(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(54)【発明の名称】関節炎低減化効能を有するキムチ乳酸菌ラクトバチルスサケイWIKIM0109
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220608BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220608BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220608BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220608BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220608BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20220608BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220608BHJP
A23K 10/18 20160101ALI20220608BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220608BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
A23L33/135
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P19/00
A61K35/747
A61P29/00
A61P43/00 111
A23K10/18
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558513
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 KR2020003883
(87)【国際公開番号】W WO2020197188
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0034211
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518405821
【氏名又は名称】コリア フード リサーチ インスティチュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA FOOD RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】245, Nongsaengmyeong-ro, Iseo-myeon, Wanju-gun, Jeollabuk-do, 55365, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ハク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ミン ソン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AA02
2B150AA03
2B150AA05
2B150AA06
2B150AA08
2B150AA10
2B150AA20
2B150AB10
2B150AC06
4B018MD86
4B018ME07
4B018ME14
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4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZC02
4C087ZC41
(57)【要約】
本発明は、キムチから分離された新規なラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109)及びこれを含む組成物に関する。本発明に係るラクトバチルスサケイWIKIM0109は、血中IgG及びIgG2a生成抑制活性及びIFN-γ、IL-17及びTNF-α生成抑制活性を有する乳酸菌であり、人又は動物の関節炎の予防及び改善、整腸などの用途のために様々に活用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号KCTC13818BPのラクトバチルスサケイWIKIM0109{Lactobacillus sakei WIKIM0109}。
【請求項2】
ラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109;受託番号KCTC13818BP)、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む、炎症性関節炎の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
炎症性関節炎は、リウマチ関節炎、強直性脊椎炎、骨関節炎又は乾癬性関節炎である、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記組成物は、血中IgG及びIgG2aの生成抑制によって過敏性炎症反応を低減させることを特徴とする、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記組成物は、コラーゲン抗原特異的IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成抑制によって過敏性炎症反応を低減させることを特徴とする、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記組成物は、経口投与用組成物である、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項7】
ラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109;受託番号KCTC13818BP)、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む、炎症性関節炎の予防及び改善用食品組成物。
【請求項8】
炎症性関節炎は、リウマチ関節炎、強直性脊椎炎、骨関節炎又は乾癬性関節炎である、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項9】
前記組成物は、血中IgG及びIgG2aの生成抑制によって過敏性炎症反応を低減させることを特徴とする、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項10】
前記組成物は、コラーゲン抗原特異的IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成抑制によって過敏性炎症反応を低減させることを特徴とする、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項11】
前記食品は、健康機能食品である、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項12】
前記食品は、飲料、バー又は発酵乳である、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項13】
ラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109;受託番号KCTC13818BP)、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む免疫増強用組成物。
【請求項14】
ラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109;受託番号KCTC13818BP)、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む整腸剤組成物。
【請求項15】
ラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109;受託番号KCTC13818BP)、その培養物、その破砕物又はその抽出物からなる、食品又は飼料発酵用の乳酸菌スターター。
【請求項16】
ラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109;受託番号KCTC13818BP)、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む、飼料又は飼料添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、新規なラクトバチルスサケイ菌株及びこれを含む組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
リウマチ関節炎は、1~1.5%の有病率を持つ自己免疫疾患且つ慢性的炎症疾患であり、関節内炎症性変化によって全身関節浮腫と疼痛が誘発され、悪化すると関節の変形及び関節の曲げ難い障害などの深刻な結果につながることがある。
【0003】
現在まで、関節炎を誘発する直接的な原因は明らかになっておらず、関節炎の治療のために、ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、痛風抑制剤、免疫抑制剤などの種々の治療剤が用いられている。しかしながら、かかる治療剤は、根本的な治療効果を呈しておらず、種々の副作用から使用が制限されている。また、いくつかの化学療法的薬剤には、既に発生した関節炎に対する効能不足という欠点がある。
【0004】
したがって、治療副作用が少ない上に、炎症性症状と疼痛緩和に効果を示し、服用が簡便な関節炎治療剤の開発が望まれる現状である。そこで、本発明では、効果的に関節炎症状を緩和させ、血液内炎症関連因子の生成を抑制させるキムチ由来乳酸菌について研究した。
【0005】
〔先行技術文献〕
〔特許文献〕
(特許文献1)韓国公開特許第10-2018-0104544号公報
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、関節炎改善活性に優れた新規なラクトバチルス属乳酸菌を提供しようとする。
【0006】
〔課題を解決するための手段〕
そこで、本発明者らは、関節炎改善効果を示す菌株を見出すために努力した結果、新規なラクトバチルス属乳酸菌菌株であるラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109)を分離、同定し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明に係るラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109)は、キムチ由来のラクトバチルスサケイ新規菌株である。たとえ本発明のラクトバチルスサケイWIKIM0109をキムチから分離、同定してはいるが、その入手経路はそれに限定されない。
【0008】
本発明の実施例で分離された伝統発酵食品からの乳酸菌菌株は、微生物の同定及び分類のための16S rRNA塩基配列の分析の結果、SEQ ID NO:1の核酸配列を有することが分かった。
【0009】
そこで、SEQ ID NO:1の16S rRNA塩基配列を有する本発明の微生物を、ラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109)と命名し、生物資源センターに2019年3月7日付に寄託した(受託番号KCTC13818BP)。
【0010】
本発明のラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109;受託番号KCTC13818BP)菌株は、グラム陽性菌であり、好気的条件、嫌気的条件のいずれにおいても成長可能な通性嫌気性(facultative anaerobe)であり、桿菌の形態をしている。
