(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-14
(54)【発明の名称】食用食品ケーシング用フィルム
(51)【国際特許分類】
A22C 13/00 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
A22C13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557530
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2020061076
(87)【国際公開番号】W WO2020221622
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513107595
【氏名又は名称】ビスコファン,エセ.アー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストフィス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】メンガー,ハンス-ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】エタヨ,ヴィンセンテ
(72)【発明者】
【氏名】レカルデ,ホセ・イグナシオ
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011DA01
4B011DA03
4B011DA04
(57)【要約】
本発明では、食用食品ケーシング用フィルム、前記食用食品ケーシング用フィルムの製造方法、前記食用食品ケーシング用フィルムの組成物および例えばソーセージケーシングとして前記食用食品ケーシング用フィルムの使用を提供する。当該食品ケーシング用フィルムは、熱水とナトリウム塩に強く、高温で安定的で、容易にシャーリングでき、食料品、特に肉、チーズまたは魚の加工食品のほかにベジタリアンやビーガン用の食料品を容易に詰めることができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用食品ケーシング用フィルムにおいて、
アルギン酸塩、カラギーンおよびペクチンからなる群から選択される化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、
ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択される熱不可逆性の水不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含み、
前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、24~80重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.45:1.0~3.0の範囲である、食用食品ケーシング用フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の食用食品ケーシング用フィルムにおいて、
前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムが、ジェランガム、ガラクトグルコマンナンおよび/またはグルコマンナンであり、好ましくはジェランガムおよび/または脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンである、食用食品ケーシング用フィルム。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか記載の食用食品ケーシング用フィルムにおいて、
前記食用食品ケーシング用フィルムが、追加成分として、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含み、
前記ガラクトマンナンが、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択される、食用食品ケーシング用フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の食用食品ケーシング用フィルムにおいて、
前記食用食品ケーシング用フィルムが、アルギン酸塩、カラギーンおよびペクチンからなる群から選択される化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、
ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択される熱不可逆性の水不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含み、
前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~70重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.25:1.0~3.0の範囲である、食用食品ケーシング用フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の食用食品ケーシング用フィルムにおいて、
前記食用食品ケーシング用フィルムが、アルギン酸塩、カラギーンおよびペクチンからなる群から選択される化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、
ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択される熱不可逆性の水不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含み、
前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの水溶性親水コロイドが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~50重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、40~60重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムの重量比が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である、食用食品ケーシング用フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の食用食品ケーシング用フィルムにおいて、
前記食用食品ケーシング用フィルムが、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択される少なくとも1つの化学的に凝固可能な親水コロイドと、
ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆性の水不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、
キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択された1つの追加成分と、を含み、
当該ガラクトマンナンが、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択され、
前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~50重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、40~60重量%の量で存在し、
