(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】抗腫瘍療法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20220603BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220603BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220603BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220603BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220603BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220603BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220603BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220603BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20220603BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 105
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P37/04
A61K35/76
A61P43/00 121
A61K39/395 N
C12N7/01
C12N15/86 Z
A61K38/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559327
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2020053477
(87)【国際公開番号】W WO2020208612
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512176406
【氏名又は名称】バスキュラー バイオジェニックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ラシュミレヴィッツ ミネイ, タマール
(72)【発明者】
【氏名】メンデル, イツァーク
(72)【発明者】
【氏名】ヤコフ, ニーヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ブライトバート, エイアル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C087AA01
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、それを必要としている対象において腫瘍を治療する方法を提供し、方法は、内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含むベクターの有効量と、免疫チェックポイント阻害薬の有効量との組み合わせを対象に投与することを含む。本開示のいくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1拮抗薬またはPD-L1拮抗薬である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている対象において腫瘍のサイズを縮小するもしくは腫瘍の増殖を抑制するまたは腫瘍を除去することにおける使用のための内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含むベクターであって、(a)前記対象が、前記ベクターの有効量を投与されおよび(b)前記対象が、免疫チェックポイント阻害薬の有効量を投与される、ベクター。
【請求項2】
それを必要としている対象において腫瘍またはその転移を治療することにおける使用のための内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含むベクターであって、(a)前記対象が、前記ベクターの有効量を投与されおよび(b)前記対象が、免疫チェックポイント阻害薬の有効量を投与される、ベクター。
【請求項3】
前記腫瘍が、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺癌、原発性脳腫瘍(多形神経膠芽腫を含む)、胃腸(GI)癌(食道、胆嚢、胆道系、肝臓、膵臓、胃、小腸、大腸、結腸、直腸、および肛門を含む)、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、乳頭様甲状腺癌、神経芽腫、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、神経内分泌癌、性泌尿器管癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、前立腺癌、ミューラー管癌、卵巣癌、腹膜癌、卵管癌、または尿管血清癌由来であるかまたはこれらに関連する、請求項1または2に記載の使用のためのベクター。
【請求項4】
前記ベクターの有効量が、1x10
10~約1x10
16、約1x10
11~約1x10
15、約1x10
11~約1x10
16、約1x10
12~約1x10
15、約1x10
12~約1x10
16、約1x10
12~約1x10
14、約5x10
12~約1x10
16、約5x10
12~約1x10
15、約5x10
12~約1x10
14、約1x10
12~約1x10
13、または約1x10
13~約1x10
14個のウィルス粒子の量で投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【請求項5】
前記ベクターの有効量が、約1x10
16、1x10
15、1x10
14、5x10
13、4x10
13、3x10
13、2x10
13、1x10
13、9x10
12、8x10
12、7x10
12、6x10
12、5x10
12、4x10
12、3x10
12、2x10
12、1x10
12、9x10
11、8x10
11、7x10
11、6x10
11、5x10
11、4x10
11、3x10
11、2x10
11、1x10
11、9x10
10、8x10
10、7x10
10、6x10
10、5x10
10、4x10
10、3x10
10、2x10
10、または1x10
10個のウィルス粒子の量で投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【請求項6】
前記ベクターおよび免疫チェックポイント阻害薬が、順次投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【請求項7】
前記ベクターが、反復して投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【請求項8】
前記ベクターが、毎日、約2日に1回、約3日に1回、約4日に1回、約5日に1回、約6日に1回、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約5週間に1回、約6週間に1回、約7週間に1回、約2か月に1回、または約6か月に1回反復して投与される、請求項7に記載の使用のためのベクター。
【請求項9】
前記免疫チェックポイント阻害薬が、反復して投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【請求項10】
前記免疫チェックポイント阻害薬が、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約2か月に1回、約3か月に1回、約4か月に1回、約5か月に1回、または約6か月に1回反復して投与される、請求項9に記載の使用のためのベクター。
【請求項11】
前記免疫チェックポイント阻害薬が、約15mg/kg未満、約14mg/kg未満、約13mg/kg未満、約12mg/kg未満、約11mg/kg未満、約10mg/kg未満、約9mg/kg未満、約8mg/kg未満、約7mg/kg未満、約6mg/kg未満、約5mg/kg未満、約4mg/kg未満、約3mg/kg未満、約2mg/kg、または約1mg/kg未満の有効量で投与されるPD-1拮抗薬である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【請求項12】
前記PD-1拮抗薬が、約100mg~約600mg、約120mg~約500mg、約140mg~約460mg、約180mg~約420mg、約200mg~約380mg、約220mg、~約340mg、約230mg~約300mg、または約230mg~約260mgの固定用量の有効量で投与される、請求項11に記載の使用のためのベクター。
【請求項13】
前記PD-1拮抗薬が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、カムレリズマブ、セミプリマブ、シンティリマブ、およびPDR001からなる群から選択される抗体である、請求項11または12に記載の使用のためのベクター。
【請求項14】
前記ベクターが、1種または複数の化学療法剤の有効量と組み合わせて投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【請求項15】
前記1種または複数の化学療法剤が、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドリアマイシン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アリムタ;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;メシル酸ビスナフィド;ベバシズマブ;ビゼレシン;ブレオマイシンサルフェート;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン(BiCNU);カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンシトレート;ドロモスタノロンプロピオネート;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンホスフェート;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;Gliadel(登録商標)ウェハ;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;ランレオチドアセテート;レトロゾール;ロイプロリドアセテート;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン(CCNU);ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パゾチニブ;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシンサルフェート;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プルメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;ソラフィニブ;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;スニチニブ;タリスマイシン;タキソール;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフイリン;チラパザミン;トポテカン塩酸塩;トレミフェンシトレート;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチンサルフェート;ビンクリスチンサルフェート;ビンデシン;ビンデシンサルフェート;ビネピジンサルフェート;ビングリシネートサルフェート;硫酸ビンロイロシン;ビノレルビンタータレート;ビンロシジンサルフェート;ビンゾリジンサルフェート;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;およびゾルビシン塩酸塩からなる群より選択される、請求項14に記載の使用のためのベクター。
【請求項16】
前記ベクターが、配列番号19を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【請求項17】
前記ベクターが、European Collection of Cell Cultures(ECACC)受入番号13021201を有する単離されたウィルスである、請求項1~16のいずれか1項に記載の使用のためのベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子申請配列表の参照
本出願と共に提出されたASCIIテキストファイルの電子申請配列表(ファイル名:3182_091PC01_Seqlisting_ST25;サイズ72,084バイト;および作成日2020年3月24日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月12日に出願された米国特許仮出願第62/833,402号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
血管新生は、いくつかの病態の一般的で主な特徴である。このような病態は、血管新生が病状を改善できる疾患(虚血性心疾患など)と、過剰な血管新生が病態の一部であり、従って、排除することが必要な疾患がある。後者の疾患は、糖尿病(糖尿病性網膜症)、心臓血管疾患(アテローム性動脈硬化症)、慢性炎症(関節リウマチ)、および癌を含む。血管新生は、腫瘍で発生し、腫瘍の成長、浸潤、および転移を可能にする。1971年に、Folkmanは、腫瘍増殖と転移が血管新生に依存しており、そのため、血管新生の阻害が腫瘍成長を停止する戦略となり得ることを提唱した。
【0004】
転写因子から増殖因子まで、血管新生に関与するいくつかの分子がある。低酸素は、新生血管形成をもたらす重要な環境要因であり、血管新生促進因子であるいくつかのサイトカインの放出を誘発する。このような因子には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)およびそれらの受容体、アンジオポエチンファミリーのメンバー、塩基性線維芽細胞増殖因子、およびエンドセリン-1(ET-1)がある。これらの因子は、内皮細胞の活性化、増殖、および遊走による血管新生の誘発に関与している。
【0005】
血管新生の内因性阻害薬の組換え型が、癌治療のために試験された。これらの組換え阻害薬の長期送達の薬物動態学上、生物工学上、および経済学上の潜在的な欠点が、科学者に他の手法を開発させることになった。
【0006】
抗VEGFモノクローナル抗体ベバシズマブの開発は、化学療法を補完する治療手法としての抗血管新生手法の有効性を確証した。第2世代のマルチターゲットチロシンキナーゼ阻害薬を含むいくつかの小分子阻害薬も、癌の抗血管新生剤として期待されている。
【0007】
免疫チェックポイントも腫瘍の増殖および進展において役割を果たす。例えば、本来、受容体/リガンド相互作用を介して自然に免疫チェックポイントを刺激することにより、腫瘍細胞は宿主免疫系を回避できる。従って、免疫チェックポイントを遮断する分子(例えば、免疫チェックポイント阻害薬)が、癌の治療のために試験された。しかし、これらの阻害剤は、少数の限られた腫瘍型を有するわずかな患者においてのみ成功したにすぎない。さらに、免疫チェックポイント療法に対する患者の応答には、再燃および疾患進行が続く場合が多い。
【0008】
組換え阻害薬、抗体、および小分子の長期送達の潜在的な薬物動態学上および経済学上の欠点、ならびに単剤療法として用いた場合に顕在化する活性の限界は、科学者に遺伝子治療を検討させることになった。しかし、発現期間、免疫応答の誘導、ベクターの細胞毒性、および組織特異性を含む、遺伝子治療の成功を制限するいくつかの障害がある。癌遺伝子療法の2つの一般戦略:腫瘍指令治療、または全身遺伝子治療、が提唱された。遺伝子治療製剤の全身治療による癌細胞またはその環境への標的化の成果が乏しいことは、ほとんどの治療を腫瘍自体に対し行わせた。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、それを必要とする対象において腫瘍サイズを縮小もしくは抑制する、または腫瘍を除去する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。本開示は、それを必要とする対象において腫瘍またはその転移を治療する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。本開示は、腫瘍を有する対象においてT細胞活性化を誘導する、または改善する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。本開示は、腫瘍を有する対象において免疫チェックポイント阻害薬の効力を誘発するまたは改善する方法も提供し、方法は、内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。本開示は、それを必要とする対象においてホット腫瘍へとコールド腫瘍を変換する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。
【0010】
いくつかの態様では、腫瘍は、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺癌、原発性脳腫瘍(多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)を含む)、胃腸(GI)癌(食道、胆嚢、胆道系、肝臓、膵臓、胃、小腸、大腸、結腸、直腸、および肛門を含む)、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、乳頭様甲状腺癌、神経芽腫、神経内分泌癌、性泌尿器管癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、前立腺癌、ミューラー管癌、卵巣癌、腹膜癌、卵管癌、または尿管血清癌、由来であるか、またはこれらに関連する。
【0011】
いくつかの態様では、Fasキメラ遺伝子は、Fasポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合されたTNF受容体1(TNFR1)ポリペプチドの細胞外ドメインを含むポリペプチドをコードする。いくつかの態様では、TNFR1の細胞外ドメインは、配列番号4と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含み、TNFR1の細胞外ドメインは、TNF-αに結合できる。いくつかの態様では、Fasポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインは、配列番号8と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含み、Fasポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインは、Fas媒介アポトーシスを誘導できる。いくつかの態様では、Fasキメラ遺伝子は、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一である第1のヌクレオチド配列、および、配列番号7と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一である第2のヌクレオチド配列を含む。
【0012】
本開示のいくつかの態様では、内皮細胞特異的プロモーターは、PPE-1プロモーターを含む。いくつかの態様では、内皮細胞特異的プロモーターは、シス作用性調節エレメントをさらに含む。いくつかの態様では、シス作用性調節エレメントは、配列番号15または配列番号16と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。本開示の特定の態様では、シス作用性調節エレメントは、配列番号11または配列番号12を含む。いくつかの態様では、シス作用性調節エレメントは、配列番号13または配列番号14をさらに含む。
【0013】
本開示のいくつかの態様では、内皮細胞特異的プロモーターは、PPE-1-3Xプロモーターである。いくつかの態様では、PPE-1-3Xプロモーターは、配列番号18と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるヌクレオチド配列を含み、PPE-1-3Xプロモーターは、内皮細胞中でのFasキメラ遺伝子発現を誘導できる。
【0014】
いくつかの態様では、ベクターの有効量は、1x1010~約1x1016、約1x1011~約1x1015、約1x1011~約1x1016、約1x1012~約1x1015、約1x1012~約1x1016、約1x1012~約1x1014、約5x1012~約1x1016、約5x1012~約1x1015、約5x1012~約1x1014、約1x1012~約1x1013、または約1x1013~約1x1014個のウィルス粒子の量で投与される。いくつかの態様では、ベクターの有効量は、約1x1016、1x1015、1x1014、5x1013、4x1013、3x1013、2x1013、1x1013、9x1012、8x1012、7x1012、6x1012、5x1012、4x1012、3x1012、2x1012、1x1012、9x1011、8x1011、7x1011、6x1011、5x1011、4x1011、3x1011、2x1011、1x1011、9x1010、8x1010、7x1010、6x1010、5x1010、4x1010、3x1010、2x1010、または1x1010個のウィルス粒子の量で投与される。
【0015】
本開示のいくつかの態様では、ベクターおよび免疫チェックポイント阻害薬は、順次投与される。いくつかの態様では、ベクターは、免疫チェックポイント阻害薬の前に投与される。特定の態様では、ベクターは、免疫チェックポイント阻害薬の前に投与され、免疫チェックポイントは、腫瘍進行時に投与される。他の態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、ベクターの前に投与される。
【0016】
いくつかの態様では、ベクターは、反復投与される。いくつかの態様では、ベクターは、毎日、約2日に1回、約3日に1回、約4日に1回、約5日に1回、約6日に1回、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約5週間に1回、約6週間に1回、約7週間に1回、約2か月に1回、または約6か月に1回反復投与される。
【0017】
本開示のいくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、反復投与される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約2か月に1回、約3か月に1回、約4か月に1回、約5か月に1回、または約6か月に1回反復投与される。
【0018】
本開示のいくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1拮抗薬である。いくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、約15mg/kg未満、約14mg/kg未満、約13mg/kg未満、約12mg/kg未満、約11mg/kg未満、約10mg/kg未満、約9mg/kg未満、約8mg/kg未満、約7mg/kg未満、約6mg/kg未満、約5mg/kg未満、約4mg/kg未満、約3mg/kg未満、約2mg/kg、または約1mg/kg未満の有効量で投与される。他の態様では、PD-1拮抗薬は、約100mg~約600mg、約120mg~約500mg、約140mg~約460mg、約180mg~約420mg、約200mg~約380mg、約220mg、~約340mg、約230mg~約300mg、または約230mg~約260mgの固定用量の有効量で投与される。いくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、約400mg~約600mg、約450mg~約520mg、約460mg~約510mg、または約470mg~約500mgの固定用量の有効量で投与される。いくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、約300mg、約320mg、約340mg、約360mg、約380mg、約400mg、約420mg、約440mg、約460mg、約480mg、約500mg、約520mg、約540mg、約560mg、約580mg、または約600mgの固定用量の有効量で投与される。
【0019】
特定の態様では、PD-1拮抗薬は、PD-1に結合する抗体である。いくつかの態様では、抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、またはキメラ抗体である。さらに特定の態様では、抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、カムレリズマブ、セミプリマブ、シンティリマブ、およびPDR001からなる群から選択される。特定の態様では、PD-1拮抗薬は、ニボルマブである。
【0020】
本開示のいくつかの態様では、ベクターは、3x1012~3x1013ウィルス粒子の有効量で投与され、ニボルマブは、2mg/kg~12mg/kgの有効量で投与される。他の態様では、ベクターは、3x1012~3x1013ウィルス粒子の有効量で投与され、ニボルマブは、460mg~500mgの固定用量で投与される。
【0021】
いくつかの態様では、ベクターは、2か月毎に投与され、ニボルマブは、2週毎に投与される。他の態様では、ベクターは、2か月毎に投与され、ニボルマブは、2か月毎に投与される。いくつかの態様では、ニボルマブは、ベクターの各投与の1か月後に投与される。
【0022】
本開示のいくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、PD-L1に結合する抗体である。いくつかの態様では、抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、またはキメラ抗体である。特定の態様では、抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびBMS-936559からなる群から選択される。
【0023】
本開示のいくつかの態様は、1種または複数の化学療法剤の有効量を対象にさらに投与することを含む。いくつかの態様では、1種または複数の化学療法剤は、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドリアマイシン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アリムタ;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;メシル酸ビスナフィド;ベバシズマブ;ビゼレシン;ブレオマイシンサルフェート;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン(BiCNU);カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンシトレート;ドロモスタノロンプロピオネート;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンホスフェート;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;Gliadel(登録商標)ウェハ;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;ランレオチドアセテート;レトロゾール;ロイプロリドアセテート;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン(CCNU);ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パゾチニブ;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシンサルフェート;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プルメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;ソラフィニブ;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;スニチニブ;タリスマイシン;タキソール;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフイリン;チラパザミン;トポテカン塩酸塩;トレミフェンシトレート;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチンサルフェート;ビンクリスチンサルフェート;ビンデシン;ビンデシンサルフェート;ビネピジンサルフェート;ビングリシネートサルフェート;硫酸ビンロイロシン;ビノレルビンタータレート;ビンロシジンサルフェート;ビンゾリジンサルフェート;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;およびゾルビシン塩酸塩からなる群より選択される。
