(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】エネルギー案内チェーンならびにエネルギー案内チェーンを備える加工機
(51)【国際特許分類】
F16G 13/16 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
F16G13/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560028
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2020059621
(87)【国際公開番号】W WO2020207931
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019109747.9
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ブラーザー
(72)【発明者】
【氏名】グンター フィッシャー
(57)【要約】
本発明は、エネルギー案内チェーンであって、枢動式に結合された複数のチェーンリンク(35)を備え、これらのチェーンリンク(35)は、チェーン長手方向に延在する作業空間を有し、この作業空間内にチェーン長手方向で少なくとも1つの供給ライン(28)が案内されており、各々のチェーンリンク(35)は、互いに反対の側に位置する2つの側方要素(37,38)と、互いに反対の側に位置する細長い2つの支持ウェブ(39,40)とから形成されており、側方要素(37,38)と支持ウェブ(39,40)とによって、チェーンリンク(35)の各々の中空形材が形成されており、2つのチェーンリンク(35)の間に、これら2つのチェーンリンク(35)に比べて高さ方向で減じられた横断面を有する少なくとも1つの特殊チェーンリンク(34)が設けられている、エネルギー案内チェーンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー案内チェーンであって、枢動式に結合された複数のチェーンリンク(35)を備え、該チェーンリンク(35)は、チェーン長手方向に延在する作業空間を有し、該作業空間内にチェーン長手方向で少なくとも1つの供給ライン(28)が案内されており、各々のチェーンリンク(35)は、互いに反対の側に位置する2つの側方要素(37,38)と、互いに反対の側に位置する細長い2つの支持ウェブ(39,40)とから形成されており、前記側方要素(37,38)と前記支持ウェブ(39,40)とによって、前記チェーンリンク(35)の各々の中空形材が形成されている、エネルギー案内チェーンにおいて、
2つのチェーンリンク(35)の間に、該チェーンリンク(35)に比べて高さ方向で減じられた横断面を有する少なくとも1つの特殊チェーンリンク(34)が設けられていることを特徴とする、エネルギー案内チェーン。
【請求項2】
前記特殊チェーンリンク(34)は、載置面(48)を有し、該載置面(48)と反対の側に位置して、上方に向けられて上向きに開放した、前記チェーン長手方向に対して横方向に延在する通路(42)を有することを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項3】
前記特殊チェーンリンク(34)の、前記載置面(48)に向けられた支持ウェブ(40)が、隣接した前記チェーンリンク(35)の下側の支持ウェブ(49)の平面内に位置していることを特徴とする、請求項2に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項4】
前記特殊チェーンリンク(34)の、前記高さ方向で先細りにされた内部空間(51)が、前記載置面(48)と、少なくとも2つの隣接したチェーンリンク(35)の枢動軸線(41)に沿って延在する結び線により形成された中立面との間に延在しているかまたは中立面よりも下側に延在していることを特徴とする、請求項2または3に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項5】
前記特殊チェーンリンク(34)の前記通路(42)の少なくとも一方の端部に、好ましくは、隣接した前記チェーンリンク(35)の幅を越えて外向きに延在する防光区分(58)が設けられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項6】
