(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(54)【発明の名称】エマルション製造マイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
B01F 23/41 20220101AFI20220603BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220603BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
B01F3/08 A
B01F5/06
B01J19/00 321
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560555
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2020060109
(87)【国際公開番号】W WO2020208121
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521286743
【氏名又は名称】パリ シアンス エ レットル
【氏名又は名称原語表記】PARIS SCIENCES ET LETTRES
【住所又は居所原語表記】60, rue Mazarine, 75006 Paris, FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】518364366
【氏名又は名称】エコール シュペリュール ドゥ フィシック エ ドゥ シミー アンダストリエル ドゥ ラ ビル ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ブルモン
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ビベット
(72)【発明者】
【氏名】グベナエール バザン
【テーマコード(参考)】
4G035
4G075
【Fターム(参考)】
4G035AB37
4G035AB40
4G035AC26
4G035AE13
4G035AE17
4G075AA13
4G075AA29
4G075AA61
4G075BB08
4G075BD15
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075FA01
4G075FA12
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC20
(57)【要約】
本発明は、エマルション製造マイクロ流体デバイス(100,100’,100’’)であって、エマルション製造マイクロ流体デバイスが、被分散相(2a)を注入するように形成された入口ポートを含む第1チャネル(10,10’、10’’)と、連続相(2c)を注入するように形成された入口ポートとエマルション出口ポートとを含む第2チャネル(20,20’,20’’)と、マイクロチャネル(30,30’,30’’)の少なくとも1つの列であって、マイクロチャネルのそれぞれの高さh0が第1チャネルの高さh1よりも小さい、マイクロチャネル(30,30’,30’’)の少なくとも1つの列と、を含み、第2チャネルが、それぞれのマイクロチャネルの流出口(34,34’)に接続された第1部分(21,21’,21’’)と、第1部分(21,21’,21’’)に沿った少なくとも第2部分(22,22’,22’’)とを含み、第1部分が、マイクロチャネルの列と第2部分との間にあり、第1部分の高さh2aがそれぞれのマイクロチャネルの高さh0よりも大きく、そして第2部分の高さh2bが第1部分の高さh2aよりも大きい、エマルション製造マイクロ流体デバイスを扱う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルション製造マイクロ流体デバイス(100,100’,100’’)であって、前記エマルション製造マイクロ流体デバイスが、
- 第1チャネル(10,10’、10’’)であって、被分散相(2a)を当該第1チャネル内へ注入するように形成された入口ポート(13,13’、13’’)を含む、第1チャネル(10,10’、10’’)と、
- 第2チャネル(20,20’,20’’)であって、前記第2チャネル内へ連続相(2c)を注入するように形成された入口ポート(23’,23’’)と、前記デバイスからエマルションを抽出するように形成されたエマルション出口ポート(24’,24’’)とを含む、第2チャネル(20,20’,20’’)と、
- サイド・バイ・サイド状に配置された、マイクロチャネル(30,30’,30’’)の少なくとも1つの列であって、それぞれのマイクロチャネルが、前記第1チャネルからの流入口(33’,33’’)と、前記第2チャネルへの流出口(34’,34’’)とを含み、前記マイクロチャネルのそれぞれの高さh0が前記第1チャネルの高さh1よりも小さい、マイクロチャネル(30,30’,30’’)の少なくとも1つの列(30,30’,30’’)と、
を備えており、
前記デバイスは、
前記第2チャネル(20,20’,20’’)が、それぞれのマイクロチャネル(30,30’,30’’)の流出口(34,34’)に接続された第1部分(21,21’,21’’)と、前記第1部分(21,21’,21’’)に沿った少なくとも第2部分(22,22’,22’’)とを含み、前記第1部分(21,21’,21’’)が、前記マイクロチャネル(30,30’,30’’)の列と前記第2部分(22,22’,22’’)との間にあり、前記第1部分(21,21’,21’’)の高さh2aがそれぞれのマイクロチャネル(30,30’,30’’)の高さh0よりも大きく、そして前記第2部分(22,22’,22’’)の高さh2bが前記第1部分(21,21’,21’’)の高さh2aよりも大きいことを特徴とする、エマルション製造マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つのマイクロチャネル(30,30’,30’’)が、一定の幅Wを有する少なくとも一部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
マイクロチャネル(30,30’,30’’)の少なくとも一部の幅Wが、前記マイクロチャネルの高さh0の0.01~10000倍であることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
