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特表2022-528618ヒドロシリル化反応によって架橋可能な化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ヒドロシリル化反応によって架橋可能な化合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
C08L83/07
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021556751
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2019057312
(87)【国際公開番号】W WO2020192873
(87)【国際公開日】2020-10-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジッケ,ボルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ビンターアー,マルクス
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP141
4J002EZ006
4J002FD156
4J002GJ02
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、2.5未満のpKs値を有する強酸(S)の含有率が0.3重量ppm未満である、ヒドロシリル化反応によって架橋することができる化合物、特にUV及び/又は可視放射線によって活性化することができる白金触媒を含む化合物に関する。本発明はまた、その製造、それらの使用、及び放射線によって製造されるシリコーンエラストマーなどのそれから製造される架橋生成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.5未満のpKaを有する強酸(S)の含有率が0.3重量ppm未満であることを特徴とする、ヒドロシリル化反応により架橋可能な白金触媒組成物。
【請求項2】
塩化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、酸活性化漂白土から選択される強酸(S)の含有率が0.3重量ppm未満であることを特徴とする、ヒドロシリル化反応により架橋可能な白金触媒組成物。
【請求項3】
前記強酸(S)の含有率が0.2重量ppm未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(i) 化合物(A)、(B)及び(C)を含む群から選択される少なくとも1種の化合物、ここで
(A)は脂肪族炭素-炭素多重結合を有する少なくとも1つの基を含む有機化合物及び/又は有機ケイ素化合物であり、
(B)は少なくとも1つのSi結合水素原子を含む有機ケイ素化合物であり、
(C)は脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合水素原子を有するSiC結合基を含む有機ケイ素化合物であり、
ただし、組成物は、脂肪族炭素-炭素多重結合を有する少なくとも1種の化合物及びSi結合水素原子を有する少なくとも1種の化合物を含むものとし;及び
(ii) 少なくとも1種の
(D)白金触媒
を含み、ただし、2.5未満のpKaを有する強酸(S)の含有率が0.3重量ppm未満であるものとする組成物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
構成成分(A)として少なくとも1種の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記白金触媒(D)が以下の式のものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物:
Pt{CpR } (I)
[式中、
Cpはシクロペンタジエニル基であり、
は同一でも異なってもよく、一価の置換されていてもよい脂肪族飽和炭化水素基であり、及び
は同一でも異なってもよく、水素原子、SiC結合したシリル基又は一価の置換されていてもよい炭化水素基である。]。
【請求項7】
酸捕捉剤(H)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸捕捉剤(H)が、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩又は塩基性ホスホン酸塩であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
個々の成分を任意の所望の順序で混合することにより、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物又は請求項9に記載のように製造された組成物を架橋することにより製造される成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応によって架橋可能な組成物、特に、紫外線及び/又は可視放射線によって活性化可能な白金触媒を含む組成物、その製造、その使用、及びそれから製造される架橋生成物、例えば、照射によって製造されるシリコーンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
付加-架橋シリコーン組成物における架橋工程は、一般に、白金又は白金族の他の金属が通常触媒として使用されるヒドロシリル化反応を介して起こる。触媒作用により進行する反応では、付加-架橋可能なシリコーン組成物をネットワークの形成を経てエラストマー状態に変換するために、脂肪族不飽和基をSi結合水素と反応させる。
【0003】
従来技術によれば、使用される触媒は通常熱により活性化され、これは架橋作用のために付加-架橋可能なシリコーン組成物を加熱しなければならないことを意味する。この工程において、シリコーン組成物は、例えば、コーティング工程、及び選択されたポッティング、成形、及び共押出又は他の成形工程における場合のように、しばしば基材に塗布されなければならない。実際の加硫工程は、この場合、費用がかかり、エネルギー集約型の装置を操作しなければならないことが多い加熱工程によって行われる。
【0004】
一方、紫外線及び/又は可視放射線によって架橋可能な混合物の使用は、多くの用途において、時に費用のかなりの削減と関連している。その結果、エネルギー及びプロセスコストの節約、ひいては対応する生産性の増加が達成できる。さらに、紫外線及び/又は可視放射線による架橋は、しばしば連続生産を可能にし、これは、不連続なバッチ式処理と比較して、さらなる生産性の利点をもたらす。特に、例えば、エラストマー材料と一緒に複合パートナーとしての熱可塑性物質を含む硬質-軟質複合材料のような多成分の場合には、高温製造工程を省くことは、成分の熱による反りを防止するという事実からも、利点が生じる。
【0005】
技術文献には、放射線によるヒドロシリル化反応の開始に適した多数の白金錯体が記載されている。記載された白金触媒は全て光によって活性化され、光源のスイッチが切れた後でもシリコーン組成物を架橋することができる。この操作は当業者に暗反応として知られている。
【0006】
