(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(54)【発明の名称】光ガイド光学素子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20220608BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02B5/00 C
G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551594
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(85)【翻訳文提出日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2020053492
(87)【国際公開番号】W WO2020212835
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518105275
【氏名又は名称】ルーマス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エラド・シャーリン
(72)【発明者】
【氏名】ドロール・アルモニ
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA08
2H042AA11
2H042AA16
2H042AA21
2H042AA26
2H149AA17
2H149AA23
2H149AB03
2H149BA04
2H149BA27
2H149BB28
2H149FB06
(57)【要約】
複数の部分反射表面を有する光ガイド光学素子を製造する方法を開示する。この方法は、複数の透明なプレートを提供することであって、各プレートは、2つの反対の表面が相互に平行になるように研磨されている、提供することと、サブセットのプレートの表面のうちの第1の表面を第1のコーティングでコーティングすることと、サブセットのプレートの表面のうちの第2の表面を第2のコーティングでコーティングすることと、複数の透明なプレートを相互に結合して、スタックを形成することと、光学素子を形成するように、透明なプレートの表面に対して斜めに角度付けられた平行面に沿ってスタックを切断することと、を含み、第1のコーティングは、第1のセットの機械的特性を有する部分反射コーティングであり、第2のコーティングは、第1のコーティングと同様のコーティングと、第1のセットの機械的特性と実質的に同様の第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングと、からなる群から選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部分反射表面を有する光ガイド光学素子を製造する方法であって、
複数の透明なプレートを提供することであって、各プレートは、2つの反対の表面が相互に平行になるように研磨されている、提供することと、
サブセットのプレートの前記表面のうちの第1の表面を第1のコーティングでコーティングすることと、
前記サブセットのプレートの前記表面のうちの第2の表面を第2のコーティングでコーティングすることと、
前記複数の透明なプレートを相互に結合して、スタックを形成することと、
前記光学素子を形成するように、前記透明なプレートの前記表面に対して斜めに角度付けられた平行な平面に沿って前記スタックを切断することと、を含み、
前記第1のコーティングは、第1のセットの機械的特性を有する部分反射コーティングであり、前記第2のコーティングは、前記第1のコーティングと同様のコーティングと、前記第1のセットの機械的特性と実質的に同様の第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングと、からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記サブセットのプレートは、前記複数のプレートのうち、1つおきのプレートからなり、前記第2のコーティングは、第1のコーティングと同様のコーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のプレートのうちの少なくとも1つのプレートは、第1の表面が前記第1のコーティングでコーティングされ、かつ、第2の表面が前記第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングでコーティングされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サブセットのプレートは、前記複数のプレートのすべてのプレートからなり、前記第2のコーティングは、前記第1のセットの機械的特性と実質的に同様の第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1対の平行な外表面を有する光ガイド光学素子であって、
