(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-09
(54)【発明の名称】窒素含有化合物、光電変換デバイス及び電子装置
(51)【国際特許分類】
C07D 209/82 20060101AFI20220602BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
C07D209/82
H05B33/14 A
H05B33/22 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570830
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2020096880
(87)【国際公開番号】W WO2021036433
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】201910785145.X
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520207310
【氏名又は名称】シャンシー ライト オプトエレクトロニクス マテリアル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shaanxi Lighte Optoelectronics Material Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Building 3, No. 99, Longfeng Road, High-tech Zone, Xi’an, Shaanxi Province, 710065 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 天天
(72)【発明者】
【氏名】楊 敏
(72)【発明者】
【氏名】楊 雷
(72)【発明者】
【氏名】馮 震
(72)【発明者】
【氏名】孫 占義
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD71
3K107DD78
(57)【要約】
窒素含有化合物、光電変換デバイス及び電子装置を提供し、オプトエレクトロニクス技術分野に属する。当該窒素含有化合物の構造一般式は式Iに示され、式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換の炭素原子数6~30のアリール基から選ばれ、Ar
1及びAr
2の置換基は、同じであるか又は異なり、且つそれぞれ独立的に、重水素、トリチウム、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基から選ばれる。当該窒素含有化合物及び光電変換デバイスは、デバイスの光電変換効率を向上させ、デバイスの寿命を延ばすことができる。
【化41】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造一般式が式Iに示される窒素含有化合物。
【化33】
(式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換の炭素原子数6~30のアリール基から選ばれ、
前記Ar
1及び前記Ar
2の置換基は、同じであるか又は異なり、且つそれぞれ独立的に、重水素、トリチウム、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基から選ばれる。)
【請求項2】
前記Ar
1及び前記Ar
2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換の環をなす炭素原子数が6~20であるアリール基から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の窒素含有化合物。
【請求項3】
前記Ar
1及び前記Ar
2は、それぞれ独立的に、下記構造からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の窒素含有化合物。
【化34】
(式中、各A
1~A
19は、それぞれ独立的に、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、シアノ基、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数6~15のアリール基から選ばれ、
b
1~b
19はb
kで示され、A
1~A
19はA
kで示され、kは、1~19の任意の整数を示す変数であり、b
kは置換基A
kの個数を示す場合には、b
kが1よりも大きい場合、対応する置換基A
kは、同じであるか又は異なり、
ここで、kが1、3、6、14、15、17又は19から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3、4又は5から選ばれ、
kが2、4、9、11、13又は18から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3又は4から選ばれ、
kが5、12、16から選ばれる場合、b
kは0、1、2又は3から選ばれ、
kが10から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3、4、5又は6から選ばれ、
kが7から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3、4、5、6又は7から選ばれ、
kが8から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3、4、5、6、7、8又は9から選ばれる。)
【請求項4】
前記Ar
1及び前記Ar
2は、それぞれ独立的に、以下の基から選ばれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の窒素含有化合物。
【化35】
【請求項5】
前記Ar
1及び前記Ar
2は、同じであるか又は異なり、且つは、それぞれ独立的に、下記基から選ばれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の窒素含有化合物。
【化36】
(式中、*は、上記の基が式Iにおける
【化37】
基に結合されるためのものであることを示す。)
【請求項6】
前記Ar
1及び前記Ar
2は同時に
【化38】
となることはない、請求項1~5のいずれか1項に記載の窒素含有化合物。
(式中、*は、上記の基が式Iにおける
【化39】
基に結合されるためのものであることを示す。)
【請求項7】
前記窒素含有化合物は下記化合物から選ばれる、請求項1~6のいずれか1項に記載の窒素含有化合物。
【化40】
【請求項8】
光電変換デバイスであって、対向設置された陽極及び陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられた機能層とを含み、
前記機能層は請求項1~7のいずれか1項に記載の窒素含有化合物を含む、ことを特徴とする光電変換デバイス。
【請求項9】
前記機能層は電子バリア層を含み、前記電子バリア層は請求項1~7のいずれか1項に記載の窒素含有化合物を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の光電変換デバイス。
【請求項10】
前記機能層は、
前記電子バリア層の前記陽極から遠ざけられた側に設けられた発光層と、
前記電子バリア層の前記発光層から遠ざけられた側に設けられた正孔輸送層と、
