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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】酸素生成用ポータブルシステム
(51)【国際特許分類】
   B01J 7/02 20060101AFI20220601BHJP
   B01J 4/02 20060101ALI20220601BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20220601BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20220601BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20220601BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20220601BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20220601BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20220601BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B01J7/02 Z
B01J4/02 B
B01D5/00 A
B01D53/26 100
B01D53/26
B01D53/22
B01D71/34
B01D71/36
B01D71/40
C01B13/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560406
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 IB2020053228
(87)【国際公開番号】W WO2020202110
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/828,475
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441917
【氏名又は名称】オキシジェニウム リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】リラズ アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ラン ミロン
(72)【発明者】
【氏名】オーデッド ワイス
(72)【発明者】
【氏名】ベン(ビンヤミン) アルカヘ
【テーマコード(参考)】
4D006
4D052
4D076
4G042
4G068
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA41
4D006KB12
4D006KB30
4D006MA03
4D006MB10
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC37
4D006MC49
4D006MC62
4D006PA03
4D006PB62
4D006PB65
4D006PC41
4D006PC71
4D052AA02
4D052BA02
4D052BB02
4D052BB04
4D052EA01
4D052HA49
4D076AA15
4D076AA22
4D076BC03
4D076BC25
4D076FA02
4D076FA04
4D076FA12
4D076FA15
4D076FA19
4D076HA15
4D076HA20
4G042BA02
4G042BA08
4G042BB06
4G042BC04
4G068AA01
4G068AB15
4G068AC17
4G068AD24
4G068AD33
4G068AE06
4G068DA02
4G068DB11
4G068DC01
4G068DC05
4G068DD11
(57)【要約】
反応室と、反応室に過酸化水素溶液を供給して制御するための供給システムと、反応器を離れる高温酸素及び水蒸気を冷却し、水を凝縮して取り除くための冷却/凝縮システムと、を含むポータブル酸素発生システムが提供されている。ポータブル化学的酸素発生システムによって、実質的に過酸化水素及び他の汚染物質が無い、呼吸に適した加湿された酸素が、制御された流量及び温度で長時間生成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブル酸素発生システムであって、
反応室であって、
過酸化水素を酸素と水に化学分解することを促進する触媒と、
前記反応室内に過酸化水素溶液を導入するための入口と、
前記反応室から酸素と水蒸気を放出するための出口と、を含む前記反応室と、
前記反応室の前記入口と流体連絡している過酸化水素供給システムであって、
過酸化水素水溶液を含む過酸化水素貯蔵器と、
前記反応室内に前記過酸化水素水溶液を添加するレートを制御する供給流量調整器と、を含む前記過酸化水素供給システムと、
冷却システムであって、
前記反応室の前記出口と流体連絡し、酸素及び水蒸気を受け取るための入口と、
2つ以上の排水管を含む凝縮器であって、各排水管は前記冷却システム内で前記水蒸気から凝縮された水を排出するように構成されている、前記凝縮器と、
水蒸気が低減された冷却された酸素ガスを放出するための出口と、を含む前記冷却システムと、を含む前記ポータブル酸素発生システム。
【請求項2】
前記デバイスからの酸素流は、デバイス動作中に前記反応室内に前記過酸化水素水溶液を導入するレートに正比例する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記触媒は、金属、半金属、金属の合金、半金属の合金、金属の化合物、たとえば金属酸化物、及び半金属の化合物、またはそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記触媒には二酸化マンガンが含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記過酸化水素水溶液は、少なくとも約15%または少なくとも約20%過酸化水素である、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記過酸化水素水溶液は約30%~約70%過酸化水素である、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記過酸化水素貯蔵器は交換可能なカートリッジである、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記供給流量調整器にはユーザ制御ポンプが含まれる、請求項1~7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ポンプは、容積型ポンプ、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、スクリューポンプ、及び往復ポンプからなる群から選択される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスはさらに、前記反応室の前記出口と前記冷却システムの前記入口との間の流体連絡に位置する触媒フィルタを含み、前記触媒フィルタには、過酸化水素を酸素と水とに分解するための前記触媒が含まれる、請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記凝縮器は、前記凝縮器の長さの全体を通して液体水を排出するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記液体水は前記凝縮器から即座かつ連続的に排出される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記冷却システムはさらに、凝縮水を集めるための容器を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記冷却システムにはヒートシンクが含まれる、請求項1~13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記冷却システムには1つ以上のファンが含まれる、請求項1~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記デバイスはさらに、前記冷却システムの前記出口において残留水を取り除くための疎水性膜を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記疎水性膜には、アクリルコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される材料が含まれる、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記デバイスから出る酸素流には、約1ppm未満の過酸化水素、または約0.5ppm未満の過酸化水素が含まれる、請求項1~17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイスは、最大で約8L/分、または最大で約10L/分、または最大で約15L/分の一定流量の酸素を、約40℃未満の温度で、約30分間を超える間、発生させる、請求項1~18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記デバイスから出る前記酸素は、周囲温度よりも約10℃以下、または周囲温度よりも約8℃以下、または周囲温度よりも約6℃以下だけ高い、請求項1~19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