前記1対の平行な外表面に非平行な表面を有する複数の透明なプレートから作製された複数の部分反射表面を備え、各プレートは、2つの反対の表面が相互に平行になるように研磨されており、
サブセットのプレートの各プレートは、一方の表面が第1のコーティングでコーティングされ、第2の表面が第2のコーティングでコーティングされ、前記第1のコーティングは、第1のセットの機械的特性を有する部分反射コーティングであり、前記第2のコーティングは、前記第1のコーティングと同様のコーティングと、前記第1のセットの機械的特性と実質的に同様の第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングと、からなる群から選択される、光ガイド光学素子。
【請求項6】
前記サブセットのプレートは、前記複数のプレートのうち、1つおきのプレートから構成され、前記第2のコーティングが前記第1のコーティングと同様のコーティングである、請求項5に記載の光ガイド光学素子。
【請求項7】
前記複数のプレートのうちの少なくとも1つのプレートは、第1の表面が前記第1のコーティングでコーティングされ、かつ、第2の表面が前記第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングでコーティングされる、請求項6に記載の光ガイド光学素子。
【請求項8】
前記第2のコーティングは、前記第1のセットの機械的特性と実質的に同様の第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングである、請求項5に記載の光ガイド光学素子。
【請求項9】
複数の部分反射表面を有する光ガイド光学素子を製造する方法であって、
複数の透明なプレートを提供することであって、各プレートは、2つの反対の表面が相互に平行になるように研磨されている、提供することと、
前記各プレートの前記表面の第1の表面を第1のコーティングでコーティングすることと、
前記複数の透明なプレートを相互に結合して、スタックを形成することと、
前記光学素子を形成するように、透明なプレートの面に対して斜めに角度付けられた平行な平面に沿って前記スタックを切断することと、を含み、
前記第1のコーティングは、交互の高屈折率コーティング材料と低屈折率コーティング材料の複数の層からなる部分反射コーティングであり、
前記低屈折率コーティング材料の前記複数の層の第1のサブセットは、第1の屈折率を有する第1のコーティング材料からなり、
前記低屈折率コーティング材料の前記複数の層の第2のサブセットは、第2の屈折率を有する第2のコーティング材料からなり、
前記高屈折率コーティング材料と、前記第1の低屈折率コーティング材料と、前記第2の低屈折率コーティング材料との組み合わせは、前記第1のコーティングによって前記プレートに加わる応力を中和するために効果的である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の主題は、光ガイド光学素子に関し、より具体的には、光ガイド光学素子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、導波路とも呼ばれる光ガイド光学素子(「LOE」)を採用し、その導波路の外表面からの全内部反射によって基板内に光波を閉じ込めることによって動作する。導波路の内側に閉じ込められた光波は、アレイ状の部分反射表面よって結合される。導波路の内表面は、典型的には、複数の透明な平面プレートを接合することによって作製される。プレートを接合する前に、典型的には、プレートは、一方の表面が薄膜の部分反射コーティングでコーティングされている。画質を維持するために、プレートは、可能な限り平坦にする必要がある。しかしながら、薄膜および/またはコーティングプロセスによって、プレートには応力が加わって、プレートを歪ませ、結果としてプレートに所望されない曲率が生じ、LOEによって提供される画像品質が低下する。
【発明の概要】
【0003】
本開示の主題の一態様によれば、複数の部分反射表面を有する光ガイド光学素子を製造する方法が提供される。この方法は、複数の透明なプレートを提供することであって、各プレートは、2つの反対の表面が相互に平行になるように研磨されている、提供することと、サブセットのプレートの表面のうちの第1の表面を第1のコーティングでコーティングすることと、サブセットのプレートの表面のうちの第2の表面を第2のコーティングでコーティングすることと、複数の透明なプレートを相互に結合して、スタックを形成することと、光学素子を形成するように、透明なプレートの表面に対して斜めに角度付けられた平行面に沿ってスタックを切断することと、を含み、第1のコーティングは、第1のセットの機械的特性を有する部分反射コーティングであり、第2のコーティングは、第1のコーティングと同様のコーティングと、第1のセットの機械的特性と実質的に同様の第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングと、からなる群から選択される。
