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  • 特表-ビール醸造粕の加水分解 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ビール醸造粕の加水分解
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20220601BHJP
   C12C 11/00 20060101ALI20220601BHJP
   C12C 7/04 20060101ALI20220601BHJP
   C12C 12/00 20060101ALI20220601BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20220601BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220601BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20220601BHJP
   A23G 1/42 20060101ALI20220601BHJP
   A23G 1/40 20060101ALI20220601BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20220601BHJP
   A23L 7/104 20160101ALI20220601BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20220601BHJP
   C12P 19/00 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 36/8998 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 36/062 20060101ALI20220601BHJP
   A23K 10/38 20160101ALI20220601BHJP
   A23K 10/14 20160101ALI20220601BHJP
【FI】
A23L33/10
C12C11/00 Z
C12C7/04
C12C12/00
A23L2/02 C
A23L2/00 F
A23L2/54 101
A23G1/42
A23G1/40
A23L33/21
A23L7/104
C12P1/04 Z
C12P19/00
A61P1/12
A61K36/8998
A61K36/062
A23K10/38
A23K10/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560564
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2020053299
(87)【国際公開番号】W WO2020208513
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019000005588
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521443140
【氏名又は名称】ヒーロ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルヴェッロ,フランチェスカ
【テーマコード(参考)】
2B150
4B014
4B018
4B023
4B064
4B117
4B128
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB02
2B150AB03
2B150AB10
2B150BB03
2B150BB05
2B150BB06
2B150CC02
4B014GB01
4B014GG01
4B014GG06
4B014GG15
4B014GK12
4B014GP01
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD49
4B018MD85
4B018MD90
4B018MD91
4B018MD94
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF04
4B018MF12
4B018MF13
4B018MF14
4B023LC09
4B023LE30
4B023LG05
4B023LK17
4B023LK18
4B023LP16
4B023LP20
4B064AF01
4B064CA02
4B064CA21
4B064CB06
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4B064CC06
4B064CC15
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4B117LC04
4B117LG01
4B117LG03
4B117LG05
4B117LK01
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4B117LK30
4B117LP20
4B128CP23
4B128CP31
4B128CP37
4C087AA01
4C087BC12
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA73
4C088AB73
4C088AC04
4C088CA22
4C088CA25
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA73
(57)【要約】
【要約】 ビール醸造粕由来の加水分解物製品、およびそれを調製するためのプロセス、ならびにヒト用食品および動物用飼料におけるその利用が開示される。この加水分解物は、低い分子量のペントサンを高いパーセントで含有し、それ故バイオアベイラビリティの高い可溶性繊維を提供する。これにより、全粒穀物製品の高い消費に伴う不利益が克服されることが可能になるとともに、消費者がそれに含有される栄養成分から利益を得ることも可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビール醸造粕由来の加水分解物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスが:
i)前記ビール醸造粕および水を、1:1から1:5の重量比で混合すること、
ii)かくて得られた混合物に、前記混合物の重量を基準として2wt%までの:
a)キシラナーゼ、または
b)キシラナーゼ、アミラーゼ、およびグルカナーゼの酵素複合体、
からなる酵素を添加すること、および45-65℃の温度および4-6のpHにおいて、1-6時間にわたり反応させること、
iii)少なくとも5分間にわたり、温度を80-90℃に上昇させることにより、工程ii)の前記酵素を失活させること、および
iv)工程iii)の最後に得られた固形成分から液体成分を分離すること、かくてビール醸造粕加水分解物である前記液体成分を保持すること、
の工程を含む、プロセス。
【請求項2】
前記キシラナーゼが、エンド-1,4-ベータ-キシラナーゼであり、前記アミラーゼが、アルファ-アミラーゼであり、かつ前記グルカナーゼが、エンド-1,3(4)-ベータ-グルカナーゼである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程ii)において、前記酵素が、前記混合物の重量を基準として1wt%までの量で添加される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程i)において、ビール醸造粕および水が、1:1.5から1:3の重量比にある、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
工程ii)において、前記混合物が58-62℃において2-4時間にわたり反応させられる、請求項1から4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
