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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】リンカー
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20220603BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220603BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220603BHJP
   C07K 7/04 20060101ALI20220603BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220603BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220603BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
A61K47/64
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/11 Z
C07K7/04
A61K47/54
A61K31/7088
A61K48/00
A61P25/00
A61P21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532408
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 GB2019053445
(87)【国際公開番号】W WO2020115494
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】1820020.4
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1911405.7
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516245900
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD UNIVERSITY INNOVATION LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】521246116
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
【氏名又は名称原語表記】UNITED KINGDOM RESEARCH AND INNOVATION
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ラズ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ウッド
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン ゴドフリー
(72)【発明者】
【氏名】グラハム マクローリー
(72)【発明者】
【氏名】サバシス バナジー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ゲート
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル ヴァレラ
(72)【発明者】
【氏名】アシュリング ホーランド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC29
4C076CC41
4C076DD42
4C076DD51
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF32
4C076FF34
4C084AA13
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA94
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA94
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA50
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、キャリヤー分子を治療用分子に結合して、複合体を形成するためのリンカー、特に、アミノ酸、例えば、グルタミン酸、コハク酸、及びγ-アミノ酪酸からなるリンカーに係る。本発明は、さらに、本発明のリンカーを含んでなる複合体、及び各種の疾患の治療における前記複合体の使用にも係る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのキャリヤーを含んでなる複合体又は薬学上許容される塩又はその溶媒和化合物であって、キャリヤーは、少なくとも1のリンカーに共有結合しており、リンカーは、少なくとも1の治療用分子に共有結合しており、少なくとも1のリンカーの各々は、独立して、下記の式(I)による構造を有することを特徴とする複合体又は薬学上許容される塩又はその溶媒和化合物。
式(I)
-T1-(CR1R2)n-T2- (I)
{ここで、
T1は、キャリーへの結合用であり、-NH-又は-C(O)-から選ばれ;
T2は、第1の治療用分子への結合用であり、-NH-又は-C(O)-から選ばれ;
nは、1、2、又は3から選ばれる整数であり;及び
各R1は、独立して、式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素、OH、又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CH(ORA3)-、-N(RA3)-、-N(RA3)-C(O)-、-N(RA3)-C(O)O-、-C(O)-N(RA3)-、-N(RA3)C(O)N(RA3)-、-N(RA3)C(NRA3)N(RA3)-、-SO-、-S-、-SO2-、-S(O)2N(RA3)-、又は-N(RA3)SO2-(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる)の基であり;及び
Z1は、更なる治療用分子であるか、又は水素、(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールから選ばる(ここで、各(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、オキソ、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、NRA4RA5、又は(1-4C)アルコキシ(ここで、RA4及びRA5は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)から選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基であり;及び
各R2は、独立して、式
-Y2-X2-Z2
[ここで、
Y2は、不在か、又は式
-[CRB1RB2]m-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRB1及びRB2は、それぞれ独立して、水素、OH、又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X2は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CH(ORB3)-、-N(RB3)-、-N(RB3)-C(O)-、-N(RB3)-C(O)O-、-C(O)-N(RB3)-、-N(RB3)C(O)N(RB3)-、-N(RB3)C(NRB3)N(RB3)-、-SO-、-S-、-SO2-、-S(O)2N(RB3)-、又は-N(RB3)SO2-(ここで、各RB3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる)の基であり;及び
Z2は、水素、(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールから選ばれる(ここで、各(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、オキソ、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、NRB4RB5、又は(1-4C)アルコキシ(ここで、RB4及びRB5は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)から選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基であり;
ただし、
n=1、及びT1及びT2が相互に異なる場合、R1及びR2は、両方がHとなることはなく;
n=1、T1及びT2が相互に異なり、及びR1及びR2の一方がHである場合、R1及びR2の他方はメチルではなく;又は
n=2、及び各R1及びR2がHである場合、T1及びT2 、ともに-C(O)-であるか、又はともに-NH-であり;
キャリヤーがペプチドである場合、ペプチドはグリコシル化されていない。}
【請求項2】
複合体が、下記の構造の1を含んでなるものである請求項1に記載の複合体。
[キャリヤー]-[リンカー]-[治療用分子];
【化1】

【化2】
[治療用分子]-[リンカー]-[キャリヤー]-[リンカー]-[治療用分子];及び
[キャリヤー]-[リンカー]-[キャリヤー]-[リンカー]-[治療用分子]
【請求項3】
複合体が、下記の構造:
[キャリヤー]-[リンカー]-[治療用分子]
を有するものである請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
T2が-C(O)-である請求項1~3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
各R1が、独立して、式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-N(RA3)-、-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)-、-N(RA3)C(O)N(RA3)-、-N(RA3)C(NRA3)N(RA3)-、又は-S-であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、更なる治療用分子であるか、又は水素、(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールから選ばれる(ここで、各(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、オキソ、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、NRA4RA5、又は(1-4C)アルコキシ(ここで、RA4及びRA5は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)から選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基である請求項1~4のいずれかに記載の複合体。
【請求項6】
各R1が、式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-O-、C(O)-、-C(O)O-、-N(RA3)-、-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)-、-N(RA3)C(O)N(RA3)、-N(RA3)C(NRA3)N(RA3)-、又は-S-であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、更なる治療用分子であるか、又は水素、(1-6C)アルキル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、又はヘテロアリールから選ばる(ここで、各(1-6C)アルキル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、ハロ、又はヒドロキシから選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基である請求項1~5のいずれかに記載の複合体。
【請求項7】
各R1が、式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-C(O)-、-C(O)O-、-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、更なる治療用分子であるか、又は水素、(1-6C)アルキル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、又はヘテロアリールから選ばれる(ここで、各(1-6C)アルキル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、ハロ、又はヒドロキシから選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基である請求項1~6のいずれかに記載の複合体。
【請求項8】
各R1が、式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CH2]-
(ここで、mは、1又は2から選ばれる整数である)の基であり;
X1は、不在か、又は-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)-であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、水素又は(1-2C)アルキルである]
の基である請求項1~7のいずれかに記載の複合体。
【請求項9】
各R2が、独立して、式
-Y2-Z2
[ここで、Y2は、不在か、又は式
-[CRB1RB2]m-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRB1及びRB2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;及び
Z2は、水素又は(1-6C)アルキルである]
の基である請求項1~8のいずれかに記載の複合体。
【請求項10】
各R2が水素である請求項1~9のいずれかに記載の複合体。
【請求項11】
nが2又は3である請求項1~10のいずれかに記載の複合体。
【請求項12】
nが1である請求項1~11のいずれかに記載の複合体。
【請求項13】
リンカーが、グルタミン酸、コハク酸、及びγ-アミノ酪酸から選ばれる請求項1~12のいずれかに記載の複合体。
【請求項14】
下記の構造の1を有する請求項1~11又は13のいずれかに記載の複合体。
【化3】
【化4】

【化5】
【化6】
【請求項15】
リンカーが、アミノ酸又はその誘導体である請求項1~12のいずれかに記載の複合体。
【請求項16】
