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特表2022-528120計器アセンブリ内の流体の蒸気圧の決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】計器アセンブリ内の流体の蒸気圧の決定
(51)【国際特許分類】
   G01L 11/00 20060101AFI20220601BHJP
   G01F 1/84 20060101ALI20220601BHJP
   G01L 7/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G01L11/00 Z
G01F1/84
G01L7/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559031
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 US2019025533
(87)【国際公開番号】W WO2020204919
(87)【国際公開日】2020-10-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワインスタイン, ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】モレット, ディヴィッド マルティネス
【テーマコード(参考)】
2F035
2F055
【Fターム(参考)】
2F035JA02
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC60
2F055DD20
2F055EE40
2F055FF49
2F055GG49
(57)【要約】
流体の蒸気圧を決定するための振動式計器(5)を提供する。振動式計器(5)は、流体を有する計器アセンブリ(10)と、計器アセンブリ(10)に通信可能に結合した計器電子機器(20)とを含む。振動式計器(5)は、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧に基づいて、計器アセンブリ(10)内の流体の蒸気圧を決定するように構成される。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の蒸気圧を決定するための振動式計器(5)であって、
流体を有する計器アセンブリ(10)と、
前記計器アセンブリ(10)に通信可能に結合した計器電子機器(20)と
を備えており、
前記計器電子機器(20)は、
前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧に基づいて、前記計器アセンブリ(10)内の流体の蒸気圧を決定する
ように構成されている、振動式計器(5)。
【請求項2】
前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧に基づいて、前記計器アセンブリ(10)内の流体の蒸気圧を決定するように構成された前記計器電子機器(20)は、
流体の相変化が検出されるまで前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧を変化させ、
前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧を決定する
ように構成された計器電子機器(20)を備える、請求項1に記載の振動式計器(5)。
【請求項3】
前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧は、前記計器アセンブリ(10)内の流体の高さの変化と流体速度の変化とのうちの少なくとも一方に起因して変化する、請求項2に記載の振動式計器(5)。
【請求項4】
前記計器アセンブリ(10)は、振動し、振動からもたらされるセンサ信号を供給するように構成され、
前記計器電子機器(20)は、前記センサ信号に基づいて前記計器アセンブリ(10)内の蒸気を検出するようにさらに構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の振動式計器(5)。
【請求項5】
前記計器電子機器(20)は、前記計器アセンブリ(10)内の流体の相変化の検出に基づいて、前記計器アセンブリ(10)内の流体の蒸気圧を決定するようにさらに構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の振動式計器(5)。
【請求項6】
前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧は、前記流体の入口圧力と出口圧力とのうちの少なくとも一方に基づいて決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の振動式計器(5)。
【請求項7】
前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧は、前記計器アセンブリ(10)内の断面積の変化に基づいて前記計器アセンブリ(10)内の静圧の変化を計算することによって決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の振動式計器(5)。
【請求項8】
前記計器電子機器(20)は、前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧を変化させるために、ポンプ(510)と流量制御装置(540)とのうちの1つ以上と通信するようにさらに構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の振動式計器(5)。
【請求項9】
前記計器電子機器(20)は、前記計器アセンブリ(10)内の流体の静圧を決定するために、入口圧力センサ(520)と出口圧力センサ(530)とのうちの少なくとも一方と通信するようにさらに構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の振動式計器(5)。
【請求項10】
流体の蒸気圧を決定するための方法であって、
流体を計器アセンブリに供給するステップと、
前記計器アセンブリ内の流体の静圧に基づいて、前記計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記計器アセンブリ内の流体の静圧に基づいて、前記計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定するステップは、
流体の相変化が検出されるまで前記計器アセンブリ内の流体の静圧を変化させるステップと、
前記計器アセンブリ内の流体の静圧を決定するステップと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記計器アセンブリ内の流体の静圧は、前記計器アセンブリ内の流体の高さの変化と流体速度の変化とのうちの少なくとも一方によって変化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記計器アセンブリの一部分を振動させ、振動からもたらされるセンサ信号を供給するステップと、
前記センサ信号に基づいて前記計器アセンブリ内の蒸気を検出するステップと
