IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオエヌテック アーゲーの特許一覧 ▶ トロン− トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク−ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2022-528422インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療
<>
  • 特表-インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療 図1
  • 特表-インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療 図2
  • 特表-インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療 図3
  • 特表-インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療 図4
  • 特表-インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療 図5
  • 特表-インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療 図6ABC
  • 特表-インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療 図6DE
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】インターロイキン2(IL2)およびインターフェロン(IFN)を含む治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20220603BHJP
   C12N 15/20 20060101ALI20220603BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20220603BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20220603BHJP
   C07K 14/555 20060101ALI20220603BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20220603BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20220603BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220603BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220603BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
A61K38/20
C12N15/20 ZNA
C07K14/55
C07K14/00
C07K14/555
C12N15/26
A61K38/21
A61K48/00
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P37/02
A61P35/00
A61K47/64
A61K47/68
A61K39/00 A
A61K39/39
A61K39/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559301
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2020059445
(87)【国際公開番号】W WO2020201448
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/058707
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(71)【出願人】
【識別番号】515123258
【氏名又は名称】トロン- トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク-ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON- Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【住所又は居所原語表記】Freiligrathstr. 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】フォルメール, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】クランツ, レナ
(72)【発明者】
【氏名】フェラーマイヤー-コップフ, ジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ミューク, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ライデンバッハ, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ディケン, ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】クライター, ゼバスティアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59Q
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084DA14
4C084DA22
4C084MA02
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA01
4C085BB01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF13
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA04
4H045DA86
4H045EA22
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、免疫エフェクタ細胞、特にインターロイキン2(IL2)に応答する免疫エフェクタ細胞、例えばCD8+T細胞などのエフェクタT細胞の効果を増強するための方法および薬剤に関する。具体的には、本開示は、IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびI型インターフェロン(IFN)もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象に投与することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において免疫応答を誘導するための方法であって、
a.IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
b.I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
c.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドがRNAであり、I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドがRNAであり、および任意で前記ペプチドまたはタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
対象において免疫応答を誘導するための方法であって、
a.IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA;および
b.I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA
を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項5】
c.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を前記対象に投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫応答がT細胞媒介性免疫応答である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、抗原の発現または発現上昇に関連する疾患、障害または状態を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
抗原の発現または発現上昇に関連する疾患、障害または状態を有する対象を治療するための方法であって、
a.IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
b.I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
c.前記対象において前記抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項9】
IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドがRNAであり、I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドがRNAであり、および前記ペプチドまたはタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗原の発現または発現上昇に関連する疾患、障害または状態を有する対象を治療するための方法であって、
a.IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA;
b.I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA;および
c.前記対象において前記抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項11】
前記疾患、障害または状態が癌であり、前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
IL2またはその機能的バリアントを含む前記ポリペプチドが、延長薬物動態(PK)IL2である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記延長PK IL2が融合タンパク質を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記融合タンパク質が、IL2またはその機能的バリアントの部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、Fn3、およびそれらのバリアントからなる群より選択される部分とを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
対象における癌を治療または予防するための方法であって、任意で前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特にRNA、および任意で前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド、特にRNAの投与が、抗原特異的T細胞を誘導する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特にRNAの投与が、制御性T細胞の数を減少させる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特にRNAの投与が、制御性T細胞のIL2媒介性拡大を減少させる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特にRNAの投与が、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記I型インターフェロンがインターフェロンαである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
a.IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
b.I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む医薬製剤。
【請求項24】
c.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド
をさらに含む、請求項23に記載の医薬製剤。
【請求項25】
IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドがRNAであり、I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドがRNAであり、および任意で前記ペプチドまたはタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項23または24に記載の医薬製剤。
【請求項26】
キットである、請求項23~25のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項27】
IL2もしくはその機能的バリアントを含む前記ポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含む前記ポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および任意で前記ペプチドもしくはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチドを別々の容器に含む、請求項26に記載の医薬製剤。
【請求項28】
癌を治療または予防するための前記医薬製剤の使用説明書をさらに含み、任意で前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項26または27に記載の医薬製剤。
【請求項29】
医薬組成物である、請求項23~25のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項30】
前記医薬組成物が、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む、請求項29に記載の医薬製剤。
【請求項31】
a.IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA;および
b.I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA
を含む医薬製剤。
【請求項32】
c.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
をさらに含む、請求項31に記載の医薬製剤。
【請求項33】
キットである、請求項31または32に記載の医薬製剤。
【請求項34】
IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードする前記RNA、I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードする前記RNA、および任意でペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNAを別々の容器に含む、請求項33に記載の医薬製剤。
【請求項35】
癌を治療または予防するための前記医薬製剤の使用説明書をさらに含み、任意で前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項33または34に記載の医薬製剤。
【請求項36】
医薬組成物である、請求項31または32に記載の医薬製剤。
【請求項37】
前記医薬組成物が、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む、請求項36に記載の医薬製剤。
【請求項38】
前記免疫応答がT細胞媒介性免疫応答である、請求項24~30および32~37のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項39】
IL2またはその機能的バリアントを含む前記ポリペプチドが、延長薬物動態(PK)IL2である、請求項23~38のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記延長PK IL2が融合タンパク質を含む、請求項39に記載の医薬製剤。
【請求項41】
前記融合タンパク質が、IL2またはその機能的バリアントの部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、Fn3、およびそれらのバリアントからなる群より選択される部分とを含む、請求項40に記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、請求項41に記載の医薬製剤。
【請求項43】
前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項41に記載の医薬製剤。
【請求項44】
医薬用途のための、請求項23~43のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項45】
前記医薬用途が、疾患または障害の治療的または予防的治療を含む、請求項44に記載の医薬製剤。
【請求項46】
対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための、任意で前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項23~45のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項47】
前記I型インターフェロンがインターフェロンαである、請求項23~46のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫エフェクタ細胞、特にインターロイキン2(IL2)に応答する免疫エフェクタ細胞、例えばCD8+T細胞などのエフェクタT細胞の効果を増強するための方法および薬剤に関する。これらの方法および薬剤は、特に、免疫エフェクタ細胞が向けられる抗原を発現する疾患細胞を特徴とする疾患の治療に有用である。具体的には、本開示は、IL2もしくはその機能的バリアント(本明細書では一般に「IL2」と呼ばれる)を含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびI型インターフェロン(IFN)もしくはその機能的バリアント(本明細書では一般に「インターフェロン」または「IFN」と呼ばれる)を含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象に投与することを含む方法に関する。対象に提供されるIL2は、エフェクタT細胞などの免疫エフェクタ細胞に作用し、例えば免疫エフェクタ細胞の拡大を促進することによって免疫エフェクタ細胞の作用の増強をもたらす一方で、インターフェロンは、免疫エフェクタ細胞の作用に拮抗する制御性T細胞(Treg)のIL2媒介性拡大を防止または低減する。本開示の方法は、免疫エフェクタ細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大のための抗原を提供するために(任意で適切な標的細胞によるポリヌクレオチドの発現後に)ワクチン抗原またはそれをコードするポリヌクレオチドを対象に投与することをさらに含み得る。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、抗原またはそのプロセシング産物に対する結合特異性を有するT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)などの抗原受容体を担持する。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、抗原受容体を発現するように遺伝子改変される。代替的にまたは加えて、免疫エフェクタ細胞は、IL2受容体(IL2R)を発現するように遺伝子改変される。そのような遺伝子改変は、エクスビボまたはインビトロで行われ、その後免疫エフェクタ細胞が治療を必要とする対象に投与され得、および/または治療を必要とする対象においてインビボで行われ得る。免疫エフェクタ細胞は、治療を必要とする対象由来であり得、治療を必要とする対象に内因性であり得る。免疫エフェクタ細胞の抗原受容体は、疾患に関連する抗原を標的とし得る。特に好ましい一実施形態では、本開示に従って投与されるIL2をコードするポリヌクレオチド、IFNをコードするポリヌクレオチドおよび/またはワクチン抗原をコードするポリヌクレオチドは、RNAである。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、病原体関連疾患だけでなく癌、自己免疫、アレルギーにおいても重要な役割を果たす。T細胞およびNK細胞は、抗腫瘍免疫応答の重要なメディエータである。CD8+T細胞およびNK細胞は、腫瘍細胞を直接溶解することができる。一方、CD4+T細胞は、CD8+T細胞およびNK細胞を含む様々な免疫サブセットの腫瘍への流入を媒介することができる。CD4+T細胞は、樹状細胞(DC)が抗腫瘍CD8+T細胞応答をプライミングするのを許可することができ、IFNγを介したMHCの上方制御と増殖阻害によって腫瘍細胞に直接作用することができる。CD8+およびCD4+腫瘍特異的T細胞応答は、ワクチン接種またはT細胞の養子移入によって誘導することができる。mRNAに基づくワクチンプラットフォームの文脈において、mRNAは、免疫刺激のためのさらなるアジュバントを必要とせずに、リポソーム製剤(RNA-リポプレックス、RNA-LPX)によって二次リンパ器官に位置する抗原提示細胞に送達され得る(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015);Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))。
【0003】
T細胞の臨床的有効性をさらに改善する1つの可能性のある方法は、細胞の生存および機能に影響を及ぼすサイトカインを介した前記細胞の支持および調節である。例えば、インターロイキン2(IL2)は強力な免疫刺激物質であり、免疫系の多様な細胞を活性化する。IL2は、T細胞およびNK細胞の分化、増殖、生存およびエフェクタ機能を支持することが公知であり(Blattman,J.NNat.Med.9,540-7(2003))、後期悪性黒色腫の治療において数十年にわたって使用されてきた(Maas,R.A.,Dullens,H.F.&Den Otter,W.Cancer Immunother.36,141-8(1993))。
【0004】
しかしながら、サイトカインの投与に関連するいくつかの困難がある。組換えサイトカインは、血漿中半減期が非常に短く、大量のサイトカインを頻繁に注入する必要性を生じさせる。IL2の場合、これは血管漏出症候群(VLS)などの重篤な副作用をもたらす(Rosenberg,S.N.Engl.J.Med.316,889-97(1987))。さらに、サイトカイン投与は、免疫細胞に望ましくない影響を引き起こす可能性がある。例えば、CD25(IL2Rα)、CD122(IL2Rβ)およびCD132(IL2Rγ)からなる高親和性IL2受容体(IL2Rαβγ)が制御性T細胞(Treg)ならびに活性化CD4およびCD8T細胞上で発現される一方で、CD25を欠く中親和性受容体(IL2Rβγ)はナイーブT細胞およびメモリT細胞ならびにNK細胞上で優勢であるので、IL2は、エフェクタT細胞よりも強力にTregを刺激するその能力で知られている(Todd,J.PLoS Med.13,e1002139(2016))。Tregは、抗腫瘍エフェクタT細胞およびNK細胞の機能を抑制することができるため、癌患者の生存率の低下と相関する(Nishikawa,H.&Sakaguchi.Curr.Opin27,1-7(2014))。CD25発現細胞に対する選択性を失うような方法でIL2を改変し、それによってナイーブT細胞およびメモリT細胞ならびにNK細胞への刺激能を相対的に増加させる試みは、その抗腫瘍能を改善することが示された(Arenas-Ramirez,N.et al.Sci.Transl.Med.8,1-13(2016))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015)
【非特許文献2】Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016)
【非特許文献3】Blattman,J.NNat.Med.9,540-7(2003)
【非特許文献4】Maas,R.A.,Dullens,H.F.& Den Otter,W.Cancer Immunother.36,141-8(1993)
【非特許文献5】Rosenberg,S.N.Engl.J.Med.316,889-97(1987)
【非特許文献6】Todd,J.PLoS Med.13,e1002139(2016)
【非特許文献7】Nishikawa,H.& Sakaguchi.Curr.Opin27,1-7(2014)
【非特許文献8】Arenas-Ramirez,N.et al.Sci.Transl.Med.8,1-13(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
明らかに、免疫療法、特に癌ワクチンなどのワクチン、および/または(ナイーブもしくはT細胞受容体トランスジェニックまたはキメラ抗原受容体トランスジェニック)T細胞およびNK細胞の養子移入を含む細胞ベースの癌免疫療法などの細胞ベースの免疫療法の有効性を高めるための新規戦略が必要とされている。
【0007】
サイトカイン療法で生じる制限に対処するために、本明細書では、IL2治療を含む免疫療法の有効性を高めるための新規戦略を提供する。
【0008】
本開示は、抗原特異的T細胞応答の拡大などのIL2治療の有益な効果を維持しながら、IL2媒介Treg拡大を防止するための手段および方法を提供する。
【0009】
本発明者らは、長期間の全身アベイラビリティのために血清アルブミンに融合されたIL2(Alb-IL2)をコードするmRNAが、CD8+T細胞を有意に活性化し、マウスにおいてインビボでワクチン誘導性抗原特異的T細胞を強力に拡大することを実証する。同時に、Alb-IL2はTregの大量増殖をもたらし、抗原特異的T細胞のその後の拡大を強く制限した。IFNαをコードするmRNAとAlb-IL2の同時投与は、Tregの拡大を防止し、ワクチン誘導性抗原特異的T細胞の持続的ブーストを可能にした。単離されたヒトT細胞を用いたインビトロ試験により、IFNαが、CD8+T細胞活性化に強く影響することなく、TregのIL2媒介性活性化を妨げることが確認された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一般に、免疫療法の有効性を高めるための、IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与、およびIL2媒介の望ましくない影響、特にTregの拡大を低減または防止するための、I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与を含む、対象の免疫療法治療を包含する。免疫療法は、ワクチン療法および/または細胞ベースの癌免疫療法、例えばTILまたはT細胞ベースの治療、例えば自己細胞を使用するTCRまたはCARトランスジェニックT細胞ベースの治療を含み得る。一般に、本明細書に記載の治療を使用して刺激される免疫エフェクタ細胞は、疾患細胞などの抗原を発現する細胞、特に腫瘍抗原を発現する癌細胞を標的とし得る。標的細胞は、細胞表面に抗原を発現し得るか、または抗原のプロセシング産物を提示し得る。一実施形態では、抗原は腫瘍関連抗原であり、疾患は癌である。そのような治療は、抗原を発現する細胞の選択的根絶を提供し、それによって抗原を発現しない正常細胞への有害作用を最小限に抑える。IL2投与によって刺激され、好ましくは内因性IL2受容体(IL2R)を有する(または任意でIL2Rを発現するように遺伝子改変されている)免疫エフェクタ細胞(任意で抗原受容体を発現するように遺伝子改変されている)は、抗原またはそのプロセシング産物、したがって抗原を発現する標的細胞集団または標的組織を標的とする。そのような免疫エフェクタ細胞は、治療を必要とする対象に投与され得るか、または治療を必要とする対象に内因性であり得る。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞はIL2受容体(IL2R)を担持する。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、IL2Rを発現するように遺伝子改変される。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、標的抗原またはそのプロセシング産物に対する結合特異性を有するT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)などの抗原受容体を担持する。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、抗原受容体を発現するように遺伝子改変される。IL2Rおよび/または抗原受容体を発現するためのそのような遺伝子改変は、エクスビボまたはインビトロで行われ、その後免疫エフェクタ細胞が治療を必要とする対象に投与され得るか、または治療を必要とする対象においてインビボで行われ得るか、またはエクスビボもしくはインビトロとインビボ改変の組合せによって行われ得る。一実施形態では、ワクチン抗原またはそれをコードするポリヌクレオチドは、標的抗原またはそのプロセシング産物を標的とする免疫エフェクタ細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大のための抗原を提供する(任意で適切な標的細胞によるポリヌクレオチドの発現後に)ために投与される。一実施形態では、本開示に従って誘導される免疫応答は、免疫エフェクタ細胞が向けられる抗原を発現する標的細胞集団または標的組織に対する免疫応答である。一実施形態では、本開示に従って誘導される免疫応答は、T細胞媒介性免疫応答である。一実施形態では、免疫応答は抗腫瘍免疫応答であり、標的細胞集団または標的組織は腫瘍細胞または腫瘍組織である。
