(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(54)【発明の名称】新規な格子配置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220608BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20220608BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547819
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 FI2020050242
(87)【国際公開番号】W WO2020212647
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520184365
【氏名又は名称】ディスペリックス オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルッコネン、ユーソ
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA53
2H199CA66
2H199CA67
2H199DA25
2H249AA12
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA65
(57)【要約】
本発明は、パーソナルディスプレイデバイス用の回折導波路素子であって、導波路本体(21)と、導波路本体(21)上に配置された少なくとも2つの格子領域(23、24)と備え、格子領域の少なくとも一部は、素子の射出瞳を拡張するように適合される、回折導波路素子に関する。本発明によれば、格子領域(23、24)が素子の少なくともいくつかの部分上で射出瞳の拡張およびアウトカップリングの機能を組み合わせるように相互作用するように、格子領域(23、24)は互いに対して配置され、異なる格子ベクトルを有する格子が設けられる。本発明は、導波路領域の効率的な使用を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルディスプレイデバイス用の回折導波路素子であって、
導波路本体と、
前記導波路本体上に配置された少なくとも2つの格子領域であって、前記格子領域の少なくともいくつかは、前記素子の射出瞳を拡張するように適合される、少なくとも2つの格子領域とを備え、
前記格子領域が前記素子の少なくともいくつかの部分上で射出瞳の拡張およびアウトカップリングの機能を組み合わせるように相互作用するように、前記格子領域が互いに対して配置され、異なる格子ベクトルを有する格子が設けられる、回折導波路素子。
【請求項2】
前記少なくとも2つの格子領域が、
第1の格子が設けられた第1の格子領域であって、前記導波路本体の第1の場所に配置される、第1の格子領域と、
第2の格子が設けられた第2の格子領域であって、前記導波路本体の前記第1の場所とは異なる第2の場所に配置される、第2の格子領域とを備え、
それによって、前記第2の格子が、前記第1の格子によって方向転換された光線をアウトカップリングするように配置され、逆もまた同様である、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
インカップリング格子であって、前記導波路本体の外側からこれに向けられた光を前記第1および第2の格子領域に向かって回折させるように適合される、インカップリング格子を備え、前記インカップリング格子、第1の格子、および第2の格子が、それらの合計格子ベクトルが0ベクトルになるように選択される、請求項2に記載の素子。
【請求項4】
前記第1および第2の格子領域が、前記導波路本体の同じ側または異なる側に重なり合わないように配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の素子。
【請求項5】
前記第1および第2の格子領域が、前記導波路の主面内で互いに部分的に重なり合うように、前記導波路本体の異なる側に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の素子。
【請求項6】
前記第1および第2の格子が、線形格子である、請求項1から5のいずれか一項に記載の素子。
【請求項7】
前記第1および第2の格子領域が、前記導波路の前記主面内で互いに距離を置いて配置され、
前記第1と第2の格子領域間に、第3の格子を有する第3の格子領域が設けられ、
