(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】融合構築物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20220603BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220603BHJP
C07K 7/04 20060101ALI20220603BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220603BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220603BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220603BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220603BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220603BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220603BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220603BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220603BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20220603BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220603BHJP
A61K 39/44 20060101ALI20220603BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220603BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220603BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220603BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C07K7/04
C12N15/13
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/02
A61P21/00
A61P43/00 111
A61K47/64
A61K47/62
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/44
A61K38/02
C07K16/18
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560384
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020026349
(87)【国際公開番号】W WO2020206093
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441102
【氏名又は名称】ビー - ポータル バイオロジクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイン、ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA41
4C084BA42
4C084BA44
4C084DC50
4C084NA13
4C084ZA021
4C084ZA151
4C084ZA161
4C084ZA221
4C084ZA941
4C084ZC411
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB50
4C085CC03
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
融合構築物が説明される。融合構築物は、ペプチド又はタンパク質(例えば、抗体)に融合される、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28のペプチドを含有する。ペプチド又はタンパク質と比較すると、融合構築物はBBBを通過する向上した透過性を呈し、後管腔表面取込み後に、BBBの反管腔側表面上にて放出される。融合構築物は、疾患の創薬、診断、予防及び処置に使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
M-L-C
(式I)
の融合構築物であって、式中、Mは抗体、プロネクチン、アフィボディー、アフィリン、アンチカリン、アトリマー、アビマー、DARPイン、フィノマー、二重環状ペプチド、及び他の非抗体タンパク質からなる群から選択され、
Lは任意のリンカーであり、
Cは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドである、融合構築物。
【請求項2】
Mが抗体である、請求項1に記載の融合構築物。
【請求項3】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号39のペプチドのアミノ末端が、前記抗体の軽鎖又は重鎖のカルボキシル末端又はアミノ末端のいずれかに融合される、請求項2に記載の融合構築物。
【請求項4】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28のペプチドのアミノ末端が、前記抗体の前記重鎖の前記カルボキシル末端に融合される、請求項3に記載の融合構築物。
【請求項5】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号39のペプチドのアミノ末端が、前記抗体の軽鎖又は重鎖のカルボキシル末端及びアミノ末端の両方に融合される、請求項2に記載の融合構築物。
【請求項6】
前記抗体が、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)により表されるCDR1、配列IRSKSNNYAT(配列番号8)により表されるCDR2、及び配列VGGGDF(配列番号9)により表されるCDR3を含む、重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)により表されるCDR1、配列GAF(配列番号11)により表されるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)により表されるCDR3を含む、軽鎖可変領域を含む、請求項2に記載の融合構築物。
【請求項7】
前記抗体が、1×10
-9~1×10
-12であるタウC3についての結合親和性(KD)、及び1×10
-3以下(例えば、1×10
-4~1×10
-2 s
-1)であるオフレート(K
d)、並びに1×10
-4~1×10
-8Mである配列番号1についての結合親和性(KD)を有するか、又は配列番号1との検出可能な結合を有さない、請求項6に記載の融合構築物。
【請求項8】
前記抗体が、配列番号1との検出可能な結合を示さない、請求項7に記載の融合構築物。
【請求項10】
前記融合構築物がタウオパチーの処置用である、請求項1~8のいずれか一項に記載の融合構築物。
【請求項11】
前記タウオパチーが、ピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭葉変性症、前頭側頭型認知症、外傷性脳損傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症からなる群から選択される、請求項10に記載の融合構築物。
【請求項12】
前記タウオパチーがアルツハイマー病である、請求項11に記載の融合構築物
【請求項13】
血液脳関門(BBB)を横断してペプチドを送達する方法であって、ペプチドのカルボキシル末端を、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有するペプチドのアミノ末端に、直接、又はリンカーを介して融合することと、前記BBBと接触した状態で、結果として得られた融合構築物を配置することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記結果として得られた融合構築物が、請求項1~8のいずれか一項に記載の構築物である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照として本明細書に組み入れられる2019年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/829,776号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの抗体が、中枢神経系(CNS)障害を処置するために開発されてきた。ただし現在まで、全身投与後に脳で有効性を示す、米国食品医薬品局により認可されたモノクローナル抗体は存在していない。主な理由は、治療用モノクローナル抗体及び他の組換えタンパク質治療の生物学的活性が、血液脳関門(「BBB」)を通過するその能力により制限されているという事実に起因する可能性が高い。
【0003】
「血液脳関門」は、脳の微小血管系固有の特性を説明するために使用される用語である。脳血管系は連続した非有窓性血管であるが、血液と脳の間の分子、イオン及び細胞の移動を厳格に調節する一連の追加特性をも含有する。この厳重に拘束する関門能力により、BBB血管内皮細胞はCNS恒常性を厳格に調節する。これは、適切な神経機能を可能とし、並びに毒物、病原体、炎症、傷害、及び疾患からCNSを保護する上で重要である。ただし、BBBの拘束性質はまた、CNSへの薬物送達、特に抗体といった大きなタンパク質にとっては障壁にもなる。通常、末梢投与後には、IgGの注入投与量の0.1%未満が脳に到達する。つまり、治療応答を生み出すために、脳内で十分な濃度の抗体を得ることは困難である。薬理学的に適切なレベルで脳を透過可能である抗体の開発は、多くのCNS障害の処置にとっては重要な治療目標である。
【0004】
抗体を含む様々な種類の生物製剤への脳のばく露を向上させ、患者の入院を必要とし、高度に侵襲的で感染症を容易に引き起こし得る、脳脊髄液体への直接注射の必要を回避するために様々な方法が発明されてきた。最も直接的なアプローチは、傍細胞通過を可能とする密接結合を破壊することである。しかしこのアプローチは、治療薬だけではなく、脳環境にとって害となり得る他の血液成分にとってもまた侵入を可能とするため、大きな分子の侵入にとっては選択できない手技である。同様のアプローチは、マンニトール、脳血管内皮細胞の縮みを引き起こす浸透物質を使用することである。しかし、この薬剤は迅速で広範なBBB開放を誘発し、循環器系の毒性があると考えられる成分に脳組織をばく露する。別の同様のアプローチは、集束超音波の使用である。これは、特定の脳領域でBBBの透過性を過渡的に向上させる方法である。ただし、これもまたBBBの非選択的交差を可能とし、そのために害があると考えられる血液由来の物質にばく露することになる。
【0005】
モノクローナル抗体(「mAb」)といった巨大分子は、脳血管内皮細胞を横断する3種類の小胞を利用可能である。これはすなわち、(i)クラスリン被覆小胞、(ii)脂質ラフトから生成されるカベオラドメイン、及び(iii)マクロ飲作用小胞である。クラスリン被覆小胞を主に使用する大きな分子のトランスサイトーシスに関して、受容体が、脳血管内皮細胞を横断した取込み及び輸送に必要とされる。このプロセスは、「受容体媒介性トランスサイトーシス」(「RMT」)と呼ばれている。これは、結合時に特異的な受容体によって協調されることから、カーゴ送達にて選択的である、唯一公知の小胞系である。この固有の選択性は非常に有利な点であり、これにより、BBBを横断して大きな分子を輸送しようとする大半の試みはRMTに基づくアプローチを使用してきた。例えば、トランスフェリン含有ナノ粒子又は受容体に対する腕及び治療標的に対する第2の腕から構成される、二重特異性抗体を使用することによるアプローチである。
【0006】
ジスルフィド結合により共に結合される2つ以上のポリペプチド鎖から構成される多量体タンパク質のように、抗体はRMT、及びBBBを介する輸送に対して特別な課題を提示する。
【0007】
RMTを使用する二重特異性抗体は、脳実質に到達するmAbの量において、比較的わずかな増加(大半の場合、注入量の約1%の量)をもたらす。更に、一価の抗体は治療標的に対する有効性を低下させる可能性がある。加えて、二重特異性抗体は開発の複雑性及び製造コストを著しく増加させる。受容体に対する抗体リガンド(すなわち、二重特異性抗体の受容体に対する腕)を必要とせず、天然リガンドの結合、例えば、トランスフェリン受容体に対するトランスフェリンの結合に干渉しない方法を有することが望ましい。これは、トランスフェリンの場合には鉄の輸送といった受容体の生理学的輸送機能に干渉することが理由である。
【0008】
重要なことには、細胞及びインビボデータに基づく論文は、抗体のアビディティー(Wiley et al.,2013)、親和性(Bien-Ly et al.,2014)及び原子価(Niewoehner et al.,2014)が脳血管内皮細胞を横断する輸送効率において重大な効果を有するという、BBB受容体結合の方法の重要性を説明する。データはまた、内在リガンド結合は、異なるエピトープに結合し得る遺伝子操作されたmAbと比較して受容体に様々に影響する可能性があることを示している。これらの論文は、トランスサイトーシス受容体との係合が細胞内選別に直接影響を及ぼし、特定の形式では、脳血管内皮細胞のエンドソーム系内の非生産的な輸送及び捕捉をもたらすという強力な証拠を提供する。この非生産的なBBBの交差は、伝統的なmAbを使用して説明される(Moos and Morgan,2001;Manich et al.,2013)。したがって、BBB内腔でのリガンドと受容体間の初期相互作用は、インターナライズされた複合体の運命を決定する。こうした知見は、脳血管内皮細胞を通り、脳の実質空間へとうまく局在化される構築物を生成するために、リガンド-カーゴ受容体複合体の細胞内輸送を理解する必要性に焦点をあてる。
【0009】
巨大分子トランスサイトーシスを研究する際には、BBBは「ブラックボックス」として捉えられてきており、脳血管内皮細胞を横断する細胞内輸送を理解しようとする点ではほとんど関心を持たれてはこなかった。したがって、脳血管内皮細胞におけるトランスサイトーシス経路を介した細胞内輸送の制御は、未だにその多くが明らかにされていないままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
BBBを横断してタンパク質を送達する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
BBBを横断してペプチドを送達する方法を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0012】
BBBを横断して抗体を送達する方法を提供することが、本発明の追加の目的である。
【0013】
BBBを横断して非抗体タンパク質を送達する方法を提供することが、本発明の追加の目的である。
【0014】
疾患の創薬、診断、予防及び処置における使用について、融合構築物を提供することが、本発明の追加の目的である。
【0015】
トランスフェリンと競合せず(したがって、鉄輸送に干渉してはならない)、二重特異性抗体の開発及び製造に関連する複雑性及びコストを回避する合成融合ペプチドを提供することが、本発明の追加の目的である。
【0016】
