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特表2022-528430一酸化窒素ドナー(NOドナー)として使用するためのキトサン硝酸塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】一酸化窒素ドナー(NOドナー)として使用するためのキトサン硝酸塩
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/722 20060101AFI20220603BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220603BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20220603BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220603BHJP
   A23G 4/12 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
A61K31/722
A61K8/73
A61Q19/00
A61P17/04
A61P37/08
A61P17/06
A61P9/00
A61P17/18
A61P15/10
A61P25/02
A61P29/00
A61P25/00
A61P25/06
A61P27/02
A61P11/02
A61P11/06
A61P27/14
A61P27/04
A61P27/06
A61P1/04
A61P1/14
A23L33/10
A23G4/12
A61P9/12
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/10 101
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559507
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 NL2020050191
(87)【国際公開番号】W WO2020197385
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】2022788
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438261
【氏名又は名称】ノー-キューティカルズ・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】NO-CEUTICALS B.V.
【住所又は居所原語表記】Scheidiuslaan 13,Arnhem,6816 NT,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】リートイェンス、マティアス・ヒューベルテュス・ヨゼヒュス・マリア
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B014GB13
4B014GK12
4B014GL11
4B018LB01
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD41
4B018ME01
4B018ME03
4B018ME04
4B018ME07
4B018ME10
4B018ME14
4C083AD321
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE12
4C083EE13
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA23
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA61
4C086ZA62
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA69
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB13
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、一酸化窒素ドナーとして使用するための、特に、哺乳類、好ましくはヒトのNO欠乏に関連する状態の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関する。キトサン硝酸塩で治療する好適な疾患として、皮膚疾患、性機能障害、疼痛治療が必要な疾患、目、鼻及び副鼻腔の疾患、気道疾患、消化器疾患、並びに代謝障害が挙げられる。これらの疾患は、本発明のキトサン硝酸塩の適用によって、良好に治療又は軽減された。本発明は、皮膚の保護及び/又は健康的な老化のための非治療的又は美容方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤として使用するためのキトサン硝酸塩。
【請求項2】
NOドナーとして使用するためのキトサン硝酸塩。
【請求項3】
哺乳類、好ましくはヒトのNO欠乏に関連する状態の予防又は治療の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項4】
前記状態は皮膚疾患である、請求項3に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項5】
前記疾患は皮膚病である、請求項4に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項6】
前記皮膚病は、乾癬、アトピー性皮膚炎及び/又は尋常性座瘡である、請求項5に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項7】
前記皮膚疾患は、レイノー症状を示す血管障害、具体的には強皮症及び/又はしもやけである、請求項4に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項8】
前記皮膚疾患は、紫外線による酸化ストレス及び/又は皮膚の老化によって生じ、前記皮膚疾患は、好ましくは、単純ヘルペスによる酸化ストレスによって生じる、請求項4に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項9】
前記状態は性機能障害である、請求項3に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項10】
勃起障害の治療及び女性性機能障害(FSD)の治療のために、生殖器領域へのキトサン硝酸塩の局所適用が必要とされる、請求項9に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項11】
疼痛治療が必要とされる、請求項3に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項12】
前記状態は、腱鞘炎、外側上顆炎、関節炎、裂肛、外傷後の疼痛及び/又は腫脹である、請求項11に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項13】
糖尿病性神経障害、手根管症候群及び/又は片頭痛における疼痛治療の一環として神経調節療法が必要とされる、請求項11に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項14】
前記状態は、目、鼻及び副鼻腔に関する疾患である、請求項3に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項15】
前記疾患は、アレルギー性結膜炎、ドライアイ、緑内障、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎及び/又は副鼻腔炎である、請求項14に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項16】
前記状態は気道疾患である、請求項3に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項17】
前記疾患は、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び/又は肺動脈性肺高血圧症である、請求項16に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項18】
前記状態は消化器疾患である、請求項3に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項19】
前記消化器疾患は、腸管壁浸漏、腸内微生物叢多様性の低下、アッカーマンシア ムシニフィラ(Akkermansia Muciniphila)の減少、腸内毒素症及び/又は過敏性腸症候群(IBS)である、請求項18に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項20】
前記状態は代謝障害である、請求項3に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項21】
前記代謝障害は、高血圧、2型糖尿病、肥満及び/又はアテローム性動脈硬化である、請求項20に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項22】
キトサンの分子量は、20~500kDa、より好ましくは150~250kDaである、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のためのキトサン硝酸塩。
