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特表2022-528437ピペラジンアミド誘導体、その製造方法及び医薬におけるその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】ピペラジンアミド誘導体、その製造方法及び医薬におけるその用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20220603BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20220603BHJP
   C07D 487/08 20060101ALI20220603BHJP
   C07D 498/08 20060101ALI20220603BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220603BHJP
   A61K 31/5386 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
C07D403/14
C07D487/08
C07D498/08
A61K31/506
A61P43/00 105
A61P35/00
A61K31/5386
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559916
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 CN2020083854
(87)【国際公開番号】W WO2020207419
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】201910294193.9
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510116819
【氏名又は名称】浙江海正薬業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Hisun Pharmaceutical CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.46 Waisha Road,Jiaojiang District,Taizhou,Zhejiang 318000,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲パン▼▲パン▼
(72)【発明者】
【氏名】顔 孫力
(72)【発明者】
【氏名】李 英
(72)【発明者】
【氏名】郭 陳莉
(72)【発明者】
【氏名】銭 文建
(72)【発明者】
【氏名】葉 成
(72)【発明者】
【氏名】施 正政
(72)【発明者】
【氏名】胡 泰山
(72)【発明者】
【氏名】陳 磊
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA03
4C050BB04
4C050CC08
4C050EE02
4C050FF03
4C050GG01
4C050HH04
4C063AA03
4C063BB02
4C063BB04
4C063CC34
4C063DD12
4C063DD28
4C063EE01
4C072AA03
4C072BB02
4C072CC02
4C072CC11
4C072EE07
4C072FF08
4C072GG01
4C072HH07
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC50
4C086CB05
4C086CB22
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、式(I)で示されるピペラジンアミド誘導体またはその薬学的に許容される塩、及びその医薬組成物、並びにそれらの治療剤、特には、選択的トランスフェクション再編成(RET)キナーゼ阻害剤としてのその用途に関する。ここで、a環、e環、X、X、X、X、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、m及びnの定義は、明細書に記載した定義と同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中、a環は、ピラゾリル基、ピリジル基若しくはピリドニル基から選ばれ、
は、水素、C-Cアルキル基若しくはC-Cシクロアルキル基から選ばれ、前記C-Cアルキル基及びC-Cシクロアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、
は、CHまたはNから選ばれ、
は、水素またはC-Cアルキル基から選ばれ、
は、水素、シアノ基、C-Cアルキル基、C-C第一級アルコール基、C-C第三級アルコール基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基及び-RCO10から選ばれ、前記C-Cアルキル基、C-C第一級アルコール基、C-C第三級アルコール基、C-Cアルコキシ基及びC-Cシクロアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、
或いは、R、Rは、それらが連結している炭素原子と一緒にアリール基を形成し、前記アリール基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子又はC-Cアルキル基で任意選択的に置換され、
は、化学結合またはC-Cアルキレン基から選ばれ、
10は、水素またはC-Cアルキル基から選ばれ、
、X、Xは、CHまたはNから選ばれ、XがNである場合には、X及びXのうちの最大1つがNであり、XがCHである場合には、X及びXはいずれもCHであり、
、R4’、R、R5’、R、R6’、R、R7’は、独立して、水素、C-Cアルキル基若しくはC-Cアルコキシ基から選ばれ、前記C-Cアルキル基は、さらに1つまたは複数の水酸基、カルボキシ基若しくはシアノ基で任意選択的に置換され、
或いは、RとR4’、RとR5’、RとR6’若しくはRとR7’は、連結して一緒になって-(CH-、-(CH-、-CH(CH)CH-、-OCHCH-若しくは-CHOCH-を形成し、
或いは、RとR、RとR、RとR、R4’とR5’、R4’とR6’、R4’とR7’、RとR、RとR、R5’とR6’、R5’とR7’、RとR又はR6’とR7’は、連結して一緒になって-(CH)q-又は-(CHOCH)-を形成し、
或いは、RとR4’、RとR5’、RとR6’又はRとR7’は、一緒に=Oを表し、
e環は、ピラゾリル基、ピリジル基、フェニル基又は3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イルから選ばれ、
は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ基、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基又はC-Cシクロアルキル基から選ばれ、前記C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基及びC-Cシクロアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、
mは、1または2であり、
nは、1、2または3であり、
qは、2または3である。)
【請求項2】
式(II)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩。
【化2】
(式中、e環、X、X、X、X、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、m及びnは、請求項1で定義されているとおりである。)
【請求項3】
式中、Rは、水素、シアノ基、C-Cアルキル基、-CHOH、-C(CHOH、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基及び-RCO10から選ばれ、前記C-Cアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、
又はR、Rは、それらが連結している炭素原子と一緒にアリール基を形成し、前記アリール基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子又はC-Cアルキル基で任意選択的に置換され、
は、化学結合またはC-Cアルキレン基から選ばれ、
10は、水素またはC-Cアルキル基から選ばれる、請求項1又は2に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
式中、前記Rは、水素、メチル基、トリフルオロメチル基、-CHOH、-C(CHOH、-COOH及び-COOMeから選ばれ、
或いは、R、Rは、それらが連結している炭素原子と一緒にベンゼン環を形成する、請求項3に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
式中、前記R、R4’、R、R5’、R、R6’、R、R7’は、それぞれ独立して、水素、メチル基、-CHOH及び-CHCHOHから選ばれ、
或いは、RとR4’、RとR5’、RとR6’又はRとR7’は、連結して一緒になって-(CH-、-OCHCH-若しくは-CHOCH-を形成し、
或いは、RとR、RとR、RとR、R4’とR5’、R4’とR6’、R4’とR7’、RとR、RとR、R5’とR6’、R5’とR7’、RとR又はR6’とR7’は、連結して一緒になって-CHOCH-又は-(CH-を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
式中、前記Rは、独立して水素、ハロゲン、シアノ基又はC-Cアルキル基から選ばれ、
前記ハロゲンは、フッ素または塩素であることが好ましく、前記C-Cアルキル基は、メチル基であることが好ましい、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記化合物は、
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩から選ばれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩と、及び薬学的に許容されるキャリア、賦形剤若しくはそれらの組み合わせとを含有する、医薬組成物。
【請求項9】
トランスフェクション再編成キナーゼ阻害剤の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項8に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
トランスフェクション再編成遺伝子に駆動される疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項8に記載の医薬組成物の使用であって、
前記疾患は、癌であることが好ましく、前記癌は、肺癌、甲状腺癌、結腸癌、乳癌又は膵臓癌であることが好ましい、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、発明の名称が「ピペラジンアミド誘導体、その製造方法及び医薬におけるその用途」である、2019年4月12日に中国特許庁へ提出された中国特許出願201910294193.9に基づく優先権を主張し、その全内容は、全体として援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、医薬技術分野に関し、特に、新規ピペラジンアミド誘導体、及び該誘導体を含有する医薬組成物、及び治療剤、特に、選択的トランスフェクション再編成(RET)キナーゼ阻害剤としてのその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
トランスフェクション再編成遺伝子(RET遺伝子)は、人体内でチロシンキナーゼ受容体をコードして細胞の生殖や生存を調節する癌原遺伝子である。この遺伝子の活性化はグリア細胞由来神経栄養因子ファミリーの受容体と該ファミリーのα受容体と相互作用して二量体を形成し、リン酸化作用によりシグナル経路を調節し、シグナル伝達および生体活動の調節の機能を発揮する必要がある。RET遺伝子の異常な発現は、さまざまな癌疾患に関連している。この遺伝子は、染色体再配列及び他の遺伝子と融合し、又は部位特異的変異によって、リガンドに依存することなく活性化状態を保持して続けることが可能であり、シグナル経路の異常を引き起こし、細胞の過剰増殖及び癌を引き起こす。