アミノ酸が、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、バリン、ロイシン、ヒスチジン、トリプトファン、トレオニン、セリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、及びそれらの誘導体から選ばれる請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
アミノ酸がグルタミン酸である請求項15又は16に記載の複合体。
【請求項18】
アミノ酸が、側鎖の少なくとも2、N-末端及びC-末端を介して結合される請求項15から17のいずれかに記載の複合体。
【請求項19】
リンカーが、N-末端を介して少なくとも1のキャリヤーに結合し、アミノ酸の側鎖を介して少なくとも1の治療用分子に結合するアミノ酸である請求項15~18のいずれかに記載の複合体。
【請求項20】
キャリヤー又は各キャリヤーが、タンパク質、ペプチド、脂肪酸、ポリマー、及びナノ粒子から選ばれ、好ましくは、ペプチドである請求項1~19のいずれかに記載の複合体。
【請求項21】
治療用分子又は各治療用分子が、核酸、ペプチド核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、PNA、PMO)、mRNA、gRNA(例えば、CRISPR/Cas9技術の使用における)、短干渉RNA、マイクロRNA、アンタゴミルRNA、ペプチド、環状ペプチド、タンパク質、医薬品、薬物、又はナノ粒子から選ばれ、好ましくは、オリゴヌクレオチドである請求項1~20のいずれかに記載の複合体。
【請求項22】
薬としての使用のための請求項1~21のいずれかに記載の複合体。
【請求項23】
請求項1~22のいずれかに記載の複合体を含んでなる医薬組成物。
【請求項24】
薬としての使用のための請求項23に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリヤー分子を治療用分子に結合して、複合体を形成するためのリンカーに係る。本発明は、さらに、本発明のリンカーを含んでなる複合体、及び各種の疾患の治療における前記複合体の使用にも係る。
【背景技術】
【0002】
相互に共有結合したキャリヤー分子及び治療用分子を含んでなる治療用複合体は、初期の実現(単独で使用される場合、治療用分子は、しばしば、細胞透過性に乏しいものであった)の後、初めて開発された。治療用分子の細胞及び/又は組織への細胞取り込みを促進するために、パートナーキャリヤーの使用が提案された。
【0003】
治療用分子のこのような1つのグループは、アンチセンスオリゴヌクレトチド(ON)である。ON療法は、その標的性及び高い有効性のため、各種の疾患の兆候を治療するための迅速な臨床的進展を形成した。ONはプレ- mRNAのスプライシングの標的化調節を惹起でき、従って、ONを、新しい遺伝子療法薬用の特に魅力的な候補とする(特に、機能喪失型突然変異に起因する疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療に関して)。しかし、多くの遺伝子疾患の治療への広範な適用性にもかかわらず、ON化合物の全身性インビボ投与は、それらの標的組織への乏しい透過性及び低レベルの細胞内取り込みのため、治療効果の提供については、限定的な成功しか達成できていない。
【0004】
オリゴヌクレオチド治療法における乏しい細胞内取り込みの課題に対処するために、短鎖ペプチドから形成されたキャリヤーを含んでなる複合体が開発されている。過去数年間では、電荷中性の種、例えば、治療用ホスホルアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)の細胞内取り込みを容易にするために、カチオン性、すなわち、正帯電性の細胞透過性ペプチド(CPP)がキャリヤーとして使用されている。CPP複合体は、DMDを含めて各種の疾患モデルにおいて、効果的なPMOのインビボ細胞内取り込みを良好に促進することを示している。
【0005】
しかし、治療法としてのキャリヤー-治療用複合体の適用は、それらの関連する毒性によって妨げられている。
【0006】
Amantanaらは、ペプチド-PMO複合体が用量依存毒性を発揮することを記載している(Bioconjug Chem., 2007, 1325-1331)。毒性の特定の閾値以上では、倦怠感、呼吸促迫、腎臓における尿細管変性、及び体重の減少が観察される。このようなCPP複合体の1つであるB-PMO複合体は、mdxマウスにおいて高い急性毒性を示した(Wuら, Am J Pathol, 2012, 392-400)。
【0007】
このような治療用複合体の毒性を減少させる研究は、毒性の原因であると考えられるキャリヤーの開発に注目している。ペプチドキャリヤーに関連して、Wuらは、6-アミノヘキサン酸残基の数の増大が毒性の増大と相関することを示し(Nuc Acids Res, 2007, 35, 5182-5191)、より活性及び安定なCPPは、アルギニン(R, D-R)、アミノヘキサン酸(X)及びβ-アラニン(B)残基の位置及び数を最適化することによって設計されると主張している。他の研究は、さらに、ペプチドキャリヤーにおけるアルギニン残基の数及び頻度は、毒性に負の影響を及ぼすこと及びこれらは低減されなければならないことを示している。
【0008】
以後、複合体を毒性の低いものとする試みにおいて、各種の配列を有するキャリヤーペプチドが開発されてきたが、多くのこのような複合体は、臨床には到達していない。これは、耐え難いレベルの毒性によるものか、複合体の有効性の望ましくないロスによるものである。例えば、Bettsらは、当分野において「Pips」として知られているいくつかの有望なCPPキャリヤーであっても、臨床開発にとって適切な治療指数を、なお有していないことを証明した(Molecular Therapy-Nucleic Acids, 2012, 1, e38)。さらに、米国特許出願公開第2016/0237426は、他の異なる設計のCPPキャリヤー、例えば、R6Glyは、毒性が低減されているが、治療用分子との複合体において使用される際、エクソンスキッピングを誘発する点で効力が低減されていることを示すデータを含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
治療用複合体での使用のためのキャリヤーの配列を変更する研究者らの努力にもかかわらず、これまでの所、治療効果及び許容の毒性レベルの両方の点で高い有効性を有す複合体を生成することが非常に困難であることが証明されている。
従って、患者に全身投与される際に低減された毒性を示すが、一方で、治療有効性を維持する治療用分子を送達するための複合体についての要求が存在したままである。
【0010】
本発明の1以上の態様は、少なくともこの課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つのキャリヤーを含んでなる複合体又は薬学上許容される塩又はその溶媒和化合物であって、キャリヤーは、少なくとも1のリンカーに共有結合しており、リンカーは、少なくとも1の治療用分子に共有結合しており、少なくとも1のリンカーの各々は、独立して、下記の式(I)による構造を有することを特徴とする複合体又は薬学上許容される塩又はその溶媒和化合物提供される。
【0012】
式(I)
-T1-(CR1R2)n-T2- (I)
{ここで、
T1は、キャリーへの結合用であり、-NH-又は-C(O)-から選ばれ;
T2は、第1の治療用分子への結合用であり、-NH-又は-C(O)-から選ばれ;
nは、1、2、又は3から選ばれる整数であり;及び
各R1は、独立して、式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素、OH、又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CH(ORA3)-、-N(RA3)-、-N(RA3)-C(O)-、-N(RA3)-C(O)O-、-C(O)-N(RA3)-、-N(RA3)C(O)N(RA3)-、-N(RA3)C(NRA3)N(RA3)-、-SO-、-S-、-SO2-、-S(O)2N(RA3)-、又は-N(RA3)SO2-(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる)の基であり;及び
Z1は、更なる治療用分子であるか、又は水素、(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールから選ばる(ここで、各(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、オキソ、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、NRA4RA5、又は(1-4C)アルコキシ(ここで、RA4及びRA5は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)から選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基であり;及び
各R2は、独立して、式
-Y2-X2-Z2
[ここで、
Y2は、不在か、又は式
-[CRB1RB2]m-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRB1及びRB2は、それぞれ独立して、水素、OH、又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X2は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CH(ORB3)-、-N(RB3)-、-N(RB3)-C(O)-、-N(RB3)-C(O)O-、-C(O)-N(RB3)-、-N(RB3)C(O)N(RB3)-、-N(RB3)C(NRB3)N(RB3)-、-SO-、-S-、-SO2-、-S(O)2N(RB3)-、又は-N(RB3)SO2-(ここで、各RB3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる)の基であり;及び
Z2は、水素、(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールから選ばれる(ここで、各(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、オキソ、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、NRB4RB5、又は(1-4C)アルコキシ(ここで、RB4及びRB5は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)から選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基であり;
ただし、
n=1、及びT1及びT2が相互に異なる場合、R1及びR2は、両方がHとなることはなく;
n=1、T1及びT2が相互に異なり、及びR1及びR2の一方がHである場合、R1及びR2の他方はメチルではなく;又は
n=2、及び各R1及びR2がHである場合、T1及びT2 、ともに-C(O)-であるか、又はともに-NH-であり;
キャリヤーがペプチドである場合、ペプチドはグリコシル化されていない。}
【0013】
本発明の第2の態様によれば、薬としての使用のための第1の態様による複合体が提供される。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様による複合体を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、薬としての使用のための第3の態様による医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、異なるリンカーを介して治療用アンチセンスPMODMDに結合したDPEP3.1ペプチド30mg/kgの単一用量の投与後、day2及びday7において、C57BL/6マウスの尿において測定した尿中クレアチニンに対する、正規化した尿中の腎臓損傷マーカー(KIM-1)の相対レベルを、0.9%食塩水コントロール及び同じ治療用アンチセンスPMODMDに結合した現在利用可能なペプチドキャリヤー(R6Gly-及びPip9b2-)と比較して示すグラフである(エラーバー:平均値の標準誤差、n=3~10)。
【0017】
図2図2A~2Cは、C57BL/6マウスにおける30mg/kgのシングル静脈内ボーラス投与後、それぞれ、(A)前脛骨筋、(B)横隔膜、及び(C)心筋における、異なるリンカーを介して治療用アンチセンスPMODMDに結合されたDPEP3.1ペプチドのインビボ有効性を示すグラフである。ジストロフィン(エクソン23)のエクソンスキッピング用qPCRによって、有効性を投与後7日間測定した。0.9%食塩水コントロール及び同じ治療用アンチセンスPMODMDに結合した現在利用可能なペプチドキャリヤー(R6Gly-及びPip9b2-)と比較して、エクソンスキッピング効力を使用した。DPEP3.1d-PMODMDについての外れ値は、誤った注入を示唆する(エラーバー:平均値の標準誤差、n=3~10)。
【0018】
図3図3は、異なるリンカーを介して治療用アンチセンスPMODMDに結合したDPEP1.9ペプチド10mg/kg、30mg/kg、又は50mg/kgの単一用量の投与後、day2及びday7において、C57BL/6マウスの尿において測定した尿中クレアチニンに対する、正規化した尿中の腎臓損傷マーカー(KIM-1)の相対レベルを、0.9%食塩水コントロール及び同じ治療用アンチセンスPMODMDに結合した現在利用可能なペプチドキャリヤー(R6Gly-及びPip9b2-)と比較して示すグラフである(エラーバー:平均値の標準誤差、n=3~10)。
【0019】
図4図4A~4Cは、C57BL/6マウスにおける10mg/kg、30mg/kg、又は50mg/kgのシングル静脈内ボーラス投与後、(A)前脛骨筋、(B)横隔膜、及び(C)心筋における、異なるリンカーを介して治療用アンチセンスPMODMDに結合されたDPEP1.9ペプチドのインビボ有効性を示すグラフである。ジストロフィン(エクソン23)のエクソンスキッピング用qPCRによって、有効性を投与後7日間測定した。0.9%食塩水コントロール及び同じ治療用アンチセンスPMODMDに結合した現在利用可能なペプチドキャリヤー(R6Gly-及びPip9b2-)と比較して、エクソンスキッピング効力を使用した(エラーバー:平均値の標準誤差、n=3~10)。
【0020】
図5図5は、リンカーa、b、及びdを各種の濃度で使用する異なるDPEP1/3-[CAG]7複合体が、DMPK遺伝子において2600のCTG反復を有するDM1患者に由来するDM1患者の筋芽細胞におけるMbnl1-依存性転写のスプライシング欠損を是正したことを示すグラフである。
【0021】
図6図6は、各種の濃度のリンカーa、b、及びdを使用する異なるDPEP1/3-[CAG]7PMO複合体が、各種の濃度でDMPK遺伝子において2600の反復を有するDM1患者に由来するDM1患者の筋芽細胞におけるインビトロDMD転写のスプライシング欠損を是正することを示すグラフである。
【0022】
