(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】多成分流体中の成分の濃度を決定するための蒸気圧の使用
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
G01F1/84
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559034
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019025542
(87)【国際公開番号】W WO2020204922
(87)【国際公開日】2020-10-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワインスタイン, ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】モレット, ディヴィッド マルティネス
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035JA02
(57)【要約】
多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用するためのシステム(700)が提供される。システム(700)は、多成分流体を検知するように構成されたトランスデューサ(720)に通信可能に結合された電子機器(710)を備える。電子機器(710)は、多成分流体の第1の成分の蒸気圧である第1の蒸気圧を決定することと、多成分流体の第2の成分の蒸気圧である第2の蒸気圧を決定することと、多成分流体の蒸気圧である多成分蒸気圧を決定することとを行うように構成されている。電子機器(710)はまた、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて、第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定するように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用するシステム(700)であって、
多成分流体を検知するように構成されたトランスデューサ(720)に通信可能に結合された電子機器(710)を備え、前記電子機器(710)は、
前記多成分流体の第1の成分の蒸気圧である第1の蒸気圧を決定することと、
前記多成分流体の第2の成分の蒸気圧である第2の蒸気圧を決定することと、
前記多成分流体の蒸気圧である多成分蒸気圧を決定することと、
前記多成分蒸気圧、前記第1の蒸気圧、および前記第2の蒸気圧に基づいて前記第1の成分および前記第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することとを行うように構成されている、システム(700)。
【請求項2】
前記多成分蒸気圧、前記第1の蒸気圧、および前記第2の蒸気圧に基づいて前記第1の成分および前記第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定するように構成された前記電子機器(710)は、以下の式、すなわち、
P
m = P
1
*x
1+P
2
*x
2
及び
x
1+x
2=1
を使用するように構成された電子機器(710)を含み、式中、
P
mは、前記多成分蒸気圧であり、二成分流体である前記多成分流体の各成分によって及ぼされる圧力の合計であり、
P
1
*、P
2
*は、それぞれ、前記第1の成分および前記第2の成分が純粋な流体である場合の前記第1の蒸気圧および前記第2の蒸気圧であり、
x
1、x
2はそれぞれ、前記二成分流体中の前記第1の成分および前記第2の成分のモル分率である、請求項1に記載のシステム(700)。
【請求項3】
前記多成分蒸気圧、前記第1の蒸気圧、および前記第2の蒸気圧に基づいて前記第1の成分および前記第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定するように構成された電子機器(710)は、以下の式、すなわち、
P
m = P
1
*x
1+P
2
*x
2+P
3
*x
3
x
1+x
2+x
3=1
MW
mix = x
1MW
1 + x
2MW
2+x
3MW
3
及び
1/ρ
T= w
1/ρ
1 + w
2/ρ
2 + w
3/ρ
3
を使用して前記第1の成分、前記第2の成分、および第3の成分の前記濃度を決定するように構成されている電子機器(710)を含み、
式中、
P
mは、前記多成分流体が三成分流体である場合の前記多成分流体の前記多成分蒸気圧であり、
x
1、x
2およびx
3は、前記三成分流体の前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分のそれぞれのモル分率であり、
P
1
*、P
2
*およびP
3
*はそれぞれ前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分が純粋な流体である場合の前記第1の蒸気圧、前記第2の蒸気圧、および第3の蒸気圧であり、
MW
mixは前記三成分流体の分子量であり、
MW
1、MW
2、およびMW
3は、前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分のそれぞれの分子量であり、
w
1、w
2、およびw
3は、前記三成分流体中の前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分のそれぞれの質量分率であり、それぞれ
x
1MW
1/MW
mix、x
2MW
2/MW
mixおよびx
3MW
3/MW
mixに等しく、
ρ
1、ρ
2、およびρ
3は前記三成分流体の前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分のそれぞれの密度であり、
ρ
Tは前記三成分流体の密度である、請求項1に記載のシステム(700)。
【請求項4】
前記電子機器(710)は、前記トランスデューサ(720)によって提供されるセンサ信号に基づいて前記トランスデューサ(720)内の前記多成分流体の密度を決定するようにさらに構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(700)。
【請求項5】
前記電子機器(710)は、前記トランスデューサ(720)内の前記多成分流体の静圧に基づいて前記多成分流体の真の蒸気圧を決定するようにさらに構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム(700)。
【請求項6】
前記電子機器(710)は、前記トランスデューサ(720)に提供される駆動信号の利得に基づいて前記蒸気圧を決定するようにさらに構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(700)。
【請求項7】
前記電子機器(710)はメータ電子機器(20)であり、前記トランスデューサ(720)は振動式メータ(5)のメータアセンブリ(10)である、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム(700)。
【請求項8】
多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用する方法であって、
前記多成分流体の第1の成分の蒸気圧である第1の蒸気圧を決定することと、
前記多成分流体の第2の成分の蒸気圧である第2の蒸気圧を決定することと、
前記多成分流体の蒸気圧である多成分蒸気圧を決定するために、前記多成分流体を有するトランスデューサを使用することと、
前記多成分蒸気圧、前記第1の蒸気圧、および前記第2の蒸気圧に基づいて前記第1の成分および前記第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することとを含む、方法。
【請求項9】
前記多成分蒸気圧、前記第1の蒸気圧、および前記第2の蒸気圧に基づいて前記第1の成分および前記第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することは、以下の式、すなわち、
P
m = P
1
*x
1+P
2
*x
2
及び
x
1+x
2=1
を使用することを含み、式中、
P
mは、前記多成分蒸気圧であり、二成分流体である前記多成分流体の各成分によって及ぼされる圧力の合計であり、
P
1
*、P
2
*は、それぞれ、前記第1の成分および前記第2の成分が純粋な流体である場合の前記第1の蒸気圧および前記第2の蒸気圧であり、
x
1、x
2はそれぞれ、前記二成分流体中の前記第1の成分および前記第2の成分のモル分率である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記多成分蒸気圧、前記第1の蒸気圧、および前記第2の蒸気圧に基づいて前記第1の成分および前記第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することは、以下の式、すなわち、
