(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】蛍光タンパク質フラグメントを含む融合タンパク質およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220601BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220601BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220601BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220601BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220601BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220601BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220601BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220601BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220601BHJP
C07K 14/62 20060101ALN20220601BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K19/00
C07K14/62
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559462
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 CN2020080036
(87)【国際公開番号】W WO2020187270
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】201910210102.9
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521437770
【氏名又は名称】ニンポー クンペン バイオテック カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NINGBO KUNPENG BIOTECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】28 Xingbin Road,ZhongyiNingbo Ecological Park,Yuyao,Ningbo,Zhejiang 315400,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ソン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ゼンシャン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フイリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA37
4H045EA27
4H045FA74
4H045GA25
(57)【要約】
蛍光タンパク質フラグメントを含む融合タンパク質およびその用途を提供する。本発明の融合タンパク質は、(P1-L1)s-A1-(X)n-A2-(L2-P2)tに示される構造を有し、ここで、(X)nまたはA1-(X)nは、融合標的ペプチドのフォールディングおよび発現を促進することができ、融合タンパク質の溶解性を向上させ、かつ融合タンパク質の分子間相互作用を減少させることができる。融合タンパク質中の(X)nまたはA1-(X)nは、酵素によって標的ペプチドよりも長さがはるかに短い複数の短いペプチドに切断されることができ、標的ペプチドからの分離が容易になり、標的ペプチドの精製がより便利になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって、
前記融合タンパク質は、式Iに示される構造を含み、
(P1-L1)s-A1-(X)n-A2-(L2-P2)t(I)
式において、
「-」は、ペプチド結合または接続ペプチドであり、
各P1は、それぞれ独立して、第1の標的ペプチドであり、
各P2は、それぞれ独立して、第2の標的ペプチドであり、
各L1は、それぞれ独立して、なしまたは第1の接続ペプチドであり、
各L2は、それぞれ独立して、なしまたは第2の接続ペプチドであり、
A1は、なしまたはシグナルペプチドであり、
A2は、なしまたはシグナルペプチドであり、
各Xは、独立して、蛍光タンパク質の単一のβ-フォールディングユニットであり、
nは、1~8の正の整数であり、
sは、0、1、または2であり、
tは、0、1、または2であり、および
追加の条件は、sとtとが同時に0ではないことを特徴とする、前記融合タンパク質。
【請求項2】
第1の標的ペプチドおよび/または第2の標的ペプチドは、非天然アミノ酸を有するタンパク質であることを特徴とする
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記β-フォールディングユニットは、蛍光タンパク質のβ-フォールディングユニットu1、u2、u3、u4、u5、u6、u7、u8、u9、u10およびu11からなる群から選択されることを特徴とする
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記A1-(X)nは、SEQ ID NO.:14、15、16、17、22、23、24、26、27、28、29または30に示されるようなアミノ酸配列を有することを特徴とする
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記任意の二つのβ-フォールディングユニットの間には、可撓性リンカーIがあり、かつ前記可撓性リンカーIには、第3の制限酵素切断部位が含まれることを特徴とする
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
単離されたオリゴヌクレオチドであって、
前記オリゴヌクレオチドは、請求項1に記載の融合タンパク質をコードすることを特徴とする、前記単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
ベクターであって、前記ベクターは、請求項6に記載のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、前記ベクター。
【請求項8】
宿主細胞であって、
前記宿主細胞は、請求項7に記載のベクターを含むか、または染色体に請求項6に記載の外因性オリゴヌクレオチドが統合されるか、または請求項1に記載の融合タンパク質を発現することを特徴とする、前記宿主細胞。
【請求項9】
タンパク質を調製する方法であって、
前記方法は、
請求項8に記載の宿主細胞を培養することにより、請求項1に記載の融合タンパク質を得る段階(a)を含むことを特徴とする、前記タンパク質を調製する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の融合タンパク質、または請求項6に記載のオリゴヌクレオチド、または請求項7に記載のベクター、または請求項8に記載の宿主細胞の使用であって、
前記融合タンパク質は、標的ポリペプチドの発現および調製に用いられることを特徴とする、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術の分野に関し、具体的には、蛍光タンパク質フラグメントを含む融合タンパク質およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドは、生体分子の一種であり、多くの生物医学研究分野で試薬、疾病の治療における治療薬として、病原菌の検出における診断剤およびバイオマーカーとして広く使用される。ペプチドを合成する方法は、通常二つがあり、一つは、化学合成であり、もう一つは、組換え発現である。化学合成は、コルチレリン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)とその誘導体であるエクセナチドおよびリラグルチド、エンフビルチド、カルシトニン、ビバリルジン(bivalirudin)、ジコノチド、セルモレリン、ソマトレリン(somatorelin)、セクレチン、テデュグルチドならびにインスリンを含む、様々な治療性ペプチドを調製するために使用されてきた。当該方法は、ペプチドを形成するためにアミノ酸フラグメントの多段階の縮合が必要であり、同時に面倒な保護、脱保護および精製等の段階も必要である。これまでのところ、50アミノ酸残基未満のほとんどの市販ペプチドは、このような方法で製造される。製薬業界や生物医学研究におけるペプチドの需要が増加し続けるにつれて、化学合成用のアミノ酸フラグメントの価格も上昇し続けている。従って、GLP-1類似体等の日常で使用される治療性ペプチド薬物は、将来的に手頃な価格を維持することは困難である。50アミノ酸残基未満のペプチドを化学的に合成することは、技術的には可能であるが、より低い収量および合成プロセスに生成される大量の有機廃棄物は、非常に不経済である。現在、50アミノ酸残基を超えるほとんどのペプチドは、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物等の細胞宿主で組換え発現される。長年にわたり、融合タンパク質を使用してポリペプチドを発現させる方法は、ずっとより一般的な方法である。しかし、ペプチド発現に使用される現在利用可能な融合タンパク質法は、特に50アミノ酸残基未満のペプチドを生成する方法について、多くの技術的問題が存在する。例えば、従来技術の融合タンパク質では、分子量が大きく、疎水性が強く、分離が難しく、標的タンパク質の比重が低く、融合比が低く、構造が安定し、切断が困難であり、サンプルイオンカラム、疎水性カラムデッドボリュームが多い。
