(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(54)【発明の名称】酸化ストレスに関連する疾患の治療に使用するためのニタゾキサニド及びチアゾリド
(51)【国際特許分類】
C07D 277/46 20060101AFI20220608BHJP
C07D 277/58 20060101ALI20220608BHJP
C07H 15/26 20060101ALI20220608BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220608BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220608BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220608BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220608BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220608BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220608BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20220608BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220608BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220608BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220608BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220608BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220608BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220608BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220608BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220608BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220608BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20220608BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220608BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220608BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220608BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220608BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20220608BHJP
A61K 31/7056 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
C07D277/46
C07D277/58 CSP
C07H15/26
A61P39/06
A61P3/00
A61P1/04
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P25/00
A61P27/12
A61P17/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P11/00
A61P13/12
A61P37/02
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/08
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/12
A61K31/426
A61K31/7056
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560068
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2020060287
(87)【国際公開番号】W WO2020208208
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・スタンコヴィック-ヴァレンティン
(72)【発明者】
【氏名】コリンヌ・フカール
(72)【発明者】
【氏名】ペギー・パロシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ヴァルチャク
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ55
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC82
4C086EA08
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZC21
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、ニタゾキサニド、又はその類似体の新規使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患に関連する酸化ストレスを治療する方法で使用するための、式(I):
【化1】
(式中:
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C1~C6)アルキル基、スルホニル基、スルホキシド基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、ニトロ基(NO
2)、アミノ基(NH
2)、(C1~C6)アルキルアミノ基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、又は(C1~C6)ジアルキルアミド基を表し;
R2は、水素原子、重水素原子、NO
2基、(C6~C14)アリール基、複素環基、ハロゲン原子、(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C2~C6)アルキニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、(C6~C14)アリールカルボニルアミノ基、カルボキシル若しくはカルボキシラート基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、(C1~C6)ジアルキルアミド基、NH
2基、又は(C1~C6)アルキルアミノ基を表し;
或いは、R1及びR2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換又は非置換5~8員シクロアルキル、複素環又はアリール基を形成し;
R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一であるか異なり、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO
2基、スルホニルアミノアルキル基、NH
2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、又はR9基を表し;
R9は、O-R8基若しくはアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群から選択されるアミノ酸、又は式(A):
【化2】
の部分を表し、ここで、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基、又は(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を表し;R''及びR'''は、独立して水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を表し;
R8は、水素原子、重水素原子、グルクロニジル基、又は