【0004】
本開示の主題の別の態様によれば、少なくとも1対の平行な外表面を有する光ガイド光学素子であって、1対の平行な外表面に非平行な表面を有する複数の透明なプレートから作製された複数の部分反射表面を備え、各プレートは、2つの反対の表面が相互に平行になるように研磨されており、サブセットのプレートの各プレートは、一方の表面が第1のコーティングでコーティングされ、第2の表面が第2のコーティングでコーティングされ、第1のコーティングは、第1のセットの機械的特性を有する部分反射コーティングであり、第2のコーティングは、第1のコーティングと同様のコーティングと、第1のセットの機械的特性と実質的に同様の第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングと、からなる群から選択される。
【0005】
本開示の主題のいくつかの態様によれば、サブセットのプレートは、複数のプレートのうち、1つおきのプレートから構成され、第2のコーティングは、第1のコーティングと同様のコーティングである。複数のプレートのうちの少なくとも1つのプレートは、第1の表面が第1のコーティングでコーティングされ、かつ、第2の表面が第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングでコーティングされ得る。
【0006】
本開示の主題のいくつかの態様によれば、サブセットのプレートは、複数のプレートのうちのすべてのプレートで構成され、第2のコーティングは、第1のセットの機械的特性と実質的に同様の第2のセットの機械的特性を有する非反射コーティングである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明を理解し、それを実際にどのように実施することができるかを確認するために、実施形態を非限定的な実施例として添付の図面を参照して説明する。
【0008】
【
図1C】先行技術による、LOEの製造方法を示す。
【
図2A】本開示の主題の第1の実施形態による、LOEを製造する方法を示す。
【
図2B】本開示の主題の第1の実施形態による、LOEを製造する特に好ましい方法を示す。
【
図3】本開示の主題の第2の実施形態による、LOEを製造する方法を示す。
【
図4A】本開示の主題の第1の実施形態による、平行平面に沿って切断されたスタックを示す。
【
図4B】本開示の主題の第2の実施形態による、平行平面に沿って切断されたスタックを示す。
【
図5A】本開示の主題の第2の実施形態による、平行平面に沿って切断された
図4Aの代替的なスタックを示す。
【
図5B】本開示の主題の第2の実施形態による、平行平面に沿って切断された
図4Bの代替的なスタックを示す。
【
図6A】本開示の主題のさらに別の実施形態による、片面コーティングの実施形態を示す。
【
図6B】本開示の主題のさらに別の実施形態による、片面コーティングの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明には、本発明の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が示されている。しかしながら、本開示の主題は、これらの特定の詳細なしで実施され得ることが、当業者によって理解されるであろう。他の場合では、本開示の主題を曖昧にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細には説明されていない。
【0010】
これを念頭に置いて、ここで
図1A~1Cを参照する。ここには、先行技術により作製されたLOEが示されている。
図1Aは、複数のプレート4と、複数の部分反射内表面2と、を有する、LOE8の側面図を示している。
図1Bは、LOE8の等角図を示している。
図1Cは、LOE8の先行技術の製造方法を示しており、各プレート4は、接合する前に、薄い膜の部分反射コーティング12で一方の表面がコーティングされている。代替的な先行技術の方法が示されている
図4A~4Bにさらに示されているように、次に、プレートは相互に結合されてスタック6を形成し、そのスタックは平行平面16に沿ってスライスされてLOE8を形成する。
【0011】
通常、部分反射コーティングでは、それが適用される表面に一定量の応力が加わる。この応力が各プレートの一方の表面に適用され、他方の表面には適用されない場合、この応力によってプレートが歪み、プレートに所望されない曲率を引き起こし、結果としてLOEが低品質の画像を伝播させることを生じ得る。歪みの量は、一般に、特定のコーティングの機械的特性(例えば、薄膜コーティングの応力特性)によって、かつ/または、コーティングプロセスの結果として判定される。例えば、コーティング材料は、コーティングされた膜に引き起こされる応力に関連する固有の特性を有し得る。これらの特性には、例えば、引張または圧縮となり得る、方向性の応力特性が含まれる。応力は、様々なコーティング層、および/または、材料の温度変化下、または、コーティングとプレートの間の異なる膨張係数によって引き起こされ得る。
