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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-14
(54)【発明の名称】NLRP3インフラマソームの阻害
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20220607BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220607BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
C12N15/115 Z
A61K45/00
A61K31/415
A61K31/341
A61P29/00
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556297
(86)(22)【出願日】2020-04-11
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2020060356
(87)【国際公開番号】W WO2020208249
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】1905265.3
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520004395
【氏名又は名称】インフレイゾーム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】マクラウド,アンガス
(72)【発明者】
【氏名】ハライ,リエナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ウィルテンバーグ,ジミー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA03
4C086BC36
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、NLRP3インフラマソームの結合部位に関する。本発明はさらに、NLRP3活性化を阻害すること、およびNLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気を処置すること、における使用の方法および使用のための化合物に関する。本発明はさらに、NLRP3活性化を阻害することにより細胞またはミトコンドリアの活性酸素種(ROS)を低減する方法に関する。本発明はさらに、NLRP3インフラマソームの結合部位への化合物の結合の程度を決定するために化合物をスクリーニングする方法、およびそのようなスクリーニング方法により同定される化合物に関する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NLRP3インフラマソームの結合部位であって、
(a)前記NLRP3インフラマソームのWalker Aおよび/もしくはWalker B部位にあるかもしくはその近位にあり;かつ/または
(b)Arg183、Gly229、Ile230、Gly231、Lys232、Thr233、Ile234、Gly303、Asp305、Glu306、Leu413およびHis522から選択される1つもしくは複数の残基を含む、
結合部位。
【請求項2】
請求項1に記載の結合部位に化合物を結合させるステップを含む、NLRP3活性化を阻害する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の結合部位に結合するように適合される、NLRP3活性化を阻害することにおける使用のための化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の結合部位に化合物の治療的有効量を結合させるステップを含む、NLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気を処置する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の結合部位に結合するように適合される、NLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気を処置することにおける使用のための化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の結合部位のアンタゴニストである、NLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気を処置することにおける使用のための化合物。
【請求項7】
前記疾患、障害または病気が、
(i)炎症;
(ii)自己免疫性疾患;
(iii)癌;
(iv)感染;
(v)中枢神経系疾患;
(vi)代謝疾患;
(vii)心血管疾患;
(viii)呼吸器疾患;
(ix)肝臓疾患;
(x)腎臓疾患;
(xi)眼科疾患;
(xii)皮膚疾患;
(xiii)リンパ病;
(xiv)精神障害;
(xv)移植片対宿主病;
(xvi)疼痛;
(xvii)糖尿病に関連する病気;
(xviii)関節炎に関連する病気;
(xix)頭痛;
(xx)創傷または熱傷;および
(xxi)個体がNLRP3の生殖系のまたは体細胞系の非サイレント変異を有すると決定された任意の疾患、
から選択される、請求項4に記載の方法、または請求項5もしくは6に記載の化合物。
【請求項8】
前記疾患、障害または病気が、
(i)クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS);
(ii)マックル・ウェルズ症候群(MWS);
(iii)家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS);
(iv)新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID);
(v)家族性地中海熱(FMF);
(vi)化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡症候群(PAPA);
(vii)高免疫グロブリンDおよび周期性発熱症候群(HIDS);
(viii)腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS);
(ix)全身若年性特発性関節炎;
(x)成人発症スチル病(AOSD);
(xi)再発性多発性軟骨炎;
(xii)シュニッツラー症候群;
(xiii)スウィート症候群;
(xiv)ベーチェット病;
(xv)抗合成酵素症候群;
(xvi)インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA);ならびに
(xvii)A20ハプロ不全症(HA20)
から選択される、請求項4に記載の方法、または請求項5もしくは6に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の結合部位に化合物を結合させるステップを含む、NLRP3活性化を阻害することにより細胞内のまたはミトコンドリアの活性酸素種(ROS)を低減する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の結合部位に結合するように適合される、NLRP3活性化を阻害することにより細胞内のまたはミトコンドリアの活性酸素種(ROS)を低減することにおける使用のための化合物。
【請求項11】
前記化合物が、低分子、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、抗体またはアプタマーである、請求項2~10のいずれか1項に記載の方法または化合物。
【請求項12】
前記化合物が、前記結合部位に共有結合または非共有結合で結合するように適合されている、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法または化合物。
【請求項13】
前記化合物が、NLRP3の活性化を阻害しかつそれによりATPがNLRP3のWalker Aおよび/またはWalker B部位からのADPに置き換わることを防止する、請求項2~12のいずれか1項に記載の方法または化合物。
【請求項14】
前記化合物が、Arg183、Gly229、Ile230、Gly231、Lys232、Thr233、Ile234、Gly303、Asp305、Glu306、Leu413およびHis522から選択される1つまたは複数の残基に結合することによりNLRP3の活性化の阻害を実行する、請求項2~13のいずれか1項に記載の方法または化合物。
【請求項15】
前記化合物が、ホスホナート模倣物として作用するモチーフを含む、請求項2~14のいずれかに記載の方法または化合物。
【請求項16】
化合物をスクリーニングする方法であって、(i)請求項1に記載の結合部位に前記化合物を暴露するステップと、(ii)前記結合部位への前記化合物の結合の程度を決定するステップを含む、方法。
【請求項17】
前記結合部位への前記化合物の結合の前記程度が、質量分析、NMR、X線結晶解析、SPRまたは放射性リガンド結合により決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
化合物をスクリーニングする方法であって、(i)請求項1に記載の結合部位に前記化合物を暴露することをコンピュータでシミュレートするステップと、(ii)前記結合部位への前記化合物の結合の程度を決定するステップを含む、方法。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項に記載の方法により同定される化合物、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項20】
請求項1に記載の結合部位に結合するように適合された化合物、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項21】
請求項19または20に記載の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグと、医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項22】
医薬における使用のための、請求項19または20に記載の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
NLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気の処置または予防における使用のための、請求項22に記載の化合物、医薬的に許容できる塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物。
【請求項24】
前記疾患、障害または病気が、
(i)炎症;
(ii)自己免疫性疾患;
(iii)癌;
(iv)感染;
(v)中枢神経系疾患;
(vi)代謝疾患;
(vii)心血管疾患;
(viii)呼吸器疾患;
(ix)肝臓疾患;
(x)腎臓疾患;
(xi)眼科疾患;
(xii)皮膚疾患;
(xiii)リンパ病;
(xiv)精神障害;
(xv)移植片対宿主病;
(xvi)疼痛;
(xvii)糖尿病に関連する病気;
(xviii)関節炎に関連する病気;
(xix)頭痛;
(xx)創傷または熱傷;および
(xxi)個体がNLRP3の生殖系のまたは体細胞系の非サイレント変異を有すると決定された任意の疾患、
から選択される、疾患、障害または病気の処置または予防における使用のための、請求項22または23に記載の化合物、医薬的に許容できる塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物。
【請求項25】
前記疾患、障害または病気が、
(i)クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS);
(ii)マックル・ウェルズ症候群(MWS);
(iii)家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS);
(iv)新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID);
(v)家族性地中海熱(FMF);
(vi)化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡症候群(PAPA);
(vii)高免疫グロブリンDおよび周期性発熱症候群(HIDS);
(viii)腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS);
(ix)全身若年性特発性関節炎;
(x)成人発症スチル病(AOSD);
(xi)再発性多発性軟骨炎;
(xii)シュニッツラー症候群;
(xiii)スウィート症候群;
(xiv)ベーチェット病;
(xv)抗合成酵素症候群;
(xvi)インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA);ならびに
(xvii)A20ハプロ不全症(HA20)
から選択される、疾患、障害または病気の処置または予防における使用のための、請求項22または23に記載の化合物、医薬的に許容できる塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物。
【請求項26】
NLRP3活性化を阻害するための、請求項19もしくは20に記載の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは請求項21に記載の医薬組成物の使用を含む、NLRP3活性化を阻害する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、NLRP3インフラマソームの結合部位に関する。本発明はさらに、NLRP3活性化を阻害すること、およびNLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気を処置すること、における使用の方法および使用のための化合物に関する。本発明はさらに、NLRP3活性化を阻害することにより細胞またはミトコンドリアの活性酸素種(ROS)を低減する方法に関する。本発明はさらに、NLRP3インフラマソームの結合部位への化合物の結合の程度を決定するために化合物をスクリーニングする方法、およびそのようなスクリーニング方法により同定される化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インフラマソームは、炎症応答の活性化を担う。NOD様受容体(NLR)ファミリーであるピリンドメイン含有タンパク質3(NLRP3)インフラマソームは、炎症過程の成分であり、その異常な活性は、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)などの遺伝的障害、ならびに多発性硬化症、2型糖尿病、アルツハイマー病およびアテローム性硬化症などの複合疾患において病原性がある。
【0003】
NLRP3は、多くの病原由来因子、環境因子および宿主由来因子を感知する細胞内シグナル伝達分子である。活性化の際に、NLRP3は、カスパーゼ活性化および動員ドメイン含有アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)に結合する。ASCはその後、重合して、ASCスペックとして知られる大きな凝集体を形成する。重合ASCは、順次、システインプロテアーゼカスパーゼ-1と相互作用して、インフラマソームと称される複合体を形成する。これがカスパーゼ-1の活性化をもたらし、それは炎症促進性サイトカインIL-1βおよびIL-18の前駆形態(それぞれプロIL-1βおよびプロIL-18と称される)を切断して、それによりこれらのサイトカインを活性化する。カスパーゼ-1はまた、パイロトーシスとして知られる型の炎症性細胞死を媒介する。ASCスペックはまた、カスパーゼ-8を動員し活性化でき、それはプロIL-1βおよびプロIL-18をプロセシングしアポトーシス性細胞死を惹起できる。
【0004】
カスパーゼ-1は、プロIL-1βおよびプロIL-18を活性形態に切断し、それらは細胞から分泌される。活性カスパーゼ-1はまた、ガスダーミン-Dを切断して、パイロトーシスを惹起する。カスパーゼ-1はまた、パイロトーシス性細胞死経路の制御を通して、IL-33および高移動度群ボックス1タンパク質(HMGB1)などのアラーミン分子の放出を媒介する。カスパーゼ-1はまた、細胞内IL-1R2を切断し、その分解をもたらし、IL-1αの放出を可能にする。ヒト細胞において、カスパーゼ-1はまた、IL-37のプロセシングおよび分泌を制御し得る。細胞骨格および解糖経路の成分などの複数の他のカスパーゼ-1基質が、カスパーゼ-1依存性炎症に寄与し得る。
【0005】
NLRP3依存性ASCスペックは、細胞外環境に放出され、そこでそれらは、カスパーゼ-1を活性化し、カスパーゼ-1基質のプロセシングを誘導し、炎症を伝播する可能性がある。
【0006】
NLRP3インフラマソーム活性化に由来する活性サイトカインは、炎症の重要な駆動因子であり、他のサイトカイン経路と相互作用して、感染および傷害に対する免疫応答を具象化する。例えばIL-1βシグナル伝達は、炎症促進性サイトカインIL-6およびTNFの分泌を誘導する。IL-1βおよびIL-18は、IL-23と相乗作用して、メモリーCD4 Th17細胞による、およびT細胞受容体エンゲージメントの非存在下でγδT細胞による、IL-17生成を誘導する。IL-18およびIL-12も相乗作用して、メモリーT細胞およびNK細胞からのIFN-γ生成を誘導しTh1応答を駆動する。
【0007】
遺伝的CAPS病であるマックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)および新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)は、NLRP3における機能獲得型変異により誘発され、これによりNLRP3を炎症過程の不可欠成分として定義する。NLRP3はまた、特に2型糖尿病、アテローム性硬化症、肥満および痛風などの代謝障害を含む、複数の複合疾患の病原性に関連づけられている。
【0008】
中枢神経系の疾患におけるNLRP3の役割が、明らかになりつつあり、肺疾患も、NLRP3により影響を受けることが示されている。さらにNLRP3は、肝臓疾患、腎臓疾患および加齢の進行において役割を有する。これらの関連性の多くは、Nlrp3-/-マウスを用いて定義されたが、これらの疾患におけるNLRP3の特異的活性化への洞察もなされた。2型糖尿病(T2D)では、膵臓の膵島アミロイドポリペプチドの沈着が、NLRP3およびIL-1βシグナル伝達を活性化し、細胞死および炎症を起こす。
【0009】
複数の低分子が、NLRP3インフラマソームを阻害することが示されている。グリブリドは、NLRP3の活性化に応答してマイクロモル濃度でIL-1β生成を阻害するが、NLRC4またはNLRP1を阻害しない。他の過去に特徴づけられた弱いNLRP3阻害剤としては、パルテノリド、3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレンおよびジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられるが、これらの薬剤は、限定された効能を有し、非特異的である。
【0010】
NLRP3関連疾患の現行の処置は、IL-1を標的とする生物学的薬剤を含む。これらは、組換えIL-1受容体アンタゴニストのアナキンラ、中和IL-1β抗体のカナキヌマブおよび可溶性デコイIL-1受容体のリロナセプトである。これらのアプローチは、CAPSの処置でうまくいくことが立証されており、これらの生物学的薬剤は、他のIL-1β関連疾患への臨床試験で用いられている。
【0011】
幾つかのジアリールスルホニルウレア含有化合物が、サイトカイン放出阻害薬(CRID)として同定された(Perregaux et al., J Pharmacol Exp Ther, 299: 187-197, 2001)。CRIDは、IL-1βの翻訳後プロセシングを阻害するジアリールスルホニルウレア含有化合物の一分類である。IL-1βの翻訳後プロセシングは、カスパーゼ-1の活性化および細胞死を伴う。CRIDは、カスパーゼ-1が不活性のままであり原形質膜の潜時(latency)が維持されるように、活性化された単球を停止させる。
【0012】
特定のスルホニルウレア含有化合物もまた、NLRP3の阻害剤として開示されている(例えば、Baldwin et al., J. Med. Chem., 59(5)、1691-1710, 2016;ならびにWO2016/131098 A1、WO2017/129897 A1、WO2017/140778 A1、WO2017/184623 A1、WO2017/184624 A1、WO2018/015445 A1、WO2018/136890 A1、WO2018/215818 A1、WO2019/008025 A1、WO2019/008029 A1、WO2019/034686 A1、WO2019/034688 A1、WO2019/034690 A1、WO2019/034692 A1、WO2019/034693 A1、WO2019/034696 Al、WO2019/034697 A1、WO2019/043610 A1、WO2019/092170 A1、WO2019/092171 A1、およびWO2019/092172 A1参照)。加えて、WO2017/184604 A1およびWO2019/079119 A1は、NLRP3の阻害剤としての複数のスルホニルアミド含有化合物を開示する。特定のスルホキシイミン含有化合物もまた、NLRP3の阻害剤として開示されている(WO2018/225018 A1、WO2019/023145 A1、WO2019/023147 A1、およびWO2019/068772 A1)。
【0013】
しかし、NLRP3の阻害剤の厳密な作用機序は、未知である。
【0014】
インフラマソームが形成するヒトNLRPタンパク質におけるATP結合ドメインの生化学的および構造的態様が、Macdonald, J.A. et al(IUBMB Life. 2013. 65(10):851-862)で議論されている。
【0015】
要約すると、全てのNLRPは一般に、N-末端ピリンドメイン、C-末端ロイシンリッチリピート、および中央のヌクレオチド結合ドメイン(NBD)を特徴とする。NBDは、NACHTドメインおよびNAD(NACHT関連ドメイン)領域で構成され、リンカー領域により連結された3つのらせん状サブドメインからなる。NACHTは、神経アポトーシス阻害タンパク質((NAIP);主要組織適合性複合体クラスII転写活性化因子(CIITA);真菌ポドスポラ・アンセリナからの不和合性タンパク質遺伝子座(HET-E);および哺乳動物テロメラーゼ関連タンパク質)中に出現することから、そのように命名されている。
【0016】
NACHTドメインのATP結合および加水分解特性は、様々な細胞活性(AAA1)スーパーファミリーに関連するATPaseのSTANDサブファミリー内のNLRPの分類の中枢である。このドメインは、Mg21配位ループ(Mg21 coordination loop)およびATPase特異性P-ループを含む、複数の異なる保存的モチーフからなる。このドメインの中枢は、NLRPを他のP-ループNTPaseと識別する、Walker AおよびWalker Bモチーフの存在である。
【0017】
Walker AおよびWalker Bモチーフは、高度に保存された三次元構造を有することが知られたタンパク質配列モチーフである。
【0018】