【0011】
本明細書に記載の方法および薬剤は、IL2が薬物動態修飾基に結合している場合(以下「延長薬物動態(PK)IL2」と呼ばれる)に特に有効である。本明細書に記載の方法および薬剤は、延長PK IL2などのIL2をコードするポリヌクレオチドがRNAであり、および/またはI型インターフェロンをコードするポリヌクレオチドがRNAである場合に特に有効である。一実施形態では、前記RNAは、全身アベイラビリティのために肝臓を標的とする。肝細胞は効率的にトランスフェクトすることができ、大量のタンパク質を産生できる。ワクチン抗原をコードするRNAは、好ましくは二次リンパ器官を標的とする。
【0012】
一態様では、対象において免疫応答を誘導するための方法であって、
a.IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
b.I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0013】
一実施形態では、この方法は、
c.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を対象に投与することをさらに含む。
【0014】
一実施形態では、IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはRNAであり、I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはRNAであり、任意で前記ペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドはRNAである。
【0015】
一態様では、対象において免疫応答を誘導するための方法であって、
a.IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA;および
b.I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA
を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0016】
一実施形態では、この方法は、
c.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を対象に投与することをさらに含む。
【0017】
一実施形態では、免疫応答はT細胞媒介性免疫応答である。
【0018】
一実施形態では、対象は、抗原の発現または発現上昇に関連する疾患、障害または状態を有する。
【0019】
一態様では、抗原の発現または発現上昇に関連する疾患、障害または状態を有する対象を治療するための方法であって、
a.IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
b.I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
c.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0020】
一実施形態では、IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはRNAであり、I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはRNAであり、前記ペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドはRNAである。
【0021】
一態様では、抗原の発現または発現上昇に関連する疾患、障害または状態を有する対象を治療するための方法であって、
a.IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA;
b.I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA;および
c.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0022】
一実施形態では、疾患、障害または状態は癌であり、抗原は腫瘍関連抗原である。
【0023】
一実施形態では、IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドは、延長薬物動態(PK)IL2である。一実施形態では、延長PK IL2は融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、IL2の部分またはその機能的バリアントと、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、Fn3、およびそれらのバリアントからなる群より選択される部分とを含む。一実施形態では、血清アルブミンは、マウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む。一実施形態では、免疫グロブリン断片は、免疫グロブリンFcドメインを含む。
【0024】
一実施形態では、任意の態様の方法は、対象における癌を治療または予防するための方法であり、任意で抗原は腫瘍関連抗原である。
【0025】
一実施形態では、IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特にRNA、および任意で対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド、特にRNAの投与は、抗原特異的T細胞を誘導する。
【0026】
一実施形態では、I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特にRNAの投与は、制御性T細胞の数を減少させる。
【0027】
一実施形態では、I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特にRNAの投与は、制御性T細胞のIL2媒介性拡大を減少させる。
【0028】
一実施形態では、I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特にRNAの投与は、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる。
【0029】
全ての態様の一実施形態では、I型インターフェロンはインターフェロンαである。
【0030】
一態様では、
a.IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
b.I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む医薬製剤が本明細書で提供される。
【0031】
一実施形態では、医薬製剤は、
c.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド
をさらに含む。
【0032】
一実施形態では、IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはRNAであり、I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはRNAであり、任意で前記ペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドはRNAである。
【0033】
一実施形態では、医薬製剤はキットである。
【0034】
一実施形態では、医薬製剤は、IL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはIL2もしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、I型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドまたはI型インターフェロンもしくはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および任意で前記ペプチドもしくはタンパク質または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチドを別々の容器に含む。
【0035】
一実施形態では、医薬製剤は、癌を治療または予防するための医薬製剤の使用説明書をさらに含み、任意で抗原は腫瘍関連抗原である。
【0036】
一実施形態では、医薬製剤は医薬組成物である。
【0037】
一実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む。
【0038】
一態様では、
a.IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA;および
b.I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA
を含む医薬製剤が本明細書で提供される。
【0039】
一実施形態では、医薬製剤は、
c.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
をさらに含む。
【0040】
一実施形態では、医薬製剤はキットである。
【0041】
一実施形態では、医薬製剤は、IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA、I型インターフェロンまたはその機能的バリアントを含むポリペプチドをコードするRNA、および任意でペプチドまたはタンパク質をコードするRNAを別々の容器に含む。
【0042】
一実施形態では、医薬製剤は、癌を治療または予防するための医薬製剤の使用説明書をさらに含み、任意で抗原は腫瘍関連抗原である。
【0043】
一実施形態では、医薬製剤は医薬組成物である。
【0044】
一実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む。
【0045】
医薬製剤の一実施形態では、免疫応答はT細胞媒介性免疫応答である。
【0046】
一実施形態では、IL2またはその機能的バリアントを含むポリペプチドは、延長薬物動態(PK)IL2である。一実施形態では、延長PK IL2は融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、IL2の部分またはその機能的バリアントと、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、Fn3、およびそれらのバリアントからなる群より選択される部分とを含む。一実施形態では、血清アルブミンは、マウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む。一実施形態では、免疫グロブリン断片は、免疫グロブリンFcドメインを含む。
【0047】
一態様では、医薬用途のための本明細書に記載の医薬製剤が本明細書で提供される。
【0048】
一実施形態では、医薬用途は、疾患または障害の治療的または予防的治療を含む。
【0049】
一態様では、対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための本明細書に記載の医薬製剤が本明細書で提供され、任意で抗原は腫瘍関連抗原である。
【0050】
全ての態様の一実施形態では、I型インターフェロンはインターフェロンαである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】mAlb-mIL2とT細胞ワクチン接種の併用処置は、オボアルブミン特異的CD8+T細胞の一時的なブーストをもたらす。 A、実験の概要。B~D、末梢血中の7日目(B)、14日目(C)、および21日目(D)のオボアルブミン(OVA)特異的CD8+T細胞の数。E、経時的なOVA特異的T細胞の頻度。F、経時的なCD4+T細胞の中でのCD4+CD25+FoxP3+Tregの頻度。統計分析には、対応のない両側スチューデントt検定(B~D)または二元配置分散分析とSidakの多重比較検定(E、F)を適用した。ns;P>0.05、*:P≦0.05、**:P≦0.01、***;P≦0.001、***;P≦0.0001。平均±標準誤差を示す。
図2】mAlb-mIL2とT細胞ワクチン接種の併用処置はgp70特異的CD8+T細胞の一時的なブーストをもたらす A、実験の概要。B~D、末梢血中の7日目(B)、14日目(C)、および21日目(D)のgp70特異的CD8+T細胞の数。E、経時的なgp70特異的T細胞の頻度。F、経時的なCD4+T細胞の中でのCD4+CD25+FoxP3+Tregの頻度。統計分析には、対応のない両側スチューデントt検定(B~D)または二元配置分散分析とSidakの多重比較検定(E、F)を適用した。ns;P>0.05、*:P≦0.05、**:P≦0.01、***;P≦0.001、***;P≦0.0001。平均±標準誤差を示す。
図3】IFNαはIL2媒介Treg拡大を制限し、インビボでOVA特異的T細胞の強固なプライミングをもたらす A、実験の概要。B、D、末梢血中の7日目(B)および14日目(D)のOVA特異的CD8+T細胞の頻度。C、7日目のCD4+T細胞の中でのCD4+CD25+FoxP3+Tregの頻度。統計分析には、一元配置分散分析、続いてシダックの多重比較検定を適用した。ns;P>0.05、*:P≦0.05、**:P≦0.01、***;P≦0.001、***;P≦0.0001。平均±標準誤差を示す。
図4】IFNαはIL2媒介Treg拡大を制限し、インビボでgp70特異的T細胞の強固なプライミングをもたらす A、実験の概要。B、D、末梢血中の7日目(B)および21日目(D)のgp70特異的CD8+T細胞の数。C、7日目のCD4+T細胞の中でのCD4+CD25+FoxP3+Tregの頻度。統計分析には、一元配置分散分析、続いてシダックの多重比較検定を適用した。ns;P>0.05、*:P≦0.05、**:P≦0.01、***;P≦0.001、***;P≦0.0001。平均±標準誤差を示す。
図5】IFNαは、インビトロでのIL2媒介Treg拡大を制限するが、CD8+T細胞拡大は制限しない CellTrace FarRedで標識した単離されたTreg(CD4+CD25+)を、最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)の存在下で自己CFSE標識PBMCと1:1の比率で共培養し、5%hAlb-hIL2含有上清で処理した。共培養物を、10,000U/mLのhIFNα2b、625U/mLのhIFNα2bと共にインキュベートするか、またはhIFNα2bなしで維持した。CD4+CD25+TregおよびCD8+T細胞の増殖を、インキュベーションの4日後にフローサイトメトリによって測定した。2つの異なるPBMCドナー(A、B)からのデータを、FlowJo v10.5ソフトウェアを使用して計算した増殖指数の平均値として示す。エラーバーは実験内の変動を示す(2つの複製物)。
図6ABC】IFNαとIL2の併用療法は、マウスにおいて相乗的な抗腫瘍効果をもたらす。A、治療レジメンおよび分析スケジュール。B、群あたりの腫瘍サイズの中央値。統計分析のために、全ての群をmAlb対照と比較して、二元配置ANOVA、続いてダネット検定を行った。C、単一マウスの腫瘍成長曲線。縦の点線は処置を示す。D、マウスの生存率。IL2およびIFNα併用群とIL2単独療法群との間の生存率の統計学的比較のために、ログランク検定を行った。E、29日目(左)および35日目(右)のCD45細胞の中のCD8T細胞の画分。平均(線)および個々の値(記号)を示す。横の点線はmAlb群の平均を示す。有意差を同定するために、一元配置ANOVA、続いてテューキー検定を行った。ns;P>0.05、*:P≦0.05、**:P≦0.01、***;P≦0.001、***;P≦0.0001。
図6DE】IFNαとIL2の併用療法は、マウスにおいて相乗的な抗腫瘍効果をもたらす。A、治療レジメンおよび分析スケジュール。B、群あたりの腫瘍サイズの中央値。統計分析のために、全ての群をmAlb対照と比較して、二元配置ANOVA、続いてダネット検定を行った。C、単一マウスの腫瘍成長曲線。縦の点線は処置を示す。D、マウスの生存率。IL2およびIFNα併用群とIL2単独療法群との間の生存率の統計学的比較のために、ログランク検定を行った。E、29日目(左)および35日目(右)のCD45細胞の中のCD8T細胞の画分。平均(線)および個々の値(記号)を示す。横の点線はmAlb群の平均を示す。有意差を同定するために、一元配置ANOVA、続いてテューキー検定を行った。ns;P>0.05、*:P≦0.05、**:P≦0.01、***;P≦0.001、***;P≦0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示を以下で詳細に説明するが、この開示は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0053】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel、およびH.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0054】
本開示の実施は、特に指示されない限り、当技術分野の文献(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0055】
以下において、本開示の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、さらなる実施形態を創出するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および実施形態は、本開示を明確に記述される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を任意の数の開示される要素と組み合わせた実施形態を開示し、包含すると理解されるべきである。さらに、記述される全ての要素の任意の並べ替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、この説明によって開示されていると見なされるべきである。
【0056】
「約」という用語はおよそまたはほぼを意味し、本明細書に記載の数値または範囲の文脈において、一実施形態では、列挙または特許請求される数値または範囲の±20%、±10%、±5%、または±3%を意味する。
【0057】
本開示を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語ならびに同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属するそれぞれ別々の値を個別に言及することの簡略方法として機能することを意図している。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書に個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本開示をより良く説明することを意図しており、特許請求の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本開示の実施に必須の特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0058】
特に明記されない限り、「含む」という用語は、「含む」によって導入されたリストのメンバーに加えて、さらなるメンバーが任意に存在し得ることを示すために本文書の文脈で使用される。しかしながら、「含む」という用語は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含することが本開示の特定の実施形態として企図され、すなわち、この実施形態の目的のためには、「含む」は「からなる」の意味を有すると理解されるべきである。
【0059】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される各資料(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書などを含む)は、前掲または後掲のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中のいかなる引用も、本開示がそのような開示に先行する権利を有さなかったことの承認と解釈されるべきではない。
【0060】
以下において、本開示の全ての態様に適用される定義を提供する。以下の用語は、特に指示されない限り、以下の意味を有する。定義されていない用語は、それらの技術分野で広く認められている意味を有する。
【0061】
定義
本明細書で使用される「低減する」、「減少させる」「阻害する」または「損なう」などの用語は、レベル、例えば結合レベルの、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上の全体的な減少または全体的な減少を生じさせる能力に関する。
【0062】
「増加させる」、「増強する」または「上回る」などの用語は、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、またはさらにそれ以上の増加または増強に関する。
【0063】
本開示によれば、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに連結された約2個以上、約3個以上、約4個以上、約6個以上、約8個以上、約10個以上、約13個以上、約16個以上、約20個以上、および最大約50個、約100個または約150個までの連続するアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、大きなペプチド、特に少なくとも約150個のアミノ酸を有するペプチドを指すが、「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では通常同義語として使用される。
【0064】
「治療用タンパク質」は、治療有効量で対象に提供された場合、対象の状態または病態に対してプラスのまたは有利な効果を及ぼす。一実施形態では、治療用タンパク質は治癒的または緩和的特性を有し、疾患または障害の1つ以上の症状を改善する、緩和する、軽減する、逆転させる、発症を遅延させる、または重症度を軽減するために投与され得る。治療用タンパク質は予防特性を有し、疾患の発症を遅延させるため、またはそのような疾患もしくは病的状態の重症度を軽減するために使用され得る。「治療用タンパク質」という用語は、タンパク質またはペプチド全体を含み、治療的に活性なその断片も指すことができる。それはまた、タンパク質の治療的に活性なバリアントを含み得る。治療活性タンパク質の例としては、サイトカインおよびワクチン接種のための抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に関する「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えばオープンリーディングフレームの3'末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、トランケートされたオープンリーディングフレームが翻訳を開始させるように働く開始コドンを含む限り、例えばオープンリーディングフレームの5'末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。アミノ酸配列の断片は、例えばアミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、好ましくはアミノ酸配列からの少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。
【0066】
本明細書における「バリアント」または「バリアントタンパク質」または「バリアントポリペプチド」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって野生型タンパク質とは異なるタンパク質を意味する。親ポリペプチドは、天然に存在するもしくは野生型(WT)ポリペプチドであり得るか、または野生型ポリペプチドの改変型であり得る。好ましくは、バリアントポリペプチドは、親ポリペプチドと比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば親ポリペプチドと比較して1~約20のアミノ酸修飾、好ましくは1~約10または1~約5のアミノ酸修飾を有する。
【0067】
本明細書で使用される「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆体ポリペプチド」、または「前駆体タンパク質」とは、その後修飾されてバリアントを生成する未修飾ポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、野生型ポリペプチド、または野生型ポリペプチドのバリアントもしくは操作型であり得る。
【0068】
本明細書における「野生型」または「WT」または「天然」とは、対立遺伝子変異を含む、自然界に見出されるアミノ酸配列を意味する。野生型タンパク質またはポリペプチドは、意図的に修飾されていないアミノ酸配列を有する。
【0069】
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアントおよび/またはアミノ酸置換バリアントを含む。「バリアント」という用語は、全てのスプライスバリアント、翻訳後修飾バリアント、立体配座バリアント、アイソフォームバリアントおよび種ホモログ、特に細胞によって天然に発現されるものを含む。「バリアント」という用語は、特にアミノ酸配列の断片を含む。
【0070】
アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列中に1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、1つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、結果として生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。アミノ酸付加バリアントは、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。アミノ酸欠失バリアントは、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の任意の位置にあってよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端および/またはC末端切断バリアントとも呼ばれる。アミノ酸置換バリアントは、配列内の少なくとも1つの残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置にある修飾、および/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置き換えることが好ましい。好ましくは、ペプチドおよびタンパク質バリアントにおけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換が含まれる。天然に存在するアミノ酸は一般に、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸の4つのファミリーに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。一実施形態では、保存的アミノ酸置換には、以下の群内の置換が含まれる:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン;
リジン、アルギニン;および
フェニルアラニン、チロシン。
【0071】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸、好ましくは連続するアミノ酸について与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最適な配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を用いて行うことができる。
【0072】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。
【0073】