【0003】
従って、既存の融合タンパク質の限界を克服すると同時に、BOC-リジンタンパク質等の非天然アミノ酸タンパク質の収量を増加させる等、挿入された非天然アミノ酸タンパク質の収量を増加させることができる、標的ペプチドを発現させるための新しい融合タンパク質を開発することが非常に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、BOC-リジンタンパク質等の非天然アミノ酸タンパク質の収量を増加させるような、挿入された非天然アミノ酸タンパク質の収量を増加させることができる、標的ペプチドを発現させるための新しい融合タンパク質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、融合タンパク質を提供し、前記融合タンパク質は、式Iに示される構造を含み、
(P1-L1)s-A1-(X)n-A2-(L2-P2)t(I)
式において、
「-」は、ペプチド結合または接続ペプチドであり、
各P1は、それぞれ独立して、第1の標的ペプチドであり、
各P2は、それぞれ独立して、第2の標的ペプチドであり、
各L1は、それぞれ独立して、なしまたは第1の接続ペプチドであり、
各L2は、それぞれ独立して、なしまたは第2の接続ペプチドであり、
A1は、なしまたはシグナルペプチドであり、
A2は、なしまたはシグナルペプチドであり、
各Xは、独立して、蛍光タンパク質の単一のβ-フォールディングユニットであり、
nは、1~8の正の整数であり、
sは、0、1、または2であり、
tは、0、1、または2であり、および
追加の条件は、sとtとが同時に0ではない。
【0006】
別の好ましい例において、sは、0であり、tは、1である。
別の好ましい例において、sは、1であり、tは、0である。
別の好ましい例において、前記nは、1~6であり、好ましくは、nは、2~4である。
別の好ましい例において、前記A1は、シグナルペプチドであり、A2は、なしである。
【0007】
別の好ましい例において、前記β-フォールディングユニットは、蛍光タンパク質のβ-フォールディングユニットu1、u2、u3、u4、u5、u6、u7、u8、u9、u10およびu11からなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記各Xの長さは、10~14aaである。
別の好ましい例において、各Xは、異なる。
【0008】
別の好ましい例において、各Xは、同じである。
別の好ましい例において、前記蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質遺伝子(CFP)、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)である。
【0009】
別の好ましい例において、前記GFPは、SEQ ID NO.:13に示されるようなアミノ酸配列を有する。
別の好ましい例において、前記任意の二つのβ-フォールディングユニットの間には、可撓性リンカーIを有するか、または有さない。
別の好ましい例において、前記(X)nは、タンパク質発現促進要素として機能する。
【0010】
別の好ましい例において、前記(X)nの全長Lnは、蛍光タンパク質の全長L0の3.7~30%、好ましくは7.5~20.5%、より好ましくは7.5~15.5%である。
別の好ましい例において、前記Xは、
SEQ ID NO.:jに示されるアミノ酸配列を有するujからなる群から選択され、
ここで、jは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11である。
【0011】
別の好ましい例において、前記Xは、次のグループからなる群から選択される。
【表1】
【0012】
別の好ましい例において、前記Xは、SEQ ID NO.:1~11に示されるような配列のいずれかにおけるR、K、Hの相互置換によって生成されるアミノ酸配列をさらに含み、および/または
前記Xは、SEQ ID NO.:1~11に示されるような配列のいずれかにおけるP、Qの相互置換によって形成されるアミノ酸配列をさらにふくみ、および/または
前記Xは、SEQ ID NO.:1~11に示されるような配列のいずれかにおけるT、Sの相互置換によって形成されるアミノ酸配列をさらに含む。
【0013】
別の好ましい例において、前記Xは、
(A)SEQ ID NO:1~11のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(B)SEQ ID NO:1~11のいずれかに示されるアミノ酸配列と≧80%の相同性(好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、最も好ましくは≧97%の相同性)を有し、かつ前記特性を保持するポリペプチド、および
(C)SEQ ID NO:1~11のいずれかに示されるアミノ酸配列に1~5アミノ酸残基を置換、欠失または付加することにより形成され、かつ前記特性を保持する誘導ポリペプチドからなる群から選択される。
【0014】
別の好ましい例において、前記(X)nは、u8、u9、u2-u3、u4-u5、u8-u9、u1-u2-u3、u2-u3-u4、u3-u4-u5、u5-u6-u7、u8-u9-u10、u9-u10-u11、u3-u5-u7、u3-u4-u6、u4-u7-u10、u6-u8-u10、u1-u2-u3-u4、u2-u3-u4-u5、u3-u4-u3-u4、u3-u5-u7-u9、u5-u6-u7-u8、u1-u3-u7-u9、u2-u2-u7-u8、u7-u2-u5-u11、u3-u4-u7-u10、u1-I-u2、u1-I-u5、u2-I-u4、u3-I-u8、u5-I-u6、またはu10-I-u11である。
【0015】
別の好ましい例において、前記A1またはA2は、SEQ ID NO.:12(MVSKGEELFTGV)に示されるようなアミノ酸配列を有する。
別の好ましい例において、前記A1-(X)nは、SEQ ID NO.:14、15、16、17、22、23、24、26、27、28、29または30に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0016】
別の好ましい例において、第1の接続ペプチドは、第1の制限酵素切断部位(例えば、TEV制限酵素切断部位)を含む。
別の好ましい例において、第2の接続ペプチドは、第2の制限酵素切断部位を含む。
別の好ましい例において、前記可撓性リンカーIは、第3の制限酵素切断部位を含む。
【0017】
別の好ましい例において、前記第3の制限酵素切断部位は、EK酵素制限酵素切断部位(配列DDDDKに示されるように、SEQ ID NO.:25)である。
別の好ましい例において、前記(X)nは、u1-EK-u2、u1-EK-u5、u2-EK-u4、u3-EK-u8、u5-EK-u6、またはu10-EK-u11であり、ここで、EKは、EK酵素制限酵素切断部位である。
【0018】
別の好ましい例において、前記第1、第2および第3の制限酵素切断部位は、互いに異なる。
別の好ましい例において、前記第1、第2および第3の制限酵素切断部位のうちの二つまたは三つは、同じである。
別の好ましい例において、P1およびP2のそれぞれに前記第1、第2および第3の制限酵素切断部位は存在しない。
【0019】
別の好ましい例において、前記第1の接続ペプチドおよび/または第2の接続ペプチドは、第1、第2および第3の制限酵素切断部位とは異なる制限酵素切断部位をさらに含む。
別の好ましい例において、前記第1の接続ペプチドおよび/または第2の接続ペプチドは、トリプシン制限酵素切断部位を含み、好ましくは、前記第1の接続ペプチドおよび/または第2の接続ペプチドは、少なくとも一つのアルギニン(R)またはリジン(K)を含む。
【0020】
別の好ましい例において、前記第1の接続ペプチドのN末端のアミノ酸は、ArgまたはLysである。
別の好ましい例において、前記第2の接続ペプチドのC末端のアミノ酸は、ArgまたはLysである。
別の好ましい例において、前記第1の接続ペプチドおよび/または第2の接続ペプチドは、タバコエッチウイルスプロテアーゼ識別配列を含む。
