(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】磁気抵抗慣性センサ・チップ
(51)【国際特許分類】
G01P 15/105 20060101AFI20220603BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20220603BHJP
G01P 15/13 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
G01P15/105
G01P15/08 101B
G01P15/13 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558868
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 CN2020081618
(87)【国際公開番号】W WO2020200076
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】201910262361.6
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building E, No. 7 Guangdong Road, Zhangjiagang Free Trade Zone, Jiangsu 215634, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チー、ピン
(72)【発明者】
【氏名】フォン、リーシエン
(72)【発明者】
【氏名】クオ、ハイピン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ウェイホン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、ソンション
(57)【要約】
【課題】本発明は、外部磁場の変化に対するそれら自体の抵抗による迅速な応答に係るTMR/GMR/AMR磁気抵抗材料の特性、およびTMR/GMR/AMRの優れた温度特性に基づく、ならびに磁性または非磁性振動ダイヤフラムと組み合わせた、高感度および高周波測定のためのおよびわずかな高周波振動、圧力、または加速度の信号を検出することができる磁気抵抗慣性センサ・チップを提案する。
【解決手段】本発明は、基板(101)と、振動ダイヤフラム(102、102’)と、磁場感知用磁気抵抗器(105)と、少なくとも1つの永久磁石薄膜(108)とを備える磁気抵抗慣性センサ・チップを説明する。振動ダイヤフラム(102、102’)は、基板(101)の片側の面上に位置する。磁場感知用磁気抵抗器(105)および永久磁石薄膜(108)は、基板(101)の基部から変位した振動ダイヤフラム(102、102’)の面上に設定される。接触電極(106)も、基板(101)の基部から離れるように振動ダイヤフラム(102、102’)の面上に配置される。磁場感知用磁気抵抗器(105)は、接続リード線(104)を介して接触電極(106)に接続される。基板(101)は、エッチングによって形成された空洞(103)を備え、磁場感知用磁気抵抗器(105)および永久磁石薄膜(108)の一方または両方は、振動ダイヤフラムの部分(102、102’)において空洞(103)の垂直突出領域内に配置される。磁気抵抗慣性センサ・チップの磁場感知用磁気抵抗器(105)の感度方向の永久磁石薄膜(108)によって生成される磁場が変化し、これは、磁場感知用磁気抵抗器(105)の抵抗値を変化させ、それによって出力電気信号の変化をもたらす。この磁気抵抗慣性センサ・チップは、磁気抵抗器の高感度および高周波応答特性を使用して出力信号強度および周波数応答を改善し、それによって小さいおよび高い周波数の圧力、振動、または加速度の変化の検出を容易にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、振動ダイヤフラムと、磁場感知用磁気抵抗器と、少なくとも1つの永久磁石薄膜とを備える磁気抵抗慣性センサ・チップであって、
該振動ダイヤフラムは、該基板の片側の面上に位置し、該磁場感知用磁気抵抗器および該永久磁石薄膜は、該基板の基部から離れるように該振動ダイヤフラムの面上に設定され、接触電極も、該基板の該基部から離れるように該振動ダイヤフラムの該面上に配置され、該磁場感知用磁気抵抗器は、接続リード線を介して該接触電極に接続され、
該基板は、エッチングによって形成された空洞を備え、該磁場感知用磁気抵抗器および該永久磁石薄膜の一方または両方は、該振動ダイヤフラムの部分上で該空洞の垂直突出領域内に配置され、該磁場感知用磁気抵抗器の感度方向の該永久磁石薄膜によって生成される磁場の成分が変化し、該磁場感知用磁気抵抗器の抵抗値を変化させ、それによって出力電気信号の変化をもたらす、磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項2】
前記磁場感知用磁気抵抗器は、前記振動ダイヤフラムの部分上で前記空洞の前記垂直突出領域以外の領域内に配置され、前記永久磁石薄膜は、前記振動ダイヤフラムの部分上で前記空洞の前記垂直突出領域の中心位置に配置され、または
前記磁場感知用磁気抵抗器は、前記振動ダイヤフラムの部分上で前記空洞の前記垂直突出領域の内側縁部上に配置され、前記永久磁石薄膜は、前記振動ダイヤフラムの部分上で前記空洞の前記垂直突出領域の前記中心位置に配置され、または
前記磁場感知用磁気抵抗器は、前記振動ダイヤフラムの部分上で前記空洞の前記垂直突出領域の前記中心位置に配置され、前記永久磁石薄膜は、前記振動ダイヤフラムの部分上で前記空洞の前記垂直突出領域以外の領域内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項3】