ガス混合物を冷却して分離するためのデバイスであって、
ガス混合物を受け取るための入口であって、前記混合物には少なくとも、高沸点側成分と低沸点側成分とが含まれる、前記入口と、
2つ以上の排水管を含む凝縮器であって、各排水管は、冷却システムから、前記高沸点側成分を含む凝縮された液体を、重力によって連続的に排出するように構成されている、前記凝縮器と、
少なくとも1つの冷却流体の源と、
高沸点側成分が低減された冷却されたガス混合物を放出するための出口と、を含む前記デバイス。
【請求項22】
前記凝縮器は、Uベンドによって接続されたパイプの縦断面で形成されており、前記凝縮器の下側Uベンドはそれぞれ、前記Uベンドに沿った最低点において排水口を含み、前記排水口を通して前記凝縮器から前記凝縮された液体を連続的に排出することを重力が助けられるようになっている、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記凝縮器はコイルの形態であり、各コイル回転に対する各最低点に位置する排水口を有する、請求項21に記載のデバイス。
【請求項24】
前記凝縮器は3つ以上の排水口を含む、請求項21~23のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項25】
凝縮器はヒートシンク内に取り入れられている、請求項21~24のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項26】
前記冷却流体は空気であり、冷却用空気の源は扇風機である、請求項21~25のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項27】
前記高沸点側成分は水であり、前記低沸点側成分は酸素である、請求項21~26のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願62/828,475号(2019年4月3日に出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、酸素生成、酸素を生成する方法、及び化学的酸素発生器の分野である。より具体的には、本開示によって、高純度の呼吸に適した酸素を供給するポータブル化学的酸素発生器が提供される。また本開示によって、たとえば酸素発生の副生水を取り除く際の(水)蒸気の低エネルギー凝縮を行うための装置/システムが提供される。
【背景技術】
【0003】
酸素は医学的処置の不可欠な要素である。この処置は慢性的または急性である可能性がある。酸素補給は救急事態において人命救助となる可能性があるが、搬送中に及び遠隔地域に酸素を供給する負担はコスト、搬送、及び材料においてかなりものとなる。
【0004】
酸素ボンベは重く、燃焼、爆発、及び噴出リスクなどの多くの潜在的な危険を示す。液体酸素システムは、より小さい設置面積で大量のガスが供給されるが、重く、長時間にわたってガスを排出し、取り扱いが不適切だと焼損リスクを示す。加えて、これら両酸素システムの出力には限りがあり、補充する必要がある。その結果、遠い前方の軍事行動において運搬上の問題点を示す。軍事及び多数死傷者行動などの多くの救急事態では、より単純で、より軽く、より長く続く酸素運搬システムが必要である。
【0005】
解決策として、ポータブル酸素濃縮器(POC)及び化学的酸素発生器(COG)が提案されている。POC(酸素濃縮器と言われることがある)は、環境(通常、約21%酸素が含まれている)から空気を吸い込んで、窒素を抽出し、最大で90~95%の濃度の酸素を供給する。ポータブルユニットでは通常、最大で6l/分で生成し、より大きいデバイス(非ポータブル)では最大で25l/分で生成する。これらのデバイスはすべて電気的に動作し、常時電力源が必要である。そのため、電源異常が起こると酸素供給が滞ることになり、予備発生器(またはバッテリーバックアップ及びパワーインバータ)利用可能となるまで続く。また、ポータブルユニットから供給されるガスは低流量で低圧力であるため、それらを多くの救急事態で使うことが制限される。
【0006】
化学的酸素発生は、Joseph Priestlyの研究によって最初に提案された。彼は酸化水銀を用いた研究の中で酸素を見つけた。Priestlyはその発見を1775年に発表した。1902年に、「Lancet」が、医療用途に対するKammの酸素発生器発明について報告した。このデバイスは、酸素源として塩素酸塩を使用し、アルコールランプで加熱されると、成分の補充が必要となる前に、ほぼ4立方フィートの酸素を生成した。非常用酸素源として、たとえば潜水艦では、クロレートキャンドルが使用されている。しかし、クロレートキャンドルの酸素生成反応は非常に高温であり(約700~800℃)、そのため非常に危険である可能性がある。
【0007】
遠い前方の軍事行動で、また災害及び多数死傷者シナリオにおいて、液体及び加圧気体酸素システムの代わりにPOC及びCOGを用いることが提案されている。なぜならば、液体及び加圧気体酸素システムに付随する運搬上の問題、重量、及び爆発のリスクがあるからである。現時点で利用可能な技術の評価によれば、COGが動作できるのは、製造業者及び設計にもよるが、30分以下でしかなく、また出力が調整できないために、デバイスは連続的な臨床ケアまたは長期動作には適していない。またCOGは、多くの非常時使用にとって酸素流量が低すぎる場合がある。
【0008】
最近になって、酸素をボンベでまたは液体状で供給することが運搬上難しいかまたは経済的に非常に高い地域(たとえば、戦闘死傷者ケア、災害状況の間、及び発展途上国における極端な農村環境)においてこの技術を用いることに、興味/関心が持たれている。軍隊及び多数死傷者行動では、より単純で、より軽く、より長く続く酸素運搬システムが必要である。
【0009】
FDAは、COGが最低限で6L/分の酸素流量を最低限で15分間、供給しなければならないと指示している(21CFRパート868.5440)。しかし、アメリカ陸軍が要求する出力はもっと高く、システムは8L/分を少なくとも20分供給しなければならないとしている。これは、総O2出力の75%の増加であり、利用可能なCOGでは達成できないレベルである。ポータブルのオンデマンド酸素発生器が長い間、必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示によって、実質的に過酸化水素及び他の汚染物質が無い、呼吸に適した加湿された酸素を、制御された流量及び温度で長時間生成する化学的酸素発生システムが提供される。一態様において、化学的酸素発生システムは、約8L/分を超えて最大で約15L/分の一定流量の酸素を、約40℃未満の温度で約30分を超える間、発生させることができる。
【0011】
一態様では、ポータブル酸素発生システムは、反応室と、反応室に過酸化水素溶液を供給して制御するための供給システムと、反応器を離れる高温酸素及び水蒸気を冷却し、水を凝縮して取り除くための冷却/凝縮システムとを含んでいる。反応室は、過酸化水素を酸素と水に化学分解することを促進する触媒と、反応室内に過酸化水素溶液を導入するための入口と、反応室から酸素及び水蒸気を放出するための出口とを含んでいる。過酸化水素供給システムは、過酸化水素水溶液を含む過酸化水素貯蔵器と、反応室内に過酸化水素水溶液を添加するレートを制御するための供給流量調整器とを含んでいる。冷却システムは、酸素及び水蒸気を受け取るための入口と、2つ以上の排水管を含む凝縮器であって、各排水管は冷却システム内で水蒸気から凝縮された水を排水するように構成されている、凝縮器と、水蒸気が低減された冷却された酸素ガスを放出するための出口と、を含んでいる。
【0012】
本開示の態様は、ポータブル酸素発生用デバイス(device)を提供することであり、本デバイスは、
a. 過酸化水素溶液を保持するための少なくとも1つの貯蔵器と、
b. 水素溶液を反応させて酸素及び水蒸気を生成するための触媒を収容する1つ以上の反応室と、
c. 貯蔵器から反応器(複数可)に過酸化水素を供給するための供給システムと、
d. 反応器の出口と流体連絡した状態で冷却し、凝縮して凝縮液体水を取り除くためのシステムと、
e. 任意的に、反応器と冷却システムとの間に位置し、酸素流から水の一部を取り除くための乾燥機と、
f. 任意的に、貯蔵タンクに液体水を移動させるための駆動システムと、
g. 任意的に、冷却システムの酸素出口において水を取り除くための疎水性膜と、
h. 任意的に、疎水性膜出口において酸素流量を調整するための酸素流量調整器と、を含む。
【0013】