Walker Aモチーフは、リン酸結合と関連づけられる。Walker Bモチーフは、ほとんどのP-ループタンパク質中のモチーフであり、Aモチーフのかなり下流に位置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
NLRP3インフラマソームの阻害剤が、NLRP3活性化をどのように抑制するかを決定すること、およびNLRP3結合部位を同定することが、必要とされている。
【0020】
NLRP3結合部位に結合する化合物を同定および提供することもまた、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本発明の第一の態様は、NLRP3インフラマソームの結合部位であって、
(a)NLRP3インフラマソームのWalker Aおよび/もしくはWalker B部位にあるか、もしくはその近位にあり;かつ/または
(b)Arg183、Gly229、Ile230、Gly231、Lys232、Thr233、Ile234、Gly303、Asp305、Glu306、Leu413およびHis522から選択される1つもしくは複数の残基を含む、
結合部位、を提供する。
【0022】
本発明の第一の態様の一実施形態において、結合部位は、NLRP3インフラマソームのWalker Aおよび/またはWalker B部位にあるか、またはその近位にある。一実施形態において、結合部位は、NLRP3インフラマソームのWalker A部位にあるか、またはその近位にある。
【0023】
本出願の目的では、用語「近位」は、10Å未満、好ましくは5Å未満を意味する。
【0024】
本発明の第一の態様の一実施形態において、結合部位は、Arg183、Gly229、Ile230、Gly231、Lys232、Thr233、Ile234、Gly303、Asp305、Glu306、Leu413およびHis522から選択される2以上(または3以上、または4以上、または5以上、または6以上、または7以上、または8以上、または9以上、または10以上、または11以上、または12全て)の残基を含む。
【0025】
本発明の第一の態様の別の実施形態において、結合部位は、Gln149、Cys150、Glu152、Asp153、Arg154、Asn155、Ala156、Arg157、Leu158、Glu160、Ser161、Val162、Ser163、Asp302、Trp416およびTyr565から選択される1つまたは複数(または2以上、または3以上、または4以上、または5以上、または6以上、または7以上、または8以上、または9以上、または10以上、または11以上、または12以上、または13以上、または14以上、または15以上、または全16)の残基をさらに含む。
【0026】
本発明の第二の態様は、化合物を本発明の第一の態様の結合部位に結合させるステップを含む、NLRP3活性化を阻害する方法を提供する。本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様の結合部位に結合するように適合される、NLRP3活性化を阻害することにおける使用のための化合物を提供する。
【0027】
本発明の目的では、化合物が、結合部位に「結合する」と言われる場合、これは、非限定的に、共有結合、非共有結合、可逆的結合、イオン結合、水素結合、およびファンデルワールス結合を含む、化合物と結合部位の間の任意の種類の相互作用を包含する。
【0028】
本発明の第三の態様は、化合物の治療有効量を本発明の第一の態様の結合部位に結合させるステップを含む、NLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気を処置する方法を提供する。本発明の第三の態様はさらに、本発明の第一の態様の結合部位に結合するように適合される、NLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気を処置することにおける使用のための化合物を提供する。本発明の第三の態様はさらに、本発明の第一の態様の結合部位のアンタゴニストである、NLRP3阻害に応答する疾患、障害または病気を処置することにおける使用のための化合物を提供する。
【0029】
本発明の第三の態様の一実施形態において、疾患、障害または病気は、
(i)炎症;
(ii)自己免疫性疾患;
(iii)癌;
(iv)感染;
(v)中枢神経系疾患;
(vi)代謝疾患;
(vii)心血管疾患;
(viii)呼吸器疾患;
(ix)肝臓疾患;
(x)腎臓疾患;
(xi)眼科疾患;
(xii)皮膚疾患;
(xiii)リンパ病;
(xiv)精神障害;
(xv)移植片対宿主病;
(xvi)疼痛;
(xvii)糖尿病に関連する病気;
(xviii)関節炎に関連する病気;
(xix)頭痛;
(xx)創傷または熱傷;および
(xxi)個体がNLRP3の生殖系または体細胞系非サイレント変異を有すると決定されている任意の疾患、
から選択される。
【0030】
本発明の第三の態様の別の実施形態において、疾患、障害または病気は、
(i)クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS);
(ii)マックル・ウェルズ症候群(MWS);
(iii)家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS);
(iv)新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID);
(v)家族性地中海熱(FMF);
(vi)化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡症候群(PAPA);
(vii)高免疫グロブリンDおよび周期性発熱症候群(HIDS);
(viii)腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS);
(ix)全身若年性特発性関節炎;
(x)成人発症スチル病(AOSD);
(xi)再発性多発性軟骨炎;
(xii)シュニッツラー症候群;
(xiii)スウィート症候群;
(xiv)ベーチェット病;
(xv)抗合成酵素症候群;
(xvi)インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA);ならびに
(xvii)A20ハプロ不全症(HA20)
から選択される。
【0031】
本発明の第四の態様は、化合物を本発明の第一の態様の結合部位に結合させるステップを含む、NLRP3活性化を阻害することにより細胞またはミトコンドリアの活性酸素種(ROS)を低減する方法を提供する。本発明の第四の態様はさらに、本発明の第一の態様の結合部位に結合するように適合される、NLRP3活性化を阻害することにより細胞またはミトコンドリアの活性酸素種(ROS)を低減することにおける使用のための化合物を提供する。
【0032】
本発明の第二、第三および第四の態様の一実施形態において、化合物は、低分子(例えば、1000Da未満)、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、抗体またはアプタマーである。
【0033】
本発明の第二、第三および第四の態様の別の実施形態において、化合物は、結合部位に共有結合または非共有結合で(即ち、可逆的に)結合するように適合される。
【0034】
本発明の第二、第三および第四の態様の別の実施形態において、化合物は、NLRP3の活性化の阻害を実行し、それによりATPがNLRP3のWalker Aおよび/またはWalker B部位からのADPに置き換わることを防止する。
【0035】
本発明の第二、第三および第四の態様の別の実施形態において、化合物は、Arg183、Gly229、Ile230、Gly231、Lys232、Thr233、Ile234、Gly303、Asp305、Glu306、Leu413およびHis522から選択される1つもしくは複数の残基に結合することにより、NLRP3の活性化の阻害を実行する。一実施形態において、化合物は、Arg183、Gly229、Ile230、Gly231、Lys232、Thr233、Ile234、Gly303、Asp305、Glu306、Leu413およびHis522から選択される2以上(または3以上、または4以上、または5以上、または6以上、または7以上、または8以上、または9以上、または10以上、または11以上、または12全て)の残基に結合することにより、NLRP3の活性化の阻害を実行する。別の実施形態において、化合物は、Gln149、Cys150、Glu152、Asp153、Arg154、Asn155、Ala156、Arg157、Leu158、Glu160、Ser161、Val162、Ser163、Asp302、Trp416およびTyr565から選択される1つまたは複数(または2以上、または3以上、または4以上、または5以上、または6以上、または7以上、または8以上、または9以上、または10以上、または11以上、または12以上、または13以上、または14以上、または15以上、または16全て)の残基にさらに結合することにより、NLRP3の活性化の阻害を実行する。
【0036】
本発明の第二、第三および第四の態様の別の実施形態において、化合物は、ホスホナート模倣物として作用するモチーフを含む。例えば化合物は、スルホキシド、スルホキシイミン、スルホニルアセトアミド、スルホンアミド、カルバマート、スルホニルカルバマート、ウレア、スルホニルウレア、またはスルホニルトリアゾールであってよい。
【0037】
本発明の第五の態様は、化合物をスクリーニングする方法であって、(i)化合物を本発明の第一の態様の結合部位に暴露するステップと、(ii)結合部位への化合物の結合の程度を決定するステップとを含む、方法を提供する。
【0038】
本発明の第五の態様の一実施形態において、結合部位への化合物の結合の程度は、質量分析、NMR(核磁気共鳴)、X線結晶解析、SPR(表面プラズモン共鳴)または放射性リガンド結合により決定される。
【0039】
本発明の第五の態様の別の実施形態において、スクリーニングの方法は、コンピュータを利用して実行される。それゆえ本発明の第五の態様はさらに、化合物をスクリーニングする方法であって、(i)化合物を本発明の第五の態様の結合部位に暴露することをコンピュータでシミュレートするステップと、(ii)結合部位への化合物の結合の程度を決定するステップとを含む、方法を提供する。
【0040】
本発明の第六の態様は、本発明の第五の態様のスクリーニング方法により同定される化合物、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0041】
本発明の第七の態様は、本発明の第一の態様の結合部位に結合するように適合された化合物、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0042】
本発明の化合物は、その遊離塩基形態およびその酸付加塩形態の両方で用いることができる。本発明の目的では、本発明の化合物の「塩」は、酸付加塩を包含する。酸付加塩は、好ましくは、非限定的にハロゲン化水素酸(例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸)もしくは他の無機酸(例えば、硝酸、過塩素酸、硫酸またはリン酸)などの無機酸;または有機カルボン酸(例えば、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、クエン酸、酢酸、安息香酸、サリチル酸、コハク酸、リンゴ酸もしくはヒドロキシコハク酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ムチン酸もしくはガラクタル酸、グルコン酸、パントテン酸、またはパモ酸)、有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエン-p-スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸またはカンファースルホン酸)もしくはアミノ酸(例えば、オルニチン酸(ornithinic acid)、グルタミン酸またはアスパラギン酸)などの有機酸を含む、医薬的に許容できる、適切な酸との非毒性付加塩である。酸付加塩は、一酸、二酸、三酸、または多酸付加塩であってよい。好ましい塩は、ハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸または有機酸付加塩である。好ましい塩は、塩酸付加塩である。
【0043】
本発明の化合物が第四級アンモニウム基を含む場合、典型的には化合物は、塩形態で使用される。第四級アンモニウム基の対イオンは、任意の医薬的に許容できる非毒性の対イオンであってよい。適切な対イオンの例としては、酸付加塩に関連して先に議論されたプロトン酸の共役塩基が挙げられる。
【0044】
本発明の化合物はまた、その遊離酸形態およびその塩形態の両方で使用できる。本発明の目的では、本発明の化合物の「塩」は、本発明の化合物のプロトン酸官能基性(カルボン酸基など)と適切なカチオンとの間に形成されたものを包含する。適切なカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。塩は、一塩、二塩、三塩、または多塩であってよい。好ましくは、塩は、一または二-リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩またはアンモニウム塩である。より好ましくは、塩は、一もしくは二ナトリウム塩、または一もしくは二カリウム塩である。
【0045】
好ましくは任意の塩は、医薬的に許容できる非毒性塩である。しかし、医薬的に許容できる塩に加えて、他の塩が、本発明に包含され、なぜならそれらは、例えば医薬的に許容できる塩の精製もしくは調製において中間体として働く能力を有する、または遊離酸もしくは塩基の同定、特徴づけもしくは精製に有用であるためである。
【0046】
本発明の化合物および/または塩は、無水であっても、または水和物(例えば、半水和物、一水和物、二水和物または三水和物)もしくは他の溶媒和物の形態であってもよい。そのような他の溶媒和物は、非限定的にアルコール溶媒、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノールを含む、共通の有機溶媒で形成されてよい。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態において、治療的に不活性なプロドラッグが、提供される。プロドラッグは、ヒトなどの対象に投与されると、全体が、または一部が本発明の化合物に変換される化合物である。ほとんどの実施形態において、プロドラッグは、インビボで活性薬物分子に変換されて治療効果を発揮し得る、薬理学的に不活性な化学的誘導体である。本明細書に記載される化合物のいずれもが、プロドラッグとして投与されて、化合物の活性、生物学的利用度もしくは安定性を上昇させることができ、またはさもなければ化合物の特性を改変できる。プロドラッグの典型的な例としては、活性化合物の官能基部分にある生物学的に不安定な保護基を有する化合物が挙げられる。プロドラッグとしては、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、水酸化、脱水酸化、加水分解、脱加水分解(dehydrolyzed)、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、および/または脱リン酸化されて、活性化合物を生成し得る化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、先に記載されたようなプロドラッグの塩および溶媒和物を包含する。
【0048】
本発明の化合物、塩、溶媒和物およびプロドラッグは、少なくとも1種のキラル中心を含有してよい。それゆえ化合物、塩、溶媒和物およびプロドラッグは、少なくとも2種の異性体形態で存在してよい。本発明は、本発明の化合物、塩、溶媒和物およびプロドラッグのラセミ混合物、ならびに鏡像異性体について濃縮された異性体および実質的に鏡像異性体として純粋な異性体を包含する。本発明の目的では、化合物の「実質的に鏡像異性体として純粋な」異性体は、5重量%未満の、より典型的には2%重量未満の、最も典型的には0.5%重量未満の同化合物の他の異性体を含む。
【0049】
本発明の化合物、塩、溶媒和物およびプロドラッグは、非限定的に12C、13C、H、H(D)、14N、15N、16O、17O、18O、19Fおよび127Iを含む任意の安定した同位体、ならびに非限定的に11C、14C、H(T)、13N、15O、18F、123I、124I、125Iおよび131Iを含む任意の放射性同位体を含有してよい。
【0050】
本発明の化合物、塩、溶媒和物およびプロドラッグは、任意の多形または非晶質形態であってよい。
【0051】
本発明の第八の態様は、本発明の第六または第七の態様の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグと、医薬的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0052】
適切な医薬配合物の選択および調製のための従来の手順は、例えば“Aulton’s Pharmaceutics - The Design and Manufacture of Medicines”, M. E. Aulton and K. M. G. Taylor, Churchill Livingstone Elsevier, 4th Ed., 2013に記載されている。
【0053】
本発明の医薬組成物中で用いられ得るアジュバント、希釈剤または担体を含む医薬的に許容できる賦形剤は、医薬配合物の分野で従来から用いられるものであり、糖、糖アルコール、デンプン、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセリロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含むが、これらに限定されない。
【0054】
一実施形態において、本発明の第八の態様の医薬的組成物は追加で、1種または複数のさらなる活性剤を含む。
【0055】
さらなる実施形態において、本発明の第八の態様の医薬的組成物は、部分品のキットの一部として提供されてよく、部分品のキットは、本発明の第八の態様の医薬的組成物と、1種または複数のさらなる医薬組成物とを含み、1種または複数のさらなる医薬組成物のそれぞれは、医薬的に許容できる賦形剤と、1種または複数のさらなる活性剤とを含む。
【0056】
本発明の第九の態様は、薬品中での使用のための、かつ/または疾患、障害もしくは病気の処置もしくは予防における使用のための、本発明の第六または第七の態様の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは本発明の第八の態様の医薬組成物を提供する。典型的には使用は、対象への化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物の投与を含む。一実施形態において、使用は、1種または複数のさらなる活性剤の共投与を含む。
【0057】
本明細書で用いられる用語「処置」は同等に、治癒的な治療、および改善もしくは緩和療法を指す。その用語は、有益な、または所望の生理学的結果を得ることを包含し、それは臨床的に確定されていても、または確定されていなくてもよい。有益な、または所望の臨床結果としては、検出可能であるか、または検出可能でないかに関わらず、症状の改善、症状の予防、疾患の程度の軽減、病気の安定化(即ち増悪しないこと)、病気/症状の進行/増悪の遅延または緩徐化、病気/症状の改善または緩和、および寛解(部分または全体のいずれかに関わらず)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で用いられる用語「緩和」およびその変形は、本発明の化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物を投与しなかった場合に比較して、生理学的条件もしくは症状の程度および/もしくは望まない症状発現が低減すること、ならびに/または進行の時間経過が緩徐化もしくは延長すること、を意味する。疾患、障害または病気に関連して本明細書で用いられる用語「予防」は、防護的または予防的治療、および疾患、障害または病気を発症するリスクを低減する治療に関する。用語「予防」は、疾患、障害または病気の出現の回避と、疾患、障害または病気の開始の遅延の両方を包含する。制御された臨床試験による測定で、任意の統計学的に有意な(p≦0.05)出現回避、開始遅延またはリスク低減が、疾患、障害または病気の予防と見なされてよい。予防を施すことができる対象としては、遺伝的または生化学的マーカーによる同定で、疾患、障害または病気のリスクの高い対象が挙げられる。典型的には遺伝的または生化学的マーカーは、考慮されている疾患、障害または病気に適し、例えば、炎症の場合のC反応性タンパク質(CRP)および単球走化性タンパク質1(MCP-1)などの炎症バイオマーカー;NAFLDおよびNASHの場合の総コレステロール、トリグリセリド、インスリン抵抗性およびCペプチド;ならびにより一般的にはNLRP3阻害に応答性の疾患、障害または病気の場合のIL-1βおよびIL-18を含む。
【0058】
本発明の第十の態様は、疾患、障害または病気の処置または予防のための医薬の製造における、本発明の第六または第七の態様の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。典型的には処置または予防は、対象への化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬の投与を含む。一実施形態において、処置または予防は、1種または複数のさらなる活性剤の共投与を含む。
【0059】
本発明の第十一の態様は、疾患、障害または病気の処置または予防の方法であって、本発明の第六または第七の態様の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは本発明の第八の態様の医薬組成物の有効量を投与して、それにより疾患、障害または病気を処置または予防するステップを含む、方法を提供する。一実施形態において、方法は、1種または複数のさらなる活性剤の有効量を共投与するステップをさらに含む。典型的には投与は、それを必要とする対象になされる。
【0060】
本発明の第十二の態様は、NLRP3における生殖系または体細胞系非サイレント変異を有する個体における疾患、障害または病気の処置または予防における使用のための、本発明の第六または第七の態様の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは本発明の第八の態様の医薬組成物を提供する。変異は、例えば機能獲得型、または結果としてNLRP3活性を上昇させる他の変異であってよい。典型的には使用は、個体への化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物の投与を含む。一実施形態において、使用は、1種または複数のさらなる活性剤の共投与を含む。使用はまた、化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物が変異のための陽性診断に基づき個体に投与される、NLRP3における生殖系または体細胞系非サイレント変異を有する個体の診断も含んでよい。典型的には個体におけるNLRP3の変異の同定は、任意の適切な遺伝的または生化学的手段によるものであってよい。
【0061】