【0012】
本発明者らは、部分反射コーティングによって引き起こされるプレートへの応力の悪影響を軽減し、それにより、歪みの量を低減または完全に排除する方法を見出した。具体的には、本発明の特定の特に好ましい実施形態によれば、プレートの一部、または、すべては、以下でより完全に詳述されるように、同様の応力特性を有するコーティングで反対の表面がコーティングされる。
【0013】
ここで
図2A、2Bおよび3を参照すると、本開示の主題の特定の実施形態による、本発明のLOEを製造する2つの方法が示されている。双方の方法では、最初に複数の透明なプレート10を提供し、ここで、各プレートは、反対の表面が相互に平行になるように、2つの反対の表面上で研磨されている。明確化のために、前述の説明では、2つの反対の表面は、時折「左」および「右」面と称され得る。本発明の目的のために、これらの説明的な明示は、本説明の目的のために2つの反対の表面を区別することのみを意味し、処理中、または、最終製品において、プレートの特定の順序および/または光学特性を決して示すものではないことを理解されたい。
【0014】
図2A、2Bおよび3に示されるように、部分反射コーティング12である第1のコーティングは、次に、プレート10の少なくとも一部(本明細書ではプレートの「サブセット」と称される)の表面の片側にコーティングされる。
図2A、2Bおよび3では、サブセットのプレートは、10’として示されている。例として、
図2A、2Bおよび3では、プレート10’の左面に適用された部分反射コーティング12が示されている。次に、特定の実施形態に応じて、同一または異なるコーティングのいずれかであり得る第2のコーティングが、以下に詳述されるように、プレート10’の第2の表面上にコーティングされる。
【0015】
特定の実施形態において、いくつかのLOEでは、プレートが異なると必要な反射率も異なり得る。したがって、「第1のコーティング」または「部分反射コーティング」への言及は、すべて部分反射であるが、それぞれの反射パラメータが異なり得るコーティングの群からの1つのコーティングを指すと解釈されるべきである。特定の実施形態では、反射パラメータは、特定のLOEの設計要件に従って、後続の各表面に対して漸進的に変更することができる。
【0016】
第1の実施形態では、
図2Aに示されるように、プレートのサブセットは1つおきのプレートから構成される。サブセットの各プレート10’は、部分反射コーティング12で左右の両方の表面がコーティングされている。残りのプレートは、コーティングされていない。コーティングされたプレートは、その両面が同様のコーティングでコーティングされているので、そのようなプレートに加わるコーティングによって誘発されるいかなる応力も双方の反対の表面に等しく加わり、それによって歪み効果を低減または排除する。「類似」のコーティングとは、同様に応力を加えるコーティングを指し、それらは同一の組成、同一数の層、および同一の総厚で製造されてもよく、あるいは、されなくてもよいことを理解されたい。
【0017】
図4A~4Bに示すように、プレートは相互に接合されてLOEを形成するため、すべてのプレートを部分反射コーティングでコーティングする必要はなく、すなわち、コーティングが施されているプレート(2つの隣接するプレートなど)の光学特性に相違はない。したがって、本発明者らは、1つおきにプレートの両面に部分反射コーティングを適用し、他のプレートにはコーティングを適用しないことが有利であることを見出した。このようにして、コーティングによって引き起こされるプレートの平坦度の偏差は、反対側の同様の偏差によって相殺され、プレートの全体的な曲率が低減または排除される。さらに、プレートの両面は、同時にコーティングすることができる。
【0018】
特定の特に好ましい実施形態において、および
図2Bに示されるように、奇数の光学活性表面が存在する場合には、プレート10’’(これは、
図2Bに示される最後のプレートであり得るか、または代替的に、スタック内の任意の場所に配置されたプレートとすることができる)は、
図3に示される第2の実施形態を参照して以下でさらに詳細に説明するように、その一方の表面が部分反射コーティング12でコーティングされ、対向する表面が中和コーティング14でコーティングされる。
【0019】
部分反射コーティングは、好ましくは、高屈折率と低屈折率(および場合によっては中間値)が交互にあり、異なる層厚を有する層を有する多層誘電体コーティングとして実装され、ここで、すべて当技術分野で既知であるように、かつ、当技術分野で既知の標準ソフトウェアツールを使用して導出することができるように、厚さおよび層特性は所望の光学特性を提供するためにアルゴリズムに従って選択される。同様に、第2のコーティングは、好ましくは、同じアプローチおよび技術を使用して実装されるが、定義された光学特性は、関連するすべての角度に対する反射防止コーティングの光学特性である。反射防止特性は、典型的には、部分反射コーティングよりも少ない層数で達成され得るが、以下でさらに考察されるように、同様の機械的特性を達成するために部分反射コーティングと同数の層を使用して、反射防止特性が実装されることが好ましい。