P
m = P
1
*x
1+P
2
*x
2+P
3
*x
3
x
1+x
2+x
3=1
MW
mix = x
1MW
1 + x
2MW
2+x
3MW
3
及び
1/ρ
T= w
1/ρ
1 + w
2/ρ
2 + w
3/ρ
3
を使用して前記第1の成分、前記第2の成分、および第3の成分の前記濃度を決定することを含み、
式中、
P
mは、前記多成分流体が三成分流体である場合の前記多成分流体の前記多成分蒸気圧であり、
x
1、x
2およびx
3は、前記三成分流体の前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分のそれぞれのモル分率であり、
P
1
*、P
2
*およびP
3
*はそれぞれ前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分が純粋な流体である場合の前記第1の蒸気圧、前記第2の蒸気圧、および第3の蒸気圧であり、
MW
mixは前記三成分流体の分子量であり、
MW
1、MW
2、およびMW
3は、前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分のそれぞれの分子量であり、
w
1、w
2、およびw
3は、前記三成分流体中の前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分のそれぞれの質量分率であり、それぞれ
x
1MW
1/MW
mix、x
2MW
2/MW
mixおよびx
3MW
3/MW
mixに等しく、
ρ
1、ρ
2、およびρ
3は前記三成分流体の前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分のそれぞれの密度であり、
ρ
Tは前記三成分流体の密度である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記トランスデューサによって提供されるセンサ信号に基づいて前記トランスデューサ内の前記多成分流体の密度を決定することをさらに含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記トランスデューサ内の前記多成分流体の静圧に基づいて前記多成分流体の真の蒸気圧を決定することをさらに含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記トランスデューサに提供される駆動信号の利得に基づいて前記蒸気圧を決定することをさらに含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記トランスデューサは、振動式メータのメータアセンブリである、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記に説明する実施形態は、多成分流体流中の成分の濃度を決定することに関し、より詳細には、多成分流体流中の成分の濃度を決定するための蒸気圧の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、振動濃度計およびコリオリ流量計などの振動センサが、一般に知られており、流量計内の導管を流れる物質の質量流量および他の情報を測定するために使用される。例示的なコリオリ流量計は、すべてJ.E.Smith他に対する米国特許第4,109,524号明細書、米国特許第4,491,025号明細書、および米国再発行特許第31,450号明細書に開示されている。これらの流量計は、直線または湾曲構成の1つまたは複数の導管を有する。例えば、コリオリ質量流量計の各導管構成は、単純な屈曲、ねじり、または結合タイプであってもよい固有振動モードのセットを有する。各導管は好ましいモードで振動するように駆動することができる。
【0003】
物質は、流量計の入口側の接続されたパイプラインから流量計に流入し、導管(複数可)を通って導かれ、流量計の出口側を通って流量計から出る。振動システムの固有振動モードは、導管および導管内を流れる物質の複合質量によって部分的に規定される。
【0004】
流量計を通る流れがない場合、導管(複数可)に加えられる駆動力は、導管(複数可)に沿ったすべての点を、同一の位相で、またはゼロの流れで測定される時間遅延である小さい「ゼロオフセット」で振動させる。物質が流量計を通って流れ始めると、コリオリの力により、導管(複数可)に沿った各点が異なる位相を有するようになる。例えば、流量計の入口端の位相は、中央のドライバ位置の位相より遅れ、一方、出口の位相は、中央のドライバ位置の位相より先行する。導管(複数可)上のピックオフが、導管(複数可)の動きを表す正弦波信号を生成する。ピックオフからの信号出力が、ピックオフ間の時間遅延を決定するために処理される。2つ以上のピックオフ間の時間遅延は、導管(複数可)を流れる物質の質量流量に比例する。
【0005】
ドライバに接続されたメータ電子機器が、ドライバを動作させるための駆動信号を生成し、ピックオフから受け取った信号から物質の質量流量および他の特性を決定する。ドライバは、多くの周知の構成の1つを含むことができる。しかしながら、磁石および対向する駆動コイルが、流量計業界において大きな成功を収めている。所望の流管振幅および周波数で導管(複数可)を振動させるために、交流電流が駆動コイルに送られる。ピックオフを、上記ドライバ構成に非常に類似した磁石およびコイルの構成として提供することも、当該技術分野において知られている。しかし、ドライバが運動を誘発する電流を受け取る一方、ピックオフはドライバによって与えられる運動を使用して電圧を誘導することができる。
【0006】
蒸気圧は、ガソリン、天然ガス液、および液体石油ガスなどの揮発性流体の流れおよび貯蔵を取り扱う用途において重要な特性である。蒸気圧は、取り扱い中に揮発性流体がどのように機能し得るかの指標を提供し、さらに、気泡が形成される可能性があり、圧力が蓄積する可能性がある条件を示す。したがって、揮発性流体の蒸気圧測定は安全性を高め、輸送容器およびインフラストラクチャへの損傷を防止する。例えば、流体の蒸気圧が高すぎる場合、圧送および移送動作中にキャビテーションが発生する可能性がある。さらに、容器またはプロセスラインの蒸気圧は、温度変化のために安全レベルを超えて上昇する可能性があり得る。したがって、貯蔵および輸送の前に蒸気圧を知ることがしばしば必要とされる。
【0007】
多くの用途では、多成分流体中の成分の濃度を知ることも望ましい。これは、追加の機器および/または実験室試料を必要とする場合がある。現場での測定は、定期的なサンプリングの必要性をなくし、試料採取時と実験室アッセイ時との間の流体特性の変化のリスクを完全に排除するため、より信頼性が高い。さらに、安全でない状態を直ちに改善することができるため、リアルタイム測定を行うことによって安全性が改善される。さらに、単純な現場検査を介して規制の施行を行うことができるため、費用が節約され、検査および施行の決定を、ほとんど遅延またはプロセス停止なしに行うことができる。したがって、流体の蒸気圧を使用することによって多成分流体中の成分の濃度を決定することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,109,524号
【特許文献2】米国特許第4,491,025号
【特許文献3】再発行特許第31,450号
【発明の概要】
【0009】
多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用するためのシステムが提供される。一実施形態によれば、システムは、多成分流体を検知するように構成されたトランスデューサに通信可能に結合された電子機器を備える。電子機器は、多成分流体の第1の成分の蒸気圧である第1の蒸気圧を決定することと、多成分流体の第2の成分の蒸気圧である第2の蒸気圧を決定することと、多成分流体の蒸気圧である多成分蒸気圧を決定することと、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することとを行うように構成されている。
【0010】
多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用するための方法が提供される。一実施形態によれば、方法は、多成分流体の第1の成分の蒸気圧である第1の蒸気圧を決定することと、多成分流体の第2の成分の蒸気圧である第2の蒸気圧を決定することと、多成分流体の蒸気圧である多成分蒸気圧を決定するために、多成分流体を有するトランスデューサを使用することと、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することとを含む。
【0011】
[態様]