基準磁気抵抗器をさらに備え、該基準磁気抵抗器は、前記基板の前記基部から離れるように前記振動ダイヤフラムの前記面上に位置し、前記振動ダイヤフラムの部分上で前記空洞の前記垂直突出領域以外の領域内に配置され、該基準磁気抵抗器および前記磁場感知用磁気抵抗器は、密封リード線を介してフルブリッジまたは半ブリッジ構造に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項4】
前記振動ダイヤフラムから離れるような前記基準磁気抵抗器の側は、軟磁性材料で構成される磁気シールド層を備え、前記磁気シールド層は、前記基準磁気抵抗器を覆うことを特徴とする、請求項3に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項5】
前記基準磁気抵抗器および前記磁場感知用磁気抵抗器は、トンネル磁気抵抗器、巨大磁気抵抗器、または異方性磁気抵抗器であることを特徴とする、請求項3または4に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項6】
前記磁気抵抗慣性センサ・チップは、密封基板および密封ハウジングからなる密封構造をさらに備え、前記基板は、該密封基板および該密封ハウジングによって形成される空洞の内側に配設され、前記密封基板上に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項7】
前記密封ハウジングは、軟磁性材料製の磁場シールド用シェルの1つまたは複数の層、金属箔製の電場シールド用シェルの1つまたは複数の層、または該磁場シールド用シェルおよび該電場シールド用シェルを積み重ねることによって形成されるシェルを備えることを特徴とする、請求項6に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項8】
前記密封基板または前記密封ハウジングは、少なくとも1つの開口部を備えることを特徴とする、請求項6に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項9】
前記振動ダイヤフラムの厚さは、0.001μmから1000μmであり、前記空洞と前記振動ダイヤフラムの間の接触面の縁部は、円形、楕円形、長方形、または平行四辺形であり、前記空洞と前記振動ダイヤフラムの間の該接触面の囲んでいる長方形の長さと幅の比は、20:1から1:1の範囲内であり、該接触面の該囲んでいる長方形の幅は、0.1μmから2000μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項10】
前記振動ダイヤフラムは、エッチングによって形成された複数の貫通穴を備えることを特徴とする、請求項1または9に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項11】
前記永久磁石薄膜は、硬磁性材料、あるいは軟磁性材料および反強磁性材料からなる複合材料ユニットによって形成される[軟磁石/反強磁性体]n、または軟磁性材料および硬磁性材料からなる複合材料ユニットによって形成される[軟磁石/硬磁石]nの1つまたは複数の層であり、nは自然数であり、該硬磁性材料はCoPt、CoCrPt、およびFePtの少なくとも1つを含み、該軟磁性材料はFeCoおよびNiFeの少なくとも1つを含み、該反強磁性材料はPtMnおよびIrMnの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項12】
前記永久磁石薄膜の磁化方向は、前記永久磁石薄膜の平面内にあり、または前記永久磁石薄膜の前記平面に直交し、前記磁場感知用磁気抵抗器の前記感度方向は、前記永久磁石薄膜の前記平面内にある、または前記永久磁石薄膜の前記平面に直交することを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【請求項13】
前記センサ・チップは、フィードバック・コイルを含み、
該フィードバック・コイルは、平面エッチング式コイルであり、前記基板の前記基部から離れるように前記振動ダイヤフラムの前記面上に位置するとともに、前記振動ダイヤフラムの部分上で前記空洞の前記垂直突出領域以外の領域内に配置され、
あるいは、該フィードバック・コイルは、前記永久磁石薄膜の直上に配設されたまたは前記永久磁石薄膜の直下に配設された巻線コイルであり、前記空洞の下方または前記空洞の内側に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗慣性センサ・チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサの分野に関し、より詳細には、磁気抵抗慣性センサ・チップの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加速度、振動、および圧力を測定するための慣性センサ・チップが、様々な分野で大いに注目されている。それらのうち、振動センサの分野は、建築物振動および機械振動等の固体振動検出などの分野、ソナー・ハイドロフォンなどの液体振動検出、ならびにマイクロフォン応用などの気体振動にさらに分けることができる。既存の慣性センサ・チップは、シリコン・ベースのキャパシタ、圧電気、およびシリコン・ベースのピエゾ抵抗などの原理に主に基づいており、加速度、振動、および圧力などの測定される力学量および物理量を測定についての電圧信号または電流信号に変換する。シリコン・ベースのキャパシタ型センサ・チップは、高感度および良好な温度安定性を有するが、応答周波数帯域が狭く、圧電気型センサ・チップは、優れた温度安定性および時間安定性、および広い線形範囲を有するが、感度が低く、シリコン・ベースのピエゾ抵抗型センサ・チップは、高感度および高い動的応答を有し、軽い圧力を測定することができるが、温度安定性が乏しい。加えて、上記の技術は、周波数が20MHzを上回る振動信号をほとんど検出することができない。