【0020】
第2の実施形態では、
図3に示されるように、サブセットのプレートはすべてのプレートで構成され、サブセットの各プレート10’は、その第1の表面(例えば、
図3の左面として示される)が部分反射コーティング12でコーティングされ、かつ、その第2の表面(例えば、
図3の右面として示されている)が中和コーティング14でコーティングされている。中和コーティング14は、認識されるような影響を光の透過に対して及ぼさない(すなわち、非反射性である)が、部分反射性のコーティング12と実質的に同様の機械的特性、すなわち、応力特性を有する。したがって、他の表面(すなわち、コーティング12の存在しない表面)に中和コーティング14を適用すると、実質的に同等の応力が各コーティングされたプレートの両面に加わり、それによって歪み効果を低減または排除する。この実施形態では、各プレートがコーティングされるが、プレートの両側は、同等の応力特性を有するコーティングでコーティングされる。結果として、第1の実施形態と同様に、コーティングによって引き起こされるプレートの平坦度の偏差は、反対側の等しい偏差によって相殺され、プレートの全体的な曲率を低減または排除する。
【0021】
特定の実施形態では、前述のように、中和コーティング14は反射防止コーティングである。特定の特に好ましい実施形態では、反射防止コーティングは、部分反射コーティングと同様の層組成および層数のコーティングであるが、反射防止光学特性を生成するように選択された厚さで適用される。多くの場合、同一の組成を有する層を同数使用することで、厚さを変えるだけで、プレートの如何なる残留歪みを許容レベルまで低減するために十分な同様の応力効果が得られる。しかしながら、「応力中和」コーティングのための異なる層組成および/または層の数の使用もまた、本発明の範囲内にある。
【0022】
特定の実施形態では、部分反射コーティングおよび中和コーティングは、プレートに同時に適用することができる。特定の実施形態では、コーティングを適用した後、プレートは歪み、次いで修正され得る。特定の実施形態では、応力はコーティングプロセスによって、および/またはコーティングが適用された後の冷却中に引き起こされる。
【0023】
「実質的に同様」の機械的特性とは、プレートの歪みが低減され、好ましくは排除される程度に機械的特性が十分に類似していることを意味することに留意されたい。多くの場合、反射率/透過率のわずかに異なる比率を達成するために、かつ/または、反射防止特性を達成するために、プレートの両側のコーティング間で実際に層の厚さが異なっているが、特に層の数とその組成が同一である場合は、同様の一連のコーティングを使用することにより、多くの場合には、高品質の製品に対して十分に高度な応力除去を達成する程度まで「実質的に同様」となることが見出されている。
【0024】
ここで
図4A~4Bを参照すると、先行技術の方法と同様に、上記の実施形態の双方において、次いで、プレートを相互に結合して、スタック6を形成し、光学素子を形成するようにプレートの表面に対して斜めに角度付けられた平行平面16に沿ってスタックを切断することによって、LOE8が形成される。特定の実施形態では、プレートは、陽極接合などの接着剤を含まない結合プロセスで結合され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、
図4Aに示されるように、プレートは、角度付けることなく積み重ねることができ、その場合、スタック6は、プレートの表面に対して角度付けられている平行平面に沿って切断される。他の実施形態では、
図4Bに示されるように、プレート自体がスタック内で角度付けられており、その場合、スタック6は、真っ直ぐに切断される。いくつかの実施形態(図示せず)では、スタックは、例えば、2次元導波路を形成するために、他の平面に沿って切断することができる。
【0026】
図5A~5Bを参照すると、いくつかの実施形態では、プレート10とは異なる厚さを有する1つ以上のエンドプレート18が、スタック6の端部に取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、エンドプレート18は、1つ以上のコーティングでコーティングすることもできる。これらのコーティングは、プレート10に適用されるコーティングと同一または異なるコーティングとすることができる。特定の最も特に好ましい実施形態では、コーティングは、エンドプレート18に適用されない。
【0027】
