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特表2022-528219人物の存在を検出するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-09
(54)【発明の名称】人物の存在を検出するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20220602BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
G01J1/42 B
G01J1/44 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021548227
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2020054157
(87)【国際公開番号】W WO2020169557
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】1950201-2
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ANDROID
(71)【出願人】
【識別番号】521362564
【氏名又は名称】ヨンデテック センサーズ アーベー パブリーク
【氏名又は名称原語表記】JONDETECH SENSORS AB(PUBL)
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】クヴィスト,ニクラス
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA12
2G065AB02
2G065BA11
2G065BA12
2G065BC13
2G065BC14
2G065BC15
2G065CA21
2G065DA01
(57)【要約】
人の存在を判定する方法が提供され、当該方法は、a)サーモパイルから第1の期間中にIRセンサデータ(50)を受信し、IRセンサデータを使用して、当該期間のIRバックグラウンド信号ベースライン(51)を決定し、前記IRセンサデータ(50)の変動性を決定することと、b)前記IRバックグラウンド信号ベースライン(51)および前記IRバックグラウンド信号レベルの変動性を使用して、前記IRバックグラウンド信号(50)の変動性が大きいほど閾値(52)が高くなるように、前記バックグラウンド信号ベースライン(51)よりも高い値を有する閾値(52)を決定することと、c)前記第1の期間の後の第2の期間中にさらなるIRセンサデータ(50)を受信し、さらなるIRセンサデータ(50)およびステップb)で決定された閾値(52)を使用して、さらなるIRセンサデータ(50)が前記閾値よりも高い値を含むときに人が存在することを判定することを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の存在を判定するための方法であって、
a)サーモパイルから第1の期間中にIRセンサデータ(50)を受信し、前記IRセンサデータを使用して、当該期間に対するIRバックグラウンド信号ベースライン(51)を決定し、前記IRセンサデータ(50)の変動性を決定することと、
b)前記IRバックグラウンド信号ベースライン(51)と、前記IRバックグラウンド信号レベルの変動性とを使用して、前記IRバックグラウンド信号(50)の変動性が大きいほど閾値(52)が高くなるように、前記バックグラウンド信号ベースライン(51)よりも高い値を有する閾値(52)を決定することと、次いで、
c)前記第1の期間の後の第2の期間中にさらなるIRセンサデータ(50)を受信し、前記さらなるIRセンサデータ(50)およびステップb)で決定された前記閾値(52)を使用して、前記さらなるIRセンサデータ(50)が前記閾値よりも高い値を含むときに人が存在すると判定すること、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第1の期間と前記第2の期間は等しい、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記第2の期間からの前記IRセンサデータは、前記閾値を更新するために使用される、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記ステップa)~c)は繰り返し実行される、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記方法は、少なくとも5秒毎に実行される、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法であって、ステップb)において減衰フィルタが適用される、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記減衰フィルタは、前記閾値のより高い値への移動を抑制させる、方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載であって、人が存在する場合にトップライン信号が決定され、前記トップライン信号より低い値を有する第2の閾値が前記トップライン信号を使用して決定され、前記システムが非存在状態にあり、前記第1の閾値より高い値が検出される場合に非存在状態から存在状態への遷移が決定され、前記システムが存在状態にある場合に前記第2の閾値より低い値が検出される場合に存在状態から非存在状態への遷移が決定される、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記第2の閾値の下方および上方の移動を抑制させる減衰フィルタが使用される、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法であって、スタートアップ時に、次のプロセス:
i)開始期間中に初期IR信号を決定し、前記初期IR信号に対する初期信号ベースラインを計算すること、次いで、
ii)前記初期IR信号ベースラインと、前記開始期間中の前記初期IR信号の計算された変動性とを使用して、上限スタートアップ閾値および下限スタートアップ閾値を決定すること、次いで、
iii)後の期間にさらなるIRセンサデータを受信し、
1.前記さらなるIRセンサデータが前記上限スタートアップ閾値を上回っていることを決定し、次いで、ステップb)における前記IRバックグラウンド信号ベースラインとして前記初期信号ベースラインを使用すること、