【0003】
磁気抵抗材料には、特に、ピン止め層、自由層、および非磁性トンネル・バリア層からなる構造を備えたトンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling MagnetoResistance)を有する磁気抵抗材料、ピン止め層、自由層、および非磁性伝導性スペーサ層からなる構造を備えた巨大磁気抵抗(GMR:Giant MagnetoResistance)を有する磁気抵抗材料、ならびに磁気異方性層構造を備えた異方性磁気抵抗(AMR:Anisotropic MagnetoResistance)を有する磁気抵抗材料が含まれる。磁場検出素子として、磁気抵抗材料は、優れた周波数応答特性、良好な温度特性、および高感度を有する。適切な機械式伝達構造と励起構造の組合せにおいて、それらは、特定の慣性パラメータの測定に使用することができる。しかしながら、慣性パラメータの測定では、励起構造および磁気抵抗素子は、それぞれ、空間内の異なる平面の設計に属する。結果として、いくつかの製造プロセスが単純化できるという利点にもかかわらず、全体の歩留まりは高くなく、測定の直線間隔は低下し、機械式伝達構造、励起構造、および磁気抵抗素子の相対空間位置の調整は限定され、それによって性能調整が限定されるなどのいくつかの欠点がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の加速度センサは弱い圧力および高周波振動に対して検出信号が弱い、またはさらには弱い圧力および高周波振動を検出することができないという現在の状況に鑑みて、本発明は、外部磁場の変化に対するそれら自体の抵抗による迅速な応答に係るTMR/GMR/AMR磁気抵抗材料の特性、およびTMR/GMR/AMRの優れた温度特性に基づく、ならびに磁性または非磁性振動ダイヤフラムと組み合わせた、高感度および高周波測定のためのおよびわずかな高周波振動、圧力、または加速度の信号を検出することができる磁気抵抗慣性センサ・チップを提案する。上記磁気抵抗慣性センサ・チップは、磁気抵抗器を感度のよい材料として使用し、永久磁石薄膜を信号送信源としておよび磁気抵抗器を信号受信源として同じ水平面上に配置して、信号の直線間隔を最大にし、上記永久磁石薄膜の磁場の変化の結果としての磁気抵抗器の抵抗の変化を用いて機械的移動を電気信号に変換し、それによって測定される振動、加速度、または圧力の信号を正確に得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の技術的解決策、すなわち、
基板と、振動ダイヤフラムと、磁場感知用磁気抵抗器と、少なくとも1つの永久磁石薄膜とを備える磁気抵抗慣性センサ・チップであって、
振動ダイヤフラムは、基板の片側の面上に位置し、磁場感知用磁気抵抗器および永久磁石薄膜は、基板の基部から離れるように振動ダイヤフラムの面上に設定され、接触電極も、基板の基部から離れるように振動ダイヤフラムの面上に配置され、磁場感知用磁気抵抗器は、接続リード線を介して接触電極に接続され、
基板は、エッチングによって形成された空洞を備え、磁場感知用磁気抵抗器および永久磁石薄膜の一方または両方は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域内に配置され、磁場感知用磁気抵抗器の感度方向の永久磁石薄膜によって生成される磁場の成分が変化し、磁場感知用磁気抵抗器の抵抗値を変化させ、それによって出力電気信号の変化をもたらす、磁気抵抗慣性センサ・チップによって実施される。
【0006】
好ましくは、磁場感知用磁気抵抗器は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域以外の領域内に配置され、永久磁石薄膜は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域の中心位置に配置され、または
磁場感知用磁気抵抗器は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域の内側縁部上に配置され、永久磁石薄膜は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域の中心位置に配置され、または
磁場感知用磁気抵抗器は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域の中心位置に配置され、永久磁石薄膜は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域以外の領域内に配置される。
【0007】
好ましくは、磁気抵抗慣性センサ・チップは、基準磁気抵抗器をさらに備え、基準磁気抵抗器は、基板の基部から離れるように振動ダイヤフラムの面上に位置し、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域以外の領域内に配置され、基準磁気抵抗器および磁場感知用磁気抵抗器は、密封リード線を介してフルブリッジまたは半ブリッジ構造に接続される。
【0008】
好ましくは、振動ダイヤフラムから離れるような基準磁気抵抗器の側は、軟磁性材料で構成される磁気シールド層を備え、磁気シールド層は、基準磁気抵抗器を覆う。
【0009】
好ましくは、基準磁気抵抗器および磁場感知用磁気抵抗器は、トンネル磁気抵抗器、巨大磁気抵抗器、または異方性磁気抵抗器である。
【0010】
好ましくは、磁気抵抗慣性センサ・チップは、密封基板および密封ハウジングからなる密封構造をさらに備え、基板は、密封基板および密封ハウジングによって形成される空洞の内側に配設され、密封基板上に固定される。
【0011】
好ましくは、密封ハウジングは、軟磁性材料製の磁場シールド用シェルの1つまたは複数の層、金属箔製の電場シールド用シェルの1つまたは複数の層、あるいは磁場シールド用シェルおよび電場シールド用シェルを積み重ねることによって形成されるシェルを備える。
