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA04
4K018BB02
4K018BB04
4K018BB05
(57)【要約】
金属ナノ構造体を含む組成物を精製する方法。前記方法は、前記組成物と水混和性ポリマーとを組み合わせて、組み合わせにおける低アスペクト比ナノ構造体の凝集よりも、前記組み合わせにおける前記金属ナノ構造体の凝集を促進する組み合わせを形成することを含む。前記方法は、前記組み合わせを沈降プロセスに供して、前記組み合わせにおける金属ナノ構造体の以前の濃度よりも高い金属ナノ構造体の濃度を含む沈降層を形成することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ構造体を含む組成物を精製する方法であって、以下を含む方法:
前記組成物と水混和性ポリマーとを組み合わせて、組み合わせにおける低アスペクト比ナノ構造体の凝集を超えて、前記組み合わせにおける前記金属ナノ構造体の凝集を促進する前記組み合わせを形成すること;および
前記組み合わせを沈降プロセスに供して、前記組み合わせにおける前記金属ナノ構造体の以前の濃度よりも高い濃度の前記金属ナノ構造体を含む沈降層を形成すること。
【請求項2】
前記水混和性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水混和性ポリマーが、前記組成物の粘度を変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物に希釈剤を導入し、希釈濃度を達成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物に前記希釈剤を導入するステップが、前記組成物と水混和性ポリマーとを組み合わせるステップの前に行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上澄みが、前記沈降層と共に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記沈降層から前記上澄みを排出することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記沈降層内に保持された前記金属ナノ構造体を再懸濁することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属ナノ構造体が、銀金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属ナノ構造体が、ナノワイヤを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組み合わせを沈降プロセスに供するステップの後、前記低アスペクト比ナノ構造体の前記金属ナノ構造体に対する比が、0.8未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組み合わせを沈降プロセスに供するステップの後、前記低アスペクト比ナノ構造体の前記金属ナノ構造体に対する比が、0.5未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組み合わせを沈降プロセスに供するステップの後、前記低アスペクト比ナノ構造体の前記金属ナノ構造体に対する比が、0.2未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組み合わせを沈降プロセスに供するステップの後、前記低アスペクト比ナノ構造体の前記金属ナノ構造体に対する比が、0.1未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記低アスペクト比ナノ構造体が、10未満のアスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記低アスペクト比ナノ構造体が、ナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記低アスペクト比ナノ構造体が、ナノロッドを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、「金属ナノ構造体の精製(METAL NANOSTRUCTURE PURIFICATION)」と題され、2019年4月3日に出願された米国仮出願第62/828,613号に対する優先権を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、金属ナノ構造体の精製、および精製された金属ナノ構造体から作製された透明導電体(conductor)に関する。
【背景技術】
【0003】
透明導電体は、光学的に透明な導電性膜(film)を含む。銀ナノワイヤ(AgNW)は、ナノ構造体の一例である。今日のAgNWの適用例の1つは、タッチパネル、光電池、フラット液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)、ウェアラブルデバイスなどの電子デバイスに透明導電体(TC)層を形成することである。通常、様々な技術により、導電性ナノ構造体などの1つまたは複数の導電性媒体に基づいて、透明導電体が製造されている。通常、導電性ナノ構造体は、長距離相互接続性を介して導電性ネットワークを形成する。