【0024】
本開示の特定の態様では、ベクターは、配列番号19を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。いくつかの態様では、ベクターは、European Collection of Cell Cultures(ECACC)受入番号13021201を有する単離ウィルスである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】抗PD-L1抗体およびAd5-PPE-1-3X-Fas-cベクターであるVB-111の併用療法のための試験デザインを示す。3日間の環境順化:マウスを、疾患誘導の前に3日間それらのケージ中で順化させた;疾患誘導:マウスの足蹠にD122細胞(転移性肺腫瘍モデル)を接種し、腫瘍が7mm
3に達するまで腫瘍増殖について監視した;肢切断 0日目:腫瘍が標的サイズに達すると、腫瘍を、肢切断により取り出し、「0日目」をスタートした;VB-111 I.V.:腫瘍肢切断の5日後に、マウスを、VB-111ベクターの静脈内注射により治療した;抗PD-L1抗体:いくつかのマウス群は、VB-111が5日目に投与される一方で、5、8、および11日目に抗PD-L1抗体も腹腔内投与された。
【
図2】生理食塩水(対照)、VB-111単独(1x10
11または1x10
9個のウィルス粒子)、抗PD-L1抗体単独(200μg)、または抗PD-L1抗体(200μg)と組み合わせたVB-111(1x10
11個のウィルス粒子)で治療後のマウスの肺重量(グラム)を示す。
【
図3】生理食塩水(対照)、VB-111単独(1x10
11または1x10
9個のウィルス粒子)、抗PD-L1抗体単独(200μg)、または抗PD-L1抗体(200μg)と組み合わせたVB-111(1x10
11個のウィルス粒子)で治療後のマウスの肺腫瘍量(グラム)を示す。
【
図4】生理食塩水(四角)、1x10
11個のVB-111ウィルス粒子単独(丸)、200μgの抗PD-L1抗体単独(三角)、または200μgの抗PD-L1抗体と組み合わせた1x10
11個のVB-111ウィルス粒子(星型)で治療後のマウスの黒色腫腫瘍体積(mm
3)を示す。矢印は、9日目、12日目、および14日目の治療を示す。I.V.:静脈内;I.P.:腹腔内。
【
図5】抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブと組み合わせたVB-111療法試験の第1/II相臨床試験の第1セグメントのための試験デザインを示す。このデザインでは、対象は、3mg/kgのニボルマブを組み合わせた、3x10
12個のVB-111ウィルス粒子または1x10
13個のVB-111ウィルス粒子を投与される。DLT:用量規制毒性。
【
図6】抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブと組み合わせたVB-111療法試験の第I/II相臨床試験の第2セグメントのための試験デザインを示す。第2のセグメントでは、対象は、3mg/kgのニボルマブと組み合わせた3x10
13個のVB-111ウィルス粒子(群1)または3mg/kgのニボルマブ(群2)を投与される。DLT:用量規制毒性。
【
図7】難治性進行型転移性結腸直腸癌の患者における、抗PD1抗体のニボルマブと組み合わせたVB-111の非盲検、単一群第2相試験のための試験デザインを示す。患者は、サイクル1の1日目またはサイクル4の1日目に、治療前生検および1回の治療後生検を受ける。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態
1.それを必要としている対象において腫瘍のサイズを縮小するもしくは腫瘍の増殖を抑制するまたは腫瘍を除去する方法であって、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む方法。
2.それを必要としている対象において腫瘍またはその転移を治療する方法であって、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む方法。
3.腫瘍を有する対象においてT細胞活性化を誘導する、または改善する方法であって、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む方法。
4.腫瘍を有する対象において免疫チェックポイント阻害薬の効力を誘発するまたは改善する方法であって、内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む方法。
5.それを必要としている対象においてホット腫瘍へとコールド腫瘍を変換する方法であって、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む方法。
6.腫瘍が、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺癌、原発性脳腫瘍(多形神経膠芽腫を含む)、胃腸(GI)癌(食道、胆嚢、胆道系、肝臓、膵臓、胃、小腸、大腸、結腸、直腸、および肛門を含む)、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、乳頭様甲状腺癌、神経芽腫、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、神経内分泌癌、性泌尿器管癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、前立腺癌、ミューラー管癌、 卵巣癌、腹膜癌、卵管癌、または尿管血清癌、由来であるか、またはこれらに関連する、実施形態1~5のいずれか1項に記載の方法。
7.Fasキメラ遺伝子が、Fasポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合されたTNF受容体1(TNFR1)ポリペプチドの細胞外ドメインを含むポリペプチドをコードする、実施形態1~6のいずれか1項に記載の方法。
8.TNFR1の細胞外ドメインが、配列番号4と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含み、TNFR1の細胞外ドメインが、TNF-α に結合できる、実施形態7に記載の方法。
9.Fasポリペプチドの膜貫通ドメインおよび前記細胞内ドメインが、配列番号8と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含み、上記Fasポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインが、Fas媒介アポトーシスを誘導できる、実施形態8に記載の方法。
10.Fasキメラ遺伝子が、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一である第1のヌクレオチド配列、および、配列番号7と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一である、第2のヌクレオチド配列を含む、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
11.内皮細胞特異的プロモーターが、PPE-1プロモーターを含む、実施形態1~10のいずれか1項に記載の方法。
12.内皮細胞特異的プロモーターが、シス作用性調節エレメントさらに含む、実施形態1~11のいずれか1項に記載の方法。
13.シス作用性調節エレメントが、配列番号15または配列番号16と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるヌクレオチド配列を含む、実施形態12に記載の方法。
14.シス作用性調節エレメントが、配列番号11または配列番号12を含む、実施形態13に記載の方法。
15.シス作用性調節エレメントが、配列番号13または配列番号14をさらに含む、実施形態14に記載の方法。
16.内皮細胞特異的プロモーターが、PPE-1-3Xプロモーターである、実施形態1~15のいずれか1項に記載の方法。
17.PPE-1-3Xプロモーターが、配列番号18と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるヌクレオチド配列を含み、PPE-1-3Xプロモーターが、内皮細胞中でのFasキメラ遺伝子発現を誘導できる、実施形態16に記載の方法。
18.ベクターの有効量が、1x1010~約1x1016、約1x1011~約1x1015、約1x1011~約1x1016、約1x1012~約1x1015、約1x1012~約1x1016、約1x1012~約1x1014、約5x1012~約1x1016、約5x1012~約1x1015、約5x1012~約1x1014、約1x1012~約1x1013、または約1x1013~約1x1014個のウィルス粒子の量で投与される、実施形態1~17のいずれか1項に記載の方法。
19.ベクターの有効量が、約1x1016、1x1015、1x1014、5x1013、4x1013、3x1013、2x1013、1x1013、9x1012、8x1012、7x1012、6x1012、5x1012、4x1012、3x1012、2x1012、1x1012、9x1011、8x1011、7x1011、6x1011、5x1011、4x1011、3x1011、2x1011、1x1011、9x1010、8x1010、7x1010、6x1010、5x1010、4x1010、3x1010、2x1010、または1x1010個のウィルス粒子の量で投与される、実施形態1~18のいずれか1項に記載の方法。
20.ベクターおよび免疫チェックポイント阻害薬が、順次投与される、実施形態1~19のいずれか1項に記載の方法。
21.ベクターが、免疫チェックポイント阻害薬の前に投与される、実施形態20に記載の方法。
22.免疫チェックポイントが、腫瘍進行時に投与される、実施形態21に記載の方法。
23.免疫チェックポイント阻害薬が、ベクターの前に投与される、実施形態20に記載の方法。
24.ベクターが、反復投与される、実施形態1~23のいずれか1項に記載の方法。
25.ベクターが、毎日、約2日に1回、約3日に1回、約4日に1回、約5日に1回、約6日に1回、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約5週間に1回、約6週間に1回、約7週間に1回、約2か月に1回、または約6か月に1回反復投与される、実施形態24に記載の方法。
26.免疫チェックポイント阻害薬が、反復投与される、実施形態1~25のいずれか1項に記載の方法。
27.免疫チェックポイント阻害薬が、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約2か月に1回、約3か月に1回、約4か月に1回、約5か月に1回、または約6か月に1回反復投与される、実施形態26に記載の方法。
28.免疫チェックポイント阻害薬が、PD-1拮抗薬である、実施形態1~27のいずれか1項に記載の方法。
29.PD-1拮抗薬が、約15mg/kg未満、約14mg/kg未満、約13mg/kg未満、約12mg/kg未満、約11mg/kg未満、約10mg/kg未満、約9mg/kg未満、約8mg/kg未満、約7mg/kg未満、約6mg/kg未満、約5mg/kg未満、約4mg/kg未満、約3mg/kg未満、約2mg/kg、または約1mg/kg未満の有効量で投与される、実施形態28に記載の方法。
30.PD-1拮抗薬が、約100mg~約600mg、約120mg~約500mg、約140mg~約460mg、約180mg~約420mg、約200mg~約380mg、約220mg、~約340mg、約230mg~約300mg、または約230mg~約260mgの固定用量の有効量で投与される、実施形態28に記載の方法。
31.PD-1拮抗薬が、約400mg~約600mg、約450mg~約520mg、約460mg~約510mg、または約470mg~約500mgの固定用量の有効量で投与される、実施形態28に記載の方法。
32.PD-1拮抗薬が、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、約300mg、約320mg、約340mg、約360mg、約380mg、約400mg、約420mg、約440mg、約460mg、約480mg、約500mg、約520mg、約540mg、約560mg、約580mg、または約600mgの固定用量の有効量で投与される、実施形態28に記載の方法。
33.PD-1拮抗薬が、PD-1に結合する抗体である、実施形態28~32のいずれか1項に記載の方法。
34.抗体が、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、またはキメラ抗体である、実施形態33に記載の方法。
35.抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、カムレリズマブ、セミプリマブ、シンティリマブ、およびPDR001からなる群から選択される、実施形態33または34に記載の方法。
36.PD-1拮抗薬が、ニボルマブである、実施形態28~35のいずれか1項に記載の方法。
37.PD-1拮抗薬が、PD-L1に結合する抗体である、実施形態28~32のいずれか1項に記載の方法。
38.抗体が、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、またはキメラ抗体である、実施形態37に記載の方法。
39.抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびBMS-936559からなる群から選択される、実施形態37または38に記載の方法。
40.1種または複数の化学療法剤の有効量を対象に投与することをさらに含む、実施形態1~39のいずれか1項に記載の方法。
41.1種または複数の化学療法剤が、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドリアマイシン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アリムタ;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;メシル酸ビスナフィド;ベバシズマブ;ビゼレシン;ブレオマイシンサルフェート;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン(BiCNU);カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンシトレート;ドロモスタノロンプロピオネート;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンホスフェート;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;Gliadel(登録商標)ウェハ;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;ランレオチドアセテート;レトロゾール;ロイプロリドアセテート;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン(CCNU);ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パゾチニブ;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシンサルフェート;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プルメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;ソラフィニブ;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;スニチニブ;タリスマイシン;タキソール;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフイリン;チラパザミン;トポテカン塩酸塩;トレミフェンシトレート;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチンサルフェート;ビンクリスチンサルフェート;ビンデシン;ビンデシンサルフェート;ビネピジンサルフェート;ビングリシネートサルフェート;硫酸ビンロイロシン;ビノレルビンタータレート;ビンロシジンサルフェート;ビンゾリジンサルフェート;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;およびゾルビシン塩酸塩からなる群より選択される、実施形態40に記載の方法。
42.ベクターが、配列番号19を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる、実施形態1~41のいずれか1項に記載の方法。
43.ベクターが、European Collection of Cell Cultures(ECACC)受入番号13021201を有する単離ウィルスである、実施形態1~42のいずれか1項に記載の方法。
【0027】
本開示の詳細な説明
I.定義
特に断らない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合には、定義を含む本出願が優先される。特に文脈上の必要がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書で言及する全ての刊行物、特許、およびその他の参考文献は、個別の刊行物または特許出願がそれぞれ具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれた場合と同様に、目的を問わず参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
本明細書の記載と類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に用いることができるが、好適な方法および材料を後述する。材料、方法、および実施例は単なる例示であり、限定することを意図しない。本開示の他の特長および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0029】
本開示をさらに定義するために、以下の用語および定義を規定する。
【0030】
「a」実体または「an」実体という用語は、その実体の1つまたは複数を指し;例えば、「a polynucleotide」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドを表すと理解される。したがって、「a」(または「an」)、「1つまたは複数」、および「少なくとも1つ」という用語は同じ意味に使用できる。
【0031】
本明細書で使われる場合、「および/または(and/or)」は、その他のものを含むまたは含まない2つの指定された特徴または成分のそれぞれの特殊な開示として解釈されるべきである。従って、「Aおよび/またはB」などの表現で使用される用語の「および/または」は本明細書では、「AおよびB」、「AまたはB」、「A(単独)、およびB(単独)」を含むことが意図される。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの表現で使用される用語の「および/または」はそれぞれ次の態様を包含する:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0032】
用語「約(about)」は、本明細書で概算、おおよそ、ほぼ、またはその範囲内を意味して使用される。用語「約」が数値範囲と組み合わせて使用される場合、示された数値の上下に範囲を広げることにより数値範囲が変化する。概して用語「約」は、指定した値の上下の数値が上下(大小)10パーセントの変動差で変化する際に本明細書で使用される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、完全な免疫グロブリン、その抗原結合フラグメント、または抗原結合分子を意味する。本開示の抗体は、任意のアイソタイプもしくはクラス(例えば、M、D、G、E、およびA)または任意のサブクラス(例えば、G1~4、A1~2)のものであり得、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかのものであり得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、必要な投与量および期間で、望ましい結果を得るのに有効な量を指す。望ましい結果は、例えば、インビトロまたはインビボでの新生血管形成または血管新生の低減または抑制;腫瘍サイズの低減または抑制;またはT細胞活性化の誘導または改善であり得る。有効量は、「治癒」する、または新生血管形成もしくは血管新生が完全に除去される必要はない。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍のサイズまたは体積を低減させ得る。いくつかの実施形態では、有効量は、癌の1種または複数の症状を低減、または回復させ得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、語句「腫瘍を治療すること」は、腫瘍の成長を抑制すること、腫瘍サイズを縮小すること、腫瘍を除去すること、腫瘍の再発を防止すること、およびそれらの組み合わせを意味する。
【0036】
用語「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド」は、単一の核酸のみならず複数の核酸を包含することが意図され、単離された核酸分子または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、従来型ホスホジエステル結合または非従来型結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、または「核酸」は、同義に使用でき、非翻訳5´配列および3´配列、コード配列を含む全長cDNA配列、ならびに核酸配列のフラグメント、エピトープ、ドメイン、およびバリアントのヌクレオチド配列を含む。ポリヌクレオチドは、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドで構成されてよく、これは非修飾RNAもしくはDNAであっても、または修飾RNAもしくはDNAであってもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるRNA、すなわち一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であるかまたは一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。加えて、ポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域から構成されてもよい。ポリヌクレオチドはまた、安定化のためまたは他の理由で、1種または複数の修飾塩基または修飾されたDNAもしくはRNA骨格も含み得る。「修飾」塩基は、例えばトリチル化塩基、およびイノシンなどの特殊な塩基を含む。DNAおよびRNAにさまざまな修飾を加えることができ、従って、「ポリヌクレオチド」は、化学修飾、酵素修飾、または代謝修飾型を包含する。
【0038】
本開示では、ポリペプチドは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸、すなわちペプチド等配電子体から構成されてよく、20種類の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸(例えば、非天然アミノ酸)を含み得る。本開示のポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの、自然な過程によって修飾されてよく、または当技術分野で周知の化学修飾技術によって修飾されてもよい。このような修飾は、基礎的な教科書および詳細な専攻論文、ならびに膨大な研究文献で十分に説明されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含む、ポリペプチドのどの位置で起こってもよい。同じ種類の修飾が、所与のポリペプチドの数部位に同程度または異なる程度で存在し得るものと理解されよう。また、所与のポリペプチドが多種類の修飾を含んでもよい。ポリペプチドは、例えばユビキチン化の結果として分岐していてよく、分岐の有無にかかわらず環状であってよい。環状の、分岐した、および分岐した環状のポリペプチドは、翻訳後の自然な過程から生じても、または合成法によって作製されてもよい。修飾は、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAを介在するタンパク質へのアミノ酸の付加(アルギニル化など)、およびユビキチン化を含む。(例えば、Proteins-Structure And Molecular Properties,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993);Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pgs.1-12(1983);Seifter et al.,Meth Enzymol 182:626-646(1990);Rattan et al.,Ann NY Acad Sci 663:48-62(1992)を参照)。
【0039】
「フラグメント」、「バリアント」、「誘導体」、および「類似体」という用語は、本開示の任意のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに言及する場合、少なくともいくつかの活性、すなわち、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの何らかの自然機能として機能する能力を保持する任意のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを包含する。例えば、腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)の「フラグメント」、「バリアント」、「誘導体」、および「類似体」は、天然に起こる全長TNFR1のいくつかの活性、例えばTNFR1リガンド、すなわちTNF-アルファまたはリンホトキシンへ結合する能力を有する。別の例では、FASポリペプチドの「フラグメント」、「バリアント」、「誘導体」、および「類似体」は、天然に起こる完全長Fasポリペプチドのいくつかの活性、例えばアポトーシス誘導能力を有する。他の例では、内皮細胞特異的プロモーターの「フラグメント」、「バリアント」、「誘導体」、および「類似体」は、プロモーターに動作可能に連結された遺伝子の内皮細胞特異的発現を誘導できる。TNFR1、FASポリペプチド、および内皮細胞特異的プロモーターの種々のフラグメント、バリアント、類似体、または誘導体の追加の非限定的な例は、以下に記載されている。
【0040】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列間の「配列同一性パーセント」という用語は、2つの配列を最適にアライメントするために導入される必要がある付加または欠失(すなわちギャップ)を考慮して、比較域にわたって配列が共有する完全に一致した位置の数を指す。一致した位置は、標的配列と参照配列の両方に同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が存在する任意の位置である。ギャップはヌクレオチドでもアミノ酸でもないため、標的配列に存在するギャップは、カウントされない。同様に、参照配列のヌクレオチドまたはアミノ酸ではなく、標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸がカウントされるため、参照配列に存在するギャップは、カウントされない。
【0041】