【0004】
近年、RET遺伝子融合及び変異が一部の癌を誘発する原動力であり、かつ、他のドライバー遺伝子と重複せず、顕著な特異性を持つこと、を示す証拠がますます増えている。RET遺伝子融合は、甲状腺乳頭癌及び非小細胞肺癌でよく見られる。例えば、散発的甲状腺乳頭癌の30%及び放射線誘発甲状腺乳頭癌の70%及び約非小細胞肺癌の2%は、RET遺伝子融合によって駆動される。RET遺伝子変異は、甲状腺髄様癌でよく見られる。例えば、甲状腺髄様癌の50%超え、ほとんどすべての先天性髄様癌、及び多発性内分泌腫瘍症は、RET遺伝子の部位特異的変異によって引き起こされる。
【0005】
現在の治療法は、主に、RETキナーゼ阻害活性を有するマルチターゲットキナーゼ阻害剤を使用し、RET遺伝子融合及び変異の癌患者を治療している。しかし、この条件下では、オフターゲット効果及び薬物毒性のために、薬物の用量が異常RET遺伝子発現を阻害するのに十分なレベルを達成するのに不十分である。また、癌治療中では、癌細胞が変異によって薬剤耐性を生じる恐れがある。薬剤耐性が発生すると、患者の治療選択肢が非常に限られる。したがって、現在、RET遺伝子融合または変異の患者を治療するための選択的RETキナーゼ阻害剤が極めて必要とされている。
【0006】
RETキナーゼを選択的に標的とする市販されている医薬品がないが、今、一連の選択的RETキナーゼ阻害剤の特許が開示され、WO2016127074、WO2017079140、WO2017011776、WO2017161269、WO2018017983、WO2018022761、WO2018071454、WO2018136661、WO2018136663などがあり、臨床試験中における医薬品としては、Blu-667、Loxo-292およびGSK-3352589がある。しかし、これらは、抗腫瘍研究に対してはるかに不十分と言える。満たされていない医療ニーズを解決するためには、新規選択的RETキナーゼ阻害剤の研究および開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
従来の技術の欠点を克服するために、第1の態様においては、本発明は、式(I)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
(式中、a環は、ピラゾリル基、ピリジル基又はピリドニル基から選ばれ、
は、水素、C-Cアルキル基又はC-Cシクロアルキル基から選ばれ、前記C-Cアルキル基及びC-Cシクロアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、
は、CHまたはNから選ばれ、
は、水素またはC-Cアルキル基から選ばれ、
は、水素、シアノ基、C-Cアルキル基、C-C第一級アルコール基、C-C第三級アルコール基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基及び-RCO10から選ばれ、前記C-Cアルキル基、C-C第一級アルコール基、C-C第三級アルコール基、C-Cアルコキシ基及びC-Cシクロアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、
又は、R、Rは、それらが連結している炭素原子と一緒にアリール基を形成し、前記アリール基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子又はC-Cアルキル基で任意選択的に置換され、
は、化学結合またはC-Cアルキレン基から選ばれ、
10は、水素またはC-Cアルキル基から選ばれ、
、X、Xは、CHまたはNから選ばれ、ここで、XがNである場合には、X及びXのうちの最大1つがNであり、また、XがCHである場合には、X及びXはいずれもCHであり、
、R4’、R、R5’、R、R6’、R、R7’は、独立して水素、C-Cアルキル基又はC-Cアルコキシ基から選ばれ、前記C-Cアルキル基は、さらに1つまたは複数の水酸基、カルボキシ基又はシアノ基で任意選択的に置換され、
又は、RとR4’、RとR5’、RとR6’又はRとR7’は、連結して一緒になって-(CH-、-(CH-、-CH(CH)CH-、-OCHCH又はは-CHOCH-を形成し、
又は、RとR、RとR、RとR、R4’とR5’、R4’とR6’、R4’とR7’、RとR、RとR、R5’とR6’、R5’とR7’、RとR又はR6’とR7’は、連結して一緒になって-(CH)q-又は-(CHOCH)-を形成し、
又は、RとR4’、RとR5’、RとR6’又はRとR7’は、一緒に=Oを表し、
e環は、ピラゾリル基、ピリジル基、フェニル基若しくは3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イルから選ばれ、
は、独立して水素、ハロゲン、シアノ基、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基又はC-Cシクロアルキル基から選ばれ、前記C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基及びC-Cシクロアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、
mは、1または2であり、
nは、1、2または3であり、
qは、2または3である。)
【0008】
本発明の好適な実施形態においては、式(II)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩である、
【化2】
(式中、e環、X、X、X、X、R、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、m及びnは、式(I)で定義されているとおりである。)式(I)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩、を提供する。
【0009】
本発明の好適な実施形態においては、式中、Rは、水素、シアノ基、C-Cアルキル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシイソプロピル基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基及び-RCO10から選ばれ、前記C-Cアルキル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシイソプロピル基、C-Cアルコキシ基及びC-Cシクロアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、又は、R、Rは、それらが連結している炭素原子と一緒にアリール基を形成し、前記アリール基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子又はC-Cアルキル基で任意選択的に置換され、Rは、化学結合またはC-Cアルキレン基から選ばれ、R10は、水素またはC-Cアルキル基から選ばれる、式(I)または式(II)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
本発明の好適な実施形態においては、式中、Rは、水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシイソプロピル基、-COOH和-COOMeから選ばれ、或いは、RとRは、それらが連結している炭素原子と一緒にベンゼン環を形成する、式(I)または式(II)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0011】
本発明の好適な実施形態においては、式中、R、R4’、R、R5’、R、R6’、R、R7’は、それぞれ独立して水素、メチル基、-CHOH及び-CHCHOHから選ばれ、又はRとR4’、RとR5’、RとR6’又はRとR7’は、連結して一緒になって-(CH-、-OCHCH-又は-CHOCH-を形成し、又はRとR、RとR、RとR、R4’とR5’、R4’とR6’、R4’とR7’、RとR、RとR、R5’とR6’、R5’とR7’、RとR又はR6’とR7’は、連結して一緒になって-CHOCH-又は-(CH-を形成する、式(I)または式(II)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0012】
本発明の好適な実施形態においては、式中、Rは、独立して、水素、ハロゲン、シアノ基又はC-Cアルキル基から選ばれ、前記ハロゲンは、フッ素または塩素であり、前記C-Cアルキル基は、メチル基である、式(I)または式(II)で示される化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0013】
本発明に係る式(I)で表れる化合物の具体的な構造には、以下の化合物又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。
【表1】
【表1】
【表1】
【表1】
【表1】
【0014】
他の態様においては、本発明は、有効量の式(I)または式(II)に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容されるキャリア、賦形剤又はそれらの組み合わせ、を含有する医薬組成物を提供する。
【0015】
別の態様においては、本発明は、トランスフェクション再編成キナーゼ阻害剤の製造における、式(I)または式(II)に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体若しくはその薬学的に許容される塩、又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0016】
別の態様においては、本発明は、本発明に係る化合物または医薬組成物をこれを必要とする対象に投与することを含む、トランスフェクション再編成キナーゼを阻害するための方法を提供する。
【0017】
別の態様においては、本発明は、さらに、本発明に係る化合物または医薬組成物をこれを必要とする対象に投与することを含む、トランスフェクション再編成遺伝子に関連するか、またはそれに駆動される疾患を治療又は予防するための方法、を提供する。
【0018】
上記の本発明に係る使用又は方法では、前記のトランスフェクション再編成遺伝子に関連するか、またはそれに駆動される疾患は、癌であることが好ましく、前記癌は、肺癌、甲状腺癌、結腸癌、乳癌又は膵臓癌であることが好ましい。
本発明の詳細な説明
【0019】
本発明では、明細書及び特許請求の範囲で使用されるいくつかの用語は、以下のように定義される。
【0020】
「アルキル基」は、基または基の一部と見なされる場合、直鎖状又は分岐鎖を持つ脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基の実例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、s-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチルなどが含まれるが、これらに限定されない。アルキル基は、置換されていてもよいし、非置換されていてもよい。本発明においては、好ましいアルキル基がC-Cアルキル基であり、より好ましいアルキル基がC-Cアルキル基又はC-Cアルキル基である。
【0021】
「シクロアルキル基」とは、飽和または部分的に飽和した単環、縮合環、架橋環及びスピロ環の炭素環を指す。単環のシクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基などを含むが、これらに限定されなく、シクロプロピル基、シクロヘキセニル基であることが好ましい。本発明においては、好ましいシクロアルキル基がC-Cシクロアルキル基である。
【0022】
「アリール基」とは、1つまたは2つの環を含む炭素環式芳香族系を指し、ここで、前記環は、縮合で一緒に連結することができる。「アリール基」という用語には、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基のような芳香族基が含まれる。アリール基がC-C10アリール基であることが好ましく、アリール基がフェニル基及びナフチル基であることがより好ましく、フェニル基であることが最も好ましい。
【0023】
「アルコキシ基」とは、「アルキル-O-」基を指す。C-Cアルコキシ基、C-Cアルコキシ基若しくはC-Cアルコキシ基を好ましく選択する。その実例は、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などがを含むが、これらに限られない。