カルボキシル末端又はアミノ末端において、アミノ酸配列THRPPMWSPVWP(配列番号2)、アミノ酸配列HRPPMWSPVWP(配列番号3)、アミノ酸配列THRPPMWSPVW(配列番号4)、アミノ酸配列HRPPMWSPVW(配列番号5)、又はアミノ酸配列HAIYPRH(配列番号28)に融合されるペプチド又はタンパク質(例えば、抗体)を提供することが、本発明の更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的及び他の目的の助長に関して、本発明は、カルボキシル末端又はアミノ末端においてアミノ酸配列THRPPMWSPVWP(配列番号2)、アミノ酸配列HRPPMWSPVWP(配列番号3)、アミノ酸配列THRPPMWSPVW(配列番号4)、アミノ酸配列HRPPMWSPVW(配列番号5)、又はアミノ酸配列HAIYPRH(配列番号28)を含有又はこれらからなるペプチドに、直接、又はリンカーを介して、融合されるペプチド又はタンパク質(例えば、抗体)を含む融合構築物に部分的に関する。アミノ酸配列THRPPMWSPVWP(配列番号2)、アミノ酸配列HRPPMWSPVWP(配列番号3)、アミノ酸配列THRPPMWSPVW(配列番号4)、アミノ酸配列HRPPMWSPVW(配列番号5)、又はアミノ酸配列HAIYPRH(配列番号28)は、BBBを介したペプチド又はタンパク質の輸送、及び/又はBBBの反管腔側側面にてペプチド又はタンパク質の放出を調節する。非修飾ペプチド又はタンパク質と比較すると、融合構築物は、(i)血管内皮エンドソーム-リソソーム系において捕捉を逃れることができる、若しくはより低速で分解することができる、(ii)向上したBBB透過性を有することができる、及び/又は(iii)向上した脳貯留を有することができる。融合構築物は、疾患の創薬、診断、予防及び処置に使用されてもよい。融合構築物はまた、診断アッセイにて使用されてもよく、及び/又はキットの一部として含まれてもよい。
【0018】
ほとんど取り込まれず、次いでリソソーム系により迅速に除去される非修飾ペプチド又はタンパク質と比較すると、融合構築物は、リソソーム系における捕捉及び/又は分解を逃れ、後管腔表面取込み後に反管腔側表面上にて放出される。同等の投与量の非修飾ペプチド又はタンパク質と比較すると、例えばリソソームによる融合構築物の除去又は捕捉が減少することから、融合構築物はしたがって、BBBに融合構築物をばく露、及び/又は融合構築物により長く(例えば、少なくとも約10%長く)ばく露してから、脳内において(例えば、約3時間、6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間などで)、診断抗体及び治療抗体を含むより高濃度のペプチド又はタンパク質を提供することができる。したがって、融合構築物は非修飾ペプチド又はタンパク質よりも治療有効投与量が少量であり得る。
【0019】
加えて、非修飾ペプチド又はタンパク質と比較すると、本発明の融合構築物は、エンドソーム-リソソーム系にて実質的に捕捉されることなく、BBBの反管腔側表面上にて放出される。
【0020】
本発明は、式I:
M-L-C
(式I)
の融合構築物に特に関し、
式中、Mはペプチド又はタンパク質であり、
Lは任意のリンカーであり、
Cは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドである。Mは、直接又はLを介して、そのカルボキシル末端又はアミノ末端に、又はその両方に、2価又は1価のいずれかで、Cへと融合されてもよい。Mは、例えば、約2kDa~約30kDa、約40kDa~約900kDa、約50kDa~約800kDa、約60kDa~約700KDa、約70kDa~約600kDa、約80kDa~約500kDa、約90kDa~約400kDa、約100kDa~約350kDa、約100kDa~約300kDa、約100kDa~約250kDa、又は約100kDa~約200kDaの分子量を有してもよい。Lは、例えば配列GGGS(配列番号6)のペプチドであってよく、又はこれを含まなくてもよい。融合構築物は好ましくは、(i)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、血管内皮エンドソーム-リソソーム系において、捕捉を回避し、低速で分解し、及び/又は(ii)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、向上した血液脳関門透過性を有し、及び/又は(iii)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、向上した脳貯留を有する。特定の実施形態において、Mは例えば、抗体又は完全長タウタンパク質又は翻訳後に修飾されるタウタンパク質を標的とする非抗体タンパク質であってよく、抗体及び非抗体タンパク質は治療用であり、例えばタウオパチー(例えば、アルツハイマー病(AD)、ピック病、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、前頭側頭型認知症(FTD)、パーキンソン病、外傷性脳損傷(TBI)など)、タウ病態に関連する別の神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症)、並びに加齢関連性認知障害の処置、又は診断に使用されてもよい。また、インビボ及び/又はインビトロアッセイ及びキットに使用されてもよい。
【0021】
追加的な態様において、本発明は式I:
M-L-C
(式I)
の融合構築物に関し、
式中、Mは抗体、アドネクチン、プロネクチン、アフィボディー、アフィリン、アンチカリン、アトリマー、アビマー、DARPイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、β-ヘアピン模倣物、二重環状ペプチド、及び他の非抗体タンパク質からなる群から選択され、Lは存在しない、又は任意のリンカー(例えば、配列GGGS(配列番号6)のペプチド)であり、Cは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドである。融合構築物は好ましくは、(i)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、血管内皮エンドソーム-リソソーム系において、捕捉を回避し、低速で分解し、及び/又は(ii)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、向上した血液脳関門透過性を有し、及び/又は(iii)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、上昇した脳貯留を有する。Mは、例えば抗体であってよく、ペプチド配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号39のアミノ末端は、カルボキシル末端、又は抗体の軽鎖及び/又は重鎖のアミノ末端のいずれかに、2価又は1価でのいずれかで、直接融合される。換言すると、ペプチド配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28のアミノ末端は、抗体の重鎖のカルボキシル末端に融合され、又はペプチド配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号39のアミノ末端は、抗体の軽鎖又は重鎖のカルボキシル末端及びアミノ末端の両方に、2価又は1価のいずれかで融合されてもよい。抗体は、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)により表されるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)により表されるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)により表されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)により表されるCDR1、配列GAF(配列番号11)により表されるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)により表されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含んでもよい。したがって、抗体は、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)と同一であるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)と同一であるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)と同一であるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)と同一であるCDR1、配列GAF(配列番号11)と同一であるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)と同一であるCDR3を含む軽鎖可変領域を含んでもよい。抗体はまた、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)と相同であるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)と相同であるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)と相同であるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)と相同であるCDR1、配列GAF(配列番号11)と相同であるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)と相同であるCDR3を含む軽鎖可変領域を含んでもよい。抗体は、1×10-9~1×10-12であるタウC3についての結合親和性(KD)、及び1×10-3以下(例えば、1×10-4~1×10-2 s-1)であるオフレート(Kd)、及び1×10-4~1×10-8Mである配列番号1についての結合親和性(KD)を有してもよく、又は配列番号1との検出可能な結合を有さなくてもよい。特定の実施形態において、抗体は配列番号1との検出可能な結合を示さない。融合構築物は、疾患の創薬、診断、予防及び処置に使用されてもよい。特定の実施形態において、Cは交差種反応性を有し、例えばヒト、サル及びマウスを含む、異なる種において融合構築物のトランスサイトーシスを促進させる。これらの実施形態において、異なる種における融合構築物の交差反応性により、例えば動物モデルにおける薬物動態(PK)研究及び薬力学的(PD)研究での融合構築物の使用、並びにヒトに対する動物モデルにおけるこの研究結果のその後の外挿が可能となる。
【0022】
本発明は式II:
A-L-C
(式II)
の融合構築物に特に関し、
式中、Aは抗体であり、
Lは任意のリンカーであり、
Cは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドである。Aは、1価で、又は2価のいずれかで、直接又はLを介して、軽鎖、重鎖又はその両方のカルボキシル末端又はアミノ末端でCに融合してもよい。Lは例えば、配列番号6のペプチドであってもよい。抗体は例えば、約40kDa~約900kDa、約50kDa~約800kDa、約60kDa~約700KDa、約70kDa~約600kDa、約80kDa~約500kDa、約90kDa~約400kDa、約100kDa~約350kDa、約100kDa~約300kDa、約100kDa~約250kDa、又は約100kDa~約200kDaの分子量を有してもよい。融合構築物は好ましくは、(i)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、血管内皮エンドソーム-リソソーム系において、捕捉を回避し、低速で分解し、及び/又は(ii)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、上昇した血液脳関門透過性を有し、及び/又は(iii)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、上昇した脳貯留を有する。ほとんど取り込まれず、次いでリソソーム系により補足され得る非修飾抗体と比較すると、融合構築物は、リソソーム系における捕捉及び/又は分解を逃れ、後管腔表面取込み後に反管腔側表面上にて放出される。同等の投与量の非修飾ペプチド又はタンパク質と比較すると、例えばリソソームによる融合構築物の除去又は捕捉が減少することから、融合構築物はしたがって、BBBに融合構築物をばく露、及び/又は融合構築物により長く(例えば、少なくとも約10%長く)ばく露してから、脳内において(例えば、約3時間、6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間などで)、より高濃度の抗体を提供する。したがって、融合構築物は非修飾抗体よりも治療有効投与量が少量であり得る。
【0023】
本発明は、式III:
T-L-C
(式III)
の融合構築物に更に関し、
式中、Tは抗タウC3抗体であり、
Lは任意のリンカーであり、Cは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドである。Lは例えば、配列番号6のペプチドであってもよい。ペプチド配列番号2、配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のアミノ末端は、直接又はLを介して、Tの重鎖若しくは軽鎖、又はTの両方のカルボキシル末端又はアミノ末端に融合されてもよい。いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有するペプチドのアミノ末端は、抗タウC3抗体の重鎖のカルボキシル末端に融合される。融合構築物は好ましくは、抗タウC3抗体の結合特異性を保持する(すなわち、10-9M以上のタウC3に対する平衡定数KDを有し、これはFLT(配列番号1)に対する抗体の平衡定数KDよりも約2~約3桁高く、好ましくはFLT(配列番号1)よりも約1000倍高い)。抗タウC3抗体と比較すると、融合構築物はBBBを通過する向上した透過性を有してもよく、抗タウC3抗体と同等の投与量よりも、例えばリソソームによる融合構築物の除去の減少により、脳において高濃度かつ効果の持続性を提供する。融合構築物は好ましくは、(i)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、血管内皮エンドソーム-リソソーム系において、低速で分解し、及び/又は(ii)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、向上した血液脳関門透過性を有し、及び/又は(iii)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号28を含有若しくはこれらからなるペプチドに結合されないMに比べ、向上した脳貯留を有する。好ましい実施形態において、抗体は約40℃~約67℃の温度で10分間供された後、結合能を保持し、また血清(例えばマウス)における37℃で21日間のインキュベーション後、結合能を保持する。抗タウC3抗体は、50mg/mL以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml、約55mg/ml~約180mg/ml、約55mg/ml~約170mg/ml、約55mg/ml~約150mg/ml、約55mg/ml~約140mg/ml、約55mg/ml~約130mg/ml、又は約100mg/ml~約200mg/ml、約100mg/ml~約180mg/ml、約100mg/ml~約170mg/ml、約100mg/ml~約150mg/ml、約100mg/ml~約140mg/ml、又は約100mg/ml~約130mg/ml)の水溶性を有してもよい。
【0024】
