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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】中性子捕捉療法システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
A61N5/10 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559126
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 CN2020079731
(87)【国際公開番号】W WO2020211583
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】201910308038.8
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲韋▼霖
(72)【発明者】
【氏名】江涛
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC05
(57)【要約】
中性子捕捉療法システムは、ビーム整形体の材料自体の変形及び損傷を防止し、中性子源のフラックス及び品質を向上させることができる。本発明に係る中性子捕捉療法システム(100)は、加速器(11)及びターゲット(T)を含む中性子生成装置(10)と、ビーム整形体(20)とを含み、加速器(11)が加速して生成した荷電粒子線(P)は、ターゲット(T)と作用して中性子を生成し、中性子が中性子ビーム(N)を形成し、中性子ビーム(N)が1本の主軸(X)を限定し、ビーム整形体(20)は、減速体(231)、反射体(232)及び放射シールド体(233)を含み、減速体(231)を収容するフレーム(21)をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速器及びターゲットを含む中性子生成装置と、ビーム整形体とを含み、前記加速器が加速して生成した荷電粒子線が、前記ターゲットと作用して中性子を生成し、前記中性子が中性子ビームを形成し、前記中性子ビームが1本の主軸を限定する中性子捕捉療法システムであって、
前記ビーム整形体は、減速体、反射体及び放射シールド体を含み、前記減速体は、前記ターゲットが生成した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ前記主軸から逸脱した中性子を前記主軸に導いて熱外中性子ビーム強度を向上させ、前記放射シールド体は、非照射領域の正常組織への線量を減らすために、しみ出る中性子及び光子を遮断し、前記ビーム整形体は、前記減速体を収容するフレームをさらに含むことを特徴とする、中性子捕捉療法システム。
【請求項2】
前記減速体は、調整可能であり、前記フレームは、前記減速体を固定する位置決め部材及びストッパ部材を含むことを特徴とする、請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項3】
前記位置決め部材とストッパ部材の材料が中性子によって活性化された後に生成した放射性同位体の半減期は、7日間未満であることを特徴とする、請求項2に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項4】
前記位置決め部材とストッパ部材の材料は、アルミニウム合金、チタン合金、鉛アンチモン合金、コバルトを含まない鋼材、炭素繊維、PEEK又は高分子重合体であることを特徴とする、請求項2に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項5】
前記減速体は、基本部分と補完部分を含み、前記基本部分と補完部分は、材料が異なり、前記フレームは、少なくとも1つの収容ユニットを形成し、前記収容ユニットは、隣接する第1の収容ユニット及び第2の収容ユニットを含み、前記基本部分は、前記第1の収容ユニット内に収容され、複数枚で調整可能であり、前記基本部分の枚数を減少させる場合、前記第1の収容ユニット内に前記位置決め部材を設置して補完し、前記ストッパ部材は、前記基本部分を固定することを特徴とする、請求項2に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項6】
前記フレームは、取り外し可能に接続されたメインフレーム及びサブフレームを含み、前記第1の収容ユニットは、前記メインフレームの少なくとも一部で囲まれて形成され、前記第2の収容ユニットは、前記メインフレームの少なくとも一部及び前記サブフレームの少なくとも一部で囲まれて形成され、前記補完部分は、前記第2の収容ユニット内に収容されることを特徴とする、請求項5に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項7】
前記メインフレームの材料は、アルミニウム合金であり、前記サブフレームの材料は、炭素繊維複合材料であることを特徴とする、請求項6に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項8】
前記基本部分の材料は、DO、Al、AlF、MgF、CaF、LiF、LiCO又はAlのうちの少なくとも1種を含み、前記基本部分は、Li-6を含み、熱中性子吸収体としても機能することを特徴とする、請求項5に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項9】
前記補完部分の材料は、Zn、Mg、Al、Pb、Ti、La、Zr、Bi、Cのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項5に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項10】
前記メインフレームは、前記中性子ビームの方向に沿って順に設置され、前記主軸を囲んで周方向に閉じた第1の壁、第2の壁と、前記第1の壁と第2の壁を接続する第1の横板とを含み、前記第1の横板は、前記中性子ビームの方向に垂直に延在し、前記第1の壁は、前記加速器の輸送管を取り付けるためのものであり、前記第2の壁で囲まれて前記第1の収容ユニットが形成され、前記第1の壁から前記主軸までの径方向距離は、前記第2の壁から前記主軸までの径方向距離より小さいことを特徴とする、請求項6に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項11】