前記特殊チェーンリンク(34)の前記通路(42)は、該通路(42)の各々の端部に導入斜面(61)を有することを特徴とする、請求項2から5までのいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項7】
前記特殊チェーンリンク(34)の前記通路(42)は、端面側に、前記特殊チェーンリンク(34)の載置面(48)から通路底部(45)にまで延在するそれぞれ1つの乗上げ斜面(46)を有することを特徴とする、請求項2から6までのいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項8】
前記通路底部(45)は、前記特殊チェーンリンク(34)および隣接した前記チェーンリンク(35)の、互いに反対の側に位置する前記側方要素(37,38)同士の間隔よりも短い長さを有することを特徴とする、請求項7に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項9】
チェーン長手方向で見て前記通路(42)の前後に、前記特殊チェーンリンク(34)の側方要素(37,38)が延在しており、該側方要素(37,38)は、前記特殊チェーンリンク(34)にそれぞれ隣接した前記チェーンリンク(35)に枢動式に結合されていることを特徴とする、請求項2から8までのいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項10】
前記高さ方向で減じられた前記内部空間(51)に隣接して、前記チェーン長手方向にかつ前記チェーン長手方向と逆方向に案内要素(53)が設けられており、該案内要素(53)は、好ましくは、前記チェーンリンク(35)の変向方向に湾曲させられていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項11】
少なくとも1つの供給ライン(28)は、前記特殊チェーンリンク(34)と、該特殊チェーンリンク(34)に隣接した前記チェーンリンク(35)との間の前記枢動軸線(41)のところにもしくは前記枢動軸線(41)に隣接して固定されているか、または先細りにされた前記内部空間(51)内に固定されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項12】
前記少なくとも1つの供給ライン(28)は、前記エネルギー案内チェーン(11)の入口側かつ/または出口側の端部で遊動式に案内されていることを特徴とする、請求項11に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項13】
前記通路(42)の、上向きに開放した側壁(43,44)に、前記チェーン長手方向でかつ前記チェーン長手方向と逆方向で、旋回制限要素(58)が設けられていることを特徴とする、請求項2から12までのいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項14】
前記特殊チェーンリンク(34)は、金属材料、特に金属薄板から形成されていて、好ましくは、中性線用の接続部を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーン。
【請求項15】
工作物(16)を加工するための加工機であって、前記工作物(16)に加工ヘッド(21)によって加工ビーム(22)を向ける加工ステーション(12)と、前記工作物(16)を載せるための工作物載置部(17)を有しかつ前記加工ステーション(12)とロード・アンロードステーション(26)との間で移動可能であるパレット(18)と、前記加工ステーション(12)を取り囲み、該加工ステーション(12)へのアクセスを可能にするための少なくとも1つのドア(24)を有するエンクロージャ(14)とを備える、加工機において、
エネルギー案内チェーン(11)が、一方の端部(31)では、前記加工ステーション(12)内にまたは前記ロード・アンロードステーション(26)内に位置固定されていて、他方の端部(32)では、移動可能な前記パレット(18)に位置固定されており、前記ドア(24)の開放領域で前記エネルギー案内チェーン(11)に、隣接した前記チェーンリンク(35)に比べて高さ方向で減じられた、先細りにされた内部空間(51)を備える横断面を有する特殊チェーンリンク(34)が設けられていることを特徴とする、加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート状の工作物を加工するための加工機用のエネルギー案内チェーンならびにエネルギー案内チェーンを備える加工機に関する。
