(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】溶媒乾燥組成物およびそのためのプロセス
(51)【国際特許分類】
B01D 11/04 20060101AFI20220601BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20220601BHJP
B01D 61/36 20060101ALI20220601BHJP
C07C 49/10 20060101ALI20220601BHJP
C07C 49/303 20060101ALI20220601BHJP
C07C 211/05 20060101ALI20220601BHJP
C07C 59/06 20060101ALI20220601BHJP
C07C 59/255 20060101ALI20220601BHJP
C07C 59/265 20060101ALI20220601BHJP
C07C 229/08 20060101ALI20220601BHJP
C07C 229/06 20060101ALI20220601BHJP
C07C 309/08 20060101ALI20220601BHJP
C07D 295/03 20060101ALI20220601BHJP
C07D 295/033 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B01D11/04 B
B01D61/00 500
B01D61/36
C07C49/10 CSP
C07C49/303
C07C211/05
C07C59/06
C07C59/255
C07C59/265
C07C229/08
C07C229/06
C07C309/08
C07D295/03
C07D295/033
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559025
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 NZ2020050034
(87)【国際公開番号】W WO2020204733
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519114786
【氏名又は名称】アクアフォータス テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AQUAFORTUS TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】プラカシュ、チャイトラ
(72)【発明者】
【氏名】タン、ハイミン
【テーマコード(参考)】
4D006
4D056
4H006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006GA25
4D006GA27
4D006JA67Z
4D006KA33
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA56
4D006KD14
4D006KD15
4D006KD30
4D006KE02P
4D006KE07Q
4D006PB70
4D056AB01
4D056AC05
4D056AC11
4D056AC13
4D056AC21
4D056BA08
4D056CA31
4H006AA03
4H006AB99
4H006BN10
4H006BS10
4H006BU32
4H006NB16
4H006NB23
(57)【要約】
本開示は、溶媒乾燥組成物およびそのためのプロセスに関する。本開示は、より具体的には、使用時に溶媒混合物から水を放出する溶媒乾燥組成物に関する。本開示はまた、溶媒乾燥組成物を回収するためのプロセス、より具体的には、浸透圧プロセスで使用される溶媒乾燥組成物を回収するためのプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒乾燥組成物であって、前記組成物は:
a)少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、の複合体を、
b)少なくとも1つのアミン含有化合物、少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルおよび水を含む溶媒中に含み、
使用時に前記溶媒中の水が放出されて、前記溶媒乾燥組成物と非混和性の水性層を形成する、溶媒乾燥組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸含有化合物は、以下:
a)式Iの化合物、
【化1】
(式中、R
*は、-C
1-C
7アルキル-OH、-C
1-C
7アルキル、-C
1-C
7アルキル-NH
2、-C
1-C
7アルキル-NHR
3および-C
1-C
7アルキルNR
3R
4から選択され、ここで、各R
3およびR
4は、-H、-OH、-ハロ、-C
1-C
7アルキル、-C
1-C
7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C
1-C
7アルキル)である)
b)1つ以上のカルボン酸基を含むポリマー、
のうちの1つまたは複数から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水が回収される前記溶媒は、少なくとも1つのアミン含有化合物および少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記溶媒は、少なくとも第二級または第三級アミンあるいはそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記溶媒が、式IIの少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含む:
【化2】
(式中、
a)R
1およびR
2は、-C
1-C
7アルキルまたは-C
3-C
7単環またはフェニルから独立して選択されるか;または、
b)R
1またはR
2のうちの一方は-O-(C
1-C
7アルキル)から選択され、他方は-C
1-C
7アルキルから選択されるか;または、
c)R
1およびR
2は、式IIのカルボニルと一緒になって、3~15員の単環式ケトンまたは3~15員の単環式複素環式ケトンまたはアセトフェノンを形成する)
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式Iのカルボン酸含有化合物が、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルキルスルホン酸がイソエチオン酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:99または99:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:50または50:1である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:10または10:1である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:5または5:1である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:3または3:1である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:2または2:1である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:1である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記溶媒が少なくとも1つのアミン含有化合物を含み、そのアミンが前記複合体中の前記アミン含有化合物と同じであっても異なっていてもよい、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記複合体または溶媒の少なくとも1つのアミン含有化合物が、共役、脂肪族、非対称または環状の第三級アミンから選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記第三級アミン含有化合物は、以下のうちから選択される:
【化3】
請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が、-N(C
1-C
7アルキル)
3から選択される、請求項16または請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が、-N(C
1-C
4アルキル)
3から選択される、請求項16~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が-N(C
2アルキル)
3(トリエチルアミン)である、請求項16~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が、エチルピペリジンである、請求項16または請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
式IIのR
1が-C
1-C
7アルキルである、請求項5~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
式IIのR
1が、-OH、-C
1-C
7アルキル、-(C
1-C
7アルキル)-OH、-NH
2、-NH(C
1-C
7アルキル)、-N(C
1-C
7アルキル)
2、-C(O)OH;-C(O)-H、または-C(O)-(C
1-C
7アルキル)から選択される1つ以上の置換基でさらに置換されている請求項5~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
式IIが2-ブタノンである、請求項5~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:99または99:1の比で存在する、請求項5~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:50または50:1の比で存在する、請求項5~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIのエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:10または10:1の比で存在する、請求項5~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:5または5:1の比で存在する、請求項5~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:3または3:1の比で存在する、請求項5~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:2または2:1の比で存在する、請求項5~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:1の比で存在する、請求項5~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物および前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせは、不可逆的にプロトン化される、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物および少なくともアルキルスルホン酸;または式Iの少なくとも1つのカルボン酸含有化合物:あるいはその組み合わせを含む複合体組成物であって、
【化4】
(式中、R
*は、-C
1-C
7アルキル-OH、-C
1-C
7アルキル、-C
1-C
7アルキル-NH
2、-C
1-C
7アルキル-NHR
3および-C
1-C
7アルキルNR
3R
4から選択され、ここで、各R
3およびR
4は、-H、-OH、-ハロ、-C
1-C
7アルキル、-C
1-C
7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C
1-C
7アルキル)である)
前記複合体は、溶媒から水を回収する使用に適しており、前記組成物が前記溶媒中を移動する際に前記溶媒から水が放出され、前記放出された水は前記溶媒と非混和性の水性層を形成し、かつ、
前記溶媒は以下を含む:
a)少なくとも1つのアミン含有化合物、
b)少なくとも1つのエノール化可能なカルボニル、および
c)水、
複合体組成物。
【請求項34】
前記溶媒は、少なくとも第二級または第三級アミン、あるいはそれらの組み合わせを含む、請求項33に記載の複合体。
【請求項35】
前記溶媒は、式IIの少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含む:
【化5】
(式中、
a)R
1およびR
2は、-C
1-C
7アルキルまたは-C
3-C
7単環またはフェニルから独立して選択されるか;または、
b)R
1またはR
2のうちの一方は-O-(C
1-C
7アルキル)から選択され、他方は-C
1-C
7アルキルから選択されるか;または、
c)R
1およびR
2は、式Iのカルボニルと一緒になって、3~15員の単環式ケトンまたは3~15員の単環式複素環式ケトンまたはアセトフェノンを形成する)
請求項33または請求項34に記載の複合体。
【請求項36】
前記複合体の前記少なくとも1つのアミン含有化合物は、第二級または第三級アミンあるいはそれらの組み合わせである請求項33~35のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項37】
