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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-09
(54)【発明の名称】血友病B疾患モデルラット
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220602BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20220602BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220602BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220602BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20220602BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20220602BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220602BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20220602BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20220602BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20220602BHJP
   C12N 15/869 20060101ALN20220602BHJP
   C12N 15/863 20060101ALN20220602BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20220602BHJP
【FI】
C12N15/09 110
A01K67/027 ZNA
C12N5/10
C12N15/113 Z
C12N9/50
C12N15/57
C12N15/12
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867
C12N15/869
C12N15/863 Z
C12N5/0735
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560162
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2020004008
(87)【国際公開番号】W WO2020197242
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0034308
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438700
【氏名又は名称】ツールジェン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ソク・ベ
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ジュン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ウ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ギ・キム
(72)【発明者】
【氏名】キュ・ジュン・イ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050DD02
4B050KK07
4B050LL05
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065BA04
4B065BA05
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、血友病B疾患ラット及びその製造方法に関し、さらに詳細には、F9因子がノックダウン(knock-down)またはノックアウト(knock-out)された血友病B疾患ラット(rat)及びその製造方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
F9遺伝子内の人為的変形を含む血友病B疾患モデルラット(rat)であって、
前記F9遺伝子内の人為的変形は、
F9遺伝子の全部または、一部の欠失(deletion);
F9遺伝子の全部または、一部挿入(insertion);
F9遺伝子の全部または、一部挿入及び欠失;及び
F9遺伝子内の逆位と、のうち、いずれか1つ以上の変形;を含み、
前記F9遺伝子の一部は、1bp~100bpのヌクレオチドであり、
前記血友病Bラットは、F9遺伝子内の人為的変形によって、
F9因子発現量減少;
F9因子発現抑制;
F9因子機能低下;及び
F9因子機能喪失;のうち、いずれか1つ以上を含み、
前記血友病B疾患ラット(rat)は、
組織内の自然出血(spontaneous bleeding);
自然出血による組織内の炎症;及び
自然出血による組織内の腫れ;のうち、いずれか1つ以上の現象を示す、血友病B疾患モデルラット(rat)。
【請求項2】
前記人為的変形は、
F9遺伝子内のエクソン領域(exon region);
F9遺伝子内のイントロン領域(intron region);
F9遺伝子内のプロモーター領域;
F9遺伝子内のエンハンサー領域;
F9遺伝子内の5’末端または、その隣接領域;
F9遺伝子内の3’末端または、その隣接領域;及び
F9遺伝子内のスプライシング部位(splicing site);のうち、いずれか1つ以上の領域に形成されることを特徴とする, 請求項1に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)。
【請求項3】
前記F9遺伝子内の人為的変形は、F9遺伝子のエクソン第1領域またはエクソン第2領域で発生したことを特徴とする、請求項1に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)。
【請求項4】
下記を含む血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物:
ガイドRNAまたはそれを暗号化するDNA;及び
エディタータンパク質またはそれを暗号化するDNA、
この際、前記ガイドRNAは、配列番号21~26からなる群から選択された配列を含み、
前記ガイドRNAは、F9遺伝子配列の全部または、一部を標的配列とすることを特徴とし、
前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するCas9タンパク質を含み、
前記ガイドRNAと前記エディタータンパク質は、ガイドRNA-エディタータンパク質複合体を形成して前記F9遺伝子に人為的な変形を起こすことを特徴とする。
【請求項5】
前記ガイドRNAと前記エディタータンパク質が複合体を形成したRNP(ribonucleoprotein)形態で存在する、請求項4に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物。
【請求項6】
前記ガイドRNAを暗号化するDNA及び前記エディタータンパク質を暗号化するDNAがベクターの形態で存在する、請求項4に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物。
【請求項7】
前記ベクターは、ウイルスベクターまたは、非ウイルスベクターであることを特徴とする、請求項4に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物。
【請求項8】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス及び単純ヘルペスウイルスで構成された群から選択される1以上であることを特徴とする、請求項7に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物。
【請求項9】
配列番号21~26からなる群から選択された配列を含む、ガイドRNA。
【請求項10】
F9遺伝子内の人為的変形を含むラット(rat)細胞であって、
前記F9遺伝子内の人為的変形は、
F9遺伝子の全部または、一部の欠失(deletion);
F9遺伝子の全部または、一部挿入(insertion);
F9遺伝子の全部または、一部挿入及び欠失;及び
F9遺伝子内の逆位のうち、いずれか1つ以上の変形;を含み、
前記F9遺伝子の一部は、1bp~100bpのヌクレオチドであり、
前記ラット細胞は、F9遺伝子内の人為的変形によって、
前記F9因子またはそれを暗号化する遺伝子内の人為的変形によって、
F9因子発現量減少;
F9因子発現抑制;
F9因子機能低下;
F9因子機能喪失;及び
F9因子機能が低下または喪失;される場合、のうち、いずれか1つ以上含むことを特徴とするラット(rat)細胞。
【請求項11】
前記人為的変形は、
F9遺伝子内のエクソン領域(exon region);
F9遺伝子内のイントロン領域(intron region);
F9遺伝子内のプロモーター領域;
F9遺伝子内のエンハンサー領域;
F9遺伝子内の5’末端または、その隣接領域;
F9遺伝子内の3’末端または、その隣接領域;及び
F9遺伝子内のスプライシング部位(splicing site);のうち、いずれか1つ以上の領域に形成されることを特徴とする請求項10に記載のラット(rat)細胞。
【請求項12】
前記ラット細胞は、体細胞、胚性細胞及び胚性幹細胞のうち、いずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項10に記載のラット(rat)細胞。
【請求項13】
前記人為的変形は、F9遺伝子のエクソン第1領域またはエクソン第2領域で発生したことを特徴とする、請求項10に記載のラット(rat)細胞。
【請求項14】
下記を含む、人為的に変形されたF9遺伝子を含むラット(rat)細胞の製造方法:
ラット(rat)細胞に請求項5~9のうち、いずれか1項による血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物を接触させること。
【請求項15】
前記細胞は、体細胞、胚性細胞、または胚性幹細胞である、請求項14に記載のラット(rat)細胞の製造方法。
【請求項16】
前記接触させることは、電気穿孔法(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノパーティクル(nanoparticles)及びPTD(Protein translocation domain)融合タンパク質方法のうち、選択される1以上の方法で行われることを特徴とする請求項14に記載のラット(rat)細胞の製造方法。
【請求項17】
前記接触させることは、生体外(in vitro)で行われることを特徴とする請求項14に記載のラット(rat)細胞の製造方法。
【請求項18】
下記を含む、F9遺伝子内の人為的変形を含む血友病B疾患モデルラット(rat)製造方法:
ラット細胞に請求項5~9のうち、いずれか1項による血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物を接触させることで、前記細胞のF9遺伝子内の人為的な変形が発生し;及び
前記細胞をラットに導入して血友病B疾患モデルラット(rat)を製造すること。
【請求項19】
前記F9遺伝子内の人為的変形は、F9遺伝子のエクソン第2領域で発生することを特徴とする請求項18に記載の血友病B疾患モデルラットの 製造方法。
【請求項20】
前記接触させることは、電気穿孔法(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノパーティクル(nanoparticles)及びPTD(Protein translocation domain)融合タンパク質方法のうち、選択される1以上の方法で行われることを特徴とする請求項18に記載の血友病B疾患モデルラットの 製造方法。
【請求項21】
前記血友病B疾患ラットは、
組織内の自然出血(spontaneous bleeding);
自然出血による組織内の炎症;及び
自然出血による組織内の腫れ;のうち、いずれか1つ以上を示す、請求項18に記載の血友病B疾患モデルラットの 製造方法。
【請求項22】
前記細胞は、体細胞、胚性細胞及び胚性幹細胞のうち、いずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項18に記載の血友病B疾患モデルラットの 製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血友病B疾患ラット及びその製造方法に係り、さらに詳細には、F9因子がノックダウン(knock-down)または、ノックアウト(knock-out)された血友病B疾患ラット(rat)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血友病Bまたは、クリスマス病は、第9凝固因子の欠陥によって発生する遺伝性X連鎖劣性出血性疾患である。血友病Bは、傷部位において血が止まらないことだけではなく、関節や筋肉に自然出血が発生しつつ、血友病性関節証のような合併症誘発も大きな問題となっている。そのような状況で根本的かつ効果的な新たな治療法の開発が必要であり、薬物の効能及び安定性評価のために、さらに優れた動物モデルの開発が必要な実情である。
【0003】
従来、血友病B動物モデルとして、マウス(mice)は、関節や筋肉など組織内に自然出血(spontaneous bleeding)現象がほとんど現れない問題点があり(Yen C.T., Fan M.-N., Yang Y.-L., Chou S.-C., Yu I.-S., Lin S.-W. Thromb. J. 2016;14:22.参照)、このような血友病B疾病マウスは、薬物の開発及び生産に活用するのに適切ではない。これにより、血友病Bに対する動物モデルとしてヒトと遺伝的にさらに類似しつつ、血友病Bの疾病症状をよく示す動物モデルに対する必要性が高まっており、かつバイオメディカル分野において比較的安い費用で正確な血友病B疾患を研究することができる動物モデルを活用しようとする要求が増加している。
【0004】
これにより、本発明は、血友病B疾病モデルとして、F9因子欠乏ラットを提供しようとする。このようなラット(rat)動物モデルは、血友病B疾病症状、さらに具体的に、自然出血(spontaneous bleeding)現象を十分に示し、これは、今後の治療剤の開発に重要な道具を提供するであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yen C.T., Fan M.-N., Yang Y.-L., Chou S.-C., Yu I.-S., Lin S.-W. Thromb. J. 2016;14:22.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願では、血友病B疾患ラット(rat)及びその製造方法を提供しようとする。
【0007】
また、本出願では、血友病B疾患ラット(rat)を製造するために、F9遺伝子を人為的に操作することができる遺伝子操作技術を含む組成物を提供しようとする。
【0008】
本出願は、前記血友病B疾患ラット(rat)を用いた多様な用途を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を達成するために、本明細書では、血友病B疾患モデル用動物として、血友病B疾患ラットを提供しようとする。
【0010】
本出願で開示する一態様は、ゲノム内の人為的変形が起きた血友病B疾患ラット(rat)に関するものである。
【0011】
前記ゲノム内の人為的変形が起きた血友病B疾患ラットは、F9遺伝子内の一部または全部が人為的に操作及び/または変形されたF9遺伝子を含む。
【0012】
一具現例において、前記人為的に操作されたF9遺伝子は、エクソン(exon)、イントロン(intron)、調節領域(regulatory region)、5’末端または、その隣接部位、3’末端または、その隣接部位、またはスプライシング部位(splicing site)などに人為的変形を含む。
【0013】
前記F9遺伝子核酸配列変形は、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、またはゲノムへの置換を含むが、それに限定されない。
【0014】
F9遺伝子内核酸配列の1つ以上のヌクレオチドの挿入、
F9遺伝子内核酸配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失、
F9遺伝子内核酸配列の1つ以上のヌクレオチドの置換、
F9遺伝子内核酸配列またはその部分のノックダウン(knock-down)などを含んでもよい。
【0015】
前記ゲノム内の人為的変形は、F9因子の突然変異を誘発することができる。すなわち、血友病Bラットは、人為的に変形されたF9因子を含んでもよい。
【0016】
前記人為的に変形されたF9因子は、1つ以上のアミノ酸配列の変更及び/または置換を含む。
【0017】
例えば、前記アミノ酸は、類似した性質を有するアミノ酸に変更されうる。または、前記アミノ酸は、互いに異なる性質を有するアミノ酸に変更されうる。
【0018】
前記アミノ酸の変更及び/または置換は、タンパク質発現量を調節することができる。
【0019】
または、前記アミノ酸の変更及び/または置換は、タンパク質の構造、機能に影響を与えることができる。
【0020】
したがって、前記F9因子の人為的変形によって、前記血友病Bラットは、全く発現しないか、発現量が減少したF9因子を含むか、または、前記血友病Bラットは、機能が低下するか、喪失したF9因子を含む。
【0021】
本出願で開示する一態様は、人為的に変形されたF9因子及び/または、それを暗号化する遺伝子を含む細胞に関するものである。
【0022】
前記細胞は、形質転換された幹細胞、胚性細胞、または体細胞でもある。
【0023】
前記形質転換細胞は、人為的に変形されたF9遺伝子を含む。
【0024】
一実施例において、前記形質転換細胞は、F9遺伝子内の1つ以上の一領域にヌクレオチドの付加、欠失、または置換が起きた遺伝子を含んでもよい。
【0025】
他の実施例において、前記F9遺伝子がノックダウン(knock-down)及び/または、ノックアウト(knock-out)された細胞でもある。
【0026】
前記形質転換細胞は、F9因子をターゲットとする遺伝子操作技術、すなわち、人工ヌクレアーゼ、アンチセンスRNA、dominant negative mutant F9、またはリボザイムなどを含んでもよい。
【0027】
例えば、前記形質転換細胞は、CRISPR-Cas system、ZFN、TALEN、またはメガヌクレアーゼを含むか、または、それらを暗号化する核酸を含む。
【0028】
または、例えば、前記形質転換細胞は、small interfering(siRNA)、short hairpin RNA(shRNA)またはmicroRNAを含むか、または、それらを暗号化する核酸を含む。
【0029】
または、例えば、前記形質転換細胞は、F9因子をターゲットとするdominant negative mutant F9、または、F9因子を暗号化する核酸に対するリボザイム(ribozyme)を含むか、または、それらを暗号化する核酸を含む。
【0030】