前記メインフレームは、前記中性子ビームの方向を囲んで周方向に閉じた第3の壁を含み、前記第2の壁から前記主軸までの径方向距離は、前記第3の壁から前記主軸までの径方向距離より小さく、前記フレームは、前記中性子ビームの方向に沿ってそれぞれ前記第3の壁の両側に設置され、第3の壁に接続された第1、第2の側板をさらに含み、前記サブフレームは、前記中性子ビームの方向に沿って前記第2の壁と第2の側板との間に設置された第2の横板を含むことを特徴とする、請求項10に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項12】
前記サブフレームは、前記中性子ビームの方向を囲んで周方向に閉じ、前記第2の横板と第2の側板との間に延在する第4の壁をさらに含み、前記中性子捕捉療法システムは、コリメータをさらに含み、前記第4の壁は、前記コリメータの取付部及び/又はビーム出口を形成し、前記メインフレームは、前記第1の側板と第2の横板との間に設置され、前記第1の壁から前記第2の壁又は第3の壁まで延在する径方向仕切り板をさらに含み、前記第1の壁、第2の壁、第3の壁、第1の横板、第2の横板及び第1の側板で囲まれて前記第2の収容ユニットが形成され、前記径方向仕切り板は、前記第2の収容ユニットを周方向に複数のサブ領域に分け、前記第3の壁、第4の壁、第2の横板及び第2の側板で囲まれて第3の収容ユニットが形成され、前記第2の収容ユニット内には、前記反射体/放射シールド体の少なくとも一部がさらに設置され、前記第3の収容ユニット内には、前記放射シールド体の少なくとも一部が設置され、前記第1、第2の側板の材料は、鉛アンチモン合金であることを特徴とする、請求項11に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項13】
前記基本部分の前記第1の側板に向かう第1の端面には、前記加速器の輸送管及びターゲットを収容する中心孔が設置され、前記基本部分が満杯になった場合、前記補完部分の前記第2の側板に近い第1の端面は、前記基本部分の前記第2の側板に近い第2の端面と面一になることを特徴とする、請求項11に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項14】
前記基本部分の第2の端面に隣接してシールド板が設置され、前記シールド板は鉛板であり、前記シールド板の前記中性子ビームの方向の厚さが5cm以下であり、前記基本部分の枚数を減少させる場合、前記シールド板に隣接して前記位置決め部材を設置し、前記ストッパ部材は、前記第2の横板に隣接して設置され、前記メインフレーム及び/又はサブフレームに取り外し可能に接続されることを特徴とする、請求項13に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項15】
中性子生成装置とビーム整形体を含み、前記中性子生成装置が生成した中性子が中性子ビームを形成し、前記中性子ビームが1本の主軸を限定し、前記ビーム整形体が前記中性子ビームのビーム品質を調整することができる中性子捕捉療法システムであって、
前記ビーム整形体は、減速体、反射体及び放射シールド体を含み、前記減速体は、前記中性子生成装置が生成した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ前記主軸から逸脱した中性子を前記主軸に導いて熱外中性子ビーム強度を向上させ、前記放射シールド体は、非照射領域の正常組織への線量を減らすために、しみ出る中性子及び光子を遮断し、前記ビーム整形体は、前記減速体を収容するフレームをさらに含み、前記フレームは、取り外し可能に接続されたメインフレーム及びサブフレームを含むことを特徴とする、中性子捕捉療法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射システムに関し、特に中性子捕捉療法システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、コバルト60、線形加速器、電子ビーム等の放射線療法は、すでにがん治療の主な手段の一つとなった。しかし、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路上の数多くの正常組織に損傷を与える。また、腫瘍細胞により放射線に対する感受性の度合いが異なっており、従来の放射線療法では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が良くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織の放射線損傷を軽減するすために、化学療法(chemotherapy)における標的療法が、放射線療法に用いられている。また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている(例えば、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法等)。このうち、中性子捕捉療法は、上記の2つの構想を結びつけたものである。例えば、ホウ素中性子捕捉療法では、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度な中性子ビームの制御と合わせることで、従来の放射線と比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)はホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対し大きい捕獲断面積を持つ特性を利用し、10B(n,α)Li中性子捕捉と核分裂反応によりHeとLiという2種の重荷電粒子を生成する。図1図2は、それぞれホウ素中性子捕捉の反応概略図と10B(n,α)Li中性子捕捉の原子原子核反応式を示す。2種の重荷電粒子は平均エネルギーが2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer,LET)と短い射程という特徴を持つ。α粒子の線エネルギー付与と射程はそれぞれ150 keV/μm、8μmであり、Li重荷粒子の場合それぞれ175 keV/μm、5μmである。2種の粒子の合計射程が細胞のサイズに近いので、生体への放射線損害を細胞レベルに抑えられる。それで、ホウ素含有薬物を選択的に腫瘍細胞に集め、適切な中性子源と合わせることで、正常組織に多くの損害を与えない状態で腫瘍細胞を部分的に殺せる。
