IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニック・アプライアンシーズ・リフリジャレーション・デバイシーズ・シンガポールの特許一覧

特表2022-528559密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ
<>
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図1
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図2
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図3A
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図3B
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図4A
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図4B
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図5A
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図5B
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図6
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図7
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図8
  • 特表-密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-14
(54)【発明の名称】密閉型コンプレッサ用クランクシャフトおよび密閉型コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
F04B39/00 103E
F04B39/00 107B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021560192
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 SG2020050190
(87)【国際公開番号】W WO2020204826
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】10201902843U
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438283
【氏名又は名称】パナソニック・アプライアンシーズ・リフリジャレーション・デバイシーズ・シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】チョン,サン ハウ
(72)【発明者】
【氏名】テオ,ケビン カイ ウェイ
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AB03
3H003AC03
3H003CA01
3H003CB02
(57)【要約】
密閉型コンプレッサ用のクランクシャフトは、メイン・シャフト部;該メイン・シャフト部の端部に結合されたフランジ部;該フランジ部に結合された偏心シャフト部;該フランジ部に対して遠位の該偏心シャフト部の端部から延びるアーム部;および該アーム部の該カウンターウェイト支持部に結合されたカウンターウェイトを含み、該偏心シャフト部は、該メイン・シャフト部の回転軸に平行で、かつ該回転軸からずれた主軸を有し、該アーム部は、該フランジ部に対して遠位の該偏心シャフト部の端部に結合された部分と、該フランジ部から離れるように角度が付けられた部分と、該偏心シャフト部の該端部に結合された部分に平行なカウンターウェイト支持部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン・シャフト部;
該メイン・シャフト部の端部に結合されたフランジ部;
該フランジ部に結合された偏心シャフト部;
該フランジ部に対して遠位の該偏心シャフト部の端部から延びるアーム部;および
カウンターウェイト
を含み、
該偏心シャフト部は、該メイン・シャフト部の回転軸に平行で、かつ該回転軸からずれた主軸を有し、
該アーム部は、該フランジ部に対して遠位の該偏心シャフト部の端部に結合された部分と、該フランジ部から離れるように角度が付けられた部分と、該偏心シャフト部の該端部に結合された部分に平行なカウンターウェイト支持部とを有し、