特定の実施形態において、Tは、2020年4月2日に出願された米国特許出願番号16/838,235号に記載の抗体である。これらの実施形態の一部において、抗体は、特に毒性があり、核形成し、プレタングルであり、細胞内及び優先的に分泌され、初期アルツハイマー病及び神経原線維変化の進行が全体的に見られる患者において、認知機能低下と高度に相関する、アスパルタート421にて終端するC末端切断型タウ断片であるタウC3を標的とする、極度に効力の高いヒト化されたmAbである。タウC3は、完全長タウ(FLT)(2N4R)(配列番号1)と比較すると低い存在量で存在するが、アルツハイマー病の脳の抽出物における大部分のタウ播種反応に寄与する、不釣合いに大きな病理学的効果を発揮することが示された。TBL-100のマウス前駆体(すなわち、本明細書に参照として組み入れられる、Nicholls,S.B.,S.L.DeVos,C.Commins,C.Nobuhara,R.E.Bennett,D.L.Corjuc,E.Maury,et al.2017.「タウC3抗体の特徴及びタウ伝播をブロックするその能力の証明(Characterization of TauC3 antibody and demonstration of its potential to block tau propagation)」 PLoS ONE 12(5:e0177914.doi:10.1371/journal.pone.0177914にて特徴付けられる抗体)は、この活性をブロッキングすることを示し、アルツハイマー病の患者の脳においてタウ伝播を阻止する可能性を表した。
【0025】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体、又はその抗原結合断片は、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)により表されるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)により表されるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)により表されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)により表されるCDR1、配列GAF(配列番号11)により表されるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)により表されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。これらの実施形態の一部において、抗体は、1×10-9~1×10-12であるタウC3についての結合親和性(KD)、及び1×10-3以下(例えば、1×10-4~1×10-2 s-1)であるオフレート(Kd)、及び1×10-4~1×10-8Mである配列番号1についての結合親和性(KD)を有するか、又は配列番号1との検出可能な結合を有さない。
【0026】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)配列LVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTYAMNWVRQASGKGLEWVARIRSKS-NNYATYYAASVKGRFTISRDDSKSMAYLQMDSLKTEDTAVYYCVGGGDFWGQGTLVTVSS(配列番号13)又は配列番号13と相同である配列を含む、可変重鎖、及び
(b)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQEISVYLGWFQQKPGKAPKRLIYGAFKLQSGVPSRFSGSRSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQYVRYPWTFGGGTKVEIK(配列番号14)又は配列番号14に相同である配列、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQEISVYLGWYQQKPGKAPKRLIYGAFTLQSGVPSRFSGSRSGTEYTLTISSLQPEDFATYYCLQYVRYPWTFGGGTKVEIK(配列番号15)又は配列番号15に相同である配列、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQEISVYLGWYQQKPGKAPKRLIYGAFSLQSGVPSRFSGSRSGTEYTLTISSLQPEDFATYYCLQYVRYPWTFGGGTKVEIK(配列番号16)又は配列番号16に相同である配列、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQEISVYLGWFQQKPGKAPKRLIYGAFKLQSGVPSRFSGSRSGTEYTLTISSLQPEDFATYYCLQYVRYPWTFGGGTKVEIK(配列番号17)又は配列番号17に相同である配列、並びに
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQEISVYLSWFQQKPGKAIKRLIYGAFSLQSGVPSRFSGSRSGTEYTLTISSLQPEDFATYYCLQYVRYPWTFGGGTKVEIK(配列番号18)又は配列番号18に相同である配列、からなる群から選択される配列を含む可変軽鎖、を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される抗タウC3抗体は、配列番号13の可変重鎖(VH)ポリペプチド及び配列番号14、配列番号15、配列番号17、又は配列番号18の可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体、又はその抗原結合断片は、(a)配列番号7により表されるCDR1、配列番号8により表されるCDR2、及び配列番号9により表されるCDR3を含む可変重鎖(VH)ポリペプチドであって、配列番号13と少なくとも70%配列同一性を有する可変重鎖(VH)ポリペプチド、並びに(b)配列番号10により表されるCDR1、配列番号11により表されるCDR2、及び配列番号12により表されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)ポリペプチドであって配列番号14、配列番号15、配列番号17、又は配列番号18と少なくとも70%配列同一性を有する可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される抗タウC3抗体は、配列番号13と少なくとも75%配列同一性を有するVL鎖ポリペプチド、配列番号14、配列番号15、配列番号17、又は配列番号18と少なくとも75%配列同一性を有するVH鎖ポリペプチドを含む、ヒト化抗体である。
【0030】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される抗タウC3抗体は、配列番号13と少なくとも80%配列同一性を有するVL鎖ポリペプチド、配列番号14、配列番号15、配列番号17、又は配列番号18と少なくとも80%配列同一性を有するVH鎖ポリペプチドを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される抗タウC3抗体は、配列番号13と少なくとも85%配列同一性を有するVL鎖ポリペプチド、配列番号14,配列番号15、配列番号17、又は配列番号18と少なくとも85%配列同一性を有するVH鎖ポリペプチドを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される抗タウC3抗体は、配列番号13と少なくとも90%配列同一性を有するVL鎖ポリペプチド、配列番号14,配列番号15、配列番号17、又は配列番号18と少なくとも90%配列同一性を有するVH鎖ポリペプチドを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される抗タウC3抗体は、配列番号13と少なくとも95%配列同一性を有するVL鎖ポリペプチド、配列番号14,配列番号15、配列番号17、又は配列番号18と少なくとも95%配列同一性を有するVH鎖ポリペプチドを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体は、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)により表されるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)により表されるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)により表されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)により表されるCDR1、配列GAF(配列番号11)により表されるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)により表されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗体であり、これは1×10-10~1×10-12であるタウC3についての結合親和性(KD)、及び1×10-3以下(例えば、1×10-4~5.4×10-4又は5.5×10-4~1×10-3s-1)であるオフレート(Kd)、及び1×10-4~1×10-8Mである配列番号1についての結合親和性(KD)を有するか、又は配列番号1との検出可能な結合を有さない。
【0035】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体は、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)と相同であるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)と相同であるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)により表されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)と相同であるCDR1、配列GAF(配列番号11)と相同であるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)と相同であるCDR3を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗体であり、これは1×10-10~1×10-12であるタウC3についての結合親和性(KD)、及び1×10-3以下(例えば、1×10-4~5.4×10-4又は5.5×10-4~1×10-3s-1)であるオフレート(Kd)、及び1×10-4~1×10-8Mである配列番号1についての結合親和性(KD)を有するか、又は配列番号1との検出可能な結合を有さない。
【0036】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体は、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)と同一であるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)と同一であるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)と同一であるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)と同一であるCDR1、配列GAF(配列番号11)と同一であるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)と同一であるCDR3を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗体であり、これは1×10-10~1×10-12であるタウC3についての結合親和性(KD)、及び1×10-3以下(例えば、1×10-4~5.4×10-4又は5.5×10-4~1×10-3s-1)であるオフレート(Kd)、及び1×10-4~1×10-8Mである配列番号1についての結合親和性(KD)を有するか、又は配列番号1との検出可能な結合を有さない。
【0037】
いくつかの実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体は、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)により表されるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)により表されるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)により表されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)により表されるCDR1、配列GAF(配列番号11)により表されるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)により表されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含むキメラ抗体であり、これは1×10-10~1×10-12であるタウC3についての結合親和性(KD)、及び1×10-3以下(例えば、1×10-4~5.4×10-4又は5.5×10-4~1×10-3s-1)であるオフレート(Kd)、及び1×10-4~1×10-8Mである配列番号1についての結合親和性(KD)を有するか、又は配列番号1との検出可能な結合を有さない。
【0038】
抗タウC3抗体と比較すると、融合構築物はBBBを横断する透過性が向上し、並びに/又は1つ以上のリソソーム系及び/若しくはエンドソーム系による除去及び/若しくは分解が減少している。
【0039】
特定の実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体は、重鎖可変領域:
EVQVVESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFNWVRQAPGKGLEWVARFTISRDDSQSMVYLQMNNLKTEDTAMYYCVGWGQGTALTVSS(配列番号23)、
及び軽鎖可変領域:
DIQMTQSPSSLSASLGERVSLTCWFQQKPDGTIKRLIYGVPKRFSGSRSGSDYSLTISSLESEDFADYYCFGGGTKLEIK(配列番号29)を含む。
抗タウC3抗体と比較すると、融合構築物はBBBを横断する透過性が向上し、並びに/又は1つ以上のリソソーム系及び/若しくはエンドソーム系による除去及び/若しくは分解が減少している。
【0040】
特定の実施形態において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに融合される、抗タウC3抗体は、
GAGGTGCAGGTTGTTGAGTCTGGTGGAGGATTGGTGCAGCCTAAAGGGTCATTGAAACTCTCATGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAATACCTACGCCATGAACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGAAAGGGTTTGGAATGGGTTGCTCGCATAAGAAGTAAAAGTAATAATTATGCGACATATTATGCCGATTCAGTGAAAGACAGGTTCACCATCTCCAGAGATGATTCACAAAGCATGGTATATCTGCAAATGAACAACTTGAAAACTGAGGACACAGCCATGTATTATTGTGTGGGAGGGGGTGACTTCTGGGGCCAAGGCACCGCTCTCACAGTCTCCTCA(配列番号24)
によってコードされる重鎖可変領域、及び
