(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物、及びそれに係わる情報を提供する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6886 20180101AFI20220601BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220601BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559792
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(85)【翻訳文提出日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2020004729
(87)【国際公開番号】W WO2020209590
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0041498
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326683
【氏名又は名称】サムスン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG LIFE PUBLIC WELFARE FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ド-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】サ、ジェイソン ギョンハ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
ターゲット遺伝子の変異を検出する製剤を含む神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物、バイオマーカーパネル及びキット、神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法、並びに神経膠腫に係わる個人誂え型医療のためのバイオマーカーパネル及び個人誂え型治療のための情報を提供する方法に係り、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上のターゲット遺伝子における遺伝子変異またはタンパク質変異を検出する場合、神経膠腫診断に対する診断の正確度が高く、敏感度も高く、効果的な神経膠腫の診断が可能であり、該ターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する製剤を利用すれば、神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物、キット、情報提供方法、及び個人誂え型治療のための情報を提供する方法に有用に利用されうる。
【選択図】
図4c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を検出する製剤を含む、神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物。
【請求項2】
前記神経膠腫は、星状細胞腫、乏突起膠細胞腫、混合神経膠腫及び上衣細胞腫からなる群のうちから選択された1種以上である、請求項1に記載の神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物。
【請求項3】
前記製剤は、遺伝子1p染色体及び遺伝子19q染色体の共欠失を検出する、請求項1に記載の神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物。
【請求項4】
前記遺伝子の変異は、塩基配列内の
1)単一塩基配列変異、
2)1個ないし50個のヌクレオチドの塩基配列部位の欠失または挿入、
3)コピー数変異または
4)前記1)ないし前記3)のうちから選択された2種以上の組み合わせである、請求項1に記載の神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物。
【請求項5】
前記製剤は、プライマー、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドを含む、請求項1に記載の神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物。
【請求項6】
SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を測定する製剤を含む、神経膠腫の診断用または予後予測用のバイオマーカーパネル。
【請求項7】
SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を検出する製剤を含む、キット。
【請求項8】
1)個体の生物学的試料から核酸試料を得る段階と、
2)得られた試料から、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上のターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階と、
3)検出された遺伝子の変異レベルを、正常試料のレベルと比較して分析する段階と、を含む、神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法。
【請求項9】
前記生物学的試料は、患者の血液、血漿、血清、小便及び唾液からなる群のうちから選択された1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法。
【請求項10】
前記段階2)の遺伝子変異は、
1)単一塩基配列変異、
2)1個ないし50個のヌクレオチドの塩基配列部位の欠失または挿入、
3)コピー数変異または
4)1ないし3)のうちから選択された2種以上の組み合わせである、請求項8に記載の神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法。
【請求項11】
前記段階2)の検出は、次世代シーケンサ(NGS)プラットホームによる、請求項8に記載の神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法。
【請求項12】
前記次世代シーケンサプラットホームは、全体ゲノムシーケンシング、全体エキソームシーケンシングまたはターゲット遺伝子パネルシーケンシングである、請求項11に記載の神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法。
【請求項13】
前記段階3)の分析は、遺伝子1p染色体及び遺伝子19q染色体の共欠失いかんを確認する、請求項8に記載の神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法。
【請求項14】
前記遺伝子1p染色体及び遺伝子19q染色体の共欠失いかんを、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子において、コピー数変異の検出によって決定する、請求項13に記載の神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法。
【請求項15】
SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を検出する製剤を含む神経膠腫に係わる、個人誂え型医療のためのバイオマーカーパネル。
【請求項16】
1)個体から分離された生物学的試料において、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上のターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階と、