前記式Iのカルボン酸含有化合物が、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される、請求項33~36のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項38】
前記アルキルスルホン酸がイソエチオン酸である、請求項33~37のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項39】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:99または99:1である、請求項33~38のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項40】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:50または50:1である、請求項33~39のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項41】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:10または10:1である、請求項33~40のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項42】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:5または5:1である、請求項33~41のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項43】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:3または3:1である、請求項33~42のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項44】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:2または2:1である、請求項33~43のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項45】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:1である、請求項33~44のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項46】
前記溶媒が少なくとも1つのアミン含有化合物を含み、そのアミンが前記複合体中の前記アミン含有化合物と同じであっても異なっていてもよい、請求項33~45のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項47】
前記複合体または前記溶媒の前記少なくとも1つのアミン含有化合物が、共役、脂肪族、非対称または環状の第三級アミンから選択される、請求項33~46のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項48】
前記第三級アミン含有化合物が以下から選択される:
【化6】
請求項47に記載の複合体。
【請求項49】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が、-N(C
1-C
7アルキル)
3から選択される、請求項47または請求項48に記載の複合体。
【請求項50】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が、-N(C
1-C
4アルキル)
3から選択される、請求項47~49のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項51】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が-N(C
2アルキル)
3(トリエチルアミン)である、請求項47~50のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項52】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物がエチルピペリジンである、請求項47または請求項48に記載の複合体。
【請求項53】
式IIのR
1が-C
1-C
7アルキルである、請求項35~52のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項54】
式IIのR
1が、-OH、-C
1-C
7アルキル、-(C
1-C
7アルキル)-OH、-NH
2、-NH(C
1-C
7アルキル)、-N(C
1-C
7アルキル)
2、-C(O)OH;-C(O)-H、または-C(O)-(C
1-C
7アルキル)から選択される1つ以上の置換基でさらに置換されている請求項35~53のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項55】
式IIが2-ブタノンである、請求項35~54のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項56】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:99または99:1の比で存在する、請求項33~55のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項57】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:50または50:1の比で存在する、請求項33~56のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項58】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIのエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:10または10:1の比で存在する、請求項33~57のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項59】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:5または5:1の比で存在する、請求項33~58のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項60】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:3または3:1の比で存在する、請求項33~59のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項61】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:2または2:1の比で存在する、請求項33~60のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項62】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:1の比で存在する、請求項33~61のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項63】
前記少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物および前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせは、不可逆的にプロトン化される、請求項33~62のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項64】
溶媒から水を回収する方法であって、前記方法は、溶媒から水を回収する使用に対して前記溶媒乾燥組成物を接触させるステップであって、前記組成物が請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物を含む、接触させるステップと、前記溶媒を通過して前記複合体組成物を移動させると前記溶媒から水が放出され前記溶媒と非混和性の水性層を形成するステップと、を含む方法。
【請求項65】
前記方法は、前記回収された水を前記非混和性の溶媒層から分離するステップを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
溶媒から水を回収する方法であって、前記方法は、前記溶媒を請求項33~63のいずれか一項に記載の複合体組成物と接触させるステップと、前記溶媒を通過して前記複合体を移動させると前記溶媒から水が放出されて前記溶媒と非混和性の水性層を形成するステップと、を含む方法。
【請求項67】
前記方法は、前記回収された水を前記非混和性の溶媒層から分離するステップを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記方法は前記溶媒を1つ以上の溶媒乾燥組成物と接触させるステップを含む、請求項64または請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記溶媒を1つ以上の溶媒乾燥組成物と繰り返し接触させて、そこから水を繰り返し放出させる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
1つ以上の溶媒を、向流プロセスにおいて1つ以上の溶媒乾燥組成物と繰り返し接触させる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
溶媒から水を回収する方法であって、前記方法は、前記溶媒を請求項33~63のいずれか一項に記載の複合体組成物と接触させるステップと、前記溶媒を通過して前記複合体を移動させると前記溶媒から水が放出されて前記溶媒と非混和性の水性層を形成するステップと、を含む方法。
【請求項72】
前記方法は、前記回収された水を前記非混和性の溶媒層から分離するステップを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記方法は前記溶媒を1つ以上の複合体組成物と接触させるステップを含む、請求項71または請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記溶媒を1つ以上の複合体組成物と繰り返し接触させて、そこから水を繰り返し放出させる、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
1つ以上の溶媒を、向流プロセスにおいて1つ以上の複合体組成物と繰り返し接触させる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
溶媒乾燥組成物を使用して溶媒から水を回収するためのプロセスであって、前記組成物は、以下の複合体:
a.少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物;および
b.少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、
を含み、
使用時に、前記溶媒を通過する前記組成物の移動により前記溶媒から水が放出され、前記放出された水は、前記溶媒と非混和性の水性層を形成し、
前記プロセスは以下のステップ:
1)前記溶媒乾燥組成物を前記溶媒と接触させて、前記組成物が前記溶媒を通過して移動する際に前記溶媒から水を放出し、前記放出された水および前記溶媒乾燥組成物は、前記溶媒と非混和性の水性層を形成することと;
2)前記非混和性の水性層から前記溶媒乾燥組成物を回収することと、
を含む、プロセス。
【請求項77】
前記溶媒を回収するステップをさらに含む、請求項76に記載のプロセス。
【請求項78】
前記回収された溶媒乾燥組成物は、さらなる溶媒乾燥プロセスで使用するためにリサイクルされる、請求項77に記載のプロセス。
【請求項79】
前記溶媒乾燥組成物を回収するプロセスは連続回収プロセスである、請求項78に記載のプロセス。
【請求項80】
前記溶媒乾燥溶液を回収するステップは、以下の技術:膜蒸留、パーバポレーション、浸透、圧力駆動膜プロセス、浸透圧駆動膜プロセス、浸透圧補助圧力駆動膜プロセス、圧力補助浸透圧駆動膜プロセス、ろ過、機械的蒸気再圧縮、蒸発ベースのプロセス、水特異的反応物、または結晶化技術などのうちの1つまたは複数によって達成される、請求項76、請求項78または請求項79のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項81】
前記溶媒乾燥溶液を回収するステップは、圧力補助浸透圧技術によって達成される、請求項80に記載のプロセス。
【請求項82】
前記プロセスは、前記溶媒と前記非混和性の水性層から前記溶媒乾燥組成物を回収するためのコアレッセンスステップを含む、請求項76~81のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項83】
静電コアレッサが前記コアレッセンスステップに使用される、請求項81に記載のプロセス。
【請求項84】
前記少なくとも1つのアミン含有化合物は、第二級または第三級アミンあるいはそれらの組み合わせである請求項76~83のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項85】