【0024】
「C-C第一級アルコール基」とは、1~5個の炭素原子を含む一価の第一級アルコール基を指す。その実例は、-CHOH、-CHCHOH、-CHCHCHOH、-CH(CH)CHOH、-(CHOH、-CH(CH)CHCHOH、-CHCH(CH)CHOH、-C(CHCHOH、-(CHOH、-CHCHCH(CH)CHOH、-CHCH(CH)CHCHOH、-CH(CH)CHCHCHOH、-CHC(CHOH、-CH(CHOH)CH(CH、-CH(CH)CH(CH)CHOHを含む。
【0025】
「C-C第三級アルコール基」とは、3~7個の炭素原子を含む一価の第三級アルコール基を指す。その実例は、-C(CHOH、-CHC(CHOH、-CHCHC(CHOH、-CH(CH)C(CHOH、-CHCHCHC(CHOH、-CHCH(CH)C(CHOH、-CH(CH)CHC(CHOH、-C(CHC(CHOH、-(CHC(CHOH、-CHCHCH(CH)C(CHOH、-CHCH(CH)CHC(CHOH、-CH(CH)CHCHC(CHOH、-CH(CH)CH(CH)C(CHOH、-CHC(CHC(CHOH、-C(CHCHC(CHOHを含む。
【0026】
「ヒドロキシ基」とは、-OHを指す。「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指し、好ましくは、塩素、臭素およびフッ素である。「アミノ基」とは、-NHを指す。「シアノ基」とは、-CNを指す。「ベンジル基」とは、-CH-フェニル基を指す。「カルボキシ基」とは、-C(O)OHを指す。「エステル基」とは、-C(O)O(アルキル基)又は(シクロアルキル基)を指し、ここで、アルキル基、シクロアルキル基の定義は、上記の通りである。「DMSO」とは、ジメチルスルホキシドを指す。「Boc」とは、tert-ブトキシカルボニル基を指す。「DIPEA」とは、ジイソプロピルエチルアミンを指す。「Pd(dba)」とは、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを指す。「t-BuXPhos」とは、2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニルを指す。「DMAc」とは、N,N-ジメチルアセトアミドを指す。「DMF」とは、N,N-ジメチルホルムアミドを指す。「PCy」は、トリシクロヘキシルホスフィンを指す。「HATU」とは、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートを指す。「PyBOP」とは、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムを指す。「T3P」とは、プロピルリン酸無水物を指す。「Bpin」とは、ボロン酸ピナコールエステルを指す。「NMP」とは、N-メチルピロリドンを指す。
【0027】
「置換された」とは、基における1つまたは複数の水素原子、好ましくは最大5つの水素原子、より好ましくは1~3個の水素原子、例えば、1つの水素原子、2つの水素原子又は3つの水素原子が互いに独立して、対応する数の置換基に置換されたことを指す。置換基がそれらの可能な化学的箇所にのみ位置し、当業者があまり労力をかけずに(実験または理論により)可能なまたは不可能な置換を確定できるのは、言うまでもない。例えば、遊離水素を有するアミノ基またはヒドロキシル基が不飽和(例えば、オレフィン系)結合を有する炭素原子と結合する場合には、不安定である可能性がある。
【0028】
通常には、本発明における立体化学の定義及び慣例は、一般に、「S.P.Parker,Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw-HillBook Company,New York」及びEliel、E.and Wilen,S.,「Stereochemistry of Organic Compounds」, JohnWiley&Sons,Inc., New York,1994の文献を参照する。本発明の化合物は、不斉中心またはキラル中心を含むことができるので、異なる立体異性体が存在する。本発明の化合物のすべての立体異性体形態は、ジアステレオマー、エナンチオマー、アトロプ異性体及びそれらの混合物、例えば、ラセミ混合物を含むが、これらに限られなく、本発明の一部を構成する。ジアステレオマーは、その物理的および化学的相違に基づいて、クロマトグラフィー、結晶化、蒸留、昇華などの方法で別々のジアステレオマーに単離することができる。エナンチオマーは、分離によりキラル異性体混合物をジアステレオマー混合物に変換させ、具体的には、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールまたはモッシャー酸クロリドなどのキラル補助剤)と反応させることで、ジアステレオマーを単離し、ごく少数のジアステレオマーを対応する純エナンチオマーに変換することができる。本発明に係る中間体および化合物は、異なる互変異性形態で存在することができ、これらの全ての形態も本発明の範囲に含まれる。有機化合物は、光学活性形態で存在することが多く、つまり、平面偏光の平面を偏向させる能力を持っている。光学活性化合物を説明する場合、接頭辞D、L又はR、Sが分子のキラル中心の絶対配置を示すために使用されている。接頭辞d、l又は(+)、(-)とは、化合物の平面偏光偏向に名前を付けるために用いられる記号である。(-)又はlとは、化合物が左旋性であることを指し、接頭辞(+)又はdとは、化合物が右旋性であることを指す。これらの立体異性体は、その原子または原子基が同じ順序で相互に連結しているが、立体構造が異なる。特定の立体異性体は、エナンチオマーでもよく、異性体の混合物は、通常エナンチオマー混合物と呼ばれる。50:50のエナンチオマー混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体と呼ばれ、化学反応中における立体選択性又は立体特異性が生じない可能性がある。「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」という用語は、光学活性を欠く、2つのエナンチオマーの等モル混合物を指す。
【0029】
「互変異性体」又は「互変異性形態」とは、異なるエネルギーの構造の異性体が低エネルギー障壁を介して互いに変換できることを指す。例えば、プロトン互変異性体(即ち、プロトン移動の互変異性体)には、ケト形-エノール形及びイミン-エナミンの異性化作用などの、プロトン移動による互変が含まれる。原子価(結合価)互変異性体には、再結合した結合電子の互変が含まれる。別の側面で明記がない限り、本発明に記載の構造式は、全ての異性体形態(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何異性体)を含み、例えば、不斉中心を持つR、S立体配座、二重結合の(Z)、(E)異性体、及び(Z)、(E)の配座異性体を含む。従って、本発明に係る化合物の単一の立体化学異性体、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー若しくは幾何異性体の混合物は、いずれも本発明の範囲に属する。
【0030】
本発明における「塩基」とは、ブレンステッド塩基又はルイス塩基を指す。
【0031】
本発明においては、「化学結合」は、特に共有結合を意味する。
【0032】
「薬学的に許容される塩」とは、元の生物学的活性を維持することができ、かつ、医療用途に適した本発明の化合物の特定の塩を指す。式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩は、適切な酸と形成されらアミン塩である。適切な酸には、無機酸及び有機酸、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などを含む。
【0033】
「医薬組成物」は、一種又は複数種の本明細書に記載の化合物、その生理学的に薬学的に許容される塩又はプロドラッグと他の化学成分との混合物、ならびに生理学的に薬学的に許容されるキャリアおよび賦形剤などの他の成分を含有するものを表す。医薬組成物は、生物への投与を促進し、有効成分の吸収を促進し、そして生物学的活性を発揮することを目的とする。

本発明の化合物の合成方法
【0034】
本発明の目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を採用することによって実施することができる。
【0035】
本発明式(I)で示される化合物は、基によって、以下の3つの製造方法がある。
方法1:
【0036】
がR3’であり、かつR3’水素、シアノ基、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基、-RCO10’から選ばれた場合、前記C-Cアルキル基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子で任意選択的に置換され、又は、R、R3’は、それらが連結している炭素原子と一緒になってアリール基を形成し、前記アリール基は、さらに1つまたは複数のハロゲン原子又はC-Cアルキル基で任意選択的に置換され、また、Rは、化学結合またはC-Cアルキレン基から選ばれ、R10’は、C-Cアルキル基から選ばれる式(I)で示される化合物は、式(B)化合物又はその塩と式(A)化合物又はその塩とを縮合剤の作用下で反応させることによって得られる式(I-a)化合物である。
【化3】
【0037】
上記反応は、反応温度が0~40℃であり、反応溶剤がジクロロメタン、アセトニトリル又はN、N-ジメチルホルムアミドであり、好ましくは、N、N-ジメチルホルムアミドであり、縮合剤がHATU、PyBOP又はT3Pであり、好ましくは、HATU又はPyBOPである。また、上記の反応は、アルカリ性条件下で行われ、使用される塩基がジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンであり、好ましくは、ジイソプロピルエチルアミンであり、ここで、a環、e環、X、X、X、X、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、m及びnは、式(I)で定義される通りである。
【0038】
ここで、式(A)で示される化合物の製造方法は、以下の通りである。
【0039】
場合1:XがNである場合には、その反応は以下のステップを含む。
【化4】
【0040】
式(1-2)化合物と式(1-1)化合物が芳香族求核置換反応を受けて式(1-3)化合物を得る。式(1-4)化合物と式(1-3)化合物が芳香族求核置換反応を受け、式(1-5)化合物を得る。式(1-5)化合物が酸性条件下でtert-ブトキシカルボニル基を除去し、式(A-1)化合物又はその塩を得る。ここで、a環、R、R、R3’、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’及びmは、式(I-a)で定義される通りである。
【0041】
場合2:XがCHである場合には、その反応は以下のステップを含む。
【化5】
【0042】
式(1-4)化合物と式(2-1)化合物が芳香族求核置換反応を受けて式(2-2)化合物を得る。式(1-2)化合物と式(2-2)化合物がパラジウム触媒条件下で反応させて式(2-3)化合物を得る。式(2-3)化合物が酸性条件下でtert-ブトキシカルボニル基を除去して式(A-2)化合物又はその塩を得る。ここで、a環、R、R、R3’、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’及びmは、(I-a)で定義される通りである。
【0043】
式(B)で示される化合物の製造方法は、以下の2つを含む。
【0044】
場合1:d環に連結されているe環の原子がN原子である場合:
【化6】
【0045】
式(3-2)化合物と式(3-1)化合物が芳香族求核置換反応を受けて式(3-3)化合物を得る。式(3-3)化合物が加水分解して式(B-1)化合物を生じる。ここで、Hal1はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、かつ、e環、X、X、X、R及びnは、式(I-a)で定義される通りである。
【0046】
場合2:d環に連結されているe環の原子がC原子である場合:
【化7】
Mが-B(OH)又はBpinである。
【0047】