一態様によれば、多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用するためのシステム(700)は、多成分流体を検知するように構成されたトランスデューサ(720)に通信可能に結合された電子機器(710)を備える。電子機器(710)は、多成分流体の第1の成分の蒸気圧である第1の蒸気圧を決定することと、多成分流体の第2の成分の蒸気圧である第2の蒸気圧を決定することと、多成分流体の蒸気圧である多成分蒸気圧を決定することと、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することとを行うように構成されている。
【0012】
好ましくは、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定するように構成された電子機器(710)は、以下の式、すなわち、
Pm = P1
*x1+P2
*x2
及び
x1+x2=1
を使用するように構成された電子機器(710)を含み、
式中、
Pmは、多成分蒸気圧であり、二成分流体である多成分流体の各成分によって及ぼされる圧力の合計であり、
P1
*、P2
*は、それぞれ、第1の成分および第2の成分が純粋な流体である場合の第1の蒸気圧および第2の蒸気圧であり、
x1、x2はそれぞれ、二成分流体中の第1の成分および第2の成分のモル分率である。
【0013】
好ましくは、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定するように構成された電子機器(710)は、以下の式、すなわち、
Pm= P1
*x1+P2
*x2+P3
*x3
x1+x2+x3=1
MWmix = x1MW1 + x2MW2+x3MW3
及び
1/ρT= w1/ρ1 + w2/ρ2 + w3/ρ3
を使用して第1の成分、第2の成分、および第3の成分の濃度を決定するように構成されている電子機器(710)を含み、
式中、
Pmは、多成分流体が三成分流体である場合の多成分流体の多成分蒸気圧であり、
x1、x2およびx3は、三成分流体の第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれのモル分率であり、
P1
*、P2
*およびP3
*はそれぞれ第1の成分、第2の成分、および第3の成分が純粋な流体である場合の第1の蒸気圧、第2の蒸気圧、および第3の蒸気圧であり、
MWmixは三成分流体の分子量であり、
MW1、MW2、およびMW3は、第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれの分子量であり、
w1、w2、およびw3は、三成分流体中の第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれの質量分率であり、それぞれ
x1MW1/MWmix、x2MW2/MWmixおよびx3MW3/MWmixに等しく、
ρ1、ρ2、およびρ3は三成分流体の第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれの密度であり、
ρTは三成分流体の密度である。
【0014】
好ましくは、電子機器(710)は、トランスデューサ(720)によって提供されるセンサ信号に基づいてトランスデューサ(720)内の多成分流体の密度を決定するようにさらに構成されている。
【0015】
好ましくは、電子機器(710)は、トランスデューサ(720)内の多成分流体の静圧に基づいて多成分流体の真の蒸気圧を決定するようにさらに構成されている。
【0016】
好ましくは、電子機器(710)は、トランスデューサ(720)に提供される駆動信号の利得に基づいて蒸気圧を決定するようにさらに構成されている。
【0017】
好ましくは、電子機器(710)はメータ電子機器(20)であり、トランスデューサ(720)は振動式メータ(5)のメータアセンブリ(10)である。
【0018】
一態様によれば、多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用する方法は、多成分流体の第1の成分の蒸気圧である第1の蒸気圧を決定することと、多成分流体の第2の成分の蒸気圧である第2の蒸気圧を決定することと、多成分流体の蒸気圧である多成分蒸気圧を決定するために、多成分流体を有するトランスデューサを使用することと、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することとを含む。
【0019】
好ましくは、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することは、以下の式、すなわち、
Pm = P1
*x1+P2
*x2
及び
x1+x2=1
を使用することを含み、式中、
Pmは、多成分蒸気圧であり、二成分流体である多成分流体の各成分によって及ぼされる圧力の合計であり、
P1
*、P2
*は、それぞれ、第1の成分および第2の成分が純粋な流体である場合の第1の蒸気圧および第2の蒸気圧であり、
x1、x2はそれぞれ、二成分流体中の第1および第2の成分のモル分率である。
【0020】
好ましくは、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定することは、以下の式、すなわち、
Pm = P1
*x1+P2
*x2+P3
*x3
x1+x2+x3=1
MWmix = x1MW1 + x2MW2+x3MW3
及び
1/ρT= w1/ρ1 + w2/ρ2 + w3/ρ3
を使用して第1の成分、第2の成分、および第3の成分の濃度を決定することを含み、
式中、
Pmは、多成分流体が三成分流体である場合の多成分流体の多成分蒸気圧であり、
x1、x2およびx3は、三成分流体の第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれのモル分率であり、
P1
*、P2
*およびP3
*はそれぞれ第1の成分、第2の成分、および第3の成分が純粋な流体である場合の第1の蒸気圧、第2の蒸気圧、および第3の蒸気圧であり、
MWmixは三成分流体の分子量であり、
MW1、MW2、およびMW3は、第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれの分子量であり、
w1、w2、およびw3は、三成分流体中の第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれの質量分率であり、それぞれ
x1MW1/MWmix、x2MW2/MWmixおよびx3MW3/MWmixに等しく、
ρ1、ρ2、およびρ3は三成分流体の第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれの密度であり、
ρTは三成分流体の密度である。
【0021】
好ましくは、方法は、トランスデューサによって提供されるセンサ信号に基づいてトランスデューサ内の多成分流体の密度を決定することをさらに含む。
【0022】
好ましくは、方法は、トランスデューサ内の多成分流体の静圧に基づいて多成分流体の真の蒸気圧を決定することをさらに含む。
【0023】
好ましくは、方法は、トランスデューサに提供される駆動信号の利得に基づいて蒸気圧を決定することをさらに含む。
【0024】
好ましくは、トランスデューサは、振動式メータのメータアセンブリである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
同じ参照番号は、すべての図面上で同じ要素を表す。図面は必ずしも原寸に比例しないことを理解されたい。
【
図2】振動式メータ5のメータ電子機器20のブロック図である。
【
図3】蒸気圧メータ係数を使用して蒸気圧を決定するために使用することができる駆動利得と気液比との間の関係を示すグラフ300である。
【
図4】蒸気圧を決定するために振動式メータ内の流体の静圧をどのように使用することができるかを示すグラフ400である。
【
図5】流体の蒸気圧を決定するためのシステム500を示す図である。
【
図6】多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用する方法600を示す図である。
【
図7】多成分流体中の濃度を決定するために蒸気圧を使用するためのシステム700を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~
図7および以下の説明は、当業者に多成分流体中の成分の濃度を決定するための蒸気圧の使用の実施形態の最良の形態を作成および使用する方法を教示するための特定の例を示している。本発明の原理を教示するために、いくつかの従来の態様は簡略化または省略されている。当業者であれば、本明細書の範囲内に入るこれらの例からの変形形態を理解するであろう。当業者であれば、下記に説明する特徴を様々な方法で組み合わせて、多成分流体中の成分の濃度を決定するための蒸気圧の使用の複数の変形形態を形成することができることを理解するであろう。その結果、下記に説明する実施形態は、下記に説明する具体例に限定されるものではなく、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるものである。