前記式Iのカルボン酸含有化合物が、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される、請求項76~84のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項86】
前記カルボン酸含有化合物が金属塩-カルボン酸複合体である、請求項76~85のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項87】
前記金属塩-カルボン酸複合体は、価数が6以下の金属塩、Na塩、Fe(II)塩、Fe(III)塩、Cu(II)塩、Al(II)塩、Al(III)塩、Sr(II)塩、Li塩およびAg塩のうちの一つ以上から選択される、請求項86に記載のプロセス。
【請求項88】
前記金属塩が、NaCl、NaCO
3、SrCl
2、AlCl
3、FeCl
3、Fe(NO
3)
3、Fe
2(SO
4)
3、CuCl
2、CuSO
4、Cu(OH)
2、AgF、AgClおよびAgBrのうちの一つ以上から選択される、請求項87に記載のプロセス。
【請求項89】
前記カルボン酸が、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)、ポリアクリル酸、サルコシン、酢酸、炭酸およびギ酸のうちの一つ以上から選択される、請求項86~88のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項90】
前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物は、以下のうちの1つまたは複数から選択される:
a)式Iの化合物、
【化7】
(式中、R
*は、-C
1-C
7アルキル-OH、-C
1-C
7アルキル、-C
1-C
7アルキル-NH
2、-C
1-C
7アルキル-NHR
3および-C
1-C
7アルキルNR
3R
4から選択され、ここで、各R
3およびR
4は、-H、-OH、-ハロ、-C
1-C
7アルキル、-C
1-C
7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C
1-C
7アルキル)である)
b)1つ以上のカルボン酸基を含むポリマー、
請求項76~89のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項91】
前記式Iのカルボン酸含有化合物が、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される、請求項76~90のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項92】
前記アルキルスルホン酸がイソエチオン酸である、請求項76~91のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項93】
前記少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:99または99:1である、請求項76~92のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項94】
前記少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:50または50:1である、請求項76~93のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項95】
前記少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:10または10:1である、請求項76~94のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項96】
前記少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:5または5:1である、請求項76~95のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項97】
前記少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:3または3:1である、請求項76~96のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項98】
前記少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:2または2:1である、請求項76~97のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項99】
前記少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、前記少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:1である、請求項76~98のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項100】
a)少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物;および
b)少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、を含む複合体は、
不可逆的にプロトン化される、請求項76~99のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項101】
前記水が回収される前記溶媒は、少なくとも1つのアミン含有化合物および少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含む、請求項76~100のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項102】
前記溶媒は、式IIの少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含む:
【化8】
(式中、R
1およびR
2は、-C
1-C
7アルキルまたは-C
3-C
7単環から独立して選択されるか;または、R
1またはR
2のうちの一方は-O-(C
1-C
7アルキル)から選択され、他方は、-C
1-C
7アルキルから選択されるか;または、R
1およびR
2は、式IIのカルボニルと一緒になって、3~5員の単環式ケトンまたは3~15員の単環式複素環式ケトンまたはアセトフェノンを形成する)
請求項99に記載のプロセス。
【請求項103】
前記溶媒が少なくとも1つのアミン含有化合物を含み、そのアミンが前記複合体中の前記アミン含有化合物と同じであっても異なっていてもよい、請求項76~101のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項104】
前記複合体または溶媒の前記少なくとも1つのアミン含有化合物が、共役、脂肪族、非対称または環状の第三級アミンから選択される、請求項76~103のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項105】
前記第三級アミン含有化合物が以下から選択される:
【化9】
請求項104に記載のプロセス。
【請求項106】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が、-N(C
1-C
7アルキル)
3から選択される、請求項105に記載のプロセス。
【請求項107】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が、-N(C
1-C
4アルキル)
3から選択される、請求項106に記載のプロセス。
【請求項108】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物が、-N(C
2アルキル)
3(トリエチルアミン)である、請求項107に記載のプロセス。
【請求項109】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物がエチルピペリジンである、請求項108に記載のプロセス。
【請求項110】
式IIのR1が-C
1-C
7アルキルである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項111】
式IIのR
1が、-OH、-C
1-C
7アルキル、-(C
1-C
7アルキル)-OH、-NH
2、-NH(C
1-C
7アルキル)、-N(C
1-C
7アルキル)
2、-C(O)OH;-C(O)-H、または-C(O)-(C
1-C
7アルキル)から選択される1つ以上の置換基でさらに置換されている請求項102または請求項110に記載のプロセス。
【請求項112】
式IIが2-ブタノンである、請求項102、110または111のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項113】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:99または99:1の比で存在する、請求項101~112のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項114】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:50または50:1の比で存在する、請求項101~113のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項115】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIのエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:10または10:1の比で存在する、請求項101~114のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項116】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:5または5:1の比で存在する、請求項101~115のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項117】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:3または3:1の比で存在する、請求項101~116のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項118】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:2または2:1の比で存在する、請求項101~117のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項119】
前記少なくとも1つの第三級アミン含有化合物と前記式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルとのモル比が、約1:1の比で存在する、請求項101~118のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶媒乾燥組成物およびそのためのプロセスに関する。より具体的には、本開示は、使用時に溶媒混合物から水を放出する溶媒乾燥組成物に関する。本開示はまた、溶媒乾燥組成物を回収するためのプロセス、より具体的には、浸透圧プロセスで使用される溶媒乾燥組成物を回収するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒混合物からの水の抽出または水の乾燥は、通常、高エネルギーかつ時間のかかる作業である。
特許文献1において、ジェソップらは、可逆性の水または水溶液とその使用について記載している。可逆性の水または水溶液は、少なくとも1つの窒素原子を有するイオン化可能な官能基を含むイオン化可能な添加剤を加えることによって形成される。添加剤はさらに、モノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラミン、またはポリマーやバイオポリマーなどのポリアミンとして記載されている。可逆性の水または水溶液は、CO
2、CS
2、COSによるバブリングや、ギ酸、塩酸、硫酸、炭酸などのブロンステッド酸による処理などのトリガーを用いることで、初期のイオン強度と増加したイオン強度を可逆的に切り替えることができる。この可逆性を可能にするために、添加剤のイオン形態は、イオン化トリガーの作用によって脱プロトン化が可能でなければならない。このためには、ジェソップの
図1に示されているように、トリガーのイオン形態と添加剤との間に可逆的な相互作用が必然的に必要となる。水または水溶液の可逆性は、水または水溶液中の様々な疎水性の液体または溶媒の溶解性または不溶性の制御を可能にする。これにより、中程度の疎水性を有する溶媒を切替可能な水から分離する手段が得られる。しかしながら、ジェソップの研究の難点の1つは、可逆性の水を実現するために、アミンからCO
2を解離させることが難しいことである。微量のCO
2とアミンが抽出液に溶け込んだままになり、加熱、ストリッピング、回収の速度は数時間から数分のオーダーで、遅く、エネルギー消費型である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0076810号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、これらの困難を克服する溶媒乾燥組成物を提供すること、または少なくとも有用な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、溶媒から水を回収する際に使用するための溶媒乾燥組成物を提供し、同組成物は:
a)少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物;および
b)少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、の複合体を含み、
使用時に、水は、溶媒を通過する(through)組成物の移動時に同溶媒から放出され、放出された水は、溶媒と非混和性の水性層(aqueous layer)を形成する。
【0006】
第2の態様において、本発明は、溶媒乾燥組成物を提供し、同組成物は:
a)少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、の複合体を、
b)少なくとも1つのアミン含有化合物少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルおよび水を含む溶媒中に含み、
使用時に溶媒中の水が放出されて、溶媒乾燥組成物と非混和性の水性層を形成する。
【0007】
一実施形態において、カルボン酸含有化合物は、以下のうちの1つまたは複数から選択される:
a)式Iの化合物、
【0008】
【0009】
(式中、R*は、-C1-C7アルキル-OH、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-NH2、-C1-C7アルキル-NHR3および-C1-C7アルキルNR3R4から選択され、ここで、各R3およびR4は、-H、-OH、-ハロ、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)である)、および
b)1つ以上のカルボン酸基を含有するポリマー。
【0010】
一実施形態において、アルキルスルホン酸はイソエチオン酸である。
別の実施形態において、溶媒は、少なくとも第二級または第三級アミン、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0011】
一実施形態において、溶媒は、式IIの少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含み、
【0012】
【0013】
(式中、
a)R1およびR2は、-C1-C7アルキルまたは-C3-C7単環から独立して選択されるか;または、
b)R1またはR2のうちの一方が-O-(C1-C7アルキル)から選択され、他方が-C1-C7アルキルから選択されるか;または、
c)R1およびR2は、式IIのカルボニルと一緒になって、3~15員の単環式ケトンまたは3~15員の単環式複素環式ケトンを形成する)。
【0014】
一実施形態において、式Iのカルボン酸含有化合物は、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される。
一実施形態において、少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせと、のモル比は、約1:99または99:1;または約1:50または50:1;または約1:10または10:1;または約1:5または5:1;または約1:3または3:1;または約1:2または2:1;または約1:1から選択される。
【0015】
第3の態様において、本発明は、溶媒乾燥組成物を提供し、同組成物は:
a)少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と
b)式Iの化合物を含有する少なくとも1つのカルボン酸またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、
【0016】
【0017】
(式中、R*は、-C1-C7アルキル-OH、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-NH2、-C1-C7アルキル-NHR3および-C1-C7アルキルNR3R4から選択され、ここで、各R3およびR4は、-H、-OH、-ハロ、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)である);、
との複合体を、
c)少なくとも1つのアミン含有化合物、少なくとも1つのエノール化可能なカルボニル、および水を含む溶媒中に含み、
使用時に溶媒中の水が放出されて、溶媒乾燥組成物と非混和性の水性層を形成する。
【0018】
一実施形態において、少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と式1の少なくとも1つのカルボン酸含有化合物との複合体は、不可逆的にプロトン化される。
別の実施形態において、溶媒は、少なくとも第二級または第三級アミン、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0019】
一実施形態において、溶媒は、式IIの少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含み、
【0020】
【0021】
(式中、
d)R1およびR2は、-C1-C7アルキルまたは-C3-C7単環から独立して選択されるか;または、
e)R1またはR2のうちの一方が-O-(C1-C7アルキル)から選択され、他方が-C1-C7アルキルから選択されるか;または、
f)R1およびR2は、式IIのカルボニルと一緒になって、3~15員の単環式ケトンまたは3~15員の単環式複素環式ケトンを形成する)。
【0022】
一実施形態において、式Iのカルボン酸含有化合物は、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される。
一実施形態において、アルキルスルホン酸はイソエチオン酸である。
【0023】
一実施形態において、少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、式Iの少なくとも1つのカルボン酸含有化合物との複合体は、不可逆的にプロトン化される。
【0024】
一実施形態において、少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:99または99:1;または約1:50または50:1;または約1:10または10:1;または約1:5または5:1;または約1:3または3:1;または約1:2または2:1;または約1:1から選択される。
【0025】
第4の態様において、本発明は複合体組成物を提供し、同複合体が、少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、以下:
a)式Iの化合物、
【0026】
【0027】
(式中、R*は、-C1-C7アルキル-OH、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-NH2、-C1-C7アルキル-NHR3および-C1-C7アルキルNR3R4から選択され、ここで、各R3およびR4は、-H、-OH、-ハロ、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)である)、
b)1つ以上のカルボン酸基;またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、を含むポリマー;
のうちの1つまたは複数から選択される少なくとも1つのカルボン酸含有化合物と、
を含み、
複合体は、溶媒から水を回収するのに使用するのに適しており、組成物が溶媒を通過して移動する際に同溶媒から水が放出され、放出された水は溶媒と非混和性の水性層を形成し、かつ、
溶媒が、
a)少なくとも1つのアミン含有化合物、
b)少なくとも1つのエノール化可能なカルボニル、および
c)水
を含む。
【0028】
別の実施形態において、溶媒は、少なくとも第二級または第三級アミン、あるいはそれらの組み合わせを含む。
一実施形態において、溶媒は、式IIの少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含み、
【0029】
【0030】
(式中、
a)R1およびR2は、-C1-C7アルキルまたは-C3-C7単環から独立して選択されるか;または、
b)R1またはR2のうちの一方が-O-(C1-C7アルキル)から選択され、他方が-C1-C7アルキルから選択されるか;または、
c)R1およびR2は、式IIのカルボニルと一緒になって、3~15員の単環式ケトンまたは3~15員の単環式複素環式ケトンを形成する)。
【0031】
一実施形態において、複合体の少なくとも1つのアミン含有化合物は、第二級または第三級アミンまたはそれらの組み合わせである。
一実施形態において、式Iのカルボン酸含有化合物は、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される。
【0032】
一実施形態において、アルキルスルホン酸はイソエチオン酸である。
一実施形態において、少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせ、とのモル比は、約1:99または99:1;または約1:50または50:1;または約1:10または10:1;または約1:5または5:1;または約1:3または3:1;または約1:2または2:1;または約1:1から選択される。
【0033】
一実施形態において、少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、式Iの少なくとも1つのカルボン酸含有化合物との複合体は、不可逆的にプロトン化される。
【0034】
第5の態様において、本発明は、溶媒から水を回収する方法を提供し、同方法は、溶媒から水を回収する使用において溶媒乾燥組成物を接触させるステップであって、同組成物が以下の複合体:
a)少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物;および
b)少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、を含む、接触させるステップと、
複合体組成物を、溶媒を通過して移動させ、その際に溶媒から水が放出され、溶媒と非混和性の水性層を形成するステップと、を含む。
【0035】
一実施形態では、方法は、回収された水を非混和性溶媒層から分離するステップを含む。
一実施形態において、溶媒は:
a)少なくとも1つのアミン含有化合物と、
b)少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルと、
を含む。
【0036】
第6の態様において、本発明は、溶媒から水を回収する方法を提供し、同方法は、溶媒から水を回収する使用において溶媒乾燥組成物を接触させるステップを含み、組成物は、
a)少なくとも1つのアミン含有化合物、
b)少なくとも1つのエノール化可能なカルボニル、を含み、
溶媒を複合体組成物に接触させるステップであって、複合体が少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、
少なくとも:
(a)アルキルスルホン酸;または
(b)式Iの少なくとも1つのカルボン酸含有化合物、
【0037】
【0038】
(式中、R*は、-C1-C7アルキル-OH、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-NH2、-C1-C7アルキル-NHR3および-C1-C7アルキルNR3R4から選択され、ここで、各R3およびR4は、-H、-OH、-ハロ、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)である)、あるいは
(c)それらの組み合わせ
とを含む、接触させるステップと、
溶媒を通過する複合体組成物の移動時に水が溶媒から放出され、溶媒と非混和性の水性層を形成するステップと、を含む。
【0039】
一実施形態において、方法は、回収された水を非混和性溶媒層から分離するステップを含む。
一実施形態において、溶媒は、
a)少なくとも1つのアミン含有化合物と、
b)少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルと、
を含む。
【0040】
別の態様において、本発明は、溶媒から水を回収するために上記で定義された溶媒乾燥組成物を使用するためのプロセスを提供し、同組成物は、以下の複合体:
a)少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物;および
b)少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、
を含み、
使用時に、溶媒を通過する組成物の移動時に水が溶媒から放出され、放出された水は、溶媒と非混和性の水性層を形成し;
同プロセスは以下のステップを含む:
1)前記溶媒乾燥組成物を前記溶媒と接触させて、前記組成物が溶媒を通過して移動する際に前記溶媒から水を放出し、放出された水および前記溶媒乾燥組成物は、前記溶媒と非混和性の水性層を形成することと;
2)前記非混和性の水性層から前記溶媒乾燥組成物を回収すること。
【0041】
一実施形態において、プロセスは、溶媒を回収するステップを含む。
一実施形態において、回収された溶媒乾燥組成物は、さらなる溶媒乾燥プロセスで使用するためにリサイクルされる。好ましい実施形態において、溶媒乾燥組成物を回収するプロセスは、連続した回収プロセスである。
【0042】
一実施形態において、溶媒乾燥溶液を回収するステップは、以下の技術:膜蒸留、パーバポレーション、浸透、圧力駆動膜プロセス、浸透圧駆動膜プロセス、浸透圧補助圧力駆動膜プロセス、圧力補助浸透圧駆動膜プロセス、ろ過、機械的蒸気再圧縮、蒸発ベースのプロセス、水特異的反応物、または結晶化技術などのうちの1つまたは複数によって達成される。