あるいは、
2.前記さらなるIRセンサデータが前記下限スタートアップ閾値未満であることを決定し、次いで、新しいIR信号ベースラインレベルを決定し、ステップb)における前記IRバックグラウンド信号ベースラインとしてそのベースラインを使用すること、
が実行される、方法。
【請求項11】
IRセンサ(2)と、プロセッサ(5)と、メモリ(6)とを備えるシステム(1)であって、前記システム(1)は、信号処理モジュール(13)と、閾値決定ロジック(10)と、存在判定ロジック(11)とを備え、
前記システム(1)は、第1の期間中に前記IRセンサ(2)を使用してIRセンサデータ(50)を決定し、当該IRセンサデータ(50)を前記信号処理モジュール(13)に提供するように構成され、
前記信号処理モジュール(13)は、前記IRセンサデータ(50)を使用して前記期間に対するIRバックグラウンド信号ベースライン(51)を決定し、前記IRセンサデータ(50)の変動性を決定するように構成され、
前記閾値決定ロジック(10)は、前記IRバックグラウンド信号ベースライン(51)と、前記IRバックグラウンド信号レベルの変動性とを使用して、前記IRバックグラウンド信号(50)の変動性が大きいほど閾値(52)が高くなるように、前記バックグラウンド信号ベースライン(51)よりも高い値を有する閾値(52)を決定するように構成され、
前記存在判定ロジック(11)は、前記閾値(52)を使用して、さらなるIRセンサデータ(50)が受信され、前記さらなるIRセンサデータ(50)が前記閾値(52)より高い値を含むときに、人(16)が存在することを判定するように構成される、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステム(1)を備えるデバイスまたは、請求項11から情報を受信するように構成されたデバイスであって、
人が存在しないという情報を前記システム(1)から受信するときに、前記デバイスを省電力モードにし、または、人が存在するという情報を前記システム(1)から受信するときに、前記デバイスを省電力モードからウェイクアップするように構成される、デバイス。
【請求項13】
ポータブルコンピュータまたはコンピュータ用のディスプレイである、請求項12に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を使用して人の存在を検出するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
存在検出は、人が存在するかどうかを検出するためのデバイスまたはシステムの能力である。身体熱を検出することにより、非接触の存在検知にIRセンサを使用することが知られている。存在検出は例えば、デバイスの動作を調整するために、例えば、デバイスをオンまたはオフに切り替えるために使用されてもよい。非接触の存在検知を使用するデバイスの例としては、人が存在しない場合に省電力(パワーセーブ)モードに移行するコンピュータ、省電力モードに移行する暖房/空調システム、人が存在する場合に自動的にオンになるランプなどの照明デバイスが挙げられる。
【0003】
サーモパイル(Thermopiles)は、IRセンサで、温度変化だけでなく絶対温度として出力を配信できる。しかしながら、存在検出のためにサーモパイルを使用する場合、特に室温が変動する「ノイズの多い」環境において、サーモパイルは、部屋内のバックグラウンドIR放射に関して調整することが困難であることが判明した。
【0004】
米国特許出願公開第2015/0185806号明細書は、所定の閾値を用いたサーモパイルによる存在検出を記載している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様では、人の存在を判定する方法であって、a)IRセンサから第1の期間(time period)中にIRセンサデータを受信し、IRセンサデータを使用して、当該期間のIRバックグラウンド信号(IR background signal)ベースラインを決定し、IRセンサデータの変動性を決定するステップと、b)IRバックグラウンド信号ベースラインおよびIRバックグラウンド信号レベルの変動性を使用して、バックグラウンド信号ベースラインよりも高い値を有する閾値を決定し、IRバックグラウンド信号における変動性が大きいほど閾値が高くなるようにするステップと、c)第1の期間の後の第2の期間中にさらなるIRセンサデータを受信し、さらなるIRセンサデータおよびステップb)で決定された閾値を使用して、さらなるIRセンサが閾値よりも高い値を含むときに人が存在すると判定するステップと、を含む方法が提供される。
【0006】
本方法は、存在検出中の偽陽性および偽陰性を回避するために、環境の変化に適応する動的な自己調整型の応答性の高いシステムを提供する。データのばらつきが大きくなると、閾値がベースラインから離れ、バックグラウンド室温が変動するときに、誤った「存在(present)」状態のリスクが減少する。
【0007】
第1および第2の期間は、好ましくは等しい長さである。
【0008】
好ましい実施形態では、第2の期間からのIRセンサデータが、閾値を更新するために使用される。好ましい実施形態では、ステップa)~c)が繰り返し実行され、好ましくは少なくとも5秒毎に実行される。
【0009】
ステップb)において、減衰(dampening)フィルタを適用することができる。一実施形態では、減衰フィルタは、閾値のより高い値への移動を減衰(抑制)させる。減衰フィルタは、IRセンサデータが増加することにつれて、閾値がIRセンサデータから「暴走」するのを防ぐ。
【0010】
一実施形態では、人が存在する場合にトップライン信号(top line signal)が決定され、トップライン信号よりも低い値の第2の閾値がトップライン信号を用いて決定され、非存在状態から存在状態への遷移が、システムが非存在状態にあり、第1閾値よりも高い値が検知された場合に決定され、存在状態から非存在状態への遷移が、システムが存在状態にあり、第2閾値よりも低い値が検知された場合に決定される。
【0011】
人が、小さな部屋、特に寒い部屋のコンピュータの前に座っているときの問題は、時間が経つにつれて部屋の温度が上昇する傾向があり、これが閾値も上昇させることである。したがって、人がコンピュータを離れるとき、信号は閾値まで完全には到達しないので、信号は閾値をトリガしない。これを解決する1つの方法は、存在から非存在への遷移のトリガのために第2の閾値を使用し、この閾値が第1の閾値よりも高いことである。