一方、暗安定性は、暗所における光活性化可能な触媒を含む組成物の安定性、すなわち、最終的には、組成物の技術的に望ましい保存安定性を記述する。不十分な暗安定性は、例えば、少量の触媒が反応して保存中にヒドロシリル化活性種を形成する場合、混合物の粘度の増加によって明らかにされる。さらに、触媒は保存中に不活性種に分解する可能性があり、その結果、光誘導架橋がもはや起こらなくなる。
【0007】
EP146307B1号は、シリコーンマトリックス中での良好な溶解度を特徴とする(η-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体を開示する。
【0008】
EP1803728A1号は、量子収量を増加させ、活性化に必要な光波長を長波範囲に変えるために、シクロペンタジエニル環に特定の置換基(ナフチル、アントラセニル等)を有する修飾(η-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体を開示する。しかし、芳香環の取り付けはシリコーンマトリックス中における錯体の溶解度に悪影響を及ぼす。
【0009】
EP2238145B1号は、この種類の化合物の揮発性を低下させるために、ポリマーへの(η-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体の取り付けを記述する。EP-A3186265号は、暗安定性の増加に寄与する(η-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体中のシクロペンタジエニル配位子の修飾を記述する。
【0010】
要約すると、可視及び/又はUV放射線を介して架橋可能である現在までに知られているシリコーン組成物のいずれも、工業環境での製造に特に使用することができるこの種類のシリコーン組成物に上に課される要件を十分に満たすものではないと言うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第146307号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1803728号明細書
【特許文献3】欧州特許第2238145号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3186265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、上述の欠点、特に不十分な暗安定性を有さないシリコーン組成物を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、2.5未満のpKaを有する強酸(S)の含有率が0.3重量ppm未満であることを特徴とする、ヒドロシリル化反応によって架橋可能な白金触媒組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の関連で、「架橋可能」という用語は、これらがネットワークの一部であるか否かにかかわらず、ヒドロシリル化反応によって形成される任意の種類の結合を意味するものとして理解されるべきである。
【0015】
強酸(S)として適切な酸は、例えば、参考文献から当業者に周知であり、通常、pKa値で記載され、pKa値は水性媒体中で決定される。ここでの参照は、例えばEPAの刊行物「Product Properties Test Guidelines OPPTS 830.7370 Dissociation Constants in Water」について行うことができる。
【0016】
強酸(S)は、1.5未満のpKaを有する、より好ましくは0未満のpKaを有するものである。
【0017】
強酸(S)の例は、塩化水素、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸などのアルキル及びアリールスルホン酸、硫酸並びにTonsil(R) Supreme 114 FF(製造者Clariant)などの酸活性化漂白土である。
【0018】
特に、強酸(S)は、塩化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、及び酸活性化漂白土から選択されるもの、最も好ましくは塩化水素である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、塩化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、及び酸活性化漂白土から選択される強酸(S)、好ましくは塩化水素の含有率が0.3重量ppm未満であることを特徴とする、ヒドロシリル化反応によって架橋可能な白金触媒組成物に関する。
【0020】
強酸(S)は、好ましくは、原料を介してシリコーン組成物に導入され、特に本発明の組成物の原料のための製造方法から生じる。例えば、ホスホニトリル塩化物のような酸性触媒は、ポリジメチルシロキサンの製造のために使用され、例えば、アミンで大部分が中和され、塩化アンモニウムの形成をもたらすが、ポリジメチルシロキサンに組み込まれたPNCl単位が経時により加水分解し、それによって塩化水素を放出することが可能である。さらに、使用される固体、例えば、クロロシランから製造されるヒュームドシリカは、残留量のケイ素結合塩素又は吸着した塩化水素を含有し得る。その後、加水分解及び/又は脱離により、塩化水素が放出される。
【0021】
本発明の組成物では、強酸(S)の含有率は、好ましくは0.2重量ppm未満、特に0.1重量ppm未満、より好ましくは0である。
【0022】
本発明の組成物は、好ましくは以下を含有する組成物である。
(i) 化合物(A)、(B)及び(C)を含む群から選択される少なくとも1種の化合物、ここで
(A)は脂肪族炭素-炭素多重結合を有する少なくとも1つの基を含む有機化合物及び/又は有機ケイ素化合物であり、
(B)は少なくとも1つのSi結合水素原子を含む有機ケイ素化合物であり、
(C)は脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合水素原子を有するSiC結合基を含む有機ケイ素化合物であり、
ただし、組成物は、脂肪族炭素-炭素多重結合を有する少なくとも1種の化合物及びSi結合水素原子を有する少なくとも1種の化合物を含むものとし、及び
(ii)少なくとも1種の
(D) 白金触媒
ただし、2.5未満のpKaを有する強酸(S)の含有率は0.3重量ppm未満であるものとする。
【0023】
本発明の組成物に使用される化合物(A)、(B)、及び(C)は、それらが架橋状態に変換できるように好ましく選択された従来技術に従っている。成分の架橋が可能なように、例えば、化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有することができ、(B)は少なくとも3つのSi結合水素原子を有することができ、又は化合物(A)は少なくとも3つの脂肪族不飽和基を有することができ、シロキサン(B)は少なくとも2つのSi結合水素原子を有することができ、化合物(A)と(B)の代わりに、脂肪族不飽和基及びSi結合水素原子を有するシロキサン(C)を用いることが可能である。さらに可能なのは、脂肪族不飽和基及びSi結合水素原子の(A)、(B)、及び(C)からの混合物である。
【0024】