をさらに含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記計器アセンブリ内の流体の相変化の検出に基づいて、前記計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定するステップをさらに含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記計器アセンブリ内の流体の静圧の決定は、前記流体の入口圧力と出口圧力とのうちの少なくとも一方に基づく、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記計器アセンブリ内の流体の静圧の決定は、前記計器アセンブリ内の断面積の変化に基づいて前記計器アセンブリ内の静圧の変化を計算することを含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記計器アセンブリ内の流体の静圧を変化させるために、計器電子機器を使用してポンプと流量制御装置とのうちの1つ以上と通信するステップ
をさらに含む、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記計器アセンブリ内の流体の静圧を決定するために、計器電子機器を使用して入口圧力センサと出口圧力センサとのうちの少なくとも一方と通信するステップ
をさらに含む、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下で説明される実施形態は、蒸気圧の決定に関し、より詳細には、計器アセンブリ内の流体の蒸気圧の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば振動式密度計およびコリオリ流量計などの振動式センサが、一般的に知られており、流量計の導管を通って流れる物質の質量流量および他の情報を測定するために使用される。例示的なコリオリ流量計が、いずれもJ.E.Smithらの米国特許第4,109,524号明細書、米国特許第4,491,025号明細書、および再発行特許第31,450号明細書に開示されている。これらの流量計は、直線的な構成または湾曲した構成の1つ以上の導管を有する。例えば、コリオリ質量流量計の各々の導管の構成は、単純な曲げ、ねじり、または結合型であってよい一連の固有振動モードを有する。各々の導管を、好ましいモードで振動するように駆動することができる。
【0003】
物質は、流量計の入口側の接続されたパイプラインから流量計に流入し、導管を通って導かれ、流量計の出口側を通って流量計を出る。振動系の固有振動モードは、部分的には、導管と導管内を流れる物質との合成質量によって定まる。
【0004】
流量計を通る流れが存在しない場合、導管へと加えられる駆動力により、導管に沿ったすべての点が同一の位相で振動し、あるいは流れがゼロであるときに測定される時間遅延である小さな「ゼロオフセット」で振動する。物質が流量計を通って流れ始めると、コリオリ力により、導管に沿った各点が異なる位相を有する。例えば、流量計の入口端における位相が、中央のドライバ位置における位相よりも遅れる一方で、出口における位相は、中央のドライバ位置における位相よりも進む。導管上のピックオフが、導管の運動を表す正弦波信号を生成する。ピックオフから出力された信号は、ピックオフ間の時間遅延を割り出すために処理される。2つ以上のピックオフの間の時間遅延は、導管を通って流れる物質の質量流量に比例する。
【0005】
ドライバに接続された計器電子機器が、ドライバを動作させるための駆動信号を生成し、ピックオフから受信される信号から物質の質量流量および他の特性を割り出す。ドライバは、多数の周知の構成のうちの1つを備えることができるが、磁石および対向する駆動コイルが、流量計の業界において大きな成功を収めている。所望の流通管の振幅および周波数で導管を振動させるために、駆動コイルに交流電流が流される。ピックオフを、ドライバの構成にきわめてよく似た磁石とコイルとからなる構成として設けることも、技術的に知られている。しかしながら、ドライバが運動を引き起こす電流を受け取る一方で、ピックオフは、ドライバがもたらす運動を使用して電圧を生じさせることができる。
【0006】
蒸気圧が、ガソリン、液体天然ガス、および液体石油ガスなどの揮発性流体の流れおよび貯蔵を取り扱う用途において、重要な特性である。蒸気圧は、取り扱い中に揮発性流体がどのように振る舞う可能性があるかについての指標をもたらし、気泡が形成され、圧力が高まる可能性が高い条件をさらに知らせる。したがって、揮発性流体の蒸気圧の測定は、安全性を高め、輸送容器およびインフラストラクチャへの損傷を防止する。例えば、流体の蒸気圧が高すぎる場合、ポンプおよび移送の作業時に、キャビテーションが発生する可能性がある。さらに、容器またはプロセスラインの蒸気圧が、温度変化に起因して安全レベルを超えて上昇する可能性がある。したがって、貯蔵および輸送の前に蒸気圧を知ることが、しばしば必要とされる。
【0007】
典型的には、蒸気圧は、サンプルを捕獲し、サンプルから値を決定するための試験用に実験室へと運ぶことによって決定される。これは、最終結果の取得の遅れ、実験室の維持コスト、ならびにサンプルの取り扱いに関連する安全性および法的証拠としての弱さゆえに、規制上の燃料品質基準の執行に関して困難な問題を引き起こす。したがって、プロセス条件下で継続的にリアルタイムなやり方で計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定することができるインラインの装置またはシステムについて、ニーズが存在する。これが、本実施形態によって提供され、技術的進歩が達成される。現場での測定は、定期的なサンプル採取の必要性をなくし、サンプル採取時と実験室でのアッセイ時との間で流体特性が変化する恐れを完全に排除するため、より信頼性が高い。さらに、不安全な状態を直ちに矯正できるため、リアルタイムの測定によって安全性が改善される。さらに、規制の執行を簡単な現場での検査を介して行うことができるため、費用が節約され、調査および執行の決定を、わずかな遅延またはプロセス停止で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,109,524号
【特許文献2】米国特許第4,491,025号
【特許文献3】再発行特許第31,450号
【発明の概要】
【0009】
流体の蒸気圧を決定するための振動式計器が提供される。一実施形態によれば、振動式計器は、流体を有する計器アセンブリと、計器アセンブリに通信可能に結合した計器電子機器とを備える。計器電子機器は、計器アセンブリ内の流体の静圧に基づいて、計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定するように構成される。
【0010】
流体の蒸気圧を決定するための方法が提供される。一実施形態によれば、本方法は、計器アセンブリに流体を供給するステップと、計器アセンブリ内の流体の静圧に基づいて、計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定するステップとを含む。
[態様]
一態様によれば、流体の蒸気圧を決定するための振動式計器(5)が、流体を有する計器アセンブリ(10)と、計器アセンブリ(10)に通信可能に結合した計器電子機器(20)とを備え、計器電子機器(20)は、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧に基づいて、計器アセンブリ(10)内の流体の蒸気圧を決定するように構成される。