【0027】
図1は、振動式メータ5を示す。
図1に示すように、振動式メータ5は、メータアセンブリ10と、メータ電子機器20とを備える。メータアセンブリ10は、プロセス材料の質量流量および密度に応答する。メータ電子機器20は、経路26上の密度、質量流量、および温度情報、ならびに/または他の情報を提供するために、リード線100を介してメータアセンブリ10に接続されている。
【0028】
メータアセンブリ10は、一対のマニホールド150および150’と、フランジネック110および110’を有するフランジ103および103’と、一対の平行導管130および130’と、ドライバ180と、抵抗性温度検出器(RTD)190と、一対のピックオフセンサ170lおよび170rとを含む。導管130および130’は、2つの基本的に直線状の入口脚部131および131’と、導管取り付けブロック120および120’において互いに向かって収束する出口脚部134および134’とを有する。導管130および130’は、その長さに沿って2つの対称位置で曲がり、それらの長さ全体にわたって本質的に平行である。ブレースバー140および140’が、各導管130,130’がそれらを中心として振動する軸WおよびW’を規定するように機能する。導管130および130’の脚部131,131’および134,134’は、導管取り付けブロック120および120’に固定して取り付けられ、これらのブロックは、マニホールド150および150’に固定して取り付けられる。これは、メータアセンブリ10を通る連続的な閉鎖材料経路を提供する。
【0029】
孔102および102’を有するフランジ103および103’が、入口端部104および出口端部104’を介して、測定されているプロセス材料を搬送するプロセスライン(図示せず)に接続されると、材料はフランジ103内のオリフィス101を通じてメータの入口端部104に入り、マニホールド150を通って表面121を有する導管取り付けブロック120に導かれる。マニホールド150内で、材料は分割され、導管130、130’を通って送られる。導管130、130’を出ると、プロセス材料は表面121’を有する取り付けブロック120’およびマニホールド150’内で単一の流れに再結合され、その後、孔102’を有するフランジ103’によってプロセスライン(図示せず)に接続されている出口端部104’に送られる。
【0030】
導管130、130’は、それぞれ曲げ軸W-WおよびW’-W’を中心とした実質的に同じ質量分布、慣性モーメントおよびヤング率を有するように選択され、導管取り付けブロック120、120’に適切に取り付けられる。これらの曲げ軸は、ブレースバー140、140’を通過する。導管のヤング率が温度によって変化し、この変化が流量および密度の計算に影響を及ぼす限り、RTD190は導管130’に取り付けられて、導管130’の温度を連続的に測定する。導管130’の温度、したがって通過する所与の電流に対してRTD190に見られる電圧は、導管130’を通過する材料の温度によって決まる。RTD190に見られる温度依存電圧は、メータ電子機器20によって、導管温度の任意の変化に起因する導管130、130’の弾性率の変化を補償するために周知の方法において使用される。RTD190は、リード線195によってメータ電子機器20に接続されている。
【0031】
導管130、130’の両方は、それぞれの曲げ軸WおよびW’を中心として反対方向に、かつ流量計の第1の位相外曲げモードと呼ばれるモードにおいてドライバ180によって駆動される。このドライバ180は、導管130’に取り付けられた磁石、ならびに、導管130に取り付けられており、両導管130、130’を振動させるために交流電流が流れる対向するコイルのような多くの周知の構成のいずれか1つを含むことができる。適切な駆動信号が、メータ電子機器20によってリード線185を介してドライバ180に印加される。
【0032】
メータ電子機器20は、リード線195上のRTD温度信号、ならびに、それぞれ左センサ信号165lおよび右センサ信号165rを搬送するリード線100上に見られる左右のセンサ信号を受信する。メータ電子機器20は、ドライバ180へのリード線185に見られる駆動信号を生成し、導管130、130’を振動させる。メータ電子機器20は、左右のセンサ信号およびRTD信号を処理して、メータアセンブリ10を通過する材料の質量流量および密度を計算する。この情報は、他の情報とともに、信号として経路26を介してメータ電子機器20によって印加される。
【0033】
質量流量測定値m'は、以下の式に従って生成することができる。
【数1】
【0034】
Δt項は、時間遅延が振動式メータ5を通る質量流量に関連するコリオリ効果によるものである場合などに、ピックオフセンサ信号間に存在する時間遅延を含む、操作により導出される(すなわち、測定される)時間遅延値を含む。測定されたΔt項は、最終的に、振動式メータ5を通って流れるときの流動材料の質量流量を決定する。Δt0項は、ゼロ流量較正定数における時間遅延を含む。Δt0項は、典型的には、工場において決定され、振動式メータ5にプログラムされる。流動条件が変化している場合であっても、ゼロ流量Δt0項における時間遅延は変化しない。流量較正係数FCFは、振動式メータ5の剛性に比例する。
【0035】
[振動式メータにおける流体の圧力]
定常条件下での非圧縮性液体を仮定すると、入り口における質量が制御ボリューム(例えば、パイプ)に入る速度(m'1)は、出口における質量が出る速度(m'3)に等しい。入口質量流量(m'1)が出口質量流量(m'3)に等しくなければならないというこの原理は、下記の式[2]によって示される。入口から出口に移動するとき、質量流量はパイプに沿った各点において保存される。しかしながら、入口と出口との間の途中で流量範囲の減少があり得る。流量範囲のこの減少は、同じ質量流量を維持し、質量保存の法則に従うために、流体の速度が増加する(vup)ことを必要とする。
【0036】
【数2】
式中、
m'は流体の質量流量であり、
vは平均流体速度であり、
ρは流体の密度であり、
Aは総断面積であり、
下付き文字1は入口を示し、
下付き文字3は出口を示し、
下付き文字2は、入口と出口との間の中間を示す。
【0037】
さらに、流れシステム内の全圧は、動圧と静圧の両方の合計に等しい。
【数3】
【0038】
動圧P
dynamicは、以下のように定義することができる。
【数4】
式中、項ρとvは、式[2]に関して上で定義されている。
【0039】
定常、非圧縮性、非粘性、非回転の流れを仮定すると、ベルヌーイ方程式は以下を与える。
【数5】
式中、Pは静圧を指し、ρgz項は、高度変化による水圧ヘッドを計上する。より詳細には、gは重力定数であり、zは高さである。圧力降下の粘性部分は、ベルヌーイ方程式の別個の損失項によって扱うことができる。
【0040】
【数6】
式中、
fは、摩擦係数であり、
Lは、パイプの長さであり、
Dは、パイプの直径である。
【0041】
下記の式[7]は、管を通って移動することに関連する摩擦損失を計上するベルヌーイ方程式のバージョンである。流体がパイプを通って移動すると、流体はエネルギーを散逸させ、圧力はパイプの所与の長さにわたって低下する。この圧力損失は、流体からのエネルギーが摩擦損失を通じて消費されているため、回復不可能である。したがって、以下の式がこの損失を計上することができる。
【数7】
【0042】
この関係は、式[2]を参照して上述した例示的なパイプに適用することができる。流体が入口から入口と出口との間の中間に移動すると、質量流量を維持するために速度が変化する。したがって、式[7]に示す関係の維持において、動圧ρv2/2が上昇し、静圧が低下する。流体が入口と出口との間の中間から出口に移動すると、静圧は同じ原理を通じて回復される。すなわち、入口と出口との間の中間から出口に移動すると、流量範囲が大きくなる。したがって、流体速度が低下し、初期静圧の一部を回復しながら動圧が低下する。しかしながら、出口における静圧は、回復不可能な粘性損失のために低くなる。
【0043】
これにより、入口および出口における静圧を流体の蒸気圧よりも大きくすることができるが、入口と出口との間の静圧は流体の蒸気圧よりも小さい。結果として、入口および出口における静圧は両方とも流体の蒸気圧よりも大きいが、フラッシングまたはガス放出が依然としてパイプ内に発生する可能性がある。さらに、コリオリメータなどの振動式メータは、振動式メータの1つまたは複数の導管の直径とは異なる直径を有するパイプラインに挿入される場合がある。その結果、振動式メータ内でガス放出が検出されると、パイプライン内で測定される圧力は、振動式メータ内の流体の蒸気圧ではない場合がある。
【0044】
[メータ電子機器-駆動利得]
図2は、振動式メータ5のメータ電子機器20のブロック図である。動作中、振動式メータ5は、質量流量、体積流量、個々の流れ成分の質量および体積流量、ならびに、例えば、個々の流れ成分の体積および質量流量の両方を含む総流量の測定値または平均値のうちの1つまたは複数を含む、出力され得る様々な測定値を提供する。