【0012】
好ましくは、密封基板または密封ハウジングは、少なくとも1つの開口部を備える。
【0013】
好ましくは、振動ダイヤフラムの厚さは、0.001μmから1000μmであり、空洞と振動ダイヤフラムの間の接触面の縁部は、円形、楕円形、長方形、または平行四辺形であり、空洞と振動ダイヤフラムの間の接触面の囲んでいる長方形の長さと幅の比は、20:1から1:1の範囲内であり、接触面の囲んでいる長方形の幅は、0.1μmから2000μmの範囲内である。
【0014】
好ましくは、振動ダイヤフラムは、エッチングによって形成された複数の貫通穴を備える。
【0015】
好ましくは、永久磁石薄膜は、硬磁性材料、あるいは軟磁性材料および反強磁性材料からなる複合材料ユニットによって形成される[軟磁石/反強磁性体]n、または軟磁性材料および硬磁性材料からなる複合材料ユニットによって形成される[軟磁石/硬磁石]nの1つまたは複数の層であり、nは自然数であり、硬磁性材料はCoPt、CoCrPt、およびFePtの少なくとも1つを含み、軟磁性材料はFeCoおよびNiFeの少なくとも1つを含み、反強磁性材料はPtMnおよびIrMnの少なくとも1つを含む。
【0016】
好ましくは、永久磁石薄膜の磁化方向は、永久磁石薄膜の平面内にあり、または永久磁石薄膜の平面に直交し、磁場感知用磁気抵抗器の感度方向は、永久磁石薄膜の平面内にある、または永久磁石薄膜の平面に直交する。
【0017】
好ましくは、センサ・チップは、フィードバック・コイルを含み、
フィードバック・コイルは、平面エッチング式コイルであり、基板の基部から離れるように振動ダイヤフラムの面上に位置するとともに、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域以外の領域内に配置され、
あるいは、フィードバック・コイルは、永久磁石薄膜の直上に配設されたまたは永久磁石薄膜の直下に配設された巻線コイルであり、空洞の下方または空洞の内側に配置される。
【0018】
先行技術と比較して、本発明は、以下の有利な技術的効果を有する。
本発明は、外部の圧力、振動、または加速度の変化を伝達するために振動ダイヤフラムを使用し、振動ダイヤフラムの機械的移動を磁気抵抗器の抵抗値の変化に変換するために磁気抵抗器を感度のよい材料として使用し、磁気抵抗器素子および永久磁石薄膜が同じ基準平面上に位置するように振動ダイヤフラムの同じ面上に磁気抵抗器素子および永久磁石薄膜を励起構造として配置し、これにより機械式伝達構造としての振動ダイヤフラム、励起構造としての永久磁石薄膜、および磁気抵抗素子の相対空間位置の調整を容易にするとともに、これはセンサからの出力信号の直線間隔およびセンサの歩留まりの改善にとって好ましく、磁気抵抗器の高感度および高周波応答特性を使用して出力信号強度および周波数応答を改善し、それによって小さいおよび高い周波数の圧力、振動、または加速度の変化の検出を容易にする。
【0019】
以下の図面を参照してなされる非限定の実施形態の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴、目標、および利点がより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図2a】本発明の一実施形態による磁気抵抗慣性センサ・チップの断面図である。
【
図2b】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの断面図である。
【
図5a】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図である。
【
図5b】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図である。
【
図5c】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図である。
【
図6a】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図6b】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図7a】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図7b】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図7c】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの断面図である。
【
図8a】本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図8b】本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図9a】本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図9b】本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図10a】本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図10b】本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図11a】本発明の実施形態による磁気抵抗ブリッジ接続モードの概略図である。
【
図11b】本発明の実施形態による磁気抵抗ブリッジ接続モードの概略図である。
【
図11c】本発明の実施形態による磁気抵抗ブリッジ接続モードの概略図である。
【
図11d】本発明の実施形態による磁気抵抗ブリッジ接続モードの概略図である。
【