【0004】
透明導電体を使用する用途の数が増加し続けるにつれて、導電性ナノ構造体に対する需要を満たすために、改良された製造方法が必要とされている。伝統的な精製技術は、沈降(sedimentation)によって望ましくない汚染物質のレベルを減少させようとする。しかしながら、従来の沈降技術は、望ましくない汚染物質から導電性ナノ構造体を適切に分離するために必要な長い沈殿時間(settling time)の結果として、沈降の生産性が制限されるため、ベンチトップ(benchtop)よりも大きなスケールには適していない。
【発明の概要】
【0005】
一態様によれば、金属ナノ構造体を含む組成物を精製する方法が提供される。前記方法は、前記組成物と水混和性ポリマーとを組み合わせて、組み合わせ(combination)における低アスペクト比ナノ構造体(low-aspect-ratio nanostructure)の凝集よりも、前記組み合わせにおける金属ナノ構造体の凝集を促進する前記組み合わせを形成することを含む。前記方法は、前記組み合わせを沈降プロセスに供して、前記組み合わせにおける金属ナノ構造体の以前の濃度よりも高い金属ナノ構造体の濃度を含む沈降層(沈殿層:sediment layer)を形成することを含む。
【0006】
上記概要(summary)は、本明細書で議論されるシステムおよび/または方法のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。本概要は、本明細書で議論されるシステムおよび/または方法の広範な要旨(overview)ではない。不可欠な(key)/重要な(critical)要素を特定したり、あるいは、そのようなシステムおよび/または方法の範囲を描き出すことを意図していない。その唯一の目的は、後に述べるより詳細な説明の前置き(prelude)として、いくつかの概念を簡略化した形式で示すことである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に提示される技術は、代替の形態で実施されてもよいが、図面に示される特定の実施形態は、本明細書に提供される説明を補足するほんの数例にすぎない。これらの実施形態は、添付の特許請求の範囲を限定するような限定的な方法で解釈されるべきではない。
【0008】
開示された主題は、特定の部分(part)および部分の配置において物理的な形態をとることができ、その実施形態は、本明細書において詳細に説明され、本明細書の一部を形成する添付の図面に示される。
【0009】
図1図1は、本開示による、金属ナノワイヤおよび低アスペクト比ナノ構造体を含む混合物を精製するためのポリマー支援沈降方法(method of polymeric-assisted sedimentation)の一例を示すフローチャートである。
【0010】
詳細な説明
以下、本発明の一部を構成し、例示として特定の実施形態例を示す添付図面を参照して、主題をより詳細に(fully)説明する。この説明は、既知の概念の広範なまたは詳細な説明を意図したものではない。関連技術の当業者に一般的に知られている詳細は、省略されていてもよいし、または、要約的に取り扱われてもよい。
【0011】
特定の用語は、本明細書では便宜のためにのみ使用され、開示された主題に関する限定とは解釈されるべきではない。本明細書で使用される相対的な用語は、図面を参照することによって最もよく理解され、図面では、同様のまたは類似の項目(アイテム)を識別するために同様の数字が使用される。さらに、図面において、特定の特徴は、いくぶん概略的な形態で示されてもよい。
【0012】
以下の主題は、方法、デバイス、構成要素(component)、および/またはシステムなどの様々な異なる形態で具現化することができる。したがって、この主題は、例として本明細書に記載された任意の例示的実施形態に限定されるものと解釈されることを意図していない。むしろ、本明細書では、実施形態は単に説明のために提供されている。
【0013】
本明細書では、プロセス混合物から導電性ナノ構造体を単離および精製する方法が提供される。本明細書で使用される場合、「導電性ナノ構造体」または「ナノ構造体」は、通常、少なくとも1つの寸法(一次元:one dimension)が、例えば、500nm未満、または、250nm未満、100nm未満、50nm未満、25nm未満、15nm未満、または10nm未満である、導電性ナノサイズ構造体を指す。通常、ナノ構造体は、元素金属(例えば遷移金属)または金属化合物(例えば、金属酸化物)などの金属材料で作製される。前記金属材料は、2種類以上の金属を含む、金属合金またはバイメタル材料であることもできる。好適な金属としては、銀、金、銅、ニッケル、金めっき銀、白金およびパラジウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