【0011】
本発明のラクトバチルスサケイWIKIM0109は、乳酸菌の一般的な整腸効果及び免疫増強効果を有する。ラクトバチルス属の乳酸菌が整腸効果及び免疫増強効果を有するということは、よく知られている事実である。
【0012】
後述の実施例では、本発明のラクトバチルスサケイWIKIM0109が血中IgG及びIgG2aの生成を抑制させ、IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成を抑制させることにより、ラクトバチルスサケイWIKIM0109菌株が関節炎の改善効果を示すことを確認した。したがって、本発明に係るラクトバチルスサケイWIKIM0109は、人又は動物の整腸、関節炎の改善、免疫強化などの用途のために様々に活用可能である。
【0013】
そこで、本発明の一具体例では、ラクトバチルスサケイWIKIM0109、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む組成物を提供する。
【0014】
本発明に係る組成物に含まれるラクトバチルスサケイWIKIM0109は、性菌体として存在してもよく、乾燥又は凍結乾燥した形態で存在してもよい。種々の組成物内に含めるのに適合する乳酸菌の形態及び製剤化方法は、当業者には周知である。
【0015】
一具体例において、前記組成物は、生菌として存在するラクトバチルスサケイWIKIM0109菌株を含む経口投与用組成物であってよい。
【0016】
また、本発明の一具体例では、ラクトバチルスサケイWIKIM0109、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む整腸剤組成物を提供する。本発明に係る整腸剤組成物は、人を含む動物の胃腸疾患の予防、治療、改善に利用可能であり、好ましくは、前記動物は牛、馬、豚のような家畜を含む。前記‘胃腸疾患’は、胃腸危害細菌感染及び炎症性腸疾患のいずれをも含み、例えば、病原性微生物(大腸菌、サルモネラ、クロストリジウムなど)による感染性下痢、胃腸炎症、炎症性腸疾患、神経性腸炎症候群、小腸微生物過成長症、腸急性下痢などを含むが、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明に係る整腸剤組成物は、経口で投与することが好ましい。投与量は、胃腸疾患の種類、疾患の程度、年齢、性別、人種、治療又は予防の目的などによって異なってよいが、一般に、成人基準で1日当たり1,000万匹~1,000億匹を投与できる。
【0018】
本発明は、ラクトバチルスサケイWIKIM0109、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む免疫増強用組成物を提供する。ラクトバチルス属の乳酸菌が免疫増強効果を有するということは、周知の事実である。
【0019】
本発明は、ラクトバチルスサケイWIKIM0109、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む関節炎の予防及び改善用組成物を提供する。前記関節炎は、リウマチ関節炎、強直性脊椎炎、骨関節炎又は乾癬性関節炎からなる群から選ばれる一つ以上の疾患であり得るが、これに制限されるものではない。
【0020】
一具体例において、前記関節炎は、リウマチ関節炎であり得る。
【0021】
本発明に係るラクトバチルスサケイWIKIM0109は、このような有利な作用から、医薬、健康機能食品、食品、飼料、飼料添加剤、若しくは又は食品又は飼料の発酵用乳酸菌スターター内に含まれてよい。
【0022】
一具体例において、本発明の組成物が薬剤学的組成物として用いられる場合、本発明の薬剤学的組成物は、前記有効成分の他にも、薬剤学的に適切であり、生理学的に許容される補助剤を用いて製造されてよく、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤又は香味剤などを使用することができる。
【0023】
前記薬剤学的組成物は、投与のために、前述した有効成分に加え、薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含めて、薬剤学的組成物として好適に製剤化することができる。
【0024】
例えば、錠剤又はカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などのような、経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合してよい。また、所望又は必要時に、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び発色剤も混合物として含まれてよい。適切な結合剤が次に制限されるものではないが、澱粉、ゼラチン、グルコース又はベータラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカント又はオレイン酸ナトリウムのような天然及び合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、次に制限されるものではないが、澱粉、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。液状溶液として製剤化される組成物において許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適合するものであり、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びそれら成分のいずれか1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤をさらに添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤として製剤化することができる。
【0025】