【0021】
別の好ましい例において、前記第1の接続ペプチドおよび/または第2の接続ペプチドは、SEQ ID NO.:18に示されるようなアミノ酸配列を有する。
別の好ましい例において、前記第1の接続ペプチドおよび/または第2の接続ペプチドは、発現および/または精製を支援するタグ配列をさらに含む。
別の好ましい例において、前記タグ配列は、ヒスチジンタグ、好ましくは6×HISタグである。
【0022】
別の好ましい例において、前記P1およびP2は、それぞれ独立して、ヒトインスリン前駆体タンパク質、インスリンリスプロの前駆体タンパク質、インスリングラルギンの前駆体タンパク質、副甲状腺ホルモン、コルチレリン、カルシトニン、ビバリルジン(bivalirudin)、グルカゴン様ペプチドとその誘導体であるエクセナチドおよびリラグルチド、ジコノチド、セルモレリン、ソマトレリン(somatorelin)、セクレチン、テデュグルチド、ヒルジン、成長ホルモン、成長因子、成長ホルモン放出因子、コルチコトロピン、放出因子、デセレリン、デスモプレシン、カルシトニン、グルカゴン、ロイプロリド、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、トリプトレリン、血管作用性腸ペプチド、インターフェロン、副甲状腺ホルモン、BH3ペプチド、アミロイドペプチド、または上記各ペプチドのフラグメント、またはその組み合わせから選択され、好ましくは、上記ポリペプチドであるが、これらに限定されない。
【0023】
別の好ましい例において、前記P1およびP2は、それぞれ独立して、非天然アミノ酸を含むタンパク質である。
別の好ましい例において、前記P1およびP2は、それぞれ独立して、長さが10~200個のアミノ酸の配列、好ましくは、長さが10~80個のアミノ酸の配列を有する。
別の好ましい例において、前記P1およびP2は、それぞれ独立して、プロインスリンまたはインスリンであり、好ましくはヒトプロインスリンまたはヒトインスリンである。
【0024】
別の好ましい例において、前記インスリンは、長時間作用型または速効型インスリンを含む。
別の好ましい例において、前記プロインスリン29位のリジンは、アルキニルオキシカルボニルリジン誘導体、BOC-リジン(tert―ブトキシカルボニル-L-リジン)誘導体、脂肪アシル化リジン、またはその組み合わせである。
【0025】
別の好ましい例において、前記プロインスリンは、SEQ ID NO:19または20に示されるアミノ酸配列を有する。
別の好ましい例において、前記標的ペプチドP2は、前記(X)nのC末端に位置(または接続)する。
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は、消化された後、第1の標的ペプチドおよび/または第2の標的ペプチドを形成する。
【0026】
別の好ましい例において、前記第1の標的ペプチドおよび第2の標的ペプチドは、同じであるか、または異なる。
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は、消化された後、第1の標的ペプチドおよび/または第2の標的ペプチドを形成し、前記(X)nは、第1の標的ペプチドおよび/または第2の標的ペプチドの長さLpよりもはるかに短い長さLxを有する短いペプチドに切断される。
【0027】
別の好ましい例において、前記各Lxは、1~25個のアミノ酸である。
別の好ましい例において、前記長さLxと長さLpとの比は、1/2~1/10、好ましくは1/3~1/8である。
別の好ましい例において、前記長さLpと長さLxとの差は1.3KDより大きい。
【0028】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は、A1-u8-L2-P2、A1-u9-L2-P2、A1-u2-u3-L2-P2、A1-u4-u5-L2-P2、A1-u8-u9-L2-P2、A1-u3-u5-u7-L2-P2、A1-u1-u2-u3-L2-P2、A1-u1-u2-u3-u4-L2-P2、A1-u3-u4-u6-L2-P2、A1-u4-u7-u10-L2-P2、A1-u3-u4-u7-u10-L2-P2、またはA1-u5-EK-u6-L2-P2からなる群から選択される構造を有する。
【0029】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO.:21に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0030】
本発明の第2の態様は、単離されたポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは、本発明の第1の態様に記載の融合タンパク質をコードする。
【0031】
本発明の第3の態様は、ベクターを提供し、前記ベクターは、本発明の第2の態様に記載のポリヌクレオチドを含む。
別の好ましい例において、前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記ベクターは、プラスミドであり、好ましくは、前記ベクターは、pBAD-HisAベクターおよび/またはpEvol-pBpFベクターである。
【0032】
本発明の第4の態様は、宿主細胞を提供し、前記宿主細胞は、本発明の第3の態様に記載のベクターを含むか、または染色体に本発明の第2の態様に記載の外因性ポリヌクレオチドが統合されるか、または本発明の第1の態様に記載の融合タンパク質を発現する。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、大腸菌、枯草菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞またはその組み合わせである。
別の好ましい例において、前記宿主細胞のいずれも、前記第1、第2および第3の制限酵素切断部位に対応するプロテアーゼを含まない。
【0033】
本発明の第5の態様は、タンパク質を調製する方法を提供し、前記方法は、
本発明の第4の態様に記載の宿主細胞を培養することにより、本発明の第1の態様に記載の融合タンパク質を得る段階(a)を含む。
別の好ましい例において、前記方法は、段階(a)で得られた融合タンパク質を精製する段階(b)をさらに含む。
【0034】
別の好ましい例において、前記方法は、本発明の第1の態様に記載の融合タンパク質をタンパク質分解消化して、前記融合タンパク質から前記標的ペプチドを放出する段階をさらに含む。
別の好ましい例において、前記段階(c)において、本発明の第1の態様に記載の融合タンパク質をプロテアーゼで消化して、消化された生成物を得、および任意選択で
(d)消化生成物から前記標的ペプチドを分離または精製する。
別の好ましい例において、前記精製は、ゲルろ過またはHPLCによる前記標的ペプチドのさらなる精製を含む。
【0035】
本発明の第6の態様は、前記融合タンパク質が標的ペプチドの発現および調製に使用される、本発明の第1の態様に記載の融合タンパク質、または本発明の第2の態様に記載のポリヌクレオチド、または本発明の第3の態様に記載のベクター、または本発明の第4の態様に記載の宿主細胞の用途を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】ジスルフィド結合を正しく形成する成熟インスリンの構造を示す。
【
図2】組換えヒトインスリン融合タンパク質発現プラスミドマップを示す。
【
図3】組換えヒトインスリン融合タンパク質の模式図を示す。
【0038】
【
図5】組換え融合タンパク質の発現を示す。レーン1は、A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS融合タンパク質の発現であり、分子量は、11.2kDであり、レーン2は、A1-u4-u5-TEV-R-GLP1融合タンパク質の発現であり、分子量は、8.7kDであり、レーン3は、A1-u8-TEV-R-MiniINS融合タンパク質の発現であり、分子量は、10.0kDであり、レーン4は、A1-u3-u5-u7-TEV-R-MiniINS融合タンパク質の発現であり、分子量は、12.2kDであり、レーン5は、A1-u5-EK-u6-TEV-R-MiniINS融合タンパク質の発現であり、分子量は、12.0kDであり、Mは、タンパク質の分子量標準である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明者らは、広範囲にわたる詳細な研究の後、標的ペプチドの発現に適した新しい融合タンパク質を初めて得た。本発明の融合タンパク質中の(X)nまたはA1-(X)nは、融合標的ペプチドのフォールディングおよび発現を促進することができ、融合タンパク質の収率および溶解性を向上させ、かつ融合タンパク質の分子間相互作用を減少させることにより、融合標的ペプチドを商業的意義を有する高濃度下でフォールディングすることができる。また、前記融合タンパク質中の(X)nまたはA1-(X)nは、標的ペプチドの長さよりもはるかに短い長さの複数の短いペプチドに切断することができ、標的ペプチドからの分離をより助長するため、標的ペプチドの精製は、より便利である。これに基づいて、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0040】