前記発光層と前記陰極との間に設けられた電子輸送層とをさらに含む、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の光電変換デバイス。
【請求項11】
前記光電変換デバイスは、有機エレクトロルミネッセンスデバイスである、ことを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項12】
前記光電変換デバイスは、太陽電池である、ことを特徴とする請求項8~11のいずれか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の光電変換デバイスを含む、ことを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月23日に提出された、出願番号がCN201910785145.Xである中国特許出願の優先権を主張しており、上記中国特許出願で開示された全体の内容は本開示の一部としてここに引用されている。
【0002】
本出願は、オプトエレクトロニクス技術分野に関し、具体的には、窒素含有化合物、光電変換デバイス及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED、Organic electroluminescent device)は、新世代の表示技術として徐々に注目されてきた。一般的な有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、陽極、陰極及び陰極と陽極との間に設けられた有機層から構成される。陰極と陽極に電圧が印加されると、両電極に電界が生じて、電界の作用で、陰極側の電子と陽極側の正孔とが同時に機能層へ移動し、且つ機能層で結合されて励起子となり、励起子が励起状態にありエネルギーを外へ放出して、励起状態から基底状態に変わる過程において外部へ発光する。したがって、OLEDデバイスにおける電子と正孔との再結合性を向上させるのが極めて重要なことである。
【0004】
光電変換デバイスでは、デバイスの寿命を改善するために電子バリア層及び電子輸送層などが設けられるのが一般的である。ただし、現在のデバイスには、効率の低いという問題が存在する。したがって、全てのデバイスにおいて電圧を低下させ、光電変換効率を高めて寿命を延ばすという効果を果たすように、性能がより良好な新しい材料をどのように設計して、電子バリア層や電子輸送層などに用いることは、従来から、当業者にとって解決しようとする課題である。
【0005】
従来技術の文献、例えば、CN102224150B、特許文献CN103827257B、特許文献CN105061371B及び特許文献CN108137500Aにおいてもこれについて研究を行っている。
【0006】
説明すべきこととして、上記背景技術の部分で開示された情報は、本出願の背景の理解を強化するためのものに過ぎず、したがって、当業者にとって公知の従来技術を構成しない情報を含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の目的は、上記従来技術の欠陥を克服し、光電変換効率を向上させ、デバイスの寿命を延ばすことができる窒素含有化合物及び光電変換デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一態様によれば、構造一般式が式Iに示される窒素含有化合物を提供する。
【化1】
(式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換の炭素原子数6~30のアリール基から選ばれ、前記Ar
1及び前記Ar
2の置換基は、同じであるか又は異なり、且つそれぞれ独立的に、重水素、トリチウム、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基から選ばれる。)
【0009】
本出願のいくつかの実施態様では、前記Ar1及び前記Ar2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換の炭素原子数6~20の環をなすアリール基から選ばれ、
前記Ar1及び前記Ar2の置換基は、同じであるか又は異なり、且つそれぞれ独立的に、重水素、トリチウム、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基から選ばれる。
【0010】
本出願のいくつかの実施態様では、前記Ar
1及び前記Ar
2は、同じであるか又は異なり、且つ、それぞれ独立的に、下記の基から選ばれる。
【化2】
(式中、*は、上記の基が式Iにおける
【化3】
基に結合されるためのものであることを示す。)
【0011】
本出願の一態様によれば、対向設置された陽極及び陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられた機能層とを含み、
前記機能層は前記窒素含有化合物を含む、光電変換デバイスを提供する。
【0012】
本出願のいくつかの実施態様では、前記機能層は電子バリア層を含み、前記電子バリア層は、前記窒素含有化合物を含む。
【0013】
本出願のいくつかの実施態様では、前記機能層は、
前記電子バリア層の前記陽極から遠ざけられた側に設けられた発光層と、
前記電子バリア層の前記発光層から遠ざけられた側に設けられた正孔輸送層と、
前記発光層と前記陰極との間に設けられた電子輸送層とをさらに含む。
【0014】
本出願のいくつかの実施態様では、前記光電変換デバイスは有機エレクトロルミネッセンスデバイスである。
【0015】
本出願の一態様によれば、上記のいずれか1項に記載の光電変換デバイスを含む電子装置を提供する。
【0016】
本出願のいくつかの実施態様では、前記光電変換デバイスは太陽電池である。
【0017】
本出願による窒素含有化合物、光電変換デバイス及び電子装置は、一方では、カルバゾールの窒素原子とトリアリールアミンの窒素原子をフェニレン基で連結することによって、窒素原子間の距離を小さくし、さらにトリアリールアミンとカルバゾールの平面とのなす角を小さくすることができる。それにより、材料のHOMOエネルギーレベルを共役作用によって、トリアリールアミン及びカルバゾール基上に同時に分布させるようにすることができる。それによって、材料の正孔移動度を高め、さらにデバイスの光電変換効率を高めることができる。一方では、異なる分岐長さにより分子の対称性を低下させ、さらに材料のアモルファス配列を強化し、またトリアリールアミンの別の2つの分岐に大平面の縮合環基を導入することで、トリアリールアミンに対する電子雲密度を効果的に分散させ、C-N結合の切断を回避することができるとともに、垂直的な構成の縮合環連結方式によって分子空間体積を増大し、分子間のスタッキングによる結晶効果を低下させることができ、それにより、デバイスの動作電圧を低下させ、デバイスの寿命を延ばすことができる。
【0018】
理解すべきことは、以上の一般的な説明及び以下の詳細の説明は、示例的かつ解釈的なものに過ぎず、本出願を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
ここでの図面は明細書に組み込まれており、本明細書の一部を構成し、本出願に合致する実施例を示しており、明細書とともに本出願の原理を解釈するために用いられる。明らかなことは、以下の説明における図面は本出願の実施例の一部に過ぎず、当業者にとっては、創造的な努力が必要なく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【
図1】本出願の実施形態における有機エレクトロルミネッセンスデバイスの構造模式図である。
