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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】船舶の燃料供給システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20220603BHJP
   B63B 11/04 20060101ALI20220603BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20220603BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220603BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20220603BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20220603BHJP
   F02D 19/08 20060101ALI20220603BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20220603BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63B11/04 B
B63H21/32 Z
B63B25/16 A
B63H21/38 C
F02B43/00 A
F02M21/02 L
F02D19/08 C
F02D19/08
F02D19/06 B
F02D19/06
F02D19/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560008
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 KR2020001198
(87)【国際公開番号】W WO2020230979
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0056202
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0056203
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】デウ シップビルディング アンド マリン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】アン,ス ギョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ソン ウ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ミン チョル
(72)【発明者】
【氏名】カン,グム ジュン
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AB07
3G092AB08
3G092AB12
3G092AB19
3G092AC10
3G092BB01
3G092FA24
3G092HD04Z
(57)【要約】
【課題】本発明は、2050年までの主要な時期毎に、段階的に強化される船舶の温室効果ガス規定を遵守できるように、既存燃料とアンモニア燃料とを選択的に使用するか、または混合して船舶の推進エンジン及び発電エンジンの燃料として使用する、環境に配慮した船舶の燃料供給システムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン;と、
前記エンジンに燃料として供給される第1燃料を貯蔵する燃料貯蔵タンク;と、
前記エンジンに燃料として供給されるアンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵タンク;とを備え、
前記エンジンは、前記第1燃料と前記アンモニアとが選択的に供給され、または前記第1燃料及び前記アンモニアを混合した燃料が供給されて、駆動されることを特徴とする、
船舶の燃料供給システム。
【請求項2】
前記燃料供給システムは、
前記エンジンに前記第1燃料のみを供給する第1燃料供給モード;、
前記エンジンに前記アンモニアのみを供給するアンモニア供給モード;及び
前記エンジンに前記第1燃料及び前記アンモニアを混合して供給する混合燃料供給モード;のうち、いずれか1つの運転モードで運転することを特徴とする、
請求項1に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項3】
前記エンジンから排気ガスが排出される排気ガス排出ライン上に設置されて、前記排気ガス中に含まれる温室効果ガスを検出する温室効果ガス分析器;をさらに備え、
前記温室効果ガス分析器によって検出された数値に基づいて、前記燃料供給システムの運転モードを選択することを特徴とする、