工程iv)において、前記液体成分が、濾過により、前記固形成分から分離される、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項のプロセスによって取得可能なビール醸造粕加水分解物であって、これにおいて、工程ii)で、前記酵素キシラナーゼa)が添加され、前記加水分解物が、フェルラ酸、タンパク質、1グラムの乾燥加水分解物当たり、30mgまでのベータグルカン、および300mgまでの30kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンを含む、ビール醸造粕加水分解物。
【請求項8】
1グラムの乾燥加水分解物当たり、25mgまでのベータグルカン、および250mgまでの30kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンを含む、請求項7に記載のビール醸造粕加水分解物。
【請求項9】
1グラムの乾燥加水分解物当たり、0.5mgまでのフェルラ酸を含む、請求項7または8に記載のビール醸造粕加水分解物。
【請求項10】
1グラムの乾燥加水分解物当たり、8mgまでのタンパク質を含む、請求項7から9のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか1項に記載のプロセスによって取得可能なビール醸造粕加水分解物であって、これにおいて、工程ii)において、キシラナーゼ、アミラーゼ、およびグルカナーゼの前記酵素複合体b)が添加され、前記加水分解物が、フェルラ酸、タンパク質、極微量のベータグルカン、および1グラムの乾燥加水分解物当たり250mgまでの10kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンを含む、該ビール醸造粕加水分解物。
【請求項12】
1グラムの乾燥加水分解物当たり、200mgまでの5kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンを含む、請求項11に記載のビール醸造粕加水分解物。
【請求項13】
1グラムの乾燥加水分解物当たり、0.8mgまでのフェルラ酸を含む、請求項11または12に記載のビール醸造粕加水分解物。
【請求項14】
1グラムの乾燥加水分解物当たり、5mgまでのタンパク質を含む、請求項11から13のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物。
【請求項15】
請求項7から10のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物と、請求項11から14のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物とを含む、食品組成物。
【請求項16】
請求項7から10のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物、もしくは請求項11から14のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物、または請求項15に記載の食品組成物を含む食品製品であって、前記食品製品が、焼いてある食べ物、飼料、フードサプリメント、栄養補助食品、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、エナジードリンク、栄養バー、食油、いわゆる「朝食用シリアル」、生パスタ、乾燥パスタ、ヨーグルト、アイスクリーム、フルーツジュース、およびデザートから選択される可食製品であり、好ましくは前記食品製品がビールである、食品製品。
【請求項17】
請求項7から10のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物、もしくは請求項11から14のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物、または請求項15に記載の食品組成物を含む、ヒトおよび動物双方の、フードサプリメントまたは医療用具。
【請求項18】
醸造プロセスであって、以下の工程:
1)水と、請求項1から6のいずれか1項に記載のプロセスの工程iv)において得られたビール醸造粕加水分解物、または請求項15に記載の食品組成物とを、マッシングタンにおいて添加すること、
2)粉砕されたモルトを添加し、かくてマッシングまで進行させること、
3)工程2)から得られた麦汁を、濾過すること、
4)前記麦汁を煮沸すること、およびホップを添加すること、
5)前記麦汁を前記ホップから分離すること、および酵母の存在下で発酵させること、
6)かくて得られたビールから、前記酵母および固形残渣を分離すること、および任意で、
7)前記ビールを熟成させること
を含む、該醸造プロセス。
【請求項19】
フィトコンプレックスの調製のためのプロセスであって、以下の工程:
A)請求項7から10のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物、もしくは請求項11から14のいずれか1項に記載のビール醸造粕加水分解物、または請求項15に記載の食品組成物から出発する、発酵ブロスを調製すること、
B)前記発酵ブロスを、3-6.5のpHにおいて安定化させること、
C)前記発酵ブロスに、コマガタエイバクター・キシリナス(Komagataeibacter xylinus)、コマガタエイバクター・スウィングシ(Komagataeibacter swingsii)、コマガタエイバクター・レティクス(Komagataeibacter rhaeticus)、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの微生物の第1の母培養物、またはストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・デブルエッキー・ブルガリクス(Lactobacillus debruecki bulgaricus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus pluntarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの微生物の第2の母培養物を接種すること、
D)前記ブロスを発酵させておくこと、
E)発酵ブロスを失活させること、および
F)失活された前記発酵ブロスを精製して、フィトコンプレックスを得ること、
を含む、プロセス。
【請求項20】
整腸薬としての使用のための、請求項19に記載のプロセスから取得可能なフィトコンプレックス。
【請求項21】
治癒剤として局所使用するための、請求項19に記載のプロセスから取得可能なフィトコンプレックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にビール醸造粕由来の、植物繊維加水分解物製品、それを調製するためのプロセス、ならびにヒト用食品および動物用飼料におけるその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等級の植物繊維は、自然の消化プロセスの多くの面に影響を及ぼす能力を持つ食物成分として、ここしばらくの間話題になっている。
【0003】
実際、ブランの摂取および同様に全粒シリアルの摂取が、腸の規則性に対し、またある種の疾患の防止に対し、ポジティブな効果をもつことが知られている。しかしながら、こうした利点が、繊維に富む植物がもたらす「引きずり(dragging)および掃除(cleaning)」という機械的効果に専ら起因するばかりではなく、特にまた、これらの植物マトリックスを含む明確に定義された分子にも起因することを、様々な研究が示したのはごく最近のことである。食品等級の植物繊維は、不溶性繊維、すなわちセルロースおよびリグニン由来、からなり、それは、腸内の食塊の輸送および糞便の排出を促進することから、上述の引きずりおよび掃除の効果を促進して、胃腸管機能に対し広く作用する。しかし、食品等級の食物繊維はまた可溶性繊維からも構成され、それは、図1に示されるように、主として、ペントサンのファミリーに属するアラビノキシランの多糖鎖と、ペントサン系構造に結合した抗酸化分子、フェルラ酸とからなる。
【0004】
これらの可溶性繊維はまた、「ビール醸造粕」として知られるもの、すなわち醸造産業の副産物の中にも存在する。ビール醸造粕は、モルト化された穀物の熱抽出に由来する残渣からなり:それは、穀物の外皮と、モルト化およびマッシングプロセスの間に可溶化を受けなかった画分とを含み、同様に不定量の非糖化デンプンおよびデキストリンを含む。