前記第3の格子が、六角形格子などの二重周期格子である、請求項1から6のいずれか一項に記載の素子。
【請求項8】
前記第1、第2および第3の格子領域が、前記導波路本体の同じ側に配置され、
前記導波路本体の前記反対面に第4の格子領域が配置され、前記第4の格子領域が、1次元の小さな波数ベクトル成分を有する光線の射出瞳を拡張するように構成された第4の格子を備える、請求項7に記載の素子。
【請求項9】
前記第4の格子が、前記第1および第2の格子よりも周期が小さい線形格子である、請求項8に記載の素子。
【請求項10】
六角形格子などの二重周期のインカップリング格子であって、前記導波路本体の外側からこれに向けられた光を前記第1、第2、第3、および第4の格子領域に向かって回折させるように適合される、二重周期のインカップリング格子を備える、請求項8または9に記載の素子。
【請求項11】
前記第1の格子領域が、前記導波路本体の第1の側に設けられ、前記第1の格子領域が、二重周期の第1の格子を備え、
前記第2の格子領域が、前記導波路本体の反対側の第2の側に設けられ、前記第1の格子領域と重なり合うかまたは完全に整列され、前記第2の格子領域が、線形の第2の格子を備え、
少なくとも1つの二重周期のインカップリング格子が設けられ、前記二重周期のインカップリング格子が、前記導波路本体の外側からこれに向けられた光を前記第1および第2の格子領域に向かって回折させるように適合される、請求項1に記載の素子。
【請求項12】
前記第2の格子の格子線の方向に、前記第1および第2の格子領域の異なる横方向側に配置された2つのそのようなインカップリング格子であって、異なる視野成分を前記第1および第2の格子領域に向けることができる、インカップリング格子を備える、請求項11に記載の素子。
【請求項13】
前記インカップリング格子が、前記第2の格子の前記格子線に垂直な方向に互いに整列せずに配置される、請求項12に記載の素子。
【請求項14】
前記第1の格子領域が、前記導波路本体の第1の側に設けられ、前記第1の格子領域が、線形または二重周期の第1の格子を備え、
前記導波路本体の反対側の第2の側に、1つまたは複数の第2の格子領域が設けられ、前記第2の格子領域が前記第1の格子領域と部分的に重なり合い、前記第2の格子領域が、前記第1の格子とは異なる格子ベクトルを有する線形の第2の格子を備え、
前記導波路本体の第1の側に少なくとも1つの二重周期のインカップリング格子が設けられ、前記二重周期のインカップリング格子が、前記導波路本体の外側からこれに向けられた光を、前記第1および第2の格子領域に向かって回折させるように適合される、請求項1に記載の素子。
【請求項15】
前記第1の格子の前記格子線に垂直な方向に、前記第1の格子領域の異なる側に2つのそのようなインカップリング格子を備える、請求項14に記載の素子。
【請求項16】
前記第2の格子領域が、前記インカップリング格子と重なり合う、請求項14または15に記載の素子。
【請求項17】
複数の第2の領域が設けられ、前記第2の領域が、前記導波路本体の前記第2の側部上の空隙、すなわち格子の無い領域が前記第1の格子領域と整列したままであるように配置される、請求項14から16のいずれか一項に記載の素子。
【請求項18】
前記第1および第2の格子領域の一方が、前記導波路本体の一方の側に、前記導波路本体の反対側に設けられた線形格子と整列された空隙、すなわち格子の無いサブ領域を備える、請求項11から16のいずれか一項に記載の素子。
【請求項19】
パーソナルディスプレイデバイスであって、
請求項1から18のいずれか一項に記載の導波路素子と、
インカップリング格子上に画像を向けるための少なくとも1つのプロジェクタであって、前記インカップリング格子から前記画像が、前記導波路内に回折され、前記第1および第2の格子領域に進み、ここで第1および第2の格子により、射出瞳は拡張され、前記画像はアウトカップリングされる、少なくとも1つのプロジェクタとを備える、パーソナルディスプレイデバイス。
【請求項20】
パーソナルシースルーディスプレイデバイス上に画像を提供する方法であって、
伝播する光線としてインカップラを用いて画像を導波路本体上にカップリングすることと、
前記導波路上に配置された第1の格子によって、前記インカップリングされた伝播光線の第1の部分の射出瞳を前記導波路内で拡張することを可能にすることであって、前記第1の格子から前記拡張された光線が、前記導波路上に配置され前記第1の格子とは異なる格子ベクトルを有する第2の格子に伝播して、前記第2の格子からアウトカップリングする、拡張することを可能にすることと、
