(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ナノワイヤインクの性能とナノワイヤ寸法との相関
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
H01B1/22 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558824
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020026061
(87)【国際公開番号】W WO2020205902
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317001367
【氏名又は名称】カンブリオス フィルム ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】スペイド マイケル アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルク ジェフ アラン
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301DA03
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
透明導電膜を作製する前に、ナノワイヤを含むインクから製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性を予測する方法。本方法は、分析のためにインクからナノワイヤ集団を得ることを含む。本方法は、インクから集団内のすべてのナノワイヤについて、長さ及び直径の少なくとも1つを特定することを含む。この方法は、特定された長さ及び直径の少なくとも1つを、製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性に相関する指標値と比較することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノワイヤを含むインクから製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性を予測する方法であって、
分析のために前記インクからナノワイヤ集団を得ることと、
前記インクから前記集団内のすべての前記ナノワイヤの長さ及び直径の少なくとも1つを特定することと、
特定された前記長さ及び直径の少なくとも1つを、透明導電膜の少なくとも1つの性能特性に相関する指標値と比較することと、を含む、
方法。
【請求項2】
透明導電膜の少なくとも1つの前記性能特性が光学特性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学特性はヘイズである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学特性は拡散反射である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記比較するステップが、透明導電膜の少なくとも1つの前記性能特性が不十分であることを示す場合に、前記インクを使用して透明導電膜を作製することを回避するために使用される品質管理方法として、前記方法が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記比較するステップは、ナノワイヤの量が特定の直径の基準外の直径を有する場合、透明導電膜の少なくとも1つの前記性能特性が不十分であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記比較するステップは、ナノワイヤの量が特定の直径の基準外の長さを有する場合、透明導電膜の少なくとも1つの前記性能特性が不十分であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
特定の基準外の長さを有する許容できない数のナノワイヤに基づいて、前記インクの使用を拒絶することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
特定の基準外の長さ及び直径を有する許容できない数のナノワイヤに基づいて、前記インクの使用を拒絶することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノワイヤは、導電性金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノワイヤは、透明導電膜内に相互接続されたネットワークを提供する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
所定の基準に基づいて相関を分析して、透明導電膜内の相互接続されたネットワークの性能を予測することを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、「INK」と題され、2019年4月3日に出願された米国仮出願第62/828,674号に対する優先権を主張し、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、そのようなナノワイヤを含むインクを使用して作製され得る透明導電膜の光学性能を予測する目的のためのナノワイヤ寸法の評価に関する。
【背景技術】
【0003】