なお、当該分野における適切な方法として“Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton PA”に開示されている方法を用いて、各疾患によって又は成分によって好適に製剤化することができる。
【0026】
他の具体例において、本発明は、ラクトバチルスサケイWIKIM0109、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む関節炎の予防及び改善用食品であり得る。前記食品組成物は、健康機能食品又は飲料、バーなどの形態を含むことができる。
【0027】
本発明において、前記菌株を有効成分として含む食品組成物は、発酵乳などの飲料を含むことができる。そこで、本発明は、ラクトバチルスサケイWIKIM0109、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分とする、食品又は飼料発酵用の乳酸菌スターターを提供する。
【0028】
本発明に係る食品組成物は、前記薬剤学的組成物と同じ方式で製剤化されて機能性食品として用いるか、各種食品に添加することができる。本発明の組成物を添加できる食品には、例えば、飲料類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0029】
本発明の食品組成物は、食品製造時に通常添加される成分を含むことができ、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤[タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)]及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤と飲料類として製造される場合には、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、及び各種植物抽出液などをさらに含有させることができる。
【0030】
上記の本発明に係る組成物は、飼料添加剤又は飼料として用いることができる。
【0031】
飼料添加剤として用いられる場合、前記組成物は、20~90%高濃縮液として、若しくは粉末又は顆粒状に製造できる。前記飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸、又はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩、ポリリン酸塩(重合リン酸塩)などのリン酸塩、又はポリフェノール、カテキン、アルファ-トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤のいずれか1種又はそれ以上をさらに含むことができる。飼料として用いられる場合、前記組成物は、通常の飼料形態に製剤化されてよく、通常の飼料成分を共に含むことができる。
【0032】
前記飼料添加剤及び飼料は、穀物、例えば粉砕又は破砕された小麦、燕麦、麦、トウモロコシ及び米;植物性タンパク質飼料、例えば、油菜、豆、及びヒマワリを主成分とする飼料;動物性タンパク質飼料、例えば、血粉、肉粉、骨粉及び魚粉;糖分及び乳製品、例えば、各種粉ミルク及び乳清粉末からなる乾燥成分などをさらに含むことができ、その他にも、栄養補充剤、消化及び吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含むことができる。
【0033】
前記飼料添加剤は、動物に、単独投与してもよく、食用担体中に他の飼料添加剤と組み合わて投与してもよい。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとして又はそれらを動物飼料に直接混合したり、又は飼料と別途の経口剤形とし、容易に動物に投与することができる。前記飼料添加剤を動物飼料とは別に投与する場合、当該技術分野に周知のとおり、薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、即時放出又は徐放性剤形として製造できる。このような食用担体は、固体又は液体、例えば、トウモロコシ澱粉、ラクトース、スクロース、豆フレーク、ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油及びプロピレングリコールであってよい。固体担体が使用される場合、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤又は含糖錠剤又は微分酸性形態のトップドレッシングであってよい。液体担体が使用される場合、飼料添加剤は、ゼラチン軟質カプセル剤、又はシロップ剤や懸濁液、エマルジョン剤、又は溶液剤の剤形であってよい。
【0034】
また、前記飼料添加剤及び飼料は、補助剤、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤、溶液促進剤などを含有することができる。前記飼料添加剤は、浸酒、噴霧又は混合して動物の飼料に添加して用いられてよい。
【0035】
本発明の飼料又は飼料添加剤は、哺乳類、家禽及び魚類を含む多種の動物食餌に適用することができる。
【0036】
前記哺乳類として豚、牛、量、山羊、実験用齧歯動物、及び実験用齧歯動物の他に愛玩動物(例えば、犬、猫)などが挙げられ、前記家禽類として鶏、七面鳥、鴨、ガチョウ、キジ、及びウズラなども挙げられ、前記魚類として鱒などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明に係る組成物に含まれるラクトバチルスサケイWIKIM0109菌株の量は、1回を基準に約106~1012cfu/gであり得、例えば、107~1011cfu/g、108~1010cfu/gであり得る。菌株を投与する場合には、生菌状態で投与することが好ましく、摂取前に死滅又は減衰(attenuation)状態にして投与してもよい。また、培養上澄液などを使用して製造する場合には、熱処理過程による滅菌化過程をさらに行うことができる。最小限の効能を有するのに必要な菌株量及び一日摂取程度は、摂取者の身体又は健康状態によって異なり得るが、一般に、約106~1012cfu/gであり得、例えば、107~1011cfu/g、108~1010cfu/gであり得る。