【0005】
ビールの製造においては、大麦麦芽とは別に、他の-モルト化されない-穀物もまた使用される。
【0006】
新鮮なビール醸造粕は、しかしながら、用いた穀物が異なるにもかかわらず、全く一定した分析組成を有しており、言い換えれば、それらは乾燥重量について典型的には以下を含む:
タンパク質: 約30%
複合炭水化物:約50%、アラビノキシラン22-23%、
セルロース12-25%、およびベータグルカン10%
【0007】
この組成は、1kgの乾燥重量当たり0.80U.F.L.および0.75 U.F.C.を超える栄養価を、ビール粕に帰することを可能にするものであって、その値は小麦ブランのものとかけ離れていない(U.F.L.=Unita Foraggera Latte、すなわちミルク飼料単位(milk fodder unit)であり、これは-栄養的な力という面で-乳牛に投与した場合、約1700kcalを与え、かつ脂肪分4%のミルク2.33lの生産を可能にする、1kgの大麦粒に等しい。U.F.C.=Unita Foraggera Carne;すなわち肉飼料単位(met fodder unit)、これは-栄養的な力という面で-肥育状態にある動物の維持および生育のために1820kcalを与える、1kgの大麦粒に等しい)。この栄養価があれば、ビール醸造粕は特に家畜の給餌において使用される。
【0008】
ペントサン、および特にアラビノキシランは、糖および脂肪の吸収を調整して、血中のグルコースおよびコレステロールレベルの制御に貢献する。それらはそれ故、血糖症の低減および高コレステロール血症および肥満の制御において、積極的な役割を果たす。
【0009】
さらにアラビノキシランは、既知のプレバイオティクスであり、それらは糞便中のビフィズス菌を増やし、かつp-クレゾールの尿排出を低減することが可能であり、腸の健康および全身の免疫系を改善する。
【0010】
しかしながら、一般に食品等級の植物繊維中に存在するほぼ全てのペントサン(アラビノキシランを含めて)およびフェルラ酸は、セルロースおよびリグニンなどの他の不活性な構造物に強く結合されていることから、バイオアベイラブルではない。
【0011】
消化管にはこれらの構造物を破壊する能力がないこと、まさにそのことが、大腸内にプロバイオティックな腸内細菌叢をもたらして加水分解酵素を産生させ、それが、食品等級の繊維の存在下で、ペントサンおよびフェルラ酸をそれらが結合されている化合物から分離し、それらをバイオアベイラブルにする。しかしながら、このプロセスは遅くかつ、腸管の最後部において起こるに過ぎないことから、その産出量は非常に低い。
【0012】
植物繊維を摂取することのポジティブな効果が確立されているとはいえ、100gの炭水化物中8gのアラビノキシランに富む繊維からなる量を摂取することが、例えば、膨満感、鼓脹、および結腸の刺激といった一連の障害をもたらし得、結果として不溶性繊維からなる部分に起因して腹痛を起こすことに注目されるべきである。
【0013】
さらに、アラビノキシランに富む繊維含量が100gのうちの8gの量に達するために摂取されねばならない全粒穀物食品は、一般に、食欲をそそるようなものではなく、かつ膵リパーゼを無効にするリパーゼ阻害剤、およびフィチン酸塩(これらは、ヒトまたは非げっ歯類動物には消化されにくく、かつそれらが特定の栄養素に対してもつキレート効果のために抗栄養として分類されている)を含有する。実際、大量に摂取されれば、フィチン酸塩は多くのミネラル、例えばカルシウムおよび亜鉛、ならびにビタミンB1の代謝および吸収を阻害し、いくつかのたんぱく質を消化しにくくする。
【0014】
さらに考慮されるべきであるのは、食品等級の植物繊維の不溶性部分が、免疫および神経学的系を改変し、酸化ストレスを引き起こし、かつ腸バリアを破壊する、マイコトキシンに汚染され得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それ故、本発明の目的は、先に述べた可溶性繊維のバイオアベイラビリティが高い製品であり、かつまた、既知の全粒穀物製品の高レベルの摂取に伴う不利益をできるだけ多く低減する、該製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的は、請求項1に述べられたような、ビール醸造粕由来の加水分解物の調製のためのプロセスによって達成された。
【0017】
さらなる態様においては、本発明は、このプロセスによって得られたビール醸造粕由来の加水分解物に関する。
【0018】
なおさらなる態様においては、本発明は、ビール醸造粕由来の前記加水分解物を含む、食品組成物、食品サプリメント、および食品製品に関する。
【0019】
別の態様においては、本発明は、これらの加水分解物の使用を想定した醸造プロセスに関する。
【0020】
別の態様においては、本発明は、これらの加水分解物の使用を想定した、フィトコンプレックスの調製のためのプロセスに関する。
【0021】
本発明の特徴および利点は、例示のために提供されかつ制限することを目的としない、以下の詳細な記載および実施例から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】主として、ペントサンのファミリーに属するアラビノキシランの多糖鎖と、ペントサン系構造に結合した抗酸化分子、フェルラ酸とから構成される食品等級の食物繊維を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、それ故、ビール醸造粕由来の加水分解物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスが:
i)前記ビール醸造粕および水を、1:1から1:5の重量比で混合すること、
ii)かくて得られた混合物に、前記混合物の重量を基準として2wt%までの:
a)キシラナーゼ、または
b)キシラナーゼ、アミラーゼ、およびグルカナーゼの酵素複合体、
からなる酵素を添加すること、および45-65℃の温度および4-6のpHにおいて、1-6時間にわたり反応させること、
iii)少なくとも5分間にわたり、温度を80-90℃に上昇させることにより、工程ii)の前記酵素を失活させること、および
iv)工程iii)の最後に得られた固形成分から液体成分を分離すること、かくてビール醸造粕加水分解物である前記液体成分を保持すること、
の工程を含む、該プロセスに関する。
【0024】
以下に見られるように、このプロセスは結果として、中間および低分子量をもつペントサンに有利に富化された加水分解物、それ故、ビール粕の可溶性画分中の富化された加水分解物を生じるだけでなく、通常は醸造産業廃棄物を構成するもの、言い換えれば前記ビール粕を、再利用することを可能にする。
【0025】
工程iv)の後に残留する固形成分、言い換えれば、主としてセルロースおよびリグニンを含有するビール粕は、そのままで、または時には顆粒もしくはペレットの形態のいずれかで、有利に農業にあてがわれ得る。あるいはビール粕は、農業において、剪定傷として知られているものの保護においてまたは抗植物病原性剤として、有用な微生物、例えば、トリコデルマ(Trichoderma)属の、増殖のための素地として有利な用途を見出すことができる。
【0026】
それ故に本発明のプロセスは、その原料として産業廃棄物の形態を用いること、およびそこから結果として生じる全ての物質が意図された用途をもち、それにより廃棄物全体を除去することから、特に有利である。
【0027】
好ましくは、前記キシラナーゼは、エンド-1,4-ベータ-キシラナーゼである。
【0028】
好ましくは、前記アミラーゼは、アルファ-アミラーゼである。
【0029】
好ましくは、前記グルカナーゼは、エンド-1,3(4)-ベータ-グルカナーゼである。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態においては、工程i)において、ビール醸造粕および水は、1:1.5から1:3の重量比にある。
【0031】
別の好ましい実施形態においては、工程ii)において、前記酵素は、前記混合物の重量を基準として1wt%までの量で添加される。より好ましい実施形態においては、工程ii)において、前記酵素は、前記混合物の重量を基準として0.1-0.7wt%の量で添加される。