配列同一性のパーセントは、両方の配列中に同一のアミノ酸残基または核酸塩基が出現する位置の数を決定して、一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を比較域内の総位置数で除算すること、その結果に100を乗じて、配列同一性のパーセントを得ることにより算出される。配列の比較および2つの配列間の配列同一性パーセントの決定は、オンラインでの使用およびダウンロードのいずれでも容易に使用可能なソフトウェアを使用して達成できる。好適なソフトウェアプログラムは、様々な供給元から入手可能であり、タンパク質配列とヌクレオチド配列の両方のアライメントに対して使用可能である。配列同一性パーセントを決定する好適なプログラムの一つは、米国政府のNational Center for Biotechnology InformationのBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTプログラムスイートの一部であるbl2seqである。bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPいずれかのアルゴリズムを用いて、2つの配列間の比較を実施する。BLASTNは、核酸配列の比較に使用され、一方でBLASTPは、アミノ酸配列の比較に使用される。他の好適なプログラムは、例えば、EMBOSSバイオインフォマティクスプログラムスイートの一部である、Needle、Stretcher、Water、またはMatcherであり、www.ebi.ac.uk/Tools/psaのEuropean Bioinformatics Institute(EBI)からも入手可能である。
【0042】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列とともに整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ固有の配列同一性パーセントを有してよい。配列同一性パーセント値は小数第1位に四捨五入されることに留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、および80.14は、80.1に切り下げられ、一方で80.15、80.16、80.17、80.18、および80.19は、80.2に切り上げられる。長さの値は常に整数であることにも留意されたい。
【0043】
当業者であれば、配列同一性パーセントの算出のための配列アライメントの生成は、一次配列データによってのみ導出される2つの配列間比較に限定されないと理解されるであろう。配列アライメントは、複数の配列アライメントから導出できる。複数の配列アライメントを生成する好適なプログラムの一つは、www.clustal.orgから入手可能なClustalW2である。別の好適なプログラムは、www.drive5.com/muscle/から入手可能なMUSCLEである。あるいは、ClustalW2およびMUSCLEは、例えばEBIから入手可能である。
【0044】
配列アライメントは、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、または系統発生学的データなどの、異種情報源からのデータと配列データを統合することによって生成できることも理解されるであろう。異種データを統合して複数の配列アライメントを生成する好適なプログラムは、www.tcoffee.orgで入手可能な、あるいは例えばEBIから入手可能なT-Coffeeである。配列同一性パーセントの算出に使用される最終的なアライメントを、自動でまたは手動で収集できることも理解されるであろう。
【0045】
本明細書で使用される場合、「連結される」、「融合される」、「融合」、「キメラの」、および「キメラ」という用語は、同義に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含むいかなる手段により、2つ以上のエレメントまたは成分を共に連結することを指す。「インフレーム融合」は、元のオープンリーディングフレーム(ORF)の正しいリーディングフレームを維持する様式で、2つ以上のORFを連結して、連続する長いORFを形成することを指す。従って、組換え融合タンパク質またはキメラタンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する単一のタンパク質である(これらのセグメントは通常、天然ではそのように連結されない)。リーディングフレームはこのように融合セグメント全体にわたって連続にされるが、これらのセグメントが、例えばインフレームのリンカー配列によって物理的または空間的に分離されてもよい。
【0046】
「異種ヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチドが、それが比較される配列実体とは異なった配列実体に由来することを意味する。例えば、異種ポリヌクレオチドは、合成であり、または異なる種、1つの個体の異なる細胞型、または異なる個体の同じ細胞型もしくは異なる細胞型に由来してもよい。一態様では、異種ヌクレオチド配列は、融合ポリヌクレオチドを生成するように別のポリヌクレオチドに動作可能に連結されたポリヌクレオチドであり得る。いくつかの態様では、異種ヌクレオチド配列は、ポリペプチドをコードし得る。例えば、異種ヌクレオチド配列は、ポリペプチドをコードする遺伝子に動作可能に連結されたプロモーターエレメントであり得る。異種ヌクレオチド配列は、ポリペプチドをコードする遺伝子に動作可能に連結された他のシス調節エレメントも含み得る。他の態様では、異種ヌクレオチド配列は、ポリペプチドをコードしない。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「発現」は、それにより遺伝子が生化学物質、例えばRNAまたはポリペプチドを産生する過程を指す。この過程は、限定されないが、遺伝子ノックダウンならびに一過性発現および安定発現の両方を含む、細胞内での遺伝子の機能的存在の何らかの顕在化を包含する。それは、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、または他の任意のRNA産物への遺伝子の転写、およびこのようなmRNAのポリペプチドへの翻訳を含むが、これに限定されない。望ましい最終産物が生化学物質である場合、発現は、その生化学物質および任意の前駆物質の生成を含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「相補性決定領域」(CDR)は、抗原への結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。抗体のCDR領域は、抗体の重鎖および軽鎖両方の超可変領域内に存在する。完全長抗体は、重鎖可変ドメインに3つのCDR領域と軽鎖可変ドメインに3つのCDR領域を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「抗腫瘍応答」という用語は、腫瘍の存在に対する対象の身体応答を指す。例えば、いくつかの態様では、本開示における抗腫瘍応答は、抗腫瘍免疫応答であり得る。いくつかの態様では、抗腫瘍免疫応答は、腫瘍床内の腫瘍浸潤CD8+リンパ球の存在を特徴とする。いくつかの態様では、抗腫瘍免疫応答は、対象の特定のサイトカインプロファイルを特徴とする。いくつかの態様では、抗腫瘍免疫応答は、腫瘍マーカーまたは腫瘍組織に対する対象中の循環抗腫瘍抗体の存在を特徴とする。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「コールド腫瘍」は、腫瘍内にほとんどまたは全く免疫細胞が存在しない腫瘍を指す。例えば、コールド腫瘍は、腫瘍微小環境内に、腫瘍浸潤リンパ球(例えば、T細胞およびB細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはマクロファージがほとんどまたは全く存在し得ない。腫瘍は、コールド腫瘍であるために、免疫細胞を完全に欠く必要はない。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「ホット腫瘍」は、コールド腫瘍に比べて、腫瘍内で免疫細胞の存在が増大した腫瘍を指す。例えば、ホット腫瘍は、コールド腫瘍に比べて、腫瘍微小環境内で、腫瘍浸潤リンパ球(例えば、T細胞およびB細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはマクロファージの存在が増大し得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「免疫チェックポイント」は、免疫系の正または負の調節因子として機能する生体分子を指す。免疫チェックポイントは、自己免疫寛容を維持する、自己免疫性を防止する、免疫付帯的損害から組織を保護することにおいて役割を果たす。免疫チェックポイント分子は、限定されないが、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、グルココルチコイド誘導TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、VISTA、およびシグレック7を含んでよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「反復して投与される」は、規定された一定間隔での反復される基準による治療薬の投与を指す。各投与間の時間間隔は、反復投与の過程中に変更されてよく、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、またはそれを超える長さであり得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「併用療法」は、疾患または状態を治療するための2種類以上の治療法の投与を指す。本開示の一態様では、併用療法は、ベクターおよび免疫チェックポイント阻害薬の、それを必要とする対象への投与を指す。いくつかの実施形態では、併用療法は、ベクターを投与する前にチェックポイント阻害剤を投与することを含む。別の実施形態では、併用療法は、ベクターの投与と同時にチェックポイント阻害剤を投与することを含む。別の実施形態では、併用療法は、ベクターを投与した後にチェックポイント阻害剤を投与することを含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「アデノウィルス」という用語は、アデノウィルス科ファミリーのヒトアデノウィルスを指す。本開示のアデノウィルスは、例えば、種A(血清型12、18、および31)、種B(血清型3、7、11、14、16、21、34、35、50、および55)、種C(血清型1、2、5、6、および57)、種D(8、9、10、13、15、17、19、20、22~30、32、33、36~39、42~49、51、53、54、および56)、種E(血清型4)、種F(血清型40および41)、または種G(血清型52)を含む、7種および57血清型のいずれか1つ由来のアデノウィルスを含み得る。本明細書で使用される場合、用語「アデノウィルスベクター」は、天然野生型ウィルスとは異なる挙動をするように遺伝子改変されたアデノウィルスを指す。例えば、アデノウィルスベクターは、それが特定のパッケージング細胞株の外側で複製できないように改変され得る。いくつかの態様では、アデノウィルスベクターは、1個または複数の非アデノウィルスタンパク質をコードする遺伝子を保持するように遺伝子改変される。
【0056】
II.本開示の治療方法
異なる腫瘍型を治療するために多種多様の化学療法剤が利用可能であるが、癌は、世界的に、死亡の主要な原因の1つのままである。化学療法剤は多くの場合、それらの急速に分裂する細胞の非特異的標的化に起因する望ましくない毒性を有し、腫瘍細胞および急速に分裂する健康な細胞の両方を死滅させる。他の薬剤は、特定の遺伝子変異を有する特定の腫瘍型の治療に限定される。これらの問題は、原発腫瘍が身体の他の領域に転移する場合に事態を悪化させ、効果的な治療をさらに困難にする。
【0057】
免疫チェックポイントは、増殖および進展において役割を果たす。受容体/リガンド相互作用を介して免疫チェックポイントを自然に刺激することにより、腫瘍細胞は宿主免疫系を回避できる。従って、免疫チェックポイントを遮断する分子(例えば、免疫チェックポイント阻害薬)が、癌の治療のために試験された。しかし、これらの阻害剤は、少数の限られた腫瘍型を有するわずかな患者においてのみ成功したにすぎない。さらに、免疫チェックポイント療法に対する患者の応答には、再燃および疾患進行が続く場合が多い。
【0058】
本開示は、それを必要とする対象において腫瘍サイズを縮小もしくは抑制する、または腫瘍を除去する方法を提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。特定の態様では、対象における腫瘍サイズが、ベクターの投与のない対象の腫瘍に比べて低減または抑制される、または腫瘍が除去される。
【0059】
本開示は、それを必要とする対象において腫瘍またはその転移を治療する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。特定の態様では、ベクターの投与のない対象の腫瘍に比べて、対象の腫瘍またはその転移が治療される。自然に免疫チェックポイントを刺激することにより、腫瘍細胞は、抗腫瘍T細胞活性を下方制御し、宿主の抗腫瘍免疫応答を回避できる。これは、腫瘍誘導T細胞寛容をもたらし、腫瘍が宿主免疫系により抑制されないで増殖し続けることを可能にする。従って、免疫チェックポイント阻害薬は、癌治療薬として研究される。しかし、免疫チェックポイント阻害薬は、「コールド腫瘍」-腫瘍内にほとんどまたは全く免疫細胞が存在しない腫瘍-に対しては効果的な治療薬ではない。コールド腫瘍は、腫瘍微小環境内に、腫瘍浸潤リンパ球(例えば、T細胞およびB細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはマクロファージをほとんどまたは全く有し得ない。対照的に、ホット腫瘍は、コールド腫瘍に比べて、腫瘍内で免疫細胞の存在が増大した腫瘍である。例えば、ホット腫瘍は、コールド腫瘍に比べて、腫瘍微小環境内で、腫瘍浸潤リンパ球(例えば、T細胞およびB細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはマクロファージの増大された存在を有し得る。
【0060】
本開示は、腫瘍を有する対象においてT細胞活性化を誘導する、または改善する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。特定の態様では、T細胞活性化が、ベクターの投与のない対象におけるT細胞活性化に比べて、対象中で誘導または改善される。
【0061】
本開示は、免疫チェックポイント阻害薬の効力を誘発するまたは改善する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。特定の態様では、対象の免疫チェックポイント阻害薬の効力が、ベクターの投与のない対象における免疫チェックポイント阻害薬の効力に比べて、対象中で誘導または改善される。
【0062】
本開示は、それを必要とする対象においてホット腫瘍へとコールド腫瘍を変換する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。特定の態様では、対象中のコールド腫瘍が、ベクターの投与のない対象におけるコールド腫瘍に比べて、ホット腫瘍に変換される。
【0063】
腫瘍増殖は、限定されないが、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、機能性MRI(fMRI)スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、または陽電子放出断層撮影(PET)スキャンを含む、当該技術分野において既知の技術により測定できる。特定の態様では、腫瘍の成長は、MRIにより測定される。いくつかの態様では、対象の腫瘍は、ベクターによる治療中に生じた再発性腫瘍である。さらに他の実施形態では、対象の腫瘍は、ベクターによる治療中に生じた転移性腫瘍である。
【0064】
いくつかの態様では、本開示の方法は、対象の全生存期間を増大させる。いくつかの態様では、本開示の方法は、対象において無増悪生存期間を増大させる。
【0065】
用語「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、任意の対象、特に、本開示の方法に対し正の反応を有する、または有することが予測される哺乳動物対象を意味する。いくつかの態様では、対象は、ヒトである。いくつかの態様では、対象は、癌患者である。
【0066】
A.免疫チェックポイント阻害薬
本開示の方法は、内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、およびまた有効量の免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与することを含む。
【0067】
免疫チェックポイントは、免疫応答の刺激または抑制に関与する生体分子である。免疫系は本来、腫瘍抗原を含む細胞に対する抗腫瘍免疫応答を活性化することにより、腫瘍細胞を除去することを試みる。抗腫瘍免疫応答は、腫瘍特異的CD8+リンパ球(細胞傷害性T細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、および他の免疫細胞を含み、これらは、腫瘍部位に移動し、腫瘍に浸潤し、腫瘍細胞を死滅させる。免疫応答過程を通して、種々のシグナル伝達チェックポイントが所定の場所でT細胞活性化を刺激または抑制し、それにより抗腫瘍応答の程度と期間を調節する。
【0068】
いくつかの免疫チェックポイントは、免疫応答を刺激する一因である(例えば、T細胞活性化の刺激)。刺激性免疫チェックポイントは、限定されないが、CD27、CD28、CD40、CD40L(CD154)、CD58、CD80、CD86、CD122、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、CD252(OX40L)、およびCD278(ICOS)を含む。他の免疫チェックポイントは、免疫応答に対し抑制効果を及ぼす(例えば、T細胞活性化の抑制)。抑制性免疫チェックポイントは、限定されないが、アデノシンA2A受容体(A2AR)、CD152(CTLA-4)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、IDO、TDO、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、NOX2、VTCN1(B7-H4)、PD-1、PD-L1、PD-L2、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(TIM3)、CD328(シグレック7)、CD329(シグレック9)、およびIgおよびITIMを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)を含む。
【0069】
腫瘍は、抑制性免疫チェックポイントと、抗腫瘍応答の下方制御を組み合わせることにより、宿主抗腫瘍応答を回避できる。従って、免疫チェックポイントを遮断する分子(例えば、免疫チェックポイント阻害薬)が、癌の治療のために調査された。しかし、これらの阻害剤は、いくつかの限られた腫瘍型を有するわずかな患者でのみ成功したにすぎない。さらに、免疫チェックポイント阻害薬療法に対する患者の応答には、再燃および疾患進行が続く場合が多い。
【0070】
いくつかの態様では、本開示の方法で有用な免疫チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイント受容体または免疫チェックポイント受容体リガンドに結合する分子である。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、抗体である。いくつかの態様では、抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、またはキメラ抗体である。別の態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、Fab、F(ab’)2、Fv、またはscFvを含む。
【0071】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞活性化の抑制に関与する免疫チェックポイント受容体または免疫チェックポイント受容体リガンドに結合する。特定の態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、A2A受容体(A2AR)、CD152(CTLA-4)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、IDO、TDO、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、NOX2、VTCN1(B7-H4)、PD-1、PD-L1、PD-L2、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(TIM3)、CD328(シグレック7)、CD329(シグレック9)、およびIgおよびITIMを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)のT細胞刺激活性を抑制する分子である。
【0072】
B.PD-1拮抗薬
本開示の特定の態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1拮抗薬である。PD-1、プログラム細胞死1は、インビボでT細胞応答の抑制に関与する細胞表面受容体である。プログラム死リガンド1(PD-L1)として既知のB7ホモログは、PD-1の天然のリガンドであり、PD-1受容体への結合により、そのT細胞抑制シグナルを送達する。ほとんどの正常なヒト組織は、細胞表面上でPD-L1を発現しない。しかし、ヒト癌は、細胞表面上で大量のPD-L1を発現する。腫瘍細胞の表面上に発現したPD-L1と、T細胞の表面上のPD-1との結合は、T細胞アポトーシス、T細胞疲弊、T細胞アネルギー、T細胞IL-10産生、および樹状細胞抑制をもたらし得る。これらのシグナルは、抗腫瘍T細胞活性の抑制を生じ、免疫学的な遮蔽として作用し、腫瘍細胞が抗腫瘍免疫応答を回避するのを助ける。
【0073】
PD-1拮抗薬は、PD-1に直接結合しPD-L1とのその相互作用を抑制することにより、PD-1シグナル伝達を妨げることができる。これは、PD-1受容体からのシグナル伝達を低減し、PD-1媒介T細胞抑制を遮断する。一実施形態では、本開示に有用なPD-1拮抗薬は、抗PD-1抗体である。別の実施形態では、抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、またはキメラ抗体である。別の実施形態では、治療のための抗PD-1抗体は、Fab、F(ab)2、Fv、またはscFvを含む。
【0074】
いくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標);例えば、米国特許第8,008,449号およびWang et al.,2014,Cancer Immunol Res.2(9):846-56)参照);ペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標);例えば、米国特許第8,354,509号および8,900,587号参照);カムレリズマブ(SHR-1210;例えば、Huang et al.,Clin Cancer Res.2018,PMID:29358502参照);セミプリマブ(LIBTAYO(登録商標);例えば、米国特許出願公開第2015/0203579A1参照);シンティリマブ(TYVYT(登録商標);例えば、Liu et al.,J Hematol Oncol.,2017;10(1):136参照)およびPDR001(例えば、Naing et al.,J Clin Oncol.2016参照)からなる群より選択される抗PD-1抗体である。
【0075】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブのVHの3CDRを含む抗PD-1抗体である。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブのVLの3CDRを含む抗PD-1抗体である。他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブのVHの3CDRおよびニボルマブのVLの3CDR:VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む抗PD-1抗体である。他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブのVHのアミノ酸配列を含むVHおよびニボルマブのVLのアミノ酸配列を含むVLを含む抗PD-1抗体である。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブである。
【0076】
PD-1シグナル伝達を低減または抑制できる別のタイプのPD-1拮抗薬は、PD-L1に結合しそれによりPD-1とPD-L1との相互作用を遮断する分子である。この受容体/リガンド結合の干渉は、PD-1受容体からのシグナル伝達を低減し、PD-1媒介T細胞抑制を遮断する。一実施形態では、本開示に有用なPD-1拮抗薬は、抗PD-L1抗体である。別の実施形態では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、またはキメラ抗体である。別の実施形態では、抗PD-L1抗体は、Fab、F(ab)2、Fv、またはscFvを含む。
【0077】
いくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、アテゾリズマブ(テセントリク(登録商標);例えば、米国特許第8,217,149号参照)、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標);例えば、米国特許出願公開第2014/0341917A1号参照)、デュルバルマブ(IMFINZI(登録商標);例えば、米国特許出願公開第2013/0034559A1号参照)、およびBMS-936559(例えば、米国特許第7,943,743号;国際公開第2013/173223号参照)からなる群より選択される抗PD-L1抗体である。
【0078】
C.FASキメラベクターおよびPD-1拮抗薬を含む併用療法
本開示は、それを必要とする対象において腫瘍サイズを縮小もしくは抑制する、または腫瘍を除去する方法を提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量のPD-1拮抗薬を対象に投与すること、を含む。いくつかの態様では、対象の腫瘍サイズが、ベクターの投与のない対象の腫瘍に比べて低減または抑制される、または対象の腫瘍が、除去される。
【0079】
本開示は、それを必要とする対象において腫瘍またはその転移を治療する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量のPD-1拮抗薬を対象に投与すること、を含む。いくつかの態様では、対象における腫瘍またはその転移が、ベクターの投与のない対象の腫瘍またはその転移に比べて、治療される。
【0080】
本開示は、腫瘍を有する対象においてT細胞活性化を誘導する、または改善する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量のPD-1拮抗薬を対象に投与すること、を含む。いくつかの態様では、対象におけるT細胞活性化が、ベクターの投与のない対象のT細胞活性化に比べて誘導または改善される。
【0081】
本開示は、腫瘍を有する対象においてPD-1拮抗薬の有効性を誘導する、または改善する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量のPD-1拮抗薬を対象に投与すること、を含む。いくつかの態様では、対象におけるPD-1拮抗薬の有効性が、ベクターの投与のない対象のPD-1拮抗薬の有効性に比べて誘導または改善される。
【0082】
本開示は、それを必要とする対象においてホット腫瘍へとコールド腫瘍を変換する方法も提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量のPD-1拮抗薬を対象に投与すること、を含む。いくつかの態様では、対象におけるコールド腫瘍が、ベクターの投与のない対象のコールド腫瘍に比べて、ホット腫瘍に変換される。
【0083】
本開示の方法のために、ベクターの有効量は、6週毎に投与される、0.5x1013~2x1013個のウィルス粒子であり、有効量のPD-1拮抗薬、例えば、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブは、2週毎に約240mgまたは4週毎に約480mgである。いくつかの態様では、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブは、3週毎に約200mgの投与量で投与される。