式(4-2)化合物と式(4-1)化合物が鈴木-宮浦カップリング反応を受けて式(4-3)化合物を得る。式(4-3)化合物が加水分解して式(B-2)化合物を得る。ここで、Hal2は、塩素、臭素またはヨウ素であり、かつ、e環、X、X、X、R及びnは、式(I-a)で定義される通りである。
方法2:
【0048】
がRCOOHである場合の式(I)で示される化合物は、式(I-b)化合物と塩基(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなど)とを反応させることにより調製される式(I-c)化合物である。
【化8】
【0049】
ここで、Rは、化学結合またはC-Cアルキレン基から選ばれ、R10’は、C-Cアルキル基から選ばれ、かつ、a環、e環、X、X、X、X、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、m及びnは、式(I)で定義される通りである。
【0050】
方法3:
がR3’’であり、かつ、R3’’がC-C第一級アルコール基である場合の式(I)で示される化合物は、式(I-b)化合物と還元試薬(NaBHやLiAlHなど)を反応させることにより製造される式(I-d)化合物である。
【化9】
【0051】
ここで、Rは、化学結合またはC-Cアルキレン基から選ばれ、R10’は、C-Cアルキル基から選ばれ、かつ、a環、e環、X、X、X、X、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、m及びnは、式(I)で定義される通りである。
【0052】
方法4:
がR3’’’であり、かつ、R3’’’がC-C第三級アルコール基である場合の式(I)で示される化合物は、式(I-b)化合物とヨウ化メチルマグネシウム又は臭化メチルマグネシウムを反応させることにより製造される式(I-e)化合物である。
【化10】
【0053】
ここで、Rは、化学結合またはC-Cアルキレン基から選ばれ、R10’は、C-Cアルキル基から選ばれ、かつ、a環、e環、X、X、X、X、R、R、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、m及びnは、式(I)で定義される通りである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
実施例
実施例では、本発明の具体的な化合物の調製及び関連する構造同定のデータが示される。以下の実施例は、本発明を説明するために使用されているが、本発明を限定するものではないことに留意されたい。化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)及び質量分析(MS)によって確定された。H NMRスペクトルは、Bruker装置(400MHz)で測定され、化学シフトをppmで表し、テトラメチルシラン内部標準(0.00ppm)を使用した。H NMRの表現方法は、s=シングレット、d=ダブレット、m=マルチプレット、br=ブロード、dd=ダブルダブレット、dt=ダブルトリプレットを表す。結合定数が指定されている場合、その単位がHzである。質量分析には、FINNIGAN LCQAd(ESI)質量分析計(メーカー:Thermo、モデル:FinniganLCQ advantage MAX)を使用した。
【0055】
薄層クロマトグラフィー用シリカゲルプレートは、煙台黄海HSGF254または青島GF254シリカゲルプレートを使用した。薄層クロマトグラフィー法(TLC)は、0.15mm~0.2mm仕様のシリカゲルプレートを使用した。薄層クロマトグラフィー分離、製品精製は、0.4mm~0.5mm仕様のシリカゲル調製プレートを使用した。
【0056】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、一般に煙台黄海200~300メッシュのシリカゲルを担体として使用した。
【0057】
本発明における既知の出発原料は、当分野で既知の手法により、またはそれに従って合成することができるか、又は、ABCR GmbH & Co.KG、Acros Organnics、Aldrich Chemical Company、韶遠化学科技(Accela ChemBio Inc)、達瑞化学品、Bide Pharmatechなどの会社から購入することができる。
【0058】
実施例においては、特に断りのない限り、反応は、すべて空気雰囲気中で行われる。
【0059】
窒素雰囲気とは、反応フラスコが約1L用量の窒素バルーンに接続されていることを指す。
【0060】
実施例においては、特に断りのない限り、反応中の溶液は、水溶液を指す。
【0061】
実施例においては、特に断りのない限り、反応温度は室温であり、室温の範囲は、20℃~30℃範囲である。
【0062】
実施例における反応進行のモニタリングは、薄層クロマトグラフィー法(TLC)を使用し、展開溶媒システムは、ジクロロメタンとメタノールのシステム、n-ヘキサンと酢酸エチルのシステムがある、展開溶媒の体積比は化合物の極性によって調整した。
実施例1
【0063】
【化11】
【0064】
ステップ1:2-クロロ-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミンの合成
【化12】
【0065】
6-メチル-2,4-ジクロロピリミジン(1a)(9.72g,60mmol)、5-メチル-1H-3-アミノピラゾール(1b)(7.0g,72mmol)及びDIPEA(11.6g,72mmol)を30mLのDMSOに溶解し、60℃下で撹拌しながら反応させ、原料が消えるまで反応をTLCでモニターし、温度を室温に下げ、10mLの水を加えて反応をクエンチし、200mLの酢酸エチルを加え、有機相を水で3回洗浄し(30mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去し、黄褐色の粘稠な液体を得、80mLのジクロロメタンを加えて溶解させ、3時間放置し、2-クロロ-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(1c)9.9gを白色固体として沈殿し、収率は74%であった。
【0066】
MSm/z(ESI):224.3[M+1]
【0067】
ステップ2:4-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-カルボン酸t-ブチルの合成
【化13】
【0068】
2-クロロ-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(1c)(892mg,4mmol)、1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペラジン(1d)(1.49g,8mmol)及びKCO(1.66g,12mmol)を25mLのDMFに溶解し、140℃下で6時間反応させ、反応液を室温に冷却し、10mLの水を加えて反応をクエンチし、150mLの酢酸エチルを加え、有機相を水で3回洗浄し(15mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=20:1)で単離し、4-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-カルボン酸t-ブチル(1e)1.01gを、収率67%で得た。
【0069】
MSm/z(ESI):374.2[M+1]
【0070】
ステップ3:6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(1-ピペラジニル)ピリミジン-4-アミン塩酸塩の合成
【化14】
【0071】
4-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-カルボン酸t-ブチル(1e)(1.24g,3.3mmol)を25mLの1,4-ジオキサンに溶解し、25mLの2.6mol/L濃度のHCl/1,4-ジオキサン溶液を滴下し、50℃下で4時間反応させ、反応終了後、ろ過し、ろ液をそれぞれ酢酸エチル、ジエチルエーテルで、フィルターケーキを洗浄し真空乾燥させ、6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(1-ピペラジニル)ピリミジン-4-アミン塩酸塩(1f)1.1gを淡黄色固体として収率>99%で得た。
【0072】
MSm/z(ESI):274.2[M+1]
【0073】
ステップ4:6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチン酸メチルの合成
【化15】
【0074】
6-フルオロニコチン酸メチル(1g)(3.10g,20mmol)4-フルオロ-1H-ピラゾール(1h)(2.07g,24mmol)及びKCO(6.91g,50mmol)を25mLのDMFに溶解し、100℃下で6時間反応させ、反応液を室温に冷却し、10mLの水を加えて反応をクエンチし、150mLの酢酸エチルを加え、有機相を水で3回洗浄し(15mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=20:1)で単離し、6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチン酸メチル(1i)3.6gを収率82%で得た。
【0075】
MSm/z(ESI):222.1[M+1]
【0076】
ステップ5:6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチン酸の合成
【化16】
【0077】
6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチン酸メチル(1i)(3.6g,16.2mmol)及び水酸化リチウム一水和物(1.36g、32.4mmol)を、40mLのメタノールと20mLの蒸留水を調製した混合溶剤に溶解し、50℃で2時間反応させ、原料が消えるまで反応をTLCでモニターし、反応液を室温に冷却し、減圧下で溶剤を除去した後、100mLの蒸留水を加え、1mol/L希塩酸を加えてpH値を2~5に調整し、1時間撹拌し、ろ過し、フィルターケーキを50℃で乾燥させ、6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチン酸(1j)3.1gを収率92%で得た。
【0078】
MSm/z(ESI):208.1[M+1]
【0079】
ステップ6:(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)(4-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メタノンの合成
【化17】
【0080】
6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチン酸(1j)(83mg,0.4mmol)及びHATU(228mg,0.6mmol)を4mLのDMFに溶解し、0℃に冷却し、DIPEA(163mg,1.6mmol)を加え、2分間撹拌した後、6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(1-ピペラジニル)ピリミジン-4-アミン塩酸塩(1f)(140mg,0.45mmol)を加え、0℃に維持しながら30分間反応させ、10mLの水を加えて反応をクエンチし、100mLの酢酸エチルを加え、水で3回洗浄し(15mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=30:1)で単離し、粗生成物を得た。それをさらにシリカゲル分取プレート(展開溶媒及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=10:1)により単離し、(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)(4-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メタノン(I-1)80mgを、収率43%で得た。
【0081】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.81(s,1H),9.28(s,1H),8.76(d,J=4.5Hz,1H),8.57(s,1H),8.09(d,J=8.2Hz,1H),7.99(t,J=7.2Hz,2H),6.24(s,1H),6.11(s,1H),3.81-3.73(m,6H),3.51-3.46(m,2H),2.18(s,3H),2.13(s,3H)ppm.