【0032】
さらなる好ましい実施形態においては、工程ii)において、前記混合物は58-62℃において2-4時間にわたり反応させられる。
【0033】
工程iii)においては、前記酵素は熱処理により、言い換えれば温度を上げることにより失活される。好ましくは、失活は、約85℃において約15分間で起こる。
【0034】
工程iv)において、前記液体成分の分離は、濾過、遠心分離、または双方の、既知の技術を用いることにより行われ得る。任意で、水を用いてさらにすすぐこともまた可能である。本発明の加水分解物は、それ故、実質的にリグニンおよびセルロースがなく、それ故、結腸における刺激、ならびに結果として生じる鼓脹および腹痛を促すことのない、可溶性繊維の供給源を有利に提供する。
【0035】
任意で、本発明のプロセスはさらに、工程v)を含み、これにおいて、工程iv)から結果として得られた液体成分が乾燥され、かくてビール醸造粕由来の乾燥加水分解物を得る。乾燥工程v)は、好ましくは、65℃を超えない温度において行われる。この乾燥工程v)は、凍結乾燥によって行われ得る。
【0036】
さらなる態様においては、本発明は、上記記載のプロセスによって得られた、ビール醸造粕由来の第1の加水分解物であって、これにおいて、工程ii)で、前記酵素キシラナーゼa)が添加され、前記加水分解物が、フェルラ酸、タンパク質、1グラムの乾燥加水分解物当たり、30mgまでのベータグルカン、および300mgまでの30kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンを含む、該第1の加水分解物に関する。
【0037】
「乾燥された加水分解物(desiccated hydrolysate)」または「乾燥水分解物(dry hydrolysate)」という表現は、乾燥処理を受けた加水分解物を意味する。加水分解物は、乾燥加水分解物の重量を基準として、1wt%を超えない残留水分を特徴とする場合に、乾燥された(desiccated)または乾燥(dry)と見なされる。
【0038】
驚くべきことに、酵素キシラナーゼの存在が、上記に述べたプロセス条件下で、低および中間分子量をもつペントサン、ならびにベータ-グルカン、フェルラ酸、およびタンパク質といったより可溶性の画分を、ビール粕から遊離させることが観察された。
【0039】
好ましくは、ビール醸造粕由来の加水分解物は、1グラムの乾燥加水分解物当たり、25mgまでのベータグルカン、および250mgまでの30kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンを含む。
【0040】
好ましくは、ビール醸造粕由来の加水分解物は、1グラムの乾燥加水分解物当たり、0.5mgまでのフェルラ酸を含む。
【0041】
好ましくは、ビール醸造粕由来の加水分解物は、1グラムの乾燥加水分解物当たり、8mgまでのタンパク質を含む。
【0042】
さらなる態様においては、本発明は、上記記載のプロセスによって取得可能な、ビール醸造粕由来の第2の加水分解物であって、これにおいて、工程ii)の間に、キシラナーゼ、アミラーゼ、およびグルカナーゼの前記酵素複合体b)が添加され、前記加水分解物が、フェルラ酸、タンパク質、極微量のベータグルカン、および1グラムの乾燥加水分解物当たり250mgまでの10kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンを含む、該第2の加水分解物に関する。
【0043】
驚くべきことに、酵素キシラナーゼの存在並びにアミラーゼおよびグルカナーゼの存在が、上記に述べたプロセス条件下で、低分子量をもつペントサン、ならびにフェルラ酸、およびタンパク質などのより可溶性の画分を、ビール粕から遊離させることが観察された。
【0044】
好ましくは、ビール醸造粕由来の加水分解物は、1グラムの乾燥加水分解物当たり200mgまでの、5kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンを含む。
【0045】
好ましくは、ビール醸造粕由来の加水分解物は、1グラムの乾燥加水分解物当たり、0.8mgまでのフェルラ酸を含む。
【0046】
好ましくは、ビール醸造粕由来の加水分解物は、1グラムの乾燥加水分解物当たり、5mgまでのタンパク質を含む。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態においては、本発明のビール醸造粕由来の加水分解物は、乾燥加水分解物である。乾燥製品の可用性は、細菌汚染のリスクおよび酸敗臭のリスクの双方を有意に低減することによる貯蔵寿命に加えて、対応する水溶液のものよりも小さい体積の管理容易性から、続いて起こる実際の輸送まで、数多くの有利点を提供する。当然ながら状況は、加水分解物が水中で容易に可溶化されて、生成物を所望の濃度をもつ液体形態にもっていくことができることを要求するはずである。
【0048】
ペントサンの測定は、参照標準として、D-キシロースを510-552nmにおいて用いることによる、迅速な再現性のあるフロログルシノールベースの比色法(S.G.Douglas,“A rapid method for the determination of pentosans in wheat flour(小麦粉中のペントサン測定のための迅速法)”「Food Chemistry」、1981年、第7巻、P.139-145)に基づく。この方法は高温における酸加水分解を想定していることから、全てのペントサンがそれらの重合化の程度にかかわらず計測される。本発明の目的上、加水分解物中のペントサンの数平均分子量(Mn)は、種々の分子カットオフポイント:50kDa、30kDa、10kDa、および5kDa、での篩上の透析濾過によって測定される。
【0049】
フェルラ酸は、好ましくは、カラムC18上での逆相HPLC分析により、水およびトリフルオロ酢酸中のアセトニトリル勾配を用いて定量される。
【0050】
前記フェルラ酸は、植物繊維の構造物から結合解除された形態で存在することから、よりバイオアベイラブルであり、かつそれ故に、より有効である。
【0051】
上記に述べたようなプロセスは、選ばれた酵素の選択がいかに、ビール粕の不活性な不溶性マトリックスから有効な可溶性分子が分離されるようにするばかりでなく、また前記有効な分子の平均分子寸法が、体内で使用しかつ最大限利用しやすい分子寸法まで低減されるようにするかを示している。実際、数ミクロン程度の寸法を持つ分子複合体の消化は、数キロダルトン(kDa)程度の寸法を持つ分子の消化よりも遅くかつより困難である。
【0052】
さらなる態様においては、本発明はまた、ビール醸造粕由来の前記第1の加水分解物と、ビール醸造粕由来の前記第2の加水分解物とを含む、食品組成物にも関する。実際、用いた酵素に応じて、結果として得られる加水分解物は、異なる濃度の活性成分を特徴とすることから、異なる栄養要求に応じて、異なる加水分解物を組合せることが有利であろう。
【0053】
さらなる態様においては、本発明は、ビール醸造粕由来の前記第1の加水分解物、もしくはビール醸造粕由来の前記第2の加水分解物、または双方を含む前記食品組成物を含む食品製品であって、前記食品製品が、焼いてある食べ物、飼料、フードサプリメント、栄養補助食品、アルコール飲料、ソフトドリンク、エナジードリンク、栄養バー、食油、朝食用シリアル、生パスタ、乾燥パスタ、ヨーグルト、アイスクリーム、フルーツジュース、および菓子類、例えばチョコレートから選択される可食製品である、該食品製品に関する。
【0054】
好ましくは、前記食品製品はビールである。
【0055】
さらなる態様においては、本発明は、ビール醸造粕由来の前記第1の加水分解物、もしくはビール醸造粕由来の前記第2の加水分解物、または双方を含む前記食品組成物を含む、ヒトおよび/または動物用のフードサプリメントに関する。
【0056】
なおさらなる態様においては、本発明は、ビール醸造粕由来の前記第1の加水分解物もしくはビール醸造粕由来の前記第2の加水分解物、または双方を含む前記食品組成物を含む、ヒトおよび/または動物用の医療用具に関する。
【0057】