図7図7は、各種の濃度のリンカーa、b、及びdを使用する異なるDPEP1/3-[CAG]7複合体が、DMPK遺伝子において2600のCTG反復を有するDM1患者に由来するDM1患者の筋芽細胞におけるMbnl1-依存性転写のスプライシング欠損を是正したことを示すグラフである。
【0023】
図8図8は、リンカーa、b、及びdを使用する異なったDPEP1/3-[CAG]7複合体の各種の用量にて48時間遺伝子導入した2600のCTG反復を有するDM1患者の筋芽細胞の筋芽細胞生存率を示すグラフである。複合体の濃度は、細胞死を生ずることなく、治療レベルから数倍増大される。
【0024】
図9図9は、リンカーa、b、及びdを使用する異なったDPEP1/3-[CAG]7複合体40μMにて遺伝子導入した肝細胞の細胞生存率を示すグラフである。複合体の濃度は、Pip6a複合体に反して、細胞死を生ずることなく、治療レベルから数倍増大される。
【0025】
図10図10は、標準曲線に適合するように希釈したサンプルでのELISA(R&D cat# MKM100)によって測定したC57BL6雌マウスへの異なるDPEP1/3-[CAG]7PMO複合体の注射後day2及びday7からの尿中毒性マーカーを示す。値は、尿中のタンパク質濃度を説明するために、尿中クレアチニンレベルに正規化した(Harwell)。KIM-1レベルは、先のPipシリーズのペプチドキャリヤーによって惹起される数倍の増大と比べて、食塩水コントロール注射と同様であった。
【0026】
図11図11は、標準曲線に適合するように希釈したサンプルでのELISA(R&D cat# MKM100)によって測定したC57BL6雌マウスへの異なるDPEP1/3-[CAG]7PMO複合体の注射後day2及びday7からの尿中毒性マーカーを示す。値は、尿中のタンパク質濃度を説明するために、尿中クレアチニンレベルに正規化した(Harwell)。VKIM-1レベルは、先のPipシリーズのペプチドキャリヤーによって惹起される数倍の増大と比べて、食塩水コントロール注射と同様であった。
【0027】
図12図12は、異なったリンカーを有する異なったDPEP1/3-[CAG]7PMOをボーラスIV(尾静脈)注入したC57BL6雌マウス(年齢:8~10週、n=5(1グループ当り))からの血漿において評価した毒性マーカーを示す。注入後day7において、血漿におけるコレクションを食塩水と比較した。全てのレベルが、注入後day7において、食塩水コントロール注入と同様であった。
【0028】
図13図13は、異なったリンカーを有する異なったDPEP1/3-[CAG]7PMOをボーラスIV(尾静脈)注入したC57BL6雌マウス(年齢:8~10週、n=5(1グループ当り))からの血漿において評価した毒性マーカーを示す。注入後day7において、血漿におけるコレクションを食塩水と比較した。全てのレベルが、注入後day7において、食塩水コントロール注入と同様であった。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明者らは、複合体においてキャリヤーと治療用分子との間に位置するリンカーは、複合体の毒性に対して驚くべき効果を有することを発見した。
【0030】
複合体内においてリンカーが使用される場合、リンカーは、代表的には、キャリヤー分子を治療用分子に結合するとの唯一の理由で使用される小分子である。現在までのところ、リンカー自体が複合体の特性に何らかの役割を有することは期待又は意図されてはいない。
【0031】
発明者らが知る限りでは、リンカーの選択が、どのように複合体の特性に影響を及ぼすかについて、特に、リンカーの選択が、どのように複合体の毒性に影響を及ぼすかについての研究は行われていない。
【0032】
本発明において、発明者らは、いくつかのペプチドキャリヤー複合体の毒性に対する異なるリンカーの使用の影響について研究を行った。発明者らは、治療用複合体の毒性を積極的に改善するいくつかのリンカーを特定した。驚くべきことには、発明者らは、本発明の第1の態様の構造に属するリンカーは、当分野において使用されている他のリンカーと比較すると、キャリヤー-治療用複合体の毒性を、相当の量で低減するように作用するとの知見を得た。
【0033】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、純粋に、科学的推測から、発明者らは、本発明の第1の態様の定義内に属するリンカーが、キャリヤー及び治療用分子を、プロテアーゼによる開裂に対して安定化及び保護する特殊な方向で配置する能力を有するものと考えている。結果として、複合体は、全体として、従来のリンカーを使用する同様の複合体と比べて、毒性が低減されている。この有利な配向性は、キャリヤーを治療用分子に結合する炭素鎖の長さに由来する。発明者らは、炭素鎖の特別な長さが、キャリヤーのチャージと治療用分子との間に充分な距離を提供すると考えている。加えて、発明者らは、前記リンカーの破壊時に生成される代謝物は毒性が少ないと考えている。
【0034】
有利には、このような毒性が低減されたリンカーの発見は、既に開発された及び新規に開発された治療用複合体が、新たに、臨床の場で使用可能であることを意味する。さらに、リンカーが、キャリヤー及び治療用分子とは独立した部分であるため、それらは、キャリヤーの細胞透過性又は治療用分子の効力に影響を及ぼすことなく、各種のキャリヤー及び治療用分子を有する各種の多く複合体において容易に使用される。
【0035】
本発明のいずれかの上記態様の特定の特徴については、下記の項目において定義する。
【0036】
本発明は、上記の態様及び特徴の組み合わせを含むが、但し、このような組み合わせが明らかに容認されない又は明白に回避される場合を除く。
【0037】
ここで使用する項目は、単に、構成上のためのものであり、記載する主題を限定するものとして解釈されてはならない。
【0038】
リンカー
リンカーは、キャリヤーを治療用分子に共有結合するために使用される。本発明の複合体は、式(I)によって定義される少なくとも1のリンカーを含んでなる。
【0039】
好適には、各リンカーは、先に定義された式(I)、すなわち、
-T1-(CR1R2)n-T2- (I)
による構造を有する。
【0040】
1具体例において、T1は-NH-である。他の具体例において、T1は-C(O)-である。
【0041】
1具体例において、T2は-C(O)-である。
【0042】
1具体例において、各R1は式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-N(RA3)-、-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)-、-N(RA3)C(O)N(RA3)-、-N(RA3)C(N RA3)N(RA3)-、又は-S-であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、更なる治療用分子であるか、又は水素、(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールから選ばれる(ここで、各(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、オキソ、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、NRA4RA5、又は(1-4C)アルコキシ(ここで、RA4及びRA5は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)から選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基である。
【0043】
1具体例において、各R1は式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-N(RA3)-、-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)-、-N(RA3)C(O)N(RA3)-、-N(RA3)C(N RA3)N(RA3)-、又は-S-であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、水素、(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル又はヘテロアリールから選ばれる(ここで、各(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、オキソ、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、NRA4RA5、又は(1-4C)アルコキシ(ここで、RA4及びRA5は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)から選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基である。
【0044】
他の具体例において、各R1は式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-N(RA3)-、-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)-、-N(RA3)C(O)N(RA3)-、-N(RA3)C(NRA3)N(RA3)-、又は-S-であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、更なる治療用分子であるか、又は水素、(1-6C)アルキル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、又はヘテロアリールから選ばれる(ここで、各(1-6C)アルキル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、ハロ、又はヒドロキシから選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基である。
【0045】
1具体例において、各R1は式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X1は、不在か、又は-C(O)-、-C(O)O-、-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、更なる治療用分子であるか、又は水素、(1-6C)アルキル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、又はヘテロアリールから選ばれる(ここで、各(1-6C)アルキル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、ハロ、又はヒドロキシから選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基である。
【0046】
1具体例において、各R1は式
-Y1-X1-Z1
[ここで、
Y1は、不在か、又は式
-[CH2]-
(ここで、mは、1又は2から選ばれる整数である)の基であり;
X1は、不在か、又は-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)-であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z1は、水素又は(1-2C)アルキルである]
の基である。
【0047】
特定の具体例では、Z1は更なる治療用分子であってもよい。更なる治療用分子は、T2に結合する第1の治療用分子と同一又は異なるものであってもよい。
【0048】
1具体例において、各R2は、それぞれ独立して、式
-Y2-X2-Z2
[ここで、
Y2は、不在か、又は式
-[CRA1RA2]m-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRA1及びRA2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;
X2は、不在か、又は-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-N(RA3)-、-N(RA3)-C(O)-、-C(O)-N(RA3)-、-N(RA3)C(O)N(RA3)-、-N(RA3)C(NRA3)N(RA3)-、又は-S-であり(ここで、各RA3は、独立して、水素又はメチルから選ばれる);及び
Z2は、水素、(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールから選ばれ(ここで、各(1-6C)アルキル、(2-6C)アルケニル、(2-6C)アルキニル、アリール、(3-6C)シクロアルキル、(3-6C)シクロアルケニル、又はヘテロアリールは、任意に、(1-4C)アルキル、オキソ、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、NRB4RB5、又は(1-4C)アルコキシ(ここで、RB4及びRB5は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)から選ばれる1以上の置換基によって置換される)]
の基である。
【0049】
1具体例において、各R2は、独立して、式
-Y2-Z2
[ここで、Y2は、不在か、又は式
-[CRB1RB2]m-
(ここで、mは、1、2、3、又は4から選ばれる整数であり、及びRB1及びRB2は、それぞれ独立して、水素又は(1-2C)アルキルから選ばれる)の基であり;及び
Z2は、水素又は(1-6C)アルキルである]
の基である。
【0050】
好適な具体例では、各R2はHである。
【0051】
特定の具体例では、nは1である。
【0052】
特定の具体例では、nは2又は3である。
【0053】
1具体例では、ここで定義する複合体が提供され、当該複合体は、下記の構造の1つを有する。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】
【0054】
特定の具体例では、リンカーは、アミノ酸又はその誘導体である。このように、リンカーは、キャリヤーを治療用分子と結合するアミノ酸又は修飾アミノ酸である。アミノ酸は修飾され、キャッピング基(例えば、無水酢酸でのキャッピングにより形成されたアセチルキャッピング基)又は保護基を含むことができる。好適には、キャッピング基又は保護基は、アミノ酸の側鎖上に存在する。
【0055】
好適には、アミノ酸は、側鎖、N-末端、又はC-末端のいずれかの少なくとも2によって、少なくとも1のキャリヤー及び少なくとも1の治療用分子に結合される。好適には、アミノ酸リンカーは、側鎖、N-末端、又はC-末端によって、少なくとも1のキャリヤーに結合される。好適には、アミノ酸リンカーは、側鎖、N-末端、又はC-末端によって、少なくとも1の治療用分子に結合される。例えば、アミノ酸リンカーは、それぞれ、N-末端及び側鎖、それぞれ、C-末端及び側鎖、又はそれぞれ、N-末端及びC-末端によって、少なくとも1のキャリヤー及び少なくとも1の治療用分子に結合される。1具体例では、リンカーは、N-末端及びC-末端を介して結合されたアミノ酸である。1具体例では、リンカーは、N-末端を介してキャリヤーに、及びC-末端を介して治療用分子に結合されるアミノ酸である。1具体例では、リンカーは、C-末端を介してキャリヤーに、及びN-末端を介して治療用分子に結合されるアミノ酸である。好適には、アミノ酸側鎖は第2の治療用分子に結合される。