【0011】
好ましくは、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧に基づいて、計器アセンブリ(10)内の流体の蒸気圧を決定するように構成された計器電子機器(20)は、流体の相変化が検出されるまで計器アセンブリ(10)内の流体の静圧を変化させ、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧を決定するように構成された計器電子機器(20)を備える。
【0012】
好ましくは、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧は、計器アセンブリ(10)内の流体の高さの変化と流体速度の変化とのうちの少なくとも一方に起因して変化する。
【0013】
好ましくは、計器アセンブリ(10)は、振動し、振動からもたらされるセンサ信号を供給するように構成され、計器電子機器(20)は、センサ信号に基づいて計器アセンブリ(10)内の蒸気を検出するようにさらに構成される。
【0014】
好ましくは、計器電子機器(20)は、計器アセンブリ(10)内の流体の相変化の検出に基づいて、計器アセンブリ(10)内の流体の蒸気圧を決定するようにさらに構成される。
【0015】
好ましくは、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧は、流体の入口圧力と出口圧力とのうちの少なくとも一方に基づいて決定される。
【0016】
好ましくは、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧は、計器アセンブリ(10)内の断面積の変化に基づいて計器アセンブリ(10)内の静圧の変化を計算することによって決定される。
【0017】
好ましくは、計器電子機器(20)は、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧を変化させるために、ポンプ(510)と流量制御装置(540)とのうちの1つ以上と通信するようにさらに構成される。
【0018】
好ましくは、計器電子機器(20)は、計器アセンブリ(10)内の流体の静圧を決定するために、入口圧力センサ(520)および出口圧力センサ(530)のうちの少なくとも1つと通信するようにさらに構成される。
【0019】
一態様によれば、流体の蒸気圧を決定するための方法が、流体を計器アセンブリに供給するステップと、計器アセンブリ内の流体の静圧に基づいて、計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定するステップとを含む。
【0020】
好ましくは、計器アセンブリ内の流体の静圧に基づいて、計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定するステップは、流体の相変化が検出されるまで計器アセンブリ内の流体の静圧を変化させるステップと、計器アセンブリ内の流体の静圧を決定するステップとを含む。
【0021】
好ましくは、計器アセンブリ内の流体の静圧は、計器アセンブリ内の流体の高さの変化と流体速度の変化とのうちの少なくとも一方によって変化する。
【0022】
好ましくは、本方法は、計器アセンブリの一部分を振動させ、振動からもたらされるセンサ信号をもたらすステップと、センサ信号に基づいて計器アセンブリ内の蒸気を検出するステップとをさらに含む。
【0023】
好ましくは、本方法は、計器アセンブリ内の流体の相変化の検出に基づいて、計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定するステップをさらに含む。
【0024】
好ましくは、計器アセンブリ内の流体の静圧は、流体の入口圧力と出口圧力とのうちの少なくとも一方に基づく。
【0025】
好ましくは、計器アセンブリ内の流体の静圧の決定は、計器アセンブリ内の断面積の変化に基づいて計器アセンブリ内の静圧の変化を計算することを含む。
【0026】
好ましくは、本方法は、計器アセンブリ内の流体の静圧を変化させるために、計器電子機器を使用してポンプと流量制御装置とのうちの1つ以上と通信するステップをさらに含む。
【0027】
好ましくは、本方法は、計器アセンブリ内の流体の静圧を決定するために、計器電子機器を使用して入口圧力センサと出口圧力センサとのうちの少なくとも一方と通信するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
同じ参照番号は、すべての図において同じ要素を表している。図面が必ずしも比例尺ではないことを、理解すべきである。
図1】振動式計器5を示す図である。
図2】振動式計器5の計器電子機器20のブロック図である。
図3】蒸気圧計器係数を使用して蒸気圧を決定するために使用することができる、駆動ゲインと気液比との間の関係を示すグラフ300である。
図4】振動式計器内の流体の静圧をどのように使用して蒸気圧を決定することができるのかを説明するグラフ400である。
図5】流体の蒸気圧を決定するためのシステム500を示す図である。
図6】流体の蒸気圧を決定する方法600を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1図6および以下の説明に、計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定する実施形態の最良の態様を作成および使用する方法を当業者に教示するための具体的な例が示される。本発明の原理を教示する目的において、いくつかの従来からの態様は、簡略化され、あるいは省略されている。当業者であれば、本明細書の範囲に含まれるこれらの例からの変形を、理解できるであろう。当業者であれば、以下で説明される特徴をさまざまなやり方で組み合わせて、計器アセンブリ内の流体の蒸気圧を決定する多数の変種を形成できることを、理解できるであろう。結果として、以下で説明される実施形態は、以下で説明される具体的な例に限定されるものではなく、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定される。
【0030】
図1が、振動式計器5を示している。図1に示されるように、振動式計器5は、計器アセンブリ10および計器電子機器20を備える。計器アセンブリ10は、プロセス物質の質量流量および密度に応答する。計器電子機器20は、経路26による密度、質量流量、および温度情報、ならびに/あるいは他の情報をもたらすために、リード線100によって計器アセンブリ10に接続される。
【0031】
計器アセンブリ10は、1対のマニホールド150および150’と、フランジ首部110および110’を有するフランジ103および103’と、1対の平行な導管130および130’と、ドライバ180と、抵抗式温度検出器(RTD)190と、1対のピックオフセンサ170lおよび170rとを含む。導管130および130’は、導管取り付けブロック120および120’においてお互いに向かって収束する2つの本質的にまっすぐな入口レグ131、131’および出口レグ134、134’を有する。導管130、130’は、それらの長さに沿った2つの対称な位置において曲がり、それらの長さの全体にわたって本質的に平行である。補強バー140および140’が、各々の導管130、130’の振動の中心軸WおよびW’を定めるように機能する。導管130、130’のレグ131、131’および134、134’は、導管取り付けブロック120および120’に堅固に取り付けられ、次いでこれらのブロックは、マニホールド150および150’に堅固に取り付けられる。これは、計器アセンブリ10を通る連続的な閉じた物質の経路をもたらす。