【
図2】本出願の実施形態における化合物1の水素スペクトルテスト図である。
【
図3】本出願の実施形態における化合物5の水素スペクトルテスト図である。
【
図4】本出願における化合物1のHOMOエネルギーレベル図である。
【
図5】本出願における化合物AのHOMOエネルギーレベル図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して例示的な実施例をより包括的に説明する。しかしながら、例示的な実施例は複数の形態で実施可能であり、且つここで説明する例に制限されるものとして理解するとはならなく、逆に、これらの実施例は本出願をより全面的かつ完全的にし、例示的な実施例の構想を全面的に当業者に伝えるために提供されるものである。説明された特徴、構造又は特性は任意の適切な方式で1つ又は2つ以上の実施例に組み込まれてよい。以下の説明において、本出願の実施例についての十分な理解を提供するために多くの詳細が提供される。
【0021】
「当該」、「この」及び「前記」という用語は、1つ又は複数の要素や構成部分などが存在することを意味し、「含む」及び「有する」という用語は、開放的に含むという意味であり、且つ挙げられた要素や構成部分などに加えて、別の要素、構成部分なども存在する可能性があることを指す。
【0022】
本出願の実施形態は、構造一般式が式Iに示される窒素含有化合物を提供する。
【化4】
(式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換の炭素原子数6~30のアリール基から選ばれ、
前記Ar
1及び前記Ar
2の置換基は、同じであるか又は異なり、且つそれぞれ独立的に、重水素、トリチウム、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基から選ばれる。)
【0023】
本出願による窒素含有化合物は、一方では、カルバゾールの窒素原子とトリアリールアミンの窒素原子をフェニレン基で連結することによって、窒素原子間の距離を小さくし、さらにトリアリールアミンとカルバゾールの平面とのなす角を小さくすることができる。それにより、材料のHOMOエネルギーレベルを共役作用でトリアリールアミン及びカルバゾール基上に同時に分布させるようにすることができる。それによって、材料の正孔移動度を高め、さらにデバイスの光電変換効率を高めることができる。一方では、異なる分岐長さにより分子の対称性を低下させ、さらに材料のアモルファス配列を強化することができ、またトリアリールアミンの別の2つの分岐に大平面の縮合環基を導入することで、トリアリールアミンに対する電子雲密度を効果的に分散させ、C-N結合の切断を回避することもできるとともに、垂直的な構成の縮合環連結方式によって分子空間体積を増大し、分子間のスタッキングによる結晶効果を低下させることができ、それにより、デバイスの動作電圧を低下させ、デバイスの寿命を延ばすことができる。
【0024】
以下、本出願の実施形態における窒素含有化合物の各部分について詳しく説明する。
【0025】
本出願では、
【化5】
意味が同じであり、全て他の置換基又は結合位置と結合する位置を指すものである。
【0026】
本出願に使用される表現「各……は、独立的に」、「……それぞれ独立的に、」、及び「独立的に……から選ばれる」同士は交換可能であり、全て広義で理解すべきであり、異なる基において、同じ符号同士が表す具体的な選択肢同士が互いに影響を与えないことを意味してもよく、同じ基において、同じ符号同士が表す具体的な選択肢同士が互いに影響を与えないことを意味してもよい。例えば、「
【化6】
において、式中、各qは独立的に0、1、2又は3であり、各R”は独立的に、水素、フッ素、塩素から選ばれる」という説明において、その意味は、式Q-1は、ベンゼン環にq個の置換基R”を有し、各R”が同じであってもよく、異なってもよく、各R”の選択肢同士が互いに影響を与えないことを意味し、式Q-2はビフェニルのそれぞれのベンゼン環上にq個の置換基R”を有し、2つのベンゼン環におけるR”置換基の個数qが同じであってもよく、異なってもよく、各R”が同じであってもよく、異なってもよく、各R”の選択肢同士が互いに影響を与えないことを意味する。
【0027】
本出願では、用語「置換又は未置換」とは、置換基がないこと、又は1つ又は複数の置換基で置換されたことを意味する。前記置換基は、重水素、ハロゲン基(F、Cl、Br)、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリロキシ基、アリールチオ基、アルキルアミン基、アリールアミン基、シクロアルキル基、複素環式基、トリアルキルシリル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基を含むが、これらに制限されない。
【0028】
本出願における位置の非特定する結合とは、環系から張り出した単結合
【化7】
を指し、当該結合の一端がこの結合の貫通する環系の任意の位置に連結され、他端が化合物分子の残りの部分に連結されてもよいことを意味する。例えば、下記式(X’)に示されるように、式(X’)に示されるフェナントリル基は、一側のベンゼン環の中間から張り出した位置の非特定する結合を介して分子の残りの位置に連結され、それが表す意味として、式(X’-1)~式(X’-4)に示されるようないずれか1つの可能な連結方式を含むことである。
【化8】
【0029】
本出願の窒素含有化合物の構造一般式は式Iに示される。
【化9】
式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換の炭素原子数6~30のアリール基から選ばれてもよい。説明すべきことは、Ar
1及びAr
2のうちの1又は2は識別子として使用されるものに過ぎず、数を限定するためのものではない。
【0030】
本出願では、アリール基は、芳香族炭素環から誘導される任意の官能基又は置換基を指す。アリール基は単環式アリール基又は多環式アリール基であってもよく、言い換えれば、アリール基は単環式アリール基、縮合環アリール基、炭素-炭素結合を介して共役連結された2つ以上の単環式アリール基、炭素-炭素結合を介して共役連結された単環式アリール基及び縮合環アリール基、炭素-炭素結合を介して共役連結された2つ以上の縮合環アリール基であってもよい。即ち、炭素-炭素結合を介して共役連結された2つ以上の芳香族基は、本出願のアリール基とみなすことも可能である。ここで、縮合環アリール基は、例えば、二環式縮合アリール基(例えばナフチル基)、三環式縮合アリール基(例えばフェナントリル基、フルオレン基、アンスリル基)などを含んでもよい。ここで、アリール基には、B、N、O、S、P、SeやSiなどのヘテロ原子を含有しない。例えば、本出願では、ビフェニル基、テルフェニル基などはアリール基である。アリール基の例は、フェニル基、ナフチル基、フルオレン基、アンスリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、テルフェニル基、クォーターフェニル基、キンケフェニル基(quinquephenyl)、ベンゾ[9,10]フェナントリル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセン基などを含んでもよいが、これらに制限されない。本出願の「アリール基」は6~20個の炭素原子を含んでもよく、いくつかの実施例では、アリール基における炭素原子数は6~18個であってもよく、別のいくつかの実施例では、アリール基における炭素原子数は6~12個であってもよい。例えば、アリール基の炭素原子の数は6個、12個、13個、15個、18個又は20個であってもよいが、勿論、炭素原子の数は他の数であってもよく、ここでは一つずつ挙げられない。