前記遺伝子操作技術は、細胞内に多様な形態で含まれる、例えば、遺伝子操作技術を暗号化する核酸を含んでいるベクターの形態でもある。
【0031】
前記形質転換細胞は、F9因子が全くないか、または発現量が減少した細胞でもある。
【0032】
前記形質転換細胞は、F9因子の機能が喪失されるか、または低下した細胞でもある。
【0033】
前記形質転換細胞は、F9因子が欠乏した細胞でもある。
【0034】
前記形質転換細胞は、細胞コロニーを形成することができる。前記細胞コロニーは、単一細胞から培養された単一細胞でもある。
【0035】
本出願の一態様は、人為的に変形されたF9因子を含むラットに関するものである。
【0036】
すなわち、F9遺伝子がノックダウン(knock-down)または、ノックアウト(knock-out)されて、F9因子の発現、または機能の下向き調節(downregulation)、または完全に喪失したラットに関するものである。以下、「人為的変形が起きたラット」とも混用して使用される。
【0037】
前記人為的変形が起きたラットは、出血症状(持続的出血、自然出血)が現れる。
【0038】
前記人為的変形が起きたラットは、自然出血(spontaneous bleeding)及び/または外出血(external bleeding)が発生しうる。
【0039】
任意の具現例において、前記人為的変形が起きたラットは、組織内の自然出血(spontaneous bleeding)を含む。
【0040】
前記組織内の自然出血による炎症;及び/または
前記組織内の自然出血による腫れ、を含む。
【0041】
例えば、前記組織は、関節、筋肉及び目でもある。
【0042】
本明細書では、F9遺伝子を人為的に操作するための、F9遺伝子の遺伝子操作技術を提供しようとする。
【0043】
前記F9遺伝子内の人為的変形を引き起こす遺伝子操作技術は、人工ヌクレアーゼを用いた技術、アンチセンスRNAを用いた技術、及び突然変異遺伝子またはタンパク質を用いた技術のうち、選択された1つ以上であり、但し、遺伝子操作技術は、それに制限されない。
【0044】
本出願において開示される、F9遺伝子の遺伝子操作技術は、人工ヌクレアーゼであるCRISPR-Cas system、ZFN、TALEN、及びmega-nucleaseからなる群から選択される1種以上の技術であってもよい。
【0045】
前記人工ヌクレアーゼは、F9遺伝子全体または、一部の核酸配列と相補的結合を形成することができる。
【0046】
前記人工ヌクレアーゼは、F9遺伝子全体を除去することによって、またはF9遺伝子内の一部のヌクレオチド配列を欠失させるもしくは置換することによって、または外部からヌクレオチドを挿入することによって、F9遺伝子を人為的に変形(modify)させうる。
【0047】
前記人工ヌクレアーゼは、F9遺伝子内のエクソン領域、イントロン領域、調節領域、スプライシング部位、5’末端部分または、それと隣接した領域、3’末端部分または、それと隣接した領域の一部核酸配列と相補的結合して、F9遺伝子を人為的に変形させることができる。
【0048】
本出願で開示する、F9遺伝子の遺伝子操作技術は、F9遺伝子と相補的結合するアンチセンスRNA技術に関するものである。
【0049】
前記アンチセンスRNAを用いた遺伝子操作技術は、small interfering RNA(以下、「siRNA」と称する)、short hairpin RNA(以下、「shRNA」と称する)及びmicroRNA(以下「miRNA」と称する)のうち、いずれか1つ以上でもある。
【0050】
前記アンチセンスRNAは、F9遺伝子の一部核酸配列と相補的結合を形成し、F9遺伝子タンパク質発現を調節することができる。
【0051】
例えば、F9遺伝子内のエクソン領域、イントロン領域、調節領域、スプライシング部位、5’末端部分または、それと隣接した領域、3’末端部分または、それと隣接した領域の一部核酸配列と相補的結合を形成することができる。
【0052】
または、本出願では、F9因子機能及び発現を調節するためのdominant negative mutant, ribozyme, intracellular antibody, peptideまたはsmall moleculeを提供することができる。
【0053】
本明細書では、下記を含む血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物を提供する。ガイドRNAまたはそれを暗号化するDNA;及びエディタータンパク質またはそれを暗号化するDNA、この際、前記ガイドRNAは、配列番号21~25からなる群から選択された配列を有し、前記ガイドRNAは、F9遺伝子配列の全部または、一部を標的配列とすることを特徴とし、前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するCas9タンパク質を含み、前記ガイドRNAと前記エディタータンパク質は、ガイドRNA-エディタータンパク質複合体を形成して前記F9遺伝子に人為的な変形を起こすことを特徴とする。
【0054】
一具現例において、前記ガイドRNAと前記エディタータンパク質が複合体を形成したRNP(ribonucleoprotein)の形態でも存在する。
【0055】
一具現例において、前記ガイドRNAを暗号化するDNA及び前記エディタータンパク質を暗号化するDNAがベクターの形態でも存在する。
【0056】
本明細書では、配列番号21~26からなる群から選択された配列を有するガイドRNAを提供する。
【0057】
本明細書は、血友病B疾患ラットモデル製造用組成物を提供しようとする。
【0058】
本出願によって開示される内容の一態様は、F9遺伝子を操作または変形するための組成物に関するものである。
【0059】
前記F9遺伝子を操作または変形するための組成物は、前記人工ヌクレアーゼまたはそれを暗号化する核酸を含んでもよい。例えば、人工ヌクレアーゼは、TALEN、ZFN、メガヌクレアーゼ、またはCRISPR-enzymeシステムのうち、いずれか1つ以上でもある。
【0060】
一例において、前記F9遺伝子操作用組成物は、F9遺伝子内の一部核酸配列と相補的結合を形成することができるガイドRNA及びCas9酵素またはその複合体を含んでもよい。
【0061】
他の例において、F9遺伝子操作用組成物は、F9遺伝子内の一部核酸配列と相補的結合を形成することができるアンチセンスRNA、例えば、siRNAまたはshRNAなどを含んでもよい。
【0062】
他の例において、F9遺伝子操作用組成物は、dominant negative mutant F9因子またはRibozymeなどを含んでもよい。
【0063】
前記組成物は、1つ以上のガイドRNA及びCas9酵素もしくはその複合体、1つ以上のアンチセンスRNA、またはdominant negative mutant F9因子のうちの1つ以上の成分を混合物として含んでもよい。
【0064】
前記組成物は、発現カセットの形態で提供されうる。
【0065】
前記F9遺伝子の遺伝子操作技術は、ウイルスベクター、非ウイルスベクターまたは、非ベクターの形態で組成物に含まれる。
【0066】
一例において、前記組成物は、RNP(ribonucleoprotein)形態のF9遺伝子の遺伝子操作技術を含む。
【0067】
他の例において、前記組成物は、F9遺伝子の遺伝子操作技術を含む組換え発現ベクターを含む。
【0068】
本明細書では、血友病B疾患ラットの製造方法を提供しようとする。
【0069】
本出願の一態様は、前記F9遺伝子を人為的に変形させるために、遺伝子操作技術をラット細胞内に伝達(delivery)する段階を含む。
【0070】
この際、前記F9遺伝子の遺伝子操作技術は、naked核酸ベクター(naked nucleic acid vector)、非ウイルス性ベクター(non-viral vector)、またはウイルス性ベクター(viral vector)を用いて伝達されうる。
【0071】
一具現例において、前記人為的変形が起きたラットを製造するためには、ラット細胞内非ウイルスベクターを用いてF9遺伝子の遺伝子操作技術を導入する段階を含んでもよい。
【0072】
例えば、前記F9遺伝子の遺伝子操作技術がガイドRNA及びCas9である場合に、前記ガイドRNA-Cas9複合体は、微細注入(microinjection)方法によって細胞内に伝達されうる。すなわち、リボヌクレオプロテイン(ribonucleoprotein, RNP)の形態で伝達されうる。前記ガイドRNA-Cas9複合体は、ガイドRNAとCRISPR酵素の相互作用を通じて形成された複合体を意味する。
【0073】
前記F9遺伝子を人為的に変形させるための組換え発現ベクターで形質転換されたラット由来細胞は、当業界に公知された方法によって増殖及び培養されうる。
【0074】
本出願の他の態様は、F9ターゲット遺伝子操作技術を含む形質転換細胞を選別する段階を含んでもよい。
【0075】
ここで、前記形質転換細胞を、薬剤耐性遺伝子(antibiotic resistance gene)、抗原-抗体反応、蛍光タンパク質(fluroscent protein)及び表面マーカー遺伝子(surface marker gene)のうちの1つ以上の選抜要素を用いて、コロニーから選別することができる。
【0076】
本明細書で開示する一態様は、胚性細胞を移植する方法を用いたF9遺伝子組換えラット生産方法に関するものである。
【0077】
前記方法は、
(a)ラットの組織から分離した胚性細胞を人工ヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ、ZFN、TALEN及び/またはCRISPR-enzymeシステム)に露出させる段階;
(b)代理母内の胚芽を移植する段階;
(c)前記人工ヌクレアーゼは、胚芽内のF9遺伝子部位に特異的に結合して細胞染色体に変化を起こし、人為的に変形されたF9遺伝子を形成する段階;及び
(d)代理母が人為的に変形されたF9遺伝子を含むラットを姙娠する段階;を含んでもよい。
【0078】
各段階に係わる通常の技術内容は、当業界に公知されている従来の胚芽移植方法を参照して理解できるであろう。
【0079】
本明細書において開示される一態様は、人為的変形によってF9遺伝子がノックアウトされた血友病B疾患モデル用形質転換ラットの製造方法であって、前記方法が、組換えベクターが導入された核供与細胞の核の脱核卵子(denucleated oocyte)への移植及びラット子孫の出生を含む、製造方法に関し、並びに、それは、前記方法によって製造される血友病B疾患モデル用ラットにも関する。
【0080】
具体的態様において、血友病B疾患ラットは、人為的変形によってF9遺伝子がノックアウトされた形質転換細胞株を用いる、体細胞核移植 (somatic cell nuclear transfer, SCNT)の方法によって、製造される。
【0081】
前記血友病B疾患ラット生産方法は、
(a)ラットの組織から分離した体細胞または幹細胞を培養することを含む核供与細胞を製造する段階;
(b)F9遺伝子内の一部または全部をターゲットとする人為的操作ヌクレアーゼを前記核供与細胞に導入する段階;
(c)ラットの卵子から核を除去して脱核卵子を製造する段階;
(d)前記(c)段階の脱核卵子に(b)段階の核供与細胞を微細注入して融合させる段階;
(e)前記(d)段階で融合された卵子を活性化させる段階;及び
(f)前記活性化された卵子を代理母の卵管に移植する段階;を含んでもよい。
【0082】
各段階に係わる通常の技術内容は、当業界に公知されている従来の体細胞核移植技術を用いたクローン動物の製造方法などを参照して理解できるであろう。
【0083】
本明細書では、下記を含むF9遺伝子内の人為的変形を含む血友病B疾患モデルラット(rat)の製造方法を提供する。ラット細胞に前記血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物を接触させることで、前記細胞のF9遺伝子内の人為的な変形が発生し;及び前記細胞をラットに導入して血友病B疾患モデルラット(rat)を製造する。
【0084】
一具現例において、前記接触させることは、電気穿孔法(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノパーティクル(nanoparticles)及びPTD(Protein translocation domain)融合タンパク質法のうち、選択される1以上の方法によっても行われる。
【0085】
一具現例において、CRISPR/Cas9システムを用いて形質転換ラットの製造方法を提供しようとする。
【0086】
前記CRISPR/Cas9システムを用いた形質転換ラットの製造方法は、
(a)ラット内のF9遺伝子内の一部核酸配列または全部をターゲットとするCRISPR-enzymeシステムを胚性細胞内に導入する段階;
(b)代理母内の胚芽を移植する段階;
(c)前記CRISPR-enzymeシステムは、胚芽内のF9遺伝子部位に特異的に結合して細胞染色体に変化を起こし、人為的に変形されたF9遺伝子を形成する段階;及び
(d)代理母は、人為的に変形されたF9遺伝子を含むラットを姙娠する段階;を含んでもよい。
【0087】
本明細書では、既存になかった新規な血友病B疾患ラット(rat)を用いて、血友病B治療用薬物スクリーニング用動物モデルを提供することができる。さらに具体的に、血友病B自然出血予防または治療用薬物スクリーニング用動物モデルを提供することができる。
【0088】
一具現例において、血友病Bに対する薬物スクリーニング方法は、
(a)血友病B疾患モデルラットに血友病B軽減、予防または治療のための候補物質を投与する段階;
(b)候補物質の投与後、候補物質を、候補物質が投与されなかった対照群と比較及び分析する段階;を含んでもよい。
【0089】
候補物質は、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、醗酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液及び動物組織抽出液などからなる群から選択されたいずれか1つ以上であることが望ましいが、これに限定されない。
【0090】
前記化合物は、新規化合物であるか、あるいは、既に公知された化合物でもある。この際、前記化合物は、塩を形成していてもよい。
【発明の効果】
【0091】
本明細書によって開示される技術によれば、次のような効果が発生する。
【0092】
本明細書によって開示される技術によれば、血友病B疾患ラット(rat)を提供することができる。具体的に、F9因子が人為的に変形された血友病B疾患ラットが提供されうる。
【0093】
本明細書で提供する血友病B疾患ラットは、ヒトと遺伝的に類似しており、正確な疾病原因メカニズムの研究に有用であり、かつ薬物スクリーニングに最適の動物モデルとして、血友病B疾患に対する治療物質探索、診断法開発などに多様に活用されうるので、血友病B疾患動物モデルとして非常に有用であろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットとを比較分析したグラフであって、(a)は、F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットのAppt(活性化部分トロンボプラスチン時間)を比較分析したグラフを示し、(b)は、F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットのトロンビン時間を比較分析したグラフを示し、(c)は、F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットの血小板数を比較分析したグレプル示す。
図2】同一時間にtail cuttingした後10分間の、F9(+/+)ラット及びF9(-/-)ラットの出血量を比較する写真である。
図3】F9ラットの痛症部位のmorphologyを確認するために、F9ラットの痛症部位のみを切り取ってヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E染色)を遂行し観察した結果を示す写真である。
図4】F9遺伝子がノックアウト(knock-out)されたラットで現れる自然出血(spontaneous bleeding)現象を示す写真である。
図5】F9遺伝子がノックアウト(knock-out)されたラットの足底に現れる症状を示す写真である。
図6】F9遺伝子がノックアウト(knock-out)されたラットの目に現れる症状を示す写真である。
図7】F9遺伝子がノックアウト(knock-out)された幼い子孫ラットに現れる症状を示す写真である。
図8】F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットの大腿部筋肉の組織学的変化を観察するために、ヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E染色)を遂行し観察した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
取り立てて定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって、一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同一方法、及び物質が本発明の実行または試験で使用されうるが、適した方法及び物質が以下に記載される。本明細書に言及された全ての刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、全体が参考として含まれる。さらに、物質、方法、及び実施例は、ただ例示に過ぎず、制限するものと意図されない。
【0096】
用語の定義
形質転換、形質転換細胞及び形質転換動物
「形質転換(Transformation, genetic modification)」は、細胞内動物のゲノム(animal genome)が含んでいるポリヌクレオチド(polynucleotide)を人為的に変形することを意味する。前記変形は、細胞内動物のゲノム(animal genome)が含むポリヌクレオチド(polynucleotide)の一部を除去すること、一部を置換すること、及び動物のゲノム(animal genome)にヌクレオチド(nucleotide)やポリヌクレオチド(polynucleotide)を挿入することを含む。
【0097】
本出願の用語「形質転換」は、細胞内で発現されるタンパク質またはRNAを追加、変更または除去することを含む。
【0098】
「形質転換細胞」は、細胞内動物のゲノムのうち、形質転換された部分を含んでいる細胞を意味する。
【0099】
「形質転換動物」は、少なくとも1つの形質転換細胞を含んでいる動物を意味する。動物F0は、第1形質転換細胞を含んでもよい。前記動物F0は、子孫F1を生産することができる。前記F1及びF1以後子孫が含む1つ以上の細胞は、前記第1形質転換細胞内動物のゲノムのうち、形質転換された部分と同じ塩基配列を有する部分を含む動物のゲノム(animal genome)を含んでもよい。本出願の「形質転換動物」は、前記F0、F1、及びF1以後子孫を含む。
【0100】
疾患モデル動物
「疾患モデル動物」とは、ヒトの疾病と非常に類似した形態の疾病を有する動物を言う。ヒトの疾病研究において、疾患モデル動物が意味を有することは、ヒトと動物との生理的または、遺伝的な類似性による。疾病研究において生体医学疾患モデル動物は、疾病の多様な原因と発病過程及び診断に対する研究用材料を提供し、疾患モデル動物の研究を通じて疾病に係わる遺伝子を把握し、遺伝子間の相互作用を理解させ、開発された新薬候補物質の実際効能及び毒性検査を通じて実用化の可能性を判断する基礎資料が得られる。