医療用具の例は、分子複合体であって、その作用が、粘膜に対する高い親和性が与えられた多糖成分のアラビノキシラン(分子量>20,000ダルトン)に起因し、その粘性が、糖の吸収を低減および調整しかつ食後の血糖スパイクを低減する障壁効果を形成させる、該分子複合体である。
【0058】
いくつかの実施形態においては、本発明のビール醸造粕由来の前記第1の加水分解物は基本的に、フェルラ酸、タンパク質、1グラムの乾燥加水分解物当たり、30mgまでのベータグルカン、および300mgまでの30kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンから構成される。「基本的に構成される」という表現は、フェルラ酸、タンパク質、ベータ-グルカン、および30kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンのみが、加水分解物中に存在する有効成分である一方、さらなる成分または賦形剤は、それらの作用に干渉しないことを意味する。加水分解物およびその成分について、好ましくかつ有利であるとして上記に特定された全ての態様が、これらの実施形態についてもまた同様に好ましくかつ有利であると見なされるべきであることが理解されるべきである。
【0059】
別の実施形態においては、本発明のビール醸造粕由来の前記第1の加水分解物は、フェルラ酸、タンパク質、1グラムの乾燥加水分解物当たり30mgまでのベータグルカン、および300mgまでの30kDaを超えない数平均分子量をもつペントサン、および任意で水を含む。
【0060】
加水分解物およびその成分について、好ましくかつ有利であるとして上記に特定された全ての態様は、これらの実施形態についてもまた同様に好ましくかつ有利であると見なされるべきであることが理解されるべきである。
【0061】
いくつかの実施形態においては、本発明のビール醸造粕由来の前記第2の加水分解物は、基本的に、フェルラ酸、タンパク質、および1グラムの乾燥加水分解物当たり、250mgまでの10kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンから基本的に構成される。「基本的に構成される」という表現は、フェルラ酸、タンパク質、および10kDaを超えない数平均分子量をもつペントサンのみが、加水分解物中に存在する有効成分である一方、さらなる成分または賦形剤は、それらの作用に干渉しないことを意味する。加水分解物およびその成分について、好ましくかつ有利であるとして上記に特定された全ての態様が、これらの実施形態についてもまた同様に好ましくかつ有利であると見なされるべきであることが理解されるべきである。
【0062】
別の実施形態においては、本発明のビール醸造粕由来の前記第1の加水分解物は、フェルラ酸、タンパク質、および1グラムの乾燥加水分解物当たり、250mgまでの10kDaを超えない数平均分子量をもつペントサン、および任意で水を含む。
【0063】
加水分解物およびその成分について、好ましくかつ有利であるとして上記に特定された全ての態様が、これらの実施形態についてもまた同様に好ましくかつ有利であると見なされるべきであることが理解されるべきである。
【0064】
さらなる態様においては、本発明は、上記記載の加水分解物の使用を想定した醸造プロセスに関する。
【0065】
ビールは、4つの成分、すなわち水、大麦麦芽、ホップ、および酵母を用いて伝統的に作られる飲料である。
【0066】
大麦麦芽は、大麦の粒を発芽させること、および次に乾燥することで発芽を中断させることによって得られる。この工程において、大麦の粒は重要な変化を受け、ビールを作るために必須である多数の物質が産生される。
【0067】
ホップ植物は、温帯に生育するつる性植物である。醸造には花が使用され、ビールに苦味および風味を与え、かつ天然の防腐剤である。
【0068】
酵母は、発酵の役割を果たす単細胞生物であり、それらの活動の間に、主としてアルコールおよび二酸化炭素を産生する。
【0069】
このプロセスは、典型的には以下の主要な工程を想定している:
-大麦麦芽を切断し、マッシングタン内にて水中で加熱して、麦芽中のデンプンの糖への転換を促進し、
-全てのデンプンが糖へ転換されたら、濾過により固形成分から麦汁を分離し(主として大麦粒の殻)、
-麦汁を煮沸タンクに移し、ホップとともに沸点に至らせ、そこから特徴的な風味および苦味を得、
-麦汁を次に濾過して、ホップから麦汁を分離し、次いで発酵に適した温度まで冷却し、
-麦汁を、酵母、通常はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)と一緒に、発酵タンクへ移し、
-発酵の終わりに、タンクの底の酵母を収集し、かくて得られたビールを熟成室へ移す。
【0070】
最後に、ビールを熟成させ、次いで供するか、瓶詰するか、または樽詰めする。
【0071】
ビールなどの、低アルコール含量の飲料の消費は、広く行きわたっており、かつ(適度の量では)耐糖能に対し有益効果をもつ。
【0072】
しかしながら、ビールは高グリセミック指数(または、簡略して「GI」)の食品、言い換えればGIが約110、であると見なされており、それ故、糖尿病または耐糖能障害を罹患しているヒトの食事においては推奨されない。
【0073】
実際、ビールのGIは可変性であり、それは第1に、この指数が概して、ミルクまたはオレンジジュースなどの可変性のグルコース含量をもつ飲料を参照標準として用いることにより測定されること、および第2に、様々なタイプのビール、すなわちクラフトビールおよび工業的に醸造されたビールがあり、それ故、述べられた値は平均値であるからである。
【0074】
いかなる場合でも、値はそれでも高いことから、ビールのGIを減らすことが望ましい。それに関連して、驚いたことには、本発明の加水分解物を醸造プロセスにおいて用いることにより、低グリセミック指数のビールが得られることが見出された。
【0075】
本発明の醸造プロセスは、以下の工程:
1)水と、上記記載のビール醸造粕由来の加水分解物の調製のためのプロセスの工程iv)において得られたビール醸造粕由来の前記加水分解物、または上記記載の食品組成物とを、マッシュタンにおいて添加すること、
2)粉砕されたモルトを添加し、かくてマッシングまで進行させること、
3)工程2)から得られた麦汁を、濾過すること、
4)前記麦汁を煮沸すること、およびホップを添加すること、
5)前記麦汁を前記ホップから分離すること、および酵母の存在下で発酵させること、
6)かくて得られたビールから、前記酵母および固形残渣を分離すること、および任意で、
7)前記ビールを熟成させること
を含む。
【0076】
好ましくは、工程2)におけるモルトは、工程1)から得られた水性混合物の重量を基準として、10から30wt%の量で、より好ましくは15から20wt%の量で添加される。
【0077】
好ましくは、工程5)において用いた酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)である。
【0078】
有利には、上記記載のプロセスによって取得可能なビールは、通常の方法によって得られた同じビールに比較して、低いグリセミック指数をもつ。
【0079】
さらに、上記記載のプロセスによって得られたビールは、好ましくは、0.08-0.1mg/mlのキシロースおよび0.15-0.25mg/mlのアラビノースを含めて、合計1.8-2.7mg/mlのペントサンを含み、かつ1.5-2.0ppmのフェルラ酸を含むのに対し、通常の方法によって得られた前記ビールは、一般に、0.0mg/mlのキシロースおよび0.15mg/mlのアラビノースを含めて、合計0.75mg/mlのペントサンを含む。
【0080】
さらなる態様においては、本発明は、上記記載の加水分解物の使用を想定したフィトコンプレックスの調製プロセス、ならびにかくて得られたフィトコンプレックスに関する。
【0081】
特に、フィトコンプレックスの調製のためのプロセスは、以下の
工程:
A)ビール醸造粕由来の前記第1の加水分解物から、またはビール醸造粕由来の前記第2の加水分解物から、または双方を含む食品組成物から出発する、発酵ブロスを調製すること、
B)前記発酵ブロスを、3-6.5のpHにおいて安定化させること、