【請求項23】
キトサン硝酸塩を投与することを含む美容方法であって、好ましくは、キトサン硝酸塩はNOドナーとして使用される、美容方法。
【請求項24】
皮膚の保護及び/又は健康的な老化促進のための、請求項23に記載の美容方法。
【請求項25】
皮膚の保護のための、好ましくは環境の影響からの保護及び皮膚の老化の抑制から選択される皮膚の保護のための、請求項24に記載の美容方法。
【請求項26】
健康的な老化を促進するための、請求項24に記載の美容方法。
【請求項27】
一酸化窒素の欠乏は、老化に起因する、請求項23~26のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項28】
キトサン硝酸塩を含む医薬組成物。
【請求項29】
キトサンの分子量は、20~500kDa、より好ましくは150~250kDaである請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記組成物は、局所用製剤、例えばクリーム、乳剤、ローション、経皮パッチ、スプレー、トローチ、チューインガム、歯磨剤、スプレー式点鼻薬、鼻及び副鼻腔用エアロゾル、点眼剤又は眼軟膏剤である、請求項28又は29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記組成物は、経口製剤、例えば錠剤、カプセル又は座薬である、請求項28又は29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記組成物は肺用エアロゾルである、請求項28又は29に記載の医薬組成物。
【請求項33】
キトサン硝酸塩を含む化粧料組成物であって、キトサンの分子量は、20~500kDa、より好ましくは150~250kDaである、化粧料組成物。
【請求項34】
前記組成物は局所用製剤又は経口製剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物は、クリーム、乳剤及びローションから好ましくは選択される局所用製剤である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物は、好ましくはサプリメント、より好ましくは錠剤又はカプセルの形態から選択される経口製剤である、請求項34に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤として使用するためのキトサン硝酸塩、一酸化窒素ドナー(NOドナー)として使用するための、具体的には一酸化窒素(NO)発生剤として使用するためのキトサン硝酸塩、哺乳類、特にヒトのNO欠乏に関連する状態の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関する。本発明は、さらに、皮膚疾患の状態の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関し、ここで、前記状態は好ましくは皮膚病である。本発明は、性機能障害の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩にも関する。本発明は、さらに、疼痛治療が必要な疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関する。本発明は、さらに、目、鼻及び副鼻腔の疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関する。本発明は、さらに、気道疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関する。本発明は、さらに、消化器疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関する。本発明は、代謝障害の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩にも関する。また、本発明は、キトサン硝酸塩を投与することを含む美容方法に関し、ここで、キトサン硝酸塩は、好ましくはNOドナーとして使用される。本発明は、キトサン硝酸塩を含む医薬組成物又は化粧料組成物にも関し、ここで、組成物は、局所用製剤、例えばクリーム、乳剤、ローション、経皮パッチ、スプレー、トローチ、チューインガム、歯磨剤、スプレー式点鼻薬、鼻及び副鼻腔用エアロゾル、点眼剤又は眼軟膏剤である。キトサン硝酸塩を含む医薬組成物は、錠剤、カプセル、座薬、肺用エアロゾルであってもよい。鼻及び副鼻腔用エアロゾル又は肺用エアロゾルは、好ましくは、ネブライザを介して投与される。
【背景技術】
【0002】
内因性一酸化窒素(NO)代謝の不活性な最終生成物と以前は考えられていた無機アニオンである硝酸塩及び亜硝酸塩の役割が、近年、より広く認識されるようになった。最近の研究は、硝酸塩-亜硝酸塩-一酸化窒素経路により、in vivoで硝酸アニオン及び亜硝酸アニオンからNOを形成できることを示す(Lundbergら、米国特許第10,406,118号)。この経路は、例えば葉物野菜、ビートルート及びホウレンソウといった硝酸塩を多く含む野菜の、食事由来の硝酸塩の還元により一酸化窒素を産生する。ヒトは、硝酸塩を亜硝酸塩に還元することはできず、還元は、口、腸、皮膚及び粘膜に存在する細菌、すなわち、いわゆる硝酸塩応答性細菌のみが行う。
【0003】
幾つかの研究により、NOが生物学的に重要な役割、例えば血管の恒常性、神経伝達、酸化還元シグナル伝達、細胞呼吸及び宿主防御に関する重大な調節因子としての役割を果たすことが示されている。野菜を多く含む食事の心臓保護効果は、実際はNOによるものである可能性がある。有益な効果に鑑み、硝酸塩の補給が広く検討されてきた。しかし、硝酸塩の補給は、例えば硝酸塩を亜硝酸塩に変換することが可能な硝酸塩応答性細菌に対する硝酸塩の供給といった課題がある。亜硝酸塩は生物活性を有しているが、硝酸塩は有していない。硝酸塩を多く含む野菜中の硝酸塩は、消化管の最初の部分で効率的に吸収される。ほとんどの硝酸塩は、結腸中の硝酸塩還元細菌に到達しない。血中の硝酸塩の25%が腸-唾液循環によって口内へ戻り、その一部は亜硝酸塩に変換される。この腸-唾液再循環を経て初めて硝酸塩は生物活性を得、その結果、舌の硝酸塩応答性細菌による硝酸塩の亜硝酸塩への変換が可能となる。最終的に、摂取した食事由来の硝酸塩の約5%のみが生物学的に活性な亜硝酸塩に変換され、さらなる還元の後に、一酸化窒素(の誘導体)に変換される。
【0004】
これまでのところ、既知のNOドナーは、全て限界を有する。NOの直接投与は、NOが気体であり、酸にさらされない可能性のあるガスボンベを使用しなければならないことから、実用的でない。ジアゼニウムジオレート(NONOエート)は、潜在的に毒性で、代謝副産物に由来する有害な生物学的作用を伴う発がん性の第2級ニトロソアミンを形成し、例えば組織を損傷する酸化ストレスを引き起こす。S-ニトロソチオールは局所送達に使用するには安定性が十分ではなく、NOハイブリッド薬の潜在的な長所及び短所は未知である。
【0005】
医薬及び化粧品の分野では、当業者は、さまざまなNOドナーを識別し、区別している(Liang et al., Future Sci. OA1(1)2015, FSO54)。活性型のNOが結合した(合成)キャリア分子をベースとする「NO放出剤」がある。選択したキャリアに応じ、適切な生理的条件又は生化学的条件の下で、NOが放出される。NO放出剤の例は、N-ジアゼニウムジオレート、ニトロソチオール、ニトロソヒドロキシルアミン、金属ニトロシル錯体、ニトロプルシドナトリウム、NO結合ジエチルアミン、V-Pyrro/NO、スペルミン/NOである。また、「NO発生剤」は、細胞代謝経路又は硝酸塩-亜硝酸塩NO経路により結合型からNOを放出するのではなく、NOを生成、すなわちNOを生合成する。NO発生剤は、さらに有機NO発生剤と無機NO発生剤に区別することができる。何れのNO発生剤も亜硝酸塩又は硝酸塩部分を含んでいる。NO発生剤は、NOプロドラッグ又はNO前駆体に分類され、したがってNOプロドラッグ又はNO前駆体と呼ばれる。
【0006】
有機硝酸塩及び亜硝酸塩は、冠動脈疾患の治療に使用されているNOドナー薬である。ニトログリセリン(グリセリルトリニトラート)、硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、並びに亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソペンチル及び亜硝酸イソプロピルは、有機NO発生剤の一例である。特定の内因性酵素を介してNOが生じる。硝酸塩血管拡張剤を長期間使用すると、タキフィラキシーにつながる硝酸塩に対する耐性を誘発するだけでなく、酸化ストレスの増大、内皮機能不全及び心臓自律神経機能不全を含む強力な副作用がもたらされる。有機硝酸塩のうちニトログリセリン及びその誘導体は、医療、特に心臓病学分野において長い間血管拡張剤として使用されてきた。頭痛、有効性の低下を伴う耐性、血管に悪影響を与える酸化ストレスといった、さまざまな副作用が知られている。ニトログリセリンを含む硬膏又は軟膏は、局所に適用するための、又は硬膏の場合、全身でNOを増加させるためのNO発生剤として使用されることが多い。有機硝酸塩は、酵素を利用し、一般的に速効性であるが、過剰摂取の可能性及びさまざまな副作用という欠点を有する。現在のところ、細菌は有機硝酸塩の代謝に関与していないと一般に考えられている。
【0007】