冷却システムは、反応器出口と疎水性膜(フィルタ)との間に動作可能に配置された開システムであってもよい。冷却システムは、反応器とフィルタとの間を流れる酸素ガスを冷却するように構成されている。
【0014】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、貯蔵器は過酸化水素、過酸化水素錯体、または過酸化水素溶液を保持するように構成されているデバイスを提供することである。
【0015】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、過酸化水素溶液は少なくとも15%過酸化水素であるかまたは少なくとも20%過酸化水素であるデバイスを提供することである。貯蔵器は、供給システムに着脱可能に接続するカートリッジであってもよい。カートリッジは、過酸化水素溶液を使い果たしたら即座に交換可能であるように構成してもよい。
【0016】
別の態様は、前述で示したデバイスであって、カートリッジ取り付けシステムによって、供給システムへの迅速な取り付けが可能であるシステムを提供することである。カートリッジは折り畳み可能であってもよいし、折り畳み可能なライナを有していてもよいし、またはハード面を持っているかもしくはソフト面を持っていてもよい。
【0017】
別の態様は、前述で示したデバイスであって、供給ユニットは、ソフト面を持っているカートリッジ上で圧力を発生させるように構成されているデバイスを提供することである。圧力はバネ、ピストン、または空気圧によって発生させてもよい。それに加えてまたはその代わりに、供給システムは、ポンプ、たとえば、容積型ポンプ、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、スクリューポンプ、及び往復ポンプから選択されるポンプを含んでいてもよい。
【0018】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、反応器は過酸化水素を水と酸素とに分解するように構成されているデバイスを提供することである。反応器には、過酸化水素を酸素と水に化学分解することを促進する触媒が含まれている。触媒には、金属、半金属、金属の合金、半金属の合金、金属の化合物、及び半金属の化合物から選択される1つ以上の活性化合物が含まれていてもよい。触媒にはさらに、電気陰性元素が含まれていてもよい。
【0019】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、デバイスはさらに任意的に触媒フィルタを含む、デバイスを提供することである。触媒フィルタは、存在する場合、少なくとも1つの触媒を含んでいてもよく、触媒には、金属、半金属、金属の合金、半金属の合金、金属の化合物、及び半金属の化合物からなる群から選択される1つ以上の活性化合物が含まれる。触媒フィルタは、反応器として同じ触媒(複数可)を含んでいてもよいし、または異なる触媒を含んでいてもよい。
【0020】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、冷却システムはヒートシンクを含むデバイスを提供することである。冷却システムはさらに、冷却システムから熱を取り除くことを促進するための少なくとも1つのファンを含んでいてもよい。ファンは扇風機であってもよい。
【0021】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、冷却システムは凝縮器を含むデバイスを提供することである。凝縮器を含む冷却システムは、冷却システムによって凝縮された液体水の排出を促進するように構成されている。排出システムは、冷却システムに沿った少なくとも1つの点から凝縮水を排出するように構成してもよい。
【0022】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、凝縮水は即座かつ連続的に排出されるデバイスを提供することである。冷却システムはさらに、凝縮水を集めるための容器を含んでいてもよい。
【0023】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、疎水性膜は、アクリルコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリスルホン、及びポリカーボネートからなる群のうちの1つ以上から選択される材料から構成されるデバイスを提供することである。
【0024】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、酸素流量調整器は、リアルタイム流量測定用に構成された熱/質量酸素(O2)流量計であるデバイスを提供することである。
【0025】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、デバイスはさらに、電子制御及び表示ユニットを含み、電子制御及び表示ユニットは以下のうちの1つ以上を含む、デバイスを提供することである。
a. ユニットセンサ、
b. ユニット制御、
c. ユニット警報、
d. ユニットフィードバック回路。
【0026】
制御ユニットは、指定されたプリント回路基板に基づいていてもよい。
【0027】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、ユニットセンサは、ユーザ設定O2流量、出口O2流量、出口O2温度、バッテリー容量、H22貯蔵レベル、反応室圧力、及び/または水タンク容量(たとえば、重量)からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを測定するように構成されているデバイスを提供することである。
【0028】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、ユニット制御は、蠕動ポンプRPM、冷却ファン速度、及び水タンク排出ソレノイドからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを制御するように構成されているデバイスを提供することである。また制御ユニットは、前述のいずれかで開示したパラメータのうちの1つ以上に対するフィードバック回路を含んでいてもよい。
【0029】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、制御ユニットは以下のうちの1つ以上の場合に警報を出すように構成されている、デバイスを提供することである。
a. 低いH22貯蔵、
b. 低バッテリー、
c. 高い水タンクレベル、
d. 高いデバイス圧力、
e. 酸素純度、
f. デバイス保守。
【0030】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、制御ユニットはさらにデータロガーを含み、データロガーはデバイスのステータスを記録するように構成されているデバイスを提供することである。制御ユニットは、外部システムと通信するように構成してもよく、選択する通信は以下のように特徴付けられる。
a. 外部システムに記録データを転送すること、
b. 外部システムから処置プロトコルを受け取ること。
【0031】
別の態様は、バッテリーユニットによってパワー供給されるデバイスを提供することであり、たとえば、バッテリーは12~18V/4~5Ahで再充電可能であってもよい。
【0032】
別の態様は、前述のいずれかで示したデバイスであって、デバイスはさらにバイオフィードバックセンサを含む、デバイスを提供することである。バイオフィードバックセンサは、患者内の末梢血O2飽和レベルを検出するように構成してもよい。センサは、前述で開示した制御ユニットと通信するように構成してもよい。たとえば、センサ及び制御ユニットは、低いかまたは高いO2患者飽和レベルの場合に警報を出すように構成してもよい。
【0033】
本開示の態様は、酸素を発生させるための方法を提供することであって、本方法は、
a. 過酸化水素溶液を触媒と混合するステップと、
b. 酸素及び水蒸気を冷却するステップと、
c. 液体水を排出するステップであって、水は水蒸気から凝縮されている、ステップと、
d. 任意的に、酸素をろ過して、水を取り除くステップと、
e. 任意的に、酸素を流量調整器に通すステップと、を含む。
【0034】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、方法はさらに反応器内への過酸化水素溶液の流量を制御するステップを含む、方法を提供することである。
【0035】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、方法はさらに酸素及び水蒸気を任意的な触媒フィルタに通すことを含む、方法を提供することである。
【0036】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、酸素及び水蒸気を冷却及び/または凝縮ユニットを用いて冷却するステップを含み、冷却は、少なくとも部分的には、空気の流れ(空気はファンによって発生させる)を、冷却及び/または凝縮ユニットの少なくとも一部にわたって発生させることによって与える、方法を提供することである。