C)前記発酵ブロスに、コマガタエイバクター・キシリナス(Komagataeibacter xylinus)、コマガタエイバクター・スウィングシ(Komagataeibacter swingsii)、コマガタエイバクター・レティクス(Komagataeibacter rhaeticus)、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの微生物の第1の母培養物、またはストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・デブルエッキー・ブルガリクス(Lactobacillus debruecki bulgaricus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus pluntarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの微生物の第2の母培養物を接種すること、
D)前記ブロスを発酵させておくこと、
E)発酵ブロスを失活させること、および
F)失活された前記発酵ブロスを精製して、フィトコンプレックスを得ること、
を含む。
【0082】
好ましくは、工程B)における培養ブロスの調製は、いくつかのパラメータをある範囲内に保つことを含み、特に:
-pHは、3.0-6.5、好ましくは3.0-4.3、より好ましくは約3.5であり;
-ブリックス度で測定された溶解された固体の濃度は、8-25、好ましくは13-20、より好ましくは約15であり;
-温度は、20-45℃、好ましくは24-28℃、より好ましくは約27℃であり:
-溶存酸素の濃度は、8-40mg/l、好ましくは12-20mg/l、より好ましくは約16mg/lである。
【0083】
工程D)において、発酵ブロスは、発酵スターターとして知られるものからなる、少なくとも1つの微生物が接種される。好ましくは、第1の母培養物中の前記微生物は、コマガタエイバクター・キシリナスであり;好ましくは、第2の母培養物中の前記微生物は、ストレプトコッカス・サーモフィルス、またはラクトバチルス・デブルエッキー・ブルガリクス(Lactobacillus debruecki bulgaricus)である。
【0084】
接種される微生物の量は、10-10UFC/ml、好ましくは10-10UFC/ml、より好ましくは10UFC/ml程度であり、0.1-20wt%、好ましくは0.2-5wt%、より好ましくは0.3-1wt%の接種用量である。
【0085】
発酵工程D)は、好ましくは以下の条件下で行われる:
- 2.5-6.0、好ましくは2.5-3.8、より好ましくは約3.0のpH;
- 10-32℃、好ましくは18-30℃、より好ましくは約28℃の温度;
-溶存酸素の濃度は、8-40mg/l、好ましくは12-20mg/l、より好ましくは約16mg/lである。
【0086】
好ましい実施形態においては、発酵工程D)は、
- 5-240時間、より好ましくは5-160時間、なおより好ましくは7-20時間の時間にわたり;かつ
- 10-10UFC/ml、より好ましくは10-10UFC/ml、なおより好ましくは10UFC/ml程度の細菌量が達成されるまで、
実施される。
【0087】
工程D)の最後に取得可能な発酵培養ブロスが、ベーカリー製品における発酵スターターとして利用可能であるという事実は、評価されかつ有利である。
【0088】
工程E)の最後に得られる失活された発酵培養ブロスが、強化されたプレバイオティックな製品を産生するための、プレバイオティックな製品において利用可能であるという事実は、さらに評価されかつ有利である。
【0089】
さらなる態様においては、本発明は、整腸薬としての使用のための、上記記載のプロセスによって取得可能なフィトコンプレックスに関する。
【0090】
さらなる態様においては、本発明は、治癒剤として局所使用するための、上記記載のプロセスによって取得可能なフィトコンプレックスに関する。
【0091】
上記に記載および議論されたことを鑑みれば、可溶性繊維の高いバイオアベイラビリティをもつ製品を提供するという目的が達成されたこと、すなわちビール醸造粕由来の加水分解物が、同時に、既知の全粒穀物製品の高い消費に伴う不利益を低減することは明らかである。
【0092】
さらに、醸造産業廃棄物を再利用するというさらなる有意な目的が達成され、その一方で、異なる用途を見出しかつそれ故に廃棄物を全体的に除去する物質が得られた。
【0093】
上記に述べたような、加水分解物の調製のためのプロセスの、それらの使用の、およびそれを含有する製品の、好ましい態様の全ての可能な組合せが、同様に好ましいことが理解されるべきである。
【0094】
加水分解物およびその成分について、好ましくかつ有利であるとして特定された全ての態様が、前記加水分解物の調製および使用についても、同様に好ましくかつ有利であると見なされるべきであることが理解されるべきである。
【0095】
以下は、例示を目的として提供された本発明の実施例である。
【実施例
【0096】
実施例1.
ビール粕由来の2つの加水分解物を、本発明により、以下のプロセスパラメータを設定することによって調製した:
i)ビール粕および水を混合した、ビール粕は40wt%、
ii)酵素を0.2wt%の量で、pH5において添加し、温度を4時間の間60℃とした、
iii)次いで、85℃で15分間加熱することにより、酵素を失活させた、
iv)得られた加水分解物を、濾過により、固形残渣から分離した。
【0097】
結果:
【0098】
【表1】
【0099】
次に続く乾燥工程v)の後、加水分解物は以下の組成物を有していた。
【0100】
【表2】
【0101】
-乾燥加水分解物についても得られた、アラビノキシランの分子量の分布:
カットオフ膜上での濾過による分布の分析は、以下の通りである。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例2.
醸造プロセス
1日目-マッシング前:ビール粕加水分解
先の醸造からの489kgのビール粕、および1050lの水道水(全質量:1539kg)を混合した。
【0104】
マッシングタン:
-混合物の10分間にわたる低速攪拌
-酵素の添加:エンド-1,4-ベータ-キシラナーゼ:2.5kg(ビール粕の0.51%)
-10分間で60℃までの温度上昇
-60℃で3時間維持:
【0105】
【表4】
【0106】
-15分間で85℃までの温度上昇:酵素の失活
【0107】
煮沸タンクへの移動:
混合物全体を、煮沸タンクへ移し、そして濾過した。
-濾過:
直径2μmの目開きをもつフィルターメッシュ。ビール粕は保持されたのに対し、酵素によって可溶化された物質を含有する液体は通過した。完全な抽出を促進するため、上から水道水を加えることにより洗浄を行った(200リットル)。濾過はゆっくりした落下によって起こり(5分間で1hl)、次いで、穏やかな攪拌動作を生じるブレード撹拌機を稼働させて、ビール醸造粕からの液体のパーコレーションを促進した。
-加水分解物をマッシングタンへ戻した:
加水分解物をマッシングタンへ戻した:60分間(温度:約70℃)に生じた全ての加水分解物(合計12hl)の移行:
【0108】
【表5】
【0109】
-水の添加:
5hlの水を、2℃において添加した。
17hlの水が達成され、温度は57℃に低下した。
【0110】
【表6】
【0111】
2日目-醸造:マッシング-煮沸-発酵
マッシング:
初期温度:<45℃:
【0112】
【表7】
【0113】
300kgの粉砕されたモルト(17.6wt%)を、17hlの混合物に添加する。
マッシングプロセスを開始する:
第1工程:45-50℃において7分間
第2工程:60-62℃において
第3工程(「糖化」と称される):66-68℃において
第4工程:78℃において
約19°のブリックスが達成される。
濾過:
麦汁を濾過して、ビール粕から分離した。ビール粕を、78℃において10hlの水で2回洗浄した:麦汁を、27hlに希釈し、ブリックス度は、19から11まで低下した。
煮沸:
この時点で、麦汁を約2時間にわたり煮沸し、そしてホップを添加し、次いで遠心分離により分離した
発酵:
発酵は、5から8℃において、サッカロミセス・セレビシエの活動の結果として生じた。
酵母の沈殿:
発酵の後、温度を0℃とした:酵母は沈殿し、そして分離された。
ビールは、タンク内でさらに4週間放置され、次いで濾過なしに瓶詰めされた。
最終収量:25hlの低GIビールが得られた。
【0114】
実施例3.