【0043】
一実施形態において、溶媒乾燥溶液を回収するステップは、圧力補助浸透圧技術によって達成される。
一実施形態において、少なくとも1つのカルボン酸含有化合物は、以下のうちの1つまたは複数から選択される:
a)式Iの化合物、
【0044】
【0045】
(式中、R*は、-C1-C7アルキル-OH、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-NH2、-C1-C7アルキル-NHR3および-C1-C7アルキルNR3R4から選択され、ここで、各R3およびR4は、-H、-OH、-ハロ、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル);である)、および
b)1つ以上のカルボン酸基を含有するポリマー。
【0046】
一実施形態において、アルキルスルホン酸はイソエチオン酸である。
一実施形態において、式Iのカルボン酸含有化合物は、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される。
【0047】
一実施形態において、少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物と、少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせとのモル比は、約1:99または99:1;または約1:50または50:1;または約1:10または10:1;または約1:5または5:1;または約1:3または3:1;または約1:2または2:1;または約1:1から選択される。
【0048】
別の実施形態において、少なくとも1つのアミン含有化合物は、第二級または第三級アミンまたはそれらの組み合わせである。
一実施形態において、カルボン酸含有化合物は、金属塩-カルボン酸複合体である。
【0049】
一実施形態において、金属塩-カルボン酸複合体は、以下の1つ以上から選択される:Na塩、Fe(II)塩、Fe(III)塩、Cu(II)塩、Al(II)塩、Al(III)塩、Sr(II)塩、Li塩およびAg塩などの6、4未満の価数を有する金属塩。一実施形態において、金属塩は4未満の原子価を有する。
【0050】
一実施形態において、式Iのカルボン酸含有化合物は、酢酸、クエン酸およびグリコール酸、あるいはそれらの組み合わせから選択される。
一実施形態において、
a)少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物;および
b)少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸;あるいはそれらの組み合わせ、
を含む複合体は不可逆的にプロトン化される。
【0051】
一実施形態において、溶媒は水が回収される溶媒であり、少なくとも1つのアミン含有化合物および少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含む。
別の実施形態において、溶媒は、少なくとも第二級または第三級アミン、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0052】
一実施形態において、溶媒は、式IIの少なくとも1つのエノール化可能なカルボニルを含み、
【0053】
【0054】
(式中、
a)R1およびR2は、-C1-C7アルキルまたは-C3-C7単環から独立して選択されるか;または、
b)R1またはR2のうちの一方が-O-(C1-C7アルキル)から選択され、他方が-C1-C7アルキルから選択されるか;または、
c)R1およびR2は、式IIのカルボニルと一緒になって、3~15員の単環式ケトンまたは3~15員の単環式複素環式ケトンを形成する)。
【0055】
前述の簡単な要約は、本発明の特定の実施形態の特徴および技術的利点を大まかに説明している。さらなる技術的利点は、本発明の詳細な説明および以下の実施例に記載される。
【0056】
本発明の特徴であると考えられる新規な特徴は、付随する図および実施例に関連して検討される場合、本発明の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、本明細書で提供される図面および実施例は、本発明の例示を支援すること、または本発明の理解を深めることを支援することを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】低濃度でのエチルピペリジン濃度の検量線を示す。
【
図2】従来技術のものと比較した種々のアミン/酸複合体の乾燥能力を示す。
【
図4】市販のブラインを用いた5回の(quintuple)向流再生プロセスを模式的に示す。
【
図5】
図4で概説した向流再生プロセスの各段階における種々の水分含量のプロットを示す。
【
図6】溶媒乾燥組成物を回収するための圧力補助浸透圧プロセスのプロセス図を概略的に示す。
【
図7】溶媒乾燥組成物を回収するための連続プロセスシステムのプロセス図を示す。
【
図8】20体積%の希釈した乾燥溶媒溶液を60バールで使用した場合の逆浸透フラックス(LMH)データおよび除去率(%)データのグラフを示す。
【
図9】異なる圧力で5つの異なる膜から得られたフラックスデータの結果を示す。
【
図10】異なる圧力で5つの異なる膜から得られた除去率(%)の結果を示す。
【
図11】静電コアレッサを使用して溶媒乾燥組成物を回収するためのプロセス図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下の説明は、多数の例示的な構成、パラメータなどを示す。しかしながら、そのような説明は本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、例示的な実施形態の説明として提供されることを認識すべきである。
【0059】
定義
本明細書の各例において、本発明の説明、実施形態、および実施例において、「含む(comprising)」、「含む(including)」などの用語は、限定ではなく広範に読まれるべきである。したがって、文脈がそうではないことを明確に要求しない限り、説明、および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの用語は、排他的な意味とは反対の包括的意味で、すなわち「含むがこれに限定されない」という意味で解釈すべきである。
【0060】
「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、通常、所定の値または範囲の20%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内を意味する。あるいは、「約」という用語は、好ましくは所与の値の対数で2倍以内(すなわち1桁以内)を意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つのアミンまたはアンモニウム塩含有化合物」という用語は、重炭酸アンモニウムが除外されるという条件で、-NH3、-NHR3または-NR3R4基または-NH4
+のアンモニウム塩を含む任意の化合物を意味し、R3およびR4は、-H、-OH、-ハロ、-C1-C7アルキル、-C1-C7アルキル-OH、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)から選択される。
【0062】
本明細書で使用される場合、「カルボン酸含有化合物」とは、-COOH基を有する任意の化合物またはその塩であり、ポリアクリル酸などのポリマー化合物、ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)溶液などのコポリマーなどが含まれる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「アルキルスルホン酸」という用語は、R-S(O)2OH官能基またはその塩を有する任意の化合物を含み、RはC1-C7アルキルであり、C1-C7アルキルは以下に定義される通りである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「C1-C7アルキル」という用語は、完全に飽和した分枝または非分枝炭化水素部分を指し、これは、特定の範囲の1~7個の炭素の直鎖または分枝鎖であり得る。好ましくは、アルキルは、1~7個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を含む。C1-C7アルキルの代表例には、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチルなどが含まれる。例えば、C1-C4-アルキルという表現は、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert-ブチルおよびイソブチルを含む。一実施形態において、C1-C7アルキル基は、以下の基のうちの1つまたは複数で置換されていてもよい:ハロ、-OH、-CN、-NO2、-C≡CH、-SH、-C1-C7アルキル、-(C1-C7アルキル)-OH、-NH2、-NH(C1-C7アルキル)、-N(C1-C7アルキル)2、-O(C1-C7アルキル)、-C(O)-O(-C1-C7アルキル)、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)。
【0065】
本明細書で使用される「C3-C7単環式」という用語は、3員、4員、5員、6員、または7員の飽和または不飽和の単環式環である。代表的なC3-C7単環式基には、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、およびシクロヘプチルが含まれる。一実施形態において、C3-C7単環式シクロアルキル基は、以下の基のうちの1つ以上で置換されていてもよい:ハロ、-OH、-CN、-NO2、-C≡CH、-SH、-C1-C7アルキル、-(C1-C7アルキル)-OH、-NH2、-NH(C1-C7アルキル)、-N(C1-C7アルキル)2、-O(C1-C7アルキル)、-C(O)-O(-C1-C7アルキル)、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)。
【0066】
「3~15員の単環式ケトン」という用語は、ケトン官能基を含む3~15員の非芳香族単環式環系を指す。3員~15員の単環式ケトンの代表的な例には、限定されるものではないが、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、シクロトリデカノン、シクロテトラデカノン、および、シクロペンタデカノンが含まれる。
【0067】
一実施形態において、3員~15員の単環式ケトンは、以下の基のうちの1つまたは複数で置換されていてもよい:ハロ、-OH、-CN、-NO2、-C≡CH、-SH、-C1-C7アルキル、-(C1-C7アルキル)-OH、-NH2、-NH(C1-C7アルキル)、-N(C1-C7アルキル)2、-O(C1-C7アルキル)、-C(O)-O(-C1-C7アルキル)、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)。
【0068】
「3~15員単環式複素環ケトン」とは、以下のもの:(i)環炭素原子の1つがN、OまたはS原子で置換されている3または4員の非芳香族単環式シクロアルキル、または(ii)環炭素原子の1~4個が独立してN、OまたはS原子で置換されている5~15員の非芳香族単環式シクロアルキル、を指す。1つのN、OまたはS原子を有する3~15員の単環式複素環式ケトンの代表的な例には、限定されるものではないが、オキシラン-2-オン、チイラン-2-オン、オキセタン-2-オン、オキセタン-3-オン、アゼチジン-3-オン、チエタン-2-オン、チエタン-3-オン、ジヒドロフラン-2(3H)-オン、ジヒドロフラン-3(2H)-オン、ピロリジン-3-オン、ジヒドロチオフェン-3(2H)-オン、ジヒドロチオフェン-2(3H)-オン、テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、ジヒドロ-2H-ピラン-3(4H)-オン、ジヒドロ-2H-ピラン-4(3H)-オン、ピペリジン-3-オン、ピペリジン-4-オン、テトラヒドロ-2H-チオピラン-2-オン、ジヒドロ-2H-チオピラン-3(4H)-オン、ジヒドロ-2H-チオピラン-4(3H)-オン、オキセパン-2-オン、オキセパン-3-オン、オキセパン-4-オン、チエパン-2-オン、チエパン-3-オン、チエパン-4-オン、アゼパン-3-オン、アゼパン-4-オン、オキソカン-2-オン、オキソカン-3-オン、オキソカン-4-オン、オキソカン-5-オン、チオカン-2-オン、チオカン-3-オン、チオカン-4-オン、チオカン-5-オン、アゾカン-3-オン、アゾカン-3-オン、アゾカン-4-オン、アゾカン-5-オン、アゾナン-3-オン、アゾナン-4-オン、アゾナン-5-オン、オキソナン-2-オン、オキソナン-3-オン、オキソナン-4-オン、オキソナン-5-オン、チオナン-2-オン、チオナン-3-オン、チオナン-4-オン、チオナン-5-オン、オキサシクロウンデカン-2-オン、オキサシクロウンデカン-3-オン、オキサシクロウンデカン-4-オン、オキサシクロウンデカン-5-オン、オキサシクロウンデカン-6-オン、アザシクロウンデカン-3-オン、アザシクロウンデカン-4-オン、アザシクロウンデカン-5-オン、アザシクロウンデカン-6-オン、チアシクロウンデカン-2-オン、チアシクロウンデカン-3-オン、チアシクロウンデカン-4-オン、チアシクロウンデカン-5-オン、チアシクロウンデカン-6-オン、オキサシクロドデカン-2-オン、オキサシクロドデカン-3-オン、オキサシクロドデカン-4-オン、オキサシクロドデカン-5-オン、オキサシクロドデカン-6-オン、オキサシクロドデカン-7-オン、アザシクロドデカン-3-オン、アザシクロドデカン-4-オン、アザシクロドデカン-5-オン、アザシクロドデカン-6-オン、アザシクロドデカン-7-オン、チアシクロドデカン-2、チアシクロドデカン-3-オン、チアシクロドデカン-4-オン、チアシクロドデカン-5-オン、チアシクロドデカン-6-オン、チアシクロドデカン-7-オン、オキサシクロトリデカン-2-オン、オキサシクロトリデカン-3-オン、オキサシクロトリデカン-4-オン、オキサシクロトリデカン-5-オン、オキサシクロトリデカン-6-オン、オキサシクロトリデカン-7-オン、アザシクロトリデカン-3-オン、アザシクロトリデカン-4-オン、アザシクロトリデカン-5-オン、アザシクロトリデカン-6-オン、アザシクロトリデカン-7-オン、チアシクロトリデカン-2-オン、チアシクロトリデカン-3-オン、チアシクロトリデカン-4-オン、チアシクロトリデカン-5-オン、チアシクロトリデカン-6-オン、チアシクロトリデカン-7-オン、オキサシクロテトラデカン-2-オン、オキサシトラデカン-3-オン、オキサシクロテトラデカン-4-オン、オキサシクロテトラデカン-5-オン、オキサシクロテトラデカン-6-オン、オキサシクロテトラデカン-7-オン、オキサシクロテトラデカン-8-オン、アザシクロテトラデカン-3-オン、アザシクロテトラデカン-4-オン、アザシクロテトラデカン-5-オン、アザシクロテトラデカン-6-オン、アザシクロテトラデカン-7-オン、アザシクロテトラデカン-8-オン、チアシクロテトラデカン-2-オン、チアシクロテトラデカン-3-オン、チアシクロテトラデカン-4-オン、チアシクロテトラデカン-5-オン、チアシクロテトラデカン-6-オン、チアシクロテトラデカン-7-オン、チアシクロテトラデカン-8-オン、オキサシクロペンタデカン-2-オン、オキサシクロペンタデカン-3-オン、オキサシクロペンタデカン-4-オン、オキサシクロペンタデカン-5-オン、オキサペンタデカン-6-オン、オキサシクロペンタデカン-7-オン、オキサシクロペンタデカン-8-オン、アザシクロペンタデカン-3-オン、アザシクロペンタデカン-4-オン、アザシクロペンタデカン-5-オン、アザシクロペンタデカン-6-オン、アザシクロペンタデカン-7-オン、アザシクロペンタデカン-8-オン、チアシクロペンタデカン-2-オン、チアシクロペンタデカン-3-オン、チアシクロペンタデカン-4-オン、チアシクロペンタデカン-5-オン、チアシクロペンタデカン-6-オン、チアシクロペンタデカン-7-オン、チアシクロペンタデカン-8-オンが含まれる。一実施形態において、3員~15員の単環式複素環式ケトン基は、以下の基のうちの1つまたは複数で置換されていてもよい:ハロ、-OH、-CN、-NO2、-C≡CH、-SH、-C1-C6低級アルキル、-(C1-C7アルキル)-OH、-NH2、-NH(C1-C7アルキル)、-N(C1-C7アルキル)2、-O(C1-C7アルキル)、-C(O)-O(-C1-C7アルキル)、-C(O)OH、-C(O)-H、または-C(O)-(C1-C7アルキル)。誤解を避けるために、3~5員の単環式複素環式ケトンは、環構造内のN原子にケトンエノール化可能なカルボニル基が隣接しているアミド基を含まない。
【0069】
本明細書で使用される「ハロ」という用語は、-F、-Cl、-Brまたは-Iを指す。
「エノール化可能なカルボニル(enolisable carbonyl)」という用語は、1つ以上のカルボニル官能基を有する化合物であって、カルボニル官能基のうちの少なくとも1つがアルファ水素(Hα)を有しており、このアルファ水素(Hα)が以下の反応スキームに示すように塩基によって除去されることでエノラートを次にエノールを形成する化合物を意味する。
【0070】
【0071】
本明細書で使用されるエノール化可能なカルボニルという用語は、アルデヒド官能基のみを有する化合物、カルボン酸官能基のみを有する化合物、アミド官能基のみを有する化合物、アシルハライド官能基のみを有する化合物、またはアセチルアセトンを含まないことを理解されたい。本発明のエノール化可能なカルボニルには、本明細書に例示されるものが含まれ、限定されるものではないが、以下のエノール化可能なカルボニルも含まれる:1-アセトナプトン、2-アセトナフトン、4-メチル-1-アセトナフトン、1’-ヒドロキシ-2’-アセトナフトン、2’-ヒドロキシ-1’-アセトナフトン、2-メトキシ-1-アセトナフトン、4-フルオロ-1-アセトナフトン、2-アセチルフェナントレン、3-アセチルフェナントレン、4-アセチルフェナントレン、9-アセチルフェナントレン、6-ブロモ-9-アセチルフェナントレン、9-フルオロ-10-アセチルフェナントレン、9-フルオレノン、9-フルオレノンオキシム、2-ニトロ-9-フルオレノン、3-ニトロ-9-フルオレノン、4-ニトロ-9-フルオレノン、2,6-ジニトロ-9-フルオレノン、2,7-ジニトロ-9-フルオレノン、2,3,7-トリニトロ-9-フルオレノン、2-フルオロ-9-フルオレノン、1-ブロモ-9-フルオレノン、2-ブロモ-9-フルオレノン、2,7-ジクロロ-9-フルオレノン、2,7-ジブロモ-9-フルオレノン、2-ヒドロキシ-9-フルオレノン、4-ヒドロキシ-9-フルオレノン、1-メチルフルオレン-9-オン、4-メチルフルオレン-9-オン、3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン、7-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン、6-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン、8-ブロモ-2,3-ジヒドロ-4(1H)-キノリノン、3-ブチル-4-ヒドロキシ-1-メチル-2(1H)-キノリノン、6-フルオロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン、8-フルオロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン、2,6-ジメチル-4(1H)-キノリノン、3-ブチル-4-ヒドロキシ-1-メチル-2(1H)-キノリノン、1-インダノン、5,6-ジメトキシ-1-インダノン、6-ブロモ-1-インダノン、6-メトキシ-1-インダノン、2-ブロモ-1-インダノン、4-ブロモ-1-インダノン、5-ブロモ-1-インダノン、5-クロロ-1-インダノン、6-クロロ-1-インダノン、4,7-ジメチル-1-インダノン、2-メチル-1-インダノン、4-メチル-1-インダノン、5-フルオロ-1-インダノン、6-フルオロ-1-インダノン、6-(トリフルオロメチル)-1-インダノン、4-メトキシ-1-インダノン、3,5-ジメトキシ-1-インダノン、4,7-ジメトキシ-1-インダノン、5-ヒドロキシ-1-インダノン、4-ヒドロキシ-1-インダノン、7-ヒドロキシ-1-インダノン、2-インダノンオキシム、2,2-ジ(メチルチオ)-1-インダノン、(2,4-ジメトキシフェニル)アセトン、3,5-ジメトキシアセトフェノン、4-(4-メトキシフェニル)-2-ブタノン、3-メトキシフェニルアセトン、4-メトキシアセトフェノン、4-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,5-ジメチルフェニルアセトン、3,4,5-トリメトキシフェニルアセトン、4-ヒドロキシ-3-フェニルブタン-2-オン、3-ヒドロキシ-4-フェニルブタン-2-オン、3-ヒドロキシ-3-フェニルブタン-2-オン、4-ヒドロキシ-4-フェニルブタン-2-オン、1-ヒドロキシ-3-フェニルブタン-2-オン、3-ヒドロキシ-1-フェニルブタン-2-オン、3-ヒドロキシ-1,3-ジフェニルブタン-2-オン、4-ヒドロキシフェニルアセトン、3,4-ジヒドロキシフェニルアセトン、4-ニトロフェニルアセトン、アセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、3-メチルフェニルアセトン、4-メチルフェニルアセトン、4-エチルフェニルアセトン、1-フェニルブタン-2-オン、3-フェニルブタン-2-オン、4-フェニルブタン-2-オン、1-ブロモ-4-フェニルブタン-2-オン、3-メチル-1-フェニルブタン-2-オン、3-メチル-4-フェニルブタン-2-オン、エチルフェニルケトン、ブチルフェニルケトン、シクロプロピルフェニルケトン、シクロペンチルフェニルケトン、シクロブチルフェニルケトン、シクロヘキシルフェニルケトン、2-フェニルシクロペンタノン、3-フェニルシクロペンタノン、2-フェニルシクロヘキサノン、3-フェニルシクロヘキサノン、2-フェニルシクロヘプタノン、3-フェニルシクロヘプタノン、4-クロロフェニルアセトン、4-クロロ-2-フェニルアセトフェノン、2,6-ジクロロフェニルアセトン、3-クロロフェニルアセトン、2,6-ジフルオロフェニルアセトン、1-ブロモ-1-フェニルブタン-2-オン、3-ブロモ-4-フェニルブタン-2-オン、1-ブロモ-4-フェニルブタン-2-オン、3-クロロ-4-フェニルブタン-2-オン、2-アセチルチオフェン、シクロプロピル-2-チエニルケトン、2-アセチルフラン、2-フリルメチルケトン、1-アセチルピロール、2-アセチルピロール、4-メチル-2-フェニルアセトフェノン、1,3-ジフェニルアセトン、4,4-ジフェニルブタン-2-オン、ベンゾフェノン、4-ナフチルフェニルケトン、2-ベンゾイルピリジン、3-ベンゾイルピリジン、4-ベンゾイルピリジン、2-(4-クロロベンゾイル)ピリジン、2-ベンゾイルチオフェン、2-ベンゾイルピロール、ジ(3-チオフェニル)メタノン、3-フェニル-1-(2-チエニル)-2-プロペン-1-オン、およびピペロニルアセトン。
【0072】
「アミン含有化合物」という用語は、1つ以上のアミン官能基を含むが、複素環が酸素または硫黄原子ならびに少なくとも1つのアミン基を含む複素環アミンを含まない任意の化合物を含み、例えば、4-エチルモルホリンなど、を含む。
【0073】
「第三級アミン含有化合物」という用語は、好ましくは、少なくとも1つの第三級アミン基を有する化合物を意味するが、化合物は、2つ以上の第三級アミン基を有し得るか、またはさらに第三級アミン含有化合物の混合物であり得ることが理解されるべきである。好ましくは、第三級アミン含有化合物は、ルイス塩基などの塩基である。塩基がルイス塩基である場合、ルイス付加物がエノール化可能なカルボニルとともに形成され得ることが想定される。一実施形態において、第三級アミン含有化合物は、1つの標準気圧下で摂氏20度以上の水と非混和性であることが好ましい。溶液は、2つ以上の第三級アミン含有化合物の組み合わせを含み得る。第三級アミン含有化合物は、脂肪族、共役、非対称または環状、あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0074】
適切な第三級アミン含有化合物の例には、以下が含まれる:
【0075】
【0076】
一実施形態において、第三級アミン含有化合物は、1-エチルピロリジン、エチルピペリジン、2-メチルピリジンおよびN-メチルピペリジンから選択される。
一実施形態では、第三級アミン含有化合物は、-N(C1-C7アルキル)3から選択される。別の実施形態において、第三級アミン含有化合物は、-N(C1-C4アルキル)3から選択される。さらに別の実施形態において、第三級アミン含有化合物は、-N(C2アルキル)3(トリエチルアミン)である。
【0077】
上記した第三級アミン含有化合物は、工業規模での生産にとって十分に単純なものであると理解される。
少なくとも1つの第三級アミン含有化合物の、式IIの1つ以上のエノール化可能なカルボニルに対するモル比は、約1:99または99:1;または約1:50または50:1;または約1:10または10:1;または約1:5または5:1;または約1:3または3:1;または約1:2または2:1;または約1:1を含むモル比にて存在し得ることが理解されるべきである。
【0078】
少なくともアミンまたはアンモニウム塩含有化合物の、少なくとも1つのカルボン酸含有化合物またはアルキルスルホン酸あるいはそれらの組み合わせに対するモル比は、約1:99または99:1;または約1:50または50:1;または約1:10または10:1;または約1:5または5:1;または約1:3または3:1;または約1:2または2:1;または約1:1から選択されることが理解されるべきである。
【実施例】
【0079】
本明細書に記載の例は、本発明の特定の実施形態を説明する目的で提供されており、いかなる方法でも本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本明細書の開示および教示を利用して、過度の実験なしに他の実施形態および変形例を生成することができる。そのようなすべての実施形態および変形例は、本発明の一部であると見なされる。
【0080】
調製例
調製例1-吸水性溶媒混合物溶液
試験目的のための吸水性溶媒混合物の調製。以下の方法を使用して、標準的な吸水性溶媒混合物溶液を生成した。
【0081】
1.市販の分析グレードの2-ブタノン(メチルエチルケトンMEKとしても知られている)とトリエチルアミン(TEA)を表1に従うように2:1のモル比で混合し、「乾燥した(dry)」状態(水を含まない)の吸水性溶媒混合物を作製した。
【0082】
【0083】
2.以下の表2に示す量で10%の脱イオン水を溶媒混合物に加え、十分に振とうした。溶媒混合物に水を加え、「湿潤溶媒混合物(wet solvent mixture)」を作製した。