用語
本発明を説明する前に、本発明は、記載された具体的な方法および実験条件に限定されないことを理解されたく、そのような方法および条件は、変化し得るからである。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明することのみを意図し、限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。
【0041】
別に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書で使用されるように、具体的に記載された数値に関して使用される場合、「約」という用語は、当該値が記載された値から1%以下しか変化できないことを意味する。例えば、本明細書で使用されるように、「約100」という用語は、99~101の間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0042】
本明細書で使用されるように、「含有」または「包括(含む)」という用語は、開放式、半閉鎖式および閉鎖式であり得る。言い換えれば、前記用語も、「基本的にからなる」、または「からなる」を含む。
本発明で使用されるアミノ酸の3文字コードおよび1文字コードは、J.biol.chem、243、p3558(1968)に記載されるとおりである。
本明細書で使用されるように、「任意選択」または「任意選択で」という用語は、後述する事件または状況が発生する可能性があるが、発生する必要はないことを意味する。
【0043】
本発明に記載の「配列同一性」は、適切な交換、挿入または欠失等の突然変異を有する状況下で最適と比較される場合の二つの核酸または二つのアミノ酸配列の間の同一性程度を指す。本発明中に記載の配列とその同一性を有する配列の間の配列同一性は、少なくとも85%、90%または95%、好ましくは少なくとも95%であり得る。非限定的な実施例としては、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%を含む。
【0044】
融合タンパク質
本明細書で使用されるように、「本発明の融合タンパク質」、「組換え融合タンパク質」または「ポリペプチド」は、すべて本発明の第1の態様に記載の融合タンパク質を指す。
具体的には、本発明の前記融合タンパク質は、式Iに示される構造を含み、
(P1-L1)s-A1-(X)n-A2-(L2-P2)t(I)
式において、
「-」は、ペプチド結合または接続ペプチドであり、
各P1は、それぞれ独立して、第1の標的ペプチドであり、
各P2は、それぞれ独立して、第2の標的ペプチドであり、
各L1は、それぞれ独立して、なしまたは第1の接続ペプチドであり、
各L2は、それぞれ独立して、なしまたは第2の接続ペプチドであり、
A1は、なしまたはシグナルペプチドであり、
A2は、なしまたはシグナルペプチドであり、
各Xは、独立して、蛍光タンパク質の単一のβ-フォールディングユニットであり、
nは、1~8の正の整数であり、
sは、0、1、または2であり、
tは、0、1、または2であり、および
追加の条件は、sとtとが同時に0ではない。
【0045】
別の好ましい例において、前記蛍光タンパク質は、GFPであり、好ましくは、前記GFPのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:13に示されるようなアミノ酸配列(241個のAA)を有する。
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVRGEGEGDATNGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKRHDFFKSAMPEGYVQERTISFKDDGTYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNFNSHNVYITADKQKNGIKANFKIRHNVEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSVLSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITHGMDELYAGS(SEQ ID NO.:13)
【0046】
ここで、上記配列において、下線が引かれた部分は、順次に蛍光タンパク質のβ-フォールディングユニットu1、u2、u3、u4、u5、u6、u7、u8、u9、u10およびu11である。
【0047】
別の好ましい例において、前記(X)nは、u8、u9、u2-u3、u4-u5、u8-u9、u1-u2-u3、u2-u3-u4、u3-u4-u5、u5-u6-u7、u8-u9-u10、u9-u10-u11、u3-u5-u7、u3-u4-u6、u4-u7-u10、u6-u8-u10、u1-u2-u3-u4、u2-u3-u4-u5、u3-u4-u3-u4、u3-u5-u7-u9、u5-u6-u7-u8、u1-u3-u7-u9、u2-u2-u7-u8、u7-u2-u5-u11、u3-u4-u7-u10、u1-I-u2、u1-I-u5、u2-I-u4、u3-I-u8、u5-I-u6、またはu10-I-u11である。
【0048】
別の好ましい例において、前記(X)n中の各X(uj)の間には、可撓性リンカーIを有するか、または有さなく、好ましくは可撓性リンカーIを有する。
別の好ましい例において、前記可撓性リンカーIは、第3の制限酵素切断部位を含む。
別の好ましい例において、前記可撓性リンカーIは、EK酵素制限酵素切断部位(DDDDK)を含む。
【0049】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は、消化された後、第1の標的ペプチドおよび/または第2の標的ペプチドを形成し、前記(X)nは、第1の標的ペプチドおよび/または第2の標的ペプチドの長さLpよりもはるかに短い長さLxを有する短いペプチドに切断される。
別の好ましい例において、前記A1-(X)nは、A1-u8、A1-u9、A1-u2-u3、A1-u4-u5、A1-u8-u9、A1-u3-u5-u7、A1-u1-u2-u3、A1-u1-u2-u3-u4、A1-u3-u4-u6、A1-u4-u7-u10、A1-u3-u4-u7-u10、またはA1-u5-EK-u6である。
【0050】
別の好ましい例において、前記A1-(X)nは、SEQ ID NO.:14、15、16、17、22、23、24、26、27、28、29または30に示されるようなアミノ酸配列を有する。
A1-u8配列:
MVSKGEELFTGVGIKANFKIRHNVED(SEQ ID NO.:23)
A1-u9配列:
MVSKGEELFTGVVQLADHYQQNTPIG(SEQ ID NO.:17)
【0051】
A1-u2-u3配列:
MVSKGEELFTGVHKFSVRGEGEGDATKLTLKFICTT(SEQ ID NO.:24)
A1-u4-u5配列:
MVSKGEELFTGVYVQERTISFKDTYKTRAEVKFEGD(SEQ ID NO.:16)
【0052】
A1-u3-u5-u7配列:
MVSKGEELFTGVKLTLKFICTTTYKTRAEVKFEGDHNVYITADKQ(SEQ ID NO.:15)
u8-u9配列(A1は、なしである):
GIKANFKIRHNVEDVQLADHYQQNTPIG(SEQ ID NO.:14)
【0053】
A1-u5-EK-u6配列:
MVSKGEELFTGVTYKTRAEVKFEGDDDDDKTLVNRIELKGIDF(SEQ ID NO.:22)
A1-u1-u2-u3配列:
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVRGEGEGDATKLTLKFICTT(SEQ ID NO.:26)
【0054】
A1-u1-u2-u3-u4配列:
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVRGEGEGDATKLTLKFICTTYVQERTISFKD(SEQ ID NO.:27)
A1-u3-u4-u6配列:
MVSKGEELFTGVKLTLKFICTTYVQERTISFKDTLVNRIELKGIDF(SEQ ID NO.:28)
【0055】
A1-u4-u7-u10配列:
MVSKGEELFTGVYVQERTISFKDHNVYITADKQHYLSTQSVLSKD(SEQ ID NO.:29)
A1-u3-u4-u7-u10配列:
MVSKGEELFTGVKLTLKFICTTYVQERTISFKDHNVYITADKQHYLSTQSVLSKD(SEQ ID NO.:30)
【0056】
別の好ましい例において、前記第1の接続ペプチドおよび/または第2の接続ペプチドは、SEQ ID NO.:18(ENLYFQGR)に示されるようなアミノ酸配列を有する。