【0032】
穴102および102’を有しているフランジ103および103’が、測定対象のプロセス物質を運ぶプロセス配管(図示せず)へと入口端104および出口端104’を介して接続されると、物質は、フランジ103のオリフィス101を通って計器の入口端104に進入し、マニホールド150を通り、表面121を有している導管取り付けブロック120へと導かれる。マニホールド150において、物質は分割され、導管130、130’を通って送られる。導管130、130’を出ると、プロセス物質は、表面121’を有する取り付けブロック120’およびマニホールド150’において再び合流して単一の流れとなり、その後に穴102’を有するフランジ103’によってプロセス配管(図示せず)へと接続された出口端104’へと送られる。
【0033】
導管130、130’は、それぞれの曲げ軸W-WおよびW’-W’の周りの質量分布、慣性モーメント、およびヤング率が実質的に同じであるように選択され、導管取り付けブロック120、120’に適切に取り付けられる。これらの曲げ軸は、補強バー140、140’を通過する。導管のヤング率が温度とともに変化し、この変化が流量および密度の計算に影響を及ぼすため、RTD190が導管130’に取り付けられ、導管130’の温度を継続的に測定する。導管130’の温度、したがってRTD190を通過する所与の電流においてRTD190の両端に現れる電圧は、導管130’を通過する物質の温度によって支配される。RTD190の両端に現れる温度依存性の電圧は、導管の温度の変化に起因する導管130、130’の弾性率の変化を補償するために、計器電子機器20によって周知の方法で使用される。RTD190は、リード線195によって計器電子機器20へと接続される。
【0034】
両方の導管130、130が、ドライバ180によって、それぞれの曲げ軸WおよびW’を中心にして反対の方向に、いわゆる流量計の第1の逆位相曲げモードで駆動される。このドライバ180は、導管130’に取り付けられた磁石、および導管130に取り付けられ、両方の導管130、130’を振動させるために交流が通される対向するコイルなど、多数の周知の構成のうちの任意の1つを備えることができる。適切な駆動信号が、計器電子機器20によって、リード線185を介して、ドライバ180に印加される。
【0035】
計器電子機器20は、リード線195上のRTD温度信号と、左右のセンサ信号165l、165rをそれぞれ運ぶリード線100に現れる左右のセンサ信号とを受信する。計器電子機器20は、ドライバ180へのリード線185に現れる駆動信号を生成し、導管130、130’を振動させる。計器電子機器20は、左右のセンサ信号およびRTD信号を処理して、計器アセンブリ10を通過する物質の質量流量および密度を計算する。この情報は、他の情報とともに、信号として経路26を介して計器電子機器20によって適用される。
【0036】
質量流量の測定値m’を、式
【数1】

に従って生成することができる。
【0037】
Δt項は、時間遅延が振動式計器5を通る質量流量に関連するコリオリ効果に起因する場合などに、ピックオフセンサ信号間に存在する時間遅延を含む運転により導出された(すなわち、測定された)時間遅延値を含む。測定されたΔt項は、最終的に、振動式計器5を通って流れるときの流動物質の質量流量を決定する。Δt0項は、ゼロ流量較正定数における時間遅延を含む。Δt0項は、典型的には、工場で決定され、振動式計器5にプログラムされる。ゼロ流量における時間遅延のΔt0項は、流れの条件が変化している場合でも変化しない。流量較正係数FCFは、振動式計器5の剛性に比例する。
【0038】
[振動式計器における流体の圧力]
定常条件下での非圧縮性の液体を仮定すると、入口において制御容積(例えば、管)に進入する質量の流量(m’1)は、出口において出て行く流量(m’3)に等しい。入口における質量流量(m’1)が出口における質量流量(m’3)に等しくなければならないというこの原理は、以下の式[2]によって示される。入口から出口へと移動するとき、質量流量は、管に沿った各点において保存される。しかしながら、入口と出口との間の途中において、流れの面積の減少が存在し得る。流れの面積のこの減少は、同じ質量流量を維持し、質量保存の原理に従うために、流体の速度の増加(vup)を必要とする。
【0039】
【数2】

ここで、
m’は流体の質量流量であり、
vは、平均流速であり、
ρは、流体の密度であり、
Aは総断面積であり、
下付き文字1は入口を表し、
下付き文字3は出口を表し、
下付き文字2は、入口と出口との間の中間を表す。
【0040】
さらに、流れの系における全圧は、動圧および静圧の両方の合計に等しい。
【数3】
【0041】
動圧Pdynamicを、
【数4】

と定義することができる。
ここで、項ρおよびvは、式[2]に関して上記で定義されている。
【0042】
定常、非圧縮性、非粘性、かつ非回転の流れであると仮定すると、ベルヌーイ方程式によって
【数5】

となり、
ここで、Pは静圧を指し、ρgz項は、高さの変化に起因する静水頭を補償する。より具体的には、gは重力定数であり、zは高さである。圧力低下の粘性部分を、ベルヌーイ方程式において別個の損失項で扱うことができる。
【0043】
【数6】

ここで、
fは、摩擦係数であり、
Lは、管の長さであり、
Dは、管の直径である。
【0044】
以下の式[7]が、管を通っての移動に関連する摩擦損失を補償するベルヌーイ方程式の一変形である。流体が管を通って移動するとき、流体はエネルギーを失い、圧力が管の所与の長さにわたって低下する。この圧力の損失は、流体からのエネルギーが摩擦損失によって消費されているため、回復不可能である。したがって、この損失を以下の式で考慮することができる。
【数7】
【0045】
この関係を、式[2]に関して上述した例示的なパイプに適用することができる。流体が入口から入口と出口との間の中間へと移動するとき、質量流量を維持するために速度が変化する。したがって、式[7]に示される関係の維持において、動圧ρv/2が上昇し、静圧が低下する。流体が入口と出口との間の中間から出口へと移動するとき、静圧は、同じ原理によって回復する。すなわち、入口と出口との間の中間から出口へと移動するとき、流れの面積が大きくなり、したがって流体の速度が低下し、動圧が低下する一方で、初期の静圧の一部が回復される。しかしながら、出口における静圧は、回復不可能な粘性損失のために低くなる。
【0046】
これにより、入口および出口における静圧は、流体の蒸気圧よりも大きいが、入口と出口との間における静圧が、流体の蒸気圧よりも小さくなる可能性がある。結果として、入口および出口における静圧が、どちらも流体の蒸気圧よりも大きいにもかかわらず、依然として管内でフラッシングまたは脱気が発生する可能性がある。さらに、コリオリ計器などの振動式計器は、振動式計器の1つ以上の導管の直径とは異なる直径を有するパイプラインに挿入される可能性がある。結果として、振動式計器において脱気が検出されるとき、パイプラインにおいて測定される圧力は、振動式計器内の流体の蒸気圧にならない可能性がある。