【0056】
好適には、リンカーは、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、バリン、ロイシン、ヒスチジン、トリプトファン、トレオニン、セリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、及びチロシン、又はそれらの誘導体から選ばれるアミノ酸である。
【0057】
好適には、リンカーは、グルタミン酸又はその誘導体である。好適には、リンカーは、GABAシャント内で見られるグルタミン酸及びその誘導体である。好適には、リンカーは、グルタミン酸、コハク酸、又はγ-アミノ酪酸(GABA)から選ばれる。
【0058】
1具体例では、リンカーは、N-末端を介してキャリヤーに結合し、及びC-末端を介して治療用分子に結合するGABAである。
【0059】
1具体例では、リンカーは、カルボキシル基の1つを介して治療用分子に結合し、他のカルボキシル基を介してキャリヤーに結合するコハク酸である。
【0060】
1具体例では、リンカーは、N-末端を介してキャリヤーに結合し、及び側鎖を介して治療用分子に結合するグルタミン酸である。
【0061】
1具体例では、リンカーは、C-末端を介してキャリヤーに結合し、及び側鎖を介して治療用分子に結合するグルタミン酸である。
【0062】
定義
全体を通して、符号「X」は、各種の形のアミノ酸であるアミノヘキサン酸、例えば、6-アミノヘキサン酸を意味する。
【0063】
全体を通して、符号「B」は、アミノ酸であるβ-アラニンを意味する。
【0064】
全体を通して、符号「[Hyp]」は、アミノ酸であるヒドロキシプロリンを意味する。
【0065】
全体を通して、符号「Ac」は、関連するペプチドのアセチル化を意味する。
【0066】
全体を通して、他の大文字の符号は、許容されたアルファベットのアミノ酸コードに従って関連する遺伝的に符号化されたアミノ酸を意味する。
【0067】
本明細書において、用語「アルキル」は、直鎖状及び分枝状の両方のアルキル基を含む。個々のアルキル基に関する表示、例えば、「プロピル」は、特異的に直鎖状型のみを意味し、個々の分枝状アルキルに関する表示、例えば、「イソプロピル」は、特異的に分枝鎖型のみを意味する。例えば、「(1-6C)アルキル」は、(1-4C)アルキル、(1-3C)アルキル、プロピル、イソプロピル、及びt-ブチルを含む。他の基についても同様であり、例えば、「フェニル(1-6C)アルキル」は、フェニル(1-4C)アルキル、ベンジル、1-フェニルエチル、及び2-フェニルエチルを含む。
【0068】
ここで使用するように、用語「アルケニル」は、少なくとも1の二重結合を含有する脂肪族基を表し、「未置換アルケニル」及び「置換アルケニル」の両方を含むものであり、後者は、アルケニル基の1以上の炭素における水素を置き換える置換基を有するアルケニルモイエティーを表す。このような置換基は、1以上の二重結合に含まれる又は含まれない1以上の炭素上に存在する。例えば、1以上のアルキル基、カルボサイクリック基、アリール基、基、又は複素環基によるアルケニル基の置換が考えられる。
【0069】
ここで使用するように、用語「アルキニル」は、少なくとも1の三重結合を含有する脂肪族基を表し、「未置換アルキニル」及び「置換アルキニル」の両方を含むものであり、後者は、アルキニル基の1以上の炭素における水素を置き換える置換基を有するアルキニルモイエティーを表す。このような置換基は、1以上の三重結合に含まれる又は含まれない1以上の炭素上に存在する。さらに、このような置換基は、ここで考慮されるすべてのものを含む。
【0070】
単独で又は接頭辞として使用される用語「(m-nC)」又は「(m-nC)基」は、m~n個の炭素原子を有する各種の基を表す。
【0071】
「(3-8C)シクロアルキル」は、炭素原子3~8個を含有する炭化水素環、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はビシクロ[2.2.1]ヘプチルを意味する。
【0072】
「(3-8C)シクロアルケニル」は、少なくとも1の二重結合を含有する炭化水素環、例えば、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、又はシクロヘプテニル、例えば、3-シクロヘキセン-1-イル、又はシクロオクテニルを意味する。
【0073】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を表す。
【0074】
「架橋環系」は、2つの環が2以上の原子を共有する環系を意味する(例えば、Jerry MarchによるAdvanced Organic Chemistry, 4版, Wiley Interscience, p. 131-133, 1992参照)。架橋複素環系の例としては、アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタン、アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタン、及びキヌクリジンが含まれる。
【0075】
用語「アリール」は、炭素原子5~12個を有する芳香族環又は多環系芳香族環を意味する。用語アリールは、1価の種及び2価の種の両方を含む。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル等が含まれるが、これらに限定されない。特別な具体例では、アリールは、任意に置換されたフェニルである。
【0076】
用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」は、窒素、酸素、又はイオウから選ばれる1以上(例えば、1~4、特に、1、2、又は3)のヘテロ原子を含有する芳香族単環、二環、又は多環を意味する。用語ヘテロアリールは、1価の種及び2価の種の両方を含む。ヘテロアリール基の例としては、5~12の環メンバー、より一般的には、5~10の環メンバーを含有する単環基及び二環基が含まれる。ヘテロアリール基は、例えば、5員、又は6員の単環又は9員又は10員の二環であり、例えば、縮合5及び6員環、又は2つの縮合6員環から形成された二環構造体である。各環は、代表的には窒素、イオウ、及び酸素から選ばれる約4までのヘテロ原子を含有できる。代表的には、ヘテロアリール環は、3以下のヘテロ原子、より一般的には、2以下のヘテロ原子、例えば、1のヘテロ原子を含有する。1具体例では、ヘテロアリール環は、少なくとも1の窒素原子を含有する。ヘテロアリール環における窒素原子は、イミダゾール又はピリジンにおけるように塩基性であり、インドール又はピロール窒素の場合のように、本質的に非塩基性である。一般に、ヘテロアリール基に存在する塩基性窒素原子の数は、環の各種のアミノ酸置換基を含めて、少なくとも5以上である。
【0077】
ヘテロアリールの例としては、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5-トリアゼニル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インダゾリル、プリニル、ベンゾフラザニル、キノリニル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、プテリジニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、フェナジニル、ベンズイソキノリニル、ピリドピラジニル、チエノ[2,3-b]フラニル、2H-フロ[3,2-b]-ピラニル、5H-ピラジノ[2,3-d]-o-オキサジニル、1H-ピラゾロ[4,3-d]-オキサゾリル、4H-イミダゾ[4,5-d]チアゾリル、ピラジノ[2,3-d]ピリダジニル、イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアジニルが含まれる。「ヘテロアリール」は、少なくとも1の環が、窒素、酸素、又はイオウから選ばれる1以上のヘテロ原子を含有する限り、少なくとも1の環が芳香族環であり、他の環の1以上が非芳香族、飽和又は部分的に飽和の環である部分的に芳香族のジ-又は多環系も含む。部分的に芳香族のヘテロアリール基の例としては、例えば、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾフラニル、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[1,4]ジオキシニル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、2,2-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾチエニル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾフラニル、インドリニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,8-ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロピリジド[2,3-b]ピラジニル、及び3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジニルが含まれる。
【0078】
5員ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、フラザニル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、及びテトラゾリル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
6員ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、及びトリアジニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
二環式ヘテロアリール基は、例えば、下記の中から選ばれる基である:
環ヘテロ原子1、2、又は3個を含有する5員又は6員環に融合したベンゼン環;
環ヘテロ原子1、2、又は3個を含有する5員又は6員環に融合したピリジン環;
環ヘテロ原子1又は2個を含有する5員又は6員環に融合したピリミジン環;
環ヘテロ原子1、2、又は3個を含有する5員又は6員環に融合したピロール環;
環ヘテロ原子1又は2個を含有する5員又は6員環に融合したピラゾール環;
環ヘテロ原子1又は2個を含有する5員又は6員環に融合したピラジン環;
環ヘテロ原子1又は2個を含有する5員又は6員環に融合したイミダゾール環;
環ヘテロ原子1又は2個を含有する5員又は6員環に融合したオキサゾール環;
環ヘテロ原子1又は2個を含有する5員又は6員環に融合したイソキサゾール環;
環ヘテロ原子1又は2個を含有する5員又は6員環に融合したチアゾール環;
環ヘテロ原子1又は2個を含有する5員又は6員環に融合したイソチアゾール環;
環ヘテロ原子1、2、又は3個を含有する5員又は6員環に融合したチオフェン環;
環ヘテロ原子1、2、又は3個を含有する5員又は6員環に融合したフラン環;
環ヘテロ原子1、2、又は3個を含有する5員又は6員の芳香族複素環に融合したシクロヘキシル環;及び
環ヘテロ原子1、2、又は3個を含有する5員又は6員の芳香族複素環に融合したシクロペンチル環。
【0081】
5員環に融合した6員環を含有する二環式ヘテロアリール基の特別な例としては、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、イソベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、プリニル(例えば、アデニニル、グアニニル)、インダゾリル、ベンゾジオキサリル、及びピラゾロピリジニル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
2つの融合した6員環を含有する二環式ヘテロアリール基の特別な例としては、キノリニル、イソキノリニル、クロマニル、チオクロマニル、クロメニル、イソクロメニル、クロマニル、イソクロマニル、ベンゾジオキサニル、キノリジニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾジアジニル、ピリドピリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、及びプテリジニル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
用語「任意に置換された」は、置換された基、構造体、又は分子及び置換されていない基、構造体、又は分子を意味する。用語「ここで、R1基内のCH、CH2、CH3基又はヘテロ原子(すなわち、NH)のいずれかが任意に置換されている」は、R1基の水素原子の(いずれかの)1が、適切に定義された基によって置換されていることを意味する。
【0084】
任意の置換基が「1以上の」基から選ばれる場合には、この定義は、全ての置換基が特定された基の1から選ばれること又は置換基が、特定された基の2以上から選ばれることを含むと理解されなければならない。
【0085】
キャリヤー
本発明の複合体は、治療用分子をキャリヤー分子に結合して前記複合体を形成するために使用されるリンカーを含んでなる。
【0086】
一般的には、キャリヤー分子は、治療用分子が遺伝子、転写物、又はタンパク質であるかに関わらず、治療標的に達するように治療用分子を輸送することを援助する。キャリヤーは、治療用分子について安定化効果を有し、治療用分子が、分解することなく、治療標的に達することを可能にする。同様に、キャリヤーは、治療用分子の標的細胞への移行を容易にする効果を有する。
【0087】
好適には、本発明の複合体において、各種の既知のキャリヤー分子が使用される。好適には、キャリヤーとしては、各種の生物学的に許容的な分子、例えば、タンパク質、ペプチド、脂肪酸、ポリマー、ナノ粒子、核酸ポリマーが含まれる。
【0088】
1具体例では、キャリヤーはペプチドである。
【0089】
好適には、キャリヤーペプチドは、キャリヤーペプチドのN-末端又はC-末端において、リンカーに結合される。
【0090】
好適には、ここに開示する構造のいずれかにおいて、ペプチドキャリヤーは、リンカーを介して、ペプチドのN又はC-末端において治療用分子に結合され、同様に、治療用分子は、リンカーを介して、ペプチドキャリヤーのN又はC-末端において結合される。
好適なペプチドキャリヤーは、当分野において知られている。このようなペプチドキャリヤーは、例えば、GB1812972.6、GB1812980.9、WO2009/147368、WO2013/030569、WO2009/005793に記載されている。
【0091】
好適には、キャリヤー分子がペプチドである場合は、ペプチドはグリコシル化されていない。好適には、キャリヤー分子はグリコシル化ペプチドではない。
【0092】