米国特許第6,261,594号及び米国特許出願公開第2008/311163号は、NO放出剤を開示する。欧州特許出願公開第3120840号は、NO放出剤、すなわちS-ニトロソグルタチオン、ジアゼニウムジオレート及び鉄ニトロシル錯体と、NO発生剤群を形成し、それに属する有機硝酸塩を開示する。
【0008】
米国特許第6,261,594号は、変性キトサンポリマー及び酸化窒素二量体[N]を含むキトサン系ポリマーNOドナー組成物を開示し、生理学的条件におけるNOの「部位特異的送達」及び「放出制御」を提供する。ジアゼニウムジオレートは、キトサン骨格に結合するNOの生物活性型である。NOは、温度及びpH値に依存し、水性媒体中のキトサンから直接放出される。したがって、米国特許第6,261,594号に開示されるキトサン系ポリマーNOドナー組成物はNO放出剤に分類される。
【0009】
米国特許出願公開第2008/311163号は、特定の美容処置方法及びそれらの装置を開示する。開示された美容障害は、年齢、環境因子、皮膚の生理的機能の変化(例.乾癬、皮膚炎、座瘡、セルライト)並びにウイルス及び/又は細菌の攻撃によって引き起こされる。開示された装置は、美容する領域に接触するよう配置された一酸化窒素(NO)溶出ポリマーを含み、美容用量のNOがNO溶出ポリマーから当該領域に溶出される。NO溶出ポリマーは、キャリア材料と一体化され、キャリア材料は、使用時に美容用量のNOの溶出を調整及び制御する。適切なNO放出ポリマーは、(とりわけ)アミン官能化キトサン群から選択される。したがって、キトサンは、NOの活性化型、すなわちジアゼニウムジオレート又はS-ニトロシル化基若しくはO-ニトロシル化基に結合したキャリアである。キャリアと生理学的条件に応じてNOが放出される。
【0010】
欧州特許出願公開第3120840号は、酸化窒素放出創傷治療フィルム及びその調製方法に関する。酸化窒素放出フィルムには、ヒトの体内で自然に形成される酸化窒素ドナーであるS-ニトログルタチオンが含まれていた。このフィルムは人体に適用することができ、ここで、酸化窒素は徐々に放出されて創傷感染の主な原因である病原体を抑制する。そのため、創傷の治癒が促進される。キトサンは、創傷分泌物を吸収し、創傷表面周辺の水分を維持する創傷治癒効果を有するため、S-ニトログルタチオンのキャリアとして使用されてもよい。
【0011】
NOドナーとして使用するための、特に哺乳類の体の異なる部位でNOを遅延放出するための組成物を提供すること、哺乳類のNO欠乏に関連する状態の予防又は治療に使用するための組成物を提供することが、依然として一般的に必要性とされる。また、皮膚の保護及び/又は健康的な老化を目的とする非治療的方法及び/又は美容方法を提供することが依然として一般的に必要性とされる。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、皮膚や、結腸、舌及び粘膜といった体内に存在する硝酸塩応答性細菌がキャリアに結合した場合に、無機硝酸塩を活性化できるという発見に基づく。キトサン硝酸塩は、このような無機硝酸塩の生物活性化可能な形態を生じるが、それについて、これまで知られているものは唾液中の硝酸塩のみであった。生物活性化可能な硝酸塩とは、Lundbergら(米国特許第10,406,118号)が説明する硝酸塩-亜硝酸塩-NO経路に従い、硝酸塩応答性細菌によって亜硝酸塩に変換できる硝酸塩を意味する。キトサンは、異なる基をバイオテクノロジーによって結合して新しい分子を創製するのに適している。第二に、キトサンと硝酸との塩の形態を使用することにより、硝酸塩を作用部位に結合させ、送達することができ、同時に、キトサンの正に帯電するアミン基は、負に帯電した、例えば毛穴の被膜(coating)と十分に相互作用する。塩の形態は、キトサンと硝酸の間に共有結合ではなくイオン結合を提供するので、硝酸塩は生物活性化可能となり、硝酸塩応答性細菌が存在するアニオン部位に硝酸塩を送達させることができる。これらの部位は、粘膜、胃腸及び毛穴を含み、これらは負に帯電している。硝酸アニオン自体も負に帯電しており、通常の条件では硝酸塩応答性細菌に到達しない。キトサンはカチオン性アミン基を有し、その一部は硝酸に結合する。しかし、残りのカチオン性部位は依然として粘膜との相互作用し、硝酸塩をこれらの部位に送達させる。カチオン性キトサンは、硝酸塩還元細菌が存在する負に帯電する粘膜及び毛穴の環境へ、硝酸アニオンを導く。このようにして、キトサン硝酸塩における硝酸は生物活性化可能となる。
【0013】
したがって、本発明者らは、無機NO発生剤としてのキトサン硝酸塩、そして、結腸の粘膜中及び皮膚の細菌によってキトサン硝酸塩が代謝されることを確立した。これまで、硝酸塩-亜硝酸塩-NO経路として腸-唾液ルートのみが知られていた。しかし、キトサン硝酸塩は、硝酸塩が新しい唾液に依存しない生物活性化(SIBA:saliva-independent bio-activatable)形態で提供される、独特の代替的ルートへの扉を開く。
【0014】
キトサン硝酸塩を使用することにより、簡便で安価な製造が可能となり、また、医学的に安全で効果的なNO送達薬が提供される。皮膚及び哺乳類の体内に存在する通性嫌気性共生細菌は、亜硝酸塩中間体を介した、硝酸塩からNOへの、制御された持続的な生成を提供する。ゆっくり、継続的かつ長期的に硝酸塩がNOへ変換されるので、医学的に安全な低濃度のNOがもたらされる。
【0015】
本発明者らは、特に、哺乳類、好ましくはヒトのNO欠乏に関連する状態を予防又は治療するための、キトサン硝酸塩をベースとする薬剤を開発した。本発明者らは、驚くべきことに、キトサン硝酸塩がNOドナーとして、より具体的にはNO発生剤として適することを見いだした。理論に拘束されるものではないが、キトサン硝酸塩は、例えば対象の皮膚、粘膜又は消化管に存在する嫌気性細菌によって亜硝酸に変換されると考えられる。さらに、亜硝酸塩は、本分野で知られているさまざまな経路によって一酸化窒素(NO)に変換される。このように、嫌気性細菌が存在するこれらの領域にキトサン硝酸塩を適用することでNOが形成され、このNOは体に吸収され、NO欠乏に関連する状態の予防又は治療につながる。本発明のキトサン硝酸塩は、細菌による活性化後に、制御されたNOの発生及び放出をもたらすと考えられる。例えば、局所的なNOは、主にNOが発生した場所で作用する。消化管では、NOは局所で作用するだけでなく、腸壁を通過して拡散し、少なくとも一部は血流に入ることができる。この効果は、数ミリメートルに限定されるかもしれない。亜硝酸塩及び硝酸塩に再酸化されて人体又は動物内でさらに移動又は拡散が可能となった場合、NOは、離れた位置でも利用可能となり、全身的に作用する可能性がある。実施例で証明されるように、NO欠乏に関連する幾つかの状態、例えば皮膚疾患、性機能障害、疼痛治療が必要な疾患、目、鼻及び副鼻腔の疾患、気道疾患、消化器疾患、代謝障害は、本発明のキトサン硝酸塩の適用によって、良好に治療又は軽減された。また、本発明者らは、キトサン硝酸塩を投与することを含む非治療的方法又は美容方法、具体的には、皮膚の保護、好ましくは環境の影響に対する皮膚の保護及び/又は健康的な老化のための方法を開発した。
【0016】
したがって、本発明は、薬剤として使用するためのキトサン硝酸塩に関する。本発明は、NOドナーとして使用するための、特にNOを供与する薬剤として使用するためのキトサン硝酸塩にも関する。この使用は、NOドナーとしてのキトサン硝酸塩の使用、又はキトサン硝酸塩を対象に投与することを含む、NOを対象に供与するための方法としても表現することができる。本発明の使用及び方法において、キトサン硝酸塩は有効成分と呼ばれてもよい。本発明は、哺乳類のNO欠乏に関連する状態の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩にも関する。本発明は、キトサン硝酸塩を投与することを含む非治療的方法及び/又は美容方法、具体的には、皮膚の保護、好ましくは環境の影響に対する皮膚の保護及び/又は健康的な老化のための方法にも関する。本発明は、キトサン硝酸塩を含む医薬組成物にも関し、ここで、組成物は、局所用製剤、例えばクリーム、乳剤、ローション、経皮パッチ、スプレー、トローチ、チューインガム、歯磨剤、スプレー式点鼻薬、鼻及び副鼻腔用エアロゾル、点眼剤又は眼軟膏剤である。あるいは、組成物は、経口製剤、例えば錠剤、カプセル又は座薬である。そうでなければ、組成物は肺用エアロゾルである。このような製剤は、嫌気性細菌が存在し、NOを発生させることができるヒト又は哺乳類の部位に、キトサン硝酸塩を投与するのに理想的である。鼻及び副鼻腔用エアロゾル又は肺用エアロゾルは、好ましくは、ネブライザを介して投与される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、キトサン硝酸塩が効率的なNOドナーであることを見いだしたことにある。したがって、キトサン硝酸塩は、一酸化窒素プロドラッグとして作用し、細菌による活性化後に硝酸塩-亜硝酸塩-NO経路を介して代謝される。本発明は、さらに、恒常性に関し、ほぼ全てのヒトの体系がNO及びその直接的又は間接的効果に依拠しているという識見に基づいて着想されたものである。
【0018】
キトサン硝酸塩
キトサンは、D-グルコサミン及びN-アセチル-D-グルコサミン単量体残基が、β-(1→4)結合してランダムに分布したポリマーである。キトサン硝酸塩は、CTS-HNOとしても知られている。キトサンは、キノコあるいはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から得られる菌由来のキチン又はエビ及び他の甲殻類のキチン殻を、アルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウムで処理することによって得ることができる。キトサンは、生物医学的用途を含め幅広い用途に使用されている。キトサンは、農業において、種子処理剤、生物農薬及び防かび剤として使用できる。医学的用途として、出血を低減するための包帯における使用、抗菌剤としての使用、及び薬剤送達ビヒクルとしての使用が挙げられる。