【0047】
[計器電子機器-駆動ゲイン]
図2が、振動式計器5の計器電子機器20のブロック図である。動作において、振動式計器5は、質量流量、体積流量、個々の流れ成分の質量流量および体積流量、ならびに例えば個々の流れ成分の体積流量および質量流量の両方を含む総流量の測定値または平均値のうちの1つ以上など、出力可能なさまざまな測定値をもたらす。
【0048】
振動式計器5は、振動応答を生じる。振動応答は、計器電子機器20によって受信および処理されて、1つ以上の流体測定値を生成する。値を監視し、記録し、保存し、合計し、さらには/あるいは出力することができる。計器電子機器20は、インターフェース201と、インターフェース201と通信する処理システム203と、処理システム203と通信するストレージシステム204とを含む。これらの構成要素が、別個のブロックとして示されているが、計器電子機器20を、統合された構成要素および/または個別の構成要素のさまざまな組み合わせから構成できることを、理解すべきである。
【0049】
インターフェース201は、振動式計器5の計器アセンブリ10と連絡するように構成される。インターフェース201を、例えば、リード線100(図1を参照)に結合し、ドライバ180、ピックオフセンサ170lおよび170r、ならびにRTD190と信号を交換するように構成することができる。さらに、インターフェース201を、通信経路26を介して外部の装置などと通信するように構成することができる。
【0050】
処理システム203は、任意の様相の処理システムを備えることができる。処理システム203は、振動式計器5を動作させるために、格納されたルーチンを取り出して実行するように構成される。ストレージシステム204は、流量計ルーチン205、弁制御ルーチン211、駆動ゲインルーチン213、および蒸気圧ルーチン215を含むルーチンを格納することができる。ストレージシステム204は、測定値、受信値、作業値、および他の情報を格納することができる。いくつかの実施形態において、ストレージシステムは、質量流量(m)221、密度(ρ)225、密度しきい値226、粘度(μ)223、温度(T)224、圧力209、駆動ゲイン306、駆動ゲインしきい値302、ガス同伴しきい値244、ガス同伴率248、および技術的に知られた任意の他の変数を格納する。ルーチン205、211、213、215は、上述の任意の信号および技術的に知られた他の変数を含むことができる。他の測定/処理ルーチンも考えられ、本明細書および特許請求の範囲の技術的範囲に含まれる。
【0051】
理解できるとおり、より多数またはより少数の値が、ストレージシステム204に格納されてよい。例えば、粘度223を用いずに蒸気圧を求めてもよい。例えば、圧力低下、または流量の関数としての摩擦に関する関数に基づいて、粘度を推定する。しかしながら、粘度223を使用してレイノルズ数を計算することができ、次いでレイノズル数を使用して摩擦係数を決定することができる。レイノルズ数および摩擦係数を使用して、図1を参照して上述した導管130、130’などの導管内の粘性圧力低下を決定することができる。理解できるとおり、必ずしもレイノルズ数を使用する必要はない。
【0052】
流量計ルーチン205は、流体の定量化および流量の測定値を生成および格納することができる。これらの値は、実質的に瞬時の測定値を含むことができ、あるいは合計値または累積値を含むことができる。例えば、流量計ルーチン205は、質量流量測定値を生成し、例えばストレージシステム204の質量流量221のストレージに格納することができる。例えば、流量計ルーチン205は、密度225の測定値を生成し、密度225のストレージに格納することができる。質量流量221および密度225の値は、前述のように、技術的に知られているとおりに、振動応答から決定される。質量流量および他の測定値は、実質的に瞬時の値を含むことができ、サンプルを含むことができ、或る時間区間にわたる平均値を含むことができ、あるいは或る時間区間にわたる累積値を含むことができる。時間区間を、例えば液体のみの流体状態または液体と同伴ガスとを含む流体状態などの特定の流体状態が検出されている時間ブロックに対応するように選択することができる。さらに、他の質量流量および体積流量ならびに関連する定量化も考えられ、本明細書および特許請求の範囲の技術的範囲に含まれる。
【0053】
駆動ゲインしきい値302を使用して、流れの期間と、流れのない期間と、単相/二相の境界(流体の相の変化が生じる)の期間と、ガス同伴/混合相の流れの期間とを区別することができる。同様に、密度の読み取り値225に適用される密度しきい値226を、駆動ゲイン306とは別個に、または駆動ゲイン306と一緒に使用して、ガス同伴/混合相の流れを区別することも可能である。駆動ゲイン306を、例えば、これらに限られるわけではないが液相および気相などの異なる密度の流体の存在に対する振動式計器計5の導管の振動の感度の測定基準として利用することができる。
【0054】
本明細書において使用されるとき、駆動ゲインという用語は、流通管を指定された振幅へと駆動するために必要な電力量の指標を指すが、任意の適切な定義を使用することが可能である。例えば、駆動ゲインという用語は、いくつかの実施形態において、駆動電流、ピックオフ電圧、あるいは特定の振幅で導管130、130’を駆動するために必要な電力量を表す任意の測定または導出による信号を指すことができる。駆動ゲインを、例えば、雑音レベル、信号の標準偏差、減衰関連測定値、および混合相流を検出するための技術的に知られた任意の他の手段などの駆動ゲインの特性を利用することによって多相流を検出するために使用することができる。これらの測定基準を、混合相流を検出するためにピックオフセンサ170lおよび170rの間で比較することができる。
【0055】
[流体の相変化の検出]
図3が、蒸気圧計器係数を使用して蒸気圧を決定するために使用することができる駆動ゲインと気液比との間の関係を示すグラフ300を示している。図3に示されるように、グラフ300は、平均ボイド率の軸310および駆動ゲインの軸320を含む。平均ボイド率の軸310および駆動ゲインの軸320は、パーセントで刻まれているが、任意の適切な単位および/または比を使用することが可能である。
【0056】
グラフ300は、さまざまな流量における駆動ゲインと気液比との間の関係であるプロット330を含む。図示のように、気液比は、プロット330の平均ボイド率の値であるが、ガス体積分率(「GVF」)またはガス同伴有率などの任意の適切な気液比を使用することができ、体積、断面積、などに基づくことができる。理解できるとおり、プロット330は、異なる流量に関連しているにもかかわらず同様である。また、40%の駆動ゲインに対応する基準平均ボイド率330aであってよい約0.20パーセントの平均ボイド率でプロット330と交差する駆動ゲインしきい値の線340も示されている。また、約10%である真の蒸気圧駆動ゲイン332も示されている。真の蒸気圧駆動ゲイン332は、流体相変化が生じる静圧を有し、気液比がゼロである計器アセンブリ内の流体に対応する。
【0057】
見て取ることができるとおり、プロット330は、0.00パーセントから約0.60パーセントまでの平均ボイド率の範囲にわたって、約10パーセントの駆動ゲインから約100パーセントの駆動ゲインまで変化する。理解できるとおり、平均ボイド率の比較的小さな変化が、駆動ゲインの著しい変化をもたらす。この比較的小さな変化は、蒸気形成の開始を駆動ゲインで正確に検出できることを保証することができる。