前記第2の格子によって、前記第1の部分とは異なる、前記インカップリングされた伝播光線の第2の部分の射出瞳を前記導波路内で拡張することを可能にすることであって、前記第2の格子から前記拡張された光線が、前記第1の格子に伝播して前記第1の格子からアウトカップリングする、拡張することを可能にすることとを含む方法。
【請求項21】
一次元の小さな波数ベクトル成分を有する光線の前記射出瞳を、前記第1および第2の格子よりも短い周期を有する追加の格子によって拡張することを可能にすることを含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスに関する。特に、本発明は、ニアツーアイディスプレイ(NED)、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)およびヘッドアップディスプレイ(HUD)などのパーソナルディスプレイデバイスに使用される回折導波路の格子配置に関する。より詳細には、コンパクトなフォームファクタを有する大視野導波路用の格子配置が、開示される。
【背景技術】
【0002】
NED、HMD、およびHUDは、典型的には、プロジェクタと、コンバイナ素子とを含む。プロジェクタは、コンバイナ素子を用いてユーザの現実世界のビューの上に重ね合わされる仮想画像を生成する。NEDおよびHMDでは、コンバイナ素子は、典型的には半透明であり、眼から1~3cmの距離に位置する。コンバイナ素子は、半透明ミラー、または回折、ホログラフィックもしくは反射ライトガイド、または自由曲面プリズムなどのより複雑な光学アセンブリとすることができる。回折導波路は、典型的には、インカップリング(IC)と、射出瞳拡張(EPE)と、アウトカップリング(OC)格子とを含む。これらの格子領域は、従来の設計では空間的に分離されている。EPEおよびOC格子のサイズは、視野(FOV)およびアイボックスのサイズが増大するにつれて増大する。これは、高FOV(>50度)ウェアラブルNEDデバイスに対するこの手法の使用を妨げる。
【0003】
この問題を例示するために、米国特許出願公開第2016/0231568号明細書に開示されているディスプレイ設計を、15mm×10mm(高さ×幅)のアイボックスおよび20mmのアイレリーフを有する50度FOV NEDディスプレイに適用すると、
図1に示す構造が得られる。この構造は、導波路11と、IC12と、EPE13と、OC14とを備える。FOVが大きいため、EPE13は、垂直方向および水平方向に、アウトカップリング格子14よりも大きい。ライトガイドの合計サイズは、77mm×52mm(高さ×幅)であり、小型のアイウェアのようなNEDには大きすぎる。
【0004】
したがって、改善された回折ディスプレイの解決策が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0231568号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、面積が効率的に使用される導波路素子を提供することである。具体的な目的は、導波路の全面積に対するディスプレイ面積の比を増大させることができる解決策を提供することである。
【0007】
特に、ウェアラブルNED、特に眼鏡フォームファクタNEDおよび他のコンパクトなフォームファクタデバイスに適合するフォームファクタを有する高視野回折導波路用の格子配置を提供することが目的である。
【0008】
1つの目的は、シースルーまたは拡張現実デバイスに適した解決策を提供することである。
【0009】
本発明は、導波路素子内で射出瞳拡張およびアウトカップリングの機能を組み合わせるという考えに基づいている。実際には、格子領域の位置およびその内部の格子パターンの適切な構成を使用して、これを達成するいくつかの方法がある。
【0010】
したがって、1つの態様によれば、パーソナルディスプレイデバイス用の回折導波路素子であって、導波路本体と、導波路本体上に配置された少なくとも2つの格子領域とを備え、格子領域の少なくともいくつかは、素子の射出瞳を拡張するように適合される、回折導波路素子が、提供される。本発明によれば、格子領域が素子の少なくともいくつかの位置で射出瞳拡張およびアウトカップリングの機能を組み合わせるように相互作用するように、格子領域は配置され、格子が設けられる。
【0011】
第1および第2の格子領域は、通常、重なり合わない位置または重なり合う位置で導波路の同じ側または異なる側に位置することができる。いくつかの例示的な構成を以下に論じる。
【0012】