好適には、ペプチドキャリヤーは、アミノ酸40個以下の長さである。従って、ペプチドは、オリゴペプチドと見なされる。
【0093】
好適には、ペプチドは、アミノ酸残基3~30個、好適には、アミノ酸残基5~25個、アミノ酸残基10~25個、アミノ酸残基13~23個、アミノ酸残基15~20個の全長を有する。
【0094】
好適には、ペプチドは、アミノ酸残基少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個の全長を有する。
【0095】
好適には、ペプチドは細胞を透過できる。従って、ペプチドは、細胞透過性ペプチドと見なされる。
【0096】
好適には、キャリヤーペプチドは、近接する単一分子である配列を有し、従って、ペプチドの各種ドメインは近接する。好適には、ペプチドは、N-末端及びC-末端の間で、直線状に配列するいくつかのドメインを有することができる。好適には、ペプチドキャリヤーは、各種のタイプのドメイン、例えば、疎水性ドメイン、親水性ドメイン、カチオン性ドメイン、アニオン性ドメイン、中性ドメイン、酸性ドメイン、塩基性ドメインを含んでなる。好適には、ペプチドキャリヤーは、いずれかの配置の幾つものドメインを含んでなる。
【0097】
ここで、「カチオン性」とは、生理的pHにおいて全体として正電荷を有するアミノ酸又はアミノ酸のドメインを意味する。
【0098】
好適には、各カチオン性ドメインは、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、少なくとも10.0、少なくとも10.5、少なくとも11.0、少なくとも11.5、少なくとも12.0の等電点(pI)を有する。
【0099】
好適には、各カチオン性ドメインは、少なくとも10.0の等電点(pI)を有する。
【0100】
好適には、各カチオン性ドメインは、10.0~13.0の等電点(pI)を有する。
【0101】
好適には、カチオン性ドメインの等電点は、当分野において利用可能な各種の好適な手段によって、生理的pHにおいて算定される。好適には、IPC(www.isoelectric.org)のLukasz Kozlowskiによって開発されたウエブ系アルゴリズム(Biol Direct. 2016; 11: 55. DOI: 10.1186/s13062-016-0159-9)を使用することによる。
【0102】
ここでは、「疎水性」とは、撥水能力を有する又は水と混合しないアミノ酸又はアミノ酸のドメインを意味する。
【0103】
好適には、各疎水性ドメインは、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、少なくとも1.0、少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.3の疎水性を有する。
【0104】
好適には、各疎水性ドメインは、0.4~1.4の疎水性を有する。
【0105】
好適には、疎水性は、White及びWimley:W.C. Wimley及びS.H. White, 「膜界面におけるタンパク質に関する実験的に測定された疎水性スケール」, Nature Struct Biol, 3: 842 (1996)によって測定される。
【0106】
好適には、ペプチドキャリヤーは、疎水性ドメイン及び/又はカチオン性ドメインを含んで又はからなる。好適には、ペプチドキャリヤーは、少なくとも1のカチオン性ドメイン及び少なくとも1の疎水性ドメインを含んでなる。好適には、ペプチドキャリヤーは、カチオン性ドメイン2個及び疎水性ドメイン1個からなる。
【0107】
好適には、カチオン性ドメインは、ペプチドキャリヤーのN及びC-末端に配置される。好適には、ペプチドキャリヤーのいずれかの末端である。好適には、1以上の疎水性ドメインは、ペプチドキャリヤーの中心に配置される。好適には、疎水性ドメインは、2つのカチオン性ドメインを分離する。好適には、各疎水性ドメインは、その側部に、カチオン性ドメインを保持する。好適には、カチオン性ドメインは、他のカチオン性ドメインと近接しない。
【0108】
好適には、各ドメインは、アミノ酸残基3~15個の長さである。好適には、アミノ酸残基3~7個の長さである。好適には、同じタイプの各ドメインは同様の長さであり、好適には、同じタイプの各ドメイン同じ長さである。好適には、各カチオン性ドメインは、アミノ酸残基4、5、6、又は7個の長さを有する。
【0109】
好適には、各疎水性ドメインは、アミノ酸残基3~6個の長さを有する。好適には、各疎水性ドメインは、アミノ酸残基5個の長さを有する。
【0110】
好適には、ペプチドキャリヤーは、正に帯電したペプチドである
【0111】
好適には、ペプチドキャリヤーは、アルギニンリッチペプチドである。好適には、ペプチドキャリヤーは、アルギニン残基少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも32%、少なくとも34%、少なくとも36%、少なくとも38%、少なくとも40%、少なくとも42%、少なくとも44%、少なくとも46%、少なくとも48%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含んでなる。好適には、ペプチドキャリヤーは、多数のアルギニン残基を含んでなる。
【0112】
好適には、ペプチドキャリヤーは、人工のアミノ酸を含んでなるものではない。好適には、ペプチドキャリヤーは、アミノヘキサン酸残基を含んでなるものではない。ここで、「人工の」アミノ酸又は残基は、天然には存在しない各種のアミノ酸を意味し、合成のアミノ酸、修飾アミノ酸(例えば、糖にて修飾したもの)、非天然アミノ酸、人為のアミノ酸、スペーサー、及び非ペプチド結合スペーサーを含む。
【0113】
合成のアミノ酸は、ヒトによって化学的に合成されたものである。
【0114】
疑義を回避するため、アミノヘキサン酸(X)は、本発明の内容においては、人工のアミノ酸である。
【0115】
好適には、アミノ酸は正に帯電している。
【0116】
好適には、カチオン性ドメインは、アルギニンリッチである。好適には、各カチオン性ドメインは、大部分がアルギニン残基からなる。好適には、カチオン性ドメインは、アルギニン残基少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含んでなる。好適には、各カチオン性ドメインは、40~70%のアルギニン残基を含んでなる。
【0117】
好適には、各疎水性ドメインは、大部分がアルギニン残基からなる。好適には、疎水性ドメインは、疎水性アミノ酸残基少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%を含んでなる。好適には、各疎水性ドメインは疎水性アミノ酸残基からなる。
【0118】
好適には、各カチオン性ドメインは、アルギニン残基少なくとも3個、好適には、アルギニン残基少なくとも4個を有する。好適には、各カチオン性ドメインは、アルギニン残基4、5、6、又はそれ以上を含有する。好適には、カチオン性ドメインは、連続するアルギニン残基3個未満、好適には、連続するアルギニン残基2個未満を含んでなる。
【0119】
好適には、カチオン性ドメインは、次の中から選ばれるアミノ酸ユニットを含んでなる:RBR、RXR、XXR、XRR、RRX、BXR、RXB、XRB、RBB、BRB、BBR、RRB、BRR、及びBRX R、H、B、RR、HH、BB、RH、HR、RB、BR、HB、BH、RBR、RBB、BRR、BBR、BRB、RBH、RHB、HRB、BRH、HRR、RRH、HRH、HBB、BBH、RHR、BHB、HBH、又はその各種の組み合わせ。
【0120】
好適には、カチオン性ドメインは、各種の組み合わせ又は各種の順のR、RR、RJR、RRJ、JRRの中から選ばれるアミノ酸ユニットから形成される。ここで、Jは各種の非天然アミノ酸を表す。
【0121】
好適には、カチオン性ドメインは、(RXR)n(ここで、n=2、3、又は4)(配列番号:1~3)、及び/又は(RBR)n(ここで、n=2、3、又は4)(配列番号:4~6)、及び/又は(RHR)n(ここで、n=2、3、又は4)(配列番号:7~9)を含んでなる又はからなる。
【0122】
好適には、カチオン性ドメインは、セリン、プロリン、及び/又はヒドロキシプロリン残基を含んでいてもよい。好適には、カチオン性ドメインは、さらに、RP、PR、PP、RPR、RRP、PRR、PRP、Hyp;R[Hyp]R、RR[Hyp]、[Hyp]RR、[Hyp]R[Hyp]、[Hyp][Hyp]R、R[Hyp][Hyp]、SB、BS、又はその各種の組み合わせ、又は上記リストアップしたアミノ酸ユニットとの各種の組み合わせを含んでなることができる。
【0123】
好適には、疎水性ドメインは、次の配列:ZAA、ZA、Z、AZA、AZ、ZAZ、ZZA、及びZZZの1個を含んでなることができる。
【0124】
ここで、Zは、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(TIC)残基を表す。
【0125】
ここで、Aは、上記で定義した疎水性アミノ酸残基を表す。
【0126】
好適には、疎水性ドメインは、次の配列の1つから選ばれる:GFTGPL(配列番号:10)、QFL、Z、ZL、F、FL、FQILY(配列番号:11)、FQ、WF、QF、FQ、及びYQFLI(配列番号:12)。好適には、コアドメインは、次の配列の1つから選ばれる:Z、F、及びFL、又はその各種の組み合わせ。ここで、Zは、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(TIC)残基。
【0127】
疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、次の配列の1つを含んでなる:YQFLI(配列番号:12)、FQILY(配列番号:11)、ILFQY(配列番号:13)、FQIY(配列番号:14)、WWW、WWPWW(配列番号:15)、WPWW(配列番号:16)、WWPW(配列番号:17)、ILFQ(配列番号:18)ILIQ(配列番号:19)、IKILFQN(配列番号:20)、IHILFQN(配列番号:21)、IRILFQN(配列番号:22)、IILFQN(配列番号:23)、KILFQN(配列番号:24)、HILFQN(配列番号:25)、RILFQN(配列番号:26)、ILFQN(配列番号:27)、HLIQN(配列番号:28)、KILIQN(配列番号:29)、KILIQY(配列番号:30)、HILIQN(配列番号:31)、RILIQN(配列番号:32)、HILIQY(配列番号:33)、RILIQY(配列番号:34)、ILIQN(配列番号:35)、ILIQY(配列番号:36)、又は各種のその組み合わせ、又は上記のリストアップしたアミノ酸ユニットとの各種の組み合わせ。
【0128】
好適には、ペプチドキャリヤーは、次の配列の1つからなることができる:
RRRRR (配列番号:37)
RRRRRR (配列番号:38)
RRRRRRR (配列番号:39)
RRRRRRRR (配列番号:40)
(RXRRBR)2 (配列番号:41)
RXRRBRRXRRBRX (配列番号:42)
RXRRXRRXRRXRX (配列番号:43)
RXRRBRRFQILYRBRXR (配列番号:44)
RXRRBRRXRILFQYRXRBRXR (配列番号:45)
RXRRBRRXRILFQYRXRXRXR (配列番号:46)
RXRRXRILFQYRXRRXR (配列番号:47)
RBRRXRRBRILFQYRBRXRBR (配列番号:48)
RBRRXRRBRILFQYRXRBRXR (配列番号:49)
RBRRXRRBRILFQYRXRRXR (配列番号:50)
RBRRXRRBRILFQYRXRBRX (配列番号:51)
RXRRBRRXRILFQYRXRRXR (配列番号:52)
RXRRBRRXRILFQYRXRBRX (配列番号:53)
RXRRBRRXRILFQYRXRBRXR (配列番号:54)
RXRRBRRXRYQFLIRXRBRXR (配列番号:55)
RXRRBRRXRIQFLIRXRBRXR (配列番号:56)
RXRRBRRXRQFLIRXRBRXR (配列番号:57)
RXRRBRRXRQFLRXRBRXR (配列番号:58)
RXRRBRRXYRFLIRXRBRXR (配列番号:59)
RXRRBRRXRFQILYRXRBRXR (配列番号:60)
RXRRBRRXYRFRLIXRBRXR (配列番号:61)
RXRRBRRXILFRYRXRBRXR (配列番号:62)
RXRRBRRXRIYQFLIRXRBRXR (配列番号:63)。
【0129】
好適には、ペプチドキャリヤーは、次の配列の1つからなることができる:
YQFLIRBRRXRBRXBRXRBYQFLI (配列番号:64)
YQFLIRBRRBRBRBRRBYQFLI (配列番号:65)
YQFLIRBRRBRBRBBRXRBYQFLI (配列番号:66)。
【0130】
好適には、ペプチドキャリヤーは、次の配列の1つからなることができる。
RBRRBRRFQILYRBRBR (配列番号:67)
RBRRBRRYQFLIRBRBR (配列番号:68)
RBRRBRRILFQYRBRBR (配列番号:69)
RBRRBRFQILYBRBR (配列番号:70)
RBRRBRRFQILYRBHBH (配列番号:71)
RBRRBRRFQILYHBHBR (配列番号:72)
RBRRBRFQILYRBHBH (配列番号:73)。
【0131】
好適には、ペプチドキャリヤーはN-末端で修飾される。好適には、ペプチドキャリヤーは、N-アセチル化、N-メチル化、N-トリフルオロアセチル化、N-トリフルオロメチルスルホニル化、又はN-メチルスルホニル化されるか、又は追加の脂肪酸にて修飾される。好適には、ペプチドキャリヤーはN-アセチル化される。
【0132】
任意に、ペプチドキャリヤーのN-末端は修飾されなくてもよい。
【0133】
1具体例では、ペプチドキャリヤーはN-アセチル化される。
【0134】
好適には、キャリヤーは、共有結合によって、リンカーに結合される。好適には、リンカーは、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合によって、キャリヤーに共有結合される。好適には、キャリヤーは、アミド結合又はエステル結合によってリンカーに結合される。
【0135】
治療用分子
本発明の複合体は、前記複合体を形成するため、キャリヤー分子に結合した治療用分子を含んでなり、複合体は、治療用分子を適切な治療標的に輸送することを援助する。
【0136】
治療用分子は、疾患の治療のための各種の分子である。治療用分子は、核酸、ペプチド核酸、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレトチド(例えば、PNA、PMO)、mRNA、gRNA(例えば、CRISPR/Cas9技術の使用における)、短干渉RNA、マイクロRNA、アンタゴミルRNA、ペプチド、環状ペプチド、タンパク質、医薬品、薬物、又はナノ粒子から選ばれる。
【0137】
治療用タンパク質は、抗体、抗原、VHドメイン、VLドメイン、scFv分子、Fcモイエティー、リセプター又はその細胞外ドメイン、Fab、及びリガンド、酵素、成長因子、インターロイキン、サイトカイン、ケモカインのリセプター結合タンパク質から選ばれる。