【0038】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すれば明確になるであろう。ただし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されず、様々な他の形態に具現されてもよく、本実施例は単に、本発明の開示を完全にさせ、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0039】
〔発明の効果〕
本発明に係るラクトバチルスサケイWIKIM0109は、血中IgG及びIgG2aの生成抑制活性と、IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成抑制活性を示すので、乳酸菌として人又は動物の整腸、免疫強化、胃腸疾患及び関節炎の予防又は改善などの用途のために様々に活用可能である。さらに、発酵用スターターとして有用に用いることができる。
【0040】
本発明に係るラクトバチルスサケイWIKIM0109は、キムチから分離された乳酸菌であり、血中IgG及びIgG2aの生成抑制活性と、IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成抑制活性を示すので、関節炎の予防又は改善などの用途のために様々に活用可能である。さらに、発酵用スターターとして有用に用いることができる。
【0041】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕本発明の菌株を経口投与したマウスモデルの関節炎発病率及び関節炎指数を示す結果である。
【0042】
〔
図2〕本発明の菌株を経口投与したマウスモデルの関節炎誘発による足の厚さを測定した結果である。
【0043】
〔
図3〕血中IgG及びコラーゲン特異的IgG(CII-IgG)生成量を測定した結果である。
【0044】
〔
図4〕血中IgG2a及びコラーゲン特異的IgG2a(CII-IgG2a)生成量を測定した結果である。
【0045】
〔
図5〕コラーゲン抗原特異的IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成量を測定した結果である。
【0046】
〔
図6〕WIKIM0109と他のラクトバチルスサケイ菌株であるLS35及びLS41との免疫調節能比較実験の結果である。
【0047】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。下記の実施例は、本発明を例示するもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0048】
〔実施例〕
<実施例1:菌株の分離及び同定>
キムチ抽出物の原液をMRS培地に塗抹して得た菌単一集落をループで回収し、MRS培地に培養した。DNA抽出は、QIAamp DNAミニキット(QIAgen,Germany)を用いて抽出した。抽出されたDNAは、1%アガロースゲルを用いて確認し、16S rRNA遺伝子を増幅するために抽出されたゲノムDNA(genomic DNA)を鋳型としてPCRを行い、PCR条件は、変性(denaturation)95℃、1分、アニーリング(annealing)45℃、1分、伸長(extension)72℃、1分30秒とし、30サイクル行った。得られたPCR産物は、マクロジェン(Seoul,Korea)に依頼して配列を分析した。細菌の同定は、16S rRNA配列を、NCBI(National Center for Biotechnology Information,www.ncbi.nlm.nih.gov)のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)検索エンジンの類似度分析によって行った。
【0049】
本発明の実施例で分離された菌株は、微生物の同定のための16S rRNA塩基配列の分析の結果、SEQ ID NO:1の核酸配列を有することが分かった。
【0050】
そこで、本発明の微生物をラクトバチルスサケイWIKIM0109(Lactobacillus sakei WIKIM0109)と命名し、生物資源センターに2019年3月7日付に寄託した(受託番号KCTC13818BP)。
【0051】
<実施例2:ラクトバチルスサケイWIKIM0109の関節炎改善効能確認>
前記実施例1で分離したラクトバチルスサケイWIKIM0109菌株は、MRS培地で30℃、24時間培養し、培養された菌体を8,000rpmで5分間遠心分離してPBSで洗浄後に、残っている培地成分を除去した。その後、PBSを用いて1×1010CFU/ml菌数に定量し、0.1ml(1×109CFU)ゾンデを用いてコラーゲン誘導関節炎マウスモデルに、週に5回経口投与した。このとき、陰性及び陽性対照群には滅菌PBSを投与した。
【0052】
1)コラーゲン誘導関節炎マウスモデルでの関節炎発生率及び指数測定
コラーゲン誘導関節炎マウスモデルにラクトバチルスサケイWIKIM0109菌株を経口投与した12週間における関節炎指数(arthritic score)及び発病率を
図1に示した。
【0053】
その結果、コラーゲン誘導関節炎誘発対照群(CIA-No LAB)において最高の発病率と関節炎指数が見られ、ラクトバチルスサケイWIKIM0109処理群(WIKIM0109)において発病率と関節炎指数が有意のレベルに減少したことを確認した。
【0054】
2)官能評価及び足の厚さ測定
ラクトバチルスサケイWIKIM0109菌株を実験動物に経口投与して4週後に、関節炎の様相を、臨床的な肉眼評価法を用いて官能評価及び足の厚さの測定を行った。
【0055】
その結果、