透明導電膜は、タッチセンシティブコンピュータディスプレイにおいて一般的に使用されるもののような、光学的に透明な導電性の膜を含む。一般に、導電性ナノワイヤは互いに接続して、長距離相互接続性を有する浸透ネットワークを形成する。浸透ネットワークは、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、又は他のコンピューティングデバイスの電子回路に接続される。
【0004】
透明導電膜の製造時には、インクが利用される。インクは、結合剤、界面活性剤、共溶媒などのコーティング品質を改善するための追加の任意の成分とともに、水又はIPAなどの溶媒中に懸濁されたナノワイヤを最小限に含む。典型的には、光学性能特性などの少なくとも1つの望ましい性能特性を有する透明導電膜を最終的に製造するナノワイヤ含有インクを製造することが望ましい。しかしながら、製造された透明導電膜が所望の性能特性を有するか否かの判定は、透明導電膜の製造後に行われる。製造された透明導電膜が所望の性能特性を有していない場合、製造にかかる時間、材料、コストが無駄になる可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
一態様によれば、本開示は、ナノワイヤを含むインクから製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性を予測する方法を提供する。本方法は、分析のためにインクからナノワイヤ集団を得ることを含む。本方法は、インクから集団内のすべてのナノワイヤについて、長さ及び直径の少なくとも1つを特定することを含む。この方法は、特定された長さ及び直径の少なくとも1つを、製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性に相関する指標値と比較することを含む。
【0006】
上記の要約は、本明細書で議論されるシステム及び/又は方法のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された要約を提示する。本要約は、本明細書で議論されるシステム及び/又は方法の広範な概要ではない。重要/極めて重要な要素を特定することや、そのようなシステム及び/又は方法の範囲を詳しく説明することを意図していない。その唯一の目的は、後に述べるより詳細な説明の前段階として、いくつかの概念を簡略化して示すことである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に示された技術は、代替の形態で実施されてもよいが、図面に示される特定の実施形態は、本明細書に提供される説明の補足である少数の例にすぎない。これらの実施形態は、添付の特許請求の範囲を限定するような限定的な方法で解釈されるものではない。
【0008】
開示された発明特定事項は、特定の部分及び部分の配置において物理的な形状をとることができ、その実施形態は、本明細書において詳細に説明され、本明細書の一部を形成する添付図面に図示される。
【
図1】本開示の一態様による方法の一例のフローチャートである。
【
図2A】ナノワイヤの例示的なバッチの直径対長さのプロットである。
【
図2B】ナノワイヤの例示的なバッチの直径対長さのプロットである。
【
図3A】ナノワイヤの例示的なバッチの直径対長さのプロットである。
【
図3B】ナノワイヤの例示的なバッチの直径対長さのプロットである。
【
図4】例えばナノワイヤのバッチに対するパーセントヘイズ対シート抵抗のプロットである。
【
図5】本開示の方法と共に使用することができる例示的なスピンコータの画像である。
【
図6】
図5のスピンコータを介して提供される典型的なナノワイヤの拡大画像である。
【
図7】本開示の方法と共に使用することができる顕微鏡の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一部を構成し、例示として特定の実施形態例を示す添付図面を参照して、発明特定事項をより詳細に説明する。この説明は、既知の概念の広範又は詳細な説明を意図したものではない。当業者に一般的に知られている詳細は省略されていてもよいし、要約して扱われてもよい。
【0010】
以下の発明特定事項は、方法、装置、構成要素、及び/又はシステムなどの様々な異なる形態で具現化することができる。したがって、この発明特定事項は、本明細書に例示として記載された任意の例示的実施形態に限定して解釈されることを意図していない。むしろ、本明細書では、実施形態は単に説明のために提供される。
【0011】
以下の発明特定事項は、方法、装置、構成要素、及び/又はシステムなどの様々な異なる形態で具現化することができる。したがって、この発明特定事項は、本明細書に例示として記載された任意の例示的実施形態に限定して解釈されることを意図していない。むしろ、本明細書では、実施形態は単に説明のために提供される。
【0012】
本発明は、ナノワイヤを含むインクから製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性を予測する方法を提供する。本方法は、分析のためにインクからナノワイヤ集団を得ることを含む。本方法は、インクから集団内のすべてのナノワイヤについて、長さ及び直径の少なくとも1つを特定することを含む。この方法は、特定された長さ及び直径の少なくとも1つを、製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性に相関する指標値と比較することを含む。
【0013】