本発明に従って使用される成分(A)、(B)、及び(C)のモル比は、従来技術から知られているものに相当する。白金触媒(D)は、Pt(0)含量に基づいて、従来技術から知られている触媒の量が本発明の組成物中に同様に存在するような量で使用される。
【0025】
本発明に従って使用される化合物(A)は、好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有するケイ素を含まない有機化合物、及び好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物、又はそれらの混合物であることができる。
【0026】
ケイ素を含まない有機化合物(A)の例は、1,3,5-トリビニルシクロヘキサン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4,7-メチレン-4,7,8,9-テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリアリルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、3-メチル-1,5-ヘプタジエン、3-フェニル-1,5-ヘキサジエン、3-ビニル-1,5-ヘキサジエン及び4,5-ジメチル-4,5-ジエチル-1,7-オクタジエン、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリアクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルカーボネート、N,N’-ジアリル尿素、ポリエチレングリコールジアクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートである。
【0027】
本発明のシリコーン組成物は、好ましくは構成成分(A)として、少なくとも1種の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含み、これまで付加-架橋組成物に使用されている脂肪族不飽和有機ケイ素化合物のいずれかを使用することができる。
【0028】
(A)が脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSiC結合基を有する有機ケイ素化合物の場合、それは以下の一般式の単位で構成されることが好ましい。
11 12 SiO(4-a-b)/2 (IV)
式中、
11は同一でも異なってもよく、ヒドロキシル基又は1~20個の炭素原子を有する一価の置換されていてもよい脂肪族飽和炭化水素基であり、
12は同一でも異なってもよく、2~10個の炭素原子を有する一価の置換されていてもよい脂肪族不飽和炭化水素基であり、
aは0、1、2又は3、好ましくは1又は2であり、
bは0、1、2又は3、好ましくは0又は1であり、
ただし、a+bの和が3以下であり、少なくとも1つの脂肪族不飽和基R12、好ましくは少なくとも2個の脂肪族不飽和基R12が1分子あたり存在するものとする。
【0029】
式(IV)の単位から構成される有機ケイ素化合物(A)では、bが0ではない単位が互いに結合しないことが好ましい。
【0030】
基R11の例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、2,2,4-トリメチルペンチル、n-ノニル又はオクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ノルボルニル、アダマンチルエチル又はボルニル基;アリール又はアルカリル基、例えば、フェニル、エチルフェニル、トリル、キシリル、メシチル又はナフチル基;アラルキル基、例えば、ベンジル、2-フェニルプロピル又はフェニルエチル基、並びに3,3,3-トリフルオロプロピル、3-ヨードプロピル、3-イソシアナトプロピル、アミノプロピル、メタクリロイルオキシメチル及びシアノエチル基である。
【0031】
基R11は、好ましくはハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよい1~20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、より好ましくはメチル、フェニル、3,3,3-トリフルオロプロピル又はシアノエチル基であり、特にメチル基である。
【0032】
基R12の例は、アルケニル及びアルキニル基、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、3-ブテニル、2、4-ペンタジエニル、ブタジエニル、5-ヘキセニル、ウンデセニル、エチニル、プロピニル又はヘキシニル基;シクロアルケニル基、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニルエチル、5-ビシクロヘプテニル、ノルボルネニル、4-シクロオクテニル又はシクロオクタジエニル基;アルケニルアリール基、例えば、スチリル又はスチリルエチル基、並びに上記基のハロゲン化及びヘテロ原子含有誘導体、例えば、2-ブロモビニル、3-ブロモ-1-プロピニル、1-クロロ-2-メチルアリル、2-(クロロメチル)アリル、アリルオキシプロピル又は1-メトキシビニル基である。
【0033】
基R12は、好ましくは末端炭素-炭素二重結合を有する2~10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、より好ましくはビニル、アリル又は5-ヘキセニル基であり、特にビニル基である。
【0034】
成分(A)の例は、1,1,1,2,2,3,3,3-ヘプタメチル-2-ビニル-トリシロキサン、MeSi-O-(SiMeO)-SiMe(CH=CH)(ここでx>0である)、(CH=CH)MeSi-O-(SiMeO)-SiMe(CH=CH)(ここでx>0である)、MeSi-O-(SiMeO)-(SiMe(CH=CH)O)-SiMe(ここでx>0及びy>0である)及び(CH=CH)MeSi-O-(SiMeO)-(SiMe(CH=CH)O)-SiMe(CH=CH)(ここでx>0及びy>0である)である(ここでMeはメチル基である)。
【0035】
本発明に従って使用される有機ケイ素化合物(A)は、25℃において好ましくは1~40000000mPa.s、より好ましくは50~1000000mPa.sの粘度を有する。
【0036】
粘度は、DIN EN ISO 3219:1994(Polymers/resins in the liquid state or as emusions or dispersions)及びDIN 53019(Measurement of viscosities and flow curves using rotational viscometers)に従って、25℃で、プレート/コーンシステム付きAnton Paar MCR301空気担持回転レオメーターで測定する。
【0037】
使用される有機ケイ素化合物(B)は、付加-架橋可能な組成物に現在まで使用されてきた任意の水素官能性有機ケイ素化合物であることができる。
【0038】
SiH結合水素原子を含む有機ケイ素化合物(B)は、以下の一般式の単位から構成されるものが好ましい。
13 SiO(4-c-d)/2 (V)、
式中、
