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特表2022-528392ヒドロキシル化ジ-又はトリ-アミド、それらの混合物、に基づくレオロジー添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】ヒドロキシル化ジ-又はトリ-アミド、それらの混合物、に基づくレオロジー添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/44 20060101AFI20220603BHJP
   C08G 69/40 20060101ALI20220603BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220603BHJP
   C08L 77/12 20060101ALI20220603BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220603BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220603BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220603BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
C08G69/44
C08G69/40
C08L101/00
C08L77/12
C09D201/00
C09D7/65
C09J201/00
C09J11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557813
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 FR2020000071
(87)【国際公開番号】W WO2020201638
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】1903316
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ・コレスニック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ルロワ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ルピネ
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J001DA03
4J001DB04
4J001DB05
4J001DC03
4J001DC05
4J001EC83
4J001EC86
4J001EE29A
4J001GB02
4J001JA12
4J001JA17
4J001JA18
4J001JA20
4J001JB21
4J002AA001
4J002BD031
4J002CD001
4J002CF003
4J002CH051
4J002CK021
4J002CL082
4J002CL092
4J002CN021
4J002CP031
4J002EH096
4J002EH146
4J002EL026
4J002EV246
4J002EW046
4J002FD023
4J002FD026
4J002GB00
4J002GF00
4J002GH00
4J002GJ01
4J002GJ02
4J038DH002
4J038KA07
4J038LA06
4J038MA09
4J038NA10
4J038PB06
4J040EG002
4J040KA25
(57)【要約】
本発明は、有機ゲル化剤として、特にレオロジー添加剤として使用することができる、ポリエーテルジアミン又はトリアミンに基づくジまたはトリアミドである脂肪アミドに関し、前記アミドは、ヒドロキシル化脂肪酸及び短いヒドロキシル化酸の特定の混合物からなる。本発明はまた、レオロジー添加剤として前記脂肪アミドを用いる配合組成物、及びコーティング、接着剤、又はPVCプラスチゾル組成物、及び特に透明又は不透明のマスチック組成物におけるこの目的でのその使用に関する。前記レオロジー添加剤は、水添ヒマシ油誘導体に基づく他の既知の脂肪アミド添加剤とは対照的に、使用前に特定の活性化プロセスを必要としないという利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミド又はトリアミド又はそれらの混合物である多官能脂肪アミドであって、前記脂肪アミドは以下のA又はBによって表され:
A)下記式(I)にしたがう:
R[(-X-R1-NHCO-R2)n(1-y)][-X-R1-NHCO-R2’]ny] (I)
ここで、
- nは2又は3、好ましくは3であり、
- R[(-X-R1-)は、一級ジアミン又はトリアミンである一級ポリアミンR[(-X-R1-NHのn価の残基であり、
- ここで各一級アミノ基-NHは、アルコキシル化ポリエステル及びポリエーテル、好ましくはポリエーテル、さらに好ましくは、ポリオキシプロピレン、又はオキシプロピレン単位のほうが多いオキシプロピレン/オキシエチレンコポリマーから選択される二価のオリゴマー鎖セグメントR1が有する末端基であり、
- R:ポリオールR(OH)に、又はポリアミンR(NHもしくはR(NH-R3)に、好ましくはポリオールR(OH)に由来するn価のC~C10アルキレン残基であり、
- X:O、NH、又はNR3、好ましくはOであり、
- R2は、ヒドロキシル化脂肪酸R2COHのC12~C52、好ましくはC16~C36、より好ましくはC16~C24の脂肪残基、特に飽和かつ直鎖状の脂肪残基であり、
- R2’は、C~C10、好ましくはC~Cの、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは少なくとも2つのヒドロキシル基を有するモノカルボン酸R2’COHの残基であり、
- yは、前記ジアミド中のR2’COH+R2COHの合計に対するR2’COHの平均モル分率を表し、yは0.05~0.50、好ましくは0.10~0.40の範囲であり、R2COH及び/又はR2’COHはそれぞれの酸の混合物であることができ、
- R3はC~Cアルキル置換基である、
あるいは、
B)前記アミドがジアミドである場合、以下の式(II)にしたがう:
(R2CONH)(1-y)-R’-O-[CH-CH(R4)-O]-CH-CH(R4)-(NHCOR2’) (II)