本発明の第十三の態様は、NLRP3における生殖系または体細胞系非サイレント変異を有する個体における疾患、障害または病気の処置または予防のための医薬の製造における、本発明の第六または第七の態様の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。変異は、例えば機能獲得型、または結果としてNLRP3活性を上昇させる他の変異であってよい。典型的には処置または予防は、個体への化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬の投与を含む。一実施形態において、処置または予防は、1種または複数のさらなる活性剤の共投与を含む。処置または予防はまた、化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬が変異のための陽性診断に基づき個体に投与される、NLRP3における生殖系または体細胞系非サイレント変異を有する個体の診断を含んでよい。典型的には個体におけるNLRP3の変異の同定は、任意の適切な遺伝的または生化学的手段によるものであってよい。
【0062】
本発明の第十四の態様は、疾患、障害または病気の処置または予防の方法であって、NLRP3における生殖系または体細胞系非サイレント変異を有する個体を診断するステップと、本発明の第六または第七の態様の化合物、または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは本発明の第八の態様の医薬組成物の有効量を、陽性と診断された個体に投与し、それにより疾患、障害または病気を処置または予防するステップとを含む、方法を提供する。一実施形態において、方法は、1種または複数のさらなる活性剤の有効量を共投与するステップをさらに含む。典型的には投与は、必要とする対象になされる。
【0063】
一般的実施形態において、疾患、障害または病気は、免疫系、心血管系、内分泌系、消化器系、腎臓系、肝臓系、代謝系、呼吸器系、中枢神経系の疾患、障害もしくは病気であってよく、癌もしくは他の悪性疾患であってよく、かつ/または病原により誘発されても、もしくは病原に関連してもよい。
【0064】
疾患、障害および病気の大まかな分類に従い定義されたこれらの一般的実施形態が、互いに排他的でないことは、察知されよう。これに関連して、任意の特別な疾患、障害または病気が、上記一般的実施形態の1つより多くに従い分類されてよい。非限定的例は、自己免疫疾患および内分泌系の疾患である、I型糖尿病である。
【0065】
本発明の第九~第十四の態様の一実施形態において、疾患、障害または病気は、NLRP3阻害に応答性である。本明細書で用いられる用語「NLRP3阻害」は、NLRP3の活性レベルの完全なまたは部分的な低減を指し、例えば、活性NLRP3の阻害および/またはNLRP3の活性化の阻害を包含する。
【0066】
複数の異なる障害に関連して、またはそれの結果として生じた炎症応答におけるNLRP3誘導性IL-1およびIL-18の役割についてのエビデンスがある(Menu et al., Clinical and Experimental Immunology, 166: 1-15, 2011; Strowig et al., Nature,481:278-286, 2012)。
【0067】
NLRP3への役割が示唆されている遺伝性疾患としては、鎌形赤血球症(Vogel et al., Blood, 130(Suppl 1): 2234, 2017)、およびバロシン含有タンパク質疾患(Nalbandian et al., Inflammation, 40(1): 21-41, 2017)が挙げられる。
【0068】
NLRP3は、家族性地中海熱(FMF)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、高免疫グロブリンDおよび周期性発熱症候群(HIDS)、化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡(PAPA)、スウィート症候群、慢性非細菌性骨髄炎(CNO)、および尋常性ざ瘡を含む、複数の自己炎症性疾患に関連づけられている(Cook et al., Eur. J. Immunol., 40: 595-653, 2010)。特にNLRP3変異は、CAPSとして知られる一連の希少な自己炎症性疾患の原因であることが見出されている(Ozaki et al., J. Inflammation Research, 8:15-27, 2015; Schroder et al., Cell, 140: 821-832, 2010;およびMenu et al., Clinical and Experimental Immunology, 166: 1-15, 2011)。CAPSは、再発性の発熱および炎症を特徴とする遺伝性疾患であり、臨床連続体を形成する3つの自己炎症性障害で構成される。これらの疾患は、重症度が増す順に、家族性寒冷自己炎症症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、および慢性乳児神経皮膚関節症候群(CINCA;新生児期発症多臓器系炎症性疾患NOMIDとも呼ばれる)であり、全てが、IL-1βの分泌増加を導く、NLRP3遺伝子の機能獲得型変異から生じることが示されている。
【0069】
特に、多発性硬化症、1型糖尿病(T1D)、乾癬、関節リウマチ(RA)、ベーチェット病、シュニッツラー症候群、マクロファージ活性化症候群、セリアック病(Masters Clin. Immunol.147(3):223-228, 2013; Braddock et al. Nat. Rev. Drug Disc. 3:1-10,2004; Inoue et al., Immunology 139: 11-18,2013; Coll et al. Nat. Med.21(3):248-55 2015;Scott et al. Clin. Exp. Rheumatol 34(1):88-93,2016;Pontillo et al., Autoimmunity, 43(8): 583-589, 2010;およびGuo et al., Clin Exp Immunol, 194(2): 231-243, 2018)、ループス腎炎(Zhao et al., Arthritis and Rheumatism,65(12): 3176-3185, 2013)を含む全身性エリテマトーデス(Lu et al. J Immunol. 198(3):1119-29,2017)、多発性硬化症(Xu et al., J Cell Biochem, 120(4): 5160-5168, 2019)、および全身性硬化症(Artlett et al. Arthritis Rheum.63(11): 3563-74, 2011)を含む多数の自己免疫疾患が、NLRP3に関与することが示されている。
【0070】
NLRP3はまた、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(ステロイド耐性喘息および好酸球性喘息を含む)、気管支炎、石綿症、火山灰による炎症、および珪肺(Cassel et al., Proceedings of the National Academy of Sciences, 105(26): 9035-9040, 2008; Chen et al., ERJ Open Research, 4: 00130-2017, 2018; Chen et al., Toxicological Sciences, 170(2): 462-475, 2019; Damby et al., Front Immun, 8: 2000, 2018; De Nardo et al., Am J Pathol, 184: 42-54, 2014; Lv et al., J Biol Chem, 293(48): 18454, 2018;およびKim et al., Am J Respir Crit Care Med, 196(3): 283-97, 2017)を含む複数の呼吸器および肺疾患においても役割を担うことが示されている。
【0071】
NLRP3はまた、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、認知症、ハンチントン病、脳マラリア、肺炎球菌性髄膜炎による脳傷害(Walsh et al., Nature Reviews, 15: 84-97, 2014、Cheng et al., Autophagy, 1-13, 2020; Couturier et al., J Neuroinflamm, 13: 20, 2016;およびDempsey et al. Brain. Behav. Immun.61:306-316, 2017)、頭蓋内動脈瘤(Zhang et al. J. Stroke & Cerebrovascular Dis, 24(5):972-979,2015)、脳内出血(ICH)(Ren et al., Stroke, 49(1): 184-192, 2018)、脳虚血性再灌流傷害(Fauzia et al., Front Pharmacol, 9:1034, 2018; Hong et al., Neural Plasticity, 2018: 8, 2018; Ye et al., Experimental Neurology, 292: 46-55, 2017)、全身麻酔による神経炎症(Fan et al., Front Cell Neurosci, 12: 426, 2018)、敗血症関連脳症(SAE)(Fu et al., Inflammation, 42(1): 306-318, 2019)、術後認知機能障害をはじめとする周術期神経認知障害(POCD)(Fan et al., Front Cell Neurosci, 12: 426, 2018;およびFu et al., International Immunopharmacology, 82:106317, 2020)、早期脳損傷(クモ膜下出血 SAH)(Luo et al., Brain Res Bull, 146: 320-326, 2019)、および外傷性脳傷害(Ismael et al. J Neurotrauma,35(11):1294-1303,2018およびChen et al., Brain Research, 1710:163-172, 2019)を含む複数の中枢神経系の病気において役割を有することが示唆されている。
【0072】
NLRP3はまた、2型糖尿病(T2D)、アテローム性硬化症、肥満、痛風、偽痛風、代謝症候群(Wen et al., Nature Immunology, 13:352-357, 2012; Duewell et al., Nature, 464:1357-1361, 2010; Strowig et al., Nature, 481:278-286, 2012)、および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(Mridha et al. J Hepatol. 66(5):1037-46,2017)を含む様々な代謝疾患に関与することが示されている。
【0073】
IL-1βを介したNLRP3の役割もまた、アテローム性硬化症(Chen et al., Journal of the American Heart Association, 6(9):e006347, 2017;およびChen et al., 35 Biochem Biophys Res Commun, 495(1): 382-387, 2018)、心筋梗塞(van Hout et al. Eur. Heart J, 38(11):828-36,2017)、心血管疾患(Janoudi et al., European Heart Journal, 37(25): 1959-1967, 2016)、心肥大および線維症(Gan et al., Biochim Biophys Acta, 1864(1): 1-10, 2018)、心不全(Sano et al. J Am. Coll. Cardiol. 71(8):875-66,2018)、大動脈瘤および解離(Wu et al. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 37(4):694-706, 2017)、代謝機能障害による心臓傷害(Pavillard et al., Oncotarget, 8(59): 99740-99756, 2017;およびZhang et al., Biochimica et Biophysica Acta, 1863(6): 1556-1567, 2017)、心房細動(Yao et al., Circulation, 138(20): 2227-2242, 2018)、高血圧(Gan et al., Biochim Biophys Acta, 1864(1): 1-10, 2018)、ならびに他の心血管病(Ridker et al, N Engl J Med., doi:10.1056/ NEJMoa1707914, 2017)において示唆されている。
【0074】
NLRP3が関与することが示されている他の疾患、障害および病気としては、
- 湿潤型および乾燥型の両方の加齢黄斑変性(Doyle et al., Nature Medicine, 18:791-798, 2012、およびTarallo et al. Cell, 149(4):847-59, 2012)、糖尿病性網膜症(Loukovaara et al. Acta Ophthalmol,95(8):803-808,2017)、および視神経損傷(Puyang et al. Sci Rep,6:20998, 2016 Feb 19)などの眼科疾患;
- 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(Henao-Meija et al., Nature, 482:179-185, 2012)、肝臓の虚血性再灌流傷害(Yu et al., Transplantation, 103(2): 353-362, 2019)、劇症肝炎(Pourcet et al., Gastroenterology, 154(5): 1449-1464, e20, 2018)、肝線維症(Zhang et al., Parasit Vectors, 12(1): 29, 2019)、および急性肝不全を含む肝不全(Wang et al., Hepatol Res, 48(3): E194-E202, 2018)などの肝臓疾患;
- 腎石灰化症(Anders et al., Kidney Int, 93(3): 656-669, 2018)、慢性結晶腎症を含む腎線維症(Ludwig- Portugall et al., Kidney Int, 90(3): 525-39, 2016)、肥満関連の糸球体症(Zhao et al., Mediators of Inflammation, article 3172647, 2019)、急性腎傷害(Zhang et al., Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity: Targets and Therapy, 12:1297-1309, 2019)、および腎性高血圧(Krishnan et al., Br J Pharmacol, 173(4): 752-65, 2016; Krishnan et al., Cardiovasc Res, 115(4): 776-787, 2019; Dinh et al., Aging, 9(6): 1595- 1606,2017)などの腎臓疾患;
- 糖尿病性脳病(Zhai et al., Molecules, 23(3): 522, 2018)、糖尿病性網膜症(Zhang et al., Cell Death Dis, 8(7): 62941, 2017)、糖尿病性腎症(糖尿病性腎臓病とも呼ばれる)(Chen et al., BMC Complementary and Alternative Medicine, 18:192, 2018)、および糖尿病性低アディポネクチン血症(Zhang et al., Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular Basis of Disease, 1863(6): 1556-1567, 2017)などの糖尿病に関連する病気;
- 肺虚血再灌流傷害(Xu et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 503(4): 3031-3037, 2018)、上皮間葉転換(EMT)(Li et al., Experimental Cell Research, 362(2): 489-497, 2018)、接触過敏症(水疱性類天疱瘡など(Fang et al. J Dermatol Sci,83(2):116-23,2016))、アトピー性皮膚炎(Niebuhr et al. Allergy,69(8):1058-67, 2014)、化膿性汗腺炎(Alikhan et al.,J Am Acad Dermatol 60(4):539-61,2009)、尋常性ざ瘡(Qin et al. J Invest. Dermatol,134(2):381-88,2014)、およびサルコイドーシス(Jager et al. Am J Respir Crit Care Med, 191:A5816,2015)などの肺および皮膚における炎症反応(Primiano et al. J Immunol,197(6):2421-33,2016);
- 関節内の炎症反応(Braddock et al., Nat. Rev. Drug Disc., 3:1-10, 2004)および骨関節炎(Jin et al., PNAS, 108(36): 14867-14872, 2011);
- 関節炎の熱(Verma, Linkoping University Medical Dissertations, No.1250, 2011)などの関節炎に関連する病気;
- 筋萎縮性側索硬化症(Gugliandolo et al. Inflammation,41(1):93-103,2018);
- 嚢胞性線維症(Iannitti et al. Nat. Commun, 7:10791,2016);
- 卒中(Walsh et al., Nature Reviews, 15:84-97, 2014;Ye et al., Experimental Neurology, 292: 46-55, 2017);
- 偏頭痛などの頭痛(He et al., Journal of Neuroinflammation, 16: 78, 2019);
- 慢性腎臓疾患(Granata et al. PLoS One 10(3):e0122272,2015);
- シェーグレン症候群(Vakrakou et al., Journal of Autoimmunity, 91: 23-33, 2018);
- 移植片対宿主病(Takahashi et al., Scientific Reports, 7:13097, 2017);
- 鎌形赤血球症(Vogel et al., Blood, 130(Suppl 1): 2234, 2017);ならびに
- 潰瘍性大腸炎およびクローン病(Braddock et al., Nat. Rev. Drug Disc., 3:1-10, 2004、Neudecker et al., J Exp. Med.214(6):1737-52, 2017、Wu et al., Mediators Inflamm, 2018: 3048532, 2018;およびLazaridis et al. Dig. Dis. Sci,62(9):2348-56,2017)、および敗血症(腸管上皮の破壊)(Zhang et al., Dig Dis Sci, 63(1): 81-91, 2018)を含む大腸炎および炎症性腸疾患、
が挙げられる。
【0075】
NLRP3の遺伝的除去が、HSD(高糖食)、HFD(高脂肪食)およびHSFD誘導性肥満(Pavillard et al., Oncotarget, 8(59): 99740-99756, 2017)を防御することが示されている。
【0076】
NLRP3インフラマソームは、酸化ストレス、日焼け(Hasegawa et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 477(3): 329-335, 2016)、およびUVB照射(Schroder et al., Science, 327:296-300, 2010)に応答して活性化されることも見出されている。
【0077】
NLRP3はまた、炎症性痛覚過敏(Dolunay et al., Inflammation, 40: 366-386, 2017)、創傷治癒(Ito et al., Exp Dermatol, 27(1): 80-86, 2018)、熱傷治癒(Chakraborty et al., Exp Dermatol, 27(1): 71-79, 2018)、アロディニア、多発性硬化症関連の神経因性疼痛(Khan et al., Inflammopharmacology, 26(1): 77-86, 2018)、慢性骨盤痛(Zhang et al., Prostate, 79(12): 1439-1449, 2019)および癌による骨痛(Chen et al., Pharmacological Research, 147: 104339, 2019)を含む疼痛、ならびに早産に関連する羊膜内炎症/感染(Faro et al., Biol Reprod, 100(5): 1290-1305, 2019;およびGomez-Lopez et al., Biol Reprod, 100(5): 1306-1318, 2019)に関与することが示されている。
【0078】
インフラマソーム、および具体的にはNLRP3は、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)を含むスタフィロコッカス・アウレウス(Cohen et al., Cell Reports, 22(9): 2431-2441, 2018;およびRobinson et al., JCI Insight, 3(7): e97470, 20,2018)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(TB)(Subbarao et al., Scientific Reports, 10: 3709,2020)、バシラス・セレウス(Mathur et al., Nat Microbiol, 4: 362-374, 2019)、サルモネラ・タイフィムリウム(Diamond et al., Sci Rep, 7(1): 6861, 2017)、およびA群連鎖球菌(LaRock et al., Science Immunology, 1(2): eaah3539, 2016)などの細菌病原体;DNAウイルス(Amsler et al., Future Virol, 8(4): 357-370, 2013)、インフルエンザAウイルス(Coates et al., Front Immunol, 8: 782, 2017)、チングニア、ロスリバーウイルス、およびアルファウイルス(Chen et al., Nat Microbiol, 2(10): 1435-1445, 2017)などのウイルス;カンジダ・アルビカンス(Tucey et al., mSphere, 1(3), pii:e00074-16, 2016) などの真菌病原体;ならびにT.ゴンディ(Gov et al., J Immunol, 199(8): 2855-2864, 2017)、蠕虫ワーム(Alhallaf et al., Cell Reports, 23(4): 1085-1098, 2018)、リーシュマニア(Novais et al., PLoS Pathogens, 13(2):e1006196, 2017)、およびプラスモジウム(Strangward et al., PNAS, 115(28):7404-7409, 2018)などの他の病原体を含む様々な病原体によるモジュレーションのための標的としても提案されている。NLRP3は、ウイルス、細菌、真菌、および蠕虫病原体感染の効率的制御に必要とされることが示されている(Strowig et al., Nature, 481: 278-286, 2012)。NLRP3活性はまた、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によるなどのウイルス感染への感受性の上昇に関連づけられている(Pontillo et al., J 35 Aquir Immune Defic Syndr, 54(3): 236-240, 2010)。HIVおよびマイコバクテリウム・ツベルクローシス(TB)に重複感染した患者の間での早期死亡のリスク上昇も、NLRP3活性に関連づけられている(Ravimohan et al., Open Forum Infectious Diseases, 5(5): ofy075, 2018)。