【0082】
MSm/z(ESI):463.2[M+1].
【0083】
実施例1を参照すると、下記の化合物を調製することができる。
【0084】
化合物(I-2):
【化18】
【0085】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.80(s,1H),9.26(s,1H),8.74(d,J=4.6Hz,1H),8.55(s,1H),8.07(d,J=8.5Hz,1H),7.99-7.97(m,2H),6.22(s,1H),6.11(s,1H),4.52-4.49(s,2H),3.17-2.94(s,3H),2.18(s,3H),2.12(s,3H),1.19(d,J=6.8Hz,3H)ppm.
【0086】
MSm/z(ESI):477.2[M+1].
【0087】
化合物(I-3):
【化19】
【0088】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.84(s,1H),9.29(s,1H),8.75(d,J=4.5Hz,1H),8.57(s,1H),8.09(d,J=8.5Hz,1H),8.02-7.93(m,2H),6.21(s,1H),6.14(s,1H),5.01-4.21(m,4H),3.65-3.35(m,3H),3.14-2.84(m,3H),2.18(s,3H),2.12(s,3H)ppm.
【0089】
MSm/z(ESI):493.2[M+1].
【0090】
化合物(I-4):
【化20】
【0091】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.81(s,1H),9.27(s,1H),8.76(d,J=4.4Hz,1H),8.64(s,1H),8.17(d,J=8.5Hz,1H),8.02-7.98(m,2H),6.23(s,1H),6.12(s,1H),4.81-4.79(m,1H),4.50-4.37(m,2H),4.21-4.18(m,1H),3.13-3.09(m,2H),2.19(s,3H),2.12(s,3H),1.95-1.83(m,2H),1.71-1.61(m,2H)ppm.
【0092】
MSm/z(ESI):489.2[M+1].
【0093】
化合物(I-5):
【化21】
【0094】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.12(s,1H),10.03(s,1H),8.77(d,J=4.5Hz,1H),8.66(s,1H),8.38(d,J=8.2Hz,1H),8.23-8.07(m,1H),8.06-7.90(m,2H),7.56(t,J=7.7Hz,1H),7.33(d,J=8.4Hz,1H),7.11(t,J=7.6Hz,1H),6.44(s,1H),4.84(s,1H),4.74-4.38(m,2H),4.24(s,1H),3.23-3.20(m,2H),2.26(s,3H),1.91(s,2H),1.71-1.68(m,2H)ppm.
【0095】
MSm/z(ESI):525.2[M+1].
【0096】
化合物(I-6):
【化22】
【0097】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.85(s,1H),9.26-9.22(m,2H),8.88(s,1H),8.82(d,J=4.5Hz,1H),8.13(d,J=4.0Hz,1H),6.23(s,1H),6.12(s,1H),4.86-4.85(m,1H),4.81-4.65(m,1H),4.52-4.50(m,1H),4.42-4.39(m,1H),3.17-3.08(m,2H),2.20(s,3H),2.12(s,3H),1.91(d,J=11.7Hz,2H),1.70(d,J=8.2Hz,2H)ppm.
【0098】
MSm/z(ESI):490.2[M+1].
【0099】
化合物(I-7):
【化23】
【0100】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ9.22(s,1H),8.77(d,J=4.5Hz,1H),8.62(s,1H),8.14(s,2H),8.01(t,J=7.0Hz,2H),6.15(brs,2H),5.09-4.41(m,3H),4.20-3.63(m,5H),3.25-3.17(m,2H),2.18(s,3H),2.12(s,3H)ppm.
【0101】
MSm/z(ESI):505.5[M+1]
【0102】
化合物(I-8):
【化24】
【0103】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.83(s,1H),9.25(s,1H),8.86(s,1H),8.65(s,1H),8.19(d,J=8.7Hz,1H),8.03(s,1H),8.01-7.94(m,1H),6.23(s,1H),6.12(s,1H),4.86-4.75(m,1H),4.52-4.35(m,2H),4.23-4.17(m,1H),3.14-3.06(m,2H),2.19(s,3H),2.12(s,3H),1.96-1.83(m,2H),1.75-1.62(m,2H)ppm.
【0104】
MSm/z(ESI):505.2[M+1].
【0105】
化合物(I-9):
【化25】
【0106】
H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.84(s,1H),9.48(s,1H),9.28(s,1H),8.71(s,1H),8.48(s,1H),8.24(s,1H),8.06(s,1H),6.23(s,1H),6.11(s,1H),4.81(s,1H),4.49(s,1H),4.38(s,1H),4.19(s,1H),3.33(s,2H),2.19(s,3H),2.11(s,3H),1.90(s,2H),1.66(s,2H)ppm.
【0107】
MSm/z(ESI):496.2[M+1].
【0108】
化合物(I-10):
【化26】
【0109】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.82(s,1H),9.27(s,1H),8.30(d,J=2.5Hz,1H),7.67(dd,J=8.7,2.3Hz,1H),6.43(d,J=8.7Hz,1H),6.21(s,1H),6.13(s,1H),4.43-4.8(m,3H),3.65-3.20(m,5H),3.07(d,J=12.6Hz,2H),2.20(s,3H),2.11(s,3H),1.89-1.40(m,6H),1.06(s,3H),0.83(s,3H)ppm.
【0110】
MSm/z(ESI):514.3[M+1]
【0111】
化合物(I-11):
【化27】
【0112】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.00(s,1H),9.90(s,1H),8.76(d,J=4.4Hz,1H),8.65(d,J=2.0Hz,1H),8.18(dd,J=8.5,2.2Hz,1H),8.09-7.89(m,2H),6.80(s,1H),6.29(s,1H),4.83(s,1H),4.49-4.35(m,2H),4.24(s,1H),3.81(s,3H),3.22-3.15(m,2H),2.21(s,3H),1.91(s,2H),1.83-1.61(m,2H)ppm.