ここで、R’は、モノプロピレングリコールからOHを除いた残基:-CH(CH)CH-であり、かつ、R2及びR2’及びyは上の式(I)における定義のとおり定義され、かつ、
xはオキシアルキレン単位-CH-CH(R4)-O-の数であり、xは5~45、好ましくは5~40、さらに好ましくは5~35の範囲であることができ、
R4はH又はメチルであり、繰り返しオキシアルキレン単位-CH-CH(R4)-O-はR4がHである場合はエトキシであり、R4がメチルである場合はプロポキシであり、あるいはR4はエトキシ/プロポキシの混合体に相当し、好ましくはR4はメチルであって前記オキシアルキレン単位はプロポキシである、
かつ、前記アミドが、10℃/分で2回走査した後にDSCによって測定して、10~110℃、好ましくは20~100℃の範囲に融点(これは溶融温度を意味する)を有する、
ことを特徴とする、多官能脂肪アミド。
【請求項2】
ポリスチレン相当としてTHF中でのGPCによって測定された、A)式(I)に従って定義される前記脂肪アミドの数平均分子量Mnが、
- n=2の場合、800~4000、好ましくは1000~3800、
- n=3の場合、1000~6000、好ましくは2000~5500
の範囲の値であることを特徴とする、請求項1に記載の脂肪アミド。
【請求項3】
A)式(I)による脂肪アミドについての前記オリゴマー鎖セグメントR1がポリエーテル鎖セグメントであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の脂肪アミド。
【請求項4】
前記オリゴマー鎖セグメントR1がポリオキシプロピレン鎖セグメントであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項5】
前記オリゴマー鎖セグメントR1が、400~2000、好ましくは500~1500の範囲の数平均分子量Mnを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項6】
前記ヒドロキシル化脂肪酸R2COHが、12-ヒドロキシステアリン酸(12-HSA)、9-又は10-ヒドロキシステアリン酸(9-HSA又は10-HSA)、好ましくは9-及び10-ヒドロキシステアリン酸の混合物;14-ヒドロキシエイコサン酸(14-HEA);及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項7】
前記ヒドロキシル化脂肪酸R2COHが12-ヒドロキシステアリン酸であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項8】
前記モノカルボン酸R2’COHが、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ヒドロキシ酢酸(あるいはグリコール酸)、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2-ヒドロキシ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-2-ヒドロキシ酪酸、2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、及びそれらの混合物;好ましくは、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ヒドロキシ酢酸(あるいはグリコール酸)、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2-ヒドロキシ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-2-ヒドロキシ酪酸、2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項9】
前記アミドが、A)又はB)によるジアミド、あるいはA)によるトリアミドであり、ここでy/(1-y)が1/20~1/2、好ましくは1/10~4/10の範囲の値であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項10】
前記アミドがA)又はB)によるジアミドであり、ここでy/(1-y)が1/10~1/2、好ましくは1/10~4/10の範囲の値であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項11】
前記アミドがA)によるトリアミドであり、ここで2つのR2残基がヒドロキシル化脂肪酸R2COHに由来し、1つが酸R2’COHに由来することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項12】
式(I)にしたがいオプションA)によって表されるジアミドであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項13】
式(II)にしたがいオプションB)によって表されるジアミドであることを特徴とする、請求項1及び6~8のいずれか一項に記載の脂肪アミド。
【請求項14】
a)少なくとも1つの有機バインダー、
b)請求項1~13のいずれか一項で定義された少なくとも1つの脂肪アミド(特にレオロジー添加剤として)
を含むことを特徴とする、有機バインダーの配合組成物。
【請求項15】
前記バインダーa)が、ブロックされたシラン基を末端に有するポリシロキサン樹脂、ブロックされたシラン基を末端に有するポリエーテル樹脂、ブロックされたシラン基を末端に有するポリスルフィド樹脂、イソシアナート基を末端に有するポリウレタンプレポリマー樹脂、プラスチゾル用PVC樹脂、エポキシ基を有するエポキシ樹脂、から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
a)及びb)に加えて、かつ前記バインダーに応じて、以下に規定される可塑剤又は反応性希釈剤を含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の組成物:
c)ポリシロキサン樹脂用の可塑剤、ポリウレタンプレポリマー樹脂、及びプラスチゾル用のPVC樹脂又は
d)エポキシ樹脂用のエポキシ化モノマーからの反応性希釈剤、及び任意選択により
e)2成分系の場合には、エポキシ又はポリウレタン樹脂のための硬化剤。
【請求項17】