【0079】
NLRP3はまた、多くの癌の病原性に関連づけられている(Menu et al., Clinical and Experimental Immunology 166:1-15, 2011;およびMasters Clin. Immunol.223-228 2013)。例えば、複数の過去の試験は、癌の浸潤、成長および転移におけるIL-1βの役割を示唆しており、カナキヌマブでのIL-1βの阻害が、無作為化二重盲検プラセボ対照試験において肺癌発症率および全癌死亡率を低下させることが示されている(Ridker et al. Lancet,S0140-6736(17)32247-X,2017)。NLRP3インフラマソームまたはIL-1βの阻害はまた、インビトロで肺癌細胞の増殖および遊走を阻害することが示されており(Wang et al. Oncol Rep,35(4):2053-64,2016)、NLRP3は、発癌性および転移のNK細胞を介した制御を抑制することが示されている(Chow et al., Cancer Res, 72(22): 5721-32, 2012)。NLRP3インフラマソームの役割は、骨髄異形成症候群において(Basiorka et al. Blood,Dec 22;128(25):2960-2975,2016)、および神経膠腫(Li et al. Am J Cancer Res,5(1):442-449,2015)、結腸癌(Allen et al., J Exp Med, 207(5): 1045-56, 2010)、黒色腫(Dunn et al., Cancer Lett, 314(1): 24-33, 2012)、乳癌(Guo et al., Scientific Reports, 6: 36107, 2016)、炎症誘導性腫瘍(Allen et al. J Exp Med,207(5):1045-56,2010、およびHu et al. PNAS,107(50):21635-40,2010)、多発性骨髄腫(Li et al. Hematology,21(3):144-51,2016)、および頭頸部の扁平上皮癌(Huang et al. J Exp Clin Cancer Res,36(1):116,2017;およびChen et al., Cellular and Molecular Life Sciences, 75: 2045-2058,2018)を含む様々な他の癌の発癌性においても示唆されている。NLRP3インフラマソームの活性化はまた、5-フルオロウラシルへの腫瘍細胞の化学療法抵抗性を介在することが示されており(Feng et al. J Exp Clin Cancer Res,36(1):81,2017)、末梢神経におけるNLRP3インフラマソームの活性化は、化学療法誘導性神経因性疼痛に寄与する(Jia et al. Mol Pain,13:1-11,2017)。
【0080】
したがって、先に列挙された疾患、障害または病気のいずれかが、本発明の第九~第十四の態様により処置または予防されてよい。NLRP3阻害に応答する可能性があり、本発明の第九~第十四の態様により処置または予防される可能性がある疾患、障害または病気の詳細な例としては:
(i)炎症性障害の結果として生じた炎症、例えば自己炎症性疾患、非炎症性障害の症状として生じた炎症、感染の結果として生じた炎症、または外傷、傷害もしくは自己免疫性に続発した炎症を含む炎症;
(ii)急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、抗合成酵素症候群、再生不良性貧血、自己免疫性副腎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性多内分泌腺不全、自己免疫性甲状腺炎、小児セリアック病を含むセリアック病、クローン病、1型糖尿病(T1D)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、川崎病、全身性エリテマトーデス(SLE)を含むエリテマトーデス、原発性進行性多発性硬化症(PPMS)、続発性進行性多発性硬化症(SPMS)および再発性寛解型多発性硬化症(RRMS)を含む多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オルド甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、多発性関節炎、原発性胆汁性胆管炎、関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎またはスチル病、難治性痛風関節炎、ライター病、シェーグレン症候群、全身性硬化症、全身性結合組織障害、高安関節炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫、全身性脱毛、ベーチェット病、シャーガス病、自律神経障害、子宮内膜症、化膿性汗腺炎(HS)、間質性膀胱炎、神経筋緊張症、乾癬、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、シュニッツラー症候群、マクロファージ活性化症候群、ブラウ症候群、白斑、または外陰部痛などの自己免疫性疾患;
(iii)肺癌、膵臓癌、胃癌(gastric cancer)、骨髄異形成症候群、急性リンパ球性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)を含む白血病、副腎癌、肛門癌、基底細胞および扁平上皮癌、頭頸部の扁平上皮癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳および脊髄腫瘍、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、目の癌、胆嚢癌、消化管悪性腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭および下咽頭癌、肝臓癌、肺悪性腫瘍、皮膚T細胞リンパ腫を含むリンパ腫、悪性中皮腫、黒色腫皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、多発性骨髄腫、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔および口咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、精巣癌、脳下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞種、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、胃癌(stomach cancer)、精巣癌、胸腺癌、未分化甲状腺癌を含む甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰部癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍を含む癌;
(iv)ウイルス感染(例えば、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、アルファウイルス(チクングニアおよびロスリバーウイルスなど)、フラビウイルス(デングウイルスおよびジカウイルスなど)、ヘルペスウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス、サイトメガロウイルス、膵島帯状疱疹ウイルス、およびKSHVなど)、ポックスウイルス(ワクシニアウイルス(改変ワクシニアウイルスアンカラ)およびミクソーマウイルスなど)、アデノウイルス(アデノウイルス5など)、またはパピローマウイルス由来)、細菌感染(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(MRSAを含む)、ヘリコバクター・ピロリ、バシラス・アントラシス、バシラス・セレウス、ボルダテラ・ペルツシス、ブルクホルデリア・シュードマレイ、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diptheriae)、クロストリジウム・テタニ、クロストリジウム・ボツリヌム、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス、リステリア・モノサイトゲネス、ヘモフィリス・インフルエンザ、パステウレラ・ムルトシダ、シゲラ・ディセンテリエ、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・レプラエ、マイコプラズマ・ニューモニエ、マイコプラズマ・ホミニス、ナイセリア・メニンギティディス、ナイセリア・ゴノレア、リケッチア・リケッチイ、レジオネラ・ニューモフィラ、クレブシエラ・ニューモニエ、シュードモナス・アエルギノサ、プロピオニバクテリウム・アクネス、トレポネーマ・パリダム、クラミジア・トラコマティス、ビブリオ・コレラ、サルモネラ・タイフィムリウム、サルモネラ・タイフィ、ボレリア・ブルグドルフェリ、尿路病原性エシェリヒア・コリ(UPEC)またはエルシニア・ペスティス由来)、真菌感染(例えば、カンジダまたはアスペルギルス種由来)、原生動物感染(例えば、プラスモジウム、バベシア、ギアルジア、エンタモエバ、リーシュマニア症またはトリパノソーム由来)、蠕虫感染(例えば、住血吸虫、回虫、条虫または吸虫由来)、プリオン感染、および前述のいずれかとの重複感染(例えば、HIVおよびマイコバクテリウム・ツベルクローシスとの)を含む感染;
(v)パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、運動ニューロン疾患、ハンチントン病、脳マラリア、肺炎球菌性髄膜炎による脳傷害、頭蓋内動脈瘤、脳内出血、敗血症関連脳症、周術期神経認知障害、術後認知機能障害、早期脳損傷、外傷性脳傷害、脳虚血再灌流傷害、卒中、全身麻酔による神経炎症、および筋萎縮性側索硬化症などの中枢神経系疾患;
(vi)2型糖尿病(T2D)、アテローム性硬化症、肥満、痛風および偽痛風などの代謝疾患;
(vii)高血圧、虚血、MI後虚血性再灌流傷害を含む再灌流傷害、虚血性脳卒中を含む卒中、一過性虚血発作、再発性心筋梗塞を含む心筋梗塞、うっ血性心不全および駆出率が保持される心不全を含む心不全、心肥大および線維症、塞栓症、腹部大動脈瘤をはじめとする動脈瘤、代謝誘導性心傷害、およびドレスラー症候群を含む心膜炎などの心血管疾患;
(viii)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性喘息、好酸球性喘息およびステロイド耐性喘息などの喘息、石綿症、珪肺、火山灰による炎症、ナノ粒子誘導性炎症、嚢胞性線維症および特発性肺線維症を含む呼吸器疾患;
(ix)進行性線維症ステージF3およびF4を含む非アルコール性脂肪肝臓疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性脂肪肝臓疾患(AFLD)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、肝臓の虚血性再灌流傷害、劇症肝炎、肝線維症、および急性肝不全を含む肝不全を含む肝臓疾患;
(x)慢性腎臓疾患、シュウ酸塩腎症、腎臓結石、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、肥満関連の糸球体症、慢性結晶腎症を含む腎線維症、急性腎不全、急性腎傷害、および腎性高血圧を含む腎臓疾患;
(xi)目の上皮の疾患、加齢黄斑変性(AMD)(乾燥型および湿潤型)、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、角膜感染、糖尿病性腎症、視神経損傷、ドライアイ、および緑内障を含む眼科疾患;
(xii)接触皮膚炎およびアトピー性皮膚炎などの皮膚炎、接触過敏症、乾癬、日焼け、皮膚病変、化膿性汗腺炎(HS)、他の嚢胞誘発性皮膚疾患、壊疽性膿皮症および集簇性ざ瘡を含む尋常性ざ瘡を含む皮膚疾患;
(xiii)リンパ管炎およびキャッスルマン病などのリンパ病;
(xiv)うつ病および精神的ストレスなどの精神障害;
(xv)移植片対宿主病;
(xvi)骨盤痛、痛覚過敏、機械的アロディニアを含むアロディニア、多発性硬化症関連の神経因性疼痛を含む神経因性疼痛、および癌による骨痛などの疼痛;
(xvii)糖尿病性脳病、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性血管内皮機能不全、および糖尿病性低アディポネクチン血症などの糖尿病に関連する病気;
(xviii)関節炎の熱などの関節炎に関連する病気;
(xix)群発頭痛、特発性頭蓋内圧亢進、片頭痛、低圧性頭痛(例えば、硬膜穿刺後)、結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT)、および緊張型頭痛を含む頭痛;
(xx)皮膚創傷および皮膚熱傷を含む、創傷および熱傷;ならびに
(xvii)個体がNLRP3の生殖系または体細胞系非サイレント変異を有すると決定された、任意の疾患、
が挙げられる。
【0081】
一実施形態において、疾患、障害または病気は、
(i)癌、
(ii)感染;
(iii)中枢神経系疾患;
(iv)心血管疾患;
(v)肝臓疾患;
(vi)眼科疾患;または
(vii)皮膚疾患、
から選択される。
【0082】
より典型的には、疾患、障害または病気は、
(i)癌、
(ii)感染;
(iii)中枢神経系疾患;または
(iv)心血管疾患;
から選択される。
【0083】
一実施形態において、疾患、障害または病気は、
(i)集簇性ざ瘡;
(ii)アトピー性皮膚炎;
(iii)アルツハイマー病;
(iv)筋萎縮性側索硬化症;
(v)加齢黄斑変性(AMD);
(vi)未分化甲状腺癌;
(vii)クリオピリン関連周期性症候群(CAPS);
(viii)接触皮膚炎
(ix)嚢胞性線維症;
(x)うっ血性心不全;
(xi)慢性腎臓疾患;
(xii)クローン病;
(xiii)家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS);
(xiv)ハンチントン病;
(xv)心不全;
(xvi)駆出率が保持される心不全;
(xvii)虚血性再灌流傷害;
(xviii)若年性特発性関節炎;
(xix)心筋梗塞;
(xx)マクロファージ活性化症候群;
(xxi)骨髄異形成症候群;
(xxii)多発性骨髄腫;
(xxiii)運動ニューロン病;
(xxiv)多発性硬化症;
(xxv)マックル・ウェルズ症候群;
(xxvi)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);
(xxvii)新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID);
(xxviii)パーキンソン病;
(xxix)鎌形赤血球症;
(xxx)全身若年性特発性関節炎;
(xxxi)全身性エリテマトーデス;
(xxxii)外傷性脳傷害;
(xxxiii)一過性虚血発作;
(xxxiv)潰瘍性大腸炎;または
(xxxv)バロシン含有タンパク質疾患
から選択される。
【0084】
本発明の第九~第十四の態様の別の実施形態において、処置または予防は、ウイルス感染への感受性の低減を含む。例えば処置または予防は、HIV感染への感受性の低減を含んでよい。
【0085】
本発明のさらなる典型的実施形態において、疾患、障害または病気は、炎症である。本発明の第九~第十四の態様に従い処置または予防され得る炎症の例としては、
(i)接触過敏症、水疱性類天疱瘡、日焼け、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、強皮症、天疱瘡、表皮水疱症、じんましん、紅斑、または脱毛などの皮膚病;
(ii)骨関節炎、全身若年性特発性関節炎、成人発症スチル病、再発性多発性軟骨炎、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、痛風、または血清陰性脊椎関節症(例えば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎またはライター病)などの関節病;
(iii)多発性菌炎または重症筋無力症などの筋肉病;
(iv)炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、大腸炎、胃潰瘍、セリアック病、直腸炎、膵臓炎、好酸球性胃腸炎、マストサイトーシス、抗リン脂質症候群、または腸から離れた作用を有し得る食物関連アレルギー(例えば、偏頭痛、鼻炎または湿疹)などの消化管病;
(v)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(好酸球性、気管支、アレルギー性、内因性、外因性または塵埃喘息、特に慢性または常習的な喘息、例えば遅発型喘息および気道過敏症を含む)、気管支炎、鼻炎(急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、アトピー性鼻炎、慢性鼻炎、乾酪性鼻炎、肥厚性鼻炎、化膿性鼻炎(rhinitis pumlenta)、乾燥性鼻炎、薬物性鼻炎、膜性鼻炎、季節性鼻炎、例えば枯れ草熱、および血管運動性鼻炎を含む)、副鼻腔炎、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、農夫肺、珪肺、石綿症、火山灰による炎症、成人呼吸窮迫症候群、過敏性肺炎、または特発性間質性肺炎などの呼吸器系病;
(vi)アテローム性硬化症、ベーチェット病、脈管炎、またはウェゲナー肉芽腫などの血管病;
(vii)全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、全身性硬化症、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、特発性血小板減少性紫斑病、またはグレーブス病などの自己免疫病;
(viii)ブドウ膜炎、アレルギー性結膜炎、または春季カタルなどの眼病;
(ix)多発性硬化症または脳脊髄炎などの神経病;
(x)後天性免疫不全症(AIDS)、急性もしくは慢性細菌感染、急性もしくは慢性寄生虫感染、急性もしくは慢性ウイルス感染、急性もしくは慢性真菌感染、髄膜炎、肝炎(A、BもしくはC型、または他のウイルス性肝炎)、腹膜炎、肺炎、喉頭蓋炎、マラリア、デング出血熱、リーシュマニア症、連鎖球菌筋炎、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(マイコバクテリウム・ツベルクローシスとHIVの重複感染を含む)、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ、ニューモシスチス・カリニ肺炎、精巣炎/精巣上体炎、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA型、エプスタイン・バー・ウイルス感染、ウイルス性脳炎/無菌性髄膜炎、または骨盤内炎症性疾患などの感染または感染関連病;
(xi)メサンギウム増殖性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、肥満関連の糸球体症、急性腎不全、急性腎傷害、尿毒症、腎炎症候群、慢性結晶腎症を含む腎線維症、または腎性高血圧などの腎臓病;
(xii)キャッスルマン病などのリンパ病;
(xiii)高IgE症候群、ライ腫性ハンセン病、家族性血球貪食性リンパ組織球症、または移植片対宿主病などの、免疫系の病気または免疫系に関与する病気;
(xiv)慢性活動性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール誘導性肝炎、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)、アルコール性脂肪性肝臓疾患(AFLD)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、原発性胆汁性肝硬変、劇症肝炎、肝線維症、または肝不全などの肝臓病;
(xv)先に列挙されたそれらの癌を含む、癌;
(xvi)熱傷、創傷、外傷、出血または卒中;
(xvii)放射線照射;
(xviii)2型糖尿病(T2D)、アテローム性硬化症、肥満、痛風または偽痛風などの代謝疾患;および/あるいは
(xix)炎症性痛覚過敏、骨盤痛、アロディニア、神経因性疼痛、または癌による骨痛などの疼痛、
に関連して、あるいはその結果として生じる炎症応答が挙げられる。
【0086】
本発明の第九~第十四の態様の一実施形態において、疾患、障害または病気は、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、家族性地中海熱(FMF)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、高免疫グロブリンDおよび周期性発熱症候群(HIDS)、インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)、マアジード症候群、化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡症候群(PAPA)、成人発症スチル病(AOSD)、A20ハプロ不全症(HA20)、小児期肉芽腫性関節炎(PGA)、PLCG2関連抗体欠損・免疫異常症(PLAID)、PLCG2関連自己炎症性抗体欠損・免疫異常症(APLAID)、またはB細胞免疫欠損・周期性発熱・発達遅延を伴う鉄芽球性貧血(SIFD)などの自己炎症性疾患である。
【0087】
NLRP3阻害に応答性である可能性があり、かつ本発明の第九~第十四の態様により処置または予防される可能性がある疾患、障害または病気の例を、先に列挙している。これらの疾患、障害または病気の幾つかは、NLRP3インフラマソーム活性、ならびにNLRP3誘導性IL-1βおよび/またはIL-18により実質的に、または全体として媒介される。結果として、そのような疾患、障害または病気は、NLRP3阻害に特に応答性である可能性があり、かつ本発明の第九~第十四の態様に従う処置または予防に特に適する可能性がある。そのような疾患、障害または病気の例としては、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)、家族性地中海熱(FMF)、化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡症候群(PAPA)、高免疫グロブリンDおよび周期性発熱症候群(HIDS)、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、全身若年性特発性関節炎、成人発症スチル病(AOSD)、再発性多発性軟骨炎、シュニッツラー症候群、スウィート症候群、ベーチェット病、抗合成酵素症候群、インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)、およびA20ハプロ不全症(HA20)が挙げられる。
【0088】