前記追加成分が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、5~20重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である、食用食品ケーシング用フィルム。
【請求項7】
前記食用食品ケーシング用フィルムを製造するための組成物において、
水と、
アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムからなる混合物と、を含み、
前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~70重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.25:1.0~3.0の範囲である、前記食用食品ケーシング用フィルムを製造するための組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物において、
Brookfield DV2T HB粘度計とT-D 94スピンドルを用いて、回転速度60rpm、温度20℃で測定されたとき、0.1~200Pa・s未満の範囲に粘度を有する、前記組成物。
【請求項9】
請求項1に記載された食用食品ケーシング用フィルムを製造する方法において、
(1)前記請求項1記載の本発明による組成物を準備し、
(2)組成物を水と混合し、
(3)押し出し装置を介して組成物を押し出し、フィルム状構造を形成するように押し出しされた材料を凝固させ、
(4)フィルム状構造を脱アセチル化して、ケーシング用フィルムを形成し、
(5)ケーシング用フィルムを乾燥させる
各ステップを含む、食用食品ケーシング用フィルムを製造する方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、
ステップ(3)の前で、ステップ(2)の間または後に、
(2.1)好ましくは真空下で、より好ましくは少なくとも200mbarの真空下で、組成物を脱気し、
好ましくは、ステップ(3)において、重力方向と反対の方向に押し出しが行われる、
ステップが行われる、方法。
【請求項11】
請求項9または10のいずれか記載の方法において、
ステップ(3)において、
(3.1)凝固した食用食品ケーシング用フィルムを得るために、押し出し装置上で組成物に凝固液を加えることによって凝固させる、
ことが行われる、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、
ステップ(3.1)において、凝固液の添加が、押し出し装置から出てきた食用食品ケーシング用フィルムの一方の面および/または他方の面に適用されることが行われる、方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項記載の方法において、
ステップ(4)の後に、
(4.1)ゲル状態のケーシングを一軸または二軸延伸して、ケーシングの長手方向および/または短手方向の機械的強度を向上させるステップ、および/または
(4.2)ケーシングを乾燥させ、強化し、食用食品ケーシング用フィルムの熱安定性を高めるために、ケーシングに熱を加える
各ステップが行われる、方法。
【請求項14】
食用食品ケーシング用フィルムを製造するための、請求項7または8記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用食品ケーシング用フィルム、前記食用食品ケーシング用フィルムの製造方法、前記食用食品ケーシング用フィルムを形成するための組成物、及び前記食用食品ケーシング用フィルム、例えばソーセージのケーシング、の使用を提供するものであり、これらの食品ケーシングは容易に噛み切れ、詰め物性及び調理性が向上する。さらに、(外側ネットとともに使用するに限らず)前記食用食品ケーシング用フィルムは崩れることなく容易にシャーリング(shirr)することができ、食料品、特に肉、チーズまたは魚の加工食品のほかにベジタリアンやビーガン用の食料品を容易に詰めることができる。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、共同消費(co-consumption)に適した、または共同消費用市販の食料品ケーシングは、天然の皮(特に豚や羊の腸)やコラーゲンケーシングで作られていて、前記従来の人工または天然ケーシングは、通常、供給源から引き出された長くて連続した管として形成されている。
【0003】
しかし、BSEや豚の病気などの動物疾患があるため、天然皮やコラーゲンケーシングを使用することに倫理的・宗教的な問題点から強い抵抗がある。
【0004】
さらに、代替品として開発されたアルギン酸カルシウムをベースにした食用ソーセージのケーシング(例えば特許文献1など)は、ソーセージ用の肉充填物と塩水の相互作用により、ほとんど溶けないアルギン酸カルシウムが、より溶けやすいアルギン酸ナトリウムに徐々に変化するため、ケーシングの安定性が損なわれるという、技術的な課題がある。
【0005】
さらに、特許文献2および特許文献3は、アルギン酸を用いた、自律的な人工ソーセージケーシングの製造方法を開示している。前記文献は、アルギン酸塩の粘性溶液を形成し、その溶液を環状ノズルから凝固液中に押し出し、形成された管状のケーシングを固定させることにより、ソーセージケーシングを製造することができると記載している。
【0006】
また、当該分野では、生分解性があり、必要に応じて食用にもなる、天然または改質されたデンプンとタンパク質を必須成分とする熱可塑性混合物でできた成形体も知られている(例えば特許文献4)。この成形体では、デンプンとタンパク質が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エピクロロヒドリンなどの架橋剤によって結合されている。さらに、前記熱可塑性混合物は、可塑剤、潤滑剤、充填剤、抗菌剤及び着色料などの成分のうち少なくとも一つの成分を含むことができる。このような混合物を深絞り成形、射出成形、吹込成形などのプロセスにかけると、フィルム、カプセル、皿、ボトル、パイプなどの成形体が得られる。しかし、デンプンが熱水に部分的に溶解するため、管状の食品ケーシング、特に調理可能なソーセージケーシングに前記熱可塑性混合物を利用するのは、あまり適していない。食用のソーセージケーシングには特許文献4に記載されている材料では固すぎである。さらに、このような食品ケーシングにおける架橋剤の存在は、食品の味に影響を与える可能性があり、コーティングが存在する食品を茹でたり揚げたりすると、多くのタンパク質がコーティングを着色する傾向がある。
【0007】
さらに、特許文献5は、トウモロコシ、小麦、ピーナッツ、または大豆由来の植物性タンパク質から作られた自己支持型(すなわち、非詰め物または空の)管状ケーシングを開示している。特許文献5は、植物性タンパク質を水に分散させ、植物性タンパク質の管を形成するように環状鋳型を通して植物性タンパク質分散液を押し出し、その後、押し出しされた植物性タンパク質ケーシングを凝固させ、硬化させ、可塑化し、乾燥させることによって、前記ケーシングは製造できることを教示している。
【0008】
さらに、特許文献6は、セルロース、少なくとも1つのタンパク質、および少なくとも1つの充填剤からなる管状の食用食品ケーシングを開示しており、前記食品ケーシングは、ケーシングの乾燥固形物重量を基準にして20~70重量%の量のセルロース、5~50重量%の量の少なくとも1つのタンパク質、及び10~70重量%の量の少なくとも1つの充填剤から構成されている。
【0009】