前記有機バインダーa)が、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタンプレポリマー樹脂、又はプラスチゾル用のPVC樹脂であり、かつ、前記可塑剤が、フタレート、アジペート、トリメリテート、セバケート、ベンゾエート、シトレート、ホスフェート、エポキシド、ポリエステル、アルキルスルホネートエステル、及びフタレートのための非フタレート代替物から選択されることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
透明又は不透明なマスチック配合組成物であることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記アミドがレオロジー添加剤として使用されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項において定義される少なくとも1つの脂肪アミドの使用。
【請求項20】
前記レオロジー添加剤がチキソ性付与剤であることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
コーティング、接着剤、PVCプラスチゾル、又はマスチック組成物、好ましくはPVCプラスチゾル組成物及びマスチック組成物における使用に関するものであることを特徴とする、請求項19又は20に記載の使用。
【請求項22】
ブロックされたシラン基を末端に有するポリシロキサン樹脂、ブロックされたシラン基を末端に有するポリエーテル樹脂、ブロックされたシラン基を末端に有するポリスルフィド樹脂、特に、アルコキシ基によってブロックされたシランを末端に有するもの、又はイソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマー樹脂に基づく、水分によって架橋されることができるマスチック組成物における使用に関するものであることを特徴とする、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
水分によって架橋することができ、透明であるか又は透明でないマスチック組成物における使用に関するものであることを特徴とする、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
レオロジー添加剤、特にチキソ性付与剤としての、請求項1~13のいずれか一項において定義される少なくとも1つの脂肪アミドの使用によってもたらされるものであることを特徴とする、コーティング、特にPVCプラスチゾルコーティング、接着剤シール、又はマスチックシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ゲル化剤として、特にレオロジー添加剤として、さらに特にコーティング組成物中の有機ゲル化剤、レオロジー添加剤として使用するのに適した特定の多官能アミド(ジアミド及びトリアミド)に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第1514912号明細書は、ポリエーテルアミンに基づく非ヒドロキシル化脂肪酸の分岐トリアミドについて記載しており、これは相変化インク(「ホットメルトインク」として知られる)中の相変化媒介剤(phase-change vector agent)として使用され、インクをインクジェットプリンタ中で、周囲温度における固体状態から高温での液体状態まで変わることを引きおこす機能を備え、この温度において噴射された後に液体インク液滴が急速に固化することを可能にする。欧州特許出願公開第1514912号明細書は、これらのポリアミドを有機ゲル化剤あるいはチキソ性付与剤として使用することを少しも示唆しておらず、かつヒドロキシル化脂肪酸及び短鎖ヒドロキシル化モノカルボン酸の混合物に基づくヒドロキシル化ポリアミドを少しも示唆していない。
【0003】
脂肪族ジアミン(ポリエーテルセグメントなし)に基づく且つヒドロキシル化脂肪酸に基づく脂肪ジアミドは、有機ゲル化剤、特にチキソ性付与剤として知られている。
【0004】
国際公開第2014/053774号は、有機ゲル化剤(あるいはレオロジー添加剤としても知られている)として、特にコーティング、成形、マスチック、又は漏れ止め剤、あるいは化粧品組成物中の有機ゲル化剤としての、ヒドロキシル化脂肪酸ジアミドを記載している。
【0005】
国際公開第2015/011375号は、それらの構造中に、特定のモル比で脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンの両方からなる脂肪酸ジアミド、及びこれらの生成物の有機ゲル化剤又はレオロジー添加剤としての使用、特にコーティング、成形、マスチック、又は漏れ止め剤あるいは化粧品組成物中での使用を記載している。
【0006】
フランス国特許出願公開第2993885号は、その構造に特定のヒドロキシル化カルボン酸を含む脂肪酸ジアミド、及びコーティング、成形、マスチック、又は漏れ止め剤組成物中の有機ゲル化剤としてのこの生成物の使用について記載している。
【0007】
これらの既知のジアミドは、粉末状態に微粉化する必要があり、その後、必要なレオロジー性能品質を与えるために、事前に「活性化」する必要がある。その活性化プロセスは、生成物に応じて、高速せん断と時には最高で100℃までの加熱を必要とする。さらに最小限の時間を必要とし、それは温度条件及びそのシステムの極性に左右される。さらに、これらの添加剤は、反応性配合物のためのいくつかの結合剤(バインダー)、又は活性化のために使用されるいくつかの希釈剤又は可塑剤とあまり相容性がないことがありうる。その結果、この活性化段階は、この分野において添加剤として使用されるポリアミド粉末及び水素化ヒマシ油誘導体にとって特に不利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1514912号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/053774号
【特許文献3】国際公開第2015/011375号