【0012】
第2の閾値の下方(下向き)および上方(上向き)への移動を減衰(抑制)させるために、減衰フィルタを使用してもよい。
【0013】
一実施形態において、以下の方法は、スタートアップ(始動)時に実行され
る:
i)開始期間中に初期IR信号を決定し、初期IR信号に対する初期信号ベースラインを計算し、
ii)初期IR信号ベースラインと、開始期間中の初期IR信号の計算された変動性とを使用して、上限スタートアップ閾値および下限スタートアップ閾値を決定し、
iii)後の期間にさらなるIRセンサデータを受け取り、
1.さらなるIRセンサデータが上限スタートアップ閾値を上回っていることを決定し、次いで、ステップb)のIRバックグラウンド信号ベースラインとして初期信号ベースラインを使用し、
あるいは、
2.さらなるIRセンサデータが下限スタートアップ閾値未満であることを決定し、次いで、新しいIR信号ベースラインのレベルを決定し、ステップb)におけるIRバックグラウンド信号ベースラインとしてそのベースラインを使用する。
【0014】
IRセンサは、サーモパイル(thermopile)であることが好ましい。サーモパイルは、小さく、感度が高く、比較的低コストであり、非接触で絶対温度を測定できるので、IRベースの非接触の存在検知に非常に有用である。
【0015】
本発明の第2の態様ではIRセンサと、プロセッサと、メモリとを含み、当該システムは、信号処理モジュールと、閾値決定ロジックと、存在判定ロジックとを含み、当該システムは、第1の期間中に当該サーモパイルを使用して当該IRセンサデータを決定し、当該IRセンサデータを当該信号処理モジュールに供給するように構成され、当該信号処理モジュールは、当該IRセンサデータを使用して当該期間に対するIRバックグラウンド信号ベースラインを決定し、当該IRセンサデータの変動性を決定するように構成され、当該閾値決定ロジックは、当該IRバックグラウンド信号ベースラインとIRバックグラウンド信号の変動性とを使用して、IRバックグラウンド信号の変動性が大きいほど閾値が高くなるように、バックグラウンド信号ベースラインよりも高い値を有する閾値を決定するように構成され、当該存在判定ロジックは、当該閾値を使用して、さらなるRセンサデータが受信され、当該IRセンサデータが当該閾値よりも高い値を含むときに、人が存在することを判定(決定)するように構成される、システムが提供される。
【0016】
本発明の第3の態様では、本発明の第2の態様によるシステムから情報を受信するためのデバイスまたはそのように構成されたデバイスが提供され、当該デバイスは当該システムからの、人が存在しないという情報を解釈し、次いで、デバイスを省電力モードにするように、または、当該システムからの、人が存在するという情報を解釈し、次いで、デバイスを省電力モードからウェイクアップするように構成される。当該デバイスは、ポータブルコンピュータであってもよいし、コンピュータ用のディスプレイであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の好ましい実施形態を概略的に例示し、本発明の原理を例示するのに役立つ。
図1図1は、システムの概略図である。
図2図2は、メモリの概略図である。
図3図3は、システムおよび人物の概略図である。
図4図4は、ディスプレイと人とを有するシステムの概略図である。
図5図5は、方法を示すフローチャートである。
図6図6は、グラフである。
図7図7は、方法を示すフローチャートである。
図8図8は、IRデータおよび閾値を示す図である。
図9図9は、方法を示すフローチャートである。
図10図10は、グラフである。
図11図11は、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、好ましくは絶対温度値を測定することができるIRセンサ、好ましくはサーモパイル(thermopile)2であるIRセンサ2を備える存在判定システム1の一実施形態を示す。有用なサーモパイルが国際公開第2004/0968256号パンフレットに示されているが、他のタイプのサーモパイルを使用することもできる。しかしながら、任意の適切なタイプのIRセンサ、例えばボロメータ(bolometer)を使用することができる。サーモパイル2は、IR放射を検出し、IRセンサデータ8(図2参照)、50(図6、10、11参照)をサブシステム3に提供することができる。サブシステム3は、ハードウェアまたはソフトウェア、あるいはそれらの組み合わせで実装されてもよく、図1はハードウェアおよびソフトウェアで実装された実施形態を示す。サブシステム3は、IRセンサ2からの信号を受信する入力インタフェース4を備える。サブシステム3はさらに、プロセッサ5、メモリ6、および出力インタフェース7を備える。システム1はまた、信号フィルタ、増幅器、A/D変換器、および信号処理の技術分野で知られており、特にIRセンサ2からの信号を処理するための同様のデバイスのうちの1つまたは複数を含むことができる。システム1は、電源から電力が供給される。サブシステム3は、IRセンサ2と同じデバイス内に取り付けることができ、又はIRセンサ2とは別個にすることができる。一実施形態では、本明細書で説明する方法のすべてのステップは、同じプロセッサ5によって実行される。
【0019】
図2を参照すると、メモリ6は、IRセンサデータ8および閾値データ9を記憶することができる。メモリは、閾値決定ロジック10と存在判定ロジック11とを有する。メモリ6はまた、存在状態データ12と信号処理モジュール13を有する。メモリ6は、以下により詳細に説明されるスタートアップロジック14を有することができる。
【0020】
システム1は、典型的には少なくとも2つの状態、すなわち「人が存在する」または「人が存在しない」、あるいは「存在」から「非存在状態」への遷移および再び戻ることに関する情報を出力することができる。システム1の存在状態は、メモリ6に存在状態データ12として記憶される。
【0021】
図3~4を参照すると、IRセンサ2は、IRセンサ2がIR放射を検出し、システム1が人16が存在するかどうかを判定する視野(field of view)15を有する。人16は、典型的にはバックグラウンドIR放射(周囲室温によって引き起こされる)よりも強いIR放射を放射する。したがって、視野15内で検出されたIR放射は、人16が視野15内に存在するか否かを判定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、システム1は、それぞれが異なる視野15を有する複数のサーモパイル2を有することができる。複数のIRセンサ2は、同じサブシステム3を使用することができ、次いで、サブシステム3は、IRセンサの各々について、データ記憶、信号処理、および閾値決定を提供することができる。