【0101】
動物または、実験動物
「動物」または「実験動物」は、ヒト以外の任意の哺乳類、げっ歯類などを言う。前記動物は、胚芽、胎児、新生児及び大人を含む全ての年齢の動物を含む。本明細書において使用するための動物は、例えば、商業用ソースから利用することができる。そのような動物は、実験用動物または、他の動物、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ及びモルモット)、牛、羊、豚、山羊、馬、犬、猫、鳥(例えば、ニワトリ、七面鳥、鴨、ガチョウ)、霊長類(例えば、チンパンジー、猿、赤毛猿)を含むが、それらに限定されない。最も望ましい動物は、ラットである。
【0102】
人工ヌクレアーゼ(Engineered nuclease)
「人工ヌクレアーゼ(Engineered nuclease)」は、任意の遺伝子に結合して特定核酸部位、例えば、特定DNA部位を切断して損傷または破壊することができる人工的ヌクレアーゼ及び/または、それを含むシステムを通称する用語である。「標的化(エンド)ヌクレアーゼ(target-specific (endo)nuclease)または「遺伝子はさみ」とも表現される。前記人工ヌクレアーゼは、配列-特異的エンドヌクレアーゼである。「配列-特異的エンドヌクレアーゼ」または「配列-特異的ヌクレアーゼ」は、別段の具体的な指定がない限り、特定ヌクレオチド配列でポリヌクレオチド、例えば、標的遺伝子を認識して結合し、前記ポリヌクレオチドにおける一本鎖または二本鎖破損を触媒するタンパク質を示す。特定配列を特異的に認識して核酸を切断することができるので、遺伝子編集(Genome editing)技術に非常に有用である。例えば、ZFN(zinc finger protein), TALEN(transcription activator-like effector protein), CRISPR/Cas systemを含むRGEN(RNA-guided endonuclease)などがある。
【0103】
CRISPR-enzyme system
「CRISPR-enzyme system」は、細胞内動物のゲノム上のターゲットサイトまたは、エキソポリヌクレオチドのターゲットサイト(target site)と相互作用してターゲットサイト(target site)の一部とを切断することができるタンパク質を含む複合体を意味する。
【0104】
CRISPR-enzyme systemは、ガイド核酸及びCRISPR酵素を含んでもよい。
【0105】
ノックアウト(knock-out)
「ノックアウト(knock-out)」は、標的遺伝子の機能低下を引き起こす遺伝子配列上の変形を意味する。好ましくは、標的遺伝子の発現が、検出不可能または無意味となる。本発明においては、F9遺伝子のノックアウトは、F9遺伝子の機能低下を意味し、遺伝子が、検出不可能または無意味なレベルで発現される。ノックアウト形質転換体は、F9遺伝子のヘテロ接合性ノックアウトまたはF9遺伝子のホモ接合性ノックアウトを有する形質転換動物であり得る。例えば、ノックアウトは、標的遺伝子変形を増進させる物質に対象動物を曝露すること、標的遺伝子部位での組換えを増進させる酵素を導入すること、または、出生後の標的遺伝子変形について指示すること等によって標的遺伝子変形を起こすことができる条件的ノックアウトを含む。
【0106】
標的遺伝子
「標的遺伝子」は、別段の具体的な指定がない限り、細胞内のポリペプチドをコードする核酸を示す。「標的配列」は、標的遺伝子の一部分を表し、例えば、標的配列は、別段の具体的な指定がない限り、標的遺伝子の1つ以上のエクソン配列、標的遺伝子のイントロン配列もしくは調節配列、または、標的遺伝子の、エクソン配列及びイントロン配列、イントロン配列及び調節配列、エクソン配列及び調節配列、もしくはエクソン配列、イントロン配列及び調節配列の組合せを示す。
【0107】
培養
「培養」は、適切且つ人工的に調節された環境において、生物体または生物体の一部(器官、組織、細胞など)を生育させることを表す。培養のためには、温度、湿度、光、気相の組成(二酸化炭素または酸素の分圧)などが、外的条件として重要である。それら以外に、培地(またはインキュベーター)は、培養される生物体に対して最も直接的な影響を与える。培地は、生物体にとっての直接的な環境であるだけでなく、生存または増殖に必要とされる種々の栄養素の供給源でもある。
【0108】
体外培養
「体外培養」とは、生体と類似する環境条件において、実験室のインキュベーターで培養を実施する一連の実験手順を意味する。当該手順は、細胞などが生体で生育する方法とは異なる。
【0109】
細胞、宿主細胞、または変形された細胞
「細胞」、「宿主細胞」、「変形された細胞」などは、具体的な対象細胞だけでなく、それらの細胞の子孫(progeny)(子孫(offspring)とも称される)またはそれらの細胞の潜在的子孫も意味する。具体的な変形が、突然変異または環境の影響によって後の世代で発生し得るため、それらの子孫は、実際には親細胞と同一ではないかもしれないが、それらは依然として、本明細書に記載される用語及び範囲によって包含される。
【0110】
変形された、または操作された
核酸との関係で記載される用語「変形された」または「操作された」は、本明細書において交換可能な用語として使用され、それらは、遺伝子を構成するヌクレオチド配列に対する人為的変形を意味する。前記変更は、1つ以上のヌクレオチドの、欠失、置換、挿入、逆位などを含んでもよい。変形または操作されたヌクレオチド配列は、核酸またはその発現生成物の発現及び/または機能的活性の変更として示され得る。例えば、変更は、増加、促進、減少、喪失などであり得る。
【0111】
核供与細胞
「核供与細胞」は、核受容体としての受核卵子(nuclear recipient oocyte)に核を伝達する細胞または細胞核を意味する。「卵子(Oocyte)」は、好ましくは、第2次減数分裂中期にある成熟卵子を意味する。本明細書においては、ラットの体細胞または幹細胞を、核供与細胞として使用することができる。
【0112】
体細胞(somatic cell)
「体細胞(somatic cell)」は、多細胞生物を構成する細胞のうち、生殖細胞以外の細胞を意味する。それは、他の細胞にならないように或る特定の目的に特化した分化した細胞、及び、幾つかの他の異なる機能を有する細胞に分化する特性を有する細胞を含む。
【0113】
幹細胞(stem cell)
「幹細胞(stem cell)」は、如何なる組織にも発達することができる細胞を意味する。既存の特徴としては、2種があるが、まず反復分裂して自己再生する自己複製(self-renewal)、そして、環境によって特定の機能を有する細胞に分化することができる多分化能力を有する。
【0114】
核移植(nuclear transfer)
「核移植(nuclear transfer)」は、卵子(oocyte)から核(nucleus)を除去して、前記卵子(oocyte)に別の細胞から得られる供与核(donor nucleus)を導入する技術を意味する。より具体的には、「核移植(nuclear transfer)」は、以下の段階:動物の卵子(oocyte)から核(nucleus)を除去して、他の動物細胞由来の供与核(donor nucleus)を当該動物の卵子に導入する段階;供与核が導入される卵子のリプログラミング(reprogramming)を実施する段階;リプログラミングされた卵子の分化を実施する段階;及び、代理母に分化した卵子を移植する段階;を実施することによって、供与核(donor nucleus)を含む別の動物細胞と同じ遺伝情報を含む動物を得る技術を含む。
【0115】
体細胞核移植(somatic cell nuclear transfer; SCNT)
「体細胞核移植(somatic cell nuclear transfer; SCNT)」は、供与核(donor nucleus)を含む細胞が体細胞(somatic cell)である場合に関して実施される核移植(nuclear transfer)を意味する。前記「体細胞核移植(somatic cell nuclear transfer; SCNT)」は、供与核(donor nucleus)を含む動物細胞が体細胞(somatic cell)である場合、前述した段階を実施することによって体細胞(somatic cell)と同じ遺伝情報を含む動物を得るための技術を含む。
【0116】
形質転換動物を、供与核(donor nucleus)を含む細胞に遺伝子操作のための物質を伝達すること(delivery)によって、作製することができる。例えば、形質転換動物を、遺伝子操作のための物質の体細胞への微細注入(somatic cell microinjection)の後におけるSCNTによって、作製することができる。
【0117】
培地または培地組成物
「培地」または「培地組成物」は、インビトロまたはエクスビボでの細胞などの生育及び増殖などのための混合物を意味する。前記混合物は、細胞の成育及び増殖などに本質的に必要とされる要素を含み、例えば、前記要素は、糖、アミノ酸、各種栄養素、血清、成長因子、ミネラルなどを含む。
【0118】
治療
「治療」は、有益なまたは望ましい臨床的結果を得るための手段を意味する。本明細書の目的のために、前記有益なまたは望ましい臨床的結果は、それらに限定されるものではないが、疾病が検出可能であるかまたは検出不可能であるかに関わらず、症状の緩和、疾病範囲の減少、疾病状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾病進行の遅延または緩慢化、疾病状態の改善、疾病進行の一時的な緩和及び軽減(部分的にまたは全体的に)を含む。「治療」は、治療学的治療及び予防的または予防措置方法の両方を意味する。これらの治療は、予防することができる障害に対する治療だけでなく、前から存在する障害に対して要求される治療も含む。疾病を「緩和(palliating)」させることは、治療が行われない場合と比較して、疾病状態の範囲及び/もしくは望ましくない臨床的兆候が減少すること、並びに/または、疾病の進行の時間的推移(time course)が遅延されるか、延びることを意味する。
【0119】

「約」とは、参照の量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%の大きさで変わる量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0120】
背景知識-血友病及びF9因子
血友病
「血友病B」または、クリスマス病は、F9因子(第9凝固因子、FIX)結合によって発生する遺伝性X連鎖劣性出血性疾患である。血友病Bは、F9因子の量または機能の欠乏に係わる疾病である。
【0121】
この際、血友病症状、すなわち、出血が現れる形態は、中枢神経系外傷、または出血(腰椎穿刺、硬膜外麻酔などを含む)、後腹膜出血、痲酔を含んだ抜歯、ひどい胃腸管出血、上気道及び呼吸器官出血、関節腔内出血及び筋肉出血、表在性血腫、口腔内出血、皮下出血、鼻出血、軽い血尿、過多月經などがある。前記関節腔内出血は、膝、ヒジ、足首、肩、尻(股関節)、手首などに現れることを言う。
【0122】
「自然出血(spontaneous bleeding)」は、自然出血症(spontaneous hemorrhage)または自然内出血(spontaneous internal bleeding)とも称され、それは、外傷、いずれかの特別な要因、または事前の兆候なしに、日常生活において急に発生する出血を意味する。関節及び/または筋肉内における自然出血は、血友病Bにおいて頻繁に現れる。前記自然内出血は、関節、筋肉、胃腸管、脳、腎臓、鼻及び目の1つ以上の領域において起こり得る。これらの自然出血は、合併症を誘発し、血友病において現れる代表的な症状の例は、間接における出血の繰り返しによって引き起こされる関節の変形または間接の炎症を含む。したがって、血友病B治療剤として、自然出血症を予防または治療するための治療剤を開発することも重要である。
【0123】
「外出血(external bleeding)」は、身体の外側部分における目に見える出血、すなわち、切り傷、抜歯、手術部位からの出血が止まらない症状などの外傷によって引き起こされる出血を意味する。
【0124】
F9因子
「Factor9(以下「F9」と称する)」は、血液凝固因子の1つであり、血栓形成に必須なタンパク質である。この際、F9因子は、第9血液凝固因子の代表的特性を有する、ある形態の第9因子分子を意味する。F9因子は、内因性凝固経路において必須の役割を行う血漿中の一本鎖糖蛋白質であり、内因性凝固経路でF9因子の活性化形態である第9a因子(FIXa)が第8a因子、燐脂質及びカルシウムイオンと相互作用して第10因子を第10a因子で置換する「テナーゼ」複合体を形成する。そのような前記F9因子は、Glaドメイン、2個のEGFドメイン(EGF-1及びEGF-2)、AP領域、及びセリンプロテアーゼドメインからなる。
【0125】
「突然変異が起きたF9因子」は、野生型F9因子と異なって自然発生的、または人為的変形(artificially modified or artificially engineered)が起きて、タンパク質機能が低下または喪失したF9因子でもある。
【0126】
「野生型」は、自然で最も普遍的であると見られる遺伝子または任意の正常であると指定された対立遺伝子を意味する。例えば、特定疾患を示さない正常状態の遺伝子形態でもある。
【0127】
「人為的に変形された(artificially modified or artificially engineered)」という用語は、自然状態で起きる存在そのままの状態ではない、人為的に変形を加えた状態を意味する。例えば、人為的に変形を加えた状態は、野生型遺伝子に突然変異を人為的に発生させる変形でもある。以下、非自然的な人為的に変形されたF9遺伝子は、人為的なF9遺伝子という用語と混用して使用されうる。
【0128】
前記F9因子は、例えば、NCBI Accession No. NM_031540で表現されるF9遺伝子でもあるが、それに制限されるものではない。
【0129】
背景知識-遺伝子の人為的な操作または変形手段
遺伝子の人為的な操作または変形手段-概括
遺伝子を人為的に操作するための手段は、人工ヌクレアーゼを用いた技術、アンチセンスRNAを用いた技術、及び突然変異遺伝子またはタンパク質を用いた技術などがある。
【0130】
「人為的に操作されたヌクレアーゼ(programmable nuclease)」は、目的とする遺伝体上の特定位置を認識して切断することができる全ての形態のヌクレアーゼを含む。前記人工ヌクレアーゼは、原核細胞及び/またはヒト細胞をはじめとした動植物細胞(例えば、真核細胞)の遺伝体で特定塩基配列を認識し、二重螺旋切断(double strand break, DSB)を起こすことができる。前記二重螺旋切断は、DNAの二重螺旋を切断し、鈍端(blunt end)または粘着終端(cohesive end)を生成させうる。DSBは、細胞内で相同組換え(homologous recombination)または、非相同末端結合(non-homologous end-joining, NHEJ)メカニズムによって効率的に修復されうるが、この過程で、人工ヌクレアーゼは、1つ以上のヌクレオチドの置換、挿入、及び削除などを起こすことができる酵素である。
【0131】
例えば、遺伝子内の人為的変形を引き起こす人工ヌクレアーゼは、遺伝体上の特定標的配列を認識するドメインである植物病原性遺伝子に由来するTALE(transcription activator-like effector)ドメインと切断ドメインとが融合されたTALEN (transcription activator-like effector nuclease)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)、メガヌクレアーゼ(meganuclease)、CRISPR-enzymeタンパク質またはCpf1タンパク質などでもある。
【0132】
前記人工ヌクレアーゼは、遺伝子全体または、一部の核酸配列と相補的結合を形成することができる。
【0133】
前記人工ヌクレアーゼは、遺伝子全体を除去するか、またはF9遺伝子内の一部核酸配列欠失(deletion)、置換(substitution)、または外部からヌクレオチドを挿入(insertion)させることで、遺伝子を人為的に変形させうる。
【0134】
前記人工ヌクレアーゼは、遺伝子内のエクソン領域、イントロン領域、調節領域、スプライシング部位、5’末端部分または、それと隣接した領域、3’末端部分または、それと隣接した領域の一部核酸配列と相補的結合して、F9遺伝子を人為的に変形させうる。
【0135】
人為的な操作の対象
前記「人為的な操作」の対象は、標的核酸、遺伝子、染色体、またはタンパク質でもある。
【0136】
一例として、前記人工ヌクレアーゼは、遺伝子内標的配列を操作または変形して発現されるタンパク質の量、活性または機能を調節することもでき、または変形されたタンパク質を発現させることができる。
【0137】
例えば、前記人工ヌクレアーゼは、遺伝子内標的配列を操作または変形して、タンパク質発現量を抑制、阻害、減少、促進、または増加させうる。
【0138】
例えば、前記人工ヌクレアーゼは、遺伝子内標的配列を操作または変形して、タンパク質発現活性を抑制、阻害、減少、促進、または増加させうる。
【0139】
例えば、前記人工ヌクレアーゼは、遺伝子内標的配列を操作または変形して、タンパク質の機能を除去、低下、追加、または向上させうる。
【0140】
前記遺伝子操作技術のうち、いずれか1つ以上は、遺伝子の転写と翻訳の段階で作用することができる。
【0141】
例えば、前記遺伝子操作技術のうち、いずれか1つ以上は、転写調節する標的配列を操作または変形して、転写を促進または阻害することができる。
【0142】
例えば、前記遺伝子操作技術のうち、いずれか1つ以上は、タンパク質発現を調節する標的配列を操作または変形して、タンパク質発現を調節することができる。
【0143】
CRISPR-enzyme system(ガイド核酸及びエディタータンパク質)
遺伝子を人為的に操作するための手段として、CRISPR-enzyme systemを使用することができる。
【0144】
前記CRISPR-enzyme systemは、ガイド核酸及び/または、エディタータンパク質で構成される。
【0145】
用語「ガイド核酸」は、標的核酸、遺伝子または染色体を認知し、かつエディタータンパク質と相互作用することができるヌクレオチド配列を意味する。この際、前記ガイド核酸は、標的核酸、遺伝子または染色体内の一部ヌクレオチドと相補的な結合を形成することができる。
【0146】
前記ガイド核酸は、標的DNA特異的ガイドRNA、前記ガイドRNAをコーディングするDNA、またはDNA/RNA混合の形態でもある。
【0147】
前記ガイド核酸は、ガイドRNAでもある。
【0148】
「ガイドRNA」は、生体外(in vitro)転写されたものでもあり、特に、オリゴヌクレオチド二重鎖、または、プラスミド鋳型から転写されたものでもあるが、それに制限されない。
【0149】
前記ガイドRNAの設計及び構成は、当業者に公知されており、韓国公開特許10-2018-0018457に詳細に説明され、前記公開特許全文が本発明の参考資料として本明細書に含まれる。
【0150】