【0002】
国際公開第2016/131964号に基づき、工作物加工のための加工機用のエネルギー案内チェーンが公知である。この公知のエネルギー案内チェーンは、互いに枢動式に結合された複数のチェーンリンクを有している。エネルギー案内チェーンの両面のうちの一方の面は、弾性的に可撓性の帯材によってカバーされている。この帯材は、少なくとも幾つかのチェーンリンクに保持されていて、チェーン長手方向に移動可能に案内されている。このカバー帯材は、チェーン横方向に、好適には両側でチェーンリンクを越えて延在している。これによって、降下させられたエネルギー案内チェーンと、案内溝との間に位置する間隙を、少なくともその上方に位置するエンクロージャ壁および/またはドアの領域でカバーすることができる。これによって、汚染リスクを減じることができる。さらに、レーザ放射線の進出のリスクを最小限に抑えることができ、ひいては、レーザ安全性を改善することができる。
【0003】
本発明の根底にある課題は、構造の点で廉価であり、エネルギー案内チェーンが降下させられている際にレーザ放射線の進出のリスクを最小限に抑えるエネルギー案内チェーンならびにエネルギー案内チェーンを備える加工機を提案することである。
【0004】
この課題は、2つのチェーンリンクの間に少なくとも1つの特殊チェーンリンクが設けられており、この特殊チェーンリンクが、これに隣接したチェーンリンクに比べて高さ方向で減じられた横断面を有している、エネルギー案内チェーンによって解決される。このエネルギー案内チェーンは、加工機のエンクロージャ壁または加工機のエンクロージャのスライド可能なドアに関して、特殊チェーンリンクが、床とエンクロージャ壁との間に位置しているかまたはスライド可能なドアの移動経路内で床上に位置しているように位置決めされる。高さ方向で減じられた横断面によって、特殊チェーンリンクの全高さが減じられる。これによって、例えばスライド可能なドアが特殊チェーンリンクを横切ることができる。エンクロージャのこのようなスライド可能なドアは、特殊チェーンリンクの減じられた高さの領域でこの特殊チェーンリンクを横切る、特に剛毛の形態の防護カーテンを基礎に向かって有している。エネルギー案内チェーンは、好適には、加工機またはエンクロージャが設置されている床上に載置されている。
【0005】
好適には、特殊チェーンリンクが、載置面と反対の側に位置して、上方に開くように向けられた、チェーン長手方向に対して横方向に延在する通路を有していることが特定されている。これによって、チェーンリンクと特殊チェーンリンクとを備えたエネルギー案内チェーンを床上に平らに載置し、構造的に高さが減じられた特殊チェーンリンクに、チェーン長手方向に対して横方向に延在する通路を形成することが可能となる。これによって、加工機のエンクロージャの壁区分が固定されている場合でも、エンクロージャを開閉するためのドアの簡単な横切りまたはエネルギー案内チェーンの簡単な導出が可能となる。
【0006】
特殊チェーンリンクの下面は、好適には、隣接したチェーンリンクの少なくとも1つの支持ウェブの平面内に位置している。これによって、少なくとも1つの供給ラインを案内するために、エネルギー案内チェーンの作業空間内でチェーンリンクと特殊チェーンリンクとの間に連続的に平らな面を付与することも可能となる。
【0007】
特殊チェーンリンクは、高さ方向において、好適には、特殊チェーンリンクの下面もしくは下側の支持ウェブと中立面との間にまたは中立面よりも下側に延在する先細りにされた内部空間が形成されているように先細りにされている。チェーンリンクの中立面は、個々のチェーンリンクの間の枢動結合部の結び線のところに位置している。これによって、特に僅かな横切り高さもしくは構造高さを得ることができる。
【0008】
特殊チェーンリンクの更なる有利な構成は、通路の少なくとも一方の端部に、特殊チェーンリンクに両側で隣接したチェーンリンクの幅を越えて外向きに延在する防光区分が設けられていることを特定している。好ましくは通路の高さを有する光区分によって、通路が、いわば延長され、レーザ放射線の進出に対する付加的な遮蔽を得ることが可能となる。スライド可能なドアに設けられた剛毛による通路の横切り時には、剛毛が通路底部の領域で傾斜させられており、通路底部を横切った後には、下向きで実質的にすぐ床に向けられている。剛毛同士の間に位置するように、レーザ放射線が進出してしまう開き間隙が形成される可能性がある。この開き間隙は防光区分によって閉鎖される。