請求項2に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項4】
前記燃料供給システムが混合燃料供給モードで運転する時、
前記温室効果ガス分析器で検出された数値に基づいて、前記第1燃料及び前記アンモニアの混合比率を調節することを特徴とする、
請求項3に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項5】
前記燃料貯蔵タンクから前記エンジンに燃料を供給する燃料供給ライン上に設置される第1制御バルブ;及び
前記アンモニア貯蔵タンクから前記エンジンにアンモニアを供給するアンモニア供給ライン上に設置される第2制御バルブ;をさらに備え、
前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブの開度が、前記温室効果ガス分析器で検出された数値に基づいて制御されることを特徴とする、
請求項4に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項6】
前記アンモニア供給ライン上に設置されて、前記アンモニアを前記エンジンに適した温度まで調節するヒーター;をさらに備えることを特徴とする、
請求項5に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項7】
前記エンジンは、常温で液体状態である燃料を使用するオイルエンジン(oil engine)であり、
前記第1燃料は、HFO,LSFO,ULSFO,MGO,MeOHのうちのいずれか1つであることを特徴とする、
請求項4に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項8】
前記エンジンは、常温で気体状態である燃料を使用するガスエンジン(gas engine)であり、
前記第1燃料は、LNG,LPG,LEG,DMEのうちのいずれか1つであり、
前記第1燃料は液体状態で前記燃料貯蔵タンクに貯蔵されることを特徴とする、
請求項4に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項9】
前記燃料供給ライン上に設置されて、液体状態の前記第1燃料を強制的に気化させる気化器;及び
前記気化器により気化された前記第1燃料を、前記エンジンに適した温度まで調節するヒーター;をさらに備えることを特徴とする、
請求項8に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項10】
前記エンジンから排気ガスが排出される排気ガス排出ライン上に設置されて、前記排気ガス中の窒素酸化物を低減させるSCR装置;をさらに備え、
前記アンモニア貯蔵タンクに貯蔵されるアンモニアを、前記エンジンと前記SCR装置とに、選択的または同時に供給可能であることを特徴とする、
請求項1に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項11】
前記燃料貯蔵タンクから前記エンジンに第1燃料が供給される第1供給ライン;と、
前記アンモニア貯蔵タンクから前記エンジンにアンモニアが供給される第2供給ライン;及び
前記アンモニア貯蔵タンクから前記SCR装置にアンモニアが供給される第3供給ライン;をさらに備え、
前記アンモニアは、第2供給ラインを介して供給される時に、前記エンジンの燃料として使用され、前記第3供給ラインを介して供給される時に、前記SCR装置の還元剤として使用されることを特徴とする、
請求項10に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項12】
前記排気ガス排出ライン上で前記エンジンの下流に設置されて、前記排気ガス中に含まれる温室効果ガスを検出する温室効果ガス分析器;及び
前記排気ガス排出ライン上で前記エンジンの下流に設置されて、前記エンジンから排出される排気ガス中に含まれる窒素酸化物を検出するNOx分析器;をさらに備え、
前記第1供給ラインを介した第1燃料の供給量と、前記第2供給ラインを介したアンモニアの供給量とが、前記温室効果ガス分析器で検出された数値に基づいて制御され、
前記第3供給ラインを介したアンモニアの供給量は、前記NOx分析器で検出された数値に基づいて制御されることを特徴とする、
請求項11に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項13】
前記第2供給ライン及び前記第3供給ライン上に、アンモニアを前記エンジン及び前記SCR装置にそれぞれ適した温度まで調節するヒーターが、それぞれ設置されることを特徴とする、
請求項12に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項14】