「エディタータンパク質」は、核酸と直接的に結合するか、または直接は結合しないが、相互作用するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を意味する。前記エディタータンパク質について概念的に「人為的に操作されたヌクレアーゼ」またはRGEN(RNA-Guided Endonuclease)とも称する。
【0151】
一具体例において、前記エディタータンパク質は、CRISPR酵素でもある。
【0152】
「CRISPR酵素」は、CRISPR-enzymeシステムの主要タンパク質構成要素であり、ガイドRNAと混合または複合体を形成して標的配列を認知し、DNAを切断することができるヌクレアーゼを言う。
【0153】
CRISPR酵素は、当業者に公知されており、韓国公開特許10-2018-0018457を参考にする。
【0154】
本明細書において、前記CRISPR酵素は、野生型タンパク質に加えて、ガイドRNAと協動して活性化エンドヌクレアーゼ(edonuclease)またはニッカーゼ(nickase)として機能することができる変異体を全て含む概念として使用することができる。活性化エンドヌクレアーゼまたはニッカーゼの場合、標的DNAの切断を導くことができ、ゲノム編集を導くことができる。また、不活性化変異体の場合、転写調節または所望のDNAの分離を、それを使用することによって実現することができる。
【0155】
前記分離されたCasタンパク質は、また細胞内への導入に容易な形態でもある。その例としてCasタンパク質は、細胞浸透ペプチドまたはタンパク質伝達ドメイン(protein transduction domain)と連結されうる。前記タンパク質伝達ドメインは、ポリアルギニンまたはHIV由来のTATタンパク質でもあるが、それに制限されない。細胞浸透ペプチドまたはタンパク質伝達ドメインは、前記記述された例以外にも多様な種類が当業界に公知されているので、当業者は、前記例に制限されず、多様な例を本明細書に適用することができる。
【0156】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、亜鉛イオンの配位を通じてその構造が安定した結合ドメイン内のアミノ酸配列領域である1つ以上のジンクフィンガーを通じて配列-特異的方式でDNAと結合するタンパク質、またはさらに大きなタンパク質内のドメインである。用語「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」は、主にジンクフィンガータンパク質またはZFPと略記される。
【0157】
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease, ZFN)は、標的遺伝子及び切断ドメインまたは切断ハーフドメインの標的部位に結合するように操作されたジンクフィンガータンパク質を含む。前記ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン及びDNA切断ドメインを含む人工的な制限酵素でもある。ここで、ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、選択された配列に結合するように操作されたものでもある。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141; Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340; Isalan et al, (2001) Nature Biotechnol. 19: 656-660; Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637; Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol.が本明細書の参考資料として含まれうる。自然発生したジンクフィンガータンパク質と比較して、操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、新規な結合特異性を有することができる。操作方法は、合理的設計及び多様なタイプの選択を含むが、その限りではない。合理的設計は、例えば、三重(または四重)ヌクレオチド配列、及び個別ジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの利用を含み、この際、各三重または四重のヌクレオチド配列は、特定三重または四重配列に結合するジンクフィンガーの1つ以上の配列と連合される。
【0158】
前記ZFNにおいて標的遺伝子及び標的配列の選択、融合タンパク質またはそれを暗号化するポリヌクレオチドの設計及び構成は、当業者に公知されており、参考資料として米国特許出願公開2005/0064474及び2006/0188987の全門に詳細に説明され、前記公開特許の全門が本発明の参考資料として本明細書に含まれる。また、このような参考文献及び当業界の他の文献に開示されたように、ジンクフィンガードメイン及び/または多重フィンガージンクフィンガータンパク質が任意の適切なリンカー配列、例えば、5個以上のアミノ酸長さのリンカーを含むリンカーによって共に連結されうる。6個以上のアミノ酸長さのリンカー配列の例は、アメリカ登録特許6,479,626;6,903,185;7,153,949を参考にする。ここに説明されたタンパク質は、タンパク質の各ジンクフィンガーの間に適切なリンカーの任意の組合わせを含んでもよい。
【0159】
前記ZFNのようなヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性部分である切断ドメイン及び/または、切断ハーフドメインを含む。
【0160】
一例において、前記切断ドメインは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインとは、互いに異なるヌクレアーゼに由来する切断ドメイン、すなわち、異種性切断ドメインでもある。
【0161】
さらに他の例において、前記切断ハーフドメインは、切断活性のために二量体化を必要とする任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来する融合タンパク質でもある。融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、一般に2個の融合タンパク質が切断に必要でもある。または、2個の切断ハーフドメインを含む単一タンパク質が用いられる。
【0162】
2個の切断ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来してもよく、または各切断ハーフドメインが互いに異なるエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来してもよい。また、2個の融合タンパク質の標的部位は、2個の融合タンパク質とその各標的部位の結合によって切断ハーフドメインが互いに対して空間的に配向されて位置されることにより、切断ハーフドメインが、例えば、二量体化によって機能性切断ドメインを形成可能なように配置されることが望ましい。
【0163】
TALENシステム
「TALEN」は、DNAのターゲット領域を認識及び切断することができるヌクレアーゼを示す。前記TALENは、TALEドメイン及びヌクレオチド切断ドメインを含む融合タンパク質である。本明細書において「TALエフェクタヌクレアーゼ」及び「TALEN」と混用して使用されうる。TALエフェクタは、キサントモナス(Xanthomonas)バクテリアが多様な植物種に感染されるとき、これらのタイプ分泌システムを通じて分泌されるタンパク質と知られている。前記タンパク質は、宿主植物内のプロモーター配列と結合してバクテリア感染に一助となる植物遺伝子の発現を活性化させうる。前記タンパク質は、34個以下の多様な数のアミノ酸を繰り返しで構成された中心反復ドメインを通じて植物DNA配列を認識する。
【0164】
「TALEドメイン」または「TALE」は、1つ以上のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。この反復ドメインは、TALEとその同族標的DNA配列の結合に係わる。単一「反復ユニット(「反復部」とも称する)は、典型的に33-35アミノ酸長さであり、自然発生したTALEタンパク質内の他のTALE反復配列と少なくとも一部配列相同性を示す。前記TALEドメインは、1つ以上のTALE-反復モジュールを通じて配列-特異的方式でヌクレオチドに結合するタンパク質ドメインである。
【0165】
前記TALEDNA結合ドメインは、少なくとも1つのTALE-反復モジュール、さらに具体的に1~30個のTALE-反復モジュールを含むが、それに限定されない。本明細書において、「TALEDNA結合ドメイン」、「TALEドメイン」または「TALEエフェクタドメイン」と混用して使用されうる。
【0166】
前記TALEDNA結合ドメインは、TALE-反復モジュールの半分を含んでもよい。前記TALEに係わって国際公開特許WO/2012/093833号または、アメリカ公開特許2013-0217131号に開示された内容全文が本明細書に参考資料として含まれる。
【0167】
メガヌクレアーゼ
前記メガヌクレアーゼは、これに制限されるものではないが、自然発生メガヌクレアーゼでもあり、これらは、15-40個塩基対切断部位を認識するが、これは、通常4個のファミリに分類される:LAGLIDADGファミリ、GIY-YIGファミリ、His-Cystボックスファミリ、及びHNHファミリ。例示的なメガヌクレアーゼは、I-SceI, I-CeuI, PI-PspI, PI-SceI, I-SceIV, I-CsmI, I-PanI, I-SceII, I-PpoI, I-SceIII, I-CreI, I-TevI, I-TevII 及び I-TevIIIを含む。
【0168】
前記人為的に操作されたメガヌクレアーゼは、新規な結合特異性を有するように遺伝的に操作されたメガヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼに由来する自然発生した、または人為的に操作されたDNA結合ドメインは、異種性ヌクレアーゼ(例えば、FokI)に由来する切断ドメインと連結されて遺伝子内の1つ以上の遺伝子組換えを起こすことで、ノックダウン(knock-down)または、ノックアウト(knock-out)させうる。
【0169】
RNAi利用
「アンチセンスRNA」を用いた遺伝子操作技術は、RNA干渉(RNA interference, RNA silencing)を用いて、small RNA(sRNAs)がmRNAを妨害したり、低下させたりし、場合によっては、破壊してタンパク質合成情報が中間で伝達されないようにする。アンチセンスRNAを用いて遺伝情報の発現を制御することができる。
【0170】
例えば、遺伝子の発現は、アンチセンスRNA技術を用いて弱化または破壊することができる。
【0171】
任意の具現例において、前記アンチセンスRNAを用いた遺伝子操作技術は、small interfering RNA(以下、「siRNA」と称する)、short hairpin RNA(以下、「shRNA」と称する)及びmicroRNA(以下、「miRNA」と称する)のうち、いずれか1つ以上でもある。
【0172】
前記アンチセンスRNAは、遺伝子の一部核酸配列と相補的結合を形成し、遺伝子タンパク質発現を調節することができる。
【0173】
例えば、遺伝子内のエクソン領域、イントロン領域、調節領域、スプライシング部位、5’末端部分または、それと隣接した領域、3’末端部分または、それと隣接した領域の一部核酸配列と相補的結合を形成することができる。
【0174】
その他
その他、直接的な遺伝子の操作ではない、前記遺伝子が発現する因子を操作するために、dominant negative mutant, ribozyme, intracellular antibody, peptide または small moleculeを使用することができる。
【0175】
一例において、前記dominant negative mutantを細胞内で発現させ、正常な機能が不可能な因子を発現させうる。
【0176】
または、他の例として、peptideまたはsmall moleculeなどを用いて、目標因子が細胞内で正常に機能できないように誘導することができる。
【0177】
背景知識-遺伝子操作用物質の伝達(delivery)
遺伝子操作用物質の伝達-概括
以下、前述した遺伝子の人為的な操作手段、すなわち、遺伝子操作用物質を遺伝子組換えの対象(例えば、細胞など)に伝達する方法について詳細に説明する。
【0178】
遺伝子操作用物質の伝達(delivery)1-ベクター
遺伝子操作用物質は、naked核酸ベクター(naked nucleic acid vector)、非ウイルス性ベクター(non-viral vector)、またはウイルス性ベクター(viral vector)を用いて伝達されうる。
【0179】
前記ベクターは、ウイルスまたは、非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)でもある。
【0180】
用語「ベクター」は、細胞に遺伝子配列を伝達することができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」及び「遺伝子伝達ベクター」は、目的の遺伝子の発現を指示し、標的細胞に遺伝子配列を伝達することができる任意の核酸構造を意味する。
【0181】
前記ベクターは、細胞内に導入して遺伝子を人為的に変形させるための手段として、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクターなど公知の発現ベクターを使用し、ベクターは、DNA組換え技術を用いた任意の公知された方法によって当業者が容易に製造することができる。
【0182】
「遺伝子伝達ベクター」は、目的の遺伝子の発現を指示し、標的細胞に遺伝子配列を伝達することができる任意の核酸構造を意味する。
【0183】
したがって、前記用語は、クローニングベクター、発現ビヒクル、及びベクターの統合(integration)を含む。
【0184】
前記ベクターは、組換え発現ベクターでもある。例えば、遺伝子操作用物質を含むベクターでもある。
【0185】
前記遺伝子を人為的に変形させるための組換え発現ベクターは、プロモーター(promoter)を含んでもよい。前記プロモーターは、当分野のプロモーターを利用することができる。
【0186】
「プロモーター」は、転写の開始及び速度を制御するためのヌクレオチド配列領域である調節配列を意味する。これらのプロモーターは、RNAポリメラーゼ及びその他の調節タンパク質などである転写因子を結合することによるヌクレオチド配列の特異的な転写の開始を可能とする遺伝子要素を含んでもよい。「有効に配置された」、「有効に結合された」、「調節下に」及び「転写調節下に」などの用語は、プロモーターが、配列の開始及び発現を調節するヌクレオチド配列に対して正しい活性化位置で及び/または正しい配向で配置されることを意味する。
【0187】
例えば、前記プロモーターは、標的領域内の内因性プロモーターまたは外因性プロモーターでもある。前記プロモーターは、RNA重合酵素IIまたはRNA重合酵素IIIによって認識されるプロモーターでもある。前記プロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、対象特異的プロモーター、ウイルスプロモーターまたは、非ウイルスプロモーターでもある。
【0188】
前記プロモーターは、制御領域(すなわち、ガイドRNA、CRISPR酵素)によって適したプロモーターを利用することができる。例えば、ガイドRNAのために有用なプロモーターは、H1、EF-1a、tRNAまたはU6プロモーターでもある。例えば、エディタータンパク質のために有用なプロモーターは、CMV、EF-1a、EFS、MSCV、PGK、またはCAGプロモーターでもある。
【0189】
前記遺伝子を人為的に変形させるための組換え発現ベクターは、レポーター(reporter)遺伝子を含み、前記レポート遺伝子には、レポーターシステムを含んでもよい。
【0190】
また、前記遺伝子を人為的に変形させるための組換え発現ベクターは、選択マーカーを含み、前記選択マーカーには、カナマイシン抵抗性遺伝子、ネオマイシン抵抗性遺伝子のような薬剤耐性遺伝子、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質のような蛍光タンパク質などが含まれるが、それらに制限されない。
【0191】
また、前記遺伝子を人為的に変形させるための組換え発現ベクターは、タンパク質分離精製または確認用タグ配列を追加的に含んでもよい。タグ配列の例としては、GFP, GST(Glutathione S-transferase)-tag, HA, His-tag, Myc-tag, T7-tagなどがあるが、前記例によって本発明のタグ配列が制限されるものではない。
【0192】
また、前記遺伝子を人為的に変形させるための組換え発現ベクターは、その他に複製起源、エンハンサー、任意の必須リボゾーム結合部位、コザック共通(kozak consensus)配列、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及び受容体部位、転写終決部位、5’フランキング非転写配列、インテイン及び/または、2A配列などを含む。
【0193】
遺伝子操作用物質の伝達(delivery)2-ウイルス性伝達
前記遺伝子操作技術は、ウイルスを用いて細胞内に伝達されうる。
【0194】
前記ウイルス性伝達(viral delivery)は、RNA基盤ウイルス性ベクター(RNA-based viral vector)を利用することができる。前記RNA基盤ウイルス性ベクター(RNA-based viral vector)は、 オンコレトロウイルスベクター(Oncoretroviral vector)、レンチウイルスベクター(Lentiviral vector)、及びヒト泡沫状ウイルスベクター(Human foamy viral vector)を含んでもよいが、それらに制限されない。
【0195】
前記ウイルス性伝達(viral delivery)は、DNA基盤ウイルス性ベクター(DNA-based viral vector)を利用することができる。前記DNA基盤ウイルス性ベクター(DNA-based viral vector)は、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus)、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barrvirus)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、及びポックスウイルス(Poxvirus)を含んでもよいが、それらに制限されない。
【0196】
ウイルス性伝達(viral delivery)は、大きいサイズ(large size)の遺伝子の伝達(delivery)効率が良好であるという利点を有する。
【0197】
前記遺伝子操作用物質は、1つ以上のベクターを用いて対象内に伝達されうる。
【0198】
例えば、前記遺伝子操作用物質がガイドRNA及びエディタータンパク質である場合、前記エディタータンパク質とガイドRNAは、互いに異なるベクターに暗号化されて伝達されうる。
【0199】
前記遺伝子操作用物質が2以上のベクターを用いてゲノム内に伝達されるとき、同一種類または互いに異なる種類のベクターを用いて伝達されうる。
【0200】
例えば、ガイド核酸をプラスミドを、用いて伝達することができ、エディタータンパク質は、ウイルスベクターを用いて伝達することができる。