前記セルロース製ケーシングは、いわゆるビスコース法という手法で製造する。前記ビスコース法はそのままでは水に溶けないセルロースを二硫化炭素と反応させて、ナトリウム化合物水溶液などに溶けるキサントゲン酸セルロース(ビスコースレーヨンとも呼ばれる)にする手法である。ビスコースレーヨンを押し出しして管を形成した後、再生槽に通してキサントゲン酸セルロースを不溶性セルロースに戻し、その後、化学試薬やその他の反応生成物を洗い流す。
【0010】
このように製造されたセルロースケーシングは、噛むこと、咀嚼すること、唾液を出すこと、飲み込むことに関して、食感および栄養面で好ましくない。
【0011】
これらの欠点を克服するために、特許文献6は、少なくとも1つの球状タンパク質および充填剤を含む再生セルロースケーシングを開示している。特許文献6では、このようなケーシングが、セルロースを溶解するための溶媒としてN-メチル-モルフォリンオキシド(NMMO)を使用する、いわゆるNMMO(N-メチル-モルフォリンオキシド)法を用いて製造できることを教示している。しかし、NMMO法は、NMMOが有害物質であり、この方法で製造されたケーシングから完全に除去することができないため、人間が消費するケーシング製品の製造には適していない。
【0012】
さらに、特許文献7は、第1の多糖類と少なくとも1つの第2の多糖類を含む、食品をコーティングするための組成物を開示しており、前記第1の多糖類は、組成物中で負に帯電しており、陽イオンの影響下でゲル化する。前記第1の多糖類は、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。前記少なくとも1つの第2の多糖類は、組成物中で中性である。前記少なくとも1つの第2の多糖類はセルロースから構成され、セルロース誘導体及びガラクトマンナンはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、グアーガム、カロブガム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。特許文献7は、使用する中性多糖類の例としてグルコマンナンには言及していない。さらに、特許文献7は、前記コーティング組成物が、共押し出しによって食品を直接コーティングするためだけでなく、(その後の充填のための)免除ケーシングを製造するためにも使用できることを教示している。
【0013】
特許文献8は、こんにゃくグルコマンナンを含む食品包装用フラットフィルムおよびその製造方法を開示している。前記製造方法において、基本組成物は、こんにゃく粉5~80%、アルギン酸10~90%、可塑剤0.5~5%、硬化剤0.5~5%からなり、可塑剤としてはグリセロールまたはエチレングリコールが使用され、硬化剤としては塩化カルシウムまたはクエン酸カルシウムが使用されている。特許文献9に開示されている製造方法は、上記の量のこんにゃく粉とアルギン酸塩を40~50℃の温度で水と混合し、混合物を撹拌・混練し、撹拌継続下で可塑剤を添加し、その後、スチールベルト上に生成された懸濁液を散布し、塩化カルシウムやクエン酸カルシウムを硬化剤として用いて、フィルムを架橋・固化させ、形成されたフィルムを、脱水剤として30~95%のエタノール水溶液を入れた水槽に浸して脱水・脱塩し、最後に乾燥させるという各ステップからなる。
【0014】
特許文献8では、同文献に開示されている製造方法において、出発原料であるこんにゃくグルコマンナンを脱アセチル化する工程を含んでいないため、形成される平板状のフィルムは、脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナンを含んでいない。そのため、特許文献8に記載されたフィルムは、食品を詰め込むことができる自己支持型管状食品ケーシングとして使用できないという欠点がある。
【0015】
一般的に、ケーシングを効率的かつ効果的に使用するためには、供給源から引き出された管状の食品ケーシングの個々の長さに「シャーリング(shirred)」(長手方向にまとめること)しなければならない。これにより、大量のケーシングを折り畳んでソーセージや食品の包装機にセットし、必要に応じてケーシングを広げて製品を充填することができる。ソーセージなどの肉製品のケーシングをシャーリングすることは、食品加工の分野ではよく知られていて、ケーシングのシャーリングのための装置を開示している多数の先行技術特許の2つの典型的な例は、特許文献9および特許文献10である。
【0016】
食生活などの観点から、動物性ではない天然素材のみで構成された食品用シール・包装材が求められている。特許文献11には、粉末スープ、香味油、乾燥野菜などの材料を密封包装するための多層ヒートシール性食用フィルムが記載されており、このフィルムは、水溶性多糖類フィルム層(主にカラギーナン、多価アルコール、水)と、大豆タンパク質とゼラチンの組み合わせを含むサブフィルム層からなる。
【0017】
特許文献12には、カラギーナンをこんにゃくガムおよび、またはジェランガムと組み合わせた食用ケーシング製剤が記載されている。このようなフィルムは、典型的な用途では、肉の基材(七面鳥、ハム、鶏)の周りに巻き付けられ、タンパク質の皮が形成されるまで、巻き付けられた肉を対流式オーブンで乾燥され、その後、スチームクッカーで調理する。このフィルムは、食用に適しており、調理された製品の表面に見栄えのいい見た目を与えるなど、様々な望ましい特性を示す。
【0018】
さらに、特許文献12の実施例5では、カラギーナン対こんにゃくガム(グルコマンナン)対アルギン酸の重量比が30:15:20(=カラギーナン+アルギン酸に対するこんにゃくガムの重量比=3.33)からなる食用フィルム組成物を教示している。しかしながら、前記実施例5は、前記フィルム組成物を用いて、熱可逆性ゲル構造からなる自己支持型ケーシングを製造する方法を教示するものではない。
【0019】
さらに、カラギーナンと他の多糖類ガムを組み合わせて構成される特許文献12に記載されたケーシングは、水に部分的に溶解し、熱水に不安定であることを概説している。したがって、これらのケーシングは、調理(加熱)や燻製の処理が必要である一般的なソーセージの製造には使用できない。
【0020】
自己支持型ケーシングを製造しない別の技術である、共押し出し法は、加工肉のような生地またはペーストが押し出しされる一般的な円形の開口部の縁を囲む溝に、フィルム形成溶液を押し込むという手法である(例えば、特許文献13や特許文献14を参照)。このフィルム形成溶液は、肉の速度と同じくらいの速度で溝を出て、押し出しされた肉の表面にコーティングを形成する。このような共押し出し法で使用されるフィルム形成溶液は、平板状または管状のシートの形で硬化するのに十分な時間を有するため、凝集力を維持するのに十分な大きさの粘度が必要であることが当事者にはよく知られている。特に共押し出しを水平に行うと、管(worm)下部のコーティングが重力によって剥離しやすくなる。このため、共押し出し技術では、適切な粘度を有することに加えて、肉に非常に迅速に、好ましくはほぼ即座に放出され、付着して、ゲル化することができるフィルム形成組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】西独国特許第1213211号明細書
【特許文献2】英国特許出願公告第711437号明細書
【特許文献3】英国特許出願公告第778921号明細書
【特許文献4】国際公開第93/019125号
【特許文献5】米国特許第3682661号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0186309号明細書
【特許文献7】国際公開第02/015715号
【特許文献8】中国特許出願公開第1385100号明細書
【特許文献9】米国特許第4580316号明細書
【特許文献10】米国特許第4683615号明細書