図12】本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
【
図13a】本発明の実施形態による他の3つの磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図である。
【
図13b】本発明の実施形態による他の3つの磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図である。
【
図13c】本発明の実施形態による他の3つの磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図である。
【
図14a】それぞれ永久磁石薄膜材料の代表的なセッティングの概略図である。
【
図14b】それぞれ永久磁石薄膜材料の代表的なセッティングの概略図である。
【
図14c】それぞれ永久磁石薄膜材料の代表的なセッティングの概略図である。
【
図14d】それぞれ永久磁石薄膜材料の代表的なセッティングの概略図である。
【
図14e】それぞれ永久磁石薄膜材料の代表的なセッティングの概略図である。
【
図14f】それぞれ永久磁石薄膜材料の代表的なセッティングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、特定の実施形態と組み合わせて以下に詳細に説明される。以下の実施形態は、当業者が本発明をさらに理解することを助けるが、本発明を何らかの形で限定しない。当業者には、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの変形および改善がさらになされ得るものであり、それらの全ては本発明の保護範囲内に入ることに留意されたい。
【0022】
本発明の説明では、「半径方向」、「軸方向」、「上」、「下」、「上部」、「下部」、「内側」、および「外側」といった用語によって示される方向関係または位置関係は、添付図面に基づく方向関係または位置関係であり、本発明の説明を助けるためにおよび説明を簡単にするために使用されるものにすぎず、示された装置または要素が特定の方向を有されなければならない、または特定の方向で構築および動作されなければならないということを示すまたは示唆するものではないことを理解されたい。したがって、それらは、本発明の限定と解釈されてはならない。本発明の説明では、別段の定めがない限り、「複数」は、2つ以上を意味する。
【0023】
本発明の説明では、他に特段規定または定義されない限り、用語「設置する」、「設定する」、および「接続する」は、その幅広い意味で理解されるべきであることに留意されたい。例えば、それは、固定された接続、取り外し可能な接続、または一体化されている接続であってもよく、それは、直接的な接続または仲介物を介した間接的な接続であってもよい。当業者には、本発明における上記用語の具体的な意味は、特定の状況に従って理解され得る。
【0024】
先行技術では、磁気抵抗慣性センサの永久磁石薄膜および磁場感知用磁気抵抗器は、同じ平面上になく、これらの2つは、垂直な構造である。振動構造の材料によって制限されるので、相対垂直位置の調整が制限される。さらに、出力信号の線形の要求により、相対水平位置の調整が制限される。結果として、構造設計は、とても制限される。
【0025】
上記の課題に基づいて、本発明の実施形態は、磁気抵抗慣性センサ・チップを提供する。
図1は、本発明の一実施形態による磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図であり、
図2aは、本発明の一実施形態による磁気抵抗慣性センサ・チップの断面図であり、
図2aは、
図1の切断線A-A’に沿った断面図であり、
図2bは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの断面図であり、
図2bは、
図1の切断線B-B’に沿った断面図であり、
図1、
図2a、および
図2bを参照すると、磁気抵抗慣性センサ・チップは、基板101と、(
図1の記号102’に対応するとともに、
図2aおよび
図2bの記号102に対応する)振動ダイヤフラムと、磁場感知用磁気抵抗器105と、少なくとも1つの永久磁石薄膜108とを備える。基板101は、単結晶シリコン、金属、およびセラミックの1つであり、振動ダイヤフラムは、基板101の上面を覆い、磁場感知用磁気抵抗器105および永久磁石薄膜108は、振動ダイヤフラムの上面に配置される。適宜、振動ダイヤフラムの上面および下面は、平面である。接触電極106は、振動ダイヤフラムの上面に配置され、磁場感知用磁気抵抗器105は、接続リード線104を介して接触電極106に接続される。基板101は、空洞103を備え、空洞103は、基板101のエッチングによって形成することができる。空洞103は、振動ダイヤフラムの下側に位置し、磁場感知用磁気抵抗器105および永久磁石薄膜108の一方または両方は、振動ダイヤフラム102上の空洞103の垂直突出領域に配置される。永久磁石薄膜108と磁場感知用磁気抵抗器105の間に相対変位があるとき、磁場感知用磁気抵抗器105の感度方向の永久磁石薄膜108により生成される磁場の成分は変化し、磁場感知用磁気抵抗器105の抵抗値を変化させ、それによって出力電気信号の変化をもたらす。添付図面を明確にさせるために、空洞に対応する振動ダイヤフラム102’のほんの一部が、
図1に示されており、振動ダイヤフラム102全体が、
図2aおよび
図2bに示されていることに留意されたい。以下の実施形態では、記号102’も、空洞に対応する振動ダイヤフラムの一部を表すために使用される。
【0026】