【0201】
遺伝子操作用物質の伝達(delivery)3-非ウイルス性伝達
前記遺伝子操作用物質は、非ウイルスを用いて細胞内に伝達されうる。
【0202】
前記非ウイルス性伝達(non-viral delivery)は、naked核酸ベクター(naked nucleic acid vector)を利用することができる。前記naked核酸ベクターは、環状核酸ベクター(circular nucleic acid vector)または線状核酸ベクター(linear nucleic acid vector)でもあるが、それに制限されない。
【0203】
前記非ウイルス性伝達は、非ウイルス性ベクターを利用することができる。前記非ウイルス性ベクターは、人工染色体(artificial chromosome)、リポソーム(liposome)、ポリマー(polymer)、脂質-高分子混成体(lipid-polymer hybrid)、無機ナノ粒子(inorganic nanoparticle)、及び有機ナノ粒子(organic nanoparticle)を含んでもよいが、それに制限されない。
【0204】
前記非ウイルス性伝達(non-viral delivery)は、微細注入(microinjection)、遺伝子銃(gene gun)、電気穿孔法(electroporation)、ソノポレーション(sonoporation)、フォトポレーション(photoporation)、マグネトフェクション(magnetofection)、及びヒドロポレーション(hydroporation)を含んでもよいが、それらに制限されない。
【0205】
「微細注入(microinjection)」は、生命体の器官、操作、細胞、または細胞内小器官に物質を注射することを意味する。前記物質は、化学物質(chemical compound)、ポリヌクレオチド(polynucleotide)、またはポリペプチド(polypeptide)を含んでもよい。
【0206】
前記微細注入は、生殖細胞微細注入(gamete microinjection)、胚芽微細注入(embryo microinjection)及び体細胞微細注入(somatic cell microinjection)などを含んでもよい。
【0207】
前記胚芽微細注入(embryo microinjection)は、胚芽にポリヌクレオチドを含む物質を微細注入することを意味し、胚芽(embryo)にポリヌクレオチドを含む物質を微細注入した後、分化段階などを経て形質転換動物を得る技術を含む。
【0208】
前記体細胞微細注入(somatic cell microinjection)は、体細胞にポリヌクレオチドを含む物質を微細注入することを意味する。前記体細胞に微細注入した後、核移植方法によって形質転換動物が得られる。
【0209】
例えば、前記遺伝子操作用物質がガイドRNA及びエディタータンパク質である場合、前記ガイドRNA-エディタータンパク質複合体は、微細注入(microinjection)方法によって細胞内に伝達されうる。すなわち、リボヌクレオプロテイン(ribonucleoprotein, RNP)の形態に伝達されうる。前記ガイドRNA-エディタータンパク質複合体は、ガイドRNAとCRISPR酵素の相互作用を通じて形成された複合体を意味する。
【0210】
従来技術の限界点
従来より、血友病B動物モデルとして、短いライフサイクル及び短い繁殖サイクルを有し、容易に維持することができ、費用の観点で比較的安価であるマウス(mice)が、疾病モデル用動物として主に使用されてきた。一方、マウス(mice)を用いる動物モデルは、血友病によって引き起こされる幾つかの症状に関する医学的意見を提供するには有用ではなく、したがって、類似した疾病誘発メカニズム及び血友病患者の症状を有する動物モデルを開発するための研究が続けられている。
【0211】
特に、既存の血友病B疾患動物モデルとしてマウス(mice)は、血友病Bの代表的症状の1つである関節、筋肉など組織内の特発性出血(spontaneous bleeding)が現れず、血友病B薬物開発及び生産などに疾病動物モデルとして利用するには力不足である。また、犬のような他の哺乳類動物種は、げっ歯類と比較して、繁殖及び費用側面で動物モデルとして活用に限界点がある。
【0212】
これにより、ヒトと遺伝的類似性、繁殖、費用及び疾患動物モデルとして活用するのにさらに適した動物モデル生産に対する必要性が急増しており、現在までラット(rat)を用いた血友病B動物モデルは開発されていない。
【0213】
血友病B疾患ラットモデル
血友病B疾患ラットモデル-概括
本明細書では、血友病B疾患モデル用動物として、血友病B疾患ラットを提供しようとする。前記血友病B疾患ラットは、1)人為的に変形されたF9遺伝子を含み、2)これにより人為的に変形されたF9因子を有しており、3)出血症状(例えば、持続的出血及び/または自然出血)が現れるということに特徴がある。これにより、前記血友病B疾患ラットは、血友病B疾患に対する適切な動物モデルにもなるという長所を有する。
【0214】
血友病B疾患ラットモデルの特徴1-人為的に変形されたF9遺伝子を含み
本出願で開示する一態様は、ゲノム内の人為的変形が起きた血友病B疾患ラット(rat)に関するものである。前記ゲノム内の人為的変形が起きた血友病B疾患ラットは、F9遺伝子内の一部または全部が人為的に操作及び/または変形されたF9遺伝子を含む。
【0215】
例えば、前記血友病B疾患ラットモデルは、F9因子の発現または機能の下向き調節(downregulation)または喪失を有し得る。具体的には、F9遺伝子がノックダウン(knock-down)またはノックアウト(knock-out)され得るが、それらに制限されない。
【0216】
以下、「人為的に変形されたF9因子またはそれを暗号化する核酸を含まれるラット」は、「人為的変形が起きたラット」と混用して使用されうる。以下、「人為的に変形されたF9遺伝子」について詳細に説明する。
【0217】
人為的に変形されたF9遺伝子1-F9遺伝子の変形態様
一具現例において、前記人為的に変形されたF9遺伝子は、エクソン(exon)、イントロン(intron)、調節領域(regulatory region)、5’末端またはその隣接部位、3’末端またはその隣接部位、またはスプライシング部位(splicing site)などに人為的変形を含む。
【0218】
一例において、前記人為的に変形されたF9遺伝子は、エクソン第1領域またはエクソン第2領域内の一領域に1つ以上の人為的変形を含んでもよい。
【0219】
他の例において、前記人為的に変形されたF9遺伝子は、調節領域(エンハンサー、プロモーター、3’UTR及び/またはポリアデニル化信号の非暗号配列)内の一領域に1つ以上の人為的変形を含んでもよい。
【0220】
さらに他の例として、前記人為的に変形されたF9遺伝子は、5’末端またはその隣接部位、または3’末端またはその隣接部位内の一領域に1つ以上の人為的変形を含んでもよい。
【0221】
さらに他の例として、前記人為的に変形されたF9遺伝子は、スプライシング部位(splicing site)の一領域に1つ以上の人為的変形を含んでもよい。
【0222】
前記F9遺伝子の変形される一領域(「ターゲット部位」)は、前記遺伝子のうち、約1bp、約2bp、約3bp、約4bp、約5bp、約6bp、約7bp、約8bp、約9bp、約10bp、約11bp、約12bp、約13bp、約14bp、約15bp、約16bp、約17bp、約18bp、約19bp、約20bp、約21bp、約22bp、約23bp、約24bp、約25bp、約26bp、約27bp、約28bp、約29bp、約30bp、約40bpまたは約50bpの連続する塩基配列部位でもある。前記F9遺伝子のターゲット部位は、前記遺伝子のうち、直前文章から選択された2つの数値範囲内の長さを有する連続する塩基配列部位でもある。前記F9遺伝子のターゲット部位は、前記遺伝子のうち、以前文章から選択された1つの数値以上の長さを有する連続する塩基配列部位でもある。
【0223】
前記F9遺伝子核酸配列変形は、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、またはゲノムへの置換を含むが、それらに限定されない。
【0224】
F9遺伝子内核酸配列の1つ以上のヌクレオチドの挿入、
F9遺伝子内核酸配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失、
F9遺伝子内核酸配列の1つ以上のヌクレオチドの置換、
F9遺伝子内核酸配列またはその部分のノックアウト(knock-out)、
F9遺伝子内核酸配列またはその部分のノックダウン(knock-down)などを含んでもよい。
【0225】
例えば、
前記F9遺伝子の変形は、次の1つ以上によって誘導されたものでもある:
1)F9遺伝子の全部または、一部の欠失、例えば、F9遺伝子の1bp以上のヌクレオチド、例えば、1~50個、1~30個、1~27個、1~25個、1~23個、1~20個、1~15個、1~10個、1~5個、1~3個、または1個のヌクレオチドの欠失;
2)F9遺伝子の1bp以上のヌクレオチド、例えば、1~30個、1~27個、1~25個、1~23個、1~20個、1~15個、1~10個、1~5個、1~3個、または1個のヌクレオチドの置換;及び
3)外来遺伝子由来の1つ以上のヌクレオチドの、F9遺伝子の任意位置への挿入。例えば、当該ヌクレオチドは、1~30個、1~27個、1~25個、1~23個、1~20個、1~15個、1~10個、1~5個、1~3個のヌクレオチド、または1個のヌクレオチドである(ヌクレオチドは、各々独立して、A、T、C及びGから選択される)。
【0226】
前記エクソン(exon)またはイントロン(intron)内の1つ以上の核酸配列変更の結果として、前記F9遺伝子の転写量減少または喪失、前記F9因子発現の減少または喪失、または、前記F9因子の機能及び/または活性が低下ないし不活性化されうる。
【0227】
前記調節領域(regulatory region)、スプライシングサイト(splicing site)、5’末端またはその隣接部位、3’末端内1つ以上の核酸配列変更の結果として、前記F9遺伝子の転写量減少または喪失、前記F9因子発現の減少または喪失、またはF9因子の機能及び/または活性が低下ないし不活性化されうる。
【0228】
別の例として、ゲノム内の人為的変形が起きた血友病B疾患ラットは、F9遺伝子が完全に除去されたものであり得る。すなわち、血友病B疾患ラットは、人為的操作または変形によって全F9遺伝子が除去された変形を含んでもよい。
【0229】
一具現例として、前記F9遺伝子は、その両末端の一部核酸配列及び/または両末端の隣接部位が同時または順次に切断されるか、及び/または除去されうる。さらに他の具現例として、前記F9遺伝子は、いずれも除去されうる。
【0230】
人為的に変形されたF9遺伝子2-人為的に変形されたF9因子
前記ゲノム内の人為的変形は、F9因子の突然変異を誘発することができる。すなわち、血友病Bラットは、人為的に変形されたF9因子を含んでもよい。
【0231】
一具体例において、前記人為的に変形されたF9因子は、1つ以上のアミノ酸配列が変更されたF9因子でもある。
【0232】
前記F9因子内の1つ以上のアミノ酸は、類似した性質を有するアミノ酸に変更されうる。
【0233】
例えば、前記F9ポリペプチド内の疎水性アミノ酸は、他の疎水性アミノ酸にも変更される。疎水性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、アルギニンまたはヒスチジンのうち、1つである。
【0234】
さらに他の例として、前記F9ポリペプチド内の酸性アミノ酸は、他の酸性アミノ酸に変更されうる。酸性アミノ酸は、グルタミン酸またはアスパラギン酸のうち、1つである。
【0235】
さらに他の例として、前記F9ポリペプチド内の極性アミノ酸は、他の極性アミノ酸に変更されうる。極性アミノ酸は、セリン、スレオニン、アスパラギンまたはグルタミンのうち、1つである。
【0236】
前記F9因子内の1つ以上のアミノ酸は、互いに異なる性質を有するアミノ酸に変更されうる。
【0237】
例えば、前記F9ポリペプチド内の疎水性アミノ酸は、極性アミノ酸であるセリン、スレオニン、アスパラギン及びグルタミンのうち、いずれか1つのアミノ酸に変更されうる。
【0238】
さらに他の例として、前記F9ポリペプチド内の疎水性アミノ酸は、酸性アミノ酸であるグルタミン酸またはアスパラギン酸のうち、いずれか1つのアミノ酸に変更されうる。
【0239】
さらに他の例として、前記F9ポリペプチド内の疎水性アミノ酸は、塩基性アミノ酸であるアルギニン及びヒスチジンのうち、いずれか1つのアミノ酸に変更されうる。
【0240】
さらに他の例として、前記F9ポリペプチド内の極性アミノ酸は、疎水性アミノ酸であるグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンのうち、いずれか1つ以上のアミノ酸に変更されうる。
【0241】
さらに他の例として、前記F9ポリペプチド内の酸性アミノ酸は、塩基性アミノ酸であるアルギニンまたはヒスチジンに変更されうる。
【0242】
さらに他の例として、前記F9ポリペプチド内の塩基性アミノ酸は、酸性アミノ酸であるグルタミン酸またはアスパラギン酸に変更されうる。
【0243】
すなわち、前記アミノ酸の変更及び/または置換によって、タンパク質発現量が調節されうる。
【0244】
または、前記アミノ酸の変更及び/または置換は、タンパク質の構造、機能に影響を与えることができる。
【0245】
したがって、一態様では、前記F9因子の人為的変形によって、前記血友病Bラットは、全く発現しないF9因子、その発現が抑制されたF9因子、及び/またはその発現レべルが減少したF9因子を含んでもよい。別の態様では、前記血友病Bラットは、機能が低下したまたは機能を喪失したF9因子を含んでもよい。
【0246】
血友病B疾患ラットモデルの特徴2-出血症状が発生する
前記人為的変形が起きたラットは、出血症状(持続的出血、自然出血)が現れる。一具現例において、前記人為的変形が起きたラットは、自然出血(spontaneous bleeding)及び/または外出血(external bleeding)が発生しうる。任意の具現例において、前記人為的変形が起きたラットは、組織内の自然出血(spontaneous bleeding)を含む。
【0247】
さらに他の具現例において、前記人為的変形が起きたラットは、
前記組織内の自然出血による炎症;及び/または
前記組織内の自然出血による腫れを含み、
例えば、前記組織は、関節、筋肉及び目でもある。
【0248】
特に、前記人為的変形が起きたラットは、マウス(mice)には現れない自然出血(spontaneous bleeding)が現れうる。
【0249】
血友病B疾患ラットモデルの長所1-ラット自体の長所
ラット(rat)は、ヒトと遺伝的類似性が高く、マウスの動物モデルとしての長所をいずれも保有している。例えば、ラット(rat)は、栄養や代謝生理的側面で他の種類の動物よりもヒトと類似性が高く、筋肉と臓器などの重量比がヒトと類似しており、内分泌、生殖などの側面で性周期の判定がマウスよりも便利でさらに規則的であり、月經周期面でもヒトと類似性が高い。また、前記ラットは、マウスと比較して、成長期は短く、繁殖能は、ほぼ類似しつつも、サイズはさらに大きいので、外科的手術操作がさらに容易である。また、前記ラットは、試料採取時に、さらに多量を採取し、哺乳類に現れる疾病に対する症状がマウスと比較して、ヒトとさらに類似して現れ、信頼性ある疾病動物モデルである。
【0250】
血友病B疾患ラットモデルの長所2-血友病B疾患モデルとしての長所
各種出血症状(例えば、自然出血症状)は、血友病B疾患の代表的な症状の1つである。特に、膝関節などに自然出血が発生する場合、関節炎などが発生する問題があって治療剤開発の需要が急増している。治療剤開発過程には、当該疾患に対する適切な動物モデルを使用することが必須である。しかし、従来、一般的に使用された血友病B疾患動物モデルであるマウス(mice)モデルは、前記各種出血症状が現れず、効果的な動物モデルにはならなかった。また、犬のような哺乳類動物種は、ヒトとさらに類似したモデル動物を製造可能であるという長所はあるが、繁殖が容易ではなく、実験費用が過度にかかるために、動物モデルとして使用し難いという問題点があった。本明細書で提供する前記血友病B疾患ラットモデルは、1)血友病B疾患の代表的な症状である各種出血症状(例えば、自然出血)が発生するという点を特徴とし、血友病B疾患に対する動物モデルとして適し、2)繁殖が容易であり、費用が少なくかかるなど、前記ラット自体の長所のために効率的な動物モデルとして使用可能であるという長所がある。したがって、前記血友病B疾患ラット(rat)モデルは、既存マウスモデルの限界を克服した動物モデルであって、治療剤開発及び生産において適合するだけではなく、毒性及び安定性評価に優れた動物モデルである。
【0251】
ラット種類-例示
ラット(rat)は、ネズミ科(muridae)、クマネズミ属 (Rattus)に属し、ハツカネズミ属(Mus)に該当するマウスとは区別される。このようなラットは、ウィスター系ラット(wistar rat)、ロングエバンスラット(long-Evans rat)、スプラーグドーリーラット(Sprague Dawley rat)、ズッカーラット(Zucker rat)、バイオブリーディングラット(Biobreeding rat)、ブラットルボローラット(brattleboro rat)、ヘアレスラット(Hairless rat)などがある。
【0252】
本明細書によって開示されるラットは、当業者が適切に選択して使用可能な公知された任意の種類を使用することができる。
【0253】
人為的に変形されたF9遺伝子を含む細胞
人為的に変形されたF9遺伝子を含む細胞-概括
本出願で開示する一態様は、人為的に変形されたF9因子及び/またはそれを暗号化する遺伝子を含む細胞に関するものである。前記細胞は、前記血友病B疾患ラットモデルを製造するために使用されうる。前記細胞は、目的によって、前記血友病B疾患ラットモデルとは別途に独立して使用されうる。
【0254】
対象細胞-例示
前記細胞は、形質転換された幹細胞、胚性細胞、または体細胞でもある。
【0255】
任意の具体例において、前記細胞は、卵丘細胞、表皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、ケラチノサイト細胞、造血細胞、メラニン細胞、軟骨細胞、マクロファージ、単球、筋肉細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、胎児由来細胞、胎盤細胞、胚性細胞などであり得る。また、多様な起源組織に由来する成体幹細胞を使用することができる。例えば、脂肪組織、子宮、骨髄、筋肉、胎盤、臍帶血または皮膚(上皮)などの組織由来の幹細胞を使用することができる。一般に、非ヒト宿主胚は、2-細胞段階、4-細胞段階、4-細胞段階、8-細胞段階、16-細胞段階、32-細胞段階、もしくは64-細胞段階の胚、または桑実胚もしくは胚盤胞を含む胚であり得る。
【0256】
さらに他の任意の具体例において、前記細胞は、肝(hepatocyte)細胞でもある。
【0257】
前記胚性細胞、体細胞または幹細胞は、当該技術分野に周知の従来方法を使用する外科用標本用の試料または生検試料を製造する方法によって、得ることができる。
【0258】
形質転換細胞