特定の実施形態では、いくつかのLOEは、異なるプレートにおいて異なる量の反射率を必要とし得る。したがって、「第1のコーティング」または「部分反射コーティング」への言及は、すべて部分反射であるが、それぞれの反射パラメータが異なり得るコーティングの群からの1つのコーティングを指すと解釈されるべきである。特定の実施形態では、反射パラメータは、特定のLOEの設計要件に従って、後続の各表面に対して漸進的に変更することができる。
【0028】
図6A~6Bは、プレート10の各々が片面のみコーティングされ得る一実施形態を概略的に示す。ここで
図6Aを参照すると、いくつかの実施形態では、スタック6内の複数のプレート10の各々は、部分反射コーティング12’でコーティングされている。ここで
図6Bを参照すると、コーティング12’は、屈折率R
hを有する高屈折率コーティングHと、屈折率R
1を有する低屈折率コーティングLとの交互の層から構成され得る(R
h>R
1)。例えば、コーティング12’は、交互のコーティングH
1、L
1、H
2、L
2…などからなることができ、
図6Bの左側に示すように、H
1はプレート表面に適用され、次いでH
1上にL
1が適用され、次いでL
1上にH
2が適用され、次いでH
2上にL
2が適用され...など。コーティングHおよび/またはLは、それ自体が、組み合わされたときに所望の屈折率、すなわちHコーティング層のR
hおよびLコーティング層のR
lを達成する複数の異なるコーティング材料から構成され得ることを理解されたい。
【0029】
コーティングHとLの各々は、プレートの表面に適用されたときにそれぞれ固有の応力特性(引張または圧縮)(特定の温度、厚さ、コーティング手順などによって異なる場合がある)を有するため、ストーニー方程式などの既知の手法を使用してコーティングの総応力12’を計算することができる。上で考察されるように、12’の総応力は望ましくなく、各プレートの片側に加えられたときに、プレート10の歪みを引き起こし得る。
【0030】
しかしながら、本発明者らは、
図6Bの右側部分に示されるように、HまたはL層の一部を、(場合によっては)異なる材料または材料の組み合わせで作製された代替のH’またはL’で置き換えることが可能であることを見出した。この場合、コーティング12’は、全体的に中性の応力(プレート10への引張応力または圧縮応力が最小または全くないということを意味する)を有するように設計および構築され得る。したがって、コーティング12’は、プレート望ましくない歪みを引き起こすことなく、プレート10の各々の片側に適用され得る。
【0031】
例えば、次のようにプレート表面から外側に適用された、SiO2(R~1.42)とTa2O5(R~2.075)の17層の交互層からなるコーティングを考える。
層1、3、5、7、9、11、13、15、17=TA2O5
層2、4、6、8、10、12、14、16=SIO2
【0032】
この場合、コーティング12’の約6分の総引張応力は216.4MPaを超える。これは、片面コーティングには望ましくない。しかしながら、L層(すなわち、SiO2)一部がL’=MgF2(R~1.38)の層に置き換えられた場合、例えば、
層1、3、5、7、9、11、13、15、17:TA2O5
層2、4、6、14、16:SIO2
層8、10、12:MgF2
MgF2層は、プレート10上のコーティング12’の総応力が最小となって、それゆえ片面コーティングに許容されるように、コーティング12’によって生成される総応力を効果的に中和する。置き換えられる層の数は、設計における総応力によって定義され、材料の数および応力特性、設計、ならびに層の厚さに応じて変化し得ることに留意されたい。
【0033】
さらに、置換層H’またはL’の屈折率は、(場合によっては)一次層HまたはLの屈折率から6%以下の偏差を有することが好ましいことに留意されたい。
【0034】
本開示の主題の教示に従って製造されたLOEは、Lumus(イスラエル)の特許および特許出願に記載されている様々なニアアイディスプレイおよび関連する用途などの様々な用途に使用することができる。
【0035】
本発明は、その出願において、本明細書に含まれる説明に明記された、または、図面に示された詳細事項に限定されないことが理解されるであろう。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ様々な方法で実践または実施されることが可能である。したがって、本明細書で用いられる表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。したがって、本開示の基礎となる概念が、本開示の主題のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法、およびシステムを設計するための基礎として容易に利用され得ることを当業者は理解するであろう。
【0036】
当業者は、添付の特許請求の範囲内、または、添付の特許請求の範囲内によって定義され、その範囲から逸脱することなく、前述のように本発明の実施形態に様々な修正および変更を適用できることを容易に理解するであろう。
【国際調査報告】