【化3】
基を表し、ここで、R8a、R8b及びR8cは、同一であるか異なり、水素原子又は重水素原子を表す)
の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
酸化ストレスが、神経疾患、例えば中枢神経系障害、代謝疾患、心臓血管疾患、白内障、アテローム性動脈硬化症、虚血、例えば心筋虚血、虚血性脳損傷、肺虚血再かん流傷害、強皮症及び脳卒中、炎症、例えば炎症性腸疾患、関節リウマチ、呼吸器疾患、自己免疫疾患、肝疾患、腎疾患、皮膚疾患、感染症、並びにがんからなる群において選択される疾患に関連するものである、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
酸化ストレスが関与する疾患を治療する方法で使用するための、式(I):
【化4】
(式中:
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C1~C6)アルキル基、スルホニル基、スルホキシド基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、ニトロ基(NO
2)、アミノ基(NH
2)、(C1~C6)アルキルアミノ基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、又は(C1~C6)ジアルキルアミド基を表し;
R2は、水素原子、重水素原子、NO
2基、(C6~C14)アリール基、複素環基、ハロゲン原子、(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C2~C6)アルキニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、(C6~C14)アリールカルボニルアミノ基、カルボキシル若しくはカルボキシラート基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、(C1~C6)ジアルキルアミド基、NH
2基、又は(C1~C6)アルキルアミノ基を表し;
或いは、R1及びR2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換又は非置換5~8員シクロアルキル、複素環又はアリール基を形成し;
R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一であるか異なり、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO
2基、スルホニルアミノアルキル基、NH
2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、又はR9基を表し;
R9は、O-R8基若しくはアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群から選択されるアミノ酸、又は式(A):
【化5】
の部分を表し、ここで、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基、又は(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を表し;R''及びR'''は、独立して水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を表し;
R8は、水素原子、重水素原子、グルクロニジル基、又は
【化6】
基を表し、ここで、R8a、R8b及びR8cは、同一であるか異なり、水素原子又は重水素原子を表す)
の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
神経疾患、例えば中枢神経系障害、代謝疾患、心臓血管疾患、白内障、アテローム性動脈硬化症、虚血、例えば心筋虚血、虚血性脳損傷、肺虚血再かん流傷害、強皮症及び脳卒中、炎症、例えば炎症性腸疾患、関節リウマチ、呼吸器疾患、自己免疫疾患、腎疾患、並びに皮膚疾患からなる群において選択される疾患を治療するための、請求項3に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、てんかん、中枢神経系の急性疾患、例えば脊髄損傷及び/又は脳損傷、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症、耐糖能異常、高血圧、アテローム性動脈硬化症、及び糖尿病、例えば1型又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心筋虚血、虚血性脳損傷、肺虚血再かん流傷害、強皮症、脳卒中、炎症性腸疾患、並びに関節リウマチからなる群において選択される、請求項3又は4に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物が、ニタゾキサニド、チゾキサニド及びその薬学的に許容される塩から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記化合物が、NTZ又はその薬学的に許容される塩である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
化合物が、経口投与用に製剤化される、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
化合物が、ピル、タブレット又は経口摂取用の懸濁液に製剤化される、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニタゾキサニド、又はその類似体の新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]エタノアート(又はニタゾキサニド、若しくはNTZ)は、1975年に最初に記載され(Rossignol and Cavier 1975)、寄生原虫類クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)及びジアルジア・インテスティナリス(Giardia intestinalis)によって引き起こされる下痢の治療用に米国で承認されている医薬である。NTZは、ラテンアメリカ及びインドでも既に市販されており、広範囲の腸内寄生虫感染症の治療に適応されている。嫌気性代謝に不可欠なピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(PFOR)酵素依存性電子移動反応の阻害が、NTZが抗寄生虫活性を発揮する作用機序であることが提唱されている(Hoffman、Sissonら 2007)。NTZは、PFORのホモログを持たない結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対しても活性を示したことから、代替的な作用機序が示唆されている。実際、著者らは、NTZが、膜電位と生物内pH恒常性を破壊する脱共役剤としても作用できることを示した(de Carvalho、Darbyら 2011)。
【0003】
NTZの薬理効果は、その抗寄生虫又は抗菌活性に限定されず、近年、いくつかの研究により、NTZが、血球凝集素(インフルエンザ)若しくはVP7(ロタウイルス)タンパク質の成熟の妨害、又は先天性免疫反応に関与するタンパク質PKRの活性化を含む多様な方法でウイルス複製を妨げることにより、抗ウイルス活性を与えることができることも明らかになった(概説に関しては、Rossignol 2014を参照されたい)。NTZは、重要な代謝及び細胞死を引き起こすシグナル伝達経路を妨げることにより、制がん特性を有することも示された(Di Santo and Ehrisman 2014)。
【0004】
NTZは最近、本出願人によって、抗線維化特性を有することも示され(WO2017178172)、現在、NASH誘導性ステージ2又は3線維症の集団に対するその効果について評価されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis」(Wuts and Greene 2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、本明細書において、NTZが抗酸化特性を有し、それが新しい治療の機会を開くことを示している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本発明者らが行った、NTZが様々なグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子の発現を活性化するという驚くべき観察に由来する。GSTは、多くの疎水性及び求電子性化合物と還元グルタチオンとの抱合に触媒作用を及ぼすことによって解毒に重要な役割を果たす酵素のファミリーである。GSTは、活性酸素種及び過酸化生成物からの細胞の保護に特定の役割を果たす。したがって、それらの活性化は、有利には、細胞、組織及び臓器を酸化ストレスから保護するために実施することができる。