「同一性パーセント」という用語は、最適なアラインメント後に得られる、比較する2つの配列間で同一であるアミノ酸残基の割合を示すことを意図しており、この割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の相違はそれらの全長にわたってランダムに分布している。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、従来、これらの配列を最適に整列させた後に比較することによって行われ、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに行われる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手作業に加えて、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0074】
同一性パーセントは、比較する2つの配列間で同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数で除し、得られた結果に100を乗じて、これら2つの配列間の同一性パーセントを得ることによって計算される。
【0075】
相同なアミノ酸配列は、本開示によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98、または少なくとも99%の同一性を示す。
【0076】
本明細書に記載のアミノ酸配列バリアントは、例えば組換えDNA操作によって、当業者によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸バリアントは、例えば固相合成および類似の方法などによる公知のペプチド合成技術を用いて容易に調製され得る。
【0077】
一実施形態では、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)の断片またはバリアントは、好ましくは「機能的断片」または「機能的バリアント」である。アミノ酸配列の「機能的断片」または「機能的バリアント」という用語は、それが由来するアミノ酸配列のものと同一または類似の1つ以上の機能特性を示す、すなわち機能的に等価の任意の断片またはバリアントに関する。IL2などのサイトカインに関して、1つの特定の機能は、断片もしくはバリアントが由来するアミノ酸配列によって示される1つ以上の免疫調節活性、および/または断片もしくはバリアントが由来するアミノ酸配列が結合する受容体(1つまたは複数)への結合である。本明細書で使用される「機能的断片」または「機能的バリアント」という用語は、特に、親分子または配列のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸によって変化し、親分子または親列の機能の1つ以上、例えば標的分子に結合する、または標的分子への結合に寄与する機能を依然として果たすことができるアミノ酸配列を含むバリアント分子または配列を指す。一実施形態では、親分子または配列のアミノ酸配列の改変は、分子または配列の結合特性に有意に影響を及ぼさないかまたは変化させない。異なる実施形態では、機能的断片または機能的バリアントの結合は、低減され得るが、依然として有意に存在し得、例えば、機能的バリアントの結合は、親分子または配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり得る。しかしながら、他の実施形態では、機能的断片または機能的バリアントの結合は、親分子または配列と比較して増強され得る。
【0078】
指定されたアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源を指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列またはその断片と同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列またはその断片のバリアントであり得る。例えば、本明細書での使用に適した抗原およびサイトカイン(例えばIL2)は、天然配列の望ましい活性を保持しながら、それらが由来する天然に存在するまたは天然の配列とは配列が異なるように改変され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0079】
本明細書で使用される場合、「説明資料」または「説明書」は、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために使用することができる刊行物、記録、図、または任意の他の表現媒体を含む。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の組成物を含む容器に貼付され得るか、または組成物を含む容器と共に出荷され得る。あるいは、説明資料と組成物が受領者によって協働して使用されることを意図して、説明資料は容器とは別に出荷されてもよい。
【0080】
「単離された」は、天然状態から改変されたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または、例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0081】
本発明の文脈における「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明の文脈における組換え細胞などの「組換え対象物」は、天然には存在しない。
【0082】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、対象物が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人間によって意図的に修飾されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。
【0083】
「遺伝子改変」という用語は、核酸による細胞のトランスフェクションを含む。「トランスフェクション」という用語は、細胞への核酸、特にRNAの導入に関する。本発明の目的のために、「トランスフェクション」という用語はまた、細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取り込みを含み、細胞は対象、例えば患者に存在し得る。したがって、本発明によれば、本明細書に記載の核酸のトランスフェクションのための細胞は、インビトロまたはインビボで存在することができ、例えば細胞は、患者の器官、組織および/または生物の一部を形成することができる。本発明によれば、トランスフェクションは一過性または安定であり得る。トランスフェクションのいくつかの用途では、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現されれば十分である。トランスフェクションの過程で導入された核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないので、外来核酸は有糸分裂によって希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノムに残ることを所望する場合は、安定なトランスフェクションが起こらなければならない。そのような安定なトランスフェクションは、トランスフェクションのためにウイルスベースのシステムまたはトランスポゾンベースのシステムを使用することによって達成することができる。一般に、抗原受容体またはIL2受容体などの受容体ポリペプチドを発現するように遺伝子改変された細胞は、受容体をコードする核酸で安定にトランスフェクトされるが、一般に、IL2またはI型インターフェロンなどのサイトカインをコードする核酸および/または抗原をコードする核酸は、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。
【0084】
免疫エフェクタ細胞
本明細書で使用される免疫エフェクタ細胞、特にIL2応答性免疫エフェクタ細胞(IL2Rを有する免疫エフェクタ細胞)は、治療を必要とする対象に投与され得るか、または治療を必要とする対象において内因性に存在し得る。対象にIL2またはIL2をコードするポリヌクレオチドを投与することにより、免疫エフェクタ細胞の刺激が可能になる。本明細書に記載の方法および薬剤は、特に、免疫エフェクタ細胞が向けられる抗原を発現する疾患細胞を特徴とする疾患の治療に有用である。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、抗原またはそのプロセシング産物に対する結合特異性を有するT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)などの抗原受容体を担持する。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、治療される対象に存在し、抗原受容体を発現するように対象においてインビボで遺伝子改変される。一実施形態では、治療される対象または異なる対象のいずれかからの免疫エフェクタ細胞が、治療される対象に投与される。投与される免疫エフェクタ細胞は、投与前にエクスビボで遺伝子改変され得るか、または投与後に抗原受容体を発現するように対象においてインビボで遺伝子改変され得る。一実施形態では、抗原受容体は免疫エフェクタ細胞に内因性である。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、IL2Rを発現するようにエクスビボまたはインビボで遺伝子改変される。したがって、IL2Rを用いたそのような遺伝子改変は、インビトロで(任意で抗原受容体による遺伝子改変と一緒に)行われ、その後免疫エフェクタ細胞が治療を必要とする対象に投与され得るか、または治療を必要とする対象においてインビボで(任意で抗原受容体による遺伝子改変と一緒に)行われ得る。
【0085】
したがって、IL2によって刺激される免疫エフェクタ細胞には、天然にまたは1つ以上のIL2Rポリペプチドによるトランスフェクション後に、IL2に応答性である任意の細胞が含まれる。そのような応答性には、1つ以上の免疫エフェクタ機能の活性化、分化、増殖、生存および/または適応症が含まれる。細胞は、特に、溶解能を有する細胞、特にリンパ系細胞を含み、好ましくはT細胞、特に細胞傷害性リンパ球であり、好ましくは細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される。活性化されると、これらの細胞傷害性リンパ球はそれぞれ標的細胞の破壊を引き起こす。例えば、細胞傷害性T細胞は、以下の手段のいずれかまたは両方によって標的細胞の破壊を引き起こす。まず、活性化すると、T細胞は、パーフォリン、グランザイム、およびグラニュライシンなどの細胞毒を放出する。パーフォリンおよびグラニュライシンは標的細胞に細孔を作り、グランザイムは細胞に進入し、細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導する細胞質のカスパーゼカスケードを引き起こす。第2に、アポトーシスは、T細胞と標的細胞との間のFas-Fasリガンド相互作用を介して誘導され得る。本発明に関連して使用される細胞は、好ましくは自家細胞であるが、異種細胞または同種異系細胞を使用することができる。一実施形態では、IL2によって刺激される免疫エフェクタ細胞は、治療されている対象にとって内因性である。
【0086】
本発明の文脈において「エフェクタ機能」という用語は、例えば腫瘍細胞などの疾患細胞の死滅、または腫瘍の播種および転移の抑制を含む腫瘍成長の阻害および/もしくは腫瘍発生の阻害をもたらす免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含む。好ましくは、本発明の文脈におけるエフェクタ機能は、T細胞媒介エフェクタ機能である。そのような機能は、ヘルパーT細胞(CD4T細胞)の場合、サイトカインの放出ならびに/またはCD8リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化を含み、CTLの場合、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介細胞溶解を介した、細胞、すなわち抗原の発現を特徴とする細胞の除去、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解死滅を含む。
【0087】
本発明の文脈において「免疫エフェクタ細胞」または「免疫反応性細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクタ機能を発揮する細胞に関する。一実施形態における「免疫エフェクタ細胞」は、細胞上のMHCに関連して提示されるかまたは細胞の表面上に発現される抗原などの抗原に結合し、免疫応答を媒介することができる。例えば、免疫エフェクタ細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤性T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、および樹状細胞を含む。好ましくは、本発明の文脈において、「免疫エフェクタ細胞」は、T細胞、好ましくはCD4および/またはCD8T細胞である。本発明によれば、「免疫エフェクタ細胞」という用語は、適切な刺激で免疫細胞(T細胞、特にTヘルパー細胞、または細胞溶解性T細胞など)に成熟することができる細胞も含む。免疫エフェクタ細胞は、CD34造血幹細胞、未成熟および成熟T細胞ならびに未成熟および成熟B細胞を含む。T細胞前駆体の細胞溶解性T細胞への分化は、抗原に暴露された場合、免疫系のクローン選択に類似する。
【0088】
好ましくは、「免疫エフェクタ細胞」は、特にMHCに関連して提示されるかまたは癌細胞などの疾患細胞の表面に存在する場合、ある程度の特異性で抗原を認識する。好ましくは、前記認識は、抗原を認識する細胞が応答性または反応性であることを可能にする。細胞がヘルパーT細胞(CD4T細胞)である場合、そのような応答性または反応性は、サイトカインの放出ならびに/またはCD8リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化を含み得る。細胞がCTLである場合、そのような応答性または反応性は、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介細胞溶解を介した、細胞、すなわち抗原の発現を特徴とする細胞の除去を含み得る。本発明によれば、CTL応答性は、持続的なカルシウム流動、細胞分裂、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、CD44およびCD69などの活性化マーカの上方制御、ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解死滅を含み得る。CTL応答性はまた、CTL応答性を正確に示す人工レポータを使用して決定し得る。抗原を認識し、応答性または反応性であるそのようなCTLは、本明細書では「抗原応答性CTL」とも称される。
【0089】
一実施形態では、免疫エフェクタ細胞はCAR発現免疫エフェクタ細胞である。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞は、TCR発現免疫エフェクタ細胞である。
【0090】
本発明に従って使用される免疫エフェクタ細胞は、T細胞受容体またはB細胞受容体などの内因性抗原受容体を発現してもよく、または内因性抗原受容体の発現を欠いていてもよい。
【0091】
「リンパ系細胞」は、任意で適切な修飾後、例えばTCRまたはCARなどの抗原受容体の移入後に、細胞性免疫応答などの免疫応答を生成することができる細胞、またはそのような細胞の前駆細胞であり、リンパ球、好ましくはTリンパ球、リンパ芽球、および形質細胞を含む。リンパ系細胞は、本明細書に記載の免疫エフェクタ細胞であり得る。好ましいリンパ系細胞は、細胞表面上に抗原受容体を発現するように改変することができるT細胞である。一実施形態では、リンパ系細胞は、T細胞受容体の内因性発現を欠く。
【0092】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。「抗原特異的T細胞」という用語または同様の用語は、T細胞が標的とする抗原を認識し、好ましくはT細胞のエフェクタ機能を発揮するT細胞に関する。T細胞が抗原を発現する標的細胞を死滅させる場合、T細胞は抗原に特異的であると見なされる。T細胞の特異性は、様々な標準的技術のいずれかを使用して、例えばクロム放出アッセイまたは増殖アッセイにおいて評価し得る。あるいは、リンホカイン(IFN-γなど)の合成を測定することができる。
【0093】
T細胞は、リンパ球として公知の白血球の群に属し、細胞性免疫において中心的な役割を果たす。これらは、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるこれらの細胞表面上の特別な受容体の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他の種類のリンパ球と区別することができる。胸腺は、T細胞の成熟に関与する主要な器官である。それぞれ別個の機能を有する、T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見されている。
【0094】
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中でも特に、B細胞の形質細胞への成熟ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む免疫学的過程において他の白血球を補助する。これらの細胞は、その表面にCD4糖タンパク質を発現するため、CD4+T細胞としても知られる。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示された場合に活性化される。ひとたび活性化されると、これらは速やかに分裂し、活性免疫応答を調節または補助する、サイトカインと呼ばれる小さなタンパク質を分泌する。
【0095】
細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植拒絶反応にも関与する。これらの細胞は、その表面にCD8糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞としても知られる。これらの細胞は、身体のほぼあらゆる細胞の表面上に存在する、MHCクラスIに関連する抗原に結合することによってその標的を認識する。
【0096】
「制御性T細胞」または「Treg」は、免疫系を調節し、自己抗原に対する寛容を維持し、自己免疫疾患を予防するT細胞の亜集団である。Tregは免疫抑制性であり、一般にエフェクタT細胞の誘導と増殖を抑制または下方制御する。Tregは、バイオマーカであるCD4、FoxP3、およびCD25を発現する。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ナイーブT細胞」という用語は、活性化またはメモリT細胞とは異なり、末梢内でそれらの同族抗原に遭遇したことがない成熟T細胞を指す。ナイーブT細胞は一般に、L-セレクチン(CD62L)の表面発現、活性化マーカCD25、CD44またはCD69の非存在、およびメモリCD45ROアイソフォームの非存在を特徴とする。
【0098】
本明細書で使用される場合、「メモリT細胞」という用語は、以前にそれらの同族抗原に遭遇し、それに応答したT細胞のサブグループまたは亜集団を指す。抗原との2回目の遭遇時に、メモリT細胞は、免疫系が抗原に最初に応答したときよりも速く、より強力な免疫応答を開始するように再生することができる。メモリT細胞はCD4またはCD8のいずれかであり得、通常、CD45ROを発現する。
【0099】
全てのT細胞は、いくつかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。T細胞のTCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合し、標的細胞の表面に提示される免疫原性ペプチド(エピトープ)と相互作用することができる。TCRの特異的結合は、T細胞内のシグナルカスケードを引き起こし、増殖および成熟エフェクタT細胞への分化をもたらす。T細胞の大部分において、実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファおよびベータ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から産生され、α-TCR鎖およびβ-TCR鎖と呼ばれる2つの別個のペプチド鎖で構成される。T細胞のはるかに一般的でない(全T細胞の2%)群であるγδ T細胞(ガンマデルタT細胞)は、一本のγ鎖および一本のδ鎖で構成される異なるT細胞受容体(TCR)をその表面に有する。
【0100】
全てのT細胞は、骨髄の造血幹細胞に由来する。造血幹細胞に由来する造血前駆細胞は胸腺に存在し、細胞分裂によって拡大して未成熟な胸腺細胞の大きな集団を生成する。最初期の胸腺細胞はCD4もCD8も発現せず、したがって二重陰性(CD4-CD8-)細胞として分類される。発達が進むにつれて、それらは二重陽性胸腺細胞(CD4+CD8+)になり、最終的に単一陽性(CD4+CD8-またはCD4-CD8+)胸腺細胞に成熟し、その後胸腺から末梢組織に放出される。
【0101】
T細胞は一般に、標準的な手順を使用してインビトロまたはエクスビボで調製し得る。例えば、T細胞は、市販の細胞分離システムを使用して、患者などの哺乳動物の骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分から単離し得る。あるいは、T細胞は、血縁関係にあるヒトもしくは血縁関係のないヒト、非ヒト動物、細胞株または培養物に由来し得る。T細胞を含む試料は、例えば末梢血単核細胞(PBMC)であり得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「NK細胞」または「ナチュラルキラー細胞」という用語は、CD56またはCD16の発現およびT細胞受容体の非存在によって定義される末梢血リンパ球のサブセットを指す。本明細書で提供されるように、NK細胞はまた、幹細胞または前駆細胞から分化させることもできる。
【0103】
核酸
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子などのDNAおよびRNAを含むことを意図している。核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。RNAは、インビトロ転写されたRNA(IVT RNA)または合成RNAを含む。本発明によれば、ポリヌクレオチドは、好ましくは単離される。
【0104】
核酸は、ベクターに含まれ得る。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、λファージなどのファージベクター、レトロウイルス、アデノウイルスもしくはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、または細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)もしくはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む、当業者に公知の任意のベクターを含む。前記ベクターには、発現ベクターおよびクローニングベクターが含まれる。発現ベクターは、プラスミドおよびウイルスベクターを含み、一般に、所望のコード配列および特定の宿主生物(例えば細菌、酵母、植物、昆虫もしくは哺乳動物)またはインビトロ発現系における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは一般に、特定の所望のDNA断片を操作および増幅するために使用され、所望のDNA断片の発現に必要な機能的配列を欠いていてもよい。
【0105】
本発明の全ての態様の一実施形態では、サイトカイン(例えばIL2またはIFN)をコードする核酸、IL2Rをコードする核酸、抗原受容体をコードする核酸またはワクチン抗原をコードする核酸などの核酸は、サイトカイン、IL2R、抗原受容体またはワクチン抗原を提供するために治療される対象の細胞において発現される。本発明の全ての態様の一実施形態では、核酸は、対象の細胞において一過性に発現される。したがって、一実施形態では、核酸は細胞のゲノムに組み込まれない。本発明の全ての態様の一実施形態では、核酸はRNA、好ましくはインビトロ転写RNAである。
【0106】
本明細書に記載の核酸は、組換えおよび/または単離された分子であり得る。
【0107】
本開示では、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態では、RNAは、リボヌクレオチド残基の全てまたは大部分を含む。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを指す。RNAは、限定されることなく、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを包含する。そのような改変は、内部RNAヌクレオチドまたはRNAの末端(一方もしくは両方)への非ヌクレオチド物質の付加を指し得る。RNA中のヌクレオチドは、化学的に合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることも本明細書で企図される。本開示では、これらの改変されたRNAは、天然に存在するRNAの類似体と見なされる。
【0108】
本開示の特定の実施形態では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA転写物に関連するメッセンジャーRNA(mRNA)である。当技術分野で確立されているように、mRNAは一般に、5'非翻訳領域(5'-UTR)、ペプチドコード領域、および3'非翻訳領域(3'-UTR)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、インビトロ転写または化学合成によって生成される。一実施形態では、mRNAは、DNA鋳型を使用するインビトロ転写によって生成され、ここで、DNAは、デオキシリボヌクレオチドを含む核酸を指す。
【0109】
一実施形態では、RNAはインビトロ転写されたRNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
【0110】
一実施形態では、本明細書に記載のRNAは修飾ヌクレオシドを有し得る。いくつかの実施形態では、RNAは、少なくとも1つの(例えば全ての)ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0111】
本明細書で使用される「ウラシル」という用語は、RNAの核酸中に存在し得る核酸塩基の1つを表す。ウラシルの構造は、
【化1】
である。
【0112】
本明細書で使用される「ウリジン」という用語は、RNA中に存在し得るヌクレオシドの1つを表す。ウリジンの構造は:
【化2】
である。
【0113】
UTP(ウリジン5'-三リン酸)は、以下の構造:
【化3】
を有する。
【0114】
シュードUTP(シュードウリジン5'-三リン酸)は、以下の構造:
【化4】
を有する。
【0115】
「シュードウリジン」は、ウリジンの異性体である修飾ヌクレオシドの一例であり、ウラシルは、窒素-炭素グリコシド結合の代わりに炭素-炭素結合を介してペントース環に結合している。
【0116】
別の例示的な修飾ヌクレオシドは、N1-メチルシュードウリジン(m1Ψ)であり、これは、構造:
【化5】
を有する。
【0117】
N1-メチルシュードUTPは、以下の構造:
【化6】
を有する。
【0118】
別の例示的な修飾ヌクレオシドは、5-メチルウリジン(m5U)であり、これは、構造:
【化7】
を有する。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA中の1つ以上のウリジンは、修飾ヌクレオシドで置き換えられる。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは修飾ウリジンである。
【0120】