好適には、治療用分子は核酸である。好適には、治療用分子はオリゴヌクレオチドであり、オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレトチドであってもよい。
【0138】
治療用核酸配列は、入手可能な各種のものから選ばれ、例えば、DMDにおけるエクソンスキッピング用のアンチセンスオリゴヌクレトチドは、https://research-repository.uwa.edu.au/en/publications/antisense-oligonucleotide-induced-exon-skipping-across-the-human-に記載されており、SMAの治療用のISSN1又はIN7配列を補完する治療用アンチセンスオリゴヌクレトチドは、Zhou, HGT, 2013;及びHammond et al, 2016;及びOsmanら, HMG, 2014に記載されている。1具体例では、治療用分子はアンチセンスオリゴヌクレトチドである。
【0139】
好適には、アンチセンスオリゴヌクレトチドは、ホスホルアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)からなる。
【0140】
或いは、オリゴヌクレオチドは、修飾PMO又は各種の他の電荷的中性オリゴヌクレオチド、例えば、ペプチド核酸(PNA)、化学的修飾PNA(例えば、γ-PNA(Bahal, Nat.Comm. 2016))、オリゴヌクレオチドホスホルアミデート(ここで、ホスフェートの非結合酸素は、アミン又はアルキルアミンによって置換される;例えば、WO2016028187A1に記載のもの)、又は各種の他の部分的に又は完全に電荷的に中和されたオリゴヌクレオチドである。
【0141】
1具体例では、複合体の治療用分子は、遺伝子標的のプレ-mRNAを補完するオリゴヌクレオチドである。1具体例では、治療用分子は低分子干渉RNAである。
【0142】
好適には、遺伝子標的のプレ-mRNAを補完するオリゴヌクレオチドは、立体ブロッキング事象を生じ、プレ-mRNAを変性して、変性されたmRNA及び故に変性された配列のタンパク質を導く。
【0143】
好適には、立体ブロッキング事象は、エクソン封入又はエクソンスキッピングである。1具体例では、立体ブロッキング事象はエクソンスキッピングである。好適には、治療用分子は、エクソンスキッピングを惹起するためのオリゴヌクレオチド配列である。好適には、治療用分子は、1又は多数のエクソンのエクソンスキッピングを惹起するオリゴヌクレオチド配列である。
【0144】
好適には、治療用分子は、遺伝子疾患の治療に使用されるものである。好適には、治療用分子は、遺伝性遺伝子疾患の治療に使用されるものである。好適には、治療用分子は、遺伝性X連鎖遺伝子疾患の治療に使用されるものである。
【0145】
好適には、治療用分子は、遺伝子性神経筋疾患の治療に使用されるものである。好適には、治療用分子は、神経筋系の遺伝子疾患の治療に使用されるものである。好適には、治療用分子は、遺伝性の神経筋遺伝子疾患の治療に使用されるものである。好適には、治療用分子は、遺伝性の神経筋系X連鎖遺伝子疾患の治療に使用されるものである。
【0146】
好適には、上記具体例のいずれかにおいて、治療用分子は、核酸、好適には、オリゴヌクレオチド、好適には、アンチセンスオリゴヌクレトチドである。
【0147】
好適には、治療用分子は、DMD治療に使用されるものである。好適には、DMD治療用の治療用分子は、核酸、好適には、アンチセンスオリゴヌクレトチドである。
【0148】
好適には、アンチセンスオリゴヌクレトチドは、DMD治療用のジストロフィン遺伝子におけるエクソンスキッピングを惹起するためのものである。
【0149】
1具体例では、アンチセンスオリゴヌクレトチド配列は、DMD治療用のジストロフィン遺伝子の単一のエクソンのエクソンスキッピングを惹起するためのものである。好適には、単一のエクソンは、DMDに関連するいずれかのエクソンから選ばれ、ジストロフィン遺伝子におけるいずれかのエクソン、例えば、エクソン45、51、又は53である。好適には、治療用分子の医学的利用は、前記治療用分子を含んでなる複合体の医学的利用と同一である。それ故、好適には、治療用分子に関連してここに記載する医学的利用のいずれかは、本発明の複合体に等しく該当する。
【0150】
いずれかの配列のPMOオリゴヌクレオチドは購入可能である(例えば、米国Gene Tools Inc.)。
【0151】
任意に、水溶性を改善するため、ペプチドへの結合前に、治療用分子(例えば、PMO又はPNA)の一方の又は両方の端部にリジン残基を付加できる。
【0152】
好適には、治療用分子は、分子量5,000 Da以下、好適には、3,000 Da以下、好適には、1,000 Daを有する。
【0153】
イメージング分子
本発明の複合体は、前記複合体を提供するために、等しく、キャリヤー分子に結合するイメージング分子を含んでなる。
【0154】
イメージング分子は、複合体の可視化を可能にする各種の分子である。好適には、イメージング分子は、複合体の位置を、好適には、インビトロ又はインビボでの複合体の位置を表示できる。好適には、イメージング分子を含んでなる複合体の位置を監視する方法であって、対象に複合体を投与すること、及び対象を画像処理して、複合体の位置を示すことを含んでなる方法が提供される。
【0155】
イメージング分子の例としては、検出用分子、対比用分子、又は増強用分子が含まれる。好適なイメージング分子は、放射線核種;フルオロフォア;ナノ粒子(例えば、ナノシェル);ナノカーゴ;発色剤(例えば、酵素);放射性同位体、染料、放射線不透過性物質、蛍光化合物、及びその組み合わせから選ばれる。
【0156】
好適には、イメージング分子は、イメージングテクノロジー(これらは、細胞イメージングテクノロジー又は医用イメージングテクノロジーである)を使用して可視化される。好適な細胞イメージングテクノロジーとしては、例えば、細胞画像解析、蛍光顕微鏡検査、位相差顕微鏡観察、SEM、TEMが含まれる。好適な医用イメージングテクノロジーとしては、例えば、X線、蛍光透視法、MRI、シンチグラフィー、SPECT、PET、CT、CAT、FNRIが含まれる。
【0157】
いくつかのケースでは、イメージング分子は、診断用分子と見なされる。好適には、診断用分子は、複合体を使用して、病気の診断を可能にする。好適には、病気の診断は、イメージング分子を使用して、複合体の位置を測定することを通して達成される。好適には、病気の診断方法が提供され、該方法は、イメージング分子を含んでなる複合体の有効量を対象に投与すること及び複合体の位置をモニターすることを含んでなる。
【0158】
好適には、イメージング分子を含んでなる複合体のリンカーの詳細は、治療用分子を含んでなる複合体に関して上記したものと同じである。
【0159】
好適には、複合体は、細胞及び組織内に、好適には、細胞の核内に、好適には筋組織内に透過できる。
【0160】
複合体
本発明の複合体は、第1の態様に従って定義されるように、少なくとも1のリンカーを使用して、少なくとも1の治療用分子に結合した少なくとも1のキャリヤーを含んでなる。
【0161】
好適には、本発明のリンカーは、複合体を提供するため、キャリヤーを1以上の治療用分子に結合ために使用される。好適には、それ故、本発明の1以上のリンカーは、キャリヤーを1以上の治療用分子に結合するために使用される。
【0162】
好適には、リンカーは、少なくとも1のリンカーを介して、少なくとも1の治療用分子に結合される。好適には、それ故、本発明の複合体は、少なくとも1のリンカーを介して、少なくとも1の治療用分子に結合されたリンカーを含んでなる。
【0163】
好適には、複合体は、1以上のリンカー及び/又は1以上の治療用分子を含んでなることができる。
【0164】
1具体例では、複合体は、リンカーを介して1の治療用分子に共有結合した1のキャリヤーを含んでなる。好適には、複合体は、下記の構造を含んでなるか、又は下記の構造からなる。

[キャリヤー]-[リンカー]-[治療用分子]
【0165】
好適には、キャリヤーは、2つの治療用分子に結合される。このような具体例では、複合体は、1つのリンカーを介して、2つの治療用分子に共有結合したキャリヤーを含んでなることができる。好適には、複合体は、下記の構造を含んでなるか、又は下記の構造からなる。
【化5】
【0166】
或いは、複合体は、2つのリンカーを介して、2つの治療用分子に共有結合したキャリヤーを含んでなることができる。好適には、複合体は、下記の構造を含んでなるか、又は下記の構造からなる。
【化6】
【0167】
或いは、複合体は、下記の構造を含んでなるか、又は下記の構造からなる。
[治療用分子]-[リンカー]-[キャリヤー]-[リンカー]-[治療用分子]
【0168】
好適には、複合体は、1以上のキャリヤーを含んでなることができる。好適には、各キャリヤーは、リンカーを介して共有結合される。好適には、2つのキャリヤーは連続的ではない。好適には、複合体は2つのキャリヤーを含んでなることができる。好適には、それ故、複合体は、好適には、第1のリンカー及び第2のリンカーを介して結合された第1のキャリヤー及び第2のキャリヤーを含んでなることができる。好適には、各キャリヤーは、同一又は異なるものである。好適には、各リンカーは、同一又は異なるものである。各キャリヤーは、特別な機能を有することができる。好適には、少なくとも1のキャリヤーは細胞透過の機能を有する。しかし、他のキャリヤーの機能としては、リセプター結合、酵素活性化、酵素阻害、溶解度調節、半減期調節、指示、検出、安定性調節、立体構造又は配向調節、等が含まれる。
【0169】
1具体例では、複合体は、第1のリンカーによって第2のキャリヤーに共有結合された第1のキャリヤーを含んでなり、前記第2のキャリヤーは、第2のリンカーに共有結合され、前記第2のリンカーは、治療用分子に共有結合されている。
【0170】
好適には、複合体は、下記の構造を含んでなるか、又は下記の構造からなる。
[キャリヤー]-[リンカー]-[キャリヤー]-[リンカー]-[治療用分子]
【0171】
1具体例では、第1のキャリヤーは、細胞透過の機能を有し、第2のキャリヤーはリセプター結合の機能を有する。
【0172】
好適には、本発明の複合体は、いずれかの配向で存在できる。好適には、それ故、上記複合体の立体構造は逆転される。
【0173】
好適には、上記の具体例のいずれかにおいて、治療用分子又は各治療用分子は、イメージング分子によって取替えられる。好適には、イメージング分子又は各イメージング分子は、治療用分子又は各治療用分子、又はキャリヤー又は各キャリヤーに結合される。好適には、イメージング分子又は各イメージング分子は、更なるリンカーによって結合される。好適には、更なるリンカーは、本発明のリンカーである。好適には、リンカー及びいずれかの更なるリンカーは、同一又は異なるものである。
【0174】
好適には、ここにリストアップしたキャリヤーのいずれかは、本発明に従って、複合体において使用される。好適には、ここにリストアップしたいずれかの治療用分子は、本発明に従って、複合体において使用される。
【0175】
医薬組成物
本発明の複合体は、必要とする対象への送達用の医薬組成物に調剤される。
【0176】
好適には、医薬組成物は、本発明の複合体を含んでなる。
【0177】
好適には、医薬組成物は、さらに、薬学上許容される希釈剤、アジュバント、又はキャリヤーを含むことができる。
【0178】
好適な薬学上許容される希釈剤、アジュバント、及びキャリヤーは、当分野において公知である。
【0179】
ここで使用するように、表現「薬学上許容される」は、適切な医学的良識の範囲内において、過剰な毒性、炎症、アレルギー反応、又は他の問題又は困難な事態を伴うことなく、妥当な利益/リスク比に見合って、ヒト及び動物の組織と接触しての使用に適するリガンド、物質、処方、及び/又は剤形をいう。
【0180】
ここで使用するように、表現「薬学上許容されるキャリヤー」は、複合体を、身体の1の器官又は部分から身体の他の器官又は部分へ運搬又は輸送することに関与する薬学上許容される物質、処方、又はビヒクル、例えば、液体又は固体のフィラー、希釈剤、添加剤、溶媒又はカプセル化物質をいう。各細胞透過性ペプチドは、組成物の他の成分、例えば、ペプチド及び治療用分子と適合性であり、ヒトに対して有害であってはならないとの意味において「許容性」でなければならない。凍結乾燥した組成物(元に戻され、投与される)も、本発明の組成物の範囲内である。
【0181】
薬学上許容されるキャリヤーは、例えば、添加剤、ビヒクル、希釈剤、及びその組み合わせである。例えば、組成物が経口投与される場合、それらは、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、又はシロップとして製剤され;非経口投与用では、注射、点滴、ネブライザー、エーロゾル、又は坐剤として製剤される。これらの組成物は、一般的な手段で調製され、必要に応じて、活性化合物(すなわち、複合体)は、各種の一般的な添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味薬、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤、被覆剤、又はその組み合わせと混合される。
【0182】
本明細書に記載の医薬組成物は、さらに、医学的利用において、ここに記載の疾患、不調、及び状態を緩和し、仲介し、及び治療するために追加の公知の治療薬、薬剤、化合物のプロドラッグへの修飾、等を含むことができると理解されなければならない。
好適には、医薬組成物は、薬剤としての使用、好適には、複合体についてここに記載したと同じ様式での薬剤としての使用のためのものである。複合体を使用する治療に関してここに記載したすべての特徴は医薬組成物に当てはまる。
【0183】
他の態様では、必要とする対象における疾患又は状態を治療する方法が提供され、該方法は、第3の態様による医薬組成物の治療上有効な量を投与することを含んでなる。
【0184】
医学的利用
本発明のペプチドを含んでなる複合体は、疾患の治療用の薬剤として使用される。
【0185】
薬剤は、上記で定義したように医薬組成物の形である。
【0186】
更なる態様では、必要とする対象の疾患又は状態を治療する方法も提供され、該方法は、第1の態様による複合体の治療上有効な量を対象に投与する工程を含んでなる。
【0187】
好適には、医療は、好適には、全身注射後、組織又は細胞、好適には細胞の核への治療用分子の送達を必要とする。
【0188】
治療すべき疾患としては、治療用分子による細胞及び/又は核膜の改善された透過が改善された治療効果につながる各種の疾患が含まれる。
【0189】
好適には、複合体は、治療用分子の治療上の利用によって定義される疾患の治療における使用のためのものである。
【0190】
好適には、本発明のリンカーを含んでなる複合体は、遺伝子疾患の治療に適する。好適には、本発明のリンカーを含んでなる複合体は、遺伝性の遺伝子疾患の治療に適する。好適には、本発明のリンカーを含んでなる複合体は、遺伝性のX連鎖遺伝子疾患の治療に適する。複合体は、神経筋系の疾患の治療に適する。好適には、本発明のリンカーを含んでなる複合体は、神経筋系の遺伝子疾患の治療に適する。好適な具体例では、神経筋系の遺伝子疾患の治療に使用される第1の態様による複合体が提供される。