【0031】
本出願では、置換のアリール基は、アリール基における1つ又は2つ以上の水素原子が例えば重水素、トリチウム、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基などの基で置換されたものであってもよい。理解すべきことは、置換のアリール基の炭素原子数とは、アリール基とアリール基における置換基の炭素原子の総数を指し、例えば炭素原子数が18である置換のアリール基とは、アリール基及びその置換基の総炭素原子数が18であることを指す。
【0032】
本出願では、「アルキル基」は、直鎖アルキル基又は分岐アルキル基を含んでもよい。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有してもよく、本出願では、「1~20」のような数値の範囲とは、所定の範囲内の各整数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12を指し、また、例えば、「炭素原子数1~12のアルキル基」とは、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、6個の炭素原子、7個の炭素原子、8個の炭素原子、9個の炭素原子、10個の炭素原子、11個の炭素原子又は12個の炭素原子が含まれるアルキル基を指す。アルキル基は、1~10個の炭素原子を有するサイズがミディアムのアルキル基であってもよい。アルキル基は、また、1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基であってもよい。別のいくつかの実施態様では、アルキル基は1~4個の炭素原子を含有し、さらなるいくつかの実施態様では、アルキル基は、1~3個の炭素原子を含有する。前記アルキル基は、任意的に本発明で記載の1つ又は複数の置換基によって置換されてもよい。アルキル基の例は、メチル基(Me、-CH3)、エチル基(Et、-CH2CH3)、n-プロピル基(n-Pr、-CH2CH2CH3)、イソプロピル基(i-Pr、-CH(CH3)2)、n-ブチル基(n-Bu、-CH2CH2CH2CH3)、イソブチル基(i-Bu、-CH2CH(CH3)2)、s-ブチル基(s-Bu、-CH(CH3)CH2CH3)、t-ブチル基(t-Bu、-C(CH3)3)などを含むが、これらに制限されない。さらに、アルキル基は置換又は未置換のものであってもよい。
【0033】
一実施形態では、Ar1及びAr2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換の環をなす炭素原子数が6~20であるアリール基から選ばれてもよい。
【0034】
例えば、その環をなす炭素原子数は、6個、10個、14個、16個又は20個であってもよいが、勿論、環をなす炭素原子数は他の数であってもよく、ここでは一つずつ挙げられない。ここで、置換とは、Ar1及びAr2における少なくとも1つの水素原子が置換基で置換されることを指す。Ar1及びAr2の置換基は同じであってもよく、異なってもよく、且つAr1及びAr2はいずれも、それぞれ独立的に、重水素、トリチウム、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基から選ばれてもよい。本出願では、「環をなす炭素原子数が6~20であるアリール基」とは、アリール基において芳香環上の炭素原子数が6~20個であることを指し、アリール基上の置換基における炭素原子数は除かれたものである。本発明のいくつかの実施態様では、本発明のアリール基における環をなす炭素原子数は6~20個であり、本発明のさらに別のいくつかの実施態様では、本発明のアリール基中の環をなす炭素原子数は6~12個であるが、これに制限されない。例示的には、フルオレン基は、環をなす炭素原子数13のアリール基であり、9,9-ジメチルフルオレン基は炭素原子数15の置換のアリール基である。
【0035】
本出願のいくつかの実施態様では、前記Ar1及び前記Ar2上の置換基は、それぞれ独立的に、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、シアノ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ジビフェニル基、テルフェニル基、フルオレン基、9,9-ジメチルフルオレン基から選ばれる。
【0036】
本出願のいくつかの実施態様では、前記Ar
1及び前記Ar
2は、それぞれ独立的に、下記一般式からなる群から選ばれる。
【化10】
式中、各A
1~A
19は、それぞれ独立的に、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、シアノ基、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数6~15のアリール基から選ばれ、
b
1~b
19はb
kで示され、A
1~A
19はA
kで示され、kは1~19の任意の整数を示す変数であり、b
kは置換基A
kの個数を示す場合には、b
kが1よりも大きい場合、対応する置換基A
kは、同じであるか又は異なり、
ここで、kが1、3、6、14、15、17又は19から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3、4又は5から選ばれ、
kが2、4、9、11、13又は18から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3又は4から選ばれ、
kが5、12、16から選ばれる場合、b
kは0、1、2又は3から選ばれ、
kが10から選ばれる場合、b
kは1、2、3、4、5又は6から選ばれ、
kが7から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3、4、5、6又は7から選ばれ、
kが8から選ばれる場合、b
kは0、1、2、3、4、5、6、7、8又は9から選ばれる。
【0037】
本出願のいくつかの実施態様では、前記Ar1及び前記Ar2は、それぞれ独立的に、置換又は未置換のフェニル基、置換又は未置換のジビフェニル基、置換又は未置換のテルフェニル基、置換又は未置換のナフチル基、置換又は未置換のアンスリル基、置換又は未置換のフェナントリル基、置換又は未置換のピレニル基、置換又は未置換のペリレン基、置換又は未置換のクリセン基又は置換又は未置換のフルオレン基から選ばれ、ここで、前記置換とは、重水素、トリチウム、フッ素、塩素、臭素、シアノ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、フェニル基又はナフチル基から独立的に選ばれる置換基で置換されたことを指す。
【0038】
本出願のいくつかの実施態様では、前記Ar
1及び前記Ar
2は、それぞれ独立的に、以下の基から選ばれる。
【化11】
【0039】
いくつかの実施形態では、Ar
1及びAr
2は、同じであってもよく、異なってもよく、且つAr
1及びAr
2は、それぞれ独立的に、下記基から選ばれてもよい。
【化12】
式中、*は、上記の基が式Iにおける
【化13】
に結合されるためのものであることを示す。勿論、Ar
1及びAr
2は、他の基から選ばれてもよく、ここでは特に限定しない。
【0040】
いくつかの実施形態では、式Iにおいて、Ar
1及びAr
2は同時に
【化14】
となることはない。
一実施形態では、窒素含有化合物は、下記化合物から選ばれてもよい。