【0009】
エネルギー案内チェーンの更なる好適な構成は、特殊チェーンリンクの通路がU字形に形成されており、通路の各々の端部に導入斜面が設けられていることを特定している。これによって、通路内へのスライド可能なドアの防護カーテンの容易な導入を行うことができる。特に、通路の側壁の一方の端部に、チェーンリンクの幅を越えて延在する防光区分が設けられており、この防光区分に外向きに続いて導入斜面が形成されていることが特定されている。
【0010】
さらに、好適には、通路が、端面側に、特殊チェーンリンクの載置面から通路底部にまで延在するそれぞれ1つの乗上げ斜面を有していることが特定されている。これによって、スライド可能なドアの遮蔽カーテンを簡単に滑動させることができる。
【0011】
有利には、通路底部は、隣接したチェーンリンクの、互いに反対の側に位置する2つの側方要素の間の間隔よりも短い長さを有していてよい。これによって、確かに、供給ラインを案内するために提供される内部空間は幅方向で減じられるものの、これによって、光放射線の進出に対する改善された防護が可能となる。なぜならば、より大きな面積を有する防光区分が乗上げ斜面の領域で作用することができるからである。
【0012】
さらに、好適には、チェーン長手方向で見て通路の前後に、特殊チェーンリンクの側方要素が設けられており、この側方要素が、特殊チェーンリンクにそれぞれ隣接したチェーンリンクに枢動式に結合されていることが特定されている。これによって、慣用の2つのチェーンリンクの間に1つまたはそれ以上の特殊チェーンリンクを枢動式に結合することができる。これによって、チェーンリンクの変向半径をほぼ維持することができる。
【0013】
特殊チェーンリンクは、好適には、高さ方向で減じられた内部空間に隣接して、チェーン長手方向にかつチェーン長手方向と逆方向に延在する案内要素を有している。この案内要素は、チェーンリンクの変向方向に傾斜させられている。好ましくは、案内要素は、通路底部の下面になだらかに(buendig)向けられている。これによって、エネルギー案内チェーンの変向時の供給ラインの屈曲が阻止される。
【0014】
エネルギー案内チェーンの更なる好適な構成は、少なくとも1つの供給ラインが、特殊チェーンリンクと、この特殊チェーンリンクに隣接したチェーンリンクとの間の枢動軸線のところにまたは枢動軸線に隣接して固定されていることを特定している。この配置形態は、少なくとも1つの供給ラインが中立面の近くでまたは中立面内に案内されており、ひいては、エネルギー案内チェーンの各々の端部での相対運動が最小限に抑えられるという利点を有している。代替的には、少なくとも1つの供給ラインが、先細りにされた内部空間内に位置固定されていることが特定されていてよい。
【0015】
さらに、好適には、少なくとも1つの供給ラインが、エネルギー案内チェーンの入口側または出口側の端部で遊動式に案内されていることが特定されている。これによって、エネルギー案内チェーンの変向運動中に、少なくとも1つの供給ラインが、応力なしに、つまり、引張応力および/または圧縮応力なしに案内されることが確保される。
【0016】
さらに、好適には、特殊チェーンリンクの通路の、上向きに開放した側壁に、チェーン長手方向でかつチェーン長手方向と逆方向で、旋回制限要素が設けられていることが特定されている。この旋回制限要素は、隣接した従来のチェーンリンクの方向に向けられて傾斜させられており、これによって、特殊チェーンリンクと、隣接した従来のチェーンリンクとの間に、2つの従来のチェーンリンクの間と等しい旋回角がとられるようになっているか、または特殊リンクの長さが従来のチェーンリンクに対して異なっている場合には、チェーンリンクの旋回時に、特殊リンクの内部に位置するケーブルの長さが、理想的には中立面の長さに相当しているように、旋回角が形成されている。
【0017】
特殊チェーンリンクは、好適には、金属材料、特に鋼板から形成されている。このことは、少ない肉厚を使用することができ、これによって、1つには、通路底部における横切り高さを減じることができ、もう1つには、先細りにされた内部空間のまだ十分な高さを得ることができるという利点を有している。
【0018】
好適には、特殊チェーンリンクを金属材料から形成する場合には、特殊チェーンリンクに、特に内側に位置するように、接地線または中性線用の接続部が設けられている。この接続部は、接地ひいては故障時または考えられるケーブル破断時の人的安全確保のために役立つ。
【0019】