2)前記検出結果において、遺伝子変異が検出される前記個体を、治療ターゲットとして設定する段階と、を含む、個人誂え型治療のための情報を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ターゲット遺伝子の変異を検出する製剤を含む神経膠腫(glioma)の診断用または予後予測用の組成物、バイオマーカーパネル及びキット、神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法、並びに神経膠腫に係わる個人誂え型医療のためのバイオマーカーパネル及び個人誂え型治療のための情報を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍(tumor)は、異常な細胞の過剰によって発生する比制御的であって無秩序な細胞増殖の産物であり、そのような腫瘍が、破壊的な増殖性、浸潤及び転移性を有することになれば、悪性腫瘍(malignant tumor)に分類することになる。特に、分子生物学的な観点から見るとき、遺伝子の変異によって生じる遺伝的疾患であると言える。
【0003】
そのうち、神経膠腫(glioma)は、神経源、神経膠細胞に起源し、ほとんど周囲の正常組織内に侵透して成長し、細胞の成長制御が損失され、逸早い成長を示し、手術で完全に除去し難い特性を示している。特に、神経膠腫は、組織学及び分子的にさまざまな分類に区分されるが、それを正確に診断するために、現在まで、IDH1/2の体細胞突然変異、EGFRのゲノム増幅、染色体1pアーム(arm)及び染色体19qアームの共欠失を確認している。ただし、IDH1/2突然変異は、主に、低級神経膠腫及び二次膠芽細胞腫で頻繁に確認され、患者の臓器生存と関連性が深いと周知されている。また、上皮成長因子受容体(EGFR)の局所増幅は、膠芽細胞腫の約50%において確認される。また、EGFR遺伝子増幅は、細胞増殖を促進させると知られているので、癌治療のために、EGFR抑制剤に係わる臨床試験が頻繁に行われている。
【0004】
従って、神経膠腫を効果的に診断するために、前記神経膠腫の増殖に重要な遺伝子と見られるIDH1のターゲット突然変異と、EGFRの局所的増幅に対する病理学的診断を行うために、免疫組織化学法(IHC)と蛍光インサイチュ(in situ)ハイブリデーション(FISH)とを通常使用しているが、さらに簡便な方法でもって、前記神経膠腫を効果的に診断するための必要性が提起されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一様態は、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を検出する製剤を含む神経膠腫(glioma)の診断用または予後予測用の組成物及びバイオマーカーパネルに係わるものである。
【0006】
一様態は、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を検出する製剤を含むキットに係わるものである。
【0007】
他の様態は、個体の生物学的試料から核酸試料を得る段階と、得られた試料から、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上のターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階と、検出された遺伝子の変異レベルを、正常試料のレベルと比較して分析する段階と、を含む神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法に係わるものである。
【0008】
さらに他の様態は、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を検出する製剤を含む神経膠腫に係わる個人誂え型医療のためのバイオマーカーパネルに係わるものである。
【0009】
さらに他の様態は、個体から分離された生物学的試料において、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上のターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階と、前記検出結果において、遺伝子変異が検出される前記個体を、治療ターゲットとして設定する段階と、を含む個人誂え型治療のための情報を提供する方法に係わるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一様態は、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を検出する製剤を含む神経膠腫(glioma)の診断用または予後予測用の組成物及びバイオマーカーパネルを提供する。
【0011】
神経膠腫は、脳と脊髄との内部にある神経膠細胞に起源する腫瘍(tumor)であり、該神経膠腫は、腫瘍を構成する主な細胞により、星状細胞腫(astrocytic tumors)、乏突起膠細胞腫(oligodendroglial tumors)、上衣細胞腫(ependymal tumors)などに分類され、一様態の組成物を介して診断または予後予測が可能な組成物は、例えば、星状細胞腫、乏突起膠細胞腫、混合神経膠腫(mixedgliomas)及び上衣細胞腫からなる群のうちから選択された1種以上でもある。
【0012】
用語「診断」は、病理状態の存在または特徴を確認することを意味する。それは、目的上、神経膠腫の発病いかんを確認するものである。用語「予後」とは、神経膠腫の、例えば、追っての当該個体の生存率、治療後、当該個体の再発、転移、薬物反応性、耐性などのいかんを判断することを意味する。個体の試料から、一様態のSAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異レベルを確認することにより、当該個体の神経膠腫の発病いかんだけではなく、追っての当該個体の生存予後が良好であるか否かということについてまで予測であることを意味する。
【0013】
神経膠腫を有した個体は、染色体1番の短腕(1p)と、19番の長腕(19q)との共欠失と関連が深いということが知られており、該神経膠腫を有した個体において、1p及び19qの共欠失を有する個体の場合、抗癌剤感受性と生存率上昇とが関連が深いということが周知されており、1pと19qとの共欠失により、個体の追っての予後まで効果的に予測することができるということが知られている。それにより、一様態の製剤は、前記1pと前記19qとの共欠失を効果的に検出し、神経膠腫を正確に診断し、予後を予測するためのターゲット遺伝子20種を確認し、前記20種遺伝子の変異レベルを検出する場合を介し、神経膠腫を有した個体、及びその予後を高い正確度と敏感度で予測することができることを確認した。
【0014】
前記一様態で確認したターゲット遺伝子20種の変異は、正常人と比較したとき、神経膠腫患者の血液で高く発現されるので、特に、臨床的に診断が困難である神経膠腫を有した個体の診断にも活用される。
【0015】
前記SAMD11は、染色体内chr1:860235-879558に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000187634である。KLHL21は、染色体内chr1:6653400-6674692に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000162413である。FAM167Bは、染色体内chr1:32712793-32714227に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000183615である。HPCAL4は、染色体内chr1:40148183-40157407に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000116983である。GPBP1L1は、染色体内chr1:46093903-46152327に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000159592である。LPHN2は、染色体内chr1:81771820-82458145に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000117114である。