「形質転換細胞」は、細胞内のゲノム中の形質転換された部分を含む体細胞または胚性細胞であり得る。以下、形質転換された体細胞または胚性細胞は、「形質転換細胞」という用語と交換可能な用語として使用され得る。前記形質転換細胞は、形質転換された部分を含む第1細胞からの第1細胞分裂からの細胞分裂によって得られる第2細胞を含む。この場合、細胞分裂によって得られる第2細胞は、第1細胞の形質転換された部分と同じヌクレオチド配列を有する部分を含む。
【0259】
前記形質転換細胞は、人為的に変形されたF9遺伝子を含む。人為的に変形されたF9遺伝子は、前述した通りである。
【0260】
一例において、前記形質転換細胞は、F9遺伝子内の1つ以上の領域にヌクレオチドの挿入、欠失または置換が起きた遺伝子を含んでもよい。
【0261】
他の実施例において、前記F9遺伝子がノックダウン(knock-down)及び/または、ノックアウト(knock-out)された細胞でもある。
【0262】
前記形質転換細胞は、F9因子が全くないか、または発現量が減少した細胞でもある。
【0263】
前記形質転換細胞は、F9因子の機能が喪失されるか、または低下した細胞でもある。
【0264】
前記形質転換細胞は、F9因子が欠乏した細胞でもある。
【0265】
遺伝子操作用物質を含む
前記形質転換細胞は、F9因子をターゲットとする遺伝子操作用物質、すなわち、人工ヌクレアーゼ、アンチセンスRNA、dominant negative mutant F9、またはリボザイムなどを含んでもよい。
【0266】
例えば、前記形質転換細胞は、CRISPR-Cas system, ZFN, TALENまたはメガヌクレアーゼを含むか、またはそれらを暗号化する核酸を含む。
【0267】
または、例えば、前記形質転換細胞は、small interfering RNA(siRNA)、short hairpin RNA(shRNA)またはmicroRNAを含むか、またはそれらを暗号化する核酸を含む。
【0268】
または、例えば、前記形質転換細胞は、F9因子をターゲットとするdominant negative mutant F9、またはF9因子を暗号化する核酸に対するリボザイム(ribozyme)を含むか、またはそれらを暗号化する核酸を含む。
【0269】
前記遺伝子操作用物質は、細胞内に多様な形態に含まれる。例えば、遺伝子操作用物質を暗号化する核酸を含んでいるベクターの形態でもある。
【0270】
細胞コロニー形成可能
前記形質転換細胞は、細胞コロニーを形成することができる。前記細胞コロニーは、単一細胞から培養された単一細胞でもある。
【0271】
この際、前記細胞コロニーは、F9因子がいずれもノックダウンまたはノックアウトされた細胞によってのみ形成されたコロニーである。
【0272】
または、細胞コロニーは、ノックダウンまたはノックアウトされていない正常F9因子を含む細胞を含むキメリック(chimeric)細胞コロニーでもある。
【0273】
血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物
血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物-概括
本明細書は、F9遺伝子操作用組成物を提供しようとする。本出願によって開示される内容の一態様は、F9遺伝子を人為的に操作または変形するための組成物に関するものである。
【0274】
血友病B疾患ラットモデル製造用組成物-例示
前記F9遺伝子を操作または変形するための組成物は、前記人工ヌクレアーゼまたはそれを暗号化する核酸を含んでもよい。例えば、人工ヌクレアーゼは、TALEN、ZFN、メガヌクレアーゼ、またはCRISPR-enzymeシステムのうち、いずれか1つ以上でもある。
【0275】
前記F9遺伝子操作用組成物は、F9遺伝子内の一部核酸配列と相補的結合を形成することができるアンチセンスRNA、例えば、siRNAまたはshRNAなどを含んでもよい。
【0276】
前記F9因子またはそれを暗号化する遺伝子を操作または変形するための組成物は、dominant negative mutant F9因子またはRibozymeなどを含んでもよい。
【0277】
または、本出願によって開示される内容の他の具現例において前記組成物は、F9タンパク質機能を抑制するか、または低下させるdominant negative mutant、intracellular antibody、peptide及びsmall moleculeのうち、いずれか1つ以上を含んでもよい。
【0278】
前記組成物は、1つ以上のガイドRNA及びCas9酵素またはその複合体、アンチセンスRNA及びdominant negative mutant F9因子のうち、いずれか1つ以上を混合して含んでもよい。
【0279】
前記組成物は、発現カセットの形態で提供されうる。
【0280】
CRISPR-Cas systemを含む組成物1-概括
本出願によって開示される内容の一具現例は、F9遺伝子操作用組成物として、CRISPR-Cas systemを含む組成物に関するものである。
【0281】
本出願によって開示される一具体例において、前記組成物は、
ガイドRNAまたはそれを暗号化するDNA;及び
エディタータンパク質またはそれを暗号化するDNAを含み、
前記エディタータンパク質は、CRISPR酵素であり、これについては、前述した通りである。
【0282】
一具現例において、前記CRISPR酵素は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9タンパク質でもある。
【0283】
一具現例において、前記ガイドRNAは、F9遺伝子内標的配列と相同性があるか、相補的な結合を形成することができる。
【0284】
一旦ガイドRNA-エディタータンパク質複合体がF9遺伝子またはF9遺伝子のヌクレオチド配列に結合すれば、F9遺伝子またはF9遺伝子のヌクレオチド配列は、ガイドRNA-エディタータンパク質複合体のエディタータンパク質によって、切断または変形されうる。
【0285】
CRISPR-Cas systemを含む組成物2-ガイドRNAの標的配列
CRISPR Cas systemを含む組成物は、ガイドRNAを含む。前記ガイドRNAは、標的配列と相同性を有するか、または、前記ガイドRNAは、前記標的配列と相補的結合を形成することができる配列を有する。以下、標的配列について詳細に説明する。
【0286】
「標的配列」は、標的遺伝子または標的核酸内に存在するヌクレオチド配列を意味し、具体的には、標的配列は、標的遺伝子または標的核酸内の標的領域内の部分ヌクレオチド配列である。ここで、「標的領域」は、標的遺伝子または核酸内におけるガイド核酸-エディタータンパク質によって変形され得る領域を意味する。
【0287】
以下、標的配列とは、2つのヌクレオチド配列情報をいずれも意味する用語として使用されうる。例えば、標的遺伝子の場合、標的配列は、標的遺伝子DNAのtranscribed strandの配列情報を意味するか、またはnon-transcribed strandのヌクレオチド配列情報を意味する。
【0288】
一実施例において、前記標的遺伝子は、F9遺伝子でもある。
【0289】
任意の具現例において、
前記F9遺伝子内標的配列は、F9遺伝子内のエクソン領域に位置する連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0290】
その場合、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチドの配列、15~35個のヌクレオチドの配列、20~35個のヌクレオチドの配列、35~35個のヌクレオチドの配列、または30~35個のヌクレオチドの配列であり得る。
【0291】
または、前記標的配列は、10~15個のヌクレオチド配列、15~20個のヌクレオチド配列、20~25個のヌクレオチド配列、25~30個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列であり得る。
【0292】
前記F9遺伝子内標的配列は、F9遺伝子内のプロモーター領域に位置した連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0293】
その場合、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチドの配列、15~35個のヌクレオチドの配列、20~35個のヌクレオチドの配列、35~35個のヌクレオチドの配列、または30~35個のヌクレオチドの配列であり得る。
【0294】
または、前記標的配列は、10~15個のヌクレオチド配列、15~20個のヌクレオチド配列、20~25個のヌクレオチド配列、25~30個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0295】
前記F9遺伝子内標的配列は、F9遺伝子内のイントロン領域に位置した連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0296】
その場合、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチドの配列、15~35個のヌクレオチドの配列、20~35個のヌクレオチドの配列、35~35個のヌクレオチドの配列、または30~35個のヌクレオチドの配列であり得る。
【0297】
または、前記標的配列は、10~15個のヌクレオチド配列、15~20個のヌクレオチド配列、20~25個のヌクレオチド配列、25~30個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0298】
前記F9遺伝子内標的配列は、F9遺伝子内のエンハンサー(enhancer)領域に位置した連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0299】
その場合、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチドの配列、15~35個のヌクレオチドの配列、20~35個のヌクレオチドの配列、35~35個のヌクレオチドの配列、または30~35個のヌクレオチドの配列であり得る。
【0300】
または、前記標的配列は、10~15個のヌクレオチド配列、15~20個のヌクレオチド配列、20~25個のヌクレオチド配列、25~30個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0301】
前記F9遺伝子内標的配列は、F9遺伝子内のプロモーター、エンハンサー、3’UTR、ポリアデニル(polyA)、またはその混合部分に位置した連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0302】
この際、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチド配列、15~35個のヌクレオチド配列、20~35個のヌクレオチド配列、25~35個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0303】
または、前記標的配列は、10~15個のヌクレオチド配列、15~20個のヌクレオチド配列、20~25個のヌクレオチド配列、25~30個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0304】
前記F9遺伝子内標的配列は、F9遺伝子内のエクソン、イントロンまたはその混合部分に位置した連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0305】
この際、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチド配列、15~35個のヌクレオチド配列、20~35個のヌクレオチド配列、25~35個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0306】
または、前記標的配列は、10~15個のヌクレオチド配列、15~20個のヌクレオチド配列、20~25個のヌクレオチド配列、25~30個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0307】
前記F9遺伝子内標的配列は、F9遺伝子内突然変異部分(例えば、野生型遺伝子と異なる部分)を含むか、または近接した連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0308】
前記「突然変異(mutation)」は、遺伝子が有するDNAの塩基配列に変化が起きたものであって、遺伝子が有するDNAの塩基配列内で1つ以上のヌクレオチドが削除(deletion)、挿入(insertion)、または置換(substitution)されて変形されたものをいずれも含む。この際、遺伝子内突然変異が起きた配列を「突然変異配列(mutation sequence)」と指称する。また、突然変異は、遺伝子内突然変異によって遺伝子が暗号化するタンパク質の一部アミノ酸が削除(deletion)、挿入(insertion)、または置換(substitution)されて変形されたものをいずれも含む。
【0309】
この際、前記1つ以上の突然変異は、自然発生的に誘発された突然変異でもある。
【0310】
この際、前記1つ以上の突然変異は、対象タンパク質発現に影響を与えない同義突然変異(synonymous mutation)でもある。
【0311】
例えば、前記対象が単一核酸塩基多型現象依存遺伝子である場合、1つ以上の突然変異は、特定疾病(癌、糖尿病、高血圧など)に対する薬物反応性、副作用、または薬物に対する耐性に影響を与えない突然変異でもある。
【0312】
この際、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチド配列、15~35個のヌクレオチド配列、20~35個のヌクレオチド配列、25~35個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0313】
または、前記標的配列は、10~15個のヌクレオチド配列、15~20個のヌクレオチド配列、20~25個のヌクレオチド配列、25~30個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0314】
望ましくは、本明細書によって開示される標的配列は、F9遺伝子内のエクソン領域またはエクソン、イントロンまたはその混合部分に位置する連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0315】
この際、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチド配列、15~35個のヌクレオチド配列、20~35個のヌクレオチド配列、25~35個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0316】
または、前記標的配列は、10~15個のヌクレオチド配列、15~20個のヌクレオチド配列、20~25個のヌクレオチド配列、25~30個のヌクレオチド配列、または30~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0317】
前記F9遺伝子内標的配列は、F9遺伝子の核酸配列内のPAM(proto-spacer-adjacent Motif)配列の5’末端及び/または3’末端に隣接した連続する10~35個のヌクレオチド配列でもある。
【0318】
この際、前記PAM配列は、例えば、下記の配列のうち、1以上でもある(5’から3’方向に記載する)。
NG(Nは、A、T、CまたはGである);
NGG(Nは、A、T、C、またはGである);
NNNNRYAC(Nは、それぞれ独立してA、T、C、またはGであり、Rは、AまたはGであり、Yは、CまたはTである);
NNAGAAW(Nは、それぞれ独立してA、T、C、またはGであり、Wは、AまたはTである);
NNNNGATT(Nは、それぞれ独立してA、T、C、またはGである);
NNGRR(T)(Nは、それぞれ独立してA、T、C、またはGであり、Rは、AまたはGである);及び
TTN(Nは、A、T、C、またはGである)。
【0319】
一実施例において、前記PAM配列は、NGG(Nは、A、T、C、またはGである)でもある。
【0320】
一実施例において、前記標的配列は、配列番号1~6からなる群から選択された1つ以上の配列でもある。一実施例において、前記ガイドRNAは、前記配列番号1~6からなる群から選択された1つ以上の標的配列と相同性があるか、これと相補的に結合可能な配列を含んでもよい。
【0321】
CRISPR-Cas systemを含む組成物3-ガイドRNA全体配列
前記ガイドRNAは、Cas9タンパク質と複合体を形成することができる配列部分、及び、前述した標的配列と相同性を有する配列または標的配列と相補的結合を形成することが可能な配列をさらに含む。前記配列部分は、Cas9タンパク質の由来によって異なり得る。一例において、前記CRISPR-Cas systemがストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9タンパク質であるエディタータンパク質を含む場合、前記ガイドRNAは、標的配列及び5’-GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC-3’(配列番号27)で表現される配列部分を含んでもよい。一例において、前記CRISPR-Cas systemがカンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCas9タンパク質であるエディタータンパク質を含む場合、前記ガイドRNAは、標的配列及び5’-GUUUUAGUCCCUGAAAAGGGACUAAAAUAAAGAGUUUGCGGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU-3’(配列番号28)で表現される配列部分を含んでもよい。一例において、前記ガイドRNAは、配列番号21~26からなる群から選択される配列を含んでもよい。
【0322】
CRISPR-Cas systemを含む組成物4-エディタータンパク質
CRISPR-Cas systemを含む組成物は、エディタータンパク質を含む。エディタータンパク質の機能については前述した。一態様において、前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9タンパク質、カンピロバクター ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCas9タンパク質、ストレプトコッカスサーモフィルス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9タンパク質、ストレプトコッカスアウレウス(Streptococcus aureus)由来のCas9タンパク質、及びナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)由来のCas9タンパク質からなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましい態様において、前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9タンパク質であり得る。
【0323】
CRISPR-Cas systemを含む組成物5-ガイド核酸-エディタータンパク質複合体
ガイド核酸及びエディタータンパク質に係わる説明は、前述した通りである。
【0324】