【0022】
システム1は、出力インタフェース7を使用して、人が存在するか否かについての情報を第2のデバイス17に提供することができる。出力インタフェース7は、システム1が第2のデバイス17にデータを提供することができる任意の適切なインタフェースでよく、出力インタフェース7は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実現することができる。第2のデバイス17は、コンピュータシステムであってもよい。システム1から第2のデバイス17に提供される情報は、状態(存在/非存在)に関する情報、または、ある状態から他の状態への状態遷移に関する情報であり得る。
【0023】
第2のデバイス17は、システム1からの出力を様々な方法で使用することができる。存在状態および非存在状態は、場合によっては第2のデバイス17をオンまたはオフに切り替えるために使用されてもよい。第2のデバイス17は例えば、ラップトップのようなパーソナルコンピュータ、暖房システム、エアコンディションシステムまたは換気システムのような、非接触存在検出から恩恵を受けることができる任意のタイプのデバイスとすることができ、例えば、人が設定された期間中に存在しないときに、そのようなシステムがシャットダウンされるか、または省電力モードに置かれることを確実にする、又は同様のものとすることができる。したがって、存在または非存在の状態は、タイマをトリガすることができる。また、第2のデバイス17は、屋内または屋外のランプのような光を提供する器具であってもよい。また、第2のデバイス17は、コンピュータ、ディスプレイ、ランプ、または換気システムが人が存在するときにオンに切り替えられるように、存在状態によってオンに切り替えられてもよい。第2のデバイス17はまた、侵入者警報のような警報装置であってもよい。一般に、これらのデバイスのすべては、本明細書の方法およびシステムによって、オンに切り替えられること、オフに切り替えられること、省電力モードに置かれること、または省電力モードからウェイクアップされることから利益を得ることができる。
【0024】
例えば、システム1からの出力は、第2のデバイス17を省電力モードにするため、および/または、ディスプレイ18をシャットダウンするために使用され得る。したがって、人が存在しないとき、第2のデバイス17は、恐らくは非存在状態がある最小時間の間検出された後に、省電力モードにされてもよい。システム1によって提供される「存在状態」は、第2のデバイス17をウェイクアップするために使用され得る。
【0025】
例えば、プロセッサ5および/またはメモリ6のようなサブシステム3の部分は、特に第2のデバイス17がコンピュータを含むか又はコンピュータから成る場合には第2のデバイス17の一部であってもよいことに注意すべきである。そして、本明細書に記載するソフトウェアは、コンピュータのハードドライブにインストールされ、コンピュータのCPUによって使用されてもよい。一般に、システム1の部分は、プロセッサ5またはメモリ6が第2のデバイス17の一部であり得るように、第2のデバイス17の部分と一体化され得る。システム1全体は、ハードウェアとソフトウェアとの適切な組み合わせで実施されるその副部分(サブパート)として、第2のデバイス17に完全に統合されてもよい。
【0026】
すなわち、システム1は、第2のデバイス17内に取り付けられてもよく、または、第2のデバイス17とは別個であってもよい。一実施形態(図4に示す)では、IRセンサ2は、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン(iPhone(登録商標)またはAndroidフォンなど)のディスプレイ18、または固定コンピュータ用の自立ディスプレイ18とすることができる、コンピュータ用のディスプレイ18の隣に取り付けられる。視野15は、好ましくはディスプレイ18の前の人16の意図された位置に向けられる。ディスプレイ18は、LCDディスプレイであってもよい。好ましい実施形態では、システム1は、ラップトップで使用される。ラップトップのような携帯型コンピュータは、異なる部屋、屋内および屋外の間で動き回り、それによって「ノイズの多い」熱パターンを有する使用環境に頻繁にさらされるので、IRセンサを調整(較正)することは特に困難である。
【0027】
IRセンサデータは、IRセンサ2からサブシステム3に供給される。サブシステム3は、センサデータを分析し、第2のデバイス17に存在/非存在の出力を提供する。システム1は、任意の適切なサンプリング間隔を使用して、視野15内の熱データをサンプリングすることができる。好ましくは、サンプリング周波数は、5秒に1回から100回/秒までである。IRセンサ信号50を得るためのIRセンサデータのサンプリングは、信号処理モジュール13によって行われ、IRセンサデータ8として記憶される。これは、連続的かつリアルタイムで行うことができる。通常、サーモパイルは、出力電圧として出力を送る。好ましくは、ここでの全てのIRセンサデータ(閾値、ベースラインなど)は相対温度値ではなく、絶対温度値であるか、または絶対温度値に変換することができる。したがって、好ましくは、サーモパイルがIRセンサとして使用される。
【0028】
次に、図5を参照して、人が存在することを判定する方法について説明する。システム1は、このような方法を実行するように構成されていることを理解されたい。
【0029】
ステップ100では、IRバックグラウンド信号ベースライン51(「ベースライン」、図8参照)が信号処理モジュール13によって決定される。ベースライン51は、傾向を示すために極値を除去する(好ましくはデジタル)平滑化方法で処理された履歴IRセンサデータ50(本明細書では「IR信号50」とも称する)を表す。有用な平滑化方法の例には、移動平均値または中央値が含まれる。いくつかの実施形態では、データ内の異常値は除去される。ベースライン51は、第1の期間に対して決定される。IRバックグラウンド信号ベースライン51は、部屋または他の環境のバックグラウンド温度を反映する。IRバックグラウンド信号ベースライン51は、視野15内に人が存在しないときに、IRセンサデータ50を反映することが好ましい。ベースライン51は、換気、日照、部屋内の人数、窓の開放などによって変動し得る。ベースライン51は、異なる方法で決定されてもよい。IRバックグラウンド信号ベースライン51は例えば、第1の期間中にIRセンサデータ50から収集された多数のデータポイントの平均として決定されてもよい。第1の期間および第2の期間の適切な長さは、例えば、0.01秒~5秒、より好ましくは0.01秒~1秒であってもよい。移動平均は、例えば、最後の1~15秒間の移動平均を使用することができる。したがって、ベースライン51は少なくとも5秒毎に、より好ましくは少なくとも1秒毎に、より好ましくは少なくとも2秒毎に、最も好ましくは少なくとも10秒毎に更新することができる。