【0009】
NTZによって誘導される肝トランスクリプトームシグネチャーの補完的分析により、細胞内酸化還元ホメオスタシスの転写マスター調節因子であるNrf2の制御下での遺伝子のサブセット(GST酵素を含む)の富化が明らかになった。In vitro分析により、機能レベルでTZ(NTZの活性代謝産物)のNrf2-AREシグナル伝達経路を誘導する能力が確認された。加えて、TZが、酸化ストレス下のヒト肝細胞において、肝臓で最も豊富な抗酸化物質であるGSH(還元グルタチオン)プールを保持できることが実証された。全体として、これらのデータは、NTZの予想外の抗酸化能力を実証するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】NTZの長期経口投与は、抗酸化防御機序に寄与する。 6週齢C57BL/6マウスに、対照(CSAA)食餌、CDAA+1%CHOL(CDAA/c)食餌、又はNTZ100mg/kg/日を補充したCDAA/c食餌を12週間与えた。屠殺後、4-HNEレベルを免疫化学により判定し、定量化した(パネルA)。各群の4-HNE染色の代表的画像をパネルBに示す(倍率300倍)。
【
図2】NTZの長期経口投与は、mRNAレベルでのGSTA1(A)及びGSTA2(B)の肝臓発現を誘導する。 6週齢C57BL/6マウスに、対照(CSAA)食餌、CDAA+1%CHOL(CDAA/c)食餌、又はNTZ100mg/kg/日を補充したCDAA/c食餌を12週間与えた。屠殺後、肝臓GSTa mRNAの肝臓レベルをRNAseqによって分析し、カウントレベルを判定した。
【
図3】NTZ長期経口投与は、mRNAレベルでのGSTA4の肝臓発現を誘導する。 6週齢C57BL/6マウスに、対照(CSAA)食餌、CDAA+1%CHOL(CDAA/c)食餌、又はNTZ100mg/kg/日を補充したCDAA/c食餌を12週間与えた。屠殺後、GSTA4 mRNAの肝臓レベルをRNAseqによって分析し、正規化されたカウントレベルを判定した。
【
図4】NTZによって差次的に誘導される遺伝子は、Nrf2標的遺伝子が大幅に富化される。 6週齢C57BL/6マウスに、対照(CSAA)食餌、CDAA+1%CHOL(CDAA/c)食餌、又はNTZ100mg/kg/日を補充したCDAA/c食餌を12週間与えた。屠殺後、トランスクリプトームをRNAseqによって分析した。RNA-seqで同定された全トランスクリプトーム(27636遺伝子)中のNrf2標的遺伝子の割合を計算し、NTZ+CDAA/c対CDAA/c条件で差次的に発現した遺伝子のサブセット中のNrf2標的遺伝子の割合と比較した。
【
図5】TZは、ヒト肝細胞においてNrf2-ARE(抗酸化応答エレメント)シグナル伝達を誘導する。 抗酸化応答エレメント(ARE)を介したルシフェラーゼ活性を、TZで処理したHepG2細胞において測定した。DL-スルフォラファン(DLS)を参照化合物として使用した。
【
図6】TZは、酸化ストレス誘導物質メナジオンに曝露されたヒト肝細胞におけるグルタチオン(GSH)枯渇を防止する。 TZの存在下又は非存在下のいずれかで、メナジオンストレスを受けた肝細胞中の細胞内GSHレベルをチオールトラッカー(ThiolTracker Violet染料)によって監視した。N-アセチルシステイン(NAC)を陽性対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、本発明の一態様は、抗酸化物質として使用するための、NTZ及びその類似体を含む以下に定義する通りの式(I)の化合物、又は式(I)の化合物の薬学的に許容される塩に関する。特定の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、その肝臓抗酸化特性のために使用される。
【0012】
本発明の別の態様は、酸化ストレスが関与する疾患を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。酸化ストレスが関与する疾患は、他の多くの情報源の中でも、de Araujoら(de Araujo, Martinsら 2016)を参照することができる当業者に一般に公知である。例えば、本発明から恩恵を受けることができる対象としては、神経疾患、例えば中枢神経系障害、代謝疾患、心臓血管疾患、白内障、アテローム性動脈硬化症、虚血、例えば心筋虚血、虚血性脳損傷、肺虚血再かん流傷害、強皮症及び脳卒中、炎症、例えば炎症性腸疾患、関節リウマチ、呼吸器疾患、自己免疫疾患、腎疾患、並びに皮膚疾患に罹患しているものが挙げられるが、これに限定されない。
【0013】
「治療」又は「治療する」という用語は、必要とする対象における疾患の治癒的又は予防的治療指す。治療は、疾患が宣告された対象に対して本発明の化合物を投与し、疾患を予防する、治癒する、遅延させる、好転させる、又はその進行速度を落とすことより対象の状態を改善することを伴う。したがって、本発明はまた、疾患を予防する、治癒する、遅延させる、好転させる、又はその進行速度を落とす方法で使用するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。本発明の化合物は、健全な対象又は疾患を発症するリスクのある対象に投与することもできる。治療すべき対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。本発明による治療すべき対象は、治療が求められる特定の疾患に関連するいくつかの基準、例えば以前の薬物治療、関連する病状、遺伝子型、危険因子への暴露、ウイルス感染に基づいて、更に、疾患に関する何らかのバイオマーカーの検出に基づいて、選択することができる。
【0014】
加えて、本発明は、疾患、特に神経疾患、例えば中枢神経系障害、代謝疾患、心臓血管疾患、白内障、アテローム性動脈硬化症、虚血、例えば心筋虚血、虚血性脳損傷、肺虚血再かん流傷害、強皮症及び脳卒中、炎症、例えば炎症性腸疾患、関節リウマチ、呼吸器疾患、自己免疫疾患、肝疾患、腎疾患、皮膚疾患、感染症、並びにがんからなる群において選択される疾患に関連する酸化ストレスを治療する方法で使用するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0015】
神経疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、てんかん、並びに中枢神経系の急性疾患、例えば脊髄損傷及び/又は脳損傷が挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
代謝疾患としては、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症、耐糖能異常、高血圧、アテローム性動脈硬化症、及び糖尿病、例えば1型又は2型糖尿病が挙げられるが、これに限定されない。代謝疾患には、メタボリックシンドロームも含まれる。
【0017】
特定の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、感染誘導性酸化ストレス、例えばウイルス誘導性酸化ストレス、特にヒト免疫不全ウイルス誘導性酸化ストレス、インフルエンザウイルス誘導性酸化ストレス、HBV誘導性酸化ストレス、C型肝炎ウイルス誘導性酸化ストレス、脳心筋炎ウイルス誘導性酸化ストレス、呼吸器合胞体ウイルス誘導性酸化ストレス、及びデングウイルス誘導性酸化ストレスを治療する方法で使用される。
【0018】