13は同一でも異なってもよく、基R11について規定されている通りであり、
cは0、1、2又は3、好ましくは1又は2であり、及び
dは0、1又は2、好ましくは1又は0であり、
ただし、c+dの和は4未満であり、有機ケイ素化合物は1分子当たり少なくとも1つのSi結合水素原子、好ましくは少なくとも2個のSi結合水素原子を有するものとする。
【0039】
成分(B)の例は、1,1,1,2,2,3,3,3-ヘプタメチルトリシロキサン、MeSi-O-(SiMeO)-SiMeH(ここでx≧0である)、テトラメチルジシロキサン、HMeSi-O-(SiMeO)-SiMeH(ここでx>0である)、MeSi-O-(SiMeO)-(SiMeHO)-SiMe(ここでx>0及びy>0である)、及びHMeSi-O-(SiMeO)-(SiMeHO)-SiMeH(ここでx>0及びy>0である)である(ここでMeはメチル基である)。
【0040】
本発明に従って使用される有機ケイ素化合物(B)は、25℃において好ましくは100~40000000mPa.s、より好ましくは1000~500000mPa.sの粘度を有する。
【0041】
成分(A)、(B)又は(C)は、脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が0.1~20、より好ましくは1.0~5.0であるような量で本発明の架橋性組成物中に存在することが好ましい。
【0042】
成分(A)及び(B)の代わりに、本発明の組成物は、Si結合水素原子と一緒に脂肪族炭素-炭素多重結合を有する有機ケイ素化合物(C)を含むことができる。本発明の組成物は、3つの成分(A)、(B)、及び(C)の全てを含むことも可能である。
【0043】
有機ケイ素化合物(C)を用いる場合は、それらは以下の一般式の単位で構成されるものが好ましい。
11 SiO4-g/2 (VII)、
11 12SiO3-h/2 (VIII)、及び
11 HSiO3-i/2 (IX)、
式中、R11及びR12は同一でも異なってもよく、上で定義された通りであり、
gは0、1、2又は3であり、
hは0、1又は2であり、及び
iは0、1又は2であり、
ただし、少なくとも2つの基R12及び少なくとも2つのSi結合水素原子が1分子当たりに存在するものとする。
【0044】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、SiO4/2単位、R11 SiO1/2単位、R11 12SiO1/2単位、及びR11 HSiO1/2単位から構成されるもの、いわゆるMQ樹脂であり、ここでこれらの樹脂は、R11SiO3/2単位及びR11 SiO2/2単位、並びにR11 12SiO1/2単位、R11 SiO2/2単位、及びR11HSiO2/2単位から本質的になる直鎖状オルガノポリシロキサンを追加的に含むことができ、ここでR11及びR12は上で定義された通りである。
【0045】
オルガノポリシロキサン(C)は、いずれの場合も25℃で、0.01~500000mPa.s、より好ましくは0.1~100000mPa.sの粘度を有することが好ましい。
【0046】
本発明に従って使用される成分(A)、(B)、及び(C)は、標準的な市販製品であるか、又は化学において一般的に使用される方法によって調製することができる。
【0047】
白金触媒(D)は、好ましくは以下の式のものである。
Pt{CpR } (I)
式中、
Cpはシクロペンタジエニル基であり、
は同一でも異なってもよく、一価の置換されていてもよい脂肪族飽和炭化水素基であり、
は同一でも異なってもよく、水素原子、SiC結合シリル基又は一価の置換されていてもよい炭化水素基である。
【0048】
シクロペンタジエニル基Cpは文献上の常識である。本発明との関連において、シクロペンタジエニル基Cpは、好ましくは、単一の負電荷を帯びた芳香族5員環系CR’-からなるシクロペンタジエニルアニオンを意味するものと理解されなければならない。本発明の目的のためのシクロペンタジエニル白金錯体は、白金含有フラグメントMにη-結合したシクロペンタジエニル基を含有し、
【0049】
【化1】
ここでR’は、任意の所望の基を表し、これらもまた互いに結合して縮合環を形成し得る。
【0050】
基Rの例は、基R11について上で定義したものである。
【0051】
基Rは、好ましくはシリル基により置換されていてもよい炭化水素基であり、より好ましくはメチル、トリメチルシリルメチル、シクロヘキシル、フェニルエチル又はtert-ブチル基、特にメチル、トリメチルシリル-メチル又はシクロヘキシル基、最も好ましくはメチル基である。
【0052】
基Rは、置換されていてもよい炭化水素基であり、一価又は多価であり、好ましくは一価である。2つ以上の一価の基Rも芳香族、飽和又は脂肪族不飽和であることができる、シクロペンタジエニル基に縮合した1つ以上の環を形成することができる。また、多価の基Rがシクロペンタジエニル基に1つ以上の位置で結合し、芳香族、飽和又は脂肪族不飽和であることができる、シクロペンタジエニル基に縮合した1つ以上の環を形成することができる。
【0053】
基Rの例は、基R11及びR12について上で与えられた例、並びに水素基、ビニルジメチルシリル基、アリルジメチルシリル基、トリメトキシシリルメチル基、トリメトキシシリルプロピル基、メチルジメトキシシリルメチル基、メチルジメトキシシリルプロピル基、及びメチルビス(ポリジメチルシロキシ)シリルプロピル基である。
【0054】
基Rは、好ましくは、水素原子、SiC結合シリル基、又はシリル基で置換されていてもよい炭化水素基、より好ましくは、水素原子、メチル基、アリルジメチルシリル基、メチルジメトキシシリルメチル基、メチルジメトキシシリルプロピル基又はメチルビス(ポリジメチルシロキシ)シリルプロピル基、特に水素原子、メチル基、アリルジメチルシリル基、メチルジメトキシシリルプロピル基又はメチルビス(ポリジメチルシロキシ)シリルプロピル基、最も好ましくは水素原子、メチル基又はメチルビス(ポリジメチルシロキシ)シリルプロピル基である。
【0055】
本発明に従って使用される白金錯体(D)の例は、EP2238145B1号段落[22]~[25]及び段落[30]~[31]、及びEP3186265B段落[37]~[38]に記載されているものであり、これらは発明の開示内容の一部として数えられる。
【0056】