【0005】
ホウ素中性子捕捉療法の効果は腫瘍細胞のある箇所でのホウ素含有薬物の濃度と熱中性子数によって決まるので、2次元放射線癌治療(binary cancer therapy)とも呼ばれる。このことから見れば、ホウ素含有薬物の開発の他に、中性子源の放射フラックスと品質の向上も、ホウ素中性子捕捉療法にとって非常に重要である。
【0006】
したがって、上記課題を解決するために、新規な技術手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
中性子源のフラックス及び品質を向上させるために、本発明の一態様に係る中性子捕捉療法システムは、加速器及びターゲットを含む中性子生成装置と、ビーム整形体とを含み、前記加速器が加速して生成した荷電粒子線は、前記ターゲットと作用して中性子を生成し、前記中性子が中性子ビームを形成し、前記中性子ビームが1本の主軸を限定し、前記ビーム整形体は、減速体、反射体及び放射シールド体を含み、前記減速体は、前記ターゲットが生成した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ前記主軸から逸脱した中性子を前記主軸に導いて熱外中性子ビーム強度を向上させ、前記放射シールド体は、非照射領域の正常組織への線量を減らすために、しみ出る中性子及び光子を遮断し、前記ビーム整形体は、前記減速体を収容するフレームをさらに含む。フレームは、減速体を位置決めして支持し、中性子源のフラックス及び品質を向上させることができる。
【0008】
さらに、前記減速体は、調整可能であり、前記フレームは、前記減速体を固定する位置決め部材及びストッパ部材を含む。好ましくは、前記位置決め部材とストッパ部材の材料が中性子によって活性化された後に生成した放射性同位体の半減期は、7日間未満である。好ましくは、前記位置決め部材とストッパ部材の材料は、アルミニウム合金、チタン合金、鉛アンチモン合金、コバルトを含まない鋼材、炭素繊維、PEEK又は高分子重合体である。位置決め部材は、便利に減速体の寸法を調整することにより、中性子ビームのフラックスを調整することができ、調整した後に、ストッパ部材は、迅速かつ便利に減速体のパッケージを実現することができる。
【0009】
さらに、前記減速体は、基本部分と補完部分を含み、前記基本部分と補完部分は、材料が異なり、前記フレームは、少なくとも1つの収容ユニットを形成し、前記収容ユニットは、隣接する第1の収容ユニット及び第2の収容ユニットを含み、前記基本部分は、前記第1の収容ユニット内に収容され、複数枚で調整可能であり、前記基本部分の枚数を減少させる場合、前記第1の収容ユニット内に前記位置決め部材を設置して補完し、前記ストッパ部材は、前記基本部分を固定する。補完部分は、減速体の製造コストを低減することができるとともに、ビーム品質に大きな影響を与えず、位置決め部材及びストッパ部材は、減速体の基本部分を便利に調整することができる。
【0010】
さらに、前記フレームは、取り外し可能に接続されたメインフレーム及びサブフレームを含み、前記第1の収容ユニットは、前記メインフレームの少なくとも一部で囲まれて形成され、前記第2の収容ユニットは、前記メインフレームの少なくとも一部及び前記サブフレームの少なくとも一部で囲まれて形成され、前記補完部分は、前記第2の収容ユニット内に収容され、サブフレームの設置は、減速体の補完部分の交換を容易にする。好ましくは、前記メインフレームの材料は、アルミニウム合金であり、優れた機械的特性を有し、かつ中性子によって活性化された後に生成した放射性同位体の半減期が短く、好ましくは、前記サブフレームの材料は、炭素繊維複合材料であり、中性子によって活性化された後に生成した放射性同位体は、半減期が短く、放射が低い。好ましくは、前記基本部分の材料は、DO、Al、AlF、MgF、CaF、LiF、LiCO又はAlのうちの少なくとも1種を含み、高速中性子との作用断面が大きく、熱外中性子との作用断面が小さく、優れた減速作用を有し、前記基本部分は、Li-6を含み、熱中性子吸収体としても機能する。好ましくは、前記補完部分の材料は、Zn、Mg、Al、Pb、Ti、La、Zr、Bi、Cのうちの少なくとも1種を含み、補完部分は、入手しやすい材料を選択し、減速体の製造コストを低減することができるとともに、一定の中性子減速作用を有し、ビーム品質に大きな影響を与えない。
【0011】
さらに、前記メインフレームは、前記中性子ビームの方向に沿って順に設置され、前記主軸を囲んで周方向に閉じた第1の壁、第2の壁と、前記第1の壁と第2の壁を接続する第1の横板とを含み、前記第1の横板は、前記中性子ビームの方向に垂直に延在し、前記第1の壁は、前記加速器の輸送管を取り付けるためのものであり、前記第2の壁で囲まれて前記第1の収容ユニットが形成され、前記第1の壁から前記主軸までの径方向距離は、前記第2の壁から前記主軸までの径方向距離より小さい。減速体の基本部分がターゲットを囲むことにより、ターゲットが生成した中性子は、各方向にいずれも効果的に減速され、中性子のフラックス及びビーム品質をさらに向上させることができる。
【0012】
さらに、前記メインフレームは、前記中性子ビームの方向を囲んで周方向に閉じた第3の壁を含み、前記第2の壁から前記主軸までの径方向距離は、前記第3の壁から前記主軸までの径方向距離より小さく、前記フレームは、前記中性子ビームの方向に沿ってそれぞれ前記第3の壁の両側に設置され、第3の壁に接続された第1、第2の側板をさらに含み、前記サブフレームは、前記中性子ビームの方向に沿って前記第2の壁と第2の側板との間に設置された第2の横板を含む。
【0013】