いくつかの実施形態では、RNAは、少なくとも1つのウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドはN1-メチルシュードウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、2種類以上の修飾ヌクレオシドを含んでもよく、修飾ヌクレオシドは、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、シュードウリジン(ψ)およびN1-メチルシュードウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、シュードウリジン(ψ)および5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、RNA中の1つ以上のウリジンを置換する修飾ヌクレオシドは、3-メチルウリジン(mU)、5-メトキシウリジン(moU)、5-アザウリジン、6-アザウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオウリジン(sU)、4-チオウリジン(sU)、4-チオシュードウリジン、2-チオシュードウリジン、5-ヒドロキシウリジン(hoU)、5-アミノアリルウリジン、5-ハロウリジン(例えば5-ヨードウリジンまたは5-ブロモウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmoU)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmoU)、5-カルボキシメチルウリジン(cmU)、1-カルボキシメチルシュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chmU)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchmU)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcmU)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン(mcmU)、5-アミノメチル-2-チオウリジン(nmU)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnmU)、1-エチルシュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(mnmU)、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン(mnmseU)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン(cmnmU)、5-プロピニルウリジン、1-プロピニルシュードウリジン、5-タウリノメチルウリジン(τmU)、1-タウリノメチルシュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオシュードウリジン、5-メチル-2-チオウリジン(mU)、1-メチル-4-チオシュードウリジン(mψ)、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、3-メチルシュードウリジン(mψ)、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチルジヒドロウリジン(mD)、2-チオジヒドロウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acpU)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acpΨ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inmU)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオウリジン(inmU)、α-チオウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、5,2'-O-ジメチルウリジン(mUm)、2'-O-メチルシュードウリジン(Ψm)、2-チオ-2'-O-メチルウリジン(sUm)、5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチルウリジン(mcmUm)、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチルウリジン(ncmUm)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチルウリジン(cmnmUm)、3,2'-O-ジメチルウリジン(mUm)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2'-O-メチルウリジン(inmUm)、1-チオウリジン、デオキシチミジン、2'-F-アラウリジン、2'-F-ウリジン、2'-OH-アラウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジン、または当技術分野で公知の任意の他の修飾ウリジンのいずれか1つ以上であり得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは5'キャップを含む。一実施形態では、本開示のRNAは、キャップされていない5'-三リン酸を有さない。一実施形態では、RNAは5'キャップ類似体によって修飾され得る。「5'キャップ」という用語は、mRNA分子の5'末端に見出される構造を指し、一般に、5'-5'三リン酸結合によってmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することは、5'キャップがRNA鎖に共転写的に発現されるインビトロ転写によって達成され得るか、またはキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、RNAのためのビルディングブロックキャップは、m 7,3'-OGppp(m 2'-O)ApG(時にm 7,3'OG(5')ppp(5')m2'-OApGとも呼ばれる)であり、これは、以下の構造:
【化8】
を有する。
【0125】
以下は、RNAおよびm 7,3`OG(5')ppp(5')m2'-OApGを含む例示的なキャップ1 RNAである。
【化9】
【0126】
以下は、別の例示的なキャップ1 RNA(キャップ類似体なし)である。
【化10】
【0127】
いくつかの実施形態では、RNAは、一実施形態では構造:
【化11】
を有するキャップ類似体アンチリバースキャップ(ARCAキャップ(m 7,3`OG(5')ppp(5')G))を使用して、「キャップ0」構造で修飾される。
【0128】
以下は、RNAおよびm 7,3`OG(5')ppp(5')Gを含む例示的なキャップ0 RNAである。
【化12】
【0129】
いくつかの実施形態では、「キャップ0」構造は、構造:
【化13】
を有するキャップ類似体β-S-ARCA(m 7,2`OG(5')ppSp(5')G)を使用して生成される。
【0130】
以下は、β-S-ARCA(m 7,2`OG(5')ppSp(5')G)およびRNAを含む例示的なキャップ0 RNAである。
【化14】
【0131】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、5'-UTRおよび/または3'-UTRを含む。「非翻訳領域」または「UTR」という用語は、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されないDNA分子内の領域、またはmRNA分子などのRNA分子内の対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレームの5'側(上流)(5'-UTR)および/またはオープンリーディングフレームの3'側(下流)(3'-UTR)に存在し得る。5'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の開始コドンの上流の5'末端に位置する。5'-UTRは5'キャップ(存在する場合)の下流にあり、例えば5'キャップに直接隣接している。3'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の終止コドンの下流の3'末端に位置するが、「3'-UTR」という用語は、好ましくはポリ(A)配列を含まない。したがって、3'-UTRはポリ(A)配列(存在する場合)の上流にあり、例えばポリ(A)配列に直接隣接している。
【0132】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは3'-ポリ(A)配列を含む。本明細書で使用される場合、「ポリ(A)配列」または「ポリA尾部」という用語は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置するアデニル酸残基の連続的または断続的な配列を指す。ポリ(A)配列は当業者に公知であり、本明細書に記載のRNAの3'UTRに続き得る。ポリ(A)配列は、任意の長さであり得る。いくつかの態様では、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチド、特に約110個のヌクレオチドを含むか、またはそれらからなる。いくつかの態様では、ポリ(A)配列はAヌクレオチドのみからなる。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、本質的にAヌクレオチドからなるが、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/005324A1号に開示されているように、4つのヌクレオチド(A、C、G、およびU)のランダムな配列によって中断されている。そのようなランダムな配列は、5~50、10~30、または10~20ヌクレオチドの長さであり得る。本質的にdAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(dA、dC、dG、dT)が均等に分布し、例えば5~50ヌクレオチドの長さを有するランダムな配列によって中断されているDNAのコード鎖に存在するポリ(A)カセットは、DNAレベルでは、大腸菌(E.coli)におけるプラスミドDNAの一定な増殖を示し、RNAレベルでは、RNAの安定性と翻訳効率の支持に関して有益な特性と依然として関連する。いくつかの態様では、Aヌクレオチド以外のヌクレオチドは、その3'末端においてポリ(A)配列に隣接しておらず、すなわち、ポリ(A)配列は、その3'末端においてA以外のヌクレオチドによってマスクされず、またはA以外のヌクレオチドがその後に続かない。
【0133】
本開示の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。
【0134】
「コードする」は、定義されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性、およびそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると呼ばれ得る。
【0135】
本明細書で使用される場合、「内因性」は、生物、細胞、組織または系からの、またはそれらの内部で産生される任意の物質を指す。
【0136】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織または系から導入されるか、またはそれらの外部で産生される任意の物質を指す。
【0137】
本明細書で使用される「発現」という用語は、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0138】
本明細書で使用される場合、「連結された」、「融合された」、または「融合」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は、2つ以上の要素または成分またはドメインの結合を指す。
【0139】
サイトカイン
サイトカインは、細胞シグナル伝達に重要である小さなタンパク質(約5~20kDa)のカテゴリである。サイトカインの放出は、それらの周りの細胞の挙動に影響を及ぼす。サイトカインは、免疫調節剤として自己分泌シグナル伝達、パラ分泌シグナル伝達および内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインには、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が含まれるが、一般にホルモンまたは成長因子は含まれない(用語が一部重複しているにもかかわらず)。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球およびマスト細胞のような免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞および様々な間質細胞を含む幅広い細胞によって産生される。所与のサイトカインは、複数の種類の細胞によって産生され得る。サイトカインは受容体を介して作用し、免疫系において特に重要である;サイトカインは、体液性免疫応答と細胞性免疫応答のバランスを調整し、特定の細胞集団の成熟、成長、および応答性を調節する。いくつかのサイトカインは、他のサイトカインの作用を複雑な方法で増強または阻害する。
【0140】
IL2およびIL2R
インターロイキン2(IL2)は、抗原活性化T細胞の増殖を誘導し、ナチュラルキラー(NK)細胞を刺激するサイトカインである。IL2の生物学的活性は、細胞膜にまたがる3つのポリペプチドサブユニット:p55(IL2Rα、アルファサブユニット、ヒトではCD25としても知られる)、p75(IL2Rβ、ベータサブユニット、ヒトではCD122としても知られる)およびp64(IL2Rγ、ガンマサブユニット、ヒトではCD132としても知られる)のマルチサブユニットIL2受容体複合体(IL2R)を介して媒介される。IL2に対するT細胞応答は、(1)IL2の濃度;(2)細胞表面上のIL2R分子の数;および(3)IL2が占有するIL2Rの数(すなわち、IL2とIL2Rの間の結合相互作用の親和性)を含む様々な因子に依存する(Smith,"Cell Growth Signal Transduction is Quantal"In Receptor Activation by Antigens,Cytokines,Hormones,and Growth Factors 766:263-271,1995))。IL2:IL2R複合体はリガンド結合時に内在化され、異なる成分は異なる選別を受ける。静脈内(i.v.)ボーラスとして投与された場合、IL2は急速な全身クリアランスを有する(半減期が12.9分の初期クリアランス期、続いて半減期が85分のより遅いクリアランス期)(Konrad et al.,Cancer Res.50:2009-2017,1990)。
【0141】
真核細胞では、ヒトIL2は153アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、そこから20アミノ酸が除去されて成熟した分泌IL2が生成される。組換えヒトIL2は、大腸菌、昆虫細胞および哺乳動物COS細胞において産生されている。
【0142】
癌患者におけるIL2の全身投与の結果は理想からほど遠い。患者の15~20%は高用量のIL2に客観的に応答するが、大多数は応答せず、多くが吐き気、錯乱、低血圧、および敗血症性ショックなどの重篤な生命を脅かす副作用を経験する。高用量IL2治療に関連する重篤な毒性は、主にナチュラルキラー(NK)細胞の活性に起因する。用量を減らし、投与レジメンを調整することによって血清濃度を低下させる試みが為されており、毒性は低くなるが、そのような治療は有効性も低かった。
【0143】
本開示によれば、IL2(任意で延長PK IL2の一部として)は、天然に存在するIL2またはその断片もしくはバリアントであり得る。IL2はヒトIL2であり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。本明細書で使用される場合、「ヒトIL2」または「野生型ヒトIL2」は、天然または組換えにかかわらず、タンパク質が大腸菌(E.coli)において細胞内画分として発現される場合に必然的に含まれる追加のN末端メチオニンを伴うまたは伴わない、天然ヒトIL2の通常存在する133アミノ酸配列(追加の20個のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドを除く)を有し、そのアミノ酸配列は、Fujita,et.al,PNAS USA,80,7437-7441(1983)に記載されている。
【0144】
一実施形態では、IL2は、配列番号1または2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL2の機能的バリアントは、配列番号1または2と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL2の機能的バリアントは、IL2受容体またはIL2受容体のサブユニット、例えばαサブユニットおよび/またはβ/γサブユニットに結合する。一般に、本開示の目的のために、本明細書で使用される「IL2」という用語は、状況によって矛盾しない限り、天然に存在するIL2部分またはその機能的バリアントを含む任意のポリペプチドを含む。
【0145】
本開示によれば、特定の実施形態では、IL2は薬物動態修飾基に結合される。以下、「延長薬物動態(PK)IL2」と称する、得られた分子は、遊離IL2と比較して延長された循環半減期を有する。延長PK IL2の延長された循環半減期は、インビボでの血清IL2濃度が治療範囲内に維持されることを可能にし、潜在的に、T細胞を含む多くの種類の免疫細胞の活性化の増強につながる。その有利な薬物動態プロファイルのために、非修飾IL2と比較した場合、延長PK IL2はより少ない頻度でより長期間にわたって投与することができる。
【0146】
したがって、本明細書に記載の特定の実施形態では、IL2部分は、異種ポリペプチド(すなわちIL2ではなく、好ましくはIL2のバリアントではないポリペプチド)に融合され、したがって、延長PK IL2である。特定の実施形態では、延長PK IL2のIL2部分は、ヒトIL2である。他の実施形態では、延長PK IL2のIL2部分は、ヒトIL2の断片またはバリアントである。異種ポリペプチドは、IL2の循環半減期を増加させることができる。以下でさらに詳細に論じるように、循環半減期を増加させるポリペプチドは、ヒトまたはマウス血清アルブミンなどの血清アルブミンであり得る。
【0147】
本開示によれば、IL2受容体(IL2R)は、天然に存在するIL2Rまたはその断片もしくはバリアントであり得る。IL2RはヒトIL2Rであり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。本明細書で使用されるIL2がIL2バリアントを含む場合、IL2Rは、IL2バリアントに結合するバリアント受容体であり得る。
【0148】
インターフェロン
インターフェロン(IFN)は、ウイルス、細菌、寄生虫などのいくつかの病原体、およびまた腫瘍細胞の存在に応答して、宿主細胞によって産生および放出されるシグナル伝達タンパク質の群である。典型的なシナリオでは、ウイルスに感染した細胞がインターフェロンを放出し、近くの細胞の抗ウイルス防御能を高める。
【0149】
インターフェロンがそれを介してシグナル伝達する受容体の種類に基づいて、インターフェロンは、典型的には3つのクラス:I型インターフェロン、II型インターフェロン、およびIII型インターフェロンに分けられる。
【0150】
全てのI型インターフェロンは、IFNAR1鎖およびIFNAR2鎖からなるIFN-α/β受容体(IFNAR)として知られる特定の細胞表面受容体複合体に結合する。
【0151】
ヒトに存在するI型インターフェロンは、IFNα、IFNβ、IFNε、IFNκおよびIFNωである。一般に、I型インターフェロンは、身体が、体内に侵入したウイルスを認識したときに産生される。それらは線維芽細胞および単球によって産生される。放出されると、I型インターフェロンは標的細胞上の特異的受容体に結合し、ウイルスがそのRNAおよびDNAを産生および複製するのを妨げるタンパク質の発現をもたらす。
【0152】
IFNαタンパク質は、主に形質細胞様樹状細胞(pDC)によって産生される。それらは主にウイルス感染に対する自然免疫に関与する。それらの合成に関与する遺伝子は、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21と呼ばれる13のサブタイプに属する。これらの遺伝子は、9番染色体上のクラスタに一緒に見出される。
【0153】
IFNβタンパク質は、線維芽細胞によって大量に産生される。それらは、主に自然免疫応答に関与する抗ウイルス活性を有する。2種類のIFNβ、すなわちIFNβ1とIFNβ3が記述されている。IFNβ1の天然型および組換え型は、抗ウイルス、抗菌、および抗癌特性を有する。
【0154】
II型インターフェロン(ヒトにおけるIFNγ)は、免疫インターフェロンとしても知られ、IL12によって活性化される。さらに、II型インターフェロンは、細胞傷害性T細胞およびTヘルパー細胞によって放出される。
【0155】
III型インターフェロンは、IL10R2(CRF2-4とも呼ばれる)およびIFNLR1(CRF2-12とも呼ばれる)からなる受容体複合体を介してシグナル伝達する。I型およびII型IFNよりも最近発見されたが、最近の情報は、いくつかの種類のウイルスまたは真菌感染におけるIII型IFNの重要性を実証している。
【0156】
一般に、I型およびII型インターフェロンは、免疫応答の調節および活性化を担う。
【0157】
本開示によれば、I型インターフェロンは、好ましくはIFNαまたはIFNβ、より好ましくはIFNαである。
【0158】
本開示によれば、IFNαは、天然に存在するIFNαまたはその断片もしくはバリアントであり得る。IFNαはヒトIFNαであり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。一実施形態では、IFNαは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IFNαの機能的バリアントは、配列番号3と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IFNαの機能的バリアントは、IFN-α/β受容体に結合する。一般に、本開示の目的のために、本明細書で使用される「IFNα」という用語は、状況によって矛盾しない限り、天然に存在するIFNα部分またはその機能的バリアントを含む任意のポリペプチドを含む。
【0159】
延長PK基
本明細書に記載のIL2ポリペプチドは、IL2部分と異種ポリペプチド(すなわちIL2またはそのバリアントではないポリペプチド)を含む融合ポリペプチドまたはキメラポリペプチドとして調製することができる。IL2は延長PK基に融合され得、これは循環半減期を増加させる。延長PK基の非限定的な例を以下で説明する。サイトカインまたはそのバリアントの循環半減期を増加させる他のPK基もまた、本開示に適用可能であることが理解されるべきである。特定の実施形態では、延長PK基は、血清アルブミンドメイン(例えばマウス血清アルブミン、ヒト血清アルブミン)である。
【0160】
本明細書で使用される場合、「PK」という用語は、「薬物動態」の頭字語であり、例として、対象による吸収、分布、代謝、および排泄を含む化合物の特性を包含する。本明細書で使用される場合、「延長PK基」は、生物学的に活性な分子に融合されるかまたは一緒に投与された場合、生物学的に活性な分子の循環半減期を増加させるタンパク質、ペプチド、または部分を指す。延長PK基の例には、血清アルブミン(例えばHSA)、免疫グロブリンFcまたはFcフラグメントおよびそのバリアント、トランスフェリンおよびそのバリアント、ならびにヒト血清アルブミン(HSA)結合剤(米国特許出願公開第2005/0287153号および同第2007/0003549号に開示されている)が含まれる。他の例示的な延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kontermann,Expert Opin Biol Ther,2016 Jul;16(7):903-15に開示されている。本明細書で使用される場合、「延長PKサイトカイン」は、延長PK基と組み合わせたサイトカイン部分を指す。一実施形態では、延長PKサイトカインは、サイトカイン部分が延長PK基に連結または融合されている融合タンパク質である。本明細書で使用される場合、「延長PK IL」は、延長PK基と組み合わせたインターロイキン(IL)部分(ILバリアント部分を含む)を指す。一実施形態では、延長PK ILは、IL部分が延長PK基に連結または融合されている融合タンパク質である。例示的な融合タンパク質は、IL2部分がHSAと融合されているHSA/IL2融合物である。
【0161】
特定の実施形態では、延長PK ILの血清半減期は、IL単独(すなわち延長PK基に融合されていないIL)と比較して増加している。特定の実施形態では、延長PK ILの血清半減期は、IL単独の血清半減期と比較して少なくとも20、40、60、80、100、120、150、180、200、400、600、800、または1000%長い。特定の実施形態では、延長PK ILの血清半減期は、IL単独の血清半減期の少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、10倍、12倍、13倍、15倍、17倍、20倍、22倍、25倍、27倍、30倍、35倍、40倍、または50倍である。特定の実施形態では、延長PK ILの血清半減期は、少なくとも10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、50時間、60時間、70時間、80時間、90時間、100時間、110時間、120時間、130時間、135時間、140時間、150時間、160時間、または200時間である。
【0162】
本明細書で使用される場合、「半減期」は、ペプチドまたはタンパク質などの化合物の血清または血漿濃度が、例えば分解および/またはクリアランスもしくは天然の機構による隔離のために、インビボで50%減少するのに要する時間を指す。本明細書での使用に適した延長PKインターロイキン(IL)などの延長PKサイトカインは、インビボで安定化されており、その半減期は、例えば、分解および/またはクリアランスもしくは隔離に抵抗する血清アルブミン(例えばHSAまたはMSA)への融合によって増加する。半減期は、薬物動態分析などによる、それ自体公知の任意の方法で決定することができる。適切な技術は当業者に明らかであり、例えば一般に、適切な用量のアミノ酸配列または化合物を対象に適切に投与する工程;前記対象から一定の間隔で血液試料または他の試料を採取する工程;前記血液試料中のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度を決定する工程;およびこのようにして得られたデータ(のプロット)から、アミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度が投与時の初期レベルと比較して50%減少するまでの時間を計算する工程を含み得る。さらなる詳細は、例えば、Kenneth,A.et al.,Chemical Stability of Pharmaceuticals:A Handbook for Pharmacistsなどの標準的なハンドブックおよびPeters et al.,Pharmacokinetic Analysis:A Practical Approach(1996)に提供されている。Gibaldi,M.et al.,Pharmacokinetics,2nd Rev.Edition,Marcel Dekker(1982)も参照されたい。
【0163】
特定の実施形態では、延長PK基は、血清アルブミン、またはその断片、または血清アルブミンもしくはその断片のバリアント(本開示の目的のために、その全てが「アルブミン」という用語に含まれる)を含む。本明細書に記載されるポリペプチドは、アルブミン(またはその断片もしくはバリアント)に融合されてアルブミン融合タンパク質を形成し得る。そのようなアルブミン融合タンパク質は、米国特許出願公開第20070048282号に記載されている。
【0164】
本明細書で使用される場合、「アルブミン融合タンパク質」は、少なくとも1分子のアルブミン(またはその断片もしくはバリアント)と、治療用タンパク質、特にIL2(またはそのバリアント)などの少なくとも1分子のタンパク質との融合によって形成されるタンパク質を指す。アルブミン融合タンパク質は、治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、アルブミンをコードするポリヌクレオチドとインフレームで結合している核酸の翻訳によって生成され得る。治療用タンパク質およびアルブミンは、ひとたびアルブミン融合タンパク質の一部になると、それぞれ、アルブミン融合タンパク質の「一部」、「領域」または「部分」(例えば「治療用タンパク質部分」または「アルブミンタンパク質部分」)と呼ばれ得る。非常に好ましい実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、少なくとも1分子の治療用タンパク質(治療用タンパク質の成熟形態を含むがこれに限定されない)および少なくとも1分子のアルブミン(アルブミンの成熟形態を含むがこれに限定されない)を含む。一実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、投与されたRNAの標的器官の細胞、例えば肝細胞などの宿主細胞によってプロセシングされ、循環中に分泌される。RNAの発現に使用される宿主細胞の分泌経路で起こる新生アルブミン融合タンパク質のプロセシングには、シグナルペプチド切断、ジスルフィド結合の形成、適切な折り畳み、炭水化物の付加とプロセシング(例えばN-結合型およびO-結合型グリコシル化など)、特異的タンパク質分解切断、ならびに/または多量体タンパク質へのアセンブリが含まれ得るが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質は、好ましくは、特にそのN末端にシグナルペプチドを有するプロセシングされていない形態のRNAによってコードされ、細胞による分泌後、好ましくは、特にシグナルペプチドが切断されているプロセシングされた形態で存在する。最も好ましい実施形態では、「プロセシングされた形態のアルブミン融合タンパク質」は、本明細書では「成熟アルブミン融合タンパク質」とも呼ばれる、N末端シグナルペプチド切断を受けたアルブミン融合タンパク質産物を指す。