前記SCR装置の下流の排気ガス排出ライン上から分岐して、前記SCR装置に戻されるリターンライン;をさらに備え、
前記NOx分析器として、
前記エンジンと前記SCR装置との間に設置される第1NOx分析器;及び
前記SCR装置の下流に設置される第2NOx分析器;を備え、
前記第2NOx分析器で検出された数値を分析して、排気ガス中に含まれる窒素酸化物が許容値以上である場合に、前記SCR装置から排出される排気ガスが前記リターンラインを介して前記SCR装置に戻されることを特徴とする、
請求項12に記載の船舶の燃料供給システム。
【請求項15】
前記第1燃料は、HFO,LSFO,ULSFO,MGO,MeOH,LNG,LPG,LEG,DMEのうちのいずれか1つであることを特徴とする、
請求項12に記載の船舶の燃料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の燃料供給システムに関するものである。より詳細には、2050年までの主要な時期毎に、段階的に強化されている船舶の温室効果ガス規定を遵守できるように、既存燃料とアンモニア燃料とを、選択的にまたは混合して船舶のエンジンに供給する、環境に配慮した船舶の燃料供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化や気候変動を防止するための環境規制に備えるため、船舶の排出ガスに対する国際的な規制が強化されたことで、世界の各国は、環境に配慮した低炭素燃料を使用する船舶の開発に力を注いでいる。
【0003】
また、世界的な気候変動や大気汚染が増加することに伴い、国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)、欧州連合、アメリカなどでは、船舶が排出する汚染物質に対する規制が大幅に強化される見込みである。
【0004】
従来の化石燃料を代替する燃料として、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を使用する方法が最も検討されている。実際にLNG船舶は、2018年9月現在、432隻以上が運航中であり、SOxとNOxの低減に大きな役割を果たしている(HFOに比べて、SOxは92%低減、NOxは80%低減)。
LNG燃料の欠点は、LNGバンカー港、バンカーリング船などの関連インフラの構築が不十分であり、LNG燃料の価格変動性、LNGエンジンのメタンスリップ問題で温室効果ガスが増加する恐れ、漏出や火災、爆発の危険が常に存在するということである。
【0005】
現在、国際海事機関(IMO)が発表した船舶の温室効果ガス及び二酸化炭素の削減目標は、次の通りである。
【0006】
温室効果ガス(Greenhouse Gas)の削減目標は、2008年における国際海運(International Shipping)の温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量に比べて、2050年まで50%の削減を目標とする(参考までに、温室効果ガスに含まれるガスとしては、メタン(CH)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、オゾン(O)、塩化フッ化炭素(CFCs)などがある)。
【0007】
炭素集約度(Carbon Intensity)の削減目標は、船舶輸送作業(Transport Work)当たりの二酸化炭素(CO)排出量を2008年における国際海運(International Shipping)の排出量に比べて、2030年まで40%の削減、2050まで70%の削減を目標とする。
【0008】
今後、船舶における温室効果ガスの排出規制は、2050年までの主要な時期ごとに段階的に強化されるため、既存のエンジンと燃料だけでは、温室効果ガスの規定を遵守することは困難となることが予想される。
【0009】
この状況は、現在、船舶の温室効果ガスの排出量を削減するための対策として検証されたLNG燃料も同様である。LNG燃料は、COの削減には限定的であるという欠点があり(HFOに比べて15~25%に過ぎない)、長期的な観点からは、他の既存燃料と同様に船舶の温室効果ガス規定を遵守することは困難であると考えられる。
【0010】
また、UMASの報告書によると、2050年までに、貿易の増加に応じて船舶の運航が増加するため、総量基準ではLNGによる排出ガス量の削減効果がなく、不燃焼メタンガスの大気漏出による悪影響が削減効果を相殺するとも言われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
今後、段階的に強化される船舶の温室効果ガスの排出規制が適用されるに伴い、現在使用されている既存の化石燃料の使用が困難となることが予想され、今後、強化された規制に対応可能な代替燃料の開発が非常に急務である。
【0012】