【特許文献4】フランス国特許出願公開第2993885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、反応性配合物において用いられる反応性バインダー及び可塑剤/希釈剤、例えば、シラン末端ポリエーテル、シラン末端ポリウレタン、イソシアナートを末端に有するポリウレタン、シリコーン、ポリサルファイド、エポキシなどと、広い範囲にわたって適合性(相容性)を備え、より簡単かつより容易な成形(前もっての予備活性化の必要なしに最終用途の反応性配合物の可塑剤又はバインダー中に容易に溶解するフレークの形態に成形すること)を可能にする新規脂肪ポリアミド(fatty polyamide)に対するニーズがある。レオロジー添加剤として必要なポリアミド(多官能性アミドを意味し、ポリマーを意味しない)は、最終製品、特にコーティング、マスチックシール、又はシール剤シールをもたらさなければならず、これらは改善された美的及び表面外観を有し、かつ表面の欠陥がなく透明であるが、それはこれらの目的とするポリアミドの具体的な構造及び具体的な組成に関連する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、その構造中に少なくとも1つのポリエーテルセグメントを含む一級ポリアミンに基づく、特に、ポリオキシプロピレンに基づき且つより短鎖のヒドロキシル化酸の存在下で少なくとも1つのヒドロキシル化脂肪酸を含む脂肪酸に基づく、新規な脂肪ポリアミド(fatty polyamide)を用いて、上で規定した新しい要求を満たすことを可能にする。
【0011】
本発明の第1の主題はしたがって、多官能脂肪アミド(polyfunctional fatty amide)に関連し、この多官能脂肪ポリアミドは、ポリエーテルポリアミン(ジアミン又はトリアミン)と、ヒドロキシル基を有する別のより短鎖のC~C10モノカルボン酸の存在下での非末端ヒドロキシル基を有する少なくとも1つの飽和直鎖状脂肪酸とに基づく脂肪酸ジアミド又はトリアミドあるいはそれらの混合物である。
【0012】
本発明の第2の主題は、有機バインダーの配合組成物に関し、この組成物は、本発明に従って規定される、特にレオロジー添加剤として規定される少なくとも1つの脂肪アミドと少なくとも1つの有機バインダーを含む。
【0013】
本発明はまた、本発明に従って規定される少なくとも1つの脂肪アミドのレオロジー添加剤としての使用を包含する。
【0014】
最後に、本発明はまた、得られる最終生成物を包含し、これは本発明によって規定される少なくとも1つの脂肪アミドのレオロジー添加剤としての、特にチキソ性付与剤としての使用によって生じるものである。
【0015】
したがって、本発明の第1の主題は、ジアミド又はトリアミドあるいはそれらの混合物である多官能脂肪アミドであって、前記脂肪アミドは以下のA)によって表される:
A)下記式(I)にしたがう:
R[(-X-R1-NHCO-R2)n(1-y)][-X-R1-NHCO-R2’]ny] (I)
ここで、
- nは2又は3、好ましくは3であり、
- R[(-X-R1-)は、一級ジアミン又はトリアミンである一級ポリアミンR[(-X-R1-NHのn価の残基であり、各一級アミノ基-NHは、ポリエーテル及びアルコキシル化されたポリエステル(アルコキシル化ポリエステル)、好ましくはポリエーテル及びさらに優先的にはポリオキシプロピレン又はオキシプロピレン単位のほうが多いオキシプロピレン/オキシエチレンコポリマーから選択される二価のオリゴマー鎖セグメントR1が有する末端基であり、
- R:ポリオールR(OH)に、又はポリアミンR(NHもしくはR(NH-R3)に、好ましくはポリオールR(OH)に由来するn価のC~C10アルキレン残基であり、
- X:O、NH、又はNR3、好ましくはOであり、
- R2は、ヒドロキシル化脂肪酸R2COHのカルボキシル基を除いたC12~C52、好ましくはC16~C36、より優先的にはC16~C24の脂肪残基、特に飽和かつ直鎖状の脂肪残基であり、
- R2’は、C~C10、好ましくはC~C、より優先的にはC~Cの、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは少なくとも2つのヒドロキシル基を有するモノカルボン酸R2’COHの残基であり、
- yは、前記ジアミド中のR2COH+R’2COHの合計に対するR2’COHの平均モル分率(R2’/(R2+R2’))を表し、yは0.05~0.50、好ましくは0.10~0.40の範囲であり、R2COH及び/又はR2’COHはそれぞれの酸類の混合物であることができ、
- R3はC~Cアルキル置換基である;
あるいは(前記脂肪アミドは)B)によって表される:
B)前記アミドがジアミドである場合、以下の式(II)にしたがう:
(R2CONH)(1-y)-R’-O-[CH-CH(R4)-O]-CH-CH(R4)-(NHCOR2’) (II)
ここで、R’は、モノプロピレングリコールからOHを除いた残基:-CH(CH)CH-であり、かつ、
xはオキシアルキレン単位-CH-CH(R4)-O-の数であり、xは5~45、好ましくは5~40、さらに優先的には5~35の範囲であることができ、
R2及びR2’及び「y」は上記式(I)において定義したとおりであり、
R4はH又はメチルであり、繰り返し単位-CH-CH(R4)-O-はR4がHである場合はエトキシであり、R4がメチルである場合はプロポキシであり、あるいはR4はエトキシ/プロポキシの混合体に相当し、好ましくはR4はメチルであって前記オキシアルキレン単位はプロポキシである、
かつ、前記アミドは、10℃/分で2回走査した後にDSCによって測定して、10~110℃、好ましくは20~100℃の範囲に融点(これは溶融温度を意味する)を有する。
【0016】
「融点」という用語は、示差走査熱量測定(DSC)によって10℃/分の加熱速度で測定された融解温度に対応する。この温度は、指定された加熱速度においてDSCによって記録された融解ピークに対応する温度である。
【0017】
残基Rに関して、前記のC~C10アルキレンは、炭素-炭素結合に加えて、ポリオール残基の場合はエーテルブリッジ-O-を、ポリアミン残基の場合は-NH-ブリッジを含みうる。
【0018】
X:Nの場合は、R残基を含むポリアミンについて上で特定した式から明らかであるとおり、これはNが-NH-、及び-N(R3)-を表すことを意味している。
【0019】
R2COHの意味に関して、これは非末端ヒドロキシルを有する直鎖状のヒドロキシル化脂肪酸に関連する。これらの直鎖状脂肪酸は、直鎖状C12~C52、好ましくはC16~C36、より優先的にはC16~C24の脂肪鎖を含み、特にそれはC-C結合のみからなり、したがってその直鎖内にエステル基を含まない。この定義は、したがって、R2COH定義から、ヒドロキシル化脂肪酸の自己重縮合によって得られるポリエステルあるいはオリゴエステルを除外する。
【0020】
モノカルボン酸R2’COHの場合、「C~C10、好ましくはC~C10、より優先的にはC~C」という用語は、これが、側鎖置換基を考慮に入れないで、鎖状炭素原子(-C-C-)の数として表されるR2'の鎖の長さであることを意味する。
【0021】
特定のオプションによれば、本発明に従って定義されるとおり、酸R2COHは、ヒドロキシル化脂肪酸の混合物であり、及び/又は酸R2’COHは、より短鎖(前記のヒドロキシル化脂肪酸と比較して)のヒドロキシル化モノカルボン酸の混合物である。
【0022】
上で規定した一級ジアミン又はトリアミンである式R(-X-R1-NHに対応する一級ポリアミンの適切な例としては、以下のものを挙げることができる:
- ジアミン(n=2)又はトリアミン(n=3)として:ポリエーテルセグメント又はアルコキシル化ポリエステル(ポリエステル-ポリエーテル)セグメントに結合した2つの一級アミン官能基をもつ一級ジアミン、又は3つのポリエーテル又はアルコキシル化ポリエステル(ポリエステル-ポリエーテル)セグメントに結合した3つの一級アミン官能基をもつトリアミンであって、ジアミンについては前記ポリエーテル又はアルコキシル化ポリエステルセグメント又はトリアミンの場合は3つのポリエーテル若しくはアルコキシル化ポリエステルセグメントの組み合わせ物が、500~3000の範囲の数平均分子量Mnを有する。特に、それらは、一級ジアミン及びトリアミンポリエーテル、さらに特に一級ジアミン及びトリアミンポリオキシプロピレン、例えば、Huntsman社によって販売されているJeffamine(登録商標)ジアミン及びトリアミン類、より具体的な適した例として、Jeffamine(登録商標)D-2000(33個のオキシプロピレン単位をもち、2つの一級アミノ基を有するポリオキシプロピレンセグメントをもつ一級ジアミン)、又はJeffamine(登録商標)T-3000(3つのポリオキシプロピレンセグメントと、50個のオキシプロピレン単位の総数をもつ一級トリアミン)などである。その他のアミンも使用できる:Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2010、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)T-5000など。
【0023】
原理的には、本発明によるジアミド及びトリアミドの調製に適した前記のポリエーテルジアミン又はポリエーテルトリアミンは、触媒の存在下での、末端OH官能基の還元的アミノ化によって、対応するポリエーテルポリオール(それぞれジオール又はトリオール)前駆体から得ることができ、米国特許第4766245号明細書又は英国特許第2175910号明細書に記載されているとおりである。
【0024】
ポリエーテルジアミン又はトリアミンのそれぞれのポリエーテルポリオール(ジオール又はトリオール)前駆体に関して、それらは、一級OH基を有するポリオールアルコキシド開始剤(これはそれぞれジオール又はトリオール(一級OH基をもつ)である)の存在下で、あるいはポリアミン開始剤(ポリエーテルの官能基数:ジオール又はトリオールにしたがってそれぞれジアミン及びトリアミン)の存在下で、対応するアルキレンオキシド(ポリオキシエチレンジオール/トリオールについてはエチレンオキシド、ポリオキシプロピレンジオール/トリオールについてはプロピレンオキシド)又は前記のアルキレンオキシドの混合物の、塩基性媒体中でのアニオン重合によって得ることができる。ジオール開始剤の例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコールを挙げることができる。トリオール開始剤の例として、トリメチロールプロパンを挙げることができる。
【0025】
二価の開始剤(2つの一級アルコキシド官能基又は2つのアミン官能基)の場合、それらは、(エーテル-O-又は-NH-結合を介して)鎖の中央に組み込まれた開始剤と、使用した開始剤のそれぞれのアルコキシド又はアミン官能基に対するポリエーテル鎖の生じた部分とをもつ対象構造をもたらす。
【0026】
三価の開始剤(一級アルコキシドトリオール又はトリアミン)の場合、各アルコキシド又はアミンがポリエーテル鎖の開始点であり、その結果は、前記開始剤の分子に結合した3つのポリエーテル鎖であり、その残基は本発明によるアミドについて上で規定した式中のRに対応する。
【0027】
ポリエーテルジアミンの特定の場合において、ポリエーテルジオール前駆体はまた、開始剤の二級炭素上にOHを有する一価の一級アルコキシド(この二級OHはアルキレンオキシドを開環させる反応はしない)から、アルキレンオキシド又はアルキレンオキシドの対応する混合物(例えば、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジール、及び(オキシエチレン-オキシプロピレン)ジオールコポリマーのそれぞれに対し、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドあるいはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物)のアニオン重合によっても得ることができる。このような場合、単一のポリエーテル鎖が一級アルコキシドから形成され、開始剤の他の(二級)OH部分はそのまま残り、変化せず、したがって、形成されたポリエーテルは、ジオール(上述したとおり、末端OH基のNHへの変換による、ポリエーテルジアミンの前駆体)である。一価のジオール開始剤(1つの単一の一級OH)の例は、以下のように、一級アルコキシドの形態のモノプロピレングリコールである:
HO-CH(CH)-CH
【0028】
ポリオキシプロピレンに基づくポリエーテルジアミンのより特定の場合には、モノプロピレングリコールは一価の開始剤として作用し、二級ヒドロキシルは、プロピレンオキシドの重合中(プロピレンオキシドの最も電子が少ない炭素原子(-CH-)へのアニオン性アルコキシド開始剤の攻撃と、それに続く鎖延長)に影響を受けず、2つの二級OH基を有する次の式のポリオキシプロピレンジオールをもたらす。
HO-CH(CH)-CH-O-(CH-CH(CH)-O)-CH-CH(CH)-OH
【0029】
末端の二級ヒドロキシルの変換(米国特許第4766245号明細書及び英国特許第2175910号明細書に記載されているNH加圧下での接触還元アミノ化による)の後、下記式のポリオキシプロピレンジアミンを得ることができる。
N-CH(CH)-CH-O-(CH-CH(CH)-O)-CH-CH(CH)-NH
【0030】
そのようなポリオキシプロピレンジアミンの例として、Huntsman社によって販売されているJeffamine(登録商標)D2000を挙げることができる。
【0031】