【0191】
好適には、複合体は、神経筋系の遺伝性の遺伝子疾患の治療に使用されるものである。好適には、複合体は、遺伝性の遺伝子神経筋疾患の治療に使用されるものである。好適には、複合体は、神経筋系の遺伝性のX連鎖遺伝子疾患の治療に使用されるものである。好適には、複合体は、遺伝性のX連鎖遺伝子神経筋疾患の治療に使用されるものである。
【0192】
好適には、複合体は、スプライシング欠損によって生ずる疾患の治療に使用されるものである。このような具体例では、治療用分子は、スプライシング欠損を防止又は是正できる及び/又は上記のように適正にスプライスされたmRNAの生産を増大できるオリゴヌクレオチドを含んでなることができる。好適には、このような具体例では、治療用分子は、先に説明したようにアンチセンスオリゴヌクレトチドである。
【0193】
好適には、複合体は、下記の疾患のいずれかの治療に使用されるものである:デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、Bucher筋ジストロフィー(BMD)、メンケス病、β-サラセミア、痴呆、パーキンソン病、脊髄性筋萎縮症(SMA)、ハンチントン病、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群、血管拡張性失調症、又は癌。
【0194】
1具体例では、複合体は、DMDの治療に使用されるものである。1具体例では、DMDの治療に使用される第1の態様による複合体が提供される。好適には、このような具体例では、複合体の治療用分子は、ジストロフィン転写の読み枠を修復できる。好適には、複合体の治療用分子は、内部でトランケートされた部分的に機能性のジストロフィンタンパク質の産生を惹起できる。このような具体例では、治療用分子は、関連する項目において上記したようにアンチセンスオリゴヌクレトチドである。好適には、治療を受ける患者又は対象は、各種の動物又はヒトである。好適には、患者又は対象は、非ヒト哺乳類でもよい。好適には、患者又は対象は雄又は雌である。1具体例では、対象は雄である。
【0195】
治療を受ける患者又は対象は、各種の年齢である。好適には、治療を受ける患者又は対象は、0~40歳、好適には、0~30歳、好適には、0~25歳、好適には、0~20歳である。
【0196】
好適には、複合体は、例えば、髄内、髄腔内、脳室内、硝子体内、腸内、非経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腫瘍内、頭蓋内、intrastratium、心室内、皮下、経口、又は経鼻ルートによる対象への全身投与用である。
【0197】
1具体例では、複合体は、対象に静脈内投与されるためのものである。
【0198】
1具体例では、複合体は、注入による対象への投与用である。
【0199】
好適には、複合体は、「治療上有効な量」で対象に投与されるためのものであり、「治療上有効な量」とは、量が、個人において利益を示すに十分であることを意味する。投与される実際の量、及び投与の速度及び時間経過は、治療される疾患の性質及び重篤性に左右される。用量の決定は、一般的開業医又は医師の責任の範囲内である。技術及びプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20版, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins発行に見られる。
【0200】
例示的な用量は、0.01~200 mg/kg、0.05~160 mg/kg、0.1~140 mg/kg、0.5~140 mg/kg、0.5~120 mg/kg、1~100 mg/kg、2~80mg/kg、5~60mg/kg、10~50mg/kg、又はそれらの間の各種の値である。
【0201】
有利には、本発明の複合体の用量は、治療用分子単独からいずれかの効果を認めるに必要な用量程度又はそれよりも低い程度である。
【0202】
好適には、本発明の複合体は、インビトロ方法、好適には、インビトロ実験室的方法で使用される。好適には、本発明の複合体は、治療用分子候補の効力をテストするインビトロ方法において使用される。好適には、インビトロ方法はアッセイである。例えば、本発明の複合体は、スプライス修正アッセイ、エクソンスキッピングアッセイ、血清安定性アッセイ、細胞生存率アッセイ、又はトランケートされた部分的機能性タンパク質の修復アッセイにおいて使用される。
【0203】
好適には、用語「インビトロ」は、培地中における細胞を使用する実験を包含することを意図するものであり、一方、用語「インビボ」は、無傷の多細胞生物を使用する実験を包含することを意図する。
【0204】
1具体例では、複合体は、後続のインビトロ細胞アセスメントのための対象への投与用である。
【0205】
毒性
キャリヤー分子及び治療用分子を結合するために、第1の態様において定義したようにリンカーを含んでなる複合体を使用することは、有利には、複合体の毒性を低減する。従って、本発明の複合体の毒性は、有利には、従来の複合体、例えば、上記で考察し、実施例において実証するものよりも低い。
【0206】
好適には、本発明の複合体の投与後、毒性の1以上のマーカーが、現在利用可能なリンカーを使用する従来の複合体と比べて、有意に低減される。
【0207】
毒性の好適なマーカーは、腎毒性又は肝毒性のマーカーである。
【0208】
毒性の好適なマーカーとしては、KIM-1、NGAL、BUN、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、アラニントランスフェラーゼ、及び アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが含まれる。
【0209】
好適には、KIM-1、NGAL、及びBUNの少なくとも1のレベルは、本発明の複合体の投与後、現在利用可能なリンカーを使用する複合体と比べて低減される。
【0210】
好適には、KIM-1、NGAL、及びBUNの各々のレベルは、本発明の複合体の投与後、現在利用可能なリンカーを使用する複合体と比べて低減される。
【0211】
好適には、マーカー又は各マーカーのレベルは、従来の複合体と比べて有意に低減される。
【0212】
好適には、マーカー又は各マーカーのレベルは、本発明の複合体の投与後、現在利用可能なリンカーを使用する複合体と比較して、5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下低減される。
【0213】
好適には、従って、本発明の複合体は、現在利用可能なリンカーを使用する複合体と比較して低減された腎毒性を有する。
【0214】
KIM-1/クレアチニンレベルは、CPPs及びCPP複合体の毒性に関する有用な指示であるとして記載されている。特に、KIM-1/クレアチニンレベルは、アルギニンリッチCPP複合体の毒性を表示するために有用である(Vaidyaら, Annu Rev Pharmacol Toxicol. 2008, 48, 463-493;Chaturvediら, Int. J. Biol. Sci. 2009, 5, 128-134;及びZhouら, Sci Reports, 2016, 6, 38930)。
【0215】
好適には、KIM-1/クレアチニンのレベルは、本発明の複合体の投与後、現在利用可能なリンカーを使用する複合体と比べて減少される。
【0216】
好適には、KIM-1/クレアチニンのレベルは、本発明の複合体の投与後、現在利用可能なリンカーを使用する複合体と比べて有意に減少される。
【0217】
好適には、KIM-1/クレアチニンのレベルは、本発明の複合体の投与後、現在利用可能なリンカーを使用する複合体と比較して、5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下低減される。
【0218】
有利には、複合体の毒性は、細胞透過性ペプチド及びその複合体と比べて、有意に低減される。特に、KIM-1/クレアチニンは毒性のマーカーであり、これは、ここに定義するリンカーを含んでなる本発明の複合体を使用する場合、従来の複合体と比べて、10倍以下、20倍以下、30倍以下、50倍以下、60倍以下、70倍以下、80倍以下、90倍以下、100倍以下、110倍以下、120倍以下有意に低減される。
【0219】
KIM-1/クレアチニンレベルは、腎臓損傷の低減及び糸球体濾過の増大があることを指示する。KIM-1/クレアチニンレベルの減少は、虚血傷害又は毒性傷害後に、しばしば腎臓に存在する脱分化型近位尿細管上皮細胞の減少の結果である(Chaturvediら, 2009 Int. J. Biol. Sci.)。KIM-1/クレアチニンレベルは、治療薬の毒性を評価するため広く使用される。
【0220】
次に、本発明の特定の具体例を、図及び表を参照して記載する。
【0221】
明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「含んでなる」及び「含む」及びそれらの変形は、「含むが、限定されない」を意味し、それらは、他のモイエティー、添加物、成分、整数、又は工程を排除することを意図しない(排除しない)。明細書及び特許請求の範囲を通して、単数は、内容が他に要求しない限り、複数を含む。特に、不定冠詞を使用する所では、明細書は、内容が他に要求しない限り、単数とともに複数を考慮するものとして理解されなければならない。
【0222】
発明の特別な態様、具体例、又は実施例と併せて記載する特徴、整数、特性、化合物、化学モイエティー又は基は、不適合とならない限り、ここに記載の他の態様、具体例、又は実施例と適用可能であると理解されなければならない。この明細書(特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に記載する特徴の全て、及び/又は記載された各種方法の工程の全ては、このような特徴の及び/又は工程の少なくともいくつかが相互に排他的であるような組み合わせを除き、いかなる組み合わせとしても組み合わされる。
【0223】
本発明は、各種の先の具体例の詳細に限定されない。本発明は、この明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴のいずれか新規の1又はいずれか新規の組み合わせ、又は開示されたいずれかの方法の工程のいずれか新規の1又はいずれか新規の組み合わせに拡張される。読者の注目は、この出願に係る明細書と同時に又は先立って提出され、この明細書とともに縦覧のために公開された全ての論文及び文献に向けられ、このような全ての論文及び文献の内容は、参照して、ここに組み込まれる。
【0224】
[実施例]
1. 材料及び方法
1.1 材料
9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護L-アミノ酸、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム(PyBOP)、Rinkアミド樹脂(0.46 mモルg-1)、及びFmoc-β-Ala-OH前負荷Wang樹脂(0.19又は0.46 mモルg-1)を、Merck Millipore(ホーエンブルン、独国)から得た。Tentagel Hydroxy-trityl樹脂をRapp Polymere(チュービンゲン、独国)から購入した。HPLC等級アセトニトリル、メタノール、及び合成等級のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、Fisher Scientific(ラフバラー、英国)から得た。ペプチド合成等級N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及びジエチルエーテルをVWR(レスターシャ―、英国)から得た。ピペリジン及びトリフルオロ酢酸(TFA)をAlfa Aesar(ヘイシャム、イングランド)から得た。PMOをGene Tools Inc.(フィロマス、米国)から購入した。Voyager DE Pro BioSpectrometry(Applied Biosystems、チィエシャー、英国)ワークステーションを使用して、MALDI-TOF質量分析を行った。マトリックスとして、50%アセトニトリル水溶液中のα-シアノ-4-ヒドロキシ経皮酸又はシナピン酸の0mg ml-1のストック溶液を使用した。Varian 940-LC HPLC System(ヤーントン、英国)にて、分析及びセミ分取HPLCを行った。DMEM培地(31966047)、ウシ胎児血清(FBS)(10270106)、抗生物質-抗真菌剤混合溶液(A5955)、臭化エチジウム(15585011)、2x ReddyMix PCR Master Mix(AB0575DCLDB)、M-MLVファーストストランド合成システム(28025013)、及びTRIzol試薬(15596026)を、ThermoFisher Scientificから購入した。RealTime-Glo(商標名)MT Cell Viability Assay(G9711)、Maxwell(登録商標)16 Total RNA Purification Kit(AS1050)をPromegaから購入した。筋芽細胞を、PromoCell’s骨格筋細胞成長培地キット(C-23160)にて培養した。インスリン(91077C)、及びアガロース(A9539)をSigma-Aldrichから得た。DNA Marker -HyperLadder 50bp(BIO-33039)をBioLine Reagentsから得た。全てのプライマーを、IDTを通して注文した。尿収集のため、マウスを、単独で、Tecniplast(英国)からの代謝ケージに収容し、腎臓損傷マーカー-1(KIM-1)用の尿バイオマーカーELISA(MKM100)をR&Dから得た。他の表示しない限り、他の全ての試薬をSigma-Aldrich(英国)から得た。
【0225】
1.2 ペプチド-PMO複合体の合成
1.2.1 Microwave Synthesiserを介するペプチドバリアントの合成
CEM Liberty Blue(商標名)マイクロウエーブPeptide Synthesizer(Buckingham、英国)及び製造者の推薦に従うFmoc化学を使用して、100μモルスケールでペプチドを合成した。リンカーとしてグルタミン酸又はコハク酸を有するペプチドを、TFA開裂後、ペプチドのカルボキシル末端でアミドを産生するため、Rinkアミド樹脂にて合成した。前負荷Wangを使用して、β-アラニンリンカーを有するペプチドを合成した。合成方法及びリンカーとともに、合成されたペプチドの全リストを表1に示す。使用した側鎖保護基はTFA処理には不安定であり、DIPEAの存在下、PyBOP(5倍過剰量)を使用して活性化したFmoc-保護アミノ酸の5倍過剰量(0.25 mモル)を使用して、ペプチドを合成した。N-Fmoc-保護基を除去するため、ピペリジン(20%v/v DMF溶液)を使用した。アルギニン残基を除き、マイクロ波電力60Wにおいて、75℃、5分間で1回カップリングを行い、アルギニン残基については2回ずつカップリングした。各脱保護反応を、マイクロ波電力35Wにおいて、75℃で2回(30秒間で1回、ついで、3分間で1回)を行った。合成が完了した後、DMF(3×50ml)にて樹脂を洗浄し、DIPEAの存在下、室温において、15分間で、無水酢酸にて、固相に結合したペプチドのN-末端をアセチル化した。N-末端のアセチル化後、DMF(3×20ml)及びDCM(3×20ml)にて、ペプチド樹脂を洗浄した。N-末端にコハク酸を有するDPEPペプチドについては、N-末端のアセチル化を行わなかった。代わりに、ペプチドの遊離N-末端を、DIPEAの存在下、室温において、30分間で無水コハク酸にて処理し、続いて、DMF(3×20ml)にて洗浄した。N-末端にリンカーとしてグルタミン酸を有するDPEPペプチドについては、上述のようにN-末端をアセチル化したが、PMOの結合を、側鎖カルボキシル基において行った。