【0058】
40%の駆動ゲインが0.20パーセントの平均ボイド率に対応するものとして示されているが、この対応関係はプロセスに固有であり得る。例えば、40%の駆動ゲインが、他のプロセス流体および条件においては、他の平均ボイド率に対応し得る。異なる流体は異なる蒸気圧を有する可能性があり、したがって流体における蒸気形成の開始が、異なる流量で起こり得る。すなわち、蒸気圧が比較的低い流体は、より高い流量で気化すると考えられ、蒸気圧が比較的高い流体は、より低い流量で気化し得る。
【0059】
やはり理解できるとおり、駆動ゲインしきい値線340は、別の/他の駆動ゲインに位置し得る。しかしながら、同伴/混合相流の誤検出を無くしつつ、蒸気形成の開始が正確に検出されることを補償するために、40%の駆動ゲインを有することが有益であり得る。
【0060】
また、プロット330は駆動ゲインを使用するが、測定された密度などの他の信号を使用してもよい。測定された密度は、流体中のボイドの存在に起因して増加または減少し得る。例えば、測定された密度は、直感に反し、音速効果ゆえに、比較的高い周波数の振動式計器においてボイドに起因して増加し得る。比較的低い周波数の計器においては、ボイドの密度が流体よりも小さいがゆえに、測定された密度が減少する可能性がある。これらの信号および他の信号を、単独で、または組み合わせて使用して、計器アセンブリ内の蒸気の存在を検出することができる。
【0061】
上述したように、0.20パーセントという平均ボイド率の値は、駆動ゲインしきい値線340が駆動ゲインの軸320と交わる場所であってよい40パーセントの駆動ゲイン値に対応する基準平均ボイド率330aであってよい。したがって、上述の計器アセンブリ10などの計器アセンブリ内の流体について測定された駆動ゲインが40パーセントであるとき、流体の平均ボイド率は約0.20パーセントであり得る。約0.20パーセントのボイド率は、流体中に存在するガスによる流体の圧力に対応し得る。例えば、約0.20パーセントのボイド率は、例えば静圧値に対応し得る。
【0062】
駆動ゲイン、または密度などの他の信号と、基準気液比であってよい基準平均ボイド率330aとの間の予め決定された関係により、蒸気圧値を、蒸気圧計器係数に関連付けることができる。例えば、液相変化が検出されるまで、静圧を増加または減少させながら計器アセンブリを振動させることができる。次いで、図4を参照して以下でさらに詳しく説明されるように、静圧から蒸気圧値を決定することができる。決定された蒸気圧値は、例えば、駆動ゲインしきい値線340における静圧に対応することができる。この決定された蒸気圧値を、蒸気圧計器係数によって、相変化が発生し、あるいは単相/二相の境界に遭遇する場所である真の蒸気圧駆動ゲイン332に対応するように調整することができる。したがって、流体中のガスの存在は、流体の真の蒸気圧とは異なる静圧で検出され得るが、それでもなお真の蒸気圧値を決定することができる。
【0063】
基準平均ボイド率330aを一例として使用すると、駆動ゲインが40パーセントに達することによって計器アセンブリ内の流体が0.20パーセントの平均ボイド率を有することを示すまで、計器アセンブリ内の静圧が下がり得る。上述の処理システム203などの処理システムは、例えば、40パーセントの駆動ゲインに対応する静圧よりも比例的に高い静圧で流体が気化し始めたと判定することができる。例えば、真の蒸気圧値は、約10%の駆動ゲインに関連付けられてもよい。理解できるとおり、静圧の計算に関する不確実性(例えば、圧力センサからの誤差、流量測定誤差、など)のために、真の蒸気圧は、40%の駆動ゲインに関連する計算された静圧よりも比例的に低くなり得る。それにもかかわらず、真の蒸気圧は、流体の相変化が生じるが、気液比はゼロである流体の静圧に対応する。
【0064】
したがって、測定された駆動ゲインを使用してガスを検出することができるが、依然として高精度の真の蒸気圧値をもたらすことができる。より具体的には、脱気が最初に生じ、少数の小さな気泡が存在する瞬間において、駆動ゲインは、検出のための駆動ゲインしきい値線340を超えて増加しないかもしれない。動圧を、例えば、駆動ゲインが駆動ゲインしきい値線340を通過するように静圧が低下するまで流量を増加させ続けるポンプによって増加させることができる。用途に応じて、この計算された静圧(例えば、補正されていない蒸気圧)を、流体相変化の検出の遅延を補償するために、例えば1psiの蒸気圧計器係数によって補正する(例えば、調整し、すなわち減少または増加させる)ことができる。すなわち、蒸気圧計器係数を決定し、駆動ゲインの関数として未補正の蒸気圧測定値に適用して、ガスが検出される駆動ゲインと真の蒸気圧との差を補償し、微量のガスを検出することができる。
【0065】
例として図3を参照すると、40パーセントの測定された駆動ゲインは、例えば真の蒸気圧に関連する駆動ゲインに対応する静圧よりも1psi小さい計器アセンブリ内の流体の静圧に対応し得る。したがって、振動式計器5、または計器電子機器20、あるいは任意の適切な電子機器は、蒸気圧計器係数が1psiであると決定し、この値を40パーセントの駆動ゲインに関連する静圧に加算することができる。結果として、振動式計器5は、流体の相変化を正確に検出することができ、したがって駆動ゲインを使用して流体の蒸気圧も正確に決定することができる。
【0066】
しかしながら、駆動ゲインを用いない他の相変化検出手段を採用してもよい。例えば、相変化を、音響測定、X線ベースの測定、光学測定、などによって検出することができる。また、上記の実施態様の組み合わせも考えられる。例えば、ループにて垂直に延びるバイパスラインにおいて、垂直に分布した音響および/または光学測定が、ガスが最初に脱気する場所を決定する。次いで、この高さが、以下で説明されるように、振動式計器5内の流体の蒸気圧を計算するために必要な入力を提供する。
【0067】
[振動式計器における圧力低下]
図4が、振動式計器内の流体の静圧をどのように使用して蒸気圧を決定することができるのかを説明するグラフ400を示している。図4に示されるとおり、グラフ400は、位置の軸410および静圧の軸420を含む。位置の軸410は、長さの特定の単位では示されていないが、インチ単位であってよく、しかしながら任意の適切な単位を使用することができる。静圧の軸420は、ポンド/平方インチ(psi)の単位であるが、任意の適切な単位を使用することができる。位置の軸410は、振動式計器の入口(「IN」)から出口(「OUT」)までの範囲である。
【0068】
したがって、INからOUTまでの位置は、例えば図1に示した計器アセンブリ10内の流体に対応することができる。この例において、INからおおむねAまでの領域が、計器アセンブリ10のうちのフランジ103と導管取り付けブロック120との間の部分に対応することができる。おおむねAからおおむねGまでの領域が、取り付けブロック120、120’間の導管130、130’に対応することができる。GからOUTまでの領域が、計器アセンブリ10のうちの取り付けブロック120’からフランジ103’までの部分に対応することができる。したがって、計器アセンブリ10内(例えば、INからOUTまでの範囲の位置)の流体は、例えば、計器アセンブリ10が挿入されるパイプライン内の流体を含まなくてよい。計器アセンブリ10内の流体は、導管130、130’内の流体であってよい。