本発明に従って使用される白金錯体(D)は、好ましくはCpMePtMe、[(HC=CH-CH)MeSiCp]PtMe、CpPtMe、トリメチル[(3-ジエトキシメチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、トリメチル[(3-ジエトキシメチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)、トリメチル[(3-ビス(ポリジメチルシロキシ)メチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)又はトリメチル[(3-ビス(ポリジメチルシロキシ)メチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)、より好ましくはCpMePtMe、トリメチル[(3-ジエトキシメチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、トリメチル[(3-ジエトキシメチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)、トリメチル[(3-ビス(ポリジメチルシロキシ)メチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)又はトリメチル[(3-ビス(ポリジメチルシロキシ)メチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)、特にCpMePtMe、トリメチル[(3-ビス(ポリジメチルシロキシ)メチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)又はトリメチル[(3-ビス(ポリジメチルシロキシ)メチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)であり、ここで「ポリジメチルシロキシ」は、ポリジメチルシロキサン単位-(SiMeO)-(ここでx=100~400であり、Meはメチル基である)を意味するものと理解される。
【0057】
使用される白金触媒(D)の量は、所望の架橋速度及び経済的考察により導かれる。架橋性組成物100重量部当たり通常使用される白金触媒(D)の量は、いずれも白金金属として計算して、好ましくは、1.10-5~5.10-2重量部、より好ましくは1.10-4~1.10-2重量部、特に5.10-4~5.10-3重量部である。
【0058】
上で述べた成分(A)、(B)、(C)、及び(D)に加えて、さらなる成分、例えば、阻害剤及び安定剤(E)、充填剤(F)、及び添加剤(G)が、本発明の組成物中に存在することも可能である。
【0059】
成分(E)は、本発明の組成物の処理時間、開始特性、及び架橋速度の選択的調整に役立つ。これらの阻害剤及び安定剤は、付加-架橋組成物の分野において非常によく知られている。一般的な阻害剤の例は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ドデシン-3-オールなどのアセチレンアルコール、脂肪族炭素-炭素多重結合を有する基を有する隣接するシロキシ基を含み、阻害作用を有するポリメチルビニルシロキサン、例えば、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン及びテトラビニルジメチルジシロキサン、トリアルキルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチル、及びマレイン酸ジエチルなどのマレイン酸アルキル、フマル酸ジアリル及びフマル酸ジエチルなどのフマル酸アルキル、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド及びピナンヒドロペルオキシドなどの有機ヒドロペルオキシド、有機過酸化物、有機スルホキシド、有機アミン、ジアミン及びアミド、ホスファン、亜リン酸塩、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジン、並びにオキシムである。
【0060】
成分(E)はアセチレンアルコール又はマレイン酸アルキルであることが好ましい。
【0061】
これらの阻害剤添加(E)の効果はその化学構造によるので、濃度は個々に決定しなければならない。阻害剤(E)を使用する場合は、その量は,いずれの場合も本発明の組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.00001~5重量%、より好ましくは0.00005~2重量%、特に好ましくは0.0001~1重量%である。本発明の組成物は成分(E)を含むことが好ましい。
【0062】
本発明の組成物に使用される任意の充填剤(F)は、現在までに知られている任意の所望の充填剤であることができる。
【0063】
充填剤(F)の例は、非補強充填剤、すなわち、好ましくはBET比表面積が50m/gまでの充填剤、例えば、石英、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、タルク、カオリン、ゼオライト、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、鉄酸化物若しくは亜鉛酸化物又はその混合酸化物などの金属酸化物粉末、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス、ポリアクリロニトリル粉末などのポリマー粉末;補強充填剤、すなわち、BET比表面積が50m/gを超える充填剤、例えば、沈降炭酸石灰、ファーネスブラック及びアセチレンブラックなどのカーボンブラック、BET比表面積の高いケイ素-アルミニウム混合酸化物;三水酸化アルミニウム、中空ビーズ形態の充填剤、例えば、ドイツのノイスの3M Deutschland GmbHのZeeospheres(商標)の商品名で入手可能なセラミックマイクロビーズ、例えば、スウェーデンのスンツヴァルのAKZO NOBELのExpancelからExpancel(R)の商品名で入手可能なもののような弾性ポリマービーズ又はガラスビーズ;アスベスト及びポリマー繊維などの繊維状充填剤である。言及された充填剤は、例えば、オルガノシラン又はオルガノシロキサンを用いた処理によって、又はステアリン酸を用いた処理によって、又はアルコキシ基へのヒドロキシル基のエーテル化によって、疎水化されていてもよい。
【0064】
本発明の組成物が充填剤(F)を含む場合、これらは、好ましくは、少なくとも50m/gのBET比表面積を有するヒュームドシリカ及び沈降シリカである。
【0065】
使用する充填剤(F)はいずれも、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の水分含有率を有する。
【0066】
本発明の組成物が充填剤(F)を含む場合、その量は、いずれの場合も本発明の組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1重量%~70重量%、より好ましくは1重量%~50重量%、特に10重量%~30重量%である。本発明の組成物は充填剤(F)を含むことが好ましい。
【0067】
任意に使用される成分(G)の例は、シロキサン(A)、(B)、及び(C)以外の樹脂性ポリオルガノシロキサン、殺菌剤、芳香剤、有機レオロジー添加剤、腐食防止剤、酸化防止剤、充填剤(F)以外の光安定剤、充填剤(F)以外の有機難燃剤及び電気特性に影響する薬剤、分散剤、溶媒、接着促進剤、顔料、染料、シロキサン(A)、(B)、及び(C)以外の可塑剤、有機ポリマー及び熱安定剤など、付加-架橋性組成物の製造に現在まで使用されてきた任意の他の添加物である。
【0068】
添加剤(G)はSi結合水素を含まない樹脂状脂肪族飽和ポリオルガノシロキサン、有機溶媒、接着促進剤、顔料又は染料であることが好ましい。
【0069】
本発明の組成物が添加剤(G)を含む場合、その量は、いずれの場合も本発明の組成物の総重量に基づいて、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~20重量%、特に1重量%~5重量%である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、酸捕捉剤(H)は、本発明の組成物の製造において、好ましくは強酸(S)の含有量に対して少なくとも化学量論量で使用される。