本発明は更に、肝障害に関連する酸化ストレスを治療する方法で使用するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。したがって、式(I)の化合物は、肝障害に関連する酸化ストレスを治療する方法に使用してもよい。特に、治療すべき対象は、肝硬変、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、肝線維症を伴うNAFLD、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症を伴うNASH、又は肝硬変を伴うNASHを有するものとすることができる。したがって、本発明はまた、肝硬変に関連する酸化ストレス、NAFLDに関連する酸化ストレス、肝線維症を伴うNAFLDに関連する酸化ストレス、NASHに関連する酸化ストレス、肝線維症を伴うNASHに関連する酸化ストレス、又は肝硬変を伴うNASHに関連する酸化ストレスを治療する方法で使用するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。別の特定の実施形態において、治療すべき対象は、NAFLD、肝線維症を伴うNAFLD、NASH又は肝線維症を伴うNASHを有する。したがって、本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、NAFLDに関連する酸化ストレス、肝線維症を伴うNAFLDに関連する酸化ストレス、NASHに関連する酸化ストレス、又は肝線維症を伴うNASHに関連する酸化ストレスを治療する方法で使用される。
【0019】
本発明は更に、肝障害に関連する酸化ストレスを治療する方法であって、肝障害の治療を必要とする対象に対する式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。本発明の方法の特定の実施形態において、対象は、肝硬変、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、肝線維症を伴うNAFLD、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症を伴うNASH、又は肝硬変を伴うNASHを有する。
【0020】
特定の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、がん、特に肝がん、より詳細には肝細胞がん(HCC)に関連する酸化ストレスを治療する方法で使用される。
【0021】
本発明は更に、がん、特に肝がん、例えば肝細胞がんに関連する酸化ストレスを治療する方法であって、必要とする対象に対する式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。
【0022】
本発明において使用される化合物は、式(I):
【0023】
【0024】
(式中:
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C1~C6)アルキル基、スルホニル基、スルホキシド基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、ニトロ基(NO2)、アミノ基(NH2)、(C1~C6)アルキルアミノ基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、又は(C1~C6)ジアルキルアミド基を表し;
R2は、水素原子、重水素原子、NO2基、(C6~C14)アリール基、複素環基、ハロゲン原子、(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C2~C6)アルキニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、(C6~C14)アリールカルボニルアミノ基、カルボキシル若しくはカルボキシラート基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、(C1~C6)ジアルキルアミド基、NH2基、又は(C1~C6)アルキルアミノ基を表し;
或いは、R1及びR2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換又は非置換5~8員シクロアルキル、複素環又はアリール基を形成し;
R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一であるか異なり、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO2基、スルホニルアミノアルキル基、NH2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、又はR9基を表し;
R9は、O-R8基若しくはアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群から選択されるアミノ酸、又は式(A):
【0025】
【0026】
の部分を表し、ここで、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基、又は(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を表し;R''及びR'''は、独立して水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を表し;
R8は、水素原子、重水素原子、グルクロニジル基、又は
【0027】
【0028】
基を表し、ここで、R8a、R8b及びR8cは、同一であるか異なり、水素原子又は重水素原子を表す)
である。
【0029】
更なる特定の実施形態において、式(I)の化合物は、下記の通りであり:
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C1~C6)アルキル基、スルホニル基、スルホキシド基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、NO2基、NH2基、(C1~C6)アルキルアミノ基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、又は(C1~C6)ジアルキルアミド基を表し;
R2は、水素原子、重水素原子、NO2基、(C6~C14)アリール基、複素環基、ハロゲン原子、(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C2~C6)アルキニル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、(C6~C14)アリールカルボニルアミノ基、カルボキシル若しくはカルボキシラート基、アミド基、(C1~C6)アルキルアミド基、(C1~C6)ジアルキルアミド基、NH2基、又は(C1~C6)アルキルアミノ基を表し;
或いは、R1及びR2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換又は非置換5~8員シクロアルキル、複素環又はアリール基を形成し;
R3は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、O-R8基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO2基、スルホニルアミノアルキル基、NH2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群から選択されるアミノ酸、又は式(A):
【0030】
【0031】
の部分を表し、ここで、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基、又は(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を表し;R''及びR'''は、独立して水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を表し;
R8は、水素原子、重水素原子、又は
【0032】
【0033】
基を表し、ここで、R8a、R8b及びR8cは、同一であるか異なり、水素原子又は重水素原子を表し;
R4、R5、R6、及びR7は、同一であるか異なり、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、(C1~C6)アルキルカルボニル基、(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルオキシ基、(C1~C6)アルキルチオ基、(C1~C6)アルキルカルボニルオキシ基、(C6~C14)アリールオキシ基、(C6~C14)アリール基、複素環基、(C3~C14)シクロアルキル基、NO2基、スルホニルアミノ(C1~C6)アルキル基、NH2基、アミノ(C1~C6)アルキル基、(C1~C6)アルキルカルボニルアミノ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群から選択されるアミノ酸、又は式(A):
【0034】
【0035】