好ましくは、前記サブフレームは、前記中性子ビームの方向を囲んで周方向に閉じ、前記第2の横板と第2の側板との間に延在する第4の壁をさらに含み、前記中性子捕捉療法システムは、コリメータをさらに含み、前記第4の壁は、前記コリメータの取付部及び/又はビーム出口を形成し、ビーム出口方向に炭素繊維で製造されたサブフレームを採用し、アルミニウム合金に比べて、活性化程度がより小さく、かつ強度が高く、さらに一定の減速作用を有し、サブフレームは、コリメータの取付部としても機能する。前記メインフレームは、前記第1の側板と第2の横板との間に設置され、前記第1の壁から前記第2の壁又は第3の壁まで延在する径方向仕切り板をさらに含み、前記第1の壁、第2の壁、第3の壁、第1の横板、第2の横板及び第1の側板で囲まれて前記第2の収容ユニットが形成され、前記径方向仕切り板は、前記第2の収容ユニットを周方向に複数のサブ領域に分け、前記第3の壁、第4の壁、第2の横板及び第2の側板で囲まれて第3の収容ユニットが形成され、前記第2の収容ユニット内には、前記反射体/放射シールド体の少なくとも一部がさらに設置され、前記第3の収容ユニット内には、前記放射シールド体の少なくとも一部が設置され、前記第1、第2の側板の材料は、鉛アンチモン合金であり、鉛が放射をさらに遮断する作用を果たすことができ、また、鉛アンチモン合金の強度が高い。
【0014】
さらに好ましくは、前記基本部分の前記第1の側板に向かう第1の端面には、前記加速器の輸送管及びターゲットを収容する中心孔が設置され、前記基本部分が満杯になった場合、前記補完部分の前記第2の側板に近い第1の端面は、前記基本部分の前記第2の側板に近い第2の端面と面一になる。さらに、前記基本部分の第2の端面に隣接してシールド板が設置され、前記シールド板は鉛板であり、鉛が減速体から放出されたガンマ線を吸収することができ、前記シールド板の前記中性子ビームの方向の厚さが5cm以下であり、減速体を通過する中性子を反射しない。前記基本部分の枚数を減少させる場合、前記シールド板に隣接して位置決め部材を設置する。前記ストッパ部材は、前記第2の横板に隣接して設置され、前記メインフレーム及び/又はサブフレームに取り外し可能に接続され、減速体の基本部分の調整及び交換を容易にする。
【0015】
本発明の別の態様に係る中性子捕捉療法システムは、中性子生成装置とビーム整形体を含み、前記中性子生成装置が生成した中性子は、中性子ビームを形成し、前記中性子ビームが1本の主軸を限定し、前記ビーム整形体は、前記中性子ビームのビーム品質を調整することができ、前記ビーム整形体は、減速体、反射体及び放射シールド体を含み、前記減速体は、前記中性子生成装置が生成した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ前記主軸から逸脱した中性子を前記主軸に導いて熱外中性子ビーム強度を向上させ、前記放射シールド体は、非照射領域の正常組織への線量を減らすために、しみ出る中性子及び光子を遮断し、前記ビーム整形体は、前記減速体を収容するフレームをさらに含み、前記フレームは、取り外し可能に接続されたメインフレーム及びサブフレームを含む。フレームは、減速体を位置決めして支持し、中性子源のフラックス及び品質を向上させることができ、メインフレームとサブフレームは、取り外し可能に接続され、減速体の交換を容易にする。
【0016】
本発明に係る中性子捕捉療法システムは、そのビーム整形体のフレームが減速体を位置決めして支持し、中性子源のフラックス及び品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ホウ素中性子捕捉の反応概略図である。
図210B(n,α)Li中性子捕捉の原子核反応式である。
図3】本発明の実施例における中性子捕捉療法システムの概略図である。
図4】本発明の実施例における中性子捕捉療法システムのビーム整形体及びコリメータの概略図である。
図5図4中のフレームの概略図である。
図6図5中のメインフレームの、中性子ビームNの方向から見た概略図である。
図7図5中のメインフレームの、中性子ビームNの方向とは逆の方向から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例をさらに詳細に説明することにより、当業者は明細書の文字を参照して実施することができる。
【0019】
図3に示すように、本実施例における中性子捕捉療法システムは、好ましくはホウ素中性子捕捉療法システム100であり、中性子生成装置10、ビーム整形体20、コリメータ30及び治療台40を含む。中性子生成装置10は、加速器11とターゲットTを含み、加速器11は、荷電粒子(例えば陽子、デューテリウム核など)に対して加速し、陽子線のような荷電粒子線Pを生成し、荷電粒子線Pは、ターゲットTに照射し、ターゲットTと作用して中性子を生成し、中性子は、中性子ビームNを形成し、中性子ビームは、1本の主軸Xを限定し、ターゲットTは、好ましくは金属ターゲットである。図示及び以下に記載の中性子ビームNの方向は、実際の中性子移動方向を表すものではなく、中性子ビームN全体の移動傾向の方向を表すものである。必要な中性子の収率とエネルギー、供給可能な加速荷電粒子のエネルギーと電流の大きさ、金属ターゲットの物理化学的特性に応じて、適切な核反応を選択し、常に議論される核反応はLi(p、n)BeおよびBe(p、n)Bであり、この両方はいずれも吸熱反応である。この2つの核反応のエネルギー閾値はそれぞれ1.881MeVおよび2.055MeVであり、ホウ素中性子捕獲治療の理想的な中性子源はkeVエネルギーレベルの熱外中性子であるため、理論的には閾値をわずかに上回るエネルギーを持つ陽子を用いて金属リチウムターゲットを衝撃し、比較的低いエネルギーの中性子を発生することができ、あまりにも減速処理することなく臨床的に使用することができるが、リチウム金属(Li)および卑金属(Be)という2つのターゲットと閾値エネルギーの陽子との作用断面が高くなく、十分に大きな中性子束を発生するために、一般に比較的高いエネルギーの陽子で核反応を開始させる。理想的なターゲットは、高い中性子収率を有し、発生した中性子エネルギー分布は熱外中性子エネルギー領域に近く(以下に詳述する)、あまり強い放射線の発生はなく、安全かつ安価で操作しやすく、かつ高温耐性などの特性を有するが、実際にはすべての要件を満たす核反応を見つけることは不可能である。当業者には周知のように、ターゲットTは、Li、Be以外の金属材料、例えばTaまたはW、およびそれらの合金で製造することができる。加速器11は、線形加速器、回転加速器、同期加速器、同期回転加速器であってもよい。
【0020】
ホウ素中性子捕捉療法の中性子源は生成したのはすべて混合放射線場である。即ち、ビームは低エネルギーから高エネルギーまでの中性子、光子を含む。深部腫瘍のホウ素中性子捕捉療法について、熱外中性子を除くその他の放射線の含有量が多ければ多いほど、正常組織での非選択的線量沈着の割合も大きくなるので、これらの不必要な線量を引き起こす放射線をできる限り低減する必要がある。エアにおけるビームの品質要素の他、中性子による人体における線量分布をさらに理解するために、本発明の実施形態は人工器官の人間の頭部組織で線量を算出し、そして人工器官におけるビームの品質要素を中性子ビーム設計の参考とする。後文でそれを詳細に説明する。