所与のナノワイヤの形態は、そのアスペクト比(ナノワイヤの長さ/直径の比)によって、簡略化された方法で定義することができる。例えば、特定のナノワイヤは、等方的な形状である(すなわち、アスペクト比=1)。例示的な実施形態では、ナノワイヤは、異方的な形状である(すなわち、アスペクト比≠1)。異方性ナノワイヤは、典型的には、その長さに沿って長手方向の軸を有する。
【0014】
ナノワイヤ(「NW(NWs)」)は、典型的には、10超、好ましくは50超、より好ましくは100超のアスペクト比を有する長く薄いナノ構造体を指す。典型的には、NWsは、長さが500nm超、1μm超、又は10μm超である。本開示は、任意のタイプのナノワイヤに適用可能であるが、本明細書における銀ナノワイヤ(「AgNWs」と示すことができ、又は単に「NWs」と略記することができる)を対象とするいくつかの説明は、一例として記載される。
【0015】
透明導電体(TC)層の電気的及び光学的特性は、NWsの物理的寸法、すなわち、それらの長さ及び直径、より一般的には、それらのアスペクト比に強く依存する。一般に、より大きなアスペクト比を有するナノワイヤで構成されるネットワークは、優れた光学特性、特に低ヘイズの導電性ネットワークを形成する。各NWは導体と考えられるため、個々のNWの長さ及び直径は、全体的なNWネットワーク導電率、したがって、最終的な膜導電率に影響を及ぼす。例えば、ナノワイヤが長くなるにつれて、導電性ネットワークを形成するために必要とされるものは少なくなり、NWsが薄くなると、NWの抵抗率が高くなり、所定の数のNWsに対して得られる膜の導電性が低下する。
【0016】
同様に、NWの長さ及び直径は、TC層の光透過性及び光拡散(ヘイズ)に影響を及ぼす。NWネットワークは、ナノワイヤが膜のごく一部を構成するので、光学的に透明である。しかしながら、ナノワイヤは光を吸収及び散乱するため、主にNWの長さ及び直径は導電性NWネットワークの光透過性及びヘイズを特定する。一般に、より薄いNWsは、TC層のヘイズを減少させることができ、これは、電子アプリケーションにとって望ましい特性である。
【0017】
いくつかの所望の品質を提供し得ない可能性のあるいくつかのナノワイヤに注目すると、TC層におけるいくつかの低アスペクト比のナノワイヤ(合成プロセスの副産物)は、ネットワークの導電性に有意に寄与することなく光を散乱する構造であるため、ヘイズの増加をもたらす。金属ナノワイヤを調製する合成方法は、典型的には、望ましいものと望ましくないものの両方の、一定範囲のナノワイヤ形態を含む組成物を生成するからである。高アスペクト比のナノワイヤの保持を促進するために、そのような組成物を精製する必要がある場合がある。保持されたナノワイヤを使用して、所望の電気的及び光学的特性を有するTCsを形成することができる。あるいは、ナノワイヤは、単純に品質が不十分であるために、所望の結果を得られないことがある。したがって、ナノワイヤの1又は複数の特性は、透明導電膜の1又は複数の性能特性に影響を及ぼす。
【0018】
透明導電膜の1又は複数の性能特性は、透明導電膜が作製された後に、容易に試験、測定、特定などすることができる。しかし、そのためには、透明導電膜を作製する必要がある。
【0019】
前述のように、インクから集団内のすべてのナノワイヤについて、長さ及び直径の少なくとも1つを特定することは、その中にナノワイヤを有するインクを使用して作製され得る透明導電膜の少なくとも1つの性能特性を予測するために使用される。すべてのナノワイヤについての長さ及び直径の少なくとも1つについての1又は複数の特定のために、いくつかの方法、構造体/デバイスなどのいずれかを利用できることを理解されたい。一例として、スピンコータと顕微鏡を利用し、顕微鏡は反射光、暗視野モードで使用する。
【0020】
製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性は、いくつかの性能特性のうちの任意の1つ又は複数であり得ることを理解されたい。例えば、膜の光学特性は、性能特性である。特定の例では、光学特性はヘイズであり得る。特定の例では、光学特性は拡散反射である。
【0021】
ナノワイヤの長さ及び直径の少なくとも1つは、異なる性能特性に対して異なる効果を有し得ることを理解されたい。様々な性能特性は、ナノワイヤの長さと直径の両方によって影響され得ることを理解されたい。ナノワイヤの長さ及び/又は直径は、長さ及び/又は直径の様々な測定基準に基づいて、様々な性能特性に影響を及ぼし得ることを理解されたい。長さ及び/又は直径のこのような測定基準の例は、個体群密度(例えば、長さ及び/又は直径の範囲における発生割合)、平均などを含むことができる。
【0022】
上記の観点から、本開示は、特定の性能特性及び/又はナノワイヤの長さ及び/又は直径の特定の寸法/測定値に限定される必要はない。
【0023】
したがって、本開示は、透明導電膜を作製する前に、ナノワイヤを含むインクから製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性を予測するための、以下の例示的な方法100(
図1)を提供する。方法100は、分析のためにインクからナノワイヤ集団を得るステップ102を含む。方法100は、インクから集団内のすべてのナノワイヤについて、長さ及び直径の少なくとも1つを特定するステップ104を含む。方法100は、特定された長さ及び直径の少なくとも1つを、製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性に相関する指標値と比較するステップ106を含む。その結果は、108に示すように、インクから製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性の予測である。