該カウンターウェイトは、該アーム部の該カウンターウェイト支持部に結合されている、密閉型コンプレッサ用のクランクシャフト。
【請求項2】
前記フランジ部に最も近い前記カウンターウェイトの表面は、前記フランジ部に対して遠位の前記偏心シャフト部の端部よりも、前記メイン・シャフト部の軸方向にフランジ部から離れている、請求項1に記載のクランクシャフト。
【請求項3】
前記アーム部は、前記フランジ部に対して遠位の偏心シャフト部の端部に結合された部分と前記角度が付けられた部分との間の第1の屈曲部と、前記角度が付けられた部分と前記カウンターウェイト支持部との間の第2の屈曲部との2つの屈曲部を有する、請求項1または2に記載のクランクシャフト。
【請求項4】
前記第1の屈曲部および前記第2の屈曲部は、15~180度の角度で屈曲している、請求項3に記載のクランクシャフト。
【請求項5】
起電要素と、圧縮要素と、該起電要素の回転運動を該圧縮要素の往復運動に変換するように構成された請求項1~4のいずれか1項に記載のクランクシャフトとを備える密閉型コンプレッサ。
【請求項6】
前記圧縮要素は、シリンダ内で往復運動するように構成されたピストンを含み、前記ピストンは、コネクティング・ロッドによって前記偏心シャフト部に結合され、前記ピストンが下死点位置にあるとき、前記カウンターウェイトは、前記ピストンと重なり、かつ前記ピストンの上に位置する、請求項5に記載の密閉型コンプレッサ。
【請求項7】
密閉コンテナと、該密閉コンテナに結合された減衰部材とを更に含み、該減衰部材は、前記カウンターウェイトの上の位置で該密閉コンテナに結合されている、請求項5または6に記載の密閉型コンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密閉型コンプレッサに関し、特に、密閉型コンプレッサのクランクシャフトにカウンターウェイトを設けることに関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型コンプレッサは、典型的には、クランクシャフトが回転するときに駆動されるピストンを含むコンプレッサ構に結合された偏心部を有するクランクシャフトを含む。ピストンは、シリンダ内に配置され、コネクティング・ロッドによってクランクシャフトの偏心部に結合されている。このため、クランクシャフトの回転運動がピストンの往復運動に変換される。コンプレッサ構のバランスが崩れると、クランクシャフトにカウンターウェイトが取り付けられ、コンプレッサ構で発生する慣性荷重とクランクシャフトの偏心部で発生する遠心力を相殺する。カウンターウェイトは偏心シャフトに取り付けられることが多いが、その場合、クランクシャフトの長さが長くなる。そのため、カウンターウェイトとの衝突を避けるために、密閉型コンプレッサの上部ハウジングの高さを高くしなければならないという問題がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様によれば、密閉型コンプレッサ用のクランクシャフトが提供される。上記クランクシャフトは、メイン・シャフト部;該メイン・シャフト部の端部に結合されたフランジ部;該フランジ部に結合された偏心シャフト部;該フランジ部に対して遠位の該偏心シャフト部の端部から延びるアーム部;およびカウンターウェイトを含み、
該偏心シャフト部は、該メイン・シャフト部の回転軸に平行で、かつ該回転軸からずれた主軸を有し、
該アーム部は、該フランジ部に対して遠位の該偏心シャフト部の端部に結合された部分と、該フランジ部から離れるように角度が付けられた部分と、該偏心シャフト部の該端部に結合された部分に平行なカウンターウェイト支持部とを有し、
該カウンターウェイトは、該アーム部の該カウンターウェイト支持部に結合されている。
【0004】
アーム部は、フランジ部から離れる方向に傾斜した部分を有しているので、気密型コンプレッサのピストンが下死点位置(bottom dead center position)にあるときに、カウンターウェイトがピストンの上方にあることを確保しつつ、偏心シャフト部の長さを短くすることができる。また、偏心シャフト部の長さを短くしたことで、偏心シャフト部の質量も小さくすることができる。これにより、カウンターウェイトに必要な質量を減らすことができる。これにより、カウンターウェイトの薄型化や高さを抑えた密閉型コンプレッサを実現することができる。
【0005】
1つの実施形態では、フランジ部に最も近いカウンターウェイトの表面は、フランジ部に対して遠位の偏心シャフト部の端部よりも、メイン・シャフト部の軸線方向にフランジ部から離れている。言い換えれば、カウンターウェイトの底部は、偏心シャフト部の頂部よりも上にある。