【0071】
使用される酸捕捉剤(H)は、架橋性組成物中の強酸(S)の含有量を減少させるのに適した任意の物質であることができ、酸捕捉剤自体及び強酸とのその反応生成物は組成物の架橋に悪影響を及ぼしてはならない。
【0072】
本発明に従って任意に使用される酸捕捉剤(H)は、好ましくは金属炭酸塩、金属カルボン酸塩又は塩基性ホスホン酸塩、より好ましくは金属炭酸塩又は金属カルボン酸塩、特に金属カルボン酸塩である。
【0073】
酸捕捉剤(H)の例は、炭酸水素ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ウンデセニル酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸カルシウム、カルシウムアルミニウムヒドロキシカーボネート、ヘキサデシルホスホン酸二ナトリウム、クエン酸カリウム、乳酸マグネシウム、ステアロイル-2-乳酸ナトリウムである。
【0074】
本発明の組成物の製造には、酸捕捉剤(H)を使用することが好ましい。
【0075】
本発明の組成物が酸捕捉剤(H)を含む場合、その量は、いずれの場合も本発明の組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.001重量%~3重量%、より好ましくは0.01重量%~1重量%、特に0.05重量%~0.1重量%である。本発明の組成物は酸捕捉剤(H)を含むことが好ましい。
【0076】
成分(A)、(B)、及び(C)、並びに(E)、(F)、(G)、及び(H)は、好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm~400nmまでで透明であり、その結果、組成物の光誘導架橋が触媒(D)の活性化により起こることができる。
【0077】
本発明に従って使用される成分は、それぞれ、そのような成分の1種、又は任意の特定の成分の少なくとも2種の混合物であることができる。
【0078】
必要であれば、本発明の組成物を液体に溶解、分散、懸濁又は乳化させることができる。
【0079】
本発明の組成物は、特に、構成成分の粘度及び充填剤含有率に応じて、知られているようにRTV-1、RTV-2、LSR、及びHTVとして専門家の間で一般に言及されている組成物の場合のように、粘度が低く、注入可能であり、ペースト状の堅さを有し、粉体であるか、又は高粘度の柔軟性のある組成物であってもよい。より具体的には、高粘度である場合、本発明の組成物は、ペレットの形態で調製され得る。この場合、個々のペレット粒子は全ての成分を含んでもよいし、又は本発明に従って使用される成分が別々に異なるペレット粒子に組み込まれる。本発明の架橋シリコーン組成物のエラストマー特性に関しては、同様に、極めて軟らかいシリコーンゲルから始まりゴム様材料を経てガラス様特性を有する高度に架橋されたシリコーンまでのかつこれを含む、全範囲が包含される。
【0080】
本発明の組成物は、それ自体知られた任意の所望の様式で、例えば、付加-架橋組成物の製造に慣用的な方法及び混合方法によって製造され得る。
【0081】
本発明はさらに、任意の所望の順序で個々の成分を混合することによって本発明の組成物を製造する方法を提供する。
【0082】
この混合は室温及び周囲圧力、すなわち約900~1100hPaで行われ得る。所望ならば、この混合は、より高温で、例えば、30~130℃の範囲内の温度でも行われ得る。さらに、揮発性化合物及び/又は空気を除去するために、減圧下、例えば、30~500hPaの絶対圧で断続的又は常時混合することが可能である。
【0083】
本発明による混合は、湿気及び波長500nm未満の光を排除して行うことが好ましい。
【0084】
本発明による方法は、連続的に又はバッチ式で行うことができる。
【0085】
本発明の方法の好ましい実施形態では、白金触媒(D)を(A)、(B)、及び任意に(E)、(F)、(G)、及び(H)の混合物と均一に混合する。本発明に従って使用される白金触媒(D)は、該物質として、又は(適当な溶媒に溶解した)溶液の形態で又は(少量の(A)又は(A)と(E)とを均質に混合した)いわゆるバッチとして組み込むことができる。
【0086】
酸捕捉剤(H)が使用される場合、それは、別々の方法で本発明の組成物の個々の構成成分と混合され得るか、又は調製物の2つ以上の構成成分の混合物に添加され得る。例えば、酸捕捉剤(H)は、(A)、(B)、及び任意に(E)、(F)、(G)の混合物と均一に混合することができ、その後、本発明に従って使用される白金触媒(D)を、該物質として又は(適当な溶媒に溶解した)溶液の形態で又はいわゆるバッチとして均一に混合することができる。この方法において、(H)及び/又は強酸とのその誘導体生成物は組成物中に残存する。
【0087】
酸捕捉剤(H)は、記載のように、本発明の組成物の個々の構成成分と別々の方法で混合されるか、又は調製物の2つ以上の構成成分の混合物に添加されるように使用することもできる。一定時間後、過剰な酸捕捉剤(H)は、酸(S)と形成された誘導体生成物と一緒に混合物から除去される。酸捕捉剤(H)及び/又はその誘導体生成物をより容易に混合し、例えば、濾過により、より良好な分離性を得るために、酸捕捉剤(H)及びその誘導体生成物が不溶性である適切な溶媒を、酸捕捉剤(H)及び/又はその誘導体生成物を含む混合物に添加することができる。この方法の変形例では、酸捕捉剤(H)及び/又はその誘導体生成物が存在しないか、又は微量でのみ存在する本発明の組成物が得られる。
【0088】
本発明の組成物は、1成分シリコーン組成物又は2成分シリコーン組成物のいずれであってもよい。後者の場合、本発明の組成物の2成分は、任意の所望のモル比で全ての構成成分を含んでもよいが、1成分が白金触媒(D)を含み、Si-H含有成分(B)又は(C)を含まないことが好ましい。
【0089】
脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加により架橋可能な本発明の組成物は、現在までに知られているヒドロシリル化反応により架橋可能な組成物と同じ条件下で架橋することができる。
【0090】
架橋は、好ましくは、30~250000hPaの圧力、特に周囲圧力、すなわち、約900~1100hPa、又は射出成形機において慣用の圧力、すなわち約200000hPaで実施される。
【0091】
架橋は、0~100℃の温度、特に10~50℃で行うことが好ましい。
【0092】
本発明による架橋は、照射によって、特に230~400nm、特に250~350nmの紫外線(UV)放射によって開始される。配合物、触媒、及びUV放射の強度に応じて、必要な照射時間は好ましくは1分未満、より好ましくは1秒未満であってもよい。約400nm未満の放射成分を有するあらゆる放射線源を使用することが可能である。波長230nm未満は好ましくは使用するべきではない。従来の低圧、中圧、及び高圧の水銀ランプが適している。蛍光管及び「不可視光線」ランプのような放射線源も同様に適している。
【0093】