【0165】
好ましい実施形態では、治療用タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質は、アルブミンに融合されていない場合の同じ治療用タンパク質の血漿安定性と比較して、より高い血漿安定性を有する。血漿安定性は、典型的には、治療用タンパク質がインビボで投与され、血流中に運ばれたときから、治療用タンパク質が分解され、血流から腎臓または肝臓などの臓器へと除去され、最終的に治療用タンパク質が体内から除去されるときまでの期間を指す。血漿安定性は、血流中の治療用タンパク質の半減期に関して計算される。血流中の治療用タンパク質の半減期は、当技術分野で公知の一般的なアッセイによって容易に決定することができる。
【0166】
本明細書で使用される場合、「アルブミン」は、アルブミンの1つ以上の機能的活性(例えば生物学的活性)を有する、アルブミンタンパク質もしくはアミノ酸配列、またはアルブミン断片もしくはバリアントを集合的に指す。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミンまたはその断片もしくはバリアント、特にヒトアルブミンの成熟形態、または他の脊椎動物由来のアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子のバリアントを指す。アルブミンは、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来し得る。非哺乳動物アルブミンには、雌鶏およびサケが含まれるが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、治療用タンパク質部分とは異なる動物に由来し得る。
【0167】
特定の実施態様では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはその断片もしくはバリアント、例えば米国特許第5,876,969号、国際公開第2011/124718号、国際公開第2013/075066号、および国際公開第2011/0514789号に開示されているものである。
【0168】
ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)という用語は、本明細書では互換的に使用される。「アルブミンおよび「血清アルブミン」という用語はより広範であり、ヒト血清アルブミン(およびその断片とバリアント)ならびに他の種由来のアルブミン(およびその断片とバリアント)を包含する。
【0169】
本明細書で使用される場合、治療用タンパク質の治療活性または血漿安定性を延長するのに十分なアルブミンの断片は、アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分の血漿安定性が非融合状態での血漿安定性と比較して延長または拡大されるように、タンパク質の治療活性または血漿安定性を安定化または延長するのに十分な長さまたは構造のアルブミンの断片を指す。
【0170】
アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、アルブミン配列の全長を含み得るか、または治療活性もしくは血漿安定性を安定化もしくは延長することができるその1つ以上の断片を含み得る。そのような断片は、10個以上のアミノ酸の長さであり得るか、またはアルブミン配列からの約15、20、25、30、50個もしくはそれ以上の連続するアミノ酸を含み得るか、またはアルブミンの特定のドメインの一部もしくは全部を含み得る。例えば、最初の2つの免疫グロブリン様ドメインにまたがるHSAの1つ以上の断片を使用し得る。好ましい実施形態では、HSA断片はHSAの成熟形態である。
【0171】
一般的に言えば、アルブミン断片またはバリアントは、少なくとも100アミノ酸長、好ましくは少なくとも150アミノ酸長である。
【0172】
本開示によれば、アルブミンは、天然に存在するアルブミンまたはその断片もしくはバリアントであり得る。アルブミンは、ヒトアルブミンであり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。一実施形態では、アルブミンは、配列番号4もしくは5のアミノ酸配列または配列番号4もしくは5と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0173】
好ましくは、アルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてアルブミンを含み、C末端部分として治療用タンパク質を含む。あるいは、C末端部分としてアルブミンを含み、N末端部分として治療用タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質も使用し得る。他の実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、アルブミンのN末端およびC末端の両方に融合した治療用タンパク質を有する。好ましい実施形態では、N末端およびC末端で融合した治療用タンパク質は、同じ治療用タンパク質である。別の好ましい実施形態では、N末端およびC末端で融合した治療用タンパク質は、異なる治療用タンパク質である。一実施形態では、異なる治療用タンパク質は両方ともサイトカインである。
【0174】
一実施形態では、治療用タンパク質(1つまたは複数)は、ペプチドリンカー(1つまたは複数)を介してアルブミンに結合される。融合部分の間のリンカーペプチドは、部分間のより大きな物理的分離を提供し、したがって、例えばその同族受容体に結合するための治療用タンパク質部分のアクセス可能性を最大化し得る。リンカーペプチドは、それが柔軟であるかまたはより剛性であるようにアミノ酸で構成され得る。リンカー配列は、プロテアーゼによってまたは化学的に切断可能であり得る。
【0175】
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、天然免疫グロブリンの2本の重鎖のそれぞれのFcドメイン(またはFc部分)によって形成される天然免疫グロブリンの部分を指す。本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」という用語は、FcドメインがFvドメインを含まない単一の免疫グロブリン(Ig)重鎖の一部または断片を指す。特定の実施形態では、Fcドメインは、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域で始まり、抗体のC末端で終わる。したがって、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジ(例えば上部、中央、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはそれらのバリアント、部分もしくは断片の少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、完全なFcドメイン(すなわち、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメインまたはその一部からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH3ドメイン(またはその一部)からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメイン(またはその一部)およびCH3ドメインからなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH2ドメイン(またはその一部)からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメインの少なくとも一部(例えばCH2ドメインの全部または一部)を欠く。本明細書におけるFcドメインは、一般に、免疫グロブリン重鎖のFcドメインの全部または一部を含むポリペプチドを指す。これには、CH1、ヒンジ、CH2、および/またはCH3ドメイン全体を含むポリペプチド、ならびに、例えばヒンジ、CH2、およびCH3ドメインのみを含むそのようなペプチドの断片が含まれるが、これらに限定されない。Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体を含むがこれらに限定されない、任意の種および/または任意のサブタイプの免疫グロブリンに由来し得る。Fcドメインは、天然のFcおよびFcバリアント分子を包含する。本明細書に記載されるように、任意のFcドメインを、アミノ酸配列が天然に存在する免疫グロブリン分子の天然のFcドメインとは異なるように修飾し得ることが当業者に理解されるであろう。特定の実施形態では、Fcドメインは、エフェクタ機能(例えばFcγR結合)が低下している。
【0176】
本明細書に記載されるポリペプチドのFcドメインは、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドのFcドメインは、IgG1分子に由来するCH2および/またはCH3ドメイン、ならびにIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例では、Fcドメインは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG3分子に由来するキメラヒンジ領域を含むことができる。別の例では、Fcドメインは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG4分子に由来するキメラヒンジを含むことができる。
【0177】
特定の実施形態では、延長PK基は、Fcドメインまたはその断片、またはFcドメインもしくはその断片のバリアント(本開示の目的のために、その全てが「Fcドメイン」という用語に含まれる)を含む。Fcドメインは、抗原に結合する可変領域を含まない。本開示での使用に適したFcドメインは、いくつかの異なる供給源から得られ得る。特定の実施形態では、Fcドメインはヒト免疫グロブリンに由来する。特定の実施形態では、FcドメインはヒトIgG1定常領域に由来する。しかしながら、Fcドメインは、例えばげっ歯動物種(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長動物種(例えばチンパンジー、マカク)を含む別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来してもよいことが理解される。
【0178】
さらに、Fcドメイン(またはその断片もしくはバリアント)は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。
【0179】
様々なFcドメイン遺伝子配列(例えばマウスおよびヒト定常領域遺伝子配列)は、公的にアクセス可能な寄託物の形で入手可能である。特定のエフェクタ機能を欠き、および/または免疫原性を低下させる特定の修飾を有するFcドメイン配列を含む定常領域ドメインを選択することができる。抗体および抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、適切なFcドメイン配列(例えばヒンジ、CH2、および/もしくはCH3配列、またはその断片もしくはバリアント)は、当技術分野で広く認められている技術を使用してこれらの配列から導くことができる。
【0180】
特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2005/0287153号、米国特許出願第2007/0003549号、米国特許出願第2007/0178082号、米国特許出願第2007/0269422号、米国特許出願第2010/0113339号、国際公開第2009/083804号、および国際公開第2009/133208号に記載されているものなどの血清アルブミン結合タンパク質である。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,176,278号および米国特許第8,158,579号に開示されているように、トランスフェリンである。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2007/0178082号、米国特許出願第2014/0220017号、および米国特許出願第2017/0145062号に開示されているものなどの血清免疫グロブリン結合タンパク質である。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2012/0094909号に開示されているものなどの、血清アルブミンに結合するフィブロネクチン(Fn)ベースの足場ドメインタンパク質である。フィブロネクチンベースの足場ドメインタンパク質を作製する方法もまた、米国特許出願第2012/0094909号に開示されている。Fn3ベースの延長PK基の非限定的な例は、Fn3(HSA)、すなわちヒト血清アルブミンに結合するFn3タンパク質である。
【0181】
特定の態様では、本開示による使用に適した延長PK ILは、1つ以上のペプチドリンカーを使用することができる。本明細書で使用される場合、「ペプチドリンカー」という用語は、ポリペプチド鎖の線状アミノ酸配列中の2つ以上のドメイン(例えば延長PK部分とIL2などのIL部分)を連結するペプチドまたはポリペプチド配列を指す。例えば、ペプチドリンカーを使用して、IL2部分をHSAドメインに連結し得る。
【0182】
例えばIL2に延長PK基を融合するのに適したリンカーは、当技術分野で周知である。例示的なリンカーには、グリシン-セリンポリペプチドリンカー、グリシン-プロリンポリペプチドリンカー、およびプロリン-アラニンポリペプチドリンカーが含まれる。特定の実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンポリペプチドリンカー、すなわちグリシンおよびセリン残基からなるペプチドである。
【0183】
上記の異種ポリペプチドに加えて、またはその代わりに、本明細書に記載のIL2バリアントポリペプチドは、「マーカ」または「レポータ」をコードする配列を含むことができる。マーカまたはレポータ遺伝子の例には、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン-B-ホスフォトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、β-ガラクトシダーゼ、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)が含まれる。
【0184】
抗原受容体
本明細書に記載の免疫エフェクタ細胞は、特に標的細胞上に存在するかまたは標的細胞によって提示された場合、T細胞受容体(TCR)もしくはキメラ抗原受容体(CAR)結合抗原などの抗原受容体、またはそのプロセシング産物を発現し得る。細胞は、抗原受容体を天然に発現し得るか、または抗原受容体を発現するように改変され得る(例えば、治療される対象においてエクスビボ/インビトロまたはインビボで)。さらに、免疫エフェクタ細胞は、IL2Rを発現し得るか、またはIL2Rを発現するように改変され得る(例えば、治療される対象においてエクスビボ/インビトロまたはインビボで)。一実施形態では、IL2Rを発現するための改変および抗原受容体を発現するための改変は、同時にまたは異なる時点で、エクスビボ/インビトロで行われる。その後、改変された細胞を患者に投与し得る。一実施形態では、IL2Rを発現するための改変はエクスビボ/インビトロで行われ、細胞を患者に投与した後、抗原受容体を発現するための改変はインビボで行われる。一実施形態では、抗原受容体を発現するための改変はエクスビボ/インビトロで行われ、細胞を患者に投与した後、IL2Rを発現するための改変はインビボで行われる。一実施形態では、IL2Rを発現するための改変および抗原受容体を発現するための改変は、同時にまたは異なる時点で、インビボで行われる。細胞は、患者の内因性細胞であってもよく、または患者に投与されていてもよい。
【0185】
キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体を発現するCAR操作されたT細胞を用いた養子細胞移入療法は、CAR改変T細胞が実質的に任意の腫瘍抗原を標的とするように操作され得るので、有望な抗癌治療法である。例えば、患者のT細胞を、患者の腫瘍細胞上の抗原に特異的に向けられるCARを発現するように遺伝子操作(遺伝子改変)し、その後患者に注入して戻し得る。
【0186】
本発明によれば、「CAR」(または「キメラ抗原受容体」)という用語は、「キメラT細胞受容体」および「人工T細胞受容体」という用語と同義であり、癌細胞などの標的細胞上の標的構造(例えば抗原)を認識し、すなわち結合し(例えば標的細胞の表面に発現された抗原への抗原結合ドメインの結合によって)、細胞表面に前記CARを発現するT細胞などの免疫エフェクタ細胞に特異性を付与し得る、単一の分子または分子の複合体を含む人工受容体に関する。好ましくは、CARによる標的構造の認識は、前記CARを発現する免疫エフェクタ細胞の活性化をもたらす。CARは、本明細書に記載の1つ以上のドメインを含む1つ以上のタンパク質ユニットを含み得る。「CAR」という用語は、T細胞受容体を含まない。
【0187】
CARは、一般にCARの細胞外ドメインの一部である抗原結合部分または抗原結合ドメインとも呼ばれる標的特異的結合要素を含む。抗原結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカとして働くリガンドを認識する。具体的には、本発明のCARは、腫瘍細胞などの疾患細胞上の腫瘍抗原などの抗原を標的とする。
【0188】
一実施形態では、CAR中の結合ドメインは抗原に特異的に結合する。一実施形態では、CAR中の結合ドメインが結合する抗原は、癌細胞で発現される(腫瘍抗原)。一実施形態では、抗原は癌細胞の表面に発現される。一実施形態では、結合ドメインは、抗原の細胞外ドメインまたは細胞外ドメインのエピトープに結合する。一実施形態では、結合ドメインは、生細胞の表面に存在する抗原の天然エピトープに結合する。
【0189】
本発明の一実施形態では、抗原結合ドメインは、抗原に対する特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域(VH)および抗原に対する特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域(VL)を含む。一実施形態では、免疫グロブリンは抗体である。一実施形態では、前記重鎖可変領域(VH)および対応する軽鎖可変領域(VL)は、ペプチドリンカーによって連結されている。好ましくは、CAR中の抗原結合部分の一部はscFvである。
【0190】
CARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含むように設計される。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR中のドメインの1つと天然には会合していない。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR中のドメインの1つと天然に会合している。一実施形態では、膜貫通ドメインは、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、アミノ酸置換によって改変される。膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。本発明において特に使用される膜貫通領域は、T細胞受容体のα鎖、β鎖またはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来し得る(すなわち、少なくともその膜貫通領域(1つまたは複数)を含む)。あるいは、膜貫通ドメインは合成であってもよく、その場合、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。好ましくは、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。
【0191】
場合によっては、本発明のCARは、膜貫通ドメインと細胞外ドメインとの間に連結を形成するヒンジドメインを含む。
【0192】
CARの細胞質ドメインまたは別の言い方では細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置されている免疫細胞の正常なエフェクタ機能の少なくとも1つの活性化を担う。「エフェクタ機能」という用語は、細胞の特殊な機能を指す。T細胞のエフェクタ機能は、例えば、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクタ機能シグナルを伝達し、特殊な機能を果たすように細胞に指示するタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮部分が使用される範囲内で、そのような短縮部分は、それがエフェクタ機能シグナルを伝達する限り、無傷の鎖の代わりに使用され得る。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクタ機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮部分を含むことを意味する。
【0193】
TCRのみを介して生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、二次シグナルまたは共刺激シグナルも必要であることが公知である。したがって、T細胞活性化は、2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを介して抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)および抗原非依存的に作用して二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると言うことができる。
【0194】
一実施形態では、CARは、CD3ζに由来する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。さらに、CARの細胞質ドメインは、共刺激シグナル伝達領域と組み合わされたCD3ζシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0195】
共刺激ドメインの同一性は、CARによる標的部分の結合時に細胞増殖および生存を増強する能力を有するという点のみに限定される。適切な共刺激ドメインには、CD28、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであるCD137(4-1BB)、TNFRスーパーファミリーの受容体のメンバーであるCD134(OX40)、および活性化T細胞上に発現されるCD28スーパーファミリーの共刺激分子であるCD278(ICOS)が含まれる。当業者は、これらの記載された共刺激ドメインの配列バリアントが、それらがモデルとするドメインと同じまたは類似の活性を有する場合、本発明に悪影響を及ぼすことなく使用できることを理解する。そのようなバリアントは、それらが由来するドメインのアミノ酸配列と少なくとも約80%の配列同一性を有する。本発明のいくつかの実施形態では、CAR構築物は2つの共刺激ドメインを含む。特定の組合せには4つの記載されたドメインの全ての可能な変形が含まれるが、具体例にはCD28+CD137(4-1BB)およびCD28+CD134(OX40)が含まれる。
【0196】
CARの細胞質シグナル伝達部分内の細胞質シグナル伝達配列は、ランダムな順序または指定された順序で互いに連結され得る。任意で、好ましくは2~10アミノ酸長の短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが連結を形成し得る。グリシン-セリンダブレットは特に適切なリンカーを提供する。
【0197】
一実施形態では、CARは、新生タンパク質を小胞体に向かわせるシグナルペプチドを含む。一実施形態では、シグナルペプチドは抗原結合ドメインに先行する。一実施形態では、シグナルペプチドは、IgGなどの免疫グロブリンに由来する。
【0198】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリンを含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRと4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。抗体は、抗原に結合し、好ましくは特異的に結合する。抗体は、天然源または組換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであり得、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分または断片であり得る。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab')、ならびに一本鎖抗体およびヒト化抗体を含む様々な形態で存在し得る(Harlow et al.,1999,In:Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow et al.,1989,in:Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Bird et al.,1988,Science 242:423-426)。
【0199】
B細胞によって発現される抗体は、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と呼ばれることがある。このクラスのタンパク質に含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD、およびIgEである。IgAは、唾液、涙、母乳、胃腸分泌物ならびに気道および泌尿生殖路の粘液分泌物などの身体分泌物中に存在する一次抗体である。IgGは最も一般的な循環抗体である。IgMは、ほとんどの対象において一次免疫応答で産生される主要な免疫グロブリンである。これは、凝集、補体固定、および他の抗体応答における最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスに対する防御において重要である。IgDは、抗体機能が不明であるが、抗原受容体として機能し得る免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンへの暴露時に肥満細胞および好塩基球からのメディエータの放出を引き起こすことによって即時型過敏症を媒介する免疫グロブリンである。
【0200】
「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部を指し、典型的には無傷の抗体の抗原決定可変領域を含む。
【0201】
抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')、およびFvフラグメント、線状抗体、scFv抗体、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0202】
本明細書で使用される「抗体重鎖」は、天然の立体配座で抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
【0203】
本明細書で使用される「抗体軽鎖」は、天然の立体配座で抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指し、κ軽鎖およびλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0204】
本開示によれば、CARは、T細胞上に存在する場合、上記のようにT細胞が刺激および/または拡大され、またはエフェクタ機能を発揮するように、抗原提示細胞または癌細胞などの疾患細胞の表面上などの抗原を認識する。
【0205】
免疫エフェクタ細胞の遺伝子改変
IL2受容体および/またはCAR構築物などの抗原受容体をT細胞などの細胞に導入して、IL2受容体および/または抗原受容体を発現するように遺伝子改変された細胞を産生するために、様々な方法が使用され得る。そのような方法には、非ウイルスベースのDNAトランスフェクション、非ウイルスベースのRNAトランスフェクション、例えばmRNAトランスフェクション、トランスポゾンベースのシステム、およびウイルスベースのシステムが含まれる。非ウイルスベースのDNAトランスフェクションは、挿入突然変異誘発のリスクが低い。トランスポゾンベースのシステムは、組み込み要素を含まないプラスミドよりも効率的に導入遺伝子を組み込むことができる。ウイルスベースのシステムには、γ-レトロウイルスおよびレンチウイルスベクターの使用が含まれる。γ-レトロウイルスは、T細胞を産生し、効率的かつ永続的に形質導入することが比較的容易であり、初代ヒトT細胞における組み込みの観点から安全であることが予備的に証明されている。レンチウイルスベクターも、T細胞を効率的かつ永続的に形質導入するが、製造コストがより高い。それらはまた、潜在的にレトロウイルスベースのシステムよりも安全である。
【0206】
本発明の全ての態様の一実施形態では、T細胞またはT細胞前駆体を、IL2受容体をコードする核酸および/または抗原受容体をコードする核酸でエクスビボまたはインビボのいずれかでトランスフェクトする。一実施形態では、エクスビボトランスフェクションとインビボトランスフェクションの組合せが使用され得る。本発明の全ての態様の一実施形態では、T細胞またはT細胞前駆体は、治療される対象に由来する。本発明の全ての態様の一実施形態では、T細胞またはT細胞前駆体は、治療される対象とは異なる対象に由来する。