本発明に従って定義されるヒドロキシル化飽和直鎖状脂肪酸R2COH(R2が非末端OHを有する)として、12-ヒドロキシステアリン酸(12-HSA)、9-ヒドロキシステアリン酸(9-HSA)、10-ヒドロキシステアリン酸(10-HSA)、14-ヒドロキシエイコサン酸(14-HEA)、又はそれらの混合物から選択されるヒドロキシ脂肪酸を用いることができる。
【0032】
より短鎖のC~C10酸であるR2’COHとして、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ヒドロキシ酢酸(あるいはグリコール酸)、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2-ヒドロキシ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-2-ヒドロキシ酪酸、2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、及びそれらの混合物;好ましくは、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ヒドロキシ酢酸(あるいはグリコール酸)、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2-ヒドロキシ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-2-ヒドロキシ酪酸、2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、及びそれらの混合物;より優先的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ヒドロキシ酢酸(あるいはグリコール酸)、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2-ヒドロキシ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-2-ヒドロキシ酪酸、2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、及びそれらの混合物、を用いることができる。
【0033】
式(I)に従ってAによって表される本発明による脂肪アミドは、好ましくは、ポリスチレン換算(ポリスチレン標準による較正)として、THF中でのGPCによって測定される数平均分子量Mnを有し、これは、
- n=2(ジアミド)の場合、800~4000、好ましくは1000~3800、
- n=3(トリアミド)の場合、1000~6000、好ましくは2000~5500
の範囲の値である。
【0034】
脂肪ジアミドである式(II)によるBによって表される本発明による脂肪アミドは、好ましくは、式(I)によるオプションA)によって表されるジアミド(n=2)と同じ範囲の、ポリスチレン換算(ポリスチレン標準による較正)としてTHF中でのGPCによって測定される数平均分子量Mnを有し、すなわち、800~4000、好ましくは1000~3800の範囲の数平均分子量を有する。
【0035】
式(I)によるオプションA)によって表される脂肪アミドの好ましいオプションによれば、前記オリゴマー鎖セグメントR1はポリエーテル鎖セグメントである。
【0036】
より特に好ましいオプションによれば、前記オリゴマー鎖セグメントR1は、ポリオキシプロピレン鎖セグメントである。
【0037】
前記オリゴマー鎖セグメントR1は、400~2000、好ましくは500~1500の範囲の数平均分子量Mnを有することができる。
【0038】
本発明の特定のオプションによれば、前記脂肪アミドは、上記で定義した式(II)によるオプションB)によって表される脂肪ジアミドである。
【0039】
好ましいオプションによれば、前記ヒドロキシル化脂肪酸R2COHは、12-ヒドロキシステアリン酸(12-HSA);9-又は10-ヒドロキシステアリン酸(9-HSA又は10-HSA)、好ましくは9-及び10-ヒドロキシステアリン酸の混合物;14-ヒドロキシエイコサン酸(14-HEA)、及びそれらのペアでの混合物から選択される。最も好ましいヒドロキシル化酸R2COHは、12-ヒドロキシステアリン酸である。
【0040】
より特に好ましくは、前記モノカルボン酸R2'COHは、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ヒドロキシ酢酸(あるいはグリコール酸)、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2-ヒドロキシ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-2-ヒドロキシ酪酸、及び2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、から選択される。
【0041】
本発明の別の特定のオプションによれば、前記アミドは、A)又はB)によるジアミドあるいはA)によるトリアミドであり、比「y/(1-y)」は、1/20~1/2、好ましくは1/10~4/10の範囲である。
【0042】
別の代替オプションによれば、前記アミドは、A)又はB)によるジアミドであり、比y/(1-y)は、1/10~1/2、好ましくは1/10~4/10の範囲である。
【0043】
特定のオプションによれば、前記アミドは、A)によるトリアミドであって、ヒドロキシル化脂肪酸R2COHから生じる2つの残基(R2)及び酸R2’COHから生じる1つの残基(R2 ’)を有する。
【0044】
より具体的には、代わりに、前記アミドは、オプションA)にしたがい、式(I)によって表されるか、又はオプションB)にしたがい、式(II)によって表されるジアミドであり、これらは上で定義したとおりである。
【0045】
本発明の第2の主題は、有機バインダーの配合物組成物に関するものであり、それは以下のもの:
a)少なくとも1つの有機バインダー、及び
b)本発明に従って上で定義した少なくとも1つの脂肪アミド(特にレオロジー添加剤として)
を含むことを特徴とする。
【0046】
より特に、前記のバインダー配合組成物において、前記バインダーa)は、ブロックされたシラン基で末端封止された(すなわちブロックされたシラン基を末端に有する)ポリシロキサン樹脂、ブロックされたシラン基で末端封止された(すなわちブロックされたシラン基を末端に有する)ポリエーテル樹脂、ブロックされたシラン基で末端封止された(すなわちブロックされたシラン基を末端に有する)ポリスルフィド樹脂、イソシアネート基で末端封止された(すなわちイソシアネート基を末端に有する)ポリウレタンプレポリマー樹脂、プラスチゾル用PVC樹脂、エポキシ基を有するエポキシ樹脂、から選択される。