ATGGACATGAGGGTTCCTGCTCACGTTTTTGGCTTCTTGTTGCTCTGGTTTCCAGGTACCAGATGTGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCTTATCTGCCTCTCTGGGAGAAAGAGTCAGTCTCACTTGTCGGGCAAGTCAGGAAATTAGTGTTTACTTAAGCTGGTTTCAGCAGAAACCAGATGGAACTATTAAACGCCTGATCTACGGCGCATTCACTTTAGATTCTGGTGTCCCAAAAAGGTTCAGTGGCAGTAGGTCTGGGTCAGATTATTCTCTCACCATCAGCAGCCTTGAGTCTGAAGATTTTGCAGACTATTACTGTCTACAATATGTTAGGTATCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGTTGGAAATCAAA(配列番号25)
によってコードされる軽鎖可変領域を含む。
抗タウC3抗体と比較すると、融合構築物はBBBを横断する透過性が向上し、並びに/又は1つ以上のリソソーム系及び/若しくはエンドソーム系による除去及び分解が減少している。
【0041】
特定の実施形態において、融合構築物は、抗タウC3抗体重鎖のN末端又はC末端のいずれかに融合される配列番号2を含む。例えば、融合構築物は重鎖:
EVQVVESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFNTYAMNWVRQAPGKGLEWVARIRSKSNNYATYYADSVKDRFTISRDDSQSMVYLQMNNLKTEDTAMYYCVGGGDFWGQGTALTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGSTHRPPMWSPVWP(配列番号26)
及び軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASLGERVSLTCRASQEISVYLSWFQQKPDGTIKRLIYGAFTLDSGVPKRFSGSRSGSDYSLTISSLESEDFADYYCLQYVRYPWTFGGGTKLEIK RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号27)
を含んでもよい。
【0042】
特定の実施形態において、融合構築物は、例えばD265A及びN297G(DANG)変異を組み込むことにより、Fc-γ受容体を結合しないように修飾されているFc領域を含んでもよい。D265A及びN297G(DANG)変異は、霊長類におけるエフェクタ機能を減弱させる点で有効であることが報告されている。
【0043】
式II及び式IIIの融合構築物は、例えばアルツハイマー病(AD)、ピック病、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、前頭側頭型認知症(FTD)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、外傷性脳損傷(TBI)などを含む、例えば様々なタウオパチーの診断及び処置に使用されてもよい。加えて、本発明の抗タウC3融合構築物は、タウ病態に関連する、例えば、パーキンソン病、多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症といった他の神経変性疾患にて使用されてもよい。加えて、本発明の抗タウC3融合構築物は加齢関連性認知障害の治療に使用されてもよい。
【0044】
本発明は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有又はこれらからなるペプチドに、直接、又はリンカーを介して、ペプチド又はタンパク質を融合することを含む、BBBを通ってペプチド又はタンパク質の透過を向上させる方法に更に関する。融合は、ペプチド若しくはタンパク質のカルボキシル末端、ペプチド若しくはタンパク質のアミノ末端、又はペプチド若しくはタンパク質の内部配列に存在してもよい(ペプチド又はタンパク質の活性及び結合性に干渉しない場合)。
【0045】
本発明は、抗体の軽鎖、重鎖又はその両方のカルボキシル末端を、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28の配列を含有するペプチドのアミノ末端に、直接、又はリンカーを介して融合することを含む、抗体の血液脳関門透過を向上させる方法に更に関する。
【0046】
本発明は、ペプチド又はタンパク質のカルボキシル末端を、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号39を含有するペプチドのアミノ末端に、直接、又はリンカーを介して融合すること、及びBBBと接触した状態で、結果として得られた融合構築物を配置することを含む、BBBを横断してペプチド及びタンパク質を送達する方法に更に関する。
【0047】
本発明は、抗体の軽鎖、重鎖(又はその両方)のカルボキシル末端及び/又はアミノ末端を、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号28を含有するペプチドのアミノ末端に、直接、又はリンカーを介して融合すること、及びBBBと接触した状態で、結果として得られた融合構築物を配置することを含む、BBBを横断して抗体を送達する方法に更に関する。
【0048】
本発明は、トランスサイトーシスの有効性を向上させる方法に更に関する。この方法は、トランスフェリンと競合しない(つまり鉄輸送に干渉してはならない)式I、式II、及び式IIIの合成融合ペプチドを使用し、二重特異性抗体の開発及び製造に関連する複雑性及びコストを回避し、トランスフェリンの使用を回避する。
【0049】
定義
本明細書で使用される「抗体」は、無変化分子(すなわち、完全長抗体(IgM、IgG、IgA、IgE))及びそれらの断片、並びに例えばFab(Fab’2)、及びF∨断片を含まない、又はpIII又はpVIII又は他の表面タンパク質の糸状ファージの表面上、若しくは抗原に結合可能であるバクテリアの表面上に発現する、それらの合成誘導体及び生物学的誘導体を含有することを意味する。Fab(Fab’2)及びF∨断片は、無変性抗体のFC断片を欠損しており、循環により更に迅速に除去する。加えてこれは、抗体の非特異的組織結合をほとんど含まない。抗体はモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってもよい。組換え抗体は用語「抗体」によって包含される。用語「抗体」は、キメラ抗体及びヒト化抗体を更に包含する。抗体はまた、完全ヒト抗体(例えば、遺伝子導入マウス又はファージ由来)であってもよい。
【0050】
本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」は、マウス又は他の非ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)がヒト抗体のフレームワーク上へと移植される抗体を指す。ヒト抗体フレームワークは、CDRを除外する完全ヒト抗体を意味する。
【0051】
本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、完全配列がヒト遺伝子レパートリー(例えば、遺伝子導入マウス又はファージ)から誘導される抗体を指す。
【0052】
用語「TBL-110」は、例1の融合構築物を意味する。
【0053】
本出願における用語「TBL-100」及び「マウスの抗タウC3抗体」は、Nicholls,S.B.,S.L.DeVos,C.Commins,C.Nobuhara,R.E.Bennett,D.L.Corjuc,E.Maury,et al.2017.「タウC3抗体の特徴及びタウ伝播をブロックするその能力の証明(Characterization of TauC3 antibody and demonstration of its potential to block tau propagation)」 PLoS ONE 12(5):e0177914.doi:10.1371/journal.pone.0177914に特徴付けられる「マウス抗タウ3」を意味する。
【0054】
本明細書に使用される用語「相同である」は、配列が、相同である配列に少なくとも80%同一であり、1つ以上の相同な配列を含む重合体のペプチド(例えば抗体)が、相同である1つ以上の配列を含む重合体のペプチドと実質的に同じ生物学的活性を有することを意味する。例えば、(a)配列GFTFNTYA(配列番号7)により表されるCDR1、IRSKSNNYAT(配列番号8)により表されるCDR2、及びVGGGDF(配列番号9)により表されるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列QEISVY(配列番号10)により表されるCDR1、配列GAF(配列番号11)により表されるCDR2、及び配列LQYVRYPWT(配列番号12)により表されるCDR3を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗体、並びに1つ以上のCDR配列が1つ以上の相同な配列により置換される抗体の両方が、1×10-10~1×10-12であるタウC3に関する結合親和性(KD)及び1×10-4~1×10-8Mである配列番号1に関する結合親和性(KD)を有するか、又は配列番号1との検出可能な結合を有さない。定義により、相同抗体は実質的に同様の三次元形状を有する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「CDR」は「相補性決定領域」を意味する。CDRは高頻度可変領域とも呼ばれてもよい。特段指定しない限り、本明細書に開示されるCDR配列は、IMGTナンバリングシステムにより定義される。
【0056】
本明細書で使用される場合、CDR配列を参照した「配列番号により表される」は、CDRの配列が列挙される配列番号と同一又はこれに相同であることを意味する。
【0057】
本明細書で使用される用語「キメラ抗体」は、マウス抗体又はラット抗体の可変領域の全体が、ヒト定常領域に従って発現される抗体を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「軽鎖」は、抗体の小さなポリペプチドサブユニットである。典型的な抗体は2つの軽鎖及び2つの重鎖を含む。
【0059】
本明細書にあるように、「同等の投与量」は、重量単位において等しい投与量を意味する。例えば、1mgのタンパク質の投与量の「同等の投与量」は、1mgの投与量の融合構築物である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「重鎖」は、抗体の大きなポリペプチドサブユニットである。抗体の重鎖は、少なくとも1つの可変ドメイン及び少なくとも1つの定常ドメインと共に、一連の免疫グロブリンドメインを含有する。
【0061】
本明細書で使用される用語「親和性」は、抗体分子がそのエピトープに結合する強度、又は非抗体タンパク質(例えばアフィボディー)がその足場に結合する強度を指す。親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される。
【0062】
本明細書で使用される用語「KD」は、平衡解離定数(KD=Kd/Ka、この場合Kdは解離速度定数であり、Kaは会合速度定数である)を指す。
【0063】
用語「病理学的タウ」は、タウC3、タウC3を含む原線維、及びタウC3を含む凝集物(例えば、完全長タウを含む異種起源の集団、タウオリゴマー及び/又は翻訳後修飾タウ(切断又はリン酸化される))を包含する。タウC3に加えて、病理学的タウは、完全長タウ(例えば、2N4R)の異種起源の集団、タウオリゴマー及び/又は翻訳後に修飾されるタウ(切断又は高リン酸化される)を含んでもよい。
【0064】
用語「播種」は、タウC3及び/又はタウC3を含む原線維、及び/又はタウC3を含む凝集物が細胞により取り込まれる後に細胞内で起こる活性を指す。
【0065】
用語「アドネクチン」は、フィブロネクチンタイプIII(10Fn3)の10番目のドメインから誘導された94アミノ酸熱安定性(Tmは80℃超)結合タンパク質断片を意味する。
【0066】
用語「アフィリン」又は「アンチカリン」は、リポカリンから誘導されたタンパク質断片を意味する。
【0067】
用語「アビマー」は、様々な細胞表面受容体(すなわち、低密度関連タンパク質(LRP)及び超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR))のA-ドメインから誘導された結合タンパク質断片のクラスを意味する。
【0068】
用語「フィノマー」は、FYNチロシンキナーゼのSrc相同3(SH3)ドメインのアミノ酸83~156から誘導され、リガンド結合の部位である2つの可撓性ループにより接合された逆平行βシートの対から構成されるタンパク質を意味する。
【0069】
用語「ノッチン」は、可変長のループ及び複数のジスルフィド結合のループにより接続された、3つの逆平行βストランドから構成された安定した30アミノ酸タンパク質の折り畳み(4kDa未満)を意味する。ノッチンのサブクラスは、タンパク質のN末端及びC末端が翻訳後に接合されて環状分子を形成するサイクロチドである。
【0070】
用語「アフィボディー」は、3つのヘリックスバンドルモチーフに適合し、システインを含有しない黄色ブドウ菌タンパク質AのIg結合領域のZドメインから誘導されたタンパク質断片を意味する。
【0071】
用語「β-ヘアピン模倣物」は、機能性天然タンパク質エピトープの立体構造特性及び電子特性を再生産するようにデザインされた単一のβ-ヘアピンモチーフを意味する(Simeon et al.,Protein Cell 2018,9(1):3-14)。
【0072】
略語「DARPイン」は、デザインされたアンキリン繰り返しタンパク質を意味する。DARPインは、アンキリン繰り返し(AR)タンパク質に基づく人工タンパク質足場である。
【0073】
用語「タウC3」は、htau40(配列番号1)のアスパルタート421にて終わるC末端切断型タウ断片を意味する。
【0074】
本明細書で使用される場合、「FLT」は完全長タウ(すなわち、htau40(配列番号1))に対する略語である。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」及び「有効量」は、治療薬(例えば、抗タウC3抗体アナログ)又は患者において測定可能な臨床効果を引き起こす組成物の量を意味する。治療薬の有効量は、投与される化合物、投与経路、処置されている症状の状態、並びにいくつかの考慮の中でもとりわけ同様の患者及び投与状態の考慮を含む、この症例を取り巻く状況によって決定される。「有効量」は、本明細書に説明される抗タウC3抗体アナログの約0.01mg/kg~約100mg/kg、好ましくは0.5mg/kg~20mg/kgを一般には含む。特定の実施形態において、「有効量」は1mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、又は10mg/kgが使用される。特定の実施形態において、約0.2%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、又は約10%より多い投与量がCSFに到達する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1A】例1の融合構築物のSDS-Pageを示す。レーンM1:タンパク質マーカ、TaKaRa、Cat.No.3452。レーン1:還元条件。レーン2:非還元条件。
【0077】
【
図1B】例1の融合構築物のウェスタンブロット解析を示す。レーンM2:タンパク質マーカ、GenScript、Cat.No.M00521。レーン1:還元条件。レーン2:非還元条件。レーンP:ポジティブコントロールとして、ヒトIgG1、Kappa(Sigma、Cat.No.I5154)。
【0078】
【
図2】インキュベーションの24時間時点でのTBL-100の画像を含有する。