【0113】
MSm/z(ESI):533.2[M+1]
【0114】
化合物(I-12):
【化28】
【0115】
MSm/z(ESI):489.2[M+1]
実施例2
【0116】
【化29】
【0117】
ステップ1:3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸t-ブチルの合成
【化30】
【0118】
2-クロロ-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(1c)(2.01g,9mmol)、3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸t-ブチル(2a)(3.82g,18mmol)及びKCO(3.73g,27mmol)を25mLのDMAcに溶解し、140℃下で反応させ、反応終了までTLCモニタリングし、反応液を室温に冷却し、5mLの水を加えて反応をクエンチし、150mLの酢酸エチルを加え、有機相を水で3回洗浄し(15mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=20:1)で単離し、3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸t-ブチル(2b)2.81gを、収率77%で得た。
【0119】
MSm/z(ESI):400.5[M+1]
【0120】
ステップ2:2-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン塩酸塩の合成
【化31】
【0121】
3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸t-ブチル(2b)(2.6g,6.5mmol)を40mLの1,4-ジオキサンに溶解し、40mLの2.6mol/L濃度のHCl/1,4-ジオキサン溶液を滴下し、50℃で4時間反応させ、ろ過し、フィルターケーキをそれぞれ酢酸エチル、ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥させ、2-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン塩酸塩(2c)2.2gを、収率>99%で得た。
【0122】
MSm/z(ESI):300.3[M+1]
【0123】
ステップ3:6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸メチルの合成
【化32】
【0124】
4-フルオロ-1H-ピラゾール(1h)(2.4g,27.8mmol)を40mLのDMFに溶解し、0℃に冷却し、水素化ナトリウム(1.4g,34.8mmol)をゆっくりと加え、0℃下で30分間反応させ、6-クロロ-ピリダジン-3-カルボン酸メチル(2d)(4.0g,23.2mmol)を加え、原料が消えるまで反応をTLCでモニターし、10mLの氷水を加えて反応をクエンチし、200mLの酢酸エチルを加え、有機相を水で3回洗浄し(30mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=20:1)で単離し、6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸メチル(2f)4.53gを、収率88%で得た。
【0125】
MSm/z(ESI):223.2[M+1]
【0126】
ステップ4:6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸の合成
【化33】
【0127】
6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸メチル(2f)(4.53g,20.4mmol)、水酸化リチウム一水和物(1.71g,40.8mmol)及び蒸留水20mLを50mLのメタノールに溶解し、40℃で2時間反応させ、原料が消えるまで反応をTLCでモニターし、反応液を室温に冷却し、減圧下でメタノールを除去した後、100mLの蒸留水を加え、1mol/L希塩酸を加えてpH値を2~5に調整し、1時間撹拌し、ろ過し、フィルターケーキを50℃で乾燥させ、6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸(2g)3.81gを、収率90%で得た。
【0128】
MSm/z(ESI):209.1[M+1]
【0129】
ステップ5:(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-イル)(3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)メタノンの合成
【化34】
【0130】
2-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン塩酸塩(2c)(700mg,2.1mmol)、6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸(2g)(390mg,1.9mmol)及びPyBOP(1.63g,3.1mmol)を20mLのDMFに溶解し、0℃に冷却し、DIPEA(810mg,6.3mmol)を加え、0℃に維持しながら30分間反応させ、10mLの水を加えて反応をクエンチし、150mLの酢酸エチルを加え、水で3回洗浄し(20mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=20:1)で単離し、粗生成物を得た。それをさらにシリカゲル分取プレート(展開溶媒及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=10:1)により単離し、(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-イル)(3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)メタノン(I-13)400mgを、収率43%で得た。
【0131】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.85(s,1H),9.27(s,1H),9.08(d,J=4.4Hz,1H),8.34(d,J=9.1Hz,1H),8.21(d,J=9.2Hz,1H),8.15(d,J=4.0Hz,1H),6.19(s,1H),6.14(s,1H),4.89(d,J=5.6Hz,1H),4.74(d,J=5.4Hz,1H),4.55(d,J=12.8Hz,1H),4.43(d,J=12.6Hz,1H),3.20(d,J=12.7Hz,1H),3.12(d,J=12.6Hz,1H),2.20(s,3H),2.12(s,3H),1.92(d,J=9.3Hz,2H),1.71(d,J=9.0Hz,2H)ppm.
【0132】
MSm/z(ESI):490.2[M+1].
【0133】
実施例2を参照すると、下記の化合物を調整することができる。
【0134】
化合物(I-14):
【化35】
【0135】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.89(s,1H),9.42(s,1H),9.09(d,J=4.5Hz,1H),8.35(d,J=9.1Hz,1H),8.22(d,J=9.2Hz,1H),8.15(d,J=4.1Hz,1H),7.89(d,J=5.7Hz,1H),6.33(s,1H),6.16(s,1H),4.95-4.84(m,1H),4.84-4.69(m,1H),4.54(d,J=12.7Hz,1H),4.43(d,J=12.5Hz,1H),3.21(d,J=12.5Hz,1H),3.17-3.08(m,1H),2.21(s,3H),1.93(d,J=9.1Hz,2H),1.71(d,J=8.5Hz,2H)ppm.
【0136】
MSm/z(ESI):476.3
【0137】
化合物(I-15):
【化36】
【0138】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.86(s,1H),9.30(s,1H),9.05(d,J=4.4Hz,1H),8.34(d,J=9.1Hz,1H),8.14(d,J=3.9Hz,1H),8.12(d,J=9.2Hz,1H),6.24(s,1H),6.12(s,1H),3.86(s,2H),3.78(s,2H),3.75(s,2H),3.59(s,2H),2.18(s,3H),2.13(s,3H)ppm.
【0139】
MSm/z(ESI):464.2[M+1].
【0140】
化合物(I-16):
【化37】
【0141】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.06(s,1H),10.10(s,1H),9.08(d,J=4.4Hz,1H),8.35(d,J=9.1Hz,1H),8.22(d,J=9.2Hz,1H),8.15(d,J=4.0Hz,1H),6.59-6.26(brs,2H),4.93(s,1H),4.79(s,1H),4.63-4.27(m,2H),3.26-3.14(m,2H),2.23(s,3H),2.07-1.81(m,2H),1.71(d,J=8.7Hz,2H)ppm.
【0142】
MSm/z(ESI):544.2[M+1].
【0143】
化合物(I-17):
【化38】
【0144】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.86(s,1H),9.30(s,1H),9.18(s,1H),8.34(d,J=9.1Hz,1H),8.23(d,J=9.1Hz,1H),8.16(s,1H),6.20(s,1H),6.14(s,1H),4.89(s,1H),4.74(s,1H),4.55(d,J=11.7Hz,1H),4.43(d,J=12.2Hz,1H),3.28-3.08(m,2H),2.20(s,3H),2.13(s,3H),1.93(d,J=8.8Hz,2H),1.74-1.72(m,2H)ppm.
【0145】
MSm/z(ESI):506.2[M+1].
【0146】
化合物(I-18):
【化39】
【0147】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.82(s,1H),9.22(s,1H),9.07(d,J=4.4Hz,1H),8.36(d,J=9.2Hz,1H),8.19(d,J=9.0Hz,1H),8.15(d,J=4.0Hz,1H),6.16(brs,2H),4.94(s,1H),4.75(d,J=13.4Hz,1H),4.66(s,1H),4.25(s,1H),4.00(d,J=11.6Hz,1H),3.92-3.69(m,3H),3.17(d,J=5.1Hz,1H),2.19(s,3H),2.12(s,3H)ppm.
【0148】
MSm/z(ESI):506.2[M+1].
実施例3
【化40】
【0149】
2-(8-(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチノイル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸の合成
【化41】
【0150】
2-(8-(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチノイル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル(I-11)(80mg,0.15mmol)及び水酸化リチウム一水和物(42mg,1mmol)を2.5mLのメタノール/水(V:V=5:1)混合溶剤に溶解し、室温下で一晩反応させ、減圧下でメタノールを除去し、10mL水を加えて希釈し、1mol/L希塩酸でpH値を2~3に調整し、酢酸エチルを加えて3回抽出し(20mL×3)、有機層を合わせて飽和食塩水で1回洗浄し、乾燥させ、ろ過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=10:1)で単離し、2-(8-(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチノイル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸(I-19)55mgを収率71%で得た。
【0151】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.12(s,1H),10.02-9.62(m,1H),8.77(d,J=4.5Hz,1H),8.65(s,1H),8.18(d,J=8.6Hz,1H),8.00(t,J=7.7Hz,2H),6.85(s,1H),6.23(s,1H),4.92-4.03(m,4H),3.48-3.00(m,2H),2.21(s,3H),1.91(s,2H),1.68-1.65(m,2H)ppm.
【0152】
MSm/z(ESI):519.2[M+1].
実施例4
【化42】
【0153】
(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)(3-(4-(ヒドロキシメチル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)メタノンの合成
【化43】
【0154】
2-(8-(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチノイル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル(I-11)(53mg,0.1mmol)を1.5mLのテトラヒドロフランに溶解し、0℃に冷却し、LiAlH(11mg,0.3mmol)を加え、ゆっくり室温へ戻して反応させ、原料が消えるまで反応をTLCでモニターし、少量の硫酸ナトリウム十水和物を加えて反応をクエンチし、ろ過し、酢酸エチルでろ液を洗浄し、有機層を収集し、減圧下で溶剤を除去し、30mLの酢酸エチルを加え、水で3回洗浄し(5mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=20:1)で単離し、(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)(3-(4-(ヒドロキシメチル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)メタノン(I-20)10mgを、収率20%で得た。
【0155】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.85(s,1H),9.38(s,1H),8.76(d,J=4.4Hz,1H),8.64(d,J=2.2Hz,1H),8.17(dd,J=8.4,2.2Hz,1H),8.07-7.90(m,2H),6.49(s,1H),6.15(s,1H),5.21(t,J=5.9Hz,1H),4.79(s,1H),4.54-4.29(m,2H),4.21(d,J=6.0Hz,3H),3.11(d,J=12.8Hz,2H),2.19(s,3H),1.89(s,2H),1.65(s,2H)ppm.