GPR88は、染色体内chr1:101003668-101007608に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000181656である。ZNF599は、染色体内chr19:35249914-35264159に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000153896である。C19ORF33は、染色体内chr19:38794776-38795671に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000167644である。B9D2は、染色体内chr19:41860580-41870103に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000123810である。BCAMは、染色体内chr19:45312291-45324698に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000187244である。CABP5は、染色体内chr19:48533789-48547336に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000105507である。SIGLEC11は、染色体内chr19:50453202-50464454に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000161640である。ERVV-2は、染色体内chr19:53547966-53554405に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000268964である。ZNF865は、染色体内chr19:56116746-56129932に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000261221である。MZF1は、染色体内chr19:59073414-59084967に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000099326である。MRTO4は、染色体内chr1:19578008-19585349に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000053372である。LRIG2は、染色体内chr1:113615767-113669847に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000198799である。BSNDは、染色体内chr1:55464581-55474326に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000162399である。SLC30A2は、染色体内chr1:26365626-26372654に存在すると知られており、Ensembl ID numberは、ENSG00000158014である。
【0016】
一様態において、組成物に含まれている製剤は、1)単一塩基配列変異、2)1個ないし50個のヌクレオチドの塩基配列部位の欠失または挿入、3)コピー数変異(copy number variant)、あるいは4)前記1)ないし前記3)のうちから選択された2種以上の組み合わせでもある。
【0017】
前記「変異」は、誘電体において、塩基、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸の変更(alteration)を意味する。該変異は、塩基、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸の、置き換え(substitution)、挿入(insertion)、欠失(deletion)(挿入、欠失を、InDel:insertion,deletionともいう)などを含むものでもある。置換は、塩基、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸が、他の塩基、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸に変わる変更を意味する。挿入は、他の塩基、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸が追加される変更を意味する。欠失は、塩基、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸が除去される変更を意味する。
【0018】
単一塩基配列変異または単一ヌクレオチド変異(SNV:single nucleotide variant)は、遺伝体上において、1つの塩基またはヌクレオチドの違いを示す配列の変更または変異を意味する。該単一塩基変異は、単一塩基多形成(SNP:single nucleotide polymorphism)とも混用される。該SNPは、遺伝体上において、単一塩基またはヌクレオチド(A、T、CまたはG;ヌクレオチドAは、アデニン、ヌクレオチドTは、チミン、ヌクレオチドCは、シトシン、ヌクレオチドGは、グアニンを意味する)が、種のメンバー間、または一個体(individual)の対染色体間において異なる場合に生じる塩基配列またはヌクレオチド配列の多様性を意味する。該SNPは、一集団(population)において、少数、1%以上または5%以上の頻度で存在する2個以上の対立する塩基配列またはヌクレオチド配列でもある。該SNPは、ヒト遺伝体上に最も多く存在する遺伝的多形成であり、遺伝学的に、該SNP位置により、各個体に大きな違いを引き起こしうる。例えば、該SNPが、タンパク質を暗号化している位置に存在する場合、タンパク質構造に影響を及ぼし、タンパク質機能が異なりもし、疾病を誘発しうる。該SNPが、タンパク質を暗号化しない非暗号化領域に存在する場合、すなわち、プローモーター(promoter)またはイントロン(intron)に存在する場合、それぞれにつき、タンパク質の発現レベルに違いをもたらし、そのタンパク質の全体的な活性が上昇したり低下したりし、選択的スプライシング(alternative splicing)を介し、異常タンパク質が発現されうる。
【0019】
前記コピー数変異は、参照配列と比較したとき、コピー数が異なる1kb以上長さの変異区間を言い、前記コピー数変異を測定することができる方法は、例えば、蛍光核酸混成化(FISH:fluorescence in situ hybridization)、クロマチン免疫沈降(ChIP:chromatin immuno precipitation)及び次世代シーケンシング(NGS)でもあるが、それらに制限されるものではない。具体的な一実施様態において、SAMD11,KLHL21,FAM167B,HPCAL4,GPBP1L1,LPHN2,GPR88,ZNF599,C19ORF33,B9D2,BCAM,CABP5,SIGLEC11,ERVV-2,ZNF865,MZF1,MRTO4,LRIG2,BSND及びSLC30A2遺伝子のコピー数変異を検出する場合、個体の染色体1と染色体19の1pと19qとの共欠失が示され、神経膠腫を効果的に検出することができる。
【0020】