本発明の根底にある課題は、さらに、工作物、特にプレート状の材料を加工するための加工機であって、工作物に加工ヘッドによって加工ビームを向ける加工ステーション内に、プレート状の工作物を載せるための工作物載置部を有するパレットが進入可能であり、このパレットが、加工ステーションとロード・アンロードステーションとの間で移動可能であり、加工ステーションが、この加工ステーションに対する少なくとも1つのスライド可能なドアを有するエンクロージャによって取り囲まれており、エネルギー案内チェーンが、一方の端部では、加工ステーション内にまたはロード・アンロードステーション内に位置固定されていて、他方の端部では、移動可能なパレットに位置固定されており、エンクロージャのスライド可能なドアの移動経路内に、エネルギー案内チェーンの、隣接したチェーンリンクに比べて高さ方向で減じられた横断面を有する特殊チェーンリンクが設けられている、加工機によって解決される。これによって、エネルギー案内チェーンの降下時にドアの簡単な開閉が可能となる。パレットは、一方でロード・アンロードステーションと、他方で加工ステーションとの間で移動することができる。パレットが加工ステーション内に位置している場合でも、ロード・アンロードステーション内に位置している場合でも、ドアが閉鎖されていれば、加工ステーションからのレーザ放射線の進出を最小限に抑えることができるかまたは完全に阻止することさえできる。また、エネルギー案内チェーンは、エンクロージャの壁が固定されている場合に使用することもでき、これによって、供給ラインをエンクロージャの外側から内部に向かって加工機に案内することができる。
【0020】
以下に、本発明ならびに本発明の別の有利な実施形態および改良形態を、図面に示した例に基づき詳しく記載すると共に説明する。明細書および図面から把握することができる複数の特徴は、本発明に従って、自体個別に使用されてもよいし、複数を任意に組み合わせて使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】エンクロージャと、加工ステーション内にあるパレットとを含む加工機の概略的な側面図である。
【
図2】ロード・アンロードステーション内にあるパレットを含む、
図1に示した加工機の概略的な側面図である。
【
図3】複数のチェーンリンクと1つの特殊チェーンリンクとを備えたエネルギー案内チェーンの斜視図である。
【
図4】
図3に示したIV-IV線に沿った概略的な断面図である。
【
図5】
図3に示したV-V線に沿った概略的な断面図である。
【
図6】特殊チェーンリンク内のドアの防護カーテンの概略図である。
【
図7】折り曲げられた位置における、隣接したチェーンリンクを備えた特殊チェーンリンクの斜視図である。
【
図8】
図7に対する特殊チェーンリンクの代替的な実施形態の斜視的な断面図である。
【0022】
図1には、プレート状の材料を分離加工するための加工機11の概略的な側面図が示してある。この加工機11の加工ステーション12はエンクロージャ14によって取り囲まれている。加工ステーション12内では、プレート状の材料16が切断ビーム22によって加工される。プレート状の材料16は工作物載置部17に載置されている。この工作物載置部17は、移動可能なパレット18に設けられている。加工ステーション12の内部には、リニア軸システム20が設けられている。このリニア軸システム20には、切断ビーム22を出射するための加工ヘッド21が取り付けられている。この加工ヘッド21は、リニア軸システム20によってプレート状の材料16に対して相対的に二次元でまたは三次元で移動可能である。加工機11は、例えばレーザ切断機として形成されていてよく、これによって、加工ヘッド21によりレーザ切断ビームが出射される。代替的には、加工機11は、プラズマ切断機またはパンチレーザ複合加工機として形成されていてもよい。
【0023】
エンクロージャ14は作業保護体として形成されていて、特にレーザ放射線の進出を最小限に抑えるかまたは理想的には完全に阻止するために役立つ。エンクロージャ14には、このエンクロージャ14を開放するために、水平方向または鉛直方向にスライド可能、移動可能または運動可能であるドア24が設けられている。このドア24の開放時には、パレット18を加工ステーション12から、この加工ステーション12に隣接して配置されたロード・アンロードステーション26に移動させることができる。この位置は
図2に示してある。
【0024】