さらに、先に言及された疾患、障害または病気の幾つかは、NLRP3における変異により生じ、特にNLRP3活性上昇をもたらす。その結果、そのような疾患、障害または病気は、NLRP3阻害に特に応答性である可能性があり、かつ本発明の第九~第十四の態様に従う処置または予防に特に適する可能性がある。そのような疾患、障害または病気の例としては、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、および新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)が挙げられる。
【0089】
本発明の第十五の態様は、NLRP3活性化を阻害するための、本発明の第六または第七の態様の化合物または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは本発明の第八の態様の医薬組成物の使用を含む、NLRP3活性化を阻害する方法を提供する。
【0090】
本発明の第十五の態様の一実施形態において、方法は、1種または複数のさらなる活性剤と組み合わせた、本発明の第六または第七の態様の化合物または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは本発明の第八の態様の医薬組成物の使用を含む。
【0091】
本発明の第十五の態様の一実施形態において、方法は、例えばNLRP3阻害の細胞に及ぼす影響を分析するために、エクスビボまたはインビトロで実施される。
【0092】
本発明の第十五の態様の別の実施形態において、方法は、インビボで実施される。例えば方法は、本発明の第六または第七の態様の化合物または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは本発明の第八の態様の医薬組成物の有効量を投与して、それによりNLRP3を阻害するステップを含んでよい。一実施形態において、方法は、1種または複数のさらなる活性剤の有効量を共投与するステップをさらに含む。典型的には投与は、それを必要とする対象になされる。
【0093】
あるいは、本発明の第十五の態様の方法は、非ヒト動物対象においてNLRP3を阻害する方法であって、化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物を非ヒト動物対象に投与するステップ、および場合により続いて非ヒト動物対象を損傷または殺処分するステップ、を含む、方法であってよい。典型的にはそのような方法は、場合により損傷または殺処分された非ヒト動物対象由来の1種または複数の組織または流体試料を分析するステップをさらに含む。一実施形態において、方法は、1種または複数のさらなる活性剤の有効量を共投与するステップをさらに含む。
【0094】
本発明の十六の態様は、NLRP3の阻害における使用のための、本発明の第六または第七の態様の化合物または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、あるいは本発明の第八の態様の医薬組成物を提供する。典型的には使用は、対象への化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物の投与を含む。一実施形態において、化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物は、1種または複数のさらなる活性剤と共投与される。
【0095】
本発明の第十七の態様は、NLRP3の阻害のための医薬の製造における、本発明の第六または第七の態様の化合物または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。典型的には阻害は、対象への化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬の投与を含む。一実施形態において、化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬は、1種または複数のさらなる活性剤と共投与される。
【0096】
1種または複数のさらなる活性剤の使用または共投与を含む、本発明の第九~第十七の態様のいずれかの実施形態において、1種または複数のさらなる活性剤は、例えば1、2または3種の異なるさらなる活性剤を含んでよい。
【0097】
1種または複数のさらなる活性剤は、互いの前に、同時に、連続で、または次に、かつ/あるいは本発明の第六または第七の態様の化合物または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、または本発明の第八の態様の医薬組成物の前に、同時に、連続で、または次に、使用または投与されてよい。1種または複数のさらなる活性剤が、本発明の本発明の第六または第七の態様の化合物または医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグと同時に投与される場合、1種または複数のさらなる活性剤を追加的に含む本発明の第八の態様の医薬組成物が、投与されてよい。
【0098】
1種または複数のさらなる活性剤の使用または共投与を含む、本発明の第九~第十七の態様のいずれかの一実施形態において、1種または複数のさらなる活性剤は、
(i)化学療法剤;
(ii)抗体;
(iii)アルキル化剤;
(iv)代謝抑制剤;
(v)血管新生阻害剤;
(vi)植物アルカロイドおよび/もしくはテルペノイド;
(vii)トポイソメラーゼ阻害剤;
(viii)mTOR阻害剤;
(ix)スチルベノイド;
(x)STINGアゴニスト;
(xi)癌ワクチン;
(xii)免疫調整剤;
(xiii)抗生物質;
(xiv)抗真菌剤;
(xv)駆虫薬;ならびに/または
(xvi)他の活性剤、
から選択される。
【0099】
活性剤の大まかな分類に従い定義されたこれらの一般的実施形態が互いに排他的でないことは、察知されよう。これに関連して、任意の特別な活性剤が、上記一般的実施形態の1つより多くに従い分類されてよい。非限定的例は、癌の処置のための免疫調整剤である、抗体のウレルマブである。
【0100】
理解される通り、さらなる活性剤が小さな化学物質である場合、以下の具体的な小さな化学物質への任意の言及が、具体的な小さな化学物質の全ての塩、水和物、溶媒和物、多形およびプロドラッグ形態を包含することが、理解されなければならない。同様に、さらなる活性剤がモノクローナル抗体などの生物学的薬剤である場合、以下の具体的な生物学的薬剤への任意の言及が、全てのバイオシミラーを包含することが、理解されなければならない。
【0101】
幾つかの実施形態において、1種または複数の化学療法剤は、アビラテロン酢酸エステル、アルトレタミン、アムサクリン、アンヒドロビンブラスチン、アウリスタチン、アザシチジン、5-アザシチジン、アザチオプリン、アドリアマイシンン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、N,N-ジメチル-L-バリル-L-バリル-N-メチル-L-バリル-L-プロリル-L-プロリン-t-ブチルアミド、シスプラチン、カルボプラチン、カルボプラチン・シクロホスファミド、クロラムブシル、カケクチン、セマドチン、シクロホスファミド、カルムスチン、クラドリビン、クリプトフィシン、シタラビン、ドセタキセル、ドキセタキセル(doxetaxel)、ドキソルビシン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン、ドラスタチン、エトポシド、リン酸エトポシド、エンザルタミド(MDV3100)、5-フルオロウラシル、フルダラビン、フルタミド、ゲムシタビン、ヒドロキシウレアおよびヒドロキシウレアタキサン(hydroxyureataxanes)、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、イキサゾミブ、レナリドミド、レナリドミド・デキサメタゾン、ロイコボリン、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、ラロタキセル(RPR109881)、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン、メルファラン、ミボブリン、3’,4’-ジデヒドロ-4’-デオキシ-8’-ノルビン-カロイコブラスチン、ニルタミド、オキサリプラチン、オナプリストン、プレドニムスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、白金含有抗癌剤、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ-N-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、プレドニムスチン、プロカルバジン、レブリミド、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、リン酸ストラムスチン、トレチノイン、タソネルミン、タキソール、トポテカン、タモキシフェン、テニポシド、タキサン、テガフル/ウラシル、サリドマイド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、および/またはビンフルニンから選択される。
【0102】
代わりまたは追加として、1種または複数の化学療法剤は、CD59補体フラグメント、フィブロネクチンフラグメント、gro-ベータ(CXCL2)、ヘパリナーゼ、ヘパリン六糖フラグメント、ヒトコリン作動性ゴナドトロピン(hCG)、インターフェロンアルファおよびインターフェロンベータなどのI型インターフェロンリガンド、I型インターフェロンミメティック、インターフェロンガンマなどのII型インターフェロンリガンド、II型インターフェロンミメティック、インターフェロン誘導性タンパク質(IP-10)、クリングル5(プラスミノーゲンフラグメント)、メタロプロテイナーゼ阻害剤(TIMP)、2-メトキシエストラジオール、胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、血小板第四因子(PF4)、プロラクチン16kDフラグメント、プロリフェリン関連タンパク質(PRP)、様々なレチノイド、テトラヒドロコルチゾール-S、トリンボスポンジン-1(TSP-1)、トランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-β)、バスキュロスタチン、バソスタチン(カルレチキュリンフラグメント)、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-5、インターロイキン-10、インターロイキン-12、およびインターロイキン-33)、インターロイキン-1リガンドおよびミメティック(リロナセプト、アナキンラ、およびアナキンラ・デキサメタゾン)、インターロイキン-2リガンドおよびミメティック、インターロイキン-5リガンドおよびミメティック、インターロイキン-10リガンドおよびミメティック、インターロイキン-12リガンドおよびミメティック、ならびに/またはインターロイキン-33リガンドおよびミメティックから選択されてよい。
【0103】
幾つかの実施形態において、1種または複数の抗体は、1種または複数のモノクローナル抗体を含んでよい。幾つかの実施形態において、1種または複数の抗体は、抗TNFαおよび/または抗IL-6抗体、特に抗TNFαおよび/または抗IL-6モノクローナル抗体である。幾つかの実施形態において、1種または複数の抗体は、アバタセプト、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、アテゾリズマブ、アトリズマブ、アベルマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ブレツキシマブ・ベドチン、ブロダルマブ、カナキヌマブ、セツキシマブ、セルトリズマブ・ペゴル、ダクリズマブ、デノスマブ、デュピルマブ、ドゥルバルマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エロツズマブ、ゲムツズマブ、ゴリムマブ、グセルクマブ、イブリツモマブ・チウキセタン、インフリキシマブ、イピリムマブ、イクセキズマブ、メポリズマブ、ムロモナブ-CD3、ナタリズマブ、ニボルマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ(panitumuab)、ペムブロリズマブ、ラニビズマブ、レスリズマブ、リサンキズマブ、リツキシマブ、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、および/またはウステキヌマブから選択される。
【0104】
幾つかの実施形態において、1種または複数のアルキル化剤は、例えば癌細胞を含む、細胞中に存在する条件下で、求核官能基をアルキル化できる薬剤を含んでよい。幾つかの実施形態において、1種または複数のアルキル化剤は、シスプラチン、カルボプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミドおよび/またはオキサリプラチンから選択される。幾つかの実施形態において、アルキル化剤は、生物学的に重要な分子中のアミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、および/またはリン酸基と共有結合を形成することにより、細胞機能を減じることにより機能してよい。幾つかの実施形態において、アルキル化剤は、細胞のDNAを修飾することにより機能してよい。
【0105】
幾つかの実施形態において、1種または複数の代謝抑制剤は、RNAまたはDNA合成に影響を及ぼす、またはそれを予防することができる薬剤を含んでよい。幾つかの実施形態において、1種または複数の代謝抑制剤は、アザチオプリンおよび/またはメルカプトプリンから選択される。
【0106】
幾つかの実施形態において、1種または複数の血管新生阻害剤は、サリドマイド、レナリドミド、エンドスタチン、アンギオゲニン阻害剤、アンジオアレスチン、アンギオスタチン(プラスミノーゲンフラグメント)、基底膜コラーゲン由来血管新生阻害因子(ツムスタチン、カンスタチン、またはアレスタチン)、血管新生抑制アンチトロンビンIII、および/または軟骨由来阻害剤(CDI)から選択される。
【0107】
幾つかの実施形態において、1種または複数の植物アルカロイドおよび/またはテルペノイドは、微細管機能を予防してよい。幾つかの実施形態において、1種または複数の植物アルカロイドおよび/またはテルペノイドは、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシンおよび/またはタキサンから選択される。幾つかの実施形態において、1種または複数のビンカアルカロイドは、マダガスカルニチニチソウ、ニチニチソウ(以前は、ニチニチカとして知られた)に由来してよく、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンおよび/またはビンデシンから選択されてよい。幾つかの実施形態において、1種または複数のタキサンは、タキソール、パクリタキセル、ドセタキセル、および/またはオルタタキセルから選択される。幾つかの実施形態において、1種または複数のポドフィロトキシンは、エトポシドおよび/またはテニポシドから選択される。
【0108】
幾つかの実施形態において、1種または複数のトポイソメラーゼ阻害剤は、I型トポイソメラーゼ阻害剤および/またはII型トポイソメラーゼ阻害剤から選択され、DNAスーパーコイリングを妨害することによりDNAの転写および/または複製を妨害してよい。幾つかの実施形態において、1種または複数のI型トポイソメラーゼ阻害剤は、エキサテカン、イリノテカン、ルルトテカン、トポテカン、BNP1350、CKD602、DB67(AR67)および/またはST1481から選択され得るカンプトテシンを含んでよい。幾つかの実施形態において、1種または複数のII型トポイソメラーゼ阻害剤は、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシドおよび/またはテニポシドから選択され得るエピポドフィロトキシンを含んでよい。
【0109】
幾つかの実施形態において、1種または複数のmTOR(ラパマイシンの機構的標的としても知られる、ラパマイシンの哺乳動物ターゲット)阻害剤は、ラパマイシン、エベロリムス、テムシロリムスおよび/またはデフォロリムスから選択される。
【0110】
幾つかの実施形態において、1種または複数のスチルベノイドは、レスベラトロール、ピセアタンノール、ピノシルビン、プテロスチルベン、アルファ-ビニフェリン、アムペロプシンA、アムペロプシンE、ジプトインドネシンC、ジプトインドネシンF、イプシロン-ビニフェリン、フレクスオソールA、グネチンH、ヘムスレイアノールD、ホペアフェノール、トランス-ジプトインドネシンB、アストリンギン、ピセイドおよび/またはジプトインドネシンAから選択される。
【0111】
幾つかの実施形態において、1種または複数のSTING(膜貫通タンパク質(TMEM)173としても知られる、インターフェロン遺伝子の刺激物質)アゴニストは、以下の修飾特性:2’-O/3’-O結合、ホスホロチオアート結合、アデニンおよび/またはグアニン類似体、および/または2’-OH修飾(例えば、メチル基での2’-OH保護、または-Fもしくは-Nによる2’-OHの置き換え)の1つまたは複数を含み得る、c-ジ-AMP、c-ジ-GMP、およびcGAMPなどの環状ジヌクレオチド(CDN)、ならびに/または修飾環状ジヌクレオチドを含んでよい。幾つかの実施形態において、1種または複数のSTINGアゴニストは、BMS-986301、MK-1454、ADU-S100、diABZI、3’3’-cGAMP、および/または2’3’-cGAMPから選択される。
【0112】
幾つかの実施形態において、1種または複数の癌ワクチンは、HPVワクチン、B型肝炎ワクチン、Oncophageおよび/またはProvengeから選択される。
【0113】
幾つかの実施形態において、1種または複数の免疫調整剤は、免疫チェックポイント阻害剤を含んでよい。免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、T細胞免疫グロブリンおよびムチン3(TIM3またはHAVCR2)、ガレクチン9、ホスファチジルセリン、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG3)、MHCクラスI、MHCクラスII、4-1BB、4-1BBL、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD27、CD70、TNFRSF25、TL1A、CD40、CD40L、HVEM、LIGHT、BTLA、CD160、CD80、CD244、CD48、ICOS、ICOSL、B7-H3、B7-H4、VISTA、TMIGD2、HHLA2、TMIGD2、ブチロフィリン(BTNL2を含む)、シグレックファミリーメンバー、TIGIT、PVR、キラー細胞免疫グロブリン様受容体、ILT、白血球免疫グロブリン様受容体、NKG2D、NKG2A、MICA、MICB、CD28、CD86、SIRPA、CD47、VEGF、ニューロピリン、CD30、CD39、CD73、CXCR4、および/またはCXCL12を含む、免疫チェックポイント受容体、または受容体の組み合わせを標的にしてよい。
【0114】
幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、ウレルマブ、PF-05082566、MEDI6469、TRX518、バルリルマブ、CP-870893、ペンブロリズマブ(PD1)、ニボルマブ(PD1)、アテゾリズマブ(以前は、MPDL3280A)(PD-L1)、MEDI4736(PD-L1)、アベルマブ(PD-L1)、PDR001(PD1)、BMS-986016、MGA271、リリルマブ、IPH2201、エマクツズマブ、INCB024360、ガルニセルチブ、ウロクプルマブ、BKT140、バビツキシマブ、CC-90002、ベバシズマブ、および/またはMNRP1685Aから選択される。
【0115】
幾つかの実施形態において、1種または複数の免疫調整剤は、補体経路モジュレータ(complement pathway modulator)を含んでよい。補体経路モジュレータは、補助活性化経路をモジュレートする。補体経路モジュレータは、C3および/もしくはC3aおよび/もしくはC3aR1受容体の活動を遮断するように作用してよく、またはC5および/もしくはC5aおよび/もしくはC5aR1受容体の活動を遮断するように作用してよい。幾つかの実施形態において、補体経路モジュレータは、C5補体経路モジュレータであり、エクリズマブ、ラブリズマブ(ALXN1210)、ABP959、RA101495、テシドルマブ(LFG316)、Zimura、クロバリマブ(RO7112689)、ポゼリマブ(REGN3918)、GNR-045、SOBI005、および/またはコバーシンから選択されてもよい。幾つかの実施形態において、補体経路モジュレータは、C5a補体経路モジュレータであり、セムジシラン(ALN-CC5)、IFX-1、IFX-2、IFX-3、および/またはオレンダリズマブ(ALXN1007)から選択されてよい。幾つかの実施形態において、補体経路モジュレータは、C5aR1補体経路モジュレータであり、ALS-205、M0R-210/TJ210、DF2593A、DF3016A、DF2593A、アバコパン(CCX168)、および/またはIPH5401から選択されてよい。
【0116】
幾つかの実施形態において、1種または複数の免疫調整剤は、抗TNFα剤を含んでよい。幾つかの実施形態において、抗TNFα剤は、抗体またはその抗原結合フラグメント、融合タンパク質、可溶性TNFα受容体(例えば、可溶性TNFR1または可溶性TNFR2)、阻害性核酸、または低分子TNFαアンタゴニストであってよい。幾つかの実施形態において、阻害性核酸は、リボザイム、低分子ヘアピンRNA、低分子干渉RNA、アンチセンス核酸、またはアプタマーであってよい。幾つかの実施形態において、抗TNFα剤は、アダリムマブ、セルトリズマブ・ペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、CDP571、およびそれらのバイオシミラー(アダリムマブ-adbm、アダリムマブ-adaz、アダリムマブ-atto、エタネルセプト-szzs、インフリキシマブ-abdaおよびインフリキシマブ-dyybなど)から選択される。
【0117】
幾つかの実施形態において、1種または複数の免疫調整剤は、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、レボフロキサシンおよび/またはロキシスロマイシンを含んでよい。
【0118】