少なくとも1つのマイクロチャネル(30,30’,30’’)がフレア状部分を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記マイクロチャネル(30,30’,30’’)の列が、流出口の位置で少なくとも2つのマイクロチャネルに共通する部分を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記マイクロチャネル(30,30’,30’’)の列が、少なくとも10個のマイクロチャネル、例えば100~100000個のマイクロチャネル、好ましくは約1000個のマイクロチャネルを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2チャネル(20,20’,20’’)の第1部分(21,21’,21’’)の高さh2aが、マイクロチャネル(30,30’,30’’)の高さh0よりも2~100倍、好ましくは10倍大きいことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第2チャネル(20,20’,20’’)の第2部分(22,22’,22’’)の高さh2bが、前記第2チャネル(20,20’,20’’)の第1部分(21,21’,21’’)の高さh2aよりも2~100倍、好ましくは10倍大きいことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1チャネル(10,10’、10’’)の高さh1がマイクロチャネル(30,30’,30’’)の高さh0よりも2~1000倍、好ましくは10倍大きいことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1チャネル(10,10’、10’’)の幅が前記第1チャネルの高さh1の1~100倍であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2チャネル(20,20’、20’’)の幅が前記第2チャネルの高さh2bの1~100倍であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1チャネル(10,10’、10’’)及び/又は前記第2チャネル(20,20’、20’’)及び/又は前記マイクロチャネル(30,30’,30’’)の表面の少なくとも一部に、前記表面を親水性にするために、親水性分子が吸着又は合体されており、あるいは前記第1チャネル(10,10’、10’’)及び/又は前記第2チャネル(20,20’、20’’)及び/又は前記マイクロチャネル(30,30’,30’’)の表面の少なくとも一部に、前記表面を疎水性にするために、疎水性分子が吸着又は合体されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション製造マイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションは、通常は不混和性の少なくとも2種の液体の混合物である。定義によれば、1種の液体(分散相と呼ばれる)が別種の液体(連続相と呼ばれる)中に分散される。
【0003】
エマルションには2種の主要タイプがある。すなわち、油が分散相であり且つ水が連続相である水中油型エマルション様の言葉通りのエマルションと、水が分散相であり且つ油が連続相である油中水型エマルション様の逆エマルションが存在する。
【0004】
被分散相は、いくつかの混和性流体の混合物、両親媒性又は非両親媒性の小分子、巨大分子の溶液、又は固体又は液体の粒子の分散体であって、従って、後者は、二重又は多重のエマルションを形成する分散体、又は種々の上述の選択肢の組み合わせであってよい。
【0005】
連続相は大まかに言えば1種又は2種以上の界面活性剤(両親媒性分子)、並びに溶質、ポリマー、又は粒子さえも含有する。
【0006】
直径が数マイクロメートルの滴を得るための乳化方法、例えば一方が回転する2つの同軸のシリンダを備えるデバイスを使用して得られる、剪断による乳化方法、又は被分散相がそれを通して注入される多孔質材料を使用することに基づくメンブレンによる乳化方法が知られている。
【0007】
しかしながら、これらの方法によってもたらされるエマルション滴が特徴づけられる、滴径の標準偏差と平均滴径との比として定義される滴径変動係数は、少なくとも15%である。
【0008】
従って、マイクロ流体工学が、較正されたエマルション滴を得るための効率的なツールと考えられている。
【0009】
例えば、特許文献1にはマイクロ流体デバイスが記載されている。
【0010】
このようなデバイスでは、被分散相が第1チャネルから、互いに平行に配置されたマイクロチャネルを介して第2チャネルへ達する。マイクロチャネルの高さはチャネルの高さよりも小さい。
【0011】
マイクロチャネルの一方の端部で滴が形成される。この端部は、連続相が注入される第2チャネルに、マイクロチャネル網に対して横方向に開口している。滴径はマイクロチャネルの高さに対して比例し、マイクロチャネルの幅に対する依存性はより小さい。臨界流量未満では、前記マイクロチャネルのいずれかの側における圧力に依存するマイクロチャネル内の被分散相の流量に対する滴径の依存性は弱い。このような臨界流量を超えると、滴径は著しく大きくなり、マイクロチャネル網内部の滴径分布を広くする。
【0012】
さらに、第2チャネル内に存在するエマルション滴は連続相によって、デバイスの流出口へ向かって動かされる。この流出口にはタンクが接続されている。
【0013】
マイクロチャネルは第2チャネルに対して横方向に直列に配置されているので、連続相内の滴の量は連続相の流れ方向に沿って増大する。
【0014】
過度に濃縮されたエマルションはこのエマルションの製造に不都合な作用を及ぼすおそれがある。すなわち、連続相中の被分散相(すなわち滴)の体積分率が増大すると、エマルションの粘度、ひいては対応圧力損失が増大する。これに加えて、滴間に存在する付着力もこの作用を増大させる。
【0015】
圧力調整によって流量制御するためには、連続相の圧力を調節することにより、デバイスの目詰まりを回避しなければならない。
【0016】
しかしながら、製造速度が比較的低い小さな滴径のために流量制御を用いることは困難であり得る。エマルションを十分に希釈するために高い流量の連続相を与えることが多くの場合に必要である。
【0017】