【0079】
【
図3】インキュベーションの24時間時点でのTBL-110の画像を含有する。
【0080】
【
図4】インキュベーションの24時間時点でのTBL-100の画像を含有する。トランスフェリン、受容体及びLAMP2についての同様の染色パターンにも関わらず、それぞれからの信号は特有の配置で検出され得る。LAMP2信号はトランスフェリン受容体と共局在しない。
【0081】
【
図5】インキュベーションの24時間時点でのTBL-110の画像を含有する。トランスフェリン、受容体及びLAMP2についての同様の染色パターンにも関わらず、それぞれからの信号は特有の配置で検出され得る。トランスフェリン受容体シグナルはLAMP2と共局在しない。
【0082】
【
図6】インキュベーションの24時間時点でのTBL-110の画像を含有する。TBL-110信号のパターンは、対応するトランスフェリン受容体及びLAMP2信号に比べてより拡散されることが明らかとなっている。これは、代替的な機構による取込み後の放出又はインターナリゼーションを示唆し得る。
【0083】
【
図7】インキュベーションの24時間時点でのTBL-110の画像を含有する。TBL-110信号のパターンは、対応するトランスフェリン受容体及びLAMP2信号に比べてより拡散されることが明らかとなっている。これは、代替的な機構による、すなわちエンドソーム-リソソーム系による取込み後の放出又はインターナリゼーションを示唆し得る。拡散したTBL-110信号は、斑点と共局在しない。
【0084】
【
図8】TBL-100対TBL-110の24時間のインキュベーションの画像を含有する。
【0085】
【0086】
【
図10】3時間の試験物質インキュベーションにて、細胞内部に保持される抗体強度を示す。
【0087】
【
図11】6時間の試験物質インキュベーションにて、細胞内部に保持される抗体強度を示す。
【0088】
【
図12】24時間の試験物質インキュベーションにて、細胞内部に保持される抗体強度を示す。
【0089】
【
図13】24時間の試験物質インキュベーションにて、細胞内部に保持される抗体強度を示す。(リソソーム分解を破壊する)バフィロマイシン処理後、TBL-100の向上した保持は、インターナライズされた時に入り込み、リソソームによって除去されることを示唆する。
【0090】
【
図14】24時間の試験物質インキュベーションにて、細胞内部に保持される抗体強度を示す。バフィロマイシン処置の存在(....)及びそれが存在しない()両方の場合におけるTBL-110のより高次のレベルは、これがTBL-100よりも更に容易にインターナライズされ、保持されることを示す。
【0091】
【
図15】3時間時点、6時間時点、及び24時間時点で保持されるTBL-100強度を示す。
【0092】
【
図16】3時間時点、6時間時点、及び24時間時点で保持されるTBL-110強度を示す。
【0093】
【
図17】24時間でのトランスフェリン受容体とのTBL100/TBL110共局在を示す。24時間時点でトランスフェリン受容体の強度に基づいて描かれたマスクにおける、TBL-100又はTBL-110のいずれかの強度において有意な差異が見られないことは、いずれの試験物質も優先的に受容体と共局在しないことを示唆する。
【0094】
【
図18】3時間時点でのインキュベーション及び6時間時点でのインキュベーションでの、トランスフェリン受容体とのTBL100/TBL110共局在を示す。6時間時点でのトランスフェリン受容体とのTBL-100共局在における有意な上昇のパターンは、この機構による細胞内への迅速な輸送を示唆する。
【0095】
【
図19】24時間の試験物質インキュベーションにおける、LAMP2とのTBL-100/TBL-110共局在を示す。
【0096】
【
図20】24時間の試験物質インキュベーションにおける、LAMP2とのTBL-100/TBL-110共局在を示す。細胞全体で定量化されたTBL-100及びTBL-110のトレンドと同様、より高次レベルの両方の試験物質は、バフィロマイシン処理後のLAMP2信号と共局在した。これは、高次レベルの試験物質が細胞内に蓄積する際に、この物質がリソソームに標的化されていることを示す。
【0097】
【
図21】3時間及び6時間の試験物質インキュベーションにおける、LAMP2とのTBL-100/TBL-110共局在を示す。これらの早期時点でのLAMP2とのTBL-100のより高次レベルの共局在は、インターナライズされると、この試験物質の迅速な除去を示す。TBL-110は、容易にリソソームにより除去されることなく、こうして蓄積することができる。
【0098】
【
図22】3時間の試験インキュベーションにおける、細胞ごとの相対的なトランスフェリン受容体強度を示す。試験物質及びバフィロマイシン処理の様々な組合せのいずれの後にも、細胞ごとのトランスフェリン受容体強度における有意な差異は存在しない。
【0099】
【
図23】6時間の試験インキュベーションにおける、細胞ごとの相対的なトランスフェリン受容体強度を示す。試験物質及びバフィロマイシン処理の様々な組合せのいずれの後にも、細胞ごとのトランスフェリン受容体強度における有意な差異は存在しない。
【0100】
【
図24】24時間の試験インキュベーションにおける、細胞ごとの相対的なトランスフェリン受容体強度を示す。試験物質及びバフィロマイシン処理の様々な組合せのいずれの後にも、細胞ごとのトランスフェリン受容体強度における有意な差異は存在しない。
【0101】
【
図25】3時間の試験物質インキュベーションにおける、細胞ごとの相対的なLAMP2強度を示す。試験物質及びバフィロマイシン処理の様々な組合せのいずれの後にも、細胞ごとのLAMP2強度における有意な差異は、存在しない。
【0102】
【
図26】6時間の試験物質インキュベーションにおける、細胞ごとの相対的なLAMP2強度を示す。試験物質及びバフィロマイシン処理の様々な組合せのいずれの後にも、細胞ごとのLAMP2強度における有意な差異は、存在しない。
【0103】
【
図27】24時間の試験物質インキュベーションにおける、細胞ごとの相対的なLAMP2強度を示す。試験物質及びバフィロマイシン処理の様々な組合せのいずれの後にも、細胞ごとのLAMP2強度における有意な差異は、存在しない。
【0104】
【
図28】タンパク質足場の模式構造を示すものであり、Simeone et al.,Protein Cell 2018.9(1):3-14から採用された。
【0105】
【
図29A】例4において作製される免疫組織化学的画像を示す。
【
図29B】例4において作製される免疫組織化学的画像を示す。
【
図29C】例4において作製される免疫組織化学的画像を示す。
【
図29D】例4において作製される免疫組織化学的画像を示す。
【0106】
【
図30】例4の統計学的有意性について解析される免疫組織化学的画像の量的表示である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
短ペプチドは、抗体の立体構造又は効力に影響することなく、抗体軽鎖又は重鎖(又はその両方)のN末端又はC末端に融合され得る。
【0108】
式Iの融合構築物の「M」
特定の実施形態において、式Iの融合構築物のMは、プロネクチン(例えばアンギオセプト(angiocept)、アフィボディー(例えば、ABY-025、SOBI002、ABY-035)、アフィリン(例えば、PRS-010、PRS-050)、アンチカリン(例えば、PRS-080、PRS-060、PRS-110、PRS-343)、アトリマー(例えば、ATX3105)、アビマー(例えば、AMG220)、DARPイン(例えば、MP0112、MP0260、MP0250、MP0274)、フィノマー(例えば、COVA322、COVA208、ノッチン、クニッツドメイン)、二重環状ペプチド、及び他の非抗体タンパク質を含有又はこれらからなる群から選択される。
【0109】
式IIの融合構築物の「A」
特定の実施形態において、式IIの融合構築物のAは、2398852(デザミズマブ)、AAB-001(バピネウズマブ)、ABBV-066(リサンキズマブ)、ABBV-323、ABBV-323、ABBV-8E12(C2N 8E12)、ABL-001(アシミニブ)、ABL301、ABP-710(インフリキシマブ)、ABT-165、ABT-414(デパツキシズマブ)、ACZ885(カナキヌマブ)、ADC-1013、ADCT-402、ALD403(エピチネズマブ)、ALX0061(ボバリリズマブ)、AMG301(エイモビグ)、AMG330、ANB020、ARGX-110、ARGX-111、ASKP1240(ブレセルマブ)、ATN-103(オゾラリズマブ)、BAN0805(ABBV-0805)、BAN2401(マブ158)、BAY1351(ネレリモマブ)、B-E8(エルシリモマブ)、ベルチリムマブ、BI655064、BI655066、BI695500、BI695501、BIIB037(アデュカヌマブ)、BIIB033(オピチヌマブ)、BIIB054(シンパネマブ)、BIIB074(ビクソトリジン)、BIIB076、BMS-936561、ブロルシズマブ、BT-061(トレガリズマブ)、C225(セツキシマブ)、CAT-192(メテリムマブ)、CC-90002(INBRX-103)、CLNH11(プリツムマブ)、cmt412(プリリキシマブ)、DB00028(ガムネックス)、DB00073(リツキシマブ)、DB00095(エファリズマブ)、DB00108(ナタリズマブ)、DB05459(ブリアキヌマブ)、DB05656(ベルツズマブ)、DB06162(ルミリキシマブ)、DB06241(クレノリキシマブ)、DB06606(テプリズマブ)、DB06650(オファツムマブ)、DB08935(オビヌツズマブ)、DB09052(ブリナツモマブ)、DB11767(サリルマブ)、DB11803(シルクマブ)、DB11988(オクレリズマブ)、DB12053(ビシリズマブ)、DB12169(トラロキヌマブ)、DB12294(アンルキンズマブ)、DB12636(サマリズマブ)、DB12849(クラザキズマブ)、DB13127(オロキズマブ)、DB14004(チルドラキズマブ)、DB14039(エレヌマブ)、DB14041(フレマネズマブ)、DI-Leu16-IL2)、ファシヌマブ、GC-1008(フレソリムマブ)、GSE64382(イトリズマブ)、GSK2862277、GSK3050002、GSK3174998、GSK3772847、GZ402668、HLX01、HLX03(アダリムマブ)、ハーセプチン、Humax(登録商標)-TAC-ADC、Humax-TAC-PBD、イネビリズマブ、イノリモマブ、IPH33、IPH52、JNJ-63709178、JNJ-63733657、JNJ-64007957、KHK4083、KHK6640、LY2062430(ソラネズマブ)、LY2599666、LY2951742(ガルカネズマブ)、LY3303560、MCLA-117、MEDI1341、MEDI1814、MEDI2070(ブラジクマブ)、MEN112、モガムリズマブ、NEOD001、ネスバクマブ、オヅリモマブ、PF-04360365(ポネズマブ)、PMN310、PRX002/RO7046015、QAX576、REGN1979、REGN3500、RG1450(ガンテネルマブ)、RG6026、RG6100、RG6168、RG7412(クレネズマブ)、RG7716、RG7828、RG7876、RG7935、RN624(タネズマブ)、RO7105705、ロンタリズマブ、RYI008(ゲルリリムズマブ)、SAR228810、SAR3419(コルツキシマブラブタンシン)、SAR650984(イサツキシマブ)、SGN-CD19B、SGN-CD70A、Sym004(モドツキシマブ)、TAB-107(セデリズマブ)、TAB-262(テネリキシマブ)、TAB-H16(ダピロリズマブペゴル)、TAK-573、TG-110(ウブリツキシマブ)、UCB4144、VX15/2503(ペピネマブ)、xmab5574(CD19)、Xmab5871、Xoma052(ゲボキズマブ)、及びザノリムマブからなる群から選択されてもよい。
【0110】
特定の実施形態において、式IIの融合構築物のAは、アルツハイマー病(AD)の処置のためのモノクローナル抗体である。ADは、家族性の遺伝的原因を有する小さな母集団では初期発生から始まり、明確な遺伝的基盤がない、より大きな母集団では、人生の後半で始まる、慢性的な神経変性進行性疾患である。この疾患に関連する大半の共通の症状は、間欠的な記憶喪失であり、深刻な認知機能低下の進行である。ADの潜在的な原因は未だ知られていない。ADは、脳皮質及び特定の皮質下領域中のニューロン及びシナプスの消失により特徴付けられる。ADは、この疾患の2つの古典的で顕著な特徴である、脳内の異常に折り畳まれたアミロイドβ(Aβ)ペプチド及びタウタンパク質のプラーク及び濃縮体堆積を生じさせるタンパク質ミスフォールド障害であるといった強力な遺伝的エビデンスが存在する(Coate et al.,1991;Hardy and Mullan,1992)。現在、疾患の進行を遅延又は抑止するための、認可済の処置は存在しない。影響力の大きい研究により、アジュバントと組み合わせた、完全長Aβに対する能動免疫は、AD遺伝子導入マウスモデルにおいてアミロイドプラーク負荷を低減させたことが示された(Schenk et al.,1999)。続いて多くの研究が、発症前のADマウスモデルにおいて、能動及び受動Aβ免疫療法の有効性を実証してきた。ただし、これらの成功した臨床前研究から派生した早期楽観主義にも関わらず、このアプローチはヒトにおいて、未だ疾患修飾療法へと発展できていない。例えば、2012年には抗Aβマブである、バピネウズマブ及びソラネズマブの2種類の第3相治験は、認知機能改善の初期臨床エンドポイントに合致することができなかった(Doody et al.,2014;Salloway et al.,2014)。重要なことには、バピネウズマブは、アミロイド関連画像異常と命名される血管の副作用を引き起こした。これは高投与量群の中止につながり、最適以下の脳ばく露による臨床効果の欠如を説明することができる。期待外れの臨床結果にも関わらず、他のmAbは現在もAD予防治験において試験されている。ここで近年の治験は、Aβペプチドの凝集形態に対するmAbは、脳内でアミロイドプラークの用量依存的減少及び時間依存的減少を生み出し、これはまた、臨床的有用性につながる可能性があることを実証している。最も有望な臨床データは、初期(前駆)AD又は軽度ADである患者において観察されており、これは、実際のところ疾患のこの段階にある患者を見つけることは極度に困難であるものの、初期介入が重要であることを示唆している。
【0111】
ヒト治験では、ADに関して試験されている最大数で臨床的有用性を確立するように、脳実質空間内部の治療濃度に到達させる目的のために、いくつかのmAbが存在する。
【0112】
特定の実施形態において、式IIの融合構築物のAは、ソラネズマブ、アデュカヌマブ、ガンテネルマブ、BAN2401、LY3372993、SAR255952、ドナネマブ(aka N3pG)LY3202626、RO7105705、BIIB076、C2N 8E12、lLY3303560からなる群から選択される。
【0113】
式IIIの融合構築物の「T」