本発明の実施形態では、永久磁石薄膜108は、励起構造として働き、永久磁石薄膜108および磁場感知用磁気抵抗器105が同じ基準平面上に位置するように、磁場感知用磁気抵抗器105と同じ振動ダイヤフラムの面に配置される。永久磁石薄膜108および磁場感知用磁気抵抗器105の水平位置の調整が、信号の線形性に重大な影響を及ぼさないので、磁気抵抗慣性センサ・チップの構造設計は、従来の磁気抵抗慣性センサ・チップと比較してより多様になっており、これにより機械式伝達構造としての振動ダイヤフラム、励起構造としての永久磁石薄膜、および磁気抵抗素子の相対空間位置の調整を容易にする。
【0027】
図1は、永久磁石薄膜108が振動ダイヤフラムの中心位置に配置され、磁場感知用磁気抵抗器105が振動ダイヤフラム上の空洞103の垂直突出領域以外の領域内に配置される状況を単に概略的に示すことに留意されたい。磁場感知用磁気抵抗器105および永久磁石薄膜108の一方または両方が振動ダイヤフラム上で空洞103の垂直突出領域に配置される状態の限り、本発明の実施形態における磁場感知用磁気抵抗器105および永久磁石薄膜108の位置への特定の限定はない。
【0028】
本実施形態による磁気抵抗慣性センサ・チップは、外部の圧力、振動、または加速度の変化を伝達するために振動ダイヤフラムを使用し、振動ダイヤフラムの機械的移動を磁気抵抗器の抵抗値の変化に変換するために磁気抵抗器を感度のよい材料として使用し、磁気抵抗器素子および永久磁石薄膜が同じ基準平面上に位置するように振動ダイヤフラムの同じ面上に磁気抵抗器素子および励起構造としての永久磁石薄膜を配置し、これにより機械式伝達構造としての振動ダイヤフラム、励起構造としての永久磁石薄膜、および磁気抵抗素子の相対空間位置の調整を容易にするとともに、これはセンサからの出力信号の直線間隔およびセンサの歩留まりの改善にとって好ましく、磁気抵抗器の高感度および高周波応答特性を使用して出力信号強度および周波数応答を改善し、それによって小さいおよび高い周波数の圧力、振動、または加速度の変化の検出を容易にする。
【0029】
永久磁石薄膜の磁場に対する変化に感度のよい磁気抵抗器が、磁場感知用磁気抵抗器として使用され、永久磁石薄膜の磁場の変化に感度がよくない磁気抵抗器が、基準磁気抵抗器として使用され、基準磁気抵抗器は、永久磁石薄膜からある距離だけ離間して配置されるように設定され、これにより基準磁気抵抗器に対しての永久磁石薄膜の磁場の影響をさらに弱める。必要ならば、軟磁性材料で構成された磁気シールド層107が、磁場の影響をなくすように基準磁気抵抗器を覆い、それによって基準磁気抵抗器の安定した抵抗値を確実にする。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図であり、
図4は、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの断面図であり、
図4は、
図3の切断線C-C’に沿った断面図である。
図3および
図4を参照すると、本発明によるセンサ・チップは、基準磁気抵抗器109をさらに備え、基準磁気抵抗器109は、振動ダイヤフラムの上面上に配置されるとともに、振動ダイヤフラム上で空洞103の垂直突出領域以外の領域内に配置され、本発明による基準磁気抵抗器109および磁場感知用磁気抵抗器105は、密封リード線を介してフルブリッジまたは半ブリッジ構造に接続され、あるいは磁場感知用磁気抵抗器は、単一のアームを有する構造を別々に形成する。
【0031】
図3および
図4をさらに参照すると、軟磁性材料で構成される磁気シールド層107は、基準磁気抵抗器109の上部を覆い、次いでこれは、基準磁気抵抗器109の抵抗値に対しての永久磁石薄膜108により生成される磁場に対する変化の影響をシールドする。
【0032】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による基準磁気抵抗器109および磁場感知用磁気抵抗器105は、トンネル磁気抵抗器、巨大磁気抵抗器、または異方性磁気抵抗器である。
【0033】
本発明によれば、永久磁石薄膜の磁化方向は、永久磁石薄膜の平面内にあり、または永久磁石薄膜の平面に直交し、磁場感知用磁気抵抗器の感度方向は、永久磁石薄膜の平面内にあり、または永久磁石薄膜の平面に直交する。
図4との組み合わせにおいて、本発明の特定の実施形態によれば、本発明における磁場感知用磁気抵抗器の感度方向は、Y方向に沿って設定され、一方、永久磁石薄膜は、Z方向に沿って磁化される。磁気抵抗器は、外部の圧力、振動、または加速度がZ方向の永久磁石薄膜の変位を引き起こすときに磁気抵抗器の位置におけるY方向の磁場の成分を検出するとともに、変位の変化を決定することによって圧力/振動/加速度を検出するために使用される。磁気抵抗器の感度方向および永久磁石薄膜の磁化方向は共に、振動ダイヤフラムの平面の方向またはダイヤフラムの平面内の任意の方向に直交し得る。
【0034】
図5aは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図であり、
図5bは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図であり、
図5cは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図である。
図5a~
図5cを参照すると、本発明の特定の実施形態によれば、本発明によるセンサ・チップは、密封基板202および密封ハウジング201からなる密封構造をさらに備え、基板101は、密封基板202および密封ハウジング201によって形成された空洞内部に配設され、密封基板202上に固定される。
【0035】
密封構造は、外部の圧力または振動を伝達するために1つまたは複数の開口部203を備えて形成され得る。音響振動(例えば、マイクロフォン)または液体/気体圧力が伝達される必要があるとき、密封開口部は、液体/気体がチップと接触しているように必要とされる。開口部は、加速度を測定するために必要とされない。本発明の特定の実施形態によれば、1つまたは複数の開口部203は、
図5aから