【0084】
【0085】
3.湿潤溶媒混合物を調製した後、[アミン*+カルボン酸含有化合物]の種々の複合体を乾燥剤、つまり溶媒混合物から水分を除去する剤として試験する。これには、選択した乾燥剤を激しく振とうしながら湿潤溶媒混合物に加えることが含まれる。表3に示すように、乾燥剤を水:乾燥剤、2:1の比で添加した。
【0086】
【0087】
4.2つの液体を完全に分離させた。
5.乾燥剤(下層)はデカンテーションして廃棄した。
6.ガスクロマトグラムを使用して、サンプル中の水の濃度を計算するために、標準添加試験(3回)を実施した。
【0088】
SUPELCO(登録商標)WATERCOL1910カラムを取り付けたSHIMADZU Nexis(商標)2030ガスクロマトグラフですべてのGCデータを収集した。GCパラメータは以下のように設定した。
【0089】
パラメータ…設定値
注入量…1.0μL
注入温度…250℃
注入モード…スプリット
スプリット比…100.0
キャリアガス…He
キャリアガス圧力…53.1kPa
カラム流量…0.93mL/分
ライナ(Liner)速度…22.0cm/s
カラム長…30.0m
カラム内径…0.32
カラム法…アイソクラティック
カラム温度…163.0℃
総時間…9分
検出器…TCD
TCDサンプルレート…40ミリ秒
TCD電流…70mA
メイクアップガス…He
メイクアップ流…8.0mL/分
TCD温度…200℃
【0090】
【0091】
調製例2-乾燥剤複合体
乾燥剤複合体は、1:1のクエン酸:エチルピペリジンのモル比で構成され、次に、10%の過剰のクエン酸を添加して、すべてのエチルピペリジンが完全に複合体[アミン*+カルボン酸含有化合物]を形成し、「遊離の」エチルピペリジンの可能性を排除するようにした。
【0092】
実施例1-種々の複合体[アミン*+カルボン酸含有化合物]の吸水性
アミンとクエン酸またはアミンとグリコール酸のいくつかの複合体の再生剤の能力を評価した。クエン酸およびグリコール酸の複合体は、6.9mol/kgの同じモル濃度で調製した。以下の表4に示すように、種々の組み合わせの溶媒混合物を準備し、6.9mol/kgのクエン酸またはグリコール酸と反応させて、種々の複合体[アミン*+カルボン酸含有化合物]を形成し、吸水能力を試験した。
【0093】
【0094】
得られた複合体[アミン*+カルボン酸含有化合物]を、以下の手順で水回収能力について試験した。
0.2mlの種々の複合体をそれぞれ20mlの湿潤溶媒混合物(上記の調製例1に従って調製したもの)に加えた。
【0095】
・得られた混合物をボルテックスミキサーで30秒間混合した後、直径130mmの4アームスイングローターを取り付けた遠心分離機にて4000rpmで60秒間分離した。
【0096】
・溶媒混合物中の残った水は、標準添加の方法によるガスクロマトグラフィーを使用して測定した。
得られた結果を表5に示す。
【0097】
【0098】
表5に示す結果は、アミン/酸性塩も再生(regen)水吸収能力を示し、したがって再生剤としても機能できることを示している。同じ濃度を用いた場合、クエン酸塩の吸水性はグリコール酸塩よりも優れていた。
【0099】
実施例1(続き)-種々の複合体[アンモニウム塩+カルボン酸含有化合物]の吸水性
アンモニウム塩とクエン酸の複合体を水回収能力について評価した。上記の調製例1に従って、乾燥溶媒混合物および湿潤溶媒混合物を調製した。
【0100】
クエン酸アンモニウムは次のように調製した:
・クエン酸(13.96g,0.073mol)を10mlの28wt%アンモニア水(NH4OH:2.55g,0.073mol)に加えた。
【0101】
・混合物を室温で30分間撹拌した。
飽和溶液の調製は以下の通りである:
・ある量の酸を10mLの蒸留水に加えた。
【0102】
・溶液を室温で撹拌した。
・酸が溶解しなくなったら、撹拌を停止し、飽和溶液を使用した。
表6では、可能性のある(potential)いくつかのアンモニウム塩再生剤が飽和溶液として作成された。再生剤の組成と供給源を表に示す。吸水能力を測定する手順は以下の通りである:
・0.2mlの種々の再生剤をそれぞれ20mlの湿潤溶媒混合物に加えた。
【0103】
・それをボルテックスミキサーで30秒間混合した後、直径130mmの4アームスイングローターを取り付けた遠心分離機にて4000rpmで60秒間分離した。
・溶媒混合物中に残った水は、標準添加の方法によるGCを使用して測定した。
【0104】
【0105】
様々なカルボキシル基含有化合物を試験して、それらの吸水能力を決定した。上記と同様に、上記の調製例1に従って湿潤溶媒混合物サンプルを調製した。種々のカルボキシル基含有化合物をSigma-Aldrich社から購入した:例えば、ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)溶液、ポリ(アクリル酸)、グリコール酸、酒石酸などである。カルボン酸含有化合物は、表6および表7に示すように調製した。表6のサンプルを半分の濃度に希釈して試験に使用し、表7のように評価した。
【0106】
【0107】
-COOHのモル濃度(mol/kg)は、次の式を使用して計算した:
【0108】
【0109】
【0110】
モル濃度(mol/kg)は、次の式を使用して計算した:
【0111】
【0112】
これらのカルボン酸基含有候補物質の水放出能力(water releasing capabilities)を測定するために、以下のステップを採用した。
・0.2mlの各カルボン酸含有化合物それぞれ20mlの湿潤溶媒混合物に加えた。
【0113】
・得られた組み合わせをミキサーの機器によって30秒間混合した後、直径130mmの4アームスイングローターを取り付けた遠心分離機にて4000rpmで60秒間分離した。
【0114】
・溶媒混合物中に残った水は、標準添加の方法によるGCを使用して測定した。
観察および分析:
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
その結果、-COOH濃度を高めると吸水能力も高まることが明らかとなった。ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)は、低濃度で最も再生剤としての可能性を示した。
実施例2-アミン複合体クロスオーバー実験
この実験は、乾燥剤複合体のアミンと溶媒混合物との間で、どの程度のアミンのクロスオーバーが検出されるかを調べるために実施した。乾燥剤複合体は、溶媒混合物に対して湿潤度(wetness)7.1%で試験した。溶媒混合物は、調製例1に従って調製された1:2のTEA:MEKのモル比で構成されていた。等量の湿潤溶媒混合物と乾燥剤とを混合し、得られた混合物を30秒間ボルテックスし(vortexed)、次に直径130mmの4アームスイングローターを取り付けた遠心分離機にて4000rpmで60秒間分離した。試験前にサンプルを一晩かけて平衡化させた。結果を表12に示し、エチルピペリジンのガスクロマトグラフィー検量線を
図1に示す。
【0119】
【0120】
ppmのほんのわずかなエチルピペリジンしか溶媒混合物中にはクロスオーバーしていないことが分かる。すなわち、[エチルピペリジン+クエン酸]複合体は、同複合体が(MEK:TEA)溶媒混合物を通過する間、その複合体としての完全性をほぼ維持していた。溶媒混合物中では、エチルピペリジンはほとんど測定されなかった。仮にエチルピペリジンがトリエチルアミンとクロスオーバーして平衡していれば、168,000ppm程度までの測定値が予想される。
【0121】
実施例3
種々の複合体[アミン*+カルボン酸含有化合物]の乾燥能力を試験し、ジェソップらの特許文献1に開示されている水回収剤と比較した。
【0122】
調製例1に従って調製した湿潤溶媒(TEA:MEK1:2)を使用し、その水分含量をガスクロマトグラフィーを使用して測定した。湿潤溶媒混合物20mlに対して、以下の乾燥剤の0.2mlを準備し、溶媒混合物に加えた後、ガスクロマトグラフィーを用いて湿潤溶媒混合物の水分含量を再測定した。TEAを加えてTEA:CO
2を調製した。H
2CO
3(0.0098mol,1.60g)を蒸留水(0.0556,1g)に加えた。9.8mol/kgのTEA:CO
2の混合物を形成し、使用した。TEA:ギ酸、TEA:クエン酸およびTEA:グリコールは同じモル濃度の9.8mol/kgで使用し、表13と
図2に示す結果を得た。
【0123】
【0124】
表13および
図2の結果から、トリエチルアミン:クエン酸複合体およびトリエチルアミン:グリコール酸複合体は、ジェソップらの特許文献1に記載されているシステムと比較して、より大きなまたは匹敵する(comparative)水分除去を提供することがわかった。
【0125】
実施例4:カルボン酸/トリエチルアミン複合体のプロトン化の不可逆性を示すためのカルボン酸/トリエチルアミン複合体のpHの測定。
複合体中のカルボン酸のプロトン化の不可逆性は、トリエチルアミンを添加すると実質的にすべての遊離プロトンが除去されることを示すpHの変化を比較することによって示すことができる(表14を参照)。pHのデータは、アミンがほとんど塩の形態であるという事実も裏付けている。
【0126】
【0127】
実施例5:アミノ酸+アミンの組み合わせ
カルボキシル基含有化合物として、様々なアミノ酸を試験し、その吸水能力を調べた。上記と同様に、上記の調製例1に従って湿潤溶媒混合物サンプルを調製した。アミノ酸はSigma-Aldrich社から購入した。アミン*+種々のアミノ酸の組み合わせの乾燥能力を試験した。
【0128】
調製例1に従って調製した湿潤溶媒(TEA:MEK1:2)を使用し、ガスクロマトグラフィーを使用してその水分含量を測定した。湿潤溶媒混合物20mlに対して、以下の乾燥剤の0.2mlを準備し、溶媒混合物に加えた後、ガスクロマトグラフィーを用いて湿潤溶媒混合物の水分含量を再び測定した。飽和アミノ酸溶液をTEAと混合して、TEA:リジン、TEA:グリシン、TEA:サルコシン、TEA:N,N-ジメチルグリシンの複合体をそれぞれ形成して使用し、表15および
図3に示す結果を得た。
【0129】
【0130】
表15および
図3の結果は、トリエチルアミン:アミノ酸複合体が乾燥剤として機能できることを示している。この複合体は、水を効果的に除去することにより、湿潤溶媒を乾燥させることができる。
【0131】
実施例6 種々の乾燥剤の組み合わせ
上記の実施例1に従って、吸水性溶媒混合物を調製した。合成ブラインを20:1の比で吸水性溶媒混合物に加えた(吸水性溶媒混合物20部に対してブライン1部))。合成ブラインは、表16に詳述されている組成を有するものであった。
【0132】
【0133】
吸水性溶媒混合物にブラインを添加した後、溶媒混合物の湿潤度は、ガスクロマトグラフィーによって8.136%であると決定された。表17に従って一連の乾燥剤を調製した。
【0134】
【0135】
組成1~7に従って調製された0.2mlの乾燥剤を、上記で調製された20mlの湿潤溶媒混合物に添加した。乾燥剤と湿潤溶媒混合物の組み合わせをボルテックスで混合し、次に遠心分離してそれぞれの層を分離した。次に、溶媒混合物の湿潤度をガスクロマトグラフィーによって再度測定して、乾燥剤によって湿潤溶媒混合物からどれだけの水が除去されたかを決定した。結果を表18に示す。
【0136】
【0137】
表18の結果は、メトキシ酢酸が酒石酸およびグリコール酸との組み合わせにおいて、より高い浸透圧を提供することを示している。対照的に、乾燥剤の組み合わせがリジンを含んだ場合、乾燥剤の浸透圧は低かった。また、乾燥剤の組み合わせによっても、粘度が異なることがわかる。酒石酸とクエン酸の組み合わせが最も粘度が高い。
【0138】
実施例7:種々の乾燥剤と異なる溶媒乾燥混合物との組み合わせ
表19に示すように、様々な溶媒乾燥混合物を調製した。アミンとケトンのモル比は1:2であった。
【0139】
【0140】
溶媒混合物のガスクロマトグラフィー検量線を作成した。これらは、0.5、0.49、0.48、0.47、0.46および0.45mlの吸収剤に、それぞれ0、0.01、0.02、0.03、0.04および0.05mlの水を加えた。乾燥剤は、表20に従って調製した。
【0141】
【0142】
ケトン/アミン溶媒混合物が水を吸収する能力は、以下の手順に従って試験した:
10mlの蒸留水を10mlのケトン/アミン混合物に1:1の体積比で加えた。
1.得られた混合物を30秒間ボルテックスし、次に摂氏50度に加熱した。
【0143】
2.1~2時間後、ボルテックスした混合物の最上層をガスクロマトグラフィーによって分析した。
3.メチルエチルケトンとエチルピペリジンの混合物の湿潤度は12.6%と測定された。
【0144】
4.シクロヘキサノンとエチルピペリジンの混合物の湿潤度は8.3%と測定された。
5.メチルエチルケトンと4-エチルモルホリンの混合物の湿潤度は、摂氏70度に加熱しても混合物が2つの相に分離しなかったため、測定できなかった。
【0145】
6.シクロヘキサノンと4-エチルモルホリンの混合物の湿潤度は、摂氏70度に加熱しても混合物が2つの相に分離しなかったため、測定できなかった。
ケトン/アミン溶媒混合物内の水を放出することができる乾燥剤の能力も試験した。以下の乾燥剤は、表20に詳述されている乾燥剤に、過剰のアミンであるトリエチルアミン(クエン酸、グリコール酸、酒石酸に対しては10ml、リジンに対しては5ml)を加えることによって調製した。次に、得られた乾燥剤とアミンの組み合わせについて、摂氏19.3度付近でのpH、粘度、導電率を分析した。得られた結果を表21に示す。
【0146】
【0147】
種々の組み合わせから、粘度と導電性が得られたことが確認できる。例えば、リジンとTEAの組み合わせでは最も高い粘度が得られ、グリコール酸とTEAの組み合わせでは最も低い粘度が得られた。異なる乾燥剤と種々の溶媒混合物(ケトン+アミン)との組み合わせ(酸+アミン)の湿潤性をGCで分析し、その結果を以下の表22に示す。