移動可能なパレット18へのエネルギー供給のために、少なくとも1つの供給ライン28が設けられている。この供給ライン28はエネルギー案内チェーン29内に収容されている。このエネルギー案内チェーン29は一方の端部でもって、好適には加工ステーション12内に位置固定されている。エネルギー案内チェーン29の他方の端部32は、移動可能なパレット18に位置固定されている。ロード・アンロードステーション26から加工ステーション12内へのエネルギー案内チェーン29の移動経路は、エンクロージャ14、特に開放可能なドア24に交差している。エネルギー案内チェーン29は、従来のチェーンリンク35同士の間に取り付けられた少なくとも1つの特殊チェーンリンク34を有している。この特殊チェーンリンク34は、エネルギー案内チェーン29とエンクロージャ14のドア24または壁との交差ポイント36に位置決めされている。この交差ポイント36は
図2に示してある。エネルギー案内チェーン29に組み込まれた特殊チェーンリンク34によって、交差ポイント36でのレーザ放射線の進出のリスクを最小限に抑えることができるかまたは理想的には完全に阻止することができる。
【0025】
図3には、エネルギー案内チェーン29の斜視図が示してある。このエネルギー案内チェーン29は、互いに枢動式に結合された複数のチェーンリンク35と、2つのチェーンリンク35の間に配置された1つの特殊チェーンリンク34とから成っている。IV-IV線に沿った特殊チェーンリンク34の概略的な断面図が
図4に示してある。V-V線に沿った別の断面図が
図5に示してある。
【0026】
一般的に知られているチェーンリンク35は、互いに反対の側に位置する2つの側方要素37,38を有している。これら2つの側方要素37,38は、互いに反対の側に位置する細長い2つの支持ウェブ39,49によって互いに離間させられている。側方要素37,38と支持ウェブ39,49とは、中空形材を形成している。側方要素37,38には、隣接する1つのチェーンリンクを枢動式に取り付けるために、それぞれ1つの枢動結合要素が設けられている。これに基づき生じる枢動軸線41が概略的に図示してある。互いに並列させられた個々の中空形材は、エネルギー案内チェーン29の、少なくとも1つの供給ライン28が案内されている作業空間を形成している。
【0027】
特殊チェーンリンク34は、片側で上向きに開放された通路42を有している。この通路42は、好ましくは鉛直方向に向けられた側壁43,44によって形成される。この側壁43,44同士の間には、通路底部45が延在している。通路42に対する入口側および出口側には、乗上げ斜面46が設けられている。この乗上げ斜面46は、エネルギー案内チェーン29の載置面48から通路底部45にまで延在している。好ましくは、載置斜面46は通路底部45になだらかに移行している。この通路底部45は、チェーンリンク35の上側の支持ウェブ39に対して凹設されて配置されている。特殊チェーンリンク34の下側の支持ウェブ40と通路底部45との間には、先細りにされた内部空間51が形成されている。この先細りにされた内部空間51は、高さ方向においてチェーンリンク35の中空形材よりも低い。好ましくは、先細りにされた内部空間51は、高さ方向において、少なくとも1つの供給ライン28がクランプなしにエネルギー案内チェーン29の長手方向で導通することができるように寸法設定されている。
【0028】
特殊チェーンリンク34の側壁43,44の内面には、案内要素53が配置されている。この案内要素53は、チェーン長手方向にかつチェーン長手方向と逆方向に延在している。さらに、案内要素53は湾曲させられて形成されている。この湾曲は、エネルギー案内チェーン29の載置面48に対して上方に向けられている。これによって、少なくとも1つの供給ライン28を変向時に案内することができ、屈曲に対して防護することができる。
【0029】
側壁43,44の上側の端部には、旋回制限要素55が設けられている。この旋回制限要素55は、案内要素53に類似してチェーン長手方向にかつチェーン長手方向と逆方向に向けられている。旋回制限要素55は、エネルギー案内チェーン29の載置面48に対して上方に向けられている。これによって、エネルギー案内チェーン29の変向時に、特殊チェーンリンク34と、この特殊チェーンリンク34に直接隣接したチェーンリンク35との間に旋回角の制限が生じる。
【0030】
通路52の少なくとも一方の端部には、防光区分58が設けられている。この防光区分58は、例えば、