【特許文献11】米国特許第4620757号明細書
【特許文献12】米国特許第6730340号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第2885981号明細書
【特許文献14】国際公開第15/091695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
そこで、本発明は、容易に噛み砕くことができ、詰め物性及び調理性が向上した、食用(共同消費に適した)食品ケーシング用フィルムを提供することを目的とする。さらに、本発明は前記食用食品ケーシング用フィルムを製造するための組成物、および野菜、魚または肉などの食材が充填される食用食品ケーシングを製造する際の前記食用食品ケーシング用フィルムの使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的のために、本発明は、アルギン酸塩、カラギーンおよびペクチンからなる群から選択される化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択される熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含み、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、24~80重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.45:1.0~3.0の範囲である、食用食品ケーシング用フィルムを提供する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、ジェランガム、ガラクトグルコマンナンおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナン、より好ましくはジェランガムおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナン、最も好ましくは脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンからなる群から選択される。
【0025】
本発明の「グルコマンナン」とは、構成糖がβ-(1→4)-linked D-glucoseとD-mannoseが単糖の単位で1:1.6の割合で含む親水コロイド状のヘテロ多糖である。側枝にα-(1→6)-linked galactoseを単位に有するグルコマンナンは、galactoglucomannanと呼ばれる。こんにゃくグルコマンナンには、通常、10~19個の糖残基に対して約1個のアセチルエステル基が含まれる。アセチルエステル基は、こんにゃくグルコマンナンに負の電荷を付与する。前記アセチルエステル基を部分的または完全に除去することにより、こんにゃくグルコマンナン分子の分子間結合が強化され、より強固なゲルやフィルムを形成することができる。こんにゃくグルコマンナン溶液は、アルカリ処理やアルカリにさらした後に加熱するとゲル化する。このゲル化は、分子間の水素結合が弱くなり、アセチル基が加水分解されることによって起こる。この過程は、こんにゃくグルコマンナンの「脱アセチル化」とも呼ばれる。
【0026】
本発明では、脱アセチル化していないこんにゃくグルコマンナンが存在しないこと、つまりは、脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンが存在することを、例えばFTIR分光法のようなものによって検出することができる。本発明による食用食品ケーシング用フィルム中に脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナンが存在する場合、その製品のFTIRスペクトルは、(非脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナン中のアセチル基のC=O伸縮による)1732cm-1の吸収ピークを持たない。
【0027】
さらに、本発明のさらに好ましい実施形態では、食用食品ケーシング用フィルムは、追加成分として、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。当該ガラクトマンナンは、好ましくは、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガム、およびグアーガムからなる群から選択されてもよい。
【0028】
また、本発明は、水と、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドからなる混合物と、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含み、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、24~80重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.45:1.0~3.0の範囲である、前記食用食品ケーシング用フィルムを製造するための組成物を提供する。
【0029】
好ましい実施形態において、食用食品ケーシング用フィルムを形成するための前記組成物は、Brookfield DV2T HB粘度計とT-D 94スピンドルを用いて、回転速度60rpm、温度20℃で測定されたとき、0.1~200Pa・s未満の範囲に粘度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明では、化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムとの組み合わせにより、フライ性、詰め物性、調理性が向上し、保存安定性にも優れた食品ケーシングが得られるという、優れた特性を得ることを見出した。
【0031】
本発明の「食品ケーシング用フィルム」とは、消費財の包装としての役割を果たし、その取扱いと保管を可能にするケーシングを意味する。本発明の食用食品ケーシング用フィルムは、例えば米国特許第4910034号明細書に記載されているような管状の食品ケーシングを形成するために使用される。本発明の「管状」とは、細長い柔軟な中空体を意味し、この中空体は何の制限もなければ、円筒形の形状を有していてもよい。本発明によれば、本発明の食品ケーシングフィルムによって形成された前記管状の食品ケーシングの安定度を、外側ネットを用いることで向上させてもよい(例えば、米国特許第4910034号明細書を参照)。消費財とは、特に、ソーセージや肉加工品などの食品を意味し、それらのベジタリアン用やビーガン用の代替品も含まれる。ソーセージの好ましいものとしては、ウインナーソーセージのように、フライ用ソーセージや調理用ソーセージが挙げられる。また、本発明の食品ケーシング用フィルムは、動物飼料などの他の任意の消費財を包むのにも適している。
【0032】
本発明の「化学的に凝固可能な親水コロイド」とは、水溶液中でコロイドを形成し、K+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Fe2+、Zn2+またはAl3+などの一価または多価の陽イオンと反応してゲルを形成する多糖類の群を意味する。本発明の化学的に凝固可能な親水コロイドは、アルギン酸、カラギーン、およびペクチンからなる群から選択される。
【0033】
本発明の「熱可逆性の不溶性ゲルを形成する水溶性親水コロイド性植物性ガム」とは、水溶液中でコロイドを形成する多糖類であって、高分子が物理的または化学的な力で結合した3次元の多孔質構造またはネットの中で重合することができる。その構造はその内部に水分子を保持することができ、前記構造は加熱しても脱重合状態に戻らない熱不可逆性であり、例えば60℃の温水を加えると完全に溶解することができるものをいう。