【0019】
Luo及びWangは、薬剤送達を目的とする天然多糖類とキトサン系ポリマー電解質複合体の近年の動向を報告した(Int J Biol Macromol. 64, 2014, 353-67)。正に帯電する多糖類であるキトサンは、高い生体親和性、優れた生分解性、低い毒性を例とするその特性が有望であるだけでなく、豊富に入手可能であり、製造コストが低いため、さまざまな用途の薬剤送達系の開発で人気の高い生体高分子である。反対の電荷を有する2つの生体高分子間の静電的相互作用によって形成される天然の生体高分子に基づく高分子電解質複合体(PEC)から製造される送達系が一般的な関心を集めた。キトサンに基づくPEC薬剤送達系の特定の用途に合わせるため、ナノ粒子、マイクロ粒子、ビーズ、タブレット、ゲル、並びにフィルム及び膜を含む、さまざまな形態が開発されている。アルギン酸塩、ヒアルロン酸、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム及びカルボキシメチルセルロースが例として挙げられる他の天然多糖類を含むキトサンに基づくPECの薬剤送達用途が開発されている。
【0020】
キトサン硝酸塩中、D-グルコサミンモノマーの1級アミン部分は、プロトン化されてアンモニウムカチオンを形成し、これは、対イオンとして硝酸を有する。キトサン硝酸塩は固体で、容易に結晶化する。したがって、一態様において、キトサン硝酸塩は結晶又は粉体の形態である。本発明のキトサン硝酸塩は、硝酸アニオンとキトサンカチオンで構成され、ここで、硝酸アニオンとキトサンの重量比は、1:1~1:10、より好ましくは1:1~1:5、より一層好ましくは1:2~1:5、さらにより好ましくは1:2~1:4、さらにより一層好ましくは1:2.5~:3.5である。最も好ましい態様において、硝酸アニオンとキトサンの重量比は約1:3である。好ましい態様において、キトサンのD-グルコサミンモノマーの、少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、最も好ましくは実質的に全ての1級アミン部分はプロトン化され、硝酸で官能化される。
【0021】
キトサンは、好ましくは20~500kDa、より好ましくは150~250kDa、最も好ましくは190~210kDaの重量平均分子量を有する。最も好ましい態様において、キトサンの分子量は約200kDaである。本発明者らは、これらの分子量の範囲で、特に約200kDaで、NO欠乏に関連する状態の軽減に関し、キトサン硝酸塩が最適な結果をもたらすことを見いだした。さらに、そのようなポリマー長は、局所製剤に含まれた場合、皮膚への適用において最適な結果をもたらした。これらの分子量で、関連する嫌気性細菌が生息する皮膚の毛穴への最適な受容が達成され、無機硝酸塩が細菌によって活性化され、NOが容易に形成され、体に取り込まれる。
【0022】
キトサン硝酸塩は、通常、キトサンを硝酸で処理することによって得る。好ましい態様において、キトサン硝酸塩は、(a)天然源、例えば甲殻類、菌類、例えばキノコ及び/又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からキチンを得ること、(b)必要に応じて、キチンを酸、例えばHCl溶液で処理し、次いで、塩基、例えばKOH溶液で処理してキトサンを含む中間体生成物を得、これを所望により分離してもよいこと、(c)(中間体)キトサン生成物を次いで硝酸(HNO)に接触させてキトサン硝酸塩を得ることを含む方法によって得ることができる。得られたキトサン硝酸塩は、溶液から容易に結晶化する塩である。その後、必要に応じて、キトサン硝酸塩を洗浄し、乾燥してもよい。
【0023】
代替的な態様において、キトサン硝酸塩は、キチナーゼでキチンを酵素処理することを含む方法によって得ることができ、この酵素は市販されている。
【0024】
あるいは、キトサン硝酸塩は、Huo, L. et al, Electrorheological properties of chitosan nitrate suspension, Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 316 (2008) 125-130に記載されているように合成することができる。まず、2cmの硝酸(16mol/L)をアセトン20cm中に溶解し、次いでキトサン2.5gと溶液を攪拌しながら十分に混合した。50℃で4時間乾燥させてアセトンを除去した後、キトサン硝酸塩粒子を粉砕し、50℃の真空炉中で2日間乾燥させた。このようにしてキトサン硝酸塩を得た。
【0025】
前述の合成の好ましい態様では、過剰量の硝酸を使用して、得られたキトサン硝酸塩のD-グルコサミンモノマーの実質的に全ての1級アミンをプロトン化し、硝酸塩とする。
【0026】
医薬組成物
一態様において、本発明はキトサン硝酸塩を含む医薬組成物に関する。キトサン硝酸塩を含む医薬組成物は、本分野で知られている一般的な手順に従って調製することができる。本発明の医薬組成物は、任意の、好ましくは経口組成物、例えば錠剤、カプセル又は座薬、肺用エアロゾル、及び局所用製剤、例えばクリーム、乳剤、ローション、経皮パッチ、スプレー、トローチ、チューインガム、歯磨剤、スプレー式点鼻薬、鼻及び副鼻腔用エアロゾル、点眼剤又は眼軟膏剤の1つの形態をとることができる。組成物が乳剤の形態をとる場合、NO欠乏に関連する状態の治療に関し最適な結果がもたらされるため、油中水型乳剤が好ましい。あるいは、水中油型乳剤も良好な治療結果をもたらす。鼻及び副鼻腔用エアロゾル又は肺用エアロゾルは、好ましくは、ネブライザを介して投与される。
【0027】
本発明の医薬組成物は、上述したキトサン硝酸塩を含む。本発明の好ましい態様において、医薬組成物は、20~500kDa、より好ましくは150~250kDa、最も好ましくは190~210kDaの分子量を有するキトサン硝酸塩を含む。
【0028】
本発明の組成物は、好ましくは、ビタミンC(アスコルビン酸)を含む。存在する場合、ビタミンCは、キトサン硝酸塩に対し、好ましくは0.5~50重量%、より好ましくは1~20重量%、最も好ましくは2.5~10重量%の量で組成物中に含まれる。特に好ましい態様において、組成物はビタミンC及び以下に説明するリン酸塩を含む。
【0029】
本発明の一態様において、医薬組成物は、局所用製剤、例えばクリームである。一態様において、クリームは、油中水型(W/O)乳剤を含む。別の態様において、クリームは、水中油中水型(W1/O/W2)二重乳剤を含む。さらに別の態様において、クリームは、水中油型(O/W)乳剤を含む。W/O乳剤において、水相は、キトサン硝酸塩を、通常、薬学的に許容される塩、例えばNaCl及び/又はリン酸含有塩と組み合わせて含む。好ましいリン酸塩は、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP;Na)及び/又はリン酸ニナトリウム(DSP;NaHPO)である。最も好ましくは、DSPが使用される。油相は、好ましくは、ワセリン/パラフィンを含む。ワセリン及びパラフィンは、好ましくは、2:1~1:2の重量比で、より好ましくはほぼ等しい重量部で存在する。好ましい態様において、油相は、さらにラノリンを含む。クリームは、攪拌しながら油相に水相をゆっくりと加えることによって調製してもよい。DSPは、キトサン硝酸塩粒子を安定させる役割を果たす。これは、好ましくは、キトサン硝酸塩に対し、3~10重量%、好ましくは4~7重量%、最も好ましくは約5重量%の重量パーセントで使用される。
【0030】
W/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤は、好ましくは、キトサン硝酸塩に対し、50~70重量%のワセリン/パラフィン、5~20重量%のラノリン、20~50重量%の蒸留水、0.1~5重量%のキトサン硝酸塩、0.1~1.0重量%のNaCl、及び3~10重量%のDSPを含む。より好ましくは、W/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤は、キトサン硝酸塩に対し、55~65重量%のワセリン/パラフィン、8~15重量%のラノリン、25~35重量%の蒸留水、0.5~2重量%のキトサン硝酸塩、0.2~0.5重量%のNaCl、及び4~6重量%のDSPを含む。最も好ましい態様において、W/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤は、キトサン硝酸塩に対し、約60重量%のワセリン/パラフィン、約10重量%のラノリン、約28.1重量%の蒸留水、約1重量%のキトサン(約200kDa)硝酸塩、約0.3重量%のNaCl、及び約5重量%のDSPを含む。
【0031】
本発明の別の態様において、医薬組成物は錠剤若しくはカプセル又は結腸標的カプセルである。錠剤又はカプセルは、好ましくは50~2000mgのキトサン硝酸塩、より好ましくは100~1000mgのキトサン硝酸塩、より一層好ましくは200~800mgのキトサン硝酸塩、最も好ましくは400~600mgのキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、調製された錠剤又はカプセルは、硝酸アニオン約120mg及びキトサン約360mgからなるキトサン硝酸塩を約480mg含有する。さらに好ましい態様において、キトサン硝酸塩は、リン酸塩、好ましくはリン酸二水素塩(DSP:dihydrogen phosphate)を、キトサン硝酸塩に対し最大で10重量%添加することによって安定化することができる。