図5cに示されるように、実際の応用のシナリオの必要に従って密封基板202または密封ハウジング201上に形成され得るものであり、
図5aは、開口部を備えない密封構造を示し、
図5bは、開口部が密封ハウジング上に位置することを示し、
図5cは、開口部が密封基板上に位置することを示す。
【0036】
加えて、本発明による密封ハウジング201は、実際の必要性に従って選択され得る軟磁性材料製の磁場シールド用シェルの1つまたは複数の層、金属箔製の電場シールド用シェルの1つまたは複数の層、あるいは磁場シールド用シェルおよび電場シールド用シェルを積み重ねることによって形成されるシェルを備える。
【0037】
図6aは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図であり、
図6bは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
図1、
図6a、および
図6bは、X方向に沿った本発明による3つの代表的なトンネル磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図であり、R1およびR3は磁場感知用磁気抵抗器であり、R2およびR4は基準磁気抵抗器であり、信号は、接触電極106によって導き出される。
図1および
図6aに示されるように、永久磁石薄膜は、振動ダイヤフラムの中心位置に配置することができ、磁化方向は、永久磁石ダイヤフラムの面に直交する、または永久磁石ダイヤフラムの任意の縁部ペアに平行である。
図6aに示されるように、磁場感知用磁気抵抗器は、振動ダイヤフラムの部分上で垂直突出領域以外の領域内に位置することができ、または
図1に示されるように、磁気抵抗器は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域の内部の内側縁部領域内に位置してもよい。外部の振動/加速度/圧力によって影響を受けるとき、振動ダイヤフラムは、ダイヤフラムに直交する方向に移動するように永久磁石薄膜を駆動し、磁気抵抗器の位置で磁場強度の変化を引き起こし、次いで磁気抵抗器の抵抗値の変化を引き起こす。代替として、
図6bに示されるように、磁気抵抗器は、空洞の突出部の内側の中心位置に配置され、永久磁石薄膜は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域の外側に配置される。外部の振動/加速度/圧力によって影響を受けるとき、ダイヤフラムは、ダイヤフラムに直交する方向に移動し、磁場強度が磁気抵抗器の位置で変化するようにダイヤフラム上の磁気抵抗器と永久磁石薄膜の間の相対変位を引き起こし、それによって磁気抵抗器の抵抗値を変化させる。
【0038】
また、
図4を参照すると、基準磁気抵抗器R2およびR4は、空洞の外側の位置に配置される。基準磁気抵抗器は、永久磁石薄膜によって生成される磁場によって影響を受けず、その抵抗値は、永久磁石薄膜の変位の結果として磁場が変化するときに変化しないままである。磁気シールド層は、磁場に対する変化の影響を減少させるように基準磁気抵抗器の上部を覆うことができる。応用のシナリオによって必要とされるとき、R1およびR3は、出力のために振動を電気信号に変換するようにフルブリッジまたは半ブリッジの形態で連結される。加速度の計算の場合、R1およびR3が分岐を形成し、R2およびR4が分岐を形成してフルブリッジを構成するときに、加速度が永久磁石薄膜の変位を引き起こす場合、R1およびR3によって形成された分岐の抵抗は、その結果として増加し、R2およびR4によって形成された分岐の抵抗は、変わらないままであり、フルブリッジ電圧信号は、ゼロから正の値へ変化する。R1およびR3の分岐における磁場の変化量、永久磁石薄膜の変位は、磁場変位の関係に従って逆算によって得られ、次いで、加速度は、そのような変位を引き起こす時間と組み合わせて得られる。
【0039】
図7aは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図であり、
図7bは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図であり、
図7cは、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの断面図である。
図7aから
図7cを参照すると、振動ダイヤフラム102は、複数の貫通穴110でエッチングされ、それによって振動伝達効率を改善する。振動ダイヤフラム上の貫通穴110の突出部は、磁気抵抗器の突出部、ならびにそのリード線および電極と重ならない。穴は、穴は磁気抵抗器およびリード線が位置する領域に形成することができないので磁気抵抗器およびリード線が設けられた後に形成され、さもなければ、磁気抵抗器およびリード線は中断される。
【0040】
図8aおよび
図8bは、本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図であり、
図9aおよび
図9bは、本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。
図8aから
図8bおよび9aから