別の好ましい例において、前記プロインスリンは、SEQ ID NO:19または20に示されるアミノ酸配列を有する。
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKTRREAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQKRGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(SEQ ID NO.:19)
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKTRGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(SEQ ID NO.:20)
【0057】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO.:21に示されるようなアミノ酸配列を有する。
MVSKGEELFTGVYVQERTISFKDTYKTRAEVKFEGDENLYFQGRFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKTRGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(SEQ ID NO.:21)
【0058】
本明細書で使用されるように、「融合タンパク質」という用語は、上記活性を有する変異形態をさらに含む。これらの変異形態は、1~3個(通常は、1~2個、より好ましくは1個)のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端での一つまたは複数(通常は、3個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下)のアミノ酸の付加または欠失を含む(これらに限定されない)。例えば、この分野において、性能が近いか、または類似なアミノ酸で置換する場合、通常、タンパク質の機能を変更しない。別の例として、C末端および/またはN末端で一个または複数のアミノ酸を付加または欠失しても、通常、タンパク質の構造および機能を変化しない。さらに、前記用語は、単量体和多量体の形態の本発明のポリペプチドをさらに含む。当該用語は、線形および非線形のポリペプチド(例えば、環状ペプチド)をさらに含む。
【0059】
本発明は、上記融合タンパク質の活性フラグメント、誘導体および類似体をさらに含む。本明細書で使用されるように、「フラグメント」、「誘導体」および「類似体」という用語は、本発明の融合タンパク質の機能または活性を実質的に保持するポリペプチドを指す。本発明のポリペプチドフラグメント、誘導体または類似体は、(i)一つまたはいくつかの保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド、または(ii)一つまたは複数のアミノ酸残基に置換基を有するポリペプチド、または(iii)ポリペプチドと別の化合物(例えば、ポリエチレングリコールなどのポリペプチドの半減期を延長する化合物)との融合によって形成されたポリペプチド、または(iv)付加されたアミノ酸配列がこのポリペプチド配列に融合することによって形成されたポリペプチド(リーダー配列、分泌配列または6His等のタグ配列を融合することによって形成された融合タンパク質)であり得る。本明細書の教示によれば、これらのフラグメント、誘導体および類似体は、当業者の周知の範囲内にある。
【0060】
好ましいタイプの活性誘導体とは、本発明のアミノ酸配列と比較して、最大で3個、好ましくは最大で2個、より好ましくは最大で1個のアミノ酸が近いまたは類似な特性を有するアミノ酸に置き換えられてポリペプチドを形成することを指す。これらの保存的変異体ポリペプチドは、最も好ましくは、表Aに従って、アミノ酸を置き換えられて生成される。
【表2】
【0061】
本発明は、本発明の融合タンパク質の類似体をさらに提供する。これらの類似体と本発明のポリペプチドの違いは、アミノ酸配列の違い、配列に影響を及ぼさない修飾形態の違い、またはその両方であり得る。類似体は、天然L-アミノ酸(例えば、D-アミノ酸)とは異なる残基を有する類似体、および天然に存在しないまたは合成のアミノ酸(例えば、β、γ-アミノ酸)を有する類似体をさらに含む。本発明のポリペプチドは、上述で例示された代用的なポリペプチドに限定されないことを理解されたい。
【0062】
さらに、本発明の融合タンパク質に対して修飾することもできる。修飾(通常は、一次構造を変更しない)形態は、アセチル化またはカルボキシル化等の、インビボまたはインビトロでのポリペプチドの化学的誘導形態を含む。修飾は、例えば、ポリペプチドの合成および加工中、またはさらなる加工段階中にグリコシル化修飾によって生成されたポリペプチド等のグリコシル化をさらに含む。このような修飾は、ポリペプチドをグリコシル化を実行する酵素(例えば、哺乳動物のグリコシラーゼまたはデグリコシラーゼ)に曝露することによって達成することができる。修飾形態は、リン酸化されたアミノ酸残基(例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、ホスホスレオニン)を有する配列をさらに含む。修飾されることによりその抗タンパク質加水分解性能を向上させるか、または溶解性能を最適化されるポリペプチドをさらに含む。
【0063】
「本発明の融合タンパク質をコードポリヌクレオチド」という用語は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、または付加のコード配列および/または非コード配列をさらに含む、ポリヌクレオチドであり得る。
【0064】
本発明は、本発明と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは融合タンパク質のフラグメント、類似体および誘導体をコードする、上記ポリヌクレオチドの変異体にさらに関する。これらのヌクレオチド変異体は、置換変異体、欠失変異体および挿入変異体を含む。当技術分野で知られているように、対立遺伝子変異体は、ポリヌクレオチドの代替形態であり、一つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または挿入であり得るが、コードする融合タンパク質の機能を実質的に変化させる機能はない。
【0065】
本発明は、上記配列とハイブリダイズし、かつ二つの配列の間で少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の相同性を有するポリヌクレオチドにさらに関する。本発明は、ストリンジェントな条件(または厳密な条件)下で本発明の前記ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドに特に関する。本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、(1)0.2×SSC、0.1%SDS、60℃のようなより低いイオン強度およびより高い温度下でのハイブリダイゼーションおよび溶出、または(2)ハイブリダイゼーション中に、ハイブリダイズする場合、50%(v/v)ホルムアミド、0.1%子牛血清/0.1%フィコール(Ficoll)、42℃等の変性剤を加え、または(3)二つの配列の間の相同性が少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上である場合にのみハイブリダイゼーションが起こる。
【0066】
本発明の融合タンパク質およびポリヌクレオチドは、好ましくは、単離された形態で提供され、より好ましくは,均一に精製される。
【0067】
本発明のポリヌクレオチドの全長配列は、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成法によって得られることができる。PCR増幅法の場合、本発明に開示される関連ヌクレオチド配列、特に開放式リーディングフレーム配列に従ってプライマーを設計することができ、市販のcDNAライブラリーまたは当業者に知られている従来の方法によって調製されたcDNAライブラリーを関連配列を増幅するためのテンプレートとして使用する。配列が長い場合、常に2回または複数回のPCR増幅を実行してから、毎回増幅されたフラグメントを正しい順序でつなぎ合わせる必要があることがよくある。
【0068】
関連する配列が得られたら、組換え法を使用して、関連配列を大量に得ることができる。これは、通常、それをベクターにグローニングし、次に細胞に移し、次に従来の方法によって増殖した宿主細胞から関連配列を単離することによって行われる。
さらに、特にフラグメントの長さが短い場合、人工合成法を使用して、関連配列を合成することもできる。通常、まず複数の小さなフラグメントを合成し、次に接続して非常に長い配列のフラグメント取得する。
【0069】
現在、完全に化学合成によって、本発明のタンパク質(またはそのフラグメント、またはその誘導体)をコードするDNA配列を得ることができる。次に、当該DNA配列を当技術分野で知られている様々な既存のDNA分子(またはベクター等)および細胞に導入することができる。