さらに、第1マイクロチャネルにおける圧力条件が不都合な場合がある。マイクロチャネルを通る被分散相の流量はマイクロチャネルのいずれかの側における圧力に依存する。デバイスの目詰まりを回避するために連続相の圧力を高くすると、その結果として、上流側に位置するマイクロチャネルの滴製造部分の変更、又は停止を必要とすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願第14/890,817号明細書(米国特許出願公開第2016/0091145号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、エマルションを製造するためのマイクロ流体デバイスであって、顕著な均質性、すなわち15%以下、又は10%以下の滴径分布係数と、数マイクロメートル、例えば数マイクロメートルと数十マイクロメートルとの間で変化し得る平均的滴径(average size)、例えば平均滴径(mean size)とを示すエマルションを製造するためのマイクロ流体デバイスに関する。
【0020】
本発明はまた、エマルションの製造条件が改善されるのを可能にする、例えばこのエマルションの連続製造及び大量生産を可能にするマイクロ流体デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明は、エマルション製造マイクロ流体デバイスであって、前記エマルション製造マイクロ流体デバイスは、
- 第1チャネルであって、被分散相を当該第1チャネル内へ注入するように形成された入口ポートを含む、第1チャネルと、
- 第2チャネルであって、前記第2チャネル内へ連続相を注入するように形成された入口ポートと、前記デバイスからエマルションを抽出するように形成されたエマルション出口ポートとを含む、第2チャネルと、
- サイド・バイ・サイド状に配置された、マイクロチャネルの少なくとも1つの列であって、それぞれのマイクロチャネルが、前記第1チャネルからの流入口と、前記第2チャネルへの流出口とを含み、前記マイクロチャネルのそれぞれの高さh0が前記第1チャネルの高さh1よりも小さい、マイクロチャネルの少なくとも1つの列と、
を備えており、
前記デバイスは、
前記第2チャネルが、それぞれのマイクロチャネルの流出口に接続された第1部分と、前記第1部分に沿った少なくとも第2部分とを含み、前記第1部分が、前記マイクロチャネルの列と前記第2部分との間にあり、前記第1部分の高さh2aがそれぞれのマイクロチャネルの高さh0よりも大きく、そして前記第2部分の高さh2bが前記第1部分の高さh2aよりも大きいことを特徴とする、エマルション製造マイクロ流体デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明は、マイクロチャネルに沿った緻密エマルションによりエマルションを構成するための滴形成工程(すなわち乳化工程)と、エマルションを希釈し、ひいてはデバイスからのその流出を容易にするための横方向流によるエマルション収集工程とを分離する。
【0023】
換言すれば、第2チャネルは、入口ポートと出口ポートとの間に少なくとも連続相を含む流れを駆動するように形成されており、そしてマイクロチャネルは、被分散相の滴流を、第2チャネル流に対して横方向に第2チャネル内へ注入するように形成されている。
【0024】
本発明は、マイクロチャネルの流出口における流れを均質化し、そして第2チャネルの第1部分と第2部分との間に流体力学的抵抗の変化を形成するのを可能にする。
【0025】
これを目的として、本発明は第2チャネルを2つの部分、すなわち、マイクロチャネルから滴形成工程を実施するように形成された第1部分と、滴収集工程を実施するように形成された第2部分とに分離する。
【0026】
第2チャネルは少なくとも2つの異なる高さによって特徴づけられる。すなわち、
- マイクロチャネルの近くの第1部分は、マイクロチャネルの高さよりも数倍大きい高さh2aによって特徴づけられ、そして、
- 第1部分に隣接する第2部分は、第1部分の高さよりも数倍大きい少なくとも1つの高さh2bによって特徴づけられる。
【0027】
このようなデバイスは「閉じたデバイス(closed device)」とも呼ばれる。それというのも、これは被分散相のための入口ポートと、エマルション出口ポートと、デバイス内で走行する流れとを含み、これにより、デバイス内で形成された滴を収集するのが可能になる(すなわちエマルションはデバイス内で形成される)からである。
【0028】
第2チャネルの第1部分の高さh2aは好ましくは一定であり、あるいはマイクロチャネルから第2部分までわずかに変化し、例えば増大することができるが、しかしいずれの場合にも、第1部分の高さh2aはマイクロチャネルの高さh0よりも著しく大きく、そして第2チャネルの第2部分の高さh2bは第1部分の高さh2aよりも著しく大きい。
【0029】
ここでは、デバイスの長さ方向は、入口ポートとエマルション出口ポートとの間の第2チャネルに沿った流れの方向であるものとして考えられる。さらに、デバイスの幅方向は、デバイスの長さ方向に対して直交方向であるものとして考えられ、そして高さ方向は長さ方向及び幅方向に対して直交方向である。
【0030】
さらに、マイクロチャネルの長さ方向はマイクロチャネルの流入口から流出口への方向として考えられる。マイクロチャネルの幅方向はその長さ方向に対して直交方向である。マイクロチャネルが第2チャネルに対して垂直である場合には、マイクロチャネルの幅方向はデバイスの長さ方向に対して平行に延びる。マイクロチャネルの高さ方向はデバイスの高さ方向に対して平行である。
【0031】
同じことがデバイスの高さ方向に対して平行な高さ方向を有する第1チャネルにも当てはまる。
【0032】
マイクロチャネルの列の少なくとも1つのマイクロチャネルの高さh0は一定のものとして考えられる。
【0033】
例えばh0は約2μmに等しい。
【0034】
マイクロチャネルは、一定の幅Wを有する(その長さに沿った)少なくとも一部を含む。
【0035】
一実施態様によれば、マイクロチャネルは、増大した幅を有する部分、例えばフレア状部分を含むことができる。このような部分は一定の幅を有する部分と第2チャネルとの間にあることが好ましい。すなわちフレア状部分は好ましくはマイクロチャネルの流出口を含む。
【0036】
一実施態様によれば、一定の幅Wを有する少なくとも2つのマイクロチャネルの部分は合体している。
【0037】
例えば、マイクロチャネル列は、流出口位置で、同じ高さh0を有する、少なくとも2つのマイクロチャネルに共通した部分を含む。
【0038】
一実施態様によれば、マイクロチャネルの少なくとも一部の幅Wは、前記マイクロチャネルの少なくとも一部の高さh0の0.01~10000倍である。