【0024】
以下は、本開示の方法論の適用を示す議論である。研究例を示す。
【0025】
研究例として、ナノワイヤの2つのサンプルを比較する相関研究を提供する。ナノワイヤのサンプルは、本明細書では、18E0039 PR3及び18F0041 PR3として特定される。
【0026】
この研究例では、相関分析を行った。一例において、ナノワイヤの長さ及び直径の両方が測定される。さらに一例では、ナノワイヤの長さ及び直径が同時に測定される。さらに一例では、そのような測定は顕微鏡を介して行われる。さらに一例では、暗視野顕微鏡が用いられる。異なる測定技術、装置等を利用することができ、そのような具体的な内容は、本開示に対する特定の制限である必要はなく、異なる測定技術、装置等が本開示の範囲内にあることを理解されたい。
【0027】
具体的には、この例で検討されているナノワイヤは主にナノワイヤであり、バッチは、ナノワイヤではないナノ構造を除去するために、いくつかの精製処理が行われている。
【0028】
各バッチ内のナノワイヤの数を定量化するために、以下の式を用いて、分析されたナノワイヤのパーセンテージも計算した。
d>dAVE+fσd
【0029】
ここで、fは定数であり、これは大まかな基準にすぎないことが理解される。
【0030】
存在する可能性のあるワイヤー集団の例として、長さ及び直径の両方による分別が記載されている表1が挙げられる。各列と行は、特定の範囲である。例えば、列3は、長さが5~7.5ミクロンのナノワイヤを表し、行4は、任意の単位で直径が2.4~3.2のナノワイヤを表す。
【0031】
【0032】
表2は、任意のビンにおける最大カウントによる集団の正規化を示す。
【0033】
【0034】
各バッチ中のナノワイヤの数を可視化するために、18E0039 PR3及び18F0041 PR3として本明細書中で特定されるサンプルについての散布図である、
図2A及び2Bに注目する。バッチ18F0041 PR3は、より短く、より大きな直径のナノワイヤを有する傾向があることに留意されたい。より短い長さの範囲には大きなグループがあり、より大きな直径の範囲には大きなグループがあることに留意されたい。数値結果の比較として、d>d
AVE+fσ
d(fは一定)とした場合の解析結果の長さ(l)と直径(d)を表3に示す。
【0035】
【0036】
この2つのインクに関する情報を集めて、それぞれのインクを用いて膜を作製した。バッチ18F0041 PR3のナノワイヤを使用して作製された膜は、バッチ18E0039 PR3を使用して作製された膜よりも性能が悪かった。バッチ18F0041 PR3のインクを使用する膜は、同じ電気抵抗でより高い光学ヘイズを有した。バッチ18F0041 PR3は、より短く、より大きな直径のワイヤを有することに留意されたい。同じ電気抵抗におけるより高い光学ヘイズは、バッチ18F0041 PR3で見られた、より短く、より大きな直径のワイヤの集団と一致することに留意されたい。したがって、この寸法特性の特定は、製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性を予測するのに有用である。より短く、より大きな直径のナノワイヤの存在と、より高い光学ヘイズとの相関が存在する。
【0037】
別の例として、139B及び141Aとして特定されるインクの比較が提供される。次の表4を参照する。また、本明細書で139B及び141Aとして特定されるサンプルの散布図である
図3A及び3Bも参照されたい。バッチ141Aに使用されるインク中には、より短くて太いナノワイヤが多いようである。バッチ141Aの平均直径も、インク139より10.6%大きいようである。この10.6%は、値2.19と2.42との差を表す。性能の悪いバッチは、より大きな直径とより短い両方を有する、大きな直径のナノワイヤであったことに留意されたい。
【0038】
SEMの結果、直径が6.4%大きいバッチ141Aが得られた。これは、次式によって求められる。
(%大きい(Large)d)=(#d>dAVE+4σdのナノワイヤ)/(分析された全ての#ワイヤ)
【0039】
【0040】
これらの結果は、バッチPC-141のインクを使用して膜を製造する場合に電気的/光学的性能が悪化することと一致している。
【0041】
本明細書における本開示及び方法は、単一の仕様に限定する必要がないことを理解されたい。ナノワイヤの寸法の態様は、単に、膜性能を予測するために使用される。
【0042】
別の例として、表5にバッチ306113と306115の測定基準を示す。
一般に、バッチ306115は、より短く、より大きな直径のナノワイヤの集団を有する。より短く、より大きな直径のナノワイヤのこのような特性は、306113には無い。
図4及び表6を見ると分かるように、バッチ306115は、電気光学性能が劣る。
【0043】
【0044】
【0045】
表6内のヘイズ数は、基板のために大きなバックグラウンド影響を有することは注目に値する。これは約1%であり得る。したがって、基板によって生じるヘイズを差し引くことなく、実際には、ヘイズの差は、生の数字が示唆するものよりもかなり大きく、注目に値する。
【0046】
上述のように、インクの集団内のすべてのナノワイヤについての長さ及び直径の少なくとも1つの特定は、本開示の方法論の一部である。また、言及したように、全てのナノワイヤについて長さ及び直径の少なくとも1つを特定する任意のプロセスを利用することができる。上述したように、一例としては、スピンコータの使用と、マイクロスポアを有する顕微鏡を反射光、暗視野モードで利用することを含む。このような例に関する情報については、以下を参照する。