前記F9遺伝子と相補的結合を形成するガイド核酸とエディタータンパク質は、ガイド核酸-エディタータンパク質複合体を形成することができる。
【0325】
前記ガイド核酸-エディタータンパク質複合体は、細胞外で形成されうる。
【0326】
前記ガイド核酸-エディタータンパク質複合体は、細胞内の細胞質で形成されうる。
【0327】
前記ガイド核酸-エディタータンパク質複合体は、細胞内の核内で形成されうる。
【0328】
前記ガイド核酸-エディタータンパク質複合体において、エディタータンパク質は、F9遺伝子または核酸配列内に存在するPAMを認識することができる。
【0329】
前記ガイド核酸-エディタータンパク質複合体においてガイド核酸は、F9遺伝子または核酸配列に相補的な結合が可能である。
【0330】
前記ガイド核酸-エディタータンパク質複合体がF9遺伝子または核酸配列に結合すれば、前記ガイド核酸-エディタータンパク質複合体のエディタータンパク質によってF9遺伝子または核酸配列は、切断または変形されうる。
【0331】
CRISPR-Cas systemを含む組成物6-CRISPR-Cas systemの形態
前記CRISPR-Casシステムは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、または非ベクターの形態で組成物に含まれうる。
【0332】
一実施例において、前記CRISPR-Cas systemは、ガイドRNA及びCRISPR酵素が複合体(complex)を形成するRNP(ribonucleoprotein)の形態でも存在する。
【0333】
他の実施例において、前記CRISPR-Casシステムは、核酸の形態でベクターに含まれうる。
【0334】
前記ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターでもある。
【0335】
前記CRISPR-Casシステムは、1つのベクターに含まれうる。
【0336】
前記CRISPR-Casシステムは、2つ以上のベクターに含まれうる。この際、前記2つのベクターは、同種のベクターでもあり、互いに異なる種類のベクターでもある。
【0337】
人為的に変形されたF9遺伝子を含むラット細胞製造方法
人為的に変形されたF9遺伝子を含むラット細胞製造方法-概括
本出願の一態様は、F9遺伝子内の人為的変形を含むラット(rat)細胞を製造する方法に関するものである。一実施例として、前記製造方法は、F9遺伝子操作用組成物をラット細胞に接触させることを含む。また、前記製造方法は、形質転換された細胞を培養すること;及び/または前記形質転換された細胞を選別することを追加的に含んでもよい。
【0338】
F9遺伝子操作用組成物を接触させること
前記製造方法は、ラット(rat)細胞のF9遺伝子を人為的に変形させることを重要な構成要素で含む。この際、前述したF9遺伝子操作用組成物を利用することができる。一具現例において、前記製造方法は、前記ラット細胞にF9遺伝子操作用組成物を接触させることを含んでもよい。一具現例において、前記ラット細胞は、体細胞、胚性細胞、または胚性幹細胞でもある。一具現例として、前記接触させることは、電気穿孔法(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノパーティクル(nanoparticles)、及びPTD(Protein translocation domain)融合タンパク質方法のうち、選択される1以上の方法によっても行われる。一具現例として、前記接触させることは、生体外(in vitro)で遂行されうる。
【0339】
形質転換された細胞の培養
前記遺伝子操作技術を用いて形質転換された細胞は、コロニーを形成することができる。形質転換された細胞を含む細胞コロニーは、前述した通りである。
【0340】
前記F9遺伝子を人為的に変形させるための組換え発現ベクターで形質転換されたラット由来細胞は、当業界に公知された方法によって増殖及び培養されうる。
【0341】
適切な培地は、動物細胞、及び特にげっ歯類動物細胞の培養のために開発されるか、または動物細胞成長に必要な適切な成分、例えば、同化性炭素、窒素及び/または微量栄養素と共に、実験室内で製造される任意の利用可能な培地を使用することができる。
【0342】
前記培地は、動物細胞の生育に適切な任意の基本培地であり得る。非制限的な例として、一般的に培養に用いられる基本培地は、MEM(Minimal Essential Medium)、DMEM(Dulbecco modified Eagle Medium)、RPMI(Roswell Park Memorial Institute Medium)、及びK-SFM(Keratinocyte Serum Free Medium)であり得る。加えて、当該技術分野において使用される任意の培地を、制限なしに使用することができる。好ましくは、培地は、α-MEM培地(GIBCO)、K-SFM培地、DMEM培地(Welgene) 、MCDB131培地(Welgene) 、IMEM培地(GIBCO)、DMEM/F12培地、PCM培地、M199/F12(mixture)(GIBCO) 、及びMSC培地(Chemicon)からなる群から選択され得る。
【0343】
このような基本培地に、炭素、窒素及び微量栄養素の同化性供給源、非制限的な例として、血清供給源、成長因子、アミノ酸、抗生剤、ビタミン、還元剤、及び/または糖供給源が添加されうる。
【0344】
当業界で通常の知識を有する者が適した培地を選択または組み合わせて公知の方法で適切に培養可能であるということは、自明であろう。また、この分野の通常の知識に基づいて適した培養環境、時間、温度などの条件を調節しながら培養可能であるということは、自明である。
【0345】
形質転換細胞の選別
本出願の他の態様は、F9ターゲット遺伝子操作技術を含む形質転換細胞を選別する段階を含んでもよい。
【0346】
この際、前記形質転換細胞は、薬剤耐性遺伝子(antibiotic resistance gene)、抗原-抗体反応、蛍光タンパク質(fluroscent protein)及び表面マーカー遺伝子(surface marker gene)のうち、いずれか1つ以上を用いて形質転換細胞をコロニーから選別することができる。
【0347】
例えば、F9ターゲット遺伝子操作技術、すなわち、例えば、ガイドRNA及びCas9タンパク質を含む細胞は、蛍光信号(fluorescence signal)を測定することができる。したがって、前記遺伝子操作技術を含まない細胞と区別することができる。
【0348】
血友病B疾患ラットモデル製造方法
血友病B疾患ラットモデル製造方法-概括
本明細書では、血友病B疾患ラットモデルを製造する方法を提供しようとする。一実施例において、前記製造方法は、CRISPR/Cas systemを用いたF9遺伝子組換えラット製造方法でもある。さらに他の実施例において、前記製造方法は、胚性細胞移植を用いたF9遺伝子組換えラット製造方法でもある。さらに他の実施例において、前記製造方法は、核供与細胞を用いたF9遺伝子組換えラット製造方法でもある。
【0349】
胚性細胞移植を用いたF9遺伝子組換えラット製造方法
本明細書で開示する一態様は、胚性細胞を移植する方法を用いたF9遺伝子組換えラット生産方法に関するものである。
【0350】
前記方法は、
(a)ラットの組織から分離した胚性細胞を前記F9遺伝子操作用組成物と接触させる段階;
(b)代理母内の胚芽を移植する段階;及び
(d)代理母は、人為的に変形されたF9遺伝子を含むラットを姙娠する段階;を含んでもよい。
【0351】
各段階に係わる通常の技術内容は、当業界に公知されている従来の胚芽移植方法を参照して理解できるであろう。
【0352】
また、前記F9遺伝子操作用組成物と接触させることは、当業界に公知されている通常の方法を利用することができる。
【0353】
例えば、インビトロで形成されたガイドRNA-Cas9複合体を含むF9遺伝子を操作するための組成物を、電気穿孔法(electroporation)または微細注入法(microinjection)などの既知の方法を用いて、胚性細胞と接触させることができる。
【0354】
他の例として、前記F9遺伝子操作用組成物は、1つ以上のベクターを用いて細胞内導入し、細胞内で複合体を形成してF9遺伝子の標的配列に結合することができる。
【0355】
核供与細胞を用いたF9遺伝子組換えラット製造方法
本明細書において開示される一態様は、組換えベクターが導入された核供与細胞由来の核の脱核卵子(denucleated oocyte)への移植及びラット子孫の作成を含む方法による、F9遺伝子が人為的にノックアウトされた血友病B疾患モデルとしての形質転換ラットの製造方法に関し、並びに、当該態様は、前記方法によって製造される血友病B疾患モデルとしてのラットにも関する。
【0356】
任意の具体例において、前記F9遺伝子を人為的にノックアウトさせた形質転換細胞株を用いて体細胞核移植方法(somatic cell nuclear transfer, SCNT)によって血友病B疾患ラットを生産する。
【0357】
前記血友病B疾患ラット生産方法は、
(a)ラットの組織から分離した体細胞または幹細胞を培養することを含む、核供与細胞を製造する段階;
(b)前記F9遺伝子操作用組成物を前記核供与細胞に接触させる段階;
(c)ラットの卵子から核を除去して脱核卵子を製造する段階;
(d)前記(c)段階の脱核卵子に(b)段階の核供与細胞を微細注入し、それらを融合させる段階;
(e)前記(d)段階で融合された卵子を活性化させる段階;及び
(f)前記活性化された卵子を代理母の卵管に移植する段階;を含んでもよい。
【0358】
各段階に係わる通常の技術内容は、当業界に公知されている従来の体細胞核移植技術を用いたクローン動物の製造方法などを参照して理解できるであろう。
【0359】
血友病B疾患研究用及び/または治療用動物モデル
本明細書では、既存になかった新規な血友病B疾患ラット(rat)を用いて、血友病B疾患研究用及び/または治療用動物モデルを提供しようとする。
【0360】
前記血友病B疾患ラットは、血友病B疾患に係わる原因及び/またはメカニズム究明、疾病に対する症状、治療物質探索などに利用されうる。
【0361】
前記血友病B動物モデルラットは、ヒトの血友病B患者と類似した病理メカニズムを示すところ、ヒト血友病B治療研究のための動物モデルとして非常に有用である。
【0362】
本出願の一具現例として、既存になかった新規な血友病B疾患ラット(rat)を用いて、血友病B治療用薬物スクリーニング用動物モデルを提供することができる。または、さらに具体的に、血友病B自然出血予防または治療用薬物スクリーニング用動物モデルを提供することができる。
【0363】
本出願のラットモデルは、膝関節、筋肉、目などにおける自然出血、及び自然出血による腫脹または炎症、という症状を示すことができる。この症状は、F9遺伝子を人為的に変形させることによって、及びしたがってF9タンパク質の発現の減少若しくは喪失によって、並びに/またはF9タンパク質の機能低下もしくは機能喪失によって、引き起こすことができる。
【0364】
したがって、前記血友病B疾患ラットは、血友病Bに対する治療剤すなわち薬物をスクリーニングするための動物モデルとして非常に有用である。すなわち、前記血友病B疾患ラットは、血友病Bが誘発されるかどうかを確認することができ、及び、現在開発中の治療剤を当該ラットに投与することによって、血友病Bのメカニズムの究明、治療物質の探索、診断法の開発などの様々な用途にラットを使用することができる。
【0365】
一具現例において、血友病Bに対する薬物スクリーニング方法は、
(a)血友病b疾患モデルラットに血友病B軽減、予防または治療のための候補物質を投与する段階;及び
(b)候補物質投与後、候補物質を投与していない対照群と比較及び分析する段階;を含んでもよい。
【0366】
候補物質は、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、醗酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、及び動物組織抽出液などからなる群から選択されたいずれか1つ以上であることが望ましいが、それらに限定されない。
【0367】
前記化合物は、新規化合物であるか、あるいは既に公知された化合物でもある。この際、前記化合物は、塩を形成していてもよい。
【0368】
前記(b)段階において、血友病B疾患ラットに対する候補物質の投与は、注射(injection)、輸血(transfusion)、挿入(implantation)または移植(transplantation)のような任意の便利な方式によって遂行される。投与経路は、皮下(subcutaneously)、皮内(intradermaliy)、腫瘍内(intratumorally)、節内(intranodally)、骨髄内(intramedullary)、筋肉内(intramuscularly)、静脈内(intravenous)、リンパ液内(intralymphatic)、腹膜内(intraperitoneally)などから選択されるが、それらに制限されず、適切な投与量、投与方法または候補物質の特性によってラット内の候補物質が投与されうる。
【0369】
これら実施例は、ただ本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されるものではないということは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0370】
1.gRNAデザイン
CRISPR RGEN Tools((http://www.rgenome.net; Park et al, Bioinformatics 31:4014-4016, 2015)を用いて、rat F9遺伝子(ENSRNOG00000003430.7)のExon1とExon2に該当する6個の「NGG」PAMを考慮したguide RNAをデザインした。デザインされたguide RNAは、Rat遺伝体上でOn-target部位を除き、1 baseまたは2 base mismatchがないということを考慮した。
【0371】
【表1】
【0372】
これら6個のguide RNAによって発生するindelをembryo poolで確認するために使用されたdeep-sequencing primerは、次の通りである。
【0373】
【表2】
【0374】
2. gRNAの構築及び合成
RNPによる伝達システムのためにsgRNAは、Phusion媒介重合によって生成された2つの部分的(Forward: GAAATTAATACGACTCACTATAGCGTCCAAAGAGATATAACTCAGGGTTTTAGAGCTAGAAATAGC
Reverse primer: AAAAAAAGCACCGACTCGGTGCCACTTTTTCAAGTTGATAACGGACTAGCCTTATTTTAACTTGCTATTTCTAGCTCTAAAAC)オリゴヌクレオチドのアニーリングによる鋳型の生成後、T7 RNA重合酵素によって転写させた。転写されたsgRNAは、分光分析(spectrometry)を用いて精製及び定量した。
【0375】
合成されたsgRNAのシーケンスは、次の通りである。
【0376】
【表3】
【0377】
【表4】
【0378】
3.F9-/-rat確立(選別)
表1のRat_F9_Exon2_gRNA4を用いてF9遺伝子Exon2領域にインデル(indel)の形成有無を確認した。
【0379】
【表5】
【0380】
4.形質転換されたF9-/-rat生産
CRISPR/Cas9を用いてF9遺伝子をノックアウトした受精卵を代理母に移植して産子を生産した。
【0381】
以下、さらに具体的に説明する。
【0382】
4-1.ホルモン投与及び受精卵採卵
受精卵は、Day-3、午前11時に採卵用5週齢メスにPMSG-大成微生物(15IU)を投与して黄体形成ホルモンを画一化させた。Day-1、午前11時に採卵用メスにhCG-大成微生物(15IU)を投与して排卵日を画一化させた後、WTオスと交配させた。翌日(Day-0)午前9時に膣栓(plug)を確認した後、卵巣-卵管-子宮が連結された部分を取り、慎重に卵管のみを分離して集めた。
【0383】
採卵30分前、予めインキュベーターにM2培地-SIGMA(ウォッシング用培地)とmR1ECM-ark-resource(ラット用培養培地-100μlドロップ4個を作ってパラフィンオイルで覆う)を入れて準備しておいた後、ラットを痲酔した後、30秒以内にM2培地を取り出し、顕微鏡を見て卵管膨大部を裂けて受精卵を取り出した。その後、M2培地-100μlのドロップを4個作って順番にウォッシングを行い、mR1ECM培地-100μlのドロップを4個作って順番にウォッシングを行った。ウォッシング済の受精卵を迅速に準備しておいたmR1ECM培地-100μl(パラフィンオイルで覆った)インキュベーターに入れて安定期を与えた。
【0384】
4-2.形質導入(Transfection)
インキュベーターで受精卵を取り出し、mR1ECM培地100μl4個のドロップでウォッシングした後、M2培地100μl 4個のドロップでウォッシングを行った。その後、sgRNA:Cas9 protein/8を受精卵に電気穿孔(BEX-Gene editor1)するために、0μg:320μgの比率で混ぜて、15分間のインキュベーション後に使用した。電気穿孔は、総1回に40個の1セルを使用し、Pd: 30 V, Pd on: 3.00 ms, Pd off: 97.0 ms, Pd cycle: 7にした。
【0385】
受精卵を電気穿孔した後、電気穿孔済の受精卵にM2培地100μl4個のドロップでウォッシングした後、mR1ECM培地100μl4個のドロップでウォッシングを行う。予めインキュベーター内に準備したmR1ECM培地に入れた後、培養する。(ラット用培養培地-100μlドロップ4個を作ってパラフィンオイルで覆ったもの)繰り返して進める。全ての電気穿孔が終了すれば、mR1ECM培地に入れた受精卵を一日間培養する。
【0386】
4-3.受精卵移植
Day-4、午前11時に7~8週齢メスにGnRH-MSD animal Health(21 μg)を注射して代理母を画一化させた。Day1に代理母の膣栓を確認した後、受精卵移植が可能な代理母を選んだ後、Day-0に予め精管手術したオスと代理母とを交配させた。一日間培養した受精卵から2-cellに育った受精卵のみを選んで代理母の卵管膨大部に移植した。姙娠した代理母から産子が生まれれば、耳を切ってgenotypingを実施して動物の形質を確認する。
【0387】
5.F9ラット標的ディープシーケンシング(genotype分析)
姙娠した代理母から産子が生まれ、離乳の時期(3週齢)にネズミの耳を切ってgDNAを抽出して動物の形質を確認する。オンターゲット部分を用いて形質導入したネズミの耳でPhusion polymerase taq(New England BioLabs)を用いてPCRで増幅した。その後、前記PCR増幅物でMi-Seq(lllumina)を用いてPaired-endディープシーケンシングした。ディープシーケンシング結果は、オンラインCas-Analyzer tool(www.rgenome.net)を用いて分析した。
【0388】
PCR primer
Forward: ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTCGTCCAAAGAGATATAACTCAGG
Reverse: GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTTCGTGCTTCTTCAAAACTGC
【0389】
6.F9ラット血液学分析