本発明のTは、タウC3のC末端に特異的であるキメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体を包含する(「抗タウC3抗体」)。抗タウC3抗体は、1×10-10~1×10-12のタウC3に対する結合親和性(KD)、1×10-4~1×10-8Mの完全長タウ(「FLT」)(配列番号1)に対する結合親和性(KD)を有する。例えば抗タウC3抗体は、約5×10-12M~約1.2×10-10M、約1×10-11M~約1×10-10M、約1×10-11M~約9×10-11M、約1×10-11M~約8×10-11M、約1×10-11M~約7×10-11M、約1×10-11M~約6×10-11M、約1×10-11M~約5×10-11M、又は約1×10-11M~約4×10-11MのタウC3に対する結合親和性(KD)、及び1×10-4~1×10-8MのFLTに対する結合親和性(KD)を有してもよい。好ましい実施形態において、抗体は、約40℃~約67℃の温度に10分間供された後、その結合能力を保持し、37℃で21日間、血清(例えば、マウス)におけるインキュベーション後のその結合能力もまた保持する。抗タウC3抗体の高結合能力により、抗体はFLTの標準的な生理学的機能を損なうことなくタウC3を標的とすることが可能である。いくつかの実施形態において、抗体の特異性により、最も有毒種のタウのみを標的とすることが可能となり、この特異性により、特異的ではなくタウの異なる種間を区別できない抗体と比較すると、治療有効投与量を潜在的に減少させることができる。抗タウC3抗体、及びそれらの抗原結合断片は、例えば脳内のタウC3の病理学的活性に関連する、例えば、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症(FTD)、外傷性脳損傷(TBI)、ピック病(PiD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)などを含む神経変性障害の診断及び処置において、使用され得る。抗タウC3抗体は、50mg/mL以上(例えば、約50mg/mL~約200mg/mL、約55mg/ml~約180mg/mL、約55mg/mL~約170mg/mL、約55mg/mL~約150mg/mL、約55mg/mL~約140mg/mL、約55mg/mL~約130mg/ml、又は約60mg/mL~約130mg/mL)の水溶性を有してもよい。
【0114】
特定の実施形態において、式IIIの融合構築物はTBL-100又はタウC3抗体である。
【0115】
タウオパチー
タウタンパク質(2N4R)(配列番号1)は、多くの場合、完全長タウ(FLT)と呼ばれ、主に軸索に分布する微小管関連タンパク質である。タウタンパク質は、ニューロン中の微小管(MT)の集合体、空間的構成及び挙動を調節する働きを担う。FLTは、タンパク質のC末端に近接する残基421にてカスパーゼ-3により優先的に切断され、タウC3として公知のタンパク質の切断形態を形成する。
【0116】
タウC3は、FLTと比較すると低い存在量で存在する(1%未満と考えられる)が、例えば、AD脳におけるタウ伝播の大半について、おそらく核形成によるタウフィラメント形成を駆動することで不釣合いに大きな病理学的効果を発揮することが示された。タウC3は極度に毒性の強いタンパク質である。タウC3は、例えばアルツハイマー病(AD)、ピック病(PiD)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、前頭側頭型認知症(FTD)、外傷性脳損傷(TBI)などを含む、様々なタウオパチー及び神経変性障害に関係している。タウC3は、例えばパーキンソン病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)にもまた関係している可能性がある。SNP(rs1768208 C/T)は、PSPの強固なリスク因子であることが同定されており、PSP患者におけるアポトーシス促進性タンパク質であるアポプトシンのレベルを上昇させることが示されている。アポプトシンの上昇は、活性化されたカスパーゼ-3及びタウC3レベルと相関する。
【0117】
タウC3に選択的に結合し、FLT(配列番号1)への実質的な結合を呈さない融合構築物は、FLTの生理学的機能を損なうことなく様々なタウオパチーを処置するために使用されてもよい。
【0118】
式IIIの融合構築物の投与は、例えばタウオパチーを処置する、又はタウオパチーから免疫化するための療法として使用され得る。
【0119】
式IIIの融合構築物は、タウオパチーを処置するために治療有効量でヒトへと投与されてもよい。投与は、中枢神経系への末梢的(すなわち、中枢神経系への投与によるものではない)又は局所的なものを含む、標準的で有効な技術を使用して実施される。末梢投与としては、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、経鼻投与、頬側投与、舌下投与、又は坐薬投与が挙げられるがこれらに限定されない。中枢神経系(CNS)へと直接投与するものを含む、局所投与としては、腰椎を介した投与、脳室内カテーテル、又は実質内カテーテル、又は外科的に植え込まれ制御される放出製剤の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
処置を受け入れられる人間としては、疾患の危険性はあるが症状が現れていない個体、及び現在症状が現れている患者が挙げられる。アルツハイマー病の場合には、実質的には、アルツハイマー病に罹患している危険性がある人間である。したがって、現在の方法は一般的な母集団へと予防的に投与され得る。こうした予防的な投与は、例えば50歳以上の年齢で開始することができる。現在の方法は、タウオパチー(例えば、アルツハイマー病)の公知の遺伝的な危険性を有さない個体にも特に有用である。こうした個体としては、この疾患を経験したことある親類を有する人々、及び遺伝的マーカ又は生物化学的マーカの分析によりその危険性が測定される人々が挙げられる。例えば、アルツハイマー病に対する危険性の遺伝的マーカとしては、APP遺伝子における変異、特にHardy及びSwedish変異とそれぞれ呼ばれる、位置717及び位置670及び671における変異が挙げられる。危険性を示す他のマーカは、プレセニリン遺伝子における変異であるPS1及びPS2、並びにApoE4、家族歴、高コレステロール血症又はアテローム性動脈硬化である。現在アルツハイマー病に罹患している個体は、上記のリスク因子が存在していることによる特徴的な認知症により認識され得る。加えて、ADを有する個体を同定するために多くの診断検査が利用可能である。こうした診断検査としては、画像化、並びに/又はCSFタウ及びAJ342レベルの測定が挙げられる。タウレベルの上昇及びAJ342レベルの減少は、ADの存在を意味する。アルツハイマー病に罹患している個体は、アルツハイマー病及び関連する障害の関連基準によっても診断され得る。
【0121】
無症状性患者においては、処置は任意の年齢(例えば、10歳、20歳、30歳、40歳、50歳、又は60歳)で開始することができる。ただし、通常は、患者が40歳、50歳、60歳、70歳、75歳、又は80歳に到達するまでは、処置を開始する必要はない。処置は通常、一定の期間にわたって複数回の投薬を必要とする。処置は、抗体、又は経時的な治療薬に対する活性化されたT細胞若しくはB細胞の応答をアッセイすることによりモニタリングされ得る。応答が減少する場合、ブースター投薬を提示する。ダウン症候群の可能性がある患者の場合には、処置は、母親への治療薬投与により出産前に、又は誕生後速やかに開始可能である。
【0122】
予防用途では、本発明による抗タウ抗体アナログを含む医薬組成物は、疾患に罹患しやすい、又はタウオパチーの危険性にある患者へ、リスクを除去又は減少させる、重症度を低下させる、又は疾患の生物化学的、組織学的、及び/又は行動学的症状、合併症及び疾患の発症中に表われる病理学的な中間表現型を含む疾患の開始を遅らせるのに十分な量で投与される。治療用途では、式IIIの融合構築物を含む組成物は、これらの疾患が疑われる、又はこれらの疾患に既に罹患している患者へと、その合併症及び疾患の発症中に表われる病理学的な中間表現型を含む疾患の生物化学的、組織学的、及び/又は行動学的症状を治癒、又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。いくつかの方法において、薬剤の投与により軽度の認知障害が低減又は除去される。治療処置又は予防処置を達成するのに適切な量は、治療的に効果的な投与量若しくは量、又は予防的に効果的な投与量若しくは量として規定される。予防的及び治療的管理体制の両方において、薬剤は通常、十分な免疫応答が得られるまでは複数回の投薬にて投与される。通常、免疫応答をモニタリングし、免疫応答が衰え始めた場合には繰り返し投薬が行われる。
【0123】
上記状態の処置を目的とする式IIIの融合構築物の有効投与量は、多くの異なる因子に応じて変化する。この因子には、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、投与される他の薬物療法、及び処置が予防的なものか治療的なものかというものが含まれる。処置投薬は、治験において個々の場合に応じて検査される必要があり、多くの場合には安全性及び有効性を最適化するために用量設定される必要がある。特定の実施形態において、本発明の式IIIの融合構築物の追加的な利点は、同等の質量の投薬について、式IIIの融合構築物の投薬が、式IIIの融合構築物に比べてタウC3への特異性が少ない抗体を含む組成物よりも、除去及び/又は「不活性化」において有効な、より高い分子投薬量の抗体を含有するということであり得る。通常、式IIIの融合構築物は、静脈内注入又は皮下注射により投与され得る。静脈内注入による投与のための式IIIの融合構築物の量は、患者当たり0.5mg~10mgで変化し得る。皮下注射は一般には、十分な量で脳に到達させるためにはより高い投与量を必要とする。抗体(例えば、IgGの全体分子)は、1ヶ月に1回投与され得る。
【0124】
投薬及び頻度は、患者における式IIIの融合構築物の半減期に応じて変化する。一般には、ヒト化抗体を含む融合構築物は、最も長い半減期を示し、キメラ抗体を含む融合構築物、非ヒト抗体を含む融合構築物がこれに続く。投薬及び投与頻度は、処置が予防的又は治療的かに応じて変化し得る。予防用途では、長期期間にわたり相対的には頻繁ではない間隔で、相対的に低量の投薬が投与される。一部の患者は、生涯にわたって処置を受け続ける。治療用途では、疾患の進行が落ち着く、又は終了するまで、好ましくは患者が疾患症状の部分的又は完全な寛解を示すまでは、相対的に短い間隔で相対的に高い投薬量が時に必要とされる。その後、患者は予防的な管理体制で投与され得る。
【0125】
いくつかの方法において、融合構築物の投薬は、1~1000μg/mLの血漿抗体濃度を得るように調節され、いくつかの方法では、これは25~300μg/mLである。代替的には、それほど頻繁な投与な必要ではない場合には、抗体は徐放性製剤として投与され得る。
【0126】
タウC3播種をブロックするための式IIIの融合構築物の投与量は、タウC3凝集を阻害するための式IIIの融合構築物の投与量と必ずしも同じである必要はない。本明細書にて提供される情報といった観点で、当業者は日常的な試験により特定の投与量を決定することができる。
【0127】
投与/処置の有効性は、血漿及び/又はCSF中の病理学的タウ又はリン酸中タウのレベルを測定することにより評価され得る。この評価に基づき、投与量及び/又は投与頻度をそれに合うように調節してもよい。
【0128】
特定の実施形態において、認知における効果もまた評価されてもよい。
【0129】
MRIによって測定されるように、有効性は脳萎縮の程度によっても評価されてもよい。
【0130】
投与/処置の安全性は、参加者が経験する有害事象(AE)の数、深刻なAE、臨床検査における異常、バイタルサイン、ECG、MRI、理学的検査及び神経学的検査、並びに認知の悪化により評価されてもよい。この評価に基づき、投与量及び/又は投与頻度をそれに合うように調節してもよい。
【0131】
式IIIの融合構築物は、経鼻的に、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注入により、経皮的に、頬側になど、又は以下詳細に説明するようなものにより投与されてもよい。
【0132】
病理学的タウ凝集の伝播をブロッキングする方法
追加的な態様において、本発明は一方のニューロンから他方のニューロンへ、又は脳の一部から別の部分への、病理学的タウの伝播をブロッキングする方法に関する。
【0133】
追加的な態様において、本発明は患者の脳内でのタウC3播種活性をブロッキングする方法に関する。
【0134】
本発明はまた、患者の脳内での病理学的タウ凝集の伝播を減少させる方法にも関する。
【0135】
本発明は、患者の脳内で、タウC3を含む凝集物の伝播を減少させる方法に更に関する。
【0136】
本発明は、患者の脳内で、タウC3を含む原線維の伝播を減少させる方法に更に関する。
【0137】
本発明の更なる態様において、本発明はタウC3及びタウC3原線維の細胞内取込みにより誘発されるタウの細胞内凝集を減少させる方法に関する。
【0138】
各態様において、この方法は、治療有効量の式IIIの融合構築物をヒトに投与することを含む。式IIIの融合構築物は、FLTの標準的な生理学的機能に大きく影響することなく、病理学的タウの凝集形態を固有に認識することが可能である。一実施形態において、式IIIの融合構築物のエピトープの本質的な部分は、タウC3(配列番号18、SSTGSIDMVD)の最終10のC末端残基に対応するペプチドのC末端残基でネオエピトープを形成するカルボキシ基である。式IIIの融合構築物は、FLT(配列番号1)に対する抗体平衡定数KDよりも約2~約3桁高い、タウC3に対する平衡定数KDを好ましくは有する。式IIIの融合構築物は、1×10-10M~1×10-11Mの平衡定数KDを有するタウC3に結合するが、1×10-4M~1×10-8MであるFLT(配列番号1)に関する平衡定数KDを有するか、又はFLT(配列番号1)に検出可能な結合を示さない。好ましい実施形態において、式IIIの融合構築物は、1×10-11M~9×10-11Mの平衡定数KDを有するタウC3に結合し、1×10-8M~9×10-8Mの平衡定数KDを有するFLT(すなわち、2N4R)(配列番号1)に結合するか、又はFLT(すなわち、2N4R)(配列番号1)に検出可能な結合を示さない。式IIIの融合構築物は、好ましくはタウC3からの非常に低速なオフレート(すなわち、9,000,000 1/Ms~14,000,000 1/MSの会合定数(ka))を有し、実質的に2N4Rへの親和性を有さない(すなわち、100,000 1/MS未満のka)。抗体は例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体又は前述のいずれかの免疫学的断片であってもよい。
【0139】
ヒトは、治療有効量の式IIIの融合構築物の投与前に、タウ凝集に関連する症状を有しても有さなくてもよい。換言すると、ヒトはタウ播種及び/又は凝集に関連する症状を経験してもしなくてもよい。当業者は、病理学的タウ播種及び凝集は、タウ凝集に関連する症状の診断又は発症の前におそらく開始することを理解するであろう。いくつかの実施形態において、ヒトはタウ播種及び/又は凝集に関連する症状を有している。他の実施形態において、ヒトはタウ播種及び/又は凝集に関連する症状を有していない。更なる他の実施形態において、ヒトは検出可能なタウ病態を有するが、タウ症状及び/又は凝集に関連する任意の他の症状を有さない。本発明による治療薬及び医薬組成物を投与することによる、ヒトの脳内においてタウ凝集の伝播を低下させることは、タウの病理学的播種及び/又は凝集に関連する発症及び/又は症状の進行を低下させることができる。
【0140】
病理学的タウ凝集の拡散の予防、阻害又は遅延はしたがって、タウ凝集物の生成及び伝播に関連する病態の処置において使用されてもよい。タウ凝集に関連する症状を有する例示的な障害としては、進行性核上性麻痺、拳闘家認知症(慢性外傷性脳症)、前頭側頭型認知症及び第17染色体に結合されたパーキンソニズム、リティコ・ボディグ病(グアムのパーキンソン認知症複合)、神経原線維変化型老年期認知症、神経節膠腫及び神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーフォルデン-シュパッツ症候群、リポフスチン沈着症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、嗜銀性顆粒病(AGD)、前頭側頭葉変性症、アルツハイマー病、及び前頭側頭型認知症が挙げられるが、これらに限定されない。これらの障害を診断するための方法は、当技術分野において公知である。
【0141】