【0039】
例えば、マイクロチャネルの少なくとも一部の幅Wは、その高さh0の2~10000倍、例えばその高さh0の2~1000倍、又は100又は20倍であり、好ましくは高さh0の5倍に等しい。
【0040】
例えばWは約10μmに等しい。
【0041】
例えば、約10μm(幅)×2μm(高さ)の、長さに沿って一定の幅を有するマイクロチャネルが、直径dが約8μmの滴を製造するように形成される。
【0042】
例えば、マイクロチャネルの少なくとも一部の幅Wは、その高さh0の0.01~1倍、好ましくはその高さh0の0.01~0.5倍である。
【0043】
このような場合、ある特定のマイクロ加工技術に基づいて、マイクロチャネルは幅よりも高さを大きくすることができる。
【0044】
別の実施態様によれば、マイクロチャネルの長さはその高さh0の2~1000倍、好ましくは100倍である。
【0045】
高さと組み合わせた長さの選択は、マイクロチャネルの流体力学的抵抗の調整を可能にする。
【0046】
例えば、2つの連続するマイクロチャネル間の距離eは、マイクロチャネルの幅Wの2~100倍、例えばマイクロチャネルの幅Wの約4倍に等しい。
【0047】
一実施態様によれば、マイクロチャネルの断面は方形、又は半円形、又は三角形である。
【0048】
例えば、方形断面の少なくとも1つの角隅が直角であるか又は湾曲しており、例えば丸みを付けられているか又は斜め面取りされている。
【0049】
別の実施態様によれば、マイクロチャネルのうちの少なくとも1つが、その長さに沿って少なくとも1つの溝を含むことができる。このような溝は、具体的にはマイクロチャネルの幅が極めて広く、すなわちその高さh0の20倍超である場合に、滴形成の局在化を容易にする。
【0050】
例えば、マイクロチャネル列は、少なくとも10個のマイクロチャネル、例えば100~100000個のマイクロチャネル、好ましくは約1000個のマイクロチャネルを含む。
【0051】
例えば、デバイスのマイクロ流体部分は好ましくは、長さL0が2cm~20cm、幅W0が0.5cm~10cm、そして高さが0.1cm~2cmである。
【0052】
連続相の圧力、ひいては流量は、乳化プロセスを変更することなしに、所望通りに製造中にエマルションを希釈するために調節することができ、このことは、中断のないエマルションの最適な製造、いわば連続的な製造を可能にする。
【0053】
結果として、単一の高さの第2チャネルを有するデバイスと比較して、マイクロチャネルの数を増やすことができる。このことはさらに製造速度を高める。
【0054】
このようなデバイスにおいて、被分散相はその入口ポートを介して第1チャネル内へ導入される。
【0055】
第1チャネルは任意には、開閉されるように形成された被分散相のための出口ポートを含むこともできる。
【0056】
第1チャネルの出口ポートが閉じていると、被分散相はマイクロチャネル列を強制的に通過させられる。マイクロチャネルは第2チャネルに通じている。第1チャネルの出口ポートが開いていると、マイクロチャネル列を貫流させる必要なしに第1チャネルをパージすることができる。
【0057】
被分散相が第1チャネルからマイクロチャネルを介して第2チャネルの第1部分へ達すると、第2チャネルの第1部分に開口するマイクロチャネルの端部で、滴が形成される。
【0058】
同時に、連続相は第2チャネル内へその入口ポートを介して注入され、そして滴を第2チャネルのエマルション出口ポートへ動かす。
【0059】
より具体的には、連続相は、例えば第2チャネルの第2部分内へ注入され、そして第2チャネルの第1部分内に広がる。
【0060】
例えば、第2チャネルは、例えば少なくともその入口ポートとそのエマルション出口ポートとの間で真直ぐであってよい。
【0061】
しかしながら、第2チャネルは蛇行状であってもよい。このことはさらにマイクロチャネルの数、ひいては製造速度の増大を可能にする。
【0062】
例えば、第2チャネルのエマルション出口ポートは、エマルションを収集するためにタンクと接続するように形成されている。
【0063】
例えば、このようなデバイスを使用して、バイオテクノロジー分野において有用であり得る機能化固形粒子を合成するための滴を製造することができる。
【0064】
一実施態様によれば、デバイスは2つのマイクロチャネル列を含む。
【0065】
一実施態様によれば、第1チャネル又は第2チャネルのうちの少なくとも一方のチャネルの両側に、1つのマイクロチャネル列が設けられている。
【0066】
例えば、デバイスは、少なくとも2つの第1チャネルと、2つの第1チャネルのうちの第1のものと第2チャネルとの間に位置する2つのマイクロチャネル列のうちの第1マイクロチャネル列と、2つの第1チャネルのうちの第2のものと第2チャネルとの間に位置する2つのマイクロチャネル列のうちの第2マイクロチャネル列と、を含むことができる。換言すれば、このような事例において、1つのマイクロチャネル列が両側に設けられた単一の第2チャネルがあり、そして両側には1つの第1チャネルも設けられている。
【0067】
あるいは例えば、デバイスは、少なくとも2つの第2チャネルと、2つの第2チャネルのうちの第1のものと第1チャネルとの間に位置する2つのマイクロチャネル列のうちの第1マイクロチャネル列と、2つの第2チャネルのうちの第2のものと第1チャネルとの間に位置する2つのマイクロチャネル列のうちの第2マイクロチャネル列と、を含むことができる。換言すれば、このような事例において、1つのマイクロチャネル列が両側に設けられた単一の第1チャネルがあり、そして両側には1つの第2チャネルも設けられている。
【0068】
第2チャネルの第1部分の高さはh2aである。
【0069】
例えば、第2チャネルの第1部分の高さh2aは、マイクロチャネルの高さh0よりも2~100倍、好ましくは10倍大きい。
【0070】
例えば、h2aは約20μmに等しい。
【0071】
例えば、第2チャネルの第2部分の高さh2bは、第2チャネルの第1部分の高さh2aよりも2~100倍、好ましくは10倍大きい。
【0072】
例えば、h2bは約200μmに等しい。
【0073】
第1チャネルは高さh1を有している。
【0074】
例えば、第1チャネルの高さh1は、マイクロチャネルの高さh0よりも2~1000倍、好ましくは10倍大きい。
【0075】
一実施態様によれば、第1チャネルの高さh1は、第2チャネルの第1部分の高さh2aに等しい。
【0076】
例えば、h1は約20μmに等しい。
【0077】
例えば、第1チャネルの幅は、高さh1の1~100倍である。
【0078】
例えば、第2チャネルの幅は、その第2部分の高さh2bの1~100倍である。
【0079】
例えば、第2チャネルの第1部分の幅は、高さh2aの1~100倍、好ましくは10倍であり、第2チャネルの第1部分の幅は、マイクロチャネルから第2チャネルの第2部分へ延びる第2チャネルの第1部分の寸法を指定する。
【0080】
マイクロ流体デバイスはガラスから成ると有利である。それというのも、ガラスはほとんどの溶媒と適合性があり、ひいてはより多様なエマルション製剤を使用することができる。
【0081】
また、ガラス基板を使用したマイクロ加工技術は、正確且つ再現可能なマイクロチャネルの特色をもたらす。
【0082】
別の有利な実施態様によれば、デバイスはシリコンから形成することができる。
【0083】
例えば、特に被分散相が有機相を含む場合に、ガラスが被分散相によって湿潤するのを制限又は防止するために、そして効率的な乳化工程を保証するために、第1チャネル、第2チャネル、及び/又はマイクロチャネルの表面のうちの少なくともいくつかが親水性(又は疎水性)であり、そしてエマルション製造中に可能な限り長い時間にわたって親水性(又は疎水性)であり続けることが望ましい。
【0084】
さらに、興味深い選択肢によれば、製造するためのエマルションのタイプに応じて、表面特性を親水性又は疎水性にするように、表面特性を改質することができる。
【0085】
これを目的として、一実施態様によれば、第1チャネル、及び/又は第2チャネル、及び/又はマイクロチャネルの表面の少なくとも一部に、親水性分子が吸着又は合体されて、表面を親水性にしており、あるいは第1チャネル、及び/又は第2チャネル、及び/又は前記マイクロチャネルの表面の少なくとも一部に、疎水性分子が吸着又は合体されて、表面を疎水性にしている。
【0086】
可能な場合には、第1チャネル、第2チャネル、及びマイクロチャネルの表面全体に、親水性又は疎水性の分子が被着される。
【0087】
親水性又は疎水性分子は、表面に対する高い付着エネルギーによって特徴づけることができる。
【0088】
一実施態様によれば、親水性又は疎水性分子はポリマーであってよい。
【0089】
興味深い親水性分子は、具体的にはガラス又はシリコンから成るデバイス用には、ポリ(エチレングリコール)(PEG)とカップリングされたシランであってよい。
【0090】
興味深い疎水性分子は、具体的にはガラス又はシリコンから成るデバイス用には、シラン、例えば有機化合物とカップリングされたシラン、例えばオクタデシルトリクロロシランのような有機官能性アルコキシシランであってよい。
【0091】
関連する方法は次の通りであってよい。
【0092】
例えば、表面をピラニア溶液、すなわち硫酸を過酸化水素(H2O2)と一緒に含む溶液で活性化する。
【0093】
次に、表面を濯ぎ、そしてその後、表面を親水性溶液又は疎水性溶液で官能化する。
【0094】
例えば、有機相の湿潤を防止する親水性又は疎水性分子を、表面上に吸着させる。
【0095】
例えば、有機相の湿潤を防止する親水性又は疎水性分子は表面上に共有結合される。
【0096】
一実施態様によれば、上述の特徴のうちの少なくとも一部を含むいくつかのデバイスを並列に配置して使用することができる。
【0097】
このことはさらに、エマルションの製造速度を高めることができる。
【0098】
例えば、上述の特徴の少なくとも一部を含むこのようなデバイスの製造方法は下記工程、すなわち
- ここではボトムプレートと呼ぶプレートを用意し、
- 第1チャネル、及び/又は第2チャネル、及び/又はマイクロチャネルの少なくとも一部をボトムプレート内に形成し、
- ボトムプレートを、ここではトッププレートと呼ぶプレートと集成することによりデバイスを形成する
工程を含むことができる。
【0099】
例えば、第1チャネル、及び/又は第2チャネル、及び/又はマイクロチャネルの少なくとも一部は、湿式又は乾式のエッチング、又はソフトリソグラフィによって、又はステレオリソグラフィのような3D印刷技術によって形成することができる。
【0100】
一実施態様によれば、この方法は、第1チャネル、及び/又は第2チャネル、及び/又はマイクロチャネルの相補部分をトッププレート内に形成する工程を含むこともできる。
【0101】
例えば、第1チャネル、及び/又は第2チャネル、及び/又はマイクロチャネルの相補部分は、湿式又は乾式のエッチング、又はソフトリソグラフィによって、又はステレオリソグラフィのような3D印刷技術によって形成することができる。
【0102】
この工程は好ましくは、トッププレートをボトムプレートと集成する前に行われる。
【0103】
例えば、ボトムプレート及び/又はトッププレートのエッチングは、異方性エッチングを含むことができる。
【0104】
例えば、ボトムプレート及び/又はトッププレートのエッチングは、等方性エッチングを含むことができる。
【0105】
もちろん、数多くの他の技術を利用することもできる。
【0106】
これに加えて、必要な場合には、互いに集成されるように形成されたボトムプレート及びトッププレートに、相異なる技術を適用することもできる。
【0107】
別の実施態様によれば、第2チャネルの第2部分は、半円筒体を得るように、ガラス基板(トッププレート及び/又はボトムプレート)をエッチングすることにより形成することができ、あるいは(トッププレート及び/又はボトムプレートを形成する)基板がシリコンから形成される場合には、三角形が得られる。
【0108】
別の実施態様によれば、デバイスの少なくとも一部を3D印刷法、例えばステレオリソグラフィによって形成して、種々異なる形状が提供されるのを可能にする。
【0109】
本発明のさらなる特徴及び利点が、図面に関連して以下に示す現時点で好ましい実施態様の説明に記載されており、またこの説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1】
図1は、従来技術に基づくマイクロ流体デバイスを概略的に示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明によるマイクロ流体デバイス100を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3Aは、
図2Aのマイクロ流体デバイスに準拠した第一実施態様に基づく、エマルションを製造するマイクロ流体デバイス100’を示す概略図であり(
図3A)、そして
図3Bは鎖線A-Aに沿って示す相応の断面図である。
【
図4】
図4A~4Iを含む