用語「バイオマーカーパネル」は、神経膠腫診断のためのバイオマーカーの任意の組み合わせを使用して構成されたものであり、前記組み合わせは、全体セット、またはその任意のサブセットまたはサブ組み合わせを意味しうる。すなわち、該バイオマーカーパネルは、バイオマーカー1セットを意味し、測定される任意形態のバイオマーカーを意味しうる。従って、RPL23がバイオマーカーパネルの一部である場合、例えば、RPL23mRNAまたはRPL23タンパク質が、前記パネルの一部であると見なすことができる。個別バイオマーカーが診断剤として有用である一方、時には、特定状態決定において、単独で単一のバイオマーカーよりは、バイオマーカー組み合わせがさらに大きい値を提供することができる。具体的には、試料において、複数個のバイオマーカー検が、試験の感度及び/または特異性を増大させることができる。従って、一具体例において、バイオマーカーパネルは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個以上のバイオマーカー類型を含んでもよい。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、最小個数のバイオマーカーで構成され、最大量の情報を生成する。従って、多様な具体例において、該バイオマーカーパネルは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個以上のバイオマーカー類型によって構成される。該バイオマーカーパネルが、「バイオマーカー1セット」で構成される場合、前記セットをなすもの以外には、いかなるバイオマーカーも存在しない。一具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された1個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された2個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された3個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された4個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された5個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された6個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された7個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された8個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された9個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された10個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された11個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された12個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された13個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された14個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された15個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された16個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された17個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された18個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された19個のバイオマーカーで構成される。他の具体例において、該バイオマーカーパネルは、本願に開示された20個のバイオマーカーで構成される。本発明のバイオマーカーは、神経膠腫診断及びその予後予測において、統計学上有意な違いを示す。一具体例において、そのようなバイオマーカーを、単独または組み合わせて使用する診断試験は、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上及び約100%の感度及び特異性を示す。
【0021】
前記バイオマーカーは、細胞の転写体データから獲得されたものでもある。
【0022】
一様態の前記遺伝子の変異を検出する製剤は、プライマー対、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドを含んでもよい。具体的には、前記バイオマーカー遺伝子の変異レベルを測定するための製剤でもあり、前記遺伝子に特異的に結合するプライマー対、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドでもある。一具体例において、前記バイオパネルは、少なくとも2種のプライマー対、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドを含み、前記それぞれのプライマー対、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドは、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2に特異的に結合することができる。
【0023】
特に、前記プライマーは、増幅されたPCR産物が、次世代シーケンサ(NGS)を利用し、神経膠腫を効果的に診断し、予後を予測するために、最適サイズの比較配列を得ることができるように、配列を増幅することを特徴とする。
【0024】
前記プライマー、前記プローブまたは前記アンチセンスヌクレオチドは、検出可能な標識によって標識されたものであるポリヌクレオチドでもある。検出可能な標識は、検出可能な信号を発生させることができる標識物質であり、蛍光物質、例えば、Cy3及びCy5のような物質を含む検出可能な信号を発生させることができる標識物質でもある。前記検出可能な標識は、核酸の混成化結果を確認することができる。
【0025】
用語プライマー(primer)は、重合酵素によるヌクレオチドの重合反応において、開始点として作用することができる一本鎖のオリゴヌクレオチドを意味する。例えば、前記プライマーは、適する温度及び適する緩衝液内において、適する条件、すなわち、4種の異なるヌクレオシド三リン酸及び重合酵素の存在下で、テンプレート指示(template-directed)DNA合成の開始点として作用することができる一本鎖のオリゴヌクレオチドでもある。プライマーの適する長さは、多様な因子、例えば、温度と、プライマーの用途とによっても異なる。前記プライマーは、長さが、5ないし100nt、5ないし70nt、10ないし50nt、または15ないし30ntでもある。例えば、プライマーの長さが短いほど、低いアニーリング(annealing)温度で、テンプレートと十分に安定した混成化複合体を形成することができる。
【0026】
前記プライマーは、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、アルキルホスホロチオエートのようなヌクレオチド類似体(analogue)、ペプチド核酸(peptide nucleic acid)または挿入物質(intercalating agent)をさらに含んでもよい。また、蛍光、リン光または放射性を発する標識物質をさらに含んでもよい。前記蛍光標識物質は、VIC、NED、FAM、PET、またはそれらの組み合わせでもある。前記標識物質は、前記ポリヌクレオチドの5’末端にも標識される。また、該放射性標識物質は、32Pまたは35Sのような放射性同位元素が添加された重合酵素連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)反応液を利用したPCR反応を介し、増幅産物にも混入される。
【0027】
用語プローブ(probe)は、相補的なポリヌクレオチド鎖に配列特異的に結合することができるポリヌクレオチドを言う。前記プローブは、長さが5ないし100nt、10ないし90nt、15ないし80nt、20ないし70nt、または30ないし50ntでもある。前記プローブは、混成化方法、例えば、マイクロアレイ(microarray)、サザンブロッティング、ダイナミック対立遺伝子混成化(dynamic allele-specific hybridization)及びDNAチップなどを利用した方法にも利用される。該マイクロアレイは、当業界に知られた意味で使用され、例えば、基板上の複数個の区分された領域に、プローブ、またはプローブの集団が固定化されているものでもある。前記基板は、適する堅固性または半堅固性の支持体であり、例えば、膜、フィルタ、チップ、スライド、ウェーハ、ファイバ、磁気性ビードまたは非磁気性ビード、ゲル、チュービング、プレート、高分子、微小粒子及び毛細管を含んでもよい。前記プローブ、またはそれに相補的なプローブは、個体から得られた核酸と混成化され、そこから得られる混成化程度を測定することができる方法にも利用される。