【0021】
国際原子力機関(IAEA)は臨床ホウ素中性子捕捉療法に用いられる中性子源について、エアにおけるビームの品質要素に関する5提案を出した。この5提案は異なる中性子の長所と短所を比較するために利用する他、中性子生成経路の選定及びビーム整形アセンブリの設計をする時の参考として利用できる。この5提案は次の通りである。
【0022】
熱外中性子束Epithermal neutron flux>1×10 n/cm
高速中性子汚染Fast neutron contamination<2×10-13 Gy-cm/n
光子汚染Photon contamination<2×10-13 Gy-cm/n
熱中性子束と熱外中性子束との比thermal to epithermal neutron flux ratio<0.05
中性子流とフラックスとの比epithermal neutron current to flux ratio>0.7
【0023】
注:熱外中性子エネルギー領域は0.5eV~40keVであり、熱中性子エネルギー領域は0.5eVより小さく、高速中性子エネルギー領域は40keVより大きい。
【0024】
1、熱外中性子束:
中性子束と腫瘍におけるホウ素含有薬物の濃度で臨床治療の時間が決まる。腫瘍におけるホウ素含有薬物の濃度が十分に高ければ、中性子束への要求を緩められる。それに反して、腫瘍におけるホウ素含有薬物の濃度が低ければ、高フラックスの熱外中性子で腫瘍に十分な線量を与える必要がある。IAEAは熱外中性子束について平方センチメートル当たり1秒の熱外中性子は109個より多いと求める。既存のホウ素含有薬物にとって、このフラックスでの中性子ビームで大体治療時間を1時間以内に抑えられる。短い治療時間で位置決めと快適さの改善、それから腫瘍におけるホウ素含有薬物の限られた滞留時間の効果的利用に貢献できる。
【0025】
2、高速中性子汚染:
高速中性子は正常組織への不必要な線量を引き起こすので、汚染と見らされる。この線量と中性子エネルギーが正の相関関係があるので、中性子ビームの設計においてできる限り高速中性子の含有量を減らす必要がある。高速中性子汚染は、単位熱外中性子束に伴う高速中性子の線量と定義される。IAEAは高速中性子汚染が2×10-13 Gy-cm/nより小さいと勧める。
【0026】
3、光子汚染(γ線汚染):
γ線は強い透過性の放射線に属し、非選択的にビーム経路にあるすべての組織での線量沈着を引き起こすので、γ線の含有量を減らすことも中性子ビームの設計の必要条件である。γ線汚染は、単位熱外中性子束に伴うγ線の線量と定義される。IAEAはγ線汚染が2×10-13 Gy-cm/nより小さいと勧める。
【0027】
4、熱中性子束と熱外中性子束との比:
熱中性子の減衰速度が速く、透過性も弱く、人体に入ったら大部分のエネルギーが皮膚組織に沈着するので、黒色腫などの皮膚腫瘍の場合ホウ素中性子捕捉療法の中性子源として熱中性子を使用する以外、脳腫瘍などの深部腫瘍の場合熱中性子の含有量を減らす必要がある。IAEAは熱中性子束と熱外中性子束との比が0.05より小さいと勧める。
【0028】
5、中性子流とフラックスとの比:
中性子流とフラックスとの比はビームの方向性を示す。その比が大きければ大きいほど、ビームの前向性が強くなる。強い前向性を持つ中性子ビームで中性子の発散による周りの正常組織への線量を減らせる他、治療可能デプスと位置決め姿勢の柔軟性を向上させることができる。IAEAは中性子流とフラックスとの比が0.7より大きいと勧める。
【0029】
人工器官で組織内の線量分布を取得し、そして正常組織及び腫瘍の線量-デプス曲線により、人工器官におけるビーム品質要素を導き出す。以下の3つのパラメータは異なる中性子ビーム療法の治療効果の比較に利用されることができる。
【0030】
1、効果的治療デプス:
腫瘍線量は最大正常組織線量と等しいデプスである。このデプスの後ろに、腫瘍細胞が受けた線量は最大正常組織線量より小さいので、ホウ素中性子捕捉上の優位性がなくなる。このパラメータは中性子ビームの透過性を示し、効果的治療デプスが大きければ大きいほど、治療可能な腫瘍のデプスが深くなり、その単位はcmである。
【0031】
2、効果的治療デプスの線量率:
即ち、効果的治療デプスにおける腫瘍線量率であり、最大正常組織線量率と等しい。正常組織で受け取る総線量は与えられ得る腫瘍総線量に影響する要因であるので、このパラメータで治療時間が決まる。効果的治療デプスの線量率が大きければ大きいほど、腫瘍に一定の線量を与える必要な照射時間が短くなり、その単位はcGy/mA-minである。
【0032】
3、効果的治療線量比:
脳表面から効果的治療デプスまで、腫瘍と正常組織が受け取る平均線量の比は効果的治療線量比と呼ばれる。平均線量は線量-デプス曲線の積分により算出できる。効果的治療線量比が大きければ大きいほど、当該中性子ビームの治療効果がよくなる。
【0033】
ビーム整形アセンブリの設計における比較根拠として、IAEAによるエアにおけるビームの品質要素という5提案、及び上記の3つのパラメータの他に、本発明の実施形態は中性子ビーム線量のパフォーマンスの優劣を評価するための以下のパラメータを利用する。
【0034】
1、照射時間≦30min(加速器で使用する陽子流は10mA)
2、30.0RBE-Gy治療可能なデプス≧7cm
3、最大腫瘍線量≧60.0RBE-Gy
4、最大正常脳組織線量≦12.5RBE-Gy
5、最大皮膚線量≦11.0RBE-Gy
【0035】
注:RBE(Relative Biological Effectiveness)は生物学的効果比であり、光子と中性子による生物学的効果が異なるので、等価線量を算出するために、上記の線量に異なる組織の生物学的効果比を掛ける。
【0036】