【0034】
本発明でいう「単押し出し(monoextrusion)」とは、当該分野で一般的に「押し出し」と呼ばれている技術であり、押し出し可能な組成物を押し出し装置の押し出しヘッドを通して押し出しする際に、包まれるべき消費製品を同時に押し出しすることなく、後の段階で消費財を充填することができる自己支持型食品ケーシングを製造することを意味する。それに対して、「共押し出し」とは、食品ケーシングを形成する組成物が、その中に封入されるべき消費財と同時にまたは一緒に押し出しヘッドを通して押し出しされるため、「単押し出し」または「押し出し」というものとは異なる(例えば、国際公開第16/027261号参照)。単押し出しが実施されると、即時に食品ケーシング用フィルムが製造される。この時、管状食品ケーシングを得るために、平らな膜または平らなフィルムの2つの縁を縫う、接着する、溶着する、加硫するなどのさらなるステップは必要ない。
【0035】
本発明は、食用食品ケーシング用フィルムを形成するための組成物を提供するものであり、この組成物は単押し出しが可能であり、ベジタリアンやビーガンの消費財の包装にも適している。本発明では、消費財を包装または梱包するための「免除(exempt)」食用食品ケーシング用フィルムを製造する。このフィルムは、必要に応じて、数日、数ヶ月、または数年にわたって、問題なく安定して保存することができる。消費財を前記食用食品ケーシング用フィルムに充填するためには、例えば、米国特許第4910034号明細書に記載されている工程のような、後の段階で行うことができる。したがって、本発明の食品ケーシング用フィルムは、後の段階で充填するために、例えば、食品製造業・加工産業に供給することができる独立した商品である。
【0036】
本発明の食用食品ケーシング用フィルムの厚さは、通常、1~80μmであるが、好ましくは5~60μmであり、より好ましくは10~35μmである。さらに、本発明の食用食品ケーシング用フィルムの幅は、通常、10~80cmであるが、好ましくは20~60cmであり、より好ましくは35~60cmである。加えて、本発明の食用食品ケーシング用フィルムの長さは、通常、100mまでであるが、好ましくは80mであり、より好ましくは60mである。
【0037】
本発明の食用食品ケーシング用フィルムの外側に、形状を保持させる弾性ネットを設けることができ、例えば、米国特許第4910034号明細書に記載されているような弾性ネットを設けることができる。
【0038】
本発明による食用食品ケーシング用フィルムは、好ましくは以下の特徴の少なくとも1つを有する。
【0039】
- 植物性原料のみで構成されている。
- 肉類や、コーシャ食材やハラール食材のほかにベジタリアン/ビーガン用食材の充填に適している。
- 安定保管でき、取扱いに優れ、ソーセージと同時に共押し出しする必要がない。
- ソーセージ製造用の標準的な機器を用いても、損傷なく食品の充填物および/または生地などを詰めたり調理したりするための優れた弾力性を有する。
- 燻製場および/または標準的な調理サイクルにおいて、優れた燻製特性および調理特性を有するための優れた耐熱性を有する。
- 透明感及び光沢感のある見た目を与える。
- 例えば、ソーセージケーシングとして使用した場合に、優れた食感と歯ごたえを提供する。
【0040】
以下では、食用食品ケーシング用フィルムの必須構成要素および任意構成要素について、より詳細に説明する。これらの記述は、上記記載の食用食品ケーシング用フィルムを形成するための組成物にも同様に適用される。
【0041】
本発明において、化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、アルギン酸塩、カラギーンおよびペクチンからなる群から選択される。
【0042】
本発明の「アルギン酸塩」という用語は、食品産業で一般的に使用されているアルギン酸塩を指し、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウムであることが好ましい。
【0043】
本発明の食用食品ケーシング用フィルムは、化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドが、優れた保存安定性を示す強いフィルムを生成するように存在する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、例えばアルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸塩である。
【0045】
さらに、本発明において、前記熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムは、グルコマンナン、好ましくはこんにゃくグルコマンナン、より好ましくは部分的に脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナン、最も好ましくは脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナンである。
【0047】
本発明において、前記熱不可逆性不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、ジェランガムおよび/またはグルコマンナンからなる群から選択される。前記構成物が優れた非熱可逆性ゲル形成重合体であることから、それを食用フィルムに含有することにより、優れた特性を得ることができることを見出した。こんにゃくグルコマンナンは、こんにゃく芋から抽出することができる。抽出された多糖類は直ちに水和し、ゲルが形成される条件に応じて、熱可逆性ゲルまたは非熱可逆性ゲルを形成することができる。ジェランガムは、バクテリアの発酵によって作られた多糖類のガムである。
【0048】
ジェランガムも脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンも強力なゲル形成剤であり、非可逆性ゲルを生成する。こんにゃくグルコマンナンもジェランガムも食用であり、GRAS(Generally Recognized As Safe: アメリカの連邦食品・医薬品・化粧品法201(s)および409に基づいて一般的に安全と認められたもの)と評価されている。こんにゃくグルコマンナンは、脆い生地のゲルを形成するジェランガムよりも、弾力性の高いゲルを形成する傾向がある。
【0049】
本発明において、脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンに加えて、一部が非脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンも、本発明の食用食品ケーシング用フィルム中に存在してもよい。このとき、非脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンの量は、食用食品ケーシング用フィルム中に存在する脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナンの重量(1平方メートルあたり)を基準にして、40%、より好ましくは25%、さらに好ましくは20%の比率を超えないものとする。好ましい実施形態において、非脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンは、本発明による食用食品ケーシング用フィルム中に存在する脱アセチル化されたグルコマンナンの重量(1平方メートルあたり)を基準にして、15%以下の量で存在する。
【0050】