【0030】
ベースライン51は、視野15内に人がいないときに決定される。視野13内に人がいないという事実は、異なる方法で、例えば、IR信号50が本明細書に記載されているように閾値を下回ったときに、決定することができる。スタートアップ時に正しいベースライン51を選択する1つの方法を、図9~11を参照して以下に説明する。ベースライン51は、好ましくはシステムが非存在状態にあるときはIR信号50を使用して繰り返し更新され、システムが非存在状態に戻るときはいつでも更新される。
【0031】
ステップ101では、第1の期間に対するIRデータ50の変動性が決定される。この決定は、信号処理モジュール13によって行われる。任意の有用な分散パラメータまたは変動性測定値を使用し、IR信号50に適用することができる。例えば、IRセンサデータ50の標準偏差、絶対変動、平均絶対偏差又は分散を使用することができる。したがって、一実施形態では、IRセンサデータ50の標準偏差を使用して、IRバックグラウンド信号ベースライン51の変動性を決定する。IR信号50のより高いバックグラウンドノイズは、より高い変動性をもたらし、従って、測定された時間隔にわたってより高い標準偏差をもたらしうる。あるいは、変動性は、第1の期間に対する最高値と最低値との間の差として決定されてもよい。一実施形態では、バックグラウンドベースライン51の変動性が決定される(例えば、ベースライン51に対するサンプリング間隔は、閾値52を決定する場合よりも短い)。ステップ101は、ステップ100の前、後、または同時に実行することができる。
【0032】
ステップ102では、存在を判定するための閾値52(ここでは「第1の閾値52」とも称する。図8を参照)が、閾値決定ロジック10によって決定される。閾値決定ロジック10は、ステップ100および101で決定されたベースライン51を決定するために使用された、ベースライン51およびIRセンサデータ50に対するデータ変動性を使用する。データ変動パラメータには、ファクタ(因子)nを乗じることができる。さらに、所定のオフセットを使用することができる。一般に、閾値は、以下のように決定される:

閾値 = ベースライン+n*(変動性)+オフセット
【0033】
ここで、nは、特に標準偏差が変動性を決定するために使用される場合、0.1~10、より好ましくは0.1~5から選択される定数値を有する無次元パラメータであり得る。オフセットは、IRセンサの構成および増幅器およびA/D変換器の選択に依存して選択され、システム1の特定の構成を使用して決定されてもよい。経験則として、オフセットは、存在状態および非存在状態における測定された信号強度の典型的な差の間の差の約10%~70%であり得る。オフセットは、特定の用途および使用されるIRセンサについて決定することができる。オフセットの使用は任意であり、したがってオフセットはゼロであってもよい。より高い変動性は、より高い閾値52をもたらし、その結果、外部要因によって引き起こされる変動が「存在」をトリガしない閾値52をもたらす。決定された閾値52は、メモリ6の閾値データ9として記憶される。オフセットの目的は、システム1によって偽陽性が検出されないように、閾値52がベースライン51から十分に離れていることを確認することである。
【0034】
ステップ100~102は繰り返し実行することができ、それによって、ベースライン51および閾値52を動的に変更する。好ましい実施形態では、システムは、連続する期間の間、ベースライン51を決定し、ベースライン51は、閾値52を繰り返し更新するために使用される。連続する期間は、離散的であってもよいし、部分的に重複していてもよい。連続する期間は、同じ長さを有することができる。上述のように、時間は、0.01秒~5秒、より好ましくは0.01秒~1秒とすることができる。したがって、閾値は、少なくとも5秒毎に、より好ましくは少なくとも1秒毎に、より好ましくは少なくとも2秒毎に、最も好ましくは少なくとも10秒毎に更新することができる。閾値は、リアルタイムまたはリアルタイム近くで更新されうる。
【0035】
ステップ103では、第1の期間の後である第2の期間に対するIRデータ50は、センサ2によってサブシステム3に供給され、メモリ6内の閾値データ9の形式で閾値52にアクセスする存在判定ロジック11によって処理される。第2の期間に対するIRデータ50は、信号処理モジュール13から存在判定ロジック11に供給されてもよい。第2の期間に対するIRデータ50が閾値よりも高い場合、人が存在すると判定され、さらなるIRデータが閾値よりも高くない場合、人が存在しないと判定される。閾値よりも高い1つの単一の測定(測定値)で十分であり得るが、連続的または繰り返しの間など、最小持続時間にわたって閾値を超えることも必要とされ得る。第2の期間に対するIRデータ50またはベースライン51は、閾値52との比較に使用することができる。存在の判定(決定)は、好ましくは閾値の更新と同じ頻度で行われる。
【0036】
第2の期間に対するIRデータは特に、人が存在しないと判定された場合、ステップ100~102に記載されるように、閾値を更新するために閾値判定ロジック11によって使用されてもよい。
【0037】
連続する非重複または重複期間を使用して、閾値を超えているかどうかを繰り返しチェックすることができる。期間は、好ましくは等しい長さである。
【0038】
図6は、閾値決定ロジック10が閾値52aを決定するために、第1の期間60aからのベースライン51aをどのように使用するかを示す。続く期間60bにおける信号50は、より可変であり、より高い閾値52bをもたらす。したがって、存在判定ロジック11は、連続した期間にわたって閾値を超えたかどうかをチェックすることができ、閾値を超えていないと判定された場合、信号は、閾値52を52bとして示される値に更新するために使用される。期間60cの間の時間Tにおいて閾値を超える。存在状態への遷移は時間Tで発生するが、時間Tなどの時間隔60cの終了後など、サンプリング間隔60cの終了後に発生する場合もある(図6を参照)。後者のアプローチは、短いサンプリング間隔に対してより有用である。したがって、一実施形態では、IR信号50がベースラインと同じ間隔で閾値52に対してチェックされ、閾値が更新される。