の部分を表し、ここで、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C1~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を表し;R''及びR'''は、独立して水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を表す。
【0036】
特定の実施形態において、本発明の式(I)の化合物では:
アルキル基は、置換又は非置換(C1~C6)アルキル基、特に置換又は非置換(C1~C4)アルキル基であってもよく;
アルキニル基は、置換又は非置換(C2~C6)アルキニル基であってもよく;
シクロアルキル基は、置換又は非置換(C3~C14)シクロアルキル基であってもよく
アルキルオキシ基は、置換又は非置換(C1~C6)アルキルオキシ基、例えば置換又は非置換(C1~C4)アルキルオキシ基であってもよく;
アルキルチオ基は、置換又は非置換(C1~C6)アルキルチオ基、例えば置換又は非置換(C1~C4)アルキルチオ基であってもよく;
アルキルアミノ基は、(C1~C6)アルキルアミノ基、例えば(C1~C4)アルキルアミノ基であってもよく;
ジアルキルアミノ基は、(C1~C6)ジアルキルアミノ基、例えば(C1~C4)ジアルキルアミノ基であってもよく;
アリール基は、置換又は非置換(C6~C14)アリール基、例えば置換又は非置換(C6~C14)アリール基であってもよく;
複素環基は、置換又は非置換ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール基であってもよい。
【0037】
窒素保護基は、当業者に周知であり、例えば、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis」(Wuts and Greene 2007)の本等の文献に記載されているものである。
【0038】
具体的な実施形態において、式(I)の化合物は、式(II):
【0039】
【0040】
(式中、R9は、水素原子、重水素原子、O-R8基(R8は、先に定義した通りである)、若しくはアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群から選択されるアミノ酸、又は式(A):
【0041】
【0042】
の部分を表し、ここで、R'は、(C1~C6)アルキル基、(C2~C6)アルケニル基、(C2~C6)アルキニル基、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルキル(C1~C6)アルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C1~C6)アルキル基、(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルケニル基、又は(C3~C14)シクロアルケニル(C2~C6)アルキニル基を表し;R''及びR'''は、独立して水素原子、(C1~C6)アルキル基、又は窒素保護基を表す)
の化合物である。
【0043】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、
- NTZ:
【0044】
【0045】
- チゾキサニド(TZ):
【0046】
【0047】
及び
- チゾキサニドグルクロニド(TZG):
【0048】
【0049】
から選択される。
【0050】
別の実施形態において、式(II)の化合物は、
R8a、R8b及びR8cが、同一であるか異なり、水素原子若しくは重水素原子を表し;及び/又は
R1、R3、R4、R5、及びR6が、同一であるか異なり、水素原子若しくは重水素原子を表し、ただし、R1、R2、R8a、R8b、R8c、R3、R4、R5、及びR6は、同時に水素原子ではない、というものである。
【0051】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d3)エタノアート、2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d2)エタノアート;又は2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d1)エタノアートである
【0052】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、2-(5-ニトロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3,3-ジメチルブタノアート、特に(S)-2-(5-ニトロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3,3-ジメチルブタノアート、又はその薬学的に許容される塩、例えば式:
【0053】
【0054】
のその塩酸塩(RM5061)である。
【0055】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、2-(5-ニトロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3-メチルペンタノアート、特に(2S,3S)-2-(5-ニトロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3-メチルペンタノアート、又はその薬学的に許容される塩、例えば式:
【0056】
【0057】
のその塩酸塩(RM5066)である。
【0058】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、2-(5-クロロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3,3-ジメチルブタノアート、特に(S)-2-(5-クロロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3,3-ジメチルブタノアート、又はその薬学的に許容される塩、例えば式:
【0059】
【0060】
のその塩酸塩(RM5064)である。
【0061】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、2-(5-クロロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3-メチルペンタノアート、特に(2S,3S)-2-(5-クロロチアゾール-2-イルカルバモイル)フェニル2-アミノ-3-メチルペンタノアート、又はその薬学的に許容される塩、例えば式:
【0062】
【0063】
のその塩酸塩(RM5065)である。
【0064】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、NTZ、TZ、TZG、又はその薬学的に許容される塩である。更なる特定の実施形態において、式(I)の化合物は、NTZ若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩である。好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、NTZ又はその薬学的に許容される塩である。
【0065】
特定の実施形態において、本発明は、肝障害に関連する酸化ストレスを治療する方法であって、肝障害の治療を必要とする対象に対するNTZ及び/若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。特定の実施形態において、対象には、NTZ又はその薬学的に許容される塩が投与される。
【0066】
更なる特定の実施形態において、本発明は、肝線維症に関連する酸化ストレスを治療する方法であって、肝線維症の治療を必要とする対象に対するNTZ及び/若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。特定の実施形態において、対象には、NTZ又はその薬学的に許容される塩が投与される。
【0067】
別の特定の実施形態において、本発明は、肝硬変に関連する酸化ストレスを治療する方法であって、肝硬変の治療を必要とする対象に対するNTZ及び/若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。特定の実施形態において、対象には、NTZ又はその薬学的に許容される塩が投与される。
【0068】