さらに、前記親水コロイド性植物性ガムを用いることで、食用食品ケーシング用フィルムのための組成物の粘度を容易に調整することができる。
【0051】
本発明のさらに好ましい実施形態では、食用食品ケーシング用フィルムは、追加成分として、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。当該ガラクトマンナンは、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択されてもよい。
【0052】
さらに、食用食品ケーシング用フィルムは、デンプン、セルロースおよびタンパク質を含んでもよい。このとき、当該デンプンは、例えば加工デンプン、ジアルデヒドデンプン、またはタピオカデンプンなどの天然デンプンであり、当該セルロースは、例えばセルロース繊維、微結晶セルロース、セルロースパウダーおよび/またはセルロース誘導体であり、当該タンパク質は、例えばエンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、ヒマワリタンパク質、米タンパク質、大豆タンパク質、乳清タンパク質、カゼイン、グルテン、卵白、ヒヨコ豆タンパク質である。
【0053】
本発明において、デンプンは通常、フィルムの乾燥時に水分布を改善するように機能する。好ましい実施形態では、他のデンプンよりも優れたフィルムを形成できる、高アミロースデンプンが使用される。デンプン成分の存在は、優れたケーシング接着力を食品に適切に提供することを目的とする。
【0054】
植物性および/または動物性のタンパク質を使用することは、ケーシングの接着力を向上するのに好ましい。植物性および/または動物性のタンパク質を加えることで、製品と皮の間の接着力が向上することがある。ビーガン用ケーシングの製造には、植物性または非動物性のタンパク質を使用する必要があるが、ベジタリアン用製品には動物性のタンパク質も使用できる。
【0055】
本発明において、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択される化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、通常20~76重量%、好ましくは30~60重量%、より好ましくは30~50重量%、さらに好ましくは35~45重量%の量で存在する。
【0056】
さらに、本発明において、熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、24~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは35~65重量%、さらに好ましくは40~60重量%、より好ましくは45~55重量%の量で存在する。
【0057】
さらに、本発明において、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択される追加成分は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは5~20重量%、より好ましくは7~18重量%、より好ましくは8~15重量%の量で存在してもよい。
【0058】
さらに、本発明において、デンプンおよびタンパク質の群から選択された追加成分は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0~40重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは5~18重量%、さらに好ましくは8~17重量%の量で存在してもよい。
【0059】
本発明において、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムの重量比は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.45:1.0~3.0の範囲、好ましくは0.2~1.25:1.0~3.0の範囲、より好ましくは0.2~1.0:1.1~3.0の範囲、さらに好ましくは0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0060】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含む、食用食品ケーシング用フィルムの好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、20~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.25:1.0~3.0の範囲である。
【0061】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含む、食用食品ケーシング用フィルムの好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、20~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.25:1.0~3.0の範囲である。
【0062】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含む、食用食品ケーシング用フィルムのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、40~60重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0063】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含む、食用食品ケーシング用フィルムのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、40~60重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0064】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択された1つの追加成分であって、ガラクトマンナンがタラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択されてもよいもの、と、を含む、食用食品ケーシング用フィルムのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、40~60重量%の量で存在し、前記追加成分は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、5~20重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0065】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択された1つの追加成分であって、ガラクトマンナンがタラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択されてもよいもの、と、タンパク質と、を含む、食用食品ケーシング用フィルムのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、40~60重量%の量で存在し、前記追加成分は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、5~20重量%の量で存在し、前記タンパク質は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、5~15重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0066】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択された1つの追加成分であって、ガラクトマンナンがタラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択されてもよいもの、と、タンパク質と、を含む、食用食品ケーシング用フィルムのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、40~60重量%の量で存在し、前記追加成分は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、5~20重量%の量で存在し、前記タンパク質は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、5~15重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0067】