【0039】
好ましい実施形態では、ステップ102で閾値52を決定するときに、(好ましくはデジタル)減衰(dampening)フィルタが適用される。例えば、人16がセンサの視野15にゆっくりと近づくと、閾値52は徐々に上昇し、信号50が閾値52に達することがないようにし、その語、存在状態がトリガされることはないが、これは望ましくない。減衰フィルタは、好ましくは少なくともベースライン51が上方に移動するときに、閾値52の移動を抑制(減衰)させる。抑制のために、任意のタイプの適切なローパスフィルタを使用することができる。閾値52の移動を抑制させる1つの方法は、ベースラインの変化のパーセンテージで移動させることのみを可能にすることである。パーセンテージは、当業者によって選択されてもよく、例えば、0.5~10%であってもよい。変化量は、サンプリング周波数に応じて選択することができる。この場合、低いサンプリング周波数に対して高いパーセンテージが使用される。特に、上述した「スローアプローチ効果」を回避するために、ベースラインが上方に移動するときに、減衰フィルタは閾値52の移動を抑制させるべきである。しかしながら、閾値52は、抑制される(減衰する)ことなく「下方に」(より低い値に向かって)移動することが可能であってもよい。減衰フィルタは、閾値決定ロジック10によって使用されてもよい。
【0040】
上述の閾値52は、信号が閾値52を横切るたびに状態が切り替えられるように、非存在状態から存在状態への切り替え、および、存在状態から非存在状態への切り替えを決定するために使用することができる。
【0041】
しかし、好ましい実施形態では、第2の閾値53が、存在状態から非存在状態に切り替えるために使用される。つまり、閾値にヒステリシス原理が適用される。したがって、(上述の)非存在状態から存在状態への切り替えを引き起こす第1の閾値52と、存在状態から非存在状態への切り替えを引き起こす第2の閾値53とが存在し得る。第1の閾値52は、信号50が第1の閾値52をより低い値からより高い値に交差するときにのみ存在状態をトリガし、第2の閾値53は、信号50が第2の閾値53をより高い値からより低い値に交差するときにのみ非存在状態をトリガする。第2の閾値53は、任意の所与の時点について第1の閾値よりも高い値を有することが好ましいが、これは必要条件ではない。
【0042】
第2の閾値53は、人24がコンピュータの前に存在するときに決定されるトップライン信号54に関連して決定されるが、それ以外は、IRバックグラウンド信号ベースライン51が上述のように決定されるのと同様に、第2の閾値53がトップライン信号54を下回っているという重要な違いを伴って、決定される。

第2の閾値 = トップライン信号-(n*(変動性)+オフセット)
【0043】
トップライン信号54は、「存在状態ベースライン54」とも称され得る。したがって、第2の閾値53は、第1の閾値52について上述したのと同じ方法で決定されることが好ましいが、トップライン信号から変動性および場合によってはオフセットを減算することによって決定される。定数nおよびオフセットは、第1の閾値52の計算の場合と異なるか、または同じであってもよい。また、「ベースライン51」および「トップライン54」は、本質的に同じ方法で決定され、集合的に「平滑化されたIR信号データ」と称されてもよいことに留意されたい。
【0044】
第2の閾値53は、閾値決定ロジック10によって決定される。減衰フィルタは、第2の閾値53を決定するときに適用されてもよい。減衰フィルタは、第2の閾値53の移動を抑制(減衰)させることができるが、上方への移動も抑制させることができる。センサがラップトップコンピュータのようなディスプレイ18を有する第2のデバイス17に組み込まれるとき、上方抑制は、人16がディスプレイ18に向かって前方に傾いたときにトップライン信号54が瞬間的に上方に移動することから生じる過度に高い第2の閾値53を防止し、それ以外は、ある状況では、人16が再び後方に傾いたときにシステム1に非存在状態をトリガさせることがある。
【0045】
図7を参照すると、方法ステップ200~204は、図5のステップ100~104と同様の態様で実施される。ステップ200では、トップライン信号54が決定される。これは、ベースライン51と同じ方法で行われ、「存在」状態でのみ行われる。存在状態は、ステップ104によってトリガされてもよいし、図9~11を参照して以下に説明される方法によって、または任意の他の適切な方法によって、スタートアップ時に決定されてもよい。例えば、存在状態は、最小の時間隔内でキーストロークまたはマウスの動きを検出することによって決定(判定)されてもよい。ステップ201では、ステップ200でトップライン54を決定するために、IR信号50の変動性が使用(決定)される。ステップ202において、第2の閾値53が決定される。ステップ203では、第2の閾値53を下回る、第2の期間に対するIRセンサデータが受信される。これにより、ステップ204において、非存在状態への遷移がトリガされる。好ましくは、決定頻度および更新頻度は、第1および第2の閾値について同じである。
【0046】
一実施形態では、図7の方法が図5の方法無しで使用され、すなわち、非存在状態を決定する方法が、存在状態を決定する方法無しで、単独で使用される。
【0047】
システム1は、非存在状態から存在状態に変動し、非存在状態に戻ることができる。システム1が非存在状態に戻るたびに、非存在状態における対応する期間からの測定データを用いて、ベースライン51を更新してもよい。システム1が存在状態に戻るたびに、存在状態における対応する期間からの測定データを用いて、トップライン信号54を更新してもよい。閾値52、53は、ベースライン51およびトップライン54が更新されるときに更新され、したがって、閾値52、53は時々、更新されないままにされ得る(すなわち、第1の閾値52は存在状態では更新されないままにされ得、第2の閾値53は非存在状態では更新されないままにされ得る)。第1および第2の閾値52、53を有するシステム1を存在状態と非存在状態との間で変動させるIRデータの例を図8に示す。グラフは、約1メートルの距離にいる人の存在を検出するサーモパイルからの実際のデータを示し、システム1は、第1の閾値52および第2の閾値53を決定し、使用する。ベースライン51、トップライン54、および閾値52、53の位置は、概略的に示されている。図8における閾値52、53は、短い時間隔で複数回調整されており、閾値が徐々に変化しているように見える。抑制(減衰)は以下のように使用される:ベースライン51が上方に移動するときに、第1の閾値52の移動は上方を抑制され、トップラインが下方に移動するときに、第2の閾値53の移動は下方を抑制される。第1の閾値52の8.5秒および14秒における「スパイク」は、ベースライン51の高い変動性によって引き起こされる。同様に、第2の閾値53は、7秒および12秒でわずかに下方に移動し、これもまた、トップライン54の高い変動性によって引き起こされる。