【0047】
前記の組成物は、a)及びb)に加えて、かつ前記の結合剤に応じて、以下に規定する可塑剤又は反応性希釈剤を含むことができる:
c)ポリシロキサン樹脂用の可塑剤、ポリウレタンプレポリマー樹脂、及びプラスチゾル用のPVC樹脂又は
d)エポキシ樹脂用のエポキシ化モノマーからの反応性希釈剤、及び任意選択により
e)2成分系の場合には、エポキシ又はポリウレタン樹脂のための硬化剤。
【0048】
さらに特に、本発明による前記の組成物において、前記の脂肪アミドは、チキソ性付与剤であるレオロジー添加剤として使用される。
【0049】
前記の組成物において、前記の有機バインダーa)は、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタンプレポリマー樹脂、又はプラスチゾル用のPVC樹脂から選択することができ、かつ、前記可塑剤は、フタレート、アジペート、トリメリテート、セバケート、ベンゾエート、シトレート、ホスフェート、エポキシド、ポリエステル、アルキルスルホネートエステル、及びフタレートのための非フタレート代替物から選択することができる。
【0050】
特定のオプションによれば、前記の組成物は、透明又は不透明のマスチック配合組成物である。より具体的なオプションによれば、それは透明なマスチック配合組成物である。
【0051】
本発明の別の主題は、本発明に従って上で定義された少なくとも1つの脂肪アミドの使用であって、前記アミドがレオロジー添加剤として用いられる使用を包含する。
【0052】
前記の使用において、前記のレオロジー添加剤は、チキソ性付与剤として使用することができる。
【0053】
さらに特に、前記の使用は、コーティング、接着剤、PVCプラスチゾル、又はマスチック組成物、好ましくはPVCプラスチゾル組成物及びマスチック組成物における使用であることができる。
【0054】
別の具体的な使用は、PVCプラスゾル組成物における使用である。
【0055】
別の具体的な使用は、ブロックされたシラン基で末端封止されたポリシロキサン樹脂、ブロックされたシラン基で末端封止されたポリエーテル樹脂、ブロックされたシラン基で末端封止されたポリスルフィド樹脂、特に、アルコキシ基によってブロックされたシランによって末端封止されたもの、又はイソシアネート基によって末端封止されたポリウレタンプレポリマー樹脂に基づく、水分によって架橋されることができるマスチック組成物における使用である。
【0056】
別の具体的な使用は、水分によって架橋することができるマスチック組成物における使用であって、そのマスチックは透明であるか又は透明でない。
【0057】
最後に、本発明は、本発明によって上で定義した少なくとも1つの脂肪アミドのレオロジー添加剤としての、特にチキソ性付与剤としての使用によってもたらされる、コーティング、特にPVCプラスチゾルコーティング、又は接着剤シール、又はマスチックシールであることができる最終生成物を包含する。
【実施例
【0058】
以下の試験セクションに示す例は、本発明及びその性能品質を説明するために提示しており、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0059】
試験セクション
1)使用した出発材料と記号
下の表1を参照されたい。
表には、合成及び配合に用いた出発物質をまとめてある。
【0060】
【表1】
【0061】
明解にするために以下の略語を使用する。
・ 12HSA:12-ヒドロキシステアリン酸
・ SA:ステアリン酸
・ HMDA:ヘキサメチレンジアミン
・ D2000:Jeffamine(登録商標)D-2000ポリエーテルアミン
・ T3000:Jeffamine(登録商標)T-3000ポリエーテルアミン
・ bMBA:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸
【0062】
2)
<本発明による例A - T3000-(12HSA-bMBA)
231.40 gのJeffamine(登録商標)T-3000(0.078 mol, 1当量)、63.11 gの12-ヒドロキシステアリン酸(0.199 mol, 2.55当量)及び5.2 gの2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(0.035 mol, 0.45当量)を、温度計、ディーン・スターク装置、コンデンサー、及び撹拌機を備えた1リットルの丸底フラスコに入れた。 その混合物を不活性雰囲気下で180℃に加熱する。除去された水は、150℃からディーン・スターク装置に蓄積される。反応は、酸価及びアミン価によって監視する。 酸価及びアミン価がそれぞれ6未満になったら、反応を止める。その反応混合物を140℃に冷却し、シリコーンの型に取り出す。周囲温度まで冷えたら、製品をフレークに変換する。
【0063】
<本発明による例B - D2000-(12HSA-bMBA)
232.3 gのJeffamine(登録商標)D-2000(0.115 mol, 1当量)、62.12 gの12-ヒドロキシステアリン酸(0.196 mol, 1.7当量)、及び5.11 gの2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(0.034 mol, 0.3当量)を、温度計、ディーン・スターク装置、コンデンサー、及び撹拌機を備えた1リットルの丸底フラスコに入れる。その混合物を不活性雰囲気下で180℃に加熱する。除去された水は、150℃からディーン・スターク装置に蓄積される。反応は、酸価及びアミン価によって監視する。酸価及びアミン価がそれぞれ6未満になったら、反応を止める。その反応混合物を140℃に冷却し、シリコーンの型に取り出す。周囲温度まで冷えたら、製品をフレークに変換する。
【0064】
<比較例C - T3000-(SA)
313.6 gのJeffamine(登録商標)T-3000(0.10 mol, 1当量)及び86.4 gのステアリン酸(0.3 mol, 3当量)を、温度計、ディーン・スターク装置、コンデンサー、及び撹拌機を備えた1リットルの丸底フラスコに入れた。その混合物を不活性雰囲気下で180℃に加熱する。除去された水は、150℃からディーン・スターク装置に蓄積される。反応は、酸価及びアミン価によって監視する。酸価及びアミン価がそれぞれ6未満になったら、反応を止める。反応混合物を140℃に冷却し、シリコーンの型に取り出す。