F9の形質分析した後、10~13週齢(F1世代)ネズミを痲酔した後、腹帯動脈で採血した。その後、SST-BD(serum separated tube)チューブを用いて血液を入れ、常温で1時間インキュベーションした後、セントリフューズを用いて3000rpm、15分回して血清を分離した。分離した血清を緑十字医療財団に依頼して血液凝固血清学検査を実施した。内因系、外因系に関与する凝固因子(F-viii, ix, xi, xii)の機能を評価するスクリーニング検査であるPTT, Prothrombin timeと線維素原活性度を直接測定する方法で患者の血小板欠乏血漿にthrombinを加えて線維素原(fibrinogen)が線維素(fibrin)に転換されて凝固が向上するまでの時間を測定する方法であるTT(Thrombin time)を分析した(図1(b)参照)。16週齢(F1世代)のネズミでは、末梢血液内に存在する類型成分の一種として、止血メカニズムに関与する因子plateletを分析した。
【0390】
7.F9ラット組織学分析
F9ラットの大腿部筋肉の組織学的変化を観察するために、ヘマトキシリン(hematoxylin)及びエオシン(Eosin)染色(H&E染色)が遂行された。Formalin-fixed paraffin-embedded組織セクションがキシレン(xylene)によってパラフィンが除去(deparaffinized)された後、無水エタノール(absolute alcohol)で再水和(rehydrated)された。水道水で簡単に洗浄した後、前記組織セクションは、Harris hematoxylinで5分間染色された。スライドを5分間水道水で濯ぎ、0.2%アンモニア水で30秒間染色された。水道水で5分間洗浄した後、前記スライドは、Y Eosinに2分30秒の間浸漬した。その後、前記スライドは、95%アルコールで2回脱水し、キシレン(xylene)で2回洗浄した。最後に、カバースリップをキシレン系ミディアム(xylene-based medium)で装着して観察した。これを観察した結果が図8に図示されている。
【0391】
8.F9ラット組織病理学分析
H&E stainingを通じて痛症部位のmorphologyを確認するために、F9ラットの痛症部位のみを切り取り、4%Paraformaldehydeに入れて固定及びウォッシング段階を経た。その後、パラフィンブラックを作製し、カットティング(10μm)してスライドに付ける。まず、rehydration段階として、パラフィンに付いている組織をxyleneを用いてパラフィンは溶かして、染色可能な条件を作った。staining段階において、Harris heamatoxylinで核を染色し、Eosinでcytoplasmを染色した。Harris heamatoxylinの場合、青色を帯び、Eosinの場合、赤色を示す。最後の段階として、dehydrationして染色を相変わらず保持させうる。
【0392】
9.F9ラット出血分析
16週齢(F1世代)の対照群、F9+/+、F9-/-を用いて出血分析を行った(図2参照)。まず、動物を痲酔した後、血を受けることができる15mlのチューブをしっぽの下に固定させ、出てくる血を受けるようにした。同時間に三匹のネズミのしっぽを切って秒時計を用いて時間測定を行った。また、ビデオ撮影を行ってリアルタイムで示される出血量を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0393】
本出願では、血友病B疾患ラット(rat)及びその製造方法を提供しようとし、ヒト血友病B疾患に対するモデル動物として、ラット(rat)動物モデルは、血友病B疾病症状、さらに具体的に、自然出血(spontaneous bleeding)現象を十分に示し、これは、今後の治療剤開発に重要な道具を提供するであろう。
【0394】
また、本出願では、血友病B疾患ラット(rat)を製造するために、血友病B疾患ラットモデル製造用F9遺伝子組換え組成物を提供しようとし、これは、前記血友病B疾患ラットの製造に使用されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2022528266000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
本明細書では、下記を含む血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物を提供する。ガイドRNAまたはそれを暗号化するDNA;及びエディタータンパク質またはそれを暗号化するDNA、この際、前記ガイドRNAは、配列番号21~26からなる群から選択された配列を有し、前記ガイドRNAは、F9遺伝子配列の全部または、一部を標的配列とすることを特徴とし、前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するCas9タンパク質を含み、前記ガイドRNAと前記エディタータンパク質は、ガイドRNA-エディタータンパク質複合体を形成して前記F9遺伝子に人為的な変形を起こすことを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
図1】F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットとを比較分析したグラフであって、(a)は、F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットのaPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を比較分析したグラフを示し、(b)は、F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットのトロンビン時間を比較分析したグラフを示し、(c)は、F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットの血小板数を比較分析したグレプル示す。
図2】同一時間にtail cuttingした後10分間の、F9(+/+)ラット及びF9(-/-)ラットの出血量を比較する写真である。
図3】F9ラットの痛症部位のmorphologyを確認するために、F9ラットの痛症部位のみを切り取ってヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E染色)を遂行し観察した結果を示す写真である。
図4】F9遺伝子がノックアウト(knock-out)されたラットで現れる自然出血(spontaneous bleeding)現象を示す写真である。
図5】F9遺伝子がノックアウト(knock-out)されたラットの足底に現れる症状を示す写真である。
図6】F9遺伝子がノックアウト(knock-out)されたラットの目に現れる症状を示す写真である。
図7】F9遺伝子がノックアウト(knock-out)された幼い子孫ラットに現れる症状を示す写真である。
図8】F9(+/+)ラットとF9(-/-)ラットの大腿部筋肉の組織学的変化を観察するために、ヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E染色)を遂行し観察した結果を示す写真である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0290
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0290】
その場合、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチドの配列、15~35個のヌクレオチドの配列、20~35個のヌクレオチドの配列、25~35個のヌクレオチドの配列、または30~35個のヌクレオチドの配列であり得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0293
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0293】
その場合、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチドの配列、15~35個のヌクレオチドの配列、20~35個のヌクレオチドの配列、25~35個のヌクレオチドの配列、または30~35個のヌクレオチドの配列であり得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0296
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0296】
その場合、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチドの配列、15~35個のヌクレオチドの配列、20~35個のヌクレオチドの配列、25~35個のヌクレオチドの配列、または30~35個のヌクレオチドの配列であり得る。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0299
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0299】
その場合、前記標的配列は、10~35個のヌクレオチドの配列、15~35個のヌクレオチドの配列、20~35個のヌクレオチドの配列、25~35個のヌクレオチドの配列、または30~35個のヌクレオチドの配列であり得る。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0322
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0322】
CRISPR-Cas systemを含む組成物4-エディタータンパク質
CRISPR-Cas systemを含む組成物は、エディタータンパク質を含む。エディタータンパク質の機能については前述した。一態様において、前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9タンパク質、カンピロバクター ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCas9タンパク質、ストレプトコッカスサーモフィルス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9タンパク質、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)由来のCas9タンパク質、及びナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)由来のCas9タンパク質、並びにCpf1タンパク質からなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましい態様において、前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9タンパク質であり得る。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0377
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0377】
【表4】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2022528266000001.app
【手続補正10】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
F9遺伝子内の人為的変形を含む血友病B疾患モデルラット(rat)であって、前記F9遺伝子内の人為的変形は、
F9遺伝子の全部または一部の配列の欠失(deletion);
F9遺伝子の全部または一の配列における挿入(insertion);
F9遺伝子の全部または一の配列の挿入及び欠失;並びに
F9遺伝子内の逆
ちの1つ以上の変形を含み、
前記F9遺伝子の一部の配列は、1bp~100bpのヌクレオチドであり、
前記血友病B疾患ラットは、F9遺伝子内の人為的変形によって、
F9因子発現量減少;
F9因子発現抑制;
F9因子機能低下;及び
F9因子機能喪
うちの1つ以上を含み、
前記血友病B疾患ラット(rat)は、
組織内の自然出血(spontaneous bleeding);
自然出血による組織内の炎症;及び
自然出血による組織内の腫
ちの1つ以上の現象を示す、血友病B疾患モデルラット(rat)。
【請求項2】
前記人為的変形
F9遺伝子内のエクソン領域(exon region);
F9遺伝子内のイントロン領域(intron region);
F9遺伝子内のプロモーター領域;
F9遺伝子内のエンハンサー領域;
F9遺伝子内の5’末端またはその隣接領域;
F9遺伝子内の3’末端またはその隣接領域;及び
F9遺伝子内のスプライシング部位(splicing site)
うち1つ以上の領域において形成されることを特徴とする請求項1に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)。
【請求項3】
前記F9遺伝子内の人為的変形は、F9遺伝子のエクソン第1領域またはエクソン第2領域で発生することを特徴とする、請求項1に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)。
【請求項4】
下記を含む血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物:
ガイドRNAまたは前記ガイドRNAを暗号化するDNA;及び
エディタータンパク質または前記エディタータンパク質を暗号化するDNA、
この際、前記ガイドRNAは、配列番号1~6からなる群から選択されるF9遺伝子の標的配列によって暗号化されるRNA配列及び前記エディタータンパク質と複合体を形成することができるRNA配列を含み
前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するCas9タンパク質を含み、
前記ガイドRNA及び前記エディタータンパク質は、ガイドRNA-エディタータンパク質複合体を形成して前記F9遺伝子に人為的な変形を起こすことを特徴とする。
【請求項5】
前記ガイドRNA及び前記エディタータンパク質が複合体を形成したRNP(ribonucleoprotein)形態で存在する、請求項4に記載のF9遺伝子操作用組成物。
【請求項6】
前記ガイドRNAを暗号化するDNA及び前記エディタータンパク質を暗号化するDNAがベクターの形態で存在する、請求項4に記載のF9遺伝子操作用組成物。
【請求項7】
前記ベクター、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであることを特徴とする、請求項に記載のF9遺伝子操作用組成物。
【請求項8】
前記ウイルスベクター、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス及び単純ヘルペスウイルスからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、請求項7に記載のF9遺伝子操作用組成物。
【請求項9】
配列番号1~6からなる群から選択されるF9遺伝子の標的配列によって暗号化されるRNA配列及びエディタータンパク質と複合体を形成することができるRNA配列を含むガイドRNA
【請求項10】
F9遺伝子内の人為的変形を含むラット(rat)細胞であって、
前記F9遺伝子内の人為的変形は、
F9遺伝子の全部または一の配列の欠失(deletion);
F9遺伝子の全部または一の配列における挿入(insertion);
F9遺伝子の全部または一の配列の挿入及び欠失;並びに
F9遺伝子内の逆
うち1つ以上の変形を含み、
前記F9遺伝子の一部の配列は、1bp~100bpのヌクレオチドであり、
前記ラット細胞は、F9遺伝子内の人為的変形によって、
F9因子または前記F9因子を暗号化する遺伝子内の人為的変形によって、
F9因子発現量減少;
F9因子発現抑制;
F9因子機能低下;
F9因子機能喪失;及び
F9因子能低下または機能
うち1つ以上含むことを特徴とするラット(rat)細胞。
【請求項11】
前記人為的変形
F9遺伝子内のエクソン領域(exon region);
F9遺伝子内のイントロン領域(intron region);
F9遺伝子内のプロモーター領域;
F9遺伝子内のエンハンサー領域;
F9遺伝子内の5’末端またはその隣接領域;
F9遺伝子内の3’末端またはその隣接領域;及び
F9遺伝子内のスプライシング部位(splicing site)
うち1つ以上の領域において形成されることを特徴とする請求項10に記載のラット(rat)細胞。
【請求項12】
前記ラット細胞、体細胞、胚性細胞及び胚性幹細胞のうち1つ以上であることを特徴とする、請求項10に記載のラット(rat)細胞。
【請求項13】
前記人為的変形、F9遺伝子のエクソン第1領域またはエクソン第2領域で発生することを特徴とする、請求項10に記載のラット(rat)細胞。
【請求項14】
下記を含む、人為的に変形されたF9遺伝子を含むラット(rat)細胞の製造方法:
ラット(rat)細胞を、請求項4~8のいずれか1項に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物接触させること。
【請求項15】
前記細胞、体細胞、胚性細胞、または胚性幹細胞である、請求項14に記載のラット(rat)細胞の製造方法。
【請求項16】
前記接触させること、電気穿孔法(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノパーティクル(nanoparticles)及びPTD(Protein translocation domain)融合タンパク質方法から選択される1以上の方法で行われることを特徴とする請求項14に記載のラット(rat)細胞の製造方法。
【請求項17】
前記接触させること、生体外(in vitro)で行われることを特徴とする請求項14に記載のラット(rat)細胞の製造方法。
【請求項18】
下記を含む、人為的に変形されたF9遺伝子を含む血友病B疾患モデルラット(rat)製造方法:
ラット細胞を、請求項4~8のいずれか1項に記載の血友病B疾患モデルラット(rat)の製造のためのF9遺伝子操作用組成物接触させることで、前記細胞のF9遺伝子内の人為的な変形が発生し;及び
前記細胞をラットに導入して血友病B疾患モデルラット(rat)を製造すること。
【請求項19】
前記F9遺伝子内の人為的変形、F9遺伝子のエクソン第1領域またはエクソン第2領域において発生することを特徴とする請求項18に記載の血友病B疾患モデルラットの製造方法。
【請求項20】
前記接触させること、電気穿孔法(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノパーティクル(nanoparticles)及びPTD(Protein translocation domain)融合タンパク質方法から選択される1以上の方法で行われることを特徴とする請求項18に記載の血友病B疾患モデルラットの製造方法。
【請求項21】
前記血友病B疾患ラット
組織内の自然出血(spontaneous bleeding);
自然出血による組織内の炎症;及び
自然出血による組織内の腫
うち1つ以上を示す、請求項18に記載の血友病B疾患モデルラットの製造方法。
【請求項22】
前記細胞、体細胞、胚性細胞及び胚性幹細胞のうち1つ以上であることを特徴とする、請求項18に記載の血友病B疾患モデルラットの製造方法。
【国際調査報告】