【0028】
一様態は、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子変異を検出する製剤を含むキット(kit)を提供する。
【0029】
前記キットは、ターゲット遺伝子の遺伝子変異を予測するためのキットでもある。該キットは、当業界に知られた意味にも使用される。前記キットは、例えば、前述のようなポリヌクレオチドと、その特定用途に必要な項目と、を含むものでもある。前述のようなポリヌクレオチドと共に、その使用方法に必要な試薬を含むものでもある。
【0030】
一様態のキットは、増幅反応を行うための試薬を含み、耐熱性DNA重合酵素、dNTPs、バッファなどを含んでもよい。また、本発明のキットは、最適の反応遂行条件を記載したユーザ案内書を追加して含んでもよい。該案内は、キット使用法、例えば、PCR緩衝液製造方法、提示される反応条件などを説明する印刷物である。該案内は、パンフレット形態またはプリント形態の案内パンフレット、キットに付着されたラベル、及びキットを含むパッケージ表面上の説明を含む。また、該案内は、インターネットのように、電気媒体を介して公開されたり提供されたりする情報を含む。
【0031】
他の様態は、個体の生物学的試料から核酸試料を得る段階と、得られた試料から、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上のターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階と、検出された遺伝子の変異レベルを、正常試料のレベルと比較して分析する段階と、を含む神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報を提供する方法を提供する。
【0032】
前記方法は、個体の生物学的試料から核酸試料を得る段階を含む。
【0033】
前記個体は、ヒトを含む哺乳動物でもある。
【0034】
前記生物学的試料は、生物から得られた試料を言う。前記生物学的試料は、例えば、患者の血液、血漿、血清、小便及び唾液からなる群のうちから選択された1種以上でもある。
【0035】
前記生物学的試料から、ターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する通常のDNA分離方法をさらに含んでも遂行される。例えば、前記分離方法は、標的核酸を、重合酵素連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR:ligase chain reaction)、転写増幅(transcription amplification)またはリアルタイム核酸配列基礎増幅(NASBA:realtime-nucleic acid sequence based amplification)を介して増幅し、それを精製して得ることができる。
【0036】
前記遺伝子変異を分析する段階は、前記ターゲット遺伝子における特定変異の有無に基づき、個体または被検体が神経膠腫にかかる危険性、または神経膠腫を示す患者であるか否かということを判別することができる。
【0037】
ターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階は、例えば、次世代シーケンサプラットホームにもより、前記次世代シーケンサプラットホームは、全体ゲノムシーケンシング(whole-genome sequencing)、全体エキソームシーケンシング(whole-exomes sequencing)、またはターゲット遺伝子パネルシーケンシング(target gene panel sequencing)でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0038】
また、検出された遺伝子の変異レベルを、正常試料のレベルと比較して分析する段階において、遺伝子の変異レベル分析は、遺伝子1p染色体及び遺伝子19q染色体の共欠失(co-deletion)いかんを確認するものでもある。
【0039】
前記個体の神経膠腫の診断または予後予測に係わる情報提供は、神経膠腫の発現と関連性が高い遺伝子1p染色体及び遺伝子19q染色体の共欠失に対する相対的な危険性を予測し、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子変異レベルを測定することにより、神経膠腫に対する相対的な危険性を予測したり診断したりするためのものでもある。例えば、前記危険性は、参照遺伝体配列を有している群に比べ、ターゲット遺伝子の変異レベルが高ければ、神経膠腫の発病可能性が上昇しているか否かということを予測したり診断したりするためのものでもある。前記ターゲット遺伝子において変異が、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上または20個以上である場合、遺伝子1p染色体及び遺伝子19q染色体の共欠失の可能性が高く、それと関連性が高い神経膠腫の発病危険性が高いと判断することができ、それを介し、神経膠腫の診断または予後の予測に係わる正確度が高くもなる。一具体例において、前記ターゲット遺伝子20種のいずれにもlコピー数変異が測定される場合、遺伝体1p染色体及び遺伝体19q染色体の共欠失が示されることを確認し、神経膠腫を効果的に診断することができるということを確認した。
【0040】
一様態において、前記検出された遺伝子の変異レベルを、正常試料のレベルと比較して分析する段階は、ターゲット遺伝子20種のいずれにもコピー数変異が測定される場合、遺伝体1p染色体及び遺伝体19q染色体の共欠失が示される個体を、1p染色体及び19q染色体の共欠失が示される神経膠腫を有した個体と決定する段階を含んでもよい。また、該個体が、1p染色体及び19q染色体の共欠失が示される場合、神経膠腫患者は、生存率が高いか否かということを決定することができるので、前記検出された遺伝子の変異レベルを、正常試料のレベルと比較して分析する段階は、前記ターゲット遺伝子20種のいずれにもコピー数変異が示され、前記個体が、1p染色体及び19q染色体の共欠失が示される神経膠腫を有した個体と決定される場合、該神経膠腫患者は、生存率が高く、神経膠腫患者の予後が良好であるか否かということを予測する段階をさらに含んでもよい。
【0041】
前記方法において、前記遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階は、ヌクレオチド配列または塩基配列を決定する方法であり、シーケンシング、例えば、全体ゲノムシーケンシング、全体エキソームシーケンシングまたはターゲット遺伝子パネルシーケンシングでもあり、マイクロアレイによる混成化、対立遺伝子特異的なPCR(allele-specific PCR)、ダイナミック対立遺伝子混成化、PCR延長分析、PCR-SSCP(PCR-single strand conformation polymorphism)及びTaqManの方法からなる群から選択された1以上の技法によって遂行されるものでもある。前記遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階は、前記組成物またはキットを利用することができる。
【0042】
さらに他の様態は、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上の遺伝子の変異を検出する製剤を含む神経膠腫に係わる個人誂え型医療のためのバイオマーカーパネルを提供する。
【0043】
さらに他の様態は、個体から分離された生物学的試料において、SAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上のターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する段階と、前記検出結果において、遺伝子変異が検出される前記個体を、治療ターゲットとして設定する段階と、を含む個人誂え型治療のための情報を提供する方法を提供する。