フィトコンプレックスの調製
-スターターの調製
穏やかな攪拌下で2時間にわたり、微生物学的および酵素的に安定化された、pH4.2においてブリックス度15の、実施例1からの350mlの加水分解物の調製。
コマガタエイバクター・キシリヌス細胞を用いた接種。
制御された好気条件下で、28℃の温度において、ブリックス度7およびpH3.9が達成されるまで、150時間にわたるインキュベーション、および光学密度の経時的観察。
カイネティクスおよび有機酸濃度の評価。
-発酵ブロスの調製
穏やかな攪拌下で2時間にわたり、微生物学的および酵素的に安定化された、ブリックス度15およびpH3.5の、70lのリンゴ標品の調製。
-スターターの接種
制御された好気条件下で、28℃の温度において、ブリックス度7およびpH3が達成されるまで、140時間にわたる接種、および光学密度の経時的観察。カイネティクスおよび有機酸濃度の評価;予想細胞濃度:>10
穏やかな攪拌下で、制御された低下により、T=12-14℃までの温度の低下。
ドレインおよび容器への移行。
【0115】
実施例4.
本発明によって得られたビールのグリセミック指数の測定
以下の研究は、実施例2によって得られたビールのグリセミック指数を測定するために実施された。
【0116】
特に、この研究の目的は、本発明の加水分解物の、ビールへの添加から結果として生じる血糖曲線に対する効果を測定することであった。10名の健康なボランティアに対し、そのままの元のビールと、および同じビールであるが、実施例2におけるように取得された、すなわち本発明の加水分解物の添加を含むビール(手短には「JAX+ビール」)とを試験して、互いに比較した。
2つのビールは以下の特徴を有していた:
【0117】
【表8】
【0118】
上記の表から、本発明のプロセスを介して、以下の分子量をもつ、さらに1.41mg/ml(0.14%)のアラビノキシラン(Ax)が可溶化された(天然に存在するものに付け加えて)ということになる:
【0119】
【表9】
【0120】
グリセミック指数を測定するために採用された方法は、科学的に推奨され、かつ科学的に検証されたプロトコールによって標準化されている(英国、糖尿病の糖尿病治療諮問委員会の栄養小委員会(Nutrition Subcommittee of the Diabetes Care Advisory Committee of Diabetes UK)、“The implementation of nutritional advice for people with diabetes(糖尿病をもつ人々のための栄養に関するアドバイスの実施)”「Diabetic Med」、2003年、第20巻、P.786-807)。この方法は、Woleverらの推奨(カナダ糖尿病学会臨床指針専門委員会(Canadian Diabetes Association Clinical Practice Guidelines Expert Committee)、“Canadian Diabetes Association 2003 clinical practice guidelines for the prevention and management of diabetes in Canada:nutrition therapy(カナダにおける糖尿病の予防及び管理のためのカナダ糖尿病学会2003年臨床指針:栄養療法)”、「Can J Diabetes」、2003年、第27巻(付録2)、S27-31)を取り入れた。
試験されるべき2つのビールのサンプルを、10名のボランティアに対し、別々の日に、かつ二重盲検法を用いて投与した。333mlボトルのビールが提供された。製品は、午前中、9.00a.m.頃、夜間の約10-12時間の絶食後に投与された。各試験について、空腹時血糖レベルを測定し、そして次にビール摂取後の15分ごと(ビール摂取後15、30、45、60、90、120)に、Woleverらによって報告されたプロトコールに従って血糖レベルを測定した。試験の間に、被験者が飲むことができた飲料は、水のみであった。血糖の測定には、グルコース値をmg/100mlとして表す、LifeScanにより製造されたOneTouch Ultra Easyを用いるキャピラリー試験(指)によって、全血サンプリングを実施した。
【0121】
元のビールおよびJAX+ビールの投与後に得られたデータを、各被験者について分析し、血糖応答の曲線下の面積(AUC)を、ORIGIN数学および統計学的分析ソフトウェアを用いて計算した。
【0122】
続いて、JAX+ビールの測定から得られたAUC(AUC2)と、元のビールの投与から得られた曲線下面積(AUC1)との間で、比率を測定した。
【0123】
50gのグルコースを含有するビールの量(2.94リットルのビールに等しい量)を被験者に投与することは不可能であったことから、元のビールに対するJAX+の添加の効果は、元のビールとの比較によって評価した。
【0124】
【表10】
【0125】
この研究は、それ故、JAX+ビールの著しい低血糖誘導性の効果を示し、それは、元のビールに比較して42%の血糖応答の低減を計測し、かつその低減は統計的に有意であった(P<0.02)。低血糖誘導性の効果は、飲料の投与後2時間の血糖応答の動態の研究によって測定された。
【0126】
実施例5.
本発明によって得られたフルーツジュースのグリセミック指数の測定
この研究の目的は、市販のフルーツジュースへの、実施例1Aによって得られた乾燥加水分解物(簡略のため「JAX+」と称される)の添加の、血糖曲線に対する効果を測定することであった。10名の健康なボランティアを、グルコースボーラス、元のフルーツジュース、およびJAX+を補足されたフルーツジュースを試験するために登録した;これらのボランティアは、血糖関連障害を罹患しておらず、かつ糖尿病の家族性はなかった。JAX+乾燥加水分解物を、試験時に元の市販のフルーツジュースへ添加し、ボランティアはそれを摂取するに先立ち、飲料をよく振るように助言された。
【0127】
試験下の元の市販のフルーツジュースの栄養組成物は以下の通りであった:
-果実含量:99.8%;
-成分:リンゴジュース、サワーチェリー、エルダーベリー、およびブラックカラント、リンゴピューレ、ラズベリーピューレ、炭酸マグネシウム、シナモンエキス(0.07%)、ヘンプシードエキス(0.05%)、ビタミンC;
-100mlについての栄養価:
【0128】
【表11】
【0129】
したがって、用いた500mlの元のフルーツジュース(すなわち、1カートンの製品)は、50gの炭水化物を含有しており、各ボランティアへの、50gの純粋なグルコースからなるグルコースボーラスのものと同じ量の投与を可能にする。
【0130】
フルーツジュースに、以下の成分を含んでいる、4g/lの乾燥加水分解物JAX+を補足した。
【0131】
【表12】
【0132】
血液サンプルは、イタリア医療センター(Centro Diagnostico Italiano)(ミラノ)において静脈内採取され、そこでは、その後のデータ分析のために、経時的な血糖およびインスリン血症値が提供された。
【0133】