さらに、本発明において、食用食品ケーシング用フィルムは、可塑剤、架橋剤(食用食品ケーシング用フィルムの靭性を向上させる)、着色剤、香料、植物繊維(食用食品ケーシング用フィルムが閉塞することを低減させる)および/または植物油(食用食品ケーシング用フィルムが閉塞することを低減させる)などの追加添加物を含むことができる。
【0068】
本発明において、可塑剤としては、例えば、ポリオール、グリセロール、プロピレングリコールおよび/またはソルビトールを使用することができる。本発明において、食用食品ケーシング用フィルムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、1~70重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~25重量%の量の前記可塑剤を含んでいてもよい。
【0069】
本発明において、架橋剤としては、燻液、ジアルデヒド、トランスグルタミナーゼなどの通常の架橋剤を用いることができる。本発明において、食用食品ケーシング用フィルムは、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.001~0.8重量%、好ましくは0.01~0.3重量%の量の前記架橋剤を含んでいてもよい。
【0070】
さらに、本発明において、食用食品ケーシング用フィルムは、少量のカラメル色素または例えばパプリカやターメリック及び様々な香辛料液体抽出物から作られた香辛料色素のような改質剤、および/またはローズマリー抽出物、オレガノ抽出物、メープル香料、甘味料、ハチミツ香料などの天然および人工香料を含んでいてもよい。
【0071】
さらに、本発明において、食用食品ケーシング用フィルムは、少量の抗菌剤、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、および/または抗酸化剤を含んでもよい。ここで、当該抗菌剤としては、例えば、バクテリオシン、ソルベート、安息香酸塩、および乳酸ナトリウムなどの可溶性乳酸塩であり、当該抗酸化剤としては、例えば、ローズマリー抽出物、オレガノ抽出物、アスコルビン酸誘導体などである。
【0072】
さらに、本発明において、食用食品ケーシング用フィルムの水分含有量は重要である。食用食品ケーシング用フィルム自体に付着するほど過度に粘着性が高くなることを避けるために、水分含有量は、最終的な食用食品ケーシングの全乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、約35重量%を超えてはならない。一方、食用食品ケーシング用フィルムの水分含有量が低すぎると、例えば最終的な食用食品ケーシングの全乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、約8%未満の場合、食用食品ケーシング用フィルムの弾性が不十分となり、脆くなる。
【0073】
本発明の食用食品ケーシング用フィルムは、下記のように様々に使用することができる。
【0074】
― 手作業で細かい食品を包装したり、食品を梱包したりしうる、平らなフィルム形状のもの。
― 例えば、米国特許第4910034号明細書に記載されているような、食用食品ケーシング用フィルムを使用して管状の形状を形成し、このような典型的な使用方法において、平らなフィルムを「管」(より正確には「管状の空間」)に合わせ、細長いハムやソーセージなどのように、食品を包むもの。
― 例えば欧州特許出願公開第1378170号明細書に記載されているように、シャーリングされた状態で使用することができるものであり、従来の自動化された製造方法であるスタッフィングマシンでハムの製造に使用することができ、食品ケーシングの各セクションが充填される前に、ホース材料の個々の長さがシャーリングされるもの。
【0075】
本発明の任意のシャーリング工程において、食用食品ケーシング用フィルムは、通常、機械的にマンドレルに折り畳まれる。この工程では、折り畳みが一貫して行われ、シャーリング後に折り目が所定の位置に残るように、何らかのシャーリング液が利用されるのが一般的である。従来のケーシングの場合、シャーリング液としては、水と鉱油または植物油がよく使われる。本発明による食用食品ケーシング用フィルムは、充填された食品ケーシングの調製において良好な結果を得るために、通常、水性シャーリング液、好ましくは鉱油または植物油を使用する。
【0076】
好ましい実施形態において、食用食品ケーシング用フィルムを製造するための前記組成物は、Brookfield DV2T HB粘度計とT-D 94スピンドルを用いて、回転速度60rpm、温度20℃で測定されたとき、0.1~200Pa・sの範囲に粘度を有する。
【0077】
さらに、本発明では、下記の各ステップを含む、消費財用の食品ケーシング用フィルムを製造する方法を提供する。
【0078】
(1)上記記載の本発明による組成物を準備し、
(2)組成物を水と混合し、
(3)押し出し装置を介して組成物を押し出し、フィルム状構造を形成するように押し出しされた材料を凝固させ、
(4)フィルム状構造を脱アセチル化して、ケーシング用フィルムを形成し、
(5)ケーシング用フィルムを乾燥させる
【0079】
この方法は、特にベジタリアンまたはビーガン用の自己支持型食品ケーシングの製造に適している。本発明において、ベジタリアンまたはビーガン用の食品ケーシング用フィルムを得るために必要な工程は、非ベジタリアン用またはコラーゲン含有ケーシングを得るために必要な工程よりも驚くほど少ない。
【0080】
本発明による組成物の特徴、特性、精製、開発、および利点は、本発明によるプロセスに対応して適用される。
【0081】
本発明において、脱アセチル化ステップは、通常、フィルム状構造体を気体のアルカリ性物質またはアルカリ溶液で処理することによって行われる。
【0082】
好ましい実施形態において、前記脱アセチル化ステップは、押し出し装置からフィルム状構造体を取り出す際または取り出した後に、食用食品ケーシング用フィルムのpH値がpH7から約pH13、好ましくはpH8から約pH12、より好ましくはpH8.5からpH10.5になるまで、食用食品ケーシング用フィルムにアルカリ溶液、好ましくはNaOH溶液を適用するという、ステップである。
【0083】
本発明による方法の1つの実施形態において、組成物は、ステップ(3)の前で、ステップ(2)の間または後に、以下のステップを設ける。
【0084】
(2.1)好ましくは真空下で、より好ましくは少なくとも200mbarの真空下で、組成物の脱気を行う。
【0085】
この方法では、製品の食感と食用食品ケーシング用フィルムの一貫性を向上させることができるという利点がある。
【0086】