別の態様によれば、本明細書に開示する導波路素子を備え、少なくとも1つのインカップリング領域も有するパーソナルディスプレイデバイスが、提供される。さらに、デバイスは、インカップリング格子上に画像を向けるための少なくとも1つのプロジェクタを備え、インカップリング格子から画像は、導波路内に回折されて格子領域に進み、ここで第1および第2の格子により、射出瞳は拡張され、画像はアウトカップリングされる。
【0013】
さらに別の態様によれば、パーソナルシースルーディスプレイデバイス上に画像を提供する方法であって、
・伝播する光線としてインカップラを用いて画像を導波路本体にカップリングすることと、
・導波路上に配置された第1の格子によって、インカップリングされた伝播光線の第1の部分の射出瞳を導波路内で拡張することを可能にすることであって、第1の格子から拡張された光線は、導波路上に配置され第1の格子とは異なる格子ベクトルを有する第2の格子に伝播して、第2の格子からアウトカップリングする、拡張することを可能にすることと、
・第2の格子によって、前記第1の部分とは異なる、インカップリングされた伝播光線の第2の部分の射出瞳を導波路内で拡張することを可能にすることであって、第2の格子から拡張された光線は、第1の格子に伝播して第1の格子からアウトカップリングする、拡張することを可能にすることとを含む方法が、提供される。
【0014】
本発明は、かなりの利点を提供する。主な利点は、素子の有効アウトカップリング領域と比較して素子の設置領域が小さいことである。これにより、例えば、大きな射出瞳およびFOVを有する眼鏡ガラスサイズのディスプレイ素子が可能になる。
【0015】
本発明はまた、後述する実施形態によって例示されるように、単一のプロジェクタおよびインカップリング領域を有する50×90度(水平×垂直)の高いFOVと、2つのプロジェクタおよび導波路(導波路の屈折率2.0)内で伝播されるインカップリング領域を有する100×90度(H×V)の非常に高いFOVとを可能にする。
【0016】
次に、添付の図面を参照して、利点として選択された本発明の実施形態について論じる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】射出瞳拡張を有する従来の回折導波路を示す図である。
【
図2】専用のアウトカップリング格子の無い格子配置を示す図である。
【
図3A】
図2の格子配置の(k
x,k
y)平面における波数ベクトル図である。
【
図3B】
図2の格子配置の(k
x,k
y)平面における別の波数ベクトル図である。
【
図5A】1Dおよび2D格子を有する格子配置を示す図である。
【
図5B】六角形格子によって生成される可能な回折次数を示す図である。
【
図6】2Dインカップラおよび小周期拡張格子が第2の表面上にある、格子配置を示す図である。
【
図7】
図6のインカップラの(k
x,k
y)平面における波数ベクトル図と、第2の表面の小周期格子の波数ベクトルとを示す図である。
【
図9】本発明のさらに別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記で論じたように、格子によって必要とされる表面積を低減するために、EPEおよびOC格子の光学機能を組み合わせる必要がある。
【0019】
いくつかの実施形態では、導波路上または導波路内に少なくとも2つの格子領域が存在し、領域は、第1の格子が設けられた第1の格子領域であって、導波路本体の第1の場所に配置される、第1の格子領域と、第2の格子が設けられた第2の格子領域であって、第1の場所とは異なる導波路本体の第2の場所に配置される、第2の格子領域とを備える。第2の格子は、第1の格子によって広げられた、すなわちその射出瞳が拡張された光線をアウトカップリングするように構成される。一方、第1の格子は、射出瞳が第2の格子によって消費された光線をアウトカップリングする。
【0020】
図2は、専用のアウトカップリング領域の無いそのような素子の例を示す。導波路21は、インカップラ21ならびにEPE格子23および24のみを含む。EPE格子24は、EPE格子23によって方向変換された光線をアウトカップリングし、逆もまた同様である。
【0021】
好ましい構成では、インカップラ(G
1)およびEPE(G
2、G
3)の格子ベクトルは、それらの和が0ベクトルになるように選択される。これは、50×90度(H×V)の視野について
図3Aおよび
図3Bに示されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、第1および第2の格子領域は、導波路本体の同じ側または異なる側に重なり合わないように配置される。