【0037】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、方法はさらに冷却システムから出る酸素流量及び酸素の温度を分析するステップを含む、方法を提供することである。
【0038】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、方法はさらに、低いH22貯蔵、低バッテリー、高いシステム圧力、高い水タンクレベル、酸素純度、及び/または低い患者O2飽和レベルのうちの1つ以上の場合にユーザに警報を出すステップを含む、方法を提供することである。
【0039】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、本方法はさらに、
a. 患者に酸素を供給するステップ、または
b. 酸素を貯蔵するステップを含む、方法を提供することである。
【0040】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、方法はさらに患者内のO2飽和レベルを検出するステップを含む、方法を提供することである。
【0041】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、方法はさらに以下のうちの1つ以上を含む、方法を提供することである。
a. デバイスのデータを記録すること、
b. 患者のデータを記録すること、
c. データを外部システムに転送すること。
【0042】
別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、方法はさらに、酸素流量を調整するステップを含み、調整は、反応器内への過酸化水素溶液の流量と流量調整器を介した流量とからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを調整することによって制御され、流量調整は、システム圧力、反応器圧力、酸素流量、及び患者O2飽和レベルからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータによって決定される、方法を提供することである。別の態様は、前述のいずれかで示した方法であって、酸素流量を調整するステップは酸素流量を測定するステップを含む方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本開示によるポータブル化学的酸素発生器の概略図である。
図2】本開示によるポータブル化学的酸素発生器の実施形態を示す図である。
図3】本開示による冷却システムの実施形態を示す図である。
図4】本開示によるヒートシンクシステムの実施形態を示す図である。
図5】Aは本開示による冷却システムの冷却エンクロージャの実施形態を示す図である。Bは本開示による冷却システムの冷却エンクロージャの実施形態を示す図である。
図6】本開示による冷却システムの実施形態を示す図である。
図7】本開示によるポータブル化学的酸素発生器の実施形態を示す図である。
図8】各出口から排出された液体に対するガス流量の影響を示す図である。
図9】排出された液体の温度に対するガス流量の影響を示す図である。
図10】冷却システムによって放出される熱に対するガス流量の影響を示す図である。
図11】排出された液体に対するガス流量及び触媒量の影響を示す図である。
図12】排出された液体の温度に対するガス流量及び触媒量の影響を示す図である。
図13】熱放出に対するガス流量及び触媒量の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示による化学的酸素発生器は、化学反応を通して酸素を生成するデバイスである。化学的酸素発生器は、酸素タンクまたは電解などの他の方法が実現できない状況で非常用酸素を供給するために重要である。
【0045】
化学的酸素発生器は、患者の吸入空気中の酸素を補充してその濃度を増加させるために用いられる。このような気体酸素には、酸素補給が必要であり得る多くの兆候がある。たとえば、血液循環障害(たとえば、病気が原因または負傷が原因で)、呼吸障害、肺機能の低下、及び高山病である。低酸素血症(血液中の酸素が不十分)は、急性下気道感染(たとえば、細菌(肺炎球菌及びインフルエンザ菌)及びウィルス(呼吸器合胞体ウィルス、インフルエンザウィルス、コロナウィルス)が原因の肺炎)でよく見られる合併症であり、死に対する強力な危険因子である。
【0046】
他の用途は、コンパクトでポータブルな酸素発生器が必要となる任意の場所となる可能性があり、たとえば軍事行動及び第三世界の診療所においてである。また化学的酸素発生器は、潜水艦、航空機において、また消防士及び坑内救助隊によって用いられる場合もある。
【0047】
優位なことに、本開示による化学的酸素発生器はコンパクトでポータブルであるが、信頼性が高く操作が単純でもある。この化学的酸素発生器は、制御された酸素流及び温度を長時間にわたって実現する。酸素流をユーザが制御して、0L/分~最大で約8L/分の酸素ガス、または最大で約10L/分、または最大で約15L/分を分配し得る。
【0048】
デバイスによって、実質的に過酸化水素及び他の汚染物質が無い呼吸に適した酸素の持続性で制御可能な流量を生成することができる。用語「実質的に無い」は、本明細書で用いる場合、過酸化水素または他の汚染物質の濃度が医学的許容レベルを下回っており、したがって患者に対する負傷または不快感のリスクを示さないことを指している。たとえば、本明細書で開示する化学的酸素発生器は、約1ppm未満の過酸化水素、または約0.5ppm未満の過酸化水素の酸素流を患者に供給する。いくつかの態様では、本デバイスは、最大で約8L/分、または最大で約10L/分、または最大で約15L/分の一定流量の酸素を、約40℃未満の温度において、約30分間を超える間、生成することができる。
【0049】
重要なことは、本明細書で開示する化学的酸素発生器が供給する酸素流は加湿されており、外部の加湿装置を用いる必要がないということである。酸素が加湿されていると、患者の快適さ及び安全性が向上する。適切な加湿を伴わずに酸素の流量を上げると、鼻粘膜または口腔粘膜が乾燥する場合があり、付随して出血、また可能性として気道閉塞が起こり得る。患者が鼻咽頭カテーテル、気管内チューブ、または気管切開術を施されている場合、供給酸素を加湿することは、分泌物を薄く保って粘液栓を回避するために重要である。供給酸素の加湿が不適切なために生じた気管内チューブ閉塞が、病院での多くの不必要な死の原因として報告されている。本明細書で開示する化学的酸素発生器は、加湿された酸素流を供給することによってこれらの懸念事項に対処している。
【0050】
過酸化水素の分解は非常に発熱性であるために、反応室内で生成された酸素は温度が90℃を超えて、最大で約98℃となることがあり、そのため、患者に分配するには高温すぎる。本明細書で説明する化学的酸素発生器を用いた場合、酸素はデバイスから、典型的に患者に送出するための柔軟な管材を経由して、快適な呼吸に適した温度(すなわち、約40℃未満)で出る。優位なことに、デバイスを出る酸素は、周囲温度(たとえば、室温)よりも約10℃以下だけ高いか、または周囲温度よりも約8℃以下だけ高いか、または周囲温度よりも約6℃以下だけ高い。
【0051】
ポータブル酸素発生システムは、反応室と、反応室に過酸化水素溶液を供給して制御するための供給システムと、反応器を離れる高温酸素及び水蒸気を冷却し、水を凝縮して取り除くための冷却/凝縮システムとを含む。反応室は、過酸化水素を酸素と水に化学分解することを促進する触媒と、反応室内に過酸化水素溶液を導入するための入口と、反応室から酸素及び水蒸気を放出するための出口とを含む。過酸化水素供給システムは、過酸化水素水溶液を含む過酸化水素貯蔵器と、反応室内に過酸化水素水溶液を添加するレートを制御するための供給流量調整器とを含む。冷却システムは、酸素及び水蒸気を受け取るための入口と、2つ以上の排水管を含む凝縮器であって、各排水管は冷却システム内で水蒸気から凝縮された水を排水するように構成されている凝縮器と、水蒸気が低減された冷却された酸素ガスを放出するための出口とを含む。
酸素源
【0052】
酸素を化学的に発生させるための酸素源は過酸化水素であるか、または過酸化水素の付加物または錯体である。本明細書で示すデバイス内で用いる化学反応における酸素源として使うには、過酸化水素の水溶液が好ましい。
【0053】
酸素ガスを形成するために反応器内で用いる過酸化水素分解に対する一般的な反応は以下の通りである。
2H22 → O2 + 2H2
【0054】
過酸化水素は一般に水溶液として入手可能であり、濃度は3%から最大で70%の範囲である。H22の濃度は好ましくは、少なくとも20%であり、約30%~約70%であってもよい。
触媒
【0055】
反応室には、過酸化水素の発熱分解を促進する触媒が含まれる。触媒には、金属、半金属、金属の合金、半金属の合金、金属の化合物、たとえば金属酸化物、及び半金属の化合物、またはそれらの混合物が含まれていてもよい。触媒には、遷移金属酸化物、たとえばMnO2、PbO2、Co34、V25、KMnO4、銀系触媒、Ni系触媒、Fe系触媒、Pt系触媒、Pd系触媒が含まれていてもよい。金属触媒には、銀、金、亜鉛、プラチナ、パラジウム、または他の金属触媒のうちの1つ以上が含まれていてもよい。代替的に、反応に触媒作用を及ぼすために酸を用いてもよい。