別の特定の実施形態において、本発明は、NAFLDに関連する酸化ストレスを治療する方法であって、NAFLDの治療を必要とする対象に対するNTZ及び/若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。特定の実施形態において、対象には、NTZ又はその薬学的に許容される塩が投与される。
【0069】
別の特定の実施形態において、本発明は、肝線維症を伴うNAFLDに関連する酸化ストレスを治療する方法であって、肝線維症を伴うNAFLDの治療を必要とする対象に対するNTZ及び/若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。特定の実施形態において、対象には、NTZ又はその薬学的に許容される塩が投与される。
【0070】
更なる特定の実施形態において、本発明は、NASHに関連する酸化ストレスを治療する方法であって、NASHの治療を必要とする対象に対するNTZ及び/若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。特定の実施形態において、対象には、NTZ又はその薬学的に許容される塩が投与される。
【0071】
更なる特定の実施形態において、本発明は、肝線維症を伴うNASHに関連する酸化ストレスを治療する方法であって、肝線維症を伴うNASHの治療を必要とする対象に対するNTZ及び/若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量の投与を含む方法に関する。特定の実施形態において、対象には、NTZ又はその薬学的に許容される塩が投与される。
【0072】
NTZ又は類似体の合成は、例えば(Rossignol and Cavier 1975)に記載されているように、又は当業者に公知の他の任意の合成方法により行うことができる。
【0073】
式(I)の化合物は、薬学的に許容される担体と共に医薬組成物に含ませることができる。こうした医薬組成物は、薬学的状況において許容される1種又は数種の賦形剤又はビヒクル(例えば、医薬用途に適合し、当業者に周知の生理食塩水、生理溶液、等張液等)も含むことができる。これらの組成物は、分散剤、可溶化剤、安定化剤、保存料等の中から選ばれる1種又は数種の薬剤又はビヒクルも含むことができる。これらの配合物に有用な薬剤又はビヒクル(液体及び/又は注射物質及び/又は固体)は特に、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物油、アカシア、リポソーム等である。組成物は、腸内又は非経口投与用とすることができる。例えば、式(I)の化合物は、経口、血管内(例えば静脈内若しくは動脈内)、筋内、腹腔内、皮下、経皮又は経鼻投与用に製剤化することができる。組成物は、固体又は液体剤形とすることができる。例示的配合物としては、注射可能な懸濁液、経口摂取用懸濁液、ゲル、オイル、軟膏、ピル、タブレット、坐薬、粉末、ゲルカップ、カプセル、エアロゾル、軟膏、クリーム、パッチ、又は持続的及び/若しくは徐放的放出を保証するガレノス形態若しくはデバイスの手段が挙げられるが、これに限定されない。この種の配合物には、薬剤、例えばセルロース、炭酸塩又はデンプンを有利に使用することができる。
【0074】
式(I)の化合物は、薬学的に許容される塩、特に医療用途に適合する酸性又は塩基性塩として製剤化することができる。式(I)の化合物の塩としては、薬学的に許容される酸付加塩、薬学的に許容される塩基付加塩、薬学的に許容される金属塩、アンモニウム及びアルキル化アンモニウム塩が挙げられる。これらの塩は、化合物の最終精製工程中に、又は、既に精製された化合物に塩を組み込むことによって得ることができる。
【0075】
具体的な実施形態によると、本発明の組成物は、有効成分としての少なくとも1種の式(I)の化合物を、許容できる賦形剤と共に含む。一例として、本発明の組成物は、2種の式(I)の化合物、NTZ及びTZの組み合わせを有効成分として含む。
【0076】
投与に関する頻度及び/又は用量は、治療すべき対象、病状、投与形態等に応じて当業者が適合させることができる。典型的には、式(I)の化合物、特にNTZ又はその薬学的に許容される塩は、0.01mg/日と4000mg/日の間に含まれる用量、例えば50mg/日~2000mg/日、特に100mg/日~1000mg/日、より詳細には500mg/日~1000mg/日で投与することができる。
【0077】
別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物、好ましくはNTZ又はその薬学的に許容される塩は、経口摂取を意図したピル又はタブレットの形態で投与される。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物、好ましくはNTZ又はその薬学的に許容される塩は、経口摂取用の懸濁液の形態で投与される。
【0078】
更なる態様において、本発明は、NTZ又はその医薬塩の投与を含む、疾患を治療する方法に関し、NTZは、500mg/日と1000mg/日の間に含まれる用量で投与され、疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、てんかん、中枢神経系の急性疾患、例えば脊髄損傷及び/又は脳損傷、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症、耐糖能異常、高血圧、アテローム性動脈硬化症、及び糖尿病、例えば1型又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム、ヒト免疫不全ウイルス誘導性酸化ストレス、インフルエンザウイルス誘導性酸化ストレス、HBV誘導性酸化ストレス、C型肝炎ウイルス誘導性酸化ストレス、脳心筋炎ウイルス誘導性酸化ストレス、呼吸器合胞体ウイルス誘導性酸化ストレス、デングウイルス誘導性酸化ストレス、肝硬変に関連する酸化ストレス、NAFLDに関連する酸化ストレス、肝線維症を伴うNAFLDに関連する酸化ストレス、NASHに関連する酸化ストレス、肝線維症を伴うNASHに関連する酸化ストレス、心筋虚血、虚血性脳損傷、肺虚血再かん流傷害、強皮症、脳卒中、炎症性腸疾患、並びに関節リウマチからなる群において選択される。
【0079】
更なる態様において、本発明は、NTZ又はその医薬塩の投与を含む、疾患を治療する方法に関し、NTZは、500mg/日と1000mg/日の間に含まれる用量で投与され、疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、遅発性ジスキネジー、てんかん、中枢神経系の急性疾患、例えば脊髄損傷及び/又は脳損傷、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症、耐糖能異常、高血圧、アテローム性動脈硬化症及び糖尿病、例えば1型又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム、ヒト免疫不全ウイルス誘導性酸化ストレス、インフルエンザウイルス誘導性酸化ストレス、HBV誘導性酸化ストレス、C型肝炎ウイルス誘導性酸化ストレス、脳心筋炎ウイルス誘導性酸化ストレス、呼吸器合胞体ウイルス誘導性酸化ストレス、デングウイルス誘導性酸化ストレス、NAFLDに関連する酸化ストレス、肝線維症を伴うNAFLDに関連する酸化ストレス、NASHに関連する酸化ストレス、肝線維症を伴うNASHに関連する酸化ストレス、心筋虚血、虚血性脳損傷、肺虚血再かん流傷害、強皮症、脳卒中、炎症性腸疾患、並びに関節リウマチからなる群において選択される。
【0080】
投与は、毎日、又は必要に応じて1日数回でも遂行することができる。治療期間は、治療すべき具体的疾患によって異なる。例えば、投与は、1日、又は数日間、例えば少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、又は少なくとも7日間遂行することができる。或いは、投与は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも4週間遂行することができる。慢性疾患の場合、投与は、4週間を超えて、例えば少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、又は6カ月を超えて、例えば少なくとも1年又は数年間検討することができる。場合によっては、本発明の組み合わせ生成物は、対象の生涯を通じて投与することができる。
【0081】
本発明を、下記の非限定的実施例を参照して更に説明する。
【実施例】
【0082】
線維化NASHの慢性CDAA+1%コレステロールモデルにおけるニタゾキサニドの評価(12週)
実験デザイン