グリセミック指数を測定するために採用された方法は、科学的に推奨され、かつ科学的に検証されたプロトコールによって標準化されている(英国、糖尿病の糖尿病治療諮問委員会の栄養小委員会(Nutrition Subcommittee of the Diabetes Care Advisory Committee of Diabetes UK)、“The implementation of nutritional advice for people with diabetes(糖尿病をもつ人々のための栄養に関するアドバイスの実施)”「Diabetic Med」、2003年、第20巻、P.786-807)。この方法は、Woleverらの推奨(カナダ糖尿病学会臨床指針専門委員会(Canadian Diabetes Association Clinical Practice Guidelines Expert Committee)、“Canadian Diabetes Association 2003 clinical practice guidelines for the prevention and management of diabetes in Canada:nutrition therapy(カナダにおける糖尿病の予防及び管理のためのカナダ糖尿病学会2003年臨床指針:栄養療法)”、「Can J Diabetes」、2003年、第27巻(付録2)、S27-31)を取り入れた。
【0134】
インスリン血症に関連したデータは、同じ数学的手法で分析された。
【0135】
グルコースボーラス、および試験されるべき2つのフルーツジュースのサンプルを、10名のボランティアに対し、別々の日に、二重盲検法に従って投与した。
【0136】
3つのサンプルは、午前中、9.00a.m.頃、夜間の約10-12時間続く絶食後に投与された。各試験について、空腹時血糖レベルの測定を行い、そして次に、飲料が摂取された後の15分ごと(15、30、45、60、90、120分)に、Woleverらによって報告されたプロトコールに従って行った。試験の間に、被験者が飲むことができた飲料は、水のみであった。
【0137】
グルコースボーラス、元のジュース、およびJAX+入りのジュースの投与に続いて得られたデータを、各被験者について分析した。より具体的には、各ボランティアについて、血糖応答の曲線下の面積(AUC2)を、ORIGIN数学および統計学的分析ソフトウェアを用いて計算した。続いて、飲料の曲線下面積(AUC1)と、グルコース標準の投与から得られた曲線下面積(AUC2)との間で、比率を測定した。
【0138】
この比率(AUC1/AUC2)は、個々のボランティアの、問題の飲料のグリセミック指数を示す。最後に、それぞれの飲料について、以下の値を評価した:平均GI、標準偏差(SD)、および平均二乗誤差(MSE)。
【0139】
低グリセミック指数の製品とは、55以下の比率(AUC1/AUC2)から推論される場合、そのように定義される。
【0140】
かくて実施された血糖の分析は、以下の結果を示した。
【0141】
【表13】
【0142】
得られた値は、JAX+入りのジュースの血糖応答が、いかに市販の元のジュースのものよりも22.6%低いかを示している。統計分析のために用いたスチューデントのt検定は、得られた結果がいかに統計学的に有意であるかを示している(P<0.02)。
【0143】
かくて実施されたインスリン血症の分析は、以下の結果を示した。
【0144】
【表14】
【0145】
JAX+の添加が、ジュースのインスリン血症の面積に19.7%の増加を引き起こすことに注目されるべきである。特に、JAX+入りのフルーツジュースの摂取の30分後の、異なる被験者におけるインスリン血症曲線の動態分析は、インスリンの極めて有意な上昇を示しており、そのことは、ジュースの摂取後の被験者に存在する反応性低血糖症を遅くするか、遅延するか、または防止することを示す。
【0146】
結論として、この研究は、血糖応答の22%減少を測定しかつ平行してインスリン血症を19.7%上昇させる、JAX+入りのフルーツジュースの低血糖誘導性の効果を示している。さらに、70%のボランティアにおいて、JAX+入りのフルーツジュースは、市販の元のジュースの特徴でありかつグリセミック指数の高い食品の特徴である、反応性低血糖症を防止した。
【0147】
実施例6.
本発明によって得られたチョコレートのグリセミック指数の測定
この研究の目的は、2つのタイプのダークチョコレートのグリセミック指数を測定することであった。グリセミック指数を測定するために採用された方法は、科学的に推奨され、かつ科学的に検証されたプロトコールによって標準化されている(英国、糖尿病の糖尿病治療諮問委員会の栄養小委員会(Nutrition Subcommittee of the Diabetes Care Advisory Committee of Diabetes UK)著、“The implementation of nutritional advice for people with diabetes(糖尿病をもつ人々のための栄養に関するアドバイスの実施)”「Diabetic Med」、2003年、第20巻、P.786-807)。この方法は、Woleverらの推奨(カナダ糖尿病学会臨床指針専門委員会(Canadian Diabetes Association Clinical Practice Guidelines Expert Committee)、“Canadian Diabetes Association 2003 clinical practice guidelines for the prevention and management of diabetes in Canada:nutrition therapy(カナダにおける糖尿病の予防及び管理のためのカナダ糖尿病学会2003年臨床指針:栄養療法)”、「Can J Diabetes」、2003年、第27巻(付録2)、S27-31)を取り入れた。
【0148】
用いた基準値は、それについて、試験されるべき食品との比率が数学的に確定された、50gのグルコースを含有する溶液であった。問題のサンプルを、10名のボランティアに投与し、一部には、繊維抜きの全炭水化物として定義される、利用可能な炭水化物50gを提供する。製品は、異なる日の午前中、9.00a.m.頃、夜間の約10-12時間続く絶食後に投与された。各試験について、空腹時血糖レベル測定を行い、そして次に食品摂取後の15分ごと(15、30、45、60、90、120分)に、Woleverらによって報告されたプロトコールに従って行った。食事の間に、被験者が飲むことができた飲料は、水のみであった。血糖の測定には、グルコース値をmg/100mlとして表す、LifeScanにより製造されたOneTouch Ultra Easyを用いるキャピラリー試験(指)によって、全血サンプリングを実施した。
【0149】
各ボランティアについて、グルコースボーラスおよび試験されるべき各食品の投与後に、血糖応答の曲線下の面積(AUC1)を、ORIGIN数学および統計学的分析ソフトウェアを用いて計算した。続いて、曲線下の面積AUC1と、グルコース標準の投与から得られた曲線下面積(AUC2)との間で、比率を測定した。
【0150】
この比率(AUC1/AUC2)は、個々のボランティアについての、問題の食品のグリセミック指数を示す。最後に、それぞれの食料品について、以下の値を評価した:平均GI、標準偏差(SD)、および平均二乗誤差(MSE)。
【0151】
試験された2つのタイプのダークチョコレートは:
1)市販のチョコレート(加糖)
2)20%アラビノキシランを含む乾燥加水分解物を補足されたチョコレート1)
(実施例1b)のプロセスから取得可能な加水分解物)
【0152】
以下に示したのは、市販のチョコレート1)の栄養価(製品100gについての平均値)である。
【0153】
【表15】
【0154】
かくて実施された血糖試験は、以下の結果を示した。
【0155】
【表16】
【0156】
既に述べたように、低グリセミック指数の食品は、55以下の値を示すAUC1/AUC2比を持つ製品である。
【0157】
上記の試験から、本発明の加水分解物を含むチョコレートは、同じ量の糖が添加された市販のチョコレートのものの約64%であるグリセミック指数をもつことから、ただグリセミック指数の低い製品にすぎないというよりも、むしろグリセミック指数が極めて低い製品であることが明らかとなった。
図1
【国際調査報告】