【0047】
スピンコータと顕微鏡を用いた例に戻り、この例に関するさらなる情報として以下を提供する。
図5に示す例のようなスピンコータを利用することができる。溶媒IPA中のナノワイヤの希釈懸濁液は、シリコン(Si)ウエハ上に1000RPMで30秒間スピンコーティングされ得る。一例では、ガラスなどの他の基板上で撮影したナノワイヤの撮像画像よりも、シリコン上で撮影したナノワイヤの撮像画像の方が良好なコントラストを提供するため、Siウエハが使用される。表面上のナノワイヤの典型的な画像を
図6に示す。
【0048】
図7に示す例のような顕微鏡を利用することができる。図示の例では、顕微鏡は、反射光、暗視野モードで利用される。図示の例は、電動ステージを備えている。典型的には、Siウエハ上の144の異なる視野の画像を500倍の倍率で撮影することができる。顕微鏡は、各視野において、ある範囲の積分時間を用いて、視野の画像を例えばTIF形式で撮影し保存するソフトウェアによって制御することができる。観察されるナノワイヤの種類に応じて、これらの時間は、10~100ms、又は20~200msの範囲であってもよく、又は、非常に小さな直径を有し、非常にわずかな光を散乱するナノワイヤについては、300又は400msという大きな積分時間を含んでもよい。必要に応じて、非常に大きな(又は小さな)直径のナノワイヤに対して、より短い(又はより長い)積分時間を使用することができる。
【0049】
積分時間の変動の可能性については、以下の点に留意されたい。ナノワイヤによって散乱される光の量は、それらの直径の関数として変化するので、いくつかのナノワイヤは、他のものよりもはるかに強く光を散乱する。ナノワイヤを検出することができる十分な光が収集されなければならない。微小なナノワイヤは長い積分時間を必要とする。また、ナノワイヤの画像に関連する飽和ピクセルの強度は測定できない。画像内のピクセルが飽和している場合、つまり、グレースケールカメラで値255を有している場合(0は光がないことを意味し、255は白である)、このピクセルの実際の強度は特定できない。このピクセルの信号は255であるか、「オフスケール」であり得る。したがって、実際の値を知ることができないので、その特定のナノワイヤを分析することができない。積分時間がより短い画像のデータを使用して、ナノワイヤの画像を生成するピクセルが既に飽和していないかどうかを判定することが可能である。
【0050】
その後、データが分析される。一例として、ソフトウェアプログラムを用いて、このような分析を行うことができる。このようなソフトウェアは、画像解析アルゴリズムを使用してすべてのナノワイヤの長さを計算するが、次に、以下のプロトコルに従って、ナノワイヤの直径をさらに計算する。
【0051】
a)画像内のバックグラウンド強度を特定する。
b)所与の各ナノワイヤの範囲を超えて10ピクセル延びるボックス内の積分強度を特定する。
この合計からバックグラウンド強度を減算する。
c)1)過剰飽和ピクセルを有する、2)他のワイヤに近すぎるため、その積分強度に他のワイヤからの寄与が含まれている、3)3未満のアスペクト比を有する、又は4)画像のエッジと交差する、すべてのナノワイヤを拒絶する。
d)ナノワイヤについて測定されたバックグラウンド減算された積分強度と長さを用いて、以下の例示関係を用いて相対直径を計算する。
da(強度/長さ)1/3
【0052】
指数又は冪乗の値は、1/3の例と異なることがあり得ることを理解されたい。例えば、指数は1/5~1/2の範囲であり得る。
【0053】
ここでも、インクから集団内のすべてのナノワイヤについて、長さ及び直径の少なくとも1つを特定するために、異なる方法、構造などを使用することができる。長さ及び直径の少なくとも1つを特定するためのそのような異なる方法、構造などが考えられ、本開示の範囲内で考慮されるべきである。
【0054】
特に明記されない限り、「第1」、「第2」及び/又は同様の用語は、時間的側面、空間的側面、順序などを意味することを意図していない。むしろ、そのような用語は、特徴、要素、項目などの識別子、名称等として単に使用される。例えば、第1のオブジェクトと第2のオブジェクトは、通常、オブジェクトAとオブジェクトB、又は2つの異なるオブジェクト、又は2つの同一のオブジェクト、又は同じオブジェクトに対応する。
【0055】
さらに、本明細書では、「例」は、例示や説明などとして機能することを意味し、必ずしも有利であるとは言えない。本明細書で使用される場合、「又は」は、排他的な「又は」ではなく包括的な「又は」を意味することを意図する。さらに、本出願で使用される「a」及び「an」は、他に特定されない限り、又は文脈から単数形を指すことが明確でない限り、一般に「1又は複数」を意味すると解釈される。また、AとBの少なくとも一方及び/又はそれに類するものは、一般にA若しくはB、又は、A及びBの両方を意味する。さらに、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、及び/又はそれらの変形が、詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される場合、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の意味で包括的であることが意図される。