【0056】
固体不均一触媒を用いたとき(すなわち、水に不溶性の触媒)、触媒の表面で酸素の生成が起こる。固体不均一触媒を、水に可溶性でない前述で列記した触媒から選択してもよい。固体不均一触媒の利点は、過酸化水素の新しい部分によって何度も再使用することができて、高効率を維持できることである。
【0057】
触媒は粉末または粒状体の形態であってもよい。粉末形態の触媒の方が、表面積が大きいために、動力学が比較的速い場合がある。しかし、粒状体の方が取り扱い及び再使用には便利であり得る。粉末状触媒の高い表面積は過酸化水素の迅速な分解を確実にするのに役立つが、微粉は、触媒を反応室内に保持する際に問題を引き起こす場合がある。
【0058】
触媒は粒状体の形態、たとえば直径が約0.5mm~約5mmであってもよい。触媒粒状体には、金属、半金属、金属の合金、半金属の合金、金属の化合物、または半金属の化合物のうちの1つ以上が含まれていてもよい。粒状体にはさらに、1つ以上の結合剤材料が含まれていてもよい。
【0059】
触媒を固体担持材料の表面または母材上に分散するかまたはコーティングしてもよい。代替的に、触媒を不活性なマトリックス材料または結合剤中に含浸してもよい。
【0060】
触媒には多孔質マトリックス(たとえば、触媒のナノ粒子を堆積させる多孔質足場構造)が含まれていてもよい。多孔質マトリックスまたは足場構造は多くの好適な材料または材料の組み合わせから形成することができる。好適な材料の非限定的な例としては、有機材料または無機材料が挙げられ、樹脂、ポリマー、金属、ガラス、セラミック、活性炭、織物、またはそれらの組み合わせを挙げてもよい。
【0061】
多孔質マトリックスまたは足場構造は、ポリマースポンジで形成してもよい。ポリマーマトリックス/支持体は、高濃度の過酸化水素及び反応器内の高温に耐えられる材料から選択すべきであり、たとえば、ポリカーボネート、PVC、高密度ポリエチレンが含まれていてもよい。多孔質足場構造は、ポリ高内相エマルション(ポリHIPE)法の合成によって形成してもよい。HIPEの連続相の重合によって、多孔性ポリマーモノリス(ポリHIPEと言われる)が形成される。ポリHIPEは高多孔性を有し、空隙サイズは約10~100μmである。
【0062】
いくつかの態様では、多孔質足場構造を粒子質多孔材によって形成してもよい。たとえば、多孔材料の顆粒(多孔質足場構造の支持体を表している)を結合して、多孔質足場構造を形成してもよい。種々の粒子質多孔材を用いてもよい。たとえば、限定することなく、活性炭、ポリマービーズ、珪砂、ジルコニア、アルミナ、無煙炭などである。
【0063】
複数の変動要素が酸素放出レートに影響し得る。たとえば、過酸化水素の添加レート、反応室の温度、及び過酸化水素溶液と接触する触媒の量である。反応室内に導入する過酸化水素に対して過剰の触媒が反応室に含まれることを確実にすることによって、触媒を変動要素としては排除してもよい。反応が実行されたら、反応室の温度を約90℃以上、最大で約98℃に維持し、その間に酸素が生成される。反応室内に十分な量の固体触媒(たとえば、二酸化マンガン)が存在する状態で、反応室への過酸化水素水溶液の添加レートによって酸素生成のレートを制御してもよい。したがって一態様は、制御可能で選択的に一定の速度で酸素を生成することである。
22貯蔵器
【0064】
貯蔵器は過酸化水素溶液を保持する。貯蔵器は、不活性な非反応性材料(たとえば、ステンレス鋼またはポリマー/プラスチック)から構成される。貯蔵器は、一度使用したら捨てるかもしくは使い捨ての容器とすることもでき、または補充可能とすることもできる。貯蔵器は、供給流量調整器によって反応室内に供給される過酸化水素溶液を保持するカートリッジであってもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵器はシステムの一部であり、別の容器から補充される。
【0065】
貯蔵器はハードまたはソフト面を持つことができる。いくつかの実施形態では、貯蔵器は「注射器」のように構成してもよい。すなわち、バレル及びプランジャ(またはピストン)から構成される。
【0066】
いくつかの実施形態では、貯蔵器は、酸素の定常流を少なくとも約20分間、または少なくとも約30分間、酸素流量が約8L/分、または約10L/分、または約15L/分で維持するのに十分な過酸化水素の水溶液を保持することができるキャニスタである。過酸化水素の濃度は少なくとも約15%、または少なくとも約20%である。過酸化水素の濃度は約30%~約70%であってもよい。過酸化水素貯蔵器は、約500ml~約4000mlの過酸化水素溶液、または約1000ml~約3000mlの過酸化水素溶液を保持してもよい。
供給流量調整器
【0067】
所望の酸素流を維持するために、供給システムによって反応室に供給される過酸化水素溶液のレートをユーザが制御してもよい。いくつかの実施形態では、供給流量調整器は、反応器内への過酸化水素溶液の流量を制御するポンプを含む。ポンプは、当該技術分野で知られた任意の好適なポンピングユニットであってもよい。たとえば、限定することなく、容積型ポンプ、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、スクリューポンプ、または往復ポンプである。いくつかの実施形態では、貯蔵器は折り畳み可能であってもよく、供給ユニットは、貯蔵器上に圧力を加えることによって反応器内に過酸化水素溶液を押すように構成されている。いくつかの実施形態では、供給ユニットは往復ポンプとして働き、貯蔵器がポンプの一部を形成する。
反応器
【0068】
反応室は、酸素源(典型的に過酸化水素を水溶液として)の化学分解を起こす耐圧性ハウジングを含む。反応室は、過酸化水素を酸素と水に化学分解することを促進する触媒と、反応室内に過酸化水素溶液を導入するための入口と、反応室から酸素及び水蒸気を放出するための出口とを含む。
【0069】
反応室は任意的に、たとえば、もし酸素出口が塞がれた場合にハウジング破裂を防ぐための過圧バルブを含んでいてもよい。圧力バルブは、過剰ガスを解放することによって及び/または供給溶液流量を調整することによって、反応室内の圧力を調整するように構成してもよい。圧力バルブによる流量の調整は、直接行うこともでき、または制御ユニットによって行うこともできる。
【0070】
反応器出口は任意的に、反応室内の触媒を維持する働きをするフィルタまたはメッシュを含んでいてもよい。このようなフィルタまたはメッシュは、触媒が粉末で小粒径を有する場合には特に有用であり得る。
【0071】
反応室は、少なくとも100℃の温度に耐えられる不活性な非反応性材料から構成されている。反応器は、不活性/非反応性金属または金属合金(たとえば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル合金たとえばインコネルなど)から構成してもよい。代替的に、反応室を不活性/非反応性のポリマー材料で構成してもよい。本状況では、不活性または非反応性材料とは、反応条件下で劣化しないもののことである。しかし、いくつかの実施形態では、反応室に対して選択されて過酸化水素と接触する材料は、過酸化水素の分解に触媒作用を及ぼし得る。
【0072】
過酸化水素水溶液は、供給ユニットから少なくとも1つの開口部または入口(たとえば、ノズルまたは噴霧ノズル)を通って反応器に入る。溶液は触媒と混合して、H22をH2OとO2とに迅速に分解する。反応は発熱性であり、90℃を超えて最大で約98℃の持続する温度に達する。したがって反応器内で水は蒸発して蒸気になる。過酸化水素の分解によって生成したガスは、反応器出口から反応器の外に流れ出る。任意的に、反応室は、任意の蓄積した液体水を除去することができる排水管を含んでいてもよい。反応室から外へ出るガス状反応生成物(O2、H2O)の流量は、反応器内に過酸化水素溶液がポンピングされるレートに正比例する。
触媒フィルタ
【0073】
反応室から出るのは、反応生成物、酸素及び水蒸気であり、いくつかの実施形態では、何らかの未反応の液体またはガス状過酸化水素である。いくらかの過酸化水素が反応室を出る場合には、酸素発生器は任意的に、残留する過酸化水素の分解を行う二次反応器(触媒フィルタと言われる)を含んでいてもよい。
【0074】
触媒フィルタは、分解反応によって蒸発しまたは蒸留されて反応室を出た任意の過酸化水素を分解するように構成されている。触媒フィルタには、前述したように、過酸化水素の酸素及び水への分解を促進する1つ以上の触媒が含まれる。触媒フィルタには、反応器と同じ触媒または別の触媒が含まれていてもよい。触媒フィルタを出るガス流には実質的に過酸化水素が無い場合があり、したがって、出ていくガス流中の過酸化水素は医学的な許容レベル以下である。
冷却ユニット/凝縮器
【0075】
本開示では、ガス混合物を冷却して分離するための冷却ユニットまたはシステムを提供する。冷却システムは酸素ガスからの水を冷却して分離することに用いると説明しているが、冷却システムは他の混合物を冷却して分離することに適応させてもよい。
【0076】