【0207】
CAR T細胞は、T細胞を標的とするナノ粒子を使用して、インビボで、したがってほぼ瞬時に産生され得る。例えば、ポリ(β-アミノエステル)ベースのナノ粒子を、T細胞上のCD3に結合するために抗CD3e F(ab)フラグメントにカップリングし得る。T細胞に結合すると、これらのナノ粒子はエンドサイトーシスされる。それらの内容物、例えば抗腫瘍抗原CARをコードするプラスミドDNAは、微小管関連配列(MTAS)および核局在化シグナル(NLS)を含有するペプチドを含むため、T細胞核に向けられ得る。CAR遺伝子発現カセットに隣接するトランスポゾンおよび高活性トランスポザーゼをコードする別個のプラスミドを含めることにより、染色体へのCARベクターの効率的な組み込みが可能になり得る。ナノ粒子注入後のCAR T細胞のインビボ産生を可能にするそのようなシステムは、Smith et al.(2017)Nat.Nanotechnol.12:813-820に記載されている。
【0208】
別の可能性は、CRISPR/Cas9法を使用して、CARコード配列を特定の遺伝子座に意図的に配置することである。例えば、CARをノックインし、それを、さもなければTCR発現を抑える内因性プロモータの動的調節制御下に置く一方で、既存のT細胞受容体(TCR)をノックアウトし得る;例えば、Eyquem et al.(2017)Nature 543:113-117を参照。
【0209】
本発明の全ての態様の一実施形態では、1つ以上のIL2受容体ポリペプチドおよび/または抗原受容体を発現するように遺伝子改変された細胞は、IL2受容体ポリペプチドをコードする核酸および/または抗原受容体をコードする核酸で安定にまたは一過性にトランスフェクトされる。一実施形態では、細胞は、いくつかの核酸で安定にトランスフェクトされ、他の核酸で一過性にトランスフェクトされる。したがって、IL2受容体ポリペプチドをコードする核酸および/または抗原受容体をコードする核酸は、細胞のゲノムに組み込まれるか、または組み込まれない。
【0210】
本発明の全ての態様の一実施形態では、抗原受容体を発現するように遺伝子改変された細胞は、内因性T細胞受容体および/または内因性HLAの発現について不活性化されている。
【0211】
本発明の全ての態様の一実施形態では、本明細書に記載の細胞は、治療される対象に対して自家、同種異系または同系であり得る。一実施形態では、本開示は、患者からの細胞の除去およびその後の患者への細胞の再送達を想定する。一実施形態では、本開示は、患者からの細胞の除去を想定しない。後者の場合、細胞の遺伝子改変の全ての工程は、もしあれば、インビボで実施され得る。
【0212】
「自家」という用語は、同じ対象に由来するものを表すために使用される。例えば、「自家移植」は、同じ対象に由来する組織または器官の移植を指す。そのような手順は、さもなければ拒絶反応をもたらす免疫学的障壁を克服するので、有利である。
【0213】
「同種異系」という用語は、同じ種の異なる個体に由来するものを表すために使用される。2つ以上の個体は、1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、互いに同種異系であると言われる。
【0214】
「同系」という用語は、同一の遺伝子型を有する個体または組織、すなわち一卵性双生児もしくは同じ近交系の動物、またはそれらの組織に由来するものを表すために使用される。
【0215】
「異種」という用語は、複数の異なる要素からなるものを表すために使用される。一例として、ある個体の骨髄を異なる個体に移入することは、異種移植を構成する。異種遺伝子は、対象以外の供給源に由来する遺伝子である。
【0216】
抗原
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、免疫エフェクタ細胞、特に抗原受容体を発現する免疫エフェクタ細胞、例えばエクスビボまたは治療される対象において抗原受容体を発現するように遺伝子操作された免疫エフェクタ細胞を、同族抗原分子と接触させる工程をさらに含み、抗原分子またはそのプロセシング産物、例えばその断片は、免疫エフェクタ細胞によって担持されるTCRまたはCARなどの抗原受容体に結合する。そのような同族抗原分子は、本明細書では「ワクチン抗原」または「抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質」とも称される。一実施形態では、同族抗原分子は、免疫エフェクタ細胞が標的とする標的細胞によって発現される抗原もしくはその断片、または前記抗原もしくは断片のバリアントからなる群より選択される。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞の拡大および/または活性化が起こるような条件下で、免疫エフェクタ細胞を同族抗原分子と接触させる。一実施形態では、免疫エフェクタ細胞を同族抗原分子と接触させる工程は、インビボまたはエクスビボで行われる。
【0217】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、同族抗原分子またはそれをコードする核酸を対象に投与する工程を含む。一実施形態では、同族抗原分子をコードする核酸は、対象の細胞で発現されて同族抗原分子を提供する。一実施形態では、同族抗原分子の発現は細胞表面においてである。一実施形態では、同族抗原分子をコードする核酸は、対象の細胞において一過性に発現される。一実施形態では、同族抗原分子をコードする核酸はRNAである。一実施形態では、同族抗原分子またはそれをコードする核酸は全身投与される。一実施形態では、同族抗原分子をコードする核酸の全身投与後、脾臓における同族抗原分子をコードする核酸の発現が起こる。一実施形態では、同族抗原分子をコードする核酸の全身投与後、抗原提示細胞、好ましくはプロフェッショナル抗原提示細胞における同族抗原分子をコードする核酸の発現が起こる。一実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞からなる群より選択される。一実施形態では、同族抗原分子をコードする核酸の全身投与後、肺および/または肝臓における同族抗原分子をコードする核酸の発現は起こらないか、または本質的に起こらない。一実施形態では、同族抗原分子をコードする核酸の全身投与後、脾臓における同族抗原分子をコードする核酸の発現は、肺における発現量の少なくとも5倍である。
【0218】
本発明に従って対象に提供されるペプチド抗原およびタンパク質抗原(ペプチド抗原およびタンパク質抗原、または前記ペプチド抗原およびタンパク質抗原をコードする核酸、特にRNAを投与することによって)、すなわちワクチン抗原は、好ましくは、ペプチド抗原もしくはタンパク質抗原または核酸が投与されている対象において免疫エフェクタ細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす。前記刺激された、プライミングされたおよび/または拡大された免疫エフェクタ細胞は、好ましくは標的抗原、特に疾患細胞、組織および/または器官によって発現される標的抗原、すなわち疾患関連抗原に対して向けられる。したがって、ワクチン抗原は、疾患関連抗原、またはその断片もしくはバリアントを含み得る。一実施形態では、そのような断片またはバリアントは、疾患関連抗原と免疫学的に等価である。本開示の文脈において、「抗原の断片」または「抗原のバリアント」という用語は、免疫エフェクタ細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす薬剤を意味し、刺激、プライミングおよび/または拡大された免疫エフェクタ細胞は、特に疾患細胞、組織および/または器官によって提示された場合、抗原、すなわち疾患関連抗原を標的とする。したがって、ワクチン抗原は、疾患関連抗原に対応し得るかもしくはそれを含み得る、疾患関連抗原の断片に対応し得るかもしくはそれを含み得る、または疾患関連抗原もしくはその断片に相同な抗原に対応し得るかもしくはそれを含み得る。ワクチン抗原が、疾患関連抗原の断片または疾患関連抗原の断片に相同なアミノ酸配列を含む場合、前記断片またはアミノ酸配列は、免疫エフェクタ細胞の抗原受容体が標的とする疾患関連抗原のエピトープまたは疾患関連抗原のエピトープに相同な配列を含み得る。したがって、本開示によれば、ワクチン抗原は、疾患関連抗原の免疫原性断片または疾患関連抗原の免疫原性断片に相同なアミノ酸配列を含み得る。本開示による「抗原の免疫原性断片」は、好ましくは、抗原に結合する抗原受容体を担持する免疫エフェクタ細胞または抗原を発現する細胞を刺激、プライミングおよび/または拡大することができる抗原の断片に関する。ワクチン抗原(疾患関連抗原に類似)は、免疫エフェクタ細胞に存在する抗原結合ドメインによる結合のための関連エピトープを提供することが好ましい。一実施形態では、ワクチン抗原(疾患関連抗原に類似)は、免疫エフェクタ細胞による結合のための関連エピトープを提供するために、抗原提示細胞などの細胞の表面に発現される。ワクチン抗原は組換え抗原であり得る。
【0219】
本発明の全ての態様の一実施形態では、ワクチン抗原をコードする核酸は、対象の細胞で発現されて、免疫エフェクタ細胞によって発現される抗原受容体による結合のための抗原またはそのプロセシング産物を提供し、前記結合は免疫エフェクタ細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす。
【0220】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が、同じもしくは本質的に同じ免疫学的特性を示す、および/または、例えば免疫学的作用の種類に関して、同じもしくは本質的に同じ免疫学的作用を発揮することを意味する。本開示の文脈において、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは、免疫化のために使用される抗原または抗原バリアントの免疫学的作用または特性に関して使用される。例えば、アミノ酸配列が、参照アミノ酸配列に結合するT細胞または参照アミノ酸配列を発現する細胞などの対象の免疫系に暴露されたときに、参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。したがって、抗原と免疫学的に等価である分子は、T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大に関して、T細胞が標的とする抗原と同じもしくは本質的に同じ特性を示す、および/または同じもしくは本質的に同じ作用を発揮する。
【0221】
本明細書で使用される「活性化」または「刺激」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されたT細胞などの免疫エフェクタ細胞の状態を指す。活性化はまた、シグナル伝達経路の開始、サイトカイン産生の誘導、および検出可能なエフェクタ機能に関連し得る。「活性化免疫エフェクタ細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を受けている免疫エフェクタ細胞を指す。
【0222】
「プライミング」という用語は、T細胞などの免疫エフェクタ細胞がその特異的抗原と最初に接触し、エフェクタT細胞などのエフェクタ細胞への分化を引き起こす過程を指す。
【0223】
「クローン拡大」または「拡大」という用語は、特定の実体が増加する過程を指す。本開示の文脈において、この用語は、好ましくは、リンパ球が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特定のリンパ球が増幅される免疫学的応答の文脈で使用される。好ましくは、クローン拡大はリンパ球の分化をもたらす。
【0224】
「抗原」という用語は、免疫応答を生じさせることができるエピトープを含む薬剤に関する。「抗原」という用語には、特にタンパク質およびペプチドが含まれる。一実施形態では、抗原は、樹状細胞またはマクロファージのような抗原提示細胞などの免疫系の細胞の表面に提示されるまたは存在する。T細胞エピトープなどの抗原またはそのプロセシング産物は、一実施形態では抗原受容体によって結合される。したがって、抗原またはそのプロセシング産物は、Tリンパ球(T細胞)などの免疫エフェクタ細胞と特異的に反応し得る。一実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原であり、エピトープはそのような抗原に由来する。
【0225】
「疾患関連抗原」という用語は、疾患に関連する任意の抗原を指すためにその最も広い意味で使用される。疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して疾患に対する細胞性抗原特異的免疫応答および/または体液性抗体応答を生じさせるエピトープを含む分子である。したがって、疾患関連抗原またはそのエピトープは、治療目的に使用され得る。疾患関連抗原は、微生物、典型的には微生物抗原による感染に関連し得るか、または癌、典型的には腫瘍に関連し得る。
【0226】
「腫瘍抗原」という用語は、細胞質、細胞表面および細胞核に由来し得る癌細胞の成分を指す。特に、この用語は、細胞内でまたは腫瘍細胞上の表面抗原として産生される抗原を指す。腫瘍抗原は、典型的には癌細胞によって選択的に発現され(例えば、非癌細胞よりも癌細胞においてより高いレベルで発現される)、場合によっては、癌細胞によってのみ発現される。腫瘍抗原の例には、限定されることなく、p53、ART-4、BAGE、β-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディン-6、クローディン-18.2およびクローディン-12などのクローディンファミリーの細胞表面タンパク質、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap 100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(またはhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、またはMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メランA、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、pl90マイナーBCR-abL、Pml/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART-1またはSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、サバイビン、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE、WT、およびWT-1が含まれる。
【0227】
「ウイルス抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち個体において免疫応答を誘発することができる任意のウイルス成分を指す。ウイルス抗原は、ウイルスのリボ核タンパク質またはエンベロープタンパク質であり得る。
【0228】
「細菌抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち個体において免疫応答を誘発することができる任意の細菌成分を指す。細菌抗原は、細菌の細胞壁または細胞質膜に由来し得る。
【0229】
「細胞表面に発現された」または「細胞表面と会合した」という用語は、受容体または抗原などの分子が細胞の形質膜と会合してそこに位置し、分子の少なくとも一部が前記細胞の細胞外空間に面しており、例えば細胞の外側に位置する抗体によって前記細胞の外側からアクセス可能であることを意味する。これに関連して、一部とは、好ましくは少なくとも4個、好ましくは少なくとも8個、好ましくは少なくとも12個、より好ましくは少なくとも20個のアミノ酸である。会合は直接または間接的であり得る。例えば、会合は、1つ以上の膜貫通ドメイン、1つ以上の脂質アンカーによるか、または他の任意のタンパク質、脂質、サッカリド、もしくは細胞の形質膜の外葉に認められ得る他の構造との相互作用によるものであり得る。例えば、細胞の表面と会合する分子は、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質であり得るか、または膜貫通タンパク質である別のタンパク質と相互作用することによって細胞の表面と会合するタンパク質であり得る。
【0230】
「細胞表面」または「細胞の表面」は、当技術分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがってタンパク質および他の分子による結合にアクセス可能な細胞の外側を含む。
【0231】
本発明の文脈における「細胞外部分」または「エキソドメイン」という用語は、細胞の細胞外空間に面しており、好ましくは、例えば細胞の外側に位置する抗体などの分子に結合することによって前記細胞の外側からアクセス可能であるタンパク質などの分子の一部を指す。好ましくは、この用語は、1つ以上の細胞外ループもしくはドメインまたはその断片を指す。
【0232】
「エピトープ」という用語は、免疫系によって認識される抗原などの分子の一部または断片を指す。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞または抗体によって認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続部分または不連続部分を含み得、約5~約100、例えば約5~約50、より好ましくは約8~約30、最も好ましくは約10~約25アミノ酸の長さであり得、例えば、エピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸の長さであり得る。一実施形態では、エピトープは、約10~約25アミノ酸の長さである。「エピトープ」という用語は、T細胞エピトープを含む。
【0233】
「T細胞エピトープ」という用語は、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞によって認識されるタンパク質の一部または断片を指す。「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および「MHC」という略語は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、全ての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または疾患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質または分子はペプチドエピトープに結合し、T細胞上のT細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)および非自己抗原(例えば侵入微生物の断片)の両方をT細胞に表示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約8~約10アミノ酸長であるが、より長いまたはより短いペプチドも有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約10~約25アミノ酸長であり、特に約13~約18アミノ酸長であるが、より長いおよびより短いペプチドも有効であり得る。
【0234】
一実施形態では、標的抗原は腫瘍抗原であり、ワクチン抗原またはその断片(例えばエピトープ)は腫瘍抗原に由来する。腫瘍抗原は、様々な癌で発現されることが一般的に公知の「標準」抗原であり得る。腫瘍抗原はまた、個体の腫瘍に特異的であり、免疫系によってそれまでに認識されていない「ネオ抗原」であり得る。ネオ抗原またはネオエピトープは、アミノ酸変化をもたらす癌細胞のゲノムにおける1つ以上の癌特異的変異から生じ得る。腫瘍抗原がネオ抗原である場合、ワクチン抗原は、好ましくは、1つ以上のアミノ酸変化を含む前記ネオ抗原のエピトープまたは断片を含む。
【0235】
癌の変異は各個体によって異なる。したがって、新規エピトープ(ネオエピトープ)をコードする癌変異は、ワクチン組成物および免疫療法の開発における魅力的な標的である。腫瘍免疫療法の有効性は、宿主内で強力な免疫応答を誘導することができる癌特異的抗原およびエピトープの選択に依存する。RNAは、患者特異的腫瘍エピトープを患者に送達するために使用することができる。脾臓に存在する樹状細胞(DC)は、腫瘍エピトープなどの免疫原性エピトープまたは抗原のRNA発現のための特に興味深い抗原提示細胞である。複数のエピトープの使用は、腫瘍ワクチン組成物における治療効果を促進することが示されている。腫瘍ミュータノームの迅速な配列決定は、本明細書に記載のRNAによってコードされ得る個別化ワクチンのための複数のエピトープを、例えばエピトープが任意でリンカーによって分離されている単一のポリペプチドとして提供し得る。本開示の特定の実施形態では、RNAは、少なくとも1つのエピトープ、少なくとも2つのエピトープ、少なくとも3つのエピトープ、少なくとも4つのエピトープ、少なくとも5つのエピトープ、少なくとも6つのエピトープ、少なくとも7つのエピトープ、少なくとも8つのエピトープ、少なくとも9つのエピトープ、または少なくとも10のエピトープをコードする。例示的な実施形態には、少なくとも5つのエピトープ(「ペンタトープ」と称される)をコードするRNAおよび少なくとも10のエピトープ(「デカトープ」と称される)をコードするRNAが含まれる。
【0236】
本発明の様々な態様によれば、目的は、好ましくは、腫瘍抗原を発現する癌細胞に対する免疫応答を提供すること、および腫瘍抗原を発現する細胞が関与する癌疾患を治療することである。一実施形態では、本発明は、腫瘍抗原を発現する癌細胞を標的とするT細胞などの抗原受容体操作免疫エフェクタ細胞の投与を含む。
【0237】
ペプチドおよびタンパク質抗原は、例えば5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、または50アミノ酸を含む、2~100アミノ酸の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、50個を超えるアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、100個を超えるアミノ酸であり得る。
【0238】
本発明によれば、ワクチン抗原は免疫エフェクタ細胞によって認識可能でなければならない。好ましくは、抗原は、免疫エフェクタ細胞によって認識される場合、適切な共刺激シグナルの存在下で、抗原を認識する抗原受容体を担持する免疫エフェクタ細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大を誘導することができる。本発明の実施形態の文脈において、抗原は、好ましくは細胞の表面、好ましくは抗原提示細胞の表面に存在する。疾患細胞の表面上の抗原の認識は、抗原(または抗原を発現する細胞)に対する免疫反応をもたらし得る。
【0239】
本発明の全ての態様の一実施形態では、抗原は、癌細胞などの疾患細胞で発現される。一実施形態では、抗原は、癌細胞などの疾患細胞の表面に発現される。一実施形態では、抗原受容体は、抗原の細胞外ドメインまたは細胞外ドメインのエピトープに結合するCARである。一実施形態では、CARは、生細胞の表面に存在する抗原の天然エピトープに結合する。一実施形態では、T細胞によって発現された場合および/またはT細胞上に存在する場合のCARの、抗原提示細胞などの細胞上に存在する抗原への結合は、前記T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす。一実施形態では、T細胞によって発現された場合および/またはT細胞上に存在する場合のCARの、癌細胞などの疾患細胞上に存在する抗原への結合は、疾患細胞の細胞溶解および/またはアポトーシスをもたらし、前記T細胞は、好ましくは細胞傷害性因子、例えばパーフォリンおよびグランザイムを放出する。
【0240】
免疫チェックポイント阻害剤
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に記載される他の治療薬と組み合わせて使用される。
【0241】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント」は、抗原のT細胞受容体認識の大きさおよび質を調節する共刺激および阻害シグナルを指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイントは阻害シグナルである。特定の実施形態では、阻害シグナルは、PD-1とPD-L1との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、CD28結合を置き換えるCTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、LAG3とMHCクラスII分子との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、TIM3とガレクチン9との間の相互作用である。
【0242】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を完全にまたは部分的に低減する、阻害する、妨げる、または調節する分子を指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナルを防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナル伝達を妨害する抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナル伝達を妨害する小分子である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイントブロッカータンパク質間の相互作用を妨げる抗体、その断片、または抗体模倣物、例えばPD-1とPD-L1との間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG3とそのリガンド、またはTIM-3とそのリガンドとの間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。チェックポイント阻害剤はまた、分子(またはそのバリアント)自体の可溶性形態、例えば可溶性PD-L1またはPD-L1融合物の形態であってもよい。
【0243】
「プログラム死1(PD-1)」受容体は、CD28ファミリーに属する免疫抑制受容体を指す。PD-1は、インビボで以前に活性化されたT細胞上で主に発現され、PD-L1とPD-L2の2つのリガンドに結合する。本明細書で使用される「PD-1」という用語は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0244】
「プログラム死リガンド1(PD-L1)」は、PD-1に結合するとT細胞の活性化およびサイトカイン分泌を下方制御する、PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つ(もう1つはPD-L2)である。本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1のバリアント、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0245】
「細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)」は、T細胞表面分子であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。このタンパク質は、CD80およびCD86に結合することによって免疫系を下方制御する。本明細書で使用される「CTLA-4」という用語は、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4のバリアント、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhCTLA-4と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0246】
「リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)」は、MHCクラスII分子に結合することによるリンパ球活性の阻害に関連する阻害性受容体である。この受容体は、Treg細胞の機能を増強し、CD8+エフェクタT細胞の機能を阻害する。本明細書で使用される「LAG3」という用語は、ヒトLAG3(hLAG3)、hLAG3のバリアント、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0247】
「T細胞膜タンパク質3(TIM3)」は、TH1細胞応答の阻害によるリンパ球活性の阻害に関与する阻害性受容体である。そのリガンドは、様々な種類の癌において上方制御されるガレクチン9である。本明細書で使用される「TIM3」という用語は、ヒトTIM3(hTIM3)、hTIM3のバリアント、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0248】
「B7ファミリー」は、未定義の受容体との阻害性リガンドを指す。B7ファミリーはB7-H3およびB7-H4を包含し、どちらも腫瘍細胞および腫瘍浸潤細胞で上方制御される。