【0006】
1つの実施形態では、アーム部が、フランジ部に対して遠位の偏心シャフト部の端部に結合された部分と角度が付けられた部分との間の第1の屈曲部と、角度が付けられた部分とカウンターウェイト支持部との間の第2の屈曲部との2つの屈曲部を有する。
【0007】
第1の屈曲部および第2の屈曲部は、15度~180度の角度で屈曲していてもよい。
【0008】
本開示の第2の態様によれば、起電要素(electromotive element)と、圧縮要素と、起電要素からの回転運動を圧縮要素における往復運動に変換するように構成された本開示によるクランクシャフトと、を含む密閉型コンプレッサが提供される。
【0009】
1つの実施形態では、圧縮要素は、シリンダ内で往復運動するように構成されたピストンを備え、ピストンは、コネクティング・ロッド(または連接棒;connecting rod)によって偏心シャフト部に結合され、ピストンが下死点位置にあるときに、カウンターウェイトは、ピストンと重なり、かつピストンの上方に位置する。
【0010】
1つの実施形態では、密閉型コンプレッサは、密閉コンテナと、密閉コンテナに結合された減衰部材とをさらに備え、減衰部材は、カウンターウェイトの上の位置で密閉コンテナに結合されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下では、本発明の実施形態を、非限定的な例として、以下の添付図面を参照して説明する。
図1】本発明の1つの実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。
図2】本発明の実施形態の利点が説明される例示的な密閉型コンプレッサの断面図である。
図3A図2に示した密閉型コンプレッサの圧縮要素の上死点位置での断面図である。
図3B図2に示した密閉型コンプレッサの圧縮要素の下死点位置での断面図である。
図4A】上死点位置付近で図2に示した密閉型コンプレッサの圧縮要素に作用する力を示す断面図である。
図4B】下死点位置付近で図2に示した密閉型コンプレッサの圧縮要素に作用する力を示す断面図である。
図5A図1の密閉型コンプレッサの圧縮要素の上死点位置での断面図である。
図5B図1の密閉型コンプレッサの圧縮要素の下死点位置での断面図である。
図6】約15度の屈曲部を有するアーム部を有する実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。
図7】約90度の屈曲部を有するアーム部を有する実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。
図8】約135度の屈曲部を有するアーム部を有する実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。
図9】約180度の屈曲部を有するアーム部を有する実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の1つの実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。密閉型コンプレッサ100は、上側コンテナ部101と下側コンテナ部102とから形成される密閉型コンテナ内に収容されている。密閉型コンプレッサ100は、起電要素110と、圧縮要素120とを備える。起電要素110および圧縮要素120は、いずれも、上側コンテナ部101および下側コンテナ部102から形成される密閉コンテナの内部に密閉されている。
【0013】
起電要素110は、ステータ111とロータ112とからなる。ステータ111とロータ112は同軸上に配置され、ロータ112はステータ111の内部に配置されている。起電要素110は、下側コンテナ部102に配置された電気接続部113に電気的に結合されている。
【0014】
圧縮要素120は、起電要素110の上方に配置されている。圧縮要素120は、シリンダブロック121で構成されている。シリンダブロック121は、圧縮チャンバ123を形成する円筒状の空洞を有している。円筒状の空洞内には、ピストン122が移動可能に設けられている。ピストン122は、コネクティング・ロッド124に結合されている。コネクティング・ロッド124は、クランクシャフト130に結合されている。
【0015】
クランクシャフト130は、メイン・シャフト部131と、フランジ部135と、偏心シャフト部136とを備えている。メイン・シャフト部131は、起電要素110のロータ112に取り付けられている。メイン・シャフト部131は、下端部に給油機構132を有する。給油機構132は、下側コンテナ部102の底部に収容されている潤滑油103に浸漬または一部浸漬されている。給油機構132は、メイン・シャフト部131を駆け上がる油通路133に連結されている。