【0032】
本発明のさらに別の態様において、医薬組成物は、スプレー式点鼻薬又は鼻用エアロゾルである。スプレー式点鼻薬は、滅菌水、薬学的に許容可能な塩、例えばNaCl、及び好ましくは0.05~5重量%のキトサン硝酸塩、より好ましくは0.1~2重量%のキトサン硝酸塩、より一層好ましくは0.3~1重量%のキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、スプレー式点鼻薬は、滅菌水、約0.5重量%のキトサン(約200kDa)硝酸塩、約0.9重量%のNaClを含有する。スプレー式点鼻薬又は鼻用エアロゾルは、好ましくは、ネブライザを介して投与される。
【0033】
本発明の以下の態様を調製し、さまざまな内科疾患及び内科様疾患の患者に対して試験を行った。以下で説明する組成物は、本発明の文脈において最も好ましい医薬組成物である。
【0034】
NO アニオン120mg及び200kDaのキトサン360mgからなるキトサン硝酸塩を480mg含有するキトサン硝酸塩カプセルを調製した。さらに好ましい態様において、キトサン硝酸塩は、リン酸塩、好ましくはリン酸二水素塩(DSP)を、キトサン硝酸塩に対し最大で10重量%添加することによって安定化することができる。
【0035】
油中水型(W/O)乳剤又は水中油中水型(W1/O/W2)二重乳剤のいずれかを含有するクリームを調製した。W/O乳剤中、水相は、キトサン(200kDa)硝酸塩並びにNaCl及び/又はDSPを含有し、油相は、等しい重量部のワセリン/パラフィン及びラノリンを含有する。クリームは、攪拌しながら油相に水相をゆっくりと加えることによって調製される。乳剤は、ワセリン/パラフィン 60重量%、ラノリン 10重量%、蒸留水 28.1重量%、キトサン(200kDa)硝酸塩 1重量%、NaCl 0.3重量%、及びDSP 0.05重量%を含有する。O/W乳剤をベースとする別のクリームは、蒸留水 60重量%、ソルビトール結晶溶液 2重量%、ソルビン酸 0.15重量%、キトサン硝酸塩 0.5重量%、DSP 0.025重量%、D-パンテノール 2重量%、グリセリン 7重量%、pHを約4.5に調整するクエン酸 約0.05重量%、セトマクロゴールワックス 7.5重量%、オレイン酸デシル 10重量%、ヤシ油 7重量%、シアバター 2重量%、及びBTMS-25 2重量%を含有する。
【0036】
滅菌水、キトサン(200kDa)硝酸塩 0.5重量%、及びNaCl 0.9重量%を含有するスプレー式点鼻薬を調製した。滅菌水、キトサン(200kDa)硝酸塩 0.25重量%、NaCl 2.00重量%、NaHPO 0.00125重量%、ユーカリ油 0.05重量%、及びベンザルコニウム塩化物(防腐剤として使用される) 0.0125重量%を含有する、さらなるスプレー式点鼻薬も調製した。
【0037】
化粧料組成物
一態様において、本発明はキトサン硝酸塩を含む化粧料組成物に関する。治療的適用を意図していないこと以外、化粧料組成物は、医薬組成物と類似していても、又は同一であってもよい。したがって、本発明の医薬組成物に対する全ての好ましい態様は、本発明の化粧料組成物にも同様に適用される。化粧料組成物は非治療的組成物と称してもよい。キトサン硝酸塩を含む化粧料組成物は、上記の医薬組成物と同じ方法で調製することができる。本発明の化粧料組成物は、任意の形態、例えば経口組成物又は(栄養)サプリメントの形態をとることができる。通常、化粧料組成物は、錠剤、カプセル又は局所用製剤、例えばクリーム、乳剤若しくはローションの形態をとる。組成物が乳剤の形態をとる場合、最適な結果をもたらすため、油中水型乳剤が好ましい。しかし、水中油型乳剤も使用することができる。
【0038】
本発明の非治療的組成物及び/又は化粧料組成物は、上述のキトサン硝酸塩を含む。本発明の好ましい態様において、医薬組成物は、20~500kDa、より好ましくは150~250kDa、最も好ましくは190~210kDaの分子量を有するキトサン硝酸塩を含む。
【0039】
本発明の一態様において、非治療的組成物及び/又は化粧料組成物は、局所用製剤、例えばクリームである。一態様において、クリームは油中水型(W/O)乳剤を含む。別の態様において、クリームは水中油中水型乳剤(W1/O/W2)二重乳剤を含む。W/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤は、上記で医薬組成物について説明されたものと同じ方法で調製することができる。水中油型(O/W)乳剤も使用することができる。
【0040】
本発明の別の態様において、非治療的組成物及び/又は化粧料組成物は、錠剤又はカプセルである。錠剤又はカプセルは、好ましくは50~2000mgのキトサン硝酸塩、より好ましくは100~1000mgのキトサン硝酸塩、より一層好ましくは200~800mgのキトサン硝酸塩、最も好ましくは400~600mgのキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、調製された錠剤又はカプセルは、硝酸アニオン約120mg及びキトサン約360mgからなるキトサン硝酸塩を約480mg含有する。
【0041】
本発明の非治療的組成物及び/又は化粧料組成物は、さらにDSPを、化粧料組成物の総重量に対して好ましくは5~10重量%含有してもよい。
【0042】
薬剤として使用するためのキトサン硝酸塩及びNOドナーとして使用するためのキトサン硝酸塩
本発明は、薬剤として使用するためのキトサン硝酸塩に関する。ここで関連する態様において、本発明は、NOドナーとして使用するためのキトサン硝酸塩に関する。ここで関連する別の態様において、本発明は、NO欠乏に関連する状態の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関する。本発明によれば、キトサン硝酸塩は、キトサン硝酸塩を含む医薬組成物として投与されることが好ましく、ここで、医薬組成物は、局所用製剤、錠剤、カプセル又はスプレー式点鼻薬若しくは肺用エアロゾルのいずれかである。スプレー式点鼻薬又は肺用エアロゾルは、好ましくは、ネブライザを介して投与される。
【0043】
好ましい態様では、望ましいNO濃度を維持又は達成するために、キトサン硝酸塩を300~600mg、好ましくは約480mg含有するキトサン硝酸塩カプセルは、1日に2回、好ましくは、朝に1カプセル及び午後に1カプセル、あるいは朝に2カプセル投与する。代替的な態様では、短期間でより高いNO濃度を維持又は達成するために、キトサン硝酸塩を300~600mg、好ましくは約480mg含有するキトサン硝酸塩カプセルは、1日当たり6カプセルの投与量で、最長で3日間投与し、最も好ましくは、投与は日中に均等に分配して行う。
【0044】
別の好ましい態様では、望ましいNO濃度を維持又は達成するために、例えばクリームを使用する局所適用の場合、初期は1日2回の処方/投与を行い、一度望ましいNO濃度を達成すると、1日に1回の投与で十分である。
【0045】
別の好ましい態様では、望ましいNO濃度を維持又は達成するために、スプレー式点鼻薬は、初期は1日4回、両鼻孔に1~2回噴霧し、一旦症状が緩和すると、1日1回、両鼻孔に1~2回噴霧する。
【0046】
一態様において、本発明は、皮膚疾患、性機能障害、疼痛治療が必要な疾患、目、鼻及び副鼻腔に関する疾患、気道疾患、消化器疾患、代謝障害から選択される、NO欠乏に関連する状態の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関する。皮膚疾患は、例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、尋常性座瘡、単純ヘルペス及び/又は帯状疱疹(shingles)であり、後者は帯状疱疹(zoster)又はヘルペス帯状疱疹(herpes zoster)としても知られている。あるいは、皮膚疾患は、レイノー症状を示す血管障害、具体的には強皮症及び/又はしもやけである。また、皮膚疾患は、紫外線による酸化ストレス(光障害)及び/又は皮膚の老化、特に早期皮膚老化によって生じる。性機能障害の場合、好ましくは、勃起障害を治療するため、及び女性性機能障害(FSD)を治療するために、生殖器領域へのキトサン硝酸塩の局所適用が必要とされてもよい。あるいは、疼痛治療が必要となるような症状であってもよく、ここで、好ましくは、腱鞘炎、外側上顆炎、関節炎、裂肛、外傷後の疼痛及び/若しくは腫脹、又は糖尿病性神経障害、手根管症候群及び/若しくは片頭痛における疼痛治療の一環として神経調節療法が必要となる疾患である。目、鼻、及び副鼻腔に関する疾患は、好ましくは、アレルギー性結膜炎、ドライアイ、緑内障、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎及び/又は副鼻腔炎である。気道疾患は、好ましくは、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び/又は肺動脈性肺高血圧症である。消化器疾患は、好ましくは、腸管壁浸漏、腸内微生物叢多様性の低下、アッカーマンシア ムシニフィラ(Akkermansia Muciniphila)の減少、腸内毒素症及び/又は過敏性腸症候群(IBS)である。代謝障害は、好ましくは、高血圧、2型糖尿病及び/又はアテローム性動脈硬化である。
【0047】