冷却ユニットに入る高温の混合物には、少なくとも2つの成分、低沸点成分及び高沸点成分の混合物が含まれる。酸素発生器の場合、低沸点成分は酸素であり、高沸点成分は水である。高温の蒸気が凝縮/冷却ユニット内に流れ込む。凝縮/冷却ユニットはエンクロージャを含んでいる。エンクロージャは、ガス/蒸気混合物を収容して冷却することによって、凝縮性蒸気を液体に転化させるように構成されている。いくつかの実施形態では、エンクロージャは配管または管材である。凝縮エンクロージャは、ユニットの長さの全体にわたる少なくとも1つの排水管、好ましくは複数の排水管を含み、ガス流から凝縮液体を分離してタンク中に排出することができる。いくつかの実施形態では、冷却エンクロージャは複数の排水管を含んでいて、冷却ユニットの長さの全体にわたって凝縮液体を排出することができ、迅速で連続的な排出によって液体を分離することができる。
【0077】
本明細書で説明する酸素発生器の場合、反応室または触媒フィルタ(存在する場合)から出る高温ガスは冷却ユニット内に送られる。冷却ユニットに入るガス流は、約90℃を超えて最大で約98℃の場合があるため、患者に分配するには高温すぎる。冷却ユニットはガス流を冷却して、快適な呼吸に適した温度、すなわち約40℃未満にする。
【0078】
冷却ユニットは、ガス流を冷却し、水蒸気を凝縮して液体水にし、液体水を取り除くように構成されている。冷却ユニットは、ガス流から液体水を分離して、貯蔵タンク内に排出することができる。いくつかの態様では、冷却ユニットは、冷却ユニットの長さの全体にわたって排出することで、液体水を迅速かつ連続的に排出することができる。このシステムは、凝縮が起きると、凝縮水(高温であり得る)を迅速に取り除く。冷却エンクロージャの長さの全体にわたってシステムから水を取り除くことによって、冷却システムの冷却能力が、凝縮水を十分に冷却する必要なく酸素ガス流を効率的に冷却することに向けられ得る。この配置によって、冷却システムの冷却能力が、より低量の酸素流を冷却することに向けられて、冷却効率が増加する。
【0079】
一実施形態では、冷却エンクロージャは、Uベンドによって接続されたパイプの縦断面で形成されている。デバイスの動作時には、冷却システムの下側Uベンドが水平方向に位置して、パイプに沿った最低点に排水口を伴い、冷却システムから凝縮液体水を連続的に排出することを重力が助けられるようになっている。代替的に、冷却エンクロージャは、ガス流を収容するパイプを水平コイルの形態で含み、各コイル回転に対する最低点に沿って位置する排水口を有していてもよい。冷却エンクロージャをヒートシンク内に取り入れてもよく、及び/またはエンクロージャの外側に沿って冷却フィンを有していてもよい。冷却流体を、冷却エンクロージャを通過するように送って、冷却エンクロージャから熱を取り除くことを助けてもよい。冷却流体は、液体またはガスであってもよく、いくつかの実施形態では、冷却用空気の流れである。
【0080】
好ましい態様では、冷却システムはアクティブ空気冷却システムである。冷却システムのアクティブコンポーネントとして扇風機を用いてもよい。ファンが通ることによってエンクロージャの周りに冷却用空気が生成されて、エンクロージャの本体が冷却される。冷却された酸素は排気管/出管を介して凝縮エンクロージャを出る。優位なことに、冷却システムを出る酸素は周囲温度よりも約10℃以下だけ高いか、または周囲温度よりも約8℃以下だけ高いか、または周囲温度よりも約6℃以下だけ高い。
疎水性膜
【0081】
実施形態では、冷却システムを出る湿った酸素ガスは疎水性膜を通り、微量な水がろ過される。液体水があると、酸素流を測定する精度に支障を来す可能性がある。疎水性膜はポリマー材料の微多孔膜である。疎水性膜は、このために該技術分野で知られている任意の材料から構成してもよい。たとえば、アクリルコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン、及びポリカーボネートである。疎水性膜を有する通気栓として市販されているものを、このために用いてもよい。
【0082】
実施形態では、乾燥機を反応室または触媒フィルタ(存在する場合)と冷却システムとの間に位置させてもよい。乾燥機は、疎水性膜を含み、ガス流が冷却システムに入る前にガス流から水の一部を取り除く働きをする。乾燥機は、ガス流から最大で約90%の水またはガス流から約70%~約90%の水を取り除いてもよい。ガス流が冷却システムに入る前に水の一部を取り除くことによって、冷却システムの効率が増加し得る。疎水性膜はポリマー材料の微多孔膜であり、このために当該技術分野で知られている任意の材料から構成してもよい。たとえば、アクリルコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0083】
図1に、化学的酸素発生器の実施形態の基本ユニット10を概略的に示す。貯蔵器11は過酸化水素溶液を保持する。保持器は一度使用したら捨てることもでき、補充可能とすることもできる。いくつかの実施形態では、貯蔵器は、システム内に供給される溶液を保持するカートリッジである。いくつかの実施形態では、貯蔵器はシステムの一部であり、別の容器から補充される。貯蔵器はハードまたはソフト面を持つことができる。貯蔵器は、不活性で非反応性の医薬品等級の材料から構成される。いくつかの実施形態では、貯蔵器は「注射器」のように収縮する。すなわち、バレル及びプランジャ(またはピストン)から構成される。いくつかの実施形態では、貯蔵器は、過酸化水素(H22)水溶液を保持することができるキャニスタである。過酸化水素の割合は少なくとも20%、いくつかの実施形態では30~70%である。
【0084】
供給ユニット12は反応器内への過酸化水素溶液の流量を制御する。いくつかの実施形態では、供給ユニットはポンプである。ポンプは、たとえば、容積型ポンプ、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、スクリューポンプ、または往復ポンプとすることができる。いくつかの実施形態では、貯蔵器12は折り畳み可能であり、供給ユニットは、貯蔵器上に圧力を加えることによって反応器内に過酸化水素溶液を押すように構成されている。いくつかの実施形態では、供給ユニットは往復ポンプとして働き、貯蔵器がポンプの一部を形成する。
【0085】
供給ユニットは、種々のパラメータに従って流量を制御するように設定することができる。たとえば、過酸化水素溶液の流量、酸素流量(デバイスの出口での)、及び反応室圧力である。いくつかの実施形態では、供給ユニットはさらに、圧力センサを含んでいる。
【0086】
反応室13は、過酸化水素を酸素と水に化学分解することを促進する触媒と、反応室内に過酸化水素溶液を導入するための入口と、反応室から酸素及び水蒸気を放出するための出口とを含む。反応室は、少なくとも100℃の温度に耐えられる不活性な非反応性材料から構成されている。
【0087】
過酸化水素水溶液は、供給ユニットから少なくとも1つの開口部または入口(たとえば、ノズルまたは噴霧ノズル)を通って反応器に入る。反応器には、過酸化水素を水と酸素とに分解することに触媒作用を及ぼす触媒が含まれる。溶液は固体触媒粒子と混合して、過酸化水素をH2OとO2とに分解する。反応は発熱性であり、90を超えて最大で約98℃の温度に達する。過酸化水素の分解によって生成したガスは、反応器を出て触媒フィルタ14を通って流れ出る。
【0088】
反応室にはさらに圧力バルブを含めることができる。いくつかの実施形態では圧力バルブは、過剰ガスを解放することによってまたは溶液流量を調整することによって、反応室内の圧力を調整するように構成されている。圧力バルブによる流量の調整は、直接行うこともでき、または制御ユニットによって行うこともできる。
【0089】
触媒フィルタ14は、分解反応によって蒸発しまたは蒸留された任意の過酸化水素を分解するように構成されている。フィルタは、反応器内に存在するものと同じ触媒または別の触媒で構成することができる。
【0090】
フィルタ14を通って流れたガスは、冷却ユニット15内に進む。冷却ユニットは、ガスを冷却し、水蒸気を凝縮して液体水にするように構成されている。冷却ユニットは液体をタンク内に排出することができる。いくつかの実施形態では、冷却ユニットは、冷却ユニットの長さの全体にわたって排出する。いくつかの実施形態では、液体は即座かつ連続的に排出される。水タンクは水を保持して排出することができる。
【0091】
冷却ユニット15を通ったガスは疎水性膜(またはフィルタ)16を通り、冷却ユニットの全体にわたって凝縮されなかった任意の水蒸気が取り除かれる。
【0092】
酸素流量調整器17は、フィルタ16を通る酸素の量を測定する流量計を含む。流量計は、酸素流が連続的で必要なレベルにあることを確実にするように供給ユニットを調整してもよい。流量調整器はまた、酸素が患者にとって高温すぎないことを確実にするためにガスの温度を測定することもできる。いくつかの実施形態では、流量調整器はさらに、酸素流を調整するためのバルブを含んでいる。バルブは手動、機械的、または電気機械的とすることができる。いくつかの実施形態では、バルブの制御はユーザによって、制御ユニットによって、または直接流量計によって行われる。
【0093】