【化15】
【0041】
説明すべきことは、以上の窒素含有化合物は例示的な窒素含有化合物に過ぎず、他の窒素含有化合物も含んでもよく、ここでは一つずつに挙げられない。
【0042】
実施例
以下、実施例を通じて本出願の窒素含有化合物の合成過程を詳しく説明する。ただし、下述の実施例は本出願の例示に過ぎず、本出願を限定するためのものではない。
【0043】
本明細書では、特に断らない限り、実施例で使用される試薬及び原料は全て商品供給者から購入されるものである。
【0044】
低分解能質量分析(MS):Agilent 6120四重極HPLC-M(カラムの規格:Zorbax SB-C18、2.1×30mm、3.5μm、6 min、流速0.5mL/min;移動相:5%~95%(0.1%ギ酸含有H2Oにおける0.1%ギ酸含有CH3CNの割合)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用して、210nm/254nmで、UVにより検出)。
【0045】
核磁気共鳴水素スペクトル:ブルカー(Bruker)400MHz核磁気共鳴装置、室温条件下、CD2Cl2又はCDCl3を溶媒(ppm単位)として、TMS(0ppm)を参照基準とする。
【0046】
化合物1の合成:
【化16】
4’-クロロビフェニル-4-ボロン酸(30.00g、129.04mmol)、1-ブロモナフタレン(26.72g、129.04mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(7.45g、6.45mmol)、炭酸カリウム(35.67g、258.09mmol)、テトラブチルアンモニウムクロリド(1.47g、6.45mmol)、トルエン(240mL)、エタノール(120mL)、及び脱イオン水(36mL)を三口フラスコに加え、窒素ガス保護下で、75℃~80℃に昇温させ、加熱して還流させ、4h撹拌した。反応の終了後、溶液を室温に冷却させて、ジクロロメタン及び水を加えて反応液を抽出し、有機相を合併し、無水硫酸マグネシウムで有機相を乾燥させて、ろ過してろ液を得て濃縮させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗品を精製し、中間体-A-1(30.45g、収率75%)を得た。
【化17】
1-ナフタレンボロン酸(30g、174.42mmol)、4-ブロモアニリン(28.57g、166.12mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(9.59g、8.30mmol)、炭酸カリウム(45.92g、332.24mmol)、テトラブチルアンモニウムクロリド(1.89g、8.31mmol)、トルエン(240mL)、エタノール(120mL)、及び脱イオン水(36mL)を三口フラスコに加え、窒素ガス保護下で、75℃~80℃に昇温させ、加熱して還流させ、4h撹拌した。反応の終了後、溶液を室温に冷却させて、ジクロロメタン及び水を加えて反応液を抽出し、有機相を合併し、無水硫酸マグネシウムで有機相を乾燥させて、ろ過してろ液を得て濃縮させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗品を精製し、中間体-B-1(27.31g、収率75%)を得た。
【化18】
中間体-B-1(27.31g、124.53mmol)、9-(4-ブロモフェニル)カルバゾール(40.12g、124.53mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.14g、1.24mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(1.19g、2.50mmol)、t-ブトキシドナトリウム(17.95g、186.81mmol)を溶媒としてのトルエン(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ、10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、中間体-C-1(43.02g、収率76%)を得た。
【化19】
中間体-C-1(10.00g、21.71mmol)、中間体-A-1(6.83g、21.71mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,6´-ジメトキシビフェニル(0.18g、0.43mmol)、t-ブトキシドナトリウム(3.13g、32.56mmol)を溶媒としてのトルエン(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ、10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、化合物1(11.12g、収率70%)を得た。質量分析:m/z=738.93(M+H)
+。
図2に示すように、化合物1の水素スペクトル:
1H NMR (400MHz,CDCl
3)(ppm):8.17(d,2H),8.07(d,1H),8.01(d,1H),7.93(d,2H),7.88(t,2H),7.76(d,2H),7.71(d,2H),7.60(d,2H),7.56(t,2H),7.53-7.44(m,16H),7.43(d,2H),7.40(d,2H),7.31(t,2H)。
【0047】
化合物2の合成:
【化20】
中間体-C-1(10.00g、21.71mmol)、4-ブロモ-p-テルフェニル(6.65g、21.52mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,6´-ジメトキシビフェニル(0.18g、0.43mmol)、t-ブトキシドナトリウム(3.13g、32.56mmol)を溶媒としてのトルエン(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ、10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、化合物2(10.43g、収率70%)を得た。質量分析:m/z=692.90(M+H)
+。
【0048】
化合物3の合成:
【化21】
9-ブロモフェナントレン(30g、116.67mmol)、4’-クロロビフェニル-4-ボロン酸(27.12g、116.67mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(7.45g、6.45mmol)、炭酸カリウム(35.67g、258.09mmol)、テトラブチルアンモニウムクロリド(1.47g、6.45mmol)、トルエン(240mL)、エタノール(120mL)、及び脱イオン水(36mL)を三口フラスコに加え、窒素ガス保護下で、75℃~80℃に昇温させ、加熱して還流させ4h撹拌した。反応の終了後、溶液を室温に冷却させて、ジクロロメタン及び水を加えて反応液を抽出し、有機相を合併し、無水硫酸マグネシウムで有機相を乾燥させて、ろ過してろ液を得て濃縮させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗品を精製し、中間体-D-1(29.79g、収率70%)を得た。
【化22】
中間体-C-1(10.00g、21.71mmol)、中間体-D-1(8.81g、21.52mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,6´-ジメトキシビフェニル(0.18g、0.43mmol)、t-ブトキシドナトリウム(3.13g、32.56mmol)をトルエン溶媒(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、化合物3(12.11g、収率71%)を得た。質量分析:m/z=793.02(M+H)