図4は、本発明によるデバイス内にチャネル又はマイクロチャネルを製造する種々の方法を示している。
【
図5】
図5は、本発明によるマイクロチャネルの3つの実施態様を示す図である。
【
図6】
図6は、
図3Aの実施態様に基づくマイクロ流体デバイスであって、被分散相の圧力が500hPa(mbar)に設定された状態で、連続相の2つの異なる圧力(Pc)に対応してエマルションを製造するマイクロ流体デバイスのスナップショットを示す。相異なるチャネルの高さが示されている。
【
図7】
図7は、
図3Aの実施態様及び
図6の試験に基づくガラスデバイスのマイクロチャネル列に沿ったマイクロチャネルの数の関数としての、液滴形成頻度を示す図である。
【
図8】
図8は、被分散相としてデカンを用いて、
図3Aに基づくデバイスによって製造されたエマルションの滴径分布を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施態様に基づくマイクロ流体デバイスを示す概略図である。
【
図10】
図10は、連続相の2つの異なる圧力(Pc)に対応してエマルションを製造する、
図9の実施態様に基づくマイクロ流体デバイスを示すスナップショットである。被分散相の圧力は350hPa(mbar)に設定される。相異なる領域の高さも示されている。
【
図11】
図11は、
図9の実施態様に基づくPDMS(ポリジメチルシロキサン)デバイスのマイクロチャネル列に沿ったマイクロチャネルの数の関数としての、液滴形成頻度を示す図である。横座標上の第1マイクロチャネルは、連続相の入口の近くに配置されたマイクロチャネルに相当する。連続相の2つの圧力(Pc)は
図10における値が用いられる。被分散相の圧力は350hPa(mbar)に設定される。
【発明を実施するための形態】
【0111】
図1は、従来技術に基づくマイクロ流体デバイス1を概略的に示す断面図である。
【0112】
このデバイス1は、第1チャネル1aと、第2チャネル1bと、第1チャネルを第2チャネルに接続するマイクロチャネル1cとを含む。
【0113】
使用中、例えば少なくとも1つの有機相を含む被分散相2aが第1チャネル1a内へ注入される。被分散相2aは、マイクロチャネル1cを通過し、そして第2チャネル1bに開口するマイクロチャネルの端部で滴2bを形成する。第2チャネル1b内には、連続相2c、例えば水性相が注入され、連続相は滴2bをデバイスのエマルション出口ポートへ動かす。
【0114】
連続相2c中の滴2bはエマルションを形成する。
【0115】
このような実施態様によれば、マイクロチャネル1cの高さh0は、第1チャネル1aの高さh1及び第2チャネル1bの高さh2よりも小さい。
【0116】
図1に示されているように、第2チャネル1bは一様の高さを有している。
【0117】
このような実施態様の欠点は、デバイスの具体的には少なくとも第2チャネル1bが容易に目詰まりし、エマルションの連続流をモニタリングすることが難しいことである。
【0118】
図2Aは、本発明によるマイクロ流体デバイス100を概略的に示す断面図である。
【0119】
このデバイス100は、第1チャネル10と、第2チャネル20と、第1チャネル10を第2チャネル20に接続するマイクロチャネル30とを含む。
【0120】
使用中、例えば少なくとも有機相を含む被分散相2aが第1チャネル10内へ注入される。被分散相2aは、マイクロチャネル30を通過し、そして第2チャネル20に開口するマイクロチャネルの流出口34で滴2bを形成する。第2チャネル20内には、連続相2c、例えば水性相が注入され、連続相は滴2bをデバイスのエマルション出口ポートへ動かす。より具体的には、連続相は好ましくはマイクロチャネルから出た滴流に対して横方向に流れることが好ましい。
【0121】
連続相2c中の滴2bはエマルションを形成する。
【0122】
この実施態様では、第2チャネル20は、マイクロチャネル30の流出口34が開口する第1部分21と、第2部分22とを含み、第1部分21はマイクロチャネル30と第2部分22との間に位置する。
【0123】
このような実施態様によれば、マイクロチャネル30の高さh0は、第1チャネル10の高さh1よりも小さい。これに加えて、第2チャネルの第1部分21の高さh2aは、マイクロチャネルの高さh0よりも大きく、そして第2チャネルの第2部分22の高さh2bは、第2チャネルの第1部分21の高さh2aよりも大きい。
【0124】
具体的な実施態様によれば、h0=2μm、h2a=20μm、及びh2b=200μmである。
【0125】
具体的な実施態様によれば、第1チャネル10の幅は500μmであり、第2チャネルの第1部分21の幅は200μmであり、そして第2チャネルの第2部分22の幅は1600μmである。
【0126】
図2Bは、
図2Aに基づくデバイスの試験的な製造及び使用を示す図である。
【0127】
デバイスの利用例によれば、被分散相2aは第1チャネル内に導入され、そしてマイクロチャネル30を通って流れる。
【0128】
並行して、場合によっては水性相を含む連続相2cが、矢印によって示されているように、第2チャネル20内に導入される。
【0129】
このように、この図は、連続相2cがマイクロチャネル30からの滴の到来に対して横方向に流れることを示している。
【0130】
図2Bはまた、エマルションが第2チャネル20の第1部分21内では緻密であり、そして次いで第2チャネル20の第2部分22内で希釈されている。このことは、より良好な連続流、ひいてはエマルションのより連続的な製造を保証する。
【0131】
A-第1デバイス
図3A及び3B(鎖線A-Aに沿った断面図)には、
図2Aの原理に準拠した第一実施態様に基づく、エマルションを製造するマイクロ流体デバイス100’の概略図が示されている。
【0132】
一実施態様では、このようなマイクロ流体デバイス100’のマイクロ流体部分の寸法は約10cm(長さL0)×1cm(幅W0)であってよい。例えばデバイスの高さはh1,h2bのなかで最も大きい高さとなる。
【0133】
マイクロ流体デバイス100’は、第1チャネル10’と、第2チャネル20’と、第1チャネル10’を第2チャネル20’に接続するマイクロチャネル30’の2つの対面する列31’,32’とを含む。
【0134】
一実施態様では、それぞれの列31’,32’は1000個のマイクロチャネル30’を含む。
【0135】
それぞれのマイクロチャネル30’は、第1チャネル10’からの流入口33’と、第2チャネル20’への流出口34’とを有している(
図3B参照)。
【0136】