図2に示すように、正常群(Naive)に比べてコラーゲン誘導関節炎誘発対照群(CIA-No LAB)において、官能評価時に基準となる、関節及び指において紅斑、腫脹などの症状が確認でき、ラクトバチルスサケイWIKIM0109処理群(WIKIM0109)では、紅斑及び関節の腫脹現象が緩和し、足の厚さが対照群に比べて減少することを確認した。
【0056】
3)血中IgG及びIgG2a濃度測定
実験動物の血液を採取し、血液内IgG、コラーゲン抗原特異的IgG、IgG2a、及びコラーゲン抗原特異的IgG2aの濃度を測定した。
図3は、IgG及びコラーゲン抗原特異的IgG(CII-IgG)の濃度を測定した結果であり、
図4は、IgG2a及びコラーゲン抗原特異的IgG2a(CII-IgG2a)の濃度を測定した結果である。
【0057】
【0058】
図3及び表1に示すように、正常群に比べて、関節炎誘発時に、血液内IgG及びIgG2aの生成が促進されることが確認でき、実験動物にラクトバチルスサケイWIKIM0109を投与したとき、IgG及びIgG2aの濃度が減少することが確認できた。特に、コラーゲン抗原特異的IgG2a(CII-IgG2a)の場合、対照群に比べて約30.4%の生成が有意に抑制されることが分かった。
【0059】
4)コラーゲン抗原特異的IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成濃度測定
実験動物の関節周囲リンパ節を採取して単一細胞を得、それぞれ、5×10
5の細胞を96ウェルプレートに分注した後、48時間コラーゲン(50μg/ml)処理した上澄液を用いて、抗原特異的IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成濃度を測定した。
図5に示すように、正常群に比べて関節炎誘発群において抗原特異的IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成が増加することが見られ、実験動物にラクトバチルスサケイWIKIM0109を投与したとき、抗原特異的IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成が有意に減少することが確認できた。
【0060】
5)WIKIM0109と他の種類のラクトバチルスサケイとの比較実験
前記ラクトバチルスサケイWIKIM0109の効果が、ラクトバチルスサケイの一般的な効果であるかを確認するために、韓国食品研究院傘下世界キムチ研究所が保有しているラクトバチルスサケイLS35及びLS41と(1)免疫抑制サイトカインであるIL-10生成量増加の有無、及び(2)免疫増進サイトカインであるIL-17の生成量減少の有無を比較した。
【0061】
ラクトバチルスサケイLS35は水キムチから、ラクトバチルスサケイLS41は、ネギタカナキムチから分離され、Lactobacilli MRS(BD Difco)液体培地を用いて30℃インキュベーターで24時間静置培養した。16S rRNAをコードする遺伝子の配列分析後、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用いた相同性分析によりラクトバチルスサケイと同定した。
【0062】
OVA特異的T細胞を持つOTIIマウスをJackson Laboratoryから購入し、繁殖後に使用した。OTIIマウスの脾臓単一細胞を96ウェルプレートに5×105で分注し、そこにOVAペプチド(OVA323-339)とキムチ乳酸菌をMOI 1で処理し、37℃で72時間培養した。培養液に存在するIL-17、IL-10の量はそれぞれ、BD Bioscienceから購入したCBA(Cytometric Bead Assay)マウスTh1/Th2/Th17キットを用いて、提示の方法によって処理した。FACSCanto II(BD Bioscience)を用いて測定後に、標準曲線(standard curve)に基づいてそれぞれのサイトカイン生成量を分析した。
【0063】
実験の結果、WIKIM0109処理時に、他の種類のラクトバチルスサケイに比べてIL-10生成が高く、IL-17の生成が最も低く、IL-10/IL-17の比率も最も高く測定されることを確認した(
図6)。
【0064】
免疫抑制サイトカインであるIL-10と関連して、LS41菌株も生成量増加を示したが、WIKIM0109が約40%以上も高いIL-10の生成量増加を示しており、LS35ではWIKIM0109の1/3レベルしか生成されていない。
【0065】
また、免疫増進サイトカインであるIL-17関連して、LS41菌株は特に生成量減少を示さなかったが、WIKIM0109は、有意にIL-17の生成量が減少することを確認した。一方、同じラクトバチルスサケイ菌株であるにもかかわらず、LS35は、むしろIL-17の生成量が増加することを確認した。
【0066】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好適な具現例に過ぎず、これに本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項とその等価物によって定義されるといえよう。
【0067】
〔受託番号〕
寄託機関名:生物資源センター(国際)
受託番号:KCTC13818BP
受託日:20190307
【0068】
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】本発明の菌株を経口投与したマウスモデルの関節炎発病率及び関節炎指数を示す結果である。
【
図2】本発明の菌株を経口投与したマウスモデルの関節炎誘発による足の厚さを測定した結果である。
【
図3】血中IgG及びコラーゲン特異的IgG(CII-IgG)生成量を測定した結果である。
【
図4】血中IgG2a及びコラーゲン特異的IgG2a(CII-IgG2a)生成量を測定した結果である。
【
図5】コラーゲン抗原特異的IFN-γ、IL-17及びTNF-α生成量を測定した結果である。
【
図6】WIKIM0109と他のラクトバチルスサケイ菌株であるLS35及びLS41との免疫調節能比較実験の結果である。
【配列表】
【国際調査報告】