【0148】
【0149】
表22の結果から、乾燥剤はすべてのアミン:ケトン溶液を乾燥させるわけではなく、特に4-エチルモルフォリン(EM)を含む溶液は、乾燥剤と混合した後、より湿った状態になったことがわかる。
【0150】
実施例8:市販のブラインサンプルを用いた、回収率を最適化し、逆浸透膜の必要性を低減する向流再生の使用
1mLの市販のブラインを20mLのメチルエチルケトン-トリエチルアミン(MEKとTEAの1:2比で2%湿潤)に加えることにより、様々なメチルエチルケトン-トリエチルアミン(吸収剤)混合物を調製した。得られたサンプルを30秒間ボルテックスし、1分間遠心分離した(4000RPM)。市販のブラインサンプルは、表23に概略を示すように、以下の組成を有していた。
【0151】
【0152】
初期実験A(標準再生)-
図4参照-では、純粋な再生剤(1mL)を用いて吸収剤を5回再生した。純粋な再生剤は、1リットルの水、1322グラムのクエン酸、112グラムのCuCl
2(二水和物)、2.22Lのトリエチルアミンおよび0.25リットルのメチルエチルケトン(2ブタノン)を用いて、段階的に製造した。
【0153】
図4は、この実験の手順を示す:
-2回目の再生の希釈再生剤は、次の段階の1回目の再生に再使用される。
-3回目の再生の希釈再生剤は、次の段階の2回目の再生に再使用される。
【0154】
-4回目の再生の希釈再生剤は、次の段階の3回目の再生に再使用される。
-5回目の再生は、
図4のPP Regenに示されるように、純粋な再生剤(1mL)を常に使用した。
【0155】
-5回目の再生の希釈再生剤は、次の段階の4回目の再生に再使用される。
向流再生プロセス(counter current regeneration process)の各ステップ全体のガスクロマトグラフィー分析は、以下に示すパラメータを使用して実施した:SH-Rxi-624Sil MSカラムを取り付けたSHIMADZU Nexis(商標)2030ガスクロマトグラフですべてのGCデータを収集した。GCパラメータは以下のように設定した。
【0156】
パラメータ…設定値
注入量…0.5μL
注入温度…250℃
注入モード…スプリット
スプリット比…50.0
キャリアガス…He
キャリアガス圧力…53.1kPa
カラム流量…1.16mL/分
ライナ(Liner)速度…24.0cm/s
カラム長…30.0m
カラム内径…0.32
カラム法…勾配
カラム温度…250.0℃
総時間…9分
検出器…TCD
TCDサンプルレート…40ミリ秒
TCD電流…60mA
メイクアップガス…He
メイクアップ流…8.0mL/分
TCD温度…200℃
【0157】
【0158】
GC分析は、吸収剤中の水の存在を決定し、吸収剤の再生または乾燥の各段階での吸収剤中の水分レベルの低下を追跡するために実施した。GCの結果を以下の表24に示し、
図5にプロットする。
【0159】
【0160】
上記の結果から、5回目の再生後、他のすべての段階で再生剤を再使用した後でも、結果はかなり安定しており、最終的には非常に低い水分率(1.3%)が得られることが明らかであった。
【0161】
本発明者らは、実施例3に示すように、複合体[アミン*+カルボン酸含有化合物]の水回収の性能がジェソップらの特許文献1に記載の水回収剤よりも優れていることを確認した。いかなる機構論にも拘束されることを望まないが、本発明の[アミン*+カルボン酸含有化合物]が不可逆的にプロトン化されているのに対し、ジェソップらの特許文献1は、アミンが不可逆的にプロトン化されてはならないことを明確に教示していることが注目される。乾燥剤のスイッチ性機能を必要とするジェソップとは異なり、本発明の実施例は、スイッチ性が乾燥剤/再生剤の必要な機能ではないことを示している。また、本発明者らは、複合体[アミン*+カルボン酸含有化合物]を溶媒混合物[アミン+エノール化可能なカルボニル+水]と混合した場合、複合体のアミン*が溶媒混合物中のアミンと同じであっても異なっていてもよいことを立証することができた。これは、複合体が溶媒混合物を通過する際に、複合体の完全性が実質的に維持されるためで、ジェソップに記載されているものとは異なっている。また、アミンの複合体または塩の形態が、温度や空気ストリッピングによって可逆的ではないことを意味している。
【0162】
実施例9
希釈された溶媒乾燥溶液は、逆浸透膜を使用して処理された。希釈された溶媒乾燥溶液(20リットル)は、20体積%の溶媒乾燥組成物および80体積%の蒸留水を含んでいた。(FeCl
3)とクエン酸を1:10のモル比で溶解し、その溶解した組成物を80%の蒸留水で希釈することにより、希釈した溶媒乾燥組成物を調製した。20%(体積比)の溶媒乾燥組成物の総溶解固形分(TDS)は、約287グラムであった。
図6を参照すると、以下の構成要素からなる逆浸透膜システムが示されている:
・1 希釈した溶媒乾燥液からなる供給物タンク
・2 供給出口の流量計
・3 膜(Dow FILMTEC(商標)海水逆浸透膜エレメントSW30-2540、有効面積2.8m2)の前の圧力を、ポンプ速度を操作することで閉ループ制御する高圧ポンプ
・4 膜容器
・5 制限弁付き濃縮液ストリーム
・6 透過液の流出物(Permeate outflow)
・7 透過液回収タンク
・8 制御弁
図6に示す浸透圧システムを使用する前、希釈された溶媒乾燥溶液を備えた供給物(feed)を投入する前に、脱イオン水を膜に2時間通して、膜容器4の膜を調整した。供給物タンク1からの希釈された溶媒乾燥溶液は、高圧ポンプ3を用いて高圧レベルに押し出された。各膜容器4の内部の半透膜は、溶媒乾燥組成物の大部分を拘束する。溶解度の低い塩と水からなる透過液のみが膜を通過し、濃縮液ストリーム5は供給物タンク1に戻される。透過液流出物6は、透過液回収タンク7に供給される。透過液の電気伝導度を測定し、透過液の品質と除去率(%)(rejection %)の指標とする。
【0163】
測定条件:
・最大動作温度:40℃
・最大膜動作温度:45℃
・圧力(バール):60(6000kPa)
・濃縮液と透過液の両方の透過液流量と導電率の測定値を以下の時間間隔で収集した。
【0164】
【0165】
表25に示す結果を表8にプロットして示した。
浸透圧および濃度の測定:100μLのサンプルを、供給物および透過液の両方から採取し、オスモメーターに通した。単位をmOsmol/kgからatmに変換し、両ストリームの塩の濃度を計算して表にした。
【0166】
フラックス、塩除去および水回収を計算するために次式を用いた。
フラックス測定:
【0167】
【0168】
導電率法による塩除去率(%):
【0169】
【0170】
浸透圧法による塩除去率(%):
【0171】
【0172】
水回収率(%)-方法1:
【0173】
【0174】
水回収率(%)-方法2:
【0175】
【0176】
本発明のプロセスの第2の実施形態を
図7に示す。この実施形態は、溶媒乾燥組成物複合体を回収するために2つ以上の溶媒乾燥組成物再生工程を使用することができるプロセスを示す。
図7に示すように、希釈された再生剤(希釈溶媒乾燥組成物)は、ブライン供給ストックからの水の除去を含む工業プロセスの後、コアレッサカラムCOL-102から回収される。希釈された溶媒乾燥組成物は、その後、多段階の逆浸透回収段階を経て、連続ループ操作で溶媒乾燥組成物(再生剤)を濃縮(すなわち水を除去)し、それによって再生剤が回収され、ブライン溶液からの水の除去を容易にするために工業プロセスの初期段階に送り返される。溶媒乾燥組成物が良好な絶縁体であり、静電コアレッセンスがプロセスの全体的な性能を向上させる可能性があるため、コアレッサカラムが静電式コアレッサカラムであってもよいことは理解されるべきである。
図11は、静電式コアレッサ(COL-202)を含むプロセス図である。
【0177】
実施例10:その他の膜
種々の他の膜も以下の条件で試験し、上記で使用した膜と比較した。
溶媒乾燥組成物-希釈された溶媒乾燥組成物は、(FeCl3)とクエン酸を1:10のモル比で一緒に溶解し、次いで、溶解した組成物を80%の蒸留水で希釈することによって調製した。20%(体積比)の溶媒乾燥組成物の総溶解固形分(TDS)は、約287グラムであった。
【0178】
実施例10.1:膜1 TriSep(商標)TS-80
膜の仕様:
・フラックス(GFD/psi):220/110
・最大動作圧力(バール):41(4100kPa)
・最大動作温度(℃):45
・塩素の許容量:0.1ppm
・膜の有効面積:0.0142m2
・供給溶液:5体積%溶媒乾燥溶液
膜1の結果:
フラックスおよび塩除去データについて、種々の圧力および時間での結果を、以下の表26~28に示す。
【0179】
【0180】
【0181】
浸透圧データ
【0182】
【0183】
実施例10.2:膜2 Dow filmtec(商標)Flat sheet Membrane,SW30XLE,PA-TFC,RO
膜の仕様:
・フラックス(GFD/psi):23-29/880
・最大動作圧力(バール):68.9(6890kPa)
・最大動作温度(℃):45
・塩素の許容量:0.1ppm
・膜の有効面積:0.0142m2
・供給溶液:5体積%溶媒乾燥溶液
膜2の結果:
フラックスおよび塩除去データについて、種々の圧力および時間での結果を、以下の表28~30に示す。
【0184】
【0185】
【0186】
浸透圧データ
【0187】
【0188】
実施例10.3:膜3 Toray Flat Sheet Membrane-UTC-82V,PA,RO
膜の仕様:
・フラックス(GFD/psi):27/798
・最大動作圧力(バール):55(5500kPa)
・最大動作温度(℃):25
・膜の有効面積:0.0142m2
・供給溶液:5体積%溶媒乾燥溶液
膜3の結果:
フラックスおよび塩除去データについて、種々の圧力および時間での結果を、以下の表32~34に示す。
【0189】
【0190】
【0191】
浸透圧計算:
【0192】
【0193】
実施例10.4:膜4 Synder Flat sheet Membrane,NFX,PA-TFC,NF
膜の仕様:
フラックス(GFD/psi):20-25/110
最大動作圧力(バール):30(3000kPa)
最大動作温度(℃):35
塩素の許容量(ppm時間):500
膜の有効面積:0.0142m2
供給溶液:5体積%溶媒乾燥溶液
膜4の結果:
フラックスおよび塩除去データについて、種々の圧力および時間での結果を、以下の表35~37に示す。
【0194】
【0195】
【0196】
浸透圧計算:
【0197】
【0198】
実施例10.5:Dow filmtec(商標)Flat sheet Membrane,SW30HR,PA-TFC,RO膜
膜の仕様:
・フラックス(GFD/psi):18-24/800
・最大動作圧力(バール):68.9(6890kPa)
・最大動作温度(℃):45
・塩素の許容量(ppm時間):0.1
・膜の有効面積:0.0142m2
・供給溶液:5体積%溶媒乾燥溶液
結果:
フラックスおよび塩除去データについて、種々の圧力および時間での結果を、以下の表38~40に示す。
【0199】
【0200】
【0201】
浸透圧計算:
【0202】
【0203】
種々の膜の結果を
図9および10に示す。
図9および10から、市販されている様々な膜を使用して、希釈溶媒乾燥溶液から水を回収することができたという膜の結果が得られた。
【0204】
実施例11:異なる金属塩が溶媒乾燥組成物の水容量に影響を与えるかどうかの決定。
異なる金属塩を用いて様々な溶媒乾燥組成物を調製し、それらのそれぞれの水容量(water capacity)をガスクロマトグラフィーによって決定した。溶媒乾燥組成物は以下のように調製した:
1.ある量の特定の金属塩(以下の表41に詳述)を、蒸留水(5ml)中のクエン酸(6.6gmまたは0.340mol)の溶液に加えた。
【0205】
2.得られた混合物を80℃で20分間撹拌した。
3.過剰のトリエチルアミンを工程2からの撹拌混合物に加えて、溶媒乾燥組成物を生成した。
【0206】
【0207】
調製された溶媒乾燥組成物の特性は、以下の表42に詳述されている:
【0208】
【0209】
金属塩を変更すると、各溶媒乾燥組成物の粘度が変化することがわかる。次に、上記の溶媒乾燥組成物を以下のように湿潤吸収剤と反応させた。
1.表Xに概説されている各溶媒乾燥組成物の0.2mlを、20mlの湿潤吸収剤に加えた。
【0210】
2.得られた混合物をボルテックスミキサーで30秒間混合した後、遠心分離器で分離した。
3.溶媒乾燥組成物と混合した後の吸収剤に残った水のGC分析を行い、その結果を以下の表43に示した。
【0211】
【0212】
表43に示す結果から、各溶媒乾燥組成物の吸水能力は、金属塩を変更しても実質的に変化しないことがわかる。
本発明およびその実施形態を詳細に説明した。しかし、本発明の範囲は、本明細書に記載のプロセス、製造、物質の組成、化合物、手段、方法、および/またはステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。本発明の精神および/または本質的な特徴から逸脱することなく、開示された材料に対して種々の修正、置換、および変更を行うことができる。したがって、当業者は、本開示から、本明細書に記載の実施形態と実質的に同じ機能を発揮する、本発明と実質的に同じ結果を達成する、本発明のそのように関連する実施形態に従う後の修正、置換、および/または変更を利用できることを容易に理解するであろう。したがって、以下の特許請求の範囲は、本明細書に開示された組み合わせ、キット、化合物、手段、方法、および/またはステップに対する修正、置換、および変更をその範囲内に包含するものとする。
【国際調査報告】