図5に側面図で示してある。防光区分58は、通路42の端部の両側に設けられていてもよい。防光区分58は、好適には、側壁43,44の延長部を成していて、特殊チェーンリンク34に隣接したチェーンリンク35の幅を越えて突出している。また、防光区分58は、好適には、少なくとも乗上げ斜面46の長さに沿っても延在している。
【0031】
防光区分58の自由端部には、導入斜面61が設けられていてよい。この導入斜面61は、通路42の幅に比べて拡幅するように外方に向けられている。通路42の反対側の端部では、導入斜面61が側壁43,44に直接接続されていてもよいし、側壁43,44に一体成形されていてもよい。
【0032】
特殊チェーンリンク34の機能は、エンクロージャ14の、水平方向にスライド可能なドア24に相俟って、
図6に示してある。
【0033】
ドア24は下側の端部に防護カーテン63を有している。この防護カーテン63は、好ましくは多数の剛毛64から成っている。これによって、ドア24と基礎との間で加工ステーション12の遮蔽を行うことができる。
【0034】
加工ステーション12内へのパレット18の進入後のドア24の閉鎖時には、防護カーテン63が通路42の内部に案内される。この通路42への入口側で剛毛64は乗上げ斜面26に対して滑動し、傾斜姿勢または湾曲させられた姿勢で通路底部45に沿って、矢印66で示したドア24の閉鎖方向に案内される。通路42の出口側の端部では、剛毛64の一部が通路底部45に対して解放される。剛毛64の別の部分はまだ通路底部45上または出口側斜面46上に位置している。これによって、破線で図示した開き領域68が生じる。この開き領域68を通ってレーザ放射線が進出してしまう可能性がある。このような進出を回避するために、防光区分58が通路42の延長部の両側に設けられており、これによって、開き領域68がカバーされて遮蔽される。
【0035】
図7には、変向位置における、
図4に示したエネルギー案内チェーン29の概略的な断面図が示してある。この断面図から明らかであるように、特殊チェーンリンク34に隣接した各々のチェーンリンク35の旋回運動は、旋回制限要素55によって制限されている。チェーンリンク35の上側の支持ウェブ39が、旋回制限要素55に接触している。この実施形態では、供給ライン28が、先細りにされた内部空間51内に位置固定されていてよい。これは、例えば、先細りにされた内部空間51内に、支持ウェブ40に沿って延在する、個々のまたは複数の供給ライン28をクランプして収容する収容チャンバが形成されていることによって行われてよい。各々の案内要素53によって、エネルギー案内チェーン29の変向時に供給ラインの屈曲が阻止される。
【0036】
図8には、
図7に対するエネルギー案内チェーン29の代替的な実施形態が示してある。この実施形態では、チェーンリンク35および特殊チェーンリンク34の枢動軸線41のところに結合バー71が設けられていることが特定されている。この結合バー71は、チェーンリンクの中立面内に位置している。このチェーンリンク35の中立面は、各々の長手方向軸線に沿った結び線によって形成される。中立面では、供給ライン38が引張応力および圧縮応力なしに収容かつ案内されていてよい。
【0037】
図8に示した実施形態では、好適には、少なくとも1つの供給ライン28が結合バー71に固定されていることが特定されている。このことは、例えば結束バンド72によって行われてよい。したがって、供給ライン28が、通路42の前後で各々の結合ウェブ71に固定されていて、ひいては、特殊チェーンリンク34に対して不動に取り付けられている。少なくとも1つの供給ライン28は、エネルギー案内チェーン29の各々の端部で遊動式に案内されている。有利には、長さ補償のために、少なくとも1つの供給ライン28は、所定の区分にわたって蛇行線状に中空形材内に収容されていてよい。
【0038】
特殊チェーンリンク34は、好適には金属材料、特に金属薄板から形成されている。これによって、高い剛性を得ることができる。同時に、減じられた肉厚の構成が可能となる。これによって、1つには、通路42の高さを、もう1つには、先細りにされた内部空間51を、それぞれ最大の規模で形成することができる。
【0039】
さらに、代替的には、特殊チェーンリンク34が2つまたはそれ以上の部分から形成されていることが特定されていてよい。有利には、通路底部45と側壁43,44との間の移行領域に枢動式の結合部が設けられている。代替的には、通路底部45内に枢動式の結合部が設けられていてもよい。このような配置形態は、特に増大させられた通路幅が必要となる場合に特定されている。
【国際調査報告】