PCR技術を使用してDNA/RNAを増幅する方法は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドを得るために使用される。特に、ライブラリーから全長cDNAを取得することが困難な場合、RACE法(RACE-cDNA末端休息増幅法)を好ましく使用することができ、PCRに使用されるプライマーは、本明細書に開示される本発明の配列情報に基づいて、適切に選択されることができ、そして従来の方法によって合成されることができる。ゲル電気泳動のような従来の方法で増幅されたDNA/RNAフラグメントを分離および生成することができる。
【0070】
発現ベクター
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、および本発明のベクターまたは本発明の融合タンパク質コード配列を使用して遺伝子工学によって作成された宿主細胞、および組換え技術を介して本発明の前記ポリペプチドを生成する方法にも関する。
従来の組換えDNA技術を通じて、本発明のポリヌクレオチド配列を使用して、組換え融合タンパク質を発現または精製することができる。
【0071】
一般的には、
(1)本発明の融合タンパク質をコードする本発明のポリヌクレオチド(または変異体)を使用するか、または当該ポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを使用して、適切な宿主細胞を形質転換または形質導入する段階と、
(2)適切な培地で宿主細胞を培養する段階と、
(3)培地または細胞からタンパク質を分離および精製する段階とを含む。
【0072】
本発明において、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、組換え発現ベクターに挿入されることができる。「組換え発現ベクター」という用語は、当技術分野で知られている細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、アデノウイルス等の哺乳動物細胞ウイルス、レトロウイルスまたは他のベクターを指す。宿主体内で複製および安定化できる限り、任意のプラスミドおよびベクターを使用することができる。発現ベクターの重要な特徴は、通常、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子および翻訳制御要素を含む。
【0073】
当業者に周知の方法はを使用して、本発明の融合タンパク質をコードするDNA配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術、DNA合成技術、インビボ組換え技術等を含む。前記DNA配列は、発現ベクター内の適切なプロモーターに効果的に接続して、mRNA合成をガイドすることができる。これらのプロモーターの代表的な例としては、大腸菌のlacまたはtrpプロモーター、λファージPLプロモーター、真核プロモーター包括CMV最初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、レトロウイルスのLTRsおよび原核生物または真核生物の細胞またはウイルスにおける遺伝子発現を抑制できる他のいくつかの既知のプロモーターを含む。発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターを含む。
【0074】
さらに、発現ベクターは、好ましくは、真核細胞培養用のジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性および緑色蛍光タンパク質(GFP)、または大腸菌用のテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性等の形質転換宿主細胞を選択するための表現型特性を提供する、一つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子を含む。
上記の適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターを使用して、タンパク質を発現できるように適切な宿主細胞を形質転換することができる。
【0075】
宿主細胞は、細菌細胞等の原核細胞、または酵母細胞等の下等真核細胞、または哺乳動物細胞等の高等真核細胞であり得る。代表的な例としては、大腸菌、ストレプトマイセス、サルモネラチフィムリウムの細菌細胞、酵母や植物細胞等の真菌細胞(ジンセン細胞等)がある。
【0076】
本発明のポリヌクレオチドが高等真核細胞で発現される場合、ベクターにエンハンサー配列が挿入されると、転写が増強される。エンハンサーは、DNAのシス作用因子であり、通常、約10~300個の塩基対であり、プロモーターに作用して遺伝子の転写を増強する。引用できる例としては、複製開始点の後側にある100~270個の塩基対のSV40エンハンサー、複製開始点の後側にあるポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサー等を含む。
【0077】
当業者は、適切なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび宿主細胞を選択する方法を知っている。
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技術によって実施することができる。宿主が大腸菌等の原核生物である場合、指数関数的成長期の後にDNAを吸収できるコンピテント細胞を取得することができ、CaCl2法で処理し、使用される段階は当技術分野でよく知られている。別の方法は、MgCl2を使用することである。必要に応じて、形質転換は、エレクトロポレーション法によって行われる。宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム包装等のDNAトランスフェクション法を選択することができる。
【0078】
得られた形質転換体を従来の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現させることができる。使用される宿主細胞に応じて、培養に使用される培地は、様々な従来の培地から選択することができる。宿主細胞の増殖に適した条件下で培養を実施する。宿主細胞が適切な細胞密度まで増殖した後、適切な方法(例えば、温度変換または化学的誘導)によって選択されたプロモーターを誘導し、細胞を一定期間培養する。
【0079】
上記の方法における組換えポリペプチドは、細胞内または細胞膜上で発現され得るか、または細胞外に分泌され得る。必要に応じて、物理的、化学的およびその他の特性を使用して、様々な分離方法で組換えタンパク質を分離および生成することができる。これらの方法は、当業者によく知られている。これらの方法の例としては、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧滅菌、超処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および他の様々な液体クロマトグラフィー技術ならびにこれらの方法の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0080】
インスリンの合成
インスリンは、既知のアミノ酸配列と構造的特徴が明確に定義されたペプチドであり、二つのアミノ酸鎖の合計51個のアミノ酸残基を有するタンパク質である。当該ホルモンは、A鎖(21個のアミノ酸)およびB鎖(30個のアミノ酸)の二つの独立したペプチド鎖を含み、二つのアミノ酸鎖には、合計6個のシステイン残基があり、各鎖の二つのシステイン残基は、ジスルフィド結合によって互いに接続される。統計的な観点から、一つのヒトインスリン分子内で形成されたジスルフィド結合には、15の可能性がある。しかし、これらの15の可能性のうちの一つだけが生物学的活性を有するヒトインスリンに存在し、そのジスルフィド結合は、1)A6-A11、2)A7-B7、3)A20-B19である。プロインスリンは、インスリンの生物学的前駆体であり、A鎖とB鎖とをCペプチドで接続して形成された一本鎖ペプチドである。インスリンの二つのペプチド鎖は、ジスルフィド結合によって結合される(
図1)。
【0081】
インスリンは、ブドウ糖等の内因性物質によって刺激された膵島細胞によって分泌されるタンパク質ホルモンである。膵島細胞によって最初に分泌されるのは、84個のアミノ酸からなる長鎖ポリペプチド-プロインスリンである。プロインスリンは、特定のプロテアーゼ-プロインスリン変換酵素PC1とPC2およびカルボキシペプチダーゼE(CPE)の作用により、プロインスリンの中央部分(C鎖)を切断し、プロインスリンのカルボキシル基部分(A鎖)およびアミノ基部分(B鎖)は、ジスルフィド結合によって結合してインスリンを形成する。成熟したインスリンは、膵島細胞内の分泌小胞に貯蔵され、亜鉛イオンと協調して六量体を形成する。外部の刺激下で、インスリンは、分泌小胞とともに血液中に放出され、かつその生理学的効果を発揮する。1型糖尿病の患者は、自体の膵島細胞のインスリン生成能力が破壊されたため、自体の血糖調節能力を失う。