第2チャネル20’は本発明では、マイクロチャネル30’の2つの列の間でデバイス内の中心に位置決めされている。
【0137】
これに加えて、第2チャネルはここでは真直ぐである。
【0138】
第2チャネル20’は、連続相のための入口ポート23’と、デバイスを使用することによって形成されたエマルションのための出口ポート24’とを含む。使用中、連続相は、入口ポート23’から出口ポート24’へ向かって流れる。出口ポートでエマルションが収集される。
【0139】
図3Bに示されているように、第2チャネル20’は2つの異なる高さ(h2a及びh2b)によって特徴づけられる。すなわち、2つの高さのうちの最も小さい高さ(h2a)を有する第1部分21’はマイクロチャネル30’の列に沿って配置されており、そして2つの高さのうちの最も大きい高さ(h2b)を有する第2部分22’は、ここでは第2チャネル20’の中心に配置されている。このように、第2チャネル20’はここでは2つの第1部分21’を含み、そして第2部分22’は2つの第1部分21’の間に配置されている。
【0140】
ここでは、デバイスの長さ方向L0は、第2チャネル20’に沿った流れ方向であると考えられる。
【0141】
第1チャネル10’はここでは被分散相のための入口ポート13’と、開閉されるように形成された、被分散相のための出口ポート14’とを含む。
【0142】
被分散相のための出口ポート14’が閉じていると、被分散相はマイクロチャネル30’の列から強制的に通過させられる。マイクロチャネルは第2チャネル20’に通じている。第2チャネル20’では、連続相が入口ポート23’からエマルション出口ポート24’へ向かって流れる。エマルション出口ポート24’ではエマルションが収集される。
【0143】
このように、第2チャネル20’内の連続相は、マイクロチャネル30から来た滴流に対して横方向に流れる。
【0144】
図3Aの実施態様では、第1チャネル10’は2つの部分11’,12’に分割されている。マイクロチャネル30’の第1列31’は第1チャネル10’の2つの部分のうちの第1部分11’と、第2チャネル20’との間に位置しており、そしてマイクロチャネル30’の第2列32’は第1チャネル10’の2つの部分のうちの第2部分12’と、第2チャネル20’との間に位置している。
【0145】
従って、ここでは、第1チャネル10’の2つの部分11’,12’は、マイクロチャネル30’の2つの列31’,32’及び第2チャネル20’を取り囲んでいる。
【0146】
ここでは、第1チャネル10’の(具体的にはここでは両部分11’,12’の)高さh1、及び第2チャネル20’の第1部分21’の高さh2aは、20μmに等しく、マイクロチャネル30’の高さh0は2μmに等しく、そして第2チャネル20’の第2部分22’の高さh2bは200μmに等しい。
【0147】
ここでは第1チャネル10’の幅は500μmであり、第2チャネルの第1部分21’の幅は200μmであり、そして第2チャネルの第2部分22’の幅は1600μmである。
【0148】
これに加えて、それぞれのマイクロチャネル30’は長さLと、幅W(デバイスの長さ方向に沿ったものと考えられる)を有する少なくとも一部とを有している。
【0149】
例えば、幅Wは約10μmに等しく、そして長さ(その流入口とその流出口との間と考えられる)は約140μmに等しい。
【0150】
連続する2つのマイクロチャネル30’の間の距離eは、例えば40μmに等しい。
【0151】
図3A及び3Bに示された構成を有するマイクロ流体デバイスはガラスから形成されると有利である。
【0152】
一実施態様によれば、チャネルは湿式エッチング法によって形成することができる。湿式エッチング法により、チャネルの底部角隅は、チャネルの高さに等しい曲率半径によって特徴づけられる丸み付けられた形状を有することになる。
【0153】
本発明による、デバイスを製造するための種々の方法の例が
図4に示されている。
【0154】
例えば、本発明によるデバイスは、ボトムプレートをトッププレートと集成することによって形成することができる。
【0155】
第1チャネル、第2チャネル、及び/又はマイクロチャネルの少なくとも一部は、少なくともボトムプレート内に形成することができる。
【0156】
例示のために、
図4はマイクロチャネル断面を示している。
【0157】
これを目的として、下記技術を用いることができる。
- 異方性エッチング又はソフトリソグラフィ。これは通常、
図4A)に示されているような直角の角隅を有する方形断面をもたらす。
- 等方性エッチング。これは通常、
-
図4B)に示されているようにガラス基板上に施されると丸み付けられた角隅をもたらし、
-
図4C)に示されているようにシリコン基板上に施されると斜め面取りされた角隅をもたらす。
【0158】
次いで基板と集成されるトッププレートは、
図4D)、4E)、及び4F)に示されているように平らであってよく、あるいは
図4G)、4H)、及び4I)に示されているようにエッチングされてもよい。
【0159】
互いに集成されるボトムプレート及びトッププレートは、所望の場合には異なる技術によってエッチングすることができる。
【0160】
別の実施態様によれば、3D印刷、例えばステレオリソグラフィを用いてデバイスの少なくとも一部を製造することもできる。
【0161】
図5に示されているように、マイクロチャネルはこれらの長さに沿って異なる形状を有することができる。
【0162】
一実施態様によれば、
図5Aに示されたマイクロチャネルは、マイクロチャネルの長さLに沿って一定の幅Wを有している。
【0163】
第2実施態様によれば、
図5Bに示されたマイクロチャネルは、マイクロチャネルの長さL1に沿って一定の幅Wを有する第1部分と、マイクロチャネルの長さL2に沿ってフレア状に広げられた第2部分とを有している。
【0164】
第3実施態様によれば、
図5Cに示されたマイクロチャネルは、マイクロチャネルの長さL1’に沿って一定の幅Wを有する第1部分と、いくつかのマイクロチャネルの合体に対応して、マイクロチャネルの長さL2’に沿って、いくつかのマイクロチャネルに共通した第2部分とを有している。
【0165】
マイクロチャネルの第2部分は同じ高さh0を有している。
【0166】
1. 第1エマルション製造実施例
被分散相2aはデカン(炭素(C)原子数10の直鎖から成るアルカンである)であり、連続相2cはドデシル硫酸ナトリウムを含む水である。
【0167】
両相の流量は、液体を含有するそれぞれのリザーバに圧力を加えることにより制御される。リザーバはマイクロ流体デバイスの対応入口ポートに接続されている。