【0045】
振動式メータ5は、振動応答を生成する。振動応答は、メータ電子機器20によって受信および処理されて、1つまたは複数の流体測定値を生成する。値は、監視、記録、保存、合計、および/または出力することができる。メータ電子機器20は、インターフェース201と、インターフェース201と通信する処理システム203と、処理システム203と通信する記憶システム204とを含む。これらの構成要素は個別のブロックとして示されているが、メータ電子機器20は、統合された構成要素および/または個別の構成要素の様々な組み合わせから構成することができることを理解されたい。
【0046】
インターフェース201は、振動式メータ5のメータアセンブリ10と通信するように構成されている。インターフェース201は、例えば、リード線100(
図1参照)に結合し、ドライバ180、ピックオフセンサ170lおよび170r、ならびにRTD190と信号を交換するように構成することができる。インターフェース201は、通信経路26を介して、例えば外部装置と通信するようにさらに構成することができる。
【0047】
処理システム203は、任意の様式の処理システムを含むことができる。処理システム203は、振動式メータ5を動作させるために、記憶されたルーチンを取り出して実行するように構成されている。記憶システム204は、流量計ルーチン205、弁制御ルーチン211、駆動利得ルーチン213、および蒸気圧ルーチン215を含むルーチンを記憶することができる。記憶システム204は、測定値、受信値、作業値、および他の情報を記憶することができる。いくつかの実施形態では、記憶システムは、質量流量(m)221、密度(ρ)225、密度閾値226、粘度(μ)223、温度(T)224、圧力209、駆動利得306、駆動利得閾値302、ガス巻き込み閾値244、ガス巻き込み率248、および当該技術分野において知られている任意の他の変数を記憶する。ルーチン205,211,213,215は、記載された任意の信号および当該技術分野で知られている他の変数を含んでもよい。他の測定/処理ルーチンが企図されており、本明細書および特許請求項の範囲内にある。
【0048】
理解され得るように、より多くのまたはより少ない値が記憶システム204に記憶されてもよい。例えば、粘度223を使用することなく蒸気圧が決定されてもよい。例えば、圧力降下、または流量の関数としての摩擦に関する関数に基づいて粘度が推定される。しかしながら、粘度223を使用してレイノルズ数を計算することができ、次いでこれを使用して摩擦係数を決定することができる。レイノルズ数および摩擦係数を利用して、
図1を参照して上述した導管130,130’などの導管内の粘性圧力降下を決定することができる。理解され得るように、レイノルズ数は必ずしも利用されなくてもよい。
【0049】
流量計ルーチン205は、流体定量化および流れ測定値を生成および記憶することができる。これらの値は、実質的に瞬間的な測定値を含むことができ、または合計値もしくは累積値を含むことができる。例えば、流量計ルーチン205は、質量流量測定値を生成し、例えば、それらを記憶システム204の質量流量221のストレージに記憶することができる。流量計ルーチン205は、密度225の測定値を生成し、例えば、それらを密度225のストレージに記憶することができる。質量流量221および密度225の値は、前述のように、また当該技術分野において知られているように、振動応答から決定される。質量流量および他の測定値は、実質的に瞬間的な値を含むことができ、サンプルを含むことができ、一定の時間間隔にわたる平均値を含むことができ、または一定の時間間隔にわたる累積値を含むことができる。時間間隔は、特定の流体条件が検出される時間のブロック、例えば液体のみの流体状態、または代替的に液体および同伴気体を含む流体状態に対応するように選択されてもよい。加えて、他の質量および体積流ならびに関連する定量化が考えられ、本明細書および請求項の範囲内にある。
【0050】
駆動利得閾値302を使用して、流れの期間、流れなしの期間、単相/二相境界(流体相変化が生じる)の期間、およびガス巻き込み/混合相流の期間を区別することができる。同様に、密度読み値225に適用される密度閾値226もまた、ガス巻き込み/混合相流を区別するために、別個にまたは駆動利得とともに使用することができる。駆動利得306は、例えば、限定はしないが、液相および気相などの異なる密度の流体の存在に対する振動式メータ5の導管振動の感度のメトリックとして利用することができる。
【0051】
本明細書において使用される場合、駆動利得という用語は、流管を指定された振幅に駆動するのに必要な電力量の尺度を指すが、任意の適切な定義が利用されてもよい。例えば、駆動利得という用語は、いくつかの実施形態では、駆動電流、ピックオフ電圧、または、特定の振幅において流導管130,130’を駆動するのに必要な電力量を示す測定もしくは導出された任意の信号を指すことができる。駆動利得は、例えば、ノイズレベル、信号の標準偏差、減衰関連測定値、および混合相流を検出するための当該技術分野で知られている任意の他の手段などの駆動利得の特性を利用することによって多相流を検出するために使用され得る。これらのメトリックは、混合相流を検出するためにピックオフセンサ170lおよび170rにわたって比較することができる。
【0052】
[流体の相変化の検出]
図3は、蒸気圧メータ係数を使用して蒸気圧を決定するために使用することができる駆動利得と気液比との間の関係を示すグラフ300である。
図3に示すように、グラフ300は、平均空隙比軸310および駆動利得軸320を含む。平均空隙比軸310および駆動利得軸320は、パーセンテージで増分されるが、任意の適切な単位および/または比が利用されてもよい。
【0053】
グラフ300は、様々な流量に対する駆動利得と気液比との間の関係であるプロット330を含む。図示するように、気液比は、プロット330の平均空隙比値であるが、ガス体積率(「GVF」)またはガス巻き込み率などの任意の適切な気液比が利用されてもよく、体積、断面積などに基づき得る。理解され得るように、プロット330は、異なる流量に関連付けられているにもかかわらず同様である。また、40%の駆動利得に対応する基準平均空隙比330aであり得る、約0.20%の平均空隙比においてプロット330と交差する駆動利得閾値線340も示されている。また、約10%である真の蒸気圧駆動利得332も示されている。真の蒸気圧駆動利得332は、流体相変化が生じる静圧を有し、ゼロの気液比を有するメータアセンブリ内の流体に対応する。
【0054】
図から分かるように、プロット330は、0.00%~約0.60%の平均空隙比の範囲にわたって、約10%の駆動利得から約100%の駆動利得まで変化する。理解され得るように、平均空隙比の比較的小さい変化が、駆動利得の大幅な変化をもたらす。この比較的小さい変化は、蒸気形成の開始を駆動利得によって正確に検出することができることを保証することができる。
【0055】
40%の駆動利得は、0.20%の平均空隙比に対応するものとして示されているが、対応関係はプロセスに固有のものであってもよい。例えば、40%の駆動利得は、他のプロセス流体および条件における他の平均空隙比に対応してもよい。異なる流体は異なる蒸気圧を有し得、したがって、流体の蒸気形成の開始は異なる流量において起こり得る。すなわち、蒸気圧が比較的低い流体はより高い流量において気化し、蒸気圧が比較的高い流体はより低い流量において気化し得る。
【0056】
同じく理解され得るように、駆動利得閾値線340は、代替的な/他の駆動利得におけるものであってもよい。しかしながら、蒸気形成の開始が正確に検出されることを保証もしながら、巻き込み/混合相流の誤検出を排除するために40%の駆動利得を有することが有益であり得る。
【0057】
また、プロット330は駆動利得を利用するが、測定密度などの他の信号を使用してもよい。測定密度は、流体中の空隙の存在に起因して増加または減少し得る。例えば、測定密度は、直感に反して、音速効果のために、比較的高い周波数の振動式メータの空隙に起因して増加し得る。比較的低い周波数計では、空隙の密度が流体よりも小さいために、測定密度が減少し得る。これらおよび他の信号は、メータアセンブリ内の蒸気の存在を検出するために単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0058】
上述したように、0.20%平均空隙比値は、これは駆動利得閾値線340が駆動利得軸320と交差するところであり得る、40%駆動利得値に対応する基準平均空隙比330aであり得る。したがって、上述のメータアセンブリ10などのメータアセンブリ内の流体について測定駆動利得が40%であるとき、流体の平均空隙比は約0.20%であり得る。約0.20%の空隙比は、流体中に存在するガスによる流体の圧力に対応し得る。例えば、約0.20%の空隙比は、例えば静圧値に対応し得る。
【0059】