+。
【0049】
化合物4の合成:
【化23】
9-フェナントレンボロン酸(30g、135.12mmol)、4-ブロモアニリン(28.57g、166.12mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(9.59g、8.30mmol)、炭酸カリウム(45.92g、332.24mmol)、テトラブチルアンモニウムクロリド(1.89g、8.31mmol)、トルエン(240mL)、エタノール(120mL)、及び脱イオン水(36mL)を三口フラスコに加え、窒素ガス保護下で、75℃~80℃に昇温させ、加熱して還流させ4h撹拌した。反応の終了後、溶液を室温に冷却させて、ジクロロメタン及び水を加えて反応液を抽出し、有機相を合併し、無水硫酸マグネシウムで有機相を乾燥させて、ろ過してろ液を得て濃縮させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗品を精製し、中間体-B-2(27.29g、収率75%)を得た。
【化24】
中間体-B-2(27.29g、101.32mmol)、9-(4-ブロモフェニル)カルバゾール(40.12g、124.53mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.14g、1.24mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(1.19g、2.50mmol)、t-ブトキシドナトリウム(17.95g、186.81mmol)をトルエン溶媒(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、中間体-C-2(39.10g、収率75%)を得た。
【化25】
中間体-C-2(10.00g、19.42mmol)、中間体-D-1(7.09g、19.43mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,6´-ジメトキシビフェニル(0.18g、0.43mmol)、t-ブトキシドナトリウム(3.13g、32.56mmol)をトルエン溶媒(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、化合物4(12.11g、収率71%)を得た。質量分析:m/z=793.02(M+H)
+。
【0050】
化合物5の合成:
【化26】
中間体-C-2(10.00g、19.42mmol)、4-ブロモ-p-テルフェニル(6.00g、19.42mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,6´-ジメトキシビフェニル(0.18g、0.43mmol)、t-ブトキシドナトリウム(3.13g、32.56mmol)をトルエン溶媒(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ、10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、化合物5(10.25g、収率70%)を得た。質量分析:m/z=742.96(M+H)
+。
図3に示すように、化合物5の水素スペクトル:
1H NMR (400MHz,CD
2Cl
2)(ppm):8.81(d,1H),8.75(d,1H),8.16(d,2H),8.10(d,1H),7.94(d,1H),7.77(s,1H),7.75-7.61(m,12H),7.56(d,2H),7.52(t, 4H),7.49-7.44(m,6H),7.42(d,4H),7.37(t,1H),7.30(t,2H)。
【0051】
化合物6の合成:
【化27】
中間体-C-2(10.00g、19.42mmol)、中間体-A-1(6.11g、19.42mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,6´-ジメトキシビフェニル(0.18g、0.43mmol)、t-ブトキシドナトリウム(3.13g、32.56mmol)をトルエン溶媒(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ、10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、化合物6(10.93g、収率71%)を得た。質量分析:m/z=788.99(M+H)
+。
【0052】
化合物7の合成:
【化28】
p-フェニルアニリン(30.39g、179.59mmol)、9-(4-ブロモフェニル)カルバゾール(40.12g、124.53mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.14g、1.24mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(1.19g、2.50mmol)、t-ブトキシドナトリウム(17.95g、186.81mmol)をトルエン溶媒(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105~110℃に昇温させ、加熱して還流させ、10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、中間体-C-3(50.62g、収率69%)を得た。
【化29】
中間体-C-3(6.11g、19.42mmol)、中間体-A-1(6.83g、21.71mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,6´-ジメトキシビフェニル(0.18g、0.43mmol)、t-ブトキシドナトリウム(3.13g、32.56mmol)をトルエン溶媒(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ、10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、化合物7(11.69g、収率70%)を得た。質量分析:m/z=692.90(M+H)
+。
【0053】
化合物8の合成:
【化30】
中間体-C-3(6.11g、19.42mmol)、中間体-D-1(8.88g、24.12mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,6´-ジメトキシビフェニル(0.18g、0.43mmol)、t-ブトキシドナトリウム(3.13g、32.56mmol)をトルエン溶媒(260mL)に加え、窒素ガス保護下で、105℃~110℃に昇温させ、加熱して還流させ、10h撹拌した。反応液を室温に冷却させた後、ジクロロメタン及び水で反応溶液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させてろ過し、ろ過後にろ液をショートシリカカラムに通過させて、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン/n-ヘプタン系を用いて粗品を再結晶させて精製し、化合物8(12.72g、収率71%)を得た。質量分析:m/z=742.96(M+H)
+。
【0054】
本出願は、光電変換デバイスをさらに提供し、
図1に示すように、当該光電変換デバイスは、対向設置された陽極1及び陰極5と、陽極1と陰極5との間に設けられた機能層3とを含んでもよく、この機能層3は、上記のいずれか1つの実施形態の窒素含有化合物を含んでもよい。