中性子生成装置10が生成した中性子ビームNは、順次ビーム整形体20とコリメータ30を経過して治療台40上の患者200に照射する。ビーム整形体20は、中性子生成装置10が生成した中性子ビームNのビーム品質を調整することができ、コリメータ30は、中性子ビームNを集め、中性子ビームNに治療過程中に高い標的性を備えさせる。ビーム整形体20は、フレーム21及び本体部23をさらに含み、少なくとも一部の本体部23は、フレーム21内に収容され、フレーム21は、本体部23を支持し、材料自体の変形及び損傷のターゲット交換及びビーム品質への影響を防止する。本体部23は、減速体231、反射体232及び放射シールド体233を含み、中性子生成装置10が生成した中性子は、エネルギースペクトルが広いため、治療ニーズを満たす熱外中性子の以外、他の種類の中性子及び光子の含有量を可能な限り減らして操作者又は患者に傷害を引き起こすことを避け、それで、中性子生成装置10から出た中性子は、減速体22を通して高速中性子エネルギーを熱外中性子エネルギー領域に調整する必要があり、減速体231は、高速中性子との作用断面が大きく、熱外中性子との作用断面が小さい材料で製造され、例えば、DO、Al、AlF、MgF、CaF、LiF、LiCO又はAlのうちの少なくとも1種を含み、反射体232は、減速体231を囲み、かつ減速体231を通過して周辺へ拡散した中性子を中性子ビームNに反射して中性子の利用率を向上させ、中性子反射能力が高い材料で製造され、例えば、Pb又はNiのうちの少なくとも1種を含み、放射シールド体233は、非照射領域の正常組織への線量を減らすために、しみ出る中性子と光子を遮断し、放射シールド体233の材料は、光子シールド材料と中性子シールド材料のうちの少なくとも1種、例えば、光子シールド材料の鉛(Pb)と中性子シールド材料のポリエチレン(PE)を含む。理解できるように、本体部は、さらにその他の構造であってもよく、治療に必要な熱外中性子ビームを取得すればよい。ターゲットTは、加速器11とビーム整形体20との間に設置され、加速器11は、荷電粒子線Pを輸送する輸送管111を有し、本実施例において、輸送管111が荷電粒子線Pの方向に沿ってビーム整形体20に伸び込み、かつ順次減速体231及び反射体232を貫通し、ターゲットTが減速体231内に設置され、輸送管111の端部に位置することにより、高い中性子ビーム品質を得る。本実施例において、輸送管111と減速体231及び反射体232との間に第1、第2の冷却管D1、D2が設置され、第1、第2の冷却管D1、D2の一端がそれぞれターゲットTの冷却入口(図示せず)と冷却出口(図示せず)に接続され、他端が外部冷却源(図示せず)に接続される。理解できるように、第1、第2の冷却管は、さらに他の形態でビーム整形体内に設置されてもよく、ターゲットがビーム整形体の外に配置される場合、さらに省略されてもよい。
【0037】
図4及び図5に示すとおり、フレーム21は、主軸Xを囲んで周方向に閉じた第1の壁211と、中性子ビームNの方向に沿ってそれぞれ第1の壁211の両側に設置され、第1の壁211に接続された第1、第2の側板221、222とを含み、第1の側板221には、輸送管111が貫通する孔2211が設置され、第2の側板222には、ビーム出口を形成する孔2221が設置され、第1の壁211と第1、第2の側板221、222との間に減速体の収容部Cが形成され、反射体及び/又は放射シールド体の少なくとも一部も収容部C内に設置される。収容部Cは、少なくとも1つの収容ユニットC1~C3(以下に詳述する)を含み、各収容ユニットC1~C3は、減速体231、反射体232及び放射シールド体233のうちの少なくとも1つを収容し、少なくとも1つの収容ユニットは、減速体、反射体及び放射シールド体のうちの少なくとも2つを同時に収容するか又は少なくとも2種類の異なる材料を同時に収容し、減速体231は、基本部分及び補完部分を含み、基本部分と補完部分がそれぞれ異なる収容ユニット内に収容される。理解できるように、第1、第2の側板が設置されなくてもよく、第1の壁で囲まれて収容部が形成される。
【0038】
フレーム21は、中性子ビームNの方向に沿って第1、第2の側板221、222の間に設置された第1の横板223と、主軸Xを囲んで周方向に閉じ、第1の横板223と第1の側板221との間に延在する第2の壁212と、主軸Xを囲んで周方向に閉じ、第1の横板223から第2の側板222まで延在する第3の壁213とをさらに含む。第2の壁212は、径方向に第3の壁213より主軸Xに近く、第3の壁213は、径方向に第1の壁211と第2の壁212との間に位置し、第1の横板223は、第2の壁212と第3の壁213との間に延在する。第2の壁212の内面は、第1の側板221上の孔2211の側壁と面一になり、第2の壁212は、輸送管111、第1、第2の冷却管D1、D2などの取付部を形成する。理解できるように、第1の横板は、第1の壁まで延在することができる。
【0039】
フレーム21は、中性子ビームNの方向に沿って第3の壁213と第2の側板222との間に設置された第2の横板224と、主軸Xを囲んで周方向に閉じ、第2の横板224と第2の側板222との間に延在する第4の壁214と、第2の横板224に隣接して第2の横板224と第2の側板222との間に設置された第3の横板225とをさらに含む。第2の横板224は、第1の壁211から第3の壁213の内側まで延在し、第4の壁214は、径方向に第1の壁211と第3の壁213との間に位置し、第4の壁214の内面は、第2の側板222上の孔2221の側壁と面一になり、第4の壁214と第2の側板222上の孔2221は、共にビーム出口を形成し、第3の横板225には、中性子ビームNが通過する孔2251が形成され、第3の壁213は、径方向に第4の壁214と第3の横板225上の孔2251の内壁との間に位置し、第3の横板225の外壁は、第4の壁214の内面と第3の壁213の内面との間に位置する。
【0040】
本実施例において、第1、第2、第3、第4の壁の主軸Xに垂直な方向での横断面は、いずれも主軸Xを囲む円環であり、かつ主軸Xに平行に延在し、側板、横板は、いずれも主軸Xに垂直に延在する平板であり、理解できるように、他の設置形態であってもよく、例えば、延在方向が主軸と傾斜し、フレームは、主軸Xを囲んで周方向に閉じた複数の壁と、壁の間に設置された複数の横板とをさらに含むことができ、さらにビーム整形体の他の部分を収容するか又は支持することができる。
【0041】
中性子ビームNの方向に第1の横板223から第3の横板225までの、第3の壁213で囲まれた領域は、柱状の第1の収容ユニットC1を形成し、第1の壁211、第2の壁212、第3の壁213、第1の側板221、第1の横板223及び第2の横板224の間には、第2の収容ユニットC2が形成され、第1の壁211、第4の壁214、第2の横板224及び第2の側板222の間には、第2の収容ユニットC3が形成される。