また、中短期的には、既存の化石燃料をLNGなどの環境に配慮した燃料に転換しても、長期的にはさらに未来を視野に入れた代案が必要であるとも考えられる。このような代案は水素、アンモニア(NH)、バイオ燃料(Biofuel)、太陽エネルギー、風力エネルギーなどの非化石燃料により、船舶の燃料を代替することである。
【0013】
本発明は、これらの中からすでに陸上で100年以上使用され、生産/貯蔵/輸送/供給のすべてを含む供給チェーン(Supply Chain)が十分に検証された化学物質であるアンモニアを利用し、今後、強化される船舶の温室効果ガス排出の規制に対応可能な、環境に配慮した船舶の提供を技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明の一実施形態では、エンジン;と、前記エンジンに燃料として供給される第1燃料を貯蔵する燃料貯蔵タンク;と、前記エンジンに燃料として供給されるアンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵タンク;とを備え、前記エンジンは、前記第1燃料と前記アンモニアとが選択的に供給され、または前記第1燃料及び前記アンモニアを混合した燃料が供給されて、駆動されることを特徴とする、船舶の燃料供給システムが提供される。
【0015】
前記燃料供給システムは、前記燃料供給システムは、前記エンジンに前記第1燃料のみを供給する第1燃料供給モード;、前記エンジンに前記アンモニアのみを供給するアンモニア供給モード;及び前記エンジンに前記第1燃料及び前記アンモニアを混合して供給する混合燃料供給モード;のうち、いずれか1つの運転モードで運転する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、前記エンジンから排気ガスが排出される排気ガス排出ライン上に設置されて、前記排気ガス中に含まれる温室効果ガスを検出する温室効果ガス分析器;をさらに備え、前記温室効果ガス分析器によって検出された数値に基づいて、前記燃料供給システムの運転モードを選択する。
【0017】
前記燃料供給システムが混合燃料供給モードで運転する時、前記温室効果ガス分析器で検出された数値に基づいて、前記第1燃料及び前記アンモニアの混合比率を調節する。
【0018】
本発明の一実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、前記燃料貯蔵タンクから前記エンジンに燃料を供給する燃料供給ライン上に設置される第1制御バルブ;及び前記アンモニア貯蔵タンクから前記エンジンにアンモニアを供給するアンモニア供給ライン上に設置される第2制御バルブ;をさらに備え、前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブの開度が、前記温室効果ガス分析器で検出された数値に基づいて制御される。
【0019】
本発明の一実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、前記アンモニア供給ライン上に設置されて、前記アンモニアを前記エンジンに適した温度まで調節するヒーター;をさらに備える。
【0020】
前記エンジンは、常温で液体状態である燃料を使用するオイルエンジン(oil engine)であり、前記第1燃料は、HFO,LSFO,ULSFO,MGO,MeOHのうちのいずれか1つである。
【0021】
または、前記エンジンは、常温で気体状態である燃料を使用するガスエンジン(gas engine)であり、前記第1燃料は、LNG,LPG,LEG,DMEのうちのいずれか1つであり、前記第1燃料は液体状態で前記燃料貯蔵タンクに貯蔵される。
【0022】
前記エンジンがガスエンジンである場合、本発明の一実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、前記燃料供給ライン上に設置されて、液体状態の前記第1燃料を強制的に気化させる気化器;及び前記気化器によって気化された前記第1燃料を、前記エンジンに適した温度まで調節するヒーター;をさらに備える。
【0023】
一方、前記目的を達成するため、本発明の他の実施形態では、エンジン;と、前記エンジンに燃料として供給される第1燃料を貯蔵する燃料貯蔵タンク;と、前記エンジンに燃料として供給されるアンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵タンク;と、前記エンジンから排気ガスが排出される排気ガス排出ライン上に設置されて、前記排気ガス中の窒素酸化物を低減させるSCR装置;とを備え、前記エンジンは、前記第1燃料と前記アンモニアとを選択的に供給され、または前記第1燃料及び前記アンモニアを混合した燃料が供給されて、駆動され、前記アンモニア貯蔵タンクに貯蔵されるアンモニアを、前記エンジンと前記SCR装置とに、選択的または同時に供給可能であることを特徴とする、船舶の燃料供給システムが提供される。
【0024】