必要な放射線密度は多くの因子に依存し、例えば、従来技術に対応するCP’PtMeを含む架橋可能な系の密度に対応する。例えば、250~350nm(例えば、Feが添加された水銀ランプにより発生)の波長範囲において市販のシリコーン組成物SEMICOSIL(R) 912/ELASTOSIL(R) CAT UV (10:1)に必要な放射線量は、2分間で1.5J/cmであり、これは180mW/cmの放射線密度に相当する。
【0094】
本発明は、さらに、本発明の組成物を架橋することによって製造される成形体を提供する。
【0095】
本発明の組成物及び本発明に従って該組成物から製造された架橋生成物は、エラストマーに架橋可能なオルガノポリシロキサン組成物又はエラストマーが現在までに使用されてきた任意の目的に使用することができる。これは、例えば、任意の所望の基材のシリコーンコーティング又は含浸、例えば、射出成形方法、真空押出方法、押出方法、流延及び圧縮成形並びに成形加工における成形体の製造、シーリング、包埋、及び埋め込み用化合物としての使用などを含む。
【0096】
本発明の架橋性組成物は、容易に得ることができる出発材料を使用して簡単な方法で経済的に製造することができるという利点を有する。
【0097】
本発明の架橋性組成物は、一成分配合物の形態において、25℃及び周囲圧力で良好な保存安定性を有し、可視光又は紫外線による照射時にのみ架橋するというさらなる利点を有する。架橋時間は特に放射線の持続時間及び強度に依存する。
【0098】
本発明の組成物はまた、2成分配合物の場合、2成分を混合した後、25℃及び周囲圧力で長期間にわたって処理可能なままである、すなわち、極めて長い可使時間を示し、照射時にのみ架橋する架橋性シリコーン組成物を生じるという利点を有する。
【0099】
本発明は、全ての既知の配合物と共に使用でき、優れた暗安定性を有する光架橋性組成物が簡単な方法で製造できるという大きな利点を有する。
【0100】
さらなる利点は、組成物中の強酸性の含有量に関連して、酸捕捉剤の正確な化学量論的添加の必要性がないことである。
【0101】
本発明の組成物は、さらに、それから得られる架橋シリコーンゴムが優れた透明性を有するという利点を有する。
【0102】
本発明の組成物はまた、ヒドロシリル化反応が反応時間と共に遅くなることがなく、照射が終了した後に自動的に停止しないという利点を有する。直接露出していない領域も硬化するが、これは特に細かい成形加工の場合又は電子部品の埋め込みの場合に有利である。架橋は温度を上げても開始できないが、促進できる。
【0103】
本発明の組成物、特に酸捕捉剤(H)を用いる場合には、これまで用いられてきた系と比較して、より良好な暗安定性、すなわち、架橋性調製物の長期保存安定性をもたらすという利点がある。
【0104】
本発明との関連で、「オルガノポリシロキサン」という用語は、ポリマー、オリゴマー、及び二量体シロキサンを包含する。
【実施例
【0105】
以下に記載する例では、特に記載のない限り、全ての部及びパーセントは重量による。特に記載のない限り、以下の実施例は、周囲圧力、すなわち、約1000hPa、室温、すなわち約20℃で、又は追加の加熱又は冷却を行うことなく室温で反応物を組み合わせて得られた温度で実施される。
【0106】
以下の実施例において、組成物の酸濃度は、ASTM D974に基づいて決定される。当業者に妥当な適切な指示薬の選択(例えば、キナルジンレッド、4-o-トリルアゾ-o-トルイジン、ベンジルオレンジ、トロパエオリン、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル)を用いて、2.5未満のpKaを有する全ての酸の濃度が記録される光度測定により決定可能な中和点を定義する。
【0107】
pKaは、水溶液中で酸が有するpKaである。
【0108】
以下の略記が使用され、Meはメチル基であり、Viはビニル基である。
【0109】
IR分光法
Si-H基の含有量の発現をその場フーリエ変換IR分光法(FTIR)によって決定する。Si-H基は2280~2080cm-1の範囲に強いバンドを持つ。Mettler Toledo社のReactIR 15機器を使用した。
【0110】
UV放射により架橋する組成物の能力を、波長230~400nmの鉄線源を用いてUV立方体(Hoehnle製、約70mW/cm)中で組成物の5mm厚層を2000Wで10秒間照射することにより試験した。
【0111】
光に対する使用した白金触媒の感度のため、実験は適切な照明条件(「黄色光室」、470nm未満のλについて透過率0.001%未満)で実施し、すなわち、白金触媒以外の全ての成分の混合及び取扱いは、該照明条件に関して特別な注意を払わずに実施した。白金触媒の混合及び白金触媒を含む混合物の保存は、上記の特殊照明条件下、又は光の完全排除下で行った。
【0112】
以下の実施例における白金触媒の記載量は、その中に含まれる白金含有率ppmを基準としている。
【0113】
[実施例1]
モデル組成物を加速保存、すなわち、高温で保存する。Si-H含量の減少で示されるように、ヒドロシリル化によるシロキサンの急速な反応は望ましくない。
【0114】
不活性ガスとしてのアルゴン下で1,1,1,2,3,3,3-ヘプタメチルトリシロキサン(複合蒸留)及び1,1,1,2,3,3,3-ヘプタメチル-2-ビニルトリシロキサン(複合蒸留)の混合物を1.5mol/1.0molの比率でフラスコに充填し、これを100℃に加熱する。塩酸含有率は0.0ppmである。これに250ppmのCpMePtMeを加える。強度の減少が検出できなくなるまでReactIRによって、相対的なSi-H含有率をモニターする。強度の総低下量(t50%)の50%が生じた時点は15時間である。
【0115】
組成物は良好な安定性を示す。
【0116】
[実施例2]
この手順は、500ppmの触媒を用い、t50%が9.5時間である以外は、実施例1と同様である。組成物は良好な安定性を示す。
【0117】
[実施例3]
この手順は、ポリジメチルシロキサンの典型的な不純物の例として塩化アンモニウム(pKa=9.24)1000重量ppmをさらに加え、t50%が13時間である以外は、実施例1と同様である。組成物は良好な安定性を示す。
【0118】
[比較例1]
この手順は、p-トルエンスルホン酸(pKa=0.7)1000重量ppmをさらに加え、t50%が3.25時間である以外は、実施例1と同様である。組成物は良好な安定性を示さない。
【0119】
[比較例2]
この手順は、ピルビン酸(pKa=2.4)1000重量ppmをさらに加え、t50%が3.5時間である以外は、実施例1と同様である。組成物は良好な安定性を示さない。
【0120】
[実施例4]
この手順は、ポリジメチルシロキサンの典型的な不純物の例として、リン酸二水素カリウム(pKa=6.82)20000重量ppmをさらに加え、t50%は13時間である以外は、実施例1と同様である。組成物は良好な安定性を示す。
【0121】
[比較例3]
この手順は、40mgの親水性ヒュームドシリカ(BET=200m/g)/4mLのシロキサン混合物をさらに加え(Wacker Chemie AG社からHDK(R) V15という名称で市販)が、これには10-3mmol/gの量の塩化水素(pKa<1)が微量に含まれている(DIN EN ISO 787-9: 4.04に従ってpHを測定)、t50%が4.5時間である以外は、実施例1と同様である。組成物は良好な安定性を示さない。
【0122】
[比較例4]