幾つかの実施形態において、1種または複数の抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、ゲルダナマイシン、ヘルビマイシン、リファキシミン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロティン(cefalotin)、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフタロリン・フォサミル、セフトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババンシン、オリタバンシン、クリンダマイシン、リノコマイシン、ダプトマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン、アズトレオナム、フラゾリドン、ニトロフラントイン、リネゾリド、ポシゾリド、ラデゾリド、トレゾリド、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、テモシリン、チカルシリン、カルブラナート、アンピシリン、スバクタム(subbactam)、タゾバクタム、チカルシリン、クラブラナート、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB,シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジキシン酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、マフェニド、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファジメトキシン、スルファメトキサゾール、スルファナミド、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、スルホンアミドクリソイジン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、オイテトラサイクリン(oytetracycline)、テトラサイクリン、クロファジミン、ダプソン、ダプレオマイシン(dapreomycin)、シクロセリン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン、ストレプトマイシン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フシジン酸、メトロニダゾール、ムピロシン、プラテンシマイシン、キヌプリスチン、ダルホプリスチン(dalopristin)、チアンフェニコール、チゲシサイクリン、チニダゾール、トリメトプリム、および/またはテキソバクチンから選択される。
【0119】
幾つかの実施形態において、1種または複数の抗生物質は、1種または複数の細胞傷害性抗生物質を含んでよい。幾つかの実施形態において、1種または複数の細胞傷害性抗生物質は、アクチノマイシン、アントラセンジオン、アントラサイクリン、サリドマイド、ジクロロ酢酸、ニコチン酸、2-デオキシグルコース、および/またはクロファジミンから選択される。幾つかの実施形態において、1種または複数のアクチノマイシンは、アクチノマイシンD、バシトラシン、コリスチン(ポリミキシンE)および/またはポリミキシンBから選択される。幾つかの実施形態において、1種または複数のアントラセンジオンは、ミトキサントロンおよび/またはピクサントロンから選択される。幾つかの実施形態において、1種または複数のアントラサイクリンは、ブレオマイシン、ドキソルビシ(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(Daunomycin)、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン、プリカマイシンおよび/またはバルルビシンから選択される。
【0120】
幾つかの実施形態において、1種または複数の抗真菌剤は、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポジコナゾール(epoziconazole)、フルコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、プロピコナゾール、ラブスコナゾール(ravusconazole)、テルコナゾール、ボリコナゾール、アバファンギン、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、安息香酸、シクロピロックス、フルシトシン、5-フルオロシトシン、グリセオフルビン、ハロプロギン、トルナフラート(tolnaflate)、ウンデシレン酸、および/またはペルーバルサムから選択される。
【0121】
幾つかの実施形態において、1種または複数の駆虫薬は、ベンゾイミダゾール(アルベンダゾール、メベンダゾール、チアベンダゾール、フェンベンダゾール、トリクラベンダゾール、およびフルベンダゾールを含む)、アバメクチン、ジエチルカルバマジン、イベルメクチン、スラミン、パモ酸ピランテル、レバミゾール、サリチルアニリド(ニクロサミドおよびオキシクロザニドを含む)、および/またはニタゾキサニドから選択される。
【0122】
幾つかの実施形態において、他の活性剤は、成長阻害剤、抗炎症剤(非ステロイド系抗炎症剤、低分子抗炎症剤(コルヒチンなど)、および例えばTNF、IL-5、IL-6、IL-17またはIL-33を標的とする、抗炎症性生物学的製剤を含む)、JAK阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、CAR T治療薬、抗乾癬剤(アントラリンおよびその誘導体を含む)、ビタミンおよびビタミン誘導体(レチノイドおよびVDR受容体リガンドを含む)、ステロイド、コルチコステロイド、グルココルチコイド(デキサメタゾン、プレドニゾンおよびトリアムシノロン・アセトニドなど)、イオンチャネルブロッカー(カリウムチャネルブロッカーを含む)、免疫系調節剤(シクロスポリン、FK506、およびグルココルチコイドを含む)、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト(ロイプロリジン(leuprolidine)、ゴセレリン、トリプトレリン、ヒストレリン、ビカルタミド、フルタミド、および/またはニルタミドなど)、ホルモン(エストロゲンを含む)、および/または尿酸降下薬(アロプリノールなど)から選択される。
【0123】
他に断りがなければ、本発明の第九~第十七の態様のいずれかにおいて、対象は、任意のヒトまたは他の動物であってよい。典型的には対象は、哺乳動物、より典型的にはヒトまたは家畜の哺乳動物、例えばウシ、ブタ、子羊、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、マウスなどである。最も典型的には、対象は、ヒトである。
【0124】
本発明で用いられる医薬のいずれもが、経口、非経口(静脈内、皮下、筋肉内、皮内、気管内、腹腔内、関節内、頭蓋内、および硬膜外を含む)、気道(エアロゾル)、直腸、膣、眼または局所投与(経皮、口腔、粘膜、舌下および局所眼投与を含む)により投与され得る。
【0125】
典型的には、選択される投与様式は、処置または予防される障害、疾患または病気に最も適するものである。1種または複数のさらなる活性剤が投与される場合、投与様式は、本発明の化合物、塩、溶媒和物、プロドラッグまたは医薬組成物の投与様式と同じであっても、または異なっていてもよい。
【0126】
本発明の化合物、塩、溶媒和物またはプロドラッグの用量は、もちろん、処置または予防される疾患、障害または病気に応じて変動するであろう。一般に適切な用量は、0.01~500mg/レシピエント体重kg/日の範囲であろう。所望の用量は、1日おき、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回などの、適当な間隔をあけて供与されてよい。所望の用量が、例えば、投与剤形あたり1mg~50gの有効成分を含有する、単位投与剤形中で投与されてよい。
【0127】
疑念を避けるために、実行可能な限りにおいて、本発明の所与の態様の任意の実施形態は、本発明の同じ態様の任意の他の実施形態と組み合わせて起こってよい。加えて、実行可能な限りにおいて、本発明の任意の態様の任意の好ましい、典型的な、または任意選択による実施形態は、本発明の任意の他の態様の好ましい、典型的な、または任意選択による実施形態と見なされるべきであることが、理解されなければならない。
【0128】
本発明の実施形態を、ここに添付の図面を参照して記載するが、それは例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0129】
図1】メタノール中の光分解溶液中のMCC7840、MCC950、IZ1201およびIZ1438、ならびにそれらの光産物の構造;
図2】過剰なMCC950またはMCC7840を含む、または含まない、光プローブIZ1201またはIZ1438で光標識されたhNLRP3を示すゲル内蛍光スキャニング;
図3】hNLRP3に対応するゲルバンド中で同定されたタンパク質の順位分布(Rnak Order Distribution);
図4】MCC7840と競合させたIZ1438での組換えhNLRP3標識後のインタクトおよびIZ1438修飾hNLRP3ペプチド195TCESPVSPIK204のMS1強度値;
図5】hNLRP3のインタクトまたはIZ1438修飾ペプチドTCESPVSPIKについてのMS2スペクトル;
図6】過剰発現するHEK細胞の上清(A)およびカラム溶出画分(B)中のNLRP3の存在の確認;
図7】2種の異なる抗体(AおよびB)を用いた、過剰発現するHEK細胞の上清中のNLRP3の存在および対照非トランスフェクトHEK細胞中の非存在の確認;
図8】放射性リガンド結合アッセイの最適化;
図9】放射性リガンド結合試験における組織直線性;
図10】非トランスフェクトHEK分解物を用いた放射性リガンド結合試験のバックグランド評定;
図11】結合飽和試験;
図12】放射性リガンド結合のATP競合;
図13】予測されたリガンド結合部位を含むNLRP3モデル;
図14】NLRC4およびNOD2構造の両方についてのADPのX線結晶構造解析法での構造と重ね合わせた、最も可能性の高いリガンド結合部位の予測によるNLRP3モデル;
図15】Walker AモチーフとHis522残基の間に位置するスルホニルウレア基を含む、活性部位内にモデル化されたMCC950を含むNLRP3モデル;
図16】結合部位の付近にあると同定されたクリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)に関連する変異の選択を含むNLRP3モデル。
【発明を実施するための形態】
【0130】
実施例
実施例1:光親和性標識質量分析(PALMS)
概要
この試験の目的は、光親和性標識質量分析(PALMS)を適用して、MCC7840とヒトNLRP3(hNLRP3)との相互作用を検証すること、およびhNLRP3のMCC7840結合部位に寄与するアミノ酸残基を同定することであった。
【0131】
当業者に知られる通り、PALMSは、光反応性基およびレポーター官能基を有する、生物活性リガンド(光親和性プローブ)の類似体を利用する。光親和性プローブは、親分子の構造-活性関連性に基づき設計および合成される。組み込まれた光反応性基およびレポーター官能基が、非誘導体化リガンドと比較して、受容体へのリガンドの結合親和性およびその機能性を有意に改変しないことを立証することが、重要である。PALMSの間、光親和性プローブを、組換えタンパク質ターゲットとインキュベートし、UV光を照射する。複合体形成に続いて、光反応性基のUV照射は、高反応生化学種(例えば、カルベン、ニトレン、またはラジカル)を生じ、それは高親和性プローブをその高分子結合パートナーに共有結合で架橋させる。光架橋されたタンパク質ターゲットを、蛍光タグまたはエピトープタグ(例えば、TAMRA、ビオチン)でのクリックケミストリーによりタグ付けし、その後、SDS-PAGEおよびゲル内蛍光スキャニングまたはウエスタンブロッティングを用いてレポーター基により視覚化できる。プローブとタンパク質パートナーの間の共有結合形成は、次の、LC-MS/MSを用いる結合ポケットにおけるプローブ修飾ペプチドおよびアミノ酸の同定を可能にする。光親和性標識事象の機能的選択性を、対照試料中の競合物質の添加を通してモニタリングし得る。
【0132】
試験計画
第一のステップで、2種の光感受性プローブを用いる組換えhNLRP3の光標識の実験条件を、最適化した。第二のステップで、hNLRP3の光標識を、2種の光感受性プローブの1種を用いて実行し、光標識されたペプチド(複数可)/アミノ酸(複数可)を、ラベルフリー定量LC-MS/MS分析により同定した。
【表1】
【0133】
方法
MCC7840の光活性化可能類似体を、MCC7840のSARに基づき設計および合成した。親分子MCC7840の生物学的ホールマークを保持する(細胞IL-1β放出アッセイで評価される)、2種の光プローブIZ1201およびIZ1438を、Sf21細胞中で生成された精製組換えhNLRP3(6His-SUMO-TEV-NLRP3[125-1036])で光親和性標識実験を実施するために選択した。hNLRP3の効率的な光標識を確実にするために、最適化条件を、さらなるPAL-MS実験:過剰な親薬物MCC7840 50μMを含む、または含まない25μM IZ1438での30分間の処置、のために選択した。タンパク質消化の後、プローブ標識ペプチドを、ラベルフリー定量質量分析(MS)により分析した。マスシフト438.1727m/zを有するペプチド付加体を、MaxQuantソフトウエアで分析し、続いてCIDフラグメンテーションスペクトルを手作業で解釈した。
【0134】
結果
■ プローブ中のミニマリスト二官能性光架橋剤は、THP-1細胞内でのIL-1β放出アッセイで示された通り、細胞条件下で、親化合物に比較して標的エンゲージメントへの負の影響をほとんど有さなかった。
■ IZ1201およびIZ1438は、生存細胞においてMCC7840と標的との相互作用を付与し得る、細胞透過性プローブである。
■ 365nmでのUV照射の際、IZ1201およびIZ1438は、カルベン中間体を発生し、それは次にエチレン生成物中に再配置するか、または溶媒分子と反応して、メタノールまたはケトン生成物と高安定性のC-O共有結合を形成する。
■ IZ1201およびIZ1438は、組換えhNLRP3に結合し、それらの結合は、親化合物MCC7840およびNLRP3特異性阻害剤MCC950により阻害される。
■ MS1分析の間、1種の修飾ペプチド195TCESPVSPIK204が、IZ1438の分子量 -(マイナス) Nに対応する+438,1727m/zの特徴的マスシフトを有して同定された。
■ プローブ修飾ペプチドは、対照試料中では検出されず、MCC7840の存在下(つまりIZ1438と競合する)ではあまり豊富でなかった。
■ MS2分析の間、修飾ペプチドが、CIDフラグメンテーションによりペプチドに付着されたプローブの切断から生じる+265,0582m/zの特徴的マスシフトを有して同定された。
■ プローブ修飾ペプチドおよびそのインタクト同等物のMS2分析は、E197への265.0582m/zの付加体の部位を定位した。
【0135】
結論(概要)
これらの結果は、IZ1438が、MCC7840と競合する様式でhNLRP3におけるE197を光標識することを実証する。
【0136】
詳細
PALMSは、光反応性基およびレポーター官能基を有する光親和性プローブ(生物活性リガンド(低分子、ペプチド)の類似体)を利用する。光親和性プローブを、親分子の構造-活性関連性に基づき設計および合成する。組み込まれた光反応性基およびレポーター官能基が、非誘導体化リガンドと比較して、受容体へのリガンドの結合親和性およびその機能性を有意に改変しないことを立証することが重要である。PALMSの間、光親和性プローブを、組換えタンパク質ターゲットとインキュベートし、UV光を照射する。複合体形成に続いて、光反応性基のUV照射は高反応生化学種(例えば、カルベン、ニトレン、またはラジカル)を生じ、それは高親和性プローブをその高分子結合パートナーに共有結合で架橋させる。光架橋されたタンパク質ターゲットを、蛍光タグまたはエピトープタグ(例えば、TAMRA、ビオチン)でのクリックケミストリーによりタグ付けし、その後、SDS-PAGEおよびゲル内蛍光スキャニングまたはウエスタンブロッティングを用いてレポーター基により視覚化できる。プローブとタンパク質パートナーの間の共有結合形成は、次の、LC-MS/MSを用いる結合ポケットにおけるプローブ修飾ペプチドおよびアミノ酸の同定を可能にする。光親和性標識事象の機能的選択性を、対照試料中の競合物質の添加を通してモニタリングし得る。
【0137】
材料と方法
材料
Sf21昆虫細胞株中で生成された組換えhNLRP3[6His-SUMO-TEV-NLRP3(125-1036)、分子量116,929Da]を、使用まで10mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaCl、1mM DDT中、-80℃で貯蔵した。2種の異なるバッチを、試験に使用した:バッチ1(0.46mg/mL;4μM)およびバッチ2(0.20mg/mL;2μM)。光プローブIZ1201およびIZ1438、ならびに親化合物MCC950およびMCC7840は、Inflazomeにより提供された(表A)。
【表2】
【0138】
組換えヒトNLRP3の光親和性標識
組換えヒトNLRP3(4μgのバッチ1またはバッチ2、3.4pmol、最終濃度0.68μM)を別々に、96ウェルプレートにおいて、指示濃度(DMSO原液から希釈され、DMSOが最終溶液の1%を超えない)のそれぞれの光プローブ(IZ1201またはIZ1438)、またはDMSOとリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でインキュベートした(最終反応容量、50μL)。室温で30分間暗所においてインキュベートした後、混合物を、365nmのUV光で4℃にて20分間、光照射した。競合的光親和性標識実験では、指示濃度の親化合物MCC950またはMCC7840での15分の前処置に続いて、光プローブ処置および光分解を行った。UV照射の後、1%SDSおよび10mM DTTを添加し、56℃で1時間インキュベートした後、タンパク質試料を、暗所において室温で45分間30mM ヨードアセトアミドで処置した。プローブ標識hNLRP3を、製造業者の使用説明に従いClick-iT(商標)Protein Reaction Buffer Kit(ThermoFisher Scientific)を用いる銅のクリックケミストリーにより、テトラメチルローダミン(TAMRA)アジド(1mM原液からの100μM TAMRAアジド)でタグ付けした。-20℃に予め冷蔵された無水アセトン(9容量)を添加し、濁った混合物を、徹底してボルテックス処理し、-20℃で一晩インキュベートした。遠心分離(15,000×g、4℃で10分間)の後、上清を廃棄し、残ったペレットを、-20℃アセトンで洗浄した。洗浄液の上清を、遠心分離により除去し、沈殿されたタンパク質ペレットを、室温で10分間風乾した。
【0139】
架橋タンパク質のゲルを基にした解析
過剰の親化合物MCC950またはMCC7840を含む、または含まない、IZ1201またはIZ1438で以前に光標識されたhNLRP3(4μg、3.4pmol)の乾燥ペレットを、50μL SDSローディング緩衝液(2.5%v/v 2-メルカプトエタノールを含有するBio-RadのXT Sample Buffer)に再懸濁し、加熱した(60℃で30分間)。タンパク質を、SDS-PAGE(4~15%Criterion(商標)TGX Stain-Free(商標)Protein Gel、Bio Rad)を用いて分解し、励起光源としての緑色LED光およびBP600/20nm発光フィルターを含むChemiDoc(商標) MP Imaging System(Bio Rad)用いるゲル内蛍光スキャニングにより分析した。ゲル内蛍光スキャニングの後、ゲルを、Coomassieブルーで染色して、同量のタンパク質試料が確実に各レーンにロードされChemiDoc(商標) MP Imaging Systemで画像化されることを確実にした。hNLRP3中の各光プローブの光取り込みを、ImageJ1.52eを用いて対応するゲルバンドの蛍光強度を測定すること、およびこの値をCoomassieブルーで染色されたhNLRP3ゲルバンドの強度値に対し標準化してローディング差を制御すること、により定量的に評定した。
【0140】
MS分析のための標識hNLRP3の調製
50μL リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の組換えhNLRP3(55μgのバッチ2、2.47pmol、最終濃度0.94μM)を、15分間50μM MCC7840またはビヒクルとプレインキュベートし、その後、25μM IZ1438により室温でさらに30分間、処置した。試料を、4℃で20分間光照射した後、SDSローディング緩衝液(4×原液、17μL)で光架橋反応をクエンチした。タンパク質を、SDS-PAGE(4~15%Criterion(商標)TGX Stain-Free(商標)Protein Gel、Bio-Rad)を用いて分解し、 ゲルを、Coomassieブルーで染色した。hNLRP3に対応するタンパク質バンドを、ゲルから切り出し、Coomassieブルーが除去されるまで、250μlの50mM NHHCOおよびアセトニトリル(ACN)(1:1)により37℃で2時間洗浄した。その後、ゲル片を、50mM NHHCO中の10mM DTTにより56℃で30分間処置し、50mMのNHHCOおよびACN(1:1)で2回洗浄した。この後、50mM NHHCO中の55mMヨードアセトアミドにより室温で35分間処置し、50mMのNHHCOおよびACN(1:1)で2回洗浄し、SpeedVac濃縮機で乾燥させ、3μgのTrypsin/Lys-C Mix、Mass Spec Grade(Promega)を含有する60μLの50mM NHHCO溶液に再水和させた。上記混合物を、暗所で穏やかに撹拌しながら37℃で消化のために一晩インキュベートした。消化の後、10分間の短いスピンを与え、「Trypsin/Lys-CM画分」を、新しいAxygen(商標) MaxyClear Snaplock Microtubes(ThemoFisher Scientific)に回収した。ゲル片を、頻繁にボルテックス処理しながら、15分間に100μLの0.2%ギ酸およびACN(1:1)で2回、そして50μLのエタノールおよびACN(1:1)で1回再抽出した。上清を、「Trypsin/Lys-C画分」とひとまとめにし、SpeedVac濃縮機を用いて濃縮乾固した。ペプチド(最終濃度0.55μg/μL)を、100μLの水中0.2%ギ酸および0.3%ACNで再構成し、LC-MS/MSによる分析まで-20℃で貯蔵した。
【0141】
ペプチド混合物の質量分析
ペプチド混合物を、ナノエレクトロスプレーイオン源を具備したQExactive HF質量分析計(Thermo Scientific)に連結されたnanoAcquity UPLC(Waters)を用いるナノLC-MS/MSにより分析した。試料を、水中の0.2%ギ酸および0.3%ACNで最終濃度0.05μg/μlに希釈した。試料(1μg、20μL)を、水中0.2%ギ酸および0.3%ACN中で20μl/分でC18プレカラム(Symmetry C18 NanoAcquity、100Å、5μm、180μm×20mm)にロードした。脱塩ステップ(3分間)の後、プレカラムをオンラインで、92%溶媒A(水中の0.2%ギ酸)および8%溶媒B(水中の0.2%ギ酸および90%ACN)で平衡にされた分析BEH C18カラム(130μm;1.7μm、75μM×250mm、Waters)と切り替えた。XCaliburソフトウエアで、MSおよびクロマトグラフィーの機能を制御した。ペプチドを、流速270nL/分で165分間に溶媒Bの8-35%勾配を利用して溶出した。質量分析計を、データ依存的取得モードで操作して、自動的にMSとMS/MSの取得を切り替えた。サーベイフルスキャンMSスペクトル(m/z325~1300のもの)を、m/z200での分解能60,000で取得した。AGCを、3×10、最大注入時間を45msに設定した。最大強力イオンから上位20のイオンを、26%の標準化衝突エネルギーでの高エネルギー衝突解離(HCD)によるフラグメンテーションの標的とした(強度閾値3.3×104でAGC 1×10および最大注入時間60ms)。ダイナミックエクスクルージョンタイムウィンドウを、30秒に設定して、同じペプチドの再選択を防止した。MS/MSスペクトルを、分解能15,000でのプロファイルタイプで記録した。
【0142】
MSデータ処理