【0016】
メイン・シャフト部131は、フランジ部135に連結されている。フランジ部135は、シリンダブロック121に形成された軸受によって支持されている。偏心シャフト部136は、偏心シャフト部136の軸線がメイン・シャフト部131の軸線からずれるように、フランジ部135に連結されている。コネクティング・ロッド124は、偏心シャフト部136に結合されている。
【0017】
偏心シャフト部136の上端には、アーム部137によってカウンターウェイト138が結合されている。アーム部137は、2つの屈曲部を含む。アーム部137のうち、偏心シャフト部136の上端に取り付けられている部分は、フランジ部135と平行であり、水平方向に走っている。その後、アーム部137は、水平から約60度の角度まで上向きに曲がっている。その後、水平方向に戻る第2の屈曲部がある。このように、アーム部の2つの端部は、互いに平行であり、垂直方向に変位する。アーム部137の第2端部分には、カウンターウェイト138が取り付けられている。
【0018】
シリンダブロック121には、シリンダヘッド150が取り付けられている。シリンダヘッド150は、バルブプレート151を保持している。バルブプレート151は、圧縮チャンバ123の端面を形成している。バルブプレート151には、吸込ポート152と吐出ポート153とが設けられている。吸込ポート152および吐出ポート153のそれぞれには、リードバルブが設けられている。吸込ポート152のリードバルブは、冷媒が圧縮チャンバ123に吸い込まれるのを許容し、ピストン122によって圧縮チャンバ123が圧縮されると閉じるように構成されている。吐出ポート153のリードバルブは、圧縮チャンバ123がピストン122によって圧縮されたときに開くように構成されている。吸込ポート152には、サクションマフラー154が結合されている。吐出マフラー155は、吐出ポート153に結合されているシリンダヘッド150の高圧チャンバに吐出チューブによって結合されている。
【0019】
振動減衰部材160は、上側コンテナ部分101に取り付けられており、カウンターウェイト138の上方に位置している。
【0020】
動作時には、電気接続部113を介して、起電要素110に電力が供給される。これにより、ロータ112がステータ111に対して相対的に回転する。ロータ112の回転により、クランクシャフト130が回転する。クランクシャフト130の回転は、偏心シャフト部136およびコネクティング・ロッド124によって往復運動に変換される。この往復運動により、ピストン122は、シリンダブロック121の空洞内で往復運動する。
【0021】
ピストン122が、圧縮チャンバ123の容積が最小となる上死点位置から、圧縮チャンバ123の容積が最大となる下死点位置に向かって移動すると、吸込ポート152から冷媒ガスが圧縮チャンバ123に吸い込まれる。また、上側コンテナ部101と下側コンテナ部102とで形成される密閉コンテナ内には、冷凍サイクルからの吸引管を介して低圧の冷媒ガスが導かれる。冷媒ガスは、サクションマフラー154を介して圧縮チャンバ123に吸引される。
【0022】
ピストン122が、圧縮チャンバ123の容積が最大となる下死点位置に達すると、ピストン122は上死点位置に向かって戻り始め、圧縮チャンバ123内の冷媒ガスが圧縮される。圧縮チャンバ123内の圧力が上昇するため、吸込ポート152のリードバルブが弁体151に押し付けられ、吸込ポート152が閉じられる。圧縮チャンバ123内の圧力が上昇することで、吐出ポート153のリードバルブが開き、圧縮された冷媒ガスは、シリンダヘッド150の高圧チャンバに入り、吐出マフラー155を介して吐出管から冷凍サイクルの高圧側に吐出される。
【0023】
図2は、本発明の実施形態の利点を説明するために参照する、一例の密閉型コンプレッサの断面図である。密閉型コンプレッサ200は、起電要素210と圧縮要素220とで構成されている。なお、図2に示す密閉型コンプレッサ200の部品の多くは、図1に示す密閉型コンプレッサ100の部品と同様であり、以下ではこれらの部品の説明を省略する。密閉型コンプレッサ200は、メイン・シャフト部231、フランジ部235および偏心シャフト部236を有するクランクシャフト230を備えている。偏心シャフト部236の上端には、アーム部237によってカウンターウェイト238が結合されている。図2に示すように、アーム部237は直線状であり、屈曲部を含んでいない。偏心シャフト部236には、ピストン222がコネクティング・ロッド224によって結合されている。ピストン222は、クランクシャフト230が回転すると、シリンダブロック221に形成された圧縮チャンバ223内で往復運動する。