【0044】
前述のように、一具体例によるバイオマーカー遺伝子パネルは、患者個人別腫瘍遺伝子に基づくが、誂え型遺伝子治療を介し、神経膠腫の治療効果を増進させることができる。また、前記遺伝子パネルは、コピー数変異がその標的対象になるので、前記遺伝子変異によって生じる多様な疾患である神経膠腫に対し、効果的に標的治療を行うことができる。
【0045】
一具体例において、前記ターゲット遺伝子20種のいずれにもコピー数変異が測定される場合、遺伝体1p染色体及び遺伝体19q染色体の共欠失が示されることを確認し、神経膠腫を効果的に診断することができるということを確認した。1p染色体及び19q染色体の共欠失が示される場合、神経膠腫患者は、生存率が高いので、前記ターゲット遺伝子20種のいずれにもコピー数変異が示される場合、神経膠腫患者の予後が良好であるか否かということを予測することができる。
【0046】
1p染色体及び19q染色体の共欠失が示されれば、特定抗癌剤療法に対する抗癌剤感受性(chemosensitivity)と生存率とが異なりうるということが当業界に知られている。例えば、乏突起膠腫において、1p染色体及び19q染色体の共欠失が示される患者は、化学療法に対する反応が異なって示されることが知られており、また、1p染色体及び19q染色体の共欠失が示される患者において、単独放射線療法対比で、放射線療法とプロカルバジン(procarbazine)/ロムスチン(lomustine)/ビンクリスチン(vincristine)化学療法(PCV)を併用する場合、生存率上昇が知られており、1p染色体及び19q染色体の共欠失が示される希少突起神経膠腫患者は、抗癌剤感受性が示され、予後にすぐれるという事実が知られているので、一様態によるターゲット遺伝子20種に対する遺伝子変異が示される個体において、1p染色体及び19q染色体の共欠失が示される個体、またはそうではない個体につき、個人誂え型治療を行うことができ、また標的治療が可能である。
【0047】
一具体例の情報を提供する方法は、個体から分離された生物学的試料で定義された遺伝子パネルの突然変異を検出する段階を含む。具体的には、前記個体は、遺伝子変異による神経膠腫の発病危険性を予測するための対象を意味する。前記個体は、脊椎動物、哺乳動物またはヒト(Homo sapiens)を含んでもよい。例えば、前記ヒトは、韓国人でもある。また、前記生物学的試料は、組織、細胞、全血、血清、血漿、唾液、喀痰、脳脊髄液または尿でもある。前記定義された遺伝子パネルの突然変異検出は、前記生物学的試料から核酸を分離した後、コピー数変異を測定することによっても遂行され、前記核酸を分離する方法、及び前記コピー数変異を測定する方法は、当該技術分野に知られている。前記核酸を分離する方法は、例えば、前記生物学的試料からDNAを直接分離するか、あるいはPCRのような核酸増幅方法により、特定領域を増幅することによって分離することができる。前記分離された核酸試料には、純粋に分離された核酸だけではなく、粗分離の核酸、例えば、核酸を含む細胞破砕物も含む。前記核酸増幅方法には、PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅、自己維持配列複製、及び核酸に基づく配列増幅(NASBA)が含まれる。前記分離された核酸は、DNAまたはRNAでもある。前記DNAには、ゲノムDNA、cDNAまたは組み換えDNAでもある。前記RNAは、mRNAでもある。また、前記突然変異位置を決定する方法は、例えば、知られた核酸のヌクレオチドシーケンシング方法(sequencing method)により、突然変異位置のヌクレオチドを直接決定することができる。該ヌクレオチド配列決定方法には、サンガー(または、ジデオキシ)シーケンシング方法、またはマクサム・ギルバート(化学切断)方法が含まれうる。また、突然変異位置の配列を含むプローブを、対象ポリヌクレオチドと混成化させ、混成化結果を分析することにより、突然変異位置のヌクレオチドを決定することができる。混成化程度は、例えば、検出可能な標識を対象核酸に標識し、混成化された対象核酸を検出することによって確認されるか、あるいは電気的方法などによっても確認される。また、単一塩基延長(SBE:single base primer extension)方法が利用されうる。
【0048】
本発明で使用される全ての技術用語は、異なって定義されない以上、本発明の関連分野において、通常の当業者が一般的に理解するような意味に使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それらと類似していたり、同等であったりするものも、本発明の範疇に含まれる。本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容は、本発明に全体が参照として統合される。
【発明の効果】
【0049】
一様態によるSAMD11、KLHL21、FAM167B、HPCAL4、GPBP1L1、LPHN2、GPR88、ZNF599、C19ORF33、B9D2、BCAM、CABP5、SIGLEC11、ERVV-2、ZNF865、MZF1、MRTO4、LRIG2、BSND及びSLC30A2からなる群のうちから選択された1種以上のターゲット遺伝子における遺伝子変異またはタンパク質変異を検出する場合、神経膠腫診断に対する診断の正確度が高く、敏感度も高く、効果的な神経膠腫の診断が可能である。従って、前記ターゲット遺伝子内において、遺伝子変異を検出する製剤を利用すれば、神経膠腫の診断用または予後予測用の組成物、キット、情報提供方法、及び個人誂え型治療のための情報を提供する方法に有用に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】GliomaSCANの敏感度をWESデータと比較して評価した結果を示した図である。
【
図2】治療ターゲット遺伝子の変異プロファイルを46個の標本から確認した結果を示した図である。
【
図3】個々人の神経膠腫に影響を及ぼす神経膠腫で頻繁に発見される変異に係わる情報を確認した図である。
【
図4a】選別された20個のターゲット遺伝子に係わる、1p及び19qのコピー数喪失の検出正確度を確認した図である。
【
図4b】GliomaSCANを介するFISHデータを比較し、前記選別された20個のターゲット遺伝子に係わる有効性を検証した結果を示した図である。
【
図4c】1p及び19qの共欠失と、1p及び19qの野生型との標本から、染色体レベルにおけるCNAの比較を確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実験例及び実施例を介し、本発明について詳細に説明する。下記実施例は、ただ、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨により、本発明の範囲が、それら実施例によって制限されるものではないということは、本発明が属する技術分野で当業者において自明であろう。
【0052】
実験例-神経膠腫を診断するためのバイオマーカーを選定するための突然変異の選定
<実験例1>神経膠腫を診断するための被験者の腫瘍標本収集及びその分析
神経膠腫を正確に診断するための癌患者標本を、2014年1月から2017年8月まで三星ソウル病院に来院した一部患者から同意を受け、生命倫理委員会の承認下で腫瘍標本を収集した。三星ソウル病院のIRB(IRC#:2010-04-004)が本研究を承認した。前記腫瘍標本を診断した。前記診断のための癌患者の標本から選択するための基準は、(i)実行可能な突然変異が発見されれば、患者が臨床試験に登録することができる可能性、(ii)患者の検体が病理学部署に十分な量の腫瘍分画に保管されうることを重点にして選定した。前記腫瘍標本を正常組織と共にまとめずに処理した。
【0053】
前記方法によって収集された腫瘍標本を三星医療院でデザインした標的シーケンシングパネルであるGliomaSCANでシーケンシングした。前記パネルを介し、韓国MFDS及び米国FDAの承認で承認されるか、あるいは公共データベースであるCOSMIC(Catalogue of Somatic Mutations in Cancer)及び文献から癌治療法に活用されうるという関連性が報告された標的癌である神経膠腫治療法と係わる標的遺伝子232個を選定し、標本において、前記遺伝子を、パネルを介して分析した。