ナノ構造体は、任意の形状(shape)または幾何学形状(geometry)であることができる。所与の(given)ナノ構造体の形態は、ナノ構造体の直径に対する長さの比である、そのアスペクト比によって、簡単な方法で定義することができる。例えば、ある種のナノ構造体は等方的な形状をしている(すなわち、アスペクト比=1)。典型的な等方性ナノ構造体はナノ粒子を含む。好ましい実施形態において、ナノ構造体は、異方性の形状をしている(すなわち、アスペクト比≠1)。異方性ナノ構造体は、通常、その長さに沿って縦軸を有する。例示的な異方性ナノ構造体は、本明細書に定義されるように、ナノワイヤ、ナノロッド、およびナノチューブを含む。
【0015】
ナノ構造体は、中実(固体:solid)または中空(hollow)であることができる。中実ナノ構造体は、例えば、ナノ粒子、ナノロッドおよびナノワイヤ(「NW」)を含む。NWとは、典型的には、10を超える、好ましくは50を超える、より好ましくは100を超える、アスペクト比を有する長くて細い(thin)ナノ構造体を指す。典型的には、ナノワイヤは、500nmを超える長さ、1μmを超える長さ、または10μmを超える長さである。「ナノロッド」は、典型的には、10以下のアスペクト比を有する短くて広い異方性ナノ構造体である。本開示は、任意の種類のナノ構造体の精製に適用可能であるが、簡潔にするために、銀ナノワイヤ(「AgNW」または単に「NW」と略記する)の精製を一例として説明する。
【0016】
多くの電子用途は、TC層の電気的および光学的特性に依存して、それらの所望の性能を達成する。そのような用途は、通常、好ましい属性として、高い導電率、高い光透過率、および低いヘイズを有するTCを必要とする。TC層の電気的および光学的特性は、NWの物理的寸法、すなわち、その長さおよび直径、より一般的には、そのアスペクト比に依存する。より大きなアスペクト比を有するNWは、所与の膜抵抗率(film resistivity)に対してより高い透明性を達成するために、ワイヤのより低い密度を可能にすることによって、より効率的な導電性ネットワークを形成する。各NWは導電体とみなすことができるので、個々のNWの長さおよび直径は、全体的なNWネットワーク導電率、したがって、最終的な膜導電率(film conductivity)に影響を及ぼすだろう。例えば、ナノワイヤが長くなるにつれて、導電性ネットワークを形成するために必要とされるものは少なくなる。NWが細くなると、NW抵抗率が増加し、得られる膜の導電性が所与の数のNWに対して低下する。
【0017】
同様に、NWの長さおよび直径は、TC層の光透過性および光拡散(ヘイズ)に影響を及ぼすだろう。NWネットワークは、ナノワイヤが膜のごく一部を構成するので、光学的に透明(transparent)である。しかしながら、ナノワイヤは光を吸収および散乱するので、NWの長さおよび直径は、大部分において、導電性NWネットワークのための光透過性およびヘイズを決定するだろう。通常、より細いNWは、TC層における透過率の増加およびヘイズの減少を可能にし、これは、電子用途に対して所望される特性である。
【0018】
NWを製造するために使用される多くの合成プロセスはまた、副生成物(byproduct)として様々な低アスペクト比ナノ構造体を生成する。これらの低アスペクト比ナノ構造体(例えば、ナノ粒子、ナノロッド、微粒子など)は、ネットワークの導電性に寄与することなく光を散乱するので、これらの構造体は、TC層に追加のヘイズを生成する。したがって、粗NW懸濁液は、通常、TC層に処理する前に、前記NW懸濁液からこれらの副生成物を除去するために、追加の処理(すなわち、精製ステップ)を必要とする。
【0019】
しかしながら、NWは、かつてないほど小さな直径(例えば、数十ナノメートルの範囲)で合成することができ、これらの小さな直径は、低アスペクト比ナノ構造体などの望ましくない副生成物の寸法に厳密に一致する。前記副生成物はネットワークの導電性に寄与せずに光を散乱し、TC層にヘイズを追加する。このヘイズを制限するために、NWを含む前記組成物から副生成物の少なくとも一部を除去すべきである。しかし、NWと副生成物とのサイズ、組成および構造が類似しているため、高品質のTC膜用の高アスペクト比のNWの精製は困難である。
【0020】
本開示は、高アスペクト比のNWを含有する懸濁液を含む、NW懸濁液を精製する際に使用するための精製方法を記載する。本方法の実施形態は、粘度改変性(viscosity-modifying)の水混和性ポリマーを利用して、可逆的なNW凝集を誘導し、低アスペクト比ナノ構造体よりもNWの優先的な沈降における沈降助剤として作用することを含む。優先的な沈降挙動は、20倍(20x)以上の副生成物濃度の減少を伴う、NWの効率的でハイスループットな精製を可能にする。
【0021】
NWは、溶液ベースの合成、例えば、金属ナノ構造体の大量生産において合理的に有効な「ポリオール」プロセスによって製造することができる。例えば、Sun,Y.ら,(2002)Science、298,2176;Sun,Y.ら,(2002)Nano Lett.2,165を参照のこと。前記ポリオールプロセスは、ポリビニルピロリドン(「PVP」)の存在下、少なくとも2つのヒドロキシル基(例えば、エチレングリコール)を含む有機化合物であるポリオールによって、金属ナノ構造体の前駆体(例えば、金属塩)を還元することを含む。通常、前記ポリオールは、還元剤と溶媒の二重の機能を果たす。例示的なポリオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、およびグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