システムは制御及び表示ユニット及び電源18を含む。表示ユニットは、重要なデバイスパラメータ(酸素流、酸素温度、水タンク含有量レベル、貯蔵レベル、システム圧力、バッテリパワーレベルなど)のすべてを表示することができる。また制御及び表示ユニットは、システムの全体ステータス(たとえば、使用ステータス、触媒ステータス、保守など)を追跡することもできる。
【0094】
いくつかの実施形態では、システムはさらにバイオセンサーを含む。いくつかの実施形態では、バイオセンサーは、患者に接続されたO2血液飽和センサである。センサを制御ユニットに接続して患者の飽和レベルを追跡することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニットは患者のO2飽和レベルに従って酸素流量を制御するように構成されている。制御ユニットは、出口バルブまたは供給ユニットを調整することによって酸素レートを制御することができる。
【0095】
システムは出口ポート19を含む。出口ポート19を通って、生成された最終的な酸素がデバイスを出て、そして、患者に送出するかまたは後で用いるために保管することができる。
【0096】
次に図2を参照する。図では酸素生成デバイスの特定の実施形態を示している。
【0097】
酸素生成デバイス20は、過酸化水素溶液(たとえば、50%~60%)を収容する過酸化水素カートリッジ21を含む。過酸化水素溶液は、H2OとO2とを生成する化学反応の基材である。カートリッジ容積は750~3000mlであってもよく、10L/分のO2の流量を30~45分生成するのに十分である。カートリッジは、空になったら迅速に交換できるようにデザインされていて、連続的な酸素流が可能になっている。
【0098】
ポンプ22(たとえば、蠕動ポンプ)は、過酸化水素溶液をカートリッジ21から反応室23へ動かし、ここでは化学反応が起きる。ポンプ速度(RPM)は制御ユニットを通して制御される。
【0099】
過酸化水素が反応室23内に供給されて、固体触媒粒子と混合し、過酸化水素が水と酸素とに分解される。反応は発熱性であり、約90℃を超えて最大で98℃の温度に達し、最大で1,500Wの定電力を形成する。
【0100】
反応室から出るのは、酸素、水蒸気、いくらかの液体及びガス状過酸化水素である。反応生成物(O2、H2O)の流量はポンプRPMに正比例する(反応は触媒によって飽和している)。圧力計24aが反応室内の圧力を追跡する。圧力が過剰である場合には、圧力バルブ24bが過剰ガスを放出することができる。
【0101】
混合物は反応室から出たら触媒フィルタ25内に送られる。ここには触媒粒子が詰められている。微量の過酸化水素(液体または気体)を化学的に分解して酸素と水とにして、わずかでも腐食性の過酸化水素が患者に達するのを防ぐ。
【0102】
高温酸素及び蒸気は触媒フィルタ25を出たら、ファン26a及び冷却エンクロージャ26bを含むアクティブ空気冷却システム内に流れ込む。システムを通って進む間に、凝縮が起こり、冷却エンクロージャ内の各曲線の底部にあるポートを通って水が流れ落ちる。この配置によって、冷却能力が、大量の水の冷却ではなくて、小量の蒸気の凝縮に効率的に向けられる。冷却システムのアクティブコンポーネントとして扇風機26b(60W)を用いる。
【0103】
水が水タンク27内に集められて、ソレノイド制御タップを通して適時に排出される。
【0104】
湿った酸素は冷却システムを出たら、疎水性膜28を通って流れて、さらなる水がろ過される。O2パイプ内に液体があると、O2流量の正確な測定に支障を来す可能性がある。
【0105】
熱メーター29a及び質量酸素流量計29bを、出口ポート29cを通ってデバイスを出る酸素のリアルタイム流量測定に用いる。
【0106】
次に図3を参照する。図では冷却システム30の断面図を示している。冷却用空気がファン31によって生成されて、漏斗32を通り、反応器によって生成された酸素及び水蒸気を収容するパイプ34を囲む領域33に至る。ガス流は次に、ポート36を通ってシステムを出る前に疎水性膜35によって除湿され、患者に供給される。
【0107】
次に図4を参照する。図ではヒートシンク冷却システム40を説明している。高温酸素及び水蒸気の混合物はシンクスルー41に入る。ガスが冷却されて水蒸気が液体に転化すると、液体水はUベンド44の最低位置にある排水口42を通して排出されて、システムスルー43を出る酸素中の水の含有量が減る。図4は、図3の冷却ユニットをy軸上で90°回転させたものを示している(すなわち、側面図)。
【0108】
次に図5を参照する。図では冷却システムの冷却エンクロージャの典型的な実施形態を示している。図5Aは、連続するUベンドを含む冷却エンクロージャを示している。各下側Uベンド51の最低部分において、冷却エンクロージャ内で凝縮された液体(水)を排出するための排水口52がある。図5Bに示すのは、水平のコイル形状の冷却エンクロージャであり、各コイル回転の最低部分に排水口52が位置する。
【0109】
次に図6を参照する。図では冷却システムの典型的な実施形態を示している。高温ガス混合物(たとえば、高温酸素及び蒸気)は、ファン66a及び冷却エンクロージャ66bを含むアクティブ空気冷却システム60内に流れ込む。システムを通って進む間に、凝縮が起こり、低沸点側成分(たとえば水)が凝縮して、冷却エンクロージャ内の各下側Uベンド66dの底部にある排水口66eを通って下方に排出される。この配置によって、冷却能力が、大量の凝縮された高沸点側成分(たとえば水)の冷却ではなくて、低沸点側成分(たとえば酸素)を含む低減された量の流れに効率的に向けられる。冷却システムのアクティブコンポーネントとして扇風機66bを用いる。高沸点側成分(たとえば水)がタンク67内に集められる。
【0110】
次に図7を参照する。図では酸素生成デバイスの特定の実施形態を示している。酸素生成デバイス70は、過酸化水素溶液(たとえば、50%~60%)を収容する過酸化水素カートリッジ71を含んでいる。過酸化水素溶液は、H2OとO2とを生成する化学反応の基材である。カートリッジ容積は750~3000mlであってもよく、10l/分O2以上の流量を30~45分生成するのに十分である。カートリッジは、空になったら即座に交換できるようにデザインされていて、酸素の連続的な流れが可能になっている。
【0111】
ポンプ72(たとえば、蠕動ポンプ)は、過酸化水素溶液をカートリッジ71から反応室73へ動かし、ここでは化学反応が起きる。ポンプ速度(RPM)は制御ユニット79dを通して制御される。
【0112】
過酸化水素が反応室73内に供給されて、固体触媒粒子と混合し、過酸化水素が水と酸素とに分解される。反応は発熱性であり、約90℃を超えて最大で98℃の温度に達する。
【0113】
反応室から出るのは、酸素、水(蒸気として)、いくらかの液体及びガス状過酸化水素である。反応生成物(O2、H2O)の流量はポンプRPMに正比例する(反応は触媒によって飽和している)。圧力計74aが反応室内の圧力を追跡する。圧力が過剰である場合には、圧力バルブ74bが過剰ガスを放出することができる。
【0114】
混合物は反応室から出たら触媒フィルタ75内に送られる。ここには触媒粒子が詰められている。微量の過酸化水素(液体または気体)を化学的に分解して酸素と水とにして、わずかでも腐食性の過酸化水素が患者に達するのを防ぐ。
【0115】
高温酸素及び蒸気は触媒フィルタ75を出たら、乾燥機76c内に流れ込む。乾燥機76cは、疎水性膜を含み、ガス流が冷却システムに入る前にガス流から水の一部を取り除く働きをする。
【0116】
部分的に乾燥した高温酸素及び水蒸気は、ファン76a及び冷却エンクロージャ76bを含むアクティブ空気冷却システム内に流れ込む。システムを通って進む間に、凝縮が起こり、液体水は、冷却エンクロージャ内の各下側Uベンドの底部にある排水口を通って下方に排出される。水が水タンク77内に集められて、ソレノイド制御タップを通して排出される。
【0117】
2パイプ内に液体があると、O2流量の正確な測定に支障を来す可能性がある。湿った酸素は冷却システムを出たら、疎水性膜78を通って流れて、さらなる水がろ過される。任意の水を、排出装置78aを通して疎水性膜から排出してもよい。任意的に、酸素流は疎水性フィルタを出たら、乾燥剤(たとえば、シリカ)を含むさらなる乾燥フィルタ78bを通る。
【0118】
温度計79a及び質量酸素流量計79を、出口ポート79cを通ってデバイスを出る酸素のリアルタイム流量測定に用いる。
【0119】
デバイスはバッテリーユニット79eによってパワー供給される。バッテリーユニット79eは、再充電可能な12~18V/4~5Ahバッテリーを含んでいてもよい。デバイスはさらに、電子制御及び表示ユニット79dを含む。制御及び表示ユニット79dは、ポンプRPM、冷却ファン速度、及び水タンク排出から選択されるパラメータを制御するように構成してもよい。また制御ユニットは、前述のいずれかで開示したパラメータのうちの1つ以上に対するフィードバック回路を含んでいてもよい。制御ユニットは、低いH22貯蔵、低バッテリー、高い水タンクレベル、高いデバイス圧力、酸素純度、及びデバイス保守のうちの1つ以上の場合についてモニタし、及び/または警報を出すように構成してもよい。
実施例
材料及び方法
【0120】
冷却システム性能をいくつかのパラメータによってテストした。排出される液体質量及び体積、排出される液体温度、及び各出口点から放出された熱である。