好ましい態様において、上記疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩は、キトサン硝酸塩を含む医薬組成物として投与され、ここで、医薬組成物は局所用製剤又は錠剤である。好ましい態様において、上記症状の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩は局所用製剤として投与され、ここで、局所用製剤、例えばクリームは、好ましくはキトサンに対し50~70重量%のワセリン/パラフィン、5~20重量%のラノリン、20~50重量%の蒸留水、0.1~5重量%のキトサン硝酸塩、0.1~1.0重量%のNaCl、及び3~10重量%のDSPを含み、油中水型(W/O)乳剤又は水中油中水型(W1/O/W2)二重乳剤を好ましくは含む。より好ましくは、W/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤は、キトサンに対し55~65重量%のワセリン/パラフィン、8~15重量%のラノリン、25~35重量%の蒸留水、0.5~2重量%のキトサン硝酸塩、0.2~0.5重量%のNaCl、及び4~7重量%のDSPを含む。さらに別の好ましい態様において、O/W乳剤をベースとするクリームは、蒸留水 60重量%、ソルビトール結晶溶液 2重量%、ソルビン酸 0.15重量%、キトサン硝酸塩 0.5重量%、DSP 0.025重量%、D-パンテノール 2重量%、グリセリン 7重量%、pHを約4.5に調整するクエン酸 約0.05重量%、セトマクロゴールワックス 7.5重量%、オレイン酸デシル 10重量%;ヤシ油 7重量%;シアバター 2重量%、及びBTMS-25 2重量%を含有する。
【0048】
さらに好ましい態様において、本発明は上記疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関し、ここで、キトサン硝酸塩は錠剤又はカプセルとして投与され、錠剤又はカプセルは、好ましくは50~2000mgのキトサン硝酸塩、より好ましくは100~1000mgのキトサン硝酸塩、より一層好ましくは200~800mgのキトサン硝酸塩、最も好ましくは400~600mgのキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、調製された錠剤又はカプセルは、硝酸アニオン約120mg及びキトサン(約200kDa)約360mgからなるキトサン硝酸塩を約480mg含有する。
【0049】
さらに好ましい態様において、本発明は気道疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関し、ここで、疾患は、好ましくは、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び/又は肺動脈性肺高血圧症である。好ましい態様において、気道疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩は肺用エアロゾルとして投与され、ここで、肺用エアロゾルは、滅菌水、薬学的に許容可能な塩、例えばNaCl、及び好ましくは0.05~5重量%のキトサン硝酸塩、より好ましくは0.1~2重量%のキトサン硝酸塩、より一層好ましくは0.3~1重量%のキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、肺用エアロゾルは、滅菌水、約0.5重量%のキトサン(約200kDa)硝酸塩、及び約0.9重量%のNaClを含有する。肺用エアロゾルは、好ましくは、ネブライザを介して投与される。
【0050】
さらに好ましい態様において、本発明は、疼痛治療が必要な疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関し、ここで、好ましくは、腱鞘炎、外側上顆炎、関節炎、裂肛、外傷後の疼痛及び/若しくは腫脹、又は代替的に糖尿病性神経障害、手根管症候群及び/若しくは片頭痛に関して疼痛治療の一環として神経調節療法が必要となる疾患である。好ましい態様において、上記疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩は錠剤又はカプセルとして投与され、ここで、錠剤又はカプセルは、好ましくは50~2000mgのキトサン硝酸塩、より好ましくは100~1000mgのキトサン硝酸塩、より一層好ましくは200~800mgのキトサン硝酸塩、最も好ましくは400~600mgのキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、調製された錠剤又はカプセルは、硝酸アニオン約120mg及びキトサン(約200kDa)約360mgからなるキトサン硝酸塩を約480mg含有する。より好ましい態様において、上記疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩は局所用製剤として投与され、ここで、局所用製剤、例えばクリームは、好ましくはキトサンに対し50~70重量%のワセリン/パラフィン、5~20重量%のラノリン、20~50重量%の蒸留水、0.1~5重量%のキトサン硝酸塩、0.1~1.0重量%のNaCl、及び3~10重量%のDSPを含み、油中水型(W/O)乳剤又は水中油中水型(W1/O/W2)二重乳剤を好ましくは含む。より好ましくは、W/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤は、キトサンに対し55~65重量%のワセリン/パラフィン、8~15重量%のラノリン、25~35重量%の蒸留水、0.5~2重量%のキトサン硝酸塩、0.2~0.5重量%のNaCl、及び4~7重量%のDSPを含む。あるいは、水中油型(O/W)乳剤を投与することができる。O/W乳剤をベースとするクリームは、蒸留水 60重量%、ソルビトール結晶溶液 2重量%、ソルビン酸 0.15重量%、キトサン硝酸塩 0.5重量%;DSP 0.025重量%、D-パンテノール 2重量%、グリセリン 7重量%、pHを約4.5に調整するクエン酸 約0.05重量%、セトマクロゴールワックス 7.5重量%、オレイン酸デシル 10重量%、ヤシ油 7重量%、シアバター 2重量%及びBTMS-25 2重量%を含有する。
【0051】
さらに好ましい態様において、本発明は、目、鼻及び副鼻腔の疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩に関し、ここで、疾患は、好ましくは、アレルギー性結膜炎、ドライアイ、緑内障、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎及び/又は副鼻腔炎である。好ましい態様において、鼻及び副鼻腔に関する疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩はスプレー式点鼻薬として投与され、ここで、スプレー式点鼻薬は、滅菌水、薬学的に許容可能な塩、例えばNaCl、及び好ましくは0.05~5重量%のキトサン硝酸塩、より好ましくは0.1~2重量%のキトサン硝酸塩、より一層好ましくは0.3~1重量%のキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、スプレー式点鼻薬は、滅菌水、約0.5重量%のキトサン(約200kDa)硝酸塩、及び約0.9重量%のNaClを含有する。好ましい態様において、眼疾患の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩は点眼剤として投与され、ここで、点眼剤は、滅菌水、薬学的に許容可能な塩、例えばNaCl、及び好ましくは0.05~5重量%のキトサン硝酸塩、より好ましくは0.1~2重量%のキトサン硝酸塩、より一層好ましくは0.3~1重量%のキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、点眼剤は、滅菌水、約0.5重量%のキトサン(約200kDa)硝酸塩、及び約0.9重量%のNaClを含有する。滅菌水、キトサン(200kDa)硝酸塩 0.25重量%、NaCl 2.00重量%、NaHPO 0.00125重量%、ユーカリ油 0.05重量%、及びベンザルコニウム塩化物(防腐剤として使用) 0.0125重量%を含有するスプレー式点鼻薬を調製した。
【0052】
好ましい態様において、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎及び/又は副鼻腔炎の予防又は治療に使用するためのキトサン硝酸塩は、スプレー式点鼻薬として投与され、ここで、スプレー式点鼻薬は、滅菌水、薬学的に許容可能な塩、例えばNaCl、及び好ましくは0.05~5重量%のキトサン硝酸塩、より好ましくは0.1~2重量%のキトサン硝酸塩、より一層好ましくは0.3~1重量%のキトサン硝酸塩を含む。好ましい態様において、スプレー式点鼻薬は、滅菌水、約0.5重量%のキトサン(約200kDa)硝酸塩、及び約0.9重量%のNaClを含有する。滅菌水、キトサン(200kDa)硝酸塩 0.25重量%、NaCl 2.00重量%、NaHPO 0.00125重量%、ユーカリ油 0.05重量%、及びベンザルコニウム塩化物(防腐剤として使用) 0.0125重量%を含有するスプレー式点鼻薬を調製した。
【0053】
キトサン硝酸塩を投与することを含む非治療的方法及び/又は美容方法