駆動利得、または密度などの他の信号と、基準気液比とすることができる基準平均空隙比330aとの間の以前に決定されている関係により、蒸気圧値を蒸気圧メータ係数と関連付けることができる。例えば、流体相変化が検出されるまで静圧を増減させながらメータアセンブリを振動させることができる。次に、
図4を参照して以下でより詳細に説明するように、静圧から蒸気圧値を決定することができる。決定された蒸気圧値は、例えば、駆動利得閾値線340における静圧に対応することができる。この決定された蒸気圧値は、蒸気圧メータ係数によって、相変化が発生するか、または単相/二相境界に遭遇するところである真の蒸気圧駆動利得332に対応するように調整することができる。したがって、流体中の気体の存在は、流体の真の蒸気圧とは異なる静圧で検出され得るが、それにもかかわらず、真の蒸気圧値が決定され得る。
【0060】
一例として基準平均空隙比330aを使用すると、駆動利得が40%に達し、それによって、メータアセンブリ内の流体が0.20%の平均空隙比を有することを示すまで、メータアセンブリ内の静圧を下げることができる。上述した処理システム203などの処理システムは、例えば、40%の駆動利得に対応する静圧よりも比例的に高い静圧において流体が気化し始めたと判定することができる。例えば、真の蒸気圧値は、約10%の駆動利得に関連付けられてもよい。理解され得るように、静圧(例えば、圧力センサからの誤差、流量測定誤差など)の計算に伴う不確実性に起因して、真の蒸気圧は、40%の駆動利得に関連する計算された静圧よりも比例的に低くなり得る。真の蒸気圧は、流体相変化が生じる流体の静圧に対応するが、気液比は0である。
【0061】
したがって、測定駆動利得を使用して気体を検出することができるが、依然として正確度の高い真の蒸気圧値をもたらすことができる。より具体的には、少数の小さい気泡が存在する最初のガス放出発生時点では、駆動利得は、検出のための駆動利得閾値線340を超えて増加しない場合がある。動圧は、例えば、駆動利得が駆動利得閾値線340を通過するように静圧が低下するまで流量を増加させ続けるポンプによって増加させることができる。用途に応じて、この計算された静圧(例えば、補正されていない蒸気圧)は、流体相変化の検出の遅延を計上するために、例えば1psiの蒸気圧メータ係数によって補正(例えば、調整、すなわち低減または増大)することができる。すなわち、蒸気圧メータ係数を決定し、駆動利得の関数として未補正の蒸気圧測定値に適用して、微量のガスを検出するようにガスが検出される駆動利得と真の蒸気圧との間の差を計上することができる。
【0062】
例として
図3を参照すると、40%の測定駆動利得は、例えば、真の蒸気圧に関連する駆動利得に対応する静圧よりも1psi小さい、メータアセンブリ内の流体の静圧に対応することができる。したがって、振動式メータ5、またはメータ電子機器20、または任意の適切な電子機器は、蒸気圧メータ係数が1psiであると決定し、この値を40%駆動利得に関連する静圧から加算することができる。結果として、振動式メータ5は、流体の位相変化を正確に検出することができ、したがって、駆動利得を使用して流体の蒸気圧も正確に決定することができる。
【0063】
しかしながら、駆動利得を使用しない他の位相変化検出手段を利用してもよい。例えば、相変化は、音響測定、X線ベースの測定、光学測定などによって検出することができる。また、上記の実施態様の組み合わせも考慮することができる。例えば、音響および/または光学測定値が垂直に分布したループ内で垂直に延在するバイパスラインは、ガスが最初に流出する場所を決定する。この高さは、次に、以下に説明するように、振動式メータ5内の流体の蒸気圧を計算するために必要な入力を提供する。
【0064】
[振動式メータにおける圧力降下]
図4は、蒸気圧を決定するために振動式メータ内の流体の静圧をどのように使用することができるかを示すグラフ400である。
図4に示すように、グラフ400は、位置軸410および静圧軸420を含む。位置軸410は、長さのいかなる特定の単位においても示されていないが、インチ単位であってもよく、ただし、任意の適切な単位が利用されてもよい。静圧軸420は、ポンド毎平方インチ(psi)の単位であるが、任意の適切な単位が利用されてもよい。位置軸410は、振動式メータの入口(「IN」)から出口(「OUT」)までに及ぶ。
【0065】
したがって、INからOUTまでの位置は、例えば
図1に示すメータアセンブリ10内の流体に対応することができる。この例では、INからおおよそAまでの領域は、フランジ103と導管取り付けブロック120との間のメータアセンブリ10の一部に対応することができる。おおよそAからおおよそGまでの領域は、取り付けブロック120,120’間の導管130,130’に対応することができる。GからOUTまでの領域は、取り付けブロック120’からフランジ103’までのメータアセンブリ10の部分に対応することができる。したがって、メータアセンブリ10(例えば、INからOUTまでに及ぶ位置)内の流体は、例えば、メータアセンブリ10が挿入されるパイプライン内の流体を含まない場合がある。メータアセンブリ10内の流体は、導管130,130’内の流体であり得る。
【0066】
グラフ400はまた、ゼロ動圧プロット430および動圧変化プロット440を含む。ゼロ動圧プロット430は、動圧の変化がないことを示し、この圧力は、振動式メータの入口から出口まで直線的に減少すると仮定される。動圧変化プロット440は、パイプラインに挿入されている振動式メータの実際の圧力を表すことができ、振動式メータの1つまたは複数の導管の直径は、パイプラインの直径よりも小さい。例示的な振動式メータ5が
図1に示されているが、任意の適切な振動式メータが利用されてもよい。したがって、上述のメータアセンブリ10などのメータアセンブリ内の流体は、動圧の増加に起因して静圧が低下し得る。また、振動式メータ内の流体の蒸気圧を表す蒸気圧線450も示されている。
【0067】
動圧変化プロット440は、静圧降下区間440aと、粘性損失区間440bと、静圧上昇区間440cとを含む。動圧変化プロット440は、最小静圧440dも含む。静圧降下区間440aは、振動式メータのこの区間の動圧の対応する増加を引き起こす流体速度の増加に起因し得る。粘性損失区間440bは、振動式メータの1つまたは複数の導管の一定直径部分に対応することができる。したがって、粘性損失区間440bは、流体速度の増加を反映しない可能性があり、したがって、動圧の増加を反映しない可能性がある。静圧上昇区間440cは、流体速度の低下に起因し得、したがって、静圧降下区間440aの間の静圧降下を回復することができる。静圧降下区間440aおよび静圧上昇区間440cは、メータアセンブリにおける静圧変化であり得る。
【0068】
最小静圧440dを含む蒸気圧線450の下にある動圧変化プロット440の部分は、上述のメータアセンブリ10などのメータアセンブリ内の流体において流体相変化が生じる位置(例えば、おおよそ位置Eから位置Gのわずかに後ろまで)に対応することができる。
図4に見られるように、最小静圧440dは蒸気圧線450より下にある。これは、動圧変化プロット440が、メータアセンブリ内の流体の静圧を増加させることによって上方にシフトされ得ることを示している。しかしながら、最小静圧440dが蒸気圧線450上に位置するまで動圧変化プロット440をシフトさせるように静圧を約5psi増加させた場合、流体相変化を検出することができる。静圧が増加するため、メータアセンブリ内の流体中の気体または蒸気は液体になり得る。逆に、動圧変化プロット440が蒸気圧線450より上にあり、最小静圧440dが蒸気圧線上に位置するまでメータアセンブリ内の流体の静圧が減少した場合、流体相変化は、流体内のガスまたは蒸気の形成であり得る。
【0069】
図4に見られるように、粘性損失区間440bは、位置Aでの約68psiの静圧から位置Gでの約55psiの静圧まで減少する。理解され得るように、位置Gでの約55psiの静圧は、約58psiである蒸気圧線450よりも小さい。結果として、入口および出口における静圧が蒸気圧線450よりも大きい場合であっても、振動式メータ内の流体は依然としてフラッシングまたは放出され得る。
【0070】
したがって、入口および出口における静圧は、流体の蒸気圧に直接対応しない。言い換えれば、流体の蒸気圧は、パイプライン内またはメータアセンブリの外部の流体の静圧から直接決定されないものであり得る。メータアセンブリ10、またはより具体的には導管130,130’内の静圧は、例えば、入口および出口における圧力測定値を使用し、振動式メータ5の寸法(例えば、導管130,130’の直径および長さ)を入力することによって正確に決定することができる。しかしながら、蒸気圧を正確に決定するために、振動式メータ5内の流体の静圧を変化させることによって引き起こされ得る、振動式メータ5内の流体の相変化を誘発する必要があり得る。
【0071】
[流体の静圧を変化させること]
図5は、流体の蒸気圧を決定するためのシステム500を示す図である。