【0055】
陽極1は機能層3への正孔の注入に寄与する材料であってもよく、この材料は大きな仕事関数(仕事関数、work function)を有してもよい。例えば、陽極1の材料は金属、合金又は金属酸化物などであってもよく、例えば、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金又はこれらの合金であってもよいし、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)及び酸化インジウム亜鉛(IZO)であってもよい。勿論、陽極1の材料は他のものであってもよく、例えば、ZnO:Al、SnO2:Sb、導電性重合体(ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロール、及びポリアニリン)のような組成物であってもよい。勿論、陽極1の材料はこれらに制限されず、他の材料であってもよく、ここでは一つずつに挙げられない。好ましくは、陽極1の材料は酸化インジウムスズ(ITO、indium tin oxide)であってもよい。
【0056】
陰極5は、機能層3への電子注入に寄与する材料であってもよく、この材料は、小さな仕事関数を有してもよい。例えば、陰極5の材料は金属又は合金材料であってもよく、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛又はこれらの合金であってもよいし、LiF/Al、Liq/Al、LiO2/Al、LiF/Ca、LiF/Al、及びBaF2/Caのような複数の層の材料であってもよい。勿論、陰極5の材料はこれらに制限されず、他の材料であってもよく、ここでは一つずつに挙げられない。好ましくは、陰極5の材料はアルミニウムであってもよい。例えば、当該光電変換デバイスは太陽電池であってもよく、有機エレクトロルミネッセンスデバイスであってもよく、勿論、他の光電変換デバイスであってもよく、ここでは一つずつに挙げられない。
【0057】
機能層3は、電子及び正孔の輸送に用いられ得るとともに、電子及び正孔の再結合又は分離ための場所を提供でき、電子及び正孔は機能層3で再結合して励起子を発生させ、発光の効果を達成することができる。
【0058】
一実施形態では、本出願のいずれの実施形態の窒素含有化合物も機能層3のうちの一層又は複数の層の形成に用いられて、光電変換デバイスの動作電圧を低減させ、発光効率を高め、デバイスの使用寿命を延ばすことができる。例えば、機能層3は電子バリア層32を含んでもよく、この電子バリア層32は、本出願のいずれか1つの実施形態の窒素含有化合物を含んでもよい。この窒素含有化合物は、陽極1への電子の輸送をバリアすることに用いられてもよく、即ち、本出願のいずれか1つの実施形態の窒素含有化合物も電子バリア材料として用いられ得る。
【0059】
機能層3は、発光層33、正孔輸送層31及び電子輸送層34をさらに含んでもよく、ただし、発光層33は、電子バリア層32の前記陽極1から遠ざけられた側に設けられてもよく、正孔輸送層31は、電子バリア層32の前記発光層33から遠ざけられた側に設けられてもよく、電子輸送層34は、発光層33と前記陰極5との間に設けられてもよい。光電変換デバイスは、積層して設けられた陽極1、正孔輸送層31、発光層33、電子輸送層34及び陰極5を含んでもよい。
【0060】
また、本出願の実施形態の光電変換デバイスは、正孔注入層2と電子注入層4をさらに含んでもよく、ただし、正孔注入層2は陽極1と正孔輸送層31との間に設けられてもよく、電子注入層4は、陰極5と電子輸送層34との間に設けられてもよい。例えば、当該光電変換デバイスは、有機エレクトロルミネッセンスデバイスであってもよい。
【0061】
以下、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを例にして、実施例によって本出願の有機エレクトロルミネッセンスデバイスを詳細に説明する。ただし、下記実施例は本出願の例に過ぎず、本出願を限定するためのものではない。
【0062】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの作製及び評価の実施例
【0063】
実施例1:青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスの作製
以下のプロセスによって陽極1を製造した。ITO厚さ1500オングストロームのITO基板を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(厚さ)のサイズに切断し、フォトリソグラフィ工程によって、陰極5、陽極1及び絶縁層のパターンを有する実験基板に作製し、また、陽極1の仕事関数を増大ように紫外線、オゾン及びO
2:N
2プラズマを用いて表面処理を施してもよく、有機溶媒を用いてITO基板の表面を洗浄し、ITO基板表面での異物や油汚れを除去してもよい。説明すべきことは、ITO基板は実際のニーズに応じて他のサイズに切断されてもよく、ここでは本出願におけるITO基板のサイズについて特に限定しない。
実験基板(陽極1)上にm-MTDATA(4,4´,4´´-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン)(構造式は以下に示される)を真空蒸着して厚さ100オングストロームの正孔注入層2(HIL)を形成し、正孔注入層2(HIL)上にNPB(N,N´-ジフェニル-N,N´-(1-ナフチル)-1,1´-ビフェニル-4,4´-ジアミン)(構造式は以下に示される)を真空蒸着して、厚さ800オングストロームの正孔輸送層31(HTL)を形成した。
正孔輸送層31(HTL)上に化合物1を蒸着して、厚さ100~350オングストロームの電子バリア層32(EBL)を形成した。例えば、電子バリア層32(EBL)の厚さは100オングストローム、150オングストローム、200オングストローム、250オングストローム、300オングストローム又は350オングストロームであってもよく、勿論、他の厚さであってもよく、ここでは一つずつに挙げられない。
α,β-ADN(構造式は以下に示される)を本体として、100:3の膜厚比でBD-1(構造式は以下に示される)をドープし、厚さ200~450オングストロームの発光層33(EML)を形成した。例えば、発光層33(EML)の厚さは200オングストローム、250オングストローム、300オングストローム、350オングストローム、400オングストローム又は450オングストロームであってもよく、勿論、他の厚さであってもよく、ここでは一つずつに挙げられない。
DBimiBphen(構造式は以下に示される)とLiQ(構造式は以下に示される)を1:1の重量比で混合し、蒸着プロセスによって200~400オングストローム厚の電子輸送層34(ETL)を形成してもよい。例えば、電子輸送層34の厚さは200オングストローム、250オングストローム、300オングストローム、350オングストローム又は400オングストロームであってもよく、勿論、他の厚さであってもよく、ここでは一つずつに挙げられない。次に、LiQを電子輸送層34上に蒸着して厚さ5~20オングストロームの電子注入層4(EIL)を形成し、例えば、電子注入層4の厚さは5オングストローム、10オングストローム、15オングストローム又は20オングストロームであってもよく、勿論、他の厚さであってもよく、ここでは一つずつに挙げられない。次に、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)を1:9の蒸着速度で混合し、電子注入層4(EIL)上に真空蒸着して、厚さ120オングストロームの陰極5を形成した。