前記ポリオールプロセスは、主にNWを生成するように最適化することができるが、実際には、ナノ構造体の複合集合体(complex collection)が反応副生成物として形成される。例えば、NWの他に、ナノ粒子、ナノキューブ、ナノロッド、ナノピラミッドおよび多重双晶粒子を含む、様々な形態の金属または金属ハロゲン化物ナノ構造体も製造され得る。この問題は、プロセスの再現性の乏しさによってさらにひどくなり、これは、合成の成分中の微量の汚染物質に起因すると考えられている。
【0023】
本明細書で論じられるように、ナノ構造体が導電性ネットワークを形成するTCを形成するためには、NW以外に存在する副生成物ナノ構造体の量を減らすことが望ましい場合がある。なぜなら、他のナノ構造体は、効果的に導電率に寄与しない可能性があり、それらの存在はヘイズに寄与する可能性があるからである。本明細書で使用される場合、「低アスペクト比ナノ構造体」または「汚染物質」は、例えば、比較的幅が広くかつ/または短いナノ構造体(例えば、ナノ粒子、ナノロッド)、および、比較的小さいアスペクト比(<10)を有するナノ構造体を含む。これらの低アスペクト比ナノ構造体の一部または全部は、暗視野顕微鏡写真で明るい外観をしているため、導電膜中の「明るい物体」として見なされる場合がある。したがって、前記明るい物体は、導電膜のヘイズを著しく増加させる可能性がある。
【0024】
粗生成物(crude product)の反応混合物中の汚染物質からNWを単離することは、困難または非効率であることが証明されている。特に、単離方法は、ポリオールおよびPVPを含む液相が上澄み(上清)を形成する間にナノ構造体を沈殿させることを可能にする沈降を含み得る。しかし、汚染物質は通常NWと共沈し、分離が非常に困難になる。また、共沈したNWおよび汚染物質は、液相中に再懸濁させることが困難な場合が多く、さらなる精製の努力を妨げる。さらに、ある種のポリオール溶媒(例えば、グリセロール)は、室温で非常に粘性が高いため、かなりの量のナノ構造体が沈殿する前に、長時間の沈降プロセスが必要となる場合がある。
【0025】
実施形態は、アスペクト比が10未満の金属ナノ構造体(例えば、ナノ粒子やナノロッド)などの汚染物質に加えて、NWを含む粗反応混合物からNWを単離する合成後精製方法を提供する。精製プロセスは、例えば、デキストリン、デンプン、キチン、キトサン、グリコーゲン、セルロースなどの粘度改変性の水混和性ポリマー多糖類を、NWおよび汚染物質を含む反応混合物に導入することを含む。前記多糖類の導入は、従来の重力ベース沈降プロセスに関連する制約の少なくとも一部(例えば、降水率の改善を提供する)を克服すると考えられ、大量生産に拡張可能である。さらに、特に、精製プロセスは、粘度改変性の水混和性ポリマー多糖類を使用して、可逆的なNW凝集を誘導し、低アスペクト比ナノ構造体よりもNWの優先的な沈降における沈降助剤として作用することを含む。
【0026】
図1は、ナノ構造体の一例としての金属NW、および低アスペクト比ナノ構造体を含む混合物を精製するための、ポリマー支援沈降方法100の例示的な実施形態を示すフローチャートである。このように、本方法の例は、NWに焦点を当てた精製に関して実施される。しかしながら、この例示的な方法は、精製に焦点を当てた他のナノ構造体に適用可能であることを理解されたい。
【0027】
本開示による例示的な方法の例示的な前駆体として、反応組成物は、液体媒体(例えば、水、エチレングリコールおよび水など)中で、NWと低アスペクト比ナノ構造体との組み合わせを含むポリオールプロセスによって製造される。もちろん、例示的な前駆体は、様々な方法で提供されるなど、変更することができ、したがって、本開示を限定するものではない。
【0028】
方法100のステップ102では、必要に応じて、反応組成物に適切な量の希釈剤(例えば、脱イオン水)を導入することによって、反応組成物を希釈して、0.04重量%以上の金属(例えば銀)濃度を2.5重量%以下の濃度まで確立する(establish a metal concentration of 0.04 wt% or greater, up to concentrations that are equal to or less than 2.5 wt%)。(例えば、組成物が既に許容可能な希釈状態を有している場合等には)ステップ102は任意選択であると考えられることを理解されたい。
【0029】
ステップ104で、水混和性ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)などを、希釈反応組成物に導入し、前記組成物を混合する。適切な量のHPMCまたは他のポリマー材料を導入して、少なくとも0.02重量%のポリマー濃度を、0.30重量%以下の濃度まで確立する(establish a polymeric concentration of at least 0.02 wt%, up to concentrations that are equal to or less than 0.30 wt%)。希釈反応組成物の液体媒体と組み合わされたHPMCは、HPMCの添加前の希釈反応組成物によって示される元の粘度から、希釈反応組成物の粘度を増加させる粘弾性特性を示す。エチレングリコール/水混合物へのHPMCの低い溶解度は、希釈反応組成物中のNWの凝集および希釈反応組成物からの凝集NWの沈降を促進すると考えられる。