別の態様において、本発明はキトサン硝酸塩を投与することを含む美容方法に関し、ここで、キトサン硝酸塩は、好ましくはNOドナーとして使用される。美容方法は非治療的方法と称してもよい。好ましい態様では、美容方法は、皮膚の保護、好ましくは環境の影響に対する皮膚の保護及び/又は健康的な老化を目的とする。さらに、美容方法において、一酸化窒素の不足は老化に起因する。本発明の美容方法は、上述した本発明の化粧料組成物を投与することを含む。
【0054】
好ましい態様において、美容方法は、キトサンに対し、50~70重量%のワセリン/パラフィン、5~20重量%のラノリン、20~50重量%の蒸留水、0.1~5重量%のキトサン硝酸塩、0.1~1.0重量%のNaCl、及び3~10重量%のDSPを好ましくは含むW/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤を投与することを含む。より好ましくは、W/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤は、キトサンに対し55~65重量%のワセリン/パラフィン重量%、8~15のラノリン、25~35重量%の蒸留水、0.5~2重量%のキトサン硝酸塩、0.2~0.5重量%のNaCl、及び4~7重量%のDSPを含む。最も好ましい態様において、W/O乳剤又はW1/O/W2二重乳剤は、キトサンに対し、約60重量%のワセリン/パラフィン、約10重量%のラノリン、約28.1重量%の蒸留水、約1重量%のキトサン(約200kDa)硝酸塩、約0.3重量%のNaCl、及び約5重量%のDSPを含む。あるいは、水中油型(O/W)乳剤を投与することができる。O/W乳剤をベースとするクリームは、蒸留水 60重量%、ソルビトール結晶溶液 2重量%、ソルビン酸 0.15重量%、キトサン硝酸塩 0.5重量%;DSP 0.025重量%、D-パンテノール 2重量%、グリセリン 7重量%、pHを約4.5に調整するクエン酸 約0.05重量%、セトマクロゴールワックス 7.5重量%、オレイン酸デシル 10重量%;ヤシ油 7重量%、シアバター 2重量%、及びBTMS-25 2重量%を含有する。
【0055】
局所適用のための油中水型乳剤
油中水乳剤は、局所適用に広く使用されている。皮内又は経皮薬物送達には、3つの経路、すなわち薬物が、毛穴、毛包及び汗管といった皮膚関連構造を通して進入し、付属器官の経路(appendageal route)としても知られている皮膚付属器(skin appendages)(又は付属器(adnexa))経路、経細胞(transcellular)経路及び細胞間(intracellular)経路がある。キトサン硝酸塩は、主として付属器官の経路を指向し、そのためW/O乳剤が好ましい。肌は全体として疎水性であるが、付属器は親水性であるため、親水性部分は付属器に容易に浸透する。これらの付属器には、微生物による硝酸塩の生物活性化とも称される硝酸塩-亜硝酸塩-NO経路を介してキトサン硝酸塩を還元することができる細菌が存在する。疎水性部分は、親油性である肌の残りの部分と親和性がある。したがって、W/O乳剤によって、キトサン硝酸塩は付属器に進入することができると認められる。しかし、付属器の親水性の毛穴以外の皮膚を油が覆うため、O/W乳剤又はそれをベースとするクリームも適切である。キトサン硝酸塩は、クリームの水相中に溶解する。
【0056】
角質層、すなわち表皮の最外層は親油性であるため、水は皮膚に侵入することができない。しかし、毛穴は親水性である。キトサン硝酸塩は親水性である。W/O乳剤は、付属器官の経路によるキトサン硝酸塩の取り込みを可能にする。毛穴中には、硝酸塩を亜硝酸塩に還元する通性嫌気性菌が存在する。これは、硝酸塩-亜硝酸塩-一酸化窒素経路の第一段階であると一般的に考えられている。毛穴、管及び毛包において、細菌リゾチーム及び細菌キトサナーゼは、キトサン硝酸塩のキトサン部分を分解する。
【0057】
本発明者らは、オリゴキトサン(10kDa)硝酸塩、硝酸塩が添加されたオリゴキトサン(10kDa)、亜硝酸塩が添加されたオリゴキトサン(10kDa)が、一部の人で皮膚刺激を起こしやすいことを見いだした。影響を受ける代表的な皮膚の領域は、肘の内側、膝の裏側及び首の裏側である。これは亜硝酸塩及び/又はキトサンの角層細胞間への蓄積に起因する可能性があるというのが出願人の見解である。ここに記載した態様における、W/O又はW/O/W乳剤中のキトサン(200kDa)硝酸塩は、これらの問題を回避するように思われる。ここに記載した態様における、O/W乳剤中のキトサン(200kDa)硝酸塩もこれらの問題を回避する。キトサン硝酸塩に対しDSPを5重量%添加することで、W/O乳剤及びO/W乳剤がより一層効果的になることが見いだされた。W/O乳剤又はO/W乳剤中のキトサンを伴わない硝酸塩自体は、改善をもたらしたとしても、非常にわずかな改善しかもたらさない。キトサンを含まず亜硝酸を含む全ての態様は、皮膚の痒み及び炎症を引き起こした。
【実施例
【0058】
実施例1:高血圧(高血圧症)
降圧剤を使用していた65歳の男性。薬を使用しない状態での血圧は、収縮期が145mmHg、拡張期が100mmHgであった。キトサン硝酸塩1カプセルを1日2回、1年間投与した。
【0059】
キトサン硝酸塩カプセルは、NO アニオン120mg及び200kDa(重量平均分子量M)のキトサン360mgからなるキトサン硝酸塩を480mg含有する。
【0060】
患者の血圧は、3か月以内に正常(収縮期130/拡張期85)となった。副作用はなかった。
【0061】
空腹時の唾液中の硝酸塩及び亜硝酸塩の測定値は、血漿中の硝酸塩及び亜硝酸塩の値を反映する。患者は、NO アニオンを120mg含有するキトサン硝酸塩カプセルを、午後11時に1個服用した。翌朝7時30分に測定した唾液中の空腹時の値は、硝酸(NO )は>500mg/L、唾液中の亜硝酸(NO )は>80mg/Lであった。
【0062】
NO の相当量をKNO塩(180mg)として午後11時に服用した翌朝の空腹時の値は、NO は80mg/L、NO は4.7mg/Lであった。
【0063】
10kDaのオリゴキトサン硝酸塩を用いる試験も行った。NO 120mgに相当する量を午後11時に服用した。翌朝7時30分における空腹時の値は、NO で144mg/L、NO で14.4mg/Lであった。オリゴキトサンは結腸に到達する前に吸収され、その際、NO も吸収されるであろう。
【0064】
Quantofix試験紙 硝酸塩及び亜硝酸塩(Macherey-Nagel, Germany)を使用してNO 及びNO を測定した。これらの試験紙は、半定量測定を可能とする。試験紙の読み取りは、Quantofix Relaxリーダーで行った。
【0065】
KNOの場合、これは即座に吸収されて75%が尿中に排出されるので、NO は大腸に到達しないであろう。キトサン(200kDa)硝酸塩の場合、投与後8.5時間後に測定した唾液中のNO 及びNO の量は、他の試験と比較して高かった。これは、硝酸塩の少なくとも一部は結腸に到達し、生物活性を有するNO型に変換されることを意味する。NOは、腸壁の血行を促進することが知られている。血行の増加は腸壁における粘膜形成を亢進することができ、その結果、微生物叢を良い方向へ調節し、アッカーマンシア ムシニフィラのような細菌の増殖を助ける。粘膜形成の亢進は、毒性物質が血流に侵入できなくなるため、腸障壁を強化し、疾病を予防する。
【0066】
朝に1日分の投与量を摂取し、24時間後に唾液中の硝酸塩及び亜硝酸塩を測定する試験を行った。2つのキトサン硝酸塩カプセルには、240mgのNO に相当する量が含まれていた。キトサン硝酸塩及びKNO塩について、測定を10回行った。空腹時における唾液中の平均値は、キトサン硝酸塩では、NO が447mg/lで、NO が45mg/lであり、KNOでは、NO が274mg/lで、NO が15.1mg/lであった。文献は、唾液中の亜硝酸塩の値が血漿中のNOの状態を最もよく表すことを示唆している。キトサン硝酸塩の服用から24時間後に採取された唾液中の亜硝酸塩の値は、相当する量の硝酸アニオンをKNOの形態で投与する場合と比べて、3倍高い。
【0067】
治療の開始時とその1年後に、微生物叢の16s rRNAのシーケンシングを行った。アッカーマンシア ムシニフィラの数が166%増加した。A.ムシニフィラは、太り過ぎ、肥満及び糖尿病に重要な役割を果たす。
【0068】
結論として、キトサン硝酸塩は、KNO及び10kDaオリゴキトサン硝酸塩と比較して、血中の硝酸塩及び(生物活性型の)亜硝酸塩の濃度を高く維持する効果を有する。また、キトサン硝酸塩は、腸内微生物叢を良い方向へ調節する。
【0069】
実施例2:湿疹(アトピー性皮膚炎)
顔、首、腕及び脚に、強い痒みを伴う湿疹に長い間苦しむ5歳の少女。症状をコントロールするために多くの副腎皮質ホルモンが投与されていた。そこで治療薬を変更した。キトサン硝酸塩を含有するクリームを1年間、1日2回、皮膚に塗布した。この治療以降、0.1%トリアムシノロン含有クリームの使用は月に約2回となった。
【0070】
このクリームは、油中水型(W/O)乳剤又はW1/O/W2二重乳剤のいずれかである。W/O乳剤では、水相は、キトサン(200kDa)硝酸塩、NaCl及びDPSを、油相は、等量のワセリン及びパラフィン並びにラノリンを含有する。クリームは、攪拌しながら油相に水相をゆっくりと加えることによって調製する。
【0071】
乳剤は、ワセリン/パラフィン60重量%、ラノリン10重量%、蒸留水28.1重量%、キトサン(200kDa)硝酸塩1重量%、及びNaCl0.9重量%を含有する。DSPを添加する場合、乳剤は、DSP0.05重量%及び蒸留水28.05重量%を含有する。
【0072】