本発明の他の実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、前記燃料貯蔵タンクから前記エンジンに第1燃料が供給される第1供給ライン;と、前記アンモニア貯蔵タンクから前記エンジンにアンモニアが供給される第2供給ライン;及び前記アンモニア貯蔵タンクから前記SCR装置にアンモニアが供給される第3供給ライン;をさらに備え、前記アンモニアは、第2供給ラインを介して供給される時に、前記エンジンの燃料として使用され、前記第3供給ラインを介して供給される時に、前記SCR装置の還元剤として使用される。
【0025】
本発明の他の実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、前記排気ガス排出ライン上で前記エンジンの下流に設置されて、前記排気ガス中に含まれる温室効果ガスを検出する温室効果ガス分析器;及び前記排気ガス排出ライン上で前記エンジンの下流に設置され、前記エンジンから排出される排気ガス中に含まれる窒素酸化物を検出するNOx分析器;をさらに備え、前記第1供給ラインを介した第1燃料の供給量と、前記第2供給ラインを介したアンモニアの供給量とが、前記温室効果ガス分析器で検出された数値に基づいて制御され、前記第3供給ラインを介したアンモニアの供給量は、前記NOx分析器で検出された数値に基づいて制御される。
【0026】
前記第2供給ライン及び前記第3供給ライン上に、アンモニアを前記エンジン及び前記SCR装置にそれぞれ適した温度まで調節するヒーターが、それぞれ設置される。
【0027】
本発明の他の実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、前記SCR装置の下流の排気ガス排出ライン上から分岐して、前記SCR装置に戻されるリターンライン;をさらに備え、前記NOx分析器として、前記エンジンと前記SCR装置との間に設置される第1NOx分析器;及び前記SCR装置の下流に設置される第2NOx分析器;を備え、前記第2NOx分析器で検出された数値を分析して、排気ガス中に含まれる窒素酸化物が許容値以上である場合に、前記SCR装置から排出される排気ガスが前記リターンラインを介して前記SCR装置に戻される。
【0028】
前記第1燃料は、HFO,LSFO,ULSFO,MGO,MeOH,LNG,LPG,LEG,DMEのうちのいずれか1つである。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、既存燃料とアンモニア燃料とを、選択的にまたは混合して、船舶の推進エンジン及び発電エンジンの燃料として供給することで、エンジンから排出される温室効果ガスの削減率が向上し、これにより、今後、強化される船舶の温室効果ガス規制に対応が可能である環境に配慮した船舶を提供する。
【0030】
また、本発明は、既存の燃料供給システムを最大限に利用し、温室効果ガスの削減量の不足分を、アンモニア燃料を利用して削減させるため、既存の燃料供給システムを全面的に改編することなく、船舶の温室効果ガスを削減するための追加投資費用や空間を最小限に抑えることができる。
【0031】
さらに、本発明は、SCR反応に必要なアンモニアと、エンジンの燃料として供給されるアンモニアとを貯蔵及び供給するシステムを統合構築することにより、アンモニア貯蔵/供給システムのCAPEXが低減し、船舶の空間使用率が増加する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】船舶の温室効果ガスの削減において、2050年までの見通しを示す図であり、(a)は船舶の燃料変化の見通しを示し、(b)は船舶のエネルギー変換の見通しを示す。
図2】本発明の第1実施形態に係る船舶の燃料供給システムを示す図であり、船舶のエンジンがオイルエンジンである実施形態を示す。
図3】本発明の第1実施形態に係る船舶の燃料供給システムを示す図であり、船舶のエンジンがガスエンジンである実施形態を示す。
図4】本発明の第2実施形態に係る船舶の燃料供給システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明と本発明の動作上の利点及び本発明の実施によって達成される目的について、本発明の実施形態を例示する添付図面及び添付図面に記載された内容を参照して説明する。
【0034】
以下、添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明することにより、本発明を詳細に説明する。各図面に提示する同一の参照符号は、同じ部材を表す。
【0035】
従来、使用される船舶燃料として、HFO(High sulfur Feul Oil),LSFO(Low Sulphur Fuel Oil),ULSFO(Ultra-Low Sulphur Fuel Oil),MGO(Marine Gas Oil),LNG(Liquefied Natural Gas),LPG(Liquefied Petroleum Gas),LEG(Liquefied Ethylene Gas),MeOH(methanol),DME(dimethyl ether)などがある。