NASH発症における酸化ストレスの顕著な役割を考慮し、CDAA/c食餌誘導性NASHモデルにおいてNTZの酸化還元ホメオスタシス調節異常を予防する能力を評価した。
【0083】
コリン欠乏L-アミノ酸置換(CDAA)食餌は、肝臓のβ-酸化及び超低密度リポタンパクの産生に不可欠なコリンを欠いており、肝細胞脂肪症を誘導すると考えられる。その後、脂質過酸化と酸化ストレスが小葉の炎症をもたらし、包括的に線維症を引き起こす。
【0084】
現在の研究では、100mg/kg/日のNTZの予防効果をマウスモデルで評価した。6週齢の雄C57Bl/6Jマウスに、対照(CSAA)食餌(n=8)、CDAA+1%コレステロール食餌(n=12)、又はNTZ100mg/kg/日を補充したCDAA+1%コレステロール食餌(n=8)を12週間与えた。餌は、Ssniff(登録商標)社(ドイツゾースト)から購入した。ニタゾキサニド(Interchim社、参照番号RQ550)は、Ssniff(登録商標)社によってCDAA+1%chol食餌に粉末形態で必要用量まで組み込まれた。
【0085】
体重と摂食量を週に2回監視した。処置の最終日、6時間の絶食期間後にマウスを屠殺した。トランスクリプトミクス及び組織学的研究のため、迅速に肝臓を切除した
【0086】
動物の処置は全て、標準的なプロトコルに従い、実験動物の適切なケアと使用に関する標準的な推奨事項に準拠して遂行した。
【0087】
トランスクリプトミクス研究
RNA抽出
Nucleospin(登録商標)96キット(Macherey Nagel社)を製造元の指示に従って使用し、肝臓の全RNAを単離した。RT緩衝液1倍(Invitrogen社、カタログ番号P/NY02321)、1mMのDTT(Invitrogen社、カタログ番号P/NY00147)、0.5mMのdNTP(Promega社)、200ngのpdN6(Roche社、カタログ番号11034731001)及び40Uのリボヌクレアーゼ阻害剤(Promega社、カタログ番号N2515)の存在下、M-MLV-RT(モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素)(Invitrogen社、カタログ番号28025)を使用して、150ngの全RNAをcDNAに逆転写した。
【0088】
RNAシーケンシング:
ナノ液滴によるRNAサンプル濃度の測定時に、バイオアナライザを使用して品質を評価した。Illumina TruSeq標準mRNA LTキットを使用してライブラリを調製し、高出力フローセルを備えたNextSeq 500装置(ペアエンドシーケンス、2×75bp)を使用してmRNAをシーケンスした。
【0089】
RNA-seqデータ分析:
Trimmomatic v.0.36を使用し、下記のパラメータで読み取りをクリーンにした:SLIDINGWINDOW:5:20 LEADING:30 TRAILING:30 MINLEN:60。次いで、デフォルトパラメータを持つアライナとしてhisat2 v.2.1.0を使用し、読み取りをrnacocktailでゲノム参照(マウス(Mus musculus)GRCm38.90)にアラインした。
【0090】
デフォルトパラメータを持つfeatureCounts v1.5.3を使用して、カウントテーブルを作成した。
【0091】
差次的に発現する遺伝子(DE遺伝子)を特定するため、R(バージョン3.4.3)及びDESEq2ライブラリ(v.1.18.1)を使用した。遺伝子注釈は、AnnotationDbiライブラリ(v.1.40.0)を使用して取得した。簡単に説明すると、FeatureCountsによって生成されたカウントマトリクスを、DESeqDataSetFromMatrix()関数で分析し、続いてDESeq2ライブラリからのDEseq()関数によって分析した。各条件(即ち、NTZ+CDAA/c対CDAA/cの比較)について、DESeq2からのresults()関数を使用して倍率変化及びp値を取得した。Ensembl IDをキーとして使用して、様々なテーブルを結合した。
【0092】
NTZによって誘導されるトランスクリプトームリモデリングに対するNrf2の役割を評価するため、Hayes and McMahon及びJung and Kwak(Hayes and McMahon 2009; Jung and Kwak 2010)からの情報、TRRUSTデータベース(https://www.grnpedia.org/trrust/)からのマウスNfe2l2標的、Wikipathway(https://www.wikipathways.org/index.php/Pathway:WP2884)からのNRF2経路、及びChorleyら(Chorley、Campbellら 2012)からのChIP-seqデータを結合することによってNrf2標的遺伝子をリスト化した表を生成した。このNrf2標的遺伝子リストを使用して、RNA-seqで同定されたトランスクリプトーム全体(27636遺伝子)、又はNTZ+CDAA/c対CDAA/c条件で差次的に発現した遺伝子のセット(下記の基準を満たす遺伝子が差次的に発現するとみなされる:少なくとも|倍率変化対CDAA/c|>1.4倍、及び調節されたp値<0.01)におけるNrf2標的遺伝子を同定した。遺伝子のプール全体とNrf2標的遺伝子との比を計算し、パーセントで表した。NTZ+CDAA/c対CDAA/c条件で観察されたNrf2標的遺伝子の割合が、同定されたトランスクリプトーム全体で観察された割合と異なるか否かを解明するため、カイ二乗検定を遂行した。
【0093】
組織学
屠殺時、組織学的分析のために肝臓サンプルを処理し、下記のように調べた。
【0094】
組織包埋及び切片化
肝臓切片をまずホルマリン4%溶液に40時間固定し、続いてエタノール中で数回の脱水工程(70、80、95及び100%エタノールで連続浴)を行った。続いて肝臓片を3つのキシレン浴中で、続いて2つの液体パラフィン(58℃)浴中でインキュベートした。次いで、肝臓片を小さなラックに入れ、Histowax(登録商標)で穏やかに満たし、組織を完全にカバーした。次いで、組織サンプルを3μmの切片に切断した。切片は、免疫組織化学(IHC)のために準備した。
【0095】
免疫組織化学アッセイ:4-HNE(4-ヒドロキシノネナール)
免疫ペルオキシダーゼプロトコルを使用することにより免疫組織化学アッセイを遂行した。切片を58℃でキシレン浴(2×3分)において脱ロウした。標本をエタノール(100%、100%、95%及び70%の連続浴)(各3分)で水和し、1倍PBSに沈めた(2×5分)。続いて、内因性ペルオキシダーゼをH2O2溶液(蒸留水中0.3%H2O2)で30分間ブロックし、続いて1倍PBSで5分間、3回洗浄した。更に、pH6.0のクエン酸塩緩衝液を用い、95℃で40分間、熱媒介抗原検索を遂行した。非特異的結合をブロックするため、3%正常ヤギ血清と0.1%Tritonを含む1倍PBS溶液を60分間添加した。続いて、組織を一次4-HNE抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、1倍PBSですすいだ(3×5分)。組織をHRP二次抗体と共に室温で1時間インキュベートし、次いで、1倍PBSですすいだ(3×5分)。次いで、スライドをペルオキシダーゼ基質3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)で15分間顕色し、水道水ですすいだ。最後に、染色剤をマイヤーヘマトキシリンで3分間対比染色し、水道水ですすぎ(2分)、組織をエタノールとキシレン中で脱水した。
【0096】
4-HNEのIHC分析:
組織学的検査及びスコアリングは、盲検式に遂行した。Pannoramic 250 Flash IIデジタルスライドスキャナ(3DHistech社)を使用して画像を取得した。スコアリング:各セクションからランダムに選択した7つのフィールドを、QuantCenterソフトウェアで調査、分析した。4-HNEの蓄積を、4-HNE-陽性領域/選択したフィールドの合計領域として計算した。
【0097】
・細胞内GSH検出:
チゾキサニド(Interchim社;カタログ番号RP253)を、DMF(Sigma社;カタログ番号227056)に溶解させた。メナジオン(Sigma社;カタログ番号M2518)とN-アセチルシステイン(Sigma社;カタログ番号A9165)を、水に溶解させた。
【0098】