【0084】
腫瘍増殖は、当該技術分野において既知の技術により測定でき、これらとしては、限定されないが、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、機能性MRI(fMRI)スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、または陽電子放出断層撮影(PET)スキャンが挙げられる。特定の態様では、腫瘍の成長は、MRIにより測定される。いくつかの態様では、対象の腫瘍は、ベクターによる治療中に生じた再発性腫瘍である。さらに他の実施形態では、対象の腫瘍は、ベクターによる治療中に生じた転移性腫瘍である。
【0085】
用語「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、任意の対象、特に、本開示の結果として、増大したまたは改善された抗腫瘍応答を有する、または有することが予測される哺乳動物対象を意味する。いくつかの態様では、用語「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、任意の対象、特に、FASキメラタンパク質を発現するベクターおよびPD-1拮抗薬を含む併用レジメンを投与された、哺乳動物対象を意味する。一実施形態では、対象は、ヒトである。別の実施形態では、対象は、癌患者である。
【0086】
特定の態様では、PD-1拮抗薬は、ベクターの投与前、ベクターの投与と同時、またはベクターの投与後に投与される。他の態様では、ベクターは、PD-1拮抗薬よりも少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも7日前、少なくとも9日前、少なくとも10日前、少なくとも2週間前、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前、少なくとも1か月前、少なくとも2か月前、またはそれより前に投与される。他の態様では、PD-1拮抗薬は、ベクターよりも少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも7日前、少なくとも9日前、少なくとも10日前、少なくとも2週間前、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前、少なくとも1か月前、少なくとも2か月前、またはそれより前に投与される。
【0087】
いくつかの態様では、対象の腫瘍は、ベクターによる治療中に生じた再発性腫瘍である。さらに他の実施形態では、対象の腫瘍は、ベクターによる治療中に生じた転移性腫瘍である。いくつかの態様では、ベクターは、PD-1拮抗薬の前に投与され、PD-1拮抗薬は、腫瘍進行時に投与される。いくつかの態様では、ベクターは、PD-1拮抗薬の前に投与され、PD-1拮抗薬は、腫瘍再発時に投与される。
【0088】
本開示の一部として投与される1回または複数回のベクターの投与量は、ウィルス粒子(VP)として測定できる。いくつかの実施形態では、ベクターの有効量は、限定されないが、約1x1016、1x1015、1x1014、5x1013、4x1013、3x1013、2x1013、1x1013、9x1012、8x1012、7x1012、6x1012、5x1012、4x1012、3x1012、2x1012、1x1012、9x1011、8x1011、7x1011、6x1011、5x1011、4x1011、3x1011、2x1011、1x1011、9x1010、8x1010、7x1010、6x1010、5x1010、4x1010、3x1010、2x1010、または1x1010個以下のウィルス粒子を含む。他の実施形態では、ベクターの有効量は、1x1010~約1x1016、約1x1011~約1x1015、約1x1011~約1x1016、約1x1012~約1x1015、約1x1012~約1x1016、約1x1012~約1x1014、約5x1012~約1x1016、約5x1012~約1x1015、約5x1012~約1x1014、約1x1012~約1x1013、または約1x1013~約1x1014個のウィルス粒子である。
【0089】
いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも約1x1011個のウィルス粒子の有効量で投与される。いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも約1x1012個のウィルス粒子の有効量で投与される。いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも約1x1013個のウィルス粒子の有効量で投与される。いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも約1x1014個のウィルス粒子の有効量で投与される。いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも約1x1015個のウィルス粒子の有効量で投与される。いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも約1x1016個のウィルス粒子の有効量で投与される。いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも約1x107、少なくとも約1x108、少なくとも約1x109、少なくとも約1x1010、または少なくとも約5x1010のウィルス粒子の有効量で投与される。
【0090】
本開示のいくつかの態様では、有効量のPD-1拮抗薬は、固定用量として投与される。本開示に関して、用語「固定用量」の使用は、患者の体重または体表面積(BSA)を考慮しないで患者に投与される投与量を意味する。従って、固定用量は、mg/kg投与量としては提供されず、むしろ、薬剤(例えば、抗PD-1抗体)の絶対量として提供される。例えば、60kgのヒトと、100kgのヒトは、同じ投与量の組成物(例えば、240mgの抗PD-1抗体)を受けることになる。
【0091】
いくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、抗PD-1または抗PD-L1抗体である。いくつかの態様では、抗PD-1または抗PD-L1抗体の有効量は、約100mg~約600mの投与量(例えば、固定用量)である。いくつかの態様では、抗PD-1または抗PD-L1抗体の有効量は、約200~300mg、約220~260mg、約230~250mgまたは約240mgなどの約100mg~300mgの固定用量である。いくつかの態様では、抗PD-1または抗PD-L1抗体の有効量は、約450~520mg、約460~510mg、約470~500mgまたは約480mgなどの約400mg~600mgの固定用量である。いくつかの態様では、PD-1またはPD-L1抗体の有効量は、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgなどの投与量(例えば、固定用量)である。
【0092】
いくつかの態様では、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の有効量は、約60~100mg、約60~200mg、約60~300mg、約60~400mg、約60~500mg、または約60mg~600mgの投与量(例えば、固定用量)である。いくつかの態様では、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の有効量は、約100~200mg、約100~300mg、約100~400mg、または約100mg~500mgの投与量(例えば、固定用量)である。いくつかの態様では、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の有効量は、約300~400mg、または約300mg~500mgの投与量(例えば、固定用量)である。いくつかの態様では、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の有効量は、約400mg~500mgの投与量(例えば、固定用量)である。特定の態様では、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の有効量は、約480mgの投与量(例えば、固定用量)である。
【0093】
本明細書において言及される場合、用語「体重に基づく投与量」は、患者に投与される投与量が、患者の体重に基づいて計算されることを意味する。例えば、60kg体重の患者が3mg/kgの抗PD-1抗体を必要とする場合、適切な抗PD-1抗体の量(すなわち、180mg)を導出できる。
【0094】
いくつかの態様では、PD-1拮抗薬の有効量は、約15mg/kg以下、約14mg/kg以下、約13mg/kg以下、約12mg/kg以下、約11mg/kg以下、約10mg/kg以下、約9mg/kg以下、約8mg/kg以下、約7mg/kg以下、約6mg/kg以下、約5mg/kg以下、約4mg/kg以下、約3mg/kg以下、約2mg/kg以下、または約1mg/kg以下の体重に基づく投与量である。特定の実施形態では、PD-1拮抗薬の有効量は、約3mg/kgである。
【0095】
いくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、ニボルマブである。いくつかの態様では、ベクターは、3x1012~3x1013個のVPの有効量で投与され、ニボルマブは、2mg/kg~12mg/kgの有効量(体重に基づく投与量)で投与される。他の態様では、ベクターは、3x1012~3x1013個のVPの有効量で投与され、ニボルマブは、460mg~500mgの有効量(固定用量)で投与される。
【0096】
特定の態様では、ベクターの有効量は、1x1013個のVPの量で投与され、ニボルマブの有効量は、3mg/kgの量(体重に基づく投与量)で投与される。別の態様では、ベクターの有効量は、3x1012~1x1013個のVPの量で投与され、ニボルマブの有効量は、200mg~260mgの量(固定用量)で投与される。特定の態様では、ベクターの有効量は、1x1013個のVPの量で投与され、ニボルマブは、240mgの有効量(固定用量)で投与される。
【0097】
別の態様では、ベクターの有効量は、1x1013個のVPの量で投与され、ニボルマブの有効量は、3mg/kg~12mg/kgの量(体重に基づく投与量)で投与される。別の態様では、ベクターの有効量は、3x1012~1x1013個のVPの量で投与され、ニボルマブの有効量は、460mg~500mgの量(固定用量)で投与される。特定の態様では、ベクターの有効量は、1x1013個のVPの量で投与され、ニボルマブの有効量は、480mgの量(固定用量)で投与される。
【0098】
いくつかの態様では、PD-1拮抗薬は、ペムブロリズマブである。いくつかの態様では、ベクターは、3x1012~3x1013個のVPの有効量で投与され、ペムブロリズマブは、150mg~250mgの有効量(固定用量)で投与される。
【0099】
別の態様では、ベクターの有効量は、3x1012~1x1013個のVPの量で投与され、ペムブロリズマブの有効量は、180mg~220mgの量(固定用量)で投与される。特定の態様では、ベクターの有効量は、1x1013個のVPの量で投与され、ペムブロリズマブは、200mgの有効量(固定用量)で投与される。
【0100】
本開示の方法は、少なくとも1回の有効量のベクター、およびPD-1拮抗薬を投与することを含む。ベクターおよびPD-1拮抗薬の投与に使用されるレジメンは、ベクターおよびPD-1拮抗薬の反復投与を含む。一実施形態では、ベクターは、毎日、約2日に1回、約3日に1回、約4日に1回、約5日に1回、約6日に1回、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約5週間に1回、約6週間に1回、約7週間に1回、約2か月に1回、または約6か月に1回反復投与される。別の実施形態では、PD-1拮抗薬は、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約2か月に1回、約3か月に1回、約4か月に1回、約5か月に1回、または約6か月に1回反復投与される。特定の実施形態では、ベクターは、2か月毎に投与され、PD-1拮抗薬は、2週間毎に投与される。特定の実施形態では、PD-1拮抗薬は、ニボルマブである。
【0101】
D.疾患および状態
本開示の方法は、それを必要とする対象において腫瘍サイズを縮小もしくは抑制する、または腫瘍を除去するために有用である。本開示のいくつかの態様では、腫瘍は、転移性大腸癌(mCRC)、進行性非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、転移性腎細胞癌(mRCC)、多形神経膠芽腫(GBM)、ミューラー管癌、卵巣癌、腹膜癌、卵管癌、または子宮体部漿液性腺癌に由来する、またはそれと関連する。いくつかの態様では、本開示の方法は、悪性腹腔液、例えば、腹水の量を減少させる、対象の痛みを緩和する、対象の生存期間を延長する、またはそれらの任意の組み合わせである。腫瘍は、ベクターとPD-1拮抗薬の組み合わせにより縮小、抑制、または治療され得る。腫瘍は、固形腫瘍、原発腫瘍、または転移性腫瘍、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。用語「転移性」または「転移」は、別の部分または臓器に二次腫瘍病変を確立できる腫瘍細胞を指す。
【0102】
本開示の方法では、「固形腫瘍」は、限定されないが、肉腫、黒色腫、癌腫、またはその他の固形腫瘍癌を含む。「肉腫」は、胎生結合組織のような物質で構成され、通常、原線維物質または均質物質に埋め込まれた密充填細胞で構成される腫瘍を指す。肉腫としては、限定されないが、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アバーメシー肉腫、脂肪性肉腫、脂肪肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫、絨毛癌、胎芽性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発色素沈着出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、ジェンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨肉腫、網状赤血球肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、または毛細管拡張性肉腫が挙げられる。
【0103】
用語「黒色腫」は、皮膚および他の臓器のメラニン細胞系に起因する腫瘍を指す。黒色腫としては、例えば、肢端黒子型黒色腫(acral lentiginous melanoma)、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング・パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、転移性黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫、または表在拡大型黒色腫が挙げられる。
【0104】
用語「癌腫」は、周辺組織に浸潤して転移を引き起こす傾向がある上皮細胞から形成される悪性の新たな増殖を指す。例示的な癌腫としては、例えば、腺房癌、小葉癌、腺嚢癌腫、腺様嚢胞癌、腺様癌、副腎皮質の癌腫、肺胞癌、肺胞上皮癌、基底細胞癌(basal cell carcinoma)、基底細胞癌(carcinoma basocellulare)、類基底細胞癌、基底扁平上皮細胞癌、気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支原性癌、大脳様癌、胆管細胞癌、絨毛膜癌、粘液癌、面疱癌、子宮体部癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円柱上皮癌、円柱細胞癌、腺管癌、硬性癌、胎児性癌、脳様癌、類表皮癌(epidermoid carcinoma)、腺様上皮癌、外方発育癌、潰瘍癌、線維癌、膠様癌(gelatiniform carcinoma)、膠様癌(gelatinous carcinoma)、巨細胞癌(giant cell carcinoma)、巨大細胞癌(carcinoma gigantocellulare)、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母組織癌、血様癌、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、硝子様癌、副腎様癌(hypernephroid carcinoma)、小児胎児性癌、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌、クロムペッヘル癌、クルチツキー細胞癌、大細胞癌、レンズ状癌(lenticular carcinoma)、レンズ状癌(carcinoma lenticulare)、脂肪性癌、リンパ上皮癌、髄様癌(carcinoma medullare)、髄様癌(medullary carcinoma)、黒色癌、軟性癌、粘液性癌、粘液腺癌、粘液細胞癌、粘液性類表皮癌(mucoepidermoid carcinoma)、粘液癌(carcinoma mucosum)、粘液癌(mucous carcinoma)、粘液腫様癌、上咽頭癌(nasopharyngeal carcinoma)、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨癌、乳頭状癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、有棘細胞癌、粥状癌、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫様癌、シュナイダー癌、スキルス癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌、球状細胞癌、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、ストリング癌、血管拡張性癌、毛細血管拡張性癌、移行上皮癌、結節癌(carcinoma tuberosum)、結節癌(tuberous carcinoma)、疣状癌、または絨毛癌(carcinoma villosum)が挙げられる。
【0105】
本方法により抑制または治療できる追加の癌としては、例えば、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌(非小細胞肺癌(NSCLC)を含む)、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、神経膠腫(多形神経膠芽腫(GBM)および再発GBMを含む)、胃腸(GI)癌(食道、胆嚢、胆道系、肝臓、膵臓、胃、小腸、大腸、結腸、直腸、および肛門を含む)、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、乳頭様甲状腺癌、神経芽腫、神経内分泌癌、性器尿路系癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、前立腺癌、ミューラー管癌、卵巣癌、腹膜癌、卵管癌、または尿管血清癌が挙げられる。
【0106】
いくつかの態様では、腫瘍は、再発性腫瘍である。いくつかの態様では、腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0107】
III.Fasキメラ遺伝子および内皮細胞特異的プロモーターを含む核酸構築物
本開示は、抗腫瘍療法を提供し、方法は、(a)内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む有効量のベクターを対象に投与すること、および(b)有効量のチェックポイント阻害薬を対象に投与すること、を含む。
【0108】
本開示において、Fasキメラタンパク質(または遺伝子産物)をコードする遺伝子は、内皮細胞特異的プロモーターに連結され得、これは内皮細胞でのFasキメラ遺伝子産物の発現を指示する。このような細胞毒性遺伝子産物の発現は、過剰な新生血管形成または血管増殖が望ましくない状況、例えば、腫瘍において有用である。
【0109】
A.Fasキメラ
本開示の核酸構築物により発現されるFasキメラタンパク質は、少なくとも2種の「デスレセプター」ポリペプチドを含み、それぞれのポリペプチドは異なるタンパク質由来である。Fasキメラタンパク質の第1のポリペプチドは、腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)のリガンド結合ドメインを含む。Fasキメラタンパク質の第2のポリペプチドは、Fasポリペプチドのエフェクタードメインを含む。
【0110】
TNFR1のリガンド結合ドメインは、TNFR1リガンドに結合するいずれかのドメインであり得る。一実施形態では、TNFR1リガンドは、TNF-αである。別の実施形態では、TNFR1リガンドは、リンホトキシン-αである。TNFR1のリガンド結合ドメインは、TNFR1の細胞外ドメイン、またはその任意のフラグメント、バリアント、誘導体、または類似体であり得る。TNFR1リガンド結合ドメインの非限定的例は、下に記載される。
【0111】
本開示に有用なFasポリペプチドのエフェクタードメインは、細胞死誘導シグナル伝達複合体(DISC)を形成するいずれかのFasドメインを含み、それによりアポトーシスを誘導する。一実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、または両方を含む。Fasポリペプチドエフェクタードメインの非限定的例は、下に記載される。
【0112】
TNFR1とFasポリペプチドは、ペプチド結合によりまたはリンカーにより連結できる。TNFR1リガンド結合ドメインとFasエフェクタードメインとを連結するリンカーは、ポリペプチドリンカーまたは非ペプチドリンカーであり得る。例えば、Fasキメラタンパク質のためのリンカーは、1個または複数のグリシン、セリン、ロイシン、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。一実施形態では、本開示に有用なリンカーはSer-Leuを含む。別の実施形態では、本開示に有用なリンカーは、(GGGS)n(Denise et al.J.Biol.Chem.277:35035-35043(2002))(配列番号25)を含み、式中、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上であり得る。
【0113】
1.腫瘍壊死因子受容体1
完全長ヒトTNFR1ポリペプチドは、455アミノ酸長であり、TNF-R1、腫瘍壊死因子受容体I型(TNFRI)、TNFR-I、TNFRSF1A、TNFAR、p55、P60、またはCD120aとしても知られる。天然ヒトTNFR1ポリペプチドは、TNF-αまたはホモ三量体リンホトキシン-αに結合することが知られている。細胞外ドメインへのTNF-αの結合は、TNFR1のホモ三量体化をもたらし、それは次いで腫瘍壊死因子受容体1型関連デスドメインタンパク質(TRADD)のデスドメインと特異的に相互作用する。TNF受容体関連因子(TRAFS)、受容体相互作用セリン/トレオニンプロテインキナーゼ1(RIPK1)、およびFas結合デスドメインタンパク質(FADD)などの種々のTRADD相互作用タンパク質が、TRADDとの結合により複合体に動員される。複合体は、少なくとも2つの異なるシグナル伝達カスケード、アポトーシスおよびNF-カッパ-Bシグナル伝達を活性化する。
【0114】
ヒトTNFR1ポリペプチド配列として報告されている455aaのポリペプチド配列は、UniProtKBデータベースの識別番号P19438-1を有する。このヒトTNFR1ポリペプチド配列は、本明細書でアイソフォームAおよび配列番号2と呼ばれる。配列番号1は、配列番号2をコードするヌクレオチド配列である。108aaのポリペプチド配列はヒトTNFR1ポリペプチド配列のアイソフォームとして報告されたものであり、UniProtKBデータベースの識別番号P19438-2を有する。108aaのポリペプチドは、アイソフォームA(配列番号2)のアミノ酸1~108に対応し、本明細書でアイソフォームBと呼ばれる。232aaを有するヒトTNFR1ポリペプチドの別のバリアントは、UniProtKBデータベースの識別番号P19438-3として報告された。232aaのポリペプチドは、アイソフォームA(配列番号2)のアミノ酸1~232に対応し、本明細書でアイソフォームCと呼ばれる。ヒトTNFR1の追加の天然バリアントとしては、H51Q、C59R、C59S、C62G、C62Y、P75L、T79M、C81F、C99S、S115G、C117R、C117Y、R121P、R121Q、P305T、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1個または複数の変異を含むアイソフォームA、B、およびCのTNFR1ポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。他の既知のTNFR1バリアントとしては、L13LILPQ、K255E、S286G、R394L、412:欠損(Missing)、GPAA443-446APP、またはこれらの任意の組み合わせを含むアイソフォームA、B、およびCのTNFR1ポリペプチドが挙げられる。
【0115】
表1は、ヒト野生型TNFR1アミノ酸配列、および野生型TNFR1をコードするヌクレオチド配列を示す。
【表1】
【0116】
マウスTNFR1ポリペプチド配列とそのバリアントも報告する。454aaのマウスTNFR1ポリペプチドは、UniProtKBデータベースの識別番号P25118を有する。他の動物で既知のTNFR1ポリペプチドとしては、限定されないが、ラット(例えば、UniProtKBデータベースのP22934)、ウシ(例えば、UniProtKBデータベースのO19131)、ブタ(例えば、UniProtKBデータベースのP50555)、またはウマ(例えば、UniProtKBデータベースのD1MH71)が挙げられる。
【0117】
完全長TNFR1は、2つの鎖(1)TNF受容体スーパーファミリーメンバー1A、膜型(すなわち、完全長TNFR1に対応するアミノ酸22~455)および(2)TNF結合タンパク質1(TBPI)(すなわち、完全長TNFR1に対応するアミノ酸41~291)、に切断され得る。完全長ヒトTNFR1ポリペプチドは、シグナル配列(配列番号2のアミノ酸1~21)、細胞外ドメイン(配列番号2のアミノ酸22~211)、膜貫通ドメイン(配列番号2のアミノ酸212~234)、および細胞質ドメイン(配列番号2のアミノ酸235~455)からなる。TNFR1細胞外ドメインは、4つのシステインリピート領域、TNFR-Cys1(配列番号2に対応するアミノ酸43~82)、TNFR-Cys2(配列番号2に対応するアミノ酸83~125)、TNFR-Cys3(配列番号2に対応するアミノ酸126~166)、およびTNFR-Cys4(配列番号2に対応するアミノ酸167~196)、を含む。
【0118】
当業者なら理解するように、上に列挙したドメインの開始残基および終了残基は、使用するコンピューターモデリングプログラム、またはドメインの判定に使用される方法に応じて異なる可能性がある。したがって、TNFR1の種々の機能的ドメインは、上で定義されたものとは異なる可能性がある。
【0119】
一実施形態では、Fasキメラタンパク質に有用なTNFR1のリガンド結合ドメインは、TNFR1の細胞外ドメイン、またはその任意のフラグメント、バリアント、誘導体、もしくは類似体を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、TNFR1の細胞外ドメイン、またはその任意のフラグメント、バリアント、誘導体、もしくは類似体は、TNF-αに結合する。別の実施形態では、TNFR1のリガンド結合ドメインは、TNFR-Cys1;TNFR-Cys2;TNFR-Cys3;TNFR-Cys4;TNFR-Cys1とTNFR-Cys2;TNFR-Cys1とTNFR-Cys3;TNFR-Cys1とTNFR-Cys4;TNFR-Cys2とTNFR-Cys3;TNFR-Cys2とTNFR-Cys4;TNFR-Cys3とTNFR-Cys4;TNFR-Cys1、TNFR-Cys2、およびTNFR-Cys3;TNFR-Cys1、TNFR-Cys2、およびTNFR-Cys4;TNFR-Cys2、TNFR-Cys3、およびTNFR-Cys4;またはTNFR-Cys1、TNFR-Cys2、TNFR-Cys3、およびTNFR-Cys4を含む。他の実施形態では、Fasキメラタンパク質のTNFR1リガンド結合ドメインは、TNF結合タンパク質Iを含む。さらに他の実施形態では、FASキメラタンパク質のTNFR1リガンド結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸22~190、アミノ酸22~191、アミノ酸22~192、アミノ酸22~193、アミノ酸22~194、アミノ酸22~195、アミノ酸22~196、アミノ酸22~197、アミノ酸22~198、アミノ酸22~199、アミノ酸22~200、アミノ酸22~201、アミノ酸22~202、アミノ酸22~203、アミノ酸22~204、アミノ酸22~205、アミノ酸22~206、アミノ酸22~207、アミノ酸22~208、アミノ酸22~209、アミノ酸22~210、またはアミノ酸22~211と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、リガンド結合ドメインは、TNFR1リガンド、例えばTNF-αに結合する。