【0168】
図6に示されているように、水中油滴2bがマイクロチャネル30’の端部に形成され、滴の結晶様の配列によって明らかになるように、均質な滴径を有する緻密エマルションを形成する。
【0169】
緻密エマルションは次いで、より大きい高さを有する収集用の第2チャネル20’の中心部分22’へ流れ、そしてここでは連続相2cの殆どが流れる。
【0170】
このことはエマルションを希釈し、ひいてはエマルションの連続製造及び収集を高いスループットで達成するのを可能にする。
【0171】
図6に提供されたスナップショットは、連続相2cの2つの異なる圧力(Pc)に対してマイクロチャネル列の端部で撮影されたものである。つまりこれらの圧力は左側の写真ではPc=100hPa(mbar)であり、そして右側の写真ではPc=200hPa(mbar)である。被分散相2aの圧力(Pd)は500hPa(mbar)に設定される。
【0172】
図6はPc値がより高いほど、収集されたエマルションがより高度に希釈されることを明示している。
【0173】
製造速度は、本発明によるマイクロ流体デバイスの構成により、主として被分散相の圧力(Pd)に依存し、連続相の圧力(Pc)に対する依存度は弱い。
【0174】
図3A及び3Bに示されたガラスデバイスのマイクロチャネル列に沿った5つの個所における約20個のマイクロチャネルの製造速度が
図7に示されている。
【0175】
第1マイクロチャネルは連続相の入口ポートの近くに位置している。連続相(Pc)の2つの圧力は
図6のように用いられる。被分散相の圧力は500hPa(mbar)に設定される。
【0176】
図7において報告されているように、マイクロチャネル列に沿った滴形成頻度はPcの修正によって影響を及ぼされない。
【0177】
1マイクロチャネル当たりの平均滴形成頻度は約130Hzである。これにより、デバイスの全製造速度は1秒あたり2.6×105滴となる。
【0178】
平均滴径は8.5μmであり、そして滴径分布の標準偏差を平均サイズによって割り算したものとして定義される対応する変動係数(CV)は7.5%である(
図8によって示される)。
【0179】
対応スループットは、1時間当たりの被分散相0.3mLである。
【0180】
マイクロ流体デバイスは数日間又は数週間にわたってエマルション滴を連続的に製造することができる。
【0181】
2. 第2エマルション製造実施例
被分散相2aは、認証屈折率液体(Cargille Laboratories のSeries AA-xx with n= 1.41, #1806Y)であり、そして連続相2cはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の水溶液である。
【0182】
一連の圧力に対して、1マイクロチャネル当たりの平均滴形成頻度は90Hzであり、結果としての滴径は8.4μmであり、滴径分布は変動係数4.8%によって特徴づけられる。
【0183】
3. 第3エマルション製造実施例
図3のデバイスをなおも使用して、被分散相2aはスチレンと、ジビニルベンゼンと、オレイン酸に覆われた酸化鉄のナノ粒子とを含み、そして連続相2cはドデシル硫酸ナトリウムを含む水である。
【0184】
一連の圧力に対して、1マイクロチャネル当たりの平均滴形成頻度は30Hzであり、結果としての平均滴径は8.2μmであり、滴径分布は変動係数7.2%によって特徴づけられる。
【0185】
B-第2デバイス
本発明の第2実施態様に基づくマイクロ流体デバイス100’’が
図9に示されている。
【0186】
類似の部材は付加的な「’」を備えた同じ符号を有している。
【0187】
デバイス100’’は、ここでは蛇行状にされいくつかのサブチャネルに分割された第1チャネル10’’の構成によって、そして、被分散相のための出口ポートが第1チャネル内にない点で、
図3で示された前述のデバイスとは異なる。
【0188】
例えば、デバイス100’’はソフトリソグラフィ技術によって製作される。
【0189】
これはポリジメチルシロキサン(PDMS)中で形成され、ガラス板上に接合される。
【0190】
一実施態様では、マイクロチャネルの高さ(h0)は2.3μm、幅Wは10μm、そして長さLは140μmであり、そして第1チャネルの高さ(h1)及び第2チャネルのそれぞれの第1部分の高さ(h2a)は20μmであり、そして第2チャネル(収集用チャネル)の第2部分の高さ(h2b)は240μmである。
【0191】
この場合、第2チャネル21’’の第1部分の幅は490μmであり、第2チャネルの第2部分22’’の幅は1600μmである。
【0192】
それぞれの列は500個のマイクロチャネルを含有し、あるいはデバイスに対しては全部で1000個のマイクロチャネルを含有する。
【0193】
被分散相2aとしてのフッ化炭素油(FC40, 3M Fluorinert)と、連続相2cとしてのドデシル硫酸ナトリウムの水溶液とから成るエマルションが、
図9で報告されたマイクロ流体デバイスによって製造される。
【0194】
図10に示されたスナップショットは、連続相2cの2つの異なる圧力(Pc)に対してマイクロチャネル列の端部で撮影されたものである。つまりこれらの圧力は左側の写真ではPc=200hPa(mbar)であり、そして右側の写真ではPc=600hPa(mbar)である。被分散相の圧力(Pd)は350hPa(mbar)に設定される。
【0195】
この図に示されているように、水中油滴2bがマイクロチャネル30’’の端部に形成され、滴2bの結晶様の配列によって明らかになるように、均質な滴径を有する緻密エマルションを形成する。
【0196】
緻密エマルションは次いで、より大きい高さを有する収集用の第2チャネル20’'の中心部分22’'へ流れ、そしてここでは連続相2cの殆どが流れる。このことはエマルションを希釈し、ひいてはエマルションの連続製造及び収集を高いスループットで達成するのを可能にする。
【0197】
Pc値がより高いほど、収集されたエマルションがより高度に希釈されることを明らかに見ることができる。
【0198】
図11は、
図9に示されたPDMSデバイス100’’のマイクロチャネル30’’の列に沿った3つの個所における約20個のマイクロチャネルの製造速度を示している。
【0199】
第1マイクロチャネル30’’は連続相2cの入口ポート23’’の近くに配置されている。
【0200】
この図によって示されるように、マイクロチャネル30’’の列に沿った滴形成頻度はPcの修正によって影響を及ぼされない。
【国際調査報告】