ローファイルを、ペプチドおよびタンパク質の同定および定量のために、MaxQuantソフトウエア(バージョン1.5.3.8)(1)で処理した。トリプシン消化のMS/MSのローファイルを、以下のパラメータを用いて、ヒトNLRP3トランケート化配列(125-1036)を含む連結されたデータベースおよびスポドプテラ・フルギペルダ(Sf21)データベースに対しAndromeda検索エンジンを利用して検索した:システインのカルバミドメチル化を、固定された修飾として設定し、N-末端アセチル化およびメチオニン酸化を、可変的修飾として設定した。全てのペプチドは、5アミノ酸の最小ペプチド長および最大2つのミスクリベージを有する必要があった。トリプシン切断への厳密な特異性を必要とし、プロリンへのN-末端切断を可能にした。マストレランスを、それぞれMSおよびMS/MSで4.5ppmおよび20ppmに設定した。検索を、過去に記載されたタンパク質配列の修飾された反転を有する連結されたターゲット・デコイ・データベースに対し実施した(2)。タンパク質およびペプチド同定のための偽発見率(FDR)を、最大1%に設定した。同定を異なるランの間で検証および転送するために、MaxQuantの「match between run’s」のオプションを、0.7分のマッチタイムウィンドウおよび20分のアライメントタイムウィンドウで可能にした。未知の修飾を、標準の検索でMaxQuantに実装された「依存的ペプチド」設定により、同定した。実装されたアルゴリズムはスペクトルマッチングを実施して、無バイアスの手法で修飾ペプチドを同定する。同定されなかったスペクトルが、同定されたスペクトルとマッチする場合、理論的プリカーサーマスおよび実測プリカーサーマスのマスシフト(ペプチドの修飾に対応する)、ならびにそのマッチした配列が、報告される。修飾ペプチドがFDR 1%およびマストレランス 6.5mDaの既に同定された非修飾ペプチドに由来する場合、それらは、同定されるのみである。修飾ペプチドを、ベースペプチドと依存的ペプチドの間のΔMマスシフトと共にallPeptides.txtから抽出した。全てのアミノ酸を、修飾が可能な残基と見なした。プローブ修飾ペプチドの検索に用いられた修飾の質量は、IZ1438では+438.17256m/zであり、これは対応するプローブ -(マイナス) 分子窒素の質量である。この修飾を、全てのMaxQuant検索において可変的修飾として設定した。定量の目的で、MaxQuantにより計算されたラベルフリー定量(LFQ)強度を、用いた。LFQメトリックを、各タンパク質について、異なる定量試料の全ての対比較で測定された全てのペプチド比を考慮することにより、特異的標準化手順および特有の凝集法を利用してタンパク質強度を計算するMaxLFQアルゴリズムにより、生データの強度から導く(3)。LFQ定量では、少なくとも2つの独特のペプチド比(最小LFQ比カウント=2)から計算されたタンパク質比のみを、LFQタンパク質強度の計算で考慮した。MaxQuantの処理データの解析を、手作業で実施した。手短に述べると、「依存的ペプチド」解析の場合、「all.Peptides.txt」ファイルを、Excelで開き、DP タンパク質の「sp|NRLP3-EV6347|」、DP質量差「400<X<460」およびDPスコア「>60」でフィルタリングした。DPマスシフトが+438.17256m/z(トレランス5ppm)であり2つの条件「NLRP3+IZ1438」および「NLRP3+IZ1438+MCC7840」のみに存在し対照「NLRP3」には存在しない、選択されたペプチドを、陽性ヒットと見なした。陽性ヒットの検証を、手作業で実施した。MSスペクトルを、Xcaliburソフトウエアで視覚化して、非修飾および修飾ペプチドの存在をチェックした。理想的には、非修飾ペプチドは、3つの条件全てで検出されるはずであり、+438.17265m/z光付加体で修飾されたペプチドは、条件「NLRP3+IZ1438」では検出され、条件「NLRP3+IZ1438+MCC7840」ではより少ない程度に検出され、対照「NLRP3」では検出されないはずである。MS/MSスペクトルを、MaxQuantのビューワープログラムを用いて視覚化して、非修飾ペプチドのyおよびbイオンをアノテートした。該当する非修飾および修飾ペプチドのMS/MSスペクトル(それぞれDPベーススキャンおよびDP修飾スキャン)を、Xcaliburソフトウエアにより開き、両方のペプチドの配列を比較して、配列内の光付加体の位置を決定した。yおよび/またはbイオンでの+438.17265m/z(トレランス5ppm)のシフトが、予期される。
【0143】
メタノール中の光分解生成物のLC-MS/MS分析
メタノール中のジアジリンプローブIZ1201およびIZ1438の光分解を、LC-MS/MSを用いて生成された光産物を分析することにより、別々に検査した。光プローブ(MeOH中の70pmol/μL)を、4℃で20分間、暗所に保持するか、または365nmで光照射し、その後、水中の0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)および0.2%ACNで最終濃度500fmol/μLに140倍希釈した。光プローブ溶液を、ナノエレクトロスプレーイオン源を具備したOrbitrap Velos Elite(Thermo Scientific) に連結されたUltimate 3500 RSLC System(Dionex)を用いるナノLC-MS/MSにより分析した。20μlの希釈された光プローブ溶液(10pmol)を、水中の0.05%TFAおよび2%ACN中で20μl/分でC-18プレカラム(Acclaim Pep Map C18、100Å、5μm、300μm×5mm)にロードした。脱塩ステップ(3分)の後、プレカラムを、オンラインで、97%溶媒A(0.2%ギ酸)および3%溶媒B(水中の0.2%ギ酸および80%ACN)で平衡にされた分析BEH C18カラム(130μm;1.7μm、75μM×250mm、Waters)と切り替えた。プローブを、ナノHPLCシステム(U3000、Thermo Fisher Scientific)を用いて流速0.250nl/分で13分間、溶媒Bの3-99%勾配により溶出し、ナノエレクトロスプレーイオン源を介してOrbitrap Velos Eliteに直接、エレクトロスプレーした。XCaliburソフトウエアにより、MSおよびクロマトグラフィーの機能を制御した。質量分析計を、データ依存的取得モードで操作して、自動的にMSとMS/MSの取得を切り替えた。サーベイフルスキャンMSスペクトル(m/z100~1600のもの)を、分解能120,000で取得した。AGCを1×10、最大注入時間を、200msに設定した。最大強力イオンから上位7のイオンを、28%の標準化衝突エネルギー(AGC 1×10)および最大注入時間10msでの衝突誘起解離(CID)によるフラグメンテーションの標的とした。アイソレーションウィンドウ 2m/z。ダイナミックエクスクルージョンタイムウィンドウを、60秒に設定して、同じペプチドの再選択を防止した。光分解の前および後に観察された異なる種の相対的存在量を、各種で測定されたMSイオン強度(またはピーク面積)から定量した。混合物中の各成分の組成率%を、MSイオン強度値に基づき計算した。
【0144】
結果
光反応性架橋および選別機能性の両方を含んだMCC7840の2種の光活性化可能類似体を、Inflazomeにより消化および合成した:図1:メタノール中の光分解溶液中のMCC7840およびMCC950、IZ1201およびIZ1438の構造、ならびにそれらの光産物の構造。LC-MSモードで観察された分子イオンの(A)構造、(B)質量、分子式、および光分解前のプローブに比較した分子マスシフト。光分解の前および後に観察された異なる種の相対的存在量を、各種で測定されたMSイオン強度から定量した。混合物中の各成分の組成率%を、MSイオン強度値に基づき計算した。
【0145】
脂肪族ジアジリン部分を、その小さなサイズ(タンパク質結合との干渉を最小限にするため)と、光分解での高反応性カルベン中間体を発生するのに必要とされる短い照射時間のため、光架橋基として選択した。本発明者らは、確立された生体直交型クリックケミストリーを利用して適切なレポータタグ(蛍光またはビオチンアジド基)にコンジュゲートされ得る、小さな脂肪族アルキンレポータ基を、プローブターゲット複合体のLC-MS/MSまたは動的細胞画像による次のエクスビボPD/標的同定のために用いた。Li et al.2013(4)により過去に記載された、ミニマリスト末端アルキン含有ジアジリン光架橋剤を、ファーマコフォアに接近して組み込み、高反応性カルベンの形成の際に光反応性部分が結合パートナーと優先的に反応し溶媒と反応しない機会を最大にした。
【0146】
PALMS実験を実行するために、親分子MCC7840の生物学的ホールマークを保持しかつMCC7840と類似の作用様式および細胞内分子相互作用を有する、MCC7840の光活性可能な類似体を選択する必要がある。この目的で、MCC7840、MCC950ならびに2種の光プローブIZ1201およびIZ1438の効能(IC50値)および阻害効果を、THP-1細胞におけるIL-1β放出アッセイで評定した。
【0147】
インフラマソームは、カスパーゼ1を活性化するように機能し、カスパーゼ1はその後、炎症促進性サイトカインのインターロイキン-1β(IL-1β)およびIL-18をタンパク質分解で切断し活性化することを担う。インフラマソームはさらに、細胞死の炎症促進性形態であるパイロトーシスを誘発することにより炎症を促進する。THP-1細胞におけるIL-1β放出アッセイを用いて、インフラマソーム介在性サイトカイン分泌を阻害する異なる分子の能力を評定した。
【0148】
表Bに示される通り、MCC950は、テストされた4種のうちもっとも強力な化合物であり、一方でMCC7840および光プローブIZ1438は、互いに同等の、かつMCC950の4分の1~6分の1のIC50値を有する。光プローブIZ1201は、活性がIZ1438のおよそ6分の1である。
【0149】
これらの結果は、プローブ中のミニマリスト二官能性光架橋剤が、細胞条件下では親化合物に比較して標的エンゲージメントへの負の影響を極わずかしか有しないか、またはほとんど有しないことを示す。
【表3】
【0150】
組換えヒトNLRP3の光親和性標識およびゲル内蛍光分析
光プローブとhNLRP3の間の直接的相互作用を検証するために、本発明者らは、インビトロ光親和性標識実験を実施した。手短に述べると、バッチ1またはバッチ2からの組換えhNLRP3を、上昇濃度のIZ1201またはIZ1438で30分間処置し、その後、UV照射して光架橋を開始した。次に、プローブ標識タンパク質を、プローブ上の脂肪族アルキン官能基を介する赤色蛍光TAMRAアジド色素とのクリック反応に供し、プローブ標識タンパク質(複数可)がTAMRAレポータフルオロフォアで選択的にタグ付けされるようにした。タンパク質をその後、SDS-PAGEにより分解し、その後、ゲル内蛍光スキャニングを行って、蛍光タンパク質を視覚化した。
【0151】
図2:過剰なMCC950またはMCC7840を含む、または含まない、IZ1201またはIZ1438で光標識されたhNLRP3を示すゲル内蛍光スキャニング。
【0152】
hNLRP3を、ビヒクルまたは指示濃度のIZ1201もしくはIZ1438で1時間標識し、その後、標準の光親和性標識(PAL)手順を行った。光分解に続いて、プローブ修飾タンパク質を、TAMRA-アジドタグとクリック反応させ、SDS-PAGEおよびゲル内蛍光スキャニングにより分析した。競合PAL実験のために、バッチ1(B)またはバッチ2(C)からのhNLRP3を、MCC7840もしくはMCC950(25または50μM)、またはビヒクルと15分間プレインキュベートし、この後、先に記載された通り、UV照射、TAMRA-アジドタグとのクリック反応、およびゲル内蛍光スキャニングを行った。hNLRP3中の各光プローブの光取り込みを、対応するゲルバンド(黒い矢印)の蛍光強度を測定すること、およびこの値をCoomassieブルーで染色されたhNLRP3ゲルバンドの強度値に対して標準化することにより、定量的に評定した。
【0153】
図2Aに示された通り、類似の標識パターンが、両方のプローブおよび両方のhNLRP3バッチで観察された。本発明者らは、hNLRP3への両方のプローブの用量依存的光取り込みを観察した(117kDa)。光取り込みの収率は、両方のプローブで類似していた。他のタンパク質バンド(約28、約60、約90および約300kDa)もまた、標識されるがhNLRP3よりかなり低い程度のようであった。1μMのIZ1201またはIZ1438での処置は、上昇濃度の親化合物MCC950およびMCC7840との競合実験を想定するのに充分なhNLRP3標識をインビトロで提供した。
【0154】
hNLRP3のIZ1201またはIZ1438標識の特異性を模索するために、MCC950およびMCC7840での一組の競合標識実験を、実施した。手短に述べると、バッチ1またはバッチ2からのhNLRP3を、MCC7840もしくはMCC950(25または50μM)、またはビヒクルと15分間プレインキュベートし、その後、IZ1201またはIZ1438(1μM)と1時間インキュベートし、この後、標準の光親和性標識手順を行った。プローブにより特異的に標識されるタンパク質は、競合物質として用いられた親化合物で前処置された試料中のゲル内蛍光シグナルの減少を呈するものである。図2Bに示された通り、MCC950およびMCC7840の両方が、バッチ1およびバッチ2からhNLRP3へのIZ1201光取り込みを、弱く、かつどちらかと言うと一貫性なく阻害した。その一方で、両方の競合物質は、類似の能力により用量依存的様式でバッチ1からのhNLRP3のIZ1438標識を遮断した(25μMで約23%阻害、および50μMで約37%阻害)。しかし、MCC950は、高用量であってもIZ1438によるバッチ2からのhNLRP3の標識を弱く防止し(50μMで11%阻害)、一方でMCC7840は、良好な効能(50μMで約70%阻害)でhNLRP3へのIZ1438光取り込みの用量依存的阻害を生じた(図2C)。
【0155】
総括すると、これらのデータは、2種のプローブIZ1201およびIZ1438が組換えhNLRP3に結合すること、および親化合物MCC7840およびNLRP3特異性阻害物質MCC950がそれらの結合を阻害することを示す。それゆえ本発明者らは、IZ1201およびIZ1438がMCC7840および類似体とhNLRP3との相互作用を試験するための可変的光親和性プローブであると結論づける。hNLRP3へのMCC7840の結合部位でのさらなる試験を、選択されたプローブとしてIZ1438および競合物質としてMCC7840を用いて、バッチ2からのhNLRP3で実施するであろう。
【0156】
組換えhNLRP3でのIZ1438修飾ペプチドのマッピング
IZ1438により光標識された厳密な残基を同定するために、hNLRP3(バッチ2、0、94μM)を単独で、またはMCC7840(50μM)と組み合わせて、もしくは組み合わせずにIZ1438(25μM)と共に光照射した。光分解の後、試料を、SDS-PAGEを利用して分解し、タンパク質を、Coomassieブルーで染色した。hNLRP3に対応するタンパク質バンドを、ゲルから切り出し、ゲル内トリプシンタンパク質分解に供した。
【0157】
図3:hNLRP3に対応するゲルバンド中で同定されたタンパク質の順位分布。A.hNLRP3を含む172種のタンパク質を、それぞれ赤色(hNLRP3)および青色(Sf21タンパク質)の円で表す。タンパク質を、最大(右)存在量から最小(左)存在量の順序で並べる。B.6His-SUMO-TEV-NLRP3(125-1036)の配列包括度の図解。LC-MS/MSにより同定されたペプチドを、赤色で示す。6His-SUMO-TEVタグの配列を、黄色で強調する。
【0158】
全部で、hNLRP3および171種のSf21タンパク質を含む、172種のタンパク質を同定した。強度に基づく172種のタンパク質の順位分布を、図4Aに示す。当然のことながら、hNLRP3は、ゲルバンドで定量された最も強力なタンパク質である。hNLRP3の少なくとも90%の配列包括度が、全ての試料で実現された(図3B)。
【0159】
得られたペプチドを、LC-MS/MSにより分析した。MSデータを、任意のアミノ酸上の修飾としてIZ1438を有する組換えhNLRP3およびスポドプテラ・フルギペルダタンパク質配列を含む複合タンパク質データベースに対しMaxQuantにより検索した。光化学的コンジュゲーションの性質により、結合部位を、1種または複数のペプチド上の複数のアミノ酸残基への多重コンジュゲーション事象により表してよい。コンジュゲートされたペプチドに割り当てられた全てのペプチドスペクトルマッチ(PSM)を、手作業で検証した。未知の修飾を有するペプチドを、標準の検索でMaxQuantに実装された「依存的ペプチド」設定を用いて、同定した。このペプチド付加体は、競合物質MCC7840の存在下でプローブIZ1438と共に照射された試料中でも同定されたが、ピーク強度はプローブのみで光標識された試料に比較して2分の1であった。予期された通り、IZ1438修飾195TCESPVSPIK204ピークからの二重充填シグナル(doubly charged signal)に対応する778.3711m/zでのプリカーサーイオンは、対照試料(IZ1438の非存在下でUV照射されたhNLRP3)では検出されなかった(図4A)。二重充填されたインタクトペプチド195TCESPVSPIK204に対応する559.2817m/zのベースピークは、対応するプローブ修飾ペプチドの約1000倍の強度であり、hNLRP3の結合部位におけるIZ1438の特異的な共有結合性光取り込みの収率が低かったことを示す(図4B)。
【0160】
図4:MCC7840と競合させたIZ1438での組換えhNLRP3標識後のインタクトおよびIZ1438修飾hNLRP3ペプチド195TCESPVSPIK204のMS1強度値。hNLRP3からのアミノ酸配列TCESPVSPIKを有する独特のトリプシン性ペプチドを、LC-MS/MS分析により検出し、このフラグメント中へのIZ1438組み込みに対応する+438.1727m/zのペプチド質量の増加があった。A.異なる試料中のIZ1438修飾TCESPVSPIKに対応する778.3711m/z(z=2)でのプリカーサーイオンのAS1強度値。B.hNLRP3をIZ1438で標識した場合に検出されたインタクトおよびIZ1438修飾TCESPVSPIKにそれぞれ対応する559.2817m/z(z=2)および778.3711m/z(z=2)でのプリカーサーイオンのMS1強度値。
【0161】
MS1データの検査は、IZ1438修飾195TCESPVSPIK204フラグメントが非修飾同等物より遅く溶出したこと(それぞれ178分および49分)を示し、IZ1438の共有結合性付着の後、ペプチド付加体がより疎水性であり、それゆえより良好にC18カラムにより良好に保持されたことを示唆する。プローブ修飾ペプチド(778.3711m/z、z=2)および非修飾形態(559.2817m/z、z=2)のMS2スペクトルを、特異的なプローブ標識bまたはy型フラグメントイオンの存在、および光付加体(特異的アミノ酸残基への)の部位の定位について手作業で評価した。両方のペプチド形態は、プローブ修飾のMS2スペクトルでの質量856.4772m/zおよび非修飾ペプチドのそれの質量1121.5302m/zで検出されたy8フラグメントイオンを除き、複数のbおよびy型フラグメントイオンを共有した(図5A)。このマスシフト+265.0582m/zは、CIDフラグメンテーションでペプチドに付着されたプローブの切断から生じる。
【0162】
実際に、図5Bに示された通り、メタノール中のIZ1438のCIDフラグメンテーションは、尿素結合の切断から生じた2つのフラグメントイオン:ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-アミン 10(174.1282m/z)、およびミニマリスト末端アルキン含有ジアジリン架橋剤で修飾された1H-ピラゾール-3-スルホニルイソシアナート 11(294.0661m/z)を生じた。y8フラグメントイオンに付着された付加体の質量は、Nの損失後の光架橋剤を含有する1H-ピラゾール-3-スルホニルイソシアナートフラグメントの質量(294.0661m/z)に対応する。プローブ修飾ペプチドおよびそのインタクト同等物のMS2分析は、E197への265.0582m/zの付加体の部位を定位した。加えて、MS2スペクトルの注意深い精査も、プローブ修飾ペプチドのMS2スペクトルのみに存在する質量174.1126m/zのフラグメントイオンを示した(図5A)。このフラグメントイオンはおそらく、CIDフラグメンテーションによる光付加体切断後に放出されたヘキサヒドロ-s-インダセン-4-アミンに対応する。本発明者らの知見は、IZ1438が、hNLRP3中のグルタミン酸197を、MCC7840阻害可能な様式で光標識することを実証した。
【0163】
図5:hNLRP3のインタクトまたはIZ1438修飾ペプチドTCESPVSPIKについてのMS2スペクトル:A.プローブ修飾ペプチド778.3711m/zおよびそのインタクト同等物559.2817m/zのMS2スペクトル。プローブ修飾ペプチドのy8フラグメントイオンは、CIDフラグメンテーションでIZ1438に由来する付加体11に対応する特異的修飾(+265.0582m/z)を含み、かつE197上に定位された(Emod)。加えて、IZ1438から切断されたフラグメントイオン174.1126m/zは、プローブ修飾ペプチドのMS2スペクトルのみで検出された。B.特異的娘フラグメンテーション174.1274m/zおよび294.0646m/z(拡大されたMS2スペクトル)を示すIZ1438のMS2スペクトル。
【0164】
結論
本発明者らは、ミニマリスト末端アルキン含有ジアジリン光架橋剤を有する2種の新規な光親和性プローブIZ1201およびIZ1438を用いた組換えhNLRP3でのPALMSの実行に成功し、かつ両方の活性プローブが、NLRP3インフラマソームの強力で選択的な阻害剤MCC7840およびMCC950により防護的様式でhNLRP3を光標識することを示した。これらの結果は、MCC7840およびMCC950がインビトロでhNLRP3を結合することを示す。本発明者らは、MCC7840をIZ1438と競合させるPAL-MSを利用して、hNLRP3におけるMCC7840の結合部位の一部として架橋アミノ酸E197を同定した。本発明者らの知識では、これは、質量分析によりアミノ酸分解での架橋位置を明瞭にするための、hNLRP3への光親和性標識の最初の適用である。本発明者らの知見は、MCC7840などの新しい阻害剤と相互作用するhNLRP3上の結合部位をマッピングするケミカルプロテオミクスの潜在能力を実証する。
【0165】
装置
- Spectramax Paradigm(Molecular devices)
- PowerPac 200(Bio-Rad)
- Trans-Blot(登録商標) Turbo(商標) Transfer System(Bio-Rad)
- Centrifuge 1-15pk(Sigma)
- ChemiDoc(商標)MP Imaging System(Bio-Rad)
- Q-Exactive Plus(ThermoFisher Scientific)
- nanoACQUITY UPLC system(Waters)
- Ultimate 3500 RSLC System(Dionex)
- Orbitrap Velos Elite(Thermo Fisher Scientific)
- UVP CL-1000 UV架橋チャンバー(Hyland Scientific)
【0166】
参考資料
1.Cox J, Mann M. MaxQuant enables high peptide identification rates, individualized p.p.b.-range mass accuracies and proteome-wide protein quantification. Nat Biotechnol. 2008 Dec;26(12):1367-72. doi: 10.1038/nbt.1511.