【0120】
他の実施形態では、TNFR1のリガンド結合ドメインは、シグナルペプチドをさらに含む。好適なシグナルペプチドの一例は、TNFR1のシグナルペプチド、例えば配列番号2のアミノ酸1~21である。さらに他の実施形態では、Fasキメラ遺伝子産物のリガンド結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸1~190、アミノ酸1~191、アミノ酸1~192、アミノ酸1~193、アミノ酸1~194、アミノ酸1~195、アミノ酸1~196、アミノ酸1~197、アミノ酸1~198、アミノ酸1~199、アミノ酸1~200、アミノ酸1~201、アミノ酸1~202、アミノ酸1~203、アミノ酸1~204、アミノ酸1~205、アミノ酸1~206、アミノ酸1~207、アミノ酸1~208、アミノ酸1~209、アミノ酸1~210、またはアミノ酸1~211と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、リガンド結合ドメインは、TNFR1リガンド、例えば、TNF-αに結合する。特定の実施形態では、Fasキメラタンパク質のTNFR1リガンド結合ドメインは、配列番号4と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、リガンド結合ドメインは、TNFR1リガンド、例えばTNF-αに結合する。
【0121】
さらに他の実施形態では、TNFR1のリガンド結合ドメインは、配列番号3と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0122】
さらに他の実施形態では、Fasキメラタンパク質のTNFR1リガンド結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸22~108(TNFR1アイソフォームB)、配列番号2のアミノ酸22~232(TNFR1アイソフォームC)、または配列番号2のアミノ酸44~291(TBP1)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、リガンド結合ドメインは、TNFR1リガンド、例えばTNF-αに結合する。
【0123】
2.Fasポリペプチド
完全長ヒトFasポリペプチドは、335アミノ酸長であり、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、Apo-1抗原、アポトーシス媒介表面抗原Fas、FasLG受容体、またはCD95としても知られる。天然のFasポリペプチドは、TNFSF6/FasLGに対する受容体である。FASポリペプチドがFasリガンド(FasL)に結合すると、FasとFasLの相互作用は、FADD、カスパーゼ-8、およびカスパーゼ-10を含む細胞死誘導シグナル伝達複合体(DISC)の形成をもたらす。いくつかの細胞型(I型)では、処理されたカスパーゼ-8がカスパーゼファミリーの他のメンバーを直接活性化し、細胞のアポトーシスの実行を誘発する。他の細胞型(II型)では、Fas-DISCが、ミトコンドリアからのアポトーシス促進因子の放出を増加させカスパーゼ-8の活性化を増幅させるスパイラルに入る、フィードバックループを開始する。Fas介在型アポトーシスは、末梢性免疫寛容の誘導、抗原刺激による成熟細胞の自死、またはその両方で役割を果たし得る。
【0124】
ヒトFasポリペプチド配列として報告されている335aaのポリペプチド配列は、UniProtKBデータベースの識別番号P25445-1を有する。このヒトFasポリペプチド配列は、本明細書で配列番号6と呼ばれる。配列番号5は、配列番号6をコードするヌクレオチド配列である。Fasポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、APT1、FAS1、またはTNFRSF6としても知られる。完全長Fasポリペプチドは、シグナルペプチド(配列番号6に対応するアミノ酸1~25)、細胞外ドメイン(配列番号6に対応するアミノ酸26~173)、膜貫通ドメイン(配列番号6に対応するアミノ酸174~190)、および細胞内(または細胞質)ドメイン(配列番号6に対応するアミノ酸191~335)を含む。細胞内ドメインは、デスドメイン(例えば、配列番号6に対応するアミノ酸230~314)を含む。
【0125】
当業者なら理解するように、上記のドメインの開始残基および終了残基は、使用するコンピューターモデリングプログラム、またはドメインの判定に使用される方法に応じて異なる可能性がある。したがって、Fasの種々の機能的ドメインは、上記で定義されたものとは異なる可能性がある。表2は、野生型ヒトFasアミノ酸配列、およびFasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。
【表2】
【0126】
マウスFasポリペプチド配列とそのバリアントも報告されている。327aaのマウスFasポリペプチドは、UniProtKBデータベースの識別番号P25446を有する。他の動物の既知のFasポリペプチドとしては、限定されないが、旧世界ザル(例えば、UniProtKBデータベースのQ9BDN4)、アカゲザル(例えば、UniProtKBデータベースのQ9BDP2)、ラット(例えば、UniProtKBデータベースのQ63199)、または雌ウシ(例えば、UniProtKBデータベースのP51867)が挙げられる。
【0127】
Fasポリペプチドの配列バリエーションに基づいて、当業者はFasポリペプチドのエフェクタードメインにおける配列バリエーションを特定できる。例えば、Fasエフェクタードメインの天然バリアントは、C178R、L180F、P183L、I184V、T198I、Y232C、T241K、T241P、V249L、R250P、R250Q、G253D、G253S、N255D、A257D、I259R、D260G、D260V、D260Y、I262S、N264K、T270I、T270K、E272G、E272K、L278F、K299N、T305I、I310S、またはそれらの任意の組み合わせの1個または複数の置換または変異を含み得る。
【0128】
一実施形態では、本開示に有用なFasポリペプチドのエフェクタードメインは、Fasポリペプチドのデスドメインを含む。別の実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、配列番号6のアミノ酸230~314と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。他の実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、Fasポリペプチドの細胞内ドメインを含む。さらに他の実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、配列番号6のアミノ酸185~335、アミノ酸186~335、アミノ酸187~335、アミノ酸188~335、アミノ酸189~335、アミノ酸190~335、アミノ酸191~335、アミノ酸192~335、アミノ酸193~335、アミノ酸194~335、アミノ酸195~335、アミノ酸196~335、アミノ酸197~335、アミノ酸198~335、またはアミノ酸199~335と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0129】
さらに他の実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインはさらに、Fasポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。さらに他の実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、配列番号6のアミノ酸174~335と少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、Fas細胞外ドメインのC末端部分に由来する約10個、約9個、約8個、約7個、約6個、約5個、約4個、約3個、約2個、または約1個のアミノ酸をさらに含む。特定の実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、配列番号6のアミノ酸179~335、アミノ酸178~335、アミノ酸177~335、アミノ酸176~335、アミノ酸175~335、アミノ酸174~335、アミノ酸173~335、アミノ酸172~335、アミノ酸171~335、アミノ酸170~335、アミノ酸169~335、アミノ酸168~335、アミノ酸167~335、アミノ酸166~335、アミノ酸165~335、アミノ酸164~335、またはアミノ酸163~335と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含み、エフェクタードメインは、細胞死誘導シグナル伝達複合体(DISC)を形成するか、カスパーゼ8を活性化するか、またはアポトーシスを誘発する。
【0130】
いくつかの実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、配列番号8と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、エフェクタードメインは、細胞死誘導シグナル伝達複合体(DISC)を形成するか、カスパーゼ8を活性化するか、またはアポトーシスを誘発する。
【0131】
他の実施形態では、Fasポリペプチドのエフェクタードメインは、配列番号7と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0132】
一実施形態では、本開示のFasキメラ遺伝子産物は、配列番号10と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、Fasキメラ遺伝子産物は、アポトーシスを誘発する。別の実施形態では、Fasキメラ遺伝子産物は、配列番号9と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるヌクレオチド配列によってコードされ、当該Fasキメラ遺伝子産物は、アポトーシスを誘発する。
【0133】
B.内皮細胞特異的プロモーター
Fasキメラ遺伝子を含む核酸構築物は、動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子の発現を調節するのに有用な1つまたは複数の発現制御エレメントをさらに含む。発現制御エレメントとしては、プロモーター、分泌シグナル、およびその他の調節エレメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
本開示に有用な核酸構築物は、内皮細胞でのFasキメラタンパク質の発現を指示する内皮細胞特異的プロモーターを用い、それにより内皮細胞のアポトーシスを誘発する。
【0135】
本開示の目的では、内皮細胞特異的プロモーターは、1つ以上のシス調節エレメントを含み、それはシス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善できる。いくつかの態様では、シス調節エレメントは、低酸素応答エレメントを含む。
【0136】
一実施形態では、本開示に有用なシス調節エレメントは、配列番号11または配列番号12(配列番号11の相補配列)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるヌクレオチド配列を含み、シス調節エレメントは、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。シス調節エレメントはさらに、配列番号13または配列番号14(配列番号13の相補配列)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一である追加のヌクレオチド配列を含み得る。
【0137】
別の実施形態では、本開示のためのシス調節エレメントは、配列番号13または配列番号14(配列番号13の相補配列)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるヌクレオチド配列を含み、シス調節エレメントは、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。シス調節エレメントはさらに、配列番号11または配列番号12(配列番号11の相補配列)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一である追加のヌクレオチド配列を含み得る。
【0138】
他の実施形態では、本開示のためのシス調節エレメントは、配列番号15または配列番号16(配列番号15の相補配列)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるヌクレオチド配列を含み、シス調節エレメントは、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。さらに他の実施形態では、核酸構築物のシス調節エレメントは、配列番号15もしくは配列番号16またはその任意のフラグメント、バリアント、誘導体、もしくは類似体を含み、そのフラグメント、バリアント、誘導体、または類似体は、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。
【0139】
いくつかの実施形態では、本開示のためのシス調節エレメントは、配列番号20または配列番号21と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるヌクレオチド配列を含み、シス調節エレメントは、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。さらに他の実施形態では、核酸構築物のシス調節エレメントは、配列番号20もしくは配列番号21またはその任意のフラグメント、バリアント、誘導体、もしくは類似体を含み、そのフラグメント、バリアント、誘導体、または類似体は、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。
【0140】
他の実施形態では、本開示のためのシス調節エレメントは、配列番号22または配列番号23と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%同一であるヌクレオチド配列を含み、シス調節エレメントは、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。さらに他の実施形態では、核酸構築物のシス調節エレメントは、配列番号22もしくは配列番号23、またはその任意のフラグメント、バリアント、誘導体、もしくは類似体を含み、そのフラグメント、バリアント、誘導体、または類似体は、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。
【0141】
表3は、本開示に有用な種々のシス調節エレメント配列を示す。
【表3】
【0142】
本開示のためのシス調節エレメントは、プロモーターの上流または下流のプロモーターに連結され得るか、またはプロモーター中の2つのヌクレオチド間に挿入され得る。本開示のための内皮細胞特異的プロモーターは、当技術分野で既知の任意のプロモーターを用いることができる。例えば、本開示に用いることができる好適なプロモーターとしては、内皮特異的プロモーター:プレプロエンドセリン-1(PPE-1プロモーター)(2010年11月11日公開の米国出願公開第2010/0282634号および2011年7月14日公開の国際公開第2011/083464号);PPE-1-3Xプロモーター(米国特許第7,579,327号、同第8,071,740号、同第8,039,261号、米国出願公開第2010/0282634号、同第2007/0286845号、国際公開第2011/083464号、および同第2011/083466号);TIE-1(S79347、S79346)およびTIE-2(U53603)プロモーター[Sato TN,Proc Natl Acad Sci USA 1993 Oct 15;90(20):9355-8]、エンドグリンプロモーター[Y11653;Rius C,Blood 1998 Dec 15;92(12):4677-90]、フォン・ヴィレブランド因子[AF152417;Collins CJ Proc Natl Acad Sci USA 1987 Jul;84(13):4393-7]、KDR/flk-1プロモーター[X89777,X89776;Ronicke V,Circ Res 1996 Aug;79(2):277-85]、FLT-1プロモーター[D64016 AJ224863;Morishita K,:J Biol Chem 1995 Nov 17;270(46):27948-53]、Egr-1プロモーター[AJ245926;Sukhatme VP,Oncogene Res 1987 Sep-Oct;1(4):343-55]、E-セレクチンプロモーター[Y12462;Collins TJ Biol Chem 1991 Feb 5;266(4):2466-73]、内皮接着分子プロモーター:ICAM-1[X84737;Horley KJ EMBO J 1989 Oct;8(10):2889-96]、VCAM-1[M92431;Iademarco MF,J Biol Chem 1992 Aug 15;267(23):16323-9]、PECAM-1[AJ313330 X96849;CD31,Newman PJ,Science 1990 Mar 9;247(4947):1219-22]、血管平滑筋特異的エレメント:CArGボックスX53154および大動脈カルボキシペプチダーゼ様タンパク質(ACLP)プロモーター[AF332596;Layne MD,Circ Res.2002;90:728-736]、ならびにAortic Preferentially Expressed Gene-1[Yen-Hsu Chen J.Biol.Chem,Vol.276,Issue 50,47658-47663,December 14,2001]が挙げられ、これらのすべてはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
一実施形態では、内皮細胞特異的エレメントに連結されたプロモーターは、配列番号17のヌクレオチド配列を少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%含み、このエレメントに連結されたプロモーターは、プロモーターに動作可能に連結された遺伝子に対する内皮細胞特異性を誘導する。別の実施形態では、内皮細胞特異的エレメントに連結されたプロモーターは、野生型PPE-1プロモーターのフラグメント、バリアント、誘導体、または類似体を含み、フラグメント、バリアント、誘導体、または類似体は、プロモーターに動作可能に連結された遺伝子に対する内皮細胞特異性を誘導する。一例では、内皮細胞特異的エレメントを、配列番号17に対応するヌクレオチド残基442と449の間に挿入されてよい。
【0144】
さらなる実施形態では、内皮細胞特異的プロモーターは、低酸素応答エレメントを含む。低酸素応答エレメント(HRE)は、エンドセリン-1プロモーターのアンチセンス鎖に位置する。このエレメントは、低酸素による(ヒト、ラット、およびマウス遺伝子の)エンドセリン-1プロモーターの正の調節に必要とされる低酸素誘導因子-1結合部位である。低酸素は、エリスロポエチン(Epo)、VEGF、および種々の糖分解酵素を含むいくつかの遺伝子の発現を誘導する、強力なシグナルである。低酸素条件に応答するすべての遺伝子のコア配列(8塩基対)は、保存され、隣接領域は、他の遺伝子と異なる。ET-I低酸素応答エレメントは、GAT A-2とAP-1結合部位の間に位置する。一例では、低酸素応答エレメントは、配列番号24、そのフラグメント、バリアント、誘導体、または類似体を含む。
【0145】
他の実施形態では、本開示に有用な内皮細胞特異的プロモーターは、配列番号18のヌクレオチド配列を少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、シス調節エレメントに連結されたプロモーターは、プロモーターに動作可能に連結された遺伝子に対する内皮細胞特異性を誘導する。別の実施形態では、内皮細胞特異的プロモーターは、配列番号18のフラグメント、バリアント、誘導体、または類似体を含み、フラグメント、バリアント、誘導体、または類似体は、プロモーターに動作可能に連結された遺伝子に対する内皮細胞特異性を誘導する。
【0146】
内皮細胞特異的プロモーターの追加のバリエーションは、国際公開第2011/083464号、同第2011/083466号、および同第2012/052423号で見つけることができる。これらの特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
本開示は、配列番号17のヌクレオチド配列を含む新規なプロモーター配列も提供する。一例では、このプロモーターは、内皮細胞特異的シス調節エレメントをさらに含む。一例では、内皮細胞特異的シス調節エレメントは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、またはその任意のフラグメント、誘導体、バリアント、もしくは類似体を含み、そのフラグメント、誘導体、バリアント、または類似体は、シス調節エレメントを含まないプロモーターと比較してプロモーターの内皮細胞特異性を改善する。別の例では、プロモーターは、配列番号18のヌクレオチド配列を含む。本開示は、新規なプロモーターおよび異種ヌクレオチド配列を含む核酸構築物を含む。一実施形態では、異種核酸配列は、本明細書に記載のFasキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、アデノウィルス配列を含む。
【0148】
C.ベクター
本開示はまた、内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含む、核酸構築物を含むベクターも提供する。本開示の目的のために、数々のベクター系を用いることができる。例えば、本開示の本態様の実施に使用できる様々なウィルス遺伝子送達系としては、限定されないが、アデノウィルスベクター、アルファウィルスベクター、エンテロウィルスベクター、ペスチウィルスベクター、レンチウィルスベクター、バキュロウィルスベクター、ヘルペスウィルスベクター、エプスタイン・バールウィルスベクター、パポーバウィルスベクター、ポックスウィルスベクター、ワクシニアウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクター、および単純ヘルペスウィルスベクターが挙げられる。
【0149】
別の実施形態では、内皮細胞特異的プロモーターに動作可能に連結されたFasキメラ遺伝子を含むベクターは、アデノウィルスである。例えば、アデノウィルスは、ヒトアデノウィルス種A(血清型12、18、および31)、B(血清型3、7、11、14、16、21、34、35、50、および55)、C(血清型1、2、5、6、および57)、D(8、9、10、13、15、17、19、20、22~30、32、33、36~39、42~49、51、53、54、および56)、E(血清型4)、F(血清型40および41)、またはG(血清型52)のいずれか1種または複数であり得る。特定の実施形態では、本開示のためのアデノウィルスは、ヒトアデノウィルス血清型5である。いくつかの実施形態では、遺伝子治療に有用なアデノウィルスは、E1領域およびE3領域を含まない、組換え非複製性アデノウィルスである。
【0150】
特定の態様では、ベクターは、Ad5-PPE-1-3X-Fas-cベクターである。さらに特定の態様では、ベクターは、配列番号19を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるAd5-PPE-1-3X-Fas-cベクターである。別の実施形態では、アデノウィルスベクターは、European Collection of Cell Cultures(ECACC)受入番号13021201を有する単離ウィルスである。
【0151】
IV.1種または複数の化学療法剤をさらに含む治療
いくつかの態様では、本開示の方法は、1種または複数の化学療法剤を対象に投与することをさらに含む。
【0152】
本開示の方法を使用して投与できる1種または複数の化学療法剤としては、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドリアマイシン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アリムタ;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;メシル酸ビスナフィド;ベバシズマブ;ビゼレシン;ブレオマイシンサルフェート;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン(BiCNU);カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンシトラート;ドロモスタノロンプロピオナート;デュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンホスフェート;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ギリアデル(登録商標)ウェハ;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;ランレオチドアセテート;レトロゾール;ロイプロリドアセテート;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン(CCNU);ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パゾチニブ;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシンサルフェート;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プルメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;ソラフィニブ;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;スニチニブ;タリスマイシン;タキソール;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフイリン;チラパザミン;トポテカン塩酸塩;トレミフェンシトラート;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチンサルフェート;ビンクリスチンサルフェート;ビンデシン;ビンデシンサルフェート;ビネピジンサルフェート;ビングリシナートスルファート;硫酸ビンロイロシン;ビノレルビンタータラート;ビンロシジンサルフェート;ビンゾリジンサルフェート;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;またはゾルビシン塩酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。追加の抗悪性腫瘍薬としては、Goodman and Gilman’s ”The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Eighth Edition,1990,McGraw-Hill,Incの第52章Antineoplastic Agents(Paul Calabresi and Bruce A.Chabner)およびその序論1202-1263に開示されているものが挙げられる。
【0153】