【0082】
現在、「鎖の組み合わせ」経路および「プロインスリン」経路の二つの経路は、様々なタイプの商業的組換えヒトインスリンの生産に使用される。「鎖の組み合わせ」経路において、インスリンを構成する二つのペプチド鎖-A鎖およびB鎖は、それぞれ生物学的組換えによって、別々に合成され、次にA鎖およびB鎖を混合してジスルフィド結合を生成して、生物学的活性を有するヒトインスリンを生成する。しかしながら、二つのペプチド鎖を直接混合して生物学的活性を有するヒトインスリンを生成する効率は、比較的に低く、最終的な収率は、わずか約7%である。現在、このような方法は、徐々に第2の経路-「プロインスリン」経路に置き換えられる。「プロインスリン」経路の場合、インスリンB鎖、C鎖およびA鎖で構成されるプロインスリンは、最初に大腸菌または酵母内で発現され、精製後にインビトロで再生される。再生されたプロインスリンは、トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで加水分解および消化して、天然活性を有するヒトインスリンを得る。「プロインスリン」経路において、トリプシンは、タンパク質中のリジンおよびアルギニンを特異的に識別し、かつリジンおよびアルギニンC末端でのペプチド結合を切断する。コンフォメーション上の理由により、プロインスリンの位置B22のアルギニンは、トリプシンによって加水分解されない。しかし、トリプシンは、インスリンの位置B29のリジンを識別および加水分解することにより、必然的に位置B30のスレオニンが除去されるインスリン副産物(DesB30-インスリン)が生成される。DesB30-インスリンの生成を減らすために、トリプシンの用量および反応時間を厳密に制御する必要がある。それにもかかわらず、一定量のDesB30-インスリンが生成される。DesB30-インスリンとインスリンとの間にはスレオニンの違いが一つしかないため、それらの間の分離は、非常に困難である。大規模な高速液体クロマトグラフィー法は、インスリンを分離するための業界で広く使用されるが、このような方法を使用してインスリンおよびDesB30-インスリンを分離すると、大量の産業廃棄物が発生し、既存の組換えヒトインスリンの製造コストが高くなる。
【0083】
本発明は、システインリッジが正しく接続されたヒトインスリンを取得するための組換え法を開発し、当該方法は、必要な段階が少ないため、より高い収量のヒトインスリンを得ることができる。
【0084】
化学的方法は、DNAフラグメントを合成し、当該DNAフラグメントは、SEQ ID NO.:21のアミノ酸配列からなる2β-TEV-R-MiniINSをコードする。当該DNAフラグメントをaraBADプロモーターによって調節される細菌発現ベクターにクローニングされる。2β-TEV-R-MiniINSを含む発現ベクターを大腸菌Top10菌株に形質転換し、組換え細胞を微量元素を含むLB培地で培養する。封入体から2β-TEV-R-MiniINS融合タンパク質を回収し、一定の条件下でフォールディングして、フォールディングされた2β-TEV-R-MiniINS融合タンパク質で形成されたジスルフィド結合は、正しくフォールディングされたヒトプロインスリン中のジスルフィド結合と同じであり、即ち、形成されたジスルフィド結合は、A6-A11、A7-B7およびA20-B19である。トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで分離された正しいフォールディング2β-TEV-R-MiniINS融合タンパク質を消化して、正しくフォールディングされたBoc-ヒトインスリンを形成する。疎水性クロマトグラフィーによって、Boc-ヒトインスリンを純度90%に精製する。次に、酸でBocを脱保護して、正しくフォールディングされたヒトインスリンを形成し、次に、逆相HPLCで精製する。N末端配列分析、分子量測定およびペプチドマッピング法を使用してこのように生成された純粋なヒトインスリンの性質を決定する。
【0085】
従来の技術と比較して、本発明は、主に以下の利点を有する。
1)本発明の融合タンパク質中のタンパク質発現促進要素は、融合タンパク質のフォールディングを促進することができる。
2)本発明のタンパク質発現促進要素は、可溶性融合タンパク質の溶解性を向上させ、かつ融合タンパク質の分子間相互作用を減少させることにより、融合タンパク質が商業的意義を有する高濃度下でフォールディングすることができる。
3)標的ペプチドを調製するプロセスにおいて、臭化シアンの分解、酸化亜硫酸縁の加水分解および関連する生成段階は必要ない。
【0086】
4)標的ペプチドを調製するプロセスにおいて、高濃度のチオールまたは疎水性吸着樹脂を使用する必要はない。
5)微生物宿主の細胞内分解から標的ペプチドを保護する。
6)標的タンパク質の比重が高く(融合比が増加する)、融合タンパク質中の(X)nまたはA1-(X)nは、プロテアーゼにより小さなフラグメントに消化され、標的タンパク質と比較して、分子量の違いが大きく、分離しやすい。
【0087】
7)本発明の融合タンパク質は、標的ペプチドの発現を促進することができ、標的ペプチドの発現レベルおよび収率は、有意に向上される。
8)本発明の融合タンパク質は、非天然アミノ酸を有する標的ペプチドを発現するのに非常に適しており、非天然アミノ酸を有する標的ペプチドのフォールディングを明らかに促進することができる。
【0088】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてされに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量パーセンテージおよび重量部数で計算される。
実施例において、標的ペプチドとしてヒトインスリンを例に使用されるが、これらに限定されない。
【0089】
実施例1.発現ベクターA1-u4-u5-TEV-R-MiniINSの構築
発現構築体A1-u4-u5-TEV-R-MiniINSは、ヒトインスリンタンパク質をコードする遺伝子を含み、前記タンパク質は、A1-u4-u5のC末端に融合する。A1-u4-u5とインスリンタンパク質MiniINSとの間の接続ペプチドは、オクタペプチドGlu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-Gly-Argである。当該オクタペプチドは、Argのカルボキシル基末端でトリプシンによって加水分解されることができ、Gln-Glyの間でTEVプロテアーゼによって加水分解されることもできる。当該オクタペプチドのDNA配列は、コドン最適化されて、大腸菌で機能性タンパク質の高レベルの発現を実現することができる。
【0090】
使用されるすべての融合組換えタンパク質フラグメントは、GenScript会社によって合成され、かつpUC57ベクターにロードされ、制限酵素NcoIおよびXhoIを使用して、合成ベクター「pUC57-A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS」から「A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS」をを切断し、同時に制限酵素NcoIおよびXhoIを使用して、発現ベクター「pBAD/His A(KanaR)」を切断し、消化された生成物は、アガロース電気泳動によって分離され、アガロースゲルDNA回収キットを使用して抽出し、最後にT4 DNAリガーゼを使用して二つのDNAフラグメントを接続する。前記接続生成物を大腸菌Top10細胞に形質転換し、前記形質転換された細胞を50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地(10g/Lの酵母ペプトン、5g/Lの酵母エキス、10g/LのNaCl、1.5%寒天)で一晩培養する。三つの生きたコロニーを選び、50μg/mLのカナマイシンを含む5mLの液体LB培地(10g/Lの酵母ペプトン、5g/Lの酵母エキス、10g/LのNaCl)で一晩培養し、少量のプラスミド抽出キットを使用してプラスミドを抽出する。次に、抽出されたプラスミドに対してシーケンシングする。最終的に得られたプラスミドは、「pBAD-A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS」と名付けられ、プラスミドマップおよび融合タンパク質の模式図は、それぞれ
図2および
図3に示される。
【0091】
実施例2.発現構築体A1-u4-u5-TEV-R-GLP1の構築