【0048】
システム1がスタートアップ(起動)しているとき、システム1は、人16が視野15内に存在するか否かを知らない。例えば、システム1を備えたラップトップ17がスタートアップしているとき、人16は、ラップトップ17の前に座っているか、または、例えばコーヒーをフェッチするなど、他の何かをしているかもしれない。したがって、システム1がIR信号の検出を開始しているとき、システム1は、それがベースライン51またはトップライン54を検出しているかどうかを知らない。システム1は、例えば、これを検出するためにキーボードがタップされているかどうかを検出するために、デバイス17からの入力を使用することができる。この問題を解決する別の方法は、スタートアップロジック14を使用した図9~11に示す方法である。スタートアップ時に、システム1は、初期信号55を決定し、下限閾値56および上限閾値57を決定する。閾値56、57は、図5~7を参照して上述したように決定されてもよく、ここで、下限閾値56は、第2の閾値53について説明したように決定され、上限閾値57は、第1の閾値52について説明したように決定される。
【0049】
図9のステップ300では、初期信号55ベースラインが検出され、決定される。これは、上記のバックグラウンドベースライン51およびトップライン信号54を決定するのと同じ方法で行われ、状態が知られていないため、ベースライン51またはトップライン信号54として指定することができないだけである。したがって、初期信号ベースライン55は、IRセンサデータ50を用いて決定される。したがって、初期信号ベースライン55は、平均信号であってもよい。ステップ301では、初期センサデータ50の変動性が、上記のステップ101およびステップ201と同様に決定される。ステップ302において、下限スタートアップ閾値56および上限スタートアップ閾値57が決定される。下限スタートアップ閾値56および上限スタートアップ閾値57は、以下のように決定される:

下限スタートアップ閾値 = 初期信号ベースライン-n*(変動性)-オフセット

上限スタートアップ閾値 = 初期信号ベースライン+n*(変動性)+オフセット
【0050】
閾値56、57は、図10~11に示すように、初期信号ベースライン55から同じまたは実質的に同じ距離にあってもよいが、これは必須ではない。定数nおよび/またはオフセットは、下限および上限スタートアップ閾値56、57に対して同じであってもなくてもよい。
【0051】
ステップ303では、少なくとも第2の期間に対するIRデータが、IRセンサ2から、下限スタートアップ閾値56または上限スタートアップ閾値57のいずれかを超えるまで、受信される。上限スタートアップ閾値57を超えた場合、ステップ304において、初期信号55がバックグラウンドベースライン51として使用されることが決定される。次に、システム1は、トップライン54(図10)の決定に進むことができ、下限スタートアップ閾値56を超えた(パスした)場合、初期信号ベースライン55はバックグラウンドベースライン51として使用されず、代わりに、バックグラウンドベースライン51がステップ305(図11)で決定される。次いで、ステップ300で決定された初期信号ベースライン55は、任意選択でトップライン54として使用されてもよい(データも廃棄されてもよい)。
【0052】
このプロセスは、システム1が例えば、システム1のスタートアップ時に、またはシステム1を再較正する必要があるときに、ベースライン51またはトップライン54を定義する必要があるときはいつでも使用することができる。
【0053】
ここでは、システム1が人16の存在を検出するためにどのように使用されるかを説明する。システム1はまた、動物の存在を検出するために使用されてもよい。動物は、好ましくは哺乳動物または鳥類のような温血動物である。
【0054】
本発明は特定の例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、この説明は一般に、本発明の概念を例示することのみを意図しており、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。その範囲は、特許請求の範囲によって一般的に定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の存在を判定するための方法であって、前記方法は、人が存在しないことを示す第1の状態と、人が存在することを示す第2の状態であることができるシステム(1)を含み、前記方法は繰り返し実行され、
a)サーモパイル(2)から第1の期間中にIRセンサデータ(50)を受信し、前記IRセンサデータを使用して、当該期間に対する平滑化されたIR信号(51,54)を決定し、前記IRセンサデータ(50)の変動性を決定するステップと、次いで、
b)前記平滑化されたIR信号(51,54)と、前記IRバックグラウンド信号レベルの変動性とを使用して、前記システムが前記システム(1)により決定された前記第1の状態であるときに、前記IRバックグラウンド信号(50)の変動性が大きいほど閾値(52)が高くなるように、前記平滑化されたIR信号(51,54)よりも高い値を有する第1の閾値(52)を決定し、前記システムが前記システム(1)により決定された前記第2の状態であるときに、前記IRバックグラウンド信号(50)の変動性が大きいほど閾値が低くなるように、前記平滑化されたIR信号より低い値を有する第2の閾値(53)を決定するステップと、次いで、