本開示のいくつかの態様では、1種または複数の化学療法剤は、アルトレタミン、ラルトリトレキセド、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、リポソームドキソルビシン、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ビノレルビン、イホスファミド、エトポシド、アルトレタミン、カペシタビン、イリノテカン、メルファラン、ペメトレキセド、ベバシズマブ、およびアルブミン結合パクリタキセルからなる群から選択される。
【0154】
いくつかの態様では、対象は、最大3ライン、最大2ライン、または最大1ラインの先行化学療法を受けたことがある。他の態様では、対象は、再発癌に対して3ラインを超える化学療法を受けたことがない。
【0155】
有効量の化学療法剤が、当技術分野で使用可能である。
【0156】
いくつかの態様では、1種または複数の化学療法剤が、反復して投与される。特定の態様では、1種または複数の化学療法剤は、約7日に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、約2か月に1回、約3か月に1回、約4か月に1回、約5か月に1回、または約6か月に1回反復して投与される。
【0157】
V.医薬組成物
本開示では、本開示の方法に使用されるFasキメラタンパク質を発現するベクターを含む医薬組成物も提供される。医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物への投与用に処方できる。本開示の方法に使用される医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、ホスファートなどの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、 塩化ナトリウム、亜鉛塩など、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂を含む。一実施形態では、組成物は、生理食塩水を添加することにより処方される。
【0158】
本開示の組成物は、任意の好適な方法によって、例えば、非経口的に(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内、および頭蓋内への注射または注入技術を含む)、脳室内に、経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸内に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、または埋込式リザーバーを介して投与できる。一実施形態では、併用療法が、全身にまたは局所に送達される。全身送達または局所送達のために、医薬製剤は、針、カニューレ、または外科用器具などの機械装置を用いて投与できる。
【0159】
本開示の方法で使用される組成物の滅菌注射形態は、水性または油性懸濁液であり得る。この懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、当技術分野の既知の技術に従って処方できる。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール懸濁液のような、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液であり得る。使用可能な許容されるビークルおよび溶媒の中でも特に、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液が好適である。加えて、従来から滅菌不揮発性油が、溶媒または懸濁媒として使用されている。この目的では、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激の不揮発性油を、使用できる。オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、オリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化型などの薬学的に許容される天然の油と同様に、注射液の調製において有用である。これらの油性溶液または懸濁液はまた、カルボキシメチルセルロースなどの長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、または乳濁液および懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の処方に一般に使用される同様の分散剤を含有してもよい。Tween、Spanなどの一般に使用される他の界面活性剤、および薬学的に許容される固体剤形、液体剤形、または他の剤形の製造に一般に使用される他の乳化剤または生物学的利用能増強剤も、処方目的に使用できる。
【0160】
非経口製剤は、単回ボーラス用量、注入または負荷ボーラス用量、それに続く維持用量であり得る。これらの組成物は、特定の固定間隔または可変間隔で、例えば1日1回、または「必要に応じて」投与できる。
【0161】
本開示の方法に使用される特定の医薬組成物は、例えば、カプセル、錠剤、水性懸濁液、または溶液を含む許容される剤形で経口投与できる。特定の医薬組成物はまた、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、ベンジルアルコールもしくは他の好適な防腐剤、生物学的利用能を増強する吸収促進剤、および/または他の従来からの可溶化剤もしくは分散剤を用いて、生理食塩水の溶液として調製されてよい。
【0162】
実施例
実施例1
転移性ルイス肺癌を有するマウスでのVB-111と組み合わせた抗PD-L1抗体の有効性および安全性の評価
目的:この試験の目的は、転移性のルイス肺癌マウスモデルで、Ad5-PPE-1-3X-Fas-cと、抗PD-L1モノクローナル抗体の併用治療の有効性と安全性を調査することであった。
【0163】
材料:以下の材料を、この試験で用いた:
精製抗マウスCD274(B7-H1、PD-L1)
・カタログ番号:BLG-124328、BLG-124329ハムスターIgG
・濃度:2.03mg/ml
・供給業者:BIOLEGEND(ENCOによる)
・物理的状態:液体
・ロット番号:8210782
・サイズ:25mgの1つのバイアルおよび5mgの別のバイアル
・ビークル:PBS
・調製:抗PD-L1抗体を、1mg/mlの濃度にPBS中で溶解した(マウス当たり200μlは、200μg/マウスの投与量を与える)。
Ad5-PPE-1-3X-Fas-c(VB-111)109個のウィルス粒子/マウス
・濃度:1x1012個のウィルス粒子(vp)/ml
・物理的状態:液体
・貯蔵条件:≦-65℃、低温バイアル中
・ビークル:生理食塩水
・調製:バイアルを、治療の日に解凍し、転倒混和した。VB-111(1x1012個/ml)を、100倍希釈した。(10μlの1x1012個/mlのVB-111を採取し、990μlの生理食塩水を加えることにより、VB-111x1010個/mlの濃度を得た)。マウスに、100μl/マウスをIV投与して、(1x109個のVP/マウス)を達成した。
Ad5-PPE-1-3X-Fas-c(VB-111)1011個のウィルス粒子/マウス
・濃度:1x1012個のウィルス粒子(vp)/ml
・物理的状態:液体
・貯蔵条件:≦-65℃、低温バイアル中
・ビークル:生理食塩水
・調製:バイアルを、治療の日に解凍し、転倒混和した。VB-111(1x1012個/ml)を100μl/マウスで投与し、1x1011個のウィルス粒子/マウスを達成した。
陰性対照/ビークル
・名称:生理食塩水
・供給業者:LIFE
・物理的状態:液体
・ロット番号:G172446
・サイズ:各バイアルは5mlを含有
・貯蔵条件:室温
【0164】
動物
12~14週齢の雄C57BL/6マウスを、この試験で用いた。マウスのケアおよび取り扱い手順は、Institute of Laboratory Animals,National Academy Press(Washington,D.C.)により出版された実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従った。
【0165】
方法:
雄C57BL/6マウス(12~14週齢)の左足蹠に、F群(健康な未処理群)を除いて、50μl中の5x105個のD122細胞を注射した。
【0166】
マウスを、5日毎に腫瘍直径について監視した。腫瘍直径が5mmに達すると、マウスを、腫瘍直径が7mmに達するまで毎日追跡調査した。腫瘍直径が7mmに達した日を0日目と定め、原発腫瘍を、肢切断により取り除いた。肢切断時に、マウスを、異なる治療群に無作為に分割した(
図1および表4)。治療を、肢切断後5日に開始した。各動物は、下記を受けた:
A.生理食塩水 IV 100μl;
B.VB-111(1x10
11個のVP/マウス、100μlのIV)5日目に治療1回;
C.VB-111(1x10
9個のVP/マウス、100μlのIV)5日目に治療1回;
D.VB-111(1x10
9個のVP/マウス、100μlのIV)5日目に治療1回および抗PD-L1抗体(200μg/マウス、IP)治療、3日毎(5日目、8日目および11日目)に1回;
E.抗PD-L1抗体(200μg/マウス、IP)治療、3日毎(5日目、8日目および11日目)に1回;または
F.無治療(健康群)。
【0167】
最初の3匹の連続した死亡に対する肢切断から死亡までの経過平均日数により、残りの動物に対する肢切断から屠殺までの日数を決定した。
【0168】
【0169】
有効性評価:肺重量を、記録、撮影し、ホルムアルデヒド4%中で収集した。腫瘍量を、正常肺重量(0.1526g)を差し引くことにより計算した。試験した各パラメーターを、t検定により解析した。
【0170】
結果:
体重
全ての治療群間で平均体重の有意な差異は認められなかった。有意な差異が、生理食塩水群と健康群の間で観察された(p<0.05)。
肺重量
陰性対照、生理食塩水治療群の平均肺重量は、健康群より6倍増大した。
【0171】
1x10
11個のVP/マウスのVB-111による治療は、最も強力な効果を示し、平均肺重量を有意に(p≦0.001)62%低減した。より低い投与量の1x10
9個のVP/マウスでのVB-111は、肺重量を有意に(p<0.005)36%低減し、これは、抗PD-L1治療後に観察された44%低減(p≦0.001)と類似であった。しかし、1x10
9個のVP/マウスのVB-111と、抗PD-L1の併用治療は、58%の平均肺重量の低減率(p≦0.001)をもたらし、これは、1x10
11個のVP/マウスの高投与量のVB-111による治療後に観察された比率に類似であった。1x10
9個のVP/マウスのVB-111と、抗PD-L1の併用治療は、1x10
9個のVP/マウスのVB-111による単剤療法よりも、有意により効果的であった(p<0.05)(
図2)。
【0172】
腫瘍量
1x10
11個のVP/マウスのVB-111による治療は、最も強力な効果を示し、平均腫瘍量を有意に(p≦0.001)72%低減した。より低い投与量の1x10
9個のVP/マウスでのVB-111は、平均腫瘍量を有意に42%低減し(p<0.005)、および51%の低減が抗PD-L1治療後に観察された(p≦0.001)。しかし、1x10
9個のVP/マウスのVB-111と、抗PD-L1の併用治療は、67%の低減をもたらし(p≦0.001)、1x10
11個のVP/マウスの高投与量のVB-111による治療後に観察された低減に類似であった。1x10
9個のVP/マウスのVB-111と、抗PD-L1の併用治療は、1x10
9個のVP/マウスのVB-111による単剤療法よりも、有意により効果的であった(p<0.05S)(
図3)。
【0173】
結論
この試験では、高投与量のVB-111(1x1011個のVP/マウス)による治療は、LLCマウスモデルにおける平均肺重量および腫瘍量を有意に低減した。抗PD-L1と組み合わせた、より低い投与量のVB-111(1x109個のVP/マウス)による治療は、抗PD-L1または1x109個のVP/マウスのVB-111による単剤療法よりも平均肺腫瘍量の低減において優位性を示し、高投与量の1x1011個のVP/マウスのVB-111による単剤療法と類似の効果を示した。
【0174】
実施例2
B16F10黒色腫腫瘍を有するマウスでのVB-111と組み合わせた抗PD-L1抗体の有効性および安全性の評価
目的:この試験の目的は、黒色腫腫瘍マウスモデルで、Ad5-PPE-1-3X-Fas-cと、抗PD-L1モノクローナル抗体の併用治療の有効性と安全性を調査することであった。
【0175】
材料:以下の材料を、この試験で用いた:
精製抗マウスCD274(B7-H1、PD-L1)
・カタログ番号:BLG-124329、ハムスターIgG
・濃度:2.0mg/ml
・供給業者:BIOLEGEND(ENCOによる)
・物理的状態:液体
・ロット番号:B214210
・サイズ:25mgの1つのバイアル
・ビークル:PBS
・調製:抗PD-L1抗体を、1mg/mlの濃度にPBS中で溶解した(マウス当たり200μlは、200μg/マウスの投与量を与える)。
【0176】
Ad5-PPE-1-3X-Fas-c(VB-111)1011個のウィルス粒子/マウス
・濃度:1x1012個のウィルス粒子(vp)/ml
・物理的状態:液体
・貯蔵条件:≦-65℃、低温バイアル中
・ビークル:生理食塩水
・調製:バイアルを、治療の日に解凍し、転倒混和した。VB-111(1x1012個/ml)の100μl/マウスを投与し、1x1011個のVP/マウスを達成した。
【0177】
陰性対照/ビークル
・名称:生理食塩水
・供給業者:LIFE
・物理的状態:液体
・ロット番号:G172446
・サイズ:各バイアルは5mlを含有
・貯蔵条件:室温
【0178】
動物
12~14週齢の雄C57BL/6マウスを、この試験で用いた。動物は、試験の開始時に12~14週齢であった。マウスのケアおよび取り扱い手順は、Institute of Laboratory Animals,National Academy Press(Washington,D.C.)により出版された実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従った。
【0179】
方法:
雄C57BL/6マウス(12~14週齢)の左側腹部皮下に、50μlのPBS+50μlのマトリゲル中の1x105個のB16F10細胞を注射した。
【0180】
マウスを、週当たり3~6回腫瘍体積について監視した。治療を、9日目(「割り付け日」)に開始し、動物が約100mm3に達する腫瘍を形成すると、マウスを、腫瘍体積および体重に基づいて異なる群に無作為に割り付けた(この時点で、何らの測定可能な腫瘍を示さないマウスまたは液腫瘍を有するマウスは除外された)。マウス体重のデータを、週3回記録し、臨床徴候を、週3~6回記録した。
【0181】
各動物は、下記を受けた:
A.生理食塩水 IV;
B.VB-111(1x1011個のVP/マウス、100μlのIV)9日目に治療1回;
C.抗PD-L1抗体(200μg/マウス、IP)治療、2~3日毎(9日目、12日目および14日目)に1回;または
D.VB-111(1x1011個のVP/マウス、100μlのIV)を9日目に治療1回および抗PD-L1抗体(200μg/マウス、IP)による2~3日毎(9日目、12日目および14日目)に1回の治療。
【0182】
治療コホートを下表5にまとめる。
【表5】
有効性評価:個別の腫瘍体積を、記録、撮影し、ホルムアルデヒド4%中で収集した。
【0183】
結果:
体重
全ての治療群間で平均体重の有意な差異は認められなかった。
【0184】
腫瘍体積(mm
3)
VB-111の1x10
11個のVP/マウスの単独、または抗PD-L1単独による治療は、腫瘍体積を中程度に低減させた;しかし、最も強力な効果は、次のVB-111と抗PD-L1との併用療法であった。併用治療は、15日目から屠殺まで平均腫瘍体積を有意に低減した。併用治療の価値は、17日目まで最も顕著であった(
図4)。
【0185】
結論
抗PD-L1と組み合わせた、VB-111(1x1011個のVP/マウス)による治療は、抗PD-L1または1x1011個のVP/マウスによる単剤療法よりも、平均腫瘍体積の低減において優位性を示した。
【0186】
実施例3
前治療のある進行型または転移性扁平細胞非小細胞肺癌(NSCLC)の患者におけるニボルマブと組み合わせたVB-111の第1相/2相無作為化非盲検多施設試験
試験デザインおよび治療計画
この非盲検試験は、進行型または転移性扁平細胞NSCLCの患者における、2週毎に3mg/kgを標準治療として輸注されるニボルマブと組み合わせて、2ヶ月毎に静脈内(IV)投与されるVB-111の安全性と有効性を、ニボルマブ単独と比較して評価することを目的とする。試験は、単一群、多施設、用量漸増の組み合わせが3+3用量漸増モデルを用いて最大12人の患者に投与される、第1相の構成要素で開始され、成功した場合には、以降で詳述のように、無作為化第2相へのさらなる登録が進められる。
【0187】
第1相の構成要素:投与レベル1(コホート1):VB-111の3x10
12個のウィルス粒子(VP)+ニボルマブの3mg/kg
第1相の構成要素を、
図5に示す。少なくとも3人の患者が、ニボルマブ(3mg/kg)のIV注入と、それに続くVB-111(3x10
12個のウィルス粒子(VP))により治療され、28日間にわたり用量規制毒性(DLT)の発生について観察される。最初は、1人のみの患者が登録され、治療が開始されるが、その間に、2人の追加の患者が、患者1の治療開始日の少なくとも5日後に登録される。最初の組の3人の患者において28時間の期間にDLTが記録されない場合には、コホート2の募集が開始される。しかし、2件のDLTが最初の組の3人の患者で記録される場合には、試験は終了される。1件のDLTのみが観察される場合、3人の追加の患者が同じ投与レベル1を投与され、DLTが最大28日間にわたり評価される。1件のDLTがこの第2の組の患者で観察される(すなわち、2/6患者がDLTを経験する)場合、試験は終了される。それ以外の場合には、コホート2の募集が開始される。
【0188】
第1相の構成要素:投与レベル2(コホート2):VB-111の1x1013個のVP+ニボルマブの3mg/kg。
【0189】
コホート2の登録の開始は、コホート1の全ての患者が28日の観察期間を完了し、2件より少ないDLTが報告された後のみに認可される。
図5を参照されたい。このコホート2では、少なくとも3人の患者が、ニボルマブ(3mg/kg)のIV注入と、それに続くVB-111(3x10
13個のVP)のIV注入により治療され、28日間にわたりDLTの発生について観察される。コホート2の登録スケジュールは、コホート1のものと類似である:最初は、1人のみの患者が登録され、治療が開始されるが、その間に、2人の追加の患者が、患者1の治療開始日の少なくとも5日後に登録される。最初の組の3人の患者において28時間の期間にDLTが記録されない場合には、この投与量は併用療法のために安全であると判断され、第2相試験推奨用量(RP2D)として使用される。しかし、2件のDLTが最初の組の3人の患者で記録される場合には、試験は終了される。1件のDLTのみが観察される場合、3人の追加の患者が同じ投与レベル2を投与され、DLTが最大28日間にわたり評価される。1件のDLTがこの第2の組の患者で観察される(すなわち、2/6患者がDLTを経験する)場合、試験は終了される。それ以外では、この試験の第2相の構成要素への登録が認可される。
【0190】
この時点で、患者内の用量漸増が許容される、すなわち、投与レベル1で治療された患者は、その後の投与レベル2での治療を受けるために用量が段階的に増やされる。第1相に入る全ての患者は、試験の第2相分析で有効性について評価される。
【0191】
DLTの定義:下記を除く、治療の最初の28日間に発生するいずれかの薬物関連の(VB-111またはニボルマブのいずれか)グレード3以上の毒性:
・グレード3以上の肝臓または血液学的毒性。
・グレード3以上の医学的に制御できる悪心または嘔吐(悪心および/または嘔吐が医学的に制御できず、28日間の観察期間中に発生する場合には、それはDLTと見なされる)。
・グレード3以上の低カリウム血漿、低ナトリウム血症、低リン血症、低マグネシウム血症、および低カルシウム血症(これらが容易に中和できる、臨床的に無症候性である、および医学的に意味のある合併症(例えば、ECG変化)を付随しない場合に)。
・VB-111投与の24時間後以内に発生するグレード3~4の発熱イベントは,それらが対症療法に応答する場合には、DLTと見なしてはならない。
・ニボルマブ治療により一般に予測される(例えば、発疹、甲状腺炎、下痢、肝炎、腎炎、間質性肺炎)および試験責任医師によりニボルマブに関連すると見なされるグレード3~4のイベントは、試験責任医師による判断で、それらがニボルマブ単剤療法毒性と比較して、グレード、程度、期間または発症時間の観点でより重篤でない限り、DLTと見なされない。
【0192】
28日間の観察期間をDLTなしで完結した患者は、14日サイクルの4サイクル目毎(56±5日毎)の1日目にVB-111、および14日サイクル毎の1日目にニボルマブによる治療が継続される。両方の薬物が投与される日には、ニボルマブが、最初に投与される。これらの患者は、イベントのスケジュールに従って、全ての診断および評価が継続される。VB-111および/またはニボルマブ投与量の低減は、許容されない(投与量は、このプロトコルで定められた治療遅延または中断ガイドラインに従って、遅らせるまたは中断することができるのみである)。
【0193】
この試験でDLTが報告される場合には、DLTが報告された患者は、試験治療を中断する。有効性FUが、中断した患者の残りについて、DLT患者に対し実施されるべきである(さらなる抗癌治療およびCTスキャン収集のためにFUを継続する)。これらの患者に対するさらなる抗癌治療は、試験責任医師の裁量に従って実施される。
【0194】
DLT以外の何らかの理由で28日の観察期間の間に中止した患者は、同じ投与レジメンで治療される患者と置き換えられる。28日の観察期間後に発生したAEは、たとえそれらがDLT基準に適合する場合でも、AEとして記録される。28日の観察期間後にDLT基準に適合するAEイベントでは、試験責任医師は、具体的安全評価ガイドラインについてメディカルモニターと相談する。
【0195】
第2相の構成要素:
第2相の構成要素を
図6に示す。2件未満のDLTがコホート2の患者で報告される場合、第2相構成要素が開始され、新規患者が募集される。この試験パートでは、患者は、集中無作為化手順を用いて、2つの治療群の1つに1:1の比率で無作為化される(調査群および対照群)。
【0196】
群1(ニボルマブと組み合わせたVB-111):
・1x1013個のVPの投与量のVB-111(RP2D)のIV注入を、1日目および14日サイクルの4サイクル毎(56日±5日毎)に投与。
・標準治療として、3mg/kgのニボルマブをIV注入により各14日サイクルの1日目に投与。
【0197】
群2(ニボルマブ単独):
・標準治療として、3mg/kgのニボルマブをIV注入により各14日サイクルの1日目に投与。
【0198】
この試験では、1サイクルの長さは14日である。試験薬の最初の投与は、無作為化の48時間以内に実施される必要がある。両方の薬物が投与される日には、ニボルマブが最初に投与される。VB-111および/またはニボルマブ投与量の低減は、許容されない(投与量は、このプロトコルで定められた治療遅延または中断ガイドラインに従って、遅らせるまたは中断することができるのみである)。また、対照群から組み合わせ群への乗り換えはない。
図6を参照のこと。
【0199】
無作為化は、次の層別化因子により層別化される:
・PD-L1発現レベル<1%対≧1%
・喫煙状態:以前の軽度喫煙者または非喫煙者対喫煙者
★非喫煙者は、現在までに100本以下のシガレットを喫煙した患者と定義した;
★以前の軽度喫煙者は、100本より多く、10pack-years(10x1日のタバコの箱数x年数)以下喫煙し、かつ登録前の禁煙期間1年以上の患者と定義した;
・性別:男性対女性
【0200】
試験治療時間
試験の両相(第1相および第2相)で、治療は、患者が受け入れられない治療関連毒性を経験するまで、irRECISTにより定義されるような確証された疾患進行(PD)まで、または他の理由(例えば、同意の撤回、試験責任医師の裁量、試験責任医師裁量により中断基準に適合しない疾患進行)で停止されるまで、継続される。試験治療は、確証されたPDにより治療を中断する患者において完了したと見なされる。いずれか他の理由のための中断は、不完全な治療と見なされ、「中断」として記録される。
【0201】
試験治療の完了または中断時に、患者は、医師の裁量により治療される。あらゆる努力が、標準治療により定義される間隔で、死亡、同意の撤回または追跡不能例まで、治療後スキャン(標準治療に従って行われる)、その後の抗癌療法に関する情報、および患者報告アウトカム尺度を収集するためになされる。PD以外の理由で試験治療を中断した患者に対しては、追跡調査スキャンがPD、同意の撤回、死亡、追跡不能例まで、8週(±7日)毎に実施されるべきである。
【0202】
試験登録および中止
なんらかの選択基準または除外基準からの偏りは許容されない。理由は、偏りは、試験、法規制の適合性、または被験者の安全性の科学的健全性を脅かす可能性があるためである。従って、プロトコルに指定された基準の遵守は必須である。被験者の適格性に関するどのような疑問も、登録の前にスポンサーと議論されるべきである。
【0203】
被験者選択規準。この試験の参加に適格であるためには、被験者は下記の基準の全てに適合しなければならない:
試験要件に従う患者の認識と意志の確認として、すべての試験の具体的手順および治療の開始の前に取得されるインフォームドコンセントへの署名。
18才以上の女性または男性患者。
ステージIVまたはステージIIIの組織学的に実証された扁平細胞非小細胞肺癌(NSCLC)、または再発性疾患の患者であり、治癒的治療の候補ではなく、標準治療としての進行性疾患のためのセカンドラインニボルマブのための候補である患者。
進行型または転移性NSCLCに対する1回の事前の白金系2剤併用化学療法レジメンの間/後での疾患再発または進行。早期疾患に対する前治療(アジュバントまたはネオアジュバント)は、疾患が最後の白金治療の6か月以内に再発する場合、ステージIVのためのファーストライン治療としてカウントできる。
試験薬の最初の投与の前の28日以内に実施される、固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)1.1に従ったコンピュータ断層撮影(CT)による測定可能な疾患。標的病変は、実証された疾患進行が以前に照射した照射野に存在する場合、その照射野に位置していてもよい。
米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス≦1。
以下の基準による適切な腎臓、肝臓、および骨髄機能:
・好中球絶対数≧1500細胞/μl
・ヘモグロビン≧9.0g/dL
・血小板≧100,00細胞/μl
・総ビリルビン量≦正常上限(ULN)の1.5倍、(総ビリルビン量<3.0mg/dLでなければならないジルベール症候群の患者を除く)
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)≦2.5xULN
・血清クレアチニンレベル≦1.5ULN、または通常範囲を越えるクレアチニンレベルの患者の場合、クレアチニンクリアランス≧40ml/分(コッククロフト・ゴールト式により計算したクレアチニンクリアランス)
・プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)(秒)はULNの20%を越えて延長されない、但し、抗凝固剤の使用が原因の場合はこの限りではない;
余命≧12週。
大きな肺気量(例えば、10%以上のV20)を含む放射線治療は、試験薬の最初の投与の少なくとも4週前に完了しなければならない。大きな肺気量を含まない放射線治療は、試験薬の最初の投与の少なくとも2週前に完了しなければならない。
先行化学療法および/または臨床試験用医薬品は、試験薬の最初の投与の少なくとも4週前に投与されていなければならない。
性的に活発な妊娠可能な女性(WOCBP)またはWOCBPと共にいる性的に活発な男性は、試験の経過中、失敗のリスクが最小限になるように、セクション10.6.3で定義されるような受胎調節の効果的な方法を使用しなければならない。試験登録の前に、妊娠可能な女性は、試験参加中の妊娠の回避、および意図しない妊娠に対する潜在リスク因子の重要性について知る必要がある。妊娠可能性な全ての女性は、最初の投与の7日前以内の陰性妊娠試験結果がなければならない。
被験者除外基準:次の基準のいずれかに適合する被験者は、この試験の参加から除外される:
最初の試験治療の投与の12か月前以内の全身性の治療を必要とする、活動性のまたは既知のもしくは疑われる自己免疫疾患の最近の病歴を有する患者。1型糖尿病、ホルモン補充を必要とする自己免疫性甲状腺炎のみに起因する後遺症としての甲状腺機能低下症、または全身性治療を必要としない皮膚障害(白斑症、乾癬、または脱毛症)の被験者は、登録が許可される。
試験治療の最初の投与の14日前以内に副腎皮質ステロイド(毎日、>10mgのプレドニゾン等価量)または他の免疫抑制薬物による全身性治療を必要とする状態の患者。吸入または局所ステロイド類は、活動性自己免疫疾患の非存在下で許容される。