【0226】
1.2.2 Intavis Multipep Synthesiserを介するペプチドバリアントの合成
Intavis Multipep Synthesiser及び製造者の推薦に従うFmoc化学を使用して、室温において、Tentagel(登録商標)Cl-トリチル樹脂上で、γ-アミノ酪酸リンカーを有するペプチドを合成した。製造者の推薦通りに塩化アセチルを使用して、Tentagel(登録商標)ヒドロキシ-トリチル樹脂からTentagel(登録商標)Cl-トリチル樹脂を調製した。簡潔には、樹脂(1g)を、DMF(2×10ml)、乾燥DCM(3×10l)、及び乾燥トルエン(3×10ml)にて洗浄し、冷却器を具備する丸底フラスコに移した。十分な量のトルエンを添加して樹脂を覆い、ついで、塩化アセチルを1滴ずつ添加し(樹脂1ml g-1、全容積1ml)、緩やかに撹拌しながら、混合物を、60~70℃において、3時間加熱した。完了後、樹脂を室温まで冷却し、ついで、トルエン(5×15ml)、DMF(5×15ml)及び最後に乾燥DCM(3×15ml)にて完全に洗浄した。ついで、樹脂に、DIEA(8当量)とともにDCM中のFmoc-γ-アミノ酪酸(3当量)を負荷し、その後、追加のDIEA(4当量)を付加し、反応混合物を計1時間混合した。ついで、1時間後、樹脂をMeOH(0.8ml g-1)と15分間カップリングし、ついで、DMF(5×10ml)及びDCM(5×15ml)にて洗浄した。樹脂の収率及び負荷を、UV/可視分光光度法に基づく304 nmでのFmoc測定によって行い(0.41 mモルg-1である)、樹脂を直ちに使用した。
一般的には、TFAに対して不安定な側鎖保護基を有する標準のFmocアミノ酸を使用して、100μモルスケールでペプチドを合成し、4-メチルモルホリンの存在下、PyBOP(5倍過剰量)を使用して活性化した5倍過剰量のFmoc-保護アミノ酸(0.05 mモル)を使用して、ペプチドを合成した。ダブルのカップリング工程を使用し、続いて、各工程後に無水酢酸によるキャッピングを行った。ピペリジン(20%v/v DMF溶液)を使用して、N-Fmoc保護基を除去した。各脱保護化サイクルを、室温において2回行った(各回10分間)。合成の完了後、樹脂をDMF(3×50ml)にて洗浄し、固相結合ペプチドのN-末端を、DIPEAの存在下、室温において、15分間で、無水酢酸によってアセチル化した。N-末端のアセチル化の後、ペプチド樹脂を、DMF(3×20ml)及びDCM(3×20ml)にて洗浄した。
【0227】
[表1]
異なったリンカーを有するペプチドの合成法及び使用した樹脂及び行ったC-末端の修飾
【0228】
1.2.3 固体支持体からの開裂及び半分取HPLCを介するペプチドの精製
室温における3時間のTFA/H2O/トリイソプロピルシラン(TIPS)(95:2.5:2.5、10ml)からなる開裂カクテルでの処理によって、ペプチドを固体支持体から開裂した。窒素でのパージによって過剰のTFAを除去した。開裂したペプチドを、氷冷したジエチルエーテルを添加することによって沈殿させ、3000 rpmで5分間遠心分離した。粗製のペプチドペレットをジエチルエーテル(3×40ml)にて洗浄し、445-LCスケールアップモジュール及び440-LCフラクションコレクターを具備するVarian 940-LC HPLCシステムを使用して、RP-HPLCによって精製した。0.1%TFA/H2OにおけるCH3CNの線状グラディエント(0~99%、CH3CNにおける0.1%TFA)を、流量15ml/分、15分で使用して、RP-C18カラム(10×250mm、Phenomenex Jupiter)上での半分取HPLCによってペプチドを精製した。220 nm及び260 nmにおいて検出を行った。
【0229】
[表2]
実施例において、リンカー及び結合位置を変化させてテストするために合成したペプチドの配列。リンカーを、それらのシングルアミノ酸略称としてリストした。リンカーの結合は、ペプチドに対するものである;C-末端=カルボキシル末端、N-末端=アミノ末端。配列番号は、何らの追加N-末端及びC-末端の修飾、例えば、リンカーを持たないペプチドの配列に関する。

【0230】
1.2.4 ペプチド-PMO複合体の合成
マウスのジストロフィンエクソン-23用の25-merアンチセンス配列:
(GGCCAAACCTCGGCTTACCTGAAAT;配列番号:74)
を使用した。リンカーの結合位置に応じて、そのC-末端カルボキシル基又はN-末端アミノ基のいずれかを介して、ペプチドをPMOの3’-末端に結合させた。これは、DIPEA2.3当量の存在下、ペプチドに対して、それぞれ、2.3倍及び2倍の当量のPyBOP及びHOAt(NMP中)、及びPMOに対して2.5倍過剰量のペプチド(DMSOに溶解)を使用することによって達成された。一般に、N-メチルピロリドン(NMP、100μl)におけるペプチド(10μモル)溶液に、PyBOP(0.3M NMP溶液76.6μl)、HOAt(0.3M NMP溶液66.7μl)、DIPEA(4.0μl)及びPMO(4μモル、10mM DMSO溶液400μl)を添加した。この混合物を40℃に2時間放置し、H2O(1ml)を添加することによって反応を停止させた。陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(Resource S6mlカラム、GE Healthcare)にて、20%CH3CNを含有するリン酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH7.0)における塩化ナトリウムの線状グラディエント(0~1M)を流量6ml/分で使用することによって、反応混合物を精製した。イオン交換後に集めたフラクションのAmicon(登録商標)ウルトラ-15 3K遠心フィルター装置を介して、過剰の塩のペプチド-PMO(P-PMO)からの除去を行った。複合体を凍結乾燥し、MALDI-TOFによって分析した。複合体を滅菌水に溶解し、使用前に、0.22μmの酢酸セルロールフィルターを介して精製した。0.1M HCl溶液における265 nmでの複合体のモル吸光測定によって、P-PMOの濃度を測定した。全体の収率(表3)はP-PMOに基づき26~64%であった。
【0231】
[表3]
インビボ分析用の大規模合成したP-PMO複合体の収率(収率は、UV/可視分光分析を介して算定し、PMOの消衰係数に基づく)。P-PMOsについての純度は、順相HPLCにより220 nm及び260 nmにおいて確認して、95%以上である。ペプチドに結合させるために使用したPMOは、次の配列を有する:5’-GGCCAAACCTCGGCTTACCTGAAAT-3’。PMOの結合位置を、ここでは、太イタリック体で示す。カッコ内はリンカーである。



以下の比較用の複合体を合成/獲得し、及び比較用のリンカーを使用して、同じPMOをペプチドに結合した。
【0232】
[表4]
比較用ペプチド
【0233】
1.3 P-PMOの定量化及び再構成
P-PMOをRNase-フリー水に溶解した。この溶液からのアリコートを、0.1M HCl中で100倍希釈し、UV/可視分光分析を介して265 nmで測定した。濃度を、ランベルト・ベールの法則:
【数1】
を使用して測定した。
使用前に、P-PMOを室温に解凍し(以前に凍結している場合)、簡単にボルテックスし、ついで、37℃において30分間インキュベートした。続いて、P-PMOのアリコートを超音波処理浴において、5分間、超音波処理した。最後に、P-PMOを簡単にボルテックスし、パルススピンした。
RNaseフリー水に希釈したP-PMOを、所望の濃度で、9%食塩水と合わせることによって注射溶液を調製した(最終濃度:食塩水0.9%)。
【0234】
1.4 インビボP-PMO治療の評価
1.4.1 P-PMOの全身投与
全ての実験を、オックスフォード大学の生体医学ユニットにおいて、Home Office Project Licence (UK)公認のもと、The Animals (Scientific Procedures) Act 1986及び治験倫理レビューに従って実施した。マウスを特殊な病原体フリーの疾病施設に収容し、環境として、12時間明-暗サイクルで、温度及び湿度を制御した。全ての動物は、自由に、市販の齧歯動物用の餌及び水を取ることができた。
年齢8~10週の雌C57BL/6マウスについて実験を行った。マウスに、尾静脈シングルボーラス注入によって、0.9%食塩水、P-PMO10mg/kg、30mg/kg、又は50mg/kgを投与した。投与後1週で、マウスを犠牲にし、前脛骨筋、横隔膜、及び心筋を採取し、ドライアイス上で瞬間凍結し、-80℃で保存した。
【0235】
1.4.2 P-PMOの毒物学的評価
P-PMO(セクション1.4.1参照)の静脈内投与後、20時間、代謝ケージに収容し、投与後、day2及びday7において、冷蔵条件下で、尿を非侵襲的に収集した。Day7において、頸静脈から血液を収集し、血液を分画し、血漿を収集した。day7において、解剖の間に、前脛骨筋、横隔膜、及び心筋を収集した。
標準曲線に合わせるために尿を適切に希釈した後、ELISAによって、腎臓損傷分子-1(KIM-1)の尿中レベルを定量した。KIM-1値を、尿中クレアチニンレベルに正規化し、尿中クレアチニンレベルを、MRC Harwell Institute, Mary Lyon Centre(オックスフォードシャー、英国)において定量した。
【0236】
1.4.3 P-PMO惹起エクソンスキッピングのqPCR分析
投与後7日間、前脛骨筋(TA)、横隔膜、及び心筋について、P-PMO惹起エクソンスキッピングの定量を行った。簡潔には、TRIzol系抽出法を使用して、ホモゲナイズした組織からRNAを抽出し、ランダムプライマーを使用したcDNAを合成した。Integrated DNA Technologiesによってプリマ―/プローブを合成し、スキップされていない生成物を示すエクソン23-24をスパンする領域(mDMD23-24、表4参照)を増幅する、又はエクソン22及び24の境界をスパンするプローブ(mDMD22-24)を使用して、転写欠失エクソン23を特異的に増幅するようにデザインした。各転写のレベルを、スキップト及び非スキップト転写によって測定し、全転写(スキップト及び非スキップト)に対するスキップト転写の割合(%)として表示した(配列について表5参照)。
【0237】
[表5]
qPCR法によるマウスのジストロフィン(エクソン23)エクソンスキッピングの定量用のプライマー及びプローブ配列
【0238】
2. 他の実施例
ペプチド-PMO複合体の合成
既に記載したように、ペプチドを合成し、PMOに結合させた。伸長したCUG反復:
(5’-CAGCAGCAGCAGCAGCAGCAG-3’:配列番号81)
を標的とするPMO配列をGene Tools LLCから購入し、更なる複合体の作製に使用した。
細胞培養及びペプチド- PMO処置
健康な個人又は2600のCTG反復を有するDM1患者からの不死化筋芽細胞を、M199:DMEMミックス(比1:4;Life technologies)からなり、20%FBS(Life technologies)、ゲンタマイシン50μg/ml(Life technologies)、フェチュイン25μg/ml、bFGF0.5ng/ml、EGF5ng/ml、及びデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)0.2μg/mlを補足した成長培地において培養した。密集細胞培地を、インスリン(Sigma-Aldrich)5μg/mlを補足した筋芽細胞用DMEM培地に切り替えることによって、筋肉分化を惹起させた。4日間で、WT又はDM1細胞が分化された。ついで、培地を、1、2、5、10、20、又は40μMの濃度でペプチド-PMOを含む新鮮な分化用培地に交換した。処置後、48時間で、分析のため細胞を収集した。ヒト肝細胞において、40μMの濃度での、又はヒト筋芽細胞において、1、2、5、10、20、又は40μMの濃度でのペプチド-PMOのトランスフェクションの2日後に、蛍光検出アッセイ(Promega)によって細胞生存率を定量した。
【0239】
RNAの単離、PT-PCR
ヒト細胞について:RNA抽出前に、細胞を、プロテアーゼK緩衝液(NaCl 500 mM、Tris-HCl(pH7.2)10mM、MgCl21.5mM)、EDTA10mM、2%SDS、及びプロテアーゼK0.5mg/ml)中、55℃において、45分間、溶解させた。製造者のプロトコルに従ってTriReagent(登録商標)を使用して、全RNAを単離した。製造者の使用説明書に従って、計20μlのM-MLVファーストストランド合成システム(Life Technologies)を使用して、RNA1μgを逆転写した。続いて、標準プロトコルによる半定量的PCR分析(ReddyMix, Thermo Scientific)において、cDNA製剤1μlを使用した。各遺伝子について、増幅の線状範囲内において、25~35サイクルでPCR増幅を行った。PCR生成物を、1.5~2%アガロースゲルにおいて分離し、臭化エチジウム染色し、ImageJソフトウエアにて定量した。エクソン封入率を、イソ型シグナルの全強度に対する封入のパーセンテージとして定量した。mRNAの発現を定量するため、製造者の使用説明書に従って、リアルタイムPCRを実施した。PCRサイクルは、15分間の変性工程、続づく、50サイクル、15秒間の94℃変性工程、20秒間の58℃アニーリング、及び20秒間の72℃伸展であった。
【0240】
[表6]
PCR用プライマー
【0241】
動物実験及びASO注射
英国の法律に従って、オックスフォード大学において実験を行った。HSA-LR C57BL/6マウスにおける静脈内注射を、尾静脈を介してシングル又は繰り返し投与によって実施した。ペプチド-PMO-CAG7の用量30、12.5、7.5、及び5mg/kgを0.9%食塩水にて希釈し、容量5~6μl/g(体重)で投与した。C57BL6雌マウスにおけるKIM-1レベルを、標準曲線内に適合するように希釈したサンプルとともに、ELISA (R&D cat# MKM100)によって測定した。尿中タンパク濃度を説明するために、値を尿中クレアチニンレベルに正規化した。
【0242】
[表7]
DPEP系[CAG]7 PMO複合体の注射後のC57BL6マウスの回復時間は、Pip6aのような従来のペプチドを使用して形成した複合体の注射後よりも短い。
【0243】
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2022528298000001.app
【国際調査報告】