【0023】
代替的な実施形態では、第1および第2の格子領域は、導波路の主面内で互いに部分的に重なり合うように、導波路本体の異なる側に配置される。これは、素子のアイボックスを増加させるのに有益である。
【0024】
実際、
図2の格子配置では、小さなk
y成分を有するFOV点は、小さなアイボックスの影響を受ける。アイボックスの問題は、EPE格子を導波路の異なる側に配置し、これらを中央領域内で重なり合うように横方向に拡張することによって修正することができる。これは
図4に示されており、この場合第1の導波路面41は、インカップラ43およびEPE格子44を含む。第2の導波路面42は、第2のEPE格子45を含む。
【0025】
重なり合う領域は、例えば、第1または第2の領域の面積の10~50%とすることができ、これらは通常、互いに対して等しくサイズ決めされる。
【0026】
上述のすべての実施形態では、第1および第2の格子、ならびにインカップリング格子は、平行線構造の周期的回折パターンを有する線形、すなわち単一周期格子とすることができる。
【0027】
図5Aは、導波路面51がインカップラ51と、第1および第2のEPE格子53、55と、二重周期(2D)の第3の格子54とを含む別の格子配置を示す。格子54は、
図5Bに示すように6つの伝播方向を有する六角形格子とすることができる。
【0028】
より全般的には、いくつかの実施形態では、第1および第2の格子領域は、導波路の主面内で互いに距離を置いて配置され、第1と第2の格子領域間に第3の格子を有する第3の格子領域が、設けられる。第3の格子は、六角形格子などの二重周期格子であり、導波路の第1および第2の格子領域と同じ側に配置することができる。
【0029】
いくつかの用途では、1次元の小さな波数ベクトル成分を有する光線の射出瞳は、短い周期を有する追加の格子によって拡張される。
【0030】
したがって、さらなる実施形態では、導波路本体の反対面に配置された第4の格子領域も提供され、第4の格子領域は、1次元内の小さい波数ベクトル成分を有する光線の射出瞳を拡張するように構成された第4の格子を備える。第4の格子は、典型的には、第1および第2の格子よりも周期が小さい線形格子である。この場合、好ましくは、六角形格子などの二重周期のインカップリング格子も設けられ、二重周期のインカップリング格子は、導波路本体の外側からこれに向けられた光を第1、第2、第3、および第4の格子領域に向かって回折させるように適合される。
【0031】
図6は、
図5Aの格子配置のこの種の強化されたバージョンを示す。導波路の第1の表面61は、2Dインカップラ63と、第1および第2のEPE格子64、66と、2Dの第3の格子65とを含む。導波路の第2の表面62は、第4の格子、すなわち短周期格子67を含む。(k
x,k
y)空間内の2Dインカップラ63および短周期格子67の動作を
図7に示す。短周期格子は、小さなk
y成分を有するFOV点の射出瞳を拡張する。
【0032】
本明細書における短周期格子という用語は、第1および第2の格子の周期よりも短い周期を有する格子を意味する。したがって、格子は、必要とされる小さい波数ベクトル成分の射出瞳拡張を実行することができる。
【0033】
上述の実施形態は、単一プロジェクタディスプレイ構成に直接適しており、素子を通る適切な50×90度(H×V)のFOV伝播を達成するために使用することができる。しかし、同様の原理を使用して、二重プロジェクタ配置において水平FOVを2倍にすることができる。
【0034】
この効果のためのいくつかの例示的な実施形態では、第1の格子領域は導波路本体の第1の側に設けられ、第1の格子領域は二重周期の第1の格子を備え、第2の格子領域は導波路本体の反対側の第2の側に設けられ、第1の格子領域と重なり合うかまたは完全に整列され、第2の格子領域は線形の第2の格子を備える。2つの二重周期のインカップリング格子も設けられ、これらの二重周期的インカップリング格子は、導波路本体の外側からこれに向けられた光を、第1の格子領域および第2の格子領域に向かって、それらの領域の異なる横方向側から回折させるように適合される。インカップリング格子は、異なる視野成分を導波路本体にカップリングするように構成される。インカップリング格子は、典型的には、第2の格子の格子線の方向に素子の異なる側に配置される。
【0035】
図8は、導波路の第1の表面81が2Dインカップラ83、84と、単一の2DEPE格子85とを含むこの種の増大したFOV格子配置を示す。2D格子は、例えば、六角形格子とすることができる。導波路の第2の表面82は、小周期格子86を含む。FOVは、y軸に沿って2つの部分に分割される。負のk