【0156】
MSm/z(ESI):505.2[M+1]
実施例5
【0157】
【化44】
(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)(3-(4-(2-ヒドロキシプロピル-2-イル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)メタノンの合成
【0158】
【化45】
2-(8-(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチノイル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル(I-11)(265mg,0.5mmol)、5mLのテトラヒドロフランに溶解し、窒素雰囲気下で0℃に冷却し、3mol/Lのヨウ化メチルマグネシウムのジエチルエーテル溶液をゆっくりと滴下し、滴下完了後、室温に戻して反応させ、反応終了までTLCモニタリングし、飽和アンモニウムクロライド水溶液を加えて反応をクエンチし、100mLの酢酸エチルを加え、水で3回洗浄し(20mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、乾燥させ、ろ過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=30:1)で単離し、(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)(3-(4-(2-ヒドロキシプロピル-2-イル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)メタノン(I-21)56mgを、収率22%で得た。
【0159】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.84(s,1H),9.34(s,1H),8.76(d,J=4.5Hz,1H),8.65(s,1H),8.18(d,J=8.7Hz,1H),8.02(d,J=4.2Hz,1H),7.99(d,J=8.7Hz,1H),6.59(s,1H),6.15(s,1H),4.95(s,1H),4.52-4.17(m,4H),3.14-3.09(m,2H),2.20(s,3H),1.91(s,2H),1.67(s,2H),1.32(s,6H)ppm.
【0160】
MSm/z(ESI):533.3[M+1]
実施例6
【0161】
【化46】
【0162】
ステップ1:6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリダジン-3-カルボン酸メチルの合成
【化47】
【0163】
6-クロロ-ピリダジン-3-カルボン酸メチル(2d)(1.73g,10mmol)、(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ボロン酸ピナコールエステル(7a)(4.16g,20mmol)、Pd(dba)(410mg,0.5mmol)、PCy(280mg,1mmol)及びリン酸カリウム(6.4g,30mmol)を35mLジオキサン/水(V:V=6:1)混合溶剤に溶解し、窒素雰囲気下で、100℃下で一晩中反応させた。反応終了後、反応液の温度を室温に下げ、珪藻土でろ過し、酢酸エチルで洗浄し、減圧下で有機溶剤を除去し、300mLの酢酸エチルを加え、水で3回洗浄し(40mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=30:1)で単離し、6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリダジン-3-カルボン酸メチル(7b)1.4gを、収率65%で得た。
【0164】
MSm/z(ESI):219.1[M+1]
【0165】
ステップ2:6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリダジン-3-カルボン酸の合成
【化48】
【0166】
6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリダジン-3-カルボン酸メチル(7b)(1.4g,7mmol)及び水酸化リチウム一水和物(580mg,14mmol)を50mLのメタノール/水(V:V=2:1)混合溶剤に溶解し、50℃下で反応させ、反応終了までLC-MSモニタリングし、減圧下でメタノールを除去した後、10mLの水を加え、1mol/L希塩酸でpH値を2~3に調整し、固形物を沈殿させ、ろ過し、乾燥させ、6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリダジン-3-カルボン酸(7c)580mgを、収率20%で得た。
【0167】
MSm/z(ESI):205.2[M+1]
【0168】
ステップ3:(6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリダジン-3-イル)(3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)メタノンの合成
【化49】
【0169】
2-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン塩酸塩(2c)(201mg,0.6mmol)、6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリダジン-3-カルボン酸(7c)(123mg,0.6mmol)及びPyBOP(468mg,0.9mmol)を6mLのDMFに溶解し、0℃に冷却し、DIPEA(310mg,2.4mmol)を加え、0℃に維持しながら30分間反応させ、5mLの水を加えて反応をクエンチし、100mLの酢酸エチルを加え、水で3回洗浄し(15mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=20:1)で単離し、粗生成物を得た。さらに、それを分取プレートで(展開溶媒及び体積比:ジクロロメタン:メタノール=10:1)単離し、(6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリダジン-3-イル)(3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)メタノン(I-22)62mgを、収率22%で得た。
【0170】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.86(s,1H),9.29(s,1H),8.56(s,1H),8.22(s,1H),8.10(d,J=8.8Hz,1H),7.98(d,J=8.8Hz,1H),6.22(s,1H),6.16(s,1H),4.88(d,J=5.8Hz,1H),4.79(s,1H),4.54(d,J=12.7Hz,1H),4.44(d,J=12.6Hz,1H),3.94(s,3H),3.19(d,J=12.7Hz,1H),3.11(d,J=12.8Hz,1H),2.20(s,3H),2.12(s,3H),1.92(d,J=8.4Hz,2H),1.71(d,J=8.2Hz,2H)ppm.
【0171】
MSm/z(ESI):486.3[M+1].
【0172】
参実施例6を参照すると、下記の化合物を調製することができる。
【0173】
化合物(I-23):
【化50】
【0174】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ13.16(s,1H),11.84(s,1H),9.27(s,1H),8.67(s,1H),8.42(s,1H),8.13(s,1H),7.92(d,J=8.2Hz,1H),7.78(d,J=8.2Hz,1H),6.22(s,1H),6.13(s,1H),5.08-4.13(m,4H),3.10(d,J=12.8Hz,2H),2.19(s,3H),2.12(s,3H),1.88(s,2H),1.65(d,J=9.7Hz,2H)ppm.
【0175】
MSm/z(ESI):471.2[M+1].
【0176】
化合物(I-24):
【化51】
【0177】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.84(s,1H),9.28(s,1H),8.67(s,1H),8.37(s,1H),8.07(s,1H),7.92(dd,J=8.1,2.2Hz,1H),7.73(d,J=8.1Hz,1H),6.21(s,1H),6.13(s,1H),4.78(s,1H),4.55-4.32(m,2H),4.21(s,1H),3.90(s,3H),3.10(d,J=12.7Hz,2H),2.19(s,3H),2.12(s,3H),1.88(s,2H),1.65(d,J=9.8Hz,2H)ppm.
【0178】
MSm/z(ESI):485.3[M+1].
【0179】
化合物(I-25):
【化52】
【0180】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.84(s,1H),9.27(s,1H),8.82(s,1H),8.21(dd,J=8.5,5.5Hz,2H),8.06(t,J=6.5Hz,2H),7.35(t,J=8.7Hz,2H),6.22(s,1H),6.13(s,1H),4.86-4.75(m,1H),4.55-4.35(m,2H),4.24-4.16(m,1H),3.13-3.10(m,2H),2.19(s,3H),2.12(s,3H),1.93-1.86(m,2H),1.67-1.65(m,2H)ppm.
【0181】
MSm/z(ESI):499.2[M+1].
【0182】
化合物(I-26):
【化53】
【0183】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.86(s,1H),9.29(s,1H),8.41(d,J=8.9Hz,1H),8.31(d,J=8.6Hz,2H),8.09(d,J=8.8Hz,1H),7.43(t,J=8.7Hz,2H),6.23(s,1H),6.15(s,1H),4.93-4.87(m,1H),4.74(s,1H),4.56(d,J=12.7Hz,1H),4.45(d,J=12.6Hz,1H),3.15-3.12(m,2H),2.20(s,3H),2.12(s,3H),1.94(d,J=10.9Hz,2H),1.72(d,J=8.7Hz,2H)ppm.
【0184】
MSm/z(ESI):500.2[M+1].
【0185】
化合物(I-27):
【化54】
【0186】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ9.46-9.10(m,1H),8.41(d,J=8.7Hz,1H),8.30(dd,J=8.4,5.5Hz,2H),8.15(s,1H),8.00(d,J=8.7Hz,1H),7.44(t,J=8.6Hz,2H),6.23(s,1H),6.12(s,1H),3.92-3.84(m,2H),3.84-3.67(m,4H),3.59-3.57(m,2H),2.18(s,3H),2.13(s,3H)ppm.
【0187】
MSm/z(ESI):474.2[M+1].
【0188】
化合物(I-28):
【化55】
【0189】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.85(s,1H),9.30(s,1H),8.89(s,1H),8.74(s,2H),8.23(d,J=8.1Hz,1H),8.13(d,J=11.7Hz,3H),6.21(s,1H),6.13(s,1H),4.82(s,1H),4.44(d,J=44.1Hz,2H),4.18-4.11(m,1H),3.20-3.03(m,2H),2.19(s,3H),2.12(s,3H),1.91(s,2H),1.66(s,2H)ppm.
【0190】
MSm/z(ESI):482.2[M+1].
【0191】
化合物(I-29):
【化56】
【0192】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.84(s,1H),9.28(s,1H),8.95(s,1H),8.61(d,J=4.6Hz,1H),8.14(d,J=8.0Hz,1H),7.84(d,J=7.8Hz,2H),7.67(d,J=7.8Hz,2H),7.52(dd,J=7.9,4.8Hz,1H),6.23(s,1H),6.13(s,1H),4.80(s,1H),4.47(s,1H),4.38(s,1H),4.18(s,1H),3.12-3.08(m,2H),2.19(s,3H),2.12(s,3H),1.87(s,2H),1.66(s,2H)ppm.