c)前記第1の期間の後の第2の期間中にさらなるIRセンサデータ(50)を受信し、前記さらなるIRセンサデータ(50)使用して、前記システムが前記第1の状態にあるときに、前記さらなるIRセンサデータ(50)が前記第1の閾値よりも高い値を含むときに、前記状態を前記第2の状態へ切り替え、前記システムが前記第2の状態にあるときに、前記さらなるIRセンサデータが前記第2の閾値(53)より低い値を含むときに、前記状態を前記第1の状態へ切り替えるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第1の期間と前記第2の期間は等しい、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記第2の期間からの前記IRセンサデータは、前記閾値を更新するために使用される、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記システムは、1つの単一のIRセンサを有する、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法は、少なくとも5秒毎に実行される、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法であって、ステップb)において減衰フィルタが適用される、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記減衰フィルタは、前記第1の閾値のより高い値への移動を抑制させる、方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法であって、前記第2の閾値の下方および上方の移動を抑制させる減衰フィルタが使用される、方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法であって、前記システム(1)は、ディスプレイ(18)を有するラップトップコンピュータにおいて使用され、前記サーモパイル(2)は、前記ディスプレイ(18)の隣に取り付けられ、前記サーモパイル(2)は、前記ディスプレイ(18)の前の人(16)の意図された位置に向けられた視野(15)を有し、前記存在しない状態は、前記ラップトップコンピュータを省電力モードにするため、または前記ディスプレイ(18)をシャットダウンするために使用される、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法であって、スタートアップ時に、次のプロセス:
i)開始期間中に初期IR信号を決定し、前記初期IR信号に対する初期信号ベースラインを計算すること、次いで、
ii)前記初期IR信号ベースラインと、前記開始期間中の前記初期IR信号の計算された変動性とを使用して、上限スタートアップ閾値および下限スタートアップ閾値を決定すること、次いで、
iii)後の期間にさらなるIRセンサデータを受信し、
1.前記さらなるIRセンサデータが前記上限スタートアップ閾値を上回っていることを決定し、次いで、ステップb)における前記IRバックグラウンド信号ベースラインとして前記初期信号ベースラインを使用すること、
あるいは、
2.前記さらなるIRセンサデータが前記下限スタートアップ閾値未満であることを決定し、次いで、新しいIR信号ベースラインレベルを決定し、ステップb)における前記IRバックグラウンド信号ベースラインとしてそのベースラインを使用すること、
が実行される、方法。
【請求項11】
サーモパイル(2)であるIRセンサ(2)と、プロセッサ(5)と、メモリ(6)とを備えるシステム(1)であって、前記システム(1)は、信号処理モジュール(13)と、閾値決定ロジック(10)と、存在判定ロジック(11)とを備え、前記システム(1)は、前記メモリ(6)に、存在状態データ(12)として第1の状態または第2の状態を記憶するように構成され、前記第1の状態は人が存在しないことを示し、前記第2の状態は人が存在することを示し、
前記システム(1)はさらに、第1の期間中に前記IRセンサ(2)を使用してIRセンサデータ(50)を決定し、当該IRセンサデータ(50)を前記信号処理モジュール(13)に提供するように構成され、
前記信号処理モジュール(13)は、前記IRセンサデータ(50)を使用して前記期間に対する平滑化されたIR信号(51,54)を決定し、前記IRセンサデータ(50)の変動性を決定するように構成され、
前記閾値決定ロジック(10)は、前記平滑化されたIR信号(51,54)と、前記IRバックグラウンド信号レベルの変動性とを使用して、前記システムが前記システム(1)により決定された前記第1の状態であるときに、前記IRバックグラウンド信号(50)の変動性が大きいほど閾値(52)が高くなるように、前記平滑化されたIR信号(51,54)よりも高い値を有する第1の閾値(52)を決定し、前記システムが前記システム(1)により決定された前記第2の状態であるときに、前記IRバックグラウンド信号(50)の変動性が大きいほど閾値(53)が低くなるように、前記平滑化されたIR信号(51,54)より低い値を有する第2の閾値(53)を決定するように構成され、
前記存在判定ロジック(11)は、前記閾値(52)を使用して、さらなるIRセンサデータ(50)が受信され、前記システムが前記第1の状態にあるときに、前記さらなるIRセンサデータ(50)が前記第1の閾値より高い値を含むときに、前記状態を前記第2の状態へ切り替え、前記システムが前記第2の状態にあるときに、前記さらなるIRセンサデータが前記第2の閾値(53)より低い値を含むときに、前記状態を前記第1の状態へ切り替え、前記システムは、前記状態を繰り返し判定するように構成される、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステム(1)を備えるデバイスまたは、請求項11から情報を受信するように構成されたデバイスであって、
人が存在しないという情報を前記システム(1)から受信するときに、前記デバイスを省電力モードにし、または、人が存在するという情報を前記システム(1)から受信するときに、前記デバイスを省電力モードからウェイクアップするように構成される、デバイス。
【請求項13】
ポータブルコンピュータまたはコンピュータ用のディスプレイである、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
請求項12に記載のデバイスであって、前記デバイス(17)は、ディスプレイ(18)を有するラップトップコンピュータであり、前記サーモパイル(2)は、前記ディスプレイ(18)の隣に取り付けられ、前記サーモパイル(2)は、前記ディスプレイ(18)の前の人(16)の意図された位置に向けられた視野(15)を有し、前記存在しない状態は、前記ラップトップコンピュータを省電力モードにするため、または前記ディスプレイ(18)をシャットダウンするために使用される、方法。
【国際調査報告】