【0036】
このような既存燃料は、化石燃料を基にした燃料であり、燃焼時に、CxHy+zO→xCO+(y/2)HOの反応式で燃焼するため、船舶における温室効果ガスの排出規制に対応が困難である。
【0037】
本発明は、2050年までの主要な時期毎に、段階的に強化されている船舶の温室効果ガス規定を遵守できるように、上述した既存燃料とアンモニア燃料とを、選択的にまたは混合して、船舶の推進エンジン及び発電エンジンの燃料として供給する、燃料供給システムを提供する。
【0038】
アンモニアは無炭素燃料であり、燃焼反応時に窒素と水のみが生成され、二酸化炭素が発生しないため(反応式:4NH+3O→2N+6HO)、船舶の温室効果ガスの排出規制に対応が可能である。
【0039】
図2及び図3は、本発明の第1実施形態に係る船舶の燃料供給システムを示す図である。
【0040】
図2及び図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、船舶のエンジンEに燃料として供給される第1燃料を貯蔵する燃料貯蔵タンク10と、船舶のエンジンEに燃料として供給されるアンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵タンク20と、エンジンEから排気ガスが排出される排気ガス排出ラインEL上に設置される温室効果ガス分析器30とを備える。この温室効果ガス分析器30により、排気ガス中に含まれる温室効果ガスが測定される。
【0041】
本実施例では、エンジンEは、船舶の推進のためのメインエンジンM/Eと発電エンジンG/Eとの両方を備える。
【0042】
燃料貯蔵タンク10に貯蔵される第1燃料は、上述したHFO,LSFO,ULSFO,MGO,MeOH,LNG,LPG,LEG,DMEなどの既存燃料である。
【0043】
ここで、図2に示す実施形態は、船舶のエンジンEが常温で液体状態である燃料を使用するオイルエンジン(oil engine)である場合に適用される。したがって、この場合の第1燃料であるHFO,LSFO,ULSFO,MGO,MeOHなどは、常温で液体状態である。
【0044】
図2に示す実施形態の燃料貯蔵タンク10で貯蔵される第1燃料は、HFO,LSFO,ULSFO,MGO,MeOHのうちのいずれか1つであり、液体状態で燃料貯蔵タンク10に貯蔵される。
【0045】
また、図3に示す実施形態は、船舶のエンジンEが常温で気体状態である燃料を使用するガスエンジン(gas engine)である場合に適用される。したがって、この場合の第1燃料であるLNG,LPG,LEG,DMEなどは、常温で気体状態である。
【0046】
図3に示す実施形態の燃料貯蔵タンク10に貯蔵される第1燃料は、LNG,LPG,LEG,DMEのうちのいずれか1つであり、液体状態で燃料貯蔵タンク10に貯蔵される。この場合、燃料貯蔵タンク10は、内部の液体状態の燃料が気化することを防止するため、断熱及び密封処理したタンクである。
【0047】
また、図3に示す実施形態では、液体状態の燃料をエンジンEで使用できるように強制気化させる気化器11と、気化された燃料をエンジンEに適した温度まで調節するヒーター12とをさらに備える。
【0048】
図2及び図3に示す本発明の第1実施形態では、アンモニア貯蔵タンク20でアンモニアが貯蔵される。アンモニアは、アンモニア水の液体状態で貯蔵される。一方、本実施形態では、アンモニアそのものを貯蔵せずに、尿素(Urea)を貯蔵して、必要に応じて尿素を加水分解して、生成されたアンモニアを使用する方式を採用することもできる。
【0049】
本実施形態に係る燃料供給システムは、燃料貯蔵タンク10で貯蔵される第1燃料とアンモニア貯蔵タンク20で貯蔵されるアンモニアとを、エンジンEの燃料として使用することができる。この時、第1燃料及びアンモニアは、エンジンEに選択的に供給されるか、または同時に供給される。
【0050】
すなわち、本実施形態におけるエンジンEは、燃料貯蔵タンク10から第1燃料のみが供給されて駆動されるか、アンモニア貯蔵タンク20に貯蔵されるアンモニア燃料のみが供給されて駆動されるか、または第1燃料及びアンモニア燃料が同時に供給されて、混合燃料により駆動される。
【0051】
本実施形態に係る燃料供給システムは、第1燃料のみをエンジンEの燃料として供給する「第1燃料供給モード」、アンモニア燃料のみをエンジンEの燃料として供給する「アンモニア供給モード」、第1燃料及びアンモニアを混合した混合燃料をエンジンEの燃料として供給する「混合燃料供給モード」のうちいずれか1つの運転モードで運転することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る燃料供給システムは、船舶が運航する地域に応じて上記3つの運転モードのうち、いずれか1つを選択して運転することができる。