【0065】
<比較例D - D2000-(SA)
312.2 gのJeffamine(登録商標)D-2000(0.15 mol, 1当量)と87.8 gのステアリン酸(0.3 mol, 2当量)を、温度計、ディーン・スターク装置、コンデンサー、及び撹拌機を備えた1リットルの丸底フラスコに入れた。その混合物を不活性雰囲気下で180℃に加熱する。除去された水は、150℃からディーン・スターク装置に蓄積される。反応は、酸価及びアミン価によって監視する。酸価及びアミン価がそれぞれ6未満になったら、反応を止める。その反応混合物を140℃に冷却し、シリコーンの型に取り出す。
【0066】
3)有機ゲル化剤のゲル化力の試験
この試験では、PVCプラスチゾル配合物において使用される従来の可塑剤(Jayflex(登録商標)DIUP)のみを含む単純化した製剤においてゲルを形成する、試験したレオロジー添加剤の能力を比較する。
【0067】
配合物は、分散ディスク及びスクレーパーを備えた実験用「プラネタリー」ミキサー(Molteni(登録商標)EMD 1タイプ)を使用して調製し、この装置は高粘度生成物を混合するだけなく、非流体システム中に粉末を混合することを可能にする。この装置は、分散時に水分の侵入を防ぐことを可能にする真空ポンプを備えている。Molteni(登録商標)EMD 1内の温度は、スクレーパーに取り付けられたプローブによって記録され、浴によって調整することができる。
【0068】
試験をし/比較をした簡略化した配合を、下の表2に示しており、一般的な可塑剤は、Jayflex(登録商標)DIUPであり、試験をしかつ比較した様々なレオロジー添加剤は、言及したアミド又は言及した他の参照生成物である。
【0069】
【表2】
【0070】
レオロジー添加剤を可塑剤に導入し、その混合物を組み込み温度(表3を参照されたい)にして、5分間分散させる。分散の最後に、その混合物を周囲温度へと冷却し、そのゲルの挙動を目視で調べる(下の表3を参照されたい)。
【0071】
【表3】
【0072】
ゲル試験の結果は、本発明による生成物(例A及びBによるアミド)がゲルを形成するのに対して、比較生成物は液体形態であることを示している。したがって、特に欧州特許出願公開第1514912A2号明細書に記載されている例Cの化合物は、ゲルを得ることを可能にできず(配合F3を参照されたい)、このことは、水素結合をもたらすヒドロキシル基の存在が、超分子集合体の形成及び形成されたファイバーの三次元(3D)ネットワークの形成に必須であることを強く示している。
【0073】
有機ゲル化剤の挙動は、使用するアミンの最初の構造によっても影響を受ける可能性がある。すなわち、国際公開第2014/053774A1号に記載されている有機ゲル化剤(12HSA-HMDA-12HSA)を本発明による例Bの化合物と比較すると、ゲル強度に有意な差が観察されうる。特に、脂肪族アミンをポリエーテルアミンに置き換えた場合、ゲル化力が増し、加えて、透明なゲルが得られることを可能にする。完全に溶解するためには、化合物12HSA-HMDA-12HSA(配合F5を参照されたい)は、本発明による生成物よりも高い温度を必要とすることに注意されたい。
【0074】
さらに、ゲルの性能品質は、レオロジー添加剤の物理的性質に関連付けることができる。その結果、配合F6及びF7に関してレオロジー添加剤の組み込みを一定温度(60℃)で始めると、ゲル強度の違いが観察される。すなわち、添加剤がフレークの形態である場合(配合F5を参照されたい)、ゲル強度が低下し、これは、溶解性の欠如による配合物中への上記生成物の不完全な組み込みによってうまく説明することができる。さらに、粒が観察される可能性があり、このことはこの仮説を裏付けることができよう。
【0075】
また、添加剤が粉末形態であり、かつその最適な組み込み温度(F7で60℃)よりも高い温度(F7で80℃)において組み込まれた場合には、ゲル強度が低下することが観察でき、このことはさらに加えて、おそらく生成物の過剰溶解による、温度に対する敏感さを示している。したがって、標準的な生成物の場合、有機ゲル化剤が有効である組み込み温度範囲(温度の窓)を本当に観察することが重要である。
【0076】
本発明による生成物を含む配合F1及びF2に関して、組み込み温度に関係なく、強いゲルの形成を観察することができる。試験をした温度において、レオロジー添加剤は完全に溶解することに言及しなくてはならない。さらに、それらの配合物は完全に透明な外観を示す。
【0077】
4)簡略化されたハイブリッドマスチック配合におけるレオロジー性能品質の評価
この試験では、可塑剤としてJayflex(登録商標)DIUPを、そしてレオロジー添加剤として比較する上述した生成物を含む、簡略化されたハイブリッドマスチック配合物の添加剤のレオロジー性能品質を比較する。
【0078】
【表4】
【0079】
上記配合物は、Molteni(登録商標)EMD 1ミキサーを使用して調製される。樹脂と可塑剤は、最初の段階で、示されている比率で添加され、かつ均質化される(表4)。添加剤は計量され、続いて第2段階で添加される。したがって、反応混合物(これは混合段階のあいだ、真空下に保たれる)は、5分間、80℃にされる。この段階の終わりに、その混合物は25℃に冷却され、取り出される。これらの配合物の性能品質を下の表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
本発明による例Aのトリアミドレオロジー添加剤は、標準的な粉末添加剤Crayvallac(登録商標)Antisettle CVP(配合物F9を参照されたい)と比較して、レオロジー性能品質に関してはるかに有効であることが証明されている(配合物F8を参照されたい)。例Cのジアミド生成物に関して、それはまた、粉末形態の化合物である12HSA-HMDA-12HSA(配合物F11を参照されたい)の化合物を用いたものよりも優れたレオロジー性能品質(配合物F10を参照)を示している。
【0082】
さらに、本発明による生成物は、水素化ヒマシ油誘導体に基づく粉末の形態の従来の添加剤の場合に必要である、レオロジー(ゲル)を発現させるための特定の処理プロセスを必要としない。
【0083】
さらに、本発明による製品はフレークの形態であるので、粉末の使用に伴って遭遇する問題(微粉化、取り扱い、毒性など)が排除される。これらの生成物は、完全に透明なMSマスチック配合物を得ることを可能にすることにも注意すべきである。
【国際調査報告】