【0056】
発明特定事項は、構造的特徴及び/又は方法論的行為に特有の言語で記載されているが、添付の特許請求の範囲で定義される発明特定事項は、必ずしも上記の特定の特徴又は行為に限定されないことを理解されたい。むしろ、上記の特定の特徴と作用は、請求項の少なくとも一部を実施する例示的形態として開示されている。
【0057】
実施形態の様々な動作が本明細書で提供される。本明細書において記載されている操作のいくつか又はすべての順序は、これらの操作が必ずしも順序に依存することを意味するように解釈されるべきではない。代替的な順序付けは、この説明の利点を有する当業者によって理解されるであろう。さらに、本明細書で提供される各実施形態において、必ずしもすべての動作が存在するわけではないことが理解されよう。また、いくつかの実施形態では、全ての動作が必要ではないことが理解されよう。
【0058】
また、開示は、1又は複数の実施形態に関して示され説明されているが、本明細書及び添付の図面を読み理解することに基づいて、当業者には同等の変更及び修正が生じるであろう。本開示は、そのようなすべての修正及び変更を含み、以下の請求項の範囲によってのみ限定される。特に、上述の構成要素(例えば、要素、リソースなど)によって実施される様々な機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語は、他に示されない限り、開示された構造と構造的に同等ではないが、上述の構成要素(例えば、それは機能的に同等である)の特定の機能を実施する任意の構成要素に対応することを意図している。さらに、開示の特定の特徴は、いくつかの実施形態のうちの1つに関してのみ開示されていてもよいが、そのような特徴は、任意の所与の又は特定のアプリケーションにとって所望されかつ有利な他の実施形態の1又は複数の他の特徴と組み合わせることができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノワイヤを含むインクから製造される透明導電膜の少なくとも1つの性能特性を予測する方法であって、
分析のために前記インクからナノワイヤ集団を得ることと、
前記インクから前記集団内のすべての前記ナノワイヤの長さ及び直
径を特定することと、
特定された前記長さ及び直
径を、透明導電膜の少なくとも1つの性能特性に相関する指標値と比較することと、を含み、
前記方法は、
a)画像内の前記ナノワイヤの長さを計算する;
b)前記画像のバックグラウンド強度を特定する;
c)所与の各ナノワイヤの範囲を超えて特定のピクセル延びるボックス内の積分強度を特定し、前記積分強度から前記バックグラウンド強度を減算する;
d)1)過剰飽和ピクセルを有する、2)他のワイヤに近すぎるため、その積分強度に他のワイヤからの寄与が含まれている、3)特定の値未満のアスペクト比を有する、又は4)前記画像のエッジと交差する、すべてのナノワイヤを拒絶する;
e)前記ナノワイヤについて測定されたバックグラウンド減算された積分強度と長さを用いて、以下の関係を用いて相対直径を計算する
相対直径=da(強度/長さ)
x
ここで、x=1/5~1/2である;を含む、
方法。
【請求項2】
透明導電膜の少なくとも1つの前記性能特性が光学特性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学特性はヘイズである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学特性は拡散反射である、請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
前記比較するステップが、透明導電膜の少なくとも1つの前記性能特性が不十分であることを示す場合に、前記インクを使用して透明導電膜を作製することを回避するために使用される品質管理方法として、前記方法が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記比較するステップは、ナノワイヤの量が特定の直径の基準外の直径を有する場合、透明導電膜の少なくとも1つの前記性能特性が不十分であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記比較するステップは、ナノワイヤの量が特定の直径の基準外の長さを有する場合、透明導電膜の少なくとも1つの前記性能特性が不十分であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
特定の基準外の長さを有する許容できない数のナノワイヤに基づいて、前記インクの使用を拒絶することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
特定の基準外の長さ及び直径を有する許容できない数のナノワイヤに基づいて、前記インクの使用を拒絶することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノワイヤは、導電性金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノワイヤは、透明導電膜内に相互接続されたネットワークを提供する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
所定の基準に基づいて相関を分析して、透明導電膜内の相互接続されたネットワークの性能を予測することを含む、請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】