【0030】
HPMCが添加された希釈反応組成物は、ステップ106で沈降に供される。様々な沈降技術、装置などを用いることができる。例えば、2~20mmの間の沈降高さ、または他の所望の高さが、沈降容器内に確立され、そして、沈降期間の日々、例えば1~5日間、またはさらなる例としては21日間まで、乱さないまま放置される(rest undisturbed)ことができる。沈降の詳細は、本開示に対する特定の制限である必要はない。
【0031】
沈降期間に続く任意であるが論理的な次のステップとして、ステップ108で上澄みを排出し、希釈反応組成物よりもそこから沈降した凝集束中にNWを含有する沈降層を残す。大部分のNWは沈降し、沈降物中のNWの濃度は、上澄み中に残されたNWの濃度よりも高い。排出された上澄みは、HPMCまたは他のポリマー物質が、低アスペクト比ナノ構造体よりもNWを凝集させることを優先する結果として、主に低アスペクト比ナノ構造体を含む。沈降層中のNW濃度の実施形態は、反応組成物または希釈反応組成物中のNWの濃度よりも少なくとも10倍(10x)、または任意に少なくとも15倍(15x)、または任意に少なくとも20倍(20x)高くすることができる。
【0032】
ステップ110において、沈降層に残っているNWを任意に水溶液(例えば、脱イオン水)中に再懸濁させることができる。水溶液中のNW濃度をさらに精製したい場合には、前記水溶液を反応混合物として始めて、上記のステップを繰り返すことができる。もちろん、再懸濁に関するバリエーションが可能であり、企図されていることを理解されたい。例えば、再懸濁は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコールの使用を介して行うことができる。
【0033】
典型的には、合成されたままの粗反応混合物において、NWに対する低アスペクト比ナノ構造体の比は、2~15の範囲である。低アスペクト比ナノ構造体(例えば、ナノ粒子やナノロッド)は、10未満のアスペクト比を有する。上記沈降精製プロセスの後、NWに対する低アスペクト比ナノ構造体の比は、大幅に減少し、好ましくは0.8未満、好ましくは0.5未満、好ましくは0.2未満、または好ましくは0.1未満である。
【0034】
例示的な方法100は、修正することができ、本開示を限定する必要はないことを理解されたい。例えば、例示的な方法のいくつかのステップは、例えば、任意であることができ、修正されることができ、異なる順序/同時で実行されることができる。
【0035】
ステップが任意/修正される方法の例として、本開示による方法は、金属ナノ構造体を含む組成物を精製する方法であり得る。この方法は、組成物と水混和性ポリマーとを組み合わせて、組み合わせにおける低アスペクト比ナノ構造体の凝集よりも、前記組み合わせにおける金属ナノ構造体の凝集を促進する組み合わせを形成し、前記組み合わせを沈降プロセスに供して、前記組み合わせにおける金属ナノ構造体の以前の濃度よりも高い濃度の金属ナノ構造体を含む沈降層を形成することを含む。
【0036】
特に明記されない限り、「第1(first)」、「第2(second)」および/または類似の用語は、時間的側面、空間的側面、順序などを意味することを意図していない。むしろ、そのような用語は、例えば、特徴、要素、アイテムなどの識別子、名前などとして単に使用される。例えば、第1の物体(object)および第2の物体は、通常、物体Aおよび物体B、または2つの異なる物体、または2つの同一の物体、または同じ物体に対応する。
【0037】
さらに、本明細書では、「例(example)」は、例示(instance)、説明(illustration)などとして機能することを意味し、必ずしも有利であるとは限らない。本明細書で使用される場合、「または(or)」は、排他的な「または」ではなく、包含的な「または」を意味することを意図している。さらに、本出願で使用される「a」および「an」は、他に明記されない限り、または文脈から明確に単数形に向けられない限り、通常「1つ以上」を意味すると解釈される。また、AおよびBの少なくとも1つ、並びに/あるいはそれに類するものは、通常、AもしくはB、またはAおよびBの両方を意味する。さらに、「含む(include)」、「有している(having)」、「有する(have)」、「伴う(with)」、および/またはそれらの変形が、詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限り、そのような用語は、「含む(comprise)」という用語と同様の方法で包含的であることが意図されている。
【0038】
主題は、構造的特徴および/または方法論的作用(methodological act)に特有の言語で記載されているが、添付の特許請求の範囲で定義される主題は、必ずしも上記の特定の特徴または作用に限定されないことを理解されたい。むしろ、上記の特定の特徴および作用は、特許請求の範囲の少なくともいくつかを実施する例示的形態として開示されている。