タウ播種又はタウ凝集に関連する症状を有する例示的な障害としては、例えば障害された認知機能、変性された挙動、感情の調節不全、てんかん発作、及び障害された神経系構造又は機能が挙げられる。障害された認知機能には、記憶、注意力、集中力、原語、抽象的な思考、創造性、実行機能、計画、及び体型付けに関する困難さが挙げられるがこれらに限定されない。変性された挙動としては、身体的又は言語的な攻撃性、衝動性、低下された抑圧性、感情鈍麻、低下された惹起、性格の変化、アルコール、タバコ又は薬物の濫用、及び中毒関連挙動が挙げられるがこれらに限定されない。感情の調節不全としては、うつ病、不安、躁病、易刺激性、及び感情失禁が挙げられるがこれらに限定されない。てんかん発作としては、全般強直関代性てんかん発作、複雑部分発作、及び心因性非てんかん性発作が挙げられるが、これらに限定されない。障害された神経系構造又は機能としては、水頭症、パーキンソニズム、睡眠障害、精神障害、バランス及び協調性の機能障害が挙げられるがこれらに限定されない。これは、不全単麻痺、不全片麻痺、四肢不全麻痺、運動失調、バリズム及び振戦といった運動機能障害を含む。これはまた、感覚消失又は嗅覚、触覚、味覚、視覚及び聴覚といった感覚機能を含む機能不全を含む。更には、これは腸機能不全、膀胱機能不全、性機能不全、血圧及び温度調節不全といった自律神経系機能障害を含む。最終的には、これは成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、小胞刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、プロラクチン、並びに多数の他のホルモン及び修飾因子の欠乏及び機能障害といった視床下部及び脳下垂体腺の機能不全に起因し得るホルモン障害を含む。タウ凝集に関連する症状を検出及び評価するための方法は、当技術分野において公知である。
【0142】
いくつかの実施形態において、タウ凝集に関連する症状は認知症を指す。認知症はそれ自体特定の疾患ではなく、毎日の活動を実施する人間の能力を十分低下させるほど深刻な記憶又は他の思考スキルにおける低下に関連する広範な症状を説明する全体的な用語である。認知症はまた、タウ凝集に関連する多くの疾患の共通する臨床的特徴でもある。当業者は、認知症の重症度を診断するのに利用可能な多くの方法に精通しているだろう。例えば、認知症に関する複数の認知検査及びスクリーニングアンケート調査が当技術分野において公知であり、その全ては感受性及び特異性の変化度を伴う。非限定的な例としては、ミニメンタルステート検査(MMSE)、略式メンタルテストのスコア(abbreviated mental test may score、AMTS)、変更されたミニメンタルステート検査(3MS)、認知能力スクリーニング手法(CASI)、トレイル・メイキング・テスト、時計描画試験、老年層における認知機能低下に関する情報アンケート調査(the Informant Questionnaire on cognitive decline in the elderly)、認知に関する一般的な開業医評価、臨床的認知症尺度(CDR)、加齢及び認知を区別する8項目の情報インタビュー(AD8)が挙げられる。
【0143】
いくつかの実施形態において、認知症の症状の重症度は、臨床的認知症尺度を使用して定量化される。臨床的認知症尺度を使用した場合、スコア0は症状が見られないことを示し、スコア0.5は非常に軽度の症状が見られることを示し、スコア1は軽度の症状を示し、スコア2は中程度の症状を示し、スコア3は重度の症状を示す。したがって、ヒトについての臨床的認知症尺度スコアの任意の上昇は、認知の悪化及び認知症の上昇を示す。更に、0から0超の臨床的認知症尺度における変化は、認知症の発症又は発生を示す。
【0144】
いくつかの実施形態において、タウ播種又はタウ凝集に関連する症状は、タウ病態又はタウオパチーを指す。用語「タウ病態」又は「タウオパチー」は、タウの病理学的播種又はタウの凝集を指す。いくつかの実施形態において、タウ病態は神経原線維変化タングルを指す。他の実施形態において、タウ病態は高リン酸化タウを指す。更なる他の実施形態において、タウ病態は、血中、血漿中、血清中、CSF中、又はISF中で検出可能な高レベルのタウ凝集物を指し、いずれも疾患を含まない個体で検出されるものよりも2~およそ40倍高い。
【0145】
医薬組成物
本発明に従う医薬組成物は、式I、式II又は式IIIの融合構築物、及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0146】
式IIIの融合構築物は、1×10-10M~1×10-11Mの平衡定数KDを有するタウC3に結合するが、1×10-4M~1×10-8MであるFLT(配列番号1)に関する平衡定数KDを有するか、又はFLT(配列番号1)に検出可能な結合を示さない。好ましい実施形態において、式IIIの融合構築物は、1×10-11M~9×10-11Mの平衡定数KDを有するタウC3に結合し、1×10-8M~9×10-8Mの平衡定数KDを有するFLT(配列番号1)に結合するか、又はFLT(配列番号1)に検出可能な結合を示さない。式IIIの融合構築物は、好ましくはタウC3からの非常に低速なオフレート(すなわち、9,000,000 1/Ms~14,000,000 1/MSの会合定数(ka))を有し、実質的にFLT(配列番号1)への親和性を有さない(すなわち、100,000 1/MS未満のka)。式IIIの融合構築物のAは、例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体又はヒト抗体(例えば、tgマウス由来)を含んでもよい。
【0147】
医薬組成物は、投与の選択方式にとって適切であるように設計され、適合する分散剤、緩衝液、界面活性物質、保存剤、可溶化剤、等張化剤、安定剤などといった薬学的に許容される賦形剤は適切なものとして使用される。
【0148】
静脈内注射又は皮下注射による末梢性の効果的な全身性送達は、生存している患者に対して好ましい投与方法である。こうした注射にとって好適な媒介物は単純なものである。
【0149】
投与されるべき製剤中の式I、式II又は式IIIの融合構築物の濃度は、有効量であり、約0.1重量%と同等の低さから、約95重量%又は約99.9重量%までの範囲である。所望の場合には選択される特定の投与方式に従い、この範囲は流体体積、粘度などに基づいて本来は選択される。特定の実施形態においては、式I、式II又は式IIIの融合構築物は、約15重量%~約20重量%の組成物を含んでもよい。
【0150】
患者へと注射するための組成物は、リン酸緩衝生理食塩水の1~250mLの緩衝滅菌水及び約1~約5000mgの式I、式II又は式IIIの融合構築物のうちいずれか1つ又はそれらの組合せを含有するように構成され得る。製剤は、製剤を作製した後に滅菌ろ過され得る。又はそれ以外の場合には、微生物学的に許容可能なものとされる。静脈内注入のための典型的な組成物は、滅菌リンガー溶液などの、1~250mLの流体の体積を有し、これは抗タウ抗体アナログ濃度についてはmLあたり1~100mg以上を有し得る。この発見に関する治療薬は、貯蔵のために冷凍又は凍結乾燥されることができ、使用前に好適な滅菌担体中で再構成され得る。凍結乾燥及び再構成は、抗体活性消失度を変化させることができる(例えば、従来の免疫グロブリンを伴い、IgM抗体はIgG抗体よりも大きな活性消失を有する傾向がある)。
【0151】
投与される投薬量は、示される目的に対する有効量であり、調節されて補償されなければならない場合がある。一般には医薬品グレード品質である製剤のpHは、抗体安定性(化学的及び物理的)の均衡を保つように選択され、投与時に患者にとって安心なものである。一般には、4~8のpHを許容する。投与量は、順調な投与を受ける個体の、サイズ、重量、及び他の物理生物学的特徴に基づき個人によって変化する。
【0152】
一態様において、典型的な投与量は約0.1mg~10mgの式I、式II、又は式IIIの融合構築物を含有する。特定の実施形態において、投与量は約0.5mg~約10mgである。投与量は約0.55mg/kg~約10mg/kgの範囲であり得る。全てのIgG抗体を用いて投与する頻度は、通常月ごとである。一方で、抗体断片は、その半減期が短いという観点から、症状を効果的に処置するために必要な場合には、更に頻繁に投与する必要がある。
【0153】
疾患自体に対する処置の投与のタイミング、及び処置の継続時間は、症例を取り巻く環境によって決定される。処置は、タウ凝集に関連する疾患の診断後に開始させることが可能である。代替的には、処置はタウ凝集に関連する症状の臨床確認後に開始させることが可能である。更には、処置はタウ病態の検出後に開始させることが可能である。処置は病院又はクリニックで速やかに、又は病院から退院した後の時点で、又は外来患者用のクリニックで確認した後に開始させることができる。処置の継続時間は、適時に投与される単回投与から、生涯にわたる一連の治療処置までの範囲である。
【0154】
前述の方法は、好適に順応することでヒト化抗体といったタンパク質の投与にとって、最も簡便であり、最も適切であり、有効であろうが、適切な製剤がそこで利用された場合には、例えば脳室内投与、経皮投与及び経口投与といった投与にとって他の効果的な技術が使用されてもよい。
【0155】
典型的な有効量又は投与量は、標準的な臨床技術を使用して決定及び最適化され得、これは本明細書にて提供される情報及び当技術分野において利用可能な知識といった観点から、投与方式によって左右される。
【0156】
例1(TBL-110)
融合構築物を調製した。融合構築物の重鎖配列及び軽鎖配列は以下の通りだった:
完全長重鎖:
EcoRI--Kozak配列--人工信号ペプチド--タウC3重鎖可変領域--ヒトIgG1定常領域(P01857)-リンカー-ペプチド--停止コドン--HindIII
重鎖配列:480aa
MGWSCIILFLVATATGVHS-EVQVVESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFN-TYAMN-WVRQAPGKGLEWVA-RIRSKSNNYATYYADSVKD-RFTISRDDSQSMVYLQMNNLKTEDTAMYYCVG-GGDF-WGQGTALTVSS-ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK-GGGS-THRPPMWSPVWP.(配列番号19)
DNA配列:1467bp
GAATTC-CC-GCCGCCACC-ATGGGCTGGTCCTGCATCATCCTGTTTCTGGTGGCCACAGCCACAGGCGTGCACTCT-GAAGTGCAGGTCGTGGAATCTGGCGGAGGACTGGTTCAGCCTAAGGGCAGCCTGAAGCTGTCTTGTGCCGCCAGCGGCTTCACCTTCAACACCTACGCCATGAACTGGGTCCGACAGGCCCCTGGCAAAGGCCTTGAATGGGTCGCCAGAATCAGAAGCAAGAGCAACAATTACGCCACCTACTACGCCGACAGCGTGAAGGACAGATTCACCATCAGCCGGGACGACAGCCAGAGCATGGTGTACCTGCAGATGAACAACCTGAAAACCGAGGACACCGCCATGTACTACTGTGTCGGCGGAGGCGATTTTTGGGGCCAGGGAACAGCTCTGACAGTGTCCAGC-GCCTCTACAAAGGGCCCTAGCGTTTTCCCACTGGCTCCCAGCAGCAAGTCTACAAGCGGAGGAACAGCCGCTCTGGGCTGCCTGGTCAAGGATTACTTTCCCGAGCCTGTGACCGTGTCCTGGAATAGCGGAGCACTGACAAGCGGCGTGCACACCTTTCCAGCTGTGCTGCAAAGCAGCGGCCTGTACTCTCTGAGCAGCGTGGTCACAGTGCCTAGCTCTAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAATGTGAACCACAAGCCTAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAACCCAAGAGCTGCGACAAGACCCACACCTGTCCTCCATGTCCTGCTCCAGAACTGCTCGGCGGACCTTCCGTGTTCCTGTTTCCTCCAAAGCCTAAGGATACCCTGATGATCAGCAGAACCCCTGAAGTGACCTGCGTGGTGGTGGATGTGTCCCACGAGGATCCCGAAGTGAAGTTCAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAAGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCTAGAGAGGAACAGTACAACAGCACCTACAGAGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCCTGCTCCTATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTAGGGAACCCCAGGTTTACACACTGCCTCCAAGCAGGGACGAGCTGACCAAGAATCAGGTGTCCCTGACCTGCCTCGTGAAGGGCTTCTACCCTTCCGATATCGCCGTGGAATGGGAGAGCAATGGCCAGCCTGAGAACAACTACAAGACAACCCCTCCTGTGCTGGACAGCGACGGCTCATTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACAGTGGACAAGTCCAGATGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGCAGCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACCCAGAAGTCCCTGAGCCTGTCTCCAGGCAAAGGCGGCGGATCT-ACACACAGACCTCCAATGTGGTCCCCAGTGTGGCCT-TGA-TAAGCTT(配列番号20)
完全長軽鎖:
EcoRI--Kozak配列--人工信号ペプチド--タウC3軽鎖可変領域--ヒトIgκ定常領域(P01834)--停止コドン--HindIII
軽鎖配列:233aa
MGWSCIILFLVATATGVHS-DIQMTQSPSSLSASLGERVSLTC-RASQEISVYLS-WFQQKPDGTIKRLIY-GAFTLDS-GVPKRFSGSRSGSDYSLTISSLESEDFADYYC-LQYVRYPWT-FGGGTKLEIK-RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC.(配列番号21)
DNA配列:726bp
GAATTC-CC-GCCGCCACC-ATGGGCTGGTCCTGCATCATCCTGTTTCTGGTGGCCACAGCCACAGGCGTGCACAGC-GATATCCAGATGACACAGAGCCCCAGCAGCCTGTCTGCCTCTCTGGGAGAAAGAGTGTCCCTGACCTGCAGAGCCAGCCAAGAGATCAGCGTGTACCTGAGCTGGTTCCAGCAGAAGCCTGACGGCACCATCAAGCGGCTGATCTACGGCGCCTTCACACTGGATAGCGGCGTGCCCAAGAGATTCTCCGGCAGCAGATCTGGCAGCGACTACAGCCTGACAATCAGCTCCCTGGAAAGCGAGGACTTCGCCGACTACTACTGCCTGCAGTACGTGCGCTACCCCTGGACATTTGGCGGCGGAACAAAGCTGGAAATCAAG-CGGACAGTGGCCGCTCCTAGCGTGTTCATCTTTCCACCTAGCGACGAGCAGCTGAAGTCTGGCACAGCCTCTGTCGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCCAGAGAAGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAACGCCCTGCAGTCCGGCAATAGCCAAGAGTCTGTGACCGAGCAGGACAGCAAGGACTCCACCTATAGCCTGAGCAGCACCCTGACACTGAGCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAAGTGTACGCCTGCGAAGTGACCCACCAGGGCCTTTCTAGCCCTGTGACCAAGAGCTTCAACCGGGGCGAATGT-TGA-T-AAGCTT.(配列番号22)