実施例1の方法のように、pUC57-A1-u4-u5-TEV-R-GLP1を構築および合成し、同時に制限酵素NcoIおよびXhoIで発現ベクター「pBAD/His A(KanaR)」を切断し、消化された生成物は、アガロース電気泳動によって分離され、アガロースゲルDNA回収キットを使用して抽出し、最後にT4 DNAリガーゼを使用して二つのDNAフラグメントを接続する。前記接続生成物を化学的方法で大腸菌Top10細胞に形質転換し、前記形質転換された細胞を50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地(10g/Lの酵母ペプトン、5g/Lの酵母エキス、10g/LのNaCl、1.5%寒天)で一晩培養する。三つの生きたコロニーを選び、50μg/mLのカナマイシンを含む5mLの液体LB培地(10g/Lの酵母ペプトン、5g/Lの酵母エキス、10g/LのNaCl)で一晩培養し、少量のプラスミド抽出キットを使用してプラスミドを抽出する。次に、前記抽出されたプラスミドをシーケンシングオリゴヌクレオチドプライマー5’-ATGCCATAGCATTTTTATCC-3’を使用してシーケンシングして、正しい挿入を確認する。最終的に得られたプラスミドは、「pBAD-A1-u4-u5-TEV-R-GLP1」と名付けられる。
【0092】
実施例3.A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS融合タンパク質の発現、分離および精製
SEQ ID NO.:21のアミノ酸配列を含むA1-u4-u5-TEV-R-MiniINSの融合フラグメントを発現させるためである。シーケンシングにより確認されたプラスミドpBAD-A1-u4-u5-TEV-R-MiniINSおよびピロリシンアミノアシルtRNAシンテターゼプラスミドpEvol-pylRs-pylT(ここで、ピロリシンアミノアシルtRNAシンテターゼプラスミドpEvol-pylRs-pylTは、特許出願番号2011103886241の実施例1に示されるように、アミノアシルtRNAシンテターゼおよびtRNAを発現するために使用される)を一緒に大腸菌株Top10に形質転換する。形質転換溶液を、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に一晩置く。単一のコロニーを選び、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB液体培地で一晩培養する。次に、前記一晩培養物を、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含む100mLのTB培地(液体TB培地:12g/Lの酵母ペプトン、24g/Lの酵母エキス、4mL/Lのグリセロール、4%KPP、0.3‰消泡剤。KPP溶液:23.1g/LのKH
2PO
4、125.4g/Lの無水K2HPO4)に接種し、OD
600が2~4になるまで37℃で培養する。次に、25%のアラビノース溶液を最終濃度0.25%になるまでに前記培地に加え、最終濃度が5mMになるまでに0.1Mのtert―ブトキシカルボニルリジン(BOC-リジン、BOCの構造は、
図4に示されるように)溶液を加えて、前記融合タンパク質の発現を誘導する。前記培養液を16~20時間連続培養した後、遠心分離(10000rpm、5min、4℃)して収集する。
【0093】
A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS融合タンパク質は、不溶性「封入体」の形態で発現される。封入体を放出するために、高圧ホモジナイザーで大腸菌細胞を破壊する。10000gの遠心分離法によって核酸、細胞破片および可溶性タンパク質を除去する。A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS融合タンパク質を含む封入体を純水で洗浄し、得られた封入体沈殿物をフォールディングの原材料として使用する。当該融合タンパク質の最終的な発現レベルは、14g/Lの発酵ブロスである。融合タンパク質のSDS-PAGEマップは、
図5に示される。
図5から、当該融合タンパク質によって発現される標的タンパク質は、破壊されずに完全に発現されることができ、非天然アミノ酸標的タンパク質を挿入する融合タンパク質も、破壊されずに完全に発現されることができることが分かる。
【0094】
融合タンパク質をリフォールディングするために、pH10.5であり、かつ2~10mMのメルカプトエタノールを含む7.5Mの尿素溶液に封入体を溶解して、溶解後の総タンパク質の濃度が10~25mg/mLになるようにする。サンプルを5~10倍に希釈し、4~8℃、pHが10.5~11.7である条件下で、従来のフォールディングを16~30時間行う。18~25℃下で、pH値を8.0~9.5に維持し、トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで融合タンパク質を10~20時間加水分解した後、0.45Mの硫酸アンモニウムを加えて酵素加水分解反応を停止させる。逆相HPLC分析の結果によると、当該酵素加水分解段階の収率が90%より高いことを示す。トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで消化した後得られたインスリン類似体は、BOC-ヒトインスリンと名付けられる。Boc-ヒトインスリンは、上記の条件下で加水分解されることはできない。膜ろ過でサンプルを清澄化し、0.45mMの硫酸アンモニウムを緩衝液として、疎水性クロマトグラフィーで最初にBoc-ヒトインスリンを精製し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の純度は、90%に達する。発酵ブロス1LあたりのBOC-ヒトインスリンの最終的な収量は、約2.1gである。また、得られたBoc-ヒトインスリンをMALDI-TOF質量分析により分析した結果、その分子量は、理論分子量5907.7Daと一致していることが検出された。疎水性クロマトグラフィーで溶出してサンプルを収集し、塩酸を加えてBoc-ヒトインスリン脱保護反応を行い、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを2.8~3.2に制御して反応を停止させ、2段階の高圧逆相クロマトグラフィーを行った後、組換えヒトインスリンの収率は、85%を超える。発酵ブロス1Lあたりの組換えヒトインスリンの最終的な収量は、約700mgである。
【0095】
実施例4.pBAD-A1-u8-TEV-R-MiniINS発現構築体の構築ならびにA1-u8-TEV-R-MiniINS融合タンパク質の発現、分離および精製
実験方法は、実施例1~3と同じであり、A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS中のA1-u4-u5(SEQ ID NO.:16)をA1-u8(SEQ ID NO.:23)に置き換え、pBAD-A1-u8-TEV-R-MiniINSと名付けられる組換えプラスミドを構築し、上記の方法に従ってA1-u8-TEV-R-MiniINS融合タンパク質を発現させる(
図5)。BOC-ヒトインスリンの最終的な収量は、約1.9g/Lである。また、得られたBoc-ヒトインスリンをMALDI-TOF質量分析により分析した結果、その分子量は、理論分子量と一致していることが分かる。
【0096】
実施例5.pBAD-A1-u3-u5-u7-TEV-R-MiniINS発現構築体の構築ならびにA1-u3-u5-u7-TEV-R-MiniINS融合タンパク質の発現、分離および精製
実験方法は、実施例1-3と同じであり、A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS中のA1-u4-u5(SEQ ID NO.:16)をA1-u3-u5-u7(SEQ ID NO.:15)に置き換え、pBAD-A1-u3-u5-u7-TEV-R-MiniINSと名付けられる組換えプラスミドを構築し、上記の方法に従ってA1-u3-u5-u7-TEV-R-MiniINS融合タンパク質を発現させる。BOC-ヒトインスリンの最終的な収量は、約2.0g/Lである。また、得られたBoc-ヒトインスリンをMALDI-TOF質量分析により分析した結果、その分子量は、理論分子量と一致していることが分かる。
【0097】
実施例6.pBAD-A1-u5-EK-u6-TEV-R-MiniINS発現構築体の構築ならびにA1-u5-EK-u6-TEV-R-MiniINS融合タンパク質の発現、分離および精製
実験方法は、実施例1-3と同じであり、A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS中のA1-u4-u5(SEQ ID NO.:16)をA1-u5-EK-u6(SEQ ID NO.:22)に置き換え、ここで、EKは、EK酵素制限酵素切断部位DDDDK(SEQ ID NO.:25)である。pBAD-A1-u5-EK-u6-TEV-R-MiniINSと名付けられる組換えプラスミドを構築し、上記の方法に従ってA1-u5-EK-u6-TEV-R-MiniINS融合タンパク質を発現させる。BOC-ヒトインスリンの最終的な収量は、約1.9g/Lである。また、得られたBoc-ヒトインスリンをMALDI-TOF質量分析により分析した結果、その分子量は、理論分子量と一致していることが分かる。
【0098】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【配列表】
【国際調査報告】