1%P/S(Gibco社;カタログ番号15140-122)、1%グルタミン(Gibco社;カタログ番号25030-024)を補充した100μlのDMEM(Gibco;カタログ番号41965-039)中、96-ウェルマイクロプレートに、HepG2細胞(ECACC)をウェル当たり20000細胞の密度で播種した。完全培地は、10%SVF(Gibco社;カタログ番号10270-106)を含有していた。翌日、培養培地を除去し、レッドフェノールとSVFを含まないが、1%P/S(Gibco社;カタログ番号15140-122)、1%グルタミン(Gibco社;カタログ番号25030-024)を補充した100μLのDMEM(Gibco社;カタログ番号31053-028)と交換した。血清欠乏状態にしたHepG2をTZ又はN-アセチルシステイン(NAC)と共に1時間プレインキュベートし、次いで、メナジオン(MND)に2時間曝露した。化合物は、先に言及したようなそれぞれのビヒクルに溶解させ、血清欠乏状態にした培養培地で希釈した。20倍希釈の5μlの希釈液を細胞に添加し、TZの場合は1μM、10mMのNAC、100μMのMNDの最終濃度にそれぞれ到達させた。続いて、還元グルタチオンの細胞レベルを、ThiolTracker Violet染料(Invitrogen社、カタログ番号T10096)を使用して監視した。簡単に説明すると、細胞をDPBS(Invitrogen社;カタログ番号14287-080)で2回洗浄し、次いで供給元の指示に従いDPBSで調製した100μlの予熱したThiolTracker Violet染料溶液と共に37℃で30分間インキュベートし、蛍光を測定した(Ex:404nm、Em:526nm)。
【0099】
AREレポーター-HepG2細胞株
AREレポーター-Hep G2細胞(BPS Bioscience, Inc.社、サンディエゴ、カタログ番号60513)を、製造元の指示に従い培養した。解凍後(BPS解凍培地1、カタログ番号60187)、細胞を増殖培地(BPS増殖培地1K、カタログ番号79533)で培養し、続いて、45μlのアッセイ培地(BPS解凍培地)中、96-ウェルマイクロプレートにウェル当たり40000細胞の密度で播種した。TZ(Interchim社;カタログ番号RP253)及びDL-スルフォラファン(Sigma社;カタログ番号S4441)をDMSOに溶解させ、アッセイ培地に入れて希釈した。5μlの10倍希釈液を細胞に添加し、TZ及びDL-スルフォラファン(DL-Sulfo)を、それぞれ1μM及び3μMの最終濃度に到達させた。18時間の暴露後、ルシフェラーゼ活性を判定した。50μlのOne-Step Luciferaseアッセイシステム(BPS社、カタログ番号60690)をウェル毎に添加し、室温で約15分揺動した後、照度計を用いて発光を測定した。
【0100】
統計分析
実験結果は、平均±SEMとして表され、棒グラフとしてプロットした。統計分析は、Prism Version 7を使用して以下の通り遂行した:
【0101】
In vivoデータ
CSAA対CDAA+1%chol群を、スチューデントt-検定(#:p<0.05;##:p<0.01;###:p<0.001)により、又はマンホイットニー検定($:p<0.05;$$:p<0.01;$$$:p<0.001)により比較した。
【0102】
NTZ処置群を、スチューデントt-検定(#:p<0.05;##:p<0.01;###:p<0.001)により、又はマンホイットニー検定($:p<0.05;$$:p<0.01;$$$:p<0.001)により、CDAA+1%chol食餌と比較した。
【0103】
In vitroデータ
ARE-レポーターlucアッセイについては、各処置効果をスチューデントt-検定(#:p<0.05;##:p<0.01;###:p<0.001)によりビヒクル効果と比較した。
【0104】
細胞内GSHの検出については、メナジオン条件をマンホイットニー検定($:p<0.05;$$:p<0.01;$$$:p<0.001)により非刺激条件と比較した。各処置効果を、スチューデントt-検定(#:p<0.05;##:p<0.01;###:p<0.001)又はマンホイットニー検定($:p<0.05;$$:p<0.01;$$$:p<0.001)によりビヒクル効果と比較した。
【0105】
結果
酸化ストレスは、NASHの重要な病態生理学的機序であり(Koruk, Taysiら 2004;Masarone, Rosatoら 2018)、不飽和脂肪酸の過酸化アルデヒド生成物である4-HNEが、酸化ストレスの指標であることが広く認識されている(Takeuchi-Yorimoto, Notoら 2013)。
【0106】
したがって、
図1に示すように、CSAA食餌と比較して、CDAA/c群では肝内4-HNEレベルの顕著な上昇が観察される一方、CDAA/cレジメンと並行してNTZに曝露された群における4-HNEのレベルは大幅に低く、酸化ストレス誘導性脂質過酸化に対するNTZの予防効果を示している。
【0107】
NTZの抗酸化ストレス効果を更に調査するため、肝臓サンプルに対してトランスクリプトーム分析を行った。
図2に示すように、肝臓のGSTA1転写産物(パネルA)のレベル及びGSTA2(パネルB)転写産物のレベルは、抗酸化防御機序の実施を反映するCSAA群と比較して、CDAA/c群では有意に誘導される。興味深いことに、NTZ+CDAA/cを投与された群対CDAA/cレジメンのみを投与された群を比較すると、両方の酵素で発現の有意な誘導が観察され、酸化ストレスに対する防御の向上が示唆される。実際、GSTAは、グルタチオンとの抱合によってHNEの排除を可能とする解毒酵素として周知である。肝臓のGSTA4 mRNAのレベルも分析した(
図3)。これは、この酵素が、他のイソ酵素と比較して、HNをGSHに抱合させる活性が高い、HNE解毒のためのキープレーヤーとみなされているためである(Awasthi, Ramanaら 2017)。他のGSTに関しては、CDAA/c群をCSAA群と比較すると、GSTA4転写産物レベルの有意な誘導が観察され、NTZ+CDAA/cレジメンを与えたマウスは、CDAA/c群と比較して有意に高いレベルのGSTA4を明らかにし、NTZが酸化ストレスに対する防御機序を促進するという知見を裏付けている。
【0108】
マウス及びヒトにおいて、GSTA1、GSTA2及びGSTA4は、細胞の酸化還元状態の重要な調節因子であるNrf2によって正に調節される遺伝子であると記述されている(Hayes and Dinkova-Kostova 2014)。したがって、シーケンスされたトランスクリプトーム全体で観察されたNrf2標的遺伝子の割合を、NTZ処理によって誘導された遺伝子の中のNrf2遺伝子の割合と比較した(NTZ+CDAA/cシグネチャー対CDAA/c条件の比較によって得られた)。予期せぬことに、Nrf2シグネチャーの有意な濃縮が、NTZ処理(
図4)によって誘導された。Nrf2標的遺伝子は、RNA-seqデータ中の同定されたトランスクリプトーム全体の1.3%を占めるのに対し、Nrf2調節遺伝子は、NTZで処置したマウスにおいて差次的に発現した全遺伝子の8%超を構成することが発見された。
【0109】
Nrf2抗酸化経路を機能レベルで活性化するNTZの効能を確認するため、抗酸化応答エレメント(ARE)を介したルシフェラーゼ活性を、TZ(NTZの活性代謝産物)で処理したHepG2細胞において測定した。基礎条件下では、Nrf2は、細胞骨格タンパク質Keap1に結合することにより細胞質ゾルに保持され、酸化ストレス又は他のARE活性化因子に暴露されると、Nrf2はKeap1から放出されて核に移行し、そこでAREに結合することができ、細胞を酸化的損傷から保護する抗酸化酵素及びフェーズII酵素の発現に繋がる。
図5に示すように、TZ暴露は、ヒト肝細胞における核へのNrf2移行と関連するAREシグナル伝達を誘導するその能力を反映するAREを介した転写の有意な上昇に繋がる。要約すると、これらのデータは、NTZが、酸化ストレスに対する防御機序を誘導でき、基礎となる機序の一部がNrf2に依存していることを示している。
【0110】
これらの分析を補完するものとして、酸化ストレス誘導物質であるメナジオン(MND)に曝露した肝細胞において、肝臓で最も強力な抗酸化物質であるGSH(還元グルタチオン)(Al-Busafi, Bhatら 2012)含有量に対するTZの影響を評価した。
図6に示すように、MND暴露は、予想通り、細胞GSHの有意な減少を誘導した。TZ処置は、このMND誘導性減少を完全に防止した。この結果は、NTZの活性代謝産物であるTZの抗酸化特性を裏付けるものである。
【0111】
結論として、これらの結果は全て、NTZ及び/又はその代謝産物TZが、酸化ストレスに関連する疾患に対する治療的有効性を提供できることを実証するものである。
【0112】
【国際調査報告】