また、上記陰極5上に厚さ650オングストロームのCP-1(構造式は以下に示される)を蒸着して、被覆層(CPL)を形成し、これにより、有機発光デバイスを製造した。
【化31】
【0064】
実施例2~8
電子バリア層32(EBL)の形成において化合物1の代わりにそれぞれ化合物2~8を使用した以外、実施例1と同様な方法によって有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作製した。
即ち、実施例2では、化合物2を機能層3のうちの一層又は複数の層として、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作製し、実施例3では、化合物3を機能層3のうちの一層又は複数の層として、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作製し、実施例4では、化合物4を機能層3のうちの一層又は複数の層として、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作製し、実施例5では、化合物5を機能層3のうちの一層又は複数の層として、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作製し、実施例6では、化合物6を機能層3のうちの一層又は複数の層として、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作製し、実施例7では、化合物7を機能層3のうちの一層又は複数の層として、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作製し、実施例8では、化合物8を機能層3のうちの一層又は複数の層として、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作製し、且つ各デバイスの性能のパラメータについては詳細に表1に示す。
【0065】
比較例1~比較例4
比較例1~比較例4では、化合物A~化合物Dをそれぞれ電子バリア層32(EBL)の替代化合物として用いた以外、実施例1と同様な方法によって有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。ここで、化合物A~化合物Dの構造はそれぞれ以下に示される。
【化32】
即ち、比較例1では、化合物Aを用いて有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造し、比較例2では、化合物Bを用いて有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造し、比較例3では、化合物Cを用いて有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造し、比較例4では、化合物Dを用いて有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造し、製造した各デバイスの性能について、詳細に表1に示す。ここで、IVL(電流、電圧、輝度)のデータは、10mA/cm
2でのテスト結果を比較したものであり、T95寿命は20mA/cm
2電流密度でのテスト結果である。
【表1】
【0066】
上記表1の結果から分かるように、化合物1~化合物8を電子バリア層32(EBL)として用いた実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7及び実施例8は、化合物A~化合物Dを用いた比較例1、比較例2、比較例3及び比較例4に比べて、発光効率とデバイス寿命がいずれも大幅に向上した。本出願では、実施例5で化合物5を電子バリア層32(EBL)として使用して製造した有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1に比べて、発光効率(Cd/A)が54.7%向上し、外部量子効率が少なくとも56.5%向上し、寿命が42時間長くなり、75.4%向上した。このことから、本出願の実施形態の有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、発光効率と寿命性能が明らかに向上したことが分かった。
【0067】
表1に示すように、化合物A、化合物C及び化合物Dに比べて、本出願の化合物1~化合物8は全て、効率及び寿命の2つの点において明らかな向上が確認された。具体的には、カルバゾールの窒素原子とトリアリールアミンの窒素原子とをフェニレン基で連結することで、窒素原子間の距離を小さくすることができ、それによりトリアリールアミンとカルバゾール平面とのなす角を減少することができる。これにより、材料のHOMOエネルギーレベルを共役作用によってトリアリールアミン及びカルバゾール基に同時に分布させるようにすることができる。それによって、材料の正孔移動度を高め、さらにデバイスの光電変換効率を向上させることができる。また、非対称的なトリアリールアミン分岐鎖の長さが立体障害のナフタレン/フェナントリル基と相まって、化合物の結晶性を大幅に低下させ、且つ成膜の均一性を明らかに高めた。以上の結果では、特に化合物1及び化合物5が優れている。
【0068】
化合物Bに比べて、本出願の化合物1~化合物8は、全て効率及び寿命の2つの点において明らかな向上が確認される。本出願の化合物1~化合物8は、トリアリールアミンの別の2つの分岐に大平面縮合環基を導入することで、トリアリールアミンに対する電子雲密度を効果的に分散させ、C-N結合の切断を回避することができる。また、垂直立体配置の縮合環連結方式によって、分子空間体積を大きくし、分子間スタッキングによる結晶効果を低減させ、さらにデバイスの動作電圧を低下させ、デバイス寿命を延ばすことができる。
【0069】
図4及び
図5は、本出願の化合物1及び化合物Aについて計算したHOMOエネルギーレベル図である。図から分かるように、本出願の化合物1のHOMOエネルギーレベルは共役作用によってトリアリールアミン及びカルバゾール基に同時に分布させており、カルバゾールの窒素原子とトリアリールアミンの窒素原子はフェニレン基で連結され、窒素原子の間の間隔が小さくなり、材料の正孔移動度が向上し、さらにデバイスの光電変換効率が向上した。本出願は電子装置をさらに提供し、この電子装置は上記いずれかの実施形態の光電変換デバイスを含んでもよく、その有益な効果及び詳細は上記光電変換デバイスを参照すればよく、ここでは詳しく説明しない。例えば、この電子装置は、ディスプレイ、アレイ基板、太陽光発電モジュールなどであってもよいが、勿論、他の装置であってもよく、ここでは一つずつに挙げられない。
【0070】
当業者であれば、明細書を考慮してここで開示された発明を実践したら、本出願の他の実施態様を容易に想到し得る。本出願は、本出願の全ての変形、用途や適応的な変化をカバーすることを意図しており、これらの変形、用途や適応的な変化は本出願の一般的な原理に従い、本出願で開示されていない該当技術分野の公知常識又は慣用技術手段も含む。明細書及び実施例は例示的なものとして取り扱われ、本出願の実際の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲により定められる。
【符号の説明】
【0071】
1、陽極
2、正孔注入層
3、機能層
31、正孔輸送層
32、電子バリア層
33、発光層
34、電子輸送層
4、電子注入層
5、陰極
【国際調査報告】