【0054】
HD753(Horizon,Inc.米国)、NA12878、及び10個の細胞株(NA07014、NA10840、NA18488、NA18511、NA18595、NA18867、NA18924、NA18957、NA19108及びNA19114)からなる遺伝子フルセットから、特異性、検出限界、PPV及びNPVを基準にし、パネルにおいて、前記癌標本を分析した。HD753細胞株は、パネルで測定された知られた変異及び変異対立遺伝子型の頻度(VAF)と、単一塩基配列変異(SNV)、挿入及び欠失(InDel)及び遺伝子複製数変異(CNV)の予想値とを比較し、敏感度を計算した。NA12878の細胞株の場合、敏感度、特異度、PPV及びNPVを計算するために、パネルにおけるSNVの遺伝子型を、コーディング領域内NA12878と比較した。また、検出及び敏感度の限界を予測するために、パネルにおいて、SNVの測定されたVAFは、前記遺伝子フルセットで予想されたVAFと比較した。
【0055】
<実験例2>収集された神経膠腫標本交差検証のための全体エキソームシーケンシングとの比較
三星医療院、カトリック大学及びソウル大学病院の機関検討委員会で承認された研究から、腫瘍標本と臨床情報とを、前記機関において、腫瘍除去手術を受けた脳腫瘍患者から得て、全ての患者から、情報提供同意を得た後、腫瘍の組織学的診断を行った。遺伝子分析のために、腫瘍標本一部をスナップ凍結させ、使用するまで液体窒素で保存した。ゲノムDNAは、DNeasyキット(Qiagen)を使用して抽出した。46個の標本において、標的シーケンシングを行い、それらのうち、28個標本を同時に全長エキソーム分析(WES:whole-exome sequencing)を行った。染色体1pと染色体19qとを確認するために、52個標本と45個標本とに対し、WESと標的配列分析とを行った。
【0056】
<実験例3>標的配列分析の遂行
FASTQファイルのシーケンス遺伝子リードは、Burrows-Wheeler Alignerバージョン0.6.2またはmutation callingを使用し、ヒトゲノムアセンブリ(hg19:human genome assembly)にマッピングされた。MuTect及びSomaticIndelDetectorは、腫瘍と正常組織との対から、体細胞突然変異に対する高い信頼度の予測を行うために使用した。VEP(Variant Effect Predictor)バージョンを、予測された体細胞突然変異に潜在的に機能的な結果、及びその他関連情報を注釈として追加するのに使用した。総遺伝子リードが20以上であるか、あるいはVAFが0.05超過である場合により、有意の突然変異を選択した。
【0057】
また、ngCGH pythonパッケージ0.4.4バージョンを使用し、遺伝子コピー数を測定した。患者とマッチされた正常WESデータを、腫瘍のコピー数の倍数変化を予測する基準として使用した。ゲノムの増幅と削除とを、それぞれ0.585以上のlog2スケールと、-0.5以下のlog2スケールと決定した。
【0058】
<実験例4>標的シーケンシングの統計学的分析の遂行
WESと標的配列とのVAF相関関係は、Pearsonで計算した。標的塩基配列分析を使用し、1p/19q状態を評価するために、染色体1p及び染色体19qに位置した遺伝子のコピー数状態を使用し、受信機作動特性曲線(ROC:receiver operating characteristic curve)を使用して調査し、台形に測定した。視覚化変更のために、Rパッケージ及び複合ヒートマップを使用し、Oncoprintプロットを使用した。IDH1の体細胞突然変異と、GliomaSCANと、FISHまたはIHCとのEGFRの局所増幅とを比較するために、two-sidedフィッシャーのexact検査を使用した。
【0059】
実施例1.腫瘍細胞株からのパネル有効性確認
1.1.HD753細胞株からのパネル有効性確認
GliomaSCANを利用した分析で、ターゲット領域から、18個変異のうち、総15種変異が確認された。突然変異測定パネルから確認された変異体と比較し、3個のSNV、GC含量が高い2個のSNV、GC含量が低い1 SNV、1個の長い挿入と、1個の長い欠失と、3個の短い欠失とを含む15個の全ての変異が検出された。予想されて測定された対立形質頻度間の高相関関係が示された(r2=0.9356)。その結果、SNV、InDel及びCNVの敏感度が100%と示された。
【0060】
1.2.NA12878細胞株からの参照配列の決定
前記パネルにおいて、4,330個の標的化領域(1,269kb)に係わるSNVの敏感度と特異度とを算定するために、遺伝子型を完全に分析し、参照配列として、NA12878細胞株を使用した。パネルで確認されたSNVとNA12878との遺伝子型(ftp://ftptrace.ncbi.nlm.nih.gov/giab/ftp/release/NA12878_HG001/latest/GRCh37/)を比較したとき、両者間で確認されたSNVは、いずれも一致した。また、標的地域の846,058個の参照遺伝子型を比較した結果パネルで確認された遺伝子型と一致した。
【0061】
1.3.遺伝子変異検出限界及び敏感度測定を介するパネルの有効性検証
遺伝子フルセット(予想変異対立遺伝子頻度(VAF:variant allelic frequency)範囲:4%~100%、パネル検証のための遺伝子セットの変異数:689)を使用し、検出限界(LOD)と検出敏感度とを測定した。前記パネルを活用し、パネル有効性を評価したとき、感度及び相関の比率(r2)は、それぞれ99.2%及び0.9856と、遺伝子セットの変異を非常に正確に測定することができるということを確認した。低い予想VAF(4.1%~5%)の範囲において、136個の変異のうち135個の検出を確認し(99.26%)、総合すれば、パネルによる遺伝子変異の検出限界は、5%以上であることを確認した。
【0062】
実施例2.標的シーケンシングパネルと全体エキソームシーケンシングとの変異対立遺伝子頻度の比較を介するパネルの有効性確認
標的シーケンシングパネルの正確性を確認するために、標的パネルで得た体細胞突然変異の可変対立遺伝子頻度を、WESと比較する実験を行った。正常血液から抽出したDNAとマッチされた腫瘍組織標本28名を、WESと標的シーケンシングパネルとに露出させた。SNV、挿入または欠失からの有意の突然変異の臨界値を深さ(depth)範囲が20以上であり、VAFが5%以上と設定した。WES及び標的配列の分析で測定された全ての体細胞突然変異のVAFを比較し、それを
図1に示した。
【0063】
図1で確認した結果、全体118個のゲノム変異が、2つのシーケンシングパネルで検出され、WESまたは標的配列の分析で、それぞれ24個または9個の変異をそれぞれ検出することができた。相対的に低いVAFを有した個人突然変異(private mutation)が測定されたのは、標的配列化パネルに適用されたDNAサンプルが、WESに適用された腫瘍断片と比較する場合、同一腫瘍の他の部位に由来するために、膠芽細胞腫は、過度なほどの腫瘍内異質性(intratumoral heterogeneity)が示されるために、前述のような結果が示されたと判断される。低いVAFから、腫瘍細胞が増殖するときと同じ下位クローン性(sub-clonal)突然変異の存在が確認され、多様な個人突然変異を獲得することができるということを確認した。反対に、WESプラットホームにおいては、相対的に高いVAFを有する少数の個人突然変異を確認することができた。それぞれの個人突然変異を分析し、前記遺伝子変異がマッチされた正常血液から同時に検出されることにより、標的シーケンシングパネルで示されないということを介し、それらが、実際の生殖細胞突然変異であるということを確認することができた。WES血液パネルの不在は、主に、WESと標的シーケンシングパネルとのシーケンシング深さの有意差によって示される。特に、GliomaSCANの範囲は、約800Xで測定され、それは、標準WESの200Xよりはるかに高いが、WESと標的配列化パネルは、体細胞突然変異頻度(r=0.814、P値=4.77e-37;フィッシャーの正確確率検定(Fisher exact test))の側面において、高い相関関係が示されるということを確認した。従って、前記実験例において確認された標的配列化パネルが、高い信頼レベルにおいて、以前に確立されたWESプラットホームに比べ、潜在的な体細胞変異を正確に識別して測定することができるということを確認した。