【0249】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法における使用に適した免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナルのアンタゴニスト、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、またはTIM3を標的とする抗体である。これらのリガンドと受容体は、Pardoll,D.,Nature.12:252-264,2012に総説されている。
【0250】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性免疫調節因子からのシグナル伝達を妨害または阻害する抗体またはその抗原結合部分である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性免疫調節因子からのシグナル伝達を妨害または阻害する小分子である。
【0251】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、PD-1受容体とそのリガンドであるPD-L1との間の相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。PD-1に結合し、PD-1とそのリガンドであるPD-L1との間の相互作用を妨害する抗体は、当技術分野で公知である。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-1に特異的に結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-L1に特異的に結合し、PD-1とのその相互作用を阻害し、それによって免疫活性を増加させる。
【0252】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、CTLA4シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、CTLA4を標的とし、CD80およびCD86とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0253】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、LAG3を標的とし、MHCクラスII分子とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0254】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、B7ファミリーシグナル伝達経路の成分である。特定の実施形態では、B7ファミリーメンバーは、B7-H3およびB7-H4である。したがって、本開示の特定の実施形態は、B7-H3またはB7-H4を標的とする抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。B7ファミリーは定義された受容体を有さないが、これらのリガンドは、腫瘍細胞または腫瘍浸潤細胞で上方制御される。前臨床マウスモデルは、これらのリガンドの遮断が抗腫瘍免疫を増強できることを示している。
【0255】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、TIM3(T細胞膜タンパク質3)シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、TIM3を標的とし、ガレクチン9とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0256】
標的化が、例えばT細胞増殖の増加、T細胞活性化の増強、および/またはサイトカイン産生の増加(例えばIFN-γ、IL2)に反映されるような抗腫瘍免疫応答などの免疫応答の刺激をもたらすことを条件として、他の免疫チェックポイント標的もまた、アンタゴニストまたは抗体によって標的化され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0257】
RNA標的化
本発明によれば、本明細書に記載のペプチド、タンパク質またはポリペプチド、特にIL2ポリペプチド、IFNポリペプチドおよび/またはワクチン抗原は、本明細書に記載のペプチド、タンパク質またはポリペプチドをコードするRNAの形態で投与されることが特に好ましい。一実施形態では、本明細書に記載の異なるペプチド、タンパク質またはポリペプチドは、異なるRNA分子によってコードされる。
【0258】
一実施形態では、RNAは送達ビヒクルに製剤化される。一実施形態では、送達ビヒクルは粒子を含む。一実施形態では、送達ビヒクルは少なくとも1つの脂質を含む。一実施形態では、少なくとも1つの脂質は、少なくとも1つのカチオン性脂質を含む。一実施形態では、脂質は、RNAと複合体を形成する、および/またはRNAを封入する。一実施形態では、脂質は、RNAを封入する小胞に含まれる。一実施形態では、RNAはリポソームに製剤化される。
【0259】
本開示によれば、本明細書に記載のRNAの投与後、RNAの少なくとも一部が標的細胞に送達される。一実施形態では、RNAの少なくとも一部が標的細胞のサイトゾルに送達される。一実施形態では、RNAは標的細胞によって翻訳されて、コードされたペプチドまたはタンパク質を産生する。
【0260】
本開示のいくつかの態様は、本明細書に開示されるRNA(例えば、IL2ポリペプチドをコードするRNA、IFNポリペプチドをコードするRNAおよび/またはワクチン抗原をコードするRNA)の標的化送達を含む。
【0261】
一実施形態では、本開示は、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることを含む。投与されるRNAがワクチン抗原をコードするRNAである場合、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることが特に好ましい。
【0262】
一実施形態では、標的細胞は脾臓細胞である。一実施形態では、標的細胞は、脾臓におけるプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。一実施形態では、標的細胞は、脾臓における樹状細胞である。
【0263】
「リンパ系」は循環系の一部であり、リンパを運ぶリンパ管のネットワークを含む免疫系の重要な部分である。リンパ系は、リンパ器官、リンパ管の伝導ネットワーク、および循環リンパからなる。一次または中枢リンパ器官は、未成熟な前駆細胞からリンパ球を生成する。胸腺および骨髄は一次リンパ器官を構成する。リンパ節および脾臓を含む二次または末梢リンパ器官は、成熟したナイーブリンパ球を維持し、適応免疫応答を開始する。
【0264】
RNAは、いわゆるリポプレックス製剤によって脾臓に送達され得、リポプレックス製剤中でRNAはカチオン性脂質および任意でさらなる脂質またはヘルパー脂質を含むリポソームに結合して注射可能なナノ粒子製剤を形成する。リポソームは、エタノール中の脂質の溶液を水または適切な水相に注入することによって得られ得る。RNAリポプレックス粒子は、リポソームをRNAと混合することによって調製され得る。脾臓標的化RNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2013/143683号に記載されている。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子を使用して、脾臓組織または脾臓細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を選択的に標的化し得ることが認められている。したがって、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、脾臓においてRNAを発現するために使用され得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、肺および/または肝臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現は、全く起こらないかまたは本質的に起こらない。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓内のプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、そのような抗原提示細胞においてRNAを発現するために使用され得る。一実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0265】
本開示の文脈において、「RNAリポプレックス粒子」という用語は、脂質、特にカチオン性脂質、およびRNAを含む粒子に関する。正に帯電したリポソームと負に帯電したRNAとの間の静電相互作用は、RNAリポプレックス粒子の複合体化および自発的形成をもたらす。正に帯電したリポソームは、一般に、DOTMAなどのカチオン性脂質とDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成され得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子はナノ粒子である。
【0266】
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」は、正味の正電荷を有する脂質を指す。カチオン性脂質は、静電相互作用によって負に帯電したRNAを脂質マトリックスに結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシルまたはジアシル鎖などの親油性部分を有し、脂質の頭部基は、典型的には正電荷を担持する。カチオン性脂質の例には、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)-ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、l,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)が含まれるが、これらに限定されない。DOTMA、DOTAP、DODAC、およびDOSPAが好ましい。特定の実施形態では、カチオン性脂質は、DOTMAおよび/またはDOTAPである。
【0267】
RNAリポプレックス粒子の正電荷と負電荷の全体的な比率および物理的安定性を調整するために、さらなる脂質を組み込んでもよい。特定の実施形態では、さらなる脂質は中性脂質である。本明細書で使用される場合、「中性脂質」は、ゼロの正味電荷を有する脂質を指す。中性脂質の例には、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、およびセレブロシドが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、さらなる脂質は、DOPE、コレステロールおよび/またはDOPCである。
【0268】
特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、カチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。例示的な実施形態では、カチオン性脂質はDOTMAであり、さらなる脂質はDOPEである。
【0269】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つのさらなる脂質とのモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、または約3:1~約1:1である。特定の実施形態では、モル比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、または約1:1であり得る。例示的な実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つのさらなる脂質とのモル比は、約2:1である。
【0270】
本明細書に記載のRNAリポプレックス粒子は、一実施形態では、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250nm~約700nm、約400nm~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nm、または約1000nmの平均直径を有する。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的な実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約400nmの平均直径を有する。
【0271】
本開示のRNAリポプレックス粒子の電荷は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する電荷とRNAに存在する電荷との合計である。電荷比は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する正電荷とRNAに存在する負電荷の比である。少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する正電荷とRNAに存在する負電荷の電荷比は、以下の式によって計算される:電荷比=[(カチオン性脂質濃度(mol))*(カチオン性脂質中の正電荷の総数)]/[(RNA濃度(mol))*(RNA中の負電荷の総数)]。
【0272】
生理的pHでの本明細書に記載の脾臓標的化RNAリポプレックス粒子は、好ましくは、正電荷と負電荷の電荷比が約1.9:2~約1:2などの正味の負電荷を有する。特定の実施形態では、生理的pHでのRNAリポプレックス粒子における正電荷と負電荷の電荷比は、約1.9:2.0、約1.8:2.0、約1.7:2.0、約1.6:2.0、約1.5:2.0、約1.4:2.0、約1.3:2.0、約1.2:2.0、約1.1:2.0、または約1:2.0である。
【0273】
延長PKサイトカインなどのサイトカイン、特に本明細書に記載されるような延長PKインターロイキンは、RNAの肝臓または肝臓組織への選択的送達のための製剤中でサイトカインをコードするRNAを対象に投与することによって対象に提供され得る。そのような標的器官または組織へのRNAの送達は、特に、大量のサイトカインを発現することが望ましい場合、および/またはサイトカインの全身的な存在、特に有意な量での存在が望ましいかもしくは必要とされる場合に好ましい。
【0274】
RNA送達システムは、肝臓への固有の選択性を有する。これは、脂質ベースの粒子、カチオン性および中性ナノ粒子、特にリポソーム、ナノミセルおよびバイオコンジュゲート中の親油性リガンドなどの脂質ナノ粒子に関連する。肝臓蓄積は、肝血管系の不連続な性質または脂質代謝(リポソームおよび脂質もしくはコレステロール複合体)によって引き起こされる。
【0275】
肝臓へのRNAのインビボ送達のために、薬物送達システムを使用して、その分解を防止することによってRNAを肝臓に輸送し得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)被覆表面とmRNA含有コアからなるポリプレックスナノミセルは、ナノミセルが生理的条件下でRNAの優れたインビボ安定性を提供するため、有用なシステムである。さらに、密なPEGパリセードで構成されるポリプレックスナノミセル表面によって提供されるステルス特性は、宿主の免疫防御を有効に回避する。
【0276】
医薬組成物
本明細書に記載の薬剤は、医薬組成物または医薬品で投与され得るか、任意の適切な医薬組成物の形態で投与され得る。
【0277】
本発明の全ての態様の一実施形態では、サイトカイン(IL2またはIFN)をコードする核酸または抗原をコードする核酸などの本明細書に記載の成分は、一緒にまたは互いに別々に、薬学的に許容される担体を含み得、任意で1つ以上のアジュバント、安定剤などを含み得る医薬組成物で投与され得る。一実施形態では、医薬組成物は、治療的または予防的治療のためのもの、例えば本明細書に記載されるような癌疾患などの抗原が関与する疾患の治療または予防における使用のためのものである。
【0278】
「医薬組成物」という用語は、好ましくは薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と共に、治療上有効な薬剤を含む製剤に関する。前記医薬組成物は、前記医薬組成物を対象に投与することによって疾患または障害を治療する、予防する、またはその重症度を軽減するのに有用である。医薬組成物は、当技術分野では医薬製剤としても知られる。
【0279】
本開示の医薬組成物は、1つ以上のアジュバントを含み得るか、または1つ以上のアジュバントと共に投与され得る。「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長、増強または加速する化合物に関する。アジュバントは、油エマルジョン(例えばフロイントアジュバント)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素など)、または免疫刺激複合体などの不均一な化合物の群を含む。アジュバントの例には、限定されることなく、LPS、GP96、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、成長因子、およびモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカインなどのサイトカインが含まれる。サイトカインは、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL12、IFNα、IFNγ、GM-CSF、LT-aであり得る。さらなる公知のアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバント、またはMontanide(登録商標)ISA51などの油である。本開示で使用するための他の適切なアジュバントには、Pam3Cysなどのリポペプチドが含まれる。
【0280】
本開示による医薬組成物は、一般に「薬学的有効量」および「薬学的に許容される製剤」で適用される。
【0281】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0282】
「薬学的有効量」または「治療有効量」という用語は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅らせること、特に疾患の進行を中断するまたは逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の予防であり得る。本明細書に記載の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の組成物の投与量は、そのような様々なパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される実質的により高い用量)を使用し得る。
【0283】
本開示の医薬組成物は、塩、緩衝剤、防腐剤、および任意で他の治療薬を含み得る。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む。
【0284】
本開示の医薬組成物で使用するための適切な防腐剤には、限定されることなく、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが含まれる。
【0285】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の医薬組成物中に存在し得るが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例には、限定されることなく、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤が含まれる。
【0286】
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする薬剤に関する。さらに、「希釈剤」という用語には、流体、液体または固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上が含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロールおよび水が含まれる。
【0287】
「担体」という用語は、医薬組成物の投与を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分が組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分を指す。本明細書で使用される担体は、対象への投与に適した1つ以上の適合性の固体もしくは液体充填剤、希釈剤または封入物質であり得る。適切な担体には、限定されることなく、滅菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが含まれる。一実施形態では、本開示の医薬組成物は等張食塩水を含む。
【0288】
治療的使用のための薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。
【0289】
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択することができる。
【0290】
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与され得る。特定の実施形態では、医薬組成物は、局所投与または全身投与用に製剤化される。全身投与には、消化管を介した吸収を含む経腸投与、または非経口投与が含まれ得る。本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、静脈内注射などによる、消化管を介する以外の任意の方法での投与を指す。好ましい実施形態では、医薬組成物は全身投与用に製剤化される。別の好ましい実施形態では、全身投与は静脈内投与によるものである。本発明の全ての態様の一実施形態では、本明細書に記載のサイトカインをコードするRNAおよび任意で抗原をコードするRNAを全身投与する。
【0291】
本明細書で使用される「同時投与」という用語は、異なる化合物または組成物(例えば、IL2ポリペプチドをコードするRNA、IFNポリペプチドをコードするRNA、および任意でワクチン抗原をコードするRNA)を同じ患者に投与する工程を意味する。異なる化合物または組成物は、同時に、本質的に同時に、または連続的に投与され得る。一実施形態では、IL2ポリペプチドまたはIL2ポリペプチドをコードする核酸を最初に投与し、続いてIFNポリペプチドまたはIFNポリペプチドをコードする核酸を投与する。
【0292】
治療
本明細書に記載の薬剤、組成物および方法は、疾患、例えば抗原を発現する疾患細胞の存在を特徴とする疾患を有する対象を治療するために使用できる。特に好ましい疾患は癌疾患である。例えば、抗原がウイルスに由来する場合、薬剤、組成物および方法は、前記ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療に有用であり得る。抗原が腫瘍抗原である場合、薬剤、組成物および方法は、癌細胞が前記腫瘍抗原を発現する癌疾患の治療に有用であり得る。
【0293】
「疾患」という用語は、個体の身体を侵す異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部源に由来する因子によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能不全によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしば、罹患した個体に疼痛、機能障害、苦痛、社会的問題、もしくは死亡を引き起こすか、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指すためにより広く使用される。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、障害(disability)、障害(disorder)、症候群、感染、単発症状、逸脱した挙動、および構造と機能の非定型の変化を含むが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリと見なされ得る。多くの疾患を患い、それと共に生活することは、人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的だけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。
【0294】
本文脈において、「治療」、「治療する」または「治療的介入」という用語は、疾患または障害などの状態と闘う目的での対象の管理およびケアに関する。この用語は、症状もしくは合併症を緩和するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和もしくは軽減するため、ならびに/または疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは除去するため、ならびに状態を予防するための治療上有効な化合物の投与などの、対象が罹患している所与の状態に対するあらゆる範囲の治療を含むことを意図しており、ここで、予防は、疾患、状態または障害と闘う目的での個体の管理およびケアとして理解されるべきであり、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を含む。
【0295】
「治療的治療」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長する(増加させる)任意の治療に関する。前記治療は、個体における疾患を排除し、個体における疾患の発症を停止もしくは遅延させ、個体における疾患の発症を阻害もしくは遅延させ、個体における症状の頻度もしくは重症度を低下させ、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体における再発を減少させ得る。
【0296】
「予防的治療」または「防止的治療」という用語は、個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図した任意の治療に関する。「予防的治療」または「防止的治療」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0297】
「個体」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、疾患または障害(例えば癌)に罹患し得るかまたは罹患しやすいが、疾患または障害を有していてもよくまたは有していなくてもよいヒトまたは別の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長動物)を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記されない限り、「個体」および「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって成人、高齢者、小児、および新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」または「対象」は「患者」である。
【0298】
「患者」という用語は、治療のための個体または対象、特に罹患した個体または対象を意味する。
【0299】
本開示の一実施形態では、目的は、腫瘍抗原を発現する癌細胞などの抗原を発現する疾患細胞に対する免疫応答を提供し、腫瘍抗原などの抗原を発現する細胞が関与する癌疾患などの疾患を治療することである。
【0300】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、抗原または抗原を発現する細胞に対する統合された身体応答を指し、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を指す。
【0301】
「細胞媒介性免疫」、「細胞性免疫」、「細胞性免疫応答」、または同様の用語は、抗原の発現を特徴とする、特にクラスIまたはクラスII MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞応答を含むことを意図している。細胞応答は、「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして働くT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関連する。ヘルパーT細胞(CD4T細胞とも称される)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8T細胞またはCTLとも称される)は、癌細胞などの疾患細胞を死滅させ、さらなる疾患細胞の産生を防止する。
【0302】
本開示は、保護的、防御的、予防的および/または治療的であり得る免疫応答を企図する。本明細書で使用される場合、「免疫応答を誘導する(または誘導すること)」は、特定の抗原に対する免疫応答が誘導前に存在しなかったことを示し得るか、または誘導前に特定の抗原に対する基礎レベルの免疫応答があり、これが誘導後に増強されたことを示し得る。したがって、「免疫応答を誘導する(または誘導すること)」には、「免疫応答を増強する(または増強すること)」が含まれる。