図9bを参照すると、本発明による代表的な異方性磁気抵抗/巨大磁気抵抗センサの平面図が示されている。磁気抵抗器はストリップまたは波形状に配置され、電極は、磁気抵抗器変化信号を導き出す。永久磁石薄膜は、振動ダイヤフラムの中心位置に配置することができ、磁化方向は、ダイヤフラムの面に直交する、またはダイヤフラムの任意の縁部ペアに平行である。外部の振動/加速度/圧力によって影響を受けるとき、ダイヤフラムは、ダイヤフラムに直交する方向に移動するように永久磁石薄膜を駆動し、磁気抵抗器の位置で磁場強度の変化を引き起こし、次いで磁気抵抗器の抵抗値の変化を引き起こす。代替として、磁気抵抗器は、空洞の突出部の内側の中心位置に配置され、永久磁石薄膜は、振動ダイヤフラムの部分上で空洞の垂直突出領域の外側に配置される。外部の振動/加速度/圧力によって影響を受けるとき、ダイヤフラムは、ダイヤフラムに直交する方向に移動し、磁場強度が磁気抵抗器の位置で変化するようにダイヤフラム上の磁気抵抗器と永久磁石薄膜の間の相対変位を引き起こし、それによって磁気抵抗器の抵抗値の変化を変化させる。一方、基準磁気抵抗器R2およびR4は、空洞の外側の位置に配置される。基準磁気抵抗器は、永久磁石薄膜によって生成される磁場によって影響を受けず、その抵抗値は、振動ダイヤフラムが振動するときに変化しないままである。必要ならば、磁気シールド層が、基準磁気抵抗器R2およびR4の上方に設けられてもよい。応用のシナリオによって必要とされるとき、基準抵抗器R2およびR4、ならびに磁場感知用磁気抵抗器R1およびR3は、出力のために振動を電気信号に変換するように基準フルブリッジまたは基準半ブリッジの形態でリンクされる。
【0041】
図10aおよび
図10bは、本発明の実施形態による他の2つの磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図である。振動ダイヤフラムの厚さは、0.001μmから1000μmであるように選択することができ、空洞と振動ダイヤフラムの間の接触面の縁部は、円形、楕円形、長方形、または平行四辺形であり、空洞と振動ダイヤフラムの間の接触面の囲んでいる長方形の長さと幅の比は、20:1から1:1の範囲内であり、ただし、接触面の囲んでいる長方形の幅は、0.1μmから2000μmの範囲内である。
図10aおよび
図10bを参照すると、本発明の特定の実施形態によれば、空洞と振動ダイヤフラムの間の接触面の縁部が円形構造であるとき、磁気抵抗器および永久磁石薄膜は、それぞれ、空洞の突出部の内側および外側に弧状で配置される。作動原理およびそのリンク・モードは、長方形のダイヤフラムの設計と同じである。磁気シールド層は、基準磁気抵抗器R2およびR4の上部を覆うことができる。
【0042】
図11aから
図11dは、本発明の実施形態による磁気抵抗ブリッジ接続モードの概略図である。
図11aから
図11dを参照すると、磁気抵抗慣性センサ・チップにおいて、磁場感知用磁気抵抗器および基準磁気抵抗器の内張りモード(lining mode)は、基準フル・ブリッジ、基準半ブリッジ、およびプッシュプル半ブリッジを含み、あるいは磁場感知用磁気抵抗器は、単一のアームを有する構造を別々に形成する。
【0043】
図12は、本発明の一実施形態による別の磁気抵抗慣性センサ・チップの平面図であり、
図13aから
図13cは、本発明の実施形態による他の3つの磁気抵抗慣性センサ・チップの概略構造図である。
図12および
図13aから
図13cを参照すると、センサ・チップは、フィードバック・コイルを備えることができる。磁気抵抗が永久磁石薄膜108の変位の結果として変化するとき、結果として得られ電圧/電流の変化は、回路によって増幅され、次いでフィードバック・コイルに加えられて、同じ変化を有するが永久磁石薄膜108の磁場に対して反対方向の磁場を生成し、それによって慣性センサの測定ダイナミック・レンジを増加させるように振動ダイヤフラムが平衡点の近くに移動するようになる。
【0044】
図12に示されるように、磁気抵抗慣性センサ・チップは、平面エッチング式コイル111を備えることができる。平面エッチング式コイル111は、平面エッチング・プロセスによって形成することができ、平面エッチング式コイル111は、振動ダイヤフラムの上面上に位置し、空洞と振動ダイヤフラムの間の接触面の垂直突出領域以外の領域内に配置される。
【0045】
図13aから
図13cに示されるように、センサ・チップは、巻線コイル112を備えることができ、一方、磁気シールド層107は、基準磁気抵抗器109の上部を覆うことができる。巻線コイル112は、永久磁石薄膜108の直上に配設され、または永久磁石薄膜108の直下に配設され、空洞103の下方または空洞103の内側に配置される。
【0046】
永久磁石薄膜は、硬磁性材料の1つまたは複数の層であってもよく、その代表的な材料は、CoPt、CoCrPt、およびFePtであり、あるいは軟磁性材料および反強磁性材料からなる複合材料ユニットによって形成された[軟磁石/反強磁性体]n、または軟磁性材料および硬磁性材料からなる複合材料ユニットによって形成された[軟磁石/硬磁石]nであり、ただし、nは自然数であり、代表的な軟磁性材料はFeCoおよびNiFeを含み、代表的な反強磁性材料はPtMnおよびIrMnを含む。
図14aから
図14fは、それぞれ永久磁石薄膜材料の代表的なセッティングの概略図である。具体的には、
図14aから
図14fに示されるように、永久磁石薄膜は、
図14aに示されるような単一の硬磁石薄膜301、または
図14bに示されるような2つ以上の複合材料の硬磁石薄膜(
図14bは、2つのタイプの硬磁石薄膜301および302が交互に積み重ねられている状況を示している)、
図14cに示されるような軟磁石304/反強磁性体303の複合材料薄膜、
図14dに示されるような多層で交互に重ね合わされた[軟磁石304/反強磁性体303]n薄膜、
図14(e)に示されるような軟磁石304/硬磁石の複合材料薄膜301、ならびに
図14fに示されるような多層で交互に重ね合わされた[軟磁石304/硬磁石301]n薄膜を備えることができ、ただし、nは自然数である。
【0047】
本発明の実施形態に基づいておよび創作的努力なしで当業者によって得られる他の全ての実施形態は、本発明の保護範囲内に入るものとする。本発明は、好ましい実施形態を図示および説明するが、当業者は、様々な変形および修正が、それらが本発明の特許請求の範囲によって定められる範囲を超えない限り、本発明になされてもよいことを理解するはずである。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】