【0042】
第1の収容ユニットC1内には、減速体231の基本部分として機能するフッ化マグネシウムブロック241が設置され、フッ化マグネシウムブロック241は、Li-6を含み、熱中性子吸収体としても機能することができ、全体が柱状であり、その第1の側板221に向かう端面に中心孔2411が設置され、中心孔2411は、輸送管111、第1、第2の冷却管D1、D2及びターゲットTなどを収容する円柱孔であり、中心孔の側壁2411aは、第2の壁212の内面と面一になり、第2の壁212から主軸Xまでの径方向距離L1が第3の壁213から主軸Xまでの径方向距離L2より小さいことにより、減速体231の基本部分がターゲットTを囲み、ターゲットTが生成した中性子が、各方向にいずれも効果的に減速され、中性子のフラックス及びビーム品質をさらに向上させることができる。フッ化マグネシウムブロック241と第3の横板225との間に鉛板242が設置され、鉛板242は、光子シールド体として機能し、鉛が減速体から放出されたガンマ線を吸収することができ、また鉛板242の中性子ビームNの方向の厚さが5cm以下であり、減速体を通過する中性子を反射せず、理解できるように、他の設置形態であってもよく、例えば、フッ化マグネシウムブロック241がLi-6を含まず、フッ化マグネシウムブロック241と第3の横板225との間にLi-6で構成された別個の熱中性子吸収体が設置され、鉛板も省略されてもよい。
【0043】
第2の収容ユニットC2内にアルミニウム合金ブロック243及び鉛ブロック244が設置され、アルミニウム合金ブロック243は、第2の壁212、第3の壁213及び第1の横板223に接触する面を有することにより、減速体231の補完部分として、第1の収容ユニットC1内に設置された減速体231の基本部分を囲む。アルミニウム合金ブロック243は、減速体231の補完部分として、減速体の製造コストを低減することができるとともに、ビーム品質に大きな影響を与えない。第3の収容ユニットC3内に対応する形状のPEブロック245が設置される。本実施例において、放射シールド体233は、中性子シールド体及び光子シールド体を含み、PEブロック245が中性子シールド体として機能し、鉛ブロック244が同時に反射体232及び光子シールド体として機能する。理解できるように、第2の収容ユニットC2内にPEブロックを中性子シールド体として設置してもよい。
【0044】
フッ化マグネシウムブロック241は複数枚で製造され、品質を容易に制御し、かつ枚数の増減によりビーム強度を調整することができ、図4に示す実施例において、フッ化マグネシウムブロック241が満杯になった場合、フッ化マグネシウムブロック241は、アルミニウム合金ブロック243の第2の側板222に近い端面と面一になり、鉛板242は、フッ化マグネシウムブロック241の第2の側板222に近い端面に隣接して設置され、かつ第3の横板225に接触する。フッ化マグネシウムブロック241の枚数を減少させる場合、鉛板242と第3の横板225との間に位置決めリング226(図5に示す)を設置して対応する補完を行い、理解できるように、位置決めリング226は、フッ化マグネシウムブロック241と鉛板242との間に設置されてもよく、第3の横板225は、ストッパリングとして機能し、位置決めリング226は、ストッパリングの孔径と同じで、中性子ビームNが通過するための孔2261をさらに有する。異なる厚さの位置決めリング226を予め設置することにより、フッ化マグネシウムブロック241を位置決めする役割を果たすことができ、位置決めリング226とストッパリング(第3の横板225)の材料は、炭素繊維であり、中性子によって活性化された後に生成した放射性同位体の半減期が短い。理解できるように、位置決めリング及びストッパリングは、さらに他の形式の位置決め部材及びストッパ部材に置換されてもよい。位置決め部材は、便利に減速体の寸法を調整することにより、中性子ビームのフラックスを調整することができ、調整した後に、ストッパ部材は、迅速かつ便利に減速体のパッケージを実現することができる。
【0045】
理解できるように、本実施例における中性子シールド体としてのPEは、他の中性子シールド材料に置換されてもよく、光子シールド体としての鉛は、他の光子シールド材料に置換されてもよく、反射体としての鉛は、中性子反射能力が高い他の材料に置換されてもよく、減速体の基本部分としてのフッ化マグネシウムは、高速中性子との作用断面が大きく、熱外中性子との作用断面が小さい他の材料に置換されてもよく、熱中性子吸収体としてのLi-6は、熱中性子との作用断面が大きい他の材料に置換されてもよく、減速体の補完部分としてのアルミニウム合金は、Zn、Mg、Al、Pb、Ti、La、Zr、Bi、Cのうちの少なくとも1種を含む材料に置換されてもよく、補完部分は、入手しやすい材料を選択すると、減速体の製造コストを低減することができるとともに、一定の中性子減速作用を有し、ビーム品質に大きな影響を与えない。
【0046】
図6及び図7に示すとおり、フレーム21にさらに径方向仕切り板210が設置され、径方向仕切り板210が位置する平面は、延在して主軸Xを通過し、第2の収容ユニットC2を周方向に少なくとも2つのサブ領域に分けることにより、第2の収容ユニットC2内に設置された鉛ブロック、アルミニウム合金ブロックを周方向に少なくとも2つのサブモジュールに均一に分ける。本実施例において、径方向仕切り板210は、第1の側板221と第2の横板224との間に設置され、第1の壁211から第2の壁212又は第3の壁213まで延在し、周方向に沿って均一に分布する4つの平板であり、理解できるように、他の数量又は他の配布形態であってもよく、径方向仕切り板が設置されなくてもよい。
【0047】