ViMeSi-O-(MeSiO)-SiMeVi(粘度100000mPas)54.0重量部、ViMeSi-O-(MeSiO)-SiMeVi(粘度20000mPas)7.5重量部、ViMeSi-O-(MeSiO)-SiMeVi(粘度7000mPas)70重量部、ViMeSi-O-(MeSiO)-SiMeVi(粘度1000mPas)170重量部、及び(MeSiO1/2(ViMeSiO1/2(SiO4/2(ここで、x+y/z=0.7及びx/y=7)44重量部の混合物(Mw5300g/ml、Mn2400g/mol)を均質に混合する。これに、MeSi-O[(MeSiO)(MeHSiO)]-SiMe(x+y=50、x/y=0.3/1、1.1% Si-H)3重量部、及びHMeSi-O-(MeSiO)-SiHMe(x=60、0.045% Si-H)15重量部をさらに加える。HCl含有率は1.7重量ppmと決定された。
【0123】
Pt含有率300重量ppmのViMeSi-O-[(MeSiO)]-SiMeVi(粘度1000mPas)中の触媒トリメチル[(3-ビス(ポリジメチルシロキシ)メチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)溶液21.5重量部を混合した。混合物全体は、3761mPasの初期粘度、25℃で4日後に7360mPasの粘度を有し、25℃で7日後に望ましくないが加硫した。
【0124】
[実施例5]
比較例4による組成物100重量部を、白金触媒の添加前に、酢酸エチル100重量部で希釈し、酸捕捉剤としての1.5重量部のNaHCOと共に25℃で1時間撹拌し、濾過し、揮発性溶媒を除去した。HCl含有率は0.0ppmと決定された。Pt含有率300重量ppmのViMeSi-O-[(MeSiO)]-SiMeVi(粘度1000mPas)中の触媒トリメチル[(3-ビス(ポリジメチルシロキシ)メチルシリル)プロピルシクロペンタジエニル]白金(IV)溶液21.5重量部を混合した。混合物全体は、3176mPasの初期粘度、25℃で6週間後に3396mPasの粘度を有していた。
【0125】
25℃で7日間保存後に紫外線放射による架橋が成功した。弾性成形体を得た。
【0126】
[比較例5]
ViMeSi-O-(MeSiO)-SiMeVi(粘度20000mPas)230重量部、ViMeSi-O-(MeSiO)-SiMeVi(粘度100mPas)40重量部、及び疎水性ヒュームドシリカ(BET=300m/g、Wacker Chemie AG社からHDK(R) H30の名称で市販)50重量部の混合物を均質に混合する。これに、MeSi-O-[(MeSiO)(MeHSiO)]-SiMe(x+y=50、1.1% Si-H)9重量部、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.5重量部、及びメタクリロイルオキシトリメトキシシラン5.0重量部をさらに混合する。これに白金含有率300重量ppmのViMeSi-O-[(MeSiO)]-SiMeVi(粘度1000mPas)中のMeCpPtMeの溶液(混合物全体の触媒含有率は15重量ppmである)17.7重量部を加え、混合する。酸含有率は13.5重量ppmのHである。
【0127】
粘度は24200mPasと決定される。25℃で1/7日間保存した後で、粘度は29440/30041mPasである。25℃で7日間保存後、紫外線放射による完全な架橋は達成されず、粘着性のある表皮が生じた。25℃でさらに24時間保存した後、表皮の下に未架橋物質を検出することができる。
【0128】
[実施例6]
この手順は、触媒添加前にウンデセニル酸亜鉛0.05重量部を混合する以外は、比較例5と同様である。
【0129】
粘度は24000mPasと決定される。25℃で7/14/21日間保存した後、粘度は23813/24580/25901mPasである。
【0130】
25℃で8週間保存後に紫外線放射による架橋が成功した。弾性成形体を得た。
【0131】
[実施例7]
この手順は、触媒添加前にパルミチン酸リチウム0.1重量部を混合する以外は、比較例5と同様である。粘度は24700mPasと決定される。25℃で7/14/21日間保存した後、粘度は23839/24762/26477mPasである。
【0132】
25℃で8週間保存後に紫外線放射による架橋が成功した。弾性成形体を得た。
【手続補正書】
【提出日】2020-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.5未満のpKaを有する強酸(S)の含有率が0.3重量ppm未満であり、白金触媒(D)が以下の式のものであることを特徴とする、ヒドロシリル化反応により架橋可能な白金触媒組成物:
Pt{CpR } (I)
[式中、
Cpはシクロペンタジエニル基であり、
は同一でも異なってもよく、一価の置換されていてもよい脂肪族飽和炭化水素基であり、及び
は同一でも異なってもよく、水素原子、SiC結合したシリル基又は一価の置換されていてもよい炭化水素基である。]。
【請求項2】
塩化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、酸活性化漂白土から選択される強酸(S)の含有率が0.3重量ppm未満であることを特徴とする、ヒドロシリル化反応により架橋可能な白金触媒組成物。
【請求項3】
前記強酸(S)の含有率が0.2重量ppm未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(i) 化合物(A)、(B)及び(C)を含む群から選択される少なくとも1種の化合物、ここで
(A)は脂肪族炭素-炭素多重結合を有する少なくとも1つの基を含む有機化合物及び/又は有機ケイ素化合物であり、
(B)は少なくとも1つのSi結合水素原子を含む有機ケイ素化合物であり、
(C)は脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合水素原子を有するSiC結合基を含む有機ケイ素化合物であり、
ただし、組成物は、脂肪族炭素-炭素多重結合を有する少なくとも1種の化合物及びSi結合水素原子を有する少なくとも1種の化合物を含むものとし;および
(ii) 少なくとも1種の
(D)白金触媒
を含み、ただし、2.5未満のpKaを有する強酸(S)の含有率が0.3重量ppm未満であるものとする組成物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
構成成分(A)として少なくとも1種の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
酸捕捉剤(H)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸捕捉剤(H)が、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩又は塩基性ホスホン酸塩であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
個々の成分を任意の所望の順序で混合することにより、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物又は請求項8に記載のように製造された組成物を架橋することにより製造される成形体。
【国際調査報告】