【0053】
具体的に、ECA(Emission Control Area)区間では、既存燃料(第1燃料)及びアンモニアを混合した燃料を使用する「混合燃料供給モード」、Global区間では、既存燃料(第1燃料)のみを使用する「第1燃料供給モード」、環境規制が特に厳しい地域(例えば、フィヨルド海岸や北極などの手付かずの海域)ではアンモニア燃料のみを使用する「アンモニア供給モード」で運転する。
【0054】
しかし、上記のような区分は例示に過ぎず、本実施形態に係る燃料供給システムの運転モードは、運航地域によって必ず決まるものではない。排気ガス中の温室効果ガスを低減させる必要性が生じた場合には、運航地域に関係なく、運転モードを変更して運転することができる。
【0055】
燃料貯蔵タンク10とアンモニア貯蔵タンク20とは、それぞれの供給ラインL1,L2を介してエンジンEに連結される。第1燃料供給ラインL1とアンモニア供給ラインL2とには、第1燃料とアンモニアとの供給量を調節する制御バルブV1,V2がそれぞれ設置される。また、アンモニア供給ラインL2上には、アンモニアをエンジンEに適した温度まで調節するヒーター21が設置される。
【0056】
本実施形態に係る燃料供給システムが「第1燃料供給モード」で運転する場合には、第1制御バルブV1が開放され、第2制御バルブV2は閉鎖される。一方、「アンモニア供給モード」で運転される場合には、第1制御バルブV1は閉鎖され、第2制御バルブV2が開放される。
【0057】
また、本実施形態に係る燃料供給システムを「混合燃料供給モード」で運転する場合、第1制御バルブV1と第2制御バルブV2との開度が調節されて、第1燃料及びアンモニアの混合比率が調節される。
【0058】
本実施形態に係る燃料供給システムは、温室効果ガス分析器30により検出された数値に基づいて、運転モードを制御する。したがって、第1及び第2制御バルブV1,V2の制御は、温室効果ガス分析器30によって検出された数値に基づいて行われると言える。
【0059】
また、第1燃料及びアンモニアの混合比率は、温室効果ガス分析器30によって決定される。温室効果ガス分析器30は、エンジンEから排気ガスが排出される排気ガス排出ラインEL上に設置される。温室効果ガス分析器30は、排気ガス中に含まれる温室効果ガスを検出し、検出された数値に基づいて第1及び第2制御バルブV1,V2の開度を制御して、第1燃料及びアンモニアの混合比率を調節する。
【0060】
「混合燃料供給モード」で第1燃料供給ラインL1を介して供給される第1燃料と、アンモニア供給ラインL2を介して供給されるアンモニアとは、エンジンEに供給される前、またはエンジンEに供給された後で燃焼される前に、均一に混合される過程を経由する。
【0061】
アンモニアと混合された燃料は、アンモニアと代替された分だけ、二酸化炭素の発生量を減らすことができる。例えば、既存燃料(第1燃料)の70%をアンモニアで代替する場合、燃焼後に発生する二酸化炭素量は、既存燃料(第1燃料)のみを使用した場合に比べて70%減少させることができる。既存燃料(第1燃料)及びアンモニアが混合された燃料は、燃焼時に、CxHy+4NH+(3+z)O→xCO+2N+(6+y/2)HOの反応式で燃焼する。
【0062】
図4は、本発明の第2実施形態に係る船舶の燃料供給システムを示す図である。
【0063】
図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る船舶の燃料供給システムは、上述した第1実施形態に係る船舶の燃料供給システムと同じ構成を備え、エンジンEから排気ガスが排出される排気ガス排出ラインEL上に設置されるSCR(Selective Catalyst Reduction)装置をさらに備える。SCR装置は、排気ガス中に含まれる大気汚染物質を低減させる。
【0064】
図4は、図2を基本構成として、追加装置が設けられるように示す。一方、エンジンEがガスエンジンである場合には、図3で示すように、燃料貯蔵タンク10とエンジンEとの間に気化器11及びヒーター12をさらに備える。
【0065】
SCR装置40は、特に、窒素酸化物(NOx)を浄化するためのものであり、200~450℃の排気ガスを還元剤と共に触媒層を通過させて、窒素酸化物を窒素と水とに変換して除去する装置である。
【0066】
排気ガス排出ラインEL上でエンジンEの下流には、第1NOx分析器51が設置される。第1NOx分析器51は、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の濃度を検出する。第1NOx分析器51で検出された数値を分析して、窒素酸化物の低減が必要である場合には、排気ガスをSCR装置40側に送る。一方、窒素酸化物の低減が必要でない場合には、排気ガスを大気中にそのまま排出(ALライン)する。