図5に示すように、システム500は、パイプライン501に結合されたバイパス入口およびバイパス出口を含むバイパスである。システム500は、コリオリメータとして示されている振動式メータ5の出口およびバイパス出口と流体連通するポンプ510を含む。入口圧力センサ520は、振動式メータ5の入口およびバイパス入口と流体連通している。出口圧力センサ530は、振動式メータ5の出口とポンプ510との間に配置され、振動式メータ5の出口における流体の静圧を測定するように構成されている。弁として示される流量制御装置540が、バイパス入口と入口圧力センサ520との間に配置される。
【0072】
ポンプ510は、例えば、振動式メータ5内の流体の速度を増加させることができる任意の適切なポンプであってもよい。ポンプ510は、例えば、可変周波数駆動装置を含むことができる。可変周波数駆動装置は、ポンプ510がシステム500内の流体の流体速度を制御することを可能にすることができる。例えば、可変周波数駆動装置は、振動式メータ5を通る流体の流体速度を増加させることができるが、流体速度は、任意の適切なポンプによって増加させることができる。流体速度を増加させることによって、ポンプ510は、流体速度を増加させることにより、振動式メータ5内の流体の動圧を増加させることができる。
【0073】
これにより、振動式メータ5内の流体の静圧が低下し得る。例示として、
図4を参照すると、ポンプ510は、動圧変化プロット440を下方にシフトさせることができる。したがって、
図4には示されていないが、動圧変化プロット440が蒸気圧線450より上にある場合、ポンプ510は、動圧変化プロット440を下方にシフトさせることによってフラッシングまたはガス放出を誘発することができる。同様に、動圧変化プロット440を蒸気圧線450までまたはそれより上までシフトさせることによって、流体中の気体または蒸気は液体になり得る。
【0074】
入口圧力センサ520および出口圧力センサ530は、流体の任意の圧力を測定するように構成された任意の適切な圧力センサであってもよい。例えば、入口圧力センサ520および出口圧力センサ530は、システム500内の流体の静圧を測定することができる。付加的に、または代替的に、入口圧力センサ520および出口圧力センサ530は、システム500内の流体の全圧を測定することができる。一例では、流体の動圧は、上記の式[3]に従ってシステム500内の流体の全圧と静圧との間の差をとることによって決定することができる。例えば、入口圧力センサ520は、振動式メータ5の入口に近接した、または入口にある流体の全圧および静圧を測定することができる。振動式メータ5の入口圧力センサ520および/またはメータ電子機器20は、振動式メータ5の入口における動圧を決定することができる。
【0075】
流量制御装置540は、流量制御装置540の位置が部分的に閉じた位置から全開位置に移動するときに、システム500内の流体の流体速度を増加させることができる。例えば、振動式メータ5の入口におけるシステム500の流れ制限を減少させることによって、流体の速度は、上記の式[2]に従って増加することができる。これは、フラッシングまたはガス放出を誘発するように、動圧変化プロット440を下方にシフトさせることができる。逆に、流量制御装置540は、システム500内の流体の流体速度を低下させ、それによって動圧変化プロット440を上にシフトさせ、それによってガスまたは蒸気を凝縮させることができる。
【0076】
流量制御装置540が開かれると、流体速度は増加するが、振動式メータ5の入口における静圧も増加し、逆もまた同様である。流量制御装置540とポンプ510との組み合わせは、望ましくはより低い静圧およびより高い速度を得るために、流量制御装置540を部分的に閉じ(例えば、流れを制限し、流量制御装置540の下流の圧力を低下させるために)、ポンプ速度を増加させる(例えば、流量の増加)ことによって好ましいプロセス条件を提供することができる。
【0077】
振動式メータ5内、より具体的には振動式メータ5内のメータアセンブリ10内の流体の静圧は、上述したポンプ510もしくは流量制御装置540、またはその両方の組み合わせを使用することによって変化させることができるが、静圧を変化させる他の手段が利用されてもよい。例えば、振動式メータ5の高さzを変化させてもよい。振動式メータ5内の流体の静圧を低減するために、高さzを増大してもよい。振動式メータ5内の流体の静圧を増大するために、高さzを低減してもよい。振動式メータ5の高さzは、振動式メータ5とパイプライン501との間の電動リフト、および振動式メータ5、例えば流量制御装置540とポンプ510との間のベローズなどの任意の適切な手段によって変化させることができる。他の手段、ならびに様々な手段(例えば、ポンプ510、流量制御装置540、および/または電動リフト)の組み合わせを利用することができる。
【0078】
例えば、バイパスを通る流量が十分である場合、ポンプは必ずしも利用されなくてもよい。流量制御装置540のみが使用されてもよい。流量制御装置540は、振動式メータ5の下流などの他の場所に設置されてもよい。代替的に、ポンプ510および/または電動リフトが利用される場合など、流量制御装置540を利用しなくてもよい。別の代替例では、メータは、バイパスではなく、主線路に設置されてもよい。付加的または代替的に、単一の圧力センサのみが利用されてもよい。例えば、出口圧力センサ530のみが利用されてもよい。入口圧力センサ520および/または出口圧力センサ530は、代替的な位置に配置されてもよい。出口圧力センサ530およびその位置は、メータアセンブリ10内の流体が蒸気圧になると、出口圧力センサ530の位置における静圧が流体速度に対して実質的に安定することができるため、有益であり得る。すなわち、流体速度がさらに増加しても、出口圧力センサ530によって測定される静圧の実質的な減少が起こり得ない。
【0079】
蒸気圧測定から追加の情報を推測することができる。例えば、流れている液体が2つ以上の純粋な物質の混合物である場合、蒸気圧を使用して、ダルトンの法則およびラウールの法則を使用して純粋な成分の液相濃度(すなわち、成分体積または質量分率)を推定することができる。標準炭化水素または他の流体の相関を送信機に入力し、現在の濃度測定曲線と同様に特徴として追加することができる。さらに、塩または他の不揮発性溶液の濃度を決定することができる。これらの概念は、以下で説明される。
【0080】
式[8]で表されるダルトンの分圧の法則は、各成分が混合物と同じ温度および体積において別個に存在する場合、ガスの混合物によって加えられる全圧P
mは、混合物の各成分によって加えられる圧力P
iの和に等しいと述べている。
【数8】
【0081】
図5に示すシステム500において予測される低圧では、ガスの挙動は、ダルトンの法則がガス混合物の挙動を最もよく予測する理想的なガス挙動に近づくと仮定することができる。
【0082】
式[9]に表されるように、ラウールの法則は、液体の理想的な混合物の各成分の分圧Piが、純粋な成分の蒸気圧Pi
*に液体混合物または二成分流体中のモル分率xiを乗じた値に等しいことを述べている。
Pm = Pi
*xi [9]
【0083】
上記の式および純粋な成分の基準蒸気圧テーブルを使用して、理想的な二流体または二成分流体の液体濃度を得ることができる。
Pm = P1
*x1+P2
*x2 [10]
式中、
Pmは、混合物の各成分によって加えられる圧力の和であり、二流体または二成分流体などの多成分流体の蒸気圧に等しくなり得る。
P1
*x1、P2
*x2は、二成分流体中の第1の成分および第2の成分のそれぞれの分圧である。
【0084】
理解され得るように、多成分流体は二流体または二成分流体であるため、第1のモル分率x1は、1から第2のモル分率x2:1-x2を減算した値に等しい。以下の例は、二元混合物の液体濃度を決定するための測定蒸気圧の使用を示す。
【0085】
ベンゼン(B)およびトルエン(T)の液体混合物が、95°Cにおいてプロセスパイプラインを通って流れる。液体の一部は、バイパスラインを通って流れ、そこで蒸気圧は、本開示で提案されているようなシステムを使用して決定される。コリオリメータが気泡の形成を検出するまで、バイパスシステム内の静圧は降下する。この時点で測定される蒸気圧は101.32kPaである。以下に、各成分の液体濃度の求め方を示す。
【0086】
最初のステップは、95°Cでの純粋な成分の蒸気圧を求めることであり得る。この情報は、文献に見出すことができる:PB
*=155.7kPa;PT
*=63.3kPa。次のステップは、ダルトンの法則およびラウールの法則を使用して、測定蒸気圧を液体濃度に関連付けるためにすることである:
101.32kPa=PB+PT=PB
*xB+PT
*xT=PB
*xB+PT
*(1-xB) =155.7 xB+63.3 (1-xB)。
【0087】
単純なルートファインダを使用して、ベンゼンのモル分率を求めることができる:
xB=0.411。xB+xT=1であるため、xT=0.589となる。
【0088】
[密度の使用]