【0039】
実施形態の様々な動作が本明細書で提供される。本明細書において記載される操作の一部または全部の順序は、これらの操作が必然的に順序に依存することを意味すると解釈されるべきではない。代替的な順序付けは、この説明の利点を有する当業者によって理解されるであろう。さらに、本明細書で提供される各実施形態において、必ずしもすべての動作が存在するわけではないことが理解されよう。また、一部の実施形態では、全ての動作が必要であるとは限らないことが理解されよう。
【0040】
また、本開示は、1つ以上の実装(implementation)に関して示され、説明されているが、本明細書および添付の図面を読んで理解することに基づいて、当業者には同等の変更および修正が生じるであろう。本開示は、そのようなすべての修正および変更を含み、以下の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。特に、上述の構成要素(component)(例えば、要素(element)、リソースなど)によって実行される様々な機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語は、特に明記されていない限り、開示された構造と構造的に同等でない場合であっても、上述の構成要素の特定の機能を実行する(例えば、それは機能的に等価である)任意の構成要素に対応することを意図している。さらに、本開示の特定の特徴は、いくつかの実装のうちの1つに関してのみ開示されていてもよいが、そのような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途にとって所望されかつ有利な可能性のある他の実装の1つ以上の他の特徴と組み合わせることができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ構造体を含む組成物を精製する方法であって、以下を含む方法:
前記組成物と水混和性ポリマーとを組み合わせて、組み合わせにおける低アスペクト比ナノ構造体の凝集を超えて、前記組み合わせにおける前記金属ナノ構造体の凝集を促進する前記組み合わせを形成すること;および
前記組み合わせを沈降プロセスに供して、前記組み合わせにおける前記金属ナノ構造体の以前の濃度よりも高い濃度の前記金属ナノ構造体を含む沈降層を形成すること
ここで、前記水混和性ポリマーは、前記組成物の粘度を変化させ、前記沈降層中の金属ナノ構造体の濃度は、前記組成物中の金属ナノ構造体の濃度よりも少なくとも10倍高い。
【請求項2】
前記水混和性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物に希釈剤を導入し、希釈濃度を達成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物に前記希釈剤を導入するステップが、前記組成物と水混和性ポリマーとを組み合わせるステップの前に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記沈降層から上澄みを排出することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記沈降層内に保持された前記金属ナノ構造体を再懸濁することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属ナノ構造体が、銀金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属ナノ構造体が、ナノワイヤを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組み合わせを沈降プロセスに供するステップの後、前記低アスペクト比ナノ構造体の前記金属ナノ構造体に対する比が、0.8未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組み合わせを沈降プロセスに供するステップの後、前記低アスペクト比ナノ構造体の前記金属ナノ構造体に対する比が、0.5未満である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記組み合わせを沈降プロセスに供するステップの後、前記低アスペクト比ナノ構造体の前記金属ナノ構造体に対する比が、0.2未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組み合わせを沈降プロセスに供するステップの後、前記低アスペクト比ナノ構造体の前記金属ナノ構造体に対する比が、0.1未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記低アスペクト比ナノ構造体が、10未満のアスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記低アスペクト比ナノ構造体が、ナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記低アスペクト比ナノ構造体が、ナノロッドを含む、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】