【0024】
図2に示すように、密閉型コンプレッサ200の上側コンテナ部分には、振動減衰部材260が取り付けられており、カウンターウェイト138の上方に配置されている。振動減衰部材260は、輸送時にコンプレッサ本体がシェルにぶつかるのを防止する目的で、カウンターウェイト236の上方で上側シェルに配置されている。
【0025】
次に、密閉型コンプレッサ200のクランクシャフト230の動きについて、図3Aおよび図3Bを参照して説明する。
【0026】
図3Aは、図2に示す密閉型コンプレッサ200の圧縮要素220の上死点位置での断面図であり、図3Bは、図2に示す密閉型コンプレッサ200の圧縮要素220の下死点位置での断面図である。
【0027】
図3Aに示すように、ピストン222が上死点位置にあるとき、偏心シャフト部236は、圧縮チャンバ223に最も近い位置にあり、カウンターウェイト238は、圧縮チャンバ223から最も遠い位置にある。偏心シャフト部236の移動は、偏心シャフト部236がフランジ部235の中心から外れた位置に取り付けられていることによって生じる。また、カウンターウェイト238の動きは、カウンターウェイト238がアーム部236に取り付けられることによって生じる。
【0028】
図3Bに示すように、ピストン222が下死点位置にあるとき、圧縮チャンバ223の容積は最大となる。偏心シャフト部236は、圧縮チャンバ223から最も離れた位置にある。また、カウンターウェイト238は、ピストン222の一部の鉛直上方に位置する位置にある。図3Bに示すように、アーム部237の底部は、ピストン222の鉛直上方にあり、ピストン222の上部とアーム部237の底部との間には、ピストン222と重なる隙間(またはクリアランス;clearance)が設けられている。
【0029】
次に、ピストン222、カウンターウェイト238、フランジ部235および偏心シャフト部236に作用する力について、図4Aおよび図4Bを参照して説明する。
【0030】
図4Aは、図2に示した密閉型コンプレッサの圧縮要素に作用する力を上死点位置付近で示した断面図であり、図4Bは、図2に示した密閉型コンプレッサの圧縮要素に作用する力を下死点位置付近で示した断面図である。
【0031】
クランクシャフト230が回転すると、フランジ部235に作用する遠心力412と、偏心シャフト部236に作用する遠心力414と、カウンターウェイト238に作用する遠心力416が働く。また、ピストン222に作用する慣性力420もある。
【0032】
密閉型コンプレッサ200の振動を低減するために、カウンターウェイト238に作用する遠心力418と、フランジ部235に作用する遠心力412とが、偏心シャフト部236に作用する遠心力414およびピストン222に作用する慣性力420と釣り合うように、カウンターウェイト238の質量が選択されている。
【0033】
図5Aは、上死点位置にある図1に示す密閉型コンプレッサ100の圧縮要素120の断面図であり、図5Bは、下死点位置にある図1に示す密閉型コンプレッサ100の圧縮要素120の断面図である。
【0034】
図5Aに示すように、ピストン122が上死点位置にあるとき、偏心シャフト部136は、圧縮チャンバ123に最も近い位置にあり、カウンターウェイト138は、圧縮チャンバ123から最も遠い位置に配置されている。図5A図3Aとを比較すると、図5Aに示す偏心シャフト部分136は、図3Aに示す偏心シャフト部分236よりも短いことが分かる。図5Aは、省略された偏心シャフト部分の追加長さの輪郭510を示している。偏心シャフト部136が短いので、質量が小さくなる。したがって、カウンターウェイト138の必要質量も、図2に示す密閉型コンプレッサ200のカウンターウェイト238の必要質量よりも小さくなる。カウンターウェイト138の必要質量が小さいので、カウンターウェイト138を薄くすることができる。
【0035】
図5Bに示すように、ピストン122が下死点位置にあるとき、圧縮チャンバ123の容積は最大となる。また、偏心シャフト部136は、圧縮チャンバ123から最も離れた位置にある。カウンターウェイト138は、ピストン122の一部よりも鉛直上方に位置する位置にある。偏心シャフト部136の上端はカウンターウェイト138の下端よりも下方にあるが、アーム部137が水平方向から折り曲げられた後、水平方向に折り返されるため、カウンターウェイト138はピストン122の上方に位置して支持される。したがって、偏心シャフト部136の外形510に相当する余分な長さは必要ない。
【0036】
以上のように、本発明の実施の形態では、偏心シャフト部136の長さを短くすることができる。これにより、カウンターウェイトに必要な質量が減少する。 カウンターウェイトに必要な質量が低減されるので、カウンターウェイトを薄くすることができる。これにより、カウンターウェイトに必要な高さを低減することができる。