【0303】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導または増強することによる疾患または状態の治療に関する。「免疫療法」という用語は、抗原免疫または抗原ワクチン接種を含む。
【0304】
「免疫」または「ワクチン接種」という用語は、例えば治療的または予防的理由から、免疫応答を誘導する目的で個体に抗原を投与する工程を表す。
【0305】
「マクロファージ」という用語は、単球の分化によって産生される食細胞のサブグループを指す。炎症、免疫サイトカインまたは微生物産物によって活性化されるマクロファージは、マクロファージ内に外来病原体を、病原体の分解をもたらす加水分解および酸化攻撃によって非特異的に貪食し、死滅させる。分解されたタンパク質からのペプチドは、T細胞によって認識され得るマクロファージ細胞表面に表示され、B細胞表面の抗体と直接相互作用して、T細胞およびB細胞の活性化ならびに免疫応答のさらなる刺激をもたらすことができる。マクロファージは抗原提示細胞のクラスに属する。一実施形態では、マクロファージは脾臓マクロファージである。
【0306】
「樹状細胞」(DC)という用語は、抗原提示細胞のクラスに属する食細胞の別のサブタイプを指す。一実施形態では、樹状細胞は造血骨髄前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞は、最初に未成熟樹状細胞に変換される。これらの未成熟細胞は、高い食作用活性と低いT細胞活性化能を特徴とする。未成熟樹状細胞は、ウイルスおよび細菌などの病原体の周囲環境を絶えずサンプリングする。それらは、提示可能な抗原と接触すると、活性化されて成熟樹状細胞となり、脾臓またはリンパ節に移動し始める。未成熟樹状細胞は病原体を貪食し、それらのタンパク質を小さな断片に分解し、成熟すると、MHC分子を使用してそれらの断片を細胞表面に提示する。同時に、CD80、CD86およびCD40などのT細胞活性化における共受容体として働く細胞表面受容体を上方制御し、T細胞を活性化するそれらの能力を大幅に増強する。それらはまた、樹状細胞が血流を通って脾臓に、またはリンパ系を通ってリンパ節に移動するように誘導する走化性受容体であるCCR7を上方制御する。ここで、それらは抗原提示細胞として働き、非抗原特異的共刺激シグナルと共に抗原を提示することによってヘルパーT細胞およびキラーT細胞ならびにB細胞を活性化する。したがって、樹状細胞は、T細胞またはB細胞関連の免疫応答を能動的に誘導することができる。一実施形態では、樹状細胞は脾臓樹状細胞である。
【0307】
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、その細胞表面上に(またはその細胞表面で)少なくとも1つの抗原または抗原性断片を表示、獲得、および/または提示することができる様々な細胞の1つである。抗原提示細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞と非プロフェッショナル抗原提示細胞とに区別することができる。
【0308】
「プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、ナイーブT細胞との相互作用に必要な主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCクラスII)分子を構成的に発現する抗原提示細胞に関する。T細胞が抗原提示細胞の膜上のMHCクラスII分子複合体と相互作用する場合、抗原提示細胞は、T細胞の活性化を誘導する共刺激分子を産生する。プロフェッショナル抗原提示細胞は、樹状細胞およびマクロファージを含む。
【0309】
「非プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、MHCクラスII分子を構成的に発現しないが、インターフェロンγなどの特定のサイトカインによる刺激を受けると発現する抗原提示細胞に関する。例示的な非プロフェッショナル抗原提示細胞には、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓β細胞または血管内皮細胞が含まれる。
【0310】
「抗原プロセシング」は、抗原の断片であるプロセシング産物への前記抗原の分解(例えばタンパク質のペプチドへの分解)、および抗原提示細胞などの細胞による特定のT細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
【0311】
「抗原が関与する疾患」という用語は、抗原に関係する任意の疾患、例えば抗原の存在を特徴とする疾患を指す。抗原が関与する疾患は、感染症、または癌疾患もしくは単に癌であり得る。上記のように、抗原は、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原であり得る。一実施形態では、抗原が関与する疾患は、好ましくは細胞表面に抗原を発現する細胞が関与する疾患である。
【0312】
「感染症」という用語は、個体から個体へ、または生物から生物へと伝染する可能性があり、微生物因子によって引き起こされる任意の疾患(例えば普通の風邪)を指す。感染症は当技術分野で公知であり、例えばウイルス性疾患、細菌性疾患、または寄生虫性疾患が含まれ、これらの疾患はそれぞれウイルス、細菌、および寄生虫によって引き起こされる。これに関して、感染症は、例えば肝炎、性感染症(例えばクラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、およびインフルエンザであり得る。
【0313】
「癌疾患」または「癌」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする個体の生理学的状態を指すかまたは表す。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるが、これらに限定されない。より具体的には、そのような癌の例には、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が含まれる。本開示による「癌」という用語は、癌転移も含む。
【0314】
癌治療における併用戦略は、結果として生じる相乗効果のために望ましい場合があり、これは単剤療法アプローチの影響よりもかなり強力であり得る。一実施形態では、医薬組成物は免疫療法剤と共に投与される。本明細書で使用される場合、「免疫療法剤」は、特定の免疫応答および/または免疫エフェクタ機能(1つまたは複数)の活性化に関与し得る任意の薬剤に関する。本開示は、免疫療法剤としての抗体の使用を企図する。理論に拘束されることを望むものではないが、抗体は、アポトーシスを誘導する、シグナル伝達経路の成分をブロックする、または腫瘍細胞の増殖を阻害することを含む様々な機構を介して癌細胞に対する治療効果を達成することができる。特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して細胞死を誘導し得るか、または補体タンパク質に結合して、補体依存性細胞傷害(CDC)として知られる直接的な細胞傷害性をもたらし得る。本開示と組み合わせて使用し得る抗癌抗体および潜在的な抗体標的(括弧内)の非限定的な例には、アバゴボマブ(CA-125)、アブシキシマブ(CD41)、アデカツムマブ(EpCAM)、アフツズマブ(CD20)、アラシズマブペゴル(VEGFR2)、アルツモマブペンテテート(CEA)、アマツキシマブ(MORAb-009)、アナツモマブマフェナトクス(TAG-72)、アポリズマブ(HLA-DR)、アルシツモマブ(CEA)、アテゾリズマブ(PD-L1)、バビツキシマブ(ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(CD22)、ベリムマブ(BAFF)、ベバシズマブ(VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(CD44 v6)、ブリナツモマブ(CD19)、ブレンツキシマブベドチン(CD30 TNFRSF8)、カンツズマブメルタンシン(ムチンCanAg)、カンツズマブラブタンシン(MUC1)、カプロマブペンデチド(前立腺癌細胞)、カルルマブ(CNT0888)、カツマキソマブ(EpCAM、CD3)、セツキシマブ(EGFR)、シタツズマブボガトクス(EpCAM)、シクスツムマブ(IGF-1受容体)、クローディキシマブ(クローディン)、クリバツズマブテトラキセタン(MUC1)、コナツムマブ(TRAIL-R2)、ダセツズマブ(CD40)、ダロツズマブ(インスリン様増殖因子I受容体)、デノスマブ(RANKL)、デツモマブ(Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(DR5)、エクロメキシマブ(GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(EpCAM)、エロツズマブ(SLAMF7)、エナバツズマブ(PDL192)、エンシツキシマブ(NPC-1C)、エプラツズマブ(CD22)、エルツマキソマブ(HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(インテグリンανβ3)、ファルレツズマブ(葉酸受容体1)、FBTA05(CD20)、フィクラツズマブ(SCH 900105)、フィギツムマブ(IGF-1受容体)、フランボツマブ(糖タンパク質75)、フレソリムマブ(TGF-β)、ガリキシマブ(CD80)、ガニツマブ(IGF-I)、ゲムツズマブオゾガマイシン(CD33)、ゲボキズマブ(ILΙβ)、ギレンツキシマブ(炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレムバツムマブベドチン(GPNMB)、イブリツモマブチウキセタン(CD20)、イクルクマブ(VEGFR-1)、イゴボマ(CA-125)、インダツキシマブラブタンシン(SDC1)、インテツムマブ(CD51)、イノツズマブオゾガマイシン(CD22)、イピリムマブ(CD152)、イラツムマブ(CD30)、ラベツズマブ(CEA)、レクサツムマブ(TRAIL-R2)、リビビルマブ(B型肝炎表面抗原)、リンツズマブ(CD33)、ロルボツズマブメルタンシン(CD56)、ルカツムマブ(CD40)、ルミリキシマブ(CD23)、マパツムマブ(TRAIL-R1)、マツズマブ(EGFR)、メポリズマブ(IL5)、ミラツズマブ(CD74)、ミツモマブ(GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(CCR4)、モキセツモマブパスドトクス(CD22)、ナコロマブタフェナトクス(C242抗原)、ナプツモマブエスタフェナトクス(5T4)、ナマツマブ(RON)、ネシツムマブ(EGFR)、ニモツズマブ(EGFR)、ニボルマブ(IgG4)、オファツムマブ(CD20)、オララツマブ(PDGF-R a)、オナルツズマブ(ヒト散乱因子受容体キナーゼ)、オポルツズマブモナトクス(EpCAM)、オレゴボマブ(CA-125)、オキセルマブ(OX-40)、パニツムマブ(EGFR)、パトリツマブ(HER3)、ペムツモマ(MUC1)、ペルツズマ(HER2/neu)、ピンツモマブ(腺癌抗原)、プリツムマブ(ビメンチン)、ラコツモマブ(N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(フィブロネクチンエクストラドメインB)、ラフィビルマブ(狂犬病ウイルス糖タンパク質)、ラムシルマブ(VEGFR2)、リロツムマブ(HGF)、リツキシマブ(CD20)、ロバツムマブ(IGF-1受容体)、サマリズマブ(CD200)、シブロツズマブ(FAP)、シルツキシマブ(IL6)、タバルマブ(BAFF)、タカツズマブテトラキセタン(α-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトクス(CD19)、テナツモマブ(テナスシンC)、テプロツムマブ(CD221)、チシリムマブ(CTLA-4)、ティガツズマブ(TRAIL-R2)、TNX-650(IL13)、トシツモマブ(CD20)、トラスツズマブ(HER2/neu)、TRBS07(GD2)、トレメリムマブ(CTLA-4)、ツコツズマブセルモロイキン(EpCAM)、ウブリツキシマブ(MS4A1)、ウレルマブ(4-1BB)、ボロキシマブ(インテグリンα5β1)、ボツムマブ(腫瘍抗原CTAA 16.88)、ザルツムマブ(EGFR)、およびザノリムマブ(CD4)が含まれる。
【0315】
本明細書で参照される文書および試験の引用は、前記のいずれかが関連する先行技術であることの承認として意図されていない。これらの文書の内容に関する全ての記述は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
【0316】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作成および使用することを可能にするために提示される。特定の装置、技術、および用途の説明は、例としてのみ提供される。本明細書に記載される例に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的原理は、様々な実施形態の精神および範囲から逸脱することなく他の例および用途に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書で説明され、示される例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と一致する範囲を与えられるべきである。
【実施例
【0317】
実施例1:構築物の設計およびmRNAの作製
サイトカインをコードするmRNAのインビトロ転写は、pST1-T7-AGA-dEarI-hAg-MCS-FI-A30LA70プラスミド骨格および誘導体DNA構築物に基づいた。これらのプラスミド構築物は、5'UTR(非翻訳領域、ヒト(homo sapiens)ヘモグロビンサブユニットα1(hAg)の5'-UTRの誘導体)、3'FIエレメント(FはスプリットmRNAのアミノ末端エンハンサの136ヌクレオチド長の3'-UTR断片であり、Iはミトコンドリアにコードされた12S RNAの142ヌクレオチド長の断片であり、両方ともヒトにおいて同定されている;国際公開第2017/060314号)、および100ヌクレオチドのポリ(A)尾部を含み、70ヌクレオチド後にリンカーを有する。サイトカインおよび血清アルブミン(Alb)をコードする配列は、ハツカネズミ(mus musculus)(mと略す、すなわちmAlb、mIL2もしくはmIFNα)またはヒト(hと略す、すなわちhAlb、hIL2 hIFNα)に由来し、得られるアミノ酸配列に変化は導入しなかった。Albを成熟IL2配列のN末端に導入した(IL2のシグナルペプチドはコードされなかった)。終止コドンは、ほとんどのC末端部分についてのみ導入した。サイトカインおよびhAlb融合構築物中の異なるタンパク質部分を、グリシンおよびセリン残基をコードする30ヌクレオチド長のリンカー配列によって分離した。mRNAを、Kreiter et al.(Kreiter,S.et al.Cancer Immunol.Immunother.56,1577-87(2007))によって記載されているようにインビトロ転写によって作製した。全てのサイトカイン/アルブミンをコードするRNAについて、通常のヌクレオシドウリジンを1-メチルシュードウリジンで置換した。得られたmRNAはキャップ1構造を備えており、二本鎖(dsRNA)分子を枯渇させた。精製したサイトカイン/アルブミンmRNAをHOに溶出させ、さらなる使用まで-80℃で保存した。記載されている全てのmRNA構築物のインビトロ転写は、BioNTech RNA Pharmaceuticals GmbHで実施された。その後の実験で使用した全ての構築物のリストを表1に示す。
【表1】
【0318】
実施例2:インビボでのワクチン誘導T細胞応答に対するRNAにコードされたIL2の効果
雌性C57BL/6(9週齢)(群あたりn=8匹のマウス)をEnvigoから購入し、0日目、7日目および14日目にニワトリオボアルブミン(OVA)由来のH2-Kb拘束性CD8T細胞エピトープSIINFEKL(Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))をコードする10μgのmRNAリポプレックス(RNA-L)を静脈内(i.v.)ワクチン接種した。各ワクチン接種の3日後、TransIT(Mirrus)で製剤化した1μgのmAlb融合タンパク質をコードするmRNAをi.v.投与した。マウスにmAlbまたはmAlbに融合したmIL2(mAlb-mIL2)のいずれかを投与した。7日目、14日目および21日目に、マウスの血液を回収し、フローサイトメトリによって抗原特異的T細胞応答および制御性T細胞(Treg)について分析した。50μlの血液を、蛍光色素標識抗体またはMHC四量体を用いて2~8℃で30分間染色した。抗原特異的T細胞を、CD45特異的抗体(30-F11、BD)およびCD8特異的抗体(クローン5H10、BD)ならびにSIINFEKLペプチドに結合したMHC四量体(MBL international)の共染色によって検出した。Tregを、eBioscienceのFoxP3染色キットを製造者の指示に従って使用して、CD45(30-F11、BD)、CD4(クローンRM4-5、Biolegend)、CD25(クローンPC61、BD)およびFoxP3(クローンFJK-16s、eBioscience)に特異的な抗体によって同定した。溶解液(BD FACS(商標))を使用して血液を溶解した。絶対細胞数を決定するために、細胞をTrucount(登録商標)チューブ(BD)に移した。フローサイトメトリデータをLSRFortessaフローサイトメータ(BD)で取得し、FlowJo Xソフトウェア(Tree Star)で分析した。GraphPad Prism 7を使用して結果を表示し、統計分析した。図1Aは、処置および分析スケジュールの概要を示す。RNA-Lワクチン接種とmAlb-mIL2による処置との組合せは、RNA-Lワクチン接種およびmAlbのみを受けた対照群と比較して、7日目および14日目にOVA特異的T細胞の有意な増加をもたらした(図1B、1C)。しかし、21日目の分析では、mAlb-mIL2処置動物における抗原特異的T細胞応答の有意な低下が明らかになり、頻度はmAlb対照さえも有意に下回った(図1D、1E)。本発明者らは、抗原特異的T細胞のこの低下がmAlb-mIL2誘導Tregによって引き起こされると仮定した。実際に、mAlb-mIL2処置マウスは、測定された各時点で有意に高いTreg頻度を示し、14日目にピークを有していた(図1F)。おそらく、初期時点では、mAlb-mIL2の刺激能はTregの阻害能を上回る。より後の時点では、Treg数が増加して活性化CD8+T細胞に対するより強い阻害シグナルをもたらし、mAlb-mIL2の刺激能を低下させる。
【0319】
これらの結果を異なるバックグラウンドの第2のモデルで確認するために、BALB/cマウス(群あたりn=7~8匹、雌性、9週齢、Janvier Labsから購入)を、図2Aに記載されるように、1μgのmAlb-mIL2またはmAlbと組み合わせたH2-Kd拘束性CD8 T細胞抗原SPSYAYHQF(Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))をコードする20μgのgp70 RNA-Lワクチン接種で処置した。再び、mAlb-mIL2での処置は、7日目および14日目にのみgp70特異的T細胞の有意であるが一時的な増加をもたらした(図2B、2C)。21日目に、抗原特異的T細胞数はmAlb対照のレベルに戻った(図2D、2E)。前に示したように、Tregの頻度は、全ての測定において有意に上昇した(図2F)。
【0320】
実施例3:IFNαはIL2媒介Treg拡大を制限し、インビボで抗原特異的T細胞の強固なプライミングをもたらす
IFNα投与は、マウス(Gangaplara,A.et al.PLoS Pathog.14,1-27(2018))およびヒト(Tatsugami,K.,Eto,M.&Naito,S.J.Interferon Cytokine Res.30,43-48(2010))においてTregの頻度低下をもたらすことができ、Tregの機能を妨げることができる(Bacher,N.et al.Cancer Res.73,5647-5656(2013))ことが実証されている。しかしながら、IFNαはまた、Treg発生において積極的な役割を果たす(Metidji,A.et al.J.Immunol.194,4265-4276(2015))。本発明者らは、IFNαが、即時のIL2媒介Treg活性化および拡大に拮抗することによってワクチン誘導T細胞プライミングに対するIL2の効果を増強し、それによってTregによるその後のT細胞増殖の阻害を防止し得ると仮定した。したがって、実施例2に記載されているように、0日目、7日目および14日目にC57BL/6マウス(9週齢、群あたりn=5匹のマウス、Envigoから購入)に100μl中10μgのOVA RNA-Lをi.v.ワクチン接種した。3日後、マウスを、TransIT(Mirrus)で製剤化した100μl中1μgのmAlbまたはmAlb-mIL2をコードするmRNAで刺激した。同時に、1つのmAlb-mIL2処置群に、TransIT(Mirrus)で製剤化した100μl中2μgのIFNαコードmRNAを投与した。図3Aに示すように、7日目に10μgのOVA RNA-LおよびサイトカインをコードするRNAによる第2の処置を行った。7日目および14日目に、マウスの血液を回収し、実施例2に記載されるように、フローサイトメトリによって抗原特異的T細胞応答およびTregについて分析した。予想されたように、7日目には、ワクチン誘導OVA特異的T細胞およびTregは、マウスをmAlb-mIL2で処置した場合により頻度が高かった(図3B、3C)。IFNαの同時投与は、抗原特異的T細胞の数を制限または増加させなかったが(図3B)、Tregの数をmAlb対照のベースラインレベルまで減少させた(図3C)。その結果、14日目の分析は、OVA特異的T細胞が、mAlb-mIL2と一緒にIFNαを投与された群において有意に上昇し、一方、mAlb-mIL2単独での処置は対照群と比較して利点を有さないことを示した(図3D)。
【0321】
これらの結果の確認を、実施例2および図2に記載されるgp70モデルで行った。実験は上記と同様に実施した。BALB/cマウス(群あたりn=5匹)に、0日目、7日目および14日目に100μl中20μgのgp70 RNA-Lをワクチン接種した。3日目、7日目および14日目にサイトカインRNA(1μg mAlb、1μg mAlb-mIL2または1μg mAlb-mIL2+2μg IFNα)を100μl中で注射し、7日目および21日目にマウスの血液を検査した(図4A)。この場合も、IFNαは、抗原特異的T細胞の拡大を制限することなく、mAlb-mIL2が媒介するTreg頻度の上昇を正常化することができ(図4B、4C)、21日目に抗原特異的T細胞の増加をもたらした(図4D)。
【0322】
実施例4:IFNαは、インビトロでCD8+T細胞拡大を損なうことなくIL2媒介Treg拡大を制限する
IFNαのインビボで観察された有益な効果を裏付けるために、IL2で刺激したCD4+CD25+TregおよびCD8+T細胞に対するhIFNaの効果をインビトロで評価した。Tregおよび自己バルクPBMCを、最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)および5%hAlb-hIL2含有上清の存在下に1:1の比率で共培養し、IFNαでさらに処理するか、またはIFNαなしで維持した。手短に言えば、Ficoll-Paque(VWR International、カタログ番号17-1440-03)密度勾配分離によって健常ドナーのバフィコートからヒトPBMCを得て、新たに調製したPBMCからCD4+CD25+Tregを単離した(CD4CD25制御性T細胞単離キットヒト、Miltenyi Biotec、カタログ番号130-091-301)。1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Thermo Fisher、カタログ番号C34554)を使用してバルクPBMCを標識し、1μMのCellTrace FarRed染料(Thermo Fisher、カタログ番号C34564)を使用してTregを標識した。30,000個のCFSE標識PBMCおよび30,000個のFarRed標識Tregを、96ウェル丸底プレート(Costar、カタログ番号734-1797)においてウェルごとに5%血漿由来ヒト血清(PHS;One Lambda lnc.、カタログ番号A25761)を添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM;Life Technologies GmbH、カタログ番号12440-053)で共培養し、最適以下の濃度の抗CD3抗体(UCHT1;R&D Systems、カタログ番号MAB100;最終濃度0.09μg/mL)と共にインキュベートした。PBMC:Treg共培養物をhAlb-hIL2含有上清(最終濃度5%)で処理し、組換えIFNα2bなし、625U/mLまたは10,000U/mLの組換えIFNα2b(pbl assay science、カタログ番号11105-1)のいずれかを添加した。共培養物を37℃、5%COで4日間刺激した。細胞を回収し、eFluor780染色(eBioscience、カタログ番号65-0865-18)によって死細胞を除外してフローサイトメトリによって分析した。CD8+T細胞を、FACS緩衝液(DPBS+2%FBS+2mM EDTA)で1:100に希釈した抗ヒトCD8 PE-Cy7抗体(TONBO Biosciences、カタログ番号60-0088)で染色することによって同定した。フローサイトメトリ分析を、BD FACS Canto IIフローサイトメータ(Becton Dickinson)で、CFSE希釈液(CD8+T細胞)およびFarRed希釈液(Treg)を増殖読み取りとして用いて行った。取得した増殖データを、FlowJo 10.5ソフトウェア(TreeStar,Inc.)を使用して分析し、エクスポートした増殖指数値をGraphPad Prism 6(GraphPad Software,Inc.)にプロットした。
【0323】
CD8+T細胞およびCD4+CD25+Tregの両方が、抗CD3およびhAlb-hIL2の併用処置時に強力な増殖で応答した。組換えIFNαの添加はTregの増殖をおよそ50~55%低減させたが、CD8+T細胞の増殖はおよそ10~20%しか減少しなかった。Tregの選択的増殖阻害の効果は、試験したPBMCドナーの両方について観察されたが、CD8+T細胞では観察されず(図5A、5B)、使用したIFNα濃度とはほとんど無関係であった。
【0324】
実施例5:IFNαとIL2の併用療法はマウスにおいて相乗的な抗腫瘍効果をもたらす
次に、IL2療法へのIFNαの追加が抗腫瘍効果の改善をもたらすかどうかを評価した。雌性BALB/cマウス(9週齢、群あたりn=12匹のマウス)をJanvier Labs S.A.S.から購入し、5×10個のCT26結腸癌細胞を皮下(s.c.)注射した。腫瘍細胞接種の15日後、群あたり10~11匹のマウスを腫瘍サイズに基づいて層別化した。マウスを、100μL中のTransIT(Mirrus)で別々に製剤化した1μgのmAlb-mIL2コードRNAおよび2μgのIFNαコードmRNAで5回処置した。対照群には、TransITで製剤化したIFNα、IL2または無関係なRNA(1μgのmAlbコードRNA)のいずれかを投与した。腫瘍サイズを週に3回カリパスで測定し、式(a×b)/2(a、幅;b、長さ)を用いて計算した。健康障害の徴候を示した場合、または腫瘍体積が1500mmを超えた場合、動物を安楽死させた。29日目および35日目に、マウスの血液を回収し、CD8T細胞を実施例2に記載されるようにフローサイトメトリによって分析した。図6Aは、実験概要を示す。
【0325】
注目すべきことに、CT26腫瘍はそれ自体が免疫原性であり、腫瘍特異的T細胞はワクチンなしで、特にIL2処置下でプライミングすることができるので、この実験ではワクチンを加えなかった。さらに、マウス腫瘍では、特に早期の介入が治療転帰を決定する。したがって、ワクチン誘導T細胞のIL2媒介ブーストは強力な腫瘍制御をもたらし、IL2刺激TregによるT細胞のその後の阻害は重要ではない。対照的に、ワクチン接種なしでは、腫瘍特異的T細胞に対するIL2のブースト効果はそれほど顕著ではなく、したがって腫瘍特異的T細胞に対するTregの阻害効果はより重要である。
【0326】
IFNαとIL2との組合せで処置した群では有意な治療活性が検出され、一方、IL2またはIFNα単独療法は腫瘍成長に影響を及ぼさなかった(図6B)。合計で、11匹のマウスのうち4匹(36%)が、併用療法下でそれらの腫瘍を拒絶し、一方、IFNαまたはIL2による単独療法後ではそれぞれ、腫瘍のないマウスは、2匹(18%)のみ、または皆無であった(図6C)。IL2およびIFNα処置は、IL2単独療法と比較して有意な生存利益をもたらした(図6D)。重要なことに、IL2およびIFNα併用療法の治療活性は、血液中のCD8T細胞の一貫した有意な増加を伴った。図2Eおよび図3Dと同様に、IL2単独療法は、29日目にCD8T細胞の一過性上昇のみを媒介し、これは35日目までに正常化した(図6E)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6ABC
図6DE
【配列表】
2022528422000001.app
【国際調査報告】