本実施例において、径方向仕切り板210、第1の横板223及び第1、第2、第3の壁211~213は一体であり、メインフレーム21aとして機能し、材料がアルミニウム合金であり、優れた機械的特性を有し、かつ中性子によって活性化された後に生成した放射性同位体の半減期が短い。鋳造プロセスを採用することができ、支持体と型枠が一体成形し、型枠が木型又はアルミニウム型を選択し、砂中子が赤砂又は樹脂砂を選択することができ、具体的なプロセスが業界で一般的な方法を選択する。鋳造には抜き勾配を付けるため、設計及びビーム品質の要件に応じて、機械加工においてそれを全て除去する必要がある。該構造形式及び鋳造プロセスにより、フレーム構造は、一体性が高く、剛性が大きく、耐荷力が高いという利点を有する。機械加工のための刃物の制限と直角辺の応力集中を考慮して、全ての隅は、丸面取りされている。板材を巻いて溶接してもよく、まずアルミニウム合金円柱を鍛造し、次に該円柱を機械加工して成形してもよい。第2の横板224と第4の壁214は一体であり、サブフレーム21bとして機能し、炭素繊維複合材料を採用し、具体的なプロセスが業界で一般的な方法を選択する。アルミニウム合金及び炭素繊維複合材料が中性子によって活性化された後に生成した放射性同位体は、半減期が短く、放射が低い。ビーム出口方向に炭素繊維を採用し、アルミニウム合金に比べて、活性化程度がより小さく、かつ強度が高く、さらに一定の減速作用を有する。メインフレーム21aとサブフレーム21bは、ボルトで接続され、第3の壁213の第2の側板222に向かう端面には、第1のねじ孔が均一に機械加工され、第2の横板224の第1のねじ孔に対応する位置には、第1の貫通孔が均一に機械加工され、ボルトは、第1の貫通孔を貫通して第1のねじ孔に接続される。ストッパリング(第3の横板225)の取付を考慮して、第3の壁213の第2の側板222に向かう端面に第2のねじ孔が均一に予め設置され、第2のねじ孔と第1のねじ孔の位置が異なり、第2の横板224の第2のねじ孔に対応する位置に第2の貫通孔が予め設置され、ストッパリング(第3の横板225)に第3の貫通孔が機械加工され、第3の貫通孔の位置が第2の貫通孔に対応し、ボルトが順次第3の貫通孔、第2の貫通孔を貫通して第2のねじ孔に接続され、ストッパリング(第3の横板225)がボルトによりメインフレーム21aに固定され、理解できるように、ストッパリングがサブフレームに固定されてもよい。また、ストッパリング(第3の横板225)に第4の貫通孔が機械加工され、第4の貫通孔の位置が第1の貫通孔に対応し、かつ孔径がメインフレーム21aとサブフレーム21bを接続するボルトのヘッド部の最大径方向寸法より僅かに大きく、ボルトのヘッド部を収容し、理解できるように、第4の貫通孔が止まり孔であってもよい。ボルトの組立を考慮して、第1の貫通孔の孔径が第1のねじ孔の孔径より僅かに大きく、第2、第3の貫通孔の孔径が第2のねじ孔の孔径より僅かに大きく、第1のねじ孔、第1の貫通孔、第2のねじ孔、第2の貫通孔及び第3の貫通孔の数量が接続強度を満たせばよい。理解できるように、サブフレーム、位置決めリング、ストッパリングを設置しなくてもよい。
【0048】
第1、第2の側板221、222は、鉛アンチモン合金材料であり、鉛が放射をさらに遮断する作用を果たすことができ、また鉛アンチモン合金の強度が高い。第1、第2の側板221、222とメインフレームは、いずれもボルトで接続され、メインフレーム21aの内壁の第1、第2の側板に向かう端面には、それぞれ第3のねじ孔が均一に機械加工され、第1、第2の側板221、222の第3のねじ孔に対応する位置には、第4の貫通孔が均一に機械加工され、ボルトの組立を考慮して、第4の貫通孔の孔径が第3のねじ孔の孔径より僅かに大きく、第3のねじ孔、第4の貫通孔の数量が接続強度を満たせばよい。
【0049】
理解できるように、本実施例におけるメインフレーム、サブフレーム、側板、位置決めリング、ストッパリングの材料が一定の強度を有し、かつ中性子によって活性化された後に生成した放射性同位体の半減期が短く(例えば、7日間より小さい)、また、メインフレームの材料性能がビーム整形体に対する支持を満たすことができればよく、例えば、アルミニウム合金、チタン合金、鉛アンチモン合金、コバルトを含まない鋼材、炭素繊維、PEEK、高分子重合体などを採用し、ストッパリングとフレームの取り外し可能な接続を保証し、減速体の基本部分の調整と交換を容易にする限り、他の接続方法も採用することができる。サブフレーム、側板及びメインフレームの間に取り外し可能な接続又は取り外し不可能な接続を採用することができ、取り外し可能な接続を採用するとき、本体部の各部分を容易に交換する。本実施例におけるビーム整形体のフレーム及び本体部は、さらに他の構造形態を有してもよい。
【0050】
コリメータ30がビーム出口の後部に設置され、コリメータ30から出た熱外中性子ビームは患者200に照射し、浅層正常組織を経過した後に熱中性子に減速されて腫瘤細胞Mに到着する。図4に示すとおり、本実施例において、コリメータ30とサブフレーム21bは、ネジ接続により固定され、サブフレーム21bの第4の壁214は、コリメータ30の取付部を形成し、コリメータ30のビーム整形体20に近い端部には、主軸Xを囲むフランジ31を有し、フランジ31の外壁に雄ねじ(図示せず)を有し、第4の壁214の内壁に雄ねじと螺合する雌ねじ(図示せず)が設置される。理解できるように、コリメータ30は、さらに他の接続形態により固定されてよく、コリメータ30は、省略されるか又は他の構造で置換されてもよく、中性子ビームは、ビーム出口から出て患者200に直接照射する。本実施例において、患者200とビーム出口との間にまた放射シールド装置50が設けられ、ビーム出口から出たビームが患者の正常組織への放射を遮断し、放射シールド装置50を設置しなくてもよいと理解されたい。
【0051】
本発明の実施例に記載されている「柱体」または「柱状」は、図面に示されている方向に沿って片側から向こう側までその外輪郭の全体的な流れがほとんど変わらない構造である。外輪郭にある1つの輪郭線は線分であってよい。例えば、円柱状の対応する輪郭線。それとも大きな曲率を有する線分に近い円弧であってもよい。例えば、大きな曲率を有する球体状の対応する輪郭線。外輪郭の表面全体はなめらかであってよく、それともなめらかでないであってもよい。例えば、円柱状または大きな曲率を有する球体状の表面に凹凸部がある。
【0052】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態について説明して、当業者が本発明を理解することを容易にするが、明らかに、本発明は具体的な実施形態の範囲に限定されず、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定かつ決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかであるため、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】