【0037】
図1を参照すると、密閉型コンプレッサ100が動作するためには、カウンターウェイト138の上面と振動減衰部材160との間に隙間が必要である。本発明の実施形態では、カウンターウェイト138を薄くすることができるので、必要な隙間を確保しつつ、コンプレッサ100の全高を低くすることができる。
【0038】
図1を参照して上述した実施形態では、アーム部は、約60度の屈曲部を有する。他の実施形態では、アーム部が屈曲する角度は様々であってもよい。これについては、図6から図9を参照して以下に説明する。図6図9では、図1と異なる特徴のみを説明し、残りの特徴は図1を参照して上述した通りである。
【0039】
図6は、約15度の屈曲部を有するアーム部を有する実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。図6に示すように、コンプレッサ600は、約15度の2つの屈曲部を有するアーム部637を有している。アーム部637には、カウンターウェイト638が取り付けられている。
【0040】
図7は、約90度の屈曲部を有するアーム部を有する実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。図7に示すように、コンプレッサ700は、約90度の2つの屈曲部を有するアーム部737を有している。アーム部737には、カウンターウェイト738が取り付けられている。
【0041】
図8は、約135度の屈曲部を有するアーム部を有する実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。図8に示すように、コンプレッサ800は、約135度の2つの屈曲部を有するアーム部837を有している。カウンターウェイト838は、アーム部837に取り付けられている。
【0042】
図9は、約180度の屈曲部を有するアーム部を有する実施形態に従った密閉型コンプレッサの断面図である。図9に示すように、コンプレッサ900は、約180度の2つの屈曲部を有するアーム部937を有している。アーム部937には、カウンターウェイト938が取り付けられている。
【0043】
図6図9に示すように、アーム部は同じ角度の2つの屈曲部を含んでいます。そのため、アーム部のうち偏心シャフト部の端部に結合された部分と、アーム部のうちカウンターウェイトを支持する部分とは、互いに平行である。偏心シャフト部の端部に結合された端部の部分と、アーム部のうちカウンターウェイトを支持する部分との間には、角度のついた部分がある。
【0044】
本発明の実施形態において、カウンターウェイト138、638、738、838、938およびアーム部137、637、837、937は、一体型の部品であっても、溶接、接着剤、リベットピンなどの接続方法によって接続された別個の部品であってもよい。
【0045】
なお、上述の実施形態では、シェル上部の内側に制振部材を設けているが、制振部材を設けず、アーム部とカウンターウェイトの構成により、カウンターウェイトとインナーシェル上部との隙間を確保しつつ、コンプレッサの全高を下げることができる実施形態も想定される。
【0046】
以上、例示的な実施形態を説明してきたが、本発明の範囲と精神の範囲内で、実施形態の多くの変形が可能であることは、当業者には理解されるであろう。
【符号の説明】
【0047】
100、200、600、700、800、900 … 密閉型コンプレッサ
101 … 上側コンテナ部
102 … 下側コンテナ部
110、210 … 起電要素
111 … ステータ
112 … ロータ
113 … 電気接続部
120、220 … 圧縮要素
121、221 … シリンダブロック
122、222 … ピストン
123、223 … 圧縮チャンバ
124、224 … コネクティング・ロッド
130、230 … クランクシャフト
131、231 … メイン・シャフト部
132 … 給油機構
133 … 油通路
135、235 … フランジ部
136、236 … 偏心シャフト部
137、237、637、737、837、937 … アーム部
138、238、638、738、838、938 … カウンターウェイト
150 … シリンダヘッド
151 … バルブプレート
152 … 吸込ポート
153 … 吐出ポート
154 … サクションマフラー
155 … 吐出マフラー
160、260 … 振動減衰部材
412、414、416 … 遠心力
420 … 慣性力
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】