【0069】
さらに、グラフ400は、ゼロ動圧のプロット430および動圧変化のプロット440を含む。ゼロ動圧のプロット430は、動圧の変化を示さず、圧力は振動式計器の入口から出口まで直線的に減少すると仮定される。動圧変化のプロット440は、パイプラインに挿入された振動式計器の実際の圧力を表すことができ、振動式計器の導管の直径は、パイプラインの直径よりも小さい。例示的な振動式計器5が図1に示されているが、任意の適切な振動式計器が使用されてよい。したがって、上述の計器アセンブリ10などの計器アセンブリ内の流体は、動圧の増加に起因して低下した静圧を有する可能性がある。また、振動式計器内の流体の蒸気圧を表す蒸気圧線450も示されている。
【0070】
動圧変化のプロット440は、静圧降下部440aと、粘性損失部440bと、静圧上昇部440cとを含む。さらに、動圧変化のプロット440は、最小静圧440dも含む。静圧降下部440aは、振動式計器のこの部分の動圧の対応する増加を引き起こす流体速度の増加に起因し得る。粘性損失部440bは、振動式計器における導管の直径一定の部分に対応することができる。したがって、粘性損失部440bは、流体速度の増加を反映するものではない可能性があり、したがって動圧の増加を反映するものではない可能性がある。静圧上昇部440cは、流体速度の低下に起因する可能性があり、したがって静圧降下部440aにおける静圧降下を回復することができる。静圧降下部440aおよび静圧上昇部440cは、計器アセンブリにおける静圧変化であり得る。
【0071】
動圧変化のプロット440のうち、最小静圧440dを含む蒸気圧線450の下方に位置する部分は、上述の計器アセンブリ10などの計器アセンブリ内の流体において流体相変化が生じる(例えば、おおむね位置Eから位置Gの少し後ろまでの)位置に対応することができる。図4に見られるように、最小静圧440dは、蒸気圧線450より下方にある。これは、動圧変化のプロット440が、計器アセンブリ内の流体の静圧を増加させることによって上方にシフトする可能性を示している。しかしながら、最小静圧440dが蒸気圧線450上に位置するまで動圧変化のプロット440を上方にシフトさせるように静圧を約5psi増加させる場合、流体相変化を検出することができる。静圧が増加するため、計器アセンブリ内の流体中のガスまたは蒸気が液体になる可能性がある。反対に、動圧変化のプロット440が蒸気圧線450より上方にあり、最小静圧440dが蒸気圧線上に位置するまで計器アセンブリ内の流体の静圧が低下する場合、流体相変化は、流体におけるガスまたは蒸気の形成であり得る。
【0072】
図4に見られるように、粘性損失部440bは、位置Aにおける約68psiの静圧から位置Gにおける約55psiの静圧まで低下する。理解できるとおり、位置Gにおける約55psiの静圧は、約58psiである蒸気圧線450よりも小さい。結果として、たとえ入口および出口における静圧が蒸気圧線450よりも大きくても、振動式計器内の流体は依然としてフラッシングまたは脱気となり得る。
【0073】
したがって、入口および出口における静圧は、流体の蒸気圧に直接対応しない。換言すると、流体の蒸気圧を、パイプライン内または計器アセンブリの外部の流体の静圧から直接決定することができない可能性がある。計器アセンブリ10、より具体的には導管130、130’内の静圧は、例えば、入口および出口における圧力測定値を使用し、振動式計器5の寸法(例えば、導管130、130’の直径および長さ)を入力することによって、正確に決定することが可能である。しかしながら、蒸気圧を正確に決定するために、振動式計器5内の流体の相変化を生じさせる必要があるかもしれず、これを振動式計器5内の流体の静圧を変化させることによって引き起こすことができる。
【0074】
[流体の静圧を変化させる]
図5が、流体の蒸気圧を決定するためのシステム500を示している。図5に示されるように、システム500は、パイプライン501に結合したバイパス入口およびバイパス出口を含むバイパスである。システム500は、コリオリ計器として示されている振動式計器5の出口およびバイパス出口に連通したポンプ510を含む。入口圧力センサ520が、振動式計器5の入口およびバイパス入口に連通している。出口圧力センサ530が、振動式計器5の出口とポンプ510との間に配置され、振動式計器5の出口における流体の静圧を測定するように構成されている。弁として示されている流量制御装置540が、バイパス入口と入口圧力センサ520との間に配置される。
【0075】
ポンプ510は、例えば、振動式計器5内の流体の速度を増加させることができる任意の適切なポンプであってよい。ポンプ510は、例えば、可変周波数駆動部を含むことができる。可変周波数駆動部は、ポンプ510によってシステム500内の流体の流体速度を制御することを可能にすることができる。例えば、可変周波数駆動部は、振動式計器5を通る流体の流体速度を高めることができるが、流体速度は、任意の適切なポンプによって高められてよい。流体速度の増加により、ポンプ510は、流体速度を高めることによって振動式計器5内の流体の動圧を増加させることができる。
【0076】
したがって、振動式計器5内の流体の静圧が低下し得る。例示として、図4を参照すると、ポンプ510は、動圧変化のプロット440を下方にシフトさせることができる。したがって、図4には示されていないが、動圧変化のプロット440が蒸気圧線450よりも上方にある場合、ポンプ510は、動圧変化のプロット440を下方にシフトさせることによってフラッシングまたは脱気を生じさせることができる。同様に、動圧変化のプロット440を蒸気圧線450まで、または蒸気圧線450の上方までシフトさせることによって、流体中のガスまたは蒸気は液体になり得る。
【0077】
入口圧力センサ520および出口圧力センサ530は、流体の任意の圧力を測定するように構成された任意の適切な圧力センサであってよい。例えば、入口圧力センサ520および出口圧力センサ530は、システム500内の流体の静圧を測定することができる。これに加え、あるいはこれに代えて、入口圧力センサ520および出口圧力センサ530は、システム500内の流体の全圧を測定してもよい。一例においては、流体の動圧を、上記の式[3]に従ってシステム500内の流体の全圧と静圧との間の差をとることによって決定してもよい。例えば、入口圧力センサ520は、振動式計器5の入口付近または入口の流体の全圧および静圧を測定することができる。振動式計器5の入口圧力センサ520および/または計器電子機器20は、振動式計器5の入口における動圧を決定することができる。
【0078】
流量制御装置540は、流量制御装置540の位置が或る程度閉じた位置から全開位置に移行するとき、システム500内の流体の流体速度を増加させることができる。例えば、振動式計器5の入口におけるシステム500の流れの制限を減少させることによって、流体の速度は、上記の式[2]に従って増加し得る。これは、フラッシングまたは脱気を誘発するように、動圧変化のプロット440を下方にシフトさせることができる。反対に、流量制御装置540は、システム500内の流体の流体速度を低下させることにより、動圧変化のプロット440を上方にシフトさせて、ガスまたは蒸気を凝縮させることができる。
【0079】