さまざまな成分及び乳化剤をさらに含有する油中水型(W/O)又は水中油中水型(W/O/W)乳剤を、本分野の標準的な手法で調製することができる。あるいは、さまざまな成分及び乳化剤をさらに含有する水中油型(O/W)乳剤を本分野の標準的な手法で調製することができる。O/W乳剤のクリームは、蒸留水 60重量%、ソルビトール結晶溶液 2重量%、ソルビン酸 0.15重量%、キトサン硝酸塩 0.5重量%、DSP 0.025重量%、D-パンテノール 2重量%、グリセリン 7重量%、pHを約4.5に調整するクエン酸 約0.05重量%、セトマクロゴールワックス 7.5重量%、オレイン酸デシル 10重量%、ヤシ油 7重量%、シアバター 2重量%及びBTMS-25 2重量%を含有する。
【0073】
実施例3:強皮症患者の手の冷え、こわばり及び疼痛
寒冷な気候でレイノー症状を頻繁に訴える強皮症の50歳の男性。手の冷え、こわばり及び疼痛は、血液の循環不良に起因する。1重量%のキトサン(200kDa)硝酸塩を含むW/O/W乳剤を1年間継続して、1日に3回(夏季は頻度を少なくした)塗布した後、患者は顕著な改善を感じた。すなわち、患者を悩ませる疼痛が少なくなり、こわばりが少なくなり、患者の手は温かく感じられ、患者は全体的により快適に感じられるようになった。
【0074】
実施例4:糖尿病性多発性神経障害
糖尿病及び深刻な脚の多発性神経障害を長年患う66歳の男性。患者は、脚の痛みのため夜眠ることができなかった。W/O/W乳剤を1日2回、1か月間、脚に塗布した後、患者は、病気の大幅な改善、すなわち痛みの軽減を感じた。一酸化窒素は、痛みの発生に関与する小神経線維を調節すると考えられている。多発性神経障害は慢性疾患であることから、生涯にわたる治療が必要である。
【0075】
実施例5:片頭痛;三叉神経の神経調節
1か月に約6日、前兆を伴う片頭痛に悩む35歳の女性。治療の初期は、前頭部の皮膚と眉に、1重量%のキトサン(200kDa)硝酸塩を含有するW/O乳剤を局所適用した。片頭痛の発作時には、乳剤を1日に最大で4回塗布し、発作と発作の間は、乳剤を1日1回塗布した。この治療は、三叉神経の眼神経枝に良い影響を及ぼすと考えられている。その後の治療では、0.5重量%のキトサン(200kDa)硝酸塩及び0.9重量%のNaClを含有するスプレー式点鼻薬を、片頭痛の発作時に1日2回、追加した。この治療は、三叉神経の上顎神経枝に良い影響を及ぼすと考えられている。三叉神経の2つの神経枝を調節することによって、患者が(片)頭痛に悩まされる日数が50%を超えて減少した。
【0076】
緊張性頭痛と片頭痛の両者に悩む別の患者に対し、同じW/O乳剤を、頸部-三叉神経(cervico-trigeminal)経路に影響を及ぼす後頭三角に局所適用することを、上記の治療に追加した。副作用はなく、患者が片頭痛及び緊張性頭痛に悩まされる日数が減少した。具体的には、W/O乳剤は、いわゆる後頭三角に局所適用した。加えて、前頭部へのW/O乳剤の局所適用を継続する。治療の後期には、同量のキトサン硝酸塩を含むO/W乳剤を塗布し、同様の結果が得られた。
【0077】
実施例6:手根管症候群
手首と手に影響を及ぼす手根管症候群を患い、これが睡眠不足の原因となっている70歳の女性。神経外科医により神経減圧術が提案されたが、行われていない。1重量%のキトサン(200kDa)硝酸塩を含有するW/O乳剤の局所適用を、最初の1か月は1日2回、その後は1日1回、半年間患者に投与した。その後、患者は手根管症候群による症状を訴えなくなった。
【0078】
実施例7:鼻炎
鼻の痒み、くしゃみ、鼻詰まり及び鼻水を訴える、アレルギー性鼻炎の25~65歳の数名の男女。滅菌水、キトサン(200kDa)硝酸塩 0.5重量%、及びNaCl 0.9重量%を含有するスプレー式点鼻薬を、1日2回、両方の鼻孔へ1~2回スプレーしたところ、良好な改善が達成された。すなわち、鼻の痒み、くしゃみ、鼻詰まり及び鼻水が緩和された。患者が必要と感じた場合、より多くスプレーすることが認められた。
【0079】
非アレルギー性鼻炎の患者にもスプレー式点鼻薬を投与し、上記治療で、いびきの低減、より良好な睡眠といった改善が認められた。鼻詰まりの解消及び三叉神経の鼻枝の調節が作用機序の一部と考えられる。アレルギー性鼻炎では、マスト細胞の安定化も寄与している可能性がある。アレルギー性鼻炎及び非アレルギー性鼻炎で、一酸化窒素による酸化ストレスの軽減は、鼻炎に基づく症状の軽減に重要な役割を果たすと考えられる。一般的な鼻炎用スプレー式点鼻薬とは作用機序が異なるので、必要に応じて、キトサン硝酸塩含有スプレーを他のスプレーと併用してもよい。
【0080】
アレルギー性鼻炎及び非アレルギー性鼻炎の治療の後期で、以下のスプレー式点鼻薬組成物を1日2回適用し、良好な結果を得た。滅菌水、キトサン(200kDa)硝酸塩 0.25重量%、NaCl 2.00重量%、NaHPO 0.00125重量%、ユーカリ油 0.05重量%及びベンザルコニウム塩化物(防腐剤として使用) 0.0125重量%を含有するスプレー式点鼻薬を調製した。
【0081】
実施例8:裂肛
裂肛による痛みに悩む56歳の男性。患者は、既にかかりつけの医師から肛門痛の処方を受けていた。処方された軟膏は1%硝酸イソソルビドクリームであった。患者は、激しい頭痛及びフラッシングといった深刻な副作用のため、このクリームの使用を中止した。硝酸イソソルビドは、ニトログリセリンのような有機硝酸塩で、キトサン硝酸塩のような無機硝酸塩とは全く異なる。何れの硝酸化合物も一酸化窒素のプロドラッグであるが、無機硝酸塩は、頭痛又はフラッシングを引き起こすことなく、局所でのみ作用すると理解されている。患者は、1重量%のキトサン(200kDa)硝酸塩を含有するW/O乳剤の1日3回の投与に切り替えた。この治療の間、副作用はなく、数週間で裂傷が治癒し、その後、治療を終了することができた。
【0082】
実施例9:太陽光からの保護;皮膚の日焼け促進
1重量%のキトサン(200kDa)硝酸塩を含むW/O/W乳剤の局所適用は、皮膚中に十分な亜硝酸塩を貯蔵し、一酸化窒素の産生により、わずかにサンレスタンニングを引き起こす。紫外線によって亜硝酸塩は一酸化窒素に変換される。W/O/W乳剤は日焼け止め剤とは考えられていないが、1日2回、3~4日間、日光を浴びる前にこのW/O/W乳剤を塗布し、日光を浴びた直後にも塗布することにより、日射による皮膚細胞への損傷が軽減されることが認められた。
【0083】
実施例10:テニスエルボー(外側上顆炎)
4か月間、右脇の下及び肘の痛みに悩まされ、テニスエルボーと診断された42歳の男性。患者は、理学療法と、1mlのケナコルトA10と1mlのキシロカインの組合せの外側上顆の腱付着部への注射を1回受けた。患者は、最初、1重量%のキトサン(200kDa)硝酸塩を含有するW/O乳剤の1日2回の局所適用から始めた。塗布の2週間後に、患者は痛みの軽減を感じ、その後、1か月間、1日1回の乳剤の塗布を継続した。
【0084】
実施例11:勃起障害
肥満、心血管障害、2型糖尿病及び勃起障害に数年悩む57歳の男性。勃起障害とは、挿入時に勃起が不十分な障害である。患者はニトログリセリンといった有機硝酸塩を使用していたため、シルデナフィル(バイアグラ(登録商標))錠は禁忌であった。PDE-5阻害剤であるシルデナフィルとは対照的に、キトサン硝酸塩のような無機硝酸塩は、PDE-5との相互作用がないので、許可される。キトサン硝酸塩 1重量%及びDSP 0.05%を含有するW/O/W乳剤を、性行為の30分前に亀頭及び陰茎に塗布した。この治療により、試みの80%で満足のいく性交がもたらされた。
【0085】
実施例12:アレルギー性結膜炎
花粉症の45歳の女性。患者は、デスロラタジン5mgを1日1錠服用し、かつレボカバスチン点眼剤を、それぞれの目に1滴、1日3回点眼している。滅菌水中にキトサン 0.5重量%及びNaCl 0.9重量%を含有するキトサン硝酸塩点眼剤を、それぞれの目に1滴、1日2回点眼することを追加することにより、花粉症の強い緩和がもたらされた。
【0086】
実施例13:運動誘発性ぜんそく
イエダニアレルギーの25歳の男性。患者は、1年間、ランニング開始時の息切れに悩まされている。この症状は、5分間だけ持続した後に収まり、運動誘発性ぜんそくと診断された。患者は、Pariboy SXネブライザを使用し始めた。キトサン硝酸塩 0.5重量%、及びNaCl 0.9重量%を含む滅菌水溶液を調製した。ランニングを開始する約10分前に、この溶液1mlをPariboy SXネブライザで吸入した。この治療は、運動誘発性ぜんそくを予防した。
【0087】
実施例14:ヘルペス(単純ヘルペスウイルス感染症)
唇と鼻下の再発性ヘルペスを患う65歳の女性。通常、太陽の光を浴び又は風邪をひくとヘルペスが再発した。患者は、上唇が突然ヒリヒリと痛み始めたことによって、ヘルペスの発疹が間もなく現れることを感じた。この兆候を認識した直後に、O/Wクリームの塗布を開始した。O/Wクリームは、以下の組成を有する:水 60重量%;ソルビトール結晶溶液 2重量%;ソルビン酸 0.15重量%;キトサン硝酸塩(CTS-HNO) 0.5重量%;DSP 0.025重量%;D-パンテノール 2重量%;グリセリン 7重量%;クエン酸 0.05重量%(pHが約4.5になるように調整);セトマクロゴールワックス 7.5重量%;オレイン酸デシル 10重量%;ヤシ油 7重量%;シアバター 2重量%;BTMS-25 2重量%。最初の3日間は、O/Wクリームを1日6回塗布した。クリームは、ヘルペスの水疱形成を防ぎ、その結果、痂皮は形成されず、患者はほとんど痛みを感じなかった。3日間の治療後、クリームを塗布する頻度を減らし、さらに3日後には治療を終了した。単純ヘルペスウイルスは、酸化ストレスに依存して増殖する。得られた治療効果は、キトサン硝酸塩から生じる、強力な抗酸化剤である一酸化窒素によってもたらされると考えられている。
【国際調査報告】