【0121】
データを、デバイスの動作中に5分間、50%過酸化水素(H22)と過酸化水素分解用の触媒(HydrogenLinkOxyCatalyst)とを用いて集めた。ガス流を、ガス流量計によって測定して、蠕動ポンプを用いて過酸化水素流を制御することによって間接的に制御した。
【0122】
体積を測定シリンダによって測定し、質量を分析天秤によって測定した。温度を温度計(ExTech4チャネル温度計、モデルSDL200)によって測定した。熱を以下の方程式を用いて計算した。
【数1】
【0123】
表1に、酸素発生器の冷却システムにおいて測定したパラメータを示す。

【表1】
【0124】
1.1 ガス流量の効果
【0125】
理論的には、ガス流量を増加させたら、過酸化水素流を増加させる必要があり、反応室内でのその分解反応レートが増加する。より多くの反応物(この場合は過酸化水素)を添加すると、触媒が分解反応に触媒作用を及ぼすことが促進される。その結果、より多くの酸素及び水が生成されることになり、発熱反応から熱が生成されることに起因して反応室内の温度が増加する。したがって、過酸化水素流が増加して、反応室に入る過酸化水素の量が増加すると、より多くの熱が放出されるにつれて、排出される液体質量及び液体温度が増加することが予想される。
【0126】
1.1.1排出された液体質量
【0127】
過酸化水素分解反応の生成物は水と酸素である。高流量実験(7及び10LPM)において、第1及び第2の出口点で排出された液体中に微量の過酸化水素が見出された。それが示すのは、反応室内ですべてのH22が反応したわけではなく、冷却システム内で凝縮されたということである。高流量のH22を補償するために触媒の量を増加すべきであると結論づけることができる。
【0128】
図8に、5、7、及び10LPMの流量において出口点1~4から排出された液体質量を示す。図から分かるように、高流量の10LPMの場合のみ、4番目の出口点が冷却プロセスに関与した。加えて、3つすべての流量に対して傾向は同じである。出口点の番号が上がるにつれて、排出される液体質量は減少する。これは、液体のほとんどが、高い温度差(ガス流が反応室から出るときの温度は92~96℃である)に起因して第1の出口点において凝縮されるという事実によって説明することができる。
【0129】
10LPMのグラフは他の2つよりもかなり高いが、5及び7LPMの間の差は小さい。しかし7LPMの場合、冷却システムから排出された液体の全質量がより高い(著しくはない)。また7LPMの場合、第3の出口点が冷却プロセスに関与したが、5LPMの場合は2つの出口点のみが必要であった。
【0130】
1.1.2 排出された液体温度
【0131】
排出された液体の温度は各出口点における冷却プロセスの効率を示す。図9に示すように、3つの流量すべてに対して、出口点の番号が上がるにつれて温度が減少する。異なる流量の間で比べると、各出口点において流量とともに温度が減少することが分かる。5LPMにおいて最も効率が高く、10LPMにおいて最も低い効率が得られた。最も高い流量の場合に、最も大量の生成物(水及び酸素)が生成された。したがって、必要とされる冷却は「より難しい」。これは、排出される液体の温度がより高いこと及び冷却に必要な出口点の数によって表される。
【0132】
1.1.3熱放出
【0133】
冷却プロセスの間に放出される熱を、排出された液体質量と、入口と出口との間の温度差とに基づいて計算する。このパラメータは、温度として、冷却効率を示した。図10に、各出口点から放出される熱を、異なる流量において示す。各出口点において放出される熱は、点番号が上がると減少する。なぜならば、冷却が必要な質量が減少して、温度のデルタが小さくなるため、放出すべき熱が減るからである。この傾向は、テストしたすべての流量において存在する。最も低い流量の5LPMが最も低い過酸化水素流量を必要とした。反応物が低流量であると、他のガス流実験の場合よりも、触媒が過酸化水素に十分な触媒作用を及ぼすことが可能になり、冷却システムの始まりにおいて冷却システムがより多くの熱を排出することが可能になった。過酸化水素が高流量であると(7及び10LPM実験の場合のように)、冷却すべき高温ガスが増加するため、冷却効率は低下する。これは、図9に示すように液体温度がより高いことと、図10に示すように放出される熱がより低いこととによって表される。
【0134】
1.2 触媒量の効果
【0135】
一般に、化学反応は触媒の存在下でより速く行われる。なぜならば、触媒によって、無触媒メカニズムの場合よりも低い活性化エネルギーを伴う代替的な反応経路が得られるからである。したがって、触媒量は反応速度に著しい影響を及ぼす。触媒の存在が十分過剰となるまで、触媒の量が多いほど反応速度が高くなることが予想される。
【0136】
1.2.1排出された液体質量
【0137】
図11に、排出された液体に対する触媒量の影響を、異なる流量に対して示す。同じ液体流量(一定のポンプ電圧)に対して特定のガス流量を得るために、低触媒実験においてより長い時間が必要であった(すべての低触媒実験において30秒)。総実験時間は一定であったため(5分間)、その時間の間に第1の出口点から得られた排出液体は減少した。第2及び第3の出口の場合、傾向は反対であった。なぜならば、凝縮すべき残った液体が少なかったからである(液体のほとんどが第1の出口点において凝縮された)。しかし、高流量の10LPMの場合、低触媒量では、多量の場合と比べて、より大量の液体がすべての出口点から排出された。これは、高流量実験において観察された「過負荷現象」によって説明することができる。セクション1.1.1で説明したように、10LPMは、その反応室デザインに対しては高流量すぎることが判った。その結果、反応室に過酸化水素が過負荷に入るが、触媒はそれに対して同じレートで触媒作用を及ぼすことができない。「過負荷現象」の結果、不完全反応が起こり、排出された液体中に過酸化水素が存在することになる。この現象は、高流量(10LPM)で低触媒実験の場合により強い。それは、高触媒実験と比べて排出される過酸化水素が多いことを意味する。過酸化水素は水よりも高密度であるため、低触媒量の場合に排出される液体質量の方が高い。
【0138】
1.2.2 排出された液体温度
【0139】
温度に対する結果を図12に示す。結果は支配的挙動を示している。特定の流量に対して、触媒量が低い方が、得られた温度は高い。これは、排出された液体の質量がより低いので、予想されることである。これは、凝縮プロセスを通して放出されたエネルギーがより少ないことを意味しており、温度はより高くなる。しかし10LPMは、一貫性のある挙動は示していない。第1の出口点の場合、低触媒はほとんど同じ液体排出温度であるが、第2の出口の場合、低触媒の方が液体排出温度が高く、第3の出口の場合、高触媒の方が温度が高くなっている。この場合もやはり、過負荷によって、反応室内での過酸化水素の一部の反応が妨げられており、反応の一部が冷却システム内で起こっているため、温度結果に基づいて結論を出すことはできないと想定することが妥当である。
【0140】
異なる流量を比較することで次のことが分かる。流量が減少すると、各触媒量に対して、各出口点における温度が低下する。その理由は、より多くの液体が凝縮されて、それによって、放出熱のより多くが吸熱性の凝縮プロセスに消費されたからである。
【0141】
1.2.3 熱放出
【0142】
図13に示す熱放出結果を見ると次のことが分かる。流量が増加すると、各触媒量に対して、各出口から放出される熱が減少する(10LPMの場合は除く。この場合は、説明したように、過負荷状態であった)。冷却システムによって放出された高熱は冷却プロセスの効率を表している。各触媒量において流量が低い方で最高効率が得られた。なぜならば、入口及び出口温度のデルタが最も大きかったからである。方程式1に基づいて、熱の計算をこの温度差に基づいて行う。すべての実験に対する傾向は同じである。各出口点から放出される熱は、第1及び第2の出口点の間で劇的に減少し、勾配は第2及び第3の出口の間でより穏やかになる。この結果、第1の出口点において熱のほとんどが放出され、そこが最も効率的な冷却点であることが分かる。
同じ流量(10LPMは除く)に対して2つの触媒量の間で比較すると、次のことが明らかになる。触媒量が多いほど熱放出が多くなる。その原因は、量が多いほど、反応に及ぼされる触媒作用が良好になり、そのため、実験の間に得られる生成物の量が増え(ポンプ電圧が一定である間)、この発熱反応において生成される熱が多くなるという事実による。
【0143】
結果を見ると、出口点の番号が上がるにつれて、排出される液体質量が減少することが分かる。各流量に対して、出口点の番号が上がるにつれて、排出される液体の温度は減少する。各出口点において、温度はまた、流量とともに減少する。各出口点において放出される熱は、点番号が上がると減少する。最も高い流量において、最も大量の生成物(水及び酸素)が生成された。
【0144】
5LPMにおいて最も効率が高く、10LPMにおいて最も低い効率が得られた。各触媒量において低流量の方が最高効率が得られた。第1の出口点が最も効率的な冷却点である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】