本発明において、消費財用の食品ケーシング用フィルムを製造する方法は、押し出し装置を介して組成物を押し出しするステップを含む。本発明では、例えばスリット式の押し出しヘッドが使用される。
【0087】
本発明による方法の一実施形態では、上記記載のステップ(3)を以下のように実施する。
【0088】
(3.1)凝固したフィルムを得るために、押し出しヘッドから離れる際に凝固溶液を加えることによって、押し出し装置上で組成物を凝固させる。
【0089】
食用食品ケーシング用フィルムは容易に固まり、押し出し流路を通過するための十分な安定性を有する。
【0090】
本発明による方法の好ましい実施形態では、ステップ(3.1)において、凝固液は、押し出し装置または押し出しヘッドから出てきた際に、食用食品ケーシング用フィルムに均一に塗布されるべきである。
【0091】
この方法によって、安定化した食用食品ケーシング用フィルムは、押し出しヘッドを出た直後に、形成される。
【0092】
本発明による方法の発展形では、凝固液は多価陽イオンを含む溶液であり、好ましくは塩化カルシウム溶液であり、より好ましくは5~45重量%の塩化カルシウムを含む溶液である。
【0093】
このような凝固溶液を使用することで、良好で安定した凝固を達成することができる。本発明による方法の一実施形態において、凝固溶液は、可塑剤、好ましくはグリセロール、より好ましくは約1~70重量%、より好ましくは約20~50重量%、最も好ましくは約43重量%のグリセロールを含む。
【0094】
可塑剤を使用することで、食用食品ケーシング用フィルムの取扱いが向上する。
【0095】
さらに、本発明の一実施形態では、凝固液は、架橋剤、例えば、燻液、グルタルアルデヒド、トランスグルタミナーゼを、0.002から0.2重量%の量で含むことが好ましい。
【0096】
上記のような架橋剤を使用することで、食用食品ケーシング用フィルムの安定性を向上させることができる。加えて、または代わりに、食用食品ケーシング用フィルムの架橋は、熱または紫外線を適用して作用させることもできる。
【0097】
本発明による方法の好ましい実施形態では、ステップ(4)の後に以下の各ステップのうち少なくとも1つを含む。
【0098】
(4.1)フィルム状構造体を一軸または二軸延伸して、ケーシングの長手方向および/または短手方向の機械的強度を向上させるステップ、および/または
(4.2)ケーシングを乾燥させ、強化し、食用食品ケーシング用フィルムの熱安定性を高めるために、ケーシングに熱を加える
【0099】
さらに、本発明は、水と、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムとを含む混合物と、を含む、組成物の使用を提供し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、30~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が、食用食品ケーシング用フィルムの乾燥固形物重量(1平方メートルあたり)を基準にして、0.2~1.25:1.0~3.0の範囲である、食用食品ケーシング用フィルムを製造する。
【0100】
一実施形態において、水と、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択される化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムとを含む混合物と、を含む、組成物は、2~20重量%、好ましくは3~8重量%の総固形分量を有することができる。
【実施例】
【0101】
次に、本発明のさらなる特徴、特性、および利点を例示する実施形態によって、本発明をより詳細に説明する。この実施形態は限定的なものではない。
【0102】
また、記載されている1つ以上の実施形態に開示されている個々の特徴は、特定の実施形態の文脈においてのみではなく、一般的な意味で開示されているので、当業者であれば、これらの特徴を本発明の他の特徴と自由に組み合わせることができる。
【0103】
1.粘度測定
粘度は、Brookfield DV2T HB粘度計を用いて測定する。このために、250mlのプラスチックカップに検査対象の材料を端まで充填し、空気を抜く。材料の温度は一定に保つ必要があり、粘度の測定は、20℃で行うので、必要に応じて、材料を冷蔵庫で冷却するか、温蔵庫で加熱する。粘度計は、使用前に毎回水準器を確認し、必要に応じて補正する。装置のスイッチを入れると、装置のすべての関連パラメータが 5 秒間画面に表示される。その後、画面は自動的に「Auto Zero」モードに切り替わる。このプロセスは、装置の電源を入れたときに必要なプロセスで、ゼロ設定を行うプロセスである。ゼロ設定の際には、装置に測定体を装着することはできない。「Next」を押すと、「Auto Zero」プロセスが開始されるが、このとき、装置に触れてはならない。「Auto Zero」が終了したら、「Next」を押して、パラメータ設定面に移行する。
【0104】
【0105】
心棒T-D 94は当該粘度計に付属している。
【0106】
測定:
試料の入ったプラスチックカップを測定体の下に置き、温度センサーをカップの縁に固定し、測定体をカップの中央で約2~3cmの深さまで慎重に浸す。この時、トルク表示が「zero」になるように、測定体を再調整する必要がある。「Run」ボタンを押して測定を開始すると、画面には「Run Viscosity Test」と表示され、粘度、トルク、温度などの各記録値が表示される。
【0107】
測定の際に、トルクが10~100%の範囲になるように注意する。トルクが100%を超えると、粘度がEEEと表示され、トルクが10%以下の場合は、データフィールドの値が点滅する。いずれの場合も、他の測定体で測定を繰り返す(小さい心棒ではトルク100%以上、大きい心棒ではトルク10%未満)。「View Test」ボタンで、設定したパラメータを呼び出すことができる。中断後、「Results Table」が画面に表示され、個々のデータが表示されたので、helipath drive unitの電源を切る。全測定の平均値を表示するには、矢印ボタンを押して「Post Test Averaging」を選択する。
【0108】
評価:
最終的な結果は、2つの測定値の平均値となり、このときの単位はPa・s(パスカル・秒)またはMcP(100万・センチポイズ)である。
【0109】
2.原料
本発明者によって試験が実行されるときに、以下の原料が用いられた。
【0110】
アルギン酸ナトリウム: Sodium Alginate 300cps HI-GEL, Bioscience Food Solutions GmbH, ドイツ、シークブルク;
【0111】
こんにゃくグルコマンナン: Konjac gum YZ-J-36A, TER Chemicals GmbH & Co KG, ドイツ、ハンブルク;
【0112】
エンドウ豆タンパク質: Vitessence Pulse 1550, Ingredion Germany GmbH, ドイツ、ハンブルク;
【0113】
ジャガイモタンパク質: Solanic 300, Avebe U.A., オランダ、フェーンダム;
【0114】
グアーガム: Guar gum 5000 cps 200 mesh. Bioscience Food Solutions GmbH, ドイツ、シークブルク;
【0115】
デンプン: Unipectine OF 305 C, Cargill GmbH, ドイツ、フランクフルト・アム・マイン
【0116】
3. 結果
本発明者は5つの試料で試験を行った。これらを表2に示す。
【0117】
【0118】
これらの試料のpH値はpH6からpH9の間である。
【国際調査報告】