x成分を有するFOVは、IC83内に供給され、正のk
x成分を有するFOVは、IC84内に供給される。この配置は、導波路内側で100×90度FOVを伝播することを可能にする。
【0036】
いくつかの実施形態では、
図8に示すように、インカップリング格子は、第2の格子の格子線に垂直な方向に互いに整列せずに配置される。いくつかの用途では、高いFOVを達成し、同時に回折素子が周囲光の存在下で生成するいわゆるレインボー効果を最小限に抑えることが望ましい。これを達成するために、いくつかの実施形態では、第1の格子領域は、導波路本体の第1の側に設けられ、第1の格子領域は、線形の第1の格子を備え、導波路本体の反対の第2の側には、1つまたは複数の第2の格子領域が設けられ、第2の格子領域は、第1の格子領域と部分的に重なり合い、第2の格子領域は、第1の格子とは異なる格子ベクトルを有する線形の第2の格子を備える。加えて、導波路本体の第1の側に2つの二重周期のインカップリング格子が設けられ、2つの二重周期のインカップリング格子は、導波路本体の外側からこれに向けられた光を第1および第2の格子領域に向かって回折させるように適合される。格子領域の重なり合わない領域では、素子の1つの表面上に存在する1つの線形格子のみが存在し、それによってレインボー効果が最小限に抑えられる。
【0037】
2つのインカップリング格子は、典型的には、第1の格子の格子線に垂直な方向の第1の格子領域の異なる側に、かつ第2の格子領域に対称に配置される。第2の格子領域は、効率を最大にするためにインカップリング格子と重なり合うことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、導波路本体の第2の側の空隙、すなわち格子の無い領域が第1の格子領域と整列したままであるように配置された複数の第2の領域が、設けられる。空隙は、最小限のレインボー効果を生み出す。
【0039】
2つの2D ICと共に
図8で使用されるFOV分割を利用するこれらの実施形態を
図9に示す。導波路の第1の表面91は、2DのIC93、94および線形格子95のみを含む。第2の表面92は、4つのEPE格子96、97、98、99を含む。インカップリングは、例えば、六角形格子とすることができる。この手法の利点は、導波路の中心部分が、周囲光による妨害的なレインボーパターンを生成するのにあまり敏感ではない垂直線形格子によってのみ覆われることである。
【0040】
代替的な実施形態では、第1の表面上の格子95は、線形格子ではなく二重周期格子である。
【0041】
EPE格子96、97、98、99は、例えば
図9に示すように、すなわち空隙領域の4つの異なる側に配置することができる。また、格子線は、図示するように、すなわち空隙領域に「向かって」配向することができる。
【0042】
より全般的には、上述したすべての実施形態において、第1および第2の格子領域のうちの一方は、導波路本体の一方の側に空隙、すなわち、導波路本体の無い領域を備えるか、画定することができ、この導波路本体の無い領域は、導波路本体の反対側に設けられた線形格子と整列してレインボー効果を最小限に抑える。
【0043】
上述したすべての実施形態の共通の好ましい特徴は、(1つまたは複数の)インカップリング格子が、それらの格子ベクトルによって表される異なる格子構成を有する少なくとも2つの異なる格子領域に光をカップリングし、それにより、それらの共効果は、領域の各またはいくつかの場所で同時に射出瞳を拡張し、アウトカップリングすることである。図示するように、領域は、導波路の同じ表面上に互いに横方向に位置決めする、例えば互いに当接することができ、または導波路の異なる表面上で互いに部分的または全体的に重なり合うことができる。格子構成は、本明細書に説明するように相互作用する限り、単一周期でも二重周期であってもよい。
【0044】
導波路本体は、例えば、平面または湾曲形状を有する、例えばガラスの高屈折率(≧1.7、例えば≧2.0)本体とすることができる。
【0045】
本発明の素子は、ニアツーアイディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどの他の拡張現実ディスプレイ、またはヘッドアップディスプレイなどのパーソナルディスプレイデバイスで使用することができる。
【0046】
本発明は、上術の例に決して限定されず、特許請求の範囲の全範囲で解釈されるべきである。
【国際調査報告】