患者の診療記録に基づく、活性型EGFR変異またはALK遺伝子転座の存在。
病理学による、小細胞肺癌と混合されたNSCLC。
プログラム死1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)抗体、または任意の他の抗体または、共刺激もしくはチェックポイント経路を特異的に標的化する薬物による前治療。
前の抗癌療法に帰属された全ての毒性(脱毛症、疲労およびグレード2末梢神経障害以外)は、試験薬の投与の前に、グレード1(NCT CTCAEバージョン4)またはベースラインまで回復させなければならない。
臨床的に意味のある間質性肺疾患の診断を有する患者。
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)または既知の後天性免疫不全症候群(AIDS)に対し試験陽性の既知の病歴。
スクリーニングの前6か月以内の、急性または慢性活動性感染を示す、B型肝炎ウィルス表面抗原(HBV sAg)またはC型肝炎ウィルスリボ核酸(HCV RNA)についての陽性試験、注意:HBVについて血清学的検査陽性の患者は、過去の曝露を示すが、活動性感染の証拠がない場合(例えば、陰性PCR)には、適格である。
他のモノクローナル抗体に対する重度過敏症反応の病歴。
登録の5年前以内の他の臨床的に活動性の悪性腫瘍の病歴、但し、表面除去基底細胞癌または皮膚の扁平上皮細胞癌腫または局所的に切除/除去した子宮頸部または乳房の上皮内癌などの転移または死亡に対する無視できるリスクを有する腫瘍を除く。
試験の開始の前4週間以内の大手術(直視下生検を含む)、または試験治療期間中の大手術の必要性の予測。患者は、試験治療の最初の投与の少なくとも14日前に、大手術または大きな外傷の影響から回復していなければならない。
最初の試験治療の前24時間以内の、軽度の外科手術。
授乳女性。
ニューヨーク心臓病学会(NYHA)グレードII以上のうっ血性心不全。
試験治療の最初の投与の前6か月以内の心筋梗塞または不安定狭心症の病歴。
試験治療の最初の投与の前6か月以内の脳卒中または一過性脳虚血発作の病歴。
試験治療の最初の投与の前6か月以内の喀血(エピソード当り、小さじ1/2以上の鮮赤色血液)の病歴。
既知の増殖性および/または血管網膜症の病歴を有する患者(例えば、糖尿病患者)。
既知のCNS疾患、但し、治療済み脳転移を除く:治療済み脳転移は、臨床検査およびスクリーニング期間中の脳MRIにより確認して、治療後少なくとも4週間進行の証拠がない、またはグレード1≦出血(NCT CTCAEバージョン4)であるものとして定義される。CNS転移は、無症候性である必要があり、患者は、試験治療開始の少なくとも2週間前に神経学的にベースラインに戻っている。加えて、患者は、副腎皮質ステロイド投与を中止しているか、または≦10mgのプレドニゾン(または等価量)の安定なもしくは漸減用量による毎日の投与を受けなければならない。登録日の前3か月以内に実施された神経外科切除または脳生検により治療されたCNS転移を有する患者は、除外される。
試験治療の最初の投与の前6か月以内の大きな血管疾患(例えば、外科的修復の必要な大動脈瘤または最近の末梢動脈血栓症)。注意:安定な末梢血管疾患は許容される。
出血性素因または大きな凝固障害(治療薬抗凝血の非存在下)の臨床的証拠。
試験薬の最初の投与の前1年以内の腹部ろう孔または消化管穿孔の病歴。
重篤な非治癒性創傷、活動性潰瘍、または未治療骨折。
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の前4週間以内にまたは抗体ベース療法の前6週間以内に抗血管新生薬療法を受けた患者。注意:先行ベバシズマブ治療は、4週の休薬期間後に許容される。
主要血管(大動脈、大静脈、主要肺血管、など)または心膜もしくは心臓へ侵入する腫瘍。
禁止された治療薬および/または制限された治療法:
・この試験で指定されたもの以外の抗癌治療薬の進行中のまたは計画された投与。
・強力なCYP3A4阻害剤。
VB-111による前治療
いずれか他の重篤なまたは無制御な医学的障害、活動性感染、身体検査結果、臨床検査結果、変更された精神的状態、または精神医学的状態は、試験責任医師の判断で、要求事項に従う患者の能力を制限し、患者に対するリスクを実質的に高める、または試験結果の解釈に影響を与えるであろう。
試験および/または追跡調査手順に従うことができない
【0204】
治療割り付け手順
本試験に参加の可能性のある全ての被験者は、被験者の適格性を判断するために試験責任医師によるスクリーニングを受けなければならない。インフォームドコンセントを、いずれかのスクリーニング手順を実施する前に書面で取得する必要がある。被験者がインフォームドコンセント(ICF)にサインすると、特有の番号が割り付けられる。全ての被験者は、この割り付けられた番号および彼らのイニシャルにより特定される。特有の被験者識別番号は、4桁の数から構成され、第1と第2の桁は、試験施設を示し、第3と第4の桁は、その施設での被験者番号を示す。最初に組み込まれる被験者は、被験者番号01、2番目が02、等である。
【0205】
スクリーニング期間中にいずれかのステージでエントランス基準(entrance criteria)に適合できない被験者は、スクリーニング検査不適格と定義される。全てのスクリーニング検査不適格は、スクリーニング検査不適格の理由を含むスクリーニングログに記述される。スクリーニングログは、ICH GCPガイドラインに従って試験責任医師のサイトファイルに保持される。試験の第2相パートでの推定スクリーニング検査不適格比率は、10%であり、脱落者比率は、2%と推定される。従って、最大112人の被験者がスクリーニングされて100人の登録被験者の標的数に達すると予想され、群につき最低限の50人の評価可能な被験者を確保する。
【0206】
この非盲検試験の第2相セグメントは、治療群、群1または群2への無作為化(1:1)を含む。集中無作為化手順が用いられる。
【0207】
無作為化は、次の層別化因子により層別化される:
・PD-L1発現レベル:<1%対≧1%
・喫煙状態:以前の軽度喫煙者または非喫煙者対喫煙者
★非喫煙者は、現在までに100本以下のシガレットを喫煙した患者と定義した
★以前の軽度喫煙者は、100本より多く、10pack-years(10x1日のタバコの箱数x年数)以下喫煙し、かつ登録前の禁煙期間1年以上の患者と定義した
・性別:男性対女性
【0208】
試験介入
VB-111製品の説明
Ofranergene Obadenovec VB-111製剤:VB-111は、無菌ベクター溶液として製剤化される。溶液は、凍結(65℃以下)した単回使用の10mlガラスバイアルで供給される。各バイアルは、ウィルス力価1012VP/mlの5mLのベクターおよびビークル(リン酸緩衝食塩水中の10%グリセロール)を含む。ベクター溶液は、解凍され、希釈まで2~8℃で維持され、投与まで室温で維持される必要がある。
【0209】
Ofranergene Obadenovec VB-111供給:試験薬は、小型密閉段ボール箱に梱包され、各箱に6バイアルが入っている。 試験施設に、患者の治療に十分な量のVB-111が供給される。試験薬は、適切な貯蔵条件下で、指定受取人(臨床試験支援センターの規則に従って、薬剤師、または他の被指名人)に輸送される。各納入は、受取人により承認されなければならない。薬剤師またはその被指名人は、試験責任医師に適切な投与量で薬物を分配する。
【0210】
分配ログは、薬剤師または被指名人により保持され、それに各患者に分配された試験製品の日付および量を記録する。在庫記録は、試験経過中の責務および投与量を確認する試験モニターに入手できるようにされる。全ての使われたおよび使用されなかった容器は、試験を通じて理由が説明され、破棄のためにスポンサーに戻されるか、またはスポンサーに承認されればその施設で破棄される。書面での破壊の確認が、送付される。
【0211】
Ofranergene Obadenovec VB-111の貯蔵および安定性:VB-111の試験が、進行中であり、現在まで、65℃以下で48か月の貯蔵寿命を立証する。貯蔵寿命は、調製された各バッチに対する薬物輸送に付随する事務手続きの際に記載される。VB-111バイアルは、凍結された(65℃以下)密閉バイアル中で貯蔵される必要がある。
【0212】
Ofranergene Obadenovec VB-111の調製:VB-111の調製は、次の表に示す通りである:
【表6】
*薬剤師は、無菌の空バッグを使用し、40mlの生理食塩水(NS)+10mlのVB-111を個別にバッグに添加できる;またはNSの50mlのバッグを使用して、過剰体積を除去した後、VB-111を添加できる。
**<50kgの患者に対して35/11.5mlは、VB-111の30%の低減である。
【0213】
薬物調製の全体過程は、バイオセーフティキャビネット(BSC)II型中、室温で実施するものとする。解凍後、薬物は、可能な限りすぐに、室温の生理食塩水で希釈されるべきである。必要があれば、薬物は希釈の前に最大3時間にわたり氷上で維持され得ることに留意。薬物が生理食塩水中でその最終配合物になると、室温で保持される。
【0214】
VB-111の投与量および投与:VB-111は、4治療サイクル(56±5日)毎の1日目に3ml/分の速度で静脈内に投与される。VB-111投与の前に絶食の必要はない。注入ポンプの使用が可能である。ニボルマブおよびVB-111の両方の薬物が投与される日およびコホートには、ニボルマブが最初に投与される。
生理食塩水中に薬物を保持する最大時間は、室温で60分(プラス30分ウインドウ)である。50kgより少ない重量の患者は、表6に示すように、低減された投与量のVB-111を受ける。
患者がVB-111およびニボルマブの両方で治療される投与日には、ニボルマブがVB-111の前に調製および投与されるものとする。これは、試験薬は安全措置のため最後に投与されるべきであるというパラダイムに基づいている。2種の薬剤の薬理作用における配列依存性の変化があるという予測があるわけではない。これは、ニボルマブの直後(1時間以内)に生じると予測されるが、それは、臨床上必要性があり、およびより長い時間が必要ならばスポンサーのメディカルモニターと検討して、後で(24時間以内に)投与してもよい。
【0215】
ニボルマブ製品の説明
ニボルマブ製剤、投与量、および投与:ニボルマブは、白金系化学療法中にまたはその後に進行を伴う、転移性のNSCLCの患者の治療に適応される完全長ヒトモノクローナル抗体である。抗体は、プログラム死受容体-1(PD-1)活性を遮断し、腫瘍増殖の低減をもたらす。
ニボルマブは、無菌の防腐剤不含非発熱性の透明~乳光の、無色~淡黄色の液体であり、わずかに軽粒子を含み得る。静脈内注入のためのニボルマブ注射は、使い捨てバイアル(40mg/4mLまたは100mg/10mL溶液)で供給される。各1mLのニボルマブ溶液は、ニボルマブ10mg、マンニトール(30mg)、ペンテト酸(0.008mg)、ポリソルベート80(0.2mg)、塩化ナトリウム(2.92mg)、クエン酸ナトリウム・2水和物(5.88mg)、および注射用蒸留水、USPを含む。pHを6に調節するために、塩酸および/または水酸化ナトリウムを含んでもよい。
3mg/kg投与量が、14日サイクルの1日目に60分にわたり静脈内に投与される。注入は、無菌、非発熱性、低タンパク質結合インラインフィルター(細孔径サイズ0.2μm~1.2μm)含有の静脈ラインを通して投与される。同じ静脈ラインを通して他の薬物を同時投与してはならない。注入の終わりに静脈ラインを洗い流す。
ニボルマブ入手:ニボルマブは、標準治療の一部として患者に処方される。
ニボルマブの貯蔵および安定性:製品は、防腐剤を含まない。調製後、ニボルマブ注入液を:
・室温で調製時から4時間以下の間、貯蔵する(これは、IV容器中の注入剤の室温貯蔵および注入液の投与のための時間を含む)、または
・注入液調製時から24時間以下の間2℃~8℃(36°F~46°F)の冷蔵下で貯蔵する。
凍結してはいけない。
【0216】
VB-111のための前投薬
解熱療法:アセトアミノフェン(900~1000mg)が、VB-111投与の1~2時間前に投与され、続いて、必要に応じ450~500mgのアセトアミノフェンが最大36時間にわたり投与される。
副腎皮質ステロイド治療:VB-111投与後にグレード3発熱のある患者では、または試験責任医師の裁量で、デキサメタゾン10mgが、その後のVB-111投与において、投与の30分(前治療最大3時間までであるが、治療前20分より早くてはいけない)前に投与されてよい。さらなる副腎皮質ステロイド治療は、試験責任医師の裁量で投与される。
前投与は、ニボルマブに対して指示されない。
【0217】
集団:最大112人の適格規準に適合した前治療歴のある進行型または転移性扁平細胞NSCLC患者(≧18才)が、試験に登録される。第1相:最小6人で最大12人の患者が登録される。第2相:100人の患者が登録され、2つの治療群(群当たり50人の患者)の1つに無作為に割り付けられる(1:1)。
【0218】
施設の数:第1相:イスラエルに2カ所の施設;第2相:必要と判断されると、追加の施設が開設され得る。
【0219】
試験の目的:安全性:進行型または転移性扁平細胞NSCLCに患者における、VB-111およびニボルマブの静脈内投与の組み合わせの安全性および耐容性を、ニボルマブ単独と比較して調べること。有効性:進行型または転移性扁平細胞NSCLCに患者における、VB-111およびニボルマブの静脈内投与の組み合わせの有効性を、ニボルマブ単独と比較して評価すること。
【0220】
試験エンドポイント:
安全性エンドポイント:治療の安全性および耐容性は、治療期間の前に、治療期間中の一定間隔で、および治療の中断後最大60日までの間に収集された、DLT、AE、重篤な有害事象(SAE)、患者臨床状態および標準的臨床検査結果に基づいて評価される。安全性評価は下記からなる:
・問診
・有害事象の監視および評価
・身体検査
・バイタルサイン
・ECG
・検査室測定-臨床化学、血液学、尿検査。
【0221】
有害事象の重症度/強度は、米国国立癌研究所の有害事象共通用語規準を使って等級分類される。
【0222】
有効性エンドポイント:
【0223】
主要エンドポイント:
・RECIST1.1による(ORR)奏効率
【0224】
副次エンドポイント:
・全生存期間(OS)
・OS率(無作為化後12か月の時点)
・irRECISTで定義されたORR
・客観的奏効の期間(DOR)
・奏効までの期間(TTR)
・無増悪生存期間(PFS)
・PFS率(無作為化後12か月の時点)
【0225】
探索的およびサブスタディエンドポイント:
・治療前PD-L1発現の関数としてのOS(月)
・治療前PD-L1発現の関数としてのPFS(月)
・治療前PD-L1発現の関数としてのORR
・患者報告アウトカム:肺癌症状尺度(LCSS)
・少なくとも1種の治療後発熱を発症した患者と発熱のなかった患者のサブグループ間での主要および副次有効性エンドポイントの比較
【0226】
次の試料が、探索的分析のために、全ての患者から収集される:
・病理組織学のためのアーカイブ腫瘍組織
・試験責任医師が、生検が参加中または試験薬中断の3か月以内の試験患者のための標準治療の一部として臨床的に正当化されると判断する場合、生検試料は、病理組織学のためのさらなる試験のために、抗腫瘍活性、免疫治療活性およびウィルス導入遺伝子の証拠のために、使用され得る。
試験手順/評価
病歴および被験者の状態:関連病歴および薬歴は、面談により、またはスクリーニング来診時およびサイクル2から開始される各14日サイクルの1日目の診療記録に基づいて得られる。データ収集は、組織学的診断およびPD-L1タンパク質発現(試験登録前の最新の検査)を確証し、以前の関連病状および治療、併用薬および合併症に重点を置く。診療記録は、禁忌疾患の文書化のために見直される。加えて、被験者は、現在または計画中の薬物(処方および売薬)および手順のリストを提供するように求められる。アーカイブ腫瘍組織は、スクリーニング来診時に、全ての適格患者から収集される。
身体検査;身体検査は、最初の治療サイクルの1日目の前7日以内、各14日治療サイクルの1日目、および試験薬物の最後の投与から30日±7日に実施される。体重は、各身体検査で測定され、身長は、スクリーニング身体検査中に測定されるのみである。
バイタルサインおよび酸素飽和度:バイタルサインおよび酸素飽和度は、最初の治療サイクルの1日目の前7日以内およびその後、サイクル1の1日目および8日目に測定される。サイクル2以後から、これらのパラメーターは、各14日治療サイクルの1日目、および試験薬物の最後の投与から30日±7日に測定される。
血圧、体温、呼吸および心拍数、パルス酸素測定によるO2飽和度(および、該当する場合は、酸素補給量の監視)が、各投与前30分(±5分)、各投与後30分(±5分)および最初のVB-111投与後のみ4時間(±5分)および6時間(±60分)に記録される。これらのパラメーターはまた、患者が何らかの新しいまたは悪化する呼吸症状があるときはいつでも記録される。
アーカイブ腫瘍組織:比較試験のために、以前の手術由来の組織を取得および提示するためにあらゆる努力がなされる。アーカイブ組織またはスライドの提出は、無作為化後30日以内に行われるべきである(試験検査室リファレンスマニュアルを参照されたい)。試料は、CD4およびCD8 T細胞に対する抗体を用いる免疫組織染色に供される。VBLは、さらなる作用機序の説明を裏付けるためのおよびVB-111に応答する可能性がある患者のサブセットを特定するための追加の試験のために、分析を拡大するオプションを保持する。
オプションの新規生検試料:試験責任医師が、生検が参加中または試験薬中断の3か月以内の試験患者のための標準治療の一部として臨床的に正当化されると判断する場合、それらの生検試料は、VBLによるさらなる試験のために(抗腫瘍活性および免疫治療活性およびウィルス導入遺伝子の証拠のために)使用され得る。組織試料が収集されると、残りの組織は、3種の試料に調製される:
・組織の1つの部分(約60mL)はすぐに、30mLの10%ホルマリン中に置かれ、収集の1週間以内に、好ましくは調製物をブロッキング後に、処理のためにVBLに常温で出荷される。試料は、VBL、またはVBLにより指定された中央検査室で周囲条件下にて貯蔵される。
・組織の2つの部分は、新しい小片として調製され、すぐに液体窒素下で2個のクライオバイアル中で急速凍結され、凍結してVBLに出荷される。凍結試料は、3か月毎に1回、ドライアイスと共にVBLに出荷され、-70℃以下でノンフロスト冷凍庫中にて中央検査室で貯蔵される。
【0227】
他の試験(抗腫瘍活性および免疫治療活性)の中でも特に、VBLは、腫瘍組織中のウィルス導入遺伝子の存在と発現の探索および検証も行う。DNAおよび/またはRNAは、DNAおよび/またはRNA単離キットを用いて、新しい凍結組織試料から抽出される。DNA試料は、組織中の挿入ウィルス導入遺伝子の配列の存在についてPCRにより検査される。RNA試料は、組織中の挿入ウィルス導入遺伝子発現についてPCRにより検査される。
【0228】
ECOGパフォーマンスステータス:最初の治療サイクルの1日目の前7日以内、各14日治療サイクルの1日目、および試験薬物の最後の投与から30日±7日に評価される。
【0229】
心電図:12誘導心電図が、サイクル1の1日目の前7日以内、最後の投与から30日±7日に実施される。試験責任医師は、ECGが正常か、異常か、およびその臨床的徴候を報告する。スクリーニング時に見つけられた全ての臨床的に有意な異常は、CRFに病歴として文書化されるべきである。
【0230】
臨床検査室評価:適格性、安全性および治療の影響の臨床検査は、地域の標準治療および臨床適応症に従って地域の臨床検査室で実施され、結果は、試験データベースに記録される。全ての試験パラメーターおよび関連臨床検査室の証明書に対する地域の臨床検査室の参照範囲は、試験薬物出荷を受ける前に、CROに提供されるべきである。
【0231】
血液学:血液学的評価は、サイクル1の開始の前7日以内、サイクル1の1日目および8日目、その後の14日サイクル毎の1日目、および最後の投与後30日±7日に行われる(常に、投与前に)。全血球数(CBC)は、完全なマニュアルによるヘモグロビン、ヘマトクリット(値)、白血球(WBC)または自動鑑別計数器によるもの(総好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球;絶対またはパーセンテージも許容可能である)、赤血球(RBC)、血小板数および赤血球沈殿速度(ESR)の評価を含む。
【0232】
生化学:生化学評価は、サイクル1の開始の前7日以内、サイクル1の1日目および8日目、その後の24日サイクル毎の1日目、および最後の投与後30日±7日に実施される(常に、投与前に)。評価は、包括的代謝パネル(アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、アルブミン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総ビリルビン量、クレアチニン、クレアチニンクリアランス、差動総タンパク質、尿酸、ウレア(BUN)、グルコース)および国際標準化比(INR)の評価を含む。肝臓機能試験結果は、投与の前72時間以内に取得されなければならない(投与の日に実施できるが、投与の前3日以内は実施できない)。
【0233】
甲状腺機能:甲状腺機能は、サイクル1の1日目、2回目の治療サイクル毎(すなわち、4週毎)の1日目、および最後の投与後の30±7日に評価される。TSHが評価され、何らの異常が記録されない場合には、T3および遊離T4に対する反応も測定される。
【0234】
尿検査:一般尿検査は、治療サイクル2から始めて各治療サイクルの1日目、および最後の投与後の30±7日に評価される。試験は、地域の標準に従って実施されるべき蛋白尿試験を含む。新規または増大した蛋白尿の症例では、24時間の尿収集が必要とされ得る。+2尿試験紙結果は、24時間の尿収集を必要とするが、+3尿試験紙結果は、試験薬を保持し24時間収集を必要とする。高クレアチニンの存在下での膿尿は、腎炎の可能性を評価する必要がある。
【0235】
凝血機能:プロトロンビン時間(PT)および部分トロンボプラスチン時間(PTT)(秒)は、最初の治療投与の7日目以内、治療サイクル2から始めて、各治療サイクルの1日目、および最後の投与後の30±7日に評価される。ULNの20%を越える延長は、試験責任医師がこの増加が抗凝固剤の使用によると考えることがない限り、VB-111投与の停止を必要とする。
【0236】
妊娠検査:血清または尿hCG妊娠検査が、妊娠の可能性のある女性に対し最初の治療投与量の開始の7日前以内に実施される。その後の検査は、2回目の治療サイクル毎(28日毎)の1日目に、投与の前に実施される。陰性の結果が、VB-111治療投与の前に入手されなければならない。妊娠検査は、次の理由で妊婦になる可能性のない女性に対しては必要ない:
・保健医療提供者により確証された閉経期
・子宮または両卵巣または両卵管を除去されている女性。
【0237】
コンピュータ断層撮影(CT):胸、腹部および骨盤およびスクリーニングおよび治療中に監視される任意の領域ならびに既知のまたは疑われる疾患(CNSを含む)の追加の部位のCTスキャンが、最初の試験投与の28日以内および4回目の治療サイクル毎(8週±5日毎)の1日目に収集される。試験薬物の中断後に、死亡、同意の撤回、または追跡不能例まで、治療後スキャンを収集するために、あらゆる努力がなされる。PD以外の理由で試験治療を中断した患者に対しては、PD、同意の撤回、死亡、追跡不能例まで、標準治療にしたがって、追跡調査スキャンが8週(±7日)毎に実施される。スクリーニング時の腫瘍評価は、施設基準CTによる。腫瘍評価方法は、全ての来診を通して一貫して、疾患進行まで実施される必要がある。患者は、RECIST1.1およびirRECISTに従って、試験を通して、試験責任医師により、疾患応答または進行に関し評価される。CTスキャンは、中央検査室審査のために収集されるが、試験の第2相パート由来の患者のためのみであり、「採集および保存」基準のみに基づく。CTは、スポンサーによる後の分析のために、CT毎に収集され、患者のファイルに保存される必要がある。その間および進行中の試験過程中、CTは、試験責任医師により読み取られ、解析される。試験中にリアルタイムでスキャンベースの応答を決定する責任は、中央判定者ではなく、(試験責任医師)にある。
【0238】
患者報告アウトカム:患者は、サイクル1の1日目、4回目の治療サイクル毎(すなわち、8週±5日毎)の1日目、および最後の投与後の30±7日に肺癌症状尺度(LCSS)を完了する。その後、死亡、同意の撤回、または追跡不能例まで、8週±7日毎に、治療後LCSSを完了するために、あらゆる努力がなされる。一般に、患者は、どの試験手順および試験治療にも先だって、LCSSを完了することを求められる。
【0239】
試験スケジュール
スクリーニング(1日目~28日目)
特定の被験者のためのスクリーニング期間は、被験者がインフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名すると開始される。書面でのインフォームドコンセントは、いずれかのプロトコル特異的試験または手順の実施の前に得られなければならない。インフォームドコンセントが得られた後で、スクリーニング評価が、下記に示すように、治療開始の7日以内に実施されるべき試験を除いて、計画された治療開始の28日以内に実施される。ICFの前に実施された身体検査および血液検査を含む標準治療試験は、スクリーニングのために使用され得る。
臨床試験を通して被験者を特定するために使用されかつその被験者に関連する全ての試験の文書化に使用する必要がある、特有の被験者番号が、スクリーニング時に割り付けられる。
次の評価が、スクリーニング来診にて実施される:
・可能な被験者から同意を得て、ICFで文書化する
・面談および/またはカルテ審査により病歴を得て適格性を決定する
・面談および/またはカルテにより薬歴を審査して適格性を決定する
・適格規準に適合する患者由来のアーカイブ腫瘍組織を取得する
・RECIST1.1ガイドラインに従い腫瘍状態を評価する
【0240】
次の試験は、最初の投与期間の7日以内に実施されなければならない:
・体重、身長、バイタルサインおよび酸素飽和度を含む、全身身体検査を実施する
・12誘導心電図を実施する
・ECOGパフォーマンスステータスを評価する
・血液学的、生化学的、凝血、甲状腺機能および尿検査を実施する
・適用できる場合は、妊娠の可能性のある女性に対し尿妊娠検査を実施する。
【0241】
試験来診
サイクル1、1日目-ベースライン
・適格性を確認するために併用薬を審査および記録する
・バイタルサインおよび酸素飽和度を測定する
・血液学的、生化学的、および甲状腺機能試験を実施する
・患者にLCSS質問票を完成させる
・必要に応じ、腫瘍生検を実施する
・選択規準/除外基準に基づいて適格性を確認する
・試験治療の最初の投与量を投与するニボルマブおよびVB-111の両方を受ける患者は、ニボルマブが最初に注入される
・有害事象を記録する
【0242】
サイクル1、8日目(±1日)
・併用薬を審査し、記録する
・有害事象を記録する
・バイタルサインおよび酸素飽和度を測定する
・血液学的、生化学的、凝血、甲状腺機能および尿検査を実施する
・必要に応じ、腫瘍生検を実施する
【0243】
サイクル2およびそれ以降、1日目(±5日)
・被験者により報告された、または試験責任医師により観察された有害事象を評価する
・併用薬を審査し、記録する
・体重、バイタルサインおよび酸素飽和度を含む全身身体検査を実施する
・ECOGパフォーマンスステータスを評価する
・血液学的、生化学的、甲状腺機能、凝血、尿検査を実施する
・妊娠の可能性のある女性の血清または尿妊娠検査を実施する(2回目のサイクル毎)
・必要に応じ、腫瘍生検を実施する
・試験治療薬を投与する
【0244】
4回目のサイクル毎(サイクル4、8、12、など)のみに実施されるべきこと:
・いずれか他の試験または手順の実施前に、患者にLCSS質問票を完成させる
・CTスキャンを収集し、RECIST1.1およびirRECISTガイドラインに従って腫瘍応答を評価する
・被験者により報告された、または試験責任医師により観察された有害事象を記録する
・併用薬を記録する
【0245】
試験完了来診-最後の投与後30日(±7日)
・被験者により報告された、または試験責任医師により観察された有害事象を記録する。AE記録は最後の投与後60日まで継続される。
・併用薬を記録する
・いずれか他の試験または手順の実施前に、患者にLCSS質問票を完成させる
・体重、バイタルサインおよび酸素飽和度を含む身体検査を実施する
・ECOGパフォーマンスステータスを評価する
・ECGを実施する
・血液学的、生化学的、甲状腺機能、凝血試験の血液試料を収集する
・尿検査用の尿を収集する
【0246】
試験後調査監視-中断後8週毎(±7日)
【0247】
死亡、同意の撤回、または追跡不能例まで、全ての治療患者の追跡調査を継続するために、あらゆる努力がなされる。
・被験者により報告された、または試験責任医師により観察された有害事象を記録する(最後の投与の場合のみで、最大60日後まで)