【0064】
実施例3.膠芽細胞腫を診断することができるバイオマーカー遺伝子における遺伝子変異の確認
従来の臨床的な判断を介してのみ確認することができた膠芽細胞腫を、簡単に診断することができるバイオマーカーとしての遺伝子変異を確認するための実験を行った。前記実験例において確認されたように、前記実験例において確認した治療効果を確認することができると知られている94個遺伝子のうち、遺伝子全般にわたり、膠芽細胞腫を効果的に検出することができる、臨床的に活用することができる突然変異を体系的に評価し、評価の結果を
図2に示した。
【0065】
図2で確認されているように、46人の患者のうち32人(69.6%)において、臨床的に実行可能な前記遺伝子において、少なくとも1以上の体細胞突然変異を有していることを確認した。また、前記46人の患者のうち11人(23.9%)が、以前にCOSMICで確認することができる変異を有していることを確認することができ、そのうち、NF1遺伝子における突然変異が最も一般的である突然変異(31.3%)であり、PTEN遺伝子、PIK3CA遺伝子及びPTPN11遺伝子における突然変異が、それぞれ28.1%、15.6%及び12.5%と示され、前記遺伝子の次に変異が多く示されることを確認した。また、
図2で確認されているように、少なくとも2名以上の患者において、19個の遺伝子の突然変異が示されることを確認した。反復して確認された突然変異は、遺伝子の体細胞突然変異数は、32個の標本において、2個から81個まで多様であった。総合的には、標本の93.5%である46名患者のうち43人で確認された潜在的な治療反応の予測可能な指標として活用されうる遺伝子は、少なくとも1つの遺伝的変異が示されうるということを確認することができた。
【0066】
実施例4.神経膠腫で頻繁に確認される体細胞変異の確認
標的配列化パネルを使用して進められた神経膠腫において頻繁に確認される突然変異を介すれば、神経膠腫を効果的に診断することができるので、前記突然変異を分析する実験を行った。10個の低級神経膠腫(LGG:low-grade gliomas)と、36個の膠芽細胞腫(GBM)との標本において、単一塩基変異、短い挿入、及び欠失を分析した。前記遺伝子変異が膠芽細胞腫で折々調節されない核心発癌経路を調節するために、神経膠腫において、前述のような変異が示されるか否かということを確認することが重要であり、従来の研究によれば、TP53突然変異は、さまざまな腫瘍類型にわたる腫瘍進行の初期段階で生じることが知られている。そのために、WHO再分類においては、神経膠腫診断のために、IDH1/IDH2の変異だけではなく、TP53の変異も考慮しなければならないとのことであり、特に、染色体1pと染色体19qとのアーム(arm)の共欠失は、TP53突然変異と一致しないので、TP53変異を確認することが重要である。また、膠芽細胞腫は、転写体の発現に伴う遺伝子変異により、4個の別途の分子サブタイプに分類されるが、前記分子のサブタイプは、CNA、並びにEGFR、NF1及びPDGFRAのような癌誘導遺伝子の体細胞変異に基づいても分類されると知られている。前記遺伝子内の頻繁に確認される突然変異は、明らかな生物学的特性を有した分子サブタイプ間において相当に異なるので、神経膠腫を正確に診断するためのバイオマーカーとして活用することができるターゲット遺伝者候補群の選定が重要である。前記ターゲット遺伝子候補群のうち9個の遺伝子(TP53、ATRX、EGFR、PTEN、PDGFRA、RB1、NF1、MDM2及びCDKN2A)においてCNAの出現率を確認し、それを
図3に示した。
【0067】
前記
図3で確認されているように、IDH1遺伝子とATRX遺伝子とにおける突然変異は、発現率が顕著である一方、EGFRの局所増幅と、PTENの遺伝子欠失とを含むいくつかの重要な遺伝子変異を神経膠腫で確認し、染色体7の増加と、染色体10の欠失とが膠芽細胞腫の重要な腫瘍誘発を誘導するという従来の知られた事実と一致することを確認した。また、前記低級神経膠腫においては、10個の変異のうち、8個及び4個の頻度で、IDH1遺伝子とATRX遺伝子との変異が示されることを確認することができた。このうち、IDH遺伝子突然変異において、IDH1タンパク質において、R20*として終結コドンを獲得する変異を除いては、R132Hにアミノ酸が変更される変異であることを確認した。
【0068】
実施例5.神経膠腫の予後及び診断のためのバイオマーカーの決定
神経膠腫を診断し、その予後までさらに正確に予測するための染色体1p/19qの共欠失を測定するためのバイオマーカーを決定するための実験を行った。前記実験例において、その有効性を確認したGliomaSCANにおいて、ターゲット配列分析データを遂行し、前記ターゲット配列分析データが、現在の標準方法と比較し、有効であるか否かということ1回検証し、それにより、有効性を有している遺伝子1p/19qの共欠失を測定することができるバイオマーカーを決定する実験を共に行った。
【0069】
実験例において確認したGliomaSCANによるターゲット配列分析が独立して確認したFISH実験を介して行ったEGFR増幅のフィッシャーの正確確立検定の結果と、P値が2.06e-04と一致したことを確認し、神経膠腫において、IDH1突然変異を検出する現在の標準測定法であるIHC方法と比較しても、高い一致率が示されることが確認された(P値は、6.68e-07である)。
【0070】
それにより、前述のように有効性が確認された染色体1p/19q共欠失を効果的に確認するためのバイオマーカーを決定するための前記実験例1の232個のターゲット遺伝子から、染色体1p/19q共欠失を効果的に確認することができる20個の遺伝子を選択し、遺伝子を下記表1に示した。
【表1】
【0071】
前記遺伝子を介すれば、実際の染色体共欠失状態を反映させることができるか否かということ評価するために、WESを使用し、1pと19qとの分節染色体レベルを比較した。1pと19の染色体アームにおいて、それぞれ11個の遺伝子のうち9個の遺伝子と、9個の遺伝子のうち8個の遺伝子とが同時に除去されたとき、それぞれの腫瘍において、1pと19qとの染色体レベル喪失を確認した。ROC曲線を、1p/19q共欠失状態を確認するためのバイオマーカーとして選択された遺伝子の正確性を評価するために、52個の標本を使用して確認し、それを
図4A、
図4B及び
図4Cに示した。
【0072】
図4Aから確認されるように、遺伝子セットとWES結果とを統合した場合、前記20個のバイオマーカー遺伝子は、1pと19qとの染色体共欠失を、AUC値が0.929であり、95%CI値が0.8862-1であるというように、高い程度に正確に予測することができることを確認することができた。
【0073】
ターゲット配列決定パネルが、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(in situ hybridization)のように、従来知られた診断方法と比較し、正確に1p/19qの同時喪失状態を予測することができるか否かということを評価した結果においては、
図4Bで確認されているように、ROC曲線分析を介し、AUC値が0.917、95%CI値が0.8596-0.9737と、一貫した高い一致率が示されることを確認することができた。
【0074】
図4Cで確認されているように、WESに由来する1pと19qとの染色体共欠失を、標的配列化パネルから予測された染色体欠失と比較した結果を介し、パネルのいずれおいても、非常に類似した染色体プロファイルが示されることを確認することができた。
【0075】
従って、総合的には、前記20個の遺伝子バイオマーカーを介すれば、神経膠腫診断または予後を正確に予測することができる1p及び19qの共欠失を高い程度の正確度及び敏感度で確認することができた。
【国際調査報告】