密度測定と蒸気圧測定とを組み合わせて、より多くの式を得ることができ、したがって、より多くの未知の成分を求めることができる。通常、純粋な化合物の塩基密度が温度の関数として分かる場合、濃度ソフトウェアは最大2つの成分の体積分率を正確に決定することができる。しかしながら、上述の蒸気圧情報を追加することにより、3つの成分を区別することができ、各成分の体積分率または質量分率が提供される。
【0089】
三元混合物の液体分率の決定を可能にすることは、濃度測定またはネット・オイル・コンピュータの使用可能範囲を増加させることができる。測定密度とともに、3つの成分に必要な追加の式を下記に定義し、φは各成分の体積分率を表し、ρは各成分の密度である。
φ1+φ2+φ3=1 [11]
ρ1φ1+ρ2φ2+ρ3φ3=ρmeasured [12]
【0090】
例として、以下の式は、上記ダルトンの法則およびラウールの法則を使用して、多成分流体中の少なくとも1つの成分の濃度をどのように決定することができるかを示し、多成分流体は三成分流体である。
P= P1
*x1+P2
*x2+P3
*x3 [13]
式中、
Pは、トランスデューサによって測定することができる三成分流体の蒸気圧であり、
x1、x2よびx3は、三成分流体の3つの成分のモル分率であり、
P1
*、P2
*およびP3
*は、例えばルックアップテーブルから知ることができる、純流体としての各成分の蒸気圧である。
【0091】
3つの成分のモル分率x1、x2、x3は、必然的に合計1になり得る。
x1+x2+x3=1 [14]
【0092】
さらに、3つの成分のモル分率x1、x2、x3にそれぞれ分子量を乗じて合計すると、三成分流体の分子量になるはずである。
MWmix = x1MW1 + x2MW2+x3MW3 [15]
式中、
MWmixは三成分流体の分子量であり、
MW1、MW2、およびMW3は、三成分流体中の各成分の分子量である。
【0093】
さらに、三成分流体の密度の逆数は、三成分流体中の各成分の質量分率と密度との比の和に等しくなり得る。
1/ρT= w1/ρ1 + w2/ρ2 + w3/ρ3 [16]
式中、
w1、w2およびw3は、三成分流体中の第1の成分、第2の成分、および第3の成分のそれぞれの質量分率であり、それぞれ
x1MW1/MWmix、x2MW2/MWmixおよびx3MW3/MWmixに等しく、
ρ1、ρ2、およびρ3はそれぞれ、三成分流体の第1の成分、第2の成分、および第3の成分の密度であり、
ρTは、測定密度ρmeasuredに等しくなり得る三成分流体の密度である。
【0094】
理解され得るように、7つの式および7つの未知数があり、したがって、各成分の濃度を決定することができる。
【0095】
2つの成分のみの混合物であっても、二元混合物の蒸気圧測定を単独で使用して、混合物の成分分率を計算することができる。これは、純粋な成分の密度が等しいが、それらの蒸気圧が異なる場合に特に有用であろう。代替的に、純粋な成分の密度が異なる場合でも、二元混合物の蒸気圧を使用して、密度ベースのアルゴリズムの二次チェックを可能にすることができる。
【0096】
[蒸気圧の使用]
図6は、多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用する方法600を示す図である。
図6に示すように、ステップ610において、方法600は第1の蒸気圧を決定する。第1の蒸気圧は、多成分流体の第1の成分の蒸気圧である。ステップ620において、本方法は、第2の蒸気圧を決定する。第2の蒸気圧は、多成分流体の第2の成分の蒸気圧である。ステップ630において、本方法は、多成分蒸気圧を決定する。多成分蒸気圧は、多成分流体の蒸気圧である。多成分流体の多成分蒸気圧は、多成分流体中の各成分によって及ぼされる圧力の合計であり得る。方法600は、ステップ640において、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて、第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定する。
【0097】
ステップ640において、方法600は、上記の式[10]およびx1+x2=1のモル分率関係を使用して、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて第1の成分または第2の成分の濃度を決定することができる。三成分流体の場合、方法600は、上記の式[13]~[16]を使用することによって、第1の成分、第2の成分、および/または第3の成分の濃度を決定することができる。
【0098】
方法600はまた、追加のステップを含むことができる。例えば、方法600は、トランスデューサによって提供されるセンサ信号に基づいてトランスデューサ内の多成分流体の密度を決定することができる。例えば、密度は、トランスデューサの共振周波数などの周波数を測定し、周波数と密度値との間の相関を使用して多成分流体の密度を決定することによって決定することができる。方法600はまた、トランスデューサ内の多成分流体の静圧に基づいて多成分流体の真の蒸気圧をさらに決定することができる。蒸気圧は、トランスデューサに提供される駆動信号の利得に基づいて決定することができる。トランスデューサは、振動式メータのメータアセンブリであってもよいが、以下で説明するように、任意の適切なトランスデューサを利用することができる。
【0099】
図7は、多成分流体中の濃度を決定するために蒸気圧を使用するためのシステム700を示す図である。
図7に示すように、システム700は、電子機器710およびトランスデューサ720から構成されている。電子機器710は、多成分流体の蒸気圧を決定するように構成することができる。例えば、電子機器710は、第1の蒸気圧および第2の蒸気圧を決定するように構成することができ、第1の蒸気圧および第2の蒸気圧は、それぞれ多成分流体の第1の成分および第2の成分の蒸気圧である。電子機器710はまた、多成分蒸気圧を決定するように構成することができ、多成分蒸気圧は多成分流体の蒸気圧である。電子機器710は、蒸気圧を使用して、多成分流体の濃度を決定することができる。例えば、電子機器710は、多成分蒸気圧、第1の蒸気圧、および第2の蒸気圧に基づいて、第1の成分および第2の成分のうちの少なくとも一方の濃度を決定するように構成することができる。
【0100】
電子機器710はまた、多成分流体の密度を決定するように構成することができる。多成分流体の密度は、各密度に各成分の体積分率を乗じた値の合計に等しくなり得る。例えば、三成分流体の場合、三成分流体の密度は、三成分流体中の成分のそれぞれの密度と体積分率との積の和に等しくなり得る。多成分流体の密度の逆数は、多成分流体中の成分のそれぞれの質量分率および密度の合計に等しくなり得る。例えば、三成分流体の場合、密度の逆数は上記の式[16]に従って決定することができる。
【0101】
上記では、多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用する振動式メータ5、特にメータ電子機器20、および方法600、ならびにシステム700について説明している。成分の濃度は、振動式メータ5のみによって提供される測定値を使用して決定されてもよいが、
図5を参照して説明した静圧測定などの追加の測定が行われてもよい。結果として、メータ電子機器20によって提供される情報は、質量流量および密度だけでなく、多成分流体中の成分の濃度も含むことができる。振動式メータの測定能力が改善されるため、振動式メータの分野が改善される。振動式メータを利用する分野もまた、多成分流体中の成分の濃度を得るために必要な測定装置の数を減らすことができ、それによってコストを節約することができるため、改善される。さらに、情報は、リアルタイムでその場で提供することができ、それにより、データが測定されている多成分流体を正確に表すことが保証される。
【0102】
上記の実施形態の詳細な説明は、本開示の範囲内であると本発明者らが考えているすべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際、当業者であれば、上述の実施形態の特定の要素は、さらなる実施形態を作成するために様々に組み合わせまたは削除されてもよく、このようなさらなる実施形態は、本開示の範囲および教示内に入ることを認識するであろう。また、当業者には、本開示の範囲および教示内で追加の実施形態を作成するために、上述の実施形態を全体的または部分的に組み合わせてもよいことは明らかであろう。
【0103】
したがって、特定の実施形態は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者には理解されるように、本明細書の範囲内で様々な均等な変更が可能である。本明細書で提供される教示は、上記および添付の図面に示された実施形態だけでなく、多成分流体中の成分の濃度を決定するために蒸気圧を使用するための他の方法、電子機器、システムなどに適用することができる。したがって、上述の実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲から決定されるべきである。
【国際調査報告】