【0067】
また、SCR装置40の下流には、第2NOx分析器52が設置される。第2NOx分析器52は、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の濃度を検出する。第2NOx分析器52で検出された数値を分析し、排気ガス中に含まれる窒素酸化物が許容値以下であれば、大気中に排出するように制御する。一方、窒素酸化物が許容値以上であれば、排気ガスをSCR装置40に戻して(BLライン)、窒素酸化物の低減処理が再び行われる。
【0068】
通常、SCR装置に供給される還元剤としては、アンモニアが主に使用される。そのため、船舶には、アンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵タンクや加水分解によってアンモニアを生成する尿素貯蔵タンクが設けられる。
【0069】
本実施例のSCR装置40に供給されるアンモニアを貯蔵する装置として、アンモニア貯蔵タンク20を使用することができる。
【0070】
すなわち、本実施例のアンモニア貯蔵タンク20に貯蔵されるアンモニアは、上述したように、エンジンEに供給される燃料として使用されると共に、SCR装置40に供給される還元剤としても使用される。
【0071】
アンモニア貯蔵タンク20で貯蔵されるアンモニアは、第3供給ラインL3を介してSCR装置40に供給される。第3供給ラインL3上には、アンモニアをSCR装置40に適した温度まで調節するヒーター22と、アンモニアの供給量を調節する第3制御バルブV3とが設置される。
【0072】
第3制御バルブV3は、第1NOx分析器51と第2NOx分析器52とで検出された数値に基づいて、開閉または開度が調節される。
【0073】
本実施形態に係る燃料供給システムは、アンモニア貯蔵タンク20に貯蔵されるアンモニアを、必要に応じて、エンジンEまたはSCR装置40に、選択的または同時に供給することができる。
【0074】
具体的には、ECA(Emission Control Area)区間や環境規制が特に厳しい地域(例えば、フィヨルド海岸や北極などの手付かずの海域)では、アンモニアをSCR装置40に供給する。一方、Global区間では、SCR装置40にアンモニアを供給しないようにすることもできる。
【0075】
しかし、上記のような区分も例示に過ぎず、Global区間でも排気ガス中の窒素酸化物を低減させる必要性が生じた場合には、当然に、SCR装置40にアンモニアを供給することができる。
【0076】
船舶の運航地域によるエンジンEとSCR装置40の供給物を、下記の表1にまとめた。
【0077】
【表1】
上述したように、本発明は、既存燃料とアンモニア燃料とを、選択的にまたは混合して、船舶のエンジンに供給する燃料供給システムを備える。そして、船舶で温室効果ガスの低減が必要な場合には、既存燃料とアンモニアを混合するか、またはアンモニアのみをエンジンの燃料として供給することで、船舶から排出される温室効果ガスを簡単に低減させることができる。
【0078】
すなわち、本発明は、既存燃料とアンモニア燃料とを、選択的にまたは混合して、船舶の推進エンジンや発電エンジンの燃料として供給することで、エンジンから排出される温室効果ガスの低減率が向上する。これにより、今後、強化される船舶の温室ガス規制に対応可能な環境に配慮した船舶を提供する。
【0079】
また、本発明は、既存の燃料供給システムを最大限に利用し、温室効果ガスの削減量の不足分を、アンモニア燃料を利用して低減させることができる。したがって、本発明は、今後、強化される船舶の温室効果ガス規定に対応するために、既存の燃料供給システムを全面的に改編することなく、既存の燃料供給システムにアンモニアの貯蔵及び供給するシステムを追加するだけで良いため、船舶の温室効果ガスを削減するための追加投資費用や空間を最小限に抑えることができる。
【0080】
さらに、従来は、SCR装置をNOx排出規制地域でのみ使用し、その他の地域では使用しなかったため、SCR装置に供給される還元剤の貯蔵/供給を担うシステムの利用率が低かった。しかし、本発明では、SCR反応に必要なアンモニアと、エンジンの燃料として供給されるアンモニアとを、同時に貯蔵して供給するシステムを構築することで、アンモニア貯蔵/供給システムのCAPEXが低減し、船舶の空間使用率が増加する効果がある。
【0081】
本発明は、上記記載された実施例に限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲を逸脱せず様々な修正及び変更が可能であることは、この技術の分野における通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、そのような修正または変更例は、本発明の特許請求の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】