・いずれかのさらなる抗癌療法を記録する
・患者にLCSS質問票を完成させる
・CTスキャンを収集し、RECIST1.1およびirRECISTガイドラインに従って腫瘍応答を評価する
・生命状態は電話で収集できる。
【0248】
有効性評価基準:
応答パラメーター-RECIST1.1:
測定可能な疾患は、少なくとも1つの次元(記録されるべき最大直径)で正確に測定できる少なくとも1つの病変と定義される。各病変の最長直径は、造影剤を用いてCTスキャンで測定して、□10mmでなければならない。CTスキャンスライス厚は、5mm以下とすべきである。胸、腹部および骨盤CTは、それぞれの時点で実施されるべきである。同じ方法を、試験を通し腫瘍評価に対し使用すべきである。
悪性リンパ節は、それらの短い軸が>15mmの場合、測定可能疾患と見なすべきである。
臓器当り最大2つの全ての測定可能な病変および全ての関与臓器の全体の代表における5つの病変が、標的病変として特定されるべきであり、ベースラインで記録および測定される。
標的病変は、それらのサイズ(最大長の直径を有する病変)、全ての関与臓器の代表であること、および1つの一貫した評価方法(画像処理技術によりまたは臨床的に)によるそれらの正確な再現可能な反復測定に対する適合性を基準に選択されるべきである。全ての標的病変について最大長の直径(LD)の合計が計算され、ベースライン合計LDとして報告される。
全ての他の病変(または疾患部位)は、非標的病変として特定され、また、ベースラインで記録されるべきである。測定が必要とされないこれらの病変は、「存在」、「非存在」または「明らかな増悪」として追跡されるべきである。
疾患状態の全てのベースライン評価は、治療の開始に可能な限り近い時点で実施されるべきであり、治療の開始4週前より早期であってはならない。
【0249】
応答基準:各標的病変の最大長の直径の測定が、追跡調査のために必要である。リンパ節に対しては、最大長の直径の測定が、追跡調査のために必要である。これらの直径の合計の変化は、腫瘍サイズの変化のある程度の推定値、従って、治療有効性を提供する。全ての病変は、ベースラインとして同じ技術を用いて評価される必要がある。
完全寛解(CR):は、全ての標的および非標的病変の消失であり、新規病変の証拠のないことである。いずれかの病理学的リンパ節は、短軸の<10mmまでの低減がなければならない。CRは、少なくとも4週間隔で、2種の疾患評価により実証されなければならない。
部分応答(PR):は、ベースラインのLD合計を基準にして、全ての標的測定可能病変の最大長直径の合計の、少なくとも30%の低減である。非標的病変の明らかな増悪がなく、新規病変がないことがあり得る。少なくとも4週間隔で2種の疾患評価による実証が必要である。唯一の標的病変が、身体検査で測定される孤立した骨盤腔内腫瘤であり、それがX線検査で測定可能でない症例では、LDの50%低減が必要である。
進行性疾患(PD):は、最小LD合計を基準にして、標的病変の合計の、少なくとも20%の増大である。合計は、少なくとも5mmの絶対増大を実証する必要がある。1個または複数の病変の出現もまた、疾患増大と見なされる。試験登録の12週以内の治療医師の意見において、腫瘍起源の細胞学的証拠がない胸水以外の既存の非標的病変の明らかな増悪もまた、疾患増大と見なされる(この状況では、説明がなされる必要がある)。唯一の標的病変が、身体検査で測定される孤立した骨盤腔内腫瘤であり、X線検査で測定可能でない症例では、LDの50%増大が必要である。
安定な疾患:は、上記基準に適合しないいずれかの状態である。
応答について評価不能:は、症状または疾患の徴候に関連しない理由で、試験療法の開始後に反復腫瘍評価のないものと定義される。
【0250】
応答パラメーター-irRECIST基準:
RECIST1.1基準を用いた評価に加えて、RECISTの免疫応答適応が、この試験に適用される。RECIST1.1およびirRECISTの両方が、この試験で各CTに対し評価されるべきである。irRECISTは、治療継続/中断に関する決定のために使用される。irRECISTとRECIST基準の間の基本的な差異は、次の通りである:
・新規測定可能病変は、進行性疾患を構成するとは限らず、それらは総腫瘍量に加えられるべきである。新規測定不能病変は、疾患進行を構成しないが、irCRの決定を妨げる。
・見かけの疾患進行は、臨床的増悪に一致する症状の非存在下で4週後に確認されるべきである。
ベースラインでは、全ての標的病変(最大で2つの病変、合計最大で5つの病変)の最大長直径の合計(SumD)が、測定される。それぞれ次の腫瘍評価(TA)で、標的病変および新規測定可能病変(最大長直径≧10mm[リンパ節≧最短直径15mm];臓器当り2つの新規病変、合計5つの新規病変まで)のSumDが一緒に追加されて、総測定可能腫瘍量(TMTB)(TMTB=標的病変のSumD+新規、測定可能病変のSumD)を与える。
評価時点当りのTMTBのパーセンテージの変化は、それらが出現する旧および新両方の測定可能な病変のサイズおよび増殖動力学を表す。各腫瘍評価で、標的および新規測定可能な病変の応答は、TMTBの変化(irPDを除外後)に基づいて以下の通り決定される:
完全寛解(irCR):全ての標的および新規測定可能な病変の完全消失、但し、短軸が<10mmまで低減する必要があるリンパ節を除く
部分応答(irPR):ベースラインに対してTMTBの≧30%の低減(下記参照)
安定な疾患(irSD):irPDの非存在下で、irCRまたはirPRの基準に適合しない
進行性疾患(irPD):最下点に比較して、TMTBの≧20%の増大。急速な臨床的増悪がない限り、irPDは、初期irPD証拠資料から≧4週で得られる2回目の連続スキャンで確認されるべきである。確認されると、irPD日付は、初期irPD証拠資料の日付とみなされる。
【0251】
irRECISTによる総合効果は、測定可能な病変(TMTBに基づく)の、およびいずれかの測定不能な病変の存在下の応答由来である。
【0252】
追加の応答パラメーター
全生存期間は、VB-111の最初の投与から死亡まで、または最後の接触までの観察された寿命の長さである。
無増悪生存期間(測定可能な疾患試験)は、VB-111の最初の投与から疾患進行、死亡、または最後の接触までの期間である。
奏効率(ORR)は、完全寛解[CR]と部分応答[PR]との比率である。
奏功期間(DOR)は、最初のPRまたはそれより良好な証拠から、PDまたは何らかの原因による死亡の確認までの時間である。DORは、CRまたはPRを達成した被験者に対し計算される。
奏効までの期間(TTR)は、治療の開始から実証されたPRまたはそれより良好までの時間である。
【0253】
統計方法
全ての収集データは、まとめられ提示される。連続変数は、n個の観察の平均、中央値、標準偏差、および範囲として記述され、分類データは、頻度およびパーセンテージを含む分割表で記述される。全てのデータの個別の患者リストが、生成され、提示される。治療群を比較する統計試験は、両側5%レベルで実施される。統計記述および分析は、Rバージョン3.4.3(R Development Core Team.Vienna,Austria)を用いて実施される。
試験集団:安全性解析対象集団は、試験薬物の少なくとも1種の投与を受けた全ての被験者を含む。全ての安全性分析は、安全性解析対象集団に対して実施される。一部修飾した割り付けられたすべての集団(mITT)は、少なくとも1種のベースライン後有効性測定値(RECIST1.1)を有する安全性解析対象集団由来の全ての被験者を含む。有効性分析は、mITT集団に対し実施され、さらに、別の分析は、mITT被験者および試験のパートI由来の被験者を含む。
人口統計学的およびベースラインパラメーター:人口統計学的およびベースラインパラメーターは、全体でおよび治療群ごとにまとめられる。全ての連続変数は、記述統計によりまとめられる。全ての離散変数は、頻度およびパーセンテージによりまとめられる。
試験継続時間および服薬遵守:全ての試験薬投与および服薬遵守データが、まとめられる。
先行治療薬および併用薬:全ての関連する先行薬物および併用薬は、頻度およびパーセンテージによりまとめられる。全ての薬物は、世界保健機関(WHO)薬物辞書を用いてコードされる。
前述の特定の実施形態の記載は、当該技術の範囲内の知識を適用することにより、他者が、過度の実験をすることなく、また本開示の一般的概念から逸脱することなく、様々な用途に向けてこのような特定の実施形態を容易に修正および/または適合させることができるという本開示の一般的性質を完全に明らかにしている。従って、このような適合および修正は、本明細書で提示された教示および手引きに基づいて、開示された実施形態の等価物の意味および範囲に入ることが意図されている。本明細書の用語または表現が教示および手引きを考慮して当業者により解釈され得るように、本明細書の表現または用語は、説明を目的とし、限定を目的とするものではないことを理解されたい。
【0254】
実施例4
転移性結腸直腸癌(mCRC)の患者における、ニボルマブと組み合わせたVB-111の第2相試験。
【0255】
背景:
GI癌における免疫ベース手法は、残念なことに、-マイクロサテライト不安定(MSI-H)疾患および胃癌での免疫チェックポイント阻害の明らかな例外により-多くは失敗であった。この理由は、明らかではないが、進行しているTステージで浸潤性リンパ球の欠如、ならびに免疫抑制腫瘍微小環境により明らかなように、進行疾患では、GI癌はそれほど免疫原性でないように見えるという事実に関連していることは疑いない。
・VB-111は、修飾マウスプレプロエンドセリン(PPE)プロモーターおよびFasキメラ導入遺伝子を含む非反復性E1欠失アデノウィルス型5からなる抗血管新生薬である。
・VB-111は、試験され、神経膠芽腫、卵巣腫瘍および甲状腺腫瘍で有望であることを示している。
・ニボルマブは、PD-1に対するヒトモノクローナル抗体である。
・この試験の目的は、結腸直腸癌(CRC)におけるVB-111の効果を試験し、VB-111療法により誘導される抗腫瘍免疫をPD-1阻害により高めることができるかどうかを評価することである。
【0256】
目的:
・難治性で転移性のCRC患者において、ニボルマブと組み合わせたVB-111の安全性および耐容性を決定すること。
・VB-111およびニボルマブの併用治療の効果判定基準(RECIST v1.1)に従って、難治性で転移性のCRCの患者における最良総合効果(BOR)(部分応答(PR)+完全寛解(CR))を決定すること。
【0257】
適格性:
・肝臓に転移した結腸直腸癌の病理組織学的確認。
・患者は、結腸直腸癌に対する2ラインを越える標準治療化学療法で進行した
、または化学療法に不耐性もしくは前の化学療法を拒絶していなければならない。
・患者の腫瘍は、マイクロサテライト安定(MSS)であると実証されていなければならない。
・患者は、治療前または治療中に生検を行いやすい転移性の疾患の少なくとの1つの病巣を有し、この生検を受ける意思がなければならない。
・全ての登録患者は、RECIST v1.1基準による測定可能な疾患を有することを必要とする。
【0258】
デザイン:
・提案された試験は、転移性CRCの患者における免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ)と組み合わせたVB-111の第2相試験である。
・治療薬は、2週からなるサイクルで与えられ、VB-111は6週毎におよびニボルマブは2週毎に、進行または受け入れられない毒性まで投与される。
・疾患状態評価は、試験治療の開始後、8(±1)週毎に実施される。
【0259】
選択規準
・患者は、NCIの病態の臨床検査室による結腸直腸癌の病理組織学的確認がなければならない。
・患者は、放射線学的に確証された肝臓転移を有しなければならない。
・患者は、下記でなければならない:
★2つを越えるラインの結腸直腸癌用標準治療化学療法で進行している
または
★結腸直腸癌用標準治療化学療法に不耐性である
または
★前の結腸直腸癌用標準治療化学療法を拒絶した
・既知のKRAS野生型腫瘍の患者は、進行している、不耐性である、または抗EGFRベース治療を拒絶している必要がある。
・患者の腫瘍は、マイクロサテライト安定(MSS)であると実証されていなければならない。
・患者は、治療前または治療中生検を行いやすい転移性の疾患の少なくとも1つの病巣を有し、この生検を受ける意思がなければならない。理想的には、生検用に採取した病変は標的の測定可能病変の1つであってはならないが、これは、試験責任医師の裁量次第である。
・患者は、RECIST v1.1基準により測定可能な疾患を有しなければならない。
・年齢≧18才。18才未満の患者でのVB-111と組み合わせたニボルマブに使用に関する投与データまたは有害事象データは現在利用可能ではないので、子供は、この試験から除外されるが、将来の小児試験には適格であろう。
・ECOGパフォーマンスステータス。
・下記により定義される適切な血液学的機能:
★白血球(WBC)≧3x10
9/L
★好中球絶対数(ANC)≧1.5x10
9/L
★リンパ球数≧0.5x10
9/L
★血小板数≧100x10
9/L
★Hgb≧9g/dL(輸血完了の48時間を越える時間後)
・PTおよびPTT(秒)<1.2xULN。抗凝固剤処置された患者は、PTおよびPTTの基準に適合する必要はない
・INR、フィブリノーゲン<1.2xULN。抗凝固剤処置された患者は、INRの基準に適合する必要はない
・下記により定義される適切な肝臓機能:
★総ビリルビン量≦1.5xULN
★肝臓転移の非存在下で、ASTレベル≦2.5xULN;または肝臓転移の存在下で、≦5xULN
★肝臓転移の非存在下で、ALTレベル≦2.5xULN;または肝臓転移の存在下で、≦5xULN
・下記により定義される適切な腎機能:
・ニボルマブおよびVB-111の発生中のヒト胎児に与える影響は、未知である。この理由のために、妊娠の可能性のある女性および男性は、試験登録前におよび試験参加期間中およびニボルマブの最後の投与後5か月まで(女性)および7か月まで(男性)、またはVB-111の最後の投与後1か月まで(どちらかのより長い期間まで)、適切な避妊法を使用することに合意しなければならない。万一、女性またはそのパートナーがこの試験に参加している間にその女性が妊婦になるまたは妊婦と疑われる場合、女性は、治療医師に直ちに知らせなければならない。
・登録の時点で通常の範囲のトロポニンレベル。
・患者は、書面でのインフォームドコンセント文書を理解でき、それに署名する意思がなければならない。
・体重>35kg
・患者は、組織収集プロトコルに登録しなければならない。
【0260】
除外基準
・登録の前4週以内に標準治療抗癌療法または臨床試験薬(例えば、化学療法、免疫療法、内分泌療法、標的療法、生物学的療法、腫瘍塞栓形成、モノクローナル抗体または他の臨床試験薬)を用いた治療法、大照射野放射線療法、または大手術を受けた患者。
・登録の前4週以内に抗VEGF療法を受けた患者。
・現在、10mgのコルチゾン/日またはその等価量で定義される、生理的補充投与を越える副腎皮質ステロイドを投与されている患者。
・予後不良のために、および神経系および他の有害事象と間違える可能性のある進行性神経系機能不全を発症することが多いため既知の脳転移を有する患者。
・登録の前の6か月以内に、肝不全の徴候、例えば、臨床的に有意な腹水、脳症、または静脈瘤出血のある患者。
・事前の大部分の肝臓切除:残りの肝臓が初期肝臓体積の50%未満。胆道内ステントを有する患者は、試験に含めることができる。
・重要臓器の機能に影響を与えるまたは全身性副腎皮質ステロイドを含む免疫抑制治療を必要とする可能性のある、再発し得る活動性自己免疫疾患または自己免疫疾患の病歴を有する患者。これらは、限定されないが、免疫関連神経疾患、多発性硬化症、自己免疫(脱髄性)神経障害、ギラン・バレー症候群またはCIDP、重症筋無力症;SLE、結合組織疾患、強皮症、炎症性腸疾患(IBD)、全身性自己免疫疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、肝炎の病歴を有する患者;および中毒性表皮壊死症(TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群、またはリン脂質症候群の病歴を有する患者を含む。このような疾患は、疾患の再発または増悪の理由で除外されるべきである。
★留意すべきは、白斑症、生理的副腎皮質ステロイドを含む補充ホルモンで管理されている甲状腺炎を含む内分泌腺不全の患者は適格であることである。関節リウマチおよび他の関節症、シェーグレン症候群および局所薬物で管理されている乾癬の患者および抗核抗体(ANA)、抗甲状腺抗体などの陽性血清学の患者は、標的臓器病変の存在および全身性の治療必要の可能性を評価すべきであるが、それ以外の場合は、適格である。
・特発性肺線維症(器質化肺炎を有する閉鎖性気管支梢炎を含む)またはスクリーニング胸CTスキャンで活動性間質性肺炎の病歴。
・限定されないが、進行中のまたは活動性感染、症候性うっ血性心不全、不安定狭心症、心不整脈、または試験要件の遵守を制限する精神的疾病/社会的状況(下記黒丸印で特定される時間枠)を含む無制御介入性疾病。
・重度のまたは不安定な脳血管疾患の病歴。
・パルスオキシメトリー:室内気で92%未満。
・登録の前6か月以内の心筋梗塞。
・心筋炎の病歴。
・持続的低血圧(<90/50mmHg)または無制御高血圧(>160/100mmHg)。
・登録の前6か月以内の脳卒中。
・増殖性網膜症および/または血管網膜症の患者。
・登録の前6か月以内の大きな血管障害(例えば、外科的修復を要する大動脈瘤または最近の末梢動脈血栓症)
・登録の前6か月以内の喀血(>小さじ1/2の鮮赤色血液/エピソード)または活動性GI出血の病歴。
・出血性素因または顕著な凝固障害の証拠(抗凝血治療薬の非存在下で)。
・腹部ろう孔または消化管穿孔の病歴
・HIV陽性患者は、HIVが複雑な免疫不全を引き起こし、試験治療がこれらの患者に対しより多くのリスクをもたらし得るために、除外される。
・先行する自己のまたは同種間の造血幹細胞移植。
・腹水を有する患者。
・30日を越える間、未治癒外科創傷を有する患者。
・ニボルマブまたはVB-111に類似の化学的または生物学的組成の化合物が原因のアレルギー反応の病歴。
・いずれかのモノクローナル抗体に対する重度過敏症反応の病歴。
・登録の前少なくとも3年間にわたり無疾患でない限り、先行する侵襲的悪性腫瘍(非メラノーマス皮膚癌を除く)。
・妊婦は、ニボルマブおよびVB-111の催奇形性または流産を促す効果の可能性が未知であるために、この試験から除外される。母親のニボルマブおよびVB-111による治療に続く乳児における有害事象は未知であるがその潜在リスクは存在するため、母親がニボルマブおよび/またはVB-111で治療される場合、母乳栄養は中断すべきである。
【0261】
試験デザインおよび治療計画
本試験は、進行型難治性CRCの患者における、抗PD1抗体のニボルマブと組み合わせたVB-111の非盲検、単一群第2相試験である。
治療薬は、2週(±3日)からなるサイクルで投与される。
VB-111は、サイクル1の1日目に開始して、6週毎に投与され、ニボルマブは、サイクル2の1日目に開始して2週毎に投与される(
図7および表7)。
治療は、治療中断基準が満たされるまで継続される。
患者は、8(±1)週毎に画像処理により監視される。
【表7】
【0262】
VB-111投与
VB-111は、サイクル1の1日目および続けて3サイクル毎(サイクル4、7、10、など)に1x1013または0.7x1013個のVPの固定用量で投与される。VB-111は、約60~90分にわたり静脈内注入により投与される。
VB-111の0.9%塩化ナトリウム溶液中の希釈および注入開始からの最大時間は、室温で60分未満でなければならない。
アセトアミノフェン500~1000mgが、VB-111注入の1~2時間前に経口投与され、続いて、必要に応じ325~500mgが、治療後4~6時間毎に最大36時間まで投与される。VB-111投与後にグレード3を越える発熱のある患者では、または試験責任医師の裁量で、デキサメタゾン10mgのIV投与が、その後のVB-111投与において治療の前の20分~3時間までに(治療前20分より早くてはいけない)投与されてよい。
【0263】
ニボルマブ投与
ニボルマブは、サイクル2で始まるサイクル毎の1日目に240mgの固定用量で投与される。ニボルマブは、約30~60分にわたり静脈内注入により投与される。
ニボルマブは、0.2ミクロン~1.2ミクロンの細孔径の低タンパク質結合インラインフィルターを介して投与される。
両方の薬物が投与される日には、VB-111が最初に投与される。ニボルマブ注入は、VB-111注入終了の約1時間後に開始される。
バイタルサインは、VB-111およびニボルマブ注入の前1時間以内、それぞれの注入中に少なくとも1回、および注入完了後30分以内に収集される。
ニボルマブの場合、グレード2以下の注入関連反応のイベントでは、試験薬の注入速度を、50%低減するか、またはイベントの消失まで中断し、注入の完了まで初速度の50%で再開し得る。アセトアミノフェンおよび/または抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン)または施設基準による等価薬物を、試験責任医師の裁量により投与し得る。注入関連反応がグレード3以上の重症度の場合、試験薬は中断される。
【表8】
1ベースラインおよびC1D1評価は、スクリーニングまたはベースラインで指定時間枠内に実施する場合は、反復される必要はない。全ての評価は、各サイクルの1日目の治療開始前72時間以内に実施される。治療が登録後28日以内に開始されない場合、スクリーニング評価が反復される。サイクルは、14(±3)日である。
2サイクル2で開始される各サイクルの1日目にIV注入による240mgのニボルマブ。
3サイクル1の1日目および+3サイクル毎(サイクル4、7、10、など)に1x10
13個のVPのIVによるVB-111。≧35kgおよび<50kgの体重の患者に対しては、低減された0.7x10
13個のVPの投与量。
4遺伝子解析または免疫組織化学的検査による確認。
5臨床的必要性に応じて。
6バイタルサインは、VB-111およびニボルマブ注入の前1時間以内、各注入中に少なくとも1回、および注入の完了後30分以内に収集される。
7生化学的プロファイル:電解質、BUN、クレアチニン、AST、ALT、総および直接ビリルビン、カルシウム、リン、アルブミン、マグネシウム。
8スクリーニング、ベースラインおよび試験治療の開始後の8(±1)週毎に、胸、腹部および骨盤のCTスキャンまたはMRI。最初のPDの推定後に治療を継続する場合、高次構造スキャンが4週(±1週)後に実施される。患者が疾患進行以外の理由で治療中断する場合、画像処理が追跡調査中に疾患進行まで継続される。
9必須腫瘍生検は、ベースラインおよびサイクル2またはサイクル4の1日目に実施される。患者の疾患が予定された生検より前に進行する場合、治療後生検をPIの裁量により進行時に実施し得る。
10±1週
11追跡調査来診は、患者安全性を評価するために、治療中断後の60(±14)日および90(±14)日に実施されるように計画される。この来診後、被験者は、生存の確認のために、6か月(±1か月)毎に電話またはe-mailにより追跡調査される。注意:患者が疾患進行以外の理由で治療中断する場合、我々は継続して、画像処理試験のために8(±1)週毎に患者に来診を求める。外部でのスキャンも許容できる。
12被験者がFU来訪のためのNIHに来る意思がない場合、生存確認および有害事象に関し電話またはe-mailにより連絡される。
【0264】
応答基準:
この試験の目的のために、患者は、8週(±1週)毎に、応答に関し再評価される必要がある。応答および進行が、改訂版固形腫瘍の効果判定基準(RECIST)ガイドライン(バージョン1.1)および修正免疫関連応答により提案された新しい国際基準を用いて、この試験で評価される。
【0265】
免疫関連RECIST基準は増殖イベント中の治療の継続に関して考慮されているが、標準RECIST基準は、主要エンドポイントの評価で使用される初期の方法である。
【0266】
試験治療は、RECIST1.1による進行の症例では、試験責任医師の決定に従って継続できる。この状況では、既存の症状の悪化または進行時点で新規腫瘍関連症状のない全ての被験者で、RECIST1.1に基づく修正免疫関連応答基準(irRC)が使用される。
【0267】
応答基準-標的病変の評価
完全寛解(CR):全ての標的病変の消失。いずれかの病理学的リンパ節は(標的または非標的に関係なく)、短軸の<10mmまでの低減がなければならない。
部分応答(PR):ベースラインの直径の合計を基準にして、標的病変の直径の合計の、少なくとも30%の低減。
進行性疾患(PD):試験での最小合計を基準にして(それが試験での最小である場合、これはベースライン合計を含む)、標的病変の直径の合計の、少なくとも20%の増大。20%の相対的増大に加えて、合計はまた、少なくとも5mmの絶対増大を示す必要がある。(注意:1個または複数の新規病変の出現も進行と見なされる。)
安定な疾患(SD):試験中に、直径の最小合計を基準にして、PRと見なせる十分な縮小も、PDと見なせる十分な増大も存在しない。
【0268】
非標的病変の評価
完全寛解(CR):全ての非標的病変の消失および腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節は、非病理学的サイズ(<10mmの短軸)でなければならない;注意:腫瘍マーカーが最初に正常上限を超える場合、それらは、患者が完全臨床反応と見なされるために正常化される必要がある。
非CR/非PD:1種または複数の非標的病変の残留および/または通常範囲を越える腫瘍マーカーレベルの維持。
進行性疾患(PD):1個または複数の新規病変の出現および/または既存の非標的病変の明らかな増悪。明らかな増悪は通常、標的病変状態より勝るものではない。それは、全体疾患状態変化を代表するものであり、単一の病変の増大であってはならない。「非標的」病変のみの明確な進行は例外的であるが、この状況では治療医師の見解が優先されるべきであり、進行状態は、審査パネル(または首席臨床試験医師)により後に確認されるべきである。
【0269】
最良総合効果の評価
最良総合効果は、治療の開始から疾患進行/再発までに記録された最良の応答である(治療開始からの最小測定値を進行に対する基準として採用して)。患者の最良応答割り付けは、測定基準および確認基準の両方の達成に基づく。
測定可能な疾患(すなわち、標的疾患)を有する患者に関しては、表9を参照:
【表9】
【0270】
測定可能でない疾患(すなわち、非標的疾患)を有する患者に関しては、表10を参照:
【表10】
【0271】
奏功期間
総合効果の期間:総合効果の期間は、測定基準がCRまたはPRに対し適合した時間(どちらかが最初に記録される)から、再発性または進行が客観的に実証された最初の日付まで測定される(治療開始以降記録された最小測定値を進行の基準として採用して)。
全体CRの期間は、測定基準が最初にCRに対し適合した時間から、進行が客観的に実証された最初の日付まで測定される。
安定な疾患の期間:安定な疾患は、治療開始以降に測定された、ベースライン測定値を含む最小測定値を基準として採用して、治療の開始から進行の基準に適合するまで測定される。
【0272】
毒性基準
次の有害事象管理ガイドラインは、試験中の各患者の安全性を確保することを目的としている。改訂NCI有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン5.0で認められる記述および評価尺度が、AE報告に利用される。
・関連-試験製品が有害事象を引き起こす合理的な可能性が存在する。合理的な可能性は、試験製品と有害事象との間の因果関係を示唆する証拠が存在することを意味する。
・関連しない-試験製品の投与が事象を引き起こしたという合理的な可能性がない。
【0273】
統計分析
一般的手法
報告毒性に基づく安全性および耐容性の決定後、応答を経験した全ての評価可能患者の割合が、信頼区間と共に報告される。
主要エンドポイントの分析
患者毎の毒性グレードおよび型が、表にされ報告される。
応答(PR+CR)を経験した評価可能患者の割合が、95%両側信頼区間と共に報告される。
【0274】
副次エンドポイントの分析
PFSおよびOSが、カプランマイヤー法を用いて決定され、中央PFSおよびOSが、95%信頼区間と共に報告される。
【0275】
安全性分析
毒性を経験した患者の割合が、毒性グレードおよび型別に、表にされる。
【0276】
ベースライン記述統計
ベースライン人口統計学的特性が、報告される。
【0277】
中間解析
2段階デザインで示されるように、9人の評価可能患者が治療された後で、応答の数が、記録され、増大する第2の段階への登録を進めてよいかどうかを決定するのに使用される。
【0278】
さらなる分析:VB-111で治療した患者の血液中および腫瘍試料中のVB-111アデノベクターレベルが、RT-PCRにより測定される。結果は、利用可能な場合には、信頼区間を含む記述統計を用いて解析される。探索目的の評価のために実施されたいずれかの統計の試験は、実施される試験数以外は、多重比較のための形式的な調節なしに実施される。
【配列表】
【国際調査報告】