【0157】
図1A及び
図1Bのそれぞれに表される、得られた構築物のSDS-Page及びウェスタンブロット解析。レーンM1:タンパク質マーカ、TaKaRa、Cat.No.3452。レーンM2:タンパク質マーカ、GenScript、Cat.No.M00521。レーン1:還元条件。レーン2:非還元条件。
【0158】
以下の一般的な手順を使用した:
【0159】
プラスミド調製:
1)標的DNA配列を設計、最適化、かつ合成した;
2)完全配列をpcDNA3.4ベクターにサブクローニングした;
3)トランスフェクショングレードのプラスミドを、Expi293F細胞発現のために最大限調製した。
【0160】
細胞培養及び一過性トランスフェクション:
1)Expi293F(商標)細胞を、血清を含まないExpi293(商標)発現培地(Thermo Fisher Scientific)中で増殖させた。
2)細胞を、オービタルシェーカ(VWR Scientific)上で、37℃で8%のCO2を含む三角フラスコ(Corning Inc.)中に維持した。
3)トランスフェクションの前日に、細胞をCorning社製の三角フラスコ中で適切な密度にて播種させた。
4)トランスフェクション当日、DNA及びExpiFectamine(商標)293試薬を最適な比率で混合し、次いでトランスフェクションの準備をした細胞と共に、フラスコに加えた。
5)標的抗体をコードする組換えプラスミドを、Expi293F細胞培養の懸濁液中へと過渡的に同時導入した。トランスフェクション後およそ16~18時間で、ExpiFectamine(商標)293トランスフェクションエンハンサ1及びExpiFectamine(商標)293トランスフェクションエンハンサ2を各フラスコに加えた。6日目に採取された細胞培養物の上清を精製するために使用した。
【0161】
精製及び分析:
1)細胞培養ブロスを遠心分離し、その後ろ過した。
2)ろ過された細胞培養物の上清を、適切な流速にてアフィニティー精製カラム上へと充填した。
3)適切な緩衝液で洗浄及び溶出した後、溶出された画分をプールし、緩衝液を最終調合用緩衝液(final formulation buffer)に交換した。
4)精製されたタンパク質をSDS-PAGE、ウェスタンブロッティングにより解析し、分子量及び純度を測定した。
5)A280法により濃度を測定した。
【0162】
神経毒性指標として、ミトコンドリア形態のタウC3誘発変化を予防する抗タウC3抗体の能力を、タウC3プラスミドで遺伝子導入された培養ニューロンを使用するか、又はFLT(配列番号1)のカスパーゼ3切断を誘発するため、アポトーシス侵襲に細胞をばく露することで試験した。
【0163】
免疫組織化学を使用して、抗タウC3抗体-タウC3複合体を同定し、高解像蛍光顕微鏡法により、培養ニューロンでのそれらの細胞内局在及び脳スライスを調査した。
【0164】
例2
マウスの抗タウC3抗体(「TBL-100」)のインターナリゼーション及び保持と、例1の融合構築物を比較した。
【0165】
例1の融合構築物のインターナリゼーション及び保持の速度は、マウスの抗タウC3抗体の速度よりも大きいように見えた。
【0166】
リソソームマーカを用いた融合構築物の共局在化、及びバフィロマイシンを用いた処置後の試験物質の保持の上昇は、インターナライズされたマウスの抗タウC3抗体を、例1の融合構築物よりも、リソソーム活性により更に効率的に除去することができることを示唆する。
【0167】
プロジェクト方法論の概要
細胞
ヒト脳微小血管内皮細胞(HBMVEC)(iX細胞)を、384ウェルプレートのウェルごとに1500細胞にて蒔き、バフィロマイシンの存在下及びこれを含まない状態の両方にて、マウスの抗タウC3抗体及び例1の融合構築物(「試験物質」)のそれぞれを用いた処置の前に24時間にわたり培養する。
【0168】
処置
マウスの抗タウC3抗体及び融合構築物試験抗体を、1:500、1:100、1:20の3点用量反応にて3時間、6時間及び24時間の処置ばく露で試験する。同じプレート上の並行ウェルを、0.1%のDMSO又は100nMのバフィロマイシンのいずれかでもまた処理し、試験物質のインターナリゼーション後のリソソーム活性の効果を測定する。3つの時点のそれぞれについて適切な時間経過の後、細胞をPFA溶液中で固定及び透過処理し、ヤギブロック緩衝液中にて一晩ブロックする。
【0169】
分析
神経突起伸長の自動化された定量分析及び神経細胞の健康状態に関連する標準的な計量は、Thermo CX7 HCSを使用する。機器使用及び分析一式20倍の対物レンズを使用し、1ウェルごとに9視野を取得し、条件ごとに最低4反復ウェル。
プロジェクト方法論の詳細
1.HBMVEC細胞(IX細胞)を解離し、Countess IIセルカウンタを使用して計数する。
2.14mLの完全培地及び1.05×106細胞の混合物を調製する。
3.低容量の384ウェルプレートの700ウェルに十分(ウェルあたり20μL/1500細胞)。
4.細胞を3つのプレートのそれぞれへと配列(3時間、6時間、24時間の試験物質処理)。
5.播種細胞を37℃のインキュベータに24時間にわたって返却。
6.24時間の前培養後、8mLの完全培地中で、TBL-100及びTBL-110(1:500、1:100、1:20)の希釈液を調製。
・過剰量であることで、液体処理機器による完全培地の変更の実施が可能となる。
6.各希釈液を2つの同等の容量に分ける。
7.そのうちの1つに、バフィロマイシンストックを加え、100nMの最終濃度を得る。
8.Apricot液体処理プラットフォームを使用し、完全培地の変更を実施。
9.プレートをインキュベータに3時間、6時間、及び24時間にわたり戻す。
10.各時点のインキュベーションの終わりにあたり、4%のPBS中PFA溶液を使用して20分間固定し、PBSで洗浄し、細胞を透過処理する。
11.ヤギブロック緩衝液中にて、一晩ブロックする。
12.3つのプレート全てのそれぞれのウェルへ、一次抗体の以下の混合物を添加する。
・トランスフェリン受容体抗体(1:400ウサギ一次)[細胞シグナリング技術 13208S]
・LAMP2抗体(1:200ラット一次)[Abcam-ab13524]
13.プレートを4℃の冷凍庫に一晩戻す
14.二次抗体の以下の混合物を加え、室温で1時間にわたり標識化する前に、Apricotを使用してプレートをPBSでそれぞれ4回洗浄する。
・ヘキスト(1:1000、核の検出用に386チャネルを占有)
・ヤギ抗マウス(1:1000 TBL100/110の検出用に488チャネルを占有)、
・ヤギ抗ウサギ(1:1000 トランスフェリンRの検出用に560チャネルを占有)、
・ヤギ抗ラット(1:1000 LAMP2の検出用に650チャネルを占有)
15.Apricotを使用して二次抗体混合物を除去し、抗菌薬/抗真菌薬及びアジ化ナトリウムを含有するPBSでウェルを充填する。
16.プレートを密封し、Thermo Scientific CellInsight CX7機器及び20倍の対物レンズを使用して画像化する。
【0170】
バフィロマイシン処理後のTBL-100(マウスの抗タウC3抗体)の保持の上昇は、未処理の細胞では、リソソームによりこれが容易に除去されることを示唆した。
【0171】
両方の試験物質は、後の時点にて、トランスフェリン受容体(TR)を用いたものよりも高レベルのリソソームマーカであるLAMP2との共局在を示すが、TBL-100(マウスの抗タウC3抗体)は、より早期の時点にて両方とより容易に共局在し、これはTRによる迅速な取込み及びリソソームによるその後の除去を示唆する。
【0172】
LAMP2又はTRのいずれとも共局在しない高レベルの細胞内TBL-110(例1の融合構築物)は、この試験物質がインターナリゼーション時に放出され、代替的な機構により取り込まれることを示唆する。
【0173】
例3
例2の知見は、ヒト、サル及び脳微小血管細胞(HBMVEC)にて確認された。
【0174】
プロジェクト方法論の概要
細胞
Creative Bioarrayからのヒト、サル又はマウスの脳微小血管内皮細胞(BMVEC)を、384ウェルプレートのウェルあたり1500細胞で蒔き、100nMのバフィロマイシンの存在下及びこれを含まない状態の両方にて、マウスの抗タウC3抗体及び例1の融合構築物のそれぞれを用いた処理の前に24時間培養した。
【0175】
処置
マウスの抗タウC3抗体(TBL-100)及び例1の融合構築物(TBL-110)(正確には「試験物質」)を、1:500、1:100、1:20の3点用量反応にて24時間の処置ばく露で試験した。同じプレート上の並行ウェルを、0.1%のDMSO又は100nMのバフィロマイシンのいずれかでもまた処理し、試験物質のインターナリゼーション後のリソソーム活性の効果を測定した。3つの時点のそれぞれについて適切な時間経過の後、細胞をPFA溶液中で固定及び透過処理し、ヤギブロック緩衝液中にてブロックした。
【0176】
分析
標準的な計量の自動化された定量分析を、Thermo CX7 HCS機器及び分析一式を使用して実施した。40倍の対物レンズを使用し、1ウェルごとに16視野を取得し、条件ごとに最低8反復ウェル。
【0177】
プロジェクト方法論の詳細
1.BMVEC細胞を解離し、Countess IIセルカウンタを使用して計数する。
2.24時間の試験物質処理のために細胞をプレートへと配列。
3.播種細胞を37℃のインキュベータに24時間にわたって返却。
4.24時間の前培養後、8mLの完全培地中で、マウスの抗タウC3抗体及び例1の融合構築物(1:500、1:100、1:20)の希釈液を調製。
・過剰量であることで、液体処理機器による完全培地の変更の実施が可能となる。
5.各希釈液を2つの同等の容量に分ける。
6.そのうちの1つに、バフィロマイシンストックを加え、100nMの最終濃度を得る。
7.Apricot液体処理プラットフォームを使用し、完全培地の変更を実施。
8.プレートをインキュベータに24時間にわたり戻す。
9.各時点のインキュベーションの終わりにあたり、4%のPBS中PFA溶液を使用して20分間固定し、PBSで洗浄し、細胞を透過処理する。
10.ヤギブロック緩衝液中にて、室温で1時間ブロックする。
11.3つのプレート全てのそれぞれのウェルへ、一次抗体の以下の混合物を添加する。
・トランスフェリン受容体抗体(1:200ウサギ一次)[細胞シグナリング技術 13208S]
・LAMP2抗体(1:200ラット一次)[Abcam-ab13524]
12.プレートを4℃の冷凍庫に一晩戻す
13.二次抗体の以下の混合物を加え、室温で1時間にわたり標識化する前に、Apricotを使用してプレートをPBSでそれぞれ5回洗浄する。
・ヘキスト(1:1000、核の検出用に386チャネルを占有)
・ヤギ抗マウス(1:1000 マウスの抗タウC3抗体/例1の融合構築物の検出用に488チャネルを占有)、
・ヤギ抗ウサギ(1:1000 トランスフェリンRの検出用に560チャネルを占有)、
・ヤギ抗ラット(1:1000 LAMP2の検出用に650チャネルを占有)
14.Apricotを使用して二次抗体混合物を除去し、抗菌薬/抗真菌薬及びアジ化ナトリウムを含有するPBSでウェルを充填する。
15.プレートを密封し、Thermo Scientific CellInsight CX7機器及び40倍の対物レンズを使用して画像化する。
【0178】
結果概要
1.例1の融合構築物(TBL-110)のインターナリゼーション及び保持の速度は、ヒト、サル、及びマウスBMVEC株におけるマウスの抗タウC3抗体(TBL-100)の速度よりも大きいように見える。
【0179】
2.マウスの抗タウC3抗体と比較すると、例1の融合構築物の保持の上昇は、バフィロマイシンが存在しない状態では最大であった(すなわち、バフィロマイシンの存在下で、試験濃度が最高である場合には、マウスの抗タウC3抗体及び例1の融合構築物の両方は、同様に高レベルの保持を有する)。
【0180】
3.バフィロマイシンの追加は、ヒト及びサルBMVEC細胞株について、例1の融合構築物よりもマウスの抗タウC3抗体の保持を優先的に上昇させた。
【0181】
4.トランスフェリン-R及びLAMP2発現レベルは、いずれかの試験物質の増加した投与量により著しく影響されなかった。
【0182】
5.マウスの抗タウC3抗体及び例1の融合構築物の両方は、トランスフェリン受容体及びLAMP2との部分的な共局在を示した。
【0183】
したがって、例1の構築物(TBL-110)は、交差種反応性を示し、ヒト、サル及びマウス細胞株で機能する。この知見により、例えば、発症前の薬物動態(PK)、薬力学(PD)及び動物における融合構築物の毒性学的研究、ヒトに対する動物モデルにおける研究にて生成されたデータの考えられる外挿が可能となる。
【0184】
例4
タウC3を過剰発現したAAVマウスモデルに、IgG1又は重鎖のC末端にてTfr結合ペプチドに融合された抗タウC3 IgG1(TBL-110)mAbを用いて毎週6ヶ月間、腹腔内(IP)に注射した。脳切片を免疫組織化学により解析し、2つの異なる濃度のコントロールであるIgG又はTBL-100の相対的な脳取込みを測定した。抗体染色した脳切片の画像を量的に解析し、統計学的有意性に関して比較した。画像を
図29A~
図29Dで再現し、定量分析及び脳解析の結果を表1に提供し、
図30にこれを示す。結果は、コントロールであるIgGと比較すると、例1の融合構築物であるTBL-110の有意な脳取込みを確認した。この取込みは、より高い投与量にて発生した最大取込みにより、用量依存的であったことも確認した。結果は以下の通りである。
【0185】
【0186】
前述の明細書では、特定の例示的な実施形態及びその例を参照して本発明を説明した。しかしながら、添付の特許請求の範囲に記載される本発明のより広い精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることは明らかであろう。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な方法で考慮されるべきである。
【配列表フリーテキスト】
【0187】
配列表2 <223>輸送ペプチド
配列表3 <223>輸送ペプチド
配列表4 <223>輸送ペプチド
配列表5 <223>輸送ペプチド
配列表6 <223>リンカー
配列表7 <223>重鎖CDR1(IMGT定義)
配列表8 <223>重鎖CDR2(IMGT定義)
配列表9 <223>重鎖CDR3(IMGT定義)
配列表10 <223>軽鎖CDR1(IMGT定義)
配列表11 <223>軽鎖CDR2(IMGT定義)
配列表12 <223>軽鎖CDR3(IMGT定義)
配列表13 <223>重鎖 HM
配列表14 <223>軽鎖 KE
配列表15 <223>軽鎖 KN
配列表16 <223>軽鎖 KO
配列表17 <223>軽鎖 KP
配列表18 <223>軽鎖 KM
配列表19 <223>TBL-110 重鎖可変領域
配列表20 <223>TBL-110 重鎖可変領域
配列表21 <223>TBL-110 軽鎖可変領域
配列表22 <223>TBL-110 軽鎖可変領域
配列表23 <223>TBL-110 重鎖可変領域
配列表24 <223>TBL-100 重鎖可変領域
配列表25 <223>TBL-100 軽鎖可変領域
配列表26 <223>TBL-110 重鎖可変領域
配列表27 <223>TBL-110 軽鎖可変領域
配列表28 <223>輸送ペプチド
【図】
【配列表】
【国際調査報告】