2.Elias JE, Gygi SP. Target-decoy search strategy for increased confidence in large-scale protein identifications by mass spectrometry/Nat Methods. 2007 Mar;4(3):207-14.
3.Cox J, Hein MY, Luber CA, Paron I, Nagaraj N, Mann M. Accurate proteome-wide label-free quantification by delayed normalization and maximal peptide ratio extraction, termed MaxLFQ. Mol Cell Proteomics. 2014 Sep;13(9):2513-26. doi: 10.1074/mcp.M113.031591. Epub 2014 Jun 17.
4.Li Z, Hao P, Li L, Tan CY, Cheng X, Chen GY, Sze SK, Shen HM, Yao SQ. Design and synthesis of minimalist terminal alkyne-containing diazirine photo-crosslinkers and their incorporation into kinase inhibitors for cell- and tissue-based proteome profiling. Angew Chem Int Ed Engl. 2013 Aug 12;52(33):8551-6. doi: 10.1002/anie.201300683.
【0167】
実施例2:競合的放射性リガンドアッセイ形式でのHEK-NLRP3溶解物上清への化合物結合の評定
この目的は、[H]-MCC7840およびNLRP3を過剰発現するHEK293細胞溶解物を利用して放射性リガンド結合アッセイを開発することであった。NLRP3は、細胞質タンパク質であるため、従来の濾過結合アッセイ法を用いて、細胞溶解物から遊離放射性リガンドおよび結合放射性リガンドを分離できなかった。ゲル濾過法を、文献の方法に基づき評価し(Analytical Biochemistry 308, 2002 127-133)、このアッセイを、ツール化合物を評価するために最適化した。
【0168】
アッセイプロトコル
上清の調製
細胞ペレットを、氷上で解凍し、結合緩衝液で2倍希釈した。得られた溶液を、1.5mlEppendorf管に分取し、遠心分離した(13.3g×1000、室温で5分)。上清を、取り出し、-20℃で貯蔵した。タンパク質の決定を、製造業者の使用説明に従いPierce BCAキットを用いて、これらの試料で実施した。
【0169】
タンパク質単離&ウエスタンブロッティング
細胞上清を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有するRIPA溶解緩衝液で調製し、単一プローブ音波処理(single probe sonication)を利用して音波処理した。BCAアッセイを利用して、タンパク質濃度を決定した。その後、等量のタンパク質を含有する多量のタンパク質溶解物を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いて4~12%Bis-Trisゲルで分離し、iBLOT Gel Tranferシステムを用いてニトロセルロース膜に移した。
【0170】
ブロットをその後、Odysseyブロッキング緩衝液中で1時間ブロックし、その後、Tris緩衝生理食塩水および0.1%Tween20(TBST)中にて一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。ブロットをその後、TBSTで3回洗浄し、IRDyeコンジュゲート化ヤギ抗ウサギまたは抗マウスIgG二次抗体と室温で1.5時間インキュベートした。免疫反応性バンドを、Odyssey Li-Cor赤外イメージングシステムを用いて視覚化した。
【0171】
放射性リガンド結合アッセイ
100μlの最終アッセイ容量
細胞上清の容量は、細胞上清の各バッチのタンパク質濃度に依存した。
10μl 2μM[3H]-MCC7840(最終アッセイ濃度(FAC)=200nM)
10μl 化合物/非特異的結合(NSB)(10μM MCC7840、FAC 10μM)/DMSO対照(FAC DMSO=0.1%)
結合緩衝液の容量は、アッセイで用いられた上清の容量に依存した。試料を、ひとまとめにし、振とうしながら室温で4時間インキュベートした。
【0172】
PD MultiTrap G-25調製プレート(最終的なゲル濾過法)
ゲル濾過は、分子がカラムに充填されたゲル濾過媒体を通過する時に、サイズの差に応じて分子を分離する。ゲル濾過媒体は、定義された排除限界を有するSephadexなどの球形粒子で作製される。試料および緩衝液がカラム全体を移動する際に、分子が、細孔の内部および外部に拡散する。より小さな分子は、さらに細孔内に移動し、そのためカラム内により長く保持される。より大きな分子は、細孔内に拡散できず、そのためより急速に溶出する。手短に述べると、PD MultiTrapプレートを、室温(RT)、800gで1分間スピンダウンして、貯蔵緩衝液を除去した。それらを、300μl/ウェル 結合緩衝液により800g、RT、1分間で5回洗浄した。
【0173】
80μlの試料を、ウェルごとに添加し、400gで1分間スピンダウンした。50μlのフロースルーを、Optiplate中の145μl Microscint-20に添加した。プレートを、RTでおよそ30分間振とうした後、Perkin Elmer TopCountで読み取った。データを、GraphPad Prismを用いて解析した。
【0174】
過剰発現するHEK細胞溶解物中のNLRP3タンパク質の確認
NLRP3発現を、先に記載された通りウエスタンブロッティングを利用してHEK293細胞溶解物中で確認した。Cell Signalling Technologies(#15101)からのNLRP3ウサギ抗体を、1:1000希釈で使用し、GAPDH抗体を、1:5000希釈で使用し、Alexa-fluorヤギ抗ウサギ抗体800を、1:10000希釈で使用した。ウエスタンブロットを、Licor赤外イメージングシステムを用いて撮影した。図6:過剰発現するHEK細胞の上清(A)およびカラム溶出画分(B)の中のNLRP3の存在の確認。複数の溶解緩衝液(PBS、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を有するおよび有さないRIPA)を、比較し、それらは同等の結果を示した。リポ多糖で刺激されたTHP-1細胞からの溶解物も、同じゲルで比較したが(A)、これらの試料ではバンドは検出されなかった。これは、GAPDHで検出された強度の低いバンドに示される通り、かなり低量のタンパク質がこれらの試料から抽出およびロードされたことが原因である可能性がある。より高量のタンパク質ローディングは、正しいNLRP3の正しいサイズに対応するバンドを示したが(B)、これは、リポ多糖刺激により増加しなかった。HEK293-NLRP3上清試料を、溶出液中のNLRP3の存在の確認のために、ローディング前のものと、PD MultiTrap G-25調製プレートの溶出画分からのもの(B)とで比較した。
【0175】
図7:2種の異なる抗体(AおよびB)を用いる、過剰発現するHEK細胞の上清中のNLRP3の存在および対照非トランスフェクトHEK細胞中の非存在の確認。NLRP3発現の2000倍を超える増加が、非トランスフェクト対照の独立した3回の実験に比較して、トランスフェクトHEK細胞で検出された(C)。
【0176】
PD MultiTrap(商標)G-25方法の最適化
遊離放射性標識からの結合放射性標識の分離を、一連の実験を通して最適化し、様々な遠心分離プロトコルおよび異なる緩衝調製物を調査した。真空により試料を運動させる試みは、カラムが長すぎるためこの手順が可能でないことを立証した。しかしスピンの速度を低減することにより、NSBを低減すること、およびおよそ3倍のアッセイウィンドウを得ることができた(図8:左側のグラフ:800g、20秒;右側のグラフ:400g、1分)。
【0177】
組織直線性
組織直線性実験を、放射性リガンド結合アッセイにおいて細胞上清のタンパク質濃度を変動させることにより実施した。非特異的結合を、10μMの非標識化合物MCC7840を用いて定義した。特異的結合を、全結合から非特異的結合を差し引くことにより決定した。良好なアッセイウィンドウでの最低濃度を、ウェルあたりタンパク質700μgであると決定した。これは、次の全実験で用いられるタンパク質濃度であった(図9:放射性リガンド結合試験(200nM [H]-MCC7840、RTで4時間)組織直線性(n=3))。
【0178】
非トランスフェクトHEK細胞上清とNLRP3トランスフェクトHEK細胞上清の比較
アッセイシグナルを、非トランスフェクト細胞上清とNLRP3トランスフェクト細胞上清を用いて決定した。バックルランドシグナルの評定を、図5に示されたアッセイで、非トランスフェクトHEK293細胞上清およびNLRP3過剰発現細胞上清において、全結合と非特異的結合を比較することにより実施した。200nM [H]-MCC7840の全結合は、非トランスフェクト対照上清に比較してNLRP3細胞上清でおよそ3倍増加した(図10:放射性リガンド結合試験(700μgタンパク質、200nM [H]-MCC7840、RTで4時間))。
【0179】
放射性リガンド飽和結合試験
H]-MCC7840の飽和結合試験を、3種の独立した実験において濃度を200倍範囲で変動させることにより実施して、Kdを決定した。3種の別の実験からテストされた全ての濃度をまとめて、より正確なKdを得た(グラフ6e)。[H]-MCC7840のKdは、3種の独立した実験からおよそ230nMであると決定された(図11)。
【0180】
ATPおよびADPでの放射性リガンド競合結合試験
リガンド結合がATPおよびADPと競合的であるかどうかを示すために、実験を、ATPおよびADPの濃度を変動させること、ならびに200nMで[H]-MCC7840と競合させることにより実施した。幾つかの競合がATPで認められたが、より高濃度は、濃度応答曲線全体を定義するほどテストできなかった。推定IC50 75mMを、ATP曲線フィットにおいて最小値を限定することにより得た(図12:放射性リガンド結合試験(700μgタンパク質、200nM [H]-MCC7840、RTで4時間)。
【0181】
結論
この報告で提示されたデータは、NLRP3を過剰発現するHEK293細胞溶解物上清中のNLRP3に結合する放射性リガンドの測定のための新規な96ウェルプレートに基づくゲル濾過結合アッセイの開発成功を示す。このアッセイを利用して、NLRP3放射性リガンド[H]-MCC7840の結合特徴を決定した。
【表4】
【0182】
結合緩衝液の組成:
50mM TrisHCl(7.88g/l)
120mM NaCl(24ml 5M/l)
5mM KCl(0.372g/l)
1mM EDTA(0.292g/l)
pH7.4
【0183】
実施例3:モデル化
デジタルコンストラクト(Digital constructs)を作成して、NLRPタンパク質をプローブする新規方法を提供し、それによりNLRP3阻害剤の結合部位に機械論的洞察を与えた。
【0184】
ヒトNLRP3の複数のモデルを、手作業で構築されたアミノ酸配列アラインメントを利用して、マウスNLRC4およびウサギNOD2タンパク質(それぞれpdbコード4kqvおよび5irn)のX線結晶構造NACHTドメインから構築した。これらを分析して、可能なリガンド結合部位を同定した(MolSoft L.C.Cからのアルゴリズムを用いて):予測されたリガンド結合部位を有するNLRP3モデルの1つを示す、図13を参照されたい。最大であり最も可能性の高い結合部位は、Pocket 1であり、一致して、最も可能性の高い低分子結合部位は、NLRC4およびNOD2の結晶構造からのADPと同等の場所にある;図14を参照のこと、これは、NLRC4およびNOD2構造の両方についてのADPのX線結晶構造解析法での構造と重ね合わせた、最も可能性の高いリガンド結合部位の予測を含むNLRP3モデルである。最も可能性の高い結合部位の予測は、ADP分子のX線結晶構造解析法の構造の場所を包含する。ATP結合部位は、同じ場所を有するであろう。
【0185】
NLRC4およびNOD2のX線結晶構造は、リン酸基に結合し、隣接するヒスチジン残基(NLRC4構造のHis443およびNOD2構造のHis583)によりさらに安定化された、Walker Aモチーフを示す。ヒトNLRP3中に同等のヒスチジン残基His522が存在し、Walker A結合モチーフと共に、それはNLRP3中のATP/ADPに対する同等のリン酸結合部位を定義する。低分子阻害剤MCC950は、スルホニルウレア部分を含有し、それは、リン酸基を模倣し、タンパク質にモデル化されると、ポケット1により画定された空間のより多くを充填するようにその分子を配置する:Walker AモチーフとHis522残基の間に位置するスルホニルウレア基を含む活性部位内にモデル化されたMCC950を示す、図15を参照されたい。
【0186】
実施例4:変異原性データ
クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)に関連する変異の選択が、NLRP3の活性部位に接近していると同定された。以下の図16および表Cを参照されたい。
【表5】
【0187】
医師およびいくらかの研究者から得たCAPS変異を記録したデータベース(https://infevers.umai-montpellier.fr/wheb/search.php?n=4)において、残基数は、Uniprotと同様のタンパク質データベース(https://www.uniprot.org/uniprot/Q96P20)におけるNLRP3のタンパク質配列から-2アミノ酸である。本出願における計算モデルでは、Uniprotの参照配列を、用いた。臨床変異アノテーションが本出願に含まれる、唯一の場所は、表Cである。
【0188】
以下の表Dに詳述されたNLRP3変異の1つまたは複数が、NLRP3阻害剤の結合を防止し、NLRP3タンパク質を不活性にし、NLRP3タンパク質を構造的に活性にし、かつ/または結合ポケットへの構造的洞察を提供することが、予期される。
【表6】
【0189】
本発明が例示のみにより先に記載されたことは、理解されよう。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲および主旨を逸脱することなく、様々な改良および実施形態を作製することができ、本発明は以下の特許請求の範囲のみにより定義される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】