流量制御装置540が開かれると、流体速度は増加するが、振動式計器5の入口における静圧も増加し、逆もまた同様である。流量制御装置540とポンプ510との組み合わせは、流量制御装置540を或る程度閉じ(例えば、流れを制限し、流量制御装置540の下流の圧力を低下させ)、ポンプ速度を増加させる(例えば、流量を増やす)ことによって好ましいプロセス条件をもたらすことで、所望のとおりの低い静圧および高い速度を得ることができる。
【0080】
振動式計器5内、より具体的には振動式計器5内の計器アセンブリ10内の流体の静圧を、上述したポンプ510または流量制御装置540、あるいは両者の組み合わせを使用することによって変化させることができるが、静圧を変化させる他の手段を採用してもよい。例えば、振動式計器5の高さzを変化させてもよい。振動式計器5内の流体の静圧を低減するために、高さzを大きくすることができる。振動式計器5内の流体の静圧を高めるために、高さzを低くすることができる。振動式計器5の高さzを、振動式計器5とパイプライン501との間の電動リフト、ならびに振動式計器5、例えば流量制御装置540とポンプ510との間のベローズなど、任意の適切な手段によって変化させることができる。他の手段を使用してもよく、さまざまな手段(例えば、ポンプ510、流量制御装置540、および/または電動リフト)の組み合わせを使用してもよい。
【0081】
例えば、バイパスを通る流量が充分である場合、ポンプを必ずしも使用する必要はない。流量制御装置540のみを使用することができる。流量制御装置540は、振動式計器5の下流など、他の場所に設置してもよい。あるいは、ポンプ510および/または電動リフトが使用される場合など、流量制御装置540を使用しなくてもよい。別の代替例においては、計器を、バイパスにではなく、主配管に設置してもよい。これに加え、あるいはこれに代えて、ただ1つの圧力センサを使用してもよい。例えば、出口圧力センサ530のみを使用することができる。入口および/または出口圧力センサ520、530は、別の位置に配置されてもよい。出口圧力センサ530およびその位置は、ひとたび計器アセンブリ10内の流体が蒸気圧になると、出口圧力センサ530の位置における静圧が流体速度に対して実質的に安定し得るがゆえに、有益であり得る。すなわち、流体速度のさらなる増加が、出口圧力センサ530によって測定される静圧の実質的な減少を引き起こさないと考えられる。
【0082】
[流体の蒸気圧の決定]
図6が、流体の蒸気圧を決定する方法600を示している。図6に示されるように、方法600は、ステップ610において、例えば図1を参照して上述した計器アセンブリ10などの計器アセンブリに流体を供給する。ステップ620において、方法600は、計器アセンブリ内の流体の静圧に基づいて流体の蒸気圧を決定する。
【0083】
ステップ610において、流体を、例えば図5に示したシステム500などのパイプライン上のブランチを介して計器アセンブリ10に供給することができる。図5に示されるように、ブランチは、流体をパイプライン501へと戻すループである。あるいは、流体を、非戻りのブランチを介して計器アセンブリ10に供給してもよい。例えば、図5に示されるパイプライン501からの分岐は、パイプライン501に戻るのではなく、リザーバまたはタンクへと注がれてもよい。流体は、蒸気またはガスを含んでも、含まなくてもよい。
【0084】
ステップ620は、例えば、流体の相変化が検出されるまで計器アセンブリ10内の流体の全圧または静圧を変化させることによって、流体の蒸気圧を決定することができる。例えば、蒸気がもはや検出されなくなるまで、流体の静圧を増加させることができる。反対に、蒸気が検出されるまで静圧を低下させてもよい。流体の相変化は、例えば、図3を参照して上述したように駆動ゲインまたは駆動信号の変化を検出するなど、センサ信号に基づくなどの任意の適切な手段によって検出可能である。
【0085】
駆動ゲインの変化が検出された場合など、流体の相変化が検出されたときに、振動式計器5、または振動式計器5に結合した電子機器は、計器アセンブリ10の入口および/または出口における圧力を決定することができる。例えば、図5を参照すると、入口圧力センサ520は、計器アセンブリ10の入口における流体の静圧を測定することができ、出口圧力センサ530は、計器アセンブリ10の出口における流体の静圧を測定することができる。したがって、入口の静圧および/または出口の静圧は、流体の相変化に関連し得る。
【0086】
入口の静圧および出口の静圧を、上記の式[7]に使用して、計器アセンブリ内の静圧を決定することができる。例えば、出口圧力がP1であってよく、P2が計器アセンブリ内の流体の圧力であってよい。高さに関する項ρgz1およびρgz2を、例えば導管の形状に起因する計器アセンブリ内の流体の高さの変化を補償するために使用することができる。例えば、上述の計器アセンブリ10の導管などの弓形の導管は、高さの変化を有し得る。動的速度の項ρv1 /2、ρv2 /2を、流体の密度および流量を測定し、導管ならびに導管の入口および出口に結合したパイプの寸法を知ることによって、同様に解くことができる。同様に、粘性圧力低下の項(-ρv/2)×(fL/D)も決定することができる。
【0087】
したがって、方法600は、蒸気の検出に基づいて計器アセンブリ10内の流体の蒸気圧を決定することができる。すなわち、静圧を、相変化が検出されるまで変化させることができ、次いで、関連の静圧を、例えば出口圧力に基づいて決定することができる。したがって、静圧は蒸気圧であり得る。理解できるとおり、計器アセンブリ内の圧力の変化は、計器アセンブリ内の断面積の変化に基づき得る。
【0088】
以上、振動式計器5、とくには計器電子機器20、および計器アセンブリ10内の流体の静圧に基づいて、計器アセンブリ10内の流体の蒸気圧を決定する方法600について説明した。静圧は、例えば計器アセンブリが挿入されたパイプライン内の流体の静圧ではなく、計器アセンブリ10内の流体の静圧であるため、決定された蒸気圧はより正確であり得る。結果として、振動式計器5および計器電子機器20によって提供される値がより正確であるため、振動式計器5および計器電子機器20の動作が改善される。蒸気圧測定の技術分野におけるより正確な測定は、流体プロセスの制御などの他の技術分野を改善することができる。
【0089】
以上の実施形態の詳細な説明は、本発明の発明者が本明細書の技術的範囲に含まれると考えるすべての実施形態を述べ尽くすものではない。実際、当業者であれば、上述の実施形態の特定の要素をさまざまに組み合わせ、あるいは取り除いて、さらなる実施形態を生み出すことが可能であり、そのようなさらなる実施形態が、本明細書の技術的範囲および教示に包含されることを、理解できるであろう。また、上述の実施形態を全体的または部分的に組み合わせて、本明細書の技術的範囲および教示の範囲内のさらなる実施形態を生成できることも、当業者にとって明らかであろう。
【0090】
このように、特定の実施形態を本明細書において例示の目的で説明したが、当業者であれば理解できるとおり、本明細書の技術的範囲の中で種々の均等な変更が可能である。本明細書において提示した教示は、上述されて添付の図面に示された実施形態だけでなく、流体の蒸気圧を決定するための他の方法、装置、電子機器、システム、などにも適用可能である。したがって、上述の実施形態の技術的範囲は、以下の特許請求の範囲から決定されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】