【0193】
MSm/z(ESI):481.3[M+1].
実施例7
【0194】
【化57】
【0195】
ステップ1:3-(6-ブロモ-4-メチルピリジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸メチルの合成
【化58】
【0196】
2-フルオロ-4-メチル-6-ブロモ-ピリジン(8a)(1.9g,10mmol)、3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸t-ブチル(2a)(2.54g,12mmol)、KCO(4.14g,30mmol)を25mLのDMFに溶解し、110℃下で撹拌しながら反応させ、原料が消えるまで反応をTLCでモニターし、室温に戻し、10mLの水を加えて反応をクエンチし、150mLの酢酸エチルを加え、有機相を水で3回洗浄し(25mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒及び体積比:石油エーテル:酢酸エチル=7:1)で生成物を単離し、真空乾燥させ、3-(6-ブロモ-4-メチルピリジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸メチル(8b)820mgを収率22%で得た。
【0197】
MSm/z(ESI):382.1[M+1]
【0198】
ステップ2:3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸メチルの合成
【化59】
【0199】
窒素雰囲気下で、3-(6-ブロモ-4-メチルピリジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸メチル(8b)(754mg,1.97mmol)、5-メチル-1H-3-アミノピラゾール(1b)(380mg,3.94mmol)、Pd(dba)(357mg,0.39mmol)、t-BuXphos(336mg,0.79mmol)及び酢酸カリウム(579mg,5.91mmol)を17mLのDMAcに溶解し、140℃下で撹拌しながら反応させ、反応終了までTLCモニタリングし、反応液を室温に戻し、100mLの酢酸エチルを加え、有機相を水で3回洗浄し(20mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び割合:石油エーテル:酢酸エチル=1:1)で生成物を単離し、3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸メチル(8c)520mgを収率61%で得た。
【0200】
MSm/z(ESI):399.3[M+1]
【0201】
ステップ3:6-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-4-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリジン-2-アミン塩酸塩の合成
【化60】
【0202】
3-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸メチル(8c)(520mg,1.3mmol)を8mLの1,4-ジオキサンに溶解し、10mLの濃度が2.6mol/Lである塩化水素の1,4-ジオキサン溶液を滴下し、50℃下で反応させ、原料が消えるまで反応をLC-MSモニタリングし、室温に戻し、減圧下で溶剤を除去し、20mLの酢酸エチルを加え、10分間撹拌し、ろ過し、フィルターケーキをそれぞれ酢酸エチル及びジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥させ、6-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-4-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリジン-2-アミン塩酸塩(8d)324mgを収率74%で得た。
【0203】
MSm/z(ESI):299.2[M+1]
【0204】
ステップ4:6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-イル)(8-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)メタノンの合成
【化61】
【0205】
6-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-4-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリジン-2-アミン塩酸塩(8d)(184mg,0.55mmol)、6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸(2g)(104mg,0.5mmol)及びPyBOP(289mg,0.75mmol)を5mLのDMFに溶解し、反応液を0℃に冷却し、DIPEA(204mg、2mmol)を加え、0℃に維持しながら20分間反応させた後、3mLの水を加えて反応をクエンチし、50mLの酢酸エチルを加え、有機相を水で3回洗浄し(10mL×3)、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤及び割合:ジクロロメタン:メタノール=15:1)で単離し、(6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリダジン-3-イル)(8-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリジン-2-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)メタノン(I-30)63mgを収率26%で得た。
【0206】
H NMR(400MHz,DMSO)δ9.07(d,J=4.2Hz,1H),8.61(s,1H),8.34(d,J=9.1Hz,1H),8.21(d,J=9.1Hz,1H),8.15(d,J=3.4Hz,2H),6.34(s,1H),5.99(s,1H),5.90(s,1H),4.91(s,1H),4.78(s,1H),4.11(d,J=12.1Hz,1H),3.98(d,J=11.4Hz,1H),3.16(d,J=8.3Hz,1H),3.04(d,J=11.7Hz,1H),2.18(s,3H),2.12(s,3H),1.95(d,J=8.9Hz,2H),1.80(d,J=8.4Hz,2H)ppm.
【0207】
MSm/z(ESI):489.3[M+1]

生物学的評価
測定例1、RETキナーゼ活性に対する本発明に係る化合物の測定
【0208】
この方法では、Cisbio会社製HTRF(登録商標)KinEASE-TKチロシンキナーゼキット(カタログ番号62TK0PEB)を使用し、時間分解-蛍光エネルギー共鳴移動法(TR-FRET)によりビオチン化ポリペプチド基質のリン酸化のレベルを測定した。ヒトRETタンパク質(RETキナーゼ)はカルナバイオサイエンス(日本、カタログ番号08-159-5μg)から購入した。
【0209】
実験ステップは以下の通りである:
(1)受試化合物(本発明の化合物及び対照としてのWO2018017983A1の化合物164)を100%のDMSOに終濃度が10mMとなるように溶解した。
(2)46uLの100%DMSOで4uLのステップ(1)で調製した受試化合物溶液を溶解し、このステップで得られた溶液を2号の番号を付けた。
(3)2号の溶液を、希釈倍数を5倍(即ち20μLの100%のDMSOに5μLの化合物を加える)として、合わせて9つの段階となるように、段階希釈し、3号~11号の番号を付けた。
注:2号は、ステップ(4)の希釈に使用しない。
(特に断らない限り、次のステップはすべて氷上で行う必要がある)
(4)キット(Cisbio、カタログ番号62TK0PEB)で提供される緩衝液で3号~11号の溶液を段階希釈し、希釈倍数を20倍(即ち、3号~11号の溶液に19μLの緩衝液をそれぞれ加える)とした。ここで、3号~11号のシステムにおける受試化合物の終濃度範囲が3200nM~0.008nM(9つの段階)であり、DMSO終濃度が2%であった。
(5)ステップ(4)における9つの段階濃度の受試化合物溶液を濃度の順で384ウェルプレートにウェルあたり4μL加え、2つの重複ウェルを設定した。
(6)2μLのヒトRETタンパク質を各ウェルに加え、氷上で10分間インキュベートした。
(7)2μLのATP(Sigma#A7699)及び2μLのビオチン化ポリペプチド基質(Cisbio、カタログ番号62TK0PEB)を各ウェルに加え、リン酸化反応を開始した。37℃下で30分間インキュベートした。
(8)ユーロピウム系元素化合物とカップリングされた抗リン酸化チロシン抗体5μL(キットに提供された、カタログ番号62TK0PEB)及び修飾化アロフィコシアニンXL665とカップリングされたストレプトアビジン(Cisbio、カタログ番号62TK0PEB)5μLを各ウェルに加えた。
(9)室温下で1時間インキュベートし続けた。インキュベーション終了後、マイクロプレートリーダー(BMG Labtech、モデル:FLUOStar Omega)を使用してTF-FRETモードで励起波長を304nMとして各ウェルを測定し、各ウェルにおける発光波長が615nM及び665nMである蛍光強度を読み取って、比率を自動的に計算された。
(10)対照群の蛍光強度比と比較することにより、各濃度での化合物の阻害率を計算し、さらにGraphPad Prism5で対数濃度-阻害率でカーブフィッティングを行い、化合物のIC50値を計算した。その結果を表2に示す。
【0210】
選択された対照キナーゼは、カルナバイオサイエンス(日本、カタログ番号08-191-5μg)から購入した、RETキナーゼと同様の構造を持つ別の受容体型チロシンキナーゼKDRである。段階希釈のステップは、RETキナーゼと同じであり、反応系における受試化合物の終濃度範囲を16000nM~0.04nM(2~10号の溶液でステップ4での段階希釈を行った)とした以外、他の反応条件を上記と同じであり、DMSOの終濃度は2%である。受試化合物によるKDRキナーゼ阻害のIC50値の計算方法は、RETキナーゼ阻害のIC50値のの計算方法と同じである。
【0211】
表2本発明の化合物及び化合物164によるRETキナーゼ及びKDRキナーゼ阻害のIC50
【表1】
【0212】
上記の表から、本発明の化合物がRETキナーゼ活性に対して有意な阻害効果を有し、また、その阻害効果の効果がWO2018017983A1に記載の化合物164より有意に優れていることが分かる。また、本発明の化合物は、RETキナーゼに対する阻害活性がKDRキナーゼに対する阻害活性より有意に優れている。従って、本発明の化合物は、効果的な選択的RETキナーゼ阻害剤として使用することができる。ここで、化合物164の構造式が以下で示され、その構造及び調製方法がWO2018017983A1に開示されている。
【化62】
【国際調査報告】